JP2004520288A - 中性及び陰イオン性の遺伝子送達用コロイド粒子 - Google Patents
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Abstract
陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化されたDNA配列を含む陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が懸濁している水相を含有する安定なコロイドを形成させること、及び中性又は正味で陰イオン性の表面ポテンシャルを有する第二のDNA複合体を含む安定なコロイドが形成されるよう、該第一のDNA複合体の表面ポテンシャルを修飾することにより、遺伝子導入用の隔絶DNAを含有している中性又は陰イオン性の複合体を作製する方法。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の細胞型へのインビボのターゲティッドDNA送達を可能にする、小さい、中性であるか又は負の電荷を有するコロイド構造のための方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
インビボで外因性遺伝子を送達しうることが証明されている遺伝子導入媒体は、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターという2つのグループに大別されうるが、それらは、各々、特定の利点及び欠点を有している。非ウイルス担体は、特に作製及び免疫原性の分野におけるウイルスの使用と関連した問題を克服しうる魅力的な特徴を示すため、最近、注目を集めている。極めて多様な非ウイルス遺伝子送達系が記載されている。リポプレックス(lipoplex)、ポリプレックス(polyplex)、又はリポポリプレックス(lipopolyplex)は、全身適用のための最も効率的な非ウイルスDNA送達媒体として記載された。一般的に、これらの複合体は、静電的相互作用によって陰イオン性のDNAと会合し、従って一般的には全体として正の電荷を有するコロイドの中にDNAを凝縮させパッケージングする、陽イオン性化合物(即ち、脂質又はポリマー)を含有している。これらの複合体へのDNAのパッケージングは、極めて効率的である。粒子は、一方では、ヌクレアーゼによる分解からのDNAの保護を提供し、他方では、細胞取り込みのための手段を提供する。細胞取り込みは、細胞表面上のグリコサミノグリカン(特に、ヘパラン硫酸)へのこれらの陽イオン性粒子の結合により媒介される。これは、最終的には遺伝子発現へと至る、細胞への侵入の経路を決定する。
【0003】
これらの利点に加え、非ウイルスベクターの使用に関連した問題がいくつか存在するが、それらは、大部分が、比較的不十分なインビボでの遺伝子導入と関係している。この活性の不足は、系の陽イオン性という性質による。注射後、複合体の正の電荷のために、粒子は、循環系内に存在する陰イオン性タンパク質と結合する。これによって、粒子は迅速にオプソニン化され、続いて細網内皮系(RES)によって消去される。RESのマクロファージによる細菌DNA、特にCpGモチーフの認識は、用量を制限する急性毒性の主因であるIFN−γ、TNF−α、IL12のようなサイトカインの高レベルの産生を引き起こす。
【0004】
特定の細胞への遺伝子送達のターゲティングを可能にすることは、有利である。複合体をRESではなく標的組織へと差し向けることによって、毒性が減少し、効率は増加する。残念ながら、ターゲティングリガンドの効果は、この非特異的な電荷によって誘導される遺伝子導入過程によって大きく妨害される。さらに、正の電荷を、例えば従来のリポソームを使用することによって回避した場合、DNAパッケージング効率又はコロイド安定性に大きな問題が生じる。
【0005】
先行技術において、ポリマーが、リポソームのRES取り込みを回避するために使用されている。これらのポリマーは、リポソームが、延長された時間、循環することを可能にし、ターゲティングリガンドがポリマー鎖の末端にコンジュゲートされたなら、それらのターゲティングを可能にする。様々なポリマーが、インビボで使用されるコロイド粒子を立体的に安定化するために使用されている。典型的な適用は、脂質アンカーを使用した、リポソームの表面へのポリエチレングリコール(PEG)の付加である(いわゆる「ステルス(Stealth)」技術)(Lasicら,Stealth Liposomes,CRC Press,1995参照)。これは、他の表面との相互作用を物理的に遮断するよう機能する親水性の層を、リポソームの表面上に生成させる(即ち、立体安定化)。この層は、剪断面を表面から離して物理的に移動させることにより、粒子のゼータポテンシャルを低下させる。しかしながら、Fitch,Polymer Colloids,A Comprehensive Introduction,第7.4部,Academic Press,1997に論じられているように、それは、剪断面を超え溶液へと露出した表面電荷の効果は遮断しない。簡単に説明すると、イオン化された粒子が電場内を移動する場合、それらはイオンを運搬する。運搬されたイオンの層は、粒子の流体力学的直径を増大させ、剪断面と呼ばれる新たな境界を画定する。剪断面を超えたイオン及び溶媒は、粒子によって運搬されない。適用された電場内での電荷を有する粒子の可動性を測定するためには、弾性光散乱(ELS)を使用することができ、それから、剪断面における静電ポテンシャル(Ψ)が計算される。剪断面における静電ポテンシャルの大きさは、ゼータポテンシャル(ζ)と呼ばれる。(PEGのような)表面会合ポリマーは、物理的に、表面付近の溶液の移動をコントロールし、有効な剪断面を拡張させる。ゼータポテンシャルは、静電場に影響を与えることなく低下する。この効果は、図1及び2に図示されている。グラフは、粒子間の立体相互作用が、極めて強いが、表面付近でのみ有効であることを示している(破線)。静電力は、典型的な表面会合ポリマーの領域を越えて拡がりうる(実線)。即ち、粒子の表面に付加された中性ポリマーは、衝突に対する短距離の障壁を提供するが、粒子が強い表面電荷を保持している場合には、電荷は表面に付加されたポリマーの範囲を越えて測定可能である。従って、陽イオン性複合体の表面へ付加されたPEGは、電荷の一部を遮断するにすぎず、複合体は、やはり溶液に対し陽イオン性である(図2)。さらに、溶液中のタンパク質は、依然として、ポリマーの表面を超えて拡がる場へと引き付けられる。即ち、PEG含有粒子は、やはりオプソニン化され、RESによって除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、中性であるか又は負の電荷を有するコロイドへの効率的なDNAパッケージングのための方法及び組成物を提供する。さらに、本発明は、全身投与後の、体内の特定の部位へのDNAのターゲティッド送達を可能にする。
【0007】
特に、本発明は、陰イオン性DNAへの陽イオン性成分の複合体化によって得られた粒子の正の電荷を低下させるか、排除するか、又は逆転させる方法を提供する。本発明は、ターゲティッド遺伝子送達を可能にする最終コロイドの組成物も企図する。本発明の好ましい方法及び組成物は、血清中での粒子の安定性及びターゲティング可能性と組み合わされた、効率的なDNAパッケージングという利点を提供する。
【0008】
従って、本発明の一つの態様によると、遺伝子導入用の隔絶DNAを含有している中性又は陰イオン性の複合体を作成する方法が提供される。この方法においては、陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化されたDNA配列を含有している陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が水相中に懸濁している安定なコロイドが形成され、その後、中性又は正味で陰イオン性の表面ポテンシャルを有する第二のDNA複合体を含有している安定なコロイドが形成されるよう、第一のDNA複合体の表面ポテンシャルが修飾される。
【0009】
一つの実施形態において、正の表面ポテンシャルを有する安定なコロイドが生成するよう、プラスミドDNAが、多価陽イオン性脂質と会合させられる。好ましい脂質は、線状ポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン)、分岐状ポリアミン(RPR209120、図4参照)、又はグアニジウム基を含有しているポリアミン(RPR204014、図7参照)のような多価陽イオン性頭部を含有しているものである。さらに、好ましい脂質は、メリスチル(meristyl)又はパルミチルのような様々な長さの1個以上のアシル鎖に基づく疎水性部分を含有している。次いで、このコロイドは、陽イオン性脂質の正の電荷を有するアミンと反応し、従ってコロイドの電荷を消費する薬剤を添加することにより、修飾される。二つの好ましい化学試薬は、シトラコン酸無水物(CCA)及びNHS−アセテートである。
【0010】
もう一つの実施形態において、複合体の電荷は、コロイド安定性が影響を受ける点にまで低下させられうる。この場合、ポリ(アルキレンオキシド)のようなポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)が、静電安定化を立体安定化に交換するため、溶液に添加されるか、又は粒子の表面へと組み込まれうる。
【0011】
さらにもう一つの実施形態において、ターゲティングリガンドが、電荷修飾の前又は後に、複合体へと添加される。これらのターゲティングリガンドは、細胞への侵入経路を提供し、最終的には遺伝子発現へと至る取り込みメカニズムを提供する。好ましいターゲティングリガンドは、フォレート(RPR258018、図13参照)、又はRGDもしくはNGRのような腫瘍ホーミングペプチドである。
【0012】
もう一つの適用において、電荷修飾は、酸性pHの下で可逆性のものである。従って、CCAで修飾されたRPR204014/DNA複合体の場合のような、修飾基の放出の誘発、及び高度の活性を有する陽イオン性複合体の再生(図7)。
【0013】
本発明は、DNAの全身ターゲティッド送達に特に有用である。好ましい一つの適用は、悪性腫瘍の治療である。小さい中性又は陰イオン性の粒子は、周知の、悪性腫瘍に関連した、増強された透過性「漏出性血管系(leaky vasculature)」及び保持「リンパ排出の欠如(no lymphatic drainage)」(EPR)現象によって、循環系を出て、腫瘍組織に侵入することができる。ターゲティングに特に適した他の組織には、炎症部位、肝臓、及び脾臓が含まれる。表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、増殖中の内皮細胞のような付加的な標的組織に特異的にトランスフェクトすることができる。
【0014】
従って、本発明のもう一つの目的は、その必要のある患者を遺伝子治療によって治療するための外因性治療用DNA配列を含む医薬品の調製のための、本発明に係るコロイドの使用である。
【0015】
もう一つの目的は、外因性治療用DNA配列の投与を目的とした医薬品の調製のための、本発明に係るコロイドの使用である。
【0016】
さらなる目的は、本発明に係るコロイドを含む組成物、特に薬学的組成物である。
【0017】
非特異的遺伝子導入及びCpG媒介毒性が、従来の非ウイルス遺伝子送達系の非能率の主因である。本発明は、非特異的遺伝子導入及びCpG媒介毒性の両方を低下させ、細胞特異的な、受容体によって媒介される遺伝子導入を可能にする。
【0018】
DNAのパッケージングのため、中性又は陰イオン性の材料を使用する試みがなされている。しかしながら、当分野の文献は、電荷を中性にすることにより、パッケージング効率及び/又はコロイド安定性に大きな問題が生じることを明白に示している。本発明の新規性は、まず、高度に効率的な様式で、DNAをパッケージングするために陽イオン性脂質が使用されるという事実にある。続いて、陽イオンは、DNAパッケージング及び粒子安定性を保持しつつ、中性又は陰イオン性の化合物へと修飾される。短いアシル鎖を有する多価脂質の多くが、化学修飾の後に安定な粒子を与えることが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の方法によって調製された安定なコロイド、及びそのコロイドを利用した遺伝子治療技術も、開示される。本発明のこれら及びその他の特徴、並びにその利点は、以下の発明の詳細な説明が、添付の図面と併せて参照された場合に、より完全に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、特定の細胞型へのインビボターゲティッド送達を可能にする、小さい、中性であるか又は負の電荷を有するコロイド構造へのDNAパッケージングのための方法及び組成物を提供する。本発明の方法によると、プラスミドDNAのコアと陽イオン性脂質とを含む複合体が形成される。これらの複合体は、最初は、水性環境中に懸濁した微粒子の形態で存在する。粒子は、最初は、正の表面ポテンシャルを有している。次いで、コロイドは、表面又は脂質複合体全体の電荷を低下させるか、除去するか、又は逆転させるため、陽イオン性脂質の正の電荷を有する基と反応する薬剤の添加によって修飾される。これらの脂質粒子の電荷の修飾は、それらが曝される陰イオン性タンパク質及び細胞表面との相互作用を低下させ、従ってターゲティッド遺伝子送達を可能にする。
【0021】
活性プラスミドDNAを含有している安定な粒子は、陽イオン性脂質又は陽イオン性脂質/中性脂質混合物がイオン相互作用によってDNAに付加される自己集合過程を使用して作製されうる。まず、脂質が、ミセル又はリポソームとして水性懸濁液中に投入される。これらの粒子がDNAと結合すると、自発的再編成によって、DNAを間にはさむ脂質二重層のセクションが生成する。十分な脂質が使用された場合、全てのDNAが、脂質構造内に隔絶されるようになり、DNAseのような溶液中の化合物にとって利用不可能となる。続いて、粒子は、インビボ遺伝子治療に使用されうる。しかしながら、粒子の強い正の電荷は、オプソニン化及びRES系による迅速な消去へと至る、血清タンパク質の結合を引き起こす。マクロファージによる取り込み及び消化は、用量を制限する毒性へと至るIFN−γ、TNF−α、又はIL12のようなサイトカインの急性の上昇を引き起こす。本発明の方法は、DNAのパッケージングに、この自己集合系を利用するが、ゼータポテンシャルを低下させるか又は逆転させるための脂質の化学修飾を追加する。DNAは、その便利な保護パッケージの中に留まる、即ち脂質で被覆される。その結果、複合体へのDNAのパッケージングに陽イオン性脂質が使用され、続いてその複合体が、やはりDNAが存在している中性又は陰イオン性のコロイドが形成されるよう改変される。これらの修飾された粒子は、減少した急性毒性プロフィールを有しており、非特異的な電荷によって媒介される遺伝子導入の排除によるターゲティングアプローチにおいて使用することが可能となっている。
【0022】
そのような粒子において使用するのに適した陽イオン性脂質は、例えば「Liposomes in Gene Delivery.」D.D.Lasic編 CRC Press,Boca Raton(1997)に記載されているような第一級アミン、第二級アミン、又はグアニジノアミンを有しうる。DNAを凝縮させるために使用されるその他の陽イオン性薬剤も、この様式において使用されうる。ポリエチレンイミン、ポリリシン、及びデンドリマーのようなポリマーが、その例である。
【0023】
本発明の陽イオン性脂質粒子は、中性脂質と組み合わされた陽イオン性脂質を含みうる。陽イオン性脂質粒子の形成において使用するのに適した中性脂質には、例えば「Liposomes in Gene Delivery.」D.D.Lasic編 CRC Press,Boca Raton(1997)に記載されているようなDOPE、DOPC、コレステロール、RPR204293が含まれる。
【0024】
当業者にとっては明白であろうが、溶媒の選択は本願とは無関係である。
【0025】
第一級アミンと反応させるために使用される化合物クラスの一例は、NHSエステルである。そのようなエステルの例は、酢酸誘導体であるN−ヒドロキシスクシンイミドアセテート(NHS−アセテート)である。NHS−アセテートは、単純な遮断試薬であり、反応生成物は可逆性でない。NHS−アセテートによる典型的な陽イオン性脂質の化学修飾は、図4に例示されている。この例において、陽イオン性脂質は、2個の第一級アミノ基を有しているRPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)である。その反応は、正の電荷を低下させる一置換、又は正の電荷を排除する二置換、又は電荷を中間レベルにまで低下させるそれらの組み合わせであり得る。図5は、NHS−アセテートを使用したRPR209120/DNA/PEG2000複合体のゼータポテンシャルの修飾を示すグラフである。データは、全脂質に対する活性エステルのモル比(M/M)の関数としてのゼータポテンシャル(ELS)(mV)として表されている。図6は、RPR209120(第一級アミン)及びRPR204014(図7に示されるようなグアニジノアミン)を使用した、類似の脂質/DNA/PEG2000複合体とのNHS−アセテートの反応に関するゼータポテンシャルに対する効果を示すグラフである。NHS−アセテートは、第一級アミンとは容易に反応するが、RPR204014のような第二級アミン又はグアニジノアミンとはさほど反応性でない。
【0026】
本発明の電荷修飾法において使用するためのもう一つの好ましい化合物クラスは、グアニジノアミン基と反応性の無水物である。そのような無水物の例は、シトラコン酸無水物(CCA)である。CCAはグアニジノアミンと反応性であり、その化学は可逆性である。シトラコン酸無水物による典型的な陽イオン性脂質の化学修飾は、図7に例示されている。この例において、陽イオン性脂質は、グアニジノアミン基を有しているRPR204014(N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−2−{3−[4−(3−グアニジノ−プロピルアミノ)−ブチル−アミノ]−プロピルアミノ}−アセトアミド)である。この場合、その反応はアミンを遮断し、カルボン酸官能基を追加する。やはり図7に示されているように、シトラコン酸無水物の反応は、シトラコン酸が生成し、脂質が正の電荷を有するアミド型へと戻る低pHにおいては可逆性である。低pHにおけるシトラコン酸無水物の反応の可逆性というこの特徴は、有用な調整可能性をこの反応に追加する。
【0027】
電荷がコロイド安定性が影響を受ける点にまで低下させられる場合には、静電コロイド安定化を立体安定化と交換するため、ポリマー又はその他の薬剤が、溶液に添加されるか、又は粒子の表面に組み込まれうる。
【0028】
本発明の電荷修飾法は、図2に例示され、そして図3により詳細に例示されるように、表面ポテンシャルをゼロにまで低下させるか、又はさらには陰イオン性粒子を生成させるため、立体的に保護された(即ち、PEGコーティングされた)粒子に適用されうる。
【0029】
これらの電荷修飾反応のための好ましい条件は、粒子安定性及び/又はDNA完全性に干渉しないよう穏和な条件の下で反応が起こることを可能にするものである。より具体的には、カチオン/DNA複合体の凝集を引き起こす条件、即ち高いイオン強度(>150mM NaCl)の条件は、回避されるべきである。さらに、DNA完全性に障害を与えうる条件、即ち極めて高いか、又は低いpHの条件が、回避されるべきである。好ましい反応条件は、6から8のpH域で起こる。また、同じ理由のため、極度の熱を発生する反応も、回避されるべきである。
【0030】
本発明の方法は、プラスミドDNAを含有している粒子にとって特に有用である。オリゴヌクレオチド、RNA、及び小さなオリゴペプチドも、この方法において使用するのに適している。本発明の主たる目的は、これらの化合物のインビボでの全身ターゲティッド送達である。好ましい一つの適用は、悪性腫瘍の治療用である。ターゲティングに特に適した他の組織には、炎症部位、肝臓、及び脾臓が含まれる。表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、増殖中の内皮細胞のような付加的な標的組織に特異的に、強い電荷−電荷相互作用の非存在下において、トランスフェクトすることができる。
【0031】
以下の実施例は、ターゲティング可能な中性又は負の電荷を有する安定なコロイド構造である、DNAの効率的なパッケージングを提供する電荷修飾された脂質/DNA複合体の調製の方法を例示する。実施例は、本発明の特定の組成物及び方法を例示することのみを目的としており、決して、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【実施例1】
【0032】
NHS−アセテートで修飾された複合体
この実施例は、プラスミドDNAを含有している陽イオン性脂質粒子の表面電荷を修飾するためのNHS−アセテートの使用を例証する。まず、陽イオン性脂質RPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)と、典型的なプラスミドDNAと、ポリエチレングリコール及び脂質のコンジュゲート(DSPE−PEG、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)2000])(Avanti Polar Lipids,PN880120)とを組み合わせることにより、陽イオン性粒子を作製した。次いで、得られた複合体を、活性エステルNHS−アセテートと反応させた。
【0033】
脂質成分RPR209120及びDSPE−PEGを、10:1というモル比でクロロホルム中で組み合わせた(10%のDSPE−PEG)。アルゴン流下又は減圧下で溶液を回転させることにより、有機溶媒の蒸発により、脂質成分を薄膜として沈着させた。脂質成分を、真空下でさらに乾燥させた(0.10mmHg未満、4時間)。次いで、5%デキストロース、20mM NaCl溶液を、3mMという濃度を有する脂質懸濁液が生成するよう添加した。これを4℃で一晩インキュベートし、次いで、均一なミセルの懸濁液が生成するよう超音波処理した。この懸濁液及びプラスミドDNA溶液(5%デキストロース、20mM NaCl中、0.5mg/ml)を、等容量、迅速に混合し、直径70nmから100nm(ELS)の脂質/DNA/PEG複合体粒子の安定なコロイドを生成させた。
【0034】
次いで、脂質複合体のコロイド懸濁液を、酢酸及びN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS−アセテート)を含む活性エステルの新鮮に作成された水性溶液と、室温で1時間反応させ、次いで、5%デキストロース、20mM NaClに対して4℃で一晩透析した。反応化学は、図1に例示されている。NHS−アセテート活性エステルの量は、低下した表面電荷を有するか、又は表面電荷を有しない粒子が生成するよう、全脂質に対するモル比で約10分の1から約10倍まで変動させられうる。全脂質に対するNHS−アセテート活性エステルのより高い比率は、負の電荷を有する粒子を生成させた。
【0035】
添付のグラフ(図5及び6)は、NHS−アセテート活性エステルの量と、得られたゼータポテンシャル(ELS)(mV)との関係を示している。動的光散乱分析による粒子サイズは、エチジウム臭化物(EB)染色の蛍光シグナルと同様に、反応の量と共にわずかに増加する(表1)。しかしながら、アガロースゲル電気泳動における遅滞によって決定されるように、DNAは、やはり脂質粒子にパッケージングされていることが見出された。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
シトラコン酸無水物で修飾された複合体
RPR204014脂質6nmolに対しDNA 1μgという比率の、RPR204014(N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−2−{3−[4−(3−グアニジノ−プロピルアミノ)−ブチルアミノ]−プロピルアミノ}−アセトアミド)とDNAとからなる陽イオン性脂質粒子は、直径60nmから80nmであり、約40mVというゼータポテンシャルを有していた。炭酸緩衝液(pH9)中のこれらの粒子の、4mMシトラコン酸無水物[CAS616−02−4](CCA)との反応によって、約−40mVというゼータポテンシャルを有する安定な粒子が生成した。5.5という比較的低いpHでは、反応は逆転し、粒子が陽イオン性へと復帰する。この反応の化学は、図7に例示されている。
【0038】
表2は、室温(RT)で2時間のpH5.5におけるCCA修飾の前後のゼータポテンシャルを示している。
【0039】
【表2】
【実施例3】
【0040】
体内分布研究
前述のように、本発明の方法は、陽イオン性粒子とインビボ環境との間の表面電荷の差が減少するよう、陽イオン性粒子を修飾する。これは、血球及びその他の陰イオン性組織膜へと捕捉される生成物の量を低下させる。オプソニン化タンパク質も、結合を阻害されうる。次いで、十分に小さいこれらの粒子は、(肝臓におけるような)窓、又は癌腫もしくは炎症組織と関連した「漏出性血管系」のいずれかを通り、毛細血管壁の開口部を通り、ある種の組織に侵入することができる。次いで、そのような電荷修飾された粒子は、弱イオン性又はエントロピー性の過程によって細胞と反応することができる。標的組織には、炎症部位、癌腫、腫瘍内皮、及び肝臓が含まれる。マウスにおける体内分布を、金属キレート化剤−脂質コンジュゲートを使用して複合体に付加されたガンマ放出因子111インジウムを使用して追跡した。複合体を、尾静脈注射により投与した。試験の10日から14日前に、予めマウスに培養腫瘍細胞(4T1)を皮下注射した。結果は、全脂質に対するNHS−アセテートのモル比に対し、血中の注入された用量に対する%として表され、30分(正方形)及び6時間(三角形)の循環時間についてのデータが示されている。
【0041】
これらの粒子の体内分布は、循環時間、腫瘍取り込み、及び脾臓に対する影響に関して、未修飾粒子と測定可能に異なっていた。図8は、実施例1の方法に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子の全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。図9は、実施例2の方法に従い作成されたシトラコン酸電荷修飾粒子の全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【0042】
図10は、異なるNHS−アセテート/脂質比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の血中レベルのグラフである。図10に例示されるように、血中レベルは、0.5時間目及び6時間目の両方において、修飾された粒子の方が有意に高かった。図10は、NHS−アセテートによる修飾の程度の関数としての血中循環を示している。データは、実施例1の方法に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子のIV注射後の時間、及び粒子と反応させるために使用された活性エステルの量を示している。
【0043】
注射された粒子は、循環血球と相互作用すべきでない。0.5時間目及び6時間目における、比較的長い循環時間は、血球への粒子吸着が低下した結果であり得る。粒子によって障害を受けた赤血球は、脾臓に到達すると予想される。図11は、電荷修飾粒子の脾臓に対する影響が比較的低いことを例証するデータを示している。データは、活性エステル/全脂質のモル比に対し、脾臓における全用量に対する%として表されており、30分(正方形)及び6時間(三角形)の循環時間に関するデータが示されている。脾臓に関するデータは、実施例1の方法に従い作成された電荷修飾粒子では、比較的少ないトレースが脾臓に移行することを示している。
【0044】
図12は、実施例1のNHS−アセテート修飾複合体粒子の、腫瘍への増強された取り込みを示している。データは、活性エステル/全脂質のモル比に対し、腫瘍における全用量に対する%として表されており、30分(円)、6時間(三角形)、及び24時間(正方形)の循環時間に関するデータが示されている。6時間後及び24時間後の両方において、約50%多い電荷修飾複合体(5及び10倍モル過剰のNHS−アセテート)が、腫瘍に到達する。
【実施例4】
【0045】
インビトロのターゲティッド遺伝子導入
強い電荷−電荷相互作用の非存在下において、表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、付加的な標的組織、即ち特異的リガンドのための結合部位を有している細胞と反応することができる。粒子は、標的細胞へとトランスフェクトされた場合、延長された時間にわたり、治療剤を産生するであろうプラスミドDNAを含有している。NHS−アセテート修飾脂質DNA複合体のインビトロでのフォレート媒介遺伝子導入を、インビトロでM109細胞を使用して調査した。以下の組成を使用した。複合体が形成された後、挿入された0.3nmolジステアリル−PEG400−フォレート(RPR258018)を含む/含まない、1μg DNA+5nmol RPR209120+1nmol RPR204014+0.3nmol RPR204293。この組成の根拠は、以下の通りであった:RPR209120はNHS−アセテートによって修飾されるであろう;RPR204014は修飾されないであろう、即ちPEG脂質が使用され得ないため、粒子の安定性を補助するであろう(短いPEGリンカーのみを含有しているターゲティングリガンドの遮蔽);RPR204293は、複合体の安定化を補助し、エンドソーム逃避を補助するであろう中性ヘルパー脂質である;RPR258018は、M109細胞上のフォレート受容体と特異的に結合することが示されている。遊離フォレート(FF)を、粒子と競合させるため、即ち遺伝子導入がフォレートにより媒介されたことを示すため、使用した。結果は、図13に示されている。RPR258018を含む、又は含まない未修飾の陽イオン性複合体については、高度の非特異的な(FFと競合しない)遺伝子導入が見い出された。5倍モル過剰のNHS−アセテート(対RPR209120アミン)による複合体の修飾は、遺伝子導入を100倍減少させた。遺伝子導入の減少は、ターゲティング脂質RPR258018の添加によって部分的に(10倍)回復し得た。5Ac修飾複合体のRPR258018により媒介される遺伝子導入は、遊離フォレートと競合することができ、従って、遺伝子導入が受容体により媒介されたことが示唆された。
【実施例5】
【0046】
インビボ遺伝子導入
この実施例は、インビボ遺伝子導入のためのNHS−アセテートで修飾された粒子の使用を例示する。まず、陽イオン性脂質RPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)と、中性脂質DOPE(ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン)と、ポリエチレングリコール及び脂質のコンジュゲート(DSPE−PEG、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)2000])と、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)をコードするプラスミドDNAとを組み合わせることにより陽イオン性粒子を作成する。次いで、得られた複合体を、活性エステルNHS−アセテートと反応させる。
【0047】
脂質成分RPR209120、DOPE、及びDSPE−PEGを、10:10:0.8というモル比で、クロロホルム中で組み合わせる。アルゴン流下又は減圧下で溶液を回転させることにより、有機溶媒の蒸発により、脂質成分を薄膜として沈着させる。脂質成分を、真空下でさらに乾燥させる(0.10mmHg未満、4時間)。次いで、5%デキストロース、20mM NaCl溶液を、脂質懸濁液が生成するよう添加し、それを、均一なリポソームの懸濁液が生成するよう超音波処理する。この懸濁液及びプラスミドDNA溶液(5%デキストロース、20mM NaCl中、0.5mg/ml)を、等容量、DNA 1マイクログラム当たり5nmol RPR209120という比率で、迅速に混合し、脂質/DNA/PEG複合体粒子の安定なコロイドを生成させる。
【0048】
脂質複合体のコロイド懸濁液を、100mM HEPES緩衝液(pH7.5)で希釈し、次いで、酢酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS−アセテート)の新鮮に作成された水性溶液と、室温で1時間反応させる。NHS−アセテートの量は、陽イオン性脂質に対し5倍モル比である。次いで、PEG20,000を透析バッグの頂部に置くことにより、粒子を濃縮する。0.8mgから1.0mg DNA/mlという最終濃度が得られた時点で、続いて、最終生成物を5%デキストロース、20mM NaClに対して4℃で一晩透析する。
【0049】
M109皮下腫瘍を保持しているBalb−Cマウスに、増加する量の修飾された粒子(100、200、400、及び800μg DNAに相当)を静脈注射する。注射の24時間後に、マウスを屠殺し、主な臓器を収集し、ホモジナイズし、CATトランスジーンの量を、標準的なCAT Elisa(Roche,IN)を使用して決定する。
【0050】
図14は、肺、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、及び腫瘍が、CATトランスジーンを発現していることを示している。
【実施例6】
【0051】
修飾された粒子の特徴決定
実施例5に記載されたようにして、粒子を形成させ修飾する。次いで、脂質を、25mM Hepes(pH8.5)、3M NaCl、1%オクチルグルコシドにより抽出し、乾燥させ、30分で水中アセトニトリル40%から70%という勾配を使用して、C4カラムを用いたHPLCによって分析する(水及びアセトニトリルは、いずれも、1%TFAを含有している)。これらの条件で、未修飾のRPR209120は、14.8分という溶出時間を有する。NHS−アセテートで処理された粒子から抽出された脂質は、19.5分という溶出時間を有しており、このことは、それがその手順によって化学修飾されたことを証明している。
【0052】
本発明の少数の特定の実施形態を記載してきたが、様々な改変、修飾、及び改良が、当業者には容易に想到される。この開示によって明白になるような改変、修飾、及び改良は、本明細書には明確に述べられていないが、この明細書の一部であるものとし、本発明の本旨及び範囲に含まれるものとする。前述の記載は、例示のためだけのものであり、本発明を制限するものではない。本発明は、以下の請求の範囲及びその等価物において定義されるようにのみ、制限される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コロイド内に含まれる電荷を有する粒子に適用されるような反発力を、類似の電荷を有する隣接表面との距離に対して示しているグラフである。Fitch,Polymer Colloids,A Comprehensive Introduction,第7.4部,Academic Press,1997に基づく。
【図2】表面からの距離の関数としての、電気ポテンシャル(Ψ)の変化を示すグラフ及び図である。イオン化された粒子が電場内を移動する場合、それらはイオンを運搬する。運搬されたイオンの層は、粒子の流体力学的直径を増加させ、剪断面を表面から離して移動させる。剪断面を超えたイオン及び溶媒は、粒子によって運搬されない。適用された電場内での電荷を有する粒子の可動性を測定するためには、弾性光散乱を使用することができ、それから、剪断面における静電ポテンシャル(Ψ)が計算される。剪断面における静電ポテンシャルの大きさは、ゼータポテンシャル(ζ)と呼ばれる。
【図3】PEG2000による修飾及び/又は化学修飾を含む、及び含まない、陽イオン性複合体の表面における電荷場を示す図である。(PEG2000のような)表面会合ポリマーは、物理的に、表面付近の溶液の移動をコントロールし、有効な剪断面を拡張させる。ゼータポテンシャルは、静電場に影響を与えることなく低下する。粒子表面のアミンの化学修飾は、粒子の周囲の静電場を改変させるために使用されうる。
【図4】典型的な陽イオン性脂質(RPR209120)の(1個以上の)アミン末端基とのNHS−アセテートの化学反応を示す。
【図5】NHS−アセテートを使用した、陽イオン性脂質複合体のゼータポテンシャルの修飾を示すグラフである。NHS活性エステル、NHS−アセテートは、第一級アミンをアセチル化するようRPR209120と反応し、ゼータポテンシャルの低下によってここに示されたように、表面電荷を低下させる。コールター(Couler)DELSA440電気泳動光散乱(ELS)装置を使用して決定されたゼータポテンシャル。
【図6】ゼータポテンシャルの修飾を示し、NHS−アセテートの異なる脂質複合体との反応を比較しているグラフである。RPR209120(第一級アミン)を含む複合体は、NHS−アセテートと容易に反応するが、RPR204014(グアニジウムアミン及び第二級アミン)は、反応しない。高い活性エステルの濃度を使用すると、ゼータポテンシャルはゼロにまで低下し、さらには逆転されうる。
【図7】シトラコン酸無水物の典型的な陽イオン性脂質のアミン末端基との可逆的な化学反応を示す。
【図8】実施例1に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子を使用した、全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【図9】実施例2に従い作成されたシトラコン酸電荷修飾粒子を使用した、全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【図10】NHS−アセテート/脂質の異なるモル比におけるNHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の血中レベルのグラフである。IV注射後の時間及び粒子と反応させるために使用された活性エステルの量の関数としての血中循環。(マウスにおける体内分布は、金属キレート化剤−脂質コンジュゲートを使用して複合体に付加されたガンマ放出因子111インジウムを使用して追跡される。複合体は、尾静脈注射によって投与される。マウスには、試験の10日から14日前に、予め培養癌細胞4T1を皮下注射する)。
【図11】異なるNHS−アセテート/脂質のモル比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の脾臓における全用量の割合(%)のグラフである。
【図12】異なるNHS−アセテート/脂質のモル比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目、6.0時間目、及び24時間目の腫瘍における全用量の割合(%)のグラフである。
【図13】NHS−アセテート修飾脂質DNA複合体:複合体が形成された後、挿入された0.3nmolジステアリル−PEG400−フォレート(RPR258018)を含む/含まない、1μg DNA+5nmol RPR209120+1nmol RPR204014+0.3nmol RPR204293のインビトロでのフォレート媒介遺伝子導入。
【図14】100、200、400、又は800μgのDNAを含む化学修飾粒子のIV注射後の異なる臓器におけるCATトランスジーンの発現。データは、4匹の動物の平均値及び個々の値である。
【0001】
本発明は、特定の細胞型へのインビボのターゲティッドDNA送達を可能にする、小さい、中性であるか又は負の電荷を有するコロイド構造のための方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
インビボで外因性遺伝子を送達しうることが証明されている遺伝子導入媒体は、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターという2つのグループに大別されうるが、それらは、各々、特定の利点及び欠点を有している。非ウイルス担体は、特に作製及び免疫原性の分野におけるウイルスの使用と関連した問題を克服しうる魅力的な特徴を示すため、最近、注目を集めている。極めて多様な非ウイルス遺伝子送達系が記載されている。リポプレックス(lipoplex)、ポリプレックス(polyplex)、又はリポポリプレックス(lipopolyplex)は、全身適用のための最も効率的な非ウイルスDNA送達媒体として記載された。一般的に、これらの複合体は、静電的相互作用によって陰イオン性のDNAと会合し、従って一般的には全体として正の電荷を有するコロイドの中にDNAを凝縮させパッケージングする、陽イオン性化合物(即ち、脂質又はポリマー)を含有している。これらの複合体へのDNAのパッケージングは、極めて効率的である。粒子は、一方では、ヌクレアーゼによる分解からのDNAの保護を提供し、他方では、細胞取り込みのための手段を提供する。細胞取り込みは、細胞表面上のグリコサミノグリカン(特に、ヘパラン硫酸)へのこれらの陽イオン性粒子の結合により媒介される。これは、最終的には遺伝子発現へと至る、細胞への侵入の経路を決定する。
【0003】
これらの利点に加え、非ウイルスベクターの使用に関連した問題がいくつか存在するが、それらは、大部分が、比較的不十分なインビボでの遺伝子導入と関係している。この活性の不足は、系の陽イオン性という性質による。注射後、複合体の正の電荷のために、粒子は、循環系内に存在する陰イオン性タンパク質と結合する。これによって、粒子は迅速にオプソニン化され、続いて細網内皮系(RES)によって消去される。RESのマクロファージによる細菌DNA、特にCpGモチーフの認識は、用量を制限する急性毒性の主因であるIFN−γ、TNF−α、IL12のようなサイトカインの高レベルの産生を引き起こす。
【0004】
特定の細胞への遺伝子送達のターゲティングを可能にすることは、有利である。複合体をRESではなく標的組織へと差し向けることによって、毒性が減少し、効率は増加する。残念ながら、ターゲティングリガンドの効果は、この非特異的な電荷によって誘導される遺伝子導入過程によって大きく妨害される。さらに、正の電荷を、例えば従来のリポソームを使用することによって回避した場合、DNAパッケージング効率又はコロイド安定性に大きな問題が生じる。
【0005】
先行技術において、ポリマーが、リポソームのRES取り込みを回避するために使用されている。これらのポリマーは、リポソームが、延長された時間、循環することを可能にし、ターゲティングリガンドがポリマー鎖の末端にコンジュゲートされたなら、それらのターゲティングを可能にする。様々なポリマーが、インビボで使用されるコロイド粒子を立体的に安定化するために使用されている。典型的な適用は、脂質アンカーを使用した、リポソームの表面へのポリエチレングリコール(PEG)の付加である(いわゆる「ステルス(Stealth)」技術)(Lasicら,Stealth Liposomes,CRC Press,1995参照)。これは、他の表面との相互作用を物理的に遮断するよう機能する親水性の層を、リポソームの表面上に生成させる(即ち、立体安定化)。この層は、剪断面を表面から離して物理的に移動させることにより、粒子のゼータポテンシャルを低下させる。しかしながら、Fitch,Polymer Colloids,A Comprehensive Introduction,第7.4部,Academic Press,1997に論じられているように、それは、剪断面を超え溶液へと露出した表面電荷の効果は遮断しない。簡単に説明すると、イオン化された粒子が電場内を移動する場合、それらはイオンを運搬する。運搬されたイオンの層は、粒子の流体力学的直径を増大させ、剪断面と呼ばれる新たな境界を画定する。剪断面を超えたイオン及び溶媒は、粒子によって運搬されない。適用された電場内での電荷を有する粒子の可動性を測定するためには、弾性光散乱(ELS)を使用することができ、それから、剪断面における静電ポテンシャル(Ψ)が計算される。剪断面における静電ポテンシャルの大きさは、ゼータポテンシャル(ζ)と呼ばれる。(PEGのような)表面会合ポリマーは、物理的に、表面付近の溶液の移動をコントロールし、有効な剪断面を拡張させる。ゼータポテンシャルは、静電場に影響を与えることなく低下する。この効果は、図1及び2に図示されている。グラフは、粒子間の立体相互作用が、極めて強いが、表面付近でのみ有効であることを示している(破線)。静電力は、典型的な表面会合ポリマーの領域を越えて拡がりうる(実線)。即ち、粒子の表面に付加された中性ポリマーは、衝突に対する短距離の障壁を提供するが、粒子が強い表面電荷を保持している場合には、電荷は表面に付加されたポリマーの範囲を越えて測定可能である。従って、陽イオン性複合体の表面へ付加されたPEGは、電荷の一部を遮断するにすぎず、複合体は、やはり溶液に対し陽イオン性である(図2)。さらに、溶液中のタンパク質は、依然として、ポリマーの表面を超えて拡がる場へと引き付けられる。即ち、PEG含有粒子は、やはりオプソニン化され、RESによって除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、中性であるか又は負の電荷を有するコロイドへの効率的なDNAパッケージングのための方法及び組成物を提供する。さらに、本発明は、全身投与後の、体内の特定の部位へのDNAのターゲティッド送達を可能にする。
【0007】
特に、本発明は、陰イオン性DNAへの陽イオン性成分の複合体化によって得られた粒子の正の電荷を低下させるか、排除するか、又は逆転させる方法を提供する。本発明は、ターゲティッド遺伝子送達を可能にする最終コロイドの組成物も企図する。本発明の好ましい方法及び組成物は、血清中での粒子の安定性及びターゲティング可能性と組み合わされた、効率的なDNAパッケージングという利点を提供する。
【0008】
従って、本発明の一つの態様によると、遺伝子導入用の隔絶DNAを含有している中性又は陰イオン性の複合体を作成する方法が提供される。この方法においては、陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化されたDNA配列を含有している陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が水相中に懸濁している安定なコロイドが形成され、その後、中性又は正味で陰イオン性の表面ポテンシャルを有する第二のDNA複合体を含有している安定なコロイドが形成されるよう、第一のDNA複合体の表面ポテンシャルが修飾される。
【0009】
一つの実施形態において、正の表面ポテンシャルを有する安定なコロイドが生成するよう、プラスミドDNAが、多価陽イオン性脂質と会合させられる。好ましい脂質は、線状ポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン)、分岐状ポリアミン(RPR209120、図4参照)、又はグアニジウム基を含有しているポリアミン(RPR204014、図7参照)のような多価陽イオン性頭部を含有しているものである。さらに、好ましい脂質は、メリスチル(meristyl)又はパルミチルのような様々な長さの1個以上のアシル鎖に基づく疎水性部分を含有している。次いで、このコロイドは、陽イオン性脂質の正の電荷を有するアミンと反応し、従ってコロイドの電荷を消費する薬剤を添加することにより、修飾される。二つの好ましい化学試薬は、シトラコン酸無水物(CCA)及びNHS−アセテートである。
【0010】
もう一つの実施形態において、複合体の電荷は、コロイド安定性が影響を受ける点にまで低下させられうる。この場合、ポリ(アルキレンオキシド)のようなポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)が、静電安定化を立体安定化に交換するため、溶液に添加されるか、又は粒子の表面へと組み込まれうる。
【0011】
さらにもう一つの実施形態において、ターゲティングリガンドが、電荷修飾の前又は後に、複合体へと添加される。これらのターゲティングリガンドは、細胞への侵入経路を提供し、最終的には遺伝子発現へと至る取り込みメカニズムを提供する。好ましいターゲティングリガンドは、フォレート(RPR258018、図13参照)、又はRGDもしくはNGRのような腫瘍ホーミングペプチドである。
【0012】
もう一つの適用において、電荷修飾は、酸性pHの下で可逆性のものである。従って、CCAで修飾されたRPR204014/DNA複合体の場合のような、修飾基の放出の誘発、及び高度の活性を有する陽イオン性複合体の再生(図7)。
【0013】
本発明は、DNAの全身ターゲティッド送達に特に有用である。好ましい一つの適用は、悪性腫瘍の治療である。小さい中性又は陰イオン性の粒子は、周知の、悪性腫瘍に関連した、増強された透過性「漏出性血管系(leaky vasculature)」及び保持「リンパ排出の欠如(no lymphatic drainage)」(EPR)現象によって、循環系を出て、腫瘍組織に侵入することができる。ターゲティングに特に適した他の組織には、炎症部位、肝臓、及び脾臓が含まれる。表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、増殖中の内皮細胞のような付加的な標的組織に特異的にトランスフェクトすることができる。
【0014】
従って、本発明のもう一つの目的は、その必要のある患者を遺伝子治療によって治療するための外因性治療用DNA配列を含む医薬品の調製のための、本発明に係るコロイドの使用である。
【0015】
もう一つの目的は、外因性治療用DNA配列の投与を目的とした医薬品の調製のための、本発明に係るコロイドの使用である。
【0016】
さらなる目的は、本発明に係るコロイドを含む組成物、特に薬学的組成物である。
【0017】
非特異的遺伝子導入及びCpG媒介毒性が、従来の非ウイルス遺伝子送達系の非能率の主因である。本発明は、非特異的遺伝子導入及びCpG媒介毒性の両方を低下させ、細胞特異的な、受容体によって媒介される遺伝子導入を可能にする。
【0018】
DNAのパッケージングのため、中性又は陰イオン性の材料を使用する試みがなされている。しかしながら、当分野の文献は、電荷を中性にすることにより、パッケージング効率及び/又はコロイド安定性に大きな問題が生じることを明白に示している。本発明の新規性は、まず、高度に効率的な様式で、DNAをパッケージングするために陽イオン性脂質が使用されるという事実にある。続いて、陽イオンは、DNAパッケージング及び粒子安定性を保持しつつ、中性又は陰イオン性の化合物へと修飾される。短いアシル鎖を有する多価脂質の多くが、化学修飾の後に安定な粒子を与えることが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の方法によって調製された安定なコロイド、及びそのコロイドを利用した遺伝子治療技術も、開示される。本発明のこれら及びその他の特徴、並びにその利点は、以下の発明の詳細な説明が、添付の図面と併せて参照された場合に、より完全に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、特定の細胞型へのインビボターゲティッド送達を可能にする、小さい、中性であるか又は負の電荷を有するコロイド構造へのDNAパッケージングのための方法及び組成物を提供する。本発明の方法によると、プラスミドDNAのコアと陽イオン性脂質とを含む複合体が形成される。これらの複合体は、最初は、水性環境中に懸濁した微粒子の形態で存在する。粒子は、最初は、正の表面ポテンシャルを有している。次いで、コロイドは、表面又は脂質複合体全体の電荷を低下させるか、除去するか、又は逆転させるため、陽イオン性脂質の正の電荷を有する基と反応する薬剤の添加によって修飾される。これらの脂質粒子の電荷の修飾は、それらが曝される陰イオン性タンパク質及び細胞表面との相互作用を低下させ、従ってターゲティッド遺伝子送達を可能にする。
【0021】
活性プラスミドDNAを含有している安定な粒子は、陽イオン性脂質又は陽イオン性脂質/中性脂質混合物がイオン相互作用によってDNAに付加される自己集合過程を使用して作製されうる。まず、脂質が、ミセル又はリポソームとして水性懸濁液中に投入される。これらの粒子がDNAと結合すると、自発的再編成によって、DNAを間にはさむ脂質二重層のセクションが生成する。十分な脂質が使用された場合、全てのDNAが、脂質構造内に隔絶されるようになり、DNAseのような溶液中の化合物にとって利用不可能となる。続いて、粒子は、インビボ遺伝子治療に使用されうる。しかしながら、粒子の強い正の電荷は、オプソニン化及びRES系による迅速な消去へと至る、血清タンパク質の結合を引き起こす。マクロファージによる取り込み及び消化は、用量を制限する毒性へと至るIFN−γ、TNF−α、又はIL12のようなサイトカインの急性の上昇を引き起こす。本発明の方法は、DNAのパッケージングに、この自己集合系を利用するが、ゼータポテンシャルを低下させるか又は逆転させるための脂質の化学修飾を追加する。DNAは、その便利な保護パッケージの中に留まる、即ち脂質で被覆される。その結果、複合体へのDNAのパッケージングに陽イオン性脂質が使用され、続いてその複合体が、やはりDNAが存在している中性又は陰イオン性のコロイドが形成されるよう改変される。これらの修飾された粒子は、減少した急性毒性プロフィールを有しており、非特異的な電荷によって媒介される遺伝子導入の排除によるターゲティングアプローチにおいて使用することが可能となっている。
【0022】
そのような粒子において使用するのに適した陽イオン性脂質は、例えば「Liposomes in Gene Delivery.」D.D.Lasic編 CRC Press,Boca Raton(1997)に記載されているような第一級アミン、第二級アミン、又はグアニジノアミンを有しうる。DNAを凝縮させるために使用されるその他の陽イオン性薬剤も、この様式において使用されうる。ポリエチレンイミン、ポリリシン、及びデンドリマーのようなポリマーが、その例である。
【0023】
本発明の陽イオン性脂質粒子は、中性脂質と組み合わされた陽イオン性脂質を含みうる。陽イオン性脂質粒子の形成において使用するのに適した中性脂質には、例えば「Liposomes in Gene Delivery.」D.D.Lasic編 CRC Press,Boca Raton(1997)に記載されているようなDOPE、DOPC、コレステロール、RPR204293が含まれる。
【0024】
当業者にとっては明白であろうが、溶媒の選択は本願とは無関係である。
【0025】
第一級アミンと反応させるために使用される化合物クラスの一例は、NHSエステルである。そのようなエステルの例は、酢酸誘導体であるN−ヒドロキシスクシンイミドアセテート(NHS−アセテート)である。NHS−アセテートは、単純な遮断試薬であり、反応生成物は可逆性でない。NHS−アセテートによる典型的な陽イオン性脂質の化学修飾は、図4に例示されている。この例において、陽イオン性脂質は、2個の第一級アミノ基を有しているRPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)である。その反応は、正の電荷を低下させる一置換、又は正の電荷を排除する二置換、又は電荷を中間レベルにまで低下させるそれらの組み合わせであり得る。図5は、NHS−アセテートを使用したRPR209120/DNA/PEG2000複合体のゼータポテンシャルの修飾を示すグラフである。データは、全脂質に対する活性エステルのモル比(M/M)の関数としてのゼータポテンシャル(ELS)(mV)として表されている。図6は、RPR209120(第一級アミン)及びRPR204014(図7に示されるようなグアニジノアミン)を使用した、類似の脂質/DNA/PEG2000複合体とのNHS−アセテートの反応に関するゼータポテンシャルに対する効果を示すグラフである。NHS−アセテートは、第一級アミンとは容易に反応するが、RPR204014のような第二級アミン又はグアニジノアミンとはさほど反応性でない。
【0026】
本発明の電荷修飾法において使用するためのもう一つの好ましい化合物クラスは、グアニジノアミン基と反応性の無水物である。そのような無水物の例は、シトラコン酸無水物(CCA)である。CCAはグアニジノアミンと反応性であり、その化学は可逆性である。シトラコン酸無水物による典型的な陽イオン性脂質の化学修飾は、図7に例示されている。この例において、陽イオン性脂質は、グアニジノアミン基を有しているRPR204014(N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−2−{3−[4−(3−グアニジノ−プロピルアミノ)−ブチル−アミノ]−プロピルアミノ}−アセトアミド)である。この場合、その反応はアミンを遮断し、カルボン酸官能基を追加する。やはり図7に示されているように、シトラコン酸無水物の反応は、シトラコン酸が生成し、脂質が正の電荷を有するアミド型へと戻る低pHにおいては可逆性である。低pHにおけるシトラコン酸無水物の反応の可逆性というこの特徴は、有用な調整可能性をこの反応に追加する。
【0027】
電荷がコロイド安定性が影響を受ける点にまで低下させられる場合には、静電コロイド安定化を立体安定化と交換するため、ポリマー又はその他の薬剤が、溶液に添加されるか、又は粒子の表面に組み込まれうる。
【0028】
本発明の電荷修飾法は、図2に例示され、そして図3により詳細に例示されるように、表面ポテンシャルをゼロにまで低下させるか、又はさらには陰イオン性粒子を生成させるため、立体的に保護された(即ち、PEGコーティングされた)粒子に適用されうる。
【0029】
これらの電荷修飾反応のための好ましい条件は、粒子安定性及び/又はDNA完全性に干渉しないよう穏和な条件の下で反応が起こることを可能にするものである。より具体的には、カチオン/DNA複合体の凝集を引き起こす条件、即ち高いイオン強度(>150mM NaCl)の条件は、回避されるべきである。さらに、DNA完全性に障害を与えうる条件、即ち極めて高いか、又は低いpHの条件が、回避されるべきである。好ましい反応条件は、6から8のpH域で起こる。また、同じ理由のため、極度の熱を発生する反応も、回避されるべきである。
【0030】
本発明の方法は、プラスミドDNAを含有している粒子にとって特に有用である。オリゴヌクレオチド、RNA、及び小さなオリゴペプチドも、この方法において使用するのに適している。本発明の主たる目的は、これらの化合物のインビボでの全身ターゲティッド送達である。好ましい一つの適用は、悪性腫瘍の治療用である。ターゲティングに特に適した他の組織には、炎症部位、肝臓、及び脾臓が含まれる。表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、増殖中の内皮細胞のような付加的な標的組織に特異的に、強い電荷−電荷相互作用の非存在下において、トランスフェクトすることができる。
【0031】
以下の実施例は、ターゲティング可能な中性又は負の電荷を有する安定なコロイド構造である、DNAの効率的なパッケージングを提供する電荷修飾された脂質/DNA複合体の調製の方法を例示する。実施例は、本発明の特定の組成物及び方法を例示することのみを目的としており、決して、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【実施例1】
【0032】
NHS−アセテートで修飾された複合体
この実施例は、プラスミドDNAを含有している陽イオン性脂質粒子の表面電荷を修飾するためのNHS−アセテートの使用を例証する。まず、陽イオン性脂質RPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)と、典型的なプラスミドDNAと、ポリエチレングリコール及び脂質のコンジュゲート(DSPE−PEG、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)2000])(Avanti Polar Lipids,PN880120)とを組み合わせることにより、陽イオン性粒子を作製した。次いで、得られた複合体を、活性エステルNHS−アセテートと反応させた。
【0033】
脂質成分RPR209120及びDSPE−PEGを、10:1というモル比でクロロホルム中で組み合わせた(10%のDSPE−PEG)。アルゴン流下又は減圧下で溶液を回転させることにより、有機溶媒の蒸発により、脂質成分を薄膜として沈着させた。脂質成分を、真空下でさらに乾燥させた(0.10mmHg未満、4時間)。次いで、5%デキストロース、20mM NaCl溶液を、3mMという濃度を有する脂質懸濁液が生成するよう添加した。これを4℃で一晩インキュベートし、次いで、均一なミセルの懸濁液が生成するよう超音波処理した。この懸濁液及びプラスミドDNA溶液(5%デキストロース、20mM NaCl中、0.5mg/ml)を、等容量、迅速に混合し、直径70nmから100nm(ELS)の脂質/DNA/PEG複合体粒子の安定なコロイドを生成させた。
【0034】
次いで、脂質複合体のコロイド懸濁液を、酢酸及びN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS−アセテート)を含む活性エステルの新鮮に作成された水性溶液と、室温で1時間反応させ、次いで、5%デキストロース、20mM NaClに対して4℃で一晩透析した。反応化学は、図1に例示されている。NHS−アセテート活性エステルの量は、低下した表面電荷を有するか、又は表面電荷を有しない粒子が生成するよう、全脂質に対するモル比で約10分の1から約10倍まで変動させられうる。全脂質に対するNHS−アセテート活性エステルのより高い比率は、負の電荷を有する粒子を生成させた。
【0035】
添付のグラフ(図5及び6)は、NHS−アセテート活性エステルの量と、得られたゼータポテンシャル(ELS)(mV)との関係を示している。動的光散乱分析による粒子サイズは、エチジウム臭化物(EB)染色の蛍光シグナルと同様に、反応の量と共にわずかに増加する(表1)。しかしながら、アガロースゲル電気泳動における遅滞によって決定されるように、DNAは、やはり脂質粒子にパッケージングされていることが見出された。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
シトラコン酸無水物で修飾された複合体
RPR204014脂質6nmolに対しDNA 1μgという比率の、RPR204014(N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−2−{3−[4−(3−グアニジノ−プロピルアミノ)−ブチルアミノ]−プロピルアミノ}−アセトアミド)とDNAとからなる陽イオン性脂質粒子は、直径60nmから80nmであり、約40mVというゼータポテンシャルを有していた。炭酸緩衝液(pH9)中のこれらの粒子の、4mMシトラコン酸無水物[CAS616−02−4](CCA)との反応によって、約−40mVというゼータポテンシャルを有する安定な粒子が生成した。5.5という比較的低いpHでは、反応は逆転し、粒子が陽イオン性へと復帰する。この反応の化学は、図7に例示されている。
【0038】
表2は、室温(RT)で2時間のpH5.5におけるCCA修飾の前後のゼータポテンシャルを示している。
【0039】
【表2】
【実施例3】
【0040】
体内分布研究
前述のように、本発明の方法は、陽イオン性粒子とインビボ環境との間の表面電荷の差が減少するよう、陽イオン性粒子を修飾する。これは、血球及びその他の陰イオン性組織膜へと捕捉される生成物の量を低下させる。オプソニン化タンパク質も、結合を阻害されうる。次いで、十分に小さいこれらの粒子は、(肝臓におけるような)窓、又は癌腫もしくは炎症組織と関連した「漏出性血管系」のいずれかを通り、毛細血管壁の開口部を通り、ある種の組織に侵入することができる。次いで、そのような電荷修飾された粒子は、弱イオン性又はエントロピー性の過程によって細胞と反応することができる。標的組織には、炎症部位、癌腫、腫瘍内皮、及び肝臓が含まれる。マウスにおける体内分布を、金属キレート化剤−脂質コンジュゲートを使用して複合体に付加されたガンマ放出因子111インジウムを使用して追跡した。複合体を、尾静脈注射により投与した。試験の10日から14日前に、予めマウスに培養腫瘍細胞(4T1)を皮下注射した。結果は、全脂質に対するNHS−アセテートのモル比に対し、血中の注入された用量に対する%として表され、30分(正方形)及び6時間(三角形)の循環時間についてのデータが示されている。
【0041】
これらの粒子の体内分布は、循環時間、腫瘍取り込み、及び脾臓に対する影響に関して、未修飾粒子と測定可能に異なっていた。図8は、実施例1の方法に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子の全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。図9は、実施例2の方法に従い作成されたシトラコン酸電荷修飾粒子の全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【0042】
図10は、異なるNHS−アセテート/脂質比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の血中レベルのグラフである。図10に例示されるように、血中レベルは、0.5時間目及び6時間目の両方において、修飾された粒子の方が有意に高かった。図10は、NHS−アセテートによる修飾の程度の関数としての血中循環を示している。データは、実施例1の方法に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子のIV注射後の時間、及び粒子と反応させるために使用された活性エステルの量を示している。
【0043】
注射された粒子は、循環血球と相互作用すべきでない。0.5時間目及び6時間目における、比較的長い循環時間は、血球への粒子吸着が低下した結果であり得る。粒子によって障害を受けた赤血球は、脾臓に到達すると予想される。図11は、電荷修飾粒子の脾臓に対する影響が比較的低いことを例証するデータを示している。データは、活性エステル/全脂質のモル比に対し、脾臓における全用量に対する%として表されており、30分(正方形)及び6時間(三角形)の循環時間に関するデータが示されている。脾臓に関するデータは、実施例1の方法に従い作成された電荷修飾粒子では、比較的少ないトレースが脾臓に移行することを示している。
【0044】
図12は、実施例1のNHS−アセテート修飾複合体粒子の、腫瘍への増強された取り込みを示している。データは、活性エステル/全脂質のモル比に対し、腫瘍における全用量に対する%として表されており、30分(円)、6時間(三角形)、及び24時間(正方形)の循環時間に関するデータが示されている。6時間後及び24時間後の両方において、約50%多い電荷修飾複合体(5及び10倍モル過剰のNHS−アセテート)が、腫瘍に到達する。
【実施例4】
【0045】
インビトロのターゲティッド遺伝子導入
強い電荷−電荷相互作用の非存在下において、表面会合リガンドを付加的に装備している粒子は、付加的な標的組織、即ち特異的リガンドのための結合部位を有している細胞と反応することができる。粒子は、標的細胞へとトランスフェクトされた場合、延長された時間にわたり、治療剤を産生するであろうプラスミドDNAを含有している。NHS−アセテート修飾脂質DNA複合体のインビトロでのフォレート媒介遺伝子導入を、インビトロでM109細胞を使用して調査した。以下の組成を使用した。複合体が形成された後、挿入された0.3nmolジステアリル−PEG400−フォレート(RPR258018)を含む/含まない、1μg DNA+5nmol RPR209120+1nmol RPR204014+0.3nmol RPR204293。この組成の根拠は、以下の通りであった:RPR209120はNHS−アセテートによって修飾されるであろう;RPR204014は修飾されないであろう、即ちPEG脂質が使用され得ないため、粒子の安定性を補助するであろう(短いPEGリンカーのみを含有しているターゲティングリガンドの遮蔽);RPR204293は、複合体の安定化を補助し、エンドソーム逃避を補助するであろう中性ヘルパー脂質である;RPR258018は、M109細胞上のフォレート受容体と特異的に結合することが示されている。遊離フォレート(FF)を、粒子と競合させるため、即ち遺伝子導入がフォレートにより媒介されたことを示すため、使用した。結果は、図13に示されている。RPR258018を含む、又は含まない未修飾の陽イオン性複合体については、高度の非特異的な(FFと競合しない)遺伝子導入が見い出された。5倍モル過剰のNHS−アセテート(対RPR209120アミン)による複合体の修飾は、遺伝子導入を100倍減少させた。遺伝子導入の減少は、ターゲティング脂質RPR258018の添加によって部分的に(10倍)回復し得た。5Ac修飾複合体のRPR258018により媒介される遺伝子導入は、遊離フォレートと競合することができ、従って、遺伝子導入が受容体により媒介されたことが示唆された。
【実施例5】
【0046】
インビボ遺伝子導入
この実施例は、インビボ遺伝子導入のためのNHS−アセテートで修飾された粒子の使用を例示する。まず、陽イオン性脂質RPR209120(2−(3−[ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミノ]−プロピルアミノ)−N−ジテトラデシルカルバモイルメチル−アセトアミド)と、中性脂質DOPE(ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン)と、ポリエチレングリコール及び脂質のコンジュゲート(DSPE−PEG、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)2000])と、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)をコードするプラスミドDNAとを組み合わせることにより陽イオン性粒子を作成する。次いで、得られた複合体を、活性エステルNHS−アセテートと反応させる。
【0047】
脂質成分RPR209120、DOPE、及びDSPE−PEGを、10:10:0.8というモル比で、クロロホルム中で組み合わせる。アルゴン流下又は減圧下で溶液を回転させることにより、有機溶媒の蒸発により、脂質成分を薄膜として沈着させる。脂質成分を、真空下でさらに乾燥させる(0.10mmHg未満、4時間)。次いで、5%デキストロース、20mM NaCl溶液を、脂質懸濁液が生成するよう添加し、それを、均一なリポソームの懸濁液が生成するよう超音波処理する。この懸濁液及びプラスミドDNA溶液(5%デキストロース、20mM NaCl中、0.5mg/ml)を、等容量、DNA 1マイクログラム当たり5nmol RPR209120という比率で、迅速に混合し、脂質/DNA/PEG複合体粒子の安定なコロイドを生成させる。
【0048】
脂質複合体のコロイド懸濁液を、100mM HEPES緩衝液(pH7.5)で希釈し、次いで、酢酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS−アセテート)の新鮮に作成された水性溶液と、室温で1時間反応させる。NHS−アセテートの量は、陽イオン性脂質に対し5倍モル比である。次いで、PEG20,000を透析バッグの頂部に置くことにより、粒子を濃縮する。0.8mgから1.0mg DNA/mlという最終濃度が得られた時点で、続いて、最終生成物を5%デキストロース、20mM NaClに対して4℃で一晩透析する。
【0049】
M109皮下腫瘍を保持しているBalb−Cマウスに、増加する量の修飾された粒子(100、200、400、及び800μg DNAに相当)を静脈注射する。注射の24時間後に、マウスを屠殺し、主な臓器を収集し、ホモジナイズし、CATトランスジーンの量を、標準的なCAT Elisa(Roche,IN)を使用して決定する。
【0050】
図14は、肺、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、及び腫瘍が、CATトランスジーンを発現していることを示している。
【実施例6】
【0051】
修飾された粒子の特徴決定
実施例5に記載されたようにして、粒子を形成させ修飾する。次いで、脂質を、25mM Hepes(pH8.5)、3M NaCl、1%オクチルグルコシドにより抽出し、乾燥させ、30分で水中アセトニトリル40%から70%という勾配を使用して、C4カラムを用いたHPLCによって分析する(水及びアセトニトリルは、いずれも、1%TFAを含有している)。これらの条件で、未修飾のRPR209120は、14.8分という溶出時間を有する。NHS−アセテートで処理された粒子から抽出された脂質は、19.5分という溶出時間を有しており、このことは、それがその手順によって化学修飾されたことを証明している。
【0052】
本発明の少数の特定の実施形態を記載してきたが、様々な改変、修飾、及び改良が、当業者には容易に想到される。この開示によって明白になるような改変、修飾、及び改良は、本明細書には明確に述べられていないが、この明細書の一部であるものとし、本発明の本旨及び範囲に含まれるものとする。前述の記載は、例示のためだけのものであり、本発明を制限するものではない。本発明は、以下の請求の範囲及びその等価物において定義されるようにのみ、制限される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コロイド内に含まれる電荷を有する粒子に適用されるような反発力を、類似の電荷を有する隣接表面との距離に対して示しているグラフである。Fitch,Polymer Colloids,A Comprehensive Introduction,第7.4部,Academic Press,1997に基づく。
【図2】表面からの距離の関数としての、電気ポテンシャル(Ψ)の変化を示すグラフ及び図である。イオン化された粒子が電場内を移動する場合、それらはイオンを運搬する。運搬されたイオンの層は、粒子の流体力学的直径を増加させ、剪断面を表面から離して移動させる。剪断面を超えたイオン及び溶媒は、粒子によって運搬されない。適用された電場内での電荷を有する粒子の可動性を測定するためには、弾性光散乱を使用することができ、それから、剪断面における静電ポテンシャル(Ψ)が計算される。剪断面における静電ポテンシャルの大きさは、ゼータポテンシャル(ζ)と呼ばれる。
【図3】PEG2000による修飾及び/又は化学修飾を含む、及び含まない、陽イオン性複合体の表面における電荷場を示す図である。(PEG2000のような)表面会合ポリマーは、物理的に、表面付近の溶液の移動をコントロールし、有効な剪断面を拡張させる。ゼータポテンシャルは、静電場に影響を与えることなく低下する。粒子表面のアミンの化学修飾は、粒子の周囲の静電場を改変させるために使用されうる。
【図4】典型的な陽イオン性脂質(RPR209120)の(1個以上の)アミン末端基とのNHS−アセテートの化学反応を示す。
【図5】NHS−アセテートを使用した、陽イオン性脂質複合体のゼータポテンシャルの修飾を示すグラフである。NHS活性エステル、NHS−アセテートは、第一級アミンをアセチル化するようRPR209120と反応し、ゼータポテンシャルの低下によってここに示されたように、表面電荷を低下させる。コールター(Couler)DELSA440電気泳動光散乱(ELS)装置を使用して決定されたゼータポテンシャル。
【図6】ゼータポテンシャルの修飾を示し、NHS−アセテートの異なる脂質複合体との反応を比較しているグラフである。RPR209120(第一級アミン)を含む複合体は、NHS−アセテートと容易に反応するが、RPR204014(グアニジウムアミン及び第二級アミン)は、反応しない。高い活性エステルの濃度を使用すると、ゼータポテンシャルはゼロにまで低下し、さらには逆転されうる。
【図7】シトラコン酸無水物の典型的な陽イオン性脂質のアミン末端基との可逆的な化学反応を示す。
【図8】実施例1に従い作成されたNHS−アセテート電荷修飾粒子を使用した、全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【図9】実施例2に従い作成されたシトラコン酸電荷修飾粒子を使用した、全ての影響を受けた組織への体内分布を示す合成グラフである。
【図10】NHS−アセテート/脂質の異なるモル比におけるNHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の血中レベルのグラフである。IV注射後の時間及び粒子と反応させるために使用された活性エステルの量の関数としての血中循環。(マウスにおける体内分布は、金属キレート化剤−脂質コンジュゲートを使用して複合体に付加されたガンマ放出因子111インジウムを使用して追跡される。複合体は、尾静脈注射によって投与される。マウスには、試験の10日から14日前に、予め培養癌細胞4T1を皮下注射する)。
【図11】異なるNHS−アセテート/脂質のモル比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目及び6.0時間目の脾臓における全用量の割合(%)のグラフである。
【図12】異なるNHS−アセテート/脂質のモル比における、NHS−アセテート電荷修飾粒子の注入された粒子の0.5時間目、6.0時間目、及び24時間目の腫瘍における全用量の割合(%)のグラフである。
【図13】NHS−アセテート修飾脂質DNA複合体:複合体が形成された後、挿入された0.3nmolジステアリル−PEG400−フォレート(RPR258018)を含む/含まない、1μg DNA+5nmol RPR209120+1nmol RPR204014+0.3nmol RPR204293のインビトロでのフォレート媒介遺伝子導入。
【図14】100、200、400、又は800μgのDNAを含む化学修飾粒子のIV注射後の異なる臓器におけるCATトランスジーンの発現。データは、4匹の動物の平均値及び個々の値である。
Claims (20)
- 遺伝子導入用の隔絶DNAを含有している中性又は陰イオン性の複合体を作製する方法であって、
陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化されたDNA配列を含む陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が懸濁している水相を含む安定なコロイドを形成させること;及び
中性又は正味で陰イオン性の表面ポテンシャルを有する第二のDNA複合体を含む安定なコロイドが形成されるよう、該第一のDNA複合体の表面ポテンシャルを修飾すること、を含む方法。 - 該第一のDNA複合体の表面ポテンシャルが、該コロイドの水相にポリ(アルキレンオキシド)を添加することにより修飾される、請求項1に記載の方法。
- 該ポリ(アルキレンオキシド)がポリエチレングリコールである、請求項2に記載の方法。
- 該第一のDNA複合体の表面ポテンシャルが、ポリ(アルキレンオキシド)を陽イオン性の脂質又はポリマーに共有結合的に付加することにより修飾される、請求項1に記載の方法。
- 該ポリ(アルキレンオキシド)がポリエチレングリコールである、請求項4に記載の方法。
- 該第一のDNA複合体が、1個以上の陽イオン性頭部を含む陽イオン性の脂質又はポリマーとのDNA配列の複合体であり、該第一のDNA複合体が、該陽イオン性頭部を、陽イオン性頭部と反応してその正の電荷を中和する試薬と反応させることにより、修飾される、請求項1に記載の方法。
- 該陽イオン性の脂質又はポリマーが、線状ポリアミン、分岐状ポリアミン、及びグアニジニウム基を含むポリアミンからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
- 該試薬が、シトラコン酸無水物又はN−ヒドロキシスクシンイミドアセテートである、請求項6に記載の方法。
- 試薬が、ターゲティングリガンドが該陽イオン性の脂質又はポリマーに共有結合的に付加され、該第一のDNA複合体の表面ポテンシャルも修飾するような、ターゲティングリガンドのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項6に記載の方法。
- 該ターゲティングリガンドが、アミノ糖又はペプチドである、請求項9に記載の方法。
- 該第一のDNA複合体が、該陽イオン性の脂質又はポリマーに共有結合的に付加されたターゲティングリガンドをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 該ポリ(アルキレンオキシド)が、該第一のDNA複合体の表面の陽イオン性の脂質又はポリマーにのみ共有結合的に付加される、請求項4に記載の方法。
- 該ポリ(アルキレンオキシド)が、第一のDNA複合体の表面及び内部の陽イオン性の脂質又はポリマーに共有結合的に付加される、請求項4に記載の方法。
- 該試薬が、該第一のDNA複合体の表面の陽イオン性の脂質又はポリマーの陽イオン性頭部とのみ反応させられる、請求項6に記載の方法。
- 該試薬が、該第一のDNA複合体の表面及び内部の陽イオン性の脂質又はポリマーの陽イオン性頭部と反応させられる、請求項6に記載の方法。
- 陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化された、その必要のある患者へのインビボ送達のための外因性治療用DNA配列を含む、陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が懸濁している水相を含む安定なコロイドであって、該水相が、ポリ(アルキレンオキシド)の水性溶液を含む、安定なコロイド。
- 陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化された、その必要のある患者へのインビボ送達のための外因性治療用DNA配列を含む、陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が懸濁している水相を含む安定なコロイドであって、該第一のDNA複合体の該表面ポテンシャルが、ポリ(アルキレンオキシド)を陽イオン性の脂質又はポリマーに共有結合的に付加することにより修飾される、安定なコロイド。
- 正の電荷を中和する試薬との反応によって修飾された1個以上の陽イオン性頭部を含む陽イオン性の脂質又はポリマーと複合体化された、その必要のある患者へのインビボ送達のための外因性治療用DNA配列を含む、陽イオン性表面ポテンシャルを有する第一のDNA複合体が懸濁している水相を含む安定なコロイド。
- その必要のある患者を遺伝子治療によって治療するための外因性治療用DNA配列を含む医薬品の調製のための、請求項16、17又は18に記載のコロイドの使用。
- 外因性治療用DNA配列の投与を目的とした医薬品の調製のための、請求項16、17又は18に記載のコロイドの使用。
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