JP2004519216A - 進行によって抑制される遺伝子13(PSGen13)およびその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、進行によって抑制される遺伝子(Progression Suppressed Gene) 13 (PSGen 13)タンパク質をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター、単離されたPSGen 13タンパク質、ならびに癌細胞および/または新しい血管の増殖を阻止するために、ひいては癌患者を治療するために、そのような分子を用いる方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、ラットおよびヒトPSGen 13をコードする完全なcDNAの特徴づけに基づき、また、PSGen 13の発現レベルの上昇はトランスフォームされた表現型を抑制し、かつ癌進行および血管新生に関連するプロモーター要素の活性を抑制することができるという発見に基づいている。各種の実施形態において、本発明は、癌細胞の増殖を抑制する方法であって、癌細胞を、該細胞の増殖を抑制するように十分量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター化合物と接触させることを含む該方法を提供する。本発明はまた被験者の癌を治療する方法であって、被験者の細胞を、該細胞にPSGen 13タンパク質を発現させるように、十分量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸と接触させ、それによって被験者の癌を治療することを含む該方法を提供する。
Description
【0001】
本明細書に開示する発明は、米国保健福祉省からの国立衛生研究所補助金第CA35675号のもとで政府の援助を得てなされた。したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本出願は、米国特許出願第09/648,310号(この内容の全体を参照により本明細書に組み入れる)の一部継続出願である。
【0003】
1.序論
本発明は、細胞が悪性表現型に向かって進行する時に該細胞中により低レベルで発現され、そのため進行によって抑制される遺伝子13 (Progression Suppressed Gene 13: PSGen 13)と呼ばれる遺伝子に関する。本発明は、少なくとも部分的には、この新規遺伝子およびそれによってコードされるタンパク質の発見、ならびに悪性腫瘍細胞へのPSGen 13の導入は癌細胞増殖を抑制し、かつ悪性腫瘍および血管形成に関連する遺伝子の発現制御要素を抑制する、という発見に基づいている。
【0004】
2.発明の背景
遺伝子発現の変化は、細胞周期の調節、分化および発生を含む正常な細胞生理学の重要な決定因子であり、そしてそれらの変化は発生異常、分化の異常なプログラム、および癌を含む異常な細胞生理学に直接寄与する(WatsonおよびMargulies, 1993, Dev. Neurosci. 15:77−86; Winkles, 1998, Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 58: 41−78; Fisher (編), 1990, Model Cell Culture Systems for Studying Differentiation: Mechanisms of Differentiation, CRC Press, Boca Raton, FL, Vol. 1; Fisher (編), 1990, Modulation of Differentiation by Exogenous Agents: Mechanisms of Differentiation, CRC Press, Boca Raton, FL, Vol. 2)。これらの前後関係において、示差的に発現された遺伝子の同定、クローン化および特徴づけは、増殖、発生、老化、分化および癌、等のプロセスの分子的決定因子に関する適切で重要な洞察を提供するに相違ない。
【0005】
示差的に発現された遺伝子を同定し、そしてクローン化するためには、いくつかの方法を用いることができる。これらの方法には、サブトラクティブハイブリダイゼーション法(JiangおよびFisher, 1993, Mol. Cell. Differ. 1: 285−299; SuおよびFisher, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783; Jiangら, Oncogene 10: 1855−1864; Jiangら, 1995, Oncogene 11: 2477−2486; Jiangら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 9160−9165)、ディファレンシャルRNAディスプレイ(DDRT−PCR)( WatsonおよびMargulies, 1993, Dev. Neurosci. 15:77−86; Winkles, 1998, Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 58: 41−78; LiangおよびPardee, 1992, Science 257: 967−971; Shenら, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92; 6778−6782)、恣意的にプライミングしたPCR(arbitrarily primed PCR)によるRNAフィンガープリンティング(McClellandら, 1995, Trends Genet, 11: 242−246; Ralphら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 10710−10714)、再現的差異分析(representational difference analysis)(HubandおよびSchatz, 1994, Nucleic Acids Res. 22: 5640−5648)、遺伝子発現の連続分析(Velculescuら, 1995, Science 270: 484−487; Zhangら, 1997, Science 276: 1268−1272)、電子工学的サブトラクション法(Wanら, 1996, Nat. Biotechnol, 14: 1685−1691; Adamsら, 1993, Nat. Genet. 4: 256−267)およびコンビナトリアル遺伝子マトリックス分析(Schenaら, 1995, Science 270: 467−470)が含まれる。
【0006】
LiangおよびPardee (1992, Science 257: 967−971)によって開発されたDDRT−PCRアプローチは、示差的に発現された遺伝子を分析し、クローン化するうえで広い人気を獲得した。DDRT−PCRは、少量のRNA(約5μg)を用いて膨大な数(重複が起こらなければ>20,000)のmRNA種を分析することができる強力な方法である(同文献)。DDRT−PCRは、組織生検等のようなRNA供給源が限定されている場合は、しばしば優れた方法である。DDRT−PCRの直接的利点は、示差的に発現された遺伝子を、アップレギュレーションされたものもダウンレギュレーションされたものも両方とも、同一の反応で同定し、単離する能力である。さらに、DDRT−PCR技法は、同一ゲル中で多数のサンプルのディスプレイを可能とする。これは、RNA種中で特異的な診断上の変化を明確にするうえで、および遺伝子発現の変化を時間的に分析するために有用である。
【0007】
しかし、DDRT−PCR技法に問題がないわけではない(Debouck, 1995, Curr. Opin. Biotechnol. 6: 597−599)。標準的DDRT−PCRを用いる際に遭遇する困難には、偽陽性および重複した遺伝子同定の高い発生率、貧弱な再現性、バイアスがかかった遺伝子ディスプレイ、およびクローン化されたcDNAに関する機能情報の欠如が含まれる。さらに、貧弱な分離は、示差的に発現された量の少ない遺伝子を、高発現された遺伝子が発生する強いシグナルの下に隠してしまう場合がある。偽陽性および重複の発生は非常に問題となりうる。そして、適切な示差的発現および単離されたcDNAの独自性を確認するために資源の過度の消費をもたらす。cDNAは、ゲルから純粋な形で単離され(多重配列によるバンドの汚染はクローン同定を複雑にする)、再度増幅され、適切なクローニングベクター中に挿入され、真正な示差的発現について分析され、そして最後に配列決定される必要がある。標準的DDRT−PCRアプローチの有するこれらの制限は、示差的に発現された遺伝子をより効率的かつ選択的に同定するためにこの方法を改善する必要性をきわだたせる。
【0008】
サブトラクティブハイブリダイゼーション(テスターとドライバーの間でハイブリダイゼーションを行い、次に共通の遺伝子産物を選択的に除去する)は、テスターcDNA集団中の独自の遺伝子産物を富化し、そして豊富な共通のcDNAを減少させる(Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783)。サブトラクトされたcDNAライブラリーを分析して、ランダムにコロニーをピッキングすることによって、またはディファレンシャルスクリーニングによって、示差的に発現された遺伝子を同定し、クローン化することが可能である(Rangnekarら, 1992, J. Biol. Chem. 267: 6240−6248; Wongら, 1997, Semin. Immunol. 9: 7−16; MaserおよびCalvet, 1995, Semin. Nephrol. 15: 29−42)。サブトラクティブハイブリダイゼーションをうまく用いて多数の示差的に発現された遺伝子がクローン化されてきたが(JiangおよびFisher, 1993, Mol. Cell. Differ. 1: 285−299; Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Jiangら, Oncogene 10: 1855−1864; Jiangら, 1995, Oncogene 11: 2477−2486)、このアプローチは多大な労力を要し、そして変化した発現を示す遺伝子の全ての単離をもたらすものではない(Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783; Wanら, 1996, Nat. Biotechnol. 14: 1685−1691)。
【0009】
原則として、サブトラクトしたRNAまたはcDNAサンプルを用いて実施したDDRT−PCRは、アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされた遺伝子産物をクローン化するための強力な戦略を提供するに相違ない。このアプローチは、両方の技法の有利な点を組合わせるもので、独自配列の富化および共通配列の減少または消去をもたらすに相違ない。また、この方法はディスプレイゲル上のバンドの複雑性を一貫して減少させ、それによってcDNAのより明確な分離を可能とし、その結果、偽陽性反応をより少なくするに相違ない。さらに、より少ない数のプライマーセットを用いて逆転写およびPCR反応を行って、示差的に発現される遺伝子の全範囲を分析することが可能であるに相違ない。遺伝子同定および単離にとって特に重要なのは、強い共通遺伝子産物によって隠されている稀な遺伝子産物が、DDRT−PCRと組合わせてサブトラクティブハイブリダイゼーションを用いることによってディスプレイされるということである。さらに、サブトラクティブライブラリーを用いたDDRT−PCRアプローチは、示差的に発現された遺伝子のサブトラクトされたcDNAライブラリーを効率的にスクリーニングするためにも貴重であることを実証できるであろう。しかし、サブトラクティブハイブリダイゼーションとDDRT−PCRの組合わせが上記の理由によって魅力的に思われようと、このアプローチを使おうとした以前の試みは、生成されるシグナルの複雑さを一貫して減少させることにおいて,標準的DDRT−PCR法と比較して、最低限の成功をもたらしたにすぎないことを実証した(Hakvoortら, 1994, Nucleic Acids Res. 22: 878−879)。
【0010】
Kangら(1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793)は、DDRT−PCRの複雑さを効率的に、かつ一貫して減少させ、そして予想された示差的発現を示す遺伝子の同定およびクローン化をもたらす、相互サブトラクションディファレンシャルRNAディスプレイ(RSDD)アプローチを用いた。RSDDのために用いられたモデルは、アデノウイルスによって形質転換されたラット胚細胞系E11であった。この細胞は、無胸腺症ヌードマウスに注入し、細胞培養物中で再確立すると(E11−NMT)、攻撃的な発癌進行表現型を獲得する(Su & Fisher, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics,(編)Adolph, K.W. (Academic, Orlando, FL), Vol. 1, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993;Babissら, 1985,Science 228: 1099−1101)。ヌードマウスへのE11細胞の注入は、腫瘍潜伏時間約35−40日で100%の動物に腫瘍をもたらし、他方、E11−NMT細胞は腫瘍潜伏時間約15−20日で100%のヌードマウス中に腫瘍を形成する(同文献)。さらに、E11細胞は寒天中で約3%の効率でコロニーを形成し、他方、E11−NMTは>30%の寒天クローニング効率を示す(同文献)。増大した腫瘍形成性および増強された足場非依存的表現型が、E11/E11−NMTモデル系における腫瘍進行の重要なインジケーターである(同文献)。
【0011】
前出のKangらは、RSDDは進行したラット腫瘍細胞中で発現の上昇を示す遺伝子[すなわち、進行によって促進される遺伝子(progression−elevated gene: PEGen遺伝子)]および進行した腫瘍細胞中で発現の抑制を示す遺伝子[すなわち、進行によって抑制される遺伝子(PSGen遺伝子)]の同定をもたらしたと報告している。Kangらによって同定されたラット遺伝子の1つは、(ラット)PSGen 13(発明者Fisherらによる国際特許出願PCT/US99/04323も参照されたい)であるが、全長cDNAは単離されておらず、したがってその配列も、それによってコードされるタンパク質の配列も報告されていなかった。本発明は、完全なラットおよびヒトPSGen 13 cDNAのクローニングおよび特徴づけに関するものであり、それらの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列を提供し、そしてさらにPSGen 13のレベルの上昇が悪性表現型に対して有する抑制効果を実証するものである。
【0012】
3.発明の概要
本発明は、進行によって抑制される遺伝子13 (PSGen 13)タンパク質をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター、単離されたPSGen13タンパク質、ならびに癌細胞および/または新血管形成を阻止するため、そして結果的に癌患者を治療するためにこれらの分子を使用する方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、ラットおよびヒトPSGen 13をコードする完全なcDNAのクローニングおよび特徴づけ、ならびにPSGen 13の発現レベルの上昇はトランスフォームされた表現型を抑制することができ、かつ癌進行および血管新生に関連するプロモーター要素を抑制することができる、という発見に基づいている。本発明はさらに、ヒトPSGen 13の染色体上の位置は、その観察された腫瘍抑制活性と一致して、種々の癌を患う患者において欠失を含むことが観察された領域であるという発見に基づいている。
【0013】
種々の実施形態において、本発明は癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。この方法は、該癌細胞を、該癌細胞の増殖を阻止するように、十分な量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター化合物と接触させることを含む。本発明はまた、被験者における癌を治療する方法を提供する。この方法は、被験者の細胞を、該細胞にPSGen 13タンパク質を発現させるように、十分な量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸と接触させ、それによって該被験者の癌を治療することを含む。
【0014】
3.1. 定義
DNA「コード配列」または特定のタンパク質を「コードするヌクレオチド配列」とは、適切な調節配列の制御下に置かれた時に、in vivoまたはin vitroで転写され、ポリペプチドに翻訳されるDNA配列をいう。コード配列の境界は、5’−(アミノ)末端の開始コドンおよび3’−(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、限定するものではないが、原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)供給源由来のゲノムDNA、ウイルスRNAまたはDNA、および合成核酸配列をも含むことができる。転写終止配列は、通常コード配列の3’末端側に位置する。
【0015】
DNA「制御配列」という用語は、宿主中のコード配列の転写および翻訳を集合的に提供するプロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流調節ドメイン、エンハンサー等、ならびに5’−UTRおよび3’−UTRを含む非翻訳領域(UTR)の総称である。
【0016】
制御配列は、RNAポリメラーゼがプロモーター配列と結合してコード配列をmRNAに転写する時、細胞中でコード配列の「転写を指令する」。次に、mRNAはコード配列によってコードされたポリペプチドに翻訳される。
【0017】
本明細書に用いる「エンハンサー要素」という用語は、関心のある治療遺伝子の転写速度を増大させるが、プロモーター活性をもたないヌクレオチド配列をいう。
【0018】
本明細書に用いる「遺伝子」という用語は、産物を直接的または間接的にコードする核酸をいう。例えば、PSGen 13タンパク質をコードするcDNAは、ゲノムDNA(PSGen 13をコードするmRNAがそこから転写されうる)が遺伝子と見なされると同じように、「PSGen 13遺伝子」と見なされるであろう。
【0019】
DNA構築物の「異種」領域とは、天然においては他方の分子と会合して見出されることはない別のDNA分子の内部の、またはそれに連結された、識別可能なDNAのセグメントである。異種コード配列の1例は、コード配列自体(例:PSGen 13突然変異体をコードする配列またはPSGen 13をコードする核酸の断片)が天然に見いだされない構築物である(例:天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、異種構造遺伝子およびPSGen 13をコードする遺伝子またはそのような遺伝子の一部を含み、組織特異的プロモーターに連結されているキメラ配列は、同一の遺伝子に由来しようと異なる遺伝子に由来しようと、異種と考えられるであろう。なぜなら、そのようなキメラ構築物は通常天然には見いだされないからである。対立遺伝子変異または天然に存在する突然変異現象は、本明細書に用いる意味でのDNAの異種領域を生じさせない。
【0020】
本明細書に用いる「核酸分子」という用語は、DNAおよびRNAの両方を含み、そして別途特定されていない場合は、2本鎖および1本鎖核酸の両方を含む。DNA−RNAハイブリッド等のハイブリッドもまた含まれる。核酸配列への言及は、改変が該核酸によるリガンド(タンパク質等)の結合またはワトソン−クリック型塩基対合を重大な程度に妨げない限り(そのような妨げが意図されたものであるか、または望ましいものである場合を除いて)、改変された塩基も含みうる。
【0021】
「機能しうる形で連結された」という表現は、上述の構成要素がそれらの通常の機能を達成するように配列されたヌクレオチド配列要素の配置をいう。このようにして、コード配列に機能しうる形で連結された制御配列は、コード配列の発現を果たすことができる。制御配列は、コード配列の発現を導くように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される配列がプロモーター配列とコード配列の間に介在することが可能であり、そしてこのような場合も該プロモーター配列はコード領域に「機能しうる形で連結されている」と考えることができる。
【0022】
2つのDNAまたはポリペプチド配列は、分子のある規定された長さにわたってヌクレオチドまたはアミノ酸の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%)が一致する場合、「実質的に相同」である。本明細書に用いる「実質的に相同」という用語はまた、特定されたDNAまたはポリペプチド配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%の同一性を示す配列をもいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定の系について規定されるストリンジェント条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験で同定することができる。適切なストリンジェント条件を規定することは、当技術分野における技術の範囲内である。例えば、Ausubelら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.I, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。
【0023】
本明細書に用いる「治療遺伝子」という用語は、癌細胞に対して治療(例:増殖を抑制する、分化させる、および/またはアポトーシスを誘導する)効果を発揮することができる、または細胞内である機能の発現に対して調節効果を有する機能性タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードするDNAを意味する。
【0024】
細胞は、細胞膜内または、細菌の場合は、細胞壁内に外因性DNAが導入され場合、外因性DNAによって「形質転換」または「トランスフォーム」されている。外因性DNAは、細胞のゲノムを作っている染色体DNAに組み込まれていても(すなわち、共有結合していても)、組み込まれていなくてもよい。例えば、原核生物および酵母においては、外因性DNAはプラスミド等のエピソーム性要素上に保持されうる。真核細胞においては、安定に形質転換された細胞とは、一般に、染色体複製を介して娘細胞によって外因性DNAが受け継がれるように外因性DNAが染色体内に組み込まれている細胞、または安定に保持された染色体外プラスミドを含む細胞である。この安定性は、細胞系または該外因性DNAを含有する娘細胞の集団からなるクローンを樹立する真核細胞の能力によって示される。
【0025】
4.図面の説明
(図面の簡単な説明については下記参照)
5.発明の開示
本発明の限定を目的とするものではないが、開示を明確にするために、発明の詳細な説明を以下の分節に分ける:
(i) PSGen 13核酸;
(ii) PSGen 13タンパク質;
(iii) PSGen 13タンパク質に対する抗体;および
(iv) PSGen 13の使用。
【0026】
5.1 PSGen 13 核酸
本発明は、PSGen遺伝子および関連分子を含めて、PSGen 13核酸を提供する。「PSGen 13」という用語は、種に関わりなく、PSGen 13分子をいう。
【0027】
特定の非限定的実施形態において、本発明は、図1および配列番号1または配列番号5に示す配列を有し、そしてAmerican Type Culture Collection (ATCC; 10801 University Blvd., Manassas, VA 20110−2209に所在する機関)に寄託され、受託番号 PTA−2414を付与されたラットPSGen 13(rPSGen 13)遺伝子、およびそれと実質的に相同な分子を提供する。この寄託物は、pcDNA3.1(+)プラスミドベクターのEcoRI−Xho Iクローニング部位に挿入されたrPSGen 13 cDNAインサートである。このインサートは、長さが約0.8 kbである。上記プラスミドのセンス鎖プロモーターは、T7である。このプラスミドは、アンピシリンおよびネオマイシン耐性遺伝子を担持している。上記インサートの起源は、ESTクローンATCC #2005777(下記参照)である。該cDNAを単離するのに用いたラット組織は、副腎組織であった。
【0028】
他の特定の非限定的実施形態において、本発明は、図2および配列番号3または配列番号6に示す配列を有し、そしてATCCに寄託され、受託番号 PTA−2413を付与されたヒトPSGen 13(HuPSGen 13)遺伝子、およびそれと実質的に相同な分子を提供する。この寄託物は、プラスミドベクターpT7T3−Pac内に挿入されたインサートである。このインサートはEcoRI−Not Iクローニング部位内に挿入されている。このインサートは、長さが約0.83 kbである。上記プラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子を担持している。上記インサートの起源は、ESTクローンATCC #2525262(下記参照)である。該DNAを単離するのに用いたヒト組織は、ヒト腎組織であった。
【0029】
本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、rPSGen 13遺伝子および/またはHuPSGen 13遺伝子とハイブリダイズするであろう核酸を提供する。ストリンジェントな条件下とは、例えば、0.5 M NaHPO4, 7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS), 1 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で65℃でハイブリダイゼーション、および0.1xSSC/0.1% SDS中で68℃で洗浄、等である(Ausubelら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.I, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc., New York, p. 2.10.3)。したがって、本発明は、非ヒト霊長類動物、マウス、またはウシのPSGen 13遺伝子を含む、他の生物種のPSGen 13遺伝子、ならびに核酸プローブおよびアンチセンス分子(これらは、例えば、トランスフォームされた表現型を確認するために用いることができるであろう)を包含する。
【0030】
本発明はまた、図1および2ならびに配列番号2および4に示すrPSGen 13およびHuPSGen 13タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸をも提供する。また、このようなPSGen 13タンパク質をコードする核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0031】
図1および2に示す核酸配列は、標準的技法を用いた増幅によってPSGen 13遺伝子を得るために使用可能なプライマー分子を同定するのに用いることができる。
【0032】
本発明は、rPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13遺伝子を発現可能な形で提供する。「発現可能な形」とは、転写および/または翻訳にとって必要な要素および制御配列を含む形である。例えば、PSGen 13遺伝子は、適切なプロモーター要素(これはPSGen 13プロモーターまたは異種プロモーターであってよい)に機能しうる形で連結されていて、そしてエンハンサー要素、転写開始および終止部位、核局在化配列をコードする核酸、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、mRNA安定化配列、等を含むことができる。
【0033】
原核生物における発現を除外するわけではないが、好ましい実施形態において、本発明はrPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13遺伝子を真核細胞中で発現可能な形で提供する。したがって、PSGen 13遺伝子は、例えば真核細胞中で活性なプロモーター要素と機能しうる形で連結されているとよい。適切なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、ヒト延長因子1αプロモーター、ヒトユビキチンcプロモーター、等が含まれる。本発明の特定の実施形態においては、誘導性プロモーターを使用することが望ましい場合がある。誘導性プロモーターの非限定的例としては、マウス乳癌ウイルスプロモーター(デキサメタゾンで誘導可能);市販のテトラサイクリン応答性またはエクダイソン誘導性プロモーター、等が含まれる。本発明の特定の非限定的実施形態において、プロモーターは、前立腺特異的抗原遺伝子プロモーター(O’Keefeら, 200, Prostate 45: 149−157)、カリクレイン2遺伝子プロモーター(Xieら, 2001, Human Gene Ther. 12: 549−561)、ヒトα−フェトプロテイン遺伝子プロモーター(Idoら, 1995, Cancer Res. 55: 3105−3109)、c−erbB−2遺伝子プロモーター(Takakuwaら, 1997, Jpn. J. Cancer Res. 88: 166−175)、ヒト癌胎児性抗原遺伝子プロモーター(Lanら, 1996, Gastroenterol. 111: 1241−1251)、ガストリン放出ペプチド遺伝子プロモーター(Inaseら, 2000, Int. J. Cancer 85: 716−719)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子プロモーター(PanおよびKoenman, 1999, Med. Hypotheses 53: 130−135)、ヘキソキナーゼII遺伝子プロモーター(Katabiら, 1999, Human Gene Ther. 10: 155−164)、L−プラスチン遺伝子プロモーター(Pengら, 2001, Cancer Res. 61: 4405−4413)、ニューロン特異的エノラーゼ遺伝子プロモーター(Tanakaら, 2001, Anticancer Res. 21: 291−294)、ミドカイン遺伝子プロモーター(Adachiら, 2000, Cancer Res. 60: 4305−4310)、ヒトムチン遺伝子MUC1プロモーター(Stackhouseら, 1999, Cancer Gene Ther. 6: 209−219)、および膵臓癌細胞中で特に活性である(Perraisら, 2001; J. Biol. Chem. によって2001年6月19日に”JBC Papers in Press”に原稿M104204200として刊行された)ヒトムチン遺伝子MUC4プロモーター(Genebank登録番号AF241535)、等のように癌細胞中で選択的に活性であってよい。
【0034】
rPSGen 13およびHuPSGen 13アミノ酸配列をコードする配列を(最初の寄託者が気付かないままに)含むエクスプレスド・シーケンス・タグ(EST)クローンが、米国特許出願第09/648,310号の出願日前にATCCに寄託され、それぞれ2005777および2525262という受託番号を付与されていたことに注意しなければならない。これらのクローンは、本発明において完全なrPSGen 13およびHuPSGen 13遺伝子を特徴づけ、クローン化するのに使用された(下記の分節6参照)。しかし、上記ESTが寄託された時、これらの完全な遺伝子は公知ではなく、また上記ESTによってコードされるタンパク質の正体または機能はいずれも公知ではなかった。
【0035】
真核細胞中で機能するプロモーター要素に機能しうる形で連結されたrPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13核酸は、例えば、他の発現関連要素、抗生物質耐性に関連する遺伝子、等と共にベクター分子中に包含されていてよい。適切なベクター分子の例としては、限定するものではないが、ウイルスに基づくベクターおよびウイルスに基づかないDNAまたはRNAデリバリー系が含まれる。ウイルスに基づく遺伝子導入ベクターの適切な例としては、限定するものではないが、レトロウイルス由来のもの、例えばLX、LNSX、LNCXまたはLXSNなどのモロニーマウス白血病ウイルスに基づくベクター(MillerおよびRosman, 1989 Biotechniques 7: 980−989); レンチウイルス由来のもの、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ネコ白血病ウイルス(FIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に基づくベクター(Caseら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 22988−2993; Curranら, 2000, Molecular Ther. 1: 31−38; Olsen, 1998, Gene Ther. 5: 1481−1487; 米国特許第6,255,071号および第 6,025,192号);アデノウイルス由来のもの(Zhang, 1999, Cancer Gene Ther. 6(2): 113−138; Connelly, 1999, Curr. Opin. Mol. Ther. 1(5): 565−572; Stratford−Perricaudet, 1990, Human Gene Ther. 1: 241−256; Rosenfield, 1991, Science 252: 431−434; Wangら, 1991, Adv. Exp. Med. Biol. 309: 61−66; Jaffeら, 1992, Nat. Gen. 1: 372−378; Quantinら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 2581−2584; Rosenfeldら, 1992, Cell 68: 143−155; Mastrangeliら, 1993, J. Clin. Invest. 91: 225−234; Ragotら, 1993, Nature 361: 647−650; Hayaskiら, 1994, J. Biol. Chem. 269: 23872−23875; Bettら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 8802−8806)、例えばAd5/CMVに基づくE1欠失ベクター(Liら, 1993, Human Gene Ther. 4: 403−409);アデノ随伴ウイルス由来のもの、例えばpSub201に基づくAAV2由来ベクター(Walshら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 7257−7261);単純ヘルペスウイルス由来のもの、例えばHSV−1に基づくベクター(GellerおよびFreese, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 1149−1153); バキュロウイルス由来のもの、例えば、AcMNPVに基づくベクター(BoyceおよびBucher, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.93: 2348−2352); SV40由来のもの、例えばSVluc (StrayerおよびMilano, 1996, Gene Ther. 3: 581−587); エプスタイン−バーウイルス由来のもの、例えばEBVに基づくレプリコンベクター(Hamborら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.85: 4010−4014); アルファウイルス由来のもの、例えばセムリキ森林熱ウイルスまたはシンドビスウイルスに基づくベクター(Poloら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.96: 4598−4603); ワクシニアウイルス由来のもの、例えば改変ワクシニアウイルス(MVA)に基づくベクター(SutterおよびMoss, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 10847−10851)、またはヒト腫瘍細胞に効率的に形質導入することができ、かつ治療上の効果に必要とされる核酸配列を収容することができる、任意の他のクラスのウイルスに由来するベクターが含まれる。特定の実施形態にとっては、シャトルベクターを用いることが望ましいであろう。
【0036】
本発明は、適切なキャリアー中に上記PSGen 13核酸を含む組成物を提供する。治療用途のために、本発明は、例えば発現可能な形でベクター中に包含され、適切な医薬キャリアーに担持された、治療的量のPSGen 13核酸を提供する。
【0037】
本発明はまた、例えばベクター中に包含された、上記のPSGen 13核酸を含む原核または真核宿主細胞を提供する。宿主細胞は、限定するものではないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞を含む、原核細胞または真核細胞であってよい。宿主細胞は悪性細胞であっても非悪性細胞であってもよい。本発明の特定の非限定的実施形態においては、宿主細胞は、例えば鼻咽頭腫瘍細胞、甲状腺腫瘍細胞、中枢神経系腫瘍細胞(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫細胞)、黒色腫細胞、上皮腫瘍細胞、非上皮腫瘍細胞、血液腫瘍細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、子宮頸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、泌尿性器癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、骨肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、胃癌細胞または膵臓癌細胞を含むヒト腫瘍細胞であってよい。
【0038】
5.2 PSGen 13 タンパク質
本発明は、PSGen 13タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明は、図1に示すrPSGen 13タンパク質であって、配列番号2に示す配列を有する該タンパク質、およびそれと実質的に相同なタンパク質を提供する。別の特定の実施形態において、本発明は、図2に示すHuPSGen 13タンパク質であって、配列番号4に示す配列を有する該タンパク質、およびそれと実質的に相同なタンパク質を提供する。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明は、上記PSGen 13核酸によってコードされる、および/または以下に記述するrPSGen 13タンパク質および/またはHuPSGen 13タンパク質に対する抗体と交差反応するPSGen 13タンパク質を提供する。したがって、ヒトおよびラットのPSGen 13タンパク質に加えて、本発明はウシタンパク質、マウスタンパク質、および非ヒト霊長類動物PSGen 13タンパク質を提供する。
【0040】
PSGen 13タンパク質は、天然の供給源から調製することも、化学的に合成することも、または遺伝子組換え技法によって生産することも可能である。例えば、PSGen 13タンパク質は、適切な発現ベクターに含まれるPSGen 13遺伝子を発現させることによって生産することができる。PSGen 13タンパク質は、標準的技法を用いて真核または原核細胞発現系中に発現させることができる。真核細胞発現系を用いる場合は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸(好ましくは、ベクター中に発現可能な形で含まれる)を任意の標準的技法(トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、等を含む)を用いて真核細胞中に導入することができる。
【0041】
本発明は、適切なキャリアー中に上記PSGen 13タンパク質を含む組成物を提供する。治療上の使用のためには、本発明は適切な医薬キャリアーに担持させた治療的量のPSGen 13タンパク質を提供する。
【0042】
5.3 PSGen 13 タンパク質に対する抗体
本発明は、本明細書に記述するPSGen 13タンパク質と特異的に結合する抗体を提供する。特定の実施形態において、該抗体は、図1および配列番号2に示す配列を有するrPSGen 13タンパク質と特異的に結合する。別の特定に実施形態において、該抗体は、図2および配列番号4に示す配列を有するHuPSGen 13タンパク質と特異的に結合する。そのような抗体は、ある場合には、異なる生物種に由来する数種のPSGen 13タンパク質と交差反応する。
【0043】
上記抗体は、限定するものではないが、例えばヒト抗体、マウス抗体、非ヒト霊長類動物抗体、ウシ抗体、ヒツジ抗体、ヤギ抗体、またはラット抗体であってよい。特定の非限定的実施形態において、抗体はマウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化霊長類動物モノクローナル抗体、またはヒト化ラットモノクローナル抗体であってよい。
【0044】
本発明によれば、PSGen 13タンパク質、その断片または他の誘導体(例えばヒスチジンタグを付けたタンパク質)またはその類似体を、抗体を作製するための免疫原として用いることができる。そのような抗体は、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、1本鎖抗体、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーを含む。特定の実施形態においては、rPSGen 13またはHuPSGen 13を認識する抗体が作製される。
【0045】
PSGen 13タンパク質と特異的に結合するポリクローナル抗体の作製には、当技術分野で公知の種々の技法を用いることができる。抗体を作製するためには、天然のPSGen 13タンパク質、もしくはその合成タンパク質、またはその誘導体(例えばフラグメント)を注射することによって種々の宿主動物(限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、等を含む)を免疫することができる。宿主の種によって種々のアジュバントを用いて免疫応答を増大させることができる。これらのアジュバントには、限定するものではないが、フロインド(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオール、等の界面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。
【0046】
PSGen 13タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製するためには、培養下の連続した細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いることができる。そのような技法の例としては、KohlerおよびMilsterin (1975, Nature 256: 495−497)によって最初に開発されたハイブリドーマ技法、ならびにトリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96 に掲載のColeら, 1985)が含まれる。本発明のさらなる実施形態においては、近年の技術(PCT/US90/02545)を用いて、無菌動物中にモノクローナル抗体を産生させることができる。本発明によれば、ヒト抗体を用いることができ、かつヒトハイブリドーマを用いることによって(Coleら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80: 2026−2030)、またはEBVウイルスを用いてヒトB細胞をin vitroで形質転換することによって(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96 に掲載のColeら, 1985)ヒト抗体を得ることができる。さらに、本発明によれば、「キメラ抗体」の作製のために開発された技法(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81: 6851−6855; Neubergerら, 1984, Nature 312: 604−608; Takedaら, 1985, Nature 314: 452−454)を用いて、PSGen 13に特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子とスプライシングすることによって抗体を作製することができる;そのような抗体は本発明の範囲内にある。
【0047】
本発明によれば、1本鎖抗体の作製のために記述された技法(米国特許第4,946,778号)を適合させてPSGen 13特異的1本鎖抗体を作製することができる。本発明のさらなる実施形態は、Fab発現ライブラリーの構築のために記述された技法(Huseら, 1989, Scinece 246: 1275−1281)を用いて、PSGen 13タンパク質誘導体または類似体に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を可能とする。
【0048】
分子のイディオタイプを含有する抗体フラグメントを公知の技法によって作製することができる。例えば、そのようなフラグメントとしては、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作製することができるF(ab’)2フラグメント;F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製できるFab’フラグメント;抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって作製できるFabフラグメントが含まれる。
【0049】
本発明は、本明細書に記述する抗体およびキャリアーを含む組成物を提供する。本発明の特定の実施形態において、この組成物は医薬組成物である。
【0050】
本発明による抗体は、例えばPSGen 13タンパク質の精製に、または存在するPSGen 13タンパク質の量を検出または測定する診断方法(細胞中のPSGen 13タンパク質の量は、細胞がトランスフォームされた表現型に向かって進行するにつれて減少するであろう)に用いることができる。
【0051】
5.4 PSGen 13 の使用
本発明は、悪性細胞のトランスフォームされた表現型を抑制するためのPSGen 13の使用に関する。トランスフォームされた表現型の指標としては、限定するものではないが、細胞増殖、形態、接触阻止の欠如、形質転換関連遺伝子の発現の増大、分化特異的遺伝子の発現の減少、足場非依存的増殖能、老化またはアポトーシスの開始の欠如、腫瘍を形成し転移する傾向、等が含まれる。PSGen 13の効果は、PSGen 13核酸を発現可能な形で悪性細胞中に導入することによって、および/またはPSGen 13タンパク質もしくはPSGen 13アクチベーター物質(下記参照)を導入することによって伝達されうる。
【0052】
したがって本発明は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター物質に癌細胞を接触させることを含む、癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。PSGen 13アクチベーター物質とは、細胞中に存在するPSGen 13のレベルを上昇させるものである。例えば、プロモーターの活性化によってPSGen 13遺伝子の転写を誘導する物質、またはPSGen 13タンパク質もしくはmRNAの半減期を増大させる物質である。特定の実施形態においては、癌細胞はヒト癌細胞である。特定の非限定的実施形態において、本発明は、ヒト癌細胞を有効量のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸(発現可能な形の)、またはrPSGen 13もしくはHuPSGenタンパク質に暴露することを含む、ヒト癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。例えば、限定するものではないが、ヒト癌細胞は鼻咽頭腫瘍細胞、甲状腺腫瘍細胞、中枢神経系腫瘍細胞(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫細胞)、黒色腫細胞、上皮腫瘍細胞、非上皮腫瘍細胞、血液腫瘍細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、子宮頸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、泌尿性器癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、骨肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、胃癌細胞または膵臓癌細胞であることができる。
【0053】
関連する実施形態において、本発明は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター物質の治療上有効量を癌を患う被験者に投与することを含む、被験者を治療する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、被験者はヒトである。特定の非限定的実施形態において、本発明は、rPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸(発現可能な形の)またはrPSGen 13もしくはHuPSGen 13タンパク質の治療上有効量を、癌を患うヒト被験者に投与することを含む、ヒト被験者の治療方法を提供する。例えば、治療されるべき癌は、鼻咽頭腫瘍、甲状腺腫瘍、中枢神経系腫瘍(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫)、黒色腫、脈管癌、血管癌(例:血管腫、血管肉腫)上皮腫瘍、非上皮腫瘍、血液腫瘍、白血病、リンパ腫、神経芽腫、子宮頸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、肝癌、泌尿性器癌、卵巣癌、精巣癌、骨肉腫、軟骨肉腫、胃癌または膵臓癌であることができる。
【0054】
PSGen 13核酸は、限定するものではないが、例えばベクター介在エントリー(例:感染)、リポソーム(例:DC−コレステロールリポソーム、カチオン性リポソーム、センダイウイルス外被タンパク質を含有するリポソーム)、イミダゾリウム脂質(例えば、2001年6月12日に発行されたWangらによる米国特許第6,245,520号参照)、カチオン性脂質(例えば、2001年5月22日に発行されたWangらによる米国特許第6,235,310号参照)、リポフェクション、アシアロ糖タンパク質ポリ(L)リシン複合体、および微小泡(例えば、2001年6月12日に発行されたPorterらによる米国特許第6,245,747号参照)を用いる、当技術分野で公知の任意の方法によって導入することができる。PSGen 13タンパク質は、リポソーム、微小球体、または飲作用または食作用を容易にするビヒクル等の処方物を用いる方法を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって細胞に導入することができる。
【0055】
被験者は、任意の適切な経路(腫瘍内点滴注入、静脈内、動脈内、鞘内、筋肉内、皮内、皮下、等を含む)によって治療上有効量のPSGen 13遺伝子またはタンパク質を投与され得る。治療上有効量のこれらの作用物質は、下記の成果のうち1つ以上をもたらす:すなわち、腫瘍塊の減少、癌細胞数の減少、血清腫瘍マーカーの減少、腫瘍転移の減少、血管新生の減少、灌流の減少、腫瘍増殖速度の低下、臨床症状の改善、および/または患者の生存率の増大である。適切な場合は、最初に癌を外科的に処置して腫瘍塊を取り除いてもよい。
【0056】
5.4.1 潜在的標的細胞の同定
特定の癌が本発明の方法にとって適切な標的であるかどうかを評価することが望ましいであろう。そのような評価は、例えば、PSGen 13遺伝子(発現可能な形の)またはタンパク質を被験癌細胞に導入し、そして該細胞のトランスフォームされた表現型が抑制されるかどうかを、例えば、該細胞の増殖能および/または軟寒天中にコロニーを形成する該細胞の能力を試験することによって確認することにより行うことができる。
【0057】
下記の分節6に、PSGen 13が進行関連遺伝子PEG3に関連するプロモーターであるPEG3プロモーター[例えば、国際特許出願PCT/US99/07199、公開番号WO 99/49898(1999年10月7日に英語で公開;参照によりここに組み入れる)に記載されているPEG3プロモーター、およびGenBank登録番号AF351130参照]の活性を抑制することを示すデータを提示する。該プロモーターの活性は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いてモニターされた。この発見に基づいて、本発明は、癌細胞がPEG3レベルの上昇を示すかどうかを確認することによって、PSGen 13の推定される治療標的を同定する方法を提供する。本発明の方法は、PSGen 13がPEG3発現を低下させうるかどうかを、例えばそのプロモーター活性を抑制することによって、確認することをさらに含むことができる。特定の実施形態において、そのような活性は、限定するものではないが、本明細書に例示するPEG3プロモーター/ルシフェラーゼ遺伝子リポーター系等のPEG3プロモーター/リポーター遺伝子構築物を用いてモニターすることができる。
【0058】
下記の分節6に、PSGen 13が、血管内皮増殖因子の発現および新たな血管形成(血管新生)に関連するプロモーターであるVEGFプロモーターの活性を抑制することを示すさらなるデータを提示する。該プロモーターの活性は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いてモニターされた。この発見に基づいて、本発明は、癌細胞がVEGFレベルの上昇を示すかどうかを確認することによって、PSGen 13の推定される治療標的を同定する方法を提供する。本発明の方法は、PSGen 13がVEGF発現を低下させうるかどうかを、例えばそのプロモーター活性を抑制することによって、確認することをさらに含むことができる。特定の実施形態において、そのような活性は、限定するものではないが、本明細書に例示するVEGFプロモーター/ルシフェラーゼ遺伝子リポーター系等のVEGFプロモーター/リポーター遺伝子構築物を用いてモニターすることができる。または、血管新生に特に関連する腫瘍(例えば、黒色腫または血管腫等の血管腫瘍等)は、PSGen 13介在治療の適切な標的でありうる。
【0059】
下記の分節8に示すように、HuPSGen 13は染色体領域6q23.2−6q23.3にマップされた。この領域に欠失を有する癌細胞は、HuPSGen 13の形質転換抑制効果に対して特に感受性でありうる。したがって、本発明は、染色体領域6q23.2−6q23.3に欠失を検出することを含む、HuPSGen 13による治療のヒト癌細胞標的を同定する方法を提供する。
【0060】
5.4.2 血管新生の抑制
本発明は、被験者における癌増殖に関連した血管新生を抑制するように、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター化合物の十分量を含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、被験者における癌増殖に関連した血管新生を抑制する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、該被験者はヒトであり、そして該治療方法は治療上有効量の発現可能な形のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸、または治療上有効量のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13タンパク質を投与することを含む。非限定的実施形態においては、PSGen 13核酸またはタンパク質を、アンギオスタチンまたはサリドマイド等の抗血管新生活性を有する別の分子と共に投与することが望ましいかもしれない。
【0061】
5.4.3 診断方法
本発明は、HuPSGen 13の染色体上の位置、すなわち6q23.2−6q23.3を利用する診断方法をさらに提供する。
【0062】
1組の実施形態において、本発明は、個体の染色体領域6q23.2−6q23.3における欠失を検出することを含む、癌を発症する危険が増大した個体を同定する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、増大した危険とは、膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含むリストより選択された癌の発症をいう。
【0063】
別の1組の実施形態において、本発明は、個体の染色体領域6q23.2−6q23.3における欠失を検出することを含む、被験者における癌の進行(すなわち、より悪性な表現型の発生)を検出する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、上記進行は、膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含むリストより選択された癌に起こる。
【0064】
欠失は、制限断片長多型の分析を含むが、それだけに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法によって検出することができる。
【0065】
6.実施例: 進行によって抑制される遺伝子 13 (PSGen 13) は、齧歯動物およびヒトの癌細胞におけるトランスフォームされた状態を抑制する
要約: 全長齧歯動物PSGen 13遺伝子を作製し、発現ベクターに導入し、そして進行した、齧歯動物のトランスフォームされた細胞系であるE11−NMTおよびDU−145ヒト前立腺癌細胞系中に安定にトランスフェクトした。一連のランダムな単一細胞クローンを単離し、そして文献に記述されているトランスフォームされた状態の発現について、足場非依存的に増殖するそれらの能力によって評価した。ラットPSGen 13遺伝子を欠く対照発現ベクターではなく、ラットPSGen 13発現ベクターを用いてトランスフェクトした特定のE11−NMTおよびDU−145クローンは、足場非依存的に増殖するそれらの能力が抑制された。ラットPSGen 13でトランスフェクトされたE11−NMT形質転換体の場合、特定の進行によって促進される遺伝子(PEG−3)および血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子の転写が抑制された。ラットPSGen 13配列を用いて、ラットPSGen 13配列にかなりのDNAおよびタンパク質相同性を有する(それぞれ75および94%)ヒトPSGen 13(HuPSGen 13)遺伝子が同定された。以下に記述する試験は、PSGen 13が癌表現型の抑制物質であること、および抑制は癌進行誘導遺伝子および血管新生刺激遺伝子の発現に変化をもたらすことを示す。
【0066】
6.1 材料および方法
細胞培養および寒天増殖アッセイ: E11は、H5ts125で形質転換されたSprague−Dawley二次RE細胞の単一細胞クローンである(Fisherら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.75: 2311−2314)。E11−NMTは、E11細胞系によって誘導されたヌードマウス腫瘍に由来するE11細胞のサブクローンである(Babissら, 1985, Science 228: 1099−1101)。R12は、Ha−ras癌遺伝子で形質転換されたE11クローンである(Duigouら, 1989, NY Acad Sci. 567 :302−306)。F1およびF2は、E11−NMTとCREF細胞の間に形成された、平坦な形態を有する、抑制された体細胞ハイブリッドである(Duigouら, 1990, Mol. Cell Biol. 10: 2027−2034)。R1およびR2は、E11−NMTとCREF細胞を融合させて作製した、丸い形態を有する、進行した体細胞ハイブリッドである(同文献)。E11−HPV E6/E7は、ヒトパピローマウイルス18型のE6/E7遺伝子領域で形質転換したE11細胞のクローンである(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130)。E11 x E11−NMT A6および3bは、E11細胞とE11−NMT細胞の間に形成された、進行表現型を示さない独立した体細胞ハイブリッドクローンである(Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。進行表現型を示さないE11 x E11−NMT細胞(同文献)。E11 x E11−NMT A6TDは、E11 x E11−NMT A6体細胞ハイブリッドによってヌードマウス中に誘導された腫瘍を単離することによって形成された、進行した体細胞ハイブリッドである(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。E11 x E11−NMT IIaは、E11とE11−NMTの間に形成された、進行表現型を示す体細胞ハイブリッドクローンである(Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。E11−NMT AzaB1およびAza C1は、5−アザシチジンで処理したE11−NMT細胞の独立したクローンであり、進行表現型の抑制を示す(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。CREFは、Fischerラット胚繊維芽細胞の特定の不死の非形質転換および非腫瘍形成性クローンである(Fisherら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79: 3527−3531)。DU−145は、ホルモン屈折性(refractive)ヒト前立腺癌細胞系である(Jiangら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 9160−9165)。全ての培養物は、5% FBSを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃にて、湿潤化5% CO2/95%空気インキュベーター中で増殖させた。足場非依存的増殖アッセイは、以前に記述されたように、0.8% noble agar含有培地である基層上の0.4% noble agar含有培地中に異なる数の細胞を播くことによって実施した(Kangら,1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793; Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705; Babissら, 1985, Scinece 228: 1099−1101; Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130; Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120; Fisherら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75: 2311−2314)。
【0067】
PSGen 13 発現 E11−NMT クローンの構築: E11−NMTおよびDU−145細胞を、以前に記述されているように(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130)、完全なrPSGen 13遺伝子を欠く、または有するpcDNA3.1(+)発現ベクター(ネオマイシン耐性遺伝子を含む)を用いてトランスフェクトした。すなわち、1 x 105個の細胞を10 cmの組織培養プレートに播き、6時間後に10 gの精製pcDNA3.1(+)ベクターまたはラットPSGen 13/pcDNA3.1(+)構築物を30 μlのリポフェクタミン(Gibco BRL)と共にインキュベートし、この混合物を8時間細胞に加えた。翌日、培地を500 μg/mlのG418を加えたものと交換し、そして培地は週に2回、3週間にわたって交換した。クローニング・シリンダーを用いてG418耐性コロニーを単離し、NMT−PSG13クローン(cl 3、5、6、7、8、9、10、11および12)およびDU−PSG13クローン(cl 11、12、13、14、15および17)と称する独立した細胞系として、100μg/mlのG418を含有する完全培地で維持した。さらに、NMT−ベクターおよびDU−145−Vecクローンを単離し、独立した細胞系として10μg/mlのG418を含有する完全培地で維持した。
【0068】
ノーザンブロッティングアッセイ: グアニジニウム/フェノール抽出法により全細胞RNAを単離した(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130)。15μgのRNAを変性させ、3%ホルムアルデヒドを含む1.2%アガロースゲル中で電気泳動し、ナイロン膜に転写し、そして32P標識化rPSGen 13 cDNAプローブと順次ハイブリダイズさせた。ブロットを剥がし、そして以前に記述されているように(同文献) 32P標識化GAPDH cDNAプローブで再度釣り上げた。ハイブリダイゼーション後、フィルターを洗浄し、オートラジオグラフィーのために感光させた。
【0069】
プロモーター分析: 全長ラットPEG3プロモーター(PEG−Prom)およびVEGF−プロモーター構築物の活性を評価するため、細胞(E11、E11−NMTおよびNMT−PSGen 13)クローンを35 mmの組織培養プレート1枚あたり2 x 105個の割合で播き、約24時間後に、5μgのPEG−Prom−ルシフェラーゼまたはVEGF−Prom−ルシフェラーゼ構築物、および200μlの無血清培地中で10μlのリポフェクタミン試薬(Gibco)と混合した1μgのSV40−β−galベクター(Promega)を用いてトランスフェクトした。20分後、室温で、800μlの無血清培地を添加し、最終容量を1 mlとした。このトランスフェクション混合物を14時間後に除去し、細胞を無血清培地で3回洗浄し、そして完全増殖培地中37℃でさらに48時間インキュベートした。細胞を回収し、溶解して、β−galおよびルシフェラーゼリポーターアッセイに用いる抽出物を調製した(Gopalkrishanら, 1999, Nucl. Acids Res. 27:4775−4782)。ルシフェラーゼおよびβ−gal活性の発光測定は、市販のキット(それぞれPromegaおよびTropix)を用いて実施した。ルシフェラーゼアッセイのためには、10μlの細胞溶解物を40μlのルシフェラーゼアッセイ基質(Promega)と混合した。β−galアッセイのためには、10μlの細胞溶解物を100μlの希釈Galecton−Plusおよび150μlのAccelerator (Tropix)と混合した。プロモーター分析のデータは、各実験ポイントについて3個1組のサンプルを用いて最低3回集めた。そして、データはβ−galデータによって標準化した。
【0070】
全長ラット PSGen 13 および HuPSGen 13 cDNA のクローニング: RSDDおよび逆ノーザンハイブリダイゼーションを用いて、E11−NMT細胞と比較してE11細胞中で発現上昇を示す遺伝子として、もとのラットPSGen 13 ESTが同定された(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793)。ラットPSGen 13の全長オープンリーディングフレーム(ORF)は、上記EST配列に基づく遺伝子特異的プライマーおよび電子データマイニングと共に完全オープンリーディングフレーム(C−ORF)アプローチを用いてクローン化した。C−ORFに用いたプライマーは、PSGen13−R2 (TCG CTT CTC ACT TTG ACG GAG TGT CAA G)(配列番号7)およびPSGen13−R2ネステッド(TGT CAA GTG TGG CAG AGA CTA AGA ATG G)(配列番号8)であった。さらに、ラットPSGen 13 EST配列をGenBankの配列とBLASTによって比較することにより、全長rPSGen 13およびHuPSGen 13 cDNAクローンを同定した。選択したクローン(ラットPSGen 13由来のATCC#2005777およびHuPSGen 13由来のATCC#2525262)を取得し(Research Genetics)、配列を決定した。
【0071】
6.2 実験結果
PSGen 13 の配列インフォーマティクス: クローン化した全長ラットPSGen 13 cDNAは、ポリ(A)テイルを除いて、780 bpからなる。ポリ(A)シグナル(AATAAA)は763位に位置する(図1;配列番号1)。インフレーム終止コドンが86 bpに存在し(HuPSGen 13には存在しない)、そしてORFは170 bpの最初のATGから始まり、415 bpまで延びている。rPSGen 13 cDNAは、計算分子量が9 kDaで、等電点(pI)が5.52である、予想される81個のアミノ酸(図1;配列番号2)を有するタンパク質をコードする。タンパク質配列分析は、膜にかかる領域のための疎水性パッチ、または分泌タンパク質に特徴的なシグナルペプチド配列を示さなかった。モチーフおよびパターン分析もまた、以前に報告された遺伝子との配列相同性(これはラットPSGen 13の生物学的機能および/または作用機序への可能な洞察を提供するのに有用な情報である)を同定できなかった。この考察に基づくならば、rPSGen 13は新規なクラスのタンパク質をコードしているように思われる。
【0072】
rPSGen 13のヒト相同体であるHuPSGen 13を、GenBankデータベースに報告されている配列を分析することにより電子的にクローン化した(図2;配列番号3)。HuPSGen 13はヌクレオチドレベルではrPSGen 13と75%同一であるが、タンパク質レベルではrPSGen 13と94%同一である(79/81残基)(図3および4)。HuPSGen 13において独特な5個の残基のうち、3個(4位のD、38位のKおよび77位のI)はrPSGen 13(4位のE、38位のRおよび77位のV)の保存された置換であり、これは機能性における強い保存を示唆している。さらに、HuPSGen 13とrPSGen 13のタンパク質コード配列の配列同一性は、ヌクレオチドレベルで87%である。5’および3’末端非翻訳領域は、それぞれ68.7%および68.3%の同一性を示す。これらの領域はrPSGen 13とHuPSGen 13の間でORF部分よりも多様であるが、これは種間相同体の間では珍しいことではない。ORFにおける保存の程度およびその結果としてのタンパク質配列を考えるならば、HuPSGen 13はrPSGen 13のオーソログである。クローン化したHuPSGen 13 cDNAは、ポリ(A)テイルを除いて835 bpからなり、そして標準的なポリ(A)シグナルが814 bpに観察される。インフレーム終止コドンは存在しなかったが、HuPSGen 13のORFは最初のATG (197 bp)から始まり、442 bpまで延びている。HuPSGen 13は計算された分子量が9 kDaで、等電点が5.86である、81個のアミノ酸をコードしている。rPSGen 13におけるように、コンピュータによるタンパク質配列分析は公知の機能モチーフを何らもたらさなかった。
【0073】
rPSGen 13 は E11−NMT および DU−145 細胞における足場非依存的増殖を抑制する:
rPSGen 13は、RSDDを用いて、E11−NMT細胞と比較してE11細胞中で発現上昇を示す遺伝子として同定された(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793)。進行した表現型(+)(これは寒天中における増殖の増大および短い腫瘍潜伏時間によって示される)、または進行しない表現型(−)(これは寒天中における増殖の減少および腫瘍潜伏時間の延長によって示される)を示す1群の齧歯動物細胞系を用いて、rPSGen 13発現の減少と進行表現型との間に直接的な相関関係が見出された(図5、Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793より)。rPSGen 13のレベルは、進行表現型を示さないE11、CREF x E11−NMT F1およびF2、E11 x E11−NMT A6、およびE11−NMT AZA B1細胞において上昇した。対照的に、進行したE11−NMT、CREF x E11−NMT R1およびR2、E11 x E11−NMT A6TD、E11 x E11−NMT IIa、E11−Ras R12およびE11−HPV E6/E7細胞においては、rPSGen 13の発現はより低かった。これらの知見は、進行表現型の発現とラットPSGen 13発現の間に潜在的な逆の関係を実証する。これらの知見はまた、PSGen 13が進行プロセスにおいて機能的な役割をはたすかもしれないという可能性を提起した。
【0074】
rPSGen 13は発現ベクター中にクローン化され、そしてE11−NMTおよびDU−145細胞中に安定にトランスフェクトされた。ランダムクローンを単離し、そして半固体寒天中に播いた時に肉眼で見えるクローンを形成する能力について評価した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。E11細胞は寒天中では低い効率で増殖するが、他方、進行したE11−NMT細胞は寒天中で増大した増殖を示し、E11細胞におけるよりも多数の、より大きいコロニーを形成する(図6)(同文献)。ランダムNMT−PSGen 13クローン(「NMT−PSG13 cl番号」で表わす)の分析は、足場非依存性の顕著な減少を何ら示さない特定のクローン(すなわちNMT−PSG13 cl 3および5)、ならびにE11細胞に類似した寒天クローニング効率の低下を示すクローン(すなわちNMT−PSG13 cl 7および12)を示した。さらに、E11−NMT細胞に較べて足場非依存性の顕著な減少を示すが、NMT−PSG13 cl 7および12よりも少ない増殖抑制を示すいくつかのクローンが同定された。これらは、NMT−PSG13 cl 6、8、9、10および11を含む。
【0075】
足場非依存性の抑制はrPSGen 13の発現増大と関連していることを確認するため、全RNAをE11、E11−NMTならびにNMT−PSG13 cl 3、5、7および12から単離して、ノーザンブロッティングによって評価した(図7)。この実験は、E11ならびにNMT−PSG13 cl 7および12におけるPSGen 13の発現を証明したが、E11−NMTまたはNMT−PSG13 cl 3および5における発現は証明しなかった。これらの結果は、E11−NMT細胞におけるrPSGen 13の強制発現が、このトランスフォーメーションモデル系における進行表現型のマーカーである足場非依存的増殖の抑制をもたらしたことを示している。
【0076】
rPSGen 13遺伝子がヒト癌細胞におけるトランスフォームされた表現型に効果を及ぼしうるかどうかを決定するため、全長rPSGen 13 cDNAをDU−145ヒト前立腺癌細胞中にトランスフェクトし、ランダムクローンを単離した。次に、これらのクローンを足場非依存的増殖について評価した(図8)。DU−145細胞と比較して足場非依存的増殖に顕著な減少を示す数個のクローン(DU−PEG13 cl 11、12および14を含む)が同定された。ベクターでトランスフェクトされたクローンならびにDU−PEG13 cl 13、15および17を含むさらなるクローンは、寒天中でトランスフェクトされていないDU−145細胞と類似のクローニング効率を示した。これらの結果は、ラットPSGen 13がヒト癌細胞におけるトランスフォームされた表現型をも抑制することができることを示し、それによってこの遺伝子産物の腫瘍細胞におけるより一般的な抑制能力を示している。
【0077】
ラット PSGen 13 は E11−NMT 細胞における転写活性を抑制する: 以前の研究は、E11細胞と比較してE11−NMT細胞がPEG−3およびVEGF遺伝子の転写の増大を示すことを明らかにした(Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)。遺伝子発現におけるこれらの変化は、E11細胞と較べてE11−NMT細胞の攻撃的で進行した癌表現型の重要な決定因子であると思われる(同文献)。rPSGen 13発現がこれらの重要な進行関連遺伝子に効果を及ぼすことができるかどうかを決定するため、ルシフェラーゼリポーター遺伝子に連結したPEG3プロモーター(PEG−Prom−ルシフェラーゼ)およびルシフェラーゼリポーター遺伝子に連結したVEGFプロモーター(VEGF−Prom−ルシフェラーゼ)構築物の転写活性を、E11、E11−NMTおよび異なるNMT−PSG13クローンにおいて評価した(図9および10)。以前に報告されているように(同文献)、PEG−PromおよびVEGF−PromはE11細胞におけるよりもE11−NMT細胞においてより活性である。NMT−PSG13 cl 7および12の両者は、E11細胞のそれと類似したPEG−Prom活性の減少を示した(図9)。対照的に、E11−NMT細胞と比較した場合、PEG−Prom−ルシフェラーゼ活性のレベルはNMT−PSG13 cl 3および5において変化しておらず、これらは増大したrPSGen 13 mRNAを発現しない(図7)。NMT−PSG13 cl 7および12において観察されたよりも小規模ではあるが、PEG−Prom活性レベルの低下がNMT−PSG13 cl 6(最小低下)、8、9、10および11においても明らかであった。VEGF−Promの場合、E11−NMT細胞と比較してNMT−PSG13 cl 3および5においてはプロモーター活性の変化は全く見られなかった(図10)。しかし、VEGF−Prom活性における類似の低下(E11細胞に観察されたものに近い)がNMT−PSG13 cl 7、8、9、10、11および12において明らかであった。これらの結果は、PSGen 13の発現がPEG−3およびVEGFの両方の発現を調節できることを示唆している。これら2つの遺伝
子のどちらについても、転写活性のこの調節が直接的または間接的作用機構によって起こるのかどうかは、現在のところ分かっていない。
【0078】
6.3 結論
RSDDアプローチは、齧歯動物およびヒトの両方の腫瘍細胞における癌の進行を機能的に調節することができる新規な遺伝子、すなわちrPSGen 13をうまく同定した。攻撃的な癌表現型を示す齧歯動物腫瘍細胞(E11−NMT)におけるrPSGen 13の強制発現は、足場非依存的増殖の減少によってモニターされる癌表現型の抑制をもたらすという証拠が提示される。同様に、ヒト前立腺癌細胞系(DU−145)中で過剰発現させた場合も、rPSGen 13は足場非依存性の抑制を誘導した。PSGen 13がその癌増殖抑制特性を誘導する作用機構は知られていない。しかし、E11−NMTモデルにおいては、rPSGen 13の強制発現は、2つの重要な癌進行調節遺伝子であるPEG−3およびVEGFの転写活性の抑制と直接相関していた。
【0079】
配列相同性に基づいて、ヒトPSGen 13遺伝子、すなわちHuPSGen 13が単離された。この遺伝子はラットPSGen 13遺伝子に高度に相同である。ヌクレオチドおよびタンパク質レベルでそれぞれ75%および94%同一である。以下の分節に示すように、HuPSGen 13もまたトランスフォームされた表現型を抑制することが示された。
【0080】
7.実施例: ヒト PSGen 13 はトランスフォームされた表現型を抑制する
HuPSGen 13 は形質転換されたラット胚細胞のトランスフォームされた表現型を抑制した: CREF細胞およびHa−rasによって形質転換したCREF細胞(「CREF−ras」細胞)を、空のベクターまたはHuPSGen 13を含むベクターによってトランスフェクトした。このベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子も含んでいた。ハイグロマイシン耐性によってトランスフェクタントを選択し、単層培養におけるコロニー形成を評価した。結果を図11に示す。この図は、3枚反復プレートの結果±S.D.を示している。このデータは、HuPSGen 13がCREF−ras形質転換ラット胚繊維芽細胞におけるコロニー形成に対して選択的抑制効果を発揮することを示している。さらに、トランスフェクトされたHa−ras形質転換細胞におけるコロニー形成効率は、形質転換されていない、トランスフェクトされたCREF細胞に観察されたレベルに戻ることが見いだされた。
【0081】
HuPSGen 13 はヒト乳癌細胞のトランスフォームされた表現型を抑制した; ヒト乳癌細胞系MCF−7の細胞を、ハイグロマイシン耐性遺伝子をも含むベクターに組み込んだHuPSGen 13によってトランスフェクトした。次に、ハイグロマイシンの存在下でトランスフェクタントを選択し、単離したクローンを寒天中における足場非依存的増殖について評価した。図12に示すように、HuPSGen 13でトランスフェクトしたいくつかの細胞系はトランスフェクトされていないMCF−7細胞と類似したクローニング効率を示したが(クローン4および5)、クローニング効率はヒトPSGen 13でトランスフェクトしたMCF−7クローン6、7、12、13および15において実質的に低下した。
【0082】
8.実施例: HuPSGen 13 の染色体上の位置
HuPSGen 13の染色体上の位置は、染色体遺伝子座6q23.2−6q23.3にマップされた。膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含む種々の癌において、この領域における欠失が注目されている。
【0083】
本出願には本文内に種々の刊行物が著者名および日付によって言及されている。米国特許出願第09/648,310号を含む、本明細書に引用したすべての特許、特許出願、GenBank配列および刊行物は、本明細書に記載し、請求している発明のなされた日において当業者に公知の技術水準をより十分に記述するため、参照により本出願に組み入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ラットPSGen 13遺伝子(rPSGen 13と称する)のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列、それぞれ配列番号1および2。オープンリーディングフレームの開始ATGおよび終止コドンを丸で囲み、またポリ(A)シグナルに下線を付している。
【図2】
ヒトPSGen 13遺伝子(HuPSGen 13と称する)のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列、それぞれ配列番号3および4。オープンリーディングフレームの開始ATGおよび終止コドンを丸で囲み、またポリ(A)シグナルに下線を付している。
【図3】
ラット(PSGen 13;配列番号1)およびヒト(HuPSGen 13;配列番号3)cDNA間のヌクレオチド配列比較。ラットPSGen 13およびヒトHuPSGen 13遺伝子の開始および終止コドンを太字で示す。
【図4】
ラットPSGen 13およびヒトHuPSGen 13タンパク質(それぞれ配列番号2および4)のアミノ酸配列比較。
【図5】
RSDDおよび逆ノーザンブロッティングによって同定されたrPSGen 13の、トランスフォーメーション進行に差を示す1群の齧歯動物細胞における示差的発現。種々の段階のトランスフォーメーション進行を示す細胞のノーザンブロットを、32Pで放射性標識したrPSGen 13 cDNA(RSDDおよび逆ノーザンブロッティングによって最初に同定された)で釣り上げた(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793)。ノーザンブロットのレーンに左から右にかけて以下の通り表示する細胞型からRNAを得た:未進行E11細胞(E11 (−));進行したE11−NMT(+)細胞; CREF x E11−NMT F1(−)未進行細胞(ここで「細胞型A x 細胞型B」はA型細胞とB型細胞の間の体細胞ハイブリッドを示す); CREF x E11−NMT F2(−)未進行細胞;CREF x E11−NMT R1(+)進行細胞;CREF x E11−NMT R2(+)進行細胞;CREF x E11−NMT A6(−)未進行細胞;CREF x E11−NMT A6TD(+)ヌードマウス腫瘍由来進行細胞;E11 x E11−NMT 3b(−)未進行細胞;E11 x E11−NMT IIa(+)進行細胞;E11−NMT AZA B1 (−)未進行5−アザシチジン処理E11−NMTクローン;E11−NMT AZA C1(−)未進行5−アザシチジン処理E11−NMTクローン;E11−Ras R12進行細胞;およびE11−HPV E6/E7(HPV−18のE6およびE7領域によって形質転換されたE11クローン)。臭化エチジウム(EtBr)染色によって、RNAの等しいローディングが示されている。このデータは、Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793からのものである。
【図6】
rPSGen 13は、E11−NMT細胞における足場非依存的増殖を抑制する。図に示す細胞型の寒天クローニング効率を、以前に記述されているように測定した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。細胞型は、E11、E11−NMT、およびPSGen 13でトランスフェクトしたE11−NMTクローン(NMT−PSG13 cl 3、5、6、7、8、9、10、11および12と称する)を含む。3個1組のサンプルは変動が<10%で、レプリケートアッセイは変動が<15%であった。
【図7】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおけるラットPSGen 13およびGAPDH発現のノーザンブロッティング分析。図に示す細胞型から単離された15μgの細胞RNAを電気泳動し、ナイロン膜に転写し、ラットPSGen 13 cDNAとハイブリダイズさせ、次に以前に記述されているようにそれを剥がしてGAPDHで釣り上げた(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)。
【図8】
ラットPSGen 13は、DU−145ヒト前立腺癌細胞における足場非依存的増殖を抑制する。図に示す細胞型の寒天クローニング効率は、以前に記述されているように測定した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。細胞型は、DU−145、DU−145のベクターで形質転換したクローン(DU−145/Vec)、およびラットPSGen 13でトランスフェクトしたDU−145クローン(DU−PSG13 cl 11、12、13、14、15および17と称する)を含む。3個1組のサンプルは変動が<10%で、レプリケートアッセイは変動が<12%であった。
【図9】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおける全長PEG−3プロモーター−ルシフェラーゼ活性。異なる細胞型を、5μgの全長PEG−Promおよび1μgのpSV−β−ガラクトシダーゼプラスミドを用いて共トランスフェクトし、そして48時間後にルシフェラーゼ活性を「材料および方法」に記述したように測定した。結果はβ−ガラクトシダーゼ活性によって標準化されており、そして変動が<15%であった3つの独立した実験の平均を表わす。
【図10】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおけるVEGFプロモーター−ルシフェラーゼ活性。異なる細胞型を、5μgのVEGF−Prom−ルシフェラーゼ(Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)および1μgのpSV−β−ガラクトシダーゼプラスミドを用いて共トランスフェクトし、そして48時間後にルシフェラーゼ活性を「材料および方法」に記述したように測定した。結果はβ−ガラクトシダーゼ活性によって標準化されており、そして変動が<15%であった3つの独立した実験の平均を表わす。
【図11】
HuPSGen 13は、Ha−rasにより形質転換されたラット胚繊維芽細胞における単層コロニー形成を選択的に抑制した。
【図12】
HuPSGen 13は、MCF−7ヒト乳癌細胞のトランスフォームされた表現型を、寒天中のクローニング効率の低下によって示されるように、抑制した。
本明細書に開示する発明は、米国保健福祉省からの国立衛生研究所補助金第CA35675号のもとで政府の援助を得てなされた。したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本出願は、米国特許出願第09/648,310号(この内容の全体を参照により本明細書に組み入れる)の一部継続出願である。
【0003】
1.序論
本発明は、細胞が悪性表現型に向かって進行する時に該細胞中により低レベルで発現され、そのため進行によって抑制される遺伝子13 (Progression Suppressed Gene 13: PSGen 13)と呼ばれる遺伝子に関する。本発明は、少なくとも部分的には、この新規遺伝子およびそれによってコードされるタンパク質の発見、ならびに悪性腫瘍細胞へのPSGen 13の導入は癌細胞増殖を抑制し、かつ悪性腫瘍および血管形成に関連する遺伝子の発現制御要素を抑制する、という発見に基づいている。
【0004】
2.発明の背景
遺伝子発現の変化は、細胞周期の調節、分化および発生を含む正常な細胞生理学の重要な決定因子であり、そしてそれらの変化は発生異常、分化の異常なプログラム、および癌を含む異常な細胞生理学に直接寄与する(WatsonおよびMargulies, 1993, Dev. Neurosci. 15:77−86; Winkles, 1998, Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 58: 41−78; Fisher (編), 1990, Model Cell Culture Systems for Studying Differentiation: Mechanisms of Differentiation, CRC Press, Boca Raton, FL, Vol. 1; Fisher (編), 1990, Modulation of Differentiation by Exogenous Agents: Mechanisms of Differentiation, CRC Press, Boca Raton, FL, Vol. 2)。これらの前後関係において、示差的に発現された遺伝子の同定、クローン化および特徴づけは、増殖、発生、老化、分化および癌、等のプロセスの分子的決定因子に関する適切で重要な洞察を提供するに相違ない。
【0005】
示差的に発現された遺伝子を同定し、そしてクローン化するためには、いくつかの方法を用いることができる。これらの方法には、サブトラクティブハイブリダイゼーション法(JiangおよびFisher, 1993, Mol. Cell. Differ. 1: 285−299; SuおよびFisher, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783; Jiangら, Oncogene 10: 1855−1864; Jiangら, 1995, Oncogene 11: 2477−2486; Jiangら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 9160−9165)、ディファレンシャルRNAディスプレイ(DDRT−PCR)( WatsonおよびMargulies, 1993, Dev. Neurosci. 15:77−86; Winkles, 1998, Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 58: 41−78; LiangおよびPardee, 1992, Science 257: 967−971; Shenら, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92; 6778−6782)、恣意的にプライミングしたPCR(arbitrarily primed PCR)によるRNAフィンガープリンティング(McClellandら, 1995, Trends Genet, 11: 242−246; Ralphら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 10710−10714)、再現的差異分析(representational difference analysis)(HubandおよびSchatz, 1994, Nucleic Acids Res. 22: 5640−5648)、遺伝子発現の連続分析(Velculescuら, 1995, Science 270: 484−487; Zhangら, 1997, Science 276: 1268−1272)、電子工学的サブトラクション法(Wanら, 1996, Nat. Biotechnol, 14: 1685−1691; Adamsら, 1993, Nat. Genet. 4: 256−267)およびコンビナトリアル遺伝子マトリックス分析(Schenaら, 1995, Science 270: 467−470)が含まれる。
【0006】
LiangおよびPardee (1992, Science 257: 967−971)によって開発されたDDRT−PCRアプローチは、示差的に発現された遺伝子を分析し、クローン化するうえで広い人気を獲得した。DDRT−PCRは、少量のRNA(約5μg)を用いて膨大な数(重複が起こらなければ>20,000)のmRNA種を分析することができる強力な方法である(同文献)。DDRT−PCRは、組織生検等のようなRNA供給源が限定されている場合は、しばしば優れた方法である。DDRT−PCRの直接的利点は、示差的に発現された遺伝子を、アップレギュレーションされたものもダウンレギュレーションされたものも両方とも、同一の反応で同定し、単離する能力である。さらに、DDRT−PCR技法は、同一ゲル中で多数のサンプルのディスプレイを可能とする。これは、RNA種中で特異的な診断上の変化を明確にするうえで、および遺伝子発現の変化を時間的に分析するために有用である。
【0007】
しかし、DDRT−PCR技法に問題がないわけではない(Debouck, 1995, Curr. Opin. Biotechnol. 6: 597−599)。標準的DDRT−PCRを用いる際に遭遇する困難には、偽陽性および重複した遺伝子同定の高い発生率、貧弱な再現性、バイアスがかかった遺伝子ディスプレイ、およびクローン化されたcDNAに関する機能情報の欠如が含まれる。さらに、貧弱な分離は、示差的に発現された量の少ない遺伝子を、高発現された遺伝子が発生する強いシグナルの下に隠してしまう場合がある。偽陽性および重複の発生は非常に問題となりうる。そして、適切な示差的発現および単離されたcDNAの独自性を確認するために資源の過度の消費をもたらす。cDNAは、ゲルから純粋な形で単離され(多重配列によるバンドの汚染はクローン同定を複雑にする)、再度増幅され、適切なクローニングベクター中に挿入され、真正な示差的発現について分析され、そして最後に配列決定される必要がある。標準的DDRT−PCRアプローチの有するこれらの制限は、示差的に発現された遺伝子をより効率的かつ選択的に同定するためにこの方法を改善する必要性をきわだたせる。
【0008】
サブトラクティブハイブリダイゼーション(テスターとドライバーの間でハイブリダイゼーションを行い、次に共通の遺伝子産物を選択的に除去する)は、テスターcDNA集団中の独自の遺伝子産物を富化し、そして豊富な共通のcDNAを減少させる(Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783)。サブトラクトされたcDNAライブラリーを分析して、ランダムにコロニーをピッキングすることによって、またはディファレンシャルスクリーニングによって、示差的に発現された遺伝子を同定し、クローン化することが可能である(Rangnekarら, 1992, J. Biol. Chem. 267: 6240−6248; Wongら, 1997, Semin. Immunol. 9: 7−16; MaserおよびCalvet, 1995, Semin. Nephrol. 15: 29−42)。サブトラクティブハイブリダイゼーションをうまく用いて多数の示差的に発現された遺伝子がクローン化されてきたが(JiangおよびFisher, 1993, Mol. Cell. Differ. 1: 285−299; Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Jiangら, Oncogene 10: 1855−1864; Jiangら, 1995, Oncogene 11: 2477−2486)、このアプローチは多大な労力を要し、そして変化した発現を示す遺伝子の全ての単離をもたらすものではない(Sagerstromら, 1997, Annu. Rev. Biochem. 66: 751−783; Wanら, 1996, Nat. Biotechnol. 14: 1685−1691)。
【0009】
原則として、サブトラクトしたRNAまたはcDNAサンプルを用いて実施したDDRT−PCRは、アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされた遺伝子産物をクローン化するための強力な戦略を提供するに相違ない。このアプローチは、両方の技法の有利な点を組合わせるもので、独自配列の富化および共通配列の減少または消去をもたらすに相違ない。また、この方法はディスプレイゲル上のバンドの複雑性を一貫して減少させ、それによってcDNAのより明確な分離を可能とし、その結果、偽陽性反応をより少なくするに相違ない。さらに、より少ない数のプライマーセットを用いて逆転写およびPCR反応を行って、示差的に発現される遺伝子の全範囲を分析することが可能であるに相違ない。遺伝子同定および単離にとって特に重要なのは、強い共通遺伝子産物によって隠されている稀な遺伝子産物が、DDRT−PCRと組合わせてサブトラクティブハイブリダイゼーションを用いることによってディスプレイされるということである。さらに、サブトラクティブライブラリーを用いたDDRT−PCRアプローチは、示差的に発現された遺伝子のサブトラクトされたcDNAライブラリーを効率的にスクリーニングするためにも貴重であることを実証できるであろう。しかし、サブトラクティブハイブリダイゼーションとDDRT−PCRの組合わせが上記の理由によって魅力的に思われようと、このアプローチを使おうとした以前の試みは、生成されるシグナルの複雑さを一貫して減少させることにおいて,標準的DDRT−PCR法と比較して、最低限の成功をもたらしたにすぎないことを実証した(Hakvoortら, 1994, Nucleic Acids Res. 22: 878−879)。
【0010】
Kangら(1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793)は、DDRT−PCRの複雑さを効率的に、かつ一貫して減少させ、そして予想された示差的発現を示す遺伝子の同定およびクローン化をもたらす、相互サブトラクションディファレンシャルRNAディスプレイ(RSDD)アプローチを用いた。RSDDのために用いられたモデルは、アデノウイルスによって形質転換されたラット胚細胞系E11であった。この細胞は、無胸腺症ヌードマウスに注入し、細胞培養物中で再確立すると(E11−NMT)、攻撃的な発癌進行表現型を獲得する(Su & Fisher, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics,(編)Adolph, K.W. (Academic, Orlando, FL), Vol. 1, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993;Babissら, 1985,Science 228: 1099−1101)。ヌードマウスへのE11細胞の注入は、腫瘍潜伏時間約35−40日で100%の動物に腫瘍をもたらし、他方、E11−NMT細胞は腫瘍潜伏時間約15−20日で100%のヌードマウス中に腫瘍を形成する(同文献)。さらに、E11細胞は寒天中で約3%の効率でコロニーを形成し、他方、E11−NMTは>30%の寒天クローニング効率を示す(同文献)。増大した腫瘍形成性および増強された足場非依存的表現型が、E11/E11−NMTモデル系における腫瘍進行の重要なインジケーターである(同文献)。
【0011】
前出のKangらは、RSDDは進行したラット腫瘍細胞中で発現の上昇を示す遺伝子[すなわち、進行によって促進される遺伝子(progression−elevated gene: PEGen遺伝子)]および進行した腫瘍細胞中で発現の抑制を示す遺伝子[すなわち、進行によって抑制される遺伝子(PSGen遺伝子)]の同定をもたらしたと報告している。Kangらによって同定されたラット遺伝子の1つは、(ラット)PSGen 13(発明者Fisherらによる国際特許出願PCT/US99/04323も参照されたい)であるが、全長cDNAは単離されておらず、したがってその配列も、それによってコードされるタンパク質の配列も報告されていなかった。本発明は、完全なラットおよびヒトPSGen 13 cDNAのクローニングおよび特徴づけに関するものであり、それらの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列を提供し、そしてさらにPSGen 13のレベルの上昇が悪性表現型に対して有する抑制効果を実証するものである。
【0012】
3.発明の概要
本発明は、進行によって抑制される遺伝子13 (PSGen 13)タンパク質をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター、単離されたPSGen13タンパク質、ならびに癌細胞および/または新血管形成を阻止するため、そして結果的に癌患者を治療するためにこれらの分子を使用する方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、ラットおよびヒトPSGen 13をコードする完全なcDNAのクローニングおよび特徴づけ、ならびにPSGen 13の発現レベルの上昇はトランスフォームされた表現型を抑制することができ、かつ癌進行および血管新生に関連するプロモーター要素を抑制することができる、という発見に基づいている。本発明はさらに、ヒトPSGen 13の染色体上の位置は、その観察された腫瘍抑制活性と一致して、種々の癌を患う患者において欠失を含むことが観察された領域であるという発見に基づいている。
【0013】
種々の実施形態において、本発明は癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。この方法は、該癌細胞を、該癌細胞の増殖を阻止するように、十分な量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター化合物と接触させることを含む。本発明はまた、被験者における癌を治療する方法を提供する。この方法は、被験者の細胞を、該細胞にPSGen 13タンパク質を発現させるように、十分な量のPSGen 13タンパク質をコードする核酸と接触させ、それによって該被験者の癌を治療することを含む。
【0014】
3.1. 定義
DNA「コード配列」または特定のタンパク質を「コードするヌクレオチド配列」とは、適切な調節配列の制御下に置かれた時に、in vivoまたはin vitroで転写され、ポリペプチドに翻訳されるDNA配列をいう。コード配列の境界は、5’−(アミノ)末端の開始コドンおよび3’−(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、限定するものではないが、原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)供給源由来のゲノムDNA、ウイルスRNAまたはDNA、および合成核酸配列をも含むことができる。転写終止配列は、通常コード配列の3’末端側に位置する。
【0015】
DNA「制御配列」という用語は、宿主中のコード配列の転写および翻訳を集合的に提供するプロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流調節ドメイン、エンハンサー等、ならびに5’−UTRおよび3’−UTRを含む非翻訳領域(UTR)の総称である。
【0016】
制御配列は、RNAポリメラーゼがプロモーター配列と結合してコード配列をmRNAに転写する時、細胞中でコード配列の「転写を指令する」。次に、mRNAはコード配列によってコードされたポリペプチドに翻訳される。
【0017】
本明細書に用いる「エンハンサー要素」という用語は、関心のある治療遺伝子の転写速度を増大させるが、プロモーター活性をもたないヌクレオチド配列をいう。
【0018】
本明細書に用いる「遺伝子」という用語は、産物を直接的または間接的にコードする核酸をいう。例えば、PSGen 13タンパク質をコードするcDNAは、ゲノムDNA(PSGen 13をコードするmRNAがそこから転写されうる)が遺伝子と見なされると同じように、「PSGen 13遺伝子」と見なされるであろう。
【0019】
DNA構築物の「異種」領域とは、天然においては他方の分子と会合して見出されることはない別のDNA分子の内部の、またはそれに連結された、識別可能なDNAのセグメントである。異種コード配列の1例は、コード配列自体(例:PSGen 13突然変異体をコードする配列またはPSGen 13をコードする核酸の断片)が天然に見いだされない構築物である(例:天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、異種構造遺伝子およびPSGen 13をコードする遺伝子またはそのような遺伝子の一部を含み、組織特異的プロモーターに連結されているキメラ配列は、同一の遺伝子に由来しようと異なる遺伝子に由来しようと、異種と考えられるであろう。なぜなら、そのようなキメラ構築物は通常天然には見いだされないからである。対立遺伝子変異または天然に存在する突然変異現象は、本明細書に用いる意味でのDNAの異種領域を生じさせない。
【0020】
本明細書に用いる「核酸分子」という用語は、DNAおよびRNAの両方を含み、そして別途特定されていない場合は、2本鎖および1本鎖核酸の両方を含む。DNA−RNAハイブリッド等のハイブリッドもまた含まれる。核酸配列への言及は、改変が該核酸によるリガンド(タンパク質等)の結合またはワトソン−クリック型塩基対合を重大な程度に妨げない限り(そのような妨げが意図されたものであるか、または望ましいものである場合を除いて)、改変された塩基も含みうる。
【0021】
「機能しうる形で連結された」という表現は、上述の構成要素がそれらの通常の機能を達成するように配列されたヌクレオチド配列要素の配置をいう。このようにして、コード配列に機能しうる形で連結された制御配列は、コード配列の発現を果たすことができる。制御配列は、コード配列の発現を導くように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される配列がプロモーター配列とコード配列の間に介在することが可能であり、そしてこのような場合も該プロモーター配列はコード領域に「機能しうる形で連結されている」と考えることができる。
【0022】
2つのDNAまたはポリペプチド配列は、分子のある規定された長さにわたってヌクレオチドまたはアミノ酸の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%)が一致する場合、「実質的に相同」である。本明細書に用いる「実質的に相同」という用語はまた、特定されたDNAまたはポリペプチド配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%の同一性を示す配列をもいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定の系について規定されるストリンジェント条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験で同定することができる。適切なストリンジェント条件を規定することは、当技術分野における技術の範囲内である。例えば、Ausubelら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.I, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。
【0023】
本明細書に用いる「治療遺伝子」という用語は、癌細胞に対して治療(例:増殖を抑制する、分化させる、および/またはアポトーシスを誘導する)効果を発揮することができる、または細胞内である機能の発現に対して調節効果を有する機能性タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードするDNAを意味する。
【0024】
細胞は、細胞膜内または、細菌の場合は、細胞壁内に外因性DNAが導入され場合、外因性DNAによって「形質転換」または「トランスフォーム」されている。外因性DNAは、細胞のゲノムを作っている染色体DNAに組み込まれていても(すなわち、共有結合していても)、組み込まれていなくてもよい。例えば、原核生物および酵母においては、外因性DNAはプラスミド等のエピソーム性要素上に保持されうる。真核細胞においては、安定に形質転換された細胞とは、一般に、染色体複製を介して娘細胞によって外因性DNAが受け継がれるように外因性DNAが染色体内に組み込まれている細胞、または安定に保持された染色体外プラスミドを含む細胞である。この安定性は、細胞系または該外因性DNAを含有する娘細胞の集団からなるクローンを樹立する真核細胞の能力によって示される。
【0025】
4.図面の説明
(図面の簡単な説明については下記参照)
5.発明の開示
本発明の限定を目的とするものではないが、開示を明確にするために、発明の詳細な説明を以下の分節に分ける:
(i) PSGen 13核酸;
(ii) PSGen 13タンパク質;
(iii) PSGen 13タンパク質に対する抗体;および
(iv) PSGen 13の使用。
【0026】
5.1 PSGen 13 核酸
本発明は、PSGen遺伝子および関連分子を含めて、PSGen 13核酸を提供する。「PSGen 13」という用語は、種に関わりなく、PSGen 13分子をいう。
【0027】
特定の非限定的実施形態において、本発明は、図1および配列番号1または配列番号5に示す配列を有し、そしてAmerican Type Culture Collection (ATCC; 10801 University Blvd., Manassas, VA 20110−2209に所在する機関)に寄託され、受託番号 PTA−2414を付与されたラットPSGen 13(rPSGen 13)遺伝子、およびそれと実質的に相同な分子を提供する。この寄託物は、pcDNA3.1(+)プラスミドベクターのEcoRI−Xho Iクローニング部位に挿入されたrPSGen 13 cDNAインサートである。このインサートは、長さが約0.8 kbである。上記プラスミドのセンス鎖プロモーターは、T7である。このプラスミドは、アンピシリンおよびネオマイシン耐性遺伝子を担持している。上記インサートの起源は、ESTクローンATCC #2005777(下記参照)である。該cDNAを単離するのに用いたラット組織は、副腎組織であった。
【0028】
他の特定の非限定的実施形態において、本発明は、図2および配列番号3または配列番号6に示す配列を有し、そしてATCCに寄託され、受託番号 PTA−2413を付与されたヒトPSGen 13(HuPSGen 13)遺伝子、およびそれと実質的に相同な分子を提供する。この寄託物は、プラスミドベクターpT7T3−Pac内に挿入されたインサートである。このインサートはEcoRI−Not Iクローニング部位内に挿入されている。このインサートは、長さが約0.83 kbである。上記プラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子を担持している。上記インサートの起源は、ESTクローンATCC #2525262(下記参照)である。該DNAを単離するのに用いたヒト組織は、ヒト腎組織であった。
【0029】
本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、rPSGen 13遺伝子および/またはHuPSGen 13遺伝子とハイブリダイズするであろう核酸を提供する。ストリンジェントな条件下とは、例えば、0.5 M NaHPO4, 7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS), 1 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で65℃でハイブリダイゼーション、および0.1xSSC/0.1% SDS中で68℃で洗浄、等である(Ausubelら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.I, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc., New York, p. 2.10.3)。したがって、本発明は、非ヒト霊長類動物、マウス、またはウシのPSGen 13遺伝子を含む、他の生物種のPSGen 13遺伝子、ならびに核酸プローブおよびアンチセンス分子(これらは、例えば、トランスフォームされた表現型を確認するために用いることができるであろう)を包含する。
【0030】
本発明はまた、図1および2ならびに配列番号2および4に示すrPSGen 13およびHuPSGen 13タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸をも提供する。また、このようなPSGen 13タンパク質をコードする核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0031】
図1および2に示す核酸配列は、標準的技法を用いた増幅によってPSGen 13遺伝子を得るために使用可能なプライマー分子を同定するのに用いることができる。
【0032】
本発明は、rPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13遺伝子を発現可能な形で提供する。「発現可能な形」とは、転写および/または翻訳にとって必要な要素および制御配列を含む形である。例えば、PSGen 13遺伝子は、適切なプロモーター要素(これはPSGen 13プロモーターまたは異種プロモーターであってよい)に機能しうる形で連結されていて、そしてエンハンサー要素、転写開始および終止部位、核局在化配列をコードする核酸、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、mRNA安定化配列、等を含むことができる。
【0033】
原核生物における発現を除外するわけではないが、好ましい実施形態において、本発明はrPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13遺伝子を真核細胞中で発現可能な形で提供する。したがって、PSGen 13遺伝子は、例えば真核細胞中で活性なプロモーター要素と機能しうる形で連結されているとよい。適切なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、ヒト延長因子1αプロモーター、ヒトユビキチンcプロモーター、等が含まれる。本発明の特定の実施形態においては、誘導性プロモーターを使用することが望ましい場合がある。誘導性プロモーターの非限定的例としては、マウス乳癌ウイルスプロモーター(デキサメタゾンで誘導可能);市販のテトラサイクリン応答性またはエクダイソン誘導性プロモーター、等が含まれる。本発明の特定の非限定的実施形態において、プロモーターは、前立腺特異的抗原遺伝子プロモーター(O’Keefeら, 200, Prostate 45: 149−157)、カリクレイン2遺伝子プロモーター(Xieら, 2001, Human Gene Ther. 12: 549−561)、ヒトα−フェトプロテイン遺伝子プロモーター(Idoら, 1995, Cancer Res. 55: 3105−3109)、c−erbB−2遺伝子プロモーター(Takakuwaら, 1997, Jpn. J. Cancer Res. 88: 166−175)、ヒト癌胎児性抗原遺伝子プロモーター(Lanら, 1996, Gastroenterol. 111: 1241−1251)、ガストリン放出ペプチド遺伝子プロモーター(Inaseら, 2000, Int. J. Cancer 85: 716−719)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子プロモーター(PanおよびKoenman, 1999, Med. Hypotheses 53: 130−135)、ヘキソキナーゼII遺伝子プロモーター(Katabiら, 1999, Human Gene Ther. 10: 155−164)、L−プラスチン遺伝子プロモーター(Pengら, 2001, Cancer Res. 61: 4405−4413)、ニューロン特異的エノラーゼ遺伝子プロモーター(Tanakaら, 2001, Anticancer Res. 21: 291−294)、ミドカイン遺伝子プロモーター(Adachiら, 2000, Cancer Res. 60: 4305−4310)、ヒトムチン遺伝子MUC1プロモーター(Stackhouseら, 1999, Cancer Gene Ther. 6: 209−219)、および膵臓癌細胞中で特に活性である(Perraisら, 2001; J. Biol. Chem. によって2001年6月19日に”JBC Papers in Press”に原稿M104204200として刊行された)ヒトムチン遺伝子MUC4プロモーター(Genebank登録番号AF241535)、等のように癌細胞中で選択的に活性であってよい。
【0034】
rPSGen 13およびHuPSGen 13アミノ酸配列をコードする配列を(最初の寄託者が気付かないままに)含むエクスプレスド・シーケンス・タグ(EST)クローンが、米国特許出願第09/648,310号の出願日前にATCCに寄託され、それぞれ2005777および2525262という受託番号を付与されていたことに注意しなければならない。これらのクローンは、本発明において完全なrPSGen 13およびHuPSGen 13遺伝子を特徴づけ、クローン化するのに使用された(下記の分節6参照)。しかし、上記ESTが寄託された時、これらの完全な遺伝子は公知ではなく、また上記ESTによってコードされるタンパク質の正体または機能はいずれも公知ではなかった。
【0035】
真核細胞中で機能するプロモーター要素に機能しうる形で連結されたrPSGen 13遺伝子またはHuPSGen 13遺伝子等のPSGen 13核酸は、例えば、他の発現関連要素、抗生物質耐性に関連する遺伝子、等と共にベクター分子中に包含されていてよい。適切なベクター分子の例としては、限定するものではないが、ウイルスに基づくベクターおよびウイルスに基づかないDNAまたはRNAデリバリー系が含まれる。ウイルスに基づく遺伝子導入ベクターの適切な例としては、限定するものではないが、レトロウイルス由来のもの、例えばLX、LNSX、LNCXまたはLXSNなどのモロニーマウス白血病ウイルスに基づくベクター(MillerおよびRosman, 1989 Biotechniques 7: 980−989); レンチウイルス由来のもの、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ネコ白血病ウイルス(FIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に基づくベクター(Caseら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 22988−2993; Curranら, 2000, Molecular Ther. 1: 31−38; Olsen, 1998, Gene Ther. 5: 1481−1487; 米国特許第6,255,071号および第 6,025,192号);アデノウイルス由来のもの(Zhang, 1999, Cancer Gene Ther. 6(2): 113−138; Connelly, 1999, Curr. Opin. Mol. Ther. 1(5): 565−572; Stratford−Perricaudet, 1990, Human Gene Ther. 1: 241−256; Rosenfield, 1991, Science 252: 431−434; Wangら, 1991, Adv. Exp. Med. Biol. 309: 61−66; Jaffeら, 1992, Nat. Gen. 1: 372−378; Quantinら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 2581−2584; Rosenfeldら, 1992, Cell 68: 143−155; Mastrangeliら, 1993, J. Clin. Invest. 91: 225−234; Ragotら, 1993, Nature 361: 647−650; Hayaskiら, 1994, J. Biol. Chem. 269: 23872−23875; Bettら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 8802−8806)、例えばAd5/CMVに基づくE1欠失ベクター(Liら, 1993, Human Gene Ther. 4: 403−409);アデノ随伴ウイルス由来のもの、例えばpSub201に基づくAAV2由来ベクター(Walshら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 7257−7261);単純ヘルペスウイルス由来のもの、例えばHSV−1に基づくベクター(GellerおよびFreese, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 1149−1153); バキュロウイルス由来のもの、例えば、AcMNPVに基づくベクター(BoyceおよびBucher, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.93: 2348−2352); SV40由来のもの、例えばSVluc (StrayerおよびMilano, 1996, Gene Ther. 3: 581−587); エプスタイン−バーウイルス由来のもの、例えばEBVに基づくレプリコンベクター(Hamborら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.85: 4010−4014); アルファウイルス由来のもの、例えばセムリキ森林熱ウイルスまたはシンドビスウイルスに基づくベクター(Poloら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.96: 4598−4603); ワクシニアウイルス由来のもの、例えば改変ワクシニアウイルス(MVA)に基づくベクター(SutterおよびMoss, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 10847−10851)、またはヒト腫瘍細胞に効率的に形質導入することができ、かつ治療上の効果に必要とされる核酸配列を収容することができる、任意の他のクラスのウイルスに由来するベクターが含まれる。特定の実施形態にとっては、シャトルベクターを用いることが望ましいであろう。
【0036】
本発明は、適切なキャリアー中に上記PSGen 13核酸を含む組成物を提供する。治療用途のために、本発明は、例えば発現可能な形でベクター中に包含され、適切な医薬キャリアーに担持された、治療的量のPSGen 13核酸を提供する。
【0037】
本発明はまた、例えばベクター中に包含された、上記のPSGen 13核酸を含む原核または真核宿主細胞を提供する。宿主細胞は、限定するものではないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞を含む、原核細胞または真核細胞であってよい。宿主細胞は悪性細胞であっても非悪性細胞であってもよい。本発明の特定の非限定的実施形態においては、宿主細胞は、例えば鼻咽頭腫瘍細胞、甲状腺腫瘍細胞、中枢神経系腫瘍細胞(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫細胞)、黒色腫細胞、上皮腫瘍細胞、非上皮腫瘍細胞、血液腫瘍細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、子宮頸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、泌尿性器癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、骨肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、胃癌細胞または膵臓癌細胞を含むヒト腫瘍細胞であってよい。
【0038】
5.2 PSGen 13 タンパク質
本発明は、PSGen 13タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明は、図1に示すrPSGen 13タンパク質であって、配列番号2に示す配列を有する該タンパク質、およびそれと実質的に相同なタンパク質を提供する。別の特定の実施形態において、本発明は、図2に示すHuPSGen 13タンパク質であって、配列番号4に示す配列を有する該タンパク質、およびそれと実質的に相同なタンパク質を提供する。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明は、上記PSGen 13核酸によってコードされる、および/または以下に記述するrPSGen 13タンパク質および/またはHuPSGen 13タンパク質に対する抗体と交差反応するPSGen 13タンパク質を提供する。したがって、ヒトおよびラットのPSGen 13タンパク質に加えて、本発明はウシタンパク質、マウスタンパク質、および非ヒト霊長類動物PSGen 13タンパク質を提供する。
【0040】
PSGen 13タンパク質は、天然の供給源から調製することも、化学的に合成することも、または遺伝子組換え技法によって生産することも可能である。例えば、PSGen 13タンパク質は、適切な発現ベクターに含まれるPSGen 13遺伝子を発現させることによって生産することができる。PSGen 13タンパク質は、標準的技法を用いて真核または原核細胞発現系中に発現させることができる。真核細胞発現系を用いる場合は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸(好ましくは、ベクター中に発現可能な形で含まれる)を任意の標準的技法(トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、等を含む)を用いて真核細胞中に導入することができる。
【0041】
本発明は、適切なキャリアー中に上記PSGen 13タンパク質を含む組成物を提供する。治療上の使用のためには、本発明は適切な医薬キャリアーに担持させた治療的量のPSGen 13タンパク質を提供する。
【0042】
5.3 PSGen 13 タンパク質に対する抗体
本発明は、本明細書に記述するPSGen 13タンパク質と特異的に結合する抗体を提供する。特定の実施形態において、該抗体は、図1および配列番号2に示す配列を有するrPSGen 13タンパク質と特異的に結合する。別の特定に実施形態において、該抗体は、図2および配列番号4に示す配列を有するHuPSGen 13タンパク質と特異的に結合する。そのような抗体は、ある場合には、異なる生物種に由来する数種のPSGen 13タンパク質と交差反応する。
【0043】
上記抗体は、限定するものではないが、例えばヒト抗体、マウス抗体、非ヒト霊長類動物抗体、ウシ抗体、ヒツジ抗体、ヤギ抗体、またはラット抗体であってよい。特定の非限定的実施形態において、抗体はマウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化霊長類動物モノクローナル抗体、またはヒト化ラットモノクローナル抗体であってよい。
【0044】
本発明によれば、PSGen 13タンパク質、その断片または他の誘導体(例えばヒスチジンタグを付けたタンパク質)またはその類似体を、抗体を作製するための免疫原として用いることができる。そのような抗体は、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、1本鎖抗体、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーを含む。特定の実施形態においては、rPSGen 13またはHuPSGen 13を認識する抗体が作製される。
【0045】
PSGen 13タンパク質と特異的に結合するポリクローナル抗体の作製には、当技術分野で公知の種々の技法を用いることができる。抗体を作製するためには、天然のPSGen 13タンパク質、もしくはその合成タンパク質、またはその誘導体(例えばフラグメント)を注射することによって種々の宿主動物(限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、等を含む)を免疫することができる。宿主の種によって種々のアジュバントを用いて免疫応答を増大させることができる。これらのアジュバントには、限定するものではないが、フロインド(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオール、等の界面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。
【0046】
PSGen 13タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製するためには、培養下の連続した細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いることができる。そのような技法の例としては、KohlerおよびMilsterin (1975, Nature 256: 495−497)によって最初に開発されたハイブリドーマ技法、ならびにトリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96 に掲載のColeら, 1985)が含まれる。本発明のさらなる実施形態においては、近年の技術(PCT/US90/02545)を用いて、無菌動物中にモノクローナル抗体を産生させることができる。本発明によれば、ヒト抗体を用いることができ、かつヒトハイブリドーマを用いることによって(Coleら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80: 2026−2030)、またはEBVウイルスを用いてヒトB細胞をin vitroで形質転換することによって(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96 に掲載のColeら, 1985)ヒト抗体を得ることができる。さらに、本発明によれば、「キメラ抗体」の作製のために開発された技法(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81: 6851−6855; Neubergerら, 1984, Nature 312: 604−608; Takedaら, 1985, Nature 314: 452−454)を用いて、PSGen 13に特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子とスプライシングすることによって抗体を作製することができる;そのような抗体は本発明の範囲内にある。
【0047】
本発明によれば、1本鎖抗体の作製のために記述された技法(米国特許第4,946,778号)を適合させてPSGen 13特異的1本鎖抗体を作製することができる。本発明のさらなる実施形態は、Fab発現ライブラリーの構築のために記述された技法(Huseら, 1989, Scinece 246: 1275−1281)を用いて、PSGen 13タンパク質誘導体または類似体に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を可能とする。
【0048】
分子のイディオタイプを含有する抗体フラグメントを公知の技法によって作製することができる。例えば、そのようなフラグメントとしては、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作製することができるF(ab’)2フラグメント;F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製できるFab’フラグメント;抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって作製できるFabフラグメントが含まれる。
【0049】
本発明は、本明細書に記述する抗体およびキャリアーを含む組成物を提供する。本発明の特定の実施形態において、この組成物は医薬組成物である。
【0050】
本発明による抗体は、例えばPSGen 13タンパク質の精製に、または存在するPSGen 13タンパク質の量を検出または測定する診断方法(細胞中のPSGen 13タンパク質の量は、細胞がトランスフォームされた表現型に向かって進行するにつれて減少するであろう)に用いることができる。
【0051】
5.4 PSGen 13 の使用
本発明は、悪性細胞のトランスフォームされた表現型を抑制するためのPSGen 13の使用に関する。トランスフォームされた表現型の指標としては、限定するものではないが、細胞増殖、形態、接触阻止の欠如、形質転換関連遺伝子の発現の増大、分化特異的遺伝子の発現の減少、足場非依存的増殖能、老化またはアポトーシスの開始の欠如、腫瘍を形成し転移する傾向、等が含まれる。PSGen 13の効果は、PSGen 13核酸を発現可能な形で悪性細胞中に導入することによって、および/またはPSGen 13タンパク質もしくはPSGen 13アクチベーター物質(下記参照)を導入することによって伝達されうる。
【0052】
したがって本発明は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター物質に癌細胞を接触させることを含む、癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。PSGen 13アクチベーター物質とは、細胞中に存在するPSGen 13のレベルを上昇させるものである。例えば、プロモーターの活性化によってPSGen 13遺伝子の転写を誘導する物質、またはPSGen 13タンパク質もしくはmRNAの半減期を増大させる物質である。特定の実施形態においては、癌細胞はヒト癌細胞である。特定の非限定的実施形態において、本発明は、ヒト癌細胞を有効量のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸(発現可能な形の)、またはrPSGen 13もしくはHuPSGenタンパク質に暴露することを含む、ヒト癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。例えば、限定するものではないが、ヒト癌細胞は鼻咽頭腫瘍細胞、甲状腺腫瘍細胞、中枢神経系腫瘍細胞(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫細胞)、黒色腫細胞、上皮腫瘍細胞、非上皮腫瘍細胞、血液腫瘍細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、子宮頸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、泌尿性器癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、骨肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、胃癌細胞または膵臓癌細胞であることができる。
【0053】
関連する実施形態において、本発明は、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター物質の治療上有効量を癌を患う被験者に投与することを含む、被験者を治療する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、被験者はヒトである。特定の非限定的実施形態において、本発明は、rPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸(発現可能な形の)またはrPSGen 13もしくはHuPSGen 13タンパク質の治療上有効量を、癌を患うヒト被験者に投与することを含む、ヒト被験者の治療方法を提供する。例えば、治療されるべき癌は、鼻咽頭腫瘍、甲状腺腫瘍、中枢神経系腫瘍(例:神経芽腫、星状細胞腫、または多形性神経膠芽腫)、黒色腫、脈管癌、血管癌(例:血管腫、血管肉腫)上皮腫瘍、非上皮腫瘍、血液腫瘍、白血病、リンパ腫、神経芽腫、子宮頸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、肝癌、泌尿性器癌、卵巣癌、精巣癌、骨肉腫、軟骨肉腫、胃癌または膵臓癌であることができる。
【0054】
PSGen 13核酸は、限定するものではないが、例えばベクター介在エントリー(例:感染)、リポソーム(例:DC−コレステロールリポソーム、カチオン性リポソーム、センダイウイルス外被タンパク質を含有するリポソーム)、イミダゾリウム脂質(例えば、2001年6月12日に発行されたWangらによる米国特許第6,245,520号参照)、カチオン性脂質(例えば、2001年5月22日に発行されたWangらによる米国特許第6,235,310号参照)、リポフェクション、アシアロ糖タンパク質ポリ(L)リシン複合体、および微小泡(例えば、2001年6月12日に発行されたPorterらによる米国特許第6,245,747号参照)を用いる、当技術分野で公知の任意の方法によって導入することができる。PSGen 13タンパク質は、リポソーム、微小球体、または飲作用または食作用を容易にするビヒクル等の処方物を用いる方法を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって細胞に導入することができる。
【0055】
被験者は、任意の適切な経路(腫瘍内点滴注入、静脈内、動脈内、鞘内、筋肉内、皮内、皮下、等を含む)によって治療上有効量のPSGen 13遺伝子またはタンパク質を投与され得る。治療上有効量のこれらの作用物質は、下記の成果のうち1つ以上をもたらす:すなわち、腫瘍塊の減少、癌細胞数の減少、血清腫瘍マーカーの減少、腫瘍転移の減少、血管新生の減少、灌流の減少、腫瘍増殖速度の低下、臨床症状の改善、および/または患者の生存率の増大である。適切な場合は、最初に癌を外科的に処置して腫瘍塊を取り除いてもよい。
【0056】
5.4.1 潜在的標的細胞の同定
特定の癌が本発明の方法にとって適切な標的であるかどうかを評価することが望ましいであろう。そのような評価は、例えば、PSGen 13遺伝子(発現可能な形の)またはタンパク質を被験癌細胞に導入し、そして該細胞のトランスフォームされた表現型が抑制されるかどうかを、例えば、該細胞の増殖能および/または軟寒天中にコロニーを形成する該細胞の能力を試験することによって確認することにより行うことができる。
【0057】
下記の分節6に、PSGen 13が進行関連遺伝子PEG3に関連するプロモーターであるPEG3プロモーター[例えば、国際特許出願PCT/US99/07199、公開番号WO 99/49898(1999年10月7日に英語で公開;参照によりここに組み入れる)に記載されているPEG3プロモーター、およびGenBank登録番号AF351130参照]の活性を抑制することを示すデータを提示する。該プロモーターの活性は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いてモニターされた。この発見に基づいて、本発明は、癌細胞がPEG3レベルの上昇を示すかどうかを確認することによって、PSGen 13の推定される治療標的を同定する方法を提供する。本発明の方法は、PSGen 13がPEG3発現を低下させうるかどうかを、例えばそのプロモーター活性を抑制することによって、確認することをさらに含むことができる。特定の実施形態において、そのような活性は、限定するものではないが、本明細書に例示するPEG3プロモーター/ルシフェラーゼ遺伝子リポーター系等のPEG3プロモーター/リポーター遺伝子構築物を用いてモニターすることができる。
【0058】
下記の分節6に、PSGen 13が、血管内皮増殖因子の発現および新たな血管形成(血管新生)に関連するプロモーターであるVEGFプロモーターの活性を抑制することを示すさらなるデータを提示する。該プロモーターの活性は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いてモニターされた。この発見に基づいて、本発明は、癌細胞がVEGFレベルの上昇を示すかどうかを確認することによって、PSGen 13の推定される治療標的を同定する方法を提供する。本発明の方法は、PSGen 13がVEGF発現を低下させうるかどうかを、例えばそのプロモーター活性を抑制することによって、確認することをさらに含むことができる。特定の実施形態において、そのような活性は、限定するものではないが、本明細書に例示するVEGFプロモーター/ルシフェラーゼ遺伝子リポーター系等のVEGFプロモーター/リポーター遺伝子構築物を用いてモニターすることができる。または、血管新生に特に関連する腫瘍(例えば、黒色腫または血管腫等の血管腫瘍等)は、PSGen 13介在治療の適切な標的でありうる。
【0059】
下記の分節8に示すように、HuPSGen 13は染色体領域6q23.2−6q23.3にマップされた。この領域に欠失を有する癌細胞は、HuPSGen 13の形質転換抑制効果に対して特に感受性でありうる。したがって、本発明は、染色体領域6q23.2−6q23.3に欠失を検出することを含む、HuPSGen 13による治療のヒト癌細胞標的を同定する方法を提供する。
【0060】
5.4.2 血管新生の抑制
本発明は、被験者における癌増殖に関連した血管新生を抑制するように、PSGen 13タンパク質をコードする核酸、PSGen 13タンパク質またはPSGen 13アクチベーター化合物の十分量を含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、被験者における癌増殖に関連した血管新生を抑制する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、該被験者はヒトであり、そして該治療方法は治療上有効量の発現可能な形のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13核酸、または治療上有効量のrPSGen 13もしくはHuPSGen 13タンパク質を投与することを含む。非限定的実施形態においては、PSGen 13核酸またはタンパク質を、アンギオスタチンまたはサリドマイド等の抗血管新生活性を有する別の分子と共に投与することが望ましいかもしれない。
【0061】
5.4.3 診断方法
本発明は、HuPSGen 13の染色体上の位置、すなわち6q23.2−6q23.3を利用する診断方法をさらに提供する。
【0062】
1組の実施形態において、本発明は、個体の染色体領域6q23.2−6q23.3における欠失を検出することを含む、癌を発症する危険が増大した個体を同定する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、増大した危険とは、膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含むリストより選択された癌の発症をいう。
【0063】
別の1組の実施形態において、本発明は、個体の染色体領域6q23.2−6q23.3における欠失を検出することを含む、被験者における癌の進行(すなわち、より悪性な表現型の発生)を検出する方法を提供する。特定の非限定的実施形態において、上記進行は、膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含むリストより選択された癌に起こる。
【0064】
欠失は、制限断片長多型の分析を含むが、それだけに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法によって検出することができる。
【0065】
6.実施例: 進行によって抑制される遺伝子 13 (PSGen 13) は、齧歯動物およびヒトの癌細胞におけるトランスフォームされた状態を抑制する
要約: 全長齧歯動物PSGen 13遺伝子を作製し、発現ベクターに導入し、そして進行した、齧歯動物のトランスフォームされた細胞系であるE11−NMTおよびDU−145ヒト前立腺癌細胞系中に安定にトランスフェクトした。一連のランダムな単一細胞クローンを単離し、そして文献に記述されているトランスフォームされた状態の発現について、足場非依存的に増殖するそれらの能力によって評価した。ラットPSGen 13遺伝子を欠く対照発現ベクターではなく、ラットPSGen 13発現ベクターを用いてトランスフェクトした特定のE11−NMTおよびDU−145クローンは、足場非依存的に増殖するそれらの能力が抑制された。ラットPSGen 13でトランスフェクトされたE11−NMT形質転換体の場合、特定の進行によって促進される遺伝子(PEG−3)および血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子の転写が抑制された。ラットPSGen 13配列を用いて、ラットPSGen 13配列にかなりのDNAおよびタンパク質相同性を有する(それぞれ75および94%)ヒトPSGen 13(HuPSGen 13)遺伝子が同定された。以下に記述する試験は、PSGen 13が癌表現型の抑制物質であること、および抑制は癌進行誘導遺伝子および血管新生刺激遺伝子の発現に変化をもたらすことを示す。
【0066】
6.1 材料および方法
細胞培養および寒天増殖アッセイ: E11は、H5ts125で形質転換されたSprague−Dawley二次RE細胞の単一細胞クローンである(Fisherら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.75: 2311−2314)。E11−NMTは、E11細胞系によって誘導されたヌードマウス腫瘍に由来するE11細胞のサブクローンである(Babissら, 1985, Science 228: 1099−1101)。R12は、Ha−ras癌遺伝子で形質転換されたE11クローンである(Duigouら, 1989, NY Acad Sci. 567 :302−306)。F1およびF2は、E11−NMTとCREF細胞の間に形成された、平坦な形態を有する、抑制された体細胞ハイブリッドである(Duigouら, 1990, Mol. Cell Biol. 10: 2027−2034)。R1およびR2は、E11−NMTとCREF細胞を融合させて作製した、丸い形態を有する、進行した体細胞ハイブリッドである(同文献)。E11−HPV E6/E7は、ヒトパピローマウイルス18型のE6/E7遺伝子領域で形質転換したE11細胞のクローンである(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130)。E11 x E11−NMT A6および3bは、E11細胞とE11−NMT細胞の間に形成された、進行表現型を示さない独立した体細胞ハイブリッドクローンである(Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。進行表現型を示さないE11 x E11−NMT細胞(同文献)。E11 x E11−NMT A6TDは、E11 x E11−NMT A6体細胞ハイブリッドによってヌードマウス中に誘導された腫瘍を単離することによって形成された、進行した体細胞ハイブリッドである(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。E11 x E11−NMT IIaは、E11とE11−NMTの間に形成された、進行表現型を示す体細胞ハイブリッドクローンである(Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。E11−NMT AzaB1およびAza C1は、5−アザシチジンで処理したE11−NMT細胞の独立したクローンであり、進行表現型の抑制を示す(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.94: 9125−9130; Chromosome and Genetic Analysis: Methods in Molecular Genetics, Adolph(編), Academic Press Inc., Orlando, FL, pp. 68−102に掲載のReddyら, 1993)。CREFは、Fischerラット胚繊維芽細胞の特定の不死の非形質転換および非腫瘍形成性クローンである(Fisherら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79: 3527−3531)。DU−145は、ホルモン屈折性(refractive)ヒト前立腺癌細胞系である(Jiangら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 9160−9165)。全ての培養物は、5% FBSを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃にて、湿潤化5% CO2/95%空気インキュベーター中で増殖させた。足場非依存的増殖アッセイは、以前に記述されたように、0.8% noble agar含有培地である基層上の0.4% noble agar含有培地中に異なる数の細胞を播くことによって実施した(Kangら,1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793; Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705; Babissら, 1985, Scinece 228: 1099−1101; Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130; Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120; Fisherら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75: 2311−2314)。
【0067】
PSGen 13 発現 E11−NMT クローンの構築: E11−NMTおよびDU−145細胞を、以前に記述されているように(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130)、完全なrPSGen 13遺伝子を欠く、または有するpcDNA3.1(+)発現ベクター(ネオマイシン耐性遺伝子を含む)を用いてトランスフェクトした。すなわち、1 x 105個の細胞を10 cmの組織培養プレートに播き、6時間後に10 gの精製pcDNA3.1(+)ベクターまたはラットPSGen 13/pcDNA3.1(+)構築物を30 μlのリポフェクタミン(Gibco BRL)と共にインキュベートし、この混合物を8時間細胞に加えた。翌日、培地を500 μg/mlのG418を加えたものと交換し、そして培地は週に2回、3週間にわたって交換した。クローニング・シリンダーを用いてG418耐性コロニーを単離し、NMT−PSG13クローン(cl 3、5、6、7、8、9、10、11および12)およびDU−PSG13クローン(cl 11、12、13、14、15および17)と称する独立した細胞系として、100μg/mlのG418を含有する完全培地で維持した。さらに、NMT−ベクターおよびDU−145−Vecクローンを単離し、独立した細胞系として10μg/mlのG418を含有する完全培地で維持した。
【0068】
ノーザンブロッティングアッセイ: グアニジニウム/フェノール抽出法により全細胞RNAを単離した(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 2195−9130)。15μgのRNAを変性させ、3%ホルムアルデヒドを含む1.2%アガロースゲル中で電気泳動し、ナイロン膜に転写し、そして32P標識化rPSGen 13 cDNAプローブと順次ハイブリダイズさせた。ブロットを剥がし、そして以前に記述されているように(同文献) 32P標識化GAPDH cDNAプローブで再度釣り上げた。ハイブリダイゼーション後、フィルターを洗浄し、オートラジオグラフィーのために感光させた。
【0069】
プロモーター分析: 全長ラットPEG3プロモーター(PEG−Prom)およびVEGF−プロモーター構築物の活性を評価するため、細胞(E11、E11−NMTおよびNMT−PSGen 13)クローンを35 mmの組織培養プレート1枚あたり2 x 105個の割合で播き、約24時間後に、5μgのPEG−Prom−ルシフェラーゼまたはVEGF−Prom−ルシフェラーゼ構築物、および200μlの無血清培地中で10μlのリポフェクタミン試薬(Gibco)と混合した1μgのSV40−β−galベクター(Promega)を用いてトランスフェクトした。20分後、室温で、800μlの無血清培地を添加し、最終容量を1 mlとした。このトランスフェクション混合物を14時間後に除去し、細胞を無血清培地で3回洗浄し、そして完全増殖培地中37℃でさらに48時間インキュベートした。細胞を回収し、溶解して、β−galおよびルシフェラーゼリポーターアッセイに用いる抽出物を調製した(Gopalkrishanら, 1999, Nucl. Acids Res. 27:4775−4782)。ルシフェラーゼおよびβ−gal活性の発光測定は、市販のキット(それぞれPromegaおよびTropix)を用いて実施した。ルシフェラーゼアッセイのためには、10μlの細胞溶解物を40μlのルシフェラーゼアッセイ基質(Promega)と混合した。β−galアッセイのためには、10μlの細胞溶解物を100μlの希釈Galecton−Plusおよび150μlのAccelerator (Tropix)と混合した。プロモーター分析のデータは、各実験ポイントについて3個1組のサンプルを用いて最低3回集めた。そして、データはβ−galデータによって標準化した。
【0070】
全長ラット PSGen 13 および HuPSGen 13 cDNA のクローニング: RSDDおよび逆ノーザンハイブリダイゼーションを用いて、E11−NMT細胞と比較してE11細胞中で発現上昇を示す遺伝子として、もとのラットPSGen 13 ESTが同定された(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793)。ラットPSGen 13の全長オープンリーディングフレーム(ORF)は、上記EST配列に基づく遺伝子特異的プライマーおよび電子データマイニングと共に完全オープンリーディングフレーム(C−ORF)アプローチを用いてクローン化した。C−ORFに用いたプライマーは、PSGen13−R2 (TCG CTT CTC ACT TTG ACG GAG TGT CAA G)(配列番号7)およびPSGen13−R2ネステッド(TGT CAA GTG TGG CAG AGA CTA AGA ATG G)(配列番号8)であった。さらに、ラットPSGen 13 EST配列をGenBankの配列とBLASTによって比較することにより、全長rPSGen 13およびHuPSGen 13 cDNAクローンを同定した。選択したクローン(ラットPSGen 13由来のATCC#2005777およびHuPSGen 13由来のATCC#2525262)を取得し(Research Genetics)、配列を決定した。
【0071】
6.2 実験結果
PSGen 13 の配列インフォーマティクス: クローン化した全長ラットPSGen 13 cDNAは、ポリ(A)テイルを除いて、780 bpからなる。ポリ(A)シグナル(AATAAA)は763位に位置する(図1;配列番号1)。インフレーム終止コドンが86 bpに存在し(HuPSGen 13には存在しない)、そしてORFは170 bpの最初のATGから始まり、415 bpまで延びている。rPSGen 13 cDNAは、計算分子量が9 kDaで、等電点(pI)が5.52である、予想される81個のアミノ酸(図1;配列番号2)を有するタンパク質をコードする。タンパク質配列分析は、膜にかかる領域のための疎水性パッチ、または分泌タンパク質に特徴的なシグナルペプチド配列を示さなかった。モチーフおよびパターン分析もまた、以前に報告された遺伝子との配列相同性(これはラットPSGen 13の生物学的機能および/または作用機序への可能な洞察を提供するのに有用な情報である)を同定できなかった。この考察に基づくならば、rPSGen 13は新規なクラスのタンパク質をコードしているように思われる。
【0072】
rPSGen 13のヒト相同体であるHuPSGen 13を、GenBankデータベースに報告されている配列を分析することにより電子的にクローン化した(図2;配列番号3)。HuPSGen 13はヌクレオチドレベルではrPSGen 13と75%同一であるが、タンパク質レベルではrPSGen 13と94%同一である(79/81残基)(図3および4)。HuPSGen 13において独特な5個の残基のうち、3個(4位のD、38位のKおよび77位のI)はrPSGen 13(4位のE、38位のRおよび77位のV)の保存された置換であり、これは機能性における強い保存を示唆している。さらに、HuPSGen 13とrPSGen 13のタンパク質コード配列の配列同一性は、ヌクレオチドレベルで87%である。5’および3’末端非翻訳領域は、それぞれ68.7%および68.3%の同一性を示す。これらの領域はrPSGen 13とHuPSGen 13の間でORF部分よりも多様であるが、これは種間相同体の間では珍しいことではない。ORFにおける保存の程度およびその結果としてのタンパク質配列を考えるならば、HuPSGen 13はrPSGen 13のオーソログである。クローン化したHuPSGen 13 cDNAは、ポリ(A)テイルを除いて835 bpからなり、そして標準的なポリ(A)シグナルが814 bpに観察される。インフレーム終止コドンは存在しなかったが、HuPSGen 13のORFは最初のATG (197 bp)から始まり、442 bpまで延びている。HuPSGen 13は計算された分子量が9 kDaで、等電点が5.86である、81個のアミノ酸をコードしている。rPSGen 13におけるように、コンピュータによるタンパク質配列分析は公知の機能モチーフを何らもたらさなかった。
【0073】
rPSGen 13 は E11−NMT および DU−145 細胞における足場非依存的増殖を抑制する:
rPSGen 13は、RSDDを用いて、E11−NMT細胞と比較してE11細胞中で発現上昇を示す遺伝子として同定された(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793)。進行した表現型(+)(これは寒天中における増殖の増大および短い腫瘍潜伏時間によって示される)、または進行しない表現型(−)(これは寒天中における増殖の減少および腫瘍潜伏時間の延長によって示される)を示す1群の齧歯動物細胞系を用いて、rPSGen 13発現の減少と進行表現型との間に直接的な相関関係が見出された(図5、Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13788−13793より)。rPSGen 13のレベルは、進行表現型を示さないE11、CREF x E11−NMT F1およびF2、E11 x E11−NMT A6、およびE11−NMT AZA B1細胞において上昇した。対照的に、進行したE11−NMT、CREF x E11−NMT R1およびR2、E11 x E11−NMT A6TD、E11 x E11−NMT IIa、E11−Ras R12およびE11−HPV E6/E7細胞においては、rPSGen 13の発現はより低かった。これらの知見は、進行表現型の発現とラットPSGen 13発現の間に潜在的な逆の関係を実証する。これらの知見はまた、PSGen 13が進行プロセスにおいて機能的な役割をはたすかもしれないという可能性を提起した。
【0074】
rPSGen 13は発現ベクター中にクローン化され、そしてE11−NMTおよびDU−145細胞中に安定にトランスフェクトされた。ランダムクローンを単離し、そして半固体寒天中に播いた時に肉眼で見えるクローンを形成する能力について評価した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。E11細胞は寒天中では低い効率で増殖するが、他方、進行したE11−NMT細胞は寒天中で増大した増殖を示し、E11細胞におけるよりも多数の、より大きいコロニーを形成する(図6)(同文献)。ランダムNMT−PSGen 13クローン(「NMT−PSG13 cl番号」で表わす)の分析は、足場非依存性の顕著な減少を何ら示さない特定のクローン(すなわちNMT−PSG13 cl 3および5)、ならびにE11細胞に類似した寒天クローニング効率の低下を示すクローン(すなわちNMT−PSG13 cl 7および12)を示した。さらに、E11−NMT細胞に較べて足場非依存性の顕著な減少を示すが、NMT−PSG13 cl 7および12よりも少ない増殖抑制を示すいくつかのクローンが同定された。これらは、NMT−PSG13 cl 6、8、9、10および11を含む。
【0075】
足場非依存性の抑制はrPSGen 13の発現増大と関連していることを確認するため、全RNAをE11、E11−NMTならびにNMT−PSG13 cl 3、5、7および12から単離して、ノーザンブロッティングによって評価した(図7)。この実験は、E11ならびにNMT−PSG13 cl 7および12におけるPSGen 13の発現を証明したが、E11−NMTまたはNMT−PSG13 cl 3および5における発現は証明しなかった。これらの結果は、E11−NMT細胞におけるrPSGen 13の強制発現が、このトランスフォーメーションモデル系における進行表現型のマーカーである足場非依存的増殖の抑制をもたらしたことを示している。
【0076】
rPSGen 13遺伝子がヒト癌細胞におけるトランスフォームされた表現型に効果を及ぼしうるかどうかを決定するため、全長rPSGen 13 cDNAをDU−145ヒト前立腺癌細胞中にトランスフェクトし、ランダムクローンを単離した。次に、これらのクローンを足場非依存的増殖について評価した(図8)。DU−145細胞と比較して足場非依存的増殖に顕著な減少を示す数個のクローン(DU−PEG13 cl 11、12および14を含む)が同定された。ベクターでトランスフェクトされたクローンならびにDU−PEG13 cl 13、15および17を含むさらなるクローンは、寒天中でトランスフェクトされていないDU−145細胞と類似のクローニング効率を示した。これらの結果は、ラットPSGen 13がヒト癌細胞におけるトランスフォームされた表現型をも抑制することができることを示し、それによってこの遺伝子産物の腫瘍細胞におけるより一般的な抑制能力を示している。
【0077】
ラット PSGen 13 は E11−NMT 細胞における転写活性を抑制する: 以前の研究は、E11細胞と比較してE11−NMT細胞がPEG−3およびVEGF遺伝子の転写の増大を示すことを明らかにした(Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)。遺伝子発現におけるこれらの変化は、E11細胞と較べてE11−NMT細胞の攻撃的で進行した癌表現型の重要な決定因子であると思われる(同文献)。rPSGen 13発現がこれらの重要な進行関連遺伝子に効果を及ぼすことができるかどうかを決定するため、ルシフェラーゼリポーター遺伝子に連結したPEG3プロモーター(PEG−Prom−ルシフェラーゼ)およびルシフェラーゼリポーター遺伝子に連結したVEGFプロモーター(VEGF−Prom−ルシフェラーゼ)構築物の転写活性を、E11、E11−NMTおよび異なるNMT−PSG13クローンにおいて評価した(図9および10)。以前に報告されているように(同文献)、PEG−PromおよびVEGF−PromはE11細胞におけるよりもE11−NMT細胞においてより活性である。NMT−PSG13 cl 7および12の両者は、E11細胞のそれと類似したPEG−Prom活性の減少を示した(図9)。対照的に、E11−NMT細胞と比較した場合、PEG−Prom−ルシフェラーゼ活性のレベルはNMT−PSG13 cl 3および5において変化しておらず、これらは増大したrPSGen 13 mRNAを発現しない(図7)。NMT−PSG13 cl 7および12において観察されたよりも小規模ではあるが、PEG−Prom活性レベルの低下がNMT−PSG13 cl 6(最小低下)、8、9、10および11においても明らかであった。VEGF−Promの場合、E11−NMT細胞と比較してNMT−PSG13 cl 3および5においてはプロモーター活性の変化は全く見られなかった(図10)。しかし、VEGF−Prom活性における類似の低下(E11細胞に観察されたものに近い)がNMT−PSG13 cl 7、8、9、10、11および12において明らかであった。これらの結果は、PSGen 13の発現がPEG−3およびVEGFの両方の発現を調節できることを示唆している。これら2つの遺伝
子のどちらについても、転写活性のこの調節が直接的または間接的作用機構によって起こるのかどうかは、現在のところ分かっていない。
【0078】
6.3 結論
RSDDアプローチは、齧歯動物およびヒトの両方の腫瘍細胞における癌の進行を機能的に調節することができる新規な遺伝子、すなわちrPSGen 13をうまく同定した。攻撃的な癌表現型を示す齧歯動物腫瘍細胞(E11−NMT)におけるrPSGen 13の強制発現は、足場非依存的増殖の減少によってモニターされる癌表現型の抑制をもたらすという証拠が提示される。同様に、ヒト前立腺癌細胞系(DU−145)中で過剰発現させた場合も、rPSGen 13は足場非依存性の抑制を誘導した。PSGen 13がその癌増殖抑制特性を誘導する作用機構は知られていない。しかし、E11−NMTモデルにおいては、rPSGen 13の強制発現は、2つの重要な癌進行調節遺伝子であるPEG−3およびVEGFの転写活性の抑制と直接相関していた。
【0079】
配列相同性に基づいて、ヒトPSGen 13遺伝子、すなわちHuPSGen 13が単離された。この遺伝子はラットPSGen 13遺伝子に高度に相同である。ヌクレオチドおよびタンパク質レベルでそれぞれ75%および94%同一である。以下の分節に示すように、HuPSGen 13もまたトランスフォームされた表現型を抑制することが示された。
【0080】
7.実施例: ヒト PSGen 13 はトランスフォームされた表現型を抑制する
HuPSGen 13 は形質転換されたラット胚細胞のトランスフォームされた表現型を抑制した: CREF細胞およびHa−rasによって形質転換したCREF細胞(「CREF−ras」細胞)を、空のベクターまたはHuPSGen 13を含むベクターによってトランスフェクトした。このベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子も含んでいた。ハイグロマイシン耐性によってトランスフェクタントを選択し、単層培養におけるコロニー形成を評価した。結果を図11に示す。この図は、3枚反復プレートの結果±S.D.を示している。このデータは、HuPSGen 13がCREF−ras形質転換ラット胚繊維芽細胞におけるコロニー形成に対して選択的抑制効果を発揮することを示している。さらに、トランスフェクトされたHa−ras形質転換細胞におけるコロニー形成効率は、形質転換されていない、トランスフェクトされたCREF細胞に観察されたレベルに戻ることが見いだされた。
【0081】
HuPSGen 13 はヒト乳癌細胞のトランスフォームされた表現型を抑制した; ヒト乳癌細胞系MCF−7の細胞を、ハイグロマイシン耐性遺伝子をも含むベクターに組み込んだHuPSGen 13によってトランスフェクトした。次に、ハイグロマイシンの存在下でトランスフェクタントを選択し、単離したクローンを寒天中における足場非依存的増殖について評価した。図12に示すように、HuPSGen 13でトランスフェクトしたいくつかの細胞系はトランスフェクトされていないMCF−7細胞と類似したクローニング効率を示したが(クローン4および5)、クローニング効率はヒトPSGen 13でトランスフェクトしたMCF−7クローン6、7、12、13および15において実質的に低下した。
【0082】
8.実施例: HuPSGen 13 の染色体上の位置
HuPSGen 13の染色体上の位置は、染色体遺伝子座6q23.2−6q23.3にマップされた。膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含む種々の癌において、この領域における欠失が注目されている。
【0083】
本出願には本文内に種々の刊行物が著者名および日付によって言及されている。米国特許出願第09/648,310号を含む、本明細書に引用したすべての特許、特許出願、GenBank配列および刊行物は、本明細書に記載し、請求している発明のなされた日において当業者に公知の技術水準をより十分に記述するため、参照により本出願に組み入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ラットPSGen 13遺伝子(rPSGen 13と称する)のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列、それぞれ配列番号1および2。オープンリーディングフレームの開始ATGおよび終止コドンを丸で囲み、またポリ(A)シグナルに下線を付している。
【図2】
ヒトPSGen 13遺伝子(HuPSGen 13と称する)のヌクレオチド配列および予想されるアミノ酸配列、それぞれ配列番号3および4。オープンリーディングフレームの開始ATGおよび終止コドンを丸で囲み、またポリ(A)シグナルに下線を付している。
【図3】
ラット(PSGen 13;配列番号1)およびヒト(HuPSGen 13;配列番号3)cDNA間のヌクレオチド配列比較。ラットPSGen 13およびヒトHuPSGen 13遺伝子の開始および終止コドンを太字で示す。
【図4】
ラットPSGen 13およびヒトHuPSGen 13タンパク質(それぞれ配列番号2および4)のアミノ酸配列比較。
【図5】
RSDDおよび逆ノーザンブロッティングによって同定されたrPSGen 13の、トランスフォーメーション進行に差を示す1群の齧歯動物細胞における示差的発現。種々の段階のトランスフォーメーション進行を示す細胞のノーザンブロットを、32Pで放射性標識したrPSGen 13 cDNA(RSDDおよび逆ノーザンブロッティングによって最初に同定された)で釣り上げた(Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793)。ノーザンブロットのレーンに左から右にかけて以下の通り表示する細胞型からRNAを得た:未進行E11細胞(E11 (−));進行したE11−NMT(+)細胞; CREF x E11−NMT F1(−)未進行細胞(ここで「細胞型A x 細胞型B」はA型細胞とB型細胞の間の体細胞ハイブリッドを示す); CREF x E11−NMT F2(−)未進行細胞;CREF x E11−NMT R1(+)進行細胞;CREF x E11−NMT R2(+)進行細胞;CREF x E11−NMT A6(−)未進行細胞;CREF x E11−NMT A6TD(+)ヌードマウス腫瘍由来進行細胞;E11 x E11−NMT 3b(−)未進行細胞;E11 x E11−NMT IIa(+)進行細胞;E11−NMT AZA B1 (−)未進行5−アザシチジン処理E11−NMTクローン;E11−NMT AZA C1(−)未進行5−アザシチジン処理E11−NMTクローン;E11−Ras R12進行細胞;およびE11−HPV E6/E7(HPV−18のE6およびE7領域によって形質転換されたE11クローン)。臭化エチジウム(EtBr)染色によって、RNAの等しいローディングが示されている。このデータは、Kangら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95: 13788−13793からのものである。
【図6】
rPSGen 13は、E11−NMT細胞における足場非依存的増殖を抑制する。図に示す細胞型の寒天クローニング効率を、以前に記述されているように測定した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。細胞型は、E11、E11−NMT、およびPSGen 13でトランスフェクトしたE11−NMTクローン(NMT−PSG13 cl 3、5、6、7、8、9、10、11および12と称する)を含む。3個1組のサンプルは変動が<10%で、レプリケートアッセイは変動が<15%であった。
【図7】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおけるラットPSGen 13およびGAPDH発現のノーザンブロッティング分析。図に示す細胞型から単離された15μgの細胞RNAを電気泳動し、ナイロン膜に転写し、ラットPSGen 13 cDNAとハイブリダイズさせ、次に以前に記述されているようにそれを剥がしてGAPDHで釣り上げた(Suら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 9125−9130; Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)。
【図8】
ラットPSGen 13は、DU−145ヒト前立腺癌細胞における足場非依存的増殖を抑制する。図に示す細胞型の寒天クローニング効率は、以前に記述されているように測定した(Fisherら, 1979, Cancer Res. 39: 3051−3057; Fisherら, 1979, Nature 281: 591−594; Fisherら, 1979, Cell 18: 695−705)。細胞型は、DU−145、DU−145のベクターで形質転換したクローン(DU−145/Vec)、およびラットPSGen 13でトランスフェクトしたDU−145クローン(DU−PSG13 cl 11、12、13、14、15および17と称する)を含む。3個1組のサンプルは変動が<10%で、レプリケートアッセイは変動が<12%であった。
【図9】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおける全長PEG−3プロモーター−ルシフェラーゼ活性。異なる細胞型を、5μgの全長PEG−Promおよび1μgのpSV−β−ガラクトシダーゼプラスミドを用いて共トランスフェクトし、そして48時間後にルシフェラーゼ活性を「材料および方法」に記述したように測定した。結果はβ−ガラクトシダーゼ活性によって標準化されており、そして変動が<15%であった3つの独立した実験の平均を表わす。
【図10】
E11、E11−NMTおよびMNT−PSG13クローンにおけるVEGFプロモーター−ルシフェラーゼ活性。異なる細胞型を、5μgのVEGF−Prom−ルシフェラーゼ(Suら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 15115−15120)および1μgのpSV−β−ガラクトシダーゼプラスミドを用いて共トランスフェクトし、そして48時間後にルシフェラーゼ活性を「材料および方法」に記述したように測定した。結果はβ−ガラクトシダーゼ活性によって標準化されており、そして変動が<15%であった3つの独立した実験の平均を表わす。
【図11】
HuPSGen 13は、Ha−rasにより形質転換されたラット胚繊維芽細胞における単層コロニー形成を選択的に抑制した。
【図12】
HuPSGen 13は、MCF−7ヒト乳癌細胞のトランスフォームされた表現型を、寒天中のクローニング効率の低下によって示されるように、抑制した。
Claims (88)
- 真核細胞中で活性なプロモーター要素に機能しうる形で連結された、進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする単離された核酸。
- 真核細胞中で活性なプロモーター要素に機能しうる形で連結された、ラットPSGen 13タンパク質をコードし、かつ配列番号1に示す核酸配列を有する単離された核酸。
- 真核細胞中で活性なプロモーター要素に機能しうる形で連結された、ストリンジェントな条件下で請求項2に記載の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
- 真核細胞中で活性なプロモーター要素に機能しうる形で連結された、ヒトPSGen 13タンパク質をコードし、かつ配列番号3に示す核酸配列を有する単離された核酸。
- 真核細胞中で活性なプロモーター要素に機能しうる形で連結された、ストリンジェントな条件下で請求項4に記載の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
- 配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする単離された核酸。
- 配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする単離された核酸
- 請求項1に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項2に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項3に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項4に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項5に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項6に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項7に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項9に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項12に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 腫瘍細胞である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の宿主細胞。
- 該腫瘍細胞が鼻咽頭腫瘍細胞、甲状腺腫瘍細胞、中枢神経系腫瘍細胞、神経芽腫細胞、星状細胞腫細胞、多形性神経膠芽腫細胞、黒色腫細胞、上皮腫瘍細胞、非上皮腫瘍細胞、血液腫瘍細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、子宮頸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、泌尿性器癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、骨肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、胃癌細胞または膵臓癌細胞からなる群より選択される、請求項22に記載の宿主細胞。
- 治療上有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸を適切な医薬キャリアー中に含む医薬組成物。
- 治療上有効量の請求項8〜14のいずれか1項に記載のベクターを適切な医薬キャリアー中に含む医薬組成物。
- 単離された進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質。
- 請求項26に記載のPSGen 13タンパク質を医薬キャリアーと共に含む組成物。
- 配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、単離されたPSGen 13タンパク質。
- 請求項28に記載のPSGen 13タンパク質を医薬キャリアーと共に含む組成物。
- 配列番号4に示すアミノ酸配列を有する、単離されたPSGen 13タンパク質。
- 請求項30に記載のPSGen 13タンパク質を医薬キャリアーと共に含む組成物。
- 請求項28に記載のタンパク質と特異的に結合する抗体。
- 請求項30に記載のタンパク質と特異的に結合する抗体。
- 請求項32に記載の抗体と結合する単離されたタンパク質。
- 請求項33に記載の抗体と結合する単離されたタンパク質。
- 細胞のトランスフォームされた表現型を抑制する方法であって、該細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項36に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項36に記載の方法。
- 癌細胞増殖を抑制する方法であって、癌細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項39に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項39に記載の方法。
- 腫瘍中の血管新生を抑制する方法であって、該腫瘍に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項42に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項42に記載の方法。
- 被験者の癌を治療する方法であって、該被験者に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項45に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項45に記載の方法。
- 細胞のトランスフォームされた表現型を抑制する方法であって、該細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質を投与することを含む、該方法。
- 該タンパク質が配列番号2に示す配列を有する、請求項48に記載の方法。
- 該タンパク質が配列番号4に示す配列を有する、請求項48に記載の方法。
- 癌細胞増殖を抑制する方法であって、該癌細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質を投与することを含む、該方法。
- 該タンパク質が配列番号2に示す配列を有する、請求項51に記載の方法。
- 該タンパク質が配列番号4に示す配列を有する、請求項51に記載の方法。
- 腫瘍中の血管新生を抑制する方法であって、該腫瘍に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質を投与することを含む、該方法。
- 該タンパク質が配列番号2に示す配列を有する、請求項54に記載の方法。
- 該タンパク質が配列番号4に示す配列を有する、請求項54に記載の方法。
- 被験者の癌を治療する方法であって、該被験者に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質を投与することを含む、該方法。
- 該タンパク質が配列番号2に示す配列を有する、請求項57に記載の方法。
- 該タンパク質が配列番号4に示す配列を有する、請求項57に記載の方法。
- 乳癌細胞のトランスフォームされた表現型を抑制する方法であって、該細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項60に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項60に記載の方法。
- 乳癌細胞増殖を抑制する方法であって、該癌細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項63に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項63に記載の方法。
- 乳癌中の血管新生を抑制する方法であって、該癌に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項66に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項66に記載の方法。
- 被験者の乳癌を治療する方法であって、該被験者に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項69に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項69に記載の方法。
- 前立腺癌細胞のトランスフォームされた表現型を抑制する方法であって、該細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項72に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項72に記載の方法。
- 前立腺癌細胞増殖を抑制する方法であって、該癌細胞に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項75に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項75に記載の方法。
- 前立腺腫瘍中の血管新生を抑制する方法であって、該腫瘍に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項78に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項78に記載の方法。
- 被験者の前立腺癌を治療する方法であって、該被験者に、有効量の進行によって抑制される遺伝子13(PSGen 13)タンパク質をコードする核酸を発現可能な形で投与することを含む、該方法。
- 該核酸が配列番号1に示す配列を有する、請求項81に記載の方法。
- 該核酸が配列番号3に示す配列を有する、請求項81に記載の方法。
- ヒトPSGen 13による治療のためのヒト癌細胞標的を同定する方法であって、染色体領域6q23.2−6q23.3中の欠失を検出することを含む、該方法。
- 癌発症の危険が増大した個体を同定する方法であって、該個体における染色体領域6q23.2−6q23.3中の欠失を検出することを含む、該方法。
- 該癌が膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項85に記載の方法。
- 被験者における癌の進行を検出する方法であって、該被験者における染色体領域6q23.2−6q23.3中の欠失を検出することを含む、該方法。
- 該癌が膵臓癌、腹膜の乳頭状漿液性癌、肝細胞癌、大B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、胃癌、およびB細胞非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項87に記載の方法。
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