JP2004517602A - 複雑性の減少した核酸標的およびその使用方法 - Google Patents

複雑性の減少した核酸標的およびその使用方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004517602A
JP2004517602A JP2000546056A JP2000546056A JP2004517602A JP 2004517602 A JP2004517602 A JP 2004517602A JP 2000546056 A JP2000546056 A JP 2000546056A JP 2000546056 A JP2000546056 A JP 2000546056A JP 2004517602 A JP2004517602 A JP 2004517602A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nucleic acid
target
acid molecules
pcr
molecules
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000546056A
Other languages
English (en)
Inventor
マイケル マッククレランド,
ジョン ウェルシュ,
トーマス トレンクル
Original Assignee
シドニー キメル キャンサー センター
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by シドニー キメル キャンサー センター filed Critical シドニー キメル キャンサー センター
Publication of JP2004517602A publication Critical patent/JP2004517602A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6811Selection methods for production or design of target specific oligonucleotides or binding molecules
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6809Methods for determination or identification of nucleic acids involving differential detection
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6813Hybridisation assays
    • C12Q1/6834Enzymatic or biochemical coupling of nucleic acids to a solid phase
    • C12Q1/6837Enzymatic or biochemical coupling of nucleic acids to a solid phase using probe arrays or probe chips

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

本発明は、プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させ(ここで、その核酸分子は、恣意的にサンプリングしたものであり、そして恣意的にサンプリングした核酸分子は、核酸分子の集団における核酸分子のサブセットを含む);そしてプローブに対する標的の特異的結合の量を検出することによって、標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法を提供する。本発明はまた、プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させ(ここで、その核酸分子は、統計学的にサンプリングしたものであり、そして統計学的にサンプリングした核酸分子は、核酸分子の集団における核酸分子のサブセットを含む);そしてプローブに対する標的の特異的結合の量を検出することによって、標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法を提供する。

Description

【0001】
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号CA68822、NS33377、AI34829、および国防総省によって授与された助成金番号BC961294の下で、政府の支持を得て行われた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般には、標的における核酸分子を測定する方法に関し、より詳細には、差次的遺伝子発現を検出する方法に関する。
【0003】
全ての生体は、遺伝物質であるデオキシリボ核酸(DNA)を必要とし、これは、生物に対して特徴的な独自の収集物を与える遺伝子を含む。DNAは、ヌクレオチド構築ブロックである2つの相補配列の鎖から構成される。この2つの鎖は、相補配列と結合し、またはそれとハイブリダイズして、二重らせんを形成する。遺伝子は、DNAの分別のある(discreet)セグメントであり、そして新たな生物を生じ、そしてその独自の特徴を生物に与えるために必要な情報を提供する。単純な生物(例えば、細菌)であっても、数千もの遺伝子を含み、そしてその数は、ヒトのような複雑な生物においては、何倍も多い。生体の発生および機能の複雑性の理解は、これらの遺伝子の知識を必要とする。
【0004】
何年もの間、科学者は、生体の発生および機能において重要な多くの遺伝子を探索し、そして同定してきた。新たな遺伝子の探索は、遺伝情報の同定を目標としたプロジェクトに指向されていることに起因して、近年大いに加速されてきている。最終的な目的は、生物の全ゲノムの決定およびそのコードされた遺伝子の決定であり、ゲノム研究といわれている。これらのゲノムプロジェクトの最も大きな野望のうちの1つがヒトゲノムプロジェクトであり、全ヒトゲノムの配列決定が目的である。配列決定技術における最近の進歩は、ゲノム情報の急速な蓄積をもたらし、これは、公のデータベースおよび私有のデータベース両方において利用可能である。これらの新たに発見された遺伝子ならびにまもなく発見される遺伝子は、新たな薬物の開発のための潜在的な標的の豊富な供給源を提供する。
【0005】
遺伝子発見の速度が急速であるにもかかわらず、これらの遺伝子を特徴付けすることおよびこれらの遺伝子の生物学的機能を決定することは、依然として侮りがたい仕事である。新たに発見された遺伝子の特徴付けは、しばしば、時間がかかり、手間のかかることであり、時折、特に複雑な高等生物においては、遺伝子またはその遺伝子産物の機能を決定するために数年を必要とする。
【0006】
遺伝子とその遺伝子産物との間の複雑な相互作用が意図される場合、複雑性の別のレベルが生じる。どのように生物が機能するかを理解するために、どの遺伝子、その転写物およびその遺伝子産物が生物の機能において役割を果たすかを理解することが重要であるだけでなく、遺伝子、その転写物、またはその遺伝子産物と、他の遺伝子およびそれらの遺伝子産物との間の潜在的に複雑な相互作用を理解することもまた重要である。
【0007】
生物の特定の細胞または組織における遺伝子発現を評価するために、多くのアプローチが使用されてきた。これらのアプローチは、種々の条件下で遺伝子発現を特徴づけるために使用されてきており、異なる条件下で発現における差異を調べることが挙げられる。しかし、これらの方法の大部分は、量が豊富な転写物を検出するためには有用であるが、特に、選択されたわずかな遺伝子よりむしろ、多くの遺伝子の発現を観察する場合、量が少ない転写物を検出するためにはあまり有用でないことが証明されている。低レベルで発現される遺伝子は、しばしば、細胞における生理学的経路を調節するので、量が少ない転写物を検出することが望ましい。
【0008】
従って、所定の設定の条件下で遺伝子の発現パターンを特徴付け、そして量が少ない転写物を検出する方法が必要である。本発明は、この必要性を満たし、そして関連した利点もまた提供する。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させ(ここで、この核酸分子は、恣意的にサンプリングされ、そして恣意的にサンプリングされた核酸分子は、核酸分子の集団において核酸分子のサブセットを含む);そしてプローブに対する標的の特異的結合の量を検出することによって標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法を提供する。本発明はまた、プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させ(ここで、核酸分子は、統計学的にサンプリングしたものであり、そして統計学的にサンプリングした核酸分子は、核酸分子の集団において核酸分子のサブセットを含む);そしてプローブに対する標的の特異的結合の量を検出することによって、標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法を提供する。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、標的中の2つ以上の核酸分子のレベルを、プローブを恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的と接触させること、およびプローブに対する特異的結合の量を検出することによって、測定するための方法を提供する。本発明はまた、標的中の2つ以上の核酸分子のレベルを測定し、そして発現レベルを第2の標的中の核酸分子の発現レベルと比較することによって、条件と関連する2つ以上の差次的に発現された核酸分子を同定する方法を提供する。本発明の方法は、所定のセットの条件の下で標的において発現された核酸分子のプロフィールを得るために有用である。本発明の方法は、2つ以上の標的間のあまり豊富ではない核酸分子の相対的な豊富さ(abundance)を比較するために特に有用である。本発明の方法は、核酸分子の豊富さのプロフィールが決定され、そして所定のセットの条件と相関付けされるか、または別の標的と比較されて、元々の標的が特定のセットの条件に曝露されたか否かを決定し、それにより疾患の診断または処置を評価するために有用な情報を提供し得る点で有利である。
【0011】
本発明は、標的中の2つ以上の核酸分子の豊富さを測定する方法を提供する。本発明の方法は、プローブを、2つ以上の核酸分子を含む標的と接触させる工程であって、ここで、この核酸分子は、恣意的にサンプリングされ、そしてここで、この恣意的にサンプリングされた核酸分子は、核酸分子の集団における核酸分子のサブセットを含む、工程;およびその標的がそのプローブに特異的に結合する量を検出する工程を包含する。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」は、2つ以上のヌクレオチドの核酸をいう。核酸分子は、RNAまたはDNAであり得る。例えば、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、またはリボソームRNA(rRNA)を含み得る。核酸分子はまた、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAを含み得る。核酸分子は、インビボまたはインビトロでのいずれかで酵素的に合成され得るか、あるいは、核酸分子は、当該分野で周知の方法によって化学的に合成され得る。核酸分子はまた、改変された塩基、例えば、tRNAに見出される改変された塩基(例えば、イノシン、メチルイノシン、ジヒドロウリジン(dihyrouridine)、リボチミジン、プソイドウリジン、メチルグアノシン、およびジメチルグアノシン)を含み得る。さらに、化学的に合成された核酸分子は、ヌクレオチド塩基の誘導体を取り込み得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子の集団」は、2つ以上の異なる核酸分子の群をいう。核酸分子の集団はまた、3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、50個以上、100個以上、1000個以上、またはさらに10,000個以上の異なる核酸分子であり得る。核酸分子は、例えば、単一ヌクレオチドにより、または単一塩基の改変により、異なり得る。一般に、核酸分子の集団は、標的サンプル(例えば、細胞、組織、または生物)から得られる。このような場合、核酸分子の集団は、標的サンプルの核酸分子を含有する。
【0014】
核酸分子の集団は、核酸分子の1つの集団を別の集団から区別し得る特徴を有する。これらの特徴は、その集団を含む個々の核酸分子の数および性質に基づく。このような特徴には、例えば、その集団中の核酸分子の豊富さが含まれる。個々の核酸分子の豊富さは、所定の標的サンプル中の絶対量であり得るか、または標的サンプル中の他の核酸分子に対する量であり得る。標的から得られる核酸分子の集団において、個々の核酸分子は、そのサンプル標的中の他の核酸分子と比較して、より豊富であるかもしれないし、またはあまり豊富でないかもしれない。あまり豊富でない配列もまた、2つのサンプル間の相対的な豊富さであり得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、あまり豊富ではない核酸分子は、例えば、集団の中の最も豊富な核酸分子の約10%未満の量であり得る。よりあまり豊富ではない核酸分子はまた、集団中の最も豊富な核酸分子の、約1%未満、約0.1%未満、または約0.01%未満の量であり得る。例えば、あまり豊富ではない核酸分子は、1細胞当たり約10コピー未満、または1細胞当たり1コピー程の少なさであり得る。
【0016】
核酸分子の集団の別の特徴は、その集団の複雑性である。本明細書で使用される場合、「複雑性」は、その集団中の異なる配列を有する核酸分子の数をいう。例えば、細菌細胞中のmRNAの代表的な核酸分子の集団は、真核生物の細胞、組織、または生物中のmRNAの代表的な核酸分子の集団よりも低い複雑性を有する。なぜなら、より小さい数の遺伝子が、真核生物の細胞、組織、または生物と比較して、細菌細胞中で発現されるからである。
【0017】
核酸分子の集団はまた、その集団中の個々の核酸分子の特性によって特徴づけられ得る。例えば、個々の核酸分子の長さは、核酸分子の集団の特徴に寄与する。同様に、集団中の個々の核酸分子の配列は、核酸分子の集団の特徴、例えば、核酸配列のG+C含量および鎖内ハイブリダイゼーションを行い得るヌクレオチド配列の相補ストレッチに起因して形成され得る任意の二次構造に寄与する。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「核酸のサブセット」は、核酸分子のセットの全てよりも少ないことを意味する。例えば、標的サンプル集団の核酸分子のサブセットは、標的サンプル集団中の核酸分子の全てよりも少ない。核酸分子のサブセットから特に除外されるのは、サンプル標的中、例えば、総cDNAまたは総mRNAを使用して作製される標的中の全ての核酸分子の代表的な核酸分子の群である。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「標的」は、プローブが結合することが所望される1つ以上の核酸分子をいう。標的は、プローブに結合した場合に検出可能である。本発明の標的は、一般に、2つ以上の異なる核酸分子を含む。標的は、細胞、組織、または生物からの核酸分子の集団に由来し得る。標的はまた、3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、50個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1000個以上、2000個以上、5000個以上、または10,000個以上の異なる核酸分子でさえ含み得る。標的は、それに結合する検出可能な部分、例えば、放射標識、蛍光標識、または検出可能な任意の標識を有し得る。標的が、例えば、放射標識によって標識される場合、その標的は、他の核酸分子を「プローブするため」またはそれとハイブリダイズするために使用され得る。標的を作製する方法は、本明細書に開示される。
【0020】
標的のプローブに対する結合を、その標的に結合した検出可能な部分を必要とせずに直接測定する検出方法がまた、使用され得る。このような場合、核酸分子は、例えば、検出可能な部分を結合することによる標的の核酸分子の改変なしに、直接的に検出可能である。検出可能な部分なしに標的を使用するこのような検出方法の例は、質量分析を使用して標的に結合する検出である。結合された検出可能な部分を含まない核酸分子を含有する標的を使用する方法の別の例は、標的を、検出可能な部分を有する分子を含有するプローブに結合することである。このような場合、標的の、検出可能な部分を有する分子を含有するプローブへの結合は、検出され、そしてそのようにしてその標的は、プローブに結合した場合に検出可能である。1つの例は、プローブの結合が、蛍光消光剤からの蛍光タグの分離を引き起こす「分子ビーコン」である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を有さない類似の構造を有する分子であるコントロール分子の結合と比較した場合の分子の結合を決定することによって、測定され得る。例えば、標的の、プローブへの特異的結合は、その標的の結合を、その標的に含まれない結合コントロール核酸と比較することによって決定され得る。特異的結合はまた、標的(例えば、過剰の非標識標的)と類似するコントロール分子との競合によって決定され得る。この場合、特異的結合は、標識された標的の、プローブへの結合が、過剰の非標識標的によって競合的に阻害される場合、示される。
【0022】
本明細書中で使用される用語「特異的結合」には、低親和性特異的結合および高親和性特異的結合の両方が含まれる。特異的結合は、例えば、少なくとも約10−4MのKを有する低親和性分子によって示され得る。特異的結合はまた、高親和性分子、例えば、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M、少なくとも約10−10MのKを有する分子によって示され得るか、あるいは、少なくとも約10−11Mまたは10−12M以上のKを有し得る。
【0023】
核酸分子のアレイを含むプローブの場合、プローブの特異的核酸分子の別の核酸分子への結合はまた、ハイブリダイズまたはハイブリダイゼーションとして知られている。本明細書中で使用される場合、用語「ハイブリダイズ」または「ハイブリダイゼーション」は、核酸分子の2つの鎖の、配列依存性の様式で水素結合する能力をいう。適切な条件下で、相補的ヌクレオチド配列は、二本鎖のDNAもしくはRNA、またはRNAおよびDNAの二本鎖ハイブリッドを形成するようにハイブリダイズし得る。類似するが、同一ではない配列を有する核酸分子もまた、適切な条件下でハイブリダイズし得る。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「プローブ」は、標的の結合が所望される2つ以上の分子の集団をいう。プローブの分子には、核酸分子、オリゴヌクレオチド、およびポリペプチド核酸分子が含まれる。プローブは、さらに、分子のアレイであり得る。
【0025】
一般に、プローブは、固体支持体上に固定された分子から構成され、そしてその標的は、溶液中にある。しかし、標的は、固体支持体に結合し得、そしてプローブは、溶液中にあり得ることが理解される。さらに、プローブおよび標的の両方が溶液中にあり得る。プローブおよび標的が、互いに結合し得る限り、プローブおよび標的の構成は、溶液中にあり得るか、または固体支持体に結合されることが理解され得る。固体支持体に結合した場合、結合したプローブまたは標的が、固体支持体を溶液中のプローブまたは標的に接触させる工程、および、固体支持体の洗浄の工程の条件下で結合したままである限り、プローブまたは標的の、支持体への結合は、共有結合または非共有結合であり得る。そのプローブおよび標的がハイブリダイズするか、さもなければ特異的に相互作用する場合、固体支持体に結合したそのプローブまたは標的は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の工程の間、結合したままである。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「サンプリングされた」または「サンプリングする」が、核酸分子に関して使用される場合、特異的結合が検出され得る核酸分子をいう。別の分子をサンプリングする核酸分子は、その分子に特異的に結合し得、そして検出され得る。例えば、プローブは、標的における分子に検出可能に結合し得ることによって、標的における分子をサンプリングし得る。それゆえ、プローブにおける核酸分子が特異的に結合する標的における分子は、サンプリングされる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「恣意的にサンプリングされた」または「恣意的にサンプリングされた核酸分子」は、分子が結合する特定の部位に基づいてサンプリングすることなしに、その配列に基づいて結合することによって、核酸分子がサンプリングされることを意味する。核酸分子の集団から恣意的にサンプリングされた核酸分子を含む標的を作製する場合、その標的は、その集団中の核酸分子の配列を予め参照することなしに、作製される。従って、その集団を恣意的にサンプリングするために、その集団中の核酸分子のヌクレオチド配列の予備知識を有する必要がない。集団中の核酸分子のヌクレオチド配列の知識は、そのヌクレオチド配列が、その集団をサンプリングする前に参照されない限り、その集団を恣意的にサンプリングする能力を阻害しないことは理解される。恣意的にサンプリングされた核酸分子を含有するプローブを作製するための方法は、本明細書中に開示される(以下および実施例I〜IIIを参照のこと)。
【0028】
恣意的にサンプリングされた核酸分子を含有する恣意的にサンプリングされたプローブは、1つ以上の恣意的なオリゴヌクレオチドを使用して作製され得る。本明細書で使用される場合、用語「恣意的なオリゴヌクレオチド」は、そのオリゴヌクレオチドが、無作為に選択された配列であり、そして任意の公知の配列に対するその相補性に基づいて選択された配列ではないことを意味する。そのため、恣意的なオリゴヌクレオチドは、核酸分子の集団を恣意的にサンプリングするために使用され得る。
【0029】
恣意的にサンプリングされる核酸分子は、その配列に基づいてサンプリングされ、そして所定の配列への結合に基づいていない。例えば、恣意的なオリゴヌクレオチドは、恣意的な配列を有するオリゴヌクレオチドであり、そしてそのため、所定の核酸分子に結合する。なぜなら、恣意的なオリゴヌクレオチドの相補配列は、核酸分子において偶然に生じるからである。オリゴヌクレオチドは、相補配列の存在に基づいて核酸分子に結合し得るので、核酸分子のサンプリングは、その配列に基づいている。しかし、集団中の任意の特定の核酸分子への恣意的なオリゴヌクレオチドの結合は、例えば、恣意的なオリゴヌクレオチドの配列を公知の核酸配列と比較し、そしてそのオリゴヌクレオチドを以前に公知の核酸配列に基づいて選択することによって、オリゴヌクレオチドの結合の前に決定されない。恣意的なオリゴヌクレオチドの、増幅のためのプライマーとしての使用は、当該分野で周知である(LiangおよびPardee,Science 257:967−971(1992))。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2つ、そして約100ヌクレオチドより少ない核酸分子をいう。オリゴヌクレオチドは、例えば、少なくとも約5ヌクレオチドでありそして約100ヌクレオチド未満、例えば、約50ヌクレオチド未満であり得る。
【0031】
本発明はまた、標的における2つ以上の核酸分子のレベルを、プローブを、2つ以上の核酸分子を包含する標的と接触させることによって測定する方法であって、ここで、核酸分子は、統計学的にサンプリングされ、そしてここで、その統計学的にサンプリングされた核酸分子は、核酸分子の集団における核酸分子のサブセットを含み;そしてその標的がそのプローブに特異的に結合する量を検出する、方法を提供する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「統計学的にサンプリングされた核酸分子」は、核酸配列が、そのヌクレオチド配列を予め参照して、2つ以上の核酸分子においてヌクレオチド配列の統計学的な発生率を予め決定することによって、その配列に基づいてサンプリングされることを意味する。従って、統計学的にサンプリングされた核酸分子を得るために、集団における少なくとも2つの核酸分子のヌクレオチド配列の予備的な知識を有することが必要である。
【0033】
統計学的にサンプリングされた核酸分子は、そのヌクレオチド配列を予め参照して、しかし、そのヌクレオチド配列の所定の部分を予め参照せずに、核酸分子の配列に基づいてサンプリングされる。オリゴヌクレオチドの群は、ヌクレオチド配列の所定の部分を予め参照することなしに、例えば、恣意的なオリゴヌクレオチドの群を決定することによって同定され得る。次いで、恣意的なオリゴヌクレオチドは、どの恣意的プライマーが公知のヌクレオチド配列にマッチするかを決定することによって、公知のヌクレオチド配列に参照され得る。公知のヌクレオチド配列に参照されるこのような恣意的なオリゴヌクレオチドは、公知の配列に基づいて選択され、従って、統計学的なプライマーになる。この方法は、公知のヌクレオチド配列の所定の部位が同定され、そしてオリゴヌクレオチドが、その所定の部位にマッチするように特異的に設計される方法とは対照的である。
【0034】
統計学的サンプリングは、有利である。なぜなら、オリゴヌクレオチドのセットが、そのオリゴヌクレオチドに相補的な配列の公知の配列の群中の存在に基づいて決定され得るからである。そのオリゴヌクレオチドは、さらに、複雑性結合に基づいてランクされ得る。複雑性結合は、所定のオリゴヌクレオチドが、1つより多い核酸分子に結合することを意味する。オリゴヌクレオチドが結合し得る分子の数が多いほど、「複雑性結合」はより高くなる。統計学的選択は、オリゴヌクレオチドが結合する配列の数に基づいて、オリゴヌクレオチドをランク付けし、そして最多数に結合するものを選択することによって、複雑性結合を増強するために使用され得る(例えば、WO99/11823を参照のこと)。統計学的サンプリングは、例えば、オリゴヌクレオチドの5以上の核酸分子への結合に基づき得、そして10以上、50以上、100以上、200以上、500以上、1000以上、またはさらに10,000以上の核酸分子への結合に基づき得る。
【0035】
さらに、統計学的サンプリングは、所定のオリゴヌクレオチドについての最高複雑度の結合について、例えば、平均数を超える核酸分子に相補的な平均を超える順位オリゴヌクレオチドを選択することによって増強し得る。このオリゴヌクレオチドは、任意の範囲の複雑性結合、例えば最高順位の複雑性結合の上から10%、最高順位の複雑性結合の上から20%、または最高順位の複雑性結合の上から50%について選択され得る。
【0036】
さらに、統計学的選択を使用して、所望ではないヌクレオチド配列(関連核酸分子のファミリーの保存配列を含む)を排除し得る(WO99/11823)。統計学的オリゴヌクレオチドは、約5ヌクレオチド長から約1000ヌクレオチド長、例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、25、30または50ヌクレオチド長であり得る。1セットの系統学的プライマーは、縮合塩基(例えば、任意の所定の位置で1つを超えるヌクレオチド)を含み得る。
【0037】
ヌクレオチド配列の予め選択した部分を使用して得られたサンプリングした核酸分子は、用語「統計学的にサンプリングした核酸分子」の意味から、具体的に排除される。例えば、公知のヌクレオチド配列の一部が同定され、同定された部分が一致するオリゴヌクレオチドを生成して核酸分子をサンプリングする場合、このようなサンプリングされた核酸分子は、統計学的にサンプリングされた分子ではない。しかし、オリゴヌクレオチドの群が最初に同定され、次いで核酸分子の集団の2つ以上の公知のヌクレオチド配列と比較されて、公知のヌクレオチド配列中に統計学的に存在するオリゴヌクレオチドまたは公知のヌクレオチド配列に類似のオリゴヌクレオチドを決定する場合、このような統計学的に同定したオリゴヌクレオチドを使用して、統計学的にサンプリングした核酸分子を入手し得る。統計学的にサンプリングした核酸分子を含む標的を生成するための方法が本明細書中に開示される。
【0038】
統計学的にサンプリングされた核酸分子を含む統計学的にサンプリングされた標的は、1つ以上の統計学的オリゴヌクレオチドを使用して生成され得る。本明細書中で使用されるように、用語「統計学的オリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドが、1つを超える公知の核酸分子における相補性のその統計学的出現に基づいて選択される配列であることを意味する。このように、統計学的オリゴヌクレオチドを使用して、核酸分子の集団を統計学的にサンプリングし得る。
【0039】
本発明の方法は、標的のプローブに対する特異的結合を検出する。標的は、例えば、核酸分子を増幅することによって生成され得る。本明細書中で使用される場合、用語「増幅した標的」は、核酸分子を酵素的にコピーして核酸分子の集団中の核酸分子の1つを超えるコピーを生成することによって生成された標的をいう。増幅した核酸標的は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅方法を用いて生成され得る。標的サンプルが由来する標的サンプル中の各核酸分子の単一コピーを有する標的(これは、もともとの集団と同一の豊富さおよび複雑性を有する)は、増幅した標的とはみなさない。増幅した標的は、例えば、プローブによってサンプリングされた核酸分子が標的中で限定量である場合に有用であり得る。サンプリングされそして非常に低量で存在する核酸分子は、プローブ中の核酸分子を増幅せずかつその質量を増加させずには検出が困難である。しかし、限定された複雑性の標的(ここでは、異なる分子の複雑性または数が限定される)は増幅する必要はない。
【0040】
増幅した標的を生成するための他の方法としては、例えば、以下が挙げられる:リガーゼ連鎖反応(LCR);自立配列複製(3SR);βレプリカーゼ反応(例えば、Q−βレプリカーゼを使用する);ファージ末端結合タンパク質反応;鎖置換増幅(SDA);核酸配列に基づく増幅(NASBA);交叉ハイブリダイゼーションによる協同性増幅(CATCH);ローリングサークル増幅(RCA)およgびAFLP(Tripplerら、J.Viral.Hepat.3:267(1996);Hoflerら、Lab.Invest.73:577(1995);Tyagiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5395(1996);Blancoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:12198(1994);Spearsら、Anal.Biochem.247:130(1997);Spargoら、Mol.Cell.Probes 10:247(1996);Gobbersら、J.Virol.Methods 66:293(1997);Uyttendaeleら、Int.J.Food Microbiol.37:13(1997;およびLeoneら、J.Virol.Methods 66:19(1997);Ellingerら、Chem.Biol.5:729−741(1998);Ehrichtら、Nucleic Asids Res.25:4697−4699(1997);Ehrichtら、Eur.J.Biochem.243:358−364(1997);Lizardiら、Nat.Genet.19:225−232(1998))。
【0041】
本発明の方法は、標的中の2つ以上の核酸分子のレベルを測定するのに有用である。本発明の方法はまた、2つの標的間の発現レベルを比較するために使用され得る。詳細には、本発明の方法は、核酸分子の差次的発現を測定するのに有用である(以下を参照のこと)。
【0042】
全標的(標的調製のためにmRNA集団の完全複雑性を使用する)は、細胞中の上位の数百または数千のmRNAを容易に試験し得る(Pietuら、Geneome Res.6:492−503(1996))。しかし、哺乳動物細胞由来の全標識化cDNA標的は、代表的には、1億を超える塩基の複雑性を有し、この塩基は、差次的ハイブリダイゼーションを使用して稀なmRNA間の差次的発現を検出する試みを複雑にする。蛍光および共焦点顕微鏡の使用における近年の利点は、差次的ハイブリダイゼーション法の感度およびダイナミックレンジにおいて改良を導く(10,000倍の検出のダイナミックレンジおよび1/500,000をアプローチする感度での転写物の検出)(MarshallおよびHodgson,Nat.Biotechnol.16:27−31(1998);Ramsay,Nat.Biotechnol.16:40−44(1998)。感度の改良にもかかわらず、全標的を使用する方法は、サンプル中のより豊富なmRNAにむけて偏向したままである。
【0043】
差次的スクリーニングのための標準的な方法(これは、代表的には、全メッセージの逆転写物由来の標的およびオートラジオグラフィーまたはホスホルイメージングを使用する)を使用して、差次的発現を検出し得る(Pietu、前出、1996)。しかし、この方法は、最も豊富なメッセージに限定される。豊富な転写物のみが、おそらく1/15,000の感度を有する有効標的を生じるに十分に高度に提示される(Boll,Gene 50:41−53(1986))。本明細書中で議論されるように、差次的スクリーニングは、標的の複雑性を減少しそして標的中の稀な核酸分子の量を統計学的に増加することによって、非常に改良され得る。標的中のあまり豊富でない核酸の量を増大させることによって、差次的スクリーニングは、全標的を使用して観察されるように、最も豊富な核酸分子のみに限定される。
【0044】
標的の複雑性を減少することによって、供給源中の全てのmRNA種を同定する能力は、同時に、改良された動力学および改良されたシグナル対ノイズ比が犠牲にされる。複雑性減少方法は、集団において核酸分子のサブセットを有する標的を生成する。この集団は、いくつかの稀なmRNAを標的の最終質量に有意に寄与させることが可能であり、それにより供給源中の稀なmRNA間の差次的遺伝子発現を観察する能力を増強する。各mRNAの部分のみまたはmRNA集団のサブセットのみについて確実に濃縮する産物の混合物を生成する任意の方法は、減少した複雑性の標的を生成するのに有用である。
【0045】
2つの基本的に異なる型の複雑性減少方法が存在し、これらの方法は、サンプリングするmRNA間の相対的化学量論を維持する方法および化学量論を維持しない方法である。あるクラスの方法は、mRNA集団のサブセットを提示する核酸を生じ、そして入力RNAのおおよその化学量論を維持する。このような方法は、最も増幅した制限フラグメント長多型性(AFLP)、およびmRNAの3’末端または内部フラグメントをサンプリングする制限ストラテジーによって例示される(Habuら、Biochem.Biophys.Res.Commun.234:516−521(1997);Moneyら、Nucleic Acids Res.24:2616−2617(1996);Bachemら、Plant J.9:745−753(1996))。別の例は、cDNA標的を生成するためのサイズ分画したmRNAの使用である。mRNAの全て(例えば、2.0〜2.1kbの範囲)は、減少した複雑性の標的として使用され得る。これらのmRNA間の化学量論が、標的において大部分は保存される(Dittmerら、Cell Biol.Int.21:383−391(1997))。
【0046】
減少した複雑性の標的を生成するための方法の第2のクラスは、開始mRNAの化学量論を保存しないが、標的が作製される標的サンプルの間の個々のRNA間の差異は保存する。化学量論を維持しない減少した複雑性の標的を生成する1つの方法は、再提示差異分析または抑制減算ハイブリダイゼーションに基づく特定の方法において減算された標的を使用することである。(これは、チップと比較可能な稀なメッセージについての感度を示した(Rhynerら、J.Neurosci.Res.16:167−181(1986);Lisitsynら、Science 259:946−951(1993);LisitsynおよびWigler,Methods Enzymol.254:291−304(1995);Jinら、Biotechniques 23:1084−1086(1997))。
【0047】
化学量論を維持しない減少した複雑性の標的を生成するための特に有用な方法は、恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的を使用することによって例示される。恣意的にサンプリングされた標的および統計学的にサンプリングされた方法を使用する方法は、本明細書中に開示される。恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的を使用する方法は、標的中のあまり豊富ではない核酸分子の検出を可能にする。本発明の方法は、有利である。なぜなら、その方法は、標的中のあまり豊富でない核酸分子を検出する能力を増強し、そしてまた限定された量の核酸分子に由来する標的(例えば、いくつかの細胞または単一の細胞さえ)中の核酸分子の検出を可能にする。
【0048】
恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的は、例えば、増幅によって生成され得る。増幅された標的が、恣意的オリゴヌクレオチドまたは統計学的オリゴヌクレオチドを使用して生成される場合、増幅された産物は、各標的核酸分子の開始時の豊富さおよびサンプリングされる標的核酸分子に対するオリゴヌクレオチドのマッチの質の両方の機能を反映する。従って、増幅した産物の最終混合物は、使用されるオリゴヌクレオチドとの良好なマッチを有しそして最初のプライミング事象後の優先的な「増幅能力(amplifiability)」を有するあまり豊富ではない核酸分子に由来する、非常に豊富な増幅した産物を含み得る。増幅能力は、二次構造および産物サイズのような効果を含む。
【0049】
恣意的オリゴヌクレオチドまたは統計学的オリゴヌクレオチドを使用する増幅した標的を生成する結果は、2つの異なる標的中の同じ核酸分子が、プライム能力(primability)および増幅能力の同一の組み合わせを経験し、その結果、特定のmRNAの豊富さにおける変化は、たとえ1つの標的内の異なる核酸分子の間の相対的な豊富さが顕著に変化しても、維持される。このことは、あまり豊富でない核酸分子は、標的中のあまり豊富でない核酸分子として存在する化学量論を維持する方法とは対照的である。
【0050】
増幅された標的を生成する場合、一般的に、オリゴヌクレオチドプライマーにおける特定の制約は存在しない。オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、少なくともいくつかのCまたはG塩基を含む。オリゴヌクレオチドプライマーはまた、好ましくは、プライマー二量体を回避するために、この反応においてそれ自身と相補的な3’末端または他のプライマーを含まない。オリゴヌクレオチドプライマーはまた、好ましくは、異なる配列を有するように選択され、その結果、mRNAの同じ部分は異なるフィンガープリントにおいては増幅されない。
【0051】
本明細書中に開示されるように、恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的を生成する方法は、核酸分子を含む標的サンプルを「フィンガープリント」するために伝統的に使用されている方法に基づき得る。フィンガープリントは、標的サンプル中の核酸分子の発現に特徴的である。恣意的にサンプリングされた標的を生成するために、使用され得る1つの方法は、RNA恣意的プライムPCR(RAP−PCR)に基づく(実施例IおよびIIを参照のこと;Welshら、Nucleic Acids Res.18:7213−7218(1990);Welshら、Nucleic Acids Res.20:4965−4970(1992);LiangおよびPardee,Science 257:967−971(1992))。
【0052】
RAP−PCRにおいて、プライマーとのマッチの豊富さおよび程度の両方は、任意の特定の産物の蔓延に寄与する。従って、図らずもプライマーとの優れたマッチを有しかつ効率的に増幅される稀なmRNAは、より豊富なRAP−PCR産物で見出され、これは、非化学量論的なRAP−PCRによって生成される標的を作製する。このことは、RAP−PCRの非常に有用な特性である。なぜなら、他の方法を使用してはサンプリングするのが困難であるmRNAのサンプリングを可能にするからである。
【0053】
代表的なRAP−PCRフィンガープリントにおいて、1レーンあたり約50〜100のcDNAフラグメントは、ポリアクリルアミドゲル上で可視であり、これは図らずも恣意プライマーとの最良のマッチの1つを有する比較的稀なmRNAからの産物を含む。100のcDNAクローンのみが各標的によってアレイ中で検出され得る場合、次いで、アレイへのハイブリダイゼーションは非能率的である。しかし、RAP−PCRフィンガープリントは、稀すぎてポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーによって視覚化できない多くの産物を含む。にもかかわらず、これらの稀な産物は再生性であり、そして高特異活性で標識される場合のアレイについての標的として作用するに十分豊富である。
【0054】
本明細書中で開示されるように、RAP−PCRに由来する単一の標的は、約18,000ESTクローンを含むアレイにおいて約1000のcDNAを検出し得、これは、変性ポリアクリルアミドゲルにおいて提示されるフィンガープリントの性能を10〜20倍超える改良である。さらに、差次的に調節された遺伝子はcDNAアレイ上で検出され、転写物を提示するクローンはすぐに利用可能であり、そしてしばしば、このクローンについて配列情報もまた利用可能である。さらに、このクローンは、通常、通常のRAP−PCR産物より非常に長い。対照的に、RNAフィンガープリンティングに対する標準的なアプローチは、差次的発現が行われる検証の前に、産物のゲル精製および配列決定が実行され得ることが必要である。本明細書中に開示されるように、標準的な変性ポリアクリルアミドゲルおよびオートラジオグラフィー法の検出能力未満である差次的に増幅されたRAP−PCR産物は、cDNAアレイへのハイブリダイゼーションを使用して検出され得る。
【0055】
RAP−PCRによって生成される恣意的にサンプリングされた標的は、標的サンプル中で上位の数千の最高に発現された核酸分子をサンプリングし得、そして集団中の核酸分子の異なるサブセットをサンプリングし得、これは、増幅に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーに依存する。標的中の稀な核酸分子のいくつかは、コロニーのアレイ上で容易に検出されるように十分提示される(実施例IおよびIIを参照のこと)。
【0056】
恣意的にサンプリングされた標的をRAP−PCRを用いて生成するために、RAP−PCRフィンガープリントは、標的サンプル中の核酸分子(例えば、メッセンジャーRNA)の恣意プライム逆転写およびPCRによって作製される(McClellandら、Differential Display Methods and Protocols,LiangおよびPardee編、Humana Press(1997))。あるいは、第1鎖cDNAは、オリゴdTまたはランダムの短いオリゴマーでプライムされ得、続いて恣意的にプライムされ得る。このようなRAP−PCR「フィンガープリント」のゲル電気泳動による分析は、約100の転写物の恣意的サンプルの相対的な豊富さを示す複合体フィンガープリントを明らかにする(実施例IIを参照のこと)
本明細書中に開示されるように、RAP−PCRフィンガープリントは、ナイロンメンブレン上にE.coliコロニーとして配列されたヒトcDNAをプローブするかまたはハイブリダイズするように標的に変換された(実施例II)。各アレイは、ゲノムおよびそれらの発現の組み込まれた分子の分析(Integrated Molecular Analysis of Genomes and their Expression:I.M.A.G.E.)協会からの18,432のcDNAクローンを含んでいた。約1000のcDNAクローンへのハイブリダイゼーションは、RAP−PCRによって生成された恣意的にサンプリングされた標的の各々を用いて検出された。異なるRAP−PCRフィンガープリントは、互いにまたは全cDNA標的からのハイブリダイゼーションパターンとの非常にわずか重複(<3%)を有するハイブリダイゼーションパターンを生じた。結果として、RAP−PCR標的の反復増幅は、メッセージ集団のより大きな機能が、放射性標識した全cDNA標的を用いて達成され得るよりもこの型のアレイ上でスクリーニングされるのを可能にする。
【0057】
恣意的にサンプリングされた標的は、EGFで処理されたHaCaTケラチノサイトから生成された。2つのRAP−PCR標的は、2000のクローンにハイブリダイズし、ここから、差次的に発現された22の候補体遺伝子が観察された(実施例II)。差次的発現は、これらのクローンのうちの15個についてRT−PCRを用いて試験され、そのうち13個が確認された。RAP−PCRフィンガープリントを分析するためのこのcDNAアレイの使用は、RAP−PCRまたはディファレンシャルディスプレイに対する従来の変性ポリアクリルアミドゲルアプローチの検出において10〜20倍超えて増加した。スループットは、アレイの使用によって提供されるクローニングおよび配列決定における減少により大いに改良される。また、同じ遺伝子、または目的の系において調節されることがすでに公知の遺伝子のクローニングおよび配列決定の反復は、最小化される。
【0058】
恣意的にサンプリングされた標的を生成するためのRAP−PCRの使用は、特に有用である。なぜなら、差次的に調節される遺伝子の非常に高スループットの発見を可能にするからである(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。この方法を用いるスループットは、約20倍早い。本質的には、一旦RAP−PCRフィンガープリントが生成されていると、ゲル電気泳動による産物の分析に関わらず、RAP−PCRフィンガープリントは、核酸分子にプローブするかまたはハイブリダイズする標的として使用される。RAP−PCRによって生成される、このような恣意的にサンプリングされた標的は、アレイのための標的として特に有用である。
【0059】
RAP−PCR反応のパラメーターは、例えば、標的の複雑性を至適化し、そして複雑性結合を増強するために変動され得る。例えば、この複雑性を増大させるために、TaqポリメラーゼStoffelフラグメント(これは、AMPLITAQよりも、無差別的である)が、増幅のために使用され得る。本明細書中で使用されるオリゴヌクレオチドプライマー(実施例II)は、10塩基または11塩基の長さであり、そして縮重されておらず、各位置に単一の塩基を有した。同じ温度で使用される、より長いオリゴヌクレオチドプライマーは、いくつかの縮重を有するプライマーで提供されるような、より複雑性の産物を提供し得る。しかし、標的の複雑性が高くなるにつれて、全体のmRNA標的をより密接に類似させ、これは、非化学量論的サンプリングの利点を喪失させる。RAP−PCRパラメーターをさらに変動させるために、オリゴヌクレオチドプライマー長、縮重、および3’付着が、逆転写反応およびPCR反応において変動され得る。種々の異なるポリメラーゼもまた、使用され得る。
【0060】
RAP−PCRフィンガープリントは、以下に記載されるように、放射性同位元素標識され得るか、または蛍光色素を用いて標識され得、そして高密度アレイ(例えば、cDNAクローンのアレイ)に対して探索するための標的として使用され得る。2つの標的間の核酸分子レベルにおける差異は、例えば、mRNA転写レベルにおける差異(これは、通常、遺伝子発現レベルにおける差異を反映する)を示し得る。発現における差異はまた、分解または翻訳後プロセシングを反映し得る。恣意的にサンプリングされた標的を使用することによって、各標的は、メッセージ集団の全体の複雑性のおよそ10%の検出を可能にすると見積もられる。そして最も重要なことに、この10%は、稀なメッセージクラスを非常に効率的に含む。この稀なメッセージクラスは、標的中に含められる。なぜなら、RAP−PCRは、標的サンプル間のメッセージの豊富さを反映する一方で、任意の個々のRAP−PCR反応における増幅に対して選択されるcDNAは、豊富さよりもむしろ配列によって決定されるからである。オリゴヌクレオチドプライマーと核酸分子との間の配列整合性が非常に良好である場合、たとえ核酸分子があまり豊富ではないとしても、あまり豊富ではない核酸分子は、最終標的において、より豊富な核酸分子に対して相対的により豊富でない、より多量の核酸分子を有する見込みが十分にある。
【0061】
ゲルに基づく分析またはアレイに基づく分析のいずれかのために適切であるように、RAP−PCRフィンガープリントは、投入RNAの8倍希釈にわたって、ほぼ同一であるように維持されるべきである。低質のRAP−PCRフィンガープリントは、通常、RNAの質および濃度に関しての制御が乏しい結果である。アレイハイブリダイゼーション工程を進行する前に、RAP−PCR産物の質は変動され得る。アレイ方法はそのような高生産性を有するので、この追加工程は、高価でないばかりでなく、時間浪費的でもなく、そして貧弱なフィンガープリント再現性に起因する偽陽性の数を低減させることによって、効率を非常に改善し得る。標的としてのRAP−PCRフィンガープリントの再現性は、本明細書中で例示される(実施例IIを参照のこと)。
【0062】
標的サンプル中のあまり豊富ではない核酸分子を検出するための、本発明の方法の能力の増大は、稀なメッセージを検出するのに制限された能力を有する以前に使用された方法に対して、主な改善を提供する。細胞のメッセージ集団の全体の複雑性は、短い期間(例えば、数週間)で試験され得るようである。
【0063】
例えば、実施例IIに開示されるように、RAP−PCRサンプルによって生成される標的であるmRNAの集団は、メッセージの豊富さとは、ほとんど独立している。これは、メッセージのあまり豊富ではないクラスは、豊富なクラスよりもより高い複雑性を有し、恣意プライマーが良好な整合をより見出すようにさせるからである。ディファレンシャルディスプレイとは異なり、RAP−PCRは、2つの恣意的プライミング(priming)現象を要求し、おそらくRAP−PCRを複雑なクラスへと偏向させる。細胞におけるmRNA集団の大部分(20,000mRNA未満)は、わずか10個のRAP−PCRフィンガープリントで見出され得る。
【0064】
RAP−PCRを使用することに加えて、ディファレンシャルディスプレイはまた、恣意的にサンプリングされた標的を生成するために使用され得る(実施例IIIを参照のこと)。ディファレンシャルディスプレイのために、最初に、逆転写は、3’アンカープライマー(例えば、オリゴ(dT)プライマー)を使用する、次に、第2鎖のcDNAが、恣意プライマーとプライムされる。次いで、恣意プライマーと3’アンカーとの間でRCPが行われる。
【0065】
実施例IIIに開示されるように、1つの恣意プライマーと1つのオリゴ(dT)アンカープライマーの組合わせが使用されて、cDNAアレイに対する恣意的にサンプリングされた標的が生成される。調製物を標的化するためのRAP−PCRアプローチおよびディファレンシャルディスプレイアプローチの両方は、いくつかの他のアレイハイブリダイゼーション方法において使用されるRNA量の1/200未満を使用し得る。各フィンガープリントは、転写mRNAの約5〜10%を検出し、ESTクローンの安価なE.coliコロニーアレイを使用して、ほぼ独立した豊富さをサンプリングした。ディファレンシャルディスプレイプロトコールを改変して、核酸分子を探索するための標的としての使用のために十分な量のPCR産物を生成した。同じ恣意プライマーとの異なるオリゴ(dT)アンカープライマーの使用は、各標的によってサンプリングされた遺伝子の中でかなりの重複を生じた。サンプリングされた遺伝子の重複は、各オリゴ(dT)アンカープライマーと共に異なる恣意プライマーを使用することによって、回避され得る。EGFによって制御されることが以前に未知であった4つの遺伝子、および他の細胞型においてEGFによって制御されることが公知であった3つの遺伝子を、ディファレンシャルディスプレイによって生成された、恣意的にサンプリングされた標的を使用して特徴付けた。ディファレンシャルディスプレイによって生成された恣意的にサンプリングされた標的の使用は、差次的に制御される遺伝子の同定のために、特に有用である。
【0066】
以前に生成された非常に多くのフィンガープリントは、十分なdNTP(100μM)およびプライマー(約1μM)の存在下で、各フィンガープリントの1アリコートに対してPCRを実施することによって、その量が増大される場合に、核酸分子アレイによって探索されるための有効な標的へと変換され得る。フィンガープリントは、以前に示されているように(Ralphら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10710−10714(1993))、再増幅され得る。従って、以前に決定されたディファレンシャルディスプレイのサンプルを使用して、アレイを探索するための標的を生成し得、さらなる情報を得ることを可能にし得る。
【0067】
本明細書中に開示されるように、ディファレンシャルディスプレイを使用して、LiangおよびPardee(前出、1992)の方法に基づいて、標的を生成する。オリゴ(dT)アンカリングに由来する標的を使用することは、特定の型のアレイについて、いくつかの潜在的利点を有する。例えば、いくつかのアレイは、オリゴ(dT)にプライムされた逆転写によって生成され、そしてこれらのクローンは、3’偏向される。オリゴ(dT)アンカープライマーおよび恣意プライマーによって生成される標的はまた、各PCR産物が、対応する3’偏向クローンにハイブリダイズし得るように、3’偏向であるべきである。対照的に、恣意的プライミングを使用して生成された標的は、mRNAに対して内部の領域をサンプリングし得る。恣意的産物が3’短縮化クローンよりも、mRNAのさらに5’に局在化している場合、この標的は、対応するmRNAに結合し得ない。
【0068】
3’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを用いるディファレンシャルディスプレイを使用して生成される、恣意的にサンプリングされた標的は、3’偏向ライブラリー、そして特に3’偏向ESTを探索するために、特に有用である。3’アンカーリングは、ほとんどの細菌性RNAのような、ポリ(A)テイルを有さないRNAをサンプリングするためには有用ではない。3’アンカープライマーを使用して生成される標的はまた、内部産物に基づくPCRアレイについては適切ではない。3’偏向標的はまた、ランダムにプライムされたライブラリーについては、あまり有用ではない。
【0069】
恣意的にサンプリングされた標的を生成するための他の方法もまた使用され得る。1つのそのような方法は、RAP−PCRの改変であり、複雑度制限恣意的サンプル配列決定(complexity limited arbitrary sample sequencing)(CLASS)と呼ばれる。CLASSは、遺伝子発現の連続分析(SAGE)の、周知でありかつフラストレーションを引き起こす制限に対する解決策として着想された(Velculescuら、Science 270:484−487(1995))。SAGEは、2つの供給源由来のcDNAの小切片を生成し、それらを互いに連鎖させ、そしてそれらを大量に配列決定する方法である。平均的な細胞は、200,000のmRNA転写物を含み、約20,000の異なる配列を表し、そしてSAGEは、一度に約40の配列決定を可能にする。従って、標準的な配列決定装置を使用して、2つの標的を比較するために、非常に多くの配列決定ゲル(約100)が、400,000のmRNA(これは、比較される2つの集団由来の200,000のmRNAを表す)に対する情報を得るために必要とされる。この方法は、核酸分子の発現に関する情報を得るために有用であるが、各々のさらなるRNAサンプルは、50個単位で、必要とされるゲルの数を増大させる。これは、非常に高価であり、そして時間浪費的である。この主な問題点は、1細胞あたり1〜10コピーへと発現が変化した、稀なメッセージに対して統計的信頼度を有するように、100枚のすべてのゲルが泳動されなければならないということである。
【0070】
この問題点を解決するために、CLASSが発明された。CLASSは、使用されるオリゴヌクレオチドプライマーが、縮重3’末端を有することを除いて、RAP−PCRと類似する。この縮重性は、プライマーの頻繁なプライムを引き起こし、これは短い配列タグを生成する。短いPCR伸長時間を選択することによって、優先的な産物は、mRNAの総複雑度の画分からのみ生じ、そしてこの画分の大きさは、3+縮重塩基の数を変動させることによって、随意に調整され得る。次いで、これらの短いタグは、連結および配列決定され得て、メッセージの複雑度の副標本に対して迅速に信頼度のある統計をもたらす。これは、SAGEにおいて使用される連結および配列決定ストラテジー(Valculescuら、前出、1995)と類似である。CLASS産物はまた、例えば、アレイに対して探索するための標的として使用され得る。
【0071】
CLASS方法は、縮重3’末端を有するさらなるプライマーのセットが生成および使用されて、異なる核酸分子のサンプリングを獲得し得るので、有益である。核酸分子の発現を決定するためのこの反復性のアプローチは、SAGEの全体的アプローチ(Velculescuら、前出、1995)よりも、核酸分子の供給源における発現パターンについて、より情報を提供する。
【0072】
任意の稀なメッセージを確実にするために、100枚のゲルのほぼ完全な配列決定が必要とされるSAGEとは対照的に、CLASSは、核酸分子の集団が、小集団へと分配されるのを可能にし、その結果、10%の仕事で、この細胞のすべての遺伝子の10%の結果について信頼度が生み出される。1回のCLASSで、第1の通過(10枚のゲル)において、稀なメッセージの90%については全く情報が得られないが、標的サンプル中の核酸分子の10%についての結果の信頼度は高い。遺伝子の10%におけるこの高い信頼度は好ましい。なぜなら、差次的に調節される遺伝子について探求する場合に、パターンまたは「挙動の型」は、差次的な遺伝子調節の間に起こることが予期されるからである。同じ経路によって制御される他の協調的な制御なしに、単一の遺伝子が活性化されることは、あるとしても、まずない。従って、例えば、トポイソメラーゼインヒビターによって調節される10のあまり豊富ではない転写物のうちの任意の1つを探索する場合に、SAGEは、10個すべてのあまり豊富ではない遺伝子を産生する100枚の配列決定ゲルを泳動することを必要とする。対照的に、CLASSは、少なくとも1つの遺伝子を同定するために、10枚のゲルを1/10の時間で泳動することを可能にする。これは、遺伝子発現のパターンを同定するのに十分であり得る。さらに、CLASSを、異なるプライマーを用いて反復的に使用して、さらなるゲル(例えば、50枚のゲル)を泳動して、同数の遺伝子の5倍の情報を獲得し得る。一方で、SAGEでの50枚のゲルの泳動は、統計的に関連のある情報を全く明らかにしない。従って、CLASSは、遺伝子発現パターンを同定するための、さらにより経済的なアプローチである。
【0073】
CLASSは、任意の種(たとえそのアレイが入手不可能である種であっても)に対して、およびアレイに対して未だ沈積されていないmRNAに対して適用され得る。従って、既知のアレイに対してRAP−PCRすることによって生成される標的を使用することが、既知の遺伝子に関する発現情報を提供する一方で、CLASSは、たとえ、アレイされたライブラリーにおいて以前に遭遇されていないとしても、任意の遺伝子に関する発現情報を提供する。従って、CLASSは、遺伝子発現に関する情報を得るために、低コストで比較的高生産性の方法を提供する。
【0074】
本発明はまた、統計的にサンプリングされた標的を使用して、標的における核酸分子のレベルを測定する方法を提供する。統計的にサンプリングされた標的を生成するために有用な方法は、以前に記載されている(WO 99/11823;McClellandら、前出、1997;Pesoleら、Biotechniques 25:112−123(1998);Lopez−NietoおよびNigam、Nature Biotechnology 14:857−861(1996))。統計的にサンプリングされた標的を生成するための典型的な方法は、統計的にプライムされたPCR(SP−PCR)である。統計的プライム法とRAP−PCRとの間の主な差異は、恣意的にプライマーを選択するというよりも、核酸分子の群におけるヌクレオチド配列の統計的出現性を決定するように、プライマーがコンピュータープログラムによって選択されるという点である。
【0075】
統計的にサンプリングされた標的を生成するための方法は、定方向性の統計的選択であり得る。例えば、GeneUPと呼ばれるプログラムが考案されており、これは、目的のリスト(例えば、アポトーシスと関連するヒトmRNAのリスト)における配列をサンプリングするが、一方で別のリスト(例えば、ヒト細胞において豊富に発現されるmRNAおよび構造的RNA(例えば、rRNA)、Alu反復、およびmtDNAのリスト)における配列を排除するためのプライマー対を選択するためのアルゴリズムを使用する(Pesoleら、前出1998)。定方向性の統計的方法は、任意の所定のオリゴヌクレオチドが、任意の所定のヌクレオチド配列および所定のオリゴヌクレオチドが結合し得る異なる核酸分子の数に整合するか否かについて、組織的な決定を提供する。そのような定方向性の統計的方法は、本発明において有用な統計的にサンプリングされた標的を生成するために使用され得る。
【0076】
統計的にサンプリングされた標的を生成するための別の方法は、モンテカルロ統計的選択法である(Lopez−NietoおよびNigam、前出、1996)。モンテカルロ統計的選択法は、モンテカルロ法を使用することによって、無作為にプライマーセットを対にする。モンテカルロ法は、プライマー整合の無作為工程を刺激することによって、増幅のために使用され得るプライマーを決定する解決策に近い。モンテカルロ統計的方法は、任意の所定のオリゴヌクレオチドが、任意の所定のヌクレオチド配列および所定のオリゴヌクレオチドが結合し得る異なる核酸分子の数と整合するか否かについての組織的な決定を定方向性の統計的方法が提供するという点で定方向性の統計的方法とは異なる。
【0077】
一般的に、異なる対の恣意的オリゴヌクレオチドを使用して生成される2つの恣意的にサンプリングされた標的は、標的サンプル中の、大部分が重複しない核酸分子のセットにハイブリダイズする。同様に、異なる対の統計的オリゴヌクレオチドを使用して生成される2つの統計的にサンプリングされた標的は、標的中の、大部分が重複しない核酸分子のセットにハイブリダイズする。一般的に、100より少ない産物が、2つの差次的にプライムした、複雑性を低減した標的において、最も強くハイブリダイズする2000コロニーの中で重複する(実施例Iを参照のこと)。この発現のパターンはまた、すべてのmRNA集団を直接標識することによって生成されるパターンとは、ほとんど完全に異なる。しかし、より多くの核酸分子が、RNA集団のさらなる恣意的サンプリングまたはRNA集団のさらなる統計的サンプリングによってサンプリングされるにつれて、サンプリングされる非重複核酸分子の数は減少する。ある程度まで、核酸分子の適用範囲の有効性は、統計的に選択されたプライマーを使用することによって改善され得る(Pesoleら、前出、1998)。RAP−PCRによって生成される複数の恣意的にサンプリングされた標的は、すべての遺伝子を包含するのに十分な標的を供給し得る。
【0078】
恣意的にサンプリングされた標的および統計的にサンプリングされた標的を生成するための上記の方法は、改変され得る。例えば、差次的に調節される核酸について富化された、恣意的にサンプリングされた標的または統計的にサンプリングされた標的を生成するために、サブトラクションストラテジーが使用され得る。核酸分子の1つの供給源由来の標的(A)が標識され、次いで、他の供給源由来の数倍過剰の非標識標的(B)と混合される。混合物全体を変性し、そしてプローブへの結合のためにハイブリダイゼーション溶液に添加する。両方の標的において存在する増幅核酸産物が二本鎖核酸分子を形成し、そして残存する有効な標識標的は、2つの標的間の差異に主に由来する。同じ実験は、供給源由来の標識標的(B)および供給源由来の過剰な非標識標的(A)を用いてなされ得る。減算された標的の両方のセットに結合するプローブが、差次的な遺伝子発現を検出するために比較される。この手順はまた、標的cDNA混合物に存在する反復を部分的にクエンチする。従って、恣意的にサンプリングされた標的または統計的にサンプリングされた標的を生成するための、このようなサブトラクション方法の使用は、別の条件由来の標識標的をクエンチするように、1つの条件由来の非標識標的を使用することによって、2つの条件を比較するために使用され得る。
【0079】
サブトラクションの制限は、発現の小さな差異を排除し得、これがmRNAの全体的な非存在であるように見え得るということである。さらに、サブトラクションは、二成分の問題においては有用であるが、多数の条件が組合わせて比較されねばならない場合には、有用性は限られる。
【0080】
特異的結合の検出は、バックグラウンドのハイブリダイゼーションおよび反復の不完全な遮断によって、制限される。従って、複雑性を低減した標的を生成するために上記の方法を使用することに加えて、CotDNAを使用して、核酸の反復エレメントをクエンチし得る。CotDNAゲノム画分は、反復に富む。CotDNAを含む標的は、検出することが困難であり得る核酸分子を低い豊富さにて探索するために有用である。あまり豊富ではない配列は、総ゲノムDNAの使用によって部分的にクエンチされ得るが、CotDNAは、より混ぜ物をして質の落ちた(sophisticated)アレイ(例えば、PCRに基づくアレイ)に対して有用であり、ここでは、比較的貧弱に増幅された産物について考慮されるのに十分なほどに、ノイズに対するシグナルの割合が高い。
【0081】
恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的を産生する場合、種々のプロモーター(例えば、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、またはその他)がプライマーに組み込まれ、その結果、対応するポリメラーゼを用いる転写が用いられて標的を生成し得る。その標的を生成するための転写を用いることは、一本鎖標的を生成することの利点を有する。RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーは、任意の他の統計学的プライマーまたは恣意プライマーと組み合わせて使用され得る。
【0082】
恣意的にサンプリングされた標的または統計学的にサンプリングされた標的はまた、消化物の連結を使用して生成され得る。この場合、その標的を生成するために使用される核酸分子の集団は、制限酵素によって消化され、そしてオリゴヌクレオチドプライマーが、増幅された標的を生成するために連結される。連結媒介PCRでは、プライマー結合部位またはプライマー結合部位の部分が、例えば、部位特異的切断後に、連結によって鋳型上に配置される。
【0083】
ネスト化PCRはまた、恣意的にサンプリングした標的または統計学的にサンプリングした標的を生成するために使用され得る。ネスト化PCRは、第1のプライマーを用いて実行される第1回のPCR、続いて、第1のプライマー配列を越えて1つ以上のヌクレオチドが伸長する配列を含むという点で、第1のプライマーとは異なる第2のプライマーを用いるPCRを含む、2つのPCR工程を含む。
【0084】
標的は、特定のプローブにハイブリダイズする標的について富化され得る。一旦特定の恣意的にまたは統計学的にプライムされた方法によって生成された標的が特定の核酸集団に使用され、そして得られる標的がプローブのセットに対して使用されたならば、検出可能にハイブリダイズされる標的のセットが公知となる。この点において、そのプローブによって、検出されたもののみまたは検出されたもののほとんどを含む新しい標的のセットを工夫することは可能である。例えば、特定のプライマー「A」が、ヒト脳由来のRNAを使用するRAP−PCRのために使用され、そして得られる標的がcDNAクローンのアレイにハイブリダイズされる場合、いくつかのクローンは検出可能にハイブリダイズされる。次いで、この特定の標的によってハイブリダイズされたこれらのプローブのみのアレイを作製することが可能である。アレイ上のcDNAの大部分は、同じプライマー「A」を用いて作製されたヒト脳RNAから開発された標的とハイブリダイズすることが予想され得る。
【0085】
いくつかの場合において、標的の基礎である核酸の配列が公知である。いくつかの標的は、特定のプローブと検出可能にハイブリダイズし、そして他の標的はハイブリダイズしない。標的と関連する配列情報は、これらのプローブにハイブリダイズした標的を生じた、恣意的または統計学的プライミング事象の規則を推定するために使用され得る。このような情報は、その配列が標的中に存在する場合、特定のプライマーによってどの配列がサンプリングされそうかを予測することを補助する。このような情報は、どの配列が効率よくサンプリングされるか、そしてどの配列が特定のプライマーによって効率よくサンプリングされるかの見積もりを改善し得る。
【0086】
本発明の方法は、アレイを使用して標的中の分子のレベルを測定するために特に有用である。本明細書中で使用される場合、用語「アレイ」または「分子のアレイ」とは、固体支持体に安定に結合される複数の分子をいう。アレイは、例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリペプチド−核酸分子を含み得る。本明細書中で使用される場合、分子のアレイは、固体支持体に結合する前に、電気泳動的に分離された分子を特異的に除外し、そしてそのようなものとして、DNA、RNA、およびタンパク質のサザンブロット、ノーザンブロット、およびウェスタンブロットをそれぞれ除外することが理解される。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「非ドットブロット」アレイとは、アレイの分子が少なくとも約2スポット/cmの配置で、吸引濾過またはニトロセルロースメンブレンもしくはナイロンメンブレンへのスポッティング以外の手段によって、固体支持体に結合されるアレイをいう。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド−核酸」または「PNA」とは、共有結合しているペプチドおよび核酸分子(Nielson,Current.Opin.Biotechnol.10:71−75(1999))をいう。
【0089】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、PNAに関連して使用される場合、2つ以上のアミノ酸のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。この用語は、同様に、その誘導体、アナログ、および機能的な模倣物をいうことを意図される。例えば、誘導体は、ポリペプチドの化学的修飾(例えば、アルキル化、アシル化、カルバミル化、ヨード化、またはポリペプチドを誘導体化する任意の修飾)を含み得る。アナログは、修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリンまたはカルボキシグルタミン酸)を含み得、そしてペプチド結合によって連結されないアミノ酸を含み得る。模倣物は、その化合物の予測された三次元構造に関わらず、ポリペプチドの機能を模倣する化学的部分を含む化学物質を含む。例えば、ポリペプチドが、その機能的ドメイン中に2つの荷電した化学的部分を含む場合、模倣物は2つの荷電した化学的部分を1つの空間的配向および制限された構造に配置し、その結果、荷電した化学的機能は、三次元的空間において維持される。従って、これらのすべての修飾が用語「ポリペプチド」の中に含まれる。
【0090】
アレイのための固体支持体は、ナイロンメンブレン、ガラス、誘導体化されたガラス、シリコン、または他の基材であり得る。このアレイは、平らな表面(例えば、膜)であり得るか、または、所望の場合、球体もしくはビーズであり得る。この分子は、「スポット」として固体支持体上に結合され得、そして一般的には、少なくとも約5/cmまたは10/cm、しかし一般的には約1000/cmを超えない密度でスポットされ得る。
【0091】
DNA分子のアレイを製造するための種々の方法が記載されている(Ramsay、前出、1988;MarshallおよびHodgson、前出、1998に概説される)。種々の種(酵母、マウス、およびヒトを含む)由来の核酸分子を含むアレイが利用可能である。アレイの使用は有利である。なぜなら、多くの遺伝子の差示的発現が並行して決定され得るからである。
【0092】
1つの型のアレイは、1平方センチメートルあたりに何千ものPCR産物を含む。mRNAのセグメントからのPCR産物のアレイは、例えば、ガラスに結合され、そして2つの供給源からのcDNA集団を使用して探査(probe)される。各々のcDNAまたはcRNA集団は、異なる蛍光色素で標識され、そしてハイブリダイゼーションが蛍光を用いて評価される(DeRisiら、Nature Genet.14:457−460(1996);Schenaら、Science 270:467−470(1995))。選択されたI.M.A.G.E.クローンからの5000を超えるPCR産物を含むアレイもまた、利用可能である。PCR産物のアレイはまた、あらゆる酵母のORFのために、そしてヒトESTのサブセットのために利用可能である。
【0093】
別の型のアレイは、E.coliクローンの18,432コロニーを含み、各々が異なるI.M.A.G.E. ESTプラスミドを含み、そして各々が22×22cmメンブレン(Genome Systems)上に2回スポットされる。I.M.A.G.E.コンソーシアムからのアレイを使用することの1つの利点は、クローンの80%より多くが、5’もしくは3’末端から、または両方から読まれ、GenBankデータベースに寄託されたシングルパス配列を有することである。従って、同じ配列を共有する既知の遺伝子または他のESTが存在するかどうかを決定するために、通常、いかなるDNAもクローン化するか、または配列決定する必要はない。同じ遺伝子由来であるようであるヒトおよびマウスESTのUnigeneクラスター化は、このプロセスにおいて大きな補助となる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Unigene/index.html)。数センチモルガンの解像度での染色体へのマッピングはまた、同じウェブサイトでこれらのクラスターの大部分について利用可能である。これらのアレイ上のクローンはすべて利用可能であり、核酸分子を探査するために、または配列決定を完成させるために使用される(www−bio.llnl.gov)。他の種における近いホモログを同定することがしばしば可能である。他のDNAを含まない、PCR産物アレイおよびオリゴヌクレオチドアレイと対照的に、各々のスポットされたESTは、宿主由来のE.coliゲノムDNAと関連する。従って、このクローンアレイは、PCRアレイまたはオリゴヌクレオチドアレイよりも高いバックグラウンドを有し得る。
【0094】
ESTアレイが使用される場合、5’RACEは現在利用されているESTを超えて延長するために使用され得る(ZhangおよびFrohman、Methods Mol.Biol.69:61−87(1997))。ほぼ全長のクローンを含むcDNAライブラリーが利用可能であり、そして末端配列決定される場合、差示的にハイブリダイズしたスポットから全長cDNAまで、直接的に応用することが可能である。
【0095】
別のクラスのアレイは、ガラスもしくはシリコン表面に結合されるか、またはDNAチップ上の連続的光化学によって製造される(Cheeら、Science 274:610−614(1996))かのいずれかであるオリゴヌクレオチドを使用する。このようなチップは、1平方センチメートルあたりに何万もの異なるオリゴヌクレオチド配列を含み得る。例えば、ペプチド−核酸のようなオリゴヌクレオチド核酸アナログのアレイが、調製され得る(Weilerら、Nucleic Acids Res.25:2792−2799(1997))。
【0096】
フィンガープリントの、アレイへのハイブリダイゼーションは、一般的に、検出された遺伝子の単離、クローニング、および配列決定が必要ないという非常に大きな利点を有する。原理的には、すべての公知のヒトmRNAは、3枚のメンブレン上(約50,000遺伝子)か、またはガラスアレイもしくは他の固体支持体上のより小さい領域中に適合する。現在、各々のフィンガープリントは、50,000の既知の遺伝子の2000より多くにハイブリダイズするに十分な複雑性を有する。
【0097】
さらなる特徴付けのための標的、特定の遺伝子に結合し得る何千もの遺伝子を有し得るアレイの使用は、所望の規準に基づいて選択され得る。例えば、すでに公知であり、そして目的の条件における新しい役割が推定され得る、同定された遺伝子が選択され得る。あるいは、この遺伝子のいくつかは、もっともらしい役割が決定され得る公知の機能を有する公知の遺伝子のファミリーメンバーであり得る。
【0098】
アレイに加えて、多数のcDNAライブラリー(例えば、I.M.A.G.E.コンソーシアム(www−bio.llnl.gov/bbrp/image/image.html)から)が利用可能であり、これには、ナイロンメンブレン上で利用可能なライブラリー(例えば、Research Genetics(Huntsville AL;www.resgen.com)、Genome Systems(St.Louis MO;www.genomesystems.com)およびthe German Human Genome Project(www.rzpd.de)から)が含まれる。これらのライブラリーには、種々のヒト組織、発生段階、疾患状態、および他の供給源由来のクローンが含まれる。
【0099】
本発明の方法は、標的へのプローブの特異的結合の量を検出する工程を包含する。本明細書中で開示されるように、種々の検出方法が使用され得る。例えば、検出可能な部分が放射性部分である場合には、その検出方法は、オートラジオグラフィーまたはホスホルイメージングであり得る。ホスホルイメージングは、定量およびデータ収集時間の短縮のために有利である。検出可能な部分が蛍光部分である場合、検出方法は、蛍光分光法または共焦点顕微鏡法であり得る。
【0100】
本発明の方法は、標的中の核酸分子の発現レベルを測定するために核酸プローブを使用する。放射性部分が標的に結合している場合、例えば、放射性部分の取り込みは、放射性部分の結合を可能にする、任意の酵素的または化学的方法であり得る。例えば、末端標識は、核酸分子の末端に放射性部分を結合させるために使用され得る。あるいは、放射性ヌクレオチド、特に32P−標識されたヌクレオチド、33P−標識されたヌクレオチド、または35S−標識されたヌクレオチドは、合成の間に核酸分子中に組み込まれ得る。ランダムプライム化合成の使用は、高い比活性標的を生成するために特に有用である。一般的には、ランダムプライム化合成は、二本鎖PCR産物の両方の鎖からランダムにプライムされたおよそ等量の核酸分子を生成し、これは、ハイブリダイゼーションの間に、ある程度、標的に再アニーリングする(実施例Iを参照のこと)。所望の場合、再アニーリングの量は、例えば、exoIII消化を用いて制限され得る。
【0101】
標識された標的またはプローブを生成する場合、一般的に、ATPまたはdATPではない標識されたヌクレオチドを取り込むことが好ましい。標識されたdATPの使用は、バックグラウンドの増加を引き起こし得る。なぜなら、標的またはプローブ中の任意のポリA配列は、高度に標識され、そしてすべてのクローン中に存在するポリAテールに相補的なポリTストレッチを含む鎖にハイブリダイズするからである。同様に、dTTPの使用は、mRNA中のポリAテールに相補的なポリTストレッチを高度に標識する。
【0102】
蛍光色素はまた、プローブもしくは標的に、結合されるかまたは組み込まれ得る。所望の場合、異なる波長で検出可能な異なる蛍光は、異なる標的に組み込まれ得、そして同じプローブ上で同時に使用され得る。異なる蛍光の使用は有利である。なぜなら、複数の標的が同じプローブに結合し、そして検出され得るからである。蛍光標識された標的は、例えば、蛍光スキャナーまたは共焦点顕微鏡を使用して検出され得る。同じアレイ上の2つの標的の相対的な豊富さを同時に測定することは、2つの異なるアレイ上のそれを測定することよりも、ハイブリダイゼーション条件または同じアレイの複製に対する標的PCR産物の量の違いによって起こる問題を除去する。ナイロンメンブレンは、代表的には、メンブレンそれ自体からのバックグラウンド蛍光に起因して、大部分の市販の蛍光タグのためには不適切である。
【0103】
赤外線色素はまた、プローブまたは標的への結合のための検出可能な部分として有用である。ナイロンメンブレンに結合したアレイのような標的またはプローブを有する赤外線色素は、そのメンブレンがタンパク質を含まない場合に、特に有用である。
【0104】
標的中の核酸分子のレベルを決定する場合、特に、増幅条件に非常に感受性である特定の増幅産物について、いくつかのバリエーションが存在し得る。核酸標的の間の増幅産物におけるバリエーションを制御するために、その標的は、2つ以上の因子によって異なる核酸分子の2つの濃度で生成され得る。差示的発現を確認するための標的を生成する種々の核酸濃度の使用は、本明細書中に記載される(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。
【0105】
本発明の方法は、プローブへの標的の特異的結合を検出することに関する。プローブに標的をハイブリダイズさせる場合、結合の特異性は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーによって決定される。オリゴヌクレオチドプライマーの長さおよび増幅反応の温度は、最終産物に寄与する。その産物は、各々の標的核酸分子の開始時の豊富さ、およびオリゴヌクレオチドプライマーと増幅された核酸標的との間の一致の特性の両方の関数である。例えば、約8塩基長のオリゴヌクレオチドプライマーが、標的を生成するために約60℃の反応温度で使用され得る。ハイブリダイゼーション条件は、例えば、約2×SSCにおける約32℃〜約0.1×SSCにおける約68℃までの範囲であり得る。ハイブリダイゼーション温度は、例えば、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、または約65℃であり得る。さらに、SSC濃度(以下を参照のこと)は、例えば、約0.2×、0.3×、0.5×、1×、または1.5×であり得る。
【0106】
本発明はさらに、標的へのプローブの特異的結合の量を比較することによって、2つの標的中の核酸分子の相対量を決定するための方法を提供し、ここで、特異的結合の量は標的中の核酸分子の発現レベルに、第2の標的中の核酸分子の発現レベルに対応する。例えば、所望の場合、発現のレベルが未知である標的であり得る第1の標的中の発現レベルは、第2の標的の発現レベルと比較され得る。第2の標的中の発現レベルは、例えば、第2の標的に同じプローブを結合させること、および第2の標的における発現レベルを決定することによって決定され得る。次いで、第1の標的および第2の標的における発現レベルが比較され得る。
【0107】
第1の標的中の相対的な発現レベルはまた、第2の標的中の発現レベルと比較され得、ここで、第2の標的中の豊富さはすでに公知である。本明細書中で使用される場合、用語「公知の」は、核酸分子の発現レベルに関連して使用される場合、核酸分子の豊富さが以前に決定されたことを意味する。このような公知の豊富さが、特定の条件のセットに適用されることが理解される。公知の豊富さに対して、未知の標的における核酸分子の豊富さを比較する目的のために、標的の間の豊富さを測定する同じ方法が使用されることがまた、理解される。
【0108】
本発明はまた、1つの条件に関連する、2つ以上の差示的に発現された核酸分子を同定する方法を提供する。この方法は、例えば、恣意的にサンプリングされた標的、または統計学的にサンプリングされた標的を使用して、標的中の2つ以上の核酸分子のレベルを測定する工程を包含し、ここでプローブへの標的の特異的結合の量は、標的中の核酸分子の豊富さに対応する。この方法はさらに、第2の標的中の核酸分子の発現レベルに対する標的中の核酸分子の相対的な発現レベルを比較する工程を包含し、それによって、標的の間の発現レベルの違いが、1つの条件を示す。
【0109】
本明細書中で使用される場合、用語「差示的に発現される(た)」は、分子の量が、2つの標的の間で異なるレベルで発現されることを意味する。2つの標的は、異なる細胞もしくは組織由来であり得るか、またはその標的は、異なる条件下で同じ細胞もしくは組織由来であり得る。その条件は、例えば、ガン、自己免疫疾患、病原体(細菌、ウイルス、真菌、酵母、または単細胞寄生生物もしくは多細胞寄生生物)による感染のような疾患状態に関連し得るか;効力、抵抗性、または毒性のような感染のような処置に関連し得るか;あるいは、化学物質のような刺激剤(例えば、薬物または天然の産物(例えば、増殖因子))に関連し得る。
【0110】
本発明の方法は、2つの標的の間の差次的な遺伝子発現を決定するために有用である。本発明の方法は、差次的な遺伝子発現が重要であると考えられる任意の系に対して適用され得る。この系としては、薬物応答、ホルモン応答、正常な発達、異常な発達、遺伝子型の遺伝、ガンまたは自己免疫疾患のような疾患の状態、加齢、感染性疾患、病理学、薬物処置、ホルモン活性、加齢、細胞周期、恒常性機構および上記の状態の組み合わせを含む他のものが挙げられる。
【0111】
本明細書において開示されるように、2つの標的における核酸分子の含有量を比較して、2つ以上の差次的に発現される核酸分子を同定し得る(実施例I〜IIIを参照のこと)。恣意的にサンプリングした標的を用いて、EGFを用いて処置するかまたは処置しない標的を、プローブとハイブリダイズさせ、そしてEGFによって調節される多数の遺伝子を同定した。EGF調節される遺伝子は、EGFに応答して増加し、そしてEGFに応答して減少することが見出された(それぞれ、実施例IIおよび実施例IIIにおける表1および表2を参照のこと)。したがって、本発明の方法は、刺激に応答して増加し、または刺激に応答して減少する核酸分子を決定するために使用し得る(実施例IIを参照のこと)。
【0112】
本発明において使用される恣意的にサンプリングした標的および統計学的にサンプリングした標的は、ある集団において、あまり豊富でない核酸分子を容易に検出し得る。従って、本発明の方法は、差次的に発現される核酸分子を同定するために特に有用である。なぜなら、差次的に発現される核酸分子は、しばしばあまり豊富ではないからである。
【0113】
本発明の方法を、任意の2つの標的に適用して、差次的な遺伝子発現を決定し得る。本発明の方法を使用して、例えば、疾患状態を診断し得る。そのような場合において、「正常な」標的を、潜在的に罹患した標的と比較して、その疾患と関連する差次的遺伝子発現を決定する。正常な標的は、その患者からの罹患した組織の付近の同じ組織の標的サンプルであり得る。正常な標的はまた、異なる個体由来の同じ組織のサンプルであり得る。本発明の方法を用いて、正常な発現のプロフィールを、1対多の正常標的サンプルにおける遺伝子発現パターンを決定することによって確立し得る。次いで、これらのプロフィールを使用して、潜在的に罹患した標的サンプルと比較し得る。正常な組織と罹患した組織との間の差次的な遺伝子発現を使用して、特定の疾患状態を診断または確認し得る。さらに、公知の罹患した組織から得られる標的サンプルの収集物を同様に決定して、その疾患に関連する遺伝子発現を反映する標的の頻度プロフィールを同定し得る。そのような場合において、潜在的な疾患標的サンプルと、差次的遺伝子発現を伴わない公知の罹患した標的サンプルとの比較は、その潜在的な疾患標的サンプルが、その疾患に関連することを示す。
【0114】
本発明の方法はまた、薬物を用いた個体の処置を評価するために使用され得る。特定の薬物処置に関連する遺伝子発現パターンの分析はまた、薬理遺伝学としても知られる。本発明の方法を使用して、処置の効力、処置に対する耐性、または処置に関連する毒性(傷害性)を決定し得る。例えば、遺伝子発現プロフィールは、特定の疾患または状態についての処置の前、および処置の後に、個体において決定され得る。次いで、遺伝子発現における相違を、その処置の効率と相関させ得る。例えば、ある個体が処置に応答することが見出され、そしてその処置が差次的な遺伝子発現と関連する場合、その差次的な遺伝子発現の同定を使用して、その処置の効力を相関付け得る。上記のように、未処置の個体に関連する遺伝子発現パターンは、処置の前のその個体において決定され得るか、またはその処置を受けていない多数の個体において決定され得る。同様に、その処置の効力に関連する発現パターンにおける変化は、多数の個体(これらの個体について、その処置が効力があった)において決定され得る。そのような場合において、処置された標的サンプルと、差次的遺伝子発現を伴わない効力のある処置を行った公知の標的サンプルとを比較することで、その処置が、おそらく効力があるであろうことが示される。同様のアプローチを使用して、その処置の毒性を用いる処置または処置に対する耐性の関連を決定し得る。処置に対する耐性は、未処置の標的サンプルからの発現パターンにおける変化と関連し得るか、または未処置の標的サンプルと比較して発現パターンの変化がないことと関連し得る。
【0115】
本発明の方法はまた、薬物探索についての潜在的な標的であり得る同時調節される遺伝子を決定するために使用され得る。例えば、細胞または生物は、刺激物を用いて処置され得、そして未処置のサンプルと、刺激物を用いて処置された標的サンプルとの間の差次的な遺伝子発現が決定され得る。刺激物は例えば、薬物または増殖(成長)因子であり得る。未処置の標的サンプルと、刺激物を用いて処置した標的サンプルとの間の核酸分子の含量の相違を使用して、その刺激物に関連する差次的な遺伝子発現を同定し得る。そのような差次的な発現パターンを使用して、標的サンプルが刺激物に曝露されたか否かを決定し得る。さらに、この遺伝子発現プロフィールを使用して、もとの刺激物と同じ遺伝子発現プロフィールを誘発する化合物についてスクリーニングすることによってその刺激物を模倣する他の化合物を同定し得る。従って、本発明の方法を使用して、公知の薬物に類似する効果を有する新たな薬物を同定し得る。
【0116】
本発明の方法は、薬物応答に相関する経路についてのマーカーを同定するために有用である。このことは、供給源のRNAのような核酸の供給源集団の発現プロフィールを反映する所定の標的サンプルについての含量プロフィールを決定することによる。例えば、本発明の方法を使用して、薬物に応答して調節されるいくつかの遺伝子を同定し、それにより潜在的な薬物標的である経路における「近隣」を提供することによって、潜在的な治療的標的の「近隣」を規定し得る。本発明はまた、例えば、治療に「失敗した」経路の悪い近隣を規定するためにも使用され得る。失敗した経路は、特定の経路が撹乱されるべきではないことを示し得る。経路の機能に対するさらなる洞察は、完全な配列情報が利用不能である、差次的に発現される任意の遺伝子を配列決定することによって入手され得る。この方法は、薬物比較について特に有用である。遺伝子発現パターンと薬物応答との相関を使用して、2つの類似の薬物がいくらか異なる効果の範囲を有する理由を決定し得る。
【0117】
遺伝子発現と薬物に対する応答との間の相関を知ると、薬物を、特定の疾患または状態とより関連する細胞型において試験し得る。ある病理と関連する細胞型に存在する経路を知ることによって、その細胞型の薬物応答に関する予測を行い得、それによって、その病理にもっとも影響を与えるようである試験された薬物のパネルから薬物の選択を可能にする。薬物応答および遺伝子発現についての情報の相関付けはまた、相乗効果を有する薬物(例えば、重複しない経路を塞ぐ薬物、または例えば、重複する遺伝子が標的化される場合に重複する経路に影響を与える薬物)を選択する助けとなり得る。
【0118】
本発明の方法は、刺激物に対する応答を決定すること、特に薬物探索についての刺激物に対する応答を決定することに適用され得る。1つの可能な適用は、本発明の方法を、National Cancer Institute (NCI)薬物スクリーニングパネルにおける60の細胞株に対して使用することである。これらの60の細胞株は、NCIによって維持され、そして薬物活性を評価するために使用される。
【0119】
例えば、NCIパネルの60の細胞株の各々を、細胞増殖、および第二にアポトーシスの単一の変数を報告する複雑な測定デバイスとして使用し得る。薬物のような化学物質を用いて処置する際の各細胞型の増殖における変化が決定される。数万の薬物の研究が、60すべての細胞株に対して比較される場合に、増殖に対する類似の効果は作用機構を共有することを証明することを示している。60の細胞株の種々の薬物に対する応答の比較は、その詳細な化学官能基性に従って、薬物のグループ分けを可能にする。結果として、細胞株のパネルは、薬物探索のための最も重要な分析ツールの一つとなっている。
【0120】
本発明の方法は、NCIパネルの60の細胞株において薬物応答を分析することに適用され得る。本明細書において開示されるように、この方法は、差次的遺伝子発現を決定することに適用され得る。この差次的発現は、特定の薬物に対するその細胞の応答と相関し得る。この方法を使用して、薬物応答に関連する多くの差次的に発現された遺伝子を同定し得る。従って、60の細胞株NCI薬物スクリーニングパネルにおける無関連の細胞における遺伝子発現の分析を使用して、そのパネルにおいて用いられた多くの10,000の薬物のいくつかと相関するmRNAの存在または非存在に基づいて、遺伝子発現のプロフィールを決定し得る。
【0121】
差次的遺伝子発現パターンは、薬物応答と相関すると予測される。その細胞株のなかの30個におけるそのような相関の同定の後、残りの30の細胞株における薬物応答の予測が試験され得る。この戦略は、すべての60の細胞株について、すべての新たな薬物について広汎な発現プロフィールを決定して、その薬物に応答する能力と相関する遺伝子を見出す必要を回避する。この戦略は、以前の方法とは、処置後のその遺伝子の差次的発現が必ずしも起きないという点で異なる。必要なことは、それらの遺伝子が処置前の細胞型の間で差次的に制御されていることがのみである。
【0122】
60の細胞株の各々は、薬物に対するその特徴的な応答を有し、そしてこれらの応答は、細胞の表現型に依存する。任意の細胞の、任意の薬物に対する応答は、遺伝子系がその細胞において作動可能であることに依存する。一旦処置されると、その細胞の遺伝子機構が撹乱される。このことは、差次的な遺伝子発現、差次的なタンパク質改変、および微小であり得る広汎な種々の他の変化をもたらす。それにもかかわらず、薬物への任意の曝露前の遺伝子発現の基底状態の遺伝子パターンまたはプロフィールがその細胞が薬物に如何に応答するかを決定することである。
【0123】
遺伝子プロフィールの基底状態は、細胞(例えば、NCIパネルの細胞株)について特徴付けるための重要な状態である。その細胞の基底状態は、所定の細胞が所定の薬物に如何に応答するかについて予測力を有する。さらに、この基底状態は、ほぼ100,000の異なる薬物の挙動について唯一の参照についての共通点であり、そしてこれを使用して、さらなる薬物に対する応答を決定し得る。
【0124】
例えば、2つのステロイドおよび2つのアルキル化剤が60の細胞株のパネルに適用され、そしてその増殖範囲が比較される場合、その細胞株のステロイドに対する平均の応答は、類似する傾向にあり、そのアルキル化剤に対する平均の応答は類似する傾向にあるが、ステロイド対アルキル化剤の応答の比較は、ほとんど類似点を示さない。これは、ステロイドが天然に存在するレセプターを介してその効果を誘発するが、アルキル化剤は、広汎な障害を引き起こすことによってその効果を誘発するという事実を反映する。ステロイド性シグナルを処理すること対障害を処理することについてのシグナル伝達経路は、大いに異なる。
【0125】
ステロイドのパネルを使用して60の細胞株にチャレンジする場合、これらの細胞のいくつかは増殖が促進され、いくつかは増殖が阻害され、そしていくつかはステロイドには無反応である。このデータの多くは、NCIウェブサイト(http://www.nci.nih.gov/)にて利用可能である。明らかな次の工程は、どの遺伝子が活性化され、どの遺伝子が不活化され、そしてどの遺伝子が無反応であるかを見るために、そのステロイドに応答する遺伝子を調査することである。各細胞型の遺伝子は、約30のステロイドレセプター遺伝子のどれがステロイド処置の前にその細胞型において発現されているかに依存して、差次的に応答する。
【0126】
ステロイドに対する遺伝子の種々の応答は、細胞型依存性である。これは大部分、どのレセプターが存在しているかに起因する。NCIのパネルの細胞の基底状態の遺伝子発現を比較することによって、各細胞型において発現されるステロイドレセプター遺伝子の範囲が記載され得、それによって、任意の特定のステロイドについて応答性である細胞について、遺伝子に関して何が必要かを説明する。
【0127】
薬物レセプターもしくはホルモンレセプターの上記の関係は、NCIパネル基底線遺伝子発現データベースとNCIパネル薬物応答データベースとの間に関連し得る相関の1つの例である。他の薬物応答は、容易に決定され得る。例えば、アポトーシスを誘発する薬物はまた、遺伝子発現を誘発し、そして細胞型に相関する、異なるアポトーシス応答を使用して、アポトーシスを制御する遺伝子産物を決定し得る。
【0128】
本発明の方法は、薬物または他の刺激物に対する応答の特徴付けについてNCIパネルの細胞に加えて、任意の細胞型に適用され得ることが理解される。複数の薬物の間の機能的な重複は、薬物探索において重要な関心事である。異なる細胞型における薬物に対する遺伝子の応答の研究は、有用である。なぜなら、遺伝子発現は、その薬物に対するその細胞の応答を決定するからである。従って、本発明の方法は、特定の薬物に対する1以上の細胞の応答を決定するために適用され得る。
【0129】
この方法はまた、NCIパネルの細胞の基底状態を特徴付けるために適用され得る。本明細書において記載される方法を使用して、その薬物によって調節される経路における遺伝子と数万もの薬物との応答とを相関付けし得る。本発明の方法は、NCIパネルの細胞を用いてこれまでに試験された8万を超える薬物についての発現プロフィールを決定するために適用され得る。この方法は、薬物作用の協調機構、薬物活性を制御するありそうな経路、毒性と相関する経路、アポトーシスおよび他の薬物効果を決定することに適用可能である。
【0130】
本発明はまた、基底遺伝子発現を、処置に対する感受性(例えば、薬物の存在、病原体または他の刺激物の存在下での)を、細胞(NCIパネル細胞)の増殖における相違)と相関付けるために、異なる未処置の細胞または組織のパネルによる遺伝子発現のパターンの使用の方法を提供する。この方法は、処置の前に存在する遺伝子および経路を決定し、そしてまた処置を、その処置によって誘導される表現型と相関付けるために適用され得る。」
遺伝子発現についてのさらなる情報を得るために、異なる条件からの2つの異なるRNA集団の発現パターンが決定され得る(McClellandら、Nucleic Acids Res.22:4419−4431(1994);McClellandら、Trends Genet.11:242−246 (1995))。例えば、アポトーシスに関心がある場合、ストレスを受けているが、アポトーシスを受けていない細胞からの標的を使用することを使用して、アポトーシスに応答する遺伝子、ストレスに応答する遺伝子、およびその両方に応答する遺伝子を決定し得る。差次的に調節される遺伝子の同定を使用して、種々の条件下での遺伝子の転写活性をさらに特徴付け得る。この遺伝子は、所定の条件に応答するシグナル伝達経路と、調節される遺伝子のプロモーターを相関付けるためにさらに特徴付けられ得る。
【0131】
核酸分子の差次的発現を決定する場合、標的におけるRNAサンプルが差次的に調節されることの決定は、まず、その標的サンプルにおける核酸の2つの異なる濃度における差次的な含有量を比較することによってなされる。含有量は、RNA供給源の2つの異なる濃度において含有量の相違が観察されない標的サンプルの核酸分子について決定される。両方のRNA供給源における両方のRNA濃度での差次的発現を示すそれらのハイブリダイゼーション事象のみが使用される(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。
【0132】
差次的な発現を決定するためのアレイに対するハイブリダイゼーションについて、4つのメンブレンを放射標識した標的について使用した。2つのRNAサンプルの各々について、RNAの2つの濃度の各々についてのものを比較した(実施例I〜IIIを参照のこと)。二色の蛍光が、その標的の検出のために使用される場合、2つのメンブレンが使用される(出発標的サンプル核酸の2つの濃度の各々についての1つ)。なぜなら、異なる検出可能な蛍光マーカーを有するその2つの標的を混合し得、そして同じプローブに適用され得るからである。次の確認工程が使用される場合(例えば、RT−PCR)、1つのマーカーが、各標的サンプルについて使用され得る。
【0133】
差次的な発現の確認は、全長の配列を必要としない。そして、これは、公知の領域のRT−PCRを用いて確認され得る。特に、低ストリンジェンシーPCRを使用して、数百塩基長の産物を生成し得る(Mathieu−Daudeら、Mol.Biochem.Parasitol.92:15−28 (1998))。この方法は、PCR反応の質、ならびに使用されたRNAの質および量を確認するために使用され得る内部「コントロール」PCR産物を生成する。
【0134】
本発明はさらに、5以上の刺激物が制御する核酸分子のプロフィールを提供する。本明細書において使用される用語「プロフィール(またはプロファイル)」とは、所定のセットの条件下で標的に特徴的である2以上の核酸分子のグループをいう。本発明は、配列番号1〜45と言及されるヌクレオチド配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列の一部を含むプロフィールを提供する。このプロフィールは、以下のGenBank登録番号のヌクレオチド配列の一部を含む:H11520、H11161、H11073、U35048、R48633、H28735、AF019386、H25513、H25514、M13918、H12999、H05639、L49207、H15184、H15124、X79781、H25195、H24377、M31627、H23972、H27350、AB000712、R75916、X85992、R73021、R73022、U66894、H10098、H10045、AF067817、R72714、X52541、H14529、M10277、H27389、D89092、D89678、H05545、J03804、H27969、R73247、U51336、H21777、K00558、およびD31765。本発明のプロフィールは、以下をコードするヌクレオチド配列の一部を包含する:TSC−22、フィブロネクチンレセプターαサブユニット、レイ(ray)遺伝子、X−ボックス結合タンパク質1、CPEレセプター、上皮制限etsタンパク質ESXおよびVav−3。
【0135】
本発明はまた、配列番号1〜45として言及されるヌクレオチド配列の各々の一部を含む標的を提供する。この標的は、以下のGenBank受託番号のヌクレオチド配列の一部を含有する:H11520、H11161 H11073、U35048、R48633、H28735、AF019386、H25513、H25514、M13918、H12999、H05639、L49207、H15184、H15124、X79781、H25195、H24377、M31627、H23972、H27350、AB000712、R75916、X85992、R73021、R73022、U66894、H10098、H10045、AF067817、R72714、X52541、H14529、M10277、H27389、D89092、D89678、H05545、J03804、H27969、R73247、U51336、H21777、K00558、およびD31765。本発明はまた、配列番号1〜45からなる群より選択される核酸配列の一部を含むプローブを提供する。
【0136】
本発明は、さらに、その核酸分子が配列番号1〜45そのものを含まない限り、配列番号1〜45からなる群より選択される核酸配列を含む実質的に純粋な核酸分子またはその機能的フラグメントを提供する。
【0137】
本発明は、さらに、第二の標的と比較した第一の標的における2つ以上の核酸分子の量を測定する方法を提供する。この方法は、プローブに対して2つ以上の核酸分子を含む第一の増幅された核酸標的をハイブリダイズさせる工程を包含する。ここで、その標的は、核酸分子の集団から1つ以上のオリゴヌクレオチドを用いて増幅され、ここで、このオリゴヌクレオチドは、偶然、核酸分子のその集団における核酸分子にハイブリダイズし、ここで、その増幅は、その核酸分子の集団における核酸の含有量に基づかず、そしてその標的におけるその増幅された核酸は、その核酸分子の集団においてあまり豊富ではない核酸について増強される。さらに、本方法においては、そのプローブに対する第一に増幅された核酸標的のハイブリダイゼーションの量を検出する工程であって、ここで、ハイブリダイゼーションの量は、第一の標的における核酸分子の含有量に対応する、工程;ならびに、第一の標的において核酸分子の含有量を、第二の標的における核酸分子の含有量と比較する工程であって、ここで、増幅された核酸標的は、最初の核酸集団における核酸のサブセットを含む、工程が包含される。
【0138】
本発明は、さらに、第二の標的と比較した第一の標的における2つ以上の核酸分子の量を測定する方法を提供する。この方法は、プローブに対して50以上の核酸分子を含む第一の増幅された核酸標的をハイブリダイズさせる工程を包含する。ここで、この標的は、核酸分子の集団から増幅され、そしてこの増幅は、核酸分子の集団における核酸の含有量には基づかず、そしてその標的における増幅された核酸は、核酸分子の集団におけるより少ない含有量の核酸について増強される。この方法は、さらに、そのプローブに対して、増幅された核酸標的のハイブリダイゼーションの量を検出する工程(ここで、ハイブリダイゼーションの量は、第一の標的における核酸分子の発現レベルに対応する);ならびに、第二の標的における核酸分子の含有量と、第一の標的における核酸分子の含有量とを比較する工程(ここで、その増幅された核酸標的は、RNA集団のような各核酸集団における核酸のサブセットを含む)を包含する。
【0139】
本明細書において使用される用語「偶然にハイブリダイズする」とは、オリゴヌクレオチドについて言及する場合、そのオリゴヌクレオチドの相補的配列に対するハイブリダイゼーションが所定の核酸分子に生じる相補的配列の統計学的頻度に基づいていることを意味する。偶然にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、そのオリゴヌクレオチドの配列を決定すること、続いてそのオリゴヌクレオチドが1つ以上の核酸分子にハイブリダイズするか否かを決定することによって、生成される。そのようなオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、公知の核酸分子の配列によっては予め定まらず、それゆえ偶然生じる。それ自体、任意のオリゴヌクレオチドは、偶然ハイブリダイズすると考えられる。なぜなら、そのオリゴヌクレオチドは、増幅される正確な配列を参照することなく決定されるからである。対照的に、偶然にハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドは、第一に公知の配列を分析すること、次いで複数のそれらのオリゴヌクレオチドの間の正確な配列を増幅するオリゴヌクレオチドとして使用され得る核酸分子中における正確な配列を同定することによって生成される。そのようなオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、公知の核酸分子の配列によって予め決定されており、それゆえ、偶然には生じない。
【0140】
本明細書において使用される句「増幅は含有量に基づかない」とは、ある標的が、その集団における個々の核酸分子の相対量を参照することなく核酸分子の集団における核酸分子の代表である核酸分子を含むことを意味する。
【0141】
本明細書において使用される句「あまり豊富でない核酸について増幅される」とは、核酸分子の集団においてあまり豊富でない個々の核酸分子が、これらのあまり豊富ではない核酸分子の量が核酸分子のもとの集団におけるこれらの核酸分子の量と比べて増加するように増幅されることを意味する。従って、核酸分子の集団における核酸分子の相対比は、その標的において維持されない。
【0142】
本明細書において使用される用語「単一サンプル」とは、標的に言及して用いられる場合、その標的が別のサンプルには以前に曝露されていない単一の細胞、組織または器官のサンプルからの核酸分子を用いて生成されることを意味する。例えば、標的が、別のサンプルに対する1つのサンプルの曝露によって決定された核酸分子の集団から生成される場合(例えば、別のサンプルからの1つのサンプルの核酸分子のサブトラクション)、そのような標的は、単一のサンプルに由来すると考えられない。
【0143】
以下の実施例は、本発明の例示を意図し、限定することは意図しない。
【0144】
(実施例1:DNAアレイをプローブするための恣意的にサンプリングした標的の生成および使用)
本実施例は、mRNA発現を決定するためのDNAアレイをプローブするために減少した複雑性を有する恣意的にサンプリングした標的の生成を記載する。
【0145】
DNAフィンガープリントを、RAP−PCRを用いて生成し、そしてランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド(Genosys Biotechnologies;The Woodlands TX)を用いて高比活性のプローブへと変換した。RAP−PCRからの10μgまでのPCR産物をQIAQUICK PCR Purification Kit (Qiagen、Inc.;Chatsworth CA)を用いて精製した。このキットは、取り込まれていない塩基、プライマーおよび40塩基対より小さなプライマーダイマーを除去する。このDNAを、100μlの10mM Tris、pH 8.3中に回収した。(α−32P)dCTPからの放射性リンの取り込みを伴うランダムプライム合成を、標準的な条件下で使用した。回収されたフィンガープリントDNAの10%(10μl)を、28μlの総量中で、6μgのランダムヘキサマーオリゴヌクレオチドプライマーおよび1μgのフィンガープリントプライマー(Genosys)の一方と合わせ、3分間煮沸し、次いで氷上に置いた。ヘキサマー/プライマー/DNAの混合物を、22μlの反応混合物と混合して、0.05mMの濃度の3つのdNTP(dATP、dTTPおよびdGTP;dCTPなし)、100μCiの3000Ci/mmol(α−32p)dCTP(10μl)、l×クレノウフラグメント緩衝液(50mM Tris−HCl、pH 8.0,10mM MgCl,50mM NaCl)および8U クレノウフラグメント(3.82 U/μl;Gibco−BRL Life Technologies;Gaithersburg MD)を含む50μlの反応物を得た。この反応を室温で4時間行った。最大の標的長について、その反応を、1μlの2.5mM dCTPを添加することで追跡し、そして15分間室温でインキュベートし、続いてさらに37℃で15分間インキュベートした。取り込まれていないヌクレオチドおよびヘキサマーを、Qiagen Nucleotide Removal Kit(Qiagen)を用いて除き、そして精製された産物を、140μlの10mM Tris、pH 8.3中に2回溶出した。
【0146】
そのアレイへのハイブリダイゼーションについて、4つのメンブレンを、放射性標識された標的について、比較される2つのRNAサンプルの各々についてRNAの2つの濃度の各々について1つを使用した。cDNAフィルター(Genome Systems)を調製するために、そのフィルターを、残留の細菌残渣を減少させるために平底容器の水平振盪で、2×SSCおよび0.l%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の3回の交換において予備洗浄した。20×SSCは、3M NaCl、0.3M クエン酸Na−2HO、pH 7.0を含む。第一の洗浄を、室温で10分間500mlにおいて行った。第二および第三の洗浄を1リットルの予め暖めた(50℃)予備洗浄溶液中で、それぞれ10分間行った。
【0147】
予備ハイブリダイゼーションについて、そのフィルターを、ローラーボトルに移し、そして60mlの予め暖めた(42℃)の予備ハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、5×デンハルト試薬、0.5%SDS、100μg/ml
断片化させ、変性させたサケ精子DNA(Pharmacia;Piscataway NJ)および50%ホルムアミド(Aldrich;Milwaukee WI)を含む)中で1〜2時間42℃にて予備ハイブリダイズさせた。50×デンハルトの溶液は、1% Ficoll、1%ポリビニルピロリドンおよび1%ウシ血清アルブミン(滅菌濾過)を含む。
【0148】
ハイブリダイゼーションについて、予備ハイブリダイゼーション溶液を除去し、そして7mlの予め暖めた(42℃)ハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.5%SDS、100μg/ml断片化され変性させたサケ精子DNAおよび50%ホルムアミドを含む)を添加した。反復配列(例えばAlu反復)に起因するバックグラウンドハイブリダイゼーションを減少させるために、長い間隔を置いた反復性のエレメント(LINE)またはセントロメアDNA反復、変性ヒトゲノムDNA(1μg/mlストック濃度)を、沸騰水浴中で10分間変性させ、そして直ぐに最終濃度10μg/mlでハイブリダイゼーション溶液に加えた。同時に、標識された標的(280μl)を、沸騰水浴中で4分間変性させ、そして直ぐにハイブリダイゼーション溶液に加えた。ハイブリダイゼーションを、42℃で2〜48時間、代表的には18時間、ハイブリダイゼーションオーブンで、ローラーボトルを用いるかまたはプラスチックバッグ中にシールして行い、そして水浴中でインキュベートした。
【0149】
洗浄について、その温度をインキュベータオーブン(Techne HB−1D;VWR Scientific;San Francisco CA)において55℃に設定した。ハイブリダイゼーション溶液を注ぎ出し、そしてメンブレンを2回、50mlの2×SSCおよび0.1% SDSで、5分間室温で洗浄した。次いで、そのメンブレンを、100ml 0.l×SSCおよび0.1% SDSで洗浄し、そして10分間室温でインキュベートした。さらなる洗浄について、洗浄溶液(0.1×SSCおよび0.1% SDSを含む)を、予め50℃に暖め、そしてそのフィルターを40分間、100mlの洗浄溶液を有するローラーボトル中で洗浄した。次いで、そのフィルターを水平に振盪する平底容器に移し、そして1リットルの洗浄溶液中で20分間緩和な振盪下で洗浄した。そのフィルターを、100mlの予め暖めた0.1×SSCおよび0.1%SDSを含むローラーボトルに戻し、そして1時間インキュベートした。最後の洗浄溶液を除き、そしてそのフィルターを、2×SSC中で室温にて手短にリンスした。
【0150】
洗浄後、そのメンブレンを、3MM紙を用いて軽く乾燥し、そしてそのわずかに湿ったメンブレンをSARANラップ中に包装した。このメンブレンを、X線フィルムに曝露した。
【0151】
図1は、クローンアレイに対する差次的ハイブリダイゼーションを示す。4つすべての画像は、より大きなメンブレンの同じ部分についてのオートラジオグラムの拡大図を示す。
【0152】
各画像は、約4000の二連のスポットE.coliコロニーにわたる。その各々は、異なるESTクローンを有する。パネルAは、逆転写の間に放射標識したコンフルエントのヒトケラチノサイトからの1μgのポリARNAのハイブリダイゼーションを示す。約500の明らかにハイブリダイズするクローンが見られ得る。パネルBおよびCは、未処理(パネルB)またはEGFで処理した(パネルC)コンフルエントのヒトケラチノサイトのオリゴ(dT)プライムされたcDNAからのcDNA上にて行われた一対の恣意プライマーを用いたRAP−PCRフィンガープリントを示す。ハイブリダイズする遺伝子のパターンをは、パネルBおよびCにおいてほぼ同一であったが、(パネルAと比較すると)総ポリA+RNAを用いて見られるものとは全く異なっていた。1つの差次的に発現されるcDNAからの2つの放射標識されたコロニーは、矢印によって示される。次いで、この遺伝子の差次的発現を、特異的なRT−PCR(Trenkleら、Nucl.Acids Res.26:3883−3891(1998))によって確認した。
【0153】
図1Dは、コンフルエントのヒトケラチノサイトからのRNAにおいて行われた、異なる対の恣意プライマーを用いたRAP−PCRフィンガープリントを示す。ハイブリダイゼーションのこのパターンは、以前のプライマー対を用いて(パネルB)およびmRNAを用いて(パネルA)見出されるものとはほとんど完全に異なっており、ここで、パネルDとパネルAおよびパネルBとの間の重複するスポットは殆どなかった。
【0154】
これらの結果は、恣意的にサンプリングされた標的(これは、減少した複雑性を有する)が、標的として総メッセージを用いて検出可能ではないmRNAの検出を可能にすることを実証する。従って総メッセージ標的(これは、それらの含有量に基づいてmRNAを検出する)とは異なり、恣意的にサンプリングされた標的を使用して、あまり豊富ではないmRNAを検出し得る。
【0155】
(実施例II:RT−PCRによって生成された、恣意的にサンプリングされた標的は、EGFに対して応答して差次的に発現された遺伝子を検出する)
本実施例は、EGFを用いた細胞の処置の際の差次的な遺伝子発現を検出するための恣意的にサンプリングされた標的を生成するための、恣意プライマ−を用いたRT−PCRの使用を記載する。
【0156】
RT−PCRによって生成された、恣意的にサンプリングされた標的を使用して、差次的な遺伝子発現についてのアレイをプローブした(Trenkleら、Nucleic Acids Res.26:3883−3891 (1998))。RNA調製物について、不死化させたヒトケラチノサイト細胞株HaCaT (Boukampら、Genes Chromosomes Cancer 19:201−214 (1997))をコンフルエンスにまで増殖させて、そして2日間コンフルエンスに維持した。10%ウシ胎仔血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含む培地であるDMEMを、実験の1日前に交換した。EGF(Gibco−BRL)を、20ng/mlで添加したか、またはTGF−β(R&D Systems;Minneapolis MN)を5ng/mlで添加した。処置細胞および未処置細胞を、4時間後、溶解緩衝液(RLT緩衝液;Qiagen)の存在下でペトリ皿をかきとることによって採集し、そしてQiashredderカラム(Qiagen)を通してホモジナイズした。平均して7×10の細胞(100mm直径のペトリ皿中コンフルエントにまで増殖した)から、RNEASY総RNA精製キット(Qiagen)から、40μgの総RNAを得た。20mM Tris、10mM MgCl緩衝液pH8中のRNAを、0.08 U/μlのRNaseを含まないDNaseおよび0.32U/μlのRNaseインヒビター(両方ともBoehringer Mannheim Biochemicals;Indianapolis IN由来)とともに、37℃で40分間インキュベートし、そしてRNEASYキットを用いて再びきれいにした。このことは、フィンガープリントに寄与し得る少量のゲノムDNAを除去するために重要である。RNAの量を、分光学的に測定した。そしてRNAサンプルを、水中の400ng/μlに調整した。RNAサンプルを、アガロースゲル電気泳動によって質および濃度についてチェックし、そして−20℃にて保存した。
【0157】
RNAフィンガープリントについて、RAP−PCRを、標準的なプロトコルを用いて実施した(McClellandら、前出、1994)。逆転写を、一つのサンプルあたりで4つの濃度(1反応物あたり1000ng、500ng、250ngおよび125ng)およびオリゴd(T)プライマー(15マー)(Genosys)を用いて総RNAに対して行った。RNA(5μl)を、50mM Tris、pH8.3、75mM KCl、3mM MgCl,20mMジチオトレイトール(DTT)、各々0.2mMのdNTP、0.5μMのプライマー、および20UのMuLV逆転写酵素(Promega;Madison WI)を含む10μlの最終反応容量のために5μlの緩衝液と混合した。初期のRAP−PCR実験において逆転写酵素を含まないコントロールを含ませることによって、RNAサンプルを、DNA夾雑物についてチェックした。この反応を、5分間での25℃から37℃への勾配の後37℃で1時間行った。この酵素を、そのサンプルを5分間94℃に加熱することによって不活化し、そして新たに合成されたcDNAを、水中に4倍に希釈した。
【0158】
PCRを、恣意的配列(対A:GP14(GTAGCCCAGC;配列番号 )およびGP16(GCCACCCAGA;配列番号 )、対B:Nucl+(ACGAAGAAGAAGAG;配列番号 )およびOPN24(AGGGGCACCA;配列番号 ))の1対の2つの異なる10マーまたは11マーのオリゴヌクレオチドプライマーの添加後に行った。一般に、それらが少なくともいくつかのCまたはGの塩基を含むこと、プライマーダイマーを避けるためにその3’末端がそれら自身または反応物中の他のプライマーに対して相補的ではないこと、およびmRNAの同じ部分が異なるフィンガープリントにおいて増幅されないように配列中の異なるプライマーセットが選択されることを除いて、そのプライマーには何ら特定の制限はない。
【0159】
希釈されたcDNA(10μl)を、最終反応容量20μlについて、20mM Tris、pH 8.3、20mM KCl、6.25mM MgCl、各々0.35mMのdNTP、各々2μMのオリゴヌクレオチドプライマー、2μCi α−(32P)−dCTP(ICN;Irvine CA)および5 U AMPLITAQ DNAポリメラーゼStoffelフラグメント(Perkin−Elmer−Cetus ;Norwalk CT)を含む同じ容量の2×PCR混合物と混合した。サーモサイクリングを、94℃で1分間、35℃で1分間および72℃で2分間の35サイクルを用いて行った。
【0160】
増幅産物の3.5μlアリコートを9μlのホルムアミド色素溶液と混合し、85℃で4分間変性し、そして氷上で冷却した。2.4μlを、0.09M Tris−ホウ酸、0.002Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する1×TBE緩衝液で調整した。5%ポリアクリルアミド、43%尿素ゲルにロードした。同じRNAテンプレートの4つの異なる濃度から生じるPCR産物を、ゲル上で横に並べてロードした。
【0161】
電気泳動を、1,700Vで、または50〜70ワットの定電力で、キシレンシアノールトラッキング色素がゲルの底部に達するまで(約4時間)実施した。このゲルを減圧下で乾燥し、そしてKodak BioMax X線フィルム上に16〜48時間配置した。
【0162】
プローブアレイに対する標的として使用するためのRAP−PCR産物の標識化のために、RAP−PCRからの10μgまでのPCR産物を、QIAQUICK PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。これは、取り込まれなかった塩基、プライマー、およびプローブダイマー(40塩基対以下)を取り除く。DNAを、50μlの10mM Tris(pH8.3)中に回収した。
【0163】
α−(32P)−dCTPの取り込みを伴うランダムプライム合成を、本質的に実施例Iに記載のように実施した。簡単に述べれば、回収されたフィンガープリントDNAの10%(代表的には、5μl中約100ng)を、総容量14μlで、3μgのランダムヘキサマーオリゴヌクレオチドプライマーおよび各フィンガープリントプライマー0.3μgと合わせた。これを3分間沸騰させ、次いで氷上に配置した。
【0164】
ヘキサマー/プライマー/DNA混合物を、11μl反応混合物と混合し、0.05mMの3つのdNTP(dCTPを含まない)、50μCiの3000Ci/mmolのα−(32P)−dCTP(5μl)、1×クレノウフラグメント緩衝液(50mM Tris−HCl,10mM MgCl、50mM NaCl、pH8.0、および4Uクレノウフラグメント(Gibco−BRL)を含む)を含む25μlの反応物を得た。反応を、室温で4時間実施した。最大標的長のために、反応を、1μlの1.25mMのdCTPを添加することにより追跡し、そして25℃で15分間インキュベートし、続いて37℃でさらに15分間インキュベートした。取り込まれなかったヌクレオチド、ヘキサマー、およびプライマーを、Qiagen Nucleotide Removal Kit(Qiagen)を用いて除去し、そして精製産物を、140μlの10mMTri(pH8.3)の2つのアリコートを使用して溶出した。
【0165】
標的として使用するためのポリ(A)mRNAおよびゲノムDNAの標識化のために、ランダムヘキサマーをポリ(A)選択mRNAおよびゲノムDNAを標識するために使用した。ゲノムDNA(150ng)を、上記のRAP−PCR産物の標識化のために使用した同じプロトコルを使用して標識化した。27μlの容量中ポリ(A)mRNA(1μg)および9μgランダムヘキサマーを、70℃で2時間インキュベートし、そして氷上で冷却した。RNA/ヘキサマー混合物を、23μlのマスター混合物と混合した。これは、10μlの5×AMV反応緩衝液を含み、これは、最終容量50μlで、250mM Tris−HCl、pH8.5、40mM MgCl、150mM KCl、5mM DTT、1μlの3つのdNTP、各33mM(dATP、dTTP、dGTP;dCTPを含まない)、2μlのAMV逆転写酵素(20単位;Boehringer Mannheim)および10μl 3000Ci/mmol α−(32P)−dCTPを含む。この反応物を、室温で15分間インキュベートし、1時間47℃に立ち上げ、47℃で1時間保ち、そして47℃で別に30分間、1μlの33mM dCTPを用いて追跡した。標識化された産物を、上述のようにして精製した。
【0166】
アレイに対するハイブリダイゼーションのために、4つの膜を使用した。1つの膜は、比較されるべき2つのRNAサンプルの各々について2つのRNA濃度の各々に対する。cDNAフィルター(Genome Systems)を、平底容器で垂直に振盪して2×SSCおよび0.1%SDSを3回換えて洗浄し、残りの細菌細片を減少させた。最初の洗浄を、室温で10分間500mlで実施した。第二および第三の洗浄を、55℃に予め暖めておいた1リットルの前洗浄溶液で、各洗浄ごとに10分間実施した。
【0167】
プレハイブリダイゼーションについて、フィルターをローラーボトルに移し、そして、42℃に予め暖めておいた60mlプレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC,5×デンハート試薬、0.5%SDS、100μg/mlフラグメント化変性サケ精子DNA、および50%ホルムアミドを含む)中で、ハイブリダイゼーションオーブン中で42℃で1〜2時間、プレハイブリダイズした。
【0168】
ハイブリダイゼーションのために、プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、そして42℃に予め暖めておいた7mlのハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.5%SDS、100μg/mlフラグメント化変性サケ精子DNA、および50%ホルムアミドを含む)を添加した。AluエレメントおよびLineエレメントのような繰り返しに起因するバックグラウンドハイブリダイゼーションを減少させるために、剪断ヒトゲノムDNAを、沸騰水浴中で10分間変性させ、そしてその直後に最終濃度10μl/mlにまでハイブリダイゼーション溶液に添加した。10ng/mlポリ(dA)を添加し、放射性標識化標的中でオリゴd(T)ストレッチをブロックした。同時に、標識化された標的は、総容量280μlで、沸騰水浴中で4分間変性させ、そしてその直後にハイブリダイゼーション溶液に添加した。ハイブリダイゼーションを、42℃で2〜48時間、代表的には18時間、大きなローラーボトル中で実施した。
【0169】
洗浄のために、インキュベーターオーブン温度を68℃に設定した。ハイブリダイゼーション溶液を注ぎ出し、膜を、室温で5分間、50mlの2×SSCおよび0.1%SDSで2回、洗浄した。次いで、洗浄溶液を、100mlの0.1×SScおよび0.1%SDSに代え、そして室温で10分間インキュベートした。さらなる洗浄のために、洗浄溶液(0.1×SSCおよび0.1%SDSを含有する)を68℃に予め暖めた。膜を、ローラーボトルにおいて、100mlの洗浄溶液中で40分インキュベートし、次いで、フィルターを垂直に振盪する平底容器に移し、1リットル中で20分間穏やかに攪拌しながら洗浄した。フィルターを、予め68℃に暖めた100mlの0.1×SSCおよび0.1%SDSを含有するローラーボトル中に戻し、そして1時間インキュベートした。最終洗浄溶液を除去し、このフィルターを2×SSCで室温で簡単にリンスした。
【0170】
洗浄後、この膜を3MM濾紙でブロットし、加湿させながらSARANラップ中に包み、X線フィルムに露出した。この膜は、通常、十分に放射性であり、スクリーンへの1日曝露により、ESTクローンを有する18,432の細菌コロニーのアレイ上の上方の1000の産物が明示された。より弱い標的またはより薄いハイブリダイゼーション事象を、−70℃で2〜3日間、増感スクリーンを用いて可視化した。
【0171】
差次的発現の確認のために、低いストリンジェンシーのRT−PCRを用いた。差次的発現の最初の確認は、1サンプル当たり2つのRNA濃度の使用であった。両RNAサンプルにおける両RNA濃度で差次的発現を示したハイブリダイゼーション事象のみが期待される。
【0172】
I.M.A.G.E.協会クローンの70%より多くが、GenBankデータベースに寄託された5’末端もしくは3’末端、または両方からの単一路の配列読みを有する。以前の配列情報が利用可能でない場合、クローンは、Genome Systemsから順に並べられて、配列決定され得る。MacVector 6.0(Oxford Molecular Group;Oxford UK)を用いて18〜25塩基長のPCRプライマーを誘導するために、配列を使用した。一般に、50〜250塩基対のPCR産物を生成し、そして少なくとも60℃の融解温度を有するように、プライマーを選択した。
【0173】
上記のRAP−PCRプロトコルにおける条件と同じ条件下で、オリゴd(T)プライマーまたはランダムな9マーのプライマーの混合物(Genosys)を用いて、逆転写を実施した。PCR反応を、以下に記載の2対の特異的プライマー(18〜25マー)を用いて実施した。PCR条件は、1.5μMの各プライマーを使用したことを除いては、RAP−PCRフィンガープリントプロトコルにおける条件と同じであった。低いストリンジェンシーの熱プロフィールを使用した:94℃で40秒、47℃で40秒、および72℃で1分(3つの別個の反応管中で19、22、および25サイクル)。反応は、異なるサイクル数で3セットの管中で実施した。なぜなら、転写物の豊富さ、プライマー対の性能、およびPCR産物の増幅能は変動し得るからである。PCR産物を、5%ポリアクリルアミドおよび43%尿素ゲル上で上述と同じ条件下で流した。ゲルを乾燥し、X線フィルムに18〜72時間露出させた。フィンガープリント中の他の恣意的産物間の不変性を、相対的定量の信頼性を示すために、内部コントロールとして使用した。
【0174】
プライマー対(Genosys)を、差次的発現の確認のために使用した。GenBank登録番号H11520(90ヌクレオチド産物)について;プライマーA、AATGAGGGGGACAAATGGGAAGC(配列番号 );プライマーB、GGAGAGCCCTTCCTCAGACATGAAG(配列番号 )。TSC−22遺伝子(GenBank登録番号U35048、H11073、H11161;179ヌクレオチド産物)について;プライマーA、TGACAAAATGGTGACAGGTAGCTGG(配列番号 );プライマーB、AAGTCCACACCTCCTCAGACAGCC(配列番号 )。GenBank登録番号R48633(178ヌクレオチド産物)について;プライマーA、CCCAGACACCCAAACAGCCGTG(配列番号 );プライマーB、TGGAGCAGCCGTGTGTGCTG(配列番号 )。
【0175】
分析されるアレイは、18,432のE.coliコロニーを含み、それぞれは、異なるI.M.A.G.E.協会ESTプラスミド(www−bio.llnl.gov/bbrp/image/image.html)を有し、22×22cm膜(Genome Systems)上で2回スポットした。Genome Systemsアレイは、それらが単位コスト当たりこれまでの最大数のESTを含有する点で有利である。標的調製のためのRNAフィンガープリンティング。
【0176】
EGFまたはTGF−βで4時間処理した場合のケラチノサイト(HaCat)における差次的遺伝子発現を探索するために、RAP−PCR増幅を実施した(Boukampら、前出、1997)。これらの実験を、コンフルエントなケラチノサイトにおいてEGFおよびTGF−β処理により差次的に調節された遺伝子を検出するために設計した。RAP−PCRを使用して、正常ケラチノサイトまたは不死ケラチノサイトにおける遺伝子の約1%がEGFに応答し、そしてより少ない遺伝子が、この時間枠でTGF−βに応答した。
【0177】
複数のRNA濃度および2セットの恣意的に選択されたプライマーを用いてTGF−βまたはEGFで処理したコンフルエントなケラチノサイト由来のRNAのRAP−PCRフィンガープリントを、図2に示す。レーン1、2、3、および4において、それぞれ250、125、62.5、および31.25ngのRNAに対してオリゴdTプライマーを用いて、逆転写を行った。RNAは、示されるように、未処理HaCaT細胞、TGF−β処理HaCaT細胞、またはEGF処理HaCaT細胞由来であった。2セットのプライマー、GP14およびGP16(パネルA)、またはNuc1+およびOPN24(パネルB)を用いて、RAP−PCRを実施した。2つの差次的に増幅されたRAP−PCR産物のサイズを、矢印で示す(317ヌクレオチドおよび291ヌクレオチド)。
【0178】
図2Aに示した第一のフィンガープリントにおいて、2つの差次的に調節された産物が検出された。これらをクローニングシ、配列決定した。これらの2つの産物のサイズ、291ヌクレオチドおよび317ヌクレオチドを、矢印と共に示す(図2Aを参照のこと)。使用したGenome Systemsアレイは、これらの2つのクローンの存在に基づいて選択した。このフィンガープリントを用いて、アレイ中で差次的に調節された遺伝子が、RAP−PCR産物を単離、クローニング、および配列決定することなく同定され得ることを実証した。図2Aに示したフィンガープリントおよび図2Bに示した第二のフィンガープリント(これは、処理に応じて差次的な調節を提示しなかった)もまた用いて、フィンガープリント上では見えない、薄い差次的に調節された産物が、それにもかかわらず、アレイアプローチによって観察され得ることを実証した。
【0179】
得られた結果は、再現性が高かった。ゲル電気泳動を用いて、異なるRNA濃度で実施された単一の処理条件からのフィンガープリントのいずれにおいてもみることができる、約100のバンド間で差異がなかった(図2を参照のこと)。同様に、図2Aのフィンガープリンとに由来する標的によってハイブリダイズした上方の1000クローンの99%より多くが、両方の投入RNA濃度でみることができた。さらに、99%より多くの産物が、単一のRNA濃度での2つの処理条件(+EGFおよび−EGF)間で同じであった。これらの結果は、RAP−PCR増幅における上方の1000のPCR産物間で高い再現性を示した。
【0180】
未処理コントロールおよびEGF処理サンプルをさらに特徴付けた。図2に示したRAP−PCRフィンガープリントを、上述のようにα−(32P)−dCTPを用いてランダムプライム合成によって、高い比活性の放射性の標的に変換した。2つの条件の各々について、2つの異なる濃度でのRNAから生成されたEGF処理および未処理のフィンガープリントを、2つの異なるフィンガープリンティングプライマー対の各々についてのランダムプライム合成によって、標的に変換した。次いで、これらの放射性標識したフィンガープリント標的を用いて、各々が18,432 I.M.A.G.E.協会cDNAクローンを含む同一アレイのセットにハイブリダイズさせることによってプローブした。コントロールとして、総ゲノムDNAおよび総ポリ(A)mRNAもまた、上述のようにランダムプライムすることにより標識し、そして同一アレイ上での標的として使用した。
【0181】
RAP−PCRフィンガープリント標的、総mRNA標的およびゲノム標的を、Genome Systemsコロニーアレイのレプリカーゼに対して個々にハイブリダイズさせた。ゲノムDNAを、ブロッキング剤として、および非常に反復性の高い配列に対する競合剤として使用した。0.1×SSCおよび0.1%SDS中での68℃での洗浄は、膜上の公知のAluエレメントに対する事実上全てのハイブリダイゼーションを除いた。これは、おそらく、Aluエレメントが、この洗浄ストリンジェンシーで互いに十分に異なるためである。
【0182】
各膜の同じ側の半分からのオートラジオグラムを図3に示す。提示された全ての画像は、放射性標識DNAでのハイブリダイゼーションによりプローブされた同じフィルター(Genome Systems)の複製物の下側の半分のオートラジオグラムである。パネルAおよびBは、同じプライマー(GP14およびGP16)を用いて生成され、そして未処理(パネルA)HaCaT細胞またはEGF処理(パネルB)HaCaT細胞に由来する2つのRAP−PCR反応のハイブリダイゼーションを示す。差次的なハイブリダイゼーションシグナルを示す3つの二重スポットクローンが、各アレイ上に標記される。クローンおよび対応する遺伝子のGenBank登録番号は、以下である:H10045およびH10098(vav−3に対応する);ならびにAF067817(四角)(Katzavら、EMBO J.8:2283−2290(1989));H28735、未知遺伝子、ヘパラン硫酸3−O−スルホトランスフェラーゼ−1に類似、AF019386(丸)(Shworalら、J.Biol.Chem.272:28008−28019(1997);およびR48633、未知遺伝子(菱形)。
【0183】
図3は、アレイに対するこれらのフィンガープリントからの標的のハイブリダイゼーションの結果を示す。図3Aおよび図3Bに示されるように、291ヌクレオチド(vav−3、四角で標記)および317ヌクレオチド(ヘパラン硫酸N−スルホトランスフェラーゼ(N−HSST)に類似、円で標記)のRAP−PCRフラグメントに対応する並べられたクローンを示す。これらのRAP−PCRフラグメントの配列を決定した。元のフィンガープリントゲル上で可視化され得ない差次的に調節された遺伝子もまた、このアレイ上に示される(菱形で標記)。
【0184】
図3Aと3Bとを比較すると、EGFでの処理に際し、vav−3について10倍より大きいダウンレギュレーションが観察された。H28735に対応する遺伝子は、EGF処理で10倍より大きくアップレギュレートされた。R48633に対応する遺伝子は、EGF処理で約3倍アップレギュレートされた。EGFに応答する遺伝子発現におけるこれらの変化は、RT−PCRにより独立に確認された。
【0185】
これらの結果は、RAP−PCRが、メッセージの豊富さとはほとんど独立して、mRNAの集団をサンプリングすることを示す。これは、あまり豊富ではないクラスのメッセージが、豊富なクラスよりかなり高い複雑度を有し、恣意プライマーが良好な一致をより見出すようにするからである。ディファレンシャルディスプレイとは異なり、RAP−PCRは、2つのこのような恣意的プライミング事象を要求し、おそらく、RAP−PCRを複雑なクラスに向かってずらす。
【0186】
全体として、これらのデータは、細胞中のmRNA集団の大部分(<20,000mRNA)が、わずか10程度のRAP−PCRフィンガープリント中に見出され得ることを示唆する。この結果は、この事象が標準的なゲル電気泳動アプローチを用いて検出され得ない場合でさえ、差次的な遺伝子調節を、組み合わせたフィンガープリンティングおよびアレイアプローチにより検出し得ることを示す。
【0187】
図3Cは、パネルA中と同じRNAであるが、異なるプライマー対、Nucl+およびOPN24とともに用い、RAP−PCR標的とハイブリダイズしたアレイを示す。図3Cに示されるように、異なるセットのプライマーを用いることは、ハイブリダイズする遺伝子の完全に異なるパターンを生じる。図3Dは、1μgのポリ(A)−選択されたmRNAの逆転写により生成されたcDNAとハイブリダイズされたアレイを示す。図3Eは、ランダムプライミングを用いて標識したヒトゲノムDNAとハイブリダイズしたアレイを示す。
【0188】
データは多くの方法で分析した。最初に、各標的によりハイブリダイズされたクローン間の重複から推定がなされた。異なるタイプの標的のすべての間のすべての対をなす比較において、最も強くハイブリダイズした500のクローン間で5%より少ない重複があった(図3A、3B、3D、および3Eを比較のこと)。ゲノム標的によりハイブリダイズされた上方の500のクローン(Alu反復を含むことが知られたほとんどすべてのクローンを含んだ)のうち、5%より少ないものが、フィンガープリント標的または総ポリ(A)mRNA標的によりハイブリダイズされた上方の500のクローンと重複した。これは、ゲノム標的の場合を除いて、散在する反復に対する有意なハイブリダイゼーションがなかったことを示す。異なるプライマーを用いて生成された2つのRAP−PCRフィンガープリントによりハイブリダイズされたクローン間の重複は、3%より少なく、そしてポリ(A)mRNA標的とのいずれかのフィンガープリントの重複は、両方とも3%より少なかった。従って、このフィンガープリントからの標的を用いて検出されたcDNAの大部分は、総mRNA標的を用いて検出され得なかった。これらの結果は、RAP−PCRが、メッセージの豊富さとはほとんど独立に、mRNAの集団をサンプリングすることを示す。これは、あまり豊富ではないクラスのメッセージが、豊富なクラスよりかなり高い複雑度を有し、恣意プライマーが良好な一致をより見出すようにするからである。ディファレンシャルディスプレイとは異なり、RAP−PCRは、2つのこのような恣意的プライミング事象を要求し、おそらく、RAP−PCRを複雑なクラスに向かってずらす。
【0189】
全体として、これらのデータは、細胞中のmRNA集団の大部分(<20,000mRNA)が、わずか10程度のRAP−PCRフィンガープリント中に見出され得ることを示唆する。
【0190】
恣意プライマー(図2)の両方のセットから誘導された標的を使用して、約3倍のディファレンシャルハイブリダイゼーションの閾値で、30個の差次的にハイブリダイズするcDNAクローンの全てを、約2000個のハイブリダイズするコロニーの中から検出した。これらの22個の差次的にハイブリダイズするクローンは、両方のRNA濃度で差次的ハイブリダイゼーションを示した。これらの22個を、さらに、RT−PCRにより特徴付けた。EGF処理に応答しての発現において2倍より高い差異を示す差次的に発現される遺伝子を、表1に示す。表1に示される結果については、差次的発現を低いストリンジェンシーのRT−PCRにより確認した。左欄はESTクローンの受託番号を提供する(5’または3’、あるいは入手可能である場合には両方)。右欄は、対応する遺伝子または最も近いホモログを与える。ホモロジーが非常に低い場合には、この遺伝子を未知であるとみなした。ホモロジーについてのカットオフ(cutoff)は、tblastxにおいてp<e−20であった。
【0191】
【表1】
Figure 2004517602
1つの濃度のみでレギュレートされたように思われる8個の擬陽性クローンをさらに特徴付けた。これら8個のうち、5個の擬陽性クローンは、1つの濃度で差次的ハイブリダイゼーションを示し、他の濃度についてはメンブレン上に存在したが、レギュレートされなかった。この型の擬陽性の最もありそうな供給源は、メンブレンである。各クローンは2回スポットされるが、時折、1つのメンブレンは他の3つのメンブレンよりも、これらのクローンについて、両方のスポットにおいて、実質的により高いかまたは低いDNAを受けた可能性がある。しかしながら、この潜在的な差異は、容易に検出され、そしてまれであり、2000個を超えるクローンにおいてほんの5回生じた。他の3個の擬陽性クローンは、1つの処理条件下のみ、およびRAP−PCRのために使用された1つのRNA濃度でのみ、ハイブリダイズした。これらの3個の擬陽性クローンは差次的に発現された遺伝子であり得たか、または種々のPCR産物からの擬陽性であり得る。しかし、擬陽性の数は非常に少なく、そして異なる開始濃度のRNAのPCRから誘導される2個の標的の結果を比較することにより、容易に同定された。
【0192】
差次的発現は、低ストリンジェンシーのRT−PCRを使用して確認した。両方のインプットRNA濃度での差次的発現が示されたハイブリダイゼーション事象の場合のみ、さらに特徴付けられた。mRNAの多くが珍しく、そして豊富さが乏しいことが予想されたので、差次的発現の確認のために、ノザンブロッティング(これは、RT−PCRよりも感度が非常に低い)よりも特定の標的を用いるRT−PCRを使用した。I.M.A.G.E.コンソーシアムからのアレイを使用する利点の一つは、70%を超えるクローンが、GenBankデータベースに寄託された、5’末端または3’末端からか、あるいは両方からのシングルパス配列読み取り(single pass sequence read)を有することである。
【0193】
ある配列がデータベース中で利用可能であるクローンを、さらなる特徴付けのために選択した。差次的にレギュレートされるアレイ上の遺伝子を示す22個のESTのうちの5個は配列決定されておらず、そして残りの17個のESTのうちの2個は同一の遺伝子由来であった。残りの15個の特有の配列決定された遺伝子を、オーバーラップするクローンからの複数の読み取りおよびより長い配列からより高い質の配列を引き出すために、データベース中の他の配列とともに整列させた。UniGeneデータベースクラスターは、同一の遺伝子由来と考えられるヒトおよびマウスESTを集めている(Schuler、J.Mol.Med.75:694〜698(1997))。このデータベースは、同一のmRNAの異なるクローンからの混成配列をアセンブリするプロセスを非常に助ける(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/index.html)。次いで、これらの混成配列を、RT−PCRのためのプライマーを選択するために使用した。
【0194】
各遺伝子について、低ストリンジェンシーの条件下でのRT−PCRにおいて、RAP−PCRフィンガープリントを生成するために使用されるプライマーに類似した、2つの特異的なプライマーを使用した。目的の産物に加えて、恣意的産物のパターン(これは非常に不変的であり、そしてRNAの質および量、ならびに逆転写効率についての内部標準として振舞う)を生成した(Mathieu−Daudeら、前述、1998)。PCRサイクルの数は、開始テンプレートmRNAの豊富さにおける差異を補うために、産物の豊富さに従って14〜25サイクルの間で調整した。このことは、PCRの間の大量の産物の再ハイブリダイゼーションがそれらの増幅を阻害し、そして産物の豊富さにおける差異がPCRサイクルの回数が増加するに従い減少するので、必須である(Mathieu−Daudeら、Nucleic Acids Res.24:2080〜2086(1996))。
【0195】
低ストリンジェンシーのRT−PCR実験により、図2AのRAP−PCRフィンガープリントで同定し、かつcDNAアレイに対する差次的ハイブリダイゼーションを示した、2つの転写物の差次的発現を確認した(図3A対3Bを比較のこと)。これらの差次的に発現された遺伝子の1つは、vavプロトオンコジーンファミリーの新規なファミリーメンバーに対応する(Katzavら、前出、1989;Katzavら、Crit.Rev.Oncog.6:87〜97(1995);Bustelo、Crit.Rev.Oncog.7:65〜88(1996);RomeroおよびFischer、Cell Signal.8:545〜553(1996))。他の差次的に発現された遺伝子は、ヘパリン硫酸3−O−スルフォトランスフェラーゼ−1に対するホモロジーを有する(Shworakら、前述、1997)。
【0196】
他の13個の差次的に発現されたものもまた試験し、そして低ストリンジェンシーのRT−PCRを使用して11個を確認した。差次的に発現された遺伝子のいくつかを図4に示す。逆転写を2つのRNAの濃度で行った(500ng、左欄;250ng、右欄)。この反応物を水で4倍に希釈し、そして4分の1を異なるサイクル数での低ストリンジェンシーのRT−PCRのために使用した。このRT−PCR産物をポリアクリルアミド−尿素ゲルで分離した。コントロールに対するバンドを示す(22サイクル);GenBank寄託番号H11520に対するバンド(22サイクル);TSC−22に対するバンド(GenBank寄託番号H11073およびH11161に対応する)(19サイクル)(Jayら、Biochem.Biophys.Res.Commun.222:821−826(1996);Dmitrenkoら、Tsitol.Genet.30:41−47(1996);Ohtaら、Eur.J.Biochem.242:460−466(1996));およびGenBank寄託番号R48633に対するバンド(19サイクル)。H11520およびTSC−22に対応する遺伝子は、EGF処理で約8〜10倍アップレギュレートされる。R48633に対応する遺伝子は、EGF処理で約3倍アップレギュレートされた。
【0197】
確認されなかった2個の差次的に発現される遺伝子のうち、1個は増幅不可能であることが証明された。他方の遺伝子は、産物を生じたが、RT−PCRにより分析すると差次的に調節されないようであった。
【0198】
RAP−PCR標的は、まれなあまり豊富ではないmRNAの検出で非常に有効であった。クローンのセットにハイブリダイズされた各々のフィンガープリントは、オポリ(A)選択されたmRNAから誘導された標的によりハイブリダイズされたセットとはほとんど完全に異なる(図3を参照のこと)。さらに、多数の他のプライマー対、メンブレン、およびRNA供給源は、任意の2つのフィンガープリントによりハイブリダイズされたクローン間か、またはフィンガープリントと総ポリ(A)−選択されたcDNA標的との間で、一貫して、5%未満の重複を示した。差次的に発現されたvav−3 mRNA(これはvavオンコジーンファミリーの新規のメンバーである)の検出を、ポリ(A)−選択されたRNAのノザンブロットを使用して試みた。1細胞あたり2、3コピーの等量まで系列希釈したベクターを検出し得るにもかかわらず、vav−3 mRNAはノザンブロットで検出不可能であったが、RT−PCRは発現を確認した。G3PDHコントロールを使用して、ノザンブロットに使用される条件がコントロール遺伝子を検出し得ることを確認した。それゆえ、vav−3は、RAP−PCRフィンガープリントにおいて顕著なバンドとして表されるあまり豊富ではないメッセージであるようである。
【0199】
ESTデータベース中でRAP−PCR標的により検出されるcDNAのホモログの頻度を決定した(>98%同一性)。これを同一のメンブレン上の他のcDNAのランダムセットに対するホモログの頻度と比較した。RAP−PCRフィンガープリントが共通のmRNAに非常に偏っていたならば、部分的には、基準化されていないかまたは不完全に基準化されたcDNAライブラリーに由来するので、その多くはESTデータベース中に頻繁に生じる。しかし、RAP−PCRにより検出されたcDNAは、無作為に選択されたcDNAについての頻度に匹敵するESTデータベースにおける頻度を有した(これは、クローンがデータベース中で固有であった場合を含む)。これらの結果は、RAP−PCRにより生じた、恣意的にサンプリングした標的によるサンプリングは、少なくとも、アレイを構築するために使用した部分的に基準化したライブラリーの無作為サンプリングと同程度に良好であり、そして総mRNA標的のような標的について得られたものとは非常に異なることを示す。
【0200】
これらの結果は、RT−PCRおよび恣意プライマーを使用して生成された恣意的にサンプリングされた標的が、EGFに応答して差次的に発現される遺伝子を検出し得ることを実証する。
【0201】
(実施例III)
(ディファレンシャルディスプレイにより生成される、恣意的にサンプリングされた標的は、EGFに応答して差次的に発現される遺伝子を検出する)
本実施例は、恣意的にサンプリングされた標的を生成するためのディファレンシャルディスプレイの使用およびEGFに応答して差次的に発現される遺伝子の検出を示す。
【0202】
RNAを、実施例IIに記載されるように、ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTから調製した。簡単にいうと、細胞をコンフルエンスまで増殖させ、そしてコンフルエンスで2日間維持した。培地を実験の1日前に交換した。EGF(Gibco−BRL)を20ng/mlで添加した。4時間後に処置細胞および非処置細胞を収集し、そして総RNAを、RNEASY総RNA精製キット(Qiagen)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、調製した。残留するゲノムDNAを取り除くために、抽出した総RNAをRNaseフリーのDNase(Boehringer Mannheim)で処理し、そしてRNEASYキットを使用して再度洗浄した。この精製RNAを、水で400ng/ulに調整し、そしてアガロースゲル電気泳動により質をチェックした。
【0203】
標準ディファレンシャルディスプレイのために、各々アンカーオリゴ(dT)プライマー(0.2μM)と共に、各RNA鋳型を20μlの反応系あたり4つの異なる濃度(800、400、200および100ng)を使用することを除いて、RNAIMAGEキット(GenHunter Corporation;Nashville TN)、AMPLITAQ DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer−ABI;Foster City CA)およびα−(32P)−dCTPを補充した材料を使用して、製造業者の説明書に従って、ディファレンシャルディスプレイを行った。このPCR反応系は、2μM dNTP(総量4μMについては、cDNA混合物からの繰越を含む)、0.2μMの各プライマー、および10分の1の新規に合成したcDNA(これは80、40、20および10ngのRNAに対応する)を含有した。アンカーオリゴ(dT)プライマーを、4つの異なる恣意プライマーを用いて可能な全ての組み合わせで使用した。用いたアンカーオリゴ(dT)プライマーは、H−T11G(HTTTTTTTTTTTG;配列番号 );H−T11A(HTTTTTTTTTTTA;配列番号 );およびH−T11C(HTTTTTTTTTTTC;配列番号 )であった。ここで、HはAAGCであり、これは、プライマーが特定の場所にとどまることを確実にするためのクランプとして使用される恣意的配列であり、引き続いてのPCR工程で高いTmを有する。使用した恣意プライマーは、H−AP1(AAGCTTGATTGCC;配列番号 );H−AP2(AAGCTTCGACTGT;配列番号 );H−AP3(AAGCTTTGGTCAG;配列番号 );およびH−AP4(AAGCTTCTCAACG;配列番号 )であった。
【0204】
改変型ディファレンシャルディスプレイについては、反応系10μlあたり4つの異なる濃度の各RNA鋳型(1000、500、250および125ng)を使用して逆転写を行った。この反応混合物は、1.5μMオリゴ(dT)アンカープライマーAT15A、GT15GおよびT13V、50mM Tris(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl、20mM DTT、各々0.2mMのdNTP、8U RNaseインヒビター(Boehringer Mannheim)および20U MuLV逆転写酵素(Promega)を含んだ。アンカープライマーはAT15A(ATTTTTTTTTTTTTTTA;配列番号 );GT15G(GTTTTTTTTTTTTTTTG;配列番号 );およびT13V(TTTTTTTTTTTTTV;配列番号 ;ここで、VはA、GまたはCである)であった。この反応混合物を、25℃から37℃へ5分間かけて変化させ(ramp)、37℃で1時間保持し、そして最終的には酵素を94℃で5分間不活化した。新規に合成したcDNAを水で4倍に希釈した。
【0205】
10μlの希釈したcDNA(これは250、125、62.5および31.25ngのRNAに対応する)に、10μlの反応混合物を添加して20μlの最終反応容量(これは、2μMアンカーオリゴ(dT)プライマー、0.4μM恣意プライマー、KA2(GGTGCCTTTGG;配列番号 )またはOPN28(GCACCAGGGG;配列番号 )のいずれか、2.5単位AMPLITAQ DNAポリメラーゼStoffelフラグメント(Perkin Elmer−ABI)、2μCi α−(32P)−dCTP、dNTP各175μM、10mM Tris(pH8.3)、10mM KClおよび3.125mM MgClを含有する)を得た後、PCRを行った。これらの濃度は、逆転写反応からの持ち越し分は含まない。反応を、94℃で40秒間、40℃で1分40秒、そして72℃で40秒の35サイクルでサーマルサイクルを行った。
【0206】
4つの異なる濃度の同一のRNA鋳型から生じるPCR産物のアリコートを、実施例IIに記載されるように、5%ポリアクリルアミドゲル上に並べて示し、そしてオートラジオグラフィーにより可視化した。
【0207】
アレイをプローブするための標的として使用するためにディファレンシャルディスプレイ産物の標識のために、ディファレンシャルディスプレイ産物のランダムプライム化標識を、実施例IIに記載されるように行った。ディファレンシャルディスプレイPCR反応物(14μl)を、QUIAQUICK PCR Purification KIT(Qiagen)を使用して精製し、そしてDNAを50μlの10mM Tris(pH8.3)中に回収した。ランダムプライム合成を、標準的プロトコールを使用して行った。簡単に言うと、5μlの回収したディファレンシャルディスプレイ産物を、3μgのランダムへキサマーと合わせ、3分間煮沸し、そして氷上に置いた。ヘキサマー/DNA混合物を、反応混合物と合わせて、0.05mMの3種のdNTP(dCTPを除く)、50μCiの3000Ci/mmol α−(32P)−dCTP、1×Klenowフラグメント緩衝液、および4UのKlenowフラグメント(Gibco−BRL)を含有する25μlの反応系を得た。この反応を室温で4時間行い、1μlの1.25mM dCTPを添加することにより室温で15分間チェイスし、そしてさらに15分間37℃でインキュベートした。組み込まれていないヌクレオチドおよびヘキサマーをQiagen Nucleotide Removal Kitを用いて取り除き、そして精製産物を140μlの10mM Tris(pH8.3)の2個のアリコートを使用して溶出した。
【0208】
アレイへのハイブリダイゼーションを、本質には実施例IおよびIIに記載されるように行った。簡単にいうと、cDNAメンブレン(Genome Systems)を、残余の細菌性細片を減少するための水平方向振盪平底容器中で、2×SSCおよび0.1% SDSを含有する予備洗浄溶液を3回交換して予備洗浄した。1回目の洗浄は、500mlの予備洗浄緩衝液を室温で10分間使用した。2回目および3回目の洗浄は、各々、55℃まで予め加温した1リットルの予備洗浄溶液中で、10分間行った。
【0209】
このメンブレンを大型のローラービンに移し、そして予め42℃まで加温した60mlのプレハイブリダイゼーション溶液(これは6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDS、100μg/mlフラグメント化変性サケ精子DNAおよび50%ホルムアルデヒドを含有する)中で、1〜2時間の間、42℃でプレハイブリダイズさせた。
【0210】
プレハイブリダイズ溶液を取り除き、そして予め42℃まで加温した10mlのハイブリダイゼーション溶液(これは6×SSC、0.5%SDS、100μg/mlフラグメント化変性サケ精子DNAおよび50%ホルムアルデヒドを含有する)をこのボトルに添加した。AluおよびLineエレメントのような反復(これはヒトゲノムDNAに共通である)に起因するバックグラウンドハイブリダイゼーションを減少するために、煮沸水浴で10分間変性させ、そしてすぐに10μg/mlの終濃度でハイブリダイゼーション溶液を添加した。10ng/mlポリ(dA)の1アリコートを添加して、放射標識標的中のオリゴ(dT)ストレッチをブロックした。同時に、標識した標的を煮沸水浴中で4分間変性し、そしてすぐにハイブリダイゼーション溶液を添加した。このハイブリダイゼーションは、42℃で18〜20時間行った。
【0211】
ハイブリダイゼーションに続いて、このハイブリダイゼーション溶液を注ぎだして、そしてメンブレンを6回の洗浄溶液の交換で2〜3時間にわたって徹底的に洗浄した(これはローラーボトルから水平方向に振盪する平底容器へメンブレンを移し、そしてローラーボトルに戻す工程を包含する)。この洗浄のストリンジェンシーは、2×SSCおよび0.1%SDS(室温)から、0.1×SSCおよび0.1%SDS(64℃)へと段階的に増加させた。この個々の洗浄は、全てのメンブレンについて、正確に同一の示された温度に維持した。最後の高ストリンジェンシーな洗浄は少なくとも40分であり、全てのボトルにおいて正確に平衡化した温度を確保した。この最終の洗浄溶液を取り除き、そしてメンブレンを2×SSCで室温で簡単にリンスし、3MMの紙でブロッティングし、湿気を帯びている間にSARANラップで覆い、そしてKodak Biomaxフィルムに対して配置した(Eastman−Kodak;Rochester,NY)。
【0212】
低ストリンジェンシーのRT−PCRを使用して差次的発現を確認した。確認の最初のレベルは1サンプルあたり2つのRNA濃度の使用であった。両方のRNAサンプルにおいて両方のRNA濃度で差次的発現を示すハイブリダイゼーション事象のみをさらに特徴付けた。
【0213】
Genome Systems(アレイの商業的供給元)から入手可能したヌクレオチド、または配列決定したヌクレオチド配列を用いて、18〜25塩基長のPCRプライマーを誘導した(MacVector 6.0(Oxford Molecular Group)を使用)。一般に、選択した、100〜250塩基対のPCR産物を生成するプライマーは、少なくとも60℃の融解温度を有し、そして好ましくは、ファミリーメンバーをサンプリングする可能性を減少させるように、mRNAのポリアデニル化部位に近接して配置された。
【0214】
逆転写を、サンプルあたり2つのRNA濃度およびオリゴ(dT15)プライマー(TTTTTTTTTTTTTTT;配列番号 ;Genosys)を使用して総RNAに対して行った。反応物は、1lあたり100ngおよび50ngの総RNA、0.5μMオリゴ(dT15)プライマー(配列番号 )、50mM Tris、pH8.3、75mM KCl、3mM MgCl、20mM DTT、0.2mMの各dNTP、0.8U/μl RNaseインヒビター(Boehringer Mannheim)および2U/μlのMuLV−逆転写酵素(Promega)を含んだ。反応物を、25℃から37℃まで急激に上げ、そして37℃で1時間維持した。反応物を94℃で5分間加熱することにより、酵素を不活化し、そして新たに合成したcDNAを水で4倍に希釈した。
【0215】
希釈したcDNA(10μl)を、2×PCR混合物(20mM Tris、pH8.3、20mM KCl、6.25mM MgCl、0.35mMの各dNTP、3μMの各特異的プライマー、2μCi α−(32P)−dCTP(ICN,Irvine,CA)および2UのAMPLITAQ DNAポリメラーゼStoffelフラグメント(Perkin−Elmer−Cetus))と20μlの最終反応容量に混合した。低ストリンジェンシーサーマルプロファイルは、以下を使用した:94℃で40秒、40℃で40秒、および72℃で1分、別個のチューブで17サイクルおよび19サイクル。この反応物を、異なるサイクル数で2セットのチューブで行った。なぜなら、転写物の量、プライマー対の性能およびPCR産物の増幅能力は変化し得るからである。PCR産物を上記と同じ条件下で5%ポリアクリルアミドおよび43%尿素ゲル上で泳動した。このゲルを乾燥させて、18〜72時間ホスホルイメージャースクリーン上に置き、そしてSTORMホスホルイメージャー(Molecular Dynamics;Sunnyvale CA)で読みとった。フィンガープリントにおける他の恣意的産物の間の不変性を内部コントロールとして使用して、相対量の信頼性を示した。差次的に調節した遺伝子あたり4セットの反応物からの遺伝子特異的産物を、IMAGEQUANTソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用して定量した。
【0216】
プライマー対を使用して、差次的発現を確認した。
【0217】
【表3】
Figure 2004517602
総RNAを、実施例IIに記載のように(Boukampら、前出、1997)、不死化HaCaTケラチノサイト(EGF処理およびEGF未処理)から得た。試行した最初の差次的ディスプレイプロトコルは、RNAイメージキット1(cut G50’;GenHunter。アンカープライマー、オリゴ(dT)−G(H−T11G;配列番号 )、オリゴ(dT)−C(H−T11C;配列番号 )またはオリゴ(dT)−A(H−T11A;配列番号 ))を逆転写のために使用し、次いで、各cDNAを、4つの差次的恣意プライマー(H−AP1(配列番号 )、H−AP2(配列番号 )、H−AP3(配列番号 )、およびH−AP4(配列番号 ))と組み合わせて、PCRのために使用した。
【0218】
図5に示されるように、フィンガープリントを、反応の特性を決定するために、変性ポリアクリルアミドゲル上で分離した。差次的ディスプレイ反応物をRNAIMAGEキットプロトコル(GenHunter Corporation)を使用して、4つの異なる開始濃度(800、400、200および100ngの総RNA)を使用したことを除いて、製造業者の示唆に従って行った。次いで、この材料の1/10をPCRの使用のために使用した。アンカーしたオリゴ(dT)プライマーH−T11C(配列番号 )を、示したように、異なる2つの恣意プライマー(H−AP3(配列番号 )およびH−AP4(配列番号 ))とともに使用した。恣意プライマー、H−AP4(配列番号 )は、2つの異なるアンカーオリゴ(dT)プライマー、H−T11C(配列番号 )およびH−T11A(配列番号 )とともに使用した。恣意プライマーまたはアンカーオリゴ(dT)プライマーのいずれかを共有する反応物は、可視可能なバンドの可視可能な重複はほとんど見られなかった。
【0219】
図5Bは、異なるセットのプライマーを使用する差次的ディスプレイを示す。差次的ディスプレイは、示したように、3つの異なるアンカーオリゴ(dT)プライマー(T13V(配列番号 )、AT15A(配列番号 )、およびGT15G(配列番号 ))とともに恣意プライマーKA2(配列番号 )を使用して行った。差次的ディスプレイプロトコルを、生成された産物のより大量かつ高度な複雑性を生じるように調整した。RNAの開始濃度は、1000、500、250および125ngであった。次いで、この材料の1/4をPCRに使用した。図5Aで見られるように、異なるオリゴ(dT)アンカープライマーを使用すると、ほぼ完全に、提示されるバンドのパターンが変化する。
【0220】
フィンガープリントは、約30〜50の明らかに可視可能な産物を生じた(図5Aを参照のこと)。フィンガープリントは、一般に、これらの実験に使用した100〜800ngの範囲の総mRNAにおいて再現可能であり、RNA濃度依存的な産物はほとんどなかった。オリゴ(dT)アンカープライマーまたは恣意プライマー(図5A)のいずれかと共有される再現可能な、大部分のフィンガープリントのうちの3つを、3つの非標識dNTPおよびα−(32P)dCTPの存在下でランダムプライミングすることによって放射性標識し、そして各々を使用して、I.M.A.G.EコンソーシアムからのESTを有する、18,000の二重スポットしたE.coliコロニーの同一のアレイをプローブした。このアレイを、上記のように、ハイブリダイズし、そして洗浄した。
【0221】
このキットプロトコルは、実施例IIに記載のRAP−PCRプロトコルにおいて1μMのプライマーおよび200μM dNTPを使用したものと比較して、0.2μMの恣意プライマーおよび4μM dNTPを使用した。フィンガープリント反応物は、おそらく、成分が制限されたために、20μl中40ng未満の産物しか含まなかった。これは、実施例2で記載された方法において使用されたDNAより約5倍少なかった。この理由のために、X線フィルムへの十分な曝露を得るためには、増感スクリーンを用いて約10日間かかった。十分な曝露後には、約500の産物が各標的を用いて容易に識別可能であった。確実に観察可能な遺伝子の数は、ホスホルイメージャースクリーンを使用する場合、通常、少なくとも2倍以上増加する。このことは、X線フィルムと比較して、ホスホルイメージングの感度がより高いことを示す。さらに、別個に標識したフィンガープリントを同じ標的にプールすることによって、なおさらにスループットを増大させ得る。
【0222】
アレイに対する標的のハイブリダイゼーションの曝露時間を減少させるために、実験をRAP−PCRプロトコルを使用する実施例IIに記載の、高濃度のプライマーおよびdNTPで行った(図5B)。これらの実験は、予測された産物量の増加および対応する、アレイに対する曝露時間の減少を生じた。
【0223】
オリゴ(dT)プライマーの選択性を、異なるアンカー塩基を使用して決定した。図6に示されるように、ディファレンシャルディスプレイ産物は、cDNAアレイにハイブリダイズした。図5Aで記載したように、プライマーGT15G(配列番号 )およびKA2(配列番号 )を用いて、未処理HaCaT細胞(図6A)およびEGF処理HaCaT細胞(図6B)から生成したディファレンシャルディスプレイ産物をランダムプライミングによって標識し、そしてcDNAアレイにハイブリダイズさせた。メンブレンの5%未満を示す部分は、矢印で示した差次的に調節された遺伝子とともに示される。図6Cは、プライマーAT15A(配列番号 )およびKA2(配列番号 )を用いて未処理HaCaT細胞から生成したディファレンシャルディスプレイ産物のハイブリダイゼーションを示す。図6Aと6Cとを比較すると、ハイブリダイゼーションシグナルの有意な重複が存在し、これは、ポリアクリルアミドディスプレイからは明らかではなかった(図5B、レーンAT15A/KA2とGT15G/KA2とを比較のこと)。
【0224】
恣意プライマーが同じアンカープライマーを維持しながら変化させた場合、ハイブリダイズしたクローンのパターンは、ほぼ全体的に変化し、代表的には、任意の2つのフィンガープリントの間で5%の重複未満であった。対照的に、同じ恣意プライマーおよび異なるアンカープライマーを含む標的は、それらがハイブリダイズしたものに対して約30%のクローンを共有した。図6Aおよび6Cは、少部分のアレイからのこのような共有される産物の例を示す。
【0225】
同様の観察が、広範な種々の条件下で生成されたフィンガープリントを使用してなされた。これらの条件としては、GenHunterキットのプロトコルおよびプライマー、改変プロトコル、およびGenHunterキット中のプライマーとは独立したプライマーを使用するプロトコルが挙げられる。この重複が反復に起因するという可能性を、同じメンブレンに対するゲノム標的および総mRNA標的の使用によって排除した。
【0226】
異なるアンカープライマーを有するが、同じ恣意プライマーを共有する、標的の間の重複は、変性ポリアクリルアミドゲル上で分離した場合、フィンガープリント産物において顕著な類似性を全く反映しなかった。例えば、図6Aおよび6Cで使用される標的を図5Bに示す。この標的は、共通して30%の産物を有するにも拘わらず、容易に識別される類似性を示さない。多くの共有された産物は、アレイに対して強くハイブリダイズするクローンの中にある。従って、ゲル上で可視可能な産物のいくつかは、一方の末端で恣意プライマーを共有し得るが、PCRの間にこの産物は、異なるアンカープライマーにより複数の異なる位置で反対の方向に優先的にプライムされる。このことは、この観察(同じ恣意プライマーを有するが、異なるアンカープライマーを有する標的はそれらがハイブリダイズするものに対してクローンの30%まで重複する)と適合性でありながらポリアクリルアミドディスプレイにおいて類似性をほとんど有さないか、または全く有さないフィンガープリントを生じる。
【0227】
共有された産物は、かなり広い範囲の条件下で恣意プライマーを共有する、アンカーされたフィンガープリントについての一般的現象である。フィンガープリントの中の重複は、同じ恣意プライマーを用いないことによって、異なるアンカープライマーを用いて避けられ得る。
【0228】
総ゲノムDNAにより生成されたパターンとハイブリダイズするクローンのパターンとの比較は、GenHunterフィンガープリントにより生成された標的にハイブリダイズするクローンが、わずか数%のmRNAの3’非翻訳領域(UTR)において生じるAlu反復エレメントを一般には含まなかったことを示した。標的によってハイブリダイズされたクローンは、ポリ(A)mRNAの逆転写物に由来する総cDNA標的によってハイブリダイズされたクローンと有意に重複しなかった。このことは、サンプリングされた遺伝子が、最も豊富なRNAに重度に偏っていなかったことを示す。これらの結果は、フィンガープリントについて恣意プライマーのみを使用して得られた結果と一致し(実施例IIを参照のこと)、そしてアンカーオリゴ(dT)プライミングと組み合わせた恣意プライマーを使用してcDNAアレイにおけるまれな遺伝子をモニターし得ることを示す。これらの結果はまた、RAP−PCRおよびディファレンシャルディスプレイが豊富な転写物に重度に偏っていないことを確認する。
【0229】
未処理HaCaT細胞とEGF処理HaCaT細胞との間の差次的遺伝子発現について調査した2000を超えるクローンの中に、1つのRNA濃度で差次的発現を明らかに反映するようである、29の異なるクローンが存在した。ノイズ比および差次的発現比に対して最も高いシグナルを有する12クローンを選択し、そして特異的プライマーをRT−PCRのために設計した。これらの差次的に発現された遺伝子のうちの1つの例を、図6Aと6Bとを対比して矢印で示す。
【0230】
少なくとも1.5倍の差次的発現を、7つの遺伝子について確認した。これを図7に示す。逆転写を2倍異なるRNA濃度で行った。反応物を水で4倍に希釈し、そして低ストリンジェンシーPCRを異なるサイクル数で行った。各PCR反応についての投入RNA/cDNAの量は125ng(左列)および250ng(右列)であった。図7に示す反応を10サイクルで行い、そしてポリアクリルアミド−尿素ゲル上で分離した。コントロール(非調節)および少なくとも1.6倍だけ異なる遺伝子についての産物を示す。示された、調節された遺伝子は、GenBank登録番号R72714、H14529、H27389、H05545,H27969、R73247、およびH21777に対応する。
【0231】
図7に示した遺伝子の調節を、表2に要約する。EGFでの4時間の処理によって調節された、同定された遺伝子(GenBank登録番号に対応する)および未処理細胞と比較した発現における増加の倍数を示す。
【0232】
【表2】
Figure 2004517602
Egr−1は、他の細胞型においてEGFにより差次的に調節されることが以前に公知であった(Iwamiら、Am.J.Physiol.270:H2100−H2107(1996);Kujubuら、J.Neurosci.Res.36:58−65(1993);Caoら、J.Biol.Chem.267:1345−1349(1992);Itoら、Oncogene 5:1755−1760(1990))。βアクチンおよびαチューブリンの発現における変化の観察は、これらの細胞がEGF処理後に受ける形態の劇的な変化と関連するようである。βアクチン遺伝子およびαチューブリン遺伝子のEGFによる調節は、他の細胞型において観察された(Torokら、J.Cell Physiol.167:422−433(1996);HazanおよびNorton、J.Biol.Chem.273:9078−9084(1998);Shinjiら、Hepatogastroenterology 44:239−244(1997);Ballら、Cell Motil.Cytoskeleton 23:265−278(1992))。これらの観察によって、差次的発現を検出するために使用した処理および方法が、独立して確証される。プロテインホスファターゼ2A mRNAの調節はこれまで観察されていなかったが、EGFシグナルの伝達におけるこのタンパク質の役割と一致する(Chajryら、Eur.J.Biochem.235:97−102(1996))。同様に、イノシトールリン酸の代謝と関連する遺伝子は、EGFにより調節されることがこれまでに示されていなかったが、このような調節は、別の外胚葉性細胞型のEGF処理後に、この酵素により生成された化合物が増加するという以前の観察と一致する(Contreras、J.Neurochem.61:1035−1042(1993))。EGF、未知遺伝子(GenBank登録番号H27969)およびRNA結合タンパク質(GenBank登録番号D89692)の2つの他の遺伝子による調節は、いずれの細胞型でも以前報告されていなかった。GenBank登録番号D31765は、KIAA0061に対応する。
【0233】
5つの他の遺伝子は、RT−PCRが使用されるときに調節されることは確認されなかった。擬陽性の数は、実験の間で変化し得、そしてフィンガープリントの質および市販されるメンブレンの質に依存する。擬陽性の数は、実施例IIに記載されるように、RT−PCRで確認する前に、アレイに対して2つのRNA濃度を使用することにより制限され得る。これらの実験は、単一の濃度のみを含んだ。なぜなら、主な目的は、オリゴ(dT)−Xアンカープライミング方法により作製された標的の中での適用範囲および重複の有効性を決定することであったからである。それにも拘わらず、1つの濃度で観察された、差次的にハイブリダイズするクローンの半分を超えるものが、差次的に発現された遺伝子に対応する。2つのアレイハイブリダイゼーションが、各処理について2つの異なる投入テンプレート濃度で行われた場合、エラー割合は、10%より十分低い。
【0234】
これらの結果は、ディファレンシャルディスプレイおよび恣意プライマーを使用して生成された、恣意的にサンプリングされた標的が、EGFに応答して差次的に発現された遺伝子を検出し得ることを実証する。
【0235】
本出願全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が関連する技術状態をさらに十分に記載するために、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0236】
本発明は、上記の実施例を参照して記載されているが、種々の改変が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。従って、本発明は、請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、クローンアレイへの差次的ハイブリダイゼーションを示す。各画像は、約4000の、二重スポット(double spot)し、各々が異なるESTクローンを有するE.coliコロニーに及ぶオートラジオグラムである。パネルAは、コンフルエントなヒトケラチノサイト由来の1μgのポリA RNA(逆転写の間に放射性標識されている)から作製した総標的の結合を示す。パネルBおよびCは、未処理(パネルB)および上皮増殖因子(EGF)処理(パネルC)のコンフルエントなヒトケラチノサイトのオリゴ(dT)プライムされたcDNA由来のcDNAに対して行った恣意プライマー対でのRAP−PCRフィンガープリントを示す。1つの差次的に発現されたcDNAに由来する放射性標識された2つのコロニーを矢印で示す。パネルDは、コンフルエントなヒトケラチノサイト由来のRNAに対して行った、恣意プライマーの異なる対でのRAP−PCRフィンガープリントを示す。
【図2】
図2は、ポリアクリルアミド−尿素ゲル上で分離したRAP−PCRフィンガープリントを示す。逆転写を、レーン1、2、3、および4において、それぞれ250、125、62.5および31.25ngのRNAのオリゴdTプライマーを用いて行った。RNAは、示したように、未処理HaCaT細胞、TGF−βおよびEGF処理HaCaT細胞由来であった。RAP−PCRは、2セットのプライマー、プライマーGP14およびGP16(パネルA)、またはNuc1+およびOPN24(パネルB)で行った。分子量マーカーを各パネルの左に示し、そして2つの差次的に増幅されたRAP−PCR産物のサイズを矢印で示す(317および291)。
【図3】
図3は、RAP−PCRによって生成された標的の、アレイに対するハイブリダイゼーションを示す。放射性標識したDNAとハイブリダイズした、2連の同じフィルター(Genome Systems)の下半分のオートラジオグラムを示す。パネルAおよびBは、同じプライマーを使用して生成され、そして未処理HaCaT細胞(パネルA)およびEGF処理HaCaT細胞(パネルB)に由来する2つのRAP−PCR反応物のハイブリダイゼーションを示す。差次的なハイブリダイゼーションシグナルを示す、3つの二重スポットしたクローンを、各アレイに対して印付けする。このクローンのGenBank登録番号および対応する遺伝子は、H10045およびH10098(vav−3およびAF067817に対応する)(四角);H28735(遺伝子は未知)(Sheparan スルフェート3−O−スルホトランスフェラーゼ−1、AF019386に類似する)(丸);R48633(遺伝子は未知)(菱形)である。パネルCは、パネルAにおけるRNAと同じRNAを使用して生成されたRAP−PCR標的と、しかし、異なるプライマー対とハイブリダイズしたアレイを示す。パネルDは、1μgのポリ(A)選択mRNAの逆転写によって生成されたcDNA標的とハイブリダイズしたアレイを示す。パネルEは、ランダムプライミングを使用して標識されたヒトゲノムDNAとハイブリダイズしたアレイを示す。
【図4】
図4は、ポリアクリルアミド−尿素ゲル上でのRT−PCR産物の分離および低ストリンジェンシーRT−PCRを使用する、EGFに対する応答における差次的調節の確認を示す。逆転写を、2つのRNA濃度(500ng(左列);250ng(右列))で、異なるサイクル数で行った。コントロール(22サイクル)についてのバンド;GenBank登録番号H11520(22サイクル)についてのバンド;TSC−22(GenBank登録番号H11073およびH11161に対応)(19サイクル)についてのバンド;およびR48633(19サイクル)についてのバンドを示す。
【図5】
図5は、未処理HaCaT細胞およびEGF処理HaCaT細胞のディファレンシャルディスプレイを示す。パネルAは、4つの異なる開始濃度の総RNA(1、2、3および4と表し、そしてそれぞれ800、400、200および100ngに対応する)で行ったディファレンシャルディスプレイ反応物を示す。これは、次いで、PCRのために使用された。アンカーオリゴ(dT)プライマー、H−T11CまたはH−T11Aを、2つの異なる恣意プライマー、H−AP3またはH−AP4のうち1つと組み合わせて使用した。これは、レーンの上に示される。パネルBは、4つの異なる開始濃度のRNA(1、2、3および4と示され、そしてそれぞれ、1000、500、250および125ngに対応する)を使用して、3つの異なるアンカーオリゴ(dT)プライマー、T13V、AT15AおよびGT15Gとともに恣意プライマーKA2を使用するディファレンシャルディスプレイを示す。これは、次いで、PCRに使用された。
【図6】
図6は、ディファレンシャルディスプレイ反応物の、cDNAアレイに対するハイブリダイゼーションを示す。未処理HaCaT細胞(パネルA)およびEGF処理HaCaT細胞(パネルB)に由来する、プライマーGT15GおよびKA2で生成したディファレンシャルディスプレイ産物を、ランダムプライミングによって標識し、そしてcDNAアレイにハイブリダイズさせた。膜の5%未満を示す部分は、矢印で示される差次的に調節された遺伝子とともに示される。パネルCは、未処理HaCaT細胞に由来する、プライマーAT15AおよびKA2で生成したディファレンシャルディスプレイ産物のハイブリダイゼーションを示す。
【図7】
図7は、低ストリンジェンシーRT−PCRを使用するEGFによる遺伝子の差次的調節の確認を示す。逆転写を、2倍異なるRNA濃度で行い、そして低ストリンジェンシーPCRを異なるサイクル数で行った。最初の第1鎖cDNA合成について使用され、そして各RAP−PCR反応において使用された投入RNAの量は125ng(左列)、および250ng(右列)であった。19サイクル反応物由来のRT−PCR産物を、ポリアクリルアミド−尿素ゲル上で分離した。コントロール産物(非調節)、およびEGFに応答して1.6倍以上の調節を示す遺伝子(GenBank登録番号R72714、H14529、H27389、H05545、H27969、R73247、およびH21777に対応する)についての産物を示す。
【図8】
図8は、GenBank登録番号H11520(配列番号1)のヌクレオチド配列を示す。
【図9】
図9は、GenBank登録番号H11161(配列番号2)のヌクレオチド配列を示す。
【図10】
図10は、GenBank登録番号H11073(配列番号3)のヌクレオチド配列を示す。
【図11】
図11は、GenBank登録番号U35048(配列番号4)のヌクレオチド配列を示す。
【図12】
図12は、GenBank登録番号R48633(配列番号5)のヌクレオチド配列を示す。
【図13】
図13は、GenBank登録番号H28735(配列番号6)のヌクレオチド配列を示す。
【図14】
図14は、GenBank登録番号AF019386(配列番号7)のヌクレオチド配列を示す。
【図15】
図15は、GenBank登録番号H25513(配列番号8)のヌクレオチド配列を示す。
【図16】
図16は、GenBank登録番号H25514(配列番号9)のヌクレオチド配列を示す。
【図17】
図17は、GenBank登録番号M13918(配列番号10)のヌクレオチド配列を示す。
【図18】
図18は、GenBank登録番号H12999(配列番号11)のヌクレオチド配列を示す。
【図19】
図19は、GenBank登録番号H05639(配列番号12)のヌクレオチド配列を示す。
【図20】
図20は、GenBank登録番号L49207(配列番号13)のヌクレオチド配列を示す。
【図21】
図21は、GenBank登録番号H15184(配列番号14)のヌクレオチド配列を示す。
【図22】
図22は、GenBank登録番号H15124(配列番号15)のヌクレオチド配列を示す。
【図23】
図23は、GenBank登録番号X79781(配列番号16)のヌクレオチド配列を示す。
【図24】
図24は、GenBank登録番号H25195(配列番号17)のヌクレオチド配列を示す。
【図25】
図25は、GenBank登録番号H24377(配列番号18)のヌクレオチド配列を示す。
【図26】
図26は、GenBank登録番号M31627(配列番号19)のヌクレオチド配列を示す。
【図27】
図27は、GenBank登録番号H23972(配列番号20)のヌクレオチド配列を示す。
【図28】
図28は、GenBank登録番号H27350(配列番号21)のヌクレオチド配列を示す。
【図29】
図29は、GenBank登録番号AB000712(配列番号22)のヌクレオチド配列を示す。
【図30】
図30は、GenBank登録番号R75916(配列番号23)のヌクレオチド配列を示す。
【図31】
図31は、GenBank登録番号X85992(配列番号24)のヌクレオチド配列を示す。
【図32】
図32は、GenBank登録番号R73021(配列番号25)のヌクレオチド配列を示す。
【図33】
図33は、GenBank登録番号R73022(配列番号26)のヌクレオチド配列を示す。
【図34】
図34は、GenBank登録番号U66894(配列番号27)のヌクレオチド配列を示す。
【図35】
図35は、GenBank登録番号H10098(配列番号28)のヌクレオチド配列を示す。
【図36】
図36は、GenBank登録番号H10045(配列番号29)のヌクレオチド配列を示す。
【図37】
図37は、GenBank登録番号AF067817(配列番号30)のヌクレオチド配列を示す。
【図38】
図38は、GenBank登録番号R72714(配列番号31)のヌクレオチド配列を示す。
【図39】
図39は、GenBank登録番号X52541(配列番号32)のヌクレオチド配列を示す。
【図40】
図40は、GenBank登録番号H14529(配列番号33)のヌクレオチド配列を示す。
【図41】
図41は、GenBank登録番号M10277(配列番号34)のヌクレオチド配列を示す。
【図42】
図42は、GenBank登録番号H27389(配列番号35)のヌクレオチド配列を示す。
【図43】
図43は、GenBank登録番号D89092(配列番号36)のヌクレオチド配列を示す。
【図44】
図44は、GenBank登録番号D89678(配列番号37)のヌクレオチド配列を示す。
【図45】
図45は、GenBank登録番号H05545(配列番号38)のヌクレオチド配列を示す。
【図46】
図46は、GenBank登録番号J03804(配列番号39)のヌクレオチド配列を示す。
【図47】
図47は、GenBank登録番号H27969(配列番号40)のヌクレオチド配列を示す。
【図48】
図48は、GenBank登録番号R73247(配列番号41)のヌクレオチド配列を示す。
【図49】
図49は、GenBank登録番号U51336(配列番号42)のヌクレオチド配列を示す。
【図50】
図50は、GenBank登録番号H21777(配列番号43)のヌクレオチド配列を示す。
【図51】
図51は、GenBank登録番号K00558(配列番号44)のヌクレオチド配列を示す。
【図52】
図52は、GenBank登録番号D31765(配列番号45)のヌクレオチド配列を示す。

Claims (95)

  1. 標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法であって、
    (a)プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させる工程であって、該核酸分子は、恣意的にサンプリングされ、そして該恣意的にサンプリングされた核酸分子は核酸分子の集団において核酸分子のサブセットを含む、工程;および
    (b)該標的の該プローブに対する特異的結合の量を検出する工程、
    を包含する、方法。
  2. 前記標的が、前記集団の1つ以上のあまり豊富ではない核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記あまり豊富ではない核酸分子が、前記集団において最も豊富な核酸分子の10%未満の量である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記あまり豊富ではない核酸分子が、前記集団において最も豊富な核酸分子の1%未満の量である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記あまり豊富ではない核酸分子が、前記集団において最も豊富な核酸分子の0.1%未満の量である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記あまり豊富ではない核酸分子が、前記集団において最も豊富な核酸分子の0.01%未満の量である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記標的が、1つ以上の恣意的オリゴヌクレオチドを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記標的が、RNA恣意的プライムポリメラーゼ連鎖反応(RAP−PCR)を使用して生成される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記標的が、ディファレンシャルディスプレイを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記標的が、消化−連結を使用して生成される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記標的が、RNAポリメラーゼプロモーターおよびRNAポリメラーゼを含むプライマーを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼおよびSP6ポリメラーゼからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記標的が増幅されている、請求項1に記載の方法。
  14. 前記増幅された標的が、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して生成されている、請求項13に記載の方法。
  15. 前記標的が増幅されていない、請求項1に記載の方法。
  16. 前記プローブが分子のアレイである、請求項1に記載の方法。
  17. 前記アレイにおける前記分子が核酸分子である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記アレイにおける前記分子がオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載の方法。
  19. 前記アレイにおける前記分子がポリペプチドである、請求項16に記載の方法。
  20. 前記アレイにおける前記分子がペプチド−核酸である、請求項16に記載の方法。
  21. 前記標的が、10以上の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  22. 前記標的が、20以上の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  23. 前記標的が、50以上の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  24. 前記標的が、100以上の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  25. 前記標的が、1000以上の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
  26. 前記プローブに対する前記標的の前記特異的結合の量を比較する工程であって、該特異的結合の量が、該標的における前記核酸分子の発現レベル、第2の標的における該核酸分子の発現レベルに対応する、工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  27. 前記第2の標的における前記核酸分子の前記発現レベルが既知である、請求項26に記載の方法。
  28. 前記第2の標的における前記核酸分子の前記発現レベルが、該第2の標的と、前記プローブとを接触させる工程、および該第2の標的に対する該プローブの特異的結合の量を検出する工程によって決定される、請求項26に記載の方法。
  29. 標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する方法であって、該方法は、
    (a)プローブと、2つ以上の核酸分子を含む標的とを接触させる工程であって、該核酸分子は、統計学的にサンプリングされ、そして該統計学的にサンプリングされた核酸分子は核酸分子の集団において核酸分子のサブセットを含む、工程;
    および
    (b)該標的の該プローブに対する特異的結合の量を検出する工程、
    を包含する、方法。
  30. 前記標的が、前記集団の1つ以上のあまり豊富ではない配列を含む、請求項29に記載の方法。
  31. 前記あまり豊富ではない配列が、前記集団において最も豊富な配列の10%未満の量である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記あまり豊富ではない配列が、前記集団において最も豊富な配列の1%未満の量である、請求項30に記載の方法。
  33. 前記あまり豊富ではない配列が、前記集団において最も豊富な配列の0.1%未満の量である、請求項30に記載の方法。
  34. 前記あまり豊富ではない配列が、前記集団において最も豊富な配列の0.01%未満の量である、請求項30に記載の方法。
  35. 前記統計学的にサンプリングされた標的が、関連しない核酸分子の複雑性について増強される、請求項29に記載の方法。
  36. 前記標的が、1つ以上の統計学的オリゴヌクレオチドを使用して生成される、請求項29に記載の方法。
  37. 前記統計的オリゴヌクレオチドが、複雑性の結合の順位付けに基づいて選択される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記統計学的オリゴヌクレオチドが、複雑性の結合について増強される、請求項36に記載の方法。
  39. 前記標的が、指示された統計学的選択法を使用して生成される、請求項29に記載の方法。
  40. 前記標的が、モンテカルロ統計的選択法を用いて生成される、請求項29に記載の方法。
  41. 前記標的が、消化−連結を使用して生成される、請求項29に記載の方法。
  42. 前記標的が、RNAポリメラーゼプロモーターおよびRNAポリメラーゼを含むプライマーを使用して生成される、請求項29に記載の方法。
  43. 前記RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼおよびSP6ポリメラーゼからなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
  44. 前記標的が増幅される、請求項29に記載の方法。
  45. 前記増幅された標的が、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して生成される、請求項44に記載の方法。
  46. 前記標的が増幅されない、請求項29に記載の方法。
  47. 前記プローブが分子のアレイである、請求項29に記載の方法。
  48. 前記アレイにおける前記分子が核酸分子である、請求項47に記載の方法。
  49. 前記アレイにおける前記分子がオリゴヌクレオチドである、請求項47に記載の方法。
  50. 前記アレイにおける前記分子がポリペプチドである、請求項47に記載の方法。
  51. 前記アレイにおける前記分子がペプチド−核酸である、請求項47に記載の方法。
  52. 前記核酸標的が、10以上の核酸分子を含む、請求項29に記載の方法。
  53. 前記核酸標的が、20以上の核酸分子を含む、請求項29に記載の方法。
  54. 前記核酸標的が、50以上の核酸分子を含む、請求項29に記載方法。
  55. 前記核酸標的が、100以上の核酸分子を含む、請求項29に記載の方法。
  56. 前記核酸標的が、1000以上の核酸分子を含む、請求項29に記載の方法。
  57. 請求項29に記載の方法であって、前記プローブに対する前記標的の前記特異的結合の量を比較する工程をさらに包含し、該特異的結合の量が、該標的における前記核酸分子の、第2の標的における該核酸分子の量に対応する、方法。
  58. 前記第2の標的における前記核酸分子の前記量が既知である、請求項57に記載の方法。
  59. 前記第2の標的における前記核酸分子の前記量が、該第2の標的と、前記プローブとを接触させる工程、および該第2の標的に対する該プローブの特異的結合の量を検出する工程によって決定される、請求項57に記載の方法。
  60. 状態と関連した、2つ以上の差次的に発現された核酸分子を同定する方法であって、該方法は、
    (a)請求項1に記載の方法に従って標的における2つ以上の核酸分子のレベルを測定する工程であって、プローブに対する該標的の特異的結合の量が、該標的における該核酸分子の発現レベルに対応する、工程;
    (b)該標的における該核酸分子の該発現レベルと、第2の標的における該核酸分子の発現レベルとを比較する工程であって、これによって、該標的間の発現レベルの差異が状態を示す、工程;
    を包含する、方法。
  61. 前記状態が疾患状態と関連している、請求項60に記載の方法。
  62. 前記疾患状態が、癌、自己免疫疾患、感染性疾患、加齢、発生障害、増殖性障害、神経学的障害からなる群より選択される、請求項60に記載の方法。
  63. 前記状態が、処置と関連している、請求項60に記載の方法。
  64. 前記発現レベルの差異が、前記処置の効力を示す、請求項63に記載の方法。
  65. 前記発現レベルの差異が、前記処置に対する耐性を示す、請求項63に記載の方法。
  66. 前記発現レベルの差異が、前記処置の毒性を示す、請求項63に記載の方法。
  67. 前記状態が、刺激と関連している、請求項60に記載の方法。
  68. 前記刺激が化学薬品である、請求項67に記載の方法。
  69. 前記化学薬品が薬物である、請求項68に記載の方法。
  70. 前記刺激が増殖因子である、請求項67に記載の方法。
  71. 前記増殖因子が、上皮増殖因子(EGF)である、請求項67に記載の方法。
  72. 前記標的が、配列番号1〜45として参照される核酸からなる群より選択される核酸配列の一部を含む、請求項71に記載の方法。
  73. 前記刺激が照射である、請求項67に記載の方法。
  74. 前記刺激がストレスである、請求項67に記載の方法。
  75. 前記標的が皮膚細胞に由来する、請求項60に記載の方法。
  76. 前期皮膚細胞が、ケラチノサイトを含む、請求項75に記載の方法。
  77. 前記標的が腫瘍に由来する、請求項60に記載の方法。
  78. 前記刺激が病原体である、請求項67に記載の方法。
  79. 5つ以上の刺激調節された核酸分子を含むプロファイル。
  80. 10以上の刺激調節された核酸分子を含む、請求項79に記載のプロファイル。
  81. 100以上の刺激調節された核酸分子を含む、請求項79に記載のプロファイル。
  82. 1000以上の刺激調節された核酸分子を含む、請求項79に記載のプロファイル。
  83. 前記刺激が上皮増殖因子である、請求項80に記載のプロファイル。
  84. 配列番号1〜45として参照されるヌクレオチド配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列の一部を含む、請求項83に記載のプロファイル。
  85. 請求項1に記載の方法により得られる、プロファイル。
  86. 前記プロファイルが2つ以上の核酸分子を含む、請求項85に記載のプロファイル。
  87. 前記プロファイルが5つ以上の核酸分子を含む、請求項85に記載のプロファイル。
  88. 前記プロファイルが10以上の核酸分子を含む、請求項85に記載のプロファイル。
  89. 前記プロファイルが100以上の核酸分子を含む、請求項85に記載のプロファイル。
  90. 請求項29に記載の方法によって得られる、プロファイル。
  91. 前記プロファイルが2つ以上の核酸分子を含む、請求項90に記載のプロファイル。
  92. 前記プロファイルが5つ以上の核酸分子を含む、請求項90に記載のプロファイル。
  93. 前記プロファイルが10以上の核酸分子を含む、請求項90に記載のプロファイル。
  94. 前記プロファイルが100以上の核酸分子を含む、請求項90に記載のプロファイル。
  95. 配列番号1〜45として参照されるヌクレオチド配列の各々の一部を含む、標的。
JP2000546056A 1998-04-27 1999-04-27 複雑性の減少した核酸標的およびその使用方法 Pending JP2004517602A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US8333198P 1998-04-27 1998-04-27
US9807098P 1998-08-27 1998-08-27
US11862499P 1999-02-04 1999-02-04
US09/300,958 US6495319B1 (en) 1998-04-27 1999-04-27 Reduced complexity nucleic acid targets and methods of using same
PCT/US1999/009119 WO1999055913A2 (en) 1998-04-27 1999-04-27 Reduced complexity nucleic acid targets and methods of using same

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004517602A true JP2004517602A (ja) 2004-06-17

Family

ID=27374507

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000546056A Pending JP2004517602A (ja) 1998-04-27 1999-04-27 複雑性の減少した核酸標的およびその使用方法

Country Status (6)

Country Link
US (2) US6495319B1 (ja)
EP (1) EP1075543A2 (ja)
JP (1) JP2004517602A (ja)
AU (1) AU3667299A (ja)
CA (1) CA2330277A1 (ja)
WO (1) WO1999055913A2 (ja)

Families Citing this family (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6844158B1 (en) * 1997-12-22 2005-01-18 Hitachi Chemical Co., Ltd. Direct RT-PCR on oligonucleotide-immobilized PCR microplates
US7008768B1 (en) 1999-02-26 2006-03-07 The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services Method for detecting radiation exposure
WO2000050643A2 (en) * 1999-02-26 2000-08-31 The Government Of The United States Of America, As Represented By The Secretary, Department Of Health & Human Services Method for detecting radiation exposure
US20020119448A1 (en) 1999-06-23 2002-08-29 Joseph A. Sorge Methods of enriching for and identifying polymorphisms
US6929907B2 (en) 1999-12-31 2005-08-16 North Carolina State University Methods and compositions for determining the purity of chemically synthesized nucleic acids
CA2397391A1 (en) 2000-01-14 2001-07-19 Integriderm, L.L.C. Informative nucleic arrays and methods for making same
US20020137043A1 (en) * 2000-08-26 2002-09-26 Nila Patil Method for reducing complexity of nucleic acid samples
EP1330518B1 (en) * 2000-10-31 2010-09-08 Hitachi Chemical Research Center, Inc. Method for collecting and using nuclear mrna
US6638428B2 (en) * 2000-10-31 2003-10-28 Hitachi Chemical Research Center, Inc. Method of preventing formation of bubbles during filtration operations
WO2003006479A1 (en) * 2001-07-13 2003-01-23 Cogent Neuroscience, Inc. Compositions and methods for diagnosing and treating conditions, disorders, or diseases involving cell death
JP2005502365A (ja) * 2001-09-06 2005-01-27 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング アレイ状に配置した増大させた生体試料の核酸の表示配列中における生体試料の遺伝分析
WO2003029485A2 (en) * 2001-10-02 2003-04-10 Azign Bioscience A/S Specific differential display arrays
AU2003234198A1 (en) * 2002-04-22 2003-11-03 University Of Michigan Novel genes, compositions, and methods for modulating the unfolded protein response
US7276589B2 (en) 2002-11-26 2007-10-02 Pdl Biopharma, Inc. Chimeric and humanized antibodies to α5β1 integrin that modulate angiogenesis
US7285268B2 (en) 2002-11-26 2007-10-23 Pdl Biopharma, Inc. Chimeric and humanized antibodies to α5β1 integrin that modulate angiogenesis
EP1755659B1 (en) 2004-03-24 2011-11-02 Abbott Biotherapeutics Corp. Use of anti-alpha5beta1 antibodies to inhibit cancer cell proliferation
EP2333104A1 (en) * 2009-12-11 2011-06-15 Lexogen GmbH RNA analytics method
US9127271B2 (en) 2010-05-03 2015-09-08 Jeffrey P. Townsend Multi-targeted priming for genome-wide gene expression assays
US9428799B2 (en) * 2011-07-25 2016-08-30 Bioinventors & Entrepreneurs Network Llc Method for determining an allele profile of nucleic acid
EP2756098B1 (en) 2011-09-16 2018-06-06 Lexogen GmbH Method for making library of nucleic acid molecules

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1992007095A1 (en) * 1990-10-15 1992-04-30 Stratagene Arbitrarily primed polymerase chain reaction method for fingerprinting genomes
US5962221A (en) 1993-01-19 1999-10-05 Univ Tennessee Res Corp Oligonucleotide constructs and methods for the generation of sequence signatures from nucleic acids
US5565340A (en) * 1995-01-27 1996-10-15 Clontech Laboratories, Inc. Method for suppressing DNA fragment amplification during PCR
US6156502A (en) 1995-12-21 2000-12-05 Beattie; Kenneth Loren Arbitrary sequence oligonucleotide fingerprinting
US6027890A (en) * 1996-01-23 2000-02-22 Rapigene, Inc. Methods and compositions for enhancing sensitivity in the analysis of biological-based assays
JP2002515738A (ja) * 1996-01-23 2002-05-28 アフィメトリックス,インコーポレイティド 核酸分析法

Also Published As

Publication number Publication date
CA2330277A1 (en) 1999-11-04
US20030224382A1 (en) 2003-12-04
EP1075543A2 (en) 2001-02-14
WO1999055913A9 (en) 2000-03-30
WO1999055913A3 (en) 2000-01-20
US6495319B1 (en) 2002-12-17
AU3667299A (en) 1999-11-16
WO1999055913A2 (en) 1999-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2004517602A (ja) 複雑性の減少した核酸標的およびその使用方法
JP5198284B2 (ja) 高処理量配列決定技術を使用する転写産物の特徴づけのための改良された戦略
EP0743989B1 (en) Methed of identifying differentially expressed genes
JP4860869B2 (ja) 固相支持体上の複数のポリヌクレオチドを増幅し、検出する方法
US6303301B1 (en) Expression monitoring for gene function identification
RU2603082C2 (ru) Способы секвенирования трехмерной структуры исследуемой области генома
US6160105A (en) Monitoring toxicological responses
NZ334426A (en) Characterising cDNA comprising cutting sample cDNAs with a first endonuclease, sorting fragments according to the un-paired ends of the DNA, cutting with a second endonuclease then sorting the fragments
JP2003245072A (ja) シグナル伝達経路の決定
US20050100911A1 (en) Methods for enriching populations of nucleic acid samples
US20020164634A1 (en) Methods for reducing complexity of nucleic acid samples
EP1723260A2 (en) Nucleic acid representations utilizing type iib restriction endonuclease cleavage products
US20020055112A1 (en) Methods for reducing complexity of nucleic acid samples
JP2002335999A (ja) ユニバーサルアレイを用いる遺伝子発現のモニター
CA2422305A1 (en) Assessing colorectal cancer
CA2455354A1 (en) Method of constructing cdna tag for identifying expressed gene and method of analyzing gene expression
US7091033B2 (en) Array of toxicologically relevant canine genes and uses thereof
JP2002532070A (ja) 核酸配列を解析するためのアレイおよび方法
TW200404891A (en) Method for preparation of expressed gene identification cDNA tags and method for analysis of gene expression
JP2005512527A (ja) 転写活性を決定するための方法
WO2022258056A1 (en) Methods and compositions for identifying viral sequences
JP2002527118A (ja) ペプチド標識オリゴヌクレオチドを用いた複合核酸集団の操作方法
Prasad et al. Identification of differentially expressed genes in the visual structures of brain using high-density cDNA grids
CA2419613A1 (en) Methods for reducing complexity of nucleic acid samples
JP4105764B2 (ja) 毒性決定における遺伝子発現プロフィールの測定

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060426

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20061129

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20061115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090424

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090724

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090731

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091020