JP2004515461A - 癌治療における変異ヘルペスウイルスおよび抗癌剤の使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、変異ヘルペスウイルスおよび化学療法薬などの抗癌剤を使用した癌の治療法を提供する。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、癌の治療法に関する。
【0002】
発明の背景
G207は、脳腫瘍治療のために設計され、悪性神経膠腫の新規の治療として現在臨床的に評価中のリボヌクレオチドレダクターゼ陰性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型である(Markertら、Gene Ther.、7:867〜874、2000;Minetaら、Nature Med.、1:983〜943、1995)。最近、このHSV変異体は、結腸直腸癌細胞に対して高い腫瘍崩壊性も示した(Koobyら、FASEB J.、13:1325〜1334、1999)。最近、このウイルスはまた、乳がん(Wuら、Cancer Research、61(7):3009〜3015、2001)、前立腺癌(Oyamaら、Japanese Journal of Cancer Research、91(12):1339〜1344、2000)、直腸結腸癌(Delmanら、Human Gene Therapy 11 (18):2465〜2472、2000)、胃癌(Journal of Molecular Medicine、78(3):166〜174、2000)、膀胱癌(Oyamaら、Human Gene Therapy、11(12):1683〜1693、2000)、卵巣癌(Coukosら、Cancer Gene Therapy、7(2):275〜283、2000)、頭頸部癌(Carewら、Human Gene Therapy、10(10):1599〜1606、1999)、および膵臓癌(Leeら、Journal of Gastrointestinal Surgery、3(2):127〜131、1999を含む多数の型の癌の実験的治療で有効であることが見出されている。
【0003】
G207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)およびγ134.5の欠失によって標的腫瘍細胞を特異的に標的化する、多くの候補腫瘍崩壊性ウイルスで使用される戦略の典型である。第1に、RRの大型サブユニットをコードする感染細胞タンパク質6(ICP6)遺伝子座への大腸菌 lacZ遺伝子の挿入によってウイルスRRを不活化する。RRは、リボヌクレオチドの対応するデオキシリボヌクレオチドへの還元を触媒するので、DNAの新規合成用の十分な前駆体が得られる。哺乳動物細胞では、RRはS期中およびDNA損傷/修復条件下で高度に発現する(Bjorklundら、Biochemistry、29:2452〜5458、1990;Chabesら、J. Biol. Chem.、275:17747〜17753:2000;Engstomら、J. Biol.Chem.、260:9114〜9116、1985;Filatovら、J.Biol.Chem.、270:25239〜25243、1995;Tanakaら、Nature、404:42〜49、2000)。ほとんどのヘルペスウイルスは、それ自体のRRをコードし、したがって、その複製は宿主細胞周期から独立している(Boehmerら、Annu.Rev.Biochem.、66:347〜384、1997;Roizmanら、Fields Virology、第3版、Lippincott−Raven、Philadelphia、1996;Roizmanら、Fields Virology、第3版、Lippincott−Raven、Philadelphia、1996)。G207中のICP6の不活化により、ウイルスDNA複製が細胞酵素に完全に依存性となり、結果として、この変異体の複製は宿主細胞の状態に大幅に依存するようになる。したがって、細胞周期の変化またはDNA損傷/修復条件はこのヘルペスベクターの複製を調節し得ると考えることが妥当である。G207の第2の変異は、両方のγ134.5遺伝子座の欠失である。γ134.5遺伝子は、少なくとも2つの機能を有するタンパク質(ICP34.5)をコードする。1つの機能は、HSVを複製し、中枢神経系内に拡大させる(Chouら、Science、250:1262〜1266、1990;Whitleyら、J.Clin.Invest.、91:2837〜2843、1993)。第2の機能は、HSVにタンパク質合成の細胞遮断の防止によりウイルス感染に対する宿主防御機構を回避する能力を付与する(Chouら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、92:10516〜10520、1995;Heら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、94:843〜848、1997)。この機能は、DNA損傷によって誘導されるタンパク質である細胞成長停止およびDNA損傷タンパク質34(GADD34)のICP34.5相同ドメインにより代替可能である(Heら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、94:843〜848、1997)。
【0004】
化学療法は、悪性腫瘍の治療において、確立された療法である。フルオロデオキシウリジン(FUdR)は、結腸直腸癌の治療に広くに使用されている化学療法薬である。これは、チミジンキナーゼを介したリン酸化によって活性な代謝産物2’−デオキシ−5−フルオロウリジン5’一リン酸(FdUMP)に急速に転換される。FdUMPは、チミジル酸シンテターゼ(TS)のスルフヒドリル残基およびメチレンテトラヒドロフォレートの両者と共有結合複合体を形成することによって酵素TSを阻害する。TSの阻害により、デオキシチミジン5’三リン酸(dTTP)が欠失し、その後細胞内デオキシヌクレオチド三リン酸プールが不均等になる(Danebergら、Mol.Cell Biochem.、43:49〜57、1982;Jackson、J.Biol.Chem.、253:7440〜7446、1978;Yoshiokaら、J.Biol.Chem.、262:8235〜8241、1987)。この阻害により、いくつかの機構を介して細胞傷害性が誘導される。ヌクレオチドプールの不均衡は、FM3A細胞中の二本鎖破壊活性を有する特異的エンドヌクレアーゼを誘導することが示されている(Yoshiokaら、J.Biol.Chem.、262:8235〜8241、1987)。他の研究により、過剰なdUTP/dTTP比によりDNA鎖の破壊につながるウラシルの誤組み込みおよび誤修復を起こすことが示されている(Ayusawaら、J.Biol.Chem.、258:12448〜12454、1983;Goulianら、Adv.Exp.Med.Biol.、195:89〜95、1986;Ingrahamら、Biochemistry,25:3225〜3230、1986)。FUdRの新生DNAに組み込まれる能力が、別の細胞毒性作用機構として示唆されている(Danenbergら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、102:654〜658、1981)。さらに、FUdRは、初期のS期中の遮断、ヒストンH1の喪失、およびDNA伸長の遅延によって細胞周期およびDNA複製に深刻な影響を与える(D’Annaら、Biochemistry、24:5020〜5026、1985)。
【0005】
FUdRおよび他のチミジル酸シンテターゼインヒビターは、細胞におけるヌクレオチド産生の均衡の破壊によって作用する化学療法薬の例である。ピリミジン類似体、プリン類似体、メトトレキセート、および5−FUヒドロキシ尿素を含む追加の作用因子は、類似の効果を有する。別の型の化学療法薬である代謝拮抗薬は、DNA合成の妨害によって作用する。アルキル化剤、いくつかの抗腫瘍性抗生物質、および挿入剤は、DNAとの直接的相互作用によって作用し、例えば、DNA合成および/または転写を妨害することができ、おそらくDNAを破壊に導く。マイトマイシンC(MMC)は、抗腫瘍性抗生物質であり、広範な臨床的抗腫瘍活性範囲を有し、胃癌の標準的治療である(Kelsen、Seminars in Oncology、23:379〜389、1996)。MMCは、一官能性または二官能性アルキル化によってDNAと結合し、DNA鎖を架橋させてDNA合成を阻害する(Verweijら、Anti−Cancer Drugs、1:5〜13、1990)。
【0006】
発明の概要
本発明は、癌患者の治療法を提供する。これらの方法は、(i)γ34.5遺伝子および/またはリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子をその中で不活化させる弱毒化ヘルペスウイルスおよび(ii)化学療法薬を患者に投与する工程を含む。これらの方法で使用することができる弱毒化ヘルペスウイルスの一例は、G207である。化学療法薬は、例えば、ブスルファン、カロプラチン(caroplatin)、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン(mecholarethamine)、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、またはチオテパなどのアルキル化剤と、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミトキサントロン、ペントスタチン、またはプリカマイシンなどの抗腫瘍性抗生物質と、チミジル酸シンテターゼインヒビター(例えば、フルオロデオキシウリジン)、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、またはチオグアニンなどの代謝拮抗薬であり得る。
【0007】
本発明の方法を使用して治療することができる癌には、星状細胞腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、髄芽細胞腫、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌が含まれる。本発明の方法で使用されるウイルスは、ワクチン抗原または免疫調節タンパク質などの異種遺伝子産物をコードする遺伝子も含み得る。
【0008】
本発明は、さらに、癌治療において本明細書に記載のウイルスおよび抗癌化合物の使用ならびに癌治療薬の調製におけるこれらの作用因子の使用を含む。例えば、本発明は、本明細書に記載の抗癌化合物と組み合わせて患者へ投与する薬剤を調製するのに本明細書に記載のウイルスを使用することならびに本明細書に記載のウイルスと組み合わせて患者に投与する薬剤調製にするためにこのような抗癌化合物を使用することを含む。
【0009】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、以下でさらに考察するように、本発明で使用する治療薬である変異ヘルペスウイルスおよび抗癌剤は、癌治療において相乗活性を有する。この相乗作用の結果として、治療効果を犠牲にすることなく、広範な薬剤効果レベルにおいて各薬剤の用量を減少させることができる。より少量の作用因子の使用は、治療患者への毒性の最小化およびコストの削減を含むいくつかの利点を有する。本方法のさらなる利点は、医療専門家は本発明で使用される多数の抗癌剤の使用に精通していることである。例えば、本発明で使用される薬剤の毒性を十分に認識しており、任意の関連する副作用を治療するための治療法が存在する。さらに、本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスは、分裂細胞(癌細胞など)中で複製してこれらを破壊する一方で体内の他の休止細胞に影響を与えない。これらのヘルペスウイルスは増殖変異するので、野生型へと逆戻りする可能性が除かれる。さらに、必要ならば、ヘルペスウイルスの複製を、ウイルス複製を遮断するアシクロビルなどの抗ウイルス薬の作用によって調節して、別の重要な防衛手段を得ることができる。最後に、本発明の方法のいくつかの例では、マイトマイシンCなどの抗癌剤は、神経毒性増加の潜在的リスクを伴うことなく、一定のヘルペスウイルスベクターの減少した複製表現型γ34.5遺伝子欠失に歯止めをかけるために使用される。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0011】
詳細な説明
本発明は、抗癌剤と組み合わせた変異ヘルペスウイルスの投与を含む癌治療法を提供する。以下でさらに考察するように、このような組み合わせ手法により、癌治療において相乗効果を得ることができるので、実質的な治療上の利点(例えば、治療効果を損失することなく潜在的に有毒な化学療法薬の投与量の減少)が得られる。本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスおよび抗癌剤、ならびにその投与方法の例を以下に示す。本発明の方法を使用して治療することができる癌の例およびこれらの方法の有効性を示す実験結果もまた以下に提供する。
【0012】
変異ヘルペスウイルス
本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスは、ヘルペスウイルス科のメンバーに由来し得る(例えば、HSV−1、HSV−2、VZV、CMV、EBV、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8)。本発明で使用することができる弱毒化HSV変異体の具体例としては、G207(Yazakiら、Cancer Res.、55(21):4752〜4756、1995)、HF(ATCC VR−260)、MacIntyre(ATCC VR−539)、MP(ATCC VR−735);HSV−2G株(ATCC VR−724)、およびMS(ATCC VR−540)ならびに以下の1つ以上の遺伝子に変異を有する変異体が含まれる:即時型遺伝子ICP0、ICP22、およびICP47(米国特許第5,658,724号);γ34.5遺伝子;リボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子;VP16遺伝子(すなわち、Vmv65、国際公開公報第WO91/02788号;同第WO96/04395号;同第WO96/04394号)。米国特許第6,106,826号、同第6,139,834号に記載のベクターもまた使用することができる。
【0013】
以下でさらに考察するように、本発明の方法での使用に好ましい変異ヘルペスウイルスは、一方もしくは両方のγ34.5遺伝子および/またはリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子の不活化変異、欠失、または挿入を有する。このような変異ヘルペスウイルスの1つの例は、上記のようにγ34.5遺伝子の両方のコピーに欠失を有する、HSV神経毒性の主要な決定基をコードするG207である。G207はまた、このウイルスのリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニット、感染細胞タンパク質6(ICP6)をコードする遺伝子であるUL39に不活化挿入を含む。
【0014】
本発明で使用することができるヘルペスウイルス変異体のさらなる例は、非必須α47遺伝子内の312塩基対が欠失したG207由来の多変異の複製コンピテントHSV−1ベクターであるG47Δである(Mavromara−Nazosら、J.Virol.、60:807〜812、1986)。HSV中のICP47およびUS11をコードする転写物の重複により、α47の欠失は、γ34.5−変異体の成長特性を向上させる即時型α47プロモーターの調節下で後期US11遺伝子に存在する。リボヌクレオチドレダクターゼが欠損したhrR3と呼ばれるHSV−1変異体もまた、本発明で使用することができる(Spearら、Cancer Gene Ther.、7(7):1051〜1059、2000)。
【0015】
ウイルスが1つ以上の治療産物(例えば、細胞毒、免疫調節タンパク質(すなわち、抗原に対する宿主免疫応答を増大または抑制するタンパク質)、腫瘍抗原、アンチセンスRNA分子、またはリボザイム)をコードする異種核酸配列も含む場合、本発明の方法で使用されるウイルスの効果を増大させることができる。免疫調節タンパク質の例には、例えば、サイトカイン(例えば、任意のインターロイキン1〜15などのインターロイキン、α、β、またはγインターフェロン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(例えば、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引物質および活性化因子(MCAF)、RANTES、およびマクロファージ炎症ペプチドMIP−1aおよびMIP−1b)と、補体成分およびその受容体と、免疫系アクセサリー分子(例えば、B7.1およびB7.2)と、接着分子(例えば、ICAM−1、2、および3)と、接着受容体分子が含まれる。本発明の方法を使用した結果として産生することができる腫瘍抗原の例には、例えば、ヒト乳頭腫ウイルスのE6抗原およびE7抗原、EBV由来タンパク質(Van der Bruggenら、Science、254:1643〜1647、1991)、MUC1(Burchellら、Int.J.Cancer、44:691〜696、1989)などのムチン(Livingstonら、Cur.Opin.Immun.、4(5):624〜629、1992)、黒色腫チロシナーゼ、およびMZ2−E(Van der Bruggenら、前述)が含まれる。(腫瘍抗原またはサイトカインをコードする遺伝子を含ませるためのウイルスベクターの改変についてのさらなる説明については、国際公開公報第WO94/16716号も参照のこと。)
【0016】
上記のように、異種治療産物は、ハイブリッド形成相互作用によって細胞、また病原体mRNAの発現の遮断に使用することができるアンチセンスRNA分子などのRNA分子でもよい。あるいは、RNA分子は、欠失細胞RNAを修復するか、好ましくない細胞、また病原体コードRNAを破壊するように設計されたリボザイム(例えば、ハンマーヘッドまたはヘアピンベースのリボザイム)でもよい(例えば、Sullenger、Chem.Biol.、2(5):249〜253、1995;Czubaykoら、Gene Ther.、4(9):943〜949、1997;Rossi、Ciba Found.symp.、209:195〜204、1997;Jamesら、Blood、91(2):371〜382、1998;Sullenger、Cytokines Mol.Ther.、2(3):201〜205、1996;Hampel、Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Bio.、58:1〜39、1998;Cucioら、Pharmacol.Ther.、74(3):317〜332、1997を参照のこと)。
【0017】
異種核酸配列を本発明で使用するために、ウイルスの調節配列の制御下におかれる位置でウイルスに挿入することができる。あるいは、異種核酸配列を、プロモーターまたはエンハンサーなどの調節エレメントを含む発現カセットの一部として挿入することができる。当業者は、適切な調節エレメントを、例えば、所望の組織特異性および発現レベル基づいて選択することができる。例えば、細胞型特異的または腫瘍特異的プロモーターを使用して、遺伝子産物の特定の細胞型への発現を制限することができる。これは、例えば細胞傷害性、免疫調節、または腫瘍抗原性遺伝子産物がその破壊を促進するために腫瘍細胞中で産生される場合、特に有用である。組織特異的プロモーターの使用に加えて、本発明のウイルスの局所投与により、局所発現および効果を得ることができる。
【0018】
本発明で使用することができる非組織特異的プロモーターの例には、初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第4,168,062号)およびラウス肉腫ウイルスプロモーター(Nortonら、Molec.Cell Biol.、5:281、1985)が含まれる。また、HSVプロモーター(HSV−1 IEおよびIE 4/5プロモーターなど)も、使用することができる。
【0019】
本発明で使用することができる組織特異的プロモーターの例には、前立腺細胞に特異的な前立腺特異的抗原(PSA)プロモーター、筋細胞に特異的なデスミンプロモーター(Liら、Gene、78:243、1989;Liら、J.Biol.Chem.、266:6562、1991;Liら、J.Biol.Chem.、268:10403、1993);ニューロンに特異的なエノラーゼプロモーター(Foss−Petterら、J.Neuroscience Res.、16(1):141〜156、1986);赤血球に特異的なβグロビンプロモーター(Townesら、EMBO J.、4:1715、1985);同様に赤血球に特異的なτ−グロビンプロモーター(Brinsterら、Nature、283:499、1980);下垂体細胞に特異的な成長ホルモンプロモーター(Beghringerら、Genes Dev.、2:453、1988);膵臓β細胞に特異的なインスリンプロモーター(Seldenら、Nature、321:545、1986);星状細胞に特異的なグリア線維酸性タンパク質プロモーター(Brennerら、J.Neurosci.、14:1030、1994);カテコールアミン作動性ニューロンに特異的なチロシンヒドロキシラーゼプロモーター(Kimら、J.Biol.Chem.、268:15689、1993);ニューロンに特異的なアミロイド前駆体タンパク質プロモーター(Salbaumら、EMBO J.、7:2807、1988);ノルアドレナリン作動性およびアドレナリン作動性ニューロンに特異的なドーパミンβ−ヒドロキシラーゼプロモーター(Hoyleら、J.Neurosci.、14:2455、1994);セロトニン/松果体細胞に特異的なトリプトファンプロモーター(Boularandら、J.Biol.Chem.、270:3757、1995);コリン作動性ニューロンに特異的なコリンアセチルトランスフェラーゼプロモーター(Hershら、J.Neurochem.、61:306、1993);カテコールアミン作動性/5−HT/D型細胞に特異的な芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモーター(Thaiら、Mol.Brain Res.、17:227、1993);ニューロン/精子形成精巣上体細胞に特異的なプロエンケファリンプロモーター(Borsookら、Mol.Endocrinol.、6:1502、1992);結腸および直腸腫瘍に特異的なreg(膵石タンパク質)プロモーター(Watanabeら、J.Biol.Chem.、265:7432、1990);および肝臓癌および盲端癌、ならびに神経鞘腫、腎臓、膵臓、および副腎細胞に特異的な副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)プロモーター(Camposら、Mol.Rnfovtinol.、6:1642、1992)が含まれる。
【0020】
腫瘍細胞で特異的に機能するプロモーターの例には、乳癌細胞に特異的なストロメリシン3プロモーター(Bassetら、Nature、348:699、1990);非小細胞肺癌細胞に特異的なサーファクタントタンパク質Aプロモーター(Smithら、Hum.Gene Ther.、5:29〜35、1994);分泌性ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)発現癌に特異的なSLPIプロモーター(Garverら、Gene Ther.、1:46〜50、1994);黒色腫細胞に特異的なチロシナーゼプロモーター(Vileら、Gene Therapy、1:307、1994;国際公開公報第WO94/16557号;同第WO93/GB1730号);線維肉腫/腫瘍形成細胞に特異的なストレス誘導性grp78/BiPプロモーター(Gazitら、Cancer Res.、55(8):1660、1995);含脂肪細胞に特異的なAP2脂肪エンハンサー(Graves、J.Cell Biochem.、49:219、1992);肝細胞に特異的なα−1抗トリプシントランスサイレチンプロモーター(Graysonら、Science、239:786、1988);多形性膠芽腫細胞に特異的なインターロイキン−10プロモーター(Nittaら、Brain Res.、649:122、1994);膵臓、乳房、胃、卵巣、および非小細胞肺癌細胞に特異的なc−erbB−2プロモーター(Harrisら、Gene Ther.、1:170、1994);脳腫瘍細胞に特異的なα−B−クリスタリン/熱ショックタンパク質27プロモーター(Aoyamaら、Int.J.Cancer、55:760、1993);神経膠腫および髄膜腫細胞に特異的な塩基性線維芽細胞成長因子プロモーター(Shibataら、Growth Fact.、4:277、1991);扁平上皮細胞癌、神経膠腫、および乳癌細胞に特異的な上皮増殖因子受容体プロモーター(Ishiiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90:282、1993);乳癌細胞に特異的なムチン様糖タンパク質(DF3、MUC1)プロモーター(Abeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90:282、1993);転移性腫瘍に特異的なmts1プロモーター(Tulchinskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89:9146、1992);小細胞肺癌細胞に特異的なNSEプロモーター(Forss−Petterら、Neuron、5:187、1990);小細胞肺癌細胞に特異的なソマトスタチン受容体プロモーター(Bombardieriら、Eur.J.Cancer、31A、184、1995;Kohら、Int.J.Cancer、60:843、1995);乳癌細胞に特異的なc−erbB−3プロモーターおよびc−erbB−2プロモーター(Quinら、Histopathology、25:247、1994);乳癌細胞および胃癌細胞に特異的なc−erbB4プロモーター(Rajkumarら、Breast Cancer Res.Trends、29:3、1994);甲状腺癌細胞に特異的なサイログロブリンプロモーター(Mariottiら、J.Clin.Endocrinol.Meth.、80:468、1995);肝臓癌細胞に特異的なαフェトプロテインプロモーター(Zuibelら、J.Cell.Phys.、162:36、1995);胃癌細胞に特異的なビリンプロモーター(Osbornら、Virchows Arch.A.Pathol.Anat.Histopathol.、413:303、1988);および肝臓癌細胞に特異的なアルブミンプロモーター(Huber、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、88:8099、1991)が含まれる。
【0021】
ウイルスを、医薬で使用される任意の従来の経路で、抗癌剤と同時または下記のように抗癌剤投与の直前または直後に投与することができる。また、ウイルスを、当業者が適切と判断することが出来るならば、抗癌剤と同一または異なる経路で投与することができる。
【0022】
本発明の方法で使用されるウイルス(または抗癌剤)を、例えば、直接注射または外科的方法(例えば、脳腫瘍への定位注射:Pellegrinoら、「精神生物学の方法(Methods in Psychobiology)」、Academic Press、New York、New York、67〜90、1971)によって、例えば、細胞死滅および/または治療遺伝子発現などのある効果が、所望される組織に直接投与することができる。脳へのウイルス投与に使用することができる方法としてさらに、Boboら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、91:2076〜2080、1994)およびMorrisonら(Am.J.Physiol.、266:292〜305、1994)によって記載された対流法がある。腫瘍治療の場合、直接腫瘍注射の代わりに、手術を行って腫瘍を除去し、任意の残存する腫瘍細胞の破壊を確実にするために切除した腫瘍床にウイルスを接種することができる。あるいは、ウイルスを、非経口経路(例えば、静脈内、動脈内、脳室内、皮下、腹腔内、皮内、表皮内または筋肉内)または粘膜表面(例えば、眼球、鼻腔内、肺内、口腔内、腸内、直腸内、膣内、または尿路表面)を介して投与することができる。
【0023】
ウイルスベクターを哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞に移入するために、任意の多数の周知の処方物を本発明で使用することができる。(例えば、「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第18版、A.Gennaro編、1990、Mack Publishing Co.、Easton、PAを参照のこと)。しかし、ウイルスを、アジュバントまたは担体を使用する、あるいは使用しないで生理学的に適合性のある溶液、滅菌食塩水または滅菌緩衝化食塩水などの中に簡単に希釈することができる。
【0024】
ベクターの投与量は、例えば、達成すべき特定の目的、ベクターで使用される任意のプロモーターの強度、投与される哺乳動物(例えば、ヒト)の状態(例えば、哺乳動物の体重、年齢、および身体全体の健康)、投与様式、および処方の型に依存する。一般に、治療または予防有効量は、例えば、約101〜1010プラーク形成単位(pfu)、例えば、約5×104〜1×106pfu、例えば、約1×105〜約4×105pfuであるが、ほとんどの有効範囲は宿主によって変化し、当業者はこの範囲を容易に決定することができる。また、当業者が適切に決定することができるように単回用量または間隔を置いて反復して投与することができる。
【0025】
抗癌剤
本発明の方法ではあらゆる任意の多数の抗癌剤(すわなち、化学療法薬)を使用することができる。これらの化合物はいくつかの異なるカテゴリーに分類され、例えば、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、および自然源の誘導体が含まれる。本発明で使用することができるアルキル化剤の例には、ブスルファン、カロプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(すなわち、シトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、およびチオテパが含まれる、また、抗腫瘍性抗生物質の例には、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミトキサントロン、ペントスタチン、およびプリカマイシンが含まれる、また、代謝拮抗薬の例には、フルオロデオキシウリジン、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU))、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、およびチオグアニンが含まれる、そして自然源の誘導体の例には、ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンオレルビン、タキソール、プレドニゾン、およびタモキシフェンが含まれる。本発明で使用することができるさらなる化学療法薬の例には、アスパラギナーゼおよびミトタンが含まれる。
【0026】
化学療法薬の投与法は当該分野で周知であり、例えば、選択した特定の薬剤(または薬剤の組み合わせ)、癌の型および位置、ならびに治療を受ける患者についての他の要因(例えば、患者の年齢、体重、および身体全体の健康)に依存して変化する。上記に列挙した任意の薬剤または当該分野で公知の他の化学療法薬を、本明細書に記載の変異ヘルペスウイルスと併せて投与する。
【0027】
ウイルスおよび抗癌剤を、例えば、同日に(0〜12時間内(例えば、1〜8または2〜6時間内))投与するか、異なる日(例えば、24、48、または72時間以内、または1週間以内)に任意の順序で投与することができる。さらに、これらを同一または異なる経路(当業者が適切に決定することができる)で投与することができる(例えば上記を参照のこと)。本発明で使用することができる経路の具体例には、静脈内注入、経口経路、皮下もしくは筋肉内注射、ならびにカテーテルもしくは手術を使用した局所投与が含まれる。適切な薬剤投与量を当業者は容易に決定することができ、例えば、1μg〜10mg/kg体重、例えば、10μg〜1mg/kg体重、25μg〜0.5mg/kg体重、または50μg〜0.25mg/kg体重)の範囲であり得る。薬剤を、任意の適切な薬学的担体または希釈剤(生理食塩水または徐放性処方物など)と共に投与することができる。
【0028】
本発明の方法で治療することができる癌の例には、神経系の癌、例えば、星状細胞腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腫瘍(例えば、下垂体腺腫)、および髄芽細胞腫が含まれる。本発明の方法で治療することができる他の癌の種類の例には、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌(例えば白血病)ならびに本明細書に記載の他の癌が含まれる。
【0029】
実験結果
本発明は、癌治療における変異ヘルペスウイルス(G207)および2つの抗癌剤、フルオロデオキシウリジン(I)およびマイトマイシンC(II)の相乗活性を示す、以下の実験結果に一部基づく。
【0030】
I .フルオロデオキシウリジン誘導性細胞変化とリボヌクレオチドレダクターゼ陰性単純ヘルペスウイルスの複製との間の機能的相互作用
上記のように、G207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)の不活化および両γ134.5遺伝子の欠失によって弱毒化された腫瘍崩壊性単純ヘルペスウイルス(HSV)である。ウイルスRRおよびICP34.5のカルボキシル末端ドメインを機能的に置換することができる細胞相対物は、それぞれ細胞RRならびに成長停止およびDNA損傷タンパク質34(GADD34)の対応する相同ドメインである。チミジル酸シンテターゼ(TS)インヒビターであるフルオロデオキシウリジン(FUdR)は、細胞RRおよびGADD34の発現を変化させることができるので、本発明者らはFUdR誘導性細胞変化によりウイルス増殖および細胞傷害性を変化させると仮定されるG207生物活性に対するFUdRの効果を試験した。10nMFUdRの存在下で野生型HSV−1の複製が阻害されたが、同一の条件下でG207は複製が増加した。FUdRとG207とを組み合わせて使用すると相乗的な細胞傷害性を示した。FUdR曝露により、10nMおよび100nMでRR活性が増加したが、GADD34は100nMのみで誘導された。FUdRによるウイルス複製の増加効果は、ヒドロキシ尿素(公知のRRインヒビター)によって抑制された。これらの結果は、FUdR処理細胞におけるG207成長の利点は、主にRR依存性機構に基づくことを示す。本発明者らが見出したことは、TS阻害がウイルス複製を減少させることを示すにもかかわらず、FUdR誘導性RRの上昇は、G207複製を増加させるというこの欠点を克服することができる。これらのデータにより、癌治療におけるRR陰性HSV変異体とチミジル酸シンテターゼインヒビターとの組み合わせ使用のための細胞の基礎が得られる。本発明者らの実験結果を、以下にさらに詳細に記載する。
【0031】
材料と方法
細胞株および培養
5−フルオロウラシル(5−FU)およびFUdRに対して2つの異なる感受性を示すHCT8細胞を本研究で使用した。HCT8細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(CCL−224、Rockville、MD、USA)から得た。耐性細胞株を、既に記載のように(Ascheleら、Cancer Res.、52:1855〜1864、1992)、15μM 5−FUへの7日間(HCT8/FU7dR)の曝露後にHCT8細胞からクローン化した。両細胞株を、10%ウシ胎児血清(FCS)、100μg/mlペニシリン、および100μ/mlストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地に維持した。ベロ細胞(アフリカミドリザル腎臓)を、10%FCSを補足したイーグル最小必須培地(MEM)中で増殖させた。
【0032】
ウイルス
多変異複製コンピテント1型ヘルペスウイルスG207の作製は、既に記載されている(Minetaら、Nature Med.、1:983〜943、1995)。野生型HSV−1F株に基づいて、R3616変異体からG207を構築した。この変異体は、γ134.5遺伝子座のコードドメイン由来の1kb欠失およびリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードするICP6遺伝子への大腸菌lacZ遺伝子の挿入を含む。HSV−1(F)はG207の親野生型ウイルスであり、KOSは異なる株の野生型HSV−1である。ベロ細胞上でウイルスを増殖させた。G207は、S.D.RabkinおよびR.L.Martuzaから贈与された。HSV−1(F)およびKOSは、MediGene,Inc.(Vancouver、Canada)から得た。
【0033】
p53変異分析
ゲノムDNAを、HCT8およびHCT8/7dR細胞から抽出した。p53遺伝子のエクソン5〜9をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、一本鎖DNA高次構造多型によって変異について分析した。
【0034】
細胞傷害性アッセイ法
G207およびFUdR(フロクスウリジン、Roche Laboratories Inc.、Nutley、NJ)の細胞傷害性を、細胞質乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の測定(Cyto Tox 96ノンラジオアクティブ・サイトトキシアッセイ、Promega, Madison, WI)によって評価した。全ての細胞傷害性アッセイ法を、2×104細胞/ウェルから出発する24ウェルプレートで行った。処理開始後の種々の測定点で、接着細胞をPBSで洗浄し、細胞質LDHを溶菌緩衝液(PBS,1.2%v/v TritonX−100)によって放出させた。テトラゾリウム塩を赤色ホルマザン生成物に変換する酵素結合反応を使用して溶解物の活性を測定した。マイクロプレートリーダー(EL 312e、Bio−Tek Instruments、Winooski、VT)を使用して450nmの吸光度を測定した。細胞傷害性が、未処理細胞(対照)と比較した処理細胞の最大LDH放出の割合として示された。
【0035】
ウイルス滴定
E−MEM、2mM L−グルタミン、10%FCSを含む少なくとも1つの継代培養にベロ培養を移した。培養物を6ウェルプレートのウェルあたり1×106細胞の密度でプレートし、加湿インキュベーターにて37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、培養物をPBSで2回洗浄し、細胞溶解物の連続希釈物(0.8ml/ウェル)を、3枚の皿に37℃で4時間吸着させた。細胞溶解物を、4回の凍結融解サイクルで調製した。吸着後、接種物を除去し、培養物を寒天含有培地に重層した。接種から2日後に培養物をニュートラルレッドで染色し、翌日にプラーク形成を評価した。
【0036】
β−ガラクトシダーゼ活性
β−ガラクトシダーゼ活性を、o−ニトロフェニルガラクトシド(ONPG)のo−ニトロフェノールとガラクトースへの変換のモニタリングによって決定した(β−ガラクトシダーゼレポーターアッセイ、Pierce、Rockford、IL)。細胞を溶解し、ONPGと37℃で30分間インキュベートした。λ=405nmでのo−ニトロフェノールの分光光度測定によって反応速度を決定した。o−ニトロフェノールについてのモル減衰係数(ελ=4.5×103M−1cm−1)を使用して、1単位のβ−ガラクトシダーゼ活性を、37℃で1分間の1nmolのONPGのo−ニトロフェノールおよびガラクトースへの切断と定義した。
【0037】
β−ガラクトシダーゼの組織化学染色
細胞をトリプシン処理し、培地に再懸濁し、PBSで洗浄した。サイトスピンスライドを、1×105細胞を含む1mlの細胞懸濁液の1000rpmで6分間の遠心分離によって調製した。スライドをX−gal(5−ブロモ−4ークロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)で染色し、37℃で4時間インキュベートした。PBSでの洗浄後、スライドを0.1%核ファーストレッドで対比染色する。
【0038】
細胞周期分析
既に記載のフローサイトメトリー(Nusseら、Cytometry、11:813〜821、1990)によって核調製物に対して細胞周期分析を行った。簡単に述べれば、細胞単層をPBSで注意深く洗浄し、細胞破片を除去した。トリプシン処理後、細胞をPBSで洗浄し、NP40溶液(10mM NaCl、3.4mM クエン酸ナトリウム、0.03%NP−40、63μM臭化エチジウム、10μg/ml RNaseA)に再懸濁した。室温で1時間の接種後、同体積の高スクロース溶液(0.25Mスクロース、78mMクエン酸、100μM臭化エチジウム)を加えた。臭化エチジウム染色核のDNA含有量を、FACScaliburにて決定した。データを、CellQuestソフトウェア(Becton Dickison, San Jose,CA)を実施するFACStationで分析した。
【0039】
リボヌクレオチドレダクターゼの細胞抽出
250cm2フラスコで増殖させた細胞をトリプシン処理し、氷冷PBSで2回洗浄した。細胞を300×g、4℃で5分間遠心分離し、3倍体積の低塩抽出緩衝液(10mM HEPES、pH7.2、2mM DTT)に再懸濁した。再懸濁物中の生細胞数を、トリパンブルー色素排除法によって決定した。氷上で30分間の接種後、細胞懸濁物を28G1/2ニードルにて10回抜き取った。粗ホモジネートを、100,000×g、4℃で60分間遠心分離して、細胞破片を除去した。上清画分を、1,000倍体積の低塩抽出緩衝液に対して4時間透析し、2時間後に分子量カットオフ10,000の透析カセット(Slide−A−Lyzer透析カセット、Pierce、Rockford、IL)を使用して一定量の緩衝液を交換した。透析した抽出物を液体窒素中で急速冷凍し、分析まで−80℃で保存した。全ての抽出手順を4℃で行った。
【0040】
CDPレダクターゼ活性のアッセイ法
リボヌクレオチドレダクターゼ活性を、SteeperおよびStuartの変法(Steeperら、Anal.Biochem.、34:123〜130、1970)によって決定した。CDPのdCDPへの変換を、[14C]CDP(53mCi/mmol、Movarek Biochemicals,Inc.)を基質として、ヌクレオチドのヌクレオシドへの加水分解のためにトウブダイヤガラガラヘビ由来のガラガラヘビ毒(Sigma)を使用してモニターした。反応混合物は、150μlの最終体積中に以下の濃度の成分を含んでいた、すなわち、40μM CDP、10μM[14C]CDP(0.08μCi)、6mM DTT、4mM酢酸マグネシウム、2mM ATP、50mM HEPES(pH7.2)、および100μl抽出物(0.2〜0.7mgタンパク質)。37℃で30分間酵素反応を行い、100℃で4分間の接種によって反応を停止させた。50μlキャリアdCMP(6mM dCMP、2mM MgCl2、6mM Tris−HCl(pH8.8))および25μlヘビ毒懸濁液(50mg/ml)の添加によってヌクレオチドを加水分解した。37℃で3時間の接種後、反応混合物を4分間沸騰させて熱不活化させた。室温で10分間の14,000×gでの遠心分離によって熱沈殿物質を除去した。[14C]デオキシシトシンを、フェニルボロン酸カラム(BondElut PBA、Varian、Harbor City、CA)を使用した共有結合性クロマトグラフィーによって[14C]シトシンから分離した。トリエタノールアミン緩衝液(pH10)を最終濃度0.4Mまで上清画分に加え、この混合物1mlをカラムに供した。画分を回収し、液体シンチレーション分光測定法(LS6000IC液体シンチレーションシステム、Beckman Instrument,Inc.、Fullerton、CA)によって放射能を測定した。酵素活性1単位は、37℃で1時間での1nmolのCDPの生成物dCDPへの変換と定義した。
【0041】
ノザンブロットハイブリッド形成
全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出によって単離した(Chomczynskiら、Anal.Biochem.、162:156〜159、1987)。RNAを変性させ、1.2%ホルムアルデヒド−アガロースゲルにて電気泳動し、標準的な方法によってニトロセルロース膜にブロットした。予備ハイブリッド形成後、膜を、40℃で50%のホルムアミド中で、ランダムプライマー法によって[32P]dCTPで標識した全長GADD34およびβ−アクチンcDNAプローブにハイブリッド形成させた。膜を洗浄し、−80℃でハイパーフィルム(Amersham pharmacia biotek)に曝露した。NIH画像ソフトウェアを使用してスキャンフィルムの濃度分析を行った。相対GADD34レベルを、GADD34/β−アクチン比として計算した。
【0042】
結果
G207およびFUdRの相乗的細胞傷害性
低LDH放出およびサブG1画分のより高い割合によって示されるように、HCT8細胞は、HCT8/7dRと比較してFUdRに対して感受性が高かった(図1A、図5A、および図5B)。両細胞株は、類似のウイルス細胞傷害性プロフィールを示した。感染多重度(MOI)が1.0または0.1でのウイルス感染により、6日目で細胞が完全に死滅する一方で、MOI 0.01でのG207は、細胞毒性作用は低かった(図1Bおよび図1C)。FUdRはウイルス細胞傷害性を増加させることができるという仮説を試験するために、本発明者らは、MOI 1.0およびMOI 0.1のウイルス細胞傷害性が過剰に高いので、MOI 0.01でG207を使用することを決定した。10nMまたは100nM FUdRと組みあせたG207(MOI 0.01)により、6日目までにHCT8細胞がほぼ完全に死滅した(図1D)。この効果は、それぞれ1種類での処理による計算された相加効果よりも高く、これは組み合わせ治療の相乗効果を示す。さらに、相乗効果の程度は、FUdR低感受性細胞株HCT8/7dRよりもHCT8細胞においてより明白であった(図1Dおよび図1E)。
【0043】
FUdRの存在下でのβ−ガラクトシダーゼ発現の増加
ウイルス感染性に対するFUdRの効果を評価するために、G207におけるlacZレポーター遺伝子産物としてβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。MOI 0.01のG207を感染させ、10nM FUdRで処理した細胞は、感染後(pi)3日目に最も高い総β−ガラクトシダーゼ発現を示したが、生細胞数に換算した場合、100nM FUdRの曝露により、G207のみでの処理よりもβ−ガラクトシダーゼ活性が高かった(図2Aおよび2B)。FUdR曝露細胞のβ−ガラクトシダーゼについての組織化学染色は、より高い染色強度およびより高いX−gal染色陽性細胞の割合を示した(図2C)。FUdRによる感染増大の程度は、HCT8/7dR細胞よりもHCT8でより明白であった。
【0044】
FUdRの存在下で、G207の複製は増加するが、野生型HSV−1の複製は減少する
一工程の成長分析により、HCT8細胞においてG207と比較して野生型HSV(HSV−1(F)、KOS)のウイルス収量は2−log倍高いことが示された。興味深いことに、FUdRの存在下でのG207の放出量は、G207のみの接種から36時間後に3倍になったが、親野生型ウイルスHSV−1(F)の複製は、同一の条件下でいくらか阻害された。本発明者らは、別の野生型HSV−1(KOS株)を試験し、10nM FUdRの存在下で類似の複製の減少が認められた(表1)。多工程成長分析により、G207感染のみと比較して両方の細胞株で10nM FUdRの存在下で有意に高いウイルス産生が認められた。G207のピークの力価および総産生量は、HCT8/7dR細胞と比較して親細胞株HCT8で高かった(図3)。
【0045】
ウイルス複製およびβ−ガラクトシダーゼ発現に対するヒドロキシ尿素の効果
RRインヒビターであるヒドロキシ尿素(HU)は、HCT8細胞のウイルス複製を90%抑制した。さらに、HUは、G207のFUdRによって誘導された複製増加を消去することができた。阻害度は、HUのみで処理した細胞(1.9±0.5×104pfu)およびHUおよびFUdRで処理した細胞(2.1±0.5×104pfu)で同様であった。ウイルス産生と対照的に、FUdRおよびHUは共にβ−ガラクトシダーゼ発現に対して有意な効果を示した(図4)。
【0046】
FUdRによる細胞周期の変化
FUdRへの増殖細胞の時期の異なる曝露により、S期の画分が増加し、G1/G0期の画分が減少したが、この効果は、薬剤濃度および細胞株に依存していた。10nMの低濃度FUdRにより、S期中の画分は24時間までにHCT8で75%、HCT8/7dRで37%増加した。48時間では両細胞株は、100nMでの処理後ほとんどがS期中の細胞であった。100nM FUdRでS期中レベルが完全に遮断されたHCT8細胞と対照的に、HCT8/7dR細胞はS期中の一過性増加のみを示し、見かけ上G2/M期に移行することができた。さらに、10〜20%のHCT8/7dR細胞は、100nM FUdRの存在下でG2/Mへの移行の代わりにS期中でDNA核内倍加することが認められた。G2/Mにおけるこれらの細胞の蓄積は、この核内倍加に起因する4N G1細胞の存在による(図5Aおよび図5B)。
【0047】
FUdRの存在下でのリボヌクレオチドレダクターゼ活性の増加
G207の複製は細胞RRに依存するので、本発明者らは、チミジル酸シンテターゼインヒビターFUdRがこの細胞酵素に対していかなる効果を有するかどうかを試験した。指数増殖細胞の基準の活性は、化学療法抵抗性細胞株HCT8/7dRと比較してHCT8細胞では約3.2倍高かった。図6は、FUdR曝露の際のRR活性の時間依存性経時変化を示す。FUdR処理により、両細胞株のRR活性が増加した。この増加は一過性であり、ピークの活性は、処理の開始から24時間後にFUdR誘導S期中の増加と同時に認められた(図5Aおよび5B)。しかし、活性誘導度は、HCT8/7dR細胞と比較してHCT8でより明白であった。10nM FUdRで処理したHCT8のRR活性は、ピークの活性後も増加しつづけた。
【0048】
リボヌクレオチドレダクターゼ活性に対するFdUMPの効果
FdUMPは、FUdRの活性な代謝産物であり、TSを阻害する。哺乳動物RR活性は、デオキシヌクレオチドのフィードバック阻害によって大きく制御される;したがって、本発明者らは、FdUMP(dUMPのフッ素化形態)がRR活性を阻害してG207の複製を妨害し得るという着想について試験した。表2は、酵素活性の用量依存性減少を示す。0.001〜0.1mMのFdUMP濃度ではRRの阻害は中程度であり、約80〜70%の活性が残存している。1mM FdUMPの存在下で実質的な酵素阻害を測定し、本研究では最大FUdR濃度の約10,000倍を使用した。
【0049】
FUdRに応答したGADD34の発現
GADD34タンパク質は、DNA損傷に応答して発現する。GADD34およびウイルスγ134.5タンパク質は、ストレス条件下でのタンパク質合成を機能的に維持することができる類似のカルボキシル末端ドメインを含む。したがって、本発明者らは、DNA損傷因子としてのFUdRがG207におけるγ134.5欠失を完全にすることができるGADD34の発現を誘導することができるかどうかを調査した。100nMのFUdRは両細胞株でGADD34を誘導するが、10nMではほとんど効果はなかった。未処理細胞と比較した場合、濃度測定により、HCT8については24時間および48時間でmRNAがそれぞれ1.9倍および1.6倍となり、HCT8/7dR細胞については48時間で1.9倍に増加した(図7)。
【0050】
【表1】
aHCT8細胞を、MOIが2のHSV−1(F)、KOS、およびG207に感染させた。37℃で1時間の吸着後、接種物を除去し、細胞をPBSで洗浄し、10nM FUdRを含む培地またはFUdRを含まない対照培地を添加した。接種から36時間後、細胞および上清を回収し、標準的なプラークアッセイ法によって溶菌物をベロ細胞に対して滴定した。データを、3つの独立した測定の平均±SEMとして示す。
【0051】
【表2】
aリボヌクレオチドレダクターゼを、以下の「実験手順」に記載のように指数増殖HCT8細胞から抽出した。抽出物を、漸増濃度のFdUMPとインキュベートし、リボヌクレオチドレダクターゼ活性を測定した。データを、3つの独立したリボヌクレオチドレダクターゼ活性決定の平均±SEMとして示す。
b100μlの透析細胞抽出物は、0.65mgのタンパク質を含んでいた。
【0052】
II .マイトマイシン C およびγ 34.5 欠失腫瘍崩壊性ヘルペスウイルス( G207 )の相乗的抗癌活性は、 GADD34 の上方制御によって媒介される
遺伝子治療に使用される腫瘍崩壊性ウイルスは、一般に、標的腫瘍ウイルスを選択的に標的化する一方で正常な宿主組織を容赦するように改変されている。上記のように、多変異ウイルスG207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼの不活化およびウイルスγ34.5遺伝子の欠失によって弱毒化されている。G207は実験モデルの多数の腫瘍型を有効に死滅されるにもかかわらず、γ34.5変異体はこの遺伝子を維持するウイルスと比較した場合に抗腫瘍効率を顕著に減少させることが十分に立証されている。γ34.5遺伝子産物に対する哺乳動物相同体は、GADD34タンパク質である。このタンパク質は、γ34.5遺伝子を機能的に置換することができ、またDNA損傷の際に上方制御する。化学療法薬マイトマイシンCをG207と組み合わせて使用して、GADD34を上方制御し、ウイルス毒性および抗腫瘍効果を増大させるためにγ34.5遺伝子欠失を完全にした。アイソボログラム法およびChou−Talaleyの組み合わせインデックス法を使用して、マイトマイシンCとG207との間でインビトロおよびインビボでの胃癌治療に有意な相乗効果を示した。このような相乗効果の結果として、腫瘍細胞死滅を犠牲にすることなく、広範な薬剤効果レベルを保ちながら各薬剤の用量減少を達成することができる。ノザンブロット分析によって決定されるように、GADD34 mRNA発現は、マイトマイシンC処理により増加した。これらのデータは、マイトマイシンCを使用して、G207中の有毒なγ34.5遺伝子表現型を選択的に修復し、癌治療におけるDNA損傷剤とγ34.5HSV変異体との組み合わせ使用の細胞での基本も得られることを示す。本発明者らの実験結果を、以下でさらに詳述する。
【0053】
材料と方法
細胞培養
ヒト胃癌細胞株OCUM−2MD3を、日本の大阪市立大学医学部のヤシロマサカズ(Masakazu Yashiro)博士から寄贈され、2mM L−グルタミン、0.5mM ピルビン酸ナトリウム、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したDMEM HG中で維持した。ヒト胃癌細胞株MKN−45−Pを、日本の神奈川大学のヨネムラユタカ(Yutaka Yoneumura)博士から寄贈され、10%FCS、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したRPMI中で維持した。ヒト肺癌細胞株A549をATCCから入手し、10%FCS、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したF−12中で維持した。細胞は、全て5%CO2加湿インキュベーター中で維持した。
【0054】
ウイルス
G207は、γ134.5神経ビルレンス遺伝子およびUL39での大腸菌lacZ挿入の両方を欠損させて構築した多変異複製コンピテントHSVであり、またUL39はリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードしている。G207の構築は他のところで記載されている。
【0055】
動物
無胸腺ヌードマウス(4〜6週齢)を、全ての動物実験で使用した。動物研究は、メモリアルスローンケタリング癌センター動物ケアと使用委員会で承認されており、厳格なガイドラインの下で実施した。麻酔にはメトキシフルラン吸入を使用して実験を行った。
【0056】
腹膜散在性胃癌の作製
以前に記載のように、胃癌の確立したネズミ移植モデルを使用した(Bennettら、Journal of Molecular Medicine、78:166〜174、2000;Yashiroら、Clin.Exp.Metastasis、14:43〜54,1996)。2×106OCUM−2MD3細胞の腹腔内(i.p.)注射により、網、小腸間膜および大腸間膜、横隔膜、性腺脂肪、および肝門に見られる散在性腹膜腫瘍が容易に発症した。注射から3日後に巨視的小結節が存在し、過剰な全身腫瘍組織量、観血性腹水症、および悪液質が注射から4週間で認められる。全身腫瘍組織量を評価するために、既に記載のように動物を屠殺して内臓を摘出し、腹腔腫瘍を関連する腹部器官から取り出した。全身腫瘍組織量を、重量で評価した。
【0057】
MMCおよびG207のインビトロ細胞傷害性
96ウェルアッセイプレート(Costar、Corning Inc.、NY)に1×104細胞/ウェルでのプレーティングによって細胞傷害アッセイを行った。MKN−45−PおよびOCUM−2MD3細胞を、培地のみ(対照ウェル)、マイトマイシンCのみ(Bristol Laboratories、Princeton、NJ)、G207のみ、G207とMMCの両方を使用した併用療法のいずれかを使用して処理した。OCUM−2MD3細胞株については1:10およびMKN−45−P細胞株については1:25の比のMMCおよびG207の連続希釈物を使用して併用療法を行った。これらの比を、最初の実験での各薬剤についてのED50の評価および併用療法の比を決定するためのこれらの用量の使用によって決定した。各群の細胞生存率(%)(対対照)を、標準MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2Hテトラゾリウムブロミド)バイオアッセイ法を使用して治療から5日後に計算した。マイクロプレートリーダーを使用して、550nmでMTT−ホルマザン産物の存在について評価した。全サンプルのOD値からバックグラウンド光学密度(OD)を引き算した。次いで、処理ウェルの平均吸光度(OD)(n=6)を未処理(対照)ウェルの平均吸光度(OD)(n=6)で割り算することによって細胞生存度を計算した。
【0058】
MMCとG207との間の相乗効果についての薬理学的分析
Chou及びTalalayの多剤効果分析を使用して、G207とMMCとの間の薬理学的相互作用を決定した。この方法は、2つの薬剤の推定される相加効果を定義し、組み合わせ効果が予想される相加効果とどれぐらい異なるかを決定することによって相乗効果または拮抗作用を定量する。データ分析に使用した方程式およびコンピュータソフトウェアは、他で詳述されている(Chou,T.編、Academic Press、New York、61〜102、1991;Chouら、Advances in Enzyme Regulation、22:27〜55、1984;Chouら、「IBM−PCのマニュアルおよびソフトウェア」;Chou,J.、Academic Press、New York、223〜244、1991)。組み合わせインデックス方程式を使用して、2薬剤組み合わせを正確に分析する。CI=1が相加効果を示し、CI<1およびCI>1がそれぞれ相乗効果および拮抗作用を示すようにCI値を解釈する。上記実験で得た細胞傷害性データを、Chou−Talalay分析で使用した。これらのデータから、各用量および対応する効果レベル(影響画分(fraction affected)(Fa)という)についてのCI値が得られた。実際の実験データに基づいて、コンピュータソフトウェアを使用して、5〜59%の全効果レベル範囲(Fa)から連続CI値を計算した。次いで、これらのデータを使用して、Fa−CIプロット(効果優先データ提示手段)を作成する。用量優先のアイソボログラム技術によってもデータを分析した。アイソボログラム上の軸は、各薬剤の用量を示す。任意の所与のFa値について、所与のFa値を得るために必要な各薬剤の用量に対応するx軸およびy軸上の2つのポイントを選択する。これら2つのポイントの間に引いた直線は、同一のFa値を得るために必要な可能な組み合わせ用量に対応し、これは、2つの薬剤間の相互作用が厳密に付加的であると考えられる。所与のFaを達成するために実際に必要な認められた実験濃度を、プロットに加える。これらのポイントが直線上に存在する場合、そのFa値で効果は付加的である。ポイントが直線の左側に存在する場合、効果は相乗的であり、ポイントが直線の右側に存在する場合、そのFa値で効果は拮抗的である。組み合わせインデックス法を使用して利用可能な別の計算は、容量減少インデックス(DRI)である。DRIは、相乗的組み合わせで得られる場合、同一の効果レベルの達成に必要な単一薬剤治療の濃度と比較した、各薬剤の倍率−用量減少の決定要因である。DRI>1は、毒性を好ましく減少しながら治療効果を維持することを示す。
【0059】
インビトロウイルス増殖分析
MMCの存在下で、G207のOCUM−2MD3細胞内で複製する能力を、ウイルス増殖分析によって評価した。1.5×105OCUM−2MD3細胞/ウェルを、6ウェルプレート(Costar、Cornin Inc.、Corning、NY)にプレートした。次いで、細胞をMOI=0.01のG207のみ、または0.01μg/cc、0.02μg/cc、または0.04μg/ccのMMCと組み合わせたMOI=0.01のG207のいずれかに感染させた。細胞および培地を、感染後0時間、24時間、48時間、72時間、および120時間で回収した。3回の凍結融解による溶菌の後、ベロ細胞に対して標準的なプラークアッセイ法を行い、ウイルス力価を評価した。全てのサンプルについて、3回行った。
【0060】
インビトロでMMC処理した細胞におけるGADD34のノザンハイブリッド形成分析
0μg/ml(未処理)、0.005μg/ml(低用量)、または0.04μg/ml(高用量)のマイトマイシンC(Bristol Laboratories、Princeton、NJ)を含む12ccの培養培地で細胞を培養した。24時間および48時間でトリプシン処理によって細胞を回収した。RNA単離システム(Promega、Madison、WI)を使用して全RNAを調製し、RNA含有量を260nmでの光学密度によって測定した。サンプルあたり7μgのRNAを変性1.2%アガロースゲルに加えた。標準的技術によって、電気泳動分離、ニトロセルロース膜(Intergen、Purchase、NY)へのRNAの移動、ハイブリッド形成(40℃で50%ホルムアミド)、およびオートラジオグラフィーでの同定を行った。2.4kbインサートを含むcDNAクローンGADD34をA.Fornace,Jr.博士から入手し、1.1kbインサートを含むcDNAクローンα−アクチンを、ATCCから入手した(Manassas、VA)(Hollanderら、J.Biol.Chem.、272:13731〜13737、1997)。プラスミドベクターから切り出したcDNAを、ランダムプライマー標識法によって[32P]dCTPで標識した(Stratagene、La Jolla、CA)。
【0061】
腹腔内G207およびMMCでの胃癌腫症の治療
G207およびMMCのインビボでの全身腫瘍組織量を減少する能力を、胃癌腫症モデルで評価した。動物は全て2×106OCUM−2MD3細胞で腹腔内注射し、3日後に治療した。実験群(n=7)を、無血清培地(対照)、1×106pfuのG207、5×106pfuのG207、0.1mg/kg MMC、あるいは0.1mg/kg MMCと1×106pfuのG207、または0.1mg/kg MMCと5×106pfuのG207の併用療法として腹腔内注射によって治療した。4週間後に動物を屠殺し、全身腫瘍組織量を記載のように評価した(Bennettら、Journal of Molecular Medicine,78:166〜174、2000)。
【0062】
結果
MMCおよびG207のインビトロ細胞傷害性
G207およびMMCは共にOCUM−2MD3およびMKN−45−P胃癌細胞に対して用量依存性の細胞傷害を示す。併用療法は、いずれか1つの薬剤よりも多数の腫瘍細胞を死滅させ、予想される相加効果よりも有効性が高い。データは、OCUM−2MD3細胞(図8A)およびMKN−45−P細胞(図8B)についての対照に対する平均(±SEM)細胞生存として示す。
【0063】
MMCとG207との間の相乗効果の薬理学的分析
以下の2つの方法を使用して、G207とMMCとの間の相乗効果を同定した、すなわち、組み合わせインデックス法およびアイソボログラム法。Chou−Talaley分析は、OCUM−2MD3(図9A)およびMKN−45−P(図9B)の全範囲のFa値に対してCI値が1未満を維持することを示す。OCUM−2MD3細胞株は中程度の相乗効果を示す一方で、MKN−45−P細胞株は強力な相乗効果を示した。各Fa値について用量減少インデックス(DRI)を計算した。OCUM−2MD3細胞株について、MMCおよびG207の用量は、併用療法で投与した場合は1/2〜1/3に減少しうる(表3)。MKN−45−P細胞株では、併用療法で投与した場合は、MMCの用量は、1/2〜1/9に減少し、G207の用量は、1/2〜1/4に減少し得る(表4)。1を超えるDRI値は、効果を喪失することなく毒性の低減を達成することができることを示す。90%の細胞死滅(ED90)、70%の細胞死滅(ED70)、および50%の細胞死滅(ED50)に必要なMMCおよびG207の用量についてアイソボログラムを構築した(図10Aおよび10B)。これらの各Fa値(0.5、0.7、および0.9)についてのさらなる推定効果ラインの十分に下の薬剤およびウイルス濃度で実験組み合わせデータポイントが存在した。これらの研究により、両細胞株についてのMMCとG207との間の相乗効果が確認された。
【0064】
インビトロウイルス増殖分析
OCUM−2MD3細胞におけるG207の複製は、高用量のMMCの存在下でのウイルス収量の減少を示した。ウイルス力価の155倍増加は、OCUM−2MD3細胞のG207での感染から5日後に認められた。0.01μg/cc MMCの存在下で、感染から5日後に24倍増加したウイルス力価が認められた。0.02μg/ccおよび0.04μg/cc MMCの存在下で、ウイルス収量がそれぞれ8倍および2倍増加した。併用化学療法で測定したより低いウイルス収量は、特に併用療法の相乗的細胞傷害性が与えられた場合、細胞基質の有意な喪失の次に起こり得る。
【0065】
インビトロでMMCで処理した細胞におけるGADD34についてのノザンハイブリッド形成分析
MMCで処理していない細胞から抽出したRNAを陰性対照(レーン1)として使用し、陽性対照(レーン6)は、2.4kbでの推定GADD34バンドを示した(図11)。全ての条件下で、ほぼ同量の細胞α−アクチン遺伝子を発現した。低用量のマイトマイシンC(0.005μg/cc)での処理から24時間後(レーン2)に回収したOCUM細胞は、予想されるサイズでいかなるバンドも示さない一方で、高用量MMC(0.04μg/cc)で処理した細胞は、有意な2.4kbバンド(レーン3)を示した。高用量処理から24時間後、陰性対照と比較した場合、強度が2.49倍増加したGADD34バンドが測定された。低用量MMCでの処理から48時間後に回収したOCUM細胞はいかなるGADD34バンドも認められなかったが(レーン4)、高用量治療は、2.4kbに不連続のバンドが認められた(レーン5)(図11)。高用量処理から48時間後、3.21倍の強度の増加が認められた(図11)。
【0066】
腹腔内G207およびMMCでの胃癌腫症の治療
胃癌腫症マウスを、G207、MMC、またはこれらの薬剤の組み合わせで腹腔内治療を行った。治療効果を、屠殺時点でのマウスの腹腔内全身腫瘍組織量の秤量によって評価した。平均腹腔内全身腫瘍組織量(±SEM)は、対照マウスで2470(±330)mg、1×106pfuのG207で治療したマウスで1210(±300)mg(対照に対してP=0.02)、および0.1mg/kg MMCで治療したマウスで1490(±310)mg(対照に対してP=0.06)であった(図12)。1×106pfuのG207および0.1mg/kg MMCを使用した併用療法の平均全身腫瘍組織量は350(±150)mg(対照に対してP<0.001)であり、これは1×106pfuのG207のみ(P=0.03)およびMMC治療のみ(P=0.01)とは統計的に異った(図5)。5×106pfuのG207でのウイルス治療により、平均全身腫瘍組織量は990(±320)mg(対照に対してP<0.01)であった(データ示さず)。5×106pfuのG207および0.1mg/kg MMCを使用した併用療法の平均全身腫瘍組織量は100(±60)mg(対照に対してP<0.01)であり、これは5×106pfuのG207のみ(P=0.04)およびMMC治療のみ(P<0.01)とは統計的に異なった(図5)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
上記で引用した全ての引例は、その全体が参考として組み込まれる。他の態様は添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【図1】G207およびFUdRの細胞傷害効果を示す実験結果を示す。細胞生存度を、細胞内LDHの最大放出の関数として評価した。上の図のパネル:G207およびFUdRの細胞傷害性。HCT8(●)およびHCT8/7dR(○)を、漸増濃度のFUdR(5、10、50、100nM)に曝露し、治療開始から6日後に生存度を決定した(A)。感染3日後および6日後のHCT8(B)およびHCT8/7dR(C)のウイルス細胞傷害性。細胞を、1.0(△)、0.1(□)、および0.01(○)のMOIのG207に感染させた。下の図のパネル:HCT8(D)およびHCT8/7dR(E)中で単独(G207またはFUdR)およびHCT8(D)およびHCT8/7dR(E)の組み合わせ治療から6日目の細胞生存度。細胞を、MOI 0.01でG207に感染させる(白抜きのバー)または、FUdRに曝露する(灰色のバー)または、G207(MOI=0.01)およびFUdR(10nMまたは100nM)を組み合わせて(黒のバー)治療した。相加効果を各単独治療から積として計算した(斜線のバー)。全てのアッセイを、各条件について4回行った(平均±SEM)。
【図2】G207での感染後のβ−ガラクトシダーゼ発現に対するFudRの影響を示す実験結果を示す。細胞(2×104)を、24ウェルプレートにプレートし、FUdRの存在下(10nM、斜線;100nM、黒)および非存在下(白)でMOI 0.01のG207を感染させた。感染から3日後、細胞を溶解し、細胞溶解物の全β−ガラクトシダーゼ活性を測定した(A)。各条件についての細胞数を、追加のウェルにおいてトリパンブルー色素排除法によって決定し、総活性を生細胞数に参照することによって活性を計算した(B)。全アッセイを3回行った(平均±SEM)。lacZ染色のために、3×105細胞を、25cm2のフラスコ上にプレートした。12時間後、細胞を、上記と同一の条件下でFUdRの存在下および非存在下でG207に感染させた。3日後、サイトスピンスライドを調製し、lacZ発現についてX−galで染色した。図2のパネルCは、異なる治療条件についての代表的な200倍のフィールドを示す。
【図3】ウイルス複製に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。ウイルス力価を決定して、ウイルス複製に対するFUdRの影響を評価した。12ウェルプレートの1ウェルあたり5×104細胞をプレートした。12時間後、細胞を、FUdRの存在下(△10nM;○100nM)および非存在下(□対照)でMOI 0.01感染させた。上清および細胞を感染のその後7日間毎日回収し、溶解物を、標準的なプラークアッセイ法によってベロ細胞に対して滴定した。全アッセイを、各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図4】ウイルス複製に対するFUdRおよびHUの効果を示す実験結果を示す。HCT8細胞を、細胞あたり2pfuのG207に感染させた。37℃で1時間接種物の吸着を除去した後、細胞をPBSで洗浄し、10nM FUdRを含む培地またはFUdRを含まない対照培地を添加した。感染8時間後、FUdRの存在下および非存在下の感染細胞を、1mM HUに曝露した。感染36時間後、上清を回収し、3回の凍結融解によって溶解物を調製した。溶解物のウイルス力価(A)およびβ−ガラクトシダーゼ活性(B)を決定した。全アッセイを各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図5】細胞周期に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。非同期的に増殖させた細胞(1×106)を、20mlの培地中の75cm2にプレートした。12時間後、10nMおよび100nMの最終濃度になるようにFUdRを培地に添加した。未処理細胞を対照として使用した。処理開始から24時間後、48時間後、および72時間後にFACS分析によって臭化エチジウム染色核のDNA含有量を測定した。側方散乱ヒストグラムに基づいてHCT8(A)およびHCT8/7dR(B)の細胞周期分析を行った。ヒストグラムは、サブG1画分(DNA<G1/G0)およびDNA>G2/Mでゲートをかけられた。
【図6】細胞リボヌクレオチドレダクターゼ活性に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。1×107細胞を、225cm2のフラスコにプレートした。9時間後、10nMおよび100nMの最終濃度になるようにFUdRを培地に添加した。未処理細胞を対照として使用した。FUdRの存在下(△10nM;○100nM)および非存在下(□対照)での種々の測定点で細胞抽出物中のリボヌクレオチドレダクターゼ活性を測定した。活性は、細胞数を参照した。全アッセイを各時点で各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図7】FUdRに反応するGADD34発現を示す実験結果を示す。FUdRの非存在下ならびに10nMおよび100nMのFUdRの存在下、24時間および48時間増殖させた、HCT8(A)およびHCT8/7dR(B)細胞中のGADD34 mRNAのノザンブロット。細胞をプレートし、RR測定実験にしたがってFUdRで処理した(図5の凡例を参照のこと)。β−アクチンは、GADD34のローディングコントロールとして使用した。
【図8】胃癌細胞を死滅させるための併用化学療法および腫瘍崩壊性ウイルス療法が1つの薬剤のみでの治療と比較して効果が高いことを示す実験結果を示す。OCUM−2MD3(A)MKN−45−P(B)胃癌細胞を、異なる用量のマイトマイシンC(μg/cc)またはG207(MOI)で処理した。OCUM−2MD3細胞については1:10、MKN−45−P細胞については1:25のMMC:G207比を一定に維持することで併用療法を行った。標準的なMTTアッセイ法を使用して、各処理群の細胞傷害性を評価し、結果を対照と比較した生存率(%)で示す。
【図9】マイトマイシンCとG207とを使用した併用療法が、評価した全用量範囲で相乗的相互作用することを示す実験結果を示す。相乗性を評価するChou−Talaley組み合わせインデックス法を、方法(本文を参照のこと)に記載のように行った。実験データポイント(●)を使用し、CalcuSynソフトウェアを使用して5〜95%(実線)全範囲のFa値からCI値を決定しCI−Faプロットを構築した。G207およびMMCの相加効果を、CI=1で示す(点線)。G207およびMMC併用療法により、全ての効果レベルでOCUM−2MD3細胞株については中程度の相乗性(A)を示し、MKN−45−P細胞株については強い相乗性を示す。
【図10】OCUM−2MD3細胞株(A)およびMKN−45−P(B)細胞株の両方におけるG207とMMCとの併用療法による相乗作用および用量の減少を示すアイソボログラムを示す。90%の細胞死滅(△)、70%の細胞死滅(□)、および50%(○)の細胞死滅を達成するために必要なMMCおよびG207の用量を、座標軸にプロットし、つないだ実線は、併用療法についての予想される相加効果を示す。下の値を90%(点を打った△)、70%(点を打った□)、および50%(点を打った○)とするための療法の実験用量は、全て対応する線の左下にあることから、相乗作用が示唆される。併用療法を使用した用量減少はまた、両細胞株についての3つのすべてのFa値で明らかである。
【図11】MMCに曝露したOCUM細胞中のGADD34 mRNAレベルを示す実験結果を示す。未処理OCUM細胞から抽出したmRNAを、GADD34の陰性対照として使用し(レーン1)、陽性対照(レーン6)は、2.4kbで強いバンドを示し、GADD34 mRNAの大きさである。OCUM細胞を、低用量(0.005μg/ml)または高用量(0.04μg/ml)のMMCのいずれかで24時間および48時間処理した。24時間後、低用量療法では、GADD34 mRNAの上方制御は認められなかったが(レーン2)、高用量療法では陰性対照と比較してmRNAが2.49倍増加した(レーン3)。48時間後、低用量療法では、GADD34 mRNAの存在は示されなかったが(レーン4)、高用量療法では、mRNAが3.21倍増加した(レーン5)。
【図12】腹腔内化学療法およびウイルス療法は胃癌腫症において組み合わせられた場合、腫瘍死滅を向上させる実験結果を示す。無胸腺症マウスへのOCUM−2MD3細胞の腹腔内注射によって腫瘍負荷を作製し、3日後から治療を開始した。マウスに、媒質(対照)、1×106pfuのG207、0.1μg/kgのMMC、または両作用因子を組み合わせて腹腔内に注射した。腫瘍細胞接種から4週間後の重量によって腫瘍負荷を評価した。G207療法を対照と比較した場合、腫瘍負荷は有意に減少したが(P=0.02)、MMC療法は、この用量で(対照に対して)腫瘍負荷の減少傾向のみを示した(P=0.06)。併用療法により、対照と比較して腫瘍負荷が最も減少し(P<0.001)、G207療法(P=0.03)またはMMC療法(P=0.01)のみと比較した場合にも有意な減少を示した。両側スチューデントt検定を使用して統計分析を行った。
発明の分野
本発明は、癌の治療法に関する。
【0002】
発明の背景
G207は、脳腫瘍治療のために設計され、悪性神経膠腫の新規の治療として現在臨床的に評価中のリボヌクレオチドレダクターゼ陰性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型である(Markertら、Gene Ther.、7:867〜874、2000;Minetaら、Nature Med.、1:983〜943、1995)。最近、このHSV変異体は、結腸直腸癌細胞に対して高い腫瘍崩壊性も示した(Koobyら、FASEB J.、13:1325〜1334、1999)。最近、このウイルスはまた、乳がん(Wuら、Cancer Research、61(7):3009〜3015、2001)、前立腺癌(Oyamaら、Japanese Journal of Cancer Research、91(12):1339〜1344、2000)、直腸結腸癌(Delmanら、Human Gene Therapy 11 (18):2465〜2472、2000)、胃癌(Journal of Molecular Medicine、78(3):166〜174、2000)、膀胱癌(Oyamaら、Human Gene Therapy、11(12):1683〜1693、2000)、卵巣癌(Coukosら、Cancer Gene Therapy、7(2):275〜283、2000)、頭頸部癌(Carewら、Human Gene Therapy、10(10):1599〜1606、1999)、および膵臓癌(Leeら、Journal of Gastrointestinal Surgery、3(2):127〜131、1999を含む多数の型の癌の実験的治療で有効であることが見出されている。
【0003】
G207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)およびγ134.5の欠失によって標的腫瘍細胞を特異的に標的化する、多くの候補腫瘍崩壊性ウイルスで使用される戦略の典型である。第1に、RRの大型サブユニットをコードする感染細胞タンパク質6(ICP6)遺伝子座への大腸菌 lacZ遺伝子の挿入によってウイルスRRを不活化する。RRは、リボヌクレオチドの対応するデオキシリボヌクレオチドへの還元を触媒するので、DNAの新規合成用の十分な前駆体が得られる。哺乳動物細胞では、RRはS期中およびDNA損傷/修復条件下で高度に発現する(Bjorklundら、Biochemistry、29:2452〜5458、1990;Chabesら、J. Biol. Chem.、275:17747〜17753:2000;Engstomら、J. Biol.Chem.、260:9114〜9116、1985;Filatovら、J.Biol.Chem.、270:25239〜25243、1995;Tanakaら、Nature、404:42〜49、2000)。ほとんどのヘルペスウイルスは、それ自体のRRをコードし、したがって、その複製は宿主細胞周期から独立している(Boehmerら、Annu.Rev.Biochem.、66:347〜384、1997;Roizmanら、Fields Virology、第3版、Lippincott−Raven、Philadelphia、1996;Roizmanら、Fields Virology、第3版、Lippincott−Raven、Philadelphia、1996)。G207中のICP6の不活化により、ウイルスDNA複製が細胞酵素に完全に依存性となり、結果として、この変異体の複製は宿主細胞の状態に大幅に依存するようになる。したがって、細胞周期の変化またはDNA損傷/修復条件はこのヘルペスベクターの複製を調節し得ると考えることが妥当である。G207の第2の変異は、両方のγ134.5遺伝子座の欠失である。γ134.5遺伝子は、少なくとも2つの機能を有するタンパク質(ICP34.5)をコードする。1つの機能は、HSVを複製し、中枢神経系内に拡大させる(Chouら、Science、250:1262〜1266、1990;Whitleyら、J.Clin.Invest.、91:2837〜2843、1993)。第2の機能は、HSVにタンパク質合成の細胞遮断の防止によりウイルス感染に対する宿主防御機構を回避する能力を付与する(Chouら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、92:10516〜10520、1995;Heら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、94:843〜848、1997)。この機能は、DNA損傷によって誘導されるタンパク質である細胞成長停止およびDNA損傷タンパク質34(GADD34)のICP34.5相同ドメインにより代替可能である(Heら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、94:843〜848、1997)。
【0004】
化学療法は、悪性腫瘍の治療において、確立された療法である。フルオロデオキシウリジン(FUdR)は、結腸直腸癌の治療に広くに使用されている化学療法薬である。これは、チミジンキナーゼを介したリン酸化によって活性な代謝産物2’−デオキシ−5−フルオロウリジン5’一リン酸(FdUMP)に急速に転換される。FdUMPは、チミジル酸シンテターゼ(TS)のスルフヒドリル残基およびメチレンテトラヒドロフォレートの両者と共有結合複合体を形成することによって酵素TSを阻害する。TSの阻害により、デオキシチミジン5’三リン酸(dTTP)が欠失し、その後細胞内デオキシヌクレオチド三リン酸プールが不均等になる(Danebergら、Mol.Cell Biochem.、43:49〜57、1982;Jackson、J.Biol.Chem.、253:7440〜7446、1978;Yoshiokaら、J.Biol.Chem.、262:8235〜8241、1987)。この阻害により、いくつかの機構を介して細胞傷害性が誘導される。ヌクレオチドプールの不均衡は、FM3A細胞中の二本鎖破壊活性を有する特異的エンドヌクレアーゼを誘導することが示されている(Yoshiokaら、J.Biol.Chem.、262:8235〜8241、1987)。他の研究により、過剰なdUTP/dTTP比によりDNA鎖の破壊につながるウラシルの誤組み込みおよび誤修復を起こすことが示されている(Ayusawaら、J.Biol.Chem.、258:12448〜12454、1983;Goulianら、Adv.Exp.Med.Biol.、195:89〜95、1986;Ingrahamら、Biochemistry,25:3225〜3230、1986)。FUdRの新生DNAに組み込まれる能力が、別の細胞毒性作用機構として示唆されている(Danenbergら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、102:654〜658、1981)。さらに、FUdRは、初期のS期中の遮断、ヒストンH1の喪失、およびDNA伸長の遅延によって細胞周期およびDNA複製に深刻な影響を与える(D’Annaら、Biochemistry、24:5020〜5026、1985)。
【0005】
FUdRおよび他のチミジル酸シンテターゼインヒビターは、細胞におけるヌクレオチド産生の均衡の破壊によって作用する化学療法薬の例である。ピリミジン類似体、プリン類似体、メトトレキセート、および5−FUヒドロキシ尿素を含む追加の作用因子は、類似の効果を有する。別の型の化学療法薬である代謝拮抗薬は、DNA合成の妨害によって作用する。アルキル化剤、いくつかの抗腫瘍性抗生物質、および挿入剤は、DNAとの直接的相互作用によって作用し、例えば、DNA合成および/または転写を妨害することができ、おそらくDNAを破壊に導く。マイトマイシンC(MMC)は、抗腫瘍性抗生物質であり、広範な臨床的抗腫瘍活性範囲を有し、胃癌の標準的治療である(Kelsen、Seminars in Oncology、23:379〜389、1996)。MMCは、一官能性または二官能性アルキル化によってDNAと結合し、DNA鎖を架橋させてDNA合成を阻害する(Verweijら、Anti−Cancer Drugs、1:5〜13、1990)。
【0006】
発明の概要
本発明は、癌患者の治療法を提供する。これらの方法は、(i)γ34.5遺伝子および/またはリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子をその中で不活化させる弱毒化ヘルペスウイルスおよび(ii)化学療法薬を患者に投与する工程を含む。これらの方法で使用することができる弱毒化ヘルペスウイルスの一例は、G207である。化学療法薬は、例えば、ブスルファン、カロプラチン(caroplatin)、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン(mecholarethamine)、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、またはチオテパなどのアルキル化剤と、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミトキサントロン、ペントスタチン、またはプリカマイシンなどの抗腫瘍性抗生物質と、チミジル酸シンテターゼインヒビター(例えば、フルオロデオキシウリジン)、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、またはチオグアニンなどの代謝拮抗薬であり得る。
【0007】
本発明の方法を使用して治療することができる癌には、星状細胞腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、髄芽細胞腫、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌が含まれる。本発明の方法で使用されるウイルスは、ワクチン抗原または免疫調節タンパク質などの異種遺伝子産物をコードする遺伝子も含み得る。
【0008】
本発明は、さらに、癌治療において本明細書に記載のウイルスおよび抗癌化合物の使用ならびに癌治療薬の調製におけるこれらの作用因子の使用を含む。例えば、本発明は、本明細書に記載の抗癌化合物と組み合わせて患者へ投与する薬剤を調製するのに本明細書に記載のウイルスを使用することならびに本明細書に記載のウイルスと組み合わせて患者に投与する薬剤調製にするためにこのような抗癌化合物を使用することを含む。
【0009】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、以下でさらに考察するように、本発明で使用する治療薬である変異ヘルペスウイルスおよび抗癌剤は、癌治療において相乗活性を有する。この相乗作用の結果として、治療効果を犠牲にすることなく、広範な薬剤効果レベルにおいて各薬剤の用量を減少させることができる。より少量の作用因子の使用は、治療患者への毒性の最小化およびコストの削減を含むいくつかの利点を有する。本方法のさらなる利点は、医療専門家は本発明で使用される多数の抗癌剤の使用に精通していることである。例えば、本発明で使用される薬剤の毒性を十分に認識しており、任意の関連する副作用を治療するための治療法が存在する。さらに、本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスは、分裂細胞(癌細胞など)中で複製してこれらを破壊する一方で体内の他の休止細胞に影響を与えない。これらのヘルペスウイルスは増殖変異するので、野生型へと逆戻りする可能性が除かれる。さらに、必要ならば、ヘルペスウイルスの複製を、ウイルス複製を遮断するアシクロビルなどの抗ウイルス薬の作用によって調節して、別の重要な防衛手段を得ることができる。最後に、本発明の方法のいくつかの例では、マイトマイシンCなどの抗癌剤は、神経毒性増加の潜在的リスクを伴うことなく、一定のヘルペスウイルスベクターの減少した複製表現型γ34.5遺伝子欠失に歯止めをかけるために使用される。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0011】
詳細な説明
本発明は、抗癌剤と組み合わせた変異ヘルペスウイルスの投与を含む癌治療法を提供する。以下でさらに考察するように、このような組み合わせ手法により、癌治療において相乗効果を得ることができるので、実質的な治療上の利点(例えば、治療効果を損失することなく潜在的に有毒な化学療法薬の投与量の減少)が得られる。本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスおよび抗癌剤、ならびにその投与方法の例を以下に示す。本発明の方法を使用して治療することができる癌の例およびこれらの方法の有効性を示す実験結果もまた以下に提供する。
【0012】
変異ヘルペスウイルス
本発明で使用することができる変異ヘルペスウイルスは、ヘルペスウイルス科のメンバーに由来し得る(例えば、HSV−1、HSV−2、VZV、CMV、EBV、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8)。本発明で使用することができる弱毒化HSV変異体の具体例としては、G207(Yazakiら、Cancer Res.、55(21):4752〜4756、1995)、HF(ATCC VR−260)、MacIntyre(ATCC VR−539)、MP(ATCC VR−735);HSV−2G株(ATCC VR−724)、およびMS(ATCC VR−540)ならびに以下の1つ以上の遺伝子に変異を有する変異体が含まれる:即時型遺伝子ICP0、ICP22、およびICP47(米国特許第5,658,724号);γ34.5遺伝子;リボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子;VP16遺伝子(すなわち、Vmv65、国際公開公報第WO91/02788号;同第WO96/04395号;同第WO96/04394号)。米国特許第6,106,826号、同第6,139,834号に記載のベクターもまた使用することができる。
【0013】
以下でさらに考察するように、本発明の方法での使用に好ましい変異ヘルペスウイルスは、一方もしくは両方のγ34.5遺伝子および/またはリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子の不活化変異、欠失、または挿入を有する。このような変異ヘルペスウイルスの1つの例は、上記のようにγ34.5遺伝子の両方のコピーに欠失を有する、HSV神経毒性の主要な決定基をコードするG207である。G207はまた、このウイルスのリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニット、感染細胞タンパク質6(ICP6)をコードする遺伝子であるUL39に不活化挿入を含む。
【0014】
本発明で使用することができるヘルペスウイルス変異体のさらなる例は、非必須α47遺伝子内の312塩基対が欠失したG207由来の多変異の複製コンピテントHSV−1ベクターであるG47Δである(Mavromara−Nazosら、J.Virol.、60:807〜812、1986)。HSV中のICP47およびUS11をコードする転写物の重複により、α47の欠失は、γ34.5−変異体の成長特性を向上させる即時型α47プロモーターの調節下で後期US11遺伝子に存在する。リボヌクレオチドレダクターゼが欠損したhrR3と呼ばれるHSV−1変異体もまた、本発明で使用することができる(Spearら、Cancer Gene Ther.、7(7):1051〜1059、2000)。
【0015】
ウイルスが1つ以上の治療産物(例えば、細胞毒、免疫調節タンパク質(すなわち、抗原に対する宿主免疫応答を増大または抑制するタンパク質)、腫瘍抗原、アンチセンスRNA分子、またはリボザイム)をコードする異種核酸配列も含む場合、本発明の方法で使用されるウイルスの効果を増大させることができる。免疫調節タンパク質の例には、例えば、サイトカイン(例えば、任意のインターロイキン1〜15などのインターロイキン、α、β、またはγインターフェロン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(例えば、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引物質および活性化因子(MCAF)、RANTES、およびマクロファージ炎症ペプチドMIP−1aおよびMIP−1b)と、補体成分およびその受容体と、免疫系アクセサリー分子(例えば、B7.1およびB7.2)と、接着分子(例えば、ICAM−1、2、および3)と、接着受容体分子が含まれる。本発明の方法を使用した結果として産生することができる腫瘍抗原の例には、例えば、ヒト乳頭腫ウイルスのE6抗原およびE7抗原、EBV由来タンパク質(Van der Bruggenら、Science、254:1643〜1647、1991)、MUC1(Burchellら、Int.J.Cancer、44:691〜696、1989)などのムチン(Livingstonら、Cur.Opin.Immun.、4(5):624〜629、1992)、黒色腫チロシナーゼ、およびMZ2−E(Van der Bruggenら、前述)が含まれる。(腫瘍抗原またはサイトカインをコードする遺伝子を含ませるためのウイルスベクターの改変についてのさらなる説明については、国際公開公報第WO94/16716号も参照のこと。)
【0016】
上記のように、異種治療産物は、ハイブリッド形成相互作用によって細胞、また病原体mRNAの発現の遮断に使用することができるアンチセンスRNA分子などのRNA分子でもよい。あるいは、RNA分子は、欠失細胞RNAを修復するか、好ましくない細胞、また病原体コードRNAを破壊するように設計されたリボザイム(例えば、ハンマーヘッドまたはヘアピンベースのリボザイム)でもよい(例えば、Sullenger、Chem.Biol.、2(5):249〜253、1995;Czubaykoら、Gene Ther.、4(9):943〜949、1997;Rossi、Ciba Found.symp.、209:195〜204、1997;Jamesら、Blood、91(2):371〜382、1998;Sullenger、Cytokines Mol.Ther.、2(3):201〜205、1996;Hampel、Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Bio.、58:1〜39、1998;Cucioら、Pharmacol.Ther.、74(3):317〜332、1997を参照のこと)。
【0017】
異種核酸配列を本発明で使用するために、ウイルスの調節配列の制御下におかれる位置でウイルスに挿入することができる。あるいは、異種核酸配列を、プロモーターまたはエンハンサーなどの調節エレメントを含む発現カセットの一部として挿入することができる。当業者は、適切な調節エレメントを、例えば、所望の組織特異性および発現レベル基づいて選択することができる。例えば、細胞型特異的または腫瘍特異的プロモーターを使用して、遺伝子産物の特定の細胞型への発現を制限することができる。これは、例えば細胞傷害性、免疫調節、または腫瘍抗原性遺伝子産物がその破壊を促進するために腫瘍細胞中で産生される場合、特に有用である。組織特異的プロモーターの使用に加えて、本発明のウイルスの局所投与により、局所発現および効果を得ることができる。
【0018】
本発明で使用することができる非組織特異的プロモーターの例には、初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第4,168,062号)およびラウス肉腫ウイルスプロモーター(Nortonら、Molec.Cell Biol.、5:281、1985)が含まれる。また、HSVプロモーター(HSV−1 IEおよびIE 4/5プロモーターなど)も、使用することができる。
【0019】
本発明で使用することができる組織特異的プロモーターの例には、前立腺細胞に特異的な前立腺特異的抗原(PSA)プロモーター、筋細胞に特異的なデスミンプロモーター(Liら、Gene、78:243、1989;Liら、J.Biol.Chem.、266:6562、1991;Liら、J.Biol.Chem.、268:10403、1993);ニューロンに特異的なエノラーゼプロモーター(Foss−Petterら、J.Neuroscience Res.、16(1):141〜156、1986);赤血球に特異的なβグロビンプロモーター(Townesら、EMBO J.、4:1715、1985);同様に赤血球に特異的なτ−グロビンプロモーター(Brinsterら、Nature、283:499、1980);下垂体細胞に特異的な成長ホルモンプロモーター(Beghringerら、Genes Dev.、2:453、1988);膵臓β細胞に特異的なインスリンプロモーター(Seldenら、Nature、321:545、1986);星状細胞に特異的なグリア線維酸性タンパク質プロモーター(Brennerら、J.Neurosci.、14:1030、1994);カテコールアミン作動性ニューロンに特異的なチロシンヒドロキシラーゼプロモーター(Kimら、J.Biol.Chem.、268:15689、1993);ニューロンに特異的なアミロイド前駆体タンパク質プロモーター(Salbaumら、EMBO J.、7:2807、1988);ノルアドレナリン作動性およびアドレナリン作動性ニューロンに特異的なドーパミンβ−ヒドロキシラーゼプロモーター(Hoyleら、J.Neurosci.、14:2455、1994);セロトニン/松果体細胞に特異的なトリプトファンプロモーター(Boularandら、J.Biol.Chem.、270:3757、1995);コリン作動性ニューロンに特異的なコリンアセチルトランスフェラーゼプロモーター(Hershら、J.Neurochem.、61:306、1993);カテコールアミン作動性/5−HT/D型細胞に特異的な芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモーター(Thaiら、Mol.Brain Res.、17:227、1993);ニューロン/精子形成精巣上体細胞に特異的なプロエンケファリンプロモーター(Borsookら、Mol.Endocrinol.、6:1502、1992);結腸および直腸腫瘍に特異的なreg(膵石タンパク質)プロモーター(Watanabeら、J.Biol.Chem.、265:7432、1990);および肝臓癌および盲端癌、ならびに神経鞘腫、腎臓、膵臓、および副腎細胞に特異的な副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)プロモーター(Camposら、Mol.Rnfovtinol.、6:1642、1992)が含まれる。
【0020】
腫瘍細胞で特異的に機能するプロモーターの例には、乳癌細胞に特異的なストロメリシン3プロモーター(Bassetら、Nature、348:699、1990);非小細胞肺癌細胞に特異的なサーファクタントタンパク質Aプロモーター(Smithら、Hum.Gene Ther.、5:29〜35、1994);分泌性ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)発現癌に特異的なSLPIプロモーター(Garverら、Gene Ther.、1:46〜50、1994);黒色腫細胞に特異的なチロシナーゼプロモーター(Vileら、Gene Therapy、1:307、1994;国際公開公報第WO94/16557号;同第WO93/GB1730号);線維肉腫/腫瘍形成細胞に特異的なストレス誘導性grp78/BiPプロモーター(Gazitら、Cancer Res.、55(8):1660、1995);含脂肪細胞に特異的なAP2脂肪エンハンサー(Graves、J.Cell Biochem.、49:219、1992);肝細胞に特異的なα−1抗トリプシントランスサイレチンプロモーター(Graysonら、Science、239:786、1988);多形性膠芽腫細胞に特異的なインターロイキン−10プロモーター(Nittaら、Brain Res.、649:122、1994);膵臓、乳房、胃、卵巣、および非小細胞肺癌細胞に特異的なc−erbB−2プロモーター(Harrisら、Gene Ther.、1:170、1994);脳腫瘍細胞に特異的なα−B−クリスタリン/熱ショックタンパク質27プロモーター(Aoyamaら、Int.J.Cancer、55:760、1993);神経膠腫および髄膜腫細胞に特異的な塩基性線維芽細胞成長因子プロモーター(Shibataら、Growth Fact.、4:277、1991);扁平上皮細胞癌、神経膠腫、および乳癌細胞に特異的な上皮増殖因子受容体プロモーター(Ishiiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90:282、1993);乳癌細胞に特異的なムチン様糖タンパク質(DF3、MUC1)プロモーター(Abeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90:282、1993);転移性腫瘍に特異的なmts1プロモーター(Tulchinskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89:9146、1992);小細胞肺癌細胞に特異的なNSEプロモーター(Forss−Petterら、Neuron、5:187、1990);小細胞肺癌細胞に特異的なソマトスタチン受容体プロモーター(Bombardieriら、Eur.J.Cancer、31A、184、1995;Kohら、Int.J.Cancer、60:843、1995);乳癌細胞に特異的なc−erbB−3プロモーターおよびc−erbB−2プロモーター(Quinら、Histopathology、25:247、1994);乳癌細胞および胃癌細胞に特異的なc−erbB4プロモーター(Rajkumarら、Breast Cancer Res.Trends、29:3、1994);甲状腺癌細胞に特異的なサイログロブリンプロモーター(Mariottiら、J.Clin.Endocrinol.Meth.、80:468、1995);肝臓癌細胞に特異的なαフェトプロテインプロモーター(Zuibelら、J.Cell.Phys.、162:36、1995);胃癌細胞に特異的なビリンプロモーター(Osbornら、Virchows Arch.A.Pathol.Anat.Histopathol.、413:303、1988);および肝臓癌細胞に特異的なアルブミンプロモーター(Huber、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、88:8099、1991)が含まれる。
【0021】
ウイルスを、医薬で使用される任意の従来の経路で、抗癌剤と同時または下記のように抗癌剤投与の直前または直後に投与することができる。また、ウイルスを、当業者が適切と判断することが出来るならば、抗癌剤と同一または異なる経路で投与することができる。
【0022】
本発明の方法で使用されるウイルス(または抗癌剤)を、例えば、直接注射または外科的方法(例えば、脳腫瘍への定位注射:Pellegrinoら、「精神生物学の方法(Methods in Psychobiology)」、Academic Press、New York、New York、67〜90、1971)によって、例えば、細胞死滅および/または治療遺伝子発現などのある効果が、所望される組織に直接投与することができる。脳へのウイルス投与に使用することができる方法としてさらに、Boboら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、91:2076〜2080、1994)およびMorrisonら(Am.J.Physiol.、266:292〜305、1994)によって記載された対流法がある。腫瘍治療の場合、直接腫瘍注射の代わりに、手術を行って腫瘍を除去し、任意の残存する腫瘍細胞の破壊を確実にするために切除した腫瘍床にウイルスを接種することができる。あるいは、ウイルスを、非経口経路(例えば、静脈内、動脈内、脳室内、皮下、腹腔内、皮内、表皮内または筋肉内)または粘膜表面(例えば、眼球、鼻腔内、肺内、口腔内、腸内、直腸内、膣内、または尿路表面)を介して投与することができる。
【0023】
ウイルスベクターを哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞に移入するために、任意の多数の周知の処方物を本発明で使用することができる。(例えば、「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第18版、A.Gennaro編、1990、Mack Publishing Co.、Easton、PAを参照のこと)。しかし、ウイルスを、アジュバントまたは担体を使用する、あるいは使用しないで生理学的に適合性のある溶液、滅菌食塩水または滅菌緩衝化食塩水などの中に簡単に希釈することができる。
【0024】
ベクターの投与量は、例えば、達成すべき特定の目的、ベクターで使用される任意のプロモーターの強度、投与される哺乳動物(例えば、ヒト)の状態(例えば、哺乳動物の体重、年齢、および身体全体の健康)、投与様式、および処方の型に依存する。一般に、治療または予防有効量は、例えば、約101〜1010プラーク形成単位(pfu)、例えば、約5×104〜1×106pfu、例えば、約1×105〜約4×105pfuであるが、ほとんどの有効範囲は宿主によって変化し、当業者はこの範囲を容易に決定することができる。また、当業者が適切に決定することができるように単回用量または間隔を置いて反復して投与することができる。
【0025】
抗癌剤
本発明の方法ではあらゆる任意の多数の抗癌剤(すわなち、化学療法薬)を使用することができる。これらの化合物はいくつかの異なるカテゴリーに分類され、例えば、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、および自然源の誘導体が含まれる。本発明で使用することができるアルキル化剤の例には、ブスルファン、カロプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(すなわち、シトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、およびチオテパが含まれる、また、抗腫瘍性抗生物質の例には、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミトキサントロン、ペントスタチン、およびプリカマイシンが含まれる、また、代謝拮抗薬の例には、フルオロデオキシウリジン、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU))、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、およびチオグアニンが含まれる、そして自然源の誘導体の例には、ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンオレルビン、タキソール、プレドニゾン、およびタモキシフェンが含まれる。本発明で使用することができるさらなる化学療法薬の例には、アスパラギナーゼおよびミトタンが含まれる。
【0026】
化学療法薬の投与法は当該分野で周知であり、例えば、選択した特定の薬剤(または薬剤の組み合わせ)、癌の型および位置、ならびに治療を受ける患者についての他の要因(例えば、患者の年齢、体重、および身体全体の健康)に依存して変化する。上記に列挙した任意の薬剤または当該分野で公知の他の化学療法薬を、本明細書に記載の変異ヘルペスウイルスと併せて投与する。
【0027】
ウイルスおよび抗癌剤を、例えば、同日に(0〜12時間内(例えば、1〜8または2〜6時間内))投与するか、異なる日(例えば、24、48、または72時間以内、または1週間以内)に任意の順序で投与することができる。さらに、これらを同一または異なる経路(当業者が適切に決定することができる)で投与することができる(例えば上記を参照のこと)。本発明で使用することができる経路の具体例には、静脈内注入、経口経路、皮下もしくは筋肉内注射、ならびにカテーテルもしくは手術を使用した局所投与が含まれる。適切な薬剤投与量を当業者は容易に決定することができ、例えば、1μg〜10mg/kg体重、例えば、10μg〜1mg/kg体重、25μg〜0.5mg/kg体重、または50μg〜0.25mg/kg体重)の範囲であり得る。薬剤を、任意の適切な薬学的担体または希釈剤(生理食塩水または徐放性処方物など)と共に投与することができる。
【0028】
本発明の方法で治療することができる癌の例には、神経系の癌、例えば、星状細胞腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腫瘍(例えば、下垂体腺腫)、および髄芽細胞腫が含まれる。本発明の方法で治療することができる他の癌の種類の例には、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌(例えば白血病)ならびに本明細書に記載の他の癌が含まれる。
【0029】
実験結果
本発明は、癌治療における変異ヘルペスウイルス(G207)および2つの抗癌剤、フルオロデオキシウリジン(I)およびマイトマイシンC(II)の相乗活性を示す、以下の実験結果に一部基づく。
【0030】
I .フルオロデオキシウリジン誘導性細胞変化とリボヌクレオチドレダクターゼ陰性単純ヘルペスウイルスの複製との間の機能的相互作用
上記のように、G207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)の不活化および両γ134.5遺伝子の欠失によって弱毒化された腫瘍崩壊性単純ヘルペスウイルス(HSV)である。ウイルスRRおよびICP34.5のカルボキシル末端ドメインを機能的に置換することができる細胞相対物は、それぞれ細胞RRならびに成長停止およびDNA損傷タンパク質34(GADD34)の対応する相同ドメインである。チミジル酸シンテターゼ(TS)インヒビターであるフルオロデオキシウリジン(FUdR)は、細胞RRおよびGADD34の発現を変化させることができるので、本発明者らはFUdR誘導性細胞変化によりウイルス増殖および細胞傷害性を変化させると仮定されるG207生物活性に対するFUdRの効果を試験した。10nMFUdRの存在下で野生型HSV−1の複製が阻害されたが、同一の条件下でG207は複製が増加した。FUdRとG207とを組み合わせて使用すると相乗的な細胞傷害性を示した。FUdR曝露により、10nMおよび100nMでRR活性が増加したが、GADD34は100nMのみで誘導された。FUdRによるウイルス複製の増加効果は、ヒドロキシ尿素(公知のRRインヒビター)によって抑制された。これらの結果は、FUdR処理細胞におけるG207成長の利点は、主にRR依存性機構に基づくことを示す。本発明者らが見出したことは、TS阻害がウイルス複製を減少させることを示すにもかかわらず、FUdR誘導性RRの上昇は、G207複製を増加させるというこの欠点を克服することができる。これらのデータにより、癌治療におけるRR陰性HSV変異体とチミジル酸シンテターゼインヒビターとの組み合わせ使用のための細胞の基礎が得られる。本発明者らの実験結果を、以下にさらに詳細に記載する。
【0031】
材料と方法
細胞株および培養
5−フルオロウラシル(5−FU)およびFUdRに対して2つの異なる感受性を示すHCT8細胞を本研究で使用した。HCT8細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(CCL−224、Rockville、MD、USA)から得た。耐性細胞株を、既に記載のように(Ascheleら、Cancer Res.、52:1855〜1864、1992)、15μM 5−FUへの7日間(HCT8/FU7dR)の曝露後にHCT8細胞からクローン化した。両細胞株を、10%ウシ胎児血清(FCS)、100μg/mlペニシリン、および100μ/mlストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地に維持した。ベロ細胞(アフリカミドリザル腎臓)を、10%FCSを補足したイーグル最小必須培地(MEM)中で増殖させた。
【0032】
ウイルス
多変異複製コンピテント1型ヘルペスウイルスG207の作製は、既に記載されている(Minetaら、Nature Med.、1:983〜943、1995)。野生型HSV−1F株に基づいて、R3616変異体からG207を構築した。この変異体は、γ134.5遺伝子座のコードドメイン由来の1kb欠失およびリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードするICP6遺伝子への大腸菌lacZ遺伝子の挿入を含む。HSV−1(F)はG207の親野生型ウイルスであり、KOSは異なる株の野生型HSV−1である。ベロ細胞上でウイルスを増殖させた。G207は、S.D.RabkinおよびR.L.Martuzaから贈与された。HSV−1(F)およびKOSは、MediGene,Inc.(Vancouver、Canada)から得た。
【0033】
p53変異分析
ゲノムDNAを、HCT8およびHCT8/7dR細胞から抽出した。p53遺伝子のエクソン5〜9をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、一本鎖DNA高次構造多型によって変異について分析した。
【0034】
細胞傷害性アッセイ法
G207およびFUdR(フロクスウリジン、Roche Laboratories Inc.、Nutley、NJ)の細胞傷害性を、細胞質乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の測定(Cyto Tox 96ノンラジオアクティブ・サイトトキシアッセイ、Promega, Madison, WI)によって評価した。全ての細胞傷害性アッセイ法を、2×104細胞/ウェルから出発する24ウェルプレートで行った。処理開始後の種々の測定点で、接着細胞をPBSで洗浄し、細胞質LDHを溶菌緩衝液(PBS,1.2%v/v TritonX−100)によって放出させた。テトラゾリウム塩を赤色ホルマザン生成物に変換する酵素結合反応を使用して溶解物の活性を測定した。マイクロプレートリーダー(EL 312e、Bio−Tek Instruments、Winooski、VT)を使用して450nmの吸光度を測定した。細胞傷害性が、未処理細胞(対照)と比較した処理細胞の最大LDH放出の割合として示された。
【0035】
ウイルス滴定
E−MEM、2mM L−グルタミン、10%FCSを含む少なくとも1つの継代培養にベロ培養を移した。培養物を6ウェルプレートのウェルあたり1×106細胞の密度でプレートし、加湿インキュベーターにて37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、培養物をPBSで2回洗浄し、細胞溶解物の連続希釈物(0.8ml/ウェル)を、3枚の皿に37℃で4時間吸着させた。細胞溶解物を、4回の凍結融解サイクルで調製した。吸着後、接種物を除去し、培養物を寒天含有培地に重層した。接種から2日後に培養物をニュートラルレッドで染色し、翌日にプラーク形成を評価した。
【0036】
β−ガラクトシダーゼ活性
β−ガラクトシダーゼ活性を、o−ニトロフェニルガラクトシド(ONPG)のo−ニトロフェノールとガラクトースへの変換のモニタリングによって決定した(β−ガラクトシダーゼレポーターアッセイ、Pierce、Rockford、IL)。細胞を溶解し、ONPGと37℃で30分間インキュベートした。λ=405nmでのo−ニトロフェノールの分光光度測定によって反応速度を決定した。o−ニトロフェノールについてのモル減衰係数(ελ=4.5×103M−1cm−1)を使用して、1単位のβ−ガラクトシダーゼ活性を、37℃で1分間の1nmolのONPGのo−ニトロフェノールおよびガラクトースへの切断と定義した。
【0037】
β−ガラクトシダーゼの組織化学染色
細胞をトリプシン処理し、培地に再懸濁し、PBSで洗浄した。サイトスピンスライドを、1×105細胞を含む1mlの細胞懸濁液の1000rpmで6分間の遠心分離によって調製した。スライドをX−gal(5−ブロモ−4ークロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)で染色し、37℃で4時間インキュベートした。PBSでの洗浄後、スライドを0.1%核ファーストレッドで対比染色する。
【0038】
細胞周期分析
既に記載のフローサイトメトリー(Nusseら、Cytometry、11:813〜821、1990)によって核調製物に対して細胞周期分析を行った。簡単に述べれば、細胞単層をPBSで注意深く洗浄し、細胞破片を除去した。トリプシン処理後、細胞をPBSで洗浄し、NP40溶液(10mM NaCl、3.4mM クエン酸ナトリウム、0.03%NP−40、63μM臭化エチジウム、10μg/ml RNaseA)に再懸濁した。室温で1時間の接種後、同体積の高スクロース溶液(0.25Mスクロース、78mMクエン酸、100μM臭化エチジウム)を加えた。臭化エチジウム染色核のDNA含有量を、FACScaliburにて決定した。データを、CellQuestソフトウェア(Becton Dickison, San Jose,CA)を実施するFACStationで分析した。
【0039】
リボヌクレオチドレダクターゼの細胞抽出
250cm2フラスコで増殖させた細胞をトリプシン処理し、氷冷PBSで2回洗浄した。細胞を300×g、4℃で5分間遠心分離し、3倍体積の低塩抽出緩衝液(10mM HEPES、pH7.2、2mM DTT)に再懸濁した。再懸濁物中の生細胞数を、トリパンブルー色素排除法によって決定した。氷上で30分間の接種後、細胞懸濁物を28G1/2ニードルにて10回抜き取った。粗ホモジネートを、100,000×g、4℃で60分間遠心分離して、細胞破片を除去した。上清画分を、1,000倍体積の低塩抽出緩衝液に対して4時間透析し、2時間後に分子量カットオフ10,000の透析カセット(Slide−A−Lyzer透析カセット、Pierce、Rockford、IL)を使用して一定量の緩衝液を交換した。透析した抽出物を液体窒素中で急速冷凍し、分析まで−80℃で保存した。全ての抽出手順を4℃で行った。
【0040】
CDPレダクターゼ活性のアッセイ法
リボヌクレオチドレダクターゼ活性を、SteeperおよびStuartの変法(Steeperら、Anal.Biochem.、34:123〜130、1970)によって決定した。CDPのdCDPへの変換を、[14C]CDP(53mCi/mmol、Movarek Biochemicals,Inc.)を基質として、ヌクレオチドのヌクレオシドへの加水分解のためにトウブダイヤガラガラヘビ由来のガラガラヘビ毒(Sigma)を使用してモニターした。反応混合物は、150μlの最終体積中に以下の濃度の成分を含んでいた、すなわち、40μM CDP、10μM[14C]CDP(0.08μCi)、6mM DTT、4mM酢酸マグネシウム、2mM ATP、50mM HEPES(pH7.2)、および100μl抽出物(0.2〜0.7mgタンパク質)。37℃で30分間酵素反応を行い、100℃で4分間の接種によって反応を停止させた。50μlキャリアdCMP(6mM dCMP、2mM MgCl2、6mM Tris−HCl(pH8.8))および25μlヘビ毒懸濁液(50mg/ml)の添加によってヌクレオチドを加水分解した。37℃で3時間の接種後、反応混合物を4分間沸騰させて熱不活化させた。室温で10分間の14,000×gでの遠心分離によって熱沈殿物質を除去した。[14C]デオキシシトシンを、フェニルボロン酸カラム(BondElut PBA、Varian、Harbor City、CA)を使用した共有結合性クロマトグラフィーによって[14C]シトシンから分離した。トリエタノールアミン緩衝液(pH10)を最終濃度0.4Mまで上清画分に加え、この混合物1mlをカラムに供した。画分を回収し、液体シンチレーション分光測定法(LS6000IC液体シンチレーションシステム、Beckman Instrument,Inc.、Fullerton、CA)によって放射能を測定した。酵素活性1単位は、37℃で1時間での1nmolのCDPの生成物dCDPへの変換と定義した。
【0041】
ノザンブロットハイブリッド形成
全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出によって単離した(Chomczynskiら、Anal.Biochem.、162:156〜159、1987)。RNAを変性させ、1.2%ホルムアルデヒド−アガロースゲルにて電気泳動し、標準的な方法によってニトロセルロース膜にブロットした。予備ハイブリッド形成後、膜を、40℃で50%のホルムアミド中で、ランダムプライマー法によって[32P]dCTPで標識した全長GADD34およびβ−アクチンcDNAプローブにハイブリッド形成させた。膜を洗浄し、−80℃でハイパーフィルム(Amersham pharmacia biotek)に曝露した。NIH画像ソフトウェアを使用してスキャンフィルムの濃度分析を行った。相対GADD34レベルを、GADD34/β−アクチン比として計算した。
【0042】
結果
G207およびFUdRの相乗的細胞傷害性
低LDH放出およびサブG1画分のより高い割合によって示されるように、HCT8細胞は、HCT8/7dRと比較してFUdRに対して感受性が高かった(図1A、図5A、および図5B)。両細胞株は、類似のウイルス細胞傷害性プロフィールを示した。感染多重度(MOI)が1.0または0.1でのウイルス感染により、6日目で細胞が完全に死滅する一方で、MOI 0.01でのG207は、細胞毒性作用は低かった(図1Bおよび図1C)。FUdRはウイルス細胞傷害性を増加させることができるという仮説を試験するために、本発明者らは、MOI 1.0およびMOI 0.1のウイルス細胞傷害性が過剰に高いので、MOI 0.01でG207を使用することを決定した。10nMまたは100nM FUdRと組みあせたG207(MOI 0.01)により、6日目までにHCT8細胞がほぼ完全に死滅した(図1D)。この効果は、それぞれ1種類での処理による計算された相加効果よりも高く、これは組み合わせ治療の相乗効果を示す。さらに、相乗効果の程度は、FUdR低感受性細胞株HCT8/7dRよりもHCT8細胞においてより明白であった(図1Dおよび図1E)。
【0043】
FUdRの存在下でのβ−ガラクトシダーゼ発現の増加
ウイルス感染性に対するFUdRの効果を評価するために、G207におけるlacZレポーター遺伝子産物としてβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。MOI 0.01のG207を感染させ、10nM FUdRで処理した細胞は、感染後(pi)3日目に最も高い総β−ガラクトシダーゼ発現を示したが、生細胞数に換算した場合、100nM FUdRの曝露により、G207のみでの処理よりもβ−ガラクトシダーゼ活性が高かった(図2Aおよび2B)。FUdR曝露細胞のβ−ガラクトシダーゼについての組織化学染色は、より高い染色強度およびより高いX−gal染色陽性細胞の割合を示した(図2C)。FUdRによる感染増大の程度は、HCT8/7dR細胞よりもHCT8でより明白であった。
【0044】
FUdRの存在下で、G207の複製は増加するが、野生型HSV−1の複製は減少する
一工程の成長分析により、HCT8細胞においてG207と比較して野生型HSV(HSV−1(F)、KOS)のウイルス収量は2−log倍高いことが示された。興味深いことに、FUdRの存在下でのG207の放出量は、G207のみの接種から36時間後に3倍になったが、親野生型ウイルスHSV−1(F)の複製は、同一の条件下でいくらか阻害された。本発明者らは、別の野生型HSV−1(KOS株)を試験し、10nM FUdRの存在下で類似の複製の減少が認められた(表1)。多工程成長分析により、G207感染のみと比較して両方の細胞株で10nM FUdRの存在下で有意に高いウイルス産生が認められた。G207のピークの力価および総産生量は、HCT8/7dR細胞と比較して親細胞株HCT8で高かった(図3)。
【0045】
ウイルス複製およびβ−ガラクトシダーゼ発現に対するヒドロキシ尿素の効果
RRインヒビターであるヒドロキシ尿素(HU)は、HCT8細胞のウイルス複製を90%抑制した。さらに、HUは、G207のFUdRによって誘導された複製増加を消去することができた。阻害度は、HUのみで処理した細胞(1.9±0.5×104pfu)およびHUおよびFUdRで処理した細胞(2.1±0.5×104pfu)で同様であった。ウイルス産生と対照的に、FUdRおよびHUは共にβ−ガラクトシダーゼ発現に対して有意な効果を示した(図4)。
【0046】
FUdRによる細胞周期の変化
FUdRへの増殖細胞の時期の異なる曝露により、S期の画分が増加し、G1/G0期の画分が減少したが、この効果は、薬剤濃度および細胞株に依存していた。10nMの低濃度FUdRにより、S期中の画分は24時間までにHCT8で75%、HCT8/7dRで37%増加した。48時間では両細胞株は、100nMでの処理後ほとんどがS期中の細胞であった。100nM FUdRでS期中レベルが完全に遮断されたHCT8細胞と対照的に、HCT8/7dR細胞はS期中の一過性増加のみを示し、見かけ上G2/M期に移行することができた。さらに、10〜20%のHCT8/7dR細胞は、100nM FUdRの存在下でG2/Mへの移行の代わりにS期中でDNA核内倍加することが認められた。G2/Mにおけるこれらの細胞の蓄積は、この核内倍加に起因する4N G1細胞の存在による(図5Aおよび図5B)。
【0047】
FUdRの存在下でのリボヌクレオチドレダクターゼ活性の増加
G207の複製は細胞RRに依存するので、本発明者らは、チミジル酸シンテターゼインヒビターFUdRがこの細胞酵素に対していかなる効果を有するかどうかを試験した。指数増殖細胞の基準の活性は、化学療法抵抗性細胞株HCT8/7dRと比較してHCT8細胞では約3.2倍高かった。図6は、FUdR曝露の際のRR活性の時間依存性経時変化を示す。FUdR処理により、両細胞株のRR活性が増加した。この増加は一過性であり、ピークの活性は、処理の開始から24時間後にFUdR誘導S期中の増加と同時に認められた(図5Aおよび5B)。しかし、活性誘導度は、HCT8/7dR細胞と比較してHCT8でより明白であった。10nM FUdRで処理したHCT8のRR活性は、ピークの活性後も増加しつづけた。
【0048】
リボヌクレオチドレダクターゼ活性に対するFdUMPの効果
FdUMPは、FUdRの活性な代謝産物であり、TSを阻害する。哺乳動物RR活性は、デオキシヌクレオチドのフィードバック阻害によって大きく制御される;したがって、本発明者らは、FdUMP(dUMPのフッ素化形態)がRR活性を阻害してG207の複製を妨害し得るという着想について試験した。表2は、酵素活性の用量依存性減少を示す。0.001〜0.1mMのFdUMP濃度ではRRの阻害は中程度であり、約80〜70%の活性が残存している。1mM FdUMPの存在下で実質的な酵素阻害を測定し、本研究では最大FUdR濃度の約10,000倍を使用した。
【0049】
FUdRに応答したGADD34の発現
GADD34タンパク質は、DNA損傷に応答して発現する。GADD34およびウイルスγ134.5タンパク質は、ストレス条件下でのタンパク質合成を機能的に維持することができる類似のカルボキシル末端ドメインを含む。したがって、本発明者らは、DNA損傷因子としてのFUdRがG207におけるγ134.5欠失を完全にすることができるGADD34の発現を誘導することができるかどうかを調査した。100nMのFUdRは両細胞株でGADD34を誘導するが、10nMではほとんど効果はなかった。未処理細胞と比較した場合、濃度測定により、HCT8については24時間および48時間でmRNAがそれぞれ1.9倍および1.6倍となり、HCT8/7dR細胞については48時間で1.9倍に増加した(図7)。
【0050】
【表1】
aHCT8細胞を、MOIが2のHSV−1(F)、KOS、およびG207に感染させた。37℃で1時間の吸着後、接種物を除去し、細胞をPBSで洗浄し、10nM FUdRを含む培地またはFUdRを含まない対照培地を添加した。接種から36時間後、細胞および上清を回収し、標準的なプラークアッセイ法によって溶菌物をベロ細胞に対して滴定した。データを、3つの独立した測定の平均±SEMとして示す。
【0051】
【表2】
aリボヌクレオチドレダクターゼを、以下の「実験手順」に記載のように指数増殖HCT8細胞から抽出した。抽出物を、漸増濃度のFdUMPとインキュベートし、リボヌクレオチドレダクターゼ活性を測定した。データを、3つの独立したリボヌクレオチドレダクターゼ活性決定の平均±SEMとして示す。
b100μlの透析細胞抽出物は、0.65mgのタンパク質を含んでいた。
【0052】
II .マイトマイシン C およびγ 34.5 欠失腫瘍崩壊性ヘルペスウイルス( G207 )の相乗的抗癌活性は、 GADD34 の上方制御によって媒介される
遺伝子治療に使用される腫瘍崩壊性ウイルスは、一般に、標的腫瘍ウイルスを選択的に標的化する一方で正常な宿主組織を容赦するように改変されている。上記のように、多変異ウイルスG207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼの不活化およびウイルスγ34.5遺伝子の欠失によって弱毒化されている。G207は実験モデルの多数の腫瘍型を有効に死滅されるにもかかわらず、γ34.5変異体はこの遺伝子を維持するウイルスと比較した場合に抗腫瘍効率を顕著に減少させることが十分に立証されている。γ34.5遺伝子産物に対する哺乳動物相同体は、GADD34タンパク質である。このタンパク質は、γ34.5遺伝子を機能的に置換することができ、またDNA損傷の際に上方制御する。化学療法薬マイトマイシンCをG207と組み合わせて使用して、GADD34を上方制御し、ウイルス毒性および抗腫瘍効果を増大させるためにγ34.5遺伝子欠失を完全にした。アイソボログラム法およびChou−Talaleyの組み合わせインデックス法を使用して、マイトマイシンCとG207との間でインビトロおよびインビボでの胃癌治療に有意な相乗効果を示した。このような相乗効果の結果として、腫瘍細胞死滅を犠牲にすることなく、広範な薬剤効果レベルを保ちながら各薬剤の用量減少を達成することができる。ノザンブロット分析によって決定されるように、GADD34 mRNA発現は、マイトマイシンC処理により増加した。これらのデータは、マイトマイシンCを使用して、G207中の有毒なγ34.5遺伝子表現型を選択的に修復し、癌治療におけるDNA損傷剤とγ34.5HSV変異体との組み合わせ使用の細胞での基本も得られることを示す。本発明者らの実験結果を、以下でさらに詳述する。
【0053】
材料と方法
細胞培養
ヒト胃癌細胞株OCUM−2MD3を、日本の大阪市立大学医学部のヤシロマサカズ(Masakazu Yashiro)博士から寄贈され、2mM L−グルタミン、0.5mM ピルビン酸ナトリウム、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したDMEM HG中で維持した。ヒト胃癌細胞株MKN−45−Pを、日本の神奈川大学のヨネムラユタカ(Yutaka Yoneumura)博士から寄贈され、10%FCS、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したRPMI中で維持した。ヒト肺癌細胞株A549をATCCから入手し、10%FCS、1%ペニシリン、および1%ストレプトマイシンを補足したF−12中で維持した。細胞は、全て5%CO2加湿インキュベーター中で維持した。
【0054】
ウイルス
G207は、γ134.5神経ビルレンス遺伝子およびUL39での大腸菌lacZ挿入の両方を欠損させて構築した多変異複製コンピテントHSVであり、またUL39はリボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードしている。G207の構築は他のところで記載されている。
【0055】
動物
無胸腺ヌードマウス(4〜6週齢)を、全ての動物実験で使用した。動物研究は、メモリアルスローンケタリング癌センター動物ケアと使用委員会で承認されており、厳格なガイドラインの下で実施した。麻酔にはメトキシフルラン吸入を使用して実験を行った。
【0056】
腹膜散在性胃癌の作製
以前に記載のように、胃癌の確立したネズミ移植モデルを使用した(Bennettら、Journal of Molecular Medicine、78:166〜174、2000;Yashiroら、Clin.Exp.Metastasis、14:43〜54,1996)。2×106OCUM−2MD3細胞の腹腔内(i.p.)注射により、網、小腸間膜および大腸間膜、横隔膜、性腺脂肪、および肝門に見られる散在性腹膜腫瘍が容易に発症した。注射から3日後に巨視的小結節が存在し、過剰な全身腫瘍組織量、観血性腹水症、および悪液質が注射から4週間で認められる。全身腫瘍組織量を評価するために、既に記載のように動物を屠殺して内臓を摘出し、腹腔腫瘍を関連する腹部器官から取り出した。全身腫瘍組織量を、重量で評価した。
【0057】
MMCおよびG207のインビトロ細胞傷害性
96ウェルアッセイプレート(Costar、Corning Inc.、NY)に1×104細胞/ウェルでのプレーティングによって細胞傷害アッセイを行った。MKN−45−PおよびOCUM−2MD3細胞を、培地のみ(対照ウェル)、マイトマイシンCのみ(Bristol Laboratories、Princeton、NJ)、G207のみ、G207とMMCの両方を使用した併用療法のいずれかを使用して処理した。OCUM−2MD3細胞株については1:10およびMKN−45−P細胞株については1:25の比のMMCおよびG207の連続希釈物を使用して併用療法を行った。これらの比を、最初の実験での各薬剤についてのED50の評価および併用療法の比を決定するためのこれらの用量の使用によって決定した。各群の細胞生存率(%)(対対照)を、標準MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2Hテトラゾリウムブロミド)バイオアッセイ法を使用して治療から5日後に計算した。マイクロプレートリーダーを使用して、550nmでMTT−ホルマザン産物の存在について評価した。全サンプルのOD値からバックグラウンド光学密度(OD)を引き算した。次いで、処理ウェルの平均吸光度(OD)(n=6)を未処理(対照)ウェルの平均吸光度(OD)(n=6)で割り算することによって細胞生存度を計算した。
【0058】
MMCとG207との間の相乗効果についての薬理学的分析
Chou及びTalalayの多剤効果分析を使用して、G207とMMCとの間の薬理学的相互作用を決定した。この方法は、2つの薬剤の推定される相加効果を定義し、組み合わせ効果が予想される相加効果とどれぐらい異なるかを決定することによって相乗効果または拮抗作用を定量する。データ分析に使用した方程式およびコンピュータソフトウェアは、他で詳述されている(Chou,T.編、Academic Press、New York、61〜102、1991;Chouら、Advances in Enzyme Regulation、22:27〜55、1984;Chouら、「IBM−PCのマニュアルおよびソフトウェア」;Chou,J.、Academic Press、New York、223〜244、1991)。組み合わせインデックス方程式を使用して、2薬剤組み合わせを正確に分析する。CI=1が相加効果を示し、CI<1およびCI>1がそれぞれ相乗効果および拮抗作用を示すようにCI値を解釈する。上記実験で得た細胞傷害性データを、Chou−Talalay分析で使用した。これらのデータから、各用量および対応する効果レベル(影響画分(fraction affected)(Fa)という)についてのCI値が得られた。実際の実験データに基づいて、コンピュータソフトウェアを使用して、5〜59%の全効果レベル範囲(Fa)から連続CI値を計算した。次いで、これらのデータを使用して、Fa−CIプロット(効果優先データ提示手段)を作成する。用量優先のアイソボログラム技術によってもデータを分析した。アイソボログラム上の軸は、各薬剤の用量を示す。任意の所与のFa値について、所与のFa値を得るために必要な各薬剤の用量に対応するx軸およびy軸上の2つのポイントを選択する。これら2つのポイントの間に引いた直線は、同一のFa値を得るために必要な可能な組み合わせ用量に対応し、これは、2つの薬剤間の相互作用が厳密に付加的であると考えられる。所与のFaを達成するために実際に必要な認められた実験濃度を、プロットに加える。これらのポイントが直線上に存在する場合、そのFa値で効果は付加的である。ポイントが直線の左側に存在する場合、効果は相乗的であり、ポイントが直線の右側に存在する場合、そのFa値で効果は拮抗的である。組み合わせインデックス法を使用して利用可能な別の計算は、容量減少インデックス(DRI)である。DRIは、相乗的組み合わせで得られる場合、同一の効果レベルの達成に必要な単一薬剤治療の濃度と比較した、各薬剤の倍率−用量減少の決定要因である。DRI>1は、毒性を好ましく減少しながら治療効果を維持することを示す。
【0059】
インビトロウイルス増殖分析
MMCの存在下で、G207のOCUM−2MD3細胞内で複製する能力を、ウイルス増殖分析によって評価した。1.5×105OCUM−2MD3細胞/ウェルを、6ウェルプレート(Costar、Cornin Inc.、Corning、NY)にプレートした。次いで、細胞をMOI=0.01のG207のみ、または0.01μg/cc、0.02μg/cc、または0.04μg/ccのMMCと組み合わせたMOI=0.01のG207のいずれかに感染させた。細胞および培地を、感染後0時間、24時間、48時間、72時間、および120時間で回収した。3回の凍結融解による溶菌の後、ベロ細胞に対して標準的なプラークアッセイ法を行い、ウイルス力価を評価した。全てのサンプルについて、3回行った。
【0060】
インビトロでMMC処理した細胞におけるGADD34のノザンハイブリッド形成分析
0μg/ml(未処理)、0.005μg/ml(低用量)、または0.04μg/ml(高用量)のマイトマイシンC(Bristol Laboratories、Princeton、NJ)を含む12ccの培養培地で細胞を培養した。24時間および48時間でトリプシン処理によって細胞を回収した。RNA単離システム(Promega、Madison、WI)を使用して全RNAを調製し、RNA含有量を260nmでの光学密度によって測定した。サンプルあたり7μgのRNAを変性1.2%アガロースゲルに加えた。標準的技術によって、電気泳動分離、ニトロセルロース膜(Intergen、Purchase、NY)へのRNAの移動、ハイブリッド形成(40℃で50%ホルムアミド)、およびオートラジオグラフィーでの同定を行った。2.4kbインサートを含むcDNAクローンGADD34をA.Fornace,Jr.博士から入手し、1.1kbインサートを含むcDNAクローンα−アクチンを、ATCCから入手した(Manassas、VA)(Hollanderら、J.Biol.Chem.、272:13731〜13737、1997)。プラスミドベクターから切り出したcDNAを、ランダムプライマー標識法によって[32P]dCTPで標識した(Stratagene、La Jolla、CA)。
【0061】
腹腔内G207およびMMCでの胃癌腫症の治療
G207およびMMCのインビボでの全身腫瘍組織量を減少する能力を、胃癌腫症モデルで評価した。動物は全て2×106OCUM−2MD3細胞で腹腔内注射し、3日後に治療した。実験群(n=7)を、無血清培地(対照)、1×106pfuのG207、5×106pfuのG207、0.1mg/kg MMC、あるいは0.1mg/kg MMCと1×106pfuのG207、または0.1mg/kg MMCと5×106pfuのG207の併用療法として腹腔内注射によって治療した。4週間後に動物を屠殺し、全身腫瘍組織量を記載のように評価した(Bennettら、Journal of Molecular Medicine,78:166〜174、2000)。
【0062】
結果
MMCおよびG207のインビトロ細胞傷害性
G207およびMMCは共にOCUM−2MD3およびMKN−45−P胃癌細胞に対して用量依存性の細胞傷害を示す。併用療法は、いずれか1つの薬剤よりも多数の腫瘍細胞を死滅させ、予想される相加効果よりも有効性が高い。データは、OCUM−2MD3細胞(図8A)およびMKN−45−P細胞(図8B)についての対照に対する平均(±SEM)細胞生存として示す。
【0063】
MMCとG207との間の相乗効果の薬理学的分析
以下の2つの方法を使用して、G207とMMCとの間の相乗効果を同定した、すなわち、組み合わせインデックス法およびアイソボログラム法。Chou−Talaley分析は、OCUM−2MD3(図9A)およびMKN−45−P(図9B)の全範囲のFa値に対してCI値が1未満を維持することを示す。OCUM−2MD3細胞株は中程度の相乗効果を示す一方で、MKN−45−P細胞株は強力な相乗効果を示した。各Fa値について用量減少インデックス(DRI)を計算した。OCUM−2MD3細胞株について、MMCおよびG207の用量は、併用療法で投与した場合は1/2〜1/3に減少しうる(表3)。MKN−45−P細胞株では、併用療法で投与した場合は、MMCの用量は、1/2〜1/9に減少し、G207の用量は、1/2〜1/4に減少し得る(表4)。1を超えるDRI値は、効果を喪失することなく毒性の低減を達成することができることを示す。90%の細胞死滅(ED90)、70%の細胞死滅(ED70)、および50%の細胞死滅(ED50)に必要なMMCおよびG207の用量についてアイソボログラムを構築した(図10Aおよび10B)。これらの各Fa値(0.5、0.7、および0.9)についてのさらなる推定効果ラインの十分に下の薬剤およびウイルス濃度で実験組み合わせデータポイントが存在した。これらの研究により、両細胞株についてのMMCとG207との間の相乗効果が確認された。
【0064】
インビトロウイルス増殖分析
OCUM−2MD3細胞におけるG207の複製は、高用量のMMCの存在下でのウイルス収量の減少を示した。ウイルス力価の155倍増加は、OCUM−2MD3細胞のG207での感染から5日後に認められた。0.01μg/cc MMCの存在下で、感染から5日後に24倍増加したウイルス力価が認められた。0.02μg/ccおよび0.04μg/cc MMCの存在下で、ウイルス収量がそれぞれ8倍および2倍増加した。併用化学療法で測定したより低いウイルス収量は、特に併用療法の相乗的細胞傷害性が与えられた場合、細胞基質の有意な喪失の次に起こり得る。
【0065】
インビトロでMMCで処理した細胞におけるGADD34についてのノザンハイブリッド形成分析
MMCで処理していない細胞から抽出したRNAを陰性対照(レーン1)として使用し、陽性対照(レーン6)は、2.4kbでの推定GADD34バンドを示した(図11)。全ての条件下で、ほぼ同量の細胞α−アクチン遺伝子を発現した。低用量のマイトマイシンC(0.005μg/cc)での処理から24時間後(レーン2)に回収したOCUM細胞は、予想されるサイズでいかなるバンドも示さない一方で、高用量MMC(0.04μg/cc)で処理した細胞は、有意な2.4kbバンド(レーン3)を示した。高用量処理から24時間後、陰性対照と比較した場合、強度が2.49倍増加したGADD34バンドが測定された。低用量MMCでの処理から48時間後に回収したOCUM細胞はいかなるGADD34バンドも認められなかったが(レーン4)、高用量治療は、2.4kbに不連続のバンドが認められた(レーン5)(図11)。高用量処理から48時間後、3.21倍の強度の増加が認められた(図11)。
【0066】
腹腔内G207およびMMCでの胃癌腫症の治療
胃癌腫症マウスを、G207、MMC、またはこれらの薬剤の組み合わせで腹腔内治療を行った。治療効果を、屠殺時点でのマウスの腹腔内全身腫瘍組織量の秤量によって評価した。平均腹腔内全身腫瘍組織量(±SEM)は、対照マウスで2470(±330)mg、1×106pfuのG207で治療したマウスで1210(±300)mg(対照に対してP=0.02)、および0.1mg/kg MMCで治療したマウスで1490(±310)mg(対照に対してP=0.06)であった(図12)。1×106pfuのG207および0.1mg/kg MMCを使用した併用療法の平均全身腫瘍組織量は350(±150)mg(対照に対してP<0.001)であり、これは1×106pfuのG207のみ(P=0.03)およびMMC治療のみ(P=0.01)とは統計的に異った(図5)。5×106pfuのG207でのウイルス治療により、平均全身腫瘍組織量は990(±320)mg(対照に対してP<0.01)であった(データ示さず)。5×106pfuのG207および0.1mg/kg MMCを使用した併用療法の平均全身腫瘍組織量は100(±60)mg(対照に対してP<0.01)であり、これは5×106pfuのG207のみ(P=0.04)およびMMC治療のみ(P<0.01)とは統計的に異なった(図5)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
上記で引用した全ての引例は、その全体が参考として組み込まれる。他の態様は添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【図1】G207およびFUdRの細胞傷害効果を示す実験結果を示す。細胞生存度を、細胞内LDHの最大放出の関数として評価した。上の図のパネル:G207およびFUdRの細胞傷害性。HCT8(●)およびHCT8/7dR(○)を、漸増濃度のFUdR(5、10、50、100nM)に曝露し、治療開始から6日後に生存度を決定した(A)。感染3日後および6日後のHCT8(B)およびHCT8/7dR(C)のウイルス細胞傷害性。細胞を、1.0(△)、0.1(□)、および0.01(○)のMOIのG207に感染させた。下の図のパネル:HCT8(D)およびHCT8/7dR(E)中で単独(G207またはFUdR)およびHCT8(D)およびHCT8/7dR(E)の組み合わせ治療から6日目の細胞生存度。細胞を、MOI 0.01でG207に感染させる(白抜きのバー)または、FUdRに曝露する(灰色のバー)または、G207(MOI=0.01)およびFUdR(10nMまたは100nM)を組み合わせて(黒のバー)治療した。相加効果を各単独治療から積として計算した(斜線のバー)。全てのアッセイを、各条件について4回行った(平均±SEM)。
【図2】G207での感染後のβ−ガラクトシダーゼ発現に対するFudRの影響を示す実験結果を示す。細胞(2×104)を、24ウェルプレートにプレートし、FUdRの存在下(10nM、斜線;100nM、黒)および非存在下(白)でMOI 0.01のG207を感染させた。感染から3日後、細胞を溶解し、細胞溶解物の全β−ガラクトシダーゼ活性を測定した(A)。各条件についての細胞数を、追加のウェルにおいてトリパンブルー色素排除法によって決定し、総活性を生細胞数に参照することによって活性を計算した(B)。全アッセイを3回行った(平均±SEM)。lacZ染色のために、3×105細胞を、25cm2のフラスコ上にプレートした。12時間後、細胞を、上記と同一の条件下でFUdRの存在下および非存在下でG207に感染させた。3日後、サイトスピンスライドを調製し、lacZ発現についてX−galで染色した。図2のパネルCは、異なる治療条件についての代表的な200倍のフィールドを示す。
【図3】ウイルス複製に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。ウイルス力価を決定して、ウイルス複製に対するFUdRの影響を評価した。12ウェルプレートの1ウェルあたり5×104細胞をプレートした。12時間後、細胞を、FUdRの存在下(△10nM;○100nM)および非存在下(□対照)でMOI 0.01感染させた。上清および細胞を感染のその後7日間毎日回収し、溶解物を、標準的なプラークアッセイ法によってベロ細胞に対して滴定した。全アッセイを、各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図4】ウイルス複製に対するFUdRおよびHUの効果を示す実験結果を示す。HCT8細胞を、細胞あたり2pfuのG207に感染させた。37℃で1時間接種物の吸着を除去した後、細胞をPBSで洗浄し、10nM FUdRを含む培地またはFUdRを含まない対照培地を添加した。感染8時間後、FUdRの存在下および非存在下の感染細胞を、1mM HUに曝露した。感染36時間後、上清を回収し、3回の凍結融解によって溶解物を調製した。溶解物のウイルス力価(A)およびβ−ガラクトシダーゼ活性(B)を決定した。全アッセイを各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図5】細胞周期に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。非同期的に増殖させた細胞(1×106)を、20mlの培地中の75cm2にプレートした。12時間後、10nMおよび100nMの最終濃度になるようにFUdRを培地に添加した。未処理細胞を対照として使用した。処理開始から24時間後、48時間後、および72時間後にFACS分析によって臭化エチジウム染色核のDNA含有量を測定した。側方散乱ヒストグラムに基づいてHCT8(A)およびHCT8/7dR(B)の細胞周期分析を行った。ヒストグラムは、サブG1画分(DNA<G1/G0)およびDNA>G2/Mでゲートをかけられた。
【図6】細胞リボヌクレオチドレダクターゼ活性に対するFUdRの効果を示す実験結果を示す。1×107細胞を、225cm2のフラスコにプレートした。9時間後、10nMおよび100nMの最終濃度になるようにFUdRを培地に添加した。未処理細胞を対照として使用した。FUdRの存在下(△10nM;○100nM)および非存在下(□対照)での種々の測定点で細胞抽出物中のリボヌクレオチドレダクターゼ活性を測定した。活性は、細胞数を参照した。全アッセイを各時点で各条件について3回行った(平均±SEM)。
【図7】FUdRに反応するGADD34発現を示す実験結果を示す。FUdRの非存在下ならびに10nMおよび100nMのFUdRの存在下、24時間および48時間増殖させた、HCT8(A)およびHCT8/7dR(B)細胞中のGADD34 mRNAのノザンブロット。細胞をプレートし、RR測定実験にしたがってFUdRで処理した(図5の凡例を参照のこと)。β−アクチンは、GADD34のローディングコントロールとして使用した。
【図8】胃癌細胞を死滅させるための併用化学療法および腫瘍崩壊性ウイルス療法が1つの薬剤のみでの治療と比較して効果が高いことを示す実験結果を示す。OCUM−2MD3(A)MKN−45−P(B)胃癌細胞を、異なる用量のマイトマイシンC(μg/cc)またはG207(MOI)で処理した。OCUM−2MD3細胞については1:10、MKN−45−P細胞については1:25のMMC:G207比を一定に維持することで併用療法を行った。標準的なMTTアッセイ法を使用して、各処理群の細胞傷害性を評価し、結果を対照と比較した生存率(%)で示す。
【図9】マイトマイシンCとG207とを使用した併用療法が、評価した全用量範囲で相乗的相互作用することを示す実験結果を示す。相乗性を評価するChou−Talaley組み合わせインデックス法を、方法(本文を参照のこと)に記載のように行った。実験データポイント(●)を使用し、CalcuSynソフトウェアを使用して5〜95%(実線)全範囲のFa値からCI値を決定しCI−Faプロットを構築した。G207およびMMCの相加効果を、CI=1で示す(点線)。G207およびMMC併用療法により、全ての効果レベルでOCUM−2MD3細胞株については中程度の相乗性(A)を示し、MKN−45−P細胞株については強い相乗性を示す。
【図10】OCUM−2MD3細胞株(A)およびMKN−45−P(B)細胞株の両方におけるG207とMMCとの併用療法による相乗作用および用量の減少を示すアイソボログラムを示す。90%の細胞死滅(△)、70%の細胞死滅(□)、および50%(○)の細胞死滅を達成するために必要なMMCおよびG207の用量を、座標軸にプロットし、つないだ実線は、併用療法についての予想される相加効果を示す。下の値を90%(点を打った△)、70%(点を打った□)、および50%(点を打った○)とするための療法の実験用量は、全て対応する線の左下にあることから、相乗作用が示唆される。併用療法を使用した用量減少はまた、両細胞株についての3つのすべてのFa値で明らかである。
【図11】MMCに曝露したOCUM細胞中のGADD34 mRNAレベルを示す実験結果を示す。未処理OCUM細胞から抽出したmRNAを、GADD34の陰性対照として使用し(レーン1)、陽性対照(レーン6)は、2.4kbで強いバンドを示し、GADD34 mRNAの大きさである。OCUM細胞を、低用量(0.005μg/ml)または高用量(0.04μg/ml)のMMCのいずれかで24時間および48時間処理した。24時間後、低用量療法では、GADD34 mRNAの上方制御は認められなかったが(レーン2)、高用量療法では陰性対照と比較してmRNAが2.49倍増加した(レーン3)。48時間後、低用量療法では、GADD34 mRNAの存在は示されなかったが(レーン4)、高用量療法では、mRNAが3.21倍増加した(レーン5)。
【図12】腹腔内化学療法およびウイルス療法は胃癌腫症において組み合わせられた場合、腫瘍死滅を向上させる実験結果を示す。無胸腺症マウスへのOCUM−2MD3細胞の腹腔内注射によって腫瘍負荷を作製し、3日後から治療を開始した。マウスに、媒質(対照)、1×106pfuのG207、0.1μg/kgのMMC、または両作用因子を組み合わせて腹腔内に注射した。腫瘍細胞接種から4週間後の重量によって腫瘍負荷を評価した。G207療法を対照と比較した場合、腫瘍負荷は有意に減少したが(P=0.02)、MMC療法は、この用量で(対照に対して)腫瘍負荷の減少傾向のみを示した(P=0.06)。併用療法により、対照と比較して腫瘍負荷が最も減少し(P<0.001)、G207療法(P=0.03)またはMMC療法(P=0.01)のみと比較した場合にも有意な減少を示した。両側スチューデントt検定を使用して統計分析を行った。
Claims (29)
- 患者の癌を治療する方法であって、該患者に(i)γ34.5遺伝子をその中で不活化させる弱毒化ヘルペスウイルスおよび(ii)化学療法薬を患者に投与することを含む、方法。
- 前記弱毒化ヘルペスウイルス中でリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子を不活化する、請求項1に記載の方法。
- 弱毒化ヘルペスウイルス中で2つのγ34.5遺伝子を不活化する、請求項1に記載の方法。
- 弱毒化ヘルペスウイルスがG207である、請求項1に記載の方法。
- 化学療法薬がアルキル化剤である、請求項1に記載の方法。
- アルキル化剤が、ブスルファン、カロプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、およびチオテパからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
- 化学療法薬が抗腫瘍性抗生物質である、請求項1に記載の方法。
- 抗腫瘍性抗生物質が、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ペントスタチン、およびプリカマイシンからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
- 抗腫瘍性抗生物質がマイトマイシンCである、請求項8に記載の方法。
- 化学療法薬が代謝拮抗薬である、請求項1に記載の方法。
- 代謝拮抗薬が、チミジル酸シンテターゼインヒビター、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、およびチオグアニンからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
- チミジル酸シンテターゼインヒビターがフルオロデオキシウリジンである、請求項11に記載の方法。
- 癌が、星状細胞腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、髄芽細胞腫、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
- ヘルペスウイルスが異種遺伝子産物をコードする遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
- 異種遺伝子産物がワクチン抗原を含む、請求項14に記載の方法。
- 異種遺伝子産物が免疫調節タンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
- 患者の癌を治療する方法であって、該患者に(i)リボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子を不活化した弱毒化ヘルペスウイルスおよび(ii)化学療法薬を投与することを含む、方法。
- 化学療法薬がアルキル化剤である、請求項17に記載の方法。
- アルキル化剤が、ブスルファン、カロプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン、メコラレサミン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、およびチオテパからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
- 化学療法薬が抗腫瘍性抗生物質である、請求項17に記載の方法。
- 抗腫瘍性抗生物質が、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ペントスタチン、およびプリカマイシンからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
- 抗腫瘍性抗生物質がマイトマイシンCである、請求項21に記載の方法。
- 化学療法薬が代謝拮抗薬である、請求項17に記載の方法。
- 代謝拮抗薬が、チミジル酸シンテターゼインヒビター、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、およびチオグアニンからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
- チミジル酸シンテターゼインヒビターがフルオロデオキシウリジンである、請求項24に記載の方法。
- 癌が、星状細胞腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経線維腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、髄芽細胞腫、頭頸部癌、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌、肝臓癌、骨癌、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉癌、甲状腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肝臓癌、中皮腫、類表皮癌、および血液の癌からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
- ヘルペスウイルスが異種遺伝子産物をコードする遺伝子を含む、請求項17に記載の方法。
- 異種遺伝子産物がワクチン抗原を含む、請求項27に記載の方法。
- 異種遺伝子産物が免疫調節タンパク質を含む、請求項27に記載の方法。
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