JP2004514409A - 修飾イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼポリペプチドおよびその用途 - Google Patents
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Abstract
本発明は、単離した修飾イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)ポリペプチドを提供する。これらの修飾IMPDHポリペプチドは、サブドメイン領域に取って代わる置換オリゴペプチドを含む。本発明に係る修飾ポリペプチドは、インヒビター、例えばMPAに結合し、そして/または野生型IMPDHホロ酵素の機能的活性を示す。
Description
【0001】
本明細書全編を通じて様々な刊行物を引用する。これらの刊行物の開示は引用によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、サブドメイン領域の代わりに置換オリゴペプチドを含む、単離された修飾イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)ポリペプチドに関する。
【0003】
(背景技術)
酵素イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH;EC 1.1.1.205)は、グアノシンヌクレオチドのデノボ合成に関与している(Crabtree,G.W., and Henderson,J.F. 1971 Cancer Res. 31:985−991;Snyder,F.F. et al., 1972 Biochem.Pharmacol. 21:2351−2357;Weber,G., 1983 Acct.Chem.Res. 24:209−215)。IMPDHは、イノシン−5’−一リン酸(IMP)からキサントシン−5’−一リン酸(XMP)への酸化を触媒する(Jackson,R.C. et al., 1975 Nature 256:331−333)。IMPDH酵素は、基質と補助因子結合の規則正しいBi−Bi反応連鎖および産物放出に従う。まずIMPがIMPDHに結合し、続いて補助因子NADの結合が起こり、その後NADHへの還元が起こる。還元されたNADHが次いで放出され、その後、産物XMPが放出される(Carr,S.F. et al., 1993 J.Biol.Chem. 268:27286−90;Holmes,E.W. et al., 1974 Biochem.Biophys.Acta. 364:209−217)。
【0004】
IMPDHは全ての原核生物と真核生物に見出される遍在性の酵素である(Natsumeda,Y. and Carr,S.F., 1993 Ann.N.Y. Acad. 696:88−93)。全ての種に由来するIMPDH酵素は、I型またはII型IMPDHポリペプチドの4つのサブユニットを含む、ホモ四量体として存在する。各サブユニットは、比較的大きな触媒コアドメインと小さなサブドメイン、または隣接ドメイン(これは機能が分かっていない)とを持つIMPDHポリペプチドである。各々のサブユニットは、活性部位の周囲に四量体を組織化し得るカリウムイオン(Sintchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)によって結合している(Xiang,B., et al., 1996 J.Biol.Chem. 271:1435−1440)。原核生物のIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列は、ヒトIMPDHと30−40%配列が一致している(Natsumeda,Y. and Carr,S.F. 1993 上記)。サブドメインのアミノ酸配列は、異なる種由来のIMPDH間で実質的な変異を示す。
【0005】
I型およびII型と呼ばれるヒトIMPDHの二つのイソ型が同定され、配列決定された(Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295)。I型とII型はいずれも514アミノ酸残基の長さであり、両者の配列の84%が一致している。I型およびII型IMPDH分子の配列の変異もまた開示されている。野生型のII型ヒトIMPDHのヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号(配列番号63)に開示されている。野生型ヒトIMPDHI型のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295(配列番号65)に開示されている。他の野生型ヒトIMPDH I型の配列もまた開示されている(Gu et al., 1997 J.Biol.Chem. 272:4458−4466(配列番号62);Dayton et al. 1994 J.Immunol. 152:984(配列番号64);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem. And Biophys. Research Communications, 537−544(1994))。さらに、IMPDH I型とII型の両者は、56kDaのサブユニット分子量を持つ活性四量体を溶液中で形成する(Yamada,Y., et al., 1988 Biochemistry 27:2737−2745)。
【0006】
IMPDHはBおよびTリンパ球の増殖にとって重要である、それはBおよびTリンパ球がサルベージ経路ではなくデノボ経路に依存し、マイトジェンまたは抗原に対する増殖反応の開始に必要なヌクレオチドレベルを作り出しているためである(Allison,A.C., et al., 1975 Lancet II, 1179;Allison,A.C., et al., 1977 Ciba Found.Symp. 48:207)。IMPDHはさらに平滑筋の増殖にも役割を果たしている(Gregory,C.R., et al., 1995 Transplantation 59:655−61)。加えて、IMPDHは或る種のウイルスセルラインにおけるウイルス複製で役割を果たしている(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。したがって、IMPDHはBおよびTリンパ球の増殖に関連する疾患またはウイルス疾患にとって重要である。
【0007】
ミコフェノール酸(MPA)はヒトI型およびII型IMPDHの強力な非競合的可逆的インヒビターである(Franklin,T.J., and Cook,J.M., 1969 Biochem.J. 113:515−524)。MPAは、NADHが放出された後に、但しXMPが産生する前に、IMPDHに結合する(Hedstrom,L. and Wang,C.C. 1990 Biochemistry 29:849−854;Link,J.O. and Straub,K. 1996 J.Am.Chem.Soc. 118:2091−2092)。ヒトI型IMPDHについて報告されているK1値は様々で11nM(Hager,P.W., et al., 1995 Biochem.Pharmacol. 49:1323−1329)から33−37nM(Carr,S.F., et al., 1993 上記)までの範囲であるが、II型のK1値は6−10nMである(Carr,S.F., et al., 1993 上記;Hager,P.W., et al., 1995 上記)。
【0008】
マイトジェンまたは抗原に対するBおよびT細胞の応答を遮断する免疫抑制剤としてMPAが使用されてきた(Allison,A.C., et al., 1993 Ann.N.Y.Acad.Sci. 696:63)。MPAはまた、腎臓移植拒絶および自己免疫疾患の治療にも使用されてきた(Morris,R.E. 1996 Kidney Intl. 49, Suppl. 53:S−26)。ところが、MPAには、胃腸毒性および劣悪なバイオアベイラビリティーといった望ましくない薬理作用がある(Shaw,L.M., et al., 1995 Therapeutic Drug Monitoring 17:690−699)。IMPDH活性のその他のインヒビター、例えばチアゾフリン、リバビリンおよびミゾリビンを包含するヌクレオシド類似体が同定されている(Hedstrom,L. et al., 1990 上記)。しかし、これらの化合物はIMPDHの競合的インヒビターであり、特異性を欠く。
【0009】
過去の研究結果は、I型またはII型ヒトIMPDHのいずれが重要な治療標的であるかを示していない。例えば、IMPDH II型のレベルがリンパおよび白血病セルラインを増殖させる際に増大することが証明されている(Konno,Y., et al., 1991 J.Biol.Chem. 266:506−509;Nagai,M. et al., 1991 Cancer Res. 51:3886−3890;Nagai,M., et al., 1992 Cancer Res. 52:258−261;Collart,F.R., et al., 1992 Cancer Res. 52:5)。別の研究者等は、両方のイソ型のmRNAレベルがマイトジェン刺激後にT細胞で増大することを証明した(Dayton,J.S., et al., 1994 J.Immunol. 152:984−991)。
【0010】
IMPDHはグアニンヌクレオチドのデノボ合成にとって必須であり、例えばIMPDHはイノシン−5’−一リン酸(IMP)を触媒してキサントシン−5’−一リン酸(XMP)とする(Jackson R.C. et al., 1975 上記)。故にIMPDHの機能的活性の阻害はDNA合成を停止させる(Duan, et al., 1987 Cancer Res. 47:4047−4051)。異常レベルのIMPDHに関連する疾患を阻害するために、野生型および改善された薬理学的性質を持つ修飾IMPDH両者に対する強力なIMPDHインヒビター分子が依然として要求されている。
【0011】
したがって現在、野生型IMPDHの活性を選択的に阻害する物質の同定に、研究努力が集中している。このような阻害物質は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過剰増殖剤および抗ウイルス剤として使用するための強力な治療用インヒビターである。さらに、IMPDHインヒビターは、移植拒絶、ならびに、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、若年性糖尿病、喘息、および炎症性腸疾患を包含する自己免疫疾患の治療に使用できる。加えてこれらのインヒビターは、癌や再狭窄を包含する血管疾患、およびレトロウイルス疾患やヘルペスを包含するウイルス複製疾患の治療に有用となり得る。
【0012】
標的タンパク質を阻害する物質を発見する1つの方法は構造に基づく方法であり、これは、既知のインヒビターと複合体形成した標的タンパク質のX線結晶構造の分析を含む。MPAおよびIMPと複合体形成した野生型チャイニーズハムスターIMPDH II型の多量体のX線結晶構造が、2.6オングストロームレベルで解析されている(Sintchak,M.D., et al., 1996 上記;米国特許第6128582号)。しかしながら、このレベルの分解能はIMPDHとMPAとの相互作用の充分な詳細を提供していない。これらの詳細を提供するような解析レベルで、インヒビターと複合体形成したIMPDHのX線結晶構造を入手する要求が依然として存在する。本発明は、サブドメイン領域に代わって置換オリゴペプチドを含むよう修飾したヒトIMPDHポリペプチドを提供する。この修飾IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHよりも短く、機能的活性を示し、MPAと結合し、そしてその結晶構造はより高レベルまたは細かい分解能で解析され得る。
【0013】
(発明の要約)
本発明は、単離された新規な修飾IMPDHポリペプチドおよびそれらをコードしている核酸分子を提供する。本発明に係るポリペプチドは各々短い置換オリゴペプチドを含み、これは野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインに取って代わり、それにより修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを短縮し、そしてインヒビターと複合体形成した修飾IMPDH多量体のX線結晶構造のより良い解析を可能にする。この置換オリゴペプチドは、折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドがIMPDHのインヒビターに結合し、そして/または野生型IMPDHの機能的活性を保持するよう選択された長さと配列を有する。
【0014】
本発明はさらに、修飾IMPDHをコードしているDNAを含む組換えベクターおよび宿主−ベクター系、ならびに修飾IMPDHポリペプチドの産生のための方法を提供する。本発明はまた、この修飾IMPDHポリペプチドと反応する抗体を提供する。
【0015】
修飾IMPDHポリペプチドは、薬物発見法、例えば構造に基づく薬品設計(ドラッグデザイン)にとって有用である。本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドはさらに、修飾IMPDHポリペプチドの検出および/または定量のための、そして任意のIMPDHポリペプチドをコードしている対応核酸分子の検出および/または定量のための治療法、診断法および予後判定法にとって有用である。
【0016】
(発明の開示)
(定義)
本明細書で使用する全ての科学および技術用語は、別途記載のない限り当該分野で使用する通常の意義を有する。本明細書で使用する以下の語または句は、明記した意義を有する。
【0017】
本明細書中使用する「ホロ酵素」という語は、互いに結合してそのホロ酵素を作り上げている、ポリペプチドサブユニットおよび補助因子のような複数の構成成分を含む完全な機能的酵素を指す。これらポリペプチドサブユニットは共有結合的または非共有結合的相互作用によって互いに結合することができる。
【0018】
本明細書に記載の「IMPDHホロ酵素」という語は、グアニンヌクレオチドのデノボ合成における決定付けられた工程である、イノシン−5’−一リン酸(IMP)のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性酸化を触媒する生物学的活性または機能を有する完全な酵素を指す。典型的には、天然に存在するIMPDHホロ酵素は、各々がカリウムイオンに結合しているIMPDHポリペプチドの4つの単量体サブユニットを含む四量体分子として見出される。さらに、野生型ヒトIMPDHホロ酵素の触媒活性はミコフェノール酸(MPA)によって阻害される。
【0019】
本明細書に記載の「IMPDH多量体」という語は、互いに結合してIMPDH多量体分子を形作っているIMPDHポリペプチドの少なくとも二つの単量体サブユニットを指す。このポリペプチドサブユニットは、共有結合的または非共有結合的相互作用により互いに結合することができる。IMPDH多量体はカリウムイオンを含んでいてもいなくてもよい。IMPDH多量体は、天然に存在するIMPDHホロ酵素の機能的活性を示しても示さなくてもよい。IMPDH多量体は修飾IMPDHポリペプチドの単量体サブユニットを2、3、4、または8個まで含むことができる。さらにこの多量体は、同一または異なるイソ型の単量体サブユニット、例えば修飾I型またはII型IMPDHポリペプチドを含むことができる。
【0020】
本明細書中使用する「野生型IMPDHポリペプチド」という語は、N末端触媒ドメイン、非触媒的内部ドメイン、およびC末端触媒ドメインを包含するポリペプチドを指す。本明細書で論ずるように、野生型IMPDHポリペプチドはそのアミノ酸配列に相違があり得る。野生型IMPDHポリペプチドの例は配列番号48、49、および62−65に示す。野生型IMPDHポリペプチドは、或る構造に折り畳まれてその結果N末端とC末端ドメインが触媒部位を形成するようになる。非触媒ドメインは隣接ドメインまたはサブドメインとしても知られている。野生型IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHホロ酵素の、または野生型IMPDH多量体の、単量体ポリペプチドサブユニットである。
【0021】
本明細書中使用する「修飾IMPDHポリペプチド」という語は、本明細書で「置換ペプチド」と称するオリゴペプチドで置換された野生型IMPDHポリペプチドのIMPDHサブドメイン(例えば非触媒的内部ドメイン)を有するIMPDHポリペプチドを指す。
【0022】
本明細書中使用する「オリゴペプチドドメイン」という語は、オリゴペプチドが野生型IMPDHサブドメインに取って代わっている、修飾IMPDHポリペプチドにおける領域または部分(例えば非触媒的内部ドメイン)を指す。
【0023】
本明細書中使用する「置換ペプチド」または「置換オリゴペプチド」または「置換テトラペプチド」または「置換トリペプチド」という語は、野生型IMPDHポリペプチドのサブドメイン領域に置き換わる、選択された長さと配列を持つペプチド断片を指す。このペプチド断片は該サブドメイン領域よりも小さい(例えば、これは133アミノ酸より少ない)。好ましい態様では、このペプチド断片はトリペプチドまたはテトラペプチドである。
【0024】
本明細書で使用するように、第一のヌクレオチドまたはポリペプチド配列と第二のヌクレオチドまたはポリペプチド配列とを比較し、それらが全く等しい場合、第一の配列は第二の配列に対して配列が「一致」していると言う。
【0025】
本明細書で使用するように、二つの配列の比較が、それらが低レベルの配列相違を示す時、第一のヌクレオチド配列は第二の参照配列に「類似して」いると言う。例えば、二つの配列間で相違しているヌクレオチドのパーセンテージが約60%ないし99.99%の間である時、二つの配列は互いに類似していると考えられる。
【0026】
本明細書中使用する「相補的」という語は、プリンおよびピリミジンヌクレオチドが水素結合によって結合して二本鎖核酸分子を形成する能力を指す。以下の塩基対は相補性によって関連している:グアニンとシトシン;アデニンとチミン;ならびにアデニンとウラシル。「相補的」という語は二つの一本鎖核酸分子を含む全ての塩基対に適用する。
【0027】
本明細書で使用するように、目的とするポリペプチドをコードしている核酸分子は、該核酸分子が、目的とするポリペプチド以外のポリペプチドをコードしている混入核酸分子から実質的に分離している時、「単離されている」と言う。
【0028】
本明細書で使用するように、目的とするポリペプチドが他の「混入」ポリペプチドから実質上分離している時、該ポリペプチドは「単離されている」と言う。さらに、「単離された」核酸分子またはポリペプチドは、いかに組み立てられまたは合成されようとも、任意のDNA、RNA、またはポリペプチド配列を指す。
【0029】
本明細書中使用する「天然に存在する」とは、天然に見出されるポリペプチドを指す。
【0030】
本明細書中使用する「実質上精製された」とは、実質上全ての混入物質(即ち、その特定分子とは異なる物質)が該核酸またはタンパク質から分離された、特定の単離された核酸もしくはポリペプチドまたはそれらの断片を意味する。
【0031】
アミノ酸残基についての一文字コードは以下のものを包含する:A=アラニン、R=アルギニン、N=アスパラギン、D=アスパラギン酸、C=システイン、Q=グルタミン、E=グルタミン酸、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、L=ロイシン、K=リジン、M=メチオニン、F=フェニルアラニン、P=プロリン、S=セリン、T=スレオニン、W=トリプトファン、Y=チロシン、V=バリン。
【0032】
本明細書に記載の発明をより完全に理解するため、以下の説明を開示する。
【0033】
A. 本発明に係る分子
その様々な態様において、下に詳細に記載するように、本発明は、単離された、修飾IMPDHポリペプチド、核酸分子、組換えDNA分子、形質転換された宿主細胞、作成方法、検定、免疫療法、トランスジェニック動物、修飾IMPDHポリペプチドのインヒビター(例えば抗体)、免疫学的および核酸に基づく検定、ならびに組成物を提供する。
【0034】
1. 修飾IMPDHポリペプチドおよび修飾IMPDHポリペプチドを含む多量体分子
a) 単離された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、数多くの形で、好ましくは単離された形で具体化できる。本発明に係るポリペプチドは天然合成されたポリペプチドとして、または天然、合成、半合成、または組換えの如何に拘わらず、任意の供給源から単離できる。したがって、修飾IMPDHポリペプチドは、任意の種、特に牛、羊、豚、マウス、馬、および好ましくはヒトを包含する哺乳動物由来の天然合成されたタンパク質として単離できる。これとは別に、修飾IMPDHポリペプチドは、原核または真核宿主細胞で発現される組換えポリペプチドとして、または合成ポリペプチドとして単離できる。
【0035】
当業者は、標準的単離法を用いて、本発明に係る方法に従い製造した、単離された修飾IMPDHタンパク質を取得できる。単離の性格と程度は、単離するタンパク質の供給源および意図する用途に依存する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、Gilbert et al.,(1979) Biochemical J. 183:481−494およびKrishnaiah(1975) Arch.Biochem.Biophys. 170:567−575に記載のような天然に存在する細菌IMPDHタンパク質の単離に使用する方法を用いて細菌宿主細胞から単離できる。別法を用いて真核細胞、例えば植物細胞(Atkins, et al.,(1985) Arch.Biochem.Biophys. 236:807−814)またはチャイニーズハムスター細胞(Collart, et al.,(1987) Mol.Cell.Biol. 7:3328−3331)またはヨシダ肉腫腹水細胞(Okada, et al.,(1983) J.Biochem. 27:2193−2196)またはラット肝癌細胞(Ikegami, et al.,(1987) Life Sci. 40:2277−2282)から修飾IMPDHを単離できる。
修飾IMPDHポリペプチドを作製する方法を下に詳細に述べる。
【0036】
a) 精製された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は精製された形態で単離できる。修飾IMPDHポリペプチドは、IMPまたは抗IMPDH抗体を用いる親和クロマトグラフィー(Marchak,D.R., et al., 1996 in: Strategies for Protein Purification and Characterization, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.)を包含する当分野で周知の方法によって精製できる。単離および精製の性格と程度は意図する用途に依存する。例えば、精製された修飾IMPDHポリペプチドは、この修飾IMPDHポリペプチドに対する抗体またはリガンドの結合を損なう分子またはその他のタンパク質を実質上含まないであろう。
【0037】
c) 結晶化された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、当分野で周知の方法(Fleming,M.A., et al., 1996 Biochemistry 35, 6990−6997)を用いて結晶形で単離できる。
【0038】
d) 修飾IMPDHポリペプチドは置換されたサブドメインを持つ
本発明は、野生型IMPDHのN末端触媒コアドメイン;野生型IMPDHサブドメイン領域に取って代わっている、または該サブドメイン領域内の或る領域に取って代わっている内部置換オリゴペプチドドメイン;野生型IMPDHのC末端触媒コアドメイン、をそれぞれ包含する修飾IMPDHポリペプチドを提供する。修飾IMPDHポリペプチドのNおよびC末端触媒コアドメインは、種々の供給源、例えばGenBank, EC1.1.1.205、または国際公開第WO94/24264号由来のI型またはII型の野生型配列を含むことができる。さらにこのNまたはC末端配列は、Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772またはNatsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295に記載の配列と同一の配列、または本明細書の配列番号48、49、および62−65に明記する配列を包含できる。野生型サブドメイン領域に取って代わるオリゴペプチド(図3)は一般に「置換オリゴペプチド」と呼ばれ、より詳細には、そのオリゴペプチドの長さに応じて「置換トリペプチド」または「置換テトラペプチド」と呼ばれる。
【0039】
置換オリゴペプチドの目的は、修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを短縮し、インヒビター、例えばMPAと複合体形成した修飾IMPDH多量体のX線結晶構造のより良好な解析を得ることである。さらに、置換オリゴペプチドの配列と長さは、折り畳まれたIMPDHポリペプチドおよび多量体がIMPDHのインヒビターに結合し、そして/または野生型IMPDHの機能的活性(例えば、NADHを産生する)を保持することを可能にするように選択する。
【0040】
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドの断片[ここでこの断片は野生型IまたはII型IMPDHのサブドメイン領域に取って代わる置換オリゴペプチドを含んでいる]を提供する。
【0041】
かつて決定された野生型ヒトI型(Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;配列番号65;Gu et al., 1997 J.Biol.Chem. 272:4458−4466(配列番号62);およびDayton et al. 1994 J.Immunol. 152:984(配列番号64))またはII型(図2;配列番号49)(Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号(配列番号63);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem.And Biophys.Research Communications, 537−544(1994))IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を使用して野生型サブドメイン領域を位置決定できる。または、配列番号48、49または62−65に示すアミノ酸配列を使用してサブドメイン領域を位置決定できる。別法として、野生型チャイニーズハムスターIMPDH(Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 上記)、または原核生物およびその他の真核生物由来の野生型IMPDHタンパク質のアミノ酸配列を使用して、野生型サブドメイン領域を位置決定できる。
【0042】
例えば、修飾されたヒト野生型II型IMPDHポリペプチドは、(1)残基1−110を包含するN末端触媒コアドメイン;(2)オリゴペプチドで置換された、残基Glu111−Gln243を包含する非触媒的内部サブドメイン;および(3)残基244−514を包含するC末端触媒コアドメイン、を包含するが、これらに限定されない。したがって、置換オリゴペプチドは、二つの触媒コアドメイン(1および3)を連結して、修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを野生型II型IMPDHに比して短縮している(図4、6、8、10、13、15、または17)。修飾IMPDHポリペプチドの長さは該オリゴペプチドの長さに依存する。例えば、該オリゴペプチドがトリペプチドであるならば、修飾IMPDHポリペプチドは384アミノ酸残基長である。修飾IMPDHポリペプチドが折り畳まれて機能的に触媒コアを形成するよう、置換オリゴペプチドの好ましい配列と長さを選択する。この折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドはIMPDH活性(例えばNADHを産生する)のインヒビターに結合する。
【0043】
e) 置換オリゴペプチドのサイズ
本発明は、約3ないし10アミノ酸残基長の置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。或る好ましい態様は、トリペプチドである置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。また、或る好ましい態様は、テトラペプチドである置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0044】
f) 置換オリゴペプチドの配列
本発明はさらに、配列番号1−10に記載する置換トリペプチド配列のいずれか1つとアミノ酸配列一致を有する置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド(配列番号20−30)を提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、配列(一文字アミノ酸コード):DKT、TPI、SPS、SAH、KPI、IVD、ALF、SPT、GGYまたはGSG、のいずれか1つを有する置換トリペプチドを含むことができる(配列番号1−10)。好ましい態様は、異なる置換トリペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチド、例えばI型IMPDH−DKT(図17、配列番号30)またはII型IMPDH−DKT(図4、配列番号20)、またはII型IMPDH−SPS(図6、配列番号22)、IMPDH−SPT(図10、配列番号27)、およびIMPDH−GSG(図8、配列番号29)を提供する。
【0045】
本発明は、配列番号11−19に記載する置換テトラペプチド配列のいずれか1つとアミノ酸配列一致を有する置換オリゴペプチドを含む、さらなる修飾IMPDHポリペプチド(配列番号31−39)を提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、配列:GSSW、QPQS、NIIP、SPTQ、TRYT、AGRP、NGQY、NSPL、またはYGTW、のいずれか1つを有する置換テトラペプチドを含むことができる(配列番号11−19)。好ましい態様は、置換テトラペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド、例えばIMPDH−AGRP(図13、配列番号36)を提供する。
【0046】
g) 置換オリゴペプチドの変異体配列
本発明はさらに、本明細書に記載する置換トリまたはテトラペプチド領域の配列変異を有する、置換オリゴペプチド領域を含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドの変異体は、配列番号1−10または配列番号11−19にそれぞれ記載の置換トリまたはテトラペプチド配列と、1またはそれ以上のアミノ酸置換によって相違しているかも知れない。このアミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的性質を持つ、保存的変化、例えばロイシンからイソロイシンへの置換であるかも知れない。変異体はまた、非保存的変化、例えばグリシンからトリプトファンへの置換であるかも知れない。置換オリゴペプチド領域においてどの、そして幾つのアミノ酸残基を変化させ得るかを決定する指針は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDH多量体中のサブドメインが及んでいる距離で見出すことができる[ここで、この及んでいる距離は、予想(例えばアミノ酸配列に基づいて)および/または実験(例えば、X線結晶学に基づいて)によって誘導する]。好ましくはアミノ酸は、及んでいる距離が、野生型サブドメインの及んでいる距離と一致または殆ど一致するように変化させる。
【0047】
当業者には周知であるように、ポリヌクレオチド配列は、そのポリペプチドのコンホメーションまたは機能を変化させることなくアミノ酸置換をコードすることができる。本発明に関して、アミノ酸置換は、置換オリゴペプチド、または該ポリペプチドの任意の部分(例えば、N末端触媒ドメイン、サブドメインまたはC末端触媒ドメイン)に起こり得る。保存的アミノ酸変化は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかで、これら疎水性アミノ酸のうち他のいずれかを置換すること;アスパラギン酸(D)でグルタミン酸(E)を置換、またはその逆;グルタミン(Q)でアスパラギン(N)を置換、またはその逆、ならびにセリン(S)でスレオニン(T)を置換、またはその逆が包含されるがこれらに限定される訳ではない。個々のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造内でのその役割に応じて、他の置換もまた保存的であると考えられる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)、またはグリシン(G)とセリン(S)は互換性のあることが多く、アラニン(A)とバリン(V)もまた同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシンと、そして時にはバリンと相互交換できる。リジン(K)およびアルギニン(R)はしばしば位置を相互交換することができ、ここで、アミノ酸残基の重要な特徴はその電荷であって、これら二つのアミノ酸残基の相違するpKは重要でない。特別な環境では、さらなるその他の変化も「保存的」であると考えることができる。
【0048】
本発明のさらなる態様では、アミノ酸置換は「非保存的」であってよい。例には、アスパラギン酸(D)をグリシン(G)で置換;アスパラギン(N)をリジン(K)で置換;またはアラニン(A)をアルギニン(R)で置換、が包含されるが、これらに限定されない。
【0049】
さらに本発明は、置換オリゴペプチド領域(例えば、置換トリペプチドまたは置換テトラペプチド)を含み、且つN末端触媒ドメインおよび/またはC末端触媒ドメインに配列変異を有する、修飾IMPDHポリペプチドを提供する。好ましくは、このような置換は野生型または修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を変化させない。N末端触媒ドメインの変異の例は配列番号62に示す。特に、29位のアスパラギン酸(D)(D29;配列番号48)をグリシン(G)に置換できる。加えて、109位のアスパラギン(N)(N109;配列番号48)はリジン(K)に置換できる。当業者には理解できるであろうが、かなりの数のアミノ酸を単独、または他のアミノ酸と組み合わせて変化させることができ、尚且つそのポリペプチドは機能的活性を保持できる(例えば、本明細書に記載のように、アミノ酸置換を有するIMPDHポリペプチドはNADH産生を調節する能力を保持する)。したがって、野生型または修飾IMPDHと同様に機能するいかなる分子も、本明細書に記載の発明の実施に使用できる。
【0050】
Natsumeda et al. J.Biol.Chem. 265:5292−5295(1990);Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号;Gu et al. J.Biol.Chem. 272:4458−4466(1997);Dayton et al. J.Immunol. 152:984(1994);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem. And Biophys.Research Communications, 537−544(1994)に、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列のIMPDHの例を見出すことができる。これらのアミノ酸配列もまた本明細書で配列番号62−65に示す。
【0051】
置換トリペプチド領域(例えばDKT)に保存的アミノ酸置換を有する、本発明に係るIMPDH−DKTポリペプチドの変異体の特別な例は、(一文字コードで)GKT、DRT、DKG、またはGRSを包含するがこれらに限定されない。当業者は置換オリゴペプチド配列のその他の変異体を容易に予想できる。
【0052】
h) 変化させたアミノ酸類似体またはポリペプチド
本発明はさらに、アミノ酸類似体を含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。このアミノ酸類似体は化学合成でき、右旋体もしくは左旋体、または擬似ペプチドを包含する。さらに本発明は、例えば翻訳後経路または化学合成によって変化させた、N−またはO−グリコシル化アミノ酸残基を含む本発明に係るポリペプチドを提供する。該ポリペプチドのN末端は、アシル化またはアルキル化された残基を含むよう変化させることができる。該ポリペプチドのC末端は、エステル化またはアミド化残基を含むよう変化させることができる。非末端アミノ酸残基を変化させることができ、これは、アミノ酸アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、プロリン、グルタミン酸、リジン、セリン、スレオニン、チロシン、ヒスチジン、およびシステインの変化を包含するがこれらに限定されない。
【0053】
h) 置換オリゴペプチドの及んでいる距離
本発明は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDHポリペプチド中のサブドメインの距離に及んでいる置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド、または、互いに結合している折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドを複数含んでいるIMPDH多量体[その結果、この折り畳まれたIMPDHポリペプチドは野生型IMPDHの機能的活性を示し、そして/またはIMPDHのインヒビターに結合する]を提供する。
【0054】
折り畳まれた野生型IMPDHポリペプチド中のサブドメインが及んでいる距離は、野生型IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列から予想でき、そして/または野生型IMPDHポリペプチド単量体または野生型IMPDH多量体または野生型IMPDHホロ酵素のX線結晶構造から実験的に取得できる。
【0055】
例えば、ヒトI型(Natsumeda,Y., et al. 1990 上記)および/またはII型(Collart,F.R., and Hubermann,E. 1988 上記;Natsumeda,Y., et al. 1990 上記)IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列は、折り畳まれたヒト野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインが及んでいる距離を予想する根拠に使用できる。残基Glu111−Gln243を包含している野生型ヒトII型IMPDHポリペプチドのサブドメインは、133アミノ酸残基の直線長さに及んでいる(配列番号61)。
【0056】
IMPDHのX線結晶構造もまた、折り畳まれたIMPDHポリペプチド中のサブドメインが及んでいる距離を予想するのに使用できる。例えば、IMPおよびMPAと複合体形成している野生型チャイニーズハムスターIMPDHホロ酵素のX線結晶構造が過去に決定されており、このサブドメインの寸法がほぼ20 x 20 x 40オングストロームである事、そしてGlu111−CAからGln243−CA(例えば、CAは各アミノ酸残基について炭素α原子である)までのサブドメインが及んでいる距離が約5.1オングストロームである事が示されている(M.D.Sintchak, et al., 1996 Cell 85:921−930)。ヒトIMPDHのX線結晶構造もまた決定されており、Glu111−CAからGln243−CAまでの距離は約5.5オングストロームである(Colby,T.D., et al., 1990 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:3531)。折り畳まれたI型IMPDHのサブドメインが及んでいる距離はおよそ5オングストロームであると仮定できる。
【0057】
本発明は、MPAに結合した本発明に係るIMPDH−DKT多量体中の置換トリペプチドの長さが及んでいる距離は、X線結晶データからの決定によると約5オングストロームであるという発見を提供する。
【0058】
本発明の或る態様は、約4.8ないし6.0オングストロームの間の距離に及んでいる置換オリゴペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチドを提供し、この距離は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDHポリペプチド単量体または折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDH多量体のサブドメイン領域の距離の範囲である。より好ましい態様は、約5.0および5.2オングストロームの間の距離に及んでいる置換オリゴペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0059】
h) 修飾IMPDHポリペプチド由来の多量体型
本発明は、互いに結合している複数の修飾I型および/またはII型ヒトIMPDHポリペプチドを含む、本明細書で修飾IMPDH多量体と称する多量体IMPDH分子を提供する。この修飾IMPDH多量体は、他の構成成分、例えばカリウムイオンを含んでいてもいなくてもよい。したがって、修飾ホモ多量体IMPDH分子は、複数のI型またはII型修飾IMPDHポリペプチドを含むことができる。同様に、修飾ヘテロ多量体IMPDH分子は、I型およびII型修飾IMPDHポリペプチドの組み合わせを含むことができる。
【0060】
例えば、IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRT多量体を包含する、特定の修飾されたII型ヒトIMPDHポリペプチドを各々に複数含む、修飾ホモマーIMPDH分子が単離された。
【0061】
修飾IMPDH多量体は2ないし8個の修飾IMPDHポリペプチドを含むことができる(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。本発明の或る態様は、2個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば二量体)を提供する。より好ましい態様は4個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば四量体)を包含し、そして最も好ましい態様は、8個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば八量体)を包含する。
【0062】
修飾IMPDHポリペプチドは、適当な緩衝溶液、例えば25mM Tris、pH8.2;300mM KCl;10%グリセロール;1mM EDTA;および2mM DTTを含有する溶液中で多量体分子を形成できる(Brandon C. & Tooze J. 1991 in:Introduction to Protein Structure (Garland Publishing Inc., London))。
【0063】
溶液中での四量体および八量体の形成は、静的および動的光散乱(Freifelder,D. 1982 in:Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., SanFrancisco, CA)、および分析用超遠心分離(Deutscher,M.P. 1990 in Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)を包含する種々の方法によって測定できる。これに代わる方法は、天然SDS/PAGEゲル電気泳動およびゲル透過クロマトグラフィーを包含する(ed. Freifelder,D. 1982 in: Physical Biochemistry; Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., San Francisco, CA; ed. Oliver,R.W.A. 1989 in: HPLC of Macromolecules: a Practical Approach IRL Press, Oxford University)。
【0064】
例えば、IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRP多量体は、分析用ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、二量体と四量体という多量体型の間で動的平衡にあるように見受けられる(ed. Oliver,R.W.A. 1989 in: HPLC of Macromolecules: a Practical Approach (IRL Press, Oxford University))。
【0065】
h) 修飾IMPDH多量体は機能的活性を示す
本発明は、野生型IMPDHホロ酵素の機能的活性を示す修飾IMPDH多量体を提供する。例えば、野生型哺乳動物IMPDHホロ酵素は、IMPの存在下でNADからNADHへの変換を触媒する。したがって、本発明に係る多量体分子はIMPの存在下でNADHの産生を触媒する。当業者は、本明細書に記載の、またはS.F.Carr, et al(1993) J.Biol.Chem. 268:27286−27290およびB.Xiang, et al.(1996) J.Biol.Chem. 271:1435−1440に記載のインビトロ法を用いてNADHの産生について修飾IMPDH多量体を容易に検定することができる。
【0066】
例えば、修飾IMPDH多量体および野生型ヒトII型IMPDHホロ酵素が産生するNADHの量は37℃で340nm(ε=6220M−1cm−1)の分光光度測定によって比較できる(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。
【0067】
別法として、本発明に係る多量体分子の機能的活性は、HPLC分析と分光光度検定を用いてIMPおよびNADからのXMPおよびNADHの産生を測定することによって分析できる(Montero,C. et al., 1995 Clinica Chemica Acta 238:169−178)。
【0068】
h) 修飾IMPDHポリペプチドに及ぼすMPAおよび/またはその他の化合物の
阻害効果
本発明は、野生型哺乳動物IMPDHホロ酵素の活性を阻害することが分かっている化合物により阻害される、野生型IMPDHホロ酵素の機能的活性を有する、修飾IMPDH多量体を提供する。例えば、MPAは、IMPDHホロ酵素活性の非競合的インヒビターである化合物であって、NADからNADHへの変換を阻害する(T.J.Franklin and J.M.Cook 1969 Biochem.J. 113:515−524)。これに代わる化合物には、ラパミシン、ならびに競合的インヒビターであるヌクレオシド類似体、例えばチアゾフリン、リバビリンおよびミゾリビンが包含される(Hedstrom,L., et al., 1990 Biochemistry 29:849−854; Cooney,D., et al., 1982, Biochem.Pharm. 31:2133−2136; Smith,C., et al., 1974:Biochem.Pharm., 23:2727−2735; Koyama,H. & Tsuji,M., 1983, Biochem.Pharm., 32:3527−3553)。
【0069】
典型的には、推定阻害化合物の効果を評価する方法は以下の工程を含む:適当な濃度のIMP、NAD、緩衝液、および評価すべき化合物をそれぞれ入れた別々の反応容器に、野生型ホロ酵素および修飾IMPDH多量体を入れ;反応容器の内容物を適当なインキュベート条件の下で充分な時間反応させ;そして、各反応容器内で生成したNADHの量を当分野で既知の方法によって監視し;野生型ホロ酵素が産生したNADHの量を、修飾IMPDHポリペプチドが産生した量と比較して、該化合物に対する修飾IMPDHポリペプチドの相対感受性を決定する。
【0070】
例えば、修飾IMPDH多量体の機能的活性(例えばNADH産生)に及ぼすMPAの阻害効果を、連続希釈法と定常状態酵素動力学法を用いて決定できる(S.F.Carr, et al. 1993 上記;B.Xiang, et al., 1996 上記)。
【0071】
2. 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子
本発明は、本明細書中「修飾impdhポリヌクレオチド配列」と称する、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を有する、様々な単離された、そして組換えの核酸分子を提供する。本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド断片、および関連ポリヌクレオチド分子、例えば修飾IMPDHに相補的なポリヌクレオチド配列またはその一部、および本発明に係る核酸分子とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0072】
本明細書中、本発明に係る核酸分子とも称する修飾impdhポリヌクレオチドは、好ましくは単離形態であり、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連分子、ならびにそれらの断片を包含するが、これらに限定される訳ではない。特に考えられるのは、ゲノムDNA、リボザイム、およびアンチセンス分子、ならびに代替バックボーンに基づく核酸、または天然起源から誘導されているか合成されたものであるかに拘わらず代替塩基を含んでいる核酸である。
【0073】
a) 本発明に係る単離されたポリヌクレオチド配列
本発明は、多くの形態に具体化される、好ましくは単離形態の、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。本発明に係るimpdhポリヌクレオチド配列は、天然合成ポリヌクレオチドとして、または天然、合成、半合成、もしくは組換えの如何に拘わらず、任意の供給源から単離することができる。したがって、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、任意の種、特に、牛、羊、豚、マウス、馬、および好ましくはヒトを包含する哺乳動物から単離できる。impdhポリヌクレオチドの単離には標準法を使用でき、例えばMolecular Cloning; A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook, Fritch, and Maniatis 1989, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい。
【0074】
例えば、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列は、野生型IMPDHタンパク質をコードしているcDNAクローンを単離し、次いで組換えDNA技術を用いて、サブドメイン配列を置換オリゴペプチドをコードしているヌクレオチド配列で置換するよう、このcDNAクローンを操作することによって作製できる。この組換えDNA法は例えばPCR技術を包含する(米国特許第4603102号)。
【0075】
a) 本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチ
ド配列
本発明は、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を有する、単離された核酸分子を提供する。例えば本発明は、配列番号40−44に記載の置換トリペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列のいずれかと配列一致を有する、単離された核酸分子を提供する。これとは別に本発明は、配列番号45−47に記載の置換テトラペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列のいずれかと配列一致を有する、単離された核酸分子を提供する。
【0076】
c) 修飾IMPDHポリペプチドの断片をコードしている核酸配列
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドの一部または断片をコードしているポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。ポリヌクレオチド断片のサイズはその意図する用途によって決定する。例えば、核酸プローブまたはPCRプライマーとして使用する断片の長さは、プロービングまたはプライミング中に比較的少数の偽陽性が得られるように選択する。これとは別に、修飾impdhポリヌクレオチド配列の断片を使用して、異なる配列と融合する修飾impdhポリヌクレオチド配列を有する組換え融合遺伝子、例えば、発現されたポリペプチドの単離および/または精製を促進するヒスチジンタグをコードしているヌクレオチド配列を組み立てることができる。
【0077】
本発明に係るプローブ、プライマー、および断片は、例えばゲノムまたはcDNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニング、または遺伝子発現の分析手段としてのmRNA種の検出および定量を包含する様々な分子生物学的技術にとって有用である。好ましくはこのプローブおよびプライマーはDNAである。理論的および実用的理由により、少なくとも15塩基対の長さのプローブまたはプライマーが示唆される(Wallace and Miyada 1987 in: Methods in Enzymology 152:432−442, Academic Press)。本発明に係るプローブとプライマーは当業者に周知の方法により製造できる(例えばSambrook et al., 1989 上記、を参照されたい)。好ましい態様では、このプローブおよびプライマーは米国特許第4683202号に開示のポリメラーゼ連鎖反応によって合成する。
【0078】
本発明の或る態様は、本発明に係る核酸分子またはその任意の特定部分の特異的増幅を可能にする、修飾impdhポリヌクレオチド配列に相補的な核酸プライマーを提供する。
【0079】
d) 修飾impdh配列に相補的な配列
本発明は、本発明に係るヌクレオチド配列、例えば配列番号40−47に記載の配列に相補的なポリヌクレオチド配列を包含する。
【0080】
d) impdh配列とハイブリダイズできる配列
本発明は、高度緊縮ハイブリダイゼーション条件下で修飾impdhポリヌクレオチド配列、例えば配列番号40−47に記載の配列と選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。典型的には、標準的高度緊縮条件下のハイブリダイゼーションは、互いに相補的な二つの核酸分子(例えば100%の正確な相補性)、または互いに殆ど相補的な二つの核酸分子(例えば約70%ないし99%一致する、例えばホモローガス配列)の間で起こる。核酸分子間の高度緊縮ハイブリダイゼーションは、例えば相同性の程度、ハイブリダイゼーションの緊縮性、およびハイブリダイズする鎖の長さに依存するということが、当業者にとっては容易に明らかである。
【0081】
非ホモローガス塩基の対合を嫌う高度緊縮ハイブリダイゼーション条件は当分野で周知である。典型的には、高度緊縮ハイブリダイゼーション条件とは、5X SSPEおよび50%ホルムアミド中50℃ないし65℃でのハイブリダイズ、および0.5X SSPE中での50℃ないし65℃での洗浄を含む。典型的な低緊縮条件は、5X SSPEおよび40%ないし45%ホルムアミド中35℃ないし37℃でのハイブリダイズ、および1−2X SSPE中での42℃での洗浄を含む。
【0082】
高度緊縮ハイブリダイゼーション法のための条件と手順は当分野でよく知られており、Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook, Fritch, and Maniatis 1989, Cold Spring Harbor Pressから容易に得られる。
【0083】
d) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているコドン使用頻度変異体
開示されたヌクレオチド配列とは異なっているが、コードされているアミノ酸配列は変化させない、修飾IMPDHポリペプチドのコドン使用頻度変異体を作製することが有利であるかも知れない。例えば、宿主細胞が利用するコドンの頻度に従って、特定の原核または真核発現宿主における修飾impdh転写物または修飾IMPDHポリペプチドの産生レベルを最適化するよう、コドンを選択することができる。修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を変化させる別の理由は、より望ましい性質、例えば増大した半減期を有するRNA転写物の産生を包含する。遺伝コードの縮重の結果、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている沢山の変異体ヌクレオチド配列が単離できる。したがって本発明は、開示されている修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列の可能な全組み合わせを産生する全ての可能なトリプレットコドンの選択を企図している。本発明の或る態様は、単離されたヌクレオチド配列が配列番号40−47に記載の配列と異なっており、その結果、各々の変異体ヌクレオチド配列が、配列番号20、22、27、29、30、34、36、または38に記載の修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列とそれぞれ配列一致を有するポリペプチドをコードしているような、単離されたヌクレオチド配列を提供する。
【0084】
アミノ酸コード化配列は以下の通りである:
【0085】
g) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているRNA分子
本発明は、配列番号20−39に記載の修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしている、単離されたRNA分子を提供する。特に、本発明に係る、完全長または部分的mRNA分子、または修飾IMPDHポリペプチドをコードしているRNAオリゴマーが単離できる。このRNA分子は、天然に存在する分子として単離でき、または組換えDNA技術もしくは化学合成によって製造できる。本発明に係るRNA分子は、修飾IMPDHポリペプチドの全体または一部をコードしているヌクレオチド配列をそれぞれ包含する。本発明に係るRNA分子は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の検出のためのハイブリダイズする核酸プローブとして有用である。
【0086】
h) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている、標識した核酸分子
修飾IMPDHポリヌクレオチド配列を有する核酸分子は検出可能なマーカーで標識することができる。この標識化IMPDHポリヌクレオチド配列は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子の検出のためのハイブリダイズ可能な核酸プローブとして使用できる。検出可能なマーカーの例は、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤または酵素を包含するがこれらに限定されない。標識化DNAおよびRNAプローブを製造する技術は当分野でよく知られている(Sambrook, et al., 1989 上記)。
【0087】
i) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の変異体
本発明は、配列番号40−47に記載の配列とは異なる修飾impdhポリヌクレオチド配列を提供する。この変異体ポリヌクレオチド配列は、天然に存在する供給源から単離、または組換えDNA技術によって製造することができる。変異体ポリヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号20、22、27、29、30、34、36、または38に記載の修飾IMPDHポリペプチドをコードしている。
【0088】
この修飾impdhポリヌクレオチド配列は、置換トリまたはテトラペプチド領域に保存的または非保存的変化を有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしている。例えば、変異体impdhポリヌクレオチド配列は、置換オリゴペプチド領域に保存的アミノ酸変化、例えばロイシンからイソロイシンへの置換を有する修飾IMPDHポリペプチドの変異体をコードすることができる。別の態様では、impdhポリヌクレオチド変異体は非保存的変化、例えばグリシンからトリプトファンへの置換を有することができる。
【0089】
ポリヌクレオチド配列は、該ポリペプチドのコンホメーションまたは機能のいずれも変化させることなく保存的アミノ酸置換をコードすることができる。このような変化は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかをこれら疎水性アミノ酸のうち別のアミノ酸に;グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(E)に、そしてその逆;アスパラギン(N)をグルタミン(Q)に、そしてその逆;そしてスレオニン(T)をセリン(S)に、そしてその逆に置換することを包含する。特定のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造内でのその役割に応じて、その他の置換もまた保存的であると考えることができる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)はしばしば相互交換可能であり、アラニン(A)とバリン(Vもまた同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)はしばしばロイシンおよびイソロイシンと、そして時にバリンと交換できる。リジン(K)とアルギニン(R)はしばしば位置を交換でき、この場合、該アミノ酸残基の重要な特徴はその電荷であって、これら二つのアミノ酸残基のpKの相違は重要でない。特別な環境ではさらに別の変化も保存的と考えることができる。
【0090】
j) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている誘導体核酸分子
本発明に係る核酸分子はまた、ペプチド核酸(PNA)、または一本鎖DNAもしくはRNAと塩基対依存的様式で特異的に結合するホスホロチオアート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、およびメチルホスホナートといった誘導体分子を包含する(Zamecnik,P.C., et al., 1978 Proc.Natl.Acad.Sci. 75:280284;Goodchild,P.C., et al., 1986 Proc.Natl.Acad.Sci. 83:4143−4146)。
【0091】
PNA分子は、リジンのようなアミノ酸残基およびアミノ基が付加した核酸オリゴマーを含む。抗遺伝子物質とも呼称されるこれらの小分子は、核酸の相補的(鋳型)核酸鎖に結合することによって転写物の伸長を停止させる(Nielsen,P.E., et al., 1993 Anticancer Drug Des 8:53−63)。例えば、DNA、RNA、およびそれらの類似体の合成法についての総説は、Oligonucleotides and Analogues, eds. F.Eckstein, 1991, IRL Press, New York; Oligonucleotide Synthesis, ed. M.J.Gait, 1984, IRL Press, Oxford, Englandに見出すことができる。加えて、アンチセンスRNA技術のための方法は米国特許5194428および5110802に記載されている。当業者は本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を用いてこれらのクラスの核酸分子を容易に取得できる。例えばInnovative and Perspectives in Solid Phase Synthesis(1992) Egholm, et al. pp325−328または米国特許第5539082号を参照されたい。
【0092】
3. 修飾IMPDH配列を含む組換え核酸分子および宿主ベクター系
本発明は、修飾IMPDHポリペプチド配列またはその断片をコードしている組換え核酸分子、例えば組換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書中使用するrDNA分子とは、インビトロでの分子操作に付されたDNA分子である。rDNA分子の製造方法は当分野で周知であり、例えばSambrook et al., Molecular Cloning(1989)を参照されたく、その方法は修飾IMPDHポリペプチドの産生にとって有用である。
【0093】
本発明に係る核酸分子は、異なる配列に結合した修飾impdhポリヌクレオチド配列をそれぞれ含む組換え分子であってよい。例えば、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、組換えベクターを生成するためのベクターに機能的に結合していてよい。
【0094】
a) 修飾impdh配列を含むベクター
ベクターという語は、プラスミド、コスミド、およびファグミド(phagmid)を包含するがこれらに限定されない。自律的に複製するベクターは、典型的には、適当な宿主細胞内でのrDNAの複製を指令するレプリコンを含む核酸分子を指す。好ましいベクターはまた、発現調節要素、例えばプロモーター配列を含み、これは挿入された修飾impdhポリヌクレオチド配列の転写を可能にし、適当な宿主細胞、例えばE.coli中で機能的に結合した修飾IMPDH配列の発現(例えば、転写および/または翻訳)の調節に用いられる。原核生物発現調節要素は当分野で知られており、誘導的プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、転写ターミネーター、およびその他の転写調節要素を包含するがこれらに限定されない。翻訳に関与するその他の発現調節要素が当分野で知られており、シャイン−ダルガルノ配列、ならびに開始および停止コドンを包含する。
【0095】
好ましいベクターはさらに、薬物耐性、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシン耐性を付与する遺伝子産物をコードしている少なくとも1個の選択可能マーカー遺伝子を含む。典型的には、ベクターは、外因性DNA配列の都合良い挿入を可能にする複数のエンドヌクレアーゼ制限部位をも含む。
【0096】
好ましいベクターは、原核宿主細胞と共存可能な発現ベクターである。原核細胞発現ベクターは当分野で周知であり、幾つかの商業的供給源から入手できる。典型的な係るベクターはpET24a発現ベクターであって、これはE.coli中で外来遺伝子を発現するのに使用し、T7 RNAポリメラーゼ系を含み、そしてカナマイシン耐性を付与する(Novagen,Inc., Madison, WI)。
【0097】
a) 修飾impdh配列を含む融合遺伝子
融合遺伝子は、異なる配列と融合した修飾impdhポリヌクレオチド配列を含む組換え分子のもう一つの例である。例えば、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、発現された修飾IMPDHポリペプチドの単離および/または精製を容易にする隣接ヒスチジン残基をコードしているタグ配列と融合させることができる(Marshak,D.R., et al., 1996 in: Strategies for Protein Purification and Characterization pp396)。
【0098】
これに代わり、キメラ組換え分子は、それぞれ異なる供給源から単離したimpdh配列と結合した置換オリゴペプチドを含む。例えば、N末端触媒ドメインをコードしているポリヌクレオチド配列は、C末端ドメインをコードしているポリヌクレオチド配列とは異なる供給源からのものであってよい。IMPDHのNおよびC末端ドメインは、ヒト(Collart and Hubermann 1988 上記)、チャイニーズハムスター(Natsutmeda and Carr 1993 上記)もしくはその他の真核生物、または原核生物由来であってよい。
【0099】
B. 宿主−ベクター系
本明細書に開示する核酸分子を持っている宿主細胞もまた本発明によって提供する。本発明は、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしているヌクレオチド配列を含むベクター、プラスミド、ファグミド、またはコスミドを導入した適当な宿主細胞を含む宿主−ベクター系を提供する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞とすることができる。例えば、多くの商業的に入手し得るEscherichia coli菌株は、外来タンパク質の発現にとって特に有用である。好適な真核宿主細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、または動物細胞、例えば哺乳動物細胞を包含する。好ましい態様は、E.coli BL21(DE3)宿主細胞(Novagen)中に導入した修飾impdhポリヌクレオチド配列を含む、組換えNovagen pET24a(Novagen,Inc., Madison, WI)を含む宿主−ベクター系を提供し、これは例えば修飾IMPDHタンパク質の産生にとって有用である。
【0100】
本発明に係る組換えDNA分子は、典型的には使用ベクターおよび使用宿主系の型に依存する周知の方法によって適当な宿主細胞中に導入できる。例えば、典型的には電気穿孔および塩処理法による原核宿主細胞の形質転換を使用し、例えば、Cohen et al., Proc Acad Sci USA(1972) 69:2110; およびManiatis et al., (1989) in: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。rDNA、電気穿孔、カチオン性脂質または塩処理法を含む、ベクターによる脊椎動物細胞の形質転換を、典型的に使用する(Graham et al., 1973 Virology 52:456; Wigler et al., 1979 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1373−76)。
【0101】
組換えDNA分子により導入した細胞は周知の技術により同定できる。例えば、本発明に係るrDNAの導入から導かれた細胞をクローニングして、単一コロニーを生成できる。これらのコロニー由来の細胞を収穫し、溶菌し、それらのDNA内容を、Southern, J.Mol.Biol. (1975)98:503、またはBerent et al., Biotech. (1985) 3:208に記載のような方法を用いてrDNAの存在について調べるか、または該細胞の産生したタンパク質を免疫学的方法によって検定する。
【0102】
選択されたベクターは、細菌宿主細胞中で修飾IMPDHポリペプチドを発現および産生させるための発現ベクターとすることができる。例えば、容易に精製できる融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターは、多機能E.coliクローニングおよび発現ベクター、例えばBLUESCRIPT(Stratagene)[ここでは修飾IMPDHコード化配列を、アミノ末端Metおよびこれに続くβ−ガラクトシダーゼの7残基のための配列を有するベクターにフレーム内でライゲーションし、その結果ハイブリッドタンパク質が生成する];pINベクター(Van Heeke & Schuster 1989 J Biol Chem 264:5503−5509); などを包含するがこれらに限定される訳ではない。pGEXベクター(Promega, Madison Wis.)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着とその後の遊離グルタチオン存在下での溶離によって、溶菌した細胞から容易に精製することができる。このような系で製造するタンパク質は、ヘパリン、トロンビンまたは第XA因子プロテアーゼ開裂部位を含むよう設計し、その結果、目的とするクローンポリペプチドはGST部分から随意に放出され得る。
【0103】
Saccharomyces cerevisiaeのような酵母宿主細胞では、構成的または誘導的プロモーター、例えばβ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含む幾つかのベクターが使用できる。総説として、F.Ausubel et al., 1989 in: Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York N.Y.およびGrant et al., 1989 Methods in Enzymology 153:516−544を参照されたい。
【0104】
植物発現ベクターを使用する場合、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている配列の発現は幾つかのプロモーターのうちいずれかによって駆動できる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウイルスプロモーター(Brisson et al., 1984 Nature 310:511−514)を、単独またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用できる(Takamatsu et al., 1987 EMBO J.6:307−311)。別法として、RUBISCOの小サブユニット(Coruzzi et al., 1984 EMBO J 3:1671−1680; Broglie et al., 1984 Science 224:838−843)のような植物プロモーター;または熱ショックプロモーター(Winter,J. and Sinibaldi,R.M. 1991 Results Probl.Cell.Differ. 17:85−105)が使用できる。これらの組み立て物は直接DNA形質転換または病原体仲介トランスフェクションにより植物細胞に導入できる。係る技術の総説については、Hobbs,S.またはMurry L E in: McGraw Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill New York N.Y., pp191−196またはWeissbach and Weissbach (1988) Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, New York N.Y., pp421−463を参照されたい。
【0105】
修飾IMPDHポリペプチドの発現に使用できる別の発現系は昆虫系である。このような系の1つでは、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫で外来遺伝子を発現させる。修飾IMPDHコード化配列をこのウイルスの非必須領域、例えばポリヘドリン遺伝子中にクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの調節下に置くことができる。impdhヌクレオチド配列は、うまく挿入されるとこのポリヘドリン遺伝子を不活性とし、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを産生する。次いでこの組換えウイルスを用いてS.frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫を感染させ、そこで修飾IMPDHポリペプチドが発現される(Smith et al., 1983 J Virol 46:584; Engelhard,E.K. et al., 1994 Proc Nat Acad Sci 91:3224−7)。
【0106】
哺乳動物宿主細胞では幾つかのウイルスに基づく発現系を利用できる。発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、修飾impdhコード化配列を、アデノウイルス後期プロモーター(例えば転写のための)および三部分リーダー配列(例えば翻訳のための)を含むアデノウイルスベクターと機能的に結合できる。このウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入は、感染した宿主細胞において修飾IMPDHを発現できる、利用可能なウイルスを導く(Logan and Shenk 1984 Proc Natl Acad Sci 81:3655−59)。加えて、転写エンハンサー、例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーを使用して哺乳動物宿主細胞での発現を増大させることができる。
【0107】
修飾impdh配列の有効な翻訳には特異的開始シグナルもまた必要であるかも知れない。これらのシグナルはATG開始コドンと隣接配列を包含する。修飾impdh開始コドンと上流配列を適当な発現ベクター中に挿入する場合、さらなる翻訳調節シグナルは必要ない。しかしながら、コード化配列またはその一部分のみを挿入する場合、ATG開始コドンを包含する外因性転写調節シグナルを供給する必要がある。さらに、この開始コドンは、挿入物全体の転写を確実とするために正しいリーディングフレームになければならない。外因性転写要素と開始コドンは、天然および合成両者の様々な起源であってよい。発現の効率は使用する細胞系にとって適切なエンハンサーを包含させることにより、増強できる(Scharf,D. et al., 1994 Results Probl Cell Differ 20:125−62; Bittner et al., 1987 Methods in Enzymol 153:516−544)。
【0108】
加えて、宿主細胞菌株は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現されたタンパク質を所望のやり方でプロセシングする能力について選択できる。ポリペプチドのこのような修飾は、アセチル化、カルボキシ化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化を包含するがこれらに限定されない。正しい挿入、折り畳みおよび/または機能のためには、「プレプロ」型のタンパク質を開裂する翻訳後プロセシングもまた重要である。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などといった異なる宿主細胞は、特異的細胞機構およびこのような翻訳後活性のための特徴的メカニズムを持っており、導入された外来タンパク質の正しい修飾とプロセシングを確実にするよう選択することができる。
【0109】
組換えタンパク質の長期高収量産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、修飾IMPDHを安定に発現するセルラインは、ウイルス複製起点または内因性発現要素および選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを用いて形質転換できる。このベクターの導入後、細胞を強化培地で1−2日間増殖させ、その後これを選択培地に交換する。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、その存在が、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖と回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性細菌塊を、その細胞型にとって適切な組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0110】
形質転換されたセルラインを回収するため数多くの選択系を使用できる。これらには、tk−マイナスまたはaprt−マイナス細胞でそれぞれ使用できる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,M. et al., 1977 Cell 11:223−32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,I. et al., 1980 Cell 22:817−23)遺伝子が包含されるがこれらに限定される訳ではない。また、抗代謝産物、抗生物質または除草剤耐性、例えばメソトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler,M. et al., 1980 Proc Natl Acad Sci 77:3567−70); アミノグリコシドネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与するnpt(Colbere−Garapin,F. et al., 1981 J Mol Biol 150:1−14)およびクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性をそれぞれ付与するalsまたはpatも選択の基礎に使用できる。さらなる選択遺伝子、例えば細胞に、トリプトファンの代わりにインドールを利用させるtrpB、または細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用させるhisD(Hartman,S.C. and R.C.Mulligan 1988 Proc Natl Acad Sci 85:8047−51)が記載されている。近年、可視マーカーの使用が人気を集めており、アントシアニン、β−グルクロニダーゼとその基質GUS、ならびにルシフェラーゼとその基質ルシフェリンのようなマーカーが、形質転換体の同定のためのみならず、特定のベクター系に帰すことのできる一過性または安定なタンパク質発現の量を定量するために広く使用されている(Rhodes,C.A., et al., 1995 Methods Mol Biol 55:121−131)。
【0111】
C. 修飾IMPDHポリペプチドの製造のための方法
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は組換え法または化学合成法によって製造できる。
【0112】
高収量を望むならば組換え法が好ましい。一般に、組換え修飾IMPDHポリペプチドの産生は宿主/ベクター系の使用を含み、これは典型的には以下の工程を含む。まず、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしている核酸分子、例えば配列番号40−47に開示のポリヌクレオチド配列または上に記載した配列変異体のいずれか1つを入手する。次にこの修飾IMPDHコード化核酸分子を、好ましくは上記の適当な発現調節配列と機能的に結合させて発現ベクター中に挿入し、修飾IMPDHコード化配列を含む組換え発現ベクターを作製する。次いでこの発現ベクターを標準的形質転換法によって適当な宿主中に導入し、得られた形質転換宿主を、修飾IMPDHポリペプチドのインビボ産生を可能にする条件の下で培養する。例えば、修飾impdh遺伝子の発現が誘導的プロモーターの調節下にあるならば、好適な増殖条件は適当なインデューサーを包含する。組換えベクターは修飾impdh配列を宿主ゲノム中に組み込むことができる。別法として、組換えベクターはこの修飾impdh配列を、自律的に複製するベクターの一部として染色体外に維持することができる。このように生成された修飾IMPDHポリペプチドを増殖培地からまたは細胞から直接単離するが、幾らかの不純物を寛容できる場合は、該タンパク質の回収および精製は必要ないかも知れない。当業者は、当分野で既知の適当な宿主/発現系を、修飾IMPDHポリペプチドを製造するための修飾IMPDHコード化配列と共に使用するため、容易に適合させることができる(Cohen et al., 1972 Proc.Acad.Sci.USA 69:2110; およびManiatis et al., 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)。様々なタンパク質精製法の例をStrategies for Protein Purification and Characterization (1996) pp396, Marshak,D.R., et al.に見出すことができる。或る態様は、アニオン交換クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)、色素親和クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)、IMP親和クロマトグラフィー(Ikegami,T., et al., 1987, Life Sciences 40:2277−2282)、およびゲル透過クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)を包含する3種類までの一連のクロマトグラフィー法を使用して精製した修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0113】
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは化学合成により製造することもできる。ポリペプチドの固相化学合成の原理は当分野で周知であり、この領域に関する一般教科書に見出すことができる(Dugas,H. and Penney,C. 1981 in: Bioorganic Chemistry, Springer−Verlag, New York, pp54−92)。修飾IMPDHポリペプチドは、Applied Biosystems 430Aペプチド合成機(Applied Biosystems, Foster City, Calif.)およびApplied Biosystemsの供給する合成サイクルを利用する固相法により合成できる。保護アミノ酸、例えばt−ブトキシカルボニル保護アミノ酸、およびその他の試薬は多くの化学薬品供給会社から商業的に入手できる。
【0114】
C. 修飾IMPDHポリペプチドの用途
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは、抗体産生を導く能力としての用途、疾病の診断および/または予後マーカー、ならびにさらに下に記載する種々の治療様式のための標的としての用途を包含する(但しこれらに限定されない)様々な目的に役立つ。修飾IMPDHポリペプチドはさらに、修飾IMPDHに結合するリガンドおよびその他の物質の同定および単離にも有用である。修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、標準ペプチド合成技術または組換えDNA技術を用いて製造できる。
【0115】
1. 修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合する抗体
本発明に係るペプチドは、修飾IMPDHポリペプチドの性質、例えば修飾されたおよび/または野生型IMPDHポリペプチドの種々のドメインに付随するエピトープに特異的に結合する抗体の生成を導く能力を示す。これらの抗体は修飾IMPDHポリペプチドを発現する細胞を同定および/または標的化するために使用できる。例えば、これらの抗体を使用して、IMPDH活性を調節するため、または野生型もしくはその他の形のIMPDHを発現する細胞を直接殺滅するために、野生型またはその他の形のIMPDHを発現する細胞に対するコンジュゲートした毒素をデリバリーすることができる。このコンジュゲートした毒素には、ジフテリア毒素、コレラ毒素、リシンまたはシュードモナス外毒素が包含されるがこれらに限定されない。これに代わり、これらの抗体を用いて、野生型IMPDHまたは修飾IMPDHポリペプチド/多量体と相互作用する物質を同定できる。これらの抗体はさらに、競合的結合物質を同定するスクリーニング検定に使用できる。
【0116】
本発明は、修飾および/または野生型IMPDHポリペプチドに結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、免疫学的に活性な断片、およびヒト化抗体)を提供する。最も好ましい抗体は特定の修飾IMPDHポリペプチドに選択的に結合し、異なる修飾IMPDHポリペプチド、または修飾IMPDHポリペプチドでないポリペプチドには結合しない(または弱く結合する)であろう。特に企図される抗体は、抗原結合ドメインおよび/またはこれらの抗体の1もしくはそれ以上の相補性決定領域を含む、モノクローナルおよびポリクローナル抗体ならびにそれらの断片(例えば組換えタンパク質)を包含する。これらの抗体は任意の供給源、例えばウサギ、羊、ラット、イヌ、ネコ、豚、馬、マウス、およびヒトからのものであってよい。
【0117】
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片を特異的に認識する抗体断片を包含する。本明細書中使用する抗体断片とは、標的に結合する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部、即ち抗原結合領域として定義する。免疫グロブリンの定常領域の幾らかが包含されるかも知れない。
【0118】
当業者には理解できるであろうが、抗体が標的とする修飾IMPDHポリペプチドの領域またはエピトープは、意図する適応によって変わる。他のエピトープを認識する抗体は、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片の膜結合型または分泌型を検出するために、損傷を受けたまたは死にかかっている細胞上またはその内部で修飾IMPDHポリペプチドを同定するために役立つかも知れない。
【0119】
抗体製造のための種々の方法が当分野で良く知られている。例えば、単離されたまたは免疫コンジュゲートした形の修飾IMPDHポリペプチドまたは断片を用いて適当な哺乳動物宿主を免疫することにより、抗体を製造できる(Harlow,E. and Lane,D. 1989 in: Antibodies: a Laboratory Manual)。加えて、修飾IMPDHポリペプチドを含む融合タンパク質、例えば修飾IMPDHポリペプチド/GST融合タンパク質を使用することもできる。修飾IMPDHポリペプチドを発現または過剰発現する細胞を免疫に使用することもできる。同様に、修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう操作した任意の細胞を使用できる。この戦略は、内因性修飾IMPDHポリペプチドを認識する能力の増強したモノクローナル抗体の産生を導き得る。
【0120】
本発明は、異なる種由来の少なくとも二つの抗体部分、例えばヒトおよび非ヒト部分を含むキメラ抗体を企図する。キメラ抗体は、非ヒト定常領域および可変領域を持つ抗体よりもヒト対象に対して抗原性がより低い傾向があるため、有用である。キメラ抗体の抗原結合領域(可変領域)はヒトから誘導し、免疫グロブリンに生物学的エフェクター機能を付与するキメラ抗体の定常領域は非ヒト供給源から誘導できる。キメラ抗体は、原核生物抗体分子の抗原結合特異性、および真核生物抗体分子により付与されたエフェクター機能を持たねばならない。
【0121】
一般に、キメラ抗体の製造に用いる方法は以下の工程を含み得る:
a) 抗体分子の抗原結合部分をコードしている正しい免疫グロブリン遺伝子セグメントを同定およびクローニングし[この遺伝子セグメント(重鎖についてはVDJ、可変、変化および結合領域、または軽鎖についてはVJ、可変、結合領域、または単にVもしくは可変領域として知られる)はcDNAまたはゲノム型のいずれであってもよい];
b) 定常領域またはその所望部分をコードしている遺伝子セグメントをクローニングし;
c) 転写および翻訳され得るような形で完全なキメラ抗体がコードされるよう、可変領域を定常領域とライゲーションし;
d) この組み立て物を、選択マーカーおよび遺伝子調節領域、例えばプロモーター、エンハンサーおよびポリ(A)付加シグナルを含むベクター中にライゲーションし;
e) この組み立て物を細菌中で増幅し;
f) このDNAを真核細胞、最も普通には哺乳動物リンパ球中に導入(トランスフェクション)し;
g) 選択マーカーを発現している細胞を選択し;
h) 所望のキメラ抗体を発現している細胞をスクリーニングし;そして、
k) この抗体を適当な結合特異性およびエフェクター機能について試験する。
【0122】
抗TNP抗体(Boulianne et al., 1984 Nature 312:643);および抗腫瘍抗原抗体(Sahagan et al., 1986 J.Immunol. 137:1066)を包含する幾つかの明瞭な抗原結合特異性を持つキメラ抗体が、当分野で周知のプロトコルによって製造されている。同様に、幾つかの異なるエフェクター機能が、抗原結合領域をコードしている配列に新たな配列を結合させることによって達成された。これらの例には、酵素(Neuberger et al., 1984 Nature 312:604);別の種由来の免疫グロブリン定常領域および別の免疫グロブリン鎖の定常領域(Sharon et al., 1984 Nature 309:364; Tan et al., 1985 J.Immunol. 135:3565−3567)が包含される。加えて、遺伝子修飾を目的としてホモローガス組換えを用いる、抗体分子を修飾するための、およびキメラ抗体分子を製造するための方法が記載されている(Fell et al., 1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8507−8511)。
【0123】
修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を用いて、抗体産生用の修飾IMPDHポリペプチドの特定の領域を選択できる。例えば、修飾IMPDHポリペプチドの疎水性および親水性分析を用いて、修飾IMPDHポリペプチドの親水性領域を同定できる。免疫原性構造を示す修飾IMPDHポリペプチドの領域ならびにその他の領域およびドメインは、当分野で既知の様々なその他の方法(Rost,B., and Sander,C. 1994 Protein 19:55−72)、例えばChou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−SchultzまたはJameson−Wolf分析を用いて容易に同定できる。これらの残基を含む断片は特定クラスの抗体を作製するのにとりわけ好適である。
【0124】
免疫原として使用するタンパク質を製造するための、そして、担体、例えばBSA、KLHまたはその他の担体タンパク質とタンパク質の免疫原性コンジュゲートを製造するための方法は、当分野でよく知られている。幾つかの状況では、例えばカルボジイミド試薬を使用する直接コンジュゲーションが使用でき、別の例ではPierce Chemical Co., Rockford,ILの供給するような結合試薬が有効となり得る。修飾IMPDH免疫原の投与は、一般に当分野で理解されているように、適当な期間にわたる注射によって、且つ適当なアジュバントを使用して実施する。免疫スケジュールの間、抗体価を測定して抗体形成の妥当性を決定する。
【0125】
このようにして生成したポリクローナル抗血清は幾つかの適応にとっては満足できるものであるが、医薬組成物用にはモノクローナル抗体調製物が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化セルラインを、KohlerとMilsteinの標準法(Nature 256:495−497)またはMonoclonal Antibodies; A Manual of Techniques, CRC press,Inc., Boca Raton, Fla.(1987) ed., Zolaに記載のその他の技術を用いて製造できる。所望の抗体を分泌する不死化セルラインを、抗原が修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片であるイムノアッセイによりスクリーニングする。所望の抗体を分泌する適当な不死化細胞培養を同定したならば、この細胞をインビトロで、または腹水中での産生によって培養することができる。
【0126】
次にこの所望のモノクローナル抗体を培養上清または腹水上清から回収する。免疫学的に重要な部分(即ち、修飾IMPDHポリペプチドを認識および結合する部分)を含む本発明に係るモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv断片、融合タンパク質)は、アンタゴニストおよび無傷の抗体として使用できる。修飾IMPDHポリペプチドに対するヒト化抗体もまた有用である。本明細書中使用するヒト化抗体とは、修飾IMPDHポリペプチドと結合でき、且つ、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質上有するFR領域および非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質上有するCDRを含む、免疫グロブリン分子、または、修飾IMPDHポリペプチドに結合するよう操作した配列である。1またはそれ以上の非ヒト抗体CDRを、対応するヒト抗体配列に置換することによる、マウスおよびその他の非ヒト抗体をヒト化する方法は、よく知られている(例えば、Jones et al., 1986 Nature 321:522−525; Riechmnan et al., 1988 Nature 332:323−327; Verhoeyen et al., 1988 Science 239: 1534−1536; Carter et al., 1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285;およびSims et al., 1993 J.Immunol. 151:2296を参照されたい)。
【0127】
免疫学的反応性断片、例えばFab、Fab’、またはF(ab’)2断片は一般に免疫グロブリン全体より免疫原性が低いため、これらの使用が、特に治療的場面では好ましい。さらに、2またはそれ以上のエピトープに特異的な二重特異性抗体を、当分野で一般に知られている方法を用いて作製できる。また、抗体エフェクター機能を、本発明に係る抗体の治療効果を増強するように修飾することができる。例えば、システイン残基をFc領域中に導入し、鎖間ジスルフィド結合の形成と、ホモ二量体(これは、インターナライゼーション、ADCCおよび/または補体仲介細胞殺滅の増強能力を有し得る)の作製をさせることができる(例えば、Caron et al., 1992 J.Exp.Med. 176:1191−1195; Shopes, 1992 J.Immunol. 148:2918−2922; Liu et al., 1998 Cancer Research 58:4055−4060を参照されたい)。ホモ二量体抗体は当分野で既知の架橋技術によって作製することもできる(例えば、Wolff et al., Cancer Res. 53:2560−2565)。本発明はさらに、本発明に係るモノクローナル抗体または抗イディオタイプモノクローナル抗体を有する医薬組成物を提供する。
【0128】
この抗体または断片は組換え手段により現行技術を用いて製造できる。修飾IMPDHポリペプチドの所望領域に特異的に結合する領域はさらに、複数の種の起源を持つキメラまたはCDR移植された抗体との関連で作製できる。本発明は、抗体、例えば修飾IMPDHポリペプチドに対する本発明に係る任意のモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合阻害するモノクローナル抗体を包含する。
【0129】
これとは別に、ファージディスプレーおよびトランスジェニック法を包含する、完全なヒトモノクローナル抗体を作製する方法が知られており、ヒトmAbの作製に使用できる(総説として、Vaughan et al., 1998 Nature Biotechnology 16:535−539を参照されたい)。例えば、完全なヒトモノクローナル抗体は、大きなヒトIg遺伝子組み合わせライブラリー(即ちファージディスプレー)を使用するクローニング技術を用いて作製できる(Griffiths and Hoogenboom, ”Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libralies” in: Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man, Clark,M.(Ed.), Nottingham Academic, pp45−64(1993); Burton and Barbas, ”Human Antibodies from combinatorial libraries” 同上, pp65−82)。完全なヒトモノクローナル抗体はまた、PCT特許出願WO98/24893、Jakobovits et al.(1997年12月3日公開)に記載の、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むよう操作されたトランスジェニックマウスを用いて作製できる(Jokobovits, 1998, Exp.Opin.Invest.Drugs 7:607−614をも参照されたい)。この方法は、ファージディスプレー技術に必要なインビトロ操作を回避し、真正の高親和性ヒト抗体を効率的に生成する。
【0130】
本発明に係る抗体またはその断片は、検出可能なマーカーで標識し、または第二の分子、例えば治療物質(例えば細胞毒性物質)とコンジュゲートさせ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる。例えばこの治療物質は、抗腫瘍薬、毒素、放射性物質、サイトカイン、第二の抗体または酵素を包含するがこれらに限定されない。さらに本発明は、本発明に係る抗体を、プロドラッグを細胞毒性薬へと変換する酵素に結合させる態様を提供する。
【0131】
細胞毒性物質の例は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロミド、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レツトリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、キュリシン、クロチン、カリキアミシン、sapaonaria officinalisインヒビター、メイタンシノイド、グルココルチコイドおよびその他の化学療法物質、ならびに212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reといったラジオアイソトープを包含するが、これらに限定される訳ではない。好適な検出可能マーカーは、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤または酵素を包含するがこれらに限定されない。抗体はさらに、プロドラッグをその活性型に変換することのできる、細胞殺滅または阻害プロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートさせることができる。例えば米国特許第4952394および5632999号を参照されたい。
【0132】
加えて、本発明に係るモノクローナル抗体のいずれかの抗原結合領域を含む、本発明に係る組換えタンパク質を作製できる。係る状況では、組換えタンパク質の抗原結合領域を、治療活性を持つ第二のタンパク質の、少なくとも機能的に活性な一部分と結合させる。この第二のタンパク質は、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素を包含できるがこれらに限定されない。好適な毒素は上記のものを包含する。
【0133】
治療物質を抗体にコンジュゲートまたは結合させる技術はよく知られている(例えば、Amon et al., ”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp243−56 (Alan R.Liss,Inc. 1985); Hellstrom et al., ”Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp623−53 (Marcel Dekker,Inc. 1987); Thorpe, ”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.), pp475−506(1985); およびThorpe et al., ”The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”, Immunol.Rev., 62:119−58(1982)を参照されたい)。
【0134】
2. 修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合する抗体の用途
本発明に係る修飾IMPDH抗体は、診断検定、画像化法、および癌またはその他の増殖型疾患の管理における治療法にとりわけ有用となり得る。このような検定は一般に、修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合することのできる1またはそれ以上の抗体を含み、様々な型の沈殿、凝集、補体固定、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)、酵素結合免疫蛍光検定(ELIFA)(Liu,H. et al. 1998 Cancer Research 58:4055−4060)、免疫組織化学検定などを包含する(但しこれらに限定されない)当分野で周知の様々な免疫学的検定フォーマットを包含する。
【0135】
本発明に係る抗体はさらに、修飾IMPDHポリペプチドを精製するための、そして野生型および突然変異体IMPDHポリペプチドのような関連分子を単離するための方法に使用できる。
【0136】
例えば或る態様では、タンパク質を精製するこの方法は、固体マトリックスに結合させてある修飾IMPDH抗体を、IMPDH抗体をIMPDHポリペプチドに結合させる条件下で、IMPDHを含有する溶菌液またはその他の溶液とインキュベートし;この固体マトリックスを洗浄して不純物を取り除き;そして結合した抗体からIMPDHポリペプチドを溶離させることを含む。さらにIMPDH抗体は、細胞選別および精製技術を用いてIMPDH陽性細胞を単離するために使用できる。罹患細胞上のIMPDHポリペプチドの存在および量(単独または他の細胞表面マーカーと組合わさっている)を使用して、罹患細胞を他の細胞から識別、単離することができる。
【0137】
3. 修飾IMPDHポリペプチドを発現する細胞
組織培養中で、または動物モデル(例えば、SCIDまたはその他の免疫不全マウス)の異種移植片として増殖させ得る大量の比較的純粋な修飾IMPDH陽性細胞を生成する能力は、例えば比較的均質な疾患細胞集団の増殖またはその他の表現型性質に関する様々なトランスジーンまたは治療用候補化合物の評価を包含する、多くの利点を提供する。加えて、本発明の特徴は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子の高度濃縮調製物の単離をも可能にし;その核酸分子は様々な分子操作にとって充分な量で濃縮され得る。例えば、このような大量の核酸分子調製物は、IMPDH関連疾患の進行に生物学的関連性を持つ稀少遺伝子の同定を助けるであろう。
【0138】
本発明のこの態様のもう一つの貴重な適応は、原発性または局所で進行したまたは転移性疾患を持つ患者からクローニングした修飾IMPDH陽性の生存腫瘍細胞の比較的純粋な調製物を単離し、分析し、そして実験する能力である。このようにして、例えば修飾IMPDH陽性である患者の罹患細胞を、限られた生検試料から拡大し、次いで、診断および予後判定遺伝子、タンパク質、染色体異常、遺伝子発現プロファイル、またはその他の関連する遺伝子型および表現型の性質の存在について、混乱を招くかも知れない混入細胞という変数なしに試験することができる。加えて、このような細胞は、動物モデルにおいて新生物の攻撃性および転移可能性について評価できる。同様に、ワクチンおよび細胞免疫療法剤をこのような細胞調製物から作り出すことができる。
【0139】
免疫学的に反応性の断片、例えばFab、Fab’、またはF(ab’)2断片は、一般に免疫グロブリン全体よりも免疫原性が低いため、これらの断片は特に治療的状況においてしばしば好ましい。本発明はさらに、本発明に係るモノクローナル抗体または抗イディオタイプモノクローナル抗体を有する医薬組成物を提供する。
【0140】
3. 薬物発見戦略における修飾IMPDHポリペプチドの用途
a) 標的ポリペプチドとしての修飾IMPDHの用途
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは、構造に基づく薬品設計戦略の出発点として有用である。これらの戦略には、標的ポリペプチドまたはタンパク質、例えば修飾IMPDHポリペプチドと、この標的ポリペプチドに結合する物質との相互作用についての情報を使用することが含まれる。典型的には、係る薬品設計戦略の目標は、標的ポリペプチドに結合し、その標的ポリペプチドの活性を調節する、例えば標的ポリペプチドの活性化または阻害を行う物質または物質群を同定することである。もう一つの目標は、例えば標的ポリペプチドについての増大した結合親和性、または標的ポリペプチドについての増大した選択性、または哺乳動物対象(例えば人間の患者)への投与に対する増大した適合性といったような改善された性質を持つ治療物質を開発するために、同定された物質を変化させることである。これらの物質は、IMPDHタンパク質の、細胞による異常な発現に関連する苦痛、例えば免疫系疾患を治療するために役立ち得る。
【0141】
構造に基づく薬品設計戦略は、該物質と複合体形成した標的ポリペプチドの三次元構造についての情報の使用を含み得る。例えば、インヒビターと複合体形成した標的ポリペプチドのX線結晶構造の解析は、該物質と相互作用するそして/または結合する標的ポリペプチド内部の特異的アミノ酸残基についての情報を提供できる。さらに、目的とする野生型タンパク質の機能的活性を示す標的ポリペプチドの結晶構造を得ることは有利である。しばしばこの物質はかなり小さく、故に、技術的な難題は、該物質と複合体形成した機能的に活性な標的ポリペプチドの結晶構造を、該物質および標的ポリペプチドとのその相互作用を解析するに充分高い分析レベルで取得することである。
【0142】
本発明は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、MPAと複合体形成した機能的に活性なIMPDH多量体のタンパク質結晶構造を、過去に他の研究者が取得した、MPAに結合した野生型IMPDHの結晶構造に比してより高い分析レベルで取得するのに有用であるという発見を提供する。特に本発明は、修飾ヒトII型IMPDH−DKTの4個のサブユニットを含み1分子のMPAと複合体形成した、ホモ多量体の結晶構造が、2.0オングストロームレベルで解析されたという発見を提供する。対照的に、MPAと複合体形成したチャイニーズハムスター由来の野生型IMPDHのホモ多量体の結晶構造は、M.D.Sintchak, et al (1996 Cell 85:921−930)により2.6オングストロームレベルで解析されている。
【0143】
修飾IMPDH−DKTを含むホモ多量体のより高い解析レベルは、各々の修飾IMPDH−DKTポリペプチドが野生型IMPDHポリペプチドよりも短いという事実によるものである。特に、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、133アミノ酸残基長であるサブドメイン領域の一部が、より短い置換DKTトリペプチド(例えば一文字アミノ酸コード)で置換されている。したがって、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、514アミノ酸残基長である野生型II型IMPDH(図2)に比してわずか384アミノ酸残基長(図4)である。さらに、修飾IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHの機能的活性(例えば、NADH産生を触媒する)を示し、MPAに結合する。したがって、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、修飾IMPDH−DKTおよび野生型IMPDHに結合する物質を発見するための、構造に基づく薬品設計戦略における使用にとって理想的な候補標的ポリペプチドである。
【0144】
b) 修飾IMPDHに結合する物質を検出および同定する方法
本発明はさらに、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよび/または多量体と相互作用する物質を検出および同定する方法を提供する。本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用する物質は、修飾IMPDH多量体の活性に変化、例えば阻害または刺激を惹起してもしなくてもよい。したがって、本発明の一つの態様は、修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用する物質を同定する方法を提供する。さらなる態様は、修飾IMPDH多量体の活性に影響を及ぼす物質、例えばアゴニストおよびアンタゴニストを同定する方法を提供する。
【0145】
修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用し、またはこれに結合する候補物質を同定する一般法は以下の工程を含む。修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体を候補物質と接触させ、接触させた修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体を、当該修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を起こす条件の下でインキュベートし、そしてこの修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を、任意の適当な手段によって検出する。これらの方法はインビボまたはインビトロで実施できる。加えて、これらの方法はPANDEX.RTM(Baxter−Dade Diagnostics)系のような自動化法に適合させ、候補物質の効率的な大容量スクリーニングを可能にすることができる。
【0146】
本発明方法で使用できる修飾IMPDHポリペプチドは、単離した修飾IMPDHポリペプチド、修飾IMPDHポリペプチドの断片、修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう改変した細胞、または修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう改変した細胞の画分を包含するが、これらに限定される訳ではない。これらの修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は互いに結合して多量体を形成する。
【0147】
修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を同定および検出するインビトロ法は、ゲル遅延検定、免疫検出を包含し、バイオチップ技術を修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と共に使用するために採用できる。その他の方法には、蛍光滴定(Freifelder,D., 1982 in: Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., San Francisco, CA)および滴定熱量測定(Wiseman,T., et al., 1989, Anal.Biochem. 179:131−137)が包含される。インビトロ法はさらに、プロテアーゼに対するタンパク質の感受性を監視することによって、または折り畳まれた状態のタンパク質に対する特異抗体によるタンパク質の結合、もしくはシャペロンタンパク質への結合、もしくは任意の適当な表面への結合のし易さを監視することによって、折り畳まれていないタンパク質に対する折り畳まれたタンパク質の比率を監視することを包含する(米国特許第5585277号)。当業者は、或る特定の物質が修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体に結合するかどうかを決定するため、当分野で既知の多数の技術を容易に使用することができる。
【0148】
これに代わり、候補物質と修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体との相互作用を同定および検出するインビボ法を、酵母二ハイブリッド系を用いて全細胞検定で実施できる(Fields,S. and Song,O. 1989 Nature 340:245−246)。酵母二ハイブリッド系を使用して、修飾IMPDHポリペプチドと相互作用/結合するリガンドについて、cDNA発現ライブラリー(G.J.Hannon, et al. 1993 Genes and Dev. 7:2378−2391)、ランダムアプトマーライブラリー(J.P.Manfredi, et al. 1996 Molec.And Cell.Biol. 16:4700−4709)、またはセミランダム(M.Yang, et al. 1995 Nucleic Acids Res. 23:1152−1156)アプトマーライブラリーをスクリーニングできる。修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と該物質との相互作用/結合は、リポーター遺伝子、例えばlacZの発現によって検出可能である。
【0149】
該物質は、例えば典型的にはポリペプチド、核酸分子、有機分子、ビタミン誘導体、または金属であるリガンドである。当業者は、このスクリーニング法に使用する物質の構造的性質に制限のないことが容易に理解できるであろう。該物質は合成のまたは天然に存在する化合物、例えば細胞成分であってよい。本発明方法において試験される細胞抽出物は、例えば細胞または組織の水性抽出物、細胞または組織の有機抽出物、または部分精製された細胞画分であってよい。
【0150】
このポリペプチド物質は、当分野で知られているように、標準的固相または溶液相ペプチド合成法を用いて作製できる。さらに、これらのペプチドをコードしている核酸分子が、標準的組換えDNA技術を用いて作製でき、または市販のオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成できる。
【0151】
該ポリペプチド物質のアミノ酸配列は、修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体の構造に基づいて選択できる。小さなポリペプチドは、修飾IMPDH多量体への修飾IMPDHポリペプチドの組み立ての競合的インヒビターとしても働き得る。
【0152】
抗体物質は、修飾IMPDHポリペプチドの選ばれたドメインまたは領域と免疫反応性であり得る。一般に、該抗体が標的とするよう意図された修飾IMPDHポリペプチドの一部を抗原性領域として含むペプチドで適当な哺乳動物対象を免疫することにより、抗体が得られる。
【0153】
上記の方法で検定した物質を、無作為に選択、または合理的に選択または設計できる。本明細書での使用において、或る物質を修飾IMPDHポリペプチドの特定の配列を考慮せずに無作為に選択する場合、この物質を無作為に選択する、と言う。無作為に選択した物質の例は、化学ライブラリーまたはペプチド組み合わせライブラリー、または生物もしくは植物抽出物の成長ブロスの使用である。
【0154】
本明細書での使用において、或る物質を、標的ポリペプチドの配列および/または標的ポリペプチドのコンホメーションを考慮して非無作為的基準で選択する場合、この物質を合理的に選択または設計する、と言う。修飾IMPDHポリペプチドを作り上げるアミノ酸配列を利用することにより、物質は合理的に選択または合理的に設計できる。
【0155】
修飾IMPDH多量体と相互作用する物質を、無細胞検定系または細胞検定系を用いて、修飾IMPDH多量体の機能的活性を調節する能力について試験することができる。例えば、修飾IMPDH多量体と相互作用する物質は、野生型IMPDH多量体またはホロ酵素と比較したNADHの産生レベルの相対変化によって検出したところ、NADからNADHへの触媒的変換を阻害または増大させることができる(Carr,S.F., et al., 1993 上記;Xiang,B., et al., 1996 上記)。
【0156】
本明細書で使用する場合、或る物質が修飾IMPDH多量体の活性を低下させる、例えば生成するNADHのレベルを低下させる場合、その物質は修飾IMPDH多量体の活性に拮抗する、と言う。好ましいアンタゴニストは、他のいかなる細胞タンパク質または多量体にも影響を及ぼさずに、修飾IMPDH多量体と選択的に拮抗する。さらに、好ましいアンタゴニストは、修飾IMPDH多量体の活性を50%以上、より好ましくは90%以上低下させ、最も好ましくは修飾IMPDH多量体の全活性を除去する。
【0157】
本明細書で使用する場合、或る物質が修飾IMPDH多量体の活性を増大させる、例えば生成したNADHのレベルを増大させる場合、その物質は修飾IMPDH多量体の活性をアゴナイズする、と言う。好ましいアゴニストは、他のいかなる細胞タンパク質または多量体にも影響を及ぼさずに、修飾IMPDH多量体を選択的にアゴナイズする。さらに、好ましいアゴニストは、修飾IMPDH多量体の活性を50%以上、より好ましくは90%以上増大させ、最も好ましくは修飾IMPDH多量体の活性を倍増する。
【0158】
3. 修飾IMPDHポリペプチドの診断用途
修飾IMPDHポリペプチドには多数の診断用途がある。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、動物または人間対象のような対象において、異常な量のIMPDHポリペプチドまたはタンパク質の存在に関連する疾病または異常を診断する方法を提供する。或る態様では、この方法は、本発明に係る抗体のいずれか1つまたはその組み合わせを用いて、適当な生物学的被験試料中のIMPDHタンパク質の量を定量的に決定することを含む。次いで、このように決定された被験試料中のIMPDHタンパク質の量を、正常量のIMPDHタンパク質を持つ対象由来の生体試料中の量と比較できる。正常試料由来の量と比較して、測定可能なほど相違する量のIMPDHが被験試料中に存在しているということが、当該疾病の存在を示し得る。適当な生体試料とは、血液、血清、細胞、組織、または鼻、耳もしくは咽喉からの拭き取り試料を包含する。修飾IMPDHポリペプチドの量は、イムノアッセイ法のような当分野で周知の方法によって決定できる。
【0159】
これに代わり、診断法は本発明に係る核酸分子の使用を包含する。例えば、適当な生物学的被験試料内部に存在するこのような配列の量を、本発明に係る修飾IMPDH配列に相補的な核酸配列を持つ核酸分子の量を決定する分子生物学的検定によって決定することができる。正常試料由来の量と比較して、測定可能なほど相違する量の、IMPDH配列を持つ核酸分子が被験試料中に存在しているということが、当該疾病の存在を示し得る。適当な生体試料とは、血液、血清、細胞、組織、または鼻、耳もしくは咽喉からの拭き取り試料を包含する。修飾IMPDHポリヌクレオチド配列を有する核酸分子の量は、ハイブリダイゼーション法のような当分野で周知の方法によって決定できる。
【0160】
一般に、このような診断法は以下の工程を包含する。生物学的被験試料から核酸分子を取得し、これらの被験核酸分子を、被験核酸分子の相補配列と本発明に係る核酸分子とのハイブリダイゼーションを起こす条件の下で、本発明に係る核酸分子と接触させ、そしてハイブリダイズした核酸分子の存在を検出する。本発明に係るポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列が被験試料中に存在すること、または、正常もしくは「対照」試料中のレベルと比較して、測定可能なほど相違するレベルの係る配列が存在することが、本発明に係る遺伝子配列を有する試料を示唆し得る。ここで、相補的核酸配列とは、比較的些少の配列相違を持ち、標準条件下で本明細書に開示する配列とハイブリダイズできる核酸配列である。
【0161】
Falkow et al., 米国特許第4358535号に記載の診断検定を包含する、IMPDH配列を持つ核酸分子の量を検出するために使用できる様々なハイブリダイゼーション法が知られている。その他の好適なハイブリダイゼーション法の変法が、核酸の検出における使用のために利用できる。これらは、例えばin situハイブリダイゼーション、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティングを包含する。
【0162】
in situハイブリダイゼーション法は一般に、1またはそれ以上の細胞または組織内部に位置する標的核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列を有する検出可能な核酸プローブと接触させることを含む。この細胞または組織試料は、対象から取得した一次試料、または組織培養中で増殖した細胞であってよい。当分野で周知のように、細胞を固定によってハイブリダイゼーション用に調製し(例えば化学的固定)、そして、検出可能なプローブと、固定した細胞または組織内部に位置する核酸とのハイブリダイゼーションをさせる条件におく。
【0163】
別法として、IMPDH配列を有する標的核酸分子の存在および/または量を、サザン(例えばDNA)またはノーザン(例えばRNA)ブロット法によって決定できる。これらの方法は、被験細胞または組織試料から核酸分子を単離し、単離した核酸分子をサイズに従って分離し、分離した核酸分子を固体マトリックス上に固定化し、そしてこの固定化した核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列を有する検出可能な核酸プローブと接触させることを含む。この核酸分子は、塩化セシウム勾配遠心、クロマトグラフィー(例えばイオン、親和、磁気)、フェノール抽出などのような方法を用いて単離できる。単離した核酸分子は、電気泳動分離を包含する方法を用いて、サイズに従い分離できる。
【0164】
本発明に係る核酸分子はPCR技術(米国特許第4603102号;引用により本明細書の一部とする)を用いて生物学的被験試料中に検出できる。PCR法は、生物学的被験試料から核酸分子を単離し、この被験核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列に相補的な配列を有する二つの核酸プライマーと接触させ、そしてこの被験核酸分子およびプライマーを、ハイブリダイゼーションと重合が起こるような条件の下にインキュベートすることを含む。典型的には、一方は5’フランキング領域に対応し、他方は3’フランキング領域に対応する一対のプライマーを使用して、被験試料中の本発明に係る核酸分子の存在および量を検出する。
【0165】
本発明を例示し、当業者がこれを作製および使用するのを助けるために以下の実施例を提示する。この実施例はいかなるやり方によっても本発明の範囲を別途限定する意図はない。
【0166】
(実施例)
実施例1
本発明に係るヒトI型およびII型修飾IMPDHポリペプチドを製造し単離するために使用する方法の説明を以下に提供する。
【0167】
A) 野生型ヒトIMPDHをコードしているヌクレオチド配列を作製
PCR増幅を使用して、PHA活性化ヒト末梢血白血球から単離したRNAから、完全長ヒトimpdh I型およびII型cDNAを作製した。野生型impdh cDNAの増幅に使用したプライマーは以下のものを包含する:
【0168】
【0169】
5’プライマーは、NdeI制限部位を含むよう修飾した、野生型impdhのN末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。3’プライマーは、野生型impdhのC末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。
【0170】
このPCR生成物をベクターpET24a(+)(Novagen, Madison, WI)中にサブクローニングし、DH5アルファF’(IQ)コンピテント細胞(Gibco)に導入した。この配列はヌクレオチド配列決定により確認し、報告されたゲノム配列と比較した(Zimmermann,A.G., et al., 1995 J.Biol.Chem. 270:6808−6814; Glesne,D.A. and Huberman,E. 1994 Biochem.Biophys.Res.Comm. 205:537−544)。
【0171】
上記のように作製した完全長ヒトI型impdh cDNAを鋳型に用いて、IMPDH−DKTをコードしているPCR増幅ヌクレオチド配列を作製した(配列番号44)。完全長ヒトII型impdh cDNAを鋳型に用いて、IMPDH−DKT、−SPS、−GSG、−SPT、−AGRP、および−NSPLを包含する様々なトリおよびテトラペプチドIMPDHをコードしているPCR増幅ヌクレオチド配列を作製した(例は、配列番号40−43、および45−47を包含する)。様々な修飾impdh配列の増幅に使用したプライマーは以下のものを包含していた:
【0172】
【0173】
5’プライマーは、NdeI制限部位を含むよう修飾した、野生型impdhのN末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。
【0174】
3’プライマーは、置換オリゴペプチド(例えば、トリまたはテトラペプチド)をコードしているヌクレオチド配列を含み、そしてII型IMPDHの108−110位のLys−Lys−Tyrに相補的な配列をそれぞれ含んでいた。
【0175】
得られた増幅させた断片を、野生型II型impdhの820bp C末端ドメイン(Leu−244からPhe−514まで)に対応するcDNA断片にライゲーションし、修飾II型impdhポリペプチドをコードしているDNA分子を作製した。この820bp断片は、野生型impdh DNAをPvu IIおよびHind III制限酵素で消化することにより作製した。このPvu II制限酵素は、平滑末端切断面を作製し、且つIMPDHサブドメインとC末端ドメインの間の接合点(例えばGln243およびLeu244)で切断し、それが該サブドメイン(Glu−111からGln−243まで)を除去する独特な戦略を提供した。修飾II型IMPDHポリペプチドをコードしているDNA分子をpET24aベクター(Novagen, Madison, WI)中にライゲーションした。
【0176】
SPTQテトラペプチドを含むプライマーは、予想に反してSPTトリペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドを生成した。
【0177】
A) 修飾IMPDHポリペプチドを単離
pET24aベクターは、IPTGで誘導され得るT7 RNAポリメラーゼ系を包含する。この組換えベクターを標準的形質転換技術を用いてコンピテントなE.coli細胞、BL21(DE3)(Novagen, Madison, WI)中に導入した。形質転換された細胞を、カナマイシン100μg/mLを含有するM9最少培地寒天プレートに蒔き、37℃で一夜インキュベートした。M9プレート上に生育した個々のコロニーを選択し、1%カザアミノ酸、微量ミネラル、チアミンおよびビタミンB12を添加し100μg/mLカナマイシンを含有する液体M9培地に接種した。この液体培養を激しく振盪しながら(例えば200rpm)37℃で一夜生育させた。
【0178】
上記の物質を添加した、バッフル付き2リットル振盪フラスコに入れた液体M9培地0.5リットルを、一夜培養10mLを接種物に使用して培養することにより、修飾IMPDHポリペプチドを発現させた。この細胞をOD600=0.6−0.7となるまで37℃で激しく振盪しながら生育させ、IPTGを最終濃度0.5mMとなるまで加えた。次にこの培養を氷上で30分間冷却し、30℃で激しく振盪しながらさらに6時間生育させ、細胞を4℃、10000RPMで遠心分離することにより収穫した。この細胞ペレットを凍結し−80℃で保存した。
【0179】
修飾IMPDH−DKTポリペプチドの大規模生産のため、上記の方法に従った。スケールは、2リットルバッフル付き振盪フラスコあたり液体培地0.5Lに維持した。培養を最初37℃で生育させ、その後氷上での30分間の冷却、0.5mM IPTGによる誘導、そして30℃で6時間の誘導後生育をさせた。これらの条件で培養1リットルあたり25−35mgの修飾IMPDH−DKTポリペプチドが産生し、これは再現性があった。
【0180】
図18は野生型ヒトII型IMPDHタンパク質のモデルを示す。触媒コアドメインはこの図の上部領域に、サブドメインは下部領域に位置する。触媒コアとサブドメイン領域の間に位置する2個の球体は、残基E−111およびQ−243に対応する。残基E−111とQ243の距離はおよそ5.1オングストロームであり;本発明に係る置換オリゴペプチドはこの距離に橋を架けるよう設計した。
【0181】
実施例2
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を特性決定するために使用する方法の説明を提供する。
A) 部分精製修飾IMPDHポリペプチドを単離
修飾IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRPのポリペプチドを単離し、青色色素親和クロマトグラフィー工程を用いて部分精製した。別途記載のない限り、全ての工程を4℃で実施した。凍結細胞ペレット(例えば実施例1に記載)を氷上で融解し、緩衝液A(25mM Tris、pH8.2、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)10mLに再懸濁した。Bransonモデル450超音波振動器(2.5出力に設定)で1/4”Microtipを用いて2 x 20秒間の超音波パルスにより細胞を溶菌し、過剰の泡立ちを注意深く回避した。この試料を4℃、8500 x gで20分間遠心分離し、上清を15mL管に移した。Cibacron Blue 3GA色素樹脂(Sigma,製品#8321)を含有する50%スラリー1.0mLを各試料に加え、内容物を穏やかに振盪しながら2時間混合した。次にこの試料を個々の0.8 x 4.0cm(Biorad, Poly−Prep,カタログ番号731−1550)に移し、非結合物質を重力の下で樹脂から排出させた。各カラムを緩衝液A 6mL、次いで緩衝液B(例えば300mM KClを加えた緩衝液A)6mL、そして最後に緩衝液C(例えば1.5M KClを含有する緩衝液A)6mLで洗浄し、一方で6mLずつの画分を清浄な管に集めた。この試料を修飾IMPDHポリペプチドの存在について評価し、クマシーブルー染色による標準SDS−PAGE法を用いて純度を概算した。修飾IMPDHポリペプチドの各々について、緩衝液C画分の純度はおよそ75%の修飾IMPDHポリペプチドを含有していると測定された。総タンパク質含有量は、Bioradタンパク質試薬(製品#500−0006)とタンパク質標準としてのBSAを使用し、Bradford検定法(Bradford,M.M. 1976, Anal.Biochem. 72:248)を用いて定量した。
【0182】
A) NADHの産生を検出
修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を評価するため、NADからNADHへの変換を37℃、340nmで分光光度的に測定した。検定緩衝液は、0.40mM IMPおよび0.40mM NADを添加した50mM Tris、pH8.2(37℃)、100mM KCl、2mM EDTA、および3mM DTT(即ち緩衝液D)で構成した。合計1.00mLの反応混合物をそれぞれ入れた石英キュベット(1.0cm光路長)を使用した。多セル移送手段を備えたCary Model 3E uv−vis分光光度計を用いて6種類の濃度のタンパク質を同時に評価した。タンパク質濃度は20−300nMの間で相違していた。NADHの産生をδOD340(ε=6220M−1cm−1)で5分間測定することにより決定した。機器のソフトウェアを用いて、反応初速度を、各データの組への線形最小二乗法の当てはめとして算出した。
【0183】
修飾IMPDH多量体−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRPは、野生型ホロ酵素に比して、より高レベルのNADH、1.23ないし1.94μmole/分mgタンパク質の範囲のレベルを産生した(図19)。例えば、IMPDH−DKTの多量体は1.94μmole/分mgタンパク質、IMPDH−SPSの多量体は1.23μmole/分mgタンパク質、IMPDH−SPTの多量体は1.62μmole/分mgタンパク質、そしてIMPDH−AGRPの多量体は1.22μmole/分mgタンパク質を産生した。これに対して野生型IMPDHホロ酵素はおよそ1.00μmole/分mgタンパク質を産生した。
【0184】
修飾IMPDH−DKTポリペプチド多量体を>95%純度に精製した後、さらに分析した。動力学的特性決定(例えばkcat値に基づく)は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドが野生型IMPDH II型よりもほぼ2倍活性であることを示した。
【0185】
実施例3
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性に及ぼすMPAの阻害効果を評価するために使用した方法の説明を提供する。
【0186】
修飾IMPDH多量体−DKT、−SPS、−SPTおよび−AGRPの機能的活性(例えばNADH産生)に及ぼすMPAの阻害効果を、連続希釈法と定常状態酵素動力学法を用いて決定した(図20)(S.F.Carr, et al. 1993 上記;B.Xiang, et al., 1996 上記)。
【0187】
修飾IMPDHポリペプチドの濃度を1つの濃度に固定し(例えば70mM)、緩衝液D中、高基質条件(即ち、0.40mM IMP、0.40mM NAD)の下で、インヒビターを6種類の濃度に変化させた(即ち、0、2、5、10、20および50nM)。MPA(Sigma、製品#M5255)をDMSO中20mMに調製し、1.00mL反応につき25μL MPA試料となるよう連続希釈を調製した。酵素の添加によって反応を開始させ、15分間監視した。算出した初速度をMPA濃度の関数としてプロットしたが、これは各々の突然変異体がナノモル範囲でMPAに感受性であることを立証した。MPA濃度プロットに対する規格化した活性(即ちMPAが存在しない)を目視調査することによっておよそのIC50値を見積もったが、その値は15−30nMの範囲であった。
【0188】
修飾IMPDH多量体および野生型ヒトII型IMPDHホロ酵素の活性は、15−30nMの濃度範囲でMPAにより50%まで阻害された。全試料について、修飾IMPDH多量体についてはおよそ70nMタンパク質濃度、そして野生型IMPDHホロ酵素についてはおよそ50nMタンパク質に対応する、3μgのタンパク質を使用した。
【0189】
>95%純度に精製した修飾IMPDH−DKTポリペプチドを定常状態酵素動力学法を用いてさらに評価した。IMPDH−DKTタンパク質の固定濃度50nMを使用し、基質IMPおよびNADを変えて初速度を37℃で測定し、それぞれのKmおよびkcat値を決定した(Segel,I.H., 1975, Enzyme Kinetics: Behavior and Analysis of Rapid Equilibrium and Steady−State Enzyme Systems, John Wiley & Sons, New York, NY)。緩衝液Dを使用し50nMタンパク質で以下の速度パラメータを決定した:kcat、Km IMP、Km NAD、およびKi XMP。Kii MPAの決定には10nMタンパク質を使用した。KinetAsyst動力学ソフトウェア(IntelliKinetics, Princeton, NJ)またはThe Scientist(登録商標)ソフトウェア(MicroMath(登録商標) Scientific Software., Salt Lake City, UT)のいずれかによる適当なモデルを用いて、複製データの組への広域当てはめから、値を決定した。
【0190】
定常状態動力学的パラメータ
【0191】
実施例4
以下に、修飾IMPDH−DKT多量体の精製試料を得るために、そしてそのX線結晶構造を得るために使用した方法の説明を提供する。
【0192】
IMPDH−DKTポリペプチドは典型的には二つのクロマトグラフィー工程で>95%純度まで精製した。培養4Lから得た凍結細胞を、25mM Tris、pH8.2(4℃で測定)、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、2mM EDTA、5mM DTT、1mM PMSF、それぞれ1μg/mLのベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチン、およびE−64からなる溶菌緩衝液(緩衝液#1)中で、氷上で融解させた。別途記載のない限り、全ての工程を4℃で実施した。3/4”プローブチップおよびBransonモデル450超音波波動器(7出力設定、および30%効率サイクルで2 x 5分サイクル)を使用する超音波処理により、細胞を氷上で溶菌した。この試料を8500 x gで20分間遠心分離し、上清を清浄なポリカーボネート瓶に移した。
【0193】
緩衝液#2(25mM Tris、pH8.2、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)で平衡化したCibacron Blue 3GA高速流アガロース色素親和樹脂(Sigma、カタログ#C8321)の50mLカラム(2.5 x 10cm)に、このタンパク質をロードした。タンパク質を蠕動ポンプにより0.7mL/分でロードし、流れを280nmでの吸光度検出によって監視した。非結合タンパク質は吸光度が基線に戻るまで緩衝液#2により3mL/分で溶出した。KCl勾配を15カラム容量にわたって使用し、緩衝液#2および緩衝液#3(即ち、2000mM KClを含有する他は緩衝液#2と同じ)を用いてIMPDH−DKTを溶出した。IMPDH−DKTをSDS−PAGEおよび活性検定(即ち、δOD340によるNADH産生)によって同定し、適当な画分を合し、3回交換した緩衝液#4(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)に対して透析した。
【0194】
記載のようにして(即ち、Ikegami,T., et al, 1987, Life Sciences 40:2277−2282)調製した樹脂50mL(2.5 x 10cm)を用いてIMP親和クロマトグラフィーを実施した。タンパク質を0.7mL/分でカラムにロードし、計200mLを用いて3mL/分で洗浄して非結合物質を除去した。IMPDH−DKTは、200mLの緩衝液#5(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、2mM IMP)を用いて3mL/分で特異的に溶出した。溶出したタンパク質を、4回交換した緩衝液#6(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT)に対して透析し、非結合IMPを除去した。
【0195】
IMPDH−DKTポリペプチドの試料の純度を、クマシー染色した4−20% Tris−グリシンゲルで表す(図21)が、これはおよそ42kDaに検出される単一のバンドを示す。この試料の高い純度は、添付したHPLC−EMS追跡(図22A、B、C)および分析用ゲル透過クロマトグラフィー追跡(図23)においても立証できる。エレクトロスプレー質量分析により、観測質量41077Daを有する修飾されたデス−Met型に矛盾しない質量を有する単一のタンパク質成分が同定された(図22C)。
【0196】
さらに、この分析用ゲル透過クロマトグラフィー追跡の結果は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドが恐らくは四量体と八量体型の間で動的平衡状態にあるということを示した(図23)。この方法および0.69mg/mLでの動的光散乱法のいずれによっても凝集物は観察されなかった。この精製修飾タンパク質のUV−visスペクトルは、野生型IMPDH試料について観察されたように、強固に結合したヌクレオチドOD280/OD260=1.24と矛盾が無かった。最終精製工程はIMP−親和カラムからの溶出を含んでいたため、これは予期せぬ事ではなかった(Ikegami,T., et al., 1987 Life Sciences 40:2277−2282)。円二色性スペクトル測定の結果は、修飾タンパク質が良好に折り畳まれ、熱的にかなり安定であることを示した(t1/2〜75℃)。
【0197】
実施例5
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの結晶を取得するために使用した方法の説明を提供する。
【0198】
A) 材料:
略語:IMPDH:イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ:IMP :イノシン5’−一リン酸:NAD+:β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド:MPA:ミコフェノール酸:MEP:1−メチル−2−ピロリジノン:EDTA:エチレンジアミン四酢酸:DTT:ジチオトレイトール:ADA:N−[2−アセトアミド]−2−イミノジ酢酸。
【0199】
IMP(遊離酸)、NAD+(ナトリウム塩)、MPA、EDTA、ADA、Trizma塩基、KCl、およびグリセロールはSigma Chemical Companyから購入した。MEP、およびDTTはAldrich Chemical Companyから購入した。Ultrafree(登録商標)−4 Centrifugal Filter & Tube Biomax−10K NMWL MembraneはMilliporeから購入した。
【0200】
A) タンパク質の結晶化:
修飾IMPDH−DKTの活性は前進経路によって阻害される(Fleming,M.A., et al., Biochemistry 35:6990−6997)。MPAを秤量し、MEPに最終濃度500mMで溶解した。新しい緩衝液A(50mM Tris−HCl、300mM KCl、10%グリセロール、2mM EDTA、5mM DTT、pH8.0、23℃)を調製し、0.22μmフィルターで濾過した。精製タンパク質を緩衝液A中に0.69mg/mlで保存した。次にNAD+、IMP、およびMPAを二倍モル過剰で加え、室温で1時間平衡化した。阻害された複合体を徹底的に濃縮し、10K NMWL膜を用いて2mM MPAを含有する新しい緩衝液Aに4℃で交換した。IMPDH−DKT多量体の結晶を、懸滴蒸気拡散法を用いて室温で成長させた。2mM MPAを含有する緩衝液A中2.97mg/mlのタンパク質溶液2μlを、11.75%飽和硫酸アンモニウムおよび0.1M ADA pH6.5を含有する保存溶液2.0μlと混合した。このプレートを密封し、保存液1.0mlに対して平衡化した。結晶は数日以内に現れ、2週間で0.09mm x 0.09mm x 0.07mmの最大サイズに達した。
【0201】
実施例6
以下に、修飾IMPDHポリペプチドに結合したMPAの結晶構造を分析するために使用した方法の説明を提供する。
【0202】
修飾IMPDH−DKT多量体のX線結晶構造を以下のようにして決定した。IMPDH−DKTの結晶をミコフェノール酸と共に同時結晶化させ、100mM N−(2−アセトアミド)−2−イミノジ酢酸、pH6.5、14%飽和硫酸アンモニウム、および凍結保護物質としての20%(v/v)グリセロールを含有する溶液に移した。次にこの結晶をHampton Research(登録商標)クライオピンに取り付けたファイバーループで捕捉し、ループとピンを液体窒素中に沈めた(Rodgers, 1994)。次いでファイバーループ内の結晶を、Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon SourceのIMCA光線17IDで、MAR(登録商標) CCD 165mmにマウントし、1オングストロームの波長でデータを集めた。空間群はa=b=102.9オングストローム;c=178.3オングストロームのI422であった。このデータを統合し、HKLプログラム群により変形した(Otwinowski,Z., & Minor,W., 1997 Methods in Enzymology 276:307−326)。データ収集の統計を下に要約する:
【0203】
データの分解能は、検出機の開口部がかなり小さいため限られていた。後にCuKα(1.54オングストローム)放射を用いて、さらにデータを2オングストロームの分解能まで集めた。
【0204】
IMPDH−DKT突然変異体の構造を、CCP4プログラム群(Collaborative Computational Project, Number 4, 1994 Acta Crystallogr. Sect. D 50, 760−763)に提供されたAmoReプログラム(Navaza,J., 1994 Acta Crystallogr.Sect. A 50:157−163)を使用して、分子置換により決定した(Rossmann,M.G., 1990 Acta Crystallogt.Sect. A 46:73−82)。このモデルはハムスターIMPDH IIの残基17−110、244−420および427−514で構成されていた(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85, 921−930)。ハムスターとヒトの間の配列相違のため、以下の残基:265、290、292をAlaに変え、残基327をCysからSerに変換した。回転および翻訳機能の両者において10−4オングストロームの分解能からのデータを使用した。回転機能溶液は1.9のシグナル対ノイズ比、翻訳機能溶液は1.8のシグナル対ノイズ比を持ち、いずれも極めて明確な構造決定を示した。最小二乗剛体当てはめの後、相関係数は70.8、R値は32.8であり、これもまた極めて明確な構造決定を示した。この構造をX−PLOR(Brunger,A.T., 1992 X−PLORバージョン3.1、Yale University Press, New Haven)で精密にし、手動の再構築をCHAIN(Sack,J.S., 1988 J.Mol. Graph. 6:224−225)を用いて達成した。最終的なモデルは2684のタンパク質原子、Cys 331に共有結合したイノシン一リン酸、ミコフェノール酸および219の溶媒分子で構成されていた。理想結合長から0.011オングストローム、理想結合角から1.5゜、そして不適切な二面角から1.5゜のr.m.s.偏差である、8−2.2オングストローム分解能からのデータについて、R値は0.201、自由R値は0.264であった。
【0205】
この構造は、IMPDH−DKT多量体が、無傷のハムスターIMPDHに関する初期の研究(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)で示されたものと全く同じ様式でIMPおよびミコフェノール酸に結合することを示した。この構造は、Gly302とAsn303の間の活性部位の近傍に異常なcisペプチド結合を同定する能力によって立証されるように、より高い分解能の故に、より良質であった。さらに、Vertexが本発明者等に提示したハムスターIMPDH IIの座標は溶媒分子を含んでいなかった。但しそれらは論文には記載されていた(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)。本明細書に開示する結果は、活性部位における水分子の部位を提供し、それはモデル作製にとって極めて貴重であった。加えて、N末端(11−16番)の6残基およびDKT挿入物(各々110A、110Bおよび110Cと番号付けた)ならびに残基421主鎖を、ハムスター構造のモデルには無かった電子密度に当てはめることができた。
【0206】
要約すると、修飾IMPDH−DKT多量体は、構造に基づく薬品設計のための優れた対象である。ミコフェノール酸を伴う該分子は容易に結晶化でき、実験室で2オングストロームの分解能まで回折される結晶を生成したが、これは、化学者および分子モデル製造者に、より強力なインヒビターおよびより望ましい性質を持つインヒビターを設計するための高品質の情報を提供する充分な範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、I型野生型ヒトIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号48)。
【図2】図2は、II型野生型ヒトIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号49)。
【図3】図3は、野生型IMPDHポリペプチドのサブドメイン領域を置換している置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドの模式的表示である。
【図4】図4は、本発明に係るII型IMPDH−DKTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号20)。
【図5】図5は、本発明に係るII型IMPDH−DKT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号40)。
【図6】図6は、本発明に係るII型IMPDH−SPSポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号22)。
【図7】図7は、本発明に係るII型IMPDH−SPS cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号41)。
【図8】図8は、本発明に係るII型IMPDH−GSGポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号29)。
【図9】図9は、本発明に係るII型IMPDH−GSG cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号42)。
【図10】図10は、本発明に係るII型IMPDH−SPTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号27)。
【図11】図11は、本発明に係るII型IMPDH−SPT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号43)。
【図12】図12は、本発明に係るII型IMPDH−SPTQ cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号45)。
【図13】図13は、本発明に係るII型IMPDH−AGRPポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号36)。
【図14】図14は、本発明に係るII型IMPDH−AGRP cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号46)。
【図15】図15は、本発明に係るII型IMPDH−NSPLポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号38)。
【図16】図16は、本発明に係るII型IMPDH−NSPL cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号47)。
【図17】図17は、本発明に係るI型IMPDH−DKTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号30)。
【図18】図18は、上記実施例1に記載する、置換トリおよびテトラペプチドの設計に使用する、折り畳まれた野生型ヒトII型IMPDHタンパク質のモデルを示すリボン図である。
【図19】図19は、上記実施例2に記載するように、修飾IMPDHポリペプチドを含むタンパク質多量体からのNADH産生の検出を説明する棒グラフである。
【図20】図20は、上記実施例3に記載するように、修飾IMPDHポリペプチドの酵素活性をMPAが阻害することを証明するグラフである。
【図21】図21は、上記実施例4に記載するように、単離された修飾IMPDH−DKTポリペプチドを示すクマシー染色したTris−グリシンゲルである。
【図22】図22A−Cは、上記実施例4に記載するように、単離した修飾IMPDH−DKTポリペプチドのHPLC−EMS追跡である。A) 合計のイオン流量対溶出時間を示すIMPDH−DKTポリペプチドのクロマトグラム;B) 11.03分に溶出するタンパク質についての規格化した強度対質量/電荷を示す積分した質量スペクトル;C) 11.03分に溶出するタンパク質について図13Bのデータを再構成したスペクトル。
【図23】図23は、上記実施例4に記載する、単離した修飾IMPDH−DKTポリペプチドのゲル透過クロマトグラフを例示している。
【図24】図24は、本発明に係るI型IMPDH−DKT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号44)。
本明細書全編を通じて様々な刊行物を引用する。これらの刊行物の開示は引用によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、サブドメイン領域の代わりに置換オリゴペプチドを含む、単離された修飾イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)ポリペプチドに関する。
【0003】
(背景技術)
酵素イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH;EC 1.1.1.205)は、グアノシンヌクレオチドのデノボ合成に関与している(Crabtree,G.W., and Henderson,J.F. 1971 Cancer Res. 31:985−991;Snyder,F.F. et al., 1972 Biochem.Pharmacol. 21:2351−2357;Weber,G., 1983 Acct.Chem.Res. 24:209−215)。IMPDHは、イノシン−5’−一リン酸(IMP)からキサントシン−5’−一リン酸(XMP)への酸化を触媒する(Jackson,R.C. et al., 1975 Nature 256:331−333)。IMPDH酵素は、基質と補助因子結合の規則正しいBi−Bi反応連鎖および産物放出に従う。まずIMPがIMPDHに結合し、続いて補助因子NADの結合が起こり、その後NADHへの還元が起こる。還元されたNADHが次いで放出され、その後、産物XMPが放出される(Carr,S.F. et al., 1993 J.Biol.Chem. 268:27286−90;Holmes,E.W. et al., 1974 Biochem.Biophys.Acta. 364:209−217)。
【0004】
IMPDHは全ての原核生物と真核生物に見出される遍在性の酵素である(Natsumeda,Y. and Carr,S.F., 1993 Ann.N.Y. Acad. 696:88−93)。全ての種に由来するIMPDH酵素は、I型またはII型IMPDHポリペプチドの4つのサブユニットを含む、ホモ四量体として存在する。各サブユニットは、比較的大きな触媒コアドメインと小さなサブドメイン、または隣接ドメイン(これは機能が分かっていない)とを持つIMPDHポリペプチドである。各々のサブユニットは、活性部位の周囲に四量体を組織化し得るカリウムイオン(Sintchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)によって結合している(Xiang,B., et al., 1996 J.Biol.Chem. 271:1435−1440)。原核生物のIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列は、ヒトIMPDHと30−40%配列が一致している(Natsumeda,Y. and Carr,S.F. 1993 上記)。サブドメインのアミノ酸配列は、異なる種由来のIMPDH間で実質的な変異を示す。
【0005】
I型およびII型と呼ばれるヒトIMPDHの二つのイソ型が同定され、配列決定された(Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295)。I型とII型はいずれも514アミノ酸残基の長さであり、両者の配列の84%が一致している。I型およびII型IMPDH分子の配列の変異もまた開示されている。野生型のII型ヒトIMPDHのヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号(配列番号63)に開示されている。野生型ヒトIMPDHI型のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295(配列番号65)に開示されている。他の野生型ヒトIMPDH I型の配列もまた開示されている(Gu et al., 1997 J.Biol.Chem. 272:4458−4466(配列番号62);Dayton et al. 1994 J.Immunol. 152:984(配列番号64);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem. And Biophys. Research Communications, 537−544(1994))。さらに、IMPDH I型とII型の両者は、56kDaのサブユニット分子量を持つ活性四量体を溶液中で形成する(Yamada,Y., et al., 1988 Biochemistry 27:2737−2745)。
【0006】
IMPDHはBおよびTリンパ球の増殖にとって重要である、それはBおよびTリンパ球がサルベージ経路ではなくデノボ経路に依存し、マイトジェンまたは抗原に対する増殖反応の開始に必要なヌクレオチドレベルを作り出しているためである(Allison,A.C., et al., 1975 Lancet II, 1179;Allison,A.C., et al., 1977 Ciba Found.Symp. 48:207)。IMPDHはさらに平滑筋の増殖にも役割を果たしている(Gregory,C.R., et al., 1995 Transplantation 59:655−61)。加えて、IMPDHは或る種のウイルスセルラインにおけるウイルス複製で役割を果たしている(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。したがって、IMPDHはBおよびTリンパ球の増殖に関連する疾患またはウイルス疾患にとって重要である。
【0007】
ミコフェノール酸(MPA)はヒトI型およびII型IMPDHの強力な非競合的可逆的インヒビターである(Franklin,T.J., and Cook,J.M., 1969 Biochem.J. 113:515−524)。MPAは、NADHが放出された後に、但しXMPが産生する前に、IMPDHに結合する(Hedstrom,L. and Wang,C.C. 1990 Biochemistry 29:849−854;Link,J.O. and Straub,K. 1996 J.Am.Chem.Soc. 118:2091−2092)。ヒトI型IMPDHについて報告されているK1値は様々で11nM(Hager,P.W., et al., 1995 Biochem.Pharmacol. 49:1323−1329)から33−37nM(Carr,S.F., et al., 1993 上記)までの範囲であるが、II型のK1値は6−10nMである(Carr,S.F., et al., 1993 上記;Hager,P.W., et al., 1995 上記)。
【0008】
マイトジェンまたは抗原に対するBおよびT細胞の応答を遮断する免疫抑制剤としてMPAが使用されてきた(Allison,A.C., et al., 1993 Ann.N.Y.Acad.Sci. 696:63)。MPAはまた、腎臓移植拒絶および自己免疫疾患の治療にも使用されてきた(Morris,R.E. 1996 Kidney Intl. 49, Suppl. 53:S−26)。ところが、MPAには、胃腸毒性および劣悪なバイオアベイラビリティーといった望ましくない薬理作用がある(Shaw,L.M., et al., 1995 Therapeutic Drug Monitoring 17:690−699)。IMPDH活性のその他のインヒビター、例えばチアゾフリン、リバビリンおよびミゾリビンを包含するヌクレオシド類似体が同定されている(Hedstrom,L. et al., 1990 上記)。しかし、これらの化合物はIMPDHの競合的インヒビターであり、特異性を欠く。
【0009】
過去の研究結果は、I型またはII型ヒトIMPDHのいずれが重要な治療標的であるかを示していない。例えば、IMPDH II型のレベルがリンパおよび白血病セルラインを増殖させる際に増大することが証明されている(Konno,Y., et al., 1991 J.Biol.Chem. 266:506−509;Nagai,M. et al., 1991 Cancer Res. 51:3886−3890;Nagai,M., et al., 1992 Cancer Res. 52:258−261;Collart,F.R., et al., 1992 Cancer Res. 52:5)。別の研究者等は、両方のイソ型のmRNAレベルがマイトジェン刺激後にT細胞で増大することを証明した(Dayton,J.S., et al., 1994 J.Immunol. 152:984−991)。
【0010】
IMPDHはグアニンヌクレオチドのデノボ合成にとって必須であり、例えばIMPDHはイノシン−5’−一リン酸(IMP)を触媒してキサントシン−5’−一リン酸(XMP)とする(Jackson R.C. et al., 1975 上記)。故にIMPDHの機能的活性の阻害はDNA合成を停止させる(Duan, et al., 1987 Cancer Res. 47:4047−4051)。異常レベルのIMPDHに関連する疾患を阻害するために、野生型および改善された薬理学的性質を持つ修飾IMPDH両者に対する強力なIMPDHインヒビター分子が依然として要求されている。
【0011】
したがって現在、野生型IMPDHの活性を選択的に阻害する物質の同定に、研究努力が集中している。このような阻害物質は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過剰増殖剤および抗ウイルス剤として使用するための強力な治療用インヒビターである。さらに、IMPDHインヒビターは、移植拒絶、ならびに、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、若年性糖尿病、喘息、および炎症性腸疾患を包含する自己免疫疾患の治療に使用できる。加えてこれらのインヒビターは、癌や再狭窄を包含する血管疾患、およびレトロウイルス疾患やヘルペスを包含するウイルス複製疾患の治療に有用となり得る。
【0012】
標的タンパク質を阻害する物質を発見する1つの方法は構造に基づく方法であり、これは、既知のインヒビターと複合体形成した標的タンパク質のX線結晶構造の分析を含む。MPAおよびIMPと複合体形成した野生型チャイニーズハムスターIMPDH II型の多量体のX線結晶構造が、2.6オングストロームレベルで解析されている(Sintchak,M.D., et al., 1996 上記;米国特許第6128582号)。しかしながら、このレベルの分解能はIMPDHとMPAとの相互作用の充分な詳細を提供していない。これらの詳細を提供するような解析レベルで、インヒビターと複合体形成したIMPDHのX線結晶構造を入手する要求が依然として存在する。本発明は、サブドメイン領域に代わって置換オリゴペプチドを含むよう修飾したヒトIMPDHポリペプチドを提供する。この修飾IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHよりも短く、機能的活性を示し、MPAと結合し、そしてその結晶構造はより高レベルまたは細かい分解能で解析され得る。
【0013】
(発明の要約)
本発明は、単離された新規な修飾IMPDHポリペプチドおよびそれらをコードしている核酸分子を提供する。本発明に係るポリペプチドは各々短い置換オリゴペプチドを含み、これは野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインに取って代わり、それにより修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを短縮し、そしてインヒビターと複合体形成した修飾IMPDH多量体のX線結晶構造のより良い解析を可能にする。この置換オリゴペプチドは、折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドがIMPDHのインヒビターに結合し、そして/または野生型IMPDHの機能的活性を保持するよう選択された長さと配列を有する。
【0014】
本発明はさらに、修飾IMPDHをコードしているDNAを含む組換えベクターおよび宿主−ベクター系、ならびに修飾IMPDHポリペプチドの産生のための方法を提供する。本発明はまた、この修飾IMPDHポリペプチドと反応する抗体を提供する。
【0015】
修飾IMPDHポリペプチドは、薬物発見法、例えば構造に基づく薬品設計(ドラッグデザイン)にとって有用である。本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドはさらに、修飾IMPDHポリペプチドの検出および/または定量のための、そして任意のIMPDHポリペプチドをコードしている対応核酸分子の検出および/または定量のための治療法、診断法および予後判定法にとって有用である。
【0016】
(発明の開示)
(定義)
本明細書で使用する全ての科学および技術用語は、別途記載のない限り当該分野で使用する通常の意義を有する。本明細書で使用する以下の語または句は、明記した意義を有する。
【0017】
本明細書中使用する「ホロ酵素」という語は、互いに結合してそのホロ酵素を作り上げている、ポリペプチドサブユニットおよび補助因子のような複数の構成成分を含む完全な機能的酵素を指す。これらポリペプチドサブユニットは共有結合的または非共有結合的相互作用によって互いに結合することができる。
【0018】
本明細書に記載の「IMPDHホロ酵素」という語は、グアニンヌクレオチドのデノボ合成における決定付けられた工程である、イノシン−5’−一リン酸(IMP)のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性酸化を触媒する生物学的活性または機能を有する完全な酵素を指す。典型的には、天然に存在するIMPDHホロ酵素は、各々がカリウムイオンに結合しているIMPDHポリペプチドの4つの単量体サブユニットを含む四量体分子として見出される。さらに、野生型ヒトIMPDHホロ酵素の触媒活性はミコフェノール酸(MPA)によって阻害される。
【0019】
本明細書に記載の「IMPDH多量体」という語は、互いに結合してIMPDH多量体分子を形作っているIMPDHポリペプチドの少なくとも二つの単量体サブユニットを指す。このポリペプチドサブユニットは、共有結合的または非共有結合的相互作用により互いに結合することができる。IMPDH多量体はカリウムイオンを含んでいてもいなくてもよい。IMPDH多量体は、天然に存在するIMPDHホロ酵素の機能的活性を示しても示さなくてもよい。IMPDH多量体は修飾IMPDHポリペプチドの単量体サブユニットを2、3、4、または8個まで含むことができる。さらにこの多量体は、同一または異なるイソ型の単量体サブユニット、例えば修飾I型またはII型IMPDHポリペプチドを含むことができる。
【0020】
本明細書中使用する「野生型IMPDHポリペプチド」という語は、N末端触媒ドメイン、非触媒的内部ドメイン、およびC末端触媒ドメインを包含するポリペプチドを指す。本明細書で論ずるように、野生型IMPDHポリペプチドはそのアミノ酸配列に相違があり得る。野生型IMPDHポリペプチドの例は配列番号48、49、および62−65に示す。野生型IMPDHポリペプチドは、或る構造に折り畳まれてその結果N末端とC末端ドメインが触媒部位を形成するようになる。非触媒ドメインは隣接ドメインまたはサブドメインとしても知られている。野生型IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHホロ酵素の、または野生型IMPDH多量体の、単量体ポリペプチドサブユニットである。
【0021】
本明細書中使用する「修飾IMPDHポリペプチド」という語は、本明細書で「置換ペプチド」と称するオリゴペプチドで置換された野生型IMPDHポリペプチドのIMPDHサブドメイン(例えば非触媒的内部ドメイン)を有するIMPDHポリペプチドを指す。
【0022】
本明細書中使用する「オリゴペプチドドメイン」という語は、オリゴペプチドが野生型IMPDHサブドメインに取って代わっている、修飾IMPDHポリペプチドにおける領域または部分(例えば非触媒的内部ドメイン)を指す。
【0023】
本明細書中使用する「置換ペプチド」または「置換オリゴペプチド」または「置換テトラペプチド」または「置換トリペプチド」という語は、野生型IMPDHポリペプチドのサブドメイン領域に置き換わる、選択された長さと配列を持つペプチド断片を指す。このペプチド断片は該サブドメイン領域よりも小さい(例えば、これは133アミノ酸より少ない)。好ましい態様では、このペプチド断片はトリペプチドまたはテトラペプチドである。
【0024】
本明細書で使用するように、第一のヌクレオチドまたはポリペプチド配列と第二のヌクレオチドまたはポリペプチド配列とを比較し、それらが全く等しい場合、第一の配列は第二の配列に対して配列が「一致」していると言う。
【0025】
本明細書で使用するように、二つの配列の比較が、それらが低レベルの配列相違を示す時、第一のヌクレオチド配列は第二の参照配列に「類似して」いると言う。例えば、二つの配列間で相違しているヌクレオチドのパーセンテージが約60%ないし99.99%の間である時、二つの配列は互いに類似していると考えられる。
【0026】
本明細書中使用する「相補的」という語は、プリンおよびピリミジンヌクレオチドが水素結合によって結合して二本鎖核酸分子を形成する能力を指す。以下の塩基対は相補性によって関連している:グアニンとシトシン;アデニンとチミン;ならびにアデニンとウラシル。「相補的」という語は二つの一本鎖核酸分子を含む全ての塩基対に適用する。
【0027】
本明細書で使用するように、目的とするポリペプチドをコードしている核酸分子は、該核酸分子が、目的とするポリペプチド以外のポリペプチドをコードしている混入核酸分子から実質的に分離している時、「単離されている」と言う。
【0028】
本明細書で使用するように、目的とするポリペプチドが他の「混入」ポリペプチドから実質上分離している時、該ポリペプチドは「単離されている」と言う。さらに、「単離された」核酸分子またはポリペプチドは、いかに組み立てられまたは合成されようとも、任意のDNA、RNA、またはポリペプチド配列を指す。
【0029】
本明細書中使用する「天然に存在する」とは、天然に見出されるポリペプチドを指す。
【0030】
本明細書中使用する「実質上精製された」とは、実質上全ての混入物質(即ち、その特定分子とは異なる物質)が該核酸またはタンパク質から分離された、特定の単離された核酸もしくはポリペプチドまたはそれらの断片を意味する。
【0031】
アミノ酸残基についての一文字コードは以下のものを包含する:A=アラニン、R=アルギニン、N=アスパラギン、D=アスパラギン酸、C=システイン、Q=グルタミン、E=グルタミン酸、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、L=ロイシン、K=リジン、M=メチオニン、F=フェニルアラニン、P=プロリン、S=セリン、T=スレオニン、W=トリプトファン、Y=チロシン、V=バリン。
【0032】
本明細書に記載の発明をより完全に理解するため、以下の説明を開示する。
【0033】
A. 本発明に係る分子
その様々な態様において、下に詳細に記載するように、本発明は、単離された、修飾IMPDHポリペプチド、核酸分子、組換えDNA分子、形質転換された宿主細胞、作成方法、検定、免疫療法、トランスジェニック動物、修飾IMPDHポリペプチドのインヒビター(例えば抗体)、免疫学的および核酸に基づく検定、ならびに組成物を提供する。
【0034】
1. 修飾IMPDHポリペプチドおよび修飾IMPDHポリペプチドを含む多量体分子
a) 単離された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、数多くの形で、好ましくは単離された形で具体化できる。本発明に係るポリペプチドは天然合成されたポリペプチドとして、または天然、合成、半合成、または組換えの如何に拘わらず、任意の供給源から単離できる。したがって、修飾IMPDHポリペプチドは、任意の種、特に牛、羊、豚、マウス、馬、および好ましくはヒトを包含する哺乳動物由来の天然合成されたタンパク質として単離できる。これとは別に、修飾IMPDHポリペプチドは、原核または真核宿主細胞で発現される組換えポリペプチドとして、または合成ポリペプチドとして単離できる。
【0035】
当業者は、標準的単離法を用いて、本発明に係る方法に従い製造した、単離された修飾IMPDHタンパク質を取得できる。単離の性格と程度は、単離するタンパク質の供給源および意図する用途に依存する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、Gilbert et al.,(1979) Biochemical J. 183:481−494およびKrishnaiah(1975) Arch.Biochem.Biophys. 170:567−575に記載のような天然に存在する細菌IMPDHタンパク質の単離に使用する方法を用いて細菌宿主細胞から単離できる。別法を用いて真核細胞、例えば植物細胞(Atkins, et al.,(1985) Arch.Biochem.Biophys. 236:807−814)またはチャイニーズハムスター細胞(Collart, et al.,(1987) Mol.Cell.Biol. 7:3328−3331)またはヨシダ肉腫腹水細胞(Okada, et al.,(1983) J.Biochem. 27:2193−2196)またはラット肝癌細胞(Ikegami, et al.,(1987) Life Sci. 40:2277−2282)から修飾IMPDHを単離できる。
修飾IMPDHポリペプチドを作製する方法を下に詳細に述べる。
【0036】
a) 精製された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は精製された形態で単離できる。修飾IMPDHポリペプチドは、IMPまたは抗IMPDH抗体を用いる親和クロマトグラフィー(Marchak,D.R., et al., 1996 in: Strategies for Protein Purification and Characterization, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.)を包含する当分野で周知の方法によって精製できる。単離および精製の性格と程度は意図する用途に依存する。例えば、精製された修飾IMPDHポリペプチドは、この修飾IMPDHポリペプチドに対する抗体またはリガンドの結合を損なう分子またはその他のタンパク質を実質上含まないであろう。
【0037】
c) 結晶化された修飾IMPDHポリペプチド
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、当分野で周知の方法(Fleming,M.A., et al., 1996 Biochemistry 35, 6990−6997)を用いて結晶形で単離できる。
【0038】
d) 修飾IMPDHポリペプチドは置換されたサブドメインを持つ
本発明は、野生型IMPDHのN末端触媒コアドメイン;野生型IMPDHサブドメイン領域に取って代わっている、または該サブドメイン領域内の或る領域に取って代わっている内部置換オリゴペプチドドメイン;野生型IMPDHのC末端触媒コアドメイン、をそれぞれ包含する修飾IMPDHポリペプチドを提供する。修飾IMPDHポリペプチドのNおよびC末端触媒コアドメインは、種々の供給源、例えばGenBank, EC1.1.1.205、または国際公開第WO94/24264号由来のI型またはII型の野生型配列を含むことができる。さらにこのNまたはC末端配列は、Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772またはNatsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295に記載の配列と同一の配列、または本明細書の配列番号48、49、および62−65に明記する配列を包含できる。野生型サブドメイン領域に取って代わるオリゴペプチド(図3)は一般に「置換オリゴペプチド」と呼ばれ、より詳細には、そのオリゴペプチドの長さに応じて「置換トリペプチド」または「置換テトラペプチド」と呼ばれる。
【0039】
置換オリゴペプチドの目的は、修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを短縮し、インヒビター、例えばMPAと複合体形成した修飾IMPDH多量体のX線結晶構造のより良好な解析を得ることである。さらに、置換オリゴペプチドの配列と長さは、折り畳まれたIMPDHポリペプチドおよび多量体がIMPDHのインヒビターに結合し、そして/または野生型IMPDHの機能的活性(例えば、NADHを産生する)を保持することを可能にするように選択する。
【0040】
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドの断片[ここでこの断片は野生型IまたはII型IMPDHのサブドメイン領域に取って代わる置換オリゴペプチドを含んでいる]を提供する。
【0041】
かつて決定された野生型ヒトI型(Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;配列番号65;Gu et al., 1997 J.Biol.Chem. 272:4458−4466(配列番号62);およびDayton et al. 1994 J.Immunol. 152:984(配列番号64))またはII型(図2;配列番号49)(Natsumeda,Y., et al. 1990 J.Biol.Chem. 265:5292−5295;Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号(配列番号63);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem.And Biophys.Research Communications, 537−544(1994))IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を使用して野生型サブドメイン領域を位置決定できる。または、配列番号48、49または62−65に示すアミノ酸配列を使用してサブドメイン領域を位置決定できる。別法として、野生型チャイニーズハムスターIMPDH(Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 上記)、または原核生物およびその他の真核生物由来の野生型IMPDHタンパク質のアミノ酸配列を使用して、野生型サブドメイン領域を位置決定できる。
【0042】
例えば、修飾されたヒト野生型II型IMPDHポリペプチドは、(1)残基1−110を包含するN末端触媒コアドメイン;(2)オリゴペプチドで置換された、残基Glu111−Gln243を包含する非触媒的内部サブドメイン;および(3)残基244−514を包含するC末端触媒コアドメイン、を包含するが、これらに限定されない。したがって、置換オリゴペプチドは、二つの触媒コアドメイン(1および3)を連結して、修飾IMPDHポリペプチドの全体の長さを野生型II型IMPDHに比して短縮している(図4、6、8、10、13、15、または17)。修飾IMPDHポリペプチドの長さは該オリゴペプチドの長さに依存する。例えば、該オリゴペプチドがトリペプチドであるならば、修飾IMPDHポリペプチドは384アミノ酸残基長である。修飾IMPDHポリペプチドが折り畳まれて機能的に触媒コアを形成するよう、置換オリゴペプチドの好ましい配列と長さを選択する。この折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドはIMPDH活性(例えばNADHを産生する)のインヒビターに結合する。
【0043】
e) 置換オリゴペプチドのサイズ
本発明は、約3ないし10アミノ酸残基長の置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。或る好ましい態様は、トリペプチドである置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。また、或る好ましい態様は、テトラペプチドである置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0044】
f) 置換オリゴペプチドの配列
本発明はさらに、配列番号1−10に記載する置換トリペプチド配列のいずれか1つとアミノ酸配列一致を有する置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド(配列番号20−30)を提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、配列(一文字アミノ酸コード):DKT、TPI、SPS、SAH、KPI、IVD、ALF、SPT、GGYまたはGSG、のいずれか1つを有する置換トリペプチドを含むことができる(配列番号1−10)。好ましい態様は、異なる置換トリペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチド、例えばI型IMPDH−DKT(図17、配列番号30)またはII型IMPDH−DKT(図4、配列番号20)、またはII型IMPDH−SPS(図6、配列番号22)、IMPDH−SPT(図10、配列番号27)、およびIMPDH−GSG(図8、配列番号29)を提供する。
【0045】
本発明は、配列番号11−19に記載する置換テトラペプチド配列のいずれか1つとアミノ酸配列一致を有する置換オリゴペプチドを含む、さらなる修飾IMPDHポリペプチド(配列番号31−39)を提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、配列:GSSW、QPQS、NIIP、SPTQ、TRYT、AGRP、NGQY、NSPL、またはYGTW、のいずれか1つを有する置換テトラペプチドを含むことができる(配列番号11−19)。好ましい態様は、置換テトラペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド、例えばIMPDH−AGRP(図13、配列番号36)を提供する。
【0046】
g) 置換オリゴペプチドの変異体配列
本発明はさらに、本明細書に記載する置換トリまたはテトラペプチド領域の配列変異を有する、置換オリゴペプチド領域を含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。例えば、修飾IMPDHポリペプチドの変異体は、配列番号1−10または配列番号11−19にそれぞれ記載の置換トリまたはテトラペプチド配列と、1またはそれ以上のアミノ酸置換によって相違しているかも知れない。このアミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的性質を持つ、保存的変化、例えばロイシンからイソロイシンへの置換であるかも知れない。変異体はまた、非保存的変化、例えばグリシンからトリプトファンへの置換であるかも知れない。置換オリゴペプチド領域においてどの、そして幾つのアミノ酸残基を変化させ得るかを決定する指針は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDH多量体中のサブドメインが及んでいる距離で見出すことができる[ここで、この及んでいる距離は、予想(例えばアミノ酸配列に基づいて)および/または実験(例えば、X線結晶学に基づいて)によって誘導する]。好ましくはアミノ酸は、及んでいる距離が、野生型サブドメインの及んでいる距離と一致または殆ど一致するように変化させる。
【0047】
当業者には周知であるように、ポリヌクレオチド配列は、そのポリペプチドのコンホメーションまたは機能を変化させることなくアミノ酸置換をコードすることができる。本発明に関して、アミノ酸置換は、置換オリゴペプチド、または該ポリペプチドの任意の部分(例えば、N末端触媒ドメイン、サブドメインまたはC末端触媒ドメイン)に起こり得る。保存的アミノ酸変化は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかで、これら疎水性アミノ酸のうち他のいずれかを置換すること;アスパラギン酸(D)でグルタミン酸(E)を置換、またはその逆;グルタミン(Q)でアスパラギン(N)を置換、またはその逆、ならびにセリン(S)でスレオニン(T)を置換、またはその逆が包含されるがこれらに限定される訳ではない。個々のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造内でのその役割に応じて、他の置換もまた保存的であると考えられる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)、またはグリシン(G)とセリン(S)は互換性のあることが多く、アラニン(A)とバリン(V)もまた同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシンと、そして時にはバリンと相互交換できる。リジン(K)およびアルギニン(R)はしばしば位置を相互交換することができ、ここで、アミノ酸残基の重要な特徴はその電荷であって、これら二つのアミノ酸残基の相違するpKは重要でない。特別な環境では、さらなるその他の変化も「保存的」であると考えることができる。
【0048】
本発明のさらなる態様では、アミノ酸置換は「非保存的」であってよい。例には、アスパラギン酸(D)をグリシン(G)で置換;アスパラギン(N)をリジン(K)で置換;またはアラニン(A)をアルギニン(R)で置換、が包含されるが、これらに限定されない。
【0049】
さらに本発明は、置換オリゴペプチド領域(例えば、置換トリペプチドまたは置換テトラペプチド)を含み、且つN末端触媒ドメインおよび/またはC末端触媒ドメインに配列変異を有する、修飾IMPDHポリペプチドを提供する。好ましくは、このような置換は野生型または修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を変化させない。N末端触媒ドメインの変異の例は配列番号62に示す。特に、29位のアスパラギン酸(D)(D29;配列番号48)をグリシン(G)に置換できる。加えて、109位のアスパラギン(N)(N109;配列番号48)はリジン(K)に置換できる。当業者には理解できるであろうが、かなりの数のアミノ酸を単独、または他のアミノ酸と組み合わせて変化させることができ、尚且つそのポリペプチドは機能的活性を保持できる(例えば、本明細書に記載のように、アミノ酸置換を有するIMPDHポリペプチドはNADH産生を調節する能力を保持する)。したがって、野生型または修飾IMPDHと同様に機能するいかなる分子も、本明細書に記載の発明の実施に使用できる。
【0050】
Natsumeda et al. J.Biol.Chem. 265:5292−5295(1990);Collart,F.R. and Hubermann,E. 1988 J.Biol.Chem. 263:15769−15772;および米国特許第5665583号;Gu et al. J.Biol.Chem. 272:4458−4466(1997);Dayton et al. J.Immunol. 152:984(1994);Zimmermann et al., J.Biol.Chem. 270:6808−6814(1995);およびGlesne et al. Biochem. And Biophys.Research Communications, 537−544(1994)に、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列のIMPDHの例を見出すことができる。これらのアミノ酸配列もまた本明細書で配列番号62−65に示す。
【0051】
置換トリペプチド領域(例えばDKT)に保存的アミノ酸置換を有する、本発明に係るIMPDH−DKTポリペプチドの変異体の特別な例は、(一文字コードで)GKT、DRT、DKG、またはGRSを包含するがこれらに限定されない。当業者は置換オリゴペプチド配列のその他の変異体を容易に予想できる。
【0052】
h) 変化させたアミノ酸類似体またはポリペプチド
本発明はさらに、アミノ酸類似体を含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。このアミノ酸類似体は化学合成でき、右旋体もしくは左旋体、または擬似ペプチドを包含する。さらに本発明は、例えば翻訳後経路または化学合成によって変化させた、N−またはO−グリコシル化アミノ酸残基を含む本発明に係るポリペプチドを提供する。該ポリペプチドのN末端は、アシル化またはアルキル化された残基を含むよう変化させることができる。該ポリペプチドのC末端は、エステル化またはアミド化残基を含むよう変化させることができる。非末端アミノ酸残基を変化させることができ、これは、アミノ酸アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、プロリン、グルタミン酸、リジン、セリン、スレオニン、チロシン、ヒスチジン、およびシステインの変化を包含するがこれらに限定されない。
【0053】
h) 置換オリゴペプチドの及んでいる距離
本発明は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDHポリペプチド中のサブドメインの距離に及んでいる置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチド、または、互いに結合している折り畳まれた修飾IMPDHポリペプチドを複数含んでいるIMPDH多量体[その結果、この折り畳まれたIMPDHポリペプチドは野生型IMPDHの機能的活性を示し、そして/またはIMPDHのインヒビターに結合する]を提供する。
【0054】
折り畳まれた野生型IMPDHポリペプチド中のサブドメインが及んでいる距離は、野生型IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列から予想でき、そして/または野生型IMPDHポリペプチド単量体または野生型IMPDH多量体または野生型IMPDHホロ酵素のX線結晶構造から実験的に取得できる。
【0055】
例えば、ヒトI型(Natsumeda,Y., et al. 1990 上記)および/またはII型(Collart,F.R., and Hubermann,E. 1988 上記;Natsumeda,Y., et al. 1990 上記)IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列は、折り畳まれたヒト野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインが及んでいる距離を予想する根拠に使用できる。残基Glu111−Gln243を包含している野生型ヒトII型IMPDHポリペプチドのサブドメインは、133アミノ酸残基の直線長さに及んでいる(配列番号61)。
【0056】
IMPDHのX線結晶構造もまた、折り畳まれたIMPDHポリペプチド中のサブドメインが及んでいる距離を予想するのに使用できる。例えば、IMPおよびMPAと複合体形成している野生型チャイニーズハムスターIMPDHホロ酵素のX線結晶構造が過去に決定されており、このサブドメインの寸法がほぼ20 x 20 x 40オングストロームである事、そしてGlu111−CAからGln243−CA(例えば、CAは各アミノ酸残基について炭素α原子である)までのサブドメインが及んでいる距離が約5.1オングストロームである事が示されている(M.D.Sintchak, et al., 1996 Cell 85:921−930)。ヒトIMPDHのX線結晶構造もまた決定されており、Glu111−CAからGln243−CAまでの距離は約5.5オングストロームである(Colby,T.D., et al., 1990 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:3531)。折り畳まれたI型IMPDHのサブドメインが及んでいる距離はおよそ5オングストロームであると仮定できる。
【0057】
本発明は、MPAに結合した本発明に係るIMPDH−DKT多量体中の置換トリペプチドの長さが及んでいる距離は、X線結晶データからの決定によると約5オングストロームであるという発見を提供する。
【0058】
本発明の或る態様は、約4.8ないし6.0オングストロームの間の距離に及んでいる置換オリゴペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチドを提供し、この距離は、折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDHポリペプチド単量体または折り畳まれた野生型哺乳動物IMPDH多量体のサブドメイン領域の距離の範囲である。より好ましい態様は、約5.0および5.2オングストロームの間の距離に及んでいる置換オリゴペプチドをそれぞれ含む修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0059】
h) 修飾IMPDHポリペプチド由来の多量体型
本発明は、互いに結合している複数の修飾I型および/またはII型ヒトIMPDHポリペプチドを含む、本明細書で修飾IMPDH多量体と称する多量体IMPDH分子を提供する。この修飾IMPDH多量体は、他の構成成分、例えばカリウムイオンを含んでいてもいなくてもよい。したがって、修飾ホモ多量体IMPDH分子は、複数のI型またはII型修飾IMPDHポリペプチドを含むことができる。同様に、修飾ヘテロ多量体IMPDH分子は、I型およびII型修飾IMPDHポリペプチドの組み合わせを含むことができる。
【0060】
例えば、IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRT多量体を包含する、特定の修飾されたII型ヒトIMPDHポリペプチドを各々に複数含む、修飾ホモマーIMPDH分子が単離された。
【0061】
修飾IMPDH多量体は2ないし8個の修飾IMPDHポリペプチドを含むことができる(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。本発明の或る態様は、2個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば二量体)を提供する。より好ましい態様は4個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば四量体)を包含し、そして最も好ましい態様は、8個の修飾IMPDHポリペプチドを有する修飾IMPDH多量体(例えば八量体)を包含する。
【0062】
修飾IMPDHポリペプチドは、適当な緩衝溶液、例えば25mM Tris、pH8.2;300mM KCl;10%グリセロール;1mM EDTA;および2mM DTTを含有する溶液中で多量体分子を形成できる(Brandon C. & Tooze J. 1991 in:Introduction to Protein Structure (Garland Publishing Inc., London))。
【0063】
溶液中での四量体および八量体の形成は、静的および動的光散乱(Freifelder,D. 1982 in:Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., SanFrancisco, CA)、および分析用超遠心分離(Deutscher,M.P. 1990 in Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)を包含する種々の方法によって測定できる。これに代わる方法は、天然SDS/PAGEゲル電気泳動およびゲル透過クロマトグラフィーを包含する(ed. Freifelder,D. 1982 in: Physical Biochemistry; Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., San Francisco, CA; ed. Oliver,R.W.A. 1989 in: HPLC of Macromolecules: a Practical Approach IRL Press, Oxford University)。
【0064】
例えば、IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRP多量体は、分析用ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、二量体と四量体という多量体型の間で動的平衡にあるように見受けられる(ed. Oliver,R.W.A. 1989 in: HPLC of Macromolecules: a Practical Approach (IRL Press, Oxford University))。
【0065】
h) 修飾IMPDH多量体は機能的活性を示す
本発明は、野生型IMPDHホロ酵素の機能的活性を示す修飾IMPDH多量体を提供する。例えば、野生型哺乳動物IMPDHホロ酵素は、IMPの存在下でNADからNADHへの変換を触媒する。したがって、本発明に係る多量体分子はIMPの存在下でNADHの産生を触媒する。当業者は、本明細書に記載の、またはS.F.Carr, et al(1993) J.Biol.Chem. 268:27286−27290およびB.Xiang, et al.(1996) J.Biol.Chem. 271:1435−1440に記載のインビトロ法を用いてNADHの産生について修飾IMPDH多量体を容易に検定することができる。
【0066】
例えば、修飾IMPDH多量体および野生型ヒトII型IMPDHホロ酵素が産生するNADHの量は37℃で340nm(ε=6220M−1cm−1)の分光光度測定によって比較できる(Carr,S.F., et al., 1993 上記)。
【0067】
別法として、本発明に係る多量体分子の機能的活性は、HPLC分析と分光光度検定を用いてIMPおよびNADからのXMPおよびNADHの産生を測定することによって分析できる(Montero,C. et al., 1995 Clinica Chemica Acta 238:169−178)。
【0068】
h) 修飾IMPDHポリペプチドに及ぼすMPAおよび/またはその他の化合物の
阻害効果
本発明は、野生型哺乳動物IMPDHホロ酵素の活性を阻害することが分かっている化合物により阻害される、野生型IMPDHホロ酵素の機能的活性を有する、修飾IMPDH多量体を提供する。例えば、MPAは、IMPDHホロ酵素活性の非競合的インヒビターである化合物であって、NADからNADHへの変換を阻害する(T.J.Franklin and J.M.Cook 1969 Biochem.J. 113:515−524)。これに代わる化合物には、ラパミシン、ならびに競合的インヒビターであるヌクレオシド類似体、例えばチアゾフリン、リバビリンおよびミゾリビンが包含される(Hedstrom,L., et al., 1990 Biochemistry 29:849−854; Cooney,D., et al., 1982, Biochem.Pharm. 31:2133−2136; Smith,C., et al., 1974:Biochem.Pharm., 23:2727−2735; Koyama,H. & Tsuji,M., 1983, Biochem.Pharm., 32:3527−3553)。
【0069】
典型的には、推定阻害化合物の効果を評価する方法は以下の工程を含む:適当な濃度のIMP、NAD、緩衝液、および評価すべき化合物をそれぞれ入れた別々の反応容器に、野生型ホロ酵素および修飾IMPDH多量体を入れ;反応容器の内容物を適当なインキュベート条件の下で充分な時間反応させ;そして、各反応容器内で生成したNADHの量を当分野で既知の方法によって監視し;野生型ホロ酵素が産生したNADHの量を、修飾IMPDHポリペプチドが産生した量と比較して、該化合物に対する修飾IMPDHポリペプチドの相対感受性を決定する。
【0070】
例えば、修飾IMPDH多量体の機能的活性(例えばNADH産生)に及ぼすMPAの阻害効果を、連続希釈法と定常状態酵素動力学法を用いて決定できる(S.F.Carr, et al. 1993 上記;B.Xiang, et al., 1996 上記)。
【0071】
2. 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子
本発明は、本明細書中「修飾impdhポリヌクレオチド配列」と称する、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を有する、様々な単離された、そして組換えの核酸分子を提供する。本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド断片、および関連ポリヌクレオチド分子、例えば修飾IMPDHに相補的なポリヌクレオチド配列またはその一部、および本発明に係る核酸分子とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0072】
本明細書中、本発明に係る核酸分子とも称する修飾impdhポリヌクレオチドは、好ましくは単離形態であり、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連分子、ならびにそれらの断片を包含するが、これらに限定される訳ではない。特に考えられるのは、ゲノムDNA、リボザイム、およびアンチセンス分子、ならびに代替バックボーンに基づく核酸、または天然起源から誘導されているか合成されたものであるかに拘わらず代替塩基を含んでいる核酸である。
【0073】
a) 本発明に係る単離されたポリヌクレオチド配列
本発明は、多くの形態に具体化される、好ましくは単離形態の、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。本発明に係るimpdhポリヌクレオチド配列は、天然合成ポリヌクレオチドとして、または天然、合成、半合成、もしくは組換えの如何に拘わらず、任意の供給源から単離することができる。したがって、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、任意の種、特に、牛、羊、豚、マウス、馬、および好ましくはヒトを包含する哺乳動物から単離できる。impdhポリヌクレオチドの単離には標準法を使用でき、例えばMolecular Cloning; A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook, Fritch, and Maniatis 1989, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい。
【0074】
例えば、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列は、野生型IMPDHタンパク質をコードしているcDNAクローンを単離し、次いで組換えDNA技術を用いて、サブドメイン配列を置換オリゴペプチドをコードしているヌクレオチド配列で置換するよう、このcDNAクローンを操作することによって作製できる。この組換えDNA法は例えばPCR技術を包含する(米国特許第4603102号)。
【0075】
a) 本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチ
ド配列
本発明は、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を有する、単離された核酸分子を提供する。例えば本発明は、配列番号40−44に記載の置換トリペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列のいずれかと配列一致を有する、単離された核酸分子を提供する。これとは別に本発明は、配列番号45−47に記載の置換テトラペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列のいずれかと配列一致を有する、単離された核酸分子を提供する。
【0076】
c) 修飾IMPDHポリペプチドの断片をコードしている核酸配列
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドの一部または断片をコードしているポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。ポリヌクレオチド断片のサイズはその意図する用途によって決定する。例えば、核酸プローブまたはPCRプライマーとして使用する断片の長さは、プロービングまたはプライミング中に比較的少数の偽陽性が得られるように選択する。これとは別に、修飾impdhポリヌクレオチド配列の断片を使用して、異なる配列と融合する修飾impdhポリヌクレオチド配列を有する組換え融合遺伝子、例えば、発現されたポリペプチドの単離および/または精製を促進するヒスチジンタグをコードしているヌクレオチド配列を組み立てることができる。
【0077】
本発明に係るプローブ、プライマー、および断片は、例えばゲノムまたはcDNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニング、または遺伝子発現の分析手段としてのmRNA種の検出および定量を包含する様々な分子生物学的技術にとって有用である。好ましくはこのプローブおよびプライマーはDNAである。理論的および実用的理由により、少なくとも15塩基対の長さのプローブまたはプライマーが示唆される(Wallace and Miyada 1987 in: Methods in Enzymology 152:432−442, Academic Press)。本発明に係るプローブとプライマーは当業者に周知の方法により製造できる(例えばSambrook et al., 1989 上記、を参照されたい)。好ましい態様では、このプローブおよびプライマーは米国特許第4683202号に開示のポリメラーゼ連鎖反応によって合成する。
【0078】
本発明の或る態様は、本発明に係る核酸分子またはその任意の特定部分の特異的増幅を可能にする、修飾impdhポリヌクレオチド配列に相補的な核酸プライマーを提供する。
【0079】
d) 修飾impdh配列に相補的な配列
本発明は、本発明に係るヌクレオチド配列、例えば配列番号40−47に記載の配列に相補的なポリヌクレオチド配列を包含する。
【0080】
d) impdh配列とハイブリダイズできる配列
本発明は、高度緊縮ハイブリダイゼーション条件下で修飾impdhポリヌクレオチド配列、例えば配列番号40−47に記載の配列と選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を提供する。典型的には、標準的高度緊縮条件下のハイブリダイゼーションは、互いに相補的な二つの核酸分子(例えば100%の正確な相補性)、または互いに殆ど相補的な二つの核酸分子(例えば約70%ないし99%一致する、例えばホモローガス配列)の間で起こる。核酸分子間の高度緊縮ハイブリダイゼーションは、例えば相同性の程度、ハイブリダイゼーションの緊縮性、およびハイブリダイズする鎖の長さに依存するということが、当業者にとっては容易に明らかである。
【0081】
非ホモローガス塩基の対合を嫌う高度緊縮ハイブリダイゼーション条件は当分野で周知である。典型的には、高度緊縮ハイブリダイゼーション条件とは、5X SSPEおよび50%ホルムアミド中50℃ないし65℃でのハイブリダイズ、および0.5X SSPE中での50℃ないし65℃での洗浄を含む。典型的な低緊縮条件は、5X SSPEおよび40%ないし45%ホルムアミド中35℃ないし37℃でのハイブリダイズ、および1−2X SSPE中での42℃での洗浄を含む。
【0082】
高度緊縮ハイブリダイゼーション法のための条件と手順は当分野でよく知られており、Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook, Fritch, and Maniatis 1989, Cold Spring Harbor Pressから容易に得られる。
【0083】
d) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているコドン使用頻度変異体
開示されたヌクレオチド配列とは異なっているが、コードされているアミノ酸配列は変化させない、修飾IMPDHポリペプチドのコドン使用頻度変異体を作製することが有利であるかも知れない。例えば、宿主細胞が利用するコドンの頻度に従って、特定の原核または真核発現宿主における修飾impdh転写物または修飾IMPDHポリペプチドの産生レベルを最適化するよう、コドンを選択することができる。修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を変化させる別の理由は、より望ましい性質、例えば増大した半減期を有するRNA転写物の産生を包含する。遺伝コードの縮重の結果、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている沢山の変異体ヌクレオチド配列が単離できる。したがって本発明は、開示されている修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列の可能な全組み合わせを産生する全ての可能なトリプレットコドンの選択を企図している。本発明の或る態様は、単離されたヌクレオチド配列が配列番号40−47に記載の配列と異なっており、その結果、各々の変異体ヌクレオチド配列が、配列番号20、22、27、29、30、34、36、または38に記載の修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列とそれぞれ配列一致を有するポリペプチドをコードしているような、単離されたヌクレオチド配列を提供する。
【0084】
アミノ酸コード化配列は以下の通りである:
【0085】
g) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているRNA分子
本発明は、配列番号20−39に記載の修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしている、単離されたRNA分子を提供する。特に、本発明に係る、完全長または部分的mRNA分子、または修飾IMPDHポリペプチドをコードしているRNAオリゴマーが単離できる。このRNA分子は、天然に存在する分子として単離でき、または組換えDNA技術もしくは化学合成によって製造できる。本発明に係るRNA分子は、修飾IMPDHポリペプチドの全体または一部をコードしているヌクレオチド配列をそれぞれ包含する。本発明に係るRNA分子は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の検出のためのハイブリダイズする核酸プローブとして有用である。
【0086】
h) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている、標識した核酸分子
修飾IMPDHポリヌクレオチド配列を有する核酸分子は検出可能なマーカーで標識することができる。この標識化IMPDHポリヌクレオチド配列は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子の検出のためのハイブリダイズ可能な核酸プローブとして使用できる。検出可能なマーカーの例は、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤または酵素を包含するがこれらに限定されない。標識化DNAおよびRNAプローブを製造する技術は当分野でよく知られている(Sambrook, et al., 1989 上記)。
【0087】
i) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の変異体
本発明は、配列番号40−47に記載の配列とは異なる修飾impdhポリヌクレオチド配列を提供する。この変異体ポリヌクレオチド配列は、天然に存在する供給源から単離、または組換えDNA技術によって製造することができる。変異体ポリヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号20、22、27、29、30、34、36、または38に記載の修飾IMPDHポリペプチドをコードしている。
【0088】
この修飾impdhポリヌクレオチド配列は、置換トリまたはテトラペプチド領域に保存的または非保存的変化を有する修飾IMPDHポリペプチドをコードしている。例えば、変異体impdhポリヌクレオチド配列は、置換オリゴペプチド領域に保存的アミノ酸変化、例えばロイシンからイソロイシンへの置換を有する修飾IMPDHポリペプチドの変異体をコードすることができる。別の態様では、impdhポリヌクレオチド変異体は非保存的変化、例えばグリシンからトリプトファンへの置換を有することができる。
【0089】
ポリヌクレオチド配列は、該ポリペプチドのコンホメーションまたは機能のいずれも変化させることなく保存的アミノ酸置換をコードすることができる。このような変化は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかをこれら疎水性アミノ酸のうち別のアミノ酸に;グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(E)に、そしてその逆;アスパラギン(N)をグルタミン(Q)に、そしてその逆;そしてスレオニン(T)をセリン(S)に、そしてその逆に置換することを包含する。特定のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造内でのその役割に応じて、その他の置換もまた保存的であると考えることができる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)はしばしば相互交換可能であり、アラニン(A)とバリン(Vもまた同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)はしばしばロイシンおよびイソロイシンと、そして時にバリンと交換できる。リジン(K)とアルギニン(R)はしばしば位置を交換でき、この場合、該アミノ酸残基の重要な特徴はその電荷であって、これら二つのアミノ酸残基のpKの相違は重要でない。特別な環境ではさらに別の変化も保存的と考えることができる。
【0090】
j) 修飾IMPDHポリペプチドをコードしている誘導体核酸分子
本発明に係る核酸分子はまた、ペプチド核酸(PNA)、または一本鎖DNAもしくはRNAと塩基対依存的様式で特異的に結合するホスホロチオアート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、およびメチルホスホナートといった誘導体分子を包含する(Zamecnik,P.C., et al., 1978 Proc.Natl.Acad.Sci. 75:280284;Goodchild,P.C., et al., 1986 Proc.Natl.Acad.Sci. 83:4143−4146)。
【0091】
PNA分子は、リジンのようなアミノ酸残基およびアミノ基が付加した核酸オリゴマーを含む。抗遺伝子物質とも呼称されるこれらの小分子は、核酸の相補的(鋳型)核酸鎖に結合することによって転写物の伸長を停止させる(Nielsen,P.E., et al., 1993 Anticancer Drug Des 8:53−63)。例えば、DNA、RNA、およびそれらの類似体の合成法についての総説は、Oligonucleotides and Analogues, eds. F.Eckstein, 1991, IRL Press, New York; Oligonucleotide Synthesis, ed. M.J.Gait, 1984, IRL Press, Oxford, Englandに見出すことができる。加えて、アンチセンスRNA技術のための方法は米国特許5194428および5110802に記載されている。当業者は本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を用いてこれらのクラスの核酸分子を容易に取得できる。例えばInnovative and Perspectives in Solid Phase Synthesis(1992) Egholm, et al. pp325−328または米国特許第5539082号を参照されたい。
【0092】
3. 修飾IMPDH配列を含む組換え核酸分子および宿主ベクター系
本発明は、修飾IMPDHポリペプチド配列またはその断片をコードしている組換え核酸分子、例えば組換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書中使用するrDNA分子とは、インビトロでの分子操作に付されたDNA分子である。rDNA分子の製造方法は当分野で周知であり、例えばSambrook et al., Molecular Cloning(1989)を参照されたく、その方法は修飾IMPDHポリペプチドの産生にとって有用である。
【0093】
本発明に係る核酸分子は、異なる配列に結合した修飾impdhポリヌクレオチド配列をそれぞれ含む組換え分子であってよい。例えば、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、組換えベクターを生成するためのベクターに機能的に結合していてよい。
【0094】
a) 修飾impdh配列を含むベクター
ベクターという語は、プラスミド、コスミド、およびファグミド(phagmid)を包含するがこれらに限定されない。自律的に複製するベクターは、典型的には、適当な宿主細胞内でのrDNAの複製を指令するレプリコンを含む核酸分子を指す。好ましいベクターはまた、発現調節要素、例えばプロモーター配列を含み、これは挿入された修飾impdhポリヌクレオチド配列の転写を可能にし、適当な宿主細胞、例えばE.coli中で機能的に結合した修飾IMPDH配列の発現(例えば、転写および/または翻訳)の調節に用いられる。原核生物発現調節要素は当分野で知られており、誘導的プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、転写ターミネーター、およびその他の転写調節要素を包含するがこれらに限定されない。翻訳に関与するその他の発現調節要素が当分野で知られており、シャイン−ダルガルノ配列、ならびに開始および停止コドンを包含する。
【0095】
好ましいベクターはさらに、薬物耐性、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシン耐性を付与する遺伝子産物をコードしている少なくとも1個の選択可能マーカー遺伝子を含む。典型的には、ベクターは、外因性DNA配列の都合良い挿入を可能にする複数のエンドヌクレアーゼ制限部位をも含む。
【0096】
好ましいベクターは、原核宿主細胞と共存可能な発現ベクターである。原核細胞発現ベクターは当分野で周知であり、幾つかの商業的供給源から入手できる。典型的な係るベクターはpET24a発現ベクターであって、これはE.coli中で外来遺伝子を発現するのに使用し、T7 RNAポリメラーゼ系を含み、そしてカナマイシン耐性を付与する(Novagen,Inc., Madison, WI)。
【0097】
a) 修飾impdh配列を含む融合遺伝子
融合遺伝子は、異なる配列と融合した修飾impdhポリヌクレオチド配列を含む組換え分子のもう一つの例である。例えば、修飾impdhポリヌクレオチド配列は、発現された修飾IMPDHポリペプチドの単離および/または精製を容易にする隣接ヒスチジン残基をコードしているタグ配列と融合させることができる(Marshak,D.R., et al., 1996 in: Strategies for Protein Purification and Characterization pp396)。
【0098】
これに代わり、キメラ組換え分子は、それぞれ異なる供給源から単離したimpdh配列と結合した置換オリゴペプチドを含む。例えば、N末端触媒ドメインをコードしているポリヌクレオチド配列は、C末端ドメインをコードしているポリヌクレオチド配列とは異なる供給源からのものであってよい。IMPDHのNおよびC末端ドメインは、ヒト(Collart and Hubermann 1988 上記)、チャイニーズハムスター(Natsutmeda and Carr 1993 上記)もしくはその他の真核生物、または原核生物由来であってよい。
【0099】
B. 宿主−ベクター系
本明細書に開示する核酸分子を持っている宿主細胞もまた本発明によって提供する。本発明は、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしているヌクレオチド配列を含むベクター、プラスミド、ファグミド、またはコスミドを導入した適当な宿主細胞を含む宿主−ベクター系を提供する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞とすることができる。例えば、多くの商業的に入手し得るEscherichia coli菌株は、外来タンパク質の発現にとって特に有用である。好適な真核宿主細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、または動物細胞、例えば哺乳動物細胞を包含する。好ましい態様は、E.coli BL21(DE3)宿主細胞(Novagen)中に導入した修飾impdhポリヌクレオチド配列を含む、組換えNovagen pET24a(Novagen,Inc., Madison, WI)を含む宿主−ベクター系を提供し、これは例えば修飾IMPDHタンパク質の産生にとって有用である。
【0100】
本発明に係る組換えDNA分子は、典型的には使用ベクターおよび使用宿主系の型に依存する周知の方法によって適当な宿主細胞中に導入できる。例えば、典型的には電気穿孔および塩処理法による原核宿主細胞の形質転換を使用し、例えば、Cohen et al., Proc Acad Sci USA(1972) 69:2110; およびManiatis et al., (1989) in: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。rDNA、電気穿孔、カチオン性脂質または塩処理法を含む、ベクターによる脊椎動物細胞の形質転換を、典型的に使用する(Graham et al., 1973 Virology 52:456; Wigler et al., 1979 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1373−76)。
【0101】
組換えDNA分子により導入した細胞は周知の技術により同定できる。例えば、本発明に係るrDNAの導入から導かれた細胞をクローニングして、単一コロニーを生成できる。これらのコロニー由来の細胞を収穫し、溶菌し、それらのDNA内容を、Southern, J.Mol.Biol. (1975)98:503、またはBerent et al., Biotech. (1985) 3:208に記載のような方法を用いてrDNAの存在について調べるか、または該細胞の産生したタンパク質を免疫学的方法によって検定する。
【0102】
選択されたベクターは、細菌宿主細胞中で修飾IMPDHポリペプチドを発現および産生させるための発現ベクターとすることができる。例えば、容易に精製できる融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターは、多機能E.coliクローニングおよび発現ベクター、例えばBLUESCRIPT(Stratagene)[ここでは修飾IMPDHコード化配列を、アミノ末端Metおよびこれに続くβ−ガラクトシダーゼの7残基のための配列を有するベクターにフレーム内でライゲーションし、その結果ハイブリッドタンパク質が生成する];pINベクター(Van Heeke & Schuster 1989 J Biol Chem 264:5503−5509); などを包含するがこれらに限定される訳ではない。pGEXベクター(Promega, Madison Wis.)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着とその後の遊離グルタチオン存在下での溶離によって、溶菌した細胞から容易に精製することができる。このような系で製造するタンパク質は、ヘパリン、トロンビンまたは第XA因子プロテアーゼ開裂部位を含むよう設計し、その結果、目的とするクローンポリペプチドはGST部分から随意に放出され得る。
【0103】
Saccharomyces cerevisiaeのような酵母宿主細胞では、構成的または誘導的プロモーター、例えばβ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含む幾つかのベクターが使用できる。総説として、F.Ausubel et al., 1989 in: Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York N.Y.およびGrant et al., 1989 Methods in Enzymology 153:516−544を参照されたい。
【0104】
植物発現ベクターを使用する場合、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている配列の発現は幾つかのプロモーターのうちいずれかによって駆動できる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウイルスプロモーター(Brisson et al., 1984 Nature 310:511−514)を、単独またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用できる(Takamatsu et al., 1987 EMBO J.6:307−311)。別法として、RUBISCOの小サブユニット(Coruzzi et al., 1984 EMBO J 3:1671−1680; Broglie et al., 1984 Science 224:838−843)のような植物プロモーター;または熱ショックプロモーター(Winter,J. and Sinibaldi,R.M. 1991 Results Probl.Cell.Differ. 17:85−105)が使用できる。これらの組み立て物は直接DNA形質転換または病原体仲介トランスフェクションにより植物細胞に導入できる。係る技術の総説については、Hobbs,S.またはMurry L E in: McGraw Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill New York N.Y., pp191−196またはWeissbach and Weissbach (1988) Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, New York N.Y., pp421−463を参照されたい。
【0105】
修飾IMPDHポリペプチドの発現に使用できる別の発現系は昆虫系である。このような系の1つでは、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫で外来遺伝子を発現させる。修飾IMPDHコード化配列をこのウイルスの非必須領域、例えばポリヘドリン遺伝子中にクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの調節下に置くことができる。impdhヌクレオチド配列は、うまく挿入されるとこのポリヘドリン遺伝子を不活性とし、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを産生する。次いでこの組換えウイルスを用いてS.frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫を感染させ、そこで修飾IMPDHポリペプチドが発現される(Smith et al., 1983 J Virol 46:584; Engelhard,E.K. et al., 1994 Proc Nat Acad Sci 91:3224−7)。
【0106】
哺乳動物宿主細胞では幾つかのウイルスに基づく発現系を利用できる。発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、修飾impdhコード化配列を、アデノウイルス後期プロモーター(例えば転写のための)および三部分リーダー配列(例えば翻訳のための)を含むアデノウイルスベクターと機能的に結合できる。このウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入は、感染した宿主細胞において修飾IMPDHを発現できる、利用可能なウイルスを導く(Logan and Shenk 1984 Proc Natl Acad Sci 81:3655−59)。加えて、転写エンハンサー、例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーを使用して哺乳動物宿主細胞での発現を増大させることができる。
【0107】
修飾impdh配列の有効な翻訳には特異的開始シグナルもまた必要であるかも知れない。これらのシグナルはATG開始コドンと隣接配列を包含する。修飾impdh開始コドンと上流配列を適当な発現ベクター中に挿入する場合、さらなる翻訳調節シグナルは必要ない。しかしながら、コード化配列またはその一部分のみを挿入する場合、ATG開始コドンを包含する外因性転写調節シグナルを供給する必要がある。さらに、この開始コドンは、挿入物全体の転写を確実とするために正しいリーディングフレームになければならない。外因性転写要素と開始コドンは、天然および合成両者の様々な起源であってよい。発現の効率は使用する細胞系にとって適切なエンハンサーを包含させることにより、増強できる(Scharf,D. et al., 1994 Results Probl Cell Differ 20:125−62; Bittner et al., 1987 Methods in Enzymol 153:516−544)。
【0108】
加えて、宿主細胞菌株は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現されたタンパク質を所望のやり方でプロセシングする能力について選択できる。ポリペプチドのこのような修飾は、アセチル化、カルボキシ化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化を包含するがこれらに限定されない。正しい挿入、折り畳みおよび/または機能のためには、「プレプロ」型のタンパク質を開裂する翻訳後プロセシングもまた重要である。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などといった異なる宿主細胞は、特異的細胞機構およびこのような翻訳後活性のための特徴的メカニズムを持っており、導入された外来タンパク質の正しい修飾とプロセシングを確実にするよう選択することができる。
【0109】
組換えタンパク質の長期高収量産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、修飾IMPDHを安定に発現するセルラインは、ウイルス複製起点または内因性発現要素および選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを用いて形質転換できる。このベクターの導入後、細胞を強化培地で1−2日間増殖させ、その後これを選択培地に交換する。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、その存在が、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖と回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性細菌塊を、その細胞型にとって適切な組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0110】
形質転換されたセルラインを回収するため数多くの選択系を使用できる。これらには、tk−マイナスまたはaprt−マイナス細胞でそれぞれ使用できる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,M. et al., 1977 Cell 11:223−32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,I. et al., 1980 Cell 22:817−23)遺伝子が包含されるがこれらに限定される訳ではない。また、抗代謝産物、抗生物質または除草剤耐性、例えばメソトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler,M. et al., 1980 Proc Natl Acad Sci 77:3567−70); アミノグリコシドネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与するnpt(Colbere−Garapin,F. et al., 1981 J Mol Biol 150:1−14)およびクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性をそれぞれ付与するalsまたはpatも選択の基礎に使用できる。さらなる選択遺伝子、例えば細胞に、トリプトファンの代わりにインドールを利用させるtrpB、または細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用させるhisD(Hartman,S.C. and R.C.Mulligan 1988 Proc Natl Acad Sci 85:8047−51)が記載されている。近年、可視マーカーの使用が人気を集めており、アントシアニン、β−グルクロニダーゼとその基質GUS、ならびにルシフェラーゼとその基質ルシフェリンのようなマーカーが、形質転換体の同定のためのみならず、特定のベクター系に帰すことのできる一過性または安定なタンパク質発現の量を定量するために広く使用されている(Rhodes,C.A., et al., 1995 Methods Mol Biol 55:121−131)。
【0111】
C. 修飾IMPDHポリペプチドの製造のための方法
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は組換え法または化学合成法によって製造できる。
【0112】
高収量を望むならば組換え法が好ましい。一般に、組換え修飾IMPDHポリペプチドの産生は宿主/ベクター系の使用を含み、これは典型的には以下の工程を含む。まず、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片をコードしている核酸分子、例えば配列番号40−47に開示のポリヌクレオチド配列または上に記載した配列変異体のいずれか1つを入手する。次にこの修飾IMPDHコード化核酸分子を、好ましくは上記の適当な発現調節配列と機能的に結合させて発現ベクター中に挿入し、修飾IMPDHコード化配列を含む組換え発現ベクターを作製する。次いでこの発現ベクターを標準的形質転換法によって適当な宿主中に導入し、得られた形質転換宿主を、修飾IMPDHポリペプチドのインビボ産生を可能にする条件の下で培養する。例えば、修飾impdh遺伝子の発現が誘導的プロモーターの調節下にあるならば、好適な増殖条件は適当なインデューサーを包含する。組換えベクターは修飾impdh配列を宿主ゲノム中に組み込むことができる。別法として、組換えベクターはこの修飾impdh配列を、自律的に複製するベクターの一部として染色体外に維持することができる。このように生成された修飾IMPDHポリペプチドを増殖培地からまたは細胞から直接単離するが、幾らかの不純物を寛容できる場合は、該タンパク質の回収および精製は必要ないかも知れない。当業者は、当分野で既知の適当な宿主/発現系を、修飾IMPDHポリペプチドを製造するための修飾IMPDHコード化配列と共に使用するため、容易に適合させることができる(Cohen et al., 1972 Proc.Acad.Sci.USA 69:2110; およびManiatis et al., 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)。様々なタンパク質精製法の例をStrategies for Protein Purification and Characterization (1996) pp396, Marshak,D.R., et al.に見出すことができる。或る態様は、アニオン交換クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)、色素親和クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)、IMP親和クロマトグラフィー(Ikegami,T., et al., 1987, Life Sciences 40:2277−2282)、およびゲル透過クロマトグラフィー(Deutscher,M.P., 1990 in: Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology, Academic Press,Inc., San Diego, CA)を包含する3種類までの一連のクロマトグラフィー法を使用して精製した修飾IMPDHポリペプチドを提供する。
【0113】
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは化学合成により製造することもできる。ポリペプチドの固相化学合成の原理は当分野で周知であり、この領域に関する一般教科書に見出すことができる(Dugas,H. and Penney,C. 1981 in: Bioorganic Chemistry, Springer−Verlag, New York, pp54−92)。修飾IMPDHポリペプチドは、Applied Biosystems 430Aペプチド合成機(Applied Biosystems, Foster City, Calif.)およびApplied Biosystemsの供給する合成サイクルを利用する固相法により合成できる。保護アミノ酸、例えばt−ブトキシカルボニル保護アミノ酸、およびその他の試薬は多くの化学薬品供給会社から商業的に入手できる。
【0114】
C. 修飾IMPDHポリペプチドの用途
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは、抗体産生を導く能力としての用途、疾病の診断および/または予後マーカー、ならびにさらに下に記載する種々の治療様式のための標的としての用途を包含する(但しこれらに限定されない)様々な目的に役立つ。修飾IMPDHポリペプチドはさらに、修飾IMPDHに結合するリガンドおよびその他の物質の同定および単離にも有用である。修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は、標準ペプチド合成技術または組換えDNA技術を用いて製造できる。
【0115】
1. 修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合する抗体
本発明に係るペプチドは、修飾IMPDHポリペプチドの性質、例えば修飾されたおよび/または野生型IMPDHポリペプチドの種々のドメインに付随するエピトープに特異的に結合する抗体の生成を導く能力を示す。これらの抗体は修飾IMPDHポリペプチドを発現する細胞を同定および/または標的化するために使用できる。例えば、これらの抗体を使用して、IMPDH活性を調節するため、または野生型もしくはその他の形のIMPDHを発現する細胞を直接殺滅するために、野生型またはその他の形のIMPDHを発現する細胞に対するコンジュゲートした毒素をデリバリーすることができる。このコンジュゲートした毒素には、ジフテリア毒素、コレラ毒素、リシンまたはシュードモナス外毒素が包含されるがこれらに限定されない。これに代わり、これらの抗体を用いて、野生型IMPDHまたは修飾IMPDHポリペプチド/多量体と相互作用する物質を同定できる。これらの抗体はさらに、競合的結合物質を同定するスクリーニング検定に使用できる。
【0116】
本発明は、修飾および/または野生型IMPDHポリペプチドに結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、免疫学的に活性な断片、およびヒト化抗体)を提供する。最も好ましい抗体は特定の修飾IMPDHポリペプチドに選択的に結合し、異なる修飾IMPDHポリペプチド、または修飾IMPDHポリペプチドでないポリペプチドには結合しない(または弱く結合する)であろう。特に企図される抗体は、抗原結合ドメインおよび/またはこれらの抗体の1もしくはそれ以上の相補性決定領域を含む、モノクローナルおよびポリクローナル抗体ならびにそれらの断片(例えば組換えタンパク質)を包含する。これらの抗体は任意の供給源、例えばウサギ、羊、ラット、イヌ、ネコ、豚、馬、マウス、およびヒトからのものであってよい。
【0117】
本発明はさらに、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片を特異的に認識する抗体断片を包含する。本明細書中使用する抗体断片とは、標的に結合する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部、即ち抗原結合領域として定義する。免疫グロブリンの定常領域の幾らかが包含されるかも知れない。
【0118】
当業者には理解できるであろうが、抗体が標的とする修飾IMPDHポリペプチドの領域またはエピトープは、意図する適応によって変わる。他のエピトープを認識する抗体は、修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片の膜結合型または分泌型を検出するために、損傷を受けたまたは死にかかっている細胞上またはその内部で修飾IMPDHポリペプチドを同定するために役立つかも知れない。
【0119】
抗体製造のための種々の方法が当分野で良く知られている。例えば、単離されたまたは免疫コンジュゲートした形の修飾IMPDHポリペプチドまたは断片を用いて適当な哺乳動物宿主を免疫することにより、抗体を製造できる(Harlow,E. and Lane,D. 1989 in: Antibodies: a Laboratory Manual)。加えて、修飾IMPDHポリペプチドを含む融合タンパク質、例えば修飾IMPDHポリペプチド/GST融合タンパク質を使用することもできる。修飾IMPDHポリペプチドを発現または過剰発現する細胞を免疫に使用することもできる。同様に、修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう操作した任意の細胞を使用できる。この戦略は、内因性修飾IMPDHポリペプチドを認識する能力の増強したモノクローナル抗体の産生を導き得る。
【0120】
本発明は、異なる種由来の少なくとも二つの抗体部分、例えばヒトおよび非ヒト部分を含むキメラ抗体を企図する。キメラ抗体は、非ヒト定常領域および可変領域を持つ抗体よりもヒト対象に対して抗原性がより低い傾向があるため、有用である。キメラ抗体の抗原結合領域(可変領域)はヒトから誘導し、免疫グロブリンに生物学的エフェクター機能を付与するキメラ抗体の定常領域は非ヒト供給源から誘導できる。キメラ抗体は、原核生物抗体分子の抗原結合特異性、および真核生物抗体分子により付与されたエフェクター機能を持たねばならない。
【0121】
一般に、キメラ抗体の製造に用いる方法は以下の工程を含み得る:
a) 抗体分子の抗原結合部分をコードしている正しい免疫グロブリン遺伝子セグメントを同定およびクローニングし[この遺伝子セグメント(重鎖についてはVDJ、可変、変化および結合領域、または軽鎖についてはVJ、可変、結合領域、または単にVもしくは可変領域として知られる)はcDNAまたはゲノム型のいずれであってもよい];
b) 定常領域またはその所望部分をコードしている遺伝子セグメントをクローニングし;
c) 転写および翻訳され得るような形で完全なキメラ抗体がコードされるよう、可変領域を定常領域とライゲーションし;
d) この組み立て物を、選択マーカーおよび遺伝子調節領域、例えばプロモーター、エンハンサーおよびポリ(A)付加シグナルを含むベクター中にライゲーションし;
e) この組み立て物を細菌中で増幅し;
f) このDNAを真核細胞、最も普通には哺乳動物リンパ球中に導入(トランスフェクション)し;
g) 選択マーカーを発現している細胞を選択し;
h) 所望のキメラ抗体を発現している細胞をスクリーニングし;そして、
k) この抗体を適当な結合特異性およびエフェクター機能について試験する。
【0122】
抗TNP抗体(Boulianne et al., 1984 Nature 312:643);および抗腫瘍抗原抗体(Sahagan et al., 1986 J.Immunol. 137:1066)を包含する幾つかの明瞭な抗原結合特異性を持つキメラ抗体が、当分野で周知のプロトコルによって製造されている。同様に、幾つかの異なるエフェクター機能が、抗原結合領域をコードしている配列に新たな配列を結合させることによって達成された。これらの例には、酵素(Neuberger et al., 1984 Nature 312:604);別の種由来の免疫グロブリン定常領域および別の免疫グロブリン鎖の定常領域(Sharon et al., 1984 Nature 309:364; Tan et al., 1985 J.Immunol. 135:3565−3567)が包含される。加えて、遺伝子修飾を目的としてホモローガス組換えを用いる、抗体分子を修飾するための、およびキメラ抗体分子を製造するための方法が記載されている(Fell et al., 1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8507−8511)。
【0123】
修飾IMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を用いて、抗体産生用の修飾IMPDHポリペプチドの特定の領域を選択できる。例えば、修飾IMPDHポリペプチドの疎水性および親水性分析を用いて、修飾IMPDHポリペプチドの親水性領域を同定できる。免疫原性構造を示す修飾IMPDHポリペプチドの領域ならびにその他の領域およびドメインは、当分野で既知の様々なその他の方法(Rost,B., and Sander,C. 1994 Protein 19:55−72)、例えばChou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−SchultzまたはJameson−Wolf分析を用いて容易に同定できる。これらの残基を含む断片は特定クラスの抗体を作製するのにとりわけ好適である。
【0124】
免疫原として使用するタンパク質を製造するための、そして、担体、例えばBSA、KLHまたはその他の担体タンパク質とタンパク質の免疫原性コンジュゲートを製造するための方法は、当分野でよく知られている。幾つかの状況では、例えばカルボジイミド試薬を使用する直接コンジュゲーションが使用でき、別の例ではPierce Chemical Co., Rockford,ILの供給するような結合試薬が有効となり得る。修飾IMPDH免疫原の投与は、一般に当分野で理解されているように、適当な期間にわたる注射によって、且つ適当なアジュバントを使用して実施する。免疫スケジュールの間、抗体価を測定して抗体形成の妥当性を決定する。
【0125】
このようにして生成したポリクローナル抗血清は幾つかの適応にとっては満足できるものであるが、医薬組成物用にはモノクローナル抗体調製物が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化セルラインを、KohlerとMilsteinの標準法(Nature 256:495−497)またはMonoclonal Antibodies; A Manual of Techniques, CRC press,Inc., Boca Raton, Fla.(1987) ed., Zolaに記載のその他の技術を用いて製造できる。所望の抗体を分泌する不死化セルラインを、抗原が修飾IMPDHポリペプチドまたはその断片であるイムノアッセイによりスクリーニングする。所望の抗体を分泌する適当な不死化細胞培養を同定したならば、この細胞をインビトロで、または腹水中での産生によって培養することができる。
【0126】
次にこの所望のモノクローナル抗体を培養上清または腹水上清から回収する。免疫学的に重要な部分(即ち、修飾IMPDHポリペプチドを認識および結合する部分)を含む本発明に係るモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv断片、融合タンパク質)は、アンタゴニストおよび無傷の抗体として使用できる。修飾IMPDHポリペプチドに対するヒト化抗体もまた有用である。本明細書中使用するヒト化抗体とは、修飾IMPDHポリペプチドと結合でき、且つ、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質上有するFR領域および非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質上有するCDRを含む、免疫グロブリン分子、または、修飾IMPDHポリペプチドに結合するよう操作した配列である。1またはそれ以上の非ヒト抗体CDRを、対応するヒト抗体配列に置換することによる、マウスおよびその他の非ヒト抗体をヒト化する方法は、よく知られている(例えば、Jones et al., 1986 Nature 321:522−525; Riechmnan et al., 1988 Nature 332:323−327; Verhoeyen et al., 1988 Science 239: 1534−1536; Carter et al., 1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285;およびSims et al., 1993 J.Immunol. 151:2296を参照されたい)。
【0127】
免疫学的反応性断片、例えばFab、Fab’、またはF(ab’)2断片は一般に免疫グロブリン全体より免疫原性が低いため、これらの使用が、特に治療的場面では好ましい。さらに、2またはそれ以上のエピトープに特異的な二重特異性抗体を、当分野で一般に知られている方法を用いて作製できる。また、抗体エフェクター機能を、本発明に係る抗体の治療効果を増強するように修飾することができる。例えば、システイン残基をFc領域中に導入し、鎖間ジスルフィド結合の形成と、ホモ二量体(これは、インターナライゼーション、ADCCおよび/または補体仲介細胞殺滅の増強能力を有し得る)の作製をさせることができる(例えば、Caron et al., 1992 J.Exp.Med. 176:1191−1195; Shopes, 1992 J.Immunol. 148:2918−2922; Liu et al., 1998 Cancer Research 58:4055−4060を参照されたい)。ホモ二量体抗体は当分野で既知の架橋技術によって作製することもできる(例えば、Wolff et al., Cancer Res. 53:2560−2565)。本発明はさらに、本発明に係るモノクローナル抗体または抗イディオタイプモノクローナル抗体を有する医薬組成物を提供する。
【0128】
この抗体または断片は組換え手段により現行技術を用いて製造できる。修飾IMPDHポリペプチドの所望領域に特異的に結合する領域はさらに、複数の種の起源を持つキメラまたはCDR移植された抗体との関連で作製できる。本発明は、抗体、例えば修飾IMPDHポリペプチドに対する本発明に係る任意のモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合阻害するモノクローナル抗体を包含する。
【0129】
これとは別に、ファージディスプレーおよびトランスジェニック法を包含する、完全なヒトモノクローナル抗体を作製する方法が知られており、ヒトmAbの作製に使用できる(総説として、Vaughan et al., 1998 Nature Biotechnology 16:535−539を参照されたい)。例えば、完全なヒトモノクローナル抗体は、大きなヒトIg遺伝子組み合わせライブラリー(即ちファージディスプレー)を使用するクローニング技術を用いて作製できる(Griffiths and Hoogenboom, ”Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libralies” in: Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man, Clark,M.(Ed.), Nottingham Academic, pp45−64(1993); Burton and Barbas, ”Human Antibodies from combinatorial libraries” 同上, pp65−82)。完全なヒトモノクローナル抗体はまた、PCT特許出願WO98/24893、Jakobovits et al.(1997年12月3日公開)に記載の、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むよう操作されたトランスジェニックマウスを用いて作製できる(Jokobovits, 1998, Exp.Opin.Invest.Drugs 7:607−614をも参照されたい)。この方法は、ファージディスプレー技術に必要なインビトロ操作を回避し、真正の高親和性ヒト抗体を効率的に生成する。
【0130】
本発明に係る抗体またはその断片は、検出可能なマーカーで標識し、または第二の分子、例えば治療物質(例えば細胞毒性物質)とコンジュゲートさせ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる。例えばこの治療物質は、抗腫瘍薬、毒素、放射性物質、サイトカイン、第二の抗体または酵素を包含するがこれらに限定されない。さらに本発明は、本発明に係る抗体を、プロドラッグを細胞毒性薬へと変換する酵素に結合させる態様を提供する。
【0131】
細胞毒性物質の例は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロミド、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レツトリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、キュリシン、クロチン、カリキアミシン、sapaonaria officinalisインヒビター、メイタンシノイド、グルココルチコイドおよびその他の化学療法物質、ならびに212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reといったラジオアイソトープを包含するが、これらに限定される訳ではない。好適な検出可能マーカーは、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤または酵素を包含するがこれらに限定されない。抗体はさらに、プロドラッグをその活性型に変換することのできる、細胞殺滅または阻害プロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートさせることができる。例えば米国特許第4952394および5632999号を参照されたい。
【0132】
加えて、本発明に係るモノクローナル抗体のいずれかの抗原結合領域を含む、本発明に係る組換えタンパク質を作製できる。係る状況では、組換えタンパク質の抗原結合領域を、治療活性を持つ第二のタンパク質の、少なくとも機能的に活性な一部分と結合させる。この第二のタンパク質は、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素を包含できるがこれらに限定されない。好適な毒素は上記のものを包含する。
【0133】
治療物質を抗体にコンジュゲートまたは結合させる技術はよく知られている(例えば、Amon et al., ”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp243−56 (Alan R.Liss,Inc. 1985); Hellstrom et al., ”Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp623−53 (Marcel Dekker,Inc. 1987); Thorpe, ”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.), pp475−506(1985); およびThorpe et al., ”The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”, Immunol.Rev., 62:119−58(1982)を参照されたい)。
【0134】
2. 修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合する抗体の用途
本発明に係る修飾IMPDH抗体は、診断検定、画像化法、および癌またはその他の増殖型疾患の管理における治療法にとりわけ有用となり得る。このような検定は一般に、修飾IMPDHポリペプチドを認識しこれに結合することのできる1またはそれ以上の抗体を含み、様々な型の沈殿、凝集、補体固定、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)、酵素結合免疫蛍光検定(ELIFA)(Liu,H. et al. 1998 Cancer Research 58:4055−4060)、免疫組織化学検定などを包含する(但しこれらに限定されない)当分野で周知の様々な免疫学的検定フォーマットを包含する。
【0135】
本発明に係る抗体はさらに、修飾IMPDHポリペプチドを精製するための、そして野生型および突然変異体IMPDHポリペプチドのような関連分子を単離するための方法に使用できる。
【0136】
例えば或る態様では、タンパク質を精製するこの方法は、固体マトリックスに結合させてある修飾IMPDH抗体を、IMPDH抗体をIMPDHポリペプチドに結合させる条件下で、IMPDHを含有する溶菌液またはその他の溶液とインキュベートし;この固体マトリックスを洗浄して不純物を取り除き;そして結合した抗体からIMPDHポリペプチドを溶離させることを含む。さらにIMPDH抗体は、細胞選別および精製技術を用いてIMPDH陽性細胞を単離するために使用できる。罹患細胞上のIMPDHポリペプチドの存在および量(単独または他の細胞表面マーカーと組合わさっている)を使用して、罹患細胞を他の細胞から識別、単離することができる。
【0137】
3. 修飾IMPDHポリペプチドを発現する細胞
組織培養中で、または動物モデル(例えば、SCIDまたはその他の免疫不全マウス)の異種移植片として増殖させ得る大量の比較的純粋な修飾IMPDH陽性細胞を生成する能力は、例えば比較的均質な疾患細胞集団の増殖またはその他の表現型性質に関する様々なトランスジーンまたは治療用候補化合物の評価を包含する、多くの利点を提供する。加えて、本発明の特徴は、修飾IMPDHポリペプチドをコードしている核酸分子の高度濃縮調製物の単離をも可能にし;その核酸分子は様々な分子操作にとって充分な量で濃縮され得る。例えば、このような大量の核酸分子調製物は、IMPDH関連疾患の進行に生物学的関連性を持つ稀少遺伝子の同定を助けるであろう。
【0138】
本発明のこの態様のもう一つの貴重な適応は、原発性または局所で進行したまたは転移性疾患を持つ患者からクローニングした修飾IMPDH陽性の生存腫瘍細胞の比較的純粋な調製物を単離し、分析し、そして実験する能力である。このようにして、例えば修飾IMPDH陽性である患者の罹患細胞を、限られた生検試料から拡大し、次いで、診断および予後判定遺伝子、タンパク質、染色体異常、遺伝子発現プロファイル、またはその他の関連する遺伝子型および表現型の性質の存在について、混乱を招くかも知れない混入細胞という変数なしに試験することができる。加えて、このような細胞は、動物モデルにおいて新生物の攻撃性および転移可能性について評価できる。同様に、ワクチンおよび細胞免疫療法剤をこのような細胞調製物から作り出すことができる。
【0139】
免疫学的に反応性の断片、例えばFab、Fab’、またはF(ab’)2断片は、一般に免疫グロブリン全体よりも免疫原性が低いため、これらの断片は特に治療的状況においてしばしば好ましい。本発明はさらに、本発明に係るモノクローナル抗体または抗イディオタイプモノクローナル抗体を有する医薬組成物を提供する。
【0140】
3. 薬物発見戦略における修飾IMPDHポリペプチドの用途
a) 標的ポリペプチドとしての修飾IMPDHの用途
本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドは、構造に基づく薬品設計戦略の出発点として有用である。これらの戦略には、標的ポリペプチドまたはタンパク質、例えば修飾IMPDHポリペプチドと、この標的ポリペプチドに結合する物質との相互作用についての情報を使用することが含まれる。典型的には、係る薬品設計戦略の目標は、標的ポリペプチドに結合し、その標的ポリペプチドの活性を調節する、例えば標的ポリペプチドの活性化または阻害を行う物質または物質群を同定することである。もう一つの目標は、例えば標的ポリペプチドについての増大した結合親和性、または標的ポリペプチドについての増大した選択性、または哺乳動物対象(例えば人間の患者)への投与に対する増大した適合性といったような改善された性質を持つ治療物質を開発するために、同定された物質を変化させることである。これらの物質は、IMPDHタンパク質の、細胞による異常な発現に関連する苦痛、例えば免疫系疾患を治療するために役立ち得る。
【0141】
構造に基づく薬品設計戦略は、該物質と複合体形成した標的ポリペプチドの三次元構造についての情報の使用を含み得る。例えば、インヒビターと複合体形成した標的ポリペプチドのX線結晶構造の解析は、該物質と相互作用するそして/または結合する標的ポリペプチド内部の特異的アミノ酸残基についての情報を提供できる。さらに、目的とする野生型タンパク質の機能的活性を示す標的ポリペプチドの結晶構造を得ることは有利である。しばしばこの物質はかなり小さく、故に、技術的な難題は、該物質と複合体形成した機能的に活性な標的ポリペプチドの結晶構造を、該物質および標的ポリペプチドとのその相互作用を解析するに充分高い分析レベルで取得することである。
【0142】
本発明は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、MPAと複合体形成した機能的に活性なIMPDH多量体のタンパク質結晶構造を、過去に他の研究者が取得した、MPAに結合した野生型IMPDHの結晶構造に比してより高い分析レベルで取得するのに有用であるという発見を提供する。特に本発明は、修飾ヒトII型IMPDH−DKTの4個のサブユニットを含み1分子のMPAと複合体形成した、ホモ多量体の結晶構造が、2.0オングストロームレベルで解析されたという発見を提供する。対照的に、MPAと複合体形成したチャイニーズハムスター由来の野生型IMPDHのホモ多量体の結晶構造は、M.D.Sintchak, et al (1996 Cell 85:921−930)により2.6オングストロームレベルで解析されている。
【0143】
修飾IMPDH−DKTを含むホモ多量体のより高い解析レベルは、各々の修飾IMPDH−DKTポリペプチドが野生型IMPDHポリペプチドよりも短いという事実によるものである。特に、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、133アミノ酸残基長であるサブドメイン領域の一部が、より短い置換DKTトリペプチド(例えば一文字アミノ酸コード)で置換されている。したがって、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、514アミノ酸残基長である野生型II型IMPDH(図2)に比してわずか384アミノ酸残基長(図4)である。さらに、修飾IMPDHポリペプチドは野生型IMPDHの機能的活性(例えば、NADH産生を触媒する)を示し、MPAに結合する。したがって、修飾IMPDH−DKTポリペプチドは、修飾IMPDH−DKTおよび野生型IMPDHに結合する物質を発見するための、構造に基づく薬品設計戦略における使用にとって理想的な候補標的ポリペプチドである。
【0144】
b) 修飾IMPDHに結合する物質を検出および同定する方法
本発明はさらに、本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドおよび/または多量体と相互作用する物質を検出および同定する方法を提供する。本発明に係る修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用する物質は、修飾IMPDH多量体の活性に変化、例えば阻害または刺激を惹起してもしなくてもよい。したがって、本発明の一つの態様は、修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用する物質を同定する方法を提供する。さらなる態様は、修飾IMPDH多量体の活性に影響を及ぼす物質、例えばアゴニストおよびアンタゴニストを同定する方法を提供する。
【0145】
修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と相互作用し、またはこれに結合する候補物質を同定する一般法は以下の工程を含む。修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体を候補物質と接触させ、接触させた修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体を、当該修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を起こす条件の下でインキュベートし、そしてこの修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を、任意の適当な手段によって検出する。これらの方法はインビボまたはインビトロで実施できる。加えて、これらの方法はPANDEX.RTM(Baxter−Dade Diagnostics)系のような自動化法に適合させ、候補物質の効率的な大容量スクリーニングを可能にすることができる。
【0146】
本発明方法で使用できる修飾IMPDHポリペプチドは、単離した修飾IMPDHポリペプチド、修飾IMPDHポリペプチドの断片、修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう改変した細胞、または修飾IMPDHポリペプチドを発現するよう改変した細胞の画分を包含するが、これらに限定される訳ではない。これらの修飾IMPDHポリペプチドおよびその断片は互いに結合して多量体を形成する。
【0147】
修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と候補物質との相互作用を同定および検出するインビトロ法は、ゲル遅延検定、免疫検出を包含し、バイオチップ技術を修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と共に使用するために採用できる。その他の方法には、蛍光滴定(Freifelder,D., 1982 in: Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H.Freeman & Co., San Francisco, CA)および滴定熱量測定(Wiseman,T., et al., 1989, Anal.Biochem. 179:131−137)が包含される。インビトロ法はさらに、プロテアーゼに対するタンパク質の感受性を監視することによって、または折り畳まれた状態のタンパク質に対する特異抗体によるタンパク質の結合、もしくはシャペロンタンパク質への結合、もしくは任意の適当な表面への結合のし易さを監視することによって、折り畳まれていないタンパク質に対する折り畳まれたタンパク質の比率を監視することを包含する(米国特許第5585277号)。当業者は、或る特定の物質が修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体に結合するかどうかを決定するため、当分野で既知の多数の技術を容易に使用することができる。
【0148】
これに代わり、候補物質と修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体との相互作用を同定および検出するインビボ法を、酵母二ハイブリッド系を用いて全細胞検定で実施できる(Fields,S. and Song,O. 1989 Nature 340:245−246)。酵母二ハイブリッド系を使用して、修飾IMPDHポリペプチドと相互作用/結合するリガンドについて、cDNA発現ライブラリー(G.J.Hannon, et al. 1993 Genes and Dev. 7:2378−2391)、ランダムアプトマーライブラリー(J.P.Manfredi, et al. 1996 Molec.And Cell.Biol. 16:4700−4709)、またはセミランダム(M.Yang, et al. 1995 Nucleic Acids Res. 23:1152−1156)アプトマーライブラリーをスクリーニングできる。修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体と該物質との相互作用/結合は、リポーター遺伝子、例えばlacZの発現によって検出可能である。
【0149】
該物質は、例えば典型的にはポリペプチド、核酸分子、有機分子、ビタミン誘導体、または金属であるリガンドである。当業者は、このスクリーニング法に使用する物質の構造的性質に制限のないことが容易に理解できるであろう。該物質は合成のまたは天然に存在する化合物、例えば細胞成分であってよい。本発明方法において試験される細胞抽出物は、例えば細胞または組織の水性抽出物、細胞または組織の有機抽出物、または部分精製された細胞画分であってよい。
【0150】
このポリペプチド物質は、当分野で知られているように、標準的固相または溶液相ペプチド合成法を用いて作製できる。さらに、これらのペプチドをコードしている核酸分子が、標準的組換えDNA技術を用いて作製でき、または市販のオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成できる。
【0151】
該ポリペプチド物質のアミノ酸配列は、修飾IMPDHポリペプチドまたは多量体の構造に基づいて選択できる。小さなポリペプチドは、修飾IMPDH多量体への修飾IMPDHポリペプチドの組み立ての競合的インヒビターとしても働き得る。
【0152】
抗体物質は、修飾IMPDHポリペプチドの選ばれたドメインまたは領域と免疫反応性であり得る。一般に、該抗体が標的とするよう意図された修飾IMPDHポリペプチドの一部を抗原性領域として含むペプチドで適当な哺乳動物対象を免疫することにより、抗体が得られる。
【0153】
上記の方法で検定した物質を、無作為に選択、または合理的に選択または設計できる。本明細書での使用において、或る物質を修飾IMPDHポリペプチドの特定の配列を考慮せずに無作為に選択する場合、この物質を無作為に選択する、と言う。無作為に選択した物質の例は、化学ライブラリーまたはペプチド組み合わせライブラリー、または生物もしくは植物抽出物の成長ブロスの使用である。
【0154】
本明細書での使用において、或る物質を、標的ポリペプチドの配列および/または標的ポリペプチドのコンホメーションを考慮して非無作為的基準で選択する場合、この物質を合理的に選択または設計する、と言う。修飾IMPDHポリペプチドを作り上げるアミノ酸配列を利用することにより、物質は合理的に選択または合理的に設計できる。
【0155】
修飾IMPDH多量体と相互作用する物質を、無細胞検定系または細胞検定系を用いて、修飾IMPDH多量体の機能的活性を調節する能力について試験することができる。例えば、修飾IMPDH多量体と相互作用する物質は、野生型IMPDH多量体またはホロ酵素と比較したNADHの産生レベルの相対変化によって検出したところ、NADからNADHへの触媒的変換を阻害または増大させることができる(Carr,S.F., et al., 1993 上記;Xiang,B., et al., 1996 上記)。
【0156】
本明細書で使用する場合、或る物質が修飾IMPDH多量体の活性を低下させる、例えば生成するNADHのレベルを低下させる場合、その物質は修飾IMPDH多量体の活性に拮抗する、と言う。好ましいアンタゴニストは、他のいかなる細胞タンパク質または多量体にも影響を及ぼさずに、修飾IMPDH多量体と選択的に拮抗する。さらに、好ましいアンタゴニストは、修飾IMPDH多量体の活性を50%以上、より好ましくは90%以上低下させ、最も好ましくは修飾IMPDH多量体の全活性を除去する。
【0157】
本明細書で使用する場合、或る物質が修飾IMPDH多量体の活性を増大させる、例えば生成したNADHのレベルを増大させる場合、その物質は修飾IMPDH多量体の活性をアゴナイズする、と言う。好ましいアゴニストは、他のいかなる細胞タンパク質または多量体にも影響を及ぼさずに、修飾IMPDH多量体を選択的にアゴナイズする。さらに、好ましいアゴニストは、修飾IMPDH多量体の活性を50%以上、より好ましくは90%以上増大させ、最も好ましくは修飾IMPDH多量体の活性を倍増する。
【0158】
3. 修飾IMPDHポリペプチドの診断用途
修飾IMPDHポリペプチドには多数の診断用途がある。例えば、修飾IMPDHポリペプチドは、動物または人間対象のような対象において、異常な量のIMPDHポリペプチドまたはタンパク質の存在に関連する疾病または異常を診断する方法を提供する。或る態様では、この方法は、本発明に係る抗体のいずれか1つまたはその組み合わせを用いて、適当な生物学的被験試料中のIMPDHタンパク質の量を定量的に決定することを含む。次いで、このように決定された被験試料中のIMPDHタンパク質の量を、正常量のIMPDHタンパク質を持つ対象由来の生体試料中の量と比較できる。正常試料由来の量と比較して、測定可能なほど相違する量のIMPDHが被験試料中に存在しているということが、当該疾病の存在を示し得る。適当な生体試料とは、血液、血清、細胞、組織、または鼻、耳もしくは咽喉からの拭き取り試料を包含する。修飾IMPDHポリペプチドの量は、イムノアッセイ法のような当分野で周知の方法によって決定できる。
【0159】
これに代わり、診断法は本発明に係る核酸分子の使用を包含する。例えば、適当な生物学的被験試料内部に存在するこのような配列の量を、本発明に係る修飾IMPDH配列に相補的な核酸配列を持つ核酸分子の量を決定する分子生物学的検定によって決定することができる。正常試料由来の量と比較して、測定可能なほど相違する量の、IMPDH配列を持つ核酸分子が被験試料中に存在しているということが、当該疾病の存在を示し得る。適当な生体試料とは、血液、血清、細胞、組織、または鼻、耳もしくは咽喉からの拭き取り試料を包含する。修飾IMPDHポリヌクレオチド配列を有する核酸分子の量は、ハイブリダイゼーション法のような当分野で周知の方法によって決定できる。
【0160】
一般に、このような診断法は以下の工程を包含する。生物学的被験試料から核酸分子を取得し、これらの被験核酸分子を、被験核酸分子の相補配列と本発明に係る核酸分子とのハイブリダイゼーションを起こす条件の下で、本発明に係る核酸分子と接触させ、そしてハイブリダイズした核酸分子の存在を検出する。本発明に係るポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列が被験試料中に存在すること、または、正常もしくは「対照」試料中のレベルと比較して、測定可能なほど相違するレベルの係る配列が存在することが、本発明に係る遺伝子配列を有する試料を示唆し得る。ここで、相補的核酸配列とは、比較的些少の配列相違を持ち、標準条件下で本明細書に開示する配列とハイブリダイズできる核酸配列である。
【0161】
Falkow et al., 米国特許第4358535号に記載の診断検定を包含する、IMPDH配列を持つ核酸分子の量を検出するために使用できる様々なハイブリダイゼーション法が知られている。その他の好適なハイブリダイゼーション法の変法が、核酸の検出における使用のために利用できる。これらは、例えばin situハイブリダイゼーション、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティングを包含する。
【0162】
in situハイブリダイゼーション法は一般に、1またはそれ以上の細胞または組織内部に位置する標的核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列を有する検出可能な核酸プローブと接触させることを含む。この細胞または組織試料は、対象から取得した一次試料、または組織培養中で増殖した細胞であってよい。当分野で周知のように、細胞を固定によってハイブリダイゼーション用に調製し(例えば化学的固定)、そして、検出可能なプローブと、固定した細胞または組織内部に位置する核酸とのハイブリダイゼーションをさせる条件におく。
【0163】
別法として、IMPDH配列を有する標的核酸分子の存在および/または量を、サザン(例えばDNA)またはノーザン(例えばRNA)ブロット法によって決定できる。これらの方法は、被験細胞または組織試料から核酸分子を単離し、単離した核酸分子をサイズに従って分離し、分離した核酸分子を固体マトリックス上に固定化し、そしてこの固定化した核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列を有する検出可能な核酸プローブと接触させることを含む。この核酸分子は、塩化セシウム勾配遠心、クロマトグラフィー(例えばイオン、親和、磁気)、フェノール抽出などのような方法を用いて単離できる。単離した核酸分子は、電気泳動分離を包含する方法を用いて、サイズに従い分離できる。
【0164】
本発明に係る核酸分子はPCR技術(米国特許第4603102号;引用により本明細書の一部とする)を用いて生物学的被験試料中に検出できる。PCR法は、生物学的被験試料から核酸分子を単離し、この被験核酸分子を、本発明に係るIMPDH配列に相補的な配列を有する二つの核酸プライマーと接触させ、そしてこの被験核酸分子およびプライマーを、ハイブリダイゼーションと重合が起こるような条件の下にインキュベートすることを含む。典型的には、一方は5’フランキング領域に対応し、他方は3’フランキング領域に対応する一対のプライマーを使用して、被験試料中の本発明に係る核酸分子の存在および量を検出する。
【0165】
本発明を例示し、当業者がこれを作製および使用するのを助けるために以下の実施例を提示する。この実施例はいかなるやり方によっても本発明の範囲を別途限定する意図はない。
【0166】
(実施例)
実施例1
本発明に係るヒトI型およびII型修飾IMPDHポリペプチドを製造し単離するために使用する方法の説明を以下に提供する。
【0167】
A) 野生型ヒトIMPDHをコードしているヌクレオチド配列を作製
PCR増幅を使用して、PHA活性化ヒト末梢血白血球から単離したRNAから、完全長ヒトimpdh I型およびII型cDNAを作製した。野生型impdh cDNAの増幅に使用したプライマーは以下のものを包含する:
【0168】
【0169】
5’プライマーは、NdeI制限部位を含むよう修飾した、野生型impdhのN末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。3’プライマーは、野生型impdhのC末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。
【0170】
このPCR生成物をベクターpET24a(+)(Novagen, Madison, WI)中にサブクローニングし、DH5アルファF’(IQ)コンピテント細胞(Gibco)に導入した。この配列はヌクレオチド配列決定により確認し、報告されたゲノム配列と比較した(Zimmermann,A.G., et al., 1995 J.Biol.Chem. 270:6808−6814; Glesne,D.A. and Huberman,E. 1994 Biochem.Biophys.Res.Comm. 205:537−544)。
【0171】
上記のように作製した完全長ヒトI型impdh cDNAを鋳型に用いて、IMPDH−DKTをコードしているPCR増幅ヌクレオチド配列を作製した(配列番号44)。完全長ヒトII型impdh cDNAを鋳型に用いて、IMPDH−DKT、−SPS、−GSG、−SPT、−AGRP、および−NSPLを包含する様々なトリおよびテトラペプチドIMPDHをコードしているPCR増幅ヌクレオチド配列を作製した(例は、配列番号40−43、および45−47を包含する)。様々な修飾impdh配列の増幅に使用したプライマーは以下のものを包含していた:
【0172】
【0173】
5’プライマーは、NdeI制限部位を含むよう修飾した、野生型impdhのN末端配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでいた。
【0174】
3’プライマーは、置換オリゴペプチド(例えば、トリまたはテトラペプチド)をコードしているヌクレオチド配列を含み、そしてII型IMPDHの108−110位のLys−Lys−Tyrに相補的な配列をそれぞれ含んでいた。
【0175】
得られた増幅させた断片を、野生型II型impdhの820bp C末端ドメイン(Leu−244からPhe−514まで)に対応するcDNA断片にライゲーションし、修飾II型impdhポリペプチドをコードしているDNA分子を作製した。この820bp断片は、野生型impdh DNAをPvu IIおよびHind III制限酵素で消化することにより作製した。このPvu II制限酵素は、平滑末端切断面を作製し、且つIMPDHサブドメインとC末端ドメインの間の接合点(例えばGln243およびLeu244)で切断し、それが該サブドメイン(Glu−111からGln−243まで)を除去する独特な戦略を提供した。修飾II型IMPDHポリペプチドをコードしているDNA分子をpET24aベクター(Novagen, Madison, WI)中にライゲーションした。
【0176】
SPTQテトラペプチドを含むプライマーは、予想に反してSPTトリペプチドを有する修飾IMPDHポリペプチドを生成した。
【0177】
A) 修飾IMPDHポリペプチドを単離
pET24aベクターは、IPTGで誘導され得るT7 RNAポリメラーゼ系を包含する。この組換えベクターを標準的形質転換技術を用いてコンピテントなE.coli細胞、BL21(DE3)(Novagen, Madison, WI)中に導入した。形質転換された細胞を、カナマイシン100μg/mLを含有するM9最少培地寒天プレートに蒔き、37℃で一夜インキュベートした。M9プレート上に生育した個々のコロニーを選択し、1%カザアミノ酸、微量ミネラル、チアミンおよびビタミンB12を添加し100μg/mLカナマイシンを含有する液体M9培地に接種した。この液体培養を激しく振盪しながら(例えば200rpm)37℃で一夜生育させた。
【0178】
上記の物質を添加した、バッフル付き2リットル振盪フラスコに入れた液体M9培地0.5リットルを、一夜培養10mLを接種物に使用して培養することにより、修飾IMPDHポリペプチドを発現させた。この細胞をOD600=0.6−0.7となるまで37℃で激しく振盪しながら生育させ、IPTGを最終濃度0.5mMとなるまで加えた。次にこの培養を氷上で30分間冷却し、30℃で激しく振盪しながらさらに6時間生育させ、細胞を4℃、10000RPMで遠心分離することにより収穫した。この細胞ペレットを凍結し−80℃で保存した。
【0179】
修飾IMPDH−DKTポリペプチドの大規模生産のため、上記の方法に従った。スケールは、2リットルバッフル付き振盪フラスコあたり液体培地0.5Lに維持した。培養を最初37℃で生育させ、その後氷上での30分間の冷却、0.5mM IPTGによる誘導、そして30℃で6時間の誘導後生育をさせた。これらの条件で培養1リットルあたり25−35mgの修飾IMPDH−DKTポリペプチドが産生し、これは再現性があった。
【0180】
図18は野生型ヒトII型IMPDHタンパク質のモデルを示す。触媒コアドメインはこの図の上部領域に、サブドメインは下部領域に位置する。触媒コアとサブドメイン領域の間に位置する2個の球体は、残基E−111およびQ−243に対応する。残基E−111とQ243の距離はおよそ5.1オングストロームであり;本発明に係る置換オリゴペプチドはこの距離に橋を架けるよう設計した。
【0181】
実施例2
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を特性決定するために使用する方法の説明を提供する。
A) 部分精製修飾IMPDHポリペプチドを単離
修飾IMPDH−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRPのポリペプチドを単離し、青色色素親和クロマトグラフィー工程を用いて部分精製した。別途記載のない限り、全ての工程を4℃で実施した。凍結細胞ペレット(例えば実施例1に記載)を氷上で融解し、緩衝液A(25mM Tris、pH8.2、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)10mLに再懸濁した。Bransonモデル450超音波振動器(2.5出力に設定)で1/4”Microtipを用いて2 x 20秒間の超音波パルスにより細胞を溶菌し、過剰の泡立ちを注意深く回避した。この試料を4℃、8500 x gで20分間遠心分離し、上清を15mL管に移した。Cibacron Blue 3GA色素樹脂(Sigma,製品#8321)を含有する50%スラリー1.0mLを各試料に加え、内容物を穏やかに振盪しながら2時間混合した。次にこの試料を個々の0.8 x 4.0cm(Biorad, Poly−Prep,カタログ番号731−1550)に移し、非結合物質を重力の下で樹脂から排出させた。各カラムを緩衝液A 6mL、次いで緩衝液B(例えば300mM KClを加えた緩衝液A)6mL、そして最後に緩衝液C(例えば1.5M KClを含有する緩衝液A)6mLで洗浄し、一方で6mLずつの画分を清浄な管に集めた。この試料を修飾IMPDHポリペプチドの存在について評価し、クマシーブルー染色による標準SDS−PAGE法を用いて純度を概算した。修飾IMPDHポリペプチドの各々について、緩衝液C画分の純度はおよそ75%の修飾IMPDHポリペプチドを含有していると測定された。総タンパク質含有量は、Bioradタンパク質試薬(製品#500−0006)とタンパク質標準としてのBSAを使用し、Bradford検定法(Bradford,M.M. 1976, Anal.Biochem. 72:248)を用いて定量した。
【0182】
A) NADHの産生を検出
修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性を評価するため、NADからNADHへの変換を37℃、340nmで分光光度的に測定した。検定緩衝液は、0.40mM IMPおよび0.40mM NADを添加した50mM Tris、pH8.2(37℃)、100mM KCl、2mM EDTA、および3mM DTT(即ち緩衝液D)で構成した。合計1.00mLの反応混合物をそれぞれ入れた石英キュベット(1.0cm光路長)を使用した。多セル移送手段を備えたCary Model 3E uv−vis分光光度計を用いて6種類の濃度のタンパク質を同時に評価した。タンパク質濃度は20−300nMの間で相違していた。NADHの産生をδOD340(ε=6220M−1cm−1)で5分間測定することにより決定した。機器のソフトウェアを用いて、反応初速度を、各データの組への線形最小二乗法の当てはめとして算出した。
【0183】
修飾IMPDH多量体−DKT、−SPS、−SPT、および−AGRPは、野生型ホロ酵素に比して、より高レベルのNADH、1.23ないし1.94μmole/分mgタンパク質の範囲のレベルを産生した(図19)。例えば、IMPDH−DKTの多量体は1.94μmole/分mgタンパク質、IMPDH−SPSの多量体は1.23μmole/分mgタンパク質、IMPDH−SPTの多量体は1.62μmole/分mgタンパク質、そしてIMPDH−AGRPの多量体は1.22μmole/分mgタンパク質を産生した。これに対して野生型IMPDHホロ酵素はおよそ1.00μmole/分mgタンパク質を産生した。
【0184】
修飾IMPDH−DKTポリペプチド多量体を>95%純度に精製した後、さらに分析した。動力学的特性決定(例えばkcat値に基づく)は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドが野生型IMPDH II型よりもほぼ2倍活性であることを示した。
【0185】
実施例3
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの機能的活性に及ぼすMPAの阻害効果を評価するために使用した方法の説明を提供する。
【0186】
修飾IMPDH多量体−DKT、−SPS、−SPTおよび−AGRPの機能的活性(例えばNADH産生)に及ぼすMPAの阻害効果を、連続希釈法と定常状態酵素動力学法を用いて決定した(図20)(S.F.Carr, et al. 1993 上記;B.Xiang, et al., 1996 上記)。
【0187】
修飾IMPDHポリペプチドの濃度を1つの濃度に固定し(例えば70mM)、緩衝液D中、高基質条件(即ち、0.40mM IMP、0.40mM NAD)の下で、インヒビターを6種類の濃度に変化させた(即ち、0、2、5、10、20および50nM)。MPA(Sigma、製品#M5255)をDMSO中20mMに調製し、1.00mL反応につき25μL MPA試料となるよう連続希釈を調製した。酵素の添加によって反応を開始させ、15分間監視した。算出した初速度をMPA濃度の関数としてプロットしたが、これは各々の突然変異体がナノモル範囲でMPAに感受性であることを立証した。MPA濃度プロットに対する規格化した活性(即ちMPAが存在しない)を目視調査することによっておよそのIC50値を見積もったが、その値は15−30nMの範囲であった。
【0188】
修飾IMPDH多量体および野生型ヒトII型IMPDHホロ酵素の活性は、15−30nMの濃度範囲でMPAにより50%まで阻害された。全試料について、修飾IMPDH多量体についてはおよそ70nMタンパク質濃度、そして野生型IMPDHホロ酵素についてはおよそ50nMタンパク質に対応する、3μgのタンパク質を使用した。
【0189】
>95%純度に精製した修飾IMPDH−DKTポリペプチドを定常状態酵素動力学法を用いてさらに評価した。IMPDH−DKTタンパク質の固定濃度50nMを使用し、基質IMPおよびNADを変えて初速度を37℃で測定し、それぞれのKmおよびkcat値を決定した(Segel,I.H., 1975, Enzyme Kinetics: Behavior and Analysis of Rapid Equilibrium and Steady−State Enzyme Systems, John Wiley & Sons, New York, NY)。緩衝液Dを使用し50nMタンパク質で以下の速度パラメータを決定した:kcat、Km IMP、Km NAD、およびKi XMP。Kii MPAの決定には10nMタンパク質を使用した。KinetAsyst動力学ソフトウェア(IntelliKinetics, Princeton, NJ)またはThe Scientist(登録商標)ソフトウェア(MicroMath(登録商標) Scientific Software., Salt Lake City, UT)のいずれかによる適当なモデルを用いて、複製データの組への広域当てはめから、値を決定した。
【0190】
定常状態動力学的パラメータ
【0191】
実施例4
以下に、修飾IMPDH−DKT多量体の精製試料を得るために、そしてそのX線結晶構造を得るために使用した方法の説明を提供する。
【0192】
IMPDH−DKTポリペプチドは典型的には二つのクロマトグラフィー工程で>95%純度まで精製した。培養4Lから得た凍結細胞を、25mM Tris、pH8.2(4℃で測定)、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、2mM EDTA、5mM DTT、1mM PMSF、それぞれ1μg/mLのベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチン、およびE−64からなる溶菌緩衝液(緩衝液#1)中で、氷上で融解させた。別途記載のない限り、全ての工程を4℃で実施した。3/4”プローブチップおよびBransonモデル450超音波波動器(7出力設定、および30%効率サイクルで2 x 5分サイクル)を使用する超音波処理により、細胞を氷上で溶菌した。この試料を8500 x gで20分間遠心分離し、上清を清浄なポリカーボネート瓶に移した。
【0193】
緩衝液#2(25mM Tris、pH8.2、20mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)で平衡化したCibacron Blue 3GA高速流アガロース色素親和樹脂(Sigma、カタログ#C8321)の50mLカラム(2.5 x 10cm)に、このタンパク質をロードした。タンパク質を蠕動ポンプにより0.7mL/分でロードし、流れを280nmでの吸光度検出によって監視した。非結合タンパク質は吸光度が基線に戻るまで緩衝液#2により3mL/分で溶出した。KCl勾配を15カラム容量にわたって使用し、緩衝液#2および緩衝液#3(即ち、2000mM KClを含有する他は緩衝液#2と同じ)を用いてIMPDH−DKTを溶出した。IMPDH−DKTをSDS−PAGEおよび活性検定(即ち、δOD340によるNADH産生)によって同定し、適当な画分を合し、3回交換した緩衝液#4(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、および1μg/mLロイペプチン)に対して透析した。
【0194】
記載のようにして(即ち、Ikegami,T., et al, 1987, Life Sciences 40:2277−2282)調製した樹脂50mL(2.5 x 10cm)を用いてIMP親和クロマトグラフィーを実施した。タンパク質を0.7mL/分でカラムにロードし、計200mLを用いて3mL/分で洗浄して非結合物質を除去した。IMPDH−DKTは、200mLの緩衝液#5(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT、2mM IMP)を用いて3mL/分で特異的に溶出した。溶出したタンパク質を、4回交換した緩衝液#6(25mM Tris、pH8.2、300mM KCl、10%グリセロール(v/v)、1mM EDTA、5mM DTT)に対して透析し、非結合IMPを除去した。
【0195】
IMPDH−DKTポリペプチドの試料の純度を、クマシー染色した4−20% Tris−グリシンゲルで表す(図21)が、これはおよそ42kDaに検出される単一のバンドを示す。この試料の高い純度は、添付したHPLC−EMS追跡(図22A、B、C)および分析用ゲル透過クロマトグラフィー追跡(図23)においても立証できる。エレクトロスプレー質量分析により、観測質量41077Daを有する修飾されたデス−Met型に矛盾しない質量を有する単一のタンパク質成分が同定された(図22C)。
【0196】
さらに、この分析用ゲル透過クロマトグラフィー追跡の結果は、修飾IMPDH−DKTポリペプチドが恐らくは四量体と八量体型の間で動的平衡状態にあるということを示した(図23)。この方法および0.69mg/mLでの動的光散乱法のいずれによっても凝集物は観察されなかった。この精製修飾タンパク質のUV−visスペクトルは、野生型IMPDH試料について観察されたように、強固に結合したヌクレオチドOD280/OD260=1.24と矛盾が無かった。最終精製工程はIMP−親和カラムからの溶出を含んでいたため、これは予期せぬ事ではなかった(Ikegami,T., et al., 1987 Life Sciences 40:2277−2282)。円二色性スペクトル測定の結果は、修飾タンパク質が良好に折り畳まれ、熱的にかなり安定であることを示した(t1/2〜75℃)。
【0197】
実施例5
以下に、修飾IMPDHポリペプチドの結晶を取得するために使用した方法の説明を提供する。
【0198】
A) 材料:
略語:IMPDH:イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ:IMP :イノシン5’−一リン酸:NAD+:β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド:MPA:ミコフェノール酸:MEP:1−メチル−2−ピロリジノン:EDTA:エチレンジアミン四酢酸:DTT:ジチオトレイトール:ADA:N−[2−アセトアミド]−2−イミノジ酢酸。
【0199】
IMP(遊離酸)、NAD+(ナトリウム塩)、MPA、EDTA、ADA、Trizma塩基、KCl、およびグリセロールはSigma Chemical Companyから購入した。MEP、およびDTTはAldrich Chemical Companyから購入した。Ultrafree(登録商標)−4 Centrifugal Filter & Tube Biomax−10K NMWL MembraneはMilliporeから購入した。
【0200】
A) タンパク質の結晶化:
修飾IMPDH−DKTの活性は前進経路によって阻害される(Fleming,M.A., et al., Biochemistry 35:6990−6997)。MPAを秤量し、MEPに最終濃度500mMで溶解した。新しい緩衝液A(50mM Tris−HCl、300mM KCl、10%グリセロール、2mM EDTA、5mM DTT、pH8.0、23℃)を調製し、0.22μmフィルターで濾過した。精製タンパク質を緩衝液A中に0.69mg/mlで保存した。次にNAD+、IMP、およびMPAを二倍モル過剰で加え、室温で1時間平衡化した。阻害された複合体を徹底的に濃縮し、10K NMWL膜を用いて2mM MPAを含有する新しい緩衝液Aに4℃で交換した。IMPDH−DKT多量体の結晶を、懸滴蒸気拡散法を用いて室温で成長させた。2mM MPAを含有する緩衝液A中2.97mg/mlのタンパク質溶液2μlを、11.75%飽和硫酸アンモニウムおよび0.1M ADA pH6.5を含有する保存溶液2.0μlと混合した。このプレートを密封し、保存液1.0mlに対して平衡化した。結晶は数日以内に現れ、2週間で0.09mm x 0.09mm x 0.07mmの最大サイズに達した。
【0201】
実施例6
以下に、修飾IMPDHポリペプチドに結合したMPAの結晶構造を分析するために使用した方法の説明を提供する。
【0202】
修飾IMPDH−DKT多量体のX線結晶構造を以下のようにして決定した。IMPDH−DKTの結晶をミコフェノール酸と共に同時結晶化させ、100mM N−(2−アセトアミド)−2−イミノジ酢酸、pH6.5、14%飽和硫酸アンモニウム、および凍結保護物質としての20%(v/v)グリセロールを含有する溶液に移した。次にこの結晶をHampton Research(登録商標)クライオピンに取り付けたファイバーループで捕捉し、ループとピンを液体窒素中に沈めた(Rodgers, 1994)。次いでファイバーループ内の結晶を、Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon SourceのIMCA光線17IDで、MAR(登録商標) CCD 165mmにマウントし、1オングストロームの波長でデータを集めた。空間群はa=b=102.9オングストローム;c=178.3オングストロームのI422であった。このデータを統合し、HKLプログラム群により変形した(Otwinowski,Z., & Minor,W., 1997 Methods in Enzymology 276:307−326)。データ収集の統計を下に要約する:
【0203】
データの分解能は、検出機の開口部がかなり小さいため限られていた。後にCuKα(1.54オングストローム)放射を用いて、さらにデータを2オングストロームの分解能まで集めた。
【0204】
IMPDH−DKT突然変異体の構造を、CCP4プログラム群(Collaborative Computational Project, Number 4, 1994 Acta Crystallogr. Sect. D 50, 760−763)に提供されたAmoReプログラム(Navaza,J., 1994 Acta Crystallogr.Sect. A 50:157−163)を使用して、分子置換により決定した(Rossmann,M.G., 1990 Acta Crystallogt.Sect. A 46:73−82)。このモデルはハムスターIMPDH IIの残基17−110、244−420および427−514で構成されていた(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85, 921−930)。ハムスターとヒトの間の配列相違のため、以下の残基:265、290、292をAlaに変え、残基327をCysからSerに変換した。回転および翻訳機能の両者において10−4オングストロームの分解能からのデータを使用した。回転機能溶液は1.9のシグナル対ノイズ比、翻訳機能溶液は1.8のシグナル対ノイズ比を持ち、いずれも極めて明確な構造決定を示した。最小二乗剛体当てはめの後、相関係数は70.8、R値は32.8であり、これもまた極めて明確な構造決定を示した。この構造をX−PLOR(Brunger,A.T., 1992 X−PLORバージョン3.1、Yale University Press, New Haven)で精密にし、手動の再構築をCHAIN(Sack,J.S., 1988 J.Mol. Graph. 6:224−225)を用いて達成した。最終的なモデルは2684のタンパク質原子、Cys 331に共有結合したイノシン一リン酸、ミコフェノール酸および219の溶媒分子で構成されていた。理想結合長から0.011オングストローム、理想結合角から1.5゜、そして不適切な二面角から1.5゜のr.m.s.偏差である、8−2.2オングストローム分解能からのデータについて、R値は0.201、自由R値は0.264であった。
【0205】
この構造は、IMPDH−DKT多量体が、無傷のハムスターIMPDHに関する初期の研究(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)で示されたものと全く同じ様式でIMPおよびミコフェノール酸に結合することを示した。この構造は、Gly302とAsn303の間の活性部位の近傍に異常なcisペプチド結合を同定する能力によって立証されるように、より高い分解能の故に、より良質であった。さらに、Vertexが本発明者等に提示したハムスターIMPDH IIの座標は溶媒分子を含んでいなかった。但しそれらは論文には記載されていた(Sinchak,M.D., et al., 1996 Cell 85:921−930)。本明細書に開示する結果は、活性部位における水分子の部位を提供し、それはモデル作製にとって極めて貴重であった。加えて、N末端(11−16番)の6残基およびDKT挿入物(各々110A、110Bおよび110Cと番号付けた)ならびに残基421主鎖を、ハムスター構造のモデルには無かった電子密度に当てはめることができた。
【0206】
要約すると、修飾IMPDH−DKT多量体は、構造に基づく薬品設計のための優れた対象である。ミコフェノール酸を伴う該分子は容易に結晶化でき、実験室で2オングストロームの分解能まで回折される結晶を生成したが、これは、化学者および分子モデル製造者に、より強力なインヒビターおよびより望ましい性質を持つインヒビターを設計するための高品質の情報を提供する充分な範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、I型野生型ヒトIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号48)。
【図2】図2は、II型野生型ヒトIMPDHポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号49)。
【図3】図3は、野生型IMPDHポリペプチドのサブドメイン領域を置換している置換オリゴペプチドを含む修飾IMPDHポリペプチドの模式的表示である。
【図4】図4は、本発明に係るII型IMPDH−DKTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号20)。
【図5】図5は、本発明に係るII型IMPDH−DKT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号40)。
【図6】図6は、本発明に係るII型IMPDH−SPSポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号22)。
【図7】図7は、本発明に係るII型IMPDH−SPS cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号41)。
【図8】図8は、本発明に係るII型IMPDH−GSGポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号29)。
【図9】図9は、本発明に係るII型IMPDH−GSG cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号42)。
【図10】図10は、本発明に係るII型IMPDH−SPTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号27)。
【図11】図11は、本発明に係るII型IMPDH−SPT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号43)。
【図12】図12は、本発明に係るII型IMPDH−SPTQ cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号45)。
【図13】図13は、本発明に係るII型IMPDH−AGRPポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号36)。
【図14】図14は、本発明に係るII型IMPDH−AGRP cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号46)。
【図15】図15は、本発明に係るII型IMPDH−NSPLポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号38)。
【図16】図16は、本発明に係るII型IMPDH−NSPL cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号47)。
【図17】図17は、本発明に係るI型IMPDH−DKTポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号30)。
【図18】図18は、上記実施例1に記載する、置換トリおよびテトラペプチドの設計に使用する、折り畳まれた野生型ヒトII型IMPDHタンパク質のモデルを示すリボン図である。
【図19】図19は、上記実施例2に記載するように、修飾IMPDHポリペプチドを含むタンパク質多量体からのNADH産生の検出を説明する棒グラフである。
【図20】図20は、上記実施例3に記載するように、修飾IMPDHポリペプチドの酵素活性をMPAが阻害することを証明するグラフである。
【図21】図21は、上記実施例4に記載するように、単離された修飾IMPDH−DKTポリペプチドを示すクマシー染色したTris−グリシンゲルである。
【図22】図22A−Cは、上記実施例4に記載するように、単離した修飾IMPDH−DKTポリペプチドのHPLC−EMS追跡である。A) 合計のイオン流量対溶出時間を示すIMPDH−DKTポリペプチドのクロマトグラム;B) 11.03分に溶出するタンパク質についての規格化した強度対質量/電荷を示す積分した質量スペクトル;C) 11.03分に溶出するタンパク質について図13Bのデータを再構成したスペクトル。
【図23】図23は、上記実施例4に記載する、単離した修飾IMPDH−DKTポリペプチドのゲル透過クロマトグラフを例示している。
【図24】図24は、本発明に係るI型IMPDH−DKT cDNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号44)。
Claims (56)
- 野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインに代わり置換されたオリゴペプチドドメインを含み、この置換は野生型IMPDポリペプチドに比して長さが短い修飾IMPDHポリペプチドを与える、単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 野生型IMPDHポリペプチドがI型またはII型IMPDHである、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- 第一のIMPDH触媒コアドメインおよび第二のIMPDH触媒コアドメインをさらに含む、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- オリゴペプチドドメインが第一および第二のIMPDH触媒コアドメインの間に位置する、請求項3に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 第一のIMPDH触媒コアドメインが第二のIMPDH触媒コアドメインのN末端に位置する、請求項3に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- オリゴペプチドドメインがトリペプチドを含む、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- オリゴペプチドドメインがテトラペプチドを含む、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- 配列番号20−39のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- トリペプチドが配列番号1−10のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- テトラペプチドが配列番号11−19のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
- トリペプチド配列の第1位アミノ酸がアスパラギン酸、スレオニン、セリン、またはグリシン、リジン、イソロイシンおよびアラニンより成る群から選ばれる、請求項6に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- トリペプチド配列の第2位アミノ酸がリジン、プロリン、アラニン、バリン、ロイシン、グリシンおよびセリンより成る群から選ばれる、請求項6に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- トリペプチド配列の第3位アミノ酸がチロシン、セリン、スレオニン、グリシン、フェニルアラニン、イソロイシン、ヒスチジンおよびアスパラギン酸より成る群から選ばれる、請求項6に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 置換テトラペプチド配列の第1位アミノ酸がグリシン、グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン、チロシン、およびアラニンより成る群から選ばれる、請求項7に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 置換テトラペプチド配列の第2位アミノ酸がセリン、グリシン、プロリン、イソロイシン、およびアルギニンより成る群から選ばれる、請求項7に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 置換テトラペプチド配列の第3位アミノ酸がセリン、グルタミン、スレオニン、チロシン、イソロイシン、プロリン、およびアルギニンより成る群から選ばれる、請求項7に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 置換テトラペプチド配列の第4位アミノ酸がトリプトファン、プロリン、ロイシン、セリン、グルタミン、スレオニン、およびチロシンより成る群から選ばれる、請求項7に記載の単離された修飾IMPDHポリペプチド。
- 互いに結合している1個から8個の修飾IMPDHポリペプチドを含むタンパク質多量体(ここでこの修飾IMPDHポリペプチドは各々、野生型IMPDHポリペプチドのサブドメインに代わり置換されたオリゴペプチドドメインを含み、その結果野生型IMPDHポリペプチドに比して長さが短い)。
- 二量体である、請求項18に記載のタンパク質多量体。
- 四量体である、請求項18に記載のタンパク質多量体。
- 八量体である、請求項18に記載のタンパク質多量体。
- 請求項8に記載の修飾IMPDHポリペプチドのいずれか1つをコードしているポリヌクレオチド配列を含む核酸分子。
- RNAである、請求項22に記載の核酸分子。
- DNAである、請求項22に記載の核酸分子。
- 請求項24に記載のポリヌクレオチド配列と相補的であるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子。
- 検出可能マーカーで標識されている、請求項22、23、24または25に記載の核酸分子。
- 検出可能マーカーが、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤、および酵素より成る群から選ばれる、請求項26に記載の核酸分子。
- 請求項8に記載の修飾IMPDHポリペプチドのいずれか1つをコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクター。
- 適当な宿主細胞に請求項28に記載のベクターを含む宿主−ベクター系。
- 適当な宿主細胞が細菌、酵母、哺乳動物、昆虫、および植物より成る群から選ばれる生物由来のものである、請求項29に記載の宿主−ベクター系。
- a) 請求項30に記載の宿主−ベクター系を修飾IMPDHポリペプチドを産生する適当な条件下で培養し;そして、
b) 産生された修飾IMPDHポリペプチドを回収する、
ことを含む、修飾IMPDHポリペプチドを生産する方法。 - 請求項31に記載の方法により生産される修飾IMPDHポリペプチド。
- 請求項1または32に記載の修飾IMPDHポリペプチドと反応するモノクローナル抗体。
- 検出可能マーカーで標識されている、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
- 検出可能マーカーが、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学ルミネセンス化合物、金属キレート化剤、および酵素より成る群から選ばれる、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
- 修飾IMPDHポリペプチドを含むタンパク質多量体の活性を阻害する目的物質を同定する方法であって、
a) このタンパク質多量体をイノシン−5’−一リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、および目的物質と接触させ;そして、
b) 生成される還元型のイノシン−5’−一リン酸またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのレベルを検出し、ここに、生成した還元型のイノシン−5’−一リン酸またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの低レベルが、該目的物質がIMPDH活性を阻害することを示す方法。 - 実質的に同一の複数の試料をそれぞれ別個に、異なる目的物質と接触させることを含む、請求項36に記載の方法。
- 複数の試料が約104以上の試料である、請求項37に記載の方法。
- 複数の試料が約105以上の試料である、請求項37に記載の方法。
- 複数の試料が約106以上の試料である、請求項37に記載の方法。
- 実質的に同一の複数の試料をそれぞれ、異なる目的物質と、本質上同時に接触させる、請求項40に記載の方法。
- IMPDHポリペプチドまたはIMPDHポリペプチド複合体のX線結晶構造の分解能を改善する方法であって、IMPDHポリペプチドのサブドメインを除去し、それによりIMPDHポリペプチドまたはIMPDHポリペプチド複合体のX線結晶構造の分解能を改善することを含む方法。
- IMPDHポリペプチドが配列番号20−39のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する、請求項42に記載の方法。
- 該タンパク質またはタンパク質複合体が化合物と複合体形成している、請求項42に記載の方法。
- 該化合物がインヒビターである、請求項44に記載の方法。
- インヒビターがMPAである、請求項45に記載の方法。
- IMPDHポリペプチドのサブドメインが比較的短いペプチド断片に置換されている、請求項42に記載の方法。
- IMPDHポリペプチドの長さを縮小し、それにより該IMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善することを含む、IMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善する方法。
- 配列番号48、49、62、63、64、または65のいずれかに記載のアミノ酸111−243をトリペプチドで置換し、それによりIMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善することを含む、IMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善する方法。
- トリペプチドが配列番号1−10のいずれかに示すアミノ酸配列を有する、請求項49に記載の方法。
- 配列番号48、49、62、63、64、または65のいずれかに記載のアミノ酸111−243をテトラペプチドで置換し、それによりIMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善することを含む、IMPDHポリペプチドのX線結晶構造の分解能を改善する方法。
- テトラペプチドが配列番号11−19に示すアミノ酸配列を有する、請求項51に記載の方法。
- 配列番号20−39のいずれかに示すアミノ酸配列を含む修飾IMPDHポリペプチド。
- 配列番号40−47のいずれかに示す核酸配列を含む、単離された核酸分子。
- 配列番号48、49、62、63、64、または65のいずれかに示すアミノ酸111−243がトリペプチドによって置換されている、修飾IMPDHポリペプチド。
- 配列番号48、49、62、63、64、または65のいずれかに示すアミノ酸111−243がテトラペプチドによって置換されている、修飾IMPDHポリペプチド。
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