JP2004509331A - 磁気トルクセンサーシステム - Google Patents

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Abstract

軸(A−A)の周りにトルクを受けるシャフト(40)は、軸方向ボア(42)を有している。シャフト(40)の一領域(44)は、蓄積磁化を有しており、領域(44)は、軸(A−A)の周りに円周方向磁化、又は、好ましくは長手方向磁化の環で永久磁化されている。蓄積磁化は、トルク依存磁界をボア(42)内へ発する。磁界センサー編成(50)はボア内に位置決めされてトルク依存信号を形成する。本開示では、領域(44)における永久磁化の半径方向深さ(t)との関係をシャフト壁厚(t)に関して検討している。磁気センサー配置は、センサー対(52a,b,54a,b)の軸方向(52,54)又はオフセット編成を含む。検出すべき磁界の性質によって、センサー(5)は、軸(A−A)に関して軸方向、半径方向、又は接線方向に配向されてもよい。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は磁界検出に関し、詳細には、トルクを受けるシャフト及びその他の物体のための非接触型トルクセンサーシステムにおける磁界検出に適用されるものである。
【0002】
発明の背景
非接触型トルクセンサーシステムは公知であり、特に、与えられたトルクが回転シャフトを介して負荷に伝達されるような該回転シャフトのためのものが知られている。これらセンサーシステムは、トルク依存磁界を発生する変換素子がシャフトとともに回転するという点で非接触である。このトルク依存磁界は、回転する各部品に接触しないセンサー又はセンサーアセンブリにより検出される。変換素子はシャフトのトルクに応答性があり、シャフトで得られたトルクを受けるような方式でシャフト又はそれに取り付けた要素と一体であってもよい。
【0003】
この種のトルクセンサーシステムにおける最近の開発は、シャフトの一体部分である変換素子に関連して行われている。シャフトのこの一体部分に対して提案された磁化の一形態は、公開された国際特許出願WO99/21150及びWO99/21151に、そしてWO99/56099にも開示されている周方向磁化である。磁気弾性材料の周方向磁化では、閉じたループつまり環形の磁化がシャフトの軸の周りに延在し、この磁化は周方向にある。通常は、無トルク条件下で外部磁界が形成されることはない。シャフトがトルク条件下に置かれると、磁気弾性現象に依存してトルク依存磁界が略軸方向に形成され、シャフトの半径方向外部に配置した外部センサーにより検出される。WO00/57150として公開されたPCT出願PCT/GB00/01103に開示されているような特別な対策を採ることにより、有用なゼロトルク発生磁界を形成することもできる。
【0004】
更にもっと最近の開発では、長手方向磁化として説明されるシャフトの一体部分の磁化の一形態が提案されている。即ち、これは軸方向に延在しているものの、依然として軸周りに環形に配置される。この磁化方向は、周方向磁化とは対照的に、軸方向であるため、磁化部分にはN極とS極が存在し、ゼロトルク条件であっても外部周辺磁界が存在する。しかしながら、後述するように、通常、この磁界は、シャフトの内部がもたらす低い磁気抵抗路内でほとんどが閉じている。問題は、永久磁石としての残留磁気へと磁化される、表面から延びる外側部分と、外側部分が発生する磁束を閉じる路を提供する内側部分とを備える磁束のトロイドである。
【0005】
長手方向磁化は、今のところ2種類の形態で利用されている。第1の形態では、磁界の周方向あるいは接線方向に向けられた外側成分がトルクによって形成され、これがトルクの指標として検出される。第2の形態では、外側軸方向磁界のトルク依存シフトが利用され、このシフトは、磁界の半径方向又は軸方向の成分の、軸方向プロフィルのシフトを用いて検出される。長手方向磁化のプロフィルシフトの形態は、測定可能な接線方向成分を発生しないことが見出された。長手方向磁化のこれら2つの形態をより詳細に以下説明する。何れも、WO01/13081として公開された国際特許出願PCT/GB00/03119及び公開された国際特許出願PCT/EP01/04077に開示されている。
【0006】
上記長手方向磁化の第1及び第2の形態はそれぞれ、便宜的に「周方向検出長手方向磁化」及び「プロフィルシフト長手方向磁化」と称することができよう。
【0007】
上に記載の3種類の形態又はモードの磁化すべてに共通する点は、磁化がシャフトの回転軸周りに環形に形成され、磁気アクティブ領域−上に例示した場合では磁束のトロイドを支持する領域−が、シャフト又は他の回転体の表面から軸へ向かって半径方向内側に延びていることである。この磁気アクティブ領域は軸に到達しなくてもよく、軸方向ボアを持つシャフトに害を与えずに利用できる。また、先に検討した3形態の磁化の何れかを用いた磁気トルク変換器システムに共通する点は、一個以上の磁界センサがシャフト外に配置されていることである。特定の工学用途では中空シャフトが使用されている。センサーシステムを、シャフト外ではなくてシャフト中空部内に配置するのが望ましいことは十分実証されるだろう。
上記ニーズに合致する本発明の実施の形態を以下説明する。
【0008】
発明の概要
本発明は、中空シャフトの如き中空部品が、ボア(空洞)によりシャフト内側で境界を成す強磁性材料の壁部分を有する、という理念に基づいている。例えば、シャフトはその内部に軸方向ボアを持つものであってもよい。ボアは貫通穴であっても、あるいは盲穴であってもよい。壁部分の磁気アクティブ領域は、ボア等の中空部内に延在してその部分に加えられるトルク又は力の関数である磁界を発する。磁気アクティブ領域は、蓄積された磁化領域すなわち永久磁化を施された領域により提供されるものであってもよい。磁気アクティブ領域は、周方向磁化により磁化された領域であってもよいし、あるいは先に検討した長手方向磁化の形態のいずれか一方で磁化された領域であってもよい。トルク又は力に依存する磁界は、ボア内に位置決めされた磁界センサー又は磁界センサー編成(arrangement)によって検出される。また、磁気アクティブ領域は、他の手段、例えば、その領域を磁化して中空部内に所望の力又はトルクに依存する磁界を提供するアクティブソースによって形成されてもよい。
本発明の観点及び特徴を特許請求の範囲に記載する。
【0009】
本発明を、特に、同軸ボアを内部に持つ断面円形シャフトの軸周りトルクの測定に関連して説明する。その他のシャフト断面も実現可能であり、ボアがシャフト軸から偏心していてもよい。また、シャフトは、長手方向に分割され、そしてその断面が完全には閉じられていない分割シャフトであってもよい。
【0010】
本発明及びその実施をより理解できるように、添付図面を参照して更に説明する。
【0011】
磁化の形態
図1は、図1a及び図1bにおいて、断面円形シャフト10の一体部分に施した周方向磁化を示す。シャフトは、磁気弾性を示す強磁性材料でできている。シャフトの磁化された部分12は環形部分14において連続ループで磁化され、実線Mで示す磁界全体がシャフト内に包含される。シャフト軸A−A周りにトルクが与えられると、この内部磁界が破線M’で示すように傾斜することにより軸方向に隔てられたN及びS極を発生し、両極間には軸方向外部磁束16が延在する。両極の極性はトルク方向に依存し、外部磁界の強度はトルクの関数である。この磁界16は、外部の非接触型磁界センサー18によって検出できる。センサー18は、例えば、ホール効果デバイス、磁気抵抗デバイス及び飽和インダクタ型デバイス等、様々なタイプのセンサーであってよい。後者のタイプのデバイスにとって好ましい回路は、公開されたPCT出願WO98/52083に開示されている。センサーは指向特性を備えていてもよく、その場合は、センサーを磁界成分に整列させて最適な結果が測定されるようにする必要がある。
【0012】
周方向磁化に関する更なる情報、その実装ならびに実施は、米国特許第5,465,627号、同第5,351,555号、同第5,520,059号及び同第5,708,216号(Garshelis)と、1995年にSAE技術論文シリーズで発行された論文920707及び950536のような、米国自動車技術協会(SAE)発行の論文において見ることができる。周方向磁化を用いるための数多くの初期の提案は、トルク下でシャフトに固着された薄いリング状の変換素子を伴うものであった。上記公報WO99/56099が開示する周方向磁化は、シャフトの一体部分の軸の周りに環形に形成され、その環形はシャフト内を実質的な深さまで延在する。これは、図1aに示す状態である。
【0013】
長手方向磁化は、本出願人による、より最新の開発成果である。シャフトは、少なくとも変換領域では強磁性材料からなる。それは著しい磁気弾性を示しても、示さなくてもよい。図2は磁化処理装置を示し、そこでは軸方向に離間してシャフトに近接配置された、両極を持つ磁石22に対して、シャフト20がA−A軸周りに回転される。この相対回転により、シャフト表面から半径方向内方に延在し、トルク変換素子として作用する環形の磁化領域24が形成される。本実施の形態では、磁極間のギャップgは、磁極の幅wよりも著しく大きく、例えば、g/w≒3である。このことは、シャフト内に形成される磁界及びそれに関する磁束分布に影響を及ぼす。
【0014】
図3aはシャフト20を軸長に切断したものであり、シャフト表面近傍の磁化領域24と内部磁路28とを通って延在するトロイダル磁束分布26が得られることを示している。大部分の磁束はシャフト内の閉じたトロイダル磁路にあるが、いくらかは符号29で示すようにシャフト外で磁極とリンクする。図3bは変形例であって、シャフトを2段階に磁化することによって、反対極性の2つの領域24aと24bが得られ、それを介して共通のトロイダル磁束分布26が延在する。環形領域24aは、シャフト20の表面から内方へ延在するとともに、領域24bは領域24aの半径方向内方に環形を成す。
【0015】
図4は、無トルク下のシャフト20における軸方向磁化Mを模式的に示す。軸A−A周りにシャフトへトルクを加えることにより、磁化の方向Mは初期方向から、M’で示すように傾斜し、接線方向即ち周方向の成分Msがトルクの関数として形成される。傾斜方向及びMsの方向は、与えられたトルクの方向に依存する。
【0016】
これは、上記のような周方向検出長手方向磁化と呼ぶ第1形態の磁化である。外部磁界の軸方向成分を特には基準信号として用いるために測定してもよい。このことは、公開された上記国際特許出願WO01/13081でより詳細に検討されている。
【0017】
長手方向磁化の第2形態は、図5に示すような磁化配向により形成される。シャフト30は、軸A−A周りに、シャフトの一体領域34に近接するU字形(馬蹄形)磁石32に対して回転される。図2の磁石22とは対照的に、磁石32の軸方向磁極幅wは、NS極間のギャップgよりも実質的に大きい。領域34で誘導される磁界(H)は、その領域の軸方向長さにわたってより強くなっている。その上、幅wの実際の物理値が図2の値を超える場合、磁界は、より深くシャフト内に延在して永久的な残留磁気を誘導する。ギャップgが小さい場合、磁化は、環形領域の軸方向長にわたって延在するとともに、半径方向深さ約2wにわたって延在する。
【0018】
例として、図2の磁石22及び図5の磁石32は両方とも、馬蹄形又はU字形磁石構造の脚部を備えてU字形構造の基部を形成する低磁気抵抗部(磁束集中部)に接続される高い磁石強度の磁極片を用いることができる。断面10×3mmの磁極片を用いて、実験を行った。図2では、3mmの寸法を軸方向に配置した(10mmの寸法はシャフトに対して接線方向)。磁極片間の間隔gを約10mmとした。図5では、シャフトに対する磁極片の配向は、軸方向寸法が10mmで接線方向寸法が3mmとなるように、90°回転された。磁極片間の間隔は、シャフトの隣接材によって閉じられた磁界分布38を得るために約2mmとした。
【0019】
変換素子としての、図5における構成の磁化領域34の磁気特性は、領域24の磁気特性とは、両領域とも、シャフト内で表面から内側に延在するトロイダル磁束分布を形成する長手方向に磁化された環形磁化領域が形成されるにもかかわらず、大きく異なっている。
【0020】
図6aは、環形領域の中心からの軸方向変位xの関数としての、変換素子により発せられる外側合成磁界36のプロット(プロフィルと称する)である。より正確に言えば、図6aは、軸方向に配向されるセンサーにより測定され、表面に隣接するシャフトの長さ方向に移動される磁界の軸方向成分のプロフィルである。この場合、いずれかの飽和インダクタ型の如きセンサーは、半径方向ゼロを含め幅広い角度に対して応答性を持つ。
【0021】
図6aは、ゼロトルク(0Nm)及び2つの反対向きのトルク(±80Nm)で得た3種類のプロフィルを示す。顕著な点は、シャフトのトルクの関数としてのプロフィルの軸方向シフトであり、これは特定範囲にわたりトルクの基本的一次関数である。従って、一箇所以上の適切な軸方向位置へ配置した一個以上の軸方向センサーを非接触型トルク測定システムで用いることができる。
【0022】
図6bは、外部磁界の半径方向成分に関する3種類のプロフィルの類似セットである。この場合は、センサー配向が軸方向におけるゼロを与える。各プロフィルの形状は異なるが、非接触型トルク測定システムを提供するために活用可能なトルク依存シフトも示す。
【0023】
図示してはいないが、接線方向成分のプロフィルを、接線方向に配向されたセンサーの軸方向変位の関数として与える変換素子34の外部磁界の接線方向又は周方向成分の測定では、有効な接線方向成分は何ら検出できないことがわかった。
【0024】
図6a及び図6bに示した、トルクに対する磁気応答性の形態は、上記プロフィルシフト長手方向磁化を実証するものである。この磁化の形態のより詳細な検討と、その実施は、公開された上記国際特許出願PCT/EP01/04077で見ることができる。
【0025】
ここまでは、トルク測定システム用変換器作製に用いることができる3種類の磁化形態(周方向磁化、周方向検出長手方向磁化、及びプロフィルシフト長手方向磁化)の主要な特徴の概要を説明した。これまでの検討では、これら異なる磁化から生じる磁界がどのようにシャフト外、即ちシャフトの表面近傍の半径方向外側で検出でき、測定できるかを説明してきた。
【0026】
発明の実施の形態の説明
ここで、先に検討した磁化の形態が、シャフト内で測定を行う際にどのように利用できるかを説明する。
【0027】
ここでは、軸方向ボア(空洞)を有するシャフト内のように、シャフトの内側で行われるトルク測定について考察する。図7を参照すると、シャフトに沿った軸方向ボア42と、磁化されて変換素子を提供するシャフト部分44とを有する中空シャフト40が図示されている。シャフトは例えばニッケル鋼であってもよい。部分44は、先に検討したどのモードで磁化されてもよい。以下の2つの条件を満たすことが前提である:1)中空シャフトの壁厚が、当該磁化のモードを支持するのに十分であること、そして、2)磁化は十分深く延在して、ボアの壁面46又はその近傍で発せられる磁界にトルク依存特性があること。条件1)に関しては、長手方向磁化モードを薄肉管チューブに用いる場合、前記したトロイダル磁束分布を得ようとすれば、変換器部分44の長さl(図7a)を制限する必要がある。条件2)に関しては、変換器部分44は、シャフトの外面48で発せられる磁界に対応する磁界を、壁面46のところで発する。ボア内では、大気中で得られた磁界パターンであっても、シャフト材の磁化部分及び隣接部分の内部において半径方向に存在する。シャフトの外側では、磁界パターンは自由雰囲気(空間)条件に近いものとなる。
【0028】
ボア内の磁界は、シャフトの外側で示される場合と類似するトルク依存特性を示すが、ボア内部に適用する特別な配慮がある。発せられた磁界は、理論的にシャフトの外側へ向けて無制限に延在するのではなく、ボア42の容積内に閉じ込められる。ボアを通る何れの断面においても、軸からの半径方向距離に対する磁界強度分布を算出してもよいが、本出願人の見解としては、この計算に対する教科書的アプローチが必ずしも明確であるかどうかはクリアではない。しかし、比較的小さなボア、例えば数mm径のものでの試験による実際的な経験では、磁界は、シャフト外よりもボア内の方が集中しており、良好な信号対雑音比が変換器部分44の所定の磁化に対して達成されることを示した。更なる利点は、シャフトに作用する外部磁界からボアを遮蔽するのをシャフト自身が支援する。
【0029】
更なる利点は、以下で説明するような、シャフトの回転に伴う出力信号の均一性が得られる点である。
【0030】
必要な条件がボア内部に形成されると、該当するトルク依存磁界の検出は、外部磁界の検出で生じた同じ配慮を必要とするが、中で測定が行われることになる相対的に閉じられた空間を考慮する必要がある。シャフトのひとつ以上の寸法パラメータを規定することになるであろう特定の工学用途への本発明の実施を評価する際には、シャフトの外径D及び内径(ボア径)d、すなわち壁厚tを考慮する必要があることは言うまでもない。もうひとつの厚さパラメータは、シャフト外面から壁厚への磁化の深さtである。
【0031】
パラメータD及びtは、変換領域中の所望磁化モードの形成に関連する。パラメータdは、ボア42内へのセンサーシステムの設置に関係して特に重要となる。これを行う効能は、センサーの大きさと、これに組み込まれているすべての電子部品の大きさとに依存する。センサーデバイスを内部に組み込んだ集積回路デバイスを設ける動きがある。種々のタイプの磁界センサーが従来技術で周知であり、その中でも、飽和インダクタ型デバイス、ホール効果デバイス及び磁気抵抗デバイスが有用である。飽和インダクタ型デバイスは、コイルが巻回された磁界検出コアを含む。飽和インダクタ回路の好ましい形態は、WO98/52063として公開されたPCT出願に記載されている。かかるデバイスの寸法は数ミリメートルが普通である。例えば、本発明を成す際に用いたひとつの飽和コアデバイスは長さ約6mmで直径2mmであった。通常、かかるデバイスは2個以上採用される。かかるデバイスを位置決めする際には、検出磁界に対するその極性応答パターンを考慮に入れなければならない。これは、普通は8の字形を成し、コアの軸に沿って最大幅を持ち、コアに対して直角に相対ゼロを持つ。従って、センサーに要求される配向も、ボア径dに関して重要となる。
【0032】
シャフト40の壁厚t内における磁化の適切なモードの形成については図7a〜7cを参照に検討する。
【0033】
図7a及び7bは、シャフト40の長手方向磁化変換器部分44を通る、それぞれ軸方向断面図及び断面図である。磁化の形態は、図2〜4又は図5〜6bに関して先に説明した形態であってもよい。部分44は、環形部44aで磁化されて、即ち残留磁気を得て、壁厚t未満の深さtまで延びている。矢印で示すように、t及びt間の壁厚44bは、磁化環形部分44aにより形成されたトロイダル磁束の戻り磁路を支持している。一例として、壁厚tが6mmであれば、磁化の深さは、この例ではその半分、すなわち3mmであってよい。この磁化の深さは、図3a及び3b又は図5に示した変換素子44の表面から外側のトルク依存磁束に対応する、ボア42内のトルク依存内部磁束を生じさせる。既に述べたように、壁厚tが小さくなれば、長手方向磁化モードに対して説明したトロイダル磁束分布を得るために、変換領域の長さlを抑えることが必要となる。
【0034】
図7cは、図1a及び1bに関して説明した類いの周方向磁化変換部分44の断面図である。この場合、図1bの外部トルク依存磁界16に対応する磁界をボア42内で発せられるようにするならば、磁化深さtは、壁厚tと等しいかそれに近いものとしなくてはならない。
【0035】
センサー配置に関する以下の説明は、特に、飽和コア型の磁界センサー(MFS)に関連して行う。より詳細には、以下の説明は、変換領域44がプロフィルシフト長手方向磁化モードで磁化され、検出対象の磁界シフトが図6aに示すような軸方向成分であることを前提としている。ゼロトルク応答性は、変換素子の中心線45における図6aの0,0点に対して実質的に対称となっていることがわかる。磁界検出は、応答曲線の直線部分上、例えば、図6aにおける約±10mmのところで行うのが好ましく、そこでは、加えられたトルクとセンサー出力間に線形伝達関数のあることが分かった。中心線45の対向両側に位置する2個のセンサーつまりセンサー対の出力同士を組み合わせることが好ましい。
【0036】
ここで図8を参照すると、この図は図7に従うが、MFS52及びMFS54をプロフィルシフト長手方向磁化変換素子44の中心線45の対向両側に備えるセンサーシステム50の配置を示す。図8aは、領域44におけるシャフトの断面図である。センサー52,54はシャフト40のA−A軸上に配置され、この軸周りに作用する、与えられたトルクを検出する。図8a及び8bで見られるMFS位置を中心軸位置又はインライン位置と称してもよい。シャフトは(連続的に、又は制限角まで)回転するので、中心軸位置の採用は、回転信号の何れの不均一性も補正する効果がある。可能性のある不均一性のひとつは、変換素子44の磁化がA−A軸周りに完全には均一でないという場合である。軸周りに均一な応答性を持ち、中心軸位置に位置決めされたMFSは、シャフトの回転角とは無関係な出力信号を形成する。たとえこの理念が達成されないとしても、変動は実質的に平均化され、次いで後続の信号処理により更に平滑化される。
【0037】
いくつかの教科書的な計算は、MFSの軸上位置又は軸外位置が信号出力の大きさに差を与えないように、ボアを横断する磁界強度が均一であるべきことを推奨する。実際に、それは、MFSをボア壁のより近く、即ち、トルク依存磁界が発生する表面のより近くに位置決めすることが望ましいことを実証するかもしれない。いずれにしても、機械的配慮から、センサーの軸外配置が必要になる場合がある。例えば、ロッドがボア42を通ってA−A軸に沿って延在する場合、図8及び8aのセンサー52及び54が占める中心軸位置は、それ以上利用できない。
【0038】
図9及び9aに示すように、センサーをボア壁面近傍の軸外に位置決めすることができる。この場合、中心線45の対向両側にある上記センサー52及び54を、センサー52a、52b及び54a、54bのそれぞれの対に置き換えることが好ましい。各対のセンサーは、図9aに見られるように、ボア壁面近傍に直径方向に対向配置される。各対からの信号は、トルク依存成分同士を合計するよう組み合わされる。信号同士のこの組み合わせは、シャフトの回転に伴う信号の均一性を改善する。即ち、平均化処理を効果的に取り入れる。軸周りに互いに角度的に離間した2個以上のセンサーを採用することにより、平均化処理、及び回転に伴う信号の均一性を向上できる。この選択は、所定の軸位置での一個の軸外センサー使用を妨げるものではないが、回転角の関数としての広範な信号出力が、それによって平均値を得るためにより多くの出力信号処理を必要とする可能性が高い。
【0039】
上記実施の形態は軸方向の磁界成分を検出するためのセンサー配向を示している。そして、これらの配向は、周方向磁化、及び長手方向磁化の軸方向プロフィルシフト(図6)に適用できる。変換領域44に形成される磁化のモードによっては、ボア42に発せられる磁界の半径方向又は接線方向の成分を検出するのが望ましい。センサーは3種類の磁界成分、即ち、軸方向、半径方向、及び接線方向の成分のうちの2つ以上に応答するように配向してもよい。
【0040】
図10aと10bはそれぞれ、半径方向の磁界成分に応答するセンサー対62a,62b及び62’a,62’bを示す。センサーの各対は、領域44においてボア42の壁面46近傍に配置されている。図10aは飽和コアデバイスを示し、図10bはホール効果チップの如きソリッド・ステート・デバイスを示す。ソリッド・ステート・チップは、飽和コアデバイスを収容するには小さ過ぎるボア内でも使用可能となる。図11a及び11bは、ボア壁面46近傍で直径方向に対向配置され、接線方向磁界成分に応答するように配向された一対の飽和コア型デバイス72a,72bを示している。
【0041】
言うまでもなく、本発明の教示は、前記3種類のモードのひとつで磁化された磁気アクティブ変換領域のボア内に配置したセンサーによる検出に限定されない。本教示は、変換領域に作用するアクティブソースを含む磁気アクティブ変換領域を形成する他の方法に適用でき、そこではトルク又は力に依存する磁界成分がボア内で現れる。
【0042】
本発明の実施の形態を、内部にシャフトと同軸の円形断面ボアを有する円形断面中空シャフトについて説明してきた。本発明の教示を、その他の断面シャフト及びボアに適用できることは明白である。また、長手方向に分割した、即ち、壁部が完全には閉じてはいない環形の中空シャフトも考えることができる。ボアは、シャフトの全長に延在する必要はない。ボアは、シャフトの一部分だけを通って延在する盲穴であってもよい。本発明の上記教示は概ね、中空部分を通って延在する軸周りにトルクが与えられる中空部分に適用できる。
【0043】
最適で、一貫して長期に安定性を保つ性能を得るために、2つの追加対策を行ってもよい。第1は、上記WO99/56099号に開示されているような保護/保持領域(Guard and keeper regions)を用いることである。保護/保持領域は、それらの保護機能を変換領域上で働かせる場合、周方向又は長手方向磁化を使用できる。第2の対策は、一箇所以上の変換領域及びすべての追加的な保護/保持領域の磁化処理に先立って、シャフトを磁気的に浄化する処理をシャフトに施すことである。この前磁化処理に適した装置は、先に記載の公開されたPCT出願WO01/13081に開示されている。
【0044】
開示された装置は、中空ソレノイド形態で巻装され、電源駆動式変圧器構造体の2次出力巻線に直列接続された消磁コイルと、電流リミッタとを備える。直径18mmのシャフトに対して好適なコイルは、直径約30cmで巻数が約300回の大容量ケーブルのコイルであった。ソレノイドコイル状に巻かれた大容量同軸ケーブルの外部導体は適切であることが証明された。変圧器構造体は、110又は240VACのAC電源に接続された可変変圧器を備えている。これは、10アンペア以上を二次側で最高約48Vの電圧で安全に供給できる絶縁変圧器に接続されている。消磁コイルは、絶縁変圧器の二次側へ、抵抗器、例えば電力レオスタットであってもよい電流リミッタ、又はより精巧な電子デバイスを介して接続される。電流リミッタは、コイルを通る電流を監視するステップが取り入れられることを条件に、省略されてもよい。通常のコイル抵抗は約100ミリオームである。変圧器構造体の可変性により電流を所望通りに制御することが可能になる。
【0045】
消磁コイルが通電され、コイルが8〜10Aで通電されている間にシャフトはその全長にわたってコイルを通される。これは約1kガウスの消磁界を形成する。通常では、500〜1200ガウスの範囲の磁界を達成することが期待される。シャフトを可動ジグに装着してコイル軸に沿って移動させ、シャフトの遠端がコイルを離れるように移動を継続し、シャフトが受ける磁界が徐々に減少するようにしてもよい。コイルに対するシャフトの軸方向位置の関数としてのコイル電流制御を含む消磁手順を行う別の方法でもよい。
【0046】
変換領域及び保護/保持領域(必要であれば)を形成するための中空シャフトの磁化処理に続き、低いレベルの磁界ではあるが前磁化処理と同じように、磁化処理を行ってもよい。後磁化処理において、磁化されたシャフトは再び、通電したソレノイドコイルに軸方向に通される。しかし、コイルを通るAC電流は、前磁化手順の場合よりも1桁低い。上記の前磁化処理の例で採用した8〜10Aの電流は、後磁化処理では約0.5〜1Aに減少する。その電流値は、形成しようとする基本磁気パターンは変えず、最良のものが推測できるように、磁化処理後に現れるかもしれない寄生磁界を減らすか、あるいは拒否する。後磁化処理は、シャフトの回転に伴う出力信号の均一性、時間経過に伴うオフセット、及び一般に最終的なセンサー安定性を向上することが判明した。
【0047】
変換領域は、保護/保持領域で保護されてもよい。この内容は、上記WO99/56099号で、周方向磁化に関連して検討されている。また、それは、公開された上記PCT出願WO01/13081及び国際特許出願PCT/EP01/04077で開示されているような長手方向磁化に関して適用されてもよい。これらの追加領域は、2つの機能を提供できる。第1に、変換領域は、類似モードの磁化(周方向又は長手方向)だが反対極性を持つ領域により、変換領域の性能向上に鑑みて各側面を接している。側面に位置する領域は、2つの領域が互いに協同して作用するように、それ自体、変換素子として用いられてもよい。第2に、側面に位置する領域同士は、変換領域を、シャフトの他の部分から軸方向に伝達される磁界から保護するために用いられている。この保護機能に関しては、長手方向磁化変換領域が、周方向磁化領域により側面に位置できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1a及び1bは、断面円形シャフトの、周方向に磁化された一体部分に形成される変換素子の断面及び軸方向断面をそれぞれ示す図である。
【図2】
図2は、上記第1形態の長手方向磁化を持つように断面円形シャフトの一体部分を磁化することにより、変換素子を形成する磁化処理装置の一形態を示す図である。
【図3】
図3aは、図2の磁化処理により形成された変換素子に関連するトロイダル磁束分布を示す図である。
図3bは、改変した2段磁化処理に関連するトロイダル磁束分布を示す図である。
【図4】
図4は、トルク無し(実線)及びトルク有り(破線)の各条件での長手方向磁界(M)を図示するシャフト外観図である。
【図5】
図5は、上記第2形態の長手方向磁化を持つように断面円形シャフトの一体部分を磁化することにより、変換素子を形成する磁化処理装置の一形態を示す図である。
【図6】
図6a及図6bは、軸方向位置の関数としての、外部磁束の軸方向及び半径方向成分それぞれのプロフィルを示すとともに、ゼロトルク及びトルク有りの条件下でのプロフィルを用いてプロフィルシフトを示す図である。
【図7】
図7は、本発明が適用可能な中空シャフトの斜視図である。
図7a、図7b、及び図7cは、シャフトの変換領域の磁化に関するパラメータを示し、図7a及び図7bは長手方向磁化に関連し、図7cは周方向磁化に関連する。
【図8】
図8及び図8aはそれぞれ、本発明に従って、軸方向磁界成分を検出するための軸方向に設置されたセンサーデバイスを用いた変換器アセンブリにおける中空シャフトの斜視図及び断面図である。
【図9】
図9及び図9aは、軸外のセンサーデバイス対を用いて軸方向磁界成分を検出する変換器アセンブリの別の実施の形態の類似図である。
【図10】
図10a及び10bは、2種類の異なるタイプのセンサーを用いて半径方向磁界成分を検出する、図9及び9aの変換器アセンブリの変形例を示す軸方向断面図である。
【図11】
図11a及び11bは、接線方向磁界成分を検出する、図9及び図9aの変換器アセンブリの変形例を示す断面図及び軸方向断面図である。

Claims (12)

  1. シャフト等の部品のための変換器アセンブリであって、
    ボアにより内側に境界を成す、強磁性材料の壁部を備える中空部品と、
    前記部品の壁部の磁気アクティブ領域を備え、前記磁気アクティブ領域は前記中空部品加えられるトルク又は力の関数である磁界を発生し、前記トルク又は力依存磁界が前記ボア内に延在するように成した変換素子と、
    前記ボア内に配置されて前記トルク又は力依存磁界を検出し、それを表す信号を提供するセンサー編成とを具備する変換器アセンブリ。
  2. 前記センサー編成は、前記ボアの中央に配置される少なくともひとつのセンサーデバイスを備える請求項1に記載の変換器アセンブリ。
  3. 前記センサー編成は、前記壁部の内面近傍に配置され、前記ボアを通って延在する軸に関して角度的に離間する2つ以上のセンサーデバイスを備える請求項1に記載の変換器アセンブリ。
  4. シャフト等の部品のための変換器アセンブリであって、
    ボアにより内側に境界を成す、強磁性材料の壁部を備え、前記ボアを通って延在する軸周りに作用するトルクを受ける中空部品と、
    前記部品の壁部の磁気アクティブ領域を備え、前記アクティブ領域は前記中空部品に加えられたトルクの関数である磁界を発生、前記トルク依存磁界が前記ボア内に延在するように成した変換素子と、
    前記ボア内に配置されて前記トルク又は力依存磁界を検出し、それを表す信号を提供するセンサー編成とを具備する変換器アセンブリ。
  5. 前記センサー編成は、前記軸上に配置された少なくともひとつのセンサーデバイスを備える請求項4に記載の変換器アセンブリ。
  6. 前記少なくともひとつのセンサーは、前記軸周りに均一な応答性を持つ請求項5に記載の変換器アセンブリ。
  7. 前記部品は、前記軸周りに回転可能である請求項4、5又は6に記載の変換器アセンブリ。
  8. 前記センサー編成は、前記壁部の内面近傍に設置されて前記軸周りに角度的に離間した2つ以上のセンサーデバイスを備える請求項4に記載の変換器アセンブリ。
  9. 前記センサーデバイスは、半径方向磁界成分、又は接線方向もしくは円周方向磁界成分、又は軸方向磁界成分に応答するよう配向される請求項8に記載の変換器アセンブリ。
  10. 前記部品は前記軸周りに回転可能である請求項8又は9に記載の変換器アセンブリ。
  11. 前記磁気アクティブ領域は磁化環形部を備える前記請求項の何れかに記載の変換器アセンブリ。
  12. 前記磁気アクティブ領域は前記壁部内部で磁束のトロイドを支持する請求項11に記載の変換器アセンブリ。
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