JP2004509069A - P−セレクチン、p−およびe−セレクチン複合体の結晶構造、ならびにそれらの用途 - Google Patents

P−セレクチン、p−およびe−セレクチン複合体の結晶構造、ならびにそれらの用途 Download PDF

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Abstract

本発明は、P−セレクチンのレクチンおよびEGF様(LE)ドメインの結晶および三次元構造、SLeとそれぞれ複合体形成されたP−セレクチンLEおよびE−セレクチンLEの結晶および三次元構造、ならびに、チロシン硫酸化およびSLeの両方で修飾された機能性PSGL−1ペプチドと複合体形成されたP−セレクチンLEの結晶および三次元構造に関する。また本発明は、上記構造のそれぞれを活性化または阻害する作用薬を同定するための方法も提供する。さらに、本発明は、このような方法で同定された作用薬を提供する。

Description

【0001】
[発明の分野]
本発明は、P−セレクチンのレクチンおよびEGF様(LE)ドメインの結晶および三次元構造、SLeとそれぞれ複合体形成されたP−セレクチンLEおよびE−セレクチンLEの結晶および三次元構造、ならびに、チロシン硫酸化およびSLeの両方で修飾された機能性PSGL−1ペプチドと複合体形成されたP−セレクチンLEの結晶および三次元構造に関する。これらの構造は、炎症プロセスにおける白血球の細胞ローリングを妨害する作用薬の設計および選択に重要である。
【0002】
[発明の背景]
セレクチンは、炎症部位への白血球の補充およびリンパ組織への白血球の遊出において、初期接着現象を担う細胞表面糖タンパク質のファミリーである((Kansas、1996)ならびに(VestweberおよびBlanks、1999)において概説)。多段階プロセス(Springer、1994)の一部として、セレクチンは血管壁上の白血球の初期付着(係留(tethering))およびそれに続くローリングを促進し、血管壁では、局在的に生成したケモカインへさらされた結果、それらは活性化されることになる。インテグリンにより媒介される白血球の強固な接着は、下側組織への血管外遊走に先行する。P−セレクチン(CD62P)およびE−セレクチン(CD62E)は、炎症刺激に応答して血管内皮表面に誘発される。活性化血小板によっても発現されるP−セレクチンは、炎症性媒介物による誘発に続いて、数分以内に細胞内貯蔵所から細胞表面へ移動される。E−セレクチンは転写的に調節されて、血管内皮の活性化の数時間以内に出現する。セレクチンファミリーの第3のメンバーであるL−セレクチン(CD62L)は、白血球上に構成的に発現される。炎症におけるその役割に加えて、L−セレクチンは、血液からリンパ組織への遊走の過程で、特定化された高内皮性細静脈へのリンパ球の付着を媒介する。
【0003】
セレクチンは、多数の構造的および機能的特性を共有する。これらは、相同性の高いN−末端カルシウム依存性(C−型(Drickamer、1988))レクチンドメインと、上皮成長因子(EGF)様ドメインと、可変数の補体調節様ユニットと、膜貫通ドメインと、細胞内領域とから成る。セレクチン結合が、主に、レクチンドメインと、並んだ細胞上のグリカンリガンドとの間の弱いタンパク質−炭水化物の相互作用よって媒介されることが、一般的に認められる。多くの異なるグリカン構造は、セレクチンの結合を支援および/または阻害できると説明されている。しかしながら、シアリルルイス(SLe、NeuNAc2,3Gal1,4[Fuc1,3]GlcNAc)四糖により表示されるエピトープおよび関連構造は、3つすべてのセレクチンに共通する生理学的に適切な認識成分であると思われる(Foxall他、1992)。認識のための更なる因子は、多様な構造の明白な高親和性(または結合性)の特異性糖タンパク質カウンタレセプターの単離によって示唆された。これらには、GlyCAM−1(Lasky他、1992)、MAdCAM−1(Berg他、1993)、CD34(Baumheuter他、1993)、ESL−1(Levinovitz他、1993)、およびPSGL−1(Moore他、1992)、(Sako他、1993)が含まれる。しかしながら、これらの重グリコシル化タンパク質はどれも、事実上、本質的に、細胞または組織に特異的なグリコシル化能力(すなわち、SLe様グリカンを生成する能力)であり、特異性タンパク質の発現ではなく、セレクチンの反応性を最終的に与える可能性を生じる、という限られた証拠があるだけである。明白な例外はPSGL−1であり、白血球の実質的に全てのサブセットによって発現されるムチン様のホモ二量体糖タンパク質である((Yang他、1999)ならびに(McEverおよびCummings、1997)において概説)。P−セレクチン認識は、PSGL−1のムチン様領域内のグリカンのSLe様の修飾に依存することが予想されたが、本質的な結合エピトープは、ムチンドメインの十分外側のポリペプチド主鎖のアニオン性N−末端部分へ局在化された(PouyaniおよびSeed、1995、Sako他、1995、Wilkins他、1995)。多数の研究は、P−セレクチン媒介結合および生体内の炎症応答がPSGL−1内のこのポリペプチド決定要因を標的にすることによって大きく減少され得ることを実証した(McEverおよびCummings、1997、Yang他、1999)。さらに、PSGL−1において遺伝的に欠損されたマウスの最近の研究は、P−セレクチン媒介の白血球ローリングおよび炎症補充において著しい欠陥を示すと説明した(Yang他、1999)。したがって、PSGL−1は、ポリペプチドおよびSLe−修飾されたグリカン成分の両方が生理学的に適切な結合のために必要とされるセレクチンカウンタレセプターの単一の例を表わす。
【0004】
脈管構造内で遭遇される剪断応力の影響下の細胞付着およびローリングの媒介物としてのその独特の機能の観点から、セレクチン相互作用の根本的な生物物理的および分子的基礎の特徴づけに対してかなりの努力が向けられてきた。セレクチンは高速結合速度論でそのリガンドと会合および解離し(Alon他、1997、Alon他、1995)、過渡的な係留および細胞ローリング現象を媒介する能力を部分的に担うと思われるのは、この特性である。セレクチン相互作用の機械的特性(Alon他、1995、Puri他、1998)および独特の構造的特性(Chen他、1997)を含む他の因子も含まれると思われるが、これらは、生理的リガンドと複合体形成されたセレクチンの高分解能分子構造が欠如しているために、まだ完全には特徴づけられていない。この制限を克服するために著しい努力が成されてきたが、現在まで、これらは不完全なままである。レクチンおよびEGFドメイン(lec/EGF)を含むE−セレクチン構築物のX線結晶構造はすでに記載されており(Graves他、1994)、部位特異的な突然変異生成の研究(Kansas、1996)と組み合わされて、レクチンドメインへ局在化された推定上のSLe結合部位を示唆している。E−セレクチン結晶構造へ結合するSLeのためのモデルは、オリゴマンノースへ結合された相同的なラット血清マンノース−結合タンパク質(MBP−A)のX線結晶構造(Weis他、1992)をガイドとして用いて、SLeの遊離または結合溶液構造の分子ドッキング((Poppe他、1997)およびその中の参考文献)に基づいて提案されている(Graves他、1994、Kogan他、1995、Poppe他、1997)。しかしながら、SLe様炭水化物リガンドと複合体形成されたE−セレクチンまたは他のセレクチンの構造は、これらの仮説を確認すると決定されていない。実際、本発明より以前は、このような結晶は、セレクチン結晶を形成するために使用される高濃度のカルシウムのブロッキング効果のために得ることができなかった。
【0005】
現在まで、SLeおよび関連のグリカンと共複合体形成されたE−セレクチン残基を含むように突然変異された(K3突然変異体)MBP−Aの結晶構造(NgおよびWeis、1997)は、セレクチンがどのようにしてそのリガンドと結合するかの唯一の直接的情報を示す。集約的に、これらのモデルおよび実験的に決定された構造は、Fuc部分の2つのヒドロキシル基がレクチンドメイン−結合カルシウムを連結し、更なる結合相互作用がおそらく、Galのヒドロキシル基およびNeuNAcのカルボキシレート部分によって媒介されるというSLe結合モチーフを支援する。しかしながら、モデルおよびMBP−A K3突然変異体/SLe結晶構造は、結合部位内のSLeの配向の点、および分子接触の同一性の点で異なる。
【0006】
高親和性P−セレクチン/PSGL−1相互作用のための構造的基礎の理解もまた、認識が炭水化物およびポリペプチド成分の両方に基づいているという観察によって、不完全および複雑である。突然変異生成の研究はPSGL−1のN−末端に集中しており、P−セレクチンが、PSGL−1ポリペプチドのアニオン領域内の1つまたは複数の硫酸化チロシン残基、およびこの領域へ潜在的に局在化されたSLe−含有O−グリカンを同時に認識することを実証した(PouyaniおよびSeed、1995 、Ramachandran他、1999、Sako他、1995、Wilkins他、1995)。推定上のSLe結合部位はセレクチン間で同様であると予想され、おそらく、P−セレクチンによるPSGL−1のSLe成分の結合に含まれるが、PSGL−1ポリペプチドとの相互作用を媒介するP−セレクチンドメインの同一性および構造的基礎は知られていない。またL−セレクチンは、炎症部位への白血球補充の増幅にとっておそらく重要な好中球−好中球相互作用との関連で、PSGL−1を認識すると示されている(Kansas、1996、VestweberおよびBlanks、1999)。また、この相互作用は、PSGL−1ポリペプチドのN−末端内の突然変異によって影響され(Ramachandran他、1999)、P−およびL−セレクチンが共通の結合要件を有することを示唆する。これに対して、PSGL−1または他のSLe提示カウンタレセプターへのE−セレクチン結合は、ポリペプチド成分を必要とすると実証されていない。
【0007】
[発明の概要]
本発明は、P−セレクチンのレクチンおよびEGF様(LE)ドメイン(「P−セレクチンLE」)の結晶と、P−セレクチンLE結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEの三次元構造と、を提供する。具体的には、P−セレクチンLEの三次元構造は、図2に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。P−セレクチンLEの三次元構造の構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLeが結合する部位を含むP−セレクチンLEの種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、P−セレクチンLE、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする作用薬を設計することに利用され得る。
【0008】
また本発明は、SLeと複合体形成されたP−セレクチンLEの結晶と、P−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造と、を提供する。具体的には、P−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造は、図3に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。P−セレクチンLEおよびSLeの構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLe結合部位を含むP−セレクチン、SLeおよびP−セレクチンLE:SLe複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は、次にP−セレクチンLE、SLe、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする種々の作用薬を設計することに利用され得る。
【0009】
またさらに本発明は、SLeと複合体形成されたE−セレクチンのレクチンおよびEGF(LE)ドメイン(「E−セレクチンLE」)の結晶と、E−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折データにより得られるE−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造と、を提供する。具体的には、E−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造は、図4に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。E−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造の構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLe結合部位を含むE−セレクチンLE、SLeおよびE−セレクチンLE:SLe複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらには限定されない。活性部位の構造は次に、E−セレクチンLE、SLe、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたE−セレクチンLEと相互作用をする種々の作用薬を設計することに利用され得る。
【0010】
またさらに、本発明は、チロシン硫酸化およびSLeの両方で修飾された機能性PSGL−1ペプチドと複合体形成されたP−セレクチンLEの結晶構造と、P−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの三次元構造と、を提供する。具体的には、P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの三次元構造は図5に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLeおよびPSGL−1結合部位を含むP−セレクチンLE、PSGL−1ペプチド、およびP−セレクチンLE:PSGL−1複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、P−セレクチンLE、PSGL−1、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする種々の作用薬を設計することに利用され得る。
【0011】
また本発明は、SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはP−セレクチンLEのSLe結合部位に関するものであり、この活性部位は、アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標を含み、上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113の図3による相対構造座標も含むことができ、アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。SLe活性部位は、作用薬、好ましくはSLeとの会合状態、またはその非結合状態のP−セレクチンLEの立体配置と一致し得る。
【0012】
さらに本発明は、SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはE−セレクチンLEのSLe結合部位に関するものであり、この活性部位は、アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、ASN83、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図4による相対構造座標を含み、上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113の図4による相対構造座標も含むことができ、アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。SLe活性部位は、作用薬、好ましくはSLeとの会合状態、またはその非結合状態のE−セレクチンLEの立体配置と一致し得る。
【0013】
またさらに、本発明は、PSGL−1結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはP−セレクチンLEのPSGL−1結合部位に関するものであり、この活性部位は、アミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114および結合ストロンチウムの図5による相対構造座標を含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104およびCYS109の図5による相対構造座標も含むことができ、アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。PSGL−1結合部位は、作用薬、好ましくはPSGL−1またはPSGL−1ペプチドとの会合状態、もしくはその非結合状態のP−セレクチンLEの立体配置と一致し得る。
【0014】
さらに、本発明は、P−セレクチンLEと相互作用する作用薬を同定するための方法であって、(a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図2、3または5による相対構造座標を用いて、P−セレクチンLEの三次元モデルを生成するステップと、(b)作用薬を設計または選択するために、上記三次元構造を使用するステップと、を含む方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、SLe結合部位を含む分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法であって、(a)(i)残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下)、または(ii)アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図4による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である)を用いて、SLe結合部位を含む分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、(b)上記ステップ(a)で生成された三次元モデルとのコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、を含む方法を提供する。別の実施形態では、図3による相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113も含み、上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。さらに別の実施形態では、図4による相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113も含み、上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。
【0016】
またさらに本発明は、分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法であって、(a)アミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114、および結合ストロンチウムの図5による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である)を用いて、PSGL−1結合部位を含む分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、(b)上記ステップ(a)で生成された三次元モデルとのコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、を含む方法を提供する。別の実施形態では、図5による相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104およびCYS109も含み、上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下である。
【0017】
さらに本発明は、SLeと相互作用する作用薬を同定するための方法であって、(a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図3または4による相対構造座標を用いて、SLeの三次元モデルを生成するステップと、(b)SLeと相互作用する作用薬を設計または選択するために、上記三次元構造を使用するステップと、を含む方法を提供する。
【0018】
またさらに、本発明は、PSGL−1と相互作用する作用薬を同定するための方法であって、(a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図5による相対構造座標を用いて、PSGL−1ペプチドの三次元モデルを生成するステップと、(b)PSGL−1と相互作用する作用薬を設計または選択するために、上記三次元構造を使用するステップと、を含む方法を提供する。
【0019】
また本発明は、上記の方法を用いて同定される作用薬、活性化剤または阻害剤を提供する。血管組織上での白血球のセレクチン媒介細胞ローリングを阻害するか、さもなくば妨害する小さい分子または他の作用薬が、喘息および乾癬のような異常な炎症応答を伴う疾患の処置において有用となり得る。
【0020】
最後に、本発明は、E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を獲得するための方法を提供する。該方法は、(a)カルシウムイオンおよびPEGの存在下で結晶E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物とを接触させて、E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を形成するステップと、(b)濃度が低下されたカルシウムイオンならびに十分な濃度のPEGおよびイオン塩の存在下で前記結晶複合体を接触させて、冷却した際に、最終の結晶複合体のX線回折によってE−セレクチン型分子およびカルシウムに配位する化合物の三次元構造を解明するのに適する最終の結晶複合体を獲得するステップとを含む。
【0021】
本発明の更なる目的は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本明細書中で使用される場合、次の用語および句は以下に説明される意味を有するものである。
【0023】
他に記載されない限り、「セレクチン」は、白血球の炎症部位への補充およびリンパ組織への遊出において、初期接着事象に寄与する細胞表面糖タンパク質ファミリーであり、P−セレクチン、E−セレクチンおよびL−セレクチン、ならびにセレクチン活性を有するそれらの類似体が含まれる。P−セレクチンは、好ましくは、保存的置換を含む図6Aに示されるアミノ酸配列を有する。E−セレクチンは、好ましくは、保存的置換を含む図6Bのアミノ酸配列を有する。「E−セレクチン型分子」は、E−セレクチン分子全体、ならびにレクチンおよび/または上皮成長因子(EGF)様ドメインのようなその一部を含み、好ましくは、以下に定義されるような「E−セレクチンLE」である。
【0024】
「LEドメイン」はセレクチンのレクチンおよび上皮成長因子(EGF)様ドメインを表し、本明細書で使用される場合、「P−セレクチンLE」はP−セレクチンのレクチンおよびEGF様ドメインを表し、「E−セレクチンLE」はE−セレクチンのレクチンおよびEGF様ドメインを表す。P−セレクチンLEおよびE−セレクチンLEのアミノ酸配列は、図6Aおよび図6Bにそれぞれ示され(下線)、保存的置換を含む。
【0025】
「SLe」はシアリルルイス(SLe、NeuNAc2,3Gal1,4[Fuc1,3]GluNAc)四糖を表し、SLeと同様の構造および活性を有する「SLe類似体」を含む。「SLe結合タンパク質またはペプチド」は、SLeに結合すると共にSLe結合部位を有するタンパク質またはペプチドであり、P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLEおよびE−セレクチンLEを含むが、これらに限定されない。「SLe結合部位を含む分子または分子複合体」には、(i)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、E−セレクチンLE、(ii)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、またはE−セレクチンLEとSLeとの複合体、(iii)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、またはE−セレクチンLEと他の分子との複合体、および(iv)SLe結合部位を有する他の分子または分子複合体が含まれる。
【0026】
「PSGL−1」はPSGL−1活性を有する分子であり、以下に定義される「PSGL−1ペプチド」を含む。PSGL−1のアミノ酸配列は、図6Cに示されており、その保存的置換を含む。「PSGL−1ペプチド」はチロシン硫酸化およびSLeにより修飾されたペプチドであり、図1Aに示される(SGP−3で表示される)ペプチド構造を含み、その保存的置換が含まれる。「PSGL−1結合タンパク質またはペプチド」は、PSGL−1に結合すると共にPSGL−1結合部位を有するタンパク質またはペプチドであり、P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLEおよびE−セレクチンLEを含むが、これらに限定されない。「PSGL−1結合部位を含む分子または分子複合体」には、(i)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、E−セレクチンLE、(ii)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、またはE−セレクチンLEとPSGL−1との複合体、(iii)P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、またはE−セレクチンLEと他の分子との複合体、および(iv)PSGL−1結合部位を有する他の分子または分子複合体が含まれる。
【0027】
他に示されない限りは、「タンパク質」または「分子」は、タンパク質、タンパク質ドメイン、ポリペプチド、またはペプチドを含むものである。
【0028】
「構造座標」は、分子または分子複合体中のある他の原子に対する原子の空間的関係に対応するデカルト座標である。構造座標は、X線結晶学技法またはNMR技法を用いて得ることができる。あるいは、分子置換解析またはホモロジーモデリングを用いて得ることもできる。種々のソフトウェアプログラムは、分子または分子複合体の三次元表示を得るために、構造座標セットのグラフィック表示を可能にする。本発明の構造座標は、数学的な操作によって、たとえば反転(inversion)または整数加算または減算などによって、図2、3、4または5に提供される元の座標セットから変更することができる。このように、本発明の構造座標は相対的であり、決して、図2、3、4または5の実際のx、y、z座標によって特に制限されないと理解される。
【0029】
「作用薬」は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、DNAまたはRNAを含む核酸、分子、化合物、または薬剤を含むものである。
【0030】
「2乗平均平方根偏差(root mean square deviation)」は、平均からの偏差の2乗の算術平均の平方根であり、本明細書に記載される構造座標からの偏差またはばらつきを表す手段である。本発明には、明記された2乗平均平方根偏差の範囲内で同一の構造座標をもたらす記載のアミノ酸残基の保存的置換を含む全ての実施形態が包含される。
【0031】
P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、E−セレクチンLE、PSGL−1およびPSGL−1ペプチドのアミノ酸残基の番号付けは、本明細書中に示されるものとは異なってもよく、図2、3、4または5によって本明細書に定義されるものと同一の三次元構造を生じるある種の保存的アミノ酸置換を含んでもよいことは、当業者には明らかであろう。他のアイソフォームまたは類似体における対応のアミノ酸および保存的置換は、適切なアミノ酸配列の外観検査によって、あるいは市販のホモロジーソフトウェアプログラム(例えば、MODELLAR、MSI、San Diego、CA)を用いることによって容易に同定される。
【0032】
「保存的置換(conservative substitution)」は、同様の極性、立体配列を有することによって、あるいは置換された残基と同じクラス(たとえば、疎水性、酸性または塩基性)に属することによって、置換されたアミノ酸残基と機能的に同等であるアミノ酸置換であり、これには、P−セレクチンLE、E−セレクチンLE、SLe、PSGL−1ペプチド、P−セレクチンLE:SLe複合体、E−セレクチンLE:SLe複合体、およびP−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド複合体の三次元構造に対する影響が、P−セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチンLE、E−セレクチンLE、SLe、PSGL−1、PSGL−1ペプチド、P−セレクチンLE:SLe複合体、E−セレクチンLE:SLe複合体、P−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド複合体、ならびに、SLeまたはPSGL−1結合部位を含む他のタンパク質、ペプチド、分子または分子複合体と相互作用をする作用薬の同定および設計のために上記構造を使用することに関して、分子置換解析および/またはホモロジーモデリングにとって、取るに足りない程度である置換が含まれる。
【0033】
「活性部位」は、その形状および電荷電位の結果、種々の共有結合および/または非共有結合の力によって、別の作用薬(タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、DNAまたはRNAを含む核酸、分子、化合物または薬剤を制限なしで含む)と有利に相互作用をするまたは会合する分子または分子複合体の領域を示す。このように、本発明の活性部位には、例えば、P−セレクチンLEまたはEセレクチンLEと結合するSLeまたはPSGL−1の実際の部位と、SLeまたはPSGL−1結合の実際の部位に隣接または近接する補助結合部位とが含まれ、この補助結合部位は、SLeまたはPSGL−1結合の実際の部位を直接妨害することによって、あるいはP−セレクチンLEまたはEセレクチンLEの立体コンホメーションまたは電荷電位へ間接的に影響することで、SLeまたはPSGL−1結合の実際の部位におけるSLeまたはPSGL−1のP−セレクチンLEまたはEセレクチンLEへの結合を防止または減少させることによって、それでもなお特定の作用薬との相互作用または会合においてP−セレクチンLEまたはEセレクチンLE活性に影響を与えることができ得る。本明細書で使用される場合、「活性部位」は、SLeまたはPSGL−1のような結合リガンドの存在下で観察可能なNMR摂動を示すP−セレクチンLEおよびEセレクチンLEの類似残基も含む。観察可能なNMR摂動を示すこのような残基は、必ずしも、残基を結合するリガンドと直接接触する、あるいは極めて近接する必要はないが、理論的な薬剤設計プロトコルのためには、これらは重大なP−セレクチンLEまたはEセレクチンLE残基である。
【0034】
本発明は、まず、結晶P−セレクチンLEを提供する。特定の実施形態では、P−セレクチンLEは、保存的置換を含む図6A(下線)に示されるアミノ酸残基を含む。本発明の結晶は、P−セレクチンLEの構造座標決定のためにX線を有効に回折し、空間群P2のプレート型であり、a=81.0Å、b=60.8Å、c=91.4Åおよびβ=103.6°の単位格子パラメータを有すると特徴付けられる。さらに、結晶P−セレクチンLEの結晶学的な非対称単位は、4分子のP−セレクチンLEを含む。
【0035】
また本発明は、P−セレクチンLEおよびSLeを含む結晶複合体を提供する。特定の実施形態では、P−セレクチンLEのアミノ酸配列は図6A(下線)に示され、保存的置換を含む。本発明の結晶複合体は、P−セレクチンLEおよびSLeの複合体の構造座標を決定するためにX線を有効に回折し、空間群P2のプレート型であり、a=81.1Å、b=60.5Å、c=91.4Åおよびβ=103.3°の単位格子パラメータを有すると特徴付けられる。さらに、本発明の結晶複合体は、非対称の結晶単位中に1分子のP−セレクチンLE:SLe複合体から成る。
【0036】
本発明は、さらに、E−セレクチンLEおよびSLeを含む結晶複合体を提供する。特定の実施形態では、E−セレクチンLEのアミノ酸配列は図6B(下線)に示され、保存的置換を含む。本発明の結晶複合体は、E−セレクチンLEおよびSLeの複合体の構造座標を決定するためにX線を有効に回折し、空間群P2のロッド型であり、a=34.5Å、b=72.4Å、およびc=77.6Åの単位格子パラメータを有すると特徴付けられる。さらに、本発明の結晶複合体は、非対称の結晶単位中に1分子のE−セレクチンLE:SLe複合体から成る。
【0037】
また、本発明はさらに、P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドを含む結晶複合体を提供する。本発明の結晶複合体は、P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの複合体の構造座標を決定するためにX線を有効に回折し、空間群I222の両錐型であり、a=63.4Å、b=96.8Å、およびc=187.3Åの単位格子パラメータを有すると特徴付けられる。さらに、本発明の結晶複合体は、非対称の結晶単位中に1分子のPE−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド複合体から成る。
【0038】
いったん本発明の結晶または結晶複合体が成長されると、結晶分子または分子複合体の原子座標を得るために、種々の手段によってX線回折データを収集することができる。特別に設計されたコンピュータソフトウェアの助けを借りて、このような結晶学的データを用いて、分子または分子複合体の三次元構造を生成することができる。結晶分子または分子構造の三次元構造を生成および精密化するために使用される種々の方法は当業者には既知であり、多波長異常分散(MAD)、多重同形置換、逆格子空間溶媒平滑法(reciprocal space solvent flattening)、分子置換、および異常散乱による単一同形置換(SIRAS)を、制限されることなく含む。
【0039】
したがって、本発明はまた、P−セレクチンLE結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEの三次元構造を提供する。特に、P−セレクチンLEの三次元構造は図2に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。P−セレクチンLEの三次元構造の構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLe結合部位を含むP−セレクチンLEの種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、P−セレクチンLE、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする作用薬を設計することに使用され得る。
【0040】
さらに、本発明は、P−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造を提供する。特に、P−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造は図3に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。P−セレクチンLEおよびSLeの構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLe結合部位を含むP−セレクチンLE、SLeおよびP−セレクチンLE:SLe複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、P−セレクチンLE、SLe、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする作用薬を設計することに使用され得る。
【0041】
本発明は、E−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折データにより得られるE−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造をさらに提供する。特に、E−セレクチンLEおよびSLeの三次元構造は図4に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。E−セレクチンLEおよびSLeの構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、SLe結合部位を含むE−セレクチンLE、SLeおよびE−セレクチンLE:SLe複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、E−セレクチンLE、SLe、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたE−セレクチンLEと相互作用をする作用薬を設計することに使用され得る。
【0042】
またさらに、本発明は、P−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド結晶のX線回折データにより得られるP−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの三次元構造を提供する。特に、P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの三次元構造は図5に示される構造座標によって定義され、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの構造座標は多数の用途に有用であり、これらの用途には、PSGL−1(およびSLe)結合部位を含むP−セレクチンLE、PSGL−1、およびP−セレクチンLE:PSGL−1ペプチド複合体の種々の活性部位の視覚化、同定および特徴付けが含まれるが、これらに限定されない。活性部位の構造は次に、P−セレクチンLE、PSGL−1、ならびにSLe、PSGL−1、または関連の分子と複合体形成されたP−セレクチンLEと相互作用をする作用薬を設計することに使用され得る。
【0043】
また本発明は、SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはP−セレクチンLEのSLe結合部位に関するものであり、これはアミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標を含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113の図3による相対構造座標を含むことができ、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。SLe活性部位は、作用薬、好ましくはSLeとの会合状態、またはその非結合状態のP−セレクチンLEの立体配置に一致し得る。
【0044】
さらに本発明は、SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはE−セレクチンLEのSLe結合部位に関し、これはアミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、ASN83、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図4による相対構造座標を含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113の図4による相対構造座標を含むことができ、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。SLe活性部位は、作用薬、好ましくはSLeとの会合状態、またはその非結合状態のE−セレクチンLEの立体配置に一致し得る。
【0045】
またさらに、本発明は、PSGL−1結合タンパク質またはペプチドの活性部位、および好ましくはP−セレクチンLEのPSGL−1結合部位を提供し、これはアミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114および結合ストロンチウムの図5による相対構造座標を含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。あるいは、活性部位は、上記で定義された構造座標に加えて、アミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104およびCYS109の図5による相対構造座標も含むことができ、ここでアミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。PSGL−1結合部位は、作用薬、好ましくはPSGL−1またはPSGL−1ペプチドとの会合状態、もしくはその非結合状態のP−セレクチンLEの立体配置に一致し得る。また、薬剤設計のために構造座標を用いる目的で、ストロンチウムをカルシウムで置換できることも本発明の範囲内にある。
【0046】
本発明の別の態様は、P−セレクチンLEの結合または活性部位と相互作用する作用薬を同定するための方法に関する。特に、この方法は、(a)図2、3または5による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)を用いて、P−セレクチンLEの三次元モデルを生成するステップと、(b)作用薬を設計または選択するために、上記三次元構造を使用するステップと、を含む。作用薬は、(a)活性部位のホモロジーモデリングまたは原子構造座標を用いて分子または分子複合体の推定上の活性部位の三次元モデルを生成し、(b)推定上の活性部位と同定された作用薬との間の会合度合いを決定することによって、推定上の活性部位と同定された作用薬との間の「適合性(fit)」を評価する種々のコンピュータソフトウェアプログラムを利用するコンピュータフィッティング解析を用いて同定することができる。推定上の活性部位の三次元モデルは当該技術で知られる多数の方法のうちのどの1つを用いて生成されてもよく、ホモロジーモデリング、ならびに結晶学的または分光学的データを用いて生成された生データのコンピュータ解析が含まれるが、これらに限定はされない。このような三次元モデルを生成するため、および/または必要なフィッティング解析を実行するために使用されるコンピュータプログラムには、GRID(Oxford University、Oxford、UK)、MCSS(Molecular Simulations、San Diego、CA)、AUTODOCK(Scripps Research Institute、La Jolla、CA)、DOCK(California大学、San Francisco、CA)、Flo99(Thistlesoft、Morris Township、 NJ)、Ludi(Molecular Simulations、San Diego、CA)、QUANTA(Molecular Simulations、San Diego、CA)、Insight(Molecular Simulations、San Diego、CA)、SYBYL(TRIPOS, Inc.、St. Louis、MO)およびLEAPFROG(TRIPOS, Inc.、St. Louis、MO)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0047】
コンピュータフィッティング解析により同定されたこのような作用薬のP−セレクチンLE活性に対する効果は、同定された作用薬をP−セレクチンLEと接触させ、P−セレクチンLE活性に対する作用薬の効果を測定することによって、さらに評価できる。P−セレクチンLEの活性部位に対する作用薬の働きによって、作用薬は、P−セレクチンLE活性の阻害剤または活性化剤のいずれかの機能を果たすことができる。例えば、酵素的アッセイを実行し、結果を解析して、作用薬がP−セレクチンLEおよびSLeの阻害剤である(すなわち、作用薬がP−セレクチンLEとSLeの間の結合親和性を低減または防止する)か、あるいはP−セレクチンLEおよびSLeの活性化剤である(すなわち、作用薬がP−セレクチンとSLeの間の結合親和性を増大する)か、を決定することができる。更なる試験を実行して、炎症のようなセレクチンに関連する条件において、同定された作用薬の潜在的な治療的効能を評価することができる。
【0048】
本発明は、P−セレクチンLEの活性部位と相互作用する同定薬に限定されるものではなく、P−セレクチン、E−セレクチン、E−セレクチンLE、P−セレクチンLE:SLe複合体、およびE−セレクチンLE:SLe複合体を含むがこれらに限定はされない、SLe結合部位またはPSGL−1結合部位を含む如何なる分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法にも関する。
【0049】
1つの実施形態では、本発明は、SLe結合部位を含む分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法を提供する。該方法は、(a)(i)残基TYR48、GLU80、 ASN82、 GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)、または(ii)アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図4による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)を用いて、SLe結合部位を含む上記分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、(b)ステップ(a)で生成された三次元モデルとのコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、を含む。別の実施形態では、図3による相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113も含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。さらに別の実施形態では、図4による相対構造座標はさらに、アミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113も含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。いったん候補活性化剤または阻害剤が獲得または合成されると、候補活性化剤または阻害剤は分子または分子複合体と接触され、上記分子または分子複合体に対して候補活性化剤または阻害剤が有する効果が決定される。好ましくは、SLeへの分子または分子複合体の結合に対して候補活性化剤または阻害剤が有する効果を決定するために、候補活性化剤または阻害剤は、SLe(もしくは、SLeを含む分子または分子複合体)の存在下で分子または分子複合体と接触される。
【0050】
さらに別の実施形態では、本発明は、PSGL−1結合部位を含む分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法を提供する。該方法は、(a)アミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114および結合ストロンチウムの図5による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)を用いて、PSGL−1結合部位を含む上記分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、(b)ステップ(a)で生成された三次元モデルとのコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、を含む。別の実施形態では、図5による相対構造座標はさらに、アミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104およびCYS109も含み、ここで上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である。いったん候補活性化剤または阻害剤が獲得または合成されると、候補活性化剤または阻害剤は分子または分子複合体と接触され、上記分子または分子複合体に対して候補活性化剤または阻害剤が有する効果が決定される。好ましくは、PSGL−1またはPSGL−1ペプチドへの分子または分子複合体の結合に対して候補活性化剤または阻害剤が有する効果を決定するために、候補活性化剤または阻害剤は、PSGL−1またはPSGL−1ペプチドの存在下で分子または分子複合体と接触される。ここで繰り返しになるが、薬剤設計のために構造座標を用いる目的で、ストロンチウムをカルシウムで置換できることも本発明の範囲内にある。
【0051】
さらに、図3または4に示されるSLeの構造座標、および図5に示されるPSGL−1ペプチドの構造座標は、それぞれSLeおよびPSGL−1と相互作用する作用薬を同定または設計するために使用できる。この点について、本発明は、SLeと相互作用する作用薬を同定するための方法であって、(a)図3または4による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)を用いて、SLeの三次元モデルを生成するステップと、(b)SLeと相互作用する作用薬を設計または選択するために上記三次元構造を使用するステップと、を含む方法を提供する。次に、同定された作用薬が合成または獲得でき、それから、SLe(もしくは、SLeを含む分子または分子複合体)と接触させて、作用薬がSLe活性に対して有する効果を決定することができる。
【0052】
またさらに、本発明は、PSGL−1と相互作用する作用薬を同定するための方法であって、(a)図5による相対構造座標(上記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差は1.5Å以下であり、好ましくは1.0Å以下、最も好ましくは0.5Å以下である)を用いて、PSGL−1ペプチドの三次元モデルを生成するステップと、(b)PSGL−1と相互作用する作用薬を設計または選択するために上記三次元構造を使用するステップと、を含む方法を提供する。次に、同定された作用薬が合成または獲得でき、それからPSGL−1またはPSGL−1ペプチド(もしくは、PSGL−1またはPSGL−1ペプチドを含む分子または分子複合体)と接触させて、作用薬がPSGL−1またはPSGL−1ペプチド活性に対して有する効果を決定することができる。
【0053】
種々の分子解析および理論的な薬剤設計技法は、米国特許第5,834,228号、同第5,939,528号および同第5,865,116号、ならびにPCT出願第PCT/US98/16879号、国際公開第99/09148号にさらに開示され、これらの内容は参照によって本明細書中に援用される。
【0054】
また本発明は、上記の方法を用いて同定される作用薬、活性化剤または阻害剤にも関する。このような作用薬、活性化剤または阻害剤は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、DNAまたはRNAを含む核酸、分子、化合物または薬剤でよい。血管組織上での白血球のセレクチン媒介細胞ローリングを阻害するか、そうでなければ妨害する小さい分子または他の作用薬は、喘息および乾癬のような異常な炎症応答を伴う疾患の処置において有用であろう。
【0055】
加えて、本発明は、その構造が未知の分子または分子複合体の三次元構造を決定するための方法であって、その構造が未知の分子または分子複合体の結晶を獲得するステップと、結晶化された分子または分子複合体からX線回折データを生成するステップと、を含む方法に関する。分子または分子複合体からのX線回折データは、次に、本発明の上述の結晶のいずれかから決定された既知の三次元構造と比較される。それから、本発明の結晶から決定された既知の三次元構造は、分子置換解析を用いて、結晶分子または分子複合体からのX線回折データへ「適合される(conformed)」。あるいは、分光学的データまたはホモロジーモデリングを使用して、分子または分子複合体の推定の三次元構造を生成することができ、推定構造は、本発明の結晶のいずれかから決定された既知の三次元構造への適合によって精密化される。
【0056】
最後に、本発明は、E−セレクチン型分子とSLeなどのカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を獲得するための方法を提供する。該方法は、(a)カルシウムイオンおよびPEGの存在下で結晶E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物とを接触させて、E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を形成するステップと、(b)濃度が低下されたカルシウムイオンならびに十分な濃度のPEGおよびイオン塩の存在下で前記結晶複合体を接触させて、冷却した際に、最終の結晶複合体のX線回折によってE−セレクチン型分子およびカルシウムに配位する化合物の三次元構造を解明するのに適する最終の結晶複合体を獲得するステップと、を含む。
【0057】
上記方法において、「E−セレクチン型分子」は、E−セレクチン分子全体、ならびにレクチンおよび/または上皮成長因子(EGF)様ドメインのようなその一部、また好ましくは、E−セレクチンLEである。カルシウムに配位する化合物は、好ましくは、SLeである。ステップ(a)において、結晶E−セレクチン型分子は、当該技術で知られている手順によって調製できる。結晶E−セレクチン型分子がE−セレクチンLEである場合、結晶E−セレクチンLEは、以下の実施例1に説明されるように調製されるのが好ましい。この方法におけるカルシウムイオン源はCaClであるのが好ましく、PEGは、好ましくはPEG−1000からPEG−20,000であり、最も好ましいのはPEG−4000である。イオン塩は当該技術で知られる多数のイオン塩でよく、NaClが好ましい。
【0058】
この方法の重要な態様は、ステップ(b)におけるカルシウムイオンの減少、あるいはカルシウムに配位する化合物のE−セレクチン型分子への結合の阻害におけるカルシウムの影響を防止および減少させる有効なカルシウム濃度の使用であり、これにより、最終結晶複合体のX線回折によってE−セレクチン型分子およびカルシウムに配位する化合物の三次元構造を解明するのに適切な最終結晶複合体の形成が可能になる。すなわち、カルシウム濃度は、カルシウムに配位する化合物がE−セレクチン型分子上のその結合部位へ結合できるようにするのに十分低くなければならない。例えば、カルシウムに配位する化合物がSLeである場合、ステップ(a)におけるカルシウムイオン濃度は20mMから300mMの範囲であり、ステップ(b)におけるカルシウムイオン濃度はそれより低くし得る(すなわち、100μMから20mMの範囲である)。ステップ(a)および(b)において、PEGは、減少された、すなわちより低いカルシウム濃度を考慮して、結晶の完全性を保持するのに十分な濃度でなければならず、約15%から60%(w/v)のPEGが好ましい。ステップ(b)におけるイオン塩の濃度は、約10mMから500mMである。ステップ(a)における接触は、約10〜20時間行い得るが、結晶を配位する化合物がSLeである場合には約15時間が好ましい。ステップ(b)における接触は約0.5〜3時間行なわれ、好ましくは約1時間である。
【0059】
最終結晶複合体のX線回折によってE−セレクチン型分子およびカルシウムに配位する化合物の三次元構造を解明するのに適切である(E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との)結晶複合体を形成するのに十分な濃度のカルシウムイオン、PEGおよびイオン塩の存在下で、結晶E−セレクチン型分子がカルシウムに配位する化合物と接触される場合には、ステップ(a)および(b)を結合できることもまた、本発明の範囲内である。ステップ(a)および(b)が結合される場合、カルシウムイオン、PEGおよびイオン塩の濃度は、それぞれ、約100μMから20mM、15%から60%(w/v)、および10mMから500mMであると考えられる。
【0060】
本発明は以下の非限定的な実施例を参照してより良く理解されるであろう。以下の実施例は本発明の好ましい実施形態をより完全に説明するために提示されたものであり、決して、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。
【0061】
実施例1
1.実験手順
構築物の生成およびタンパク質/ペプチドの調製
介在エンテロキナーゼ切断配列(Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)によってIgGのCH2−CH3領域へ融合されたP−セレクチン(P−LE)およびE−セレクチン(E−LE)のレクチン−EGF(LE)ドメイン(153アミノ酸)をCHO細胞中で発現させ、プロテインAセファロース(Pharmacia)クロマトグラフィによって、調整培地から回収した。エンテロキナーゼによる二量体Fc構築物の消化によって、単量体のセレクチンLEドメインを生成し(LaVallie他、1993)、タンデム大豆トリプシン阻害剤−アガロース(Sigma)およびプロテインA(Perseptive Biosystems)カラムによるクロマトグラフィによって、酵素および残余Fcドメインを除去した。セレクチンLEドメインは、25ミリ単位N−グリカナーゼ/mgタンパク質の比率において37℃で48時間、脱グリコシル化され、陰イオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィによって精製された。LEドメインを減圧濃縮によって10〜30mg/mlにした。P−LEおよびE−LEはいずれも、マススペクトロメトリ(MS)によって正確であり、ゲルろ過HPLCによって単量体であり、表面プラズモン共鳴(BIAcore)分析(以下を参照)によって機能性であると決定された。
【0062】
エンテロキナーゼ切断配列を含む9アミノ酸リンカーを介してIgGのFc領域へ融合されたPSGL−1のN−末端19アミノ酸を含有する水溶性構築物(19ek.Fc)は、以前に説明されている(Goetz他、1997)。19ek.Fcを精製し、エンテロキナーゼで消化し、上記のLE構築物の場合と同様に単量体PSGL−1 19eKペプチドを回収した。0〜500mM勾配のNaClを用いるスーパーQ陰イオン交換クロマトグラフィによって、不均質の19ekペプチドを個々の種に精製した。これらの構造は、タンパク質分解およびグリコシドの消化の前後のMS、NMRによって、ならびに組成分析(J. Rouse, D. TsaoおよびR.Camphausen、未公表データ)によって決定した。
【0063】
P−LE/19ekペプチド結合の研究
表面プラズモン共鳴は、ストレプトアビジンがコーティングされたセンサチップ(BIAcore)と、CaClおよびMgClをそれぞれ1mMに調整したHBS−P緩衝液(BIAcore、10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaClおよび0.005%のポリソルベート20(v/v))とを用いて、25℃においてBIAcoreの2000および3000機器で実行した。19ekペプチドおよびsPSGL、PSGL−1の二量体の細胞外ドメイン全体のフコシルトランスフェラーゼ−VII修飾形(Croce他、1998)を、Lys残基においてスルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce)でビオチン化した。ビオチン化に続いて、機能性材料を単離するために、sPSGLを固定化P−セレクチンと反応させた(Sako他、1995)。SGP−3のポリペプチド部分に対応する合成ペプチド(AnaSpec, Inc.)を、同様にビオチン化した。HBS−P緩衝液を用いて、ビオチン化された試薬をセンサチップ上へコーティングした。実験的に決定された消衰係数(extinction coefficient)(280nm)により定量されたグリコシル化P−LEおよびE−LEを、19ekペプチド、sPSGLおよびコントロール表面上へ40μL/分で注入した。結合の特異性は、P−およびE−セレクチンに対する中和Mab、10mMのEDTAならびに水溶性19ekペプチドの存在下で実行されたコントロール実験によって確認された(R. Camphausen、未公表データ)。脱グリコシル化P−LEおよびE−LEは、そのままのグリコシル化形と同等に結合した。
【0064】
結晶化およびデータ収集
全ての回折データは、記載された場合を除いて、Yale/Molecular Structure社の集束ミラーおよびRAXIS IIまたはRAXIS IV画像プレートエリア検出器を用いて、5.0KWで作動するRigakuのRU200ジェネレータで社内で収集された。
【0065】
P−LEのプレート形状の結晶は、10mg/mlのタンパク質、100mMのトリスHCl(pH8.5)、150mMのNaCl、12mMのCaCl、10%(v/v)の2,4メチルペンタンジオール(MPD)、および10%(w/v)のPEG6000を含む溶液から、蒸気拡散を用いて18℃で成長させた。これらの結晶を、100mMのトリスHCl(pH8.5)、75mMのNaCl、10mMのCaCl、10%(v/v)のMPD、および11%(w/v)のPEG6000の中へ移行させ、次に、MPDで5%(v/v)だけ希釈した同じ緩衝液へ2時間移行させた。MPDによる第2の5%希釈の後、液体窒素温度に保持された液体プロパン中での瞬時の冷却(flash cooling)の前に、結晶を13時間浸漬させた。SLe(SLe−β−O−メチル、Toronto Research Chemicals)と複合体形成されたP−LEは、同一の方法を用いるが、最後の浸漬溶液に8mMのSLeを添加して得られた。P−LE結晶の空間群はP2であり、格子パラメータはa=81.0Å、b=60.8Å、c=91.4Åおよびβ=103.6°であった。結晶をSLeに浸漬すると、最大分解能が3.4Åへ低下され、モザイク角が1.5°へ増加され、格子パラメータa=81.1Å、b=60.5Å、c=91.4Åおよびβ=103.3°が与えられた。回折データはDENZO/SCALEPACK(HRL Research, Inc.)を用いて処理およびスケーリングされ、表1に報告される統計値が与えられた。
【0066】
E−LEの大きいロッド形状の結晶は、30mg/mlのタンパク質、100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのトリスHCl、200mMのCaCl、および15%(w/v)のPEG4000を含む溶液から、蒸気拡散を用いて18℃で得られた。結晶は成長するのに数週間かかり、マクロシーディングの使用とともにより再生可能であった。SLeとの複合体のために、E−LE結晶を、100mMのHEPES(pH7.5)、200mMのCaCl、30%(w/v)のPEG4000、および15mMのSLeを含む溶液中へ、25℃で15時間移行させた。この初期インキュベーションの後、上記に説明された瞬時の冷却の前にさらに1時間、結晶を、100mMのトリスHCl(pH7.4)、300mMのNaCl、2mMのCaCl、30%(w/v)のPEG4000、および15mMのSLe中へ移行させた。E−LE/SLe結晶は、空間群P2に属し、格子パラメータはa=34.5Å、b=72.4Å、c=77.6Åであった。回折データは上記のように処理された。
【0067】
0.5×0.5×0.3mmに達するP−LE/PSGL−1 19ekペプチド(SGP−3)複合体の大きな結晶は、気相拡散結晶液滴中への繰り返しマクロシーディングによって得られた。結晶は、8mg/mlのP−LE、2倍モル過剰のSGP−3、10mMのトリスHCl、100mMのHEPES(pH7.0)、150mMのNaCl、4mMのCaCl、50mMのSrCl、5%(w/v)のPEG6000、および33%(v/v)のMPDから成長した。初期の小さい種結晶は、50%MPDを含むがSrClまたはPEG6000を含まない同様の緩衝液から得られた。結晶は、瞬時の冷却の前に15時間、100mMのHEPESpH7.0、10%のPEG6000、30%のMPD、100mMのNaClおよび50mMのSrCl中へ移動された。水銀−誘導体化結晶は、瞬時の冷却の前に24時間、最終浸漬緩衝液へ0.5mMの酢酸水銀を添加することによって得られた。複合体結晶の空間群はI222であり、格子パラメータはa=63.4Å、b=96.8Å、およびc=187.3Åであることがわかった。結晶は両錐型であった。天然の回折データは、回折データを記録するためにRAXIS IVを用いてBrookhaven National Labs station X4Aで収集された。水銀誘導体データは社内で収集された。全てのデータは上記のように換算されて表1の統計値を与えた。
【0068】
構造決定および精密化
SLeと複合体形成されたE−LEの結晶は、以前に報告されたもの(Graves他、1994)と本質的に同形であり、結晶学的な非対称単位中にE−LEの単一コピーを有することがわかった。CNSにおける剛体精密化(Brunger他、1998)を用いて、結合されたSLe対して明白な電子密度を与える初期位相を得た。これらのマップはさらにBUSTER(Bricogne、1993)を使用して改良され、結合SLeのモデルがQUANTA(Molecular Simulations, Inc.)を用いて適合されるのを可能にした。全ての更なる精密化はCNSにおいて実行され、ラマチャンドラン・プロットの最も有利な領域に86%の残基を有し、全体で1510個の原子、186個の水分子、1個のカルシウムイオン、および1個のSLeコピーから成る最終モデルが与えられた。統計値は表1に記載される。
【0069】
P−LEの構造は、E−セレクチンlec/EGF構築物の公表モデル(PDB登録コード1ESL)を用いて、分子置換で解明された。プログラムAMORE(CCP4、1994)を用いて、P−LEの4つ全てのコピーを配置した。モデルは、上記の方法を用いて構築および精密化した。1個のP−LEコピーは他の3つよりも低い電子密度を有していたが、非結晶学的な対称を使用して、十分進歩した精密化により表1の統計値が与えられた。精密化の最後に、4番目のP−LEコピーの平均B因子は、他の3個のコピーでは44.2Åであるのに対し、63.7Åであった。最終モデルは4個のP−LEコピーから成り、ラマチャンドラン・プロットの最も有利な領域に81%の残基を有し、全体で5418個の原子、134個の水分子、2つMPD分子、および4個のカルシウムイオンを有する。
【0070】
SLeに浸漬されたP−LE結晶は、上記のP−LE構造と本質的に同形であった。CNSにおける剛体精密化の後、3個の結合されたSLe分子に対する明白な密度が存在した。4番目の結合部位は結晶の接触によって部分的に閉塞されており、したがって、SLe中での浸漬における分解能の損失が説明された。QUANTAを用いて、CNS中の制限された精密化の前に、結合SLeをモデル化し、タンパク質残基を修復(refit)した。これにより、最も有利なラマチャンドラン領域に71%の残基を有し、全体で5455個の原子、3個のSLe分子、4個のカルシウムイオン、および2個のMPD分子を有する最終モデルが与えられた。
【00071】
PSGL−1 19ekペプチドSGP−3と複合体形成されたP−LEの構造を分子置換によって解明するための試みは全て失敗であった。重原子部位は、SHARPで精密化されたパターソン技法を用いて配置された(de la FourtelleおよびBricogne、1997)。これらの位相は乏しいマップを与えたが、その品質は、P−LE構造からの2つのレクチンドメインの位置決め、および2つのEGFドメインの独立的位置決めを可能にするのに十分な品質であった。また、これらのマップによって、P−LE/SLe複合体で見られるのと同じ位置に結合SLe分子が存在することと、解釈できない余分な密度とが示された。重原子の位相は、BUSTERにおけるモデル位相と結合されて、QUANTAにおけるSGP−3ポリペプチドおよびSLe部分のフィッティングを可能にする明白な最大エントロピーマップを与えた。この構造は上記のように精密化され、表1の統計値と、ラマチャンドラン・プロットの最も有利な領域の84%の残基と、が与えられた。最終モデルは、2つのP−LE/SGP−3複合体、3263個の原子、2個のストロンチウムイオン、224個の水分子、2個のナトリウムイオン、および7個の結合MPD分子から成る。
【0072】
2.結果および議論
P−セレクチンのレクチン/EGFドメインのX線結晶構造
本発明の発明者らは、N−末端レクチンおよびEGFドメインを含むP−セレクチン構築物(P−LEと称される)を生成した。E−セレクチンのlec/EGF結晶構造(Graves他、1994)は、レクチンおよびEGFドメイン間の相互作用は最小限であり、推定のSLe結合部位はレクチン−EGFドメイン接合部から十分に離されることを示したが、本発明者らは、EGFドメインが機能的な役割を有し得ることを示唆する研究(Gibson他、1995、Kansas他、1994)のために、EGFドメインを保持することを選択した。P−LEは、介在エンテロキナーゼ切断配列を介してIgGのFc領域へ融合された。この構築物はP−LE.Fcと称され、条件培地からの容易な精製、およびエンテロキナーゼの消化に続く単量体P−LEドメインの生成を可能にした。CHO細胞中で発現されたP−LEは3つのN−連結グリカンを含み、これは、結晶化の前に酵素によって除去された。P−LE結晶は、結晶学的な非対称単位中に4分子を有する空間群P2で得られ、2.4Å分解能へ回折された。構造は、検索モデルとしてE−セレクチンlec/EGF結晶の構造座標を用いて分子置換によって解明した。
【0073】
P−LE結晶構造は、E−セレクチンlec/EGF構造と本質的に同一の全体的コンホメーションを採用する。これは、これらのドメインにおいてセレクチン間の配列同一性が62%であることと矛盾せず、その結果、これらのC主鎖のRMS差はたった0.7Åである。P−LEのレクチンおよびEGFドメインは小さい界面によって相互に作用し、この関係も保持されるので、E−セレクチン構築物との類似性をさらにより顕著にする。ドメイン間角度の小さな移動と共にEGFドメインのいくつかのループの移動は、2つの構造間の多くの小さな相違に寄与している。また、ドメイン間角度は、結晶中の異なるP−LEコピーの間でもわずかに変動し、したがって、おそらく結晶のパッキング力の影響である。
【0074】
突然変異生成および構造の研究(Kansas、1996)によって示唆される推定のSLe結合部位は、P―LEおよびE−セレクチンlec/EGF構造の間で著しく保存される。この部位の共通の特徴、およびおそらくセレクチン機能の金属依存性の基礎は、Glu−80、Asn−82、Asn−105およびAsp−106の側鎖、ならびにAsp−106の主鎖カルボニルによって配位されるカルシウムイオンである。また、2個の水分子もP−LE内でカルシウムと連結し、そのうちの1つはAsn−83の側鎖によって安定化される。SLe結合部位の類似性は、P−LEのこの領域の8つの結合した水がE−セレクチンlec/EGF構造(図示せず)にも存在する(0.8Å以内)ことを考慮して、さらにより顕著である。しかしながら、結合部位は、E−セレクチンのArg−97からP−セレクチンのSer−97への変更によって大部分定義されるある領域において、相違を有する。E−セレクチンlec/EGF構造では、Arg−97はTyr−94上に重なることにより、この領域にプラスに帯電した表面を供与するが、P−LEでは、Tyr−94は、より小さいSer−97残基によって妨害されず、その結果、疎水性相互作用を媒介するための電位を有する。E−セレクチンlec/EGF構築物のArg−97はAsp−100と水素結合を作るが、これは、P−LEではアラニン残基である。この領域に隣接するのはLys−99であり、これは、E−セレクチンlec/EGF内では、結合部位から離れたところを指す。P−LE中の同等の残基はセリン残基であり、これは結合部位に面している。
【0075】
SLeと複合体形成されたP−およびE−セレクチンlec/EGFドメインの結晶構造
本発明者らは、SLeと複合体形成されたP−LEの結晶構造を得ようとし、予め形成されたP−LE結晶中にSLeを浸漬することによって得られるであろうと予測した。また、本発明者らは、E−セレクチン対P−セレクチンについて記載された(Poppe他、1997)約10倍高いSLe結合親和性のための構造的基礎を理解することを望み、これは、その推定のSLe結合部位の類似性を仮定すれば予期されない。したがって、本発明者らは、P−LEに関して発現、精製、および脱グリコシル化されたE−セレクチンのレクチン/EGF構築物(E−LE)を生成した。E−LEは、E―セレクチンlec/EGFに対して以前に使用された(Graves他、1994)ものと同様の条件下で結晶化され、結晶学的な非対称単位中に1つのE−LEコピーを有した。
【0076】
P−LE結晶は8mMのSLeを含む安定化溶液中に浸漬され、結晶学的データは3.4Åまで広げて収集された(表1)。P−LE/SLe結晶構造は、非対称単位中に4つのP−LEコピーを有し、1つのSLe結合部位は結晶接触によって部分的に閉塞される。浸漬時に回折品質においてこのような著しい損失を引き起こすのは、おそらくこの結晶接触である。データの低分解能にもかかわらず、明白な電子密度は3つのP−LEコピーの結合カルシウムから離れて伸びることがわかった。これらの結果はあとで高分解能のE−LEとのSLe複合体を得た後に精密化されたが、これらのマップはP−LEへ結合されたSLeの複合体構造を構築するために使用された。20mMまでのSLe濃度でSLeをE−LE結晶中へ浸漬する初期の試みは、成功しなかった。本発明者らは続いて、結晶化のために使用される高濃度のカルシウムがSLe結合分析(図示せず)においてE−セレクチンを阻害すると決定した。したがって、SLe結合を容易にしながら高分解能の回折をも維持するレベルまでカルシウム濃度が低減された浸漬プロトコルが得られた。これらの条件は、1.5Å分解能への回折データおよび結合SLeの明白な電子密度を与える結晶をもたらした(表1)。P−LE/SLe複合体の構造は、相互作用が本質的にほぼ完全に静電的であり、覆い隠された全表面積は、SLeのサイズと比較して小さい(549Å)ことを明らかにした。P−LEとの複合体は分解能が低いので、保存された相互作用のさらに詳細な説明は、E−LE/SLe複合体について以下に説明されるであろう。Fucヒドロキシルの相互作用は、大量の結合エネルギーを提供しなければならない。3−および4−ヒドロキシル基は結合カルシウムに配位するだけでなく、それ自身がカルシウムに配位している残基と水素結合も形成する。さらに、Glu−107はFuc2−ヒドロキシル基から3.4Åしか離れておらず、弱い水素結合を形成できる。SLeGal残基は、4−ヒドロキシル基(Tyr−94のヒドロキシル基と)および6−ヒドロキシル基(Glu−92のカルボキシレート基と)を用いて、タンパク質残基と水素結合する。NeuNAc残基は、2つのセレクチンが非常に異なる領域、すなわちArg−99(E−セレクチン)に対してSer−99(P−セレクチン)である部位において相互作用をする。P−LEにおいて、Tyr−48およびSer−99のヒドロキシル基は、それぞれ、NeuNAcのカルボキシレート部分および4−ヒドロキシル基に対して水素結合を形成する。最後に、NeuNAc環のC−4はPro−98に対して集まるように見える。NeuNAcの位置決めは、E−LEにおいてArg−99との好ましくない接触を作り得るので、より良い相互作用を可能にするためにさらに背後へ移動する(図2A)。SLeの残りは、E−LEおよびP−LEの間で本質的に重ね合わせ可能である。
【0077】
SLeと複合体形成されたE−LEの構造は、Ser−97:Arg−97(P−セレクチン:Eセレクチン)の相違の結果としてNeuNAcへの異なる接触を有して、P−LEの低分解能構造に見られる相互作用を確認する。Fuc3−および4−ヒドロキシル基は結合カルシウムに配位し、やはりカルシウムに配位する残基との水素結合の複合体ネットワークを形成する。Fuc4−ヒドロキシル基は、配位子を持たない(unliganded)構造で観察されるカルシウムに連結した水分子を正確に置換し、Asn−82から水素結合を受け取り、Glu−80へ水素結合を提供する。Fuc3−ヒドロキシル基は、その最終位置はAsn−105へ1Å近いが、別のカルシウム配位した水分子を置換する。SLe結合において、Asn−83はその2ねじれ角を59°へ回転させるので、水素結合を結合水へ提供できるようになり、次に結合水をFuc2−ヒドロキシル基およびGlu−107の側鎖の両方へ水素結合することができる(図示せず)。またこの回転は、ここでAsn−83側鎖がカルシウムに配位できる。P−LEのSer−97のE−LEのArg−97による置換は、NeuNAcとの異なる相互作用セットの形成を可能にし、発生し得る近接した接触を緩和するために側鎖から離れた糖の移動を引き起こす。Arg−97は、NeuNAcのグリコシド酸素およびカルボキシレート基へ水素結合を提供する。P−LEへの同様の配置において、カルボキシレート基はまた、Tyr−48から水素結合を受け取る。
【0078】
P−LEおよびE−LEへ結合するSLeについて観察されるタンパク質接触は、P−およびE−セレクチン認識のために重要な残基を定義することに焦点を絞った部位特異的な突然変異生成の研究(Erbe他、1993、Erbe他、1992、Graves他、1994、Hollenbaugh他、1993、NgおよびWeis、1997)と良く一致する。これらの突然変異(例えば、E−およびP−セレクチンのTyr−48およびTyr−94、ならびにE−セレクチンのArg−97の置換)の多くは今や、SLeとの水素結合相互作用に直接影響すると解釈できる。他の突然変異は、おそらく相互作用する残基の配向を変更することによって間接的に機能を妨害する。E−およびP−セレクチンの両方に見られる三連Lysの連続物(残基111〜113)の突然変異に関連した機能の妨害の説明となりそうなのは、この後者の説明である。SLeと複合体形成されたP−LEおよびE−LEの構造においてLys−113は、結合に直接参加しない。しかしながら、この残基は、Glu−92のカルボキシレート部分へ(その側鎖アミノ基によって)水素結合し、Glu−92はまた、SLe内のGal残基の6−ヒドロキシル基へ水素結合する。したがって、セレクチンのこの領域におけるいくつかの突然変異は、間接的なメカニズムによってSLe結合を妨害し得る。
【0079】
E−およびP−LE/SLe構造と関連のレクチン/グリカン複合体の構造とを比較すると、重要な類似点および相違点が明らかになる。オリゴマンノースへ結合されたMBP−Aの結晶構造の試験(Weis他、1992)は、連結マンノース残基の3−および4−ヒドロキシル基も含むカルシウム結合相互作用の同様の配置を示す。しかしながら、E−およびP−LE/SLe構造のFuc環は、MBP−A/オリゴマンノース複合体のマンノースに対して「反転される(flipped)」。この結果、環位置の交換が起こるので、セレクチンLE/SLe複合体のFuc3−および4−ヒドロキシル基は、それぞれ、MBP−A/オリゴマンノース複合体のマンノースの4−および3−ヒドロキシル基位置を占める。異なるヒドロキシル基が使用され、糖環に対するその関係が異なる(マンノース3−および4−ヒドロキシル基ではそれぞれエクアトリアル−エクアトリアルなのに対してFucではエクアトリアル−アキシアル)にもかかわらず、ヒドロキシル基に対する糖環の炭素に沿ったベクトルは保持される。ヒドロキシル基のこの正確な位置決めは、カルシウムイオンへの同時連結反応およびタンパク質との水素結合相互作用のために、不可欠であると思われる。3つのセレクチン残基が導入されたMBP−AのK3突然変異体の結晶構造(NgおよびWeis、1997)は、セレクチンLE/SLe複合体について本明細書で本発明者らが観察したのとは大きく異なって、SLeと結合する。この構造および本明細書に提供される構造は結合カルシウムへのFuc連結反応を示すが、異なるヒドロキシル基が含まれる。K3突然変異体/SLe複合体では、Fuc2−および3−ヒドロキシル基はカルシウムと連結し、それぞれ、セレクチンLE/SLe複合体で見られるFuc4−および3−ヒドロキシル基の位置を占める。この結果、セレクチンLE/SLe複合体に対して結合ポケット内のSLe配向が90°回転され、Gal4−ヒドロキシル基とLys−111の側鎖との間の水素結合相互作用(発明者らは観察していない)が提供される。これは、E−およびP−LE/SLe複合体におけるリガンドの結合に対するGlu−92、Tyr−94、およびTyr−48(ならびにEセレクチンのArg−97)の重要性を強調する。最後に、E−セレクチンlec/EGF結晶構造内へ分子的にドッキングされたSLeのモデル(Graves他、1994、Kogan他、1995、Poppe他、1997)は、結合表面のSLeの一般的な配向については、本発明の結果と比べてひけをとらない。しかしながら、程度の差はあっても、全て、分子接触の同一性に関して、ここに示された構造と一致しない。SLeの結合カルシウムへの連結反応は、MBP−A/オリゴマンノース複合体およびMBP−A K3突然変異体/SLe複合体で観察されるものを模倣するという基本的な前提では、全てのモデルは、SLeのFuc2−および3−ヒドロキシル基が結合カルシウムと連結することを提案する。これは、Fuc連結反応が3−および4−ヒドロキシル基で媒介される発明者らの2つの別々のセレクチンLE/SLe複合体の観察と鋭く対照的である。E−セレクチン/SLe相互作用のための提案される他の接触は、様々な程度で本発明の結果と一致または矛盾する。これらの誤った構造の検討に基づいて治療目的を対象としたSLe模倣体の設計は、最終的に、これらの努力の成果を制限するであろう。
【0080】
X線結晶学のための機能性PSGL−1ペプチドの生成
本発明者らは次に、認識の構造的基礎を解明するためにPSGL−1と複合体形成されたP−LEの結晶構造を得ようとしたが、生理的または大きい細胞外型のPSGL−1は共結晶の試行にとって不均質すぎると判明するであろうと予想した。突然変異生成および生化学的な研究は、P−セレクチンが、E−セレクチンと対照的に、成熟したPSGL−1のN−末端内で、ポリペプチド残基およびSLe修飾されたO−グリカンの両方を認識することを示す。PSGL−1決定基の候補には、(成熟ポリペプチドのN−末端から番号付けされる)Tyr−5、Tyr−7、およびTyr−10(そのうちの1つまたは複数は硫酸化される)、ならびに間接的な方法(PouyaniおよびSeed、1995、Ramachandran他、1999、Sako他、1995、Wilkins他、1995)でThr−16へ局在化されたシアリル化、フコシル化(おそらくSLe様の)O−グリカンを包含するアミノ酸のアニオン性の連続物が含まれる。3つのTyr残基のいずれか1つの硫酸化は、P−セレクチン結合を支援できるが、個々の硫酸チロシンの相対的な役割は、ローリング研究(Ramachandran他、1999)によって推察されたもので、厳密な親和性決定によるものではない。これらの構造的な疑問を探求するため、およびP−LEとの結晶に適した均質的に修飾された形のPSGL−1を生成するために、発明者らは、切断型のPSGL−1をCHO細胞株中で発現させた。CHO細胞株にはあらかじめ、フコシルトランスフェラーゼ−VIIおよびコア2N−アセチルグルコサミン、CHO細胞中の機能性PSGL−1の生成に不可欠である修飾酵素を移入した(Kumar他、1996、Li他、1996)。発明者らは、IgGの重鎖ドメイン(19.Fc,(Sato他、1995))に融合されたPSGL−1の19N−末端アミノ酸をコード化しているPSGL−1の可溶性構築物(19eK.Fc,(Goetz他、1997))を利用した。ここで、発明者らは、発現および精製に続いて単量体PSGL−1ペプチドの単離を可能にするエンテロキナーゼ切断配列を導入した。ラテックスミクロスフェア上へコーティングされた19eK.Fcは、P−およびE−セレクチンを発現するCHO細胞上のローリングを支援することが以前に証明された(Goetz他、1997)。
【0081】
19eK.Fcは、単量体PSGL−1ペプチド(19ekペプチドと称される)を生成するためにエンテロキナーゼで消化された。MSによる予備的な分析は、19ekペプチドが構造的に不均質であることを示唆した(図示せず)。したがって、混合物の分解は陰イオン交換HPLCによって達成され、19ekペプチド混合物を、塩の勾配で遅れて溶出する主な種が優位を占める均質な各成分へ分離した(図1A)。主要な19ekペプチドの構造は、図1Aに示されるように、スルホグリコペプチド(SGP−3と称される)であると決定された。SGP−3のPSGL−1部分は広範囲にわたって翻訳後に(post−translationally)修飾され、3つのチロシン残基すべての上の硫酸塩、およびThr−16におけるSLe−含有コア2修飾されたO−グリカンを含む(図1A、挿入図)。重要なことには、グリカンは、HL−60骨髄細胞株から単離されたPSGL−1について特徴付けられた2つのSLe−含有O−グリカンのうちの1つと同一である(Wilkins他、1996)。19ekペプチドの主要でない種(図1A)は、SGP−3の修飾が少ない型である。19ekペプチドSGP−1およびSGP−2(図1A)の構造は、それぞれ、1つおよび2つの硫酸チロシンを含むSGP−3の形であると決定された。MSによる予備的実験は、チロシン硫酸化の全ての順列は次亜硫酸化種内に存在するが、これらは定量されないことを示した。また、19ekペプチドプール内に存在し、クロマトグラフィにより分解される(図1A)のは、SGP−3の硫酸チロシンを含まない形(グリコペプチドー1、GP−1)、あるいは炭水化物を含まない形(スルホペプチドー1、SP−1)である。
【0082】
本発明者らは、共結晶の試みに対して最も機能的な種を選択するために、表面プラズモン共鳴を使用して、個々の19ekペプチドに対するP−LEの結合親和性を決定した。比較のために、発明者らは、二量体細胞外ドメイン全体からなる可溶性の組み換え型PSGL−1(sPSGL)を評価した。以前の研究と一致して、P−LEは、固定化sPSGLおよび19ekペプチドと速い速度論で結合した(図1B)。結合は、EDTAおよび中和Mabs(図示せず)、ならびに可溶性阻害剤として使用されるSGP−3(図1B)とともに実行されたコントロール実験に基づいて、特異的であると決定された。個々の19ekペプチドについて観察された最も高い親和性相互作用は、Kが778nMであり完全修飾された種SGP−3についてであった。sPSGLについても本質的に同一の親和性が得られ(図1C)、これにより、19ekペプチドSGP−3は完全長の細胞外PSGL−1構築物を機能的に模倣し、より短い構築物に存在するPSGL−1のN−末端領域はP−LEのための認識領域全体を構成することが示唆された。SGP−3の次亜硫酸化型に対するP−LEの結合親和性はわずかに弱く(図1C)、二硫酸化種(SGP−2)では2.88μMのKを示し、モノ硫酸化種(SGP−1)では12.3μMのKを示した。SGP−3の炭水化物を含まない形(SP−1)、またはスルホチロシンを含まない形(GP−1)のP−LE結合親和性はさらに弱く、それぞれ、113μM、および31.1μMであると評価された(図1C)。炭水化物または硫酸化を含まない19ekペプチドの合成型に対するP−LEの親和性は修飾されたどの種よりもかなり低く、ここで使用されるタンパク質濃度では決定されなかった。ここで決定されたsPSGLおよびSGP−3へのP−LE結合の結合親和性は、完全長の好中球PSGL−1に対するP−LEの結合と同様に、可溶性PセレクチンおよびP−セレクチンのレクチン−EGF構成物の結合について以前に決定された値と比較して十分適度である(それぞれ、322nMおよび422nMのK)(Mehta他、1998)。さらに、SGP−3と同様に修飾されたPSGL−1グリコスルホペプチドに対する可溶性P−セレクチンの結合親和性は、Kが〜350nMであると最近報告された(Leppanen他、1999)。
【0083】
PSGL−1スルホグリコペプチド−3へ結合されたP−LEのX線結晶構造 P−LEは2倍モル過剰のSGP−3とともに共結晶化された。1.9Åに回折される大きいI222空間群の結晶を与えるために、繰り返しマクロシーディングおよびストロンチウムによるカルシウム置換が必要とされた。位相は社内で収集した水銀データを用いて生成され、結晶学的な非対称単位中の2つのP−LE/SGP−3複合体が明らかにされた。構造は、CNSを用いて20.4%のR因子(R遊離、23.5%)へ精密化された(表1)。SGP−3ポリペプチド内の29アミノ酸では、硫酸化Tyr−7(Tys−7)および硫酸化Tyr−10(Tys−10)を含む残基6〜18が観察された。構造に乱れのあるおよび不在なのは、最もN−末端の硫酸化チロシン(Tys−5)を含むポリペプチド残基1〜5と、エンテロキナーゼ−リンカー領域を含む残基19〜29である。Thr−16でのSLe−修飾されたO−グリカンの1残基以外の全てが観察される。Gal(1,3)GalNAc分枝に(2,3)連結したNeuNAc(図1A、挿入図)の電子密度は検出されなかったが、この残基は結合のために必要とされるようには見えない(Lappanen他、1999)。
【0084】
P−LE/SGP−3複合体の2つの異なる見解は、結合相互作用の構造的概観を提供し、これから、生理的P−セレクチン/PSGL−1相互作用の態様が推測できる。SGP−3はP−LEレクチンドメインへ1:1化学量論で結合し、大きいエピトープは溶媒から1641Åを排除し、P−LE/SLe複合体について記載されたSLe結合部位を含む。SGP−3は転移NOE研究(D. Tsao、未発表の観察)により決定されるように溶液中で乱れ、おそらく延びているという事実にもかかわらず、結合コンホメーションは、ヘアピン様構造を生成する内部折りたたみによって凝縮される。これらの結果は、それぞれが結合相互作用の異なる成分を供給するPSGL−1ホモ二量体の異なるアームが、同時に単一のP−セレクチンレクチンドメインに結合するかもしれない可能性を排除しないが、PSGL−1の単一のアームが完全な結合決定基セットを提供できることを示唆する。さらに、このタイプの結合相互作用は、PSGL−1ホモ二量体の個々のモノマーが2つの異なるP−セレクチン分子へ同時に結合するであろう可能性を許す。2つの平行する結合相互作用の同時局在化(co−localization)は、PSGL−1の二量体化突然変異体が剪断の影響下で細胞結合を支援できないという観察(Snapp他、1998)の点から見て、P−セレクチン機能の生理的要求かもしれない。また、P−LE/SLe複合体の試験からすぐに明らかなのは、SGP−3の結合が、レクチンドメイン:EGFドメイン界面と本質的に反対のP−LEの面で生じることである。これは、P−セレクチンのEGFドメインが、PSGL−1、少なくとも分子のN末端部分への直接結合に関与しないという直接的な証拠を提供するが、P−セレクチン機能において間接的な役割を有することができる(以下を参照)。
【0085】
カルシウムがストロンチウムで置換されるという事実にもかかわらず、SLeとP−LEの複合体で見られる相互作用はP−LE/SLe構造中に再現され、この金属がカルシウムを有効に置換できる(Asa他、1992)という以前の観察と一致する。複合体中にはP−LEの大きい構造的再配置があり、これは金属イオンの配位に変化を引き起こす。P−LE/SLe複合体において、Fucの2−ヒドロキシルは、Glu−107と弱い水素結合(3.4Åの距離)を作る。これはP−LE/SGP−3複合体には存在しないが、Glu−88との水素結合に入れ替わり、これはそれ自身もまた結合ストロンチウムに配位する。P−LEの構造では、Asn−83の側鎖は結合カルシウムに近接するが配位せず、SLeのE−LE結合では、SLeの結合は、それを金属イオンおよびFucヒドロキシルと相互作用させる。P−LE/SGP−3複合体では、この残基の位置はGlu−88の側鎖に入れ替わっていた。この点で、金属の連結反応は、今、オリゴマンノースと複合体形成されたMBP(Weis他、1992)およびSLeと複合体形成されたMBPのK3突然変異体(NgおよびWeis、1997)を厳密に模倣し、ここで対応する残基Glu−193はカルシウムに連結することが観察される。
【0086】
SGP−3ポリペプチドとP−LEの間の相互作用は、疎水性および静電的接触の組み合わせである。タンパク質と接触するSGP−3ペプチドの最もN−末端の残基はTys−7であり、この後に、伸びたコンホメーションで3つの残基が続く。残基Tys−10からLeu−13は湾曲部を形成してペプチドの方向を変化させ、残りの残基は伸びたコンホメーションでPro−18まで達する。Tys−7の硫酸塩は、Ser−46およびSer−47の側鎖ヒドロキシル基、主鎖アミド窒素と、順序付けられた水分子によって一連の水素結合を形成する。さらに、P−LEのHis−114は残りの硫酸塩酸素へ水素結合を提供し、水素結合ネットワークを完成する。また、Tys−7は、Lys−112のアミド窒素との主鎖−主鎖の水素結合、ならびにSer−47およびLys−113の側鎖とのいくつかの疎水性相互作用を形成する。SGP−3残基Leu−8はLeu−13に対して集まり、これらは両方とも、His−108およびLys−111の側鎖により形成されるタンパク質の疎水性表面に対して集められる。これらの相互作用は、ペプチドの緻密な三次構造を安定化するのを助けるに違いない。Tys−10側鎖の芳香環はこれらの2つのロイシン残基に寄りかかり、Arg−85、およびThr−16の主鎖アミドと水素結合できる位置に硫酸塩を配置する。Arg−85とSGP−3ポリペプチドの間の相互作用は、P−LEの大きい構造再配置(以下を参照)によって可能にされ、P−セレクチン内のこの残基を標的とする以前の部位特異的な突然変異生成の研究(Bajorath他、1994)の結論を支持する。Alaへ突然変異される場合、P−セレクチン突然変異体は、低い親和性(おそらく独占的に、SLe−媒介される)結合がなお保持されたPSGL−1発現細胞への高い親和性結合を失う。同様に、すぐ近くの残基76〜83へそのエピトープがマッピングされる抗体は、SLeではなくPSGL−1への結合を廃止すると示された(Hirose他、1998)。このP−LE/SGP−3複合体では、SGP−3のPhe−12の側鎖はタンパク質と接触しないが、非結晶学的に対称の関係にある他の複合体コピー中のそれ自身へ集まる。おそらく、溶液中では、側鎖Leu−110により形成された疎水性表面に寄りかかるであろうと思われる。ただひとつ残った相互作用は、SGP−3のPro−14とともに見られ、これは、His−108に対して集まり、Arg−85から水素結合を受け取る。
【0087】
非連結P−LEおよびP−LE/SLe複合体の両方と比較して、SGP−3結合に関連するP−LEのコンホメーションにはいくつかの目覚しい変化がある。最も顕著なコンホメーション変化は、Asn−83からAsp−89までの残基のループの移動であり、Arg−85をSGP−3のTys−10と接触させ、Glu−88を結合金属と連結する位置へ動かす。この移動は、次に、Asn−83からAsp−89ループにより空けられた空間を占めるように移動する残基Arg−54からGlu−74の位置に影響すると思われる。複合体形成されていないP−LEでは、Thr−65はTrp−1の側鎖に対して集まり、それを溶媒から排除する。P−LE/SGP−3複合体について観察されたループの移動は、溶媒へのTrp−1へさらされることが期待されるだろうが、この残基は、レクチンドメインのTyr−118と、EGFドメインのGlu−135との間に集まるように再配置する。Trp−1の移動とともに、レクチンドメインに対するEGFドメインの52度の移動が存在し、Trp−1側鎖の移動により形成した空所はMPD分子によって満たされ、これは側鎖の新しい位置へ集まる。これにより、EGFドメインの移動が結晶化のために使用される高濃度のMPDによって引き起こされるのか、あるいはSGP−3の結合によるものなのかに関しての疑問が提起される。EGFドメインは、PSGL−1、少なくとも分子のN−末端領域への結合において直接的な役割を果たすようには見えないが、レクチンドメインに対するその関係の変化は、EGFドメインがリガンド認識を調節できる(Gibson他、1995、Kansas他、1994)という観察を考慮して、興味深い観察である。
【0088】
あるいは、これらの研究は、EGFおよびCRドメインならびにここで評価される結合部位へのPSGL−1C−末端の他の領域の間の第2の結合相互作用を示すことができる。更なる構造研究は、レクチンおよびEGFドメインの間の潜在的相互作用をさらに探求することを保証される。Thr−16におけるO−グリカンの近くのTys−10の配置をもたらすSGP−3ポリペプチドの内部折りたたみは、PSGL−1の直線的配列内の硫酸チロシンに対するSLe修飾グリカンの関係が最少数の介在残基より上では絶対的でないだろうことを示唆する。P−セレクチンは、PSGL−1N−末端の多数の結合コンホメーションを支持することができ、そのうちの1つだけがこの研究で示される。P−LE/SGP−3構造は、PSGL−1のTys−7およびTys−10(Tys−5ではない)が結合に不可欠であることを示唆し、P−セレクチン媒介ローリングにおけるこれらの特異性硫酸チロシン残基のための優先的な役割を示す突然変異生成研究と一致する結果である。しかしながら、PSGL−1N−末端の柔軟性は、硫酸チロシン、例えばTys−5およびTys−7またはTys−5およびTys−10の異なる順列がP−セレクチン内の塩基性残基へ異なる登録で結合することを可能にするかもしれない。この仮定は、三硫酸化SGP−3に対するP−LEの親和性が、どうして二硫酸化SGP−2に対する親和性よりも大きいかを説明できる。この観察を説明するP−セレクチン内にさらに第3の未定義の硫酸チロシン結合部位が存在することが可能であるが、PSGL−1ポリペプチドの柔軟性は3つの硫酸チロシン残基のどれもが本明細書に定義される2つの部位へ結合できるようにしてもよい。これは、単一の硫酸チロシン残基(Tys−5を含む)を含むPSGL−1の突然変異が、どうしてP−セレクチン結合を支援できる(Ramachandran他、1999)のかを説明することができる。また、結合におけるこの潜在的な柔軟性を支援するのは、マウスPSGL−1の対応するN−末端領域もP−セレクチンへの結合にとって重要であり、さらに、2つの潜在的な硫酸チロシンを含み、Thr−16に対応する潜在的グリコシル化部位から2つだけおよび4つの残基が除去されるという観察である。マウスP−セレクチンはまた、位置85および114に塩基性残基を含み、ヒトのP−LE/SGP−3相互作用についての本明細書での観察に基づいて、マウスPSGL−1内で硫酸チロシンとの同様のイオン性相互作用を起こすことが予想されるであろう。この相互作用の結果は、硫酸チロシンおよびSLe結合部位にわたる介在残基を少なくするであろう。同様に、PSGL−1のN−末端領域の柔軟性は、Thr−16へ付着した他のO−グリカン構造の認識も可能にするであろう。骨髄PSGL−1およびP−セレクチンについて記載された、より長いポリ−N−アセチルラクトサミンO−グリカン内のSLeおよびLeエピトープは、同様にしてこれを受け入れ得る。
【0089】
結言
本明細書中に示された、SLeと複合体形成されたP−LEおよびE−LE、ならびにPSGL−1スルホグリコペプチドと複合体形成されたP−LEの結晶構造は、セレクチン認識の分子基礎についての発明者らの理解へ大きく貢献した。SLeと複合体形成されたP−LEおよびE−LEの構造は、共通および異なる結合相互作用の両方を示し、この共有リガンドに対するその差別的な親和性を説明する。P−LE/SGP−3複合体の構造は、特に、E−およびP−セレクチンによる差別的なPSGL−1認識がどのようにして達成されるかを説明する。E−およびP−セレクチンのレクチンドメインの主要な配列は50%以上同一であるが、P−LE/SGP−3相互作用にとって重要な残基はP−セレクチンに特有のものであり、おそらく、P−セレクチン/PSGL−1相互作用の高い親和性を説明する。SGP−3内の硫酸チオシン残基とのイオン性相互作用にとって重要な残基Arg−85およびHis−114は、P−セレクチンに特有である(ヒトのE−セレクチン中の対応する残基は、それぞれ未帯電のGlnおよびLeuである)。興味深いことに、これらの位置における差別的な電荷のこの傾向は、マウス、ラット、ウサギおよび牛のP−セレクチンおよびE−セレクチンで観察され、PSGL−1とのP−セレクチンの相互作用のための保存された結合のモチーフを示唆する。ここで行われた構造観察は、L−セレクチン/PSGL−1相互作用の本質へも可能な洞察を提供する。L−セレクチンも、Mab中和(Kansas、1996)および突然変異生成(Ramachandran他、1999)の研究に基づいて、PSGL−1のN−末端領域を認識すると思われる。この相互作用の親和性はまだ決定されていないが、P−セレクチンおよびE−セレクチンのPSGL−1との相互作用に関連して、中間の親和性を有するであろうと予想される。これは、相同性の高いL−セレクチンレクチンドメインはE−およびP−セレクチンについて決定されたのと同様のコンホメーションを採用し、PSGL−1N−末端の認識はP−セレクチンのそれと特性を共有するという仮定の上に断定される。P−セレクチンと同様に、ヒトのL−セレクチンは位置85に塩基性残基(Lys残基)を含有し、PSGL−1N−末端内で硫酸化Tyrと本質的なイオン性相互作用を起こすと予想される。しかしながら、L−セレクチンは、位置114に、PSGL−1内で硫酸チロシンと第2のイオン性相互作用、したがってP−セレクチンにおそらく匹敵する結合親和性を支援できる塩基性残基を含有しない。
【0090】
水素結合ネットワークおよび選択されたイオン性相互作用に大きく基づいて、ここに示されるSLeおよびPSGL−1スルホグリコペプチドとのE−およびP−セレクチンの相互作用は、この種の細胞接着分子について説明された結合親和性および速い結合速度論の基礎である。比較的低い親和性のセレクチン/カウンタレセプターの相互作用の急速な可逆性は、白血球のその後の活性化、強固な接着および組織への血管外遊走に必須である白血球の付着およびローリングを生成する。炎症の状況では、PSGL−1は、セレクチン媒介プロセスにおいて、炎症反応の増幅にとっておそらく重要な好中球−好中球、および好中球−血小板の相互作用を促進するとともに、血管内皮への好中球の初期付着を媒介する、中心的役割を果たすと思われる。E−およびP−セレクチン/SLeならびにP−セレクチン/PSGL−1相互作用が証明される炎症条件の処置のための小分子拮抗物質の理論的設計は、本明細書中に提供される構造情報によってかなり支援されるであろう。
【0091】
【表1】
Figure 2004509069
【0092】
【表2】
[E−セレクチンSLEX4Å接触]
TYR48,GLU80,ASN82,ASN83,GLU92,TYR94,ARG97,GLU98,ASN105,ASP106,GLU107,結合カルシウム
[E−セレクチンSLEX8Å接触]
TYR44,SER45,PRO46,SER47,TYR48,ALA77,PRO78,GLY79,GLU80,PRO81,ASN82,ASN83,GLU88,CYS90,GLU92,TYR94,ARG97,GLU98,LYS99,ASP100,TRP104,ASN105,ASP106,GLU107,ARG108,LYS111,LYS113,結合カルシウム
[P−セレクチンSLEX4Å接触]
TYR48,GLU80,ASN82,GLU92,TYR94,PRO98,SER99,ASN105,ASP106,GLU107,結合カルシウム
[P−セレクチンSLEX8Å接触]
TYR44,SER46,SER47,TYR48,ALA77,ASP78,ASN79,GLU80,PRO81,ASN82,ASN83,ARG85,GLU88,CYS90,GLU92,ILE93,TYR94,LYS96,SER97,PRO98,SER99,ALA100,TRP104,ASN105,ASP106,GLU107,HIS108,LYS111,LYS113,結合カルシウム
[P−セレクチンPSGL−14Å接触]
ALA9,TYR45,SER46,SER47,TYR48,GLU80,ASN82,LYS84,ARG85,GLU88,GLU92,TYR94,PRO98,SER99,ASN105,ASP106,GLU107,HIS108,LEU110,LYS111,LYS112,LYS113,HIS114,結合ストロンチウム
[P−セレクチンPSGL−18Å接触]
SER6,THR7,LYS8,ALA9,TYR10,SER11,TYR44,TYR45,SER46,SER47,TYR48,TYR49,TRP50,ALA77,ASP78,ASN79,GLU80,PRO81,ASN82,ASN83,LYS84,ARG85,ASN86,ASN87,GLU88,CYS90,GLU92,ILE93,TYR94,ILE95,LYS96,SER97,PRO98,SER99,ALA100,TRP104,ASN105,ASP106,GLU107,HIS108,CYS109,LEU110,LYS111,LYS112,LYS113,HIS114,結合ストロンチウム
【0093】
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【0094】
本明細書中で上記に言及された全ての出版物は、発行済み特許、係属中の出願、出版論文、タンパク質構造寄託物であろうとなかろうと、参照によってその全体が本明細書中に援用される。上記の本発明は、明瞭性および理解の目的でいくらか詳細に説明されたが、併記の特許請求の範囲中の本発明の真の範囲から逸脱することなく、形式および細部に種々の変化をもたらすことが可能であることは、開示の解釈から当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
PSGL−1 19ekペプチドの分解およびBIAコアの親和性解析を示す。図1Aは、陰イオン交換クロマトグラフィにより分解されたPSGL−1 19ekペプチドのプロファイルである。ピークラベルの定義、挿入図、主要なPSGL−1 19ekペプチドSGP−3の構造については本文を参照。<Qは、ピログルタミン酸へのN−末端Gln残基の環化を表し、SOは、Tyr残基の硫酸化を表す。番号付けされたペプチド配列のオーバーラインは、エンテロキナーゼリンカー領域と関連されるPSGL−1起源ではない残基を示す。
【図1B】
PSGL−1 19ekペプチドの分解およびBIAコアの親和性解析を示す。図1B−1および図1B−2は、固定化PSGL−1構築物への溶液位相(solution−phase)P−LE結合の代表的BIAコアのセンサグラムである。P−LE(800nM濃度)をsPSGL(図1B−1)、およびSGP−3(図1B−2)上へ注入した。P−LE注入されたあまり修飾されていない他の型のSGP−3(図示せず)の結合信号は、結合速度論に関しては、これらの結果と同一であった。sPSGLおよびSGP−3へのP−LE結合は、溶液位相SGP−3との共注入によって阻害された(点線)が、チロシン硫酸化またはグリコシル化を含まない合成ペプチドによっては阻害されなかった(破線)。いずれも20μMの濃度であった。全ての曲線は、結合全体から非特異性結合を差し引くことにより生成された特異性結合を反映している。
【図1C】
PSGL−1 19ekペプチドの分解およびBIAコアの親和性解析を示す。図1C−1〜図1C−6は、固定化sPSGLおよびBIAコア解析により精製された19ekペプチドと反応させた溶液位相P−LEの結合親和性の決定である。第1列の左から右へ、sPSGL(図1C−1)、SGP−3(図1C−2)およびSGP−2(図1C−3)である。第2列の左から右へ、SGP−1(図1C−4)、GP−1(図1C−5)およびSP−1(図1C−6)である。示された濃度のP−LEは、固定化リガンド(全結合信号を決定するため)と、およびリガンドをまったく含まないコントロール細胞(非特異性結合を決定するため)に対して、反応させた。P−LEの各濃度における平衡応答(equilibrium response)(Req)が示される。試験された各P−LE濃度では、特異性結合信号(四角)は、全結合信号(ひし形)から非特異性応答(三角)を差し引くことにより決定された。Kおよび標準偏差(図示)は、BIA評価ソフトウェア(BIAcore)を用いて、特異性結合曲線のラインフィッティングによって決定され、3対10の分離実験の結果である。ラインフィッティングを用いるKの決定は、スキャッチャードプロット(図示せず)の直線回帰分析により決定される値とうまく一致した。
【図2】
P−セレクチンLE結晶のX線回折によって得られるP−セレクチンLEの原子構造座標を提供する。「Atom Type」は、その座標が測定されている原子を示す。「Residue」は、各測定原子がその一部であるタイプまたは残基を示し、すなわちアミノ酸、補因子、リガンドまたは溶媒である。「x、y、およびz」座標は、各測定原子の単位格子中の位置(Å)のデカルト座標を示す。「Occ」は占有係数を示す。「B」は、原子構造中で原子がどのくらい移動可能であるかの尺度(Å)である「B−値」を示す。「MOL」は、結晶中の各分子を同定するために使用されるセグメント識別を示す。「MOL」の下の、「MOLA」、「MOLB」、「MOLC」および「MOLD」は、P−セレクチンLEの各分子を示し、「SOLV」は水分子を示し、「MPDS」はMPD分子を示し、「CALS」はカルシウムイオンを示す。乱れのある構造のために、P−セレクチンのLys17(MOLA)、Lys17(MOLC)およびAsn57(MOLC)は、アラニンとして表される。
【図3】
P−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折によって得られるP−セレクチンLEおよびSLeの原子構造座標を提供する。図の見出しは、「MOL」の下の、「A」、「B」、「C」および「D」がP−セレクチンLEの各分子を示し、かつSLe、MDP分子およびカルシウムイオンが「MOL」の下に表示されない以外は、図2について記された通りである。しかしながら、SLe、MDP分子およびカルシウムイオンは、「Residue」の下に同定される。乱れのある構造のために、P−セレクチンのLys17(MOLA)、Lys17(MOLC)およびAsn57(MOLC)は、アラニンとして表される。
【図4】
P−セレクチンLE:SLe結晶のX線回折によって得られるE−セレクチンLEおよびSLeについての原子構造座標を提供する。図の見出しは、「MOL」の下の「SOLV」が水分子を示し、かつE−セレクチンLE、SLe、カルシウムイオンが「MOL」の下に表示されない以外は、図2について記された通りである。しかしながら、E−セレクチンLE、SLeおよびカルシウムイオンは、「Residue」の下に同定される。
【図5】
P−セレクチン:PSGL−1ペプチド結晶のX線回折によって得られるP−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの原子構造座標を提供する。図の見出しは、図5が「MOL」の見出しを含まない以外は、図2について記された通りである。しかしながら、P−セレクチンLEの各分子、PSGL−1ペプチド、水、およびMPDは、「Residue」の下に同定される。乱れのある構造のために、P−セレクチンのAsn57(MOLA)、Lys58(MOLA)、Asn71(MOLA)、Arg22(MOLB)、Asn57(MOLB)、Lys58(MOLB)、Glu72(MOLB)、Met125(MOLB)およびArg157(MOLB)は、アラニンとして表される。
【図6A】
P−セレクチンのアミノ酸配列を提供する。結晶中の構築物を作るために使用される配列のセグメントは下線が引かれている。
【図6B】
E−セレクチンのアミノ酸配列を提供する。結晶中の構築物を作るために使用される配列のセグメントは下線が引かれている。
【図6C】
PSGL−1のアミノ酸配列を提供する。結晶中の構築物を作るために使用される配列のセグメントは下線が引かれている。

Claims (35)

  1. 結晶P−セレクチンLE。
  2. 空間群P2のプレート型であり、a=81.0Å、b=60.8Å、c=91.4Å、およびβ=103.6°の単位格子パラメータを有することを特徴とする請求項1に記載の結晶P−セレクチンLE。
  3. P−セレクチンLEおよびSLeの結晶複合体。
  4. 空間群P2のプレート型であり、a=81.1Å、b=60.5Å、c=91.4Å、およびβ=103.3°の単位格子パラメータを有することを特徴とする請求項3に記載の結晶複合体。
  5. E−セレクチンLEおよびSLeの結晶複合体。
  6. 空間群P2のロッド型であり、a=34.5Å、b=72.4Å、およびc=77.6Åの単位格子パラメータを有することを特徴とする請求項5に記載の結晶複合体。
  7. P−セレクチンLEおよびPSGL−1ペプチドの結晶複合体。
  8. 空間群I222の両錐型であり、a=63.4Å、b=96.8Å、およびc=187.3Åの単位格子パラメータを有することを特徴とする請求項7に記載の結晶複合体。
  9. SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位であって、該活性部位が、アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標を含み、該アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である当該活性部位。
  10. 前記活性部位が、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113の図3による相対構造座標を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項9に記載の活性部位。
  11. SLe結合タンパク質またはペプチドの活性部位であって、該活性部位が、図4によるアミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、ASN83、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの相対構造座標を含み、該アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である当該活性部位。
  12. 前記活性部位が、さらに、図4によるアミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113の相対構造座標を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項11に記載の活性部位。
  13. PSGL−1結合タンパク質またはペプチドの活性部位であって、該活性部位は、図5によるアミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114、および結合ストロンチウムの相対構造座標を含み、該アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である当該活性部位。
  14. 前記活性部位が、さらに、図5によるアミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、およびCYS109の相対構造座標を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項13に記載の活性部位。
  15. 、P−セレクチンLEと相互作用する作用薬を同定するための方法であって、
    (a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図2、3または5による相対構造座標を用いて、P−セレクチンLEの三次元モデルを生成するステップと、
    (b)P−セレクチンLEと相互作用する作用薬を設計または選択するために、前記三次元モデルを使用するステップと、
    を含む方法。
  16. (c)同定された前記作用薬を獲得するステップと、(d)前記同定された作用薬がP−セレクチンLE活性に関して有する効果を決定するために、前記同定された作用薬をP−セレクチンLEと接触させるステップと、をさらに含む請求項15に記載の方法。
  17. SLe結合部位を含む分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法であって、
    (a)(i)残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図3による相対構造座標(前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下)、または(ii)アミノ酸残基TYR48、GLU80、ASN82、GLU92、TYR94、ARG97、GLU98、ASN105、ASP106、GLU107および結合カルシウムの図4による相対構造座標(前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である)を用いて、SLe結合部位を含む分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、
    (b)ステップ(a)で生成された三次元モデルと、候補活性化剤または阻害剤のコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、
    を含む当該方法。
  18. 図3による前記相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER46、SER47、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ARG85、GLU88、CYS90、ILE93、LYS96、SER97、ALA100、TRP104、HIS108、LYS111およびLYS113を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項17に記載の方法。
  19. 図4による前記相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基TYR44、SER45、PRO46、SER47、ALA77、PRO78、GLY79、PRO81、GLU88、CYS90、LYS99、ASP100、TRP104、ARG108、LYS111およびLYS113を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項17に記載の方法。
  20. (c)候補活性化剤または阻害剤を獲得するステップと、(d)前記候補活性化剤または阻害剤を分子または分子複合体と接触させ、前記候補活性化剤または阻害剤が分子または分子複合体に関して有する効果を決定するステップと、をさらに含む請求項17に記載の方法。
  21. 前記候補活性化剤または阻害剤が分子または分子複合体のSLeへの結合に関して有する効果を決定するために、前記候補活性化剤または阻害剤は、SLeの存在下で分子または分子複合体と接触される請求項20に記載の方法。
  22. PSGL−1結合部位を含む分子または分子複合体の活性化剤または阻害剤を同定するための方法であって、
    (a)アミノ酸残基ALA9、TYR45、SER46、SER47、TYR48、GLU80、ASN82、LYS84、ARG85、GLU88、GLU92、TYR94、PRO98、SER99、ASN105、ASP106、GLU107、HIS108、LEU110、LYS111、LYS112、LYS113、HIS114、および結合ストロンチウムの図5による相対構造座標(前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である)を用いて、PSGL−1結合部位を含む分子または分子複合体の三次元モデルを生成するステップと、
    (b)前記ステップ(a)で生成された三次元モデルと、候補活性化剤または阻害剤のコンピュータフィッティング解析を実行することによって、候補活性化剤または阻害剤を選択または設計するステップと、
    を含む当該方法。
  23. 図5による前記相対構造座標は、さらに、アミノ酸残基SER6、THR7、LYS8、TYR10、SER11、TYR44、TYR49、TRP50、ALA77、ASP78、ASN79、PRO81、ASN83、ASN86、ASN87、CYS90、ILE93、ILE95、LYS96、SER97、ALA100、TRP104およびCYS109を含み、前記アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である請求項22に記載の方法。
  24. (c)候補活性化剤または阻害剤を獲得するステップと、(d)前記候補活性化剤または阻害剤を分子または分子複合体と接触させ、前記候補活性化剤または阻害剤が分子または分子複合体に関して有する効果を決定するステップと、をさらに含む請求項22に記載の方法。
  25. 前記候補活性化剤または阻害剤が分子または分子複合体のPSGL−1またはPSGL−1ペプチドへの結合に関して有する効果を決定するために、前記候補活性化剤または阻害剤は、PSGL−1またはPSGL−1ペプチドの存在下で分子または分子複合体と接触される請求項24に記載の方法。
  26. SLeと相互作用する作用薬を同定するための方法であって、
    (a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図3または図4による相対構造座標を用いて、SLeの三次元モデルを生成するステップと、
    (b)SLeと相互作用する作用薬を設計または選択するために、前記三次元構造を使用するステップと、
    を含む当該方法。
  27. (c)同定された前記作用薬を獲得するステップと、(d)前記同定された作用薬がSLe活性に関して有する効果を決定するために、前記同定された作用薬をSLeと接触させるステップと、をさらに含む請求項26に記載の方法。
  28. PSGL−1と相互作用する作用薬を同定するための方法であって、
    (a)アミノ酸の主鎖原子からの±2乗平均平方根偏差が1.5Å以下である図5による相対構造座標を用いて、PSGL−1ペプチドの三次元モデルを生成するステップと、
    (b)PSGL−1と相互作用する作用薬を設計または選択するために、前記三次元構造を使用するステップと、
    を含む当該方法。
  29. (c)同定された前記作用薬を獲得するステップと、(d)前記同定された作用薬がPSGL−1またはPSGL−1ペプチドの活性に関して有する効果を決定するために、前記同定された作用薬をPSGL−1またはPSGL−1ペプチドと接触させるステップと、をさらに含む請求項28に記載の方法。
  30. 請求項15の方法によって同定される作用薬。
  31. 請求項17の方法によって同定される阻害剤または活性化剤。
  32. 請求項22の方法によって同定される阻害剤または活性化剤。
  33. 請求項26の方法によって同定される作用薬。
  34. 請求項28の方法によって同定される作用薬。
  35. E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を獲得するための方法であって、
    (a)カルシウムイオンおよびPEGの存在下で結晶E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する前記化合物とを接触させて、E−セレクチン型分子とカルシウムに配位する化合物との結晶複合体を形成するステップと、
    (b)濃度が低下されたカルシウムイオンならびに十分な濃度のPEGおよびイオン塩の存在下で前記結晶複合体を接触させて、冷却した際に、最終の結晶複合体のX線回折によってE−セレクチン型分子およびカルシウムに配位する前記化合物の三次元構造を解明するのに適する前記最終の結晶複合体を獲得するステップと、
    を含む当該方法。
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