JP2004506696A - 脱髄疾患を処置する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、国立衛生研究所によって与えられる助成金番号NS37336−01の下で、政府の支援によって行った。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、免疫学に関し、より詳細には、ケモカインIP−10の中和を通した脱髄疾患の処置に関する。
【0003】
脱髄疾患は、神経繊維を覆い、かつ隔離するミエリン鞘に対する傷害によって特徴付けられる障害の1つの群である。脱髄疾患に苦しむ個体は、神経繊維から分離するミエリンによって引き起こされる神経インパルスの伝達が損傷したことに起因して、神経学的欠損を被る。この疾患群のうち最も顕著である多発性硬化症は、中枢神経系(CNS)の神経炎症性脱髄疾患である。MSは、北アメリカにおける若年の成人の間で、非外傷性神経学的疾病の主要原因であり、全世界で約100万人の若年の成人に影響を与えている。
【0004】
MSは、通常、中枢神経系(CNS)中の白質の複数領域に影響を与え、最も頻繁には、室周囲白質、脳幹、脊髄および視神経に影響を与える。この疾患は、最初にミエリン鞘を破壊し、最終的にMSに特徴的である斑を生成する稀突起神経膠細胞を殺傷する。斑の初期発生は、一般的に、血管周囲の炎症と関連し、続いて、リンパ球、プラズマ細胞およびマクロファージが病変へ移動する。マクロファージの浸潤は、神経繊維の脱髄の重篤度と直接関連することが示されている。
【0005】
MSの発生率およびその分布パターンは、数十年間変化していない。この疾患は、通常、病巣性神経学的不全および多病巣性神経学的不全の再発攻撃の形態(from)で存在する。攻撃は、長い年月にわたって、表面上無作為に、生じたり、鎮静したり、再発したりする。鎮静は、しばしば不完全であり、ある攻撃は別の攻撃に続き、段階的な下方への進行が、増大する永久的な欠損を伴って結果として起こる。現在のMSの治療技術としては、インターフェロン、コルチコステロイド、および細胞傷害性免疫抑制剤が挙げられ、しばしば、不十分な結果、重大な副作用およびMSの慢性進行に対する影響力の欠如を伴う。現在の処置は、炎症性応答を減らすことによるMSの急性悪化からの回復を促進し得るが、一般的に、将来の攻撃、さらなる疾病の発生、またはMSの慢性進行は妨げない。さらに、損傷を受けた神経繊維の再有髄化を引き起こすことによって、脱髄疾患と関連する神経学的欠損を反転させる処置は、現在存在しない。結果として、支持方法、症候に関する処置および総合的な修復が、処置技術の中心となっているままである。
【0006】
従って、慢性進行を回避し、そしてMSおよび他の脱髄疾患の神経学的欠損を反転させる処置に対する必要性が存在する。本発明は、この要求を満たし、そして関連する利点も同様に提供する。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、脱髄疾患を有する被験体に10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与することによって、脱髄疾患に罹患した被験体における再有髄化を促進する方法を提供する。本発明はまた、脱髄疾患を有する被験体に10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与することによって、被験体における脱髄疾患の重篤度を減少させる方法(脱髄した神経繊維を再有髄化する方法およびさらなる脱髄を妨害する方法を含む)を提供する。10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量の投与は、神経系において脱髄病変の修復をもたらすこと、および脱髄疾患と関連する進行中の脱髄を妨害することによって、脱髄疾患の重篤度を減少させる。
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)を特異的な中和剤を用いて中和することによって、多発性硬化症(MS)を含む脱髄疾患を処置する方法に関する。IP−10の中和は、脱髄疾患に対する有意な処置選択を示す。なぜなら、IP−10の中和は、脱髄神経繊維の再有髄化を引き起こし、それによって、脱髄と関連する神経学的欠損を反転させ、そしてさらに、脱髄疾患と関連する神経学的欠損の原因である神経繊維の脱髄を妨害するからである。重要なことに、IP−10の中和は、単に脱髄と関連する神経学的欠損の症状だけでなく、原因を標的とする。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)を特異的な中和剤を用いて中和することによって、多発性硬化症(MS)を含む脱髄疾患を処置する方法に関する。
【0010】
本明細書中において使用される場合、用語「脱髄疾患(demyelinating disease)」は、神経細胞の神経繊維(軸索)を取り囲むミエリン鞘の損失によって特徴付けされる疾患または状態をいうことが意図される。脱髄疾患において、炎症が、ミエリンの損失と同時に起こり得る。脱髄疾患の臨床的な経過は、例えば、急性、慢性または弛張性および再発性である得る。脱髄疾患におけるミエリンの損失は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(RNS)またはこれら両方において生じ得る。例えば、多発性硬化症(MS)は、脱髄が脳の白質および脊髄で生じる中枢神経系(CNS)の脱髄疾患である。急性脱髄多発性神経障害(ギヤン−バレー症候群(GBS)およびその異型慢性炎症性脱髄多発性神経障害(CIDP)としてより公知である)は、末梢神経系の脱髄疾患の例である。
【0011】
本明細書中において使用される場合、用語「神経炎症性疾患(neuroinflammatory disease)」は、T細胞の中枢神経系への浸潤によって特徴付けられる疾患に関する。神経炎症性状態は、脱髄疾患および非脱髄炎症性疾患(例えば、ウイルス性脳炎、細菌性脳炎、および細菌性髄膜炎)の両方を含む。ウイルス性脳炎は、種々の感染因子(例えば、日本脳炎ウイルス、HIV−1およびサイトメガロウイルスが挙げられる)によって引き起こされ得る。
【0012】
本明細書中において使用される場合、用語「再有髄化(remyelination)」は、脱髄神経繊維の有髄化における著しい増大をいう。有髄化における著しい増大は、当該分野で公知の種々の方法を通して検出され得る。
【0013】
本明細書中において使用される場合、用語「有効量」は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に関して使用される際、脱髄疾患の重篤度を減少させるのに十分なIP−10に特異的な中和剤の量、または脱髄疾患に罹患した被験体において再有髄化を促進するのに十分なIP−10に特異的な中和剤の量を意味することが意図される。同様に、用語「有効量」は、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)に関して使用される際、脱髄疾患の重篤度を減少させるのに十分なMigに特異的な中和剤の量を意味することが意図される。
【0014】
本明細書中において使用される場合、「重篤度における減少」は、特定の疾患と関連する、兆候および症状、生理学的指標、生化学的マーカーまたは代謝的指標における、休止、減少または反転をいうことが意図される。脱髄疾患の症状としては、例えば、神経学的欠損および神経炎症が挙げられる。脱髄疾患の生理学的指標としては、神経繊維の脱髄が挙げられる。脱髄疾患の生化学的マーカーとしては、例えば、ミエリン、γグロブリン、またはオリゴクローナルバンドを生じる特定の分子である。神経繊維の脱髄ならびに再有髄化は、当該分野で周知の種々の臨床方法によって検出され得る。例えば、誘発電位(EP)を使用して、神経系の種々の部分においてどれほど早く神経インパルスが神経繊維に沿って走るかを測定し得る。さらに、コンピューター断層撮影法(CT)を使用して、神経繊維の脱髄領域ならびに再有髄化領域を検出するために中枢神経系をスキャンし得る。核磁気共鳴画像法(MRI)もまた使用して、中枢神経系をスキャンし得るが、この方法は、X線を使用しない。CTスキャンよりもより感度が高いMRIは、CTスキャナーによって見ることができなかった脱髄領域ならびに再有髄化領域を検出し得る。さらに、腰椎穿刺手順または脊髄穿刺手順を使用して、髄液を引き出し得る。γグロブリンレベルおよびオリゴクローナルバンドレベルの増大について、この液体を調べる。これらの方法および当該分野で周知の他の方法を使用して、神経繊維の脱髄ならびに再有髄化のような有髄化の変化を測定することによって、脱髄疾患の重篤度を測定し得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤」は、IP−10発現の程度、量、または速度における減少をもたらす薬剤、あるいはIP−10の活性における減少をもたらす薬剤をいうように意図される。同様に、本明細書中で使用される場合、用語「インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)に特異的な中和剤」は、Mig発現の程度、量または速度における減少をもたらす薬剤、あるいはMigの活性における減少をもたらす薬剤をいうように意図される。本願発明の実施のために有用な中和剤としては、例えば、結合分子(例えば、IP−10またはMigに対する抗体、ならびに非結合相互作用を介してIP−10またはMigを調整または調節する分子が挙げられる。中和剤は、例えば、IP−10またはMigの活性を減少するために十分な親和性で、それぞれIP−10またはMigに結合する任意の分子であり得る。さらに、中和剤は、調節分子または遺伝子領域に結合して、その調節タンパク質または遺伝子領域の機能を阻害または促進し、そしてIP−10またはMigの発現または活性の程度または量または速度における減少をもたらす任意の分子であり得る。従って、中和剤は、IP−10またはMigの発現または活性の程度、量または速度を、直接的または間接的に調整または調節する任意の分子であり得る。例えば、CXCR3レセプターのフラグメントまたはペプチド模倣物(これらは、それぞれ、IP−10またはMigの活性を減少するために十分な親和性でIP−10およびMigに結合する)は、本願発明の方法を実施するために有用である。さらに、IP−10またはMigの発現における減少をもたらす中和剤の例としては、アンチセンス核酸および転写インヒビターが挙げられ得る。本明細書中で使用する場合、用語「候補」は、その中和活性を確認する前の中和剤をいう。
【0016】
本発明は、脱髄疾患に罹患した被験体において再有髄化を促進する方法を提供する。この方法は、脱髄疾患を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程からなる。本発明は、脱髄疾患の重篤度を低減する方法をさらに提供する。この方法は、脱髄性神経線維を再有髄化する工程、および脱髄疾患を有する被験体に10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与することによって、罹患した神経線維のさらなる脱髄を妨げる工程を包含する。
【0017】
本発明はまた、被験体における神経炎症性疾患の重篤度を低減する方法を提供し、この方法は、神経炎症性疾患を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する。
【0018】
本発明は、神経炎症性疾患に関連する中枢神経系(CNS)へのT細胞の移動を阻害する方法をさらに提供し、この方法は、被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する。
【0019】
さらに、本発明は、被験体における脱髄疾患の重篤度を低減する方法を提供し、この方法は、脱髄疾患を有する被験体に、γ−インターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する。
【0020】
炎症に対する首尾よい宿主応答は、一般に、組織損傷の部位での特異化した宿主細胞の蓄積を必要とする。この細胞の蓄積は、正常な炎症性プロセスにおける重要な工程であり、そしてこの蓄積は、病原性炎症における共通の重要な構造的特性および役割を有する、分泌される走化性サイトカインのファミリーによって媒介される。IP−10およびMigは、ケモカインとして公知の40個を超える構造的および機能的に関連するタンパク質のうちの、このタンパク質ファミリーに属する。
【0021】
ケモカインは、相同な8〜14kDaのヘパリン結合タンパク質であり、これは2つのシステイン対を含む保存された構造モチーフを有し、そしてその成熟タンパク質におけるシステイン残基の相対的位置に基づいてサブファミリーに分割される。少なくとも4つのケモカインサブファミリーが存在するが、2つのみ(α−ケモカインおよびβ−ケモカイン)が、十分に特徴付けられている。α−ケモカインにおいて、最初の2つのシステイン残基は、1つのアミノ酸によって隔てられており(CXC)、一方、β−ケモカインにおいては、最初の2つのシステイン残基は、互いに隣接している(CC)。このC−X−Cケモカインとしては、例えば、インターロイキン−8(IL−8)、ヒト血小板由来因子、IP−10およびMigが挙げられる。C−Cケモカインサブファミリーのメンバーとしては、例えば、マクロファージ化学誘引タンパク質(MCP)、マクロファージ炎症性タンパク質−1α(MIP−1α)、マクロファージ炎症性タンパク質−1β(MIP−1β)およびランテス(regulated on activation,normal T−cell expressed and secreted)(RANTES)が挙げられる。
【0022】
ケモカインは、白血球サブセットを選択的に引きつける;いくつかのケモカインは、好酸球に対して特異的に作用し、他のケモカインは、単球、樹状細胞、またはT細胞に対して特異的に作用する(Luster,A.,New Engl.J.Med.338:436−445(1998)(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。一般に、CCケモカインは、単球、好酸球、好塩基球、およびT細胞を化学誘引し;そしてケモカインレセプターCCR1〜CCR9を介してシグナル伝達する。このCXCケモカインファミリーは、CXC配列の前にN末端付近のELR配列(Glu−Leu−Arg)が存在するかまたは存在しないかに基づいて2つのクラスにさらに分割され得る。IL−8を含むELR含有CXCケモカインは、好中球を化学誘引するが、IP−10およびMigを含む非ELR CXCケモカインは、Tリンパ球を化学誘引する。
【0023】
ケモカインは、部分的に、標的細胞上の特定のG−タンパク質結合細胞表面レセプターに結合することによって、細胞の移動および活性化を誘導する。10個より多くの異なるケモカインレセプター(各々は、白血球の異なるサブセット上で発現される)が、同定されている。ケモカインレセプターは、いくつかの細胞上で構成的に発現されるが、一方、これらのケモカインレセプターは他の細胞上で誘導性である。CXCR3(IP−10およびMigによって認識されるレセプター)は、Tヘルパー1型(Th1)表現型の活性化Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞上で発現される。意義深いことに、神経炎症性疾患(脱髄神経炎症性疾患および非脱髄神経炎症性疾患の両方を含む)の病理学における中心的機構は、活性化T細胞の、中枢神経系への器官特異的移動である。
【0024】
脱髄疾患は、これらの疾患が生じる頻度およびこれらの疾患が引き起こす能力障害が原因で、神経学的障害の重要な群である。脱髄疾患は、ミエリン鞘の局限的破壊または斑状破壊を共通して有し、これらの破壊は、炎症性応答によって達成され得る。ミエリン喪失はまた、他の状況(例えば、ミエリン代謝における遺伝的に決定された欠損)においても、そして毒素の曝露および稀突起膠細胞またはシュヴァン細胞の感染の結果としても、生じる。
【0025】
脱髄疾患は、中枢神経系のミエリンを冒すプロセスと末梢神経系のミエリンを冒すプロセスとに分割され得る。中枢神経系の脱髄疾患としては、例えば、MS、急性播種性脳脊髄炎(ADE)(感染後脳脊髄炎およびワクチン後脳脊髄炎を含む)、急性壊死性出血性脳脊髄炎および進行性(壊死性)ミエロパシーが挙げられる。末梢神経系の脱髄疾患としては、例えば、急性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパシー(ギヤン−バレー症候群)、慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパシー(CIDP)、IgMモノクローナル高ガンマグロブリン血症に関連する脱髄性ニューロパシーおよび硬化性骨髄腫に関連するニューロパシーが挙げられる。
【0026】
本発明の方法は、その病因に関係なく、脱髄疾患とともに実施され得る。MSは、Martinら、Annu.Rev.Immunol.10:153−187(1992)(これは、本明細書中に参考として援用される)に総説されるようにおそらく自己免疫病因を有する中枢神経系脱髄疾患である。対照的に、ADEは、感染性の疾病後に(しばしば、麻疹の続発症として)発症する中枢神経系脱髄疾患である。その個別の病因にもかかわらず、MSおよびADEの両方、ならびに当業者に公知の他の脱髄疾患(本明細書中に記載されるものを含む)は、組織損傷の部位へのリンパ球およびマクロファージの移動によって特徴付けられる炎症性脱髄に共有される特徴に基づいて、本発明の方法についての適切な治療標的である。上記のように、神経炎症性脱髄疾患の病理学における中心的機構は、中枢神経系への活性化T細胞の器官特異的な移動である。この共有される疾患機構に基づいて、中枢神経系のT細胞浸潤によって特徴付けられる任意の神経炎症性疾患は、本発明の方法を実施するための治療的標的である。従って、本発明の方法はまた、非脱髄神経炎症性疾患(例えば、ウイルス性脳炎、細菌性脳炎、および細菌性髄膜炎を含む)の重篤度を低減するために使用され得る。ウイルス性脳炎は、種々の感染性因子(例えば、日本脳炎ウイルス、HIV−1およびサイトメガロウイルスを含む)によって引き起こされ得る。細菌性髄膜炎は、例えば、リステリア属によって引き起こされ得る。炎症性疾患の重篤度を低減することに関する本発明の方法は、特定の型の感染因子にかかわらず適用可能であることが意図される。
【0027】
本明細書中に記載されるように、IP−10およびMigは、神経系の炎症に対する宿主防御を高めることにおける成分である。詳細には、本明細書中に示されるように、そのIP−10およびMigは、病理学的異常(例えば、感染性因子または自己攻撃性(autoagressive)免疫細胞)に応答してTh1 Tリンパ球を中枢神経系へと輸送することを協調する。Tリンパ球は、CD4+細胞およびCD8+細胞として公知である2つの主要なカテゴリーへと細分され得る。CD4およびCD8は、抗原についてのT細胞レセプターと、抗原提示細胞によりT細胞に提示される抗原自体との間の相互作用を促進する、表面タンパク質である。T細胞により認識される抗原は、抗原提示細胞の表面上に発現される主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質の裂溝内に含まれる。CD4細胞は、クラスII組織適合性対立遺伝子により提示されるフラグメントを認識し、CD8細胞は、クラスI組織適合性対立遺伝子により提示されるペプチドフラグメントを認識する。多発性硬化症において過剰に表れる、DR2対立遺伝子は、MHCクラスII対立遺伝子であり、多発性硬化症における病変形成におけるCD4+細胞に関する役割を示す。
【0028】
CD4+細胞は、Th1サブタイプおよびTh2サブタイプへとさらに細分され得る。Th1細胞は、遅延型過敏症応答を担い、かつ多数のサイトカイン(インターロイキン−2(IL−2)(T細胞増殖の刺激因子))、およびインターフェロン(マクロファージの活性化因子)、およびリンホトキシン(稀突起神経膠細胞(中枢神経系のミエリン形成細胞)を損傷する能力を有するタンパク質)を含む)を分泌する。インターフェロンの投与は、多発性硬化症攻撃を引き起こし、そしてIF分泌細胞の数の増加が、攻撃の間の血液において、そしてMSプラークにおいて、検出され得る。インターフェロンは、IL−2と組み合わされて、マクロファージを活性化し、マクロファージは、神経線維からミエリンを直接奪い、かつ腫瘍壊死因子α(TNF−α)(ミエリン生成稀突起神経膠細胞を損傷するサイトカイン)を分泌する。
【0029】
本明細書中に記載されるように、IP−10(慢性段階の神経学的疾患の間に、ほぼ脱髄領域においてのみ発現される)の中和は、脱髄された神経線維の再有髄化を引き起こし、そして脱髄のさらなる進行を低減する(図8)。このように、IP−10活性を中和すると、脱髄疾患の重篤度の減少、および脱髄に関連した神経学的障害のレベルをもたらす。IP−10中和剤(下記の方法により同定される抗体、アンチセンス核酸、および化合物を含む)は、脱髄疾患を処置するため、または脱髄疾患の重篤度を減少するため、および脱髄疾患に罹患した被験体における再有髄化を促進するために、有用である。
【0030】
IP−10特異的中和剤またはMig特異的中和剤は、細胞補充、脱髄、および再有髄化の防止に関連する、IP−10またはMigの活性を減少するに十分に、IP−10またはMigをそれぞれ調節する。IP−10特異的中和剤またはMig特異的中和剤は、結合相互作用および非結合相互作用の両方を介して、IP−10およびMigの活性を調節し得る。IP−10特異的中和剤またはMig特異的中和剤は、高分子(例えば、ポリペプチド、核酸、糖質、または脂質)であり得る。IP−10特異的中和剤またはMig特異的中和剤はまた、その中和剤の存在下でIP−10活性またはMig活性が減少する限り、誘導体、アナログまたは模倣化合物、および小有機化合物でもあり得る。IP−10またはMigのいずれかに関する本発明の方法および本明細書中に記載される投与方法を実施するために有用な中和剤であり得る分子の型は、両方のケモカインに等しく適用可能である。中和剤のサイズは、その分子がIP−10またはMigに対する選択的中和活性を示すかまたはその選択的中和活性を示すようにされ得る限り、重要ではない。例えば、中和剤は、高分子または化学的結合分子を構成するモノマー形成ブロックが、約1〜6個程度の少なさであっても、数十個または数百個程度の多さであってもよい。同様に、有機化合物は、それが活性を減少させるに十分な親和性でIP−10またはMIGに結合する限りは、単純な構造であっても、複雑な構造であってもよい。
【0031】
IP−10に特異的な中和剤またはMigに特異的な中和剤としては、例えば、抗体、およびその免疫系の他のレセプター結合ポリペプチドまたはリガンド結合ポリペプチドが、挙げられ得る。そのようなその免疫系の他の分子としては、例えば、T細胞レセプター(TCR)(CD4細胞レセプターを含む)が、挙げられる。さらに、活性を減少させるに十分な親和性でIP−10もしくはMigに結合するかまたはIP−10もしくはMigに結合するようになされ得る、細胞表面レセプター(例えば、インテグリン、増殖因子レセプターおよびケモカインレセプター)、ならびに他の任意のレセプターまたはそのフラグメントもまた、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、例えば、IP−10、Migまたはそれらのレセプターの発現を阻害する、レセプター、増殖因子、サイトカインまたはケモカインもまた、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、DNA結合ポリペプチド(例えば、転写因子およびDNA複製因子)が、IP−10についての選択的結合活性、Migについての選択的結合活性、またはIP−10もしくはMigの発現もしくは活性を制御する調節分子についての選択的結合活性、またはIp−10もしくはMigの発現を制御する遺伝子領域についての選択的結合活性を有する限り、それらのDNA結合ポリペプチドも同様に、用語、結合分子の定義内に含まれる。最後に、ポリペプチド、核酸および化合物(例えば、ランダムライブラリーおよびコンビナトリアルライブラリーから選択されるもの)もまた、そのような分子が、活性を減少させるに十分な親和性でIP−10またはMigに結合する限り、その用語の定義内に含まれる。
【0032】
種々のアプローチが、IP−10またはMigのいずれかについて選択的な中和剤を同定するために使用され得る。例えば、1つのアプローチは、ケモカイン結合分子として機能することが既知の分子からか、またはIP−10、MigもしくはIP−10の調節因子もしくはMigの調節因子に特異的な結合親和性を示すことが既知であるかそのような結合親和性を示し得ることが既知である分子(例えば、CD4+ T細胞およびNK細胞上に見出されるCXCR3レセプターのフラグメントまたは模倣物)からの、IP−10の構造および機能に関して利用可能な情報、Migの構造および機能に関して利用可能な情報、またはIP−10の調節因子の構造および機能に関して利用可能な情報もしくはMigの調節因子の構造および機能に関して利用可能な情報を、結合分子の集団に対して使用することである。IP−10に特異的な中和剤またはMigに特異的な中和剤は、その免疫レパートリーの抗体および他のレセプターであり得る。そのような免疫レセプターの正常な機能は、本質的に無限の数の種々の抗原およびリガンドに結合することである。従って、例えば、免疫レパートリーから結合分子の多様な集団を生成することが、IP−10に特異的な中和剤またはMigに特異的な中和剤を同定するために有用であり得る。本発明の方法において有用な結合分子はまた、IP−10の発現および活性もしくはMigの発現および活性を、調節または調整する分子について選択的であり得る。
【0033】
IP−10に特異的な中和剤またはMigに特異的な中和剤は、さらに、当該分野で周知の方法によって、未知の分子の大集団から同定され得る。このような集団は、ペプチドまたは低分子化合物のランダムライブラリーであり得る。この集団は、IP−10タンパク質もしくはMigタンパク質もしくはそれら各々の核酸に結合する分子を含むように、十分な多様性の配列または構造を含むように生成され得る。当業者は、どのような大きさおよび多様性が、意図する目的に必要または十分であるかを知っている。活性を減少させるに十分な親和性でIP−10またはMigに結合する、IP−10中和剤もしくはMig中和剤を含む高い可能性を有するように、十分なサイズおよび複雑性の集団が、生成され得る。他の多数の型のライブラリー分子集団が、存在し、そして以下にさらに記載される。
【0034】
IP−10の活性もしくは発現を調整もしくは調節する任意の分子、IP−10レセプターの活性もしくは発現を調整もしくは調節する任意の分子、IP−10発現を制御する遺伝子領域を調整もしくは調節する任意の分子、またはIP−10の活性もしくは発現を調節する調節分子を調整もしくは調節する任意の分子、ならびにIP−10レセプター発現を調整もしくは調節する任意の調節分子が、本発明を実施するために有用な、IP−10特異的中和剤である。例えば、IP−10に結合する任意の分子、IP−10レセプターに結合する任意の分子、IP−10発現を制御する遺伝子領域に結合する任意の分子、またはIP−10の活性もしくは発現を調節する調節分子に結合する任意の分子、ならびにIP−10レセプター発現を調節する任意の調節分子に結合する任意の分子が、本発明を実施するために有用な、IP−10特異的中和剤である。従って、IP−10特異的中和剤は、IP−10との結合相互作用もしくは非結合相互作用を介して直接に、ならびにIP−10の発現もしくは活性を調節もしくは調整する他の任意の分子との結合相互作用もしくは非結合相互作用を介して間接的に、作用し得る。
【0035】
同様に、Migの活性もしくは発現を調整もしくは調節する任意の分子、Migレセプターの活性もしくは発現を調整もしくは調節する任意の分子、Mig発現を制御する遺伝子領域を調整もしくは調節する任意の分子、またはMigの活性もしくは発現を調節する調節分子を調整もしくは調節する任意の分子、ならびにMigレセプター発現を調整もしくは調節する任意の調節分子が、本発明を実施するために有用な、Mig特異的中和剤である。例えば、Migに結合する任意の分子、Migレセプターに結合する任意の分子、Mig発現を制御する遺伝子領域に結合する任意の分子、またはMigの活性もしくはMigの発現を調節する調節分子に結合する任意の分子、ならびにMigレセプター発現を調節する任意の調節分子に結合する任意の分子が、本発明を実施するために有用な、Mig特異的中和剤である。従って、Mig特異的中和剤は、Migとの結合相互作用もしくは非結合相互作用を介して直接に、ならびにMigの発現もしくは活性を調節もしくは調整する他の任意の分子との結合相互作用もしくは非結合相互作用を介して間接的に、作用し得る。IP−10特異的中和剤またはMig特異的中和剤は、それぞれ、IP−10またはMigの転写を制御もしくはアップレギュレートする転写因子の作用を減少または阻害することによって、IP−10またはMigの発現に影響する調節分子であり得る。さらに、IP−10またはMigの活性化に関与する分子に十分な親和性で結合してIP−10またはMigの活性化を減少する調節分子が、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。
【0036】
IP−10またはMigの活性を低下させるのに十分にIP−10またはMigの発現または活性を調節し得る中和剤は、脱髄疾患に罹患した被験体において脱髄疾患の重篤度を減少させる本願方法および脱髄疾患に罹患した被験体において再有髄化を促進する本願方法を実施するために有用である。さらに、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、IP−10もしくはMigのレセプターを調節することによってか、調節分子(これは次いで、IP−10またはMigの活性または発現を調節する)を調節することによってか、またはIP−10もしくはMigの発現を制御する遺伝子領域を調節することによって、IP−10またはMigの活性または発現を低下させ得る。例えば、本願発明を実施するために有用な中和剤は、IP−10またはMigの発現または活性を調節する調節分子に対する抗体であり得る。さらに、本明細書で記載されるように、抗IP−10抗体または抗Mig抗体は、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、IP−10およびMigは、特定のT細胞レセプターに結合することが公知の分泌タンパク質であるので、本発明を実施するために有用な中和剤は、レセプターの免疫グロブリンスーパーファミリーの任意の結合ポリペプチド、レセプターまたはそれらのフラグメントであり得る。あるいは、IP−10またはMigに特異的なさらなる中和剤を同定するために、無作為ペプチド集団の集団を使用することが所望され得る。当業者は、どのような型のアプローチおよびどのような型の中和剤が、脱髄疾患に罹患した被験体において脱髄疾患の重篤度を減少させる本発明の方法および脱髄疾患に罹患した被験体において再有髄化を促進する本発明の方法を実施するために適切であるかを知っているか、または決定し得る。
【0037】
IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するための中程度のサイズの集団は、集団中における数百および数千の異なる分子(例えば、結合分子)からなり得るが、大集団は、数万および数百万の異なる分子種からなる。より詳細には、中和剤を同定するための大規模かつ多様な分子集団は、約104個、約105個、約106個、約107個、約108個、約109個、約1010個以上の任意の異なる分子種を含む。当業者は、IP−10またはMigの活性または発現を調節または調整する中和剤を同定するために十分な分子集団のおおよその多様性を知る。
【0038】
分子(例えば、結合分子)の組換えライブラリーを使用して、IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定し得る。なぜなら、大規模かつ多様な集団が迅速に生成され得、そしてIP−10およびMigを用いてスクリーニングされ得るからである。IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するために有用な発現ポリペプチドの組換えライブラリーは、当該分野で公知の多数の異なる方法で操作され得る。組換えライブラリー方法は、同様に、天然に存在するレパートリーから多数の結合分子集団を生成することを可能にする。組換えであろうと他であろうと、その供給源が、IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するのに十分なサイズおよび多様性の異なる結合分子を提供する限り、本質的に任意の結合分子集団の供給源が使用され得る。所望される場合、IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するために有用な結合分子集団は、Watkinsら、Anal.Biochem.256(92):169−177(1998)(これは、本明細書中において参考として援用される)によって記載されたように、固体支持体に選択的に固定され得る。
【0039】
溶原ファージが、細菌により発現された結合分子ポリペプチドの放出を引き起こすファージ発現ライブラリーは、IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するために使用され得る組換えライブラリーの特定の例である。別の型のファージ発現ライブラリーでは、多数の潜在的な結合分子が、細菌細胞のペリプラズム表面上で融合ポリペプチドとして発現され得る。酵母および高等真核生物の細胞におけるライブラリーも同様に存在し、そして本発明の方法において同様に適用可能である。当業者は、どのような型のライブラリーがIP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するために有用であるかを知っているか、または決定し得る。
【0040】
IP−10またはMigに特異的に結合するものについて化合物のライブラリーをスクリーニングするために精製ポリペプチドを利用する上記の方法に加えて、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、精製ポリペプチドを使用して抗体を生成することによって同定され得る。例えば、IP−10に特異的な抗体は、本発明の中和剤として使用され得、そして当該分野で周知の方法を使用して生成され得る。本発明の方法を実施するために有用な中和剤は、IP−10、MigまたはIP−10もしくはMigの発現もしくは活性を調節する任意の分子に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を含み、ならびにこのような抗体の抗原結合フラグメント(Fab、F(ab’)2、Fd、およびFvフラグメントなどを含む)を含む。さらに、本発明の方法を実施するために有用な中和剤は、天然に存在しない抗体(例えば、単鎖抗体、キメラ抗体、二官能性抗体、相補性決定領域グラフト(complementarity determining region−grafted)(CDR−グラフト)抗体、およびヒト化抗体ならびにそれらの抗原結合フラグメントを含む)を含む。
【0041】
ペプチド免疫原を使用して、抗体(ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む)を調製および単離する方法は、当業者に周知であり、そして例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)に記載されている。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築され得るか、組換え的に生成され得るか、または例えば、Huseら、Science 246:1275−1281(1989)(これは、本明細書中において参考として援用される)により記載されたように、可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得られ得る。例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR−グラフト抗体、単鎖抗体および二官能性抗体を作製するこれらの方法および他の方法は、当業者に周知である(Hoogenboomら、米国特許第5,564,332号(1996年10月15日発行);WinterおよびHarris、Immunol.Today 14:243−246(1993);Wardら、Nature 341:544−546(1989);HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988);Hilyardら、Protein Engineering:A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck、Antibody Engineering、第2版(Oxford University Press 1995)(これらの各々は、本明細書中において参考として援用される))。
【0042】
IP−10またはMigに特異的な抗体中和剤は、実質的に精製されたIP−10タンパク質もしくはMigタンパク質(これらは、天然の供給源から調製され得るか、または組換え的に生成され得る)またはIP−10タンパク質もしくはMigタンパク質のペプチド部分(合成ペプチドを含む)を、免疫原として使用して惹起され得る。IP−10タンパク質またはMigタンパク質の非免疫原性ペプチド部分は、ウシ血清アルブミン(BSA)もしくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のようなキャリア分子にハプテンをカップリングすることによってか、または融合タンパク質としてペプチド部分を発現させることによって、免疫原性になされ得る。種々の他のキャリア分子およびキャリア分子にハプテンをカップリングする方法が、当該分野で周知である(HarlowおよびLane、前出、1988を参照のこと;Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press、1996(これは、本明細書中において参考として援用される)もまた参照のこと)。上記のように、IP−10またはMigに特異的な抗体中和剤はまた、IP−10またはMigに対して直接的に惹起されるのではなく、IP−10またはMigの発現または活性を調節する調節分子に対して惹起され得る。
【0043】
IP−10またはMigのいずれかに特異的な中和剤(例えば、抗体)は、当該分野で周知の方法を使用して、検出可能なように標識され得る(Hermanson、前出、1996;HarlowおよびLane、前出、1988;第9章)。例えば、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、当該分野で周知の方法によって、放射性同位体または治療剤に連結され得る。放射性同位体または可視化され得る他の部分に連結された、IP−10またはMigに直接的に結合する中和剤は、器官または組織に特異的なIP−10またはMigの存在または非存在によって特徴付けられる脱髄疾患または神経炎症性疾患の臨床段階の進行を診断または病期分類するために有用であり得る。従って、本発明はまた、IP−10またはMigの活性または発現に関連した状態に適用可能な診断方法を提供する。
【0044】
例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物においてポリクローナル抗体を惹起する方法は、当該分野で周知である(HarlowおよびLane、前出、1988)。抗ペプチド抗体の生成は、一般的に、ウサギ、マウス、モルモットまたはラットのような宿主動物の使用を含む。多量の血清が必要とされる場合、より大きな動物(例えば、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタまたはロバ)が使用され得る。動物は通常、必要とされる抗血清の量に基づいて選択される。そして適切な動物としては、ウサギ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターが挙げられる。これらの動物は、それぞれ、1回の採血あたり最大で25mL、100〜200μL、1〜2mL、1〜2mL、および1〜2mLの血清を生じる(HarlowおよびLane、前出、1988)。ウサギは、ポリクローナル抗血清の生成のために非常に有用である。なぜなら、ウサギは、安全にそして反復して採血され得、そして高容量の抗血清を生成し得るからである。適切なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)中の15〜50μgの抗原を用いて、2〜4週間の間隔をあけて2回注射することに続き、血液収集および抗血清の分析がなされ得る。
【0045】
さらに、モノクローナル抗体は、当該分野において周知慣用の方法(HarlowおよびLane、前出、1988)を使用して得られ得る。免疫原としての使用のためのタンパク質(例えば、IP−10またはMig)のペプチド部分は、当該分野で周知の方法によって決定され得る。IP−10またはMigで免疫したマウス由来の脾臓細胞を、適切な骨髄腫細胞株に融合し、ハイブリドーマ細胞を産生し得る。クローン化されたハイブリドーマ細胞株を、標識したIP−10タンパク質またはMigタンパク質を使用してスクリーニングし、それぞれ、抗IP−10抗体または抗Mig抗体を分泌するクローンを同定し得る。所望の特異性および親和性を有する抗IP−10モノクローナル抗体または抗Migモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを単離し得、そして抗体中和剤の連続的な供給源として利用し得る。
【0046】
IP−10またはMigに特異的な中和剤は、哺乳動物における脱髄疾患の重篤度を減少するために使用され得る。IP−10またはMigに特異的な中和剤は、哺乳動物の脱髄疾患に罹患している被験体において再有髄化を促進し得る。従って、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、ヒト被験体における脱髄疾患の重篤度を減少するために使用され得る。さらに、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、ヒト被験体の脱髄疾患に罹患している被験体において再有髄化を促進するために使用され得る。ヒト化抗体は、本質的に任意の抗原結合特異性をヒト抗体フレームワークに付与することによって構築され得る。ヒト化抗体を構築する方法は、本発明の方法を実施し、そして治療的に使用される場合にその抗体中和剤に対する宿主免疫応答を回避するのに適切な、抗体中和剤を調製するために、有用である。
【0047】
上記の抗体中和剤は、当該分野で周知の方法(例えば、相補性決定領域(CDR)グラフティングならびにフレームワーク残基およびCDR残基の最適化)によって治療的なヒト中和剤を作製するために使用され得る。例えば、抗体中和剤のヒト化は、Fiorentiniら、Immunotechonology 3(1):45−59(1997)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載のようなCDRグラフティングによって達成され得る。手短に言えば、CDRグラフティングは、非ヒト抗体中和剤由来のCDRをヒトフレームワーク領域へ組換え的にスプライシングし、得られたグラフト化抗体またはその可変領域結合フラグメントに結合活性を付与することを含む。一旦、そのCDRグラフト化抗体または可変領域結合フラグメントが作製されると、非ヒト抗体中和剤に適合性の結合親和性が、次回の当該分野で公知の親和性成熟ストラテジーによって再獲得され得る。ウサギポリクローナル抗体の形態にある抗体中和剤のヒト化は、Raderら、J.Biol.Chem.275(18):13668−13676(2000)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような同様の方法によって達成され得る。
【0048】
非ヒトIP−10またはMig抗体中和剤のヒト化はまた、フレームワーク残基およびCDR残基の同時最適化によって達成され得る。これは、Wuら、J.Mol.Biol.294(1):151−162(1999)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、協同的に相互作用するフレームワーク残基およびCDR残基の迅速な同定を可能にする。手短に言えば、潜在的に重要な多くのフレームワーク位置を試験するコンビナトリアルライブラリーを、重鎖および軽鎖の第3CDRにおけるランダムな一アミノ酸変異を含む改変体からなる焦点化(focused)CDRライブラリーと同時に発現させる。この方法によって、1つほどの少ない非ヒトフレームワーク残基を含み、かつ最初のキメラFabよりも約500倍までに高い親和性を示す、複数のFab改変体が同定され得る。コンビナトリアルフレームワーク−CDRライブラリーのスクリーニングは、機能について最適化された構造を有するモノクローナル抗体(例えば、抗原がそのモノクローナル抗体におけるコンフォメーション変化を誘導する、モノクローナル抗体を含む)の同定を可能にする。増強されたヒト化改変体は、当該分野で公知の一連のインビトロヒト化および親和性成熟ストラテジーによってヒト化された抗体よりも少ない非ヒトフレームワーク残基を含む。
【0049】
本発明の中和剤は、ヒト抗体または霊長類化(primatized)抗体であり得ることがさらに意図される。さらに、ヒト抗体は、当該分野で公知の方法によって産生され得、これらの方法は、トランスジェニック非ヒト動物を所望の抗原で免疫することを包含する。トランスジェニック非ヒト動物は、それが内因性の抗体を産生せず、代わりに、完全なヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生するように、改変され得る。産生された抗体は、その動物から直接得られ得るか、またはそのトランスジェニック非ヒト動物に由来する不死化B細胞から得られ得る。あるいは、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、抗体を直接得るために発現させ得るか、または抗体のアナログ(例えば、単鎖Fv分子のような)を得るために改変し得る。従って、免疫応答を刺激する条件下で非ヒト動物を抗原で免疫する工程を包含するプロセスによって、特定の抗原に対する完全なヒト免疫グロブリンである本発明の中和剤を産生すること、または、その免疫グロブリンのアナログを産生することが、意図される。
【0050】
本発明のヒト抗体中和剤を産生する非ヒト動物は、内因性の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を実質的に産生し得ず、ヒト可変領域および定常領域の両方を有する免疫グロブリンを産生し得るように改変され得る。その生じる免疫応答において、その動物は、完全なヒトの、かつその抗原に特異的な免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。所望の特異性のヒト免疫グロブリンを、動物から(例えば、血清から)直接回収し得るか、または初代B細胞を動物から獲得し得、そして不死化し得る。不死化B細胞は、ヒト抗体の供給源として直接使用され得るか、あるいは、抗体をコードする遺伝子を、不死化B細胞から、あるいは免疫した動物の血液またはリンパ組織(例えば、脾臓、扁桃、リンパ節、骨髄)の初代B細胞から調製し得、そして組換え宿主において発現させて(改変を伴うかまたは伴わずに)、中和剤免疫グロブリンまたはそのアナログを産生し得る。さらに、免疫した動物によって産生される免疫グロブリンのレパートリーをコードする遺伝子を使用して、免疫グロブリンのライブラリーを生成し、所望の親和性を提供するそれらの可変領域についてのスクリーニングを可能にする。次いで、所望の特性を有するライブラリー由来のクローンを、標準的な組換え技術を使用するヒト抗体またはそれらの特性を有するアナログを生成するためのさらなる操作のための、所望の可変領域をコードするヌクレオチド配列の供給源として使用し得る。トランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)を使用してヒト抗体を調製するための種々の技術は、当該分野で周知であり、そして例えば、以下に記載される:Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845−851(1996);Heijnenら、Journal of Clinical Investigation 97:331−338(1996);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826(1996);ChaddおよびCamow、Curr.Opin.Biotechnol.12(2)188−94(2001);Russelら、Infection and Immunity 1820−1826(2000);Galloら、European Journal of Immunology 30:534−540(2000);Davisら、Cancer Metastatis Rev.18(4):421−5(1999);Green、Journal of Immunological Methods 231:11−23(1999);Yangら、Journal of Leukocyte Biology 66:401−410(1999);Jakobovits、Advanced Drug Delivery Reviews 31:33−42(1998);GreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.188(3)483−495(1998);Jakobovits、Exp.Opin.Invest.Drugs 7(4):607−614(1998);Mendezら、Natuer Genetics 15:146−156(1997);Jakobovits、Weir’s Handbook of Experimental Immunology、The Integrated Immune System、Vol.IV:194.1−194.7(1996)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)。さらに、ヒト抗体の調製のための当該分野で公知の種々の技術は、米国特許第6,162,963号;同第6,150,584号;同第6,114,598号;同第6,111,166号;6,096,311号;および同第6,075,181号(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0051】
組換え抗体を生成するための別の非常に効率的な手段は、Newman、Biotechnology 10:1455−1460(1992)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載のような、霊長類化による。より詳細には、サル可変ドメインおよびヒト定常配列を含む霊長類化抗体が生成される。霊長類化のための方法は、当該分野で公知であり、米国特許第6,113,898号(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。抗体は、それらがヒト投与の際に抗原に拒絶されないように霊長類化され得る。霊長類化は、ヒト抗原またはレセプターでの霊長類(例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis))の免疫に依存し、そしてヒト細胞表面抗原に対する高い親和性のモノクローナル抗体を作製するために使用され得る。霊長類化によって生成された抗体は、ヒトエフェクター機能を示し、減少された免疫原性、および長い血清半減期を有することが以前に報告されており、従って、本発明の中和剤として有用である。この技術は、カニクイザルがヒトと進化的に類似するという事実に拘わらず、それらがなお多くのヒトタンパク質を異物として認識し、従って、免疫応答をマウントするという事実に依存する。さらに、カニクイザルは、ヒトと進化的に近縁であるので、これらのサルにおいて生成された抗体は、ヒトにおいて産生される抗体に対する高い程度のアミノ酸相同性を有することが発見されている。事実、マカク免疫グロブリンの軽鎖および重鎖可変領域遺伝子の配列決定後、各遺伝子ファミリーの配列が、そのヒト対応物に対して85〜98%相同であることが見出された(Newmanら、前出、1992)。霊長類化によって生成された最初の抗体(抗CD4抗体)は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域のコンセンサス配列に対して91〜92%相同であった(Newmanら、前出、1992)。霊長類化抗体の生成のための当該分野で公知で、かつ本発明の中和剤を調製するために有用な方法はさらに、Newmanら、Clinical Immunology 98(2):164−74(2001);およびReddyら、J.Immunol.164(4):1925−33(2000)(これらの両方は、本明細書中に援用される)に記載される。
【0052】
上記のように、本発明の抗体中和剤としては、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにその組換え型および機能的フラグメントが挙げられる。抗体中和剤の組換え型としては、重鎖をコードするcDNAおよび軽鎖をコードするcDNAの単純発現および同時アセンブリからデザイナー抗体と称される特別の構築物にわたる、広範な種々の構築物が挙げられる。免疫グロブリンスーパーファミリー内、および特に抗体内のポリペプチドの広範な特徴付けと組み合わされた組換え方法論は、免疫グロブリン可変領域の結合ドメインおよび定常領域の結合ドメイン由来の結合分子の多くの異なる型、様式および特異性を設計および構築する能力を提供する。特定の例としては、キメラ抗体(ここで、ある抗体の定常領域は、別の抗体の定常領域と置換されている)、および上記したヒト化抗体(ここで、ある抗体からの相補性決定領域(CDR)は、別の抗体からの相補性決定領域と置換されている)が挙げられる。
【0053】
抗体中和剤の他の組換え型としては、例えば、機能的抗体改変体(ここで、抗原結合の維持を担う可変領域結合ドメインまたは機能的フラグメントは、抗体の定常領域由来のFcレセプター結合ドメインに融合されている)が挙げられる。このような改変体は、基本的に抗体の短縮型であり、抗原およびFcレセプター結合に必須ではない領域を除いている。短縮型改変体は、例えば、一価を有し得るか、あるいは、使用者の適用および必要性に依存して多価を有して構築され得る。さらに、リンカーまたはスペーサーは、結合活性を最適化するために、そしてIP−10またはMigの中和以外の生物学的機能をもたらすように融合または付着されたさらなる機能的ドメインを含むために抗原とFcレセプター結合ドメインとの間に挿入され得る。当業者は、抗体操作に関する当該分野の知識ならびに本明細書中に示された手引きおよび教示を考慮して、IP−10またはMigに特異的な組換え型抗体中和剤をどのように構築するかを知っている。組換え型抗体、機能的フラグメントおよび改変体ならびに抗体様分子の説明は、例えば、”Antibody Engineering,”2nd Edition,(Carl A.K.Borrebaeck,Ed.)Oxford University Press,New York(1995)中に見出され得る。
【0054】
抗体中和剤として使用され得る抗体のさらなる機能的改変体としては、抗原結合ドメイン−Fcレセプター結合ドメイン融合物以外の抗体様分子が挙げられ得る。例えば、抗体、機能的フラグメント、およびFcレセプター結合ドメインを含むそれらの融合物は、二特異的であるように生成され得、ここで、1つの可変領域結合ドメインが1つの抗原に対する結合活性を示し、そして他の可変領域結合ドメインが第二の抗原に対する結合活性を示す。このような二特異的な抗体中和剤は、本発明の方法において有利であり得る。なぜなら、単一の二特異的抗体は、2つの異なる標的抗原結合種を含むからである。従って、単一分子全体は、例えば、IP−10およびMigの両方の中和を達成するために投与され得る。
【0055】
IP−10またはMigに特異的な抗体中和剤はまた、免疫接着または二特異的免疫接着であり得る。免疫接着は、非抗体ポリペプチドの結合ドメインを抗体定常ドメインの抗体エフェクター機能と組み合わせる抗体様分子である。この非抗体ポリペプチドの結合ドメインは、例えば、リガンド、またはリガンド結合活性を有するレセプターであり得る。IP−10またはMigの中和剤として使用するための免疫接着は、抗体定常ドメインの少なくともFcレセプター結合エフェクター機能を含み得る。免疫接着中和剤の抗原結合ドメインとして使用され得るリガンドおよび細胞表面レセプターの特定の例としては、例えば、IP−10およびMigを認識するT細胞レセプターまたはNK細胞レセプター(例えば、CXCR3レセプター)が挙げられる。当該分野において公知の他のリガンドおよびリガンドレセプターは、IP−10またはMigに特異的な免疫接着中和剤の抗原結合ドメインとして同様に使用され得る。さらに、多価免疫接着およびマルチ特異的な免疫接着は、IP−10およびMigの中和剤としての使用のために構築され得る。IP−10またはMigに特異的な中和剤として使用され得る二特異的抗体、免疫接着、二特異的免疫接着および他のヘテロ多量体ポリペプチド構築は、例えば、米国特許第5,807,706号および同5,428,130号(これらは、本明細書中に参考として援用される)の主題である。
【0056】
本発明の1つの実施形態において、IP−10、Mig、IP−10もしくはMigの発現もしくは活性を調節する制御分子、またはその任意のフラグメント、をコードするポリヌクレオチド、あるいはアンチセンス分子は、治療目的のための中和剤としての使用され得る。1つの局面において、IP−10コード核酸に対するアンチセンス分子は、mRNAの転写または翻訳をブロックするために使用され得る。詳細には、細胞は、IP−10核酸に相補的な配列を用いて形質転換され得る。このような方法は、当該分野において周知であり、センスオリゴヌクレオチドもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはより長いフラグメントは、IP−10をコードする配列のコード領域または調節領域に沿う種々の位置から設計され得る。従って、アンチセンス分子は、IP−10もしくはMigの活性を中和するためにか、または遺伝子機能の調節を達成するために使用され得る。
【0057】
IP−10およびMigの活性、ならびに中和剤の活性は、当該分野において公知のインビトロアッセイによって確認され得る。従って、本発明はさらに、IP−10に特異的な中和剤を同定する方法を提供し、この方法は、候補中和剤の存在下でIP−10レセプターを含有する細胞をIP−10と接触させる工程、およびIP−10活性に関する生物学的応答の発生を決定する工程を包含し、ここで、生物学的応答の不発生は、この候補をIP−10中和剤として同定する。本発明はさらに、Migに特異的な中和剤を同定する方法を提供し、この方法は、候補中和剤の存在下でMigレセプターを含有する細胞をMigと接触させる工程、およびMig活性に関する生物学的応答の発生を決定する工程を包含し、ここで、生物学的応答の不存在は、この候補をMig中和剤として同定する。
【0058】
実施例IIIに記載されるように、走化性アッセイを使用して、標的化細胞集団の指向性移動を誘導するための規定されたシグナルの能力を評価し得る。簡単には、IP−10またはMigの活性は、本発明の中和剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体)を用いて中和され得、そして中枢神経系へのT細胞移動に対するこの処理の阻害効果が確認され得る。実施例IIIにさらに記載されるように、細胞内カルシウム変化を測定するアッセイもまた、本発明の中和剤の活性を確認するために有用である。この点において、特定のケモカインレセプターへのケモカイン結合の証明は、細胞内カルシウムレベルにおける変化である。従って、IP−10またはMigのCXCR3レセプターとの相互作用を阻害する中和剤の能力は、本発明の中和剤の非存在下対存在下での細胞内カルシウムの変化を測定および比較することによって確認され得る。IP−10またはMigに特異的な中和剤を同定するための、当該分野において公知の他のアッセイはまた、本発明を実施するために使用され得る。
【0059】
レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスもしくはワクシニアウイルス、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターは、アンチセンスヌクレオチド配列の送達のために使用され得る。選択された発現ベクターは、中枢神経系の細胞を感染し得るべきであり、そして宿主に対して安全であり得るべきであり、そして最小限の細胞形質転換を引き起こすべきである。レトロウイルスベクターおよびアデノウイルスは、哺乳動物細胞に外来性ヌクレオチド配列を効率的に導入および発現する、効率的で、有用で、そして現在最も特徴付けられた手段を提供する。これらのベクターは、当該分野において周知であり、そして非常に広範な宿主型および細胞型の範囲を有し、遺伝子を安定かつ効率的に発現する。当業者に周知の方法は、このような組換えベクターを構築するために使用され得、そしてSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York(1999)に記載される。DNAへの組み込みの非存在下でさえ、このようなベクターは、内因性ヌクレアーゼによって無能にされるまでRNA分子を転写し続け得る。一過性発現は、非複製ベクターを有して1ヶ月以上、そして適切な複製エレメントがベクター系の一部である場合はより長く持続し得る。
【0060】
リボザイム、酵素的RNA分子をまた使用して、IP−10 mRNA、Mig mRNA、またはIP−10もしくはMigの発現もしくは活性を調節する任意の制御分子のmRNAの特異的な切断を触媒し得る。リボザイム作用の機構は、そのmRNAを相補的に標的化するためのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、引き続く内ヌクレオチド鎖分解性の切断を包含する。任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、リボザイム切断部位(以下の配列:GUA、GUUおよびGUCを含む)についてそのRNAを走査することによって同定される。一旦同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に相補的な15リボヌクレオチドと20リボヌクレオチドとの間の短いRNA配列は、オリゴヌクレオチドを作動不可能にし得る二次構造特性について評価され得る。候補標的の適合もまた、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのための接近を試験することによって評価され得る。本発明のアンチセンス分子およびリボザイムは、核酸分子の合成について当該分野において公知の任意の方法によって調製され得る。
【0061】
本発明の方法を実施するために有用な中和剤は、処置されるべき脱髄性疾患;脱髄の速度および量;被験体の体重、性別、年齢および健康状態;特定の化合物の生化学的性質、生体活性、バイオアベイラビリティー、および副作用に適切な様式および量で、そして現在の処置レジメンと適合し得る様式で、当業者によって処方および投与され得る。ヒトにおける脱髄性疾患の重篤度を軽減するための適切な量および処方物は、特定の障害の当該分野で公知の信頼性のある動物モデルから推定され得る。IP−10またはMigに特異的な中和剤の用量は、IP−10またはMigに対する中和剤の結合親和性に基づいて調節されなければならない(その結果、有意に高い結合親和性を示す中和剤は、低い結合親和性を有する中和剤で必要な用量に比べて、さらに低用量で投与され得る)ことが理解される。
【0062】
中和剤の総量は、単回用量でか、もしくは比較的短い時間間隔にわたって注入(インフュージョン)によって投与され得るか、またはさらに長時間にわたって投与される複数用量で投与され得る。このような考慮は、症例に特異的な種々の因子(例えば、疾患のカテゴリーが急性発症(エピソード)または漸進的神経学的増悪のいずれによって特徴づけられるか)に依存する。例えば、慢性の神経学的増悪に罹患した被験体については、中和剤は、全身送達のためにまたは標的組織の部位に移植され得る、徐放性のマトリックスで投与される。治療用化合物の制御された放出(徐放性)のために有用な意図されるマトリックスは、当該分野で周知であり、そしてこれには、DepoFoamTM、バイオポリマー、マイクロポンプ、などのような材料が挙げられる。
【0063】
本発明の中和剤は、当該分野で公知の多数の経路(例えば、静脈内または動脈内のような全身的経路を含む)によって被験体に投与され得る。IP−10またはMigに特異的中和剤は、当業者に公知の処方方法を用いて、薬学的に受容可能な処方物中において、単離されかつ実質的に精製されたポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントの形態で提供され得る。これらの処方物は、標準的な経路(例えば、局所投与、経皮投与、腹腔内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、脳内投与、膣内投与、子宮内投与、経口投与、直腸投与または非経口投与(例えば、静脈内、髄腔内、鞘内、皮下、筋肉内)を含む)によって投与され得る。IP−10またはMigに特異的な中和剤の、硬膜内腔またはクモ膜下腔への髄腔内投与は、本発明の方法を実施するための好ましい経路である。IP−10またはMigに特異的な中和剤の静脈内投与はまた、本発明の方法を実施するための好ましい経路である。さらに、IP−10またはMigに特異的な中和剤の改変体は、脱髄性疾患の重篤度を減じるために有用な化合物の徐放性を可能にする生分解性ポリマーに組み込まれ得る。生分解性ポリマーおよびその使用は、例えば、Bremら、J.Neurosurg.74:441〜446(1991)(本明細書において参考として援用されている)に記載されている。
【0064】
IP−10またはMigに特異的な中和剤は、薬学的に受容可能な媒質と一緒に溶液または懸濁液として投与され得る。このような薬学的に受容可能な媒質は、例えば、以下であり得る:滅菌の水性溶剤(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水、正常生理食塩水、もしくはリンゲル溶液、または他の生理学的に緩衝された生理食塩水)、または他の溶媒もしくはビヒクル(例えば、グリコール、グリセロール、オイル(例えば、オリーブオイル、または注射用有機エステル))。薬学的に受容可能な媒質は、さらに、生理学的に受容可能な化合物(例えば、この中和剤を安定化するか、その可溶性を増大するか、またはその吸収を増大する、作用をする)を含み得る。このような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン);血液脳関門の透過性を増大するために用いられ得るレセプター媒介性透過化物(permeabilizer);微生物の膜を破壊する、EDTAのようなキレート剤;カルシウムまたはマグネシウムのような二価金属イオン;低分子量タンパク質;脂質もしくはリポソーム;または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が中和剤を含む化合物の投与の経路、ならびに特定の物理的特性および化学的特性に依存することを理解する。
【0065】
非経口投与に適切な処方物は、上記の薬学的に受容可能な媒質のような水性および非水性の滅菌注射溶液を含む。この溶液は、さらに、例えば、緩衝液、静菌剤および溶質(この処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にする)を含む。他の処方物としては、例えば、水性および非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤および増粘剤を含み得る)が挙げられる。この処方物は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封されたアンプル、およびバイアル中に存在し得、そして凍結乾燥された条件で貯蔵され得、例えば、使用の直前に滅菌液体キャリアの添加を要する。即時的な注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0066】
血液脳関門を横切るための化合物および組成物を要する適用のためには、この化合物の親油性を増大する処方物が、特に所望され得る。例えば、中和剤が、リポソーム中に組み込まれ得る(Gregoriadis,Liposome Technology,第I巻〜III巻、第2版(CRC Press,Boca Raton FL(1993))。リン脂質または他の脂質からなるリポソームは、非毒性であり、生理学的に受容可能であり、そして代謝可能なキャリアであり、これは作成および投与することが比較的簡単である。
【0067】
IP−10またはMigに特異的な中和剤はまた、ナノ粒子として調製され得る。ナノ粒子の表面上へのペプチド化合物の吸着は、脳へペプチド薬物を送達する際の有効性が証明されている(Kreuterら、Brain Res.674:171〜174(1995))。代表的なナノ粒子は、表面上に吸着され、次いでポリソルベート80でコートされた、IP−10またはMigに特異的な中和剤とのポリ−ブチルシアノアクリレートのコロイド性ポリマー粒子である。
【0068】
脳における選択された位置への血液脳関門を通じた中和剤の画像誘導超音波送達が、米国特許第5,752,515号に記載されるように利用され得る。要するに、血液脳関門を通過して中和剤を送達するためには、脳における選択された位置を標的して、そして超音波を用いて、中枢神経系(CNS)組織、および/またはその位置での液体中で画像化することによって検出可能な変化を誘導する。選択された位置の近傍における脳の少なくとも1部分を、例えば、核磁気共鳴法(MRI)を介して、画像化し、変化の位置を確認する。患者の血流中のIP−10またはMigに特異的な中和剤は、超音波を付与してその位置で血液脳関門を開口させ、そしてそれによってこの中和剤の取り込みを誘導することによって、確認された位置へ送達され得る。
【0069】
さらに、レセプター媒介透過化物(RMP)と呼ばれるポリペプチドを用いて、米国特許第5,268,164号;同第5,506,206号;および同第5,686,416号に記載のように、治療剤または診断剤のような分子に対する血液脳関門の透過性を増大し得る。これらのレセプター媒介性透過化物は、その所望の目的先が脳の脳脊髄液コンパートメントである分子とともに宿主に同時に静脈内投与され得る。透過化物ポリペプチドまたはそのコンフォメーションアナログによって治療剤が血液脳関門を透過すること、およびその標的の目的先に到達することが可能になる。
【0070】
脱髄性疾患のための現在の処置レジメンにおいて、複数の化合物がしばしば、この疾患の同じ局面または異なる局面の管理のために個体に投与される。同様に、脱髄の速度を減少するかまたは脱髄を逆転する工程を包含する本発明の方法において、IP−10またはMigに特異的な中和剤は、第二の治療化合物(例えば、抗炎症性化合物、免疫抑制化合物、またはこの疾患の同じ局面もしくは異なる局面を管理する任意の他の化合物)とともに有利に処方され得る。このような化合物としては、例えば、酢酸メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、およびベタメタゾンが挙げられる。脱髄疾患の重篤度を軽減し、そして再有髄化を促進する意図される方法は、IP−10またはMigに特異的な中和剤を、単独で、このような他の化合物と組み合わせて、またはこのような他の化合物と連続して投与する工程を包含する。あるいは、併用療法は、融合タンパク質から構成され得、ここではIP−10またはMigに特異的な中和剤が異種タンパク質(例えば、治療用タンパク質)に連結されている。
【0071】
以下の実施例は、例示を目的としており、本発明を限定するものではない。
【0072】
本発明の種々の実施形態の働きに実質的に影響しない改変もまた、本明細書中で提供される発明の定義の中に含まれることが理解される。従って、以下の実施例は、例示を目的としており、本発明を限定するものではない。
【0073】
(実施例I)
(抗IP−10抗体によるIP−10の選択的阻害)
本実施例は、ウサギポリクローナル抗IP−10抗体による、マウスのIP−10の選択的阻害を記載し、この選択的阻害は、致死率の増加、およびウイルス感染に対するCNSのTリンパ球浸潤の減少をもたらす。さらに、CNSのウイルス感染の後のマウスのIP−10の選択的阻害は、再有髄化の甚だしい増加を伴う神経繊維の脱髄の減少をもたらす。
【0074】
CNSのウイルス感染の後のIP−10発現の機能的重要性を決定するために、マウスを、MHV(プラス鎖RNAウイルス)の神経向性株で感染させた。感受性のあるマウスのMHVによる脳内感染は、MSと多くの臨床的および組織学的類似性を共有する、慢性の脱髄性疾患をもたらす。このように、MHVマウスモデルは、MSの病因の原因となる基礎的な免疫病理学的機構を研究するための、十分に受け入れられた動物モデルである。詳細には、マウスのMHV脳内感染は、マウスの感受性のある系統において、急性脳脊髄炎を生じた後、慢性神経疾患を生じる(HoutmanおよびFleming,J.Neurovirol.2:361−376(1996);BuchmeierおよびLane,Curr.Opin.Micro.2:398−402(1999)を参照のこと)。MHVの急性期は、ニューロンおよびグリア細胞の広範なウイルス感染により表され、一方、急性期は、単核細胞浸潤およびミエリン破壊を伴う、星状細胞および稀突起膠細胞のウイルス存続により特徴付けられる(HoutmanおよびFleming、前出、1996;BuchmeierおよびLane、前出、1999を参照のこと)。
【0075】
マウス肝炎ウイルス(MHV)株であるV5A13.1は、Dalzielら、J.Virol.59:463−471(1986)(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、野生型MHV−4から誘導された。5週齢から7週齢に相当する年齢の雄性wt C57BL/6(H−2bバックグラウンド)マウス(Sprague−Dawley,San Diego,CA)を、記載されている研究に用いた。メトキシフルオラン(methoxyfluorane)(Pitman−Moore Inc.,Washington Crossing,NJ)の吸入による麻酔の後、マウスに、Laneら、J.Virol.74:1415−1424(2000)(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、30μlの滅菌生理食塩水に懸濁した10pfuのMHVを、頭蓋内に注入した。コントロール動物に、滅菌生理食塩水のみを注射した。この動物を、感染後7日目および10日目に屠殺し、この時、脳および脊髄を取り出した。各脳の半分を、Laneら、前出、2000に記載されるように、ウイルス負荷を決定するための、DBT星状細胞株に対するプラークアッセイに用いた。各脳の残りの半分を、組織学的分析のために固定するか、RNA単離のために−80℃で保存するか、またはFACS分析もしくはELISAのために用いるかのいずれかを行った。全てのデータを、Sigma Stat 2.0ソフトウェアを使用して、有意とみなされる0.05以下のP値を用いて、Mann−Whitney順位和検定を行うことにより分析した。
【0076】
IP−10は、MHV感染後のCNS内で非常に早く(感染の1日後)に発現され、そして疾患の急性期の間、優性のケモカインを発現させる(Laneら、J.Immunol.160:970−978(1998)を参照のこと)。IP−10活性を、ウサギポリクローナル抗IP−10抗血清の腹腔内投与を介して選択的に阻害した。
【0077】
マウスIP−10に特異的なウサギポリクローナル抗血清を、Tnnenbaumら、J.Immunol.161:927−932(1998)(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように作製した。ウサギポリクローナル抗体は、IP−10に特異的であり、そして他の公知のケモカインと交叉反応しないことが以前に示されている(Tnnenbaumら、前出、1998を参照のこと)。MHV感染マウスを2つの群に分け、そして正常なウサギ血清(NRS)または抗IP−10のいずれかで処置した。マウスに、0.5mlの抗IP−10抗血清(0.5mg/mlの濃度)またはNRSを、感染後の0、2、5、7、および9日目に腹腔内注射し、そして引き続いて、感染後の7および10日に屠殺した。
【0078】
マウスIP−10に特異的なウサギポリクローナル抗体を用いる処置は、致死率の増加をもたらした(任意の抗IP−10マウス(n=27)の5%未満が、感染後の12日まで生存している)(図1)。対照的に、NRS処置コントロールマウス(n=27)の約50%が、MHV感染から生き延びた(図1)。致死率の増加と関連して、抗IP−10処置マウスが、そのCNSからウイルスを排除する能力は、NRS処理マウスと比較して低下した。詳細には、生存している抗IP−10処置マウスは、感染の10日後に、NRS処置マウスで示される力価と比較して、脳におけるウイルス力価における2−logの増加を示した(図2)。
【0079】
以前の研究によって、CD4+細胞およびCD8+細胞は、CNSからのMHVの排除に重要であることが示された(WilliamsonおよびStohlman,J.Viol.64:4589−4592(1990);Yamaguchiら、J.Neuroimmunol.32:1−9(1991);Pearceら、J.Virol.68:5483−5495(1997);Laneら、前出、2000を参照のこと)。この研究において、細胞を、感染の7日後に、抗IP−10処置MHV感染マウスまたはNRS処置MHV感染マウスの脳から得、そして2重蛍光染色を、以前にLaneら、前出、2000に記載されるように、CXCR3抗原およびCD4抗原またはCD8抗原について行った。フルオレセインイソチオシアネート結合体化(FITC)ラット抗マウス抗体を用いて、CD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞(Pharmingen,San Diego,CA)を検出した。コントロールとして、アイソタイプの一致したFITC結合体化抗体を用いた。細胞を、抗体と共に、4℃にて30分間インキュベートし、洗浄し、そして引き続いて1%パラホルムアルデヒド中で固定し、そして最終的に、FACStar(Becton Dickinson,Mountain View,CA)で分析した。
【0080】
二重蛍光染色CD4+リンパ球およびCD8+リンパ球、ならびに共焦点顕微鏡によって、ウイルス感染に応答してCNSを浸潤する、CD4+リンパ球およびCD8+リンパ球の大部分が、IP−10レセプターであるCXCR3を発現することが示された。CXCR3を発現するCD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球は、髄膜および実質組織内に存在しており、このことは、これらの細胞が、脳内へ移動することが出来たことを示している。概して、これらの結果は、IP−10が、ウイルス感染に対してCNS内へT細胞を誘引することによる、宿主防御の調節因子であることを実証する。さらに、図3に示されるように、フローサイトメトリー分析によって、マウスの抗IP−10処置が、NRS処置のマウスと比較して、CD4+T細胞の浸潤の82.3%の低下、およびCD8+T細胞の浸潤の70.4%の低下を生じることが示された。抗IP−10処置マウスおよびNRS処置マウスの両方が、匹敵するレベルの単球/マクロファージ浸潤を示し、このことは、IP−10が、ウイルス感染後のCNS内に、これらの細胞を誘引しないことを示している。
【0081】
抗IP−10処置マウスのCNSを浸潤するTリンパ球の数、ならびに浸潤するCD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球におけるCXCR3発現を、以下の細胞抗原の二重蛍光検出に用いる、5%の正常ウマ血清を含む緩衝化生理食塩水で希釈した一次抗体で決定した:ラット抗マウスCD4(Pharmingen,San Diego,CA)(1:100の希釈);およびヤギ抗マウスCXCR3(Santa Cruz Laboratories,Santa Cruz,CA)(1:50の希釈)。CD4一次抗体およびCD8一次抗体について、TRITC結合体化二次抗体(Sigma,ST.Louis,MO)を、1:50の希釈で用いた。CXCR3一次抗体について、FITC結合体化二次抗体(Zymed,South San Francisco,CA)を、1:50の希釈で用いた。F4/80(マクロファージに特異的な抗原)を検出するために用いた試薬は、モノクローナル抗体(クローンC1:A3−1)(Serotec,Raleigh,NC)であり、このモノクローナル抗体を、製造業者の指示書に従って、2%ヤギ血清/PBS溶液中の1:50希釈で用いた。アセトン中で−20℃にて10分間固定した、8μmの凍結切片に、染色を行った。引き続いて、二重染色スライドを、BioRad MRC UVレーザースキャニング共焦点顕微鏡を使用して、共焦点顕微鏡分析に供した。
【0082】
浸潤するTリンパ球が、抗ウイルスサイトカインであるIFN−γの放出を介して、CNSのMHV感染に対する宿主防御に寄与するか否かを決定するために、抗IP−10処置マウスおよびNRS処置マウスの脳内のmRNAおよびタンパク質のレベルを、それぞれ、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RPA)およびELISAにより決定した。
【0083】
総RNAを、感染の7日後のNRS処置マウスまたは抗IP−10処置マウスの脳から、Laneら、前出、2000;およびLaneら、J.Immunol.,160:970−978(1998)に記載されるように、TRIzol(登録商標)(Life Technologies(GIBCO−BRL)Rockville,MD)試薬を用いて抽出した。リボヌクレアーゼ保護アッセイを、以前にLaneら、前出、2000;およびLaneら、前出、1998に記載されるように、15μgの総RNAを用いて行った。インターフェロン−γ(IFN−γ)レベルを、Laneら、前出、2000に記載されるように、感染の7日後に得たマウスの脳を用いて、Quantikine MマウスIFN−γイムノアッセイキット(R&D System,Minneapolis,MN)を使用して定量した。図4Aに示されるデータを、プローブセットに含まれる内部L32に対するIFN−γのシグナル強度の割合を表す、正規化単位として示す。スキャンオートラジオグラフィ−から得た値の分析を、NIH Image 1.61ソフトウェアを用いて実施した。
【0084】
図4Aに示されるように、IP−10の中和は、NRS処理されたマウスの脳に存在する転写物レベルと比較した場合に、IFN−γの減少したmRNA転写物を生じた。NRS処理されたマウスにおけるタンパク質レベルと比較して、感染後7日目におけるIFN−γタンパク質レベルの約80パーセントの減少は、IFN−γ転写物レベルの減少と相関していた(図4B)。抗IP10で処理されたマウスにおけるIFN−γmRNA転写物のレベルは、IFN−γELISAデータに基づいて予測されたレベルよりもわずかに高かったが、このことは、マウス間のバリエーションおよびRPAにおける感受性に起因するようであり、IP−10調節IFN−γmRNA翻訳の結果ではないようである。
【0085】
MHVに感染したマウスに対する抗IP−10および抗Mig処置の連続的治療単位の効果を決定するために、感染後12日目から19日目まで連続して処置を施した。図5は、抗IP−10、抗MigまたはNRSのいずれかで処置された、MHVに感染したマウスの臨床的スコアを示す(この処置は、感染後12日目に開始して19日目に終わる)。3つの集団の臨床的スコアは、処置の開始までは実質的に同じであり、そして抗Migで処置されたマウスおよびNRSで処置されたマウスについては実質的に同じままであった(図5)。しかし、抗IP−10で処置されたマウスについてのこの臨床的スコアは、処置の間、抗Migで処置されたマウスおよびNRSで処置されたマウスと比較して有意に低下し、そして一旦処置が中止されると回復した(図5)。
【0086】
抗IP−10、抗MigまたはNRSで処置されたマウスのCNSへのCD4Tリンパ球およびCD8Tリンパ球の処置後浸潤を、上記のようなFACS分析により感染後28日目に測定した。図6に示されるように、感染後12日目に開始して19日目に終わる、MHVに感染したマウスの抗IP−10処置は、NRS処置と比較して、CNSへのCD4+またはCD8+の浸潤において有意な差異を生じなかった(図6)。
【0087】
CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球およびマクロファージの処置後CNS浸潤を、抗IP−10、抗MigまたはNRSで処置された(この処置は、感染後12日目に開始しそして感染後19日目に終了する)マウスにおいて上記のFACS分析により感染後21日目に測定した。図7に示されるように、感染後12日目に開始して19日目に終了する、MHVに感染したマウスの抗IP−10処置は、NRS処置と比較して、感染後21日目におけるマクロファージのCNSへの浸潤における有意な減少を生じた。同様に、感染後12日目に開始して19日目に終了する、MHVに感染したマウスの抗IP−10処置は、NRS処置と比較して、感染後21日目におけるCNSへのCD4+細胞の浸潤において有意な減少を生じた。その検出に使用された抗原性マーカーF4/80に基づいて、マクロファージは、図7においてF480と示される。
【0088】
抗IP−10、抗MigまたはNRSで処置(感染後12日目に開始して19日目に終了する)されたMHVに感染したマウスにおけるCNS神経線維の脱髄を、感染後21日目に測定した。脱髄を、選択された実験群内の動物由来の脊髄の試験により評価した。組織を調製し、そして脱髄の重篤度を以下のように評価した:計画された時点においてマウスから脊髄を取り出し、そして10%標準緩衝化ホルマリン中で一晩固定した。次いで組織をパラフィン中に包埋した。続いて、切片を、炎症を検出するためのヘマトキシリンおよびエオシン、ならびに脱髄の領域を検出するためのルクソールファストブルーの両方で染色した。染色後、スライドを隠し、そして3人の試験者が独立に調べた。最近記載された測定尺度(HoutmanおよびFleming、前出、1996)に基づいてスコアリングを行った。スコア0は、正常な組織を示した;1は、限定された白質破壊を伴う中程度の炎症を示した;2は、炎症および脱髄の両方における中程度の増加を示した;3は、炎症性病巣および脱髄の両方における顕著な増加を示した;そして4は、多数の炎症性/脱髄病巣を示した。スコアを3人の試験者の間で平均し、そして(平均値)+(平均値の標準誤差)(SEM)として表した。
【0089】
図8に示されるように、感染後12日目から19日目までの抗IP−10処置は、NRS処置と比較して、感染後21日目における脱髄の有意な減少を生じた。脱髄におけるこの減少は、抗IP−10で感染後12日目から19日目まで処置されたMHV感染マウスの、感染後21日目におけるCNSへのF480細胞浸潤およびCD4細胞浸潤の、NRS処置と比較した場合の減少に対応する。
【0090】
IP−10で処置されたマウスにおいて検出された脱髄の有意な減少が再有髄化における全体の増加に付随するか否かを決定するために、抗IP−10で処置されたMHV感染マウス、抗Migで処置されたMHV感染マウスおよびNRSで処置されたMHV感染マウスの脊髄切片の光学顕微鏡観察を行った。再有髄化を、感染後21日目に得られたトルエンブルーで染色した脊髄切片(冠状)の光学顕微鏡分析により評価した。上記の抗IP−10で処置されたマウスにおいて感染後21日目に検出された脱髄の有意な減少(図8を参照のこと)は、再有髄化の全体的な増加に付随していた。NRSで処置されたマウスも抗Migで処置されたマウスも、再有髄化を経験しなかった。光学顕微鏡分析の結果は、CD4およびマクロファージのCNSへの進入の抗IP−10に媒介される中和が、さらなる脱髄を防止するだけでなく、損傷したミエリンの修復をも可能にすることを示す。図16は、MHV感染マウスに対応する軸索の電子顕微鏡写真(electron photomicrograph)を示す。図16Aに示されるように、抗IP−10処置は、軸索の各々を取り囲む特徴的な細く黒い線で示されるように、ウイルス誘発脱髄の再有髄化をもたらす。対照的に、図16Bは、ウイルス誘発脱髄の結果として周囲のミエリンが全くない未処置の軸索を示す。
【0091】
(実施例II)
(抗Mig抗体を用いたMigの選択的阻害)
この実施例は、抗Migポリクローナル抗体を用いた、マウスにおけるMigの選択的阻害を示し、これは、CNSに対する増加したウイルス荷重と相関して、MHV感染の急性期の間の増加した死亡率を生じた。さらに、以下に示される結果は、Migがこの疾患の急性期の間は重要であるが、慢性脱髄の病理学には寄与していないことを示す。さらに、この実施例は、Mig活性の抗体媒介中和が、保護的Th1からTh2応答へのシフトを生じることを示す。宿主応答におけるこのシフトは、CNSへのCD4+およびCD8+T細胞浸潤における有意な減少、減少したIFN−γ発現、およびNRS処置マウスにおいて見出されたレベルと比較して増加したレベルの抗炎症性Th2サイトカインIL−10により特徴付けられる。
【0092】
マウスをMHVに感染させ、そして脳および脊髄を上記のように単離した。ウサギポリクローナル抗Mig抗体を、Tannenbaumら(前出、1998)に記載されるようなMigタンパク質配列から選択されたキャリアタンパク質KLHに結合した、合成ペプチドCISTSRGTIHYKSLKを使用して、Biosynthesis(Lewisville,TX)により作製した。これらの試薬は、Migに特異的であり、かつIP−10、RANTES、またはその他のケモカインとは交差反応しないことが以前に示されている(Tannenbaumら、前出、1998を参照のこと)。MHV感染マウスを、2つの群に分け、そしてNRSまたは抗Migのいずれかで処置した。マウスに0.5mlの抗体を0.5mg/mlの濃度で、感染後0、2、5、7および9日目に注射し、そして感染後7日目および10日目に屠殺した。
【0093】
図9に示されるように、生存している抗Mig処置マウスは、脳におけるウイルス力価において、感染後10日目におけるNRS処置マウスに存在する力価と比較して、100倍(2−log)の増加を示し、これは、抗IP−10処置について図2に示されそして上記したようなウイルスクリアランスの速度論に類似している。この疾患の急性段階の間(感染後7日目まで続く)、ウイルスは、ニューロンおよびグリア細胞内で複製する(HoutmanおよびFleming、前出、1996;Dalziel、前出、1985;およびFazackerlyら、Virology 187:178−188(1992)を参照のこと)。急性疾患に耐えた動物は、しばしば、単核細胞浸潤およびミエリン破壊を伴う、星状細胞および稀突起神経膠細胞内のウイルス存続により特徴付けられる慢性脱髄疾患を発症する(HoutmanおよびFleming、前出、1996;BuchmeierおよびLane、前出、1999を参照のこと)。
【0094】
MHV感染の間でのMigの役割を決定するために、総RNAを、感染の7日、12日、および35日後に脳から単離し、そしてMigおよびMHVウイルス遺伝子の発現の速度論を、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RPA)によって決定した。総RNAを、Laneら、前出、1998に記載されるように抗MigまたはNRSのいずれかで処置された、MHVに感染した動物の脳および脊髄から抽出した。Mig mRNAを検出するために使用されたアンチセンスリボプローブを、感染の7日、12日、および35日後に、MHVに感染したマウスの脳から単離した総RNAから生成したcDNAのRT−PCRの増幅により誘導した。以下のオリゴヌクレオチドプライマーを、Mig増幅のために使用した:(順方向)5’CGT CGT CGT TCA AGG AAGおよび(逆方向)5’TCG AAA GCT TGG GAG GTT。PCR増幅を、自動化されたPerkin Elmer(Norwalk、CT)モデル 480 DNAサーモサイクラーを使用して、以下のプロファイルで実施した:工程1、30秒間、94℃で初期変性;工程2、30秒間、60℃でアニーリング;および工程3、45秒間、72℃で伸長。工程1〜3を、34回(全部で35サイクル)繰返し、続いて、72℃で7分間インキュベートした。599個の塩基対の推定PCRアンプリコンを、pCR Script SK+ベクター(Stratagene,San Diego,CA)にクローニングし、そして配列分析より、95%を越えるマウスMigとのヌクレオチド同一性と同定した(VanguriおよびFarber、J.Biol.Chem.265(25):15049−15057(1990)を参照こと)。
【0095】
Migウイルス遺伝子およびMHVウイルス遺伝子の発現の分析のために、Migリボプローブを、以前にLaneら、J.Virol.71:2202−2220(1997)(これは、本明細書中で参考として援用されている)に記載されたMHVスパイク遺伝子(spikegene)に対して特異的なリボプローブと組み合わせて使用した。Laneら、前出、1998;およびLaneら、前出、2000において以前に記載されたように、L32を、内部コントロールとして添加し、RNA充填およびアッセイの実施における一貫性を確証した。シグナル強度の定量化のために、オートラジオグラフをスキャンし、そして個々のケモカインバンドを、Laneら、前出、1998;およびLaneら、前出、2000において以前に記載されたように、バンド強度のL32コントロールに対する比として規格化した。スキャンされたオートラジオグラフから得られた値の分析を、NIH Image 1.61ソフトウェアを使用した実施した。
【0096】
図10に示されるように、Migスパイク遺伝子およびMHVスパイク遺伝子を、感染の7日および12日後に発現させた。しかし、動物が広範なミエリンの損失を示す(図8を参照のこと)感染の35日後までに、Mig転写物は検出されないが、スパイク遺伝子転写物は、なお存在する。Mig mRNAおよびポリクローナル抗体に特異的なアンチセンスリボプローブを使用して、製造業者の指示書に従って使用されるグリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)(DAKO Corp.,Carpinteria,CA)に二重標識することにより、星状細胞がMHV感染の後にMigを発現することが示される。これらの結果は、Migが疾患の急性期の間に重要であるが、持続的に感染されたマウス内での慢性的な脱髄には寄与しないことを示す。
【0097】
Mig mRNA転写のためのインサイチュシグナルと細胞抗原とを共存させるように設計された研究のために、免疫組織学的分析を、Laneら、前出、1998に記載されるように実施されるインサイチュハイブリダイゼーションによりも先に実施した。抗体の希釈および洗浄工程において使用されるリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、ジエチルピロカルボネートであり、これを、RNaseのコンタミネーションおよびインサイチュシグナルの損失を減少するように処理した。クロマゲンジアミノベンジジン(DAB)の適用後、スライドを、PBSで2回洗浄し、次いで、1時間、42℃で、ハイブリダイゼーション緩衝液中でプレハイブリダイズした。続いて、この直線化した35S標識リボプローブを、この部分に添加し、そしてインサイチュハイブリダイゼーション手順の標準を、Laneら、前出、1998に記載されるように実施した。展開後、このスライドを、ヘマトキシリンのみで対比染色し、次いで脱水し、そして取り付けた。
【0098】
MHV感染したマウスの抗Mig抗体を用いた処理を実施し、CNSのウイルス感染後にMig発現の機能的有意性を評価した。図11に示されるように、抗Mig抗体処理により、NRSで処理したコントロールマウスと比較して、死亡率の顕著な増加を生じた。感染の12日後までNRSで処置されたMHVに感染したマウスにおける50%の生存率に比べて、抗Migで処置したマウスの10%未満が、感染を残存させる(図11)。抗Mig抗体で処理した生存マウスは、NRSで処置したマウスにおいて示される力価(2.0±0.2、n=10)と比較して、有意により高い(p≦0.001)ウイルス力価(5.4±0.3、n=4)を示した(図9)。これらの結果は、急性疾患の間のMigの中性化が、増加した死亡率を生じることを示し、これは、CNS内に含まれるウイルスの増加に相関する。
【0099】
Tリンパ球の単離およびフローサイトメトリーを行い、上述およびLaneら、(前出、2000)に記載されるように、Tリンパ球のCNSへの浸潤に対するMHVに感染したマウスの抗Mig処置の効果を決定した。感染7日後での、蛍光細胞分析分離装置(FACS)による分析は、抗Migで処置したMHVに感染したマウスが、NRSで処置したMHVに感染したマウス内で示されるレベルと比較した場合、CNSへのCD4+およびCD8+Tリンパ球の両方の浸潤のレベルが顕著に低い(p≦0.005)ことを示すことを示した(図12)。図12に示されるように、マウスの抗Mig処置の結果、NRSで処置されたマウスと比較した場合、浸潤するCD4+細胞において45%減少し、浸潤するCD8+細胞において60%減少した(*p≦0.005)。
【0100】
T細胞がCNSのMHV感染に対して宿主防御することに寄与する1つの機構は、抗ウイルスサイトカインIFN−γの放出を介する(Pearce,前出,1997;Lane,前出,1997;Parraら,J.Immunol.162:1641−1647(1999))。IFN−γレベルが、抗Migで処置されたMHVに感染したマウス中で変更されたかどうかを決定するために、抗Mig処置したマウスもしくはNRS処置したマウスのCNS内のサイトカインmRNA転写レベルを、感染7日後にRPAによって評価した。
【0101】
図13は感染7日後に抗MigまたはNRSのいずれかで処置した、MHVに感染したマウスの脳におけるIFN−γおよびIFN−β転写レベルの濃度測定分析を示す。図13に示されるデータは、プローブセットに含まれる内部L32コントロールに対するIFN−γまたはIFN−βのシグナル強度の比を表わす、正規化された単位として表わされる。値を、NIH Image 1.61ソフトウェアを用いてスキャンしたオートラジオグラフから得る(Laneら,前出,1998およびLaneら,前出,2000に記載)。上記シグナル強度は、抗Migで処置したマウスが、NRSで処置したマウスと比較して、IFN−γ転写レベルにおいて86.7%の減少(p≦0.03)、ならびにIFN−β転写レベルにおいて65.1%の減少(p≦0.02)を示すことを示した(図13)。
【0102】
さらに、グループ内のIFN−γおよびIL−10タンパク質のレベルを、Quantikine MマウスのIFN−γまたはIL−10免疫アッセイキット(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて感染7日後に決定した。組織サンプルを、1mlの滅菌リン酸緩衝生理食塩水中でホモジェナイズし、そして4℃で5分間、400×gで回転させた。二連の上清サンプルを、製造者の指示に従って、組織内に存在するそれぞれのタンパク質レベルを決定するために使用した。酵素の呈色反応の後、サンプルを450nmで読み取り、それぞれのタンパク質レベルを製造者によって供給される標準曲線と比較して定量した。図14および15における結果は、1ミリリットルあたりのピコグラムとして表わされる。タンパク質検出の感度の限界は、約8.0pg/mlであった。使用される試薬は、他のマウスサイトカインと交差反応しない。
【0103】
RPAの結果と一致して、IFN−γタンパク質レベルは、ELISAで決定されるように、NRSで処置されたマウスと比較して、抗Mig処置されたマウスのCNS内で91%減少した(p≦0.05)(図14)。図15に示されるように、CNS内の抗炎症性TH2サイトカインIL−10のレベルにおける4倍の増加は、抗Mig抗体で処置されたマウスにおけるIFN−γレベルの減少と一致した。
【0104】
(実施例3)
(インビトロアッセイによるIP−10およびMig活性の確認)
この実施例は、インビトロ法によるIP−10およびMig活性の確認、ならびにIP−10に対するヒトモノクローナル(monclonal)抗体の中和活性の確認を示す。以下に記載されるアッセイは、IP−10またはMigに関して特異的な中和剤を同定するために有用である。
【0105】
簡潔に言うと、IP−10またはMigの活性は、本発明の中和剤(例えば、ヒトモノクローナル抗体)を用いて中和され、T細胞の中枢神経系への移入に対するこの処置の効果が、決定される。この目的のために、化学走性アッセイは、CXCR3ヒトレセプターcDNAで安定にトランスフェクトされ、特徴付けられているヒト細胞株を利用する。簡潔に言うと、ヒトCXCR3レセプターcDNAを、PHA/IL−2で活性化されたヒトT細胞および調製されたRNAから、RT−PCRによってクローン化する。サブクローン化されたcDNAを、引き続き、配列決定して、PCRプライマー特異性を確認する。Jurkat細胞を、20ugのcDNA構築物を用いて電気穿孔した。ネオマイシン耐性細胞を、限界希釈によってクローン化し、発現についてノーザンブロットによってスクリーニングした。引き続き、抗ヒトCXCR3レセプター抗体(Leukocyte,Inc.,Cambridge,MA)を用いるフローサイトメトリー分析で、レセプター発現を確認した。
【0106】
化学走性は、Lusterら、Proc.Assoc.Am Physicians 110(3):183−196(1998)(本明細書中で参考として援用する)に記載される十分確立したプロトコルを用いて評価される。簡単に述べると、化学走性は、5ミクロン孔を有するポリビニルピロリドンを含まないポリカーボネートメンブレンを用いた48ウェルの化学走性チャンバ(Neuroprobe、Cabin John、MD)を使用する。このメンブレンを、ヒトコラーゲンIV型(Collaborative Biomedical Products、Beford MA)の2μg/ml溶液中に浸し、そして使用する前に37℃で1時間インキュベートする。ヒト組換え炎症誘発性分子IP−10(PeproTech、Rocky Hill、NJ)またはMigを、5×104/ウェルの濃度で、ヒトmAbおよびレセプター発現T細胞の混合物と共に、またはそれらを伴わずにインキュベートし、末梢血から獲得し、次いでFicoll−Hypaque勾配で回転させる。活性化された細胞は、活性な炎症誘発性分子に応答して移動する。この細胞をDiff−Quick(Baster、Valencia、CA)で染色し、そして4つの無作為な高倍率の視野で計数する。非トランスフェクト細胞を、ネガティブコントロールとして使用する。
【0107】
第2のアッセイは、細胞内カルシウムの検出に基づく。細胞内カルシウムの変化は、特定のケモカインレセプターに結合するケモカインを証明する。上記のような、単一のレセプター発現T細胞の細胞内カルシウム([Ca2+]i)を、Lusterら、Proc.Assoc.Am Physicians 110(3):183−196(1998)に以前に記載されたようなプロトコルを用いて決定する。細胞(1×105/ml)を、PIPES緩衝液中で、37℃にて30分間、2mMでfura−2/AMと共に充填する。1mlの細胞を、バックグラウンドのシグナル伝達を排除するための、チャンバのいかなるコーティングも施さない特別なチャンバ(Nunc、Roskilde、Denmark)に入れる。[Ca2+]iにおける変化を、感光カメラを有するデジタル画像化システムを用いて決定する。組換えヒト炎症誘発性分子を、異なる濃度のmAbと共にか、またはそれを伴わずにインキュベートし、そして細胞の別々のチャンバに添加する。[Ca2+]iを、刺激前および刺激後に決定する。
【0108】
本願を通して、種々の刊行物が、括弧内で参照されている。これらの刊行物の開示は、その全体において、本願発明の属する分野の状態をより十分に記載するために、本願で参考として本明細書によって援用される。
【0109】
本発明は、開示される実施形態を参照して記載されているが、詳述される特定の実施形態が本発明を例示するのみであることを、当業者は容易に認識する。種々の改変が、本発明の意図から逸脱することなく成され得ることが理解されるはずである。従って、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、抗IP−10処理マウスの増加した死亡率を示す。このマウスにMHVを頭蓋内感染させ、そして抗IP−10または正常なウサギ血清(NRS)のいずれかを用いて腹腔内処理した。
【図2】
図2は、抗IP−10処理マウスのCNSからの遅いウイルスクリアランスを示す。試験したマウスの数を、anで示す。示されるデータは、3つの独立した研究を表す。
【図3】
図3は、抗IP−10処理マウスのCNS内での減少したTリンパ球レベルを示す。MHV感染マウスの抗IP−10処理により、MHV感染マウスのNRS処理と比較して、浸潤性CD4+T細胞が82.3%減少し、浸潤性CD8+T細胞が70.4%減少する。これらのデータを、平均+/−標準誤差(SEM)として表し、そして2つの独立した研究の結果を示す。
【図4】
図4は、感染7日後に抗IP−10処理したマウスのIFN−γ mRNA転写物の分析(*P≦0.05;NRS、n=3;抗IP−10、n=3)(A)および感染7日後に抗IP−10処理したマウスの減少したIFN−γタンパク質発現レベル(*P≦0.01;NRS、n=5;抗IP−10、n=5)(B)を示す。
【図5】
図5は、感染12日後に開始し、感染19日目で終了する抗IP−10、抗Mig、またはNRSのいずれかで処理したMHV感染マウスの臨床スコアを示す。以下のパラメータに基づく数値によるスコア付けシステムに従い、臨床的な疾患を評価する:0−異常なし;2−尾がぐったりし、後肢が部分的に衰弱する;3−後肢が完全に麻痺する;4−死ぬ。
【図6】
図6は、感染12日後に開始し、感染19日後に終了する抗IP−10、抗Mig、またはNRS処理したマウスのCNSへのCD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球の処理後浸潤を示す(MHV感染後28日目に測定した)。
【図7】
図7は、感染12日後に開始し、感染19日目で終了する抗IP−10、抗Mig、またはNRS処理したマウスのCNSへのCD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、およびマクロファージの処理後浸潤を示す(MHV感染後21日目に測定した)。
【図8】
図8は、感染12日後に開始し、感染19日後に終了する抗IP−10、抗Mig、またはNRSのいずれかで処理したマウスにおけるMHV感染21日後の脱随を示す(C.S.、臨床スコア、DM、脱髄)。
【図9】
図9は、抗Mig処理マウスのCNSからの遅いウイルスクリアランスを示す。試験したマウスの数を、nで示す。
【図10】
図10は、感染7日後および感染12日後の、MHV感染マウスのCNSにおけるMig発現を示す。これらのデータを、平均±SEMで示す(PID 7 n=3;PID 12 n=2;PID 35 NRS n=3)。
【図11】
図11は、抗Mig処理マウスの増加した死亡率を示す。抗Mig群についてはn=27、そしてNRS群についてはn=27。
【図12】
図12は、抗Mig処理マウスのCNS内での減少した浸潤性Tリンパ球レベルを示す。これらのデータを、平均±SEMとして表し、そして2つの独立した研究の結果を示す。NRS群についてはn=5、そして抗Mig群についてはn=5。
【図13】
図13は、抗MigまたはNRSのいずれかで処理したMHV感染マウスの脳におけるサイトカインの発現を示す。データを、平均±SEM(*P≦0.02)として表す。NRS群についてはn=3、そして抗Mig群についてはn=3。
【図14】
図14は、抗Mig処理マウスにおける減少したIFN−γタンパク質発現を示す。データを、平均±SEM(*P≦0.05)として表す。NRS群についてはn=5、そして抗Mig群についてはn=5。
【図15】
図15は、抗Mig処理マウスにおける増加したIL−10タンパク質発現を示す。データを、平均±SEM(*P≦0.02)として表す。NRS群についてはn=5、そして抗Mig群についてはn=5。
【図16】
図16は、抗IP−10処理による、ウイルスにより誘導された神経繊維の脱随の再有髄化(A)、およびウイルスにより誘導された神経繊維の脱随(抗IP−10処理をしない)(B)を示す。
Claims (18)
- 脱髄疾患に罹患した被験体における再有髄化を促進する方法であって、脱随疾患を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な有効量の中和剤を投与する工程を包含する、方法。
- 前記被験体が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
- 前記被験体がヒトである、請求項2に記載の方法。
- 前記脱随疾患が多発性硬化症(MS)である、請求項1に記載の方法。
- 10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な前記中和剤が、抗IP−10抗体である、請求項1に記載の方法。
- 被験体における神経炎症性疾患の重篤度を減少させる方法であって、神経炎症性疾患を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な有効量の中和剤を投与する工程を包含する、方法。
- 被験体における神経炎症性疾患の重篤度を減少させる方法であって、脱随疾患を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な有効量の抗体を投与する工程を包含する、方法。
- 神経炎症性疾患に関連する、T細胞の中枢神経系(CNS)への移動を阻害する方法であって、被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な有効量の中和剤を投与する工程を包含する、方法。
- 脱随疾患の重篤度を減少させる方法であって、脱随疾患を有する被験体に10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な有効量の中和剤を投与することにより、脱随神経繊維を再有髄化させ、該神経繊維の脱随を妨げる工程を包含する、方法。
- 前記被験体が哺乳動物である、請求項9に記載の方法。
- 前記被験体がヒトである、請求項10に記載の方法。
- 前記脱随疾患が多発性硬化症(MS)である、請求項9に記載の方法。
- 10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な前記中和剤が、抗IP−10抗体である、請求項9に記載の方法。
- 10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)に特異的な前記中和剤が、静脈内投与により投与される、請求項9に記載の方法。
- IP−10に特異的な中和剤を同定する方法であって、候補中和剤の存在下でIP−10レセプターを発現する細胞をIP−10と接触させる工程、およびIP−10活性に関連する生物学的応答の発生を決定する工程を包含し、ここで、該生物学的応答の非発生によって、候補物質がIP−10中和剤として同定される、方法。
- 前記生物学的応答が、IP−10レセプターを発現する前記細胞の細胞内カルシウムレベルの変化である、請求項15に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、IP−10レセプターを発現する前記細胞の移動である、請求項15に記載の方法。
- 前記レセプターがCXCR3レセプターである、請求項15に記載の方法。
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