JP2006008705A - 二次的な組織変性のcxcl10処置 - Google Patents

二次的な組織変性のcxcl10処置 Download PDF

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Abstract

【課題】 中枢神経系損傷(特に、脊髄損傷およびCNSに対する外傷から生じる二次的な組織変性)を処置するためのさらなる方法の提供。
【解決手段】 被験体における中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、中枢神経系損傷に関連する二次的な組織変性を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する、方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、National Institutes of Healthによって授与された契約番号NS37336−01の元で政府の援助によってなされた。合衆国政府は、本発明に特定の権利を有する。
本発明は、免疫学に関しそして、より具体的には、ケモカインCXCL10の中和によって中枢神経系(CNS)損傷と関連する二次的な組織変性の処置に関する。
(発明の背景)
CNSは脳および脊髄からなり、これらは、神経細胞、支持細胞および神経線維を含む連続した系を形成する。脳は、明確な領域および層を有する認知器官であり、領域および層の各々は、感覚器官から受信される特定の刺激の受信および処理に関連する。ヒト脳は、3つの主要領域に分けられ、その各々は以下の明確な機能を有する:終脳(前脳)(forebrain (prosencephalon))、中脳(中脳)(mid−brain(mesencephalon))および後脳(菱脳)(hindbrain(rhombencephalon))。脊髄はセグメントに並び、このセグメントは、身体の上部における移動および感覚を制御するより高いにセグメント、ならびに身体の下部を制御するより低いセグメントを有する。CNS損傷の結果は、その構成器官の組織化に反映する。
障害の型は、損傷の型および重大性、損傷を発症する脊髄のレベル、ならびに損傷された神経線維の経路に非常に依存する脊髄損傷に関連する。脊髄への重篤な損傷は、損傷点より下の脊髄セグメントによって制御される身体部分の麻痺および完全な感覚喪失を引き起こす。脊髄損傷はまた、多くの合併症(床ずれおよび呼吸疾患へ高い感受性を含む)を誘導し得る。脳損傷は、異なる領域(認知機能、身体能力、意思伝達、または社会的/挙動的機能を含む)における欠陥の広範な指標を誘導し得る。
中枢神経系に対する損傷は、最初の損傷の直後に止まらないが、最初の外傷後から数時間または数日間続く。これらの遅延した損傷プロセスは、脳および脊髄の損傷から生じる障害の程度を減少させることを目的とする処置のためのよい機会を提示する。外傷または疾患の非存在において、免疫細胞の主要な型はCNSにほとんど進入しない。しかし、脳または脊髄が外傷または疾患によって損傷される場合、免疫細胞はその領域を飲み込み、細片(debris)を除去し、そして強力な調節化学物質(有益および有害の両方)を宿主に放出する。免疫細胞の進入は、急性のCNS損傷および関連する二次的な変性の両方に関連する。
急性脊髄損傷の現在標準の治癒処置は、高用量のメチルプレドニソロン(methylprednisolone)(ステロイド)であり、損傷の最初の3時間後に投与され、そして全体効力は最近疑問となっている。脊髄損傷の徴候処置は、カリウムチャネルのブロッカーである4−アミノピリジン(4−AP)で達成され得、神経作用潜在力の持続時間を延長し、そして脱髄した軸索における伝達を改善する。しかし、これらの薬剤のいずれも、CNS外傷に関連する複雑な病理学的カスケードを防御しない。
従って、中枢神経系損傷(特に、脊髄損傷およびCNSに対する外傷から生じる二次的
な組織変性)を処置するためのさらなる方法を有する必要が存在する。本発明は、この必要性を満足させ、そして関係する利点も提供する。
本発明によって、以下が提供される:
(項目1)
被験体における中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、中枢神経系損傷に関連する二次的な組織変性を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記被験体が哺乳動物である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被験体がヒトである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記中枢神経系損傷が脊髄損傷である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記中枢神経系損傷が脳損傷である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤が、抗CXCL10抗体である、項目1に記載の方法。
(項目7)
被験体における中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的に結合し得る抗体またはそのフラグメントの有効量を、それらを必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目8)
前記中枢神経系損傷が、機械的損傷、脊髄挫傷、脊髄の圧迫損傷、脊髄の裂傷、脊髄の分断、および脱髄状態からなる群より選択される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記脱髄状態が多発性硬化症である、項目8に記載の方法。
(項目10)
被験体における病理学的中枢神経系状態に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的に結合し得る抗体またはそのフラグメントの有効量を、それらを必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目11)
前記病理学的状態がミエリン喪失である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ミエリン喪失が、急性播種性脳脊髄炎、感染後ミエリン喪失、ワクチン後ミエリン喪失、急性壊死性脳脊髄炎、および進行性壊死性ミエロパシーからなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記中和剤が、前記損傷の1時間以内に投与される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記抗体またはそのフラグメントが、前記損傷の1時間以内に投与される、項目7に記載の方法。
(項目15)
前記抗体またはそのフラグメントが、前記状態の診断の1日以内に投与され、そして該投与が、さらに25日間まで毎日繰り返される、項目10に記載の方法。
(項目16)
前記中和剤が、少なくとも損傷の25日後まで毎日投与される、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記抗体またはそのフラグメントが、少なくとも損傷の25日後まで毎日投与される、請
求項7に記載の方法。
(項目18)
被験体における中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、細胞内の10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)の量を減少させ得るポリヌクレオチド剤の有効量を、それらを必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目19)
前記薬剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群より選択され、ここで、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムはCXCL10をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する、項目18に記載の方法。
(項目20)
被験体における病理学的中枢神経系状態に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、細胞内の10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)の量を減少させ得るポリヌクレオチド剤の有効量を、それらを必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目21)
前記薬剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群より選択され、ここで、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムはCXCL10をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記薬剤が、該薬剤によって血液脳関門の浸透を増進し得るリポソームを含有する組成物で投与される、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記抗体またはそのフラグメントが、該抗体またはそのフラグメントによって血液脳関門の浸透を増進し得るリポソームを含む組成物で投与される、項目7に記載の方法。
(項目24)
前記抗体またはそのフラグメントが、該抗体またはそのフラグメントによって血液脳関門の浸透を増進し得るリポソームを含む組成物で投与される、項目10に記載の方法。
(項目25)
前記抗体またはそのフラグメントが、該抗体またはそのフラグメントによって血液脳関門の浸透を増進し得るリポソームを含む組成物で投与される、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記抗体またはそのフラグメントが、該抗体またはそのフラグメントによって血液脳関門の浸透を増進し得るリポソームを含む組成物で投与される、項目20に記載の方法。
(項目27)
中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させるのに使用するための組成物であって、該組成物は、CXCL10中和剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目28)
中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法において使用するための、CXCL10中和剤および指示書を備える、キット。
(発明の要旨)
本発明は、CNS損傷に関連する二次的な組織変性を有するか、またはそれを発症する危険性のある被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の治療有効量を投与することによって、被験体における中枢神経系(CNS)損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法を提供する。本発明の方法は、脊髄損傷および脳損傷の両方の処置のために有用である。
さらなる局面において、本発明は、被験体におけるCNS損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法を提供し、この方法は、CNS損傷に関連する二次的な組織変性を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する。
特定の実施形態において、この被験体は哺乳動物である。他の実施形態において、この方法の被験体はヒトである。なおさらなる実施形態において、CNS損傷は、脊髄損傷、脳損傷、またはその両方のいずれかである。
なおさらなる実施形態において、中和剤は抗CXCL10抗体、抗CXCL10抗体に対応するフラグメント、CXCL10に対して特異的な低分子またはポリペプチドである。
本発明のさらなる局面は、被験体におけるCNS損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法を提供し、この方法は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的に結合し得る、抗体またはそのフラグメントの有効量を、重篤な二次的な組織変性の減少を必要とする被験体に投与する工程を包含する。
本発明の特定の実施形態において、CNS損傷は、機械的損傷、脊髄挫傷、脊髄の圧迫損傷、脊髄の裂傷、脊髄の分断、または脱髄状態によって生じるか、または誘導される。1つの実施形態において、この脱髄状態は多発性硬化症である。
被験体における病理学的CNS状態に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法もまた、本発明によって提供され、この方法は、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的に結合し得る抗体またはそのフラグメントの有効量を、重篤な二次的な組織変性の減少を必要とする被験体に投与する工程を包含する。
特定の実施形態において、病理学的状態は、ミエリン喪失である。他の実施形態において、ミエリン喪失は、急性播種性脳脊髄炎、感染後ミエリン喪失、ワクチン後ミエリン喪失、急性壊死性脳脊髄炎、または進行性壊死性ミエロパシーに起因する。
さらなる実施形態では、本発明の中和剤が、損傷の少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間以内に投与される。なおさらなる実施形態では、中和剤は、損傷または診断の12時間、18時間、または24時間以内に投与される。他の実施形態では、中和剤は、抗体または抗体フラグメントである。なおさらなる実施形態では、中和剤は、単独または抗炎症剤のようなさらなる薬剤と組合わせて投与され、そして投与は、少なくとも1回、および他の実施形態では、何日か繰り返して生じる。1つの実施形態では、日数は、10日まで、15日まで、20日まで、25日まで、または、少なくとも30日まである。
本発明により提供されるものはまた、被験体におけるCNS損傷と関連する二次的な組織変性の重篤度を低下させる方法であり、この方法は、それを必要とする被験体に、細胞中の10kDaのインターフェロン誘導タンパク質(CXCL10)の量を低下させ得るポリヌクレオチド剤の有効量を投与する工程を包含する。
種々の実施形態では、ポリヌクレオチド剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムであり得、ここで、このアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムは、CXCL10をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する。
なおさらなる局面では、本発明は、被験体における病理学的なCNS状態に関係する二次的な組織変性の重篤度を低下させる方法を提供し、この方法は、それを必要とする被験体に、細胞中の10kDaのインターフェロン誘導タンパク質(CXCL10)の量を低下させ得るポリヌクレオチド剤の有効量を投与する工程を包含する。
特定の実施形態では、薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムであり得、ここで、このアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムは、CXCL10をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する。
なおさらなる実施形態では、本発明の中和剤は、血液脳関門の透過を増大し得る組成物(例えば、リポソーム)中で投与され得る。
(発明の詳細な説明)
本発明は、10kDAのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)を特定の中和剤を用いて中和することにより、脊髄損傷および脳損傷を含む、CNS損傷を処置および/または軽減する方法に関する。本発明はまた、CNS損傷または外傷と関連する二次的な組織変性を逆転させる方法、ならびに特定の中和剤を用いて10kDAのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)を中和することにより、神経細胞再生および再ミエリン化を促進する方法を提供する。
CXCL10の中和は、CNS損傷についての有意な処置オプションを提示する。なぜならば、これは、CNS損傷または外傷後の組織損失と関連する神経学的変性の原因である、T細胞浸潤の程度を低下させるからである。CXCL10の中和は、CNS損傷または外傷に関連する二次的な変性の単なる症状よりもむしろ原因を標的とする。
CNSは、軸索と呼ばれる長い神経繊維により特徴付けられる、神経細胞、すなわち、ニューロン、を含む。脊髄中の軸索は、下行性の経路に沿って、脳から下向きに、および上行性の経路に沿って、脳に対して上向きにシグナルを運ぶ。これらの経路中の多くの軸索は、ミエリンと呼ばれる絶縁物質の鞘により覆われており、このミエリンは、白っぽい外観を与える;従って、これらがある領域は「白質」と呼ばれる。神経細胞自体は、他の神経細胞からシグナルを受容する樹状突起とよばれる木様の枝を有し、「灰白質」を構成する。灰白質は、脊髄の中心の蝶型の領域にある。脳および脊髄の両方は、3つの膜(髄膜)で囲まれている:軟膜、最も内側の層;クモ膜、繊細な中間層;および硬膜(これは強い外側の層である)。
脊髄は、その長さに沿ってセグメントへと組織化される。各セグメントからの神経は、身体の特定の領域に接続する。首のセグメント、すなわち、C1〜C8といわれる、頸部領域は、首、腕、および手へのシグナルを制御する。T1〜T12といわれる、胸領域または上部背領域内のセグメントは、胴および腕のいくつかの部分へとシグナルをリレーする。L1〜L5といわれる、上腰領域または肋骨直下の中部背領域内のセグメントは、臀
部および肢へのシグナルを制御する。最後に、S1〜S5といわれる、仙骨セグメントは、中背内の腰セグメントの直ぐ下にあり、そして鼠径部、足指、および肢のいくつかの部分へのシグナルを制御する。異なるセグメントでの脊髄損傷の影響は、この構成を反映する。
いくつかの型の細胞が、CNS機能を実行する。大きな運動神経は、首、胴、および肢内の骨格筋を制御する長い軸索を有する。脊髄神経節細胞と呼ばれる感覚神経(その軸索は、身体から脊髄へと情報を運ぶ神経を形成する)は、脊髄の直ぐ外側に見出される。脊髄の完全に中にある、脊髄の介在ニューロンは、感覚情報を統合し、そして筋肉を制御する協調シグナルを生じるのに役立つ。グリア、すなわち、支持細胞、は、脳および脊髄中のニューロンよりも数が多く、そして種々の機能を行う。グリア細胞の1つの型である、稀突起神経膠細胞は、軸索を絶縁し、そして神経シグナル伝達の速度および信頼性を高めるミエリン鞘を作る。他のグリアは、車輪のリムおよびスポーク様の脊髄を封入し、上行性神経線維管および下行性神経線維管についての区画を提供する。星状細胞(大きな星型のグリア細胞)は、神経細胞を取り囲む流体の組成を調節する。これらの細胞のいくつかはまた、損傷後の瘢痕組織を形成する。ミクログリアと呼ばれるより小さな細胞もまた、損傷に応答して活性化され、そして老廃物を片付ける助けとなる。これらのグリア細胞の全ては、ニューロン生存を支持しそして軸索成長に影響する物質を、生成する。
脳および脊髄は、これらを保護する骨腔(bony cavity)内に閉じ込められるが、またこれらを、膨潤または激しい損傷により引き起こされる圧迫損傷に対して脆弱にもする。CNSの細胞は、非常に高い代謝速度を有し、そしてエネルギーについて血糖に依存する。健常な血流が正常な機能に必要とされる最低限を割る範囲は、他の組織においてよりも、CNSにおいてずっと小さいので、CNS細胞は、虚血に対して特に脆弱である。CNSの他の固有に特徴は、「血液脳関門」および「血液脊髄関門」であり、これらは、CNS内の血管を裏打つ細胞により形成され、そして潜在的に有害な物質および免疫系の細胞の進入を制限することにより、神経細胞を保護するように働く。外傷は、これらの関門を傷つけて、脳および脊髄におけるさらなる損傷を与える。
本明細書中で用いられる場合、用語「中枢神経系損傷」および「CNS損傷」とは、損傷または病巣の部位での炎症性応答により特徴付けられる脊髄および/もしくは脳の損傷または状態をいうことが意図される。中枢神経系損傷は、一般的に、主に機械的損傷を伴うが、病理学的状態のような非外傷性事象により引起される病巣を包含する。CNSの損傷としては、脊髄の挫傷により引起される打撲傷、および脊髄に対する圧力により引起される圧迫損傷が挙げられる。脊髄損傷の他の型としては、断裂、分離、および脊髄中心症候群が挙げられ、これらは索の頚(首)領域に影響し、そして脳と脊髄との間のシグナルを運ぶ皮質脊髄路と呼ばれる神経線維の群に対する集中的な損傷から生じる。CNS損傷または病巣は、CNSの1つ以上の細胞型または組織(ニューロン、グリア細胞およびミエリンを含む)に影響し得る。CNSの状態としては、多発性硬化症(MS)を含む脱髄状態が挙げられ、ここで、脱髄が脳および脊髄の白質で生じる。脱髄および局所的炎症は、多発性硬化症を含む、CNSの脊髄損傷および脱髄状態に共通し、そしてミエリン破壊の結果としてミエリン塩基性タンパク質(MBP)に特異的なT細胞の流入が、脊髄損傷および多発性硬化症の両方で実証されている。
脱髄疾患または脱髄状態は、これらが生じる頻度、およびこれらが引き起こす障害に起因して、神経学的障害の重要な群である。脱髄疾患は、炎症性応答により伴われ得るミエリン鞘の限局的破壊または斑状の(patchy)破壊という共通点を有する。ミエリンの損失はまた、他の状態、例えば、ミエリン代謝において遺伝的に決定される欠損において、および稀突起神経膠細胞またはシュワン細胞の毒素曝露および感染の結果として生じる。CNSの脱髄疾患としては、例えば、MS、感染後脳脊髄炎およびワクチン後脳脊髄
炎を含む急性の播種性脳脊髄炎(ADE)、急性の壊死性出血性脳脊髄炎、および進行性(壊死性)のミエロパシーが挙げられる。
CNSに対する損傷は、DusartおよびSchwab,Eur.J.Neurosci.,6(5):712−724(1994)およびSchnellら、Eur.J.Neurosci.,11(10):3648−3458(1999)に記載されるように、CNS実質に対する炎症細胞の流入を生じる。初期応答は、好中球により支配され、これは、損傷の1日後に最高になり、そして血液脳関門の崩壊、および血管内皮に対する細胞接着分子のアップレギュレーションを伴う。好中球は、細胞特性および殺菌特性を表し、そして微生物侵入者および微生物の残骸の除去のために重要である(Clark,Dermatol.Clin.,11(4):647−66(1994))。活性化した好中球は、以下により記載されるような、プロテアーゼ、サイトカイン、ケモカイン、およびフリーラジカルを含む、種々の炎症誘導性分子を生じる:Cassatella,Immunol.Today,16(1):21−26 1994);Kunkelら、Semin.Cell Biol.,(6):327−336(1995);ConnerおよびGrisham,Nutrition 12(4):274−277(1996);これらの各々は、本明細書中で参考として援用される。これらの分子の放出は、以下により記載されるように、他の炎症細胞の漸増および活性化、ならびに神経損傷およびグリア細胞活性化に寄与する:Yong,Cytokines,astogliosis and neutrophils following CNS trauma, Cytokines and the CNS:Development, Defense and Disease,CRC Press,Boca Raton,Florida(1996)。血液由来のマクロファージおよび活性化したレジデントCNS小グリアは、損傷の2日後に始まる炎症応答に寄与し、そしてリンパ球を浸潤することを伴う。これらの細胞型についての化学誘引物質は、脊髄損傷の数時間以内にアップレギュレートされ、そして大脳の内皮に対する細胞の接着に必要とされる接着分子は、損傷後にアップレギュレートされる:BartholdiおよびSchwab,Eur.J.Neurosci.9(7):1422−1438 1997;Hamadaら、J.Neurochem.66(4):1525−1531(1996)。CXCL10(T細胞を誘因するCXCケモカイン)およびMIP−1a(マクロファージを誘因するCCケモカイン)の発現は、脊髄損傷の数時間以内にアップレギュレートされることが示されている(Bartholdi,上述,1997;およびMcTigueら、J.Neurosci.Res.53(3):368−376(1998)を参照のこと)。
CNS損傷に関して本明細書中で用いられる場合、用語「二次的な組織変性」とは、CNSに対する初期の外傷または病巣による、損害を受けていない、またはわずかに損傷を受けた、隣接する細胞および組織の二次的な損失をいう。この二次的な組織変性は、損傷または病巣の部位に存在する任意の細胞型(ニューロンおよびグリア細胞を含む)、ならびに組織(神経繊維および脈管構造を取り囲むミエリン組織を含む)に影響し得る。二次的な組織変性は、一般的に、炎症ならびに細胞型および組織の広範なアレイに対する特異性を有するT細胞のCXCL10が媒介するT細胞の漸増に関連する。CNS損傷または外傷の後にCXCL10により媒介される二次的な組織変性はまた、血液脳関門破壊、水腫、脱髄、軸策損傷および神経の死(これらは、電圧依存チャンネルまたはアンタゴニストゲートチャンネルの活性化により先導され得る)、イオンリーク、カルシウム依存酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼおよびヌクレアーゼ)の活性化、ミトコンドリア機能障害およびエネルギー枯渇、細胞死になることを引き起こす(Yolesら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.33(13):3586−3591(1992);ZivinおよびChoi,Scientific American 265(1):56−63(1993);Hovdaら、Brain Research 567(1):1−10(1991);Yoshinoら、Brain Resarch 5
61(1):106−119(1991))(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)。CNS損傷または外傷後の二次的な組織変性と関連するCXCL10が媒介する神経細胞死としては、壊死、アポトーシス、パラトーシス(paraptosis)または細胞死の任意のさらなる形態(例えば、筋萎縮性側索硬化症のトランスジェニックマウスモデルに記載されている(CantoおよびGurney,American Journal of Pathology 145:1271−1279(1994)(これは、本明細書中で参考として援用される))ような、神経変性細胞死)を含む、任意の機構による死が挙げられ得る。
炎症は、CNS損傷と関連する二次的な組織変性に寄与する(DusartおよびSchwab、Eur.J.Neurosci.6(5):712−724(1994);Blight,Central Nervous System Trauma 2(4):299−315(1985);Egertonら、EMBO J.11(10):3533−40(1992);Popovichら、J.Comp.Neurol.,377(3):443−464(1997)、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)。炎症に対する首尾良い宿主応答は、一般的に、組織損傷の部位で分化した宿主細胞の蓄積を必要とする。損傷したCNSにおける炎症は、流体蓄積、ならびに血漿タンパク質、好中球、Tリンパ球、およびマクロファージの流入により特徴付けられる。この細胞蓄積は、正常な炎症プロセスにおける重要な行程であり、そして共通の重要な構造的特性を有する、分泌型走化性サイトカインのファミリーにより媒介され、そして病原性の炎症における役割である。CXCL10は、ケモカインとして公知である、40を超える構造的および機能的に関連したタンパク質の、このタンパク質ファミリーに属する。
ケモカインは、2つのシステイン対を含む保存された構造モチーフを有する、8〜10kDaのヘパリン結合タンパク質に類似し、そして成熟タンパク質中のシステイン残基の相対的位置に基づいてサブファミリーに分けられる。ケモカインの少なくとも4つのサブファミリーが存在するが、2つ(α−ケモカインおよびβ−ケモカイン)のみが、十分に特徴付けられている。α−ケモカインにおいて、最初の2つのシステイン残基が、単一のアミノ酸により隔てられており(CXC)、一方、β−ケモカインにおいて、最初の2つのシステイン残基は、互いに隣接している(CC)。C−X−Cケモカインとしては、例えば、インターロイキン−8(IL−8)、ヒト血小板由来因子、CXCL10およびMigが挙げられる。C−Cケモカインサブファミリーのメンバーとしては、例えば、マクロファージ化学誘引物質および活性化因子(MCAF)、マクロファージ炎症タンパク質−1α(MIP−α)、マクロファージ炎症タンパク質−1β(MIP−β)ならびにregulated on activation,normal T−cell expressed and secreted(RANTES)が挙げられる。
ケモカインは、白血球のサブセットを選択的に誘引し;いくつかのケモカインは、好酸球に対して特異的に作用し、他のものは、単球、樹状細胞またはT細胞に対して特異的に作用する(Luster,A.,New Engl.J.Med.338:436−445(1998)(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。概して、CCケモカインは単球、好酸球、好塩基球、およびT細胞を化学誘引し;そしてそのケモカインレセプターであるCCR1〜CCR9を介してシグナル伝達を行う。このCXCケモカインファミリーは、CXC配列の前のN末端付近にあるELR配列(Glu−Leu−Arg)の存在または非存在に基づいてさらに2つのクラスに分類され得る。そのELR含有CXCケモカイン(IL−8を含む)は、好中球を化学誘引し、その一方で、非ELR CXCケモカイン(CXCL10およびMigを含む)は、リンパ球を化学誘引する。
ケモカインは、少なくともの2つの方法、すなわち第1に、直接的な化学誘引を介して
、そして、第2に、標的細胞上の特定のGタンパク質共役細胞表面レセプターに結合することによって、細胞移動および細胞活性化を誘導する。10を超える別個のケモカインレセプター(各々は、異なるサブセットの白血球上で発現されている)が、同定されている。ケモカインレセプターは、いくつかの細胞上で構成的に発現されており、その一方で、それらのケモカインレセプターは、他の細胞上では誘導性である。CXCR3(CXCL10によって認識されているレセプター)は、Tヘルパー型1(Th 1)表現型の活性化Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞上で発現されている。重要なことに、二次的な組織変性に関連する神経炎症の病理における主要な機構は、損傷または病巣である部位に対する活性T細胞の移動である。
本明細書において使用される場合、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)を参照する際に使用される場合の用語「有効量」は、CNS損傷に関連する二次的な組織変性の重篤度を軽減するのに十分な、CXCL10に特異的な中和剤の量を意味することが意図される。
本明細書中で使用される場合、「重篤度の低減」とは、CNS損傷に関連する二次的な組織変性の、徴候または症状、生理学的指標、生化学的マーカーまたは代謝指標の、停止、減少または逆転をいうことが意図される。脊髄損傷において、脳から胴および四肢に対する運動の信号を伝える神経線維の破壊は、筋肉麻痺を導く。CNS損傷に関わる二次組織損傷の生理学的症状としては、例えば、神経学的欠陥および神経性炎症が挙げられ、そして、臨床性症状は、その損傷の重篤度、損傷が存在する脊髄のセグメントおよび神経線維が損傷をうけている脊髄のセグメントに依存して劇的に変化する。感覚神経線維の破壊によって、感覚(例えば、触覚、圧力および温度)喪失を導き得;それはまた、時折、疼痛を生じる。他の重篤な結果としては、過度の反射;膀胱および腸の制御の喪失;性機能不全;呼吸能力の喪失または低下;咳反射の欠陥;および痙性が挙げられる。脊髄損傷を有する殆どの人は、損傷後1週間から6ヶ月の間でいくつかの機能は回復するが、自発的な回復の可能性は、6ヶ月を超えるとほとんどなくなる。脊髄損傷は、多くの臨床的合併症(床ずれを含む)、呼吸系疾患および自律神経反射欠陥(autonomic dysreflexia)、血圧を上昇させ、発汗させる潜在性致命的疾患、ならびに腸の埋伏(impaction)またはいくつかの他の刺激に反応する他の自律神経性反射に対する増大した感受性を導き得る。
CNS損傷に関わる二次的な組織変性の生理学的指標としては、血液脳関門破壊、水腫、脱髄、軸索損傷および神経死ならびに組織喪失が挙げられる。CNS損傷に関わる二次的な組織変性の生物化学的マーカーは、例えば、神経細胞マーカー、ミエリン、γグロブリンまたはオリゴクローナルバンディングを生じる特異的な分子である。二次的な組織変性に関連するCNS組織喪失は、当該分野で公知の種々の臨床的方法によって検出され得る。神経細胞性マーカー(例えば、NeuN)は、CNSでの組織喪失を可視化するために使用され得る(Wolf et al.,J.Histochem.Cytochem.44:1167−1171(1996)(これは、本明細書中で参考として援用される)。さらに、誘発電位(EP)は、どのくらい迅速に神経インパルスが神経系の種々の部分における神経線維にそって伝達するのかを測定するために使用され得、そして、コンピュータ断層撮影(CT)がCNSを走査(スキャン)して細胞死または神経線維の脱髄によって引き起こされる組織喪失の領域を検出するために使用され得る。核磁気共鳴映像法(MRI)もまた、CNSを走査するために使用され得るが、X線の使用はない。CTスキャンよりも高感度である、MRIは、CTスキャン機器によって観察し得ないCNS組織喪失の領域を検出し得る。さらに、腰椎穿刺または脊椎穿刺の処置が、脳脊髄液を抽出するために使用され得る。この髄液は、γグロブリンおよびオリゴクローナルバンディングの上昇したレベルについて調べられ得る。当該分野で周知のこれらまたは他の方法が、組織喪失(神経のグリア細胞の死および神経線維の脱髄によって引き起こされる組織喪失
を含む)を測定することによって、CNS損傷に関わる二次的な組織変性の重篤度を決定するために使用され得る。
本明細書において使用される場合、用語「10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤」は、CXCL10発現の程度、量または速度の減少を与えるかまたはCXCL10の活性の減少を与える因子をいうことが意図される。特許請求する発明を実施するのに有用な中和剤としては、例えば、CXCL10に対する抗体のような結合分子が挙げられる。中和剤は、CXCL10活性を減少するのに十分な親和性でCXCL10に結合する任意の分子であり得る。さらに、中和剤は、調節タンパク質または遺伝子領域の機能を阻害また促進し、そして、CXCL10発現の程度または量または速度あるいはその活性の減少を与えるための調節分子または遺伝子領域に結合する任意の分子であり得る。例えば、CXCL10活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10に結合するCXCR3レセプターのフラグメントまたはペプチド模倣物は、特許請求している方法を実施するのに有用である。さらに、CXCL10発現の減少を与える中和剤の例としては、アンチセンス核酸および転写インヒビターが挙げられ得る。
本発明は、CNS損傷に関わる二次組織損傷の重篤度を低減する方法を提供する。本方法は、有効量の10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質に特異的な中和剤(CXCL10)を、CNS損傷に関わる二次的な組織変性を有する被験体に投与する工程を包含する。
本明細書中に記載されるように、CXCL10は、神経系の炎症に対する宿主防御を与える工程に関与する。具体的には、CXCL10は、CNS損傷、CNS炎症、生理学的異常(例えば、感染因子または自己免疫細胞(autoagressive immune cell))に応答してCNSへのTh1 Tリンパ球の輸送を調整する。Tリンパ球は、CD4細胞およびCD8細胞として知られている2つの主要なカテゴリーに細分され得る。CD4およびCD8は、抗原に対するT細胞レセプターと抗原提示細胞によってT細胞に対して提示に対して提示されている抗原自体との間の相互作用を促進する表面タンパク質である。T細胞によって認識される抗原は、抗原提示細胞の表面に発現されている主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質のクレフト中に含まれる。CD4細胞は、クラスIIの組織適合性対立遺伝子によって提示されるペプチドフラグメントを認識し、CD8細胞は、クラスIの組織適合性対立遺伝子によって提示されるフラグメントを認識する。DR2対立遺伝子は、多発性硬化症において過剰に提示される、MHCクラスII対立遺伝子であって、このことは、CNSにおける損傷形成におけるCD4細胞に対する役割を示す。
CD4細胞は、Th1サブタイプおよびTh2サブタイプにさらに細分され得る。Thl細胞は、遅延型過敏性応答の原因となりかつ多くのサイトカイン(T細胞増殖の刺激因子であるインターロイキン2(IL−2)、およびマクロファージの活性化因子であるインターフェロン、および希突起神経膠細胞(CNSのミエリン形成細胞)に損傷を与える能力を有すタンパク質であるリンホトキシンを分泌する。インターフェロンは、IL−2と合わさって、ミエリンを神経線維から直接剥ぎ取るマクロファージを活性化し、そして、ミエリン形成性の希突起神経膠細胞に損傷させるサイトカインである腫瘍壊死因子α(TNF−α)を分泌する。
本明細書中に記載されるように、損傷部位または病巣(損傷)(図1)の中またはその周辺でCNS損傷後に発現されるCXCL10の中和によって、その損傷部位および周辺組織での組織喪失を介してそれ自体を露見させる(manifest)二次的な組織変性を減少させる(図3)。その結果、CXCL10活性を中和することは、CNS損傷に関わる二次的な組織変性の重篤度の低減を導き得る。CXCL10中和剤(以下に記載の方
法によって同定される、抗体、アンチセンス核酸または他の化合物を含む)は、CNS損傷に関わる二次組織損傷の重篤度を処置または低減するのに有用である。
CXCL10中和剤の投与は、二次的な組織変性に関連する種々の別個のCXCL10媒介性破壊事象(例えば、電位依存性チャネルまたはアゴニストゲートチャネルの活性化、イオン漏洩、カルシウム依存性酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、おおよびヌクレアーゼ)の活性化、炎症、ミトコンドリア機能不全およびエネルギー涸渇、細胞死の完結(culminating)を含む)を標的化する。CXCL10特異的中和剤の投与によって、単一の局面の二次的な組織変性というよりもこれらの別個のCXCL10媒介性事象の各々を標的化および処置することによって治療的改善を提示する、二次変性の重篤度を低減する増強された方法が提供する。
さらに、CXCL10が二次的な組織変性に対するこのような劇的な効果を有するという予想外の知見に加え、驚くべき知見は、損傷が停止し得るだけでなく、CXCL10中和剤がまた、ミエリンの再増殖を促進し、それによって、神経再形成および髄鞘再形成を誘導することである。従って、本発明はまた、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)を特異的な中和剤を使用して中和することによって、CNS損傷に関わる二次的な組織変性または外傷を回復する方法ならびに神経細胞の再形成および髄鞘再形成を促進する方法を提供する。
成体哺乳動物の脊髄に対する機械的損傷によって、血管浸透性の上昇、ならびに炎症細胞の広範な活性化ならびに漸増を生じる(Dusart,IおよびM.E.Schwab(1994),「Secondary cell death and the inflammatory reaction after dorsal hemisection of the rat spinal cord」、Eur J Neurosci 6(5):712−24)(Schnell,L.,S.Fearn,et al.(1999),「Acute inflammatory responses to
mechanical lesions in the CNS:differences between brain and spinal cord」,Eur J Neurosci 11(10):3648−58)。脊髄損傷に対するこの強い炎症応答の制御および結果は、十分には知られていない。神経免疫相互作用の十分な理解が多発性硬化症の研究の分野において見出され得、ここで、これは、多発性硬化症のMHVモデルにおける脱髄の病理に対するTリンパ球応答の減衰が異常組織発生および挙動欠陥を減少させることを近年、実証した(Liu,M.T.,H.S.Keirstead,et
al.(2001),「Neutralization of the chemokine cxc110 reduces inflammatory cell invasion and demyelination and improves neurological function in a viral model of multiple sclerosis」,J Immunol 167(7):4091−7)。脊髄損傷の部位においてTリンパ球が優勢であり(McTigue,D.M.,M.Tani,et al.(1998),「Selective chemokine
mRNA accumulation in the rat spinal cord after contusion injury」,J Neurosci Res
53(3):368−76)、そして、最近の研究によって、これらが脊髄外傷の構造上かつ機能上の結果における中心的な役割を担っていることを示唆されており(Hauben,E.,O.Butovskyら(2000),「Passive or active immunization with myelin basic protein promotes recovery from spinal cord contusion」,J Neurosci 20(17):6421−30)(Hauben,E.,U.Nevoら(2000),「Autoimmune T cells a
s potential neuroprotective therapy for spinal cord injury」,Lancet 355(9200):286−7)、脊髄損傷部位にTリンパ球をリクルートメントすることを阻害する結果がさらに調べられた。Tリンパ球化学誘引剤CXCL10に対する抗体を機能的にブロックし得ること(Liu,M.T.,H.S.Keirsteadら(2001),「Neutralization of the chemokine cxc110 reduces
inflammatory cell invasion and demyelination and improves neurological function
in a viral model of multiple sclerosis」,J Immunol 167(7):4091−7)が、脊髄外傷の部位に対するTリンパ球の補充におけるこのケモカインの役割、および外傷後の異常組織発生および挙動欠陥に対するTリンパ球の寄与を試験する機会を提供した。本明細書中のデータによって、CXCL10が成体哺乳動物の脊髄損傷後にアップレギュレートされた(図1)こと、および損傷動物におけるCXCL10の抗体媒介性中和は、脊髄損傷後に通常は発生する劇的なTリンパ球浸潤を減少したこと(図5)を明瞭に実証した。これらのデータは、樹立されたウイルス誘導性脱髄を有するマウスに対する抗CXCL10抗血清のCNSへの投与がCD4 Tリンパ球浸潤を有意に減少し、そしてTH1関連プロ炎症性(proinflammatory)サイトカインIFN−gの発現を減少させる(Liu,M.T.,H.S.Keirsteadら(2001),「Neutralization of the chemokine cxc110 reduces inflammatory cell invasion and demyelination and improves neurological function in a viral model of multiple sclerosis」,J Immunol
167(7):4091−7)という本発明者らの最近の実証を確定付けた。抗CXCL10処置後の脊髄損傷部位に対するTリンパ球の浸潤の減衰は、脊髄損傷の間のCXCL10が特に重要なTリンパ球化学誘引剤であり、CXCR3レセプターの発現(Rollins,B.J.(1997),「Chemokines」,Blood 90(3):909−28)と矛盾しないという強力な証拠を提供する(Luster,A.D.,J.C.Unkelessら(1985),「Gamma−interferon transcriptionally regulates an early−response gene containing homology to platelet
proteins」,Nature 315(6021):672−6)。
重要でありかつ予測不可能であるのは、本明細書中で開示されるデータは、抗CXCL10処置単独が、外傷の後組織変性および損傷後の運動性欠陥を低減するのに十分であったことを示している。形態形成分析は、抗CXCL10処置を受けた半側切除の損傷マウスが、未処置の半切除損傷マウス(図3)と比較して損傷部位の周囲の組織損傷において68%の減少を有したことを示した。損傷部位の周辺のニューロン細胞数は、抗CXCL10処置を受けた半切除損傷マウスにおける組織喪失の低減が、未処置の半切除損傷マウスよりも損傷部位の周辺で438%を超えるニューロンの存在と関連した。これらのデータは、抗CXCL10処置は背側半切除後の外傷後組織喪失を有意に減少することを示す。
挙動分析によって、抗CXCL10処置を受けた半切除損傷マウスが回復期の間で試験した運動学的パラメータの統計学的に有意な連続的な改善を示したことを示した(図2)。損傷後の14日までに、全部で4つの運動学的パラメータにとっての挙動スコアは、損傷していないコントロールマウスと有意な差異をもたなかった。この回復は、重篤な線維の再構成よりも病巣(損傷)の尾側の感覚運動経路の再構成によって寄与されやすかった。生化学的再構成およびシナプスの再構成が、脊髄損傷後に実証され、そして、機能的改善に対して寄与し得る(Edgerton,V.R.,R.D.Leonら(2001)
「Retraining the injured spinal cord」,J Physiol 533(Pt 1):15−22)。損傷した脊髄におけるシナプス形成(synaptogenesis)に関連するデータは殆ど存在しなかったが、脱神経された歯状回の良好に記録されたモデルを使用する定量的電子顕微鏡写真研究によって、実質的に多くの数の新規のシナプスが損傷後10日までに脱神経されたニューロンにおいて形成される(Steward,O.,S.L.Vinsantら(1988),「The
process of reinnervation in the dentate
gyrus of adult rats:an ultrastructural study of changes in presynaptic terminals as a result of sprouting」,J Comp Neurol 267(2):203−10)ことを示している。現在の研究における挙動の回復の機構は未知であるが、本明細書中で開示されたデータは、抗CXCL10処置が脊髄損傷後の神経学的欠陥を低減することを明瞭に示している。
損傷したCNS実質への溢血後の免疫応答についての有害な役割は、多発性硬化症の病因学、および多発性硬化症の動物モデルにおいて見られる疾患状態によって示され、ここで、前炎症性細胞が疾患の発達の中心と見なされる(Olsson,T.(1995),「Cytokine−producing cells in experimental autoimmune encephalomyelitis and multiple sclerosis」Neurology 45(6 補遺6):S11−5)(Schulze−Koops,H.,P.E.Lipskyら(1995),「Elevated Th1− or Th0−like cytokine mRNA in peripheral circulation of patients with rheumatoid arthritis.Modulation by treatment with anti− ICAM−1 correlates with clinical benefit」J Immunol 155(10):5029−37))。外傷性の脊髄損傷における免疫応答についての有害な役割は、ケモカイン発現の一時的な関連および二次的な変性を伴う免疫細胞の流入によって示唆される(Dusart,I.およびM.E.Schwab(1994)「Secondary cell death and the inflammatory reaction after
dorsal hemisection of the rat spinal cord」Eur J Neurosci 6(5):712−24)(Blight,A.R.(1985)「Delayed demyelination and macrophage invasion: a candidate for secondary cell damage in spinal cord injury」Cent
Nerv Syst Trauma 2(4):299−315)(Popovich,P.G.,P.Weiら(1997)「Cellular inflammatory
response after spinal cord injury in Sprague−Dawley and Lewis rats」J Comp Neurol 377(3):443−64))。
Popovichおよびその協力者らは、クロドロネート(clodronate)媒介性の造血性マクロファージ除去が、脊髄損傷後の外傷性組織損失の低下および体制的移動運動(overground locomotion)の改善を導くことを、納得のいくように実証している。これらの発見は、著者らに浸潤性免疫細胞が深刻な二次的な変性のエフェクターであると結論付け、そして細胞特異的な免疫喪失が脊髄損傷に対する治療法であることを証明し得ることを示唆するよう導いた。(Popovich,P.G.,P.Weiら(1997),「Cellular inflammatory response after spinal cord injury in Sprague−Dawley and Lewis rats」J Comp Neurol 377
(3):443−64)。実際に、活性化した単球食細胞は、外傷性CNS損傷の後に神経毒を放出し(Giulian,D.,M.Corpuzら(1993),「Reactive mononuclear phagocytes release neurotoxins after ischemic and traumatic injury to the central nervous system」J Neurosci Res 36(6):681−93)、NMDAレセプタター媒介性神経毒性を誘導し(Paini,D.,K.Frei,ら(1991)「Murine brain
macrophages induce NMDA receptor mediated neurotoxicity in vitro by secreting glutamate」Neurosci Lett 133:159−162)、そして活性化した白血球が、広範な種々の溶解酵素ならびに反応性酸素中間体および反応性窒素中間体を放出する(Martiney,J.A.,C.Cuffら(1998),「Cytokine−induced inflammation in the central nervous system revisited」Neurochem Res
23(3):349−59)。
これらの発見は、抗CXCL10処置が脊髄損傷の部位に対してTリンパ球および造血性マクロファージの両方の浸潤の低下を導く(図5)という現在の確証の観点から興味深い。造血性マクロファージはCXCL10に対するCXCR3レセプターを発現しないので、これらマクロファージの喪失はTリンパ球喪失の下流の効果である可能性があり;このことは、活性化CD4+ Tリンパ球がRANTES(造血性マクロファージについての化学誘引物質)を分泌することを実証することによって、支援される。
CNS疾患/外傷の部位内での免疫細胞の調節が複雑であり、そしてこのような部位内での免疫細胞活性化が下流の影響である場合、傷害部位への免疫細胞集団の漸増加(recruitment)を標的化することは、CNS傷害(insult)を従える二次的変性カスケードにおける特定の集団の役割を解明し得る。本明細書中に記載される結果は、CNS損傷の間にCXCL10発現の機能的重要性についての新規の洞察を提供し、そしてさらにCXCL10に対して特異的な中和剤を用いてCNSを処置する方法のための基礎を提供する。CXCL10は本明細書中で、脊髄損傷の間の重要な化学誘引物質であることが示されている。本発明によって提供されるようにCXCL10を標的化する治療法は、CNS損傷後の外傷後の異常組織発生および行動障害を低減するための、実行可能な処置ストラテジーを表す。
十分な親和性でCXCL10を結合するCXCL10中和剤は、免疫細胞の漸増加、組織喪失または脱髄に関するCXCL10の活性を低減し得る。CXCL10特異的な中和剤は、高分子(例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質)であり得る。CXCL10特異的中和剤はまた、CXCL10活性がこの中和剤の存在下で低減される限り、誘導化合物、類似化合物または模倣的化合物、ならびに低分子有機化合物であり得る。中和剤のサイズは、CXCL10に対して、この分子が選択的中和化活性を提示するかまたは選択的中和化を提示するように作製され得る限り、重要ではない。例えば、中和剤は、約1個と6個の間ほどのモノマー構築ブロック、および数10個または数百個ほどのモノマー構築ブロックであり得、このモノマー構築ブロックは、高分子または化学結合分子を構成する。同様に、有機化合物は、活性を低減するのに十分な親和性でCXCL10に結合する限り、単一構造または複雑な構造であり得る。
CXCL10に特異的な中和剤としては、例えば、免疫系のポリペプチドを結合する、抗体および他のレセプターまたはリガンドが挙げられ得る。免疫系のこのような他の分子としては、例えば、CD4細胞レセプターを含むT細胞レセプター(TCR)が挙げられる。CXCL10についての中和剤はまた、CXCL10とケモカインレセプター(例え
ば、CXCR3レセプター)との相互作用を阻害する分子であり得る。さらに、インテグリン、増殖因子レセプターおよびケモカインレセプターのような細胞表面レセプター、ならびにCXCL10を結合するかまたは活性を低減するのに十分な親和性で結合するように作製され得る、任意の他のレセプターまたはそのフラグメントもまた、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、例えば、CXCL10もしくはそのレセプターの発現を阻害するレセプター、増殖因子、サイトカインまたはケモカインもまた、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、転写因子およびDNA複製因子のようなDNA結合性ポリペプチドは、これらがCXCL10に対する選択的な結合活性、CXCL10の発現もしくは活性を制御する調節分子、またはCXCL10の発現を制御する遺伝子領域を有する限り、用語結合分子の規定内に含まれるようである。最終的に、ランダムライブラリーおよびコンビナトリアルライブラリーより選択されるような、ポリペプチド、核酸および化合物はまた、それら分子が活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10を結合する限り、その用語の規定内に含まれる。
種々のアプローチが、CXCL10について選択的な中和剤の同定のために使用され得る。例えば、1つのアプローチは、CXCL10の構造および機能に関して利用可能な情報を使用して、ケモカイン結合分子として機能することが知られる分子から結合性分子集団を作製するか、またはCXCL10に特異的な結合親和性を提示するかもしくは提示し得ることが知られる分子(例えば、CD4+ T細胞およびNK細胞上に見出されるCXCR3レセプターのフラグメントまたは模倣物)からの結合分子集団を作製する。CXCL10に特異的な中和剤は、抗体および免疫レパートリーの他の分子であり得る。このような免疫レセプターの通常の機能は、本質的に無限数の異なる抗体およびリガンドを結合することである。従って、免疫レパートリーからの結合分子の多様な集団を作製することは、例えば、CXCL10に特異的な中和剤を同定するために有用であり得る。
CXCL10に特異的な中和剤は、さらに、当該分野で周知の方法によって、未知の分子の大規模集団から同定され得る。このような集団は、ペプチドまたは低分子化合物のランダムライブラリーであり得る。この集団を、CXCL10タンパク質またはそれらのそれぞれの核酸に結合する分子を含有するように、十分多様性な配列または構造を含むよう生成し得る。当業者は、どのサイズおよびどの多様性が意図される目的に必要または十分であるかを認知する。十分なサイズおよび複雑性の集団を、活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10を結合するCXCL10中和剤を高い可能性で含むように生成し得る。ライブラリーの分子集団の多くの他の型が存在し、そして以下にさらに記載される。
CXCL10にか、CXCL10レセプターにか、CXCL10発現を制御する遺伝子領域にか、またはCXCL10の活性もしくは発現を調節する調節分子に結合するいずれかの分子、およびCXCL10レセプターの発現を調節するいずれかの調節分子は、本発明を実施するために有用なCXCL10特異的中和剤である。例えば、CXCL10特異的中和剤は、CXCL10の転写を制御するかアップレギュレートする転写因子の活性を低減または阻害することによって、CXCL10発現に影響する調節分子であり得る。さらに、CXCL10活性化を低減するのに、十分な親和性でCXCL10の活性化に関与する分子にz結合する調節分子は、本発明の方法を実行するために有用な中和剤である。
CXCL10の活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10に結合し得る中和剤は、CNS損傷に関連する二次的な組織変性の重篤度を低減する本願の方法を、CNS損傷に関連する二次的な組織変性に罹患した被験体に実施するのに有用である。さらに、CXCL10特異的中和剤は、CXCL10レセプターにか、CXCL10の活性もしくは発現を調節する調節分子にか、またはCXCL10発現を制御する遺伝子領域に結合することによって、CXCL10の活性または発現を低下させ得る。例えば、本願発明を実施するために有用な中和剤は、CXCL10の発現または活性を調節する調節分子に対する
抗体であり得る。さらに、本明細書中に記載されるように、抗CXCL10抗体は、本発明の方法を実施するために有用な中和剤である。さらに、CXCL10は特異的なT細胞レセプターに結合することが公知の分泌タンパク質であるので、本発明の実施に有用な中和剤は、レセプターの免疫グロブリンスーパーファミリーのうちの、いずれかの結合性ポリペプチド、レセプターまたはそのフラグメントであり得る。あるいは、CXCL10に特異的なさらなる中和剤を同定するためのランダムなペプチド集団の集団を使用することが、所望され得る。当業者は、どの型のアプローチおよびどの型の中和剤が、CNS損傷に関連した二次的な組織変性に罹患した被験体において、CNS損傷に関連した二次的な組織変性の重篤度を低減するために、本発明の方法を実施するのに適切であるかを、認知するかまたは決定し得る。
CXCL10特異的中和剤の同定のための中程度のサイズ化された集団は、その集団中で、数百および数千の異なる結合分子からなり得、一方、大規模なサイズ化結合分子集団は、数万および数百万の異なる結合分子種からなる。より具体的には、中和剤の同定のための結合分子の大規模かつ多様性の集団は、任意の約10、約10、約10、約10、約10、約10、約1010以上のいずれかの、異なる結合分子種を含み得る。当業者は、CXCL10に特異的な中和剤を同定するのに十分な結合分子の集団の適切な多様性を認知する。
結合分子の組換えライブラリーを使用して、IP−10に特異的な中和剤を同定し得る。なぜなら、大規模かつ多様性の集団が、CXCL10を用いて迅速に生成され、そしてスクリーニングされ得るからである。CXCL10に特異的な中和剤を同定するのに有用な発現ポリペプチドの組換えライブラリーを、当該分野で公知の非常に多くの異なる方法で作製し得る。組換えライブラリー方法は、同様に、天然に存在するレパートリーからの非常に多くの結合分子集団の生成を可能にする。組換えであってもまたはそれ以外であっても、結合分子集団の本質的に任意の供給源を、その供給源が、CXCL10に特異的な中和剤を同定するために、十分なサイズおよび多様性の異なる結合分子を提供する限り、使用し得る。所望される場合、CXCL10に特異的な中和剤を同定するのに有用な結合分子の集団を、Watkinsら、Anal.Biochem.256(92):169−177(1998)(これは本明細書中で参考として援用される)によって記載されたように、固体支持体に選択的に固定化し得る。
溶菌性ファージが細菌によって発現された結合分子ポリペプチドの放出を生じるファージ発現ライブラリーは、CXCL10に特異的な中和剤を同定するために使用され得る組換えライブラリーの1つの具体例である。別の型のファージ発現ライブラリーにおいて、非常に多くの潜在的結合分子が細菌細胞のペリプラズム表面上に融合ポリペプチドとして発現され得る。酵母および高等真核生物細胞におけるライブラリーもまた存在し、そして同様に本発明の方法に適用可能である。当業者は、どの型のライブラリーがCXCL10に特異的な中和剤を同定するのに有用であるかを認知するかまたは決定し得る。
CXCL10を特異的に結合する化合物について、その化合物のライブラリーをスクリーニングするために精製ポリペプチドを利用する上記の方法に加え、CXCL10に特異的な中和剤を、抗体を生成するための精製ポリペプチドを使用することによって同定し得る。例えば、CXCL10に特異的である抗体を、本発明の中和剤として使用し得、そして当該分野で周知の方法を使用して生成し得る。本発明の方法を実施するのに有用な中和剤としては、CXCL10またはCXCL10の活性もしくは発現を調節する任意の分子に対する、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方、ならびにFab、F(ab’)2、FdおよびFvフラグメントなどを含有するそのような抗体の抗原結合フラグメントが挙げられる。さらに、本発明の方法を実施するのに有用な中和剤は、例えば、単鎖抗体、キメラ抗体、二機能性抗体、相補性決定領域移植化(CDR移植化)抗体およ
びヒト化抗体、ならびにそれらの抗原結合フラグメントを含む、天然には存在しない抗体を包含する。
ペプチド免疫原を使用して、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含めた抗体を調製および単離する方法は、当業者に周知であり、そして例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratoy Press(1988)(これは本明細書中で参考として援用される)によって記載される。天然に存在しない抗体を、固相ペプチド合成を使用して構築し得るか、組換え的に生成し得るか、または例えばHuseら、Science 246:1275−1281(1989)(これは本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって獲得し得る。例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植化抗体、単鎖抗体および二機能性抗体を作製する、これらおよび他の方法は、当業者に周知である(Hoogenboomら、1996年10月15日に発行された米国特許第5,564,332号;WinterおよびHarris、Immunol.Today 14:243−246(1993);Wardら、Nature 341:544−546(1989);HarlowおよびLane、前出、1988);Hilyardら、Protein Engineering:A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck、Antibody Engineering、第2版(Oxford University Press 1995);それらの各々が本明細書中に参考として援用される)。
CXCL10特異的中和剤を、天然供給源から調製され得るかもしくは組換え的に生成され得る、実質的に精製されたCXCL10タンパク質、または合成ペプチドを含むCXCL10タンパク質のペプチド部分を、免疫原として使用して惹起し得る。CXCL10タンパク質の非免疫原性ペプチド部分は、ハプテンをウシ血清アルブミン(BSA)のようなキャリア分子もしくはキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)と結合することによってか、または融合タンパク質としてペプチド部分を発現することによって、免疫原性にされ得る。ハプテンをキャリア分子に結合するための種々の他のキャリア分子および方法は、当該分野で周知である(HarlowおよびLane、前出、1988を参照のこと;また、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press 1996(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。上記のように、CXCL10の特異的な抗体中和剤を、また、CXCL10に対して直接的ではなく、CXCL10の発現または活性を調節する調節分子に対して惹起し得る。
CXCL10に特異的な中和剤(例えば、抗体)は、当該分野で周知の方法を使用して、検出可能なように標識され得る(Hermanson、前出、1996;HarlowおよびLane、前出、1988;第9章)。例えば、CXCL10に特異的な中和剤は、当該分野で周知の方法によって、放射性同位元素または治療剤に連結され得る。可視化の可能な放射性同位元素または他の部分に連結された、CXCL10に直接的に結合する中和剤は、器官特異的または組織特異的なCXCL10の存在または非存在によって特徴付けられる、CNS損傷に関連した二次的な組織変性の臨床的病期の進行度を診断または病期決定するために有用であり得る。
ポリクローナル抗体を、例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物において惹起するための方法は当該分野で周知である(HarlowおよびLane、前出、1988)。抗ペプチド抗体の産生は通常、ウサギ、マウス、モルモットまたはラットのような宿主動物の使用を含む。多量の血清が必要な場合には、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタまたはロバのようなより大きな動物が使用され得る。動物は通常、必要とされる抗血清の量に基
づいて選択される。適切な動物としては、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターが挙げられる。これらの動物は、1回の採血につき最大で25mL、100〜200μL、および1〜2mLの血清を産生する(HarlowおよびLane、前出、1988)。ウサギは、ポリクローナル抗血清の産生のために非常に有用である。なぜなら、ウサギは、安全にそして繰り返して採血され得、かつ高容量の抗血清を産生し得るからである。例えば、フロイント完全アジュバントのような適切なアジュバント中にある15〜50μgの抗原を用いて、2〜4週間の間隔をあけて2回注射した後で、血液が収集され得、そして抗血清の分析がなされ得る。
さらに、モノクローナル抗体は、当該分野で周知でありかつ慣用的である方法を使用して入手され得る(HarlowおよびLane、前出、1988)。免疫原として使用するためのタンパク質(例えば、CXCL10)のペプチド部分は、当該分野で周知の方法によって決定され得る。CXCL10で免疫されたマウスに由来する脾臓細胞が、適切な骨髄腫細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を生成し得る。クローン化されたハイブリドーマ細胞株は、抗CXCL10を分泌するクローンを同定するために、標識化CXCL10タンパク質を用いてスクリーニングされ得る。所望の特異性および親和性を有する抗CXCL10モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマが単離され得、そして抗体中和剤の持続的供給源として利用され得る。
CXCL10に特異的な中和剤を使用して、哺乳動物(ヒト被験体を含む)におけるCNS損傷に関連した二次的な組織変性の重篤度を減少し得る。ヒト化抗体は、ヒト抗体フレームワークに本質的に任意の抗原結合特異性を付与することによって構築され得る。ヒト化抗体を構築する方法は、本発明の方法を実施するため、そして治療的に使用される場合に抗体中和剤に対する宿主の免疫応答を回避するために適切な抗体中和剤を調製するために有用である。
上記の抗体中和剤を使用して、当該分野で周知の方法(例えば、相補性決定領域(CDR)グラフティング(grafting)、ならびにフレームワークおよびCDR残基の最適化)によって、治療的なヒト中和剤を生成し得る。例えば、抗体中和剤のヒト化は、Fiorentiniら、Immunotechnology 3(1):45−59(1997)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載のようなCDRグラフティングによって達成され得る。簡潔には、CDRグラフティングは、得られるグラフト化された抗体またはその可変領域結合フラグメントに結合活性を付与するために、ヒトフレームワーク領域中に非ヒト抗体中和剤由来のCDRを組換え的にスプライシングすることを含む。一旦、CDRグラフト化抗体または可変領域結合フラグメントが作製されると、非ヒト抗体中和剤に匹敵する結合親和性は、引き続く回の当該分野で公知の親和性変異ストラテジーによって再度獲得され得る。ウサギポリクローナル抗体の形態にある抗体中和剤のヒト化は、Raderら、J.Biol.Chem.275(18):13668−13676(2000)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載される方法と類似の方法によって達成され得る。
非ヒトCXCL10抗体中和剤のヒト化はまた、Wuら、J.Mol.Biol.294(1):151−162(1999)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されるような、フレームワークおよびCDR残基の同時最適化(これは、フレームワークとCDR残基との協調的な相互作用の迅速な同定を可能にする)によって達成され得る。簡潔には、多数の潜在的に重要なフレームワーク位置を試験するコンビナトリアルライブラリーが、重鎖および軽鎖の第3のCDRにおいてランダムに単一のアミノ酸変異を含む改変体からなる焦点化(focused)CDRライブラリーと同時に発現される。この方法によって、1つ程度の少数の非ヒトフレームワーク残基を含みかつ最初のキメラFabよりも約500倍まで高い親和性を示す複数のFab改変体が同定され得る。フ
レームワーク−CDRのコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって、機能について最適化された構造を有するモノクローナル抗体の同定が可能となる(抗原が、モノクローナル抗体においてコンフォメーション変化を誘導する場合を含む)。ヒト化を増強された改変体は、当該分野で公知の連続的なインビトロでのヒト化および親和性成熟によってヒト化された抗体よりも、少ない非ヒトフレームワーク残基を含む。
上記のように、本発明の抗体中和剤は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにそれらの組換えバージョンおよび機能的フラグメントを含む。抗体中和剤の組換えバージョンは、重鎖および軽鎖をコードするcDNAの単純な発現物およびコアセンブリから、デザイナー抗体と称される特殊な構築物に及ぶ広範な種々の構築物を含む。免疫グロブリンスーパーファミリー(特に、抗体)におけるポリペプチドの広範な特徴付けと組み合わせた組換え方法論により、免疫グロブリンの可変領域および定常領域の結合ドメインに由来する、莫大な数の異なる型、スタイルおよび特異性の結合分子を設計および構築する能力が提供される。特定の例としては、キメラ抗体(ここでは、1つの抗体の定常領域が、別の抗体の定常領域で置換される)および上記のヒト化抗体(ここでは、1つの抗体に由来する相補性決定領域(CDR)が、別の抗体に由来する相補性決定領域で置換される)が挙げられる。
抗体中和剤の他の組換えバージョンとしては、例えば、機能的な抗体改変体が挙げられ、ここでは、抗原結合の維持を担う可変領域結合ドメインまたは機能的フラグメントが、抗体定常領域に由来するFレセプター結合ドメインに融合される。このような改変体は、基本的に、抗原結合およびFレセプター結合に必須ではない領域を取り除いた、抗体の短縮形態である。短縮化された改変体は、例えば、適用および使用者の要求に依存して、単一の価数(valency)を有し得るか、あるいは複数の価数で構築され得る。さらに、リンカーまたはスペーサーが、結合活性を最適化するため、およびCXCL10の中和以外の生物学的機能をもたらすために融合または付加されるさらなる機能的ドメインを含ませるために、抗原とFレセプター結合ドメインとの間に挿入され得る。当業者は、抗体操作に関する当該分野での見識ならびに本明細書中で与えられる指針および教示に照らして、CXCL10に特異的な組換え抗体中和剤を構築する方法を知る。組換え抗体、機能的なフラグメントおよび改変体、ならびに抗体様分子に関する記載は、例えば、Antibody Engineering、第2版(Carl,A.K.Borrebaeck編)、Oxford University Press、New York(1995)において見出され得る。
抗体中和剤として使用され得る抗体のさらなる機能的改変体としては、抗原結合ドメイン−Fレセプター結合ドメインの融合物以外の抗体様分子が挙げられる。例えば、Fレセプター結合ドメインを含む抗体、その機能的なフラグメントおよび融合物は、1つの可変領域結合ドメインが1つの抗原に対する結合活性を示しかつ他方の可変領域結合ドメインが第2の抗原に対する結合活性を示すという点で二重特異性であるように生成され得る。このような二重特異性の抗体中和剤は、本発明の方法において有益であり得る。なぜなら、単一の二重特異性抗体は、2つの異なる標的抗原結合種を含むからである。従って、単一の分子実体が投与されて、CXCL10の中和を達成し得る。
CXCL10に特異的な抗体中和剤はまた、免疫接着物(immunoadhesion)または二重特異性の免疫接着物であり得る。免疫接着物は、非抗体ポリペプチドの結合ドメインを、抗体定常ドメインの抗体のエフェクター機能と組み合わせた、抗体様分子である。非抗体ポリペプチドの結合ドメインは、例えば、リガンドまたはリガンド結合活性を有する細胞表面レセプターであり得る。CXCL10中和剤として使用するための免疫接着物は少なくとも、抗体定常ドメインのFレセプター結合エフェクター機能を含み得る。免疫接着物中和剤の抗原結合ドメインに使用され得るリガンドおよび細胞表面レセ
プターの特定の例としては、例えば、CXCL10を認識するCXCR3レセプターのようなT細胞レセプターまたはNK細胞レセプターが挙げられる。当該分野で公知の他のリガンドおよびリガンドレセプターが同様に、CXCL10に特異的な免疫接着物中和剤の抗原結合ドメインに使用され得る。さらに、多価および多重特異性の免疫接着物が、CXCL10中和剤として使用されるために構築され得る。CXCL10特異的中和剤として使用され得る、二重特異性抗体、免疫接着物、二重特異性免疫接着物および他のヘテロマルチマー性ポリペプチドの構築は、例えば、米国特許第5,807,706号および同第5,428,130号(これらは、本明細書中で参考として援用される)の主題である。
本発明の1つの実施形態では、CXCL10をコードするポリヌクレオチド、CXCL10の発現もしくは活性を調節する調節分子、またはそれらの任意のフラグメント、あるいはアンチセンス分子が、治療目的のための中和剤として使用され得る。1つの局面では、CXCL10のコード核酸に対するアンチセンス分子を使用して、そのmRNAの転写または翻訳をブロックし得る。詳細には、CXCL10の核酸に対して相補的な配列により、細胞が形質転換され得る。このような方法は当該分野で周知であり、そしてセンスまたはアンチセンスのオリゴヌクレオチドまたはより大きなフラグメントが、CXCL10をコードする配列のコード領域または制御領域に沿って種々の位置から設計され得る。従って、アンチセンス分子を使用して、CXCL10活性を中和し得るか、または遺伝子機能の調節を達成し得る。
レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスもしくはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌プラスミド由来の発現ベクターが、アンチセンスヌクレオチド配列の送達のために使用され得る。選択されるウイルスベクターは、CNS細胞に感染し得、かつ宿主に対して安全であり、かつ最小の細胞トランスフォーメーションを引き起すべきである。レトロウイルスベクターおよびアデノウイルスは、哺乳動物細胞に効率的に外来ヌクレオチド配列を導入しそしてそれを発現させる、効率的で、有用で、そして現在最も良く特徴付けられている手段を提供する。これらのベクターは当該分野で周知であり、そして非常に広範な宿主範囲および細胞型範囲を有し、安定かつ効率的に遺伝子を発現させる。当業者に周知の方法を使用して、このような組換えベクターを構築し得る。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Plainview、New York(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York(1999)(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。DNAへの組込みがない場合であっても、このようなベクターは、それらが内因性ヌクレアーゼによって機能停止にされるまで、RNA分子を転写し続けることができる。一過的な発現は、非複製ベクターで1ヶ月以上持続し得、そして適切な複製エレメントがそのベクター系の一部にあれば、さらにより長い間持続し得る。
リボザイム(酵素性のRNA分子)もまた、CXCL10のmRNAまたはCXCL10の発現もしくは活性を調節する任意の調節分子のmRNAの特異的切断を触媒するために使用され得る。リボザイムの作用機構は、リボザイム分子のそのmRNAの相補性標的への配列特異的ハイブリダイゼーションと、続く内部ヌクレオチド鎖切断性切断とを含む。任意の潜在的RNA標的内における特異的リボザイム切断部位は、以下の配列:GUA、GUU、およびGUCを含むリボザイム切断部位についてRNAをスキャニングすることによって同定される。一旦同定されると、その切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを無能にさせ得る二次構造特性について評価され得る。候補標的の適合性はまた、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを使用して、相補性オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼー
ションに対する利用可能性を試験することによって評価され得る。本発明のアンチセンス分子およびリボザイムは、核酸分子の合成に関する分野で公知の任意の方法によって調製され得る。
本発明の方法を実施するために有用な中和剤は、処置される組織変性の重篤度;組織損傷の速度または量;被験体の体重、性別、年齢および健康状態;特定の化合物の生化学的性質、生物活性、バイオアベイラビリティおよび副作用;ならびに併用する処置レジメンに適合する様式において適切な様式および量で、当業者により処方および投与され得る。ヒトにおけるCNS損傷に関連した二次的な組織変性の重篤度を減少させるために適切な量および処方は、当該分野で公知の特定の障害に関する信頼性ある動物モデルから推定され得る。より低い結合親和性を有する中和剤に必要とされる投薬量と比較して、より少ない用量の有意により高い結合親和性を示す中和剤が投与され得るように、CXCL10に特異的な中和剤の投薬量が、CXCL10に対するその中和剤の結合親和性に基づいて調整されなければならないことが理解される。従って、適切な投薬量は、特定の処置に応じて、および所望される処置の期間に応じて変動する;しかし、1日あたり体重1kgあたりで約10μgと約1mgとの間の投薬量が治療的処置のために使用されることが予想される。治療的に有効な量は、代表的に、生理的に受容可能な組成物中において投与される場合に、約0.1μg/ml〜約100μg/ml、約1.0μg/ml〜約50μg/ml、または少なくとも約2μg/ml、そして通常は、5〜10μg/mlの血漿濃度を達成するために十分である中和剤の量である。
被験体においてCNS損傷に関連した二次的な組織変性の重篤度を減少させる本発明の方法が、CNS損傷に関連した二次的な組織変性を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含し、この方法がさらに、損傷または外傷の時点で開始する反復される処置から構成される時間経過的なレジメンを含み得ることが企図される。CNS損傷に関連した二次的組織損傷は、損傷後の数日または早期の週に起こる進行性プロセスであるので、CXCL10中和剤の投与は、迅速にまたは損傷後できるだけ早くに開始され得、そして適切な長さの時間にわたり毎日繰り返され得る。適切な時間の長さは、当業者に公知の種々の要因に対して決定され得、そして例えば、損傷後1日間、2日間、3日間、5日間、6日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、20日間、25日間またはそれより長い日数であり得る。処置はまた、2日間毎または3日間毎に投与され得、そして処置の日に、2回、3回またはそれより多くの回数で投与され得る。例えば、処置は、CXCL10レベルがCNSの損傷後または外傷後のそのベースレベルより上に上方制御される量の時間で継続される(Leeら、Neurochemistry International 36:417−425(2000)を参照のこと(これは、本明細書中で参考として援用される))。従って、時間経過的なレジメンは、本願方法を実施するために有用である。なぜなら、10kDaのインターフェロン誘導タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤は、CNS損傷の直後(例えば、約10分以内、約20分以内、約30分以内、約40分以内、約50分以内、または約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約4時間以内、約5時間以内、約6時間以内、約7時間以内、約8時間以内、約10時間以内、約12時間以内、もしくはそれより長い時間の範囲内)に開始して投与され得、そしてCNS損傷後のCXCL10の上方制御と相関するように決定された時間にわたって繰り返され得るからである。
中和剤の総量は、単回投与として投与され得るか、または比較的短い時間にわたる注入により投与され得るか、あるいはより長時間にわたって投与される複数回投与で投与され得る。そのような考慮は、種々の症例特異的要因(例えば、その疾患カテゴリーが、急性エピソードにより特徴付けられるかまたは漸進性組織劣化により特徴付けられるか)に依存する。例えば、慢性組織劣化に罹患した被検体について、その中和剤は、徐放性マトリ
ックス中で投与され得、この徐放性マトリックスは、全身投与のために移植され得るかまたは標的組織部位に移植され得る。治療化合物の制御放出のために有用な企図されるマトリックスは、当該分野で周知である。そのようなマトリックスとしては、材料(例えば、DepoFoamTM、生体ポリマー、マイクロポンプなど)が挙げられる。
本発明の中和剤は、当該分野で公知の多数の経路により被検体に投与され得る(例えば、全身投与(例えば、静脈内投与または動脈内投与))。CXCL10特異的中和剤が、当業者に公知の処方方法を使用して、薬学的に受容可能な処方物中にある、単離され実質的に精製されたポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントの形態で、提供され得る。これらの処方物は、標準的経路(局所経路、経皮経路、腹腔内経路、頭蓋内経路、脳室内経路、脳内経路、膣内経路、子宮内経路、経口経路、直腸経路、または非経口経路(例えば、静脈内経路、脊髄内経路、皮下経路、もしくは筋肉内経路)を含む)により投与され得る。CXCL10特異的中和剤の脊髄内投与および静脈内投与が、本発明の方法を実施するために特に適切な経路である。脊髄内投与は、損傷部位または外傷部位に上記中和剤の送達を標的化するために実施され得る。さらに、CXCL10特異的中和剤改変体が、生分解性ポリマー中に組み込まれ得、これにより、CNS損傷に関係する二次的な組織変性の重篤度を減少するために有用な化合物の徐放が可能になる。生分解性ポリマーおよびその使用は、例えば、Bremら、J.Neurosurg.74:441〜446(1991)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
CXCL10特異的中和剤は、薬学的に受容可能な媒体と一緒に溶液または懸濁物として投与され得る。そのような薬学的に受容可能な媒体は、例えば、滅菌水性溶媒(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水、通常生理食塩水もしくはリンゲル溶液、または他の生理学的緩衝化生理食塩水)または他の溶媒もしくはビヒクル(例えば、グリコール、グリセロール、油(例えば、オリーブ油)もしくは注射可能な有機エステル)であり得る。薬学的に受容可能な媒体は、さらに、作用する生理学的に受容可能な化合物(例えば、中和剤を安定化する化合物、その溶解度を増加する化合物、もしくはその吸収度を増加する化合物)を含み得る。そのような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、糖質(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン);レセプター媒介性透過剤(これは、血液−脳関門の透過度を増加するために使用され得る);キレート剤(例えば、EDTA)(これは、微生物膜を破壊する);二価金属イオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム);低分子量タンパク質;脂質またはリポソーム;または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が、中和剤を含む化合物の投与経路、ならびにその特定の物理的特徴および化学的特徴に依存することを理解する。
非経口投与に適切な処方物としては、水性および非水性の滅菌注射溶液(例えば、上記の薬学的に受容可能な媒体)が挙げられる。その溶液は、さらに、例えば、緩衝剤、静菌剤、および処方物を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質を含み得る。他の処方物としては、例えば、懸濁剤および濃化剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁物が挙げられる。その処方物は、単位用量容器または多用量容器(例えば、密封アンプルおよび密封バイアル)中に提示され得、そして使用直前に例えば滅菌液体キャリアの添加を必要とする凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即時注射溶液および即時注射懸濁物が、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
CXCL10中和剤が血液−脳関門を通り得る処方物の状態で投与され得る脳損傷に指向された適用のために、例えば、CXCL10中和剤の親油性を増加する処方物の状態で投与され得る。例えば、上記中和剤は、リポソーム中に組み込まれ得る(Gregoriadis,Liposome Technology、第I巻〜第III巻、第2版(CRC Press,Boca Raton FL(1993))。リン脂質または他の脂
質からなるリポソームは、作製および投与するのが比較的簡単である、非毒性で生理学的に受容可能で代謝可能なキャリアである。
CXCL10に特異的な中和剤もまた、ナノ粒子として調製され得る。ナノ粒子の表面上にペプチド化合物を吸着することは、ペプチド薬物を脳に送達する際に有効であることが示されている(Kreuterら、Brain Res.674:171〜174(1995)を参照のこと)。例示的ナノ粒子は、CXCL10に特異的な中和剤が表面上に吸着されそしてポリソルベート80でコートされている、ポリブチルシアノアクリレートのコロイド状ポリマー粒子である。
脳中に選択された位置に脳−血液関門を通してCXCL10中和剤の画像誘導超音波送達が、米国特許第5,752,515号に記載されるように利用され得る。手短かに述べると、血液−脳関門を通してCXCL10中和剤を送達するために、脳中に選択された位置が標的化され、そしてその位置にあるCNS中で(CNS)組織および/または流体を画像化することによって検出可能な変化を誘導するために超音波が使用される。選択された位置の近傍にある脳の少なくとも一部が、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)を介して、その変化の位置を確認するために画像化される。患者の血流中のCXCL10特異的中和剤が、その位置に脳−血液関門の開口をもたらし、それにより中和剤の取り込みを誘導するために超音波を適用することによって、確認された位置に送達され得る。
さらに、レセプター媒介性透過剤(RMP)と呼ばれるポリペプチドが、例えば、米国特許第5,268,164号;同第5,506,206号;および同第5,686,416号に記載されるように、分子(例えば、治療剤または診断剤)へ、血液関門の透過性を増加するために使用され得る。これらのレセプター媒介透過剤が、所望の目的地が脳脊髄液である分子とともに、宿主に静脈内同時投与され得る。透過剤ポリペプチドまたはその立体構造アナログは、治療剤が血液−脳関門を透過してその標的目的地に到達するのを可能にする。
本発明の別の実施形態に従って、CXCL10中和剤と、中枢神経系に関係する二次的な組織変性の重篤度を減少するための方法において使用するための指示書とを含む、治療システムが、好ましくは、キット形態で存在する。1つの実施形態において、例えば、その治療剤は、抗CXCL10抗体である。本発明のキットは、中枢神経系損傷に関連する二次的な組織変性の重篤度を逆転するために有用である。
適切なキットは、少なくとも1つの治療適用に十分な量で、別個の包装された化学試薬として少なくとも1つのCXCL10中和剤を含む。包装されたキットの使用のための指示書もまた、代表的には含まれる。当業者は、CXCL10中和剤を、本明細書中に記載されるような本発明の方法の実施のために適切な緩衝液および溶液と組み合わせてキットの形態に容易に組み込み得る。
CNS損傷のための現在の処置レジメンにおいて、1つより多くの化合物は、しばしば、その疾患の同じの局面または異なる局面の管理のために、個体に投与される。同様に、二次的な組織変性の速度を減少する工程を包含する本発明の方法において、CXCL10に特異的な中和剤は、第2の治療化合物(例えば、抗炎症化合物、免疫抑制化合物、またはその疾患の同じ局面もしくは異なる局面を管理する他の任意の化合物)とともに有利に処方され得る。そのような化合物としては、例えば、メチルプレドニソロンアセテート、GM−1ガングリオシドおよび4−アミノピリジン(4−AP)が挙げられる。CNS損傷に関係する二次的な組織変性の重篤度を減少するための企図される方法は、CXCL10に特異的な中和剤を、単独でか、そのような他の化合物と組み合わせてかまたは連続して、ならびに他の治療(例えば、リハビリおよび神経プロテーゼ)と組み合わせて、投与
する工程を包含する。あるいは、併用療法は、CXCL10に特異的な中和剤が異種タンパク質(例えば、治療タンパク質)に結合している、融合タンパク質からなる。
以下の実施例は、本発明を例示することが意図されるが、本発明を限定することは意図されない。本発明の種々の実施形態の活性に実質的には影響を与えない改変もまた、本明細書中に提供される本発明の定義内に包含されることが、理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することが意図されるが、本発明を限定することは意図されない。
下記に別個に記載されない限り、下記の実施例に対応する実験手順は、以下の通りである。
(抗体投与) 年齢が一致した成体雌C57/BL6マウスを、すべての研究に使用した。マウスに、損傷1日前およびその後屠殺するまで1日ごとに、100mgのモノクローナルCXCL10抗体(200mlの滅菌PBS中に懸濁した)の腹腔内注射を与えた。これらの研究において使用したモノクローナル抗体は、CXCL10に特異的であり、CXCL10誘導性T細胞走化性をブロックする。
(脊髄損傷) 脊髄背面ヘミセクション損傷を、腹腔内注射を介して投与したAvertin麻酔剤(0.6ml/20mg)下で実施した。T4−L2の棘突起の上で中線切開を行い、脊椎傍筋肉を、椎骨から分離した。T9椎骨の完全後弓切除を、微細なハサミおよび骨鉗子を使用して実施した。柱を、微細マニピュレーターに取り付けたクランプを用いて安定化した。その後、微小切開ナイフを使用して、背面ヘミセクション損傷を作製した。その後、筋肉層を縫合し、そして表在組織および皮膚を、4−0シルクで閉じた。体温を、加熱パッド上で維持した。手術後のケアは、膀胱排尿および乳酸添加リンゲル溶液による水和を含んだ。
(運動学的分析) すべてのマウスを、機能的試験の開始前の4日間、直線運動場に順応させた。運動学的分析を、損傷の1日前、およびその後屠殺するまで1日ごとにほぼ中日に行い、そして処置群について知らない2人の観察者により別個にスコア付けさせた。動物を、規定された1cmグリッド線を保有するプレキシガラス表面下からHitachi 8mm Video Camcorder VM−E555LAを使用して、ビデオテープに撮った。その後、そのビデオを、MPEG−2圧縮デバイスを使用してダウンロードし、そしてFMV2.0ソフトウェア(これは、ビデオを運動学的評価のためにフレームごとに観察するのを可能にする)を使用して分析した。4つの運動学的パラメーター(ストライド長;ストライド幅;足回転(paw rotation)および爪先幅(tow spread))をアッセイした。後足ストライド長を、後足を用いるステップの開始から同じ足を用いるステップの最後までの点として規定した(測定は、個々の側で、3つの連続ステップ(mm)の間行い、その後平均した)。ストライド幅を、後肢研究の幅(mm)(最も外側の左後肢足指から最も外側の右対側の後足指までの距離)として規定した。爪先幅を、後指の最も後ろの点から中指の最も中側の点までの後足中の幅(mm)(それぞれ、左後足および右後指の両方)として規定した。足回転を、後足の長手方向軸と身体の中線との間の角度(度)として規定した。SPSS 4.0 T検定を使用して、処置群と未処置群との間での有意な差異を決定した。
(RNASE保護アッセイ) マウスを、CO2固定および断頭による損傷後の以下の時点(6時間(n=3)、12時間(n=3)、18時間(n=3)、24時間(n=3)、3日間(n=3)、7日間(n=3)、および14日間(n=2))で殺傷した。2匹の非損傷マウスをコントロールとして使用した。脊髄を2つの片として除去し、すぐに凍結した。全RNAを、Trizol試薬(Gibco)試薬を用いて抽出し、そしてエタノール沈殿した。そのペレットを、50μlのRNASEを含まない水中に溶解し、そ
してそのRNA濃度を決定した。マルチプローブセットmCK−5を使用して、CXCL10 mRNA転写物を検出した。このマルチプローブセットは、RNAローディングについてのコントロールとして使用するためにL32についてのプローブを含んだ。分析は、10μgタンパク質に対して実施した。フラグメントを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、そしてフィルムオートラジオグラフィーにより可視化した。オートラジオグラフをスキャンし、画像化ソフトウェアを使用して、そのバンドを定量した。
(単核細胞単離およびフローサイトメトリー) 単一細胞懸濁物を、抗CXCL10抗体またはコントロール抗体のいずれかで処置したマウスの脊髄から、損傷後3日目および14日目に得た。FACS分析を、以前に記載された通りに実施した(Lane,Liuら、「A central role for CD4(+) T cells and
RANTES in virus−induced central nervous
system inflammation and demyelination」J
Virol,(2000)74(3):1415〜24)。簡単に述べると、脳を取り出し、その組織を破砕することによって、単一細胞懸濁物を得た。すべての技術は、氷上の滅菌組織培養プレート上で実施した。このプレートは、10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地を含んだ。細胞懸濁物を15ml三角チューブに移し、Percoll(Pharmacia,Uppsala,Sweden)を、最終濃度30%添加した。1mlの70% Percollを下層に置き、そして細胞を、4℃にて1300×gで30分間遠心分離した。細胞を境界面から取り出し、そして2回洗浄した。フルオレセインイソチオシアネート結合体化(FITC)ラット抗マウスCD4および(フィコエリトリン結合体化PE)ラット抗マウスCD8(Pharmingen,San Diego,CA)を使用して、それぞれ、浸潤性CD4+ T細胞および浸潤性CD8+ T細胞を検出した。コントロールとして、アイソタイプが一致するFITC抗体およびPE抗体を使用した。細胞を、40℃で1時間、抗体とともにインキュベートし、洗浄し、1%パラホルムアルデヒド中に固定し、そしてFACStar(Becton Dickinson、Mountain View,Calif.)上で分析した。CNS中に浸潤する細胞の割合を、Cell questフローサイトメトリーソフトウェアにて決定した。ポジティブの細胞を、バックグラウンドサンプルおよびコントロールサンプルの蛍光から実験サンプルの蛍光を差し引くことによって、決定した。CD4 T細胞およびCD8 T細胞の総数を、ゲートを通る集団内のポジティブ細胞の割合に、脊髄から単離した細胞の数を乗算することによって、決定した。データは、平均+標準誤差平均として提示する。
(H&E染色) 長手方向凍結脊髄切片を切断し、そして酢酸アルコール中に固定した。その切片を、Harrisヘマトリキシン中で染色し、水道水で洗浄し、そして1%エオシン中で対比染色した。増加するアルコール中でスライドを脱水し、そしてパラマウント(permount)(Fisher Scientific)に封入した。
(免疫組織化学) 動物を、4%パラホルムアルデヒドを用いて、損傷後24時間、3日間、および14日間、経噴門還流した。脊髄を取り出し、25%スクロース中に一晩沈めた。その後、この組織をOCT中に包埋し、12μm厚の長手方向軸凍結切片を切断し、そしてスライド上に配置した。切片を、10%の正常ヤギ血清(NGS:PBSで希釈)中にて室温で1時間ブロックした。一次抗血清(ラット抗マウスCD4モノクローナル抗体、10% NGS中に1:200希釈、PharMingen;ラット抗マウスCD11b、Serotec)を、4℃にて一晩切片に適用した。切片を、PBSで3回リンスし、そしてヤギ抗ラットIgGビオチニル化抗血清(10% NGS中1:200希釈、Vector Laboratories)を適用し、スライドを、室温で1時間インキュベートした。切片をPBS中にて3回リンスし、そしてメタノール:30%過酸化水素溶液(100:1)中で10分間インキュベートした。その切片をPBS中で3回リン
スし、そしてABC溶液(Vector Laboratories)中で室温にて30分間インキュベートした。DAB基質溶液(Vector Laboratories)を使用して、抗体の結合を可視化した。切片を増加するアルコール中で脱水した。Permount(Fisher Scientific)を、封入のために使用した。一次抗体を除去した場合に、何の免疫反応も観察されなかった。以下の改変を含んで、同じ手順を使用してニューロンを染色した:切片を一晩ブロックし、そして使用した一次抗血清はマウス抗NeuNモノクローナル(Chemicon,1:100希釈)であった。使用した二次抗体は、ビオチン化ラット吸着ウマ抗マウス抗体(Vector Laboratories,1:200希釈)であった。損傷の各側1ml中のニューロンおよびCD4ポジティブT細胞を、10×倍率で計数した。明確に標識された細胞のみを計数した。
(実施例I)
(CNS損傷後のCXCL10レベルおよびT細胞数のアップレギュレーション)
この実施例は、CNS損傷後のCXCL10レベルおよびT細胞数のアップレギュレーションを記載する。
CXCL10 mRNAレベルが、ヘミセクション損傷後に増大したかどうかを決定するために、成体マウス脊髄のヘミセクション損傷を、先鋭小刀ブレードを使用して、T9にて、成体C57B16雌性マウスに対して実施し、その後、T9椎骨の背側半分を除去した。総RNAを、ヘミセクションした脊髄から、TRIzol(登録商標)試薬(Life Technologies(GIBCO−BRL)Rockville、MD)を使用して、損傷後6時間目、12時間目、18時間目、24時間目、3日目、7日目および14日目にて抽出し、そしてIP−10 mRNA転写物のレベルを、Laneら、J.Virol.74(3):415−424(2000)(これは、本明細書中で参考として援用される)に以前に記載されたCK−1ケモカインプローブセットを使用するリボヌクレアーゼ保護アッセイ(RPA)によって各々の時点において決定した。mRNA転写物の量を、走査型オートラジオグラフィーによって決定して、NIH1.61画像ソフトウェアを使用して、内部L32コントロールに関して、個々のバンドの強度を決定した。
図1に示されるように、CXCL10 mRNAレベルは、損傷後6時間までに増加し、次いで徐々に減衰し、損傷の14日後でさえ、基底レベルを上回ったままであった。CXCL10 mRNAは、未損傷の脊髄組織においては検出不能であった。
脊髄をまた、手術時に印をつけた損傷部位が、解剖した組織内の中心に位置してするように、損傷後3日目および14日目に解剖した。中心管が明らかに見える縦断面を選択し、デジタル化した。細胞計数について、損傷部位のいずれかの側に1ミリメートル延びた総組織面積内のCD4免疫陽性細胞の数を、立体解析を使用して決定した。明らかに識別可能なヘキスト染色された核を有する、免疫標識された細胞のみを、スコア付けした。
CD4で免疫染色した縦組織断面の定量的分析は、CD4+T細胞が、未損傷の脊髄と比較して、ヘミセクション損傷された脊髄において、損傷の3日後に、損傷部位のいずれかの側に1mm延びた領域内に、増加した密度で存在することを示した。上記の研究は、IP−10レベルおよびT細胞数が、CNS損傷後にアップレギュレートされることを示す。
(実施例II)
(CNS損傷後の損傷部位内および損傷部位周辺の、CXCL10レベルが低下したT細胞蓄積の中和)
背側ヘミセクション損傷後の抗IP−10処置の効果を決定するために、ヘミセクション損傷された成体マウスに、損傷の1日前で開始し、そして1日おきに損傷の7日後まで継続する、抗IP−10抗体(約0.5mg/ml)の腹腔内注射0.5mlを行った。このマウスを、損傷の3日後または14日後に屠殺し、そして損傷部位が解剖した組織内に中心に位置するように、脊髄を解剖した。中心管が明らかに見える縦断面を選択し、そしてデジタル化した。細胞計数について、損傷部位のいずれかの側に1ミリメートル延びた総組織面積内のCD4免疫陽性細胞の数を、立体解析を使用して決定した。上記実施例Iに記載されるように、明らかに識別可能なヘキスト染色された核を有する、免疫標識された細胞のみを、スコア付けした。
CD4で免疫染色した縦組織断面の定量的分析は、CD4+T細胞が、抗CXCL10処置したヘミセクション損傷脊髄と比較して、未処置のヘミセクション損傷された脊髄において、損傷の3日後に、損傷部位のいずれかの側に1mm延びた領域内に、増加した密度で存在することを示した。これらの研究は、IP−10の中和が、CNS損傷後のT細胞補充を低減させたことを示す。
CNS損傷に関連する挙動欠損に対する、抗IP10処置の効果を決定するために、抗CXCL10抗体処置したヘミセクション損傷マウス、未処置のヘミセクション損傷マウスおよび未損傷のコントロールマウスを、ヘミセクション損傷の前にまず4日間順応させ、その後、処置群について盲目にした2人の観察者によって、ヘミセクション損傷後1日目から13日目まで、毎日、運動学的分析に供した。動物を、規定されたグリッド線を有する4’×4’プレキシガラス表面の下方からビデオ撮影し、そしてAdobe Premiereビデオ編集ソフトウェア(Adobe Systems,Inc.、San Jose、CA)を使用して記録を分析した。
4つの運動学的パラメータを評価した:ストライドの長さ、ストライドの幅、肢の回転およびつま先の広がり。図2に示されるように、抗IP−10抗体で処置した全てのヘミセクション損傷マウスは、未処置のヘミセクション損傷マウスの次に、有意に大きいストライドの長さを有し、そして有意に小さいストライドの幅、つま先の広がりおよび肢の回転を有した。進行性の挙動の改善を、各運動学的パラメータについて、損傷後の最初の3日間にわたる全ての動物についてのデータ点を、損傷後の最後の3日間にわたる全ての動物についてのデータ点と比較することによって評価した。未処置のヘミセクション損傷マウスは、回復期間の間に、運動学的パラメータの変化を示さなかった(p>0.05)。対照的に、処置したヘミセクション損傷マウスは、回復期間の間に、全ての運動学的パラメータについて統計学的に有意な進行性の改善を示した(p<<0.01)。
損傷部位が解剖した組織内の中心に位置するように、脊髄を、損傷後14日目に解剖した。中心管が明らかに見える縦断面を、選択およびデジタル化した。損傷部位のいずれかの側に1mm延びた総組織面積を、Zhangら、J.Comp.Neurol.371:485−495(1996)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、MCID分析システムを使用して測定した。
図3に示されるように、未処置のヘミセクション損傷マウスは、未損傷のコントロール脊髄と比較して、損傷のいずれかの側に1mm延びた総組織面積における平均49.4%の減少を有した。対照的に、抗IP−10抗体処置したヘミセクション損傷マウスの形態学的分析は、未損傷のコントロール脊髄と比較して、損傷のいずれかの側に1mm延びた総組織面積における20.9%の減少を示し、これは、未処置のヘミセクション損傷マウスと比較して、68%の組織喪失の減少に相当する。損傷部位のいずれかの側に1mm延びた総組織面積内で決定されたNeuN免疫陽性ニューロンの数を、立体解析を使用して決定した。ニューロン特異的な核タンパク質を認識し、ほとんどの神経細胞型と反応する
NeuNモノクローナル抗体(MAB377、Chemicon、Temecula、CA)を、製造業者の指示に従って使用した。明らかに識別可能なヘキスト染色された核を有する、免疫標識された細胞のみを、スコア付けした。NeuNを免疫染色した縦組織断面の定量的分析は、NeuN+ニューロンが、未処置のヘミセクション損傷マウスと比較して、抗CXCL1010処置したヘミセクション損傷マウスにおける損傷部位のいずれかの側に1mm延びた領域内に、増加した密度で存在することを示した。
これらのデータは、抗CXCL10処置が、ヘミセクション損傷後の、外傷後の組織喪失を低減させたことを示す。
(実施例III)
(リンパ球浸潤に対するCXCL10抗体の効果)
CXCL10 mRNAレベルは、成体マウス脊髄に対するヘミセクション損傷の後に増大した。総RNAを、損傷後6時間目(n=3)、12時間目(n=3)、18時間目(n=3)、24時間目(n=3)、3日目(n=3)、7日目(n=3)および14日目(n=3)にて、ヘミセクション損傷脊髄から抽出し、そしてCXCL10 mRNA転写物のレベルを、CK−1ケモカインプローブセットを使用するリボヌクレアーゼ保護アッセイ(RPA)(Lane,Liuら、「A central role for CD4(+)T cells and RANTES in virus−induced central nervous system inflammation and demyelination」、J.Virol.、(2000)74(3):1415−24)によって、各時点について決定した。mRNA転写物の量を、走査型オートラジオグラフィーによって決定して、内部L32コントロールと比較して、個々のバンドの強度を決定した。CXCL10 mRNAレベルは、損傷後6時間までに、74.8±21.78の平均レベルまで上昇し、次いで徐々に減衰し、損傷の14日後でさえも基底レベルを上回ったままであり、41.57±1.80の平均レベルである(図1)。CXCL10 mRNAは、未損傷の脊髄組織においては検出不能であった。
抗CXCL10での処理は、リンパ球を減少させ、創傷後のCNSへのマクロファージの浸潤を活性化した。ヘミセクションした成体マウスにおいて、縦方向の組織切片を免疫染色したCD4の定量的な分析は、創傷3日後に創傷部分のいずれか一方の側が1mm拡張している領域内のCD4+Tリンパ球の総数が、2050+/−102(n=3、図5)であることを示した。創傷していない脊髄組織において、CD4+Tリンパ球は検出されなかった。これらのデータは、CXCL 10レベルおよびTリンパ球の数が、外傷後にアップレギュレートされることを示し、成体ラットに対する挫傷創傷の6時間後のCXCL10のアップレギュレーション、および創傷後の第1週以内のTリンパ球浸潤のピークを実証した以前の研究を支持する(McTigue,Taniら,「Selective chemokine mRNA accumulation in the rat
spinal cord after contusion injury」J.Neurosci.Res.,(1998)53(3):368〜76)。
ヘミセクションした抗CXCL10処置を受けた成体マウスにおいて、縦方向の組織切片を免疫染色したCD4の定量的な分析は、創傷3日後に創傷部分のいずれか一方の側が1mm拡張している領域内のCD4+Tリンパ球の総数が、622+/−202(n=3)であったことを示し、処置しなかったヘミセクション創傷動物と比較して、70%の減少を示した(図5)。
FACS分析は、抗CXCL10処置したヘミセクション創傷マウスにおいて、創傷後3日および14日の両方で、処置しなかったヘミセクション創傷マウスと比較して、CD4+リンパ球、CD8+リンパ球、およびF480/CD45+マクロファージの数が減
少したことを示した。
特に、下記の表1に要約したFACSデータは、処置しなかったヘミセクション創傷マウスにおけるTリンパ球および活性化マクロファージ/小膠レベルと比較して、創傷3日後のこれらの動物の脊髄内に存在するCD4+Tリンパ球(66.4%減少)、CD8+Tリンパ球(57.4%減少)および活性化マクロファージ/小膠細胞(35.5%減少)において有意な減少を実証した。さらに、FACSデータは、処置しなかったヘミセクション創傷マウスにおけるTリンパ球および活性化マクロファージ/小膠レベルと比較して、創傷14日後の処置した動物の脊髄内に存在するCD4+Tリンパ球(58%減少)、CD8+Tリンパ球(64%減少)および活性化マクロファージ/小膠細胞(43.2%減少)において有意な減少を実証した(n=4;表1)。
(表1.細胞の浸潤は抗CXCL10処置マウスにおいて減少する)
(実施例IV)
(組織スペアリングおよび機能欠失に対するCXCL10処置の効果)
外傷性の脊髄創傷に応答して減弱したCD4+Tリンパ球が、組織スペアリングまたは機能的欠失の減少に関与したか否かを決定するために、ヘミセクションした成体マウスに、抗CXCL10抗体を、創傷1日前から創傷9日後まで1日おきに腹腔内注射し、そして創傷14日後に屠殺した(n=11)。ヘミセクション創傷後の組織スペアリングは、処置しなかったヘミセクション創傷マウスと比較して、抗CXCL10抗体で処置したマウスで、有意により大きかった(n=8)。中心管が明瞭に見える縦方向の組織切片の形態学的分析を、Zhangら、(1996)(Zhang,Fujikiら,「Genetic influence on cellular reactions to spinal cord injury:a wound−healing response present in normal mice is impaired in
mice carrying a mutation(Wlds)that causes delayed Wallerian degeneration,」J.Comp.Neurol.,(1996)371(3):485−95)に記載されるようなMCID分析システムを用いて行った。処置していないヘミセクション創傷マウスは、創傷していないコントロール脊髄と比較して、創傷のいずれか一方の側が1mm拡張している組織領域全体で平均49.4%の減少を有した(図3)。対照的に、抗CXCL10抗体処置したヘミセクション創傷マウスの形態計測分析は、創傷していないコントロール脊髄と比較して、創傷のいずれか一方の側が1mm拡張している組織領域全体で20.9%の減少を示し、組織の喪失においては、処置していないヘミセクション創傷マウスと比較して、68%の減少を示す(図3)。
より大きな組織スペアリングと合わせて、処置したヘミセクション創傷マウスは、創傷14日後に、処置していないヘミセクション創傷マウスより、創傷部位周囲のより多くの神経細胞を有意に含む。処置していないヘミセクション創傷マウス由来の、縦方向の組織切片を免疫染色したNeuNの定量分析は、創傷14日後において、創傷部位のいずれか
一方の側が1mm拡張している領域内のNeuN+ニューロンの平均総数が、267+/−72であることを示した。対称的に、抗CXCL10抗体で処置したヘミセクション創傷マウスからの縦方向の組織切片を免疫染色したNeuNの定量分析は、創傷14日後において、創傷部位のいずれか一方の側が1mm拡張している領域内のNeuN+ニューロンの平均総数が、1170+/−184であることを示し、処置していないヘミセクション創傷動物よりも438%多くのニューロンが存在している。
これらのデータは、背面のヘミセクション創傷の後の抗CXCL10処置が、外傷後の組織の消失を有意に減少させたことを示す。
(実施例V)
(挙動性欠損に対する抗CXCL10抗体処置の効果)
抗CXCL10抗体で処置したマウスにおけるヘミセクション創傷後の挙動欠損は、処置しなかったコントロールと比較して、漸進的に減少した。処置したヘミセクション創傷マウスおよび処置しなかったヘミセクション創傷マウス、ならびに非創傷コントロールマウス(n=8)を、ヘミセクション創傷1〜13日後から、処置群について盲目である2人の観察者による毎日の運動学的分析に供した。動物を、規定の1cmグリッド線を有する、3’×1’プレキシガラス表面の低部からビデオ撮影し、ビデオ編集ソフトウェアを用いて記録を分析した。4つの運動学的パラメータを評価した;前後肢のスライド長、前後肢のスライド、前後肢の回転および前後肢のつま先の広がり。これらの分析は、抗CXCL10抗体で処置した全てのヘミセクション創傷マウスが、創傷14日後における、処置しなかったヘミセクション創傷コントロールマウスよりも有意により大きな、前後肢のスライド長、有意に少ない前後肢のスライド、前後肢のつま先の広がりおよび前後肢の回転を有することを示した(図2)。進行性の挙動の改善を、創傷後の初めの3日間にわたる全ての動物についてデータ点を、創傷後の最後の3日間にわたる全ての動物についてのデータ点と、各々の運動学的パラメータについて比較することによって評価した。処置しなかったヘミセクション創傷マウスは、回復期間の間、運動学的パラメータにおいて、変化を示さなかった(p>0.05)。対称的に、処置したヘミセクション創傷マウスは、回復期間の間、全ての運動学的パラメータにおいて、統計的に有意な進行性の改善を示した(p<0.01)。創傷14日後までに、処置したヘミセクション創傷マウスの4つの全ての挙動学的パラメータについて、挙動スコアは、非創傷コントロールマウスと有意に違わなかった。
これらのデータは、抗CXCL10抗体処置が、脊髄創傷後の神経学的障害を低減することを示す。
本出願を通して、括弧内で、多様な刊行物を参照している。本出願において、本発明が関連する分野の水準、より完全に記載するために、これらの刊行物の開示の全体が、本明細書によって参考として援用される。
本発明は、開示された実施形態を参照して記載されているが、当業者は、記述された特定の実験が、本発明の単なる例示であることを容易に理解する。本発明の精神を逸脱することなしに、多様な改変がなされ得ることを理解すべきである。従って、本発明は、添付の請求項によってのみ限定される。
図1は、成体マウス脊髄に対する半側切断損傷の後の増加したCXCL10 mRNAレベルを示す。 図2は、以下の4つの運動学的パラメーターにより測定される未処置コントロールマウスと比較して、抗CXCL10抗体を用いて処置したマウスにおいて漸減した、成体マウス脊髄に対する半側切断損傷の後の挙動欠損を示す:2(A)またぎ長(stride length);2(B)趾の広がり(toe spread);2(C)またぎ幅(stride width);および2(D)後足回転(rear paw rotation)。 図2は、以下の4つの運動学的パラメーターにより測定される未処置コントロールマウスと比較して、抗CXCL10抗体を用いて処置したマウスにおいて漸減した、成体マウス脊髄に対する半側切断損傷の後の挙動欠損を示す:2(A)またぎ長(stride length);2(B)趾の広がり(toe spread);2(C)またぎ幅(stride width);および2(D)後足回転(rear paw rotation)。 図3は、以下を示す:3(A)未処置のマウスにおける損傷の14日後の背面観点からの脊椎半側切断損傷の全体の病理;3(B)未処置のマウスにおける損傷の14日後の脊椎の背側の半側切断損傷の長手方向の断面;3(C)抗CXCL10抗体処置のマウスにおける損傷の14日後の背面観点からの脊椎半側切断損傷の全体の病理;および3(D)抗CXCL10抗体処置のマウスにおける、損傷の14日後の脊椎の背側の半側切断損傷の長手方向の断面。外抗CXCL10抗体に媒介された、傷性脊髄損傷に応答したCD4+ Tリンパ球の弱毒化は、組織節約(tissue sparing)に関係する。 図4は、以下を実証するCD4+の染色された光学顕微鏡写真を示す:4(A)抗CXCL10抗体処置は、4(B)の未処置マウスと比較して、処置したマウスにおける半側切断損傷の後の、強力なTリンパ球の漸増を低下する。 図5は、抗CXCL10抗体により媒介される、外傷性脊椎損傷に対するCD4+ Tリンパ球応答の弱毒化は、組織節約に関係することを示す。

Claims (1)

  1. 被験体における中枢神経系損傷に関連する、重篤な二次的な組織変性を減少させる方法であって、該方法は、中枢神経系損傷に関連する二次的な組織変性を有する被験体に、10kDaのインターフェロン誘導性タンパク質(CXCL10)に特異的な中和剤の有効量を投与する工程を包含する、方法。
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