JP2004504056A - タンパク質 - Google Patents
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Abstract
本発明は、3型肺炎連鎖球菌に由来するタンパク質およびペプチドを提供するが、これらはすべて補体H因子(fH)を結合する。これらのタンパク質およびペプチドは、本明細書で配列番号1として開示する配列のThr38〜Lys149の部分配列との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。上記の部分配列は、3型肺炎連鎖球菌から単離された表面タンパク質のアミノ末端に位置しており、fHの結合と深く関連している。他の態様では、本発明は、Hicタンパク質、すなわち配列番号1として開示するアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であるタンパク質およびペプチドに関する。本発明は、上記のタンパク質およびペプチドを含むワクチン組成物も提供する。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、H因子結合性タンパク質およびペプチド、このようなタンパク質およびペプチドをコードする核酸配列、これに特異的に結合する抗体、ならびにこれを含む薬剤組成物、特にワクチン組成物に関する。
【0002】
(発明の背景)
肺炎連鎖球菌は、有効な抗生物質および多価莢膜多糖体ワクチンが利用できるにもかかわらず、依然として病的状態および死亡の重大な原因であり、中耳炎、市中感染性肺炎、敗血症、および髄膜炎などの状態を引き起こしている。乳幼児、高齢者、および免疫無防備状態の患者は、肺炎球菌感染に特にかかりやすい。
【0003】
肺炎球菌の多糖体莢膜は、長い間主な病原性決定因子とみなされてきた(1)。病原性は莢膜血清型によって様々であるが、血清型変換実験によって、莢膜よりも他の因子が重要な役割を担っていることがはっきりと実証された(2)。いくつかの非莢膜病原因子が遍く調査されている。肺炎球菌の病原性への相対的な寄与は依然として不確かであるが、PspA、ニューモリジン、PsaAなどのタンパク質が肺炎球菌の病原性において役割を担っていることは明らかである(3〜5)。
【0004】
補体の古典経路および第二経路は、先天免疫系の一部であり、肺炎球菌感染から防御する重要な系統を構成している(6、7)。細菌が補体系機能を妨害できる多くの戦略が存在する((8)で概説)。たとえば、いくつかのグループが補体制御タンパク質fHの細菌表面タンパク質への結合を記載しているが((9)で概説)、このような結合の正確な因果関係は依然としてつかめないままである。fHは、20個の短い共通反復単位からなる150kDaの血漿タンパク質であり、H因子タンパク質ファミリーで最もよく特徴付けられたメンバーである(10)。fHは、補体制御において非常に重要なタンパク質である。第二経路の増幅ループでの決定的ステップは、表面に沈着したC3bとB因子からC3転換酵素(C3bBb)が形成されることである。fHは、B因子とC3bの結合を妨げ、因子IによるC3b分解で補因子として働き、さらにC3/C5転換酵素からのBbの解離を促進することによって補体活性化を阻害する。
【0005】
fHと相互に作用する細菌表面構造の例には、S.pyogeneのMタンパク質およびM様タンパク質が含まれる(11、12)。さらに、Yersinia enterocoliticaのYadAは、細菌表面をfHで被覆することによって補体活性化を阻害することを示した(13)。最近では、2つのグループが、それぞれ独立に、3型肺炎球菌での補体を媒介とするオプソニン食作用(opsonophagocytosis)の阻害を記載している。一方の研究(14)は、PspAがC3bの沈着を妨げ、かつ/または第二経路C3転換酵素を阻害することを提示している。もう一方の研究(15)は、肺炎球菌の耐食作用性が、現段階では知られていないfH結合性表面タンパク質を媒介としていることを主張する。PspA欠損変異株が親株と同様に、またはそれより大量にfHを結合するので、PspAは、この相互作用に寄与しない。
【0006】
現在使用されている肺炎連鎖球菌ワクチンは、すべて莢膜構造(炭水化物抗原)に基づくものである。各血清型は、特有の莢膜構造を有する。したがって、肺炎連鎖球菌のワクチン組成物は、最もよくある血清型群から防御するために、多種類の異なる莢膜抗原を含有する。やはり、このような組成物は、すべての個人に十分な防御性をもたらしていない。
【0007】
特に、補体の欠損を示すような患者では、このようなワクチン組成物によって十分に防御されない者もいる。3型肺炎球菌からの防御は、特に不十分である。したがって、改良された肺炎連鎖球菌ワクチン組成物が求められている。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、H因子結合能を有するポリペプチドであって、(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、(b)H因子を結合できる(a)の変異体、または(c)H因子を結合できる、少なくともアミノ酸20個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含む、予防または治療に使用するためのポリペプチドを提供する。
【0009】
本発明は、(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、(b)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる(a)の変異体、あるいは(c)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる、少なくともアミノ酸6個の長さの(a)もしくは(b)の断片から選沢されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むワクチン組成物も提供する。
【0010】
もう一つの態様では、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸配列、または(b)(a)との配列同一性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%のポリペプチドを含む、アミノ酸15〜800個の長さのポリペプチドを提供する。このポリペプチドは、H因子結合能を有することが好ましい。
【0011】
本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供するが、このポリヌクレオチドは、(i)配列番号4のヌクレオチド・コード配列またはこれに相補的な配列、(ii)前記配列(i)と選択的にハイブリッド形成するヌクレオチド配列またはその断片、あるいは(iii)前記配列(i)もしくは(ii)にコードされているものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本発明は、補体H因子(fH)を結合する、3型肺炎連鎖球菌に由来するタンパク質およびペプチドを提供する。このタンパク質およびペプチドは、本明細書に配列番号1として開示する配列のThr38〜Lys149の部分配列との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。上記の部分配列は、3型肺炎連鎖球菌から単離した表面タンパク質のアミノ末端に位置し、fHの結合に深く関連している。もう一つの態様では、本発明は、Hicタンパク質、すなわち配列番号1として開示するアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であるタンパク質およびペプチドに関する。本発明は、上記のタンパク質およびペプチドを含むワクチン組成物も提供する。
【0013】
(配列の説明)
配列番号1は、Hicタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号2および3は、Hicのタンパク質の増幅に使用したプライマーである。
配列番号4は、Hicタンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号5および6は、それぞれPspC6Aのためのアミノ酸配列およびコードDNA配列である。
配列番号7および8は、それぞれPspC2のためのアミノ酸配列およびコードDNA配列である。
配列番号9は、PspC19のアミノ酸配列である。
配列番号10は、PspC19TIGRのアミノ酸配列である。
配列番号11は、SpsA1のアミノ酸配列である。
【0014】
(発明の詳細な説明)
一般用語および序文
この出願では以下の略語、すなわち、fH:補体H因子、PspA:肺炎球菌表面タンパク質A、PsaA:肺炎球菌表面抗原A、PspC:肺炎球菌表面タンパク質C、CbpA:コリン結合タンパク質A、SpsA:肺炎連鎖球菌分泌IgA結合タンパク質、GST:グルタチオンS転移酵素、PCR:ポリメラーゼ連鎖反応、SDS−PAGE:ナトリウムドデシル硫酸塩ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を使用する。
【0015】
上述のとおり、第一の態様では、この出願は、fHを結合するタンパク質およびペプチドに関する。このタンパク質およびペプチドはすべて、Hicタンパク質アミノ末端のthr38〜lysl49の部分配列誘導体を含み、そのHicタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1として本明細書に含まれる。この第一の態様によるタンパク質およびペプチドは、本明細書で配列番号1として開示する配列の部分配列Thr38〜Lys149との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。以下で、Hicタンパク質のアミノ末端部分がfHの結合に関連していることを示す。また、アミノ末端のアミノ酸配列が、おそらくはそれもfHを結合するであろう他の数種の肺炎球菌表面タンパク質とかなり類似していることも示す。
【0016】
本発明の第一の態様によるポリペプチドは、1つまたは複数の以下の特性を有する。第一に、このポリペプチドは、fH結合能を有する。以下で示すように、このポリペプチドは、この特徴のために肺炎球菌のワクチン候補として関心を集めている。第二に、本発明によるペプチドは、T細胞応答を刺激する能力を有する。第三に、本発明のペプチドは、B細胞応答を刺激する。
【0017】
第二の態様では、本発明は、少なくとも15個のアミノ酸を含むペプチドおよびタンパク質に関するものであり、このペプチドおよびタンパク質は、配列番号1として開示するHicタンパク質のアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0018】
本発明の第二の態様によるポリペプチドは、Hicタンパク質に対して高い相同性を示し、そのために肺炎球菌のワクチン候補として関心を集めている。第二に、本発明のこの態様によるペプチドは、T細胞応答を刺激する能力を有する。第三に、本発明のこの態様のペプチドは、B細胞応答を刺激する。
【0019】
代替の態様では、本発明は、
(a)配列番号1のThr38〜Lys149のアミノ酸配列、
(b)H因子を結合できる(a)の変異体、または
(c)H因子を結合できる、少なくともアミノ酸20個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含むポリペプチドを提供する。
【0020】
もう一つの態様では、本発明は、ポリペプチドを含むワクチン組成物に関するものであり、そのポリペプチドは、
(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、
(b)肺炎球菌に免疫応答を発生させる、または抗Hic抗体に結合することのできる(a)の変異体、あるいは
(c)肺炎球菌に対して免疫応答を発生させる、または抗Hic抗体に結合することのできる、少なくともアミノ酸6個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含む。
【0021】
H因子結合能は、何らかの適切な方法によってモニターすることができる。特に、標識したH因子、たとえば、放射能標識で標識したものを使用し、調査中のペプチドへの結合をモニターして、アッセイを実施することができる。同様に、ペプチドが抗Hic抗体を結合する能力は、何らかの適切なアッセイを利用して、特に配列番号1で示す全長Hicタンパク質または配列番号1のThr38〜Lysl49の配列を含むその断片に対して産生された抗体を使用してモニターできる。同様に、動物に調査中のペプチドを投与すること、抗体産生を通して、または細胞障害性T細胞応答など、T細胞応答の発生を通して免疫応答の発生をモニターすることを含む、マウスのモデルなどの適切な動物モデルを使用して、ペプチドが免疫応答を発生させる能力を試験することができる。防御免疫応答を発生させることのできる好ましいペプチドは、動物に致死量の肺炎球菌接種を施すことによって特定できる。同様に、ペプチドが抗Hicタンパク質抗体に結合する能力は、in vitroで検定することができる。抗Hicタンパク質抗体は、配列番号1のタンパク質を使用して適切な抗体を発生させる標準の技術によって生成できる。
【0022】
別の態様では、本発明は、以下の配列、すなわち、
(i)配列番号4のヌクレオチド・コード配列またはこれに相補的な配列、
(ii)前記配列(i)と選択的にハイブリッド形成するヌクレオチド配列またはその断片、あるいは
(iii)前記配列(i)もしくは(ii)によってコードされたものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する新規のポリヌクレオチドに関する。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを提供する。また本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は、
−ポリヌクレオチドが制御配列に操作可能に結合した発現ベクターなど、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え型ベクター、
−本発明のポリヌクレオチド用に形質転換した宿主細胞、
−本発明のポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞をポリペプチドの発現をもたらす条件下に保つことを含む、本発明のポリペプチドの産生方法、
−本発明によるポリペプチドに特異的な、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、
−患者に肺炎球菌感染のワクチンを接種する方法であって、患者に有効量の本発明によるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを投与することを含む方法も提供する。
【0024】
もう一つの態様では、本発明は、H因子のHicタンパク質への結合を阻害する薬品を特定するアッセイに関する。このアッセイは、試験中の基質の存在下、H因子結合能を有する本発明のポリペプチドをH因子と共にインキュベートすること、および本発明のポリペプチドのH因子への結合をモニターすることを含む。タンパク質相互作用をモニターする方法は、当技術分野でよく知られている。本発明のポリペプチドは、単離された形で得られる。あるいは、本発明のポリペプチドを発現する細菌を得、H因子と共にインキュベートしてもよい。H因子の本発明のポリペプチドへの結合を阻害する特定された物質は、抗生物質として使用しても、肺炎球菌感染に罹患している個人の治療に使用してもよい。
【0025】
本発明は、H因子の本発明のポリペプチドへの結合阻害薬として特定された薬品を薬剤として許容される担体と処方することも提供する。
【0026】
したがって、本発明は、肺炎連鎖球菌感染の治療方法を提供するものであり、この方法は、H因子が本発明のポリペプチドに結合するのを阻害する物質を特定すること、およびこれを必要とする患者に治療有効量のこの物質を投与することを含む。この物質の治療有効量は、肺炎連鎖球菌感染の症状を緩和する、あるいは肺炎連鎖球菌感染に罹患している患者の状態を改善する量である。患者に投与する物質は、薬剤として許容される担体と共に処方されていることが好ましい。
【0027】
Hicタンパク質をコードするDNA配列は、配列番号4として開示する。本発明の核酸配列は、DNAであることが好ましいが、RNAでもよい。当分野の技術者には、本発明によるRNA配列のT残基がUで置換されることは明らかであろう。本発明の核酸配列は、通常は単離された形またはほぼ単離された形である。たとえば、通常、本発明の核酸調製物中の核酸材料の最高で80%、90%、95%、または100%が、本発明による核酸である。本発明による核酸配列の変更、単離、または合成は、何らかの従来法、たとえば、Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)によって実施してよい。
【0028】
本発明の配列には、たとえば、本発明のタンパク質もしくはペプチドをコードするものまたはその相補鎖と選択的にハイブリッド形成でき、1つまたは複数の上記で定義した特性を有するポリペプチドをコードする配列が含まれる。
【0029】
そのようなハイブリッド形成は、当技術分野で知られている何らかの適切な条件下(Sambrook等(1989年)の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」を参照のこと)で実施してよい。たとえば、求められる厳密性が高い場合、適切な条件には60℃の0.2×SSCがある。求められる厳密性が低い場合、適切な条件には60℃の2×SSCがある。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、バックグラウンドをかなり上回るレベルで、配列番号4またはその相補配列とハイブリッド形成できることが好ましい。バックグラウンド・ハイブリダイゼーションは、たとえばcDNAライブラリーに存在する他のcDNAのために起こる。本発明のポリヌクレオチドと配列番号4の配列の相互作用によって発生したシグナル・レベルは、通常は少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍であり、他のポリヌクレオチドと配列番号4の配列の相互作用と同じく強い。相互作用の強さは、たとえば、プローブをたとえば32Pで放射能標識することによって測定してよい。選択的なハイブリダイゼーションは、通常、中程度から高度の厳密性(たとえば、約50℃〜約60℃の0.1〜0.2×SSC)の条件を利用して実現される。
【0031】
配列番号4のDNA配列またはそのコード配列に相補的な配列と選択的にハイブリッド形成できるヌクレオチド配列は、少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、たとえば少なくとも40個、60個、もしくは100個以上の隣接するヌクレオチドの領域において、実際は、コード配列の全長において、配列番号4の配列またはその相補配列と、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%相同的である。したがって、このような領域において、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチド同一性が存在する。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドを定義するには、上記で触れた相同性の度合いと最小サイズをどのように組み合わせて使用してもよいが、より厳密な組合せ(すなわち、より長い長さでより高い相同性)が好ましい。したがって、たとえば、25個、好ましくは30個のヌクレオチドにおいて少なくとも85%相同的なポリヌクレオチドが本発明の一態様となり、40個のヌクレオチドにおいては、少なくとも90%相同的なポリヌクレオチドであれば同様である。
【0033】
たとえば、UWGCG PackageがBESTFITプログラムを提供しているが、これを使用すると、(たとえば、デフォルト設定上で使用される)相同性が算出できる(Devereux等(1984年)のNucleic Acids Research第12巻、387〜395ページ)。たとえば、Altschul S.F.(1993年)のJ Mol Evol第36巻、290〜300ページ;Altschul,S,F等(1990年)のJ Mol Biol第215巻、403〜10ページに記載されているように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用すると、((通常はそのデフォルト設定上で)等価なまたは対応する配列を同定するなど、)相同性の算出または配列の整列を行うことができる。
【0034】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手できる。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードに一直線に合わせたときに、ある正の閾値スコアTに一致するまたはそれを満たす、照会配列中の長さWの短いワードを識別することによって、ハイスコアリング・シーケンス対(HSPs)を特定することを第一に含む。Tは、近傍ワード・スコア閾値を指す(上記Altschul等を参照されたい)。このような初期近傍ワード・ヒットは、これらを含むHSPsを発見する検索を開始するためのシードとして働く。ワード・ヒットは、累積整列スコアが増大する限り、各配列に沿って両方向に伸展する。各方向のワード・ヒットの伸展は、累積整列スコアがその最大達成値から数量Xだけ低下したとき;1または複数の負のスコアリング剰余整列が累積したために、累積スコアがゼロ以下になったとき;あるいはどちらかの配列の末端に到達したときに停止する。BLASTアルゴリズム・パラメータW、T、およびXは、整列の感度および速度を決定する。BLASTプログラムでは、ワード長さ(W)の11、BLOSUM62スコアリング・マトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992年)のProc.Natl.Acad.Sci.USA第89巻、10915〜10919ページを参照のこと)整列(B)の50、期待値(E)の10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較がデフォルトとして使用される。
【0035】
BLASTアルゴリズムは、2種の配列の類似性を統計的に解析する。たとえば、KarlinおよびAltschul(1993年)のProc.Natl.Acad.Sci.USA第90巻、5873〜5787ページを参照されたい。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の一尺度は、ヌクレオチドまたはアミノ酸の2配列の一致が偶然に生じる確率を示す最小確率和(P(N))である。たとえば、第一の配列の第二の配列に対する最小確率和が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは0.001未満である場合、ある配列がもう一方の配列と類似していると見なされる。
【0036】
本発明の範囲には、遺伝暗号の縮重のために上記で定義したものと異なり、上記で定義した特性を1つまたは複数有する同じポリペプチドをコードする配列も含まれる。
【0037】
本発明の核酸配列は、少なくとも塩基30個、たとえば、最高で塩基50個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、800個、1000個、最高で塩基2000個、または最高で塩基3000個の長さであることが好ましい。
【0038】
本発明の核酸配列は、5’および3’末端のいずれかまたは両方を伸長させてよい。そうした伸長はどんな長さでもよい。たとえば、伸長部分は、最高で10個、20個、50個、100個、200個、または500個以上の核酸を含む。したがって、本発明の核酸配列は、何らかの非野生型配列によって5’および3’末端のいずれかまたは両方を伸長させてよい。
【0039】
本発明のポリペプチドは、配列番号1として示すアミノ酸配列に由来する。したがって、本発明のポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドに限らない。むしろ、本発明のポリペプチドには、fHを結合できる、配列番号1と近い関係にある配列を有するポリペプチドも含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドは、fHに結合しないにもかかわらず、Hicタンパク質に非常に類似したまたは同一の抗原決定基を含む。これらの配列はすべて、何らかの従来法によって配列番号1の配列を変更して調製しても、生物体から単離しても、合成で作製してもよい。このような変更、単離、または合成は、何らかの従来法、たとえばSambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)によって実施してよい。特に、Hicタンパク質をコードするDNA配列を修飾して、組換えによりポリペプチドを発現させることによって、配列番号1に関連したポリペプチドを調製してよい。
【0040】
そのため、本発明のポリペプチドは、配列番号1との配列同一性が100%未満となる。したがって、本発明のポリペプチドは、fH結合能を損なわない限り、またはHicタンパク質と同様な抗原特性を示す限り、配列番号1との区別を表す置換、欠失、または挿入を含む。
【0041】
置換、欠失、または挿入には、適切には1個または複数のアミノ酸、通常は1〜5個、1〜10個、または1〜20個のアミノ酸が関与し、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個、15個、または20個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入となる。通常、本発明の第一の態様のfH結合性ポリペプチドは、配列番号1の部分配列thr38〜lysl49との配列同一性が少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%である。このポリペプチドと配列番号1の同一性が少なくとも80%、90%、95%、97%、または99%であることが好ましい。通常、本発明の第二の態様のポリペプチドは、配列番号1の配列のあらゆる部分から誘導できる部分配列、好ましくは配列番号1の15〜600個の隣接するアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%である。
【0042】
一般に、本発明のポリペプチドには、配列番号1の配列の物理化学的性質が保たれるべきである。一般に、そうした配列の電荷、疎水性、およびサイズは、配列番号1に似るであろう。アミノ酸配列の物理化学的性質に大きな影響を及ぼさない置換の例は、以下の各群、すなわち、
H、R、およびK
I、L、V、およびM
A、G、S、およびT
D、E、Q、およびN
のうちの1種のアミノ酸が、その同じ群の異なるアミノ酸に置換される場合である。
【0043】
本発明のポリペプチドを化学的に合成する場合、(天然には存在しない)D−アミノ酸を、アミノ酸配列中のポリペプチドの生物学的特性に影響を及ぼさない部位に組み込んでよい。これにより、レシピエントのプロテアーゼによるタンパク質分解に対するポリペプチドの感受性が低減される。
【0044】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、何らかの非野生型配列によって一方または両方の末端で伸長させてよい。
【0045】
したがって、本発明のポリペプチドは、いずれかの長さのアミノ酸配列によってC末端を伸長させてよい。たとえば、1回の伸長は、最高で5個、10個、20個、50個、100個、または200個以上のアミノ酸を含む。C末端伸長部分は、元のHicタンパク質中の本発明の配列(またはその起源となる元の配列)に対するC末端とは異なる任意の配列を含んでいてもよい。したがって、本発明のポリペプチドは、何らかの非野生型配列によってC末端を伸長させてよい。
【0046】
本発明のポリペプチドは、その抗原特性を高める他のポリペプチド、タンパク質、または炭水化物に結合させてよい。したがって、本発明のポリペプチドは、1個または複数の他の抗原性ポリペプチドに結合させてよい。このような追加の抗原性ポリペプチドは、肺炎連鎖球菌または別の生物体に由来する。考えられる追加の抗原性ポリペプチドには、他の肺炎連鎖球菌タンパク質由来の、または肺炎連鎖球菌以外の種に由来する異種T細胞エピトープが含まれる。異種B細胞エピトープを使用してもよい。そのような異種のT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープは、どんな長さでもよく、最高でアミノ酸5個、10個、または20個の長さのエピトープが特に好ましい。付加できると考えられる炭水化物は、莢膜抗原である。このような追加の抗原性ポリペプチドは、本発明のポリペプチドに化学的に結合させてよい。あるいは、1個または複数の追加の抗原配列または炭水化物基が本発明のポリペプチドへの伸長部分を含んでもよい。
【0047】
本発明のポリペプチドには、グリコシル化、硫酸化、COOHアミド化、またはアシル化など、1種または複数の化学修飾を施してよい。特に、N末端をアセチル化したポリペプチドは好ましく、C末端アミド基を有するポリペプチドも好ましい。好ましいポリペプチドは、1種または複数のこのような修飾を受けている。たとえば、特に好ましいポリペプチドは、C末端アミド基を有し、N末端のアセチル化を受けている。
【0048】
本発明のポリペプチドは、本明細書で定義するいずれかの手段で、1または複数の配列番号1の配列またはそれと関係のある配列の多重コピーを含むより大きなポリペプチドの部分を形成してよい。
【0049】
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも15個のアミノ酸、たとえば、15〜20個、20〜50個、50〜100個、100〜200個、200〜300個、300〜400個、400〜500個、500〜600個、600〜700個、または700〜800個のアミノ酸を含む。
【0050】
本発明によるポリペプチドは、精製する、またはほとんど精製してよい。一般に、ほとんど精製された形のポリペプチドは、調製物中の90%超、たとえば最高で95%、98%、または99%のペプチド材料が1種または複数の本発明のポリペプチドである調製物の部分を形成する。
【0051】
本発明の核酸配列およびポリペプチドは、もともと肺炎連鎖球菌に由来する。しかし、本発明の核酸配列および/またはポリペプチドは、他の生物体、通常は細菌、特に他の連鎖球菌から得てもよい。従来のクローン技術によって、または本発明による核酸配列でゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーを探索することによってこれを得てよい。Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)など、何らかの従来法によってこれを行うことができる。
【0052】
本発明による核酸配列は、ベクター、適切には複製可能なベクター、たとえば複製可能な発現ベクターに含まれていてもよい。
【0053】
複製可能な発現ベクターは複製開始点を含むので、細菌宿主細胞など、宿主細胞中でベクターが複製できる。また適切なベクターは、通常、普通は5’〜3’の配列中に以下の要素、すなわち、核酸配列の発現を指令するプロモータおよび任意選択のプロモータ制御因子、翻訳開始コドン、およびHicタンパク質の生物学的特性を1つまたは複数有するポリペプチドをコードする本発明による核酸配列も含む。複製不能なベクターは、適切な複製開始点を欠き、一方非発現ベクターは、有効なプロモータを欠いている。
【0054】
ベクターは、細菌の形質転換体を特定するための1種または複数の選択可能な標識遺伝子、たとえば、アンピシリン耐性遺伝子を含有していてもよい。考えられる別の標識遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子である。ベクターは、任意選択で、プロモータのエンハンサも含んでよい。真核細胞中で本発明の核酸配列を発現させることを望むなら、ベクターは、機能性タンパク質をコードする核酸に3’が操作可能に連結されたポリアデニル化シグナルを含んでもよい。ベクターは、本発明のポリペプチドをコードする配列に対する転写ターミネータ3’も含んでよい。
【0055】
ベクターは、本発明のポリペプチドをコードする配列に対する1つまたは複数の非コード配列3’を含んでもよい。これらは、このベクターで形質転換されることになる肺炎連鎖球菌(本発明の配列はこの生物に由来する)または宿主生物に、あるいは別の生物体に由来していてよい。
【0056】
発現ベクターでは、本発明の核酸配列が、この配列を発現できるプロモータに操作可能に結合している。「操作可能に結合している」とは、プロモータと本発明のポリペプチドをコードする核酸配列とがプロモータの制御下でコード配列の発現を可能にする関係にある近位を指す。したがって、プロモータとコード配列間に5’非コード配列などの要素が存在してもよい。このような要素は、肺炎連鎖球菌またはプロモータ配列の起源である生物体、またはその両者以外に本来備わったものであってよい。プロモータによるコード配列の正しい制御が向上し、またはそれが損なわれないなら、ベクターにこのような配列が含まれていてよい。
【0057】
ベクターはどんなタイプでもよい。線形でも環形でもよい。たとえば、ベクターをプラスミド・ベクターとしてよい。当分野の技術者は、広範囲で入手可能なベクターから始め、これをSambrook等の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年に記載のものなど、遺伝子工学技術によって改変して、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含む適切なベクターを調製できるであろう。好ましい出発ベクターには、カナマイシン耐性を与え、tacプロモータを介して本発明のポリペプチドの発現を指令するプラスミドがある。
【0058】
発現ベクターでは、宿主細胞中で本発明の配列の発現を指令できる何らかのプロモータが、本発明の核酸配列に操作可能に結合していてよい。適切なプロモータには、tacプロモータが含まれる。
【0059】
このようなベクターを使用して、宿主細胞に形質移入または形質転換を施すことができる。ベクターのタイプによるが、これをクローニング・ベクターとして使用して、本発明によるDNA配列を増幅させても、そのDNAを宿主細胞中に発現させてもよい。
【0060】
本発明の別の実施形態は、本発明の核酸配列を複製し、かつ/または発現させるための、本発明のベクターを収容した宿主細胞、すなわち、ベクターで形質転換または形質移入を施した細胞を提供する。細胞は、ベクターと適合するように選択するが、たとえば細菌細胞でよい。形質転換または形質移入を施した細菌細胞、たとえば大腸菌細胞は、本発明の核酸配列を増幅させるだけでなく、それをポリペプチドとして発現させるために特に有用となろう。
【0061】
Sambrook等の「Molecular cloning:A Laboratory Manual」、1989年に記載の方法など、何らかの適切な方法によって、細胞に形質転換または形質移入を施してもよい。たとえば、本発明による核酸配列を含むベクターは、感染性のウイルス粒子、たとえばレトロウイルス粒子にパッケージングしてよい。たとえば、電子穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、および微粒子銃法によって、または溶液中で裸の核酸ベクターと細胞を接触させることによってこの作製物を導入してもよい。
【0062】
宿主細胞を形質転換し、または宿主細胞に形質移入する前記の核酸ベクターの核酸は、DNAでもRNAでもよく、DNAが好ましい。
【0063】
宿主細胞を形質転換し、または宿主細胞に形質移入するベクターは、適切などんなタイプでもよい。ベクターは、宿主細胞ゲノムに本発明の核酸配列を組み込むことができても、細胞質中で遊離したままであってもよい。たとえば、形質転換に使用するベクターを、本明細書で定義する発現ベクターにしてよい。
【0064】
本発明は、本発明によるポリペプチドの産生方法も提供する。このプロセスは、通常、本発明による核酸配列を含むベクターで宿主細胞に形質転換もしくは形質移入を施すこと、および宿主細胞中でその核酸配列を発現させることを含む。この場合、核酸配列は、宿主細胞中でその発現を指令できるプロモータに操作可能に連結される。そのプロモータは、宿主細胞中で高レベルな発現を実現できる「強力な」プロモータであることが望ましい。本発明によるポリペプチドが宿主細胞中で過剰発現させることが望ましい。この目的に適した宿主細胞には、酵母細胞および細菌細胞、たとえば大腸菌細胞が含まれ、特に好ましい大腸菌株は、大腸菌K12株BL21である。しかし、他の発現系を使用することもでき、たとえばバキュロウイルス系では、ベクターは、そのゲノムに本発明のポリペプチドをコードする核酸を有するバキュロウイルスであり、そのバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させたときに発現が起こる。
【0065】
そうして産生された本発明のポリペプチドは、当技術分野で知られている何らかの方法によって回収してよい。そうして回収されたポリペプチドは、任意選択で、何らかの適切な方法、たとえばSambrook等(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」)による方法で精製してよい。
【0066】
本発明のポリペプチドは、標準のペプチド合成技術を使用して、化学的に合成してもよい。より短いポリペプチドでは、組換え体の発現に化学合成が好ましい。特に、アミノ酸残基が最高で20個または40個の長さのペプチドは、化学的に合成することが好ましい。
【0067】
本発明の核酸配列を使用して、プローブおよびプライマーを調製してよい。これらは、たとえば、配列番号4に類似の配列を有する遺伝子の単離に有用となる。そのようなプローブおよびプライマーは、適切などんな長さでもよいが、塩基10〜100個、たとえば10〜20個、20〜50個、または50〜100個の長さであることが望ましい。このようなプローブの例を、本明細書の配列番号2および配列番号3として開示する。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーには、露出する標識が付けられていてよい。適切な標識には、32Pや35Sなどの放射性同位元素、酵素標識、またはビオチンなどの他のタンパク質標識が含まれる。このような標識は、本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーに加えてよく、それ自体が知られている技術を利用して検出することができる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドもしくはプライマーまたはその断片は、標識されたものでも未標識のものでも、核酸を基にした試験において当分野の技術者が試料中のHicタンパク質を検出し、または配列決定するために使用されてよい。
【0070】
このような検出試験は、一般に、ハイブリッド形成条件下、DNAまたはRNAを含有する試料を本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーを含むプローブに接触させること、および試料中のプローブと核酸の間に形成した二重鎖を検出することを含む。PCRなどの技術を利用して、あるいは固体担体にプローブを固定化し、プローブとハイブリッド形成していない試料中の核酸を除去し、次いでプローブとハイブリッド形成した核酸を検出することによって、このような検出が実施できる。あるいは、固体担体に試料の核酸を固定化し、その担体に結合したプローブの量を検出してもよい。
【0071】
本発明のプローブは、試験キットの形で適切な容器に納めると好都合である。キットが、固体担体への結合を必要とするアッセイ型式用に設計されている場合、プローブは、固体担体に結合していてよい。このキットは、探索する試料の処理に適する試薬、プローブと試料中の核酸のハイブリッド形成に適する試薬、制御試薬、および説明書なども含んでよい。
【0072】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え型の複製可能なベクターに組み込むことができる。そのベクターを使用して、適合する宿主細胞中で核酸を複製してよい。したがって、本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入し、そのベクターを適合する宿主細胞に導入し、さらにベクターの発現を引き起こす条件下でその宿主細胞を成長させることによって本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ベクターは、その宿主細胞から回収してよい。適切な宿主細胞は、発現ベクターと共に述べる。
【0073】
本発明は、本発明のポリペプチドの抗体も提供する。この抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよい。本発明の意図では、用語「抗体」には、標的抗原への結合活性を保持する抗体全体の断片が含まれる。そのような断片には、Fv、F(ab’)、およびF(ab’)2断片、ならびに単鎖抗体が含まれる。
【0074】
抗体は、Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;1989年)など、当技術分野で知られている何らかの方法によって生成してよい。たとえば、従来のハイブリドーマ技術によって、または、改変された抗体もしくは断片の場合、組換えDNA技術によって、たとえばプロモータに操作可能に結合した改変された抗体もしくは断片をコードするDNA作製物を適切な宿主ベクター中に発現させることによって抗体を調製してよい。適切な宿主細胞には、細菌(たとえば、大腸菌)、酵母、昆虫、および哺乳類の細胞が含まれる。また、宿主動物、たとえばラットまたはウサギに本発明のペプチドを接種すること、および免疫血清を回収することを含む従来の手段によって、ポリクローナル抗体を調製してもよい。
【0075】
本発明は、本発明のポリペプチドを含む薬剤組成物も提供する。本発明のポリペプチドを含む組成物は、T細胞および/またはB細胞エピトープを含み、肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチンとして使用してよい。
【0076】
本発明のポリペプチドを使用すると、ある範囲の哺乳類の種に、3型肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチン接種を施すことができる。ヒトへのワクチン接種が特に望ましい。
【0077】
本発明の組成物は、適切な何らかの経路によってヒトを含む哺乳動物に投与してよい。適切な経路には、口腔への局所的塗布、錠剤もしくはカプセル剤による経口的送達、皮下、筋肉内、静脈内、および皮内送達を含む非経口的送達が含まれる。好ましい投与経路は、全身免疫化をもたらすことを考えて、注射、通常は皮下もしくは筋肉内注射である。
【0078】
先に示したように、本発明によるポリペプチドは、異なる免疫原性の他の抗原と混合してもよい。
【0079】
本発明の組成物は、対象者に、単独で、リポソームの形で、または他の送達分子と結合させて投与してよい。有効投与量は、送達分子の使用の有無、送達経路、ワクチン接種する哺乳動物の大きさなど、多くの要因に応じて変わる。典型的な用量は、1回に本発明のポリペプチドを0.1〜100mg、たとえば1回0.1〜1mg、1〜5mg、5〜10mg、および10〜100mgである。1〜5mgの用量が好ましい。
【0080】
投与スケジュールは、たとえば、投与経路、レシピエントの種、およびレシピエントの状態により様々である。しかし、1回式投与および複数回式投与が、1日、1週間、または1ヶ月単位の期間におよぶものと考えられる。若年のヒトの患者への本発明のワクチン組成物の投与レジメンを6ヶ月、2年、5年、および10年とし、初回分にはアジュバントを加え、後続分を初回分のポリペプチド量の約1/2〜1/4とすると好都合である。しかし、投与頻度は、患者の抗体量をモニターすることによって決定する。
【0081】
本発明のポリペプチドは、単独での投与が可能であるが、処方製剤として与えることが好ましい。本発明の処方は、少なくとも1種の活性成分、すなわち本発明のポリペプチドと共に、1種または複数のその許容される担体、および任意選択の他の治療用成分を含む。担体は、処方の他の成分と適合し、かつそのレシピエントに有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。
【0082】
免疫原性ポリペプチドを活性成分として含有するワクチン製剤は、当分野の技術者に知られている。通常、このようなワクチンは、液状の溶液または懸濁液の注射剤として調製されるが、溶液または懸濁液に適する、注射前に液体に入れる固体に調製してもよい。製剤は、乳化されていても、このタンパク質がリポソームにカプセル封入されていてもよい。活性免疫原性成分は、しばしば、薬剤として許容され、かつ活性成分と適合する賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、たとえば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびこれらの混合物などである。さらに、望むならワクチンは、二次的な量の、湿潤剤や乳化剤などの補助的物質、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を高めるアジュバントを含有してよい。
【0083】
有効となるアジュバントの例には、それだけに限らないが、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−n−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、n−MDPと呼ぶ)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタムニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと呼ぶ)、およびRIBIが含まれ、このRIBIは、2%のスクアレン/Tween80乳濁液中に、細菌から抽出した3種の成分、すなわちモノホスホリル脂質A、トレハロースジミコラート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有する。様々なアジュバントも含むワクチンの形のHic抗原配列含有免疫原性ポリペプチドを投与した結果として生じる、このポリペプチドを標的とする抗体量を測定することによって、アジュバントの有効性が決定される。
【0084】
ワクチンは、注射、たとえば皮下または筋肉内によって非経口投与すると好都合である。他の投与方式に適する処方には、座剤、および場合によっては経口の処方が含まれる。座剤の伝統的な結合剤および担体には、たとえばポリアルキレングリコール、またはトリグリセリドが含まれ、このような座剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含む混合物から生成できる。経口処方は、たとえば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、通常使用される賦形剤を含む。このような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放処方、または粉末の形をとり、活性成分を10%〜95%、好ましくは25%〜70%含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥した場合、凍結乾燥材料は、投与前に、たとえば懸濁液として再構成することができる。緩衝液中で再構成を行うことが好ましい。
【0085】
患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤、および丸剤は、たとえば、Eudragit“S”、Eudragit“L”、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、またはヒドロキシプリピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを施して提供してよい。
【0086】
本発明のポリペプチドは、中性または塩の形のワクチンに処方してよい。薬剤として許容される塩には、(ペプチドの遊離アミノ酸基と形成した)酸の付加塩が含まれるが、これは、たとえば塩酸またはリン酸などの無機酸とも、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸などの有機酸とも形成される。遊離カルボキシル基と形成した塩は、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは第二鉄の水酸化物など、無機塩基からも、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど、有機塩基からも誘導できる。
【0087】
非経口投与に適した処方には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、およびその処方を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有する水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、増粘剤、およびその化合物が血液成分または1種または複数の臓器を標的とするように設計したリポソームもしくは他の微粒子系を含む水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。
【0088】
考えられる処方の、発熱物質を含まない無菌の水溶液および非水性溶液が好ましい。同様に好ましいものは、本発明のポリペプチドがリポソームに含まれている処方である。注射溶液および懸濁液は、先に記載した種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から即座に調製することができる。
【0089】
経口的な投与方法では、全身的作用が生じる。経口的に活性な製剤は、ゲル、練り歯磨き、口腔洗浄剤、またはチューインガムなど、何らかの適切な担体に含ませて処方してよい。
【0090】
問題の処方のタイプは顧慮されるが、本発明の処方が、上記で特に述べた成分に加えて、当技術分野で慣習的な他の薬品も含んでよいことを知っておくべきである。
【0091】
したがって、本発明は、哺乳類の宿主に肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチン接種を施し、またはそのような感染を治療する方法を提供するが、この方法は、宿主に有効量の上述の薬剤組成物、たとえばワクチン組成物を投与することを含む。
【0092】
受動免疫化向けには、モノクローナル抗体を含む抗体、およびFab断片など、その断片が、本発明のポリペプチドを含む処方について上記で示したように処方される。好ましい受動免疫化用処方には、ゲル、練り歯磨き、口腔洗浄剤、またはチューインガムなど、固体または液体処方が含まれる。
【0093】
本発明の別の態様は、裸の(naked)核酸ワクチンである。この実施形態では、ワクチン組成物は、ポリペプチドよりもむしろ核酸、通常は単離された核酸、好ましくはDNAを含む。核酸は、哺乳類の宿主に注射され、in vivoで発現して、本発明のポリペプチドを生じる。これがT細胞応答を刺激し、本発明のポリペプチドを直接ワクチン接種したのと同じように、肺炎連鎖球菌、たとえば、う蝕に対する防御免疫をもたらす。
【0094】
核酸ワクチン接種は、T細胞および/またはB細胞応答を刺激するポリペプチドをコードしさえすれば、本発明によるどんな核酸でも実施できる。このような核酸は、通常は上記で定義した発現ベクターの範囲に含まれよう。そのような発現ベクターでは、本発明による核酸が、通常は、哺乳類の宿主細胞中で発現を指令できるプロモータに操作可能に結合する。たとえば、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモータなど、哺乳類細胞中で発現するウイルス遺伝子由来プロモータが適切である。同様に適切なものは、「ハウスキーピング」遺伝子プロモータなど、哺乳類細胞型の多くまたは全ての中で発現する哺乳類遺伝子由来プロモータである。一つのそのようなプロモータは、p−ヒドロキシメチルCoA還元酵素(HMG)プロモータである(Gautier等(1989年)の「Nucleic Acids Research」第17巻、8839ページ)。
【0095】
裸の核酸のワクチン接種では、本発明による核酸配列がプラスミド・ベクターに組み込まれていることが好ましい。共有結合性閉サイクル(CCC)・プラスミドDNAは、直接に筋細胞によって吸収され、細胞のゲノムDNAに組み込まれることなく発現し得ることが判明したからである(Ascadi等(1991年)の「The New Biologist」、第3巻、71〜81ページ。裸の核酸ワクチンは、従来のポリペプチドを基にしたワクチンに関して上記で述べた処方型のいずれかとして調製してよい。しかし、非経口的注射、特に筋肉内注射に適する処方が好ましい。裸の核酸ワクチンは、ポリペプチドを基にした従来のワクチンに関して上記で述べた手段のいずれかで送達してよいが、筋肉内注射が好ましい。
【0096】
あるいは、核酸ワクチンは、微粒子銃による投与向けに、あるいはリポソーム、リポフェクチンなどのカチオン性リピド処方、または他の適切な担体を含む処方で提供してもよい。
【0097】
したがって、本発明は、上述の核酸配列もしくはベクター、および許容される担体を含むワクチン組成物を提供する。
【0098】
実験的研究への導入
補体依存的なオプソニン食作用は、肺炎連鎖球菌感染からの非常に重要な防御策である(33)。最近の2つの研究が、3型連鎖球菌がどのようにして補体系の正常な機能を破壊するかを論じている。一方の研究(14)は、補体第二経路が細菌の効率的な排除に不可欠であること、および肺炎球菌による補体活性化への介入が病原性決定要因であることを示す。研究者等は、PspA陰性変異体と野生型細菌の比較に基づいて、知られていない機構によってPspAが第二経路の動員をブロックすると主張している。他の研究(15)は、補体因子Hが、先の補体活性化とは無関係に肺炎球菌表面のトリプシン感受性構造に結合することを述べている。この研究が、fHの結合に関して、PspAの主たる寄与があり得ないとしていることは注目に値する。これらの発見は、H因子結合タンパク質が独立した病原因子であるかもしれないことを示唆する。
【0099】
この調査は、3型肺炎球菌でのfH結合の原因である新規の肺炎球菌表面タンパク質を記載する。このタンパク質(Hic)をコードする遺伝子は、pspCの座位、すなわち考えられる病原性決定要因および感染防御抗原中に見出されるが、以前に述べられたpspCアレルより顕著に非定型特性を示す。いくつかのpspCアレルを配列決定した研究(16)では、PspC抗原と反応するタンパク質が存在せず、PCR実験によりpspC遺伝子が増幅されなかったので、3型株は、pspC陰性であるとみなされた。タンパク質のNH2末端部分の領域は別として、HicとPspCには配列相同性がほとんどなかった。さらに、Hicは、LPXTGXモチーフの存在によって細胞壁に固定されるが、PspCは、コリン結合性モチーフを収容する。これに関して、Hicは、同様にfHに結合することが知られているS.pyogenes中Mタンパク質に類似している(11)。Hic欠損変異株は、野生型株とは対照的に、ヒト血漿からfHを吸収しなかった。この変異株は、放射能標識したfHに結合せず、fHのPR218細菌への結合の大部分またはすべてが、肺炎球菌表面のHicの存在によるものであることを示唆した。徹底的なスクリーニングは実施していないが、調べた株の大部分がfHを結合し、この表現型が3型株に限らないことを示唆した。さらに、Hicの組換え型fH結合性断片は、放射能標識したfHの、別の血清型の肺炎球菌への結合と競合する。PspCは、Hicに類似した領域によって肺炎球菌にfHを結合させるが、他の表面構造が、Hicのように、fHの同じ部分と相互に作用することも除外できない。GSTおよびNH2末端Hic領域(GST:Hic39−261)とfH間の融合の表面プラスモン共鳴実験は、相互作用の融和性が高いことを示した。
【0100】
様々なPspCタンパク質およびHicのNH2末端部分における類似領域の存在は、組換えによって発現させたHic断片中に含まれるこの幾分可変性の領域が、多くの肺炎球菌株でのH因子結合の原因であるという興味深い可能性を提示する。PspCは感染防御抗原であり、NH2末端領域は、特定の抗体の誘発を避けるために、おそらくかなりの遺伝的変異を受けなければならないことが以前に示されている。しかしこれは、fHの特異的結合を妨げない。比較として、S.pyogenesのM5およびM6タンパク質が、その高頻度可変領域によってH因子様タンパク質1に結合することを示した(12)。同様に、数種のM様タンパク質は、高頻度可変性NH2末端領域によって別の補体制御タンパク質、すなわちC4結合タンパク質に結合する(34)。我々は、PspCのNH2末端切断型を発現させる2型変異株が、親株D39とは異なり、血漿からfHを吸収しないことを発見した。切断にはHicに相同性を示さないPspCの部分も関与するので確証的なものではないが、この実験は、fH結合がspCおよびHicのNH2末端領域に媒介され得るという考えを支持する。
【0101】
補体系機能の妨害が肺炎球菌の病原性に深く関連した側面であることを多くの研究が示している。より具体的には、fHの結合が、オプソニン食作用への抵抗性と相互に関連していると示されている。先の研究は、細胞壁と莢膜の両方にC3bが沈着したにもかかわらず、3型肺炎球菌が食作用に強く抵抗したことを示した(29)。我々のデータは、hic、すなわち非定形性の強いpspCアレルが3型肺炎球菌の主要なfH結合タンパク質をコードすることを示す。fHの補体阻害機能は、Hicとの相互作用による影響を受けない。Hicは、肺炎球菌表面で活性補体阻害物を蓄積することによって、単独またはPspAと共同で作用して、C3bの沈着および随伴するオプソニン食作用を阻害する。以前に述べられているように、3型、4型、および14型肺炎球菌の推定上のC3プロテイナーゼ(35)は、同様の作用を有するはずである。Hicの領域が内在性の第二経路阻害能を示すというこの観察によって、この病原性機構の重要性が強調される。結論として、肺炎球菌は、補体系を妨害する傾向が強いようである。fHの結合は、異なる機構によるものが、A群肺炎球菌(11)、Y.エンテロコリチカ(13)、および淋菌についても述べられており(36,37)、細菌のヒト宿主への順応において一般化した題目としても差し支えない。
【0102】
以下では、添付の図を参照しながら本発明を開示する。
【0103】
(実験手順)
細菌株
この研究で使用した肺炎連鎖球菌株を表1に記載する。非被包性株PR201、PR212、PR215、およびPR218では、莢膜座位全体を欠失させ、(F.Ianelli、B.J.Pearce、およびG.Pozziより提供された)カナマイシン(Km)耐性カセットで置換した。3%のウマ血液を補充したTSB(Difco)中またはTSA(寒天添加TSB)上、37℃で肺炎球菌を成長させた。適切であるなら、カナマイシン(500μg/ml)またはクロラムフェニコール(3μg/ml)を加えた。結合アッセイに使用する細菌は、0.2%のYeast extract(Difco)を補充したTodd−Hewitt broth(Difco)中で成長させた。大腸菌株DH5αは、pGEXを含有する場合はアンプシリン(50μg/ml)を補充したLuria−Broth(Difco)中またはLB寒天上で成長させた。
【0104】
DNA法、クローンニング、および配列決定
PCR SOEing(19)によって、クロラムフェニコール転移酵素カセットを、hicの上流および下流に見出される配列の側に配置した。この作製物でPR218を形質転換した。その結果、二重交差突然変異誘発法によって、hic遺伝子がこのcatカセットで置換されて、hic欠損変異株FP13を産生した。
【0105】
それぞれBamHIおよびEcoRI制限部位を含む、オリゴヌクレオチドHICfl(5’−TGGGATCCCAGAGAAGGAGGTAAC TAC3’、配列番号2)およびHICrl(5’−GGAGCCTGAATTCGACGAAG−3’、配列番号3)をポリメラーゼ鎖反応(PCR)に使用して、Hicのアミノ酸39〜261に対応するDNAを増幅した。このPCRは、Taqポリメラーゼ(Gibco BRL)で実施し、94℃で1分間、50℃で1分間、さらに72℃で1分間の30サイクルからなり、その後72℃で7分間、最終的に伸展させる。細菌コロニーを水中に再懸濁させ、5分間沸騰させ、13000×gの遠心分離によって細菌細片を除去して鋳型を調製した。PCRで増幅された断片を、Sephaglas Bandprep(Pharmacia Biotech)でゲル精製し、BamHIおよびEcoRI(Pharmacia Biotech)と共に消化し、T4 DNAリガーゼ(Pharmacia Biotech)を使用して、同様に消化したベクターpGEX−5X−3(Pharmacia Biotech)と結合させた。次いで、GST遺伝子融合系プロトコル(Pharmacia Biotech)に従って、DH5α大腸菌に電気穿孔してプラスミドpGEX−SX3:hic(39〜261)を入れた。プラスミド・ミニプレップおよび制限酵素消化による挿入の存在について形質転換体をスクリーニングした。このプラスミドを精製し、挿入断片の全部を配列決定することによって、融合タンパク質GST:Hic39−261の過剰発現に使用したクローンを検証した。GST遺伝子融合系マニュアル(Pharmacia Biotech)の指示に従って、融合タンパク質をアフィニティー精製にかけた。
【0106】
リガンド結合およびタンパク質法
対数相肺炎球菌(ODおよそ0.4)で血漿吸収実験を実施した。0.05%のTween20を含むpH7.4のPBS(PBST)中で細菌を2回洗浄し、細菌濃度を2×1010細胞/mlに調節した。細菌100μlをヒト血漿100μlと共に1時間インキュベートした。細菌をPBSTで5回洗浄し、pH2.0の0.1Mグリシン/HCl100μlで、結合したタンパク質を溶離させた。溶離した材料のpHを1Mのトリスで7付近に調節した。C3欠損血清は、スウェーデンのHuddinge HospitalのG.Eggertsen博士の好意による提供で、C3が選択的に完全に欠損した(C3<1mg/リットル)患者から得た。
【0107】
8〜12%のアクリルアミドを含むSDS−PAGE(20)によってタンパク質試料を分離した。(21)に記載のとおり、タンパク質をImmobilon−P(商標)PVDF膜(Millipore)にブロットした。1:1000に希釈したfHに対するウサギポリクローナル抗血清を一次抗体源とした。西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した抗ウサギ・ヤギ抗体(Bio−Rad、Bio−Rad Laboratories、CA)を二次抗体として使用し、(22)に記載のように、化学発光によって免疫反応性バンドを検出した。
【0108】
Iodobeads kit(Pierce)を使用して125Iで放射能標識したfH(Sigma)の、スロット・ブロット、ウェスタン・ブロット、および細菌結合アッセイを行った。SephadexG−25(Pharmacia Biotech)でのゲル濾過によって、組み込まれなかった125Iを除去した。スロット・ブロット装置(Schleicher & Schuell)のニトロセルロース膜に5、1、0.02、および0.004μgの精製したタンパク質を塗布することによって、スロット・ブロットを行った。0.25%(w/v)のゼラチン(Difco)を含むPBST中で膜を4×20分間ブロックした。次いで放射能標識したfH(200000cpm/ml)を加え、室温で1時間膜をインキュベートした。PBST、0.5M NaCl中で、4×20分間膜を洗浄し、ホスホイメージング・プレート(フジ写真フィルム)への露出によって、膜と関連性のある放射能活性を視覚化した。ウェスタン・ブロット膜も同様に処理した。肺炎球菌の結合アッセイは、対数相細菌(OD600およそ0.4)を使用して、(23)に記載のとおりに実施した。
【0109】
製造者の説明書に従い、アフィニティー精製した抗GST抗体(Biacore)を標準のアミン結合によってセンサ・チップCM5(Biacore)に結合させることにより表面プラズモン共鳴を行った。およそ10000共鳴単位(RU)の抗体を結合させた。次いで、500〜1500RUのGSTまたはGST:Hic39−261(10g/ml)を固定化することによって、各分析サイクルを開始し、その後fH(2〜0.127μM)を注入した。PBST中で動力学研究を実施した。チップを10mMのグリシンpH2.2で再生することによって、各サイクルを停止した。BiaEvaluation3.0の多重モデルを用いて大域データ解析を実現した。
【0110】
溶血アッセイ
fHを媒介とする第二経路阻害について以前に述べられたアッセイを利用した(24)。ウサギ赤血球(National Institute of Veterinary Medicine、スウェーデン、ウプサラ)を洗浄し、5×108細胞/mlで懸濁させた。ホモ接合性C2を欠損した患者の血清(25)を補体供給源として使用した。高度に精製したfHも、好意でTruedsson博士から提供を受けた。ベロナール緩衝食塩水中、16mMのEGTA、4mMのMg2+、および0.1%のゼラチンを用いて溶血反応を実施した。予備実験において、このアッセイ系で約80%の溶血を発生させるC2欠損血清濃度を決定した。最終的なインキュベーション混合物は、追加のタンパク質(それぞれ30、90、または60μMのfH、GST、またはGST:Hic39−261)を添加したまたは無添加の1/12(200μl)希釈C2欠損血清、および2.5×107個のウサギ赤血球(50μl)を含有していた。赤血球は、他の試薬の5分後に加えた。5〜40分後、750μlの冷VBS、10mMのEDTAを加えて反応を停止した。試料を5分間3000rpmで遠心分離し、上清を除去して、412nmの吸光度を測定した。
【0111】
生物情報学
MacVector6.5.3(Oxford Molecular、英国オックスフォード)での配列比較を行った。データベース検索には、The National Institute for Biotechnology InformationのEntrez serverを利用した。4型肺炎球菌由来のPspC配列は、http://www.tigr.orgのThe Institute for Genomic Research websiteから得た。
【0112】
結果
肺炎連鎖球菌による補体因子Hの結合
我々の研究所での以前の観察は、肺炎連鎖球菌がヒト血清からタンパク質を吸収できることを示唆した(非公表の結果)。このような相互作用の性質をより適切に調査するために、被包性および非被包性の一連の菌株(表1)を血清と共にインキュベートした。
【0113】
肺炎球菌に結合した血漿タンパク質を、洗浄後、溶離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離した。特に、D39、HB565、3496、G54、PR201、PR212、PR218、およびFP13によって吸収され、これらから溶離した血漿タンパク質のSDS−PAGE分析を実施した。希釈した血漿およびpHもゲル上を移動した。菌株D39(2型、被包性)、および4種の非被包性株すべて(血清型2、3、3、および19)が推定分子量140kDaのタンパク質を吸収した。繰り返した実験では、PR218、すなわちAvery株A66の非被包性派生株(Pearce、IannelliおよびPozzi、manuscript in preparation)が、140kDaタンパク質の最も顕著な吸収を一貫して示した。PR218によって吸収されたタンパク質をゲル内トリプシン消化にかけ、エドマン分解によって6本の内部フラグメントを配列決定した。
【0114】
これらの配列は、ヒト補体因子Hの様々な領域との同一性が100%であった。電気ブロット法によって、得られたゲルの複製をPVDF膜に移し、ウサギ抗fH抗血清で探索した。抗血清は、前述の140kDaバンド、血漿中の同様サイズのバンド、および精製したfHと反応した。50kDa付近に相当するバンドとも弱い反応性があった。NH2末端配列決定にかけると、このバンドは、ヒト免疫グロブリン重鎖として特定され、免疫グロブリンの肺炎球菌への特異的または非特異的結合、および後続する次のヤギ抗ウサギ抗体との交差反応性を示唆した。
【0115】
fHの結合が補体活性化および細菌表面でのC3沈着に従属的であることを退けるために、C3欠損血清を使用して、菌株D39での血漿吸収を繰り返した。正常なヒト血漿とC3欠損血清の吸収の結果を比較すると、抗E抗体と反応するタンパク質の存在量は等しく(データ表示なし)、fHの結合がC3と無関係であることを示した。
【0116】
放射能標識したfHの結合について肺炎連鎖球菌株群を調べた。結合の度合いは菌株同士でかなり様々であったが、大部分の菌株が有意なfH結合を示した(表2)。
【0117】
被包性株は一般に、対応する非被包性株よりも結合性が多少弱かった。結合がタンパク質構造に媒介されるのか調査するために、細菌を異なるプロテアーゼで処理してから、fHの菌株PR218への結合を調べた(データ表示なし)。結合は、パパインでの前処理によって、ほとんど完全に不能になった。トリプシンでも半分以上に低下したが、ペプシンではそれほど効果がなかった(<50%の低下)。これらの結果は、細菌をトリプシンで前処理することによってfH結合を不能にできるという先の観察の裏づけになる(15)。
【0118】
fH結合性タンパク質をコードする候補遺伝子の同定および配列分析
最近の論文(15)が、3型肺炎球菌は、fHがタンパク質の表面構造に結合するために、補体活性化および食作用に耐性であると提唱している。fHと相互に作用することが知られている以前に述べられた細菌表面タンパク質には、連鎖球菌Mタンパク質(11)およびY.エンテロコリチカ由来のYadA(13)が含まれる。YadA、M1、M1.1(26)、M6(27)、およびM様タンパク質H(28)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を使用して、The Institute for Genomic Research(http://www.tigr.org)から入手した肺炎球菌(4型株JNR.7/87)ゲノム・データベースを検索した。すべてのプローブで最高スコアの相同性が、2106bpのオープン・リーディング・フレーム(ORF)中に見出され、アミノ酸(aa)702個の推定上のタンパク質をコードした。肺炎球菌タンパク質と検索に使用したfH結合性タンパク質との相同性の度合いは低かったが、配列全体を比較すると有意であった。しかし、相同性の著しく高い数箇所の限定された領域が存在していた。この推定上のタンパク質でのGENBANK検索によって、PspCアレルとして特定され、同じくSpsA、CbpA、またはPbcAを表示した(16)。次いでPspCを逆にStreptococcus pyogenesゲノム配列決定プロジェクトの検索に使用し、最高スコアの組合せがM1タンパク質をコードすることが判明した。
【0119】
我々は、Avery株A66(3型)およびその誘導株PR218のpspC遺伝子の染色体座位を配列決定することにした。血清型3は食作用に強力に抵抗し(29)、PR218はヒト血漿由来のfHの吸収が顕著であった。この座は、612aaの推定上のタンパク質をコードする1836bpのORFを含んでいた。H因子結合性補体阻害因子であるので、この遺伝子を仮にhicと名付けた。(GenBank受入れ番号AF252857)。Hicタンパク質(図1の上方に略図を示す)は、アミノ酸11個の反復単位22個からなるプロリン高含有領域を含む。COOH末端付近には、共通配列LPSTGS、すなわちグラム陽性細胞壁に固定されたタンパク質の典型的なものが存在する(30)。この配列が疎水性のCOOH末端に続く。このHic配列を使用して、肺炎球菌ゲノムプロジェクト・データベースを検索し、Mタンパク質を最適な組合せとして同定した。数種の肺炎球菌表面タンパク質がHicに相同的であることが判明した。2型および47型肺炎球菌由来のSpsAは、Hicとの相同性が高い領域を含む。SpsAは、分泌型IgAおよびその分泌成分を結合する(17)。CbpA(18)、すなわち、2型肺炎球菌のアドヘシンかつ病原性決定因子もこの領域を含み、PbcA(GENBANKからの非公表の配列)も同様である。SpsA2、CbpA、およびPbcAは、一緒になってPspCアレルのD39系列を形成する(16)。Hicの予想される37aaのリーダー・ペプチドを含む149aaの長さのNH2末端領域は、血清型1、2、4、6A、および19由来のPspCタンパク質中の対応する領域と整合していた(図2)。PspCタンパク質中のこの領域についての特定の機能は、これまでに提唱されていない。興味深いことに、Hicの残部は、PspCプロリン高含有領域中のより短い配列単位を除くPspCタンパク質との相同性をそれほど示さなかった。Hicとは対照的に(図1、下)、PspCタンパク質は、一連の反復単位と共にコリン結合性モチーフ、すなわち、表面付着のための異なる仕組みを含む。二次構造をコンピュータで予測すると(31、32)、Hic(aa40〜270)およびPspC(aa50〜250)のNH2末端領域中のαへリックス構造の有力な予測がもたらされた。
【0120】
Hic欠損変異株の構造および特性
肺炎球菌のfH結合への考えられるHicの寄与を調査するために、さらなる研究では、ヒト血漿から最も顕著にfHを吸収する非被包性株PR218(血清型3)を選択した。重複伸長によるスプライシング(遺伝子SOEing)(19)を利用して、抗生物質耐性カセットをhic遺伝子の上流および下流に見出される配列の側に配置した。PR218をこの作製物で形質転換し、二重交差突然変異誘発法によってhic遺伝子を欠失させた。得られた菌株FP13は、通常の成長培地中で親株と同じくらいよく成長した。hicの欠失をPCR実験によって確認した。
【0121】
この変異株で上述のものと同一の血漿吸収実験を行った。親株とは対照的に、抗fH抗血清ではfHの位置のバンドが検出されなかった。さらに、細菌を連続的に希釈して、放射能標識したfHの野生型および変異型細菌への結合を調べた(図3)。親株PR218とは異なり、変異株FP13のfH結合は、最高の細菌濃度でも、バックグラウンド・レベルであった。また、pspC遺伝子が切断されているために、PspCの405個のNH2末端アミノ酸を欠いているD39変異誘導株を作製することによって、肺炎球菌fH結合への考えられるPspCの寄与も調べた。FP7と称したこの変異株を血漿吸収実験に使用したが、抗fH抗体と反応したバンドは溶出しなかった(データ表示なし)。
【0122】
HicのH因子結合性領域の地図作成(mapping)
我々は、Hic、PspC、CbpA、SpsA、およびPbcAに共有される部分を含むHic非反復領域の結合特性を調査することにした。そのため、HicのNH2末端部分をコードするhic領域(aa39〜261)をベクターpGEX中にクローン化して、GSTをコードする遺伝子と融合させた。この挿入の対照配列決定によって、部分的なhic遺伝子の存在を検証すると、菌株A66からのDNA配列との同一性が100%であった。GST:Hic39−261およびGSTを過剰発現させ、アフィニティー精製にかけ、SDS−PAGEによって分析した。一部は分解されたが、主要なタンパク質バンドの質量は期待通り(54kDa)であった。同一のゲルを膜にブロットし、次いでこれを放射能標識したfHと共にインキュベートし、洗浄し、オートラジオグラフィにかけた。fHはGST:Hic39−261には結合したが、GSTには結合しなかった。連続希釈物(5、1、0.2、0.04μg)の形の融合タンパク質およびGST対照もニトロセルロース膜に塗布した。膜を放射能標識したfHで探索すると、融合タンパク質に結合し、GSTには結合しなかった。さらに、融合タンパク質を競合結合アッセイに使用して、GST:Hic39−261がPR218細菌へのfH結合と競合し得るかを調査した。結果(図4)は、融合タンパク質のHicドメインは細菌のfH結合をブロックするが、GST単独では結合に影響を及ぼさないことを示している。肺炎連鎖球菌株3496、G54、PR215、およびHB565でも同様の実験を行った。その実験でも、GST:Hic39−261はfHの試験菌株への結合をブロックしたが、GSTは影響を及ぼさなかった(データ表示なし)。G54株は血清型19であり、Hicと19型肺炎球菌PspCの類似性(図1Bを参照のこと)は、非3型株へのfH結合がHicと相同的なPspC領域を媒介とすることを示唆する。
【0123】
表面プラズモン共鳴によってGST:Hic39−261とfHの相互作用をさらに調べた。抗GST抗体をカルボキシメチルデキストラン・チップに結合させてから、リガンドとしてのGST:Hic39−261を固定化した。高度に精製したfHを様々な濃度の分析物として使用した。fHは、全濃度範囲(0.1〜2μM)でGST:Hicと相互に作用し、最高のfH濃度で部分的に飽和した。チップへの結合をそれぞれ独立にして、実験を3回繰り返した。1つのチップを連続して再生する代表的な実験を示す(図5)。対照として、GSTを抗GST抗体チップに同様に固定化した。流体相fHの結合はなかった(データ表示なし)。標準のLangmuir1:1モデルを適用して、データの包括的解析を行って、会合/解離の速度定数、会合定数、および解離定数を決定した。値は、3種の異なる実験の平均±標準偏差である。
【0124】
Hicおよび補体阻害
機能の観点からの重要な問題は、HicのfHへの結合がfHの補体阻害機能に影響を及ぼすかである。この論点に取り組むために、fHを加えることによってウサギ血清中赤血球の補体を媒介とする溶解を阻害する、以前に述べられた方法論を適応させた(24)。C2欠損血清を補体供給源として使用して、古典経路からの影響を排除した。最初の実験を行い、fHを加えると、第二経路を媒介とする溶血が用量依存的に阻害された(データ表示なし)。反応物中のfHの濃度を(血清中のfHの)3倍に増大させることによって、溶血の完全な抑制を実現した。fHの増加がこれより少ないと、溶血の抑制は部分的となる。GST:Hic39−261、GST、またはfHとGST:Hic39−261(モル比1:2)が溶血に及ぼす影響を調査した。fHとGST:Hic39−261の相互作用を平衡にするために、プレインキュベーションのステップ(5分間)に若干の時間をとった。溶血の動力学研究は、fHを媒介とする補体活性化阻害が、反応物中のGST:Hic39−261の存在によって低下しないことを示した。むしろ、fHとGST:Hic39−261が同時に存在することによって、抑制の増強がもたらされる。興味深いことに、GST:Hic39−261を(過剰なfHを加えずに)単独で加えたときに部分的に溶血が抑制されたので、この融合タンパク質は、内在性の補体阻害作用を有するようである(図6)。
【0125】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【図1】
HicとPspCの比較を示すHicとPspCの略図である。シグナル・ペプチド(SP)および壁貫通領域(W)を表示する。
【図2】
HicとPspCの対立配列変異体、すなわちPspC6A(配列番号5)、PspC2(配列番号7)、PspC19(配列番号9)、PspC19TIGR(配列番号10)、およびSpsA1(配列番号11)の配列の比較を示す図であり、Hic(血清型3)、およびSpsAを含むPspC対立配列変異体由来のNH2末端領域のClustalWアラインメントである。同一または類似の残基に、それぞれ濃い陰および淡い陰をかけた。タンパク質名中の数字は、その配列の入手元の菌株血清型を示す。PspC.TIGRは、血清型4の菌株由来である。GenBank/EMBL受入れ番号は、PspC2がAF068645、PspC6AがAF068645、PspC19がAF068648、SpsAlがY10818である。
【図3】
放射能標識したH因子のHic欠損変異株への結合に関するグラフである。PR218(□)およびHic欠損変異株FP13(◆)の連続希釈物を放射能標識したfHと共にインキュベートした。結合は、加えられた放射能の百分率として示す。データの点は、複製試料での3回の実験の平均である。標準偏差を誤差バーで示した。
【図4】
H因子のHicへの結合を示すグラフである。競合結合アッセイは、非標識のfH(O)、GST(□)、およびGST:Hic(39−261)(◆)の次第に増大する濃縮物の存在下、PR218細菌(109CFU/ml)を放射能標識したfHと共にインキュベートすることによって実施した。
【図5】
表面プラズモン共鳴によるHicとH因子の相互作用の動力学分析を示す図である。(3つの中から)1つの代表的なセンサブラフを示す。分析物(fH)の濃度は、2000、667、333、167、および83nMとし、時間の尺度を0が注入開始点を表すように調節した。
【図6】
HicおよびH因子が第二経路溶血を阻害したことを示すグラフである。ウサギ赤血球をC2欠損血清と共にインキュベートし、溶血の動力学研究を行った。fH、GST、および/またはGST:HiC31−261の溶血への影響を調査した。数字は、溶血を対照での最大溶血画分として表す(90〜95%)。示したデータは、1つの代表的な実験からのものである(n=3)。曲線は、対照の反応(□)、fHとの反応(◆)、GST:Hic39−261(□)、GST(△)、およびfHとGST:Hic39−261の組合せ(O)を表す。
(発明の分野)
本発明は、H因子結合性タンパク質およびペプチド、このようなタンパク質およびペプチドをコードする核酸配列、これに特異的に結合する抗体、ならびにこれを含む薬剤組成物、特にワクチン組成物に関する。
【0002】
(発明の背景)
肺炎連鎖球菌は、有効な抗生物質および多価莢膜多糖体ワクチンが利用できるにもかかわらず、依然として病的状態および死亡の重大な原因であり、中耳炎、市中感染性肺炎、敗血症、および髄膜炎などの状態を引き起こしている。乳幼児、高齢者、および免疫無防備状態の患者は、肺炎球菌感染に特にかかりやすい。
【0003】
肺炎球菌の多糖体莢膜は、長い間主な病原性決定因子とみなされてきた(1)。病原性は莢膜血清型によって様々であるが、血清型変換実験によって、莢膜よりも他の因子が重要な役割を担っていることがはっきりと実証された(2)。いくつかの非莢膜病原因子が遍く調査されている。肺炎球菌の病原性への相対的な寄与は依然として不確かであるが、PspA、ニューモリジン、PsaAなどのタンパク質が肺炎球菌の病原性において役割を担っていることは明らかである(3〜5)。
【0004】
補体の古典経路および第二経路は、先天免疫系の一部であり、肺炎球菌感染から防御する重要な系統を構成している(6、7)。細菌が補体系機能を妨害できる多くの戦略が存在する((8)で概説)。たとえば、いくつかのグループが補体制御タンパク質fHの細菌表面タンパク質への結合を記載しているが((9)で概説)、このような結合の正確な因果関係は依然としてつかめないままである。fHは、20個の短い共通反復単位からなる150kDaの血漿タンパク質であり、H因子タンパク質ファミリーで最もよく特徴付けられたメンバーである(10)。fHは、補体制御において非常に重要なタンパク質である。第二経路の増幅ループでの決定的ステップは、表面に沈着したC3bとB因子からC3転換酵素(C3bBb)が形成されることである。fHは、B因子とC3bの結合を妨げ、因子IによるC3b分解で補因子として働き、さらにC3/C5転換酵素からのBbの解離を促進することによって補体活性化を阻害する。
【0005】
fHと相互に作用する細菌表面構造の例には、S.pyogeneのMタンパク質およびM様タンパク質が含まれる(11、12)。さらに、Yersinia enterocoliticaのYadAは、細菌表面をfHで被覆することによって補体活性化を阻害することを示した(13)。最近では、2つのグループが、それぞれ独立に、3型肺炎球菌での補体を媒介とするオプソニン食作用(opsonophagocytosis)の阻害を記載している。一方の研究(14)は、PspAがC3bの沈着を妨げ、かつ/または第二経路C3転換酵素を阻害することを提示している。もう一方の研究(15)は、肺炎球菌の耐食作用性が、現段階では知られていないfH結合性表面タンパク質を媒介としていることを主張する。PspA欠損変異株が親株と同様に、またはそれより大量にfHを結合するので、PspAは、この相互作用に寄与しない。
【0006】
現在使用されている肺炎連鎖球菌ワクチンは、すべて莢膜構造(炭水化物抗原)に基づくものである。各血清型は、特有の莢膜構造を有する。したがって、肺炎連鎖球菌のワクチン組成物は、最もよくある血清型群から防御するために、多種類の異なる莢膜抗原を含有する。やはり、このような組成物は、すべての個人に十分な防御性をもたらしていない。
【0007】
特に、補体の欠損を示すような患者では、このようなワクチン組成物によって十分に防御されない者もいる。3型肺炎球菌からの防御は、特に不十分である。したがって、改良された肺炎連鎖球菌ワクチン組成物が求められている。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、H因子結合能を有するポリペプチドであって、(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、(b)H因子を結合できる(a)の変異体、または(c)H因子を結合できる、少なくともアミノ酸20個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含む、予防または治療に使用するためのポリペプチドを提供する。
【0009】
本発明は、(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、(b)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる(a)の変異体、あるいは(c)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる、少なくともアミノ酸6個の長さの(a)もしくは(b)の断片から選沢されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むワクチン組成物も提供する。
【0010】
もう一つの態様では、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸配列、または(b)(a)との配列同一性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%のポリペプチドを含む、アミノ酸15〜800個の長さのポリペプチドを提供する。このポリペプチドは、H因子結合能を有することが好ましい。
【0011】
本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供するが、このポリヌクレオチドは、(i)配列番号4のヌクレオチド・コード配列またはこれに相補的な配列、(ii)前記配列(i)と選択的にハイブリッド形成するヌクレオチド配列またはその断片、あるいは(iii)前記配列(i)もしくは(ii)にコードされているものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本発明は、補体H因子(fH)を結合する、3型肺炎連鎖球菌に由来するタンパク質およびペプチドを提供する。このタンパク質およびペプチドは、本明細書に配列番号1として開示する配列のThr38〜Lys149の部分配列との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。上記の部分配列は、3型肺炎連鎖球菌から単離した表面タンパク質のアミノ末端に位置し、fHの結合に深く関連している。もう一つの態様では、本発明は、Hicタンパク質、すなわち配列番号1として開示するアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であるタンパク質およびペプチドに関する。本発明は、上記のタンパク質およびペプチドを含むワクチン組成物も提供する。
【0013】
(配列の説明)
配列番号1は、Hicタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号2および3は、Hicのタンパク質の増幅に使用したプライマーである。
配列番号4は、Hicタンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号5および6は、それぞれPspC6Aのためのアミノ酸配列およびコードDNA配列である。
配列番号7および8は、それぞれPspC2のためのアミノ酸配列およびコードDNA配列である。
配列番号9は、PspC19のアミノ酸配列である。
配列番号10は、PspC19TIGRのアミノ酸配列である。
配列番号11は、SpsA1のアミノ酸配列である。
【0014】
(発明の詳細な説明)
一般用語および序文
この出願では以下の略語、すなわち、fH:補体H因子、PspA:肺炎球菌表面タンパク質A、PsaA:肺炎球菌表面抗原A、PspC:肺炎球菌表面タンパク質C、CbpA:コリン結合タンパク質A、SpsA:肺炎連鎖球菌分泌IgA結合タンパク質、GST:グルタチオンS転移酵素、PCR:ポリメラーゼ連鎖反応、SDS−PAGE:ナトリウムドデシル硫酸塩ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を使用する。
【0015】
上述のとおり、第一の態様では、この出願は、fHを結合するタンパク質およびペプチドに関する。このタンパク質およびペプチドはすべて、Hicタンパク質アミノ末端のthr38〜lysl49の部分配列誘導体を含み、そのHicタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1として本明細書に含まれる。この第一の態様によるタンパク質およびペプチドは、本明細書で配列番号1として開示する配列の部分配列Thr38〜Lys149との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。以下で、Hicタンパク質のアミノ末端部分がfHの結合に関連していることを示す。また、アミノ末端のアミノ酸配列が、おそらくはそれもfHを結合するであろう他の数種の肺炎球菌表面タンパク質とかなり類似していることも示す。
【0016】
本発明の第一の態様によるポリペプチドは、1つまたは複数の以下の特性を有する。第一に、このポリペプチドは、fH結合能を有する。以下で示すように、このポリペプチドは、この特徴のために肺炎球菌のワクチン候補として関心を集めている。第二に、本発明によるペプチドは、T細胞応答を刺激する能力を有する。第三に、本発明のペプチドは、B細胞応答を刺激する。
【0017】
第二の態様では、本発明は、少なくとも15個のアミノ酸を含むペプチドおよびタンパク質に関するものであり、このペプチドおよびタンパク質は、配列番号1として開示するHicタンパク質のアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0018】
本発明の第二の態様によるポリペプチドは、Hicタンパク質に対して高い相同性を示し、そのために肺炎球菌のワクチン候補として関心を集めている。第二に、本発明のこの態様によるペプチドは、T細胞応答を刺激する能力を有する。第三に、本発明のこの態様のペプチドは、B細胞応答を刺激する。
【0019】
代替の態様では、本発明は、
(a)配列番号1のThr38〜Lys149のアミノ酸配列、
(b)H因子を結合できる(a)の変異体、または
(c)H因子を結合できる、少なくともアミノ酸20個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含むポリペプチドを提供する。
【0020】
もう一つの態様では、本発明は、ポリペプチドを含むワクチン組成物に関するものであり、そのポリペプチドは、
(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、
(b)肺炎球菌に免疫応答を発生させる、または抗Hic抗体に結合することのできる(a)の変異体、あるいは
(c)肺炎球菌に対して免疫応答を発生させる、または抗Hic抗体に結合することのできる、少なくともアミノ酸6個の長さの(a)もしくは(b)の断片を含む。
【0021】
H因子結合能は、何らかの適切な方法によってモニターすることができる。特に、標識したH因子、たとえば、放射能標識で標識したものを使用し、調査中のペプチドへの結合をモニターして、アッセイを実施することができる。同様に、ペプチドが抗Hic抗体を結合する能力は、何らかの適切なアッセイを利用して、特に配列番号1で示す全長Hicタンパク質または配列番号1のThr38〜Lysl49の配列を含むその断片に対して産生された抗体を使用してモニターできる。同様に、動物に調査中のペプチドを投与すること、抗体産生を通して、または細胞障害性T細胞応答など、T細胞応答の発生を通して免疫応答の発生をモニターすることを含む、マウスのモデルなどの適切な動物モデルを使用して、ペプチドが免疫応答を発生させる能力を試験することができる。防御免疫応答を発生させることのできる好ましいペプチドは、動物に致死量の肺炎球菌接種を施すことによって特定できる。同様に、ペプチドが抗Hicタンパク質抗体に結合する能力は、in vitroで検定することができる。抗Hicタンパク質抗体は、配列番号1のタンパク質を使用して適切な抗体を発生させる標準の技術によって生成できる。
【0022】
別の態様では、本発明は、以下の配列、すなわち、
(i)配列番号4のヌクレオチド・コード配列またはこれに相補的な配列、
(ii)前記配列(i)と選択的にハイブリッド形成するヌクレオチド配列またはその断片、あるいは
(iii)前記配列(i)もしくは(ii)によってコードされたものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する新規のポリヌクレオチドに関する。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを提供する。また本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は、
−ポリヌクレオチドが制御配列に操作可能に結合した発現ベクターなど、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え型ベクター、
−本発明のポリヌクレオチド用に形質転換した宿主細胞、
−本発明のポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞をポリペプチドの発現をもたらす条件下に保つことを含む、本発明のポリペプチドの産生方法、
−本発明によるポリペプチドに特異的な、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、
−患者に肺炎球菌感染のワクチンを接種する方法であって、患者に有効量の本発明によるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを投与することを含む方法も提供する。
【0024】
もう一つの態様では、本発明は、H因子のHicタンパク質への結合を阻害する薬品を特定するアッセイに関する。このアッセイは、試験中の基質の存在下、H因子結合能を有する本発明のポリペプチドをH因子と共にインキュベートすること、および本発明のポリペプチドのH因子への結合をモニターすることを含む。タンパク質相互作用をモニターする方法は、当技術分野でよく知られている。本発明のポリペプチドは、単離された形で得られる。あるいは、本発明のポリペプチドを発現する細菌を得、H因子と共にインキュベートしてもよい。H因子の本発明のポリペプチドへの結合を阻害する特定された物質は、抗生物質として使用しても、肺炎球菌感染に罹患している個人の治療に使用してもよい。
【0025】
本発明は、H因子の本発明のポリペプチドへの結合阻害薬として特定された薬品を薬剤として許容される担体と処方することも提供する。
【0026】
したがって、本発明は、肺炎連鎖球菌感染の治療方法を提供するものであり、この方法は、H因子が本発明のポリペプチドに結合するのを阻害する物質を特定すること、およびこれを必要とする患者に治療有効量のこの物質を投与することを含む。この物質の治療有効量は、肺炎連鎖球菌感染の症状を緩和する、あるいは肺炎連鎖球菌感染に罹患している患者の状態を改善する量である。患者に投与する物質は、薬剤として許容される担体と共に処方されていることが好ましい。
【0027】
Hicタンパク質をコードするDNA配列は、配列番号4として開示する。本発明の核酸配列は、DNAであることが好ましいが、RNAでもよい。当分野の技術者には、本発明によるRNA配列のT残基がUで置換されることは明らかであろう。本発明の核酸配列は、通常は単離された形またはほぼ単離された形である。たとえば、通常、本発明の核酸調製物中の核酸材料の最高で80%、90%、95%、または100%が、本発明による核酸である。本発明による核酸配列の変更、単離、または合成は、何らかの従来法、たとえば、Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)によって実施してよい。
【0028】
本発明の配列には、たとえば、本発明のタンパク質もしくはペプチドをコードするものまたはその相補鎖と選択的にハイブリッド形成でき、1つまたは複数の上記で定義した特性を有するポリペプチドをコードする配列が含まれる。
【0029】
そのようなハイブリッド形成は、当技術分野で知られている何らかの適切な条件下(Sambrook等(1989年)の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」を参照のこと)で実施してよい。たとえば、求められる厳密性が高い場合、適切な条件には60℃の0.2×SSCがある。求められる厳密性が低い場合、適切な条件には60℃の2×SSCがある。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、バックグラウンドをかなり上回るレベルで、配列番号4またはその相補配列とハイブリッド形成できることが好ましい。バックグラウンド・ハイブリダイゼーションは、たとえばcDNAライブラリーに存在する他のcDNAのために起こる。本発明のポリヌクレオチドと配列番号4の配列の相互作用によって発生したシグナル・レベルは、通常は少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍であり、他のポリヌクレオチドと配列番号4の配列の相互作用と同じく強い。相互作用の強さは、たとえば、プローブをたとえば32Pで放射能標識することによって測定してよい。選択的なハイブリダイゼーションは、通常、中程度から高度の厳密性(たとえば、約50℃〜約60℃の0.1〜0.2×SSC)の条件を利用して実現される。
【0031】
配列番号4のDNA配列またはそのコード配列に相補的な配列と選択的にハイブリッド形成できるヌクレオチド配列は、少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、たとえば少なくとも40個、60個、もしくは100個以上の隣接するヌクレオチドの領域において、実際は、コード配列の全長において、配列番号4の配列またはその相補配列と、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%相同的である。したがって、このような領域において、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチド同一性が存在する。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドを定義するには、上記で触れた相同性の度合いと最小サイズをどのように組み合わせて使用してもよいが、より厳密な組合せ(すなわち、より長い長さでより高い相同性)が好ましい。したがって、たとえば、25個、好ましくは30個のヌクレオチドにおいて少なくとも85%相同的なポリヌクレオチドが本発明の一態様となり、40個のヌクレオチドにおいては、少なくとも90%相同的なポリヌクレオチドであれば同様である。
【0033】
たとえば、UWGCG PackageがBESTFITプログラムを提供しているが、これを使用すると、(たとえば、デフォルト設定上で使用される)相同性が算出できる(Devereux等(1984年)のNucleic Acids Research第12巻、387〜395ページ)。たとえば、Altschul S.F.(1993年)のJ Mol Evol第36巻、290〜300ページ;Altschul,S,F等(1990年)のJ Mol Biol第215巻、403〜10ページに記載されているように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用すると、((通常はそのデフォルト設定上で)等価なまたは対応する配列を同定するなど、)相同性の算出または配列の整列を行うことができる。
【0034】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手できる。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードに一直線に合わせたときに、ある正の閾値スコアTに一致するまたはそれを満たす、照会配列中の長さWの短いワードを識別することによって、ハイスコアリング・シーケンス対(HSPs)を特定することを第一に含む。Tは、近傍ワード・スコア閾値を指す(上記Altschul等を参照されたい)。このような初期近傍ワード・ヒットは、これらを含むHSPsを発見する検索を開始するためのシードとして働く。ワード・ヒットは、累積整列スコアが増大する限り、各配列に沿って両方向に伸展する。各方向のワード・ヒットの伸展は、累積整列スコアがその最大達成値から数量Xだけ低下したとき;1または複数の負のスコアリング剰余整列が累積したために、累積スコアがゼロ以下になったとき;あるいはどちらかの配列の末端に到達したときに停止する。BLASTアルゴリズム・パラメータW、T、およびXは、整列の感度および速度を決定する。BLASTプログラムでは、ワード長さ(W)の11、BLOSUM62スコアリング・マトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992年)のProc.Natl.Acad.Sci.USA第89巻、10915〜10919ページを参照のこと)整列(B)の50、期待値(E)の10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較がデフォルトとして使用される。
【0035】
BLASTアルゴリズムは、2種の配列の類似性を統計的に解析する。たとえば、KarlinおよびAltschul(1993年)のProc.Natl.Acad.Sci.USA第90巻、5873〜5787ページを参照されたい。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の一尺度は、ヌクレオチドまたはアミノ酸の2配列の一致が偶然に生じる確率を示す最小確率和(P(N))である。たとえば、第一の配列の第二の配列に対する最小確率和が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは0.001未満である場合、ある配列がもう一方の配列と類似していると見なされる。
【0036】
本発明の範囲には、遺伝暗号の縮重のために上記で定義したものと異なり、上記で定義した特性を1つまたは複数有する同じポリペプチドをコードする配列も含まれる。
【0037】
本発明の核酸配列は、少なくとも塩基30個、たとえば、最高で塩基50個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、800個、1000個、最高で塩基2000個、または最高で塩基3000個の長さであることが好ましい。
【0038】
本発明の核酸配列は、5’および3’末端のいずれかまたは両方を伸長させてよい。そうした伸長はどんな長さでもよい。たとえば、伸長部分は、最高で10個、20個、50個、100個、200個、または500個以上の核酸を含む。したがって、本発明の核酸配列は、何らかの非野生型配列によって5’および3’末端のいずれかまたは両方を伸長させてよい。
【0039】
本発明のポリペプチドは、配列番号1として示すアミノ酸配列に由来する。したがって、本発明のポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドに限らない。むしろ、本発明のポリペプチドには、fHを結合できる、配列番号1と近い関係にある配列を有するポリペプチドも含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドは、fHに結合しないにもかかわらず、Hicタンパク質に非常に類似したまたは同一の抗原決定基を含む。これらの配列はすべて、何らかの従来法によって配列番号1の配列を変更して調製しても、生物体から単離しても、合成で作製してもよい。このような変更、単離、または合成は、何らかの従来法、たとえばSambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)によって実施してよい。特に、Hicタンパク質をコードするDNA配列を修飾して、組換えによりポリペプチドを発現させることによって、配列番号1に関連したポリペプチドを調製してよい。
【0040】
そのため、本発明のポリペプチドは、配列番号1との配列同一性が100%未満となる。したがって、本発明のポリペプチドは、fH結合能を損なわない限り、またはHicタンパク質と同様な抗原特性を示す限り、配列番号1との区別を表す置換、欠失、または挿入を含む。
【0041】
置換、欠失、または挿入には、適切には1個または複数のアミノ酸、通常は1〜5個、1〜10個、または1〜20個のアミノ酸が関与し、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個、15個、または20個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入となる。通常、本発明の第一の態様のfH結合性ポリペプチドは、配列番号1の部分配列thr38〜lysl49との配列同一性が少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%である。このポリペプチドと配列番号1の同一性が少なくとも80%、90%、95%、97%、または99%であることが好ましい。通常、本発明の第二の態様のポリペプチドは、配列番号1の配列のあらゆる部分から誘導できる部分配列、好ましくは配列番号1の15〜600個の隣接するアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%である。
【0042】
一般に、本発明のポリペプチドには、配列番号1の配列の物理化学的性質が保たれるべきである。一般に、そうした配列の電荷、疎水性、およびサイズは、配列番号1に似るであろう。アミノ酸配列の物理化学的性質に大きな影響を及ぼさない置換の例は、以下の各群、すなわち、
H、R、およびK
I、L、V、およびM
A、G、S、およびT
D、E、Q、およびN
のうちの1種のアミノ酸が、その同じ群の異なるアミノ酸に置換される場合である。
【0043】
本発明のポリペプチドを化学的に合成する場合、(天然には存在しない)D−アミノ酸を、アミノ酸配列中のポリペプチドの生物学的特性に影響を及ぼさない部位に組み込んでよい。これにより、レシピエントのプロテアーゼによるタンパク質分解に対するポリペプチドの感受性が低減される。
【0044】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、何らかの非野生型配列によって一方または両方の末端で伸長させてよい。
【0045】
したがって、本発明のポリペプチドは、いずれかの長さのアミノ酸配列によってC末端を伸長させてよい。たとえば、1回の伸長は、最高で5個、10個、20個、50個、100個、または200個以上のアミノ酸を含む。C末端伸長部分は、元のHicタンパク質中の本発明の配列(またはその起源となる元の配列)に対するC末端とは異なる任意の配列を含んでいてもよい。したがって、本発明のポリペプチドは、何らかの非野生型配列によってC末端を伸長させてよい。
【0046】
本発明のポリペプチドは、その抗原特性を高める他のポリペプチド、タンパク質、または炭水化物に結合させてよい。したがって、本発明のポリペプチドは、1個または複数の他の抗原性ポリペプチドに結合させてよい。このような追加の抗原性ポリペプチドは、肺炎連鎖球菌または別の生物体に由来する。考えられる追加の抗原性ポリペプチドには、他の肺炎連鎖球菌タンパク質由来の、または肺炎連鎖球菌以外の種に由来する異種T細胞エピトープが含まれる。異種B細胞エピトープを使用してもよい。そのような異種のT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープは、どんな長さでもよく、最高でアミノ酸5個、10個、または20個の長さのエピトープが特に好ましい。付加できると考えられる炭水化物は、莢膜抗原である。このような追加の抗原性ポリペプチドは、本発明のポリペプチドに化学的に結合させてよい。あるいは、1個または複数の追加の抗原配列または炭水化物基が本発明のポリペプチドへの伸長部分を含んでもよい。
【0047】
本発明のポリペプチドには、グリコシル化、硫酸化、COOHアミド化、またはアシル化など、1種または複数の化学修飾を施してよい。特に、N末端をアセチル化したポリペプチドは好ましく、C末端アミド基を有するポリペプチドも好ましい。好ましいポリペプチドは、1種または複数のこのような修飾を受けている。たとえば、特に好ましいポリペプチドは、C末端アミド基を有し、N末端のアセチル化を受けている。
【0048】
本発明のポリペプチドは、本明細書で定義するいずれかの手段で、1または複数の配列番号1の配列またはそれと関係のある配列の多重コピーを含むより大きなポリペプチドの部分を形成してよい。
【0049】
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも15個のアミノ酸、たとえば、15〜20個、20〜50個、50〜100個、100〜200個、200〜300個、300〜400個、400〜500個、500〜600個、600〜700個、または700〜800個のアミノ酸を含む。
【0050】
本発明によるポリペプチドは、精製する、またはほとんど精製してよい。一般に、ほとんど精製された形のポリペプチドは、調製物中の90%超、たとえば最高で95%、98%、または99%のペプチド材料が1種または複数の本発明のポリペプチドである調製物の部分を形成する。
【0051】
本発明の核酸配列およびポリペプチドは、もともと肺炎連鎖球菌に由来する。しかし、本発明の核酸配列および/またはポリペプチドは、他の生物体、通常は細菌、特に他の連鎖球菌から得てもよい。従来のクローン技術によって、または本発明による核酸配列でゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーを探索することによってこれを得てよい。Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年)など、何らかの従来法によってこれを行うことができる。
【0052】
本発明による核酸配列は、ベクター、適切には複製可能なベクター、たとえば複製可能な発現ベクターに含まれていてもよい。
【0053】
複製可能な発現ベクターは複製開始点を含むので、細菌宿主細胞など、宿主細胞中でベクターが複製できる。また適切なベクターは、通常、普通は5’〜3’の配列中に以下の要素、すなわち、核酸配列の発現を指令するプロモータおよび任意選択のプロモータ制御因子、翻訳開始コドン、およびHicタンパク質の生物学的特性を1つまたは複数有するポリペプチドをコードする本発明による核酸配列も含む。複製不能なベクターは、適切な複製開始点を欠き、一方非発現ベクターは、有効なプロモータを欠いている。
【0054】
ベクターは、細菌の形質転換体を特定するための1種または複数の選択可能な標識遺伝子、たとえば、アンピシリン耐性遺伝子を含有していてもよい。考えられる別の標識遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子である。ベクターは、任意選択で、プロモータのエンハンサも含んでよい。真核細胞中で本発明の核酸配列を発現させることを望むなら、ベクターは、機能性タンパク質をコードする核酸に3’が操作可能に連結されたポリアデニル化シグナルを含んでもよい。ベクターは、本発明のポリペプチドをコードする配列に対する転写ターミネータ3’も含んでよい。
【0055】
ベクターは、本発明のポリペプチドをコードする配列に対する1つまたは複数の非コード配列3’を含んでもよい。これらは、このベクターで形質転換されることになる肺炎連鎖球菌(本発明の配列はこの生物に由来する)または宿主生物に、あるいは別の生物体に由来していてよい。
【0056】
発現ベクターでは、本発明の核酸配列が、この配列を発現できるプロモータに操作可能に結合している。「操作可能に結合している」とは、プロモータと本発明のポリペプチドをコードする核酸配列とがプロモータの制御下でコード配列の発現を可能にする関係にある近位を指す。したがって、プロモータとコード配列間に5’非コード配列などの要素が存在してもよい。このような要素は、肺炎連鎖球菌またはプロモータ配列の起源である生物体、またはその両者以外に本来備わったものであってよい。プロモータによるコード配列の正しい制御が向上し、またはそれが損なわれないなら、ベクターにこのような配列が含まれていてよい。
【0057】
ベクターはどんなタイプでもよい。線形でも環形でもよい。たとえば、ベクターをプラスミド・ベクターとしてよい。当分野の技術者は、広範囲で入手可能なベクターから始め、これをSambrook等の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、1989年に記載のものなど、遺伝子工学技術によって改変して、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含む適切なベクターを調製できるであろう。好ましい出発ベクターには、カナマイシン耐性を与え、tacプロモータを介して本発明のポリペプチドの発現を指令するプラスミドがある。
【0058】
発現ベクターでは、宿主細胞中で本発明の配列の発現を指令できる何らかのプロモータが、本発明の核酸配列に操作可能に結合していてよい。適切なプロモータには、tacプロモータが含まれる。
【0059】
このようなベクターを使用して、宿主細胞に形質移入または形質転換を施すことができる。ベクターのタイプによるが、これをクローニング・ベクターとして使用して、本発明によるDNA配列を増幅させても、そのDNAを宿主細胞中に発現させてもよい。
【0060】
本発明の別の実施形態は、本発明の核酸配列を複製し、かつ/または発現させるための、本発明のベクターを収容した宿主細胞、すなわち、ベクターで形質転換または形質移入を施した細胞を提供する。細胞は、ベクターと適合するように選択するが、たとえば細菌細胞でよい。形質転換または形質移入を施した細菌細胞、たとえば大腸菌細胞は、本発明の核酸配列を増幅させるだけでなく、それをポリペプチドとして発現させるために特に有用となろう。
【0061】
Sambrook等の「Molecular cloning:A Laboratory Manual」、1989年に記載の方法など、何らかの適切な方法によって、細胞に形質転換または形質移入を施してもよい。たとえば、本発明による核酸配列を含むベクターは、感染性のウイルス粒子、たとえばレトロウイルス粒子にパッケージングしてよい。たとえば、電子穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、および微粒子銃法によって、または溶液中で裸の核酸ベクターと細胞を接触させることによってこの作製物を導入してもよい。
【0062】
宿主細胞を形質転換し、または宿主細胞に形質移入する前記の核酸ベクターの核酸は、DNAでもRNAでもよく、DNAが好ましい。
【0063】
宿主細胞を形質転換し、または宿主細胞に形質移入するベクターは、適切などんなタイプでもよい。ベクターは、宿主細胞ゲノムに本発明の核酸配列を組み込むことができても、細胞質中で遊離したままであってもよい。たとえば、形質転換に使用するベクターを、本明細書で定義する発現ベクターにしてよい。
【0064】
本発明は、本発明によるポリペプチドの産生方法も提供する。このプロセスは、通常、本発明による核酸配列を含むベクターで宿主細胞に形質転換もしくは形質移入を施すこと、および宿主細胞中でその核酸配列を発現させることを含む。この場合、核酸配列は、宿主細胞中でその発現を指令できるプロモータに操作可能に連結される。そのプロモータは、宿主細胞中で高レベルな発現を実現できる「強力な」プロモータであることが望ましい。本発明によるポリペプチドが宿主細胞中で過剰発現させることが望ましい。この目的に適した宿主細胞には、酵母細胞および細菌細胞、たとえば大腸菌細胞が含まれ、特に好ましい大腸菌株は、大腸菌K12株BL21である。しかし、他の発現系を使用することもでき、たとえばバキュロウイルス系では、ベクターは、そのゲノムに本発明のポリペプチドをコードする核酸を有するバキュロウイルスであり、そのバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させたときに発現が起こる。
【0065】
そうして産生された本発明のポリペプチドは、当技術分野で知られている何らかの方法によって回収してよい。そうして回収されたポリペプチドは、任意選択で、何らかの適切な方法、たとえばSambrook等(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」)による方法で精製してよい。
【0066】
本発明のポリペプチドは、標準のペプチド合成技術を使用して、化学的に合成してもよい。より短いポリペプチドでは、組換え体の発現に化学合成が好ましい。特に、アミノ酸残基が最高で20個または40個の長さのペプチドは、化学的に合成することが好ましい。
【0067】
本発明の核酸配列を使用して、プローブおよびプライマーを調製してよい。これらは、たとえば、配列番号4に類似の配列を有する遺伝子の単離に有用となる。そのようなプローブおよびプライマーは、適切などんな長さでもよいが、塩基10〜100個、たとえば10〜20個、20〜50個、または50〜100個の長さであることが望ましい。このようなプローブの例を、本明細書の配列番号2および配列番号3として開示する。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーには、露出する標識が付けられていてよい。適切な標識には、32Pや35Sなどの放射性同位元素、酵素標識、またはビオチンなどの他のタンパク質標識が含まれる。このような標識は、本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーに加えてよく、それ自体が知られている技術を利用して検出することができる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドもしくはプライマーまたはその断片は、標識されたものでも未標識のものでも、核酸を基にした試験において当分野の技術者が試料中のHicタンパク質を検出し、または配列決定するために使用されてよい。
【0070】
このような検出試験は、一般に、ハイブリッド形成条件下、DNAまたはRNAを含有する試料を本発明のポリヌクレオチドまたはプライマーを含むプローブに接触させること、および試料中のプローブと核酸の間に形成した二重鎖を検出することを含む。PCRなどの技術を利用して、あるいは固体担体にプローブを固定化し、プローブとハイブリッド形成していない試料中の核酸を除去し、次いでプローブとハイブリッド形成した核酸を検出することによって、このような検出が実施できる。あるいは、固体担体に試料の核酸を固定化し、その担体に結合したプローブの量を検出してもよい。
【0071】
本発明のプローブは、試験キットの形で適切な容器に納めると好都合である。キットが、固体担体への結合を必要とするアッセイ型式用に設計されている場合、プローブは、固体担体に結合していてよい。このキットは、探索する試料の処理に適する試薬、プローブと試料中の核酸のハイブリッド形成に適する試薬、制御試薬、および説明書なども含んでよい。
【0072】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え型の複製可能なベクターに組み込むことができる。そのベクターを使用して、適合する宿主細胞中で核酸を複製してよい。したがって、本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入し、そのベクターを適合する宿主細胞に導入し、さらにベクターの発現を引き起こす条件下でその宿主細胞を成長させることによって本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ベクターは、その宿主細胞から回収してよい。適切な宿主細胞は、発現ベクターと共に述べる。
【0073】
本発明は、本発明のポリペプチドの抗体も提供する。この抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよい。本発明の意図では、用語「抗体」には、標的抗原への結合活性を保持する抗体全体の断片が含まれる。そのような断片には、Fv、F(ab’)、およびF(ab’)2断片、ならびに単鎖抗体が含まれる。
【0074】
抗体は、Sambrook等の方法(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;1989年)など、当技術分野で知られている何らかの方法によって生成してよい。たとえば、従来のハイブリドーマ技術によって、または、改変された抗体もしくは断片の場合、組換えDNA技術によって、たとえばプロモータに操作可能に結合した改変された抗体もしくは断片をコードするDNA作製物を適切な宿主ベクター中に発現させることによって抗体を調製してよい。適切な宿主細胞には、細菌(たとえば、大腸菌)、酵母、昆虫、および哺乳類の細胞が含まれる。また、宿主動物、たとえばラットまたはウサギに本発明のペプチドを接種すること、および免疫血清を回収することを含む従来の手段によって、ポリクローナル抗体を調製してもよい。
【0075】
本発明は、本発明のポリペプチドを含む薬剤組成物も提供する。本発明のポリペプチドを含む組成物は、T細胞および/またはB細胞エピトープを含み、肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチンとして使用してよい。
【0076】
本発明のポリペプチドを使用すると、ある範囲の哺乳類の種に、3型肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチン接種を施すことができる。ヒトへのワクチン接種が特に望ましい。
【0077】
本発明の組成物は、適切な何らかの経路によってヒトを含む哺乳動物に投与してよい。適切な経路には、口腔への局所的塗布、錠剤もしくはカプセル剤による経口的送達、皮下、筋肉内、静脈内、および皮内送達を含む非経口的送達が含まれる。好ましい投与経路は、全身免疫化をもたらすことを考えて、注射、通常は皮下もしくは筋肉内注射である。
【0078】
先に示したように、本発明によるポリペプチドは、異なる免疫原性の他の抗原と混合してもよい。
【0079】
本発明の組成物は、対象者に、単独で、リポソームの形で、または他の送達分子と結合させて投与してよい。有効投与量は、送達分子の使用の有無、送達経路、ワクチン接種する哺乳動物の大きさなど、多くの要因に応じて変わる。典型的な用量は、1回に本発明のポリペプチドを0.1〜100mg、たとえば1回0.1〜1mg、1〜5mg、5〜10mg、および10〜100mgである。1〜5mgの用量が好ましい。
【0080】
投与スケジュールは、たとえば、投与経路、レシピエントの種、およびレシピエントの状態により様々である。しかし、1回式投与および複数回式投与が、1日、1週間、または1ヶ月単位の期間におよぶものと考えられる。若年のヒトの患者への本発明のワクチン組成物の投与レジメンを6ヶ月、2年、5年、および10年とし、初回分にはアジュバントを加え、後続分を初回分のポリペプチド量の約1/2〜1/4とすると好都合である。しかし、投与頻度は、患者の抗体量をモニターすることによって決定する。
【0081】
本発明のポリペプチドは、単独での投与が可能であるが、処方製剤として与えることが好ましい。本発明の処方は、少なくとも1種の活性成分、すなわち本発明のポリペプチドと共に、1種または複数のその許容される担体、および任意選択の他の治療用成分を含む。担体は、処方の他の成分と適合し、かつそのレシピエントに有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。
【0082】
免疫原性ポリペプチドを活性成分として含有するワクチン製剤は、当分野の技術者に知られている。通常、このようなワクチンは、液状の溶液または懸濁液の注射剤として調製されるが、溶液または懸濁液に適する、注射前に液体に入れる固体に調製してもよい。製剤は、乳化されていても、このタンパク質がリポソームにカプセル封入されていてもよい。活性免疫原性成分は、しばしば、薬剤として許容され、かつ活性成分と適合する賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、たとえば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびこれらの混合物などである。さらに、望むならワクチンは、二次的な量の、湿潤剤や乳化剤などの補助的物質、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を高めるアジュバントを含有してよい。
【0083】
有効となるアジュバントの例には、それだけに限らないが、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−n−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、n−MDPと呼ぶ)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタムニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと呼ぶ)、およびRIBIが含まれ、このRIBIは、2%のスクアレン/Tween80乳濁液中に、細菌から抽出した3種の成分、すなわちモノホスホリル脂質A、トレハロースジミコラート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有する。様々なアジュバントも含むワクチンの形のHic抗原配列含有免疫原性ポリペプチドを投与した結果として生じる、このポリペプチドを標的とする抗体量を測定することによって、アジュバントの有効性が決定される。
【0084】
ワクチンは、注射、たとえば皮下または筋肉内によって非経口投与すると好都合である。他の投与方式に適する処方には、座剤、および場合によっては経口の処方が含まれる。座剤の伝統的な結合剤および担体には、たとえばポリアルキレングリコール、またはトリグリセリドが含まれ、このような座剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含む混合物から生成できる。経口処方は、たとえば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、通常使用される賦形剤を含む。このような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放処方、または粉末の形をとり、活性成分を10%〜95%、好ましくは25%〜70%含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥した場合、凍結乾燥材料は、投与前に、たとえば懸濁液として再構成することができる。緩衝液中で再構成を行うことが好ましい。
【0085】
患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤、および丸剤は、たとえば、Eudragit“S”、Eudragit“L”、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、またはヒドロキシプリピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを施して提供してよい。
【0086】
本発明のポリペプチドは、中性または塩の形のワクチンに処方してよい。薬剤として許容される塩には、(ペプチドの遊離アミノ酸基と形成した)酸の付加塩が含まれるが、これは、たとえば塩酸またはリン酸などの無機酸とも、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸などの有機酸とも形成される。遊離カルボキシル基と形成した塩は、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは第二鉄の水酸化物など、無機塩基からも、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど、有機塩基からも誘導できる。
【0087】
非経口投与に適した処方には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、およびその処方を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有する水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、増粘剤、およびその化合物が血液成分または1種または複数の臓器を標的とするように設計したリポソームもしくは他の微粒子系を含む水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。
【0088】
考えられる処方の、発熱物質を含まない無菌の水溶液および非水性溶液が好ましい。同様に好ましいものは、本発明のポリペプチドがリポソームに含まれている処方である。注射溶液および懸濁液は、先に記載した種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から即座に調製することができる。
【0089】
経口的な投与方法では、全身的作用が生じる。経口的に活性な製剤は、ゲル、練り歯磨き、口腔洗浄剤、またはチューインガムなど、何らかの適切な担体に含ませて処方してよい。
【0090】
問題の処方のタイプは顧慮されるが、本発明の処方が、上記で特に述べた成分に加えて、当技術分野で慣習的な他の薬品も含んでよいことを知っておくべきである。
【0091】
したがって、本発明は、哺乳類の宿主に肺炎球菌によって引き起こされる感染のワクチン接種を施し、またはそのような感染を治療する方法を提供するが、この方法は、宿主に有効量の上述の薬剤組成物、たとえばワクチン組成物を投与することを含む。
【0092】
受動免疫化向けには、モノクローナル抗体を含む抗体、およびFab断片など、その断片が、本発明のポリペプチドを含む処方について上記で示したように処方される。好ましい受動免疫化用処方には、ゲル、練り歯磨き、口腔洗浄剤、またはチューインガムなど、固体または液体処方が含まれる。
【0093】
本発明の別の態様は、裸の(naked)核酸ワクチンである。この実施形態では、ワクチン組成物は、ポリペプチドよりもむしろ核酸、通常は単離された核酸、好ましくはDNAを含む。核酸は、哺乳類の宿主に注射され、in vivoで発現して、本発明のポリペプチドを生じる。これがT細胞応答を刺激し、本発明のポリペプチドを直接ワクチン接種したのと同じように、肺炎連鎖球菌、たとえば、う蝕に対する防御免疫をもたらす。
【0094】
核酸ワクチン接種は、T細胞および/またはB細胞応答を刺激するポリペプチドをコードしさえすれば、本発明によるどんな核酸でも実施できる。このような核酸は、通常は上記で定義した発現ベクターの範囲に含まれよう。そのような発現ベクターでは、本発明による核酸が、通常は、哺乳類の宿主細胞中で発現を指令できるプロモータに操作可能に結合する。たとえば、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモータなど、哺乳類細胞中で発現するウイルス遺伝子由来プロモータが適切である。同様に適切なものは、「ハウスキーピング」遺伝子プロモータなど、哺乳類細胞型の多くまたは全ての中で発現する哺乳類遺伝子由来プロモータである。一つのそのようなプロモータは、p−ヒドロキシメチルCoA還元酵素(HMG)プロモータである(Gautier等(1989年)の「Nucleic Acids Research」第17巻、8839ページ)。
【0095】
裸の核酸のワクチン接種では、本発明による核酸配列がプラスミド・ベクターに組み込まれていることが好ましい。共有結合性閉サイクル(CCC)・プラスミドDNAは、直接に筋細胞によって吸収され、細胞のゲノムDNAに組み込まれることなく発現し得ることが判明したからである(Ascadi等(1991年)の「The New Biologist」、第3巻、71〜81ページ。裸の核酸ワクチンは、従来のポリペプチドを基にしたワクチンに関して上記で述べた処方型のいずれかとして調製してよい。しかし、非経口的注射、特に筋肉内注射に適する処方が好ましい。裸の核酸ワクチンは、ポリペプチドを基にした従来のワクチンに関して上記で述べた手段のいずれかで送達してよいが、筋肉内注射が好ましい。
【0096】
あるいは、核酸ワクチンは、微粒子銃による投与向けに、あるいはリポソーム、リポフェクチンなどのカチオン性リピド処方、または他の適切な担体を含む処方で提供してもよい。
【0097】
したがって、本発明は、上述の核酸配列もしくはベクター、および許容される担体を含むワクチン組成物を提供する。
【0098】
実験的研究への導入
補体依存的なオプソニン食作用は、肺炎連鎖球菌感染からの非常に重要な防御策である(33)。最近の2つの研究が、3型連鎖球菌がどのようにして補体系の正常な機能を破壊するかを論じている。一方の研究(14)は、補体第二経路が細菌の効率的な排除に不可欠であること、および肺炎球菌による補体活性化への介入が病原性決定要因であることを示す。研究者等は、PspA陰性変異体と野生型細菌の比較に基づいて、知られていない機構によってPspAが第二経路の動員をブロックすると主張している。他の研究(15)は、補体因子Hが、先の補体活性化とは無関係に肺炎球菌表面のトリプシン感受性構造に結合することを述べている。この研究が、fHの結合に関して、PspAの主たる寄与があり得ないとしていることは注目に値する。これらの発見は、H因子結合タンパク質が独立した病原因子であるかもしれないことを示唆する。
【0099】
この調査は、3型肺炎球菌でのfH結合の原因である新規の肺炎球菌表面タンパク質を記載する。このタンパク質(Hic)をコードする遺伝子は、pspCの座位、すなわち考えられる病原性決定要因および感染防御抗原中に見出されるが、以前に述べられたpspCアレルより顕著に非定型特性を示す。いくつかのpspCアレルを配列決定した研究(16)では、PspC抗原と反応するタンパク質が存在せず、PCR実験によりpspC遺伝子が増幅されなかったので、3型株は、pspC陰性であるとみなされた。タンパク質のNH2末端部分の領域は別として、HicとPspCには配列相同性がほとんどなかった。さらに、Hicは、LPXTGXモチーフの存在によって細胞壁に固定されるが、PspCは、コリン結合性モチーフを収容する。これに関して、Hicは、同様にfHに結合することが知られているS.pyogenes中Mタンパク質に類似している(11)。Hic欠損変異株は、野生型株とは対照的に、ヒト血漿からfHを吸収しなかった。この変異株は、放射能標識したfHに結合せず、fHのPR218細菌への結合の大部分またはすべてが、肺炎球菌表面のHicの存在によるものであることを示唆した。徹底的なスクリーニングは実施していないが、調べた株の大部分がfHを結合し、この表現型が3型株に限らないことを示唆した。さらに、Hicの組換え型fH結合性断片は、放射能標識したfHの、別の血清型の肺炎球菌への結合と競合する。PspCは、Hicに類似した領域によって肺炎球菌にfHを結合させるが、他の表面構造が、Hicのように、fHの同じ部分と相互に作用することも除外できない。GSTおよびNH2末端Hic領域(GST:Hic39−261)とfH間の融合の表面プラスモン共鳴実験は、相互作用の融和性が高いことを示した。
【0100】
様々なPspCタンパク質およびHicのNH2末端部分における類似領域の存在は、組換えによって発現させたHic断片中に含まれるこの幾分可変性の領域が、多くの肺炎球菌株でのH因子結合の原因であるという興味深い可能性を提示する。PspCは感染防御抗原であり、NH2末端領域は、特定の抗体の誘発を避けるために、おそらくかなりの遺伝的変異を受けなければならないことが以前に示されている。しかしこれは、fHの特異的結合を妨げない。比較として、S.pyogenesのM5およびM6タンパク質が、その高頻度可変領域によってH因子様タンパク質1に結合することを示した(12)。同様に、数種のM様タンパク質は、高頻度可変性NH2末端領域によって別の補体制御タンパク質、すなわちC4結合タンパク質に結合する(34)。我々は、PspCのNH2末端切断型を発現させる2型変異株が、親株D39とは異なり、血漿からfHを吸収しないことを発見した。切断にはHicに相同性を示さないPspCの部分も関与するので確証的なものではないが、この実験は、fH結合がspCおよびHicのNH2末端領域に媒介され得るという考えを支持する。
【0101】
補体系機能の妨害が肺炎球菌の病原性に深く関連した側面であることを多くの研究が示している。より具体的には、fHの結合が、オプソニン食作用への抵抗性と相互に関連していると示されている。先の研究は、細胞壁と莢膜の両方にC3bが沈着したにもかかわらず、3型肺炎球菌が食作用に強く抵抗したことを示した(29)。我々のデータは、hic、すなわち非定形性の強いpspCアレルが3型肺炎球菌の主要なfH結合タンパク質をコードすることを示す。fHの補体阻害機能は、Hicとの相互作用による影響を受けない。Hicは、肺炎球菌表面で活性補体阻害物を蓄積することによって、単独またはPspAと共同で作用して、C3bの沈着および随伴するオプソニン食作用を阻害する。以前に述べられているように、3型、4型、および14型肺炎球菌の推定上のC3プロテイナーゼ(35)は、同様の作用を有するはずである。Hicの領域が内在性の第二経路阻害能を示すというこの観察によって、この病原性機構の重要性が強調される。結論として、肺炎球菌は、補体系を妨害する傾向が強いようである。fHの結合は、異なる機構によるものが、A群肺炎球菌(11)、Y.エンテロコリチカ(13)、および淋菌についても述べられており(36,37)、細菌のヒト宿主への順応において一般化した題目としても差し支えない。
【0102】
以下では、添付の図を参照しながら本発明を開示する。
【0103】
(実験手順)
細菌株
この研究で使用した肺炎連鎖球菌株を表1に記載する。非被包性株PR201、PR212、PR215、およびPR218では、莢膜座位全体を欠失させ、(F.Ianelli、B.J.Pearce、およびG.Pozziより提供された)カナマイシン(Km)耐性カセットで置換した。3%のウマ血液を補充したTSB(Difco)中またはTSA(寒天添加TSB)上、37℃で肺炎球菌を成長させた。適切であるなら、カナマイシン(500μg/ml)またはクロラムフェニコール(3μg/ml)を加えた。結合アッセイに使用する細菌は、0.2%のYeast extract(Difco)を補充したTodd−Hewitt broth(Difco)中で成長させた。大腸菌株DH5αは、pGEXを含有する場合はアンプシリン(50μg/ml)を補充したLuria−Broth(Difco)中またはLB寒天上で成長させた。
【0104】
DNA法、クローンニング、および配列決定
PCR SOEing(19)によって、クロラムフェニコール転移酵素カセットを、hicの上流および下流に見出される配列の側に配置した。この作製物でPR218を形質転換した。その結果、二重交差突然変異誘発法によって、hic遺伝子がこのcatカセットで置換されて、hic欠損変異株FP13を産生した。
【0105】
それぞれBamHIおよびEcoRI制限部位を含む、オリゴヌクレオチドHICfl(5’−TGGGATCCCAGAGAAGGAGGTAAC TAC3’、配列番号2)およびHICrl(5’−GGAGCCTGAATTCGACGAAG−3’、配列番号3)をポリメラーゼ鎖反応(PCR)に使用して、Hicのアミノ酸39〜261に対応するDNAを増幅した。このPCRは、Taqポリメラーゼ(Gibco BRL)で実施し、94℃で1分間、50℃で1分間、さらに72℃で1分間の30サイクルからなり、その後72℃で7分間、最終的に伸展させる。細菌コロニーを水中に再懸濁させ、5分間沸騰させ、13000×gの遠心分離によって細菌細片を除去して鋳型を調製した。PCRで増幅された断片を、Sephaglas Bandprep(Pharmacia Biotech)でゲル精製し、BamHIおよびEcoRI(Pharmacia Biotech)と共に消化し、T4 DNAリガーゼ(Pharmacia Biotech)を使用して、同様に消化したベクターpGEX−5X−3(Pharmacia Biotech)と結合させた。次いで、GST遺伝子融合系プロトコル(Pharmacia Biotech)に従って、DH5α大腸菌に電気穿孔してプラスミドpGEX−SX3:hic(39〜261)を入れた。プラスミド・ミニプレップおよび制限酵素消化による挿入の存在について形質転換体をスクリーニングした。このプラスミドを精製し、挿入断片の全部を配列決定することによって、融合タンパク質GST:Hic39−261の過剰発現に使用したクローンを検証した。GST遺伝子融合系マニュアル(Pharmacia Biotech)の指示に従って、融合タンパク質をアフィニティー精製にかけた。
【0106】
リガンド結合およびタンパク質法
対数相肺炎球菌(ODおよそ0.4)で血漿吸収実験を実施した。0.05%のTween20を含むpH7.4のPBS(PBST)中で細菌を2回洗浄し、細菌濃度を2×1010細胞/mlに調節した。細菌100μlをヒト血漿100μlと共に1時間インキュベートした。細菌をPBSTで5回洗浄し、pH2.0の0.1Mグリシン/HCl100μlで、結合したタンパク質を溶離させた。溶離した材料のpHを1Mのトリスで7付近に調節した。C3欠損血清は、スウェーデンのHuddinge HospitalのG.Eggertsen博士の好意による提供で、C3が選択的に完全に欠損した(C3<1mg/リットル)患者から得た。
【0107】
8〜12%のアクリルアミドを含むSDS−PAGE(20)によってタンパク質試料を分離した。(21)に記載のとおり、タンパク質をImmobilon−P(商標)PVDF膜(Millipore)にブロットした。1:1000に希釈したfHに対するウサギポリクローナル抗血清を一次抗体源とした。西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した抗ウサギ・ヤギ抗体(Bio−Rad、Bio−Rad Laboratories、CA)を二次抗体として使用し、(22)に記載のように、化学発光によって免疫反応性バンドを検出した。
【0108】
Iodobeads kit(Pierce)を使用して125Iで放射能標識したfH(Sigma)の、スロット・ブロット、ウェスタン・ブロット、および細菌結合アッセイを行った。SephadexG−25(Pharmacia Biotech)でのゲル濾過によって、組み込まれなかった125Iを除去した。スロット・ブロット装置(Schleicher & Schuell)のニトロセルロース膜に5、1、0.02、および0.004μgの精製したタンパク質を塗布することによって、スロット・ブロットを行った。0.25%(w/v)のゼラチン(Difco)を含むPBST中で膜を4×20分間ブロックした。次いで放射能標識したfH(200000cpm/ml)を加え、室温で1時間膜をインキュベートした。PBST、0.5M NaCl中で、4×20分間膜を洗浄し、ホスホイメージング・プレート(フジ写真フィルム)への露出によって、膜と関連性のある放射能活性を視覚化した。ウェスタン・ブロット膜も同様に処理した。肺炎球菌の結合アッセイは、対数相細菌(OD600およそ0.4)を使用して、(23)に記載のとおりに実施した。
【0109】
製造者の説明書に従い、アフィニティー精製した抗GST抗体(Biacore)を標準のアミン結合によってセンサ・チップCM5(Biacore)に結合させることにより表面プラズモン共鳴を行った。およそ10000共鳴単位(RU)の抗体を結合させた。次いで、500〜1500RUのGSTまたはGST:Hic39−261(10g/ml)を固定化することによって、各分析サイクルを開始し、その後fH(2〜0.127μM)を注入した。PBST中で動力学研究を実施した。チップを10mMのグリシンpH2.2で再生することによって、各サイクルを停止した。BiaEvaluation3.0の多重モデルを用いて大域データ解析を実現した。
【0110】
溶血アッセイ
fHを媒介とする第二経路阻害について以前に述べられたアッセイを利用した(24)。ウサギ赤血球(National Institute of Veterinary Medicine、スウェーデン、ウプサラ)を洗浄し、5×108細胞/mlで懸濁させた。ホモ接合性C2を欠損した患者の血清(25)を補体供給源として使用した。高度に精製したfHも、好意でTruedsson博士から提供を受けた。ベロナール緩衝食塩水中、16mMのEGTA、4mMのMg2+、および0.1%のゼラチンを用いて溶血反応を実施した。予備実験において、このアッセイ系で約80%の溶血を発生させるC2欠損血清濃度を決定した。最終的なインキュベーション混合物は、追加のタンパク質(それぞれ30、90、または60μMのfH、GST、またはGST:Hic39−261)を添加したまたは無添加の1/12(200μl)希釈C2欠損血清、および2.5×107個のウサギ赤血球(50μl)を含有していた。赤血球は、他の試薬の5分後に加えた。5〜40分後、750μlの冷VBS、10mMのEDTAを加えて反応を停止した。試料を5分間3000rpmで遠心分離し、上清を除去して、412nmの吸光度を測定した。
【0111】
生物情報学
MacVector6.5.3(Oxford Molecular、英国オックスフォード)での配列比較を行った。データベース検索には、The National Institute for Biotechnology InformationのEntrez serverを利用した。4型肺炎球菌由来のPspC配列は、http://www.tigr.orgのThe Institute for Genomic Research websiteから得た。
【0112】
結果
肺炎連鎖球菌による補体因子Hの結合
我々の研究所での以前の観察は、肺炎連鎖球菌がヒト血清からタンパク質を吸収できることを示唆した(非公表の結果)。このような相互作用の性質をより適切に調査するために、被包性および非被包性の一連の菌株(表1)を血清と共にインキュベートした。
【0113】
肺炎球菌に結合した血漿タンパク質を、洗浄後、溶離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離した。特に、D39、HB565、3496、G54、PR201、PR212、PR218、およびFP13によって吸収され、これらから溶離した血漿タンパク質のSDS−PAGE分析を実施した。希釈した血漿およびpHもゲル上を移動した。菌株D39(2型、被包性)、および4種の非被包性株すべて(血清型2、3、3、および19)が推定分子量140kDaのタンパク質を吸収した。繰り返した実験では、PR218、すなわちAvery株A66の非被包性派生株(Pearce、IannelliおよびPozzi、manuscript in preparation)が、140kDaタンパク質の最も顕著な吸収を一貫して示した。PR218によって吸収されたタンパク質をゲル内トリプシン消化にかけ、エドマン分解によって6本の内部フラグメントを配列決定した。
【0114】
これらの配列は、ヒト補体因子Hの様々な領域との同一性が100%であった。電気ブロット法によって、得られたゲルの複製をPVDF膜に移し、ウサギ抗fH抗血清で探索した。抗血清は、前述の140kDaバンド、血漿中の同様サイズのバンド、および精製したfHと反応した。50kDa付近に相当するバンドとも弱い反応性があった。NH2末端配列決定にかけると、このバンドは、ヒト免疫グロブリン重鎖として特定され、免疫グロブリンの肺炎球菌への特異的または非特異的結合、および後続する次のヤギ抗ウサギ抗体との交差反応性を示唆した。
【0115】
fHの結合が補体活性化および細菌表面でのC3沈着に従属的であることを退けるために、C3欠損血清を使用して、菌株D39での血漿吸収を繰り返した。正常なヒト血漿とC3欠損血清の吸収の結果を比較すると、抗E抗体と反応するタンパク質の存在量は等しく(データ表示なし)、fHの結合がC3と無関係であることを示した。
【0116】
放射能標識したfHの結合について肺炎連鎖球菌株群を調べた。結合の度合いは菌株同士でかなり様々であったが、大部分の菌株が有意なfH結合を示した(表2)。
【0117】
被包性株は一般に、対応する非被包性株よりも結合性が多少弱かった。結合がタンパク質構造に媒介されるのか調査するために、細菌を異なるプロテアーゼで処理してから、fHの菌株PR218への結合を調べた(データ表示なし)。結合は、パパインでの前処理によって、ほとんど完全に不能になった。トリプシンでも半分以上に低下したが、ペプシンではそれほど効果がなかった(<50%の低下)。これらの結果は、細菌をトリプシンで前処理することによってfH結合を不能にできるという先の観察の裏づけになる(15)。
【0118】
fH結合性タンパク質をコードする候補遺伝子の同定および配列分析
最近の論文(15)が、3型肺炎球菌は、fHがタンパク質の表面構造に結合するために、補体活性化および食作用に耐性であると提唱している。fHと相互に作用することが知られている以前に述べられた細菌表面タンパク質には、連鎖球菌Mタンパク質(11)およびY.エンテロコリチカ由来のYadA(13)が含まれる。YadA、M1、M1.1(26)、M6(27)、およびM様タンパク質H(28)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を使用して、The Institute for Genomic Research(http://www.tigr.org)から入手した肺炎球菌(4型株JNR.7/87)ゲノム・データベースを検索した。すべてのプローブで最高スコアの相同性が、2106bpのオープン・リーディング・フレーム(ORF)中に見出され、アミノ酸(aa)702個の推定上のタンパク質をコードした。肺炎球菌タンパク質と検索に使用したfH結合性タンパク質との相同性の度合いは低かったが、配列全体を比較すると有意であった。しかし、相同性の著しく高い数箇所の限定された領域が存在していた。この推定上のタンパク質でのGENBANK検索によって、PspCアレルとして特定され、同じくSpsA、CbpA、またはPbcAを表示した(16)。次いでPspCを逆にStreptococcus pyogenesゲノム配列決定プロジェクトの検索に使用し、最高スコアの組合せがM1タンパク質をコードすることが判明した。
【0119】
我々は、Avery株A66(3型)およびその誘導株PR218のpspC遺伝子の染色体座位を配列決定することにした。血清型3は食作用に強力に抵抗し(29)、PR218はヒト血漿由来のfHの吸収が顕著であった。この座は、612aaの推定上のタンパク質をコードする1836bpのORFを含んでいた。H因子結合性補体阻害因子であるので、この遺伝子を仮にhicと名付けた。(GenBank受入れ番号AF252857)。Hicタンパク質(図1の上方に略図を示す)は、アミノ酸11個の反復単位22個からなるプロリン高含有領域を含む。COOH末端付近には、共通配列LPSTGS、すなわちグラム陽性細胞壁に固定されたタンパク質の典型的なものが存在する(30)。この配列が疎水性のCOOH末端に続く。このHic配列を使用して、肺炎球菌ゲノムプロジェクト・データベースを検索し、Mタンパク質を最適な組合せとして同定した。数種の肺炎球菌表面タンパク質がHicに相同的であることが判明した。2型および47型肺炎球菌由来のSpsAは、Hicとの相同性が高い領域を含む。SpsAは、分泌型IgAおよびその分泌成分を結合する(17)。CbpA(18)、すなわち、2型肺炎球菌のアドヘシンかつ病原性決定因子もこの領域を含み、PbcA(GENBANKからの非公表の配列)も同様である。SpsA2、CbpA、およびPbcAは、一緒になってPspCアレルのD39系列を形成する(16)。Hicの予想される37aaのリーダー・ペプチドを含む149aaの長さのNH2末端領域は、血清型1、2、4、6A、および19由来のPspCタンパク質中の対応する領域と整合していた(図2)。PspCタンパク質中のこの領域についての特定の機能は、これまでに提唱されていない。興味深いことに、Hicの残部は、PspCプロリン高含有領域中のより短い配列単位を除くPspCタンパク質との相同性をそれほど示さなかった。Hicとは対照的に(図1、下)、PspCタンパク質は、一連の反復単位と共にコリン結合性モチーフ、すなわち、表面付着のための異なる仕組みを含む。二次構造をコンピュータで予測すると(31、32)、Hic(aa40〜270)およびPspC(aa50〜250)のNH2末端領域中のαへリックス構造の有力な予測がもたらされた。
【0120】
Hic欠損変異株の構造および特性
肺炎球菌のfH結合への考えられるHicの寄与を調査するために、さらなる研究では、ヒト血漿から最も顕著にfHを吸収する非被包性株PR218(血清型3)を選択した。重複伸長によるスプライシング(遺伝子SOEing)(19)を利用して、抗生物質耐性カセットをhic遺伝子の上流および下流に見出される配列の側に配置した。PR218をこの作製物で形質転換し、二重交差突然変異誘発法によってhic遺伝子を欠失させた。得られた菌株FP13は、通常の成長培地中で親株と同じくらいよく成長した。hicの欠失をPCR実験によって確認した。
【0121】
この変異株で上述のものと同一の血漿吸収実験を行った。親株とは対照的に、抗fH抗血清ではfHの位置のバンドが検出されなかった。さらに、細菌を連続的に希釈して、放射能標識したfHの野生型および変異型細菌への結合を調べた(図3)。親株PR218とは異なり、変異株FP13のfH結合は、最高の細菌濃度でも、バックグラウンド・レベルであった。また、pspC遺伝子が切断されているために、PspCの405個のNH2末端アミノ酸を欠いているD39変異誘導株を作製することによって、肺炎球菌fH結合への考えられるPspCの寄与も調べた。FP7と称したこの変異株を血漿吸収実験に使用したが、抗fH抗体と反応したバンドは溶出しなかった(データ表示なし)。
【0122】
HicのH因子結合性領域の地図作成(mapping)
我々は、Hic、PspC、CbpA、SpsA、およびPbcAに共有される部分を含むHic非反復領域の結合特性を調査することにした。そのため、HicのNH2末端部分をコードするhic領域(aa39〜261)をベクターpGEX中にクローン化して、GSTをコードする遺伝子と融合させた。この挿入の対照配列決定によって、部分的なhic遺伝子の存在を検証すると、菌株A66からのDNA配列との同一性が100%であった。GST:Hic39−261およびGSTを過剰発現させ、アフィニティー精製にかけ、SDS−PAGEによって分析した。一部は分解されたが、主要なタンパク質バンドの質量は期待通り(54kDa)であった。同一のゲルを膜にブロットし、次いでこれを放射能標識したfHと共にインキュベートし、洗浄し、オートラジオグラフィにかけた。fHはGST:Hic39−261には結合したが、GSTには結合しなかった。連続希釈物(5、1、0.2、0.04μg)の形の融合タンパク質およびGST対照もニトロセルロース膜に塗布した。膜を放射能標識したfHで探索すると、融合タンパク質に結合し、GSTには結合しなかった。さらに、融合タンパク質を競合結合アッセイに使用して、GST:Hic39−261がPR218細菌へのfH結合と競合し得るかを調査した。結果(図4)は、融合タンパク質のHicドメインは細菌のfH結合をブロックするが、GST単独では結合に影響を及ぼさないことを示している。肺炎連鎖球菌株3496、G54、PR215、およびHB565でも同様の実験を行った。その実験でも、GST:Hic39−261はfHの試験菌株への結合をブロックしたが、GSTは影響を及ぼさなかった(データ表示なし)。G54株は血清型19であり、Hicと19型肺炎球菌PspCの類似性(図1Bを参照のこと)は、非3型株へのfH結合がHicと相同的なPspC領域を媒介とすることを示唆する。
【0123】
表面プラズモン共鳴によってGST:Hic39−261とfHの相互作用をさらに調べた。抗GST抗体をカルボキシメチルデキストラン・チップに結合させてから、リガンドとしてのGST:Hic39−261を固定化した。高度に精製したfHを様々な濃度の分析物として使用した。fHは、全濃度範囲(0.1〜2μM)でGST:Hicと相互に作用し、最高のfH濃度で部分的に飽和した。チップへの結合をそれぞれ独立にして、実験を3回繰り返した。1つのチップを連続して再生する代表的な実験を示す(図5)。対照として、GSTを抗GST抗体チップに同様に固定化した。流体相fHの結合はなかった(データ表示なし)。標準のLangmuir1:1モデルを適用して、データの包括的解析を行って、会合/解離の速度定数、会合定数、および解離定数を決定した。値は、3種の異なる実験の平均±標準偏差である。
【0124】
Hicおよび補体阻害
機能の観点からの重要な問題は、HicのfHへの結合がfHの補体阻害機能に影響を及ぼすかである。この論点に取り組むために、fHを加えることによってウサギ血清中赤血球の補体を媒介とする溶解を阻害する、以前に述べられた方法論を適応させた(24)。C2欠損血清を補体供給源として使用して、古典経路からの影響を排除した。最初の実験を行い、fHを加えると、第二経路を媒介とする溶血が用量依存的に阻害された(データ表示なし)。反応物中のfHの濃度を(血清中のfHの)3倍に増大させることによって、溶血の完全な抑制を実現した。fHの増加がこれより少ないと、溶血の抑制は部分的となる。GST:Hic39−261、GST、またはfHとGST:Hic39−261(モル比1:2)が溶血に及ぼす影響を調査した。fHとGST:Hic39−261の相互作用を平衡にするために、プレインキュベーションのステップ(5分間)に若干の時間をとった。溶血の動力学研究は、fHを媒介とする補体活性化阻害が、反応物中のGST:Hic39−261の存在によって低下しないことを示した。むしろ、fHとGST:Hic39−261が同時に存在することによって、抑制の増強がもたらされる。興味深いことに、GST:Hic39−261を(過剰なfHを加えずに)単独で加えたときに部分的に溶血が抑制されたので、この融合タンパク質は、内在性の補体阻害作用を有するようである(図6)。
【0125】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【図1】
HicとPspCの比較を示すHicとPspCの略図である。シグナル・ペプチド(SP)および壁貫通領域(W)を表示する。
【図2】
HicとPspCの対立配列変異体、すなわちPspC6A(配列番号5)、PspC2(配列番号7)、PspC19(配列番号9)、PspC19TIGR(配列番号10)、およびSpsA1(配列番号11)の配列の比較を示す図であり、Hic(血清型3)、およびSpsAを含むPspC対立配列変異体由来のNH2末端領域のClustalWアラインメントである。同一または類似の残基に、それぞれ濃い陰および淡い陰をかけた。タンパク質名中の数字は、その配列の入手元の菌株血清型を示す。PspC.TIGRは、血清型4の菌株由来である。GenBank/EMBL受入れ番号は、PspC2がAF068645、PspC6AがAF068645、PspC19がAF068648、SpsAlがY10818である。
【図3】
放射能標識したH因子のHic欠損変異株への結合に関するグラフである。PR218(□)およびHic欠損変異株FP13(◆)の連続希釈物を放射能標識したfHと共にインキュベートした。結合は、加えられた放射能の百分率として示す。データの点は、複製試料での3回の実験の平均である。標準偏差を誤差バーで示した。
【図4】
H因子のHicへの結合を示すグラフである。競合結合アッセイは、非標識のfH(O)、GST(□)、およびGST:Hic(39−261)(◆)の次第に増大する濃縮物の存在下、PR218細菌(109CFU/ml)を放射能標識したfHと共にインキュベートすることによって実施した。
【図5】
表面プラズモン共鳴によるHicとH因子の相互作用の動力学分析を示す図である。(3つの中から)1つの代表的なセンサブラフを示す。分析物(fH)の濃度は、2000、667、333、167、および83nMとし、時間の尺度を0が注入開始点を表すように調節した。
【図6】
HicおよびH因子が第二経路溶血を阻害したことを示すグラフである。ウサギ赤血球をC2欠損血清と共にインキュベートし、溶血の動力学研究を行った。fH、GST、および/またはGST:HiC31−261の溶血への影響を調査した。数字は、溶血を対照での最大溶血画分として表す(90〜95%)。示したデータは、1つの代表的な実験からのものである(n=3)。曲線は、対照の反応(□)、fHとの反応(◆)、GST:Hic39−261(□)、GST(△)、およびfHとGST:Hic39−261の組合せ(O)を表す。
Claims (18)
- H因子結合能を有する、予防または治療に使用するためのポリペプチドであって、
(a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、
(b)H因子を結合できる(a)の変異体、または
(c)H因子を結合できる、少なくともアミノ酸20個の長さの(a)もしくは(b)の断片、
を含む上記ポリペプチド。 - (a)配列番号1のThr38〜Lysl49のアミノ酸配列、
(b)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる(a)の変異体、あるいは
(c)肺炎連鎖球菌に対して免疫応答を生じる、または抗Hicタンパク質抗体に結合することのできる、少なくともアミノ酸6個の長さの(a)もしくは(b)の断片、
から選沢されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むワクチン組成物。 - 変異体(b)の配列(a)との配列同一性が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である請求項1または請求項2に記載のポリペプチド。
- (a)配列番号1のアミノ酸配列、または
(b)(a)との配列同一性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であるポリペプチド、
を含む、アミノ酸15〜800個の長さのポリペプチド。 - ポリペプチドが、
(i)配列番号4のヌクレオチド・コード配列またはこれに相補的な配列、
(ii)前記配列(i)と選択的にハイブリッド形成するヌクレオチド配列またはその断片、あるいは
(iii)(i)もしくは(ii)の前記配列にコードされているものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
を含む、請求項1〜4のいずれか一項で定義したポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。 - 配列番号1の配列のThr38〜Lysl49の部分配列との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%であるアミノ末端アミノ酸配列を含む、医療用のH因子結合性タンパク質。
- 20〜200個のアミノ酸を含む、医療用のH因子結合性ペプチドであって、配列番号1の配列のThr38〜Lysl49の部分配列との相同性が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%であるペプチド。
- 15〜800個のアミノ酸を含む、Hicタンパク質由来のポリペプチドであって、配列番号1のアミノ酸配列との相同性が少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%であるポリペプチド。
- 医療用の請求項4または8に記載のポリペプチド。
- 請求項6〜8のいずれか一項に記載のH因子結合性タンパク質またはペプチドをコードする核酸配列。
- 請求項5または10に記載のポリヌクレオチドを含む組換え型ベクター。
- ベクターが発現ベクターであり、前記のポリヌクレオチドが制御配列に作動可能に結合している請求項11記載のベクター。
- 請求項11または12に記載のベクターで形質転換した宿主細胞。
- 請求項1〜4および請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドを特異的に結合する単離された抗体、好ましくはモノクローナル抗体。
- 請求項1〜4および請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドと共に薬剤として許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む薬剤組成物。
- 肺炎連鎖球菌感染に対するワクチン組成物を調製するための、請求項1〜4または請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
- (a)請求項1〜4または請求項6〜8に定義したポリペプチドを得ること、
(b)前記のポリペプチドをH因子および試験薬品と共にインキュベートすること、
(c)H因子の(a)のポリペプチドへの結合をモニターし、それによって試験薬品がH因子の(a)のポリペプチドへの結合を阻害したか否かを決定すること、
を含む、H因子の肺炎連鎖球菌への結合を阻害する薬剤を同定する方法。 - 請求項17記載のH因子の結合を阻害する物質を同定すること、およびそうして同定された薬剤を使用してH因子の肺炎連鎖球菌への結合を阻害することを含む、肺炎連鎖球菌によるH因子の結合を阻害する方法。
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