JP2004503605A - 流動接触分解のための新規な運転方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、流動接触分解条件下で行われる流動接触分解プロセスを定めるものであって、該プロセスは、一つ以上のライザーを有する流動接触分解装置(FCCU)の少なくとも一つの反応域に複数の原料を注入することによって行われ、その際該複数の原料は少なくとも一つの原料(α)と少なくとも一つの他の原料(β)とを含み、また該原料(α)と(β)とは、(a)コンラドソン残留炭素が少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なり、さらに該原料(α)と(β)とは交互に注入され、しかも該交互注入により該ライザーがサイクル定常状態に保持され、一方FCC装置の残り部分は定常状態にある。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、石油留分などの炭化水素混合物から液体燃料および軽質オレフィンを製造する流動接触分解(FCC)に関する。より詳しくは、本発明は、FCCプロセスの非線形性に関し、これにより炭化水素混合物を転化するための新規なFCC運転方策が導かれる。
【0002】
発明の背景
FCCは、石油精製における主要な転化プロセスであったし、また今後も相当期間に亘ってそのようなプロセスであり続けるであろう。典型的な現在のFCCプロセスにおいては、液体原料混合物は、ノズルから噴霧されてライザーの底部に小滴を形成する。小滴は、高温の再生触媒に接触し、気化し、軽質生成物とコークとに分解しされる。蒸発した生成物はライザーを上昇する。触媒は、サイクロンによって炭化水素流れから分離される。分離されると、触媒は、スチームストリッパーで吸収した炭化水素を除去され、次いでコークを燃焼し尽くす再生装置に送られる。生成物は、分留装置に送られて、いくつかの生成物に分留される。触媒は再生されると、次いでライザーに送り戻される。ライザーと再生装置との一体化装置では、熱バランスが取られ、コークが燃焼し尽くされることによって発生した熱が原料の気化と分解とに用いられる。最も一般的なFCC原料は、断然にガス油または減圧ガス油(VGO)であり、これらは650゜Fを越える沸点の炭化水素混合物である。製油所において、重質の、すなわち残油などの高度に汚染した油を転化することが必要とされる場合には、通常このような重質油の少量がガス油原料に混合される。高品質原油の供給が次第に減少することから、石油産業おいては、FCCはますます重質の汚染原料を転化しなければならないという傾向がある。このような原料は、窒素、硫黄、金属、多環芳香族およびコンラドソン残留炭素(CCR、アスファルテン含有量の指標)などの汚染物質を高レベルで含む。以下、重質成分という用語は、残油、脱アスファルト油、潤滑油エキストラクト、タールサンド、石炭液化油、およびこれらの類似物などの高度な汚染炭化水素を含めて用いられる。このような重質成分は、重質成分が少ない他の原料に添加されて、FCC原料となる。このような重質成分は、今後数年間にFCC原料の重要な一部分となるであろう。
【0003】
重質成分を含むFCC原料が直面する技術的課題は、Otterstedtらによって概説されている(Otterstedt,J.E.、Gevert,S.B.、Jaras,S.G.およびMenon,P.G.、Applied Catalysis、22、159、1986)。それらの中で主な課題は、高いコークおよびガス収率、触媒の不活性化、および煙道ガス中のSOXである。これらの重質成分含有原料のコーク形成傾向は、伝統的にCCR含有量によって評価されてきた。VGO原料は、典型的には0.5wt%未満のCCRを含み、一方常圧および減圧残渣は、典型的にはそれぞれ1〜15wt%および4〜25wt%のCCRを含む。これらの重質成分を分解することにより、既存のFCC装置で必須となるよりはるかに高いレベルのコークが生成されることから、FCC原料中の重質成分の最大許容レベルは、しばしば装置のコーク燃焼能力によって制約される。現在、多くのFCC装置では、原料中に高々5〜15wt%含まれる残油、すなわち重質成分しか分解することができない。原料価格の観点から、既存設備の制約内で、FCCの運転範囲を拡大する、すなわち重質成分の限界を拡大することができる経済的な方法が強く求められている。
【0004】
当技術分野で求められるものは、既存設備の運転限界を広げて、従来とは別の原料の使用を増加することができ、しかも所望の生成物の収率を向上させることができるFCC方法である。
【0005】
発明の概要
本出願人らにより、原料中の重質成分の量が増加した際に、FCCにおける液体収率が線形で悪化することも、コーク収率が線形で増加することもないことが見出された。このことは、原料汚染物質のFCC触媒に対する限界的効果が損なわれることに関して、重質成分の量が増加するにつれてますます弱くなることを意味している。したがって、本発明には、異なる品質の原料を分解するための新規な改良FCC運転方法が開示される。
【0006】
したがって、本発明は、流動接触分解条件下で行われる流動接触分解プロセスを定めるものであって、該プロセスは、一つ以上のライザーを有する流動接触分解装置(FCCU)の少なくとも一つの反応域に複数の原料を注入することを含み、その際該複数の原料は少なくとも一つの原料(α)と少なくとも一つの他の原料(β)とを含み、また該原料(α)と(β)とは、(a)コンラドソン残留炭素が少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なり、さらに該原料(α)と(β)とは交互に注入され、しかも該交互注入により該ライザーがサイクル定常状態に保持され、一方FCC装置の残り部分は定常状態にある。交互注入のサイクル時間は、該ライザーがサイクル定常状態に保持されるようにして慎重に選定される。このようなサイクル運転によって、先行技術の非サイクル運転と比較して、高い時間平均転化率と低いコーク選択性とがもたらされる。この利点は、一定の液体収率における重質成分原料に対する高い分解能力に言い換えることができる。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、通常の研究室および/または小規模設備実験によって容易に得られる図面から、より容易に理解することができる。図1には、原料中の残油含有量に対する転化率およびコーク収率の非線形の従属関係が定性的に示される。転化率の曲線は凸形状であり、これに対してコーク収率の曲線は凹形状である。例えば、FCC装置のコーク燃焼能力が、残油の最大許容含有量が10wt%であるような場合には、先行技術によれば、VGO中に残油を10wt%を含む原料(図1aの点C)を装置に供給することがコスト的に有効であると示唆される。上述の点に関して、本発明では、先行技術に示されるものとは全く異なるFCC運転が示唆される。重質成分を常時10wt%に保持する代わりに、本発明では、重質成分の濃度を二つのレベル(一つは残油が10wt%より高く、他は低い)の間で交互に変えることが求められる。サイクル時間(二つの交互原料を注入するための全結合時間)は、FCCUのライザーをサイクル定常状態で維持するのに十分な長さであるようにして設定される。このようなサイクル時間は、当然にFCC装置の他のサブシステム(分留装置、再生装置、およびストリッパー)の運転が阻害されないように十分短いものである。したがって、FCC装置の他のサブシステムは、装置またはプロセスに影響を与える程に影響されない。
【0008】
当業者においては、本発明に関して、本発明に用いることができる原料の選定方法は知られたものであろう。本質的に、原料は、原料品質指数に対する転化率およびコークメークの非線形曲線から選定される。原料品質指数は、例えば図1aおよび1bに示されるwt%残油、または図3bに示されるwt%原料水素である。前述したように、これらの図は、小規模の通常実験で演繹的に得ることができる。FCC装置の残油能力を把握することは、本発明で用いる二つの原料(α)および(β)を選定するのに役立つ。例えば、液体収率3wt%の増加が所望されることを予定する場合、3wt%の増加が得られる任意の二つの原料[例えば図1aの(D−F)参照、(D−F)は予定される所望の増加である]が選定されるであろう。好ましくは、液体収率の増加は、原料に対して少なくとも約0.5wt%であろうし、また/あるいはコークメークの減少は、原料に対して少なくとも約0.2wt%であろう。コークメークのwt%減少は、図1bのG−Eで表されるであろう。二つのこのような原料を選定することによって、二つの原料を交互に分解して得られる液体生成物の混合物(D)は、二つの原料が先ず混合され、次いで分解された際に得られるであろうもの(F)より高い。図を作成するのに任意の原料品質指数が用いられることに注目する。いくつかを挙げれば、例えば%残油、水素含有量、API重量、窒素含有量、C/H比、および沸点である。典型的には、少なくとも三つの原料が、図が作成するのに用いられよう。
【0009】
図1aを引用すると、本発明の一例では、重質成分の濃度が0wt%および20wt%(図1の点Aおよび点Bである)の間で、等しい時間間隔をもって反復される。他の実施形態においては、濃度が5wt%と15wt%との間で反復されることができる。いずれの場合も、時間平均の残油濃度は10wt%である。しかし、図1に示されるように、交互運転により、先行技術(重質成分を10t%含む原料を用いる非交互(一定原料注入)運転(点Fおよび点G))に比べて、高い時間平均転化率(図1aの点D)および低い時間平均コーク収率(図1aの点E)が得られる。また、図1aおよび1bにより、二つの原料成分(例えばガス油と減圧残油)の品質の差が大きくなるほど、利点(コークメークの低減と液収率の増加)が大きくなることが示唆される。この利点は、図1に示される非線形性に由来する。すなわち、重質成分含有原料に起因する損失は、他の原料に起因する利得で相殺したもの以上である。重質成分含有原料は、CCR,窒素、多環芳香族、および/または金属によって高度に汚染されている。これらは、また低い水素含有量または低いAPI重量によって特性付けられる。
【0010】
本出願人らによれば、本発明がFCC運転をサイクル定常状態に維持することができる理由は、外部の変動に対する種々のFCCサブシステムの応答時間が大幅に相違することによると信じられている。短い接触時間と近プラグ流れとにより、ライザーは、典型的には5秒程度の非常に短い応答時間を有する。再生装置は、典型的には30秒程度の応答時間で、はるかにより緩慢である。ストリッパーおよび分留装置の応答時間は、またライザーのそれより長い大きさのオーダーである。例えば、二つの原料が、それぞれ20秒間注入される場合(すなわち、サイクル時間が40秒である)には、その際ライザーは、次の原料転換のはるか前に、新しい定常状態に迅速に平衡することができる。したがって、ライザーは、実質的に二つの定常状態の間で運転される。ライザーはサイクル定常状態にあるといえる。一方、40秒のサイクル時間は、非常に短いので緩慢な再生装置は応答することができない。原料サイクルに起因する変動は迅速に平準化され、再生装置は基本的に定常状態にある。同様のことは、ストリッパーおよび分留装置においてもあてはまる。例えば、分留装置における液体滞留量、蒸気−液体の多流量、および還流量は、いかなる高頻度の変動をも迅速に消し去るであろう。
【0011】
したがって、当業者においては、サイクル時間を容易に設定し、その際あたかも品質が異なる二つの原料を個別に分解するために二つのライザーがあるかのようにFCC装置を運転することができよう。原料切り替えは、実用的には再生装置、ストリッパーおよび分留装置に対して殆ど影響を及ぼさない。
【0012】
好ましい原料サイクル時間は、各原料が同じ時間量で供給されるという対称性であってもよく、または原料が異なる時間量で供給されるという非対称性であってもよい。原料サイクル時間は、熟練技能者により、ライザー、再生装置、および分留装置の応答時間に基いて容易に選定される。選定は、好ましくは再生装置の運転および生成物回収の観点から許容される最長時間に基くであろう。したがって、本発明においては、両原料を考慮して多数の選択肢が提供される。上記の実施例では、二つの原料が同じ時間間隔で交互に転換されるが、原料を転換するこの対象性方式により、必ずしも最大利得が得られなくともよい。ある場合には、非対象性転換が望まれてもよい。すなわち、各原料は、異なる時間量で供給される。例えば、サイクル時間が40秒である上記の実施例では、直留VGOおよび残油を20wt%含むVGOに対する個々の時間は、それぞれ15秒、25秒であってもよい。本発明による運転で使用される重質成分の原料濃度は、また最大利点に対して選定されてもよい。二つの原料に対して異なる流速が使用されてもよい。したがって、本発明による運転においては、プロセスを最適化するために、多くの自由度がもたらされる。典型的なサイクル時間は、10秒〜3分間、好ましくは20秒〜2分間の範囲である。FCCUは、各サイクルを連続的に繰り返して運転される。
【0013】
当業者においては、本発明による運転が、任意の転化率またはコーク収率に関して、原料中の重質成分を転化する高いFCC装置能力に言い換えられることは、即座に理解されるであろう。本発明のプロセスは、当業者に知られたFCC条件で運転される。
【0014】
前述のものは、重質原料の分解についてのものであるが、当業者においては、本発明による運転は、原料性状が十分に異なる限り、いかなる原料対にも適用できることは、ただちに理解できるであろう。例えば、オレフィンを最大に製造するためには、原料対には、ナフサリッチ基材とナフサリーン基材とが含まれてもよい。適切な原料に関して、原料性状の尺度の限定しない例は、(a)水素含有量(少なくとも約0.2wt%だけ異なる)、(b)炭素水素比(少なくとも約0.3だけ異なる)、(c)API重量(少なくとも約2ポイントだけ異なる)、(d)窒素含有量(少なくとも約50ppmだけ異なる)、(e)中間沸点(少なくとも約200゜Fだけ異なる)、(f)CCR(少なくとも約2wt%だけ異なる)などである。好ましくは、単に二つの原料が用いられよう。
【0015】
本出願人らによれば、本発明の利点は、図1aおよび1bに例証される凸凹挙動に起因すると信じられる。したがって、以下の説明的な限定しない実施例は、種々の原料材、触媒および分解条件に関して、重質原料成分レベルの変化に対する凸凹応答性を明確にすることを目的とする実験で得られた。図1には原料重質成分レベルの尺度として原料中のwt%残油が用いられるが、他の尺度もまた用いることができることが示される。いくつかを挙げれば、例えばCCR、水素、窒素、極性物質および多環芳香族である。
【0016】
本発明の方法は、品質((a)〜(f))が十分に異なる任意の二つの原料に対して使用することができるものの、特に重質の低品質炭化水素混合物を転化するのに適している。該方法は、先行技術である非交互運転から得られるものに比べて、高い時間平均液体収率と低い時間平均コークメークとを提供する。加えて、多くの場合、非交互運転で得られるものより高い時間平均プロピレン収率を提供することができる。本方法は、短い接触時間のライザーに限定することなく、流動床反応器、および流下反応器を含めて、別の分解反応方式において実施することができる。
【0017】
FCCが二つのライザーまたは分離された反応域を有する一つのライザーを装備する場合には、本発明は、二つ以上の原料を用いて実施することもまたできる。分離とは、二つの別々の反応域が効果的にもたらされる距離を置いた物理的分離または空間的分離を意味する。例えば、品質(例えば、(a)〜(f)で定義される)または分解性が低い三つの原料α、βおよびγが、それぞれ精油所の廃棄物である場合には、先に述べた原料の選定基準((a)〜(f))に従って、原料αとβとを第一のライザーに交互に注入し、原料αとγとを第二のライザーに交互に注入することができる。各ライザーから得られる生成物は、次いで混合されてもよい。加えて、三つの原料のいかなる組合せも、二つの原料を各ライザーに交互に注入して用いることができる。例えば、二つの反応域を有する一つのライザーにおいては、αとβとを一つの反応域に交互に注入し、αとγとを第二の反応域に交互に注入することができる。さらに、αとβとを第一にライザーの一つの反応域に交互に注入し、αとγとを同じライザーの別の反応域または第二のライザーに次のようにして注入することができる。すなわち、(i)単一ライザーの単一反応域に、該ライザーの少なくとも一つの注入ノズルに原料(α)を、またライザーの残りのノズルから原料(γ)を同時に注入するか、または(ii)FCCUにおける第二のライザーの少なくとも一つの反応域に原料(α)を、また第二のライザーの他の反応域に原料(γ)を同時に注入するかである。明らかなように、考えられる多くの組合せが可能である。好ましくは、このような場合は、最も清浄かつ最も分解性の原料が、各ライザーに注入され、二つの残る原料のうちの一つが各交互ライザーに注入されるであろう。最も清浄かつ最も分解性の原料とは、原料が、他の二つの原料と比較して、最も水素含有量が高いか、最もAPIが高いまたは最も窒素含有量が低いか、最も炭素水素比が低いかまたは最も平均沸点が低いか、もしくは最もCCRが低い原料を意味する。原料の基準は、同じライザーに注入される二つの原料は、本明細書で前述された基準((a)〜(f))を満たさなければならないということである。すなわち、同じライザーに注入される原料は、(a)少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるコンラドソン残留炭素を有するか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なるものでなければならない。
【0018】
以下に示されるすべての実施例では、望ましい非線形性が認められた。
【0019】
実施例1
この一連の実験においては、純粋のVGO、およびVGOと減圧残油(VR)とを含む二つの原料混合油(一つは残油を16wt%含有し、他は32wt%含有する)を調製した。表1には、原料混合油の性状がCCR(wt%)と固有窒素(wppm)のレベルで記載される。Niを3500ppm含浸させた平衡触媒を用いた。
【0020】
【表1】
【0021】
分解実験を、FCCパイロット装置において、515℃および触媒対油(C/O)比8で行った。運転中、触媒は、再生触媒ホッパーからスクリューフィーダーを用いてライザーに計量して供給される。加熱触媒は、流入する油とガス状窒素とに接触して、ライザーを上昇しそこで油が分解される。ライザーの端部では、廃触媒と反応器生成物とが分離域に入る。ここでは、ガスは頭頂に流れ続けて生成物回収系に入り、触媒はストリッパーを降下して廃触媒ホッパーに入る。ガス状生成物は冷却されて、C5 +液体生成物とC5 −生成物ガスとを生成する。
【0022】
分解は、二次の動力学に従うことから、分解の程度の尺度は、所謂動力学的転化率ξである。X430を、コークなしベースにおける<430゜F生成物への重量%転化率として示すと、ξ430=X430/(100−X430)である。コーク選択性Sは、S=Y/ξ430で計算される。ここでYは、原料に対する重量%コーク収率である。直留VGOおよびVRを32%含むVGO原料の%転化率をそれぞれX1およびとX2する。その時間平均動力学的転化率は、ξ=(X1+X2)/2/[100−(X1+X2)/2]であり、対応する時間平均コーク選択性は、S=(Y1+Y2)/2/ξである。
【0023】
図2aおよび2bに、それぞれ全原料の残油含有量の関数として、<430゜Fおよび<650゜F生成物へのコークなし動力学的転化率を示す。図2cに、コーク収率に対する同様のプロットを示す。これらのプロットから、時間平均動力学的転化率とコーク選択性とを決定することができる。図2a〜2cから、(<430゜Fおよび<650゜F生成物への転化率に関する)は、VRを16%含むVGO原料から得られるものより高く、またSは低いことがわかる。各データ点は、二つまたは三つの運転の平均である。特に、430および650のコークなし動力学的転化率は、それぞれ5.3%および7.5%だけ向上した。すなわち、430コークなし動力学的転化率については、ξ対ξ比(VRを16%含むVGO原料に関する)は、1.053である。また、コーク選択性は、12.2%だけ低い。
【0024】
実施例2
上記の実験を、C/Oを5として繰り返した。430および650動力学的転化率は、それぞれ10.2%と11.7%上昇したことが認められた。さらに、コーク選択性は、9.3%低い。
【0025】
実施例3
実施例2に示された実験を、560℃、C/O5で繰り返した。この場合は、430および650動力学的転化率は、それぞれ3.7%と4.9%向上した。また、コーク選択性は、21.5%低下している。
【0026】
実施例4
この場合、触媒は、Niを含浸しなかったことを除いて、実施例1におけると同じものを用いた。分解条件は5C/Oおよび515℃である。430および650動力学的転化率は、それぞれ8.9%と10.7%向上し、コーク選択性は4.4%減少した。プロピレン収率は6.5%向上した。
【0027】
実施例5
この実施例で用いられた原料成分は、水素化処理したVGO(HTGO)およびブタン脱アスファルト残油(DAO)である。表2には、原料混合油の組成と性状とが記載される。
【0028】
【表2】
【0029】
分解実験を、実施例4で用いられたものとは異なる平衡触媒上で、530℃、8C/Oで行った。430および650動力学的転化率は、それぞれ4.9%と10.8%向上した。コーク選択性は、7.4%の減少である。
【0030】
実施例6
減圧ガス油を、溶剤抽出によって水素含有量を変化させた異なる留分に分離した。これらの得られた留分を、496℃、6.5C/Oおよび80g/mの油速度で、数種の市販触媒(触媒A、BおよびCとして示す)を用いてそれぞれ分解した。表3にこれらの触媒の性状を記載する。原料の水素含有量を、原料品質の尺度として用いた。図3a〜3hに示したデータは、水素含有量が10.4、12.1、13.6、および13.8wt%である原料について得られた。図に示された結果は、望ましい非線形性を明確に示している。
【0031】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは、全原料中のwt%残油の関数として転化率を表す。
図1bは、全原料中のwt%残油の関数としてコーク収率を表す。
【図2】図2aは、原料中のwt%残油に対する<430゜F生成物へのコークなし動力学的転化率(515℃、8C/O)を表す。
図2bは、原料中のwt%残油に対する<650゜F生成物へのコークなし動力学的転化率(515℃、8C/O)を表す。
図2cは、原料中のwt%残油に対するコーク選択性(515℃、8C/O)を表す。
【図3】図3aは、wt%原料水素に対する<430゜F生成物への転化率(496℃、6.5C/O、触媒A)を表す。
図3bは、wt%原料水素に対する<430゜F生成物への転化率(496℃、6.5C/O、触媒B)を表す。
図3cは、wt%原料水素に対するコーク収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3dは、wt%原料水素に対するプロピレン収率(496℃、6.5C/O、触媒B)を表す。
図3eは、wt%原料水素に対する留出油収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3fは、wt%原料水素に対するナフサ収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3gは、wt%原料水素に対する塔底油収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3hは、wt%原料水素に対するブチレン収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
発明の分野
本発明は、石油留分などの炭化水素混合物から液体燃料および軽質オレフィンを製造する流動接触分解(FCC)に関する。より詳しくは、本発明は、FCCプロセスの非線形性に関し、これにより炭化水素混合物を転化するための新規なFCC運転方策が導かれる。
【0002】
発明の背景
FCCは、石油精製における主要な転化プロセスであったし、また今後も相当期間に亘ってそのようなプロセスであり続けるであろう。典型的な現在のFCCプロセスにおいては、液体原料混合物は、ノズルから噴霧されてライザーの底部に小滴を形成する。小滴は、高温の再生触媒に接触し、気化し、軽質生成物とコークとに分解しされる。蒸発した生成物はライザーを上昇する。触媒は、サイクロンによって炭化水素流れから分離される。分離されると、触媒は、スチームストリッパーで吸収した炭化水素を除去され、次いでコークを燃焼し尽くす再生装置に送られる。生成物は、分留装置に送られて、いくつかの生成物に分留される。触媒は再生されると、次いでライザーに送り戻される。ライザーと再生装置との一体化装置では、熱バランスが取られ、コークが燃焼し尽くされることによって発生した熱が原料の気化と分解とに用いられる。最も一般的なFCC原料は、断然にガス油または減圧ガス油(VGO)であり、これらは650゜Fを越える沸点の炭化水素混合物である。製油所において、重質の、すなわち残油などの高度に汚染した油を転化することが必要とされる場合には、通常このような重質油の少量がガス油原料に混合される。高品質原油の供給が次第に減少することから、石油産業おいては、FCCはますます重質の汚染原料を転化しなければならないという傾向がある。このような原料は、窒素、硫黄、金属、多環芳香族およびコンラドソン残留炭素(CCR、アスファルテン含有量の指標)などの汚染物質を高レベルで含む。以下、重質成分という用語は、残油、脱アスファルト油、潤滑油エキストラクト、タールサンド、石炭液化油、およびこれらの類似物などの高度な汚染炭化水素を含めて用いられる。このような重質成分は、重質成分が少ない他の原料に添加されて、FCC原料となる。このような重質成分は、今後数年間にFCC原料の重要な一部分となるであろう。
【0003】
重質成分を含むFCC原料が直面する技術的課題は、Otterstedtらによって概説されている(Otterstedt,J.E.、Gevert,S.B.、Jaras,S.G.およびMenon,P.G.、Applied Catalysis、22、159、1986)。それらの中で主な課題は、高いコークおよびガス収率、触媒の不活性化、および煙道ガス中のSOXである。これらの重質成分含有原料のコーク形成傾向は、伝統的にCCR含有量によって評価されてきた。VGO原料は、典型的には0.5wt%未満のCCRを含み、一方常圧および減圧残渣は、典型的にはそれぞれ1〜15wt%および4〜25wt%のCCRを含む。これらの重質成分を分解することにより、既存のFCC装置で必須となるよりはるかに高いレベルのコークが生成されることから、FCC原料中の重質成分の最大許容レベルは、しばしば装置のコーク燃焼能力によって制約される。現在、多くのFCC装置では、原料中に高々5〜15wt%含まれる残油、すなわち重質成分しか分解することができない。原料価格の観点から、既存設備の制約内で、FCCの運転範囲を拡大する、すなわち重質成分の限界を拡大することができる経済的な方法が強く求められている。
【0004】
当技術分野で求められるものは、既存設備の運転限界を広げて、従来とは別の原料の使用を増加することができ、しかも所望の生成物の収率を向上させることができるFCC方法である。
【0005】
発明の概要
本出願人らにより、原料中の重質成分の量が増加した際に、FCCにおける液体収率が線形で悪化することも、コーク収率が線形で増加することもないことが見出された。このことは、原料汚染物質のFCC触媒に対する限界的効果が損なわれることに関して、重質成分の量が増加するにつれてますます弱くなることを意味している。したがって、本発明には、異なる品質の原料を分解するための新規な改良FCC運転方法が開示される。
【0006】
したがって、本発明は、流動接触分解条件下で行われる流動接触分解プロセスを定めるものであって、該プロセスは、一つ以上のライザーを有する流動接触分解装置(FCCU)の少なくとも一つの反応域に複数の原料を注入することを含み、その際該複数の原料は少なくとも一つの原料(α)と少なくとも一つの他の原料(β)とを含み、また該原料(α)と(β)とは、(a)コンラドソン残留炭素が少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なり、さらに該原料(α)と(β)とは交互に注入され、しかも該交互注入により該ライザーがサイクル定常状態に保持され、一方FCC装置の残り部分は定常状態にある。交互注入のサイクル時間は、該ライザーがサイクル定常状態に保持されるようにして慎重に選定される。このようなサイクル運転によって、先行技術の非サイクル運転と比較して、高い時間平均転化率と低いコーク選択性とがもたらされる。この利点は、一定の液体収率における重質成分原料に対する高い分解能力に言い換えることができる。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、通常の研究室および/または小規模設備実験によって容易に得られる図面から、より容易に理解することができる。図1には、原料中の残油含有量に対する転化率およびコーク収率の非線形の従属関係が定性的に示される。転化率の曲線は凸形状であり、これに対してコーク収率の曲線は凹形状である。例えば、FCC装置のコーク燃焼能力が、残油の最大許容含有量が10wt%であるような場合には、先行技術によれば、VGO中に残油を10wt%を含む原料(図1aの点C)を装置に供給することがコスト的に有効であると示唆される。上述の点に関して、本発明では、先行技術に示されるものとは全く異なるFCC運転が示唆される。重質成分を常時10wt%に保持する代わりに、本発明では、重質成分の濃度を二つのレベル(一つは残油が10wt%より高く、他は低い)の間で交互に変えることが求められる。サイクル時間(二つの交互原料を注入するための全結合時間)は、FCCUのライザーをサイクル定常状態で維持するのに十分な長さであるようにして設定される。このようなサイクル時間は、当然にFCC装置の他のサブシステム(分留装置、再生装置、およびストリッパー)の運転が阻害されないように十分短いものである。したがって、FCC装置の他のサブシステムは、装置またはプロセスに影響を与える程に影響されない。
【0008】
当業者においては、本発明に関して、本発明に用いることができる原料の選定方法は知られたものであろう。本質的に、原料は、原料品質指数に対する転化率およびコークメークの非線形曲線から選定される。原料品質指数は、例えば図1aおよび1bに示されるwt%残油、または図3bに示されるwt%原料水素である。前述したように、これらの図は、小規模の通常実験で演繹的に得ることができる。FCC装置の残油能力を把握することは、本発明で用いる二つの原料(α)および(β)を選定するのに役立つ。例えば、液体収率3wt%の増加が所望されることを予定する場合、3wt%の増加が得られる任意の二つの原料[例えば図1aの(D−F)参照、(D−F)は予定される所望の増加である]が選定されるであろう。好ましくは、液体収率の増加は、原料に対して少なくとも約0.5wt%であろうし、また/あるいはコークメークの減少は、原料に対して少なくとも約0.2wt%であろう。コークメークのwt%減少は、図1bのG−Eで表されるであろう。二つのこのような原料を選定することによって、二つの原料を交互に分解して得られる液体生成物の混合物(D)は、二つの原料が先ず混合され、次いで分解された際に得られるであろうもの(F)より高い。図を作成するのに任意の原料品質指数が用いられることに注目する。いくつかを挙げれば、例えば%残油、水素含有量、API重量、窒素含有量、C/H比、および沸点である。典型的には、少なくとも三つの原料が、図が作成するのに用いられよう。
【0009】
図1aを引用すると、本発明の一例では、重質成分の濃度が0wt%および20wt%(図1の点Aおよび点Bである)の間で、等しい時間間隔をもって反復される。他の実施形態においては、濃度が5wt%と15wt%との間で反復されることができる。いずれの場合も、時間平均の残油濃度は10wt%である。しかし、図1に示されるように、交互運転により、先行技術(重質成分を10t%含む原料を用いる非交互(一定原料注入)運転(点Fおよび点G))に比べて、高い時間平均転化率(図1aの点D)および低い時間平均コーク収率(図1aの点E)が得られる。また、図1aおよび1bにより、二つの原料成分(例えばガス油と減圧残油)の品質の差が大きくなるほど、利点(コークメークの低減と液収率の増加)が大きくなることが示唆される。この利点は、図1に示される非線形性に由来する。すなわち、重質成分含有原料に起因する損失は、他の原料に起因する利得で相殺したもの以上である。重質成分含有原料は、CCR,窒素、多環芳香族、および/または金属によって高度に汚染されている。これらは、また低い水素含有量または低いAPI重量によって特性付けられる。
【0010】
本出願人らによれば、本発明がFCC運転をサイクル定常状態に維持することができる理由は、外部の変動に対する種々のFCCサブシステムの応答時間が大幅に相違することによると信じられている。短い接触時間と近プラグ流れとにより、ライザーは、典型的には5秒程度の非常に短い応答時間を有する。再生装置は、典型的には30秒程度の応答時間で、はるかにより緩慢である。ストリッパーおよび分留装置の応答時間は、またライザーのそれより長い大きさのオーダーである。例えば、二つの原料が、それぞれ20秒間注入される場合(すなわち、サイクル時間が40秒である)には、その際ライザーは、次の原料転換のはるか前に、新しい定常状態に迅速に平衡することができる。したがって、ライザーは、実質的に二つの定常状態の間で運転される。ライザーはサイクル定常状態にあるといえる。一方、40秒のサイクル時間は、非常に短いので緩慢な再生装置は応答することができない。原料サイクルに起因する変動は迅速に平準化され、再生装置は基本的に定常状態にある。同様のことは、ストリッパーおよび分留装置においてもあてはまる。例えば、分留装置における液体滞留量、蒸気−液体の多流量、および還流量は、いかなる高頻度の変動をも迅速に消し去るであろう。
【0011】
したがって、当業者においては、サイクル時間を容易に設定し、その際あたかも品質が異なる二つの原料を個別に分解するために二つのライザーがあるかのようにFCC装置を運転することができよう。原料切り替えは、実用的には再生装置、ストリッパーおよび分留装置に対して殆ど影響を及ぼさない。
【0012】
好ましい原料サイクル時間は、各原料が同じ時間量で供給されるという対称性であってもよく、または原料が異なる時間量で供給されるという非対称性であってもよい。原料サイクル時間は、熟練技能者により、ライザー、再生装置、および分留装置の応答時間に基いて容易に選定される。選定は、好ましくは再生装置の運転および生成物回収の観点から許容される最長時間に基くであろう。したがって、本発明においては、両原料を考慮して多数の選択肢が提供される。上記の実施例では、二つの原料が同じ時間間隔で交互に転換されるが、原料を転換するこの対象性方式により、必ずしも最大利得が得られなくともよい。ある場合には、非対象性転換が望まれてもよい。すなわち、各原料は、異なる時間量で供給される。例えば、サイクル時間が40秒である上記の実施例では、直留VGOおよび残油を20wt%含むVGOに対する個々の時間は、それぞれ15秒、25秒であってもよい。本発明による運転で使用される重質成分の原料濃度は、また最大利点に対して選定されてもよい。二つの原料に対して異なる流速が使用されてもよい。したがって、本発明による運転においては、プロセスを最適化するために、多くの自由度がもたらされる。典型的なサイクル時間は、10秒〜3分間、好ましくは20秒〜2分間の範囲である。FCCUは、各サイクルを連続的に繰り返して運転される。
【0013】
当業者においては、本発明による運転が、任意の転化率またはコーク収率に関して、原料中の重質成分を転化する高いFCC装置能力に言い換えられることは、即座に理解されるであろう。本発明のプロセスは、当業者に知られたFCC条件で運転される。
【0014】
前述のものは、重質原料の分解についてのものであるが、当業者においては、本発明による運転は、原料性状が十分に異なる限り、いかなる原料対にも適用できることは、ただちに理解できるであろう。例えば、オレフィンを最大に製造するためには、原料対には、ナフサリッチ基材とナフサリーン基材とが含まれてもよい。適切な原料に関して、原料性状の尺度の限定しない例は、(a)水素含有量(少なくとも約0.2wt%だけ異なる)、(b)炭素水素比(少なくとも約0.3だけ異なる)、(c)API重量(少なくとも約2ポイントだけ異なる)、(d)窒素含有量(少なくとも約50ppmだけ異なる)、(e)中間沸点(少なくとも約200゜Fだけ異なる)、(f)CCR(少なくとも約2wt%だけ異なる)などである。好ましくは、単に二つの原料が用いられよう。
【0015】
本出願人らによれば、本発明の利点は、図1aおよび1bに例証される凸凹挙動に起因すると信じられる。したがって、以下の説明的な限定しない実施例は、種々の原料材、触媒および分解条件に関して、重質原料成分レベルの変化に対する凸凹応答性を明確にすることを目的とする実験で得られた。図1には原料重質成分レベルの尺度として原料中のwt%残油が用いられるが、他の尺度もまた用いることができることが示される。いくつかを挙げれば、例えばCCR、水素、窒素、極性物質および多環芳香族である。
【0016】
本発明の方法は、品質((a)〜(f))が十分に異なる任意の二つの原料に対して使用することができるものの、特に重質の低品質炭化水素混合物を転化するのに適している。該方法は、先行技術である非交互運転から得られるものに比べて、高い時間平均液体収率と低い時間平均コークメークとを提供する。加えて、多くの場合、非交互運転で得られるものより高い時間平均プロピレン収率を提供することができる。本方法は、短い接触時間のライザーに限定することなく、流動床反応器、および流下反応器を含めて、別の分解反応方式において実施することができる。
【0017】
FCCが二つのライザーまたは分離された反応域を有する一つのライザーを装備する場合には、本発明は、二つ以上の原料を用いて実施することもまたできる。分離とは、二つの別々の反応域が効果的にもたらされる距離を置いた物理的分離または空間的分離を意味する。例えば、品質(例えば、(a)〜(f)で定義される)または分解性が低い三つの原料α、βおよびγが、それぞれ精油所の廃棄物である場合には、先に述べた原料の選定基準((a)〜(f))に従って、原料αとβとを第一のライザーに交互に注入し、原料αとγとを第二のライザーに交互に注入することができる。各ライザーから得られる生成物は、次いで混合されてもよい。加えて、三つの原料のいかなる組合せも、二つの原料を各ライザーに交互に注入して用いることができる。例えば、二つの反応域を有する一つのライザーにおいては、αとβとを一つの反応域に交互に注入し、αとγとを第二の反応域に交互に注入することができる。さらに、αとβとを第一にライザーの一つの反応域に交互に注入し、αとγとを同じライザーの別の反応域または第二のライザーに次のようにして注入することができる。すなわち、(i)単一ライザーの単一反応域に、該ライザーの少なくとも一つの注入ノズルに原料(α)を、またライザーの残りのノズルから原料(γ)を同時に注入するか、または(ii)FCCUにおける第二のライザーの少なくとも一つの反応域に原料(α)を、また第二のライザーの他の反応域に原料(γ)を同時に注入するかである。明らかなように、考えられる多くの組合せが可能である。好ましくは、このような場合は、最も清浄かつ最も分解性の原料が、各ライザーに注入され、二つの残る原料のうちの一つが各交互ライザーに注入されるであろう。最も清浄かつ最も分解性の原料とは、原料が、他の二つの原料と比較して、最も水素含有量が高いか、最もAPIが高いまたは最も窒素含有量が低いか、最も炭素水素比が低いかまたは最も平均沸点が低いか、もしくは最もCCRが低い原料を意味する。原料の基準は、同じライザーに注入される二つの原料は、本明細書で前述された基準((a)〜(f))を満たさなければならないということである。すなわち、同じライザーに注入される原料は、(a)少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるコンラドソン残留炭素を有するか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なるものでなければならない。
【0018】
以下に示されるすべての実施例では、望ましい非線形性が認められた。
【0019】
実施例1
この一連の実験においては、純粋のVGO、およびVGOと減圧残油(VR)とを含む二つの原料混合油(一つは残油を16wt%含有し、他は32wt%含有する)を調製した。表1には、原料混合油の性状がCCR(wt%)と固有窒素(wppm)のレベルで記載される。Niを3500ppm含浸させた平衡触媒を用いた。
【0020】
【表1】
【0021】
分解実験を、FCCパイロット装置において、515℃および触媒対油(C/O)比8で行った。運転中、触媒は、再生触媒ホッパーからスクリューフィーダーを用いてライザーに計量して供給される。加熱触媒は、流入する油とガス状窒素とに接触して、ライザーを上昇しそこで油が分解される。ライザーの端部では、廃触媒と反応器生成物とが分離域に入る。ここでは、ガスは頭頂に流れ続けて生成物回収系に入り、触媒はストリッパーを降下して廃触媒ホッパーに入る。ガス状生成物は冷却されて、C5 +液体生成物とC5 −生成物ガスとを生成する。
【0022】
分解は、二次の動力学に従うことから、分解の程度の尺度は、所謂動力学的転化率ξである。X430を、コークなしベースにおける<430゜F生成物への重量%転化率として示すと、ξ430=X430/(100−X430)である。コーク選択性Sは、S=Y/ξ430で計算される。ここでYは、原料に対する重量%コーク収率である。直留VGOおよびVRを32%含むVGO原料の%転化率をそれぞれX1およびとX2する。その時間平均動力学的転化率は、ξ=(X1+X2)/2/[100−(X1+X2)/2]であり、対応する時間平均コーク選択性は、S=(Y1+Y2)/2/ξである。
【0023】
図2aおよび2bに、それぞれ全原料の残油含有量の関数として、<430゜Fおよび<650゜F生成物へのコークなし動力学的転化率を示す。図2cに、コーク収率に対する同様のプロットを示す。これらのプロットから、時間平均動力学的転化率とコーク選択性とを決定することができる。図2a〜2cから、(<430゜Fおよび<650゜F生成物への転化率に関する)は、VRを16%含むVGO原料から得られるものより高く、またSは低いことがわかる。各データ点は、二つまたは三つの運転の平均である。特に、430および650のコークなし動力学的転化率は、それぞれ5.3%および7.5%だけ向上した。すなわち、430コークなし動力学的転化率については、ξ対ξ比(VRを16%含むVGO原料に関する)は、1.053である。また、コーク選択性は、12.2%だけ低い。
【0024】
実施例2
上記の実験を、C/Oを5として繰り返した。430および650動力学的転化率は、それぞれ10.2%と11.7%上昇したことが認められた。さらに、コーク選択性は、9.3%低い。
【0025】
実施例3
実施例2に示された実験を、560℃、C/O5で繰り返した。この場合は、430および650動力学的転化率は、それぞれ3.7%と4.9%向上した。また、コーク選択性は、21.5%低下している。
【0026】
実施例4
この場合、触媒は、Niを含浸しなかったことを除いて、実施例1におけると同じものを用いた。分解条件は5C/Oおよび515℃である。430および650動力学的転化率は、それぞれ8.9%と10.7%向上し、コーク選択性は4.4%減少した。プロピレン収率は6.5%向上した。
【0027】
実施例5
この実施例で用いられた原料成分は、水素化処理したVGO(HTGO)およびブタン脱アスファルト残油(DAO)である。表2には、原料混合油の組成と性状とが記載される。
【0028】
【表2】
【0029】
分解実験を、実施例4で用いられたものとは異なる平衡触媒上で、530℃、8C/Oで行った。430および650動力学的転化率は、それぞれ4.9%と10.8%向上した。コーク選択性は、7.4%の減少である。
【0030】
実施例6
減圧ガス油を、溶剤抽出によって水素含有量を変化させた異なる留分に分離した。これらの得られた留分を、496℃、6.5C/Oおよび80g/mの油速度で、数種の市販触媒(触媒A、BおよびCとして示す)を用いてそれぞれ分解した。表3にこれらの触媒の性状を記載する。原料の水素含有量を、原料品質の尺度として用いた。図3a〜3hに示したデータは、水素含有量が10.4、12.1、13.6、および13.8wt%である原料について得られた。図に示された結果は、望ましい非線形性を明確に示している。
【0031】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは、全原料中のwt%残油の関数として転化率を表す。
図1bは、全原料中のwt%残油の関数としてコーク収率を表す。
【図2】図2aは、原料中のwt%残油に対する<430゜F生成物へのコークなし動力学的転化率(515℃、8C/O)を表す。
図2bは、原料中のwt%残油に対する<650゜F生成物へのコークなし動力学的転化率(515℃、8C/O)を表す。
図2cは、原料中のwt%残油に対するコーク選択性(515℃、8C/O)を表す。
【図3】図3aは、wt%原料水素に対する<430゜F生成物への転化率(496℃、6.5C/O、触媒A)を表す。
図3bは、wt%原料水素に対する<430゜F生成物への転化率(496℃、6.5C/O、触媒B)を表す。
図3cは、wt%原料水素に対するコーク収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3dは、wt%原料水素に対するプロピレン収率(496℃、6.5C/O、触媒B)を表す。
図3eは、wt%原料水素に対する留出油収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3fは、wt%原料水素に対するナフサ収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3gは、wt%原料水素に対する塔底油収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
図3hは、wt%原料水素に対するブチレン収率(496℃、6.5C/O、触媒C)を表す。
Claims (7)
- 一つ以上のライザーを有する流動接触分解装置(FCCU)の少なくとも一つの反応域に、少なくとも一つの原料(α)と少なくとも一つの他の原料(β)とを含む複数の原料を注入することを含んだ流動接触分解条件下で行われる流動接触分解プロセスであって、該原料(α)と(β)とは、(a)コンラドソン残留炭素が少なくとも約2wt%ポイントだけ異なるか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なり、該原料(α)と(β)とは交互に注入され、該交互注入により該ライザーがサイクル定常状態に保持され、一方FCC装置の残り部分は定常状態にあるプロセス。
- 原料(α)と(β)との結合注入時間(サイクルタイム)は、約10秒〜約3分の範囲である請求項1のプロセス。
- 前記サイクルタイムは、約20秒〜約2分の範囲である請求項2のプロセス。
- (a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)によって評価された原料(α)および(β)の品質の差が大きくなるほど、液体収率が増大し、コークメークが減少する請求項1のプロセス。
- 前記原料(α)と(β)とは、同じまたは異なる流速で注入される請求項1のプロセス。
- 前記FCC装置が、少なくとも二つのライザーまたは少なくとも二つの分離された反応域を備えた一つのライザーを有する場合に、少なくとも一つの追加原料(γ)が、該ライザーの少なくとも一つまたは該分離された反応域の一つに、原料(α)および(β)のいずれか一方と交互に注入され、該原料(γ)は、注入される原料と比較して、(a)少なくとも2wt%ポイントだけ異なるCCRを有するか、(b)水素含有量が少なくとも約0.2wt%だけ異なるか、(c)API重量が少なくとも約2ポイントだけ異なるか、(d)窒素含有量が少なくとも約50ppmだけ異なるか、(e)炭素水素比が少なくとも約0.3だけ異なるか、または(f)平均沸点が少なくとも約200゜Fだけ異なる請求項1のプロセス。
- 原料α、βおよびγのうちで最も清浄な原料が、前記二つのライザーのそれぞれまたは前記分離された反応域のそれぞれに、前記残りの原料の一つと交互に注入される請求項6のプロセス。
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