JP2004503206A - 致死表現系を引き起こす物質を同定するための方法およびその物質 - Google Patents
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Abstract
本発明は、致死表現系を引き起こす細胞増殖抑制性または細胞傷害性物質の同定を導く、ネガティブ選別アッセイを実施するための方法に関する。
本発明はまた、条件付き細胞傷害性および細胞特異的細胞傷害性の評価に有用である。
本発明はまた、条件付き細胞傷害性および細胞特異的細胞傷害性の評価に有用である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願は、K.A. Kambの米国特許明細書第09/504,132号、発明の名称「致死表現系を引き起こす物質の同定のための方法およびその物質」ならびにその一部継続出願であり、また、これらの優先権を主張する。 優先権出願の開示は、その全体を参考までに本明細書に取り込まれている。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
異常な、または望ましくない細胞増殖を含む癌およびその他の疾患は、製薬業界にとって、主要な挑戦事項である。 望ましい治療用化合物は、細胞増殖を阻害し、および/または望ましくない細胞を殺すために、細胞標的上でよく機能する。 そのような治療用化合物を効果的に同定するために、そのような増殖阻害または細胞死に関わる細胞性物質を同定することが望ましい場合が多い。 望ましい表現系を発現している細胞は、細胞集団より消失し、続いて標的(および相当する原因となる物質)が欠失するので、そのような細胞性物質は同定することは未だ困難である。
【0003】
一般的に、細胞増殖を阻害する、および/または細胞を殺す物質を同定する実験は、「ネガティブ選別」、すなわち、細胞集団において、細胞傷害性、または細胞増殖抑制性効果をもつ化合物に対する選別、という語で示される。 そのようなネガティブ選別は、癌、ウイルス感染などを含む多くの領域に関係する薬理学的研究のために必要である。 現在までの技術では、哺乳動物細胞においてネガティブ選別を実施するための、すなわち、原因となる物質を直接的に同定し、続いて、増殖阻害または細胞死となるそのような物質と相互作用する標的を回収するための、効果的な、一般的に適用可能な方法は提供されていない。
【0004】
効果的なネガティブ選別プロトコールの欠如は、癌研究分野においてとりわけ関心事である。 癌に対する薬剤探索は、疾病の、または以上の細胞上での細胞傷害性効果を提供するように、内因性細胞標的と相互作用する治療的薬剤の同定を必要とする。 好ましくは、そのような薬剤は、標的細胞型に対する特異性をもって働く、すなわち、選択的に望ましくない細胞を殺し、一方で健康で、正常な細胞は許容する。 そのような価値のある治療用薬剤を同定するための1つの方法は、最初に、細胞傷害性効果に関わる内因性細胞標的を同定し、ついで標的と相互作用する小分子調節因子を同定するための選別の基準として、その標的を使用することである。 あるいは、治療的薬剤は、内因性細胞標的と相互作用するタンパク質化合物、またはその標的の産出または機能いずれかを抑制する核酸のいずれかであってよい。 そのような場合、望ましい細胞阻害または死を引き起こす物質を直接的に回収することが望ましい。
【0005】
細胞死の場合、調節された標的は、いくつかの例において、アポトーシス経路に関わる可能性があり、また他の例では、壊死(ネクローシス)に関わる可能性がある。 一般的に、アポトーシスは、生物の中で、正常の、プログラムされた細胞死の工程であり、壊死はアポトーシスに関連した多くの生化学的特徴を欠いた、特異的でなく、制御されたのではない応答である。 癌の多くの臨床兆候は、この通常のアポトーシス工程の機能不全、すなわち正常の細胞死の欠如を示していると信じられており、体内での形質転換された癌細胞の制御されない増殖を導く。 従って、製薬会社は、とりわけ、アポトーシス工程を選択的に促進し、それによって望ましくない癌細胞の死を促進する薬剤を同定することをとりわけ望んでいる。
【0006】
新規化学治療物質に対する多くの現在の研究は、考えられる疾患経路中の主要な鍵を握っているとすでに公知のタンパク質と相互作用するか、またはその効果を調節する新規化合物を同定することに広く焦点を当てている。 1つのそのような例は、癌におけるチミジンキナーゼの役割における最近の研究であり、結果としての5−フルオロウラシルおよび葉酸類似体の発見である。 しかしながら、そのような技術は、そのような鍵となるタンパク質のすでに存在する知識の範囲によって本質的に制限される。 たとえば、癌に対する新規化学治療物質の開発を最大化するためには、すでに存在する小さな標的のプールに限定せすに、細胞傷害性化合物に対して、広く、そして一般的にスクリーニング可能であることが好ましい。
【0007】
いくつかの一般的な方法は、死亡したか、または死亡している細胞の同定に関するが、しかし、細胞死を引き起こす基質を直接的に同定する能力を欠き(および、従って、その細胞傷害性効果を調節する細胞標的の直接同定を導くことはない)、例えば、種々の染色方法は壊死および/またはアポトーシス細胞を同定する。 そのような方法には、抗体染色技術および、たとえばプロピジウムおよびヨウ化染色のような、色素染色技術が含まれる。 他のアッセイは、複雑な複製プレーティング技術を使用し、それによって複写コロニーが確立され、1つのそのようなコロニーを推定細胞傷害性物質に曝露する。 細胞死が(その死を介して、または複製プレートからの欠如を介して)1つのコロニーで観察された場合、次いで、その相当する複写物をさらなる解析にかける。 しかしながら、そのような複写プレーティング技術は、時間を浪費し、ハイスループットスクリーニング手順には適さない。 さらに、複製プレーティング技術は単に近似であり、細胞死に関与する実際の内因性細胞性物質は、複写プレートから消失する複写コロニーとともに、欠失する。
【0008】
したがって、直接的なネガティブ選別技術(すなわち、その死に関連している原因物質及び相当する内因性標的を提供する、死亡したか、死亡している細胞それ自身)に対する必要性が存在する。 さらに、迅速で、効果的な評価を提供するネガティブ選択技術、すなわちハイスループットスクリーニングに好適な技術に対する必要性が存在する。 本発明は、これらの必要性に合致する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ネガティブ選別を実施するための方法を提供する。 いくつかの実施様態において、ネガティブ選別は、遺伝的ライブラリーを、標的細胞の集団内に導入すること、培養表面から脱離した細胞の亜集団を回収すること、次いで、その亜集団より遺伝的物質を回収することによって実施される、他の実施様態において、本発明は、致死表現系を確立する細胞傷害性物質を得るための方法を提供し、そこで、遺伝的ライブラリーが標的細胞の集団に導入され、致死表現系を示している細胞の亜集団が回収され、ついでその亜集団から遺伝的物質が回収される。 これらの種々の実施様態において、細胞特異的細胞傷害性物質が、脱離および/または致死表現系を示している亜集団からの遺伝的物質が第二の、異なった細胞集団に導入され、遺伝的物質の第二のサブライブラリーが、脱離および/または致死表現系を示していない第二亜集団より得られるカウンタースクリーニング工程を実施することで同定される。
【0010】
これらの各基本的な実施様態に対して、種々の特定の実施様態が存在する。
いくつかの特定の実施様態において、方法論の致死表現系はアポトーシス、壊死、または増殖停止でありうる。 致死遺伝子が、アポトーシスである実施様態において、培養基質からの脱離の特性を、アポトーシスに対する代理として使用してよく、これによって、アポトーシス細胞集団を濃縮するための技術が提供される。 他の特定の実施様態において、遺伝的物質は部分的に配列決定されているか、または方法工程が、同一の細胞の第二集団中で繰り返されてよい。 標的細胞は哺乳動物細胞であり、より好ましくは初代細胞であり、とりわけ上皮または内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞または造血細胞から由来する初代細胞であってよい。 哺乳動物細胞はまた、癌細胞であってよく、より好ましくは、転移性であるか、固形腫瘍由来の癌細胞であってよい。 癌細胞は、とりわけ、乳、大腸、肺、黒色腫または前立腺組織より由来してよい。 他の特定の実施様態において、哺乳動物細胞は、遺伝的に改変されており、より好ましくは、不死化されているか、形質転換されていてよい。
【0011】
培養表面からの標的細胞の脱離の特性を利用している実施様態において、特定の実施様態が、自発的な脱離細胞のバックグラウンドが低いという特徴を持ち、特に、約10%より低く、または約20%よりも低い可能性がある。 そのような低バックグラウンドをもつ標的細胞には、SW60およびHT29大腸癌細胞、T47D乳癌細胞、およびHuVEC細胞が含まれる。 特定の実施様態において、脱離細胞は少なくとも約12時間の間隔にわたって収集される。 また、基礎的実施様態の他の特定の実施様態において、遺伝的ライブラリーは大きいか、または非常に大きい(〜105コード推定細胞傷害性物質)。
【0012】
本発明はまた、致死表現系を誘導する小有機分子の同定に関する。 いくつかの実施様態において、内因性タンパク質よりタンパク質性細胞傷害性物質を提示している有機分子が得られる。 他の実施様態において、そのタンパク質性細胞傷害性物質と、構造活性関連性を持つ有機分子が同定される。
【0013】
本発明はまた、条件付細胞傷害性に関して選別する実施様態に利用でき、そこで、遺伝的ライブラリーが、標的細胞の集団内に導入され、致死表現系を提示している細胞の亜集団が収集され、その亜集団より遺伝的物質が回収される。 ここでも、特定の実施様態において、致死表現系はアポトーシス、壊死、増殖停止であってよい。 他の特定の実施様態において、第二物質は、UV、X線、またはニュートロン放射であってよく、または化学治療物質、とりわけ、メトトレキサート、シスプラチン、5−フルオロウラシル、コルチシン、ビンブラスチン、ビンクレスチン、ドキシルビシンまたはタキソールであってよい。 特定の実施様態には、標的細胞として癌細胞、特に、固形腫瘍が含まれ、第二細胞傷害性基質でのカウンタースクリーニング、たとえば、成長因子、サイトカイン、ケモカインなどでの曝露、または癌遺伝子の活性化の前の標的細胞のプレコンディショニングが含まれる。
【0014】
本発明はまた、上記要素の組合わせに関し、特に、6つの代表的なアミノ酸配列に関し、これらは、本発明のネガティブ選別方法をHT29大腸癌細胞に適用することによって得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、(i) 細胞の細胞性死を引き起こすか、または促進する致死物質または基質、または(ii)細胞のある集団における増殖および/または再生産停止を誘引し、したがって最終的にその集団の死亡を導く物質に対する、迅速で、効果的なスクリーニングの方法を提供する。 両方の型の物質は、最終結果が細胞集団の欠失であるので、本明細書では「細胞傷害性物質」と呼ぶ。
【0016】
本発明は、まず直接または間接的に、致死表現系を選択し、ついでその表現形を作り出す内因性タンパク質の調節物の直接的な回収を実施する、ネガティブ選別アッセイを提供することで効果的なスクリーニングの終了を成し遂げる。
【0017】
「ネガティブ選別」は、増殖停止および/または細胞死のいくつかの段階の内の1つにおいて、致死表現系を示している細胞を同定し、単離するために設計された手順を意味する。 「致死表現系」は、結果として、直接的に、または間接的に、個々の細胞または細胞集団の死となる1つまたはそれ以上の細胞事象を意味する。
【0018】
致死表現系は、結果として細胞死となる任意の数の生理学的事象の結果であってよい。
【0019】
非限定例として、細胞は、アポトーシスのような積極的な、先にプログラムされた経路によって、または壊死のようなより受動的な、退化方法にて、すなわち個々の細胞での致死を作り出す直接の結果として、死亡しうる。 他の例では、細胞は、間接的な結果として、たとえば増殖停止のいくつかの形態を介して、消失しうる。 そのような増殖停止は、正常の細胞増殖を阻害する種々の気候によって引き起こされえ、それによってその細胞増殖サイクルのあるステージで死亡が停止しうる。 たとえばp16誘導増殖停止は、細胞サイクルのG1期で細胞を停止させる。
【0020】
一般的に、本発明の選別方法は、致死表現系を示している細胞を簡単に回収可能な、標的細胞集団を提供することで開始される。 種々の方法がそのような回収に関して利用可能であり、その多くが、直接的または間接的に死亡した、または死亡している細胞を同定可能である、または、特に、アポトーシス対壊死細胞を見分けることができる、蛍光マーカーを利用する細胞ソーティングを含む。 他の例において、致死表現系は、望んだ細胞集団の簡単な回収を提供する、代理表現系を持つ可能性がある。 一例として、細胞接着の欠失特性が、細胞死を代理可能であり、従って、相関関係のある致死表現系を持つ細胞に関する単純な濃縮および/または選別が提供される。 他の例として、細胞構造および/または機能の変化が、致死に対する適切な代理であり、たとえば、P−糖タンパク質過剰発現の欠失は、抵抗性細胞株において、化学治療薬剤への選択性の増加と相関関係にあり、したがって、細胞死の率の増加と相関関係にある。
【0021】
本発明の1つの顕著な利点は、細胞傷害性物質をコードしている遺伝的物質の直接の回収である。 「直接回収」は、(レプリカプレーティングのような間接的方法に対して)増殖停止された、および/または死亡したまたは死亡している細胞それ自身からの遺伝的物質の回収を意味する。 したがって、本技術は、致死表現系を引き起こす物質を構成する、またはコードしている核酸の直接のサンプリングを提供する。 そのような直接回収は、実際の、原因となる遺伝的物質が、引き続く操作および/または解析のために、そして、他の標的細胞集団中の個々のライブラリー挿入物の際スクリーニングまたはカウンタースクリーニングのために、回収され、保存される場合に利点である。
【0022】
本発明は、別々の細胞傷害性物質に対して、または推定細胞傷害性物質のライブラリーに対して等しく適用可能である。 いくつかの実施様態において、スクリーニングすべきライブラリーは、大きなライブラリー(すなわち、1×103以上の物質)、またはとても大きなライブラリー(すなわち、1×105以上の物質)であってよい。 本発明は、公知の、または予想される細胞傷害性効果を持つ物質を評価するのに使用することができるが、以前には特性化されていない、すなわち、細胞傷害性効果を持っていることが明らかではないか、予想されていなかった物質のスクリーニングにも等しく利用できる。 いくつかの例において、物質は、他のものでもありえる一方で、タンパク質様、または核酸の一部とすることができ、スクリーニングすべき薬剤は、小有機分子とすることができる。
【0023】
本発明は、他の物質(たとえば、増感剤または相乗作用物質)の存在下、または非存在下で、細胞傷害性物質の活性を評価するのによく適する。 したがって、いくつかの実施様態において、本発明は、第二の物質(たとえば、公知の化学治療物質または紫外線、X線またはニュートロンを含む、種々の供給源からの放射)に対する細胞の感受性を増強する増強剤(たとえば、遺伝的ライブラリー挿入物によってコードされた増感剤)を同定するような、「条件付細胞傷害性」を評価するのに利用できる。 したがって、増感剤は、第二物質の細胞傷害性を増強し、通常副次毒性用量またはそのような第二物質細胞傷害性の曝露を提供する。 このアプローチは、たとえば癌細胞における多重薬剤抵抗性(MDR)を改善するための候補物質を評価し、それによって、そのような細胞をタキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、メトトレキサート、シスプラスチン、5−フルオロウラシル、コルチシン、ビンクリスチン、ドキシルビシンなどのような標準の化学治療物質に対して感受性にする場合に、とりわけ有利である。
【0024】
また他の実施様態において、標的細胞は、いくつかの物質を介して先行感作してもよく、または、たとえば増殖因子を添加することによって、それ自身、有害な効果を発揮しない。 他の例において、標的細胞は、たとえば癌遺伝子のような、対象の遺伝子の発現を活性化することで先行感作してよい。
【0025】
本発明はまた、それ自身、「細胞特異的」様式にて機能する物質を簡単に同定することを導く。 このことは、第二の細胞型を使用するカウンタースクローニング工程を実施することによって実施されうる。 そのような実施様態において、本発明は、たとえば、同一の条件下で、第二細胞型においては細胞傷害性効果を示していないが、第一細胞型を選択的に殺すことによって、差異的に細胞傷害性効果を示している細胞傷害性物質を同定するために使用できる。 1つの特定の、しかし非限定的な例として、推定細胞傷害性基質をコードしているライブラリーが、第一細胞集団、すなわちWM35のような癌性細胞株にて選別されうる。 そのような細胞株において致死表現系を引き起こす物質は、ついで単離され、第二の、相当する初代細胞株にて選別される。 非癌性細胞株において致死表現系を引き起こさない物質は、ついで単離され、さらに特性化される。
【0026】
致死表現系の単離
致死表現系を持つ細胞を同定するための種々の方法が存在する。 たとえば、当業者によく知られている多くの方法が、アポトーシスまたは壊死経路への細胞の導入においてのみ発生する表面抗原のような細胞構成要素を標的にしている。他の例において、致死表現系を特徴づける、細胞形態、または細胞透過性の変化、たとえば、核膜完全性の変化、または細胞膜の「水泡化」、が観察される。種々の色素、染色および抗体が、そのような方法で利用可能であり、限定はしないで、抗体Apo2.7、ヨウ化プロピジウムおよびカスパーゼ色素が含まれる。
【0027】
同定物質が蛍光である場合、致死表現系を示している細胞は、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)、96ウェルプレートリーダー、またはCCDカメラを用いて可視細胞より簡単に単離でき、遺伝的物質が、得られた死亡した、および/または死亡している細胞の亜集団から回収される。 1つのそのような蛍光物は、種々の蛍光色素に直接共役可能なタンパク質アネキシンVである。 アネキシンVは、脂質部位、ホスファチジルセリンに結合し、これは通常細胞質膜の内部小葉に位置する。 多くの細胞がアポトーシス(プログラムされた細胞死)を受けているときに、この脂質は、細胞質膜の外側小葉に転位する。 この転位により、外来より加えた蛍光共役アネキシンVが、脂質と相互作用することが可能になり、それによって、アポトーシスを受けている細胞を標識することが可能である。 さらに、壊死(非アポトーシス細胞死)の通常の経過の間、細胞質膜の完全性がゆるくなり、蛍光共役アネキシンVが細胞内に入り、脂質と相互作用可能になり、このことより死亡した細胞のタグとして利用できる。 他の代表的な蛍光物は、シントックス(SyntoxTM)(モレキュラー プローブ)であり、細胞質膜が緩くなる時に、アポトーシス、または壊死の後期のステージの間に、細胞内に入ることが可能な、膜不透過性色素である。 細胞への進入に際し、シントックスは、DNAおよび蛍光と相互作用し、それによって死亡細胞の検出が可能になる。
【0028】
標的細胞
広範囲の種々の異なる細胞型が、標的細胞としての使用に好適である。 一般的に、公知の病理学または疾患状態に対して、または公知の標的組織または細胞集団に対して関連を持つ細胞が利用される。 多くの実施様態において、標的細胞は哺乳動物細胞でありうる。
【0029】
多くの例において、対象の疾患は癌である。 細胞型はよく固形腫瘍を示し、転移性癌細胞がとりわけ対象である。 代表的な癌種には、限定はしないが、乳、大腸、前立腺および肺腫瘍、ならびに黒色腫が含まれる。 相当する細胞株としては、限定はしないが、SW620、HT29、DLD1、T47D、WM35などが含まれる。
【0030】
他の例において、ヒト臍帯動脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells、HuVECs)またはヒト乳房上皮細胞(Human Mammary Epithelial Cells、HMECs)のような初代細胞での致死表現形の探索が望ましい可能性がある。 一般的に、本発明は、上皮細胞、内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞および造血細胞から由来する種々の初代細胞培養のスクリーニングに簡単に役に立つ。 いくつかの例において、初代細胞株を、細胞傷害物質の選択性を見積もるために、カウンタースクリーニング工程で使用可能である。 他の例において、たとえば血管新生において、初代細胞それ自身に細胞傷害性である物質を同定することが望ましい可能性がある。
【0031】
本発明はまた、遺伝的に改変された初代細胞におけるネガティブ選別を実施するために適用可能である。 非限定例として、初代細胞は、当業者によく知られた標準の技術を用いて、不死化するために、遺伝的に改変してよい。 不死化技術には、HPV−E6、HPV−E7、hTERT、活性化ras、SV40ラージT抗原、エプスタイン−バー(Epstein−Barr)ウイルス(EBV)BARF1遺伝子、I型ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T−Cell Leukemia Virus Type 1、HTLV−1)TAX(転写促進)遺伝子、およびアデノウイルスE1Aのような公知の遺伝子の使用が含まれる。 他の例において、初代細胞株は、種々の標準の技術によって形質転換してよい。 たとえば、1つまたはそれ以上の公知の腫瘍サプレッサが使用される。 あるいは、広く種々の形質転換されたか、または不死化された細胞株が、ATCCおよび他の同様の供給源より入手可能である。
【0032】
多くの例において、標的細胞が、対象の致死表現系に対して選別するために使用した同定特性または代理特性が何であっても、低いバックグラウンドを持つことも好まれる。 1つの例として、アポトーシスに対する浮遊アッセイの場合に、(i) 自発的脱離の低バックグラウンド、および/または(ii)脱離と致死表現系の良好な相関関係を持つ標的細胞が選択される。 そのような低バックグラウンド脱離率を持つ標的細胞は、たとえば、アポトーシス細胞に対する良好なレベルの濃縮を提供し、濃縮物は、脱離した細胞の1つ以上の集団を収集することによってさらに濃縮されうる。 脱離のバックグラウンド率は、与えられた標的細胞型に対して評価される。 多くの例において、1%または2%までの率がもっとも好ましく、2〜5%のバックグラウンド率、約10%までが、本発明での使用において、適切な区別を提供する。 そのような標的細胞株およびその特性の選別および最適化は当業者の範囲内である。
【0033】
本明細書の他の部分でより完全に記述したように、たとえばHT29およびSW620のような大腸癌細胞株、T47Dのような乳癌細胞株、およびHMECおよびHuVECのような初代細胞株が、浮遊アッセイ実施様態に対してとりわけ好ましい。 また他の実施様態において、ネガティブ選別戦略を他の細胞種に対して、当業者の範囲内での最小の改変をともなって、適用してよい。 非限定例には、細胞傷害性物質を、ウイルス感染細胞の選択的殺傷に基づいて選択する、広く種々のウイルス感染哺乳動物細胞が含まれる。
【0034】
遺伝的ライブラリー
本発明は、細胞傷害性物資に対する種々の種類の遺伝的物質を選別しうる。
取り扱いおよび細胞への導入の容易さのために、そのような遺伝的物質は、しばしば、遺伝的ライブラリーの形であり、言い換えれば、選択の標的細胞に対して好適な発現ベクターに含まれる。
【0035】
いくつかの例において、遺伝的ライブラリーは、すべてまたは部分的に無作為化されたペプチドライブラリーをコードしているDNAとすることができ、当業者によく知られている技術を用いて合成される。 他の実施様態において、遺伝的ライブラリーは、特定のペプチド配列をコードしている可能性がある。 そのようなペプチドコードDNAは、内部に位置するか、あるいは骨格ポリペプチドのN−末端またはC−末端にて、またはその近くに局在する内部部位を持つ、骨格構造の一部分として発現されうる。 本技術分野では、広く種々のそのような骨格構造がよく知られている。 そのような内部骨格部位に挿入された無作為ペプチドライブラリーの1つの非限定例は、そのすべてが本明細書にて参考文献として組み込まれた開示である、Abei et al., N.A.R. 26(2);623−630(1998)にある。
【0036】
他の例において、細胞傷害性物質に関して選別すべき遺伝的物質は、細胞供給源より由来する。 そのような遺伝的ライブラリーは、ゲノムDNA(gDNA)、クローン化DNAから由来するか、または細胞RNAから由来するcDNAから由来するかいずれかであってよい。 そのようなライブラリーは、広く種々の細胞供給源から由来してよく、限定はしないが、脳、ヒト胎盤組織、肝臓、腎臓などが含まれる。 好ましくは1つは、すべてのタンパク質領域が、ライブラリーで発現されるように、十分な数のDNA断片を合成する。 たとえば、参考文献にて組み込まれている開示である、Sambrook, Molecular Cloning;A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989) 第7〜9章。 本技術分野では、広く種々のそのようなcDNAおよびgDNAライブラリーの調製が普及している。
【0037】
1つの非限定例として、cDNAの合成およびクローニングは、二本鎖DNAを、たとえばヒト胎盤組織から単離した、無作為プライムmRNAから調製することによって実施される。 あるいは、無作為に共有されたゲノムDNA断片が使用されうる。 いずれかの場合において、断片を、酵素で処理し、末端を修復し、対象の標的細胞、多くの場合哺乳動物細胞であるが、この細胞内に導入するのに好適なベクター内にライゲーションする。 例示ベクターには、種々のレトロウイルス構造が含まれ、そのうちのいくつかの非限定例が本明細書にて記述されている。
【0038】
細胞傷害性物質
種々の細胞傷害性物質が、本発明の範囲内である。 たとえば、細胞傷害性物質は、タンパク質様化合物(たとえば、ペプチド、ポリペプチドまたは天然のまたは合成起源のタンパク質)、核酸物質(たとえば、アンチセンス様式で働く、さもなければ正常の細胞機能を干渉するRNA)、または小有機分子(たとえば天然の産物または組み合わせz化学ライブラリーのメンバー、またはその誘導体)でありうる。
【0039】
細胞傷害性物質がタンパク質様または核酸である場合、ついでそのような物質をコードしているDNAを、そのような標的細胞に対して適切な分子生物学的な標準技術を介して、たとえばレトロウイルス伝送、エレクトロポレーションなどを介して、細胞内に導入する。 細胞傷害性物質が小有機分子である場合、ついで標的細胞を、先に選択した濃度の物質を添加した培養培地を介して、そのような物質に曝露する。
【0040】
小有機分子である細胞傷害性物質は、当業者によく知られている少なくとも2つの方法で、簡単に単離されうる。 1つのそのような方法は、標準のin vitro置換アッセイである。 そのようなアッセイにおいて、細胞傷害性ポリペプチドおよびその相当する内因性細胞結合相手が、しばしばハイスループット機械化アッセイ系に好適である多重ウェルプレート内で、in vitroにてまず調製される。ついで、小有機分子のライブラリーを、これらの細胞構成物の1つに結合し、それによって、それらの正常の、内因性の相互作用が乱される分子を同定するために選別する。 あるいは、小有機分子を、分子の構造を体系的に改変し、構造を選られた生物学的活性と関連付けること、本明細書では「構造−活性相関」研究と呼ぶものによって得る。 当業者に好まれるものとして、そのような構造−活性相関を作り出すための種々の標準の方法が存在する。 いくつかの例において、作業は純粋に経験に基づくものであり、他においては、内因性ポリペプチドの三次元構造が、小分子模倣の合理的な設計に対する開始点として使用される。
【0041】
標的細胞の細胞傷害性物質への曝露
細胞傷害性物質は、標的細胞の内因性構成物と相互作用する、タンパク質様(タンパク質、タンパク質断片または領域、ポリペプチド、またはペプチド)または核酸部分、または他の有機、または生物無機化合物でありうる。 タンパク質様および核酸物質は、たとえば合成DNA、cDNAまたは断片化、共有または消化ゲノムDNAからなる発現ライブラリー(「遺伝的ライブラリー」の産物として、標的細胞に提示してよい。 遺伝的ライブラリー挿入物は、それらに加わったさらなる任意の配列なしに細胞に発現しうるか、または他の物質に融合しうる。 たとえば、ポリペプチドは、パーターバゲンに融合し、アッセイ系でのパーターバゲンの安定性を増加させる、および/または蛍光のような簡単に検出可能な特性を提供しうる。 そのような融合部分の例には、GFP、LacZ、またはGal4が含まれる。 詳細は、そのすべてが、本明細書にて組み込まれた、共同出願、および共有の米国特許第08/965,477号、「光励起骨格において提示されるペプチドライブラリーの方法および組成物」にて提供されている。
【0042】
いくつかの実施様態において、推定細胞傷害性物質をコードしているか、含んでいる遺伝的ライブラリーは、当業者によく知られているトランスフェクション手順を用いて、レトロウイルスベクターを介して標的細胞に提示される。 あるいは、そのような物質は、エレクトロポレーションまたは他の標準の手順を介して細胞に提示される。
【0043】
浮遊細胞アッセイおよび濃縮
本発明のいくつかの例において、致死表現系(たとえば、アポトーシスまたは壊死)が、培養表面からの脱離の選別特性の代理として使用されるネガティブ選別アッセイ、本明細書では「浮遊アッセイ」と呼ぶが、このアッセイを用いることで、選択される。 したがって、致死表現系に適している細胞が濃縮されるか、またはより濃縮される細胞集団が、細胞傷害性物質への曝露の後に、培養培地なしで、「浮遊」する細胞を収集することによって単純に収集されうる。
【0044】
そのような浮遊アッセイ実施様態は、まず、好適な標的細胞種、たとえば、対象の組織または疾患状態と関連している、および自発的脱離のバックグラウンド(すなわち非アポトーシス細胞の脱離)が好ましい程度に低い、そして致死誘導用量の細胞傷害性物質への曝露に続く、脱離と致死表現系の間の高い相関性のある細胞種の選別を含む。 好適な細胞種は、以下のようにして選別される。 まず、(以上でより詳細に記述した)対象の疾患に関連した細胞種を選択する。
次に、細胞培養を標準の技術を用いて確立する。 ついで、この細胞培養を2つの集団、「浮遊」および接着細胞に分ける。 「浮遊」集団を、培養プレートまたはフラスコから培養培地から抜き取ることで回収し、ついで、この培地から細胞を採集する。 接着集団は、培養培地を抜き取った後に残った、培養支持体に接着した細胞をトリプシン処理して得る。 ついで、それぞれの集団を計数し、自発的浮遊細胞の、接着細胞に対する総体すうを計算する。 ついで浮遊細胞および接着細胞集団を解析して、それぞれのうちアポトーシスまたは壊死細胞の数を測定した。 好ましい細胞種は、接着の欠失と致死表現系の間に高い関連性を提供し、すなわち、浮遊細胞集団が、死亡した、または死亡している細胞で、相対的に大きく占められ、一方で接着集団が、生細胞で比較的大きく占められる。
【0045】
浮遊細胞は、由来する細胞種に依存して、致死および非致死表現系の異なる濃度で提示する。 たとえば、いくつかの細胞株において、生細胞(すなわち、細胞分裂が起こっており、および/または複製はしないが、正常の細胞代謝および生理学を示している、健康で、生きている細胞)は接着しない。 そのような細胞株において、非接着の代理表現系は、アポトーシスに関連せず、したがって、そのような細胞株は、本明細書で記述した浮遊アッセイ技術には好適ではない(しかしながら、たとえばFACS解析によって採取された死亡した、または死亡している細胞からの遺伝的物質の直接の回収を用いる、ネガティブ選別のために使用可能である)。 生細胞が通常プレーティング表面に接着する他の細胞株において、有意な割合の生細胞、非アポトーシス細胞が、浮遊細胞集団に入りうる。 他の細胞株において、いくつかの有意な浮遊細胞集団の部分は、非アポトーシス、非生細胞、たとえば、アポトーシス以外の細胞処理によって死亡した細胞でありうる。 そのような混合「浮遊」集団を提供する細胞株を、好適な対照を使用し、および/または第二の同定方法(たとえばApo2.7またはヨウ化プロピジウム)を、浮遊アッセイ技術とともに使用する場合に、本明細書で記述したアッセイ技術で使用することができる。
【0046】
次に、選択した細胞種を、推定細胞傷害性物質に曝露する。 細胞傷害性物質が、核酸であるか、または核酸によってコードされている場合、たとえばレトロウイルスライブラリーの構築および感染のための標準の手順に従うことで、種々のそのような物質をコードしているライブラリーを、選択した細胞種の集団に提供することによって、簡単に実施される。 処理した標的細胞を、ついで致死表現系の確立が確認されるのに十分な時間培養し、続いて細胞培養培地中の「浮遊」または脱離細胞を収集し、遺伝的物質を抽出するために処理する。 ついで、死亡した、または死亡している細胞からのDNAを増幅し、どの細胞傷害性物質(類)が、アポトーシス致死表現系に関連しているかを同定するために、少なくとも部分的に配列決定する。 ついで、致死表現系および回収した物質間の相関を、そのような物質を、第二のそのような標的細胞集団に導入し、相関致死表現系の存在を確かめることで、確認した。
【0047】
あるいは、全体として浮遊細胞集団を、1つまたはそれ以上の致死表現系に対して濃縮した亜集団として使用することができる。 たとえば、アポトーシス細胞を壊死細胞から区別したい場合、ついで上記戦略を使用して、致死表現系に対して、得られた標的細胞亜集団を濃縮してよい。 ついで、この濃縮した亜集団をああに、たとえばアポトーシス特異的同定戦略(たとえば、Apo2.7)およびFACSソーティングを用いて分離して、精製アポトーシス細胞画分を得てよい。
【0048】
遺伝的物質の回収
いったん推定細胞傷害性物質を受けた細胞を、選別し、致死遺伝子を持っているそのような細胞を直接的に染色技術を介して、または間接的に、接着の欠失のような代理表現系を介して、同定したならば、それらの細胞からの遺伝的物質を、標準の技術を介して回収する。 簡単に記すと、標準PCR技術を使用して、対象の遺伝的物質(DNA)を回収し、増幅する。 PCRプライマーは、推定細胞傷害性物質をコードしている領域を増幅するように選択する。 ついで遺伝的物質を、当業者によく知られた技術を用いて、全体的に、または部分的に配列決定し、第二選別またはカウンター選別のためのサブライブラリーとして再構築することができる。
【0049】
内因性細胞タンパク質
本明細書で記述したような、ネガティブ選別プロトコールが完了した後、しばしば、致死表現系を促進する内因性細胞タンパク質(類)を得ることが有益である。 「内因性細胞タンパク質」は、選択した宿主細胞ないでのネガティブ遺伝的物質残基によってコードされた、タンパク質、ポリペプチド、またはポリペプチドサブユニットの集合を意味する。 そのような内因性細胞タンパク質は、限定はしないで、(i)酵素機能、(ii)細胞質または核における経路中のタンパク質−タンパク質相互作用、および(iii)シグナル伝達および輸送タンパク質などを含む、膜貫通、または分秘タンパク質を含む細胞中の種々の基異能に役に立ちうる。
【0050】
対象の内因性細胞タンパク質は、種々の方法にて得ることができる。 たとえば、細胞傷害物質がタンパク質様である場合、ついで相当する内因性結合相手を、酵母2−ハイブリッド結合アッセイ、ファージディスプレイ技術またはたとえばタンパク質コート基質を用いたin vitro結合アッセイのような標準のタンパク質−タンパク質相互作用を介して同定してよい。
【0051】
細胞特異的細胞傷害性物質のアッセイ
いくつかの実施様態において、本発明の方法論は、示差的細胞傷害性効果を示す、すなわち、1つの細胞集団には細胞傷害性であるが、他に対しては傷害性ではない、物質を同定するために適用してよい。 そのような実施様態は、対象の癌種に対して特異的に働き、一方で非癌細胞には部分的または全体として影響を与えない、物質を同定するのに有益である。 同様に、本方法論は、1つの発展工程の癌細胞、たとえば転移性細胞に特異的であるが、他は特異的でない、物質を同定することができる。 そのような適用は、そのようにして同定された物質が、望ましくない副作用の欠失、より低い治療用量などのような治療的利点を提供するように予想され、とりわけ有益である。
【0052】
1つの一般的なアプローチは以下の通りである。 標的細胞種を選択し、対象の細胞傷害性基質(本明細書では、「第二物質」と呼ぶ)を選択する。 ついで「標準殺傷曲線」(すなわち用量−応答曲線、ここで、物質の量を増加させて標的細胞に提示し、得られた細胞死をモニタし、プロットした)を、細胞種および細胞傷害性基質に対して調製する。 標準の殺傷曲線より、第二物質「副次毒性閾値」用量(すなわち標的細胞集団において、細胞死を開始させない、殺傷曲線からの最大用量)をさらなる研究のために選択する。 ついで、標的細胞の集団に、1つまたはそれ以上の推定細胞傷害性増強物質(たとえば、遺伝的ライブラリーの形態で)を提供し、続いて、選択した副次毒性閾値用量の第二物質に曝露する。 ついで、本明細書の他の部分で記述したようなネガティブ選別を実施し、副次毒性閾値用量の第二物質に対する応答で死亡した、形質転換した標的細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を同定する。 そのような物質が、タンパク質様であるか、または核酸生物分子である場合、ついで、たとえば本明細書の他の部分で記述したPCR増幅およびシークエンシング戦略によって、物質をコードしているか、含んでいる遺伝的物質を単離し、評価する。
【0053】
プレコンディショニング
本発明のいくつかの実施様態において、プレコンディショニング工程が、ネガティブ選別戦略に加えられうる。 そのような実施様態において、標的細胞の集団を、まずプレコンディショニング物質に曝露する。 ついで、細胞を推定細胞傷害性物質(たとえば、遺伝的ライブラリー)に曝露する。 ここでまた、本明細書の他の部分で記述しているように、選別によって致死表現系(たとえばアポトーシス、または壊死)を表示している細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を単離する。 この工程は、結果として、プレコンディショニング物質の存在下で働く物質の同定となる。
【0054】
任意に、第二の選別工程(ポジティブ選別)を使用して、プレコンディショニング物質の存在下でのみ働く物質を同定してもよい。 このような実施様態において、標的細胞の第二集団を、プレコンディショニング物質への曝露の先行工程無しに、同様の様式で、第一(ネガティブ)選別工程で単離した細胞傷害性物質(群)に曝露する。 本明細書の他の部分で記述しているように生きている細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を単離する。
【0055】
種々のプレコンディショニング物質が、当業者に公知である。 一般的に、これらの物質は、細胞増殖または死に関連する代謝経路に関与する可能性がある。非限定例には、活性化EGFレセプター、rasまたはmycのような活性化癌遺伝子p53、p16またはRbのような遺伝子のノックアウなどのような増殖因子が含まれる。
【0056】
本発明の選別系の産出および使用のための以下の実施例は、当業者に、本発明をよりはっきりと理解され、実施することを可能にする。 しかしながら、本発明は、実施例によってその範囲が限定されることはなく、本発明の単一の観点を示しているに過ぎず、方法および機能的に同等である物質は、本発明の範囲内である。 本明細書で記述したものに加えて、種々の改変が、以上の記述および付随する図表より、当業者に明らかになるであろう。 そのような改変は、付随する請求項の範囲内であると意図される。
【0057】
【実施例】
実施例1:生細胞と瀕死細胞の識別ならびにキャラクタリゼーションの方法
本明細書で述べるいくつかの選択を含め、多くのネガティブセレクションは死および/または瀕死細胞の識別を必要とする。 当業者が認識するように、これらの細胞を検出する多くの方法がある。
【0058】
致死的表現型を有する細胞を識別する、および、たとえばアポトーシスおよび壊死性細胞を区別する多くの技法が存在する。 ある例において、抗体はアポトーシスを受けている細胞を識別するために使用される。 Koester et al., Monitoring Early Cellular responses in Apotosis is Aided by the Mitochondrial Membrane Protein−Specific Monoclonal Antibody Apo2.7” Cytometry, 29:306−312 (1997)。 このようないくつかの実施態様において、抗体は、正常(生存可能な)条件下で検出から隠れた、またはマスキングされているが、死細胞において暴露されるようになる抗原を認識する。 別の例において、アポトーシス細胞は、アポトーシス経路に特異の、そしてアポトーシス経路によって活性化される、プロテアーゼ(カスパーゼ)によって認識される基質を使用して検出される。 Green, D., Kroemer, G., ”The Central Executioners of Apotosis: Caspases or Mitochondria”, Trends in Cell Biology, 8:267−271 (1998)。 また別の例において、死細胞および瀕死細胞は、各種の染料とのその相互作用に基づいて、生細胞と区別される。 1つのクラスである膜透過性染料(たとえば、トリパンブルー)は、生細胞の細胞内区画から活動的に除外されるが、死細胞または瀕死細胞の細胞質/核領域に蓄積する。 第2クラスの試薬である膜不透過性染料は、すべての生細胞から除外されるが、死および/または瀕死細胞の易感染性膜境界に浸透することができる。 これらの試薬の多く(たとえばヨウ化プロピジウム、エチジウムホモダイマー)は、DNAに対する親和性を持ち、核酸に結合すると蛍光の増加を示す。 Krishan, ”Rapid flow cytofluormetric analysis of mammalian cell cycle by propidium iodide staining”, J. Cell Biology 59:766(1973)。 これらの試薬は、FACS分析とともに使用されるか、蛍光顕微鏡法のさらに一般的な技法で使用される。 Shapiro, ”Practical Flow Cytometry” H.M. Wiley−Liss Publications (1995)。
【0059】
A. Apo2.7 抗体染色
Apo2.7(Coulter Immunotech)は、アポトーシスを受けている細胞内のみで暴露されるミトコンドリア膜内のエピトープを認識する、モノクローナル抗体である。ネガティブセレクションでその有効性を試験するために、抗FAS抗体(1μg/ml 抗CD95クローン、Yonehara, S. et al., ”A cell killing monoclonal antibody (anti−Fas) to a cell surface antigen co−down regulated with the receptor of tumor necrosis factor.” J.Exp.Med 169:1747−1756 (1989))を用いて、2mlのAIM−V無血清培地中の1×106 Jurkat細胞にアポトーシスを受けさせた。 一定の暴露時間(抗FAS抗体中で0、2、10、17または21時間)の後、細胞膜を透過化処理するために、100μlの100μg/mlジギトニンのPBS溶液を加えた(氷上で20分間)。 この手順の後、細胞を回転させ(200×g)、Coulter−Immunotech社提供の蛍光R−フィコエリトリンシアニン標識Apo2.7(10μl Apo2.7抗体、90μl PBS、+細胞)を含む溶液中で再懸濁させた。 この方法によって、暗所で室温にて15分間インキュベートを行うことができた。 細胞は次に、遠心分離(200×g)によってペレット化し、フローサイトメトリー(励起488nm;発光660〜690nm)によって分析する前に、1mlのPBS中で再懸濁させた。 FAC分析の結果(図1)は、時間=0(すなわち対照)において、個体群のわずか4%のみがApo2.7抗体によって標識されたことを示していた。 これに対して、アポトーシス誘起抗FAS抗体は、Apo2.7のJurkat細胞系への結合を増加させた(t=21時間=81%標識)。
【0060】
B.ヨウ化プロピジウム染色
ヨウ化プロピジウム染色(PI)は蛍光のDNA間在分子である。 無傷の膜を持つ生細胞は、細胞間区画からPIを排除するため、非蛍光である。 死および瀕死細胞はPIに対して易感染性で、透過性であるため、蛍光である。 PI染色技法は、アポトーシスおよび壊死細胞に等しく利用される。
【0061】
この種の試薬の死細胞の識別および精製への使用の、限定しない例として、以下のパイロット実験を実施した。 フローター細胞(すなわち、別の接着細胞個体群中の非接着細胞)は、HT−29大腸癌細胞のフラスコから単離した。 これらの細胞は、等しい大きさの接着細胞個体群とともに、遠心分離によって収集し、次にPBS中で1×106細胞/mlにて再懸濁させた。 次に、PIを2.0μg/mlの濃度で各サンプルに添加し、細胞をフローサイトメトリー(励起488nm、発光610nm)によって分析した。 膜完全性を失った死細胞は、蛍光の増加に基づいて、生細胞と容易に区別できた(図2)。 PI摂取が陽性の接着細胞のパーセンテージは、この細胞濃度では平均約0.5〜1.5%であった。 非接着「フローター」細胞では、細胞の高いパーセンテージ(>10%)がPI摂取について陽性であることがわかった。
【0062】
PI染色と細胞生存度の相関を陽性にするために、同数のPI陽性細胞とPI陰性細胞を、FACSを用いて識別し、別々に収集した。 この2つの個体群は次に、150mmプラスチック組織培養皿に蒔き、接着させて、7〜10日間培養した。
次に、各プレートで増殖したコロニーの数をカウントして、細胞生存度を決定した。 PI陰性の細胞が生存可能で、コロニーを作成するのに対して、PI陰性細胞は増殖できなかった。
【0063】
C.核凝縮
壊死に対して、アポトーシスによって死ぬ細胞は、核凝縮を示すことが多い。したがって、核の形態を描出する染料/染色技法を用いて、細胞が死ぬ方法を評価する。
【0064】
2つの細胞系、WM35およびHS294Tを蒔き(ウェル当たり50,000細胞、24ウェルプレート)、接着させた。 24時間後、細胞を可変濃度(5〜80μM)の、アポトーシスを誘発する周知の化学療法剤であるシスプラチン(シスプラチナ(II)ジアミンジクロライド)によって4時間処理した。 翌日(18〜24時間後)、次に培地を各ウェルから収集し、ウェルに接着しなかった細胞(本明細書では「フローター細胞」または「フローター」と呼ぶ)を遠心分離によって収集した(400×g)。 接着細胞の個体群を次に、トリプシン処理によって固体担体から持ち上げ、遠心分離にかけて(400×g)、PBS(0.125ml)中で再懸濁させた。 WM35およびHS294T細胞系の核の形態と細胞死パーセントを観察するために、フローターと接着個体群の両方の細胞をSyto16とエチジウムホモダイマーによって同時に染色した(125μlの細胞懸濁液+2.5μlの62.5μM Syto16+2.5μMの100μg/mlエチジウムホモダイマー、37℃にて
10分間)。 エチジウムホモダイマーは膜不透過性化合物であり、染色体DNAによってインタカレートされる場合、617nm範囲で蛍光を発する。 それゆえ、生細胞と死/瀕死細胞の両方を含む、混合細胞の細胞群では、細胞膜が易感染性である細胞のみがエチジウムホモダイマーによって染色される。 これに対して、Syto16(Molecular Probes)は膜透過性染料であり、染色体DNAと結合すると518nm範囲で蛍光を発する。 これらの2つの染料はともに、生細胞と死/瀕死細胞の両方を含む個体群の核形態を観察および区別するのに使用できる。
【0065】
シスプラチン処理したHS294T細胞のフローター個体群を検査すると、一般に50%を超える細胞がエチジウムホモダイマーで染色されたのに対して、蛍光顕微鏡法で観察した場合に、これらの細胞の20%未満が濃縮または断片化核を示したことがわかった。 その代わりに、これらの細胞の核は、拡散し、膨潤しているように見え、このことはシスプラチン処理HS294細胞が、アポトーシス経路ではなく、壊死経路によって死ぬことを示唆している。 これに対して、シスプラチン処理WM35細胞系から得たフローターは、高度のエチジウムホモダイマー染色(45〜50%)と表現型によって識別可能な濃縮または断片化核(シスプラチンの高濃度において40〜50%)の両方を示し、このことはこれらの細胞の多くのパーセンテージがアポトーシス経路で死ぬことを示唆している。 2つの接着細胞個体群のどちらも、大量のエチジウムホモダイマー染色を示さず(一般に<10%)、接着個体群の多くは生細胞よりなることが示されている。
【0066】
D.カスパーゼ感受性染色
カスパーゼ−3と他のプロテアーゼは、アポトーシス誘発細胞死で重要な役割を示すことが示されている(Green and Kroemer、1998)。 この酵素活性と細胞死との相関を試験し、カスパーゼ−3活性をネガティブセレクションで使用する可能性を研究するために、WM35(メラノーマ)細胞にアポトーシスを受けさせ、次に、カスパーゼ−3蛍光基質である、ローダミン123−YVADに暴露させた。
【0067】
WM35細胞は、アポトーシス誘発前に1日経過させ、24時間インキュベートして基質に接着させた。 次に培地を除去し、残りの接着細胞をPBSで1回洗浄し、次に新しい培地中でシスプラチンに暴露させた(15μg/ml)。 アポトーシス誘発の18〜24時間後、フローター細胞個体群を収集し、遠心分離(400×g)によってペレット化し、PBS中で3×106細胞/mlにて再懸濁させた。 次にサンプルを4つのグループに分割した:(1)非誘発マイナスローダミン123−YVAD(基質)、(2)非誘発プラス基質、(3)誘発マイナス基質および(4)誘発プラス基質。 ローダミン123−YVAD基質に暴露させたサンプルでは、50μlの予備加温(37℃)細胞懸濁液を25μlのストック基質溶液(Cellprobe)とあわせた。 サンプルを37℃にて60分間インキュベートし、次にFACS分析の前に氷上に置いた。 カスパーゼ−3染色に加えて、核サンプルの複製をヨウ化プロピジウムで染色して、膜が易感染性である個体群内の細胞のパーセンテージと、PIおよびカスパーゼ−3染色の重複を決定した。 サイトフローメトリー分析では、各サンプルを総量1ml(PBS)とし、アルゴンレーザーを用いて波長488nm(15mワット)で励起させた。 発光スペクトルは、FL1(PMT2)525nmブルーフィルタを用いて、515〜535nmの波長で読取った。
【0068】
アポトーシスサイクル初期のカスパーゼ−3活性は、細胞の細胞質膜破壊のはるか前にピークに達する。 したがって、カスパーゼ−3−陽性フローター細胞は、PI−陰性であることが予想され、これに対してPI−陽性フローター細胞は、カスパーゼ−3活性のピーク期間を経過したため、表現型上はカスパーゼ−3−陰性であることが予想される。 これらの予想と一致して、PI−マイナスのうち、フローター個体群、94.6%から収集したシスプラチン処理WM35細胞はカスパーゼ−3−陽性であることがわかった。 フローター細胞から得た残りの細胞は、PI−陽性、カスパーゼ−3−陰性グループになった。 接着細胞個体群を用いた対照研究は、ほぼ大部分(>95%)がカスパーゼおよびPI陰性であることを示した。
【0069】
実施例2:フローターアッセイによるネガティブセレクション用細胞種の識別
ネガティブセレクションアッセイを行う前に、致死性表現型のただちに監視される表現型特徴を備えた細胞型を識別する。 本実施例において、プラスチック、ゼラチンまたは他の適切な培養担体に細胞接着しないこと(すなわち、「フローティング細胞」すなわち「フローター」の存在)は、致死表現型に相関する代理表現型の特徴として選択される。
【0070】
ネガティブセレクションで死および/または瀕死細胞を識別および濃縮する方法としてフローター個体群を使用するために、細胞系は、好ましくは3つの機能を示す:(1)安定な未処理細胞個体群において、細胞の大多数が固体担体(たとえばプラスチック、ゼラチン)に接着し、フローター細胞のバックグラウンド率が比較的低い(<1%);(2)未処理または処理細胞個体群(すなわち推定上の細胞毒性剤、場合によっては2次剤にも暴露された個体群)において、高いパーセンテージのフローター細胞が死および/または瀕死細胞個体群と相関している;(3)細胞系が、たとえばレトロウィルス感染または形質導入などの、推定上の細胞毒性剤を細胞内にコード化するライブラリインサートを導入する標準または一般的技法に感受性である。
【0071】
A.フローター細胞のバックグラウンドレベル
第1の可変の、バックグラウンドフローターレベルは、標的細胞の安定な培養を確立し、次に培地中に浮遊する細胞のレベルを細胞の総数(接着細胞+フローター細胞)と比較することによって評価する。 レトロウィルス感染などの別の手順をこの実験設計に重複させて、フローター細胞/細胞全体の比に対するレトロウィルス感染の影響と、推定上の細胞毒性剤の形質移入による導入に対する細胞系の感受性の判定を評価することができる。
【0072】
HT29細胞は、以下のようにフローター細胞アッセイにおける実現可能性について試験した。 簡潔には、0日目に6個のフラスコを6.25×105HT29細胞/フラスコを用いて播種した。 1日目に、細胞を固体担体に接着させた後に、これらのフラスコのうち2個を、選択可能な薬剤耐性マーカー(たとえばネオマイシン)を含み、グリーン蛍光タンパク質を構成的に発現する、レトロウィルスベクターpVT324を含むレトロウィルス上清によって感染させた。 残りの4個のフラスコのうち、2個を偽感染(たとえば、レトロウィルスを除き、フラスコ1と2とすべて同一の試薬/条件に暴露させた、「実施例3C」を参照)させ、2個には影響を与えないままとした。 2日目にはこの手順を繰り返した(すなわち二重感染)。 3日目(そして次に5日目)には、3個のグループそれぞれから1個のフラスコを選択し、フロータおよび接着細胞の個体群を分離・カウントして処理した。フローター細胞個体群の場合、培地を収集し、200×gで10分間遠心分離し、PBS中で再懸濁させてから、血球計数器でカウントするためのサンプルを取り除いた。 接着細胞個体群の場合、トリプシン処理によって細胞を最初に取り除き、遠心分離にかけて、次にフローター細胞と類似した方法で分析用に処理した。 個体群に存在するフローター細胞の固有バックグラウンドレベルを決定するために、細胞総数(接着細胞+フローター細胞)に対するフローター細胞の数の比を、操作しなかった3日目と5日目のフラスコの両方で分析した。 これらの数は、感染および偽感染フラスコから採取した類似の数と比較して、レトロウィルスまたは形質移入手順がバックグラウンドフローター率を変化させたかどうかを判定した。 HT29細胞のレトロウィルス感染に対する感受性を判定するために、pVT324感染フラスコ内でGFPを発現した細胞の割合を、フローサイトメトリーを使用して計算した。
【0073】
HT29細胞系の非感染バックグラウンドフローター率は、0.42%であることがわかった。 感染および偽感染HT29細胞はそれぞれ、0.51および0.37%のフローター率を示し、レトロウィルス感染手順もレトロウィルス自体も、実質的にはバックグラウンドフローター率を上昇させないことが示されている。 加えて、pVT324感染HT29個体群のFACS分析は、約80%の細胞が「明るい」ゲートに当たる(すなわちGFP発現細胞)ことを示した。 図3。 低いバックグラウンドのフローター率とHT29のレトロウィルス感染に対する高い感受性はともに、それをネガティブセレクションの望ましい候補にしている。 別の細胞系−2つの結腸直腸線癌系、SW620およびDLD−1(CCL−221、ATCC)と前立腺癌細胞系、PC−3も、これらの同じ基準を使用して検査し、ネガティブセレクションに適した細胞系候補であることがわかっている。 これに対して、LNCaP、ヒト前立腺癌細胞系は、10%を超えるバックグラウンドフローター率を示すため、致死表現型として、接着性の欠如を利用するネガティブセレクションでの使用にはあまり好ましくない。 以下の表1を参照。
【0074】
【表1】
【0075】
B.「フローター」と致死表現型の相関
本発明のネガティブセレクションの重要な要素は、フローター個体群と死および/または瀕死細胞との相関を示す能力である。 この相関は、制限なく、そのような細胞の検出・キャラクタリゼーションのための上述の技法を含め、当業者に既知の各種の技法を用いて確立できる。
【0076】
本実施例では、接着および浮遊細胞の個体群両方における死/瀕死細胞のパーセントを監視する方法として、ヨウ化プロピジウム(PI)を使用した。 死および/または瀕死のフローターのパーセントを決定するために、4つの独立した細胞系(3つの大腸癌細胞系、HT29、SW620およびDLD−1、そして1つの前立腺細胞系、PC3)を組織培養フラスコに蒔き、接着させた。 24〜48時間後、接着細胞とフローターの両方を収集し、PIで染色して、フローサイトメトリーで検査した。 4種類すべての細胞系の接着個体群は通常、1%未満のPI+細胞を示し、30%以上のフローター細胞個体群がPI+であることがわかった。
【0077】
これらの研究は、上の細胞系において死細胞とフローターの間に強い相関があることを示している。 加えて、フローター収集技法と第2のセレクション(PI+細胞のFACS分類)を組合わせると、致死表現型を持ち、死および/または瀕死細胞の濃縮レベルをさらに最大限にする技法が可能となり、それゆえ個体群中では低い頻度で存在する細胞分裂停止剤を単離する可能性が上昇する。
【0078】
死または瀕死細胞が接着個体群からフローター個体群に移動するかどうかを判定するために設計された第2の実験は、パルス追跡プロトコルを用いて実施した。 Alberts, B. et al., ”Molecular Biology of the Cell”, pg.180, Garland Publishing, Inc. (1983) 。 培養物中の接着PC−3細胞は、2μg/mlのPIで短時間染色し、これに対して残りはプレートに付着させた。 次に細胞をすすいで、新しい培地に戻した。 24時間後、フローターと接着個体群の両方を収集し、スキャンして、2つのグループの細胞の中でPI陽性細胞の分布を決定した。 結果(図4)は、PI陽性細胞が、細胞の非接着「フローター」個体群に特異的に分離されたことを示している。 この結果は、以前に接着性であった死または瀕死細胞が、24時間以内にフローター個体群の中に移動したことを示している。
【0079】
実施例3:細胞毒性剤をコード化する配列の導入と回収
細胞毒性剤(すなわち、個々の細胞の比較的即時の死を刺激する薬剤、または細胞の成長または増殖を防止し、それにより細胞個体群の死に徐々に至らせる薬剤)をコード化する配列を識別する「フローターアッセイ」を実施するには、推定上の細胞毒性/細胞分裂防止剤をコード化する配列のライブラリを作成し、次に選択した細胞系に導入する。 以下の実施例は、そのような研究の限定しない1つのプロトコルについて述べる。
【0080】
A.cDNAライブラリの調製および転移
当業者にとって一般的な技法を用いて、オリゴdTセルロースカラム(PolyASpin(商標)、New England BioLabs)を用いた親和性クロマトグラフィーによって、ポリAmRNAを胎性脳組織から単離する。 次にこの物質によって、選択された制限酵素リンカーをコード化する配列に結合されたオリゴdTプライマーを用いて、第1鎖PCR(Pfuポリメラーゼ、Stratagene)合成を行う。 サンプルからのRNA(RNAse A/H、Boehringer Mannheim)の除去後、望ましいリンカー配列を用いて作成されている、ランダムに初回刺激されたオリゴを用いて、第2鎖合成を進める。 次に二重鎖cDNA生成物のサイズを選択し、「粘着性」の末端を作成するために適切な酵素で処理し、選択する細胞系に適した発現ベクター内に連結する。
【0081】
オリゴdT初回刺激cDNAライブラリの代用として、推定上の細胞毒性剤をコード化する配列の供給源として、ランダム初回刺激cDNAライブラリを使用する。 そのようなライブラリを作成する1つの限定しない例として、胎盤組織に由来するポリA mRNAは、独自のSfiI配列(「SfiA」)ランダム9−merを用いて、次に後でライブラリ増幅に使用されるヌクレオチドの追加セット(OVT906:5’ACTCTGGACTAGGCAGGTTCAGTGGCCATTATGGCC(N)9)を用いてPCR増幅した。 この反応の生成物は、サイズ選択し(>400塩基対)、元のRNAテンプレートを除去するために、RNAseA/H処理を行った。 残りの単鎖DNAは次に、第2の独自のSfiI配列(「SfiB」)に連結された、ランダムヘキサマーヌクレオチド配列を用いて、次に再び、将来のライブラリ増幅のためのヌクレオチドの追加セット(OVT 908:5’ AAGCAGTGGTGTCAACGCAGTGAGGCCGAGGCGGCC(N)6)によって、2回目のPCRを行った。 この反応の最終生成物は平滑末端化し、/Klenow Fragment (New England BioLabs)によって充填し、サイズ選択肢、PCR増幅し(OVT 909:5’ACTCTGGACTAGGCAGGTTCAGTおよびOVT 910:5’AAGCAGTGGTGTCAACGCAGTGA)、SfiI(New England Biolabs)によって消化し、レトロウィルスベクターに挿入した。
【0082】
または市販のライブラリも使用できる。 そのようなライブラリのcDNAインサートをもとのベクターからスプライスして、選択した発現ベクターに挿入する。 1つの限定しない例として、3つの異なる組織源(脳、肝臓および腎臓)から得られた3つのライブラリは、Origine Inc.(カタログ番号DHL101、DHL105、DHL106)から得た。 標準手法を用いて、ライブラリを持つ細菌宿主を液体培地(LBとアンピシリン)中で拡張子、大量のエピソーム(ライブラリ)DNA(Maxiprep、Qiagen)を調製するのに用いた。 各ベクターのcDNAインサートは次に、適切な制限酵素(EcoRI/XhoI)を用いた消化によって放出させ、次に断片をゲル精製(0.4〜2.8kB)し、pVT340レトロウィルスベクター(以下で述べる)の適合部位内に連結した(T4リガーゼ、Boehringer Mannheim)。
【0083】
B.足場ペプチドライブラリの作成
足場ペプチドライブラリの作成は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Abedi et al., N.A.R. 26(2):623−630 (1998)によって開発されたプロトコルに従った。最初に、位置6(pVT27)にBamHI、XhoIおよびEcoRI部位を含む修飾GFPは、pVT014(Jasper Rine博士寄贈の、pACA151としても知られる)をテンプレートとして用いて作成した。これを実施するために、オリゴOVT 312(5’TGAGAATTCCTCGAGTTGTTTGTCTGCCATGATGTATAC)、OVT 322(5’TGAGAATTCGGATCCAAGAATGGAATCAAAGTTAACTTC)、OVT 329(5’GTTAGCTCACTCATTAGGCACCC)およびOVT 330(5’CGGTATAGATCTGTATAGTTCATCC)を用いた2つの独立したPCR反応を、組換Pfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて行った。 生成した断片の内部末端は、XhoI/EcoRIおよびEcoRI/BamHI制限部位を含んでいた(図5)。 この2つの断片を次に、EcoRI(New England Biolabs)によって消化し、T4 DNAリガーゼ(Boehringer Mannheim)と連結し、外部プライマーOVT329とOVT330の外部プライマーを使用してPCR増幅した。 最終生成物は、pVT27のGln157−Lys158挿入部位のXhoI/EcoRI/BamHI制限部位を含む6コドンインサートを含んでいる。
【0084】
ランダムペプチドライブラリを作成するために、15pmolのアプタマー3(5’TCGAGAGTGCAGGT[NN(G/C/T)]15GGAGCTTCTGを、アプタマー4(5’ACCTGCACTC)およびアプタマー5(5’GATCCAGAACTCC)とモル比1:50:50で混合し、70℃まで5分間加熱することによって、pH7.5の20mM Tris−HCl、2mM MgCl2、50mM NaCl中でアニーリングした。 次に溶液を室温に冷却させ、T4リガーゼ(Boehringer Mannheim)を用いて、BamHI/XhoIカットpVT334レトロウィルスベクターに連結した。 これらの操作の結果として、どちらの末端も3個の一定のアミノ酸によってフランキングされたバイアスランダム15アミノ酸配列を、GFPの位置6/VT27に挿入した。 電気穿孔法によって、ライブラリをE.coli(DH10B、Gibco)に形質転換し、選択性薬剤のアンピシリンを含むLB寒天板に蒔いた。
【0085】
C.発現ベクター
各種のレトロウィルスまたは他のベクターが本発明での使用に適している。
1つの限定しない例として、哺乳類細胞におけるライブラリ配列の構成的発現に有用なレトロウィルスベクターは、以下のように作成した。 pVT314の3.8kB HindIII/ScaIバンド(図18)を、pBluescript(商標)(Stratagene)の1.9kB SSPI/PVuIIバンドに連結させた。 本反応の最終生成物(pCLMFG、またはMFGまたはpVT340)は、構成的CMV駆動発現のパッケージング用のPsi部位、高レベルのライブラリインサート発現を得るためのスプライス供与体および受容体部位、EGFPの3’末端に結合した複数クローニング部位(MSC)を含む、構成的レトロウィルス発現ベクターの必要成分すべてを含むベクターである。 推定上の細胞毒性剤は、GFP足場との融合物として構成的に発現される。
【0086】
構成的pCLMFGベクターの代わりとして、エクジソンによって調節できる誘発性作成物を以下のように作成した。 pVT324によるPmII/XhoI断片は、PINDベクター(Invitrogen)のMCSに挿入した。 この生成物は次に、平滑末端BglIIによって消化し、BamHI/XhoIによって消化し、平滑末端化した(Klenow Fragment)pBabe−K−rasベクター(pV313ベース)に挿入した。 生成したベクターは、pBabe−Forward−1と呼ばれた。pVT324のXbaI断片は次に、pBabe−Forward−1を適合部位に挿入した。
生成したベクターは、pBIGFIIと呼ばれた。 ベクターpBIGFIIは次に、エクジソン受容体(pVgRXR)の内在性コピーを含む細胞(ECR293、Invitrogen)に形質移入した。 これらの細胞をポネステロンA不在時に培養すると、低レベルのバックグラウンド蛍光を示す。 これに対して、両方のベクターを含む細胞を5μMポネステロンAの存在下で培養すると、蛍光のレベルが約30倍に増加する(図6を参照)。 それゆえ、pBIGFIIは低いバックグラウンド蛍光を示し、ポネステロンAの存在下で強力に誘発される。 このようなベクターは、細胞サイクルを混乱させるか、アポトーシス経路で死を誘発する細胞毒性剤をコード化する配列の識別に有効である。
【0087】
D.レトロウィルスのパッケージングと感染
次に、選択した細胞へのレトロウィルス形質移入のために、ライブラリ作成物をパッケージングする。 これを実施するための1つの限定しない方法を以下に述べる。 1日目に、3×106細胞のパッケージング細胞系(293gp)をT175フラスコに播種する。 2日目に、2本の試験管、1本は15μg ライブラリDNA+10μg エンベローププラスミド(pCMV−VSV.G−bpa)+1.5ml DMEM(無血清)を含む試験管、もう1本は100μl リポフェクトアミン(Gibco BRL)+1.5ml DMEM(無血清)を含む試験管を混合し、室温で30分間放置する。
【0088】
続いて、2本の試験管をともに17ml 無血清DMEMと混合する。 このカクテルを「形質移入ミックス」と呼ぶ。 以前に播種した293grp細胞を次に、無血清培地によって静かに洗浄し、20mlの形質移入ミックスに37℃にて4時間暴露する。
この時間の後、形質移入ミックスを取り除き、細胞を完全DMEM(10%血清)によって37℃にて72時間、インキュベートする。 4日目か5日目に、293gp細胞の上に重ねられた培地(ここでは「ウィルス上清」と呼ぶ)を収集し、0.45μフィルタで濾過して、−80℃で凍結させる。
【0089】
レトロウィルスDNAパッケージングのリポフェクトアミン法の代わりとして、本明細書では「CaCl2法」と呼ばれる第2のプロトコルを用いて、レトロウィルス配列をパッケージングできる。 本方法では、1日目に、5×106細胞のパッケージング細胞系(293grp)を15cm2のフラスコに播種した。 翌日、培地を22.5mlの修飾DMEMと交換した。 続いて、22.5μgのレトロウィルスライブラリDNAと22.5μgのエンベロープ発現プラスミド(pCMV−VSV.G−bpa)を含む1本の試験管をdH2Oによって400μlとし、これに100μlのCaCl2(2.5M)および500μlのBBS(滴下添加、2×溶液=50mM、Bes(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4、pH6.95)を加えた。 このレトロウィルス混合物を室温にて5〜10分間静置した後、すなわち、293gp細胞に滴下して加え、細胞は次に37℃(3%CO2)で16〜24時間インキュベートした。 次に培地を交換して、細胞を37℃にてさらに48〜72時間インキュベートした。 そのときに、次にウィルス粒子を含む培地を収集し、0.45μフィルタで濾過して、−80℃で凍結させた。
【0090】
興味のある細胞系または一次細胞を感染させるために、選択した標的細胞(たとえばHT29、SW620)をT175フラスコ当たり約1.5×106細胞の濃度で蒔く。 翌日(1日目)、4μg/mlポリブレンとともに、ライブラリ上清を培地に直接加え(10〜30%総体積)、一晩インキュベートする。 2日目と3日目に上清を除去し、新しい培地と交換する。 次に、3〜5日目にフローター細胞個体群を収集する。
【0091】
E.死および/または瀕死細胞からの細胞毒性配列の回収
細胞死を引き起こす細胞毒性剤または物質を識別するために、これらの薬剤(またはそれをコード化するDNA配列)を死および/または瀕死細胞から回収する。
【0092】
簡潔には、PCRを用いて、生存不可能な細胞から細胞毒性剤をコード化するDNA配列を救出し、増幅する。 McPherson, M.J. et al., ”PCR 2. A practical approach.” Oxford University Press (1995)。 死細胞のPCR感受性を生細胞と比較するために、レトロウィルスインサート(pVT324)をコード化する構成的GFPを持つHT29細胞に、ピューロマイシン(2μg/ml)を用いてアポトーシス/壊死を受けさせた。 数日後、フローター細胞を収集し、膜完全性を失った細胞の選択的識別と回収を行えるようにするためにPIで染色した。 フローサイトメトリーを用いて、PI+(死)細胞を、25μlの細胞溶解緩衝液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH 8.0、0.5% Tween−20、0.5% Triton X−100、2mM MgCl2、1U/μl プロテイナーゼK)を含むPCR管に直接分類し、1)60℃にて2時間、および2)95℃にて10分間、インキュベートした。
続いて、25μlのストックPCR反応ミックス(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH 8.0、400μM dNTP、MgCl2)を各管に加え、レトロウィルスGFP作成物(OVT 131、5’GACCTTCGGCGTCCAGTGCTTCAG;OVT179、5’AGCTAGCTTGCCAAACCTACA)の増幅に対して特異性のプライマー(0.4μM)を用いてPCRを実施した。 対照として、未処理培養物からの生細胞(PI摂取については陰性)も分類して、PCRに使用した。結果は、PI陽性細胞に存在するゲノムDNAが明らかに、PCR増幅の適切なテンプレートとして作用可能であったことを示している(図7)。 死細胞からのGFP生成物の増幅は、生細胞から増幅させた生成物と比較して、サイズまたは量が変化したように見えなかった。
【0093】
PI摂取が陽性である細胞は壊死性であるか、アポトーシスの後のほうの工程にある。 アポトーシスを受けている細胞から回収したDNAがPCR用の良好なテンプレートとして作用できるかどうか、という問いに特に対処するために、以下の実験を実施した。 構成的にGFP(pVT324)を発現するレトロウィルス作成物を含むHT29細胞は、アポトーシスを誘発するために、硫化スリンダクによって処理した。 処理の48時間後、細胞の大多数は皿から離れて、代表的なアポトーシス形態(凝縮核)を示した。 アポトーシス細胞はPCR管内にカウントし、レトロウィルスGFP作成物の増幅に特異性のプライマーを使用して、PCRを実施した。 未処理培養物からの生細胞は、PCR対照として使用した。 アポトーシス細胞によるGFP生成物の増幅は、生細胞と比較した場合に、明確な相違はなかった(図8)。 したがって、壊死またはアポトーシス性細胞死のいずれかを受けた細胞から回収したDNAは、PCR増幅とサブライブラリ作成のための有効なテンプレートとして役立つ。
【0094】
実施例4:HT29大腸癌細胞における陰性選別
20個のT175フラスコに、10%FBS(ウシ胎児血清)を加えて変法としたマッコイの5A培地(Gibco BRL社製)の中の2.2×106HT29細胞/フラスコを播種した。 第1日目、各フラスコ(4μg/mlポリブレン、50%容積)は、市販されているものを入手した脳cDNAライブラリー(上記「実施例3」)を含むレトロウイルス上清により感染させた。 第2日目に、その培地が替えられた。 第3日目、浮遊個体と付着細胞の両方の集団がその20個のフラスコから(別々に)回収された。 およそ652,500個の浮遊個体が、4.2×107付着細胞(1.5%浮遊個体細胞)という理論的な背景により分離され、また、これ以降の諸研究のために凍結保存された。 感染の指標としてのGFP(グリーン蛍光タンパク質)の蛍光特性を用いて、FACS(蛍光標示式細胞分取器)分析では、生細胞の76%がそのレトロウイルスライブラリーに感染したことが示された。付加的な浮遊個体細胞はその後に第5日目に回収されたが、そこでその回収と計数手順が繰り返され、また、7.8×106浮遊個体、および7.6×108付着細胞が数えられた(1.03%浮遊個体)。 その生細胞集団は再びFACSによりスキャニングされ、また、その感染率(GFP+)が88%であることが判明した。 第3日目と第5日目のその浮遊個体がその後一緒にされ、標準的な手順後に、QIAampキット(Qiagen社製)を使用して、ゲノムDNA調製の準備をした。 手短に言うと、PBS中に入れた9×106浮遊個体細胞が洗浄され、gDNAを放出した。
【0095】
この物質は、QIAampカラムを通過させ、その後タンパク質とRNA汚染物を取り除くため、数回洗浄された。 27μgのゲノムDNAがその後にdH2Oによりそのカラムから溶出され、また、何らかのRNA汚染を取り除くためにリボヌクレアーゼで処理された。 このgDNAはその後にその中にコードされているそのライブラリー配列を増幅するため、PCR手順を受けた。 手短に言うと、上記gDNAアリコートが、そのオリゴヌクレオチドOVT800(5’GCCGCCGGGATCACTCTC)およびOVT1211(5’GCTAGCTTGCCAAACCTACAGGTGGGG)(PCR条件:95℃,30秒;95℃,15秒;63℃,30秒;72℃,3分;「ステップ2」まで24回のサイクル;72℃,5分)を使用するPCRのためのテンプレートとして用いるため、27×1μgサンプルに分割された。 その結果生じたPCR産生物はその後に、5つのプ−ルに分けられ、また各プールはその後にQIAクイック(Qiagen社製)を使用して精製され、EcoRIおよびXhoIにより加水分解され、その後、原レトロウイルスベクター(pV340)に関連性をもたせて連結させた。 この物質は、その後に電気的に応答能のある細菌細胞に形質転換させ(DH10B,Gibco BRL社製)、また、5つの区別の付くサブライブラリーを作り出すためにLB増幅プレート上で培養された。 各ライブラリーは引き続き、液体培養培地(LB+アンピシリン)で増殖され、また、293gp細胞(上記参照)の中に第2ラウンドのパッキング用物質を産生するため、加工された(Qiagen Maxi Prep)。 その結果生じたウイルス上清はその後に、未処理のHT29細胞(1×10 細胞/フラスコ、サブライブラリー当たり3つのフラスコ)の中に入れて、陰性選別の第2ラウンドを始めるために、再度感染させた。その陰性選別のラウンド2およびその後の全てのラウンドは、第1ラウンドとは、a)単感染のみが実施され、また、b)第3日目および第5日目から得られた各サブライブラリーから得た浮遊個体細胞は一緒にプールされいるといった点が異なる。 このように繰り返されるサイクリングにより、その発現の結果細胞死を引き起こすライブラリークローンが産生される。
【0096】
【表2】
【0097】
その陰性選別の6回連続サイクルから得られた結果を上記表2に示し、また、以下のように要約する。 模擬感染細胞およびpVT324対照ベクター細胞の両方とも、その培地では1%(あるいはそれ以下)の浮遊個体を一致して示している。 それとは対照的に、5つのプールはすべて、そのサイクリングの経過期間にわたって、パーセント浮遊個体集団で確実な増加を示しており、プール3では、サイクル6では14%浮遊個体という非常に高い豊富化の値を示している。 このデータは、死んでいるおよび/または死につつあるHT29細胞の頻度を増加させるパーターベイジャン配列の豊富化を成功させたことを示している。
【0098】
陰性選別の付加的ラウンドによりこれらのライブラリー配列をサイクリングすることに加えて、50のクローンが、サイクル5のそれぞれから採取され、第5日目にはプールが配列分析に回された。 これらクローンのうちの2つは、BID(BH3相互作用ドメイン死アゴニスト、遺伝子バンク受託番号#AF042083)の部分、そのアポトーシス経路の公知の成分をコード化することが判明している。 これら陰性選別から得られたBIDクローンの両方とも、その在来タンパク質(BIDクローン#1はアミノ酸33−195をコードし、BIDクローン#2はアミノ酸76−195をコードする、図9参照)のN末端の切り詰めをコードする。 BIDクローン#1は新鮮、未処理のHT29細胞の中に再導入され、また、浮遊個体率が模擬感染あるいは対照ベクターpVT324による感染を受けた細胞と比較された。 両方の対照とも、1.5%よりも小さい、低いバックグランド浮遊個体率を示した。 それとは対照的に、BIDクローン#1に感染させたHT29細胞は、おおよそ18%の浮遊個体を示した。 同様の実験では、BIDクローン#1は、HuVEG(ヒト臍帯静脈内皮細胞、Clonetics/Biowhittaker社製)の中に導入され、また、細胞生存度が、16時間の経過期間にわたって追跡調査された。 対照細胞が16時間の時点で1%の細胞死というバックグランド値を示した一方で、BIDクローン#1感染培養培地における細胞の80%が、同じ期間の間に細胞死した。
【0099】
BIDクローン#1と#2に加えて、4つの新たな細胞毒性薬剤が無作為にピックアップされた36のクローンから同定された(ソートVI)。 4つのクローンすべて(0113,0196,0328および0461)がHT29浮遊個体アッセイでは、浮遊個体の高い値を示した(図10)。 より適度な細胞毒性薬剤(0195および0113)が、4.5〜7.5%浮遊個体率を引き起こしている一方で、より弱い細胞毒性薬剤(例えば、0328および0461は2〜3%(それぞれ)という浮遊個体率を示している。これら薬剤の配列は図9に示す。
【0100】
実施例5:SW620大腸癌細胞における陰性選別
上述されているHT29スクリーニングとほぼ同様の陰性選別では、SW620大腸癌細胞の20個のフラスコが培養され(3百万細胞/フラスコ)、また、2つの推定上の細胞毒性配列コード化ライブラリーのうちの1つに感染させた。その最初のライブラリーは、MFGベクターの中に挿入された無作為初回抗原刺激を受けた胎盤cDNAから作られた。 推定上の細胞毒性薬剤のうち、第2番目のライブラリーは、GFP(pVT334、Abedi et al., (1998)参照)の内部部位(挿入部位6、pVT27)の中に挿入された無作為オリゴヌクレオチドライブラリーであった。 SW620細胞系統の中に入れられたこれらライブラリー感染後には、浮遊個体が48および96時間の時点で回収された(第3日目および第5日目)。 これら細胞はその後、ヨウ化プロピジウム(上記参照)により処理され、またPT細胞はFACSにより選別された。 両方の時点から得られたPI+浮遊個体細胞はその後、ゲノムDNA調製のために3つの別々のプールに分けられた。 引き続いてPCRが、当該パーターベイジャンコード配列を増幅し、また回収するために使用された。プライマーの2つのユニークなセットがPCR増幅のために使用された。 すなわち、無作為初回抗原刺激を受けた胎盤ライブラリーに対しては、OVT1136(5’GGATCACTCTCGGCATGGACGAG)およびOVT1137(5’ATCCGCGGCCGCGGCCATAATGGCC)が使用された。 無作為ペプチド(オリゴ)ライブラリーに対しては、OVT777(5’GACTGCCATGGTGAGCAAGGGC)およびOVT144(5’GCCGTCCTCGATGTTGTGGCGGAT)が使用された。 その結果、そのペプチドライブラリーにより感染されたSW620細胞における感染および回収手順(F4)の4サイクルを実施した後、第5日目の浮遊個体細胞のバックグラウンド値は、原ライブラリーにおけるおよそ1%(平均で)から3.9%まで上昇したことを示した(図11)。 同時に、模擬およびpVT334における浮遊個体のバックグラウンド値は1.35%という低い値ままであった。 浮遊個体のバックグラウンド値上昇は浮遊個体集団におけるPI+細胞の付随的な増加を伴うことはなかったが、全細胞数の減少は、その選別過程の経過期間にわたって観察され、細胞増殖率/細胞生存度に影響を与える1つあるいはそれ以上のライブラリー配列(複数)が豊富化されつつあることが示唆された(図12)。 これら潜在的な細胞毒性薬剤(無作為初回抗原刺激を受けた胎盤ライブラリーを使用した選別の初期ラウンドからのものとともに)はその後に、未処理SW620細胞の中に再導入され、また、再びサイクリングされた。 サイクリングの4〜6ラウンド後、個々のライブラリー挿入断片が配列化され、また、細胞毒性活性に関して検証が行われた。
【0101】
実施例6:T47D転移性乳房上皮細胞における陰性選別
浮遊個体アッセイの付加的な実施例には、転移性乳房上皮細胞腫瘍から採取される細胞系統T47D(ATCC)が含まれる。 T47Dは、主として、それが示す比較的低い浮遊個体率のために、また、レトロウイルスをベースとしたベクターに容易に感染するため、研究に選ばれた。
【0102】
T47D細胞系統に関する浮遊個体率を測定するために、細胞はT175組織培養培地フラスコ(おおよそ5×105細胞/フラスコ)における集密度に培養され、また、全細胞(付着細胞+浮遊個体細胞)のパーセンテージを示すものとして、浮遊個体の数が確かめられた。 T47D細胞に関しては、浮遊個体率は培養培地において、3〜5日にわたり0.5%であることが測定された。 さらに、トリパンブルー染色により判定されたものとしては、浮遊個体細胞の70%が死んでいるものと観察された(”Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals”, Hauland, R.P., Molecular Probes社)。 それとは対照的に、付着細胞の1%よりも少ないものが同一の染色方法を使用して、死んでいるのが発見された。 このように、T47D培養培地から浮遊個体細胞を回収することにより、死んでいるか、および/または死につつある細胞の総数の少なくとも30%が得られた。 pVT324レトロウイルスベクターによるこの細胞系統の感染率がおよそ90%であることが観察されたが、T47D細胞系統はこのように、陰性選別には適していた。
【0103】
T47D細胞系統はその後、条件付き陰性選別に利用され、すなわち、1つのユニークな組み合わせ条件下で作用する細胞毒性薬剤が同定される選別に利用される。 この非限定的な実施例では、T47D細胞の化学療法薬剤に対する感受性を向上させるライブラリー配列であるカンプトテシン(トポイソメラーゼIIの阻害剤)が以下のように選別された。
【0104】
当初、T47D細胞浮遊個体率を増加させるのに失敗したカンプトテシンの最高濃度は以下のように測定された。 およそ250,000個の細胞が6ウェルプレートの各ウェルの中に播種された。 細胞はその後に、さまざまな濃度のカンプトテシンを含む培地で増殖させた。 5日後、カンプトテシン処理ウェルのそれぞれの中に残っている細胞の数が未処理対照と比較された。 これら実験から、1〜4nMの範囲のカンプトテシン濃度は、5日間の処理の経過期間にわたりT47D細胞数には影響を与えなかったことが判明した。 4nMよりも高い濃度による細胞の処理は、未処理対照に比して細胞数で減少しているという結果を生じた(図13)。 明らかなように、10nMカンプトテシンの存在下での細胞数はおおよそ、未処理対照でみられたものの3分の1であり、また、50nMよりも高いカンプトテシン濃度に曝した場合は、そのプレートに付着して残っている細胞は実質的にはなかった。 こうした結果から、T47D細胞は細胞生存度かあるいは分割かのいずれかに悪い影響を与えずに4nMまでのカンプトテシン濃度には耐性がある可能性があることが示唆されている。 この処理値が、その集団における浮遊個体の数を付随して増加させているかどうかを測定するために、いくつかのフラスコにT47D細胞を播種し、またその後に、カンプトテシンの1〜4nM濃度により処理された。 3〜5日の期間の後、その培地は回収され、また、浮遊個体細胞の数が数えられ、また、フラスコ中の全細胞数(浮遊個体細胞+付着細胞)に比較された。
【0105】
T47D細胞を含めた条件付き陰性選別を実施するために、以下の実験が実施された。 細胞が、HT29大腸癌アッセイに関して説明されているように、レトロウイルスをベースとしたcDNAか、あるいはペプチド発現ライブラリー(「実施例3」参照)かのいずれかにより感染させる。 感染後、細胞は4nMカンプトテシンにより処理され、また浮遊個体細胞が5日間の期間にわたって回収された。 「実施例5」および「実施例1B」において説明されているように、細胞毒性薬剤をコードするライブラリー挿入断片の付加的な豊富化は、このプロトコルに、死んでいるおよび/または死につつある細胞の同定を可能にするPI染色/回収(FACS)ステップを含めることにより、達成することができる。
こうした浮遊個体細胞の中に存在しているライブラリー挿入断片は、PCRにより回収され、レトロウイルスベクターの中にサブクローン化され、また引き続いて、未処理のT47D細胞の中に再導入される。 この第2の感染に引き続き、浮遊個体細胞は再び、4nMカンプトテシンの存在下で5日間にわたって回収され、また、そのサイクルが繰り返される。 HT29陰性選別の場合ではそうであったように、このように繰り返しサイクリングを行うことにより、カンプトテシンの存在下か、あるいはカンプトテシンが存在しない場合かのいずれかで、その発現が細胞死を結果的に生じるライブラリークローンを産生するはずである。
【0106】
カンプトテシンのサブ毒性レベルの存在下でのみ細胞死を起こすライブラリークローンのサブセットを同定するために、2つのカウンタースクリーニングのうち、1つが用いられる。まず、細胞死を引き起こす挿入断片のサブライブラリーが、カンプトテシンが存在しない場合に、T47D細胞の中に導入される。非特異的細胞死を引き起こすライブラリークローンを含む細胞は死ぬが、一方、カンプトテシンの存在下でのみ死を誘発するクローンは生存する。 カンプトテシンに対する転移性細胞の感受性を特異的に増加させるこうしたクローンを同定するために、第2のカウンター選別が用いられる。 カンプトテシン特異的死を引き起こすライブラリー挿入断片は、カンプトテシンの亜毒性レベルの存在下で始原乳房上皮細胞の中に導入される(Clonetics−Biowhittaker社,カタログ番号cc−2551)。 この処理を生き残る細胞の中に存在するライブラリー挿入断片はその後にPCRにより回収され、原宿主レトロウイルスベクターの中にサブクローン化され、また、分析される。 これら2つのカウンター選別の使用により、化学療法薬剤カンプトテシンに対する転移性乳房上皮細胞の感受性を特異的に増加させる細胞毒性薬剤が同定される。
【0107】
実施例7:HuVEC細胞における陰性選別
形質転換(不死化)細胞(例えば、HT29)上で陰性選別を実施する代替可能なものとして、始原細胞に対してその浮遊個体アッセイを適用するために、プロトコルが開発された。 HuVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)が、血管新生における研究を追求するのに頻繁に使用される始原細胞である。 始原細胞で陰性選別に関して準備するため、HuVECの2つの分離株である8F1868および9F0293(Clonetics/Biowhittaker社製)が、EGM−2培地(Clonetics/Biowhittaker社製)の中で培養され、その培養培地の倍加時間および長寿度を測定するために数週間の経過期間にわたって観察された。 両方の系統とも最初の10〜12継代の培養(〜24時間)の経過期間にわたって比較的一貫した倍加時間を示した。 9F0293の寿命は、20継代に限定されたが、それは、後期継代(>12継代)は、倍加時間および丸味のある小石様の上皮様細胞から、より扁平な線維芽様形態への形態学的改変の両方で、広範な変動をみせるからである。 それとは対照的に、その8F1868系統は、30継代まで延長した寿命を有していて、また、倍加時間では大幅な一層の一貫性がみられた。 これら2つの培養培地は最初の6継代の間は同様に行われていたため、また、提案された陰性選別が継代4の間に起こるであろうため、系統9F0293はそれ以降の陰性のために選択された(図14)。
【0108】
陰性選別において始原細胞系統を使用する可能性を評価するために、9f0293系統は、a)レトロウイルス感染に対する感受性、およびb)浮遊個体細胞のバックグラウンドパーセンテージ、に関して試験が行われた。 9F0293細胞の早期継代の3種類のサンプル(対照、模擬感染および感染)が、2×105/15cm2プレートの密度で培養され、また、120時間の経過期間にわたって追跡調査された。 その時間の間、全細胞数、倍加時間、また、浮遊個体比(ここで計算されているのは、浮遊個体の全数/付着細胞の全数として)が記録され、また比較された。 細胞はpLIBEGFP(Clontech社製)に感染し、また、以前に説明されているCaCl2プロトコルを使用してパッケージされた。 これら手順の中で使用されるレトロウイルス感染プロトコルには、2.0というMOI(感染多重度)、また、ポリブレン4μg/mlを使用して、感染に関する12時間の期間が含められた。
【0109】
その結果からは、その対照に比較した場合に、その感染手順と、レトロウイルスが存在することによっては、9F0293系統の前細胞数および倍加時間はほんの少ししか変わらなかった。 さらに、120時間に先立つ全ての時点で、3つのシナリオ全てで浮遊個体比は1%よりも下で一致していた。 120時間では、細胞培養培地は集密的になり、また、浮遊個体比は増加し(3%以上)、これまでに研究されてきた全哺乳動物細胞培養培地とほぼ一致する観察結果であった(図15)。 さらに、HuVECの9F0293系統は、平均して70〜80%の間となるGFP+ゲートに入る細胞のパーセンテージを有し、レトロウイルス感染に対して高度に感受性があることが証明された。
【0110】
死んでいるおよび/または死につつあるHuVECが、細胞毒性薬剤に対して反応する固体支持体から分離する時間経過を測定するために、9F0293細胞が培養され、また引き続いて、ピュロマイシン(2μg/ml)により処理された。 浮遊個体および付着細胞集団の両方とも、その後にさまざまな時間(t=4,7,9,16,20および24時間)で回収され、また、(a)浮遊個体集団におけるパーセントPI+細胞と、(b)浮遊個体になった細胞の断片、を測定するために、分析された。 これら実験の結果から、HuVECの大部分が16時間の時点で分離し、また、細胞の90〜99%が、ピュロマイシン添加後24時間以内に浮遊個体となった。 PI(PI+集団)で染色された浮遊個体の断片は時間とともに増加した。 早期の時点(4,7,および9時間)で、PT−およびPI+浮遊個体細胞はほぼ等しい数になっていた。 20時間までに、ほぼ全ての浮遊個体細胞がPI+ゲートに入り、HuVECが、PI−細胞として分離し、またその後に急速にPI+表現型に変換された(図16)ことを示唆していた。
【0111】
HuVECにおけるアポトーシス/ネクローシスを誘発する細胞毒性薬剤を同定するために、9F0293細胞が個体支持体上(ゲラチン)上で培養され、また、レトロウイルスベクターとして、pCLMFG(上記「実施例3、セクションB」参照)あるいはPLIB(Clontech社製)の主鎖を使用する挿入断片のレトロウイルスをベースとするライブラリーに感染させる(MOI=2、16時間感染、4μg/mlポリブレン)。 GFPのVT27ループ(上記、Abedi et al., (1998)参照)、cDNAの中に挿入された無作為オリゴヌクレオチドか、あるいはGFPのC末端に融着したゲノムDNA(上記「実施例3、セクションB」参照)かのいずれかが、細胞毒性薬剤に関してスクリーニングされる。 感染後48時間、72時間、96時間の時点で、浮遊個体が回収される。 その2つの早期回収時点から得られる浮遊個体は一緒にプールされる(プール1)。 96時間時点から得られる浮遊個体は別個のプールを形成する(プール2)。 各プールから調製されるゲノムDNAは、その後に、標準的なPCR技術を使用して、そのライブラリー挿入断片を増幅するのに使用される(上記参照)。 この反応から得られる産生物はその後に再クローン化されて適当なレトロウイルスベクターの中に入れて、また、再度感染させて、スクリーニングと豊富化の引き続いて次のラウンドのために、未処理の9F0293細胞の中に入れる。スクリーニングの後期ラウンド(>4)では、個々のパーターベイジャンクローンが分離され、HuvECの中に再導入され、また、こうしたライブラリー挿入断片が、非感染および模擬感染培養培地において観察されるバックグラウンド浮遊個体率よりも高いところまで、浮遊個体細胞のレベルが上がるかどうかを測定するため、試験が行われる。
【0112】
HuVECで細胞毒性であると判明したライブラリー挿入断片は、その後、コードされた薬剤の細胞あるいは組織タイプ特異性を測定するため、付加的な細胞型に導入される。 すなわち、そのコード化細胞毒性薬剤はその他の細胞系統とともに、HT29,SW620,DLD−1の中に導入される(始原細胞および不死化あるいは形質転換されるように遺伝子的に改変された細胞の両方)。 細胞死の値は「実施例1」に説明されている技術のいずれか1つ(それらに限定されないが)を使用してモニターされる。
【0113】
実施例8:形質転換始原ヒト乳房上皮細胞(HMEC)における陰性選別
最も少ない数の遺伝子要素で不死化され、また形質転換された始原ヒト乳房細胞(HMEC)を含む浮遊個体アッセイが以下のように実施された。 始原プールされたHMEC(Biowhittaker/Clonetics社製)が2つの方法により不死化され、また形質転換された。 すなわち、1)SV−40 Lg T Ag,ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットhTERTおよび活性化されたV12 H−rasをコードするレトロウイルス構築物の連続導入および発現(Hahn et alの方法、Nature 400:464−468,1999)、2)HPV−16 E6/E7,hTERTおよびV12 H−rasをコードする構築物の連続導入および発現である。 それら系統はそれぞれ、指定されている96Cと96Aである。 そのレトロウイルス構築物BABE/ネオマイシン/SV−40 LG T Ag BABE/LNCX/ピュロマイシン/hTERT,LXSN/ハイグロマイシン/V−12 H−RasおよびLXSN/ネオマイシン/HPV−16 E6/E7が使用される。
【0114】
バックグラウンド浮遊個体率を測定するために、細胞は、3つの100mm皿(100,000細胞/皿)において20%集密度まで培養され、また、全細胞(付着+浮遊個体)のパーセンテージとしての浮遊個体の数と浮遊個体の生存度が、2、3、4日間培養後で確かめられた。 生存度は、ヨウ化プロピジウム摂取を測定することにより評価された。 未処理対照に加えて、形質導入対照ベクターpVT340(pCLMFG/GFP)および陽性対照BID/MFGベクター、結腸直腸癌腫HT29陰性選別で先に同定されたプロアポートーシスタンパク質が使用された。
細胞は、95%と45%の比率で30%(v/v)ウイルス上清によりそれぞれ形質導入された。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
96Aおよび96Cの両方の浮遊個体比は、未処理の細胞に関しては0.4〜0.9%であり、また、340ベクター対照形質導入細胞に関しては0.7〜0.9%であると測定され、一方、BID感染陽性対照は、系統96Aに関しては第2日目に54%の浮遊個体、また、系統96Cに関しては第2日目に46%の浮遊個体率を測定した。 さらに、付着系統96A細胞の0.5〜1.2%に比較して浮遊個体の28〜44%は、第3日目および第4日目に、ヨウ化プロピジウム染色により非生存であると判定された。 系統96Cでは浮遊個体の36%と付着細胞の0.2〜0.5%が、第3日目と第4日目にヨウ化プロピジウムにより染色された。 BID形質導入細胞は、浮遊個体では45〜75%ヨウ化プロピジウム陽性であり、また、系統96Aでは付着で0.4〜1.6%陽性であり、また、浮遊個体で70〜81%および系統96Cでは0.5〜8.5%ヨウ化プロピジウム陽性であった。 高い生存度付着細胞成分と低生存度浮遊個体細胞成分を低い浮遊個体率で結合させたものは、陰性選別に関するこうした系統の適性に対して肯定的な反映を示した。 浮遊アッセイはまた、陽性対照BIDに関しても、大半の非生存細胞が分離して、うまく実施された。 このように、本アッセイにおける浮遊個体を回収することにより、細胞死を誘発するパーターベイジャン配列の大半は回収されて然るべきものである。
【0119】
実施例9:複数薬剤耐性を克服する薬剤を同定
本発明は現在有効な化学療法薬剤に対する複数薬剤耐性(MDR)癌系統を感知する薬剤を同定するのに容易に適用されうる。 1つの非限定的実施例は以下のようなものである。すなわち、多くのMDR菌株(例えば、LS513,LS1034)はATCCから得ることができる。 代替的には、MDR菌株は以下の、非限定的な手順により得ることができる。 2×106HT29細胞/フラスコを含む10個のT75フラスコが薬物(例えば、タキソール)に、90〜95%細胞死を誘発する濃度で曝露される。 この処理後、その生存している細胞は基準培地で膨張させることを許容され、そこで、その薬物の上昇させた値(例えば、5倍)に曝露させる。 殺傷、再増殖、および薬剤濃度の工程的な増加という複数サイクルの結果として、HT29 MDR菌株を進化させる。
【0120】
現在有効な化学療法薬剤に対する複数薬剤耐性(MDR)癌系統を感知するパーターベイジャンに関するスクリーニングを実施するのに先立って、研究の中で使用される薬物の致死量下濃度をまず測定することが非常に重要なことである。本実施例では、「致死量下」投与は、MDR−細胞系統を殺傷することが可能である薬物の濃度であるが、しかし、MDR+系統にはほとんどあるいはまったく影響がないものである。 致死量下濃度をどのように測定することができるのかについての1つの非限定的実施例では、殺傷曲線が、LS513(MDR+系統)およびいくつかのMDR−対照系統の両方で実施される。 すなわち、1×106LS513細胞は15cm2プレートで培養され、また、一晩中付着することが許容される。 次の日に、タキソールが2nM〜500μMでさまざまに変わる濃度の範囲でその培養培地に添加される。 その細胞はその後2〜7日間付加的に培養され、そこで、その細胞数と浮遊個体率が比較される。 タキソールの致死量下濃度はその後、MDR−(対照)細胞の50%よりも多くを殺傷する薬物の濃度として定義されるが、しかし、LS513系統では2%よりも少ない致死量を誘発するにすぎない。
【0121】
そのMDR表現型を破壊する配列を同定するために、ライブラリー挿入断片(cDNAか、あるいは無作為ペプチドをベースにしたものかのいずれか)が、上述されているレトロウイルス技術を使用して、粘着MDR系統(例えば、LS513およびLS1034結腸直腸癌腫細胞系統、ATCC)の中に導入される。
【0122】
こうした細胞はその後、化学療法薬剤(例えば、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン、アクチノマイシン)の致死量下濃度に曝露され、また、2〜7日間の期間にわたって培養される。 細胞の大半は、薬剤が複数薬剤耐性(例えば、P−糖タンパク質)のメカニズムを克服する、あるいは破壊するようにできるライブラリー挿入断片を含んではいないので、こうした細胞は、継続して分裂し、また、その個体支持体に付着したままで残ることになる。 (特に、MDR+系統をMDR−に変換する)化学療法薬剤に対するMDR細胞の感受性を向上させるライブラリー挿入断片を同定するためには、浮遊個体細胞を、その実験の経過期間にわたって回収する。 再び、前出の諸セクションで説明されているように、これら特性を備えた細胞毒性パーターベイジャンの付加的な豊富化が、このプロトコルの中に、死んでいるおよび/または死につつある細胞の同定と回収を可能にするPI染色/回収(FACS)手順を含めることにより、達成することができる。 その配列(複数)はその後PCRにより、浮遊個体細胞ゲノムDNA調製物から回収され、増幅され、また、MDR表現型を破壊するパーターベイジャン配列を豊富化するために、付加的な選別のラウンドにより再度サイクリングされる。
【0123】
タキソールの亜毒性レベルの存在下でのみ細胞死を引き起こすライブラリークローンのサブセットを同定するために、カウンタースクリーニングが用いられる。細胞死を引き起こす挿入断片のサブライブラリーが、タキソールが存在しない場合にLS513細胞の中に導入される。 非特異的細胞死を引き起こすライブラリークローンを含む細胞は死に、一方、タキソールの存在下でのみ死を誘導するクローンが生き残る。
【0124】
多くのMDR細胞系統では、薬物耐性表現型がP−糖タンパク質(MDR1)、すなわち、細胞外空間にその細胞質からさまざまな広範な化学療法薬物を取り除く(あるいはポンピングする)ことが可能である細胞質膜関連タンパク質の過剰発現との関連性を有してきている。 P−糖タンパク質のポンピング作用を破壊する薬剤を豊富化するために、MDR1菌株を、タキソールの致死量下濃度で成育させた、推定上の薬剤であるタキソールをコードするライブラリーに感染させる。 これら培養培地はその後、膜透過性であって、P−糖タンパク質の蛍光基質であるローダミン123(Rh123)に曝される。 引き続いて、浮遊個体細胞は回収され、蛍光をベースにして分類される。FACSにより「暗い」表現型を示す細胞は、その細胞質からRh123を取り除くことができ、また、したがって、活発なP−糖タンパク質ポンプを有する(図17)。 こうした細胞には、P−糖タンパク質ポンプ作用に干渉する薬剤を含有することはなく、放棄される。 「明るく」なっている細胞は、細胞質コンパートメントの中にRho123を蓄積し、またしたがって、MDR1ポンプの機能を破壊する薬剤を含有する。 本実施例では、「破壊する」という用語は、MDR1ポンプの作用あるいは活性化を直接干渉する分子か、あるいは、その在来部位に対するP−糖タンパク質の局在化を改変する、あるいは防ぐ分子かのいずれかを言う。 こうしたRh123「暗い」細胞はFACSにより回収され、また、P−糖タンパク質のポンピング作用を干渉する配列を豊富化するために、選別の付加的なラウンド(上記参照)により再びサイクリングされる。
【0125】
本アッセイを代替するものとして、P−糖タンパク質の作用を破壊する薬剤の検出は、その化学療法薬物の存在しない場合にも実施することができる。 こうした状況下で、MDR1細胞の培養培地を、推定上の破壊薬剤をコードする挿入断片のライブラリーに感染させ、そのライブラリー挿入断片の発現を許容するように、短期間(24〜72時間)培養され、また、その固体支持体からその細胞を放出させるようにトリプシンで処理される。 その細胞は、その後、Rh123に曝され、Rh123+細胞(その細胞の外にRh123をポンピングすることができない細胞)を同定するためにFACSによりその集団内で分類される。 こうした薬剤をコードするそのライブラリー挿入断片(複数)はその後、PCR増幅され、また、MDR1遺伝子の産生物に干渉する配列を豊富化するために、付加的な選別のラウンドにより再びサイクリングされる。
【0126】
本明細書の本文内に引用されている全ての参考文献は、全体として本明細書に参考文献として組み込まれている。
【0127】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】抗FAS抗体でのアポトーシスの誘導に対する反応でのApo2.7で標識化されたJurkat細胞のFACS解析の結果を示している棒グラフである。
【図2】ヨウ化プロピジウムで染色した、接着対脱離(「浮遊」)細胞の異なる蛍光パターンを示している対のヒストグラムである。
【図3】未感染、およびモック感染HT29細胞のFACS解析である。モック感染細胞はGFPマーカーを含む。
【図4】PIへの暴露24時間後の、浮遊細胞対接着細胞集団のPI染色の異なるパターンを示しているFACSヒストグラムである。
【図5】内部XhoI/EcoRI/BamHI制限部位をもつGFPレポーターベクターの構築の図表示である。 2組のプライマーを用いて、GFPの左側および右側をPCR増幅した。 各プライマー組の内部プライマーには、示したように、XhoI−EcoRIまたはEcoRI―BamHI制限部位のいずれかが含まれる。 これらの断片の続く消化(EcoRI)およびライゲーションによって、新規の内部クローニング部位、XhoI−EcoRI−BamHIをもつGFPが再構築される。 2つの外部プライマーを用いた続くPCR増幅によって新規のGFPが増幅可能である。
【図6】ベクターpBIGFILのバックグラウンド蛍光および誘導特徴を示しているFACSヒストグラムである。 また、ベクターpVGRXR、およびCMV−GFPの蛍光特性も示している。
【図7】PI+(死)HT29細胞(ゲートM1)のFACSヒストグラムおよび、その画分の続くPCR増幅を示しているゲルである。
【図8】アポトーシス細胞、生細胞およびgDNA対照のPCR増幅を比較しているゲルである。
【図9】HT29大腸癌細胞でのネガティブ選別から単利された6つの細胞傷害性物質のペプチド配列を含んでいる。 配列(A)は、2つのBH3相互作用部位死アゴニスト(BH3 Interacting Domain Death Agonist、BID)断片を示している。 前兆プロBIDは195アミノ酸長である。 プロBIDは、カスパーゼ8によって、アミノ酸55(LQTD,灰色文字)の部分で開裂される。 細い下線領域は、BIDクローン番号1(アミノ酸33〜195)を表している。 影領域「LAQVGDSMD」(灰色)は、BH3(Bcl−2類似性)領域を示している。 配列(B)は、0113と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 配列(C)は、0195と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 配列(D)は、0328と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である(xxは読むことが不可能な配列を表している)。 配列(E)は、0461と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 細胞傷害性物質は、長さが約230アミノ酸またはそれ以上であると推定されている。
【図10】本明細書に記載のHT29浮遊アッセイの第6ソートからのクローンの解析を示している。 無作為に選んだ36個のクローンを、HT29浮遊アッセイにて試験した。 5つのクローン(BID、0113、0195、0328および0461)が、バックグラウンドに対して統計学的に有意である浮遊レベルの増加を示した。
【図11】F0(開始ライブラリー)、F2(1回の収集、1回のソート後)、F3(1回の収集および2回のソート後)、およびF4(1回の収集後、3回ソート)でのSW620細胞における浮遊率を示した棒グラフであり、ここでSW620細胞は、無作為ペプチドパーターバゲンライブラリーにて感染しており、本明細書で記述したネガティブ選別を数回行った。 浮遊率パーセンテージは、各工程にて計算し、モック感染、およびpVT334感染対照と比較した。
【図12】本明細書で記述したネガティブ選別のSW620細胞に対する細胞数観察を描写した棒グラフである。 等しい数の対照(すなわちモック感染およびpTV−334感染)細胞およびF3(ペプチドライブラリー感染)細胞をT75フラスコ内にしいた。 5日目に、フラスコを洗浄し、トリプシン処理し、接着細胞の総数を測定した。
【図13】T47D細胞でのカンプトテシンの量を変化させた殺傷曲線である。
【図14】2つのHuVEC細胞単離細胞、8F1868および9F0293の倍増時間および老化を比較した2つのグラフを示している。
【図15】細胞数、倍増時間および浮遊率におけるレトロウイルス感染の影響を示している棒グラフの組である。 HuVEC 9F0293細胞にpLIBEGFPベクターを感染させ、細胞数、倍増時間および浮遊率における、レトロウイルス感染および感染手順の効果を決定するために研究した。 倍増時間は時間単位で測定した。浮遊率は、パーセンテージ(浮遊細胞数/接着細胞数)で測定した。
【図16】プロマイシン処理した培養培養中のPI−/PI+HuVECsの時間経過を図示しているヒストグラムである。 9F0293細胞をプロマイシン(2μg/ml)で処理し、24時間、経過を追った。 浮遊細胞を定義した間隔にて回収し、PIで処理し、FACS解析にかけて、死亡した、および/または死亡している細胞の割合を決定した。
【図17】(本明細書で「パーターバゲンズ」として示した)ライブラリー挿入有りおよび無しでの、MDR1細胞からのローダミン123のP−糖タンパク質ポンプ仲介押し出しの概念図である。 非形質転換MDR1細胞において、P−糖タンパク質は、細胞外に活発にRh123をポンプ排出し、細胞を「薄暗く」する。 活性ピューターバゲンを持つMDR1細胞においては、P−糖タンパク質のポンプ活性が阻害されるか、乱され、結果として細胞はRh123を保持し、「明るい」ままである。
【図18】本発明の実施態様の説明において引用したベクターの概略図である。
【発明の属する技術分野】
本願は、K.A. Kambの米国特許明細書第09/504,132号、発明の名称「致死表現系を引き起こす物質の同定のための方法およびその物質」ならびにその一部継続出願であり、また、これらの優先権を主張する。 優先権出願の開示は、その全体を参考までに本明細書に取り込まれている。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
異常な、または望ましくない細胞増殖を含む癌およびその他の疾患は、製薬業界にとって、主要な挑戦事項である。 望ましい治療用化合物は、細胞増殖を阻害し、および/または望ましくない細胞を殺すために、細胞標的上でよく機能する。 そのような治療用化合物を効果的に同定するために、そのような増殖阻害または細胞死に関わる細胞性物質を同定することが望ましい場合が多い。 望ましい表現系を発現している細胞は、細胞集団より消失し、続いて標的(および相当する原因となる物質)が欠失するので、そのような細胞性物質は同定することは未だ困難である。
【0003】
一般的に、細胞増殖を阻害する、および/または細胞を殺す物質を同定する実験は、「ネガティブ選別」、すなわち、細胞集団において、細胞傷害性、または細胞増殖抑制性効果をもつ化合物に対する選別、という語で示される。 そのようなネガティブ選別は、癌、ウイルス感染などを含む多くの領域に関係する薬理学的研究のために必要である。 現在までの技術では、哺乳動物細胞においてネガティブ選別を実施するための、すなわち、原因となる物質を直接的に同定し、続いて、増殖阻害または細胞死となるそのような物質と相互作用する標的を回収するための、効果的な、一般的に適用可能な方法は提供されていない。
【0004】
効果的なネガティブ選別プロトコールの欠如は、癌研究分野においてとりわけ関心事である。 癌に対する薬剤探索は、疾病の、または以上の細胞上での細胞傷害性効果を提供するように、内因性細胞標的と相互作用する治療的薬剤の同定を必要とする。 好ましくは、そのような薬剤は、標的細胞型に対する特異性をもって働く、すなわち、選択的に望ましくない細胞を殺し、一方で健康で、正常な細胞は許容する。 そのような価値のある治療用薬剤を同定するための1つの方法は、最初に、細胞傷害性効果に関わる内因性細胞標的を同定し、ついで標的と相互作用する小分子調節因子を同定するための選別の基準として、その標的を使用することである。 あるいは、治療的薬剤は、内因性細胞標的と相互作用するタンパク質化合物、またはその標的の産出または機能いずれかを抑制する核酸のいずれかであってよい。 そのような場合、望ましい細胞阻害または死を引き起こす物質を直接的に回収することが望ましい。
【0005】
細胞死の場合、調節された標的は、いくつかの例において、アポトーシス経路に関わる可能性があり、また他の例では、壊死(ネクローシス)に関わる可能性がある。 一般的に、アポトーシスは、生物の中で、正常の、プログラムされた細胞死の工程であり、壊死はアポトーシスに関連した多くの生化学的特徴を欠いた、特異的でなく、制御されたのではない応答である。 癌の多くの臨床兆候は、この通常のアポトーシス工程の機能不全、すなわち正常の細胞死の欠如を示していると信じられており、体内での形質転換された癌細胞の制御されない増殖を導く。 従って、製薬会社は、とりわけ、アポトーシス工程を選択的に促進し、それによって望ましくない癌細胞の死を促進する薬剤を同定することをとりわけ望んでいる。
【0006】
新規化学治療物質に対する多くの現在の研究は、考えられる疾患経路中の主要な鍵を握っているとすでに公知のタンパク質と相互作用するか、またはその効果を調節する新規化合物を同定することに広く焦点を当てている。 1つのそのような例は、癌におけるチミジンキナーゼの役割における最近の研究であり、結果としての5−フルオロウラシルおよび葉酸類似体の発見である。 しかしながら、そのような技術は、そのような鍵となるタンパク質のすでに存在する知識の範囲によって本質的に制限される。 たとえば、癌に対する新規化学治療物質の開発を最大化するためには、すでに存在する小さな標的のプールに限定せすに、細胞傷害性化合物に対して、広く、そして一般的にスクリーニング可能であることが好ましい。
【0007】
いくつかの一般的な方法は、死亡したか、または死亡している細胞の同定に関するが、しかし、細胞死を引き起こす基質を直接的に同定する能力を欠き(および、従って、その細胞傷害性効果を調節する細胞標的の直接同定を導くことはない)、例えば、種々の染色方法は壊死および/またはアポトーシス細胞を同定する。 そのような方法には、抗体染色技術および、たとえばプロピジウムおよびヨウ化染色のような、色素染色技術が含まれる。 他のアッセイは、複雑な複製プレーティング技術を使用し、それによって複写コロニーが確立され、1つのそのようなコロニーを推定細胞傷害性物質に曝露する。 細胞死が(その死を介して、または複製プレートからの欠如を介して)1つのコロニーで観察された場合、次いで、その相当する複写物をさらなる解析にかける。 しかしながら、そのような複写プレーティング技術は、時間を浪費し、ハイスループットスクリーニング手順には適さない。 さらに、複製プレーティング技術は単に近似であり、細胞死に関与する実際の内因性細胞性物質は、複写プレートから消失する複写コロニーとともに、欠失する。
【0008】
したがって、直接的なネガティブ選別技術(すなわち、その死に関連している原因物質及び相当する内因性標的を提供する、死亡したか、死亡している細胞それ自身)に対する必要性が存在する。 さらに、迅速で、効果的な評価を提供するネガティブ選択技術、すなわちハイスループットスクリーニングに好適な技術に対する必要性が存在する。 本発明は、これらの必要性に合致する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ネガティブ選別を実施するための方法を提供する。 いくつかの実施様態において、ネガティブ選別は、遺伝的ライブラリーを、標的細胞の集団内に導入すること、培養表面から脱離した細胞の亜集団を回収すること、次いで、その亜集団より遺伝的物質を回収することによって実施される、他の実施様態において、本発明は、致死表現系を確立する細胞傷害性物質を得るための方法を提供し、そこで、遺伝的ライブラリーが標的細胞の集団に導入され、致死表現系を示している細胞の亜集団が回収され、ついでその亜集団から遺伝的物質が回収される。 これらの種々の実施様態において、細胞特異的細胞傷害性物質が、脱離および/または致死表現系を示している亜集団からの遺伝的物質が第二の、異なった細胞集団に導入され、遺伝的物質の第二のサブライブラリーが、脱離および/または致死表現系を示していない第二亜集団より得られるカウンタースクリーニング工程を実施することで同定される。
【0010】
これらの各基本的な実施様態に対して、種々の特定の実施様態が存在する。
いくつかの特定の実施様態において、方法論の致死表現系はアポトーシス、壊死、または増殖停止でありうる。 致死遺伝子が、アポトーシスである実施様態において、培養基質からの脱離の特性を、アポトーシスに対する代理として使用してよく、これによって、アポトーシス細胞集団を濃縮するための技術が提供される。 他の特定の実施様態において、遺伝的物質は部分的に配列決定されているか、または方法工程が、同一の細胞の第二集団中で繰り返されてよい。 標的細胞は哺乳動物細胞であり、より好ましくは初代細胞であり、とりわけ上皮または内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞または造血細胞から由来する初代細胞であってよい。 哺乳動物細胞はまた、癌細胞であってよく、より好ましくは、転移性であるか、固形腫瘍由来の癌細胞であってよい。 癌細胞は、とりわけ、乳、大腸、肺、黒色腫または前立腺組織より由来してよい。 他の特定の実施様態において、哺乳動物細胞は、遺伝的に改変されており、より好ましくは、不死化されているか、形質転換されていてよい。
【0011】
培養表面からの標的細胞の脱離の特性を利用している実施様態において、特定の実施様態が、自発的な脱離細胞のバックグラウンドが低いという特徴を持ち、特に、約10%より低く、または約20%よりも低い可能性がある。 そのような低バックグラウンドをもつ標的細胞には、SW60およびHT29大腸癌細胞、T47D乳癌細胞、およびHuVEC細胞が含まれる。 特定の実施様態において、脱離細胞は少なくとも約12時間の間隔にわたって収集される。 また、基礎的実施様態の他の特定の実施様態において、遺伝的ライブラリーは大きいか、または非常に大きい(〜105コード推定細胞傷害性物質)。
【0012】
本発明はまた、致死表現系を誘導する小有機分子の同定に関する。 いくつかの実施様態において、内因性タンパク質よりタンパク質性細胞傷害性物質を提示している有機分子が得られる。 他の実施様態において、そのタンパク質性細胞傷害性物質と、構造活性関連性を持つ有機分子が同定される。
【0013】
本発明はまた、条件付細胞傷害性に関して選別する実施様態に利用でき、そこで、遺伝的ライブラリーが、標的細胞の集団内に導入され、致死表現系を提示している細胞の亜集団が収集され、その亜集団より遺伝的物質が回収される。 ここでも、特定の実施様態において、致死表現系はアポトーシス、壊死、増殖停止であってよい。 他の特定の実施様態において、第二物質は、UV、X線、またはニュートロン放射であってよく、または化学治療物質、とりわけ、メトトレキサート、シスプラチン、5−フルオロウラシル、コルチシン、ビンブラスチン、ビンクレスチン、ドキシルビシンまたはタキソールであってよい。 特定の実施様態には、標的細胞として癌細胞、特に、固形腫瘍が含まれ、第二細胞傷害性基質でのカウンタースクリーニング、たとえば、成長因子、サイトカイン、ケモカインなどでの曝露、または癌遺伝子の活性化の前の標的細胞のプレコンディショニングが含まれる。
【0014】
本発明はまた、上記要素の組合わせに関し、特に、6つの代表的なアミノ酸配列に関し、これらは、本発明のネガティブ選別方法をHT29大腸癌細胞に適用することによって得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、(i) 細胞の細胞性死を引き起こすか、または促進する致死物質または基質、または(ii)細胞のある集団における増殖および/または再生産停止を誘引し、したがって最終的にその集団の死亡を導く物質に対する、迅速で、効果的なスクリーニングの方法を提供する。 両方の型の物質は、最終結果が細胞集団の欠失であるので、本明細書では「細胞傷害性物質」と呼ぶ。
【0016】
本発明は、まず直接または間接的に、致死表現系を選択し、ついでその表現形を作り出す内因性タンパク質の調節物の直接的な回収を実施する、ネガティブ選別アッセイを提供することで効果的なスクリーニングの終了を成し遂げる。
【0017】
「ネガティブ選別」は、増殖停止および/または細胞死のいくつかの段階の内の1つにおいて、致死表現系を示している細胞を同定し、単離するために設計された手順を意味する。 「致死表現系」は、結果として、直接的に、または間接的に、個々の細胞または細胞集団の死となる1つまたはそれ以上の細胞事象を意味する。
【0018】
致死表現系は、結果として細胞死となる任意の数の生理学的事象の結果であってよい。
【0019】
非限定例として、細胞は、アポトーシスのような積極的な、先にプログラムされた経路によって、または壊死のようなより受動的な、退化方法にて、すなわち個々の細胞での致死を作り出す直接の結果として、死亡しうる。 他の例では、細胞は、間接的な結果として、たとえば増殖停止のいくつかの形態を介して、消失しうる。 そのような増殖停止は、正常の細胞増殖を阻害する種々の気候によって引き起こされえ、それによってその細胞増殖サイクルのあるステージで死亡が停止しうる。 たとえばp16誘導増殖停止は、細胞サイクルのG1期で細胞を停止させる。
【0020】
一般的に、本発明の選別方法は、致死表現系を示している細胞を簡単に回収可能な、標的細胞集団を提供することで開始される。 種々の方法がそのような回収に関して利用可能であり、その多くが、直接的または間接的に死亡した、または死亡している細胞を同定可能である、または、特に、アポトーシス対壊死細胞を見分けることができる、蛍光マーカーを利用する細胞ソーティングを含む。 他の例において、致死表現系は、望んだ細胞集団の簡単な回収を提供する、代理表現系を持つ可能性がある。 一例として、細胞接着の欠失特性が、細胞死を代理可能であり、従って、相関関係のある致死表現系を持つ細胞に関する単純な濃縮および/または選別が提供される。 他の例として、細胞構造および/または機能の変化が、致死に対する適切な代理であり、たとえば、P−糖タンパク質過剰発現の欠失は、抵抗性細胞株において、化学治療薬剤への選択性の増加と相関関係にあり、したがって、細胞死の率の増加と相関関係にある。
【0021】
本発明の1つの顕著な利点は、細胞傷害性物質をコードしている遺伝的物質の直接の回収である。 「直接回収」は、(レプリカプレーティングのような間接的方法に対して)増殖停止された、および/または死亡したまたは死亡している細胞それ自身からの遺伝的物質の回収を意味する。 したがって、本技術は、致死表現系を引き起こす物質を構成する、またはコードしている核酸の直接のサンプリングを提供する。 そのような直接回収は、実際の、原因となる遺伝的物質が、引き続く操作および/または解析のために、そして、他の標的細胞集団中の個々のライブラリー挿入物の際スクリーニングまたはカウンタースクリーニングのために、回収され、保存される場合に利点である。
【0022】
本発明は、別々の細胞傷害性物質に対して、または推定細胞傷害性物質のライブラリーに対して等しく適用可能である。 いくつかの実施様態において、スクリーニングすべきライブラリーは、大きなライブラリー(すなわち、1×103以上の物質)、またはとても大きなライブラリー(すなわち、1×105以上の物質)であってよい。 本発明は、公知の、または予想される細胞傷害性効果を持つ物質を評価するのに使用することができるが、以前には特性化されていない、すなわち、細胞傷害性効果を持っていることが明らかではないか、予想されていなかった物質のスクリーニングにも等しく利用できる。 いくつかの例において、物質は、他のものでもありえる一方で、タンパク質様、または核酸の一部とすることができ、スクリーニングすべき薬剤は、小有機分子とすることができる。
【0023】
本発明は、他の物質(たとえば、増感剤または相乗作用物質)の存在下、または非存在下で、細胞傷害性物質の活性を評価するのによく適する。 したがって、いくつかの実施様態において、本発明は、第二の物質(たとえば、公知の化学治療物質または紫外線、X線またはニュートロンを含む、種々の供給源からの放射)に対する細胞の感受性を増強する増強剤(たとえば、遺伝的ライブラリー挿入物によってコードされた増感剤)を同定するような、「条件付細胞傷害性」を評価するのに利用できる。 したがって、増感剤は、第二物質の細胞傷害性を増強し、通常副次毒性用量またはそのような第二物質細胞傷害性の曝露を提供する。 このアプローチは、たとえば癌細胞における多重薬剤抵抗性(MDR)を改善するための候補物質を評価し、それによって、そのような細胞をタキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、メトトレキサート、シスプラスチン、5−フルオロウラシル、コルチシン、ビンクリスチン、ドキシルビシンなどのような標準の化学治療物質に対して感受性にする場合に、とりわけ有利である。
【0024】
また他の実施様態において、標的細胞は、いくつかの物質を介して先行感作してもよく、または、たとえば増殖因子を添加することによって、それ自身、有害な効果を発揮しない。 他の例において、標的細胞は、たとえば癌遺伝子のような、対象の遺伝子の発現を活性化することで先行感作してよい。
【0025】
本発明はまた、それ自身、「細胞特異的」様式にて機能する物質を簡単に同定することを導く。 このことは、第二の細胞型を使用するカウンタースクローニング工程を実施することによって実施されうる。 そのような実施様態において、本発明は、たとえば、同一の条件下で、第二細胞型においては細胞傷害性効果を示していないが、第一細胞型を選択的に殺すことによって、差異的に細胞傷害性効果を示している細胞傷害性物質を同定するために使用できる。 1つの特定の、しかし非限定的な例として、推定細胞傷害性基質をコードしているライブラリーが、第一細胞集団、すなわちWM35のような癌性細胞株にて選別されうる。 そのような細胞株において致死表現系を引き起こす物質は、ついで単離され、第二の、相当する初代細胞株にて選別される。 非癌性細胞株において致死表現系を引き起こさない物質は、ついで単離され、さらに特性化される。
【0026】
致死表現系の単離
致死表現系を持つ細胞を同定するための種々の方法が存在する。 たとえば、当業者によく知られている多くの方法が、アポトーシスまたは壊死経路への細胞の導入においてのみ発生する表面抗原のような細胞構成要素を標的にしている。他の例において、致死表現系を特徴づける、細胞形態、または細胞透過性の変化、たとえば、核膜完全性の変化、または細胞膜の「水泡化」、が観察される。種々の色素、染色および抗体が、そのような方法で利用可能であり、限定はしないで、抗体Apo2.7、ヨウ化プロピジウムおよびカスパーゼ色素が含まれる。
【0027】
同定物質が蛍光である場合、致死表現系を示している細胞は、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)、96ウェルプレートリーダー、またはCCDカメラを用いて可視細胞より簡単に単離でき、遺伝的物質が、得られた死亡した、および/または死亡している細胞の亜集団から回収される。 1つのそのような蛍光物は、種々の蛍光色素に直接共役可能なタンパク質アネキシンVである。 アネキシンVは、脂質部位、ホスファチジルセリンに結合し、これは通常細胞質膜の内部小葉に位置する。 多くの細胞がアポトーシス(プログラムされた細胞死)を受けているときに、この脂質は、細胞質膜の外側小葉に転位する。 この転位により、外来より加えた蛍光共役アネキシンVが、脂質と相互作用することが可能になり、それによって、アポトーシスを受けている細胞を標識することが可能である。 さらに、壊死(非アポトーシス細胞死)の通常の経過の間、細胞質膜の完全性がゆるくなり、蛍光共役アネキシンVが細胞内に入り、脂質と相互作用可能になり、このことより死亡した細胞のタグとして利用できる。 他の代表的な蛍光物は、シントックス(SyntoxTM)(モレキュラー プローブ)であり、細胞質膜が緩くなる時に、アポトーシス、または壊死の後期のステージの間に、細胞内に入ることが可能な、膜不透過性色素である。 細胞への進入に際し、シントックスは、DNAおよび蛍光と相互作用し、それによって死亡細胞の検出が可能になる。
【0028】
標的細胞
広範囲の種々の異なる細胞型が、標的細胞としての使用に好適である。 一般的に、公知の病理学または疾患状態に対して、または公知の標的組織または細胞集団に対して関連を持つ細胞が利用される。 多くの実施様態において、標的細胞は哺乳動物細胞でありうる。
【0029】
多くの例において、対象の疾患は癌である。 細胞型はよく固形腫瘍を示し、転移性癌細胞がとりわけ対象である。 代表的な癌種には、限定はしないが、乳、大腸、前立腺および肺腫瘍、ならびに黒色腫が含まれる。 相当する細胞株としては、限定はしないが、SW620、HT29、DLD1、T47D、WM35などが含まれる。
【0030】
他の例において、ヒト臍帯動脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells、HuVECs)またはヒト乳房上皮細胞(Human Mammary Epithelial Cells、HMECs)のような初代細胞での致死表現形の探索が望ましい可能性がある。 一般的に、本発明は、上皮細胞、内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞および造血細胞から由来する種々の初代細胞培養のスクリーニングに簡単に役に立つ。 いくつかの例において、初代細胞株を、細胞傷害物質の選択性を見積もるために、カウンタースクリーニング工程で使用可能である。 他の例において、たとえば血管新生において、初代細胞それ自身に細胞傷害性である物質を同定することが望ましい可能性がある。
【0031】
本発明はまた、遺伝的に改変された初代細胞におけるネガティブ選別を実施するために適用可能である。 非限定例として、初代細胞は、当業者によく知られた標準の技術を用いて、不死化するために、遺伝的に改変してよい。 不死化技術には、HPV−E6、HPV−E7、hTERT、活性化ras、SV40ラージT抗原、エプスタイン−バー(Epstein−Barr)ウイルス(EBV)BARF1遺伝子、I型ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T−Cell Leukemia Virus Type 1、HTLV−1)TAX(転写促進)遺伝子、およびアデノウイルスE1Aのような公知の遺伝子の使用が含まれる。 他の例において、初代細胞株は、種々の標準の技術によって形質転換してよい。 たとえば、1つまたはそれ以上の公知の腫瘍サプレッサが使用される。 あるいは、広く種々の形質転換されたか、または不死化された細胞株が、ATCCおよび他の同様の供給源より入手可能である。
【0032】
多くの例において、標的細胞が、対象の致死表現系に対して選別するために使用した同定特性または代理特性が何であっても、低いバックグラウンドを持つことも好まれる。 1つの例として、アポトーシスに対する浮遊アッセイの場合に、(i) 自発的脱離の低バックグラウンド、および/または(ii)脱離と致死表現系の良好な相関関係を持つ標的細胞が選択される。 そのような低バックグラウンド脱離率を持つ標的細胞は、たとえば、アポトーシス細胞に対する良好なレベルの濃縮を提供し、濃縮物は、脱離した細胞の1つ以上の集団を収集することによってさらに濃縮されうる。 脱離のバックグラウンド率は、与えられた標的細胞型に対して評価される。 多くの例において、1%または2%までの率がもっとも好ましく、2〜5%のバックグラウンド率、約10%までが、本発明での使用において、適切な区別を提供する。 そのような標的細胞株およびその特性の選別および最適化は当業者の範囲内である。
【0033】
本明細書の他の部分でより完全に記述したように、たとえばHT29およびSW620のような大腸癌細胞株、T47Dのような乳癌細胞株、およびHMECおよびHuVECのような初代細胞株が、浮遊アッセイ実施様態に対してとりわけ好ましい。 また他の実施様態において、ネガティブ選別戦略を他の細胞種に対して、当業者の範囲内での最小の改変をともなって、適用してよい。 非限定例には、細胞傷害性物質を、ウイルス感染細胞の選択的殺傷に基づいて選択する、広く種々のウイルス感染哺乳動物細胞が含まれる。
【0034】
遺伝的ライブラリー
本発明は、細胞傷害性物資に対する種々の種類の遺伝的物質を選別しうる。
取り扱いおよび細胞への導入の容易さのために、そのような遺伝的物質は、しばしば、遺伝的ライブラリーの形であり、言い換えれば、選択の標的細胞に対して好適な発現ベクターに含まれる。
【0035】
いくつかの例において、遺伝的ライブラリーは、すべてまたは部分的に無作為化されたペプチドライブラリーをコードしているDNAとすることができ、当業者によく知られている技術を用いて合成される。 他の実施様態において、遺伝的ライブラリーは、特定のペプチド配列をコードしている可能性がある。 そのようなペプチドコードDNAは、内部に位置するか、あるいは骨格ポリペプチドのN−末端またはC−末端にて、またはその近くに局在する内部部位を持つ、骨格構造の一部分として発現されうる。 本技術分野では、広く種々のそのような骨格構造がよく知られている。 そのような内部骨格部位に挿入された無作為ペプチドライブラリーの1つの非限定例は、そのすべてが本明細書にて参考文献として組み込まれた開示である、Abei et al., N.A.R. 26(2);623−630(1998)にある。
【0036】
他の例において、細胞傷害性物質に関して選別すべき遺伝的物質は、細胞供給源より由来する。 そのような遺伝的ライブラリーは、ゲノムDNA(gDNA)、クローン化DNAから由来するか、または細胞RNAから由来するcDNAから由来するかいずれかであってよい。 そのようなライブラリーは、広く種々の細胞供給源から由来してよく、限定はしないが、脳、ヒト胎盤組織、肝臓、腎臓などが含まれる。 好ましくは1つは、すべてのタンパク質領域が、ライブラリーで発現されるように、十分な数のDNA断片を合成する。 たとえば、参考文献にて組み込まれている開示である、Sambrook, Molecular Cloning;A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989) 第7〜9章。 本技術分野では、広く種々のそのようなcDNAおよびgDNAライブラリーの調製が普及している。
【0037】
1つの非限定例として、cDNAの合成およびクローニングは、二本鎖DNAを、たとえばヒト胎盤組織から単離した、無作為プライムmRNAから調製することによって実施される。 あるいは、無作為に共有されたゲノムDNA断片が使用されうる。 いずれかの場合において、断片を、酵素で処理し、末端を修復し、対象の標的細胞、多くの場合哺乳動物細胞であるが、この細胞内に導入するのに好適なベクター内にライゲーションする。 例示ベクターには、種々のレトロウイルス構造が含まれ、そのうちのいくつかの非限定例が本明細書にて記述されている。
【0038】
細胞傷害性物質
種々の細胞傷害性物質が、本発明の範囲内である。 たとえば、細胞傷害性物質は、タンパク質様化合物(たとえば、ペプチド、ポリペプチドまたは天然のまたは合成起源のタンパク質)、核酸物質(たとえば、アンチセンス様式で働く、さもなければ正常の細胞機能を干渉するRNA)、または小有機分子(たとえば天然の産物または組み合わせz化学ライブラリーのメンバー、またはその誘導体)でありうる。
【0039】
細胞傷害性物質がタンパク質様または核酸である場合、ついでそのような物質をコードしているDNAを、そのような標的細胞に対して適切な分子生物学的な標準技術を介して、たとえばレトロウイルス伝送、エレクトロポレーションなどを介して、細胞内に導入する。 細胞傷害性物質が小有機分子である場合、ついで標的細胞を、先に選択した濃度の物質を添加した培養培地を介して、そのような物質に曝露する。
【0040】
小有機分子である細胞傷害性物質は、当業者によく知られている少なくとも2つの方法で、簡単に単離されうる。 1つのそのような方法は、標準のin vitro置換アッセイである。 そのようなアッセイにおいて、細胞傷害性ポリペプチドおよびその相当する内因性細胞結合相手が、しばしばハイスループット機械化アッセイ系に好適である多重ウェルプレート内で、in vitroにてまず調製される。ついで、小有機分子のライブラリーを、これらの細胞構成物の1つに結合し、それによって、それらの正常の、内因性の相互作用が乱される分子を同定するために選別する。 あるいは、小有機分子を、分子の構造を体系的に改変し、構造を選られた生物学的活性と関連付けること、本明細書では「構造−活性相関」研究と呼ぶものによって得る。 当業者に好まれるものとして、そのような構造−活性相関を作り出すための種々の標準の方法が存在する。 いくつかの例において、作業は純粋に経験に基づくものであり、他においては、内因性ポリペプチドの三次元構造が、小分子模倣の合理的な設計に対する開始点として使用される。
【0041】
標的細胞の細胞傷害性物質への曝露
細胞傷害性物質は、標的細胞の内因性構成物と相互作用する、タンパク質様(タンパク質、タンパク質断片または領域、ポリペプチド、またはペプチド)または核酸部分、または他の有機、または生物無機化合物でありうる。 タンパク質様および核酸物質は、たとえば合成DNA、cDNAまたは断片化、共有または消化ゲノムDNAからなる発現ライブラリー(「遺伝的ライブラリー」の産物として、標的細胞に提示してよい。 遺伝的ライブラリー挿入物は、それらに加わったさらなる任意の配列なしに細胞に発現しうるか、または他の物質に融合しうる。 たとえば、ポリペプチドは、パーターバゲンに融合し、アッセイ系でのパーターバゲンの安定性を増加させる、および/または蛍光のような簡単に検出可能な特性を提供しうる。 そのような融合部分の例には、GFP、LacZ、またはGal4が含まれる。 詳細は、そのすべてが、本明細書にて組み込まれた、共同出願、および共有の米国特許第08/965,477号、「光励起骨格において提示されるペプチドライブラリーの方法および組成物」にて提供されている。
【0042】
いくつかの実施様態において、推定細胞傷害性物質をコードしているか、含んでいる遺伝的ライブラリーは、当業者によく知られているトランスフェクション手順を用いて、レトロウイルスベクターを介して標的細胞に提示される。 あるいは、そのような物質は、エレクトロポレーションまたは他の標準の手順を介して細胞に提示される。
【0043】
浮遊細胞アッセイおよび濃縮
本発明のいくつかの例において、致死表現系(たとえば、アポトーシスまたは壊死)が、培養表面からの脱離の選別特性の代理として使用されるネガティブ選別アッセイ、本明細書では「浮遊アッセイ」と呼ぶが、このアッセイを用いることで、選択される。 したがって、致死表現系に適している細胞が濃縮されるか、またはより濃縮される細胞集団が、細胞傷害性物質への曝露の後に、培養培地なしで、「浮遊」する細胞を収集することによって単純に収集されうる。
【0044】
そのような浮遊アッセイ実施様態は、まず、好適な標的細胞種、たとえば、対象の組織または疾患状態と関連している、および自発的脱離のバックグラウンド(すなわち非アポトーシス細胞の脱離)が好ましい程度に低い、そして致死誘導用量の細胞傷害性物質への曝露に続く、脱離と致死表現系の間の高い相関性のある細胞種の選別を含む。 好適な細胞種は、以下のようにして選別される。 まず、(以上でより詳細に記述した)対象の疾患に関連した細胞種を選択する。
次に、細胞培養を標準の技術を用いて確立する。 ついで、この細胞培養を2つの集団、「浮遊」および接着細胞に分ける。 「浮遊」集団を、培養プレートまたはフラスコから培養培地から抜き取ることで回収し、ついで、この培地から細胞を採集する。 接着集団は、培養培地を抜き取った後に残った、培養支持体に接着した細胞をトリプシン処理して得る。 ついで、それぞれの集団を計数し、自発的浮遊細胞の、接着細胞に対する総体すうを計算する。 ついで浮遊細胞および接着細胞集団を解析して、それぞれのうちアポトーシスまたは壊死細胞の数を測定した。 好ましい細胞種は、接着の欠失と致死表現系の間に高い関連性を提供し、すなわち、浮遊細胞集団が、死亡した、または死亡している細胞で、相対的に大きく占められ、一方で接着集団が、生細胞で比較的大きく占められる。
【0045】
浮遊細胞は、由来する細胞種に依存して、致死および非致死表現系の異なる濃度で提示する。 たとえば、いくつかの細胞株において、生細胞(すなわち、細胞分裂が起こっており、および/または複製はしないが、正常の細胞代謝および生理学を示している、健康で、生きている細胞)は接着しない。 そのような細胞株において、非接着の代理表現系は、アポトーシスに関連せず、したがって、そのような細胞株は、本明細書で記述した浮遊アッセイ技術には好適ではない(しかしながら、たとえばFACS解析によって採取された死亡した、または死亡している細胞からの遺伝的物質の直接の回収を用いる、ネガティブ選別のために使用可能である)。 生細胞が通常プレーティング表面に接着する他の細胞株において、有意な割合の生細胞、非アポトーシス細胞が、浮遊細胞集団に入りうる。 他の細胞株において、いくつかの有意な浮遊細胞集団の部分は、非アポトーシス、非生細胞、たとえば、アポトーシス以外の細胞処理によって死亡した細胞でありうる。 そのような混合「浮遊」集団を提供する細胞株を、好適な対照を使用し、および/または第二の同定方法(たとえばApo2.7またはヨウ化プロピジウム)を、浮遊アッセイ技術とともに使用する場合に、本明細書で記述したアッセイ技術で使用することができる。
【0046】
次に、選択した細胞種を、推定細胞傷害性物質に曝露する。 細胞傷害性物質が、核酸であるか、または核酸によってコードされている場合、たとえばレトロウイルスライブラリーの構築および感染のための標準の手順に従うことで、種々のそのような物質をコードしているライブラリーを、選択した細胞種の集団に提供することによって、簡単に実施される。 処理した標的細胞を、ついで致死表現系の確立が確認されるのに十分な時間培養し、続いて細胞培養培地中の「浮遊」または脱離細胞を収集し、遺伝的物質を抽出するために処理する。 ついで、死亡した、または死亡している細胞からのDNAを増幅し、どの細胞傷害性物質(類)が、アポトーシス致死表現系に関連しているかを同定するために、少なくとも部分的に配列決定する。 ついで、致死表現系および回収した物質間の相関を、そのような物質を、第二のそのような標的細胞集団に導入し、相関致死表現系の存在を確かめることで、確認した。
【0047】
あるいは、全体として浮遊細胞集団を、1つまたはそれ以上の致死表現系に対して濃縮した亜集団として使用することができる。 たとえば、アポトーシス細胞を壊死細胞から区別したい場合、ついで上記戦略を使用して、致死表現系に対して、得られた標的細胞亜集団を濃縮してよい。 ついで、この濃縮した亜集団をああに、たとえばアポトーシス特異的同定戦略(たとえば、Apo2.7)およびFACSソーティングを用いて分離して、精製アポトーシス細胞画分を得てよい。
【0048】
遺伝的物質の回収
いったん推定細胞傷害性物質を受けた細胞を、選別し、致死遺伝子を持っているそのような細胞を直接的に染色技術を介して、または間接的に、接着の欠失のような代理表現系を介して、同定したならば、それらの細胞からの遺伝的物質を、標準の技術を介して回収する。 簡単に記すと、標準PCR技術を使用して、対象の遺伝的物質(DNA)を回収し、増幅する。 PCRプライマーは、推定細胞傷害性物質をコードしている領域を増幅するように選択する。 ついで遺伝的物質を、当業者によく知られた技術を用いて、全体的に、または部分的に配列決定し、第二選別またはカウンター選別のためのサブライブラリーとして再構築することができる。
【0049】
内因性細胞タンパク質
本明細書で記述したような、ネガティブ選別プロトコールが完了した後、しばしば、致死表現系を促進する内因性細胞タンパク質(類)を得ることが有益である。 「内因性細胞タンパク質」は、選択した宿主細胞ないでのネガティブ遺伝的物質残基によってコードされた、タンパク質、ポリペプチド、またはポリペプチドサブユニットの集合を意味する。 そのような内因性細胞タンパク質は、限定はしないで、(i)酵素機能、(ii)細胞質または核における経路中のタンパク質−タンパク質相互作用、および(iii)シグナル伝達および輸送タンパク質などを含む、膜貫通、または分秘タンパク質を含む細胞中の種々の基異能に役に立ちうる。
【0050】
対象の内因性細胞タンパク質は、種々の方法にて得ることができる。 たとえば、細胞傷害物質がタンパク質様である場合、ついで相当する内因性結合相手を、酵母2−ハイブリッド結合アッセイ、ファージディスプレイ技術またはたとえばタンパク質コート基質を用いたin vitro結合アッセイのような標準のタンパク質−タンパク質相互作用を介して同定してよい。
【0051】
細胞特異的細胞傷害性物質のアッセイ
いくつかの実施様態において、本発明の方法論は、示差的細胞傷害性効果を示す、すなわち、1つの細胞集団には細胞傷害性であるが、他に対しては傷害性ではない、物質を同定するために適用してよい。 そのような実施様態は、対象の癌種に対して特異的に働き、一方で非癌細胞には部分的または全体として影響を与えない、物質を同定するのに有益である。 同様に、本方法論は、1つの発展工程の癌細胞、たとえば転移性細胞に特異的であるが、他は特異的でない、物質を同定することができる。 そのような適用は、そのようにして同定された物質が、望ましくない副作用の欠失、より低い治療用量などのような治療的利点を提供するように予想され、とりわけ有益である。
【0052】
1つの一般的なアプローチは以下の通りである。 標的細胞種を選択し、対象の細胞傷害性基質(本明細書では、「第二物質」と呼ぶ)を選択する。 ついで「標準殺傷曲線」(すなわち用量−応答曲線、ここで、物質の量を増加させて標的細胞に提示し、得られた細胞死をモニタし、プロットした)を、細胞種および細胞傷害性基質に対して調製する。 標準の殺傷曲線より、第二物質「副次毒性閾値」用量(すなわち標的細胞集団において、細胞死を開始させない、殺傷曲線からの最大用量)をさらなる研究のために選択する。 ついで、標的細胞の集団に、1つまたはそれ以上の推定細胞傷害性増強物質(たとえば、遺伝的ライブラリーの形態で)を提供し、続いて、選択した副次毒性閾値用量の第二物質に曝露する。 ついで、本明細書の他の部分で記述したようなネガティブ選別を実施し、副次毒性閾値用量の第二物質に対する応答で死亡した、形質転換した標的細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を同定する。 そのような物質が、タンパク質様であるか、または核酸生物分子である場合、ついで、たとえば本明細書の他の部分で記述したPCR増幅およびシークエンシング戦略によって、物質をコードしているか、含んでいる遺伝的物質を単離し、評価する。
【0053】
プレコンディショニング
本発明のいくつかの実施様態において、プレコンディショニング工程が、ネガティブ選別戦略に加えられうる。 そのような実施様態において、標的細胞の集団を、まずプレコンディショニング物質に曝露する。 ついで、細胞を推定細胞傷害性物質(たとえば、遺伝的ライブラリー)に曝露する。 ここでまた、本明細書の他の部分で記述しているように、選別によって致死表現系(たとえばアポトーシス、または壊死)を表示している細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を単離する。 この工程は、結果として、プレコンディショニング物質の存在下で働く物質の同定となる。
【0054】
任意に、第二の選別工程(ポジティブ選別)を使用して、プレコンディショニング物質の存在下でのみ働く物質を同定してもよい。 このような実施様態において、標的細胞の第二集団を、プレコンディショニング物質への曝露の先行工程無しに、同様の様式で、第一(ネガティブ)選別工程で単離した細胞傷害性物質(群)に曝露する。 本明細書の他の部分で記述しているように生きている細胞を収集し、相当する細胞傷害性物質を単離する。
【0055】
種々のプレコンディショニング物質が、当業者に公知である。 一般的に、これらの物質は、細胞増殖または死に関連する代謝経路に関与する可能性がある。非限定例には、活性化EGFレセプター、rasまたはmycのような活性化癌遺伝子p53、p16またはRbのような遺伝子のノックアウなどのような増殖因子が含まれる。
【0056】
本発明の選別系の産出および使用のための以下の実施例は、当業者に、本発明をよりはっきりと理解され、実施することを可能にする。 しかしながら、本発明は、実施例によってその範囲が限定されることはなく、本発明の単一の観点を示しているに過ぎず、方法および機能的に同等である物質は、本発明の範囲内である。 本明細書で記述したものに加えて、種々の改変が、以上の記述および付随する図表より、当業者に明らかになるであろう。 そのような改変は、付随する請求項の範囲内であると意図される。
【0057】
【実施例】
実施例1:生細胞と瀕死細胞の識別ならびにキャラクタリゼーションの方法
本明細書で述べるいくつかの選択を含め、多くのネガティブセレクションは死および/または瀕死細胞の識別を必要とする。 当業者が認識するように、これらの細胞を検出する多くの方法がある。
【0058】
致死的表現型を有する細胞を識別する、および、たとえばアポトーシスおよび壊死性細胞を区別する多くの技法が存在する。 ある例において、抗体はアポトーシスを受けている細胞を識別するために使用される。 Koester et al., Monitoring Early Cellular responses in Apotosis is Aided by the Mitochondrial Membrane Protein−Specific Monoclonal Antibody Apo2.7” Cytometry, 29:306−312 (1997)。 このようないくつかの実施態様において、抗体は、正常(生存可能な)条件下で検出から隠れた、またはマスキングされているが、死細胞において暴露されるようになる抗原を認識する。 別の例において、アポトーシス細胞は、アポトーシス経路に特異の、そしてアポトーシス経路によって活性化される、プロテアーゼ(カスパーゼ)によって認識される基質を使用して検出される。 Green, D., Kroemer, G., ”The Central Executioners of Apotosis: Caspases or Mitochondria”, Trends in Cell Biology, 8:267−271 (1998)。 また別の例において、死細胞および瀕死細胞は、各種の染料とのその相互作用に基づいて、生細胞と区別される。 1つのクラスである膜透過性染料(たとえば、トリパンブルー)は、生細胞の細胞内区画から活動的に除外されるが、死細胞または瀕死細胞の細胞質/核領域に蓄積する。 第2クラスの試薬である膜不透過性染料は、すべての生細胞から除外されるが、死および/または瀕死細胞の易感染性膜境界に浸透することができる。 これらの試薬の多く(たとえばヨウ化プロピジウム、エチジウムホモダイマー)は、DNAに対する親和性を持ち、核酸に結合すると蛍光の増加を示す。 Krishan, ”Rapid flow cytofluormetric analysis of mammalian cell cycle by propidium iodide staining”, J. Cell Biology 59:766(1973)。 これらの試薬は、FACS分析とともに使用されるか、蛍光顕微鏡法のさらに一般的な技法で使用される。 Shapiro, ”Practical Flow Cytometry” H.M. Wiley−Liss Publications (1995)。
【0059】
A. Apo2.7 抗体染色
Apo2.7(Coulter Immunotech)は、アポトーシスを受けている細胞内のみで暴露されるミトコンドリア膜内のエピトープを認識する、モノクローナル抗体である。ネガティブセレクションでその有効性を試験するために、抗FAS抗体(1μg/ml 抗CD95クローン、Yonehara, S. et al., ”A cell killing monoclonal antibody (anti−Fas) to a cell surface antigen co−down regulated with the receptor of tumor necrosis factor.” J.Exp.Med 169:1747−1756 (1989))を用いて、2mlのAIM−V無血清培地中の1×106 Jurkat細胞にアポトーシスを受けさせた。 一定の暴露時間(抗FAS抗体中で0、2、10、17または21時間)の後、細胞膜を透過化処理するために、100μlの100μg/mlジギトニンのPBS溶液を加えた(氷上で20分間)。 この手順の後、細胞を回転させ(200×g)、Coulter−Immunotech社提供の蛍光R−フィコエリトリンシアニン標識Apo2.7(10μl Apo2.7抗体、90μl PBS、+細胞)を含む溶液中で再懸濁させた。 この方法によって、暗所で室温にて15分間インキュベートを行うことができた。 細胞は次に、遠心分離(200×g)によってペレット化し、フローサイトメトリー(励起488nm;発光660〜690nm)によって分析する前に、1mlのPBS中で再懸濁させた。 FAC分析の結果(図1)は、時間=0(すなわち対照)において、個体群のわずか4%のみがApo2.7抗体によって標識されたことを示していた。 これに対して、アポトーシス誘起抗FAS抗体は、Apo2.7のJurkat細胞系への結合を増加させた(t=21時間=81%標識)。
【0060】
B.ヨウ化プロピジウム染色
ヨウ化プロピジウム染色(PI)は蛍光のDNA間在分子である。 無傷の膜を持つ生細胞は、細胞間区画からPIを排除するため、非蛍光である。 死および瀕死細胞はPIに対して易感染性で、透過性であるため、蛍光である。 PI染色技法は、アポトーシスおよび壊死細胞に等しく利用される。
【0061】
この種の試薬の死細胞の識別および精製への使用の、限定しない例として、以下のパイロット実験を実施した。 フローター細胞(すなわち、別の接着細胞個体群中の非接着細胞)は、HT−29大腸癌細胞のフラスコから単離した。 これらの細胞は、等しい大きさの接着細胞個体群とともに、遠心分離によって収集し、次にPBS中で1×106細胞/mlにて再懸濁させた。 次に、PIを2.0μg/mlの濃度で各サンプルに添加し、細胞をフローサイトメトリー(励起488nm、発光610nm)によって分析した。 膜完全性を失った死細胞は、蛍光の増加に基づいて、生細胞と容易に区別できた(図2)。 PI摂取が陽性の接着細胞のパーセンテージは、この細胞濃度では平均約0.5〜1.5%であった。 非接着「フローター」細胞では、細胞の高いパーセンテージ(>10%)がPI摂取について陽性であることがわかった。
【0062】
PI染色と細胞生存度の相関を陽性にするために、同数のPI陽性細胞とPI陰性細胞を、FACSを用いて識別し、別々に収集した。 この2つの個体群は次に、150mmプラスチック組織培養皿に蒔き、接着させて、7〜10日間培養した。
次に、各プレートで増殖したコロニーの数をカウントして、細胞生存度を決定した。 PI陰性の細胞が生存可能で、コロニーを作成するのに対して、PI陰性細胞は増殖できなかった。
【0063】
C.核凝縮
壊死に対して、アポトーシスによって死ぬ細胞は、核凝縮を示すことが多い。したがって、核の形態を描出する染料/染色技法を用いて、細胞が死ぬ方法を評価する。
【0064】
2つの細胞系、WM35およびHS294Tを蒔き(ウェル当たり50,000細胞、24ウェルプレート)、接着させた。 24時間後、細胞を可変濃度(5〜80μM)の、アポトーシスを誘発する周知の化学療法剤であるシスプラチン(シスプラチナ(II)ジアミンジクロライド)によって4時間処理した。 翌日(18〜24時間後)、次に培地を各ウェルから収集し、ウェルに接着しなかった細胞(本明細書では「フローター細胞」または「フローター」と呼ぶ)を遠心分離によって収集した(400×g)。 接着細胞の個体群を次に、トリプシン処理によって固体担体から持ち上げ、遠心分離にかけて(400×g)、PBS(0.125ml)中で再懸濁させた。 WM35およびHS294T細胞系の核の形態と細胞死パーセントを観察するために、フローターと接着個体群の両方の細胞をSyto16とエチジウムホモダイマーによって同時に染色した(125μlの細胞懸濁液+2.5μlの62.5μM Syto16+2.5μMの100μg/mlエチジウムホモダイマー、37℃にて
10分間)。 エチジウムホモダイマーは膜不透過性化合物であり、染色体DNAによってインタカレートされる場合、617nm範囲で蛍光を発する。 それゆえ、生細胞と死/瀕死細胞の両方を含む、混合細胞の細胞群では、細胞膜が易感染性である細胞のみがエチジウムホモダイマーによって染色される。 これに対して、Syto16(Molecular Probes)は膜透過性染料であり、染色体DNAと結合すると518nm範囲で蛍光を発する。 これらの2つの染料はともに、生細胞と死/瀕死細胞の両方を含む個体群の核形態を観察および区別するのに使用できる。
【0065】
シスプラチン処理したHS294T細胞のフローター個体群を検査すると、一般に50%を超える細胞がエチジウムホモダイマーで染色されたのに対して、蛍光顕微鏡法で観察した場合に、これらの細胞の20%未満が濃縮または断片化核を示したことがわかった。 その代わりに、これらの細胞の核は、拡散し、膨潤しているように見え、このことはシスプラチン処理HS294細胞が、アポトーシス経路ではなく、壊死経路によって死ぬことを示唆している。 これに対して、シスプラチン処理WM35細胞系から得たフローターは、高度のエチジウムホモダイマー染色(45〜50%)と表現型によって識別可能な濃縮または断片化核(シスプラチンの高濃度において40〜50%)の両方を示し、このことはこれらの細胞の多くのパーセンテージがアポトーシス経路で死ぬことを示唆している。 2つの接着細胞個体群のどちらも、大量のエチジウムホモダイマー染色を示さず(一般に<10%)、接着個体群の多くは生細胞よりなることが示されている。
【0066】
D.カスパーゼ感受性染色
カスパーゼ−3と他のプロテアーゼは、アポトーシス誘発細胞死で重要な役割を示すことが示されている(Green and Kroemer、1998)。 この酵素活性と細胞死との相関を試験し、カスパーゼ−3活性をネガティブセレクションで使用する可能性を研究するために、WM35(メラノーマ)細胞にアポトーシスを受けさせ、次に、カスパーゼ−3蛍光基質である、ローダミン123−YVADに暴露させた。
【0067】
WM35細胞は、アポトーシス誘発前に1日経過させ、24時間インキュベートして基質に接着させた。 次に培地を除去し、残りの接着細胞をPBSで1回洗浄し、次に新しい培地中でシスプラチンに暴露させた(15μg/ml)。 アポトーシス誘発の18〜24時間後、フローター細胞個体群を収集し、遠心分離(400×g)によってペレット化し、PBS中で3×106細胞/mlにて再懸濁させた。 次にサンプルを4つのグループに分割した:(1)非誘発マイナスローダミン123−YVAD(基質)、(2)非誘発プラス基質、(3)誘発マイナス基質および(4)誘発プラス基質。 ローダミン123−YVAD基質に暴露させたサンプルでは、50μlの予備加温(37℃)細胞懸濁液を25μlのストック基質溶液(Cellprobe)とあわせた。 サンプルを37℃にて60分間インキュベートし、次にFACS分析の前に氷上に置いた。 カスパーゼ−3染色に加えて、核サンプルの複製をヨウ化プロピジウムで染色して、膜が易感染性である個体群内の細胞のパーセンテージと、PIおよびカスパーゼ−3染色の重複を決定した。 サイトフローメトリー分析では、各サンプルを総量1ml(PBS)とし、アルゴンレーザーを用いて波長488nm(15mワット)で励起させた。 発光スペクトルは、FL1(PMT2)525nmブルーフィルタを用いて、515〜535nmの波長で読取った。
【0068】
アポトーシスサイクル初期のカスパーゼ−3活性は、細胞の細胞質膜破壊のはるか前にピークに達する。 したがって、カスパーゼ−3−陽性フローター細胞は、PI−陰性であることが予想され、これに対してPI−陽性フローター細胞は、カスパーゼ−3活性のピーク期間を経過したため、表現型上はカスパーゼ−3−陰性であることが予想される。 これらの予想と一致して、PI−マイナスのうち、フローター個体群、94.6%から収集したシスプラチン処理WM35細胞はカスパーゼ−3−陽性であることがわかった。 フローター細胞から得た残りの細胞は、PI−陽性、カスパーゼ−3−陰性グループになった。 接着細胞個体群を用いた対照研究は、ほぼ大部分(>95%)がカスパーゼおよびPI陰性であることを示した。
【0069】
実施例2:フローターアッセイによるネガティブセレクション用細胞種の識別
ネガティブセレクションアッセイを行う前に、致死性表現型のただちに監視される表現型特徴を備えた細胞型を識別する。 本実施例において、プラスチック、ゼラチンまたは他の適切な培養担体に細胞接着しないこと(すなわち、「フローティング細胞」すなわち「フローター」の存在)は、致死表現型に相関する代理表現型の特徴として選択される。
【0070】
ネガティブセレクションで死および/または瀕死細胞を識別および濃縮する方法としてフローター個体群を使用するために、細胞系は、好ましくは3つの機能を示す:(1)安定な未処理細胞個体群において、細胞の大多数が固体担体(たとえばプラスチック、ゼラチン)に接着し、フローター細胞のバックグラウンド率が比較的低い(<1%);(2)未処理または処理細胞個体群(すなわち推定上の細胞毒性剤、場合によっては2次剤にも暴露された個体群)において、高いパーセンテージのフローター細胞が死および/または瀕死細胞個体群と相関している;(3)細胞系が、たとえばレトロウィルス感染または形質導入などの、推定上の細胞毒性剤を細胞内にコード化するライブラリインサートを導入する標準または一般的技法に感受性である。
【0071】
A.フローター細胞のバックグラウンドレベル
第1の可変の、バックグラウンドフローターレベルは、標的細胞の安定な培養を確立し、次に培地中に浮遊する細胞のレベルを細胞の総数(接着細胞+フローター細胞)と比較することによって評価する。 レトロウィルス感染などの別の手順をこの実験設計に重複させて、フローター細胞/細胞全体の比に対するレトロウィルス感染の影響と、推定上の細胞毒性剤の形質移入による導入に対する細胞系の感受性の判定を評価することができる。
【0072】
HT29細胞は、以下のようにフローター細胞アッセイにおける実現可能性について試験した。 簡潔には、0日目に6個のフラスコを6.25×105HT29細胞/フラスコを用いて播種した。 1日目に、細胞を固体担体に接着させた後に、これらのフラスコのうち2個を、選択可能な薬剤耐性マーカー(たとえばネオマイシン)を含み、グリーン蛍光タンパク質を構成的に発現する、レトロウィルスベクターpVT324を含むレトロウィルス上清によって感染させた。 残りの4個のフラスコのうち、2個を偽感染(たとえば、レトロウィルスを除き、フラスコ1と2とすべて同一の試薬/条件に暴露させた、「実施例3C」を参照)させ、2個には影響を与えないままとした。 2日目にはこの手順を繰り返した(すなわち二重感染)。 3日目(そして次に5日目)には、3個のグループそれぞれから1個のフラスコを選択し、フロータおよび接着細胞の個体群を分離・カウントして処理した。フローター細胞個体群の場合、培地を収集し、200×gで10分間遠心分離し、PBS中で再懸濁させてから、血球計数器でカウントするためのサンプルを取り除いた。 接着細胞個体群の場合、トリプシン処理によって細胞を最初に取り除き、遠心分離にかけて、次にフローター細胞と類似した方法で分析用に処理した。 個体群に存在するフローター細胞の固有バックグラウンドレベルを決定するために、細胞総数(接着細胞+フローター細胞)に対するフローター細胞の数の比を、操作しなかった3日目と5日目のフラスコの両方で分析した。 これらの数は、感染および偽感染フラスコから採取した類似の数と比較して、レトロウィルスまたは形質移入手順がバックグラウンドフローター率を変化させたかどうかを判定した。 HT29細胞のレトロウィルス感染に対する感受性を判定するために、pVT324感染フラスコ内でGFPを発現した細胞の割合を、フローサイトメトリーを使用して計算した。
【0073】
HT29細胞系の非感染バックグラウンドフローター率は、0.42%であることがわかった。 感染および偽感染HT29細胞はそれぞれ、0.51および0.37%のフローター率を示し、レトロウィルス感染手順もレトロウィルス自体も、実質的にはバックグラウンドフローター率を上昇させないことが示されている。 加えて、pVT324感染HT29個体群のFACS分析は、約80%の細胞が「明るい」ゲートに当たる(すなわちGFP発現細胞)ことを示した。 図3。 低いバックグラウンドのフローター率とHT29のレトロウィルス感染に対する高い感受性はともに、それをネガティブセレクションの望ましい候補にしている。 別の細胞系−2つの結腸直腸線癌系、SW620およびDLD−1(CCL−221、ATCC)と前立腺癌細胞系、PC−3も、これらの同じ基準を使用して検査し、ネガティブセレクションに適した細胞系候補であることがわかっている。 これに対して、LNCaP、ヒト前立腺癌細胞系は、10%を超えるバックグラウンドフローター率を示すため、致死表現型として、接着性の欠如を利用するネガティブセレクションでの使用にはあまり好ましくない。 以下の表1を参照。
【0074】
【表1】
【0075】
B.「フローター」と致死表現型の相関
本発明のネガティブセレクションの重要な要素は、フローター個体群と死および/または瀕死細胞との相関を示す能力である。 この相関は、制限なく、そのような細胞の検出・キャラクタリゼーションのための上述の技法を含め、当業者に既知の各種の技法を用いて確立できる。
【0076】
本実施例では、接着および浮遊細胞の個体群両方における死/瀕死細胞のパーセントを監視する方法として、ヨウ化プロピジウム(PI)を使用した。 死および/または瀕死のフローターのパーセントを決定するために、4つの独立した細胞系(3つの大腸癌細胞系、HT29、SW620およびDLD−1、そして1つの前立腺細胞系、PC3)を組織培養フラスコに蒔き、接着させた。 24〜48時間後、接着細胞とフローターの両方を収集し、PIで染色して、フローサイトメトリーで検査した。 4種類すべての細胞系の接着個体群は通常、1%未満のPI+細胞を示し、30%以上のフローター細胞個体群がPI+であることがわかった。
【0077】
これらの研究は、上の細胞系において死細胞とフローターの間に強い相関があることを示している。 加えて、フローター収集技法と第2のセレクション(PI+細胞のFACS分類)を組合わせると、致死表現型を持ち、死および/または瀕死細胞の濃縮レベルをさらに最大限にする技法が可能となり、それゆえ個体群中では低い頻度で存在する細胞分裂停止剤を単離する可能性が上昇する。
【0078】
死または瀕死細胞が接着個体群からフローター個体群に移動するかどうかを判定するために設計された第2の実験は、パルス追跡プロトコルを用いて実施した。 Alberts, B. et al., ”Molecular Biology of the Cell”, pg.180, Garland Publishing, Inc. (1983) 。 培養物中の接着PC−3細胞は、2μg/mlのPIで短時間染色し、これに対して残りはプレートに付着させた。 次に細胞をすすいで、新しい培地に戻した。 24時間後、フローターと接着個体群の両方を収集し、スキャンして、2つのグループの細胞の中でPI陽性細胞の分布を決定した。 結果(図4)は、PI陽性細胞が、細胞の非接着「フローター」個体群に特異的に分離されたことを示している。 この結果は、以前に接着性であった死または瀕死細胞が、24時間以内にフローター個体群の中に移動したことを示している。
【0079】
実施例3:細胞毒性剤をコード化する配列の導入と回収
細胞毒性剤(すなわち、個々の細胞の比較的即時の死を刺激する薬剤、または細胞の成長または増殖を防止し、それにより細胞個体群の死に徐々に至らせる薬剤)をコード化する配列を識別する「フローターアッセイ」を実施するには、推定上の細胞毒性/細胞分裂防止剤をコード化する配列のライブラリを作成し、次に選択した細胞系に導入する。 以下の実施例は、そのような研究の限定しない1つのプロトコルについて述べる。
【0080】
A.cDNAライブラリの調製および転移
当業者にとって一般的な技法を用いて、オリゴdTセルロースカラム(PolyASpin(商標)、New England BioLabs)を用いた親和性クロマトグラフィーによって、ポリAmRNAを胎性脳組織から単離する。 次にこの物質によって、選択された制限酵素リンカーをコード化する配列に結合されたオリゴdTプライマーを用いて、第1鎖PCR(Pfuポリメラーゼ、Stratagene)合成を行う。 サンプルからのRNA(RNAse A/H、Boehringer Mannheim)の除去後、望ましいリンカー配列を用いて作成されている、ランダムに初回刺激されたオリゴを用いて、第2鎖合成を進める。 次に二重鎖cDNA生成物のサイズを選択し、「粘着性」の末端を作成するために適切な酵素で処理し、選択する細胞系に適した発現ベクター内に連結する。
【0081】
オリゴdT初回刺激cDNAライブラリの代用として、推定上の細胞毒性剤をコード化する配列の供給源として、ランダム初回刺激cDNAライブラリを使用する。 そのようなライブラリを作成する1つの限定しない例として、胎盤組織に由来するポリA mRNAは、独自のSfiI配列(「SfiA」)ランダム9−merを用いて、次に後でライブラリ増幅に使用されるヌクレオチドの追加セット(OVT906:5’ACTCTGGACTAGGCAGGTTCAGTGGCCATTATGGCC(N)9)を用いてPCR増幅した。 この反応の生成物は、サイズ選択し(>400塩基対)、元のRNAテンプレートを除去するために、RNAseA/H処理を行った。 残りの単鎖DNAは次に、第2の独自のSfiI配列(「SfiB」)に連結された、ランダムヘキサマーヌクレオチド配列を用いて、次に再び、将来のライブラリ増幅のためのヌクレオチドの追加セット(OVT 908:5’ AAGCAGTGGTGTCAACGCAGTGAGGCCGAGGCGGCC(N)6)によって、2回目のPCRを行った。 この反応の最終生成物は平滑末端化し、/Klenow Fragment (New England BioLabs)によって充填し、サイズ選択肢、PCR増幅し(OVT 909:5’ACTCTGGACTAGGCAGGTTCAGTおよびOVT 910:5’AAGCAGTGGTGTCAACGCAGTGA)、SfiI(New England Biolabs)によって消化し、レトロウィルスベクターに挿入した。
【0082】
または市販のライブラリも使用できる。 そのようなライブラリのcDNAインサートをもとのベクターからスプライスして、選択した発現ベクターに挿入する。 1つの限定しない例として、3つの異なる組織源(脳、肝臓および腎臓)から得られた3つのライブラリは、Origine Inc.(カタログ番号DHL101、DHL105、DHL106)から得た。 標準手法を用いて、ライブラリを持つ細菌宿主を液体培地(LBとアンピシリン)中で拡張子、大量のエピソーム(ライブラリ)DNA(Maxiprep、Qiagen)を調製するのに用いた。 各ベクターのcDNAインサートは次に、適切な制限酵素(EcoRI/XhoI)を用いた消化によって放出させ、次に断片をゲル精製(0.4〜2.8kB)し、pVT340レトロウィルスベクター(以下で述べる)の適合部位内に連結した(T4リガーゼ、Boehringer Mannheim)。
【0083】
B.足場ペプチドライブラリの作成
足場ペプチドライブラリの作成は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Abedi et al., N.A.R. 26(2):623−630 (1998)によって開発されたプロトコルに従った。最初に、位置6(pVT27)にBamHI、XhoIおよびEcoRI部位を含む修飾GFPは、pVT014(Jasper Rine博士寄贈の、pACA151としても知られる)をテンプレートとして用いて作成した。これを実施するために、オリゴOVT 312(5’TGAGAATTCCTCGAGTTGTTTGTCTGCCATGATGTATAC)、OVT 322(5’TGAGAATTCGGATCCAAGAATGGAATCAAAGTTAACTTC)、OVT 329(5’GTTAGCTCACTCATTAGGCACCC)およびOVT 330(5’CGGTATAGATCTGTATAGTTCATCC)を用いた2つの独立したPCR反応を、組換Pfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて行った。 生成した断片の内部末端は、XhoI/EcoRIおよびEcoRI/BamHI制限部位を含んでいた(図5)。 この2つの断片を次に、EcoRI(New England Biolabs)によって消化し、T4 DNAリガーゼ(Boehringer Mannheim)と連結し、外部プライマーOVT329とOVT330の外部プライマーを使用してPCR増幅した。 最終生成物は、pVT27のGln157−Lys158挿入部位のXhoI/EcoRI/BamHI制限部位を含む6コドンインサートを含んでいる。
【0084】
ランダムペプチドライブラリを作成するために、15pmolのアプタマー3(5’TCGAGAGTGCAGGT[NN(G/C/T)]15GGAGCTTCTGを、アプタマー4(5’ACCTGCACTC)およびアプタマー5(5’GATCCAGAACTCC)とモル比1:50:50で混合し、70℃まで5分間加熱することによって、pH7.5の20mM Tris−HCl、2mM MgCl2、50mM NaCl中でアニーリングした。 次に溶液を室温に冷却させ、T4リガーゼ(Boehringer Mannheim)を用いて、BamHI/XhoIカットpVT334レトロウィルスベクターに連結した。 これらの操作の結果として、どちらの末端も3個の一定のアミノ酸によってフランキングされたバイアスランダム15アミノ酸配列を、GFPの位置6/VT27に挿入した。 電気穿孔法によって、ライブラリをE.coli(DH10B、Gibco)に形質転換し、選択性薬剤のアンピシリンを含むLB寒天板に蒔いた。
【0085】
C.発現ベクター
各種のレトロウィルスまたは他のベクターが本発明での使用に適している。
1つの限定しない例として、哺乳類細胞におけるライブラリ配列の構成的発現に有用なレトロウィルスベクターは、以下のように作成した。 pVT314の3.8kB HindIII/ScaIバンド(図18)を、pBluescript(商標)(Stratagene)の1.9kB SSPI/PVuIIバンドに連結させた。 本反応の最終生成物(pCLMFG、またはMFGまたはpVT340)は、構成的CMV駆動発現のパッケージング用のPsi部位、高レベルのライブラリインサート発現を得るためのスプライス供与体および受容体部位、EGFPの3’末端に結合した複数クローニング部位(MSC)を含む、構成的レトロウィルス発現ベクターの必要成分すべてを含むベクターである。 推定上の細胞毒性剤は、GFP足場との融合物として構成的に発現される。
【0086】
構成的pCLMFGベクターの代わりとして、エクジソンによって調節できる誘発性作成物を以下のように作成した。 pVT324によるPmII/XhoI断片は、PINDベクター(Invitrogen)のMCSに挿入した。 この生成物は次に、平滑末端BglIIによって消化し、BamHI/XhoIによって消化し、平滑末端化した(Klenow Fragment)pBabe−K−rasベクター(pV313ベース)に挿入した。 生成したベクターは、pBabe−Forward−1と呼ばれた。pVT324のXbaI断片は次に、pBabe−Forward−1を適合部位に挿入した。
生成したベクターは、pBIGFIIと呼ばれた。 ベクターpBIGFIIは次に、エクジソン受容体(pVgRXR)の内在性コピーを含む細胞(ECR293、Invitrogen)に形質移入した。 これらの細胞をポネステロンA不在時に培養すると、低レベルのバックグラウンド蛍光を示す。 これに対して、両方のベクターを含む細胞を5μMポネステロンAの存在下で培養すると、蛍光のレベルが約30倍に増加する(図6を参照)。 それゆえ、pBIGFIIは低いバックグラウンド蛍光を示し、ポネステロンAの存在下で強力に誘発される。 このようなベクターは、細胞サイクルを混乱させるか、アポトーシス経路で死を誘発する細胞毒性剤をコード化する配列の識別に有効である。
【0087】
D.レトロウィルスのパッケージングと感染
次に、選択した細胞へのレトロウィルス形質移入のために、ライブラリ作成物をパッケージングする。 これを実施するための1つの限定しない方法を以下に述べる。 1日目に、3×106細胞のパッケージング細胞系(293gp)をT175フラスコに播種する。 2日目に、2本の試験管、1本は15μg ライブラリDNA+10μg エンベローププラスミド(pCMV−VSV.G−bpa)+1.5ml DMEM(無血清)を含む試験管、もう1本は100μl リポフェクトアミン(Gibco BRL)+1.5ml DMEM(無血清)を含む試験管を混合し、室温で30分間放置する。
【0088】
続いて、2本の試験管をともに17ml 無血清DMEMと混合する。 このカクテルを「形質移入ミックス」と呼ぶ。 以前に播種した293grp細胞を次に、無血清培地によって静かに洗浄し、20mlの形質移入ミックスに37℃にて4時間暴露する。
この時間の後、形質移入ミックスを取り除き、細胞を完全DMEM(10%血清)によって37℃にて72時間、インキュベートする。 4日目か5日目に、293gp細胞の上に重ねられた培地(ここでは「ウィルス上清」と呼ぶ)を収集し、0.45μフィルタで濾過して、−80℃で凍結させる。
【0089】
レトロウィルスDNAパッケージングのリポフェクトアミン法の代わりとして、本明細書では「CaCl2法」と呼ばれる第2のプロトコルを用いて、レトロウィルス配列をパッケージングできる。 本方法では、1日目に、5×106細胞のパッケージング細胞系(293grp)を15cm2のフラスコに播種した。 翌日、培地を22.5mlの修飾DMEMと交換した。 続いて、22.5μgのレトロウィルスライブラリDNAと22.5μgのエンベロープ発現プラスミド(pCMV−VSV.G−bpa)を含む1本の試験管をdH2Oによって400μlとし、これに100μlのCaCl2(2.5M)および500μlのBBS(滴下添加、2×溶液=50mM、Bes(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4、pH6.95)を加えた。 このレトロウィルス混合物を室温にて5〜10分間静置した後、すなわち、293gp細胞に滴下して加え、細胞は次に37℃(3%CO2)で16〜24時間インキュベートした。 次に培地を交換して、細胞を37℃にてさらに48〜72時間インキュベートした。 そのときに、次にウィルス粒子を含む培地を収集し、0.45μフィルタで濾過して、−80℃で凍結させた。
【0090】
興味のある細胞系または一次細胞を感染させるために、選択した標的細胞(たとえばHT29、SW620)をT175フラスコ当たり約1.5×106細胞の濃度で蒔く。 翌日(1日目)、4μg/mlポリブレンとともに、ライブラリ上清を培地に直接加え(10〜30%総体積)、一晩インキュベートする。 2日目と3日目に上清を除去し、新しい培地と交換する。 次に、3〜5日目にフローター細胞個体群を収集する。
【0091】
E.死および/または瀕死細胞からの細胞毒性配列の回収
細胞死を引き起こす細胞毒性剤または物質を識別するために、これらの薬剤(またはそれをコード化するDNA配列)を死および/または瀕死細胞から回収する。
【0092】
簡潔には、PCRを用いて、生存不可能な細胞から細胞毒性剤をコード化するDNA配列を救出し、増幅する。 McPherson, M.J. et al., ”PCR 2. A practical approach.” Oxford University Press (1995)。 死細胞のPCR感受性を生細胞と比較するために、レトロウィルスインサート(pVT324)をコード化する構成的GFPを持つHT29細胞に、ピューロマイシン(2μg/ml)を用いてアポトーシス/壊死を受けさせた。 数日後、フローター細胞を収集し、膜完全性を失った細胞の選択的識別と回収を行えるようにするためにPIで染色した。 フローサイトメトリーを用いて、PI+(死)細胞を、25μlの細胞溶解緩衝液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH 8.0、0.5% Tween−20、0.5% Triton X−100、2mM MgCl2、1U/μl プロテイナーゼK)を含むPCR管に直接分類し、1)60℃にて2時間、および2)95℃にて10分間、インキュベートした。
続いて、25μlのストックPCR反応ミックス(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH 8.0、400μM dNTP、MgCl2)を各管に加え、レトロウィルスGFP作成物(OVT 131、5’GACCTTCGGCGTCCAGTGCTTCAG;OVT179、5’AGCTAGCTTGCCAAACCTACA)の増幅に対して特異性のプライマー(0.4μM)を用いてPCRを実施した。 対照として、未処理培養物からの生細胞(PI摂取については陰性)も分類して、PCRに使用した。結果は、PI陽性細胞に存在するゲノムDNAが明らかに、PCR増幅の適切なテンプレートとして作用可能であったことを示している(図7)。 死細胞からのGFP生成物の増幅は、生細胞から増幅させた生成物と比較して、サイズまたは量が変化したように見えなかった。
【0093】
PI摂取が陽性である細胞は壊死性であるか、アポトーシスの後のほうの工程にある。 アポトーシスを受けている細胞から回収したDNAがPCR用の良好なテンプレートとして作用できるかどうか、という問いに特に対処するために、以下の実験を実施した。 構成的にGFP(pVT324)を発現するレトロウィルス作成物を含むHT29細胞は、アポトーシスを誘発するために、硫化スリンダクによって処理した。 処理の48時間後、細胞の大多数は皿から離れて、代表的なアポトーシス形態(凝縮核)を示した。 アポトーシス細胞はPCR管内にカウントし、レトロウィルスGFP作成物の増幅に特異性のプライマーを使用して、PCRを実施した。 未処理培養物からの生細胞は、PCR対照として使用した。 アポトーシス細胞によるGFP生成物の増幅は、生細胞と比較した場合に、明確な相違はなかった(図8)。 したがって、壊死またはアポトーシス性細胞死のいずれかを受けた細胞から回収したDNAは、PCR増幅とサブライブラリ作成のための有効なテンプレートとして役立つ。
【0094】
実施例4:HT29大腸癌細胞における陰性選別
20個のT175フラスコに、10%FBS(ウシ胎児血清)を加えて変法としたマッコイの5A培地(Gibco BRL社製)の中の2.2×106HT29細胞/フラスコを播種した。 第1日目、各フラスコ(4μg/mlポリブレン、50%容積)は、市販されているものを入手した脳cDNAライブラリー(上記「実施例3」)を含むレトロウイルス上清により感染させた。 第2日目に、その培地が替えられた。 第3日目、浮遊個体と付着細胞の両方の集団がその20個のフラスコから(別々に)回収された。 およそ652,500個の浮遊個体が、4.2×107付着細胞(1.5%浮遊個体細胞)という理論的な背景により分離され、また、これ以降の諸研究のために凍結保存された。 感染の指標としてのGFP(グリーン蛍光タンパク質)の蛍光特性を用いて、FACS(蛍光標示式細胞分取器)分析では、生細胞の76%がそのレトロウイルスライブラリーに感染したことが示された。付加的な浮遊個体細胞はその後に第5日目に回収されたが、そこでその回収と計数手順が繰り返され、また、7.8×106浮遊個体、および7.6×108付着細胞が数えられた(1.03%浮遊個体)。 その生細胞集団は再びFACSによりスキャニングされ、また、その感染率(GFP+)が88%であることが判明した。 第3日目と第5日目のその浮遊個体がその後一緒にされ、標準的な手順後に、QIAampキット(Qiagen社製)を使用して、ゲノムDNA調製の準備をした。 手短に言うと、PBS中に入れた9×106浮遊個体細胞が洗浄され、gDNAを放出した。
【0095】
この物質は、QIAampカラムを通過させ、その後タンパク質とRNA汚染物を取り除くため、数回洗浄された。 27μgのゲノムDNAがその後にdH2Oによりそのカラムから溶出され、また、何らかのRNA汚染を取り除くためにリボヌクレアーゼで処理された。 このgDNAはその後にその中にコードされているそのライブラリー配列を増幅するため、PCR手順を受けた。 手短に言うと、上記gDNAアリコートが、そのオリゴヌクレオチドOVT800(5’GCCGCCGGGATCACTCTC)およびOVT1211(5’GCTAGCTTGCCAAACCTACAGGTGGGG)(PCR条件:95℃,30秒;95℃,15秒;63℃,30秒;72℃,3分;「ステップ2」まで24回のサイクル;72℃,5分)を使用するPCRのためのテンプレートとして用いるため、27×1μgサンプルに分割された。 その結果生じたPCR産生物はその後に、5つのプ−ルに分けられ、また各プールはその後にQIAクイック(Qiagen社製)を使用して精製され、EcoRIおよびXhoIにより加水分解され、その後、原レトロウイルスベクター(pV340)に関連性をもたせて連結させた。 この物質は、その後に電気的に応答能のある細菌細胞に形質転換させ(DH10B,Gibco BRL社製)、また、5つの区別の付くサブライブラリーを作り出すためにLB増幅プレート上で培養された。 各ライブラリーは引き続き、液体培養培地(LB+アンピシリン)で増殖され、また、293gp細胞(上記参照)の中に第2ラウンドのパッキング用物質を産生するため、加工された(Qiagen Maxi Prep)。 その結果生じたウイルス上清はその後に、未処理のHT29細胞(1×10 細胞/フラスコ、サブライブラリー当たり3つのフラスコ)の中に入れて、陰性選別の第2ラウンドを始めるために、再度感染させた。その陰性選別のラウンド2およびその後の全てのラウンドは、第1ラウンドとは、a)単感染のみが実施され、また、b)第3日目および第5日目から得られた各サブライブラリーから得た浮遊個体細胞は一緒にプールされいるといった点が異なる。 このように繰り返されるサイクリングにより、その発現の結果細胞死を引き起こすライブラリークローンが産生される。
【0096】
【表2】
【0097】
その陰性選別の6回連続サイクルから得られた結果を上記表2に示し、また、以下のように要約する。 模擬感染細胞およびpVT324対照ベクター細胞の両方とも、その培地では1%(あるいはそれ以下)の浮遊個体を一致して示している。 それとは対照的に、5つのプールはすべて、そのサイクリングの経過期間にわたって、パーセント浮遊個体集団で確実な増加を示しており、プール3では、サイクル6では14%浮遊個体という非常に高い豊富化の値を示している。 このデータは、死んでいるおよび/または死につつあるHT29細胞の頻度を増加させるパーターベイジャン配列の豊富化を成功させたことを示している。
【0098】
陰性選別の付加的ラウンドによりこれらのライブラリー配列をサイクリングすることに加えて、50のクローンが、サイクル5のそれぞれから採取され、第5日目にはプールが配列分析に回された。 これらクローンのうちの2つは、BID(BH3相互作用ドメイン死アゴニスト、遺伝子バンク受託番号#AF042083)の部分、そのアポトーシス経路の公知の成分をコード化することが判明している。 これら陰性選別から得られたBIDクローンの両方とも、その在来タンパク質(BIDクローン#1はアミノ酸33−195をコードし、BIDクローン#2はアミノ酸76−195をコードする、図9参照)のN末端の切り詰めをコードする。 BIDクローン#1は新鮮、未処理のHT29細胞の中に再導入され、また、浮遊個体率が模擬感染あるいは対照ベクターpVT324による感染を受けた細胞と比較された。 両方の対照とも、1.5%よりも小さい、低いバックグランド浮遊個体率を示した。 それとは対照的に、BIDクローン#1に感染させたHT29細胞は、おおよそ18%の浮遊個体を示した。 同様の実験では、BIDクローン#1は、HuVEG(ヒト臍帯静脈内皮細胞、Clonetics/Biowhittaker社製)の中に導入され、また、細胞生存度が、16時間の経過期間にわたって追跡調査された。 対照細胞が16時間の時点で1%の細胞死というバックグランド値を示した一方で、BIDクローン#1感染培養培地における細胞の80%が、同じ期間の間に細胞死した。
【0099】
BIDクローン#1と#2に加えて、4つの新たな細胞毒性薬剤が無作為にピックアップされた36のクローンから同定された(ソートVI)。 4つのクローンすべて(0113,0196,0328および0461)がHT29浮遊個体アッセイでは、浮遊個体の高い値を示した(図10)。 より適度な細胞毒性薬剤(0195および0113)が、4.5〜7.5%浮遊個体率を引き起こしている一方で、より弱い細胞毒性薬剤(例えば、0328および0461は2〜3%(それぞれ)という浮遊個体率を示している。これら薬剤の配列は図9に示す。
【0100】
実施例5:SW620大腸癌細胞における陰性選別
上述されているHT29スクリーニングとほぼ同様の陰性選別では、SW620大腸癌細胞の20個のフラスコが培養され(3百万細胞/フラスコ)、また、2つの推定上の細胞毒性配列コード化ライブラリーのうちの1つに感染させた。その最初のライブラリーは、MFGベクターの中に挿入された無作為初回抗原刺激を受けた胎盤cDNAから作られた。 推定上の細胞毒性薬剤のうち、第2番目のライブラリーは、GFP(pVT334、Abedi et al., (1998)参照)の内部部位(挿入部位6、pVT27)の中に挿入された無作為オリゴヌクレオチドライブラリーであった。 SW620細胞系統の中に入れられたこれらライブラリー感染後には、浮遊個体が48および96時間の時点で回収された(第3日目および第5日目)。 これら細胞はその後、ヨウ化プロピジウム(上記参照)により処理され、またPT細胞はFACSにより選別された。 両方の時点から得られたPI+浮遊個体細胞はその後、ゲノムDNA調製のために3つの別々のプールに分けられた。 引き続いてPCRが、当該パーターベイジャンコード配列を増幅し、また回収するために使用された。プライマーの2つのユニークなセットがPCR増幅のために使用された。 すなわち、無作為初回抗原刺激を受けた胎盤ライブラリーに対しては、OVT1136(5’GGATCACTCTCGGCATGGACGAG)およびOVT1137(5’ATCCGCGGCCGCGGCCATAATGGCC)が使用された。 無作為ペプチド(オリゴ)ライブラリーに対しては、OVT777(5’GACTGCCATGGTGAGCAAGGGC)およびOVT144(5’GCCGTCCTCGATGTTGTGGCGGAT)が使用された。 その結果、そのペプチドライブラリーにより感染されたSW620細胞における感染および回収手順(F4)の4サイクルを実施した後、第5日目の浮遊個体細胞のバックグラウンド値は、原ライブラリーにおけるおよそ1%(平均で)から3.9%まで上昇したことを示した(図11)。 同時に、模擬およびpVT334における浮遊個体のバックグラウンド値は1.35%という低い値ままであった。 浮遊個体のバックグラウンド値上昇は浮遊個体集団におけるPI+細胞の付随的な増加を伴うことはなかったが、全細胞数の減少は、その選別過程の経過期間にわたって観察され、細胞増殖率/細胞生存度に影響を与える1つあるいはそれ以上のライブラリー配列(複数)が豊富化されつつあることが示唆された(図12)。 これら潜在的な細胞毒性薬剤(無作為初回抗原刺激を受けた胎盤ライブラリーを使用した選別の初期ラウンドからのものとともに)はその後に、未処理SW620細胞の中に再導入され、また、再びサイクリングされた。 サイクリングの4〜6ラウンド後、個々のライブラリー挿入断片が配列化され、また、細胞毒性活性に関して検証が行われた。
【0101】
実施例6:T47D転移性乳房上皮細胞における陰性選別
浮遊個体アッセイの付加的な実施例には、転移性乳房上皮細胞腫瘍から採取される細胞系統T47D(ATCC)が含まれる。 T47Dは、主として、それが示す比較的低い浮遊個体率のために、また、レトロウイルスをベースとしたベクターに容易に感染するため、研究に選ばれた。
【0102】
T47D細胞系統に関する浮遊個体率を測定するために、細胞はT175組織培養培地フラスコ(おおよそ5×105細胞/フラスコ)における集密度に培養され、また、全細胞(付着細胞+浮遊個体細胞)のパーセンテージを示すものとして、浮遊個体の数が確かめられた。 T47D細胞に関しては、浮遊個体率は培養培地において、3〜5日にわたり0.5%であることが測定された。 さらに、トリパンブルー染色により判定されたものとしては、浮遊個体細胞の70%が死んでいるものと観察された(”Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals”, Hauland, R.P., Molecular Probes社)。 それとは対照的に、付着細胞の1%よりも少ないものが同一の染色方法を使用して、死んでいるのが発見された。 このように、T47D培養培地から浮遊個体細胞を回収することにより、死んでいるか、および/または死につつある細胞の総数の少なくとも30%が得られた。 pVT324レトロウイルスベクターによるこの細胞系統の感染率がおよそ90%であることが観察されたが、T47D細胞系統はこのように、陰性選別には適していた。
【0103】
T47D細胞系統はその後、条件付き陰性選別に利用され、すなわち、1つのユニークな組み合わせ条件下で作用する細胞毒性薬剤が同定される選別に利用される。 この非限定的な実施例では、T47D細胞の化学療法薬剤に対する感受性を向上させるライブラリー配列であるカンプトテシン(トポイソメラーゼIIの阻害剤)が以下のように選別された。
【0104】
当初、T47D細胞浮遊個体率を増加させるのに失敗したカンプトテシンの最高濃度は以下のように測定された。 およそ250,000個の細胞が6ウェルプレートの各ウェルの中に播種された。 細胞はその後に、さまざまな濃度のカンプトテシンを含む培地で増殖させた。 5日後、カンプトテシン処理ウェルのそれぞれの中に残っている細胞の数が未処理対照と比較された。 これら実験から、1〜4nMの範囲のカンプトテシン濃度は、5日間の処理の経過期間にわたりT47D細胞数には影響を与えなかったことが判明した。 4nMよりも高い濃度による細胞の処理は、未処理対照に比して細胞数で減少しているという結果を生じた(図13)。 明らかなように、10nMカンプトテシンの存在下での細胞数はおおよそ、未処理対照でみられたものの3分の1であり、また、50nMよりも高いカンプトテシン濃度に曝した場合は、そのプレートに付着して残っている細胞は実質的にはなかった。 こうした結果から、T47D細胞は細胞生存度かあるいは分割かのいずれかに悪い影響を与えずに4nMまでのカンプトテシン濃度には耐性がある可能性があることが示唆されている。 この処理値が、その集団における浮遊個体の数を付随して増加させているかどうかを測定するために、いくつかのフラスコにT47D細胞を播種し、またその後に、カンプトテシンの1〜4nM濃度により処理された。 3〜5日の期間の後、その培地は回収され、また、浮遊個体細胞の数が数えられ、また、フラスコ中の全細胞数(浮遊個体細胞+付着細胞)に比較された。
【0105】
T47D細胞を含めた条件付き陰性選別を実施するために、以下の実験が実施された。 細胞が、HT29大腸癌アッセイに関して説明されているように、レトロウイルスをベースとしたcDNAか、あるいはペプチド発現ライブラリー(「実施例3」参照)かのいずれかにより感染させる。 感染後、細胞は4nMカンプトテシンにより処理され、また浮遊個体細胞が5日間の期間にわたって回収された。 「実施例5」および「実施例1B」において説明されているように、細胞毒性薬剤をコードするライブラリー挿入断片の付加的な豊富化は、このプロトコルに、死んでいるおよび/または死につつある細胞の同定を可能にするPI染色/回収(FACS)ステップを含めることにより、達成することができる。
こうした浮遊個体細胞の中に存在しているライブラリー挿入断片は、PCRにより回収され、レトロウイルスベクターの中にサブクローン化され、また引き続いて、未処理のT47D細胞の中に再導入される。 この第2の感染に引き続き、浮遊個体細胞は再び、4nMカンプトテシンの存在下で5日間にわたって回収され、また、そのサイクルが繰り返される。 HT29陰性選別の場合ではそうであったように、このように繰り返しサイクリングを行うことにより、カンプトテシンの存在下か、あるいはカンプトテシンが存在しない場合かのいずれかで、その発現が細胞死を結果的に生じるライブラリークローンを産生するはずである。
【0106】
カンプトテシンのサブ毒性レベルの存在下でのみ細胞死を起こすライブラリークローンのサブセットを同定するために、2つのカウンタースクリーニングのうち、1つが用いられる。まず、細胞死を引き起こす挿入断片のサブライブラリーが、カンプトテシンが存在しない場合に、T47D細胞の中に導入される。非特異的細胞死を引き起こすライブラリークローンを含む細胞は死ぬが、一方、カンプトテシンの存在下でのみ死を誘発するクローンは生存する。 カンプトテシンに対する転移性細胞の感受性を特異的に増加させるこうしたクローンを同定するために、第2のカウンター選別が用いられる。 カンプトテシン特異的死を引き起こすライブラリー挿入断片は、カンプトテシンの亜毒性レベルの存在下で始原乳房上皮細胞の中に導入される(Clonetics−Biowhittaker社,カタログ番号cc−2551)。 この処理を生き残る細胞の中に存在するライブラリー挿入断片はその後にPCRにより回収され、原宿主レトロウイルスベクターの中にサブクローン化され、また、分析される。 これら2つのカウンター選別の使用により、化学療法薬剤カンプトテシンに対する転移性乳房上皮細胞の感受性を特異的に増加させる細胞毒性薬剤が同定される。
【0107】
実施例7:HuVEC細胞における陰性選別
形質転換(不死化)細胞(例えば、HT29)上で陰性選別を実施する代替可能なものとして、始原細胞に対してその浮遊個体アッセイを適用するために、プロトコルが開発された。 HuVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)が、血管新生における研究を追求するのに頻繁に使用される始原細胞である。 始原細胞で陰性選別に関して準備するため、HuVECの2つの分離株である8F1868および9F0293(Clonetics/Biowhittaker社製)が、EGM−2培地(Clonetics/Biowhittaker社製)の中で培養され、その培養培地の倍加時間および長寿度を測定するために数週間の経過期間にわたって観察された。 両方の系統とも最初の10〜12継代の培養(〜24時間)の経過期間にわたって比較的一貫した倍加時間を示した。 9F0293の寿命は、20継代に限定されたが、それは、後期継代(>12継代)は、倍加時間および丸味のある小石様の上皮様細胞から、より扁平な線維芽様形態への形態学的改変の両方で、広範な変動をみせるからである。 それとは対照的に、その8F1868系統は、30継代まで延長した寿命を有していて、また、倍加時間では大幅な一層の一貫性がみられた。 これら2つの培養培地は最初の6継代の間は同様に行われていたため、また、提案された陰性選別が継代4の間に起こるであろうため、系統9F0293はそれ以降の陰性のために選択された(図14)。
【0108】
陰性選別において始原細胞系統を使用する可能性を評価するために、9f0293系統は、a)レトロウイルス感染に対する感受性、およびb)浮遊個体細胞のバックグラウンドパーセンテージ、に関して試験が行われた。 9F0293細胞の早期継代の3種類のサンプル(対照、模擬感染および感染)が、2×105/15cm2プレートの密度で培養され、また、120時間の経過期間にわたって追跡調査された。 その時間の間、全細胞数、倍加時間、また、浮遊個体比(ここで計算されているのは、浮遊個体の全数/付着細胞の全数として)が記録され、また比較された。 細胞はpLIBEGFP(Clontech社製)に感染し、また、以前に説明されているCaCl2プロトコルを使用してパッケージされた。 これら手順の中で使用されるレトロウイルス感染プロトコルには、2.0というMOI(感染多重度)、また、ポリブレン4μg/mlを使用して、感染に関する12時間の期間が含められた。
【0109】
その結果からは、その対照に比較した場合に、その感染手順と、レトロウイルスが存在することによっては、9F0293系統の前細胞数および倍加時間はほんの少ししか変わらなかった。 さらに、120時間に先立つ全ての時点で、3つのシナリオ全てで浮遊個体比は1%よりも下で一致していた。 120時間では、細胞培養培地は集密的になり、また、浮遊個体比は増加し(3%以上)、これまでに研究されてきた全哺乳動物細胞培養培地とほぼ一致する観察結果であった(図15)。 さらに、HuVECの9F0293系統は、平均して70〜80%の間となるGFP+ゲートに入る細胞のパーセンテージを有し、レトロウイルス感染に対して高度に感受性があることが証明された。
【0110】
死んでいるおよび/または死につつあるHuVECが、細胞毒性薬剤に対して反応する固体支持体から分離する時間経過を測定するために、9F0293細胞が培養され、また引き続いて、ピュロマイシン(2μg/ml)により処理された。 浮遊個体および付着細胞集団の両方とも、その後にさまざまな時間(t=4,7,9,16,20および24時間)で回収され、また、(a)浮遊個体集団におけるパーセントPI+細胞と、(b)浮遊個体になった細胞の断片、を測定するために、分析された。 これら実験の結果から、HuVECの大部分が16時間の時点で分離し、また、細胞の90〜99%が、ピュロマイシン添加後24時間以内に浮遊個体となった。 PI(PI+集団)で染色された浮遊個体の断片は時間とともに増加した。 早期の時点(4,7,および9時間)で、PT−およびPI+浮遊個体細胞はほぼ等しい数になっていた。 20時間までに、ほぼ全ての浮遊個体細胞がPI+ゲートに入り、HuVECが、PI−細胞として分離し、またその後に急速にPI+表現型に変換された(図16)ことを示唆していた。
【0111】
HuVECにおけるアポトーシス/ネクローシスを誘発する細胞毒性薬剤を同定するために、9F0293細胞が個体支持体上(ゲラチン)上で培養され、また、レトロウイルスベクターとして、pCLMFG(上記「実施例3、セクションB」参照)あるいはPLIB(Clontech社製)の主鎖を使用する挿入断片のレトロウイルスをベースとするライブラリーに感染させる(MOI=2、16時間感染、4μg/mlポリブレン)。 GFPのVT27ループ(上記、Abedi et al., (1998)参照)、cDNAの中に挿入された無作為オリゴヌクレオチドか、あるいはGFPのC末端に融着したゲノムDNA(上記「実施例3、セクションB」参照)かのいずれかが、細胞毒性薬剤に関してスクリーニングされる。 感染後48時間、72時間、96時間の時点で、浮遊個体が回収される。 その2つの早期回収時点から得られる浮遊個体は一緒にプールされる(プール1)。 96時間時点から得られる浮遊個体は別個のプールを形成する(プール2)。 各プールから調製されるゲノムDNAは、その後に、標準的なPCR技術を使用して、そのライブラリー挿入断片を増幅するのに使用される(上記参照)。 この反応から得られる産生物はその後に再クローン化されて適当なレトロウイルスベクターの中に入れて、また、再度感染させて、スクリーニングと豊富化の引き続いて次のラウンドのために、未処理の9F0293細胞の中に入れる。スクリーニングの後期ラウンド(>4)では、個々のパーターベイジャンクローンが分離され、HuvECの中に再導入され、また、こうしたライブラリー挿入断片が、非感染および模擬感染培養培地において観察されるバックグラウンド浮遊個体率よりも高いところまで、浮遊個体細胞のレベルが上がるかどうかを測定するため、試験が行われる。
【0112】
HuVECで細胞毒性であると判明したライブラリー挿入断片は、その後、コードされた薬剤の細胞あるいは組織タイプ特異性を測定するため、付加的な細胞型に導入される。 すなわち、そのコード化細胞毒性薬剤はその他の細胞系統とともに、HT29,SW620,DLD−1の中に導入される(始原細胞および不死化あるいは形質転換されるように遺伝子的に改変された細胞の両方)。 細胞死の値は「実施例1」に説明されている技術のいずれか1つ(それらに限定されないが)を使用してモニターされる。
【0113】
実施例8:形質転換始原ヒト乳房上皮細胞(HMEC)における陰性選別
最も少ない数の遺伝子要素で不死化され、また形質転換された始原ヒト乳房細胞(HMEC)を含む浮遊個体アッセイが以下のように実施された。 始原プールされたHMEC(Biowhittaker/Clonetics社製)が2つの方法により不死化され、また形質転換された。 すなわち、1)SV−40 Lg T Ag,ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットhTERTおよび活性化されたV12 H−rasをコードするレトロウイルス構築物の連続導入および発現(Hahn et alの方法、Nature 400:464−468,1999)、2)HPV−16 E6/E7,hTERTおよびV12 H−rasをコードする構築物の連続導入および発現である。 それら系統はそれぞれ、指定されている96Cと96Aである。 そのレトロウイルス構築物BABE/ネオマイシン/SV−40 LG T Ag BABE/LNCX/ピュロマイシン/hTERT,LXSN/ハイグロマイシン/V−12 H−RasおよびLXSN/ネオマイシン/HPV−16 E6/E7が使用される。
【0114】
バックグラウンド浮遊個体率を測定するために、細胞は、3つの100mm皿(100,000細胞/皿)において20%集密度まで培養され、また、全細胞(付着+浮遊個体)のパーセンテージとしての浮遊個体の数と浮遊個体の生存度が、2、3、4日間培養後で確かめられた。 生存度は、ヨウ化プロピジウム摂取を測定することにより評価された。 未処理対照に加えて、形質導入対照ベクターpVT340(pCLMFG/GFP)および陽性対照BID/MFGベクター、結腸直腸癌腫HT29陰性選別で先に同定されたプロアポートーシスタンパク質が使用された。
細胞は、95%と45%の比率で30%(v/v)ウイルス上清によりそれぞれ形質導入された。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
96Aおよび96Cの両方の浮遊個体比は、未処理の細胞に関しては0.4〜0.9%であり、また、340ベクター対照形質導入細胞に関しては0.7〜0.9%であると測定され、一方、BID感染陽性対照は、系統96Aに関しては第2日目に54%の浮遊個体、また、系統96Cに関しては第2日目に46%の浮遊個体率を測定した。 さらに、付着系統96A細胞の0.5〜1.2%に比較して浮遊個体の28〜44%は、第3日目および第4日目に、ヨウ化プロピジウム染色により非生存であると判定された。 系統96Cでは浮遊個体の36%と付着細胞の0.2〜0.5%が、第3日目と第4日目にヨウ化プロピジウムにより染色された。 BID形質導入細胞は、浮遊個体では45〜75%ヨウ化プロピジウム陽性であり、また、系統96Aでは付着で0.4〜1.6%陽性であり、また、浮遊個体で70〜81%および系統96Cでは0.5〜8.5%ヨウ化プロピジウム陽性であった。 高い生存度付着細胞成分と低生存度浮遊個体細胞成分を低い浮遊個体率で結合させたものは、陰性選別に関するこうした系統の適性に対して肯定的な反映を示した。 浮遊アッセイはまた、陽性対照BIDに関しても、大半の非生存細胞が分離して、うまく実施された。 このように、本アッセイにおける浮遊個体を回収することにより、細胞死を誘発するパーターベイジャン配列の大半は回収されて然るべきものである。
【0119】
実施例9:複数薬剤耐性を克服する薬剤を同定
本発明は現在有効な化学療法薬剤に対する複数薬剤耐性(MDR)癌系統を感知する薬剤を同定するのに容易に適用されうる。 1つの非限定的実施例は以下のようなものである。すなわち、多くのMDR菌株(例えば、LS513,LS1034)はATCCから得ることができる。 代替的には、MDR菌株は以下の、非限定的な手順により得ることができる。 2×106HT29細胞/フラスコを含む10個のT75フラスコが薬物(例えば、タキソール)に、90〜95%細胞死を誘発する濃度で曝露される。 この処理後、その生存している細胞は基準培地で膨張させることを許容され、そこで、その薬物の上昇させた値(例えば、5倍)に曝露させる。 殺傷、再増殖、および薬剤濃度の工程的な増加という複数サイクルの結果として、HT29 MDR菌株を進化させる。
【0120】
現在有効な化学療法薬剤に対する複数薬剤耐性(MDR)癌系統を感知するパーターベイジャンに関するスクリーニングを実施するのに先立って、研究の中で使用される薬物の致死量下濃度をまず測定することが非常に重要なことである。本実施例では、「致死量下」投与は、MDR−細胞系統を殺傷することが可能である薬物の濃度であるが、しかし、MDR+系統にはほとんどあるいはまったく影響がないものである。 致死量下濃度をどのように測定することができるのかについての1つの非限定的実施例では、殺傷曲線が、LS513(MDR+系統)およびいくつかのMDR−対照系統の両方で実施される。 すなわち、1×106LS513細胞は15cm2プレートで培養され、また、一晩中付着することが許容される。 次の日に、タキソールが2nM〜500μMでさまざまに変わる濃度の範囲でその培養培地に添加される。 その細胞はその後2〜7日間付加的に培養され、そこで、その細胞数と浮遊個体率が比較される。 タキソールの致死量下濃度はその後、MDR−(対照)細胞の50%よりも多くを殺傷する薬物の濃度として定義されるが、しかし、LS513系統では2%よりも少ない致死量を誘発するにすぎない。
【0121】
そのMDR表現型を破壊する配列を同定するために、ライブラリー挿入断片(cDNAか、あるいは無作為ペプチドをベースにしたものかのいずれか)が、上述されているレトロウイルス技術を使用して、粘着MDR系統(例えば、LS513およびLS1034結腸直腸癌腫細胞系統、ATCC)の中に導入される。
【0122】
こうした細胞はその後、化学療法薬剤(例えば、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン、アクチノマイシン)の致死量下濃度に曝露され、また、2〜7日間の期間にわたって培養される。 細胞の大半は、薬剤が複数薬剤耐性(例えば、P−糖タンパク質)のメカニズムを克服する、あるいは破壊するようにできるライブラリー挿入断片を含んではいないので、こうした細胞は、継続して分裂し、また、その個体支持体に付着したままで残ることになる。 (特に、MDR+系統をMDR−に変換する)化学療法薬剤に対するMDR細胞の感受性を向上させるライブラリー挿入断片を同定するためには、浮遊個体細胞を、その実験の経過期間にわたって回収する。 再び、前出の諸セクションで説明されているように、これら特性を備えた細胞毒性パーターベイジャンの付加的な豊富化が、このプロトコルの中に、死んでいるおよび/または死につつある細胞の同定と回収を可能にするPI染色/回収(FACS)手順を含めることにより、達成することができる。 その配列(複数)はその後PCRにより、浮遊個体細胞ゲノムDNA調製物から回収され、増幅され、また、MDR表現型を破壊するパーターベイジャン配列を豊富化するために、付加的な選別のラウンドにより再度サイクリングされる。
【0123】
タキソールの亜毒性レベルの存在下でのみ細胞死を引き起こすライブラリークローンのサブセットを同定するために、カウンタースクリーニングが用いられる。細胞死を引き起こす挿入断片のサブライブラリーが、タキソールが存在しない場合にLS513細胞の中に導入される。 非特異的細胞死を引き起こすライブラリークローンを含む細胞は死に、一方、タキソールの存在下でのみ死を誘導するクローンが生き残る。
【0124】
多くのMDR細胞系統では、薬物耐性表現型がP−糖タンパク質(MDR1)、すなわち、細胞外空間にその細胞質からさまざまな広範な化学療法薬物を取り除く(あるいはポンピングする)ことが可能である細胞質膜関連タンパク質の過剰発現との関連性を有してきている。 P−糖タンパク質のポンピング作用を破壊する薬剤を豊富化するために、MDR1菌株を、タキソールの致死量下濃度で成育させた、推定上の薬剤であるタキソールをコードするライブラリーに感染させる。 これら培養培地はその後、膜透過性であって、P−糖タンパク質の蛍光基質であるローダミン123(Rh123)に曝される。 引き続いて、浮遊個体細胞は回収され、蛍光をベースにして分類される。FACSにより「暗い」表現型を示す細胞は、その細胞質からRh123を取り除くことができ、また、したがって、活発なP−糖タンパク質ポンプを有する(図17)。 こうした細胞には、P−糖タンパク質ポンプ作用に干渉する薬剤を含有することはなく、放棄される。 「明るく」なっている細胞は、細胞質コンパートメントの中にRho123を蓄積し、またしたがって、MDR1ポンプの機能を破壊する薬剤を含有する。 本実施例では、「破壊する」という用語は、MDR1ポンプの作用あるいは活性化を直接干渉する分子か、あるいは、その在来部位に対するP−糖タンパク質の局在化を改変する、あるいは防ぐ分子かのいずれかを言う。 こうしたRh123「暗い」細胞はFACSにより回収され、また、P−糖タンパク質のポンピング作用を干渉する配列を豊富化するために、選別の付加的なラウンド(上記参照)により再びサイクリングされる。
【0125】
本アッセイを代替するものとして、P−糖タンパク質の作用を破壊する薬剤の検出は、その化学療法薬物の存在しない場合にも実施することができる。 こうした状況下で、MDR1細胞の培養培地を、推定上の破壊薬剤をコードする挿入断片のライブラリーに感染させ、そのライブラリー挿入断片の発現を許容するように、短期間(24〜72時間)培養され、また、その固体支持体からその細胞を放出させるようにトリプシンで処理される。 その細胞は、その後、Rh123に曝され、Rh123+細胞(その細胞の外にRh123をポンピングすることができない細胞)を同定するためにFACSによりその集団内で分類される。 こうした薬剤をコードするそのライブラリー挿入断片(複数)はその後、PCR増幅され、また、MDR1遺伝子の産生物に干渉する配列を豊富化するために、付加的な選別のラウンドにより再びサイクリングされる。
【0126】
本明細書の本文内に引用されている全ての参考文献は、全体として本明細書に参考文献として組み込まれている。
【0127】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】抗FAS抗体でのアポトーシスの誘導に対する反応でのApo2.7で標識化されたJurkat細胞のFACS解析の結果を示している棒グラフである。
【図2】ヨウ化プロピジウムで染色した、接着対脱離(「浮遊」)細胞の異なる蛍光パターンを示している対のヒストグラムである。
【図3】未感染、およびモック感染HT29細胞のFACS解析である。モック感染細胞はGFPマーカーを含む。
【図4】PIへの暴露24時間後の、浮遊細胞対接着細胞集団のPI染色の異なるパターンを示しているFACSヒストグラムである。
【図5】内部XhoI/EcoRI/BamHI制限部位をもつGFPレポーターベクターの構築の図表示である。 2組のプライマーを用いて、GFPの左側および右側をPCR増幅した。 各プライマー組の内部プライマーには、示したように、XhoI−EcoRIまたはEcoRI―BamHI制限部位のいずれかが含まれる。 これらの断片の続く消化(EcoRI)およびライゲーションによって、新規の内部クローニング部位、XhoI−EcoRI−BamHIをもつGFPが再構築される。 2つの外部プライマーを用いた続くPCR増幅によって新規のGFPが増幅可能である。
【図6】ベクターpBIGFILのバックグラウンド蛍光および誘導特徴を示しているFACSヒストグラムである。 また、ベクターpVGRXR、およびCMV−GFPの蛍光特性も示している。
【図7】PI+(死)HT29細胞(ゲートM1)のFACSヒストグラムおよび、その画分の続くPCR増幅を示しているゲルである。
【図8】アポトーシス細胞、生細胞およびgDNA対照のPCR増幅を比較しているゲルである。
【図9】HT29大腸癌細胞でのネガティブ選別から単利された6つの細胞傷害性物質のペプチド配列を含んでいる。 配列(A)は、2つのBH3相互作用部位死アゴニスト(BH3 Interacting Domain Death Agonist、BID)断片を示している。 前兆プロBIDは195アミノ酸長である。 プロBIDは、カスパーゼ8によって、アミノ酸55(LQTD,灰色文字)の部分で開裂される。 細い下線領域は、BIDクローン番号1(アミノ酸33〜195)を表している。 影領域「LAQVGDSMD」(灰色)は、BH3(Bcl−2類似性)領域を示している。 配列(B)は、0113と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 配列(C)は、0195と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 配列(D)は、0328と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である(xxは読むことが不可能な配列を表している)。 配列(E)は、0461と設計されたクローンから単離された細胞傷害性物質のアミノ酸配列である。 細胞傷害性物質は、長さが約230アミノ酸またはそれ以上であると推定されている。
【図10】本明細書に記載のHT29浮遊アッセイの第6ソートからのクローンの解析を示している。 無作為に選んだ36個のクローンを、HT29浮遊アッセイにて試験した。 5つのクローン(BID、0113、0195、0328および0461)が、バックグラウンドに対して統計学的に有意である浮遊レベルの増加を示した。
【図11】F0(開始ライブラリー)、F2(1回の収集、1回のソート後)、F3(1回の収集および2回のソート後)、およびF4(1回の収集後、3回ソート)でのSW620細胞における浮遊率を示した棒グラフであり、ここでSW620細胞は、無作為ペプチドパーターバゲンライブラリーにて感染しており、本明細書で記述したネガティブ選別を数回行った。 浮遊率パーセンテージは、各工程にて計算し、モック感染、およびpVT334感染対照と比較した。
【図12】本明細書で記述したネガティブ選別のSW620細胞に対する細胞数観察を描写した棒グラフである。 等しい数の対照(すなわちモック感染およびpTV−334感染)細胞およびF3(ペプチドライブラリー感染)細胞をT75フラスコ内にしいた。 5日目に、フラスコを洗浄し、トリプシン処理し、接着細胞の総数を測定した。
【図13】T47D細胞でのカンプトテシンの量を変化させた殺傷曲線である。
【図14】2つのHuVEC細胞単離細胞、8F1868および9F0293の倍増時間および老化を比較した2つのグラフを示している。
【図15】細胞数、倍増時間および浮遊率におけるレトロウイルス感染の影響を示している棒グラフの組である。 HuVEC 9F0293細胞にpLIBEGFPベクターを感染させ、細胞数、倍増時間および浮遊率における、レトロウイルス感染および感染手順の効果を決定するために研究した。 倍増時間は時間単位で測定した。浮遊率は、パーセンテージ(浮遊細胞数/接着細胞数)で測定した。
【図16】プロマイシン処理した培養培養中のPI−/PI+HuVECsの時間経過を図示しているヒストグラムである。 9F0293細胞をプロマイシン(2μg/ml)で処理し、24時間、経過を追った。 浮遊細胞を定義した間隔にて回収し、PIで処理し、FACS解析にかけて、死亡した、および/または死亡している細胞の割合を決定した。
【図17】(本明細書で「パーターバゲンズ」として示した)ライブラリー挿入有りおよび無しでの、MDR1細胞からのローダミン123のP−糖タンパク質ポンプ仲介押し出しの概念図である。 非形質転換MDR1細胞において、P−糖タンパク質は、細胞外に活発にRh123をポンプ排出し、細胞を「薄暗く」する。 活性ピューターバゲンを持つMDR1細胞においては、P−糖タンパク質のポンプ活性が阻害されるか、乱され、結果として細胞はRh123を保持し、「明るい」ままである。
【図18】本発明の実施態様の説明において引用したベクターの概略図である。
Claims (60)
- ネガティブ選別を実施する方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)多数の推定細胞傷害性物質を含む遺伝学的ライブラリーを、標的細胞集団へ導入し、
(b)前記標的細胞を表面上に平板培養し、
(c)先に決定した時間内に、前記表面より脱離した標的細胞亜集団を収集し、および
(d)前記亜集団より遺伝学的物質の第一のプールを回収する、
工程を含む方法。 - 以下の工程、すなわち、
(e)致死表現系の形跡を示した前記亜集団内で個々の細胞を同定する、工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。 - 前記致死表現系が、アポトーシスである請求項2に記載の方法。
- 前記致死表現系が、壊死(ネクローシス)である請求項2に記載の方法。
- 前記致死表現系が、増殖停止である請求項2に記載の方法。
- 前記遺伝学的物質が、少なくとも部分的に配列決定されている請求項1に記載の方法。
- 以下の工程、すなわち、
(e)工程(d)で回収した前記遺伝学的物質を標的細胞の第二集団に導入し、
(f)表面上に標的細胞の第二集団を平板培養し、
(g)先に決定した時間内に、前記表面より脱離した標的細胞第二亜集団を収集し、および
(h)前記第二亜集団より遺伝学的物質の第二のプールを回収する、
工程を含む請求項1に記載の方法。 - 前記標的細胞が、哺乳動物細胞である請求項1に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞が、初代細胞である請求項8に記載の方法。
- 前記初代細胞が、上皮細胞、内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞および造血細胞からなるグループより選択される請求項9に記載の方法。
- 前記哺乳細胞が、癌細胞である請求項8に記載の方法。
- 前記細胞が、固形腫瘍由来のものである請求項11に記載の方法。
- 前記癌細胞が、転移性である請求項11に記載の方法。
- 前記癌細胞が、乳、大腸、肺、黒色腫および前立腺からなるグループより選択される組織由来のものである請求項11に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞が、遺伝的に改変された初代細胞である請求項8に記載の方法。
- 前記遺伝的に改変された初代細胞が、不死化初代細胞である請求項15に記載の方法。
- 前記遺伝的に改変された初代細胞が、形質転換された初代細胞である請求項15に記載の方法。
- 前記遺伝的に改変された初代細胞が、上皮細胞、内皮細胞、幹細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、神経細胞および造血細胞からなるグループより選択される初代細胞由来のものである請求項15に記載の方法。
- 前記初代細胞が、E6、E7、hTERT、Ras、T抗原およびアデノウイルスElaからなるグループより選択される遺伝子によって不死化される請求項16に記載の方法。
- 前記標的細胞での自発的に脱離した細胞のバックグラウンドが低い請求項1に記載の方法。
- 前記バックグラウンドが、約20%よりも低い請求項20に記載の方法。
- 前記バックグラウンドが、約10%よりも低い請求項20に記載の方法。
- 前記標的細胞が、HT29大腸癌細胞、SW620大腸癌細胞、T47D乳癌細胞およびHuVEC 8F1868細胞からなるグループより選択される請求項20に記載の方法。
- 前記先に決定した時間間隔が、少なくとも約12時間である請求項1に記載の方法。
- 前記遺伝学的ライブラリーが、少なくとも約1×105個の推定細胞傷害性物質をコードしている請求項1に記載の方法。
- 致死表現系を確立する細胞傷害性物質を得るための方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)標的細胞集団に、多数の推定細胞傷害性物質をコードしている遺伝的ライブラリーを提供し、
(b)致死表現系を示している細胞亜集団を収集し、および
(c)前記亜集団から遺伝的物質のプールを回収する、
工程を含む方法。 - 前記致死表現系が、アポトーシスである請求項26に記載の方法。
- アッセイの前記工程が、さらに、先に決定した時間間隔内で、培養表面より脱離した細胞の濃縮された亜集団を収集することによって、工程(b)の前に前記致死表現系に関して濃縮することを含む請求項27に記載の方法。
- 前記致死表現系が、壊死(ネクローシス)である請求項26に記載の方法。
- 前記致死表現系が、増殖停止である請求項26に記載の方法。
- 細胞特異的細胞傷害性物質を同定するための方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)多数の推定細胞傷害性物質をコードしている遺伝的ライブラリーを、標的細胞の第一集団内に導入し、
(b)第一致死表現形を現している細胞の第一亜集団を収集し、
(c)前記第一亜集団から、遺伝的物質の第一サブライブラリーを回収し、
(d)遺伝的物質の前記第一サブライブラリーを、第二の、異なった、標的細胞の集団に導入し、
(e)前記致死表現形を現していない細胞の第二亜集団を収集し、および
(f)前記第二亜集団から物質の第二サブライブラリーを回収する、
工程を含む方法であって、前記第二遺伝的物質が、細胞特異的細胞傷害性物質をコードするものである方法。 - 前記致死表現系が、アポトーシスである請求項31に記載の方法。
- 前記収集の第一工程が、さらに、先に決定した時間間隔内で、培養表面より脱利した細胞の濃縮された亜集団を収集することによって工程(b)より前に前記致死表現系に関して濃縮することを含む請求項32に記載の方法。
- 前記致死表現系が、壊死(ネクローシス)である請求項31に記載の方法。
- 前記致死表現系が、増殖停止である請求項31に記載の方法。
- 前記標的細胞の第一集団が癌細胞であって、前記標的細胞の第二集団が初代細胞である請求項31に記載の方法。
- 前記標的細胞の第一集団が転移性癌細胞であって、前記標的細胞の第二集団が非転移性癌細胞である請求項31に記載の方法。
- 前記標的細胞の第一集団がウイルスの感染した宿主細胞であって、前記標的細胞の第二集団がウイルスに感染していない宿主細胞である請求項31に記載の方法。
- 前記第一、および前記第二致死表現系が、同一の表現系である請求項31に記載の方法。
- 細胞特異的細胞傷害性物質が、タンパク質化合物である請求項31に記載の方法。
- 細胞特異的細胞傷害性物質が、核酸である請求項31に記載の方法。
- 致死表現系を誘導する小有機分子を同定する方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)請求項1、25または30に記載の方法によって同定した細胞傷害性物質に対して構造活性相関性を持つ小有機分子を標的細胞内に導入し、および
(b)前記小有機分子が、前記細胞内で致死表現系を誘導するかどうか測定する、工程を含む方法。 - 致死表現系を誘導する小有機分子を同定する方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)相当する内因性タンパク質より、請求項1、23または30に記載の方法によって同定したタンパク性細胞傷害性物質を表示する能力を持つ小有機分子を標的細胞内に導入し、および
(b)前記小有機分子が、前記細胞内で致死表現系を誘導するかどうか測定する、工程を含む方法。 - 条件付き細胞傷害性をスクリーニングする方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)標的細胞の第一集団内に、推定細胞傷害性増強物質の遺伝的ライブラリーを発現させ、
(b)前記標的細胞の第一集団を、副次毒性閾値用量の第二物質に曝露し、
(c)前記副次毒性閾値用量の前記第二物質に対する応答において、致死表現系を示している標的細胞の第一亜集団を収集し、および、
(d)前記第一亜集団より遺伝的物質を回収する、
工程を含む方法であって、前記遺伝的物質は、少なくとも1つの条件付き細胞傷害性を与える細胞傷害性増強物質をコードしている方法。 - 前記致死表現系が、アポトーシスである請求項44に記載の方法。
- 前記第二物質が、紫外線放射、X線放射、およびニューロン放射からなるグループより選択される請求項44に記載の方法。
- 前記第二物質が、化学治療物質である請求項44に記載の方法。
- 前記化学治療物質が、メトトレキサート、シスプラチン、5−フルオロウラシル、クロチシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキシルビシンおよびタキソールからなるグループより選択される請求項46に記載の方法。
- 前記標的細胞が、癌細胞である請求項44に記載の方法。
- 前記癌細胞が、固形腫瘍から由来する請求項49に記載の方法。
- カウンタースクリーニングを実施する工程をさらに含み、前記カウンタースクリーニングが、第二細胞毒性基質を用いて、前記処理工程(a)、(b)、(c)および(d)を繰り返すことを含む請求項44に記載の方法。
- 前記細胞傷害性基質への前記曝露工程が、前記標的細胞をプレコンディショニングする工程によって遂行される請求項44に記載の方法。
- 前記プレコンディショニングする工程が、前記標的細胞を、増殖因子、サイトカインおよびケモカインからなるグループより選択されるプレコンディショニング物質へ曝露することを含む請求項52に記載の方法。
- 前記プレコンディショニングが、前記標的細胞内で癌遺伝子を活性化することを含む請求項52に記載の方法。
- 図9のBID配列のアミノ酸33−195を含むBIDのペプチド断片。
- 図9のBID配列のアミノ酸76−195を含むBIDのペプチド断片。
- 図9のアミノ酸からなるクローン0013由来のペプチド断片。
- 図9のアミノ酸からなるクローン0195由来のペプチド断片。
- 図9のアミノ酸からなるクローン0328由来のペプチド断片。
- 図9の部分アミノ酸からなるクローン0461由来のペプチド断片。
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