JP2004500078A - 癌胎児抗原様(cea様)ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関する方法と材料 - Google Patents
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Abstract
本発明は、新規性のあるヒトの分泌性CEA様ポリペプチドに対応するポリヌクレオチドおよびそれらの突然変異体または変異体でコード化された、新規性のあるポリヌクレオチドおよびポリペプチドを提供するものである。こういうポリヌクレオチドは、成人のヒトの直腸のcDNAライブラリから分離された核酸配列(Hyseqクローン認識番号15456780(SEQ ID NO:1))で構成されている。本発明のその他の特徴には、新規なヒトの分泌性CEA様ポリペプチド、およびそのようなポリペプチドに特異的な抗体の生成プロセスに関係するベクターが含まれる。
Description
【0001】
(1.技術分野)
本発明は新規性のあるポリヌクレオチドおよびそのようなポリヌクレオチドによってコード化された蛋白質を提供し、それと共にそれらのポリヌクレオチドおよび蛋白質の使用、特に治療、診断および研究分野における使用を提供するものである。本発明は、特に新規性のある癌胎児抗原様(CEA様)ポリペプチドに関連する。
【0002】
(2.背景技術)
同定されたポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、たとえば診断、法医学、遺伝子地図作成、遺伝疾患またはその他の特性の原因となる突然変異の特定、およびDNAおよびアミノ酸配列配列に依存するその他の多くの種類のデータおよび生成物の作成など、数多くの用途を持っている。蛋白質は、たとえばリーダー配列配列クローニングにおけるその分泌性により、またPCRベースの手法におけるその細胞または組織源により、または既知の生物活性を有する他の遺伝子との構造的な相似性により、生物活性を持つことが知られている。本発明はポリヌクレオチドおよびポリペプチドのコード化に関するものである。本発明は特に新規性のある可溶性のCEA様ポリペプチドとポリヌクレオチドに関するものである。
【0003】
多くの腫瘍が遺伝子を発現し、その産物は悪性状態を誘発または維持するのに必要とされる(Abbas等(2000)細胞及び分子免疫学、Sanders(出版社)pp.386)。そういう蛋白質は腫瘍発見のマーカーとして働くが、同時に治療用の標的も提供する。癌胎児抗原(CEA,例えば、CD66a−CD66d)は、結腸、膵臓、胃、及び乳房の癌腫に発現する抗原であると最初表現された。しかし、更に感度の高い検出技術を使うことにより、こういう蛋白質は炎症の時にも発現するし、正常な時も少量発現することが明らかとなった。癌胎児抗原は、受容体のイミュノグロブリン(Ig)上科に属する細胞膜内糖蛋白である。CEA細胞付着分子(CEA−CAM)は胆管糖蛋白及びCD66aとしても知られるが、約85kDaの蛋白質であり、かなりグリコシル化されており、少なくとも2つの組織特異性を持つ突然変異体(交互スプライシング)を表す。
【0004】
受容体として機能するイミュノグロブリン上科メンバーは、その細胞質ドメインの性質に従って3つのグループに分類できる。免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を持つ膜内外分子(YxxL、xはアミノ酸)は、ふつう活性化受容体である。免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)を持つの(I/L/VxxYxxL/V、xはアミノ酸)は、阻害作用を持つ。LIR−4のような第3のクラスの短い膜内外受容体、または活性化するか阻害するか未知の可溶性FDF03(交互にスプライシング)も存在するようである。こういう分子は、細胞外MHC結合ドメインのお陰で、「分子吸い込み口」として機能することができ、同族の膜内外受容体の機能を阻害することが可能である。
【0005】
いくつかの機能がCEAに起因する。CD66aの最初のIgドメインはEセレクチンを結合する付着モジュールとして機能し、炎症カスケードを開始する。ハツカネズミのCEAは、ハツカネズミの肝炎ウイルスの受容体であることが証明されているし、ヒトのCEAは淋菌、サルモネラ菌、及び大腸菌の細菌性蛋白の受容体であることが証明されている。最近、CEAは負の調節因子、従って結腸、前立腺、乳房の癌腫の抑制蛋白であることも証明されている(Huber等(1999)J.Biol.Chem.274,335−344)。
【0006】
CEA−CAMまたはCD66aは、その細胞質ドメインによる変換シグナル機能に関係している。いくつかの生理学的機構が、CEAの細胞質ドメインでチロシンのリン酸化反応を促進する。又、好中球に於けるBGP1の刺激がRac1、PAK、およびJun N末端キナーゼの活性化につながることも報告されている。同様に、BGP1細胞質ドメインのITIM配列が、上皮細胞で、蛋白質−チロシン・リン酸酵素SHP−1及びSHP−2と相互反応を起こすことも報告されている(Huber等(1999)J.Biol.Chem.274,335−344)
CEAの発現は結腸、膵臓、胃、乳房の癌腫で急激に増大し、血清レベルの上昇をもたらす。更に、CEAの翻訳後処理は、腫瘍細胞内で変更されるかも知れない。従って血清CEAは、一次治療後腫瘍転移の発生または再発を監視する方法として使用できる。CEAは、細胞間付着分子として機能し、腫瘍細胞同士の結合を促進する。従ってCEAは、腫瘍細胞同士の相互作用、および腫瘍細胞とそれが成長している組織との相互作用において、何らかの役割を果しているかも知れない。
【0007】
このようにCEAは、正常な胎児の成長期間中の細胞結合、その後の信号変換、又は炎症や発癌現象にも関係しているようである。CEAをコード化しているポリヌクレオチド及びそのポリペプチドは、乳癌、結腸癌、その他の癌の治療に効果を発揮する可能性がある。CEA及びCEAに結合している組成物は、炎症や自己免疫症に関連する疾患の治療にも有効かも知れない。可溶性のCWAは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても使用可能かも知れない。可溶性のCEA分子は、上述の細菌やウイルスの感染症に於いておとり受容体としても機能するかも知れない。
【0008】
(3.発明の要約)
本発明は、新規性のあるCEA様ポリペプチド、そのようなペプチドをコード化する新規性のある分離されたポリヌクレオチドの発見に基づいている。それらに含まれるものとして、組み換えDNA分子、クローンされた遺伝子またはそれらの退化変異体、対立変異体のような特に天然に発生する変異体、アンチセンスポリヌクレオチド分子、およびそれらのポリペプチド上に存在する1つあるいはそれ以上のエピトープを特に認識する抗体、さらにそれらの抗体を生み出すヒブリドーマ(雑種細胞)などがある。特に、本発明のポリヌクレオチドは、直腸のcDNAライブラリから分離されたCEA様ポリヌクレオチド(Hyseqクローン認識番号15456780(SEQ ID NO: 1)に基づいている。
【0009】
本発明の組成物は、さらに本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターのようなベクター、そのようなポリヌクレオチドを含むように遺伝子工学的な処理をされた細胞、およびそのようなポリヌクレオチドを発現するように遺伝子工学的な処理をされた細胞を含むものである。
【0010】
本発明の成分は、以下のものを含むがそれらに限定されない分離されたポリヌクレオチドを提供する。すなわち、SEQ ID NO:1−3または5に指定されたヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチド;または、SEQ ID NO:1−3または5の断片;SEQ ID NO:1−3または5の完全長蛋白コーディング配列で構成されるポリヌクレオチド(たとえば、SEQ ID NO:4);および任意のSEQ ID NO:1−3または5の成熟した蛋白質コーディング配列のヌクレオチド配列で構成されるポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドはさらに、以下のものを含むが、それらに限定されないポリヌクレオチドを提供する。すなわち、(a)SEQ ID NO:1−3または5に指定された任意のヌクレオチド配列の補体;(b)任意のSEQ ID NO:4、6−10をコード化しているヌクレオチド配列と厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件下でハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチド;上述の任意のポリヌクレオチドの対立変異体であり、当該ポリヌクレオチドに対して70%以上の配列同一性を持つポリヌクレオチド;上述の任意のペプチドの同族体(例えばオーソログ)種をコード化するポリヌクレオチド;SEQ ID NO:4から成るポリペプチドの特定の領域または切断部からなるポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドである。
【0011】
この用途に使われるコレクションは単一のポリヌクレオチドのコレクションであっても良い。各配列の配列情報または独特な同定情報のコレクションは、核酸のアレイ上で提供されても良い。ある実施例においては、配列情報の各セグメントが、そのセグメントを含むポリヌクレオチドを検出するよう、核酸アレイ上に提供される。そのアレイはそのセグメントを含むポリヌクレオチドに対する完全な一致または不一致を検知するように設計することもできる。そのコレクションには、コンピュータで読み取れるような形式をもたせることもできる。
【0012】
本発明はさらに、上記のような構成のポリヌクレオチドの少なくとも断片を含むクローニングまたは発現ベクターおよびそれらの発現ベクターによって変換された宿主細胞または組織を提供する。有益なベクターの中には、当業界の技術でよく知られているプラスミド、コスミド、ラムダファージ誘導体、ファジミドなどを含む。したがって、この発明は本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよび当該ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。一般的にベクターは少なくとも1つの生体中で機能する複製源、便利な制限エンドヌクレアーゼ・サイトおよび宿主細胞用の選択可能なマーカーを含んでいる。本発明のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列化ベクターが含まれる。本発明の宿主細胞は原核細胞または真核細胞であり、単細胞生体または多細胞生体であっても良い。
【0013】
本発明の組成物はSEQ ID NO:4、6−10のアミノ酸配列を含むグループから選ばれた分離ポリペプチドを含むがそれに限定されないポリペプチド又はそれに対応する全長又は成熟蛋白質で構成されている。本発明のポリペプチドは(a)SEQ ID NO:3または5に規定されたヌクレオチド配列を持つ任意のポリヌクレオチド;または(b)厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件の下で(a)のポリヌクレオチドの補体とハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチドのいずれかによってコード化される生物活性をもつポリペプチドも含む。SEQ ID NO:4、6−10に上げられている任意の蛋白質配列の生物または免疫活性変異体、ならびに生物または免疫活性を保持しそれらとほぼ同等のものもまた考慮に含める。本発明のポリペプチドはその全部または一部を化学的に合成してもよいが、本発明の遺伝工学的に処理された細胞(たとえば宿主細胞)を利用して遺伝子組み換え手段で生成されることが望ましい。
【0014】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを含む組成物をも提供する。本発明の薬学的組成物としては、本発明のポリペプチドのほかに親水性の担体、例えば薬学的に妥当な担体を含んでもよい。
【0015】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを生成する方法にも関連する。例えば、望ましいポリペプチドの発現を許すような条件の下に適切な培養液中で、本発明のポリペプチドをコード化したポリヌクレオチドの少なくとも断片を含む発現ベクターから成る培養宿主細胞の培養、培養液または宿主細胞から蛋白質またはペプチドを精製する方法などである。望ましい実施例には、そのようなプロセスで製造された蛋白質が熟成した形態の蛋白質である場合を含む。
【0016】
本発明によるポリヌクレオチドは、分子生物学的に熟達した者が知っているさまざまな技術に応用することができる。それらの技術には、雑種形成プローブへの応用、オリゴマーやプライマーへの応用、PCRへの応用、配列アレイへの応用、コンピュータ読み取り媒体への応用、染色体や遺伝子の地図作成への応用、蛋白質の遺伝子組み換え生産への応用、およびアンチセンスDNAまたはRNAの生成、その化学アナログなどへの応用が含まれる。たとえば、mRNAの発現が特定種類の細胞または組織に対しておおむね制限されているとき、サンプル内の特定の細胞または組織のmRNAの存在を例えば原位置雑種形成法を使って検知するための雑種形成プローブとして、本発明のポリヌクレオチドを使うことができる。
【0017】
他の実施例としては、診断において発現された遺伝子の識別のための発現配列標識として、また、当業者に良く知られており、またヴォルラスらがScience 258:52−59(1992)において発表したように、ヒトのゲノムの物理的地図作りのための発現配列標識として当該ポリヌクレオチドを使用することができる。
【0018】
本発明によるポリヌクレオチドは、他の蛋白質に現在応用されている、普通の手続きや方法にも使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは特異的にポリペプチドに結合する抗体を生成するために使用することができる。そのような抗体、特に単クローン抗体は、組織内のポリペプチドの検知および定量に有益である。本発明のポリペプチドは分子量マーカーとして、また補助食品としても使用することができる。
【0019】
また病気の予防、治療、改善のためのいろいろな方法も提供する。例えば、本発明のペプチドや製薬学的に容認可能な担体で構成される組成物を、治療学的に適量、哺乳類の被験体に投与する方法などである。
【0020】
特に、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、たとえば、乳癌、前立腺癌、結腸癌、その他の癌の治療薬として利用することができる。CEA様のポリペプチドは、炎症、自己免疫症関連疾患の治療に有効であるかも知れない。又CEA様ポリペプチドは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても使用でいるかも知れない。又水溶性のCEA分子は、ある種の細菌及びウイルス性感染症のおとり受容体として機能する可能性もある。
【0021】
本発明の方法は、また、ここで述べられている疾患の治療方法も提供する、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと薬学的に妥当な担体からなる組成物を、ここに述べたような疾患に関係した症状また兆候を示している哺乳動物の被験体に、治療学的に有効な量を投与する方法などである。さらに、本発明は、標的遺伝子生成物及び薬学的に妥当な担体の総合的な活性を調整する組成物、その他の物質から成る化合物を投与する方法など、ここで述べている疾病または疾患の治療法も含むものである。組成物や他の物質は、標的遺伝子/蛋白質発現レベルまたは標的蛋白活性の調節にも効果を挙げることができる。具体的には、ビールス性疾患を含む医療状態の予防、治療または改善のための方法を提供する。例えば、本発明のポリペプチドから成る組成物の治療学的な有効量、または本発明のCEA様ポリペプチドの(例えば特に反応性を持つ抗体の)結合剤から成る治療学的な有効量をヒトを含み、ヒトに限らない哺乳動物に投与することもその中に含まれる。治療を必要とする個体にとって、本発明によるポリペプチドか、またはその結合剤(または抑制剤)のいずれかが有効であるかは、特定の状態または病理のメカニズムに依存する。この方法によると、本発明のポリペプチドは細胞機能の生体外または生体内での抑制を生じるために投与することができる。本発明のあるポリペプチドは、生体内用として単独に、または他の治療法の補助剤として投与することができる。一方、本発明の蛋白質または他の活性成分は特定の抗ヒスタミン剤または抗炎症剤の製剤に含めることにより、この抗ヒスタミン剤または抗炎症剤の副作用を減少させることができる。
【0022】
本発明はさらに上述の方法において有用製薬の方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、サンプル(たとえば、組織またはサンプル)中の本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在を検出する方法にも関連する。そのような方法は、例えば、ここに述べたような疾患の予知および診断評価の一部として、またそのような状態に対する素因を示している対象の識別に利用することができる。
【0024】
本発明は、本発明のポリペプチドが試料中に存在することを検出する方法として、複合体を形成するのに十分な状態の下で十分な期間、ポリペプチドと結合して複合体を形成する化合物に試料を接触させ、当該複合体の形成を検出し、それによって複合体が形成されたら、ポリペプチドが検出される方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、本発明の方法を実施するために、ポリヌクレオチド・プローブおよび/またはモノクロナールから成るキット、ならびにオプションとして、定量的基準を提供する。さらに、本発明は、上述の疾患の治療のために臨床的な試みを行う場合における、医薬品の有効度を評価し、患者の経過を監視する方法をも提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現または活性を調節(例えば増減)する化合物の同定方法も提供する。そのような方法は、たとえば、上述のように疾患の症状を軽減することのできる化合物の同定にも使用することができる。そのような方法は、本発明のポリペプチドと相互作用する化合物や他の物質の検定をも含む。
【0027】
本発明は本発明のポリペプチドと結合する化合物を識別する方法として、複合体を形成するのに十分な状態の下で、十分な期間をかけてポリペプチドに接触させてポリペプチドと化合物の複合体を形成させ、複合体を検出することによってポリペプチドと化合物の複合体が検出されることにより、ポリペプチドと結合する化合物が検出される方法を提供する。
【0028】
また、ポリペプチドと化合物の複合体が形成されるのに十分な時間、化合物を細胞の中でポリペプチドと接触し、それによって化合物にレポーター遺伝子配列を発現させ、レポーター遺伝子配列発現を検出することによって化合物を検出し、ポリペプチドと化合物の複合体が検出されたらポリペプチドと結合する化合物が検出されたものとすることから成る、ポリペプチドと結合する化合物を同定する方法も提供する。
【0029】
(5.発明の詳細な説明)
SEQ ID NO:4のCEA様ポリペプチドは約425のアミノ酸が分泌された膜内外蛋白質で、予測分子量が非グリコシル化された約47kDaである。BLASTPアルゴリズムを使った蛋白質データベース検索(アルトシュル,S.F.等、J.Mol.Evol.36:290−300(1993)およびアルトシュル,S.F.ら、J.Mol.Biol.21:403−10(1990)、参照として本文書に編入)によれば、SEQ ID NO:4はヒトのCEA蛋白質に対して相同である。
【0030】
図1AはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の部位とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。図1BはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の別の部位とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について52%の相似性、SEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について37%の同一性があることを示している。
【0031】
図2AはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の部位とヒトの癌胎児根源CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於ける両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。図2BはSEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドとによりコード化された蛋白質の別の部位とヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12の間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸について52%が相似性、SEQ ID NO:4の同102のアミノ酸について37%が同一であることを示している。本発明の配列はCEA様の活性を持つよう期待されている。
【0032】
予測されるほぼ20の残基シグナルペプチドはSEQ ID NO:4(SEQ ID NO:8)のほぼ残基1から残基20までコード化される。細胞外部分はそれ自身で利用できる。これは哺乳類の細胞における発現、および分割生成物の配列で確認することができる。シグナルペプチド領域の存在は、カイト−ドリトル疎水性予測アルゴリズム(J.MolBiol,157,pp.105−31(1982)を参照し、本出願の一部とする)によって予測された。同業者は、実際の分割部位はコンピュータプログラムで予測されたものと異なる可能性があることを理解するであろう。
【0033】
eMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:6)の残基363−407にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。又、EMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:7)の残基68−112にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。SEQ ID NO:6−7に対応するドメインは以下の通りである。
その場合、A=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンである。
【0034】
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
SQLPSGTWIAGPAHTGREVGFPNCSLLVQKLNLTDTGRYTLKTVT
SEQ ID NO:6)p値8.920e−15、DM00372B(用法指示関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基363−407に位置している。
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
YIVSTGDETPGPAHTGREAVRPDGSLDIQGILPRHSGTYILQTFN
SEQ ID NO:7)p値3.329e−12、DM00372B(シグネチャー関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基68−112に位置している。
【0035】
更にMolecular Simulations Inc.GENEAtlasソフト(Molecular Simulations Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア)で蛋白質データベース検索を行えば、SEQ ID NO:4の残基32乃至120の部位は、SeqFold及びPB90法を用いて、チャイニーズ・ハムスター(Cricetulus griceus)卵巣で発現するヒトの遺伝子組み換え形から、構造的にCD2と同族であることが示される(鎖id=1hnf、確認スコア0.07)。
【0036】
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、乳癌、前立腺癌、結腸癌、その他の癌の治療に使用できるかも知れない。更にCEAは、炎症及び自己免疫症関連の疾患の治療にも有効かも知れない。更にCEAは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても機能する可能性がある。又可溶性のCEA分子は、上記細菌及びウイルスの感染症に於けるおとり受容体としても機能するかも知れない。
【0037】
(5.1 定義)
本仕様書および付属する請求項において、単数形「a」、「an」および「the」は特に文面において差異が明らかである場合を除き、複数の場合をも含むものとする。
【0038】
「活性」という用語は天然に発生するポリペプチドの生物学的および/または免疫活性を持つポリペプチドの形態を示す。本発明によれば、「生物活性」または「生物活動」とは、天然に発生する構造的、調節的または生化学的機能を持つ蛋白質またはペプチドを指す。同様に、「生物活性」または「生物活動」は天然、組み換えまたは人工のCEA様ペプチド、またはそれらの任意のペプチドについて、適当な動物や細胞に特定の生物学的反応を誘発し、特定の抗体と結合することを意味する。「CEA様生物活性」という用語は、CEAペプチドの生物活性に似た生物活性を意味する。
同様に、「生物活性」または「生物活動」は自然、組み換え体(リコンビナント)または合成のCEA様ペプチド、またはそれらの任意のペプチドについて、適当な動物や細胞に特定の生物学的応答を誘発し、特定の抗体と結合することを意味する。
【0039】
「活性化された細胞」という用語は、ここで使用された場合、細胞内または細胞外膜を出入りするこれらの細胞を指し、正常または疾病の過程の一部としての分泌分子細胞や酵素分子の搬出を含む。
【0040】
「相補的」または「相補性」とは、塩基対形成によるポリヌクレオチドの自然の結合を意味する。例えば、5’−AGT−3’配列は相補配列3’−TCA−5’と結合する。2つの一本鎖分子間の相補性は、一部の核酸が結合するだけの「部分的」相補か、全体的相補性が一本鎖分子間で存在するような「完全」相補である。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強さに対して大きく影響する。
【0041】
「胚幹細胞(ES)」という用語は、胎児または成人において生殖細胞を含む多くの分化した細胞タイプを発生させ得る細胞を指す。「生殖系列幹細胞(GSC)」とは、生殖体の産生のために胚細胞を安定して連続的に供給する始原生殖細胞由来の幹細胞を指す。「始原生殖細胞(PGC)とは、生殖細胞やその他の細胞に分化する能力を持つ他の細胞系列、特に卵黄嚢、腸間膜、または生殖巣堤から胚形成中は分離される小さい一群の細胞を指す。PGCはGSCやES細胞の生成に携わる源である。PGC、GSCおよびES細胞は自己再生機能を持っている。したがって、これらの細胞は生殖系列を増殖させ、成人の特殊器官を形成する永久分化細胞を複数発生させるだけでなく、それら自体をも再生するのである。
【0042】
「発現モジューレーティング断片」、EMFという用語は、操作可能に連結されたORFまたは他のEMFの発現をもジュレート〔変調〕するヌクレオチドを意味する。
【0043】
ここで使われる意味としては、EMFが存在することによって配列の発現が変更されるとき、配列は「操作可能にリンクされた配列の発現をモジュレートする」と言われる。EMFは、プロモータとプロモータをモジュレートする配列(誘発因子)を含み、それらに限らない。EMFの1つのクラスは、特定の調節因子または生理事象に応じて操作可能にリンクされたORFの発現を誘発する核酸フラグメント(断片)である。
【0044】
「ヌクレオチド配列」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、互換的に用いられる用語であり、ヌクレオチドまたはこれらのヌクレオチド配列のヘテロ多量体を指す。
【0045】
これらの用語は、またゲノム的または単鎖または複鎖であったり、有意鎖または反意鎖でもあり得るゲノム又は合成のDNAまたはRNA、ペプチド核酸(PNA)または任意のDNA様またはPNA様物質を指す。ポリヌクレオチドがRNAの場合、本文書で説明されている配列のT(チミン)はU(ウラシル)で置き換えることができるのは了解済みである。一般的に、本発明により提供される核酸セグメントはゲノムおよび短オリゴヌクレオチドリンカーのフラグメントから、またはオリゴヌクレオチドの列から、または個々のヌクレオチドから組立てられ、微生物またはウイルスオペロン、または真核性の遺伝子由来の調節要素から成る組み換え転写ユニットに発現され得る合成核酸を提供する。
【0046】
「オリゴヌクレオチドフラグメント」または「ポリヌクレオチドフラグメント」、「ポーション」または「セグメント」または「プローブ」または「プライマー」は互換的に使用され、少なくとも約5個のヌクレオチド、できれば少なくとも約7個のヌクレオチド、そして最も望ましいのは少なくとも約9個のヌクレオチド、さらにできれば少なくとも約11個のヌクレオチド、そして最も望ましいのは、少なくとも約17個のヌクレオチドのヌクレオチド残基の列を指す。フラグメントとは、約500個未満のヌクレオチド、できれば約200個未満のヌクレオチド、さらにできれば約100個未満のヌクレオチド、さらにできれば50個未満のヌクレオチド、そして最も望ましいのは約30個未満のヌクレオチドから成るものを指す。プローブは、望ましくは約6から約200個のヌクレオチド、より望ましくは約15個から約50個のヌクレオチド、より望ましくは17個から30個のヌクレオチド、そして最も望ましくは、20個から25個のヌクレオチドから成るものを指す。フラグメントは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、各種の交配プロセスまたはマイクロアレイプロセスにおいて、mRNAまたはDNA分子の同一または関連部分の同定または増幅に使われることが望ましい。フラグメントまたはセグメントは本発明の各ポリヌクレオチド配列を明確に同定することができる。フラグメントはSEQ ID NO:1−3、および5のポーションとほぼ相似な配列を持つことが望ましい。
【0047】
プローブは、例えば細胞や組織の中に特定のmRNA分子が存在するかどうかを決定するため、またはウォルシュらによって説明された染色体DNAから類似の核酸配列を分離するために使われる。(ウォルシュ,P.S.ほか、1992、PCR Methods Appl 1:241−250)それらは、当業者によく知られたニックトランスレーション、クレノー・フィルイン反応、PCRなどの方法で標識できる。本発明のプローブ、その標本および/またはラベリングは、サムブルック,J.らにより、1989 A Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory,NY;またはオーシュベル,F.M.ら、1989、Current Protocols in Molecular Biology、John Willey & Sons,New York,NY、によって詳述されており、両者ともにここに言及することにより、本申請書の一部とする。
【0048】
本発明の核酸配列はまた、SEQ ID NO:1−3、および5の任意の核酸配列の情報を含んでいる。
【0049】
配列情報はSEQ ID NO:1−3、および5のセグメントであることもあり、SEQ ID NO:1−3、および5の配列情報を指す。そのようなセグメントは20量体核酸でもあり得るが、その理由はヒトのゲノムにおいて20量体が完全にマッチする確率は300分の1であるからである。ヒトのゲノムの場合、1組の染色体の中に30億個の塩基対がある。420の20量体が存在し得るわけだから、1組のヒトの染色体に存在する塩基対の数の300倍もの20量体が存在することになる。同じ分析を使った場合、17量体がヒトのゲノムにおいて完全にマッチする確率は5分の1である。これらのセグメントを発現研究にアレイとして使用される場合は、15量体セグメントを使うことができる。同様に、15量体が発現された配列において完全にマッチする確率は、発現された配列が全体のゲノム配列の約5%以下から構成されているので、ほぼ5分の1になる。
【0050】
同様に、単一のミスマッチを検知するために配列情報を使う上で、1つのセグメントは25量体である。ヒトのゲノムにおいて25量体がミスマッチ1個だけで現れる確率は、完全マッチの確率(1÷425)に各ヌクレオチド位置におけるミスマッチの増えた確率(3×25)を掛けることで計算される。1つのミスマッチを有する18量体1つのアレイで検知される確率は約5分の1である。1つのミスマッチを有する20量体がヒトのゲノムの中で検知される確率は約5分の1である。
【0051】
「オープン・リーディング・フレーム」、ORFという用語は、終止コドンを持たないアミノ酸に対する一連のヌクレオチドトリプレット暗号を意味し、蛋白質に転写可能な配列である。
【0052】
「操作可能にリンクされた」または「操作可能に会合した」とは、機能的に会合した核酸配列を指す。例えば、あるプロモータ−があるコード配列の転写をコントロールするとき、そのプロモーターはそのコード配列に対して操作可能にリンクされ、操作可能に会合している。操作可能にリンクされた核酸配列が隣接しており、同一のリーディングフレーム内にあるとき、ある遺伝子因子、例えば調節遺伝子はコ−ド配列に隣接的にはリンクされていないがコード配列の転写/翻訳を制御することができる。
【0053】
「プルリポーテント(多能性)」とは、1つの細胞が数多くの成人有機体細胞に分化し得る能力を意味する。プルリポーテント細胞は、トチポーテント(全能性)細胞に比較すると、分化能力が制限されている。
【0054】
「ポリペプチド」または「アミノ酸配列」とは、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質配列またはそれらのフラグメントを指し、天然に発生するものと人工のものと両方を指す。ポリペプチドの「フラグメント(断片)」、「ポーション」、または「セグメントは、少なくも5個のアミノ酸,望ましくは少なくとも約7個のアミノ酸、より望ましくは約17個またはそれ以上のアミノ酸の一連のアミノ酸残基である。
【0055】
ペプチドは、望ましくは200個未満のアミノ酸、より望ましくは150個未満のアミノ酸、そして最も望ましくは100個未満のアミノ酸である。ペプチドは約5個から200個のアミノ酸であることが望ましい。活性であるためには、ポリペプチドは生物および/または免疫的活性を示すための十分な長さを持っていなければならない。
【0056】
「自然に発生するポリペプチド」という用語は、遺伝子工学的に生産されていない細胞によって生成されたポリペプチドを指し、特に、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸エステル化、脂質化、アシル化などに限らず含む、ポリペプチドの翻訳後の修飾から生じる各種のポリペプチドを意味する。
【0057】
「翻訳された蛋白質コード配列」という用語は、完全長の蛋白質をコード化する配列を指し、任意のリーダー配列またはプロセス配列を含む。
【0058】
「成熟蛋白質コード配列」とはリーダー/シグナル〔情報〕配列なしのペプチドまたは蛋白質をコード化する配列を指す。そのペプチドは、細胞内の処理過程で除かれたリーダ配列を有するか、またはその蛋白質は、合成されたか、または成熟蛋白質コード配列のみをするポリヌクレオチドを使用して生成されたリーダー配列を持っていることもある。
【0059】
「誘導体」とは、ユビキチン結合、ラベリング(例えば、放射性核種または各種の酵素に関して)共有結合ポリマー付加、例えばペジレーション(ポリエチレングリコ−ルによる誘導)およびオルニチンのようなアミノ酸の化学合成による挿入または置換のような手法を使って化学的に修飾されたポリペプチドで、ヒトの蛋白質では自然に生じないものを指す。
【0060】
「変異体」(または「アナログ」)という用語は、自然発生のポリペプチドとアミノ酸の挿入、削除、および置換がされている点で異なり、例えば組み換えDNA手法を使って生成されたものを指す。目的とする活性を殺すことなくどのアミノ酸残基を置換、付加または除去すべきかを決定するためのガイドは、特定のペプチドの配列を相同ペプチドの配列と比較し、高相同性の領域(保護領域)に生じたアミノ酸配列変化数を最小にするかまたは、共通配列のあるアミノ酸と置換することにより見出すことができる。
【0061】
また別の方法としては、これらの同一または同様なポリペプチドをコード化する組み換え変異体は、遺伝情報の中にある「冗長性」を利用することにより、合成または選択することができる。各種のコドン置換、例えば各種の制限部位を作り出すサイレンと(無変化)な変化は特定の原核または真核系におけるプラスミドまたはウィルスベクターまたは発現に導入されてクローニングを最適化することができる。ポリヌクレオチド配列におけるポリペプチドまたはそのポリペプチドに付加された他のペプチドのドメインに反映し、ポリペプチドのいずれかの部分の特性が修飾され、リガンド結合親和性、鎖間親和性、または分解または代謝回転率のような特性が変わる。
【0062】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を同様な構造的および/または化学的特性、例えば伝統的なアミノ酸交替物質を持つ他のアミノ酸で置換した結果である。「保存的」アミノ酸置換は、関連する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、および/または両親媒性の相似性を持つ塩基上で行われる。例えば、無極性(疎水性)のアミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含み、中立極性のアミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、シスチン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含み、正電荷(塩基性)アミノ酸はアルギン、リシンおよびヒスチジンを含み、また、負電荷(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。「挿入」または「除去」は、アミノ酸約1個から20個、より望ましくは1個から10個のアミノ酸の範囲である。与えられた変化は、ポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、除去、または交換を系統的に行い、組み換えDNA手法を使い、結果として生じた組み換え変異体を検定して、実験的に決定される。
【0063】
別の方法としては、機能の変更が望まれる場合は、挿入、除去または非保存的な変更によって、改変ポリペプチドが工学的に作られる。そのような変更は、例えば、本発明のポリペプチドの1つまたは複数の生物学的機能または生化学的特性を変更することによって可能である。例えば、それらの変更はリガンド結合親和性と鎖間親和性、または分解/代謝回転率のようなポリペプチド特性を変える。さらに、そのような変更は、発現のために選ばれたホスト細胞の発現、スケールアップなどのためにより適したポリペプチドを発生するように選択することができる。例えば、2硫化ブリッジを消去するために、システイン残基は除去または他のアミノ酸残基と入れ換えることができる。
【0064】
「精製」または「ほぼ精製」という用語は、他の生体高分子、例えばポリヌクレオチド、蛋白質などがほとんど存在しない時に、指定された核酸またはポリヌクレオチドが存在することを意味する。ある実施例では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、指定された生体高分子の重量で95%以上、より望ましくは重量で99%以上を占めるところまで精製される(ただし、水、緩衝液、および他の分子量で1000ダルトン未満分子は存在してもよい)。
【0065】
「分離」とは、核酸またはポリペプチドが自然の供給源から得られる核酸またはポリペプチドに存在する少なくとも1つの他の構成成分(例えば、核酸またはポリペプチド)から分離することを意味する。1つの実施例では、核酸またはポリペプチドは、溶剤、緩衝液、鉄、またはその溶液に通常存在する他の構成成分が存在するところにのみ(もしあるとすれば)存在する。「分離」または「精製」という用語は、天然の供給源中に存在する核酸またはポリペプチドに対しては使われない。
【0066】
「組み換え体〔リコンビナント〕」という用語は、ここでポリペプチドまたは蛋白質に関連して使われた場合、組み換え体(例えば、微生物、昆虫、または哺乳類の)発現系から得られたポリペプチドまたは蛋白質であることを意味する。「微生物」とは、バクテリアまたは真菌(例えば、イースト)の発現系で生成される組み換え体ポリペプチドまたは蛋白質を指す。生成物としては、「組み換え体微生物」としては自然の内因性物質が存在せず、関連する自然のグリコシル化のないポリペプチドまたは蛋白質を指す。例えば、E.coliのようなほとんどのバクテリア培養菌に発現されたポリペプチドまたは蛋白質にはグリコシル化の修飾はない。イースト菌に発現されているポリペプチドや蛋白質は、一般的に哺乳類の細胞に発現されているものと異なるグリコシル化形態を持っている。
【0067】
「組み換え体発現媒体またはベクター」という用語は、DAN(RNA)配列からポリペプチドを発現するためのプラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターを指す。発現媒体は、(1)例えばプロモーターまたはエンハンサーのような遺伝子発現において調節的な役割を持つ遺伝因子、(2)mRNAに転写され、蛋白質に翻訳される構造的またはコード配列、および(3)適切な転写開始および停止配列を持つ組合せから成る転写ユニットから成り得る。イーストまたは真核性発現系で使用される目的の構造ユニットは、宿主細胞による転写蛋白質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含むことが望ましい。また、組み換え体の蛋白質がリーダー配列または輸送配列なしに発現された場合は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。最終生成物を得るためには、残基は発現された組み換え体蛋白質からその後切断しても、しなくてもよい。
【0068】
「組み換え体発現システム」とは、組み換え体転写ユニットを染色体DNAに安定的に組み込まれたか、または染色体外に組み換え体転写ユニットを搬送する宿主細胞を意味する。ここで定義されている組み換え体発現システムは、発現すべきDNAセグメントまたは合成遺伝子にリンクされた調節要素の導入時に異種のポリペプチドまたは蛋白質を発現するものである。この用語はまた、例えばプロモーターやエンハンサーのような遺伝子発現において調節的役割を持つ組み換え体遺伝因子を安定的に組み合わせている宿主細胞をも意味する。ここに定義された組み換え発現システムは、発現すべきDNAセグメントまたは合成遺伝子にリンクされた調節要素の導入によって、細胞に内生するポリペプチドまたは蛋白質を発現するものである。その細胞は原核または真核細胞のいずれでもよい。
【0069】
「分泌」蛋白質とは、膜を通して、または越えて運搬された蛋白質であり、適切な宿主細胞にそれが発現されたときに、アミノ酸配列におけるシグナル配列の結果運搬される場合を含む。「分泌蛋白質」の中には、それが発現される細胞から完全に(例えば、可溶性蛋白質)または部分的に分泌された蛋白質をすべて含む。「分泌蛋白質」とは、小胞体の膜を通して運搬される蛋白質を含む。「分泌蛋白質」はまた、非典型的シグナル配列を含む蛋白質をも意味する(例えば、インターロイキン−1ベータ、クラズニー,P.A.およびヤング,P.R.(1962)Cytokine 4(2):134−143)および破壊された細胞から遊離される因子(例えば、インターロイキン−1受容体・アンタゴニスト、アーレンド、W.P.ほか(1998)Annu.Rev.Immunol.16:27−55を参照)。
必要な場合は、発現ベクターはポリペプチドを細胞の膜を通して導く「シグナルまたはリーダー配列」を含むように設計されていてもよい。そのような配列は、組み換えDNAで手法によって異種の蛋白源から提供されるか、本発明のポリペプチドに天然に存在しているものである。
【0070】
「厳しい」という用語は、当業者によって通常理解されている厳しいと言う意味で使われる。厳しい条件には、極めて厳しい条件(例えば、フィルター固定したDNAを0.5M NaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、65℃の1mM EDTAでハイブリダイズし、68℃の0.1×SSC/0.1% SDSで洗浄)、および中程度に厳しい条件(例えば、42℃の0.2×SSC/0.1% SDSで洗浄)を含む。その他のハイブリダイゼーション条件は本文中の例によって説明する。
【0071】
デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの場合、その他のハイブリダイゼーション条件としては、37℃(14塩基オリゴヌクレオチドに対して)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチドに対して)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチドに対して)および60℃(23塩基オリゴヌクレオチドに対して)で6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウムで洗浄する。
【0072】
「ほぼ同等」という用語は、ヌクレオチドとアミノ酸配列の両方に使用され、例えば、基準配列から1つまたは複数の置換、除去または付加があり、その結果として、基準配列と比較した場合に、機能上不利な差異を生じないような突然変異体配列を指す。普通、そのようなほぼ同等な配列は、ここにリストされたものから35%以上(すなわち、基準配列との比較の上でほぼ同等な配列における交換、追加、および/または除去された残基の数を、ほぼ同等な当該配列の全残基数で除した値が0.35以上)異ならないものを指す。そのよな配列はリストされた配列に対して65%の配列同一度を持つと言われる。
【0073】
ある実施例の場合、本発明のほぼ同等な、例えば、変異配列はリストされた配列に比べて30%しか異ならない(70%の配列が同一);本実施例のある変異では、25%しか異ならない(75%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、20%しか異ならない(80%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、10%しか異ならない(90%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、5%しか異ならない(95%の配列が同一)。本発明によるほぼ同等な、例えば、突然変異体アミノ酸配列は、リストされたアミノ酸配列に比べて、少なくとも80%の同一度があることが望ましく、少なくとも85%あれば更に望ましく、少なくとも90%あれば更に望ましく、少なくとも95%あれば更に望ましく、少なくとも98%あれば更に望ましく、少なくとも99%の同一度があれば最も望ましい。本発明のほぼ同等なヌクレオチド配列は、遺伝子コードの冗長性または縮退性を考慮して、より低いパーセントの配列同一度を持つことができる。ヌクレオチド配列は、65%以上の配列同一度が望ましく、さらに75%以上の配列同一度が望ましく、少なくとも80%の配列同一度があることが望ましく、少なくとも85%あれば更に望ましく、少なくとも90%あれば更に望ましく、少なくとも95%あれば更に望ましく、少なくとも98%あれば更に望ましく、99%以上の配列同一度が最も望ましい。本発明の目的において、ほぼ同等な生物活性とほぼ同等な発現特性を持つ配列は、ほぼ同等なものとみなされる。同一性の決定の目的のためには、成熟した配列の切断(例えば、擬似ストップコドンを生成する突然変異を介して)は除外すべきである。配列の同一度は例えば、ジョタン・ハイン法(Hein,J.(1990)Methods Enzymol.183:626−645)で決定することができる。183:626−645).配列間の同一度はハイブリダイゼーション(雑種形成)条件を変えて行う、当業者によく知られた他の方法でも行うことができる。
【0074】
「トティポーテント(分化全能性)」とは、成熟した器官のあらゆる種類の細胞に分化し得る細胞の能力を指す。
【0075】
「形質転換」とは、適切な宿主細胞にDNAを導入して、DNAが染色体外要素として、または染色体の一部として再製可能なようにすることを意味する。「形質移入」とは、コード配列が実際に発現されているかどうかにかかわらず、適切な宿主細胞によって発現ベクターを取り込むことを意味する。「感染」とはウイルスまたはウイルスベクターを使って適切な宿主細胞に核酸を導入することを指す。
【0076】
ここで用いる「取り込みモジュレイティングフラグメント」UMFとは、リンクされたDNAフラグメントの細胞への取り込みを媒介する一連のヌクレオチドを意味する。UMFは既知のUMFを目標配列ないしは目標モチーフとして以下に説明するようなコンピュータを使ったシステムで容易に同定することができる。UMFの存在と活性は、疑いのあるUMFをマーカー配列に結合させて確認することができる。その結果の核酸分子を適切な条件下で、適切な宿主細胞で培養し、マーカー配列の取り込みを決定する。上述のように、UMFはリンクしたマーカー配列の取り込みの頻度を増加する。
【0077】
上述の各用語は、特に文脈上他の意味で使われていないかぎり、上述の意味で使われる。
【0078】
(5.2 本発明の核酸)
本発明は、新規性のある分泌性CEA様ポリペプチド、そのCEA様ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド(複数)の発見、そして癌及び他の免疫学的異常の診断、治療または予防のために、これらの組成物を使用することに基づいている。
【0079】
本発明の分離されたポリヌクレオチドは制限無く次のものを含む。すなわち、SEQ ID NO:1−3または5のいずれかのヌクレオチドの配列を形成するポリヌクレオチド;SEQ ID NO:1−3または5の一断片;SEQ ID NO:1−3または5完全長蛋白質コード配列を形成するポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:4);そしてSEQ ID NO:1−3または5のいずれかのポリヌクレオチド(複数)の成熟蛋白質コード配列をコードするヌクレオチド配列を形成するポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチド(複数)は又制限無く次のものを含む。厳しいハイブリダイゼーション条件下で下記のものとハイブリダイズするポリヌクレオチド:(a)SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列のいずれかの補体;(b)SEQ ID NO:4又は6−10のポリペプチドのいずれか一つをコードするポリヌクレオチド;(c)上記のポリヌクレオチド(複数)のいずれかのアレル変異体であるポリヌクレオチド;(d)上記の蛋白質のいずれかの種の相同物(ホモログ)をコードするポリヌクレオチド;又は(e)SEQ ID NO:4又は6−10のポリペプチドの特定領域又は切断部からなるポリヌクレオチド。関心対象のはコードされたポリペプチドの性質による。例えば、受容体様ポリペプチドの領域は、リガンド結合、細胞外、膜貫通、又は細胞質領域、又はそれらの組合せを含む;免疫グロブリン様蛋白質の領域は、免疫グロブリン様可変領域を含む;酵素様ポリペプチドの領域は、触媒および基質結合領域を含む;そしてリガンドポリペプチドの領域は受容体結合領域を含む。
【0080】
本発明のポリヌクレオチドは自然発生のDNA、又は全部或いは一部合成されたDNAを含む。例えば、cDNAとゲノムDNA,そしてRNA,例えばmRNAである。ポリヌクレオチド関連部分は、cDNAのコード領域コ全部、またはその一部分を含む。
【0081】
本発明は、またここで開示したcDNAの配列に対応した遺伝子も提供する。これらの対応した遺伝子は、ここで開示した配列情報を使い既知の方法に従って分離できる。それらの方法には、適切なゲノムのライブラリー、又は他のゲノムの材料源で、遺伝子を同定および/又は増幅するために、開示された配列情報からプローブ、またはプライマーを作成することを含む。
【0082】
当業界の既知の方法で、更に5’と3’の配列を取得できる。例えば、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドのいずれか、又はその一部分をプローブとして使用して、適切なハイブリダイゼーション条件の下で、適当なcDNA又はゲノムDNAを選別することによって、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドのいずれかに対応する、完全長のcDNA又はゲノムのDNAを取得できる。別の方法として、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドは、適切なゲノムのDNA又はcDNAのライブラリ−における遺伝子の同定および/又は増幅を可能にする適切なプライマーの基礎として使用できる。
【0083】
本発明の核酸の配列は、一個以上の公開データベース、例えばdbEST,gbpriとUniGeneから取得可能なESTsと配列(cDNAとゲノム配列を含む)から組み立てられる。ESTの配列は、全長の遺伝子に関する、同定する配列の情報、代表的なフラグメント(断片)又はセグメント(区分)の情報、又は新規なセグメントの情報を提供できる。
【0084】
本発明のポリヌクレオチドはまた、上記のポリヌクレオチドと殆ど同等のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0085】
本発明によるポリヌクレオチドは、例えば、最低65%位,最低70%位、最低75%位、最低80%、81%、82%、83%、84%位、より典型的には最低約85%、86%、87%、88%、89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%位,そして更により典型的には最低95%、96%、97%、98%、99%位の上記のポリヌクレオチドに対する配列同位性を有する。
【0086】
本発明における核酸の配列の範囲に含まれるものは、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列のいずれかに厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列の断片、又はその補体で、その断片は約5個のヌクレオチドより、好ましくは7個のヌクレオチドより、更に好ましくは9個より、最も好ましくは17個のヌクレオチドより大きい。例えば、15,17又は20個以上のヌクレオチドの断片で選択的なもの(即ち、本発明のポリヌクレオチドのいずれか一つに特異的に交配するもの)を考慮している。ポリヌクレオチドの一個に特異的にハイブリダイズできるプローブは、同族の遺伝子における他のポリヌクレオチド配列から本発明のポリヌクレオチド配列を区別することが出来、又は他種の遺伝子からヒトの遺伝子を区別することが出来、そして好ましくはユニークなヌクレオチド配列に基づいている。。
【0087】
本発明の範囲内に含まれる配列は、これら特定の配列に限定されず、その対立遺伝子および種の変異をも含む。対立遺伝子と種の変異は、SEQ ID NO:1−3または5にて得られた配列、その代表的な断片、又は、SEQ ID NO:1−3または5と最低90%、出来れば95%同一のヌクレオチド配列を同種の他の分離物からの配列とを比較し、定常的に決定できる
更に、コドンの可変性にあわせて、本発明はここに開示された特定のORFと同様に、本発明は,同じアミノ酸配列の核酸分子コードを含む。即ち、一個のORFのコード領域において、1つのコドンを、同じアミノ酸をコードするもう一つのコドンで置換することが明らかに考えられえる。
【0088】
SEQ ID NO:1−3または5を含む、本発明の核酸の近似値的な結果は、アルゴリズム又はプログラムを使ってデータベースを検索することにより取得できる。好ましくはベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツールBLASTを使って、局在配列のアラインメントを検索する(Altshul,S.F.J Mol.Evol.36 290−300(1993)and Altschul S.F.et al.J.Mol.Biol.21:403−410(1990))。
【0089】
本発明は、開示したポリヌクレオチドと蛋白質の種のホモログ(相同体、同族体)(オーソログ)も提示する。種のオーソログについては、ここに提示した配列から適切なプローブ又はプライマーを作成し、望ましい種から適切な核酸源を選別することによって、分離・同定が可能である。
【0090】
本発明はまた、開示したポリヌクレオチド(複数)又は蛋白質の対立形質変異体も包含する;即ち、自然発生する、分離されたポリヌクレオチドの代替形態で、それはまたポリヌクレオチド)によってコードされたものと同一の、相同(同族)の、又は関連する蛋白質をコードする。
【0091】
本発明の核酸配列は、記述の核酸の変異体をコードする配列へ更に指向されている。これらのアミノ酸の配列の変異形は、原型または変異体のポリヌクレオチドに適切なヌクレオチドの変化をさせるという、既知の方法で作成できる。アミノ酸配列変異体の構成には2個の可変要素がある。すなわち、突然変異の位置と突然変異の性質である。アミノ酸配列変異体をコードする核酸は、好ましくは、自然発生しないアミノ酸配列をコードするように、ポリヌクレオチドを突然変異させて構成することが望ましい。これらの核酸の改変は、異種の核酸によって異なる部位(可変位置)又は高度に保存された領域(定常領域)で出来る。それらの位置での部位は、普通、シリーズで修正される;例えば、まず保守的な選択対象で置換する(例えば、疎水性アミノ酸を異なる疎水性アミノ酸で)、それから更に遠い選択対象で置換する(例えば、疎水性アミノ酸を、負荷されたアミノ酸で),その後、目標部位で削除または挿入が出来る。アミノ酸配列の削除は、通常ほぼ1から30の残基、好ましくはほぼ1から10の残基であり、普通は連続している。アミノ酸の挿入はアミノ基および/又はカルボキシル基末端融合により、長さは1から100以上の残基にわた,また、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入も同様である。配列内挿入は、普通、1から10のアミノ酸残基にわたり、好ましくは1から5の残基である。
【0092】
末端挿入の例としては、分泌または異なる宿主細胞で細胞内の目標付けに必要な、異種ののシグナル〔情報〕配列、及びFLAGのような配列、又は発現した蛋白質の精製に役立つポリヒスチジン配列がある。
【0093】
望ましい方法では、新規性のあるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、部位指向型突然変異の誘発を介して変換される。この方法は、オリゴヌクレオチド 配列を使ってポリヌクレオチドを変換し、目的のアミノ酸 変異体をコードし、同時に、変換したアミノ酸の両隣の十分な量のヌクレオチドに、変換される部位のどちらかの側で安定した2重鎖を形成させる。一般に、部位指向型突然変異誘発の技術は、当業界の熟練者達には良く知られており、このテクニックは次の出版物で例に挙げられている:エーデルマン他、DNA 2:183(1983)。ポリヌクレオチド配列における部位特異的変化を創り出すための、多才で効率的な方法は、ゾラーとスミス著、核酸 Res.10:6487 6500(1982)で出版された。PCRも新規性のある核酸からアミノ酸配列変異体を作成するために使える。最初の材料として少量のテンプレートDNAを使う場合、配列がテンプレートDNA内の対応する部分から僅かに異なるプライマーを使うと、望ましいアミノ酸変異体を作成できる。PCRの増幅によって、そのプライマーで特定された位置のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドテンプレートと異なるDNAの断片作成物の数が増える。このDNAの断片作成物はプラスミッド内の対応する領域で置き換わり、望ましいアミノ酸変異体をコードするポリヌクレオチドが得られる。
【0094】
アミノ酸変異体を作成するもう一つのテクニックは、カセット突然変異誘発テクニックで、ウエルス他著、遺伝子 34:315(1985)に説明してある。他の突然変異誘発テクニックは当業界で良く知られている。例えば、前出のサムブルックス著作、そして「分子生物学における現行のプロトコール」、オースベル他著に述べられたテクニックである。遺伝情報の内在的な縮退のため、ほぼ同一か、機能的に同等なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を本発明の実施に使用し、これらの新規性のある核酸のクローニングと発現に使用して良い。それらのDNA配列は、厳しい条件の下、適当で新規性のある核酸配列にハイブリダイズ可能なものを含む。
【0095】
本発明の望ましいポリペプチドの切断部分をコードするポリヌクレオチドは、本発明の1個以上の領域を形成する、キメラまたは融合蛋白質と(ヘテロ)異種蛋白質配列をコードするポリヌクレオチドを創生するために使用できる。
【0096】
本発明のポリヌクレオチドは、更に、上記ポリヌクレオチドのいずれの補体も含む。そのポリヌクレオチドはDNA(ゲノム的、cDNA、増幅したもの、あるいは合成したもの)でもRNAでも良い。そのようなポリヌクレオチドを取得するための方法とアルゴリズムは、当業界の熟練者には良く知られており、例えば、望ましい配列の同定されたポリヌクレオチドを定常的に分離することが出来るハイブリダイゼーション条件を決定する方法を含む。
【0097】
本発明により, SEQ ID NO:4または6−10、何れかに対応する成熟した蛋白質コード配列、或いはその機能的同等物をコードするポリヌクレオチドの配列は、適切な宿主細胞内で核酸を発現する組換えDNA分子、又はその機能的同等物を作成する為に使用できる。、を。また、ここで同定されたクローンのcDNA挿入も含まれる。
【0098】
本発明によるポリヌクレオチドは、十分に確立された組換えDNAのテクニックにより他のヌクレオチド配列のどの種類にも結合できる(参照:J.サムブルック他 10(1989)分子のクローニング:研究所マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所,NY)。ポリヌクレオチドに結合する有用なヌクレオチド配列は、様々なベクターを含む;例えば、プラスミド、コスミド、ラムダファージの誘導体、ファージミドなど、当業界では良く知られているもの。従って、本発明はまた本発明のポリヌクレオチドを含むベクターとそのポリヌクレオチドを保有する宿主細胞をを提供する。一般に、そのベクターは、少なくとも1個の生物で機能する複製の源、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び選出可能な、宿主細胞のマーカーを含む。本発明によるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ作成ベクター、及び配列ベクターが含まれる。本発明によれば、宿主細胞は原核細胞または真核細胞で良く、単細胞生物、または多細胞生物のの一部でもよい。
【0099】
本発明は更に、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、そのフラグメント(断片)、又は本発明の他のポリヌクレオチドのどれかを持つ核酸を含む、組換え作成物を提供する。一つの具体例では、本発明の組換え作成物は、プラズミドまたはウイルスのようなベクターで構成され、その中に、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、又はそのフラグメントを持つ 核酸 が前向きまたは後ろ向きに挿入される。本発明の又はORFの1つを含むベクターの場合、そのベクターは更に調節配列を含むかもしれない:例えば、ORFに機能的に連結されたプロモーターを含む。多数の適切なベクターとプロモーターは、当業界の熟練者には知られており、本発明の組換え作成物を作成するために業者から入手できるものである。下記のベクターは例として挙げる。細菌類:pBs,ファージスクリプト、PsiX174,pBluescript SK,pBs KS,pNH8a,pNH16a,pNH18a,pNH46a(Stratagene);pTrc99A,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(Pharmacia).
真核細胞類:pWLneo,pSV2cat,pOG44,PXTI,pSG(Pharmacia) pSVK3,pBPV,pMSG,pSVL(Pharmacia)。
【0100】
本発明の分離されたポリヌクレオチドは、蛋白質を組換え的に作成するために、カウフマンほか、核酸 Res.19,4485−4490(1991)で開示された、pMT2又はpED発現ベクターのような発現調節配列に機能的にリンクすることが出来る。多数の適切な発現調節配列が当業界で知られている。組換え蛋白質の一般的な発現方法も知られており、R.カウフマン著、「酵素学の方法論(Methods in Enzymology)」185,537−566(1990)に例証されている。ここに定義されてあるように、「機能的にリンクされる」ということは、本発明の分離されたポリヌクレオチドと発現調節配列は、ベクター又は細胞の中に配置され、その蛋白質は、連結したポリヌクレオチド/発現調節配列とともにトランスフェクトされた宿主細胞によって発現される様になっている。
【0101】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクター、又は選択可能なマーカー付きの他のベクターを使って、どの望ましい遺伝子からも選択出来る。2個の適当なベクターはpKK232−8とpCM7である。個々の名前がついた細菌プロモーターはlacI、lacZ、T3、T7、gpt、lambda、PR,及びtrcを含む。真核性のプロモーターは下記のものを含む:CMV直近早期,HSVチミジンキナーゼ 早期と晩期 SV40,レトロウイルスからのLTR,及びマウスのメタロチオネイン−I。適当なベクターとプロモーターの選択は、当業界での普通のレベルの技術で出来ることである。一般に、組換え体発現のベクターは、複製の開始と選択可能なマーカーを含み、これらは宿主細胞の形質転換を可能にし、例えば、大腸菌のアンピシリン抗体遺伝子とS.cerevisiae TRP1の遺伝子、そして、高度に発現した遺伝子から取出した、下流の構造配列の転写を指示するプロモーターである。それらのプロモーターとしては、色々あるうち、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK),因子、,酸性ホスファターゼ、又は熱ショックの蛋白質のような糖分解酵素をコードするオペロンから得られる。異種構造の配列は、適当な位相に翻訳の開始と終結配列、望ましくは、細胞膜周辺腔または細胞外媒体への翻訳蛋白質の分泌を可能にするリーダー配列でアセンブリする。オプションとしては、異種配列が、望ましい特性を発揮するアミノ末端同定ペプチドを含む融合蛋白質をコードできることである。例えば、発現された組換え製品を安定化または単純に精製することである。細菌に使う有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターを持つ活性的な読取り段階で、適切な翻訳開始と終止シグナルと共に、望ましい蛋白質をコードする構造的なDNA配列を挿入することによって造られる。ベクターは、1個以上の表現型の選択可能なマーカーと複製の原型から形成され、ベクターの維持を確保し、望ましければ、宿主内で増幅する。形質転換に適した原核性の宿主には、以下の細菌、すなわち、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌及びシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびスタフィロコッカス属の中の色々な種が含まれるが、他のものも選択して使用できる。
【0102】
代表的だがそれに限らない例として、有用な細菌用の発現ベクターは、選択可能なマーカーと、良く知られたクローニングのベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝因子からなる、商業的に入手可能なプラズミド由来の複製の細菌の原型から構成される。そのような商業的に入手可能なベクターには、例えばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)とGEM 1(Promega Biotech,Madison,WI,USA)がある。これらのpBR322「バックボーン」のセクションは適当なプロモーターと発現される構造配列と結合される。適切な宿主菌株が形質転換し適切な細胞密度に成長した後、選択されたプロモーターは適当な手段で誘発又は抑制され(例えば温度変更又は化学的誘発により)細胞は更に追加期間の間培養される。細胞は、普通、遠心分離によって収集し、物理的又は化学的方法で破壊し、そして残った粗抽出液は更に精製するために保存する。
【0103】
本発明のポリヌクレオチドは又免疫応答を誘発する為に使用できる。例えば、ファン他.,Nat.Biotech.17:870−872(1999)に記述され、ここに参考として使われているように、ポリペプチドをコード化する核酸配列は、裸のプラスミドDNAを局所的に投与又は注射した後、望ましくは、DNAを筋肉内に注射した後、コード化したポリペプチドに対する抗体を生成するために使用される。核酸配列は、望ましくは組換え発現ベクターに挿入され、裸のDNAの形でも良い。
【0104】
(5.3 アンティセンス)
本発明のもう一つの側面は、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、又はそのフラグメント、相似物又は派生物から成る核酸分子に交配可能か又は相補的な、分離されたアンティセンス核酸分子に関連する。「アンティセンス」核酸は、蛋白質をコードする「センス」核酸に相補的なヌクレオチド配列から成る:例えば、2重ストランドcDNA分子のコードするストランドかmRNA配列に相補的である。特別な側面では、少なくとも約10,25,50,100,250又は500のヌクレオチド、又はコードするストランド全部、又はその一部に相補的なアンティセンス核酸分子が提供される。SEQ ID NO:1−3または5のいずれかの蛋白質のフラグメント、同族物、相似物又は派生物をコード化する核酸分子、又は、SEQ ID NO:1−3または5の核酸配列に相補的なアンティセンス核酸が更に提供される。
【0105】
1つの具体例では、アンティセンス核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列のコードするストランドの「コード領域」にアンティセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンから成るヌクレオチド配列の領域を指す。もう1つの具体例では、アンティセンス核酸分子は、本発明ヌクレオチド配列のコードするストランドの「コードしない領域」に対してアンティセンスである。
【0106】
「コードしない領域」という用語は、コード領域の横にありアミノ酸に翻訳されない5’と3’の配列を指す。(即ち、5’と3’の翻訳されない領域とも言える)。
【0107】
ここに開示された、核酸をコード化する、コードストランドの配列(例えば、SEQ ID NO:1−3または5)が与えられれば、本発明のアンティセンス核酸は、ワトソンとクリック、又はフーグスティーンの塩基対の規則に従って設計できる。アンティセンス核酸分子は、mRNAのコード領域全体に対して相補的であり得るが、mRNAのコードする又はコードしない領域の一部分にだけアンティセンスである少数ヌクレオチドが更に望ましい。例えば、そのアンティセンス少数ヌクレオチドはmRNAの翻訳開始部位を囲む領域に対して相補的であり得る。アンティセンス少数ヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個のヌクレオチドの長さでありうる。本発明のアンティセンス核酸は、当業界で知られている化学合成又は酵素結合反応によって造成できる。例えば、アンティセンス核酸(例:アンティセンス少数ヌクレオチド)は、自然発生するヌクレオチド又は、分子の生物安定度を上げるため、或いはアンティセンスとセンス核酸の間に形成される二本鎖2重構造体の物理的安定度を上げるため多様に修正されたヌクレオチドを使って化学合成出来る。例えば、ホスホロチオ酸の派生物とアクリディンを代用したヌクレオチドが使用できる。
【0108】
アンティセンス核酸を生成する為に使用できる修正ヌクレオチドの例には、下記のものを含む:
5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシルヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオユリディン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシリクオシン、イノシン、N6−イソペンテナイラデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マノシリクオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v),ウイブトクソシン、擬似ウラシル、キオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエスター、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3(3−アミノ−3−N−2−カルボオキシルプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ディアミノピュリン。代替方法として、アンティセンス核酸は、核酸がアンティセンス指向でサブクローンとして挿入される発現ベクターを使って生物学的に生成できる(即ち、挿入された核酸から転写されるRNAは目標とする核酸に対してアンティセンス指向となる。次のサブセクションで詳細説明する)。
本発明のアンティセンス核酸分子は、通常、披験体に投与されるか、または本来の位置で生成され、本発明の蛋白質をコード化するmRNAやゲノムのDNAとハイブリダイズ(雑種形成)又は結合し、蛋白質の発現を抑制する;例えば、転写や翻訳を抑制する。その雑種形成は、従来のヌクレオチドの相補性によってでも良いし、又は、例えばDNAの2重鎖に結合するアンティセンス核酸分子の場合には、2重螺旋の大きな溝内での特異的な相互作用によって、安定した2重構造を形成しても良い。本発明によるアンティセンス核酸分子の投与ルートの一例は組織部位へ直接注射することである。代替方法として、アンティセンス核酸分子を、選択された細胞を標的にするように修正し、全身に投与することも出来る。例えば、全身投与の場合、アンティセンス分子を修正し、受容体又は選択された細胞の表面に発現された抗原に特異的に結合するようにする。例えば、アンティセンス核酸分子を、細胞表面の受容体か抗原に結合するペプチドか抗体にリンクさせる方法を用いる。アンティセンス核酸分子はまたここに述べたベクターを使って細胞に運ばれる。アンティセンス分子の十分な細胞内濃度を得る為に、アンティセンス核酸分子が強力なポルII又はポルIIIプロモーターの支配下に置かれるようなベクターの構造物が望ましい。
【0109】
もう一つの具体化例では、本発明のアンティセンス核酸分子はアルファーアノメリック核酸分子である。アルファーアノメリック核酸分子は、相補的RNAと特異的に2本鎖の雑種を形成し、その中では、通常のアルファと異なり、ストランドがお互いに平行になっている(ゴーチエーほか(1987)核酸 Res 15:6625−6641)。また、アンティセンス核酸分子は2’−o−メチルリボヌクレオチド(井上ほか(1987)核酸s Res 15:6131−6148)、又はキメラ的なRNA−DNAの類似物から成る場合もある(井上ほかInoue et al.(1987)FEBS Lett 215:327−330)。
(5.4 リボザイムとPNAの半分)
更にもう一つの具体化例では、本発明のアンティセンス核酸はリボザイムである。リボザイムはRNA分解酵素的活性を持つ触媒的なRNA分子で、それが相補的な領域を持つmRNAのような1本鎖の核酸を2分することが出来る。従って、リボザイム(例えば、ハマーヘッドリボザイム;(ハーゼルホフとゲアラック著(1988)自然 334:585−591)に記述)はmRNAの転写を触媒的に2分し、mRNAの翻訳を抑制するために利用できる。本発明の核酸に対して特異性を持つリボザイムは、ここに開示したDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計できる(即ちSEQ ID NO:1−3,10−13と15)。
【0110】
例えば、テトラハイメナL−19 IVS RNAの派生体を造成して、その活性部位のヌクレオチド配列が、SECXコード化mRNAの中で2分されるヌクレオチド配列に相補的であるようにする。参考例:チェックほか、米国特許.No.4,987,071、及びチェックほか.米国特許.No.5,116,742。
【0111】
代替方法として、mRNAを使って、RNA分子のプールから特異的なRNA分解酵素的活性を持つ触媒的なRNAを選択出来る。参考例:バーテルほか、(1993)科学 261:1411−1418。
【0112】
代替方法として、調整領域(例えば、プロモーターと/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的にする事により、標的細胞内の遺伝子の転写を防ぐ3重螺旋状の構造を形成すれば、遺伝子の発現は抑制出来る。参考:へレン.(1991)抗癌薬品 Des.6:569−84;ヘレンほか(1992)Ann.N.Y Acad.Sci.660:27−36;及びメーハ−(1992)生物学検定 14:807−15。
【0113】
色々な具体例では、本発明の核酸は、例えば分子の安定性、雑種形成、又は溶解性を改善するように、塩基の半数、糖の半数、又は燐酸塩のバックボーンにおいて変更可能である。例えば、核酸のデオキシリボーゼ燐酸塩のバックボーンは、ペプチド核酸を生成するように変更可能である(参考:ハイラップほか.(1996)Bio又はg Med Chein 4:5−23)。ここで使われている「ペプチド核酸」又は「PNA」の用語は、核酸例えばDNAの擬態を意味し、デオキシリボーズ燐酸塩のバックボーンは、擬似ペプチドのバックボーンに置き換えられ、4個の自然ヌクレオベースだけが保持される。PNAの中性バックボーンは、低イオン強度の条件下でDNAとRNAに特異的に雑種形成することが証明されている。PNAオリゴマーの合成は、標準固相ぺプチド合成プロトコールを使って実行可能で、それはハイラップほか著の上記書(1996);ぺリー・オキーフほか著(1996)PNAS 93:14670−675に説明されてあるとおりである。本発明のPNAは、治療と診断の用途に使える。例えば、PNAは、転写や翻訳停止又は複製の抑制を誘発して配列特異性のある遺伝子発現を調整するアンティセンスまたはアンティジーン薬剤として使用可能である。本発明のPNAの用途は、例えば、PNA指揮のPCR締付けなどにより、単一塩基対の突然変異の分析、S1核酸分解酵素のような他の酵素と組合わせたと人工制限酵素(ハイラップ B.(1996)、前出)、DNA配列と雑種形成用のプローブ又はプライマーなどである(ハイラップほか(1996),前出;ぺリー・オキーフ(1996)、前出)。
【0114】
他の具体例では,本発明のPNAは、安定性や細胞摂取を改善するように変更可能である。その方法は例えば、親油脂性または他の助剤群のPNAへの付加、PNA−キメラの形成、当業界で知られているリポソームやその他の薬剤配送技術の使用などである。例えば、PNAとDNAの有利な特性を組み合わせたPNA−DNAキメラを生成できる。
【0115】
その様なキメラは、DNAの認知酵素、例えばRN酵素HとDNA重合酵素がDNA部分と相互作用を許し、それと同時にPNA部分は高度の結合親和性と特異性を提供する。PNA−DNAキメラは、塩基の積み重なり、塩基間の結合数、及び指向を考慮に入れて選択された適当な長さのリンカーを使ってリンクすることが出来る(ハイラップ(1996)前出)。PNA−DNAキメラの合成は、ハイラップ(1996)前出とフィンほか(1996)核酸Res 24:3357−63に説明されているように実行可能である。例えば、DNA鎖は、標準のホスホラミダイト結合化学を使って固定した支持台の上で合成し、調整ヌクレオシド相似体、例えば、5’−(4−メチオキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−サイミディン・ホスホラミダイトはPNAとDNAの5’端の間に使うことができる(マグほか(1989)核酸調査Nucl Acid Res 17:5973−88)。それからPNAモノマーは段階的にリンクされ、5’PNAセグメント及び3’DNAセグメントの付いたキメラ分子を生成する(フィンほか(1996)前出)。代替方法としては、キメラ分子は5’PNAセグメント及び3’DNAセグメントを使って合成することも出来る。参照:ピーターソンほか、(1975)Bio Org Med Chem Lett 5:1119−11124。
【0116】
他の具体例では、オリゴヌクレオチドには、ペプチド(例:体内で宿主細胞を標的とするペプチド)のような他の付属グループ、又は細胞膜層(参考例:レツィンガーほか,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556;ルメートルほか1987,Proc.Natl.Acad.Sci.84:648−652;PCT出版No.W088/09810)又は血液脳関門(参考例:PCT出版No.W089/10134)の通過・運搬を助ける薬剤も含まれる。更に、オリゴヌクレオチドは、雑種形成誘発分割剤(参考例:クロールほか,1988,BioTechniques 6:958−976)又は挿入剤(参考例:ゾン、1988,Pharm.Res.5:539−549)でも変更出来る。この目的ために、オリゴヌクレオチドを別の分子、例えば、ペプチド、雑種形成誘発架橋剤、運搬剤、雑種形成誘発分割剤などと接合させても良い。
【0117】
(5.5 宿主)
本発明は更に、遺伝子工学的に本発明ポリヌクレオチドを包含するように設計された宿主細胞を提供する。例えば、その宿主細胞は、既知の形質転換、形質移入又は感染方法を使って導入された本発明の核酸を包含するかもしれない。本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを発現するように遺伝子工学的に設計された宿主細胞を提供し、それらのポリヌクレオチドは、細胞内でポリヌクレオチドの発現を操作する宿主細胞とは異種な調節配列と機能的に会合する。
【0118】
CEA様DNA配列の知識は、CEA様ポリペプチドの発現を許す又は増加させるように細胞を調節できる。細胞は調整して(例えば、同族性の組換えによって)、自然発生するCEA様プロモーターの全部か一部を、異種のプロモーターの全部か一部で取替えることによって、CEA様ポリペプチドの細胞がより高いレベルで発現されるようにできる。異種のプロモーターは、CEA様のコード化配列に機能的にリンクされる様に挿入される。参考例:PCT International Publication No.WO94/12650,PCT International Publication No.WO92/20808、及びPCT International Publication No.WO91/09955。また、異種のプロモーターDNAの他に、増幅可能なマーカーDNA(例:カルバミルリン酸シンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ及びジヒドロロオロターゼをコード化するada,dhfr,及び多機能性のCAD遺伝子)および/又はイントロンDNAが異種のプロモーターDNAと共に挿入されることも考慮されている。もしCEA様のコード配列にリンクされると、標準選択方法によるマーカーDNAの増幅は、細胞内でCEA様コード配列の共同増幅を導く。
【0119】
宿主細胞は、哺乳類の細胞のような高度に真核性の宿主細胞、イースト細胞のような低度に真核性の宿主細胞でも,又は細菌の細胞のような原核細胞でも良い。組換え構成を宿主細胞へ導入するには、リン酸カルシウムの形質移入、DEAE、デキストラン仲介形質移入、又はエレクトロポーレーションによって実行される。(デイビス,L.ほか著、分子生物学の基本方法(1986))。本発明ポリヌクレオチドの1つを持つ宿主細胞は、従来の方法で分離断片によってコード化された遺伝子生成物を生成する為に(ORFの場合)、又はEMFの支配下で異種の蛋白質を生成する為に使用出来る。
【0120】
いかなる宿主/ベクターシステムでも、本発明のORFを1個又はそれ以上発現するのに使用できる。これらは下記のものを制限無く含む:真核性の宿主、例えば:HeLa細胞,Cv−1細胞、COS細胞、293細胞、Sf9細胞、及び原核性の宿主、例えば:大腸菌やB.サブチリス。最も望ましい細胞は、通常、特別なポリペプチド又は蛋白質を発現しないもの、又はポリペプチド又は蛋白質を天然の低レベルで発現するものである。成熟蛋白質は、哺乳類細胞、イースト、細菌、又はその他適当なプロモーターの支配下にある細胞内で発現出来る。細胞なしの翻訳システムを使用して、本発明のDNA構成物から取出したRNAを使ってそのような蛋白質を生成することもできる。原核性と真核性の宿主を使用する適当なクローニング及び発現ベクターは、サムブルックほか著、分子のクローニング:研究所マニュアル、第2版コールドスプリングハーバー、NY(1989)に記述されてあり、その開示は参考としてここに含む。
【0121】
色々な哺乳類細胞の培養システムを使って、組換え蛋白質を発現出来る。哺乳類細胞の発現システムの例は、グルズマン著、細胞、23:175(1981)に記述された、サルの腎臓繊維芽細胞のCOS−7線を含む。他の細胞系で適合性のベクターを発現出来るものは、例えば、C127、サルのCOS細胞,中国産ハムスターの卵巣(CHO)細胞、ヒトの腎臓の293細胞,ヒトの表皮のA431細胞、ヒトのColo2O5細胞、3T3細胞、CV−1細胞,他の形質転換された霊長類の細胞系、正常な2倍体細胞,一次組織の体外培養から得られた細胞株、一次体外移植組織、HeLa細胞、マウスのL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK又はジュルカット細胞である。哺乳類細胞の発現ベクターは、複製の原体、適当なプロモーター及び必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス・ドナーと受容体部位、転写終結配列、及び5’側面非転写配列で形成される。例えば、SV40のウイルスゲノム、SV40原体,初期プロモーター、エンハンサー、スプライス、及びポリアデニル化部位から取出されたDNA配列を使って、必要な非転写遺伝子要素を提供することができる。細菌培養で生成された組換えポリペプチドと蛋白質は、通常、細胞ペレットから最初抽出によって分離され、次に、1回又はそれ以上の塩析、水分イオン交換、又はサイズ除外クロマトグラフィーと続く。必要に応じて、蛋白質を再度折り畳んで、成熟蛋白質の編成を完了することが出来る。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、精製の手順を終了する。蛋白質の発現に使用する微生物の細胞は、凍結‐融解サイクル、音波破粋、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用等、従来の方法で破壊出来る。
【0122】
代替方法としては、蛋白質をイースト又は昆虫のように低位の真核生物の中で、又は細菌のような原核生物の中で生成することが出来る。潜在的に適切なイースト株には、Saccharomyces cerevisiae,Schizosaccharomyces pombe,Kluyveromyces株,Candida、又は異種の蛋白質を発現出来るイースト株ならどれでもを含むことができる。潜在的に適切な細菌株には、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、又は異種の蛋白質を発現出来る細菌株のどれでも含まれる。もしその蛋白質がイーストか細菌で出来ている場合、機能的な蛋白質を得る為に、例えば、適当な部位の燐酸エステル化、又はグリコシル化により、そこで生成された蛋白質を修正する必要があるかもしれない。そのような共有結合の添付は、既知の化学的又は酵素的な方法で達成出来る。
【0123】
本発明の別の具体例では、細胞と組織は、誘導性の調節要素の支配下で、本発明のポリヌクレオチドを含む内生遺伝子を発現するように設計可能で、その場合、内生遺伝子の調節配列は同族性の組換えで置き換えられる。
【0124】
ここで説明されたように、遺伝子の標的技術を使って、遺伝子の既存の調節領域を、異なる遺伝子から分離された調節配列、又は遺伝子工学的方法で合成された新規性のある調節配列で置き換えることができる。その調節配列は、プロモーター、エンハンサー、骨格取付領域、負の調節要素、転写始動部位,調節蛋白質結合部位、又はそれらの配列の組合せで構成される。代替方法としては、生成されたRNA又は蛋白質の構造又は安定性に影響する配列は取替え、除去、添付、又はその他の標的法で修正することが出来る。これらの配列には、ポリアデニル化信号、mRNA安定性要素、スプライス部位、蛋白質の搬送又は分泌特性を改善・修正するためのリーダー配列、又は蛋白質かRNA分子の機能又は安定性を変更又は改善する、その他の配列を含む。
【0125】
標的法は、単に調節配列を挿入することで、例えば、新しいプロモーター又はエンハンサー又は両者を遺伝子の上流に挿入して、遺伝子を新しい調節配列の支配下に置くことであるかも知れない。代替的には、標的法は、単に調節要素を削除することで、例えば、組織特異的な負の調節要素を削除することである。代替方法としては、標的法で既存の要素を取替える;例えば,組織特異的なエンハンサーは、自然発生の要素よりも幅広い、又はそれとは異なった細胞タイプに特異性を持つエンハンサーで置き換えられる。ここでは、自然発生の配列は削除され、新しい配列が加えられる。いずれの場合でも、標的法の識別は、標的DNAと隣接している1個又はそれ以上の選択可能マーカー遺伝子を使えば容易になり、外因性DNAが宿主細胞ゲノムに結合した細胞を選択出来る。標的法の識別は、また、負の選択特性を示す1個又はそれ以上のマーカー遺伝子を使っても容易になる。つまり負の選択可能マーカーは、外因性DNAにリンクされるが、標的配列の脇に位置され、そして、宿主細胞ゲノムの中の配列と正しい同族性の組換えを行うものは、負の選択可能マーカーと安定した結合をしない。この目的に役立つマーカーには、単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、又は細菌性キサンチン‐グアニンホスホリボシル転移酵素(gpt)遺伝子を含む。
【0126】
本発明のこの面に従って使える遺伝子標的又は遺伝子活性化技術は更に詳しく下記に説明されている:米国特許No.5,272,071 チャペル宛;米国特許No.5,578,461シャーウイン他宛;国際申請No.PCT/US92/09627(WO93/09222)セルデンほか;及び国際申請No.PCT/US90/06436(WO91/06667)スクールチほか、これらの内容の全体が本書に参考として含まれている。
【0127】
(5.6 本発明のポリペプチド)
本発明の分離されたポリペプチドは下記のものから成るポリペプチドを制限無く含む:SEQ ID NO:4又は6−10の1つとして設定されたアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:1−3,又は5のヌクレオチド配列のどれか1つによってコード化されたアミノ酸配列、又は対応する全長又は成熟蛋白質。又、本発明のポリペプチドは、次のものにコード化された、生物学的、又は免疫学的な活性のあるポリペプチドが望ましい:(a)SEQ ID NO:1−3,又は5に設定されたヌクレオチド配列の一つを持つポリヌクレオチド、又は(b)SEQ ID NO:4又は6−10に設定されたアミノ酸配列のどれか1つをコード化するポリヌクレオチド、又は(c)厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件下で(a)又は(b)のポリヌクレオチドの補体にハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチド。本発明はまた、SEQ ID NO:4又は6−10として設定されたアミノ酸配列のいずれかの、生物学的、又は免疫学的な活性のある突然変異種、又は対応する全長又は成熟蛋白質;そして生物活性を持つそれらと「ほぼ同等のもの」(例:アミノ酸の同一量が、最低65%位、最低70%位、最低75%位、最低80%位、最低85%、86%、87%、88%、89%位、最低90%、91%、92%、93%、94%位、典型的には最低95%、96%、97%位、更に典型的には最低98%位、又は最も典型的には最低99%位)で生物学的な活性を持つ。対立変異体によりコード化されたポリペプチドは、SEQ ID NO:4又は6−10で構成されるポリペプチドと比較して、活性が同様か、より高いか、又はより低いかもしれない。
【0128】
生物活性を示す能力がある本発明の蛋白質のフラグメントも本発明に含まれるが、それは直線形かも知れないし、又は、既知の方法を使って環状形にすることも出来る。例えば、これらはH.U.サラゴヴィほか著、Bio/Technology 10,773−778(1992)とR.S.マクドウエルほか著、J.Amer.Chem.Soc.114,9245−9253(1992)に記述されてあり、両者はここに参考として加える。そういうフラグメントは、蛋白質の結合部位の原子価を上げるなど色々な目的のために、免疫グロブリンのような担体分子と融合することもできる。
【0129】
本発明はまた、開示された蛋白質の全長と成熟の二つの形体を提供する(例えば、シグナル配列又は前駆体配列なしで)。蛋白質コード配列は、開示されたヌクレオチド配列の翻訳によって、配列リストの中で同定される。そういう蛋白質の成熟形は、適当な哺乳類の細胞、又は他の宿主細胞の中で全長のポリヌクレオチドを発現して得られる。成熟形体の蛋白質の配列はまた全長形のアミノ酸配列からも決定できる。
【0130】
本発明の蛋白質が膜と結合している場合、可溶性の蛋白質もまた提供される。そのような形体では、蛋白質を膜と結合する領域の一部又は全部は蛋白質が、その発現される細胞から充分に分泌されるように削除される。
【0131】
更に、本発明の蛋白質の組成物は、例えば、製薬学的に容認できる親水性の担体などの容認可能担体を含むことが出来る。
【0132】
本発明は更に、本発明の核酸フラグメント又は核酸フラグメントの退化変異体によってコード化された分離ポリペプチドを提供する。「退化変異体」とは、本発明の核酸フラグメント(例:ORF)とはヌクレオチド配列が異なっているが、遺伝子コードの退化の故に同一のポリヌクレオチド配列をコード化しているヌクレオチド・フラグメントである。本発明の望ましい核酸フラグメントは蛋白質をコード化するORFである。
【0133】
当業界で既知の色々な方法を利用して、本発明の分離されたポリペプチド又は蛋白質のどれでも取得できる。最も単純なレベルでは、アミノ酸配列は、商業的に入手できるペプチド合成剤を使って合成出来る。合成された蛋白質配列は、一次、二次、又は三次構造や配座の特徴を蛋白質と共有するので、蛋白質の活性を含む生物学的な特質を所有するかもしれない。この技術は、小さいペプチドと大きなポリペプチドのフラグメントを生成するのに特に役立つ。フラグメントは、例えば、天然のポリペプチドに対する抗体を生成するのに役立つ。従って、天然の精製された蛋白質の、生物学的に活性な、又は免疫学的な代用品として、治療用の組成物を選別する時や抗体開発の免疫学的なプロセスで使用できる。
【0134】
本発明のポリペプチドと蛋白質は、望ましいポリペプチド又は蛋白質を発現するために変更された細胞から交互に精製できる。、「望ましいポリペプチド又は蛋白質を発現するために変更された」というのは、ここでは、細胞が遺伝子操作で、通常は生成しない、又は通常は低いレベルでしか生成しないポリペプチド又は蛋白質を発現する様に変更されることを意味する。当業界の熟練者は、本発明のポリペプチドと蛋白質のいずれかを生成する細胞を造る為に、組換え又は合成配列のどちらかを真核細胞又は原核細胞に導入し発現する手順を容易に調整することが出来る。
【0135】
本発明は、ポリペプチドを生成する方法にも言及する。例えば、宿主細胞を適切な培養基で育てる方法や、細胞又は細胞が生育する培養液から蛋白質を精製する方法などである。例えば、本発明の方法に含まれるポリペプチド生成プロセスには、本発明のポリヌクレオチドを含む適当な発現ベクターを持つ宿主細胞を、コード化されたポリペプチドの発現を許す条件下で培養する方法もある。
【0136】
ポリペプチドは培養体から又は宿主細胞から作られた溶解産物から容易に取り出して更に精製する。望ましい具体例は、そのプロセスで生成された蛋白質は全長又は成熟形体であること。
【0137】
代替方法では、天然でポリペプチド又は蛋白質を生成する細菌の細胞から、ポリペプチド又は蛋白質は精製される。当業界の熟練者なら、本発明の分離されたポリペプチド又は蛋白質の1つを得る為に、既知のポリペプチドと蛋白質の分離方法を簡単に利用できる。これらの方法は、下記のものを制限無く含む:イムノクロマトグラフィー、HPLC、サイズ除外クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー,及びイムノアフィニティー・クロマトグラフィー。参考例:スコープス、蛋白質の純化 理論と実用,スプリンガ−フェアラグ(1994);サムブルックほか、分子クローニング:研究所マニュアル;アウスベルほか、分子生物学における現行のプロトコール。生物学的・免疫学的活性を保持するポリペプチドフラグメントは、約100個以上のアミノ酸、又は約200個以上のアミノ酸で構成されるフラグメント、そして特定の蛋白質のドメインをコード化するフラグメントを含む。
【0138】
精製されたポリペプチドは、当業界で良く知られたポリペプチドに結合する分子を同定する方法である生体外結合検定に使うことができる。これらの分子は、次のものを制限無く含む:小さな分子、組み合わせライブラリーからの分子、抗体又はその他の蛋白質。結合検定で同定された分子は、拮抗又は敵対活性について体内組織培養又は動物モデルで試験されるが、この方法は当業界で良く知られている。要するに、分子は、複数の細胞培養か動物の中に注入され、その後細胞/動物の死亡又は生存の長さを試験する。
【0139】
更に、本発明のペプチド又はペプチドに結合できる分子は、リシン、コレラのような毒素又は細胞に有毒な化合物と複合体を作っているかも知れない。毒素と結合した分子複合体は、SEQ ID NO:4又は6−10結合分子の特異性によって腫瘍又は他の細胞を標的として使用される。
【0140】
本発明の蛋白質はまた、遺伝子導入動物の生成物、例えば、遺伝子導入された雌牛、山羊、豚、羊のミルクの成分として発現されるかも知れない。これらの動物は、蛋白質をコード化したヌクレオチド配列を含む体細胞、又は生殖細胞を持つことを特徴とする。
【0141】
ここで言う蛋白質はまた、精製された蛋白質と似たアミノ酸配列を特徴とする蛋白質を含んでいるが、そのアミノ酸は自然に修正された又は人為的に設計されたものである。例えば、ペプチド又はDNA配列での修正は、当業界の熟練者が既知の技術を使って出来ることである。関心のある蛋白質配列の修正は、コード配列の選択アミノ酸残基の変更、代用、入れ換え、挿入又は削除を含む。例えば、分子構造を変えるために、1個又はそれ以上のシスチン残基を削除する又は他のアミノ酸で置き換えることも可能である。そのような、変更、代用、入れ換え、挿入又は削除の技術は当業熟練者に良く知られている。(参照例:米国特許No.4,518,584)。望ましくは、そのような変更、代用、入れ換え、挿入又は削除が、蛋白質の望ましい活性を保持することである。蛋白質の機能に重要な蛋白質の領域は当業界に良く知られている、下記のいろいろな方法できめられる:アラニン走査方法は、1個のまたは連なったアミノ酸をアラニンで系統的に置き換え、その結果生じたアラニンを含む変異種に関して生物活性を試験する。このタイプの分析は置き換えられたアミノ酸の生物活性における重要性を決める。蛋白質の機能に重要な蛋白質の領域はeMATRIXプログラムで決定できる。
【0142】
蛋白質の配列の他のフラグメントと派生物で、蛋白質の活性の全部又は一部を保持すると期待され、選別又は他の免疫学的な方法に役立つものは、ここの開示を使って、当業界の熟練者によって簡単に作られる。そのような修正は、本発明に含まれている。
【0143】
本発明の分離されたポリヌクレオチドを1個又はそれ以上の昆虫発現ベクター内の適切な制御配列に機能的にリンクし、昆虫発現システムを使って、蛋白質を生成できる。バキュウロウイルス/昆虫細胞発現システムの材料と方法は、業者からキットとして入手できる。例えば、Invitrogen,San Diego,Calif.,U.S.A.(the MaxBatTM kit),で、その様な方法は当業界では良く知られており、サマーズとスミス著,テキサス農業実験ステーションブレティンNo.1555(1987),の記述を参考としてここに加える。ここで使われている表現を用いれば、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力がある昆虫細胞は「形質転換されている」。本発明の蛋白質は、組換え蛋白質を発現するのに適切な培養条件で形質転換された宿主細胞を培養することによって、作成できる。その結果発現された蛋白質は、ゲル濾過とイオン交換クロマトグラフィーのような既知の精製プロセスを使って、その培養基(即ち、培養媒体か細胞エキス)から精製される。また、蛋白質の精製は下記のものを含む:蛋白質に結合する薬剤を含むアフィニティーカラム;コンカナヴァリンA−アガロース、へパリン−トヨパールTM又はチバクローム青3GAセファロースTMのような親和性樹脂の上に位置する1個又はそれ以上のカラムステップ;フェニルエーテル、ブチルエーテル、又はプロピルエーテルのような樹脂を使って疎水性の相互作用クロマトグラフィーを行う1個又はそれ以上のステップ;又はイムノアフィニティー・クロマトグラフィー。
【0144】
代替的には、本発明の蛋白質を、精製を助ける形体で発現させても良い。例えば、下記のような融合蛋白質として発現できる:麦芽糖結合蛋白質(MBP)、グルタチオン−S−転移酵素(GST)又はチオレドキシン(TRX),又はヒス標識。そのような融合蛋白質の発現と精製用のキットは夫々次の業者から入手できる:New England BioLab(Beverly,Mass.),Pharmacia(Piscataway,N.J.)及びInvitrogen。その蛋白質は又、エピト−プ標識を付け、その後エピト−プに向けられた特異性のある抗体を使って精製される。その様なエピト−プの1つ(「FLAG(登録商標)」)はコダック(New Haven,Conn.)から販売されている。
【0145】
最後に、1個又はそれ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLQ)(ペンダントメチルや他の脂肪族グループを持つシリカゲルなどの疎水性RP−HPCL媒体を使う)ステップを使って蛋白質を更に精製する。上記の精製手順の一部か全部を色々な組合せで使えば、ほぼ同質の分離組換え蛋白質を生成できる。このように精製された蛋白質には他の哺乳類の蛋白質が殆ど無く、本発明では「分離された蛋白質」と定義される。
【0146】
本発明のポリペプチドは相似物(変異体)を含む。本発明のポリペプチドはCEA様相似物を含む。これは、本発明のCEA様ポリペプチドの断片及び1個又はそれ以上の削除、挿入又は置換されたアミノ酸からなるCEA様ポリペプチドを含む。また、本発明のCEA様ポリペプチドの相似物は、CEA様ポリペプチドの融合体、又はCEA様ポリペプチドの修正体を含み、CEA様ポリペプチド又は相似物は、他の半体又は複数の半体、例えば、標的半体又は他の治療用薬剤へ融合される。それらの相似物は、活性および/又は安定性のような性質の改善を示すかもしれない。CEA様ポリペプチド、又は相似物に融合される半体の例は、ニューロンへポリペプチドを運ぶ標的半体、例えば、中枢神経システムへ運ぶ抗体、又はニューロン細胞で発現された受容体とリガンドへ運ぶ抗体である。CEA様ポリペプチドに融合される他の半体には、治療用の薬剤、例えば抗鬱剤、又は神経障害用の他の薬品を含む。また、CEA様ポリペプチドは、ニューロン成長調整剤やその他標的配送用のケモキンに融合することが出来る。
【0147】
(5.6.1 ポリペプチドとポリヌクレオチドの同一性と類似性の決定)
望ましい同一性と/又は類似性は、試験された配列間で最大の一致を出すように設計されている。同一性と類似性の決定方法は、コンピュータープログラムに体系化してあり、下記を制限無く含む:GAPを含むGCG プログラムパッケジ(デヴェロー,J.,ほか、核酸研究12(1):387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX,FASTA(アルチュル,S.F.ほか、分子生物学.215:403−410(1990),PSI−BLAST(アルチュルS.F.et al.,核酸研究.vol.25,pp.3389−3402,参考としてここに含む)、eMatrix software(ウーほか、J.Comp.Biol.,vol.6,pp.219−235(1999),参考としてここに含む)、eMotif software(ネヴィル−マニングほか,ISMB−97,vol 4,pp.202−209,参考としてここに含む)及び、カイト−ドゥーリトル疎水性予測アルゴリズム(J.Mol Biol,157,pp.105−31(1982)、参考としてここに含む)。BLASTプログラムはNational Center for Biotechnology Information[バイオテクノロジー情報国立センター](NCDI)と他のソース(BLAST Manual,アルチュル,S.,ほか.NCB NLM NIH Bethesda,MD 20894;アルチュル,S.,ほか,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))から一般に販売されている。
【0148】
(5.7 キメラと融合蛋白質)
本発明はまたキメラ又は融合蛋白質を提供する。ここで使われる、「キメラ蛋白質」又は「融合蛋白質」は、他のポリペプチドに機能的に連結された本発明ポリペプチドで構成される。融合蛋白質の内部で、本発明のポリペプチドは、本発明の蛋白質の全部又は一部に対応する。一具体例では,融合蛋白質は、本発明の蛋白質の少なくても1つの生物学的に活性のある部分を含む。他の具体例では、融合蛋白質は、本発明の蛋白質の少なくても2つの生物学的に活性のある部分を含む。融合蛋白質の内部で、「機能的にリンクされた」という用語は、本発明のポリペプチドと他のポリペプチドは枠内でお互いに融合されていること示す。ポリペプチドは、N−端末、C−端末、又は真中に融合できる。
【0149】
例えば、1つの具体例では、融合蛋白質は、第二蛋白質の細胞外のドメインに機能的にリンクされた本発明のポリペプチドを含む。
【0150】
他の具体例では、融合蛋白質はGST−融合蛋白質で、本発明のポリペプチド配列がGST(即ち、グルタチオンS−転移酵素)配列のC末端に融合されている。
【0151】
他の具体例では、融合蛋白質は免疫グロブリン融合蛋白質で、本発明のポリペプチド配列が、免疫グロブリン蛋白質ファミリーのメンバーから取出された配列に融合された1個又はそれ以上のドメインで構成される。
【0152】
本発明の免疫グロブリン融合蛋白質は薬学的組成物に取り入れられ、対象物に投与して、細胞の表面でのリガンドと本発明の蛋白質との間の相互作用を抑制し、それによって体内の信号の変換を抑制する。免疫グロブリン融合蛋白質を使って、同族リガンドの生物利用能に影響を与えることができる。リガンド/蛋白質 の相互作用の抑制は、繁殖分化障害(例えばガン)の治療と細胞の生存の調節(例えば、促進又は抑制)の両方に治療学的に役立つ。更に、本発明の免疫グロブリン融合蛋白質は免疫源として使用され、対象物の中に抗体を作り、リガンドを純化し、そしてスクリーニング検定時に、本発明のポリペプチドのリガンドとの相互作用を抑制する分子を同定する。
【0153】
本発明のキメラ又は融合蛋白質は、標準組換えDNA技術によって生成できる。例えば,異なったポリペプチド配列のためのDNAフラグメントのコードは、従来の技術に従って、枠内でリンクされる。従来の技術とは、例えば、リンクに鈍端、又は波形端をもつ端末を使い、抑制酵素の消化力で適当な端末を作り、粘着端末を適当に充填し、望ましくない結合を避けるために適当なアルカリ性燐酸酵素処理をし、そして酵素的なリンクをする方法である。他の具体例では、融合遺伝子を、自動DNA合成器を含む、従来の技術で合成出来る。代替方法として、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、アンカープライマーを使って遂行される。アンカープライマーは2個の連続した遺伝子フラグメントの間に相補的な突出部を作り、2個のフラグメントは次にアニール化され再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成する(参考例:アウスベル他編集、「分子生物学における現行のプロトコール」、John Wiley & Sons,1992)。更に、多くの発現ベクターは、融合半体をコード化したものが市場で販売されている(例:GSTポリペプチド)。本発明のポリペプチドをコード化する核酸を、融合半体が本発明の蛋白質に枠内で連結されるような発現ベクターの中にクローン化することができる。
【0154】
(5.8 遺伝子治療)
本発明のポリヌクレオチド遺伝子における突然変異は、コード化された蛋白質の正常機能を失う結果となる。従って、本発明は、本発明のポリペプチドの正常な活性を回復する又は 本発明のポリペプチドに関連した病状を治療するための遺伝子治療を提供する。本発明のポリペプチドをコード化する機能遺伝子の適当な細胞への配送は、ベクターを使って、半ビボ、生体内原位置、又は生体内で実行される。更に詳しく言うと、ウイルスのベクターを使って(例えば、腺ウイルス、腺関係のウイルス、又はレトロウイルス)、又は物理的なDNA転移方法を使って半ビボで(例:リポソーム又は化学治療)実行される。
参考例:アンダーソン、Nature[自然]、補充 vol.392,no.6679,pp.25−20(1998)、遺伝子治療技術の追加参考資料として、フリードマン、Science[科学],244:1275−1281(1989);ヴァ−マ、Scientific American[サイエンティフィックアメリカン]:68−84(1990);及びミラー、Nature,357:455460(1992)。本発明のヌクレオチド又は本発明のポリペプチドをコード化する遺伝子に関する入門は、染色体外の基質(一時的発現)又は人工染色体(安定発現)を使って達成できる。また、細胞を増殖し、細胞に望ましい効果又は活性を与えるために、本発明の蛋白質の存在下半ビボで細胞を培養することも出来る。処理された細胞は治療目的で体内に導入される。代替的に、その他のヒトの病状では、本発明のポリペプチドの発現を防ぎ、またはその活動を抑制することは病状の治療に役立つと考えられる。本発明のポリペプチドの発現を負に調節するためにアンティセンス治療又は遺伝子治療を適用することも考慮されている。
【0155】
蛋白質の発現を抑制する他の方法はアンティセンス分子、それらの補体、又は翻訳されたRNA配列を本発明の核酸に導入することで,当業界で知られている方法である。更に、本発明のポリペプチドは、標的削除法を使って、又は組織特異性のあるサイレンサーのような負の調節要素を挿入して抑制される。
【0156】
本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを発現するために、体内で遺伝子工学的に設計された細胞を提供する。その様なポリヌクレオチドは、細胞内でポリヌクレオチドの発現を促進する宿主細胞に異種な調節配列と機能的に会合している。こういう方法は、本発明のポリペプチドの発現を増大又は減少する目的で用いることができる。
【0157】
本発明が提供するDNA配列の知識は、細胞の調整が内生ポリペプチドの発現を実行、増加、又は減少させるのを可能にする。細胞は調整可能で(例えば、同族性の組換えによって)、天然に発生するプロモーターの全部か一部を、異種のプロモーターの全部か一部で取替えて、細胞がより高いレベルで蛋白質を発現するようにする。この異種のプロモーターは、配列をコード化する望ましい蛋白質に機能的に連結される様に挿入される。参考例:PCT International Publication No.WO94/12650,PCT International PublicationNo.WO92120808、とPCT International Publication No.WO91/09955。また、異種のプロモーターDNAの他に、増幅可能なマーカーDNA(例:カルバミルリン酸シンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ及びジヒドロオロターゼをコード化するada,dhfr及び多機能を持ったCAD遺伝子)と/又はイントロンDNAが異種のプロモーターDNAと共に挿入されることも考慮されている。
【0158】
望ましい蛋白質のコード配列にリンクされると、標準選択方法によるマーカーDNAの増幅は、細胞内の望ましい蛋白質コード配列の共同増幅を導く。
【0159】
本発明の別の具体例では、細胞と組織は、誘導性の調節要素の支配下で本発明のポリヌクレオチドから成る1個の内生遺伝子を発現するように設計できる。その場合、内生遺伝子の調節配列は、同族性の組換えによって置き換えられる。ここで説明されたように、遺伝子の目標設定を使って、遺伝子の既存の調節領域を、異なる遺伝子から分離された規制配列、又は遺伝子工学の方法により合成された新規性のある調節配列で置き換えられる。その様な調節配列は、プロモーター, エンハンサー、骨格取付領域、負の調節要素、転写始動部位、調節蛋白質結合部位、又はそれらの配列の組合せで構成される。代替的には,生成されたRNA又は蛋白質の構造又は安定性に影響する配列は、標的法によって取替え、除去、添加又は修正される。これらの配列は、ポリアデニル化信号、mRNA安定要素、スプライス部位,蛋白質の運送又は分泌特性を改善又は修正するリーダー配列、或いは、蛋白質又はRNA分子の機能又は安定性を変更または改良する、その他の配列で構成される。
【0160】
標的法は、単に調節配列を挿入することで、例えば、新しいプロモーター又はエンハンサー又は両者を遺伝子の上流に挿入し、遺伝子を新しい調節配列の支配下に置くことであるかも知れない。代替的には、標的法は、単に調節要素を削除することで、例えば、組織特異性のある負の調節要素を削除することである。代替方法としては、標的法で既存の要素を取替える;例えば、組織特異性のあるエンハンサーは、自然発生の要素よりも幅広い、又はそれとは異なった細胞タイプに特異性を持つエンハンサーで置き換えられる。ここでは、自然発生の配列は削除され、新しい配列が加えられる。いずれの場合でも、標的法の識別は、標的のDNAと隣接している1個又はそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を使えば容易になり、外因性DNAが宿主細胞ゲノムに結合した細胞を選択出来る。標的法の識別は、また、負の選択の特性を示す1個又はそれ以上のマーカー遺伝子を使っても容易になる。つまり負の選択可能マーカーは、外因性DNAに連結されるが、標的配列の脇に位置され、そして、宿主細胞ゲノムの中の配列と正しい同族性の組換えを行うものは、負の選択可能マーカーと安定した結合をしない。この目的に役立つマーカーには、単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、又は細菌性キサンチン‐グアニン・ホスホリボシル転移酵素(gpt)遺伝子を含む。
【0161】
本発明のこの面に従って使用できる遺伝子標的設定又は遺伝子活性化技術は、より詳細に米国特許No.5,272,071 チャッペル宛;米国特許No.5,578,461 シャーウインほか宛;国際申請No.PCT/US92/09627(WO93/09222)セルデン他より;そして国際申請No.PCT/US90/06436(WO91/06667)スコウルチ他より;これらはその全体をここに参考として含む。
【0162】
(5.9 遺伝子導入の動物)
本発明のポリペプチドの体内での生物機能を決める望ましい方法では、同族性の組換えを使っている動物の生殖系において、本発明が提供する1個又はそれ以上の遺伝子は超過発現されているか、又は活動停止となっている[カペッキ,Science 244:1288−1292(1989)]。外生又は内生プロモーター要素の調節管理の下で遺伝子が超過発現されている動物は、遺伝子導入の動物として知られる。同族性の組換えによって活動停止となっている内生の遺伝子をもつ動物は「ノックアウト」動物とよばれる。ノックアウト動物は望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、それについてはここに参考として含まれた米国特許No.5,557,032に記載のとおり、準備可能である。遺伝子導入の動物は、本発明のポリペプチドが生物学的なプロセス、望ましくは病気の状態で演じる役割を決めるのに役立つ。遺伝子導入の動物は、油脂の新陳代謝を調節する化合物を識別するモデルシステムとして有用である。遺伝子導入の動物は、望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、ここに参考として含まれた米国特許No.5,489,743とPCT Publication No.WO94/28122に記載された方法を使って作り出すことができる。
【0163】
本発明のポリヌクレオチドのプロモーターの全部か一部が活性化又は非活性化されて、本発明のポリヌクレオチドの発現のレベルが変更された場合、遺伝子導入の動物は準備できる。非活性化は、上記の同族性の組換え方法を使って実行できる。活性化は、蛋白質発現を増加するために、同族性のプロモーターを補充するか、又は取替えて達成出来る。同族性のプロモーターは、特定の組織にプロモーター活性を与えることが知られている1個又はそれ以上の異種のエンハンサー要素を挿入して補充できる。
【0164】
本発明のポリヌクレオチドは又、例えば同族性の組換え又はノックアウト方法を使って、CEA様ポリペプチドの機能を発現しない動物、又はCEA様ポリペプチドの変異種を発現する動物を開発することを可能にする。そのような動物は、CEA様ポリペプチドの生体内活動とそのモジュレーターを研究するモデルとして役に立つ。
【0165】
本発明のポリペプチドの体内での生物機能を決める望ましい方法では、同族性の組換えを使っている動物の生殖系において、本発明が提供する1個又はそれ以上の遺伝子は超過発現されているか、又は活動停止となっている[カペッキ,Science 244:1288−1292(1989)]。外生又は内生プロモーター要素の調節管理の下で遺伝子が超過発現されている動物は、遺伝子導入の動物として知られる。同族性の組換えによって活動停止となっている内生の遺伝子をもつ動物は「ノックアウト」動物と呼ばれる。ノックアウト動物は望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、それについてはここに参考として含まれた米国特許No.5,557,032に記載のとおり、準備可能である。遺伝子導入の動物は、本発明のポリペプチドが生物学的なプロセス望ましくは病気の状態で演じる役割を決めるのに役立つ。遺伝子導入の動物は、脂肪の新陳代謝を調節する化合物を同定するモデルシステムとして有用である。遺伝子導入の動物は、望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、ここに参考として含まれた米国特許No.5,489,743とPCT Publication No.WO94/28122に記載された方法を使って作り出すことができる。
【0166】
本発明のポリヌクレオチドのプロモーターの全部か一部が活性化又は非活性化されて、本発明のポリヌクレオチドの発現のレベルが変更された場合、遺伝子導入の動物は準備できる。非活性化は、上記の同族性の組換え方法を使って実行できる。活性化は、蛋白質発現を増加するために、同族性のプロモーターを補充するか、又は取替えて達成出来る。同族性のプロモーターは、特定の組織にプロモーター活性を与えることが知られている1個又はそれ以上の異種のエンハンサー要素を挿入して補充できる。
【0167】
(5.10 ヒトのCEA様ポリペプチドの用途と生物活性)
本発明のポリヌクレオチドと蛋白質は、ここに特定された1個又はそれ以上の用途又は生物活性(ここに挙げた検定に関連するものを含む)を示すことが期待される。本発明の蛋白質について説明された用途又は活性は、その蛋白質の投与又は使用あるいはその蛋白質をコードするポリヌクレオチドの投与又は使用によって提供される(例えば、DNAの導入に適した遺伝子治療やベクター)。特定の状態における反応機構又は病理学が、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド又はそのモジュレーター(活性化剤又は阻害剤)が治療を必要とする対象物に効果があるかどうかを決める。従って、「本発明の治療学的組成物」は以下の通りである:分離されたポリヌクレオチド(組換えDNA分子、,クローン遺伝子とその退化変異種を含む)から成る組成物、又は本発明のポリペプチド(全長蛋白質、成熟蛋白質及び切形又はそのドメインを含む)、又は標的遺伝子/蛋白質発現又は標的蛋白質の活性レベルのいずれかにおいて、標的遺伝子生成物の全体的活性を調整する化合物その他の物質。
【0168】
そのようなモジュレーターは、ポリペプチド、類似体、(変異体)で、フラグメントと融合蛋白質、抗体そして他の結合蛋白質、本発明のポリペプチドを直接又は間接に活性化又は抑制する化合物(ここで述べられたように、例えば薬剤スクリーニング検定で同定される化合物);三重へリックス形成に適したアンティセンスポリヌクレオチドとポリヌクレオチド、そして特に、本発明のポリペプチドの1個又はそれ以上のエピトープを特に認知する抗体又は他の結合剤を含む。本発明のポリペプチドは、同様に細胞の活性化に関係しているかも知れないし、又はここに述べられた、他の生理学的な経路の1つに関連しているかも知れない。
【0169】
(5.10.1 研究用途と実用性)
本発明が提供するポリヌクレオチドは研究者達により色々な目的に使用できる。例えば以下の様な用途がある:分析、特性付け、又は治療用に組換え蛋白質を発現させる為;対応する蛋白質が優先的に発現される組織のマーカーとして(構造的に、又は組織分化、発育又は病気の特定の段階で);ゲルの分子量マーカーとして;染色体識別又は関連遺伝子位置の地図を作成する為の染色体マーカー、又は標識として;潜在的な遺伝子障害を特定するために、患者の内因性DNA配列と比較する為;雑種形成のプローブとして使い、新しい関連性のあるDNA配列を発見する為;遺伝子フィンガープリンティング法のためにPCRプライマーを導く情報源として;他の新規のポリヌクレオチドを見つける過程で、既知の配列を「除外」するためのプローブとして;「遺伝子チップ」や他の支持体への付着用にオリゴマーを選別・作成する為;DNA免疫技術を使って、抗蛋白質抗体を作るため;そして、抗DNA抗体を作る又は他の免疫反応を引出すための抗原として。ポリヌクレオチドが、他の蛋白質に結合する又は結合する可能性のある蛋白質をコード化する場合(例えば、受容体とリガンドの相互作用において)、そのポリヌクレオチドを相互作用トラップ検定に使い(例えばギュリスほか、細胞 75:791−803(1993)で記述されたもの)、結合相手の蛋白質をコード化するポリヌクレオチドを識別したり、結合相互作用の抑制剤を同定したりすることも可能である。
【0170】
本発明が提供するポリペプチドは、同様に次のように生物活性を決めるための検定で使用できる:大量スクリーニングの為の複数蛋白質パネルで;抗体を作るため又は他の免疫反応を引出すため;生物の液体の蛋白質(又はその受容体)レベルを定量的に決定する為の検定で試薬として;対応するポリペプチドが優先的に発現される組織のマーカーとして(構造的に、又は組織分化、発育又は病気の特定の段階で);そして勿論、相関した受容体又はリガンドを分離するため。
【0171】
これらの結合の相互作用に係わる蛋白質は、ペプチド、結合相互作用の小分子抑制剤、又は作用薬のスクリーニングにも使用できる。
【0172】
本発明のポリペプチドはまた、CEA様蛋白質と特異的に免疫反応する抗体物質を作るのに役立つ。本発明のポリペプチドに結合する抗体とその部分(例えばFabフラグメント)は、試料の中のその様なポリペプチドの存在確認に使用できる。そのような確認は、適切な免疫検定法を使って行われ、抗体により特異的に結合される本発明のポリペプチドは正の制御として使用できる。
【0173】
いずれの研究材料も、試薬又はキットのレベルにまで開発し、研究用製品として商業化が可能である。
【0174】
上記に示した用途を実行する方法は当業界の熟練者には良く知られている。その様な方法を開示した参考資料は、以下のものを制限なく含む:「分子のクローニング:研究所マニュアル」,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,サムブルック,J.、E.F.フリッチとT.マニアティス編、1989、及び「酵素学方法論:分子クローニング 技術への手引き」、Academic Press,バーガー,S.L.及びA.R.キンメル編、1987。
【0175】
(5.10.2 栄養面での用途)
本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドは、栄養源又は栄養補助剤としても使用できる。そのような用途は、制限無く、蛋白質又はアミノ酸の栄養補助剤として、炭素、窒素、炭水化物のそれぞれの供給源として使用できる。その場合、ポリペプチド又は本発明のポリヌクレオチドは、特定の有機体の飼料に添加したり粉末、錠剤、溶液、縣濁液、カプセルなどの固体、液体の形で投与したりできる。微生物の場合、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドは微生物が培養されている培養基に添加できる。
【0176】
更に、本発明のポリペプチドは、分子量マーカーとして、また栄養補助食品として使用できる。例えば、SEQ ID NO:4を含むポリペプチドは、未処理でグリコシル化されていない状態では、約47kDAの分子量を持つ。蛋白質の補助食品は良く知られており、本発明のポリペプチドを含む適切な栄養補助食品の製剤方法は、食料製造業の技術レベルで対応出来る。
【0177】
(5.10.3 サイトカインと細胞増殖/分化の活動)
本発明のポリペプチドは、サイトカイン、細胞増殖(誘発又は抑制のどちらか)、細胞分化(誘発又は抑制のどちらか)の活動を示し、又はある細胞において他のサイトカインの生成を誘発するかもしれない。本発明のポリヌクレオチドはそのような特質を示すポリペプチドをコード化することが出来る。全ての既知のサイトキンを含めて、これまで発見された多くの蛋白因数は1回又はそれ以上の因数依存細胞増殖検定で活性を示した。従って、検定はサイトカイン活動の確認方法として便利である。本発明の治療学的組成物の活動は、因数依存細胞増殖検定によって立証されており、その細胞株は次のものを含む:32D,DA2,DA1G,T1O,B9,B9/11,BaF3,MC9/G,M+(preB M+),2E8,RB5,DA1,123,T1165,HT2,CTLL2,TF−1,Mo7e,CMK,HUVEC,及びCaco.
本発明の治療学的組成物は下記に場合に使用できる:
T−細胞又は胸腺細胞の増殖検定は、下記に述べられたものを制限無く含む:免疫学における現在のプロトコール,編集J.E.コリガン,A.M.クルイスビーク,D.H.マーグリース,E.M.シェバック,W.ストローバー,出版.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(第3章、ネズミのリンパ球機能の体外検定3.1−3.19;第7章,ヒトにおける免疫学の研究);高井ほか、J.Immunol.137:3494−3500,1986;バータニオリほか、J.Immunol.145:1706−1712,1990;バータニオリほか、細胞免疫学 133:327−341,1991;バータニオリほか、I.Immunol.149:3778−3783,1992;ボウマンほか、I.Immunol.152:1756−1761,1994。
【0178】
サイトカイン生成と/又は膵臓細胞、リンパ腺細胞、又は胸腺細胞の繁殖検定は下記に述べられたものを制限なく含む:ポリクローン性T細胞の刺激、クルイスビーク,A.M.and シェバック,E.M.免疫学における現在のプロトコール.J.E.e.a.コリガン編集.Vol I pp.3.12.1−3.12.14,John Wiley and Sons,Toronto.1994;及び、マウスとヒトのインターロイキン−γの測定、シュライバー,R.D.免疫学における現在のプロトコール.J.E.e.a.コリガン編集、Vol 1 pp.6.8.1−6.8.8,John Wiley and Sons,Toronto.1994。
【0179】
造血細胞及びリンパ球生成細胞の繁殖と分化の検定は、下記に述べられたものを制限無く含む:「ヒトとネズミ類のインターロイキン2と4の測定」、ボトムリ,K.,デイビス,L.S.及びリプスキー P.E.;「免疫学における現在のプロトコール」J.E.e.a.コリガン eds.Vol 1 pp.6.3.1−6.3.12、John Wiley and Sons,Toronto.1991;デフリースほか、J.Exp.Med.173:1205−1211,1991;モローほか、自然 336:690−692,1988;グリーンバーガーほか、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:2931−2938,1983;マウスとヒトのインターロイキン6の測定−ノーダン,R.免疫学における現在のプロトコールJ.E.コリガン eds.Vol 1 pp.6.6.1−6.6.5,John Wiley and Sons,Toronto.1991;スミスほか,Proc.Natl.Aced.Sci.U.S.A.83:1857−1861,1986;ヒトのインターロイキンIIの測定−ベネット,F.,ジアノッティ,J.,クラーク,S.C.及びターナー、K.J.免疫学における現在のプロトコール.J.E.コリガン編集.Vol 1 pp.6.15.1 John Wiley and Sons,Toronto.1991;マウスとヒトのインターロイキン9の測定−シアレッタA.,ジアノッティ,J.,クラーク,S.C.及びターナー,K.J.免疫学における現在のプロトコール.J.E.コリガンeds.Vol 1 pp − 6.13.1,John Wiley and Sons,Toronto.1991。
【0180】
T−細胞クローンの抗原反応検定(これは特に、増殖とサイトカイン生成を測定することによりAPC−T細胞の相互作用及びT細胞の直接効果に影響を与える蛋白質を同定する)は、下記に述べられたものを制限無く含む:免疫学における現在のプロトコール,編集:J.E.コリガン,A.M.クルイスビ−ク,D.H.マーグリース,E.M.シェバック,W.ストローバー、出版社 Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(第3章、マウスの白血球機能の体外 検定;第6章,サイトキンとそれらの細胞受容体;第7章,ヒトにおける免疫学の研究);ワインバーガーほか、Proc.Nad.Acad.Sci.USA 77:6091−6095,1980;ワインバーガーほか、Eur.J.Immun.11:405411,1981;高井ほか,J.Immunol.137:3494−3500,1986;高井ほか、J.,Immunol.140:508−512,1989。
【0181】
(5.10.4 幹細胞成長因子活性)
本発明のポリペプチドは、幹細胞成長因子活性を示し、始原生殖細胞、胎児幹細胞,造血幹細胞と/又は生殖細胞幹細胞を含むプルリポーテント(多能性)及びトチポーテント(全能性)幹細胞の増殖、分化と生存に関係しているかもしれない。本発明のポリペプチドを体内又は体外の幹細胞に投与すると、トチポーテント又はプルリポーテントな状態で細胞総数を維持したり拡大したりするかもしれない。それは、損傷した、又は病気にかかった組織の再構築、移植、生物薬剤の製造、バイオセンサーの開発に役立つかもしれない。大量のヒト細胞を製造する能力は次のような面で重要な応用範囲を持っている:ヒト蛋白質の生成。現在、パーキンソン氏病、アルツハイマー氏病、その他の神経退化の病気を治療するには、ヒト以外の供給源、ドナー、細胞移植などから取なければならない;移植用の組織、例えば骨髄、皮膚、軟骨、腱、骨、筋肉(心筋を含む),血管、網膜、神経細胞、胃腸の細胞;そして移植用の器官、例えば、腎臓、肝臓、膵臓(膵島細胞を含む)、心臓と肺臓。
【0182】
望ましい効果を達成するために、複数の異なった外因性の成長因子と/又はサイトカインを本発明のポリペプチドと共に投与することが考慮されており、成長因子には以下のものが含まれる:本文書で述べられている任意の成長因子、他の幹細胞維持因子、そして特に幹細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、Flt−3リガンド(Flt−3L)、インターロイキン,IL6に融合された組換え水溶性IL−6受容体、マクロファージ炎症蛋白I−アルファ(MIP−1−アルファ)、G−CSF、GM−CSF、トロンボポエチン(TPO)、血小板因子4(PF−4)、血小板から得られる成長因子(PDGF)、神経成長要素、そして繊維芽細胞基礎成長因子(bFGF)。
【0183】
トチポーテント幹細胞は、成熟細胞タイプのほぼ全てを発生させるので、培養液中でこれらの細胞を増殖すれば、大量の成熟細胞の生産を促進できる。幹細胞の培養技術は当業界で知られており、本発明のポリペプチドの投与は、他の成長因子そして/又はサイトキンと共に投与しても良いが、幹細胞の生存率と増殖を高めることが期待されている。これは、本発明のポリペプチドを培養基に直接投与することによって達成出来る。代替方法としては、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを形質移入された間質細胞が培養液又は体内の幹細胞用のフィーダー層として使える。フィーダー層の間質細胞は、胚体骨髄繊維芽細胞、骨髄間質細胞、胎児の肝臓細胞、又は培養された胚の繊維芽細胞を含む(参照:米国特許No.5,690,926)。
【0184】
幹細胞自体は、本発明のポリペプチドのオートクリン発現を誘発するために本発明のポリヌクレオチドを形質移入できる。これによって、分化されていないトチポーテント/プルリポーテント幹細胞株の生成が可能となり、それはそのままでも有益であるが、望みの成熟細胞タイプに分化することもできる。これらの安定した細胞株は分化されていないトチポーテント/プルリポーテントmRNAの源として、ポリメラーゼ連鎖反応実験用のcDNAのライブラリやテンプレートの作成に利用できる。これらの研究によって、幹細胞の増殖と/または維持を制御する幹細胞中の分化発現遺伝子の分離と同定が可能となる。トチポーテント幹細胞の増殖と維持は、多くの病理学的な症状の治療に役立つ。例えば、本発明のポリペプチドは、培養液中の幹細胞を操作して神経上皮細胞を作り、それを病気、自己免疫病、事故による傷害、又は遺伝障害 によって損傷を受けた細胞を補充したり、取替えたりするのに利用できる。
【0185】
本発明のポリペプチドは、神経細胞の増殖を誘発したり、神経と脳の細胞組織を再生したりする上で有用である。即ち、中枢及び末梢神経の疾病や神経障害、また、神経細胞や神経組織の退化、死滅、又は傷害を伴う機械的、外傷的障害の治療に使われる。更に、増殖した幹細胞は、遺伝子療法の為、そして移植後、置換組織の宿主拒否反応を減らす為、遺伝学的に変更することも出来る。
【0186】
本発明のポリペプチドの発現と幹細胞へのその影響も操作可能で、幹細胞の管理された分化を更に分化された細胞タイプにすることが出来る。分化されていない幹細胞個体群から特定の分化された細胞タイプの純粋個体群を取る広範囲に応用可能な方法は、選択可能なマーカーを作動する細胞タイプに特異的なプロモーターを使用することである。選択可能なマーカーは、望ましいタイプの細胞だけを生存させる。例えば、幹細胞は心筋細胞(ウオバスほか、分化,48:173−182,(1991);クルグほか、J.Clin.Invest、98(1):216−224,(1998))又は骨格筋肉細胞(ブラウダ−,L.W.組織工学理論 eds.ランザほか、Academic Press(1997))に分化するように誘発できる。代替方法としては、レチノイン酸のような分化因子と、内生的幹細胞因子の活性を抑制して分化を進める本発明ポリペプチドの拮抗剤の存在下に幹細胞を培養することによって、方向性を与えられた幹細胞の分化を達成出来る。
【0187】
幹細胞の体外培養体を使って、本発明のポリペプチドが幹細胞の成長因子活性を示すかどうかを判定することが出来る。幹細胞は様々な細胞源(造血幹細胞と胚体幹細胞を含む)から分離され、本発明ポリペプチドのみの存在下で、又は他の成長因子やサイトカインとの組み合わせによって、トンプソンほかによるProc.Natl.Acad.Sci,U.S.A.,92:7844−7848(1995)で述べられているように、フィーダー層で培養される。幹細胞の増殖を誘発する本発明のポリペプチドの能力は、例えばバーンスタイン他の「血液」77:2316−2321(1991)に述べられてあるように、半固体支持体上のコローニー形成によって決定される。
【0188】
(5.10.5 造血調節活性)
本発明のポリペプチドは造血調節に関連しており、従って、骨髄またはリンパ細胞障害の治療に関連するものである。コロニー形成細胞の支持、あるいは因子依存性細胞系の支持においてわずかでも生物活性があることから、造血調節への関与を示し、例えば、赤血球前駆細胞単独で、または他のサイトカインと共に成長や増殖を支持し、それによって、例えば、種々の貧血治療、または赤血球前駆体あるいは赤血球、またはそのいずれかの産生を刺激するための照射/化学療法と併用して使用するなどの利用性が示される、また、例えば、結果的に生じる骨髄抑制の予防または治療のための化学療法との併用において有用な顆粒球や単球/マクロファージ(すなわち、従来のCSF活性)などのような骨髄細胞の成長および増殖の支持において、巨核球の成長と増殖、したがって、血小板の成長・増殖を支持し、それによって、血小板減少症のような様々の血小板障害(疾患)に、一般に血小板輸血の代わりに、または補助として使用してその予防または治療を可能にする、および/あるいは、上記の造血細胞のいずれか、またはすべてに対して成熟を可能にする造血幹細胞の成長および増殖を支持し、したがって、種々の幹細胞障害(通常、再生不良性貧血および発作性夜間ヘモグロビン尿症をこれらに限らず含む移植によって通常治療される疾患など)、および、生体内か、または生体外(すなわち、骨髄移植、または末梢前駆細胞移植(相同または異種)と併せて)のいずれかにおいて、照射/化学療法後の幹細胞分画を正常細胞として、または遺伝子療法用遺伝子操作された細胞として再増殖させるなど、これらに限らず治療的利用性が示される。
【0189】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0190】
種々の造血細胞系の増殖および分化に適した検定は前記に引用した。
【0191】
胚性幹細胞分化(胚性分化造血に影響を及ぼすタンパク質を他から同定する)検定にはJohansson et al.Cellular Biology 15:141−151,1995;Keller et al.,Molecular and Cellular Biology 13:473−486,1993;McClanahan et al.,Blood 81:2903−2915,1993に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0192】
幹細胞の生存および分化のための検定(リンパ−造血を調節するタンパク質を他から同定する)はMethylcellulose colony forming assays,Freshney,M.G.In Culture of Hematopoietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.265−268,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Hirayama et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5907−5911,1992;Primitive hernatopoietic colony forming cells with high proliferative potential,McNiece,I.K.and Briddell,R.A.In Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney,et al.eds.Vol pp.23−39,Wiley−Liss,Inc New York,N.Y.1994;Neben et al.,Experimental Hematology 22:353−359,1994;Cobblestone area forming cell assay,Ploemacher,R.E.In Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney,et al.eds.Vol pp.1−21,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Long term bone marrow cultures in the presence of stromal cells,Spooncer,E.,Dexter,M.and Allen,T.In Culture of Hematoppietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.163−179,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Long term culture initiating cell assay,Sutherland,H.J.In Culture of Hematopoietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.139−162,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0193】
(5.10.6 組織成長活性)
本発明のポリペプチドは、また骨、軟骨、腱、靭帯および/または神経組織の成長あるいは再生、および創傷治癒および組織修復や置換や火傷、切開や潰瘍の治癒にも関与する。
【0194】
骨が正常に形成されていない場合において、靭帯または骨あるいはその両者の成長を促す本発明のポリペプチドは、人および他の動物における骨折および靭帯損傷あるいは欠損症の治癒において使用できる。本発明のポリペプチド、抗体、結合パートナーまたは他のモジュレータの組成物は開放骨折同様皮下骨折の軽減において予防的に使用でき、また人工関節の固定をも改善する場合がある。骨形成物質によって誘発される新規の骨形成は、先天性、外傷性、または腫瘍学的切除性頭蓋顔面欠損の修復に役立つし、また美容整形外科においても有用である。
【0195】
本発明のポリペプチドは、また骨形成細胞の誘引、骨形成細胞の成長刺激、骨形成細胞前駆体の分化の誘導に関与する。骨または靭帯修復あるいはその両者の刺激によるか、または、炎症あるいは炎症過程により媒介される組織破壊過程(コラゲナーゼ活性化、破骨細胞活性化など)を阻止するによる、骨粗しょう症、変形性関節炎(骨関節炎)、骨変性疾患、または歯周病の治療もまた本発明の組成物の使用が可能な場合がある。
【0196】
本発明のポリペプチドが関与する組織再生活性のもう一つのカテゴリーは、腱/靭帯様組織形成である。腱/靭帯様組織または他の組織形成の誘発は、これらの組織が正常に形成されていない場合において、人および他の動物における腱あるいは靭帯の損傷、奇形および他の腱または靭帯欠損の治癒に使用できる。このような腱/靭帯様組織誘発性タンパク質を使用した製剤は、腱または靭帯の骨あるいは他の組織への固定改善や、腱または靭帯組織の欠損修復にも使用できるだけでなく、腱または靭帯組織の破損を防ぐための予防にも使用できる場合がある。本発明の組成物によって誘発されたデノボ腱/靭帯様組織形成は、先天性、外傷性、または他の原因の腱あるいは靭帯欠損の修復に寄与し、また、腱または靭帯の取付け、修復のための美容整形手術にも使用できる。本発明の組成物は腱または靭帯形成細胞の誘発、腱または靭帯形成細胞の成長刺激、腱または靭帯形成細胞前駆体の分化の誘導、あるいは、腱/靭帯細胞または組織修復に作用するよう生体内に戻す生体外前駆体の成長の誘発を行う環境を提供する。
【0197】
本発明の組成物は、また腱炎、手根管症候群および他の腱または靭帯欠損症の治療にも有用である。本組成物には、また適切な基質および/または技術上周知のキャリアとしての隔離作用物質も含まれていることがある。
【0198】
本発明の組成物はまた、神経細胞の増殖と神経や脳組織の再生、すなわち、中枢および末梢神経系疾患や神経障害の治療に有用であるだけでなく、また神経細胞や神経組織の変性、死または外傷を含む機械的、外傷性障害にも有用である。さらに厳密には、末梢神経損傷、末梢神経障害および限局性神経障害などのような末梢神経系疾患、また、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症およびシャイ・ドレーガー症候群などの中枢神経系疾患の治療にも使用することができる。さらに、本発明によって治療される状態には、脊髄障害、脳外傷のような機械的、外傷性疾患および脳卒中のような脳血管疾患が含まれる。
【0199】
本発明の組成物は、またプレッシャー潰瘍、血管性機能不全に関連する潰瘍、手術創傷および外傷性創傷などをこれらに限らず含む非治癒性創傷の閉合をより良く、より速く促進するのに役立つ場合がある。
【0200】
本発明の組成物はまた、臓器(例えば、膵臓、肝臓、腸、腎臓、皮膚、内皮を含む)、筋肉(平滑筋、骨格筋肉、心筋)および血管(血管内皮を含む)組織などのような他の組織の産生または再生、あるいは、このような組織を形成する細胞の増殖の促進にも関与する。望ましい効果の一部は正常組織の再生を可能する線維性瘢痕の抑制または変調による。本発明のポリペプチドはまた、血管原性作用をも示す場合がある。
【0201】
本発明の組成物は、また腸保護、または肺や肝臓線維症の治療、種々の組織の再灌流損傷および組織的サイトカイン損傷から生じた状態にも有用である。
【0202】
本発明の組成物はまた、前駆体組織や前駆体細胞からの、前記した組織の分化を促進または阻害するために、または前記の組織の成長阻害にも有用である。
【0203】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0204】
組織産生活性検定にはInternational Patent Publication No.WO95/16035(bone,cartilage,tendon);International Patent Publication No.WO95/05846(nerve,neuronal);International Patent Publication No.WO91107491(skin,endothelium)に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0205】
創傷治癒活性検定にはWinter,Epidermal Wound Healing,pp.71−112(Maibach,H.I.and Rovee,D.T.,eds.),Year Book Medical Publishers,Inc.,Chicago,as modified by Eaglstein and Mertz,J.Invest.Dermatol 71:382−84(1978)に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0206】
(5.10.7 免疫機能刺激または抑制活性)
本発明のポリペプチドはまた、ここに記載の検定による活性をこれに限らず含む免疫刺激または免疫抑制活性を示す。本発明のポリヌクレオチドはこのような活性を示すポリペプチドをコードできる。タンパク質は、種々の免疫不全や免疫疾患(重症複合型免疫不全症(SCID)など)の治療、例えば、Tおよび/またはBリンパ球の成長や増殖の調節(上方、または下方)と同様、NK細胞や他の細胞集団の細胞溶解活性への作用においても有用である。これらの免疫不全は細菌あるいは真菌感染によるだけでなく、遺伝的またはウイルス(例えば、HIV)、あるいは自己免疫疾患によって引き起こされる場合がある。さらに厳密には、HINT、肝炎ウイルス、ヘルペス・ウイルス、放線菌、Leishmania spp(リーシュマニア属)、マラリアspp.による感染症およびカンジダ症などのような種々の真菌感染症を含み、ウイルス、細菌、真菌または他の感染症によって生じる感染疾患は、本発明のタンパク質を用いて治療できる場合がある。もちろん、この点で、本発明のタンパク質は、免疫系への強化が一般に望ましい場合に、つまり、癌の治療においてもまた有用である。
【0207】
本発明のタンパク質を用いて治療される自己免疫疾患には、例えば、結合組織病、多発性硬化病、全身性エリテマトーデス、関節リューマチ、自己免疫肺性炎症、ギラン・バレー症候群、自己免疫甲状腺炎、インシュリン依存性真性糖尿病、重症筋無力症、移植片対宿主疾患および、自己免疫炎症性眼疾患が含まれる。このような本発明のタンパク質(または抗体を含むその拮抗物質)は、喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸器系障害のようなアレルギー反応および状態(例えば、アナフィラキシー、血清病、薬物反応、食物アレルギー、昆虫毒液アレルギー、肥満細胞症、アレルギー性鼻炎、過敏性肺炎、蕁麻疹、血管性浮腫、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、多型性紅疹、スティーヴンス・ジョンソン症候群、アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、性病性角結膜炎、巨大乳頭状結膜炎、接触アレルギー)の治療にも有用である。他の免疫抑制が望まれる(例えば、臓器移植を含む)状態もまた、本発明のタンパク質(またはその拮抗物質)を用いて治療することができる場合がある。ポリペプチドまたはその拮抗物質のアレルギー反応に対する治療効果は、累積性接触増加テスト(Lastbom et al.,Toxicology 125:59−66,1998)、皮膚突き傷テスト(Hoffmann et al.,Allergy 54:446−54,1999)、モルモット皮膚感作テスト(Vohr et al.,Arch.Toxocol.73:501−9)、およびマウス局部リンパ節試験assay(Kimber et al.,J.Toxicol.Environ.Health 53:563−79)などの生体内動物モデルによって評価できる。
【0208】
本発明のタンパク質を用いる場合、また、多くの方法で免疫反応を変調することも可能である。下方調節は、すでに進行中の免疫反応を抑制するか、または阻止するやり方で行われるか、あるいは、免疫反応の誘導の防御に関与する。活性T細胞の機能はT細胞反応の抑制によるか、またはT細胞における特異的トレランス(寛容)の誘導によって、あるいはその両方によって抑制される。T細胞反応の免疫抑制は一般に活性、非抗原特異的過程であり、これはT細胞の抑制物質への持続的暴露を必要とする。T細胞での非反応性または無反応の誘導に関連するトレランスは、それが一般に抗原特異的であり、寛容化物質への暴露が中止された後にも持続するという点で免疫抑制と区別される。操作的には、トレランスは、寛容化物質の無い状態における特定抗原への再暴露時にT細胞反応が起こらないことによって示される。
【0209】
下方調節または1つ以上の抗原機能(Bリンパ球抗原機能(例えば、B7のように)をこれに限らず含む)の防御、例えば、活性T細胞による高度レベルのリンホカイン合成の防御は、組織、皮膚および臓器移植の状態において、また、移植片対宿主疾患(GVHD)において有用である。例えば、T細胞機能を阻止することは、組織移植における組織破壊を減少する結果となるはずである。一般に、組織移植において移植の拒絶反応は、T細胞がそれを異物として認識することによって開始され、その後に移植片を破壊する免疫反応が続く。本発明の治療的組成物の投与は、T細胞のような免疫細胞によるサイトカインの合成を妨げ、したがって、免疫抑制剤として作用する。さらに、同時刺激がないことによって、T細胞が無反応化(アネルギー化)されることになり、これによって、被験者におけるトレランスが誘導される場合もある。Bリンパ球抗原阻止試薬による長期トレランスの誘導によって、これらの阻止剤の反復投与の必要性がなくなる。
【0210】
被験者において十分な免疫抑制またはトレランスを得るには、Bリンパ球抗原の組合せの機能を阻止する必要がある場合もある。
【0211】
臓器移植拒絶反応またはGVHDの予防における特定の治療的組成物の効力は、ヒトにおける有効性についての予測である動物モデルを用いて評価することができる。使用できる適切なシステムの例として、ラットにおける同種心臓移植片や、マウスにおける異種間膵島細胞移植片があり、これらのどちらもが、Lenschow et al.,Science 257:789−792 (1992) およびTurka et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:11102−11105(1992)に述べられているように生体内CTLA4Ig 融合タンパク質の免疫抑制効果を検査するために使われている。さらに、GVHD(移植片対宿主疾患)のマウスモデル(Paul ed.,Fundamental Immunology,Raven Press,New York,1989,pp.846−847参照)はこの疾患の進展時の本発明の治療的組成物の効果を測定するために使うことができる。
【0212】
抗原機能の阻止は、また自己免疫疾患の治療に対して治療的に有用である。多くの自己免疫疾患は、自己組織に反応的なT細胞の不適切な活性化の結果、および、その疾患の病態に関与するサイトカインや自己抗体の産生を促進した結果である。自己反応性T細胞の活性化の防御は病状を減少するか、または除去する。T細胞の刺激を阻止する試薬の投与は、T細胞活性化の抑制、およびこの疾患の過程に関与する自己抗体またはT細胞由来サイトカインの産出の防御に使うことができる。さらに、ブロッキング試薬の効力によって、この疾患からの長期的緩解につながる自己反応性T細胞の抗原特異的トレランスが誘導される場合がある。自己免疫疾患の予防または緩解におけるブロッキング試薬の効力は、よく特徴化された、ヒト自己免疫疾患の動物モデルを用いて測定できる。この例には、マウス実験的自己免疫脳炎、MRL/lpr/lprマウスまたはNZBハイブリッド・マウスにおける全身性エリテマトーデス、マウス自己免疫性膠原関節炎、NODマウスおよびBBラットにおける真性糖尿病、マウス実験的重症筋無力症(Paul ed.,Fundamental Immunology,Raven Press,New York,1989,pp.840−856参照)がある。
【0213】
免疫反応を上げる手段としての抗原機能の上方調節(例、Bリンパ球抗原機能)は、また治療においても有用である。免疫反応の上方調節は既存の免疫反応を亢進させる形式か、または初期の免疫反応を誘発する形式で行われる。例えば、免疫反応の亢進は、インフルエンザ、感冒、および脳炎などのような全身性ウイルス疾患を含むウイルス感染の場合に有用な場合がある。
【0214】
あるいは、感染した患者の抗ウイルス性免疫反応は、患者からT細胞を除去し、本発明のペプチドを発現するか、あるいは本発明の水溶性ペプチドの刺激性形態のものと共に、ウイルス抗原パルス化APCで、試験管内でT細胞を同時刺激し、そして、試験管内活性T細胞を患者に再び導入することによって増強されることがある。
【0215】
抗ウイルス免疫反応を亢進させる他の方法は、患者から感染細胞を分離し、それらに、細胞がその表面にタンパク質のすべて、または一部を発現するように、ここに記載する本発明のタンパク質をコードする核酸で形質移入し、そして、形質移入された細胞を患者に再び導入することであろう。ここで、感染細胞は同時刺激シグナルを送ることができ、それによって生体内でT細胞を活性化できるであろう。
【0216】
本発明のポリペプチドは形質移入された腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫反応を誘導するために必要な刺激シグナルを提供する。さらに、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子を持たない、または、十分な量のMHCクラスIまたはMHCクラスII分子を再発現できない腫瘍細胞は、MHCクラスIアルファ鎖タンパク質とβ2ミクログロブリンタンパク質、あるいは、MHCクラスIIアルファ鎖タンパク質とMHCクラスIIベータ鎖タンパク質のすべて、または一部(例えば、細胞質内ドメイン切断部分)のすべて、または一部をコードする核酸で形質移入して、それによって、細胞表面にMHCクラスIまたはMHCクラスIIタンパク質を発現させることができる。Bリンパ球抗原(例えば、B7−1、B7−2、B7−3)の活性を有するペプチドと共に、適切なクラスIまたはクラスIIMHCを発現させることによって、形質移入された腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫反応が誘導される。随意に、インバリアント(不変異)鎖のようなMHCクラスII結合タンパク質の発現を阻止するアンチセンス作成物をコードする遺伝子は、Bリンパ球抗原の活性を有するペプチドをコードするDNAで同時形質移入して、腫瘍関連抗原の提示を促進し腫瘍特異的免疫を誘導することができる。このようにして、ヒト被験者におけるT細胞媒介免疫反応の誘導は、被験者における腫瘍特異的トレランスを十分克服できる。
【0217】
本発明のタンパク質の活性は、他にも方法はあるが、次の方法によって測定される。
【0218】
適切な胸腺または脾細胞の細胞毒性検定には、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 3,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;Chapter 7,Immunologic studies in Humans);Herrmann et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2488−2492,1981;Herrmann et al.,1.Immunol.128:1968−1974,1982;Handa et al.,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takai et al.,1.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai et al.,J.Immunol.140:508−512,1988;Bowman et al,,J.Virology 61:1992−1998;Bertagnolli et al.,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Brown et al.,J.Immunol.153:3079−3092,1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0219】
T細胞依存性免疫グロブリン反応およびアイソタイプスイッチング(T細胞依存性抗体反応を変調し、Thl/Th2プロフィールに影響するタンパク質を他から同定する)の検定にはMaliszewski,J.Immunol.144:3028−3033,1990;およびAssays for B cell function:In vitro antibody production,Mond,J.J.and Brunswick,M.In Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan eds.Vol 1 pp.3.8.1−3.8.16,John Wiley and Sons,Toronto.1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0220】
混合リンパ球反応(MLR)検定(主にTh1とCTL反応を生じるタンパク質を他から同定する)にはCurrent Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 3,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;Chapter 7,Immunologic studies in Humans);Takai et al.,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai et al.,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolli et al.,J.Immunol.149:3778−3783,1992に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0221】
樹状突起細胞依存性検定(未処置のT細胞を活性化する樹状突起細胞によって発現されるタンパク質を他から同定する)にはGuery et al.,J.Imimmol.134:536−544,1995;Inaba et al.,Journal of Experimental Medicine 173:549−559,1991;Macatonia et al.,Journal of Immunology 154:5071−5079,1995;Porgado et al.,Journal of Experimental Medicine 182:255−260,1995;Nair et al.,Journal of Virology 67:4062−4069,1993;Huang et al.,Science 264:961−965,1994;Macatonia et al.,Journal of Experimental Medicine 169:1255−1264,1989;Bhardwaj et al.,Journal of Clinical Investigation 94:797−807,1994;and Inaba et al.,Journal of Experimental Medicine 172:631−640,1990に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0222】
リンパ球生存/アポトーシスの検定(スーパー抗原誘導後のアポトーシスを防ぐタンパク質およびリンパ球ホメオスタシスを調節するタンパク質を他から同定する)にはDarzynkiewicz et al.,Cytometry 13:795−808,1992;Gorczyca et al.,Leukemia 7:659−670,1993;Gorczyca et al.,Cancer Research 53:1945−1951,1993;Itoh et al.,Cell 66:233−243,1991;Zacharchuk,Journal of Immunology 145:4037−4045,1990;Zamai et al.,Cytometry 14:891−897,1993;Gorczyca et al.,International Journal of Oncology 1:639−648,1992に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0223】
T細胞コミットメントおよび発達の初期段階に影響するタンパク質の検定には:Antica et al.,Blood 84:111−117,1994;Fine et al.,Cellular Immunology 155:111−122,1994;Galy et al.,Blood 85:2770−2778,1995;Toki et al.,Proc.Nat.Acad Sci.USA 88:7548−7551,1991に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0224】
(5.10.8 アクチビン/インヒビン活性)
本発明のポリペプチドは、またアクチビンまたはインヒビン関連活性をも示す。本発明のポリヌクリオチドはこのような特性を示すポリペプチドをコードする。インヒビンは卵胞刺激ホルモン(FSH)の遊離を抑制する能力によって特徴づけられており、一方、アクチビンは卵胞刺激ホルモン(FSH)の遊離を刺激する能力によって特徴づけられている。このように、本発明のポリペプチドは、単独で、またはインヒビン系統群の一メンバーとのヘテロダイマー(ヘテロ二量体)として、雌哺乳類の受精能を減少させ、雄哺乳類の精子形成を減少させるインヒビンの機能に基づいた避妊薬として有用である。十分量の他のインヒビンを投与することによって、これらの哺乳類における不妊を誘発できる。あるいは、本発明のポリペプチドは、ホモダイマーとして、または他のタンパク質のインヒビン群サブユニットを持つヘテロダイマーとして、脳下垂体前葉細胞からのFSH(卵胞刺激ホルモン)遊離の刺激におけるアクチビン分子の機能に基づいた、受精能誘発治療剤として有用である。例えば、米国特許番号.4,798,885を参照されたし。本発明のポリペプチドは、また雌牛、羊および豚に限らず、このような家畜類の生涯生殖能を増加するように、性的に未熟な哺乳類の受精能の開始を前進させるためにも有用である。
【0225】
本発明のポリペプチドの活性は、他にも方法はあるが、次の方法によって測定できる。
【0226】
アクチビン/インヒビン活性の検定には、Vale et al.,Endocrinology 91:562−572,1972;Ling et al.,Nature 321:779−782,1986;Vale et al.,Nature 321:776−779,1986;Mason et al.,Nature 318:659−663,1985;Forage et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3091−3095,1986に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0227】
(5.10.9 走化性/化学運動性活性)
本発明のポリペプチドは例えば、単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、肥満細胞、好酸球、上皮細胞または/および内皮細胞を含む哺乳類細胞の走化性または化学運動性活性に関与する。本発明のポリヌクレオチドは、そのような属性を示すポリペプチドをコードすることができる。走化性および化学運動性レセプターの活性は、作用の望ましい部位へ望ましい細胞集団を動員するか、誘引するために使うことができる。走化性/化学運動性組成物(例えば、タンパク質、抗体、結合パートナー、または発明のモジュレータは局所性感染症の治療においてだけでなく、創傷や他の組織の外傷の治療においても特定の利益を与える。例えば、リンパ球、単球または好中球の、腫瘍または感染部位への誘引によって、腫瘍または感染物質に対する免疫反応が改善される場合がある。
【0228】
タンパク質または、ペプチドは特定の細胞集団に対して、そのような細胞集団の方向または運動を直接または間接的に刺激できる場合、走化性活性を有する。好ましくは、タンパク質またはペプチドは細胞の有向運動を直接刺激する機能を有する。特定のタンパク質が細胞集団に対する走化性活性を有するかどうかは、そのタンパク質またはペプチドに周知の細胞走化性検定を行うことによって容易に判定できる。
【0229】
本発明の治療的組成物は以下において用いることができる。
【0230】
走化性活性の検定(走化性を誘導する、または防ぐタンパク質を同定する)は、蛋白質が1つの細胞集団の他の細胞集団への付着を誘導する能力だけでなく、タンパク質が膜内で細胞の遊走を誘導する能力をも検定する試験法からなる。
【0231】
移動および付着の適切な検定にはCurrent Protocols in Immunology,Ed by 1.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Marguiles,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 6.12,Measurement of alpha and beta Chemokines 6.12.1−6.12.28;Taub et al.J.Clin.Invest.95:1370−1376,1995;Lind et al.APMIS 103:140−146,1995;Muller et al Eur.J.Immunol.25:1744−1748;Gruber et al.J.of Immunol.152:5860−5867,1994;Johnston et al.J.of Immunol.153:1762−1768,1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0232】
(5.10.10 走化性および血栓溶解活性)
本発明のポリペプチドは、また止血、血栓溶解あるいは血栓症にも関与する場合がある。本発明のポリヌクレオチドは、そのような属性を示すポリペプチドをコードできる。組成物は種々の凝固障害(血友病のような遺伝的疾患を含む)の治療において、または外傷、手術あるいは他の原因から生じた創傷の治療において凝固や他の止血を促進させるために有用である。本発明の組成物は、また血栓の溶解または形成抑制およびそれから生じる状態(例えば、心臓や中枢神経血管の梗塞(例えば、脳卒中)のような)の治療や予防にも有用である。
【0233】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0234】
止血や血栓活性の検定には、Linet et al.,J.Clin.Pharmacol.26:131−140,1986;Burdick et al.,Thrombosis Res.45:413−419,1987;Humphrey et al.,Fibrinolysis 5:71−79(1991);Schaub,Prostaglandins 35:467−474,1988に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0235】
(5.10.11 癌の診断および治療)
本発明のポリペプチドは癌細胞の産生、増殖または転移にも関与する。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在または量の検出は、1種以上の癌の診断および/または予知に有用である。例えば、本発明のポリヌクレオチド/ポリペプチドの存在または発現の増加によって、癌の遺伝性危険、前癌状態または進行性悪性腫瘍が示される場合がある。逆に、遺伝子における欠損、またはこのポリペプチドの不在は、癌状態に関連する場合がある。また、癌または癌の素因に関連する単一ヌクレオチド多型の同定は、診断あるいは予測にも役立つ場合がある。
【0236】
癌の治療では、腫瘍細胞増殖の抑制、血管新生(腫瘍増殖の補助に必要な新血管の成長)の抑制および/または腫瘍細胞の運動性や侵襲性を減らして転移を妨げることによって腫瘍の退行を促進する。本発明の治療的組成物は成人および小児腫瘍において有効であり、これには、充実性腫瘍/悪性腫瘍、局所進行性腫瘍、ヒト軟部組織肉腫、リンパ性転移などの転移性癌、多発性骨髄腫、急性・慢性白血病、リンパ腫などの血球悪性腫瘍が含まれ、また、口癌、喉頭癌、甲状腺癌を含む頭部および頸部の癌、小細胞癌、非小細胞癌を含む肺癌、小細胞癌および管性癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸を含む消化管癌、および結腸直腸異常増殖に合併するポリープ、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌や前立腺癌を含む泌尿器癌、卵巣癌、子宮(子宮内膜を含む)癌、卵胞のsolid腫瘍を含む女性生殖器官の悪性腫瘍、腎細胞癌を含む腎臓癌、内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、アストロサイト(星状細胞)脳腫瘍、神経膠腫、中神経系における転移腫瘍細胞侵襲を含む脳腫瘍、骨腫を含む骨癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、血管外皮細胞腫およびKarposi肉腫が含まれる。
【0237】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのモジュレータ(本発明のポリペプチドの生物活性のインヒビターと刺激物質を含む)は癌の治療のために投与される場合がある。治療的組成物は、単独に、または手術、化学療法、放射線療法、温熱療法およびレーザー療法のような癌の補助的療法と併せて治療的効果用量で投与することができ、有利な効果、例えば、腫瘍のサイズを減少する、腫瘍の成長速度を低下する、転移の阻害、または癌を必ずしも根絶させないで全体的な臨床状態を改善するなどの効果を提供する場合がある。
【0238】
本組成物は抗癌カクテルの一部として治療的有効量を投与することができる。抗癌カクテルは、本発明のポリペプチドまたはモジュレータと薬剤学的に許容される送達用キャリアに一種以上の抗癌剤を加えた配合剤である。癌の治療として抗癌カクテルを使用することは、日常的になっている。本発明のポリペプチドまたはモジュレータと組み合わせて治療として使用できる技術上周知の抗癌剤には、アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブチル、シスプラチン、(cis−DDP)、シクロホスファミド、塩酸シタラビン(シトシン・アラビノシド)、ダカルバジン、ダクチノマイシンン、ダウノマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、エストラムスチン燐酸ナトリウム、エトポシデ、(V16−213)、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル(5−Fu)、フルタミデ、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロン・アルファ−2s、インターフェロン・アルファ−2b、酢酸リュープロライド(LHRH−遊離因子類似体)、ロムスチン、塩酸メクロレタミン(ナイトロジェン・マスタード)、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、(MTX)、マイトマイシン、塩酸ミトキサントロン、オクトレオチド、プリカマイシン、塩酸プロカルバジン、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェンク、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、アムサクリン、アザシチジン、ヘキサメチルメラニン、インターロイキン−2、ミトグアゾン、ペントスタチン、セムスチン、テニポシデ、およびビンデシン硫酸がある。
【0239】
さらに、本発明の治療的組成物は、癌の予防的治療用に使うことができる。個人が癌になりやすい、技術上周知の遺伝的状態および/または環境状態(例えば、発癌物質への暴露)がある。これらの環境において、癌になる危険を少なくするために、治療的有効量の本発明のポリペプチドでこれらの個人を治療することは、有利な場合がある。
【0240】
試験管内モデルを用いて、可能性のある癌の治療としての本発明のポリペプチドの有効量を測定することができる。これらの試験管内モデルには、培養腫瘍細胞増殖の検定、軟寒天における培養腫瘍細胞の増殖(Preshney,(1987) Culture of Animal Cells:A manual of Basic Technique,Wily−Liss,New York,NY Ch 18 and Ch 21参照)、Giovanella et al.,J.Natl.Can.Inst,52:921−30(1974)に記載のヌードマウスにおける腫瘍システム、Pilkington et al.,Anticancer Res.,17:4107−9(1997)に記載のBoyden Chamber 検定における腫瘍細胞の移動性と侵襲性の可能性、および、Ribatta et al.,Intl,J.Dev.Biol.,40:1189−97(1999)やLi et al.,Clin.Exp.Metastasis,17:423−9(1999)に各々記載の鶏絨毛尿膜の血管新生の誘導、または血管内皮細胞遊走の誘導のような血管形成の検定がある。適切な腫瘍細胞系は例えば、American Type Tissue Culture Collection カタログから入手できる。
【0241】
(5.10.12 レセプター/リガンドの活性)
本発明のポリペプチドはまた、レセプター/リガンド相互作用のレセプター、レセプターリガンド、またはインヒビターあるいは、アゴニスト(作動薬)としての活性を示す。本発明のポリヌクレオチドはこのような特性を示すポリペプチドをコードする。このようなレセプターおよびリガンドの例には、サイトカイン・レセプターとそのリガンド、レセプター・キナーゼとそのリガンド、レセプター・ホスファターゼとそのリガンド、細胞間相互作用に関与するレセプターとそのリガンド(セレクチン、インテグリンおよびそれらのリガンドのような)細胞接着分子をこれに限らず含む)および抗原表示、抗原認識および細胞性、体液性免疫反応の進展に関与するレセプター/リガンド対があり、またこれらに限らない。レセプターとリガンドは、また関連するレセプター/リガンド相互作用の可能性があるペプチドまたは小分子インヒビターのスクリーニングにも役立つ場合がある。本発明のタンパク質(レセプターの断片とリガンドをこれらに限らず含む)はそれ自体レセプター/リガンド相互作用のインヒビターとして有用である。
【0242】
本発明のポリペプチドの活性は、他に方法もあるが、以下の方法によって測定できる。
【0243】
レセプターーリガンド活性の適切な検定には、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 7.28,Measurement of Cellular Adhesion under static conditions 7.28.1−7.28.22),Takai et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6864−6868,1987:Bierer et al.,J.Exp.Med.168:1145−1156,1988;Rosenstein et al.,J.Exp.Med.169:149−160 1989;Stoltenborg et al.,J.Immunol.Methods 175:59−68,1994;Stitt et al.,Cell 80:661−670,1995に記載の検定があり、また検定はこれらに限らない。
【0244】
例として、本発明のポリペプチドは、1つまたは複数のリガンドのレセプターとして使われ、それによってそのリガンドの生物活性が伝達される。リガンドは結合検定、アフィニティ・クロマトグラフィ、ダイハイブリッド・スクリーニング検定、BIAコア検定、ゲル・オーバレイ検定または技術上周知の他の方法によって同定できる。
【0245】
薬物またはタンパク質がアゴニスト(作動薬)か、またはアンタゴニスト(拮抗薬)、あるいは部分的アゴニストか、または部分的アンタゴニストかの特性を決める試験には、競合的リガンドとしての他のタンパク質を使う必要がある。本発明のポリペプチドまたはそのリガンドは、従来の方法によって放射性同位元素、比色定量分子または毒素分子に結合されて標識される(「Guide to Protein Purification」 Murray P.Deutscher(ed)Methods in Enzymology Vol.182(1990)AcademicPress,Inc.San Diego)。放射性同位元素の例としては、トリチウムや炭素−14があるが、これらに限定されない。比色定量分子の例には、フルオレサミンのような蛍光分子、またはローダミンや他の比色定量分子があり、またこれらに限定されない。毒素の例には、リシンがあり、またこれに限定されない。
【0246】
(5.10.13 薬物スクリーニング)
本発明は様々な薬物スクリーニング技法のいずれかにおいて、新しいポリペプチドまたはその結合断片を用いて、化合物をスクリーニングするのに役立つ。このような試験に用いるポリペプチドまたは断片(フラグメント)は、溶液中に遊離しているか、または固体支持体に付着しているか、あるいは、細胞表面に生じるか、または細胞内にある。薬物スクリーニングの1つの方法では、真核または原核宿主細胞を利用し、これらはポリペプチドまたはその断片を発現する組み換え核酸で安定に形質転換される。薬物は結合蛋白競合測定法で、このような形質転換細胞に対してスクリーニングされる。生存能力のある、または固定化された形のこのような細胞は、標準結合検定に使うことができる。例えば、本発明のポリペプチドまたは断片とテストされた物質との間の複合物形成を測定するか、または新しいポリペプチドと技術上周知の適切な細胞系との間の複合形成における減少を調べることができる
結合能力、または本発明のポリペプチドの活性を変調する(すなわち、増加または減少させる)能力をスクリーニングできる検査化合物のソースとして、(1)無機および有機化合物ライブラリー、(2)天然物ライブラリーおよび(3)ランダムまたは模倣ペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機分子からなるコンビナトリアル・ライブラリーがある。
【0247】
ケミカルライブラリーは多くの市販源から容易に合成または購入でき、また、これには既知の化合物の構造的類似体、または天然物スクリーニングを介して「ヒット」または「リード」と同定されている化合物が含まれる。
【0248】
天然物ライブラリーのソースは、微生物(細菌や真菌を含む)、動物、植物または他の植生または海洋生物であり、また、スクリーニング用混合ライブラリーは、(1)土壌、植物または海洋微生物からのブロスの発酵および抽出、または(2)微生物自体からの抽出によって作成できる。天然物ライブラリーには、ポリケチド、非リボソーム・ペプチドおよびその(非天然性発生)変異体がある。総説は、Science 282:63−68(1998)を参照されたし。
【0249】
コンビナトリアル・ライブラリーは、多数のペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機化合物からなり、従来の自動合成法、PCR、クローニングまたは特許化された合成方法によって容易に作成することができる。ペプチドとオリゴヌクレオチド・コンビナトリアル・ライブラリーが特に興味深い。なお、この他に興味深いライブラリーには、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣、
多平行型合成収集、リコンビナトリアル、およびポリペプチド・ライブラリーがある。コンビナトリアル・ケミストリーとそれから作成されたライブラリーの総説はMyers,Curr.Opin.Biotechnol.8:701−707(1997)を参照されたし。ペプチド模倣ライブラリーの総説および例は、Al−Obeidi et al.,Mol.Biotechnol,9(3):205−23(1998);Hruby et al.,Curr Opin Chem Boil,1(1):114−19(1997):Dorner et al.,Bioorg Med Chem,4(5):709−15(1996)(アルキル化ジペプチド)を参照されたし。
【0250】
ここに記載する種々のライブラリーを使用してモジュレータを同定することによって、本発明のポリペプチドに結合する「ヒット」の能力を至適化するための「ヒット」(または「リード」)候補の修飾(変更)が可能になる。次に、結合能検定で同定された分子について、生体内組織培養または技術上周知の動物モデルにおいてアンタゴニストまたはアゴニスト活性の測定を行う。要するに、分子を多数の細胞培養または動物に滴定して、次に細胞/動物の死亡または細胞/動物の生存延長についてテストする。
【0251】
このように、結合分子は毒素、例えば、リシンまたはコレラとの複合体を作るか、または放射性同位元素のような細胞に毒性のある他の化合物との複合体を作る。次に、毒素結合分子複合体は、結合分子の本発明のポリペプチドに対する特異性によって腫瘍または他の細胞を標的にする。あるいは、結合分子は標的化および映像目的のためのイメージング(画像)剤と複合体を作る。
【0252】
(5.10.14 レセプター活性の検定)
本発明はまた、ポリペプチド、例えばリガンドまたはレセプターの特異的結合を検出する方法をも提供する。この技術は、以前は不明であった、本発明のレセプター・ポリペプチドの結合パートナーの同定に、特に役立つ多くの検定を提供する。例えば、哺乳類または細菌の細胞、あるいはダイハイブリッド・スクリーニング検定を用いた発現クローニングは、結合パートナーをコードするポリヌクレオチドの同定に使うことができる。他の例として、適切に固定化された本発明のポリペプチドを用いたアフィニティ・クロマトグラフィーは、本発明のポリペプチドを認識し、結合するポリペプチドを分離するために使用することができる。本発明のポリペプチドの生物活性を変調する(つまり、増加または減少する)化合物、特に小分子の同定に用いられる多くの異なったライブラリーがある。本発明のレセプターポリペプチド用リガンドは、外来性リガンドまたは、リガンドのカクテルを本発明のレセプターの発現以外は遺伝学的に同じの2種の細胞集団に加えることによって同定できる。1種の細胞集団は本発明のレセプターを発現するが、他の細胞集団は発現しない。加えられたリガンドに対する2種の細胞集団の応答を比較する。あるいは、発現ライブラリーは、細胞内で本発明のポリペプチドと同時発現させることができ、可能性のあるリガンドを同定するためのオートクライン反応を検定することができる。
【0253】
さらに、他の例として、BIAコア 検定、ゲル・オーバーレイまたは技術的に周知の他の方法を用いて結合パートナーのポリペプチドを同定できるが、これには、(1)有機および無機化学ライブラリー、(2)天然物ライブラリーおよび(3)ランダム・ペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機分子のようなコンビナトリアル・ライブラリーが含まれる。
【0254】
下流細胞内情報伝達分子の、本発明のポリペプチドの情報伝達カスケードにおける役割は決定できる。例えば、本発明のポリペプチドの細胞質内ドメインが、リガンドが同定されているタンパク質の細胞外部分に融合したキメラタンパク質は、宿主細胞内で生成される。次に、この細胞をキメラタンパク質の細胞外部分に特異的なリガンドと一緒に培養し、それによってキメラ・レセプターを活性化する。次に、細胞内情報伝達に関与する既知の下流タンパク質の予測される修飾、すなわち、燐酸化を測定できる。また、技術上周知の他の方法も、また、レセプター活性に関与する情報伝達分子の同定に使用できる。
【0255】
(5.10.15 抗炎症活性)
本発明の組成物は、また抗炎症活性をも示す。抗炎症活性は、炎症反応に関与する細胞に刺激を与えるか、細胞間相互作用(例えば、細胞癒着のような)を抑制または促進するか、炎症過程に関与する細胞の走化性を抑制または促進するか、細胞の血管外遊走を抑制または促進するか、あるいは、炎症をより直接的に抑制または亢進する他の因子の産出を刺激または抑制することによって得られる。このような活性を持つ組成物は、感染(敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応症候群(SIRS))、虚血再灌流傷害、菌体内毒素致死、関節炎、補体媒介超急性拒絶、腎炎、サイトカインまたはケモカイン誘導性肺傷害、炎症性腸疾患、クローン病、あるいはTNFやIL−1のようなサイトカインの産出過剰によると思われる慢性、急性炎症状態の治療に、これらに限らず用いることができる。本発明の組成物は、また抗原性物質または抗原性材料に対するアナフィラキシーまたは過敏症の治療にも有用である。本発明の組成物は敗血症、急性膵炎、エンドトキシン・ショック、サイトカイン性ショック、慢性関節リューマチ、慢性炎症性リューマチ、真性糖尿病タイプ1による膵臓細胞障害、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、肺疾患に合併する炎症、他の自己免疫疾患または炎症性疾患のような状態の予防または治療に、急性、慢性骨髄性白血病の抗増殖性剤として、または子宮内感染症の前段階における早期分娩の予防において使用することができ、また使用はこれらに限らない。
【0256】
(5.10.16 白血病)
白血病および関連疾患は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの機能を促進または阻害する治療剤を投与することによって治療または予防することができる場合がある。このような白血病および関連疾患には、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球(顆粒球)性白血病、および慢性リンパ性白血病(これらの疾患の総説については、Fishman et al.,1985,Medicine,2d Ed.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia参照)が含まれ、またこれらに限らない。
【0257】
(5.10.17 神経系疾患)
本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの活性を変調する化合物の介入の効力をテストできる細胞タイプに関連し、またしたがって、治療的有用性の指標を見ながら治療できる神経系疾患には、神経系損傷および神経系疾患、あるいは、アクソンの連絡切断、神経細胞の退縮、変性、または脱髄を生じる神経系障害がこれらに限らず含まれる。本発明にしたがって患者(ヒトおよびヒト以外の哺乳動物を含む)において治療される神経系病変には、以下の、中枢(脊髄、脳を含む)または末梢神経系のどちらかの病変が含まれ、またこれらに限らない。
【0258】
(i) 物理的傷害または手術、例えば、神経系の一部を切断する病変、または圧迫損傷によって生じた病変を含む外傷性病変
(ii) 脳梗塞または脳虚血、あるいは脊髄の梗塞または虚血などの神経系の一部における酸素欠乏による神経細胞損傷または死亡にいたる虚血性病変
(iii)、例えば、膿瘍による感染の結果、またはヒト免疫不全症ウイルス、帯状疱疹、単純疱疹ウイルスによる感染と合併して、または、ライム病、結核、梅毒と合併して神経系の一部が感染の結果、破壊されるか、または損傷を受ける感染性病変
(iv) パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病または筋萎縮性側索硬化症と合併した変性に限らず、これらを含む変性過程の結果として、神経系の一部が破壊または損傷する変性(退縮)病変
(v) 栄養障害または代謝障害によって神経系の一部が破壊または損傷する、栄養上の疾患、または栄養障害に関連する病変で、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ウエルニッケ病、タバコ・アルコール性弱視、マルキャファーヴァ・ビニャミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール性小脳変性が含まれ、また、これらに限らない。
【0259】
(vi) 全身性疾患に合併する神経性病変で、糖尿病(糖尿病性神経障害、顔面麻痺)、全身性エリトマトーデス、癌または肉腫症が含まれ、また、これらに限らない。
【0260】
(vii) アルコール、鉛または特定の神経毒を含む毒性物質によって生じた病変
(viii)脱髄疾患によって神経系の一部が破壊または損傷する脱髄病変で、多発性硬化症、ヒト免疫不全症ウイルス関連脊髄症、横断性脊髄症、種々の病因論、進行性多病巣性白質脳障害、および中央脳橋ミエリン溶解が含まれるが、これらに限らない。
【0261】
本発明にしたがった有用な神経系疾患用治療剤は、神経細胞の生存または分化の促進についての生物活性を試験することによって選択できる。例えば、制限としてではなく、次の作用のいずれかを誘発する治療剤は本発明によると有用である。
【0262】
(i) 培養液において神経細胞の生存時間を増加した。
【0263】
(ii) 培養液または生体内において神経細胞の出芽を増加した。
【0264】
(iii) 培養液または生体内において、神経細胞関連分子、例えば、運動ニューロンに関連するコリンアセチルトランスフェラーゼまたはアセチルコリンエステラーゼの産生が増加した。
【0265】
(iv) 生体内神経細胞機能障害の症状を減少した。
【0266】
このような効果は技術上周知のいずれの方法によっても測定できる。好ましくは、実施例に限らず、神経細胞の生存率増加は、Arakawa et al.(1990,J.Neurosci.10:3507−3515)に示される方法によって測定でき、神経細胞の出芽の増加はPestronk et al.(1980,Exp.Neurol.70:65−82)またはBrown et al.(1981,Ann.Rev.Neurosci.4:17−42)に示される方法によって検出でき、神経細胞関連分子の産生増加は測定される分子によって、生物検定法、酵素学的検定、結合抗体、ノーザンブロット検定などで測定できる。また、運動ニューロン機能不全は、運動ニューロン障害、例えば、脱力感、運動ニューロン伝達速度または機能的能力障害などの物理的症状の評価によって測定できる。
【0267】
特定の具体例において、本発明にしたがって治療される運動ニューロン障害には、梗塞、感染症、毒素への暴露、外傷、外科的損傷、変性疾患または運動ニューロンおよび神経系の他の構成成分に影響する悪性腫瘍のような疾患、および筋萎縮性側索硬化症のような神経細胞に選択的に影響する疾患、ならびに、進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺、原発性側索硬化症、乳児性、若年性筋萎縮、幼児期の進行性球麻痺(ファチオ・ロンデ症候群)、灰白髄炎およびポリオ後症候群、および遺伝性運動感覚ニューロパシー(シャルコー・マリー・トゥース病)などに限らず含まれる。
【0268】
(5.10.18 その他の活性)
本発明のポリペプチドは、またさらに、次のような活性または作用のうちの1つ以上を示す。すなわち、細菌、ウイルス、真菌および他の寄生虫をこれらに限らず含む感染性物質の成長、感染または機能を抑制または抑止する、身長、体重、髪の色、眼の色、皮膚、脂肪の細い部分に対する割合または他の組織色素沈着、または臓器あるいは身体部分のサイズまたは形(例えば、乳房の増大または縮小、または骨の形態および形状における変化のような)をこれらに限らず含む身体的特徴に作用する(抑制または亢進)、男性または女性の受精能に作用する、食餌脂肪、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、補助因子、他の栄養的因子または成分の代謝、異化、同化、処理、利用、保存、または排出に影響する、食欲、性欲、ストレス、認知(認知障害を含む)、抑鬱(鬱病性障害を含む)および狂暴症をこれらに限らず含む行動性特徴に作用する、鎮痛効果または他の痛み減少作用を与える、造血系以外の系における胚幹細胞の分化および成長を促進する、ホルモン、内分泌の活性化、酵素の場合、酵素の欠乏症を修正し、欠乏関連性疾患を治療する、過剰増殖疾患(例えば、乾癬のような)の治療、免疫グロブリン様活性(例えば、抗原または補体を結合する能力のような)、および、ワクチン成分において抗原として作用して、そのようなタンパク質、または、そのようなタンパク質と交差反応する他の物質あるいは実体に対して免疫反応を促進する。
【0269】
(5.10.19 多型の同定)
多型性を証明することによって、ヒト被験者におけるこのような多型の同定が可能になり、この遺伝薬理学的情報を診断や治療に使用できる。このような多型性は、例えば、種々の疾患状態(炎症または免疫反応に関与する疾患のような)に対する特異な素因または感受性あるいは、薬物投与に対する特異な反応に関連し、また、この遺伝情報を用いて、予防的または治療的処置を適切に合わせることができる。
【0270】
例えば、炎症または自己免疫疾患の素因に関連する多型が存在する場合は、多型の存在を同定することによって、ヒトにおけるこの状態を診断することができる。
【0271】
多型は、技術上周知の様々の方法において同定することができ、すべての場合、一般に患者からのサンプルを得て、このサンプルからDNAを分析し、随意に、DNAの分離または増幅を行って、DNAにおける多型の存在を同定する。例えば、PCRを用いて適切なゲノムDNAの断片を増幅し、次にそれを配列決定する。あるいは、DNAはアレル(対立遺伝子)特異的オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション(一塩基ミスマッチの検出が可能な状態の下で適切なオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする)にかけるか、または単一ヌクレオチド伸長検定(多型の位置のすぐ隣にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが1つ以上の標識ヌクレオチドで伸長している)にかける。さらに、従来の制限酵素断片長多型分析(多型の存在または不在によってゲノムDNAに異なった消化をさせる制限酵素を用いて)を行う場合もある。本発明のヌクレオチド配列のアレイは、多型性の検出に使うことができる。このアレイは本発明のヌクレオチド配列を検出するために本発明のヌクレオチド配列の修飾したものを使っても良い。代用物において、本発明のヌクレオチド配列のどれか1つをこのアレイ上で置き換えて、これらの配列の変更を検出できる。
【0272】
あるいは、アミノ酸配列の変更で生じた多型はまた、タンパク質のアミノ酸配列の対応する変更を検出することによって、例えば、変異配列に特異的な抗体によっても検出できる。
【0273】
(5.10.20 関節炎と炎症)
慢性関節リューマチに対する発明組成物の免疫抑制効果は、実験用の動物モデル・システムで決定される。実験用モデル・システムはネズミを使った補助薬誘発関節炎である。その実験計画はHoloshitz等(1983,Science,219:56)又は、B.Waksman(1963,Int.Arch.Alllergy Appl.Immunol.,23:129)により記述されている。この病気は、完全フロインド・アジュバンド(CFA)の中に懸濁させた死んだマイコバクテリア結核菌を一回注射(ふつう皮内注射)することにより引き起こすことができる。注射の方法は色々であるが、ネズミの場合、補助薬の混合液を尻尾の付け根に注射しても良い。ポリペプチドは約1−5 mg/kgの量をリン酸緩衝液(PBS)に入れ投与する。対照標準液はPBSだけを使う。
【0274】
試験組成物の効果をテストする方法は、CFAに入っている死んだマイコバクテリア結核菌を皮内注射し、その後すぐ試験組成物を投与、その後1日おきに24日までそれを継続する。マイコバクテリアCFAを注射後14,15,18,20,22,そして24日目に、上記J.Holoshitzにより記述されているような関節炎の総合スコアが得られる。データ分析の結果、試験化合物は関節の腫れに劇的な効果を及ぼすことが、関節炎スコアの減少により判明するはずである。
【0275】
(5.11 治療方法)
発明組成物(ポリペプチド断片、類似体、変異体、抗体、その他結合剤やアンチセンス・ポリヌクレオチドのような修飾物質なども含む)は様々な治療方法へ応用できる。治療面での応用は以下のような例を含む。
【0276】
(5.11.1 例)
本発明の一応用例はCEA様ポリペプチド又はその他の本発明組成物を有効量、病気又は疾患に罹った個人に投与する方法である。この場合、本発明のペプチドをコントロールすることにより、有効量の投与を調整することが可能である。投与方法は特に重要ではないが、非経口投与がどちらかと言うと好ましい。模範的な投与方法は静脈内ボーラスである。CEA様ポリペプチド又はその他の本発明組成物の投与量は、ふつう処方医により決定される。投与量は、年令、体重、患者の健康状態や反応により異なるはずである。ふつう薬量当たりのポリペプチド量は、患者の体重1kg当たり0.01μg乃至100mg、最も好ましい量は0.1μg乃至10mgである。CEA様本発明ポリペプチドは、非経口用として、製薬学的に承認されている非経口担体とともに注射可能な形になっている。そういう担体は当業界では良く知られているものであり、例えば水、塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、ヒトの血清アルブミン少量を含む溶液などが相当する。担体には、ポリペプチドの等浸透性と安定性を維持するための添加物や他の活性成分が僅かに含まれる場合もある。そういう溶液の準備は当業界の技術の範疇に属する。
【0277】
(5.12 製薬学的製剤及び投与方法)
蛋白質又は本発明の他の組成物(供給源の如何に拘わらず組み換え及び非組み換え供給源、抗体及び本発明ポリペプチドの他の結合剤を含む)を必要とする患者に、そのままの形で、又は様々な疾患を治療・回復させるのに必要な薬量を、適切な担体又は媒体と混合した製薬学的組成物として投与できる。そういう混合物には、蛋白質又は他の活性成分や担体の他に、希釈液、増量剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶剤、その他医学で良く知られている材料を含むこともできる。「製薬学的に容認できる」というのは、活性成分の生物学的効果には干渉しない非毒性の物質という意味である。担体の特徴は投与方法に依存する。本発明の製薬学的組成物の中には、サイトカイン、リンフォカイン、又は造血因子、例えばM−CSF,GM−CSF,TNF,IL−1,IL−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−11,IL−12,IL−13,IL−14,IL−15,IFN,TNF0,TNF−1,TNF−2,G−CSF,Meg−CSF等、トロンボポエチン、幹細胞因子、エリスロポエチン等も含むことができる。更に、本発明の蛋白質を病気又は疾患の治療に有効な他の物質と組み合わせることも可能である。そういう物質の中には、本文で述べられているサイトカインを初め、表皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF−α及びTGF−β)、インシュリン様成長因子(IGF)など色々な成長因子が含まれる。
【0278】
更に製薬学的組成物の中には、本蛋白質の活動を活性化するか治療面での活動又は使用を補足する他の作用薬を含むことも可能である。こういう付加因子および/又は作用薬は、本発明の蛋白質か他の活性成分と相乗効果を引き出す目的で、又は副作用を最小化する目的で製薬学的組成物の中に含むことができる。反対に、凝血因子、サイトカイン、リンフォカイン、他の造血因子、血栓崩壊、抗血栓因子、又は抗炎薬(例えば、IL−1Ra、IL−1Hy1、IL−1Hy2、抗TNF、コルチコステロイド、免疫抑制剤)の副作用を最小限に抑える目的で、本発明の蛋白質や他の活性成分を特定の凝血因子、サイトカイン、リンフォカイン、他の造血因子、血栓崩壊、抗血栓因子、又は抗炎薬の中に含むことも可能である。
【0279】
本発明の蛋白質は多量体(例えばヘテロダイマーかホモダイマー)で活性かも知れないし、あるいはそれ自身又は他の蛋白質との複合体として活性かも知れない。その結果、本発明の製薬学的組成物は、多量体か複合体の形で本発明の蛋白質を含むようになるかも知れない。
【0280】
本発明の製薬学的組成物(第1蛋白質を含む)の中に含む代わりに、第2蛋白質又は治療薬を第1蛋白質と一緒に投与することもできる(例えば同時に、あるいは組み合わせる物質の治療濃度が治療部位で実現されるのを条件として異なる時に)。インスタント施用化合物の調剤及び投与技術は、ペンシルバニア州イーストンのMack Publishing Co.出版「レミントン製薬科学」を参考にしてもよい。治療学的に有効な投与量とは、症状の回復、例えば治療、治癒、予防、関連医療条件の回復、又は治療、治癒、予防、そういう条件の回復率の増大をもたらすに十分な化合物の量を意味する。個別の活性成分が単独で投与される場合には、治療学的に有効な投与量とはその活性成分のみに言及する。組み合わせて使用する場合は、治療学的に有効な投与量とは、複合投与が連続であろうと同時であろうと、治療効果をもたらす活性成分の総合量を意味する。
【0281】
本発明の治療方法又は使用方法の実践において、本発明の蛋白質又は他の活性成分は、治療学的に有効な量だけ、治療条件を有している哺乳動物に投与される。本発明の蛋白質又は他の活性成分は、本発明の方法を単独で投与することもできるし、他の治療方法、例えばサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子を使った治療方法と組み合わせて投与することも可能である。サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子のうち1つ又は複数と組み合わせて投与する場合は、本発明の蛋白質又は他の活性成分は、サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊因子、又は抗血栓因子と同時に投与しても、連続的に投与しても良い。連続的に投与する場合は、本発明の蛋白質又は他の活性成分をサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊因子、又は抗血栓因子とどのような順序で組み合わせて投与するかについては、診療医師がその適切性を決定する。
【0282】
(5.12.1 投与の経路)
適切な投与方法は、例えば、経口、直腸、経粘膜、腸内投与、内皮注射(筋肉内、皮下、髄内注射等)、くも膜下、直接心室内注射、静脈注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、眼内注射等が含まれる。製薬学的組成物に使用される本発明の蛋白質又は他の活性成分の投与、又は本発明の方法の実践は、通常の色々なやり方で実行できる。例えば、経口摂取、吸入、局所又は皮膚施用、皮下、腹腔内、腸管外注射等である。患者への投与はどちらかと言うと静脈注射が好ましい。
【0283】
全身ではなく局所に化合物を投与するのも可能である。例えば、関節炎を患っている関節又は繊維組織に直接注射することなどであり、その場合、デポー剤か持続放出性のものが多い。緑内障手術の合併症として生じがちな瘢痕を防ぐため、化合物を局所的に、例えば目薬として投与することも可能である。更に薬物標的運搬システムを使って投与することもできる。例えば、関節炎を起こしている部位の組織又は繊維組織などを標的として、特定の抗体でコーティングしたリポゾーム等を使用する方法である。リポゾームは、症状を患っている細胞組織が選択的に標的としたり吸収したりする。
【0284】
本発明のポリペプチドは、要求されている作用部位に有効量を運搬する方法であれば、どのような方法でも使用できる。適切な投与方法及び有効量の決定は、当業界の技術の範疇に含まれる。怪我の治療の場合同様、治療化合物を局部に直接投与しても良い。本発明ポリペプチドの適切な投与量の範囲は、適切な動物モデルを使った投与量又はそういうモデルを使った類似の研究結果から推定できる。その後、最大治療効果を上げるため、投与量は臨床医が必要に応じて調整すれば良い。
【0285】
(5.12.2 組成物/製剤)
従って本発明に使われる製薬学的組成物は、媒体や補助剤で構成される生理学的に有効な担体を1つ乃至それ以上使った普通の方法で製剤できる。媒体や補助剤は活性化合物を製薬学的に利用可能な形に成形するのを助ける。こういう製薬学的組成物は、良く知られている方法で製造できる。例えば、混合、溶解、顆粒化、ドラジェー(糖衣)、微粒子化、乳化、カプセル化、エントラッピング又は凍結乾燥などの普通の方法である。適切な製法は投与方法により異なる。治療学的に有効な量を経口で投与する場合、本発明の蛋白質又は活性成分は、錠剤、カプセル、粉末、溶液、又はエリキシル剤の形で投与される。錠剤で投与する場合、本発明の製薬学的組成物には、更にゼラチンや補助剤のような固形の担体も含まれるかも知れない。
【0286】
錠剤、カプセル、及び粉末には、本発明の蛋白質又は活性成分が約5%乃至95%含まれる。理想的には、本発明の蛋白質又は活性成分が約25%乃至95%含まれている方が好ましい。液体で投与する場合は、水、石油、動物性又は植物性の油、例えば落花生油、ミネラル油、大豆油、胡麻油、あるいは合成油のような液状担体を追加しても良い。液状の製薬学的組成物の中には、更に生理塩水、ブドウ糖又は他のサッカリド溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなグリコール類を含めても良い。液体の場合は、本発明の蛋白質又は活性成分が重量比で約0.5乃至90%含まれる。理想的には、本発明の蛋白質又は活性成分が重量比で約1乃至50%含まれるのが好ましい。
【0287】
本発明の蛋白質又は活性成分の治療学的有効量を静脈、皮膚、又は皮下注射により投与する場合は、本発明の蛋白質又は活性成分は、発熱物質を含まず、非経口的に容認可能な液体の形で投与される。非経口的に容認可能なそういう蛋白質又は他の活性成分溶液をpH、等浸透圧性、安定性等へ配慮して準備するのは、当業界の技術の範疇に属する。静脈、皮膚、又は皮下注射のために好ましい製薬学的組成物には、本発明の蛋白質又は活性成分の他に、等浸透圧性の担体、例えば塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、ブドウ糖注射、ブドウ糖と塩化ナトリウム注射、乳酸化したリンゲル注射、あるいは当業界の技術で良く知られている他の担体も含めるべきである。本発明の製薬学的組成物には、安定化剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、その他当業界の技術で良く知られている添加物を含めても良い。注射の場合、本発明の作用薬は液体の形で製剤しても良い。できればハンクス液、リンゲル液、生理塩水のような生理学的に合った緩衝剤が好ましい。経粘膜投与の場合は、特定の浸透剤が使用される。そういう浸透剤は、当業界で一般的に良く知られているものである。
【0288】
経口投与の場合、組成物は、当業界で良く知られ製薬学的に容認されている担体と活性化合物とを組み合わせることにより、容易に製剤できる。そういう担体は、本発明の化合物を錠剤、丸薬、ドラジー(糖衣)、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等に製剤するのを可能にし、患者が経口摂取できるようにする。経口使用のための製薬学的準備は、必要であれば適切な補助剤を添加して錠剤かドラジーの中核を得た後、固形の担体を加え、混合体を粉末にし、その粒状の混合体を加工することにより得られる。特に適切な担体は砂糖(ラクトース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール等も含む)やセルロース(例えばトウモロコシの澱粉、米の澱粉、じゃが芋の澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ナトリウム・カルボキシメチル・セルロース、および/又はポリビニルピロリドン(PVP))等の増量剤である。
【0289】
必要なら、橋架け結合のポリビニル・ピロリドン、寒天、アルギン酸、その塩例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊薬(ママ)を加えても良い。ドラジーの中核には適切なコーティングが提供される。この目的のために濃縮砂糖液を使っても良い。その中にはアラビアゴム、タルク、ポリビニル・ピロリドン、カルボポル・ゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー液、及び適切な有機溶媒又は混合溶媒を含めても良い。活性化合物の含有量の組み合わせを強調するため又は内容を同定するため、錠剤やドラジー・コーティングに染料や色素を加えるのも可能である。
【0290】
経口使用製品の製薬学的準備には、ゼラチン製のプッシュ・フィット・カプセルやゼラチン、及びグリコールやソルビトール等可塑剤製の柔いシールド・カプセル等が使われる。プッシュ・フィット・カプセルには、活性成分をラクトースのような増量剤、澱粉のような結合剤、および/又はタルク、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、必要ならば安定剤と混合して入れることもできる。ソフト・カプセルの場合は、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解するか懸濁させるかしても良い。更に安定剤を加えても良い。経口投与の場合の製剤は、その目的に適した量でなければならない。口内投与の場合は、通常の方法で成形される錠剤やトローチ剤を使用できる。
【0291】
吸入投与の場合は、本発明の組成物を加圧パック又は噴霧器からスプレーすることにより投与する。その場合、適切な推薬、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、その他適当なガスを使用する。加圧噴霧の場合、投与量の単位は、一定量を送るバルブを使用することにより決定できる。吸入器に使用されるゼラチン等のカプセルや薬包は、ラクトースや澱粉のような適切な粉末ベースと化合物を粉末状態で混合して成形しても良い。混合物は巨丸剤注射や連続注入のような非経口投与用に製剤しても良い。注射用の製剤は、アンプルや多薬量容器のような単位薬量形式に保存剤を添加しても良い。混合物は、油又は液体の担体の中に懸濁、溶解、乳化させる形を取ることもできるし、懸濁剤、安定化剤、分散剤等の製剤用の物質を含んでも良い。
【0292】
非経口投与用の製薬学的組成物には、活性化合物が水溶性の形で含まれる液状のものもある。更に活性化合物の懸濁液を、適切な油液注射用の懸濁液として準備することもできる。適切な脂質親和性の溶媒又は担体には、胡麻油のような脂肪油、オレイン酸エチルのような合成脂肪酸エステル、トリグリセリド、リポゾーム等も含まれる。液状注射懸濁液の中には、懸濁液の粘性を高める物質、例えばナトリウム・カルボキシルメチル・セルロース、ソルビトール、デキストラン等を含んでも良い。必要ならば、懸濁液の中に安定剤や組成物の溶解度を高める物質を含め、高濃度の溶液を準備することも可能である。代替案として、使用前に活性成分を粉末状にしておき、消毒し発熱物質を含まない水等の適切な担体と組み合わせる方法もある。
【0293】
組成物は、通常の座薬ベース、例えばココアバターや他のグリセリドを含む座薬や固定浣腸のような直腸用の組成物にすることも可能である。上述の製剤法の他に、デポー剤用の組成物にすることも可能である。そういう長期持続用の方法は、インプラント(例えば内皮や筋肉内)や筋肉内注射により実現できる。従って例えば、適切なポリマー剤や疎水性の作用薬(例えば適当な油に乳化させた作用薬)、イオン交換樹脂、僅かに溶解する塩などの誘導体を使って組成物を製剤できる。
【0294】
本発明の疎水性組成物用の製薬学的担体は、ベンジルアルコール、無極性の表面活性剤、水混和性の有機ポリマー、及び水様性相で構成される共通溶媒システムである。共通溶媒システムはVDP共通溶媒システムでもあり得る。VDPは、3%w/vのベンジルアルコール溶液、8%w/vの無極性表面活性剤ポリソルベート80、そして65%w/vのポリエチレングリコール300を無水アルコールの中に入れたものである。VDP共通溶媒システム(VDP:5W)は、VDPを5%のブドウ糖水溶液で1:1に希釈したものである。このVDP共通溶媒システムには疎水性の組成物が良く溶け、全身投与の場合に毒性が少ない。当然VDP共通溶媒システムの割合は色々であり、しかも溶解性や毒性の性質を壊すことがない。更に共通溶媒の構成成分も多種多様である。更に共通溶媒例えばポリソルベート80の代わりに他の低毒無極性の表面活性剤を使うこともできるし、ポリエチレングリコールのフラクション・サイズにも様々な可能性がある。ポリエチレングリコールの代わりに他の生物適合性のあるポリマー、例えばポリビニル・ピロリドンを使うこともできる。ブドウ糖の代わりに他の糖類やポリサッカリドを使っても良い。代替案として、疎水性の製薬学的組成物には別の運搬システムを使っても良い。疎水性の薬としては、リポゾームや乳化剤が運搬用担体又は媒体として良く知られている。
【0295】
ジメチルスルフォキシドのようなある有機溶媒も、毒性は少し高いが使用可能である。更に、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透性基質のような持続放出システムを使って化合物を送達しても良い。色々なタイプの持続放出物質が確立されており、医学界では良く知られている。持続放出カプセルは、その化学物質の性質次第ではあるが、組成物を2−3週間から長い時には100日以上をかけて放出する。治療薬の科学的性質及び生物学的安定性次第ではあるが、蛋白質や他の活性成分の安定に必要だと思われる方法が追加される場合もあり得る。
【0296】
製薬学的組成物には、適切な固体又はゲル状の相から成る担体で構成されている場合もある。そういう担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールのようなポリマー等が挙げられる。本発明の活性成分の多くを、製薬学的に親和性のある反対イオン塩として提供することも可能である。そういう製薬学的に容認可能な塩は、生物学的な有効性及び自由酸の性質を保持する塩であり、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、二塩基アミノ酸、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、トリエタノールアミン等の無機又は有機の塩基と反応させることにより得られる。
【0297】
本発明の製薬学的組成物は、本発明の蛋白質又は他の活性成分、及び蛋白質又はペプチド抗原の複合体の形でも可能である。蛋白質および/又はペプチド抗原は、Bリンフォサイト及びTリンフォサイトに刺激信号を送る。Bリンフォサイトは、その表面にあるイミュノグロブリン受容体を通して抗原に対し反応する。Tリンフォサイトは、MHC蛋白により抗原が出された後T細胞受容体(TCR)を通して抗原に反応する。MHC及び構造的に関連のある蛋白質(クラスI及びクラスII MHC遺伝子により宿主細胞上にコード化されている場合も含めて)は、ペプチド抗原をTリンフォサイトに提供する働きをする。抗原成分も、精製されたMHCペプチド複合体単独で、又はT細胞に直接信号を送る共同刺激分子とともに供給しても良い。代替案として、表面イミュノグロブリンやB細胞上の他の分子に結合可能な抗体、及びTCRやT細胞上の他の分子に結合可能な抗体を、本発明の製薬学的組成物と組み合わせることも可能である。
【0298】
本発明の製薬学的組成物は、リポゾームの形でも可能である。その場合、リポゾームの中で、本発明の蛋白質を、製薬学的に容認可能な他の担体とは別に、脂質のような両親媒性の物質と組み合わせる。脂質はミセル(コロイド分散状態)、不溶性の単一層、又は水溶液の中に層状相として凝集した形で存在している。
【0299】
リポゾーム形成に必要な脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、サルファチド、リソレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等である。こういうリポゾームの製法は、公表されている当業界の技術の範疇に含まれている。例えば、米国特許番号4,235,871;4,501,728;4,837,028;4,737,323等で、これらは全て参考文献として本文書に含まれている。
【0300】
本発明の製薬学的組成物との関連で用いられる本発明の蛋白質又は他の活性成分の量は、治療される条件の性質及びその重症度により決定される。最終的には、各患者の治療に当たって、診察する医者が本発明の蛋白質又は他の活性成分の量を決定する。診察医は最初、本発明の蛋白質又は他の活性成分を少量投与し、患者の反応を観察する。治療学上最高の効果が得られるまで、本発明の蛋白質又は他の活性成分の量を増やしていき、その点に達したらもはや薬量を増やすことはしない。本発明の方法を実践するのに使われる色々な製薬学的組成物は、本発明の蛋白質又は他の活性成分を体重1kg当たり約0.01μgから約100mg(できれば約0.1μgから約10mg、更に理想的には約0.1μgから約1mg)含んでいるべきであると考えられている。骨、軟骨、腱、又は靭帯の退化に有効である本発明の組成物を用いた治療方法には、局部的、全身的、又はインプラントや装置の形で局所的に使用する方法などがある。投与に当たり、本発明の治療方法は、発熱物資を含まない生理学的に容認できる形で行われる。更にこの組成物は、カプセル化するか色々な方法で注射することにより、骨、軟骨、又は損傷した細胞組織へ送るのが好ましいかも知れない。怪我の癒しや細胞組織の修復には局部投与が適切かも知れない。本発明の蛋白質又は他の活性成分以外の治療に有効な物質(それも上記組成物の中に含めることが可能)を本発明の組成物の代わりに、又はその追加として、同時又は連続的に使用しても良い。骨および/又は軟骨の形成を促すには、蛋白質又は他の活性成分を含む組成物を骨や軟骨の損傷部位に送ることができ、骨および/又は軟骨の発達に必要な構造を持ちしかも、再び体に吸収される基質が、その組成物の中に含まれているのが望ましい。そういう基質は、現在他の移植手術で使われている材料で作っても良い。
【0301】
基質材料の選択は生物適合性、生物分解性、物理学的性質、外見、及び相互作用的性質に基づいている。混合物の適用内容により調剤方法が決定される。組成物の基質になる可能性のあるのは生物分解性のあるもので、合成硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ無水物である。この他に可能性のある材料は、生物分解性があり生物学的に明確な例えば骨や皮膚のコラーゲンなどである。他の基質は純粋の蛋白質か細胞外基質成分で構成されている。他に可能性のある基質は、生物分解性がなく化学合成された例えば焼結されたヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミン酸塩、又はその他のセラミックである。基質は上記物質を複数組み合わせたもので構成するのも可能である。例えば、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト又はコラーゲンとリン酸三カルシウムなどである。生体セラミックは組成を変えることもできる。例えばカルシウム・アルミン酸塩・リン酸塩で、加工して穴の大きさ、粒子の大きさ及び形、又は生物分解性を変えることも可能である。現在好まれているのは、直径150乃至800ミクロンの多孔性粒子からなる乳酸とグリコール酸50:50(分子量)の共重合体である。ある場合には、蛋白質組成物が基質から解離するのを防ぐのに、カルボキシルメチル・セルロースや自家凝血のような金属イオン封鎖剤を利用しても良い。
【0302】
金属イオン封鎖剤として好まれるのは、アルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースも含む)のようなセルロース材料である。この中には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等も含まれる。その中でも最も好まれるのがカルボキシメチルセルロース(CMC)の陽イオン塩である。この他にも金属イオン封鎖剤として好まれるのは、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン酸化物、カルボキシビニル・ポリマー、及びポリビニル・アルコールである。金属イオン封鎖剤の最適量は、全製剤重量当たり0.5−20重量%、理想的には1−10重量%で、これは蛋白質がポリマー基質から脱着するのを防ぐと同時に、組成物取り扱いの簡便化に必要な量を表しており、しかも始原細胞が基質に侵入するのを妨げる程の量ではないので、蛋白質は始原細胞の骨形成活動を助けることができる。更に、本発明の蛋白質又は他の活性成分を、骨および/又は軟骨の欠陥、怪我、又は問題のある細胞組織の治療に役立つ他の物質と組み合わせても良い。こういう物質には、色々な成長因子が含まれる。例えば表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF−α及びTGF−β)、インシュリン様成長因子(IGF)などである。
【0303】
治療用組成物は現在獣医学の面でも価値が見出されている。本発明の蛋白質又は他の活性成分を用いた治療は、ヒト以外にも、家畜やサラブレッドの馬に特に使用できる。細胞組織の再生に蛋白質を含む製薬学上の組成物を用いるに当たり、その投与量は、診断する医師が蛋白質の活動に影響を及ぼす色々な要因を考慮した上で決定する。例えば、形成すべき細胞組織の重量、損傷部分、損傷を受けた細胞組織の状態、怪我の大きさ、損傷を受けた細胞組織の種類(例えば骨)、患者の年令、性別、食事、感染度合い、投与時間、他の臨床的要因等である。投与量は再生に使われる基質の種類によっても異なるし、製薬学的組成物の中に含まれる他の蛋白質の有無によっても違ってくる。例えば、最終組成物にIGF I(インシュリン様成長因子I)のような他の既知の成長因子を加える場合も、投与量に影響が及ぶかも知れない。細胞組織や骨の成長および/又は修復をX線、組織形態計測決定法、テトラサイクリン標識法のような方法で定期的に評価することにより、回復度合いをチェックできる。
【0304】
本発明のポリヌクレオチドは遺伝子療法に用いることもできる。そういうポリヌクレオチドは哺乳類の形質発現を調べるため、生体内又は生体外で細胞に導入できる。本発明のポリヌクレオチドは、核酸を細胞や生物体に導入する方法として知られている他の方法を用いても投与できる(例えばウイルス媒介や裸のDNA等)。細胞は、繁殖させるため又は望ましい効果や活動を得るため、本発明の蛋白質を含む試験管内で培養することも可能である。このようにして処理された細胞は、治療目的のため生体内に導入することができる。
【0305】
(5.12.3 有効薬量)
本発明の使用に適した製薬学的組成物は、目的達成のために活性成分を有効量含む混合物である。より具体的に述べると、治療学的な有効量とは、治療を受ける対象の現在の症状の進行が抑えられる、あるいは緩和されるのに必要な量を意味する。有効量の決定は当業界の技術の能力の範疇に属するものであり、本文書で詳細に説明してきたので尚更そうである。本発明の方法に用いられる組成物の薬効量は、まず生体外での分析によって推定できる。例えば動物モデルを使って薬量を処方し、循環濃度の範囲を決め、次にそれを使ってより精確にヒトの使用量を決定する。
【0306】
例えば動物モデルを使って薬量を処方し、循環濃度の範囲を決めるが、その中に細胞培養で決定されるIC50(つまり蛋白質の生物学的活動を阻害する最大値の半分に相当する試験化合物の濃度)も含まれる。こういう情報は、ヒトの使用量をより精確に決定するのに利用できる。
【0307】
薬効量とは、症状の回復又は患者の生存期間の延長を実現する化合物の量を意味する。そういう化合物の毒性及び治療学的効果は、細胞培養や実験動物を用いた標準の製薬学的手法により決定できる。例えば、LD50(個体数が50%死ぬ薬量)やED50(個体数の50%に治療学的に効果のある薬量)等の決定である。毒性と治療学的効果の薬量比は治療指数と言い、LD50とED50の比で表される。治療指数の高い化合物がより好ましい化合物である。この細胞培養分析と動物研究から得られるデータを使って、ヒトの使用量の範囲を処方することができる。そういう化合物の薬量はED50を含む循環濃度内に納まり、毒性が全くあるいはほとんどないのが好ましい。薬量は薬の形態又は投与方法に基づいてその範囲内で変化する。正確な処方、投与方法、及び薬量は、患者の状態を見ながら、医者が決定するものである。例えば、Fingl等、1975年、「治療学の薬理学的基礎」の第1章第1頁を参照のこと。薬量及び期間は、血漿の活動レベルが半分であるような状態を提供するように個別に調整できる。そういう状態は、好ましい効果を維持するのに、あるいは最低有効濃度(MEC)を維持するのに十分である。MECは化合物の種類により異なるが、生体外データに基づいて推測可能である。MECを達成するのに必要な薬量は個人の特性や投与方法により異なるが、HPLC分析や生物検定を用いて血漿濃度を決定するのは可能である。
【0308】
投薬の間隔もMECの値を使って決定できる。組成物は、時間の10−90%、血漿値をMEC以上に維持する方法を使って投与されるべきである。できれば30−90%、最も好ましいのは50−90%である。局所投与又は選択的摂取の場合は、薬の有効局所濃度は血漿濃度とは関係ないかも知れない。
【0309】
本発明のポリペプチド又は他の組成物の薬量は、大人と子供では異なるが、毎日体重1kg当たり約0.01μg乃至100mgの範囲になるであろう。より好ましいのは、毎日体重1kg当たり約0.1μg乃至25mgの範囲である。投薬は1日1回、又は等量であればその間隔を短くしても長くしても良い。勿論、投与量は、治療される対象の年令、体重、症状の度合い、投与方法、及び処方医の判断によって異なってくる。
(5.12.4 包装)
組成物はパック又はディスペンサーを使って投与することも可能である。その中に活性成分を含む1単位又はそれ以上の単位の薬を入れることができる。パックは例えば金属製やブリスター・パックのようなプラスチック・フォイルでも良い。パックやディスペンサーには投与方法に関する手引書を添付しても良い。本発明の組成物を含む組成物を製薬学的に適合性のある担体に入れて処方し、それを適切な容器に入れ、特定の治療方法を示したラベルを貼ることも可能である。
【0310】
(5.13 抗体)
本発明の中には、蛋白質又は本発明の蛋白質の断片への抗体も含まれている。本文書で使われている「抗体」という語は、イミュノグロブリン分子及びイミュノグロブリン(Ig)分子のうち免疫学的に活性な部分、つまり抗原と特異的に結合する(免疫反応を生じる)抗原結合部位を有している分子を意味している。そういう抗体の中には、ポリクロナル、単クロナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、Fab表現ライブラリー等が含まれる。一般的にヒトの抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDのいずれかのクラスに関係している。これらの分子は、それに含まれる重鎖の性質により互いに異なっている。あるクラスの中にはIgG1、IgG2のようにサブクラスを持つのもある。ヒトの場合は、軽鎖はκ鎖やλ鎖である場合もある。本文書で抗体と言う場合は、そういうクラス、サブクラス、そしてヒトの抗体の全てを意味する。
【0311】
本発明の蛋白質に関連する分離蛋白を抗原として、又はその一部や断片として使うことも可能である。そしてそれを免疫抗原として使い、ポリクローン及び単クローン抗体準備の標準技術を用いて、免疫特異的に抗原に結合する抗体を作ることもできる。蛋白質全体を免疫抗原として使うこともできるし、免疫抗原として使われる抗原のペプチド断片を本発明が提供することも可能である。抗原性のペプチド断片は、SEQ ID NO:4または6−10に示されているような全蛋白質のアミノ酸配列のうち少なくとも6つのアミノ酸残基から成っており、その抗原決定基(エピトープ)を取り囲んでいる。その場合、ペプチドの抗体は、全蛋白質あるいはエピトープを含む断片と特異的な免疫複合体を形成する。
【0312】
できれば、抗原性のペプチドは少なくとも10のアミノ酸残基、あるいは少なくとも15のアミノ酸残基、あるいは少なくとも20のアミノ酸残基、あるいは少なくとも30のアミノ酸残基からなっているのが好ましい。抗原性のペプチドによって囲まれているエピトープは、蛋白質の表面に位置しているのが望ましい。その部位はふつう親水性である。
【0313】
本発明のある部分に関しては、抗原性のペプチドにより囲まれているエピトープの少なくとも1つは、CEA様蛋白質の表面に位置している例えば親水性の部位である。ヒトの蛋白質配列の疎水性分析は、関連蛋白質のどの部位が親水性で、抗体生産用の表面残基をコード化しているかを示している。抗体生産の方法として、親水性と疎水性の部位を示す方法は、当業界の技術の面で既に良く知られている。例えば、Kyte Doolittel法又はHopp Woods法(フーリエ変換を使う場合も使わない場合も)などである。Hopp and Woods,1981,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;Kyte and Doolittle 1982,J.Mol.Biol.157:105−142を参照のこと。いずれも参考文献として本文書に全文が掲載されている。抗原蛋白、その誘導体、断片、類似体、又は同族体の中の1つ又はそれ以上の領域に特異的な抗体も、本文書に提供されている。
【0314】
本発明の蛋白質、その誘導体、断片、類似体、同族体、又はオルトログは、これら蛋白質構成要素へ免疫特異的に結合する抗体生産において、免疫抗原として利用することができる。
【0315】
「特異的に」という用語は、本発明の抗体の可変部領域が本発明のポリペプチドを独占的に認識し結合する(すなわち他の類似のポリペプチドが配列の同一性を持ち、同族体、類似体であっても、それと本発明のポリペプチドを区別できる)が、抗体の可変部領域の外部、特に分子の定常領域の配列と相互作用を起こすことにより、他の蛋白質(例えばS.aureus蛋白AやELISA技術の他の抗体)と反応する可能性を持つ事を意味している。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニング検定試験は、当業界では良く知られており日常的に実践されている。そういう検定試験の詳細については、Halow等(Eds)、抗体・実験室手引書;コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー;コールドスプリング・ハーバー、ニューヨーク(1988)、第6章を参照の事。本発明のポリペプチド断片を認識し結合する抗体は、それが上で定義したように、本発明の完全長ポリペプチドに他の何よりも特異的であることを条件とすれば、予想可能である。本発明の完全長ポリペプチドに特異的な抗体に関してであるが、断片を識別できる本発明の抗体は、ポリペプチドを同族のポリペプチド(配列が同一で、同族体、類似体であっても)から識別可能なものである。
【0316】
本発明の抗体は、例えば治療目的(本発明のポリペプチドの活性を調整することにより)、本発明のポリペプチドを検出・定量化することによる診断目的、あるいは本発明ポリペプチドの純化等に利用できる。本発明の抗体を含み、本文書に述べられている色々な目的に使用されるキット(道具一式)も考慮されている。一般的に、本発明のキットには、抗体が免疫特異的である対照抗原も含まれる。更に本発明は、抗体を生産する雑種細胞も提供する。本発明の抗体は、本発明ポリペプチドの検出および精製に役立つ。
【0317】
本発明の蛋白質に結合している単クローン抗体は、蛋白質の免疫検出用診断薬としても有効かも知れない。蛋白質に結合する中和単クローン抗体も、蛋白質関連の症状および蛋白質の異常発現が関係しているある種の癌の治療の両面に効果を発揮するかも知れない。癌細胞または白血性細胞に関しては、蛋白質拮抗の中和単クローン抗体は、蛋白質が関与する癌細胞の転移を検出したり予防したりするのに有益であるかも知れない。
【0318】
本発明の標識抗体は、生体外、生体内、および生体内原位置に於いて、ポリペプチドの断片が発現している細胞又は組織の同定用試験に利用できる。本抗体は、直接治療または他の診断にも利用できるかも知れない。本発明は、固体の支持台上に上記抗体を固定することも可能である。固体支持台の例としては、ポリカーボネート等のプラスチック、アガロースやSepharose(登録商標)等の複合炭水化物、ポリアクリルアミドのようなアクリル樹脂やラテックス・ビーズ等がある。そういう固形の支持台へ抗体を固定する技術は、当業界では良く知られている(Weir,D.M.等、「実験免疫学手引き書」第4版、ブラックウェル・サイエンティフィック出版、オックスフォード、英国、第10章(1986);Jacoby,W.D.等、Meth.Enzym.34アカデミック・プレス、ニューヨーク(1974))。本発明の固定抗体は、生体外、生体内、および生体内原位置に於ける試験、ならびに本発明蛋白質のイムノアフィニティー精製にも使用可能である。
【0319】
本発明の蛋白質、その誘導体、断片、類似体、同族体、又はオルトログに対するポリクローン又は単クローン抗体の生産には、当業界で既に知られている色々な方法を利用することができる。(例えば、本文書に参考文献として取り上げている、抗体:実験室手引書、Halow E.and Lane D,1988,Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。)こういう抗体のいくつかは、以下で論じる。
【0320】
(5.13.1 ポリクローン抗体)
ポリクローン抗体の生産にあたり、天然の蛋白質、その合成変異体、又はそれらの誘導体を1回又はそれ以上注射することにより、色々な実験動物、例えばウサギ、山羊、ハツカネズミ等の哺乳動物を、免疫化することができる。免疫抗原の準備の中には、天然の免疫抗原蛋白、免疫抗原蛋白を代表する合成ポリペプチド、又は組み換え型形質発現の免疫抗原蛋白等を含むことができる。更に、免疫化される哺乳動物の体内で免疫抗原であると既に知られている第2の蛋白質とその蛋白質を結合させ、複合蛋白質にすることも可能である。
【0321】
そういう免疫抗原蛋白としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、血清アルブミン、牛のチログロブリン、大豆のトリプシン抑制剤等がある。更に補助物質を含めても良い。免疫反応を高めるために使用される色々な補助物質の中には、フロイント補助物質(完全及び不完全)、ミネラル・ゲル(例えばアルミニウム水酸化物)、表面活性物質(例えばリソレシチン、プルロニック・ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノール等)がある。ヒトに使われる補助物質としては、カルメット・ゲラン、コリネバクテリウム・パルブム、又は類似の免疫刺激物質がある。この他にも使用可能な補助物質として、MPL−TDM補助物質(モノホスホリル脂質A、合成トレハロース・ジコリノミコール酸)もある。
【0322】
免疫抗原蛋白に対するポリクローン抗体分子は哺乳動物の例えば血液から単離し、蛋白質Aか蛋白質Gを使ったアフィニティー・クロマトグラフィーのような良く知られて技術で純化することができる。それは主に免疫血清のIgG画分を提供する。その後、又は代替方法として、イミュノグロブリンの標的である特定の抗原又はそのエピトープを、カラム上で固定し、イミュノアフィニティー・クロマトグラフィーで免疫抗体を純化することも可能である。イミュノグロブリンの純化に関しては、例えば、D.Wilkinsonが論じている(ペンシルバニア州フィラデルフィアのザ・サイエンティスト社出版、ザ・サイエンティスト、第14巻、No.8(2000年4月17日)25−28頁)。
【0323】
(5.13.2 単クローン抗体)
本文書で使用される「単クローン抗体」(MAb)又は「単クローン混合物」は、ユニークな軽鎖遺伝子産物及びユニークな重鎖遺伝子産物からなる1種類の抗体分子だけを含む抗体分子個体群を意味している。特に、相補性を決定する単クローン抗体部位(CDR)は、個体群の全分子に関して同一である。従ってMAbは、ある抗原に特別の親和性を持ち、その抗原のエピトープと免疫反応を起こすことのできる抗原結合部位を含んでいる。
【0324】
単クローン抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記述されているようなヒブリドーマ(雑種細胞法)を用いて準備できる。雑種細胞法では、ハツカネズミ、ハムスター、その他の実験動物を免疫剤で免疫化する。それは、免疫剤に特異的に結合する抗体を生産する又は生産できるリンパ球を引き出すためである。リンパ球は試験管内で免疫化することも可能である。
【0325】
免疫化物質の中には、ふつう蛋白抗原、その断片又はその融合蛋白等が含まれる。一般的に、ヒトの細胞が要求される時には抹消血液リンパ球、ヒト以外の哺乳動物が要求される時には脾臓細胞かリンパ腺細胞が使われる。次にリンパ球はポリエチレングリコールのような適当な融合剤を使って不朽化した細胞株と融合させ、雑種細胞を形成する(Goding、単クローン抗体:原理と実践、アカデミック・プレス、(1986)59−103頁)。不朽化した細胞株は普通、形質転換した哺乳動物の細胞、特にげっ歯類、牛属、ヒトの骨髄腫細胞である。通常、ネズミかハツカネズミの骨髄腫の細胞株が用いられる。雑種細胞は適当な培地で培養することができる。培地には、融合しなかった不朽化細胞の成長や生存を阻害する物質を1種類乃至それ以上含むのが望ましい。例えば、親細胞に酵素であるヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)が欠如している場合は、雑種細胞用の培地には普通、HGPRT欠乏細胞の成長を阻害するヒポキサンチン、アミノプテリン、そしてチミジン(HAT培地)が含まれている。
【0326】
不朽化細胞は、融合率が良いもの、選別された抗体生産細胞の抗体発現を安定した高いレベルで支持するもの、HAT培地等の培地に敏感なものが好ましい。より好ましい不朽化細胞は、ネズミ科の骨髄腫細胞株である。ネズミ科の骨髄腫細胞株は、カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionで入手できる。ヒトの骨髄腫及びハツカネズミ・ヒトへテロ骨髄腫細胞株も、ヒトの単クローン抗体生産に関して記述されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等,単クローン抗体生産技術及び応用、Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク、(1987)51−63頁)。
【0327】
次に抗原に対する単クローン抗体が存在するかどうかを、雑種細胞を培養する培地について分析する。雑種細胞が生産する単クローン抗体の結合特異性を、免疫沈降反応により、あるいは放射性同位元素標識免疫測定(RIA)や酵素連結・特異的抗体吸着分析(ELISA)のような試験管内の結合分析によって決定するのが好ましい。そういう技術や分析方法は当業界では良く知られている。単クローン抗体の結合親和性は、例えば、マンソン及びポラードのスキャッチャード分析、Anal Biochem.,107:220(1980)により決定できる。抗原への特異性と結合親和性の高い抗体の分離が望まれる。
【0328】
求められている雑種細胞が同定されたら、その後、限界希釈法によりクローンをサブクローン化し、標準方法でそれを成長させる。この目的に適した培地は、例えば、ダルベッコのModified Eagle培地及びRPMI−1640培地である。雑種細胞は、哺乳動物の体内で腹水として成長させる方法も可能である。
【0329】
サブクローンにより分泌された単クローン抗体は、蛋白質Aセファローズ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティー・クロマトグラフィー等の一般的なイミュノグロブリン純化方法により、培地又は腹水から分離し精製することができる。
【0330】
単クローン抗体は、米国特許番号4,816,567に記されているような組み換えDNA法によっても作成できる。本発明の単クローン抗体をコード化しているDNAは、普通の方法を使って簡単に分離し配列を決定できる(例えば、ネズミの抗体の重鎖及び軽鎖をコード化している遺伝子へ特異的に結合できるオリゴヌクレオチドを使って)。本発明の雑種細胞は、そういうDNA源として好ましいものである。分離されたDNAは次に発現ベクターに載せられ、それから組み換え宿主細胞の中で単クローン抗体を合成するために、猿のCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞のような普通はイミュノグロブリン蛋白を生産しない宿主細胞に形質移入される。DNAは例えば、同族体のネズミの配列の代わりにヒトの重鎖・軽鎖一定領域のコード化された配列を使ったり(米国特許番号4,816,567;Morrison,Nature 368,812−12(1994))、非イミュノグロブリン・ポリペプチドのコード化された配列をイミュノグロブリンのコード化された配列に共有結合させたりして修正することも可能である。そういう非イミュノグロブリン・ポリペプチドを本発明の一定領域の代わりに、又は本発明抗体の抗原結合部位可変ドメインの代わりに使って、キメラ的なニ価抗体を作ることも可能である。
【0331】
(5.13.3 ヒト化された抗体)
更に、本発明の蛋白抗原に対する抗体は、ヒト化した抗体又はヒトの抗体で構成することも可能である。こういう抗体は、イミュノグロブリンを投与してもヒトに免疫反応を起こさせることがないので、ヒトへの投与に適している。ヒト化された形の抗体は、キメラ性のイミュノグロブリン、イミュノグロブリン鎖、又はその断片(例えばFv,Fab,Fab’,F(ab’)2等抗原と結合する抗体のサブ配列)であり、これらは主にヒトのイミュノグロブリンの配列で構成され、ヒト以外のイミュノグロブリンから得られた配列を最小限含んでいる。抗体のヒト化は、Winter及び彼の同僚の方法を踏襲し(Jone等、Nat ure,321:522−525(1986);Riechmann等、Nature,332:323−327(988);Verhoeyen等、Science,239:1534−1536(1988))、ヒトの抗体の配列の代わりに、それに対応するげっ歯類のCDR又はCDR配列を使うことにより達成できる。(米国特許番号5,225,539も参照のこと) ある場合には、ヒトのイミュノグロブリンのFv基質残基を、それに対応するヒト以外の残基で置き換える。
【0332】
ヒト化された抗体は、受容体の抗体にも、移入性のCDRにも、基質配列にも見出されないような残基で構成することも可能である。一般的に、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、普通は2つの可変ドメインにり構成される。その場合、CDR部分の全て又は実質的に全てがヒト以外のイミュノグロブリンのそれに対応しており、基質部分の全て又は実質的に全てがヒトのイミュノグロブリンのコンセンサス配列のそれである。ヒト化された抗体は、理想的には、イミュノグロブリンの一定領域(Fc)の少なくとも一部分、普通はヒトのイミュノグロブリンのそれで構成するのが好ましい(Jones等 1986;Riechmann等、1988;及びPresta,Curr.Op.Stgruct.Biol.2:593−596(1992))。
【0333】
(5.13.4 ヒトの抗体)
ヒトの抗体は、CDRを含めて軽鎖及び重鎖の実質的に全ての配列が、ヒトの遺伝子起源である抗体分子に関係している。そういう抗体は、本文書では「ヒトの抗体」又は「完全にヒトの抗体」と呼ぶ。ヒトの単クローン抗体は、トリオマ技術、ヒトのB細胞の雑種細胞技術(Kozbor等、1983 Immunol Today 4:72を参照のこと)、及びEBV雑種細胞技術(Cole等,単クローン抗体及び癌の治療,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)で準備できる。ヒトの単クローン抗体は本発明の実用化の際に利用でき、ヒトの雑種細胞を使うことにより(Cote等,1983,Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030を参照のこと)、あるいはヒトのB細胞を生体外でEBV(エプシュタイン・バー・ヴィールス)により形質転換させることにより(Cole等,単クローン抗体及び癌の治療,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)生産できる。
【0334】
更にヒトの抗体は、別の技術、例えばファージ表示ライブラリー(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks等,J.Mol.Biol.222:581(1991))等を使っても生産できる。同様に、ヒトの抗体は、ヒトのイミュノグロブリンの遺伝子座を遺伝子導入動物、例えば内因性のイミュノグロブリン遺伝子を部分的に又は完全に不活性化したハツカネズミに導入することによっても形成できる。抗原投与に対し、ヒトの抗体生産の観察が行われたが、遺伝子の再配列、集合、及び抗体のレパートリーを含むあらゆる面で、それはヒトの体内で生じている内容に酷似している。これは例えば次の報告に記述されている:米国特許番号5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016、Marks等、(Bio/Technology 10,779−783(992);Lonberg等(Nature 368,856−859(1994));Morrison(Nature 368,812−13(1994);Fishwild等,(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996));及びLonberg and Huszar(Intern.Rev.Immunol.13 65−93 (1995))。
【0335】
ヒトの抗体は、自分の内因性抗体でなく完全にヒトの抗体を生産するように修正された遺伝子導入動物を使って生産することも可能である(PCT出版WO94/02602を参照のこと)。イミュノグロブリンの重鎖及び軽鎖をコード化した動物の内因性遺伝子を不活性化し、重鎖及び軽鎖のイミュノグロブリンをコード化したヒトの活性遺伝子座が、その代わりに宿主のゲノムの中に挿入されている。ヒトの遺伝子は、例えば、ヒトのDNAの必要な部分を含む酵母の人工染色体を使って導入する。希望の修正部分を全て提供する動物は、修正部分を完全には含まない中間遺伝子導入動物を交雑育種することにより後代として得られる。そういう動物の中ではハツカネズミが好ましく、PCT出版WO96/33735及びWO96/34086で示されているように、それはXenomouse(ゼノマウス)と呼ばれる。この動物は、完全にヒトのイミュノグロブリンを分泌するB細胞を生産する。抗体は、例えばポリクローン抗体の準備として、関心のある免疫抗原で免疫化した後、そういう動物から直接得ることができる。あるいは単クローン抗体を生産する雑種細胞のような動物起因の不朽化B細胞から得ることも可能である。ヒトの変動部位を持つイミュノグロブリンをコード化した遺伝子を回復させ、発現させて、直接抗体を得ることも可能である。あるいは更に修正を加えて、単鎖Fv分子のような抗体類似体を得ることもできる。
【0336】
内因性のイミュノグロブリン重鎖の形質発現が欠如しているヒト以外の宿主、例えばハツカネズミ等を生産する方法は、米国特許番号5,939,598に示されている。それは、胚幹細胞の中にある内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つからJ部分の遺伝子を削除する方法があるが、それを含むやり方で得ることができる。それは、その遺伝子座の再配列を防ぎ、再配列されたイミュノグロブリン重鎖遺伝子座の写しの作成を防ぐためである。削除は、選択可能な標識をコード化した遺伝子を含む標的ベクターにより行われる。そして胚幹細胞から、選択的標識をコード化した遺伝子を体細胞及び生殖細胞に含む遺伝子導入マウスを生産する。
【0337】
例えばヒトの抗体のように求められている抗体を生産する方法は、米国特許番号5.916,771に述べられている。それは、重鎖をコード化したヌクレオチド配列を含む発現ベクターを培養中の哺乳動物宿主細胞に導入し、軽鎖をコード化したヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入し、その2つの細胞を融合して雑種細胞を作る方法に関係している。雑種細胞は、重鎖と軽鎖を含む抗体を発現する。
【0338】
このやり方を更に改善する方法として、免疫抗原に臨床的に関連のあるエピトープを同定する方法、及びそのエピトープに高い親和性で免疫特異的に結合する抗体を選別する相補的な方法が、PCT出版WO99/53049に述べられている。
【0339】
(5.13.5 FAB断片及び単鎖抗体)
本発明では、本発明の抗原蛋白に特異的な単鎖抗体を生産するための技術は、調整可能である(例えば米国特許番号4,946,778を参照のこと)。更に、蛋白質、又はその誘導体、断片、類似体、同族体に対し好ましい特異性を持つ単クローンFab断片の同定を迅速かつ効果的に行うために、Fab発現ライブラリーの構築方法を調整することも可能である(例えばHuse等,1989 Science 246:1275−1281を参照のこと)。ある蛋白抗原に特有の遺伝子型を含む抗体断片は、当業界で既に良く知られている技術を用いて生産可能である。例えば、(i)ある抗体分子のペプシン消化により生産されるF(ab’)2断片;(ii)F(ab’)2のジスルフィド・ブリッジを減らすことにより生産されるFab断片;(iii)パパイン及び還元剤で抗体分子を処理することにより生産されるFab断片;及び(iv)Fv断片。
【0340】
(5.13.6 生物特異的な抗体)
二重特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を持つ単クローン抗体(ヒト又はヒト化された抗体が好ましい)である。本件においては、結合特異性の1つは、本発明の抗原蛋白である。第2の結合標的はそれ以外の抗原であり、細胞表面の蛋白質、受容体、又は受容体サブユニットであるのが望ましい。
【0341】
二重特異性抗体の作成方法は、当業界では良く知られている。通常の方法としては、二重特異性抗体の遺伝子組み換え生産は、2つのイミュノグロブリン重鎖・軽鎖ペアの共同発現に基づいている。この場合2つの重鎖は、異なる特異性を有している(Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983))。イミュノグロブリン重鎖・軽鎖はランダムに組み合わされるので、その雑種細胞(クアドロマ)は、10の異なる抗体分子の混合体を産する。その中で1つだけが、正しい二重特異性の構造を持っている。その正しい分子の精製は、普通アフィニティー・クロマトグラフィーにより行われる。同じような方法が、PCT出版WO93/08829(1993年5月13日出版)及びTraunecker等,EMBO J.,10:3655−3659に述べられている。
【0342】
要求されている結合特異性(抗原抗体結合部位)を持つ抗体の可変ドメインは、イミュノグロブリンの一定領域配列に融合させることができる。ヒンジ(ちょうつがい)、CH2及びCH3部位の少なくとも一部分で構成されるイミュノグロブリン重鎖の一定領域との融合が好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖一定領域が、融合体の少なくとも1つに存在するのが望ましい。イミュノグロブリン重鎖(そしてできればイミュノグロブリン軽鎖も)の融合をコード化したDNAが異なる発現ベクターに挿入され、適切な宿主有機体に同時形質移入される。二重特異性抗体の生産方法については、更に詳細は例えば、Suresh等、酵素化学の方法、121:210(1986)を参照のこと。
【0343】
WO96/27011に述べられている別の方法によれば、遺伝子組み換え細胞培養から回収されるヘテロダーマーの割合を最大にするように、一対の抗体分子間のインターフェースを工夫することも可能である。好ましいインターフェースは、抗体一定領域中にあるCH3部位の少なくとも一部分で構成される。この方法によると、最初の抗体分子のインターフェースから得られる小さいアミノ酸側鎖を、チロシンやトリプトファンのような大きい側鎖で置き換えることができる。大きいアミノ酸側鎖をアラニンやトレオニンのような小さいアミノ酸側鎖で置き換えることにより、大きい側鎖に対して同じ又は類似の大きさの補償「キャビティー(腔)」を、第2の抗体分子のインターフェース上に作ることができる。この方法で、ホモダイマーのような好ましくない最終生産物以上にヘテロダイマーを増やすことが可能である。
【0344】
二重特異性抗体は完全長抗体として、又は抗体の断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として準備できる。抗体断片から二重特異性抗体を作る技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学結合を使って準備できる。Brennan等、Science 229:81(1985)は、無傷の抗体が蛋白質分解して裂け、F(ab’)2の断片を生成する方法について述べている。こういう断片は、ジチオール複合剤である砒酸ナトリウムの存在下で還元され、その結果、隣接したジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド結合の形成を阻害する。そのようにして生成されたFab’の断片は、チオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換される。次にFab’‐TNB誘導体はメルカプトエチルアミンで還元するとFab’‐チオールに再び転換され、Fab’‐TNB誘導体と等モル量ずつ混合されて二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化剤として使用できる。
【0345】
その他に、Fab’の断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させて二重特異性抗体を形成する。Shalaby等,J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)2分子の生産について記述している。
【0346】
Fab’断片はそれぞれ大腸菌から別々に分泌され、生体外で化学結合を施され、その結果二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現している細胞及びヒトの正常なT細胞に結合でき、それと同時に、ヒトの乳癌に対して細胞毒性リンパ球の溶解活動を誘発する。
【0347】
遺伝子組み換え細胞培養から直接二重特異性抗体の断片を形成し分離する方法も、種々報告されている。例えば、二重特異性抗体はロイシン・ジッパーを使って生産されている。Kostelny等,J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJun蛋白質から得られるロイシン・ジッパー・ペプチドは、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモダイマーはヒンジ部分で還元されモノマーを作り、再び酸化されて抗体へテロダイマーを形成した。この方法は、抗体ホモダイマーの生産にも利用できる。Hollinger等、Proc.Nati.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に記されている「diabody」技術は、二重特異性抗体の断片を作るための代替機構を提供している。その断片は、リンカーにより互いに結合された重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。リンカーは短いので、同じ鎖上の2つの領域間でペアを作ることはない。従って、1つの断片のVH領域をVL領域は相補的なVL領域及びVH領域とペアを作るように強制され、その結果、抗原と結合する部位が2つ形成される。単鎖Fv(sFv)ダイマーを用いた二重特異性抗体断片の作成方法も報告されている。Gruber等,J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
【0348】
3価以上の抗体も考えられている。例えば、トリ・スペシフィック(3特異性)な抗体も準備できる。Tutt等,J.Immunol.147:50 (991)。典型的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープと結合できる。そのうちの少なくとも1つは本発明の蛋白抗原に由来する。イミュノグロブリン分子の反抗原用の腕を、白血球上のトリガ分子(例えばCD2,CD3,CD28,B7のようなT細胞受容体分子)、あるいはIgG(FcγR)のFc受容体(例えばFcγRI(CD64),FcγRII(CD32),FcγRIII(CD16))に結合している腕と連結させることも可能である。これは、細胞の防御機構を、特定の抗原を発現している細胞に集中させるためである。
【0349】
二重特異性抗体は、特定の抗原を発現している細胞に細胞毒性物質を向ける目的で利用できる。こういう抗体は、抗原と結合する腕及び細胞毒性物質や放射性核種キレート化剤(EOTUBE,DPATA,DOTA,TETA等)と結合する腕を所有している。別の二重特異性抗体は、本文書で述べられている蛋白抗原や、更に組織因子(TF)とも結合する。
【0350】
(5.13.7 ヘテロ共役抗体)
ヘテロ共役抗体も本発明の範囲内にある。ヘテロ共役抗体は、2つの共有結合をした抗体で構成されている。そういう抗体の使用方法として例えば、免疫組織細胞で望ましくない細胞を攻撃する方法(米国特許番号4,676,980)や、HIV感染の治療(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089)が提案されている。そういう抗体は、合成蛋白化学で良く知られている方法(例えば架橋結合物質等を使う方法)を使って、生体外で準備できると考えられている。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使って、又はチオエーテル結合を形成することにより構築できる。この目的に適した試薬は例えば、イミノチオレート、メチル−4−メルカプトブチルイミデート、米国特許番号4,676,980に掲載された試薬などである。
【0351】
(5.13.8 作動体機能工学)
本発明の抗体は、作動体機能の面で調整するのが望ましい。これは例えば、癌治療などの際に抗体の効果を高めるためである。例えば、シスチン残基をFc部位に導入し、分子内S−S結合形成をその部位で行わせる。このようにして作られたホモダイマーの抗体は、内在化能力を高め、および/又は補体媒介の細胞死滅や抗体依存の細胞毒性を増大できる。Caron等,J.Exp.Med.,176:1191−1195(1992);Shopes,J.Immunol.,148:2918−292(1992)を参照のこと。抗癌作用を強められたホモダイマー抗体は、Wolff等,癌研究,53:2560−2565 (1993)に述べられているように、ヘテロ・二作用架橋結合剤を使って準備することも可能である。Fc二重部位を持つ抗体を作り、補体溶解やADCC能力を増進することも可能である。Stevenson等,抗癌薬設計,3:219−230(1980)を参照のこと。
【0352】
(5.13.8 免疫共役)
本発明は、化学療法剤、毒素(例えば細菌、カビ、植物、動物、又はそれらの断片由来の酵素学的に活発な毒素)、放射性アイソトープ(つまり放射性共役)のような細胞毒性物質を抗体と結合させた免疫共役とも関係している。
そういう免疫共役の生成に用いられる化学療法剤は、上述の通りである。酵素学的に活性な毒素及びその断片は例えば、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒の非結合活性断片、エクソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ・サルシン、Aleurites fordii蛋白、dianthin蛋白、Phytolaca Americana 蛋白(PAPI,PAPII,及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテシン等である。放射性共役抗体の生成には、212Bi,131I,131In,90Y,186Reのような数多くの放射性核種が入手可能である。
【0353】
抗体と細胞毒性物質との結合には、種々の二作用性蛋白結合剤が使われる。二作用性蛋白結合剤には、N−サクシンイミジル‐3‐(2‐ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオレーン(IT)、イミドエステルの二作用性誘導体(ジメチル・アジピミデートHCL等)、活性エステル(ジサクシンイミジル・スベリン酸塩等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(P−アジドベンゾイル)へキサンジアミン等)、ビス‐ジアゾニウム誘導体(ビス‐(P‐ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン等)、ジイソシアン酸塩(トリエン2,6−ジイソシアン酸塩等)、ビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ‐2,4‐ジニトロベンゼン等)等がある。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等,Science,238:1098(1987)に述べられている方法で準備できる。炭素14標識の1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレン・トリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種と抗体との結合用の典型的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。
【0354】
腫瘍攻撃の準備のために、抗体とストレプタビジンのような「受容体」を共役結合させることも可能である。その場合、抗体・受容体共役体が患者に投与され、その後で結合しなかった共役体は、清澄剤を使い、それからアビジン等の「配位子」(細胞毒素と結合する)を投与することによって、循環器系から除去される。
【0355】
(5.14 コンピューター読取り可能な配列)
一応用例として、本発明のヌクレオチド配列は、コンピューター読取り可能媒体上に記録できる。本文書で使用される「コンピューター読取り可能媒体」と言うのは、コンピューターにより読取り及びアクセスが可能な媒体全てを意味している。例えばフロッピー(登録商標)ディスクのような磁気記憶媒体、ハードディスク記憶媒体、磁気テープ、CD−ROMのような光学記憶媒体、RAMやROMのような電子記憶媒体、磁気記憶媒体や光学記憶媒体等のハイブリッド等である。本発明のヌクレオチド配列を記録したコンピューター読取り媒体製品を製作するには、現在知られているコンピューター読取り媒体の中のどれをどのように使えば良いか、有能な技師であればすぐに分かるはずである。本文書で使用されている「記録される」という言い回しは、コンピューター読取り媒体に情報を保存するプロセスに言及している。有能な技師であれば、コンピューター読取り媒体に情報を記録する方法をどれでもすぐに採用して、本発明のヌクレオチド配列情報を含む製品を製作できるはずである。
【0356】
有能な技師は、本発明のヌクレオチド配列を記録するコンピューター読取り媒体を、色々なデータ記憶構造体を使って製作できる。どのデータ記憶構造体を選択するかは、通常記録された情報にアクセスする手段により決定される。更に、色々なデータ処理プログラムやフォーマットを使って、本発明のヌクレオチド配列情報をコンピューター読取り媒体上に記録できる。配列情報は、ワードパーフェクトやマイクロソフト・ワードのように商業用のソフトでフォーマットされたワープロ・テキストファイルで表すこともできるし、DB2、Sybase、オラクルのようなデータベースの形式のASCIIで表すことも可能である。有能な技師であれば、データ処理構造のフォーマット(テキストファイルかデータベース)を使って、本発明のヌクレオチド配列情報を記録したコンピューター読取り媒体をすぐに得ることができる。
【0357】
SEQ ID NO:1、3、5、その代表的な断片、又はSEQ ID NO:1、3、または5のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を、コンピューター読取り可能な形で提供することにより、有能な技師は、その配列情報をいつでも好きな時に色々な目的のためにアクセスできる。コンピューター読取り媒体の形で提供される配列情報をアクセス可能にするコンピューター・ソフトは、市販のものでいくらでも入手可能である。以下の例は、Sybaseシステム上でBLAST(Altschul等,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))及びBLAZE(Brutlag等,Comp.Chem.17:203−207(1993))探索アルゴリズムを実行するソフトを使って、核酸配列内のオープン・リーディング・フレーム(ORF)の確認を行う方法を示している。そういうORFは、蛋白質をコード化した断片であるかも知れないし、発酵反応に使われる酵素や、商業的に有用な代謝産物の生産に使われる酵素等、商業的に重要な蛋白質の生産に使用されるかも知れない。
【0358】
本文書に述べられている「コンピューター利用システム」という語は、本発明のヌクレオチド配列情報を分析するのに使われるハード、ソフト、及びデータ記憶手段を意味している。本発明のコンピューター利用システムにとって最低限必要なハードは、中央処理装置(CPU)、インプット装置、アウトプット装置、そしてデータ記憶装置である。有能な技師であれば、現在入手可能なコンピューター利用システムのうち、本発明の使用に適しているのがどれであるかすぐ判断できる。上述の如く、本発明のコンピューター利用システムは、本発明のヌクレオチド配列を記録したデータ記憶装置、及び探索手段の支援と実行に必要なハードとソフトの装置で構成される。
【0359】
本文書で使用される「データ記憶装置」という用語は、本発明のヌクレオチド配列情報を記録できる記憶装置(メモリー)か、本発明のヌクレオチド配列情報を記録している製品にアクセスするメモリー・アクセス装置のいずれかを意味している。
【0360】
本文書に使用される「探索手段」という用語は、標的配列又は標的構造モチーフとデータ記憶装置に記録した配列情報とを比較するために、コンピューター利用システム上で実行される1つ又は複数のプログラムを意味している。探索手段は、特定の標的配列又は標的モチーフと一致する断片や既知の配列部位を同定するのに使用される。色々なアルゴリズムが既に商業化されているし、本発明のコンピューター利用システムに利用可能な探索手段実行用ソフトも数多く市販されている。そういうソフトには例えば、smith−Waterman、MacPattern(EMBL)、BLASTN、BLASTA(NPOLYPEPTIDEIA)等がある。有能な技師であれば、相同性探索用の種々のアルゴリズム又は実行ソフト・ユニットのうちいずれが、本発明のコンピューター利用システムに利用できるかすぐ判断できるはずである。本文書で使われる「標的配列」という用語は、全ての核酸、6つ又はそれ以上のヌクレオチドのアミノ酸配列、あるいは2つ又はそれ以上のアミノ酸のアミノ酸配列を意味している。標的配列は長ければ長いほど、データベースの中でランダムには起きにくいということが、有能な技師ならすぐに分かるはずである。標的配列のうち最も好ましい配列の長さは、約10乃至100のアミノ酸、又は約30乃至300のヌクレオチド残基である。しかし既に良く知られていることであるが、遺伝子発現や蛋白質処理等に関連する配列断片のような商業的に重要な断片の探索は、かなり短い長さで行われるかも知れない。
【0361】
本文書に使用される「標的構造モチーフ」又は「標的モチーフ」という用語は、理性的に選択された配列又は配列の組み合わせのことであり、その配列は、標的モチーフのひだ上に形成される3次元構造に基づいて選ばれる。当業界では色々な種類の標的モチーフが知られている。蛋白質の標的モチーフは、例えば、酵素の活性部位やシグナル配列などである。核酸の標的モチーフには、プロモーター(促進因子)配列、ヘアピン構造、誘発性発現要素(蛋白質結合配列)等が含まれる。
【0362】
(5.15 三重へリックス形成)
更に、本発明の断片は、広い意味では、三重へリックス形成またはポリヌクレオチド・アンチセンスDNA/RNAを通して遺伝子発現をコントロールするのに使用できる。両方法とも、ポリヌクレオチド配列のDNA又はRNA結合に基づいている。こういう使用方法に適したポリヌクレオチドは、ふつう塩基の長さが20乃至40であり、転写に関係する遺伝子部位(三重へリックス−Lee等,Nucl.Acids Res.6:3073(1979);Cooney等,Science,15241:456(1988);Dervan等,Science,251:1360(1991)を参照のこと)、又はmRNA自体(アンチセンス−Olmno,J.Neurochem.56:560(1991);遺伝子発現のアンチセンス阻害剤としてのオリゴデオキシヌクレオチド、CRCプレス、ボカレイトン、フロリダ(1988))に相補性を持って設計されている。三重へリックス形成は、DNAからRNAへの転写を最適条件で遮断し、アンチセンスRNAハイブリダイゼーション法はmRNA分子のポリペプチドへの翻訳を阻止する。両技術とも、モデル・システムにおいて有効であることが証明されている。本発明の配列に含まれる情報は、アンチセンス又は三重へリックスオリゴヌクレオチドの設計には必要である。
【0363】
(5.16 診断用分析及び用具)
本発明は、核酸プローブ又は本発明の抗体(適当な標識化可能)を使用することにより、本発明の1つのORF又はその同族体の存在又は発現を、試験サンプル中で同定する方法も提供する。
【0364】
本発明のポリヌクレオチドを検出する方法であるが、普通は、ポリヌクレオチドに結合し複合体を形成する化合物をその複合体の形成に必要な時間サンプルと接触させ、その後でその複合体を検出する。その結果、もし複合体が存在すれば、本発明のポリヌクレオチドもサンプルの中に検出されることになる。その方法では更に、ハイブリダイゼーションの厳しい条件の下に、そういう条件下で本発明のポリヌクレオチドをアニールする核酸プライマーにサンプルを接触させ、それからアニール化されたポリヌクレオチドを増幅させる。もしポリヌクレオチドが増幅すれば、本発明のポリヌクレオチドがサンプル中に検出されることになる。
【0365】
本発明のポリペプチドを検出する方法であるが、普通は、ポリペプチドに結合し複合体を形成する化合物をその複合体の形成に必要な時間サンプルと接触させ、その後でその複合体を検出する。その結果、もし複合体が存在すれば、本発明のポリペプチドもサンプルの中に検出されることになる。
【0366】
こういう方法は更に詳細に説明すると、試験サンプルを本発明の抗体の1つ又はそれ以上、又は核酸プローブの1つ又はそれ以上と定温培養させ、その後、試験サンプルの成分と核酸プローブか抗体との結合状態を分析する。
【0367】
核酸プローブか抗体を試験サンプルと共に定温培養する条件は様々である。培養条件は、分析に使われるフォーマット、検出方法、分析に使用される核酸プローブか抗体の種類及び性質に依存している。
【0368】
当業界の技術の訓練を受けた人は、一般に入手可能なハイブリダイゼーション、増幅、又は免疫学的検定フォーマットのうちのいずれが、本発明の核酸プローブ又は抗体の使用に適しているかをすぐに判定できる。そういう検定は、Chard,T.,放射性免疫検定及び関連技術入門、エルセヴィア・サイエンス出版社、アムステルダム、オランダ(1986);Bullock,G.R.等、免疫細胞化学技術、アカデミック・プレス、オーランド、フロリダ、第1巻(1982)、第2巻(1983)、第3巻(1985);Tijssen,P.,免疫学的検定法の実践と理論:生化学及び分子生物学に於ける実験技術、エルセヴィア・サイエンス出版社、アムステルダム、オランダ(1985)等に説明されている。本発明の試験サンプルとしては、細胞、細胞の蛋白質又は膜抽出物、生体液(痰、血液、血清、血漿、尿等)等がある。上述の方法に使用される試験サンプルは、検定フォーマット、検出方法の性質、検定のサンプルとして使われる細胞組織、細胞、又は抽出物の性質等により異なっている。細胞の蛋白抽出物又は膜抽出物の準備方法は当業界では良く知られており、調整も容易であるから、利用システムに適したサンプルをすぐ得ることができる。
【0369】
本発明の別の応用面では、本発明の検定を実行するのに必要な試薬を含む器具が一式提供される。特に本発明は、1つ又は複数の容器を入れる区画用具が提供される。それは以下の内容で構成されている:(1)最初の容器は本発明のプローブ又は抗体のうちの1つを含む;(2)別の1つ又はそれ以上の容器は、洗浄試薬、結合プローブ又は抗体の存在を検出できる試薬のうち1つを含む。
【0370】
更に詳細に説明すると、区画用具には、試薬を各々異なる容器に入れている用具全てが含まれる。そういう容器には、小さいガラス容器、プラスチック容器、又はプラスチックや紙の切れ端が入っている。そういう容器を使うと、試薬を1つの区画用具から別の区画用具に効果的に移すことができる。試薬もサンプルも混じり合うことがないし、各容器に入っている物質や溶液を定量的に、1つの区画用具から別の区画用具へ加えることも可能である。そういう容器としては、試験サンプルを入れる容器、検定に使用される抗体を入れる容器、洗浄試薬(リン酸塩緩衝塩水、トリス緩衝液等)を入れる容器、結合抗体やプローブを検出するのに使われる試薬を入れた容器等がある。検出試薬には、標識された核酸プローブ、標識された二次抗体、あるいは一次抗体が標識されている場合は、標識された抗体と反応可能な酵素又は抗体の結合試薬が含まれる。当業界の技術に優れた人は、本発明で開示されたプローブ又は抗体が、当業界で良く知られている用具フォーマットのいずれに適しているかすぐ分かるはずである。
【0371】
(5.17 医療画像)
本発明の新しいポリペプチド及び結合剤は、本発明の分子を発現する部位の医療画像にとって有益である(例えば本発明のポリペプチドが免疫反応に関係している場所、炎症又は感染部分の画像等)。例えば、Kunkel等、米国特許番号5,413,778を参照のこと。そういう方法には、標識薬又は画像剤の化学的付着、製薬学的に承認できる担体中の対象へ標識ポリペプチドを投与、生体内の標的部位で標識ポリペプチドの画像を撮る等のプロセスが関係している。
【0372】
(5.18 スクリーニング分析法)
本発明は、その単離蛋白質及びポリヌクレオチドを使うことにより、ORF(SEQ ID NO:1、3又は5で説明されているヌクレオチド配列のいずれかと対応)によりコード化されているポリペプチドと結合した物質、又はその核酸によりコード化されたポリペプチドの特異領域と結合している物質を獲得・同定する方法も提供する。上記方法の詳細は、以下の段階で構成される。
(a)本発明のORFによりコード化された分離蛋白質をある物質に接触させる。
(b)その物質が上記蛋白質又は上記核酸と結合するかどうか決定。
【0373】
従って普通、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物を同定するには、本発明のポリヌクレオチドと化合物をポリヌクレオチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させ、それからその複合体を検出する。そうすることにより、もしポリヌクレオチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物が同定される。
【0374】
従って同様に普通、本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定するには、本発明のポリペプチドと化合物をポリペプチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させ、それからその複合体を検出する。そうすることにより、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリヌクレオチド(ママ)に結合する化合物が同定される。
【0375】
本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定する方法として、更に、本発明のポリペプチドと化合物を細胞中で、ポリペプチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させる方法もある。その場合、その複合体は細胞の受容体の遺伝子配列の発現を促すので、受容体の遺伝子配列の形質発現を検出すればその複合体を検出できる。その結果、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリペプチドに結合する化合物が同定される。
【0376】
こういう方法で同定される化合物には、本発明のポリペプチドの活動を調整する化合物(つまりその化合物がない場合の活動と比べポリペプチドの活動を増大させたり減少させたりする化合物)も含めることができる。こういう方法で同定される化合物の中には、本発明のポリヌクレオチドの活動を調整する化合物(つまりその化合物がない場合の発現レベルと比べ形質発現を増大させたり減少させたりする化合物)を含めることも可能である。本発明の方法を使って同定されるような化合物は、当業界技術で既に知られている標準検定方法を用いて、活動や形質発現の調整能力を試験することが可能である。
【0377】
上述の方法でスクリーニングされる作用薬には、ペプチド、炭水化物、ビタミン誘導体、製薬学上のその他の作用薬が含まれる。そういう作用薬は、無作為に選別したりスクリーニングを行ったりできる。あるいは蛋白質モデリング技術を使って、理性的に選別したり設計したりすることも可能である。
【0378】
無作為スクリーニングの場合、ペプチド、炭水化物、製薬学上の物質等は無作為に選択され、本発明のORFによりコード化されている蛋白質へ結合する能力について検定される。物質は理性的に選別又は設計することも可能である。本文書では、ある物質が特定の蛋白質の構造に基づいて選択される時、その物質は「理性的に選別又は設計される」と呼ぶ。例えば、当業界の技術の訓練を受けた人は、既存の方法を適用して、特定のペプチド配列に結合する能力を持つペプチドや製薬学上の物質を容易に生産し、ひいては理性的に設計されたアンチペプチド(ママ)・ペプチド(例えばHurby等、合成ペプチドの応用:アンチセンス・ペプチド、合成ペプチド、使用者ガイド、W.H.Freeman,NY(1992)289−307頁、及びKaspczak等、生化学28:9230−8(1989)を参照のこと)、又は製薬学上の物質を作ることができる。
【0379】
前述の内容の他に、広義の意味で、本発明のあるクラスの物質は、本発明のORF又はEMFの1つへの結合を通して、遺伝子発現をコントロールするために使用できる。上述通り、そういう物質は無作為にスクリーニングしても良いし、理性的に設計・選別しても良い。当業界の技術者は、ORF又はEMFを標的にすることにより、単一のORF又は複数のORF(いずれも発現コントロールの面で同じEMFに依存)の発現を調整し、配列特異性又は要素特異性の物質を設計することができる。あるクラスのDNA結合物質は、DNA又はRNAに結合することにより三重へリックスを形成する塩基の残基を含んでいる。そういう物質は、古典的なホスホジエスター、リボ核酸バックボーンに基づかせても良いし、塩基付着能力を有する色々なスルフヒドリル誘導体又は重合誘導体でも良い。
【0380】
こういう方法に使用される物質は、普通20乃至40の塩基を含んでおり、転写に関係する遺伝子部位に相補的であるように(三重へリックス‐Lee等,Nuel.Acids.Res.6:3073(1979);Cooney等,Science,241:456(1988);及びDervan等,Science 251:1360(1991)を参照のこと)、あるいはmRNA自体に相補的であるように(アンチセンス‐Okano,J.Neurochem.56:560(1991);遺伝子発現のアンチセンス抑制剤としてのオリゴデオキシヌクレオチド、CRCプレス、ボカレイトン、フロリダ(1988))設計されている。三重ヘリックス形成はDNAからRNAへの転写阻害の面で最高の結果をもたらし、アンチセンスRNAハイブリダイゼーションはmRNAをポリペプチドに翻訳するプロセスを阻害する。両技術とも、モデル・システムに於いて有効であることが証明されている。本発明の配列に含まれる情報は、アンチセンス、三重ヘリックス・オリゴヌクレオチド、その他のDNA結合物質の設計にとって必要である。
【0381】
本発明のORFの1つによりコード化されている蛋白質に結合する物質は、診断薬として用いることができる。本発明のORFの1つによりコード化されている蛋白質に結合する物質は、製薬学的な化合物の生成に使われる既知の技術に基づいて調剤可能である。
【0382】
(5.19 プローブとしての核酸の利用)
本発明は、自然界で得られるヌクレオチド配列を使って雑種形成することができるポリペプチドに特異的な核酸雑種形成プローブも提供する。本発明の雑種形成プローブは、ヌクレオチド配列SEQ ID:1−3または5のうち任意のものから得られる。対応する遺伝子は限られた数の組織にしか発現されないので、ヌクレオチド配列SEQ ID:1−3または5の任意の物から得られた雑種形成プローブは、試料中のそのような組織細胞タイプのRNAの存在を示す指標として使うことができる。
【0383】
例えば、原位置雑種形成のような適切な雑種形成手法を使うことができる。米国特許4,683,195と4,965,188に述べられたPCRは、ヌクレオチド配列に基づくオリゴヌクレオチドの別な用途も提供する。PCRに用いられるそのようなプローブは組み換え法により生成されるか、化学的に合成されるか、またはその混合法により生成される。プローブは、同一配列の検知のため異なるヌクレオチド配列で構成されるか、密接に関係したゲノム配列識別のため可能配列の退化プールで構成される。
【0384】
核酸に特異的な雑種形成プローブを生成する他の方法には、mRNAプローブの生成のために核酸配列をベクターの中にクローン化する方法が含まれる。そのようなベクターは、当業界で知られており、商業的に入手可能であり、T7として適切なRNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼおよび適切に放射態ラベルがつけられたヌクレオチドを追加することによって、体外でRNAプローブを合成するのに使用できる。
【0385】
ヌクレオチド配列は、各々のゲノム配列をマップするための雑種形成プローブを構成するために使用することができる。本発明で提供されるヌクレオチド配列は、一般に知られた遺伝子および/または染色体地図作成手法によってある染色体または染色体の特定領域に対してマップすることができる。これらの手法には、原位置雑種形成、既知の染色体マーカーに対するリンケージ分析、既知の染色体に特異的なフロー分類が施された染色体標本またはライブラリーを使った雑種形成スクリーニングなどがある。染色体分布の蛍光原位置雑種形成の手法は、バーマほか(1988)Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York NY.(ヒトの染色体:基本手法のマニュアル、パーガモンプレス、ニュ−ヨーク州ニューヨーク市)にも説明されている。
【0386】
染色体標本の蛍光原位置雑種形成およびその他の物理染色地図作成手法は、付加遺伝子地図データによって照合することができる。遺伝子地図データの例は、1994 Genome Issue of Science(ゲノム特集号Science誌)(265:1981f)に示されている。物理的な染色体地図上の核酸の位置と特定の疾病(または特定の疾病に対する体質)の相関性は、その特定の疾病と関連するDNAの領域を限定する上で役立つ。本発明のヌクロチド配列は正常者、保菌者または患者の間の遺伝子配列の違いを検知するのに使うことができる。
【0387】
(5.20 支持体に固定されたオリゴヌクレオチドの作成)
オリゴヌクレオチド、すなわち、核酸の小セグメントは、例えば自動オリゴヌクレオチド合成装置を使って、つまり一般的に行われているオリゴヌクレオチドの直接化学合成によって、容易に作成することができる。
【0388】
支持固定されたオリゴヌクレオチドは、当業界で良く知られたガラス、ポリスチレンまたはテフロン(登録商標)のような適当な支持体を使う方法によって標本を作成することができる。1つの方法は、標準的な合成装置を使って合成されたオリゴヌクレオチドを正確に見分ける方法である。固定方法としては、受動的吸着(井上および本道、1990 J.Clin Microbiol 28(6)1462−72);紫外線)(永田ほか、1985;ダーレンほか、1987、モリセイおよびコリンズ、Mol.Cell Probes 1989 3(2)189−207)または塩基を修正したDNAの共有結合(ケラほか、1988;1989)などがあり、ここに挙げた参考文献は本出願の一部とする。別の方法は、リンカーとして強力なバイオチンとストレプタビジンの相互作用を使う方法もある。例えば、ブルーデほか.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91(8)3072−6は、バイオチニル化されたプローブの利用について述べており、それらは二重プローブであるストレプタビジン被覆された磁気ビーズで固定されている。
【0389】
ストレプタビジンを被覆したビーズはオスローのディナール社から購入することができる。もちろん、同じ結合化学はストレプタビジンを持つ表面の被覆用として応用できる。バイオチニル化されたプローブは、例えば、オペロン・テクノロジーズ社(カリフォルニア州アラメダ市)などのさまざまな供給源から入手できる。
【0390】
ナンク・ラボラトリーズ(イリノイ州ネイパービル市)からも適切な材料を入手することができる。ナンク・ラボラトリーズは、コバリンクNHと呼ばれるマイクロウェル面に共有結合することができる。コバルトリンクNHは、更なる共有結合のための橋頭堡となる第2段階のアミノグループ(>HN)が移植されたポリスチレン面である。コバリンクモジュールは、ナンク・ラボラトリーズから購入されたものである。DNA分子はホストアミド結合によりコバリンクの5’端にのみ結合されることが可能であり、1pmol以上のDNAの固定を可能にする(ラスムッセンほか、(1991)Anal Biochern 198(l)138−42)。
【0391】
コバリンクNHストップを5’端へのDNAの共有結合のために使用することは公開されている(ラスムッセンら、1991)。この技術においては、ホスホラミデート結合が使用されている。(チユーら、1983 Nucleic Acids 11(18)6513−29)これは,共有結合を1個だけ使用して固定するという利点がある。ホスホラミデート結合は、長さ2nmのスペーサーアームを介して、ポリスチレン表面に共有結合的に移植されているスペーサーアームの端部に位置しているコバリンクNH第2アミノグループにDNAを結合する。ホスホラミデート結合を経由してコバリンクNHにオリゴヌクレオチドをリンクするためには、オリゴヌクレチドターミナルは5’端リン酸塩グループを持っていなければならない。たぶんビオチンをコバリンクに共有結合し、ストレプタビジンをプローブの結合のために使うことも可能である。
【0392】
さらに詳しくは、このリンク方法はDNAを水(7.5ng/ul)に溶解し、10分間95℃で変性し、氷で10分間冷やす過程を含む。次に、氷で冷やした0.1M 1−メチルイミダゾール、pH 7.0(1−MeIm7)を加えて、最終的な濃度を10mM I−MeIm7.とする。ss DNA溶液を次に氷冷却中のコバリンクNHストリップ(75ul/well)に供給する。
【0393】
カーボジイミド0.2Mエチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カーボジイミド(EDC)を10mM 1−MeIm7に溶解したものを新たに作り、ウェルあたり25ul を加えた。ストリップは50℃で5時間培養した。培養後、ストリップを例えばヌンク−イムノウォッシュを使って洗った。最初に、ウェルを3回洗い、その後5分間洗浄液に浸漬し、最後に3回洗浄された(そのとき、洗浄液は50℃に温めた0.4N NaOH,0.25%SDSであった)。
【0394】
本発明にとってさらに適した方法は、PCT特許申請WO 90/03382(サザン&マスコス)で公開されたもので、ここに言及することにより、本出願の一部とする。支持体に固定したオリゴヌクレオチドを作成するこの方法では、ヌクレオシド3’−試薬をリン酸塩を介して共有結合ホスホジエステル・リンクにより、支持体で支えられた脂肪族ヒドロオキシルグループに付加する方法も含まれる。
【0395】
次にオリゴヌクレオチドは、支持されたヌクレオシド上で合成され、支持体からオリゴヌクレオチドを切断しない標準状態の下で、合成されたオリゴヌクレオチド鎖から外される。適切な試薬としては、ヌクレオシドホスホラミダイトおよびヌクレオシド水素ホスホレートが含まれる。
【0396】
DNAプローブアレイの作成のために、チップ上でDNAプローブ作成を行うことができる。例えば、ガラス板上で直接アドレス指定可能なレーザー起動フォトデプロテクションを実施することは、フォーダーら、(1991)Science 251(4995)767−73に開示されたように可能であり、ここに言及することにより、本出願の一部とする。プローブをナイロン支持体の上に固定することは、ファンネスら、(1991)Nucleic Acids Res.19(12)3345−50に開示されたように可能である。また、プローブは、ダンカンとキャバリエ、(1988)Anal 10Biochem 169(l)104−8の方法を使ってテフロン(登録商標)にリンクすることも可能である;これらすべての参照文献は、ここに言及することにより、本出願の一部とする。
【0397】
オリゴヌクロチドをナイロン支持体にリンクするには、ファンネスら(1991)が述べるように、ナイロン表面をアルキル化によって活性化し、塩化シアヌル酸でオリゴヌクレオチドの5’−アミンを選択活性化する必要がある。
【0398】
支持体に固定されたオリゴヌクレオチドを作成する別の方法としては、ピーズらが(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91(11)5022−6で述べた光合成法がある。これらの著者は、固定されたオリゴヌクレオチドのプローブ(DNAチップ)のアレイを作成するために最近のフォトリトグラフ法を使用している。高密度で小型化したアレイの中で光を使ってオリゴヌクレオチドプローブを合成するこれらの方法は、光不安定5’−保護N−アシル−デオキシヌクレオシド・ホスホアラミダイト、表面リンカー化学および多様組合わせ合成手法を駆使している。この方法により、空間的に256個に分けられたオリゴヌクレオチドプローブ・マトリクスを作成することができる。
【0399】
(5.21 核酸フラグメントの標本作成)
核酸は、cDNAs、ゲノムDNA、染色体DNA、マイクロ切断染色体バンド、コスミドまたはYAC 挿入片、および増幅段階のないmRNAを含むRNAなど、さまざまなソースから得られる。例えば、サムブルックら(1989)は、高分子量DNAを哺乳類細胞から分離するための3つのプロトコルについて述べている(p.9.14−9.23)。
【0400】
DNAフラグメントは、M13、プラスミドまたはラムダベクターにクローンとして、および/またはゲノムDNAまたはcDNAからPCRまたはその他の増幅方法によって直接作成することができる。サンプルは、マルチウェルプレート上で作成し、取り分けることができる。約100−1000ngのDNAサンプルが最終容積2−500mlの中に生成される。
【0401】
核酸は、当業界で知られている任意の方法、例えば、サンブルックら(1989)の9.24−9.28に述べられた制限酵素を使い、超音波とNaOH処理でせん断する方法で、フラグメント化される。
【0402】
低圧せん断法もまた、シュリーファーらが(1990)Nucleic Acids Res.18(24)7455−6に述べたように適切である。この方法では、小型のフレンチプレッシャーセルに低圧から中圧のさまざまな圧力をかけてDNAサンプルを通す。細胞に対する低圧から中圧の圧力調節はレバー装置でコントロールされる。これらの研究の結果、低圧せん断が音波や酵素DNA断片形成法の替わりになり得ることが明らかになった。
【0403】
特にDNAを断片化するのに適した方法としては、フィッツジェラルドら(1992)のNucleic Acids Res.20(14)3753−62によって開示された2塩基識別エンドヌクレアーゼCviJIを使用する方法が考えられている。これらの著者は、迅速断片化を行い、彼らがショットガンクローニングおよび配列化に妥当であると考えた特性のサイズにDNAを分画するための方法を説明した。
【0404】
制限エンドヌクレアーゼCviJIは、識別配列PuGCPyを通常GとCの間で分断して鈍端を残す。この酵素(CviIL**)の特異性を変化させる特殊反応条件は、準ランダム分布したDNAフラグメントを小型の分子pUC 19(2688個の塩基対)から発生させる。フィッツジェラルドら(192)は、この断片形成法のランダム度を迅速ゲル濾過法によってサイズ分画されたof pUC 19のCviJI**ダイジェストを使用し、端部補修することなく、ラックZマイナスM13クローニングベクターに直接連結することにより、定量的に評価した。76個のクローンの配列分析の結果、PuGCPyに加えてCviJI**はpyGCPyとPuGCPuを制限し、新しい配列データはランダム断片化と一致する割合で累積されることが分かった。
【0405】
文献に報告されているとおり、この方法の長所は、音波破砕およびアガローズゲル分断法に比べて:DNAの必要量が少ないこと(2−5ugの代わりに0.2−0.5ug);処理ステップが少ない(予備連結、端部修復、化学的抽出、またはアガローズゲル電気泳動および溶出などが不要)という点が挙げられる。核酸フラグメンツの入手・作成方法の如何にかかわらず、DNAを変性して雑種形成のための一本鎖を提供することが重要である。これはDNA溶液を80−90℃で2−5分間培養することによって達成される。この溶液を次に2℃まで急速冷却し、DNAフラグメントがチップに接触するまでに復元するのを防ぐ。リン酸塩グループは当業界で知られた方法でゲノムDNAから除去されなければならない。
【0406】
(5.22 DNAアレイの作成)
アレイは、例えばナイロン膜のような支持体の上にDNAサンプルをスポッティングすることによって作成することができる。スポッティングは、金属製ピンのアレイ(その位置はマイクロタイタープレートのウェルのアレイに対応する)を使い、約20nlのDNA溶液をナイロン膜に繰り返し移すことで行うことができる。オフセットプリンティングにより、ウェルの密度以上のドット密度が得られる。使用されるラベルに応じて1mm2当たり1ないし25ドットを設けることができる。あらかじめ選ばれた特定の行と列にスポットするのを避けることにより、別のサブセット(サブアレイ)を形成することができる。1つのサブアレイ中のサンプルは、異なる個人のDNAの同じゲノムセグメント(または同じ遺伝子)であっても良いし、異なるオーバーラップしたゲノムクローンでも良い。各サブアレイは同じサンプルのレプリカスポッティングを表していても良い。ある例では、選ばれた遺伝子セグメントは64人の患者から増幅されたものである。各患者に対して、増幅された遺伝子セグメントが1枚96のウェルプレート上にあっても良い(全96ウェルが同じサンプルを持っている)。64人の患者1人1人に1枚のプレートが準備される。96ピンの装置を使うと、すべてのサンプルが1枚の8×12cmの膜にスポットされる。サブアレイには各患者から1つずつ、合計64サンプルを設けることもできる。96のサブアレイが同一であるとき、ドットのスパンは1mm2で、サブアレイ間に1mmの間隔があるかも知れない。
【0407】
別の方法としては、物理的なスペーサ−で分けられた膜またはプレート(イリノイ州ネイパービル市のヌンク社)を使う方法で、その場合、スペーサーは膜の上に成形されたプラスチックの格子で、その格子はマルチウェルプレート、または疎水性ストリップの底部に設けられる膜と同様なものであってもよい。固定された物理的スペーサーは、平らなリン貯蔵スクリーン、またはX線フィルムを露出することによって画像をとる場合には望ましくない。
【0408】
本発明を以下の例で説明する。この開示により、当業界の技術者は本発明の範囲の中で、さまざまな実施例や変更ができることは明らかである。したがって、本発明の広範囲な可能性は以下の例によって制限されるべきではない。本発明は、本発明の1つの側面のみを示すことを意図した実施例によって制限されるべきではなく、また、機能的に同等な組成物や方法は発明の範囲内にある。事実、ここに示す望ましい実施例を考察すれば、当業界の技術者にとって本発明の実施の面でさまざまな修正や変形は可能である。したがって、本発明の範囲における唯一の制限は、提示された請求項によるものである。
【0409】
本発明明細書中に言及されるすべての参考文献は、参照として、ここにそれらすべてを編入し本申請の一部とする。
【0410】
(6.0 実施例)
(実施例 1)
(直腸のcDNAライブラリーからのSEQ ID NO 1の分離)
直腸から得られたcDNAライブラリーから標準のPCRを使い、交配配列シグネチャー分析によって配列が決定され、サンガー配列手法を応用した結果、複数の新規性のある核酸(Hyseqクローン認識番号15456780(SEQ ID NO:1)を得た。ライブラリーの挿入部は、挿入部に隣接するベクター配列に特異的なプライマーを使ってPCRにより増幅された。このサンプルは、ナイロンの膜にスポットされ、オリゴヌクレオチドプローブを使って配列のシグネチャーを検定した。これらのクローンは、類似のまたは同一の配列ごとに分類され、ゲル配列決定のために各グループから単一の代表クローンが選ばれた。増幅された挿入部の5’配列は典型的なサンガー配列プロトコルで逆M13配列プライマーを使って演繹的に推理された。PCR生成物は、精製されてから、蛍光染料ターミネータサイクル配列決定にかけた。シングルパスゲル配列決定が377アプライドバイオシステムズ(ABI)配列決定装置を使って行われた。挿入部はこのライブラリーからは今まで得られたことのない新しい配列であり、また、公開されているデータベースにもないものであることが確認された。この配列はSEQ ID NO:1と名付けられた。
【0411】
(実施例 2)
(SEQ ID NO:2の集合)
本発明によるSEQ ID NO:2と名付けられた核酸は、EST配列であるSEQ ID NO:1をシードとして使って集められた。次に循環アルゴリズムをシードに適用して拡張することにより拡張集合を得た。その場合、この集合に属する異なるデータベース(すなわち、Hyseq’sのEST配列を含むデータベース、dbESTバージョン114、gb pri 114、およびUniGeneバージョン101)から追加配列を引き出した。集合を拡張する追加配列が上述のデータベースからそれ以上得られなくなったとき、アルゴリズムは停止した。成分配列の集合への組み入れは、拡張する集合に対するBLASTNヒットが300より多いBLASTスコアであり、95%より多い同一度であることに基づいて行われた。
【0412】
集合コンティグの最も近い隣接結果は、FASTXYアルゴリズムを使い、Genpeptリリース114に対するFASTAバージョン3サーチにより得られた。FASTXYはFASTAアラインメントの改良版で、コドン内のフレームシフトを可能にするものである。最も近い隣接結果は、Genpeptから最も近い各集合の同族体を示した(また当該集合がコード化する翻訳アミノ酸配列を含んでいる)。
【0413】
最も近い隣接結果を以下に示す。
【0414】
【表1】
信号ペプチド配列とその分割部位をコード化する集合コンティグ内にあるヌクレオチド配列は、ニューラル・ネットワーク・シグナルPV1.1プログラム(デンマーク工科大学生物配列分析センターによる)を使って決定される。原核生物および真核生物の信号ペプチドのプロセスおよびそれらの分割部位を識別するプロセスは、ヘンリック・ニールソン、ジェイコブ・エンゲルブレヒト、ソーレン・ブルナックおよびガンマー・フォン・ヘイネの「Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites(原核生物および真核生物の信号ペプチドの識別およびそれらの分割部位)」Protein Engineering,vol.10,no.1,pp.1−6(1997)によって開示されており、ここに言及することにより本申請の一部とする。ニールセンらの参考文献に示された最大Sスコアと平均Sスコアは、各集合コンティグに関して測定されている。予測信号配列の最初のアミノ酸から始めて、45個のアミノ酸の配列について述べられている。45個のアミノ酸のすべてが信号ペプチドを構成しているわけではない。
SEQ ID NO:2について:
【0415】
【表2】
(実施例 3)
(SEQ ID NO:3および4の集合)
新規性のあるヌクレオチドSEQ ID NO:3の集合が、EST配列SEQ ID NO:1をシードを使って行われた。そのシードは、3’端を拡張するプライマー(プライマー・エクステンション)を使ってゲル配列をする(377アプライドバイオシステムズ(ABI)シーケンサー)ことにより拡張された。
【0416】
ポリペプチド(SEQ ID NO:4)は、SEQ ID NO:3によって下記のようにコード化されることが予測された。このポリペプチドは、翻訳された新規性のあるポリヌクレオチドと既知のポリヌクレオチドとの比較に基づいてポリペプチドを選択するBLASTXと呼ばれるソフトウェアプログラムを使って予測された。最初のメチオニンはSEQ ID NO:3の55番目の位置で始まり、推定ストップコンドンTAAはヌクレオチド配列の1330の位置から始まる。
【0417】
図1Aは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEACAM−1)蛋白SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の342アミノ酸残基に関して49%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同342アミノ酸残基に関して34%が同一であることを表している。図1Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEACAM−1)蛋白SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の102アミノ酸残基に関して52%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同102アミノ酸残基に関して37%が同一であることを表している。
【0418】
図2Aは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の342アミノ酸残基に関して49%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同342アミノ酸残基に関して34%が同一であることを表している。図2Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の102アミノ酸残基に関して52%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同102アミノ酸残基に関して37%が同一であることを表している。
【0419】
予想通り20残基のシグナル・ペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQID NO:8)の大体残基1から残基20によりコード化されている。シグナル・ペプチド部位は、Kyte−Doolittle疎水性予想アルゴリズム(J.Mol Biol,157,pp.105−31(1982)、参照のため本文書に編入)を使って予想できる。
【0420】
eMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:6)の残基363−407にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。又、EMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:7)の残基68−112にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。SEQ ID NO:6−7に対応するドメインは以下の通りである。その場合、A=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンである。
【0421】
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
SQLPSGTWIAGPAHTGREVGFPNCSLLVQKLNLTDTGRYTLKTVT
SEQ ID NO:6)p値8.920e−15、DM00372B(用法指示関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基363−407に位置している。
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
YIVSTGDETPGPAHTGREAVRPDGSLDIQGILPRHSGTYILQTFN
SEQ ID NO:7)p値3.329e−12、DM00372B(シグネチャー関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基68−112に位置している。
【0422】
更にMolecular Simulations Inc.GENEAtlasソフト(Molecular Simulations Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア)で蛋白質データベース検索を行えば、SEQ ID NO:4の残基32乃至120の部位は、SeqFold及びPB90法を用いて、チャイニーズ・ハムスター(Cricetulus griceus)卵巣で発現するヒトの遺伝子組み換え形から、構造的にCD2と同族であることが示される(鎖id=1hnf、確認スコア0.07)。
【0423】
SEQ ID NO:3は次の細胞組織に存在することが決定された:直腸(Invitrogen)(Hyseqライブラリー名REC001)及び胎児の筋肉(Invitrogen)(Hyseqライブラリー名FMS002)。細胞組織発現情報は、SEQ ID NO:3を構成するESTの組織源、及びそういうESTが属するクラスターの他のESTの組織源を使って決定された。クラスターは、実施例1に述べられているような各配列のシグネチャーに基づいて形成された。
【0424】
(実施例 4)
(A.細胞中のSEQ ID NO:4の発現)
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはその他の適切な種類の細胞をDMEM(ATCC)および10%牛の胎児の血清(FBS)(Gibco)で70%合流するまで成長させる。形質移入に先立って、媒質はDMEMと0.5% FCSに変更される。細胞は、SEQ ID NO:3または5に関してcDNAが形質移入される、又はFuGENE−6形質移入試薬(ボーリンガー)を用い、pBGalベクターが形質移入される。
【0425】
要約すれば、FuGENE−6の4μlがDMEM100μlに希釈され、5分間にわたって培養される。その後、これに1μgのDNAが加えられ、15分間培養したのち、CHO細胞の35mmディッシュに加えられる。CHO細胞は、37℃で5%のCO2を加えて培養される。24時間後に、媒質と細胞の溶解産物が収集され、遠心分離され、検定緩衝液で透析された(15mM Tris pH 7.6、134mM NaCl、5Mmグルコース、3mM CaCl2 およびMgCl2)。
【0426】
(B.SEQ ID NO:1−3または5を使った発現研究)
さまざまな組織におけるSEQ ID NO:1−3または5の発現が準定量的ポリメラーゼ連鎖反応をベースとする手法を使って分析された。対象とする組織(成人の膀胱、成人の脳、成人の心臓、成人の腎臓、成人のリンパ節、成人の肝臓、成人の肺、成人の卵巣、成人の胎盤、成人の直腸、成人の脾臓、成人の精巣、骨髄、胸腺、甲状腺、胎児の腎臓、胎児の肝臓、胎児の肝臓−脾臓、胎児の皮膚、胎児の脳、胎児の白血球およびマクロファージ)から得られる発現遺伝子の供給源としてはヒトのcDNAライブラリーが使われた。遺伝子に特異性のあるプライマーを使って、サンプルからSEQ ID NO:1−3または5の部分の増幅が行われた。増幅された生成物は、アガローズゲル上で分離され、移転され、化学的にナイロンフィルタにリンクされた。このフィルタは、次にSEQ ID NO:1−3または5から生成され放射能で標識(33P−dCTP)された2本鎖プローブにより、クレノウポリメラーゼを使い、ランダムプライム法で雑種形成された。そのフィルタを洗浄し(高厳格洗浄)、数時間にわたりホスホイメージングスクリーンに露出させた。できた縞模様が特定のライブラリー内のSEQ ID NO:1−3または5配列を含むcDNAの存在、したがって対応する細胞タイプまたは組織中のmRNA発現の存在を示している。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
図1Aは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図1B】
図1Bは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間の第2BLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について52%の相似性、SEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について37%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図2A】
図2Aは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児根源CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於ける両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図2B】
図2Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドとによりコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12の間の第2BLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸について52%が相似性、SEQ ID NO:4の同102のアミノ酸について37%が同一であることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
(1.技術分野)
本発明は新規性のあるポリヌクレオチドおよびそのようなポリヌクレオチドによってコード化された蛋白質を提供し、それと共にそれらのポリヌクレオチドおよび蛋白質の使用、特に治療、診断および研究分野における使用を提供するものである。本発明は、特に新規性のある癌胎児抗原様(CEA様)ポリペプチドに関連する。
【0002】
(2.背景技術)
同定されたポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、たとえば診断、法医学、遺伝子地図作成、遺伝疾患またはその他の特性の原因となる突然変異の特定、およびDNAおよびアミノ酸配列配列に依存するその他の多くの種類のデータおよび生成物の作成など、数多くの用途を持っている。蛋白質は、たとえばリーダー配列配列クローニングにおけるその分泌性により、またPCRベースの手法におけるその細胞または組織源により、または既知の生物活性を有する他の遺伝子との構造的な相似性により、生物活性を持つことが知られている。本発明はポリヌクレオチドおよびポリペプチドのコード化に関するものである。本発明は特に新規性のある可溶性のCEA様ポリペプチドとポリヌクレオチドに関するものである。
【0003】
多くの腫瘍が遺伝子を発現し、その産物は悪性状態を誘発または維持するのに必要とされる(Abbas等(2000)細胞及び分子免疫学、Sanders(出版社)pp.386)。そういう蛋白質は腫瘍発見のマーカーとして働くが、同時に治療用の標的も提供する。癌胎児抗原(CEA,例えば、CD66a−CD66d)は、結腸、膵臓、胃、及び乳房の癌腫に発現する抗原であると最初表現された。しかし、更に感度の高い検出技術を使うことにより、こういう蛋白質は炎症の時にも発現するし、正常な時も少量発現することが明らかとなった。癌胎児抗原は、受容体のイミュノグロブリン(Ig)上科に属する細胞膜内糖蛋白である。CEA細胞付着分子(CEA−CAM)は胆管糖蛋白及びCD66aとしても知られるが、約85kDaの蛋白質であり、かなりグリコシル化されており、少なくとも2つの組織特異性を持つ突然変異体(交互スプライシング)を表す。
【0004】
受容体として機能するイミュノグロブリン上科メンバーは、その細胞質ドメインの性質に従って3つのグループに分類できる。免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を持つ膜内外分子(YxxL、xはアミノ酸)は、ふつう活性化受容体である。免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)を持つの(I/L/VxxYxxL/V、xはアミノ酸)は、阻害作用を持つ。LIR−4のような第3のクラスの短い膜内外受容体、または活性化するか阻害するか未知の可溶性FDF03(交互にスプライシング)も存在するようである。こういう分子は、細胞外MHC結合ドメインのお陰で、「分子吸い込み口」として機能することができ、同族の膜内外受容体の機能を阻害することが可能である。
【0005】
いくつかの機能がCEAに起因する。CD66aの最初のIgドメインはEセレクチンを結合する付着モジュールとして機能し、炎症カスケードを開始する。ハツカネズミのCEAは、ハツカネズミの肝炎ウイルスの受容体であることが証明されているし、ヒトのCEAは淋菌、サルモネラ菌、及び大腸菌の細菌性蛋白の受容体であることが証明されている。最近、CEAは負の調節因子、従って結腸、前立腺、乳房の癌腫の抑制蛋白であることも証明されている(Huber等(1999)J.Biol.Chem.274,335−344)。
【0006】
CEA−CAMまたはCD66aは、その細胞質ドメインによる変換シグナル機能に関係している。いくつかの生理学的機構が、CEAの細胞質ドメインでチロシンのリン酸化反応を促進する。又、好中球に於けるBGP1の刺激がRac1、PAK、およびJun N末端キナーゼの活性化につながることも報告されている。同様に、BGP1細胞質ドメインのITIM配列が、上皮細胞で、蛋白質−チロシン・リン酸酵素SHP−1及びSHP−2と相互反応を起こすことも報告されている(Huber等(1999)J.Biol.Chem.274,335−344)
CEAの発現は結腸、膵臓、胃、乳房の癌腫で急激に増大し、血清レベルの上昇をもたらす。更に、CEAの翻訳後処理は、腫瘍細胞内で変更されるかも知れない。従って血清CEAは、一次治療後腫瘍転移の発生または再発を監視する方法として使用できる。CEAは、細胞間付着分子として機能し、腫瘍細胞同士の結合を促進する。従ってCEAは、腫瘍細胞同士の相互作用、および腫瘍細胞とそれが成長している組織との相互作用において、何らかの役割を果しているかも知れない。
【0007】
このようにCEAは、正常な胎児の成長期間中の細胞結合、その後の信号変換、又は炎症や発癌現象にも関係しているようである。CEAをコード化しているポリヌクレオチド及びそのポリペプチドは、乳癌、結腸癌、その他の癌の治療に効果を発揮する可能性がある。CEA及びCEAに結合している組成物は、炎症や自己免疫症に関連する疾患の治療にも有効かも知れない。可溶性のCWAは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても使用可能かも知れない。可溶性のCEA分子は、上述の細菌やウイルスの感染症に於いておとり受容体としても機能するかも知れない。
【0008】
(3.発明の要約)
本発明は、新規性のあるCEA様ポリペプチド、そのようなペプチドをコード化する新規性のある分離されたポリヌクレオチドの発見に基づいている。それらに含まれるものとして、組み換えDNA分子、クローンされた遺伝子またはそれらの退化変異体、対立変異体のような特に天然に発生する変異体、アンチセンスポリヌクレオチド分子、およびそれらのポリペプチド上に存在する1つあるいはそれ以上のエピトープを特に認識する抗体、さらにそれらの抗体を生み出すヒブリドーマ(雑種細胞)などがある。特に、本発明のポリヌクレオチドは、直腸のcDNAライブラリから分離されたCEA様ポリヌクレオチド(Hyseqクローン認識番号15456780(SEQ ID NO: 1)に基づいている。
【0009】
本発明の組成物は、さらに本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターのようなベクター、そのようなポリヌクレオチドを含むように遺伝子工学的な処理をされた細胞、およびそのようなポリヌクレオチドを発現するように遺伝子工学的な処理をされた細胞を含むものである。
【0010】
本発明の成分は、以下のものを含むがそれらに限定されない分離されたポリヌクレオチドを提供する。すなわち、SEQ ID NO:1−3または5に指定されたヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチド;または、SEQ ID NO:1−3または5の断片;SEQ ID NO:1−3または5の完全長蛋白コーディング配列で構成されるポリヌクレオチド(たとえば、SEQ ID NO:4);および任意のSEQ ID NO:1−3または5の成熟した蛋白質コーディング配列のヌクレオチド配列で構成されるポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドはさらに、以下のものを含むが、それらに限定されないポリヌクレオチドを提供する。すなわち、(a)SEQ ID NO:1−3または5に指定された任意のヌクレオチド配列の補体;(b)任意のSEQ ID NO:4、6−10をコード化しているヌクレオチド配列と厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件下でハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチド;上述の任意のポリヌクレオチドの対立変異体であり、当該ポリヌクレオチドに対して70%以上の配列同一性を持つポリヌクレオチド;上述の任意のペプチドの同族体(例えばオーソログ)種をコード化するポリヌクレオチド;SEQ ID NO:4から成るポリペプチドの特定の領域または切断部からなるポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドである。
【0011】
この用途に使われるコレクションは単一のポリヌクレオチドのコレクションであっても良い。各配列の配列情報または独特な同定情報のコレクションは、核酸のアレイ上で提供されても良い。ある実施例においては、配列情報の各セグメントが、そのセグメントを含むポリヌクレオチドを検出するよう、核酸アレイ上に提供される。そのアレイはそのセグメントを含むポリヌクレオチドに対する完全な一致または不一致を検知するように設計することもできる。そのコレクションには、コンピュータで読み取れるような形式をもたせることもできる。
【0012】
本発明はさらに、上記のような構成のポリヌクレオチドの少なくとも断片を含むクローニングまたは発現ベクターおよびそれらの発現ベクターによって変換された宿主細胞または組織を提供する。有益なベクターの中には、当業界の技術でよく知られているプラスミド、コスミド、ラムダファージ誘導体、ファジミドなどを含む。したがって、この発明は本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよび当該ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。一般的にベクターは少なくとも1つの生体中で機能する複製源、便利な制限エンドヌクレアーゼ・サイトおよび宿主細胞用の選択可能なマーカーを含んでいる。本発明のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列化ベクターが含まれる。本発明の宿主細胞は原核細胞または真核細胞であり、単細胞生体または多細胞生体であっても良い。
【0013】
本発明の組成物はSEQ ID NO:4、6−10のアミノ酸配列を含むグループから選ばれた分離ポリペプチドを含むがそれに限定されないポリペプチド又はそれに対応する全長又は成熟蛋白質で構成されている。本発明のポリペプチドは(a)SEQ ID NO:3または5に規定されたヌクレオチド配列を持つ任意のポリヌクレオチド;または(b)厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件の下で(a)のポリヌクレオチドの補体とハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチドのいずれかによってコード化される生物活性をもつポリペプチドも含む。SEQ ID NO:4、6−10に上げられている任意の蛋白質配列の生物または免疫活性変異体、ならびに生物または免疫活性を保持しそれらとほぼ同等のものもまた考慮に含める。本発明のポリペプチドはその全部または一部を化学的に合成してもよいが、本発明の遺伝工学的に処理された細胞(たとえば宿主細胞)を利用して遺伝子組み換え手段で生成されることが望ましい。
【0014】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを含む組成物をも提供する。本発明の薬学的組成物としては、本発明のポリペプチドのほかに親水性の担体、例えば薬学的に妥当な担体を含んでもよい。
【0015】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを生成する方法にも関連する。例えば、望ましいポリペプチドの発現を許すような条件の下に適切な培養液中で、本発明のポリペプチドをコード化したポリヌクレオチドの少なくとも断片を含む発現ベクターから成る培養宿主細胞の培養、培養液または宿主細胞から蛋白質またはペプチドを精製する方法などである。望ましい実施例には、そのようなプロセスで製造された蛋白質が熟成した形態の蛋白質である場合を含む。
【0016】
本発明によるポリヌクレオチドは、分子生物学的に熟達した者が知っているさまざまな技術に応用することができる。それらの技術には、雑種形成プローブへの応用、オリゴマーやプライマーへの応用、PCRへの応用、配列アレイへの応用、コンピュータ読み取り媒体への応用、染色体や遺伝子の地図作成への応用、蛋白質の遺伝子組み換え生産への応用、およびアンチセンスDNAまたはRNAの生成、その化学アナログなどへの応用が含まれる。たとえば、mRNAの発現が特定種類の細胞または組織に対しておおむね制限されているとき、サンプル内の特定の細胞または組織のmRNAの存在を例えば原位置雑種形成法を使って検知するための雑種形成プローブとして、本発明のポリヌクレオチドを使うことができる。
【0017】
他の実施例としては、診断において発現された遺伝子の識別のための発現配列標識として、また、当業者に良く知られており、またヴォルラスらがScience 258:52−59(1992)において発表したように、ヒトのゲノムの物理的地図作りのための発現配列標識として当該ポリヌクレオチドを使用することができる。
【0018】
本発明によるポリヌクレオチドは、他の蛋白質に現在応用されている、普通の手続きや方法にも使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは特異的にポリペプチドに結合する抗体を生成するために使用することができる。そのような抗体、特に単クローン抗体は、組織内のポリペプチドの検知および定量に有益である。本発明のポリペプチドは分子量マーカーとして、また補助食品としても使用することができる。
【0019】
また病気の予防、治療、改善のためのいろいろな方法も提供する。例えば、本発明のペプチドや製薬学的に容認可能な担体で構成される組成物を、治療学的に適量、哺乳類の被験体に投与する方法などである。
【0020】
特に、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、たとえば、乳癌、前立腺癌、結腸癌、その他の癌の治療薬として利用することができる。CEA様のポリペプチドは、炎症、自己免疫症関連疾患の治療に有効であるかも知れない。又CEA様ポリペプチドは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても使用でいるかも知れない。又水溶性のCEA分子は、ある種の細菌及びウイルス性感染症のおとり受容体として機能する可能性もある。
【0021】
本発明の方法は、また、ここで述べられている疾患の治療方法も提供する、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと薬学的に妥当な担体からなる組成物を、ここに述べたような疾患に関係した症状また兆候を示している哺乳動物の被験体に、治療学的に有効な量を投与する方法などである。さらに、本発明は、標的遺伝子生成物及び薬学的に妥当な担体の総合的な活性を調整する組成物、その他の物質から成る化合物を投与する方法など、ここで述べている疾病または疾患の治療法も含むものである。組成物や他の物質は、標的遺伝子/蛋白質発現レベルまたは標的蛋白活性の調節にも効果を挙げることができる。具体的には、ビールス性疾患を含む医療状態の予防、治療または改善のための方法を提供する。例えば、本発明のポリペプチドから成る組成物の治療学的な有効量、または本発明のCEA様ポリペプチドの(例えば特に反応性を持つ抗体の)結合剤から成る治療学的な有効量をヒトを含み、ヒトに限らない哺乳動物に投与することもその中に含まれる。治療を必要とする個体にとって、本発明によるポリペプチドか、またはその結合剤(または抑制剤)のいずれかが有効であるかは、特定の状態または病理のメカニズムに依存する。この方法によると、本発明のポリペプチドは細胞機能の生体外または生体内での抑制を生じるために投与することができる。本発明のあるポリペプチドは、生体内用として単独に、または他の治療法の補助剤として投与することができる。一方、本発明の蛋白質または他の活性成分は特定の抗ヒスタミン剤または抗炎症剤の製剤に含めることにより、この抗ヒスタミン剤または抗炎症剤の副作用を減少させることができる。
【0022】
本発明はさらに上述の方法において有用製薬の方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、サンプル(たとえば、組織またはサンプル)中の本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在を検出する方法にも関連する。そのような方法は、例えば、ここに述べたような疾患の予知および診断評価の一部として、またそのような状態に対する素因を示している対象の識別に利用することができる。
【0024】
本発明は、本発明のポリペプチドが試料中に存在することを検出する方法として、複合体を形成するのに十分な状態の下で十分な期間、ポリペプチドと結合して複合体を形成する化合物に試料を接触させ、当該複合体の形成を検出し、それによって複合体が形成されたら、ポリペプチドが検出される方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、本発明の方法を実施するために、ポリヌクレオチド・プローブおよび/またはモノクロナールから成るキット、ならびにオプションとして、定量的基準を提供する。さらに、本発明は、上述の疾患の治療のために臨床的な試みを行う場合における、医薬品の有効度を評価し、患者の経過を監視する方法をも提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現または活性を調節(例えば増減)する化合物の同定方法も提供する。そのような方法は、たとえば、上述のように疾患の症状を軽減することのできる化合物の同定にも使用することができる。そのような方法は、本発明のポリペプチドと相互作用する化合物や他の物質の検定をも含む。
【0027】
本発明は本発明のポリペプチドと結合する化合物を識別する方法として、複合体を形成するのに十分な状態の下で、十分な期間をかけてポリペプチドに接触させてポリペプチドと化合物の複合体を形成させ、複合体を検出することによってポリペプチドと化合物の複合体が検出されることにより、ポリペプチドと結合する化合物が検出される方法を提供する。
【0028】
また、ポリペプチドと化合物の複合体が形成されるのに十分な時間、化合物を細胞の中でポリペプチドと接触し、それによって化合物にレポーター遺伝子配列を発現させ、レポーター遺伝子配列発現を検出することによって化合物を検出し、ポリペプチドと化合物の複合体が検出されたらポリペプチドと結合する化合物が検出されたものとすることから成る、ポリペプチドと結合する化合物を同定する方法も提供する。
【0029】
(5.発明の詳細な説明)
SEQ ID NO:4のCEA様ポリペプチドは約425のアミノ酸が分泌された膜内外蛋白質で、予測分子量が非グリコシル化された約47kDaである。BLASTPアルゴリズムを使った蛋白質データベース検索(アルトシュル,S.F.等、J.Mol.Evol.36:290−300(1993)およびアルトシュル,S.F.ら、J.Mol.Biol.21:403−10(1990)、参照として本文書に編入)によれば、SEQ ID NO:4はヒトのCEA蛋白質に対して相同である。
【0030】
図1AはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の部位とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。図1BはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の別の部位とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について52%の相似性、SEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について37%の同一性があることを示している。
【0031】
図2AはSEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質の部位とヒトの癌胎児根源CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於ける両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。図2BはSEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドとによりコード化された蛋白質の別の部位とヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12の間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸について52%が相似性、SEQ ID NO:4の同102のアミノ酸について37%が同一であることを示している。本発明の配列はCEA様の活性を持つよう期待されている。
【0032】
予測されるほぼ20の残基シグナルペプチドはSEQ ID NO:4(SEQ ID NO:8)のほぼ残基1から残基20までコード化される。細胞外部分はそれ自身で利用できる。これは哺乳類の細胞における発現、および分割生成物の配列で確認することができる。シグナルペプチド領域の存在は、カイト−ドリトル疎水性予測アルゴリズム(J.MolBiol,157,pp.105−31(1982)を参照し、本出願の一部とする)によって予測された。同業者は、実際の分割部位はコンピュータプログラムで予測されたものと異なる可能性があることを理解するであろう。
【0033】
eMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:6)の残基363−407にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。又、EMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:7)の残基68−112にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。SEQ ID NO:6−7に対応するドメインは以下の通りである。
その場合、A=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンである。
【0034】
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
SQLPSGTWIAGPAHTGREVGFPNCSLLVQKLNLTDTGRYTLKTVT
SEQ ID NO:6)p値8.920e−15、DM00372B(用法指示関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基363−407に位置している。
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
YIVSTGDETPGPAHTGREAVRPDGSLDIQGILPRHSGTYILQTFN
SEQ ID NO:7)p値3.329e−12、DM00372B(シグネチャー関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基68−112に位置している。
【0035】
更にMolecular Simulations Inc.GENEAtlasソフト(Molecular Simulations Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア)で蛋白質データベース検索を行えば、SEQ ID NO:4の残基32乃至120の部位は、SeqFold及びPB90法を用いて、チャイニーズ・ハムスター(Cricetulus griceus)卵巣で発現するヒトの遺伝子組み換え形から、構造的にCD2と同族であることが示される(鎖id=1hnf、確認スコア0.07)。
【0036】
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、乳癌、前立腺癌、結腸癌、その他の癌の治療に使用できるかも知れない。更にCEAは、炎症及び自己免疫症関連の疾患の治療にも有効かも知れない。更にCEAは、臓器移植患者の免疫抑制剤としても機能する可能性がある。又可溶性のCEA分子は、上記細菌及びウイルスの感染症に於けるおとり受容体としても機能するかも知れない。
【0037】
(5.1 定義)
本仕様書および付属する請求項において、単数形「a」、「an」および「the」は特に文面において差異が明らかである場合を除き、複数の場合をも含むものとする。
【0038】
「活性」という用語は天然に発生するポリペプチドの生物学的および/または免疫活性を持つポリペプチドの形態を示す。本発明によれば、「生物活性」または「生物活動」とは、天然に発生する構造的、調節的または生化学的機能を持つ蛋白質またはペプチドを指す。同様に、「生物活性」または「生物活動」は天然、組み換えまたは人工のCEA様ペプチド、またはそれらの任意のペプチドについて、適当な動物や細胞に特定の生物学的反応を誘発し、特定の抗体と結合することを意味する。「CEA様生物活性」という用語は、CEAペプチドの生物活性に似た生物活性を意味する。
同様に、「生物活性」または「生物活動」は自然、組み換え体(リコンビナント)または合成のCEA様ペプチド、またはそれらの任意のペプチドについて、適当な動物や細胞に特定の生物学的応答を誘発し、特定の抗体と結合することを意味する。
【0039】
「活性化された細胞」という用語は、ここで使用された場合、細胞内または細胞外膜を出入りするこれらの細胞を指し、正常または疾病の過程の一部としての分泌分子細胞や酵素分子の搬出を含む。
【0040】
「相補的」または「相補性」とは、塩基対形成によるポリヌクレオチドの自然の結合を意味する。例えば、5’−AGT−3’配列は相補配列3’−TCA−5’と結合する。2つの一本鎖分子間の相補性は、一部の核酸が結合するだけの「部分的」相補か、全体的相補性が一本鎖分子間で存在するような「完全」相補である。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強さに対して大きく影響する。
【0041】
「胚幹細胞(ES)」という用語は、胎児または成人において生殖細胞を含む多くの分化した細胞タイプを発生させ得る細胞を指す。「生殖系列幹細胞(GSC)」とは、生殖体の産生のために胚細胞を安定して連続的に供給する始原生殖細胞由来の幹細胞を指す。「始原生殖細胞(PGC)とは、生殖細胞やその他の細胞に分化する能力を持つ他の細胞系列、特に卵黄嚢、腸間膜、または生殖巣堤から胚形成中は分離される小さい一群の細胞を指す。PGCはGSCやES細胞の生成に携わる源である。PGC、GSCおよびES細胞は自己再生機能を持っている。したがって、これらの細胞は生殖系列を増殖させ、成人の特殊器官を形成する永久分化細胞を複数発生させるだけでなく、それら自体をも再生するのである。
【0042】
「発現モジューレーティング断片」、EMFという用語は、操作可能に連結されたORFまたは他のEMFの発現をもジュレート〔変調〕するヌクレオチドを意味する。
【0043】
ここで使われる意味としては、EMFが存在することによって配列の発現が変更されるとき、配列は「操作可能にリンクされた配列の発現をモジュレートする」と言われる。EMFは、プロモータとプロモータをモジュレートする配列(誘発因子)を含み、それらに限らない。EMFの1つのクラスは、特定の調節因子または生理事象に応じて操作可能にリンクされたORFの発現を誘発する核酸フラグメント(断片)である。
【0044】
「ヌクレオチド配列」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、互換的に用いられる用語であり、ヌクレオチドまたはこれらのヌクレオチド配列のヘテロ多量体を指す。
【0045】
これらの用語は、またゲノム的または単鎖または複鎖であったり、有意鎖または反意鎖でもあり得るゲノム又は合成のDNAまたはRNA、ペプチド核酸(PNA)または任意のDNA様またはPNA様物質を指す。ポリヌクレオチドがRNAの場合、本文書で説明されている配列のT(チミン)はU(ウラシル)で置き換えることができるのは了解済みである。一般的に、本発明により提供される核酸セグメントはゲノムおよび短オリゴヌクレオチドリンカーのフラグメントから、またはオリゴヌクレオチドの列から、または個々のヌクレオチドから組立てられ、微生物またはウイルスオペロン、または真核性の遺伝子由来の調節要素から成る組み換え転写ユニットに発現され得る合成核酸を提供する。
【0046】
「オリゴヌクレオチドフラグメント」または「ポリヌクレオチドフラグメント」、「ポーション」または「セグメント」または「プローブ」または「プライマー」は互換的に使用され、少なくとも約5個のヌクレオチド、できれば少なくとも約7個のヌクレオチド、そして最も望ましいのは少なくとも約9個のヌクレオチド、さらにできれば少なくとも約11個のヌクレオチド、そして最も望ましいのは、少なくとも約17個のヌクレオチドのヌクレオチド残基の列を指す。フラグメントとは、約500個未満のヌクレオチド、できれば約200個未満のヌクレオチド、さらにできれば約100個未満のヌクレオチド、さらにできれば50個未満のヌクレオチド、そして最も望ましいのは約30個未満のヌクレオチドから成るものを指す。プローブは、望ましくは約6から約200個のヌクレオチド、より望ましくは約15個から約50個のヌクレオチド、より望ましくは17個から30個のヌクレオチド、そして最も望ましくは、20個から25個のヌクレオチドから成るものを指す。フラグメントは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、各種の交配プロセスまたはマイクロアレイプロセスにおいて、mRNAまたはDNA分子の同一または関連部分の同定または増幅に使われることが望ましい。フラグメントまたはセグメントは本発明の各ポリヌクレオチド配列を明確に同定することができる。フラグメントはSEQ ID NO:1−3、および5のポーションとほぼ相似な配列を持つことが望ましい。
【0047】
プローブは、例えば細胞や組織の中に特定のmRNA分子が存在するかどうかを決定するため、またはウォルシュらによって説明された染色体DNAから類似の核酸配列を分離するために使われる。(ウォルシュ,P.S.ほか、1992、PCR Methods Appl 1:241−250)それらは、当業者によく知られたニックトランスレーション、クレノー・フィルイン反応、PCRなどの方法で標識できる。本発明のプローブ、その標本および/またはラベリングは、サムブルック,J.らにより、1989 A Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory,NY;またはオーシュベル,F.M.ら、1989、Current Protocols in Molecular Biology、John Willey & Sons,New York,NY、によって詳述されており、両者ともにここに言及することにより、本申請書の一部とする。
【0048】
本発明の核酸配列はまた、SEQ ID NO:1−3、および5の任意の核酸配列の情報を含んでいる。
【0049】
配列情報はSEQ ID NO:1−3、および5のセグメントであることもあり、SEQ ID NO:1−3、および5の配列情報を指す。そのようなセグメントは20量体核酸でもあり得るが、その理由はヒトのゲノムにおいて20量体が完全にマッチする確率は300分の1であるからである。ヒトのゲノムの場合、1組の染色体の中に30億個の塩基対がある。420の20量体が存在し得るわけだから、1組のヒトの染色体に存在する塩基対の数の300倍もの20量体が存在することになる。同じ分析を使った場合、17量体がヒトのゲノムにおいて完全にマッチする確率は5分の1である。これらのセグメントを発現研究にアレイとして使用される場合は、15量体セグメントを使うことができる。同様に、15量体が発現された配列において完全にマッチする確率は、発現された配列が全体のゲノム配列の約5%以下から構成されているので、ほぼ5分の1になる。
【0050】
同様に、単一のミスマッチを検知するために配列情報を使う上で、1つのセグメントは25量体である。ヒトのゲノムにおいて25量体がミスマッチ1個だけで現れる確率は、完全マッチの確率(1÷425)に各ヌクレオチド位置におけるミスマッチの増えた確率(3×25)を掛けることで計算される。1つのミスマッチを有する18量体1つのアレイで検知される確率は約5分の1である。1つのミスマッチを有する20量体がヒトのゲノムの中で検知される確率は約5分の1である。
【0051】
「オープン・リーディング・フレーム」、ORFという用語は、終止コドンを持たないアミノ酸に対する一連のヌクレオチドトリプレット暗号を意味し、蛋白質に転写可能な配列である。
【0052】
「操作可能にリンクされた」または「操作可能に会合した」とは、機能的に会合した核酸配列を指す。例えば、あるプロモータ−があるコード配列の転写をコントロールするとき、そのプロモーターはそのコード配列に対して操作可能にリンクされ、操作可能に会合している。操作可能にリンクされた核酸配列が隣接しており、同一のリーディングフレーム内にあるとき、ある遺伝子因子、例えば調節遺伝子はコ−ド配列に隣接的にはリンクされていないがコード配列の転写/翻訳を制御することができる。
【0053】
「プルリポーテント(多能性)」とは、1つの細胞が数多くの成人有機体細胞に分化し得る能力を意味する。プルリポーテント細胞は、トチポーテント(全能性)細胞に比較すると、分化能力が制限されている。
【0054】
「ポリペプチド」または「アミノ酸配列」とは、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質配列またはそれらのフラグメントを指し、天然に発生するものと人工のものと両方を指す。ポリペプチドの「フラグメント(断片)」、「ポーション」、または「セグメントは、少なくも5個のアミノ酸,望ましくは少なくとも約7個のアミノ酸、より望ましくは約17個またはそれ以上のアミノ酸の一連のアミノ酸残基である。
【0055】
ペプチドは、望ましくは200個未満のアミノ酸、より望ましくは150個未満のアミノ酸、そして最も望ましくは100個未満のアミノ酸である。ペプチドは約5個から200個のアミノ酸であることが望ましい。活性であるためには、ポリペプチドは生物および/または免疫的活性を示すための十分な長さを持っていなければならない。
【0056】
「自然に発生するポリペプチド」という用語は、遺伝子工学的に生産されていない細胞によって生成されたポリペプチドを指し、特に、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸エステル化、脂質化、アシル化などに限らず含む、ポリペプチドの翻訳後の修飾から生じる各種のポリペプチドを意味する。
【0057】
「翻訳された蛋白質コード配列」という用語は、完全長の蛋白質をコード化する配列を指し、任意のリーダー配列またはプロセス配列を含む。
【0058】
「成熟蛋白質コード配列」とはリーダー/シグナル〔情報〕配列なしのペプチドまたは蛋白質をコード化する配列を指す。そのペプチドは、細胞内の処理過程で除かれたリーダ配列を有するか、またはその蛋白質は、合成されたか、または成熟蛋白質コード配列のみをするポリヌクレオチドを使用して生成されたリーダー配列を持っていることもある。
【0059】
「誘導体」とは、ユビキチン結合、ラベリング(例えば、放射性核種または各種の酵素に関して)共有結合ポリマー付加、例えばペジレーション(ポリエチレングリコ−ルによる誘導)およびオルニチンのようなアミノ酸の化学合成による挿入または置換のような手法を使って化学的に修飾されたポリペプチドで、ヒトの蛋白質では自然に生じないものを指す。
【0060】
「変異体」(または「アナログ」)という用語は、自然発生のポリペプチドとアミノ酸の挿入、削除、および置換がされている点で異なり、例えば組み換えDNA手法を使って生成されたものを指す。目的とする活性を殺すことなくどのアミノ酸残基を置換、付加または除去すべきかを決定するためのガイドは、特定のペプチドの配列を相同ペプチドの配列と比較し、高相同性の領域(保護領域)に生じたアミノ酸配列変化数を最小にするかまたは、共通配列のあるアミノ酸と置換することにより見出すことができる。
【0061】
また別の方法としては、これらの同一または同様なポリペプチドをコード化する組み換え変異体は、遺伝情報の中にある「冗長性」を利用することにより、合成または選択することができる。各種のコドン置換、例えば各種の制限部位を作り出すサイレンと(無変化)な変化は特定の原核または真核系におけるプラスミドまたはウィルスベクターまたは発現に導入されてクローニングを最適化することができる。ポリヌクレオチド配列におけるポリペプチドまたはそのポリペプチドに付加された他のペプチドのドメインに反映し、ポリペプチドのいずれかの部分の特性が修飾され、リガンド結合親和性、鎖間親和性、または分解または代謝回転率のような特性が変わる。
【0062】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を同様な構造的および/または化学的特性、例えば伝統的なアミノ酸交替物質を持つ他のアミノ酸で置換した結果である。「保存的」アミノ酸置換は、関連する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、および/または両親媒性の相似性を持つ塩基上で行われる。例えば、無極性(疎水性)のアミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含み、中立極性のアミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、シスチン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含み、正電荷(塩基性)アミノ酸はアルギン、リシンおよびヒスチジンを含み、また、負電荷(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。「挿入」または「除去」は、アミノ酸約1個から20個、より望ましくは1個から10個のアミノ酸の範囲である。与えられた変化は、ポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、除去、または交換を系統的に行い、組み換えDNA手法を使い、結果として生じた組み換え変異体を検定して、実験的に決定される。
【0063】
別の方法としては、機能の変更が望まれる場合は、挿入、除去または非保存的な変更によって、改変ポリペプチドが工学的に作られる。そのような変更は、例えば、本発明のポリペプチドの1つまたは複数の生物学的機能または生化学的特性を変更することによって可能である。例えば、それらの変更はリガンド結合親和性と鎖間親和性、または分解/代謝回転率のようなポリペプチド特性を変える。さらに、そのような変更は、発現のために選ばれたホスト細胞の発現、スケールアップなどのためにより適したポリペプチドを発生するように選択することができる。例えば、2硫化ブリッジを消去するために、システイン残基は除去または他のアミノ酸残基と入れ換えることができる。
【0064】
「精製」または「ほぼ精製」という用語は、他の生体高分子、例えばポリヌクレオチド、蛋白質などがほとんど存在しない時に、指定された核酸またはポリヌクレオチドが存在することを意味する。ある実施例では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、指定された生体高分子の重量で95%以上、より望ましくは重量で99%以上を占めるところまで精製される(ただし、水、緩衝液、および他の分子量で1000ダルトン未満分子は存在してもよい)。
【0065】
「分離」とは、核酸またはポリペプチドが自然の供給源から得られる核酸またはポリペプチドに存在する少なくとも1つの他の構成成分(例えば、核酸またはポリペプチド)から分離することを意味する。1つの実施例では、核酸またはポリペプチドは、溶剤、緩衝液、鉄、またはその溶液に通常存在する他の構成成分が存在するところにのみ(もしあるとすれば)存在する。「分離」または「精製」という用語は、天然の供給源中に存在する核酸またはポリペプチドに対しては使われない。
【0066】
「組み換え体〔リコンビナント〕」という用語は、ここでポリペプチドまたは蛋白質に関連して使われた場合、組み換え体(例えば、微生物、昆虫、または哺乳類の)発現系から得られたポリペプチドまたは蛋白質であることを意味する。「微生物」とは、バクテリアまたは真菌(例えば、イースト)の発現系で生成される組み換え体ポリペプチドまたは蛋白質を指す。生成物としては、「組み換え体微生物」としては自然の内因性物質が存在せず、関連する自然のグリコシル化のないポリペプチドまたは蛋白質を指す。例えば、E.coliのようなほとんどのバクテリア培養菌に発現されたポリペプチドまたは蛋白質にはグリコシル化の修飾はない。イースト菌に発現されているポリペプチドや蛋白質は、一般的に哺乳類の細胞に発現されているものと異なるグリコシル化形態を持っている。
【0067】
「組み換え体発現媒体またはベクター」という用語は、DAN(RNA)配列からポリペプチドを発現するためのプラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターを指す。発現媒体は、(1)例えばプロモーターまたはエンハンサーのような遺伝子発現において調節的な役割を持つ遺伝因子、(2)mRNAに転写され、蛋白質に翻訳される構造的またはコード配列、および(3)適切な転写開始および停止配列を持つ組合せから成る転写ユニットから成り得る。イーストまたは真核性発現系で使用される目的の構造ユニットは、宿主細胞による転写蛋白質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含むことが望ましい。また、組み換え体の蛋白質がリーダー配列または輸送配列なしに発現された場合は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。最終生成物を得るためには、残基は発現された組み換え体蛋白質からその後切断しても、しなくてもよい。
【0068】
「組み換え体発現システム」とは、組み換え体転写ユニットを染色体DNAに安定的に組み込まれたか、または染色体外に組み換え体転写ユニットを搬送する宿主細胞を意味する。ここで定義されている組み換え体発現システムは、発現すべきDNAセグメントまたは合成遺伝子にリンクされた調節要素の導入時に異種のポリペプチドまたは蛋白質を発現するものである。この用語はまた、例えばプロモーターやエンハンサーのような遺伝子発現において調節的役割を持つ組み換え体遺伝因子を安定的に組み合わせている宿主細胞をも意味する。ここに定義された組み換え発現システムは、発現すべきDNAセグメントまたは合成遺伝子にリンクされた調節要素の導入によって、細胞に内生するポリペプチドまたは蛋白質を発現するものである。その細胞は原核または真核細胞のいずれでもよい。
【0069】
「分泌」蛋白質とは、膜を通して、または越えて運搬された蛋白質であり、適切な宿主細胞にそれが発現されたときに、アミノ酸配列におけるシグナル配列の結果運搬される場合を含む。「分泌蛋白質」の中には、それが発現される細胞から完全に(例えば、可溶性蛋白質)または部分的に分泌された蛋白質をすべて含む。「分泌蛋白質」とは、小胞体の膜を通して運搬される蛋白質を含む。「分泌蛋白質」はまた、非典型的シグナル配列を含む蛋白質をも意味する(例えば、インターロイキン−1ベータ、クラズニー,P.A.およびヤング,P.R.(1962)Cytokine 4(2):134−143)および破壊された細胞から遊離される因子(例えば、インターロイキン−1受容体・アンタゴニスト、アーレンド、W.P.ほか(1998)Annu.Rev.Immunol.16:27−55を参照)。
必要な場合は、発現ベクターはポリペプチドを細胞の膜を通して導く「シグナルまたはリーダー配列」を含むように設計されていてもよい。そのような配列は、組み換えDNAで手法によって異種の蛋白源から提供されるか、本発明のポリペプチドに天然に存在しているものである。
【0070】
「厳しい」という用語は、当業者によって通常理解されている厳しいと言う意味で使われる。厳しい条件には、極めて厳しい条件(例えば、フィルター固定したDNAを0.5M NaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、65℃の1mM EDTAでハイブリダイズし、68℃の0.1×SSC/0.1% SDSで洗浄)、および中程度に厳しい条件(例えば、42℃の0.2×SSC/0.1% SDSで洗浄)を含む。その他のハイブリダイゼーション条件は本文中の例によって説明する。
【0071】
デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの場合、その他のハイブリダイゼーション条件としては、37℃(14塩基オリゴヌクレオチドに対して)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチドに対して)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチドに対して)および60℃(23塩基オリゴヌクレオチドに対して)で6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウムで洗浄する。
【0072】
「ほぼ同等」という用語は、ヌクレオチドとアミノ酸配列の両方に使用され、例えば、基準配列から1つまたは複数の置換、除去または付加があり、その結果として、基準配列と比較した場合に、機能上不利な差異を生じないような突然変異体配列を指す。普通、そのようなほぼ同等な配列は、ここにリストされたものから35%以上(すなわち、基準配列との比較の上でほぼ同等な配列における交換、追加、および/または除去された残基の数を、ほぼ同等な当該配列の全残基数で除した値が0.35以上)異ならないものを指す。そのよな配列はリストされた配列に対して65%の配列同一度を持つと言われる。
【0073】
ある実施例の場合、本発明のほぼ同等な、例えば、変異配列はリストされた配列に比べて30%しか異ならない(70%の配列が同一);本実施例のある変異では、25%しか異ならない(75%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、20%しか異ならない(80%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、10%しか異ならない(90%の配列が同一);本実施例のさらに別の変異では、5%しか異ならない(95%の配列が同一)。本発明によるほぼ同等な、例えば、突然変異体アミノ酸配列は、リストされたアミノ酸配列に比べて、少なくとも80%の同一度があることが望ましく、少なくとも85%あれば更に望ましく、少なくとも90%あれば更に望ましく、少なくとも95%あれば更に望ましく、少なくとも98%あれば更に望ましく、少なくとも99%の同一度があれば最も望ましい。本発明のほぼ同等なヌクレオチド配列は、遺伝子コードの冗長性または縮退性を考慮して、より低いパーセントの配列同一度を持つことができる。ヌクレオチド配列は、65%以上の配列同一度が望ましく、さらに75%以上の配列同一度が望ましく、少なくとも80%の配列同一度があることが望ましく、少なくとも85%あれば更に望ましく、少なくとも90%あれば更に望ましく、少なくとも95%あれば更に望ましく、少なくとも98%あれば更に望ましく、99%以上の配列同一度が最も望ましい。本発明の目的において、ほぼ同等な生物活性とほぼ同等な発現特性を持つ配列は、ほぼ同等なものとみなされる。同一性の決定の目的のためには、成熟した配列の切断(例えば、擬似ストップコドンを生成する突然変異を介して)は除外すべきである。配列の同一度は例えば、ジョタン・ハイン法(Hein,J.(1990)Methods Enzymol.183:626−645)で決定することができる。183:626−645).配列間の同一度はハイブリダイゼーション(雑種形成)条件を変えて行う、当業者によく知られた他の方法でも行うことができる。
【0074】
「トティポーテント(分化全能性)」とは、成熟した器官のあらゆる種類の細胞に分化し得る細胞の能力を指す。
【0075】
「形質転換」とは、適切な宿主細胞にDNAを導入して、DNAが染色体外要素として、または染色体の一部として再製可能なようにすることを意味する。「形質移入」とは、コード配列が実際に発現されているかどうかにかかわらず、適切な宿主細胞によって発現ベクターを取り込むことを意味する。「感染」とはウイルスまたはウイルスベクターを使って適切な宿主細胞に核酸を導入することを指す。
【0076】
ここで用いる「取り込みモジュレイティングフラグメント」UMFとは、リンクされたDNAフラグメントの細胞への取り込みを媒介する一連のヌクレオチドを意味する。UMFは既知のUMFを目標配列ないしは目標モチーフとして以下に説明するようなコンピュータを使ったシステムで容易に同定することができる。UMFの存在と活性は、疑いのあるUMFをマーカー配列に結合させて確認することができる。その結果の核酸分子を適切な条件下で、適切な宿主細胞で培養し、マーカー配列の取り込みを決定する。上述のように、UMFはリンクしたマーカー配列の取り込みの頻度を増加する。
【0077】
上述の各用語は、特に文脈上他の意味で使われていないかぎり、上述の意味で使われる。
【0078】
(5.2 本発明の核酸)
本発明は、新規性のある分泌性CEA様ポリペプチド、そのCEA様ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド(複数)の発見、そして癌及び他の免疫学的異常の診断、治療または予防のために、これらの組成物を使用することに基づいている。
【0079】
本発明の分離されたポリヌクレオチドは制限無く次のものを含む。すなわち、SEQ ID NO:1−3または5のいずれかのヌクレオチドの配列を形成するポリヌクレオチド;SEQ ID NO:1−3または5の一断片;SEQ ID NO:1−3または5完全長蛋白質コード配列を形成するポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:4);そしてSEQ ID NO:1−3または5のいずれかのポリヌクレオチド(複数)の成熟蛋白質コード配列をコードするヌクレオチド配列を形成するポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチド(複数)は又制限無く次のものを含む。厳しいハイブリダイゼーション条件下で下記のものとハイブリダイズするポリヌクレオチド:(a)SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列のいずれかの補体;(b)SEQ ID NO:4又は6−10のポリペプチドのいずれか一つをコードするポリヌクレオチド;(c)上記のポリヌクレオチド(複数)のいずれかのアレル変異体であるポリヌクレオチド;(d)上記の蛋白質のいずれかの種の相同物(ホモログ)をコードするポリヌクレオチド;又は(e)SEQ ID NO:4又は6−10のポリペプチドの特定領域又は切断部からなるポリヌクレオチド。関心対象のはコードされたポリペプチドの性質による。例えば、受容体様ポリペプチドの領域は、リガンド結合、細胞外、膜貫通、又は細胞質領域、又はそれらの組合せを含む;免疫グロブリン様蛋白質の領域は、免疫グロブリン様可変領域を含む;酵素様ポリペプチドの領域は、触媒および基質結合領域を含む;そしてリガンドポリペプチドの領域は受容体結合領域を含む。
【0080】
本発明のポリヌクレオチドは自然発生のDNA、又は全部或いは一部合成されたDNAを含む。例えば、cDNAとゲノムDNA,そしてRNA,例えばmRNAである。ポリヌクレオチド関連部分は、cDNAのコード領域コ全部、またはその一部分を含む。
【0081】
本発明は、またここで開示したcDNAの配列に対応した遺伝子も提供する。これらの対応した遺伝子は、ここで開示した配列情報を使い既知の方法に従って分離できる。それらの方法には、適切なゲノムのライブラリー、又は他のゲノムの材料源で、遺伝子を同定および/又は増幅するために、開示された配列情報からプローブ、またはプライマーを作成することを含む。
【0082】
当業界の既知の方法で、更に5’と3’の配列を取得できる。例えば、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドのいずれか、又はその一部分をプローブとして使用して、適切なハイブリダイゼーション条件の下で、適当なcDNA又はゲノムDNAを選別することによって、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドのいずれかに対応する、完全長のcDNA又はゲノムのDNAを取得できる。別の方法として、SEQ ID NO:1−3または5のポリヌクレオチドは、適切なゲノムのDNA又はcDNAのライブラリ−における遺伝子の同定および/又は増幅を可能にする適切なプライマーの基礎として使用できる。
【0083】
本発明の核酸の配列は、一個以上の公開データベース、例えばdbEST,gbpriとUniGeneから取得可能なESTsと配列(cDNAとゲノム配列を含む)から組み立てられる。ESTの配列は、全長の遺伝子に関する、同定する配列の情報、代表的なフラグメント(断片)又はセグメント(区分)の情報、又は新規なセグメントの情報を提供できる。
【0084】
本発明のポリヌクレオチドはまた、上記のポリヌクレオチドと殆ど同等のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0085】
本発明によるポリヌクレオチドは、例えば、最低65%位,最低70%位、最低75%位、最低80%、81%、82%、83%、84%位、より典型的には最低約85%、86%、87%、88%、89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%位,そして更により典型的には最低95%、96%、97%、98%、99%位の上記のポリヌクレオチドに対する配列同位性を有する。
【0086】
本発明における核酸の配列の範囲に含まれるものは、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列のいずれかに厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列の断片、又はその補体で、その断片は約5個のヌクレオチドより、好ましくは7個のヌクレオチドより、更に好ましくは9個より、最も好ましくは17個のヌクレオチドより大きい。例えば、15,17又は20個以上のヌクレオチドの断片で選択的なもの(即ち、本発明のポリヌクレオチドのいずれか一つに特異的に交配するもの)を考慮している。ポリヌクレオチドの一個に特異的にハイブリダイズできるプローブは、同族の遺伝子における他のポリヌクレオチド配列から本発明のポリヌクレオチド配列を区別することが出来、又は他種の遺伝子からヒトの遺伝子を区別することが出来、そして好ましくはユニークなヌクレオチド配列に基づいている。。
【0087】
本発明の範囲内に含まれる配列は、これら特定の配列に限定されず、その対立遺伝子および種の変異をも含む。対立遺伝子と種の変異は、SEQ ID NO:1−3または5にて得られた配列、その代表的な断片、又は、SEQ ID NO:1−3または5と最低90%、出来れば95%同一のヌクレオチド配列を同種の他の分離物からの配列とを比較し、定常的に決定できる
更に、コドンの可変性にあわせて、本発明はここに開示された特定のORFと同様に、本発明は,同じアミノ酸配列の核酸分子コードを含む。即ち、一個のORFのコード領域において、1つのコドンを、同じアミノ酸をコードするもう一つのコドンで置換することが明らかに考えられえる。
【0088】
SEQ ID NO:1−3または5を含む、本発明の核酸の近似値的な結果は、アルゴリズム又はプログラムを使ってデータベースを検索することにより取得できる。好ましくはベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツールBLASTを使って、局在配列のアラインメントを検索する(Altshul,S.F.J Mol.Evol.36 290−300(1993)and Altschul S.F.et al.J.Mol.Biol.21:403−410(1990))。
【0089】
本発明は、開示したポリヌクレオチドと蛋白質の種のホモログ(相同体、同族体)(オーソログ)も提示する。種のオーソログについては、ここに提示した配列から適切なプローブ又はプライマーを作成し、望ましい種から適切な核酸源を選別することによって、分離・同定が可能である。
【0090】
本発明はまた、開示したポリヌクレオチド(複数)又は蛋白質の対立形質変異体も包含する;即ち、自然発生する、分離されたポリヌクレオチドの代替形態で、それはまたポリヌクレオチド)によってコードされたものと同一の、相同(同族)の、又は関連する蛋白質をコードする。
【0091】
本発明の核酸配列は、記述の核酸の変異体をコードする配列へ更に指向されている。これらのアミノ酸の配列の変異形は、原型または変異体のポリヌクレオチドに適切なヌクレオチドの変化をさせるという、既知の方法で作成できる。アミノ酸配列変異体の構成には2個の可変要素がある。すなわち、突然変異の位置と突然変異の性質である。アミノ酸配列変異体をコードする核酸は、好ましくは、自然発生しないアミノ酸配列をコードするように、ポリヌクレオチドを突然変異させて構成することが望ましい。これらの核酸の改変は、異種の核酸によって異なる部位(可変位置)又は高度に保存された領域(定常領域)で出来る。それらの位置での部位は、普通、シリーズで修正される;例えば、まず保守的な選択対象で置換する(例えば、疎水性アミノ酸を異なる疎水性アミノ酸で)、それから更に遠い選択対象で置換する(例えば、疎水性アミノ酸を、負荷されたアミノ酸で),その後、目標部位で削除または挿入が出来る。アミノ酸配列の削除は、通常ほぼ1から30の残基、好ましくはほぼ1から10の残基であり、普通は連続している。アミノ酸の挿入はアミノ基および/又はカルボキシル基末端融合により、長さは1から100以上の残基にわた,また、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入も同様である。配列内挿入は、普通、1から10のアミノ酸残基にわたり、好ましくは1から5の残基である。
【0092】
末端挿入の例としては、分泌または異なる宿主細胞で細胞内の目標付けに必要な、異種ののシグナル〔情報〕配列、及びFLAGのような配列、又は発現した蛋白質の精製に役立つポリヒスチジン配列がある。
【0093】
望ましい方法では、新規性のあるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、部位指向型突然変異の誘発を介して変換される。この方法は、オリゴヌクレオチド 配列を使ってポリヌクレオチドを変換し、目的のアミノ酸 変異体をコードし、同時に、変換したアミノ酸の両隣の十分な量のヌクレオチドに、変換される部位のどちらかの側で安定した2重鎖を形成させる。一般に、部位指向型突然変異誘発の技術は、当業界の熟練者達には良く知られており、このテクニックは次の出版物で例に挙げられている:エーデルマン他、DNA 2:183(1983)。ポリヌクレオチド配列における部位特異的変化を創り出すための、多才で効率的な方法は、ゾラーとスミス著、核酸 Res.10:6487 6500(1982)で出版された。PCRも新規性のある核酸からアミノ酸配列変異体を作成するために使える。最初の材料として少量のテンプレートDNAを使う場合、配列がテンプレートDNA内の対応する部分から僅かに異なるプライマーを使うと、望ましいアミノ酸変異体を作成できる。PCRの増幅によって、そのプライマーで特定された位置のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドテンプレートと異なるDNAの断片作成物の数が増える。このDNAの断片作成物はプラスミッド内の対応する領域で置き換わり、望ましいアミノ酸変異体をコードするポリヌクレオチドが得られる。
【0094】
アミノ酸変異体を作成するもう一つのテクニックは、カセット突然変異誘発テクニックで、ウエルス他著、遺伝子 34:315(1985)に説明してある。他の突然変異誘発テクニックは当業界で良く知られている。例えば、前出のサムブルックス著作、そして「分子生物学における現行のプロトコール」、オースベル他著に述べられたテクニックである。遺伝情報の内在的な縮退のため、ほぼ同一か、機能的に同等なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を本発明の実施に使用し、これらの新規性のある核酸のクローニングと発現に使用して良い。それらのDNA配列は、厳しい条件の下、適当で新規性のある核酸配列にハイブリダイズ可能なものを含む。
【0095】
本発明の望ましいポリペプチドの切断部分をコードするポリヌクレオチドは、本発明の1個以上の領域を形成する、キメラまたは融合蛋白質と(ヘテロ)異種蛋白質配列をコードするポリヌクレオチドを創生するために使用できる。
【0096】
本発明のポリヌクレオチドは、更に、上記ポリヌクレオチドのいずれの補体も含む。そのポリヌクレオチドはDNA(ゲノム的、cDNA、増幅したもの、あるいは合成したもの)でもRNAでも良い。そのようなポリヌクレオチドを取得するための方法とアルゴリズムは、当業界の熟練者には良く知られており、例えば、望ましい配列の同定されたポリヌクレオチドを定常的に分離することが出来るハイブリダイゼーション条件を決定する方法を含む。
【0097】
本発明により, SEQ ID NO:4または6−10、何れかに対応する成熟した蛋白質コード配列、或いはその機能的同等物をコードするポリヌクレオチドの配列は、適切な宿主細胞内で核酸を発現する組換えDNA分子、又はその機能的同等物を作成する為に使用できる。、を。また、ここで同定されたクローンのcDNA挿入も含まれる。
【0098】
本発明によるポリヌクレオチドは、十分に確立された組換えDNAのテクニックにより他のヌクレオチド配列のどの種類にも結合できる(参照:J.サムブルック他 10(1989)分子のクローニング:研究所マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所,NY)。ポリヌクレオチドに結合する有用なヌクレオチド配列は、様々なベクターを含む;例えば、プラスミド、コスミド、ラムダファージの誘導体、ファージミドなど、当業界では良く知られているもの。従って、本発明はまた本発明のポリヌクレオチドを含むベクターとそのポリヌクレオチドを保有する宿主細胞をを提供する。一般に、そのベクターは、少なくとも1個の生物で機能する複製の源、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び選出可能な、宿主細胞のマーカーを含む。本発明によるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ作成ベクター、及び配列ベクターが含まれる。本発明によれば、宿主細胞は原核細胞または真核細胞で良く、単細胞生物、または多細胞生物のの一部でもよい。
【0099】
本発明は更に、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、そのフラグメント(断片)、又は本発明の他のポリヌクレオチドのどれかを持つ核酸を含む、組換え作成物を提供する。一つの具体例では、本発明の組換え作成物は、プラズミドまたはウイルスのようなベクターで構成され、その中に、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、又はそのフラグメントを持つ 核酸 が前向きまたは後ろ向きに挿入される。本発明の又はORFの1つを含むベクターの場合、そのベクターは更に調節配列を含むかもしれない:例えば、ORFに機能的に連結されたプロモーターを含む。多数の適切なベクターとプロモーターは、当業界の熟練者には知られており、本発明の組換え作成物を作成するために業者から入手できるものである。下記のベクターは例として挙げる。細菌類:pBs,ファージスクリプト、PsiX174,pBluescript SK,pBs KS,pNH8a,pNH16a,pNH18a,pNH46a(Stratagene);pTrc99A,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(Pharmacia).
真核細胞類:pWLneo,pSV2cat,pOG44,PXTI,pSG(Pharmacia) pSVK3,pBPV,pMSG,pSVL(Pharmacia)。
【0100】
本発明の分離されたポリヌクレオチドは、蛋白質を組換え的に作成するために、カウフマンほか、核酸 Res.19,4485−4490(1991)で開示された、pMT2又はpED発現ベクターのような発現調節配列に機能的にリンクすることが出来る。多数の適切な発現調節配列が当業界で知られている。組換え蛋白質の一般的な発現方法も知られており、R.カウフマン著、「酵素学の方法論(Methods in Enzymology)」185,537−566(1990)に例証されている。ここに定義されてあるように、「機能的にリンクされる」ということは、本発明の分離されたポリヌクレオチドと発現調節配列は、ベクター又は細胞の中に配置され、その蛋白質は、連結したポリヌクレオチド/発現調節配列とともにトランスフェクトされた宿主細胞によって発現される様になっている。
【0101】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクター、又は選択可能なマーカー付きの他のベクターを使って、どの望ましい遺伝子からも選択出来る。2個の適当なベクターはpKK232−8とpCM7である。個々の名前がついた細菌プロモーターはlacI、lacZ、T3、T7、gpt、lambda、PR,及びtrcを含む。真核性のプロモーターは下記のものを含む:CMV直近早期,HSVチミジンキナーゼ 早期と晩期 SV40,レトロウイルスからのLTR,及びマウスのメタロチオネイン−I。適当なベクターとプロモーターの選択は、当業界での普通のレベルの技術で出来ることである。一般に、組換え体発現のベクターは、複製の開始と選択可能なマーカーを含み、これらは宿主細胞の形質転換を可能にし、例えば、大腸菌のアンピシリン抗体遺伝子とS.cerevisiae TRP1の遺伝子、そして、高度に発現した遺伝子から取出した、下流の構造配列の転写を指示するプロモーターである。それらのプロモーターとしては、色々あるうち、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK),因子、,酸性ホスファターゼ、又は熱ショックの蛋白質のような糖分解酵素をコードするオペロンから得られる。異種構造の配列は、適当な位相に翻訳の開始と終結配列、望ましくは、細胞膜周辺腔または細胞外媒体への翻訳蛋白質の分泌を可能にするリーダー配列でアセンブリする。オプションとしては、異種配列が、望ましい特性を発揮するアミノ末端同定ペプチドを含む融合蛋白質をコードできることである。例えば、発現された組換え製品を安定化または単純に精製することである。細菌に使う有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターを持つ活性的な読取り段階で、適切な翻訳開始と終止シグナルと共に、望ましい蛋白質をコードする構造的なDNA配列を挿入することによって造られる。ベクターは、1個以上の表現型の選択可能なマーカーと複製の原型から形成され、ベクターの維持を確保し、望ましければ、宿主内で増幅する。形質転換に適した原核性の宿主には、以下の細菌、すなわち、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌及びシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびスタフィロコッカス属の中の色々な種が含まれるが、他のものも選択して使用できる。
【0102】
代表的だがそれに限らない例として、有用な細菌用の発現ベクターは、選択可能なマーカーと、良く知られたクローニングのベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝因子からなる、商業的に入手可能なプラズミド由来の複製の細菌の原型から構成される。そのような商業的に入手可能なベクターには、例えばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)とGEM 1(Promega Biotech,Madison,WI,USA)がある。これらのpBR322「バックボーン」のセクションは適当なプロモーターと発現される構造配列と結合される。適切な宿主菌株が形質転換し適切な細胞密度に成長した後、選択されたプロモーターは適当な手段で誘発又は抑制され(例えば温度変更又は化学的誘発により)細胞は更に追加期間の間培養される。細胞は、普通、遠心分離によって収集し、物理的又は化学的方法で破壊し、そして残った粗抽出液は更に精製するために保存する。
【0103】
本発明のポリヌクレオチドは又免疫応答を誘発する為に使用できる。例えば、ファン他.,Nat.Biotech.17:870−872(1999)に記述され、ここに参考として使われているように、ポリペプチドをコード化する核酸配列は、裸のプラスミドDNAを局所的に投与又は注射した後、望ましくは、DNAを筋肉内に注射した後、コード化したポリペプチドに対する抗体を生成するために使用される。核酸配列は、望ましくは組換え発現ベクターに挿入され、裸のDNAの形でも良い。
【0104】
(5.3 アンティセンス)
本発明のもう一つの側面は、SEQ ID NO:1−3または5のヌクレオチド配列、又はそのフラグメント、相似物又は派生物から成る核酸分子に交配可能か又は相補的な、分離されたアンティセンス核酸分子に関連する。「アンティセンス」核酸は、蛋白質をコードする「センス」核酸に相補的なヌクレオチド配列から成る:例えば、2重ストランドcDNA分子のコードするストランドかmRNA配列に相補的である。特別な側面では、少なくとも約10,25,50,100,250又は500のヌクレオチド、又はコードするストランド全部、又はその一部に相補的なアンティセンス核酸分子が提供される。SEQ ID NO:1−3または5のいずれかの蛋白質のフラグメント、同族物、相似物又は派生物をコード化する核酸分子、又は、SEQ ID NO:1−3または5の核酸配列に相補的なアンティセンス核酸が更に提供される。
【0105】
1つの具体例では、アンティセンス核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列のコードするストランドの「コード領域」にアンティセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンから成るヌクレオチド配列の領域を指す。もう1つの具体例では、アンティセンス核酸分子は、本発明ヌクレオチド配列のコードするストランドの「コードしない領域」に対してアンティセンスである。
【0106】
「コードしない領域」という用語は、コード領域の横にありアミノ酸に翻訳されない5’と3’の配列を指す。(即ち、5’と3’の翻訳されない領域とも言える)。
【0107】
ここに開示された、核酸をコード化する、コードストランドの配列(例えば、SEQ ID NO:1−3または5)が与えられれば、本発明のアンティセンス核酸は、ワトソンとクリック、又はフーグスティーンの塩基対の規則に従って設計できる。アンティセンス核酸分子は、mRNAのコード領域全体に対して相補的であり得るが、mRNAのコードする又はコードしない領域の一部分にだけアンティセンスである少数ヌクレオチドが更に望ましい。例えば、そのアンティセンス少数ヌクレオチドはmRNAの翻訳開始部位を囲む領域に対して相補的であり得る。アンティセンス少数ヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個のヌクレオチドの長さでありうる。本発明のアンティセンス核酸は、当業界で知られている化学合成又は酵素結合反応によって造成できる。例えば、アンティセンス核酸(例:アンティセンス少数ヌクレオチド)は、自然発生するヌクレオチド又は、分子の生物安定度を上げるため、或いはアンティセンスとセンス核酸の間に形成される二本鎖2重構造体の物理的安定度を上げるため多様に修正されたヌクレオチドを使って化学合成出来る。例えば、ホスホロチオ酸の派生物とアクリディンを代用したヌクレオチドが使用できる。
【0108】
アンティセンス核酸を生成する為に使用できる修正ヌクレオチドの例には、下記のものを含む:
5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシルヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオユリディン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシリクオシン、イノシン、N6−イソペンテナイラデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マノシリクオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v),ウイブトクソシン、擬似ウラシル、キオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエスター、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3(3−アミノ−3−N−2−カルボオキシルプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ディアミノピュリン。代替方法として、アンティセンス核酸は、核酸がアンティセンス指向でサブクローンとして挿入される発現ベクターを使って生物学的に生成できる(即ち、挿入された核酸から転写されるRNAは目標とする核酸に対してアンティセンス指向となる。次のサブセクションで詳細説明する)。
本発明のアンティセンス核酸分子は、通常、披験体に投与されるか、または本来の位置で生成され、本発明の蛋白質をコード化するmRNAやゲノムのDNAとハイブリダイズ(雑種形成)又は結合し、蛋白質の発現を抑制する;例えば、転写や翻訳を抑制する。その雑種形成は、従来のヌクレオチドの相補性によってでも良いし、又は、例えばDNAの2重鎖に結合するアンティセンス核酸分子の場合には、2重螺旋の大きな溝内での特異的な相互作用によって、安定した2重構造を形成しても良い。本発明によるアンティセンス核酸分子の投与ルートの一例は組織部位へ直接注射することである。代替方法として、アンティセンス核酸分子を、選択された細胞を標的にするように修正し、全身に投与することも出来る。例えば、全身投与の場合、アンティセンス分子を修正し、受容体又は選択された細胞の表面に発現された抗原に特異的に結合するようにする。例えば、アンティセンス核酸分子を、細胞表面の受容体か抗原に結合するペプチドか抗体にリンクさせる方法を用いる。アンティセンス核酸分子はまたここに述べたベクターを使って細胞に運ばれる。アンティセンス分子の十分な細胞内濃度を得る為に、アンティセンス核酸分子が強力なポルII又はポルIIIプロモーターの支配下に置かれるようなベクターの構造物が望ましい。
【0109】
もう一つの具体化例では、本発明のアンティセンス核酸分子はアルファーアノメリック核酸分子である。アルファーアノメリック核酸分子は、相補的RNAと特異的に2本鎖の雑種を形成し、その中では、通常のアルファと異なり、ストランドがお互いに平行になっている(ゴーチエーほか(1987)核酸 Res 15:6625−6641)。また、アンティセンス核酸分子は2’−o−メチルリボヌクレオチド(井上ほか(1987)核酸s Res 15:6131−6148)、又はキメラ的なRNA−DNAの類似物から成る場合もある(井上ほかInoue et al.(1987)FEBS Lett 215:327−330)。
(5.4 リボザイムとPNAの半分)
更にもう一つの具体化例では、本発明のアンティセンス核酸はリボザイムである。リボザイムはRNA分解酵素的活性を持つ触媒的なRNA分子で、それが相補的な領域を持つmRNAのような1本鎖の核酸を2分することが出来る。従って、リボザイム(例えば、ハマーヘッドリボザイム;(ハーゼルホフとゲアラック著(1988)自然 334:585−591)に記述)はmRNAの転写を触媒的に2分し、mRNAの翻訳を抑制するために利用できる。本発明の核酸に対して特異性を持つリボザイムは、ここに開示したDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計できる(即ちSEQ ID NO:1−3,10−13と15)。
【0110】
例えば、テトラハイメナL−19 IVS RNAの派生体を造成して、その活性部位のヌクレオチド配列が、SECXコード化mRNAの中で2分されるヌクレオチド配列に相補的であるようにする。参考例:チェックほか、米国特許.No.4,987,071、及びチェックほか.米国特許.No.5,116,742。
【0111】
代替方法として、mRNAを使って、RNA分子のプールから特異的なRNA分解酵素的活性を持つ触媒的なRNAを選択出来る。参考例:バーテルほか、(1993)科学 261:1411−1418。
【0112】
代替方法として、調整領域(例えば、プロモーターと/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的にする事により、標的細胞内の遺伝子の転写を防ぐ3重螺旋状の構造を形成すれば、遺伝子の発現は抑制出来る。参考:へレン.(1991)抗癌薬品 Des.6:569−84;ヘレンほか(1992)Ann.N.Y Acad.Sci.660:27−36;及びメーハ−(1992)生物学検定 14:807−15。
【0113】
色々な具体例では、本発明の核酸は、例えば分子の安定性、雑種形成、又は溶解性を改善するように、塩基の半数、糖の半数、又は燐酸塩のバックボーンにおいて変更可能である。例えば、核酸のデオキシリボーゼ燐酸塩のバックボーンは、ペプチド核酸を生成するように変更可能である(参考:ハイラップほか.(1996)Bio又はg Med Chein 4:5−23)。ここで使われている「ペプチド核酸」又は「PNA」の用語は、核酸例えばDNAの擬態を意味し、デオキシリボーズ燐酸塩のバックボーンは、擬似ペプチドのバックボーンに置き換えられ、4個の自然ヌクレオベースだけが保持される。PNAの中性バックボーンは、低イオン強度の条件下でDNAとRNAに特異的に雑種形成することが証明されている。PNAオリゴマーの合成は、標準固相ぺプチド合成プロトコールを使って実行可能で、それはハイラップほか著の上記書(1996);ぺリー・オキーフほか著(1996)PNAS 93:14670−675に説明されてあるとおりである。本発明のPNAは、治療と診断の用途に使える。例えば、PNAは、転写や翻訳停止又は複製の抑制を誘発して配列特異性のある遺伝子発現を調整するアンティセンスまたはアンティジーン薬剤として使用可能である。本発明のPNAの用途は、例えば、PNA指揮のPCR締付けなどにより、単一塩基対の突然変異の分析、S1核酸分解酵素のような他の酵素と組合わせたと人工制限酵素(ハイラップ B.(1996)、前出)、DNA配列と雑種形成用のプローブ又はプライマーなどである(ハイラップほか(1996),前出;ぺリー・オキーフ(1996)、前出)。
【0114】
他の具体例では,本発明のPNAは、安定性や細胞摂取を改善するように変更可能である。その方法は例えば、親油脂性または他の助剤群のPNAへの付加、PNA−キメラの形成、当業界で知られているリポソームやその他の薬剤配送技術の使用などである。例えば、PNAとDNAの有利な特性を組み合わせたPNA−DNAキメラを生成できる。
【0115】
その様なキメラは、DNAの認知酵素、例えばRN酵素HとDNA重合酵素がDNA部分と相互作用を許し、それと同時にPNA部分は高度の結合親和性と特異性を提供する。PNA−DNAキメラは、塩基の積み重なり、塩基間の結合数、及び指向を考慮に入れて選択された適当な長さのリンカーを使ってリンクすることが出来る(ハイラップ(1996)前出)。PNA−DNAキメラの合成は、ハイラップ(1996)前出とフィンほか(1996)核酸Res 24:3357−63に説明されているように実行可能である。例えば、DNA鎖は、標準のホスホラミダイト結合化学を使って固定した支持台の上で合成し、調整ヌクレオシド相似体、例えば、5’−(4−メチオキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−サイミディン・ホスホラミダイトはPNAとDNAの5’端の間に使うことができる(マグほか(1989)核酸調査Nucl Acid Res 17:5973−88)。それからPNAモノマーは段階的にリンクされ、5’PNAセグメント及び3’DNAセグメントの付いたキメラ分子を生成する(フィンほか(1996)前出)。代替方法としては、キメラ分子は5’PNAセグメント及び3’DNAセグメントを使って合成することも出来る。参照:ピーターソンほか、(1975)Bio Org Med Chem Lett 5:1119−11124。
【0116】
他の具体例では、オリゴヌクレオチドには、ペプチド(例:体内で宿主細胞を標的とするペプチド)のような他の付属グループ、又は細胞膜層(参考例:レツィンガーほか,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556;ルメートルほか1987,Proc.Natl.Acad.Sci.84:648−652;PCT出版No.W088/09810)又は血液脳関門(参考例:PCT出版No.W089/10134)の通過・運搬を助ける薬剤も含まれる。更に、オリゴヌクレオチドは、雑種形成誘発分割剤(参考例:クロールほか,1988,BioTechniques 6:958−976)又は挿入剤(参考例:ゾン、1988,Pharm.Res.5:539−549)でも変更出来る。この目的ために、オリゴヌクレオチドを別の分子、例えば、ペプチド、雑種形成誘発架橋剤、運搬剤、雑種形成誘発分割剤などと接合させても良い。
【0117】
(5.5 宿主)
本発明は更に、遺伝子工学的に本発明ポリヌクレオチドを包含するように設計された宿主細胞を提供する。例えば、その宿主細胞は、既知の形質転換、形質移入又は感染方法を使って導入された本発明の核酸を包含するかもしれない。本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを発現するように遺伝子工学的に設計された宿主細胞を提供し、それらのポリヌクレオチドは、細胞内でポリヌクレオチドの発現を操作する宿主細胞とは異種な調節配列と機能的に会合する。
【0118】
CEA様DNA配列の知識は、CEA様ポリペプチドの発現を許す又は増加させるように細胞を調節できる。細胞は調整して(例えば、同族性の組換えによって)、自然発生するCEA様プロモーターの全部か一部を、異種のプロモーターの全部か一部で取替えることによって、CEA様ポリペプチドの細胞がより高いレベルで発現されるようにできる。異種のプロモーターは、CEA様のコード化配列に機能的にリンクされる様に挿入される。参考例:PCT International Publication No.WO94/12650,PCT International Publication No.WO92/20808、及びPCT International Publication No.WO91/09955。また、異種のプロモーターDNAの他に、増幅可能なマーカーDNA(例:カルバミルリン酸シンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ及びジヒドロロオロターゼをコード化するada,dhfr,及び多機能性のCAD遺伝子)および/又はイントロンDNAが異種のプロモーターDNAと共に挿入されることも考慮されている。もしCEA様のコード配列にリンクされると、標準選択方法によるマーカーDNAの増幅は、細胞内でCEA様コード配列の共同増幅を導く。
【0119】
宿主細胞は、哺乳類の細胞のような高度に真核性の宿主細胞、イースト細胞のような低度に真核性の宿主細胞でも,又は細菌の細胞のような原核細胞でも良い。組換え構成を宿主細胞へ導入するには、リン酸カルシウムの形質移入、DEAE、デキストラン仲介形質移入、又はエレクトロポーレーションによって実行される。(デイビス,L.ほか著、分子生物学の基本方法(1986))。本発明ポリヌクレオチドの1つを持つ宿主細胞は、従来の方法で分離断片によってコード化された遺伝子生成物を生成する為に(ORFの場合)、又はEMFの支配下で異種の蛋白質を生成する為に使用出来る。
【0120】
いかなる宿主/ベクターシステムでも、本発明のORFを1個又はそれ以上発現するのに使用できる。これらは下記のものを制限無く含む:真核性の宿主、例えば:HeLa細胞,Cv−1細胞、COS細胞、293細胞、Sf9細胞、及び原核性の宿主、例えば:大腸菌やB.サブチリス。最も望ましい細胞は、通常、特別なポリペプチド又は蛋白質を発現しないもの、又はポリペプチド又は蛋白質を天然の低レベルで発現するものである。成熟蛋白質は、哺乳類細胞、イースト、細菌、又はその他適当なプロモーターの支配下にある細胞内で発現出来る。細胞なしの翻訳システムを使用して、本発明のDNA構成物から取出したRNAを使ってそのような蛋白質を生成することもできる。原核性と真核性の宿主を使用する適当なクローニング及び発現ベクターは、サムブルックほか著、分子のクローニング:研究所マニュアル、第2版コールドスプリングハーバー、NY(1989)に記述されてあり、その開示は参考としてここに含む。
【0121】
色々な哺乳類細胞の培養システムを使って、組換え蛋白質を発現出来る。哺乳類細胞の発現システムの例は、グルズマン著、細胞、23:175(1981)に記述された、サルの腎臓繊維芽細胞のCOS−7線を含む。他の細胞系で適合性のベクターを発現出来るものは、例えば、C127、サルのCOS細胞,中国産ハムスターの卵巣(CHO)細胞、ヒトの腎臓の293細胞,ヒトの表皮のA431細胞、ヒトのColo2O5細胞、3T3細胞、CV−1細胞,他の形質転換された霊長類の細胞系、正常な2倍体細胞,一次組織の体外培養から得られた細胞株、一次体外移植組織、HeLa細胞、マウスのL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK又はジュルカット細胞である。哺乳類細胞の発現ベクターは、複製の原体、適当なプロモーター及び必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス・ドナーと受容体部位、転写終結配列、及び5’側面非転写配列で形成される。例えば、SV40のウイルスゲノム、SV40原体,初期プロモーター、エンハンサー、スプライス、及びポリアデニル化部位から取出されたDNA配列を使って、必要な非転写遺伝子要素を提供することができる。細菌培養で生成された組換えポリペプチドと蛋白質は、通常、細胞ペレットから最初抽出によって分離され、次に、1回又はそれ以上の塩析、水分イオン交換、又はサイズ除外クロマトグラフィーと続く。必要に応じて、蛋白質を再度折り畳んで、成熟蛋白質の編成を完了することが出来る。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、精製の手順を終了する。蛋白質の発現に使用する微生物の細胞は、凍結‐融解サイクル、音波破粋、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用等、従来の方法で破壊出来る。
【0122】
代替方法としては、蛋白質をイースト又は昆虫のように低位の真核生物の中で、又は細菌のような原核生物の中で生成することが出来る。潜在的に適切なイースト株には、Saccharomyces cerevisiae,Schizosaccharomyces pombe,Kluyveromyces株,Candida、又は異種の蛋白質を発現出来るイースト株ならどれでもを含むことができる。潜在的に適切な細菌株には、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、又は異種の蛋白質を発現出来る細菌株のどれでも含まれる。もしその蛋白質がイーストか細菌で出来ている場合、機能的な蛋白質を得る為に、例えば、適当な部位の燐酸エステル化、又はグリコシル化により、そこで生成された蛋白質を修正する必要があるかもしれない。そのような共有結合の添付は、既知の化学的又は酵素的な方法で達成出来る。
【0123】
本発明の別の具体例では、細胞と組織は、誘導性の調節要素の支配下で、本発明のポリヌクレオチドを含む内生遺伝子を発現するように設計可能で、その場合、内生遺伝子の調節配列は同族性の組換えで置き換えられる。
【0124】
ここで説明されたように、遺伝子の標的技術を使って、遺伝子の既存の調節領域を、異なる遺伝子から分離された調節配列、又は遺伝子工学的方法で合成された新規性のある調節配列で置き換えることができる。その調節配列は、プロモーター、エンハンサー、骨格取付領域、負の調節要素、転写始動部位,調節蛋白質結合部位、又はそれらの配列の組合せで構成される。代替方法としては、生成されたRNA又は蛋白質の構造又は安定性に影響する配列は取替え、除去、添付、又はその他の標的法で修正することが出来る。これらの配列には、ポリアデニル化信号、mRNA安定性要素、スプライス部位、蛋白質の搬送又は分泌特性を改善・修正するためのリーダー配列、又は蛋白質かRNA分子の機能又は安定性を変更又は改善する、その他の配列を含む。
【0125】
標的法は、単に調節配列を挿入することで、例えば、新しいプロモーター又はエンハンサー又は両者を遺伝子の上流に挿入して、遺伝子を新しい調節配列の支配下に置くことであるかも知れない。代替的には、標的法は、単に調節要素を削除することで、例えば、組織特異的な負の調節要素を削除することである。代替方法としては、標的法で既存の要素を取替える;例えば,組織特異的なエンハンサーは、自然発生の要素よりも幅広い、又はそれとは異なった細胞タイプに特異性を持つエンハンサーで置き換えられる。ここでは、自然発生の配列は削除され、新しい配列が加えられる。いずれの場合でも、標的法の識別は、標的DNAと隣接している1個又はそれ以上の選択可能マーカー遺伝子を使えば容易になり、外因性DNAが宿主細胞ゲノムに結合した細胞を選択出来る。標的法の識別は、また、負の選択特性を示す1個又はそれ以上のマーカー遺伝子を使っても容易になる。つまり負の選択可能マーカーは、外因性DNAにリンクされるが、標的配列の脇に位置され、そして、宿主細胞ゲノムの中の配列と正しい同族性の組換えを行うものは、負の選択可能マーカーと安定した結合をしない。この目的に役立つマーカーには、単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、又は細菌性キサンチン‐グアニンホスホリボシル転移酵素(gpt)遺伝子を含む。
【0126】
本発明のこの面に従って使える遺伝子標的又は遺伝子活性化技術は更に詳しく下記に説明されている:米国特許No.5,272,071 チャペル宛;米国特許No.5,578,461シャーウイン他宛;国際申請No.PCT/US92/09627(WO93/09222)セルデンほか;及び国際申請No.PCT/US90/06436(WO91/06667)スクールチほか、これらの内容の全体が本書に参考として含まれている。
【0127】
(5.6 本発明のポリペプチド)
本発明の分離されたポリペプチドは下記のものから成るポリペプチドを制限無く含む:SEQ ID NO:4又は6−10の1つとして設定されたアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:1−3,又は5のヌクレオチド配列のどれか1つによってコード化されたアミノ酸配列、又は対応する全長又は成熟蛋白質。又、本発明のポリペプチドは、次のものにコード化された、生物学的、又は免疫学的な活性のあるポリペプチドが望ましい:(a)SEQ ID NO:1−3,又は5に設定されたヌクレオチド配列の一つを持つポリヌクレオチド、又は(b)SEQ ID NO:4又は6−10に設定されたアミノ酸配列のどれか1つをコード化するポリヌクレオチド、又は(c)厳格なハイブリダイゼーション(雑種形成)条件下で(a)又は(b)のポリヌクレオチドの補体にハイブリダイズ(雑種形成)するポリヌクレオチド。本発明はまた、SEQ ID NO:4又は6−10として設定されたアミノ酸配列のいずれかの、生物学的、又は免疫学的な活性のある突然変異種、又は対応する全長又は成熟蛋白質;そして生物活性を持つそれらと「ほぼ同等のもの」(例:アミノ酸の同一量が、最低65%位、最低70%位、最低75%位、最低80%位、最低85%、86%、87%、88%、89%位、最低90%、91%、92%、93%、94%位、典型的には最低95%、96%、97%位、更に典型的には最低98%位、又は最も典型的には最低99%位)で生物学的な活性を持つ。対立変異体によりコード化されたポリペプチドは、SEQ ID NO:4又は6−10で構成されるポリペプチドと比較して、活性が同様か、より高いか、又はより低いかもしれない。
【0128】
生物活性を示す能力がある本発明の蛋白質のフラグメントも本発明に含まれるが、それは直線形かも知れないし、又は、既知の方法を使って環状形にすることも出来る。例えば、これらはH.U.サラゴヴィほか著、Bio/Technology 10,773−778(1992)とR.S.マクドウエルほか著、J.Amer.Chem.Soc.114,9245−9253(1992)に記述されてあり、両者はここに参考として加える。そういうフラグメントは、蛋白質の結合部位の原子価を上げるなど色々な目的のために、免疫グロブリンのような担体分子と融合することもできる。
【0129】
本発明はまた、開示された蛋白質の全長と成熟の二つの形体を提供する(例えば、シグナル配列又は前駆体配列なしで)。蛋白質コード配列は、開示されたヌクレオチド配列の翻訳によって、配列リストの中で同定される。そういう蛋白質の成熟形は、適当な哺乳類の細胞、又は他の宿主細胞の中で全長のポリヌクレオチドを発現して得られる。成熟形体の蛋白質の配列はまた全長形のアミノ酸配列からも決定できる。
【0130】
本発明の蛋白質が膜と結合している場合、可溶性の蛋白質もまた提供される。そのような形体では、蛋白質を膜と結合する領域の一部又は全部は蛋白質が、その発現される細胞から充分に分泌されるように削除される。
【0131】
更に、本発明の蛋白質の組成物は、例えば、製薬学的に容認できる親水性の担体などの容認可能担体を含むことが出来る。
【0132】
本発明は更に、本発明の核酸フラグメント又は核酸フラグメントの退化変異体によってコード化された分離ポリペプチドを提供する。「退化変異体」とは、本発明の核酸フラグメント(例:ORF)とはヌクレオチド配列が異なっているが、遺伝子コードの退化の故に同一のポリヌクレオチド配列をコード化しているヌクレオチド・フラグメントである。本発明の望ましい核酸フラグメントは蛋白質をコード化するORFである。
【0133】
当業界で既知の色々な方法を利用して、本発明の分離されたポリペプチド又は蛋白質のどれでも取得できる。最も単純なレベルでは、アミノ酸配列は、商業的に入手できるペプチド合成剤を使って合成出来る。合成された蛋白質配列は、一次、二次、又は三次構造や配座の特徴を蛋白質と共有するので、蛋白質の活性を含む生物学的な特質を所有するかもしれない。この技術は、小さいペプチドと大きなポリペプチドのフラグメントを生成するのに特に役立つ。フラグメントは、例えば、天然のポリペプチドに対する抗体を生成するのに役立つ。従って、天然の精製された蛋白質の、生物学的に活性な、又は免疫学的な代用品として、治療用の組成物を選別する時や抗体開発の免疫学的なプロセスで使用できる。
【0134】
本発明のポリペプチドと蛋白質は、望ましいポリペプチド又は蛋白質を発現するために変更された細胞から交互に精製できる。、「望ましいポリペプチド又は蛋白質を発現するために変更された」というのは、ここでは、細胞が遺伝子操作で、通常は生成しない、又は通常は低いレベルでしか生成しないポリペプチド又は蛋白質を発現する様に変更されることを意味する。当業界の熟練者は、本発明のポリペプチドと蛋白質のいずれかを生成する細胞を造る為に、組換え又は合成配列のどちらかを真核細胞又は原核細胞に導入し発現する手順を容易に調整することが出来る。
【0135】
本発明は、ポリペプチドを生成する方法にも言及する。例えば、宿主細胞を適切な培養基で育てる方法や、細胞又は細胞が生育する培養液から蛋白質を精製する方法などである。例えば、本発明の方法に含まれるポリペプチド生成プロセスには、本発明のポリヌクレオチドを含む適当な発現ベクターを持つ宿主細胞を、コード化されたポリペプチドの発現を許す条件下で培養する方法もある。
【0136】
ポリペプチドは培養体から又は宿主細胞から作られた溶解産物から容易に取り出して更に精製する。望ましい具体例は、そのプロセスで生成された蛋白質は全長又は成熟形体であること。
【0137】
代替方法では、天然でポリペプチド又は蛋白質を生成する細菌の細胞から、ポリペプチド又は蛋白質は精製される。当業界の熟練者なら、本発明の分離されたポリペプチド又は蛋白質の1つを得る為に、既知のポリペプチドと蛋白質の分離方法を簡単に利用できる。これらの方法は、下記のものを制限無く含む:イムノクロマトグラフィー、HPLC、サイズ除外クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー,及びイムノアフィニティー・クロマトグラフィー。参考例:スコープス、蛋白質の純化 理論と実用,スプリンガ−フェアラグ(1994);サムブルックほか、分子クローニング:研究所マニュアル;アウスベルほか、分子生物学における現行のプロトコール。生物学的・免疫学的活性を保持するポリペプチドフラグメントは、約100個以上のアミノ酸、又は約200個以上のアミノ酸で構成されるフラグメント、そして特定の蛋白質のドメインをコード化するフラグメントを含む。
【0138】
精製されたポリペプチドは、当業界で良く知られたポリペプチドに結合する分子を同定する方法である生体外結合検定に使うことができる。これらの分子は、次のものを制限無く含む:小さな分子、組み合わせライブラリーからの分子、抗体又はその他の蛋白質。結合検定で同定された分子は、拮抗又は敵対活性について体内組織培養又は動物モデルで試験されるが、この方法は当業界で良く知られている。要するに、分子は、複数の細胞培養か動物の中に注入され、その後細胞/動物の死亡又は生存の長さを試験する。
【0139】
更に、本発明のペプチド又はペプチドに結合できる分子は、リシン、コレラのような毒素又は細胞に有毒な化合物と複合体を作っているかも知れない。毒素と結合した分子複合体は、SEQ ID NO:4又は6−10結合分子の特異性によって腫瘍又は他の細胞を標的として使用される。
【0140】
本発明の蛋白質はまた、遺伝子導入動物の生成物、例えば、遺伝子導入された雌牛、山羊、豚、羊のミルクの成分として発現されるかも知れない。これらの動物は、蛋白質をコード化したヌクレオチド配列を含む体細胞、又は生殖細胞を持つことを特徴とする。
【0141】
ここで言う蛋白質はまた、精製された蛋白質と似たアミノ酸配列を特徴とする蛋白質を含んでいるが、そのアミノ酸は自然に修正された又は人為的に設計されたものである。例えば、ペプチド又はDNA配列での修正は、当業界の熟練者が既知の技術を使って出来ることである。関心のある蛋白質配列の修正は、コード配列の選択アミノ酸残基の変更、代用、入れ換え、挿入又は削除を含む。例えば、分子構造を変えるために、1個又はそれ以上のシスチン残基を削除する又は他のアミノ酸で置き換えることも可能である。そのような、変更、代用、入れ換え、挿入又は削除の技術は当業熟練者に良く知られている。(参照例:米国特許No.4,518,584)。望ましくは、そのような変更、代用、入れ換え、挿入又は削除が、蛋白質の望ましい活性を保持することである。蛋白質の機能に重要な蛋白質の領域は当業界に良く知られている、下記のいろいろな方法できめられる:アラニン走査方法は、1個のまたは連なったアミノ酸をアラニンで系統的に置き換え、その結果生じたアラニンを含む変異種に関して生物活性を試験する。このタイプの分析は置き換えられたアミノ酸の生物活性における重要性を決める。蛋白質の機能に重要な蛋白質の領域はeMATRIXプログラムで決定できる。
【0142】
蛋白質の配列の他のフラグメントと派生物で、蛋白質の活性の全部又は一部を保持すると期待され、選別又は他の免疫学的な方法に役立つものは、ここの開示を使って、当業界の熟練者によって簡単に作られる。そのような修正は、本発明に含まれている。
【0143】
本発明の分離されたポリヌクレオチドを1個又はそれ以上の昆虫発現ベクター内の適切な制御配列に機能的にリンクし、昆虫発現システムを使って、蛋白質を生成できる。バキュウロウイルス/昆虫細胞発現システムの材料と方法は、業者からキットとして入手できる。例えば、Invitrogen,San Diego,Calif.,U.S.A.(the MaxBatTM kit),で、その様な方法は当業界では良く知られており、サマーズとスミス著,テキサス農業実験ステーションブレティンNo.1555(1987),の記述を参考としてここに加える。ここで使われている表現を用いれば、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力がある昆虫細胞は「形質転換されている」。本発明の蛋白質は、組換え蛋白質を発現するのに適切な培養条件で形質転換された宿主細胞を培養することによって、作成できる。その結果発現された蛋白質は、ゲル濾過とイオン交換クロマトグラフィーのような既知の精製プロセスを使って、その培養基(即ち、培養媒体か細胞エキス)から精製される。また、蛋白質の精製は下記のものを含む:蛋白質に結合する薬剤を含むアフィニティーカラム;コンカナヴァリンA−アガロース、へパリン−トヨパールTM又はチバクローム青3GAセファロースTMのような親和性樹脂の上に位置する1個又はそれ以上のカラムステップ;フェニルエーテル、ブチルエーテル、又はプロピルエーテルのような樹脂を使って疎水性の相互作用クロマトグラフィーを行う1個又はそれ以上のステップ;又はイムノアフィニティー・クロマトグラフィー。
【0144】
代替的には、本発明の蛋白質を、精製を助ける形体で発現させても良い。例えば、下記のような融合蛋白質として発現できる:麦芽糖結合蛋白質(MBP)、グルタチオン−S−転移酵素(GST)又はチオレドキシン(TRX),又はヒス標識。そのような融合蛋白質の発現と精製用のキットは夫々次の業者から入手できる:New England BioLab(Beverly,Mass.),Pharmacia(Piscataway,N.J.)及びInvitrogen。その蛋白質は又、エピト−プ標識を付け、その後エピト−プに向けられた特異性のある抗体を使って精製される。その様なエピト−プの1つ(「FLAG(登録商標)」)はコダック(New Haven,Conn.)から販売されている。
【0145】
最後に、1個又はそれ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLQ)(ペンダントメチルや他の脂肪族グループを持つシリカゲルなどの疎水性RP−HPCL媒体を使う)ステップを使って蛋白質を更に精製する。上記の精製手順の一部か全部を色々な組合せで使えば、ほぼ同質の分離組換え蛋白質を生成できる。このように精製された蛋白質には他の哺乳類の蛋白質が殆ど無く、本発明では「分離された蛋白質」と定義される。
【0146】
本発明のポリペプチドは相似物(変異体)を含む。本発明のポリペプチドはCEA様相似物を含む。これは、本発明のCEA様ポリペプチドの断片及び1個又はそれ以上の削除、挿入又は置換されたアミノ酸からなるCEA様ポリペプチドを含む。また、本発明のCEA様ポリペプチドの相似物は、CEA様ポリペプチドの融合体、又はCEA様ポリペプチドの修正体を含み、CEA様ポリペプチド又は相似物は、他の半体又は複数の半体、例えば、標的半体又は他の治療用薬剤へ融合される。それらの相似物は、活性および/又は安定性のような性質の改善を示すかもしれない。CEA様ポリペプチド、又は相似物に融合される半体の例は、ニューロンへポリペプチドを運ぶ標的半体、例えば、中枢神経システムへ運ぶ抗体、又はニューロン細胞で発現された受容体とリガンドへ運ぶ抗体である。CEA様ポリペプチドに融合される他の半体には、治療用の薬剤、例えば抗鬱剤、又は神経障害用の他の薬品を含む。また、CEA様ポリペプチドは、ニューロン成長調整剤やその他標的配送用のケモキンに融合することが出来る。
【0147】
(5.6.1 ポリペプチドとポリヌクレオチドの同一性と類似性の決定)
望ましい同一性と/又は類似性は、試験された配列間で最大の一致を出すように設計されている。同一性と類似性の決定方法は、コンピュータープログラムに体系化してあり、下記を制限無く含む:GAPを含むGCG プログラムパッケジ(デヴェロー,J.,ほか、核酸研究12(1):387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX,FASTA(アルチュル,S.F.ほか、分子生物学.215:403−410(1990),PSI−BLAST(アルチュルS.F.et al.,核酸研究.vol.25,pp.3389−3402,参考としてここに含む)、eMatrix software(ウーほか、J.Comp.Biol.,vol.6,pp.219−235(1999),参考としてここに含む)、eMotif software(ネヴィル−マニングほか,ISMB−97,vol 4,pp.202−209,参考としてここに含む)及び、カイト−ドゥーリトル疎水性予測アルゴリズム(J.Mol Biol,157,pp.105−31(1982)、参考としてここに含む)。BLASTプログラムはNational Center for Biotechnology Information[バイオテクノロジー情報国立センター](NCDI)と他のソース(BLAST Manual,アルチュル,S.,ほか.NCB NLM NIH Bethesda,MD 20894;アルチュル,S.,ほか,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))から一般に販売されている。
【0148】
(5.7 キメラと融合蛋白質)
本発明はまたキメラ又は融合蛋白質を提供する。ここで使われる、「キメラ蛋白質」又は「融合蛋白質」は、他のポリペプチドに機能的に連結された本発明ポリペプチドで構成される。融合蛋白質の内部で、本発明のポリペプチドは、本発明の蛋白質の全部又は一部に対応する。一具体例では,融合蛋白質は、本発明の蛋白質の少なくても1つの生物学的に活性のある部分を含む。他の具体例では、融合蛋白質は、本発明の蛋白質の少なくても2つの生物学的に活性のある部分を含む。融合蛋白質の内部で、「機能的にリンクされた」という用語は、本発明のポリペプチドと他のポリペプチドは枠内でお互いに融合されていること示す。ポリペプチドは、N−端末、C−端末、又は真中に融合できる。
【0149】
例えば、1つの具体例では、融合蛋白質は、第二蛋白質の細胞外のドメインに機能的にリンクされた本発明のポリペプチドを含む。
【0150】
他の具体例では、融合蛋白質はGST−融合蛋白質で、本発明のポリペプチド配列がGST(即ち、グルタチオンS−転移酵素)配列のC末端に融合されている。
【0151】
他の具体例では、融合蛋白質は免疫グロブリン融合蛋白質で、本発明のポリペプチド配列が、免疫グロブリン蛋白質ファミリーのメンバーから取出された配列に融合された1個又はそれ以上のドメインで構成される。
【0152】
本発明の免疫グロブリン融合蛋白質は薬学的組成物に取り入れられ、対象物に投与して、細胞の表面でのリガンドと本発明の蛋白質との間の相互作用を抑制し、それによって体内の信号の変換を抑制する。免疫グロブリン融合蛋白質を使って、同族リガンドの生物利用能に影響を与えることができる。リガンド/蛋白質 の相互作用の抑制は、繁殖分化障害(例えばガン)の治療と細胞の生存の調節(例えば、促進又は抑制)の両方に治療学的に役立つ。更に、本発明の免疫グロブリン融合蛋白質は免疫源として使用され、対象物の中に抗体を作り、リガンドを純化し、そしてスクリーニング検定時に、本発明のポリペプチドのリガンドとの相互作用を抑制する分子を同定する。
【0153】
本発明のキメラ又は融合蛋白質は、標準組換えDNA技術によって生成できる。例えば,異なったポリペプチド配列のためのDNAフラグメントのコードは、従来の技術に従って、枠内でリンクされる。従来の技術とは、例えば、リンクに鈍端、又は波形端をもつ端末を使い、抑制酵素の消化力で適当な端末を作り、粘着端末を適当に充填し、望ましくない結合を避けるために適当なアルカリ性燐酸酵素処理をし、そして酵素的なリンクをする方法である。他の具体例では、融合遺伝子を、自動DNA合成器を含む、従来の技術で合成出来る。代替方法として、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、アンカープライマーを使って遂行される。アンカープライマーは2個の連続した遺伝子フラグメントの間に相補的な突出部を作り、2個のフラグメントは次にアニール化され再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成する(参考例:アウスベル他編集、「分子生物学における現行のプロトコール」、John Wiley & Sons,1992)。更に、多くの発現ベクターは、融合半体をコード化したものが市場で販売されている(例:GSTポリペプチド)。本発明のポリペプチドをコード化する核酸を、融合半体が本発明の蛋白質に枠内で連結されるような発現ベクターの中にクローン化することができる。
【0154】
(5.8 遺伝子治療)
本発明のポリヌクレオチド遺伝子における突然変異は、コード化された蛋白質の正常機能を失う結果となる。従って、本発明は、本発明のポリペプチドの正常な活性を回復する又は 本発明のポリペプチドに関連した病状を治療するための遺伝子治療を提供する。本発明のポリペプチドをコード化する機能遺伝子の適当な細胞への配送は、ベクターを使って、半ビボ、生体内原位置、又は生体内で実行される。更に詳しく言うと、ウイルスのベクターを使って(例えば、腺ウイルス、腺関係のウイルス、又はレトロウイルス)、又は物理的なDNA転移方法を使って半ビボで(例:リポソーム又は化学治療)実行される。
参考例:アンダーソン、Nature[自然]、補充 vol.392,no.6679,pp.25−20(1998)、遺伝子治療技術の追加参考資料として、フリードマン、Science[科学],244:1275−1281(1989);ヴァ−マ、Scientific American[サイエンティフィックアメリカン]:68−84(1990);及びミラー、Nature,357:455460(1992)。本発明のヌクレオチド又は本発明のポリペプチドをコード化する遺伝子に関する入門は、染色体外の基質(一時的発現)又は人工染色体(安定発現)を使って達成できる。また、細胞を増殖し、細胞に望ましい効果又は活性を与えるために、本発明の蛋白質の存在下半ビボで細胞を培養することも出来る。処理された細胞は治療目的で体内に導入される。代替的に、その他のヒトの病状では、本発明のポリペプチドの発現を防ぎ、またはその活動を抑制することは病状の治療に役立つと考えられる。本発明のポリペプチドの発現を負に調節するためにアンティセンス治療又は遺伝子治療を適用することも考慮されている。
【0155】
蛋白質の発現を抑制する他の方法はアンティセンス分子、それらの補体、又は翻訳されたRNA配列を本発明の核酸に導入することで,当業界で知られている方法である。更に、本発明のポリペプチドは、標的削除法を使って、又は組織特異性のあるサイレンサーのような負の調節要素を挿入して抑制される。
【0156】
本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを発現するために、体内で遺伝子工学的に設計された細胞を提供する。その様なポリヌクレオチドは、細胞内でポリヌクレオチドの発現を促進する宿主細胞に異種な調節配列と機能的に会合している。こういう方法は、本発明のポリペプチドの発現を増大又は減少する目的で用いることができる。
【0157】
本発明が提供するDNA配列の知識は、細胞の調整が内生ポリペプチドの発現を実行、増加、又は減少させるのを可能にする。細胞は調整可能で(例えば、同族性の組換えによって)、天然に発生するプロモーターの全部か一部を、異種のプロモーターの全部か一部で取替えて、細胞がより高いレベルで蛋白質を発現するようにする。この異種のプロモーターは、配列をコード化する望ましい蛋白質に機能的に連結される様に挿入される。参考例:PCT International Publication No.WO94/12650,PCT International PublicationNo.WO92120808、とPCT International Publication No.WO91/09955。また、異種のプロモーターDNAの他に、増幅可能なマーカーDNA(例:カルバミルリン酸シンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ及びジヒドロオロターゼをコード化するada,dhfr及び多機能を持ったCAD遺伝子)と/又はイントロンDNAが異種のプロモーターDNAと共に挿入されることも考慮されている。
【0158】
望ましい蛋白質のコード配列にリンクされると、標準選択方法によるマーカーDNAの増幅は、細胞内の望ましい蛋白質コード配列の共同増幅を導く。
【0159】
本発明の別の具体例では、細胞と組織は、誘導性の調節要素の支配下で本発明のポリヌクレオチドから成る1個の内生遺伝子を発現するように設計できる。その場合、内生遺伝子の調節配列は、同族性の組換えによって置き換えられる。ここで説明されたように、遺伝子の目標設定を使って、遺伝子の既存の調節領域を、異なる遺伝子から分離された規制配列、又は遺伝子工学の方法により合成された新規性のある調節配列で置き換えられる。その様な調節配列は、プロモーター, エンハンサー、骨格取付領域、負の調節要素、転写始動部位、調節蛋白質結合部位、又はそれらの配列の組合せで構成される。代替的には,生成されたRNA又は蛋白質の構造又は安定性に影響する配列は、標的法によって取替え、除去、添加又は修正される。これらの配列は、ポリアデニル化信号、mRNA安定要素、スプライス部位,蛋白質の運送又は分泌特性を改善又は修正するリーダー配列、或いは、蛋白質又はRNA分子の機能又は安定性を変更または改良する、その他の配列で構成される。
【0160】
標的法は、単に調節配列を挿入することで、例えば、新しいプロモーター又はエンハンサー又は両者を遺伝子の上流に挿入し、遺伝子を新しい調節配列の支配下に置くことであるかも知れない。代替的には、標的法は、単に調節要素を削除することで、例えば、組織特異性のある負の調節要素を削除することである。代替方法としては、標的法で既存の要素を取替える;例えば、組織特異性のあるエンハンサーは、自然発生の要素よりも幅広い、又はそれとは異なった細胞タイプに特異性を持つエンハンサーで置き換えられる。ここでは、自然発生の配列は削除され、新しい配列が加えられる。いずれの場合でも、標的法の識別は、標的のDNAと隣接している1個又はそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を使えば容易になり、外因性DNAが宿主細胞ゲノムに結合した細胞を選択出来る。標的法の識別は、また、負の選択の特性を示す1個又はそれ以上のマーカー遺伝子を使っても容易になる。つまり負の選択可能マーカーは、外因性DNAに連結されるが、標的配列の脇に位置され、そして、宿主細胞ゲノムの中の配列と正しい同族性の組換えを行うものは、負の選択可能マーカーと安定した結合をしない。この目的に役立つマーカーには、単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、又は細菌性キサンチン‐グアニン・ホスホリボシル転移酵素(gpt)遺伝子を含む。
【0161】
本発明のこの面に従って使用できる遺伝子標的設定又は遺伝子活性化技術は、より詳細に米国特許No.5,272,071 チャッペル宛;米国特許No.5,578,461 シャーウインほか宛;国際申請No.PCT/US92/09627(WO93/09222)セルデン他より;そして国際申請No.PCT/US90/06436(WO91/06667)スコウルチ他より;これらはその全体をここに参考として含む。
【0162】
(5.9 遺伝子導入の動物)
本発明のポリペプチドの体内での生物機能を決める望ましい方法では、同族性の組換えを使っている動物の生殖系において、本発明が提供する1個又はそれ以上の遺伝子は超過発現されているか、又は活動停止となっている[カペッキ,Science 244:1288−1292(1989)]。外生又は内生プロモーター要素の調節管理の下で遺伝子が超過発現されている動物は、遺伝子導入の動物として知られる。同族性の組換えによって活動停止となっている内生の遺伝子をもつ動物は「ノックアウト」動物とよばれる。ノックアウト動物は望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、それについてはここに参考として含まれた米国特許No.5,557,032に記載のとおり、準備可能である。遺伝子導入の動物は、本発明のポリペプチドが生物学的なプロセス、望ましくは病気の状態で演じる役割を決めるのに役立つ。遺伝子導入の動物は、油脂の新陳代謝を調節する化合物を識別するモデルシステムとして有用である。遺伝子導入の動物は、望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、ここに参考として含まれた米国特許No.5,489,743とPCT Publication No.WO94/28122に記載された方法を使って作り出すことができる。
【0163】
本発明のポリヌクレオチドのプロモーターの全部か一部が活性化又は非活性化されて、本発明のポリヌクレオチドの発現のレベルが変更された場合、遺伝子導入の動物は準備できる。非活性化は、上記の同族性の組換え方法を使って実行できる。活性化は、蛋白質発現を増加するために、同族性のプロモーターを補充するか、又は取替えて達成出来る。同族性のプロモーターは、特定の組織にプロモーター活性を与えることが知られている1個又はそれ以上の異種のエンハンサー要素を挿入して補充できる。
【0164】
本発明のポリヌクレオチドは又、例えば同族性の組換え又はノックアウト方法を使って、CEA様ポリペプチドの機能を発現しない動物、又はCEA様ポリペプチドの変異種を発現する動物を開発することを可能にする。そのような動物は、CEA様ポリペプチドの生体内活動とそのモジュレーターを研究するモデルとして役に立つ。
【0165】
本発明のポリペプチドの体内での生物機能を決める望ましい方法では、同族性の組換えを使っている動物の生殖系において、本発明が提供する1個又はそれ以上の遺伝子は超過発現されているか、又は活動停止となっている[カペッキ,Science 244:1288−1292(1989)]。外生又は内生プロモーター要素の調節管理の下で遺伝子が超過発現されている動物は、遺伝子導入の動物として知られる。同族性の組換えによって活動停止となっている内生の遺伝子をもつ動物は「ノックアウト」動物と呼ばれる。ノックアウト動物は望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、それについてはここに参考として含まれた米国特許No.5,557,032に記載のとおり、準備可能である。遺伝子導入の動物は、本発明のポリペプチドが生物学的なプロセス望ましくは病気の状態で演じる役割を決めるのに役立つ。遺伝子導入の動物は、脂肪の新陳代謝を調節する化合物を同定するモデルシステムとして有用である。遺伝子導入の動物は、望ましくはヒト以外の哺乳類であるが、ここに参考として含まれた米国特許No.5,489,743とPCT Publication No.WO94/28122に記載された方法を使って作り出すことができる。
【0166】
本発明のポリヌクレオチドのプロモーターの全部か一部が活性化又は非活性化されて、本発明のポリヌクレオチドの発現のレベルが変更された場合、遺伝子導入の動物は準備できる。非活性化は、上記の同族性の組換え方法を使って実行できる。活性化は、蛋白質発現を増加するために、同族性のプロモーターを補充するか、又は取替えて達成出来る。同族性のプロモーターは、特定の組織にプロモーター活性を与えることが知られている1個又はそれ以上の異種のエンハンサー要素を挿入して補充できる。
【0167】
(5.10 ヒトのCEA様ポリペプチドの用途と生物活性)
本発明のポリヌクレオチドと蛋白質は、ここに特定された1個又はそれ以上の用途又は生物活性(ここに挙げた検定に関連するものを含む)を示すことが期待される。本発明の蛋白質について説明された用途又は活性は、その蛋白質の投与又は使用あるいはその蛋白質をコードするポリヌクレオチドの投与又は使用によって提供される(例えば、DNAの導入に適した遺伝子治療やベクター)。特定の状態における反応機構又は病理学が、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド又はそのモジュレーター(活性化剤又は阻害剤)が治療を必要とする対象物に効果があるかどうかを決める。従って、「本発明の治療学的組成物」は以下の通りである:分離されたポリヌクレオチド(組換えDNA分子、,クローン遺伝子とその退化変異種を含む)から成る組成物、又は本発明のポリペプチド(全長蛋白質、成熟蛋白質及び切形又はそのドメインを含む)、又は標的遺伝子/蛋白質発現又は標的蛋白質の活性レベルのいずれかにおいて、標的遺伝子生成物の全体的活性を調整する化合物その他の物質。
【0168】
そのようなモジュレーターは、ポリペプチド、類似体、(変異体)で、フラグメントと融合蛋白質、抗体そして他の結合蛋白質、本発明のポリペプチドを直接又は間接に活性化又は抑制する化合物(ここで述べられたように、例えば薬剤スクリーニング検定で同定される化合物);三重へリックス形成に適したアンティセンスポリヌクレオチドとポリヌクレオチド、そして特に、本発明のポリペプチドの1個又はそれ以上のエピトープを特に認知する抗体又は他の結合剤を含む。本発明のポリペプチドは、同様に細胞の活性化に関係しているかも知れないし、又はここに述べられた、他の生理学的な経路の1つに関連しているかも知れない。
【0169】
(5.10.1 研究用途と実用性)
本発明が提供するポリヌクレオチドは研究者達により色々な目的に使用できる。例えば以下の様な用途がある:分析、特性付け、又は治療用に組換え蛋白質を発現させる為;対応する蛋白質が優先的に発現される組織のマーカーとして(構造的に、又は組織分化、発育又は病気の特定の段階で);ゲルの分子量マーカーとして;染色体識別又は関連遺伝子位置の地図を作成する為の染色体マーカー、又は標識として;潜在的な遺伝子障害を特定するために、患者の内因性DNA配列と比較する為;雑種形成のプローブとして使い、新しい関連性のあるDNA配列を発見する為;遺伝子フィンガープリンティング法のためにPCRプライマーを導く情報源として;他の新規のポリヌクレオチドを見つける過程で、既知の配列を「除外」するためのプローブとして;「遺伝子チップ」や他の支持体への付着用にオリゴマーを選別・作成する為;DNA免疫技術を使って、抗蛋白質抗体を作るため;そして、抗DNA抗体を作る又は他の免疫反応を引出すための抗原として。ポリヌクレオチドが、他の蛋白質に結合する又は結合する可能性のある蛋白質をコード化する場合(例えば、受容体とリガンドの相互作用において)、そのポリヌクレオチドを相互作用トラップ検定に使い(例えばギュリスほか、細胞 75:791−803(1993)で記述されたもの)、結合相手の蛋白質をコード化するポリヌクレオチドを識別したり、結合相互作用の抑制剤を同定したりすることも可能である。
【0170】
本発明が提供するポリペプチドは、同様に次のように生物活性を決めるための検定で使用できる:大量スクリーニングの為の複数蛋白質パネルで;抗体を作るため又は他の免疫反応を引出すため;生物の液体の蛋白質(又はその受容体)レベルを定量的に決定する為の検定で試薬として;対応するポリペプチドが優先的に発現される組織のマーカーとして(構造的に、又は組織分化、発育又は病気の特定の段階で);そして勿論、相関した受容体又はリガンドを分離するため。
【0171】
これらの結合の相互作用に係わる蛋白質は、ペプチド、結合相互作用の小分子抑制剤、又は作用薬のスクリーニングにも使用できる。
【0172】
本発明のポリペプチドはまた、CEA様蛋白質と特異的に免疫反応する抗体物質を作るのに役立つ。本発明のポリペプチドに結合する抗体とその部分(例えばFabフラグメント)は、試料の中のその様なポリペプチドの存在確認に使用できる。そのような確認は、適切な免疫検定法を使って行われ、抗体により特異的に結合される本発明のポリペプチドは正の制御として使用できる。
【0173】
いずれの研究材料も、試薬又はキットのレベルにまで開発し、研究用製品として商業化が可能である。
【0174】
上記に示した用途を実行する方法は当業界の熟練者には良く知られている。その様な方法を開示した参考資料は、以下のものを制限なく含む:「分子のクローニング:研究所マニュアル」,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,サムブルック,J.、E.F.フリッチとT.マニアティス編、1989、及び「酵素学方法論:分子クローニング 技術への手引き」、Academic Press,バーガー,S.L.及びA.R.キンメル編、1987。
【0175】
(5.10.2 栄養面での用途)
本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドは、栄養源又は栄養補助剤としても使用できる。そのような用途は、制限無く、蛋白質又はアミノ酸の栄養補助剤として、炭素、窒素、炭水化物のそれぞれの供給源として使用できる。その場合、ポリペプチド又は本発明のポリヌクレオチドは、特定の有機体の飼料に添加したり粉末、錠剤、溶液、縣濁液、カプセルなどの固体、液体の形で投与したりできる。微生物の場合、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドは微生物が培養されている培養基に添加できる。
【0176】
更に、本発明のポリペプチドは、分子量マーカーとして、また栄養補助食品として使用できる。例えば、SEQ ID NO:4を含むポリペプチドは、未処理でグリコシル化されていない状態では、約47kDAの分子量を持つ。蛋白質の補助食品は良く知られており、本発明のポリペプチドを含む適切な栄養補助食品の製剤方法は、食料製造業の技術レベルで対応出来る。
【0177】
(5.10.3 サイトカインと細胞増殖/分化の活動)
本発明のポリペプチドは、サイトカイン、細胞増殖(誘発又は抑制のどちらか)、細胞分化(誘発又は抑制のどちらか)の活動を示し、又はある細胞において他のサイトカインの生成を誘発するかもしれない。本発明のポリヌクレオチドはそのような特質を示すポリペプチドをコード化することが出来る。全ての既知のサイトキンを含めて、これまで発見された多くの蛋白因数は1回又はそれ以上の因数依存細胞増殖検定で活性を示した。従って、検定はサイトカイン活動の確認方法として便利である。本発明の治療学的組成物の活動は、因数依存細胞増殖検定によって立証されており、その細胞株は次のものを含む:32D,DA2,DA1G,T1O,B9,B9/11,BaF3,MC9/G,M+(preB M+),2E8,RB5,DA1,123,T1165,HT2,CTLL2,TF−1,Mo7e,CMK,HUVEC,及びCaco.
本発明の治療学的組成物は下記に場合に使用できる:
T−細胞又は胸腺細胞の増殖検定は、下記に述べられたものを制限無く含む:免疫学における現在のプロトコール,編集J.E.コリガン,A.M.クルイスビーク,D.H.マーグリース,E.M.シェバック,W.ストローバー,出版.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(第3章、ネズミのリンパ球機能の体外検定3.1−3.19;第7章,ヒトにおける免疫学の研究);高井ほか、J.Immunol.137:3494−3500,1986;バータニオリほか、J.Immunol.145:1706−1712,1990;バータニオリほか、細胞免疫学 133:327−341,1991;バータニオリほか、I.Immunol.149:3778−3783,1992;ボウマンほか、I.Immunol.152:1756−1761,1994。
【0178】
サイトカイン生成と/又は膵臓細胞、リンパ腺細胞、又は胸腺細胞の繁殖検定は下記に述べられたものを制限なく含む:ポリクローン性T細胞の刺激、クルイスビーク,A.M.and シェバック,E.M.免疫学における現在のプロトコール.J.E.e.a.コリガン編集.Vol I pp.3.12.1−3.12.14,John Wiley and Sons,Toronto.1994;及び、マウスとヒトのインターロイキン−γの測定、シュライバー,R.D.免疫学における現在のプロトコール.J.E.e.a.コリガン編集、Vol 1 pp.6.8.1−6.8.8,John Wiley and Sons,Toronto.1994。
【0179】
造血細胞及びリンパ球生成細胞の繁殖と分化の検定は、下記に述べられたものを制限無く含む:「ヒトとネズミ類のインターロイキン2と4の測定」、ボトムリ,K.,デイビス,L.S.及びリプスキー P.E.;「免疫学における現在のプロトコール」J.E.e.a.コリガン eds.Vol 1 pp.6.3.1−6.3.12、John Wiley and Sons,Toronto.1991;デフリースほか、J.Exp.Med.173:1205−1211,1991;モローほか、自然 336:690−692,1988;グリーンバーガーほか、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:2931−2938,1983;マウスとヒトのインターロイキン6の測定−ノーダン,R.免疫学における現在のプロトコールJ.E.コリガン eds.Vol 1 pp.6.6.1−6.6.5,John Wiley and Sons,Toronto.1991;スミスほか,Proc.Natl.Aced.Sci.U.S.A.83:1857−1861,1986;ヒトのインターロイキンIIの測定−ベネット,F.,ジアノッティ,J.,クラーク,S.C.及びターナー、K.J.免疫学における現在のプロトコール.J.E.コリガン編集.Vol 1 pp.6.15.1 John Wiley and Sons,Toronto.1991;マウスとヒトのインターロイキン9の測定−シアレッタA.,ジアノッティ,J.,クラーク,S.C.及びターナー,K.J.免疫学における現在のプロトコール.J.E.コリガンeds.Vol 1 pp − 6.13.1,John Wiley and Sons,Toronto.1991。
【0180】
T−細胞クローンの抗原反応検定(これは特に、増殖とサイトカイン生成を測定することによりAPC−T細胞の相互作用及びT細胞の直接効果に影響を与える蛋白質を同定する)は、下記に述べられたものを制限無く含む:免疫学における現在のプロトコール,編集:J.E.コリガン,A.M.クルイスビ−ク,D.H.マーグリース,E.M.シェバック,W.ストローバー、出版社 Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(第3章、マウスの白血球機能の体外 検定;第6章,サイトキンとそれらの細胞受容体;第7章,ヒトにおける免疫学の研究);ワインバーガーほか、Proc.Nad.Acad.Sci.USA 77:6091−6095,1980;ワインバーガーほか、Eur.J.Immun.11:405411,1981;高井ほか,J.Immunol.137:3494−3500,1986;高井ほか、J.,Immunol.140:508−512,1989。
【0181】
(5.10.4 幹細胞成長因子活性)
本発明のポリペプチドは、幹細胞成長因子活性を示し、始原生殖細胞、胎児幹細胞,造血幹細胞と/又は生殖細胞幹細胞を含むプルリポーテント(多能性)及びトチポーテント(全能性)幹細胞の増殖、分化と生存に関係しているかもしれない。本発明のポリペプチドを体内又は体外の幹細胞に投与すると、トチポーテント又はプルリポーテントな状態で細胞総数を維持したり拡大したりするかもしれない。それは、損傷した、又は病気にかかった組織の再構築、移植、生物薬剤の製造、バイオセンサーの開発に役立つかもしれない。大量のヒト細胞を製造する能力は次のような面で重要な応用範囲を持っている:ヒト蛋白質の生成。現在、パーキンソン氏病、アルツハイマー氏病、その他の神経退化の病気を治療するには、ヒト以外の供給源、ドナー、細胞移植などから取なければならない;移植用の組織、例えば骨髄、皮膚、軟骨、腱、骨、筋肉(心筋を含む),血管、網膜、神経細胞、胃腸の細胞;そして移植用の器官、例えば、腎臓、肝臓、膵臓(膵島細胞を含む)、心臓と肺臓。
【0182】
望ましい効果を達成するために、複数の異なった外因性の成長因子と/又はサイトカインを本発明のポリペプチドと共に投与することが考慮されており、成長因子には以下のものが含まれる:本文書で述べられている任意の成長因子、他の幹細胞維持因子、そして特に幹細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、Flt−3リガンド(Flt−3L)、インターロイキン,IL6に融合された組換え水溶性IL−6受容体、マクロファージ炎症蛋白I−アルファ(MIP−1−アルファ)、G−CSF、GM−CSF、トロンボポエチン(TPO)、血小板因子4(PF−4)、血小板から得られる成長因子(PDGF)、神経成長要素、そして繊維芽細胞基礎成長因子(bFGF)。
【0183】
トチポーテント幹細胞は、成熟細胞タイプのほぼ全てを発生させるので、培養液中でこれらの細胞を増殖すれば、大量の成熟細胞の生産を促進できる。幹細胞の培養技術は当業界で知られており、本発明のポリペプチドの投与は、他の成長因子そして/又はサイトキンと共に投与しても良いが、幹細胞の生存率と増殖を高めることが期待されている。これは、本発明のポリペプチドを培養基に直接投与することによって達成出来る。代替方法としては、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを形質移入された間質細胞が培養液又は体内の幹細胞用のフィーダー層として使える。フィーダー層の間質細胞は、胚体骨髄繊維芽細胞、骨髄間質細胞、胎児の肝臓細胞、又は培養された胚の繊維芽細胞を含む(参照:米国特許No.5,690,926)。
【0184】
幹細胞自体は、本発明のポリペプチドのオートクリン発現を誘発するために本発明のポリヌクレオチドを形質移入できる。これによって、分化されていないトチポーテント/プルリポーテント幹細胞株の生成が可能となり、それはそのままでも有益であるが、望みの成熟細胞タイプに分化することもできる。これらの安定した細胞株は分化されていないトチポーテント/プルリポーテントmRNAの源として、ポリメラーゼ連鎖反応実験用のcDNAのライブラリやテンプレートの作成に利用できる。これらの研究によって、幹細胞の増殖と/または維持を制御する幹細胞中の分化発現遺伝子の分離と同定が可能となる。トチポーテント幹細胞の増殖と維持は、多くの病理学的な症状の治療に役立つ。例えば、本発明のポリペプチドは、培養液中の幹細胞を操作して神経上皮細胞を作り、それを病気、自己免疫病、事故による傷害、又は遺伝障害 によって損傷を受けた細胞を補充したり、取替えたりするのに利用できる。
【0185】
本発明のポリペプチドは、神経細胞の増殖を誘発したり、神経と脳の細胞組織を再生したりする上で有用である。即ち、中枢及び末梢神経の疾病や神経障害、また、神経細胞や神経組織の退化、死滅、又は傷害を伴う機械的、外傷的障害の治療に使われる。更に、増殖した幹細胞は、遺伝子療法の為、そして移植後、置換組織の宿主拒否反応を減らす為、遺伝学的に変更することも出来る。
【0186】
本発明のポリペプチドの発現と幹細胞へのその影響も操作可能で、幹細胞の管理された分化を更に分化された細胞タイプにすることが出来る。分化されていない幹細胞個体群から特定の分化された細胞タイプの純粋個体群を取る広範囲に応用可能な方法は、選択可能なマーカーを作動する細胞タイプに特異的なプロモーターを使用することである。選択可能なマーカーは、望ましいタイプの細胞だけを生存させる。例えば、幹細胞は心筋細胞(ウオバスほか、分化,48:173−182,(1991);クルグほか、J.Clin.Invest、98(1):216−224,(1998))又は骨格筋肉細胞(ブラウダ−,L.W.組織工学理論 eds.ランザほか、Academic Press(1997))に分化するように誘発できる。代替方法としては、レチノイン酸のような分化因子と、内生的幹細胞因子の活性を抑制して分化を進める本発明ポリペプチドの拮抗剤の存在下に幹細胞を培養することによって、方向性を与えられた幹細胞の分化を達成出来る。
【0187】
幹細胞の体外培養体を使って、本発明のポリペプチドが幹細胞の成長因子活性を示すかどうかを判定することが出来る。幹細胞は様々な細胞源(造血幹細胞と胚体幹細胞を含む)から分離され、本発明ポリペプチドのみの存在下で、又は他の成長因子やサイトカインとの組み合わせによって、トンプソンほかによるProc.Natl.Acad.Sci,U.S.A.,92:7844−7848(1995)で述べられているように、フィーダー層で培養される。幹細胞の増殖を誘発する本発明のポリペプチドの能力は、例えばバーンスタイン他の「血液」77:2316−2321(1991)に述べられてあるように、半固体支持体上のコローニー形成によって決定される。
【0188】
(5.10.5 造血調節活性)
本発明のポリペプチドは造血調節に関連しており、従って、骨髄またはリンパ細胞障害の治療に関連するものである。コロニー形成細胞の支持、あるいは因子依存性細胞系の支持においてわずかでも生物活性があることから、造血調節への関与を示し、例えば、赤血球前駆細胞単独で、または他のサイトカインと共に成長や増殖を支持し、それによって、例えば、種々の貧血治療、または赤血球前駆体あるいは赤血球、またはそのいずれかの産生を刺激するための照射/化学療法と併用して使用するなどの利用性が示される、また、例えば、結果的に生じる骨髄抑制の予防または治療のための化学療法との併用において有用な顆粒球や単球/マクロファージ(すなわち、従来のCSF活性)などのような骨髄細胞の成長および増殖の支持において、巨核球の成長と増殖、したがって、血小板の成長・増殖を支持し、それによって、血小板減少症のような様々の血小板障害(疾患)に、一般に血小板輸血の代わりに、または補助として使用してその予防または治療を可能にする、および/あるいは、上記の造血細胞のいずれか、またはすべてに対して成熟を可能にする造血幹細胞の成長および増殖を支持し、したがって、種々の幹細胞障害(通常、再生不良性貧血および発作性夜間ヘモグロビン尿症をこれらに限らず含む移植によって通常治療される疾患など)、および、生体内か、または生体外(すなわち、骨髄移植、または末梢前駆細胞移植(相同または異種)と併せて)のいずれかにおいて、照射/化学療法後の幹細胞分画を正常細胞として、または遺伝子療法用遺伝子操作された細胞として再増殖させるなど、これらに限らず治療的利用性が示される。
【0189】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0190】
種々の造血細胞系の増殖および分化に適した検定は前記に引用した。
【0191】
胚性幹細胞分化(胚性分化造血に影響を及ぼすタンパク質を他から同定する)検定にはJohansson et al.Cellular Biology 15:141−151,1995;Keller et al.,Molecular and Cellular Biology 13:473−486,1993;McClanahan et al.,Blood 81:2903−2915,1993に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0192】
幹細胞の生存および分化のための検定(リンパ−造血を調節するタンパク質を他から同定する)はMethylcellulose colony forming assays,Freshney,M.G.In Culture of Hematopoietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.265−268,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Hirayama et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5907−5911,1992;Primitive hernatopoietic colony forming cells with high proliferative potential,McNiece,I.K.and Briddell,R.A.In Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney,et al.eds.Vol pp.23−39,Wiley−Liss,Inc New York,N.Y.1994;Neben et al.,Experimental Hematology 22:353−359,1994;Cobblestone area forming cell assay,Ploemacher,R.E.In Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney,et al.eds.Vol pp.1−21,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Long term bone marrow cultures in the presence of stromal cells,Spooncer,E.,Dexter,M.and Allen,T.In Culture of Hematoppietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.163−179,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994;Long term culture initiating cell assay,Sutherland,H.J.In Culture of Hematopoietic Cells.R.1.Freshney,et al.eds.Vol pp.139−162,Wiley−Liss,Inc.,New York,N.Y.1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0193】
(5.10.6 組織成長活性)
本発明のポリペプチドは、また骨、軟骨、腱、靭帯および/または神経組織の成長あるいは再生、および創傷治癒および組織修復や置換や火傷、切開や潰瘍の治癒にも関与する。
【0194】
骨が正常に形成されていない場合において、靭帯または骨あるいはその両者の成長を促す本発明のポリペプチドは、人および他の動物における骨折および靭帯損傷あるいは欠損症の治癒において使用できる。本発明のポリペプチド、抗体、結合パートナーまたは他のモジュレータの組成物は開放骨折同様皮下骨折の軽減において予防的に使用でき、また人工関節の固定をも改善する場合がある。骨形成物質によって誘発される新規の骨形成は、先天性、外傷性、または腫瘍学的切除性頭蓋顔面欠損の修復に役立つし、また美容整形外科においても有用である。
【0195】
本発明のポリペプチドは、また骨形成細胞の誘引、骨形成細胞の成長刺激、骨形成細胞前駆体の分化の誘導に関与する。骨または靭帯修復あるいはその両者の刺激によるか、または、炎症あるいは炎症過程により媒介される組織破壊過程(コラゲナーゼ活性化、破骨細胞活性化など)を阻止するによる、骨粗しょう症、変形性関節炎(骨関節炎)、骨変性疾患、または歯周病の治療もまた本発明の組成物の使用が可能な場合がある。
【0196】
本発明のポリペプチドが関与する組織再生活性のもう一つのカテゴリーは、腱/靭帯様組織形成である。腱/靭帯様組織または他の組織形成の誘発は、これらの組織が正常に形成されていない場合において、人および他の動物における腱あるいは靭帯の損傷、奇形および他の腱または靭帯欠損の治癒に使用できる。このような腱/靭帯様組織誘発性タンパク質を使用した製剤は、腱または靭帯の骨あるいは他の組織への固定改善や、腱または靭帯組織の欠損修復にも使用できるだけでなく、腱または靭帯組織の破損を防ぐための予防にも使用できる場合がある。本発明の組成物によって誘発されたデノボ腱/靭帯様組織形成は、先天性、外傷性、または他の原因の腱あるいは靭帯欠損の修復に寄与し、また、腱または靭帯の取付け、修復のための美容整形手術にも使用できる。本発明の組成物は腱または靭帯形成細胞の誘発、腱または靭帯形成細胞の成長刺激、腱または靭帯形成細胞前駆体の分化の誘導、あるいは、腱/靭帯細胞または組織修復に作用するよう生体内に戻す生体外前駆体の成長の誘発を行う環境を提供する。
【0197】
本発明の組成物は、また腱炎、手根管症候群および他の腱または靭帯欠損症の治療にも有用である。本組成物には、また適切な基質および/または技術上周知のキャリアとしての隔離作用物質も含まれていることがある。
【0198】
本発明の組成物はまた、神経細胞の増殖と神経や脳組織の再生、すなわち、中枢および末梢神経系疾患や神経障害の治療に有用であるだけでなく、また神経細胞や神経組織の変性、死または外傷を含む機械的、外傷性障害にも有用である。さらに厳密には、末梢神経損傷、末梢神経障害および限局性神経障害などのような末梢神経系疾患、また、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症およびシャイ・ドレーガー症候群などの中枢神経系疾患の治療にも使用することができる。さらに、本発明によって治療される状態には、脊髄障害、脳外傷のような機械的、外傷性疾患および脳卒中のような脳血管疾患が含まれる。
【0199】
本発明の組成物は、またプレッシャー潰瘍、血管性機能不全に関連する潰瘍、手術創傷および外傷性創傷などをこれらに限らず含む非治癒性創傷の閉合をより良く、より速く促進するのに役立つ場合がある。
【0200】
本発明の組成物はまた、臓器(例えば、膵臓、肝臓、腸、腎臓、皮膚、内皮を含む)、筋肉(平滑筋、骨格筋肉、心筋)および血管(血管内皮を含む)組織などのような他の組織の産生または再生、あるいは、このような組織を形成する細胞の増殖の促進にも関与する。望ましい効果の一部は正常組織の再生を可能する線維性瘢痕の抑制または変調による。本発明のポリペプチドはまた、血管原性作用をも示す場合がある。
【0201】
本発明の組成物は、また腸保護、または肺や肝臓線維症の治療、種々の組織の再灌流損傷および組織的サイトカイン損傷から生じた状態にも有用である。
【0202】
本発明の組成物はまた、前駆体組織や前駆体細胞からの、前記した組織の分化を促進または阻害するために、または前記の組織の成長阻害にも有用である。
【0203】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0204】
組織産生活性検定にはInternational Patent Publication No.WO95/16035(bone,cartilage,tendon);International Patent Publication No.WO95/05846(nerve,neuronal);International Patent Publication No.WO91107491(skin,endothelium)に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0205】
創傷治癒活性検定にはWinter,Epidermal Wound Healing,pp.71−112(Maibach,H.I.and Rovee,D.T.,eds.),Year Book Medical Publishers,Inc.,Chicago,as modified by Eaglstein and Mertz,J.Invest.Dermatol 71:382−84(1978)に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0206】
(5.10.7 免疫機能刺激または抑制活性)
本発明のポリペプチドはまた、ここに記載の検定による活性をこれに限らず含む免疫刺激または免疫抑制活性を示す。本発明のポリヌクレオチドはこのような活性を示すポリペプチドをコードできる。タンパク質は、種々の免疫不全や免疫疾患(重症複合型免疫不全症(SCID)など)の治療、例えば、Tおよび/またはBリンパ球の成長や増殖の調節(上方、または下方)と同様、NK細胞や他の細胞集団の細胞溶解活性への作用においても有用である。これらの免疫不全は細菌あるいは真菌感染によるだけでなく、遺伝的またはウイルス(例えば、HIV)、あるいは自己免疫疾患によって引き起こされる場合がある。さらに厳密には、HINT、肝炎ウイルス、ヘルペス・ウイルス、放線菌、Leishmania spp(リーシュマニア属)、マラリアspp.による感染症およびカンジダ症などのような種々の真菌感染症を含み、ウイルス、細菌、真菌または他の感染症によって生じる感染疾患は、本発明のタンパク質を用いて治療できる場合がある。もちろん、この点で、本発明のタンパク質は、免疫系への強化が一般に望ましい場合に、つまり、癌の治療においてもまた有用である。
【0207】
本発明のタンパク質を用いて治療される自己免疫疾患には、例えば、結合組織病、多発性硬化病、全身性エリテマトーデス、関節リューマチ、自己免疫肺性炎症、ギラン・バレー症候群、自己免疫甲状腺炎、インシュリン依存性真性糖尿病、重症筋無力症、移植片対宿主疾患および、自己免疫炎症性眼疾患が含まれる。このような本発明のタンパク質(または抗体を含むその拮抗物質)は、喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸器系障害のようなアレルギー反応および状態(例えば、アナフィラキシー、血清病、薬物反応、食物アレルギー、昆虫毒液アレルギー、肥満細胞症、アレルギー性鼻炎、過敏性肺炎、蕁麻疹、血管性浮腫、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、多型性紅疹、スティーヴンス・ジョンソン症候群、アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、性病性角結膜炎、巨大乳頭状結膜炎、接触アレルギー)の治療にも有用である。他の免疫抑制が望まれる(例えば、臓器移植を含む)状態もまた、本発明のタンパク質(またはその拮抗物質)を用いて治療することができる場合がある。ポリペプチドまたはその拮抗物質のアレルギー反応に対する治療効果は、累積性接触増加テスト(Lastbom et al.,Toxicology 125:59−66,1998)、皮膚突き傷テスト(Hoffmann et al.,Allergy 54:446−54,1999)、モルモット皮膚感作テスト(Vohr et al.,Arch.Toxocol.73:501−9)、およびマウス局部リンパ節試験assay(Kimber et al.,J.Toxicol.Environ.Health 53:563−79)などの生体内動物モデルによって評価できる。
【0208】
本発明のタンパク質を用いる場合、また、多くの方法で免疫反応を変調することも可能である。下方調節は、すでに進行中の免疫反応を抑制するか、または阻止するやり方で行われるか、あるいは、免疫反応の誘導の防御に関与する。活性T細胞の機能はT細胞反応の抑制によるか、またはT細胞における特異的トレランス(寛容)の誘導によって、あるいはその両方によって抑制される。T細胞反応の免疫抑制は一般に活性、非抗原特異的過程であり、これはT細胞の抑制物質への持続的暴露を必要とする。T細胞での非反応性または無反応の誘導に関連するトレランスは、それが一般に抗原特異的であり、寛容化物質への暴露が中止された後にも持続するという点で免疫抑制と区別される。操作的には、トレランスは、寛容化物質の無い状態における特定抗原への再暴露時にT細胞反応が起こらないことによって示される。
【0209】
下方調節または1つ以上の抗原機能(Bリンパ球抗原機能(例えば、B7のように)をこれに限らず含む)の防御、例えば、活性T細胞による高度レベルのリンホカイン合成の防御は、組織、皮膚および臓器移植の状態において、また、移植片対宿主疾患(GVHD)において有用である。例えば、T細胞機能を阻止することは、組織移植における組織破壊を減少する結果となるはずである。一般に、組織移植において移植の拒絶反応は、T細胞がそれを異物として認識することによって開始され、その後に移植片を破壊する免疫反応が続く。本発明の治療的組成物の投与は、T細胞のような免疫細胞によるサイトカインの合成を妨げ、したがって、免疫抑制剤として作用する。さらに、同時刺激がないことによって、T細胞が無反応化(アネルギー化)されることになり、これによって、被験者におけるトレランスが誘導される場合もある。Bリンパ球抗原阻止試薬による長期トレランスの誘導によって、これらの阻止剤の反復投与の必要性がなくなる。
【0210】
被験者において十分な免疫抑制またはトレランスを得るには、Bリンパ球抗原の組合せの機能を阻止する必要がある場合もある。
【0211】
臓器移植拒絶反応またはGVHDの予防における特定の治療的組成物の効力は、ヒトにおける有効性についての予測である動物モデルを用いて評価することができる。使用できる適切なシステムの例として、ラットにおける同種心臓移植片や、マウスにおける異種間膵島細胞移植片があり、これらのどちらもが、Lenschow et al.,Science 257:789−792 (1992) およびTurka et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:11102−11105(1992)に述べられているように生体内CTLA4Ig 融合タンパク質の免疫抑制効果を検査するために使われている。さらに、GVHD(移植片対宿主疾患)のマウスモデル(Paul ed.,Fundamental Immunology,Raven Press,New York,1989,pp.846−847参照)はこの疾患の進展時の本発明の治療的組成物の効果を測定するために使うことができる。
【0212】
抗原機能の阻止は、また自己免疫疾患の治療に対して治療的に有用である。多くの自己免疫疾患は、自己組織に反応的なT細胞の不適切な活性化の結果、および、その疾患の病態に関与するサイトカインや自己抗体の産生を促進した結果である。自己反応性T細胞の活性化の防御は病状を減少するか、または除去する。T細胞の刺激を阻止する試薬の投与は、T細胞活性化の抑制、およびこの疾患の過程に関与する自己抗体またはT細胞由来サイトカインの産出の防御に使うことができる。さらに、ブロッキング試薬の効力によって、この疾患からの長期的緩解につながる自己反応性T細胞の抗原特異的トレランスが誘導される場合がある。自己免疫疾患の予防または緩解におけるブロッキング試薬の効力は、よく特徴化された、ヒト自己免疫疾患の動物モデルを用いて測定できる。この例には、マウス実験的自己免疫脳炎、MRL/lpr/lprマウスまたはNZBハイブリッド・マウスにおける全身性エリテマトーデス、マウス自己免疫性膠原関節炎、NODマウスおよびBBラットにおける真性糖尿病、マウス実験的重症筋無力症(Paul ed.,Fundamental Immunology,Raven Press,New York,1989,pp.840−856参照)がある。
【0213】
免疫反応を上げる手段としての抗原機能の上方調節(例、Bリンパ球抗原機能)は、また治療においても有用である。免疫反応の上方調節は既存の免疫反応を亢進させる形式か、または初期の免疫反応を誘発する形式で行われる。例えば、免疫反応の亢進は、インフルエンザ、感冒、および脳炎などのような全身性ウイルス疾患を含むウイルス感染の場合に有用な場合がある。
【0214】
あるいは、感染した患者の抗ウイルス性免疫反応は、患者からT細胞を除去し、本発明のペプチドを発現するか、あるいは本発明の水溶性ペプチドの刺激性形態のものと共に、ウイルス抗原パルス化APCで、試験管内でT細胞を同時刺激し、そして、試験管内活性T細胞を患者に再び導入することによって増強されることがある。
【0215】
抗ウイルス免疫反応を亢進させる他の方法は、患者から感染細胞を分離し、それらに、細胞がその表面にタンパク質のすべて、または一部を発現するように、ここに記載する本発明のタンパク質をコードする核酸で形質移入し、そして、形質移入された細胞を患者に再び導入することであろう。ここで、感染細胞は同時刺激シグナルを送ることができ、それによって生体内でT細胞を活性化できるであろう。
【0216】
本発明のポリペプチドは形質移入された腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫反応を誘導するために必要な刺激シグナルを提供する。さらに、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子を持たない、または、十分な量のMHCクラスIまたはMHCクラスII分子を再発現できない腫瘍細胞は、MHCクラスIアルファ鎖タンパク質とβ2ミクログロブリンタンパク質、あるいは、MHCクラスIIアルファ鎖タンパク質とMHCクラスIIベータ鎖タンパク質のすべて、または一部(例えば、細胞質内ドメイン切断部分)のすべて、または一部をコードする核酸で形質移入して、それによって、細胞表面にMHCクラスIまたはMHCクラスIIタンパク質を発現させることができる。Bリンパ球抗原(例えば、B7−1、B7−2、B7−3)の活性を有するペプチドと共に、適切なクラスIまたはクラスIIMHCを発現させることによって、形質移入された腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫反応が誘導される。随意に、インバリアント(不変異)鎖のようなMHCクラスII結合タンパク質の発現を阻止するアンチセンス作成物をコードする遺伝子は、Bリンパ球抗原の活性を有するペプチドをコードするDNAで同時形質移入して、腫瘍関連抗原の提示を促進し腫瘍特異的免疫を誘導することができる。このようにして、ヒト被験者におけるT細胞媒介免疫反応の誘導は、被験者における腫瘍特異的トレランスを十分克服できる。
【0217】
本発明のタンパク質の活性は、他にも方法はあるが、次の方法によって測定される。
【0218】
適切な胸腺または脾細胞の細胞毒性検定には、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 3,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;Chapter 7,Immunologic studies in Humans);Herrmann et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2488−2492,1981;Herrmann et al.,1.Immunol.128:1968−1974,1982;Handa et al.,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takai et al.,1.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai et al.,J.Immunol.140:508−512,1988;Bowman et al,,J.Virology 61:1992−1998;Bertagnolli et al.,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Brown et al.,J.Immunol.153:3079−3092,1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0219】
T細胞依存性免疫グロブリン反応およびアイソタイプスイッチング(T細胞依存性抗体反応を変調し、Thl/Th2プロフィールに影響するタンパク質を他から同定する)の検定にはMaliszewski,J.Immunol.144:3028−3033,1990;およびAssays for B cell function:In vitro antibody production,Mond,J.J.and Brunswick,M.In Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan eds.Vol 1 pp.3.8.1−3.8.16,John Wiley and Sons,Toronto.1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0220】
混合リンパ球反応(MLR)検定(主にTh1とCTL反応を生じるタンパク質を他から同定する)にはCurrent Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 3,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;Chapter 7,Immunologic studies in Humans);Takai et al.,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai et al.,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolli et al.,J.Immunol.149:3778−3783,1992に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0221】
樹状突起細胞依存性検定(未処置のT細胞を活性化する樹状突起細胞によって発現されるタンパク質を他から同定する)にはGuery et al.,J.Imimmol.134:536−544,1995;Inaba et al.,Journal of Experimental Medicine 173:549−559,1991;Macatonia et al.,Journal of Immunology 154:5071−5079,1995;Porgado et al.,Journal of Experimental Medicine 182:255−260,1995;Nair et al.,Journal of Virology 67:4062−4069,1993;Huang et al.,Science 264:961−965,1994;Macatonia et al.,Journal of Experimental Medicine 169:1255−1264,1989;Bhardwaj et al.,Journal of Clinical Investigation 94:797−807,1994;and Inaba et al.,Journal of Experimental Medicine 172:631−640,1990に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0222】
リンパ球生存/アポトーシスの検定(スーパー抗原誘導後のアポトーシスを防ぐタンパク質およびリンパ球ホメオスタシスを調節するタンパク質を他から同定する)にはDarzynkiewicz et al.,Cytometry 13:795−808,1992;Gorczyca et al.,Leukemia 7:659−670,1993;Gorczyca et al.,Cancer Research 53:1945−1951,1993;Itoh et al.,Cell 66:233−243,1991;Zacharchuk,Journal of Immunology 145:4037−4045,1990;Zamai et al.,Cytometry 14:891−897,1993;Gorczyca et al.,International Journal of Oncology 1:639−648,1992に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0223】
T細胞コミットメントおよび発達の初期段階に影響するタンパク質の検定には:Antica et al.,Blood 84:111−117,1994;Fine et al.,Cellular Immunology 155:111−122,1994;Galy et al.,Blood 85:2770−2778,1995;Toki et al.,Proc.Nat.Acad Sci.USA 88:7548−7551,1991に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0224】
(5.10.8 アクチビン/インヒビン活性)
本発明のポリペプチドは、またアクチビンまたはインヒビン関連活性をも示す。本発明のポリヌクリオチドはこのような特性を示すポリペプチドをコードする。インヒビンは卵胞刺激ホルモン(FSH)の遊離を抑制する能力によって特徴づけられており、一方、アクチビンは卵胞刺激ホルモン(FSH)の遊離を刺激する能力によって特徴づけられている。このように、本発明のポリペプチドは、単独で、またはインヒビン系統群の一メンバーとのヘテロダイマー(ヘテロ二量体)として、雌哺乳類の受精能を減少させ、雄哺乳類の精子形成を減少させるインヒビンの機能に基づいた避妊薬として有用である。十分量の他のインヒビンを投与することによって、これらの哺乳類における不妊を誘発できる。あるいは、本発明のポリペプチドは、ホモダイマーとして、または他のタンパク質のインヒビン群サブユニットを持つヘテロダイマーとして、脳下垂体前葉細胞からのFSH(卵胞刺激ホルモン)遊離の刺激におけるアクチビン分子の機能に基づいた、受精能誘発治療剤として有用である。例えば、米国特許番号.4,798,885を参照されたし。本発明のポリペプチドは、また雌牛、羊および豚に限らず、このような家畜類の生涯生殖能を増加するように、性的に未熟な哺乳類の受精能の開始を前進させるためにも有用である。
【0225】
本発明のポリペプチドの活性は、他にも方法はあるが、次の方法によって測定できる。
【0226】
アクチビン/インヒビン活性の検定には、Vale et al.,Endocrinology 91:562−572,1972;Ling et al.,Nature 321:779−782,1986;Vale et al.,Nature 321:776−779,1986;Mason et al.,Nature 318:659−663,1985;Forage et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3091−3095,1986に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0227】
(5.10.9 走化性/化学運動性活性)
本発明のポリペプチドは例えば、単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、肥満細胞、好酸球、上皮細胞または/および内皮細胞を含む哺乳類細胞の走化性または化学運動性活性に関与する。本発明のポリヌクレオチドは、そのような属性を示すポリペプチドをコードすることができる。走化性および化学運動性レセプターの活性は、作用の望ましい部位へ望ましい細胞集団を動員するか、誘引するために使うことができる。走化性/化学運動性組成物(例えば、タンパク質、抗体、結合パートナー、または発明のモジュレータは局所性感染症の治療においてだけでなく、創傷や他の組織の外傷の治療においても特定の利益を与える。例えば、リンパ球、単球または好中球の、腫瘍または感染部位への誘引によって、腫瘍または感染物質に対する免疫反応が改善される場合がある。
【0228】
タンパク質または、ペプチドは特定の細胞集団に対して、そのような細胞集団の方向または運動を直接または間接的に刺激できる場合、走化性活性を有する。好ましくは、タンパク質またはペプチドは細胞の有向運動を直接刺激する機能を有する。特定のタンパク質が細胞集団に対する走化性活性を有するかどうかは、そのタンパク質またはペプチドに周知の細胞走化性検定を行うことによって容易に判定できる。
【0229】
本発明の治療的組成物は以下において用いることができる。
【0230】
走化性活性の検定(走化性を誘導する、または防ぐタンパク質を同定する)は、蛋白質が1つの細胞集団の他の細胞集団への付着を誘導する能力だけでなく、タンパク質が膜内で細胞の遊走を誘導する能力をも検定する試験法からなる。
【0231】
移動および付着の適切な検定にはCurrent Protocols in Immunology,Ed by 1.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Marguiles,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 6.12,Measurement of alpha and beta Chemokines 6.12.1−6.12.28;Taub et al.J.Clin.Invest.95:1370−1376,1995;Lind et al.APMIS 103:140−146,1995;Muller et al Eur.J.Immunol.25:1744−1748;Gruber et al.J.of Immunol.152:5860−5867,1994;Johnston et al.J.of Immunol.153:1762−1768,1994に記載の検定があり、またこれらに限らない。
【0232】
(5.10.10 走化性および血栓溶解活性)
本発明のポリペプチドは、また止血、血栓溶解あるいは血栓症にも関与する場合がある。本発明のポリヌクレオチドは、そのような属性を示すポリペプチドをコードできる。組成物は種々の凝固障害(血友病のような遺伝的疾患を含む)の治療において、または外傷、手術あるいは他の原因から生じた創傷の治療において凝固や他の止血を促進させるために有用である。本発明の組成物は、また血栓の溶解または形成抑制およびそれから生じる状態(例えば、心臓や中枢神経血管の梗塞(例えば、脳卒中)のような)の治療や予防にも有用である。
【0233】
本発明の治療的組成物は以下において使用できる。
【0234】
止血や血栓活性の検定には、Linet et al.,J.Clin.Pharmacol.26:131−140,1986;Burdick et al.,Thrombosis Res.45:413−419,1987;Humphrey et al.,Fibrinolysis 5:71−79(1991);Schaub,Prostaglandins 35:467−474,1988に記載の検定があり、またこれに限らない。
【0235】
(5.10.11 癌の診断および治療)
本発明のポリペプチドは癌細胞の産生、増殖または転移にも関与する。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在または量の検出は、1種以上の癌の診断および/または予知に有用である。例えば、本発明のポリヌクレオチド/ポリペプチドの存在または発現の増加によって、癌の遺伝性危険、前癌状態または進行性悪性腫瘍が示される場合がある。逆に、遺伝子における欠損、またはこのポリペプチドの不在は、癌状態に関連する場合がある。また、癌または癌の素因に関連する単一ヌクレオチド多型の同定は、診断あるいは予測にも役立つ場合がある。
【0236】
癌の治療では、腫瘍細胞増殖の抑制、血管新生(腫瘍増殖の補助に必要な新血管の成長)の抑制および/または腫瘍細胞の運動性や侵襲性を減らして転移を妨げることによって腫瘍の退行を促進する。本発明の治療的組成物は成人および小児腫瘍において有効であり、これには、充実性腫瘍/悪性腫瘍、局所進行性腫瘍、ヒト軟部組織肉腫、リンパ性転移などの転移性癌、多発性骨髄腫、急性・慢性白血病、リンパ腫などの血球悪性腫瘍が含まれ、また、口癌、喉頭癌、甲状腺癌を含む頭部および頸部の癌、小細胞癌、非小細胞癌を含む肺癌、小細胞癌および管性癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸を含む消化管癌、および結腸直腸異常増殖に合併するポリープ、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌や前立腺癌を含む泌尿器癌、卵巣癌、子宮(子宮内膜を含む)癌、卵胞のsolid腫瘍を含む女性生殖器官の悪性腫瘍、腎細胞癌を含む腎臓癌、内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、アストロサイト(星状細胞)脳腫瘍、神経膠腫、中神経系における転移腫瘍細胞侵襲を含む脳腫瘍、骨腫を含む骨癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、血管外皮細胞腫およびKarposi肉腫が含まれる。
【0237】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのモジュレータ(本発明のポリペプチドの生物活性のインヒビターと刺激物質を含む)は癌の治療のために投与される場合がある。治療的組成物は、単独に、または手術、化学療法、放射線療法、温熱療法およびレーザー療法のような癌の補助的療法と併せて治療的効果用量で投与することができ、有利な効果、例えば、腫瘍のサイズを減少する、腫瘍の成長速度を低下する、転移の阻害、または癌を必ずしも根絶させないで全体的な臨床状態を改善するなどの効果を提供する場合がある。
【0238】
本組成物は抗癌カクテルの一部として治療的有効量を投与することができる。抗癌カクテルは、本発明のポリペプチドまたはモジュレータと薬剤学的に許容される送達用キャリアに一種以上の抗癌剤を加えた配合剤である。癌の治療として抗癌カクテルを使用することは、日常的になっている。本発明のポリペプチドまたはモジュレータと組み合わせて治療として使用できる技術上周知の抗癌剤には、アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブチル、シスプラチン、(cis−DDP)、シクロホスファミド、塩酸シタラビン(シトシン・アラビノシド)、ダカルバジン、ダクチノマイシンン、ダウノマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、エストラムスチン燐酸ナトリウム、エトポシデ、(V16−213)、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル(5−Fu)、フルタミデ、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロン・アルファ−2s、インターフェロン・アルファ−2b、酢酸リュープロライド(LHRH−遊離因子類似体)、ロムスチン、塩酸メクロレタミン(ナイトロジェン・マスタード)、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、(MTX)、マイトマイシン、塩酸ミトキサントロン、オクトレオチド、プリカマイシン、塩酸プロカルバジン、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェンク、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、アムサクリン、アザシチジン、ヘキサメチルメラニン、インターロイキン−2、ミトグアゾン、ペントスタチン、セムスチン、テニポシデ、およびビンデシン硫酸がある。
【0239】
さらに、本発明の治療的組成物は、癌の予防的治療用に使うことができる。個人が癌になりやすい、技術上周知の遺伝的状態および/または環境状態(例えば、発癌物質への暴露)がある。これらの環境において、癌になる危険を少なくするために、治療的有効量の本発明のポリペプチドでこれらの個人を治療することは、有利な場合がある。
【0240】
試験管内モデルを用いて、可能性のある癌の治療としての本発明のポリペプチドの有効量を測定することができる。これらの試験管内モデルには、培養腫瘍細胞増殖の検定、軟寒天における培養腫瘍細胞の増殖(Preshney,(1987) Culture of Animal Cells:A manual of Basic Technique,Wily−Liss,New York,NY Ch 18 and Ch 21参照)、Giovanella et al.,J.Natl.Can.Inst,52:921−30(1974)に記載のヌードマウスにおける腫瘍システム、Pilkington et al.,Anticancer Res.,17:4107−9(1997)に記載のBoyden Chamber 検定における腫瘍細胞の移動性と侵襲性の可能性、および、Ribatta et al.,Intl,J.Dev.Biol.,40:1189−97(1999)やLi et al.,Clin.Exp.Metastasis,17:423−9(1999)に各々記載の鶏絨毛尿膜の血管新生の誘導、または血管内皮細胞遊走の誘導のような血管形成の検定がある。適切な腫瘍細胞系は例えば、American Type Tissue Culture Collection カタログから入手できる。
【0241】
(5.10.12 レセプター/リガンドの活性)
本発明のポリペプチドはまた、レセプター/リガンド相互作用のレセプター、レセプターリガンド、またはインヒビターあるいは、アゴニスト(作動薬)としての活性を示す。本発明のポリヌクレオチドはこのような特性を示すポリペプチドをコードする。このようなレセプターおよびリガンドの例には、サイトカイン・レセプターとそのリガンド、レセプター・キナーゼとそのリガンド、レセプター・ホスファターゼとそのリガンド、細胞間相互作用に関与するレセプターとそのリガンド(セレクチン、インテグリンおよびそれらのリガンドのような)細胞接着分子をこれに限らず含む)および抗原表示、抗原認識および細胞性、体液性免疫反応の進展に関与するレセプター/リガンド対があり、またこれらに限らない。レセプターとリガンドは、また関連するレセプター/リガンド相互作用の可能性があるペプチドまたは小分子インヒビターのスクリーニングにも役立つ場合がある。本発明のタンパク質(レセプターの断片とリガンドをこれらに限らず含む)はそれ自体レセプター/リガンド相互作用のインヒビターとして有用である。
【0242】
本発明のポリペプチドの活性は、他に方法もあるが、以下の方法によって測定できる。
【0243】
レセプターーリガンド活性の適切な検定には、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(Chapter 7.28,Measurement of Cellular Adhesion under static conditions 7.28.1−7.28.22),Takai et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6864−6868,1987:Bierer et al.,J.Exp.Med.168:1145−1156,1988;Rosenstein et al.,J.Exp.Med.169:149−160 1989;Stoltenborg et al.,J.Immunol.Methods 175:59−68,1994;Stitt et al.,Cell 80:661−670,1995に記載の検定があり、また検定はこれらに限らない。
【0244】
例として、本発明のポリペプチドは、1つまたは複数のリガンドのレセプターとして使われ、それによってそのリガンドの生物活性が伝達される。リガンドは結合検定、アフィニティ・クロマトグラフィ、ダイハイブリッド・スクリーニング検定、BIAコア検定、ゲル・オーバレイ検定または技術上周知の他の方法によって同定できる。
【0245】
薬物またはタンパク質がアゴニスト(作動薬)か、またはアンタゴニスト(拮抗薬)、あるいは部分的アゴニストか、または部分的アンタゴニストかの特性を決める試験には、競合的リガンドとしての他のタンパク質を使う必要がある。本発明のポリペプチドまたはそのリガンドは、従来の方法によって放射性同位元素、比色定量分子または毒素分子に結合されて標識される(「Guide to Protein Purification」 Murray P.Deutscher(ed)Methods in Enzymology Vol.182(1990)AcademicPress,Inc.San Diego)。放射性同位元素の例としては、トリチウムや炭素−14があるが、これらに限定されない。比色定量分子の例には、フルオレサミンのような蛍光分子、またはローダミンや他の比色定量分子があり、またこれらに限定されない。毒素の例には、リシンがあり、またこれに限定されない。
【0246】
(5.10.13 薬物スクリーニング)
本発明は様々な薬物スクリーニング技法のいずれかにおいて、新しいポリペプチドまたはその結合断片を用いて、化合物をスクリーニングするのに役立つ。このような試験に用いるポリペプチドまたは断片(フラグメント)は、溶液中に遊離しているか、または固体支持体に付着しているか、あるいは、細胞表面に生じるか、または細胞内にある。薬物スクリーニングの1つの方法では、真核または原核宿主細胞を利用し、これらはポリペプチドまたはその断片を発現する組み換え核酸で安定に形質転換される。薬物は結合蛋白競合測定法で、このような形質転換細胞に対してスクリーニングされる。生存能力のある、または固定化された形のこのような細胞は、標準結合検定に使うことができる。例えば、本発明のポリペプチドまたは断片とテストされた物質との間の複合物形成を測定するか、または新しいポリペプチドと技術上周知の適切な細胞系との間の複合形成における減少を調べることができる
結合能力、または本発明のポリペプチドの活性を変調する(すなわち、増加または減少させる)能力をスクリーニングできる検査化合物のソースとして、(1)無機および有機化合物ライブラリー、(2)天然物ライブラリーおよび(3)ランダムまたは模倣ペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機分子からなるコンビナトリアル・ライブラリーがある。
【0247】
ケミカルライブラリーは多くの市販源から容易に合成または購入でき、また、これには既知の化合物の構造的類似体、または天然物スクリーニングを介して「ヒット」または「リード」と同定されている化合物が含まれる。
【0248】
天然物ライブラリーのソースは、微生物(細菌や真菌を含む)、動物、植物または他の植生または海洋生物であり、また、スクリーニング用混合ライブラリーは、(1)土壌、植物または海洋微生物からのブロスの発酵および抽出、または(2)微生物自体からの抽出によって作成できる。天然物ライブラリーには、ポリケチド、非リボソーム・ペプチドおよびその(非天然性発生)変異体がある。総説は、Science 282:63−68(1998)を参照されたし。
【0249】
コンビナトリアル・ライブラリーは、多数のペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機化合物からなり、従来の自動合成法、PCR、クローニングまたは特許化された合成方法によって容易に作成することができる。ペプチドとオリゴヌクレオチド・コンビナトリアル・ライブラリーが特に興味深い。なお、この他に興味深いライブラリーには、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣、
多平行型合成収集、リコンビナトリアル、およびポリペプチド・ライブラリーがある。コンビナトリアル・ケミストリーとそれから作成されたライブラリーの総説はMyers,Curr.Opin.Biotechnol.8:701−707(1997)を参照されたし。ペプチド模倣ライブラリーの総説および例は、Al−Obeidi et al.,Mol.Biotechnol,9(3):205−23(1998);Hruby et al.,Curr Opin Chem Boil,1(1):114−19(1997):Dorner et al.,Bioorg Med Chem,4(5):709−15(1996)(アルキル化ジペプチド)を参照されたし。
【0250】
ここに記載する種々のライブラリーを使用してモジュレータを同定することによって、本発明のポリペプチドに結合する「ヒット」の能力を至適化するための「ヒット」(または「リード」)候補の修飾(変更)が可能になる。次に、結合能検定で同定された分子について、生体内組織培養または技術上周知の動物モデルにおいてアンタゴニストまたはアゴニスト活性の測定を行う。要するに、分子を多数の細胞培養または動物に滴定して、次に細胞/動物の死亡または細胞/動物の生存延長についてテストする。
【0251】
このように、結合分子は毒素、例えば、リシンまたはコレラとの複合体を作るか、または放射性同位元素のような細胞に毒性のある他の化合物との複合体を作る。次に、毒素結合分子複合体は、結合分子の本発明のポリペプチドに対する特異性によって腫瘍または他の細胞を標的にする。あるいは、結合分子は標的化および映像目的のためのイメージング(画像)剤と複合体を作る。
【0252】
(5.10.14 レセプター活性の検定)
本発明はまた、ポリペプチド、例えばリガンドまたはレセプターの特異的結合を検出する方法をも提供する。この技術は、以前は不明であった、本発明のレセプター・ポリペプチドの結合パートナーの同定に、特に役立つ多くの検定を提供する。例えば、哺乳類または細菌の細胞、あるいはダイハイブリッド・スクリーニング検定を用いた発現クローニングは、結合パートナーをコードするポリヌクレオチドの同定に使うことができる。他の例として、適切に固定化された本発明のポリペプチドを用いたアフィニティ・クロマトグラフィーは、本発明のポリペプチドを認識し、結合するポリペプチドを分離するために使用することができる。本発明のポリペプチドの生物活性を変調する(つまり、増加または減少する)化合物、特に小分子の同定に用いられる多くの異なったライブラリーがある。本発明のレセプターポリペプチド用リガンドは、外来性リガンドまたは、リガンドのカクテルを本発明のレセプターの発現以外は遺伝学的に同じの2種の細胞集団に加えることによって同定できる。1種の細胞集団は本発明のレセプターを発現するが、他の細胞集団は発現しない。加えられたリガンドに対する2種の細胞集団の応答を比較する。あるいは、発現ライブラリーは、細胞内で本発明のポリペプチドと同時発現させることができ、可能性のあるリガンドを同定するためのオートクライン反応を検定することができる。
【0253】
さらに、他の例として、BIAコア 検定、ゲル・オーバーレイまたは技術的に周知の他の方法を用いて結合パートナーのポリペプチドを同定できるが、これには、(1)有機および無機化学ライブラリー、(2)天然物ライブラリーおよび(3)ランダム・ペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機分子のようなコンビナトリアル・ライブラリーが含まれる。
【0254】
下流細胞内情報伝達分子の、本発明のポリペプチドの情報伝達カスケードにおける役割は決定できる。例えば、本発明のポリペプチドの細胞質内ドメインが、リガンドが同定されているタンパク質の細胞外部分に融合したキメラタンパク質は、宿主細胞内で生成される。次に、この細胞をキメラタンパク質の細胞外部分に特異的なリガンドと一緒に培養し、それによってキメラ・レセプターを活性化する。次に、細胞内情報伝達に関与する既知の下流タンパク質の予測される修飾、すなわち、燐酸化を測定できる。また、技術上周知の他の方法も、また、レセプター活性に関与する情報伝達分子の同定に使用できる。
【0255】
(5.10.15 抗炎症活性)
本発明の組成物は、また抗炎症活性をも示す。抗炎症活性は、炎症反応に関与する細胞に刺激を与えるか、細胞間相互作用(例えば、細胞癒着のような)を抑制または促進するか、炎症過程に関与する細胞の走化性を抑制または促進するか、細胞の血管外遊走を抑制または促進するか、あるいは、炎症をより直接的に抑制または亢進する他の因子の産出を刺激または抑制することによって得られる。このような活性を持つ組成物は、感染(敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応症候群(SIRS))、虚血再灌流傷害、菌体内毒素致死、関節炎、補体媒介超急性拒絶、腎炎、サイトカインまたはケモカイン誘導性肺傷害、炎症性腸疾患、クローン病、あるいはTNFやIL−1のようなサイトカインの産出過剰によると思われる慢性、急性炎症状態の治療に、これらに限らず用いることができる。本発明の組成物は、また抗原性物質または抗原性材料に対するアナフィラキシーまたは過敏症の治療にも有用である。本発明の組成物は敗血症、急性膵炎、エンドトキシン・ショック、サイトカイン性ショック、慢性関節リューマチ、慢性炎症性リューマチ、真性糖尿病タイプ1による膵臓細胞障害、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、肺疾患に合併する炎症、他の自己免疫疾患または炎症性疾患のような状態の予防または治療に、急性、慢性骨髄性白血病の抗増殖性剤として、または子宮内感染症の前段階における早期分娩の予防において使用することができ、また使用はこれらに限らない。
【0256】
(5.10.16 白血病)
白血病および関連疾患は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの機能を促進または阻害する治療剤を投与することによって治療または予防することができる場合がある。このような白血病および関連疾患には、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球(顆粒球)性白血病、および慢性リンパ性白血病(これらの疾患の総説については、Fishman et al.,1985,Medicine,2d Ed.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia参照)が含まれ、またこれらに限らない。
【0257】
(5.10.17 神経系疾患)
本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの活性を変調する化合物の介入の効力をテストできる細胞タイプに関連し、またしたがって、治療的有用性の指標を見ながら治療できる神経系疾患には、神経系損傷および神経系疾患、あるいは、アクソンの連絡切断、神経細胞の退縮、変性、または脱髄を生じる神経系障害がこれらに限らず含まれる。本発明にしたがって患者(ヒトおよびヒト以外の哺乳動物を含む)において治療される神経系病変には、以下の、中枢(脊髄、脳を含む)または末梢神経系のどちらかの病変が含まれ、またこれらに限らない。
【0258】
(i) 物理的傷害または手術、例えば、神経系の一部を切断する病変、または圧迫損傷によって生じた病変を含む外傷性病変
(ii) 脳梗塞または脳虚血、あるいは脊髄の梗塞または虚血などの神経系の一部における酸素欠乏による神経細胞損傷または死亡にいたる虚血性病変
(iii)、例えば、膿瘍による感染の結果、またはヒト免疫不全症ウイルス、帯状疱疹、単純疱疹ウイルスによる感染と合併して、または、ライム病、結核、梅毒と合併して神経系の一部が感染の結果、破壊されるか、または損傷を受ける感染性病変
(iv) パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病または筋萎縮性側索硬化症と合併した変性に限らず、これらを含む変性過程の結果として、神経系の一部が破壊または損傷する変性(退縮)病変
(v) 栄養障害または代謝障害によって神経系の一部が破壊または損傷する、栄養上の疾患、または栄養障害に関連する病変で、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ウエルニッケ病、タバコ・アルコール性弱視、マルキャファーヴァ・ビニャミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール性小脳変性が含まれ、また、これらに限らない。
【0259】
(vi) 全身性疾患に合併する神経性病変で、糖尿病(糖尿病性神経障害、顔面麻痺)、全身性エリトマトーデス、癌または肉腫症が含まれ、また、これらに限らない。
【0260】
(vii) アルコール、鉛または特定の神経毒を含む毒性物質によって生じた病変
(viii)脱髄疾患によって神経系の一部が破壊または損傷する脱髄病変で、多発性硬化症、ヒト免疫不全症ウイルス関連脊髄症、横断性脊髄症、種々の病因論、進行性多病巣性白質脳障害、および中央脳橋ミエリン溶解が含まれるが、これらに限らない。
【0261】
本発明にしたがった有用な神経系疾患用治療剤は、神経細胞の生存または分化の促進についての生物活性を試験することによって選択できる。例えば、制限としてではなく、次の作用のいずれかを誘発する治療剤は本発明によると有用である。
【0262】
(i) 培養液において神経細胞の生存時間を増加した。
【0263】
(ii) 培養液または生体内において神経細胞の出芽を増加した。
【0264】
(iii) 培養液または生体内において、神経細胞関連分子、例えば、運動ニューロンに関連するコリンアセチルトランスフェラーゼまたはアセチルコリンエステラーゼの産生が増加した。
【0265】
(iv) 生体内神経細胞機能障害の症状を減少した。
【0266】
このような効果は技術上周知のいずれの方法によっても測定できる。好ましくは、実施例に限らず、神経細胞の生存率増加は、Arakawa et al.(1990,J.Neurosci.10:3507−3515)に示される方法によって測定でき、神経細胞の出芽の増加はPestronk et al.(1980,Exp.Neurol.70:65−82)またはBrown et al.(1981,Ann.Rev.Neurosci.4:17−42)に示される方法によって検出でき、神経細胞関連分子の産生増加は測定される分子によって、生物検定法、酵素学的検定、結合抗体、ノーザンブロット検定などで測定できる。また、運動ニューロン機能不全は、運動ニューロン障害、例えば、脱力感、運動ニューロン伝達速度または機能的能力障害などの物理的症状の評価によって測定できる。
【0267】
特定の具体例において、本発明にしたがって治療される運動ニューロン障害には、梗塞、感染症、毒素への暴露、外傷、外科的損傷、変性疾患または運動ニューロンおよび神経系の他の構成成分に影響する悪性腫瘍のような疾患、および筋萎縮性側索硬化症のような神経細胞に選択的に影響する疾患、ならびに、進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺、原発性側索硬化症、乳児性、若年性筋萎縮、幼児期の進行性球麻痺(ファチオ・ロンデ症候群)、灰白髄炎およびポリオ後症候群、および遺伝性運動感覚ニューロパシー(シャルコー・マリー・トゥース病)などに限らず含まれる。
【0268】
(5.10.18 その他の活性)
本発明のポリペプチドは、またさらに、次のような活性または作用のうちの1つ以上を示す。すなわち、細菌、ウイルス、真菌および他の寄生虫をこれらに限らず含む感染性物質の成長、感染または機能を抑制または抑止する、身長、体重、髪の色、眼の色、皮膚、脂肪の細い部分に対する割合または他の組織色素沈着、または臓器あるいは身体部分のサイズまたは形(例えば、乳房の増大または縮小、または骨の形態および形状における変化のような)をこれらに限らず含む身体的特徴に作用する(抑制または亢進)、男性または女性の受精能に作用する、食餌脂肪、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、補助因子、他の栄養的因子または成分の代謝、異化、同化、処理、利用、保存、または排出に影響する、食欲、性欲、ストレス、認知(認知障害を含む)、抑鬱(鬱病性障害を含む)および狂暴症をこれらに限らず含む行動性特徴に作用する、鎮痛効果または他の痛み減少作用を与える、造血系以外の系における胚幹細胞の分化および成長を促進する、ホルモン、内分泌の活性化、酵素の場合、酵素の欠乏症を修正し、欠乏関連性疾患を治療する、過剰増殖疾患(例えば、乾癬のような)の治療、免疫グロブリン様活性(例えば、抗原または補体を結合する能力のような)、および、ワクチン成分において抗原として作用して、そのようなタンパク質、または、そのようなタンパク質と交差反応する他の物質あるいは実体に対して免疫反応を促進する。
【0269】
(5.10.19 多型の同定)
多型性を証明することによって、ヒト被験者におけるこのような多型の同定が可能になり、この遺伝薬理学的情報を診断や治療に使用できる。このような多型性は、例えば、種々の疾患状態(炎症または免疫反応に関与する疾患のような)に対する特異な素因または感受性あるいは、薬物投与に対する特異な反応に関連し、また、この遺伝情報を用いて、予防的または治療的処置を適切に合わせることができる。
【0270】
例えば、炎症または自己免疫疾患の素因に関連する多型が存在する場合は、多型の存在を同定することによって、ヒトにおけるこの状態を診断することができる。
【0271】
多型は、技術上周知の様々の方法において同定することができ、すべての場合、一般に患者からのサンプルを得て、このサンプルからDNAを分析し、随意に、DNAの分離または増幅を行って、DNAにおける多型の存在を同定する。例えば、PCRを用いて適切なゲノムDNAの断片を増幅し、次にそれを配列決定する。あるいは、DNAはアレル(対立遺伝子)特異的オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション(一塩基ミスマッチの検出が可能な状態の下で適切なオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする)にかけるか、または単一ヌクレオチド伸長検定(多型の位置のすぐ隣にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが1つ以上の標識ヌクレオチドで伸長している)にかける。さらに、従来の制限酵素断片長多型分析(多型の存在または不在によってゲノムDNAに異なった消化をさせる制限酵素を用いて)を行う場合もある。本発明のヌクレオチド配列のアレイは、多型性の検出に使うことができる。このアレイは本発明のヌクレオチド配列を検出するために本発明のヌクレオチド配列の修飾したものを使っても良い。代用物において、本発明のヌクレオチド配列のどれか1つをこのアレイ上で置き換えて、これらの配列の変更を検出できる。
【0272】
あるいは、アミノ酸配列の変更で生じた多型はまた、タンパク質のアミノ酸配列の対応する変更を検出することによって、例えば、変異配列に特異的な抗体によっても検出できる。
【0273】
(5.10.20 関節炎と炎症)
慢性関節リューマチに対する発明組成物の免疫抑制効果は、実験用の動物モデル・システムで決定される。実験用モデル・システムはネズミを使った補助薬誘発関節炎である。その実験計画はHoloshitz等(1983,Science,219:56)又は、B.Waksman(1963,Int.Arch.Alllergy Appl.Immunol.,23:129)により記述されている。この病気は、完全フロインド・アジュバンド(CFA)の中に懸濁させた死んだマイコバクテリア結核菌を一回注射(ふつう皮内注射)することにより引き起こすことができる。注射の方法は色々であるが、ネズミの場合、補助薬の混合液を尻尾の付け根に注射しても良い。ポリペプチドは約1−5 mg/kgの量をリン酸緩衝液(PBS)に入れ投与する。対照標準液はPBSだけを使う。
【0274】
試験組成物の効果をテストする方法は、CFAに入っている死んだマイコバクテリア結核菌を皮内注射し、その後すぐ試験組成物を投与、その後1日おきに24日までそれを継続する。マイコバクテリアCFAを注射後14,15,18,20,22,そして24日目に、上記J.Holoshitzにより記述されているような関節炎の総合スコアが得られる。データ分析の結果、試験化合物は関節の腫れに劇的な効果を及ぼすことが、関節炎スコアの減少により判明するはずである。
【0275】
(5.11 治療方法)
発明組成物(ポリペプチド断片、類似体、変異体、抗体、その他結合剤やアンチセンス・ポリヌクレオチドのような修飾物質なども含む)は様々な治療方法へ応用できる。治療面での応用は以下のような例を含む。
【0276】
(5.11.1 例)
本発明の一応用例はCEA様ポリペプチド又はその他の本発明組成物を有効量、病気又は疾患に罹った個人に投与する方法である。この場合、本発明のペプチドをコントロールすることにより、有効量の投与を調整することが可能である。投与方法は特に重要ではないが、非経口投与がどちらかと言うと好ましい。模範的な投与方法は静脈内ボーラスである。CEA様ポリペプチド又はその他の本発明組成物の投与量は、ふつう処方医により決定される。投与量は、年令、体重、患者の健康状態や反応により異なるはずである。ふつう薬量当たりのポリペプチド量は、患者の体重1kg当たり0.01μg乃至100mg、最も好ましい量は0.1μg乃至10mgである。CEA様本発明ポリペプチドは、非経口用として、製薬学的に承認されている非経口担体とともに注射可能な形になっている。そういう担体は当業界では良く知られているものであり、例えば水、塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、ヒトの血清アルブミン少量を含む溶液などが相当する。担体には、ポリペプチドの等浸透性と安定性を維持するための添加物や他の活性成分が僅かに含まれる場合もある。そういう溶液の準備は当業界の技術の範疇に属する。
【0277】
(5.12 製薬学的製剤及び投与方法)
蛋白質又は本発明の他の組成物(供給源の如何に拘わらず組み換え及び非組み換え供給源、抗体及び本発明ポリペプチドの他の結合剤を含む)を必要とする患者に、そのままの形で、又は様々な疾患を治療・回復させるのに必要な薬量を、適切な担体又は媒体と混合した製薬学的組成物として投与できる。そういう混合物には、蛋白質又は他の活性成分や担体の他に、希釈液、増量剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶剤、その他医学で良く知られている材料を含むこともできる。「製薬学的に容認できる」というのは、活性成分の生物学的効果には干渉しない非毒性の物質という意味である。担体の特徴は投与方法に依存する。本発明の製薬学的組成物の中には、サイトカイン、リンフォカイン、又は造血因子、例えばM−CSF,GM−CSF,TNF,IL−1,IL−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−11,IL−12,IL−13,IL−14,IL−15,IFN,TNF0,TNF−1,TNF−2,G−CSF,Meg−CSF等、トロンボポエチン、幹細胞因子、エリスロポエチン等も含むことができる。更に、本発明の蛋白質を病気又は疾患の治療に有効な他の物質と組み合わせることも可能である。そういう物質の中には、本文で述べられているサイトカインを初め、表皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF−α及びTGF−β)、インシュリン様成長因子(IGF)など色々な成長因子が含まれる。
【0278】
更に製薬学的組成物の中には、本蛋白質の活動を活性化するか治療面での活動又は使用を補足する他の作用薬を含むことも可能である。こういう付加因子および/又は作用薬は、本発明の蛋白質か他の活性成分と相乗効果を引き出す目的で、又は副作用を最小化する目的で製薬学的組成物の中に含むことができる。反対に、凝血因子、サイトカイン、リンフォカイン、他の造血因子、血栓崩壊、抗血栓因子、又は抗炎薬(例えば、IL−1Ra、IL−1Hy1、IL−1Hy2、抗TNF、コルチコステロイド、免疫抑制剤)の副作用を最小限に抑える目的で、本発明の蛋白質や他の活性成分を特定の凝血因子、サイトカイン、リンフォカイン、他の造血因子、血栓崩壊、抗血栓因子、又は抗炎薬の中に含むことも可能である。
【0279】
本発明の蛋白質は多量体(例えばヘテロダイマーかホモダイマー)で活性かも知れないし、あるいはそれ自身又は他の蛋白質との複合体として活性かも知れない。その結果、本発明の製薬学的組成物は、多量体か複合体の形で本発明の蛋白質を含むようになるかも知れない。
【0280】
本発明の製薬学的組成物(第1蛋白質を含む)の中に含む代わりに、第2蛋白質又は治療薬を第1蛋白質と一緒に投与することもできる(例えば同時に、あるいは組み合わせる物質の治療濃度が治療部位で実現されるのを条件として異なる時に)。インスタント施用化合物の調剤及び投与技術は、ペンシルバニア州イーストンのMack Publishing Co.出版「レミントン製薬科学」を参考にしてもよい。治療学的に有効な投与量とは、症状の回復、例えば治療、治癒、予防、関連医療条件の回復、又は治療、治癒、予防、そういう条件の回復率の増大をもたらすに十分な化合物の量を意味する。個別の活性成分が単独で投与される場合には、治療学的に有効な投与量とはその活性成分のみに言及する。組み合わせて使用する場合は、治療学的に有効な投与量とは、複合投与が連続であろうと同時であろうと、治療効果をもたらす活性成分の総合量を意味する。
【0281】
本発明の治療方法又は使用方法の実践において、本発明の蛋白質又は他の活性成分は、治療学的に有効な量だけ、治療条件を有している哺乳動物に投与される。本発明の蛋白質又は他の活性成分は、本発明の方法を単独で投与することもできるし、他の治療方法、例えばサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子を使った治療方法と組み合わせて投与することも可能である。サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子のうち1つ又は複数と組み合わせて投与する場合は、本発明の蛋白質又は他の活性成分は、サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊因子、又は抗血栓因子と同時に投与しても、連続的に投与しても良い。連続的に投与する場合は、本発明の蛋白質又は他の活性成分をサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊因子、又は抗血栓因子とどのような順序で組み合わせて投与するかについては、診療医師がその適切性を決定する。
【0282】
(5.12.1 投与の経路)
適切な投与方法は、例えば、経口、直腸、経粘膜、腸内投与、内皮注射(筋肉内、皮下、髄内注射等)、くも膜下、直接心室内注射、静脈注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、眼内注射等が含まれる。製薬学的組成物に使用される本発明の蛋白質又は他の活性成分の投与、又は本発明の方法の実践は、通常の色々なやり方で実行できる。例えば、経口摂取、吸入、局所又は皮膚施用、皮下、腹腔内、腸管外注射等である。患者への投与はどちらかと言うと静脈注射が好ましい。
【0283】
全身ではなく局所に化合物を投与するのも可能である。例えば、関節炎を患っている関節又は繊維組織に直接注射することなどであり、その場合、デポー剤か持続放出性のものが多い。緑内障手術の合併症として生じがちな瘢痕を防ぐため、化合物を局所的に、例えば目薬として投与することも可能である。更に薬物標的運搬システムを使って投与することもできる。例えば、関節炎を起こしている部位の組織又は繊維組織などを標的として、特定の抗体でコーティングしたリポゾーム等を使用する方法である。リポゾームは、症状を患っている細胞組織が選択的に標的としたり吸収したりする。
【0284】
本発明のポリペプチドは、要求されている作用部位に有効量を運搬する方法であれば、どのような方法でも使用できる。適切な投与方法及び有効量の決定は、当業界の技術の範疇に含まれる。怪我の治療の場合同様、治療化合物を局部に直接投与しても良い。本発明ポリペプチドの適切な投与量の範囲は、適切な動物モデルを使った投与量又はそういうモデルを使った類似の研究結果から推定できる。その後、最大治療効果を上げるため、投与量は臨床医が必要に応じて調整すれば良い。
【0285】
(5.12.2 組成物/製剤)
従って本発明に使われる製薬学的組成物は、媒体や補助剤で構成される生理学的に有効な担体を1つ乃至それ以上使った普通の方法で製剤できる。媒体や補助剤は活性化合物を製薬学的に利用可能な形に成形するのを助ける。こういう製薬学的組成物は、良く知られている方法で製造できる。例えば、混合、溶解、顆粒化、ドラジェー(糖衣)、微粒子化、乳化、カプセル化、エントラッピング又は凍結乾燥などの普通の方法である。適切な製法は投与方法により異なる。治療学的に有効な量を経口で投与する場合、本発明の蛋白質又は活性成分は、錠剤、カプセル、粉末、溶液、又はエリキシル剤の形で投与される。錠剤で投与する場合、本発明の製薬学的組成物には、更にゼラチンや補助剤のような固形の担体も含まれるかも知れない。
【0286】
錠剤、カプセル、及び粉末には、本発明の蛋白質又は活性成分が約5%乃至95%含まれる。理想的には、本発明の蛋白質又は活性成分が約25%乃至95%含まれている方が好ましい。液体で投与する場合は、水、石油、動物性又は植物性の油、例えば落花生油、ミネラル油、大豆油、胡麻油、あるいは合成油のような液状担体を追加しても良い。液状の製薬学的組成物の中には、更に生理塩水、ブドウ糖又は他のサッカリド溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなグリコール類を含めても良い。液体の場合は、本発明の蛋白質又は活性成分が重量比で約0.5乃至90%含まれる。理想的には、本発明の蛋白質又は活性成分が重量比で約1乃至50%含まれるのが好ましい。
【0287】
本発明の蛋白質又は活性成分の治療学的有効量を静脈、皮膚、又は皮下注射により投与する場合は、本発明の蛋白質又は活性成分は、発熱物質を含まず、非経口的に容認可能な液体の形で投与される。非経口的に容認可能なそういう蛋白質又は他の活性成分溶液をpH、等浸透圧性、安定性等へ配慮して準備するのは、当業界の技術の範疇に属する。静脈、皮膚、又は皮下注射のために好ましい製薬学的組成物には、本発明の蛋白質又は活性成分の他に、等浸透圧性の担体、例えば塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、ブドウ糖注射、ブドウ糖と塩化ナトリウム注射、乳酸化したリンゲル注射、あるいは当業界の技術で良く知られている他の担体も含めるべきである。本発明の製薬学的組成物には、安定化剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、その他当業界の技術で良く知られている添加物を含めても良い。注射の場合、本発明の作用薬は液体の形で製剤しても良い。できればハンクス液、リンゲル液、生理塩水のような生理学的に合った緩衝剤が好ましい。経粘膜投与の場合は、特定の浸透剤が使用される。そういう浸透剤は、当業界で一般的に良く知られているものである。
【0288】
経口投与の場合、組成物は、当業界で良く知られ製薬学的に容認されている担体と活性化合物とを組み合わせることにより、容易に製剤できる。そういう担体は、本発明の化合物を錠剤、丸薬、ドラジー(糖衣)、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等に製剤するのを可能にし、患者が経口摂取できるようにする。経口使用のための製薬学的準備は、必要であれば適切な補助剤を添加して錠剤かドラジーの中核を得た後、固形の担体を加え、混合体を粉末にし、その粒状の混合体を加工することにより得られる。特に適切な担体は砂糖(ラクトース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール等も含む)やセルロース(例えばトウモロコシの澱粉、米の澱粉、じゃが芋の澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ナトリウム・カルボキシメチル・セルロース、および/又はポリビニルピロリドン(PVP))等の増量剤である。
【0289】
必要なら、橋架け結合のポリビニル・ピロリドン、寒天、アルギン酸、その塩例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊薬(ママ)を加えても良い。ドラジーの中核には適切なコーティングが提供される。この目的のために濃縮砂糖液を使っても良い。その中にはアラビアゴム、タルク、ポリビニル・ピロリドン、カルボポル・ゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー液、及び適切な有機溶媒又は混合溶媒を含めても良い。活性化合物の含有量の組み合わせを強調するため又は内容を同定するため、錠剤やドラジー・コーティングに染料や色素を加えるのも可能である。
【0290】
経口使用製品の製薬学的準備には、ゼラチン製のプッシュ・フィット・カプセルやゼラチン、及びグリコールやソルビトール等可塑剤製の柔いシールド・カプセル等が使われる。プッシュ・フィット・カプセルには、活性成分をラクトースのような増量剤、澱粉のような結合剤、および/又はタルク、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、必要ならば安定剤と混合して入れることもできる。ソフト・カプセルの場合は、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解するか懸濁させるかしても良い。更に安定剤を加えても良い。経口投与の場合の製剤は、その目的に適した量でなければならない。口内投与の場合は、通常の方法で成形される錠剤やトローチ剤を使用できる。
【0291】
吸入投与の場合は、本発明の組成物を加圧パック又は噴霧器からスプレーすることにより投与する。その場合、適切な推薬、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、その他適当なガスを使用する。加圧噴霧の場合、投与量の単位は、一定量を送るバルブを使用することにより決定できる。吸入器に使用されるゼラチン等のカプセルや薬包は、ラクトースや澱粉のような適切な粉末ベースと化合物を粉末状態で混合して成形しても良い。混合物は巨丸剤注射や連続注入のような非経口投与用に製剤しても良い。注射用の製剤は、アンプルや多薬量容器のような単位薬量形式に保存剤を添加しても良い。混合物は、油又は液体の担体の中に懸濁、溶解、乳化させる形を取ることもできるし、懸濁剤、安定化剤、分散剤等の製剤用の物質を含んでも良い。
【0292】
非経口投与用の製薬学的組成物には、活性化合物が水溶性の形で含まれる液状のものもある。更に活性化合物の懸濁液を、適切な油液注射用の懸濁液として準備することもできる。適切な脂質親和性の溶媒又は担体には、胡麻油のような脂肪油、オレイン酸エチルのような合成脂肪酸エステル、トリグリセリド、リポゾーム等も含まれる。液状注射懸濁液の中には、懸濁液の粘性を高める物質、例えばナトリウム・カルボキシルメチル・セルロース、ソルビトール、デキストラン等を含んでも良い。必要ならば、懸濁液の中に安定剤や組成物の溶解度を高める物質を含め、高濃度の溶液を準備することも可能である。代替案として、使用前に活性成分を粉末状にしておき、消毒し発熱物質を含まない水等の適切な担体と組み合わせる方法もある。
【0293】
組成物は、通常の座薬ベース、例えばココアバターや他のグリセリドを含む座薬や固定浣腸のような直腸用の組成物にすることも可能である。上述の製剤法の他に、デポー剤用の組成物にすることも可能である。そういう長期持続用の方法は、インプラント(例えば内皮や筋肉内)や筋肉内注射により実現できる。従って例えば、適切なポリマー剤や疎水性の作用薬(例えば適当な油に乳化させた作用薬)、イオン交換樹脂、僅かに溶解する塩などの誘導体を使って組成物を製剤できる。
【0294】
本発明の疎水性組成物用の製薬学的担体は、ベンジルアルコール、無極性の表面活性剤、水混和性の有機ポリマー、及び水様性相で構成される共通溶媒システムである。共通溶媒システムはVDP共通溶媒システムでもあり得る。VDPは、3%w/vのベンジルアルコール溶液、8%w/vの無極性表面活性剤ポリソルベート80、そして65%w/vのポリエチレングリコール300を無水アルコールの中に入れたものである。VDP共通溶媒システム(VDP:5W)は、VDPを5%のブドウ糖水溶液で1:1に希釈したものである。このVDP共通溶媒システムには疎水性の組成物が良く溶け、全身投与の場合に毒性が少ない。当然VDP共通溶媒システムの割合は色々であり、しかも溶解性や毒性の性質を壊すことがない。更に共通溶媒の構成成分も多種多様である。更に共通溶媒例えばポリソルベート80の代わりに他の低毒無極性の表面活性剤を使うこともできるし、ポリエチレングリコールのフラクション・サイズにも様々な可能性がある。ポリエチレングリコールの代わりに他の生物適合性のあるポリマー、例えばポリビニル・ピロリドンを使うこともできる。ブドウ糖の代わりに他の糖類やポリサッカリドを使っても良い。代替案として、疎水性の製薬学的組成物には別の運搬システムを使っても良い。疎水性の薬としては、リポゾームや乳化剤が運搬用担体又は媒体として良く知られている。
【0295】
ジメチルスルフォキシドのようなある有機溶媒も、毒性は少し高いが使用可能である。更に、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透性基質のような持続放出システムを使って化合物を送達しても良い。色々なタイプの持続放出物質が確立されており、医学界では良く知られている。持続放出カプセルは、その化学物質の性質次第ではあるが、組成物を2−3週間から長い時には100日以上をかけて放出する。治療薬の科学的性質及び生物学的安定性次第ではあるが、蛋白質や他の活性成分の安定に必要だと思われる方法が追加される場合もあり得る。
【0296】
製薬学的組成物には、適切な固体又はゲル状の相から成る担体で構成されている場合もある。そういう担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールのようなポリマー等が挙げられる。本発明の活性成分の多くを、製薬学的に親和性のある反対イオン塩として提供することも可能である。そういう製薬学的に容認可能な塩は、生物学的な有効性及び自由酸の性質を保持する塩であり、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、二塩基アミノ酸、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、トリエタノールアミン等の無機又は有機の塩基と反応させることにより得られる。
【0297】
本発明の製薬学的組成物は、本発明の蛋白質又は他の活性成分、及び蛋白質又はペプチド抗原の複合体の形でも可能である。蛋白質および/又はペプチド抗原は、Bリンフォサイト及びTリンフォサイトに刺激信号を送る。Bリンフォサイトは、その表面にあるイミュノグロブリン受容体を通して抗原に対し反応する。Tリンフォサイトは、MHC蛋白により抗原が出された後T細胞受容体(TCR)を通して抗原に反応する。MHC及び構造的に関連のある蛋白質(クラスI及びクラスII MHC遺伝子により宿主細胞上にコード化されている場合も含めて)は、ペプチド抗原をTリンフォサイトに提供する働きをする。抗原成分も、精製されたMHCペプチド複合体単独で、又はT細胞に直接信号を送る共同刺激分子とともに供給しても良い。代替案として、表面イミュノグロブリンやB細胞上の他の分子に結合可能な抗体、及びTCRやT細胞上の他の分子に結合可能な抗体を、本発明の製薬学的組成物と組み合わせることも可能である。
【0298】
本発明の製薬学的組成物は、リポゾームの形でも可能である。その場合、リポゾームの中で、本発明の蛋白質を、製薬学的に容認可能な他の担体とは別に、脂質のような両親媒性の物質と組み合わせる。脂質はミセル(コロイド分散状態)、不溶性の単一層、又は水溶液の中に層状相として凝集した形で存在している。
【0299】
リポゾーム形成に必要な脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、サルファチド、リソレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等である。こういうリポゾームの製法は、公表されている当業界の技術の範疇に含まれている。例えば、米国特許番号4,235,871;4,501,728;4,837,028;4,737,323等で、これらは全て参考文献として本文書に含まれている。
【0300】
本発明の製薬学的組成物との関連で用いられる本発明の蛋白質又は他の活性成分の量は、治療される条件の性質及びその重症度により決定される。最終的には、各患者の治療に当たって、診察する医者が本発明の蛋白質又は他の活性成分の量を決定する。診察医は最初、本発明の蛋白質又は他の活性成分を少量投与し、患者の反応を観察する。治療学上最高の効果が得られるまで、本発明の蛋白質又は他の活性成分の量を増やしていき、その点に達したらもはや薬量を増やすことはしない。本発明の方法を実践するのに使われる色々な製薬学的組成物は、本発明の蛋白質又は他の活性成分を体重1kg当たり約0.01μgから約100mg(できれば約0.1μgから約10mg、更に理想的には約0.1μgから約1mg)含んでいるべきであると考えられている。骨、軟骨、腱、又は靭帯の退化に有効である本発明の組成物を用いた治療方法には、局部的、全身的、又はインプラントや装置の形で局所的に使用する方法などがある。投与に当たり、本発明の治療方法は、発熱物資を含まない生理学的に容認できる形で行われる。更にこの組成物は、カプセル化するか色々な方法で注射することにより、骨、軟骨、又は損傷した細胞組織へ送るのが好ましいかも知れない。怪我の癒しや細胞組織の修復には局部投与が適切かも知れない。本発明の蛋白質又は他の活性成分以外の治療に有効な物質(それも上記組成物の中に含めることが可能)を本発明の組成物の代わりに、又はその追加として、同時又は連続的に使用しても良い。骨および/又は軟骨の形成を促すには、蛋白質又は他の活性成分を含む組成物を骨や軟骨の損傷部位に送ることができ、骨および/又は軟骨の発達に必要な構造を持ちしかも、再び体に吸収される基質が、その組成物の中に含まれているのが望ましい。そういう基質は、現在他の移植手術で使われている材料で作っても良い。
【0301】
基質材料の選択は生物適合性、生物分解性、物理学的性質、外見、及び相互作用的性質に基づいている。混合物の適用内容により調剤方法が決定される。組成物の基質になる可能性のあるのは生物分解性のあるもので、合成硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ無水物である。この他に可能性のある材料は、生物分解性があり生物学的に明確な例えば骨や皮膚のコラーゲンなどである。他の基質は純粋の蛋白質か細胞外基質成分で構成されている。他に可能性のある基質は、生物分解性がなく化学合成された例えば焼結されたヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミン酸塩、又はその他のセラミックである。基質は上記物質を複数組み合わせたもので構成するのも可能である。例えば、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト又はコラーゲンとリン酸三カルシウムなどである。生体セラミックは組成を変えることもできる。例えばカルシウム・アルミン酸塩・リン酸塩で、加工して穴の大きさ、粒子の大きさ及び形、又は生物分解性を変えることも可能である。現在好まれているのは、直径150乃至800ミクロンの多孔性粒子からなる乳酸とグリコール酸50:50(分子量)の共重合体である。ある場合には、蛋白質組成物が基質から解離するのを防ぐのに、カルボキシルメチル・セルロースや自家凝血のような金属イオン封鎖剤を利用しても良い。
【0302】
金属イオン封鎖剤として好まれるのは、アルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースも含む)のようなセルロース材料である。この中には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等も含まれる。その中でも最も好まれるのがカルボキシメチルセルロース(CMC)の陽イオン塩である。この他にも金属イオン封鎖剤として好まれるのは、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン酸化物、カルボキシビニル・ポリマー、及びポリビニル・アルコールである。金属イオン封鎖剤の最適量は、全製剤重量当たり0.5−20重量%、理想的には1−10重量%で、これは蛋白質がポリマー基質から脱着するのを防ぐと同時に、組成物取り扱いの簡便化に必要な量を表しており、しかも始原細胞が基質に侵入するのを妨げる程の量ではないので、蛋白質は始原細胞の骨形成活動を助けることができる。更に、本発明の蛋白質又は他の活性成分を、骨および/又は軟骨の欠陥、怪我、又は問題のある細胞組織の治療に役立つ他の物質と組み合わせても良い。こういう物質には、色々な成長因子が含まれる。例えば表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF−α及びTGF−β)、インシュリン様成長因子(IGF)などである。
【0303】
治療用組成物は現在獣医学の面でも価値が見出されている。本発明の蛋白質又は他の活性成分を用いた治療は、ヒト以外にも、家畜やサラブレッドの馬に特に使用できる。細胞組織の再生に蛋白質を含む製薬学上の組成物を用いるに当たり、その投与量は、診断する医師が蛋白質の活動に影響を及ぼす色々な要因を考慮した上で決定する。例えば、形成すべき細胞組織の重量、損傷部分、損傷を受けた細胞組織の状態、怪我の大きさ、損傷を受けた細胞組織の種類(例えば骨)、患者の年令、性別、食事、感染度合い、投与時間、他の臨床的要因等である。投与量は再生に使われる基質の種類によっても異なるし、製薬学的組成物の中に含まれる他の蛋白質の有無によっても違ってくる。例えば、最終組成物にIGF I(インシュリン様成長因子I)のような他の既知の成長因子を加える場合も、投与量に影響が及ぶかも知れない。細胞組織や骨の成長および/又は修復をX線、組織形態計測決定法、テトラサイクリン標識法のような方法で定期的に評価することにより、回復度合いをチェックできる。
【0304】
本発明のポリヌクレオチドは遺伝子療法に用いることもできる。そういうポリヌクレオチドは哺乳類の形質発現を調べるため、生体内又は生体外で細胞に導入できる。本発明のポリヌクレオチドは、核酸を細胞や生物体に導入する方法として知られている他の方法を用いても投与できる(例えばウイルス媒介や裸のDNA等)。細胞は、繁殖させるため又は望ましい効果や活動を得るため、本発明の蛋白質を含む試験管内で培養することも可能である。このようにして処理された細胞は、治療目的のため生体内に導入することができる。
【0305】
(5.12.3 有効薬量)
本発明の使用に適した製薬学的組成物は、目的達成のために活性成分を有効量含む混合物である。より具体的に述べると、治療学的な有効量とは、治療を受ける対象の現在の症状の進行が抑えられる、あるいは緩和されるのに必要な量を意味する。有効量の決定は当業界の技術の能力の範疇に属するものであり、本文書で詳細に説明してきたので尚更そうである。本発明の方法に用いられる組成物の薬効量は、まず生体外での分析によって推定できる。例えば動物モデルを使って薬量を処方し、循環濃度の範囲を決め、次にそれを使ってより精確にヒトの使用量を決定する。
【0306】
例えば動物モデルを使って薬量を処方し、循環濃度の範囲を決めるが、その中に細胞培養で決定されるIC50(つまり蛋白質の生物学的活動を阻害する最大値の半分に相当する試験化合物の濃度)も含まれる。こういう情報は、ヒトの使用量をより精確に決定するのに利用できる。
【0307】
薬効量とは、症状の回復又は患者の生存期間の延長を実現する化合物の量を意味する。そういう化合物の毒性及び治療学的効果は、細胞培養や実験動物を用いた標準の製薬学的手法により決定できる。例えば、LD50(個体数が50%死ぬ薬量)やED50(個体数の50%に治療学的に効果のある薬量)等の決定である。毒性と治療学的効果の薬量比は治療指数と言い、LD50とED50の比で表される。治療指数の高い化合物がより好ましい化合物である。この細胞培養分析と動物研究から得られるデータを使って、ヒトの使用量の範囲を処方することができる。そういう化合物の薬量はED50を含む循環濃度内に納まり、毒性が全くあるいはほとんどないのが好ましい。薬量は薬の形態又は投与方法に基づいてその範囲内で変化する。正確な処方、投与方法、及び薬量は、患者の状態を見ながら、医者が決定するものである。例えば、Fingl等、1975年、「治療学の薬理学的基礎」の第1章第1頁を参照のこと。薬量及び期間は、血漿の活動レベルが半分であるような状態を提供するように個別に調整できる。そういう状態は、好ましい効果を維持するのに、あるいは最低有効濃度(MEC)を維持するのに十分である。MECは化合物の種類により異なるが、生体外データに基づいて推測可能である。MECを達成するのに必要な薬量は個人の特性や投与方法により異なるが、HPLC分析や生物検定を用いて血漿濃度を決定するのは可能である。
【0308】
投薬の間隔もMECの値を使って決定できる。組成物は、時間の10−90%、血漿値をMEC以上に維持する方法を使って投与されるべきである。できれば30−90%、最も好ましいのは50−90%である。局所投与又は選択的摂取の場合は、薬の有効局所濃度は血漿濃度とは関係ないかも知れない。
【0309】
本発明のポリペプチド又は他の組成物の薬量は、大人と子供では異なるが、毎日体重1kg当たり約0.01μg乃至100mgの範囲になるであろう。より好ましいのは、毎日体重1kg当たり約0.1μg乃至25mgの範囲である。投薬は1日1回、又は等量であればその間隔を短くしても長くしても良い。勿論、投与量は、治療される対象の年令、体重、症状の度合い、投与方法、及び処方医の判断によって異なってくる。
(5.12.4 包装)
組成物はパック又はディスペンサーを使って投与することも可能である。その中に活性成分を含む1単位又はそれ以上の単位の薬を入れることができる。パックは例えば金属製やブリスター・パックのようなプラスチック・フォイルでも良い。パックやディスペンサーには投与方法に関する手引書を添付しても良い。本発明の組成物を含む組成物を製薬学的に適合性のある担体に入れて処方し、それを適切な容器に入れ、特定の治療方法を示したラベルを貼ることも可能である。
【0310】
(5.13 抗体)
本発明の中には、蛋白質又は本発明の蛋白質の断片への抗体も含まれている。本文書で使われている「抗体」という語は、イミュノグロブリン分子及びイミュノグロブリン(Ig)分子のうち免疫学的に活性な部分、つまり抗原と特異的に結合する(免疫反応を生じる)抗原結合部位を有している分子を意味している。そういう抗体の中には、ポリクロナル、単クロナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、Fab表現ライブラリー等が含まれる。一般的にヒトの抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDのいずれかのクラスに関係している。これらの分子は、それに含まれる重鎖の性質により互いに異なっている。あるクラスの中にはIgG1、IgG2のようにサブクラスを持つのもある。ヒトの場合は、軽鎖はκ鎖やλ鎖である場合もある。本文書で抗体と言う場合は、そういうクラス、サブクラス、そしてヒトの抗体の全てを意味する。
【0311】
本発明の蛋白質に関連する分離蛋白を抗原として、又はその一部や断片として使うことも可能である。そしてそれを免疫抗原として使い、ポリクローン及び単クローン抗体準備の標準技術を用いて、免疫特異的に抗原に結合する抗体を作ることもできる。蛋白質全体を免疫抗原として使うこともできるし、免疫抗原として使われる抗原のペプチド断片を本発明が提供することも可能である。抗原性のペプチド断片は、SEQ ID NO:4または6−10に示されているような全蛋白質のアミノ酸配列のうち少なくとも6つのアミノ酸残基から成っており、その抗原決定基(エピトープ)を取り囲んでいる。その場合、ペプチドの抗体は、全蛋白質あるいはエピトープを含む断片と特異的な免疫複合体を形成する。
【0312】
できれば、抗原性のペプチドは少なくとも10のアミノ酸残基、あるいは少なくとも15のアミノ酸残基、あるいは少なくとも20のアミノ酸残基、あるいは少なくとも30のアミノ酸残基からなっているのが好ましい。抗原性のペプチドによって囲まれているエピトープは、蛋白質の表面に位置しているのが望ましい。その部位はふつう親水性である。
【0313】
本発明のある部分に関しては、抗原性のペプチドにより囲まれているエピトープの少なくとも1つは、CEA様蛋白質の表面に位置している例えば親水性の部位である。ヒトの蛋白質配列の疎水性分析は、関連蛋白質のどの部位が親水性で、抗体生産用の表面残基をコード化しているかを示している。抗体生産の方法として、親水性と疎水性の部位を示す方法は、当業界の技術の面で既に良く知られている。例えば、Kyte Doolittel法又はHopp Woods法(フーリエ変換を使う場合も使わない場合も)などである。Hopp and Woods,1981,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;Kyte and Doolittle 1982,J.Mol.Biol.157:105−142を参照のこと。いずれも参考文献として本文書に全文が掲載されている。抗原蛋白、その誘導体、断片、類似体、又は同族体の中の1つ又はそれ以上の領域に特異的な抗体も、本文書に提供されている。
【0314】
本発明の蛋白質、その誘導体、断片、類似体、同族体、又はオルトログは、これら蛋白質構成要素へ免疫特異的に結合する抗体生産において、免疫抗原として利用することができる。
【0315】
「特異的に」という用語は、本発明の抗体の可変部領域が本発明のポリペプチドを独占的に認識し結合する(すなわち他の類似のポリペプチドが配列の同一性を持ち、同族体、類似体であっても、それと本発明のポリペプチドを区別できる)が、抗体の可変部領域の外部、特に分子の定常領域の配列と相互作用を起こすことにより、他の蛋白質(例えばS.aureus蛋白AやELISA技術の他の抗体)と反応する可能性を持つ事を意味している。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニング検定試験は、当業界では良く知られており日常的に実践されている。そういう検定試験の詳細については、Halow等(Eds)、抗体・実験室手引書;コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー;コールドスプリング・ハーバー、ニューヨーク(1988)、第6章を参照の事。本発明のポリペプチド断片を認識し結合する抗体は、それが上で定義したように、本発明の完全長ポリペプチドに他の何よりも特異的であることを条件とすれば、予想可能である。本発明の完全長ポリペプチドに特異的な抗体に関してであるが、断片を識別できる本発明の抗体は、ポリペプチドを同族のポリペプチド(配列が同一で、同族体、類似体であっても)から識別可能なものである。
【0316】
本発明の抗体は、例えば治療目的(本発明のポリペプチドの活性を調整することにより)、本発明のポリペプチドを検出・定量化することによる診断目的、あるいは本発明ポリペプチドの純化等に利用できる。本発明の抗体を含み、本文書に述べられている色々な目的に使用されるキット(道具一式)も考慮されている。一般的に、本発明のキットには、抗体が免疫特異的である対照抗原も含まれる。更に本発明は、抗体を生産する雑種細胞も提供する。本発明の抗体は、本発明ポリペプチドの検出および精製に役立つ。
【0317】
本発明の蛋白質に結合している単クローン抗体は、蛋白質の免疫検出用診断薬としても有効かも知れない。蛋白質に結合する中和単クローン抗体も、蛋白質関連の症状および蛋白質の異常発現が関係しているある種の癌の治療の両面に効果を発揮するかも知れない。癌細胞または白血性細胞に関しては、蛋白質拮抗の中和単クローン抗体は、蛋白質が関与する癌細胞の転移を検出したり予防したりするのに有益であるかも知れない。
【0318】
本発明の標識抗体は、生体外、生体内、および生体内原位置に於いて、ポリペプチドの断片が発現している細胞又は組織の同定用試験に利用できる。本抗体は、直接治療または他の診断にも利用できるかも知れない。本発明は、固体の支持台上に上記抗体を固定することも可能である。固体支持台の例としては、ポリカーボネート等のプラスチック、アガロースやSepharose(登録商標)等の複合炭水化物、ポリアクリルアミドのようなアクリル樹脂やラテックス・ビーズ等がある。そういう固形の支持台へ抗体を固定する技術は、当業界では良く知られている(Weir,D.M.等、「実験免疫学手引き書」第4版、ブラックウェル・サイエンティフィック出版、オックスフォード、英国、第10章(1986);Jacoby,W.D.等、Meth.Enzym.34アカデミック・プレス、ニューヨーク(1974))。本発明の固定抗体は、生体外、生体内、および生体内原位置に於ける試験、ならびに本発明蛋白質のイムノアフィニティー精製にも使用可能である。
【0319】
本発明の蛋白質、その誘導体、断片、類似体、同族体、又はオルトログに対するポリクローン又は単クローン抗体の生産には、当業界で既に知られている色々な方法を利用することができる。(例えば、本文書に参考文献として取り上げている、抗体:実験室手引書、Halow E.and Lane D,1988,Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。)こういう抗体のいくつかは、以下で論じる。
【0320】
(5.13.1 ポリクローン抗体)
ポリクローン抗体の生産にあたり、天然の蛋白質、その合成変異体、又はそれらの誘導体を1回又はそれ以上注射することにより、色々な実験動物、例えばウサギ、山羊、ハツカネズミ等の哺乳動物を、免疫化することができる。免疫抗原の準備の中には、天然の免疫抗原蛋白、免疫抗原蛋白を代表する合成ポリペプチド、又は組み換え型形質発現の免疫抗原蛋白等を含むことができる。更に、免疫化される哺乳動物の体内で免疫抗原であると既に知られている第2の蛋白質とその蛋白質を結合させ、複合蛋白質にすることも可能である。
【0321】
そういう免疫抗原蛋白としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、血清アルブミン、牛のチログロブリン、大豆のトリプシン抑制剤等がある。更に補助物質を含めても良い。免疫反応を高めるために使用される色々な補助物質の中には、フロイント補助物質(完全及び不完全)、ミネラル・ゲル(例えばアルミニウム水酸化物)、表面活性物質(例えばリソレシチン、プルロニック・ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノール等)がある。ヒトに使われる補助物質としては、カルメット・ゲラン、コリネバクテリウム・パルブム、又は類似の免疫刺激物質がある。この他にも使用可能な補助物質として、MPL−TDM補助物質(モノホスホリル脂質A、合成トレハロース・ジコリノミコール酸)もある。
【0322】
免疫抗原蛋白に対するポリクローン抗体分子は哺乳動物の例えば血液から単離し、蛋白質Aか蛋白質Gを使ったアフィニティー・クロマトグラフィーのような良く知られて技術で純化することができる。それは主に免疫血清のIgG画分を提供する。その後、又は代替方法として、イミュノグロブリンの標的である特定の抗原又はそのエピトープを、カラム上で固定し、イミュノアフィニティー・クロマトグラフィーで免疫抗体を純化することも可能である。イミュノグロブリンの純化に関しては、例えば、D.Wilkinsonが論じている(ペンシルバニア州フィラデルフィアのザ・サイエンティスト社出版、ザ・サイエンティスト、第14巻、No.8(2000年4月17日)25−28頁)。
【0323】
(5.13.2 単クローン抗体)
本文書で使用される「単クローン抗体」(MAb)又は「単クローン混合物」は、ユニークな軽鎖遺伝子産物及びユニークな重鎖遺伝子産物からなる1種類の抗体分子だけを含む抗体分子個体群を意味している。特に、相補性を決定する単クローン抗体部位(CDR)は、個体群の全分子に関して同一である。従ってMAbは、ある抗原に特別の親和性を持ち、その抗原のエピトープと免疫反応を起こすことのできる抗原結合部位を含んでいる。
【0324】
単クローン抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記述されているようなヒブリドーマ(雑種細胞法)を用いて準備できる。雑種細胞法では、ハツカネズミ、ハムスター、その他の実験動物を免疫剤で免疫化する。それは、免疫剤に特異的に結合する抗体を生産する又は生産できるリンパ球を引き出すためである。リンパ球は試験管内で免疫化することも可能である。
【0325】
免疫化物質の中には、ふつう蛋白抗原、その断片又はその融合蛋白等が含まれる。一般的に、ヒトの細胞が要求される時には抹消血液リンパ球、ヒト以外の哺乳動物が要求される時には脾臓細胞かリンパ腺細胞が使われる。次にリンパ球はポリエチレングリコールのような適当な融合剤を使って不朽化した細胞株と融合させ、雑種細胞を形成する(Goding、単クローン抗体:原理と実践、アカデミック・プレス、(1986)59−103頁)。不朽化した細胞株は普通、形質転換した哺乳動物の細胞、特にげっ歯類、牛属、ヒトの骨髄腫細胞である。通常、ネズミかハツカネズミの骨髄腫の細胞株が用いられる。雑種細胞は適当な培地で培養することができる。培地には、融合しなかった不朽化細胞の成長や生存を阻害する物質を1種類乃至それ以上含むのが望ましい。例えば、親細胞に酵素であるヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)が欠如している場合は、雑種細胞用の培地には普通、HGPRT欠乏細胞の成長を阻害するヒポキサンチン、アミノプテリン、そしてチミジン(HAT培地)が含まれている。
【0326】
不朽化細胞は、融合率が良いもの、選別された抗体生産細胞の抗体発現を安定した高いレベルで支持するもの、HAT培地等の培地に敏感なものが好ましい。より好ましい不朽化細胞は、ネズミ科の骨髄腫細胞株である。ネズミ科の骨髄腫細胞株は、カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionで入手できる。ヒトの骨髄腫及びハツカネズミ・ヒトへテロ骨髄腫細胞株も、ヒトの単クローン抗体生産に関して記述されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等,単クローン抗体生産技術及び応用、Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク、(1987)51−63頁)。
【0327】
次に抗原に対する単クローン抗体が存在するかどうかを、雑種細胞を培養する培地について分析する。雑種細胞が生産する単クローン抗体の結合特異性を、免疫沈降反応により、あるいは放射性同位元素標識免疫測定(RIA)や酵素連結・特異的抗体吸着分析(ELISA)のような試験管内の結合分析によって決定するのが好ましい。そういう技術や分析方法は当業界では良く知られている。単クローン抗体の結合親和性は、例えば、マンソン及びポラードのスキャッチャード分析、Anal Biochem.,107:220(1980)により決定できる。抗原への特異性と結合親和性の高い抗体の分離が望まれる。
【0328】
求められている雑種細胞が同定されたら、その後、限界希釈法によりクローンをサブクローン化し、標準方法でそれを成長させる。この目的に適した培地は、例えば、ダルベッコのModified Eagle培地及びRPMI−1640培地である。雑種細胞は、哺乳動物の体内で腹水として成長させる方法も可能である。
【0329】
サブクローンにより分泌された単クローン抗体は、蛋白質Aセファローズ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティー・クロマトグラフィー等の一般的なイミュノグロブリン純化方法により、培地又は腹水から分離し精製することができる。
【0330】
単クローン抗体は、米国特許番号4,816,567に記されているような組み換えDNA法によっても作成できる。本発明の単クローン抗体をコード化しているDNAは、普通の方法を使って簡単に分離し配列を決定できる(例えば、ネズミの抗体の重鎖及び軽鎖をコード化している遺伝子へ特異的に結合できるオリゴヌクレオチドを使って)。本発明の雑種細胞は、そういうDNA源として好ましいものである。分離されたDNAは次に発現ベクターに載せられ、それから組み換え宿主細胞の中で単クローン抗体を合成するために、猿のCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞のような普通はイミュノグロブリン蛋白を生産しない宿主細胞に形質移入される。DNAは例えば、同族体のネズミの配列の代わりにヒトの重鎖・軽鎖一定領域のコード化された配列を使ったり(米国特許番号4,816,567;Morrison,Nature 368,812−12(1994))、非イミュノグロブリン・ポリペプチドのコード化された配列をイミュノグロブリンのコード化された配列に共有結合させたりして修正することも可能である。そういう非イミュノグロブリン・ポリペプチドを本発明の一定領域の代わりに、又は本発明抗体の抗原結合部位可変ドメインの代わりに使って、キメラ的なニ価抗体を作ることも可能である。
【0331】
(5.13.3 ヒト化された抗体)
更に、本発明の蛋白抗原に対する抗体は、ヒト化した抗体又はヒトの抗体で構成することも可能である。こういう抗体は、イミュノグロブリンを投与してもヒトに免疫反応を起こさせることがないので、ヒトへの投与に適している。ヒト化された形の抗体は、キメラ性のイミュノグロブリン、イミュノグロブリン鎖、又はその断片(例えばFv,Fab,Fab’,F(ab’)2等抗原と結合する抗体のサブ配列)であり、これらは主にヒトのイミュノグロブリンの配列で構成され、ヒト以外のイミュノグロブリンから得られた配列を最小限含んでいる。抗体のヒト化は、Winter及び彼の同僚の方法を踏襲し(Jone等、Nat ure,321:522−525(1986);Riechmann等、Nature,332:323−327(988);Verhoeyen等、Science,239:1534−1536(1988))、ヒトの抗体の配列の代わりに、それに対応するげっ歯類のCDR又はCDR配列を使うことにより達成できる。(米国特許番号5,225,539も参照のこと) ある場合には、ヒトのイミュノグロブリンのFv基質残基を、それに対応するヒト以外の残基で置き換える。
【0332】
ヒト化された抗体は、受容体の抗体にも、移入性のCDRにも、基質配列にも見出されないような残基で構成することも可能である。一般的に、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、普通は2つの可変ドメインにり構成される。その場合、CDR部分の全て又は実質的に全てがヒト以外のイミュノグロブリンのそれに対応しており、基質部分の全て又は実質的に全てがヒトのイミュノグロブリンのコンセンサス配列のそれである。ヒト化された抗体は、理想的には、イミュノグロブリンの一定領域(Fc)の少なくとも一部分、普通はヒトのイミュノグロブリンのそれで構成するのが好ましい(Jones等 1986;Riechmann等、1988;及びPresta,Curr.Op.Stgruct.Biol.2:593−596(1992))。
【0333】
(5.13.4 ヒトの抗体)
ヒトの抗体は、CDRを含めて軽鎖及び重鎖の実質的に全ての配列が、ヒトの遺伝子起源である抗体分子に関係している。そういう抗体は、本文書では「ヒトの抗体」又は「完全にヒトの抗体」と呼ぶ。ヒトの単クローン抗体は、トリオマ技術、ヒトのB細胞の雑種細胞技術(Kozbor等、1983 Immunol Today 4:72を参照のこと)、及びEBV雑種細胞技術(Cole等,単クローン抗体及び癌の治療,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)で準備できる。ヒトの単クローン抗体は本発明の実用化の際に利用でき、ヒトの雑種細胞を使うことにより(Cote等,1983,Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030を参照のこと)、あるいはヒトのB細胞を生体外でEBV(エプシュタイン・バー・ヴィールス)により形質転換させることにより(Cole等,単クローン抗体及び癌の治療,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)生産できる。
【0334】
更にヒトの抗体は、別の技術、例えばファージ表示ライブラリー(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks等,J.Mol.Biol.222:581(1991))等を使っても生産できる。同様に、ヒトの抗体は、ヒトのイミュノグロブリンの遺伝子座を遺伝子導入動物、例えば内因性のイミュノグロブリン遺伝子を部分的に又は完全に不活性化したハツカネズミに導入することによっても形成できる。抗原投与に対し、ヒトの抗体生産の観察が行われたが、遺伝子の再配列、集合、及び抗体のレパートリーを含むあらゆる面で、それはヒトの体内で生じている内容に酷似している。これは例えば次の報告に記述されている:米国特許番号5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016、Marks等、(Bio/Technology 10,779−783(992);Lonberg等(Nature 368,856−859(1994));Morrison(Nature 368,812−13(1994);Fishwild等,(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996));及びLonberg and Huszar(Intern.Rev.Immunol.13 65−93 (1995))。
【0335】
ヒトの抗体は、自分の内因性抗体でなく完全にヒトの抗体を生産するように修正された遺伝子導入動物を使って生産することも可能である(PCT出版WO94/02602を参照のこと)。イミュノグロブリンの重鎖及び軽鎖をコード化した動物の内因性遺伝子を不活性化し、重鎖及び軽鎖のイミュノグロブリンをコード化したヒトの活性遺伝子座が、その代わりに宿主のゲノムの中に挿入されている。ヒトの遺伝子は、例えば、ヒトのDNAの必要な部分を含む酵母の人工染色体を使って導入する。希望の修正部分を全て提供する動物は、修正部分を完全には含まない中間遺伝子導入動物を交雑育種することにより後代として得られる。そういう動物の中ではハツカネズミが好ましく、PCT出版WO96/33735及びWO96/34086で示されているように、それはXenomouse(ゼノマウス)と呼ばれる。この動物は、完全にヒトのイミュノグロブリンを分泌するB細胞を生産する。抗体は、例えばポリクローン抗体の準備として、関心のある免疫抗原で免疫化した後、そういう動物から直接得ることができる。あるいは単クローン抗体を生産する雑種細胞のような動物起因の不朽化B細胞から得ることも可能である。ヒトの変動部位を持つイミュノグロブリンをコード化した遺伝子を回復させ、発現させて、直接抗体を得ることも可能である。あるいは更に修正を加えて、単鎖Fv分子のような抗体類似体を得ることもできる。
【0336】
内因性のイミュノグロブリン重鎖の形質発現が欠如しているヒト以外の宿主、例えばハツカネズミ等を生産する方法は、米国特許番号5,939,598に示されている。それは、胚幹細胞の中にある内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つからJ部分の遺伝子を削除する方法があるが、それを含むやり方で得ることができる。それは、その遺伝子座の再配列を防ぎ、再配列されたイミュノグロブリン重鎖遺伝子座の写しの作成を防ぐためである。削除は、選択可能な標識をコード化した遺伝子を含む標的ベクターにより行われる。そして胚幹細胞から、選択的標識をコード化した遺伝子を体細胞及び生殖細胞に含む遺伝子導入マウスを生産する。
【0337】
例えばヒトの抗体のように求められている抗体を生産する方法は、米国特許番号5.916,771に述べられている。それは、重鎖をコード化したヌクレオチド配列を含む発現ベクターを培養中の哺乳動物宿主細胞に導入し、軽鎖をコード化したヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入し、その2つの細胞を融合して雑種細胞を作る方法に関係している。雑種細胞は、重鎖と軽鎖を含む抗体を発現する。
【0338】
このやり方を更に改善する方法として、免疫抗原に臨床的に関連のあるエピトープを同定する方法、及びそのエピトープに高い親和性で免疫特異的に結合する抗体を選別する相補的な方法が、PCT出版WO99/53049に述べられている。
【0339】
(5.13.5 FAB断片及び単鎖抗体)
本発明では、本発明の抗原蛋白に特異的な単鎖抗体を生産するための技術は、調整可能である(例えば米国特許番号4,946,778を参照のこと)。更に、蛋白質、又はその誘導体、断片、類似体、同族体に対し好ましい特異性を持つ単クローンFab断片の同定を迅速かつ効果的に行うために、Fab発現ライブラリーの構築方法を調整することも可能である(例えばHuse等,1989 Science 246:1275−1281を参照のこと)。ある蛋白抗原に特有の遺伝子型を含む抗体断片は、当業界で既に良く知られている技術を用いて生産可能である。例えば、(i)ある抗体分子のペプシン消化により生産されるF(ab’)2断片;(ii)F(ab’)2のジスルフィド・ブリッジを減らすことにより生産されるFab断片;(iii)パパイン及び還元剤で抗体分子を処理することにより生産されるFab断片;及び(iv)Fv断片。
【0340】
(5.13.6 生物特異的な抗体)
二重特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を持つ単クローン抗体(ヒト又はヒト化された抗体が好ましい)である。本件においては、結合特異性の1つは、本発明の抗原蛋白である。第2の結合標的はそれ以外の抗原であり、細胞表面の蛋白質、受容体、又は受容体サブユニットであるのが望ましい。
【0341】
二重特異性抗体の作成方法は、当業界では良く知られている。通常の方法としては、二重特異性抗体の遺伝子組み換え生産は、2つのイミュノグロブリン重鎖・軽鎖ペアの共同発現に基づいている。この場合2つの重鎖は、異なる特異性を有している(Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983))。イミュノグロブリン重鎖・軽鎖はランダムに組み合わされるので、その雑種細胞(クアドロマ)は、10の異なる抗体分子の混合体を産する。その中で1つだけが、正しい二重特異性の構造を持っている。その正しい分子の精製は、普通アフィニティー・クロマトグラフィーにより行われる。同じような方法が、PCT出版WO93/08829(1993年5月13日出版)及びTraunecker等,EMBO J.,10:3655−3659に述べられている。
【0342】
要求されている結合特異性(抗原抗体結合部位)を持つ抗体の可変ドメインは、イミュノグロブリンの一定領域配列に融合させることができる。ヒンジ(ちょうつがい)、CH2及びCH3部位の少なくとも一部分で構成されるイミュノグロブリン重鎖の一定領域との融合が好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖一定領域が、融合体の少なくとも1つに存在するのが望ましい。イミュノグロブリン重鎖(そしてできればイミュノグロブリン軽鎖も)の融合をコード化したDNAが異なる発現ベクターに挿入され、適切な宿主有機体に同時形質移入される。二重特異性抗体の生産方法については、更に詳細は例えば、Suresh等、酵素化学の方法、121:210(1986)を参照のこと。
【0343】
WO96/27011に述べられている別の方法によれば、遺伝子組み換え細胞培養から回収されるヘテロダーマーの割合を最大にするように、一対の抗体分子間のインターフェースを工夫することも可能である。好ましいインターフェースは、抗体一定領域中にあるCH3部位の少なくとも一部分で構成される。この方法によると、最初の抗体分子のインターフェースから得られる小さいアミノ酸側鎖を、チロシンやトリプトファンのような大きい側鎖で置き換えることができる。大きいアミノ酸側鎖をアラニンやトレオニンのような小さいアミノ酸側鎖で置き換えることにより、大きい側鎖に対して同じ又は類似の大きさの補償「キャビティー(腔)」を、第2の抗体分子のインターフェース上に作ることができる。この方法で、ホモダイマーのような好ましくない最終生産物以上にヘテロダイマーを増やすことが可能である。
【0344】
二重特異性抗体は完全長抗体として、又は抗体の断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として準備できる。抗体断片から二重特異性抗体を作る技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学結合を使って準備できる。Brennan等、Science 229:81(1985)は、無傷の抗体が蛋白質分解して裂け、F(ab’)2の断片を生成する方法について述べている。こういう断片は、ジチオール複合剤である砒酸ナトリウムの存在下で還元され、その結果、隣接したジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド結合の形成を阻害する。そのようにして生成されたFab’の断片は、チオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換される。次にFab’‐TNB誘導体はメルカプトエチルアミンで還元するとFab’‐チオールに再び転換され、Fab’‐TNB誘導体と等モル量ずつ混合されて二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化剤として使用できる。
【0345】
その他に、Fab’の断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させて二重特異性抗体を形成する。Shalaby等,J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)2分子の生産について記述している。
【0346】
Fab’断片はそれぞれ大腸菌から別々に分泌され、生体外で化学結合を施され、その結果二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現している細胞及びヒトの正常なT細胞に結合でき、それと同時に、ヒトの乳癌に対して細胞毒性リンパ球の溶解活動を誘発する。
【0347】
遺伝子組み換え細胞培養から直接二重特異性抗体の断片を形成し分離する方法も、種々報告されている。例えば、二重特異性抗体はロイシン・ジッパーを使って生産されている。Kostelny等,J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJun蛋白質から得られるロイシン・ジッパー・ペプチドは、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモダイマーはヒンジ部分で還元されモノマーを作り、再び酸化されて抗体へテロダイマーを形成した。この方法は、抗体ホモダイマーの生産にも利用できる。Hollinger等、Proc.Nati.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に記されている「diabody」技術は、二重特異性抗体の断片を作るための代替機構を提供している。その断片は、リンカーにより互いに結合された重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。リンカーは短いので、同じ鎖上の2つの領域間でペアを作ることはない。従って、1つの断片のVH領域をVL領域は相補的なVL領域及びVH領域とペアを作るように強制され、その結果、抗原と結合する部位が2つ形成される。単鎖Fv(sFv)ダイマーを用いた二重特異性抗体断片の作成方法も報告されている。Gruber等,J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
【0348】
3価以上の抗体も考えられている。例えば、トリ・スペシフィック(3特異性)な抗体も準備できる。Tutt等,J.Immunol.147:50 (991)。典型的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープと結合できる。そのうちの少なくとも1つは本発明の蛋白抗原に由来する。イミュノグロブリン分子の反抗原用の腕を、白血球上のトリガ分子(例えばCD2,CD3,CD28,B7のようなT細胞受容体分子)、あるいはIgG(FcγR)のFc受容体(例えばFcγRI(CD64),FcγRII(CD32),FcγRIII(CD16))に結合している腕と連結させることも可能である。これは、細胞の防御機構を、特定の抗原を発現している細胞に集中させるためである。
【0349】
二重特異性抗体は、特定の抗原を発現している細胞に細胞毒性物質を向ける目的で利用できる。こういう抗体は、抗原と結合する腕及び細胞毒性物質や放射性核種キレート化剤(EOTUBE,DPATA,DOTA,TETA等)と結合する腕を所有している。別の二重特異性抗体は、本文書で述べられている蛋白抗原や、更に組織因子(TF)とも結合する。
【0350】
(5.13.7 ヘテロ共役抗体)
ヘテロ共役抗体も本発明の範囲内にある。ヘテロ共役抗体は、2つの共有結合をした抗体で構成されている。そういう抗体の使用方法として例えば、免疫組織細胞で望ましくない細胞を攻撃する方法(米国特許番号4,676,980)や、HIV感染の治療(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089)が提案されている。そういう抗体は、合成蛋白化学で良く知られている方法(例えば架橋結合物質等を使う方法)を使って、生体外で準備できると考えられている。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使って、又はチオエーテル結合を形成することにより構築できる。この目的に適した試薬は例えば、イミノチオレート、メチル−4−メルカプトブチルイミデート、米国特許番号4,676,980に掲載された試薬などである。
【0351】
(5.13.8 作動体機能工学)
本発明の抗体は、作動体機能の面で調整するのが望ましい。これは例えば、癌治療などの際に抗体の効果を高めるためである。例えば、シスチン残基をFc部位に導入し、分子内S−S結合形成をその部位で行わせる。このようにして作られたホモダイマーの抗体は、内在化能力を高め、および/又は補体媒介の細胞死滅や抗体依存の細胞毒性を増大できる。Caron等,J.Exp.Med.,176:1191−1195(1992);Shopes,J.Immunol.,148:2918−292(1992)を参照のこと。抗癌作用を強められたホモダイマー抗体は、Wolff等,癌研究,53:2560−2565 (1993)に述べられているように、ヘテロ・二作用架橋結合剤を使って準備することも可能である。Fc二重部位を持つ抗体を作り、補体溶解やADCC能力を増進することも可能である。Stevenson等,抗癌薬設計,3:219−230(1980)を参照のこと。
【0352】
(5.13.8 免疫共役)
本発明は、化学療法剤、毒素(例えば細菌、カビ、植物、動物、又はそれらの断片由来の酵素学的に活発な毒素)、放射性アイソトープ(つまり放射性共役)のような細胞毒性物質を抗体と結合させた免疫共役とも関係している。
そういう免疫共役の生成に用いられる化学療法剤は、上述の通りである。酵素学的に活性な毒素及びその断片は例えば、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒の非結合活性断片、エクソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ・サルシン、Aleurites fordii蛋白、dianthin蛋白、Phytolaca Americana 蛋白(PAPI,PAPII,及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテシン等である。放射性共役抗体の生成には、212Bi,131I,131In,90Y,186Reのような数多くの放射性核種が入手可能である。
【0353】
抗体と細胞毒性物質との結合には、種々の二作用性蛋白結合剤が使われる。二作用性蛋白結合剤には、N−サクシンイミジル‐3‐(2‐ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオレーン(IT)、イミドエステルの二作用性誘導体(ジメチル・アジピミデートHCL等)、活性エステル(ジサクシンイミジル・スベリン酸塩等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(P−アジドベンゾイル)へキサンジアミン等)、ビス‐ジアゾニウム誘導体(ビス‐(P‐ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン等)、ジイソシアン酸塩(トリエン2,6−ジイソシアン酸塩等)、ビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ‐2,4‐ジニトロベンゼン等)等がある。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等,Science,238:1098(1987)に述べられている方法で準備できる。炭素14標識の1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレン・トリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種と抗体との結合用の典型的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。
【0354】
腫瘍攻撃の準備のために、抗体とストレプタビジンのような「受容体」を共役結合させることも可能である。その場合、抗体・受容体共役体が患者に投与され、その後で結合しなかった共役体は、清澄剤を使い、それからアビジン等の「配位子」(細胞毒素と結合する)を投与することによって、循環器系から除去される。
【0355】
(5.14 コンピューター読取り可能な配列)
一応用例として、本発明のヌクレオチド配列は、コンピューター読取り可能媒体上に記録できる。本文書で使用される「コンピューター読取り可能媒体」と言うのは、コンピューターにより読取り及びアクセスが可能な媒体全てを意味している。例えばフロッピー(登録商標)ディスクのような磁気記憶媒体、ハードディスク記憶媒体、磁気テープ、CD−ROMのような光学記憶媒体、RAMやROMのような電子記憶媒体、磁気記憶媒体や光学記憶媒体等のハイブリッド等である。本発明のヌクレオチド配列を記録したコンピューター読取り媒体製品を製作するには、現在知られているコンピューター読取り媒体の中のどれをどのように使えば良いか、有能な技師であればすぐに分かるはずである。本文書で使用されている「記録される」という言い回しは、コンピューター読取り媒体に情報を保存するプロセスに言及している。有能な技師であれば、コンピューター読取り媒体に情報を記録する方法をどれでもすぐに採用して、本発明のヌクレオチド配列情報を含む製品を製作できるはずである。
【0356】
有能な技師は、本発明のヌクレオチド配列を記録するコンピューター読取り媒体を、色々なデータ記憶構造体を使って製作できる。どのデータ記憶構造体を選択するかは、通常記録された情報にアクセスする手段により決定される。更に、色々なデータ処理プログラムやフォーマットを使って、本発明のヌクレオチド配列情報をコンピューター読取り媒体上に記録できる。配列情報は、ワードパーフェクトやマイクロソフト・ワードのように商業用のソフトでフォーマットされたワープロ・テキストファイルで表すこともできるし、DB2、Sybase、オラクルのようなデータベースの形式のASCIIで表すことも可能である。有能な技師であれば、データ処理構造のフォーマット(テキストファイルかデータベース)を使って、本発明のヌクレオチド配列情報を記録したコンピューター読取り媒体をすぐに得ることができる。
【0357】
SEQ ID NO:1、3、5、その代表的な断片、又はSEQ ID NO:1、3、または5のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を、コンピューター読取り可能な形で提供することにより、有能な技師は、その配列情報をいつでも好きな時に色々な目的のためにアクセスできる。コンピューター読取り媒体の形で提供される配列情報をアクセス可能にするコンピューター・ソフトは、市販のものでいくらでも入手可能である。以下の例は、Sybaseシステム上でBLAST(Altschul等,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))及びBLAZE(Brutlag等,Comp.Chem.17:203−207(1993))探索アルゴリズムを実行するソフトを使って、核酸配列内のオープン・リーディング・フレーム(ORF)の確認を行う方法を示している。そういうORFは、蛋白質をコード化した断片であるかも知れないし、発酵反応に使われる酵素や、商業的に有用な代謝産物の生産に使われる酵素等、商業的に重要な蛋白質の生産に使用されるかも知れない。
【0358】
本文書に述べられている「コンピューター利用システム」という語は、本発明のヌクレオチド配列情報を分析するのに使われるハード、ソフト、及びデータ記憶手段を意味している。本発明のコンピューター利用システムにとって最低限必要なハードは、中央処理装置(CPU)、インプット装置、アウトプット装置、そしてデータ記憶装置である。有能な技師であれば、現在入手可能なコンピューター利用システムのうち、本発明の使用に適しているのがどれであるかすぐ判断できる。上述の如く、本発明のコンピューター利用システムは、本発明のヌクレオチド配列を記録したデータ記憶装置、及び探索手段の支援と実行に必要なハードとソフトの装置で構成される。
【0359】
本文書で使用される「データ記憶装置」という用語は、本発明のヌクレオチド配列情報を記録できる記憶装置(メモリー)か、本発明のヌクレオチド配列情報を記録している製品にアクセスするメモリー・アクセス装置のいずれかを意味している。
【0360】
本文書に使用される「探索手段」という用語は、標的配列又は標的構造モチーフとデータ記憶装置に記録した配列情報とを比較するために、コンピューター利用システム上で実行される1つ又は複数のプログラムを意味している。探索手段は、特定の標的配列又は標的モチーフと一致する断片や既知の配列部位を同定するのに使用される。色々なアルゴリズムが既に商業化されているし、本発明のコンピューター利用システムに利用可能な探索手段実行用ソフトも数多く市販されている。そういうソフトには例えば、smith−Waterman、MacPattern(EMBL)、BLASTN、BLASTA(NPOLYPEPTIDEIA)等がある。有能な技師であれば、相同性探索用の種々のアルゴリズム又は実行ソフト・ユニットのうちいずれが、本発明のコンピューター利用システムに利用できるかすぐ判断できるはずである。本文書で使われる「標的配列」という用語は、全ての核酸、6つ又はそれ以上のヌクレオチドのアミノ酸配列、あるいは2つ又はそれ以上のアミノ酸のアミノ酸配列を意味している。標的配列は長ければ長いほど、データベースの中でランダムには起きにくいということが、有能な技師ならすぐに分かるはずである。標的配列のうち最も好ましい配列の長さは、約10乃至100のアミノ酸、又は約30乃至300のヌクレオチド残基である。しかし既に良く知られていることであるが、遺伝子発現や蛋白質処理等に関連する配列断片のような商業的に重要な断片の探索は、かなり短い長さで行われるかも知れない。
【0361】
本文書に使用される「標的構造モチーフ」又は「標的モチーフ」という用語は、理性的に選択された配列又は配列の組み合わせのことであり、その配列は、標的モチーフのひだ上に形成される3次元構造に基づいて選ばれる。当業界では色々な種類の標的モチーフが知られている。蛋白質の標的モチーフは、例えば、酵素の活性部位やシグナル配列などである。核酸の標的モチーフには、プロモーター(促進因子)配列、ヘアピン構造、誘発性発現要素(蛋白質結合配列)等が含まれる。
【0362】
(5.15 三重へリックス形成)
更に、本発明の断片は、広い意味では、三重へリックス形成またはポリヌクレオチド・アンチセンスDNA/RNAを通して遺伝子発現をコントロールするのに使用できる。両方法とも、ポリヌクレオチド配列のDNA又はRNA結合に基づいている。こういう使用方法に適したポリヌクレオチドは、ふつう塩基の長さが20乃至40であり、転写に関係する遺伝子部位(三重へリックス−Lee等,Nucl.Acids Res.6:3073(1979);Cooney等,Science,15241:456(1988);Dervan等,Science,251:1360(1991)を参照のこと)、又はmRNA自体(アンチセンス−Olmno,J.Neurochem.56:560(1991);遺伝子発現のアンチセンス阻害剤としてのオリゴデオキシヌクレオチド、CRCプレス、ボカレイトン、フロリダ(1988))に相補性を持って設計されている。三重へリックス形成は、DNAからRNAへの転写を最適条件で遮断し、アンチセンスRNAハイブリダイゼーション法はmRNA分子のポリペプチドへの翻訳を阻止する。両技術とも、モデル・システムにおいて有効であることが証明されている。本発明の配列に含まれる情報は、アンチセンス又は三重へリックスオリゴヌクレオチドの設計には必要である。
【0363】
(5.16 診断用分析及び用具)
本発明は、核酸プローブ又は本発明の抗体(適当な標識化可能)を使用することにより、本発明の1つのORF又はその同族体の存在又は発現を、試験サンプル中で同定する方法も提供する。
【0364】
本発明のポリヌクレオチドを検出する方法であるが、普通は、ポリヌクレオチドに結合し複合体を形成する化合物をその複合体の形成に必要な時間サンプルと接触させ、その後でその複合体を検出する。その結果、もし複合体が存在すれば、本発明のポリヌクレオチドもサンプルの中に検出されることになる。その方法では更に、ハイブリダイゼーションの厳しい条件の下に、そういう条件下で本発明のポリヌクレオチドをアニールする核酸プライマーにサンプルを接触させ、それからアニール化されたポリヌクレオチドを増幅させる。もしポリヌクレオチドが増幅すれば、本発明のポリヌクレオチドがサンプル中に検出されることになる。
【0365】
本発明のポリペプチドを検出する方法であるが、普通は、ポリペプチドに結合し複合体を形成する化合物をその複合体の形成に必要な時間サンプルと接触させ、その後でその複合体を検出する。その結果、もし複合体が存在すれば、本発明のポリペプチドもサンプルの中に検出されることになる。
【0366】
こういう方法は更に詳細に説明すると、試験サンプルを本発明の抗体の1つ又はそれ以上、又は核酸プローブの1つ又はそれ以上と定温培養させ、その後、試験サンプルの成分と核酸プローブか抗体との結合状態を分析する。
【0367】
核酸プローブか抗体を試験サンプルと共に定温培養する条件は様々である。培養条件は、分析に使われるフォーマット、検出方法、分析に使用される核酸プローブか抗体の種類及び性質に依存している。
【0368】
当業界の技術の訓練を受けた人は、一般に入手可能なハイブリダイゼーション、増幅、又は免疫学的検定フォーマットのうちのいずれが、本発明の核酸プローブ又は抗体の使用に適しているかをすぐに判定できる。そういう検定は、Chard,T.,放射性免疫検定及び関連技術入門、エルセヴィア・サイエンス出版社、アムステルダム、オランダ(1986);Bullock,G.R.等、免疫細胞化学技術、アカデミック・プレス、オーランド、フロリダ、第1巻(1982)、第2巻(1983)、第3巻(1985);Tijssen,P.,免疫学的検定法の実践と理論:生化学及び分子生物学に於ける実験技術、エルセヴィア・サイエンス出版社、アムステルダム、オランダ(1985)等に説明されている。本発明の試験サンプルとしては、細胞、細胞の蛋白質又は膜抽出物、生体液(痰、血液、血清、血漿、尿等)等がある。上述の方法に使用される試験サンプルは、検定フォーマット、検出方法の性質、検定のサンプルとして使われる細胞組織、細胞、又は抽出物の性質等により異なっている。細胞の蛋白抽出物又は膜抽出物の準備方法は当業界では良く知られており、調整も容易であるから、利用システムに適したサンプルをすぐ得ることができる。
【0369】
本発明の別の応用面では、本発明の検定を実行するのに必要な試薬を含む器具が一式提供される。特に本発明は、1つ又は複数の容器を入れる区画用具が提供される。それは以下の内容で構成されている:(1)最初の容器は本発明のプローブ又は抗体のうちの1つを含む;(2)別の1つ又はそれ以上の容器は、洗浄試薬、結合プローブ又は抗体の存在を検出できる試薬のうち1つを含む。
【0370】
更に詳細に説明すると、区画用具には、試薬を各々異なる容器に入れている用具全てが含まれる。そういう容器には、小さいガラス容器、プラスチック容器、又はプラスチックや紙の切れ端が入っている。そういう容器を使うと、試薬を1つの区画用具から別の区画用具に効果的に移すことができる。試薬もサンプルも混じり合うことがないし、各容器に入っている物質や溶液を定量的に、1つの区画用具から別の区画用具へ加えることも可能である。そういう容器としては、試験サンプルを入れる容器、検定に使用される抗体を入れる容器、洗浄試薬(リン酸塩緩衝塩水、トリス緩衝液等)を入れる容器、結合抗体やプローブを検出するのに使われる試薬を入れた容器等がある。検出試薬には、標識された核酸プローブ、標識された二次抗体、あるいは一次抗体が標識されている場合は、標識された抗体と反応可能な酵素又は抗体の結合試薬が含まれる。当業界の技術に優れた人は、本発明で開示されたプローブ又は抗体が、当業界で良く知られている用具フォーマットのいずれに適しているかすぐ分かるはずである。
【0371】
(5.17 医療画像)
本発明の新しいポリペプチド及び結合剤は、本発明の分子を発現する部位の医療画像にとって有益である(例えば本発明のポリペプチドが免疫反応に関係している場所、炎症又は感染部分の画像等)。例えば、Kunkel等、米国特許番号5,413,778を参照のこと。そういう方法には、標識薬又は画像剤の化学的付着、製薬学的に承認できる担体中の対象へ標識ポリペプチドを投与、生体内の標的部位で標識ポリペプチドの画像を撮る等のプロセスが関係している。
【0372】
(5.18 スクリーニング分析法)
本発明は、その単離蛋白質及びポリヌクレオチドを使うことにより、ORF(SEQ ID NO:1、3又は5で説明されているヌクレオチド配列のいずれかと対応)によりコード化されているポリペプチドと結合した物質、又はその核酸によりコード化されたポリペプチドの特異領域と結合している物質を獲得・同定する方法も提供する。上記方法の詳細は、以下の段階で構成される。
(a)本発明のORFによりコード化された分離蛋白質をある物質に接触させる。
(b)その物質が上記蛋白質又は上記核酸と結合するかどうか決定。
【0373】
従って普通、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物を同定するには、本発明のポリヌクレオチドと化合物をポリヌクレオチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させ、それからその複合体を検出する。そうすることにより、もしポリヌクレオチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物が同定される。
【0374】
従って同様に普通、本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定するには、本発明のポリペプチドと化合物をポリペプチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させ、それからその複合体を検出する。そうすることにより、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリヌクレオチド(ママ)に結合する化合物が同定される。
【0375】
本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定する方法として、更に、本発明のポリペプチドと化合物を細胞中で、ポリペプチド/化合物複合体を形成するのに必要な時間接触させる方法もある。その場合、その複合体は細胞の受容体の遺伝子配列の発現を促すので、受容体の遺伝子配列の形質発現を検出すればその複合体を検出できる。その結果、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリペプチドに結合する化合物が同定される。
【0376】
こういう方法で同定される化合物には、本発明のポリペプチドの活動を調整する化合物(つまりその化合物がない場合の活動と比べポリペプチドの活動を増大させたり減少させたりする化合物)も含めることができる。こういう方法で同定される化合物の中には、本発明のポリヌクレオチドの活動を調整する化合物(つまりその化合物がない場合の発現レベルと比べ形質発現を増大させたり減少させたりする化合物)を含めることも可能である。本発明の方法を使って同定されるような化合物は、当業界技術で既に知られている標準検定方法を用いて、活動や形質発現の調整能力を試験することが可能である。
【0377】
上述の方法でスクリーニングされる作用薬には、ペプチド、炭水化物、ビタミン誘導体、製薬学上のその他の作用薬が含まれる。そういう作用薬は、無作為に選別したりスクリーニングを行ったりできる。あるいは蛋白質モデリング技術を使って、理性的に選別したり設計したりすることも可能である。
【0378】
無作為スクリーニングの場合、ペプチド、炭水化物、製薬学上の物質等は無作為に選択され、本発明のORFによりコード化されている蛋白質へ結合する能力について検定される。物質は理性的に選別又は設計することも可能である。本文書では、ある物質が特定の蛋白質の構造に基づいて選択される時、その物質は「理性的に選別又は設計される」と呼ぶ。例えば、当業界の技術の訓練を受けた人は、既存の方法を適用して、特定のペプチド配列に結合する能力を持つペプチドや製薬学上の物質を容易に生産し、ひいては理性的に設計されたアンチペプチド(ママ)・ペプチド(例えばHurby等、合成ペプチドの応用:アンチセンス・ペプチド、合成ペプチド、使用者ガイド、W.H.Freeman,NY(1992)289−307頁、及びKaspczak等、生化学28:9230−8(1989)を参照のこと)、又は製薬学上の物質を作ることができる。
【0379】
前述の内容の他に、広義の意味で、本発明のあるクラスの物質は、本発明のORF又はEMFの1つへの結合を通して、遺伝子発現をコントロールするために使用できる。上述通り、そういう物質は無作為にスクリーニングしても良いし、理性的に設計・選別しても良い。当業界の技術者は、ORF又はEMFを標的にすることにより、単一のORF又は複数のORF(いずれも発現コントロールの面で同じEMFに依存)の発現を調整し、配列特異性又は要素特異性の物質を設計することができる。あるクラスのDNA結合物質は、DNA又はRNAに結合することにより三重へリックスを形成する塩基の残基を含んでいる。そういう物質は、古典的なホスホジエスター、リボ核酸バックボーンに基づかせても良いし、塩基付着能力を有する色々なスルフヒドリル誘導体又は重合誘導体でも良い。
【0380】
こういう方法に使用される物質は、普通20乃至40の塩基を含んでおり、転写に関係する遺伝子部位に相補的であるように(三重へリックス‐Lee等,Nuel.Acids.Res.6:3073(1979);Cooney等,Science,241:456(1988);及びDervan等,Science 251:1360(1991)を参照のこと)、あるいはmRNA自体に相補的であるように(アンチセンス‐Okano,J.Neurochem.56:560(1991);遺伝子発現のアンチセンス抑制剤としてのオリゴデオキシヌクレオチド、CRCプレス、ボカレイトン、フロリダ(1988))設計されている。三重ヘリックス形成はDNAからRNAへの転写阻害の面で最高の結果をもたらし、アンチセンスRNAハイブリダイゼーションはmRNAをポリペプチドに翻訳するプロセスを阻害する。両技術とも、モデル・システムに於いて有効であることが証明されている。本発明の配列に含まれる情報は、アンチセンス、三重ヘリックス・オリゴヌクレオチド、その他のDNA結合物質の設計にとって必要である。
【0381】
本発明のORFの1つによりコード化されている蛋白質に結合する物質は、診断薬として用いることができる。本発明のORFの1つによりコード化されている蛋白質に結合する物質は、製薬学的な化合物の生成に使われる既知の技術に基づいて調剤可能である。
【0382】
(5.19 プローブとしての核酸の利用)
本発明は、自然界で得られるヌクレオチド配列を使って雑種形成することができるポリペプチドに特異的な核酸雑種形成プローブも提供する。本発明の雑種形成プローブは、ヌクレオチド配列SEQ ID:1−3または5のうち任意のものから得られる。対応する遺伝子は限られた数の組織にしか発現されないので、ヌクレオチド配列SEQ ID:1−3または5の任意の物から得られた雑種形成プローブは、試料中のそのような組織細胞タイプのRNAの存在を示す指標として使うことができる。
【0383】
例えば、原位置雑種形成のような適切な雑種形成手法を使うことができる。米国特許4,683,195と4,965,188に述べられたPCRは、ヌクレオチド配列に基づくオリゴヌクレオチドの別な用途も提供する。PCRに用いられるそのようなプローブは組み換え法により生成されるか、化学的に合成されるか、またはその混合法により生成される。プローブは、同一配列の検知のため異なるヌクレオチド配列で構成されるか、密接に関係したゲノム配列識別のため可能配列の退化プールで構成される。
【0384】
核酸に特異的な雑種形成プローブを生成する他の方法には、mRNAプローブの生成のために核酸配列をベクターの中にクローン化する方法が含まれる。そのようなベクターは、当業界で知られており、商業的に入手可能であり、T7として適切なRNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼおよび適切に放射態ラベルがつけられたヌクレオチドを追加することによって、体外でRNAプローブを合成するのに使用できる。
【0385】
ヌクレオチド配列は、各々のゲノム配列をマップするための雑種形成プローブを構成するために使用することができる。本発明で提供されるヌクレオチド配列は、一般に知られた遺伝子および/または染色体地図作成手法によってある染色体または染色体の特定領域に対してマップすることができる。これらの手法には、原位置雑種形成、既知の染色体マーカーに対するリンケージ分析、既知の染色体に特異的なフロー分類が施された染色体標本またはライブラリーを使った雑種形成スクリーニングなどがある。染色体分布の蛍光原位置雑種形成の手法は、バーマほか(1988)Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York NY.(ヒトの染色体:基本手法のマニュアル、パーガモンプレス、ニュ−ヨーク州ニューヨーク市)にも説明されている。
【0386】
染色体標本の蛍光原位置雑種形成およびその他の物理染色地図作成手法は、付加遺伝子地図データによって照合することができる。遺伝子地図データの例は、1994 Genome Issue of Science(ゲノム特集号Science誌)(265:1981f)に示されている。物理的な染色体地図上の核酸の位置と特定の疾病(または特定の疾病に対する体質)の相関性は、その特定の疾病と関連するDNAの領域を限定する上で役立つ。本発明のヌクロチド配列は正常者、保菌者または患者の間の遺伝子配列の違いを検知するのに使うことができる。
【0387】
(5.20 支持体に固定されたオリゴヌクレオチドの作成)
オリゴヌクレオチド、すなわち、核酸の小セグメントは、例えば自動オリゴヌクレオチド合成装置を使って、つまり一般的に行われているオリゴヌクレオチドの直接化学合成によって、容易に作成することができる。
【0388】
支持固定されたオリゴヌクレオチドは、当業界で良く知られたガラス、ポリスチレンまたはテフロン(登録商標)のような適当な支持体を使う方法によって標本を作成することができる。1つの方法は、標準的な合成装置を使って合成されたオリゴヌクレオチドを正確に見分ける方法である。固定方法としては、受動的吸着(井上および本道、1990 J.Clin Microbiol 28(6)1462−72);紫外線)(永田ほか、1985;ダーレンほか、1987、モリセイおよびコリンズ、Mol.Cell Probes 1989 3(2)189−207)または塩基を修正したDNAの共有結合(ケラほか、1988;1989)などがあり、ここに挙げた参考文献は本出願の一部とする。別の方法は、リンカーとして強力なバイオチンとストレプタビジンの相互作用を使う方法もある。例えば、ブルーデほか.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91(8)3072−6は、バイオチニル化されたプローブの利用について述べており、それらは二重プローブであるストレプタビジン被覆された磁気ビーズで固定されている。
【0389】
ストレプタビジンを被覆したビーズはオスローのディナール社から購入することができる。もちろん、同じ結合化学はストレプタビジンを持つ表面の被覆用として応用できる。バイオチニル化されたプローブは、例えば、オペロン・テクノロジーズ社(カリフォルニア州アラメダ市)などのさまざまな供給源から入手できる。
【0390】
ナンク・ラボラトリーズ(イリノイ州ネイパービル市)からも適切な材料を入手することができる。ナンク・ラボラトリーズは、コバリンクNHと呼ばれるマイクロウェル面に共有結合することができる。コバルトリンクNHは、更なる共有結合のための橋頭堡となる第2段階のアミノグループ(>HN)が移植されたポリスチレン面である。コバリンクモジュールは、ナンク・ラボラトリーズから購入されたものである。DNA分子はホストアミド結合によりコバリンクの5’端にのみ結合されることが可能であり、1pmol以上のDNAの固定を可能にする(ラスムッセンほか、(1991)Anal Biochern 198(l)138−42)。
【0391】
コバリンクNHストップを5’端へのDNAの共有結合のために使用することは公開されている(ラスムッセンら、1991)。この技術においては、ホスホラミデート結合が使用されている。(チユーら、1983 Nucleic Acids 11(18)6513−29)これは,共有結合を1個だけ使用して固定するという利点がある。ホスホラミデート結合は、長さ2nmのスペーサーアームを介して、ポリスチレン表面に共有結合的に移植されているスペーサーアームの端部に位置しているコバリンクNH第2アミノグループにDNAを結合する。ホスホラミデート結合を経由してコバリンクNHにオリゴヌクレオチドをリンクするためには、オリゴヌクレチドターミナルは5’端リン酸塩グループを持っていなければならない。たぶんビオチンをコバリンクに共有結合し、ストレプタビジンをプローブの結合のために使うことも可能である。
【0392】
さらに詳しくは、このリンク方法はDNAを水(7.5ng/ul)に溶解し、10分間95℃で変性し、氷で10分間冷やす過程を含む。次に、氷で冷やした0.1M 1−メチルイミダゾール、pH 7.0(1−MeIm7)を加えて、最終的な濃度を10mM I−MeIm7.とする。ss DNA溶液を次に氷冷却中のコバリンクNHストリップ(75ul/well)に供給する。
【0393】
カーボジイミド0.2Mエチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カーボジイミド(EDC)を10mM 1−MeIm7に溶解したものを新たに作り、ウェルあたり25ul を加えた。ストリップは50℃で5時間培養した。培養後、ストリップを例えばヌンク−イムノウォッシュを使って洗った。最初に、ウェルを3回洗い、その後5分間洗浄液に浸漬し、最後に3回洗浄された(そのとき、洗浄液は50℃に温めた0.4N NaOH,0.25%SDSであった)。
【0394】
本発明にとってさらに適した方法は、PCT特許申請WO 90/03382(サザン&マスコス)で公開されたもので、ここに言及することにより、本出願の一部とする。支持体に固定したオリゴヌクレオチドを作成するこの方法では、ヌクレオシド3’−試薬をリン酸塩を介して共有結合ホスホジエステル・リンクにより、支持体で支えられた脂肪族ヒドロオキシルグループに付加する方法も含まれる。
【0395】
次にオリゴヌクレオチドは、支持されたヌクレオシド上で合成され、支持体からオリゴヌクレオチドを切断しない標準状態の下で、合成されたオリゴヌクレオチド鎖から外される。適切な試薬としては、ヌクレオシドホスホラミダイトおよびヌクレオシド水素ホスホレートが含まれる。
【0396】
DNAプローブアレイの作成のために、チップ上でDNAプローブ作成を行うことができる。例えば、ガラス板上で直接アドレス指定可能なレーザー起動フォトデプロテクションを実施することは、フォーダーら、(1991)Science 251(4995)767−73に開示されたように可能であり、ここに言及することにより、本出願の一部とする。プローブをナイロン支持体の上に固定することは、ファンネスら、(1991)Nucleic Acids Res.19(12)3345−50に開示されたように可能である。また、プローブは、ダンカンとキャバリエ、(1988)Anal 10Biochem 169(l)104−8の方法を使ってテフロン(登録商標)にリンクすることも可能である;これらすべての参照文献は、ここに言及することにより、本出願の一部とする。
【0397】
オリゴヌクロチドをナイロン支持体にリンクするには、ファンネスら(1991)が述べるように、ナイロン表面をアルキル化によって活性化し、塩化シアヌル酸でオリゴヌクレオチドの5’−アミンを選択活性化する必要がある。
【0398】
支持体に固定されたオリゴヌクレオチドを作成する別の方法としては、ピーズらが(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91(11)5022−6で述べた光合成法がある。これらの著者は、固定されたオリゴヌクレオチドのプローブ(DNAチップ)のアレイを作成するために最近のフォトリトグラフ法を使用している。高密度で小型化したアレイの中で光を使ってオリゴヌクレオチドプローブを合成するこれらの方法は、光不安定5’−保護N−アシル−デオキシヌクレオシド・ホスホアラミダイト、表面リンカー化学および多様組合わせ合成手法を駆使している。この方法により、空間的に256個に分けられたオリゴヌクレオチドプローブ・マトリクスを作成することができる。
【0399】
(5.21 核酸フラグメントの標本作成)
核酸は、cDNAs、ゲノムDNA、染色体DNA、マイクロ切断染色体バンド、コスミドまたはYAC 挿入片、および増幅段階のないmRNAを含むRNAなど、さまざまなソースから得られる。例えば、サムブルックら(1989)は、高分子量DNAを哺乳類細胞から分離するための3つのプロトコルについて述べている(p.9.14−9.23)。
【0400】
DNAフラグメントは、M13、プラスミドまたはラムダベクターにクローンとして、および/またはゲノムDNAまたはcDNAからPCRまたはその他の増幅方法によって直接作成することができる。サンプルは、マルチウェルプレート上で作成し、取り分けることができる。約100−1000ngのDNAサンプルが最終容積2−500mlの中に生成される。
【0401】
核酸は、当業界で知られている任意の方法、例えば、サンブルックら(1989)の9.24−9.28に述べられた制限酵素を使い、超音波とNaOH処理でせん断する方法で、フラグメント化される。
【0402】
低圧せん断法もまた、シュリーファーらが(1990)Nucleic Acids Res.18(24)7455−6に述べたように適切である。この方法では、小型のフレンチプレッシャーセルに低圧から中圧のさまざまな圧力をかけてDNAサンプルを通す。細胞に対する低圧から中圧の圧力調節はレバー装置でコントロールされる。これらの研究の結果、低圧せん断が音波や酵素DNA断片形成法の替わりになり得ることが明らかになった。
【0403】
特にDNAを断片化するのに適した方法としては、フィッツジェラルドら(1992)のNucleic Acids Res.20(14)3753−62によって開示された2塩基識別エンドヌクレアーゼCviJIを使用する方法が考えられている。これらの著者は、迅速断片化を行い、彼らがショットガンクローニングおよび配列化に妥当であると考えた特性のサイズにDNAを分画するための方法を説明した。
【0404】
制限エンドヌクレアーゼCviJIは、識別配列PuGCPyを通常GとCの間で分断して鈍端を残す。この酵素(CviIL**)の特異性を変化させる特殊反応条件は、準ランダム分布したDNAフラグメントを小型の分子pUC 19(2688個の塩基対)から発生させる。フィッツジェラルドら(192)は、この断片形成法のランダム度を迅速ゲル濾過法によってサイズ分画されたof pUC 19のCviJI**ダイジェストを使用し、端部補修することなく、ラックZマイナスM13クローニングベクターに直接連結することにより、定量的に評価した。76個のクローンの配列分析の結果、PuGCPyに加えてCviJI**はpyGCPyとPuGCPuを制限し、新しい配列データはランダム断片化と一致する割合で累積されることが分かった。
【0405】
文献に報告されているとおり、この方法の長所は、音波破砕およびアガローズゲル分断法に比べて:DNAの必要量が少ないこと(2−5ugの代わりに0.2−0.5ug);処理ステップが少ない(予備連結、端部修復、化学的抽出、またはアガローズゲル電気泳動および溶出などが不要)という点が挙げられる。核酸フラグメンツの入手・作成方法の如何にかかわらず、DNAを変性して雑種形成のための一本鎖を提供することが重要である。これはDNA溶液を80−90℃で2−5分間培養することによって達成される。この溶液を次に2℃まで急速冷却し、DNAフラグメントがチップに接触するまでに復元するのを防ぐ。リン酸塩グループは当業界で知られた方法でゲノムDNAから除去されなければならない。
【0406】
(5.22 DNAアレイの作成)
アレイは、例えばナイロン膜のような支持体の上にDNAサンプルをスポッティングすることによって作成することができる。スポッティングは、金属製ピンのアレイ(その位置はマイクロタイタープレートのウェルのアレイに対応する)を使い、約20nlのDNA溶液をナイロン膜に繰り返し移すことで行うことができる。オフセットプリンティングにより、ウェルの密度以上のドット密度が得られる。使用されるラベルに応じて1mm2当たり1ないし25ドットを設けることができる。あらかじめ選ばれた特定の行と列にスポットするのを避けることにより、別のサブセット(サブアレイ)を形成することができる。1つのサブアレイ中のサンプルは、異なる個人のDNAの同じゲノムセグメント(または同じ遺伝子)であっても良いし、異なるオーバーラップしたゲノムクローンでも良い。各サブアレイは同じサンプルのレプリカスポッティングを表していても良い。ある例では、選ばれた遺伝子セグメントは64人の患者から増幅されたものである。各患者に対して、増幅された遺伝子セグメントが1枚96のウェルプレート上にあっても良い(全96ウェルが同じサンプルを持っている)。64人の患者1人1人に1枚のプレートが準備される。96ピンの装置を使うと、すべてのサンプルが1枚の8×12cmの膜にスポットされる。サブアレイには各患者から1つずつ、合計64サンプルを設けることもできる。96のサブアレイが同一であるとき、ドットのスパンは1mm2で、サブアレイ間に1mmの間隔があるかも知れない。
【0407】
別の方法としては、物理的なスペーサ−で分けられた膜またはプレート(イリノイ州ネイパービル市のヌンク社)を使う方法で、その場合、スペーサーは膜の上に成形されたプラスチックの格子で、その格子はマルチウェルプレート、または疎水性ストリップの底部に設けられる膜と同様なものであってもよい。固定された物理的スペーサーは、平らなリン貯蔵スクリーン、またはX線フィルムを露出することによって画像をとる場合には望ましくない。
【0408】
本発明を以下の例で説明する。この開示により、当業界の技術者は本発明の範囲の中で、さまざまな実施例や変更ができることは明らかである。したがって、本発明の広範囲な可能性は以下の例によって制限されるべきではない。本発明は、本発明の1つの側面のみを示すことを意図した実施例によって制限されるべきではなく、また、機能的に同等な組成物や方法は発明の範囲内にある。事実、ここに示す望ましい実施例を考察すれば、当業界の技術者にとって本発明の実施の面でさまざまな修正や変形は可能である。したがって、本発明の範囲における唯一の制限は、提示された請求項によるものである。
【0409】
本発明明細書中に言及されるすべての参考文献は、参照として、ここにそれらすべてを編入し本申請の一部とする。
【0410】
(6.0 実施例)
(実施例 1)
(直腸のcDNAライブラリーからのSEQ ID NO 1の分離)
直腸から得られたcDNAライブラリーから標準のPCRを使い、交配配列シグネチャー分析によって配列が決定され、サンガー配列手法を応用した結果、複数の新規性のある核酸(Hyseqクローン認識番号15456780(SEQ ID NO:1)を得た。ライブラリーの挿入部は、挿入部に隣接するベクター配列に特異的なプライマーを使ってPCRにより増幅された。このサンプルは、ナイロンの膜にスポットされ、オリゴヌクレオチドプローブを使って配列のシグネチャーを検定した。これらのクローンは、類似のまたは同一の配列ごとに分類され、ゲル配列決定のために各グループから単一の代表クローンが選ばれた。増幅された挿入部の5’配列は典型的なサンガー配列プロトコルで逆M13配列プライマーを使って演繹的に推理された。PCR生成物は、精製されてから、蛍光染料ターミネータサイクル配列決定にかけた。シングルパスゲル配列決定が377アプライドバイオシステムズ(ABI)配列決定装置を使って行われた。挿入部はこのライブラリーからは今まで得られたことのない新しい配列であり、また、公開されているデータベースにもないものであることが確認された。この配列はSEQ ID NO:1と名付けられた。
【0411】
(実施例 2)
(SEQ ID NO:2の集合)
本発明によるSEQ ID NO:2と名付けられた核酸は、EST配列であるSEQ ID NO:1をシードとして使って集められた。次に循環アルゴリズムをシードに適用して拡張することにより拡張集合を得た。その場合、この集合に属する異なるデータベース(すなわち、Hyseq’sのEST配列を含むデータベース、dbESTバージョン114、gb pri 114、およびUniGeneバージョン101)から追加配列を引き出した。集合を拡張する追加配列が上述のデータベースからそれ以上得られなくなったとき、アルゴリズムは停止した。成分配列の集合への組み入れは、拡張する集合に対するBLASTNヒットが300より多いBLASTスコアであり、95%より多い同一度であることに基づいて行われた。
【0412】
集合コンティグの最も近い隣接結果は、FASTXYアルゴリズムを使い、Genpeptリリース114に対するFASTAバージョン3サーチにより得られた。FASTXYはFASTAアラインメントの改良版で、コドン内のフレームシフトを可能にするものである。最も近い隣接結果は、Genpeptから最も近い各集合の同族体を示した(また当該集合がコード化する翻訳アミノ酸配列を含んでいる)。
【0413】
最も近い隣接結果を以下に示す。
【0414】
【表1】
信号ペプチド配列とその分割部位をコード化する集合コンティグ内にあるヌクレオチド配列は、ニューラル・ネットワーク・シグナルPV1.1プログラム(デンマーク工科大学生物配列分析センターによる)を使って決定される。原核生物および真核生物の信号ペプチドのプロセスおよびそれらの分割部位を識別するプロセスは、ヘンリック・ニールソン、ジェイコブ・エンゲルブレヒト、ソーレン・ブルナックおよびガンマー・フォン・ヘイネの「Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites(原核生物および真核生物の信号ペプチドの識別およびそれらの分割部位)」Protein Engineering,vol.10,no.1,pp.1−6(1997)によって開示されており、ここに言及することにより本申請の一部とする。ニールセンらの参考文献に示された最大Sスコアと平均Sスコアは、各集合コンティグに関して測定されている。予測信号配列の最初のアミノ酸から始めて、45個のアミノ酸の配列について述べられている。45個のアミノ酸のすべてが信号ペプチドを構成しているわけではない。
SEQ ID NO:2について:
【0415】
【表2】
(実施例 3)
(SEQ ID NO:3および4の集合)
新規性のあるヌクレオチドSEQ ID NO:3の集合が、EST配列SEQ ID NO:1をシードを使って行われた。そのシードは、3’端を拡張するプライマー(プライマー・エクステンション)を使ってゲル配列をする(377アプライドバイオシステムズ(ABI)シーケンサー)ことにより拡張された。
【0416】
ポリペプチド(SEQ ID NO:4)は、SEQ ID NO:3によって下記のようにコード化されることが予測された。このポリペプチドは、翻訳された新規性のあるポリヌクレオチドと既知のポリヌクレオチドとの比較に基づいてポリペプチドを選択するBLASTXと呼ばれるソフトウェアプログラムを使って予測された。最初のメチオニンはSEQ ID NO:3の55番目の位置で始まり、推定ストップコンドンTAAはヌクレオチド配列の1330の位置から始まる。
【0417】
図1Aは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEACAM−1)蛋白SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の342アミノ酸残基に関して49%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同342アミノ酸残基に関して34%が同一であることを表している。図1Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEACAM−1)蛋白SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の102アミノ酸残基に関して52%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同102アミノ酸残基に関して37%が同一であることを表している。
【0418】
図2Aは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の342アミノ酸残基に関して49%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同342アミノ酸残基に関して34%が同一であることを表している。図2Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドによりコード化された蛋白質と、ヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列を示しており、2つの配列がSEQ ID NO:4の102アミノ酸残基に関して52%の類似性を持ち、SEQ ID NO:4の同102アミノ酸残基に関して37%が同一であることを表している。
【0419】
予想通り20残基のシグナル・ペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQID NO:8)の大体残基1から残基20によりコード化されている。シグナル・ペプチド部位は、Kyte−Doolittle疎水性予想アルゴリズム(J.Mol Biol,157,pp.105−31(1982)、参照のため本文書に編入)を使って予想できる。
【0420】
eMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:6)の残基363−407にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。又、EMATRIXソフト・パッケージ(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア)(Wu等、J.Comp.Biol.,第6巻、pp.219−235(1999)、参照のため本文書に編入)を使用することにより、可溶性のCEA様ポリペプチドは、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:7)の残基68−112にCEA前駆体アミノ末端基ドメインを持つことが予想される。SEQ ID NO:6−7に対応するドメインは以下の通りである。その場合、A=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンである。
【0421】
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
SQLPSGTWIAGPAHTGREVGFPNCSLLVQKLNLTDTGRYTLKTVT
SEQ ID NO:6)p値8.920e−15、DM00372B(用法指示関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基363−407に位置している。
癌胎児抗原前駆体アミノ末端基ドメイン。
YIVSTGDETPGPAHTGREAVRPDGSLDIQGILPRHSGTYILQTFN
SEQ ID NO:7)p値3.329e−12、DM00372B(シグネチャー関連のID番号)として指定、SEQ ID NO:4の残基68−112に位置している。
【0422】
更にMolecular Simulations Inc.GENEAtlasソフト(Molecular Simulations Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア)で蛋白質データベース検索を行えば、SEQ ID NO:4の残基32乃至120の部位は、SeqFold及びPB90法を用いて、チャイニーズ・ハムスター(Cricetulus griceus)卵巣で発現するヒトの遺伝子組み換え形から、構造的にCD2と同族であることが示される(鎖id=1hnf、確認スコア0.07)。
【0423】
SEQ ID NO:3は次の細胞組織に存在することが決定された:直腸(Invitrogen)(Hyseqライブラリー名REC001)及び胎児の筋肉(Invitrogen)(Hyseqライブラリー名FMS002)。細胞組織発現情報は、SEQ ID NO:3を構成するESTの組織源、及びそういうESTが属するクラスターの他のESTの組織源を使って決定された。クラスターは、実施例1に述べられているような各配列のシグネチャーに基づいて形成された。
【0424】
(実施例 4)
(A.細胞中のSEQ ID NO:4の発現)
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはその他の適切な種類の細胞をDMEM(ATCC)および10%牛の胎児の血清(FBS)(Gibco)で70%合流するまで成長させる。形質移入に先立って、媒質はDMEMと0.5% FCSに変更される。細胞は、SEQ ID NO:3または5に関してcDNAが形質移入される、又はFuGENE−6形質移入試薬(ボーリンガー)を用い、pBGalベクターが形質移入される。
【0425】
要約すれば、FuGENE−6の4μlがDMEM100μlに希釈され、5分間にわたって培養される。その後、これに1μgのDNAが加えられ、15分間培養したのち、CHO細胞の35mmディッシュに加えられる。CHO細胞は、37℃で5%のCO2を加えて培養される。24時間後に、媒質と細胞の溶解産物が収集され、遠心分離され、検定緩衝液で透析された(15mM Tris pH 7.6、134mM NaCl、5Mmグルコース、3mM CaCl2 およびMgCl2)。
【0426】
(B.SEQ ID NO:1−3または5を使った発現研究)
さまざまな組織におけるSEQ ID NO:1−3または5の発現が準定量的ポリメラーゼ連鎖反応をベースとする手法を使って分析された。対象とする組織(成人の膀胱、成人の脳、成人の心臓、成人の腎臓、成人のリンパ節、成人の肝臓、成人の肺、成人の卵巣、成人の胎盤、成人の直腸、成人の脾臓、成人の精巣、骨髄、胸腺、甲状腺、胎児の腎臓、胎児の肝臓、胎児の肝臓−脾臓、胎児の皮膚、胎児の脳、胎児の白血球およびマクロファージ)から得られる発現遺伝子の供給源としてはヒトのcDNAライブラリーが使われた。遺伝子に特異性のあるプライマーを使って、サンプルからSEQ ID NO:1−3または5の部分の増幅が行われた。増幅された生成物は、アガローズゲル上で分離され、移転され、化学的にナイロンフィルタにリンクされた。このフィルタは、次にSEQ ID NO:1−3または5から生成され放射能で標識(33P−dCTP)された2本鎖プローブにより、クレノウポリメラーゼを使い、ランダムプライム法で雑種形成された。そのフィルタを洗浄し(高厳格洗浄)、数時間にわたりホスホイメージングスクリーンに露出させた。できた縞模様が特定のライブラリー内のSEQ ID NO:1−3または5配列を含むcDNAの存在、したがって対応する細胞タイプまたは組織中のmRNA発現の存在を示している。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
図1Aは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図1B】
図1Bは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原関連の細胞付着分子1(CEA−CAM−1)蛋白質SEQ ID NO:11との間の第2BLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について52%の相似性、SEQ ID NO:4の102のアミノ酸残基について37%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図2A】
図2Aは、SEQ ID NO:3(すなわちSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドでコード化された蛋白質とヒトの癌胎児根源CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12との間のBLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於ける両配列はSEQ ID NO:4の342のアミノ酸残基について49%の相似性、SEQ ID NO:4の同342のアミノ酸残基について34%の同一性があることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
【図2B】
図2Bは、SEQ ID NO:3(つまりSEQ ID NO:4)CEA様ポリペプチドとによりコード化された蛋白質とヒトの癌胎児抗原CEA−(c)蛋白質SEQ ID NO:12の間の第2BLASTPアミノ酸配列の比較であり、この部位に於いて両配列はSEQ ID NO:4の102のアミノ酸について52%が相似性、SEQ ID NO:4の同102のアミノ酸について37%が同一であることを示している。同図でA=アラニン、C=システイン、D=アスパラギン酸、E=グルタミン酸、F=フェニルアラニン、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、K=リシン、L=ロイシン、M=メチオニン、N=アスパラギン、P=プロリン、Q=グルタミン、R=アルギニン、S=セリン、T=トレオニン、V=バリン、W=トリプトファン、Y=チロシンを意味する。ギャップは横線で示す。
Claims (30)
- SEQ ID NO:2、3、または5のグループ、その翻訳された蛋白質コーディング部分、その成熟蛋白質コーディング部分、その細胞外部分、またはその活性ドメインから選ばれたヌクレオチド配列を含む、分離されたポリヌクレオチド。
- 生物活性を持つポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドであり、そのポリヌクレオチドは厳しいハイブリダイゼーション(雑種形成)条件の下で請求項1のポリヌクレオチドの補体とハイブリダイズ(雑種形成)する。
- 生物活性を持つポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドであり、該ポリヌクレオチドは請求項1のポリヌクレオチドと約90%より多い配列同一度を持つ。
- 請求項1のポリヌクレオチドで、DNA配列であるもの。
- 請求項1のヌクレオチドの補体からなる分離されたポリヌクレオチド。
- 請求項1のポリヌクレオチドからなるベクター。
- 請求項1のポリヌクレオチドからなる発現ベクター。
- 請求項1のポリヌクレオチドを発現するように、遺伝子工学的に作成された宿主細胞。
- 請求項8の宿主細胞において、宿主細胞のポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列とポリヌクレオチドが機能的に会合しているもの。
- SEQ ID NO:4または6−10のグループ、その翻訳された蛋白質コーディング部分、その成熟蛋白質コーディング部分、その細胞外部分、またはその活性領域から選ばれたアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、分離されたポリペプチド。
- 請求項10のポリペプチドと担体からなる組成物。
- CEA様活性を有し、SEQ ID NO:4または6−10から成るグルプから選ばれたポリペプチド配列の少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
- 請求項12のポリペプチドで、SEQ ID NO: 4または6−10から成るグルプから選ばれたポリペプチド配列の少なくとも5個の連続的アミノ酸を含むもの。
- 請求項12のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド。
- 請求項13のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド。
- 請求項10のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド。
- 請求項10のポリペプチドに特異的な抗体。
- サンプル中の請求項1のポリヌクレオチドを検出する方法で、以下より成るもの:
a)請求項1のポリヌクレオチドと結合して、複合体を形成する化合物に、複合体を形成するのに必要な期間、サンプルを接触させ、
b)その複合体を検出し、複合体が検出されれば、請求項1のポリヌクレオチドが検出されたものとする。 - サンプル中の請求項1のポリヌクレオチドを検出する方法で、以下より成るもの:
a)請求項1のポリヌクレオチドと厳しい雑種形成条件の下で、アニールする核酸プライマーをそのような雑種形成条件下でサンプルを接触させ;
b)請求項1のポリヌクレオチドの少なくとも一部を含む生成物を増幅し;そして
c)該生成物を検出し、それによってサンプル中の請求項1のポリヌクレオチドが存在することを検出する。 - 請求項19の方法において、そのポリヌクレオチドは、RNA分子を含み、さらにその方法はアニールされたRNA分子をcDNAポリヌクレオチドに逆転写することを含む。
- サンプル中の請求項1のポリヌクレオチドを検出する方法で、以下より成るもの:
a)請求項1のポリペプチドと結合して、複合体を形成する化合物に、複合体を形成するに必要な期間と条件下でサンプルを接触させ;
b)その複合体を検出し、複合体が検出されれば、請求項10のポリヌクレオチドが検出されたものとする。 - 請求項10のポリペプチドと結合する化合物を同定する方法で、以下よりなるもの:
a)請求項10のポリペプチドとポリペプチド/化合物の複合体を形成するに必要な期間と条件下で、該化合物を接触させ;
b)複合体を検出し、ポリペプチド/化合物の複合体が検出されれば、請求項10のポリペプチドに結合する化合物が同定されたものとする。 - 請求項10のポリペプチドと結合する化合物を同定する方法で、以下よりなるもの:
a)請求項10のポリペプチドと該化合物を細胞の中で、ポリペプチド/化合物の複合体を形成するに十分な期間だけ接触させて、その複合体によって前記細胞中にレポーター遺伝子配列を発現させ、そして
b)レポーター遺伝子配列発現を検出することによって複合体の存在を検出し、ポリペプチド/化合物の複合体が検出されれば、請求項10のポリペプチドに結合する化合物が同定されたものとする。 - 以下より成るCEA様のポリペプチドの生成方法:
a)請求項8の宿主細胞を前記細胞中にポリペプチドを発現させるために必要な状態で培養し
b)細胞培養物またはステップ(a)の細胞からポリペプチドを分離する。 - 請求項10のポリペプチドから成るキット。
- 請求項1のポリヌクレオチドから成る核酸アレイまたは表面に付着した請求項1のポリヌクレオチド独特なセグメント。
- 請求項26のアレイで、請求項1のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの独特なセグメントに対するフルマッチを検出するアレイ。
- 請求項26のアレイで、請求項1のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの独特なセグメントに対するミスマッチを検出するアレイ。
- 請求項10のCEA様ポリペプチドの発現または活性の強化の必要が求められている対象の治療方法で、以下の項目よりなるグループから選択される組成物を該対象に投与することを含むもの:
(a)該ポリペプチドの作用薬の治療量;
(b)該ポリペプチドの治療量;および
(c)ポリペプチドが生成されるような形態と条件の下で、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの治療量、
および薬学的に妥当な担体。 - 請求項10のCEA様ポリペプチドの発現または活性を抑止する必要が求められている対象の治療方法で以下の項目よりなるグループから選択される組成物の該対象への投与を含むもの:
(a)該ポリペプチドの拮抗薬の治療量;
(b)前記ペプチドをコード化するヌクレオチド配列の発現を抑止するポリヌクレオチドの治療量;および
(c)CEA様ポリペプチドとそのリガンドの獲得を競うポリペプチドの治療量、
および薬学的に妥当な担体。
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