JP2004363859A - アンテナ装置及びそれを用いた電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面実装型アンテナ70と、表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60とを備え、表面実装型アンテナ70が、誘電材料または磁性材料の少なくとも1つからなる基体10と、基体10に形成された第1の放射電極20aと、第1の放射電極20aに電圧を印加するための給電用端子40とを有し、実装基板60の一方主面60aまたは他方主面60bの少なくとも1つ以上に、給電用端子40に静電容量C2を介して接続される少なくとも1つの第Nの放射電極(ここでNは、2以上の整数)20bが配設されてなるアンテナ装置、及びそれを用いた電子機器である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)などに用いられるアンテナ装置であってデュアルバンド(dual band)以上のマルチバンド(multi−band)に好適なもの、及びそれを用いた電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンテナ装置が使用される携帯電話やパソコンなどの電子機器において、1台の電子機器で2つの周波数帯のデュアルバンドなどマルチバンドに対応する信号を送受信して情報処理するニーズが増大している。
【0003】
住宅内や部屋内などの限られたエリア内において、複数の機器の間で、無線LANシステムを構築して、データの送受信を行っている。IEEE802.11b規格では、このような無線LANシステムに用いることができる無線周波数帯として、2.4GHz帯(BluetoothTMとほぼ同じ周波数帯域)が規定されている。
また、IEEE802.11a規格では、無線LANシステムの周波数帯として5GHz帯が開放された。データ転送速度が、IEEE802.11b規格では11Mbpsに対し、IEEE802.11a規格では54Mbpsと更に高速で、ビデオのような大容量のデータ伝送に適し、今後の市場拡大が期待されている。
【0004】
このような携帯電話やパソコンなどの電子機器に使用されるアンテナ装置には、ヌル(NULL)点のない良好な指向性が要求される。
指向性とは受信の場合、各方向に対して受信する電力強度を表したものである。ヌル点とは、その方向から到来する信号を全く受信しない点をいう。
従って、アンテナの指向性にヌル点が存在すると、携帯電話や携帯型パソコンなどの電子機器の受信位置によっては受信が途絶えるという不都合が生じる。
【0005】
また、マルチバンド用のアンテナ装置においては、1つの放射電極で複数の共振周波数を有するアンテナを設計することは困難であった。
【0006】
そこで、図16に示すような、2つの放射電極で2つの共振周波数に対応するアンテナ装置を並設したものが提案された(例えば、特許文献1参照)。
図16において、アンテナ装置80は、基板60と、基板60の一方主面60aに搭載された2つの表面実装型アンテナ70a、70bで構成される。基板60の一方主面60aには給電用電極64と接地電極62aが形成されている。給電用電極64の一端は2つに分けられ、それぞれ2つの表面実装型アンテナ70a、70bの給電用端子40a、40bに接続され、他端は信号処理回路(図示せず)に接続されている。
【0007】
しかし、特許文献1記載のアンテナ装置80においては、指向性、ヌル点に関する技術的課題への解決策は見られない。
また、2つの表面実装型アンテナ70a、70bが必要で、部品点数が多く大型になるという問題がある。別々の表面実装型アンテナ70a、70bを基板60に実装するための製造コストなども問題である。
1つのアンテナ装置でマルチバンドに対応しようとすれば、基板の接地電極に接地された放射電極が1つであるため、単一の周波数帯域に対応するように設計されており、複数の共振周波数を持つものを設計することは困難であるという問題点もあった。複数の周波数帯間の相互干渉などの為であり、即ちアイソレーションが悪かった。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−4117号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような課題を解決するために、本発明者らは、図17に例示するアンテナ装置に係る発明を出願中である(特願2002−268048号)。
この発明は、誘電体または磁性体からなる基体10と、基体10の少なくとも一面に形成された第1の放射電極20aと、第1の放射電極20aの一端に直接接続または容量結合して基体10に形成された接地電極30と、第1の放射電極20aに離間して対向する給電用端子40とを有する表面実装型アンテナ70と、表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60と、実装基板60の表面実装型アンテナ70を実装しない基板面(基板の裏面)60bに配設した第2の放射電極20bとを具備したものである。
表面実装型アンテナ70に形成された第1の放射電極20aと、実装基板60の表面実装型アンテナ70を実装しない基板面(基板の裏面)60bに配設した第2の放射電極20bとは、共に逆F型アンテナを構成してデュアルバンドのアンテナ装置として動作する。
【0010】
特願2002−268048号で出願中の発明によって、特許文献1記載のアンテナ装置における前述の課題、即ち、部品点数、製造コスト、複数の周波数帯間の相互干渉(すなわちアイソレーションが悪化)、周波数帯域を大きく出来ない等の課題は解決された。
しかし、ヌル点の問題を含む指向性については改善の余地が残っている。
【0011】
そこで、本発明は、部品点数が少なく製造コストが安く、アイソレーションが良好で周波数帯域が広いという出願中の発明の特長を保持しつつ、ヌル点の問題を含む指向性が更に改善されたマルチバンドのアンテナ装置、及びそのアンテナ装置を搭載することにより性能の改善された電子機器の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(第1手段)
本発明は、表面実装型アンテナ(70)と、該表面実装型アンテナ(70)を実装する実装基板(60)とを備え、前記表面実装型アンテナ(70)が、誘電材料または磁性材料の少なくとも1つからなる基体(10)と、該基体(10)に形成された第1の放射電極(20a)と、該第1の放射電極(20a)に電圧を印加するための給電用端子(40)とを有し、前記実装基板(60)の一方主面(60a)または他方主面(60b)の少なくとも1つ以上に、前記給電用端子(40)に静電容量(C2)を介して接続される少なくとも1つの第Nの放射電極(ここでNは、2以上の整数)(20b)が配設されてなることを特徴とするアンテナ装置である。
【0013】
(第2手段)
また本発明は、前記実装基板(60)が多層基板で形成され、前記第Nの放射電極(20b)が前記実装基板(60)の一方主面(60a)、他方主面(60b)あるいは中間層(60c,60d,60e・・・)の少なくとも1つ以上に配設された(第1手段)記載のアンテナ装置である。
【0014】
(第3手段)
本発明は更に、画面(92)を有する電子機器(90)であって、(第1手段)または(第2手段)記載のアンテナ装置(80)を、前記実装基板(60)の主面(60a、60b)が前記画面(92)と実質的に平行となるように搭載したことを特徴とする電子機器(90)である。
【0015】
本発明は、前述の特願2002−268048号(以下、「比較例」と呼ぶ)で出願中の発明の改良であり、発明者らの継続的な開発の成果である。
比較例においては逆F型アンテナを組み合わせたが、本発明においてはモノポール型アンテナと逆F型アンテナを組み合わせるように構成を変更した。
その結果、データを基に後述する通り、本発明によるとヌル点の問題を含む指向性も更に改善されたものが得られる。また、それによって安定した無線信号の授受が可能な携帯型パソコンなどの電子機器が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るアンテナ装置80の一実施形態を示す斜視図である。IEEE規格の無線LAN802.11a(5GHz)と802.11b(2.4GHz)のデュアルバンドの例を示す。
図2は、図1を反対側から斜視した図である。図1において基体10の奥側に隠れて位置する給電用端子40と第2の放射電極20bが、手前側に図示される。図1に例示した実施形態のアンテナ装置80は、表面実装型アンテナ70を成す第1の放射電極20aと、表面実装型アンテナ70を搭載する実装基板60の裏面60bにパターン電極で形成された第2の放射電極20bとの組み合わせでデュアルバンドのアンテナ装置80を構成した例を示す。
【0017】
図2において、実装基板60に搭載された表面実装型アンテナ70を形成する第1の放射電極20aと、表面実装型アンテナ70が搭載された主面60aの対向面になる他方主面60bの上にパターン電極で形成された第2の放射電極20bとでデュアルバンドのアンテナ装置70が形成される。
第1の放射電極20aの一端は開放端であり、他端は給電用端子40と接続される。給電用端子40は、実装基板60に印刷法などによるパターンで形成された給電電極64に接続され、給電電極64は図示しない給電源(後述する図3の記号42)に接続される。
他方、第2の放射電極20bは給電源と直接に接続されず、第2の放射電極20bのパターンと接地電極62a,62bなどと形成される静電容量を介して給電源に電気的に接続される。
【0018】
図3はアンテナ装置80の等価回路を示し、図3(a)は本発明に係るアンテナ装置、図3(b)は図17に示した比較例のアンテナ装置を示す。
第1の放射電極20aは2.4GHz帯、第2の放射電極20bは5GHz帯の共振に主として寄与する。
図3(a)に示すように、本発明に係るアンテナ装置は、給電源42に直接接続される2.4GHz帯の第1の放射電極20aと、第1の放射電極20aの給電点(あるいは近接点)より静電容量C2を介して給電される5GHz帯の第2放射電極20bとでなる。静電容量C2は、第2の放射電極20bのパターンと接地電極62a,62bなどとで形成される静電容量である。
第1の放射電極20aと第2放射電極20bは、電極パターンで形成された伝送線路で構成され、伝送線路のインダクタンスと前述の静電容量とで共振回路を形成する。
【0019】
伝送線路のインダクタンスと前述の静電容量とで構成される共振回路と、アンテナ動作との関係を説明する。給電源42から給電用端子40を介して供給された高周波電流は、放射電極のインダクタンスと接地電極62a,62bなどとで形成される静電容量で決まる周波数で共振し、その一部が送信波として空中に放射され、アンテナとして機能する。
逆に、受信波がアンテナに入射した場合は、共振回路によって電圧に変換され、高周波電流が信号処理回路(図示しない)に送られて信号として取り出される。
【0020】
アンテナ装置の動作を、図1〜図3を用いて説明する。給電源42に一端を接続され、他端を開放端とした第1の放射電極20aと、給電源42の給電点(あるいは近接点)から間隙を隔て形成された静電容量を介して給電される第2の放射電極20bは各々、電磁エネルギーの授受をしている。第1の放射電極20a、第2の放射電極20bの自己インダクタンス、第1の放射電極20a、第2の放射電極20bと給電用端子40との間で各々形成される静電容量、及び第1の放射電極20a、第2の放射電極20bと基板の接地電極62a、62bとの間で形成される静電容量などで、LC共振回路が形成される。
従って、給電用端子40から共振回路に信号が入力されると、入力した信号のエネルギーは共振回路内で共振し、その一部が空中に放射されて送信アンテナとして機能する。逆に、受信波が入力されると、共振回路で電圧に変換されて受信アンテナとして機能する。
これにより、各々の放射電極で共振電流が生ずることから、異なる2つ以上の周波数帯域でアンテナが動作する。この原理を利用し、例えば携帯型パソコンの2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンド用無線LANのアンテナとして用いられる。
【0021】
図3(b)に示す比較例のアンテナ装置においては、第1の放射電極20aのパターンと接地電極62a,62bなどとで形成される静電容量C1、第2の放射電極20bのパターンと接地電極62a,62bなどとで形成される静電容量C2を介して、おのおの接続された2つの逆F型アンテナを組み合わせたものであるのに対して、本発明のアンテナ装置においては、第1の放射電極20aはモノポール型アンテナとして、第2放射電極20bは逆F型アンテナとして機能させる。このような構成の違いにより、良好な指向性、ヌル点の無いという本発明の特徴が実現できるものと考えられる。
【0022】
図1に示した実施態様における作用効果を説明する。基体10の寸法は、一実施形態として、幅4mm、長さ10mm、厚さ3mmであり、その材質は比誘電率εr=8のアルミナ系誘電体を用いる。
表面実装型アンテナ70の厚み(図1の符号D)は3mm程度であるが、この表面実装型アンテナ70を実装する基板60(比誘電率εr=5の銅張積層基板)の0.6mm程度の厚み(図1の符号d)を利用したアンテナ装置80にすれば、形成される静電容量における電極間の間隔がD(3mm)からD+d(3.6mm)に増大できる結果、静電容量Cを減少できる。
アンテナの帯域幅は、アンテナ工学でよく知られた数式1で表される量に比例する。
【0023】
【数1】
【0024】
数式1において、R:アンテナの抵抗成分,C:アンテナの静電容量成分,L:アンテナのインダクタンス成分である。他のR、L成分をほぼ等しいとした場合、静電容量Cを減少することにより、アンテナ装置の帯域幅を広げることができる。前述の通り、この実施形態では静電容量Cを減少できるから、アンテナ装置の帯域幅を広げることができる。
【0025】
また、本発明に係るアンテナ装置80においては、第1の放射電極20aと第2の放射電極20bとの幾何学的平均距離が最大に配設できるから、第1の放射電極20aと第2の放射電極20bとの相互干渉も最小となり、アイソレーションが良好である。
【0026】
図1、図2に示す実施形態では、基体10の表面に第1の放射電極20aおよび給電用端子40を形成した表面実装型アンテナ70と、この表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60の裏面60bに第2の放射電極20bを形成し、表面実装型アンテナ70の表面に形成した給電用端子40によりアンテナ装置80を構成した。
【0027】
本発明に係るアンテナ装置80は、それに限定されるものではなく、例えば図4に示すように表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60の表面60aに第2の放射電極20bを形成することも、また図5に示すように表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60を多層基板とし中間層60c,60d,60eなどに第2の放射電極20bを形成してもよい。実装基板60の表面60a、裏面60bと多層基板内部の中間層60c,60d,60e等との電気的接続はビアホール(via hole)等により行う。
【0028】
マルチバンドなどアンテナ素子をN個(ここでNは2以上の整数)備えるアンテナ装置80を構成する場合、実装基板60の表面60a、裏面60b、中間層60c,60d,60eなどを組み合わせて第2放射電極、第3放射電極・・第N放射電極のアンテナ素子を組み合わせることができる。
【0029】
このように種々の構成が自由に選択できるので、本発明に係るアンテナ装置80においては設計の自由度が向上する。
【0030】
第1の放射電極20aのインピ−ダンスマッチングは、給電点とアンテナ素子の間に図示しない整合回路を入れて調整することもできる。例えば、第1放射電極の途中に基体露出部を形成し、給電点と第1放射電極を容量結合する構成が挙げられる。また、第2放射電極20bでは線電極の長さLb(後述の図7参照)や第1の放射電極20aとの距離の調整によりインピーダンスマッチングをとることもできる。
【0031】
基体10の材質は誘電体、磁性体、またはそれらの混合物などが使える。基体10の材質として誘電体を用いる場合には、波長短縮効果によりアンテナを小型化できる。
例えば、一般的なアルミナが使える。Al2O3:92重量%以上,SiO2:6重量%以下,MgO:1.5重量%以下,Fe2O3:0.1%以下,Na2O:0.3重量%以下等が挙げられる。
あるいは、22.22重量%のMgO、63重量%のCaCO3、48.14重量%のTiO2及び24.6重量%のZnOの各原料からなる素体を焼成し、焼成基体として36.6モル%のMgO、3.4モル%のCaO、40モル%のTiO2及び20モル%のZnOからなる誘電セラミックにより形成することもできる。
【0032】
基体10の材質として、より好ましくは、主成分がAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成され、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl2O3、SiO2、SrO、TiO2に換算し合計100質量%としたとき、Al2O3換算で10〜60質量%、SiO2換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO2の換算で20質量%以下のAl、Si、Sr、Tiを含有し、前記合計100質量%に対し副成分として、Bi2O3換算で0.1〜10質量%のBiを含有し、さらにNa2O換算で0.1〜5質量%のNa、K2O換算で0.1〜5質量%のK、CoO換算で0.1〜5質量%のCoのうち少なくとも1種以上を含有していること、前記基体チップの組成で合計100質量%に対し副成分としてBi2O3換算で0.1〜10質量%のBiを含有し、さらにNa2O換算で0.1〜5質量%のNa、K2O換算で0.1〜5質量%のK、Co換算で0.1〜5質量%のCo、CuOの換算で0.01〜5質量%のCu、MnO2換算で0.01〜5質量%のMn、0.01〜5質量%のAgのうち少なくとも1種以上を含有するものが適している。
【0033】
この他にもフォルステライト、チタン酸マグネシウム系やチタン酸カルシウム系、ジルコニア・スズ・チタン系、チタン酸バリウム系や鉛・カルシウム・チタン系などのセラミック材料を用いても良い。必要に応じて公知の誘電体材料を選択できる。
【0034】
基体10の材質として磁性体を用いる場合には、インダクタンスを大きくできるため、更に小型化できるとともに、アンテナのQ値を低下し広帯域化できる。
【0035】
基体10の材質として誘電体と磁性体の混合物を用いる場合には、波長短縮効果によるアンテナの小型化と、アンテナのQ値を低下できることによる広帯域化が可能である。波長短縮効果は、誘電率ε、透磁率μの両方からアンテナ工学で知られた数式2から決るからである。アンテナのQ値は、μ/εがインピーダンスを支配して高める。
【0036】
【数2】
【0037】
図6と図7は、表面実装型アンテナ70を実装する実装基板60の実装面のパターン(フットパターン)を示す図であり、図6は表面実装型アンテナ70(実装位置を破線で示す)を実装する面60aにおけるフットパターン、図7は表面実装型アンテナ70を実装しない面(実装基板60の裏面)60bにおけるフットパターンを示す図である。
図6で、給電電極64は表面実装型アンテナ70の給電用端子40を接続するための端子であり、図示しない給電源に半田付けなどで接続される。
補強パターン66a〜66iは表面実装型アンテナ70の補強パターン50a、50b、50c(図1参照)を半田付け固定するためのパターンである。なお、図1、図2において、補強パターン66a、66bに対応する表面実装型アンテナ70側の補強パターンは使用してない。補強パターンは、電気的な機能は無く、表面実装型アンテナ70を基板60に半田付けなどで実装する際の取付け用のパターンである。これにより実装強度が補強され、耐振動性などが向上する。必要に応じて使用できる。
【0038】
図7(a)で、第2の放射電極20bは表面実装型アンテナ70を実装しない面60bに配設され、一端は接地電極62bに接続され、他端は開放端であり、パターン電極の長さLbを調節することにより簡単に共振周波数を調節することが出来る。
図7(b)に示す比較例においては、接地電極62bと第2の放射電極20bとの静電容量が大きい構成であるのに対して、図7(a)に示す本発明においては静電容量が小さい。
【0039】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
基体10の寸法を幅4mm、長さ10mm、厚さ3mm、材質をアルミナ系セラミックス(比誘電率εr=8)とした表面実装型アンテナ70を、材質がFR−4(銅張積層基板)、厚み0.6mm、寸法50×10mmの評価基板に搭載して、図1に示すように、基板の裏面にパターンで、第2放射電極20bを形成した。
ネットワークアナライザから信号を入力して、2.4GHz帯と5GHz帯の双方について、周波数−VSWR(電圧定在波比)特性、アンテナ指向性、周波数−全方位平均アンテナ利得特性をシールドルーム内で測定した。ターンテーブル上で回転するアンテナ装置から電波を発信し、このうち直接波のみホーンアンテナで受信する構成で、得られた受信電力を元に利得および放射特性を求めた。
【0040】
図1の左下部分に測定方位を図示した。表面実装型アンテナ70の長手方向をZ軸、表面実装型アンテナ70の幅方向をX軸、実装基板60に垂直方向(アンテナ装置80の主面60a,60bの垂直方向)をY軸とした。
図1の右部分にXY面を図示した。前述のX軸とY軸により形成される面であり、アンテナ装置80はZ軸の周りに観点される。XY面における測定開始位置0°が+Y軸、90°位置が+X軸、180°位置が−Y軸、270°位置が−X軸に対応する。このように0°から360°までアンテナの放射特性パターンを測定した。
【0041】
図8と図9に、アンテナ装置のVSWRの周波数特性曲線図を示す。図8は2.4GHz帯、図9は5.2GHz帯のものである。
VSWRは、アンテナと送信機(あるいは受信機)との間での反射の大きさを表す指数である。最も反射が小さい場合が1で、このとき送信機からの供給電力は全く反射せずアンテナに効率よく送り出される。逆に、最も反射が大きい場合は無限大となり、供給電力は完全に反射され無効電力となる。
図8において、2.4GHz帯で、VSWRが1に近い良好な特性を示し、反射電力が10%程度のVSWR=2で(a)本発明と(b)比較例を比べた場合、本発明によると帯域幅が100MHzは広がっていることが分かる。
図9において、5GHz帯で、VSWRが1に近い良好な特性を示し、(a)本発明と(b)比較例を比べた場合、本発明によるとVSWRは1.2〜1.7と、比較例が1.7以上であるのに比べて良好であることが分かる。
【0042】
図10に2450MHzで測定したアンテナ装置のXY面での放射パターン、図11に5500MHzで測定したアンテナ装置のXY面での放射パターンを示す。円グラフの周方向は、30°刻みで軸方向からの角度を示す。半径方向の同心円は等利得線を示し、最外周が+5dB、内側に−5dB、−15dB、−25dBを示す。
実線パターンは水平偏波、破線パターンは垂直偏波に対する放射パターンを示す。
(a)本発明と(b)比較例を比べた場合、本発明に係るアンテナ装置の放射パターンは、特に、図11(a)の破線で表される垂直偏波に対するパターンが著しく改善されていることが分かる。図11(b)では、放射パターンの局所的な減少、すなわちヌル点が多いが、図11(a)ではヌル点が大幅に改善されている。
無線LANにおける中継用アンテナは、無線信号の垂直偏波を用いて信号の授受を行っているから、本発明に係るアンテナ装置の放射パターンは無線LANに好適だと言える。
図10(a)においても垂直偏波特性は真円に近く−5dBi同心円をクリアし、水平偏波特性は対称的な8の字特性を示す。図11(a)の水平偏波特性についても図11(b)に比べると対称性が大幅に改善されている。
【0043】
表1に、測定周波数2450MHz,5500MHzの場合の、アンテナ装置の全方位平均アンテナ利得を、比較例と比べて示す。なお、単位dBiはアイソトロピック利得で、あらゆる方向に等しい強さで電波を出すアンテナ(アイソトロピックアンテナ)を比較基準とした利得で、絶対利得とも呼ばれる。
表1から、本発明に係るアンテナ装置においても、本発明者が出願中の比較例と遜色の無い全方位平均アンテナ利得の得られることが分かる。
【0044】
【表1】
【0045】
図12、図13に、アンテナ装置の感度(全方位平均アンテナ利得)を示す。図12は2.4GHz帯での周波数−アンテナ利得特性曲線を示し、(a)本発明は、(b)比較例と比べて広い周波数帯域に亘って大きなアンテナ利得の得られることが分かる。
図13は5GHz帯での周波数−アンテナ利得特性曲線を示し、(a)本発明は、(b)比較例と比べて遜色ない。
【0046】
前記の実施形態では2.4GHzと5GHzのデュアルバンドの場合を例示したが、本発明は、それに限定されるものではなく、携帯電話に用いられるGSM(0.8GHz),PCS(1.9GHz)、GPS(1.5GHz)、BluetoothTM(2.4GHz)、更にはIEEE規格の無線LANである802.11a(5GHz),802.11b(2.4GHz)の少なくとも二つ以上の周波数帯を組み合わせたマルチバンドを実現できる。
【0047】
(実施例2)
図14、図15を用いて、本発明に係るアンテナ装置80を電子機器90、例えば携帯型パソコンの無線LANに組み込んだ例を説明する。
画面(ディスプレイ)92の左右に一対のダイバーシティアンテナを配置する。図15に、図14の画面92とアンテナ装置80との位置関係を拡大図示する。アンテナ装置80を、実装基板60の主面(表面実装型アンテナ70の主面でもある)が画面92と実質的に平行となるように搭載している。
【0048】
このような携帯型パソコン90をビットエラーレート(BER)試験したところ、本発明に係るアンテナ装置80を搭載したものにおいては良好な結果が得られた。
従って、本発明に係る電子機器90においては、ビットエラーレートが低減し通信品質の劣化を改善できる。その結果、無線LANセル内の全域で高品質で高速の通信を安定に実現することができる。
また、複数本の受信アンテナを設置してそれらを切り替えるダイバーシティ方式においては、信号受信時に当該信号が受信不能に陥った場合、例えば、受信信号にビットエラーが発生した場合に、そのことを検出して前記複数本のダイバーシティ受信アンテナの切り替えを行なう。無線LANなどの無線データ通信システムにおいては、前述したようにビットエラーが発生した後に受信アンテナを切り替えたとしても、アンテナが切り替えられるまでの時間に受信されたビットデータはエラーとなっているため、正常な受信は不可能となる。すなわち、無線データ通信システムにアンテナダイバーシティ方式を採用したとしても、大幅な受信ビットエラーレートの向上は望めないこととなる。
この点からも、本発明に係る電子機器90が無線LANに好適であるといえる。
【0049】
図14、図15において、本発明に係るアンテナ装置80を携帯型パソコン90の画面92の左右に配置した例を説明した。
しかし、このような配置は、本発明に係るアンテナ装置80が特に図11(a)に示すようにXY面において垂直偏波に対するヌル点が実質的に無いという特徴を活かしたものであるから、この特徴を活かせる配置であれば良い。
従って、左右に限定するものではなく、図15(a)の破線で示すように画面92の上枠に配置することもできる。画面92の上枠と画面92の左右枠に分けて配置することもできる。オフィス内のように多数の反射が想定される場合には、2つのアンテナ装置を接近して直角に取り付けることもできる。
【0050】
また、本発明に係るアンテナ装置80は、平面タイプであるため、PCMCIA(Personal Computer MemoryCard International Association)カードタイプの無線LAN装置にも容易に適用可能である。
PCMCIA等の規格に準拠したPCMCIAカードは、携帯型パソコン90に設けられたカードスロットに挿入して用いるだけでなく、その他の無線LANや携帯電話機等にも利用できる。
また、本発明に係るアンテナ装置80は、PCMCIAカードを実装基板60に代用して、第2の放射電極20bをPCMCIAカード上に形成することもできる。
【0051】
以上、本発明に係る電子機器として携帯型パソコンを例にとって具体的な実施形態を示したが、本発明に係る電子機器はそれに限定されるものではなく、携帯電話、無線LANカードを用いた携帯端末、無線を用いた家電機器、無線や赤外線により外部装置との通信可能に構成された眼鏡型映像表示装置(アイディスプレイ)などユビキタス社会における種々の電子機器に適用可能である。
【0052】
なお、本発明に係る電子機器としてはディスプレイ(LCD)などの画面を有するものに好適であるが、それに限定されるものではなく、画面の無い電子機器にも適用可能である。その場合、本発明に係るアンテナ装置の配置については、アンテナ指向性パターンが無線機器の動作に好適になるように適宜、配置すればよい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、1つのアンテナ装置によって、複数の周波数の間での相互干渉も無く広い周波数帯域を有し、指向性、ヌル点が更に改善されたデュアルバンド以上のマルチバンドの周波数帯に用いることが出来るアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1を反対側から見た斜視図である。
【図3】図3(a)は本発明に係るアンテナ装置の等価回路、図3(b)は比較例の等価回路を示す図である。
【図4】本発明に係るアンテナ装置の別の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るアンテナ装置の更に別の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るアンテナ装置のうち表面実装型アンテナを実装する基板の表面のフットパターンを示す図である。
【図7】本発明に係るアンテナ装置のうち表面実装型アンテナを実装する基板の裏面のフットパターンを示す図である。
【図8】図8(a)は本発明に係るアンテナ装置の2.4GHz帯のVSWR−周波数特性を示す図、図8(b)は比較例のアンテナ装置のVSWR−周波数特性を示す図である。
【図9】図9(a)は本発明に係るアンテナ装置の5.2GHz帯のVSWR−周波数特性を示す図、図9(b)は比較例のアンテナ装置におけるVSWRの周波数特性を示す図である。
【図10】図10(a)は本発明に係るアンテナ装置の2.4GHz帯のXY面における放射パターンを示す図、図10(b)は比較例のアンテナ装置のXY面における放射パターンを示す図である。
【図11】図11(a)は本発明に係るアンテナ装置の5.2GHz帯のXY面における放射パターンを示す図、図11(b)は比較例のアンテナ装置のXY面における放射パターンを示す図である。
【図12】図12(a)は本発明に係るアンテナ装置の2.4GHz帯の全方位平均アンテナ利得の周波数特性を示す図、図12(b)は比較例のアンテナ装置における全方位平均アンテナ利得の周波数特性を示す図である。
【図13】図13(a)は本発明に係るアンテナ装置の5.2GHz帯の全方位平均アンテナ利得の周波数特性を示す図、図13(b)は比較例のアンテナ装置における全方位平均アンテナ利得の周波数特性を示す図である。
【図14】本発明に係るアンテナ装置を電子機器である携帯型パソコンに組み込んだ一形態を示す図である。
【図15】図14の部分拡大図である。
【図16】従来のアンテナ装置を示す斜視図である。
【図17】比較例(出願中)のアンテナ装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
10:基体
20:放射電極
20a:第1の放射電極
20b:第2の放射電極
30:接地電極
40:給電用端子
42:給電源
50a〜50c:補強パターン
60:実装基板
60a:表面実装型アンテナを搭載する実装基板の実装面側
60b:実装基板の表面実装型アンテナを搭載しない面(裏面)側
60c,60d,60e:中間層
62a、62b:接地電極
64:給電電極
66a〜66i:補強パターン
70:表面実装型アンテナ
80:アンテナ装置
90:電子機器
92:画面
C1,C2:静電容量
D:基体の厚み
d:実装基板の厚み
Lb:第2の放射電極20bの長さ
Claims (3)
- 表面実装型アンテナと、該表面実装型アンテナを実装する実装基板とを備え、
前記表面実装型アンテナが、誘電材料または磁性材料の少なくとも1つからなる基体と、該基体に形成された第1の放射電極と、該第1の放射電極に電圧を印加するための給電用端子とを有し、
前記実装基板の一方主面または他方主面の少なくとも1つ以上に、前記給電用端子に静電容量を介して接続される少なくとも1つの第Nの放射電極(ここでNは、2以上の整数)が配設されてなることを特徴とするアンテナ装置。 - 前記実装基板が多層基板で形成され、前記第Nの放射電極が前記実装基板の一方主面、他方主面、中間層の少なくとも1つ以上に配設されたことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
- 画面を有する電子機器であって、
請求項1または2記載のアンテナ装置を、前記実装基板の主面が前記画面と実質的に平行となるように搭載したことを特徴とする電子機器。
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