JP2004359496A - リチウム化合物合成装置およびリチウム化合物の合成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させ、種々のリチウム化合物を効率良く簡便に合成できる装置を提供する。また、その装置を用い、リチウム化合物を効率良く簡便に合成できる方法を提供する。
【解決手段】リチウム化合物合成装置1を、リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器6と、反応容器6に反応ガスを供給する反応ガス供給手段2と、反応容器6内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段3、4と、反応容器6内の温度を上昇させる加熱手段7と、を備えて構成する。加圧手段3、4および加熱手段7により、反応ガス圧力および反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができ、種々のリチウム化合物を効率的に合成することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】リチウム化合物合成装置1を、リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器6と、反応容器6に反応ガスを供給する反応ガス供給手段2と、反応容器6内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段3、4と、反応容器6内の温度を上昇させる加熱手段7と、を備えて構成する。加圧手段3、4および加熱手段7により、反応ガス圧力および反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができ、種々のリチウム化合物を効率的に合成することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させて、リチウム化合物を合成するリチウム化合物合成装置、およびそれを用いたリチウム化合物の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無機物と水素、酸素等の反応ガスとを反応させて、有用な無機化合物が種々製造されている。例えば、金属と水素との反応から得られる金属水素化合物は、水素を可逆的に吸蔵・放出できる水素貯蔵材料として重要である。なかでも、リチウムを含むリチウム水素化合物は、有用な水素貯蔵材料の一つとして注目されており、今後の開発が期待される。しかしながら、リチウムを含む無機物原料は、水素と反応し難いため、種々のリチウム水素化合物を効率的に合成する技術は未だ確立されていない。
【0003】
水素化合物を合成する方法として、例えば、金属と水素ガスとの直接反応による直接合成法、酸化物の還元法、有機溶媒を用いる化学反応法等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
大角泰章著,「新版 水素吸蔵合金−その物性と応用−」,株式会社アグ ネ技術センター,1999年2月5日,p25−28
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
金属と水素ガスとの直接合成法では、通常、使用される水素ガスの圧力が0.1〜20MPa程度と低い。そのため、水素ガスとの反応速度が遅い金属を原料に含む場合、直接合成法により水素化合物を得ることは困難である。なお、アンビル等を用いた機械的な高圧合成装置を利用することもできるが、同装置では、反応中の水素圧力や温度を制御し難いため、反応を充分に進行させることは難しい。また、機械的な高圧合成装置では、水素ガスの供給源として、NaBH4等の固体水素源を用いることになる。固体水素源から水素を放出させるには、真空下での加熱が必要となるため、リチウム等の原料の蒸発が問題になる。また、高真空にすることは難しいため、原料の酸化の影響も排除できない。
【0006】
一方、化学反応法では、使用できる原料や試薬が限られてしまい、反応条件に自由度も無い。よって、合成できる水素化合物の種類は限定され、種々の水素化合物の合成には不向きである。
【0007】
このように、従来の方法、装置では、リチウムを含む無機物原料から、種々のリチウム水素化合物を合成することは容易ではない。本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させ、種々のリチウム化合物を効率良く簡便に合成できる装置を提供することを課題とする。また、その装置を用い、リチウム化合物を効率良く簡便に合成できる方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のリチウム化合物合成装置は、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させて、リチウム化合物を合成するリチウム化合物合成装置であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器と、該反応容器に前記反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、該反応容器内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段と、該反応容器内の温度を上昇させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のリチウム化合物合成装置では、加圧手段および加熱手段により、反応容器内の反応ガス圧力および温度を任意に設定することができる。そのため、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとの反応性が低くても、反応ガス圧力、温度、反応時間を適宜調整することで、効率良くリチウム化合物を合成することができる。
【0010】
(2)例えば、反応ガスに水素を用いれば、本発明の合成装置によりリチウム水素化合物を合成することができる。この場合、加圧手段により、反応容器内の水素圧力を200MPa程度の超高圧とすると、無機物原料の表面に吸着した水素分子は解離して水素原子となり、解離した水素原子は無機物原料の内部に拡散して水素化合物を形成する。水素の超高圧下では、無機物原料に水素が吸蔵されるとともに、格子欠陥も導入される。格子欠陥が導入されることで、熱力学的に安定化し、さらに多くの水素が吸蔵されると考えられる。
【0011】
(3)本発明の合成装置における加圧手段は、反応容器内の反応ガス圧力を10MPa以上に上昇させることができる態様が望ましい。また、反応ガス圧力を20MPa以上とより高圧にすることで、従来の低圧条件下で合成できなかったリチウム化合物であっても、合成することが可能となる。加圧手段の加圧範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、20MPa以上200MPa以下の範囲とすると好適である。
【0012】
(4)本発明の合成装置では、反応容器の上流側に、反応容器に供給される反応ガス中の不純物を除去する反応ガス純化手段を備えることが望ましい。供給される反応ガス中の不純物を除去することにより、無機物原料と反応ガスとの反応を促進することができ、また、合成されるリチウム化合物の純度をも高めることができる。
【0013】
(5)また、本発明の合成装置では、反応容器内のガスを排気して、該反応容器内のガス置換および反応ガス圧力の調整の少なくとも一方を行う減圧手段を備えることが望ましい。このような減圧手段を備えることで、例えば、反応容器内のガス置換をすることができる。具体的には、無機物原料を反応容器に収容した後、反応容器内のガスを排気して真空雰囲気にする。これにより、反応容器中の不要なガスを除去することができ、無機物原料の酸化等を抑制することができる。特に、水素との反応の場合には、予め真空雰囲気と水素雰囲気とを交互に繰り返すことで、無機物原料の活性化処理を行うことができる。
【0014】
また、減圧手段を備えることで、例えば、反応容器内の反応ガス圧力を自由に調整することができる。具体的には、加圧手段により所定の圧力にされた反応容器から、反応ガスを所定量排気することで、反応容器内の反応ガス圧を調整することができる。これにより、無機物原料の種類に応じて、反応ガス圧力を制御することができ、無機物原料と反応ガスとの反応を効率よく進行させることができる。
【0015】
(6)本発明の合成装置では、反応容器は取り外し可能であることが望ましい。反応容器を合成装置本体から取り外し可能とすることで、例えば、無機物原料の反応容器への収容作業を、不活性ガス雰囲気等の合成装置の設置場所とは異なる別の場所で行うことができる。これにより、大気による無機物原料の酸化が抑制されるとともに、作業性も向上する。また、反応後のリチウム化合物を取り出す場合にも、上記同様、酸化を抑制することができ、作業性が向上する。
【0016】
(7)本発明の第一のリチウム化合物の合成方法は、上述した本発明のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の反応ガス圧力を、10MPa以上200MPa以下の範囲で繰り返し上昇、低下させることを特徴とする。
【0017】
すなわち、本発明の合成方法は、上記(1)〜(6)で述べた本発明の合成装置を用いてリチウム化合物を合成する際に、反応ガス圧力を所定の圧力範囲で適宜上昇、低下させる。これにより、反応ガスと反応し難い無機物原料であっても、反応を促進させることができる。
【0018】
(8)本発明の第二のリチウム化合物の合成方法は、上述した本発明のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の温度を100℃以上800℃以下の範囲で繰り返し上昇、低下させることを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明の合成方法は、上記(1)〜(6)で述べた本発明の合成装置を用いてリチウム化合物を合成する際に、反応容器内の温度を所定の範囲で適宜上昇、低下させる。これにより、反応ガスと反応し難い無機物原料であっても、反応を促進させることができる。
【0020】
なお、上記本発明の第一および第二のリチウム化合物の合成方法を組み合わせた態様を採用してもよい。すなわち、無機物原料を収容した反応容器内の反応ガス圧力を、10MPa以上200MPa以下の範囲で繰り返し上昇、低下させるとともに、該反応容器内の温度を100℃以上800℃以下の範囲で繰り返し上昇、低下させて合成してもよい。この態様によれば、無機物原料と反応ガスとの反応がより促進される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のリチウム化合物合成装置の実施形態を詳しく説明する。なお、本発明の合成装置の実施形態を説明する中で、本発明のリチウム化合物の合成方法についても述べる。
【0022】
(1)まず、本発明の一実施形態であるリチウム化合物合成装置の構成を説明する。図1に、リチウム化合物合成装置の概略を示す。図1に示すように、リチウム化合物合成装置1は、水素ボンベ2と、ブースターポンプ3と、リザーブタンク4と、水素精製装置5と、反応容器6と、ヒーター7と、真空ポンプ8とを備える。
【0023】
水素ボンベ2は、反応ガスとしての水素を、後述する反応容器6に供給する。水素ボンベ2は、本発明の合成装置を構成する反応ガス供給手段に含まれる。
【0024】
ブースターポンプ3は、水素ボンベ2の下流に配置され、水素ボンベ2から供給された水素の圧力を上昇させる。ブースターポンプ3は、200MPaまで加圧可能である。また、リザーブタンク4は、ステンレス鋼製の耐圧タンクであり、水素ボンベ2の下流にブースターポンプ3と並列に配置される。リザーブタンク4は、ブースターポンプ3により高圧とされた水素を一旦貯留する。リザーブタンク4の許容圧力は90MPaである。ブースターポンプ3およびリザーブタンク4は、本発明の合成装置を構成する加圧手段に含まれる。
【0025】
水素精製装置5は、ブースターポンプ3およびリザーブタンク4の下流に配置される。水素精製装置5では、チタンワイヤを繰り返し巻き付けたゲッターが700〜800℃に加熱される。加熱されたゲッターを水素が通過することで、水素中の酸素、窒素、炭素、水分等の不純物が除去される。水素精製装置5は、本発明の合成装置を構成する反応ガス純化手段に含まれる。
【0026】
反応容器6は、インコネル625製であり、水素精製装置5の下流に配置される。反応容器6のシールには、メタルシールとフッ素系オーリングとが二重に用いられる。反応容器6は、バルブFとバルブGとの両側で取り外すことができる。反応容器6の中には、Ta製の試料るつぼ61が設置される。試料るつぼ61の中に、リチウムを含む無機物原料として粉末状のLi3Nが収容される。
【0027】
ヒーター7は、反応容器6における、試料るつぼ61が設置された部分の周囲を覆うよう配置される。ヒーター7に通電することで、反応容器6が加熱される。ヒーター7は、本発明の合成装置を構成する加熱手段に含まれる。
【0028】
真空ポンプ8は、反応容器6の下流に配置される。真空ポンプ8は、反応容器6内のガスを排気することにより、反応容器6内のガス置換および水素圧力の調整を行う。真空ポンプ8は、本発明の合成装置を構成する減圧手段に含まれる。
【0029】
(2)次に、上記リチウム化合物合成装置によるリチウム水素化合物の合成プロセスの一例を説明する。ここでは、Li3NからLiNH2を合成する。なお、リチウム化合物合成装置1に配置されたバルブA〜Gは、合成開始時には閉じられている。
【0030】
まず、バルブGを開け、真空ポンプ8により反応容器6内のガスを排気して、反応容器6内を真空雰囲気とする。バルブGを閉じた後、バルブA、B、E、F、を開け、水素ボンベ2より水素を反応容器6に導入し、反応容器6内を一旦水素雰囲気とする。その後、バルブA、B、E、F、を閉じ、再度バルブGを開け、真空ポンプ8により反応容器6内のガスを排気して、反応容器6内を真空雰囲気とする。この操作により、Li3N粉末の表面に付着していた不純物は除去され、Li3N粉末は活性化される。
【0031】
次に、バルブGを閉じ、ヒーター7により反応容器6を加熱する。反応容器6内の温度が所定の温度に達した後、バルブA、B、Dを開け、水素ボンベ2より水素を導入する。ブースターポンプ3を駆動して水素を加圧し、加圧された水素を、一旦リザーブタンク4に貯留する。リザーブタンク4内の水素圧力が所定の圧力に達したら、加圧をやめ、バルブA、Bを閉じる。そして、バルブE、Fを開け、リザーブタンク4より水素精製装置5を介して、高圧水素を反応容器6に供給する。反応容器6内を、所定の温度、水素圧力の状態で所定時間保持することにより、リチウム水素化合物であるLiNH2が合成される。
【0032】
(3)上記実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。第一に、ブースターポンプ3を用いることで、反応容器6内の水素圧力を高圧にすることができる。よって、低水素圧条件下では反応が進行しなかった無機物原料からでも、リチウム水素化合物を合成することができる。
【0033】
第二に、ブースターポンプ3、真空ポンプ8、ヒーター7により、水素圧力、反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができる。その結果、種々のリチウム水素化合物を効率的に合成することができる。また、反応容器6内の水素圧力や温度を、繰り返し上昇、低下させることも可能であり、その結果、反応をより促進させることができる。
【0034】
第三に、水素精製装置5により、供給される水素中の酸素、窒素、炭素、水分等が除去されるため、反応をより促進させ、合成されるリチウム水素化合物の純度を高くすることができる。
【0035】
第四に、真空ポンプ8により、反応容器6内のガス置換を行うことで、無機物原料の酸化を抑制することができる。また、真空雰囲気→水素雰囲気→真空雰囲気とすることで、無機物原料の活性化処理も行うことができる。さらに、反応容器6内を所定の圧力まで水素加圧した後に、真空ポンプ8により水素を排気することで、反応容器6内の水素圧力を調整することもできる。
【0036】
第五に、反応容器6はリチウム化合物合成装置1から取り外しできるため、無機物原料の反応容器6への収容作業を、不活性ガス雰囲気等の別の場所で行うことができる。これにより、大気による無機物原料の酸化が抑制されるとともに、作業性も向上する。また、反応後のリチウム化合物を取り出す場合にも、酸化を抑制することができ、作業性が向上する。
【0037】
(4)他の実施形態
上記実施形態では、反応ガスとして水素を使用した。しかし、反応ガスは水素に限定されるものではなく、目的とするリチウム化合物に応じて、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等の種々のガスを用いることができる。また、反応ガスは、一種類のガスでもよいが、例えば、水素と窒素とを混合した混合ガス等、二種類以上のガスを用いてもよい。無機物原料は、リチウムが含まれていれば特に限定されるものではない。Li3N、LiH、Mg−Li等のリチウムを含む無機物の一種を単独で、あるいは二種類以上を混合して用いることができる。また、LiH、LiAlH4、LiBH4等のリチウムを含む無機物と、Al、B、C、Mg等のリチウムを含まない無機物とを混合して用いてもよい。さらに、リチウム(Li)を単独で用いてもよい。
【0038】
上記実施形態では、水素を供給するために水素ボンベを使用した。しかし、反応ガス供給手段は、反応ガスを供給することができればよく、その形態が特に限定されるものではない。また、加圧手段として、ブースターポンプとリザーブタンクとを併用した。しかし、リザーブタンクは、必ずしも必要ではなく、ブースターポンプのみを用いて、反応容器内の反応ガスを直接加圧してもよい。なお、加圧する装置は、ブースターポンプに限定されるものではない。
【0039】
上記実施形態では、加熱手段としてヒーターを使用した。しかし、加熱手段は、特に限定されるものではなく、反応容器を所定の温度に加熱し、その状態を維持できるものであればよい。
【0040】
また、反応容器の材質および構造も、耐熱性および耐圧性を考慮して、種々の態様を採用することができる。例えば、反応容器の材質として、インコネルの他、ハステロイ等のニッケル基耐熱合金等が好適である。また、上記実施形態では、反応容器と無機物原料との反応を考慮して、反応容器の中に試料るつぼを設置し、該試料るつぼの中に無機物原料を収容した。しかし、無機物原料を直接反応容器に収容する態様でも構わない。さらに、反応容器は、合成装置本体から取り外しできない構造であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、反応ガス純化手段と減圧手段とを備えてリチウム化合物合成装置を構成した。しかし、両手段を備えない態様でもよく、両手段のうちいずれか一方のみを備える態様でもよい。ここで、反応ガス純化手段は、反応ガスの種類に応じて、また、不純物として除去したい成分に応じて、適宜最適な手法を採用すればよい。また、減圧手段も、特に限定されるものではなく、反応容器内のガスを排気できる手法を採用すればよい。
【0042】
上記実施形態では、反応容器を所定の温度、圧力に保持して合成を行った。しかし、反応容器内の温度を、所定の温度から一旦低下させ、再び上昇させて合成を行ってもよい。また、反応ガス圧力を、所定の圧力から一旦低下させ、再び上昇させて合成を行ってもよい。このように、反応温度や反応ガス圧力を、所定の範囲で繰り返し上昇、低下させることにより、反応をより促進することができる。
【0043】
【実施例】
上記実施形態で示したリチウム化合物合成装置を使用して、種々のリチウム水素化合物を合成した。以下、順に述べる。
【0044】
(1)LiNH2の合成
リチウムを含む無機物原料としてLi3N粉末を用い、LiNH2を合成した。まず、反応容器をリチウム化合物合成装置から取り外し、アルゴンガスで満たされたグローブボックス中に設置した。そこで、反応容器内の試料るつぼにLi3N粉末をを収容した。その後、反応容器を密閉し、グローブボックスから取り出して、リチウム化合物合成装置に取り付けた。
【0045】
次に、真空ポンプにより反応容器内のガスを排気して、反応容器内を真空雰囲気とした。その後、水素ボンベより水素を反応容器に導入し、反応容器内を約2MPaの水素雰囲気とした。続いて、真空ポンプにより反応容器内のガスを排気して、反応容器内を再度真空雰囲気とした。
【0046】
次に、ヒーターにより反応容器を加熱した。反応容器内の温度が300℃に達し安定した後、高圧水素の反応容器への供給を開始した。高圧水素の供給は、以下の手順で行った。まず、水素ボンベより供給された水素を、ブースターポンプにより加圧して、リザーブタンクに貯留した。リザーブタンク内の水素圧力が35MPaに達した後、加圧をやめた。次いで、35MPaの高圧水素を、リザーブタンクから水素精製装置を介して反応容器に供給した。反応容器内を、300℃、35MPaの水素圧力とした状態で、約2時間保持した。その後、ヒーターの出力を下げて、反応容器を常温まで冷却した。さらに、真空ポンプにて反応容器内の水素を排気して、反応容器内の水素圧力を0.2MPaとした。続いて、反応容器をリチウム化合物合成装置から取り外し、上述したグローブボックス中に設置した。そこで、反応容器から合成物を取り出した。合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiNH2を主相とするリチウム水素化合物であることが確認された。
【0047】
(2)LiAlH4の合成
リチウムを含む無機物原料としてLiH、Alの各粉末を用い、LiAlH4を合成した。上記(1)のLiNH2の合成において、無機物原料を変更し、反応容器内の水素圧力を200MPaとした以外は、上記(1)と同様にして合成した。得られた合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiAlH4であることが確認された。
【0048】
(3)LiBH4の合成
リチウムを含む無機物原料としてLiH、Bの各粉末を用い、LiBH4を合成した。上記(1)のLiNH2の合成において、無機物原料を変更し、反応容器内の温度を400℃、水素圧力を90MPaとした以外は、上記(1)と同様にして合成した。得られた合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiBH4であることが確認された。
【0049】
【発明の効果】
本発明のリチウム化合物合成装置は、リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器と、該反応容器に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、該反応容器内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段と、該反応容器内の温度を上昇させる加熱手段と、を備える。本発明のリチウム化合物合成装置では、加圧手段により反応容器内の反応ガス圧力を高圧にすることができる。よって、低圧条件下では反応が進行しなかった無機物原料からでも、リチウム化合物の合成が可能となる。また、加圧手段および加熱手段により、反応ガス圧力および反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができる。その結果、種々のリチウム化合物を効率的に合成することができる。
【0050】
また、本発明のリチウム化合物の合成方法では、上記本発明のリチウム化合物合成装置を用い、反応容器内の反応ガス圧力あるいは温度を、繰り返し上昇、低下させる。それにより、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとの反応を、より促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるリチウム化合物合成装置の概略を示す。
【符号の説明】
1:リチウム化合物合成装置 2:水素ボンベ(反応ガス供給手段)
3:ブースターポンプ(加圧手段) 4:リザーブタンク(加圧手段)
5:水素精製装置(反応ガス純化手段)
6:反応容器 61:試料るつぼ
7:ヒーター(加熱手段) 8:真空ポンプ(減圧手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させて、リチウム化合物を合成するリチウム化合物合成装置、およびそれを用いたリチウム化合物の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無機物と水素、酸素等の反応ガスとを反応させて、有用な無機化合物が種々製造されている。例えば、金属と水素との反応から得られる金属水素化合物は、水素を可逆的に吸蔵・放出できる水素貯蔵材料として重要である。なかでも、リチウムを含むリチウム水素化合物は、有用な水素貯蔵材料の一つとして注目されており、今後の開発が期待される。しかしながら、リチウムを含む無機物原料は、水素と反応し難いため、種々のリチウム水素化合物を効率的に合成する技術は未だ確立されていない。
【0003】
水素化合物を合成する方法として、例えば、金属と水素ガスとの直接反応による直接合成法、酸化物の還元法、有機溶媒を用いる化学反応法等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
大角泰章著,「新版 水素吸蔵合金−その物性と応用−」,株式会社アグ ネ技術センター,1999年2月5日,p25−28
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
金属と水素ガスとの直接合成法では、通常、使用される水素ガスの圧力が0.1〜20MPa程度と低い。そのため、水素ガスとの反応速度が遅い金属を原料に含む場合、直接合成法により水素化合物を得ることは困難である。なお、アンビル等を用いた機械的な高圧合成装置を利用することもできるが、同装置では、反応中の水素圧力や温度を制御し難いため、反応を充分に進行させることは難しい。また、機械的な高圧合成装置では、水素ガスの供給源として、NaBH4等の固体水素源を用いることになる。固体水素源から水素を放出させるには、真空下での加熱が必要となるため、リチウム等の原料の蒸発が問題になる。また、高真空にすることは難しいため、原料の酸化の影響も排除できない。
【0006】
一方、化学反応法では、使用できる原料や試薬が限られてしまい、反応条件に自由度も無い。よって、合成できる水素化合物の種類は限定され、種々の水素化合物の合成には不向きである。
【0007】
このように、従来の方法、装置では、リチウムを含む無機物原料から、種々のリチウム水素化合物を合成することは容易ではない。本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させ、種々のリチウム化合物を効率良く簡便に合成できる装置を提供することを課題とする。また、その装置を用い、リチウム化合物を効率良く簡便に合成できる方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のリチウム化合物合成装置は、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させて、リチウム化合物を合成するリチウム化合物合成装置であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器と、該反応容器に前記反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、該反応容器内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段と、該反応容器内の温度を上昇させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のリチウム化合物合成装置では、加圧手段および加熱手段により、反応容器内の反応ガス圧力および温度を任意に設定することができる。そのため、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとの反応性が低くても、反応ガス圧力、温度、反応時間を適宜調整することで、効率良くリチウム化合物を合成することができる。
【0010】
(2)例えば、反応ガスに水素を用いれば、本発明の合成装置によりリチウム水素化合物を合成することができる。この場合、加圧手段により、反応容器内の水素圧力を200MPa程度の超高圧とすると、無機物原料の表面に吸着した水素分子は解離して水素原子となり、解離した水素原子は無機物原料の内部に拡散して水素化合物を形成する。水素の超高圧下では、無機物原料に水素が吸蔵されるとともに、格子欠陥も導入される。格子欠陥が導入されることで、熱力学的に安定化し、さらに多くの水素が吸蔵されると考えられる。
【0011】
(3)本発明の合成装置における加圧手段は、反応容器内の反応ガス圧力を10MPa以上に上昇させることができる態様が望ましい。また、反応ガス圧力を20MPa以上とより高圧にすることで、従来の低圧条件下で合成できなかったリチウム化合物であっても、合成することが可能となる。加圧手段の加圧範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、20MPa以上200MPa以下の範囲とすると好適である。
【0012】
(4)本発明の合成装置では、反応容器の上流側に、反応容器に供給される反応ガス中の不純物を除去する反応ガス純化手段を備えることが望ましい。供給される反応ガス中の不純物を除去することにより、無機物原料と反応ガスとの反応を促進することができ、また、合成されるリチウム化合物の純度をも高めることができる。
【0013】
(5)また、本発明の合成装置では、反応容器内のガスを排気して、該反応容器内のガス置換および反応ガス圧力の調整の少なくとも一方を行う減圧手段を備えることが望ましい。このような減圧手段を備えることで、例えば、反応容器内のガス置換をすることができる。具体的には、無機物原料を反応容器に収容した後、反応容器内のガスを排気して真空雰囲気にする。これにより、反応容器中の不要なガスを除去することができ、無機物原料の酸化等を抑制することができる。特に、水素との反応の場合には、予め真空雰囲気と水素雰囲気とを交互に繰り返すことで、無機物原料の活性化処理を行うことができる。
【0014】
また、減圧手段を備えることで、例えば、反応容器内の反応ガス圧力を自由に調整することができる。具体的には、加圧手段により所定の圧力にされた反応容器から、反応ガスを所定量排気することで、反応容器内の反応ガス圧を調整することができる。これにより、無機物原料の種類に応じて、反応ガス圧力を制御することができ、無機物原料と反応ガスとの反応を効率よく進行させることができる。
【0015】
(6)本発明の合成装置では、反応容器は取り外し可能であることが望ましい。反応容器を合成装置本体から取り外し可能とすることで、例えば、無機物原料の反応容器への収容作業を、不活性ガス雰囲気等の合成装置の設置場所とは異なる別の場所で行うことができる。これにより、大気による無機物原料の酸化が抑制されるとともに、作業性も向上する。また、反応後のリチウム化合物を取り出す場合にも、上記同様、酸化を抑制することができ、作業性が向上する。
【0016】
(7)本発明の第一のリチウム化合物の合成方法は、上述した本発明のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の反応ガス圧力を、10MPa以上200MPa以下の範囲で繰り返し上昇、低下させることを特徴とする。
【0017】
すなわち、本発明の合成方法は、上記(1)〜(6)で述べた本発明の合成装置を用いてリチウム化合物を合成する際に、反応ガス圧力を所定の圧力範囲で適宜上昇、低下させる。これにより、反応ガスと反応し難い無機物原料であっても、反応を促進させることができる。
【0018】
(8)本発明の第二のリチウム化合物の合成方法は、上述した本発明のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の温度を100℃以上800℃以下の範囲で繰り返し上昇、低下させることを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明の合成方法は、上記(1)〜(6)で述べた本発明の合成装置を用いてリチウム化合物を合成する際に、反応容器内の温度を所定の範囲で適宜上昇、低下させる。これにより、反応ガスと反応し難い無機物原料であっても、反応を促進させることができる。
【0020】
なお、上記本発明の第一および第二のリチウム化合物の合成方法を組み合わせた態様を採用してもよい。すなわち、無機物原料を収容した反応容器内の反応ガス圧力を、10MPa以上200MPa以下の範囲で繰り返し上昇、低下させるとともに、該反応容器内の温度を100℃以上800℃以下の範囲で繰り返し上昇、低下させて合成してもよい。この態様によれば、無機物原料と反応ガスとの反応がより促進される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のリチウム化合物合成装置の実施形態を詳しく説明する。なお、本発明の合成装置の実施形態を説明する中で、本発明のリチウム化合物の合成方法についても述べる。
【0022】
(1)まず、本発明の一実施形態であるリチウム化合物合成装置の構成を説明する。図1に、リチウム化合物合成装置の概略を示す。図1に示すように、リチウム化合物合成装置1は、水素ボンベ2と、ブースターポンプ3と、リザーブタンク4と、水素精製装置5と、反応容器6と、ヒーター7と、真空ポンプ8とを備える。
【0023】
水素ボンベ2は、反応ガスとしての水素を、後述する反応容器6に供給する。水素ボンベ2は、本発明の合成装置を構成する反応ガス供給手段に含まれる。
【0024】
ブースターポンプ3は、水素ボンベ2の下流に配置され、水素ボンベ2から供給された水素の圧力を上昇させる。ブースターポンプ3は、200MPaまで加圧可能である。また、リザーブタンク4は、ステンレス鋼製の耐圧タンクであり、水素ボンベ2の下流にブースターポンプ3と並列に配置される。リザーブタンク4は、ブースターポンプ3により高圧とされた水素を一旦貯留する。リザーブタンク4の許容圧力は90MPaである。ブースターポンプ3およびリザーブタンク4は、本発明の合成装置を構成する加圧手段に含まれる。
【0025】
水素精製装置5は、ブースターポンプ3およびリザーブタンク4の下流に配置される。水素精製装置5では、チタンワイヤを繰り返し巻き付けたゲッターが700〜800℃に加熱される。加熱されたゲッターを水素が通過することで、水素中の酸素、窒素、炭素、水分等の不純物が除去される。水素精製装置5は、本発明の合成装置を構成する反応ガス純化手段に含まれる。
【0026】
反応容器6は、インコネル625製であり、水素精製装置5の下流に配置される。反応容器6のシールには、メタルシールとフッ素系オーリングとが二重に用いられる。反応容器6は、バルブFとバルブGとの両側で取り外すことができる。反応容器6の中には、Ta製の試料るつぼ61が設置される。試料るつぼ61の中に、リチウムを含む無機物原料として粉末状のLi3Nが収容される。
【0027】
ヒーター7は、反応容器6における、試料るつぼ61が設置された部分の周囲を覆うよう配置される。ヒーター7に通電することで、反応容器6が加熱される。ヒーター7は、本発明の合成装置を構成する加熱手段に含まれる。
【0028】
真空ポンプ8は、反応容器6の下流に配置される。真空ポンプ8は、反応容器6内のガスを排気することにより、反応容器6内のガス置換および水素圧力の調整を行う。真空ポンプ8は、本発明の合成装置を構成する減圧手段に含まれる。
【0029】
(2)次に、上記リチウム化合物合成装置によるリチウム水素化合物の合成プロセスの一例を説明する。ここでは、Li3NからLiNH2を合成する。なお、リチウム化合物合成装置1に配置されたバルブA〜Gは、合成開始時には閉じられている。
【0030】
まず、バルブGを開け、真空ポンプ8により反応容器6内のガスを排気して、反応容器6内を真空雰囲気とする。バルブGを閉じた後、バルブA、B、E、F、を開け、水素ボンベ2より水素を反応容器6に導入し、反応容器6内を一旦水素雰囲気とする。その後、バルブA、B、E、F、を閉じ、再度バルブGを開け、真空ポンプ8により反応容器6内のガスを排気して、反応容器6内を真空雰囲気とする。この操作により、Li3N粉末の表面に付着していた不純物は除去され、Li3N粉末は活性化される。
【0031】
次に、バルブGを閉じ、ヒーター7により反応容器6を加熱する。反応容器6内の温度が所定の温度に達した後、バルブA、B、Dを開け、水素ボンベ2より水素を導入する。ブースターポンプ3を駆動して水素を加圧し、加圧された水素を、一旦リザーブタンク4に貯留する。リザーブタンク4内の水素圧力が所定の圧力に達したら、加圧をやめ、バルブA、Bを閉じる。そして、バルブE、Fを開け、リザーブタンク4より水素精製装置5を介して、高圧水素を反応容器6に供給する。反応容器6内を、所定の温度、水素圧力の状態で所定時間保持することにより、リチウム水素化合物であるLiNH2が合成される。
【0032】
(3)上記実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。第一に、ブースターポンプ3を用いることで、反応容器6内の水素圧力を高圧にすることができる。よって、低水素圧条件下では反応が進行しなかった無機物原料からでも、リチウム水素化合物を合成することができる。
【0033】
第二に、ブースターポンプ3、真空ポンプ8、ヒーター7により、水素圧力、反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができる。その結果、種々のリチウム水素化合物を効率的に合成することができる。また、反応容器6内の水素圧力や温度を、繰り返し上昇、低下させることも可能であり、その結果、反応をより促進させることができる。
【0034】
第三に、水素精製装置5により、供給される水素中の酸素、窒素、炭素、水分等が除去されるため、反応をより促進させ、合成されるリチウム水素化合物の純度を高くすることができる。
【0035】
第四に、真空ポンプ8により、反応容器6内のガス置換を行うことで、無機物原料の酸化を抑制することができる。また、真空雰囲気→水素雰囲気→真空雰囲気とすることで、無機物原料の活性化処理も行うことができる。さらに、反応容器6内を所定の圧力まで水素加圧した後に、真空ポンプ8により水素を排気することで、反応容器6内の水素圧力を調整することもできる。
【0036】
第五に、反応容器6はリチウム化合物合成装置1から取り外しできるため、無機物原料の反応容器6への収容作業を、不活性ガス雰囲気等の別の場所で行うことができる。これにより、大気による無機物原料の酸化が抑制されるとともに、作業性も向上する。また、反応後のリチウム化合物を取り出す場合にも、酸化を抑制することができ、作業性が向上する。
【0037】
(4)他の実施形態
上記実施形態では、反応ガスとして水素を使用した。しかし、反応ガスは水素に限定されるものではなく、目的とするリチウム化合物に応じて、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等の種々のガスを用いることができる。また、反応ガスは、一種類のガスでもよいが、例えば、水素と窒素とを混合した混合ガス等、二種類以上のガスを用いてもよい。無機物原料は、リチウムが含まれていれば特に限定されるものではない。Li3N、LiH、Mg−Li等のリチウムを含む無機物の一種を単独で、あるいは二種類以上を混合して用いることができる。また、LiH、LiAlH4、LiBH4等のリチウムを含む無機物と、Al、B、C、Mg等のリチウムを含まない無機物とを混合して用いてもよい。さらに、リチウム(Li)を単独で用いてもよい。
【0038】
上記実施形態では、水素を供給するために水素ボンベを使用した。しかし、反応ガス供給手段は、反応ガスを供給することができればよく、その形態が特に限定されるものではない。また、加圧手段として、ブースターポンプとリザーブタンクとを併用した。しかし、リザーブタンクは、必ずしも必要ではなく、ブースターポンプのみを用いて、反応容器内の反応ガスを直接加圧してもよい。なお、加圧する装置は、ブースターポンプに限定されるものではない。
【0039】
上記実施形態では、加熱手段としてヒーターを使用した。しかし、加熱手段は、特に限定されるものではなく、反応容器を所定の温度に加熱し、その状態を維持できるものであればよい。
【0040】
また、反応容器の材質および構造も、耐熱性および耐圧性を考慮して、種々の態様を採用することができる。例えば、反応容器の材質として、インコネルの他、ハステロイ等のニッケル基耐熱合金等が好適である。また、上記実施形態では、反応容器と無機物原料との反応を考慮して、反応容器の中に試料るつぼを設置し、該試料るつぼの中に無機物原料を収容した。しかし、無機物原料を直接反応容器に収容する態様でも構わない。さらに、反応容器は、合成装置本体から取り外しできない構造であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、反応ガス純化手段と減圧手段とを備えてリチウム化合物合成装置を構成した。しかし、両手段を備えない態様でもよく、両手段のうちいずれか一方のみを備える態様でもよい。ここで、反応ガス純化手段は、反応ガスの種類に応じて、また、不純物として除去したい成分に応じて、適宜最適な手法を採用すればよい。また、減圧手段も、特に限定されるものではなく、反応容器内のガスを排気できる手法を採用すればよい。
【0042】
上記実施形態では、反応容器を所定の温度、圧力に保持して合成を行った。しかし、反応容器内の温度を、所定の温度から一旦低下させ、再び上昇させて合成を行ってもよい。また、反応ガス圧力を、所定の圧力から一旦低下させ、再び上昇させて合成を行ってもよい。このように、反応温度や反応ガス圧力を、所定の範囲で繰り返し上昇、低下させることにより、反応をより促進することができる。
【0043】
【実施例】
上記実施形態で示したリチウム化合物合成装置を使用して、種々のリチウム水素化合物を合成した。以下、順に述べる。
【0044】
(1)LiNH2の合成
リチウムを含む無機物原料としてLi3N粉末を用い、LiNH2を合成した。まず、反応容器をリチウム化合物合成装置から取り外し、アルゴンガスで満たされたグローブボックス中に設置した。そこで、反応容器内の試料るつぼにLi3N粉末をを収容した。その後、反応容器を密閉し、グローブボックスから取り出して、リチウム化合物合成装置に取り付けた。
【0045】
次に、真空ポンプにより反応容器内のガスを排気して、反応容器内を真空雰囲気とした。その後、水素ボンベより水素を反応容器に導入し、反応容器内を約2MPaの水素雰囲気とした。続いて、真空ポンプにより反応容器内のガスを排気して、反応容器内を再度真空雰囲気とした。
【0046】
次に、ヒーターにより反応容器を加熱した。反応容器内の温度が300℃に達し安定した後、高圧水素の反応容器への供給を開始した。高圧水素の供給は、以下の手順で行った。まず、水素ボンベより供給された水素を、ブースターポンプにより加圧して、リザーブタンクに貯留した。リザーブタンク内の水素圧力が35MPaに達した後、加圧をやめた。次いで、35MPaの高圧水素を、リザーブタンクから水素精製装置を介して反応容器に供給した。反応容器内を、300℃、35MPaの水素圧力とした状態で、約2時間保持した。その後、ヒーターの出力を下げて、反応容器を常温まで冷却した。さらに、真空ポンプにて反応容器内の水素を排気して、反応容器内の水素圧力を0.2MPaとした。続いて、反応容器をリチウム化合物合成装置から取り外し、上述したグローブボックス中に設置した。そこで、反応容器から合成物を取り出した。合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiNH2を主相とするリチウム水素化合物であることが確認された。
【0047】
(2)LiAlH4の合成
リチウムを含む無機物原料としてLiH、Alの各粉末を用い、LiAlH4を合成した。上記(1)のLiNH2の合成において、無機物原料を変更し、反応容器内の水素圧力を200MPaとした以外は、上記(1)と同様にして合成した。得られた合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiAlH4であることが確認された。
【0048】
(3)LiBH4の合成
リチウムを含む無機物原料としてLiH、Bの各粉末を用い、LiBH4を合成した。上記(1)のLiNH2の合成において、無機物原料を変更し、反応容器内の温度を400℃、水素圧力を90MPaとした以外は、上記(1)と同様にして合成した。得られた合成物をX線回折法により分析した結果、合成物は、LiBH4であることが確認された。
【0049】
【発明の効果】
本発明のリチウム化合物合成装置は、リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器と、該反応容器に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、該反応容器内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段と、該反応容器内の温度を上昇させる加熱手段と、を備える。本発明のリチウム化合物合成装置では、加圧手段により反応容器内の反応ガス圧力を高圧にすることができる。よって、低圧条件下では反応が進行しなかった無機物原料からでも、リチウム化合物の合成が可能となる。また、加圧手段および加熱手段により、反応ガス圧力および反応温度を自由に調整することができる。よって、無機物原料に応じて、最適な反応条件を容易に作り出すことができる。その結果、種々のリチウム化合物を効率的に合成することができる。
【0050】
また、本発明のリチウム化合物の合成方法では、上記本発明のリチウム化合物合成装置を用い、反応容器内の反応ガス圧力あるいは温度を、繰り返し上昇、低下させる。それにより、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとの反応を、より促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるリチウム化合物合成装置の概略を示す。
【符号の説明】
1:リチウム化合物合成装置 2:水素ボンベ(反応ガス供給手段)
3:ブースターポンプ(加圧手段) 4:リザーブタンク(加圧手段)
5:水素精製装置(反応ガス純化手段)
6:反応容器 61:試料るつぼ
7:ヒーター(加熱手段) 8:真空ポンプ(減圧手段)
Claims (8)
- リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させて、リチウム化合物を合成するリチウム化合物合成装置であって、
前記リチウムを含む無機物原料を収容する反応容器と、
該反応容器に前記反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
該反応容器内の反応ガス圧力を上昇させる加圧手段と、
該反応容器内の温度を上昇させる加熱手段と、
を備えるリチウム化合物合成装置。 - 前記反応ガスは水素を含み、リチウム水素化合物を合成する請求項1に記載のリチウム化合物合成装置。
- 前記加圧手段は、前記反応容器内の反応ガス圧力を10MPa以上に上昇させることができる請求項1に記載のリチウム化合物合成装置。
- 前記反応容器の上流側に、該反応容器に供給される前記反応ガス中の不純物を除去する反応ガス純化手段を備える請求項1に記載のリチウム化合物合成装置。
- 前記反応容器内のガスを排気して、該反応容器内のガス置換および前記反応ガス圧力の調整の少なくとも一方を行う減圧手段を備える請求項1に記載のリチウム化合物合成装置。
- 前記反応容器は取り外し可能である請求項1に記載のリチウム化合物合成装置。
- 請求項1に記載のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、
前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の反応ガス圧力を、10MPa以上200MPa以下の範囲で繰り返し上昇、低下させるリチウム化合物の合成方法。 - 請求項1に記載のリチウム化合物合成装置を用い、リチウムを含む無機物原料と反応ガスとを反応させてリチウム化合物を合成するリチウム化合物の合成方法であって、
前記リチウムを含む無機物原料を収容した反応容器内の温度を100℃以上800℃以下の範囲で繰り返し上昇、低下させるリチウム化合物の合成方法。
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JP2009545744A (ja) * | 2006-07-31 | 2009-12-24 | アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド | 電子装置製造システムにおけるガスの現場分析のための方法及び装置 |
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-
2003
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