JP2004356404A - 多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子及び磁場センサー素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の多ホウ化物には知られていない全く新しい機能として、残留磁化を発現する性質を有する多ホウ化物を見出し、それを使用した耐酸性、耐熱性等に優れた磁気メモリー素子や磁場センサー素子を提供する。
【解決手段】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子。
【選択図】 図1
【解決手段】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子と磁場センサー素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気メモリーについては盛んな材料研究が行われており、パソコン市場などを中心に膨大なマーケットが築かれてきた。そして、このマーケットが大衆的に巨大になる反面、将来的には、例えば劣悪な環境下での応用など、特殊なニーズにそぐう磁性素子の開発も必要である。一方で、多ホウ化物は、その特徴として、耐酸性があり、また、高融点を有し、高温においても安定であるという劣悪環境下での魅力的な特性を有することが知られているが、磁気的性質などの機能で興味深いものは見つかっていなかった。しかし、近年、多ホウ化物における興味深い機能として、TbB50において初めての磁気転移が発見され、その後、TbB25やGdB18Si5においても磁気転移が観測された(例えば、非特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
Takao Mori and Takaho Tanaka, Journal of the Physical Society of Japan Vol.68, No.6, June, 1999, pp.2033−2039
【非特許文献2】
Takao Mori and Takaho Tanaka, Journal of the Physical Society of Japan Vol.69, No.2, February, 2000, pp.579−585
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のTbB50、TbB25、GdB18Si5といった多ホウ化物においては、磁気転移は観測されたものの、それは全て反強磁性転移であり、磁性素子などへの応用にはそぐわないものであった。一方で、従来の磁性素子は、酸に弱く、多ホウ化物のような硝酸雰囲気下でも安定であるような耐酸性はなく、また、高温に曝されると分解してしまい、そのような環境に耐えられないのが現状であり、硝酸や硫酸の存在するような環境下や高温環境下でも磁気メモリー素子や磁場センサー素子等に安定して使用できるような新規な磁性素子用素材を見出すことが期待されている状況にある。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の多ホウ化物には知られていない全く新しい機能として、残留磁化を発現する性質を有する多ホウ化物を見出し、それを使用した耐酸性、耐熱性等に優れた磁気メモリー素子や磁場センサー素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、多ホウ化物TbB50で磁気転移を初めて発見し、B12正二十面体が新規な磁気相互作用の担い手になっていることを解明している。そして、この知見に基づいて、B12正二十面体を有し、更に、二次元的な構造を持っているHoB24+XC4+YN1+ZとErB24+XC4+YN1+Zとに着目し、その磁気特性について鋭意研究を行ったところ、初めて多ホウ化物において残留磁化が生じる機能を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明によれば、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子、が提供される。
【0008】また、本発明によれば、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁場センサー素子、が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、それぞれ一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)、ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物に磁場を印加したとき、それらに残留磁化が発現するという性質を新たに見出し、その性質と多ホウ化物が一般的に有している耐酸性、耐熱性といった特性を利用すべく、それら多ホウ化物を磁気メモリー素子及び磁場センサー素子に使用してなるものである。
【0010】本発明において使用される多ホウ化物は、前記のとおり、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示されるものであり、一般式HoB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)で示されるものが好ましく、一般式HoB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)で示されるものがより好ましい。具体的な多ホウ化物としては、例えばHoB28.5C4、HoB22C2N、HoB17CN、ErB28.5C4、ErB22C2N、ErB17CN等を挙げることができる。
【0011】図1及び図2は、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4の、また、図3及び図4は、同多ホウ化物の他の一例であるHoB22C2Nのヒステリシス(磁化曲線)を示すグラフである。図5及び図6は、一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4の、また、図7及び図8は、同多ホウ化物の他の一例であるErB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【0012】これらの図より、HoB24+XC4+YN1+ZやErB24+XC4+YN1+Zは微小な磁場(<0.5 Oe)においても磁場履歴を示し、磁化が増大することが確認でき、磁場センサー素子としての使用が可能であることがわかる。また、磁場遍歴を利用して、磁場印加後、零磁場においても残留磁化が存在することが確認でき、磁気メモリー素子としても使用可能であることがわかる。
【0013】一般に、多ホウ化物は、極めて優れた耐酸性を有し、硝酸や硫酸環境下でも安定であり、また、約2000℃という高融点を有するので、高温下に曝されても安定であるという特性を有している。このため、前記のような磁気特性を有する多ホウ化物を使用した本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、従来は不可能であったような劣悪な環境下での使用が可能になる。
【0014】本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子については、具体的な使用環境は特に限定されないが、将来的には、例えば、他惑星無人探索等においての使用も考えられる。実際に、木星の月Europa上などにおいては硫酸が充満している環境がある。本発明に使用される多ホウ化物は、そのような環境下でも安定であり、自らが磁気履歴の特性が備わった化合物であるので、特異性があり、磁気メモリー素子や磁場センサー素子として使用可能である。
【0015】なお、本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、磁性素子材料として前記のような多ホウ化物を使用すること以外は、従来の一般的な磁気メモリー素子や磁場センサー素子と特に異なる構成を採る必要はなく、従来と同様の構成部材を使用し、従来と同様の構造とすることができ、また、細部については様々な様態を採ることが可能である。
【0016】次に、それぞれ一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)、ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の製法例について説明する。
【0017】
[製造方法1]:
ホルミウム(Ho)又はエルビウム(Er)に対するホウ素(B)のモル比(以下、単に「比」と言う。)が24+X(−8<X<8)で、Ho又はErに対する炭素(C)の比が4+Y(−3<Y<3)で、 Ho又はErに対する窒素(N)の比が1+Z(−1<Y<1)となるように、既知のホルミウムホウ化物又はエルビウムホウ化物(HoB2、HoB4、HoB6、HoB12やErB2、ErB4、ErB6、ErB12等)にBとCと窒化ホウ素(BN)を混合し、その混合物を真空下又は不活性ガス下で1500℃以上1900℃以下で固相反応する。
【0018】
[製造方法2]:
本方法では2段階の反応を行う。まず、Ho又はErに対するBの比がV(4<V<15)となるように、ホルミウム酸化物又はエルビウム酸化物(Ho2O3やEr2O3)にBを混合し、その混合物を真空下で1200℃以上2200℃以下で固相反応する。次に、酸素(O2)がBによって還元されて得られたHoBV−3又はErBV−3を用いて、Ho又はErに対するBの比が24+X(−8<X<8)で、Ho又はErに対するCの比が4+Y(−3<Y<3)で、Ho又はErに対するNの比が1+Z(−1<Y<1)となるように、HoBV−3又はErBV−3にBとCとBNを混合し、その混合物を真空下で1500℃以上1900℃以下で固相反応する。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
[本発明に使用される多ホウ化物の具体的な製法例]:
Ho2O3とBをHoに対するBの比が8となる割合で混合し、これを加圧成形したものを真空中、1500℃で4時間加熱して得られたもの(酸素がホウ素により還元されたHoB5の組成の燒結体である)を粉砕した。次いで、この粉砕物のHoに対するBの比が29で、Hoに対するCの比が4になるようにBとCを添加して混合し、これを加圧成形したものを真空中、1700℃で10時間加熱した。
【0021】こうして得られたホルミウム多ホウ化物について、化学分析による測定を行ったところ、[B]/[Ho]=28.5、[C]/[Ho]=4となり、HoB24+XC4+YN1+Z(X=4.5,Y=0,Z=−1)のほぼ所望の組成と近似するホルミウム多ホウ化物を得たことが確認された。そして、粉末X線回折より、格子定数a=5.64Å、c=56.88Åの三斜晶系で指数付けすることができた(図9参照)。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、磁性素子材料として、硝酸や硫酸環境下でも安定であり、また、約2000℃という高融点を有する多ホウ化物を使用しているため、従来は使用が困難であった強い酸性環境や高温環境などのような劣悪な環境下での使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4のヒステリシスを示すグラフである。
【図2】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4の微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図3】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【図4】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB22C2Nの微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図5】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4のヒステリシスを示すグラフである。
【図6】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4の微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図7】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【図8】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB22C2Nの微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図9】実施例にて得られた多ホウ化物のX線回折パターンを示すグラフである。
【発明の属する技術分野】本発明は、多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子と磁場センサー素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気メモリーについては盛んな材料研究が行われており、パソコン市場などを中心に膨大なマーケットが築かれてきた。そして、このマーケットが大衆的に巨大になる反面、将来的には、例えば劣悪な環境下での応用など、特殊なニーズにそぐう磁性素子の開発も必要である。一方で、多ホウ化物は、その特徴として、耐酸性があり、また、高融点を有し、高温においても安定であるという劣悪環境下での魅力的な特性を有することが知られているが、磁気的性質などの機能で興味深いものは見つかっていなかった。しかし、近年、多ホウ化物における興味深い機能として、TbB50において初めての磁気転移が発見され、その後、TbB25やGdB18Si5においても磁気転移が観測された(例えば、非特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
Takao Mori and Takaho Tanaka, Journal of the Physical Society of Japan Vol.68, No.6, June, 1999, pp.2033−2039
【非特許文献2】
Takao Mori and Takaho Tanaka, Journal of the Physical Society of Japan Vol.69, No.2, February, 2000, pp.579−585
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のTbB50、TbB25、GdB18Si5といった多ホウ化物においては、磁気転移は観測されたものの、それは全て反強磁性転移であり、磁性素子などへの応用にはそぐわないものであった。一方で、従来の磁性素子は、酸に弱く、多ホウ化物のような硝酸雰囲気下でも安定であるような耐酸性はなく、また、高温に曝されると分解してしまい、そのような環境に耐えられないのが現状であり、硝酸や硫酸の存在するような環境下や高温環境下でも磁気メモリー素子や磁場センサー素子等に安定して使用できるような新規な磁性素子用素材を見出すことが期待されている状況にある。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の多ホウ化物には知られていない全く新しい機能として、残留磁化を発現する性質を有する多ホウ化物を見出し、それを使用した耐酸性、耐熱性等に優れた磁気メモリー素子や磁場センサー素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、多ホウ化物TbB50で磁気転移を初めて発見し、B12正二十面体が新規な磁気相互作用の担い手になっていることを解明している。そして、この知見に基づいて、B12正二十面体を有し、更に、二次元的な構造を持っているHoB24+XC4+YN1+ZとErB24+XC4+YN1+Zとに着目し、その磁気特性について鋭意研究を行ったところ、初めて多ホウ化物において残留磁化が生じる機能を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明によれば、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子、が提供される。
【0008】また、本発明によれば、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁場センサー素子、が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、それぞれ一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)、ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物に磁場を印加したとき、それらに残留磁化が発現するという性質を新たに見出し、その性質と多ホウ化物が一般的に有している耐酸性、耐熱性といった特性を利用すべく、それら多ホウ化物を磁気メモリー素子及び磁場センサー素子に使用してなるものである。
【0010】本発明において使用される多ホウ化物は、前記のとおり、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示されるものであり、一般式HoB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)で示されるものが好ましく、一般式HoB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)で示されるものがより好ましい。具体的な多ホウ化物としては、例えばHoB28.5C4、HoB22C2N、HoB17CN、ErB28.5C4、ErB22C2N、ErB17CN等を挙げることができる。
【0011】図1及び図2は、一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4の、また、図3及び図4は、同多ホウ化物の他の一例であるHoB22C2Nのヒステリシス(磁化曲線)を示すグラフである。図5及び図6は、一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4の、また、図7及び図8は、同多ホウ化物の他の一例であるErB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【0012】これらの図より、HoB24+XC4+YN1+ZやErB24+XC4+YN1+Zは微小な磁場(<0.5 Oe)においても磁場履歴を示し、磁化が増大することが確認でき、磁場センサー素子としての使用が可能であることがわかる。また、磁場遍歴を利用して、磁場印加後、零磁場においても残留磁化が存在することが確認でき、磁気メモリー素子としても使用可能であることがわかる。
【0013】一般に、多ホウ化物は、極めて優れた耐酸性を有し、硝酸や硫酸環境下でも安定であり、また、約2000℃という高融点を有するので、高温下に曝されても安定であるという特性を有している。このため、前記のような磁気特性を有する多ホウ化物を使用した本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、従来は不可能であったような劣悪な環境下での使用が可能になる。
【0014】本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子については、具体的な使用環境は特に限定されないが、将来的には、例えば、他惑星無人探索等においての使用も考えられる。実際に、木星の月Europa上などにおいては硫酸が充満している環境がある。本発明に使用される多ホウ化物は、そのような環境下でも安定であり、自らが磁気履歴の特性が備わった化合物であるので、特異性があり、磁気メモリー素子や磁場センサー素子として使用可能である。
【0015】なお、本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、磁性素子材料として前記のような多ホウ化物を使用すること以外は、従来の一般的な磁気メモリー素子や磁場センサー素子と特に異なる構成を採る必要はなく、従来と同様の構成部材を使用し、従来と同様の構造とすることができ、また、細部については様々な様態を採ることが可能である。
【0016】次に、それぞれ一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)、ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の製法例について説明する。
【0017】
[製造方法1]:
ホルミウム(Ho)又はエルビウム(Er)に対するホウ素(B)のモル比(以下、単に「比」と言う。)が24+X(−8<X<8)で、Ho又はErに対する炭素(C)の比が4+Y(−3<Y<3)で、 Ho又はErに対する窒素(N)の比が1+Z(−1<Y<1)となるように、既知のホルミウムホウ化物又はエルビウムホウ化物(HoB2、HoB4、HoB6、HoB12やErB2、ErB4、ErB6、ErB12等)にBとCと窒化ホウ素(BN)を混合し、その混合物を真空下又は不活性ガス下で1500℃以上1900℃以下で固相反応する。
【0018】
[製造方法2]:
本方法では2段階の反応を行う。まず、Ho又はErに対するBの比がV(4<V<15)となるように、ホルミウム酸化物又はエルビウム酸化物(Ho2O3やEr2O3)にBを混合し、その混合物を真空下で1200℃以上2200℃以下で固相反応する。次に、酸素(O2)がBによって還元されて得られたHoBV−3又はErBV−3を用いて、Ho又はErに対するBの比が24+X(−8<X<8)で、Ho又はErに対するCの比が4+Y(−3<Y<3)で、Ho又はErに対するNの比が1+Z(−1<Y<1)となるように、HoBV−3又はErBV−3にBとCとBNを混合し、その混合物を真空下で1500℃以上1900℃以下で固相反応する。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
[本発明に使用される多ホウ化物の具体的な製法例]:
Ho2O3とBをHoに対するBの比が8となる割合で混合し、これを加圧成形したものを真空中、1500℃で4時間加熱して得られたもの(酸素がホウ素により還元されたHoB5の組成の燒結体である)を粉砕した。次いで、この粉砕物のHoに対するBの比が29で、Hoに対するCの比が4になるようにBとCを添加して混合し、これを加圧成形したものを真空中、1700℃で10時間加熱した。
【0021】こうして得られたホルミウム多ホウ化物について、化学分析による測定を行ったところ、[B]/[Ho]=28.5、[C]/[Ho]=4となり、HoB24+XC4+YN1+Z(X=4.5,Y=0,Z=−1)のほぼ所望の組成と近似するホルミウム多ホウ化物を得たことが確認された。そして、粉末X線回折より、格子定数a=5.64Å、c=56.88Åの三斜晶系で指数付けすることができた(図9参照)。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気メモリー素子及び磁場センサー素子は、磁性素子材料として、硝酸や硫酸環境下でも安定であり、また、約2000℃という高融点を有する多ホウ化物を使用しているため、従来は使用が困難であった強い酸性環境や高温環境などのような劣悪な環境下での使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4のヒステリシスを示すグラフである。
【図2】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB28.5C4の微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図3】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【図4】一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるHoB22C2Nの微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図5】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4のヒステリシスを示すグラフである。
【図6】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB28.5C4の微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図7】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB22C2Nのヒステリシスを示すグラフである。
【図8】一般式ErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物の一例であるErB22C2Nの微小磁場におけるヒステリシスを示すグラフである。
【図9】実施例にて得られた多ホウ化物のX線回折パターンを示すグラフである。
Claims (8)
- 一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁気メモリー素子。
- 前記多ホウ化物が、一般式HoB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)で示される多ホウ化物である請求項1記載の磁気メモリー素子。
- 前記多ホウ化物が、一般式HoB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)で示される多ホウ化物である請求項1記載の磁気メモリー素子。
- 前記多ホウ化物が、HoB28.5C4、HoB22C2N、HoB17CN、ErB28.5C4、ErB22C2N及びErB17CNのうちの何れかである請求項1記載の磁気メモリー素子。
- 一般式HoB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)又はErB24+XC4+YN1+Z(−8<X<8,−3<Y<3,−1<Z<1)で示される多ホウ化物を使用した磁場センサー素子。
- 前記多ホウ化物が、一般式HoB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB26+XC4+YN1+Z(−6<X<6,−2<Y<2,−1<Z<1)で示される多ホウ化物である請求項5記載の磁場センサー素子。
- 前記多ホウ化物が、一般式HoB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)又はErB28+XC4+YN1+Z(−4<X<4,−2<Y<2,−1<Z<1)で示される多ホウ化物である請求項5記載の磁場センサー素子。
- 前記多ホウ化物が、HoB28.5C4、HoB22C2N、HoB17CN、ErB28.5C4、ErB22C2N及びErB17CNのうちの何れかである請求項5記載の磁場センサー素子。
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