JP2004353792A - ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】加工工数を増やすことなく、ナットのボール循環部と転走路との接続部での段差を小さくし、ボール循環の良好な作動性が得られ、ボールの挙動を安定させることができるボールねじを提供する。
【解決手段】ねじ軸2の外径面とこのねじ軸2の外周に遊嵌するナット3の内径面に、互いに対向するねじ溝6,7を形成する。ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7の間で形成される転走路8に複数のボール4を介在させる。ナット3は、そのねじ溝7に両端が連通して上記転走路8のボール4を循環させるボール循環部を有する。この循環部の端部を、上記ナット3に加工された断面円形のボール循環孔10aとし、上記ナット3のねじ溝7の断面をゴシックアーチ形状とする。上記ボール循環孔10aの中心O1を、転走路8のボール中心径となる円Sの接線Tに対して平行で、かつ上記ナット3のねじ溝7の溝底と反対側へオフセットさせた位置とする。
【選択図】 図4
【解決手段】ねじ軸2の外径面とこのねじ軸2の外周に遊嵌するナット3の内径面に、互いに対向するねじ溝6,7を形成する。ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7の間で形成される転走路8に複数のボール4を介在させる。ナット3は、そのねじ溝7に両端が連通して上記転走路8のボール4を循環させるボール循環部を有する。この循環部の端部を、上記ナット3に加工された断面円形のボール循環孔10aとし、上記ナット3のねじ溝7の断面をゴシックアーチ形状とする。上記ボール循環孔10aの中心O1を、転走路8のボール中心径となる円Sの接線Tに対して平行で、かつ上記ナット3のねじ溝7の溝底と反対側へオフセットさせた位置とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、射出成形機、プレス機等のように高回転速度、高負荷荷重用途に適用可能なボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
電動射出成形機は、モータの回転をボールねじで進退動作に変換して射出駆動するものであり、広く使用されている。しかし、高い射出速度が必要な加工ではボールねじの性能上、使用できないことがある。例えば、超薄肉成形品(携帯電話機の電池パック外装等)や、底が深く薄肉の食品用容器等を成形する場合は、成形のために高い射出速度が必要とされるが、ボールねじの許容dn値(=軸径(mm)×回転速度(r/min ))の制約によって、必要となる射出速度まで上げることが難しい。そのため、これまでは、上述した超薄肉成形品等の成形では、油圧射出成形機に増速装置(アキュームレータ)を使用して行っており、電動式射出成形機のメリットである省電力や、油を使用しないエコロジーの恩恵を受けることができなかった。
【0003】
一般にボールねじの許容dn値は、ボールねじのボール循環部におけるボールの衝突による破壊強度の関係によって、実験値から決定されている。この許容dn値を大きくするには、循環部材へのボールの衝突エネルギを小さくすることが有効である。その一つの方法として、図8に示される循環構造のボールねじが提案されている(例えば特許文献1)。この循環構造は、図7に示す一般的なボールねじに対して、ボール循環部32とねじ溝26,27の接続部が延びる方向を、ねじ溝26,27の接線方向T、つまりボール中心径となる円Sの接線Tの方向で、かつリード角方向に設定するように工夫したものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−276764号公報
【特許文献2】
特開2001−124172号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般にボールねじのねじ溝26,27は断面がゴシックアーチ形状であるのに対し、ボール循環部32のねじ溝26,27への接続部であるボール循環孔30は断面が真円となっている。このため、ボール24がねじ溝27内からナット23のボール循環孔30に入る部分や、ボール24がナット23のボール循環孔30からねじ溝27内に入る部分(図9(A)のA部)において、大きな段差部35が生じてしまう。すなわち、A部のII−II矢視断面図である図9(B)のように、ナット23のボール循環孔30を、ねじ溝27のボール中心径上でエンドミルにより加工すると、ダブルハッチングで示すような大きな段差部35が生じてしまう。図10は図9(A)における段差部35を拡大して示す。
特許文献1の循環構造は、高回転速度でのボール24の挙動を安定させようとするものであるが、上記のような大きな段差部35があると、この段差部35をボール24が通過する時に振動が発生し、また音も大きくなり、ボール24の挙動も安定しなくなる。このように段差部35の段差が大きい場合、初期の作動性が悪くなるだけでなく、初期なじみ運転を行っても、上記段差は大きく残ってしまう。上記段差部35は、使用する間に滑らかになるまで摩耗するが、摩耗粉がグリースの劣化等を招くため、ボールねじの耐久性に大きく影響を与える。
【0006】
また、図11のようにボール24,24間に、ボール24同士の自転による摩擦を軽減するための間座25を介在させたボールねじがあるが、この間座25は球形のボール24に比べて段差部35に引っ掛かり易く、場合によっては損傷してしまう。その回避策として、リターンチューブ式のボールねじにおいて、図12(A)のように、ナット23のボール循環孔30とナット23のねじ溝27との繋ぎ部40に発生していた凸状の角部41を、図12(B)のように滑らかな形状とすることによって、間座25の引っ掛かりを回避するようにしたものも提案されている(例えば特許文献2)。
しかし、このように繋ぎ部40を滑らかな形状とするには、ボールねじ組立前に、別途、クラウニング加工を施す必要があり、加工工数が増加するという問題点を有する。
【0007】
この発明の目的は、加工工数を増やすことなく、ナットのボール循環部と転走路との接続部での段差を小さくし、ボール循環の良好な作動性が得られ、ボールの挙動を安定させることができるボールねじを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面とこのねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面に、互いに対向するねじ溝が形成され、ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝の間で形成される転走路に複数のボールが介在し、上記ナットのねじ溝に両端が連通して上記転走路のボールを循環させるボール循環部をナットに有し、この循環部の端部が、上記ナットに加工された断面円形のボール循環孔であり、上記ナットのねじ溝の断面がゴシックアーチ形状であるボールねじであって、上記ボール循環孔の中心を、上記転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行で、かつ上記ナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせた位置としたことを特徴とする。
ボール循環孔は、ほぼボールと同径とされるが、ボールに負荷が作用しない箇所であるため、ボールの円滑な循環のために、転走路の断面に比べて若干大きな円形断面形状とされる。そのため、上記のようにボール循環孔の中心をナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせることで、ナットのゴシックアーチ形状のねじ溝と、円形断面のボール循環孔との境界部で段差が生じることが軽減される。また、ボール循環孔の中心が転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行であることにより、ボールの移動経路が、折れ曲がりを生じることなく滑らかに続く。これらにより、良好なボール循環の作動性が得られ、ボールの挙動が安定する。この場合に、ボール循環孔の中心をオフセットさせることで段差を軽減するため、加工工数を増やすことなく段差の軽減が行える。
【0009】
この発明において、上記ボール循環孔の端部と上記ナットのねじ溝の端部との間に生じる段差面を略球面状としても良い。
段差面を略球面状とすると、ボール循環の作動性がさらに良好となり、ボールの挙動をより安定させることができる。段差面を略球面状とする加工は、ボール循環孔の加工にボールエンドミル等を用いることで、工程を増やすことなく行える。
【0010】
上記ボール循環孔の中心のオフセット範囲は、例えば、上記ナットのねじ溝の底に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置から、ナットの上記ゴシックアーチ形状のねじ溝におけるボールの接触点に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置までの範囲とする。
ボール循環孔の中心のオフセット量は、ナットのねじ溝の溝底にボール循環孔の内径面が一致する量とすることが、段差を無くすために理想であるが、ゴシックアーチ形状のねじ溝におけるボールの接触点に上記ボール循環孔の内径面が一致するにようになるオフセット量であっても段差軽減の効果が得られる。したがって上記両位置の間のオフセット範囲であれば、段差の軽減効果が得られる。
【0011】
この発明における上記各構成の場合に、上記ボール循環部が主に上記ナットに取付けられたガイドプレートの溝部と上記ボール循環孔とで形成され、上記ナットのねじ溝内に、端面が上記ボール循環孔に続く傾斜面となったデフレクタが装着されたものとしても良い。
ボール循環部をガイドプレート形式とした場合、ナット内においてボール循環孔とねじ溝とが上記段差面で直接に繋がることになる。そのためこの発明におけるボール循環孔の中心のオフセットによる段差軽減の効果がより効果的となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。このボールねじ1は、ねじ軸2と、このねじ軸2の外周に遊嵌するナット3と、複数のボール4とを備え、ナット3にガイドプレート5が取付けられている。ナット3は、円筒状に形成されたナット本体3aと、その一端に設けられたフランジ3bを有する。ねじ軸2は、その外径面に螺旋状のねじ溝6が形成され、ナット3の内径面には、ねじ軸2のねじ溝6に対向する螺旋状のねじ溝7が形成されている。ボール4は、ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7との間に形成された螺旋状の転走路8内に、連なり状態で転動自在に収容される。
ねじ軸2およびナット3のねじ溝6,7の断面形状は、ゴシックアーチ形状とされている。ゴシックアーチ形状は、図4(B)にナット3のねじ溝7の断面形状を示すように、曲率中心の異なる2つの円弧を組み合わせた形状のことである。ねじ溝7の断面形状は、具体的には、溝底における溝幅中心を境界として、両側の溝内側面部7a,7aがそれぞれ別個の円弧曲線で形成されている。これら溝内側面部7a,7aの断面形状を成す円弧は、互いに線対象であって、溝開口側端が互いに近づくように、溝底部で繋がっている。また、この溝内側面部7aの断面形状を成す円弧は、ボール4よりも大径であり、したがってボール4は、ねじ溝7の深さ方向の中間の接触点Pで、両側の溝内側面部7aに対して点接触する。ねじ軸2側のねじ溝6についても、ナット3のねじ溝7と同様な断面形状とされている。
【0013】
ガイドプレート5は、ナット3の外周の一部に形成した平坦面部3aaに固定される。ガイドプレート5の裏面には、ボール4が通過する溝部9が形成されている。溝部9は、例えば略直線状とされている。この溝部9は、ナット3で溝開口部が蓋されることにより、孔状のボール循環部12(図3)の主要部を形成する。また、溝部9は、図2のように2本が軸方向に並んで設けられ、それぞれが別のボール循環部12を構成する。各ボール循環部12と上記転走路8とで、一連のボール周回経路14(図1)が形成されている。なお、このボール周回経路14は一つとしても、3つ以上としても良い。
【0014】
ボール循環部12の両端は、ねじ軸2とナット3間の転走路8に接続される接続部10となっている。接続部10は、ナット3に形成された断面円形のボール循環孔10aにより主に形成される。この循環孔10aの内径は、ねじ軸2およびナット3のねじ溝6,7間に形成される転走路8の断面形状よりも大きな径とされる。ナット3のねじ溝7内には、転走路8のボール4をボール循環部12に掬い上げるデフレクタ11が配置される。デフレクタ11の端面11aは、ナット3のボール循環孔10aの内面に滑らかに続く傾斜面とされ、ボール循環孔10aと同じ傾斜角度を持つ。デフレクタ11は、ボール循環部12の両側の接続部10に対してそれぞれ別のものが設けられる。
【0015】
ボール循環部12の各接続部10の延びる方向、つまりボール循環孔10aの延びる方向は、ねじ溝6,7の接線方向T(図3)に設定されている。ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ溝6,7間に形成された転走路8におけるボール軌道中心径となる円S(図4(A))の接線方向のことである。上記の円Sは、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面におけるボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0016】
図4に示すように、ボール循環部12の接続部10におけるボール循環孔10aの中心O1は、上記転走路8のボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行で、かつナット3のねじ溝7の溝底から遠ざかる方向へ所定量δだけオフセットさせた位置とされている。同図の例では、オフセット量となる所定量δは、ナット3のねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するだけの量としてある。ボール循環孔10aの断面が円形であり、ナット3のねじ溝7の断面がゴシックアーチ形状であるため、ボール循環孔10aの端部と、ナット3のねじ溝7の端部との間には段差部15が生じる。その段差部15を図4(B)においてダブルハッチングで示す。図4(B)は同図(A)のI−I矢視断面図である。この段差部15の発生は、円形とゴシックアーチ形状との形状差のため、避けることができないが、上記のようにボール循環孔10aの中心O1をオフセットさせることにより、段差量を極力小さくすることができる。なお、この段差部15の段差は、上記オフセットのため、ねじ溝7の底7cの部分で最も小さく、ねじ溝7の肩部へ向けて次第に大きくなってる。
ボール循環孔10aの中心O1のオフセット位置は、上記のようにナット3のねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するだけの量とすることが理想であるが、ナット3のゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール4の接触点Pにボール循環孔10aの内径面が一致する位置であっても良い。したがって上記中心O1のオフセット範囲は、ボール循環孔10aの内径面が上記溝底Pに一致する位置からボール接触点Pに一致する位置までの範囲であっても良い。また、上記オフセット範囲は、ねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するときのオフセット量よりもさらに小さな値となる範囲であっても良い。
【0017】
上記段差部15となる段差面は、略球面状とすることが好ましい。ナット3における上記ボール循環孔10aの加工には、図5(A)に示す円筒状のストレートエンドミル16や、図5(B),(C)に示すように先端を球面状としたボールエンドミル17,18が使用される。ストレートエンドミル16の加工では、ワークWの加工面Wsが図5(D)のように平坦面となるが、ボールエンドミル17,18の加工では、加工面Wsが図5(E)のように球面状となる。この実施形態では、図5(B)または同図(C)に示すように円筒部の先端を球面状としたボールエンドミル17,18が用いられ、図6のように上記ボール循環孔10aが加工される。すなわち、ボールエンドミル17,18の中心O2を、上記ボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行となるようにして、ボール循環孔10aが加工される。これにより、ボール循環孔10aの端部と、ナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差部15(図4(A))の表面は略球面状となる。
【0018】
上記構成のボールねじ1の作用を説明する。図4に示されるように、ボールねじ1のボール中心径となる円Sの接線Tの方向にボール4を拾い上げる場合、この接線Tに沿う方向のボール循環孔10aが必要になる。ボール循環孔10aはボール径に極力沿うような径に加工するが、図9(A)の従来例のようにボール循環孔10aの中心O1が接線Tと一致している場合、ナット3のねじ溝7はゴシックアーチ形状としているため、ナット3の溝底部での段差が一番小さく、ナット3のねじ溝7の肩部へ向けて、段差が大きくなっていく。そこで、この実施形態では、接線Tからオフセットした位置にボール循環孔10aを加工することで、上記段差を極力小さくし、また、ボール循環孔10aの加工にボールエンドミル17,18を採用して段差面を滑らかにした。
すなわち、この実施形態のボールねじ1によると、ボール循環孔10aの中心O1を、ナット3のねじ溝7の溝底と反対側へ所定量δだけオフセットさせた位置としたため、ボール循環孔10aの端部とナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差を極力小さくできる。また、ボール循環孔10aの中心O1を、転走路8のボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行としたため、ボールの移動経路が、折れ曲がりを生じることなく滑らかに続く。中心O1は円Sの接線Tに対し平行でかつリード角方向に設定してもよい。これらにより、良好なボール循環の作動性が得られ、ボールの挙動が安定する。この場合に、ボール循環孔10aの中心O1をオフセットさせることで段差を軽減するため、加工工数を増やすことなく段差の軽減が行える。
【0019】
また、ボール循環孔10aの端部とナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差部15(図4(A))の面を略球面状としたため、ボール循環の作動性がさらに良好となり、ボール4の挙動をより安定させることができる。この段差部15の球面状の加工は、ボール循環孔10aの加工にボールエンドミル17,18を用いることによって行うため、加工工程の増加を伴うことなく、球面状に加工することができる。
この実施形態によれば、上記段差部15の段差が極僅かであるため、ボールねじ1の作動性が良好になり、初期なじみ運転だけで段差部15は滑らかな形状となる。そのため、使用時に段差部15の摩耗が生じて摩耗粉により耐久性を劣化させることがなくなる。一般に、ボールねじは、製造時になじみ運転を必ず行い、なじみ運転後の洗浄、再組立を行う。よって、この実施形態により、追加の工数を掛けることなく、簡単にこの段差部を滑らかな形状とでき、また作動性や耐久性を良好に保つことが可能になる。
【0020】
また、この実施形態では、循環孔10aの中心O1のオフセット量である所定量δは、ナット3のねじ溝7の溝底にボール循環孔10aの内径面が一致する量としたため、段差を無くすために理想的である。なお、図4(C)のように、ゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール接触点Pに上記ボール循環孔10aの内径面が一致するにようになるオフセット量であっても、段差軽減の効果が得られ、上記所定量δが上記両位置の間のオフセット範囲であっても段差の軽減効果が得られる。また、上記所定量δは上記オフセット範囲よりもさらに小さな範囲の値であって良い。
【0021】
また、この実施形態では、ボール循環部12をガイドプレート5で主に形成したが、このようなガイドプレート形式では、ナット3内においてボール循環孔10aとねじ溝7とが上記段差部15で直接に繋がることになる。そのため、上記のようにボール循環孔10aの中心O1のオフセットによる段差軽減の効果がより効果的となる。
【0022】
つぎに、試験結果を説明する。供試対象は、図1ないし図6に示す実施形態のボールねじ1に対して、表1に示すようにボール循環孔の加工、およびボール循環孔のオフセット状況を種々異ならせたものである。このうち、通し番号が▲2▼,▲3▼,▲5▼,▲6▼の各例が実施例であり、▲1▼,▲4▼の各例が比較例である。ボールねじ1の構成の詳細は、ねじ軸2の軸径φ63mm、ねじ溝6,7のリード16mm、ボール径1/2”(φ12.7mm)である。各例は、初期なじみ運転として回転速度1000rpm、進退ストローク1000mmの動作を100回行い、この初期なじみ運転後の作動性と段差部の状況、さらに洗浄後の耐久性の確認を行った。その結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2において、○は結果が良好、○△はほぼ良好、△は多少作動性に難あり(使用可能レベル)、×は作動性・耐久性とも不可(使用不可能)であることを示す。
この試験結果から、実施例▲2▼,▲5▼のように、加工中心O1のオフセット量は、ナット3のねじ溝7の底にボール循環孔10aの内径面が一致する位置が理想的であるが、実施例▲3▼,▲6▼のように、ゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール接触点Pにボール循環孔10aの内径面が一致する位置であっても良いことがわかる。
【0026】
なお、上記実施形態ではガイドプレート式のボールねじ1に適用した場合につき説明したが、これに限らず、例えばリターンチューブ式のボールねじに適用しても同様の効果を得ることができる。
【0027】
【発明の効果】
この発明のボールねじは、ナットのねじ溝に両端が連通して転走路のボールを循環させるボール循環部をナットに有し、この循環部の端部が、上記ナットに加工された断面円形のボール循環孔であり、上記ナットのねじ溝の断面がゴシックアーチ形状であるボールねじにおいて、上記ボール循環孔の中心を、上記転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行で、かつ上記ナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせた位置としたため、加工工数を増やすことなく、ナットのボール循環部と転走路との接続部での段差を小さくできる。これによりボール循環の良好な作動性が得られ、ボールの挙動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態におけるボールねじの正面図である。
【図2】同ボールねじの平面図である。
【図3】同ボールねじにおける部分横断面図である。
【図4】(A)は図3の一部の拡大図、(B)は(A)のI−I矢視断面図、(C)は同図(B)の変形例の断面図である。
【図5】(A)〜(C)は各種エンドミルの部分正面図、(D),(E)はそれらエンドミルによる加工部の断面図である。
【図6】ボールエンドミルによるボール循環孔の加工例を示す説明図である。
【図7】(A)はリターンチューブ式ボールねじの平面図、(B)は同ボールねじの横断面図である。
【図8】(A)は従来例のボールねじの平面図、(B)は同ボールねじの横断面図である。
【図9】(A)は同ボールねじのボールを省略して示す拡大横断面図、(B)は(A)のII−II矢視断面図である。
【図10】図9(A)における段差部の部分の拡大図である。
【図11】間座付きのガイドプレート式ボールねじにおけるボールの挙動を示す説明図である。
【図12】他の従来例のボールねじの改良構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ボールねじ
2…ねじ軸
3…ナット
4…ボール
5…ガイドプレート
6,7…ねじ溝
8…転走路
9…溝部
10…接続部
10a…ボール循環孔
11…デフレクタ
11a…端面
12…ボール循環部
15…段差部
O1…ボール循環孔の中心
S…ボール中心径となる円
T…接線
【発明の属する技術分野】
この発明は、射出成形機、プレス機等のように高回転速度、高負荷荷重用途に適用可能なボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
電動射出成形機は、モータの回転をボールねじで進退動作に変換して射出駆動するものであり、広く使用されている。しかし、高い射出速度が必要な加工ではボールねじの性能上、使用できないことがある。例えば、超薄肉成形品(携帯電話機の電池パック外装等)や、底が深く薄肉の食品用容器等を成形する場合は、成形のために高い射出速度が必要とされるが、ボールねじの許容dn値(=軸径(mm)×回転速度(r/min ))の制約によって、必要となる射出速度まで上げることが難しい。そのため、これまでは、上述した超薄肉成形品等の成形では、油圧射出成形機に増速装置(アキュームレータ)を使用して行っており、電動式射出成形機のメリットである省電力や、油を使用しないエコロジーの恩恵を受けることができなかった。
【0003】
一般にボールねじの許容dn値は、ボールねじのボール循環部におけるボールの衝突による破壊強度の関係によって、実験値から決定されている。この許容dn値を大きくするには、循環部材へのボールの衝突エネルギを小さくすることが有効である。その一つの方法として、図8に示される循環構造のボールねじが提案されている(例えば特許文献1)。この循環構造は、図7に示す一般的なボールねじに対して、ボール循環部32とねじ溝26,27の接続部が延びる方向を、ねじ溝26,27の接線方向T、つまりボール中心径となる円Sの接線Tの方向で、かつリード角方向に設定するように工夫したものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−276764号公報
【特許文献2】
特開2001−124172号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般にボールねじのねじ溝26,27は断面がゴシックアーチ形状であるのに対し、ボール循環部32のねじ溝26,27への接続部であるボール循環孔30は断面が真円となっている。このため、ボール24がねじ溝27内からナット23のボール循環孔30に入る部分や、ボール24がナット23のボール循環孔30からねじ溝27内に入る部分(図9(A)のA部)において、大きな段差部35が生じてしまう。すなわち、A部のII−II矢視断面図である図9(B)のように、ナット23のボール循環孔30を、ねじ溝27のボール中心径上でエンドミルにより加工すると、ダブルハッチングで示すような大きな段差部35が生じてしまう。図10は図9(A)における段差部35を拡大して示す。
特許文献1の循環構造は、高回転速度でのボール24の挙動を安定させようとするものであるが、上記のような大きな段差部35があると、この段差部35をボール24が通過する時に振動が発生し、また音も大きくなり、ボール24の挙動も安定しなくなる。このように段差部35の段差が大きい場合、初期の作動性が悪くなるだけでなく、初期なじみ運転を行っても、上記段差は大きく残ってしまう。上記段差部35は、使用する間に滑らかになるまで摩耗するが、摩耗粉がグリースの劣化等を招くため、ボールねじの耐久性に大きく影響を与える。
【0006】
また、図11のようにボール24,24間に、ボール24同士の自転による摩擦を軽減するための間座25を介在させたボールねじがあるが、この間座25は球形のボール24に比べて段差部35に引っ掛かり易く、場合によっては損傷してしまう。その回避策として、リターンチューブ式のボールねじにおいて、図12(A)のように、ナット23のボール循環孔30とナット23のねじ溝27との繋ぎ部40に発生していた凸状の角部41を、図12(B)のように滑らかな形状とすることによって、間座25の引っ掛かりを回避するようにしたものも提案されている(例えば特許文献2)。
しかし、このように繋ぎ部40を滑らかな形状とするには、ボールねじ組立前に、別途、クラウニング加工を施す必要があり、加工工数が増加するという問題点を有する。
【0007】
この発明の目的は、加工工数を増やすことなく、ナットのボール循環部と転走路との接続部での段差を小さくし、ボール循環の良好な作動性が得られ、ボールの挙動を安定させることができるボールねじを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面とこのねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面に、互いに対向するねじ溝が形成され、ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝の間で形成される転走路に複数のボールが介在し、上記ナットのねじ溝に両端が連通して上記転走路のボールを循環させるボール循環部をナットに有し、この循環部の端部が、上記ナットに加工された断面円形のボール循環孔であり、上記ナットのねじ溝の断面がゴシックアーチ形状であるボールねじであって、上記ボール循環孔の中心を、上記転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行で、かつ上記ナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせた位置としたことを特徴とする。
ボール循環孔は、ほぼボールと同径とされるが、ボールに負荷が作用しない箇所であるため、ボールの円滑な循環のために、転走路の断面に比べて若干大きな円形断面形状とされる。そのため、上記のようにボール循環孔の中心をナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせることで、ナットのゴシックアーチ形状のねじ溝と、円形断面のボール循環孔との境界部で段差が生じることが軽減される。また、ボール循環孔の中心が転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行であることにより、ボールの移動経路が、折れ曲がりを生じることなく滑らかに続く。これらにより、良好なボール循環の作動性が得られ、ボールの挙動が安定する。この場合に、ボール循環孔の中心をオフセットさせることで段差を軽減するため、加工工数を増やすことなく段差の軽減が行える。
【0009】
この発明において、上記ボール循環孔の端部と上記ナットのねじ溝の端部との間に生じる段差面を略球面状としても良い。
段差面を略球面状とすると、ボール循環の作動性がさらに良好となり、ボールの挙動をより安定させることができる。段差面を略球面状とする加工は、ボール循環孔の加工にボールエンドミル等を用いることで、工程を増やすことなく行える。
【0010】
上記ボール循環孔の中心のオフセット範囲は、例えば、上記ナットのねじ溝の底に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置から、ナットの上記ゴシックアーチ形状のねじ溝におけるボールの接触点に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置までの範囲とする。
ボール循環孔の中心のオフセット量は、ナットのねじ溝の溝底にボール循環孔の内径面が一致する量とすることが、段差を無くすために理想であるが、ゴシックアーチ形状のねじ溝におけるボールの接触点に上記ボール循環孔の内径面が一致するにようになるオフセット量であっても段差軽減の効果が得られる。したがって上記両位置の間のオフセット範囲であれば、段差の軽減効果が得られる。
【0011】
この発明における上記各構成の場合に、上記ボール循環部が主に上記ナットに取付けられたガイドプレートの溝部と上記ボール循環孔とで形成され、上記ナットのねじ溝内に、端面が上記ボール循環孔に続く傾斜面となったデフレクタが装着されたものとしても良い。
ボール循環部をガイドプレート形式とした場合、ナット内においてボール循環孔とねじ溝とが上記段差面で直接に繋がることになる。そのためこの発明におけるボール循環孔の中心のオフセットによる段差軽減の効果がより効果的となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。このボールねじ1は、ねじ軸2と、このねじ軸2の外周に遊嵌するナット3と、複数のボール4とを備え、ナット3にガイドプレート5が取付けられている。ナット3は、円筒状に形成されたナット本体3aと、その一端に設けられたフランジ3bを有する。ねじ軸2は、その外径面に螺旋状のねじ溝6が形成され、ナット3の内径面には、ねじ軸2のねじ溝6に対向する螺旋状のねじ溝7が形成されている。ボール4は、ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7との間に形成された螺旋状の転走路8内に、連なり状態で転動自在に収容される。
ねじ軸2およびナット3のねじ溝6,7の断面形状は、ゴシックアーチ形状とされている。ゴシックアーチ形状は、図4(B)にナット3のねじ溝7の断面形状を示すように、曲率中心の異なる2つの円弧を組み合わせた形状のことである。ねじ溝7の断面形状は、具体的には、溝底における溝幅中心を境界として、両側の溝内側面部7a,7aがそれぞれ別個の円弧曲線で形成されている。これら溝内側面部7a,7aの断面形状を成す円弧は、互いに線対象であって、溝開口側端が互いに近づくように、溝底部で繋がっている。また、この溝内側面部7aの断面形状を成す円弧は、ボール4よりも大径であり、したがってボール4は、ねじ溝7の深さ方向の中間の接触点Pで、両側の溝内側面部7aに対して点接触する。ねじ軸2側のねじ溝6についても、ナット3のねじ溝7と同様な断面形状とされている。
【0013】
ガイドプレート5は、ナット3の外周の一部に形成した平坦面部3aaに固定される。ガイドプレート5の裏面には、ボール4が通過する溝部9が形成されている。溝部9は、例えば略直線状とされている。この溝部9は、ナット3で溝開口部が蓋されることにより、孔状のボール循環部12(図3)の主要部を形成する。また、溝部9は、図2のように2本が軸方向に並んで設けられ、それぞれが別のボール循環部12を構成する。各ボール循環部12と上記転走路8とで、一連のボール周回経路14(図1)が形成されている。なお、このボール周回経路14は一つとしても、3つ以上としても良い。
【0014】
ボール循環部12の両端は、ねじ軸2とナット3間の転走路8に接続される接続部10となっている。接続部10は、ナット3に形成された断面円形のボール循環孔10aにより主に形成される。この循環孔10aの内径は、ねじ軸2およびナット3のねじ溝6,7間に形成される転走路8の断面形状よりも大きな径とされる。ナット3のねじ溝7内には、転走路8のボール4をボール循環部12に掬い上げるデフレクタ11が配置される。デフレクタ11の端面11aは、ナット3のボール循環孔10aの内面に滑らかに続く傾斜面とされ、ボール循環孔10aと同じ傾斜角度を持つ。デフレクタ11は、ボール循環部12の両側の接続部10に対してそれぞれ別のものが設けられる。
【0015】
ボール循環部12の各接続部10の延びる方向、つまりボール循環孔10aの延びる方向は、ねじ溝6,7の接線方向T(図3)に設定されている。ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ溝6,7間に形成された転走路8におけるボール軌道中心径となる円S(図4(A))の接線方向のことである。上記の円Sは、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面におけるボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0016】
図4に示すように、ボール循環部12の接続部10におけるボール循環孔10aの中心O1は、上記転走路8のボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行で、かつナット3のねじ溝7の溝底から遠ざかる方向へ所定量δだけオフセットさせた位置とされている。同図の例では、オフセット量となる所定量δは、ナット3のねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するだけの量としてある。ボール循環孔10aの断面が円形であり、ナット3のねじ溝7の断面がゴシックアーチ形状であるため、ボール循環孔10aの端部と、ナット3のねじ溝7の端部との間には段差部15が生じる。その段差部15を図4(B)においてダブルハッチングで示す。図4(B)は同図(A)のI−I矢視断面図である。この段差部15の発生は、円形とゴシックアーチ形状との形状差のため、避けることができないが、上記のようにボール循環孔10aの中心O1をオフセットさせることにより、段差量を極力小さくすることができる。なお、この段差部15の段差は、上記オフセットのため、ねじ溝7の底7cの部分で最も小さく、ねじ溝7の肩部へ向けて次第に大きくなってる。
ボール循環孔10aの中心O1のオフセット位置は、上記のようにナット3のねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するだけの量とすることが理想であるが、ナット3のゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール4の接触点Pにボール循環孔10aの内径面が一致する位置であっても良い。したがって上記中心O1のオフセット範囲は、ボール循環孔10aの内径面が上記溝底Pに一致する位置からボール接触点Pに一致する位置までの範囲であっても良い。また、上記オフセット範囲は、ねじ溝7の底7cにボール循環孔10aの内径面が一致するときのオフセット量よりもさらに小さな値となる範囲であっても良い。
【0017】
上記段差部15となる段差面は、略球面状とすることが好ましい。ナット3における上記ボール循環孔10aの加工には、図5(A)に示す円筒状のストレートエンドミル16や、図5(B),(C)に示すように先端を球面状としたボールエンドミル17,18が使用される。ストレートエンドミル16の加工では、ワークWの加工面Wsが図5(D)のように平坦面となるが、ボールエンドミル17,18の加工では、加工面Wsが図5(E)のように球面状となる。この実施形態では、図5(B)または同図(C)に示すように円筒部の先端を球面状としたボールエンドミル17,18が用いられ、図6のように上記ボール循環孔10aが加工される。すなわち、ボールエンドミル17,18の中心O2を、上記ボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行となるようにして、ボール循環孔10aが加工される。これにより、ボール循環孔10aの端部と、ナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差部15(図4(A))の表面は略球面状となる。
【0018】
上記構成のボールねじ1の作用を説明する。図4に示されるように、ボールねじ1のボール中心径となる円Sの接線Tの方向にボール4を拾い上げる場合、この接線Tに沿う方向のボール循環孔10aが必要になる。ボール循環孔10aはボール径に極力沿うような径に加工するが、図9(A)の従来例のようにボール循環孔10aの中心O1が接線Tと一致している場合、ナット3のねじ溝7はゴシックアーチ形状としているため、ナット3の溝底部での段差が一番小さく、ナット3のねじ溝7の肩部へ向けて、段差が大きくなっていく。そこで、この実施形態では、接線Tからオフセットした位置にボール循環孔10aを加工することで、上記段差を極力小さくし、また、ボール循環孔10aの加工にボールエンドミル17,18を採用して段差面を滑らかにした。
すなわち、この実施形態のボールねじ1によると、ボール循環孔10aの中心O1を、ナット3のねじ溝7の溝底と反対側へ所定量δだけオフセットさせた位置としたため、ボール循環孔10aの端部とナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差を極力小さくできる。また、ボール循環孔10aの中心O1を、転走路8のボール軌道中心径となる円Sの接線Tに対して平行としたため、ボールの移動経路が、折れ曲がりを生じることなく滑らかに続く。中心O1は円Sの接線Tに対し平行でかつリード角方向に設定してもよい。これらにより、良好なボール循環の作動性が得られ、ボールの挙動が安定する。この場合に、ボール循環孔10aの中心O1をオフセットさせることで段差を軽減するため、加工工数を増やすことなく段差の軽減が行える。
【0019】
また、ボール循環孔10aの端部とナット3のねじ溝7の端部との間に生じる段差部15(図4(A))の面を略球面状としたため、ボール循環の作動性がさらに良好となり、ボール4の挙動をより安定させることができる。この段差部15の球面状の加工は、ボール循環孔10aの加工にボールエンドミル17,18を用いることによって行うため、加工工程の増加を伴うことなく、球面状に加工することができる。
この実施形態によれば、上記段差部15の段差が極僅かであるため、ボールねじ1の作動性が良好になり、初期なじみ運転だけで段差部15は滑らかな形状となる。そのため、使用時に段差部15の摩耗が生じて摩耗粉により耐久性を劣化させることがなくなる。一般に、ボールねじは、製造時になじみ運転を必ず行い、なじみ運転後の洗浄、再組立を行う。よって、この実施形態により、追加の工数を掛けることなく、簡単にこの段差部を滑らかな形状とでき、また作動性や耐久性を良好に保つことが可能になる。
【0020】
また、この実施形態では、循環孔10aの中心O1のオフセット量である所定量δは、ナット3のねじ溝7の溝底にボール循環孔10aの内径面が一致する量としたため、段差を無くすために理想的である。なお、図4(C)のように、ゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール接触点Pに上記ボール循環孔10aの内径面が一致するにようになるオフセット量であっても、段差軽減の効果が得られ、上記所定量δが上記両位置の間のオフセット範囲であっても段差の軽減効果が得られる。また、上記所定量δは上記オフセット範囲よりもさらに小さな範囲の値であって良い。
【0021】
また、この実施形態では、ボール循環部12をガイドプレート5で主に形成したが、このようなガイドプレート形式では、ナット3内においてボール循環孔10aとねじ溝7とが上記段差部15で直接に繋がることになる。そのため、上記のようにボール循環孔10aの中心O1のオフセットによる段差軽減の効果がより効果的となる。
【0022】
つぎに、試験結果を説明する。供試対象は、図1ないし図6に示す実施形態のボールねじ1に対して、表1に示すようにボール循環孔の加工、およびボール循環孔のオフセット状況を種々異ならせたものである。このうち、通し番号が▲2▼,▲3▼,▲5▼,▲6▼の各例が実施例であり、▲1▼,▲4▼の各例が比較例である。ボールねじ1の構成の詳細は、ねじ軸2の軸径φ63mm、ねじ溝6,7のリード16mm、ボール径1/2”(φ12.7mm)である。各例は、初期なじみ運転として回転速度1000rpm、進退ストローク1000mmの動作を100回行い、この初期なじみ運転後の作動性と段差部の状況、さらに洗浄後の耐久性の確認を行った。その結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2において、○は結果が良好、○△はほぼ良好、△は多少作動性に難あり(使用可能レベル)、×は作動性・耐久性とも不可(使用不可能)であることを示す。
この試験結果から、実施例▲2▼,▲5▼のように、加工中心O1のオフセット量は、ナット3のねじ溝7の底にボール循環孔10aの内径面が一致する位置が理想的であるが、実施例▲3▼,▲6▼のように、ゴシックアーチ形状のねじ溝7におけるボール接触点Pにボール循環孔10aの内径面が一致する位置であっても良いことがわかる。
【0026】
なお、上記実施形態ではガイドプレート式のボールねじ1に適用した場合につき説明したが、これに限らず、例えばリターンチューブ式のボールねじに適用しても同様の効果を得ることができる。
【0027】
【発明の効果】
この発明のボールねじは、ナットのねじ溝に両端が連通して転走路のボールを循環させるボール循環部をナットに有し、この循環部の端部が、上記ナットに加工された断面円形のボール循環孔であり、上記ナットのねじ溝の断面がゴシックアーチ形状であるボールねじにおいて、上記ボール循環孔の中心を、上記転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行で、かつ上記ナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせた位置としたため、加工工数を増やすことなく、ナットのボール循環部と転走路との接続部での段差を小さくできる。これによりボール循環の良好な作動性が得られ、ボールの挙動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態におけるボールねじの正面図である。
【図2】同ボールねじの平面図である。
【図3】同ボールねじにおける部分横断面図である。
【図4】(A)は図3の一部の拡大図、(B)は(A)のI−I矢視断面図、(C)は同図(B)の変形例の断面図である。
【図5】(A)〜(C)は各種エンドミルの部分正面図、(D),(E)はそれらエンドミルによる加工部の断面図である。
【図6】ボールエンドミルによるボール循環孔の加工例を示す説明図である。
【図7】(A)はリターンチューブ式ボールねじの平面図、(B)は同ボールねじの横断面図である。
【図8】(A)は従来例のボールねじの平面図、(B)は同ボールねじの横断面図である。
【図9】(A)は同ボールねじのボールを省略して示す拡大横断面図、(B)は(A)のII−II矢視断面図である。
【図10】図9(A)における段差部の部分の拡大図である。
【図11】間座付きのガイドプレート式ボールねじにおけるボールの挙動を示す説明図である。
【図12】他の従来例のボールねじの改良構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ボールねじ
2…ねじ軸
3…ナット
4…ボール
5…ガイドプレート
6,7…ねじ溝
8…転走路
9…溝部
10…接続部
10a…ボール循環孔
11…デフレクタ
11a…端面
12…ボール循環部
15…段差部
O1…ボール循環孔の中心
S…ボール中心径となる円
T…接線
Claims (4)
- ねじ軸の外径面とこのねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面に、互いに対向するねじ溝が形成され、上記ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝の間で形成される転走路に複数のボールが介在し、上記ナットのねじ溝に両端が連通して上記転走路のボールを循環させるボール循環部をナットに有し、このボール循環部の端部が、上記ナットに加工された断面円形のボール循環孔であり、上記ナットのねじ溝の断面がゴシックアーチ形状であるボールねじにおいて、上記ボール循環孔の中心を、上記転走路のボール中心径となる円の接線に対して平行で、かつ上記ナットのねじ溝の溝底から遠ざかる方向へオフセットさせた位置としたことを特徴とするボールねじ。
- 請求項1において、上記ボール循環孔の端部と上記ナットのねじ溝の端部との間に生じる段差面を略球面状としたボールねじ。
- 請求項1または請求項2において、上記ボール循環孔のオフセット範囲を、上記ナットのねじ溝の底に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置から、ナットの上記ゴシックアーチ形状のねじ溝におけるボールの接触点に上記ボール循環孔の内径面が一致する位置までの範囲としたボールねじ。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記ボール循環部が上記ナットに取付けられたガイドプレートの溝部と、上記ボール循環孔とで形成され、上記ナットのねじ溝内に、端面が上記ボール循環孔に続く傾斜面となったデフレクタが装着されたボールねじ。
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CZ306885B6 (cs) * | 2016-09-05 | 2017-08-23 | KSK Precise Motion, a.s. | Kuličkový šroub s axiálně vkládanými převáděcími tělísky |
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2003
- 2003-05-30 JP JP2003153720A patent/JP2004353792A/ja active Pending
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