JP2004352663A - 女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物の提供。
【解決手段】本発明によれば、繊維素溶解作用を有する酵素を有効成分として含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物が提供される。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明によれば、繊維素溶解作用を有する酵素を有効成分として含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物が提供される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の分野】
本発明は女性の原因不明慢性下腹痛の治療に有効な薬剤およびその治療法に関する。
【0002】
【従来の技術】
6ヶ月以上持続する慢性下腹痛(Chronic Pelvic Pain(CPP))を訴える女性は少なくない。その内約50%は子宮内膜症か、子宮腺筋症か、子宮筋腫か、骨盤内癒着によるものであるが、残りの約50%は双合診、経膣超音波断層診、腹腔鏡検査(Laparoscopy)によっても痛みの原因を発見出来ない原因不明慢性下腹痛(Unexplained Chronic Pelvic Pain(UCPP))である。
【0003】
この原因不明慢性下腹痛の原因について骨盤内鬱血症候群、過敏性腸症候群、尿道症候群、間質性膀胱炎、神経損傷説、筋筋膜痛説、心因説などが挙げられているがいずれも確証を欠いており、腹腔鏡検査を行わない症例では子宮付属器炎あるいは骨盤腹膜炎などと誤診されていることが多い(Novak’s Gynecology 13th Ed., ed. by J. S. Berek, USA 2002 p436(非特許文献1); F. M. Howard, Obstetrics & Gynecology, VOL.101, NO.3, pp594−611 (2003)(非特許文献2); British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.105, pp8−10 (1998)(非特許文献3); British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.100, pp508−510 (1993)(非特許文献4))
このように女性の原因不明慢性下腹部痛は現在のところ有効な治療方法がなく、鎮痛剤、消炎鎮痛剤、精神安定剤、抗鬱剤、精神分析などで漫然と治療されており、最後は仙骨子宮靱帯切断手術、仙骨前神経切除手術、子宮全摘手術を受ける患者が少なくない。
【0004】
【非特許文献1】
Novak’s Gynecology 13th Ed., ed. by J. S. Berek, USA 2002 p436
【非特許文献2】
F. M. Howard, Obstetrics & Gynecology, VOL.101, NO.3, pp594−611 (2003)
【非特許文献3】
British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.105, pp8−10 (1998)
【非特許文献4】
British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.100, pp508−510 (1993)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように女性の原因不明慢性下腹痛はその原因が未だ解明されておらず、子宮から出る神経を切断する手術の効果も不完全のことが多く、最後は子宮を全摘出することしか治療法がない。
【0006】
本発明は、女性の原因不明慢性下腹痛の原因を究明するとともにその診断方法を確立し、原因不明慢性下腹痛の治療剤および治療法を提供することをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、女性の原因不明慢性下腹痛のほとんどの原因が子宮旁結合組織、特に基靱帯および仙骨子宮靱帯にあること、そして子宮旁結合組織の伸展痛陽性で立証される子宮旁結合組織の慢性的炎症とその後遺症が原因不明慢性下腹痛の直接の原因であることを確認した。子宮旁結合組織は腹腔外に存在するので腹腔鏡では診断不能であり、経膣超音波断層診およびふつうの双合診でも診断困難である。そのために原因不明慢性下腹痛はこれまで原因不明とされてきたと推察される。本発明者が見出した子宮旁結合組織伸展痛検査法により原因不明慢性下腹痛の主な原因が初めて明らかにされるとともに、原因不明慢性下腹痛の診断ひいてはその治療が初めて可能となった。
【0008】
本発明者はまた、子宮旁結合組織に繊維素溶解作用を有する酵素を適用することにより、原因不明慢性下腹痛の大多数を確実に治療できることを見出した。繊維素溶解作用を有する酵素は、これまでに急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解や脳血栓症の血栓溶解等を主な目的として使用されてきたが、女性の慢性下腹痛の治療に有効という報告はこれまで一切なされていない。
【0009】
本発明によれば、繊維素溶解作用を有する酵素を有効成分として含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物が提供される。
【0010】
本発明によればまた、治療上の有効量の繊維素溶解作用を有する酵素をヒトに投与することを含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療法が提供される。
【0011】
本発明によれば更に、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬の製造のための、繊維素溶解作用を有する酵素の使用が提供される。
【0012】
本発明によれば、子宮を摘出せずに、外来で原因不明慢性下腹痛を治療できる点で有利である。
【0013】
【発明の具体的説明】
対象疾患
本発明による医薬組成物は、子宮旁結合組織伸展痛、特に、基靱帯および/または仙骨子宮靱帯の伸展痛、に由来する、女性の原因不明慢性下腹痛の治療に用いることができる。すなわち、本発明による医薬組成物は原因不明慢性下腹痛患者、典型的には慢性子宮旁結合組織伸展痛陽性患者、に投与することができる。
【0014】
本発明による医薬組成物の投与に当たっては、下記(1)、(2)、および(3)を満たす者を原因不明慢性下腹痛患者と診断することができる。
(1)6ヶ月以上慢性下腹痛を訴える女性。
(2)子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、あるいは卵巣または卵管の腫大に罹っていない女性。
(3)子宮旁結合組織伸展痛陽性の女性。
【0015】
上記(2)の診断に当たっては、双合診、経膣超音波断層診、更に必要に応じてMRI検査および腹腔鏡検査を行うことが好ましい。特に双合診に際しては内診指を出来るだけ膣内深くに挿入し、まず後膣円蓋を通してダグラス窩に硬結や圧痛の有無を調べる。これが陽性なら子宮内膜症が疑われる。
【0016】
上記(3)の診断に当たっては、子宮膣部の左側(あるいは右側)に指先をあて、子宮膣部を強く右側(あるいは左側)に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みがふだんの慢性下腹痛と一致する者を「子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。具体的には、指先を子宮膣部の左側にあて子宮膣部を強く右側に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みが慢性下腹痛と一致した場合には、「左側子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive left Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。また指先を子宮膣部の右側にあて子宮膣部を強く左側に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みが慢性下腹痛と一致した場合には、「右側子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive right Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。
【0017】
医薬組成物およびその投与
本発明による医薬組成物の有効成分である繊維素溶解作用を有する酵素は、市販されているものを使用できる。繊維素溶解作用を有する酵素としては、例えば、ウロキナーゼ、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーター(tPA)、ナサルプラーゼ、ストレプトキナーゼ・ストレプトドルナーゼ、フィブリノリシン、トリプシン、キモトリプシン、セミアルカリプロテイナーゼ、セラペプターゼ、およびブロメラインが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーターの具体例としては、例えば、チソキナーゼ、アルテプラーゼ、ナテプラーゼ、パミテプラーゼ、およびモンテプラーゼが挙げられる。
【0018】
本発明による医薬組成物は、繊維素溶解作用を有する酵素以外に1種以上の他の薬剤を更に含んでいてもよい。このような薬剤としては、抗生物質(例えば、アンピシリン)や局所麻酔剤(例えば、キシロカイン)が挙げられる。子宮旁結合組織の細菌およびウィルスによる感染を治療し、更なる感染を防止する観点から、抗生物質を併用投与することが望ましい。また、局所投与に当たっては、患者の苦痛を軽減する観点から、局所麻酔剤を併用投与することが望ましい。
【0019】
本発明による医薬組成物は、例えば、原因不明慢性下腹部痛患者に経膣的に局所投与することができる。具体的には、本発明による医薬組成物を子宮旁結合組織伸展痛陽性と診断された患者の子宮旁結合組織、特に、基靱帯および/または仙骨子宮靱帯、の子宮付着部付近に投与することができる。より具体的には、左側子宮旁結合組織伸展痛陽性と判定された患者に対して、本発明による医薬組成物を左側子宮旁結合組織に局所投与することができる。また、右側子宮旁結合組織伸展痛陽性と判定された患者に対して、本発明による医薬組成物を右側子宮旁結合組織に局所投与することができる。繊維素溶解作用を有する酵素を目的部位以外に作用させないために、局所投与に当たっては、本発明による医薬組成物が血管内に入らないように注射操作を行うことが望ましい。
【0020】
本発明による医薬組成物はまた、静脈注射や経口投与により投与してもよい。
【0021】
本発明による医薬組成物は、通常用いられている製剤用添加剤を用いて投与経路に適した剤形とすることができ、例えば、溶剤、基剤、希釈剤、増量剤、充填剤、補形剤などの賦形剤;溶解補助剤、可溶化剤、緩衝剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤などの補助剤;抗酸化剤、保存剤、保湿剤、遮光剤、甘味剤、着色剤などの添加剤などを使用することができる。
【0022】
本発明による医薬組成物の投与量は、患者の症状の程度や投与経路等を考慮して、医師の裁量により適宜決定できるが、例えば、ウロキナーゼを有効成分として局所投与する場合には、通常成人一人当たり1回につき約1万単位〜約10万単位、好ましくは約1万単位〜約6万単位を投与することができる。また、tPAを有効成分として投与する場合には、通常成人一人当たり1回につき約10万単位〜約160万単位、好ましくは約20万単位〜約60万単位を投与することができる。
【0023】
本発明による医薬組成物は、上記の投与量で2〜4週間おきに2〜4回投与することができる。このような投与間隔および投与回数で本発明による医薬組成物を患者に投与することにより子宮旁結合組織伸展痛が陰性になるとともに、慢性下腹痛も消失するが、患者の症状の程度によっては、医師の裁量により、投与間隔および投与回数を適宜調節できることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
本発明を下記実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
子宮旁結合組織伸展痛が右側は陰性だが、左側は強陽性である、原因不明慢性下腹痛患者に対して、ウロキナーゼ1.5万単位を生理食塩水3m1に溶解し、これをアンピシリン1万単位1mlおよび1%キシロカイン1mlと更によく混合し、経膣的に左側子宮旁結合組織の子宮付着部位に注射した。注射後16日目に診察したところ、左側子宮旁結合組織伸展痛は軽快し弱陽性に好転していた。そこで同日に、前回同様のウロキナーゼ注射(第二回目注射)を行った。第二回目の注射後7日目に診察したところ、自覚的下腹痛は完全に消失し、左側子宮旁結合組織伸展痛も陰性になった。
【0026】
実施例2
子宮旁結合組織伸展痛が左側は強陽性で、右側が中等度陽性である原因不明慢性下腹痛患者に対して、tPA40万単位を生理食塩水3mlに溶解し、これをアンピシリン1万単位1mlおよび1%キシロカイン1mlと更によく混合し、経膣的に左右の子宮旁結合組織の子宮付着部位に注射した。注射後19日目に診察したところ、自覚痛は軽快し、右側子宮旁結合組織伸展痛は陰性に、左側子宮旁結合組織伸展痛は弱陽性となった。そこで同日に、前回同様のtPA注射(第二回目注射)を行い、更に第二回目の注射後21日目に同様の注射(第三回目注射)を行った。第三回目の注射から28日目と36日目に診察したところ、自覚的下腹痛は完全に消失し、左右の子宮旁結合組織伸展痛も陰性となった。
【発明の分野】
本発明は女性の原因不明慢性下腹痛の治療に有効な薬剤およびその治療法に関する。
【0002】
【従来の技術】
6ヶ月以上持続する慢性下腹痛(Chronic Pelvic Pain(CPP))を訴える女性は少なくない。その内約50%は子宮内膜症か、子宮腺筋症か、子宮筋腫か、骨盤内癒着によるものであるが、残りの約50%は双合診、経膣超音波断層診、腹腔鏡検査(Laparoscopy)によっても痛みの原因を発見出来ない原因不明慢性下腹痛(Unexplained Chronic Pelvic Pain(UCPP))である。
【0003】
この原因不明慢性下腹痛の原因について骨盤内鬱血症候群、過敏性腸症候群、尿道症候群、間質性膀胱炎、神経損傷説、筋筋膜痛説、心因説などが挙げられているがいずれも確証を欠いており、腹腔鏡検査を行わない症例では子宮付属器炎あるいは骨盤腹膜炎などと誤診されていることが多い(Novak’s Gynecology 13th Ed., ed. by J. S. Berek, USA 2002 p436(非特許文献1); F. M. Howard, Obstetrics & Gynecology, VOL.101, NO.3, pp594−611 (2003)(非特許文献2); British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.105, pp8−10 (1998)(非特許文献3); British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.100, pp508−510 (1993)(非特許文献4))
このように女性の原因不明慢性下腹部痛は現在のところ有効な治療方法がなく、鎮痛剤、消炎鎮痛剤、精神安定剤、抗鬱剤、精神分析などで漫然と治療されており、最後は仙骨子宮靱帯切断手術、仙骨前神経切除手術、子宮全摘手術を受ける患者が少なくない。
【0004】
【非特許文献1】
Novak’s Gynecology 13th Ed., ed. by J. S. Berek, USA 2002 p436
【非特許文献2】
F. M. Howard, Obstetrics & Gynecology, VOL.101, NO.3, pp594−611 (2003)
【非特許文献3】
British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.105, pp8−10 (1998)
【非特許文献4】
British Journal of Obstetrics and Gynaecology, VOL.100, pp508−510 (1993)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように女性の原因不明慢性下腹痛はその原因が未だ解明されておらず、子宮から出る神経を切断する手術の効果も不完全のことが多く、最後は子宮を全摘出することしか治療法がない。
【0006】
本発明は、女性の原因不明慢性下腹痛の原因を究明するとともにその診断方法を確立し、原因不明慢性下腹痛の治療剤および治療法を提供することをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、女性の原因不明慢性下腹痛のほとんどの原因が子宮旁結合組織、特に基靱帯および仙骨子宮靱帯にあること、そして子宮旁結合組織の伸展痛陽性で立証される子宮旁結合組織の慢性的炎症とその後遺症が原因不明慢性下腹痛の直接の原因であることを確認した。子宮旁結合組織は腹腔外に存在するので腹腔鏡では診断不能であり、経膣超音波断層診およびふつうの双合診でも診断困難である。そのために原因不明慢性下腹痛はこれまで原因不明とされてきたと推察される。本発明者が見出した子宮旁結合組織伸展痛検査法により原因不明慢性下腹痛の主な原因が初めて明らかにされるとともに、原因不明慢性下腹痛の診断ひいてはその治療が初めて可能となった。
【0008】
本発明者はまた、子宮旁結合組織に繊維素溶解作用を有する酵素を適用することにより、原因不明慢性下腹痛の大多数を確実に治療できることを見出した。繊維素溶解作用を有する酵素は、これまでに急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解や脳血栓症の血栓溶解等を主な目的として使用されてきたが、女性の慢性下腹痛の治療に有効という報告はこれまで一切なされていない。
【0009】
本発明によれば、繊維素溶解作用を有する酵素を有効成分として含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物が提供される。
【0010】
本発明によればまた、治療上の有効量の繊維素溶解作用を有する酵素をヒトに投与することを含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療法が提供される。
【0011】
本発明によれば更に、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬の製造のための、繊維素溶解作用を有する酵素の使用が提供される。
【0012】
本発明によれば、子宮を摘出せずに、外来で原因不明慢性下腹痛を治療できる点で有利である。
【0013】
【発明の具体的説明】
対象疾患
本発明による医薬組成物は、子宮旁結合組織伸展痛、特に、基靱帯および/または仙骨子宮靱帯の伸展痛、に由来する、女性の原因不明慢性下腹痛の治療に用いることができる。すなわち、本発明による医薬組成物は原因不明慢性下腹痛患者、典型的には慢性子宮旁結合組織伸展痛陽性患者、に投与することができる。
【0014】
本発明による医薬組成物の投与に当たっては、下記(1)、(2)、および(3)を満たす者を原因不明慢性下腹痛患者と診断することができる。
(1)6ヶ月以上慢性下腹痛を訴える女性。
(2)子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、あるいは卵巣または卵管の腫大に罹っていない女性。
(3)子宮旁結合組織伸展痛陽性の女性。
【0015】
上記(2)の診断に当たっては、双合診、経膣超音波断層診、更に必要に応じてMRI検査および腹腔鏡検査を行うことが好ましい。特に双合診に際しては内診指を出来るだけ膣内深くに挿入し、まず後膣円蓋を通してダグラス窩に硬結や圧痛の有無を調べる。これが陽性なら子宮内膜症が疑われる。
【0016】
上記(3)の診断に当たっては、子宮膣部の左側(あるいは右側)に指先をあて、子宮膣部を強く右側(あるいは左側)に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みがふだんの慢性下腹痛と一致する者を「子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。具体的には、指先を子宮膣部の左側にあて子宮膣部を強く右側に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みが慢性下腹痛と一致した場合には、「左側子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive left Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。また指先を子宮膣部の右側にあて子宮膣部を強く左側に圧迫したとき強い痛みを訴え、かつその痛みが慢性下腹痛と一致した場合には、「右側子宮旁結合組織伸展痛陽性」(positive right Parametrium−Stretch−Pain)と診断する。
【0017】
医薬組成物およびその投与
本発明による医薬組成物の有効成分である繊維素溶解作用を有する酵素は、市販されているものを使用できる。繊維素溶解作用を有する酵素としては、例えば、ウロキナーゼ、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーター(tPA)、ナサルプラーゼ、ストレプトキナーゼ・ストレプトドルナーゼ、フィブリノリシン、トリプシン、キモトリプシン、セミアルカリプロテイナーゼ、セラペプターゼ、およびブロメラインが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーターの具体例としては、例えば、チソキナーゼ、アルテプラーゼ、ナテプラーゼ、パミテプラーゼ、およびモンテプラーゼが挙げられる。
【0018】
本発明による医薬組成物は、繊維素溶解作用を有する酵素以外に1種以上の他の薬剤を更に含んでいてもよい。このような薬剤としては、抗生物質(例えば、アンピシリン)や局所麻酔剤(例えば、キシロカイン)が挙げられる。子宮旁結合組織の細菌およびウィルスによる感染を治療し、更なる感染を防止する観点から、抗生物質を併用投与することが望ましい。また、局所投与に当たっては、患者の苦痛を軽減する観点から、局所麻酔剤を併用投与することが望ましい。
【0019】
本発明による医薬組成物は、例えば、原因不明慢性下腹部痛患者に経膣的に局所投与することができる。具体的には、本発明による医薬組成物を子宮旁結合組織伸展痛陽性と診断された患者の子宮旁結合組織、特に、基靱帯および/または仙骨子宮靱帯、の子宮付着部付近に投与することができる。より具体的には、左側子宮旁結合組織伸展痛陽性と判定された患者に対して、本発明による医薬組成物を左側子宮旁結合組織に局所投与することができる。また、右側子宮旁結合組織伸展痛陽性と判定された患者に対して、本発明による医薬組成物を右側子宮旁結合組織に局所投与することができる。繊維素溶解作用を有する酵素を目的部位以外に作用させないために、局所投与に当たっては、本発明による医薬組成物が血管内に入らないように注射操作を行うことが望ましい。
【0020】
本発明による医薬組成物はまた、静脈注射や経口投与により投与してもよい。
【0021】
本発明による医薬組成物は、通常用いられている製剤用添加剤を用いて投与経路に適した剤形とすることができ、例えば、溶剤、基剤、希釈剤、増量剤、充填剤、補形剤などの賦形剤;溶解補助剤、可溶化剤、緩衝剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤などの補助剤;抗酸化剤、保存剤、保湿剤、遮光剤、甘味剤、着色剤などの添加剤などを使用することができる。
【0022】
本発明による医薬組成物の投与量は、患者の症状の程度や投与経路等を考慮して、医師の裁量により適宜決定できるが、例えば、ウロキナーゼを有効成分として局所投与する場合には、通常成人一人当たり1回につき約1万単位〜約10万単位、好ましくは約1万単位〜約6万単位を投与することができる。また、tPAを有効成分として投与する場合には、通常成人一人当たり1回につき約10万単位〜約160万単位、好ましくは約20万単位〜約60万単位を投与することができる。
【0023】
本発明による医薬組成物は、上記の投与量で2〜4週間おきに2〜4回投与することができる。このような投与間隔および投与回数で本発明による医薬組成物を患者に投与することにより子宮旁結合組織伸展痛が陰性になるとともに、慢性下腹痛も消失するが、患者の症状の程度によっては、医師の裁量により、投与間隔および投与回数を適宜調節できることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
本発明を下記実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
子宮旁結合組織伸展痛が右側は陰性だが、左側は強陽性である、原因不明慢性下腹痛患者に対して、ウロキナーゼ1.5万単位を生理食塩水3m1に溶解し、これをアンピシリン1万単位1mlおよび1%キシロカイン1mlと更によく混合し、経膣的に左側子宮旁結合組織の子宮付着部位に注射した。注射後16日目に診察したところ、左側子宮旁結合組織伸展痛は軽快し弱陽性に好転していた。そこで同日に、前回同様のウロキナーゼ注射(第二回目注射)を行った。第二回目の注射後7日目に診察したところ、自覚的下腹痛は完全に消失し、左側子宮旁結合組織伸展痛も陰性になった。
【0026】
実施例2
子宮旁結合組織伸展痛が左側は強陽性で、右側が中等度陽性である原因不明慢性下腹痛患者に対して、tPA40万単位を生理食塩水3mlに溶解し、これをアンピシリン1万単位1mlおよび1%キシロカイン1mlと更によく混合し、経膣的に左右の子宮旁結合組織の子宮付着部位に注射した。注射後19日目に診察したところ、自覚痛は軽快し、右側子宮旁結合組織伸展痛は陰性に、左側子宮旁結合組織伸展痛は弱陽性となった。そこで同日に、前回同様のtPA注射(第二回目注射)を行い、更に第二回目の注射後21日目に同様の注射(第三回目注射)を行った。第三回目の注射から28日目と36日目に診察したところ、自覚的下腹痛は完全に消失し、左右の子宮旁結合組織伸展痛も陰性となった。
Claims (7)
- 繊維素溶解作用を有する酵素を有効成分として含んでなる、女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物。
- 女性の原因不明慢性下腹痛が子宮旁結合組織伸展痛に由来する、請求項1に記載の医薬組成物。
- 子宮旁結合組織伸展痛陽性と診断された患者の子宮旁結合組織の子宮付着部付近に投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
- 子宮旁結合組織が、基靱帯および/または仙骨子宮靱帯である、請求項2または3に記載の医薬組成物。
- 繊維素溶解作用を有する酵素が、ウロキナーゼ、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーター(tPA)、ナサルプラーゼ、ストレプトキナーゼ・ストレプトドルナーゼ、フィブリノリシン、トリプシン、キモトリプシン、セミアルカリプロテイナーゼ、セラペプターゼ、およびブロメラインからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 1種以上の他の薬剤を更に含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 他の薬剤が、抗生物質および/または局所麻酔剤である、請求項6に記載の医薬組成物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152863A JP2004352663A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物 |
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JP2003152863A JP2004352663A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 女性の原因不明慢性下腹痛の治療用医薬組成物 |
Publications (1)
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JP2004352663A true JP2004352663A (ja) | 2004-12-16 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018212256A1 (ja) * | 2017-05-16 | 2018-11-22 | ノーベルファーマ株式会社 | エストロゲン受容体α阻害作用を有するエストロゲン受容体βパーシャルアゴニストを用いた、子宮内膜症、子宮腺筋症等の婦人科疾患の疼痛、及び/又は器質的病変の治療剤 |
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2003
- 2003-05-29 JP JP2003152863A patent/JP2004352663A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018212256A1 (ja) * | 2017-05-16 | 2018-11-22 | ノーベルファーマ株式会社 | エストロゲン受容体α阻害作用を有するエストロゲン受容体βパーシャルアゴニストを用いた、子宮内膜症、子宮腺筋症等の婦人科疾患の疼痛、及び/又は器質的病変の治療剤 |
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