JP2004349336A - 巻線型コイル - Google Patents
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Abstract
【課題】ボビンの筒状胴部の穴の内周面と、該筒状胴部の穴に挿通されている磁性体コアの脚部の外周面との間に形成された空間ギャップ内にワニスが残留しにくい巻線型コイルを提供する。
【解決手段】巻線37,47の各々は、ボビン32,42の筒状胴部33,43の外周に単層巻きされている。ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43aの内壁面に設けられた突起状コア支持部33b,43bによって、穴33a,43aの内壁面とコア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面52aa,52baとの間に空間ギャップG1が形成されている。この空間ギャップG1には柱状ワニスは生じていない。各部品を固着するためのワニスの粘度Xと空間ギャップG1の寸法Yは、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足している。
【選択図】 図3
【解決手段】巻線37,47の各々は、ボビン32,42の筒状胴部33,43の外周に単層巻きされている。ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43aの内壁面に設けられた突起状コア支持部33b,43bによって、穴33a,43aの内壁面とコア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面52aa,52baとの間に空間ギャップG1が形成されている。この空間ギャップG1には柱状ワニスは生じていない。各部品を固着するためのワニスの粘度Xと空間ギャップG1の寸法Yは、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足している。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線型コイル、特に、インダクタ、コモンモードチョークコイル、ノーマルモードチョークコイル、トランスなどに使用される巻線型コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コモンモードチョークコイルの挿入損失−周波数特性は、自己共振周波数より低い周波数領域ではコモンモードインダクタンスLによる誘導性特性を示し、自己共振周波数より高い周波数領域ではコモンモードチョークコイルに発生する浮遊容量Cによる容量性特性を示す。自己共振周波数と、50Ω系で測定する場合の誘導性特性および容量性特性とは、以下の式によって表される。
自己共振周波数:fr=1/[2π(LC)1/2]
誘導性特性カーブ:挿入損失=10log[1+(ωL/100)2]
容量性特性カーブ:挿入損失=10log[1+1/(100ωC)2]
【0003】
コモンモードチョークコイルの高周波帯域でのノイズ除去性能をアップさせるには、浮遊容量Cを小さくする必要がある。浮遊容量発生の主な要因は、概略、巻線の巻回構造による影響分と、ボビンによる影響分と、磁性体コアによる影響分である。ここに、ボビンによる影響分を小さくするためには、誘電率の低いボビン材質に変更したり、ボビンの肉厚を薄くしたりする必要がある。しかし、コモンモードチョークコイルを交流電源ライン用として使用する場合には、安全規格の難燃性、相対温度指数および絶縁距離を確保しなければならない。また、既存のコモンモードチョークコイルにおいては、誘電率ε=2〜4程度の材質で、0.5〜1.0mm程度の肉厚のボビンが一般的に用いられているため、ボビン材質やボビンの肉厚を変更して、浮遊容量Cのうちボビンによる影響分を小さくすることは困難である。
【0004】
従って、コモンモードチョークコイルに発生する浮遊容量Cを小さくするには、巻線の巻回構造による影響分と磁性体コアによる影響分を軽減することが重要になる。これら影響分の割合は巻線の巻回構造により変わる。例えば、浮遊容量の発生が少ないとされている巻線の巻回構造として、従来より巻線を分割して巻回する、いわゆる分割巻きがある。
【0005】
図18は、巻線7,17を分割巻きした従来のコモンモードチョークコイル1の構成を示す。コモンモードチョークコイル1はU字形状を有する二つのコア部材20,21からなる磁性体コアと二つのボビン2,12とを備えている。ボビン2,12はそれぞれ、筒状胴部3,13と、該筒状胴部3,13に設けた鍔部4,5,6、14,15,16とを有している。
【0006】
巻線7は、第1巻線部7aと第2巻線部7bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部7aはボビン2の鍔部4と6の間に巻回され、第2巻線部7bは鍔部5と6の間に巻回されている。同様に、巻線17は第1巻線部17aと第2巻線部17bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部17aはボビン12の鍔部14と16の間に巻回され、第2巻線部17bは鍔部15と16の間に巻回されている。
【0007】
ボビン2,12は、その筒状胴部3,13が互いに平行になるように配置される。そして、筒状胴部3,13の穴3a,13aに、コア部材20,21の脚部20b,21bがそれぞれ挿通される。これらコア部材20,21は、その各々の両脚部20b,21bの先端面が穴3a,13a内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0008】
各部分2,12,20,21が組み付けられたコモンモードチョークコイル1は、ワニスの入った浴槽に浸漬された後、引き上げられ、ワニス硬化することによって各部分2,12,20,21は確実に固着される。
【0009】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル1において、浮遊容量は巻幅にほぼ比例しているため、巻線7,17をそれぞれ二つの巻線部7a,7b、17a,17bに分割した場合、一つの巻線部の浮遊容量は分割前の巻線の浮遊容量の1/2になる。また、各巻線部7aと7b、あるいは、17aと17bは直列に接続されているため、2分割巻きコモンモードチョークコイル1の巻線7,17の各々の浮遊容量は分割前の巻線の浮遊容量の1/4(例えば、4.0pF程度)になる。
【0010】
また、巻線の別の巻回構造として、巻線を1層のみ巻回する、いわゆる単層巻きがある。この巻回構造は、隣接する巻回部分が左右方向だけであり、隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は、巻回数分だけ直列に接続されるような構造であるため、浮遊容量を最も小さくできる。例えば、先の分割巻きの場合(4.0pF)に比較して、約1/6程度以上に低くすることもできる。ただし、得られるインダクタンス値は小さくなる。
【0011】
さらに、巻線の別の巻回構造として、単層巻きされた巻線を並列に複数段重ねる、いわゆる単層並列巻きがある。この巻回構造は、単層巻きのインダクタンス値が小さいという不具合を解消するため、巻線の径を細くして一段当たりの巻線のターン数を多くして大きなインダクタンス値を得るものである。そして、それによって大きくなる巻線の直流抵抗値を低く抑えるため、複数段に積み重ねられた巻線を並列接続している。つまり、単層並列巻きは、単層巻きの特徴をもちながら、比較的大きなインダクタンスを得ることができる。ただし、巻回構造による浮遊容量分は、単層巻きの場合より大きくなる。
【0012】
表1は、同じ巻線径で巻回したときの巻回構造の違いによる浮遊容量分、巻線の直流抵抗値およびインダクタンス値のそれぞれの一般的な大小関係を表したものである。
【0013】
【表1】
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、コモンモードチョークコイル1の巻線7,17の巻回可能領域は、閉磁路を構成しているコア部材20,21の窓面積、ボビン2,12の肉厚、絶縁距離などにより制限を受けている。従来のコモンモードチョークコイル1は、その限られた巻回可能領域内で最大のインダクタンス値を得るため、無駄なスペースがないように設計されている。従って、コア部材20,21とボビン2,12の間、あるいは、コア部材20,21と巻線7,17の間には、組み立て作業上または安全規格上、最低限必要な空間ギャップしか設けていなかった。従って、コア部材20,21による浮遊容量分は比較的大きく、巻線7,17を2分割する中央鍔部6,16がない多層巻きのコモンモードチョークコイルと比較して浮遊容量の発生が少ないとされている巻線7,17の巻回構造を採用しているコモンモードチョークコイル1の場合には、その影響は無視できないほどの値である。特に、浮遊容量の発生が少ない単層巻きや単層並列巻きでは、コア部材20,21による浮遊容量への影響は極めて大きい。
【0015】
そこで、本出願人は、コア部材20,21による浮遊容量への影響を抑えることができる構造として、ボビン2,12の筒状胴部3,13の穴3a,13aの内周面と、コア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間に空間ギャップを設けることを考えた(特願2001−356552号)。ボビン2,12の穴3a,13aの内周面とコア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間は、誘電率εが低い空気で満たされている。これにより、コア部材20,21による浮遊容量への影響を抑えることができ、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が改善される。
【0016】
ところが、ボビン2,12の穴3a,13aの内周面とコア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間に空間ギャップを単に形成するだけであると、コモンモードチョークコイル1を各部分を固着させるためのワニスが入った浴槽に浸漬した際にボビン2,12とコア部材20,21の間の空間ギャップに浸透したワニスが残留し易くなり、空間ギャップ内に柱状ワニス溜まりを形成し易くなる。
【0017】
このとき、空間ギャップからワニスを除去するために、自重によるワニス除去時間を長くしたり、コモンモードチョークコイル1を揺動したりすれば、ワニスの残留は少なくなってくる。しかし、ワニス除去時間を長くすることは、生産性の低下を招く。また、コモンモードチョークコイル1の揺動は、コア部材20,21の衝き合わせ面のずれや、衝き合わせ界面へのワニスの浸透を招く。
【0018】
柱状ワニス溜まりが形成されると、ボビン2,12とコア部材20,21との間の実効的な誘電率εが上昇してしまうことがある。実効的な誘電率εが大きくなると、浮遊容量が大きくなり、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が劣化する。
【0019】
そこで、本発明の目的は、ボビンの筒状胴部の穴の内周面と、該筒状胴部の穴に挿通されている磁性体コアの脚部の外周面との間に形成された空間ギャップ内にワニスが残留しにくい巻線型コイルを提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る巻線型コイルは、
(a)筒状胴部を有するボビンと、
(b)筒状胴部に設けられた単層巻きの巻線もしくは単層並列巻きの巻線もしくは複数に分割された分割巻きの巻線のいずれかの巻線と、
(c)筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路もしくは開磁路のいずれかを構成する磁性体コアと、
(d)筒状胴部の穴の内周面もしくは磁性体コアの脚部の外周面の少なくともいずれかに設けたコア支持部と、
(e)ボビンと磁性体コアを固着するためのワニスとを備え、
(f)コア支持部によって、筒状胴部の穴の内周面と、筒状胴部の穴に挿通されている磁性体コアの脚部の外周面との間に空間ギャップを設け、
(g)筒状胴部の穴の内周面と磁性体コアの脚部の外周面との対向領域は、筒状胴部と磁性体コア間を繋ぐ柱状ワニス溜まりの非存在領域であること、
を特徴とする。そして、筒状胴部の穴の内周面と磁性体コアの脚部の外周面とコア支持部の表面に、2〜10μmの厚みの薄膜状ワニスが付与されている。
【0021】
より具体的には、ワニスの粘度X(mPa・S)と空間ギャップの寸法Y(nm)が、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足していることを特徴とする。
【0022】
以上の構成により、磁性体コアとボビンの間の空間ギャップに柱状ワニス溜まりが存在しなくなる。このため、磁性体コアと巻線の間の実効的な誘電率が小さくなり、浮遊容量が小さくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る巻線型コイルの実施形態について添付の図面を参照して説明する。本実施形態は、コモンモードチョークコイルを例にして説明する。
【0024】
コモンモードチョークコイルの外観を図1に示し、その正面図を図2に示し、水平断面図および一部垂直断面図をそれぞれ図3および図4に示し、電気等価回路図を図5に示す。コモンモードチョークコイル31は、U字形状を有する二つのコア部材50a,50bからなる磁性体コア50と、二つのボビン32,42と、止め金具60とを備えている。
【0025】
ボビン32,42の各々は、筒状胴部33,43と、該筒状胴部33,43の両端部に設けた鍔部34,35、44,45とを有している。鍔部34,35,44,45にはそれぞれリード端子54a,54b,55a,55bが植設されている。ボビン32,42は、その筒状胴部33,43が互いに平行になるように配置される。ボビン32,42は樹脂などで形成されている。
【0026】
巻線37,47の各々は、ボビン32,42の筒状胴部33,43の外周に単層巻きされている。巻線37,47は互いに等しい巻回数を有している。巻線37の両終端は、ボビン32に設けられたリード端子54a,54bにそれぞれ電気的に接続されている。同様に、巻線47の両終端は、ボビン42に設けられたリード端子55a,55bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0027】
磁性体コア50を構成しているコア部材50a,50bの各々は、腕部51a,51bと、該腕部51a,51bの両端から直角方向に延在した脚部52a,52bとを有している。そして、ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43a(横断面形状が矩形)には、コア部材50a,50bの脚部52a,52b(横断面形状が矩形)がそれぞれ挿入されている。これらコア部材50a,50bは、その各々の両脚部52a,52bの先端面が穴33a,43a内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0028】
ここで、図2〜図4に示すように、ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43aのそれぞれの四つの内壁面には、空間ギャップ形成のための突起状コア支持部33b,43bが設けられている。この突起状コア支持部33b,43bによって、コア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成されている。突起状コア支持部33b,43bとコア部材50a,50bとの当接面は、コア部材50a,50bの保持の面からは平坦面の方がよく、また、浮遊容量を極力低減するという面からは当接面積が少ない方がよいので、当接面はR面状のようなものがよい。なお、水平方向の空間ギャップG1の寸法と垂直方向の空間ギャップG1の寸法は、本実施形態のように等しくすることが好ましいが、異ならせてもよいことは言うまでもない。
【0029】
また、図3に示すように、コア部材50a,50bの腕部51a,51bは、ボビン32,42の各々の鍔部34,35,44,45に並走している。鍔部34,35,44,45の外側主面34a,35a,44a,45aには、それぞれ空間ギャップ形成のための凸状スペーサ36,46が設けられている。凸状スペーサ36,46はテーパを有しており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入し易いようになっている。腕部51a,51bの内側面51aa,51bbと、鍔部34,35,44,45の外側主面34a,35a,44a,45aとの間に所定の寸法の空間ギャップG2が形成されている。
【0030】
さらに、図1に示すように、ボビン32と42の間には、コア部材50a,50bの衝き合わせ面を堅固に密着させるためのコ字型止め金具60が嵌め込まれている。
【0031】
コア部材50a,50bの材料には、Mn−Zn系フェライトやNi−Zn系フェライトが用いられる。特に、Mn−Zn系フェライトは高透磁率を有するため、巻線37,47の巻回数が比較的少なくても数十〜数百mHの大きなインダクタンス値を得ることができる。因みに、低周波数帯域(数KHz)からのノイズ電圧を抑制するためには、数十〜数百mHのインダクタンス値を必要とする。
【0032】
以上の部品32,42,50a,50b,60は、必要最低限の量のワニスで固着される。すなわち、図6に示すように、各部品32,42,50a,50b,60が組み付けられたコモンモードチョークコイル31を、ワニス70の入った浴槽に浸漬し、コモンモードチョークコイル31にワニス70を付与する。ワニス70はボビン32,42の穴33a,43aにも浸透する。
【0033】
次に、コモンモードチョークコイル31をワニス浴槽から引き上げる。図7に示すように、コモンモードチョークコイル31を若干傾け、ボビン32,42の穴33a,43a内に浸透したワニスなどの余分なワニス70を自重により落とす。このとき、図8に示すように、余分なワニスが垂れてくるので、この余分なワニスを布75などで拭き取ると、効率良く余分なワニスが除去される。
【0034】
ここで、ワニスは希釈材により濃度を変えて使用されることが多く、ワニス濃度が高ければ粘度も高くなり、ワニス濃度が低ければ粘度も低くなる。ワニスの粘度が高くなると、ボビン32,42の穴33a,43a内に浸透したワニスは残留し易くなり、空間ギャップG1内に、例えば図9に示すような柱状ワニス溜まり72を形成し易くなる。なお、図9において、ボビン32の穴33aの内壁面とコア部材50aの脚部52aの外周面52aaと突起状コア支持部33bの表面に付与されている薄膜状ワニス71がボビン32とコア部材50aを固着する。薄膜状ワニス71の膜厚は2〜10μm程度である。
【0035】
そこで、図6〜図8に示す手順でコモンモードチョークコイル31をワニス浴に浸漬したときに、図9に示すような柱状ワニス溜まり72が生じない空間ギャップG1の寸法とワニス粘度との関係について評価した。図10は評価結果を示すグラフである。実線76は評価結果から1次式を用いて求めた柱状ワニス溜まり72が生じない空間ギャップG1の寸法の限界線である。ワニス粘度をX、空間ギャップG1の寸法をYとすると、1次式はY=0.0127X+0.265と表示される。従って、コモンモードチョークコイル31を設計する場合には、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足するような空間ギャップG1にすればよい。
【0036】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル31は、巻線37,47にコモンモード(同相)ノイズ電流が流れると、巻線37,47により磁性体コア50内にそれぞれ同一方向に磁束が発生する。この磁束は磁性体コア50内を周回しながら消費される。
【0037】
このコモンモードチョークコイル31はコア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面(上側面、下側面、内側面および外側面の四つの面を含んだもの)52aa,52baと、ボビン32,42の穴33a,43aの内壁面との間にそれぞれ空間ギャップG1を形成している。空間ギャップG1には柱状ワニス溜まり72は生じておらず、磁性体コア50と巻線37,47の間の実効的な誘電率を小さくすることができる。従って、コモンモードチョークコイル31の浮遊容量が小さくなり、高周波特性を改善することができる。
【0038】
図11は、柱状ワニス溜まり72が生じていない本実施形態のコモンモードチョークコイル31の周波数特性を示すグラフである(実線78参照)。比較のために、柱状ワニス溜まり72が生じている場合の周波数特性を併せて記載している(点線79参照)。
【0039】
ところで、一般に、コモンモードチョークコイルは、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分を僅かながら有しているため、ノーマルモードノイズを除去する効果もある。しかしながら、信号(電源)ラインに、コモンモードノイズの他に、強いノーマルモードノイズも流れる場合には、コモンモードチョークコイルとノーマルモードチョークコイルの両方の部品を使用してノイズ対策する必要がある。また、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分が比較的大きいコモンモードチョークコイルの場合には、漏れ磁束が周辺回路に悪影響を与えることがあるため、コモンモードチョークコイルの外周に磁気シールド材を設ける必要がある。
【0040】
そこで、図12に示すように、コモンモードチョークコイル31の隣接する二つのボビン32,42の間に、比透磁率が1以上(例えば2〜数十)の磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設する。磁粉入り絶縁性樹脂材80は、例えば、80〜90wt%のNi−Zn系やMn−Zn系のフェライトと、ナイロン系やポリフェニレンサルファイド系の樹脂とを混練したものからなる。磁粉入り絶縁性樹脂材80は加工が容易で、それ自体が絶縁性を有するので、コア部材50a,50bとの間に絶縁性スペーサを挟み込む必要がない。
【0041】
磁粉入り絶縁性樹脂材80を設けることにより、ノーマルモードの磁路の実効透磁率が上がり、また、その実効透磁率の大きい磁路(磁粉入り絶縁性樹脂材80およびコア部材50a,50b)に磁束φが集中する。そのため、ノーマルモードインダクタンス成分が大きくなり、強いノーマルモードノイズも除去することができるコモンモードチョークコイル31が得られ、漏れ磁束による周辺回路への悪影響も抑制できる。
【0042】
ノーマルモードインダクタンス成分の値は、コア部材50a,50bと磁粉入り絶縁性樹脂材80との接触面積やギャップ、磁粉入り絶縁性樹脂材80の比透磁率などで決まる。コモンモードチョークコイル31でノーマルモードインダクタンス成分を大きくしていくと、コア部材50a,50bが飽和し易くなるため、使用するコア部材50a,50bの特性(飽和特性と比透磁率など)やそのコモンモードチョークコイル31に流れる電流により、どの程度までノーマルモードインダクタンス成分を大きくできるかが決まる。つまり、コモンモードチョークコイル31の使用保証範囲で、コア部材50a,50bが飽和しないように、磁粉入り絶縁性樹脂材80を利用してノーマルモードインダクタンス成分を大きくする必要がある。
【0043】
また、二つのボビン32,42の間に、磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設することで、巻線37,47間の絶縁距離を長くすることができるとともに、コモンモードチョークコイル31の空間スペースを有効活用してサイズが大型化するのを防止する。
【0044】
磁粉入り絶縁性樹脂材80の代わりに、絶縁性樹脂で表面が被覆されているフェライト材を使用してもよい。このフェライト材(Ni−Zn系やMn−Zn系などの材料からなるもの)も、磁粉入り絶縁性樹脂材80と同様の作用効果を奏する。
【0045】
また、単層巻きは浮遊容量Cを最も抑えることができる巻回構造であるが、大きなインダクタンス値を得ることが困難であるため、低周波帯域のコモンモードノイズを十分に抑えることが難しい。そこで、図13に示すように、ボビン32,42の筒状胴部33,43に、巻線37a,37b,37c並びに巻線47a,47b,47cをそれぞれ順に単層巻きして複数段に積み重ねた単層並列巻き構造としてもよい。
【0046】
また、図13に示したコモンモードチョークコイル31Aは、ボビン32,42の筒状胴部33,43のそれぞれの四つの内壁面には、空間ギャップG1を形成するためのレール状コア支持部33b,43bを設けている。各レール状コア支持部33b,43bはテーパを有しており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入され易いようになっている。このレール状コア支持部33b,43bが脚部52a,52bの外周面(四つの面)52aa,52baに当接することによって、脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成される。
【0047】
また、図14および図15に示したコモンモードチョークコイル31Bは、コア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面(四つの面)52aa,52baにそれぞれ、レール状コア支持部65,66を設けている。各レール状コア支持部65,66の先端部にはテーパが形成されており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入され易いようになっている。このレール状コア支持部65,66によって、脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成される。このコモンモードチョークコイル31Bは、前記コモンモードチョークコイル31と同様の作用効果を奏する。
【0048】
さらに、図16に示すように、ボビン32と42の軸を揃えて連接し、連通した穴33a,43aに、コア部材50a,50bの一方の脚部52a,52bを挿入した構造のコモンモードチョークコイル31Cであってもよい。このとき、ボビン32,42の穴33a,43aの内壁面の一つにコア部材50a,50bの脚部52a,52bの内側面が接触する構造、すなわち、脚部52a,52bの外側面、上側面および下側面と、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成されている構造であっても、浮遊容量削減の効果がある。
【0049】
また、図17に示したコモンモードチョークコイル31Dは、巻線37,47を分割巻きしたものである。
【0050】
巻線37は、第1巻線部37aと第2巻線部37bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部37aはボビン32の鍔部34と96の間に巻回され、第2巻線部37bは鍔部35と96の間に巻回されている。同様に、巻線47は第1巻線部47aと第2巻線部47bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部47aはボビン42の鍔部44と97の間に巻回され、第2巻線部47bは鍔部45と97の間に巻回されている。このコモンモードチョークコイル31Dは前記コモンモードチョークコイル31と同様の作用効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、磁性体コアとしてロ字型の一体コアや日字型の一体コアを使用し、ボビンとして2以上に分割させた歯車構造のボビンを使用してもよい。また、前記実施形態では、二つの巻線を有する二ラインのものについて説明したが、三つ以上の巻線を有する三ライン以上のものであってもよい。さらに、磁性体コアは閉磁路を形成するものに限定するものではなく、開磁路を形成する構成のものであってもよい。
【0052】
さらに、本発明は、コモンモードチョークコイル以外に、図1において、二つのボビン32,42のうちいずれか一方のボビンを省略した構造のインダクタであってもよい。また、ノーマルモードチョークコイル、トランスなどのコイルにも適用できる。さらに、本発明は、コアでコモンモードノイズ(ノーマルモードノイズ)を除去し、ボビンでノーマルモードノイズ(コモンモードノイズ)を除去する、いわゆるハイブリッドチョークコイルにも適用可能であり、コモンモードノイズに対してだけでなく、ノーマルモードノイズに対しても本発明の効果を奏することができる。
【0053】
また、レール状コア支持部や突起状コア支持部は、横断面が矩形である必要はなく、半円形や台形や三角形などであってもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、磁性体コアと巻線の間に所定の寸法の空間ギャップを確保し、かつ、空間ギャップ内に柱状ワニス溜まりが生じないようにしたので、浮遊容量を低減することができる。この結果、高周波領域の電気特性の優れた巻線型コイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る巻線型コイルの一実施形態を示す外観斜視図。
【図2】図1に示した巻線型コイルの正面図。
【図3】図1に示した巻線型コイルの水平断面図。
【図4】図1に示した巻線型コイルの一部垂直断面図。
【図5】図1に示した巻線型コイルの電気等価回路図。
【図6】図1に示した巻線型コイルへのワニス付与手順を示す断面図。
【図7】図6に続くワニス付与手順を示す断面図。
【図8】図7に続くワニス付与手順を示す断面図。
【図9】ワニス付与後の空間ギャップG1の一部拡大断面図。
【図10】空間ギャップG1の寸法とワニス粘度の関係を示すグラフ。
【図11】図1に示した巻線型コイルの挿入損失―周波数特性を示すグラフ。
【図12】図1に示した巻線型コイルの変形例を示す水平断面図。
【図13】本発明に係る巻線型コイルの別の実施形態を示す水平断面図。
【図14】本発明に係る巻線型コイルの別の実施形態を示す水平断面図。
【図15】図14に示した巻線型コイルの一部垂直断面図。
【図16】本発明に係る巻線型コイルのさらに別の実施形態を示す水平断面図。
【図17】本発明に係る巻線型コイルのさらに別の実施形態を示す水平断面図。
【図18】従来の巻線型コイルを示す水平断面図。
【符号の説明】
31,31A〜31D…コモンモードチョークコイル
32,42…ボビン
33,43…筒状胴部
33a,43a…穴
33b,43b,65,66…コア支持部
37,37a〜37c,47,47a〜47c…巻線
50…磁性体コア
51a,51b…腕部
52a,52b…脚部
G1…空間ギャップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線型コイル、特に、インダクタ、コモンモードチョークコイル、ノーマルモードチョークコイル、トランスなどに使用される巻線型コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コモンモードチョークコイルの挿入損失−周波数特性は、自己共振周波数より低い周波数領域ではコモンモードインダクタンスLによる誘導性特性を示し、自己共振周波数より高い周波数領域ではコモンモードチョークコイルに発生する浮遊容量Cによる容量性特性を示す。自己共振周波数と、50Ω系で測定する場合の誘導性特性および容量性特性とは、以下の式によって表される。
自己共振周波数:fr=1/[2π(LC)1/2]
誘導性特性カーブ:挿入損失=10log[1+(ωL/100)2]
容量性特性カーブ:挿入損失=10log[1+1/(100ωC)2]
【0003】
コモンモードチョークコイルの高周波帯域でのノイズ除去性能をアップさせるには、浮遊容量Cを小さくする必要がある。浮遊容量発生の主な要因は、概略、巻線の巻回構造による影響分と、ボビンによる影響分と、磁性体コアによる影響分である。ここに、ボビンによる影響分を小さくするためには、誘電率の低いボビン材質に変更したり、ボビンの肉厚を薄くしたりする必要がある。しかし、コモンモードチョークコイルを交流電源ライン用として使用する場合には、安全規格の難燃性、相対温度指数および絶縁距離を確保しなければならない。また、既存のコモンモードチョークコイルにおいては、誘電率ε=2〜4程度の材質で、0.5〜1.0mm程度の肉厚のボビンが一般的に用いられているため、ボビン材質やボビンの肉厚を変更して、浮遊容量Cのうちボビンによる影響分を小さくすることは困難である。
【0004】
従って、コモンモードチョークコイルに発生する浮遊容量Cを小さくするには、巻線の巻回構造による影響分と磁性体コアによる影響分を軽減することが重要になる。これら影響分の割合は巻線の巻回構造により変わる。例えば、浮遊容量の発生が少ないとされている巻線の巻回構造として、従来より巻線を分割して巻回する、いわゆる分割巻きがある。
【0005】
図18は、巻線7,17を分割巻きした従来のコモンモードチョークコイル1の構成を示す。コモンモードチョークコイル1はU字形状を有する二つのコア部材20,21からなる磁性体コアと二つのボビン2,12とを備えている。ボビン2,12はそれぞれ、筒状胴部3,13と、該筒状胴部3,13に設けた鍔部4,5,6、14,15,16とを有している。
【0006】
巻線7は、第1巻線部7aと第2巻線部7bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部7aはボビン2の鍔部4と6の間に巻回され、第2巻線部7bは鍔部5と6の間に巻回されている。同様に、巻線17は第1巻線部17aと第2巻線部17bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部17aはボビン12の鍔部14と16の間に巻回され、第2巻線部17bは鍔部15と16の間に巻回されている。
【0007】
ボビン2,12は、その筒状胴部3,13が互いに平行になるように配置される。そして、筒状胴部3,13の穴3a,13aに、コア部材20,21の脚部20b,21bがそれぞれ挿通される。これらコア部材20,21は、その各々の両脚部20b,21bの先端面が穴3a,13a内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0008】
各部分2,12,20,21が組み付けられたコモンモードチョークコイル1は、ワニスの入った浴槽に浸漬された後、引き上げられ、ワニス硬化することによって各部分2,12,20,21は確実に固着される。
【0009】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル1において、浮遊容量は巻幅にほぼ比例しているため、巻線7,17をそれぞれ二つの巻線部7a,7b、17a,17bに分割した場合、一つの巻線部の浮遊容量は分割前の巻線の浮遊容量の1/2になる。また、各巻線部7aと7b、あるいは、17aと17bは直列に接続されているため、2分割巻きコモンモードチョークコイル1の巻線7,17の各々の浮遊容量は分割前の巻線の浮遊容量の1/4(例えば、4.0pF程度)になる。
【0010】
また、巻線の別の巻回構造として、巻線を1層のみ巻回する、いわゆる単層巻きがある。この巻回構造は、隣接する巻回部分が左右方向だけであり、隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は、巻回数分だけ直列に接続されるような構造であるため、浮遊容量を最も小さくできる。例えば、先の分割巻きの場合(4.0pF)に比較して、約1/6程度以上に低くすることもできる。ただし、得られるインダクタンス値は小さくなる。
【0011】
さらに、巻線の別の巻回構造として、単層巻きされた巻線を並列に複数段重ねる、いわゆる単層並列巻きがある。この巻回構造は、単層巻きのインダクタンス値が小さいという不具合を解消するため、巻線の径を細くして一段当たりの巻線のターン数を多くして大きなインダクタンス値を得るものである。そして、それによって大きくなる巻線の直流抵抗値を低く抑えるため、複数段に積み重ねられた巻線を並列接続している。つまり、単層並列巻きは、単層巻きの特徴をもちながら、比較的大きなインダクタンスを得ることができる。ただし、巻回構造による浮遊容量分は、単層巻きの場合より大きくなる。
【0012】
表1は、同じ巻線径で巻回したときの巻回構造の違いによる浮遊容量分、巻線の直流抵抗値およびインダクタンス値のそれぞれの一般的な大小関係を表したものである。
【0013】
【表1】
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、コモンモードチョークコイル1の巻線7,17の巻回可能領域は、閉磁路を構成しているコア部材20,21の窓面積、ボビン2,12の肉厚、絶縁距離などにより制限を受けている。従来のコモンモードチョークコイル1は、その限られた巻回可能領域内で最大のインダクタンス値を得るため、無駄なスペースがないように設計されている。従って、コア部材20,21とボビン2,12の間、あるいは、コア部材20,21と巻線7,17の間には、組み立て作業上または安全規格上、最低限必要な空間ギャップしか設けていなかった。従って、コア部材20,21による浮遊容量分は比較的大きく、巻線7,17を2分割する中央鍔部6,16がない多層巻きのコモンモードチョークコイルと比較して浮遊容量の発生が少ないとされている巻線7,17の巻回構造を採用しているコモンモードチョークコイル1の場合には、その影響は無視できないほどの値である。特に、浮遊容量の発生が少ない単層巻きや単層並列巻きでは、コア部材20,21による浮遊容量への影響は極めて大きい。
【0015】
そこで、本出願人は、コア部材20,21による浮遊容量への影響を抑えることができる構造として、ボビン2,12の筒状胴部3,13の穴3a,13aの内周面と、コア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間に空間ギャップを設けることを考えた(特願2001−356552号)。ボビン2,12の穴3a,13aの内周面とコア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間は、誘電率εが低い空気で満たされている。これにより、コア部材20,21による浮遊容量への影響を抑えることができ、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が改善される。
【0016】
ところが、ボビン2,12の穴3a,13aの内周面とコア部材20,21の脚部20b,21bの外周面との間に空間ギャップを単に形成するだけであると、コモンモードチョークコイル1を各部分を固着させるためのワニスが入った浴槽に浸漬した際にボビン2,12とコア部材20,21の間の空間ギャップに浸透したワニスが残留し易くなり、空間ギャップ内に柱状ワニス溜まりを形成し易くなる。
【0017】
このとき、空間ギャップからワニスを除去するために、自重によるワニス除去時間を長くしたり、コモンモードチョークコイル1を揺動したりすれば、ワニスの残留は少なくなってくる。しかし、ワニス除去時間を長くすることは、生産性の低下を招く。また、コモンモードチョークコイル1の揺動は、コア部材20,21の衝き合わせ面のずれや、衝き合わせ界面へのワニスの浸透を招く。
【0018】
柱状ワニス溜まりが形成されると、ボビン2,12とコア部材20,21との間の実効的な誘電率εが上昇してしまうことがある。実効的な誘電率εが大きくなると、浮遊容量が大きくなり、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が劣化する。
【0019】
そこで、本発明の目的は、ボビンの筒状胴部の穴の内周面と、該筒状胴部の穴に挿通されている磁性体コアの脚部の外周面との間に形成された空間ギャップ内にワニスが残留しにくい巻線型コイルを提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る巻線型コイルは、
(a)筒状胴部を有するボビンと、
(b)筒状胴部に設けられた単層巻きの巻線もしくは単層並列巻きの巻線もしくは複数に分割された分割巻きの巻線のいずれかの巻線と、
(c)筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路もしくは開磁路のいずれかを構成する磁性体コアと、
(d)筒状胴部の穴の内周面もしくは磁性体コアの脚部の外周面の少なくともいずれかに設けたコア支持部と、
(e)ボビンと磁性体コアを固着するためのワニスとを備え、
(f)コア支持部によって、筒状胴部の穴の内周面と、筒状胴部の穴に挿通されている磁性体コアの脚部の外周面との間に空間ギャップを設け、
(g)筒状胴部の穴の内周面と磁性体コアの脚部の外周面との対向領域は、筒状胴部と磁性体コア間を繋ぐ柱状ワニス溜まりの非存在領域であること、
を特徴とする。そして、筒状胴部の穴の内周面と磁性体コアの脚部の外周面とコア支持部の表面に、2〜10μmの厚みの薄膜状ワニスが付与されている。
【0021】
より具体的には、ワニスの粘度X(mPa・S)と空間ギャップの寸法Y(nm)が、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足していることを特徴とする。
【0022】
以上の構成により、磁性体コアとボビンの間の空間ギャップに柱状ワニス溜まりが存在しなくなる。このため、磁性体コアと巻線の間の実効的な誘電率が小さくなり、浮遊容量が小さくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る巻線型コイルの実施形態について添付の図面を参照して説明する。本実施形態は、コモンモードチョークコイルを例にして説明する。
【0024】
コモンモードチョークコイルの外観を図1に示し、その正面図を図2に示し、水平断面図および一部垂直断面図をそれぞれ図3および図4に示し、電気等価回路図を図5に示す。コモンモードチョークコイル31は、U字形状を有する二つのコア部材50a,50bからなる磁性体コア50と、二つのボビン32,42と、止め金具60とを備えている。
【0025】
ボビン32,42の各々は、筒状胴部33,43と、該筒状胴部33,43の両端部に設けた鍔部34,35、44,45とを有している。鍔部34,35,44,45にはそれぞれリード端子54a,54b,55a,55bが植設されている。ボビン32,42は、その筒状胴部33,43が互いに平行になるように配置される。ボビン32,42は樹脂などで形成されている。
【0026】
巻線37,47の各々は、ボビン32,42の筒状胴部33,43の外周に単層巻きされている。巻線37,47は互いに等しい巻回数を有している。巻線37の両終端は、ボビン32に設けられたリード端子54a,54bにそれぞれ電気的に接続されている。同様に、巻線47の両終端は、ボビン42に設けられたリード端子55a,55bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0027】
磁性体コア50を構成しているコア部材50a,50bの各々は、腕部51a,51bと、該腕部51a,51bの両端から直角方向に延在した脚部52a,52bとを有している。そして、ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43a(横断面形状が矩形)には、コア部材50a,50bの脚部52a,52b(横断面形状が矩形)がそれぞれ挿入されている。これらコア部材50a,50bは、その各々の両脚部52a,52bの先端面が穴33a,43a内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0028】
ここで、図2〜図4に示すように、ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43aのそれぞれの四つの内壁面には、空間ギャップ形成のための突起状コア支持部33b,43bが設けられている。この突起状コア支持部33b,43bによって、コア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成されている。突起状コア支持部33b,43bとコア部材50a,50bとの当接面は、コア部材50a,50bの保持の面からは平坦面の方がよく、また、浮遊容量を極力低減するという面からは当接面積が少ない方がよいので、当接面はR面状のようなものがよい。なお、水平方向の空間ギャップG1の寸法と垂直方向の空間ギャップG1の寸法は、本実施形態のように等しくすることが好ましいが、異ならせてもよいことは言うまでもない。
【0029】
また、図3に示すように、コア部材50a,50bの腕部51a,51bは、ボビン32,42の各々の鍔部34,35,44,45に並走している。鍔部34,35,44,45の外側主面34a,35a,44a,45aには、それぞれ空間ギャップ形成のための凸状スペーサ36,46が設けられている。凸状スペーサ36,46はテーパを有しており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入し易いようになっている。腕部51a,51bの内側面51aa,51bbと、鍔部34,35,44,45の外側主面34a,35a,44a,45aとの間に所定の寸法の空間ギャップG2が形成されている。
【0030】
さらに、図1に示すように、ボビン32と42の間には、コア部材50a,50bの衝き合わせ面を堅固に密着させるためのコ字型止め金具60が嵌め込まれている。
【0031】
コア部材50a,50bの材料には、Mn−Zn系フェライトやNi−Zn系フェライトが用いられる。特に、Mn−Zn系フェライトは高透磁率を有するため、巻線37,47の巻回数が比較的少なくても数十〜数百mHの大きなインダクタンス値を得ることができる。因みに、低周波数帯域(数KHz)からのノイズ電圧を抑制するためには、数十〜数百mHのインダクタンス値を必要とする。
【0032】
以上の部品32,42,50a,50b,60は、必要最低限の量のワニスで固着される。すなわち、図6に示すように、各部品32,42,50a,50b,60が組み付けられたコモンモードチョークコイル31を、ワニス70の入った浴槽に浸漬し、コモンモードチョークコイル31にワニス70を付与する。ワニス70はボビン32,42の穴33a,43aにも浸透する。
【0033】
次に、コモンモードチョークコイル31をワニス浴槽から引き上げる。図7に示すように、コモンモードチョークコイル31を若干傾け、ボビン32,42の穴33a,43a内に浸透したワニスなどの余分なワニス70を自重により落とす。このとき、図8に示すように、余分なワニスが垂れてくるので、この余分なワニスを布75などで拭き取ると、効率良く余分なワニスが除去される。
【0034】
ここで、ワニスは希釈材により濃度を変えて使用されることが多く、ワニス濃度が高ければ粘度も高くなり、ワニス濃度が低ければ粘度も低くなる。ワニスの粘度が高くなると、ボビン32,42の穴33a,43a内に浸透したワニスは残留し易くなり、空間ギャップG1内に、例えば図9に示すような柱状ワニス溜まり72を形成し易くなる。なお、図9において、ボビン32の穴33aの内壁面とコア部材50aの脚部52aの外周面52aaと突起状コア支持部33bの表面に付与されている薄膜状ワニス71がボビン32とコア部材50aを固着する。薄膜状ワニス71の膜厚は2〜10μm程度である。
【0035】
そこで、図6〜図8に示す手順でコモンモードチョークコイル31をワニス浴に浸漬したときに、図9に示すような柱状ワニス溜まり72が生じない空間ギャップG1の寸法とワニス粘度との関係について評価した。図10は評価結果を示すグラフである。実線76は評価結果から1次式を用いて求めた柱状ワニス溜まり72が生じない空間ギャップG1の寸法の限界線である。ワニス粘度をX、空間ギャップG1の寸法をYとすると、1次式はY=0.0127X+0.265と表示される。従って、コモンモードチョークコイル31を設計する場合には、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足するような空間ギャップG1にすればよい。
【0036】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル31は、巻線37,47にコモンモード(同相)ノイズ電流が流れると、巻線37,47により磁性体コア50内にそれぞれ同一方向に磁束が発生する。この磁束は磁性体コア50内を周回しながら消費される。
【0037】
このコモンモードチョークコイル31はコア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面(上側面、下側面、内側面および外側面の四つの面を含んだもの)52aa,52baと、ボビン32,42の穴33a,43aの内壁面との間にそれぞれ空間ギャップG1を形成している。空間ギャップG1には柱状ワニス溜まり72は生じておらず、磁性体コア50と巻線37,47の間の実効的な誘電率を小さくすることができる。従って、コモンモードチョークコイル31の浮遊容量が小さくなり、高周波特性を改善することができる。
【0038】
図11は、柱状ワニス溜まり72が生じていない本実施形態のコモンモードチョークコイル31の周波数特性を示すグラフである(実線78参照)。比較のために、柱状ワニス溜まり72が生じている場合の周波数特性を併せて記載している(点線79参照)。
【0039】
ところで、一般に、コモンモードチョークコイルは、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分を僅かながら有しているため、ノーマルモードノイズを除去する効果もある。しかしながら、信号(電源)ラインに、コモンモードノイズの他に、強いノーマルモードノイズも流れる場合には、コモンモードチョークコイルとノーマルモードチョークコイルの両方の部品を使用してノイズ対策する必要がある。また、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分が比較的大きいコモンモードチョークコイルの場合には、漏れ磁束が周辺回路に悪影響を与えることがあるため、コモンモードチョークコイルの外周に磁気シールド材を設ける必要がある。
【0040】
そこで、図12に示すように、コモンモードチョークコイル31の隣接する二つのボビン32,42の間に、比透磁率が1以上(例えば2〜数十)の磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設する。磁粉入り絶縁性樹脂材80は、例えば、80〜90wt%のNi−Zn系やMn−Zn系のフェライトと、ナイロン系やポリフェニレンサルファイド系の樹脂とを混練したものからなる。磁粉入り絶縁性樹脂材80は加工が容易で、それ自体が絶縁性を有するので、コア部材50a,50bとの間に絶縁性スペーサを挟み込む必要がない。
【0041】
磁粉入り絶縁性樹脂材80を設けることにより、ノーマルモードの磁路の実効透磁率が上がり、また、その実効透磁率の大きい磁路(磁粉入り絶縁性樹脂材80およびコア部材50a,50b)に磁束φが集中する。そのため、ノーマルモードインダクタンス成分が大きくなり、強いノーマルモードノイズも除去することができるコモンモードチョークコイル31が得られ、漏れ磁束による周辺回路への悪影響も抑制できる。
【0042】
ノーマルモードインダクタンス成分の値は、コア部材50a,50bと磁粉入り絶縁性樹脂材80との接触面積やギャップ、磁粉入り絶縁性樹脂材80の比透磁率などで決まる。コモンモードチョークコイル31でノーマルモードインダクタンス成分を大きくしていくと、コア部材50a,50bが飽和し易くなるため、使用するコア部材50a,50bの特性(飽和特性と比透磁率など)やそのコモンモードチョークコイル31に流れる電流により、どの程度までノーマルモードインダクタンス成分を大きくできるかが決まる。つまり、コモンモードチョークコイル31の使用保証範囲で、コア部材50a,50bが飽和しないように、磁粉入り絶縁性樹脂材80を利用してノーマルモードインダクタンス成分を大きくする必要がある。
【0043】
また、二つのボビン32,42の間に、磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設することで、巻線37,47間の絶縁距離を長くすることができるとともに、コモンモードチョークコイル31の空間スペースを有効活用してサイズが大型化するのを防止する。
【0044】
磁粉入り絶縁性樹脂材80の代わりに、絶縁性樹脂で表面が被覆されているフェライト材を使用してもよい。このフェライト材(Ni−Zn系やMn−Zn系などの材料からなるもの)も、磁粉入り絶縁性樹脂材80と同様の作用効果を奏する。
【0045】
また、単層巻きは浮遊容量Cを最も抑えることができる巻回構造であるが、大きなインダクタンス値を得ることが困難であるため、低周波帯域のコモンモードノイズを十分に抑えることが難しい。そこで、図13に示すように、ボビン32,42の筒状胴部33,43に、巻線37a,37b,37c並びに巻線47a,47b,47cをそれぞれ順に単層巻きして複数段に積み重ねた単層並列巻き構造としてもよい。
【0046】
また、図13に示したコモンモードチョークコイル31Aは、ボビン32,42の筒状胴部33,43のそれぞれの四つの内壁面には、空間ギャップG1を形成するためのレール状コア支持部33b,43bを設けている。各レール状コア支持部33b,43bはテーパを有しており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入され易いようになっている。このレール状コア支持部33b,43bが脚部52a,52bの外周面(四つの面)52aa,52baに当接することによって、脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成される。
【0047】
また、図14および図15に示したコモンモードチョークコイル31Bは、コア部材50a,50bの脚部52a,52bの外周面(四つの面)52aa,52baにそれぞれ、レール状コア支持部65,66を設けている。各レール状コア支持部65,66の先端部にはテーパが形成されており、コア部材50a,50bの脚部52a,52bが穴33a,43aに挿入され易いようになっている。このレール状コア支持部65,66によって、脚部52a,52bの外周面52aa,52baと、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成される。このコモンモードチョークコイル31Bは、前記コモンモードチョークコイル31と同様の作用効果を奏する。
【0048】
さらに、図16に示すように、ボビン32と42の軸を揃えて連接し、連通した穴33a,43aに、コア部材50a,50bの一方の脚部52a,52bを挿入した構造のコモンモードチョークコイル31Cであってもよい。このとき、ボビン32,42の穴33a,43aの内壁面の一つにコア部材50a,50bの脚部52a,52bの内側面が接触する構造、すなわち、脚部52a,52bの外側面、上側面および下側面と、穴33a,43aの内壁面との間に所定の寸法の空間ギャップG1が形成されている構造であっても、浮遊容量削減の効果がある。
【0049】
また、図17に示したコモンモードチョークコイル31Dは、巻線37,47を分割巻きしたものである。
【0050】
巻線37は、第1巻線部37aと第2巻線部37bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部37aはボビン32の鍔部34と96の間に巻回され、第2巻線部37bは鍔部35と96の間に巻回されている。同様に、巻線47は第1巻線部47aと第2巻線部47bを電気的に直列接続して構成される。第1巻線部47aはボビン42の鍔部44と97の間に巻回され、第2巻線部47bは鍔部45と97の間に巻回されている。このコモンモードチョークコイル31Dは前記コモンモードチョークコイル31と同様の作用効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、磁性体コアとしてロ字型の一体コアや日字型の一体コアを使用し、ボビンとして2以上に分割させた歯車構造のボビンを使用してもよい。また、前記実施形態では、二つの巻線を有する二ラインのものについて説明したが、三つ以上の巻線を有する三ライン以上のものであってもよい。さらに、磁性体コアは閉磁路を形成するものに限定するものではなく、開磁路を形成する構成のものであってもよい。
【0052】
さらに、本発明は、コモンモードチョークコイル以外に、図1において、二つのボビン32,42のうちいずれか一方のボビンを省略した構造のインダクタであってもよい。また、ノーマルモードチョークコイル、トランスなどのコイルにも適用できる。さらに、本発明は、コアでコモンモードノイズ(ノーマルモードノイズ)を除去し、ボビンでノーマルモードノイズ(コモンモードノイズ)を除去する、いわゆるハイブリッドチョークコイルにも適用可能であり、コモンモードノイズに対してだけでなく、ノーマルモードノイズに対しても本発明の効果を奏することができる。
【0053】
また、レール状コア支持部や突起状コア支持部は、横断面が矩形である必要はなく、半円形や台形や三角形などであってもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、磁性体コアと巻線の間に所定の寸法の空間ギャップを確保し、かつ、空間ギャップ内に柱状ワニス溜まりが生じないようにしたので、浮遊容量を低減することができる。この結果、高周波領域の電気特性の優れた巻線型コイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る巻線型コイルの一実施形態を示す外観斜視図。
【図2】図1に示した巻線型コイルの正面図。
【図3】図1に示した巻線型コイルの水平断面図。
【図4】図1に示した巻線型コイルの一部垂直断面図。
【図5】図1に示した巻線型コイルの電気等価回路図。
【図6】図1に示した巻線型コイルへのワニス付与手順を示す断面図。
【図7】図6に続くワニス付与手順を示す断面図。
【図8】図7に続くワニス付与手順を示す断面図。
【図9】ワニス付与後の空間ギャップG1の一部拡大断面図。
【図10】空間ギャップG1の寸法とワニス粘度の関係を示すグラフ。
【図11】図1に示した巻線型コイルの挿入損失―周波数特性を示すグラフ。
【図12】図1に示した巻線型コイルの変形例を示す水平断面図。
【図13】本発明に係る巻線型コイルの別の実施形態を示す水平断面図。
【図14】本発明に係る巻線型コイルの別の実施形態を示す水平断面図。
【図15】図14に示した巻線型コイルの一部垂直断面図。
【図16】本発明に係る巻線型コイルのさらに別の実施形態を示す水平断面図。
【図17】本発明に係る巻線型コイルのさらに別の実施形態を示す水平断面図。
【図18】従来の巻線型コイルを示す水平断面図。
【符号の説明】
31,31A〜31D…コモンモードチョークコイル
32,42…ボビン
33,43…筒状胴部
33a,43a…穴
33b,43b,65,66…コア支持部
37,37a〜37c,47,47a〜47c…巻線
50…磁性体コア
51a,51b…腕部
52a,52b…脚部
G1…空間ギャップ
Claims (3)
- 筒状胴部を有するボビンと、
前記筒状胴部に設けられた単層巻きの巻線もしくは単層並列巻きの巻線もしくは複数に分割された分割巻きの巻線のいずれかの巻線と、
前記筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路もしくは開磁路のいずれかを構成する磁性体コアと、
前記筒状胴部の穴の内周面もしくは前記磁性体コアの脚部の外周面の少なくともいずれかに設けたコア支持部と、
前記ボビンと前記磁性体コアを固着するためのワニスとを備え、
前記コア支持部によって、前記筒状胴部の穴の内周面と、該筒状胴部の穴に挿通されている前記磁性体コアの脚部の外周面との間に空間ギャップを設け、
前記筒状胴部の穴の内周面と前記磁性体コアの脚部の外周面との対向領域は、筒状胴部と磁性体コア間を繋ぐ柱状ワニス溜まりの非存在領域であること、
を特徴とする巻線型コイル。 - 前記筒状胴部の穴の内周面と前記磁性体コアの脚部の外周面と前記コア支持部の表面に、2〜10μmの厚みの薄膜状ワニスが付与されていることを特徴とする請求項1に記載の巻線型コイル。
- 筒状胴部を有するボビンと、
前記筒状胴部に設けられた単層巻きの巻線もしくは単層並列巻きの巻線もしくは複数に分割された分割巻きの巻線のいずれかの巻線と、
前記筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路もしくは開磁路のいずれかを構成する磁性体コアと、
前記筒状胴部の穴の内周面もしくは前記磁性体コアの脚部の外周面の少なくともいずれかに設けたコア支持部と、
前記ボビンと前記磁性体コアを固着するためのワニスとを備え、
前記コア支持部によって、前記筒状胴部の穴の内周面と、該筒状胴部の穴に挿通されている前記磁性体コアの脚部の外周面との間に空間ギャップを設け、
前記ワニスの粘度X(mPa・S)と前記空間ギャップの寸法Y(nm)が、条件式Y≧0.0127X+0.265を満足していること、
を特徴とする巻線型コイル。
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JP2003142232A JP2004349336A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 巻線型コイル |
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JP2003142232A JP2004349336A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 巻線型コイル |
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2003
- 2003-05-20 JP JP2003142232A patent/JP2004349336A/ja active Pending
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