JP2004348897A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】電磁変換特性、特に高密度記録特性が良好で、且つ優れた走行耐久性を併せ持ち、またヘッド腐食性および媒体の劣化の懸念がなく、高温湿度保存性に優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体上に主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、磁性層の厚みが0.02〜0.2μmであり、該強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、該磁性層及び下層の結合剤が環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まず、且つ磁性層表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下である磁気記録媒体。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、磁性層の厚みが0.02〜0.2μmであり、該強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、該磁性層及び下層の結合剤が環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まず、且つ磁性層表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下である磁気記録媒体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた走行耐久性及び電磁変換特性を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来可デジタル信号記録システムにおいて使用される磁気テープは、システム毎にきめられており、DLT型、3480、3490、QIC、D8型、あるいはDDS型対応の磁気テープが知られている。どのシステムにおいても、用いられる磁気テープは、支持体上の一方の側に、膜厚が2.0〜3.0μmと比較的厚い単層構造の強磁性粉末、結合剤、及び研磨剤を含む磁性層が設けられている。しかし一般に上記のように比較的厚い単層構造の磁性層において、出力が低下するという厚み損失の問題がある。
磁性層の厚み損失による再生出力の低下を改善するために、磁性層を薄層化することが知られている。
例えば、特許文献1には支持体上に、主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む、厚みが1.0μm以下である磁性層を設けた磁気記録媒体が開示されている。
しかしながら、急速な磁気記録媒体の大容量化、高密度化に伴い、このような技術をもってしても満足な特性を得ることが難しくなってきた。また耐久性と両立させることも困難な状況になってきている。
【0003】
また、近年の大容量、高速且つ高信頼性が要求されるデータシステムにおいて、磁気テープから発生する極めて微量の塩素ガスが、磁気テープを変性させたり、磁気ヘッドを腐食させるといった弊害をもたらす可能性があることがわかってきた。この塩素ガスは、結合剤に含まれる塩化ビニルの分解によって発生すると考えられている。コンピューター用のデータ記録システムで使用されているMR(Magnet Resistance)ヘッドは金属薄膜を用いており、塩素ガスによる腐食が特性劣化をもたらすと懸念される。また、高密度記録化にともない、塩素ガスによる磁気テープのわずかな変性、たとえば磁性層に含まれる強磁性粉末の変質やテープ表面への微細な結晶の析出などが、データの記録再生に大きく影響をおよぼす可能性がある。
また、塩化ビニル系樹脂は、磁気記録媒体の焼却廃棄時にダイオキシンの発生が懸念され、環境保全上問題である。
【0004】
上記のヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に好適な結合剤として、例えば、特許文献2には、Tgの異なる2種類以上のポリエステルポリウレタンのみのバインダーを開示し、特許文献3には、ポリエステルウレタンのみをバインダーとすると共に、低分子成分を除去し、Tgを60〜80℃とした結合剤を開示している。
しかしながら、上記先願公知例ではヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に有効な磁気記録媒体を提供できるものの、それらが開示するポリウレタン樹脂では、分散性、平滑性、電磁変換特性が不充分である。従来のポリウレタン樹脂は高温高湿環境で保存すると、ポリウレタン分子中のエステル結合の加水分解やエーテル結合の熱分解が起こり、膜劣化が懸念され、媒体の保全性も充分とは言えない。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−182178号公報
【特許文献2】
特開平5−307734号公報
【特許文献3】
特開平6−52539号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電磁変換特性、特に高密度記録特性が良好で、且つ優れた走行耐久性を併せ持ち、またヘッド腐食性および媒体の劣化の懸念がなく、高温湿度保存性に優れた磁気記録媒体を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体上に主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、磁性層の厚みが0.02〜0.2μmであり、該強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、該磁性層及び下層の結合剤が環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まず、且つ磁性層表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下である磁気記録媒体である。
本発明の好ましい態様は、以下の通りである。
(1)該強磁性粉末は、Feを主成分とし、平均長軸長が30〜60nmである強磁性金属粉末であることを特徴とする上記磁気記録媒体。
(2)該強磁性粉末の抗磁力が1800〜3000Oe(144〜240kA/m)でσsが80〜130A・m2/kgである上記磁気記録媒体。
(3)強磁性粉末の比表面積が50〜90m2/gであるある上記磁気記録媒体。
(4)磁性層(A)と下層(B)との厚み比率はA/B=0.05〜0.15ある上記磁気記録媒体。
(5)wet on wet塗布方式を用いで磁性層及び下層を形成してなる上記磁気記録媒体。
(7)ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が90〜200℃ある上記磁気記録媒体。
(8)ポリウレタン樹脂はエステル結合およびエーテル結合を含まない上記磁気記録媒体。
(9)磁性層厚みが0.05〜0.15μmである上記磁気記録媒体。
(10)磁性層表面の10nm以上の突起数は50〜300個/100μm2ある上記磁気記録媒体。
(11)25nm以上の突起数が全突起数の5%以下ある上記磁気記録媒体。
【0008】
【発明の実施の態様】
本発明は、下層及び磁性層を有する磁気記録媒体の磁性層厚み、強磁性粉末のサイズ(平均長軸長)、下層及び磁性層の結合剤、及び磁性層表面(以下、磁性面ともいう)を特定したことを特徴とする。
本発明は、磁性層に使用する強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmの微粒子を用いることによりノイズが低下でき、出力が大幅に改善でき、電磁変換特性が良好である。
また、本発明の磁性層及び下層に含まれるポリウレタン樹脂は、強磁性粉末や非磁性無機粉末への吸着性を高め、かつポリウレタン樹脂中のジオール化合物とジイソシアネート化合物の含有量を調整する事で十分な溶剤への溶解性を得られるため分散性に富み、塗膜の平滑性に優れているため、十分な電磁変換特性が得られる。
更に、本発明は、下層及び磁性層から完全に塩化ビニル系樹脂を除くことで、ヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に有効な磁気記録媒体となる。本発明で用いるポリウレタン樹脂(以下、本発明用ポリウレタン樹脂ともいう)は強磁性粉末や非磁性無機粉末への吸着性が高く、且つ溶剤溶解性が高く分散性に優れているため、塩化ビニル系樹脂の併用の必要性がない。
また、本発明用ポリウレタン樹脂は、エステル結合やエーテル結合を排除することができ、構造上、ガラス転移温度(Tg)を高くすることができるため、本発明の磁気記録媒体は、高温高湿環境での保存性に優れる。
そして、本発明の磁気記録媒体は、磁性面に高さ及び密度が特定の突起を有することにより走行時の磁気記録媒体の摩擦係数が低く、走行耐久性が向上し、繰り返し走行でのエラーレートを安定に低く抑える事ができる。また、突起の数および高さを制御することで、媒体とヘッドとの間のスペーシングロスによる出力低下の弊害を防ぎ、走行耐久性と電磁変換特性との両立が可能である。
本発明は、磁性層厚みを0.02〜0.2μm、好ましくは0.02〜0.1μmとする。
本発明は、磁性層を薄くすることで磁性層内の自己減磁作用を低減し、高周波領域での出力を大幅に高め、更に重ね書き特性も向上させたものである。磁気ヘッドの改良により、狭ギャップヘッドとの組合せにより超薄層磁性層の効果が一層発揮でき、デジタル記録特性の向上が図れる。特に再生ヘッドにMR素子、巨大磁気抵抗素子を使用するシステムで使用されると好適である。
本発明では、磁性層に使用する強磁性粉末の平均長軸長は20〜60nm、好ましくは20〜45nmであり、このような超微粒子の強磁性粉末を用いる事によりノイズが低下でき、エラレ―トが大幅に改善できる。
また、バック層の結合剤としてガラス転移温度(Tg)が70〜200℃、好ましくは80〜150℃のポリウレタン樹脂を使用することにより、塗膜強度が向上でき、繰り返し走行でのバック層の耐久性を大幅に向上できると共にカッピンング及びコイリングを効果的に抑制することができ、カッピングによるヘッド当り不良を抑え、出力低下や、エッジダメージの発生を抑制することができ、またコイリングによる巻きつけ操作不良を防止することができる。
また、該ポリウレタン樹脂は高Tgと共に柔軟性を備えていることから、走行耐久性に優れテープ変形がない磁気テープを作成することができる。
【0009】
以下、本発明の構成要素について詳述する。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90〜200℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは140〜180℃の範囲である。Tgを90℃以上に保つことで塗膜の強度、特に高温での強度を確保でき、高い走行安定性が得られる。しかし、Tgが200℃を超えると、強磁性粉末や下層の非磁性無機粉末への分散性が低下し、膜表面の平滑性が失われ、電磁変換特性が低下してしまう。
【0010】
ポリウレタン樹脂は、ウレタン基濃度が2.5〜6.0mmol/gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは3.0〜4.5mmol/gであることが適当である。ウレタン基濃度が2.5mmol/g以上であると、塗膜のTgが高く良好な耐久性を得ることができ、6.0mmol/g以下であると、溶剤溶解性が高いため分散性が良好である。ウレタン基濃度が過度に高いと必然的にポリオールを含有することができなくなるため、分子量コントロールが困難になる等、合成上好ましくない。
【0011】
ポリウレタン樹脂の質量平均分子量(Mw)は、30,000〜200,000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは50,000〜100,000の範囲であることが適当である。分子量が30,000以上であると、塗膜強度が高く良好な耐久性を得ることができ、200,000以下であると溶剤溶解性が高く分散性が良好である。
【0012】
ポリウレタン樹脂中のOH基含有量は、1分子当たり2〜20個であることが好ましく、更に好ましくは1分子当たり3〜15個であることが適当である。1分子当たり2個以上のOH基を含むことにより、イソシアネート硬化剤と良好に反応するため、塗膜強度が高く、良好な耐久性を得ることができる。一方、1分子当たり15個以下のOH基を含むと、溶剤溶解性が高く分散性が良好である。OH基を付与するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、3官能以上OH基を持つ分岐ポリエステル又はポリエーテルエステルを用いることができる。これらのなかでも、3官能のものが好ましい。4官能以上になると硬化剤との反応が速くなりすぎポットライフが短くなる。
【0013】
ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール等の環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物等の公知のポリオールを用いることができる。
上記ポリオールの分子量は500〜2000程度が好ましい。分子量が上記範囲内であると、実質的にジイソシアネートの質量比を増やすことができるため、ウレタン結合が増えて分子間の相互作用が強まり、ガラス転移温度が高く、力学強度の高い塗膜を得ることができる。
【0014】
上記ポリオール成分はジオール成分であって、かつ環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物であることが好ましい。ここで、長鎖アルキル鎖とは、炭素数2〜18のアルキル基をいう。環状構造及び長鎖アルキル鎖を有すると、屈曲した構造を有するため、溶剤への溶解性に優れる。これにより、塗布液中で磁性体又は非磁性体表面に吸着したウレタン分子鎖の広がりを大きくできるので、分散安定性を向上させる作用があり、優れた電磁変換特性を得ることができる。また、環状構造を有することにより、ガラス転移温度が高いポリウレタンを得ることができる。
環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とは、特に好ましくは下式で示されるジオール化合物である。
【化1】
Zは、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環から選ばれる環状構造であり、R1及びR2は炭素数1〜18のアルキレン基であり、R3及びR4は炭素数2〜18のアルキル基である。
【0015】
上記ジオール成分は、ポリウレタン樹脂中に10〜50質量%含まれることが好ましく、更に好ましくは15〜40質量%含まれることが適当である。10質量%以上であると、溶剤溶解性が高く分散性が良好であり、50質量%以下であると、Tgが高く優れた耐久性を有する塗膜が得られる。
【0016】
ポリウレタン樹脂には、鎖延長剤として上記ジオール成分以外のジオール成分を併用することもできる。ジオール成分の分子量が大きくなると、必然的にジイソシアネート含有量が少なくなるため、ポリウレタン中のウレタン結合が少なくなり、塗膜強度に劣る。よって、十分な塗膜強度を得るためには、併用される鎖延長剤は、分子量500未満、好ましくは300以下である低分子量ジオールであることが好ましい。
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンジオール(CHD)、水素化ビスフェノールA(H−BPA)等の脂環族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールF等の芳香族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物を用いることができる。特に好ましいものは水素化ビスフェノールAである。
【0017】
ポリウレタン樹脂に用いるジイソシアネートとしては、公知のものを用いることができる。具体的には、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。
【0018】
従来のポリウレタン樹脂では、塩化ビニル系樹脂を併用しなければ十分な分散性が得られなかった。そこで本発明では、ポリウレタン樹脂のみで十分な分散性を確保するため、ポリウレタン樹脂中の極性基濃度を高めることが好ましい。この極性基は、−SO3M,−OSO3M,−PO3M2,−COOMであることが好ましく、さらに好ましくは−SO3M,−OSO3Mであることが好ましい。この時の極性基濃度は、1×10−5〜4×10−4eq/gとした。従来のポリウレタン樹脂では、上記のように極性基濃度を高めると、ポリウレタン樹脂は溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下するといった弊害が発生してしまう。そこで、ポリウレタン樹脂中のジオール化合物とジイソシアネート化合物の含有量を調整する事で十分な溶剤への溶解性を確保することができる。具体的には、溶剤への溶解性を高める機能を持つダイマージオール等の環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物の成分比を高めることが挙げられる。
【0019】
本発明の下層及び磁性層の結合剤は、本発明用ポリウレタン樹脂の他に各種の合成樹脂を用いることができる。例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂である。これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
【0020】
他の合成樹脂を併用する場合には、下層または磁性層に含まれるポリウレタン樹脂は、結合剤中に10〜90質量%を含有されていることが好ましく、更に好ましくは20〜80質量%の量である。特に好ましくは25〜60質量%の量である。
【0021】
また、下層及び/又は磁性層は、上記結合剤の他にポリイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することができる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応性生物(例、デスモジュールL−75(バイエル社製))、キシリレンジイソシアネートあるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとのビューレット付加化合物、トリレンジイソシアネート5モルのイソシアヌレート化合物、トリレンジイソシアネート3モルとヘキサメチレンジイソシアネート2モルのイソシアヌレート付加化合物、イソホロンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートのポリマーを挙げることができる。
【0022】
下層または磁性層に含まれるポリイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%の範囲である。また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用することができる。樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の質量は、強磁性粉末100質量部に対して、通常15〜40質量部の範囲内にあることが好ましく、更に好ましくは20〜30質量部である。
【0023】
[表面突起数]
本発明の磁気記録媒体の最上層に位置する磁性層は、10nm以上の突起数を30〜500個/100μm2、好ましくは50〜300個/100μm2有し、25nm以上の突起数は全突起数の10%以下、好ましくは5%以下である。10nm以上の突起数が30個/100μm2未満であると、媒体走行時の摩擦係数が高くなり、走行安定性が低下する。また、10nm以上の突起数が500個/100μm2を超えると電磁変換特性が低下してしまう。
さらに、25nm以上の突起数が全突起数の10%を超えると、ヘッドとのスペーシングロスが大きくなり、電磁変換特性が劣化する。また繰り返し走行によって25nmを超える突起はトップカットされ、剥がれ落ちた突起先端はデブリとして、ヘッド目詰まりを誘発し出力低下を引き起こしてしまうため、25nm以上の突起は極力抑える必要がある。
【0024】
磁性面の表面突起は、磁性層に含有される強磁性粉末、研磨剤、カーボンブラック、その下層に含有される非磁性無機粉末、研磨剤、カーボンブラック等の無機粉体の粒子サイズ、それらを分散する結合剤や潤滑剤の種類、磁性層液、下層液を調製するときの混練条件、分散条件、塗布層厚み、塗布乾燥条件、カレンダー条件等によってコントロールすることができる。
具体的には、混練条件は、下層塗布液調製時の混練固形分濃度を65〜85重量%とすることが好ましい。上記範囲内であると分散性が良好であり、磁性層には微小表面突起数が少なく高い平滑性が得られる。
分散は、ボールミル、サンドグラインダー、アトライター等の分散機を用い、分散可能な範囲で塗布液の粘度(固形分濃度)を高くして分散シェアーを上げることが好ましい。分散シェアーを上げることで、塗布液の分散性を高めることができる。
カレンダー処理条件は、ロール温度を60〜100℃、好ましくは70〜90℃、線圧を980〜4900N/cm、好ましくは1960〜4412N/cmとして行うことが好ましい。上記条件でカレンダー処理を行うことにより、表面平滑性に優れた塗膜を得ることができる。尚、処理ロールは、後述するようにエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールや金属ロールが用いられ、金属ロールであることが好ましい。
以上のように、最上層に位置する磁性層表面の突起数をコントロールするためには様々な方法があり、本発明の磁気記録媒体で定義する表面状態を得るために、これらの手法を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
(表面突起数の測定方法)
本発明の磁気記録媒体の表面突起数は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定する。具体的には、DIGITAL INSTRUMENT社製のNANOSCOPEIIIを用い、コンタクトモードで10μm平方(100μm2)を測定し、突起と窪みの体積が等しくなる面を基準面とし、基準面から5〜30nmの高さの面で5nm毎にスライスした場合に面にスライスされるか、面に接触される突起のカウントをして求められる。
【0026】
[強磁性粉末]
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末でBET法による比表面積(SBET)が40〜80m2/g、好ましくは50〜70m2/g であることが適当である。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmであることが適当である。平均長軸長は20〜60nmであり、好ましくは20〜50nmであり、特に好ましくは20〜45μmであることが適当である。強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%〜20原子%が好ましく、更に好ましくは、5〜10原子%であることが適当である。0.5原子%以上であると、強磁性粉末の高飽和磁化量化が可能となり磁気特性が向上し、良好な電磁変換特性を得ることができる。20原子%以下であると、鉄の含有量が適当であり磁気特性が良好であり、電磁変換特性が向上する。更に、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
【0027】
本発明に用いることができる強磁性粉末として、コバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宣選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0028】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。また、アルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0029】
本発明に用いることができる強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0030】
上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、通常、磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al2O3、Cr2O3等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
【0031】
[下層]
次に、本発明の下層(非磁性層)について説明する。
下層に含まれる非磁性無機粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機質化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタンである。これら非磁性無機粉末の平均粉体サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粉体サイズの異なる非磁性無機粉末を組み合わせたり、単独の非磁性無機粉末でもサイズ分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましくは、非磁性無機粉末の平均粉体サイズは0.01μm〜0.2μmである。非磁性無機粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性無機粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性無機粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPを用いた吸油量は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gであることが適当である。比重は1〜12、好ましくは3〜6であることが適当である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
【0032】
これらの非磁性無機粉末の表面には、表面処理によってAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3 、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいものは、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であり、更に好ましいものは、Al2O3、SiO2、ZrO2である。
これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを施した後にその表層をシリカにする方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0033】
本発明では、下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gであることが適当である。カーボンブラックの平均粒子径は5〜80nm(mμ)、好まし<10〜50nm(mμ)、更に好ましくは10〜40nm(mμ)であることが適当である。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。
【0034】
下層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0035】
以上の材料により調製した磁性塗料又は非磁性塗料を支持体上に塗布して下層を形成する。本発明に用いることのできる支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドが挙げられる。これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行っても良い。また本発明に用いることのできる支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0036】
[磁気記録媒体の製造方法]
本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある支持体の表面に下層の塗布液を塗布した後、あるいは同時に磁性塗料を塗布し、作製する。好ましくは下層の塗布液と磁性塗料は同時に支持体に塗布する、wet on wet塗布方式を用いた方が良い。このとき、磁性層厚みは、0.05〜0.15μmであることが好ましく、磁性層(A)と下層(B)との厚み比率はA/B=0.05〜0.15であることが好ましい。
【0037】
上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にすることができる。
【0038】
本発明の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
【0039】
本発明で用いる支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバック層(バッキング層)が設けられていてもよい。通常、バック層は、支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨剤、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバック層形成塗料を塗布して設けられた層である。なお、支持体の磁性塗料及びバック層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。
【0040】
このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施すことが好ましい。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。好ましくは金属ロールで処理することが適当である。
【0041】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層の表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0042】
本願明細書において、各種粉体のサイズは、以下の粉体サイズから求められるものである。
本明細書において、強磁性粉末、カーボンブラックのように種々の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、高分解能透過型電子顕微鏡写真及び画像解析装置より求められる。高分解能透過型電子顕微鏡写真(倍率20000倍)の粉体の輪郭を画像解析装置でなぞり、粉体のサイズを求めることができる。即ち、粉体サイズは、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)六方晶系フェライト磁性粉のように粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径、即ち板径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
【0043】
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、(長軸長/短軸長)の値の算術平均を平均針状比という。尚、短軸長とは長軸に直行する軸で最大のものをいう。同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(板径/板厚)の算術平均を平均板状比という。ここで、板厚とは厚さ乃至高さである。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均粒子径という。
【0044】
【実施例】
本発明の新規な特長を以下の実施例で具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
<ポリウレタンの合成>
表1に示したジオール成分を還流式冷却器、攪拌機を具備し、予め窒素置換した容器にシクロヘキサノン30%溶液に窒素気流下60℃で溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加え更に15分間溶解した。更に表1に示したMDIを加え90℃にて6時間加熱反応し、ポリウレタン樹脂Aを得た。
ポリウレタンAと同様の方法で表1に示した原料及び組成比でポリウレタンB〜Dを得た。得られたポリウレタンの分子量及びガラス転移温度:Tgを表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
ただし表1の略号は以下の通りの意味である。
DD:ダイマージオール
HBPA:水素化ビスフェノールA
DEIS:スルホイソフタル酸エチレンオキサイド付加物MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
ポリエステルポリオール:イソフタル酸/アジピン酸/ネオペンチルグリコール=0.8/0.7/1(モル比)
【0048】
実施例1
磁性塗料1
強磁性金属粉末 100部
(Co/Fe=30原子%、Hc:2350エルステッド(187kA/m)、SBET:80m2/g、表面処理層:Al2O3,SiO2、Y2O3、平均長軸長:50nm、平均針状比:7、σs:120A・m2/kg)
ポリウレタン樹脂A 15部
α−Al2O3 モ−ス硬度9(平均粒子径:0.1μm) 5部
カ−ボンブラック(平均粒子径:0.08μm) 0.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
上記の塗料について、各成分をオープンニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え,1μm高平均孔径を有するフィルタ−を用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
【0049】
下層(非磁性層)
非磁性無機粉末 αFe2O3:ヘマタイト 80部
(平均長軸長:0.10μm、SBET:52m2/g、pH:6、タップ密度:0.8、DBP吸油量:27〜38ml/100g、表面処理層:Al2O3、SiO2)
カーボンブラック 20部
(平均粒子径:16nm、DBP吸油量:80ml/100g、pH:8.0、SBET:250m2/g、揮発分:1.5%)
ポリウレタン樹脂A 17部
α−Al2O3(平均粒子径:0.2μm) 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
【0050】
上記の塗料について、各成分をオープンニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた下層分散液にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルタ−を用いて濾過し、下層塗布液を調製した。
得られた下層塗布液を、乾燥後の厚さが1μmになるように厚さ4.5μmで下層塗布面の中心線表面粗さが0.001μmの予め、コロナ処理を施して、支持体表面を親水性にしたポリアミド樹脂支持体上に塗布し、さらにその直後にその下層上に上層(磁性層)の厚さが0.2μmになるように、磁性層塗布液を用いて同時重層塗布をおこない、両層がまだ湿潤状態にあるうちに500mTの磁力をもつコバルト磁石と400mTの磁力をもつソレノイドにより配向させ乾燥後、やはり、予めコロナ処理を施した他方の支持体面に厚み0.3μmの下記処方のバック層を塗布した。その後、金属ロールとエポキシ樹脂ロールから構成される7段のカレンダで温度100℃にて分速200m/minで処理を行い、3.8mm幅にスリットしてデジタル記録用テ−プを作成した。
【0051】
バック層処方
混練物▲1▼
上記をロールミルで予備混練した後、
混練物▲2▼
カーボンブラック 100部
(SBET:8.5m2/g、平均粒子径:270nm、DBP吸油量:36ml/100g、pH:10)
ニトロセルロース (旭化成社製RS1/2) 100部
ポリウレタン(日本ポリウレタン製N2301) 30部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
上記混練物▲1▼と▲2▼とをサンドグラインダーで分散し、完成後、以下を添加した。
ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン300) 5部
ポリイソシアナート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 5部
以上を加えて、バック層用塗布液とした。
【0052】
実施例2
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Aを表1のポリウレタン樹脂Bに変更し、他は実施例1と同じように磁気テープを作成した。
【0053】
実施例3
強磁性粉末を平均長軸長が30nmで、比表面積が100m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0054】
実施例4
強磁性粉末を平均長軸長が60nmで、比表面積が69m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0055】
実施例5
上層(磁性層)厚みを0.08μmに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0056】
比較例1
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Cに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0057】
比較例2
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Dに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0058】
比較例3
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0059】
比較例4
上層(磁性層)の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0060】
比較例5
下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0061】
比較例6
磁性体を平均長軸長が100nmで、比表面積が49m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0062】
比較例7
下層の混練時に用いるシクロヘキサノン溶剤量を50部から100部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0063】
比較例8
上層(磁性層)の結合剤をポリウレタン樹脂B:15部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):10部及びポリウレタンB:6部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0064】
比較例9
非磁性層の結合剤をポリウレタン樹脂B:17部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):12部及びポリウレタンB:5部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0065】
比較例10
上層(磁性層)の結合剤をポリウレタン樹脂B:15部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):10部及びポリウレタンB:6部に変更し、且つ下層塗布層の結合剤をポリウレタン樹脂B:17部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):12部及びポリウレタンB:5部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0066】
得られた磁気テープを以下により評価し、結果を表3に示した。
測定方法
<ヘッド腐食性>
MRヘッドの金属部材であるパーマロイを上層(磁性層)に接触させた状態で60℃90%RH環境に4週間放置したのち、パーマロイ部材の表面を走査型電子顕微鏡30000倍で観察し、表面の変化を調べた。
腐食のような変色が見られた物×、見られなかった物を○とした。
【0067】
<テープ変性>
テープを60℃90%RH環境下に8週間保存し、上層(磁性層)表面を走査型電子顕微鏡30000倍で観察した。
微細な結晶が発生していたものを×、変化がなかったものを○とした。
【0068】
<再生出力>
DDS4ドライブ(ソニー製)を用いて、25℃60%RHでデータ出力波形を観察した。レファレンスにはDDS3のレファレンステープを用いている。
【0069】
<全長走行後のエラーレート劣化分>
DDS4ドライブ(ソニー製)を用いて、40℃80%RH環境で再生;巻き戻しを1000回繰り返した。
全長走行後のエラーレート劣化分は以下の式から求めた。
全長走行後のエラーレート劣化分=走行直後のエラーレート/繰り返し走行後のエラーレート
尚、エラーレートは、線記録密度(144kbpi)の信号を8−10変換 PRI等化方式でテ−プに記録してDDSドライブを用いて測定した。
【0070】
【表2】
【0071】
(評価結果)
実施例1〜5は、上層(磁性層)と下層の結合剤が環状構造および長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物及び極性基の成分比を高めた分散性の高いポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まないため、ヘッド腐食およびテープ変性がなく、保存性が良好であった。さらに、上層(磁性層)表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下であるため、再生出力が高く、全長走行後のエラーレートの劣化も少なかった。
一方、比較例1は、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が見られた。これは、極性基含量の低いポリウレタン樹脂を用いているため、分散性に乏しく塩化ビニル系樹脂を併用しないと表面が粗くなるため、10nm以上の突起数が600個/100μm2と高い。また、ポリウレタン樹脂Cより極性基濃度を高めたポリウレタン樹脂Dを用いた比較例2も、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が見られた。これは、単に極性基濃度を高めただけでは、このポリウレタン樹脂は溶剤溶解性に乏しく、分散性が悪いため、比較例1同様に表面が粗くなるためと考える。
比較例3〜5は、高温湿度環境下での長時間保存によってテープ表面に微細な結晶が観察され、テープ変性が認められた。これは、少なくとも下層もしくは上層(磁性層)の結合剤としてエステル結合を有するポリエステルを用いているため、エステル結合の加水分解し、低分子成分がテープ表面で結晶化したものと考える。
また、上層(磁性層)表面の突起について本発明の範囲を超えている比較例6および7は、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が大きかった。
少なくとも上層(磁性層)もしくは下層の結合剤として塩化ビニル系樹脂を含む比較例8〜10は、ヘッド腐食が認められた。さらにテープ表面に微細な結晶が観察され、テープの変性が認められた。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
▲1▼ヘッド腐食性が改良された。
▲2▼高温湿度環境下での保存性が向上した。
▲3▼電磁変換特性が向上した。
▲4▼走行耐久性が向上した。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた走行耐久性及び電磁変換特性を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来可デジタル信号記録システムにおいて使用される磁気テープは、システム毎にきめられており、DLT型、3480、3490、QIC、D8型、あるいはDDS型対応の磁気テープが知られている。どのシステムにおいても、用いられる磁気テープは、支持体上の一方の側に、膜厚が2.0〜3.0μmと比較的厚い単層構造の強磁性粉末、結合剤、及び研磨剤を含む磁性層が設けられている。しかし一般に上記のように比較的厚い単層構造の磁性層において、出力が低下するという厚み損失の問題がある。
磁性層の厚み損失による再生出力の低下を改善するために、磁性層を薄層化することが知られている。
例えば、特許文献1には支持体上に、主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む、厚みが1.0μm以下である磁性層を設けた磁気記録媒体が開示されている。
しかしながら、急速な磁気記録媒体の大容量化、高密度化に伴い、このような技術をもってしても満足な特性を得ることが難しくなってきた。また耐久性と両立させることも困難な状況になってきている。
【0003】
また、近年の大容量、高速且つ高信頼性が要求されるデータシステムにおいて、磁気テープから発生する極めて微量の塩素ガスが、磁気テープを変性させたり、磁気ヘッドを腐食させるといった弊害をもたらす可能性があることがわかってきた。この塩素ガスは、結合剤に含まれる塩化ビニルの分解によって発生すると考えられている。コンピューター用のデータ記録システムで使用されているMR(Magnet Resistance)ヘッドは金属薄膜を用いており、塩素ガスによる腐食が特性劣化をもたらすと懸念される。また、高密度記録化にともない、塩素ガスによる磁気テープのわずかな変性、たとえば磁性層に含まれる強磁性粉末の変質やテープ表面への微細な結晶の析出などが、データの記録再生に大きく影響をおよぼす可能性がある。
また、塩化ビニル系樹脂は、磁気記録媒体の焼却廃棄時にダイオキシンの発生が懸念され、環境保全上問題である。
【0004】
上記のヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に好適な結合剤として、例えば、特許文献2には、Tgの異なる2種類以上のポリエステルポリウレタンのみのバインダーを開示し、特許文献3には、ポリエステルウレタンのみをバインダーとすると共に、低分子成分を除去し、Tgを60〜80℃とした結合剤を開示している。
しかしながら、上記先願公知例ではヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に有効な磁気記録媒体を提供できるものの、それらが開示するポリウレタン樹脂では、分散性、平滑性、電磁変換特性が不充分である。従来のポリウレタン樹脂は高温高湿環境で保存すると、ポリウレタン分子中のエステル結合の加水分解やエーテル結合の熱分解が起こり、膜劣化が懸念され、媒体の保全性も充分とは言えない。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−182178号公報
【特許文献2】
特開平5−307734号公報
【特許文献3】
特開平6−52539号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電磁変換特性、特に高密度記録特性が良好で、且つ優れた走行耐久性を併せ持ち、またヘッド腐食性および媒体の劣化の懸念がなく、高温湿度保存性に優れた磁気記録媒体を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体上に主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、磁性層の厚みが0.02〜0.2μmであり、該強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、該磁性層及び下層の結合剤が環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まず、且つ磁性層表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下である磁気記録媒体である。
本発明の好ましい態様は、以下の通りである。
(1)該強磁性粉末は、Feを主成分とし、平均長軸長が30〜60nmである強磁性金属粉末であることを特徴とする上記磁気記録媒体。
(2)該強磁性粉末の抗磁力が1800〜3000Oe(144〜240kA/m)でσsが80〜130A・m2/kgである上記磁気記録媒体。
(3)強磁性粉末の比表面積が50〜90m2/gであるある上記磁気記録媒体。
(4)磁性層(A)と下層(B)との厚み比率はA/B=0.05〜0.15ある上記磁気記録媒体。
(5)wet on wet塗布方式を用いで磁性層及び下層を形成してなる上記磁気記録媒体。
(7)ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が90〜200℃ある上記磁気記録媒体。
(8)ポリウレタン樹脂はエステル結合およびエーテル結合を含まない上記磁気記録媒体。
(9)磁性層厚みが0.05〜0.15μmである上記磁気記録媒体。
(10)磁性層表面の10nm以上の突起数は50〜300個/100μm2ある上記磁気記録媒体。
(11)25nm以上の突起数が全突起数の5%以下ある上記磁気記録媒体。
【0008】
【発明の実施の態様】
本発明は、下層及び磁性層を有する磁気記録媒体の磁性層厚み、強磁性粉末のサイズ(平均長軸長)、下層及び磁性層の結合剤、及び磁性層表面(以下、磁性面ともいう)を特定したことを特徴とする。
本発明は、磁性層に使用する強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmの微粒子を用いることによりノイズが低下でき、出力が大幅に改善でき、電磁変換特性が良好である。
また、本発明の磁性層及び下層に含まれるポリウレタン樹脂は、強磁性粉末や非磁性無機粉末への吸着性を高め、かつポリウレタン樹脂中のジオール化合物とジイソシアネート化合物の含有量を調整する事で十分な溶剤への溶解性を得られるため分散性に富み、塗膜の平滑性に優れているため、十分な電磁変換特性が得られる。
更に、本発明は、下層及び磁性層から完全に塩化ビニル系樹脂を除くことで、ヘッド腐食や媒体の劣化防止および環境保全に有効な磁気記録媒体となる。本発明で用いるポリウレタン樹脂(以下、本発明用ポリウレタン樹脂ともいう)は強磁性粉末や非磁性無機粉末への吸着性が高く、且つ溶剤溶解性が高く分散性に優れているため、塩化ビニル系樹脂の併用の必要性がない。
また、本発明用ポリウレタン樹脂は、エステル結合やエーテル結合を排除することができ、構造上、ガラス転移温度(Tg)を高くすることができるため、本発明の磁気記録媒体は、高温高湿環境での保存性に優れる。
そして、本発明の磁気記録媒体は、磁性面に高さ及び密度が特定の突起を有することにより走行時の磁気記録媒体の摩擦係数が低く、走行耐久性が向上し、繰り返し走行でのエラーレートを安定に低く抑える事ができる。また、突起の数および高さを制御することで、媒体とヘッドとの間のスペーシングロスによる出力低下の弊害を防ぎ、走行耐久性と電磁変換特性との両立が可能である。
本発明は、磁性層厚みを0.02〜0.2μm、好ましくは0.02〜0.1μmとする。
本発明は、磁性層を薄くすることで磁性層内の自己減磁作用を低減し、高周波領域での出力を大幅に高め、更に重ね書き特性も向上させたものである。磁気ヘッドの改良により、狭ギャップヘッドとの組合せにより超薄層磁性層の効果が一層発揮でき、デジタル記録特性の向上が図れる。特に再生ヘッドにMR素子、巨大磁気抵抗素子を使用するシステムで使用されると好適である。
本発明では、磁性層に使用する強磁性粉末の平均長軸長は20〜60nm、好ましくは20〜45nmであり、このような超微粒子の強磁性粉末を用いる事によりノイズが低下でき、エラレ―トが大幅に改善できる。
また、バック層の結合剤としてガラス転移温度(Tg)が70〜200℃、好ましくは80〜150℃のポリウレタン樹脂を使用することにより、塗膜強度が向上でき、繰り返し走行でのバック層の耐久性を大幅に向上できると共にカッピンング及びコイリングを効果的に抑制することができ、カッピングによるヘッド当り不良を抑え、出力低下や、エッジダメージの発生を抑制することができ、またコイリングによる巻きつけ操作不良を防止することができる。
また、該ポリウレタン樹脂は高Tgと共に柔軟性を備えていることから、走行耐久性に優れテープ変形がない磁気テープを作成することができる。
【0009】
以下、本発明の構成要素について詳述する。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90〜200℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは140〜180℃の範囲である。Tgを90℃以上に保つことで塗膜の強度、特に高温での強度を確保でき、高い走行安定性が得られる。しかし、Tgが200℃を超えると、強磁性粉末や下層の非磁性無機粉末への分散性が低下し、膜表面の平滑性が失われ、電磁変換特性が低下してしまう。
【0010】
ポリウレタン樹脂は、ウレタン基濃度が2.5〜6.0mmol/gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは3.0〜4.5mmol/gであることが適当である。ウレタン基濃度が2.5mmol/g以上であると、塗膜のTgが高く良好な耐久性を得ることができ、6.0mmol/g以下であると、溶剤溶解性が高いため分散性が良好である。ウレタン基濃度が過度に高いと必然的にポリオールを含有することができなくなるため、分子量コントロールが困難になる等、合成上好ましくない。
【0011】
ポリウレタン樹脂の質量平均分子量(Mw)は、30,000〜200,000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは50,000〜100,000の範囲であることが適当である。分子量が30,000以上であると、塗膜強度が高く良好な耐久性を得ることができ、200,000以下であると溶剤溶解性が高く分散性が良好である。
【0012】
ポリウレタン樹脂中のOH基含有量は、1分子当たり2〜20個であることが好ましく、更に好ましくは1分子当たり3〜15個であることが適当である。1分子当たり2個以上のOH基を含むことにより、イソシアネート硬化剤と良好に反応するため、塗膜強度が高く、良好な耐久性を得ることができる。一方、1分子当たり15個以下のOH基を含むと、溶剤溶解性が高く分散性が良好である。OH基を付与するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、3官能以上OH基を持つ分岐ポリエステル又はポリエーテルエステルを用いることができる。これらのなかでも、3官能のものが好ましい。4官能以上になると硬化剤との反応が速くなりすぎポットライフが短くなる。
【0013】
ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール等の環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物等の公知のポリオールを用いることができる。
上記ポリオールの分子量は500〜2000程度が好ましい。分子量が上記範囲内であると、実質的にジイソシアネートの質量比を増やすことができるため、ウレタン結合が増えて分子間の相互作用が強まり、ガラス転移温度が高く、力学強度の高い塗膜を得ることができる。
【0014】
上記ポリオール成分はジオール成分であって、かつ環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物であることが好ましい。ここで、長鎖アルキル鎖とは、炭素数2〜18のアルキル基をいう。環状構造及び長鎖アルキル鎖を有すると、屈曲した構造を有するため、溶剤への溶解性に優れる。これにより、塗布液中で磁性体又は非磁性体表面に吸着したウレタン分子鎖の広がりを大きくできるので、分散安定性を向上させる作用があり、優れた電磁変換特性を得ることができる。また、環状構造を有することにより、ガラス転移温度が高いポリウレタンを得ることができる。
環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とは、特に好ましくは下式で示されるジオール化合物である。
【化1】
Zは、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環から選ばれる環状構造であり、R1及びR2は炭素数1〜18のアルキレン基であり、R3及びR4は炭素数2〜18のアルキル基である。
【0015】
上記ジオール成分は、ポリウレタン樹脂中に10〜50質量%含まれることが好ましく、更に好ましくは15〜40質量%含まれることが適当である。10質量%以上であると、溶剤溶解性が高く分散性が良好であり、50質量%以下であると、Tgが高く優れた耐久性を有する塗膜が得られる。
【0016】
ポリウレタン樹脂には、鎖延長剤として上記ジオール成分以外のジオール成分を併用することもできる。ジオール成分の分子量が大きくなると、必然的にジイソシアネート含有量が少なくなるため、ポリウレタン中のウレタン結合が少なくなり、塗膜強度に劣る。よって、十分な塗膜強度を得るためには、併用される鎖延長剤は、分子量500未満、好ましくは300以下である低分子量ジオールであることが好ましい。
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンジオール(CHD)、水素化ビスフェノールA(H−BPA)等の脂環族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールF等の芳香族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物を用いることができる。特に好ましいものは水素化ビスフェノールAである。
【0017】
ポリウレタン樹脂に用いるジイソシアネートとしては、公知のものを用いることができる。具体的には、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。
【0018】
従来のポリウレタン樹脂では、塩化ビニル系樹脂を併用しなければ十分な分散性が得られなかった。そこで本発明では、ポリウレタン樹脂のみで十分な分散性を確保するため、ポリウレタン樹脂中の極性基濃度を高めることが好ましい。この極性基は、−SO3M,−OSO3M,−PO3M2,−COOMであることが好ましく、さらに好ましくは−SO3M,−OSO3Mであることが好ましい。この時の極性基濃度は、1×10−5〜4×10−4eq/gとした。従来のポリウレタン樹脂では、上記のように極性基濃度を高めると、ポリウレタン樹脂は溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下するといった弊害が発生してしまう。そこで、ポリウレタン樹脂中のジオール化合物とジイソシアネート化合物の含有量を調整する事で十分な溶剤への溶解性を確保することができる。具体的には、溶剤への溶解性を高める機能を持つダイマージオール等の環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物の成分比を高めることが挙げられる。
【0019】
本発明の下層及び磁性層の結合剤は、本発明用ポリウレタン樹脂の他に各種の合成樹脂を用いることができる。例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂である。これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
【0020】
他の合成樹脂を併用する場合には、下層または磁性層に含まれるポリウレタン樹脂は、結合剤中に10〜90質量%を含有されていることが好ましく、更に好ましくは20〜80質量%の量である。特に好ましくは25〜60質量%の量である。
【0021】
また、下層及び/又は磁性層は、上記結合剤の他にポリイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することができる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応性生物(例、デスモジュールL−75(バイエル社製))、キシリレンジイソシアネートあるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとのビューレット付加化合物、トリレンジイソシアネート5モルのイソシアヌレート化合物、トリレンジイソシアネート3モルとヘキサメチレンジイソシアネート2モルのイソシアヌレート付加化合物、イソホロンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートのポリマーを挙げることができる。
【0022】
下層または磁性層に含まれるポリイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%の範囲である。また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用することができる。樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の質量は、強磁性粉末100質量部に対して、通常15〜40質量部の範囲内にあることが好ましく、更に好ましくは20〜30質量部である。
【0023】
[表面突起数]
本発明の磁気記録媒体の最上層に位置する磁性層は、10nm以上の突起数を30〜500個/100μm2、好ましくは50〜300個/100μm2有し、25nm以上の突起数は全突起数の10%以下、好ましくは5%以下である。10nm以上の突起数が30個/100μm2未満であると、媒体走行時の摩擦係数が高くなり、走行安定性が低下する。また、10nm以上の突起数が500個/100μm2を超えると電磁変換特性が低下してしまう。
さらに、25nm以上の突起数が全突起数の10%を超えると、ヘッドとのスペーシングロスが大きくなり、電磁変換特性が劣化する。また繰り返し走行によって25nmを超える突起はトップカットされ、剥がれ落ちた突起先端はデブリとして、ヘッド目詰まりを誘発し出力低下を引き起こしてしまうため、25nm以上の突起は極力抑える必要がある。
【0024】
磁性面の表面突起は、磁性層に含有される強磁性粉末、研磨剤、カーボンブラック、その下層に含有される非磁性無機粉末、研磨剤、カーボンブラック等の無機粉体の粒子サイズ、それらを分散する結合剤や潤滑剤の種類、磁性層液、下層液を調製するときの混練条件、分散条件、塗布層厚み、塗布乾燥条件、カレンダー条件等によってコントロールすることができる。
具体的には、混練条件は、下層塗布液調製時の混練固形分濃度を65〜85重量%とすることが好ましい。上記範囲内であると分散性が良好であり、磁性層には微小表面突起数が少なく高い平滑性が得られる。
分散は、ボールミル、サンドグラインダー、アトライター等の分散機を用い、分散可能な範囲で塗布液の粘度(固形分濃度)を高くして分散シェアーを上げることが好ましい。分散シェアーを上げることで、塗布液の分散性を高めることができる。
カレンダー処理条件は、ロール温度を60〜100℃、好ましくは70〜90℃、線圧を980〜4900N/cm、好ましくは1960〜4412N/cmとして行うことが好ましい。上記条件でカレンダー処理を行うことにより、表面平滑性に優れた塗膜を得ることができる。尚、処理ロールは、後述するようにエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールや金属ロールが用いられ、金属ロールであることが好ましい。
以上のように、最上層に位置する磁性層表面の突起数をコントロールするためには様々な方法があり、本発明の磁気記録媒体で定義する表面状態を得るために、これらの手法を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
(表面突起数の測定方法)
本発明の磁気記録媒体の表面突起数は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定する。具体的には、DIGITAL INSTRUMENT社製のNANOSCOPEIIIを用い、コンタクトモードで10μm平方(100μm2)を測定し、突起と窪みの体積が等しくなる面を基準面とし、基準面から5〜30nmの高さの面で5nm毎にスライスした場合に面にスライスされるか、面に接触される突起のカウントをして求められる。
【0026】
[強磁性粉末]
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末でBET法による比表面積(SBET)が40〜80m2/g、好ましくは50〜70m2/g であることが適当である。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmであることが適当である。平均長軸長は20〜60nmであり、好ましくは20〜50nmであり、特に好ましくは20〜45μmであることが適当である。強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%〜20原子%が好ましく、更に好ましくは、5〜10原子%であることが適当である。0.5原子%以上であると、強磁性粉末の高飽和磁化量化が可能となり磁気特性が向上し、良好な電磁変換特性を得ることができる。20原子%以下であると、鉄の含有量が適当であり磁気特性が良好であり、電磁変換特性が向上する。更に、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
【0027】
本発明に用いることができる強磁性粉末として、コバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宣選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0028】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。また、アルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0029】
本発明に用いることができる強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0030】
上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、通常、磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al2O3、Cr2O3等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
【0031】
[下層]
次に、本発明の下層(非磁性層)について説明する。
下層に含まれる非磁性無機粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機質化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタンである。これら非磁性無機粉末の平均粉体サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粉体サイズの異なる非磁性無機粉末を組み合わせたり、単独の非磁性無機粉末でもサイズ分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましくは、非磁性無機粉末の平均粉体サイズは0.01μm〜0.2μmである。非磁性無機粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性無機粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性無機粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPを用いた吸油量は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gであることが適当である。比重は1〜12、好ましくは3〜6であることが適当である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
【0032】
これらの非磁性無機粉末の表面には、表面処理によってAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3 、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいものは、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であり、更に好ましいものは、Al2O3、SiO2、ZrO2である。
これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを施した後にその表層をシリカにする方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0033】
本発明では、下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gであることが適当である。カーボンブラックの平均粒子径は5〜80nm(mμ)、好まし<10〜50nm(mμ)、更に好ましくは10〜40nm(mμ)であることが適当である。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。
【0034】
下層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0035】
以上の材料により調製した磁性塗料又は非磁性塗料を支持体上に塗布して下層を形成する。本発明に用いることのできる支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドが挙げられる。これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行っても良い。また本発明に用いることのできる支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0036】
[磁気記録媒体の製造方法]
本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある支持体の表面に下層の塗布液を塗布した後、あるいは同時に磁性塗料を塗布し、作製する。好ましくは下層の塗布液と磁性塗料は同時に支持体に塗布する、wet on wet塗布方式を用いた方が良い。このとき、磁性層厚みは、0.05〜0.15μmであることが好ましく、磁性層(A)と下層(B)との厚み比率はA/B=0.05〜0.15であることが好ましい。
【0037】
上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にすることができる。
【0038】
本発明の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
【0039】
本発明で用いる支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバック層(バッキング層)が設けられていてもよい。通常、バック層は、支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨剤、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバック層形成塗料を塗布して設けられた層である。なお、支持体の磁性塗料及びバック層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。
【0040】
このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施すことが好ましい。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。好ましくは金属ロールで処理することが適当である。
【0041】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層の表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0042】
本願明細書において、各種粉体のサイズは、以下の粉体サイズから求められるものである。
本明細書において、強磁性粉末、カーボンブラックのように種々の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、高分解能透過型電子顕微鏡写真及び画像解析装置より求められる。高分解能透過型電子顕微鏡写真(倍率20000倍)の粉体の輪郭を画像解析装置でなぞり、粉体のサイズを求めることができる。即ち、粉体サイズは、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)六方晶系フェライト磁性粉のように粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径、即ち板径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
【0043】
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、(長軸長/短軸長)の値の算術平均を平均針状比という。尚、短軸長とは長軸に直行する軸で最大のものをいう。同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(板径/板厚)の算術平均を平均板状比という。ここで、板厚とは厚さ乃至高さである。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均粒子径という。
【0044】
【実施例】
本発明の新規な特長を以下の実施例で具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
<ポリウレタンの合成>
表1に示したジオール成分を還流式冷却器、攪拌機を具備し、予め窒素置換した容器にシクロヘキサノン30%溶液に窒素気流下60℃で溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加え更に15分間溶解した。更に表1に示したMDIを加え90℃にて6時間加熱反応し、ポリウレタン樹脂Aを得た。
ポリウレタンAと同様の方法で表1に示した原料及び組成比でポリウレタンB〜Dを得た。得られたポリウレタンの分子量及びガラス転移温度:Tgを表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
ただし表1の略号は以下の通りの意味である。
DD:ダイマージオール
HBPA:水素化ビスフェノールA
DEIS:スルホイソフタル酸エチレンオキサイド付加物MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
ポリエステルポリオール:イソフタル酸/アジピン酸/ネオペンチルグリコール=0.8/0.7/1(モル比)
【0048】
実施例1
磁性塗料1
強磁性金属粉末 100部
(Co/Fe=30原子%、Hc:2350エルステッド(187kA/m)、SBET:80m2/g、表面処理層:Al2O3,SiO2、Y2O3、平均長軸長:50nm、平均針状比:7、σs:120A・m2/kg)
ポリウレタン樹脂A 15部
α−Al2O3 モ−ス硬度9(平均粒子径:0.1μm) 5部
カ−ボンブラック(平均粒子径:0.08μm) 0.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
上記の塗料について、各成分をオープンニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え,1μm高平均孔径を有するフィルタ−を用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
【0049】
下層(非磁性層)
非磁性無機粉末 αFe2O3:ヘマタイト 80部
(平均長軸長:0.10μm、SBET:52m2/g、pH:6、タップ密度:0.8、DBP吸油量:27〜38ml/100g、表面処理層:Al2O3、SiO2)
カーボンブラック 20部
(平均粒子径:16nm、DBP吸油量:80ml/100g、pH:8.0、SBET:250m2/g、揮発分:1.5%)
ポリウレタン樹脂A 17部
α−Al2O3(平均粒子径:0.2μm) 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
【0050】
上記の塗料について、各成分をオープンニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた下層分散液にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルタ−を用いて濾過し、下層塗布液を調製した。
得られた下層塗布液を、乾燥後の厚さが1μmになるように厚さ4.5μmで下層塗布面の中心線表面粗さが0.001μmの予め、コロナ処理を施して、支持体表面を親水性にしたポリアミド樹脂支持体上に塗布し、さらにその直後にその下層上に上層(磁性層)の厚さが0.2μmになるように、磁性層塗布液を用いて同時重層塗布をおこない、両層がまだ湿潤状態にあるうちに500mTの磁力をもつコバルト磁石と400mTの磁力をもつソレノイドにより配向させ乾燥後、やはり、予めコロナ処理を施した他方の支持体面に厚み0.3μmの下記処方のバック層を塗布した。その後、金属ロールとエポキシ樹脂ロールから構成される7段のカレンダで温度100℃にて分速200m/minで処理を行い、3.8mm幅にスリットしてデジタル記録用テ−プを作成した。
【0051】
バック層処方
混練物▲1▼
上記をロールミルで予備混練した後、
混練物▲2▼
カーボンブラック 100部
(SBET:8.5m2/g、平均粒子径:270nm、DBP吸油量:36ml/100g、pH:10)
ニトロセルロース (旭化成社製RS1/2) 100部
ポリウレタン(日本ポリウレタン製N2301) 30部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
上記混練物▲1▼と▲2▼とをサンドグラインダーで分散し、完成後、以下を添加した。
ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン300) 5部
ポリイソシアナート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 5部
以上を加えて、バック層用塗布液とした。
【0052】
実施例2
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Aを表1のポリウレタン樹脂Bに変更し、他は実施例1と同じように磁気テープを作成した。
【0053】
実施例3
強磁性粉末を平均長軸長が30nmで、比表面積が100m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0054】
実施例4
強磁性粉末を平均長軸長が60nmで、比表面積が69m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0055】
実施例5
上層(磁性層)厚みを0.08μmに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0056】
比較例1
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Cに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0057】
比較例2
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Dに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0058】
比較例3
上層(磁性層)及び下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0059】
比較例4
上層(磁性層)の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0060】
比較例5
下層の結合剤のポリウレタン樹脂Bを表1のポリウレタン樹脂Eに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0061】
比較例6
磁性体を平均長軸長が100nmで、比表面積が49m2/gに変更し、他は実施例2と同じように磁気テープを作成した。
【0062】
比較例7
下層の混練時に用いるシクロヘキサノン溶剤量を50部から100部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0063】
比較例8
上層(磁性層)の結合剤をポリウレタン樹脂B:15部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):10部及びポリウレタンB:6部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0064】
比較例9
非磁性層の結合剤をポリウレタン樹脂B:17部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):12部及びポリウレタンB:5部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0065】
比較例10
上層(磁性層)の結合剤をポリウレタン樹脂B:15部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):10部及びポリウレタンB:6部に変更し、且つ下層塗布層の結合剤をポリウレタン樹脂B:17部から、塩化ビニル(日本ゼオン製MR−110):12部及びポリウレタンB:5部に変更し、他は実施例2と同じように作成した。
【0066】
得られた磁気テープを以下により評価し、結果を表3に示した。
測定方法
<ヘッド腐食性>
MRヘッドの金属部材であるパーマロイを上層(磁性層)に接触させた状態で60℃90%RH環境に4週間放置したのち、パーマロイ部材の表面を走査型電子顕微鏡30000倍で観察し、表面の変化を調べた。
腐食のような変色が見られた物×、見られなかった物を○とした。
【0067】
<テープ変性>
テープを60℃90%RH環境下に8週間保存し、上層(磁性層)表面を走査型電子顕微鏡30000倍で観察した。
微細な結晶が発生していたものを×、変化がなかったものを○とした。
【0068】
<再生出力>
DDS4ドライブ(ソニー製)を用いて、25℃60%RHでデータ出力波形を観察した。レファレンスにはDDS3のレファレンステープを用いている。
【0069】
<全長走行後のエラーレート劣化分>
DDS4ドライブ(ソニー製)を用いて、40℃80%RH環境で再生;巻き戻しを1000回繰り返した。
全長走行後のエラーレート劣化分は以下の式から求めた。
全長走行後のエラーレート劣化分=走行直後のエラーレート/繰り返し走行後のエラーレート
尚、エラーレートは、線記録密度(144kbpi)の信号を8−10変換 PRI等化方式でテ−プに記録してDDSドライブを用いて測定した。
【0070】
【表2】
【0071】
(評価結果)
実施例1〜5は、上層(磁性層)と下層の結合剤が環状構造および長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物及び極性基の成分比を高めた分散性の高いポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まないため、ヘッド腐食およびテープ変性がなく、保存性が良好であった。さらに、上層(磁性層)表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下であるため、再生出力が高く、全長走行後のエラーレートの劣化も少なかった。
一方、比較例1は、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が見られた。これは、極性基含量の低いポリウレタン樹脂を用いているため、分散性に乏しく塩化ビニル系樹脂を併用しないと表面が粗くなるため、10nm以上の突起数が600個/100μm2と高い。また、ポリウレタン樹脂Cより極性基濃度を高めたポリウレタン樹脂Dを用いた比較例2も、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が見られた。これは、単に極性基濃度を高めただけでは、このポリウレタン樹脂は溶剤溶解性に乏しく、分散性が悪いため、比較例1同様に表面が粗くなるためと考える。
比較例3〜5は、高温湿度環境下での長時間保存によってテープ表面に微細な結晶が観察され、テープ変性が認められた。これは、少なくとも下層もしくは上層(磁性層)の結合剤としてエステル結合を有するポリエステルを用いているため、エステル結合の加水分解し、低分子成分がテープ表面で結晶化したものと考える。
また、上層(磁性層)表面の突起について本発明の範囲を超えている比較例6および7は、再生出力が低く、全長走行後のエラーレートの劣化が大きかった。
少なくとも上層(磁性層)もしくは下層の結合剤として塩化ビニル系樹脂を含む比較例8〜10は、ヘッド腐食が認められた。さらにテープ表面に微細な結晶が観察され、テープの変性が認められた。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
▲1▼ヘッド腐食性が改良された。
▲2▼高温湿度環境下での保存性が向上した。
▲3▼電磁変換特性が向上した。
▲4▼走行耐久性が向上した。
Claims (1)
- 支持体上に主として非磁性無機粉末と結合剤とを含む下層を設け、その上に少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、磁性層の厚みが0.02〜0.2μmであり、該強磁性粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、該磁性層及び下層の結合剤が環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂を含み且つ塩化ビニル系樹脂を含まず、且つ磁性層表面の突起数について、10nm以上の突起数が30〜500個/100μm2且つ25nm以上の突起数が全突起数の10%以下である磁気記録媒体。
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