JP2004347509A - 吸音材料の物性値同定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】専用の測定器を用いないで吸音材料の物性値を測定できるようにする。
【解決手段】イノベーション計算部23は、所定の物性値(流れ抵抗)をパラメータとして解析により得られた吸音率と位相の周波数特性と測定により得られた吸音率と位相の周波数特性とを用いてイノベーションを計算し、同定部24は、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える物性値(流れ抵抗)を吸音材料の物性値として同定する。
【選択図】 図1
【解決手段】イノベーション計算部23は、所定の物性値(流れ抵抗)をパラメータとして解析により得られた吸音率と位相の周波数特性と測定により得られた吸音率と位相の周波数特性とを用いてイノベーションを計算し、同定部24は、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える物性値(流れ抵抗)を吸音材料の物性値として同定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸音材料の物性値同定装置に係わり、特に、相関演算結果あるいはカルマンフィルタのイノベーションを用いた吸音材料の物性値同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔質吸音材料は、室内の防音や吸音(音の反射や外への漏出を軽減する)に用いられる壁面材料で、代表的な材質として発泡ウレタンやグラスウールが挙げられる。また、シートやドアトリム等の自動車内装これらに類似するものが有る。この多孔質吸音材料は、連結されて外部に通じている無数の孔を内部に持ち、この穴が持つ音伝搬への抵抗作用によって音を吸収する。
物性値として、発砲ウレタンやダラスウールに代表される多孔質吸音材料の性質を定量的に評価する指標として、以下三種類の物性値が規定されている。
【0003】
▲1▼流れ抵抗
流れ抵抗は、材料表面垂直方向に一定空気流を通したときの速度と材料表面間の圧力差の比であり、次式
R=Δp/hv
により定義される。ただし、R:流れ抵抗[rayl/m]、Δp:材料表面間の圧力差[Pa]、h:材料厚さ[m]、v:流体流速[m/v]、1 rayl=1 Ns/m3=1kg/m2sである。
▲2▼有孔率
有孔率は多孔質材料全体の体積と空隙部(連続気泡)の体積の比であり、次式
Ω=Vv/Vt
により定義される。ただし、Ω:有孔率、Vv:空隙部の体積[m3]、Vt:全体の体積[m3]である。
▲3▼構造係数
構造係数は、多孔質中の流体(空気等)について、流体の通常密度と多孔質中での密度の比であり、次式
Ks=ρe/ρ
により定義される。ただし、Ks:構造係数、ρe:媒質の多孔質中密度[kg/m3]、ρ:媒質の通常密度[kg/m3]である。
【0004】
以上の物性値を同定することができれば、車室壁面に発泡ウレタンを貼付した時の車室内音場(音の強弱の分布状態)がどのようになるかを実機を製作せずに評価可能になる。又、車室内音場を正確に評価可能となれば、たとえば車室内のどの箇所にスピーカを設置すると最適な聴取環境が得られるかを判断可能となる。
従って、多孔質吸音材料の物性値を正しく同定することは車室内の音響システムを構築する上で重要である。
【0005】
従来は、専用の計測器を用いて物性値を測定するものであった(従来技術1)。すなわち、流れ抵抗、有孔率、構造係数それぞれに専用の測定器を用意してこれら物性値を測定するものであった。たとえば、流れ抵抗測定器では、厚さが既知の多孔質材料に流体(空気)を通じて、前後の差圧と流速を測定し、定義式から算出する。このとき圧力の印可状態でDC法とAC法に分類される。有孔率測定器では、見かけ体積が既知の多孔材料を水中に沈め、体積増加分を測定して材料の体積を求め(この時の体積は空隙を除いた材料自身の体積である)、この二つの体積から有孔率を求める。構造係数測定器では、捻れ率の平方根が構造係数であるため、捻れ率を計測する。
又、従来技術2として入力パラメータに基づいて室型モデルを構築すると共に、所定のスピーカを用いた場合における音場解析を行って表示するものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平2002−123262号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術1では、専用の測定器が必要である。このため、物性値測定のためにはその測定器を所有するか、保有機関に測定を依頼しなければならない。このため測定データ取得には多大な費用と期間を要する問題がある。又、従来技術2では吸音材料の物性値を同定することはできない。
以上から本発明の目的は、専用の測定器を用いないで吸音材料の物性値を測定できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の第1実施態様によれば、所定の物性値をパラメータとし、各物性値における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する解析部、実際の吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する測定部、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性と前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性の相関を演算する相関演算部、相関が最大となる周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、を備えた吸音材料の物性値同定装置により達成される。
【0008】
また、上記課題は、本発明の第2実施態様によれば、所定の物性値をパラメータとして解析により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算するイノベーション計算部、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、を備えた吸音材料の物性値同定装置により達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
(A)概略説明
図1は本発明の概略説明図であり、図1(A)は第1実施例、図1(B)は第2実施例の概略説明図である。
図1(A)において、音響解析部11は、所定の物性値(たとえば流れ抵抗値)をパラメータとし、各流れ抵抗における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する。音響インピーダンス測定部12は、実際の多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより実際の吸音率と位相の周波数特性を算出する。相関演算部13は、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性と前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性の相関を演算し、物性値同定部14は相関が最大となる周波数特性を与える流れ抵抗を多孔質吸音材料の流れ抵抗として同定する。
【0010】
図1(B)において、音響解析部21は、所定の物性値(たとえば流れ抵抗値)をパラメータとし、各流れ抵抗における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する。音響インピーダンス測定部22は、実際の多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより実際の吸音率と位相の周波数特性を算出する。イノベーション演算部23は、前記解析により求めた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算する。物性値同定部24は、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える流れ抵抗を多孔質吸音材料の流れ抵抗として同定する。
【0011】
(B)第1実施例
図2は第1実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図であり、多孔質吸音材料における3つの物性値のうち流れ抵抗をパラメータとして103〜106の範囲で可変し、残りの2つの物性値である有孔率を0.95〜0.96の範囲の値に固定し、又、構造係数を有孔率から算出される値に固定した場合である。なお、パラメータ範囲は文献等にて絞り込み、その範囲内で20 ̄30パターンについて解析を行うものとする。
【0012】
解析パラメータ設定部51は、所定パターンの物性値を音響インピーダンス解析部52に設定する。音響インピーダンス解析部52は市販の解析ソフト(たとえばSYSNOISE)を用いて周波数毎に音響インピーダンス(複素インピーダンス)Z=R+jXを求め、吸音率・位相算出部53に入力する。吸音率・位相算出部53は、次の(1)、(2)式
【数1】
により、周波数毎に吸音率α0、位相θを演算する。これにより、所定パターンの吸音率、位相それぞれの周波数特性を求めることができる。以下、同様に、20〜30パターンについて周波数特性を求める。ただしρcは媒質密度と音速の積である。
【0013】
一方、音響インピーダンス測定部54は、解析パラメータ設定部51で設定した有孔率、構造係数を有し、流れ抵抗が不明な試料(多孔質吸音材料)の音響インピーダンスを周波数毎に測定する。図3は音響インピーダンス測定部54の構成図であり、円筒状の音響管30を用いた2マイクロホン法(米国材料試験協会 ASTM E−1050−98)により多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定する。音響管30の一端にはスピーカ31が設けられ、他端にはバックプレート32が設けられ、該バックプレート32には試料33が取付けられている。また、音響管30の中間部には試料面から距離Lxの位置に第1のマイク34が設けられ、距離(Lx+Dx)の位置に第2のマイク35が設けられている。スピーカ31から発せられた音が試料33で反射して生じる定在波の音圧差を二つのマイクロホン34,35により測定して換算式から試料面の複素音響インピーダンスr+jxを測定する。この複素音響インピーダンスZ0=r+jxは、第1のマイク34の音圧をP1、第2のマイク35の音圧をP2、サンプル面および第1マイク、第2マイクにおける粒子速度をU0,U1,U2とすれば次式
【数2】
により求めることができる。ただし、
【数3】
k:波数(角速度ωを音速cで除す)、S:音響管の断面積、ρ:媒質(空気)密度、c:音速である。
【0014】
図3の測定装置は全国の公的試験機関等に広く採用されて稼動しているため、速やかに、かつ、安価に測定データを取得することができる。
スピーカ31から発する音の周波数を変えて各周波数の音響インピーダンスZ0=r+jxが測定されれば、吸音率・位相算出部55は、次の(7)、(8)式
【数4】
により、周波数毎に吸音率α0、位相θを演算する。これにより、試料の吸音率、位相それぞれの周波数特性を求めることができる。
【0015】
ついで、相関演算部56は、実測により求めた吸音率、位相の周波数特性と解析により求めた各パターンの吸音率、位相の周波数特性とを用いて、各パターンについて吸音率、位相それぞれの相関を演算する。全てのパターンについて相関演算が終了すれば相関評価部57は、相関が最も1に近いパターンを求める。たとえば、相関評価部57は、吸音率の相関のなかで最も1に近いパターンと位相の相関のなかで最も1に近いパターンをそれぞれ求め、▲1▼2つのパターンが同じであれば該パターンの相関が最も1に近いと判定する。しかし、▲2▼パターンが異なれば、相関が1に近い方を選択する。
【0016】
物性値同定部58は相関が最も1に近いパターンのパラメータ値(流れ抵抗)を試料の流れ抵抗と判定して出力する。図4は以上の流れ抵抗同定までのシーケンス説明図である。
図5は実測値と3パターンの周波数特性であり、(A)は吸音率の周波数特性、(B)は位相の周波数特性である。それぞれにおいて、Aは音響インピーダンスの測定により得られた周波数特性、B〜Dは流れ抵抗が10k,20k,30kのときの解析により得られた周波数特性である。
流れ抵抗が10k,20k,30kの吸音率周波数特性の相関値及び位相周波数特性の相関値は図6に示す通りである。これより、吸音率の相関のなかで最も1に近いパターン(流れ抵抗=20k)と位相の相関のなかで最も1に近いパターン(流れ抵抗=20k)が一致しており、試料の流れ抵抗は20k(=20000)と同定できる。
【0017】
(C)第2実施例
第1実施例では相関(相関係数)に基づいて物性値(流れ抵抗)を同定したが、実測データと解析結果の吸音率・位相−周波数特性の相関を求めると、図7に示すように流れ抵抗値に拘わらず相関が1に近い値となり、最も相似と判断可能なピーク点を見つけることが難しくなり、流れ抵抗を同定できなくなることがある。尚、図7は厚さ20mmのウレタンの流れ抵抗・相関特性であり、A,B,Cは、流れ抵抗がそれぞれ16k,23k,41k(実測値)の特性であり、いずれの場合も相関ピーク点が同定しにくくなっている。
そこで、第2実施例はイノベーション評価法を用いて物性値(たとえば流れ抵抗)を同定する。
【0018】
図8は第2実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図であり、図2の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
カルマンフィルタ61は、解析により求めた吸音率あるいは位相の周波数特性及び音響インピーダンス測定により得られた吸音率あるいは位相の周波数特性を用いて状態ベクトルxkを算出する。
解析により求めた吸音率あるいは位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0とし、これらn個の要素からなるベクトルHを次式
H=[Hn−1,Hn−2,H n−3,・・,H0]
で表現する。同様に音響インピーダンス測定により得られた吸音率あるいは位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、ベクトルJを次式
J=[Jn−1,Jn−2,J n−3,・・,J0]
で表現する。以上のように解析データH,実測データJを表現すると、実測データとJkと解析データHkを関係づけるシステム方程式は状態ベクトルxkを用いて下式で表される。ただし、Vkは観測雑音である。
xk+1=xk (状態方程式) (9)
Jk=Hkxk+Vk (観測方程式) (10)
【0019】
この状態ベクトルxkを下式によって逐次推定する。この推定演算を行うものがカルマンフィルタである。
【数5】
ただし、Pkは誤差共分散、Kkはカルマンゲインである。また添え字のk及びk−1は現時点と1ステップ前の過去のデータを表す。k−1|k−1は1ステップ前の過去までのデータによってk−1時点のデータを推定したことを表している。また、^は推定を意味する。カルマンフィルタはxk|kを逐次演算して出力する。一般的なカルマンフィルタではxk|kを求めた時点で処理が終了する。しかし、本発明ではxk|kを利用してイノベーションを演算する。(11)式の右辺括弧内は実測値と直前までの推定値の差であり、これをイノベーションという。
【0020】
【数6】
カルマンフィルタによる推定が行なわれた場合、イノベーションνkは白色性を持つ(=自己相関係数がΔ関数となる)ため、これを評価することで実測データと解析データの関係の強さが評価可能である。
【0021】
従って、イノベーション算出部62は(14)式によりイノベーション系列νkを算出し、自己相関算出部63は次式
【数7】
により自己相関R(k)を算出する。又、相関算出部64は、自己相関R(k)とΔ関数との相関Crを次式
【数8】
により算出する。尚、DjはΔ関数で、j=1で1、それ以外は0となる関数である。バーは平均値を意味し、Δ関数の平均値はnが大きくなるほど小さくなる。
【0022】
以後、上記の状態ベクトルxk|kの算出、イノベーション系列νkの算出、自己相関R(k)の算出、相関Crの算出を、解析により求めた全パターンの周波数特性に適用する。
相関評価部65は、全てのパターンについて上記演算が完了すれば、相関Crが最も1に近いパターンを求める。物性値同定部68は該パターンのパラメータ値(流れ抵抗)を試料の流れ抵抗と判定して出力する。
【0023】
図9は発泡ウレタン、グラスウールなどの代表的な多孔質吸音材料の吸音率と位相のそれぞれの実測データと解析データ(流れ抵抗を複数パターン用意して解析)を用いて、第1実施例の相関係数及び第2実施例のイノベーション白色性を求めた。そして、第1実施例において、相関が最も1に近い時の流れ抵抗を求めて図9中に示し、第2実施例では、イノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗を求めて示している。
図9より、第1実施例では位相相関のピーク点が求まらない場合があるが、第2実施例ではピーク点はすべて求まっている。なお、第2実施例において、理想的には、吸音率と位相の両方においてイノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗値が一致することであるが、異なる場合は、イノベーション白色性が強い方の流れ抵抗を選択する。
【0024】
(D)物性値同定の効果
(1)車室内音場解析
物性値(たとえば流れ抵抗)を正確に同定できれば、車室壁面に発泡ウレタンを貼付した時の車室内音場(音の強弱の分布状態)がどのようになるかを実機を製作せずに評価可能となる。さらに、本手法は多孔質吸音材料に限らず、他の車室内装材にも適用可能なので、今後車室内装材料全般について物性値を同定することでより正確な車室内音場の評価が可能であると考えられる。図10は運転席における音圧―周波数特性(実測データAと解析結果B)であり、解析結果Bは実測データAに類似していることがわかる。
【0025】
(2)スピーカ設置位置の決定
車室内音場を正確に評価することが可能となれば、たとえば、車室内のどの箇所にスピーカを設置すると最適な聴取環境が得られるかを判断可能となる。図11はセダン車の運転席におけるスピーカ位置変更前Aと位置変更後Bの音圧−周波数特性であり、実機を製作しなくても、特性Bのようにフラットな周波数特性となるスピーカ位置を決定することができる。
以上本発明を多孔質吸音材料の物性値を測定する場合について説明したが、本発明は多孔質吸音材料に限らず多孔質以外の吸音材料の物性値の同定にも用いることできる。
又、以上では流れ抵抗をパラメータとして可変して吸音材料の流れ抵抗を求めたが、吸音材料の他の物性値も同様に求めることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上本発明によれば、専用の測定器を用いないで吸音材料の物性値を測定することができ、安価に吸音材料の物性値を同定することができる。
また、本発明における垂直入射吸音率測定は公的試験機関等で広く行なわれおり、専用機器を所有していなくとも安価に測定が行なえる。また、測定方法はJIS等国際規格で規定されており、測定の信頼性は高い。したがって、物性値を精度よく同定することができる。
また、本発明によれば、吸音率測定データを元にイノベーション評価によって物性値を決定することから安価、短時間かつより正確に物性値を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概略説明図である。
【図2】第1実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図である。
【図3】音響インピーダンス測定部の構成図である。
【図4】流れ抵抗同定までのシーケンス説明図である。
【図5】実測値と3パターンの周波数特性である。
【図6】流れ抵抗が10k,20k,30kの吸音率周波数特性及び位相周波数特性の相関値説明図表である。
【図7】第1実施例の問題点説明図である。
【図8】第2実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図である。
【図9】第1実施例において相関が最も1に近い時の流れ抵抗および第2実施例においてイノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗を示す図表である。
【図10】運転席における音圧―周波数特性である。
【図11】スピーカ位置変更前Aと位置変更後Bの音圧−周波数特性である。
【符号の説明】
11音響解析部
12音響インピーダンス測定部
13相関演算部
14物性値同定部
21音響解析部
22音響インピーダンス測定部
23イノベーション演算部
24物性値同定部
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸音材料の物性値同定装置に係わり、特に、相関演算結果あるいはカルマンフィルタのイノベーションを用いた吸音材料の物性値同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔質吸音材料は、室内の防音や吸音(音の反射や外への漏出を軽減する)に用いられる壁面材料で、代表的な材質として発泡ウレタンやグラスウールが挙げられる。また、シートやドアトリム等の自動車内装これらに類似するものが有る。この多孔質吸音材料は、連結されて外部に通じている無数の孔を内部に持ち、この穴が持つ音伝搬への抵抗作用によって音を吸収する。
物性値として、発砲ウレタンやダラスウールに代表される多孔質吸音材料の性質を定量的に評価する指標として、以下三種類の物性値が規定されている。
【0003】
▲1▼流れ抵抗
流れ抵抗は、材料表面垂直方向に一定空気流を通したときの速度と材料表面間の圧力差の比であり、次式
R=Δp/hv
により定義される。ただし、R:流れ抵抗[rayl/m]、Δp:材料表面間の圧力差[Pa]、h:材料厚さ[m]、v:流体流速[m/v]、1 rayl=1 Ns/m3=1kg/m2sである。
▲2▼有孔率
有孔率は多孔質材料全体の体積と空隙部(連続気泡)の体積の比であり、次式
Ω=Vv/Vt
により定義される。ただし、Ω:有孔率、Vv:空隙部の体積[m3]、Vt:全体の体積[m3]である。
▲3▼構造係数
構造係数は、多孔質中の流体(空気等)について、流体の通常密度と多孔質中での密度の比であり、次式
Ks=ρe/ρ
により定義される。ただし、Ks:構造係数、ρe:媒質の多孔質中密度[kg/m3]、ρ:媒質の通常密度[kg/m3]である。
【0004】
以上の物性値を同定することができれば、車室壁面に発泡ウレタンを貼付した時の車室内音場(音の強弱の分布状態)がどのようになるかを実機を製作せずに評価可能になる。又、車室内音場を正確に評価可能となれば、たとえば車室内のどの箇所にスピーカを設置すると最適な聴取環境が得られるかを判断可能となる。
従って、多孔質吸音材料の物性値を正しく同定することは車室内の音響システムを構築する上で重要である。
【0005】
従来は、専用の計測器を用いて物性値を測定するものであった(従来技術1)。すなわち、流れ抵抗、有孔率、構造係数それぞれに専用の測定器を用意してこれら物性値を測定するものであった。たとえば、流れ抵抗測定器では、厚さが既知の多孔質材料に流体(空気)を通じて、前後の差圧と流速を測定し、定義式から算出する。このとき圧力の印可状態でDC法とAC法に分類される。有孔率測定器では、見かけ体積が既知の多孔材料を水中に沈め、体積増加分を測定して材料の体積を求め(この時の体積は空隙を除いた材料自身の体積である)、この二つの体積から有孔率を求める。構造係数測定器では、捻れ率の平方根が構造係数であるため、捻れ率を計測する。
又、従来技術2として入力パラメータに基づいて室型モデルを構築すると共に、所定のスピーカを用いた場合における音場解析を行って表示するものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平2002−123262号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術1では、専用の測定器が必要である。このため、物性値測定のためにはその測定器を所有するか、保有機関に測定を依頼しなければならない。このため測定データ取得には多大な費用と期間を要する問題がある。又、従来技術2では吸音材料の物性値を同定することはできない。
以上から本発明の目的は、専用の測定器を用いないで吸音材料の物性値を測定できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の第1実施態様によれば、所定の物性値をパラメータとし、各物性値における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する解析部、実際の吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する測定部、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性と前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性の相関を演算する相関演算部、相関が最大となる周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、を備えた吸音材料の物性値同定装置により達成される。
【0008】
また、上記課題は、本発明の第2実施態様によれば、所定の物性値をパラメータとして解析により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算するイノベーション計算部、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、を備えた吸音材料の物性値同定装置により達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
(A)概略説明
図1は本発明の概略説明図であり、図1(A)は第1実施例、図1(B)は第2実施例の概略説明図である。
図1(A)において、音響解析部11は、所定の物性値(たとえば流れ抵抗値)をパラメータとし、各流れ抵抗における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する。音響インピーダンス測定部12は、実際の多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより実際の吸音率と位相の周波数特性を算出する。相関演算部13は、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性と前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性の相関を演算し、物性値同定部14は相関が最大となる周波数特性を与える流れ抵抗を多孔質吸音材料の流れ抵抗として同定する。
【0010】
図1(B)において、音響解析部21は、所定の物性値(たとえば流れ抵抗値)をパラメータとし、各流れ抵抗における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する。音響インピーダンス測定部22は、実際の多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより実際の吸音率と位相の周波数特性を算出する。イノベーション演算部23は、前記解析により求めた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算する。物性値同定部24は、得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える流れ抵抗を多孔質吸音材料の流れ抵抗として同定する。
【0011】
(B)第1実施例
図2は第1実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図であり、多孔質吸音材料における3つの物性値のうち流れ抵抗をパラメータとして103〜106の範囲で可変し、残りの2つの物性値である有孔率を0.95〜0.96の範囲の値に固定し、又、構造係数を有孔率から算出される値に固定した場合である。なお、パラメータ範囲は文献等にて絞り込み、その範囲内で20 ̄30パターンについて解析を行うものとする。
【0012】
解析パラメータ設定部51は、所定パターンの物性値を音響インピーダンス解析部52に設定する。音響インピーダンス解析部52は市販の解析ソフト(たとえばSYSNOISE)を用いて周波数毎に音響インピーダンス(複素インピーダンス)Z=R+jXを求め、吸音率・位相算出部53に入力する。吸音率・位相算出部53は、次の(1)、(2)式
【数1】
により、周波数毎に吸音率α0、位相θを演算する。これにより、所定パターンの吸音率、位相それぞれの周波数特性を求めることができる。以下、同様に、20〜30パターンについて周波数特性を求める。ただしρcは媒質密度と音速の積である。
【0013】
一方、音響インピーダンス測定部54は、解析パラメータ設定部51で設定した有孔率、構造係数を有し、流れ抵抗が不明な試料(多孔質吸音材料)の音響インピーダンスを周波数毎に測定する。図3は音響インピーダンス測定部54の構成図であり、円筒状の音響管30を用いた2マイクロホン法(米国材料試験協会 ASTM E−1050−98)により多孔質吸音材料の音響インピーダンスを測定する。音響管30の一端にはスピーカ31が設けられ、他端にはバックプレート32が設けられ、該バックプレート32には試料33が取付けられている。また、音響管30の中間部には試料面から距離Lxの位置に第1のマイク34が設けられ、距離(Lx+Dx)の位置に第2のマイク35が設けられている。スピーカ31から発せられた音が試料33で反射して生じる定在波の音圧差を二つのマイクロホン34,35により測定して換算式から試料面の複素音響インピーダンスr+jxを測定する。この複素音響インピーダンスZ0=r+jxは、第1のマイク34の音圧をP1、第2のマイク35の音圧をP2、サンプル面および第1マイク、第2マイクにおける粒子速度をU0,U1,U2とすれば次式
【数2】
により求めることができる。ただし、
【数3】
k:波数(角速度ωを音速cで除す)、S:音響管の断面積、ρ:媒質(空気)密度、c:音速である。
【0014】
図3の測定装置は全国の公的試験機関等に広く採用されて稼動しているため、速やかに、かつ、安価に測定データを取得することができる。
スピーカ31から発する音の周波数を変えて各周波数の音響インピーダンスZ0=r+jxが測定されれば、吸音率・位相算出部55は、次の(7)、(8)式
【数4】
により、周波数毎に吸音率α0、位相θを演算する。これにより、試料の吸音率、位相それぞれの周波数特性を求めることができる。
【0015】
ついで、相関演算部56は、実測により求めた吸音率、位相の周波数特性と解析により求めた各パターンの吸音率、位相の周波数特性とを用いて、各パターンについて吸音率、位相それぞれの相関を演算する。全てのパターンについて相関演算が終了すれば相関評価部57は、相関が最も1に近いパターンを求める。たとえば、相関評価部57は、吸音率の相関のなかで最も1に近いパターンと位相の相関のなかで最も1に近いパターンをそれぞれ求め、▲1▼2つのパターンが同じであれば該パターンの相関が最も1に近いと判定する。しかし、▲2▼パターンが異なれば、相関が1に近い方を選択する。
【0016】
物性値同定部58は相関が最も1に近いパターンのパラメータ値(流れ抵抗)を試料の流れ抵抗と判定して出力する。図4は以上の流れ抵抗同定までのシーケンス説明図である。
図5は実測値と3パターンの周波数特性であり、(A)は吸音率の周波数特性、(B)は位相の周波数特性である。それぞれにおいて、Aは音響インピーダンスの測定により得られた周波数特性、B〜Dは流れ抵抗が10k,20k,30kのときの解析により得られた周波数特性である。
流れ抵抗が10k,20k,30kの吸音率周波数特性の相関値及び位相周波数特性の相関値は図6に示す通りである。これより、吸音率の相関のなかで最も1に近いパターン(流れ抵抗=20k)と位相の相関のなかで最も1に近いパターン(流れ抵抗=20k)が一致しており、試料の流れ抵抗は20k(=20000)と同定できる。
【0017】
(C)第2実施例
第1実施例では相関(相関係数)に基づいて物性値(流れ抵抗)を同定したが、実測データと解析結果の吸音率・位相−周波数特性の相関を求めると、図7に示すように流れ抵抗値に拘わらず相関が1に近い値となり、最も相似と判断可能なピーク点を見つけることが難しくなり、流れ抵抗を同定できなくなることがある。尚、図7は厚さ20mmのウレタンの流れ抵抗・相関特性であり、A,B,Cは、流れ抵抗がそれぞれ16k,23k,41k(実測値)の特性であり、いずれの場合も相関ピーク点が同定しにくくなっている。
そこで、第2実施例はイノベーション評価法を用いて物性値(たとえば流れ抵抗)を同定する。
【0018】
図8は第2実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図であり、図2の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
カルマンフィルタ61は、解析により求めた吸音率あるいは位相の周波数特性及び音響インピーダンス測定により得られた吸音率あるいは位相の周波数特性を用いて状態ベクトルxkを算出する。
解析により求めた吸音率あるいは位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0とし、これらn個の要素からなるベクトルHを次式
H=[Hn−1,Hn−2,H n−3,・・,H0]
で表現する。同様に音響インピーダンス測定により得られた吸音率あるいは位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、ベクトルJを次式
J=[Jn−1,Jn−2,J n−3,・・,J0]
で表現する。以上のように解析データH,実測データJを表現すると、実測データとJkと解析データHkを関係づけるシステム方程式は状態ベクトルxkを用いて下式で表される。ただし、Vkは観測雑音である。
xk+1=xk (状態方程式) (9)
Jk=Hkxk+Vk (観測方程式) (10)
【0019】
この状態ベクトルxkを下式によって逐次推定する。この推定演算を行うものがカルマンフィルタである。
【数5】
ただし、Pkは誤差共分散、Kkはカルマンゲインである。また添え字のk及びk−1は現時点と1ステップ前の過去のデータを表す。k−1|k−1は1ステップ前の過去までのデータによってk−1時点のデータを推定したことを表している。また、^は推定を意味する。カルマンフィルタはxk|kを逐次演算して出力する。一般的なカルマンフィルタではxk|kを求めた時点で処理が終了する。しかし、本発明ではxk|kを利用してイノベーションを演算する。(11)式の右辺括弧内は実測値と直前までの推定値の差であり、これをイノベーションという。
【0020】
【数6】
カルマンフィルタによる推定が行なわれた場合、イノベーションνkは白色性を持つ(=自己相関係数がΔ関数となる)ため、これを評価することで実測データと解析データの関係の強さが評価可能である。
【0021】
従って、イノベーション算出部62は(14)式によりイノベーション系列νkを算出し、自己相関算出部63は次式
【数7】
により自己相関R(k)を算出する。又、相関算出部64は、自己相関R(k)とΔ関数との相関Crを次式
【数8】
により算出する。尚、DjはΔ関数で、j=1で1、それ以外は0となる関数である。バーは平均値を意味し、Δ関数の平均値はnが大きくなるほど小さくなる。
【0022】
以後、上記の状態ベクトルxk|kの算出、イノベーション系列νkの算出、自己相関R(k)の算出、相関Crの算出を、解析により求めた全パターンの周波数特性に適用する。
相関評価部65は、全てのパターンについて上記演算が完了すれば、相関Crが最も1に近いパターンを求める。物性値同定部68は該パターンのパラメータ値(流れ抵抗)を試料の流れ抵抗と判定して出力する。
【0023】
図9は発泡ウレタン、グラスウールなどの代表的な多孔質吸音材料の吸音率と位相のそれぞれの実測データと解析データ(流れ抵抗を複数パターン用意して解析)を用いて、第1実施例の相関係数及び第2実施例のイノベーション白色性を求めた。そして、第1実施例において、相関が最も1に近い時の流れ抵抗を求めて図9中に示し、第2実施例では、イノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗を求めて示している。
図9より、第1実施例では位相相関のピーク点が求まらない場合があるが、第2実施例ではピーク点はすべて求まっている。なお、第2実施例において、理想的には、吸音率と位相の両方においてイノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗値が一致することであるが、異なる場合は、イノベーション白色性が強い方の流れ抵抗を選択する。
【0024】
(D)物性値同定の効果
(1)車室内音場解析
物性値(たとえば流れ抵抗)を正確に同定できれば、車室壁面に発泡ウレタンを貼付した時の車室内音場(音の強弱の分布状態)がどのようになるかを実機を製作せずに評価可能となる。さらに、本手法は多孔質吸音材料に限らず、他の車室内装材にも適用可能なので、今後車室内装材料全般について物性値を同定することでより正確な車室内音場の評価が可能であると考えられる。図10は運転席における音圧―周波数特性(実測データAと解析結果B)であり、解析結果Bは実測データAに類似していることがわかる。
【0025】
(2)スピーカ設置位置の決定
車室内音場を正確に評価することが可能となれば、たとえば、車室内のどの箇所にスピーカを設置すると最適な聴取環境が得られるかを判断可能となる。図11はセダン車の運転席におけるスピーカ位置変更前Aと位置変更後Bの音圧−周波数特性であり、実機を製作しなくても、特性Bのようにフラットな周波数特性となるスピーカ位置を決定することができる。
以上本発明を多孔質吸音材料の物性値を測定する場合について説明したが、本発明は多孔質吸音材料に限らず多孔質以外の吸音材料の物性値の同定にも用いることできる。
又、以上では流れ抵抗をパラメータとして可変して吸音材料の流れ抵抗を求めたが、吸音材料の他の物性値も同様に求めることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上本発明によれば、専用の測定器を用いないで吸音材料の物性値を測定することができ、安価に吸音材料の物性値を同定することができる。
また、本発明における垂直入射吸音率測定は公的試験機関等で広く行なわれおり、専用機器を所有していなくとも安価に測定が行なえる。また、測定方法はJIS等国際規格で規定されており、測定の信頼性は高い。したがって、物性値を精度よく同定することができる。
また、本発明によれば、吸音率測定データを元にイノベーション評価によって物性値を決定することから安価、短時間かつより正確に物性値を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概略説明図である。
【図2】第1実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図である。
【図3】音響インピーダンス測定部の構成図である。
【図4】流れ抵抗同定までのシーケンス説明図である。
【図5】実測値と3パターンの周波数特性である。
【図6】流れ抵抗が10k,20k,30kの吸音率周波数特性及び位相周波数特性の相関値説明図表である。
【図7】第1実施例の問題点説明図である。
【図8】第2実施例における多孔質吸音材料の物性値同定装置の構成図である。
【図9】第1実施例において相関が最も1に近い時の流れ抵抗および第2実施例においてイノベーション白色性が最も強い時の流れ抵抗を示す図表である。
【図10】運転席における音圧―周波数特性である。
【図11】スピーカ位置変更前Aと位置変更後Bの音圧−周波数特性である。
【符号の説明】
11音響解析部
12音響インピーダンス測定部
13相関演算部
14物性値同定部
21音響解析部
22音響インピーダンス測定部
23イノベーション演算部
24物性値同定部
Claims (3)
- 所定の物性値をパラメータとし、各物性値における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する解析部、
実際の吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する測定部、
前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性と前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性の相関を演算する相関演算部、
相関が最大となる周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、
を備えた吸音材料の物性値同定装置。 - 所定の物性値をパラメータとし、各物性値における音響インピーダンスを解析し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する解析部、
実際の吸音材料の音響インピーダンスを測定し、該音響インピーダンスより吸音率と位相の周波数特性を算出する測定部、
前記解析により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、前記測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、前記解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算するイノベーション計算部、
得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、
を備えた吸音材料の物性値同定装置。 - 吸音材料の物性値を同定する物性値同定装置において、
所定の物性値をパラメータとして解析により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をHn−1,…,H2,H1,H0、測定により得られた吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントの値をJn−1,…,J2,J1,J0とするとき、カルマンフィルタの基本システムが形成されるようにこれらHk,Jk(k=0,1,2,…n−1)間の関係を線形モデル化してイノベーションを計算し、同様に、解析により得られた別の吸音率と位相の周波数特性におけるn個のポイントについてイノベーションを計算するイノベーション計算部、
得られた複数のイノベーションを比較して最も白色信号に近いイノベーションに応じた周波数特性を与える前記物性値を吸音材料の物性値として同定する同定部、
を備えた吸音材料の物性値同定装置。
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JP2010091282A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Nissan Motor Co Ltd | 音源探査装置および音源探査方法 |
CN102426035A (zh) * | 2011-11-21 | 2012-04-25 | 上海工程技术大学 | 一种多孔吸声材料静流阻率和曲折度的测试方法 |
WO2021166946A1 (ja) * | 2020-02-21 | 2021-08-26 | 株式会社東京測振 | 推定装置、振動センサシステム、推定装置により実行される方法、及びプログラム |
-
2003
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