JP2004347167A - 潜熱マイクロカプセル型蓄冷材を用いたlng冷熱利用装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】LNGの有する冷熱を有効に利用し、環境対策と省エネルギーとを実現することができるLNG冷熱利用装置を提供する。
【解決手段】低温のLNGを気化させて、常温の天然ガスを得る際に、LNGの有する冷熱を利用する装置であって、LNGの低温から常温までの温度範囲を、複数の温度区間に区分し、各温度区間の冷熱を利用し、それぞれ異なる低温利用プロセスを実行する該複数の低温利用設備と、該複数の低温利用設備に温度区間の低い順にLNGまたはLNGが気化した天然ガスを流す管路10とを含み、該複数の低温利用設備が、温度に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を内包するマイクロカプセル型蓄冷材を有して冷熱の蓄冷と蓄冷されている冷熱の放出とが可能な蓄冷装置11,12,13をそれぞれ備えることを特徴とするLNG冷熱利用装置。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LNG(液化天然ガス)を気化させて天然ガスとして利用する際に、冷熱を有効に利用するLNG冷熱利用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、都市ガスの原料や火力発電所の燃料などに、LNGが利用されている。天然ガスは、海外の生産基地で採掘等によって生産され、約−160℃に冷却されて液化され、LNGとなって貯蔵される。生産基地からLNGの需要先へは、LNGタンカーと呼ばれる専用船舶で輸送される。天然ガスの需要地に近い臨海部には、LNG受入基地が設けられ、LNGタンカーによって輸送されたLNGを荷揚げし、LNGを貯蔵し、需要に応じて気化させて天然ガスとして供給している。LNGを気化させる熱源としては、海水などが用いられている。
【0003】
LNGを気化させる熱源として海水を用いることは、LNGの有する冷熱を周囲の環境に廃棄していることになる。LNGの冷熱を有効利用する用途の一環としては、炭酸ガスを液化して、高純度の液化炭酸を製造するプロセスが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−311438号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような液化炭酸製造プロセスでは、大気圧下で、液化炭酸が約−50℃であり、−56.6℃以下になると固化してしまう。従って、−160℃程度のLNGの温度は低すぎるので、中間冷媒を介して冷却する必要がある。また、有効な熱交換のためには10℃程度の温度差が必要であるので、LNGが気化して−60℃以上に温度が上がると、液化炭酸製造プロセスには冷熱を利用することができなくなってしまう。
【0006】
このように、従来からLNGの冷熱を有効に利用することは考えられているけれども、低温利用のプロセスにはそれぞれ適切な温度範囲があり、この温度範囲外の冷熱は有効に利用することができない。LNGの冷熱は、LNG生産基地で電力エネルギーを用いて生成したものであり、LNGの気化の際に冷熱を有効に利用することができないと、冷却に要したエネルギーが無駄になってしまう。また、冷熱の有効利用がなされないと、周囲の環境から熱源を得なければならなくなる。
【0007】
本発明の目的は、LNGの有する冷熱を有効に利用し、環境対策と省エネルギーとを実現することができるLNG冷熱利用装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記に示すとおりのLNG冷熱利用装置を提供するものである。
項1. 低温のLNGを気化させて、常温の天然ガスを得る際に、LNGの有する冷熱を利用する装置であって、LNGの低温から常温までの温度範囲を、複数の温度区間に区分し、各温度区間の冷熱を利用し、それぞれ異なる低温利用プロセスを実行する該複数の低温利用設備と、該複数の低温利用設備に温度区間の低い順にLNGまたはLNGが気化した天然ガスを流す管路とを含み、該複数の低温利用設備が、温度に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を内包するマイクロカプセル型蓄冷材を有して冷熱の蓄冷と蓄冷されている冷熱の放出とが可能な蓄冷装置をそれぞれ備えることを特徴とするLNG冷熱利用装置。
項2. 相変化物質の相変化温度が−160℃〜−60℃である項1に記載のLNG冷熱利用装置。
項3. 相変化物質の相変化温度が−60℃〜−20℃である項1に記載のLNG冷熱利用装置。
項4. 相変化物質の相変化温度が−20℃〜10℃である項1に記載のLNG冷熱利用装置。
項5. 前記複数の低温利用設備には、炭化水素を分離するガス分離設備を含むことを特徴とする項2に記載のLNG冷熱利用装置。
項6. 前記複数の低温利用設備には、液化炭酸を製造する液化炭酸設備を含むことを特徴とする項2または3に記載のLNG冷熱利用装置。
項7. 前記複数の低温利用設備には、液化ブタンを製造するブタン冷却設備を含むことを特徴とする項3または4に記載のLNG冷熱利用装置。
項8. 前記複数の低温利用設備には、ガスタービンの吸気を冷却する吸気冷却設備を含むことを特徴とする項3または4に記載のLNG冷熱利用装置。
項9. 前記蓄冷装置において、冷熱源からの冷熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて蓄冷することを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
項10. 前記蓄冷装置において、冷熱媒体が流れる伝熱管が前記蓄冷材に接触して設けられ、冷熱源からの冷熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管を介して蓄冷材に蓄冷されることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
項11. 前記蓄冷装置において、前記マイクロカプセルに対して非相溶性であり、冷熱吸収時に気体から液体に変化し、冷熱放出時に液体から気体に変化する伝熱冷媒体を有することを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
項12. 冷熱媒体が流れる伝熱管が蓄冷装置内の上部に設けられ、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して蓄冷材に蓄冷させることを特徴とする項11に記載のLNG冷熱利用装置。
項13. 項9に記載の蓄冷装置を有し、温熱源からの温熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて、前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする項9に記載のLNG冷熱利用装置。
項14. 項9に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記蓄冷材に接触して設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする項9に記載のLNG冷熱利用装置。
項15. 項10に記載の蓄冷装置を有し、温熱源からの温熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて、前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする項10に記載のLNG冷熱利用装置。
項16. 項11に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記伝熱冷媒体に接触して設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする項11に記載のLNG冷熱利用装置。
項17. 項12に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記伝熱冷媒体に接触して下部に設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする項12に記載のLNG冷熱利用装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に従えば、約−160℃の低温のLNGを気化させて常温の天然ガスを得る際に、LNGの低温から常温までの温度範囲を複数の温度区間に区分する。各温度区間は、異なる低温利用プロセスを実行する低温利用設備でそれぞれ利用する。複数の低温利用設備には、温度区間の低い順にLNGまたはLNGが気化した天然ガスを流す管路を含むので、LNGの有する冷熱を、複数の温度区間に分けて、複数段階で利用することができる。個々の低温利用プロセスで利用する冷熱の温度範囲外では、他の低温利用プロセスで冷熱を利用することができるので、LNGの有する冷熱を有効に利用し、周囲の環境を熱源とする必要性を減少させ、環境対策と省エネルギーとを図ることができる。
【0010】
また、本発明で、前記複数の低温利用設備は、冷熱の蓄積と蓄積されている冷熱の放出とが可能なマイクロカプセル型蓄冷材が充填された蓄冷装置をそれぞれ備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、複数の低温利用設備は、冷熱の蓄積と蓄積されている冷熱の放出とが可能な蓄冷装置をそれぞれ備えるので、LNGの需要の変動や他の低温利用設備の稼働状態の変動などを蓄冷装置で吸収し、円滑に冷熱の利用を図ることができる。
【0012】
また、本発明で、前記複数の低温利用設備には、−160℃〜−60℃程度の低温域で、炭化水素を分離するガス分離設備を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、約−160℃のLNGが有する冷熱のうち、−160℃〜−60℃程度の温度領域で、冷熱を炭化水素を分離するために有効に利用することができる。
【0014】
また、本発明で、前記複数の低温利用設備には、−60℃〜−20℃程度の液化炭酸を製造する液化炭酸設備を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、約−160℃のLNGが有する冷熱のうち、−160℃〜−20℃程度の温度領域で、冷熱を、液化炭酸の製造、さらにはドライアイスなどの製造にも有効に利用することができる。
【0016】
また、本発明で、前記複数の低温利用設備には、ブタンを−20℃〜0℃程度に冷却して、液化ブタンを製造するブタン冷却設備を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、約−160℃のLNGが有する冷熱のうち、−60℃〜0℃程度の温度領域で、冷熱を、ブタンを液化して需要の増大時に備えて貯蔵しておくために、有効に利用することができる。
【0018】
また、本発明で、前記複数の低温利用設備には、ガスタービンの吸気を0℃〜20℃程度に冷却する吸気冷却設備を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、約−160℃のLNGが有する冷熱のうち、−20℃〜10℃程度の常温以下の温度領域で、冷熱をガスタービンの吸気を冷却するために利用して、ガスタービンの運転効率を向上させるために、有効に利用することができる。
【0020】
以下、本発明のLNG冷熱利用装置を、図に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態であるLNG冷熱利用装置1の概略的な構成を示す。LNG冷熱利用装置1は、−160℃の低温のLNGを気化させて、常温の天然ガスを得る際に、LNGの有する冷熱を利用する装置であって、LNGの低温から常温までの温度範囲を、複数の温度区間に区分し、各温度区間の冷熱を利用し、それぞれ異なる低温利用プロセスを実行する複数の低温利用設備として、液炭設備2、ブタン冷却設備3および吸気冷却設備4を含む。液炭設備2、ブタン冷却設備3および吸気冷却設備4には、熱交換器5,6,7をそれぞれ含み、管路10によって順次連結し、液炭設備2にはLNGを供給し、吸気冷却設備4からは、常温の天然ガス(NG)を取り出す。複数の低温利用設備には、温度区間の低い方から高い方に、順次、すなわちカスケードにLNGまたはLNGが気化した天然ガスを流す管路10を含むので、LNGの有する冷熱を、複数の温度区間に分けて、複数段階で利用することができる。個々の低温利用プロセスで利用する冷熱の温度範囲外では、他の低温利用プロセスで冷熱を利用することができるので、LNGの有する冷熱を有効に利用し、周囲の環境を熱源とする必要性を減少させ、環境対策と省エネルギーとを図ることができる。
【0022】
液炭設備2、ブタン冷却設備3および吸気冷却設備4は、冷熱の蓄積と蓄積されている冷熱の放出とが可能なマイクロカプセル型蓄冷材が充填された蓄冷装置11,12,13をそれぞれ備える。蓄冷装置11,12,13をそれぞれ備えるので、LNGの需要の変動や他の低温利用設備の稼働状態の変動などを畜冷装置11,12,13で吸収し、円滑に冷熱の利用を図ることができる。
【0023】
図2は、図1に示す畜冷装置11,12,13を用いて、LNGの使用量の変動や冷熱負荷の変動を平準化する考え方を示す。蓄冷装置11,12,13には、蓄冷材15が含まれ、図2(a)に示すように、LNG使用量が変動するときには、LNG使用量が多いときに蓄冷材15に冷熱を蓄積し、LNG使用量が少ないときに蓄冷材15に蓄積している冷熱を放熱する。図2(b)に示すように、冷熱負荷量が少ないときに蓄冷材15に冷熱を蓄積し、冷熱負荷量が多くなると蓄冷材15に蓄積されている冷熱を放熱する。蓄冷装置11,12,13を用いることによって、LNGの需要変動等で低温利用設備での冷熱負荷量を上回って余剰になる冷熱も、蓄積しておいて有効に利用することができる。
【0024】
本発明で用いられる蓄冷材は、相変化物質を皮膜形成材により内包したマイクロカプセルである。マイクロカプセルの製造方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等の一般的な方法を用いることができる。
【0025】
マイクロカプセルの皮膜形成材としては、界面重合法、インサイチュー法等の手法で得られる、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられるが、本発明の如き相変化物質を内包するマイクロカプセルの場合には、インサイチュー法によるメラミンホルマリン樹脂および尿素ホルマリン樹脂が好ましい。
【0026】
本発明で用いられるマイクロカプセルの平均粒子径は0.5〜1000μm、好ましくは1〜500μmに設定することにより物理的圧力にも破壊することのないマイクロカプセルが得られる。この粒子径の範囲より小さいと耐熱性が低下し、またこの範囲より大きいと物理的強度が低下するため好ましくない。
【0027】
本発明で用いられる相変化物質としては、相変化温度(例えば、融点)が−160℃〜10℃の範囲の物質が好ましく、具体的には脂肪族炭化水素化合物(パラフィン類化合物)や、プロピオン酸、カプロン酸、リノール酸等の脂肪酸類、ベンジルアルコール等のアルコール類、ジヘプチルフタレート、ジブチルアジペートメチルアセチルリシノレート等のエステル化合物、および無機塩類などが使用可能であるが、炭素数が5〜14の直鎖の脂肪族炭化水素化合物は蓄熱容量も多いために好ましい相変化物質として挙げられる。さらに本発明において好ましいマイクロカプセル化法であるインサイチュー法のメラミンホルマリン樹脂、尿素ホルマリン樹脂と組み合わせることにより、緻密性の高い高強度のマイクロカプセルが得られるために好ましい相変化物質として挙げられる。これらの相変化物質中には、必要に応じて過冷却防止材、比重調節材、劣化防止剤等を添加することができる。
【0028】
本発明で用いられるマイクロカプセルは、粉末状、粒状、成形されたペレット状またはシート状である。好ましくはペレット状である。ペレットやシートを成形するには、バインダーを用いるのが好ましい。バインダーとしては、特に制限されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる蓄冷装置および熱交換器としては、例えば、図3〜7で示されるものが挙げられる。図3〜7は、蓄冷装置および熱交換器の概略的な構成を示す。なお、図3〜7に示されている冷熱源とは、−160℃のLNG、液炭設備後の約−60℃の低温天然ガスおよびブタン冷却設備後の約−20℃の低温天然ガスのいずれかを示す。また、温熱源とは、液炭設備の炭酸ガス、ブタン冷却設備のブタンおよび吸気冷却設備の吸気冷却用の水のいずれかを示す。また、図3〜7においては、蓄冷装置の符号を105とし、蓄冷材の符号を106とする。
【0030】
図3においては、蓄冷装置105に蓄冷材106が充填されている。蓄冷装置105には、冷熱源から出た冷熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管101、および蓄冷装置105から出た冷熱媒体が通る配管102が設けられている。また、蓄冷装置105には、温熱源から出た温熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管103、および蓄冷装置105から出た温熱媒体が通る配管104が設けられている。配管101を通って蓄冷装置105に入った冷熱媒体は、蓄冷装置105に充填されている蓄冷材106に接触しながら通過し、下方の配管102を通って出ていく。冷熱媒体が蓄冷材106に接触することにより、冷熱媒体が有していた冷熱が蓄冷材106に直接的に蓄冷される。次いで、配管103を通って温熱媒体が蓄冷装置105に入り、蓄冷装置105に充填されている蓄冷材106に接触しながら通過し、上方の配管104を通って出ていく。温熱媒体が蓄冷材106に接触することにより、蓄冷材106が有していた冷熱が直接的に放冷される。すなわち、蓄冷材106に蓄冷されていた冷熱と温熱媒体の温熱とが熱交換される。このように、媒体と蓄冷材が接触して直接的に熱交換が可能であるため、極めて高い効率で熱交換することができる。
【0031】
図4においても、蓄冷装置105に蓄冷材106が充填されている。蓄冷装置105には、冷熱源から出た冷熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管101、および蓄冷装置105から出た冷熱媒体が通る配管102が設けられており、配管101と配管102はU字形の伝熱管(金属管)108で連結されている。この伝熱管108は、蓄冷装置105の内部において蓄冷材106に接触している。また、蓄冷装置105には、温熱源から出た温熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管103、および蓄冷装置105から出た温熱媒体が通る配管104が設けられている。配管101を通って蓄冷装置105に入った冷熱媒体は、伝熱管108を通り、配管102を通って出ていく。冷熱媒体が伝熱管108の内部を流れることにより、冷熱媒体が有していた冷熱が伝熱管108を介して蓄冷材106に蓄冷される。一方、配管103を通って温熱媒体が蓄冷装置105に入り、蓄冷装置105に充填されている蓄冷材106に接触しながら通過し、上方の配管104を通って出ていく。温熱媒体が蓄冷材106に接触することにより、蓄冷材106が有していた冷熱が直接的に放冷される。すなわち、蓄冷材106に蓄冷されていた冷熱と温熱媒体の温熱とが熱交換される。このように、冷熱媒体と温熱媒体の混合を防止しながら、高い効率で熱交換することができる。伝熱管108にはフィンが設けられていてもよい。
【0032】
図5においては、温熱源から出た温熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管103と、蓄冷装置105から出た温熱媒体が通る配管104とが、U字形の伝熱管(金属管)109で連結されている。この伝熱管109は、蓄冷装置105の内部において蓄冷材106に接触している。配管101を通って蓄冷装置105に入った冷熱媒体は、蓄冷装置105に充填されている蓄冷材106に接触しながら通過し、下方の配管102を通って出ていく。冷熱媒体が蓄冷材106に接触することにより、冷熱媒体が有していた冷熱が蓄冷材106に直接的に蓄冷される。一方、配管103を通って蓄冷装置105に入った温熱媒体は、伝熱管109を通り、配管104を通って出ていく。温熱媒体が伝熱管109の内部を流れることにより、蓄冷材106が有していた冷熱が伝熱管109を介して放冷される。すなわち、蓄冷材106に蓄冷されていた冷熱と温熱媒体の温熱とが熱交換される。このように、冷熱媒体と温熱媒体の混合を防止しながら、高い効率で熱交換することができる。伝熱管109にはフィンが設けられていてもよい。
【0033】
図6においては、蓄冷装置105の上半分に蓄冷材106が充填されている。蓄冷装置105には、冷熱源から出た冷熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管101、および蓄冷装置105から出た冷熱媒体が通る配管102が設けられており、配管101と配管102はU字形の伝熱管(金属管)108で連結されている。この伝熱管108は、蓄冷装置105の内部において蓄冷材106に接触している。蓄冷装置105の下方部においては、温熱源から出た温熱媒体が通って蓄冷装置105に入るための配管103と、蓄冷装置105から出た温熱媒体が通る配管104とが、U字形の伝熱管(金属管)109で連結されている。また、蓄冷装置105の下方部には、マイクロカプセルに対して非相溶性であり、冷熱吸収時に気体から液体に変化し、冷熱放出時に液体から気体に変化する伝熱冷媒体107が充填されており、伝熱管109は、伝熱冷媒体107に接触している。伝熱冷媒体107としては、プロパン、代替フロン等を使用することができる。配管101を通って蓄冷装置105に入った冷熱媒体は、伝熱管108を通り、配管102を通って出ていく。冷熱媒体が伝熱管108の内部を流れることにより、冷熱媒体が有していた冷熱が伝熱管108を介して蓄冷材106に蓄冷される。一方、配管103を通って蓄冷装置105に入った温熱媒体は、伝熱管109を通り、配管104を通って出ていく。温熱媒体が伝熱管109の内部を流れることにより、伝熱冷媒体107が加熱されて気化する。この気体が上方の蓄冷材106と接触して直接的に熱交換し、冷却されて液体に変化して下方部に戻る。このような蓄冷と放冷の繰返しにより、冷熱と温熱とが熱交換される。伝熱冷媒体107が介在することにより、温熱媒体の過度の冷却が防止される。伝熱管108,109にはフィンが設けられていてもよい。
【0034】
図7においては、蓄冷材106が蓄冷装置105のほぼ中央部に充填されている点で図6の場合と異なる。すなわち、伝熱管108が、蓄冷材106に接触していない。配管101を通って蓄冷装置105に入った冷熱媒体は、伝熱管108を通り、配管102を通って出ていく。一方、配管103を通って蓄冷装置105に入った温熱媒体は、伝熱管109を通り、配管104を通って出ていく。温熱媒体が伝熱管109の内部を流れることにより、伝熱冷媒体107が加熱されて気化する。この気体がほぼ中央部にある蓄冷材106を通過し、さらに上にある伝熱管108と接触して熱交換し、冷却されて液体に変化して下方部に戻る。その際に、蓄冷材106に接触しながら通過し、伝熱冷媒体107が有していた冷熱が蓄冷材106に蓄冷される。なお、蓄冷材106の温度が高い場合には、蓄冷材106と接触した伝熱冷媒体107が加熱されて気化し、上方の伝熱管108と接触して冷却されて液体に変化して下方部に戻る。このような蓄冷と放冷の繰返しにより、冷熱と温熱とが熱交換される。伝熱冷媒体107が介在することにより、温熱媒体の過度の冷却が防止される。また、このような熱交換器は、蓄冷材106が過度に冷却されるのを防止する必要がある場合に有効である。伝熱管108,109にはフィンが設けられていてもよい。
【0035】
図8は、従来のLNG利用形態を示し、図9は、本発明におけるLNG冷熱利用装置の一実施形態を示す。図8で示す従来のLNG利用では、例えば、液化炭酸製造にLNGの冷熱を使用するとしても、−60℃以下の温度領域しか利用することができない。図9に示す実施形態では、−160℃〜−60℃の温度領域は液炭設備2で従来と同様に利用するとしても、さらに、−60℃〜−20℃の温度領域をブタン冷却設備3で利用し、−20℃〜10℃の温度領域を吸気冷却設備4で利用することができる。さらに、蓄冷装置を用いることによって、LNGの需要変動等で低温利用設備での冷熱負荷量を上回って余剰になる冷熱も、蓄積しておいて有効に利用することができ、より効率的な冷熱利用が可能となる。
【0036】
図10は、本発明の他の実施形態であるLNG冷熱利用装置61の概略的な構成を示す。本実施形態で、図1の実施形態に対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態では、LNGタンク62からのLNGを、−160℃〜−150℃の温度域を利用するガス分離設備63で利用した後、さらに液炭設備2以下でカスケード利用する。ガス分離設備63は、石油精製工場53で副生するエチレンやプロピレンなどの軽質炭化水素を低温で分離し、ガス中のオレフィンを分離し、石油化学工場52でのポリマー製品の原料に利用し、残りのガスは燃料として活用する。なお、本実施形態でも、蓄冷を行なうことができるのはもちろんである。
【0037】
なお、圧力を高めれば、ガス分離設備63では、−160℃〜−60℃程度の低温域を利用することができ、液炭設備2では、−160℃〜−20℃程度の低温域を利用することができ、ブタン冷却設備3では、−60℃〜0℃程度の低温域を利用することができ、吸気冷却設備4では、−20℃〜10℃程度の低温域を利用することができる。
【0038】
以上で説明しているように、本発明は、石油化学コンビナートに導入すれば、コンビナート全体としての競争力向上を図ることができる。ただし、プロセスの組み合わせは石油化学や石油精製に限られるものではなく、冷蔵や空調など、他の冷熱利用と組み合わせることもできる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、約−160℃の低温のLNGを気化させて常温の天然ガスを得る際に、複数の温度区間に分けて、複数段階で冷熱を利用することができる。個々の低温利用プロセスで利用する冷熱の温度範囲外では、他の低温利用プロセスで冷熱を利用することができるので、LNGの有する冷熱を有効に利用し、環境対策と省エネルギーとを図ることができる。
【0040】
また、本発明によれば、冷熱の蓄積と蓄積されている冷熱の放出とが可能なマイクロカプセル型潜熱蓄冷材が充填された蓄冷装置で、LNGの需要の変動や他の低温利用設備の稼働状態の変動などを吸収し、冷熱の利用を円滑に図ることができる。
【0041】
さらに、蓄冷材は、その蓄冷に物質の相変化に際して生じる潜熱を利用するものであることから、蓄冷量がきわめて大きい。しかも、従来の、単に相変化物質をそのまま用いるものと異なり、相変化物質がマイクロカプセルに封入されているため、相変化物質をそのまま蓄冷媒体として用いる場合の欠点である間接熱交による効率の低下および冷却部での固形化による熱交換効率の低下の改善が可能となった。
【0042】
また、本発明によれば、LNGの冷熱を、−160℃〜−60℃程度の温度領域で、炭化水素を分離するために、有効に利用することができる。
【0043】
また、本発明によれば、LNGの冷熱を、−160℃〜−20℃程度の温度領域で、液化炭酸を製造するために、有効に利用することができる。
【0044】
また、本発明によれば、LNGの冷熱を、−60℃〜0℃程度の温度領域で、ブタンを液化するために、有効に利用することができる。
【0045】
また、本発明によれば、LNGの冷熱を、−20℃〜10℃程度の温度領域で、ガスタービンの吸気を冷却するために、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるLNG冷熱利用装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】畜冷装置を用いてLNGの使用量の変動や冷熱負荷の変動を平準化する考え方を示す図である。
【図3】熱交換器の一例を示す概略図である。
【図4】熱交換器の他の一例を示す概略図である。
【図5】熱交換器の他の一例を示す概略図である。
【図6】熱交換器の他の一例を示す概略図である。
【図7】熱交換器の他の一例を示す概略図である。
【図8】従来のLNG利用形態を示す図である。
【図9】本発明におけるLNG冷熱利用装置の一実施形態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態であるLNG冷熱利用装置の概略的な構成を示す図である。
【符号の説明】
1,61 LNG冷熱利用装置
2 液炭設備
3 ブタン冷却設備
4 吸気冷却設備
5,6,7 熱交換器
10 管路
11,12,13 蓄冷装置
15 蓄冷材
52 石油化学工場
53 石油精製工場
55 ガスタービン
62 LNGタンク
63 ガス分離設備
101,102,103,104 配管
105 蓄冷装置
106 蓄冷材
107 伝熱冷媒体
108,109 伝熱管

Claims (17)

  1. 低温のLNGを気化させて、常温の天然ガスを得る際に、LNGの有する冷熱を利用する装置であって、
    LNGの低温から常温までの温度範囲を、複数の温度区間に区分し、各温度区間の冷熱を利用し、それぞれ異なる低温利用プロセスを実行する該複数の低温利用設備と、
    該複数の低温利用設備に温度区間の低い順にLNGまたはLNGが気化した天然ガスを流す管路とを含み、
    該複数の低温利用設備が、温度に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を内包するマイクロカプセル型蓄冷材を有して冷熱の蓄冷と蓄冷されている冷熱の放出とが可能な蓄冷装置をそれぞれ備えることを特徴とするLNG冷熱利用装置。
  2. 相変化物質の相変化温度が−160℃〜−60℃である請求項1に記載のLNG冷熱利用装置。
  3. 相変化物質の相変化温度が−60℃〜−20℃である請求項1に記載のLNG冷熱利用装置。
  4. 相変化物質の相変化温度が−20℃〜10℃である請求項1に記載のLNG冷熱利用装置。
  5. 前記複数の低温利用設備には、炭化水素を分離するガス分離設備を含むことを特徴とする請求項2に記載のLNG冷熱利用装置。
  6. 前記複数の低温利用設備には、液化炭酸を製造する液化炭酸設備を含むことを特徴とする請求項2または3に記載のLNG冷熱利用装置。
  7. 前記複数の低温利用設備には、液化ブタンを製造するブタン冷却設備を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のLNG冷熱利用装置。
  8. 前記複数の低温利用設備には、ガスタービンの吸気を冷却する吸気冷却設備を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のLNG冷熱利用装置。
  9. 前記蓄冷装置において、冷熱源からの冷熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて蓄冷することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
  10. 前記蓄冷装置において、冷熱媒体が流れる伝熱管が前記蓄冷材に接触して設けられ、冷熱源からの冷熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管を介して蓄冷材に蓄冷されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
  11. 前記蓄冷装置において、前記マイクロカプセルに対して非相溶性であり、冷熱吸収時に気体から液体に変化し、冷熱放出時に液体から気体に変化する伝熱冷媒体を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のLNG冷熱利用装置。
  12. 冷熱媒体が流れる伝熱管が蓄冷装置内の上部に設けられ、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して蓄冷材に蓄冷させることを特徴とする請求項11に記載のLNG冷熱利用装置。
  13. 請求項9に記載の蓄冷装置を有し、温熱源からの温熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて、前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする請求項9に記載のLNG冷熱利用装置。
  14. 請求項9に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記蓄冷材に接触して設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする請求項9に記載のLNG冷熱利用装置。
  15. 請求項10に記載の蓄冷装置を有し、温熱源からの温熱媒体を前記蓄冷材に接触通過させて、前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする請求項10に記載のLNG冷熱利用装置。
  16. 請求項11に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記伝熱冷媒体に接触して設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする請求項11に記載のLNG冷熱利用装置。
  17. 請求項12に記載の蓄冷装置を有し、温熱媒体が流れる伝熱管が前記伝熱冷媒体に接触して下部に設けられ、温熱源からの温熱媒体が該伝熱管の内部を流れることにより、該伝熱管と前記伝熱冷媒体を介して前記蓄冷材に蓄冷された冷熱と前記温熱媒体の温熱とを熱交換する熱交換器を有することを特徴とする請求項12に記載のLNG冷熱利用装置。
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