JP2004346029A - 重合性化合物および位相差板 - Google Patents

重合性化合物および位相差板 Download PDF

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Kensuke Morita
健介 森田
Atsuhiro Okawa
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Abstract

【課題】Δnが高く、紫外線照射により着色せず、安価に合成できる、位相差板等の作製に有用な化合物、および該化合物を利用した、良好な光学性能を有する位相差板を提供する。
【解決手段】一般式(I)B−X−A−X−(A−X−B(式中、X〜Xは各々、置換もしくは無置換の、1,4‐フェニレン基または複素芳香環基を表すが、XおよびXの少なくとも1つは5員複素芳香環基、6員複素芳香環基またはこれらを含む縮合環基である。BおよびBは各々、水素原子または置換基を表すが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。lは0または1であり、AおよびAは各々、−COO−、−OCO−等である)で表される化合物、該化合物から形成される光学異方性層を有する位相差板である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ用セル、光学フィルムなどに利用される新規な重合性化合物および、それを用いた位相差板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイおよび位相差板等に用いる液晶は、有機溶媒に対する溶解性が高いこと、液晶温度範囲が広いこと、Δnが大きいこと、安価であること、光に対して安定であること等の条件を満たすことが必要であり、用途に応じて、様々な構造の化合物が開発されている。重合性基を有する液晶を重合させて位相差板を形成した例も知られている(例えば、非特許文献1参照)。Δnが大きく、光学補償フィルムとして必要な大きさの複屈折を有する位相差板を光学的に均一に製造できる化合物が望まれている。また、重合での紫外線照射によって、着色を減少できる化合物が望まれている。
分子内に複素芳香環を有する重合性液晶としては、下記の化合物などが記載されているが、これらは環同士が単結合で直接繋がっている(例えば、特許文献1参照)。合成ルートが短い製造適性に優れる化合物が望まれている。
【0003】
【化4】
Figure 2004346029
【0004】
【非特許文献1】
Makromolekulare Chemie(1991),192(1),59−74
【特許文献1】
国際公開WO95/22586号公報
【0005】
【発明が解決しようとすれる課題】
本発明の目的は、液晶ディスプレイ用セル、位相差板などに利用される、Δnが高く、紫外線で着色せず、安価に合成できる化合物を提供することである。また、本発明の他の目的は、着色がなく、薄い膜厚で、π、π/2などの位相差を有する位相差板を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の手段により解決された。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物。
一般式(I)
−X−A−X−(A−X−B
(式中、X〜Xは各々、置換もしくは無置換の、1,4‐フェニレン基または複素芳香環基を表すが、XおよびXの少なくとも1つは5員複素芳香環基、6員複素芳香環基またはこれらを含む縮環基である。BおよびBは各々、水素原子または置換基を表すが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。lは0または1であり、AおよびAは各々、下記(A−1)〜(A−6)で表される基である。)
【0007】
【化5】
Figure 2004346029
【0008】
[2] 前記一般式(I)中、lが1である[1]に記載の化合物。
[3] 下記一般式(II)で表される[1]に記載の化合物。
【0009】
一般式(II)
【化6】
Figure 2004346029
【0010】
(式中、RおよびRは各々、置換基であり、mおよびnは各々、0〜4の整数であり、Xは5員複素環基、6員複素環基またはこれらを含む縮環基であり、BおよびBは各々、水素原子または置換基であるが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。)
【0011】
[4] 前記一般式(II)において、Xが下記式(X−1)〜(X−5)から選ばれる2価の基である[3]に記載の化合物。
【0012】
【化7】
Figure 2004346029
【0013】
(式中、Rは置換基であり、pは0〜3の整数であり、qは0〜2の整数である。)
【0014】
[5] 一般式(II)のXがX−1である[4]に記載の化合物。
[6] 透明支持体と、透明支持体の上方に[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物から形成される光学異方性層とを有する位相差板。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。まず、本発明の下記一般式(I)で表される化合物について説明する。
一般式(I)
−X−A−X−(A−X−B
式中、X〜Xは各々、置換もしくは無置換の、1,4‐フェニレン基または複素芳香環基を表すが、XおよびXの少なくとも1つは5員複素芳香環基、6員複素芳香環基またはこれらを含む縮環基である。X〜Xが表す複素芳香環基としては、窒素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を含む5員環または6員環の複素環基が挙げられる。中でも、窒素原子または硫黄原子を含む5員環または6員環の複素環基が好ましい。特に、下記(X−1)〜(X−5)の中から選ばれる基であることが好ましく、液晶性、溶解性、合成適性から、(X−1)または(X−4)が好ましく、(X−1)が最も好ましい。X〜Xが複素環を含む縮環基である場合、その縮環基は、下記一般式(III)で表される基が好ましい。
【0016】
一般式(III)
【化8】
Figure 2004346029
【0017】
式中、Y〜Yは窒素原子または炭素原子であるが、Y〜Yのうち少なくとも1つは窒素原子である。一般式(III)で表される縮環の中でも、Y〜Yうち1つまたは2つが窒素原子であるものが好ましく、1つが窒素原子であることが最も好ましい。
【0018】
〜Xで表される1,4‐フェニレン基または複素芳香環基は、環上置換基を有していてもよく、その具体例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基(ビシクロアルキル基等の2以上の環からなる基を含む)を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基(ビシクロアルケニル基等の2以上の環からなる基を含む)を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基に含まれる炭素数はそれぞれ0〜8個が好ましく、0〜5個が、より好ましい。上記の置換基の中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、シアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基が、より好ましく、塩素原子、メチル基が特に好ましい。1つの環が複数の置換基を有する場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。1つの環が有する置換基の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0019】
前記一般式(I)中、BおよびBは各々、水素原子または置換基を表すが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。BおよびBは、一般式(I)の化合物が広い液晶温度範囲を示すために、アルキル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であるのが好ましい。これらの置換基に含まれる炭素原子数は、1〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましい。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。その場合の置換基の例は、上記X〜Xの環上置換基の例で挙げたものと同じものである。
【0020】
およびBの少なくとも一方は、重合性基を含む。BおよびBの双方が、重合性基を含むことが好ましい。本発明の化合物は重合性基を有するので、配向を固定化するのに有利である。
前記重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0021】
【化9】
Figure 2004346029
【0022】
式中、Rは水素原子または置換基を表すが、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。中でも、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)が最も好ましい。
開環性重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基またはオキセタン基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0023】
重合時に配向秩序度が低下したり、膜面が乱れることを防止するために、重合性基とメソゲンとの間(具体的には、重合性基とXおよびXまたはXとの間)にはフレキシブルスペーサー部分を有することが好ましい。フレキシブルスペーサーの例としては、−(CH−、−(CHCHO)−などが挙げられる。式中、mは1〜10の整数、nは1〜4の整数を表す。
【0024】
およびBとして好ましいのは、下記一般式(B)で表される基である。
一般式(B) −L−M
式中Mは重合性基であり、Lは、−CHCH−(M)、−O(CH−(M)、−COO(CH−(M)、−OCO(CH−(M)、−OCOO(CH―(M)、−CHCHOCO(CH−(M)、−OCHCOO(CH−(M)、−OCHC≡CCH−(M)、−OCOOCHC≡CCH−(M)、−C≡C−(CH−(M)、−CHCH−O−(M)、−O(CH−O−(M)、−COO(CH−O−(M)、−OCO(CH−O−(M)、−OCOO(CH―O−(M)、−CHCHOCO(CH−O−(M)、−OCHCOO(CH−O−(M)、−OCHC≡CCH−O−(M)、−OCOOCHC≡CCH−O−(M)または−C≡C−(CH−O−(M)で表される2価の基である。式中nは1〜10の自然数である。
これらの中でも、−O(CH−(M)が最も好ましい。
【0025】
前記一般式(I)中、lは0または1であり、lは1が好ましい。
【0026】
前記一般式(I)中、AおよびAは各々、下記(A−1)〜(A−6)で表される基である。
【0027】
【化10】
Figure 2004346029
【0028】
およびAはとして好ましいのは、(A−1)または(A−2)であるが、液晶性の高いX−COO−X−OCO−X型の結合が最も好ましい。即ち、Aが(A−1)で、且つAが(A−2)であるのが最も好ましい。
【0029】
前記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(IV)で表される化合物が特に好ましい。
【0030】
一般式(IV)
【化11】
Figure 2004346029
【0031】
式中、mは0〜3の整数、nは2〜10の整数、Xは水素原子または置換基を表し、Rは置換基を表す。中でも、mは0または1が好ましく、nは3〜8の整数であることが好ましい。Xは水素原子、塩素原子またはメチル基であることが好ましい。Rはメチル基、塩素原子またはフッ素原子であることが好ましい。mが1の場合、Rの置換位置は、ピリジン環のN原子の隣接位が好ましい。
【0032】
前記一般式(I)で表される化合物は液晶性を有していることが好ましい。
以下に、本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。
【0033】
【化12】
Figure 2004346029
【0034】
【化13】
Figure 2004346029
【0035】
【化14】
Figure 2004346029
【0036】
【化15】
Figure 2004346029
【0037】
本発明の例示化合物(I−1)〜(I−9)、(I−15)は、下記に示す様に、安息香酸誘導体(I−a)を酸クロライドまたは酸無水物(I−b)に変換し、次いで、“J.Am.Chem.Soc., 80(1958), p.3717”などに記載の公知の方法で合成した複素環ジオール化合物(I−c)を反応させて合成することができる。
【0038】
【化16】
Figure 2004346029
【0039】
式中、Xは複素環を表し、RおよびBは各々置換基を表す。mは0〜4の整数である。Yはクロル原子またはメタンスルホニルオキシ基などの離脱性基を表す。
【0040】
反応条件についてさらに詳しく説明する。
酸クロライド(I−b)は、(I−a)を0.5〜10当量の塩化チオニルまたはオキサリルクロリドと反応させることにより合成できる。その際、トルエン、塩化メチレンなどの有機溶媒を用いてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。反応温度は10℃〜120℃が好ましく、反応時間は10分間〜20時間が好ましい。反応時にジメチルホルムアミドなどの触媒を加えてもよい。酸無水物は、0.5〜3当量の酸クロライド(メタンスルホニルクロライドなど)を(1−a)と反応させることにより合成できる。その際、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることが好ましい。反応に際して、(I−a)に対して0.5〜10当量の塩基(トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなど)を用いることが好ましい。反応温度は−30℃〜80℃が好ましく、反応時間は5分間から10時間が好ましい。
【0041】
このようにして合成した(I−b)を0.3〜1当量の(I−c)と反応させることによって(I−d)を合成できる。反応に際して、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を用いることが好ましく、(I−b)に対して0.5〜3当量の塩基(ピリジン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなど)を用いることが好ましい。触媒としてジメチルアミノピリジンなどを加えてもよい。反応温度は−10〜100℃が好ましく、反応時間は10分間から20時間が好ましい。この様にして合成した(I−d)に、さらに修飾を加えることによって、本発明の化合物に変換してもよい。
【0042】
本発明の例示化合物(I−10)および(I−11)は、下記のように、複素環ジカルボン酸から合成した酸クロライドまたは酸無水物(I−e)と、フェノール化合物(I−f)との反応によって合成することができる。
【0043】
【化17】
Figure 2004346029
【0044】
式中、Xは複素環を表し、RおよびBは置換基を表す。mは0〜4の整数である。Yはクロル原子、メタンスルホニルオキシ基などの離脱性基を表す。
【0045】
酸クロライド(I−f)は、(I−e)を1〜20当量の塩化チオニルまたはオキサリルクロリドと反応させることにより合成できる。その際、トルエン、塩化メチレンなどの有機溶媒を用いてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。反応温度は10℃〜120℃が好ましく反応時間は10分間から20時間が好ましい。反応時にジメチルホルムアミドなどの触媒を加えてもよい。酸無水物は、1〜6当量の酸クロライド(メタンスルホニルクロライドなど)を(1−e)と反応させることにより合成できる。その際、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることが好ましい。反応に際して、(I−e)に対して1〜20当量の塩基(トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなど)を用いることが好ましい。反応温度は−30℃〜80℃が好ましく、反応時間は5分間〜10時間が好ましい。
【0046】
このようにして合成した(I−f)を1.5〜4当量の(I−g)と反応させることによって(I−h)を合成できる。反応の際、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を用いることが好ましく、反応に際して、(I−f)に対して1〜6当量の塩基(ピリジン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなど)を用いることが好ましい。触媒としてジメチルアミノピリジンなどを加えてもよい。このようにして合成した(I−h)にさらに修飾を加えることによって本発明の化合物に変換してもよい。反応温度は−10℃から100℃が好ましく、反応時間は10分間から20時間が好ましい。
【0047】
本発明の例示化合物(I−16)〜(I−18)は下記(I−i)と(I−j)もしくは(I−k)と(I−l)を出発物質として上記と同様の縮合反応を行うことにより合成できる。
【0048】
【化18】
Figure 2004346029
【0049】
式中、Xは複素環を表し、RおよびBは置換基を表す。mは0〜4の整数である。本発明の他の化合物も同様の方法で合成できる。
【0050】
次に、本発明の位相差板について説明する。
本発明の位相差板は、透明支持体と、透明支持体の上方に本発明の化合物から形成される光学異方性層とを含む。
本発明では、支持体として透明支持体を用いる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明支持体は、波長分散が小さいのが好ましく、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であるのが好ましい。また、透明支持体は、光学異方性が小さいのが好ましく、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。透明支持体としては、ガラス、軽量であることおよび種々の形状に加工しやすいこと等から、ポリマーフィルムが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。透明支持体用のポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により作製するのが好ましい。
【0051】
透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
なお、透明支持体の形状については特に制限はないが、長尺状の透明支持体を用いて、光学異方性層を積層してから、必要な大きさに切断することが好ましい。長尺状の透明支持体は、例えば、長方形のシート状の形状を有していてもよいが、搬送および保管の容易性から、ロール状であるのが好ましい。
【0052】
前記光学異方性層は、本発明の化合物および所望により添加される添加剤を溶媒に溶解して調製した溶液を、透明支持体(所望により配向膜)表面に塗布して、前記化合物を配向させ、液晶化合物をその配向状態に固定することよって作製することができる。前記光学異方性層は、本発明の化合物から形成されているので、Δnが大きく、また紫外線照射による着色がないので、良好な光学性能を有する位相差板となる。
【0053】
前記塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液中には、前記一般式(I)で表される化合物の1種もしくは2種以上の他、本発明の効果を損なわない限り、他の液晶化合物、重合開始剤、重合性モノマー、配向制御剤等を用いることができる。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0054】
支持体(配向膜)表面に適用された本発明の化合物は、支持体もしくは配向膜表面に施されたラビング処理等の配向処理によっておよび/または熱等を供給されることによって配向する。配向した液晶性化合物を、その配向を維持して固定する。固定化は、前記一般式(I)で表される化合物が有する重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0055】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0056】
前記光学異方性層の形成には、本発明の化合物を配向させるための配向膜を用いることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコ酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリル酸メチルなど)の累積のような手段で設けることができる。さらに電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜がとくに好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより実施する。配向膜に使用するポリマーの種類は、前記化合物の種類、所望の配向に応じて決定する。
液晶性化合物を水平に配向させるためには配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。いずれの配向膜においても、液晶性化合物と透明支持体の密着性を改善する目的で、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号公報に記載されている。
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0057】
なお、配向膜を用いて液晶性化合物を配向させてから、その配向状態のまま液晶性化合物を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム等の透明支持体上に転写してもよい。配向状態の固定された液晶性化合物は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0058】
本発明の位相差板は、反射型液晶表示装置において使用されるλ/4板、光ディスクの書き込み用のピックアップ、GH−LCDやPS変換素子に使用されるλ/4板、あるいは反射防止膜として利用されるλ/4板として、特に有利に用いられる。なお、λ/4板は、一般に偏光膜と組み合わせて使用される。よって、位相差板と偏光膜とを組み合わせた楕円偏光板として構成しておくと、容易に反射型および半透過型液晶表示装置のような用途とする装置に組み込むことができる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸(透過軸)は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。偏光膜は、一般に保護膜を有する。ただし、本発明では、透明支持体をポリマーフィルムからなる光学異方性層として機能させることもできるし、偏光膜の片側の保護膜として機能させることもできる。透明支持体とは別に保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフィルム、特にトリアセチルセルロースフィルムを用いることが好ましい。
【0059】
λ/4板を用いた反射型液晶表示装置については、特開平10−186357号公報に記載がある。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セルおよび偏光膜を、この順に積層した構成を有する。位相差板は、反射板と偏光膜との間(反射板と液晶セルとの間または液晶セルと偏光膜との間)に配置される。反射板は、液晶セルと基板を共有していてもよい。すなわち、液晶セルの一方の基板の内側に反射膜を形成して、その基板を反射板として機能させることができる。反射板と液晶セルとが、基板を共有する場合、位相差板を、反射膜と液晶セルの液晶層との間に設けることができる。液晶セルは、一般に透明電極を備えた二枚の基板の間に、棒状液晶性分子を含む液晶層を有する。本発明の位相差板は、TN(twisted nematic)型の液晶表示装置に用いるのが好ましい。
なお、本発明の位相差板は、液晶セルの両側に使用してもよいし、片側のみに使用してもよい。
【0060】
本発明の位相差板および楕円偏光板は前記用途に限らず、その他の種々の用途に供することができる。例えば、半透過型液晶表示素子、ホスト−ゲスト型液晶表示装置、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などに用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に制限されるものではない。
【0062】
[実施例1:例示化合物(I−1)の合成]
メタンスルホニルクロリド 1.15g(10ミリモル)をテトラヒドロフラン 10mlに加え、−3℃に冷却した。そこにテトラヒドロフラン10mlに、(1−a)2.64g(10ミリモル)とジイソプロピルエチルアミン 1.42g(11ミリモル)を加えた溶液を反応液を0℃以下に保ちながら滴下した。0℃で15分間攪拌し、混合酸無水物(1−b)を生成させた。そこに、ジイソプロピルエチルアミン 1.42g(11ミリモル)とジメチルアミノピリジン0.12g(1ミリモル)およびJ.Am.Chem.Soc.80(1958),p3717に記載の方法に従って合成した2,5−ジヒドロキシピリジン0.5g(4.54ミリモル)を加えた。室温で5時間攪拌した後、希塩酸に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/塩化メチレン=1/9)で精製した後、イソプロピルアルコールから晶析し、例示化合物(I−1)0.9g(1.49ミリモル)を得た。
NMR(CDCl):δ=8.39(s、1H)、8.19(br、4H)、7.77(d、1H)、7.26(d、1H)、6.99(br、4H)、6.42(d、2H)、6.13(dd、2H)、5.84(d、2H)、4.28(br、4H)、4.09(br、4H)、1.93(br、8H)
Cr 87℃ N 152℃ I
【0063】
【化19】
Figure 2004346029
【0064】
2,5−ジヒドロキシピリジンの代わりに、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジチオールを用いて同様の反応を行うことにより例示化合物(I−14)を合成した。
NMR(CDCl):δ=8.05(d、4H)、6.93(d、4H)、6.40(d、2H)、6.11(dd、2H)、5.85(d、2H)、4.26(t、4H)、4.09(t、4H)、1.93(br、8H)
Cr 120℃ (N 100℃) I
【0065】
2,5−ジヒドロキシピリジンの代わりに、4−メチルピリダジン−3,6−ジオ−ルを用いて同様の反応を行うことにより例示化合物(I−15)を合成した。
NMR(CDCl):δ=8.20(d、4H)、7.48(s、1H)、6.99(d、4H)、6.42(d、2H)、6.13(dd、2H)、5.84(d、2H)、4.27(t、4H)、4.12(t、4H)、2.34(s、3H)、1.93(br、8H)
Cr 78℃ N 105℃ 分解
また、5−ジヒドロキシピリジンの代わりに、6−アミノピリジン−3−オールを用いて同様の反応を行うことにより例示化合物(I−13)を合成できる。
【0066】
[実施例2:例示化合物(I−10)の合成]
メタンスルホニルクロリド2.29g(20ミリモル)をアセトニトリル 10mlに加え、0℃に冷却した。そこにアセトニトリル10mlに、5−ピリジンジカルボン酸1.67g(10ミリモル)とジイソプロピルエチルアミン 2.59g(20ミリモル)を加えた溶液を反応液を5℃以下に保ちながら滴下した。5℃で15分間攪拌し、混合酸無水物(10−a)を生成させた。そこに、ジイソプロピルエチルアミン 2.59g(20ミリモル)とジメチルアミノピリジン0.24g(2ミリモル)および(10−b) 5.29g(20ミリモル)を加えた。室温で5時間攪拌した後、希塩酸に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/3)で精製し、例示化合物(I−10)0.8g(1.21ミリモル)を得た。
Cr 91℃ S 95℃ I
【0067】
【化20】
Figure 2004346029
【0068】
[実施例3]
本発明の液晶性化合物である(I−1)および(I−15)と非特許文献1に記載の比較化合物Aをそれぞれ用いて作製した位相差フィルムの性能を比較した。
【0069】
比較化合物A
【化21】
Figure 2004346029
【0070】
ガラス板を透明支持体として用い、日産化学工業(株)製のSE−150の稀釈液を透明支持体の片面に連続塗布した後、80℃で15分間、続いて200℃で1時間乾燥し、厚さ0.5μmの配向膜を形成した。ラビング処理した後、20質量%の例示化合物(I−1)と0.4質量%の下記の光重合開始剤、0.03質量%の下記の水平配向剤のクロロホルム溶液をスピンコートし、ホットステージで97℃(融点+10℃)まで加熱し、1分間保持した後、窒素雰囲気下、ハロゲンランプを用いて紫外線照射すると、均一なレタデーション(135nm)を有する液晶乾燥膜厚0.84μmの実質的に無色の位相差板P−1が得られた(Δn=0.16)。
【0071】
同様に、ガラス板上に形成された前記配向膜上に、20質量%の例示化合物(I−15)と0.4質量%の下記の光重合開始剤、0.03質量%の下記の水平配向剤のクロロホルム溶液をスピンコートし、ホットステージで88℃(融点+10℃)まで加熱し、30秒間保持した後、窒素雰囲気下、ハロゲンランプを用いて紫外線照射すると、均一なレタデーション(132nm)を有する液晶乾燥膜厚0.87μmの実質的に無色の位相差板P−2が得られた(Δn=0.15)。
同様に、ガラス板上に形成された前記配向膜上に、30質量%の比較化合物Aと0.6質量%の下記の光重合開始剤、0.03質量%の下記の水平配向剤のクロロホルム溶液を用いた溶液をスピンコートし、ホットステージで118℃(融点+10℃)まで加熱し、1分間保持した後、紫外線照射したところ、均一なレタデーション(135nm)を有する液晶乾燥膜厚1.10μmの位相差板P−3が得られたが(Δn=0.12)、紫外線照射時に着色し、得られた位相差板は黄色味を帯びていた。
【0072】
分光光度計を用い、空気をリファレンスとして、位相差板P−1〜P−3の波長400nmにおける吸光度を測定したところ、本発明の位相差板は400nmにおける吸収が少なく、黄色味が少ないことが、測定値としても示された。
【0073】
【表1】
Figure 2004346029
【0074】
光重合開始剤
【化22】
Figure 2004346029
【0075】
水平配向剤
【化23】
Figure 2004346029
【0076】
作製した位相差板(P−1)〜(P−3)をECBモード反射型液晶ディスプレイに用いると、本発明の位相差板P−1またはP−2を用いた場合、比較用位相差板P−3を用いた場合と比較して、高輝度で、かつ色再現性にも優れていた。
【0077】
同じレタデーションの位相差板を製造した場合、本発明の化合物(I−1)または(I−15)を用いた方が、比較化合物Aを用いた場合よりも、光学性能および製造技術上の利点の大きい、薄い位相差板を製造することができた。
実施例3より本発明の化合物による、Δn向上および、着色抑止の効果は明らかである。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、液晶ディスプレイ用セル、位相差板などに利用される、Δnが高く、紫外線照射により着色せず、安価に合成できる化合物を提供することができる。また、本発明によれば、着色がなく、良好な光学性能を有する位相差板を提供することができる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物。
    一般式(I)
    −X−A−X−(A−X−B
    (式中、X〜Xは各々、置換もしくは無置換の、1,4‐フェニレン基または複素芳香環基を表すが、XおよびXの少なくとも1つは5員複素芳香環基、6員複素芳香環基又はこれらを含む縮環基である。BおよびBは各々、水素原子または置換基を表すが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。lは0または1であり、AおよびAは各々、下記(A−1)〜(A−6)で表される基である。)
    Figure 2004346029
  2. 前記一般式(I)中、lが1である請求項1に記載の化合物。
  3. 下記一般式(II)で表される請求項1に記載の化合物。
    一般式(II)
    Figure 2004346029
    (式中、RおよびRは各々、置換基であり、mおよびnは各々、0〜4の整数であり、Xは5員複素環基、6員複素環基又はこれらを含む縮環基であり、BおよびBは各々、水素原子または置換基であるが、BおよびBの少なくとも一方は重合性基を含む。)
  4. 一般式(II)において、Xが下記式(X−1)〜(X−5)から選ばれる2価の基である請求項3に記載の化合物。
    Figure 2004346029
    (式中、Rは置換基であり、pは0〜3の整数であり、qは0〜2の整数である。)
  5. 一般式(II)のXが(X−1)である請求項4に記載の化合物。
  6. 透明支持体と、該透明支持体の上方に請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物から形成される光学異方性層を有する位相差板。
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JP2011219642A (ja) * 2010-04-12 2011-11-04 Tokyo Institute Of Technology 硫黄を含有する(メタ)アクリレート化合物
JP2011221365A (ja) * 2010-04-12 2011-11-04 Jsr Corp 硬化性組成物及び光学部材

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