JP2004345071A - 描画装置及び描画方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】描画時間を短縮化することができる描画装置及び描画方法を提供する。
【解決手段】描画装置1は、被処理物99に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行うものであり、複数のプローブ12、制御部22、及び移動機構24を備えている。各プローブ12は、円錐状の突起部12aを有しており、突起部12aの先端部12bから電子を放出する。制御部22は、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を、各プローブ12について個別に制御している。移動機構24は、被処理物99が載置されているステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。
【選択図】 図1
【解決手段】描画装置1は、被処理物99に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行うものであり、複数のプローブ12、制御部22、及び移動機構24を備えている。各プローブ12は、円錐状の突起部12aを有しており、突起部12aの先端部12bから電子を放出する。制御部22は、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を、各プローブ12について個別に制御している。移動機構24は、被処理物99が載置されているステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行う描画装置及び描画方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の描画装置としては、AFM(原子間力顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)等の走査型顕微鏡を応用したものがある(例えば、特許文献1,2参照)。この装置は、被処理物の表面に沿ってプローブを走査させつつ、プローブから放出される電子等と被処理物との相互作用により、被処理物の表面に所定パターンの描画を行うものである。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−113634号公報
【特許文献2】
特開2000−100796号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の描画装置は、描画領域が広い場合、或いは描画パターンが複雑な場合等において、描画に莫大な時間を要してしまう。すなわち、被処理物上に所望のパターンが描かれるように、プローブで被処理物の描画領域全体を走査しなければならないからである。それゆえ、上記の描画装置においては、描画速度の向上が望まれてきた。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、描画時間を短縮化することができる描画装置及び描画方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による描画装置は、突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、各プローブにおける電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御部と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この描画装置においては、プローブが複数設けられている。また、これら複数のプローブから放出される電子の量は、制御部によって、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画装置によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明による描画装置は、突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、各プローブと被処理物との間隔を、各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御部と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えることを特徴としてもよい。
【0009】
この描画装置においては、プローブが複数設けられている。また、これらのプローブと被処理物との距離は、制御部によって、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画装置によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0010】
本発明による描画方法は、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、各プローブの突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、各プローブにおける電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御工程と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブのそれぞれから電子を放出させている。また、これら複数のプローブから放出される電子の量は、制御工程において、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画方法によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明による描画方法は、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、各プローブの突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、各プローブと被処理物との間隔を、各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御工程と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、を備えることを特徴としてもよい。
【0013】
この描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブのそれぞれから電子を放出させている。また、これらのプローブと被処理物との距離は、制御工程において、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画方法によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0014】
制御部は、各プローブと被処理物との間に印加する電圧を変化させることにより、制御を行うことができる。また、制御部は、各プローブに対してそれぞれ設けられ、各プローブにおける電子の放出量を調節するゲート電極を有することが好適である。この場合、ゲート電極に印加する電圧を変化させることにより、各プローブからの電子の放出量を精度良く制御することができる。
【0015】
複数のプローブは、1枚のプローブ固定板上に固定されており、各プローブは、隣り合う他のプローブとの中心間距離が1mm以下であることが好適である。この場合、狭い領域に多数のプローブを設けることが可能である。また、プロ−ブの数を増やすことにより、その数に略比例して描画速度を上げることができる。
【0016】
プローブにおける突起部の先端は、結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、又はLaB6からなることが好適である。この場合、これらの材料は電子を放出し易いので、高い電流密度を得ることができ、それゆえ描画速度がより向上する。或いは、プローブにおける突起部の先端は、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)からなることが好適である。この場合、これらの材料は融点が高いため、温度耐性の強いプローブが実現される。
【0017】
複数のプローブのうち少なくとも1つは、突起部を2つ以上有していることが好適である。この場合、複数の突起部から放出される電子によって被処理物に照射する電流を形成することができるので、描画に充分な電流値を保ちつつ、ビーム径を任意に大きくすることが可能である。
【0018】
複数のプローブは、一次元的に配列されていてもよいし、二次元的に配列されていてもよい。
【0019】
描画中において、各プローブと被処理物との間隔は、0.5nm以上1mm以下に設定されることが好適である。上記の間隔を1mm以下とすることにより、プローブと被処理物との間に印加する電圧を小さくしても充分な電流値を得ることができる。また、上記の間隔0.5nm以上とすることにより、振動等によりプローブと被処理物とが接触するのを防ぐことができる。
【0020】
被処理物に照射される電流は、被処理物表面において0.5eV以上1keV以下のエネルギーをもつ電子線であることが好適である。被処理物に照射される電子線のエネルギーが1keV以下であることにより、電子の拡がりを充分に抑えることができ、ナノメートルレベルの微細な描画を好適に行うことができる。一方で、被処理物に照射される電子線のエネルギーが0.5eV以上であることにより、被処理物に対する改質や反応等の描画効果を充分に得ることができる。
【0021】
被処理物に照射される電流は、被処理物表面において0.5nm以上100μm以下のビーム径をもつ電子線であることが好適である。被処理物に照射される電子線のビーム径が100μm以下であることにより、被処理物に対して微細な描画を好適に行うことができる。一方で、被処理物に照射される電子線のビーム径が0.5nm以上であることにより、描画に充分な電流密度を確保することができる。
【0022】
本発明による描画装置は、電流が照射される被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給するノズルを備え、ノズルの噴出口とプローブ固定板の中心との水平距離は10mm以下であることが好適である。この場合、ノズルから気体を供給することにより、被処理物の表面に局所的に圧力の高い領域を容易に形成することができる。
【0023】
本発明による描画装置は、複数のプローブと、被処理物の表面のうち少なくとも電流が照射される領域とを覆うカバーを備えることが好適である。この場合、描画領域の圧力を均一に維持することが可能となる。
【0024】
また、本発明による描画方法は、電流が照射される被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給する供給工程を備えることを特徴としてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面とともに本発明による描画装置及び描画方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0026】
図1は、本発明による描画装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。描画装置1は、被処理物に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行うものである。描画装置1は、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、制御部22、及び移動機構24を備えている。なお、制御部22及び移動機構24は、中央制御部(図示せず)によって一括して管理されている。
【0027】
各プローブ12は、円錐状の突起部12aを有している。また、突起部12aの先端部12bは尖鋭な形状をしており、この先端部12bから電子が放出される。突起部12aの材料としては、結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、カーボンナノチューブ、LaB6、W、又はMo等を用いることができる。
【0028】
プローブ固定板14は、その一面(プローブ固定面)14a上に複数のプローブ12を固定している。ここで、図2は、プローブ12が固定されたプローブ固定板14を示す平面図である。複数のプローブ12は、図2に示すように、プローブ固定面14a上において二次元的に配列されている。具体的には、これらのプローブ12は、二次元格子状に等間隔で配列されている。ここで、隣り合う2つのプローブ12どうしの中心間距離d2は1mm以下とすることが望ましい。「中心間距離」とは、2つのプローブ12の中心軸間の距離をいう。
【0029】
図1に戻って、プローブ固定板14のプローブ固定面14aに対向する位置に、ステージ16が設けられている。このステージ16は、描画装置1の描画対象となる被処理物99を載置するものである。また、ステージ16は、可動に設けられている。
【0030】
制御部22は、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を、各プローブ12について個別に制御している。これにより、制御部22は、各プローブ12における電子の放出量を、それぞれ独立に制御することができる。
【0031】
移動機構24は、ステージ16に接続されている。この移動機構24は、被処理物99が載置されているステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。この移動は、ステージ16の面内方向(X,Y方向)及び面に垂直な方向(Z方向)の何れにも行うことが可能である。
【0032】
また、描画装置1は、ノズル32、及びカバー34を備えている。ノズル32は、プローブ固定板14に隣接して設けられている。このノズル32は、被処理物99の表面に外部から所定の気体又は液体を供給するためのものである。ここで、気体又は液体を噴出するノズル32の噴出口32aとプローブ固定板14の中心との水平距離d1は、10mm以下であることが望ましい。ここで「水平距離」とは、プローブ固定板14のプローブ固定面14a方向に沿った距離をいう。
【0033】
カバー34は、一面が開口した箱状をしており、その開口側を被処理物99側に向けて設けられている。そして、このカバー34は、プローブ12、プローブ固定板14、及び被処理物99表面の一部を覆っている。これにより、被処理物99の表面のうちプローブ12が放出する電子によって生じる電流が照射される領域は、カバー34によって覆われることとなる。また、カバー34にはノズル挿通孔34aが形成されており、このノズル挿通孔34aによりノズル32がカバーの外側から内側へと挿通されている。
【0034】
描画装置1の動作を説明し、併せて本発明による描画方法の一実施形態についても説明する。
【0035】
描画装置1においては、まずステージ16上に被処理物99を載置する。次に、各プローブ12と被処理物99との間に電圧を印加することにより、各プローブ12における突起部12aの先端部12bから電子を放出させる。これにより、各プローブ12と被処理物99とで挟まれる空間に電流が生じる。被処理物99表面のうち電流の照射を受けた部分に、例えばエッチング等の描画が施される(電子放出工程)。
【0036】
また、制御部22によって、プローブ毎に印加する電圧をオン/オフしたり、或いは印加する電圧の大きさを変化させることにより、各プローブ12が放出する電子によって生じる電流の大きさを制御することができる。これにより、被処理物99上に描画のコントラストが形成される(制御工程)。
【0037】
また、制御部22による制御と併せて、移動機構24によって、ステージ16をその面内方向について移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。これにより、被処理物99表面において描画領域を次々と変えて行くことができる(移動工程)。
【0038】
以上の工程により、被処理物99に対して、所望のパターンで描画を行うことができる。なお、電子放出工程、制御工程、及び移動工程を実行する順序については、特に限定されない。例えば、これらの工程を同時に実行してもよい。また、描画装置1においては、必要に応じて、ノズル32により被処理物99の表面に気体又は液体を供給してもよい(供給工程)。例えば、上述のエッチング反応のためのエッチャントを供給することができる。
【0039】
本実施形態による描画装置1及び描画方法の効果を説明する。
【0040】
描画装置1においては、プローブ12が複数設けられている。このため、各プローブ12が同時に描画を行うことにより、1つのプローブ12で描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。また、これらのプローブ12を、隣接するプローブ12との中心間距離d2が1mm以下となるように配置した場合、狭い領域に多数のプローブを設けることが可能である。また、プロ−ブの数を増やすことにより、その数に略比例して描画速度を上げることができる。なお、中心間距離d2は、100nm以上であることが好適である。この場合、制御部22による各プローブ12の個別制御を比較的容易に行うことができるからである。
【0041】
また、プローブ12の突起部12aの材料として結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、カーボンナノチューブ、又はLaB6を用いた場合、これらの材料は電子を放出し易いので、高い電流密度を得ることができ、それゆえ描画速度がより向上する。一方、W、又はMoを用いた場合には、これらの材料は融点が高いため、温度耐性の強いプローブ12が実現される。
【0042】
また、プローブ12の先端部12bは尖鋭な形状をしているため、プローブ12に電圧を印加したとき、その先端部12bに電場が集中する。このため、電界放出によりプローブ12から電子を放出させること、或いはプローブ12に正や負の電流を流すことが容易である。さらに、プローブ12から微弱なトンネル電流のみを放出させる可能である。
【0043】
このような描画装置1によれば、被処理物99に対して、ナノメートルオーダーの微細な描画を好適に行うことができる。また、量子ドット、量子細線等の描画も実現することができる。また、被処理物99に対して三次元の描画を行うことも可能となる。例えば、この描画装置1を半導体露光に用いれば、マスクを作製することなく、パソコンで編集した描画パターンを半導体に直接描画することができる。このため、描画装置1は、少量多品種の半導体製品の生産に特に有用である。例えば、半導体メーカーは、描画装置1を用いることにより、ユーザからの注文に応じ、短期間で半導体製品を生産・納品することが可能となる。
【0044】
さらに、描画装置1においては、ノズル32が設けられている。ここで、ノズル32の噴出口32aとプローブ固定板14の中心との水平距離d1を10mm以下とした場合、ノズル32から気体を供給することにより、被処理物99の表面に局所的に圧力の高い領域を容易に形成することができる。これにより、供給された気体と被処理物99との反応速度が上がるため、描画速度をより向上させることができる。また、カバー34により被処理物99表面の電流が照射される領域が覆われているため、描画領域の圧力を均一に維持することが可能となる。
【0045】
なお、描画中において、各プローブ12と被処理物99との間隔は、1mm以下に設定されることが好適である。ここで各プローブ12と被処理物99との間隔とは、各プローブ12の先端部12bから被処理物99表面までの最短距離をいう。これらの場合、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を小さくしても、充分な電流値を得ることができる。また、被処理物99表面における電流の拡がりの半値幅をナノメートルオーダーまで抑えることができ、それゆえナノメートルオーダーの微細な描画を好適に行うことができる。
【0046】
一方で、各プローブ12と被処理物99との間隔は、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上に設定されるとよい。これらの場合、振動等によりプローブ12の先端部12bと被処理物99とが接触するのを防ぐことができる。
【0047】
また、移動機構24による最小の移動単位は、0.1nm以上10nm以下であることが好適である。これにより、プローブ12と被処理物99とが高精度で互いに位置合わせされる。なお、粗い描画を行う場合には、最小の移動単位を大きくすることにより、ステージ16の移動速度を上げることができる。
【0048】
ところで、真空雰囲気中で描画を行う場合、プローブ12から被処理物99に流れる電流は電子線として流れる。ここで、この電子線のエネルギーは、被処理物99の表面上において1keV以下であることが好適である。電子線のエネルギーが1keVよりも大きい場合、被処理物99の表面及び内部における電子の拡がりが大きくなる。一般に、固体表面に数keV以上のエネルギーをもつ電子線を照射すると、電子の拡がりはサブミクロンからミクロンのレベルとなる。これでは、ナノメートルレベルの微細な描画を行う上で問題である。これに対して、被処理物99に照射される電子線のエネルギーが1keV以下であれば、電子の拡がりを充分に抑えることができ、ナノメートルレベルの微細な描画を好適に行うことができる。一方で、電子線のエネルギーは、被処理物99の表面上において0.5eV以上であることが好適である。この場合、被処理物99に対する改質や反応等の描画効果を充分に得ることができる。
【0049】
特に、励起やイオン化を伴う反応を必要とする場合には、電子線のエネルギーは、励起やイオン化に要するエネルギーを超えるエネルギーであることが好ましく、数eV〜20eV、或いはそれ以上であることが好ましい。
【0050】
また、被処理物99の表面における電子線のビーム径は、100μm以下であることが好適である。この場合、被処理物99に対して微細な描画を好適に行うことができる。ここで、ビーム径の大きさは、プローブ12の先端部12bの形状、プローブ12と被処理物99との間隔、及び被処理物99に照射される電流の電流密度により決まる。先端部12bをより尖鋭にし、プローブ12と被処理物99との間隔を小さくし、また電流密度を小さくすることにより、被処理物99の表面におけるビーム径を0.1nm以下とすることも可能である。一方で、被処理物99の表面における電子線のビーム径は、0.5nm以上であることが好適である。この場合、描画に充分な電流密度を確保することができる。
【0051】
また、各プローブ12から流れる電流の電流密度は、1mA/cm2以上30A/cm2以下であることが好適である。
【0052】
本実施形態による描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブ12のそれぞれから電子を放出させている。このため、各プローブ12が同時に描画を行うことにより、1つのプローブ12で描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0053】
図3は、描画装置1の一変形例の概略構成を示す模式図である。描画装置2は、描画装置1と同様に、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、及び移動機構24を備えている。一方で、描画装置2は、描画装置1の制御部22とは異なる制御部40を備えている。
【0054】
制御部40は、圧電素子42、及び電圧制御部44を有している。圧電素子42は、各プローブ12とプローブ固定板14との間にそれぞれ設けられている。すなわち、各プローブ12は、プローブ固定板14に対して圧電素子42を介して固定されている。この圧電素子42は、電圧を印加されることにより伸縮する。伸長するか収縮するかは電圧の向きによって制御され、伸縮の大きさは電圧の大きさによって制御される。また、圧電素子42は、その伸縮方向がプローブ12の中心軸方向と一致するように設けられている。
【0055】
電圧制御部44は、各圧電素子42に印加する電圧を個別に制御するものである。これにより、制御部40は、電圧制御部44により各圧電素子42の伸縮量を変化させ、各プローブ12と被処理物99との間隔をそれぞれ独立に制御することができる。この間隔が小さければ、被処理物99に照射される電流CRの電流値は大きくなり、一方で電流CRのビーム径は小さくなる。逆に、この間隔が大きければ、電流CRの電流値は小さくなり、一方で電流CRのビーム径は大きくなる。
【0056】
上記の制御部40を備える描画装置2によれば、被処理物99に照射する電流CRのビーム径を高精度に制御することが可能である。なお、描画装置2においては、図1の描画装置1における制御部22を併せて設けることが好適である。この場合、各プローブ12と被処理物99との間隔の制御、及び各プローブ12に印加する電圧の制御を同時に行うことができる。これにより、電流CRのビーム径と電流値とを独立に制御することが可能となる。
【0057】
図4は、描画装置1の他の変形例の概略構成を示す模式図である。描画装置3は、描画装置1と同様に、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、及び移動機構24を備えている。一方で、描画装置3は、描画装置1の制御部22とは異なる制御部50を備えている。
【0058】
制御部50は、ゲート電極52、及び電圧制御部54を有している。ゲート電極52は、各プローブ12の先端部12bを包囲するように設けられている。ゲート電極52は、各プローブ12から放出される電子の放出量を調節するためのものである。電圧制御部54は、各ゲート電極52と各プローブ12との間に印加する電圧を制御する。制御部50は、電圧制御部54により各ゲート電極52に印加する電圧を変化させることにより、被処理物99に照射される電流CRの電流値を制御することができる。
【0059】
上記の制御部50を備える描画装置3によれば、被処理物99に照射する電流CRの電流値を高精度に制御することが可能である。なお、描画装置3においては、図1の描画装置1における制御部22、及び図3の描画装置2における制御部40を併せて設けることが好適である。制御部22を設けた場合、制御部22により電流値の粗い調整を行い、制御部50により微調整を行うことができる。また、制御部40を設けた場合、電流CRの電流値とビーム径とを独立に制御することが可能となる。
【0060】
図5は、描画装置1における複数のプロ−ブ12の配列パターンを示す平面図である。図5においては、図2と同様に、プローブ固定板14のプローブ固定面14a上に固定された複数のプローブ12が示されている。複数のプローブ12は、図2と同様に、二次元的に配列されている。一方で、図中上下方向に並ぶ複数(ここでは4つ)のプローブ12から構成される列を「プローブ列」と呼ぶことにすると、各プローブ12が、隣りのプローブ列に属するプローブ12と中心がずれて配置されている点で、図2のものとは相違する。すなわち、これらのプローブ12は、千鳥格子状に配列されている。
【0061】
図6は、描画装置1における複数のプロ−ブ12の他の配列パターンを示す平面図である。図5においては、図2と同様に、プローブ固定板14のプローブ固定面14a上に固定された複数のプローブ12が示されている。複数のプローブ12は、一次元的に配列されている。すなわち、各プローブ12の先端部12bが一直線上に乗るような配列となっている。
【0062】
図7は、図1の描画装置1におけるプローブ12の一変形例を示す斜視図である。プローブ13は、突起部13aを複数有している点で、プローブ12と相違する。すなわち、プローブ13は、基台部13cを有しており、基台部13c上には、複数の突起部13aが一体的に立設されている。各突起部13aの先端部13bは、プローブ12におけるものと同様に、尖鋭な形状をしている。このように、1つのプローブ13に複数の突起部13aを設けることにより、複数の突起部13aから放出される電子によって被処理物に照射する電流を形成することができ、描画に充分な電流値を保ちつつ、ビーム径を任意に大きくすることが可能である。このため、一度に広い領域の描画が可能となる。
【0063】
図8は、図7のプローブ13を図1の描画装置1に適用して描画を行う様子を示す模式図である。図8においては、描画装置1の構成のうち、プローブ13及びプローブ固定板14のみを示している。この図に示すように、プローブ13は、その基台部13cがプローブ固定板14に固定されている。描画の際には、各プローブ13が有する複数の突起部13aから電子が放出され、その電子により形成される電流CRが被処理物99へと照射される。このとき、制御部22(図1参照)によって、各プローブ13毎に電子の放出量が制御される。
【0064】
図9は、描画装置1の一使用例を示す模式図である。ここでは、描画装置1は、気相雰囲気中で使用される。描画装置1は、チャンバ62内に収容されている。チャンバ62には、チャンバ62内の圧力を制御する圧力制御装置64が取り付けられている。また、チャンバ62内に気体又は液体を供給する供給装置66が設けられている。供給装置66からの気体又は液体は、描画装置1のノズル32(図1参照)を通って、被処理物の表面に供給される。
【0065】
圧力制御装置64により、チャンバ62内の圧力を例えば1Pa以上2×105Pa(2気圧)以下とした場合を考える。この範囲は、大気圧を中心とする減圧下から加圧下の範囲である。この範囲では、平均自由工程が短く、電子は雰囲気中のガスと衝突を繰り返すため電子線にはならず、微小な放電状態を形成する。よって、上記の圧力範囲においては、この放電により描画が行われる。
【0066】
また、チャンバ62内の圧力を1×10−10Pa以上1Pa未満とした場合を考える。この範囲では、平均自由工程が長く、電子は雰囲気中のガスとほとんど衝突しないか、衝突してもその回数は少ない。よって、この圧力範囲では、電子線により描画が行われる。なお、1×10−2Pa以上1Pa未満の範囲では、条件次第では放電が発生することもある。
【0067】
図10は、描画装置1の他の使用例を示す模式図である。ここでは、描画装置1は、液相雰囲気中で使用される。描画装置1は、水槽72内に収容されている。水槽72には、水槽72に対して所定の溶液を供給する溶液供給装置74が取り付けられている。液相雰囲気においては、液相中のイオンを通じて電流が流れる。従って、この電流により描画が行われる。また、液相雰囲気で描画装置1を使用する場合、プローブに印加する電位は、被処理物に対して正負何れであってもよい。
【0068】
図11(a)及び図11(b)は、描画装置1による描画の一例を示す模式図である。図11(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。これにより、図11(b)に示すように、電流が照射された部分99aがエッチング除去される。例えば、反応性ガスが存在しない加圧雰囲気から真空雰囲気中において、プローブ12と被処理物99との間に電流を流すことにより、放電によるスパッタ蒸発、又は放電若しくは電子線の加熱効果による蒸発を起こすことができる。或いは、液相雰囲気中において電流を流せば、プローブ12近傍の被処理物99表面のみが選択的にイオン化される。このイオン化された部分は液相中に溶出し、それゆえ被処理物99表面がエッチングされる。
【0069】
図12(a)及び図12(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図12(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。これにより、図12(b)に示すように、電流が照射された部分99bに対し、結晶化、非晶質化、結晶欠陥の制御、応力緩和、又はレジストの描画等の改質を施すことができる。これらは、主に熱的な効果を利用するものである。
【0070】
図13(a)及び図13(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図13(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。すると、図13(c)に示すように、電流が照射された部分99cにおいては、雰囲気に供給された気体又は液体が被処理物99と反応することにより、或いは被処理物99の内部へと拡散することにより、ホウ化、炭化、窒化、酸化、又はドーピングが施される。このとき、被処理物99の表面は、比較的高めの圧力に設定されることが好ましい。
【0071】
なお、ホウ化の場合には、ジボランガス雰囲気中等のホウ素を含むガス雰囲気中において描画処理を行うことが望ましい。炭化の場合には、炭化水素ガスやCO2ガス雰囲気中での処理が可能である。窒化の場合には、窒素ガス雰囲気の他、液体窒素やアンモニア溶液中での処理が可能である。酸化の場合には、酸素ガス雰囲気の他、水中においても処理が可能である。ドーピングの場合には、ドーピングする元素を含むガス雰囲気中、或いはそのガスを水素や希ガスで希釈した雰囲気中で処理することが好ましい。
【0072】
図14(a)及び図14(b)は、図1の描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図14(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。すると、図14(b)に示すように、電流が照射された部分99dにおいて、雰囲気に供給された気体又は液体が反応し堆積する。雰囲気が気相の場合はCVDのような反応、液相の場合はメッキに順ずる反応となる。例えば、炭化水素ガス雰囲気中で処理を行えば炭素膜が、シランガス雰囲気中であればシリコンが、またWF6ガスを含む雰囲気中であればタングステンが析出できる。また、各種有機金属ガスを適用することもできる。メッキ液を使用することによりNi、Cr、Au等の析出を、液体の有機金属を直接液相で適用することにより各種金属の析出をすることができる。
【0073】
本発明による描画装置及び描画方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、図1の描画装置1において移動機構24は、ステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させているが、移動機構は、プローブ固定板14を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる構成としてもよい。或いは、移動機構は、ステージ16及びプローブ固定板14の両方を移動させてもよい。また、図3において制御部40は、圧電素子42を用いることにより、プローブ12と被処理物99との間隔を変化させているが、制御部は、静電的な方法により、その間隔を変化させる構成としてもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明による描画装置及び描画方法によれば、描画時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による描画装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】プローブ12が固定されたプローブ固定板14を示す平面図である。
【図3】描画装置1の一変形例の概略構成を示す模式図である。
【図4】描画装置1の他の変形例の概略構成を示す模式図である。
【図5】描画装置1における複数のプロ−ブ12の配列パターンを示す平面図である。
【図6】描画装置1における複数のプロ−ブ12の他の配列パターンを示す平面図である。
【図7】描画装置1におけるプローブ12の一変形例を示す斜視図である。
【図8】図7のプローブ13を図1の描画装置1に適用して描画を行う様子を示す模式図である。
【図9】描画装置1の一使用例を示す模式図である。
【図10】描画装置1の他の使用例を示す模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の一例を示す模式図である。
【図12】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【図13】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【図14】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1,2,3…描画装置、12,13…プローブ、12a,13a…突起部、12b,13b…先端部、13c…基台部、14…プローブ固定板、14a…プローブ固定面、16…ステージ、22,40,50…制御部、24…移動機構、32…ノズル、32a…噴出口、34…カバー、34a…ノズル挿通孔、42…圧電素子、44,54…電圧制御部、52…ゲート電極、62…チャンバ、64…圧力制御装置、66…供給装置、72…水槽、74…溶液供給装置、99…被処理物、CR…電流。
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行う描画装置及び描画方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の描画装置としては、AFM(原子間力顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)等の走査型顕微鏡を応用したものがある(例えば、特許文献1,2参照)。この装置は、被処理物の表面に沿ってプローブを走査させつつ、プローブから放出される電子等と被処理物との相互作用により、被処理物の表面に所定パターンの描画を行うものである。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−113634号公報
【特許文献2】
特開2000−100796号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の描画装置は、描画領域が広い場合、或いは描画パターンが複雑な場合等において、描画に莫大な時間を要してしまう。すなわち、被処理物上に所望のパターンが描かれるように、プローブで被処理物の描画領域全体を走査しなければならないからである。それゆえ、上記の描画装置においては、描画速度の向上が望まれてきた。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、描画時間を短縮化することができる描画装置及び描画方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による描画装置は、突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、各プローブにおける電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御部と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この描画装置においては、プローブが複数設けられている。また、これら複数のプローブから放出される電子の量は、制御部によって、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画装置によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明による描画装置は、突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、各プローブと被処理物との間隔を、各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御部と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えることを特徴としてもよい。
【0009】
この描画装置においては、プローブが複数設けられている。また、これらのプローブと被処理物との距離は、制御部によって、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画装置によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0010】
本発明による描画方法は、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、各プローブの突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、各プローブにおける電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御工程と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブのそれぞれから電子を放出させている。また、これら複数のプローブから放出される電子の量は、制御工程において、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画方法によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明による描画方法は、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、各プローブの突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、各プローブと被処理物との間隔を、各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御工程と、複数のプローブを被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、を備えることを特徴としてもよい。
【0013】
この描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブのそれぞれから電子を放出させている。また、これらのプローブと被処理物との距離は、制御工程において、各プローブ毎に制御される。これにより、被処理物に照射する電流の電流値及びビーム径が、各プローブ毎に制御される。したがって、この描画方法によれば、複数のプローブで同時に描画を行うので、1つのプローブで描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0014】
制御部は、各プローブと被処理物との間に印加する電圧を変化させることにより、制御を行うことができる。また、制御部は、各プローブに対してそれぞれ設けられ、各プローブにおける電子の放出量を調節するゲート電極を有することが好適である。この場合、ゲート電極に印加する電圧を変化させることにより、各プローブからの電子の放出量を精度良く制御することができる。
【0015】
複数のプローブは、1枚のプローブ固定板上に固定されており、各プローブは、隣り合う他のプローブとの中心間距離が1mm以下であることが好適である。この場合、狭い領域に多数のプローブを設けることが可能である。また、プロ−ブの数を増やすことにより、その数に略比例して描画速度を上げることができる。
【0016】
プローブにおける突起部の先端は、結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、又はLaB6からなることが好適である。この場合、これらの材料は電子を放出し易いので、高い電流密度を得ることができ、それゆえ描画速度がより向上する。或いは、プローブにおける突起部の先端は、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)からなることが好適である。この場合、これらの材料は融点が高いため、温度耐性の強いプローブが実現される。
【0017】
複数のプローブのうち少なくとも1つは、突起部を2つ以上有していることが好適である。この場合、複数の突起部から放出される電子によって被処理物に照射する電流を形成することができるので、描画に充分な電流値を保ちつつ、ビーム径を任意に大きくすることが可能である。
【0018】
複数のプローブは、一次元的に配列されていてもよいし、二次元的に配列されていてもよい。
【0019】
描画中において、各プローブと被処理物との間隔は、0.5nm以上1mm以下に設定されることが好適である。上記の間隔を1mm以下とすることにより、プローブと被処理物との間に印加する電圧を小さくしても充分な電流値を得ることができる。また、上記の間隔0.5nm以上とすることにより、振動等によりプローブと被処理物とが接触するのを防ぐことができる。
【0020】
被処理物に照射される電流は、被処理物表面において0.5eV以上1keV以下のエネルギーをもつ電子線であることが好適である。被処理物に照射される電子線のエネルギーが1keV以下であることにより、電子の拡がりを充分に抑えることができ、ナノメートルレベルの微細な描画を好適に行うことができる。一方で、被処理物に照射される電子線のエネルギーが0.5eV以上であることにより、被処理物に対する改質や反応等の描画効果を充分に得ることができる。
【0021】
被処理物に照射される電流は、被処理物表面において0.5nm以上100μm以下のビーム径をもつ電子線であることが好適である。被処理物に照射される電子線のビーム径が100μm以下であることにより、被処理物に対して微細な描画を好適に行うことができる。一方で、被処理物に照射される電子線のビーム径が0.5nm以上であることにより、描画に充分な電流密度を確保することができる。
【0022】
本発明による描画装置は、電流が照射される被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給するノズルを備え、ノズルの噴出口とプローブ固定板の中心との水平距離は10mm以下であることが好適である。この場合、ノズルから気体を供給することにより、被処理物の表面に局所的に圧力の高い領域を容易に形成することができる。
【0023】
本発明による描画装置は、複数のプローブと、被処理物の表面のうち少なくとも電流が照射される領域とを覆うカバーを備えることが好適である。この場合、描画領域の圧力を均一に維持することが可能となる。
【0024】
また、本発明による描画方法は、電流が照射される被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給する供給工程を備えることを特徴としてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面とともに本発明による描画装置及び描画方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0026】
図1は、本発明による描画装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。描画装置1は、被処理物に電流を照射することにより所望のパターンで描画を行うものである。描画装置1は、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、制御部22、及び移動機構24を備えている。なお、制御部22及び移動機構24は、中央制御部(図示せず)によって一括して管理されている。
【0027】
各プローブ12は、円錐状の突起部12aを有している。また、突起部12aの先端部12bは尖鋭な形状をしており、この先端部12bから電子が放出される。突起部12aの材料としては、結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、カーボンナノチューブ、LaB6、W、又はMo等を用いることができる。
【0028】
プローブ固定板14は、その一面(プローブ固定面)14a上に複数のプローブ12を固定している。ここで、図2は、プローブ12が固定されたプローブ固定板14を示す平面図である。複数のプローブ12は、図2に示すように、プローブ固定面14a上において二次元的に配列されている。具体的には、これらのプローブ12は、二次元格子状に等間隔で配列されている。ここで、隣り合う2つのプローブ12どうしの中心間距離d2は1mm以下とすることが望ましい。「中心間距離」とは、2つのプローブ12の中心軸間の距離をいう。
【0029】
図1に戻って、プローブ固定板14のプローブ固定面14aに対向する位置に、ステージ16が設けられている。このステージ16は、描画装置1の描画対象となる被処理物99を載置するものである。また、ステージ16は、可動に設けられている。
【0030】
制御部22は、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を、各プローブ12について個別に制御している。これにより、制御部22は、各プローブ12における電子の放出量を、それぞれ独立に制御することができる。
【0031】
移動機構24は、ステージ16に接続されている。この移動機構24は、被処理物99が載置されているステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。この移動は、ステージ16の面内方向(X,Y方向)及び面に垂直な方向(Z方向)の何れにも行うことが可能である。
【0032】
また、描画装置1は、ノズル32、及びカバー34を備えている。ノズル32は、プローブ固定板14に隣接して設けられている。このノズル32は、被処理物99の表面に外部から所定の気体又は液体を供給するためのものである。ここで、気体又は液体を噴出するノズル32の噴出口32aとプローブ固定板14の中心との水平距離d1は、10mm以下であることが望ましい。ここで「水平距離」とは、プローブ固定板14のプローブ固定面14a方向に沿った距離をいう。
【0033】
カバー34は、一面が開口した箱状をしており、その開口側を被処理物99側に向けて設けられている。そして、このカバー34は、プローブ12、プローブ固定板14、及び被処理物99表面の一部を覆っている。これにより、被処理物99の表面のうちプローブ12が放出する電子によって生じる電流が照射される領域は、カバー34によって覆われることとなる。また、カバー34にはノズル挿通孔34aが形成されており、このノズル挿通孔34aによりノズル32がカバーの外側から内側へと挿通されている。
【0034】
描画装置1の動作を説明し、併せて本発明による描画方法の一実施形態についても説明する。
【0035】
描画装置1においては、まずステージ16上に被処理物99を載置する。次に、各プローブ12と被処理物99との間に電圧を印加することにより、各プローブ12における突起部12aの先端部12bから電子を放出させる。これにより、各プローブ12と被処理物99とで挟まれる空間に電流が生じる。被処理物99表面のうち電流の照射を受けた部分に、例えばエッチング等の描画が施される(電子放出工程)。
【0036】
また、制御部22によって、プローブ毎に印加する電圧をオン/オフしたり、或いは印加する電圧の大きさを変化させることにより、各プローブ12が放出する電子によって生じる電流の大きさを制御することができる。これにより、被処理物99上に描画のコントラストが形成される(制御工程)。
【0037】
また、制御部22による制御と併せて、移動機構24によって、ステージ16をその面内方向について移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる。これにより、被処理物99表面において描画領域を次々と変えて行くことができる(移動工程)。
【0038】
以上の工程により、被処理物99に対して、所望のパターンで描画を行うことができる。なお、電子放出工程、制御工程、及び移動工程を実行する順序については、特に限定されない。例えば、これらの工程を同時に実行してもよい。また、描画装置1においては、必要に応じて、ノズル32により被処理物99の表面に気体又は液体を供給してもよい(供給工程)。例えば、上述のエッチング反応のためのエッチャントを供給することができる。
【0039】
本実施形態による描画装置1及び描画方法の効果を説明する。
【0040】
描画装置1においては、プローブ12が複数設けられている。このため、各プローブ12が同時に描画を行うことにより、1つのプローブ12で描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。また、これらのプローブ12を、隣接するプローブ12との中心間距離d2が1mm以下となるように配置した場合、狭い領域に多数のプローブを設けることが可能である。また、プロ−ブの数を増やすことにより、その数に略比例して描画速度を上げることができる。なお、中心間距離d2は、100nm以上であることが好適である。この場合、制御部22による各プローブ12の個別制御を比較的容易に行うことができるからである。
【0041】
また、プローブ12の突起部12aの材料として結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、カーボンナノチューブ、又はLaB6を用いた場合、これらの材料は電子を放出し易いので、高い電流密度を得ることができ、それゆえ描画速度がより向上する。一方、W、又はMoを用いた場合には、これらの材料は融点が高いため、温度耐性の強いプローブ12が実現される。
【0042】
また、プローブ12の先端部12bは尖鋭な形状をしているため、プローブ12に電圧を印加したとき、その先端部12bに電場が集中する。このため、電界放出によりプローブ12から電子を放出させること、或いはプローブ12に正や負の電流を流すことが容易である。さらに、プローブ12から微弱なトンネル電流のみを放出させる可能である。
【0043】
このような描画装置1によれば、被処理物99に対して、ナノメートルオーダーの微細な描画を好適に行うことができる。また、量子ドット、量子細線等の描画も実現することができる。また、被処理物99に対して三次元の描画を行うことも可能となる。例えば、この描画装置1を半導体露光に用いれば、マスクを作製することなく、パソコンで編集した描画パターンを半導体に直接描画することができる。このため、描画装置1は、少量多品種の半導体製品の生産に特に有用である。例えば、半導体メーカーは、描画装置1を用いることにより、ユーザからの注文に応じ、短期間で半導体製品を生産・納品することが可能となる。
【0044】
さらに、描画装置1においては、ノズル32が設けられている。ここで、ノズル32の噴出口32aとプローブ固定板14の中心との水平距離d1を10mm以下とした場合、ノズル32から気体を供給することにより、被処理物99の表面に局所的に圧力の高い領域を容易に形成することができる。これにより、供給された気体と被処理物99との反応速度が上がるため、描画速度をより向上させることができる。また、カバー34により被処理物99表面の電流が照射される領域が覆われているため、描画領域の圧力を均一に維持することが可能となる。
【0045】
なお、描画中において、各プローブ12と被処理物99との間隔は、1mm以下に設定されることが好適である。ここで各プローブ12と被処理物99との間隔とは、各プローブ12の先端部12bから被処理物99表面までの最短距離をいう。これらの場合、プローブ12と被処理物99との間に印加する電圧を小さくしても、充分な電流値を得ることができる。また、被処理物99表面における電流の拡がりの半値幅をナノメートルオーダーまで抑えることができ、それゆえナノメートルオーダーの微細な描画を好適に行うことができる。
【0046】
一方で、各プローブ12と被処理物99との間隔は、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上に設定されるとよい。これらの場合、振動等によりプローブ12の先端部12bと被処理物99とが接触するのを防ぐことができる。
【0047】
また、移動機構24による最小の移動単位は、0.1nm以上10nm以下であることが好適である。これにより、プローブ12と被処理物99とが高精度で互いに位置合わせされる。なお、粗い描画を行う場合には、最小の移動単位を大きくすることにより、ステージ16の移動速度を上げることができる。
【0048】
ところで、真空雰囲気中で描画を行う場合、プローブ12から被処理物99に流れる電流は電子線として流れる。ここで、この電子線のエネルギーは、被処理物99の表面上において1keV以下であることが好適である。電子線のエネルギーが1keVよりも大きい場合、被処理物99の表面及び内部における電子の拡がりが大きくなる。一般に、固体表面に数keV以上のエネルギーをもつ電子線を照射すると、電子の拡がりはサブミクロンからミクロンのレベルとなる。これでは、ナノメートルレベルの微細な描画を行う上で問題である。これに対して、被処理物99に照射される電子線のエネルギーが1keV以下であれば、電子の拡がりを充分に抑えることができ、ナノメートルレベルの微細な描画を好適に行うことができる。一方で、電子線のエネルギーは、被処理物99の表面上において0.5eV以上であることが好適である。この場合、被処理物99に対する改質や反応等の描画効果を充分に得ることができる。
【0049】
特に、励起やイオン化を伴う反応を必要とする場合には、電子線のエネルギーは、励起やイオン化に要するエネルギーを超えるエネルギーであることが好ましく、数eV〜20eV、或いはそれ以上であることが好ましい。
【0050】
また、被処理物99の表面における電子線のビーム径は、100μm以下であることが好適である。この場合、被処理物99に対して微細な描画を好適に行うことができる。ここで、ビーム径の大きさは、プローブ12の先端部12bの形状、プローブ12と被処理物99との間隔、及び被処理物99に照射される電流の電流密度により決まる。先端部12bをより尖鋭にし、プローブ12と被処理物99との間隔を小さくし、また電流密度を小さくすることにより、被処理物99の表面におけるビーム径を0.1nm以下とすることも可能である。一方で、被処理物99の表面における電子線のビーム径は、0.5nm以上であることが好適である。この場合、描画に充分な電流密度を確保することができる。
【0051】
また、各プローブ12から流れる電流の電流密度は、1mA/cm2以上30A/cm2以下であることが好適である。
【0052】
本実施形態による描画方法では、電子放出工程において、複数のプローブ12のそれぞれから電子を放出させている。このため、各プローブ12が同時に描画を行うことにより、1つのプローブ12で描画する場合に比して描画速度を向上させることができる。
【0053】
図3は、描画装置1の一変形例の概略構成を示す模式図である。描画装置2は、描画装置1と同様に、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、及び移動機構24を備えている。一方で、描画装置2は、描画装置1の制御部22とは異なる制御部40を備えている。
【0054】
制御部40は、圧電素子42、及び電圧制御部44を有している。圧電素子42は、各プローブ12とプローブ固定板14との間にそれぞれ設けられている。すなわち、各プローブ12は、プローブ固定板14に対して圧電素子42を介して固定されている。この圧電素子42は、電圧を印加されることにより伸縮する。伸長するか収縮するかは電圧の向きによって制御され、伸縮の大きさは電圧の大きさによって制御される。また、圧電素子42は、その伸縮方向がプローブ12の中心軸方向と一致するように設けられている。
【0055】
電圧制御部44は、各圧電素子42に印加する電圧を個別に制御するものである。これにより、制御部40は、電圧制御部44により各圧電素子42の伸縮量を変化させ、各プローブ12と被処理物99との間隔をそれぞれ独立に制御することができる。この間隔が小さければ、被処理物99に照射される電流CRの電流値は大きくなり、一方で電流CRのビーム径は小さくなる。逆に、この間隔が大きければ、電流CRの電流値は小さくなり、一方で電流CRのビーム径は大きくなる。
【0056】
上記の制御部40を備える描画装置2によれば、被処理物99に照射する電流CRのビーム径を高精度に制御することが可能である。なお、描画装置2においては、図1の描画装置1における制御部22を併せて設けることが好適である。この場合、各プローブ12と被処理物99との間隔の制御、及び各プローブ12に印加する電圧の制御を同時に行うことができる。これにより、電流CRのビーム径と電流値とを独立に制御することが可能となる。
【0057】
図4は、描画装置1の他の変形例の概略構成を示す模式図である。描画装置3は、描画装置1と同様に、複数のプローブ12、プローブ固定板14、ステージ16、及び移動機構24を備えている。一方で、描画装置3は、描画装置1の制御部22とは異なる制御部50を備えている。
【0058】
制御部50は、ゲート電極52、及び電圧制御部54を有している。ゲート電極52は、各プローブ12の先端部12bを包囲するように設けられている。ゲート電極52は、各プローブ12から放出される電子の放出量を調節するためのものである。電圧制御部54は、各ゲート電極52と各プローブ12との間に印加する電圧を制御する。制御部50は、電圧制御部54により各ゲート電極52に印加する電圧を変化させることにより、被処理物99に照射される電流CRの電流値を制御することができる。
【0059】
上記の制御部50を備える描画装置3によれば、被処理物99に照射する電流CRの電流値を高精度に制御することが可能である。なお、描画装置3においては、図1の描画装置1における制御部22、及び図3の描画装置2における制御部40を併せて設けることが好適である。制御部22を設けた場合、制御部22により電流値の粗い調整を行い、制御部50により微調整を行うことができる。また、制御部40を設けた場合、電流CRの電流値とビーム径とを独立に制御することが可能となる。
【0060】
図5は、描画装置1における複数のプロ−ブ12の配列パターンを示す平面図である。図5においては、図2と同様に、プローブ固定板14のプローブ固定面14a上に固定された複数のプローブ12が示されている。複数のプローブ12は、図2と同様に、二次元的に配列されている。一方で、図中上下方向に並ぶ複数(ここでは4つ)のプローブ12から構成される列を「プローブ列」と呼ぶことにすると、各プローブ12が、隣りのプローブ列に属するプローブ12と中心がずれて配置されている点で、図2のものとは相違する。すなわち、これらのプローブ12は、千鳥格子状に配列されている。
【0061】
図6は、描画装置1における複数のプロ−ブ12の他の配列パターンを示す平面図である。図5においては、図2と同様に、プローブ固定板14のプローブ固定面14a上に固定された複数のプローブ12が示されている。複数のプローブ12は、一次元的に配列されている。すなわち、各プローブ12の先端部12bが一直線上に乗るような配列となっている。
【0062】
図7は、図1の描画装置1におけるプローブ12の一変形例を示す斜視図である。プローブ13は、突起部13aを複数有している点で、プローブ12と相違する。すなわち、プローブ13は、基台部13cを有しており、基台部13c上には、複数の突起部13aが一体的に立設されている。各突起部13aの先端部13bは、プローブ12におけるものと同様に、尖鋭な形状をしている。このように、1つのプローブ13に複数の突起部13aを設けることにより、複数の突起部13aから放出される電子によって被処理物に照射する電流を形成することができ、描画に充分な電流値を保ちつつ、ビーム径を任意に大きくすることが可能である。このため、一度に広い領域の描画が可能となる。
【0063】
図8は、図7のプローブ13を図1の描画装置1に適用して描画を行う様子を示す模式図である。図8においては、描画装置1の構成のうち、プローブ13及びプローブ固定板14のみを示している。この図に示すように、プローブ13は、その基台部13cがプローブ固定板14に固定されている。描画の際には、各プローブ13が有する複数の突起部13aから電子が放出され、その電子により形成される電流CRが被処理物99へと照射される。このとき、制御部22(図1参照)によって、各プローブ13毎に電子の放出量が制御される。
【0064】
図9は、描画装置1の一使用例を示す模式図である。ここでは、描画装置1は、気相雰囲気中で使用される。描画装置1は、チャンバ62内に収容されている。チャンバ62には、チャンバ62内の圧力を制御する圧力制御装置64が取り付けられている。また、チャンバ62内に気体又は液体を供給する供給装置66が設けられている。供給装置66からの気体又は液体は、描画装置1のノズル32(図1参照)を通って、被処理物の表面に供給される。
【0065】
圧力制御装置64により、チャンバ62内の圧力を例えば1Pa以上2×105Pa(2気圧)以下とした場合を考える。この範囲は、大気圧を中心とする減圧下から加圧下の範囲である。この範囲では、平均自由工程が短く、電子は雰囲気中のガスと衝突を繰り返すため電子線にはならず、微小な放電状態を形成する。よって、上記の圧力範囲においては、この放電により描画が行われる。
【0066】
また、チャンバ62内の圧力を1×10−10Pa以上1Pa未満とした場合を考える。この範囲では、平均自由工程が長く、電子は雰囲気中のガスとほとんど衝突しないか、衝突してもその回数は少ない。よって、この圧力範囲では、電子線により描画が行われる。なお、1×10−2Pa以上1Pa未満の範囲では、条件次第では放電が発生することもある。
【0067】
図10は、描画装置1の他の使用例を示す模式図である。ここでは、描画装置1は、液相雰囲気中で使用される。描画装置1は、水槽72内に収容されている。水槽72には、水槽72に対して所定の溶液を供給する溶液供給装置74が取り付けられている。液相雰囲気においては、液相中のイオンを通じて電流が流れる。従って、この電流により描画が行われる。また、液相雰囲気で描画装置1を使用する場合、プローブに印加する電位は、被処理物に対して正負何れであってもよい。
【0068】
図11(a)及び図11(b)は、描画装置1による描画の一例を示す模式図である。図11(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。これにより、図11(b)に示すように、電流が照射された部分99aがエッチング除去される。例えば、反応性ガスが存在しない加圧雰囲気から真空雰囲気中において、プローブ12と被処理物99との間に電流を流すことにより、放電によるスパッタ蒸発、又は放電若しくは電子線の加熱効果による蒸発を起こすことができる。或いは、液相雰囲気中において電流を流せば、プローブ12近傍の被処理物99表面のみが選択的にイオン化される。このイオン化された部分は液相中に溶出し、それゆえ被処理物99表面がエッチングされる。
【0069】
図12(a)及び図12(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図12(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。これにより、図12(b)に示すように、電流が照射された部分99bに対し、結晶化、非晶質化、結晶欠陥の制御、応力緩和、又はレジストの描画等の改質を施すことができる。これらは、主に熱的な効果を利用するものである。
【0070】
図13(a)及び図13(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図13(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。すると、図13(c)に示すように、電流が照射された部分99cにおいては、雰囲気に供給された気体又は液体が被処理物99と反応することにより、或いは被処理物99の内部へと拡散することにより、ホウ化、炭化、窒化、酸化、又はドーピングが施される。このとき、被処理物99の表面は、比較的高めの圧力に設定されることが好ましい。
【0071】
なお、ホウ化の場合には、ジボランガス雰囲気中等のホウ素を含むガス雰囲気中において描画処理を行うことが望ましい。炭化の場合には、炭化水素ガスやCO2ガス雰囲気中での処理が可能である。窒化の場合には、窒素ガス雰囲気の他、液体窒素やアンモニア溶液中での処理が可能である。酸化の場合には、酸素ガス雰囲気の他、水中においても処理が可能である。ドーピングの場合には、ドーピングする元素を含むガス雰囲気中、或いはそのガスを水素や希ガスで希釈した雰囲気中で処理することが好ましい。
【0072】
図14(a)及び図14(b)は、図1の描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。図14(a)においては、プローブ12からの電流CRが被処理物99表面の一部に照射されている。すると、図14(b)に示すように、電流が照射された部分99dにおいて、雰囲気に供給された気体又は液体が反応し堆積する。雰囲気が気相の場合はCVDのような反応、液相の場合はメッキに順ずる反応となる。例えば、炭化水素ガス雰囲気中で処理を行えば炭素膜が、シランガス雰囲気中であればシリコンが、またWF6ガスを含む雰囲気中であればタングステンが析出できる。また、各種有機金属ガスを適用することもできる。メッキ液を使用することによりNi、Cr、Au等の析出を、液体の有機金属を直接液相で適用することにより各種金属の析出をすることができる。
【0073】
本発明による描画装置及び描画方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、図1の描画装置1において移動機構24は、ステージ16を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させているが、移動機構は、プローブ固定板14を移動させることにより、プローブ12を被処理物99に対して相対的に移動させる構成としてもよい。或いは、移動機構は、ステージ16及びプローブ固定板14の両方を移動させてもよい。また、図3において制御部40は、圧電素子42を用いることにより、プローブ12と被処理物99との間隔を変化させているが、制御部は、静電的な方法により、その間隔を変化させる構成としてもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明による描画装置及び描画方法によれば、描画時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による描画装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】プローブ12が固定されたプローブ固定板14を示す平面図である。
【図3】描画装置1の一変形例の概略構成を示す模式図である。
【図4】描画装置1の他の変形例の概略構成を示す模式図である。
【図5】描画装置1における複数のプロ−ブ12の配列パターンを示す平面図である。
【図6】描画装置1における複数のプロ−ブ12の他の配列パターンを示す平面図である。
【図7】描画装置1におけるプローブ12の一変形例を示す斜視図である。
【図8】図7のプローブ13を図1の描画装置1に適用して描画を行う様子を示す模式図である。
【図9】描画装置1の一使用例を示す模式図である。
【図10】描画装置1の他の使用例を示す模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の一例を示す模式図である。
【図12】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【図13】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【図14】(a)及び(b)は、描画装置1による描画の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1,2,3…描画装置、12,13…プローブ、12a,13a…突起部、12b,13b…先端部、13c…基台部、14…プローブ固定板、14a…プローブ固定面、16…ステージ、22,40,50…制御部、24…移動機構、32…ノズル、32a…噴出口、34…カバー、34a…ノズル挿通孔、42…圧電素子、44,54…電圧制御部、52…ゲート電極、62…チャンバ、64…圧力制御装置、66…供給装置、72…水槽、74…溶液供給装置、99…被処理物、CR…電流。
Claims (22)
- 突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、前記突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、
前記各プローブにおける前記電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御部と、
前記複数のプローブを前記被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする描画装置。 - 突起部を有し、被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、前記突起部の先端から電子を放出する複数のプローブと、
前記各プローブと前記被処理物との間隔を、前記各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御部と、
前記複数のプローブを前記被処理物に対して相対的に移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする描画装置。 - 前記制御部は、前記各プローブと前記被処理物との間に印加する電圧を変化させることにより、前記制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
- 前記制御部は、前記各プローブに対してそれぞれ設けられ、前記各プローブにおける前記電子の放出量を調節するゲート電極を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記複数のプローブは、1枚のプローブ固定板上に固定されており、
前記各プローブは、隣り合う他の前記プローブとの中心間距離が1mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の描画装置。 - 前記プローブにおける前記突起部の先端は、結晶質ダイヤモンド、非晶質炭素、又はLaB6からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記プローブにおける前記突起部の先端は、タングステン、又はモリブデンからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記複数のプローブのうち少なくとも1つは、前記突起部を2つ以上有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記複数のプローブは、一次元的に配列されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記複数のプローブは、二次元的に配列されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の描画装置。
- 描画中において、前記各プローブと前記被処理物との間隔は、0.5nm以上1mm以下に設定されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記被処理物に照射される前記電流は、前記被処理物表面において0.5eV以上1keV以下のエネルギーをもつ電子線であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記被処理物に照射される前記電流は、前記被処理物表面において0.5nm以上100μm以下のビーム径をもつ電子線であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記複数のプローブは、1枚のプローブ固定板上に固定されており、
前記電流が照射される前記被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給するノズルを備え、
前記ノズルの噴出口と前記プローブ固定板の中心との水平距離は10mm以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の描画装置。 - 前記複数のプローブと、前記被処理物の表面のうち少なくとも前記電流が照射される領域とを覆うカバーを備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の描画装置。
- 被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、前記各プローブの前記突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、
前記各プローブにおける前記電子の放出量を、それぞれ独立に制御する制御工程と、
前記複数のプローブを前記被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、
を備えることを特徴とする描画方法。 - 被処理物に照射する電流を生ぜしめるように、突起部を有する複数のプローブに対し、前記各プローブの前記突起部の先端から電子を放出させる電子放出工程と、
前記各プローブと前記被処理物との間隔を、前記各プローブについてそれぞれ独立に制御する制御工程と、
前記複数のプローブを前記被処理物に対して相対的に移動させる移動工程と、
を備えることを特徴とする描画方法。 - 前記制御工程においては、前記各プローブと前記被処理物との間に印加する電圧を変化させることにより、前記制御を行うことを特徴とする請求項16に記載の描画方法。
- 描画中において、前記各プローブと前記被処理物との間隔は、0.5nm以上1mm以下に設定されることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の描画方法。
- 前記被処理物に照射される前記電流は、前記被処理物表面において0.5eV以上1keV以下のエネルギーをもつ電子線であることを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項に記載の描画方法。
- 前記被処理物に照射される前記電流は、前記被処理物表面において0.5nm以上100μm以下のビーム径をもつ電子線であることを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項に記載の描画方法。
- 前記電流が照射される前記被処理物の表面近傍に気体又は液体を供給する供給工程を備えることを特徴とする請求項16〜21のいずれか一項に記載の描画方法。
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JP2003148071A JP2004345071A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | 描画装置及び描画方法 |
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JP2003148071A JP2004345071A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | 描画装置及び描画方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016537501A (ja) * | 2013-09-20 | 2016-12-01 | アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドApplied Materials,Incorporated | ナノメートルスケールの特徴を直接形成する方法及び装置 |
-
2003
- 2003-05-26 JP JP2003148071A patent/JP2004345071A/ja active Pending
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JP2016537501A (ja) * | 2013-09-20 | 2016-12-01 | アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドApplied Materials,Incorporated | ナノメートルスケールの特徴を直接形成する方法及び装置 |
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