JP2004341261A - 反射型表示装置の反射板反射率算出方法およびその装置、並びにプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】反射効率を向上し得る形状の最適化を図れ、波長の違いによる回折方向、強度の変化を予測した設計を実現できる反射型表示装置の反射板反射率算出方法およびその装置、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】記憶装置に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する3次元形状作成演算部111と、記憶装置に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小なポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する波動光学計算部112とを設ける。
【選択図】 図2
【解決手段】記憶装置に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する3次元形状作成演算部111と、記憶装置に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小なポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する波動光学計算部112とを設ける。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法とその反射率を最適化するための算出方法およびその装置、並びにその方法をコンピュータで実行し得るプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
代表的な反射型表示装置として反射型液晶表示装置が挙げられる。反射型表示装置は、周囲光を有効利用できるのが大きな特徴であり、デジタルスチルカメラや、デジタルビデオカメラ、携帯情報端末等の屋外での使用に適している。
また、反射型表示装置は、光源を内蔵する必要が無く、低消費電力化や薄型軽量化が可能なことから、表示装置全体として消費電力の低減が実現でき、軽量薄型を目的とする機器に適している。
【0003】
このように、低消費電力や薄型軽量といった利点を有する反射型表示装置であるが、現状では周囲光が十分効果的に利用されておらず、十分な表示の明るさが得られているとは言い難い。
そこで、反射板の設計を最適化し、周囲光を効率的に利用するための手法が検討されつつある。
【0004】
たとえば、反射型表示装置に入射する周囲光の入射方向ごとの輝度分布データと、輝度分布データに対応した入射方向ごとの反射型表示装置の輝度率分布データとから、表示装置観察者に与える表示面輝度を算出するステップを備える反射型表示装置の表示面輝度算出方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また、液晶表示装置に特化しない汎用的な計算シミュレーターについて考えると、計算アルゴリズムの違いにより光線追跡法と波動光学計算の2つに大別できる。このうち、光線追跡法の反射板シミュレーションへの適用例として、たとえば非特許文献1には、反射板のドット形状を変化させた場合の反射光方向分布の変化について実測とシミュレーションを比較した結果が記載されている。ただし、波動光学計算については、反射板への適用例は見当たらない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−108242号公報
【非特許文献1】
International Display Workshops 2002, p.307−310
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、反射型表示装置の画質を向上させるには、反射板形状の最適化により反射効率を向上させる必要がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1には、反射板自体の反射率分布のシミュレーションに関しては具体的には記載されておらず、上記特許文献1に記載の方法では、反射効率を向上させるための形状の最適化には妥当な手段ではない。
【0009】
また、上記非特許文献1では、光線追跡法により任意の形状を有する反射板の反射率を算出しているが、定性的な計算結果であり、波長の違いを考慮した計算ができないため、波長の違いによる回折方向、強度の変化を予測した設計をすることができないという不利益がある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反射効率を向上し得る形状の最適化を図れ、波長の違いによる回折方向、強度の変化を予測した設計を実現できる反射型表示装置の反射板反射率算出方法およびその装置、並びにプログラムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法であって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップとを有する。
【0012】
好適には、上記第1のステップにおいては、2次元レイアウト情報から適当な関数を選択し、当該関数中の係数を変化させることにより3次元形状を作成する。
【0013】
好適には、上記第1のステップにおいては、開口部を示す特定の構造から開口部の重心座標を計算し、当該開口部の重心座標を原点として所定の軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う。
【0014】
好適には、上記第1のステップにおいては、プロセス条件に基づいて3次元形状の作成を行う。
【0015】
好適には、任意の反射率角度分布を入力値として逆演算することにより所望の反射率角度分布をもつ反射型表示装置の反射板の3次元形状データを算出する第4のステップをさらに有する。
【0016】
好適には、上記第4のステップにおいては、光学計算による反射率分布を正反射成分が多くなるように修正し、当該修正後の反射率分布を入力値として逆演算する。
【0017】
本発明の第2の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する装置であって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報に基づいて3次元形状を作成する3次元形状作成部と、上記3次元形状作成部で作成された3次元形状データに基づいて所定の傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第1の演算部と、上記第1の演算部で得られた微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第2の演算部とを有する。
【0018】
本発明の第3の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法をコンピューターに実行させるためのプログラムであって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップとを含む。
【0019】
反射板の反射率を計算するためには、反射板の3次元形状データを要するが、本発明では作製以前のサンプルについても2次元のレイアウト情報よりたとえば適当な関数(パラメーターは実測値より抽出)を用い、自動作成可能なコンピュータで実行し得るプログラムに基づいて反射板の3次元形状データが作成される。
そして、作成された3次元形状データから様々な傾斜角度や傾斜方位等の傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合への変換が行われ、波動光学計算によりそれらからの反射光のエネルギー伝播の角度分布が算出される。
また、実測可能なサンプル以外の場合に関しても結果を予測すること等の種々の条件を考慮して反射型表示装置の反射板の反射率を算出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0021】
第1実施形態
本第1の実施形態においては、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成および波動光学計算による反射板の反射率計算を行う。
【0022】
図1は、本発明の反射型表示装置の反射板の反射率算出プログラムを実行するための、コンピューターシステムの基本構成を示す図である。
【0023】
このコンピュータシステム10は、演算装置(CPU)11、キーボード等の入力装置12、演算装置11が実行する後述の3次元形状作成プログラムおよび波動光学計算プログラムを記憶するハードディスク等の記憶装置13、演算装置11で算出される3次元形状データおよび波動光学計算による反射板の反射率データを保管するためのメモリ等の保管部14、およびディスプレイ等の出力装置15を有する。
なお、記憶装置13に用いられる記録媒体は固定型または着脱可能型の何れの媒体でもよい。
記憶装置13を構成するハードディスクにはコンピューターを用いて反射率を計算するコンピュータープログラムが記録されており、演算装置11はハードディスクよりプログラムをローカルメモリ上に読み出してプログラムを実行する。
【0024】
コンピュータシステム10において、キーボード等の入力装置12からの入力により読み込まれたデータはハードディスク装置等の保管部14に保存される。演算に必要なデータは、保管部14よりローカルメモリに読み込まれ、演算装置11によって必要な演算が行われ、演算結果をハードディスクの保管部14に保存する。計算の結果はディスプレイあるいはプリンタ等の出力装置15に出力する。
【0025】
演算装置11は、図2に示すように、3次元形状作成演算部111と、第1の演算部および第2の演算部としての波動光学計算部112とを有する。
【0026】
3次元形状作成演算部111は、記憶装置13に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成し、波動光学計算部112に出力する。
【0027】
波動光学計算部112は、記憶装置13に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小な傾斜面、具体的にはポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する。
【0028】
なお、反射型表示装置としては、たとえば図3に示すような反射型液晶表示装置20が適用される。
この液晶表示装置20は、図3に示すように、第1のガラス基板21と、この第1のガラス基板21の対向基板である第2のガラス基板22とを有している。
第1のガラス基板21上に拡散性(凹凸形状)を有する反射板23が形成され、第2のガラス基板22上にカラーフィルタ層24、樹脂層25、配向膜26が積層されている。
そして、反射板22と配向膜24が対向するようにしてスペーサ27を介して両基板間に液晶層28が封入される。
【0029】
以下に、演算装置11における3次元形状データ作成処理、および波動光学計算による反射板の反射率計算の手順を図面に関連付けて順を追って詳細に説明する。
【0030】
まず、3次元形状データの作成処理について説明する。
図4は、図1および図2に示すコンピューターシステム10で実施する、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0031】
まず、反射板のGDS2ファイル等のレイアウト情報を読み込む(ST1)。この場合、たとえば図5に示すように、開口部OPを示す特定の構造から開口部OPの座標を読み込み、開口部OPの重心Gの座標を計算する。
開口部上の座標をx1,x2,…, xn 、 y1,y2,…, yn とすると、重心Gの座標(xg , yg )は、次式で与えられる。
【0032】
【数1】
【0033】
たとえば突起の断面形状を関数で再現する場合、計算に用いる関数の種類、関数中の係数の読み込みを行う(ST3)。
図6に示すように、断面の水平方向をx軸、高さ方向をz軸として、xに対する関数f(x)にて断面形状を与える場合、f(x)は0<x<lの平らな部分と、l<xの裾野の関数f(x−1)で定義する。
f(x)は、開口部OPの重心座標(xg , yg )をx軸の原点として、z軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う(ST4)。
【0034】
f(x)に用いる関数は、以下の表1に示すようなものを選択する。関数は、作成条件に応じて最も適当なものを選択し、実際の凸凹形状に一致するようにパラメータa、bの合わせ込みを行う。
【0035】
【表1】
【0036】
図5に示すように、開口部OPの重心からの距離をrとし、断面形状関数においてx→rとして、点Pにおける高さ情報を算出する。この際、高さを求める点Pと重心Gを結んだ点と開口部輪郭データとの交点との距離dによって断面形状関数のパラメータを補正する。
【0037】
プロセス条件から3次元形状データを算出する場合は、反射板の構成材料の物性値、露光量、現像液の種類、熱処理温度等のプロセス条件の読込みを行う(ST5)。
GDS2ファイル等のマスクレイアウト情報より、反射板が形成される材料上での露光量分布をシミュレーターにより算出する(ST6)。
露光量分布シミュレーションには、実際に使用する露光機のNA、使用する波長等々の光学系に関する情報を入力する。それをもとに材料の物性値、処理温度、時間等を考慮したシミュレーションを実施することにより、任意のプロセス条件における3次元形状データを作成する(ST7)。
このプロセスシミュレーションの際には、市販のシミュレーターを使用しても構わない。また、算出された露光量分布データを処理することにより、直接、高さ情報データに変換したものを利用しても構わない(ST8)。
【0038】
上記のように作成された3次元形状データは、マトリクス状に並んだ高さ情報のデータファイルとして出力される(ST9)。
【0039】
次に、波動光学計算による反射板の反射率計算の手順について説明する。
【0040】
図7は、図1に示すコンピューターシステム10で実施する波動光学計算による反射板の反射率計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0041】
まず、入射光の方向(極角θinci、方位角φinci)や波長λ、観測角度範囲(θ1,obs 〜θ2,obs 、φ1,obs 〜φ2,obs )等々を記述した計算条件データの読込みを行う(ST11)。
次に、計算に用いる3次元形状データの読込みを行う(ST12)。3次元形状データは、上述したような方法で作成した仮想的な形状でも、実物の反射板形状を測定した結果のどちらでも構わない。
【0042】
読み込んだデータを用い、図8に示すような、微小なポリゴンにより覆われた反射板上凸凹の3次元表面形状の作成を行う(ST13)。
この際、ポリゴンの大きさは、波長の3分の1以下とする。なお、図8に示す凸凹は、図3の反射型パネル内で存在する位置と対応している。ポリゴン作成の際には、その要素数が2の累乗個となるように限定した場合、高速フーリエ変換(FFT)による計算が可能になる。
FFT(高速フーリエ変換)の適用の有無に関わらず、光学計算には以下に示すキルヒホッフの公式を用いる。また、図9に、このキルヒホッフの公式で考えている(対象としている)系の構成を示す。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、ψp は点Pでの複素振幅、(∂/∂n )は考える空間の表面に外向きに立てた法線方向の微分演算、dσは閉曲面S上の点Qを中心とする微小面要素、rは点Pと点Qとの距離、kは光の波数を示している。
【0045】
式2を用い、図8に示すような各ポリゴンから反射される光の複素振幅を計算する(ST14)。
この際の計算は、観測範囲内(θ1,obs 〜θ2,obs 、φ1,obs 〜φ2,obs )に限ってよい。各ポリゴンから反射される複素振幅は、同じ角度範囲内のものを全て積算し、その絶対値の2乗が、以下に示す光の強度I(θobs 、φobs )となる(ST15)。
【0046】
【数3】
【0047】
図10は、上記の算出法によって得られた、λ=632.8nm、入射角度20°における反射率の受光角度分布計算結果を示す図であり、図11は、従来の光線追跡法における反射率の受光角度分布計算結果を示す図であり、図12は、反射率の受光角度分布の実測結果を示す図である。
これら図10〜図12において、横軸が受光角度を、縦軸が強度をそれぞれ表している。
【0048】
図10および図12からわかるように、本実施形態に係る算出法によれば、実測結果と比較して、近い結果が得られている。
図11に示す従来の光線追跡法の計算結果では、正反射部以外のピークの再現ができていないが、本発明の計算方法によって図10に示すような実測に近い反射率プロファイルが得られている。
また、上記計算結果は反射板周辺の媒質は屈折率1の空気を想定していたが、空気以外の複数の誘電体中における計算も可能である。
【0049】
また、反射率分布の指向性について、実測(平行、単色光を反射板に入射させて、反射してきた光の投影像)と計算を比較した結果を図13、図14、図15に示す。図13が本発明方法の計算結果を示し、図14が従来の計算法である光線追跡法の計算結果を示し、図15が実測結果を示している。これらは、λ=632.8nm、反射板に対して垂直に光を入射させた場合の結果である。
図12に示す本発明の計算結果は、図15に示す実測結果をよく再現できる。従来の計算法である光線追跡法では、実測結果のような二重のリング状構造が再現できない。
【0050】
図16は、周辺媒質の屈折率が1.6の場合の計算結果を示す図である。屈折率nの媒質中では、光の波数kは以下の式のように変化するので、屈折率1の空気中とは光学的距離が変化する。
【0051】
【数4】
【0052】
したがって、観測点における波動の干渉条件が変化し、図16は、図13と異なる回折像となっていることが示されている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶装置13に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する3次元形状作成演算部111と、記憶装置13に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小なポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する波動光学計算部112とを設けたので、以下の効果を得ることができる。
【0054】
すなわち、任意の微小形状を有する反射板の反射率の角度分布計算が可能となり、結果として、任意方向から観測した場合の反射型表示装置の反射率、コントラスト等の画質の予測が可能となる。また、波動光学計算により、光の波長を考慮した計算が可能となるので、反射板の反射光の色付きを無くすような設計をするための指針となり得る。
また、反射型表示装置の反射特性の最適化が可能になり、従来以上に明るく視認性の高い反射型表示装置を実現可能となる。また、仮想的な表示装置の反射特性が評価可能となることで、明確な設計指針が得られることにより、表示特性の最適化を迅速に行うことできる。
【0055】
第2実施形態
本第2の実施形態においては、FFT(高速フーリエ変換)法による波動光学計算の高速化と逆FFT法による反射板形状の逆算出について説明する。
【0056】
前述のように、ポリゴンの要素数が2の累乗個の場合、FFT(高速フーリエ変換)が可能になる。FFT(高速フーリエ変換)を行う前に、上記式2を以下に示すような離散フーリエ変換の形に変形する。
【0057】
【数5】
【0058】
ここで、k、lは方向余弦、m,nは反射板上での座標を示し、f(m,n)は反射関数、F(k,l)は複素振幅を示す。
また、離散逆フーリエ変換の式は、次のようになる。
【0059】
【数6】
【0060】
FFTの計算に用いるアルゴリズムとしては、代表的なものとしてCooley−Tukeyの方法等を用いることにより、計算速度が飛躍的に向上する。
また、逆FFTが可能であることから、適当な反射率分布F(k,l)を入力することにより、所望の反射板形状f(m,n)を求めることが可能である。
【0061】
図17(A)〜(D)は、逆FFT計算により所望の形状を算出する方法の例を示す図である。図17(A)は凸凹形状の一部を示す図、図17(B)は反射板形状を初期値とし、FFT法により光学計算を行った結果を示す図、図17(C)はこの反射率分布を、正反射成分が多くなるように修正した結果を示す図、図17(D)は図17(C)の反射率分布を入力データとして、逆FFT(高速フーリエ変換)法により反射板形状を逆算した結果を示す図である。
【0062】
このように、正反射成分を増加させると、それに伴い反射板形状が全体的になだらかになっている様子が示されている。
なお、逆FFTの際に入力する反射率分布は、例に示したような実測結果を変換したものでも、全く仮想的なものでも構わない。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、任意の微小形状を有する反射板の反射率の角度分布計算が可能となり、結果として、任意方向から観測した場合の反射型表示装置の反射率、コントラスト等の画質の予測が可能となる。また、波動光学計算により、光の波長を考慮した計算が可能となるので、反射板の反射光の色付きを無くすような設計をするための指針となり得る。
【0064】
また、本発明によれば、反射型表示装置の反射特性の最適化が可能になり、従来以上に明るく視認性の高い反射型表示装置を実現可能となる。また、仮想的な表示装置の反射特性が評価可能となることで、明確な設計指針が得られることにより、表示特性の最適化を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型表示装置の反射板の反射率算出プログラムを実行するためのコンピューターシステムの基本構成を示す図である。
【図2】図1の演算装置のより具体的な構成および機能を説明するための図である。
【図3】反射型液晶表示装置の基本構成を示す図である。
【図4】図1および図2に示すコンピューターシステムで実施する、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】開口部を示す特定の構造から開口部の座標を読み込み、開口部の重心の座標を計算する工程を説明するための図である。
【図6】突起の断面形状を関数で再現する場合に計算に用いる関数の定義を説明するための図である。
【図7】図1に示すコンピューターシステムで実施する波動光学計算による反射板の反射率計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】微小なポリゴンにより覆われた反射板上凸凹の3次元表面形状の作成工程を説明するための図である。
【図9】キルヒホッフの公式で考えている(対象としている)系の構成を示す図である。
【図10】本発明に係る算出法によって得られた、λ=632.8nm、入射角度20°における反射率の受光角度分布計算結果を示す図である。
【図11】従来の光線追跡法における反射率の受光角度分布計算結果を示す図である。
【図12】反射率の受光角度分布の実測結果を示す図である。
【図13】本発明方法の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図14】従来の計算法である光線追跡法の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図15】反射率分布の指向性についての実測結果を示す図である。
【図16】周辺媒質の屈折率が1.6の場合の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図17】逆FFT計算により所望の形状を算出する方法の例を示す図であって、(A)は凸凹形状の一部を示す図、(B)は反射板形状を初期値とし、FFT法により光学計算を行った結果を示す図、(C)はこの反射率分布を、正反射成分が多くなるように修正した結果を示す図、(D)は(C)の反射率分布を入力データとして、逆FFT(高速フーリエ変換)法により反射板形状を逆算した結果を示す図である。
【符号の説明】
10…コンピュータシステム、11…演算装置(CPU)、111…3次元形状データ作成演算部、112…波動光学計算部、12…入力装置、13…記憶装置、14…保管部、15…出力装置、20…反射型液晶表示装置、21…第1のガラス基板、22…第2のガラス基板、23…反射板、24…カラーフィルタ層、25…樹脂層、26…配向膜、27…スペーサ、28…液晶層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法とその反射率を最適化するための算出方法およびその装置、並びにその方法をコンピュータで実行し得るプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
代表的な反射型表示装置として反射型液晶表示装置が挙げられる。反射型表示装置は、周囲光を有効利用できるのが大きな特徴であり、デジタルスチルカメラや、デジタルビデオカメラ、携帯情報端末等の屋外での使用に適している。
また、反射型表示装置は、光源を内蔵する必要が無く、低消費電力化や薄型軽量化が可能なことから、表示装置全体として消費電力の低減が実現でき、軽量薄型を目的とする機器に適している。
【0003】
このように、低消費電力や薄型軽量といった利点を有する反射型表示装置であるが、現状では周囲光が十分効果的に利用されておらず、十分な表示の明るさが得られているとは言い難い。
そこで、反射板の設計を最適化し、周囲光を効率的に利用するための手法が検討されつつある。
【0004】
たとえば、反射型表示装置に入射する周囲光の入射方向ごとの輝度分布データと、輝度分布データに対応した入射方向ごとの反射型表示装置の輝度率分布データとから、表示装置観察者に与える表示面輝度を算出するステップを備える反射型表示装置の表示面輝度算出方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また、液晶表示装置に特化しない汎用的な計算シミュレーターについて考えると、計算アルゴリズムの違いにより光線追跡法と波動光学計算の2つに大別できる。このうち、光線追跡法の反射板シミュレーションへの適用例として、たとえば非特許文献1には、反射板のドット形状を変化させた場合の反射光方向分布の変化について実測とシミュレーションを比較した結果が記載されている。ただし、波動光学計算については、反射板への適用例は見当たらない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−108242号公報
【非特許文献1】
International Display Workshops 2002, p.307−310
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、反射型表示装置の画質を向上させるには、反射板形状の最適化により反射効率を向上させる必要がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1には、反射板自体の反射率分布のシミュレーションに関しては具体的には記載されておらず、上記特許文献1に記載の方法では、反射効率を向上させるための形状の最適化には妥当な手段ではない。
【0009】
また、上記非特許文献1では、光線追跡法により任意の形状を有する反射板の反射率を算出しているが、定性的な計算結果であり、波長の違いを考慮した計算ができないため、波長の違いによる回折方向、強度の変化を予測した設計をすることができないという不利益がある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反射効率を向上し得る形状の最適化を図れ、波長の違いによる回折方向、強度の変化を予測した設計を実現できる反射型表示装置の反射板反射率算出方法およびその装置、並びにプログラムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法であって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップとを有する。
【0012】
好適には、上記第1のステップにおいては、2次元レイアウト情報から適当な関数を選択し、当該関数中の係数を変化させることにより3次元形状を作成する。
【0013】
好適には、上記第1のステップにおいては、開口部を示す特定の構造から開口部の重心座標を計算し、当該開口部の重心座標を原点として所定の軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う。
【0014】
好適には、上記第1のステップにおいては、プロセス条件に基づいて3次元形状の作成を行う。
【0015】
好適には、任意の反射率角度分布を入力値として逆演算することにより所望の反射率角度分布をもつ反射型表示装置の反射板の3次元形状データを算出する第4のステップをさらに有する。
【0016】
好適には、上記第4のステップにおいては、光学計算による反射率分布を正反射成分が多くなるように修正し、当該修正後の反射率分布を入力値として逆演算する。
【0017】
本発明の第2の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する装置であって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報に基づいて3次元形状を作成する3次元形状作成部と、上記3次元形状作成部で作成された3次元形状データに基づいて所定の傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第1の演算部と、上記第1の演算部で得られた微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第2の演算部とを有する。
【0018】
本発明の第3の観点は、反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法をコンピューターに実行させるためのプログラムであって、上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップとを含む。
【0019】
反射板の反射率を計算するためには、反射板の3次元形状データを要するが、本発明では作製以前のサンプルについても2次元のレイアウト情報よりたとえば適当な関数(パラメーターは実測値より抽出)を用い、自動作成可能なコンピュータで実行し得るプログラムに基づいて反射板の3次元形状データが作成される。
そして、作成された3次元形状データから様々な傾斜角度や傾斜方位等の傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合への変換が行われ、波動光学計算によりそれらからの反射光のエネルギー伝播の角度分布が算出される。
また、実測可能なサンプル以外の場合に関しても結果を予測すること等の種々の条件を考慮して反射型表示装置の反射板の反射率を算出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0021】
第1実施形態
本第1の実施形態においては、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成および波動光学計算による反射板の反射率計算を行う。
【0022】
図1は、本発明の反射型表示装置の反射板の反射率算出プログラムを実行するための、コンピューターシステムの基本構成を示す図である。
【0023】
このコンピュータシステム10は、演算装置(CPU)11、キーボード等の入力装置12、演算装置11が実行する後述の3次元形状作成プログラムおよび波動光学計算プログラムを記憶するハードディスク等の記憶装置13、演算装置11で算出される3次元形状データおよび波動光学計算による反射板の反射率データを保管するためのメモリ等の保管部14、およびディスプレイ等の出力装置15を有する。
なお、記憶装置13に用いられる記録媒体は固定型または着脱可能型の何れの媒体でもよい。
記憶装置13を構成するハードディスクにはコンピューターを用いて反射率を計算するコンピュータープログラムが記録されており、演算装置11はハードディスクよりプログラムをローカルメモリ上に読み出してプログラムを実行する。
【0024】
コンピュータシステム10において、キーボード等の入力装置12からの入力により読み込まれたデータはハードディスク装置等の保管部14に保存される。演算に必要なデータは、保管部14よりローカルメモリに読み込まれ、演算装置11によって必要な演算が行われ、演算結果をハードディスクの保管部14に保存する。計算の結果はディスプレイあるいはプリンタ等の出力装置15に出力する。
【0025】
演算装置11は、図2に示すように、3次元形状作成演算部111と、第1の演算部および第2の演算部としての波動光学計算部112とを有する。
【0026】
3次元形状作成演算部111は、記憶装置13に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成し、波動光学計算部112に出力する。
【0027】
波動光学計算部112は、記憶装置13に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小な傾斜面、具体的にはポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する。
【0028】
なお、反射型表示装置としては、たとえば図3に示すような反射型液晶表示装置20が適用される。
この液晶表示装置20は、図3に示すように、第1のガラス基板21と、この第1のガラス基板21の対向基板である第2のガラス基板22とを有している。
第1のガラス基板21上に拡散性(凹凸形状)を有する反射板23が形成され、第2のガラス基板22上にカラーフィルタ層24、樹脂層25、配向膜26が積層されている。
そして、反射板22と配向膜24が対向するようにしてスペーサ27を介して両基板間に液晶層28が封入される。
【0029】
以下に、演算装置11における3次元形状データ作成処理、および波動光学計算による反射板の反射率計算の手順を図面に関連付けて順を追って詳細に説明する。
【0030】
まず、3次元形状データの作成処理について説明する。
図4は、図1および図2に示すコンピューターシステム10で実施する、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0031】
まず、反射板のGDS2ファイル等のレイアウト情報を読み込む(ST1)。この場合、たとえば図5に示すように、開口部OPを示す特定の構造から開口部OPの座標を読み込み、開口部OPの重心Gの座標を計算する。
開口部上の座標をx1,x2,…, xn 、 y1,y2,…, yn とすると、重心Gの座標(xg , yg )は、次式で与えられる。
【0032】
【数1】
【0033】
たとえば突起の断面形状を関数で再現する場合、計算に用いる関数の種類、関数中の係数の読み込みを行う(ST3)。
図6に示すように、断面の水平方向をx軸、高さ方向をz軸として、xに対する関数f(x)にて断面形状を与える場合、f(x)は0<x<lの平らな部分と、l<xの裾野の関数f(x−1)で定義する。
f(x)は、開口部OPの重心座標(xg , yg )をx軸の原点として、z軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う(ST4)。
【0034】
f(x)に用いる関数は、以下の表1に示すようなものを選択する。関数は、作成条件に応じて最も適当なものを選択し、実際の凸凹形状に一致するようにパラメータa、bの合わせ込みを行う。
【0035】
【表1】
【0036】
図5に示すように、開口部OPの重心からの距離をrとし、断面形状関数においてx→rとして、点Pにおける高さ情報を算出する。この際、高さを求める点Pと重心Gを結んだ点と開口部輪郭データとの交点との距離dによって断面形状関数のパラメータを補正する。
【0037】
プロセス条件から3次元形状データを算出する場合は、反射板の構成材料の物性値、露光量、現像液の種類、熱処理温度等のプロセス条件の読込みを行う(ST5)。
GDS2ファイル等のマスクレイアウト情報より、反射板が形成される材料上での露光量分布をシミュレーターにより算出する(ST6)。
露光量分布シミュレーションには、実際に使用する露光機のNA、使用する波長等々の光学系に関する情報を入力する。それをもとに材料の物性値、処理温度、時間等を考慮したシミュレーションを実施することにより、任意のプロセス条件における3次元形状データを作成する(ST7)。
このプロセスシミュレーションの際には、市販のシミュレーターを使用しても構わない。また、算出された露光量分布データを処理することにより、直接、高さ情報データに変換したものを利用しても構わない(ST8)。
【0038】
上記のように作成された3次元形状データは、マトリクス状に並んだ高さ情報のデータファイルとして出力される(ST9)。
【0039】
次に、波動光学計算による反射板の反射率計算の手順について説明する。
【0040】
図7は、図1に示すコンピューターシステム10で実施する波動光学計算による反射板の反射率計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0041】
まず、入射光の方向(極角θinci、方位角φinci)や波長λ、観測角度範囲(θ1,obs 〜θ2,obs 、φ1,obs 〜φ2,obs )等々を記述した計算条件データの読込みを行う(ST11)。
次に、計算に用いる3次元形状データの読込みを行う(ST12)。3次元形状データは、上述したような方法で作成した仮想的な形状でも、実物の反射板形状を測定した結果のどちらでも構わない。
【0042】
読み込んだデータを用い、図8に示すような、微小なポリゴンにより覆われた反射板上凸凹の3次元表面形状の作成を行う(ST13)。
この際、ポリゴンの大きさは、波長の3分の1以下とする。なお、図8に示す凸凹は、図3の反射型パネル内で存在する位置と対応している。ポリゴン作成の際には、その要素数が2の累乗個となるように限定した場合、高速フーリエ変換(FFT)による計算が可能になる。
FFT(高速フーリエ変換)の適用の有無に関わらず、光学計算には以下に示すキルヒホッフの公式を用いる。また、図9に、このキルヒホッフの公式で考えている(対象としている)系の構成を示す。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、ψp は点Pでの複素振幅、(∂/∂n )は考える空間の表面に外向きに立てた法線方向の微分演算、dσは閉曲面S上の点Qを中心とする微小面要素、rは点Pと点Qとの距離、kは光の波数を示している。
【0045】
式2を用い、図8に示すような各ポリゴンから反射される光の複素振幅を計算する(ST14)。
この際の計算は、観測範囲内(θ1,obs 〜θ2,obs 、φ1,obs 〜φ2,obs )に限ってよい。各ポリゴンから反射される複素振幅は、同じ角度範囲内のものを全て積算し、その絶対値の2乗が、以下に示す光の強度I(θobs 、φobs )となる(ST15)。
【0046】
【数3】
【0047】
図10は、上記の算出法によって得られた、λ=632.8nm、入射角度20°における反射率の受光角度分布計算結果を示す図であり、図11は、従来の光線追跡法における反射率の受光角度分布計算結果を示す図であり、図12は、反射率の受光角度分布の実測結果を示す図である。
これら図10〜図12において、横軸が受光角度を、縦軸が強度をそれぞれ表している。
【0048】
図10および図12からわかるように、本実施形態に係る算出法によれば、実測結果と比較して、近い結果が得られている。
図11に示す従来の光線追跡法の計算結果では、正反射部以外のピークの再現ができていないが、本発明の計算方法によって図10に示すような実測に近い反射率プロファイルが得られている。
また、上記計算結果は反射板周辺の媒質は屈折率1の空気を想定していたが、空気以外の複数の誘電体中における計算も可能である。
【0049】
また、反射率分布の指向性について、実測(平行、単色光を反射板に入射させて、反射してきた光の投影像)と計算を比較した結果を図13、図14、図15に示す。図13が本発明方法の計算結果を示し、図14が従来の計算法である光線追跡法の計算結果を示し、図15が実測結果を示している。これらは、λ=632.8nm、反射板に対して垂直に光を入射させた場合の結果である。
図12に示す本発明の計算結果は、図15に示す実測結果をよく再現できる。従来の計算法である光線追跡法では、実測結果のような二重のリング状構造が再現できない。
【0050】
図16は、周辺媒質の屈折率が1.6の場合の計算結果を示す図である。屈折率nの媒質中では、光の波数kは以下の式のように変化するので、屈折率1の空気中とは光学的距離が変化する。
【0051】
【数4】
【0052】
したがって、観測点における波動の干渉条件が変化し、図16は、図13と異なる回折像となっていることが示されている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶装置13に記憶されている形状作成プログラムに従って、入力装置12から入力される反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する3次元形状作成演算部111と、記憶装置13に記憶されている波動光学計算プログラムに従って、3次元形状作成演算部111で得られた3次元形状データから反射板形状を微小なポリゴンの集合として近似して波動光学計算を行い、その結果より、空気、若しくは複数の誘電体中における反射型表示装置の反射板の反射率角度分布を算出する波動光学計算部112とを設けたので、以下の効果を得ることができる。
【0054】
すなわち、任意の微小形状を有する反射板の反射率の角度分布計算が可能となり、結果として、任意方向から観測した場合の反射型表示装置の反射率、コントラスト等の画質の予測が可能となる。また、波動光学計算により、光の波長を考慮した計算が可能となるので、反射板の反射光の色付きを無くすような設計をするための指針となり得る。
また、反射型表示装置の反射特性の最適化が可能になり、従来以上に明るく視認性の高い反射型表示装置を実現可能となる。また、仮想的な表示装置の反射特性が評価可能となることで、明確な設計指針が得られることにより、表示特性の最適化を迅速に行うことできる。
【0055】
第2実施形態
本第2の実施形態においては、FFT(高速フーリエ変換)法による波動光学計算の高速化と逆FFT法による反射板形状の逆算出について説明する。
【0056】
前述のように、ポリゴンの要素数が2の累乗個の場合、FFT(高速フーリエ変換)が可能になる。FFT(高速フーリエ変換)を行う前に、上記式2を以下に示すような離散フーリエ変換の形に変形する。
【0057】
【数5】
【0058】
ここで、k、lは方向余弦、m,nは反射板上での座標を示し、f(m,n)は反射関数、F(k,l)は複素振幅を示す。
また、離散逆フーリエ変換の式は、次のようになる。
【0059】
【数6】
【0060】
FFTの計算に用いるアルゴリズムとしては、代表的なものとしてCooley−Tukeyの方法等を用いることにより、計算速度が飛躍的に向上する。
また、逆FFTが可能であることから、適当な反射率分布F(k,l)を入力することにより、所望の反射板形状f(m,n)を求めることが可能である。
【0061】
図17(A)〜(D)は、逆FFT計算により所望の形状を算出する方法の例を示す図である。図17(A)は凸凹形状の一部を示す図、図17(B)は反射板形状を初期値とし、FFT法により光学計算を行った結果を示す図、図17(C)はこの反射率分布を、正反射成分が多くなるように修正した結果を示す図、図17(D)は図17(C)の反射率分布を入力データとして、逆FFT(高速フーリエ変換)法により反射板形状を逆算した結果を示す図である。
【0062】
このように、正反射成分を増加させると、それに伴い反射板形状が全体的になだらかになっている様子が示されている。
なお、逆FFTの際に入力する反射率分布は、例に示したような実測結果を変換したものでも、全く仮想的なものでも構わない。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、任意の微小形状を有する反射板の反射率の角度分布計算が可能となり、結果として、任意方向から観測した場合の反射型表示装置の反射率、コントラスト等の画質の予測が可能となる。また、波動光学計算により、光の波長を考慮した計算が可能となるので、反射板の反射光の色付きを無くすような設計をするための指針となり得る。
【0064】
また、本発明によれば、反射型表示装置の反射特性の最適化が可能になり、従来以上に明るく視認性の高い反射型表示装置を実現可能となる。また、仮想的な表示装置の反射特性が評価可能となることで、明確な設計指針が得られることにより、表示特性の最適化を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型表示装置の反射板の反射率算出プログラムを実行するためのコンピューターシステムの基本構成を示す図である。
【図2】図1の演算装置のより具体的な構成および機能を説明するための図である。
【図3】反射型液晶表示装置の基本構成を示す図である。
【図4】図1および図2に示すコンピューターシステムで実施する、2次元レイアウト情報からの3次元形状データの作成方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】開口部を示す特定の構造から開口部の座標を読み込み、開口部の重心の座標を計算する工程を説明するための図である。
【図6】突起の断面形状を関数で再現する場合に計算に用いる関数の定義を説明するための図である。
【図7】図1に示すコンピューターシステムで実施する波動光学計算による反射板の反射率計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】微小なポリゴンにより覆われた反射板上凸凹の3次元表面形状の作成工程を説明するための図である。
【図9】キルヒホッフの公式で考えている(対象としている)系の構成を示す図である。
【図10】本発明に係る算出法によって得られた、λ=632.8nm、入射角度20°における反射率の受光角度分布計算結果を示す図である。
【図11】従来の光線追跡法における反射率の受光角度分布計算結果を示す図である。
【図12】反射率の受光角度分布の実測結果を示す図である。
【図13】本発明方法の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図14】従来の計算法である光線追跡法の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図15】反射率分布の指向性についての実測結果を示す図である。
【図16】周辺媒質の屈折率が1.6の場合の反射率分布の指向性についての計算結果を示す図である。
【図17】逆FFT計算により所望の形状を算出する方法の例を示す図であって、(A)は凸凹形状の一部を示す図、(B)は反射板形状を初期値とし、FFT法により光学計算を行った結果を示す図、(C)はこの反射率分布を、正反射成分が多くなるように修正した結果を示す図、(D)は(C)の反射率分布を入力データとして、逆FFT(高速フーリエ変換)法により反射板形状を逆算した結果を示す図である。
【符号の説明】
10…コンピュータシステム、11…演算装置(CPU)、111…3次元形状データ作成演算部、112…波動光学計算部、12…入力装置、13…記憶装置、14…保管部、15…出力装置、20…反射型液晶表示装置、21…第1のガラス基板、22…第2のガラス基板、23…反射板、24…カラーフィルタ層、25…樹脂層、26…配向膜、27…スペーサ、28…液晶層。
Claims (17)
- 反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法であって、
上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、
上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、
上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップと
を有する反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 上記第1のステップにおいては、2次元レイアウト情報から適当な関数を選択し、当該関数中の係数を変化させることにより3次元形状を作成する
請求項1記載の反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 上記第1のステップにおいては、開口部を示す特定の構造から開口部の重心座標を計算し、当該開口部の重心座標を原点として所定の軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う
請求項2記載の反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 上記第1のステップにおいては、プロセス条件に基づいて3次元形状の作成を行う
請求項1記載の反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 任意の反射率角度分布を入力値として逆演算することにより所望の反射率角度分布をもつ反射型表示装置の反射板の3次元形状データを算出する第4のステップをさらに有する
請求項1記載の反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 上記第4のステップにおいては、光学計算による反射率分布を正反射成分が多くなるように修正し、当該修正後の反射率分布を入力値として逆演算する
請求項5記載の反射型表示装置の反射板反射率算出方法。 - 反射型表示装置の反射板の反射率を算出する装置であって、
上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報に基づいて3次元形状を作成する3次元形状作成部と、
上記3次元形状作成部で作成された3次元形状データに基づいて所定の傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第1の演算部と、
上記第1の演算部で得られた微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第2の演算部と
を有する反射型表示装置の反射板反射率算出装置。 - 上記3次元形状作成部は、2次元レイアウト情報から適当な関数を選択し、当該関数中の係数を変化させることにより3次元形状を作成する
請求項7記載の反射型表示装置の反射板反射率算出装置。 - 上記3次元形状作成部は、開口部を示す特定の構造から開口部の重心座標を計算し、当該開口部の重心座標を原点として所定の軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う
請求項8記載の反射型表示装置の反射板反射率算出装置。 - 上記3次元形状作成部は、プロセス条件に基づいて3次元形状の作成を行う
請求項7記載の反射型表示装置の反射板反射率算出装置。 - 上記第2の演算部は、任意の反射率角度分布を入力値として逆演算することにより所望の反射率角度分布をもつ反射型表示装置の反射板の3次元形状データを算出する
請求項7記載の反射型表示装置の反射板反射率算出装置。 - 反射型表示装置の反射板の反射率を算出する方法をコンピューターに実行させるためのプログラムであって、
上記反射型表示装置の反射板の2次元レイアウト情報から3次元形状データを作成する第1のステップと、
上記3次元形状データから反射板形状を傾斜情報を有する微小な傾斜面の集合に変換する第2のステップと、
上記微小な傾斜面の集合からの反射光のエネルギー伝播の角度分布を波動光学計算により算出する第3のステップと
を含むコンピューターに実行させるためのプログラム。 - 上記第1のステップにおいては、2次元レイアウト情報から適当な関数を選択し、当該関数中の係数を変化させることにより3次元形状を作成する
請求項12記載のコンピューターに実行させるためのプログラム。 - 上記第1のステップにおいては、開口部を示す特定の構造から開口部の重心座標を計算し、当該開口部の重心座標を原点として所定の軸を中心として回転させることにより3次元形状の作成を行う
請求項13記載のコンピューターに実行させるためのプログラム。 - 上記第1のステップにおいては、プロセス条件に基づいて3次元形状の作成を行う
請求項12記載のコンピューターに実行させるためのプログラム。 - 任意の反射率角度分布を入力値として逆演算することにより所望の反射率角度分布をもつ反射型表示装置の反射板の3次元形状データを算出する第4のステップをさらに有する
請求項12記載のコンピューターに実行させるためのプログラム。 - 上記第4のステップにおいては、光学計算による反射率分布を正反射成分が多くなるように修正し、当該修正後の反射率分布を入力値として逆演算する
請求項16記載のコンピューターに実行させるためのプログラム。
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JP2010020528A (ja) * | 2008-07-10 | 2010-01-28 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 光反射板の光強度分布シミュレーション装置、シミュレーション方法、および該方法を実行させるプログラム |
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2003
- 2003-05-15 JP JP2003138024A patent/JP2004341261A/ja active Pending
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