JP2004339430A - 機能物質含有組成物、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機能物質、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有し、特定の粘度特性を有する記録特性に優れた機能物質含有組成物を提供する。
【解決手段】機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である機能物質含有組成物。前記機能物質がブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されている。前記ブロックポリマーまたはグラフトポリマーがポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有する。
【選択図】 なし
【解決手段】機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である機能物質含有組成物。前記機能物質がブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されている。前記ブロックポリマーまたはグラフトポリマーがポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能物質含有組成物、画像形成方法及び画像形成装置に関し、特に各種機能材料として使用することができるポリマーを含む機能性物質分散組成物、それを用いた画像またはパターン形成方法および形成装置に関する。
【0002】
【背景技術】
機能物質を含有する分散材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、または粒状固体として着色剤を有するインク、トナー等の色材が良く知られている。そうした中でも特に色材を含有する組成物を利用するデジタル印刷技術は近年非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡させ、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。耐候性や定着性を改善する目的で顔料分散インクを使用することが検討されている。例えば、親水性成分および疎水性成分を各1成分以上有するイオン性ブロックポリマーによって顔料を分散させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、なお様々な面で改善が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第5,085,698号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、機能物質、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有し、特定の粘度特性を有する記録特性が良好な機能物質含有組成物を提供しようとするものである。
また、本発明は、該機能物質含有組成物を用いた記録特性が良好な画像又はパターン形成方法を含む画像形成方法、およびそれに用いる画像形成装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の発明は、機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする機能物質含有組成物である。
【0007】
好ましくは前記機能物質がブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されている方がよい。また本発明の好ましい一形態は前記ブロックポリマーまたはグラフトポリマーがポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とする組成物である。さらに本発明の好ましい一形態はインク組成物である。
【0008】
本発明の第二の発明は、前記組成物を定常的振動もしくは流動状態下に置いた状態から、画像又はパターンを形成もしくは記録する画像形成方法である。本発明では前記組成物を吐出することにより画像又はパターンを形成、記録する方法が好ましい例として挙げられる。また。前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子として、ピエゾ素子または表面弾性波素子を使用することが好ましい例として挙げられる。
【0009】
さらに本発明の第三の発明は前記画像又はパターンを形成、記録する画像形成方法に用いる画像形成装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の発明は、機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする機能物質含有組成物である。
【0011】
本発明における機能物質とは、所望の機能を発揮する化合物または組成物を意味する。例えば、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、また、色材、代表的には顔料あるいは染料をあげることができる。例えば、上記の農薬であれば除草効果を有する活性化合物、殺虫効果を有する活性化合物である。また、上記の医薬であれば、対象の症状を緩和または緩解する化合物である。
【0012】
また、上記の色材としての利用では、顔料のような粒状固体、染料化合物などである。本発明においては機能物質として好ましく色材が用いられる。色材としては前述したように顔料が例としてあり、無機の無彩色顔料、有機、無機の有彩色顔料があり、また、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0013】
以下に顔料の例を挙げる。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
黄色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
また、本発明には顔料と同様に染料を用いることもできる。使用しうる染料は、公知のものでも新規のものでもよく、例えば以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、脂溶性(油溶性)染料又は、分散染料の不溶性色素を用いることができるが、固体化した状態で使用されてもよい。この点では好ましくは、例えば、油溶性染料が使用されえる。
【0018】
例としては、C.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135;C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219;C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等が挙げられる。
【0019】
水溶性染料も使用することが出来、例としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0020】
なお、これら上記の色材の例は、本発明の組成物に対して特に好ましいものであるが、本発明に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
【0021】
本発明に用いられる機能性物質は、組成物の重量に対して、全体で0.01〜80重量%が好ましい。機能物質の量が、0.01重量%未満となると、十分な機能が得られなくなる場合が有り、80重量%を超えると分散性が悪化したりする場合がある。より好ましい範囲としては0.1重量%から50重量%の範囲である。さらに好ましくは0.3重量%から30重量%の範囲である。
【0022】
また、本発明の組成物は溶媒を含有する。本発明の組成物に含まれる溶媒は、特に限定されないが、組成物に含まれる成分を溶解、懸濁、分散できる媒体を意味する。本発明では、直鎖、分岐鎖、環状の各種脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素芳香族炭化水素などの有機溶媒、水性溶媒、水などが溶媒として使用でき、もちろんそれらの混合溶媒を使用することも可能である。特に、本発明の組成物では水および水性溶媒を好適に使用することができる。
【0023】
水性溶媒の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を挙げることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。水のpHに関しても全ての範囲で使用可能であるが、好ましくはpHは1から14の間である。
【0024】
また、本発明に特徴的に使用されるブロックポリマーは、ブロックポリマーまたはブロックコポリマーと呼ばれる、異なるセグメント構造のポリマーが一つの鎖状に共有結合で結合したポリマーである。また、本発明で用いられるグラフトポリマーは異なるセグメント構造のポリマーがT字状に共有結合したポリマーである。
【0025】
次に本発明にさらに特徴的に用いられる成分であるブロックポリマーについて説明する。本発明に用いることができるブロックポリマーとして、具体的な例をあげると、アクリル、メタクリル系ブロックポリマー、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロックポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロックポリマー等、従来から知られているブロックポリマーを用いることもできる。本発明において、ブロックポリマーはAB、ABA、ABD等のブロック形態がより好ましい。A、B、Dはそれぞれ異なるブロックセグメントを示す。
【0026】
本発明に用いられるグラフトポリマーは、ポリマーチェインの中途において別のポリマーチェインと結合を形成している、代表的にはT字状のポリマーであり、アクリル系あるいはメタクリル系のポリマーチェイン末端がポリビニルアルコールチェインや縮合系のポリエステル、ポリアミドなどのポリマーチェインあるいは別のアクリル系あるいはメタクリル系のポリマーチェインの中途部分に結合した構造のポリマーが例としてあげられる。
【0027】
また、本発明では、ブロックポリマーがあるポリマー鎖にT字状に結合してグラフトポリマーとなっていてもよい。また、ブロックポリマーの各セグメントは共重合セグメントであってもよいし、その共重合の形態は限定されず、例えばランダムセグメントであってもグラジュエーションセグメントであってもよい。
【0028】
本発明では、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーが好ましく用いられる。特に好ましくはポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーである。本発明に好ましく用いられるポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリアルケニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等で行うこともできる。
【0029】
また、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーの構造は、ビニルエーテルと他のポリマーからなる共重合体であってもよい。
【0030】
好ましく用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーは、以下の一般式(1)で表される繰り返し単位構造が持つことが好ましい。
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)l −R4 もしくは−(CH2 )m −(O)n −R4 から選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、もしくはCH3 である。R4 は水素原子、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2 CHO、−CO−CH=CH2 、−CO−C(CH3 )=CH2 、CH2 COOR5 からなり、R4 が水素原子以外である場合、炭素原子上の水素原子は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R5 は水素原子または炭素数1から5のアルキル基である。)
【0033】
本発明で、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基については、可能な位置異性体のいずれのものであってもよい。
【0034】
本発明では、好ましく両親媒性のブロックポリマーが使用される。例えば、上記一般式(1)の繰り返し単位構造から、疎水性のブロックセグメントと親水性のブロックセグメントを選択、合成することにより得ることができる。
【0035】
次に、ブロックポリマーのポリビニルエーテル構造の繰り返し単位構造として、ビニルエーテルモノマーの構造の例をあげるが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されない。
【0036】
【化2】
【0037】
なお、式中、Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基を表す。
【0038】
以下に、これらのビニルエーテルモノマーからなる、ポリビニルエーテルの構造を例示するが、本発明に用いられるポリマーは、これらに限定されない。
【0039】
【化3】
【0040】
以上のポリビニルエーテルにおいて、繰り返し単位数におけるu、v、wがそれぞれ独立に1以上10,000以下であることが好ましく、またその合計(u+v+w)が10以上20,000以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明で用いられるブロックポリマーの分子量分布Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.0以下であることが好ましい。更に好ましくは1.6以下であり、更に好ましくは1.3以下である。さらに好ましくは1.2以下である。
【0042】
本発明で用いられるブロックポリマーの数平均分子量Mnは1000〜30万であるが好ましい。1000未満あるは30万を超えると所定の機能を奏する物質を溶媒中において良好に分散できない場合がある。
【0043】
本発明の機能物質は、外的環境から攻撃による変性を抑制する意味でブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されていることが好ましい。自己集積構造を形成することにより機能物質を容易に内包することができる点でブロックポリマーまたはグラフトポリマーを使用することが好ましい。
【0044】
また、分散安定性向上、包接性向上のためにはブロックポリマーの分子運動性がよりフレキシブルであることが機能性物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。さらには後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、ガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。
【0045】
本発明の組成物中に含有される前記ブロックポリマーの含有量は、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%が望ましい。ブロックポリマーの量が0.1重量%未満となると、本発明のインク組成物中に含まれる色材を十分に分散したり、包接したりすることができない場合があり、90重量%を超えると粘性が大きくなりすぎる場合がある。
【0046】
本発明の組成物は、前述したように好ましくは機能物質を内包している。内包状態は、例えばブロックポリマーまたはグラフトポリマーが形成する水中でのミセルに、水に不溶の有機溶媒中に色材を溶解させ、そののち該有機溶媒を留去することにより形成することが出来る。そのほかに有機溶剤中にポリマーと色材を共に溶解させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより包接状態を形成し、残存する有機溶媒を留去することにより形成することも可能である。さらには例えばブロックポリマーまたはグラフトポリマーが形成する水中でのミセルに水に不溶の有機溶媒中に顔料を分散させることによっても行なうことが出来る。そのほかに有機溶剤中にポリマーを溶解し色材を分散させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより内包状態を形成することにより形成することも可能である。内包状態を確認するためには、各種電子顕微鏡、X線回折等の機器分析により実施することが可能である。また、ミセル状態の包接の場合、ミセル崩壊条件で色材が溶媒からポリマーと別々に分離することで内包状態を間接的に確認することが出来る。
【0047】
以上説明してたようにブロックポリマーまたはグラフトポリマーがミセル状態を形成することが好ましく、そのために本発明に用いられるブロックポリマーまたはグラフトポリマーは両親媒性であることが好ましい。
【0048】
ブロックポリマーまたはグラフトポリマーに機能物質が内包されている割合は、好ましくは90重量%以上もっと好ましくは95重量%以上、さらには98重量%以上が好ましい。この量比に関しても各種電子顕微鏡、X線回折等の機器分析、色材の発色濃度分析等により、また、前記した間接法によっても観測することが可能である。
【0049】
また、本発明の組成物には上記以外の、例えば酸化防止剤、減粘剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等の添加物を含有させることも可能である。
【0050】
本発明の組成物の特徴は、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることである。粘度の測定は以下のように行なうことができる。
本発明の組成物の粘度の測定は、通常の使用温度で行うが一般的には25℃で行い、回転粘度測定装置を用いて行なう。代表的な装置としては、E型等各種回転粘度計、あるいはレオメーターであり、たとえばハーケ社回転粘度計、ブルックフィールド社回転粘度計、東機産業社回転粘度計、レオロジカ社レオメーターDAR100等がある。
【0051】
回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)は回転粘度計またはレオメーターの回転数がそれぞれ0.5rpm、100rpmの流動状態での粘度を言い、文字通り回転数が0.5rpm、100rpmの回転数における回転粘度である。
【0052】
本発明はすなわち静的状態での粘度より流動状態での粘度が小さい、いわゆるチキソトロピー性の大きい液体組成物であり、その大きさが実効的である必要性から回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である必要がある。このような特性を有する組成物は、比較して低粘度である流動状態で低粘度で機能しえる用い方をし、比較して高粘度となる静止状態では高粘度で機能しえる用い方をするものに対して好適に用いられる。このような用いられ方をする組成物、方法としては、代表的にはインク組成物が挙げられる。さらに一例として挙げれば、印刷、そのインク組成物においては、潜像を形成した回転体にインク組成物を供給し、高速回転状態でインクを潜像に付着し現像化する。そして受像媒体である紙に同じく高速回転状態で転写する。このような工程において前記高速回転状態では微細な画像パターンが実現できるようインク組成物は低粘度である必要があるが、インクの供給あるいは紙に転写した後の状態では、そのような低粘度ではなく、高粘度状態であることが、インク供給のスピードの制御あるいは紙に転写した後の混色や裏移りの抑制のために必要となっている。
【0053】
従来印刷インクを調整するには均一な分散とその安定性確保のために多大な工程を経て調製されねばならなかったところ、本発明においては高分散性とその安定性を持つブロックポリマーあるいはグラフトポリマーを用いるため、均一性及び安定性に非常に優れた組成物を提供することができる。そのために分子溶解状態のポリマーが特性の不安定要因となることから、好ましくはブロックポリマーあるいはグラフトポリマーは両親媒性であって、臨界ミセル濃度は1.0g/l以下であることが好ましい。また、デジタルプリンティングの分野では、インクジェット技術が好適かつ代表的に挙げられる。
【0054】
その中でたとえばコンティニュアスタイプのインクジェット記録方法においては、画像形成時は継続的にインクジェットヘッドからインクが吐出され、そのうち画像形成したい情報のみを電界等により制御し受像媒体に記録する。すなわちインクは、ヘッドから吐出するときは高速な流動状態であり、受像した後は静的な状態へ置かれることとなり、本発明の回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である組成物が好適に用いられる。さらにオンデマンド型のピエゾインクジェットヘッドにおいても同様に、本発明の組成物は好適に用いられる。この場合特に好ましくは、ピエゾ素子により非選択記録時、選択記録時に関らず一定の微小振動をインク組成物に与えておき低粘度状態としておくことである。そしてこの低粘度状態で吐出信号によってインクを吐出させることにより記録、画像形成することができる。アクチュエイターはピエゾ素子に限定されなくてもよく、他には表面弾性波なども使用することができる。
【0055】
本発明の組成物は、機能物質とブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有することを特徴とする組成物であって、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする液体組成物である。均一な分散とその安定性を得、なおかつ安定に回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である特性を好適に実現するためにブロックポリマーまたはグラフトポリマーを用いることが必要である。このためさらにブロックポリマーを使用することがより好ましい。また、安定に前述した粘度特性を保持するという意味では、代表的にはインクジェット技術に使用されるときのように微小液滴を形成して使用する場合においてもその非常に微小な液滴の粘度特性が均一であることも含んでおり、そのような要請に対して応え得るためにもブロックポリマーを使用することが好ましく、前述したような好適なブロックポリマーを用いることができる。また、現実にはナノリッター、ピコリッターオーダーの液体組成物の一つ一つの粘性を測定することは困難であるため、実際には記録特性によってその均一性を判断することが可能である。
【0056】
さらには本発明の組成物は、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であるが、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上あるいは1000以上あるいは10000以上が良い。10未満では例えばインクジェット記録において記録動作時と受像紙上での粘度差が不充分で良好な画像を形成できない場合が有る。
【0057】
また、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)を10以上に制御する方法としては、代表的にはブロックポリマーあるいはグラフトポリマーの条件を変化することにより実施することができる。例えば、その濃度、分散液の水素イオン濃度、ポリマーの構造である。もちろん溶媒の種類を変更したり、添加剤によっても制御することが可能である。
【0058】
組成物の特性安定性、特に微小液滴状態における安定性のために、前記組成物の粒子の平均粒径が200nm以下であることが好ましい。特に機能物質として色材を用いるとき、粒子の粒径が小さい場合、色合いが良好な組成物を実現することができる。前述したように本発明では機能性物質はブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されていることが好ましい。本発明の組成物をインク組成物に適用した場合、色材分散インクの分散安定性、着色力、さらに色の鮮やかさには分散粒子の粒径及び粒径の均一さが大きく影響を及ぼす。すなわち溶媒中に分散した粒子の粒径が非常に大きいと粒子間で凝集を起こしてしまい安定に分散することが出来なくなる場合があったりする。また粒径と着色力は反比例の関係にあることから(Annalen der Physik、25巻、377頁、1908年)、粒径が大きすぎると着色力が低下してしまうことがある。
【0059】
このため本発明においては、粒子の平均粒径は前述した通り、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下で、さらに好ましくは100nm以下である。平均粒径は様々な方法で測定することが可能である。例えば、電子顕微鏡による直接観察、小角中性子線回折、小角X線回折、光散乱法、レーザー回折法などの方法がある。200nm、100nmレベルの粒子の粒径を測定するのに好ましくは動的光散乱法により測定することができる。粒子の粒径分布は、光子相関法である動的光散乱法によって測定可能である。粒径の均一さの指標としては一般的に、Gulariらが示した分散度指数が用いられる(The Journal of Chemical Physics、70巻、3965頁、1979年)。分散度指数は粘度特性の安定性のため、好ましくは、0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。分散度指数は小さいほど粒径分布が狭くなる。動的光散乱法による粒径測定装置としては、大塚電子(株)のDLS7000等の装置がある。
【0060】
本発明の第二の発明は、前記組成物を定常的振動もしくは流動状態下に置いた状態から、画像又はパターンを形成、記録する方法である。前述したように、本発明では前記組成物を吐出することにより画像又はパターンを形成、記録する方法が好ましい例として挙げられる。また。前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子として、ピエゾ素子や表面弾性波素子を使用することが好ましい例として挙げられる。ピエゾ素子とは圧電素子のことであり、電界により材質がひずむ特性を有する材料を用いた素子であり、例えばPZTやポリビニリデンフルオライド、リチウムナイオベート等の材料を使用することができる。表面弾性波素子は例えば圧電材基板上にくしば型電極を構成し交流電界を印加することにより、圧電材基板表面に発生する弾性波を利用するものである。特開平02−269058に記載されているような方法を用いてインクジェット記録を行なうことが可能である。定常的振動の周波数は好ましくは1Hz以上、さらに好ましくは10Hz以上、100Hz以上である。特に表面弾性波デバイスの場合駆動自身が高周波数で行なわれるため、好ましく用いられる。
【0061】
本発明は例えば上記方法により、パターンを形成する方法である。好ましい一実施形態はインクジェット法によるパターン形成方法である。さらに本発明の好ましい一実施形態は前記インクを用いて画像を形成する画像形成方法である。本発明のインクは、各種インクジェット法による画像形成装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。用いられるインクジェット法は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式のような周知の方法であってもよい。また、コンティニュアス型またはオンデマンド型のいずれの方法を用いてもよい。また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の最終被記録媒体に転写する記録方式に用いることもできる。
【0062】
また本発明のパターン形成方法で電子回路やデバイスのパターンを形成したりすることもできる。
【0063】
本発明の第三の発明は前記パターン形成方法を用いたパターン形成装置である。好ましい一実施形態はインク組成物を用いるインクジェット記録装置である。圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等のようなインクジェット記録装置を含む。図1に、インクジェット記録装置の概略的機能図を示す。50はインクジェット記録装置20の中央処理ユニット(CPU)である。CPU50を制御するためのプログラムは、プログラムメモリ66に記憶されていてもよいし、あるいはいわゆるファームウェアとしてEEPROM(不図示)等の記憶手段に記憶されていてもよい。インクジェット記録装置は、記録データ作成手段(不図示、コンピュータなど)から、プログラムメモリ66に記録データを受容する。記録データは、記録すべき画像あるいは文字の情報そのものでもよいし、それら情報の圧縮されたものでもよいし、または符号化された情報であってもよい。圧縮または符号化された情報を処理する場合には、CPU50に伸長または展開を行わせて記録すべき画像あるいは文字の情報を得ることができる。Xエンコーダ62(例えば、X方向または主走査方向に関する)およびYエンコーダ64(例えば、Y方向または副走査方向に関する)を設けて、被記録媒体に対するヘッドの相対位置をCPU50に通知することができる。
【0064】
CPU50は、プログラムメモリ66、Xエンコーダ62およびYエンコーダ64の情報に基づいて、画像を記録するための信号をXモータ駆動回路52、Yモータ駆動回路54およびヘッド駆動回路60に送信する。Xモータ駆動回路52はX方向駆動モータ56を、Yモータ駆動回路54はY方向駆動モータ58をそれぞれ駆動し、ヘッド70を被記録媒体に対して相対的に移動させ、記録位置に移動させる。ヘッド駆動回路60は、ヘッド70が記録位置に移動した時点で、各種インク組成物(Y、M、C、K)あるいは刺激となる刺激付与物質の吐出を行わせるための信号をヘッド70に送信し、記録を行う。ヘッド70は、単色のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、複数種のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、あるいは刺激となる刺激付与物質を吐出する機能を併せて有していてもよい。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0066】
実施例1
<ブロックポリマーの合成>
イソブチルビニルエーテル(IBVE)、2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)[Aブロック]と、HO(CH2 )5 COOH[Bブロック]とからなる、片末端カルボン酸ABブロックポリマーの合成
ポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOH(ここで、bはブロックポリマーであることを示す記号である)を、以下の手順により合成した。
【0067】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE12mmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.1mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合の完了を確認した。
【0068】
次いで、B成分(MOVE)を12mmol添加し、重合を行った。GPCを用いるモニタリングによって、B成分の重合の完了を確認した後、HO(CH2 )5 COOEtを30mmol添加して、重合反応を停止した。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固して、ポリ[EOVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOEtのブロクポリマーを得た。
【0069】
合成した化合物の同定は、GPCとNMRにより行なった。特に末端に結合している部分の同定にはNMRのDOSY法による測定により、高分子量体のスペクトル中に末端部位の存在することを確認することによって行なった。Mn=2.2×104 、Mw/Mn=1.2であった。Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0070】
得られたポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOEtの末端のエステル部位を加水分解し、NMRにて同定を行ったところ、目的物であるポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOHが得られた。
【0071】
得たカルボン酸末端のブロックポリマー26重量部をpH10の水酸化ナトリウム水溶液200重量部ともに0℃で3日間攪拌し、完全にポリマーが溶解したカルボン酸ナトリウム塩ポリマー溶液とした。これを塩酸で中和し、これから塩化メチレンでこのポリマーを抽出し、乾燥し、溶媒を留去してポリマーを単離した。
【0072】
このポリマーを25重量部と1当量の水酸化ナトリウム0.1N溶液、脂溶性染料(オリエント化学製、バリファストイエロー)10重量部を、DMF50重量部に溶解したのち、これを180重量部の蒸留水に攪拌しながら滴下し、さらにエチレングリコール30重量部を加えた。本発明のグリーンのインク組成物▲1▼を作成した。粒径測定装置(大塚電子(株)製、DLS7000)で粒径を測定したところ、平均粒径は86nmであった。分散度指数は0.088であった。
【0073】
また、このインク組成物▲1▼を、25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が467cpsに対して、100rpmでの粘度は11cpsであった。
【0074】
実施例2
実施例1で用いたブロックポリマーのA成分を2−エトキシエチルビニルエーテルに変えて実施例1と同じ重量比でインク組成物▲2▼を調整した。A成分である2−エトキシエチルビニルエーテル重合体は20℃以下で疎水性から親水性に変化し、そうなったときミセルが崩壊する。インク組成物▲2▼を0℃に冷却しミセルを崩壊させたところ、色材が溶出しインク上部に浮上、水相は完全に脱色した。このことから色材はブロックポリマーミセル中に完全に内包されていたことがわかった。インク組成物▲2▼と前記消色した水相のλmaxにおける強度比による濃度比は、後者が前者の0.4%で99%以上の色材が内包されていたことわかった。
【0075】
また、インク組成物▲2▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が502cpsに対して100rpmでの粘度は12cpsであった。
【0076】
実施例3
さらに実施例1で用いたポリマーをカルボン酸ナトリウムの状態ではなく、フリーのカルボン酸の状態のものを使用して実施例1と全く同じ調製方法でインク組成物▲3▼を調製した。粒径測定装置(大塚電子(株)製、DLS7000)で粒径を測定したところ、平均粒径は80nmであった。分散度指数は0.092であった。また、このインク組成物▲3▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が893cpsに対して100rpmでの粘度は8cpsであった。
【0077】
実施例4
実施例1で調整したインク組成物▲1▼を蒸留水で1.5倍に希釈し、インク組成物▲4▼を調製した。このインク組成物▲4▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が117cpsに対して100rpmでの粘度は8cpsであった。
【0078】
実施例5
55mm×30mmのリチウムナイオベート基板上に材質クロム、線幅100μm、ピッチ400μm、20対のくし型電極を構成した素子を作成した。電極前方に実施例1から4で調製したインク組成物をそれぞれ担持し、ガラス基板上に普通紙を貼り付けたものを1cmの間隔を空けて対峙した。そして55V、9.6MHzの周波数のサイン波を1秒あたり1000分の1秒づつ印加したところ、いずれのインク組成物も基板から飛翔し普通紙に着弾した。3分後指を押し付けたが指にインクの色は付着しなかった。
【0079】
比較例1
スチレン、アクリル酸、トリスエチレングリコールメチルエーテルアクリルレートの共重合比が20:30:30の重量平均分子量15900の共重合体のナトリウム塩20重量部と、カーボンブラック(キャボット社製、モーグルL)5重量部と、エチレングリコール40重量部、蒸留水280重量部をボールミルで混合し、2ミクロン径のメンブランフィルターで粗大粒子を除去して、インク組成物▲5▼を調製した。
【0080】
レオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が150cpsに対して100rpmでの粘度は87cpsであった。
【0081】
このインク組成物を実施例5の素子を用いて実施例5と同様にインク飛翔記録を行なおうとしたが、普通紙にインクは付着せず、インクは飛翔しなかった。また、このインク組成物を市販の噴霧器を用いて普通紙にインクを飛翔させた。その4分後に指をその普通紙に圧着させたところ、指に黒いインクが付着した。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、機能物質、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有し、特定の粘度特性を有する記録特性が良好な機能物質含有組成物を提供することができる。
また、本発明は、該機能物質含有組成物を用いた記録特性が良好な画像又はパターン形成方法を含む画像形成方法、およびそれに用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の概略の機構を示す図である。
【符号の説明】
20 インクジェット記録装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能物質含有組成物、画像形成方法及び画像形成装置に関し、特に各種機能材料として使用することができるポリマーを含む機能性物質分散組成物、それを用いた画像またはパターン形成方法および形成装置に関する。
【0002】
【背景技術】
機能物質を含有する分散材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、または粒状固体として着色剤を有するインク、トナー等の色材が良く知られている。そうした中でも特に色材を含有する組成物を利用するデジタル印刷技術は近年非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡させ、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。耐候性や定着性を改善する目的で顔料分散インクを使用することが検討されている。例えば、親水性成分および疎水性成分を各1成分以上有するイオン性ブロックポリマーによって顔料を分散させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、なお様々な面で改善が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第5,085,698号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、機能物質、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有し、特定の粘度特性を有する記録特性が良好な機能物質含有組成物を提供しようとするものである。
また、本発明は、該機能物質含有組成物を用いた記録特性が良好な画像又はパターン形成方法を含む画像形成方法、およびそれに用いる画像形成装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の発明は、機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする機能物質含有組成物である。
【0007】
好ましくは前記機能物質がブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されている方がよい。また本発明の好ましい一形態は前記ブロックポリマーまたはグラフトポリマーがポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とする組成物である。さらに本発明の好ましい一形態はインク組成物である。
【0008】
本発明の第二の発明は、前記組成物を定常的振動もしくは流動状態下に置いた状態から、画像又はパターンを形成もしくは記録する画像形成方法である。本発明では前記組成物を吐出することにより画像又はパターンを形成、記録する方法が好ましい例として挙げられる。また。前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子として、ピエゾ素子または表面弾性波素子を使用することが好ましい例として挙げられる。
【0009】
さらに本発明の第三の発明は前記画像又はパターンを形成、記録する画像形成方法に用いる画像形成装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の発明は、機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする機能物質含有組成物である。
【0011】
本発明における機能物質とは、所望の機能を発揮する化合物または組成物を意味する。例えば、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、また、色材、代表的には顔料あるいは染料をあげることができる。例えば、上記の農薬であれば除草効果を有する活性化合物、殺虫効果を有する活性化合物である。また、上記の医薬であれば、対象の症状を緩和または緩解する化合物である。
【0012】
また、上記の色材としての利用では、顔料のような粒状固体、染料化合物などである。本発明においては機能物質として好ましく色材が用いられる。色材としては前述したように顔料が例としてあり、無機の無彩色顔料、有機、無機の有彩色顔料があり、また、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0013】
以下に顔料の例を挙げる。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
黄色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
また、本発明には顔料と同様に染料を用いることもできる。使用しうる染料は、公知のものでも新規のものでもよく、例えば以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、脂溶性(油溶性)染料又は、分散染料の不溶性色素を用いることができるが、固体化した状態で使用されてもよい。この点では好ましくは、例えば、油溶性染料が使用されえる。
【0018】
例としては、C.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135;C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219;C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等が挙げられる。
【0019】
水溶性染料も使用することが出来、例としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0020】
なお、これら上記の色材の例は、本発明の組成物に対して特に好ましいものであるが、本発明に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
【0021】
本発明に用いられる機能性物質は、組成物の重量に対して、全体で0.01〜80重量%が好ましい。機能物質の量が、0.01重量%未満となると、十分な機能が得られなくなる場合が有り、80重量%を超えると分散性が悪化したりする場合がある。より好ましい範囲としては0.1重量%から50重量%の範囲である。さらに好ましくは0.3重量%から30重量%の範囲である。
【0022】
また、本発明の組成物は溶媒を含有する。本発明の組成物に含まれる溶媒は、特に限定されないが、組成物に含まれる成分を溶解、懸濁、分散できる媒体を意味する。本発明では、直鎖、分岐鎖、環状の各種脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素芳香族炭化水素などの有機溶媒、水性溶媒、水などが溶媒として使用でき、もちろんそれらの混合溶媒を使用することも可能である。特に、本発明の組成物では水および水性溶媒を好適に使用することができる。
【0023】
水性溶媒の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を挙げることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。水のpHに関しても全ての範囲で使用可能であるが、好ましくはpHは1から14の間である。
【0024】
また、本発明に特徴的に使用されるブロックポリマーは、ブロックポリマーまたはブロックコポリマーと呼ばれる、異なるセグメント構造のポリマーが一つの鎖状に共有結合で結合したポリマーである。また、本発明で用いられるグラフトポリマーは異なるセグメント構造のポリマーがT字状に共有結合したポリマーである。
【0025】
次に本発明にさらに特徴的に用いられる成分であるブロックポリマーについて説明する。本発明に用いることができるブロックポリマーとして、具体的な例をあげると、アクリル、メタクリル系ブロックポリマー、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロックポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロックポリマー等、従来から知られているブロックポリマーを用いることもできる。本発明において、ブロックポリマーはAB、ABA、ABD等のブロック形態がより好ましい。A、B、Dはそれぞれ異なるブロックセグメントを示す。
【0026】
本発明に用いられるグラフトポリマーは、ポリマーチェインの中途において別のポリマーチェインと結合を形成している、代表的にはT字状のポリマーであり、アクリル系あるいはメタクリル系のポリマーチェイン末端がポリビニルアルコールチェインや縮合系のポリエステル、ポリアミドなどのポリマーチェインあるいは別のアクリル系あるいはメタクリル系のポリマーチェインの中途部分に結合した構造のポリマーが例としてあげられる。
【0027】
また、本発明では、ブロックポリマーがあるポリマー鎖にT字状に結合してグラフトポリマーとなっていてもよい。また、ブロックポリマーの各セグメントは共重合セグメントであってもよいし、その共重合の形態は限定されず、例えばランダムセグメントであってもグラジュエーションセグメントであってもよい。
【0028】
本発明では、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーが好ましく用いられる。特に好ましくはポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーである。本発明に好ましく用いられるポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリアルケニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等で行うこともできる。
【0029】
また、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーの構造は、ビニルエーテルと他のポリマーからなる共重合体であってもよい。
【0030】
好ましく用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーは、以下の一般式(1)で表される繰り返し単位構造が持つことが好ましい。
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)l −R4 もしくは−(CH2 )m −(O)n −R4 から選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、もしくはCH3 である。R4 は水素原子、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2 CHO、−CO−CH=CH2 、−CO−C(CH3 )=CH2 、CH2 COOR5 からなり、R4 が水素原子以外である場合、炭素原子上の水素原子は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R5 は水素原子または炭素数1から5のアルキル基である。)
【0033】
本発明で、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基については、可能な位置異性体のいずれのものであってもよい。
【0034】
本発明では、好ましく両親媒性のブロックポリマーが使用される。例えば、上記一般式(1)の繰り返し単位構造から、疎水性のブロックセグメントと親水性のブロックセグメントを選択、合成することにより得ることができる。
【0035】
次に、ブロックポリマーのポリビニルエーテル構造の繰り返し単位構造として、ビニルエーテルモノマーの構造の例をあげるが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されない。
【0036】
【化2】
【0037】
なお、式中、Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基を表す。
【0038】
以下に、これらのビニルエーテルモノマーからなる、ポリビニルエーテルの構造を例示するが、本発明に用いられるポリマーは、これらに限定されない。
【0039】
【化3】
【0040】
以上のポリビニルエーテルにおいて、繰り返し単位数におけるu、v、wがそれぞれ独立に1以上10,000以下であることが好ましく、またその合計(u+v+w)が10以上20,000以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明で用いられるブロックポリマーの分子量分布Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.0以下であることが好ましい。更に好ましくは1.6以下であり、更に好ましくは1.3以下である。さらに好ましくは1.2以下である。
【0042】
本発明で用いられるブロックポリマーの数平均分子量Mnは1000〜30万であるが好ましい。1000未満あるは30万を超えると所定の機能を奏する物質を溶媒中において良好に分散できない場合がある。
【0043】
本発明の機能物質は、外的環境から攻撃による変性を抑制する意味でブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されていることが好ましい。自己集積構造を形成することにより機能物質を容易に内包することができる点でブロックポリマーまたはグラフトポリマーを使用することが好ましい。
【0044】
また、分散安定性向上、包接性向上のためにはブロックポリマーの分子運動性がよりフレキシブルであることが機能性物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。さらには後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、ガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。
【0045】
本発明の組成物中に含有される前記ブロックポリマーの含有量は、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%が望ましい。ブロックポリマーの量が0.1重量%未満となると、本発明のインク組成物中に含まれる色材を十分に分散したり、包接したりすることができない場合があり、90重量%を超えると粘性が大きくなりすぎる場合がある。
【0046】
本発明の組成物は、前述したように好ましくは機能物質を内包している。内包状態は、例えばブロックポリマーまたはグラフトポリマーが形成する水中でのミセルに、水に不溶の有機溶媒中に色材を溶解させ、そののち該有機溶媒を留去することにより形成することが出来る。そのほかに有機溶剤中にポリマーと色材を共に溶解させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより包接状態を形成し、残存する有機溶媒を留去することにより形成することも可能である。さらには例えばブロックポリマーまたはグラフトポリマーが形成する水中でのミセルに水に不溶の有機溶媒中に顔料を分散させることによっても行なうことが出来る。そのほかに有機溶剤中にポリマーを溶解し色材を分散させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより内包状態を形成することにより形成することも可能である。内包状態を確認するためには、各種電子顕微鏡、X線回折等の機器分析により実施することが可能である。また、ミセル状態の包接の場合、ミセル崩壊条件で色材が溶媒からポリマーと別々に分離することで内包状態を間接的に確認することが出来る。
【0047】
以上説明してたようにブロックポリマーまたはグラフトポリマーがミセル状態を形成することが好ましく、そのために本発明に用いられるブロックポリマーまたはグラフトポリマーは両親媒性であることが好ましい。
【0048】
ブロックポリマーまたはグラフトポリマーに機能物質が内包されている割合は、好ましくは90重量%以上もっと好ましくは95重量%以上、さらには98重量%以上が好ましい。この量比に関しても各種電子顕微鏡、X線回折等の機器分析、色材の発色濃度分析等により、また、前記した間接法によっても観測することが可能である。
【0049】
また、本発明の組成物には上記以外の、例えば酸化防止剤、減粘剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等の添加物を含有させることも可能である。
【0050】
本発明の組成物の特徴は、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることである。粘度の測定は以下のように行なうことができる。
本発明の組成物の粘度の測定は、通常の使用温度で行うが一般的には25℃で行い、回転粘度測定装置を用いて行なう。代表的な装置としては、E型等各種回転粘度計、あるいはレオメーターであり、たとえばハーケ社回転粘度計、ブルックフィールド社回転粘度計、東機産業社回転粘度計、レオロジカ社レオメーターDAR100等がある。
【0051】
回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)は回転粘度計またはレオメーターの回転数がそれぞれ0.5rpm、100rpmの流動状態での粘度を言い、文字通り回転数が0.5rpm、100rpmの回転数における回転粘度である。
【0052】
本発明はすなわち静的状態での粘度より流動状態での粘度が小さい、いわゆるチキソトロピー性の大きい液体組成物であり、その大きさが実効的である必要性から回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である必要がある。このような特性を有する組成物は、比較して低粘度である流動状態で低粘度で機能しえる用い方をし、比較して高粘度となる静止状態では高粘度で機能しえる用い方をするものに対して好適に用いられる。このような用いられ方をする組成物、方法としては、代表的にはインク組成物が挙げられる。さらに一例として挙げれば、印刷、そのインク組成物においては、潜像を形成した回転体にインク組成物を供給し、高速回転状態でインクを潜像に付着し現像化する。そして受像媒体である紙に同じく高速回転状態で転写する。このような工程において前記高速回転状態では微細な画像パターンが実現できるようインク組成物は低粘度である必要があるが、インクの供給あるいは紙に転写した後の状態では、そのような低粘度ではなく、高粘度状態であることが、インク供給のスピードの制御あるいは紙に転写した後の混色や裏移りの抑制のために必要となっている。
【0053】
従来印刷インクを調整するには均一な分散とその安定性確保のために多大な工程を経て調製されねばならなかったところ、本発明においては高分散性とその安定性を持つブロックポリマーあるいはグラフトポリマーを用いるため、均一性及び安定性に非常に優れた組成物を提供することができる。そのために分子溶解状態のポリマーが特性の不安定要因となることから、好ましくはブロックポリマーあるいはグラフトポリマーは両親媒性であって、臨界ミセル濃度は1.0g/l以下であることが好ましい。また、デジタルプリンティングの分野では、インクジェット技術が好適かつ代表的に挙げられる。
【0054】
その中でたとえばコンティニュアスタイプのインクジェット記録方法においては、画像形成時は継続的にインクジェットヘッドからインクが吐出され、そのうち画像形成したい情報のみを電界等により制御し受像媒体に記録する。すなわちインクは、ヘッドから吐出するときは高速な流動状態であり、受像した後は静的な状態へ置かれることとなり、本発明の回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である組成物が好適に用いられる。さらにオンデマンド型のピエゾインクジェットヘッドにおいても同様に、本発明の組成物は好適に用いられる。この場合特に好ましくは、ピエゾ素子により非選択記録時、選択記録時に関らず一定の微小振動をインク組成物に与えておき低粘度状態としておくことである。そしてこの低粘度状態で吐出信号によってインクを吐出させることにより記録、画像形成することができる。アクチュエイターはピエゾ素子に限定されなくてもよく、他には表面弾性波なども使用することができる。
【0055】
本発明の組成物は、機能物質とブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有することを特徴とする組成物であって、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする液体組成物である。均一な分散とその安定性を得、なおかつ安定に回転数0.5rpmでの流動状態の粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上である特性を好適に実現するためにブロックポリマーまたはグラフトポリマーを用いることが必要である。このためさらにブロックポリマーを使用することがより好ましい。また、安定に前述した粘度特性を保持するという意味では、代表的にはインクジェット技術に使用されるときのように微小液滴を形成して使用する場合においてもその非常に微小な液滴の粘度特性が均一であることも含んでおり、そのような要請に対して応え得るためにもブロックポリマーを使用することが好ましく、前述したような好適なブロックポリマーを用いることができる。また、現実にはナノリッター、ピコリッターオーダーの液体組成物の一つ一つの粘性を測定することは困難であるため、実際には記録特性によってその均一性を判断することが可能である。
【0056】
さらには本発明の組成物は、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であるが、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上あるいは1000以上あるいは10000以上が良い。10未満では例えばインクジェット記録において記録動作時と受像紙上での粘度差が不充分で良好な画像を形成できない場合が有る。
【0057】
また、粘度(α0.5)と粘度(α100)の比(α0.5/α100)を10以上に制御する方法としては、代表的にはブロックポリマーあるいはグラフトポリマーの条件を変化することにより実施することができる。例えば、その濃度、分散液の水素イオン濃度、ポリマーの構造である。もちろん溶媒の種類を変更したり、添加剤によっても制御することが可能である。
【0058】
組成物の特性安定性、特に微小液滴状態における安定性のために、前記組成物の粒子の平均粒径が200nm以下であることが好ましい。特に機能物質として色材を用いるとき、粒子の粒径が小さい場合、色合いが良好な組成物を実現することができる。前述したように本発明では機能性物質はブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されていることが好ましい。本発明の組成物をインク組成物に適用した場合、色材分散インクの分散安定性、着色力、さらに色の鮮やかさには分散粒子の粒径及び粒径の均一さが大きく影響を及ぼす。すなわち溶媒中に分散した粒子の粒径が非常に大きいと粒子間で凝集を起こしてしまい安定に分散することが出来なくなる場合があったりする。また粒径と着色力は反比例の関係にあることから(Annalen der Physik、25巻、377頁、1908年)、粒径が大きすぎると着色力が低下してしまうことがある。
【0059】
このため本発明においては、粒子の平均粒径は前述した通り、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下で、さらに好ましくは100nm以下である。平均粒径は様々な方法で測定することが可能である。例えば、電子顕微鏡による直接観察、小角中性子線回折、小角X線回折、光散乱法、レーザー回折法などの方法がある。200nm、100nmレベルの粒子の粒径を測定するのに好ましくは動的光散乱法により測定することができる。粒子の粒径分布は、光子相関法である動的光散乱法によって測定可能である。粒径の均一さの指標としては一般的に、Gulariらが示した分散度指数が用いられる(The Journal of Chemical Physics、70巻、3965頁、1979年)。分散度指数は粘度特性の安定性のため、好ましくは、0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。分散度指数は小さいほど粒径分布が狭くなる。動的光散乱法による粒径測定装置としては、大塚電子(株)のDLS7000等の装置がある。
【0060】
本発明の第二の発明は、前記組成物を定常的振動もしくは流動状態下に置いた状態から、画像又はパターンを形成、記録する方法である。前述したように、本発明では前記組成物を吐出することにより画像又はパターンを形成、記録する方法が好ましい例として挙げられる。また。前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子として、ピエゾ素子や表面弾性波素子を使用することが好ましい例として挙げられる。ピエゾ素子とは圧電素子のことであり、電界により材質がひずむ特性を有する材料を用いた素子であり、例えばPZTやポリビニリデンフルオライド、リチウムナイオベート等の材料を使用することができる。表面弾性波素子は例えば圧電材基板上にくしば型電極を構成し交流電界を印加することにより、圧電材基板表面に発生する弾性波を利用するものである。特開平02−269058に記載されているような方法を用いてインクジェット記録を行なうことが可能である。定常的振動の周波数は好ましくは1Hz以上、さらに好ましくは10Hz以上、100Hz以上である。特に表面弾性波デバイスの場合駆動自身が高周波数で行なわれるため、好ましく用いられる。
【0061】
本発明は例えば上記方法により、パターンを形成する方法である。好ましい一実施形態はインクジェット法によるパターン形成方法である。さらに本発明の好ましい一実施形態は前記インクを用いて画像を形成する画像形成方法である。本発明のインクは、各種インクジェット法による画像形成装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。用いられるインクジェット法は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式のような周知の方法であってもよい。また、コンティニュアス型またはオンデマンド型のいずれの方法を用いてもよい。また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の最終被記録媒体に転写する記録方式に用いることもできる。
【0062】
また本発明のパターン形成方法で電子回路やデバイスのパターンを形成したりすることもできる。
【0063】
本発明の第三の発明は前記パターン形成方法を用いたパターン形成装置である。好ましい一実施形態はインク組成物を用いるインクジェット記録装置である。圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等のようなインクジェット記録装置を含む。図1に、インクジェット記録装置の概略的機能図を示す。50はインクジェット記録装置20の中央処理ユニット(CPU)である。CPU50を制御するためのプログラムは、プログラムメモリ66に記憶されていてもよいし、あるいはいわゆるファームウェアとしてEEPROM(不図示)等の記憶手段に記憶されていてもよい。インクジェット記録装置は、記録データ作成手段(不図示、コンピュータなど)から、プログラムメモリ66に記録データを受容する。記録データは、記録すべき画像あるいは文字の情報そのものでもよいし、それら情報の圧縮されたものでもよいし、または符号化された情報であってもよい。圧縮または符号化された情報を処理する場合には、CPU50に伸長または展開を行わせて記録すべき画像あるいは文字の情報を得ることができる。Xエンコーダ62(例えば、X方向または主走査方向に関する)およびYエンコーダ64(例えば、Y方向または副走査方向に関する)を設けて、被記録媒体に対するヘッドの相対位置をCPU50に通知することができる。
【0064】
CPU50は、プログラムメモリ66、Xエンコーダ62およびYエンコーダ64の情報に基づいて、画像を記録するための信号をXモータ駆動回路52、Yモータ駆動回路54およびヘッド駆動回路60に送信する。Xモータ駆動回路52はX方向駆動モータ56を、Yモータ駆動回路54はY方向駆動モータ58をそれぞれ駆動し、ヘッド70を被記録媒体に対して相対的に移動させ、記録位置に移動させる。ヘッド駆動回路60は、ヘッド70が記録位置に移動した時点で、各種インク組成物(Y、M、C、K)あるいは刺激となる刺激付与物質の吐出を行わせるための信号をヘッド70に送信し、記録を行う。ヘッド70は、単色のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、複数種のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、あるいは刺激となる刺激付与物質を吐出する機能を併せて有していてもよい。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0066】
実施例1
<ブロックポリマーの合成>
イソブチルビニルエーテル(IBVE)、2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)[Aブロック]と、HO(CH2 )5 COOH[Bブロック]とからなる、片末端カルボン酸ABブロックポリマーの合成
ポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOH(ここで、bはブロックポリマーであることを示す記号である)を、以下の手順により合成した。
【0067】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE12mmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.1mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合の完了を確認した。
【0068】
次いで、B成分(MOVE)を12mmol添加し、重合を行った。GPCを用いるモニタリングによって、B成分の重合の完了を確認した後、HO(CH2 )5 COOEtを30mmol添加して、重合反応を停止した。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固して、ポリ[EOVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOEtのブロクポリマーを得た。
【0069】
合成した化合物の同定は、GPCとNMRにより行なった。特に末端に結合している部分の同定にはNMRのDOSY法による測定により、高分子量体のスペクトル中に末端部位の存在することを確認することによって行なった。Mn=2.2×104 、Mw/Mn=1.2であった。Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0070】
得られたポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOEtの末端のエステル部位を加水分解し、NMRにて同定を行ったところ、目的物であるポリ[IBVE−b−MOVE]−O(CH2 )5 COOHが得られた。
【0071】
得たカルボン酸末端のブロックポリマー26重量部をpH10の水酸化ナトリウム水溶液200重量部ともに0℃で3日間攪拌し、完全にポリマーが溶解したカルボン酸ナトリウム塩ポリマー溶液とした。これを塩酸で中和し、これから塩化メチレンでこのポリマーを抽出し、乾燥し、溶媒を留去してポリマーを単離した。
【0072】
このポリマーを25重量部と1当量の水酸化ナトリウム0.1N溶液、脂溶性染料(オリエント化学製、バリファストイエロー)10重量部を、DMF50重量部に溶解したのち、これを180重量部の蒸留水に攪拌しながら滴下し、さらにエチレングリコール30重量部を加えた。本発明のグリーンのインク組成物▲1▼を作成した。粒径測定装置(大塚電子(株)製、DLS7000)で粒径を測定したところ、平均粒径は86nmであった。分散度指数は0.088であった。
【0073】
また、このインク組成物▲1▼を、25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が467cpsに対して、100rpmでの粘度は11cpsであった。
【0074】
実施例2
実施例1で用いたブロックポリマーのA成分を2−エトキシエチルビニルエーテルに変えて実施例1と同じ重量比でインク組成物▲2▼を調整した。A成分である2−エトキシエチルビニルエーテル重合体は20℃以下で疎水性から親水性に変化し、そうなったときミセルが崩壊する。インク組成物▲2▼を0℃に冷却しミセルを崩壊させたところ、色材が溶出しインク上部に浮上、水相は完全に脱色した。このことから色材はブロックポリマーミセル中に完全に内包されていたことがわかった。インク組成物▲2▼と前記消色した水相のλmaxにおける強度比による濃度比は、後者が前者の0.4%で99%以上の色材が内包されていたことわかった。
【0075】
また、インク組成物▲2▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が502cpsに対して100rpmでの粘度は12cpsであった。
【0076】
実施例3
さらに実施例1で用いたポリマーをカルボン酸ナトリウムの状態ではなく、フリーのカルボン酸の状態のものを使用して実施例1と全く同じ調製方法でインク組成物▲3▼を調製した。粒径測定装置(大塚電子(株)製、DLS7000)で粒径を測定したところ、平均粒径は80nmであった。分散度指数は0.092であった。また、このインク組成物▲3▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が893cpsに対して100rpmでの粘度は8cpsであった。
【0077】
実施例4
実施例1で調整したインク組成物▲1▼を蒸留水で1.5倍に希釈し、インク組成物▲4▼を調製した。このインク組成物▲4▼を25℃でレオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が117cpsに対して100rpmでの粘度は8cpsであった。
【0078】
実施例5
55mm×30mmのリチウムナイオベート基板上に材質クロム、線幅100μm、ピッチ400μm、20対のくし型電極を構成した素子を作成した。電極前方に実施例1から4で調製したインク組成物をそれぞれ担持し、ガラス基板上に普通紙を貼り付けたものを1cmの間隔を空けて対峙した。そして55V、9.6MHzの周波数のサイン波を1秒あたり1000分の1秒づつ印加したところ、いずれのインク組成物も基板から飛翔し普通紙に着弾した。3分後指を押し付けたが指にインクの色は付着しなかった。
【0079】
比較例1
スチレン、アクリル酸、トリスエチレングリコールメチルエーテルアクリルレートの共重合比が20:30:30の重量平均分子量15900の共重合体のナトリウム塩20重量部と、カーボンブラック(キャボット社製、モーグルL)5重量部と、エチレングリコール40重量部、蒸留水280重量部をボールミルで混合し、2ミクロン径のメンブランフィルターで粗大粒子を除去して、インク組成物▲5▼を調製した。
【0080】
レオロジカ社製、レオメーターDAR100で回転数を変化させながら回転粘度を測定したところ、0.5rpmでの粘度が150cpsに対して100rpmでの粘度は87cpsであった。
【0081】
このインク組成物を実施例5の素子を用いて実施例5と同様にインク飛翔記録を行なおうとしたが、普通紙にインクは付着せず、インクは飛翔しなかった。また、このインク組成物を市販の噴霧器を用いて普通紙にインクを飛翔させた。その4分後に指をその普通紙に圧着させたところ、指に黒いインクが付着した。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、機能物質、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと溶媒を含有し、特定の粘度特性を有する記録特性が良好な機能物質含有組成物を提供することができる。
また、本発明は、該機能物質含有組成物を用いた記録特性が良好な画像又はパターン形成方法を含む画像形成方法、およびそれに用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の概略の機構を示す図である。
【符号の説明】
20 インクジェット記録装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド
Claims (9)
- 機能物質と、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーと、溶媒を含有する組成物であって、回転粘度における回転数0.5rpmでの流動状態での粘度(α0.5)と、回転数100rpmの流動状態での粘度(α100)の比(α0.5/α100)が10以上であることを特徴とする機能物質含有組成物。
- 前記機能物質がブロックポリマーまたはグラフトポリマーに内包されていることを特徴とする請求項1記載の機能物質含有組成物。
- 前記ブロックポリマーまたはグラフトポリマーがポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の機能物質含有組成物。
- 請求項1乃至3のいずれかの項に記載の機能物質含有からなることを特徴とするインク組成物。
- 請求項1乃至4のいずれかの項に記載の組成物を定常的振動もしくは流動状態下に置いた状態から、画像又はパターンを形成もしくは記録する画像形成方法。
- 前記組成物を吐出することにより画像又はパターンを形成もしくは記録する請求項5記載の画像形成方法。
- 前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子としてピエゾ素子を使用することを特徴とする請求項5または6記載の画像形成方法。
- 前記組成物を定常的振動もしくは流動状態とする素子または前記組成物を吐出する素子として表面弾性波素子を使用することを特徴とする請求項5または6記載の画像形成方法。
- 請求項5乃至8のいずれかに記載の画像形成方法に用いる画像形成装置。
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JP2003140258A JP2004339430A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | 機能物質含有組成物、画像形成方法及び画像形成装置 |
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JP2011225859A (ja) * | 2010-04-21 | 2011-11-10 | Toshiba Corp | 水性インクジェットインク |
-
2003
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