JP2004337025A - 細胞死を阻害する薬剤のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞死を阻害する物質のスクリーニング方法、及び前記方法によりスクリーニングされたフラボノイドの提供。
【解決手段】反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結させて得られる遺伝子を神経系細胞に導入してなる、筋強直性ジストロフィーのモデル細胞、反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結し、得られる遺伝子を細胞に導入し、被検物質の存在下で前記細胞を培養することにより、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法、並びに前記スクリーニング方法によりスクリーニングされたフラボノイドを含む医薬。
【選択図】 図1
【解決手段】反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結させて得られる遺伝子を神経系細胞に導入してなる、筋強直性ジストロフィーのモデル細胞、反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結し、得られる遺伝子を細胞に導入し、被検物質の存在下で前記細胞を培養することにより、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法、並びに前記スクリーニング方法によりスクリーニングされたフラボノイドを含む医薬。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞死を阻害する物質のスクリーニング方法、及び該方法によってスクリーニングされたフラボノイドに関する。
【0002】
【従来の技術】
筋強直性ジストロフィー(筋緊張性ジストロフィーともいう)[MIM 160900; dystrophia myotonica 1 (DM1)]は常染色体優性遺伝形式の筋ジストロフィーであり、この疾患に共通する特徴は、筋肉のミオトニー現象及び進行性の1型優位な筋繊維萎縮である。しかし、その他にも心臓障害、白内障、インスリン耐性糖尿病、前頭部の頭髪脱毛、軽度の痴呆など全身性の症状が認められる。 (Harper PS. 2001. Myotonic Dystrophy. Third Edition. W.B. Saunders Co., London. pp. 17−165)。DMにはこれまでに、2種類の原因遺伝子の異なるもののあることが報告されており、それぞれDM1及びDM2と名付けられている。
【0003】
DM1では、DM1プロテインキナーゼ(DM1PK)遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)内に存在するCTG三塩基配列が延長して生じることが報告されている (Fu et al., 1992(非特許文献1))。この塩基配列の延長はmRNAに転写され、DM1PK mRNA の3’非翻訳領域内に、50から2000以上のCUGリピートを有するmRNAが存在することも報告されている(Fu et al., 1993(非特許文献2))。DM症例の98%に見られるDM1突然変異はどのようにしてこの疾患を引き起こすのか正確には分かっていないが、いくつかの作用機構が提案されている(Thapscott SJ and Thornton CA. Science 293: 816−817, 2001)。例えば、DMPKの遺伝子産物の発現量の減少、あるいはリピートの延長が自分自身の遺伝子発現に影響を及ぼすシス効果もしくは、同時に発現する他の遺伝子の転写・翻訳に影響を及ぼすトランス効果などの仮説が提案されている(Amack JD et al., 1999)。
【0004】
最近、CCTGリピートが増幅する疾患[MIM 602668; dystrophia myotonica 2 (DM2)]も報告された。この疾患では、CCTGリピートがジンクフィンガープロテイン9 (ZNF9)遺伝子のイントロン内に存在することが報告されている(Liquori CL, et al., 2001(非特許文献3); Day JW et al., Neurology. 2003 ; 25;60 :657−664)。DM1におけるCUGリピートが延長したRNAと同様に、DM2でもCCUGリピートが延長したRNAは細胞核内に止まっていることが報告されており、この事から、CUGリピートやCCUGリピートが延長することでDMPKやZNF9タンパクや、そのすぐ下流にあるSIX5遺伝子の発現が減少するということよりも、むしろ延長したCUG又はCCUGリピートを含むRNAが発現すること自体で、DM1及びDM2に共通する病態が発症すると考えられる (Thapscott SJ, et al., 2001)。さらに、Davisらは、突然変異転写産物が、DM1患者細胞及びマウスC1C12筋芽細胞の核内にとどまっていることを示しており(Davis BM, et al., 1997; Taneja KL, 1998)、また、リピートの延長したDMPK mRNAがトランスに作用して、同時期に発現する他のmRNAの転写・翻訳に影響を及ぼすことも報告されている (Timchenko LT, 1999; Miller JW, et al., 2000)。さらに、本発明者は、RNA内の増幅したCUGリピートのシス及びトランス効果にとって、核膜が重要であることを示した(Furuya H. et al.,
2000)。
【0005】
DM1患者では新皮質及び皮質下核に、神経原繊維変化(NFT)が形成されることが報告されている。NFTは対をなすらせん状の細繊維(PHF)と呼ばれる、過リン酸化された微小管結合タンパク質の凝集によって形成されている(Harper PS, 2001)。DM1に認められる病原性タウ蛋白では、特異な異常リン酸化のパターンが認められ、そしてこれら異常リン酸化パターンは多くのDM1患者及びDM1モデルマウスの脳においても観察されている(Sergeant N. et al., 2001(非特許文献4); Seznec H. et al., 2001(非特許文献5))。これらの結果もまた、CTGリピートの増幅によって異常リン酸化タウ蛋白が中枢神経系に蓄積することを示している。また、延長したCTG90リピートがPC12(ラット神経細胞系)の神経分化を抑制するという報告もなされている(Qintero−Mora ML et al., 2002(非特許文献6))。
【0006】
【非特許文献1】
Fu YH et al., Science, 255: 1256−1258, 1992
【0007】
【非特許文献2】
Fu YH et al., Science, 260, 235−238, 1993
【0008】
【非特許文献3】
Liquori CL et al., Science 2001 ;293 : 864−867
【0009】
【非特許文献4】
Sergeant N et al., Hum Mol Genet 2001 ;10 : 2143−2155
【0010】
【非特許文献5】
Seznec H et al., Hum Mol Genet 2001 ;10 :2717−2726
【0011】
【非特許文献6】
Quintero−Mora ML et al., Biochem Biophys Res Commun 2002 ;295 :289−294
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DM1モデル神経細胞において、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法を提唱するとともに、その方法で選択されたフラボノイドを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、CTGリピート配列をレポーター遺伝子であるルシフェラーゼの3’側非翻訳領域に付加した遺伝子を作成し、それを神経系培養細胞に導入することにより、細胞死を抑制する薬物をスクリーニングするシステムを作成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼをコードする遺伝子)の非翻訳領域に連結させて得られる遺伝子を神経系細胞に導入してなる、筋強直性ジストロフィーのモデル細胞。
【0015】
非翻訳領域としては3’側非翻訳領域が挙げられる。
(2)反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結し、得られる遺伝子を細胞に導入し、被検物質の存在下で前記細胞を培養することにより、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法。
【0016】
上記スクリーニング方法において、細胞としてはラットの神経系培養細胞が用いられた。この場合は、培養は神経成長因子の存在下で行うことが好ましい。また、非翻訳領域としては3’側非翻訳領域が挙げられ、物質としてはフラボノイド(例えばオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチン)などが挙げられる。
(3)前記スクリーニング方法によってスクリーニングされたフラボノイドを含む医薬又は細胞死阻害剤。
【0017】
フラボノイドとしてはオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンが挙げられる。上記医薬は、例えば筋緊張性ジストロフィーの治療のために使用し得る。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
1.発明の概要
本発明は、250回に増幅したCTGリピートを含むリポーター遺伝子のmRNAを発現するPC12ラット神経細胞系(CTG−250)が、酸化ストレス条件下での細胞分化の直後に神経細胞死を引き起こす知見に基づいて完成されたものである。
【0020】
ところで、筋緊張性ジストロフィープロテインキナーゼ遺伝子(DMPK)内には、CTGトリプレットが繰り返されたリピート配列が存在する。このリピート配列は、筋緊張性ジストロフィー(筋緊張性ミオパシー、1型; DM1)に関与していると考えられる。しかしながら、CTGリピートの存在がどのようにして該疾患を誘導するか、その作用機構はいまだに解明されていない。
【0021】
本発明者は、CUGリピートを含むmRNAを安定に発現する培養神経細胞系(PC12細胞系)をin vitroで構築し、そしてCTGリピート配列による細胞傷害作用を抑制するフラボノイドのスクリーニングを実施した。一般にPC12細胞系は、細胞分裂の間に、核膜が分裂期ごとに消失するという特徴を有する。しかしPC12細胞では、いったん分化が開始されると、細胞分裂は行われなくなり、核膜が継続して維持される。すなわち、上記細胞系では、核膜は細胞分裂のたびに消失するのに対し(図1a)、神経成長因子(NGF)により分化が誘導されると、核膜は保存される。CUGリピートを含むmRNAが核内にとどまることでその毒性が強く出ると考えられるので、分化誘導後のCUGリピートの効果を詳細に観察することができる(図1b)。これに対し、NGFが存在しない条件下では、CTGリピートを含む細胞と含まない細胞との間で細胞数及び細胞傷害性に関する差異は見られない。このことは、核膜の存在下でCTGリピートが神経細胞に対して傷害性を示し、その結果直接的又は間接的にアポトーシスを引き起こすことを示している。
【0022】
本発明者は、NGFを作用させて神経細胞に分化させると、核膜の存在によってmRNAが核内に保持される結果、CUGリピート配列を核内に有する細胞は細胞死を起こすと考えた。そして、そのような細胞に被検物質を添加して培養すれば、被検物質が細胞死を阻害するか否かを評価することができ、細胞死を阻害する物質は、DM1に於いて細胞死を防ぐ薬剤として利用することができると考えた。
【0023】
また、本発明者は、酸化ストレス条件下においてリピート配列が細胞傷害性を有することをin vitroで確認し、いくつかのバイオフラボノイド薬が、CUGリピートを含むmRNAのシス効果及び細胞傷害性を抑制することを示した。「酸化ストレス条件」とは細胞内に活性型酸素原子を増やすこと意味し、神経細胞に障害を与え、異常リン酸化など神経細胞の老化を早めるために設定される。酸化ストレス処理は、神経細胞培養液を用いてその中からウシ血清を除くことで行われる。
2.遺伝子及び細胞
本発明において使用される遺伝子は特に限定されるものではないが、細胞死の程度によって発現量が変化することを確認できるマーカー遺伝子であることが好ましい。マーカー遺伝子としては、例えばルシフェラーゼ遺伝子(LUC)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ウミシイタケルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。マーカー遺伝子は、市販のものを使用することもでき、当分野において周知の遺伝子クローニング手法によってクローニングすることもできる。
【0024】
本発明においては、上記遺伝子の非翻訳領域にCTG反復配列を連結する。反復配列を連結する非翻訳領域は、特に限定されるものではないが、レポーター遺伝子の3’側非翻訳領域、あるいはDMPK遺伝子の非翻訳領域であることが好ましい。CTG反復配列とは、「CTG」配列が一組となって繰り返し反復された配列を意味し、「CTGリピート」又は「CTGリピート配列」ともいう。なお、mRNAにおいて説明する場合は、「CUGリピート」又は「CUGリピート配列」という。DM1の疾患が発症するリピート回数は50回以上であり、先天型DM1などでは2000回以上のものも認められている。しかし、長いリピートをクローニングすることは困難であるため、本発明において用いることができるリピート回数は50回〜250回程度、好ましくは250回である。本発明におけるリピートサイズ250回は、リピートとしては最長の部類に入る。
【0025】
本発明において、上記CTG配列を付加した遺伝子を導入する対象となる細胞は、特に限定されるものではない。例えば、大腸菌、枯草菌等などの細菌、Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母、CHO細胞、各種組織由来細胞(神経細胞、腫瘍化肝臓細胞、神経膠細胞)などの動物細胞を使用することができる。
【0026】
本発明においては、 神経系モデル細胞であるPC12(ラット神経細胞)が好ましい。これらの細胞は当分野において容易に入手することができる。
【0027】
遺伝子の細胞への導入は、一般的な形質転換手法、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等により行うことができる。
3.スクリーニング
本発明の好ましい実施態様において、DM1患者のゲノムDNAからCTGリピートを単離し、ルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)にサブクローニングし、そしてLUCリポーター遺伝子単独(pLUC)のもの、又はLUCの 3’−UTRに250個のCTGリピートを融合させた融合遺伝子(pLUC+CTG250)を細胞に導入して形質転換体を樹立する。NGFで分化誘導した後に酸化的ストレスをかけて培養を続け、細胞内乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定することにより、これらの細胞系の細胞傷害性を観察し、LUC活性を測定することにより、増幅したCTGリピートのシス効果を評価する。シス効果とは、CTGリピートを含む遺伝子がその遺伝子自体の発現を抑制する効果を意味し、他の遺伝子の発現を抑制するトランス効果に対立する概念である。
【0028】
次に、増幅したCTGリピートの細胞傷害性及びシス効果を抑制する効果的な化学物質を見つけ出すため、CTGリピートを含む細胞を当該化学物質とともに培養し、細胞のLUC活性を測定することによって目的とする化学物質をスクリーニングする。細胞傷害性の活性及びLUC活性は、市販のキット(Luciferase Assay System (Promega))を用いて製造者のプロトコールに従って測定することができる。
【0029】
スクリーニングの対象となる物質としては、例えば合成化合物、発酵物、ペプチド、タンパク質、フラボノイド、ホルモンなどが挙げられる。本発明においては、例えば200〜300種類のフラボノイドから目的の効果を有するものを容易にスクリーニングできる。
【0030】
本発明において好ましいフラボノイドとしては、例えばオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンを挙げることができる。そして、スクリーニングされたフラボノイドは、in vitroにおいて細胞死(例えばアポトーシス性細胞死)を阻止することができる。この系を用いると、CTGリピートのシス効果を評価するのが非常に簡単であるため、DMの治療に有効な薬剤をスクリーニングするのに有用である。
4.細胞死阻害剤及び医薬
本発明においてスクリーニングされたフラボノイドを細胞死阻害剤として使用する場合は、フラボノイドの量は特に限定されるものではなく、好ましくは5−160μg/mlである。使用期間も特に限定されるものではないが、好ましくは分化開始後から7日以内である。
【0031】
本発明においてスクリーニングされたフラボノイドを医薬として使用する場合は、投与する対象疾患は、神経系疾患、精神系疾患などに適用が可能である。このような疾患の具体例として、例えば筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)、アルツハイマー病、fronto−temporal dementia(FTD)、 CAGリピート病などが挙げられる。
【0032】
本発明において、フラボノイドを有効成分として含有する医薬は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。
【0033】
上記医薬は、常法にしたがって製剤化することができ、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0034】
担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。
【0035】
本発明のフラボノイドを経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤とし、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。顆粒剤及び散剤は、カプセル剤などの単位量投与形態とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にすることもできる。
【0036】
経口用固形剤は、それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0037】
注射剤の場合は、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供され、使用する際に適当な担体(例えば滅菌水で再溶解させる粉体)であってもよい。これらの剤形は、それらの組成物中に製剤上一般に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。また、その投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。
【0038】
上記フラボノイドの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に許容し得る担体との組合せとして投与される有効量を適宜決定することができる。
【0039】
また、投与時期としては、特に限定されるものではないが、痴呆などの症状が始まってからではなく、その症状が出る前から、発症の予防薬として投与することが好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
(1) プラスミドの構築
インフォームドコンセントを得た軽症の男性DM1患者(47歳)の白血球から、通常の方法によりゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAから、PCR法で、CTGリピートを含むDNA断片を単離した。この患者のゲノムDNAをサザンブロット分析にかけたところ、250個に増幅したCTGリピートを含むことが判明した。このリピートを含むDNA断片を増幅し、制限酵素MspIで消化し、そしてルシフェラーゼ発現ベクターpGL3 (Promega, Madison, WI)のXba I部位(平滑末端化し、BAPで処理した)にサブクローン化した(pGL/CTG250という)。このプラスミドをHindIII及びBamHIで消化し、次に両制限酵素部位を平滑末端化した後にpCAGGSneoベクター(Niwa H. et al., Gene 1991 ;108 , 193−200.)のEcoRI部位にサブクローン化した。サブクローン化したプラスミドのDNAを、Dye Deoxy Terminator Kit (Perkin−Elmer, Applied Biosystems)を用いたジデオキシ法により配列決定した。
(2) 細胞培養及びトランスフェクション
PC12細胞は、公知手法により継代及び維持を行った(Greene LA, et al., Proc Natl Acad Sci USA 1976 ;73 :2424−2428)。コラーゲンをコーティングしたプレート(Sigma)に播いた細胞を、Lipofectamin Plus Reagent (Gibco−BRL)を用いてリポータープラスミドでトランスフェクトした。また、ルシフェラーゼ遺伝子のみを含むプラスミドでトランスフェクトした細胞を対照細胞とした。0.4 mg/mlのネオマイシン(Gibco−BRL)を含む増殖培地中で増殖させた後に、安定なトランスフェクタントを単離した。生存細胞を再培養し、そして高度に遺伝子を発現するコロニーをスクリーニングするためにルシフェラーゼ活性を測定した。250個のCTGリピートを含むルシフェラーゼ遺伝子を効率的に発現するPC12細胞を選択し、この細胞をCTG−250と名付けた。ルシフェラーゼリポーター遺伝子のみを発現する細胞をLUCと名付け、対照として用いた。
【0042】
上記LUC細胞及びCTG−250細胞の分化を誘導するため、それぞれの細胞を100 ng/mlの神経成長因子(NGF; Gibco−BRL)を用いて6日間処理した。分化した細胞を、コラーゲンを塗布したプレートに再度播種することによって血清を完全に除去し(Batistatou A. et al., J Cell Biol 1991 ;115 :461−71)、 そして細胞を100 ng/mlのNFGを含む無血清培地中に一定期間、酸化ストレス条件下で維持した(Davis PK, et al., J Neurochem 1997 ;68 :2338−2347; Anastasiadis PZ, et al., J Biol Chem 2001 ;276 :9050−9058.)。免疫組織学的分析のために、細胞を12μg/mlのD−リシン(Sigma)をコーティングした24ウエルプレート中のガラス製のカバースリップに再播種した。
【0043】
(3) 免疫蛍光の顕微鏡検査
細胞はステップとステップとの間にリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。カバースリップ上の培養PC12細胞を4%パラホルムアルデヒド−PBSで15分間固定し、抗神経フィラメント200 kDaモノクローナル抗体(クローンNE14、Boehringer Mannheim Biochemica)を用いて細胞質神経フィラメントを検出した(Katoh H. et al., Mol Cell Biol 2000 ;20 :7378−7387)。
(4) ルシフェラーゼアッセイ及びLDH細胞傷害性検出アッセイ
PC12細胞を96ウエルプレートに15x105個/ウエルの割合で播いた。フラボノイドの存在下又は不存在下で所定時間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄した。CTGリピートを含むリポーター遺伝子の転写及び翻訳を評価するため、CTG−250及びLUC細胞の分化後、酸化ストレス条件下(ウシ血清を除外した培地)で2〜6日間インキュベートした後で、Luciferase Assay System (Promega, Madison, WI)を用いて製造者のプロトコールに従ってルシフェラーゼ活性をアッセイした。各サンプル中のタンパク質の量をフォリン−フェノールアッセイによって測定し、そしてルシフェラーゼ活性を一定量のタンパク質あたりの活性として表わした。
【0044】
増幅したCTGリピートの細胞傷害作用を検出するために、LDH細胞傷害性検出キット(宝バイオ)を用いて細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を全生存細胞の尺度として測定した。結果を一定量のタンパク質あたりの細胞内LDH活性として表わした。
(5)フラボノイドによる細胞処理
細胞処理実験のために、最初に252種類の精製バイオフラボノイドのスクリーニングを実施した。これらのフラボノイドはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。分化後のPC12細胞(LUC及びCTG−250)を、コラーゲンでコーティングした96ウエルプレート中の100 ng/ml NGF含有無血清培地に1.0x104個/ウエルの割合で播いた。そして、各フラボノイドを種々の濃度で加えて細胞を処理した。この試験において、培地に添加したDMSOの最大量は0.25%であった。2日間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、Cell Lysate Buffer (Promega, Madison, WI)によって溶解し、そしてルシフェラーゼアッセイに用いた。ルシフェラーゼ活性のデータを未処理細胞のルシフェラーゼ活性と比較した。未処理細胞(対照)と比較してルシフェラーゼ活性が3〜4倍に増大するフラボノイドを選択し、2次及び3次スクリーニングに用いた。
【0045】
フラボノイドの2次及び3次スクリーニングは、以下の通り行った。
【0046】
分化後のPC12細胞(LUC及びCTG−250)を、コラーゲンでコーティングした96ウエルプレート中の100 ng/ml NGF含有無血清培地に1.0x104個/ウエルの割合で播いた。そして、各フラボノイドを種々の濃度で加えて細胞培養の2日目及び4日目に細胞を処理した。濃度は、2次スクリーニングでは10、20、40及び80μg/ml、3次スクリーニングでは5、10、20、80及び160μg/mlの濃度とした。2次及び3次スクリーニングにおいては、CTG−250細胞系とLUC細胞系のルシフェラーゼ活性を比較した。そして、添加したフラボノイドのうち統計的に有意な細胞障害性の防止と、ルシフェラーゼ活性の増大を示した数種類のフラボノイドを図3及び表1(後述)に示した。
(6) イムノブロット分析
細胞ホモジネートを調製し、イムノブロット分析を実施した(Davis PK, et al., J Neurochem 1997 ;68 :2338−2347)。10 mgのタンパク質を電気泳動によって7.5% SDS−ポリアクリルアミドゲル上に分離し、Immunobilon−P膜(Millipore)に転写し、この膜を3%脱脂粉乳(森永乳業)でブロックし、次に1次抗体としてのカスパーゼ3(Cell Signaling Technology)と共にインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体と共にインキュベートした後、Enhanced Chemiluminescence (Amersham Pharmacia Biotech)を用いてイムノブロットを発生させた。
(7) データ分析及び統計
CTGリピートがDM1モデル細胞に起こす細胞傷害性の実験では、それぞれのデータを、再播種した日のそれぞれの細胞のLDH値やルシフェラーゼ活性値で割って、比として表した。
【0047】
データは平均値±SDとして示した。これらの実験はそれぞれ3回実施し、統計学的有意差は、反復して実施した測定値の分散分析(ANOVA)によって決定した。
【0048】
バイオフラボノイドを用いた細胞処理実験では、フラボノイド処理をしていない各細胞から得られた対照値に対する比としてデータを示した。mRNAの翻訳効率を表わす値としてルシフェラーゼ活性値を示した(延長したCTGリピートのシス効果の評価)。LDH活性は、増幅したCTGリピートの細胞傷害性に対する生存比を示す。データは平均±SDとして示す。また、全ての実験におけるCTG−250及びLUC細胞間の経時的データの統計分析には、分散分析を用いた。これらの実験はそれぞれ3回実施し、データを統計分析に供した。
(8) 結果
▲1▼ 安定なPC12クローンの樹立
RNAの3’−UTRに存在する増幅したCUGリピートの細胞傷害作用を簡便に、かつ効率的に測定するため、本発明者はリポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた。増幅したCTGリピートを含む、又は含まない3’−UTRを有するルシフェラーゼリポータープラスミドをPC12細胞にトランスフェクトし、そして各構築物でトランスフェクトした形質転換体についてネオマイシン耐性により安定なクローンを選択した。この細胞はNGFに応答して、形態的及び生物学的にニューロンに類似した細胞に分化する(図1a、1b)。安定なクローンがゲノム中にCTGリピートを含み、そしてCUGリピートを含むRNAをin vitroで発現するかどうかを分析するため、安定なクローンから抽出したゲノムDNAをPCRにより増幅し、ルシフェラーゼ遺伝子中の配列及びCTGリピートの3’側領域の配列に基づくプライマーを用いたRT−PCR分析を実施した。CTG−250を増幅するために、予測されるDNA断片を得た。
【0049】
▲2▼ CUGリピートを含むmRNAの細胞傷害性
PC12細胞においてCTGリピートの転写が神経細胞の分化及び細胞傷害性に及ぼす効果を調べるため、本発明者は、最初に、NGFによって誘導される分化の間に起こる安定なクローンの形態的変化を調べた(図1C)。その結果、酸化ストレス条件下での6日間のNGF処理後に、CTG−250細胞の増大等の変化を示した。これらの細胞は、樹状突起及び軸索を伸長させることができなかった。他方、LUC細胞系は顕著な変化を示さなかった(図1C)。
【0050】
CTG−250細胞系に観察された特徴を評価するため、LDH及びルシフェラーゼアッセイによって細胞機能を分析した。すなわち、CTG−250細胞系のルシフェラーゼ活性と、リピートを含まないクローン(すなわち、LUC細胞系)のルシフェラーゼ活性とを比較した。その結果、CTGリピートを発現する細胞は、リピートを含まないクローン(LUC細胞系)と比較して、ルシフェラーゼの翻訳が有意に低いことが判明した。NGFを用いた場合は特にそうであった(p<0.0001)(図2a)。
【0051】
次に、培養細胞の細胞傷害性に対応するLDHのアッセイでは、NGFを用いなかった場合は、CTG−250細胞系のLDH値は、リピートを含まない細胞系のLDH値と比較して有意差はなかった(p=0.041)。他方、NGFを用いた場合は、軽度の有意差があった(p=0.0043)。したがって、RNAの3’−UTRに存在する増幅したCUGリピートの発現は、NGFに基づくシグナル伝達経路に特に影響を及ぼし、細胞機能の障害を起こすと考えられた。
【0052】
▲3▼ フラボノイドの作用
3次スクリーニングで得られたフラボノイドを図3及び表1に示す。CTG−250及びLUC細胞系の増殖に対するこれらのフラボノイドの効果を、図4(オノニン)、図5(フォルムオノネチン)、図6(イソサクラネチン)及び図7(ゲニステイン)に示す。
【0053】
【表1】
これらのフラボノイドは、CTG−250及びLUC細胞系におけるルシフェラーゼ活性を改善した。これらのフラボノイドを1 mlあたり5−160μg添加すると、CTGリピートの細胞傷害性を抑制し、及び/又はそのシス効果を抑制した。オノニン及びホルムオノネチンはルシフェラーゼ活性を増大させ、CTGリピートのシス効果を抑制した(それぞれ図4a、図5a)。イソサクラネチン及びゲニステインは、CTGリピートのシス効果及び細胞傷害性の両方を優位に抑制した(それぞれ図6a、6b、図 7a、7b)。
【0054】
用量応答実験は、5−10μg/mlのオノニン(11.6−23.3 μmol)(図4)又はフォルムオノネチン(18.7−37.3 μmol)(図5)は、2から4日のインキュベーション期間中、リポーター遺伝子の翻訳を改善した。他方、10−20μg/mlのゲニステイン(37.0−74.1 μmol)(図7)又はイソサクラネチン(34.9−69.9 μmol)(図6)は、CTGリピートのシス効果及び細胞傷害性をそれぞれ低下させた。
【0055】
次に、本発明者は、CTG−250細胞系において、フラボノイド処理をすると、増幅したCTGリピートによって誘導されるカスパーゼ3活性化をブロックするかどうかイムノブロッティング及び生化学的技法の両方によって調べた。
【0056】
まず、ウエスタンブロッティングによって活性化形態のカスパーゼ3の形成があるかどうかを調べた。次に、ウエスタンブロッティングによって、カスパーゼ3のp17(活性形)及び既知のカスパーゼ3基質の開裂を調べた(Fujikawa DG, et al., J Neurochem 2002 ;83 :229−240)(図8a)。
【0057】
適切な濃度のイソサクラネチン、ゲニステイン、フォルムオノネチン又はオノニンで処理したサンプル由来の細胞溶解物中には、カスパーゼ3の開裂又はその基質の開裂はウエスタンブロッティングでは検出されなかった(図8b)。これは、フラボノイド処理をしなかったCTG−250細胞系由来の溶解物の分析結果と対照的であった。この溶解物を6日間のインキュベーション後に測定すると、活性化形態のカスパーゼ3及びカスパーゼ3の開裂された基質が増加していた(図8a)。上記フラボノイドで処理したLUC細胞系由来の溶解物中には、活性なカスパーゼ3生成物は検出されなかった。
【0058】
以上の通り、フラボノイドによりCTGリピートのシス効果が抑制され、神経細胞死が抑制されることが示された。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、細胞死を阻害する物質のスクリーニング方法、及び前記方法によりスクリーニングされたフラボノイドが提供される。本発明のフラボノイドは細胞死、アポトーシスを阻止することが確認されたため、脳神経系疾患の治療用医薬組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】未分化PC12細胞の細胞周期(a)、分化PC12細胞の細胞周期(b)、及び酸化ストレス条件下でNTG処理した、PC12細胞系での延長したCTGリピートが神経突起成長に及ぼす効果(c)を示す図。
LUC対照細胞及びCTG−250神経細胞系の免疫組織学的染色を示す(神経フィラメント(NF)染色、x200)(c)。
(a)PC12細胞の核膜は、細胞分裂現象のたびに消失する(破線)。この条件で安定な細胞系の構築を実施した。
(b)ウシ胎児血清(FCS)及びNGFと共に6日間インキュベートしてNGFによる細胞分化を誘導すると、PC12細胞は細胞分裂を停止し、核膜は細胞分化後維持される。そして、樹状突起及び軸索が形成される。次に、これらの細胞をFCSの不存在下で酸化ストレス条件下で2〜6日間培養する。細胞の写真を対応する各細胞図の下に配置した。
【図2】NGFの存在下(下段)又は不存在下 (上段)で培養した細胞のin vitroルシフェラーゼ(a)及びLDH (b)アッセイの結果を示す図。培養の経過日数に沿って示す。
グラフは、LUC細胞(○)及びCTG−250細胞(●)の平均値±標準誤差を示す。各数値は、インキュベーションしなかった場合のルシフェラーゼ活性又はLDH活性に対する比として示されている。NGF存在下におけるLUC細胞のルシフェラーゼ活性が、インキュベーションの経過と共に、CTG−250細胞と比較して有意に増大する(p<0.0001)ことに注意されたい。CTG−250細胞のLDH活性は、NGFと共にインキュベートした場合、軽度に低下した(p=0.0043)。
【図3】種々のフラボノイドの化学構造を示す図。MW:分子量。
【図4】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のオノニン(イソフラボン)による抑制を示す図。グラフは、LUC細胞(○)及びCTG−250細胞(●)の平均値±標準誤差を示す。各数値は、オノニンで処理していない各細胞のルシフェラーゼ活性又はLDH活性に対する比として示されている。上段は2日間インキュベーション後、及び下段は4日間インキュベーション後の各活性を示す。統計的有意も合わせて示す(*: p<0.0001; †:p<0.05)。
【図5】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のフォルムオノネチン(イソフラボン)による抑制を示す図。
【図6】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のイソサクラネチン(フラバノン)による抑制を示す図。グラフ及び略語の説明は図4に同じ。
【図7】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のゲニステイン(イソフラボン)による抑制を示す図。グラフ及び略語の説明は図4に同じ。
【図8】PC12 CTG−250細胞においてカスパーゼ3活性を誘導する酸化ストレスが、フラボノイド処理によって抑制されることを示す図。フラボノイド処理をしなかった場合のカスパーゼ3活性を(a)に、フラボノイドで処理をした場合のカスパーゼ3活性を(b)に示す。フラボノイドを加えることで、活性型カスパーゼ3のバンドが認められなくなっていることに注目する必要がある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞死を阻害する物質のスクリーニング方法、及び該方法によってスクリーニングされたフラボノイドに関する。
【0002】
【従来の技術】
筋強直性ジストロフィー(筋緊張性ジストロフィーともいう)[MIM 160900; dystrophia myotonica 1 (DM1)]は常染色体優性遺伝形式の筋ジストロフィーであり、この疾患に共通する特徴は、筋肉のミオトニー現象及び進行性の1型優位な筋繊維萎縮である。しかし、その他にも心臓障害、白内障、インスリン耐性糖尿病、前頭部の頭髪脱毛、軽度の痴呆など全身性の症状が認められる。 (Harper PS. 2001. Myotonic Dystrophy. Third Edition. W.B. Saunders Co., London. pp. 17−165)。DMにはこれまでに、2種類の原因遺伝子の異なるもののあることが報告されており、それぞれDM1及びDM2と名付けられている。
【0003】
DM1では、DM1プロテインキナーゼ(DM1PK)遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)内に存在するCTG三塩基配列が延長して生じることが報告されている (Fu et al., 1992(非特許文献1))。この塩基配列の延長はmRNAに転写され、DM1PK mRNA の3’非翻訳領域内に、50から2000以上のCUGリピートを有するmRNAが存在することも報告されている(Fu et al., 1993(非特許文献2))。DM症例の98%に見られるDM1突然変異はどのようにしてこの疾患を引き起こすのか正確には分かっていないが、いくつかの作用機構が提案されている(Thapscott SJ and Thornton CA. Science 293: 816−817, 2001)。例えば、DMPKの遺伝子産物の発現量の減少、あるいはリピートの延長が自分自身の遺伝子発現に影響を及ぼすシス効果もしくは、同時に発現する他の遺伝子の転写・翻訳に影響を及ぼすトランス効果などの仮説が提案されている(Amack JD et al., 1999)。
【0004】
最近、CCTGリピートが増幅する疾患[MIM 602668; dystrophia myotonica 2 (DM2)]も報告された。この疾患では、CCTGリピートがジンクフィンガープロテイン9 (ZNF9)遺伝子のイントロン内に存在することが報告されている(Liquori CL, et al., 2001(非特許文献3); Day JW et al., Neurology. 2003 ; 25;60 :657−664)。DM1におけるCUGリピートが延長したRNAと同様に、DM2でもCCUGリピートが延長したRNAは細胞核内に止まっていることが報告されており、この事から、CUGリピートやCCUGリピートが延長することでDMPKやZNF9タンパクや、そのすぐ下流にあるSIX5遺伝子の発現が減少するということよりも、むしろ延長したCUG又はCCUGリピートを含むRNAが発現すること自体で、DM1及びDM2に共通する病態が発症すると考えられる (Thapscott SJ, et al., 2001)。さらに、Davisらは、突然変異転写産物が、DM1患者細胞及びマウスC1C12筋芽細胞の核内にとどまっていることを示しており(Davis BM, et al., 1997; Taneja KL, 1998)、また、リピートの延長したDMPK mRNAがトランスに作用して、同時期に発現する他のmRNAの転写・翻訳に影響を及ぼすことも報告されている (Timchenko LT, 1999; Miller JW, et al., 2000)。さらに、本発明者は、RNA内の増幅したCUGリピートのシス及びトランス効果にとって、核膜が重要であることを示した(Furuya H. et al.,
2000)。
【0005】
DM1患者では新皮質及び皮質下核に、神経原繊維変化(NFT)が形成されることが報告されている。NFTは対をなすらせん状の細繊維(PHF)と呼ばれる、過リン酸化された微小管結合タンパク質の凝集によって形成されている(Harper PS, 2001)。DM1に認められる病原性タウ蛋白では、特異な異常リン酸化のパターンが認められ、そしてこれら異常リン酸化パターンは多くのDM1患者及びDM1モデルマウスの脳においても観察されている(Sergeant N. et al., 2001(非特許文献4); Seznec H. et al., 2001(非特許文献5))。これらの結果もまた、CTGリピートの増幅によって異常リン酸化タウ蛋白が中枢神経系に蓄積することを示している。また、延長したCTG90リピートがPC12(ラット神経細胞系)の神経分化を抑制するという報告もなされている(Qintero−Mora ML et al., 2002(非特許文献6))。
【0006】
【非特許文献1】
Fu YH et al., Science, 255: 1256−1258, 1992
【0007】
【非特許文献2】
Fu YH et al., Science, 260, 235−238, 1993
【0008】
【非特許文献3】
Liquori CL et al., Science 2001 ;293 : 864−867
【0009】
【非特許文献4】
Sergeant N et al., Hum Mol Genet 2001 ;10 : 2143−2155
【0010】
【非特許文献5】
Seznec H et al., Hum Mol Genet 2001 ;10 :2717−2726
【0011】
【非特許文献6】
Quintero−Mora ML et al., Biochem Biophys Res Commun 2002 ;295 :289−294
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DM1モデル神経細胞において、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法を提唱するとともに、その方法で選択されたフラボノイドを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、CTGリピート配列をレポーター遺伝子であるルシフェラーゼの3’側非翻訳領域に付加した遺伝子を作成し、それを神経系培養細胞に導入することにより、細胞死を抑制する薬物をスクリーニングするシステムを作成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼをコードする遺伝子)の非翻訳領域に連結させて得られる遺伝子を神経系細胞に導入してなる、筋強直性ジストロフィーのモデル細胞。
【0015】
非翻訳領域としては3’側非翻訳領域が挙げられる。
(2)反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結し、得られる遺伝子を細胞に導入し、被検物質の存在下で前記細胞を培養することにより、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法。
【0016】
上記スクリーニング方法において、細胞としてはラットの神経系培養細胞が用いられた。この場合は、培養は神経成長因子の存在下で行うことが好ましい。また、非翻訳領域としては3’側非翻訳領域が挙げられ、物質としてはフラボノイド(例えばオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチン)などが挙げられる。
(3)前記スクリーニング方法によってスクリーニングされたフラボノイドを含む医薬又は細胞死阻害剤。
【0017】
フラボノイドとしてはオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンが挙げられる。上記医薬は、例えば筋緊張性ジストロフィーの治療のために使用し得る。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
1.発明の概要
本発明は、250回に増幅したCTGリピートを含むリポーター遺伝子のmRNAを発現するPC12ラット神経細胞系(CTG−250)が、酸化ストレス条件下での細胞分化の直後に神経細胞死を引き起こす知見に基づいて完成されたものである。
【0020】
ところで、筋緊張性ジストロフィープロテインキナーゼ遺伝子(DMPK)内には、CTGトリプレットが繰り返されたリピート配列が存在する。このリピート配列は、筋緊張性ジストロフィー(筋緊張性ミオパシー、1型; DM1)に関与していると考えられる。しかしながら、CTGリピートの存在がどのようにして該疾患を誘導するか、その作用機構はいまだに解明されていない。
【0021】
本発明者は、CUGリピートを含むmRNAを安定に発現する培養神経細胞系(PC12細胞系)をin vitroで構築し、そしてCTGリピート配列による細胞傷害作用を抑制するフラボノイドのスクリーニングを実施した。一般にPC12細胞系は、細胞分裂の間に、核膜が分裂期ごとに消失するという特徴を有する。しかしPC12細胞では、いったん分化が開始されると、細胞分裂は行われなくなり、核膜が継続して維持される。すなわち、上記細胞系では、核膜は細胞分裂のたびに消失するのに対し(図1a)、神経成長因子(NGF)により分化が誘導されると、核膜は保存される。CUGリピートを含むmRNAが核内にとどまることでその毒性が強く出ると考えられるので、分化誘導後のCUGリピートの効果を詳細に観察することができる(図1b)。これに対し、NGFが存在しない条件下では、CTGリピートを含む細胞と含まない細胞との間で細胞数及び細胞傷害性に関する差異は見られない。このことは、核膜の存在下でCTGリピートが神経細胞に対して傷害性を示し、その結果直接的又は間接的にアポトーシスを引き起こすことを示している。
【0022】
本発明者は、NGFを作用させて神経細胞に分化させると、核膜の存在によってmRNAが核内に保持される結果、CUGリピート配列を核内に有する細胞は細胞死を起こすと考えた。そして、そのような細胞に被検物質を添加して培養すれば、被検物質が細胞死を阻害するか否かを評価することができ、細胞死を阻害する物質は、DM1に於いて細胞死を防ぐ薬剤として利用することができると考えた。
【0023】
また、本発明者は、酸化ストレス条件下においてリピート配列が細胞傷害性を有することをin vitroで確認し、いくつかのバイオフラボノイド薬が、CUGリピートを含むmRNAのシス効果及び細胞傷害性を抑制することを示した。「酸化ストレス条件」とは細胞内に活性型酸素原子を増やすこと意味し、神経細胞に障害を与え、異常リン酸化など神経細胞の老化を早めるために設定される。酸化ストレス処理は、神経細胞培養液を用いてその中からウシ血清を除くことで行われる。
2.遺伝子及び細胞
本発明において使用される遺伝子は特に限定されるものではないが、細胞死の程度によって発現量が変化することを確認できるマーカー遺伝子であることが好ましい。マーカー遺伝子としては、例えばルシフェラーゼ遺伝子(LUC)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ウミシイタケルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。マーカー遺伝子は、市販のものを使用することもでき、当分野において周知の遺伝子クローニング手法によってクローニングすることもできる。
【0024】
本発明においては、上記遺伝子の非翻訳領域にCTG反復配列を連結する。反復配列を連結する非翻訳領域は、特に限定されるものではないが、レポーター遺伝子の3’側非翻訳領域、あるいはDMPK遺伝子の非翻訳領域であることが好ましい。CTG反復配列とは、「CTG」配列が一組となって繰り返し反復された配列を意味し、「CTGリピート」又は「CTGリピート配列」ともいう。なお、mRNAにおいて説明する場合は、「CUGリピート」又は「CUGリピート配列」という。DM1の疾患が発症するリピート回数は50回以上であり、先天型DM1などでは2000回以上のものも認められている。しかし、長いリピートをクローニングすることは困難であるため、本発明において用いることができるリピート回数は50回〜250回程度、好ましくは250回である。本発明におけるリピートサイズ250回は、リピートとしては最長の部類に入る。
【0025】
本発明において、上記CTG配列を付加した遺伝子を導入する対象となる細胞は、特に限定されるものではない。例えば、大腸菌、枯草菌等などの細菌、Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母、CHO細胞、各種組織由来細胞(神経細胞、腫瘍化肝臓細胞、神経膠細胞)などの動物細胞を使用することができる。
【0026】
本発明においては、 神経系モデル細胞であるPC12(ラット神経細胞)が好ましい。これらの細胞は当分野において容易に入手することができる。
【0027】
遺伝子の細胞への導入は、一般的な形質転換手法、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等により行うことができる。
3.スクリーニング
本発明の好ましい実施態様において、DM1患者のゲノムDNAからCTGリピートを単離し、ルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)にサブクローニングし、そしてLUCリポーター遺伝子単独(pLUC)のもの、又はLUCの 3’−UTRに250個のCTGリピートを融合させた融合遺伝子(pLUC+CTG250)を細胞に導入して形質転換体を樹立する。NGFで分化誘導した後に酸化的ストレスをかけて培養を続け、細胞内乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定することにより、これらの細胞系の細胞傷害性を観察し、LUC活性を測定することにより、増幅したCTGリピートのシス効果を評価する。シス効果とは、CTGリピートを含む遺伝子がその遺伝子自体の発現を抑制する効果を意味し、他の遺伝子の発現を抑制するトランス効果に対立する概念である。
【0028】
次に、増幅したCTGリピートの細胞傷害性及びシス効果を抑制する効果的な化学物質を見つけ出すため、CTGリピートを含む細胞を当該化学物質とともに培養し、細胞のLUC活性を測定することによって目的とする化学物質をスクリーニングする。細胞傷害性の活性及びLUC活性は、市販のキット(Luciferase Assay System (Promega))を用いて製造者のプロトコールに従って測定することができる。
【0029】
スクリーニングの対象となる物質としては、例えば合成化合物、発酵物、ペプチド、タンパク質、フラボノイド、ホルモンなどが挙げられる。本発明においては、例えば200〜300種類のフラボノイドから目的の効果を有するものを容易にスクリーニングできる。
【0030】
本発明において好ましいフラボノイドとしては、例えばオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンを挙げることができる。そして、スクリーニングされたフラボノイドは、in vitroにおいて細胞死(例えばアポトーシス性細胞死)を阻止することができる。この系を用いると、CTGリピートのシス効果を評価するのが非常に簡単であるため、DMの治療に有効な薬剤をスクリーニングするのに有用である。
4.細胞死阻害剤及び医薬
本発明においてスクリーニングされたフラボノイドを細胞死阻害剤として使用する場合は、フラボノイドの量は特に限定されるものではなく、好ましくは5−160μg/mlである。使用期間も特に限定されるものではないが、好ましくは分化開始後から7日以内である。
【0031】
本発明においてスクリーニングされたフラボノイドを医薬として使用する場合は、投与する対象疾患は、神経系疾患、精神系疾患などに適用が可能である。このような疾患の具体例として、例えば筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)、アルツハイマー病、fronto−temporal dementia(FTD)、 CAGリピート病などが挙げられる。
【0032】
本発明において、フラボノイドを有効成分として含有する医薬は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。
【0033】
上記医薬は、常法にしたがって製剤化することができ、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0034】
担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。
【0035】
本発明のフラボノイドを経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤とし、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。顆粒剤及び散剤は、カプセル剤などの単位量投与形態とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にすることもできる。
【0036】
経口用固形剤は、それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0037】
注射剤の場合は、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供され、使用する際に適当な担体(例えば滅菌水で再溶解させる粉体)であってもよい。これらの剤形は、それらの組成物中に製剤上一般に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。また、その投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。
【0038】
上記フラボノイドの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に許容し得る担体との組合せとして投与される有効量を適宜決定することができる。
【0039】
また、投与時期としては、特に限定されるものではないが、痴呆などの症状が始まってからではなく、その症状が出る前から、発症の予防薬として投与することが好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
(1) プラスミドの構築
インフォームドコンセントを得た軽症の男性DM1患者(47歳)の白血球から、通常の方法によりゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAから、PCR法で、CTGリピートを含むDNA断片を単離した。この患者のゲノムDNAをサザンブロット分析にかけたところ、250個に増幅したCTGリピートを含むことが判明した。このリピートを含むDNA断片を増幅し、制限酵素MspIで消化し、そしてルシフェラーゼ発現ベクターpGL3 (Promega, Madison, WI)のXba I部位(平滑末端化し、BAPで処理した)にサブクローン化した(pGL/CTG250という)。このプラスミドをHindIII及びBamHIで消化し、次に両制限酵素部位を平滑末端化した後にpCAGGSneoベクター(Niwa H. et al., Gene 1991 ;108 , 193−200.)のEcoRI部位にサブクローン化した。サブクローン化したプラスミドのDNAを、Dye Deoxy Terminator Kit (Perkin−Elmer, Applied Biosystems)を用いたジデオキシ法により配列決定した。
(2) 細胞培養及びトランスフェクション
PC12細胞は、公知手法により継代及び維持を行った(Greene LA, et al., Proc Natl Acad Sci USA 1976 ;73 :2424−2428)。コラーゲンをコーティングしたプレート(Sigma)に播いた細胞を、Lipofectamin Plus Reagent (Gibco−BRL)を用いてリポータープラスミドでトランスフェクトした。また、ルシフェラーゼ遺伝子のみを含むプラスミドでトランスフェクトした細胞を対照細胞とした。0.4 mg/mlのネオマイシン(Gibco−BRL)を含む増殖培地中で増殖させた後に、安定なトランスフェクタントを単離した。生存細胞を再培養し、そして高度に遺伝子を発現するコロニーをスクリーニングするためにルシフェラーゼ活性を測定した。250個のCTGリピートを含むルシフェラーゼ遺伝子を効率的に発現するPC12細胞を選択し、この細胞をCTG−250と名付けた。ルシフェラーゼリポーター遺伝子のみを発現する細胞をLUCと名付け、対照として用いた。
【0042】
上記LUC細胞及びCTG−250細胞の分化を誘導するため、それぞれの細胞を100 ng/mlの神経成長因子(NGF; Gibco−BRL)を用いて6日間処理した。分化した細胞を、コラーゲンを塗布したプレートに再度播種することによって血清を完全に除去し(Batistatou A. et al., J Cell Biol 1991 ;115 :461−71)、 そして細胞を100 ng/mlのNFGを含む無血清培地中に一定期間、酸化ストレス条件下で維持した(Davis PK, et al., J Neurochem 1997 ;68 :2338−2347; Anastasiadis PZ, et al., J Biol Chem 2001 ;276 :9050−9058.)。免疫組織学的分析のために、細胞を12μg/mlのD−リシン(Sigma)をコーティングした24ウエルプレート中のガラス製のカバースリップに再播種した。
【0043】
(3) 免疫蛍光の顕微鏡検査
細胞はステップとステップとの間にリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。カバースリップ上の培養PC12細胞を4%パラホルムアルデヒド−PBSで15分間固定し、抗神経フィラメント200 kDaモノクローナル抗体(クローンNE14、Boehringer Mannheim Biochemica)を用いて細胞質神経フィラメントを検出した(Katoh H. et al., Mol Cell Biol 2000 ;20 :7378−7387)。
(4) ルシフェラーゼアッセイ及びLDH細胞傷害性検出アッセイ
PC12細胞を96ウエルプレートに15x105個/ウエルの割合で播いた。フラボノイドの存在下又は不存在下で所定時間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄した。CTGリピートを含むリポーター遺伝子の転写及び翻訳を評価するため、CTG−250及びLUC細胞の分化後、酸化ストレス条件下(ウシ血清を除外した培地)で2〜6日間インキュベートした後で、Luciferase Assay System (Promega, Madison, WI)を用いて製造者のプロトコールに従ってルシフェラーゼ活性をアッセイした。各サンプル中のタンパク質の量をフォリン−フェノールアッセイによって測定し、そしてルシフェラーゼ活性を一定量のタンパク質あたりの活性として表わした。
【0044】
増幅したCTGリピートの細胞傷害作用を検出するために、LDH細胞傷害性検出キット(宝バイオ)を用いて細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を全生存細胞の尺度として測定した。結果を一定量のタンパク質あたりの細胞内LDH活性として表わした。
(5)フラボノイドによる細胞処理
細胞処理実験のために、最初に252種類の精製バイオフラボノイドのスクリーニングを実施した。これらのフラボノイドはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。分化後のPC12細胞(LUC及びCTG−250)を、コラーゲンでコーティングした96ウエルプレート中の100 ng/ml NGF含有無血清培地に1.0x104個/ウエルの割合で播いた。そして、各フラボノイドを種々の濃度で加えて細胞を処理した。この試験において、培地に添加したDMSOの最大量は0.25%であった。2日間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、Cell Lysate Buffer (Promega, Madison, WI)によって溶解し、そしてルシフェラーゼアッセイに用いた。ルシフェラーゼ活性のデータを未処理細胞のルシフェラーゼ活性と比較した。未処理細胞(対照)と比較してルシフェラーゼ活性が3〜4倍に増大するフラボノイドを選択し、2次及び3次スクリーニングに用いた。
【0045】
フラボノイドの2次及び3次スクリーニングは、以下の通り行った。
【0046】
分化後のPC12細胞(LUC及びCTG−250)を、コラーゲンでコーティングした96ウエルプレート中の100 ng/ml NGF含有無血清培地に1.0x104個/ウエルの割合で播いた。そして、各フラボノイドを種々の濃度で加えて細胞培養の2日目及び4日目に細胞を処理した。濃度は、2次スクリーニングでは10、20、40及び80μg/ml、3次スクリーニングでは5、10、20、80及び160μg/mlの濃度とした。2次及び3次スクリーニングにおいては、CTG−250細胞系とLUC細胞系のルシフェラーゼ活性を比較した。そして、添加したフラボノイドのうち統計的に有意な細胞障害性の防止と、ルシフェラーゼ活性の増大を示した数種類のフラボノイドを図3及び表1(後述)に示した。
(6) イムノブロット分析
細胞ホモジネートを調製し、イムノブロット分析を実施した(Davis PK, et al., J Neurochem 1997 ;68 :2338−2347)。10 mgのタンパク質を電気泳動によって7.5% SDS−ポリアクリルアミドゲル上に分離し、Immunobilon−P膜(Millipore)に転写し、この膜を3%脱脂粉乳(森永乳業)でブロックし、次に1次抗体としてのカスパーゼ3(Cell Signaling Technology)と共にインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体と共にインキュベートした後、Enhanced Chemiluminescence (Amersham Pharmacia Biotech)を用いてイムノブロットを発生させた。
(7) データ分析及び統計
CTGリピートがDM1モデル細胞に起こす細胞傷害性の実験では、それぞれのデータを、再播種した日のそれぞれの細胞のLDH値やルシフェラーゼ活性値で割って、比として表した。
【0047】
データは平均値±SDとして示した。これらの実験はそれぞれ3回実施し、統計学的有意差は、反復して実施した測定値の分散分析(ANOVA)によって決定した。
【0048】
バイオフラボノイドを用いた細胞処理実験では、フラボノイド処理をしていない各細胞から得られた対照値に対する比としてデータを示した。mRNAの翻訳効率を表わす値としてルシフェラーゼ活性値を示した(延長したCTGリピートのシス効果の評価)。LDH活性は、増幅したCTGリピートの細胞傷害性に対する生存比を示す。データは平均±SDとして示す。また、全ての実験におけるCTG−250及びLUC細胞間の経時的データの統計分析には、分散分析を用いた。これらの実験はそれぞれ3回実施し、データを統計分析に供した。
(8) 結果
▲1▼ 安定なPC12クローンの樹立
RNAの3’−UTRに存在する増幅したCUGリピートの細胞傷害作用を簡便に、かつ効率的に測定するため、本発明者はリポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた。増幅したCTGリピートを含む、又は含まない3’−UTRを有するルシフェラーゼリポータープラスミドをPC12細胞にトランスフェクトし、そして各構築物でトランスフェクトした形質転換体についてネオマイシン耐性により安定なクローンを選択した。この細胞はNGFに応答して、形態的及び生物学的にニューロンに類似した細胞に分化する(図1a、1b)。安定なクローンがゲノム中にCTGリピートを含み、そしてCUGリピートを含むRNAをin vitroで発現するかどうかを分析するため、安定なクローンから抽出したゲノムDNAをPCRにより増幅し、ルシフェラーゼ遺伝子中の配列及びCTGリピートの3’側領域の配列に基づくプライマーを用いたRT−PCR分析を実施した。CTG−250を増幅するために、予測されるDNA断片を得た。
【0049】
▲2▼ CUGリピートを含むmRNAの細胞傷害性
PC12細胞においてCTGリピートの転写が神経細胞の分化及び細胞傷害性に及ぼす効果を調べるため、本発明者は、最初に、NGFによって誘導される分化の間に起こる安定なクローンの形態的変化を調べた(図1C)。その結果、酸化ストレス条件下での6日間のNGF処理後に、CTG−250細胞の増大等の変化を示した。これらの細胞は、樹状突起及び軸索を伸長させることができなかった。他方、LUC細胞系は顕著な変化を示さなかった(図1C)。
【0050】
CTG−250細胞系に観察された特徴を評価するため、LDH及びルシフェラーゼアッセイによって細胞機能を分析した。すなわち、CTG−250細胞系のルシフェラーゼ活性と、リピートを含まないクローン(すなわち、LUC細胞系)のルシフェラーゼ活性とを比較した。その結果、CTGリピートを発現する細胞は、リピートを含まないクローン(LUC細胞系)と比較して、ルシフェラーゼの翻訳が有意に低いことが判明した。NGFを用いた場合は特にそうであった(p<0.0001)(図2a)。
【0051】
次に、培養細胞の細胞傷害性に対応するLDHのアッセイでは、NGFを用いなかった場合は、CTG−250細胞系のLDH値は、リピートを含まない細胞系のLDH値と比較して有意差はなかった(p=0.041)。他方、NGFを用いた場合は、軽度の有意差があった(p=0.0043)。したがって、RNAの3’−UTRに存在する増幅したCUGリピートの発現は、NGFに基づくシグナル伝達経路に特に影響を及ぼし、細胞機能の障害を起こすと考えられた。
【0052】
▲3▼ フラボノイドの作用
3次スクリーニングで得られたフラボノイドを図3及び表1に示す。CTG−250及びLUC細胞系の増殖に対するこれらのフラボノイドの効果を、図4(オノニン)、図5(フォルムオノネチン)、図6(イソサクラネチン)及び図7(ゲニステイン)に示す。
【0053】
【表1】
これらのフラボノイドは、CTG−250及びLUC細胞系におけるルシフェラーゼ活性を改善した。これらのフラボノイドを1 mlあたり5−160μg添加すると、CTGリピートの細胞傷害性を抑制し、及び/又はそのシス効果を抑制した。オノニン及びホルムオノネチンはルシフェラーゼ活性を増大させ、CTGリピートのシス効果を抑制した(それぞれ図4a、図5a)。イソサクラネチン及びゲニステインは、CTGリピートのシス効果及び細胞傷害性の両方を優位に抑制した(それぞれ図6a、6b、図 7a、7b)。
【0054】
用量応答実験は、5−10μg/mlのオノニン(11.6−23.3 μmol)(図4)又はフォルムオノネチン(18.7−37.3 μmol)(図5)は、2から4日のインキュベーション期間中、リポーター遺伝子の翻訳を改善した。他方、10−20μg/mlのゲニステイン(37.0−74.1 μmol)(図7)又はイソサクラネチン(34.9−69.9 μmol)(図6)は、CTGリピートのシス効果及び細胞傷害性をそれぞれ低下させた。
【0055】
次に、本発明者は、CTG−250細胞系において、フラボノイド処理をすると、増幅したCTGリピートによって誘導されるカスパーゼ3活性化をブロックするかどうかイムノブロッティング及び生化学的技法の両方によって調べた。
【0056】
まず、ウエスタンブロッティングによって活性化形態のカスパーゼ3の形成があるかどうかを調べた。次に、ウエスタンブロッティングによって、カスパーゼ3のp17(活性形)及び既知のカスパーゼ3基質の開裂を調べた(Fujikawa DG, et al., J Neurochem 2002 ;83 :229−240)(図8a)。
【0057】
適切な濃度のイソサクラネチン、ゲニステイン、フォルムオノネチン又はオノニンで処理したサンプル由来の細胞溶解物中には、カスパーゼ3の開裂又はその基質の開裂はウエスタンブロッティングでは検出されなかった(図8b)。これは、フラボノイド処理をしなかったCTG−250細胞系由来の溶解物の分析結果と対照的であった。この溶解物を6日間のインキュベーション後に測定すると、活性化形態のカスパーゼ3及びカスパーゼ3の開裂された基質が増加していた(図8a)。上記フラボノイドで処理したLUC細胞系由来の溶解物中には、活性なカスパーゼ3生成物は検出されなかった。
【0058】
以上の通り、フラボノイドによりCTGリピートのシス効果が抑制され、神経細胞死が抑制されることが示された。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、細胞死を阻害する物質のスクリーニング方法、及び前記方法によりスクリーニングされたフラボノイドが提供される。本発明のフラボノイドは細胞死、アポトーシスを阻止することが確認されたため、脳神経系疾患の治療用医薬組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】未分化PC12細胞の細胞周期(a)、分化PC12細胞の細胞周期(b)、及び酸化ストレス条件下でNTG処理した、PC12細胞系での延長したCTGリピートが神経突起成長に及ぼす効果(c)を示す図。
LUC対照細胞及びCTG−250神経細胞系の免疫組織学的染色を示す(神経フィラメント(NF)染色、x200)(c)。
(a)PC12細胞の核膜は、細胞分裂現象のたびに消失する(破線)。この条件で安定な細胞系の構築を実施した。
(b)ウシ胎児血清(FCS)及びNGFと共に6日間インキュベートしてNGFによる細胞分化を誘導すると、PC12細胞は細胞分裂を停止し、核膜は細胞分化後維持される。そして、樹状突起及び軸索が形成される。次に、これらの細胞をFCSの不存在下で酸化ストレス条件下で2〜6日間培養する。細胞の写真を対応する各細胞図の下に配置した。
【図2】NGFの存在下(下段)又は不存在下 (上段)で培養した細胞のin vitroルシフェラーゼ(a)及びLDH (b)アッセイの結果を示す図。培養の経過日数に沿って示す。
グラフは、LUC細胞(○)及びCTG−250細胞(●)の平均値±標準誤差を示す。各数値は、インキュベーションしなかった場合のルシフェラーゼ活性又はLDH活性に対する比として示されている。NGF存在下におけるLUC細胞のルシフェラーゼ活性が、インキュベーションの経過と共に、CTG−250細胞と比較して有意に増大する(p<0.0001)ことに注意されたい。CTG−250細胞のLDH活性は、NGFと共にインキュベートした場合、軽度に低下した(p=0.0043)。
【図3】種々のフラボノイドの化学構造を示す図。MW:分子量。
【図4】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のオノニン(イソフラボン)による抑制を示す図。グラフは、LUC細胞(○)及びCTG−250細胞(●)の平均値±標準誤差を示す。各数値は、オノニンで処理していない各細胞のルシフェラーゼ活性又はLDH活性に対する比として示されている。上段は2日間インキュベーション後、及び下段は4日間インキュベーション後の各活性を示す。統計的有意も合わせて示す(*: p<0.0001; †:p<0.05)。
【図5】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のフォルムオノネチン(イソフラボン)による抑制を示す図。
【図6】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のイソサクラネチン(フラバノン)による抑制を示す図。グラフ及び略語の説明は図4に同じ。
【図7】増幅したCTGリピートによって引き起こされるシス効果(a)及び細胞傷害性(b)のゲニステイン(イソフラボン)による抑制を示す図。グラフ及び略語の説明は図4に同じ。
【図8】PC12 CTG−250細胞においてカスパーゼ3活性を誘導する酸化ストレスが、フラボノイド処理によって抑制されることを示す図。フラボノイド処理をしなかった場合のカスパーゼ3活性を(a)に、フラボノイドで処理をした場合のカスパーゼ3活性を(b)に示す。フラボノイドを加えることで、活性型カスパーゼ3のバンドが認められなくなっていることに注目する必要がある。
Claims (14)
- 反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結させて得られる遺伝子を神経系細胞に導入してなる、筋強直性ジストロフィーのモデル細胞。
- レポーター遺伝子がルシフェラーゼをコードする遺伝子である請求項1記載のモデル細胞。
- 非翻訳領域が3’側非翻訳領域である請求項1記載の細胞。
- 反復数50〜250のCTG反復配列をレポーター遺伝子の非翻訳領域に連結し、得られる遺伝子を細胞に導入し、被検物質の存在下で前記細胞を培養することにより、細胞死を阻害する物質をスクリーニングする方法。
- 細胞が神経系細胞である請求項4記載の方法。
- レポーター遺伝子がルシフェラーゼをコードする遺伝子である請求項4記載の方法。
- 非翻訳領域が3’側非翻訳領域である請求項4記載の方法。
- 培養が神経成長因子の存在下で行われるものである請求項4記載の方法。
- 物質がフラボノイドである請求項4記載の方法。
- フラボノイドがオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンである請求項9記載の方法。
- 請求項9又は10記載の方法によってスクリーニングされたフラボノイドを含む医薬。
- 筋強直性ジストロフィーの治療のための請求項11記載の医薬。
- 請求項9又は10記載の方法によってスクリーニングされたフラボノイドを含む細胞死阻害剤。
- フラボノイドがオノニン、フォルモノネチン、ゲニステイン又はイソサクラネチンである請求項13記載の細胞死阻害剤。
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- 2003-05-13 JP JP2003134759A patent/JP2004337025A/ja active Pending
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