JP2004336282A - 画像処理装置、画像処理プログラム及び該プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】入力画像の画像特徴を基に黒文字を囲む領域を抽出し、ブロック分割処理で文字囲み領域の中から画素数、輝度値に基づく評価関数が最大値をとるブロックの高輝度画素群領域を地肌基準として選択し、その平均値を推定地肌色とする。推定地肌色を基に入力画像から地肌とみなす領域を抽出し、この領域の画素を推定代表背景色により置換することにより、画質を改善する。他方、入力画像の地肌以外の領域に対し局所的に背景色を推定しながら、裏写り画素を推定背景色で置換する処理を適用し裏写り除去を行い画質を改善し、さらにこの領域に対して地肌領域との階調不連続が生じないように階調補正を施す。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷文書をスキャナ等の入力機器により読取り、得られるデジタル画像に基づいて、出力機器としてのプリンタ、ディスプレイ等から印刷・表示出力を行う際のカラー画像処理に関し、より詳細には、出力画像の画質を劣化させる地肌や背景に生じる画像ノイズ(裏写り、汚れなど)を除き、画質を改善させるための画像処理を行う画像処理装置、該装置を構成する画像処理手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム及び該プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷文書をスキャナなどのカラー画像入力機器により読取り、得られるデジタル画像に対し補正や調整処理を施さずに、そのままカラープリンタから印刷したり、ディスプレイ上に表示したりすると、入力時のスキャナにおける変換特性などの装置条件の違いや変動によって、地肌や背景の色が一様でなかったり、裏面に印刷されている内容が透けて入力される「裏写り」が生じて、画像が全体として汚く見える現象が起こる。このような画質を損なう画像ノイズの除去処理はこれまでも行われており、地肌や背景の色が白の場合には、「下地除去」や「地肌除去」と呼ばれる処理(地肌や背景部分を白に置換する処理)が有効である。例えば、画素信号値のヒストグラムをもとに地肌レベルを検出し、地肌レベル以上の輝度信号を白レベルで出力することにより、地肌を飛ばす処理が知られている(下記[特許文献1〜3]参照)。このような処理により、地肌や背景の色が白の場合には、スキャナ変動や裏写りによる画像劣化を防止することができる。
また、下記特許文献4には、原稿の背景色を推定し、該背景色と処理対象の画素値との差を用いて、該対象画素の画素値を変更する処理が開示されている。ここでは、背景色は同じ色のヒストグラムの最も明るい領域を探すことによって決定され、背景を次の4つ、即ち、(1)ニアホワイト、コントーン(白地のコピー用紙や新聞印刷用紙など)、(2)ニアホワイト、ハーフトーン(雑誌印刷用紙など)、(3)ファーホワイト、コントーン(写真や着色紙など)、(4)ファーホワイト、ハーフトーン(雑誌印刷用紙など)のうち、いずれか一つに識別し、その識別結果に応じて、色分布から背景基準色を決定し、各対象画素との色の差に基づいて、画素の色を変更する方法が示されている。
また、下記特許文献5には、階調分布を表すヒストグラムに現れるピークの分布状態を解析することにより、画像/地肌/それ以外の3種に領域の種別を判定するための閾値を決定し、画像領域は無処理のまま出力、地肌領域は地肌色に変換、他の領域では所定の条件に従って処理する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−22971号公報
【特許文献2】
特開2000−78408号公報
【特許文献3】
特開2002−27252号公報
【特許文献4】
特開2000−50083号公報
【特許文献5】
特開2001−45297号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カラー文書画像では、地肌や背景の色が任意であり、背景の構造も複雑で、複数の背景色から構成されている場合も多い。図5は、このような場合の一例を示すものである。この例では、複数箇所に配置された文字の背景が異なる濃度(色成分)を持つ例を示しており、原稿の地肌を示す(I)部分が、中間調の背景を持つ(II)部分や黒の背景を持つ(III)部分より高輝度(低濃度)の背景を持っている。
このような文書画像の場合に、単純に色や階調分布を調べると、ヒストグラム中に多くのピークや谷が現れるような「混合分布」となるため、真の背景色を推定することが難しくなる。上記した特許文献1,2,5では、このような混合分布から背景・地肌色を抽出する方式を述べているが、ヒストグラムには、ノイズによるピークや谷も多く含まれるため、正確に所望の背景・地肌色が抽出できるとは限らず、誤りも多くなる。なお、特許文献3には、真の背景色の推定を誤らせる網点画像によるノイズへの対応策としてヒストグラムに用いる画像を制限する方法が示されているが、網点によるノイズへの適応に留まっている。また、特許文献4では、背景・地肌を、コントーンとハーフトーン(網点)に識別しているが、網点の識別は入力機器の周波数特性(MTF:Modulation Transfer Function)に強く依存するため、ネットワークを介して遠隔地から送られてきたデータのように、入力機器が未知の場合に適用するのが難しいために、正しい識別結果が保証されない。
【0005】
ところで、特許文献1〜5により例示した従来方法による上記した問題点を回避すべく、このような従来方法によらずに、図5に示すような背景の構造も複雑で、複数の背景色から構成されている文書画像を対象にして、背景に生じる裏写りや地肌汚れを除去して画質を改善する方法が、本出願人により、先に提案されている(特願2003−48834号、以下これを「先行例」という)。
この先行例では、入力画像の画像特徴によって背景画素の抽出、背景(地肌)色を推定(即ち、文字とその周囲画素を含む文字領域を抽出し、そこから背景画素を分類し、背景画素を対象として代表背景色を推定)し、推定された代表背景色に基づいて原画像上の背景とみなされる領域を抽出し、抽出された領域の色を推定された代表背景色或いは白に置換することにより背景領域の裏写りや地肌の汚れを除き、画質の改善を図っている。
しかしながら、ここでは、推定する代表背景色が“真の背景”即ち“地肌”の色となるように、各文字領域の背景画素を評価し、その評価に従って背景とみなされる領域を抽出しているので、画質が改善される領域は、地肌に相当する領域である。従って、文字の背景に下地色が施されているような背景領域に対して、上記の画質改善処理が行われることはなく、そのままに放置される(例えば、図5に対して改善処理を行うと、図9に示すように、地肌(I)の裏写りは除去されても、下地色を施した(II)の裏写りは残存する)ことになるので、画像全体としての画質の改善は不十分になってしまう。
本発明は、画質を改善するために入力画像を処理する上記した従来方法及び先行例の方法における問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、背景の構造も複雑で、地肌を含め複数の背景色から構成されている文書画像を対象にする場合に、混合分布から構成されるヒストグラムの解析結果や、入力画像機器に関する知識・特性情報や既定のパラメータを必要とする従来方法によらずに、入力画像の局所的なデータに基づいて背景(地肌)とそれ以外の領域を特定し、それぞれに適した裏写り、汚れ等の画質を劣化させる要因を排除する画質改善法を適用し得るようにすることにより、地肌のみならず下地色が施されている背景領域を含めて、画像全体の画質の改善をより適正に行うことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、処理対象となる原デジタル画像から文字とその隣接画素範囲を文字領域として抽出する手段と、抽出された文字領域に属する画素を色によって背景とそれ以外の2クラスに分類する手段と、背景クラスに分類された画素をもとに原画像上の代表背景色を推定する手段と、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色以外の色を有する背景領域を抽出する手段と、抽出された代表背景色以外の背景領域に対し裏写りの補正を施す手段とを具備する画像処理装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載された画像処理装置において、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色を有するとみなされる背景領域を抽出する背景領域抽出手段と、抽出された代表背景色を有するとみなされる背景領域の色を推定された代表背景色に置換する手段とを具備することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1に記載された画像処理装置において、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色を有するとみなされる背景領域を抽出する背景色領域抽出手段と、抽出された代表背景色を有するとみなされる背景領域の色を白に置換する手段とを具備することを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載された画像処理装置において、前記代表背景色以外の背景領域に対しさらに階調の補正を施す手段を具備することを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載された画像処理装置において、原画像をブロック分割する手段を具備し、前記文字領域抽出手段は、処理対象となる原デジタル画像から画像の特徴量を計算する手段、算出された特徴量によって原画像から文字領域を抽出する手段よりなる手段であり、前記2クラス分類手段は、ブロック分割手段により分割されたブロックごとに分類を行う手段であり、前記代表背景色推定手段が、ブロックごとに前記2クラス分類手段によって得られた背景クラスの画素に基づいて原画像上の代表背景色を推定する手段であることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載された画像処理装置において、前記2クラス分類手段は、各画素の色信号から輝度を計算し、算出した輝度を閾値処理することにより2クラスに分類する手段であることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載された画像処理装置において、前記特徴量計算手段、前記文字領域抽出手段、前記ブロック分割手段、前記2クラス分類手段、前記代表背景色推定手段、前記背景色領域抽出手段、前記代表背景色以外の色を有する背景領域抽出手段の少なくとも一つは、解像度が原画像よりも低い縮小画像を生成する手段を具備する手段であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載された画像処理装置が具備する手段としてコンピュータを機能させるための画像処理プログラムである。請求項9の発明は、請求項8に記載されたプログラムを記録した記録媒体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、文書画像の背景領域における裏写りや汚れ等を排除し、画質の改善を図る際に、従来から行われている混合分布から構成されるヒストグラムの解析結果を用いる方法(上記[従来の技術][発明が解決しようとする課題]参照)によって起きる問題を回避するとともに、地肌のみならず地肌以外の色(下地色)が施されている背景領域に対しても画質改善が可能な処理方法を適用することにより、画像全体の画質を改善することを解決課題とするものである。
本発明では、背景のうちの地肌に相当する領域に適用できる方法として用いる方法は、地肌以外の領域に適用できないので、地肌以外の領域には別の改善処理を適用することにより、画像全体の画質を改善するという上記課題を解決する。
つまり、地肌に相当する背景領域に対しては、入力画像の画像特徴に基づく(即ち、局所的な画像情報に基づく)下記の原理に従う処理方法を適用し、改善処理を施す背景領域を特定し、その領域の代表色をとらえることにより、ヒストグラムの解析結果を用いる従来法によって起きる問題を回避する。
この処理方法の原理について説明すると、カラー文書画像は、局所的に見ると、前景と背景の2種類の領域から構成されているので、この点に着目するもので、ここでは、背景色の統計量推定問題を単純な2クラス問題に帰着させ、
(1) 真の背景(地肌)色を含むような部分領域を探索する。
(2) その領域を前景と背景の2クラスに分類する。
(3) 背景の色・階調分布から、地肌や背景の代表色やばらつき度合を抽出する。
という処理により、改善処理に必要な統計量を求める。
さらに、こうして得られた統計量をもとに画像全体から地肌に相当する背景領域を抽出し、この領域を推定された代表色で置換する。
【0012】
他方、地肌に相当する領域以外の領域には、地肌領域に用いた改善処理方法は適用できないので、この領域に対しては、別の画質改善処理方法(以下の実施形態では、裏写りの除去を例とするので、ここでは“裏写り除去方法”という)を適用する。この場合に対象領域は、上記した地肌に相当する領域の抽出方法によって得た結果を受け、地肌領域以外の領域を特定する。
ここで、地肌領域以外の領域に適用する裏写り除去方法は、対象とした入力画像の地肌に相当する背景領域に対する改善処理に連結させて一連の処理として適用するものであるから、上記地肌改善処理におけると同等の条件の入力画像に適応可能であり、汎用性の高い方法が望ましい。つまり、対象とする入力文書画像以外に対象画像に関する特別な付加的情報を必要としないで(例えば、入力は裏写りした原稿のスキャナ読み取り画像のみとして、それ以外は無条件で)除去処理を可能とする方法が望ましい。また、こうした入力条件に適応する裏写りの除去方法は、複写機等に適用する処理方法として既に提案された方法が存在するので、この方法を適用することにより実施することが可能である(詳細は後記に例示)。
さらに、地肌に相当する領域以外の領域に対して地肌領域との階調不連続が生じないように階調変換を施す。この場合の対象領域は、上記した裏写り除去方法が施される領域と同じであるから、裏写り除去方法に連結する一連の処理として裏写り除去処理後の画像を対象に階調補正を施す。
画像全体に対するこの画質改善処理においては、上記のように、処理に必要なデータは画像特徴から統計的処理により算出され、入力画像機器に関する知識・特性情報や既定のパラメータは一切必要とせずに処理を可能にする。従って、この処理方法は、ネットワークを介して、遠隔地から送信されてきた場合のように、入力機器がわからないようなデータを処理するときに有効な方法といえる。
【0013】
本発明に係わる画像処理装置を添付する図面とともに示す以下の実施形態に基づき説明する。なお、以下に示す実施形態では、本発明に係わる画像処理装置をシステム要素として構築される画像処理システムの形態で実施した例を示す。
図1は、本実施形態に係わる画像処理システムの構成を示す。この画像処理システム100は、サーバ クライアント システムをなし、図1に示すようにLANなどのネットワークに、クライアントとして働くPC(パーソナル コンピュータ)10と、システム内の情報や資源を一元的に管理するサーバ70と、スキャナ、デジタルカメラ等の画像入力機器30と、プリンタ等の画像出力機器50と、MFP90を接続して構成する。
本発明に係わる画像処理装置は、クライアントPC10上に構成する。クライアントPC10は、サーバ70の管理下におかれた画像入力機器30、画像出力機器50、MFP90に処理対象となる文書画像の入出力処理を依頼する。また、クライアントPC10では、処理を依頼した画像入力機器30やMFP90からの入力画像をもとに、本発明に係わる画像処理装置による処理を施し、画像出力機器50やMFP90、或いはPC10内の出力部を用いて画像出力を行わせる。
また、画像処理システム100は、図1に示すようにネットワーク間接続によって、画像処理システム100と同様の画像処理が可能なサーバ クライアント システム100’とリンクすることや、インターネットで外部環境と接続するという方法により外部システムとリンクさせ、外部で発生する画像を受け入れ、画像処理システム100で発生する画像を出力することが可能なシステムとしてこれを構築する。
【0014】
図2は、本発明に係わる画像処理装置を構成するPCのモジュール構成図である。
図2にモジュール構成を例示するPCは、同図に示すように、ネットワーク接続可能な汎用コンピュータを示すものであり、構成要素としてCPU11、ROM,RAM等のメモリ12、HDD(ハード ディスク ドライブ)13、CD−ROM等のリムーバブルディスク装置14、表示装置(ディスプレイ)15、キーボード16、マウス等のポインティングデバイス17、ネットワークインタフェース18などを用意し、これらをデータバスで接続して構成する。
また、記憶手段としてのメモリ12、HDD13、リムーバブルディスク装置14が用いる記憶媒体の一部には、本発明に係わる画像処理の機能を実現し、下記実施形態に示す画像処理手順を実現させるための画像処理プログラム(ソフトウェア)が記録されている。
処理対象の原稿文書画像は、スキャナ等の画像入力機器30により入力され、例えばHDD13などに格納されているものである。CPU1は、記憶手段が有する記録媒体から上記した画像処理機能を実現するプログラムを読み出し、プログラムに従う処理をHDD13などに格納した対象文書画像に対して実行し、その処理結果等を画像出力機器50やMFP90、或いはPC10内の表示装置15を用いて画像出力を行わせるために出力する。なお、PC10の画像処理機能を用いるべく入出力される処理対象の文書画像を、ネットワーク接続した外部システムとの間で授受する形態で実施しても良い。
【0015】
図3は、本実施形態に係わる画像処理プログラムにより実現する画像処理機能のブロックを示す。
図3に示す画像処理機能による処理の概要は、次の通りである。
文書画像には多くの文字が印刷されているが、通常の文書には、黒い文字が背景の何も印刷されていない部分(下地、地肌)に直接印刷されている部分がある。そこで、入力画像から黒文字がありそうな領域を抽出し、さらに、入力画像を十分に小さいブロックに分割してみると、内部に黒い文字が地肌(下地)に直接印刷されているようなあるブロックが存在すると仮定できる。ここでは、この仮定に従って、処理の流れを規定し、まず、局所適応的閾値処理と膨張処理により、文字領域(C)を抽出する。この処理過程は、図3に示す、前処理(平滑化)21、特徴量(エッジ量、ウィンドウ統計量)計算22、文字領域抽出23の各機能ブロックにより行う。
次に、入力画像を固定サイズの互いに重なりのないブロックに分割する。各ブロックにおいて、文字領域(C)に属する画素を2色に分類する。通常、明るい色(高輝度)の方が文字領域の背景色に、暗い色の方が文字色に対応する。そして、高輝度クラスに分類される画素数と、その輝度値をもとにして決められる評価関数の値が最大になるようなブロックを選択する。入力画像における背景の平均色として、このブロックにおける明るい方の代表色を設定し、さらに、輝度(例えば、RGB信号の平均:(r+g+b)/3)の統計量(平均、標準偏差)を計算する。このようにして、背景(地肌)の色を正確に推定することができる。これらの統計量をもとにして、背景(地肌)領域を抽出する。この処理過程は、図3に示す、紙面(地肌)色の統計量推定24、地肌領域抽出25の各機能ブロックにより行う。なお、ここでは計算量を減らすために、解像度を落とした画像により上記前処理(平滑化)21から地肌領域抽出25までの処理過程を行うので、序段で低解像度画像生成20を適用する。
そして、抽出された背景(地肌)領域の色を、推定された背景(地肌)領域の平均色に置換し、背景以外の画素については、裏写りの除去処理を行い、さらに背景(地肌)領域との階調不連続が生じないように階調補正を施す。この処理過程は、それぞれ図3に示す、地肌の色置換29及び地肌以外の裏写り除去・階調補正30の各機能ブロックにより行うもので、元の解像度の画像に対して適用する。
【0016】
以下に、「実施形態1」〜「実施形態5」として上記画像処理装置の実施形態をより詳細に説明する。「実施形態1」では、実施装置の基本形態を示し、他の実施形態は基本形態の一部を変更した形態を示すものである。従って、「実施形態1」においてその実行手順を示すフローチャート(図4)は、各実施形態に共通する。
「実施形態1」
図4は、本実施形態の画像処理プログラムによる処理の実行手順を示すフローチャートである。
このフローチャートを参照することにより、背景の画質の改善を図る本実施形態の画像処理について手順を追って詳細に説明する。
・ 原画像(I0)の入力/受信(S101)
本例では、クライアントPC10からの依頼によりスキャナ等の画像入力機器30で文書画像が生成され、該文書画像を画像入力機器30からPC10側が受け取り、本発明に係わる処理を施した後、画像出力を画像出力機器50に依頼するという一連の処理において、PC10側で行う画像処理プログラムに従う処理手順を示すものである。従って、本例の処理手順は、まず、画像入力機器30からカラー画像(R,G,B)信号で表した原文書画像(I0)を処理対象画像としてR,G,Bの各チャンネルごとに受信・入力することにより、処理が始まる。
なお、処理対象画像として入力される原画像(I0)の1例を図5に示す。同図に示す例では、複数箇所に文字が配置されており、各個所の文字に対する背景が異なる濃度を持つ例を示している。この例では、原稿の地肌を示す(I)部分が、中間調の背景を持つ(II)部分や黒の背景を持つ(III)部分より高輝度(低濃度)の背景を持ち、背景(I)部分に低濃度の裏写り(“裏向きの文字”により示す)や地肌雑音(“破線”により示す)が現れ、背景(II)部分の一方に背景(I)部分におけると同様の裏写り(“裏向きの文字”により示す)が現れている。本実施形態では、背景(I)の地肌部分、地肌以外の背景(II) (III)、それぞれに対して異なる処理方法を適用して画質の改善を図る例を示す。
【0017】
・ 低解像度画像(I)の生成(S102)
このステップでは、以下に示す背景(地肌)色の推定や背景(地肌)領域の抽出等のステップ(S103〜109)を行う際の計算量を減らすために、原画像(I0)を100dpi程度の低解像度画像(I)に変換する。低解像度画像への変換は、単純に入力画像の画素を重なりのないブロック分割し、ブロック内に含まれる画素の信号の平均値を、低解像度画像での対応する画素の信号に設定する。ブロックの大きさ、すなわち、縮小率を1/rとすると、低解像度画像(I)は、下記式(1)によって算出することができる。ここでは、原カラー画像(I0)は各色成分(R,G,B)の2次元の画素マトリックスにより表現され、R,G,Bごとに低解像度画像(I)を求める。
【0018】
【数1】
【0019】
なお、上記式(1)において、縮小率を定めるrは常に自然数になるようにする。原画像(I0)の解像度が100に割り切れない場合、rは自然数に丸めた値にする。例えば、360dpiの場合、rは3とすることになり、この場合には低解像度画像(I)は、120dpiとなる。
・ 低解像度画像(I)の平滑化(S103)
低解像度画像(I)には、低解像度の生成過程でノイズを発生する可能性がある。また、元の原画像にも画像入力機器30やネットワーク上で発生するノイズが含まれる可能性がある(特に外部システムから送信されてくる入力画像にその可能性が高い)。こうしたノイズは、後続の処理における障害となるので、前段で得られた低解像度画像(I)を線形フィルタで平滑化することにより、ノイズを除去する。
・ 低解像度画像(I)における特徴量計算(S104)
平滑化後の低解像度画像(I)に対し、その画像の特徴を表すデータ値を求めるための計算を行う。本実施形態では、各画素の周囲に所定(固定)サイズのウィンドウ(2次元配列の画素を含む)を設定し、ウィンドウ内の画素が持つ輝度(濃度)信号の平均値μと注目画素の平均値μに対する標準偏差σを計算する。これらの特徴量は、R,G,Bごとに計算される。
【0020】
・ 低解像度画像(I)における文字領域(C)の抽出(S105)
次に、低解像度画像(I)に対して、カラー成分の局所適応的二値化を行うことにより、文字領域の抽出検出を行う。
具体的には、色の各成分R,G,Bにおいて、上記特徴量計算手順(S104)で特徴量として算出した平均値μと標準偏差σを用いて、aとbをパラメータとした閾値μ(a+bσ)を設定し、閾値μ(a+bσ)と低解像度画像(I)の信号値の比較を行う。背景に直接印刷された黒文字の場合、RGBのすべての成分信号において、コントラストが強くなる傾向があることに着目すると、全てのチャンネルにおいて、信号値が閾値よりも低ければ、画素 [i,j] を文字領域(C)の要素に設定するという方法を用いることが適当である。つまり、下記(2)式に従って、文字領域(C)の要素を求める。
【0021】
【数2】
【0022】
次いで、低解像度画像(I)と同じサイズで、上記で求めた文字領域(C)の要素となる画素位置では値ON、それ以外では値OFFを持つような2値画像(P)を構成する。この2値画像(P)において、横方向に背景画素のラン(画像(P)がOFFの画素を連ねた連結画素列)を取り出す。もし、取り出したランの長さが閾値τよりも短ければ、その画素を一時的にONにする。このようにして、横方向に対して、背景画素のランをsmearingする。同様に、縦方向にも、背景画素のランのsmearingを行う。そして、横方向と縦方向のsmearingのANDをとり、両方のsmearingでONになるものだけを、最終的にモノクロ前景画素としての文字領域(C)として判定して、抽出する。
図6は、スキャナ入力され、本処理の対象として図5に例示した原画像(I0)に対しここまでの処理を経て、文字領域(C)の抽出を行った結果を示す。図6に示すように、上記したsmearingの結果として、文字を囲む矩形領域内をONとするような形(図中の領域(IV))で文字領域(C)が抽出される。
【0023】
・ 原画像(I0)のブロック分割(S106)
次に、上記で抽出した文字領域(C)を対象にして背景を探索するプロセスを実行するが、このときに、原画像(I0)をブロックに分割し、ブロック単位ごとに処理を行い、真の背景、即ち“地肌”を求めるようにする。
ブロックの分割は、互いに重なりのない、十分に小さいブロックとし、図6には低解像度画像(I)に行った場合を示す。図6に示すように、各ブロックのサイズと形は、例えば、辺の長さが20mm(100dpiで80画素)相当の正方形などとすればよい。
・ 分割ブロックごとに文字領域(C)内を2クラスに分類(S107)
次に、真の背景(原稿の地肌部分)を探索するプロセスとして、上記分割ステップで定めた各ブロック内で、上記文字領域(C)の抽出手順(S105)で抽出した文字領域(C)に属する画素を輝度によって2クラスに分類する。この分類には、各画素の色信号から輝度を計算し、閾値処理する方法を用いる。閾値処理には、判別分析法、モーメント保持法、エントロピ法などの既知の方法を使用することが可能である。ブロックiにおいて、分類された画素のうち、暗い方に対応する画素群を第1のクラスRi1、明るい方に対応する画素群を第2のクラスRi2とすると、Ri1が文字に、Ri2が背景(地肌)に対応する。
【0024】
・ 背景(地肌)色の推定・統計量計算(S108)
真の背景(原稿の地肌)を探索するプロセスのステップとして、次に、上記ステップS107で得た第2のクラスRi2に属する画素数Niと、Ri2の平均輝度Liをもとにした評価関数、例えば、Ni×Liのように、画素数が多く、平均輝度が高いほど大きい値をとるような関数を定義し、その値が最大になるブロックを見つけ、その中の文字領域(C)をウィンドウ(W) として設定する。
図7は、図5の入力画像に対して、ウィンドウ(W)として設定された領域を示す。ウィンドウ(W)として設定された領域の中での暗い方に対応する画素群を画素群RW1、明るい方に対応する画素群を画素群RW2とし、それぞれ濃いグレーと薄いグレーで示す。明るい方に対応する画素群RW2の平均色を原画像(図5)における真の背景色(代表背景色)の推定結果として得る。
さらに、真の背景に相当する画素群RW2において、輝度の統計量として、平均lB及び標準偏差σを計算しておく。
【0025】
・ 地肌領域抽出(S109)
前段の背景(地肌)色の推定・統計量計算手順(S108)で求めたウィンドウ(W)における真の背景の輝度の統計量(平均lB及び標準偏差σ)に基づいて、背景(地肌)とみなされる領域を抽出する。低解像度画像(I)において、輝度Lが、lB−aσ<L<lB(ただし、aは正のパラメータ)であるような画素を抽出すべき背景(地肌)とみなされる画素とする。
抽出条件を示す上記した不等式で、下限値lB−aσにおけるパラメータaは、背景の変動や裏写りの程度などにより決まり、例えば、裏写りが強ければ、調整パラメータaを大きめに設定すればよい。この下限値を裏写りが除去できる程度の値に設定すれば、裏写りよりも低輝度の領域を背景と判断しない。また、上限値をlBとすることにより、lB以上の輝度に対する背景処理が不要になる。
図8は、図5の入力画像に対するこの処理の結果を示すもので、背景(地肌)として抽出された画素を黒で示す。図8に示すように、文字(黒と白抜きを含む)や、文字の背景であっても中間調の背景を持つ(II)部分や黒の背景を持つ(III)部分(図5参照)は、地肌背景として抽出されない。
なお、ここでは、RW2における輝度の平均lBと標準偏差σに基づいて、背景領域を決定したが、かわりに、RW2における輝度分布のメディアンmBやαパーセント分位点αB(αは例えば25)を用いて、αB<L<mBであるような画素を背景領域としても良い。
【0026】
・ 地肌の色置換(S110)
前段で抽出した背景(地肌)に対する画質の改善処理として、抽出背景領域を本来あるべき地肌色で置換し、裏写りや汚れなどのない背景とする。手順としては、原画像(I0)において、前段の背景領域抽出手順(S109)で抽出した背景領域における画素の色を、背景(地肌)色の推定・統計量計算手順(S108)で求めたウィンドウ(W)において計算された背景の平均色によって置換する。この色置換は、抽出領域の全ての画素について行うので、置換後の背景は平均値として算出された背景(地肌)色により一様になる。
図9は、図5の入力画像に対して、上記した色置換を施した結果の画像を示す。同図に示すように、背景(I)部分は背景(地肌)とみなされる領域として抽出されるので、その領域は色置換の対象とされ、結果として一様な背景(地肌)色により塗られて、裏写りや汚れは消失する。
【0027】
・ 地肌以外の領域の裏写り除去と階調補正(S111)
この手順では、地肌以外の領域に対する画質改善処理を行う。この場合、対象とする地肌以外の領域は、上記した背景領域抽出手順(S109)で抽出した背景領域によって得た結果を受け、地肌領域以外の領域を特定する。図8の例によると、地肌(黒で示したON画素領域)以外の領域(白で示したOFF画素領域)、即ち中間調の背景を持つ(II)部分や黒の背景を持つ(III)部分(図5参照)を対象とする。
ここで行う画質改善処理の一つは裏移りを除去する処理である。前段の地肌の色置換手順(S110)では、地肌領域に対する処理であったから、地肌以外の領域の裏写りは改善されない。これは、図9の例によると、裏写りが背景(II)部分の残存することにより示される。このような裏写りを対象に、次に示すような除去処理を適用することにより、画質を改善する。
ここで適用する裏写り除去方法は、対象とした入力画像の地肌に相当する背景領域に対する改善処理に連結させて一連の処理として適用するもので、図5に例示するような入力原画像(I0)或いはその低解像度画像(I)のみにより、即ちそれ以外の条件を不要にして、処理が可能な方法を用いることが望ましい。
【0028】
こうした入力条件に適応する裏写り除去方法は、複写機等に適用する処理方法として既に提案された方法が存在するので、この方法を適用することにより実施することが可能であり、例えば、多重スケール処理により、局所的に背景色を推定しながら、裏写り成分をこの背景色で置換する処理(特開2001−169080号公報、参照)を用いることができる。
例示する既存の方法による裏写り除去処理手順の概要は、次の(1)〜(4)に示す通りである。
(1) カラー原画像のエッジ強度の二値化
この処理は、原画像のエッジ強度を検出し、エッジ強度画像を生成し、この画像に対して閾値処理を適用することにより、裏写りエッジを除いた二値エッジ画像を得る。
(2) 局所的カラー閾値処理による背景色推定
この処理は、カラー原画像と上記(1)で得た二値エッジ画像を入力として、二値エッジ画像のoff画素のラン(所定数以下の連続画素列)として原画像のランを抽出し、各ランの代表色を縦・横方向を総合して求め、これを背景色として推定する。
(3) 推定背景色による原画像の裏写り除去
この処理は、上記(2)で得た推定背景色により原画像の二値エッジ画像のoff画素を置き換えることにより、裏写り画像を除去する。
(4) 多重スケールのエッジ差分解析による裏写り除去画像の修正
この処理は、上記(3)で得た裏写り除去画像に対する修正処理として行うもので、裏写り除去画像に対する多重スケールのエッジ差分解析による得られる差分画像におけるON画素の周囲に背景色推定処理を施し、さらに原画像で裏写り画像部分の判定を行い、この部分を最終的に修正する。
【0029】
上記のようにして地肌以外の領域に対する処理により裏写り除去を行った画像には、さらに階調の補正を行う。この補正は、地肌の色置換手順(S110)で地肌色を置換した背景領域との階調不連続が生じないようにして、画像全体を高画質に保つために行う処理である。
即ち、上記裏写り除去処理手順により裏写りが除去された地肌以外の領域(図8の例では、白で示したOFF画素領域)の画素の各色成分信号R,G,Bに、地肌色と階調が連続するように補正する変換処理を施こす。この変換処理は、具体的には下記式(3)に示す関数に従う演算により変換信号を出力する。
【0030】
【数3】
【0031】
図10は、式(3)に従う入出力の関係を表し、この変換処理の特性を示す線図である。図10に示すように、入力信号が“ lB−aσ ”になるまでは、線形の特性で、“ lB−aσ ”を越え最大値に達するまでは、出力信号が“ lB”一定値となる特性を持つ。
図11は、地肌の色置換手順(S110)で地肌領域の画質改善を施した後の画像(図9に示す)に対して、上記した地肌以外の領域の裏写り除去と階調補正処理(S111)を施した結果の画像を示す。地肌以外の領域の裏写り除去については、図11に示すように、中間調の背景を持つ(II)部分に残存していた裏写り(図9、参照)は、この手順により除去される。
また、階調補正処理については、入力信号が“ lB−aσ ”になるまでは、それぞれの輝度に線形の関係で対応する輝度を出力するので、中間調の領域の輝度は原画像が保存され、“ lB−aσ ”を越えると、“ lB”一定値となるので、真の背景(地肌を示す図9の(I)部分)は、中間調の領域との階調が連続するとともに、裏写りや地肌の劣化が改善され一様な輝度の信号を生成する。
また、変換処理に用いる特性関数として、式(3)の代わりに、ウィンドウ(W)の明るい方に対応する画素群RW2の輝度分布のメディアンmBやαパーセント分位点αBに基づいて定める上記式(4)を用いて、式(3)におけると同様の手順により階調補正処理を施すようにしても良い。
【0032】
「実施形態2」
実施形態1では、実施装置の基本形態を示したが、本実施形態では、実施形態1の一部の手順における処理方法を変更することにより、処理の改善を図るものである。本実施形態では、地肌背景(図5の例では(I)部分)に直接印刷された黒文字に対して有効な処理方法を提案するものである。
背景に直接印刷された黒文字の場合、RGBすべての色信号においてコントラストが強くなる傾向があり、それがエッジ量に現れるので、この点に着目し、文字領域(C)の抽出を行う。つまり、実施形態1に示した「低解像度画像(I)における特徴量計算(S104)」と「低解像度画像(I)における文字領域(C)の抽出(S105)」を注目画素のエッジ量、即ち、隣接画素に対する輝度変化とその変化量、によって行う。
具体的には、特徴量計算(S104)において、注目画素におけるRGBの各色信号でエッジ量を計算し、得られる各色の最小値をその画素のエッジ量(特徴量)として定める。
次の文字領域(C)の抽出(S105)では、まず、前のS104で特徴量として算出した各画素のエッジ量を、文字領域(C)の要素を切り出すために予め決められた閾値と比較し、閾値よりも高ければ、その画素 [i,j] を文字領域(C)の要素に設定する。その後、実施形態1と同様にランのsmearingを行い、最終的に文字領域(C)を抽出する。
なお、上記のように特徴量計算(S104)および文字領域(C)の抽出(S105)をエッジ量に基づいて行うが、それ以外は、実施形態1と同様の手順を用いることにより裏写りや地肌の劣化の改善を図る本発明に係わる画像処理を実施することが可能である。また、エッジ量を計算する処理は、実施形態1において説明したように、地肌以外の領域の裏写り除去処理(S111)でも必要とするので、計算処理の共通化を図ることができる利点もある。
【0033】
「実施形態3」
実施形態1では、実施装置の基本形態を示したが、本実施形態では、実施形態1の一部の手順において他の処理方法を追加することにより、処理の改善を図るものである。本実施形態では、地肌背景(図5の例では(I)部分)に直接印刷された黒文字に対して有効な処理方法を提案するものである。
背景に直接印刷された黒文字の場合、RGBすべての色信号においてコントラストが強くなる傾向があり、それがエッジ量に現れるので、この点に着目した処理方法を追加して、文字領域(C)の抽出を行う。つまり、実施形態1に示した「低解像度画像(I)における特徴量計算(S104)」と「低解像度画像(I)における文字領域(C)の抽出(S105)」において、さらに注目画素のエッジ量による処理手順を加えて、漏れのない抽出を行うようにするものである。
具体的には、特徴量計算(S104)において、注目画素におけるRGBの各色信号でエッジ量を計算し、得られる各色の最小値をその画素のエッジ量として定め、このエッジ量を各画素の特徴量として、文字領域(C)抽出(S105)では、文字領域(C)の要素を切り出すために予め決められた閾値と比較し、閾値よりも高ければ、その画素 [i,j] を、ウィンドウ(W)の統計量を用いる方法(「実施形態1」の背景の平均輝度lB及び標準偏差σによる方法)の結果に従って得た文字領域(C)の要素に加えて設定した後、実施形態1と同様にランのsmearingを行い,最終的に文字領域(C)を求める。
なお、上記のように特徴量計算(S104)および文字領域(C)の抽出(S105)をエッジ量に基づいて行うが、それ以外は、実施形態1と同様の手順を用いることにより裏写りや地肌の劣化の改善を図る本発明に係わる画像処理を実施することが可能である。また、エッジ量を計算する処理は、実施形態1において説明したように、地肌以外の領域の裏写り除去処理(S111)でも必要とするので、計算処理の共通化を図ることができる利点もある。
【0034】
「実施形態4」
上記実施形態1〜3では、背景(地肌)色の推定や地肌領域の抽出等のステップ(S103〜109)を行う際の計算量を減らすために、原画像(I0)を低解像度画像(I)に変換する形態で実施する例を示したが、低解像度への変換過程で不可避のエラーが生じるので、本実施形態では、エラーをできるだけ回避することが必要であり、しかも十分な能力がハード資源に用意されている場合に対応することを意図し,低解像度への変換をしないで、原画像(I0)に対して各ステップの処理手順を行うようにする。
本実施形態は、画像処理プログラムによる処理の実行手順のフローとして、上記各実施形態で示したフローチャート(図4)において、低解像度画像(I)の生成ステップ(S102)を省略することによりこの実施を可能にする。このステップを省略することにより、処理フローにおける平滑化、特徴量計算、文字領域(C)の抽出、ブロック分割、文字領域の2クラス分類、代表背景色の推定、背景領域の抽出の各処理ステップを原画像に対して実行するような形態で実施することができる。
【0035】
「実施形態5」
本実施形態は、実施装置の基本形態として示した実施形態1の一部の手順における処理方法を変更することにより、実施形態1と異なる地肌背景(図5の例では(I)部分)の改善処理を行うようにするものである。
実施形態1における地肌の色置換(S110)において、前段の地肌領域抽出手順(S109)で抽出した地肌領域における画素の色を、ウィンドウ(W)において計算された背景(地肌)の平均色(S108)によって置換し、この色置換により背景を一様にする。従って、この平均色が、地肌の汚れを含んだ画素によるものである場合なども起きる可能性があり、地肌そのままであることを期待しているユーザを満足させない。
そこで、本実施形態では、地肌領域における画素を“白”に置き換えるようにして、背景を地肌そのままにする処理を行う。処理手順としては、地肌の色置換(S110)において、地肌領域抽出手順(S109)で抽出した地肌領域における画素を“白”、即ち最大輝度で出力する。
また、地肌以外の領域に対する処理として、実施形態1と同様に裏写り除去処理を行い、この処理により裏写り除去を行った画像には、さらに階調の補正を行う。この補正は、地肌の色置換手順(S110)で地肌色を置換した背景領域との階調不連続が生じないようにして、画像全体を高画質に保つために行う処理であるという点で、実施形態1と目的は変わらないが、本実施形態では、地肌の色置換手順(S110)で置き換えた地肌色が“白”であるから、この色に適合した階調補正を必要とする。
即ち、上記裏写り除去処理手順により裏写りが除去された地肌以外の領域(図8の例では、白で示したOFF画素領域)の画素の各色成分信号R,G,Bに、“白”とした地肌色と階調が連続するように補正する変換処理を施こす。この変換処理は、具体的には下記式(3)に示す関数に従う演算により変換信号を出力する。
【0036】
【数4】
【0037】
図12は、式(5)に従う入出力の関係を表し、この変換処理の特性を示す線図である。図12に示すように、入力信号が“ lB−aσ ”になるまでは、線形の特性で、“ lB−aσ ”を越え最大値に達するまでは、出力信号が最大値となる特性を持つ。なお、“ lB−aσ ”におけるlB、a、σは、上記した背景(地肌)色の推定・統計量計算(S108),地肌領域抽出手順(S109)において説明したと同義である。
図13は、地肌の色置換手順(S110)で地肌領域の画質改善を施した後の画像(図9に示す)に対して、上記した地肌以外の領域の裏写り除去と階調補正処理(S111)を施した結果の画像を示す。地肌以外の領域の裏写り除去については、図13に示すように、中間調の背景を持つ(II)部分に残存していた裏写り(図9、参照)は、この手順により除去される。
また、階調補正処理については、入力信号が“ lB−aσ ”になるまでは、それぞれの輝度に線形の関係で対応する輝度を出力するので、“ lB−aσ ”に達するまでの中間調の領域の輝度は原画像が保存され、“ lB−aσ ”を越えると、最大値一定となるので、真の背景(原稿の地肌を示す図9の(I)部分)は、中間調の領域との階調が連続するとともに、“白”になって、裏写りや地肌の劣化が現れることはなく、画質が改善される。
また、変換処理に用いる特性関数として、式(5)の代わりに、ウィンドウ(W)の明るい方に対応する画素群RW2の輝度分布のαパーセント分位点αBに基づいて定める上記式(6)を用いて、式(5)におけると同様の手順により階調補正処理を施すようにしても良い。
【0038】
【発明の効果】
(1) 請求項1〜7の発明に対応する効果
入力画像から文字を囲む領域を抽出し、その領域において、輝度による文字(前景)・背景の2分類法を用い、さらに真の背景(地肌)を表す基準領域の評価・選択をしてそこから代表背景色(地肌色)を推定し、推定地肌色によって原画像上の地肌領域とそれ以外の領域を特定し、前者の画素に対して推定した代表背景色(地肌色)により置換する処理、後者の画素に対して局所的に背景色を推定しながら、裏写り画素を推定背景色で置換する処理、という各々に適した画質改善処理(裏写り等の除去)法を適用することにより背景・地肌の色変動や裏写りなどの画像劣化を改善するようにしたので、混合分布をもつヒストグラムの解析法や入力画像機器に関する特性情報、既定のパラメータを必要とする従来法よりも、より適正に、背景や地肌の色を保持した形で画像全体の高画質化を図ることが可能になる。
また、代表背景色(地肌色)やその統計量は入力画像の特徴から統計的処理により算出するようにしたことにより、入力機器に関する知識・特性情報、既定のパラメータを一切必要とせず、背景の色変動や裏写りなどの、入力画像の特性に適応するために、ユーザが指定するパラメータも単純になる。
また、文字とその隣接画素範囲(文字領域(C))に対する輝度による文字(前景)・背景の2分類処理を、ブロック分割した領域ごとに局所適応的二値化を適用する処理法を用いて行うようにしたことにより、より正しい代表背景色を得ることを可能にする。
さらに、低解像度の画像を処理対象にすることにより、各処理での計算量を減らすことが可能になり、処理の高速化を可能とし、また、ハード資源に十分な能力が用意されていない場合にも適用可能となる。
(2) 請求項8,9の発明に対応する効果
コンピュータを、請求項1乃至7のいずれかに記載された画像処理装置が具備する手段として機能させるためのプログラムを提供し、またこのプログラムを記録媒体に記録した形態で提供することにより、上記(1)の効果を容易に具現化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる画像処理装置をシステム要素として構築される画像処理システムの構成例を示す。
【図2】本発明に係わる画像処理装置を構成するPCのモジュール構成を示す。
【図3】本発明の実施形態に係わる画像処理プログラムにより実現する画像処理機能のブロックを示す。
【図4】本発明の実施形態に係わる画像処理プログラムによる処理の実行手順を示すフローチャートである。
【図5】処理対象画像として入力される原画像(I0)の1例を示す。
【図6】図5に例示した原画像(I0)に対し文字領域(C)の抽出を行った結果とブロック分割を示す。
【図7】図5の入力画像に対して、ウィンドウ(W)として設定された領域を示す。
【図8】図5の入力画像に対する背景(地肌)抽出処理の結果を示すもので、抽出された画素を黒で示す。
【図9】図5の入力画像に対し推定地肌色による色置換を施した結果の画像を示す。
【図10】階調補正の変換処理特性(式(3)に従う入出力関係)を示す線図である。
【図11】図9の入力画像に対して、裏写り除去処理と図10の特性に従う階調補正処理を施した結果の画像を示す。
【図12】階調補正の変換処理特性(式(5)に従う入出力関係)を示す線図である。
【図13】図9の入力画像に対して、裏写り除去処理と図12の特性に従う階調補正処理を施した結果の画像を示す。
【符号の説明】
10…PC(パーソナル コンピュータ)、
20…低解像度画像生成手段、21…前処理(平滑化)手段、
22…特徴量(エッジ量、ウィンドウ統計量)計算手段、
23…文字領域抽出手段、 24…紙面色の統計量推定手段、
25…地肌領域抽出手段、 28…地肌の色変換手段、
29…地肌以外の裏写り除去・階調補正手段、
30…画像入力機器、 50…画像出力機器、
70…サーバ、 90…MFP、
100…画像処理システム。
Claims (9)
- 処理対象となる原デジタル画像から文字とその隣接画素範囲を文字領域として抽出する手段と、抽出された文字領域に属する画素を色によって背景とそれ以外の2クラスに分類する手段と、背景クラスに分類された画素をもとに原画像上の代表背景色を推定する手段と、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色以外の色を有する背景領域を抽出する手段と、抽出された代表背景色以外の背景領域に対し画質改善処理を施す手段とを具備する画像処理装置。
- 請求項1に記載された画像処理装置において、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色を有するとみなされる背景領域を抽出する背景領域抽出手段と、抽出された代表背景色を有するとみなされる背景領域の色を推定された代表背景色に置換する手段とを具備することを特徴とする画像処理装置。
- 請求項1に記載された画像処理装置において、推定された代表背景色によって原画像上における該代表背景色を有するとみなされる背景領域を抽出する背景色領域抽出手段と、抽出された代表背景色を有するとみなされる背景領域の色を白に置換する手段とを具備することを特徴とする画像処理装置。
- 請求項2または3に記載された画像処理装置において、前記代表背景色以外の背景領域に対しさらに階調の補正を施す手段を具備することを特徴とする画像処理装置。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載された画像処理装置において、原画像をブロック分割する手段を具備し、前記文字領域抽出手段は、処理対象となる原デジタル画像から画像の特徴量を計算する手段、算出された特徴量によって原画像から文字領域を抽出する手段よりなる手段であり、前記2クラス分類手段は、ブロック分割手段により分割されたブロックごとに分類を行う手段であり、前記代表背景色推定手段が、ブロックごとに前記2クラス分類手段によって得られた背景クラスの画素に基づいて原画像上の代表背景色を推定する手段であることを特徴とする画像処理装置。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載された画像処理装置において、前記2クラス分類手段は、各画素の色信号から輝度を計算し、算出した輝度を閾値処理することにより2クラスに分類する手段であることを特徴とする画像処理装置。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載された画像処理装置において、前記特徴量計算手段、前記文字領域抽出手段、前記ブロック分割手段、前記2クラス分類手段、前記代表背景色推定手段、前記背景色領域抽出手段、前記代表背景色以外の色を有する背景領域抽出手段の少なくとも一つは、解像度が原画像よりも低い縮小画像を生成する手段を具備する手段であることを特徴とする画像処理装置。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載された画像処理装置が具備する手段としてコンピュータを機能させるための画像処理プログラム。
- 請求項8に記載されたプログラムを記録した記録媒体。
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