JP2004333852A - 光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液晶化合物から形成された光学異方性層を有し、この光学異方性層が末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基を含有する特定構造のモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共重合体から形成される光学フィルム、この光学フィルムを備えた偏光板、及び液晶表示装置。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶化合物を配向固定した光学異方性層を有する光学フィルム、該光学フィルムを備えた偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来、光学補償シートとしては、延伸複屈折フィルムが使用されている。また、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶性化合物からなる光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶性化合物を含むディスコティック液晶組成物を配向膜の上に塗布し、配向温度よりも高い温度で加熱してディスコティック液晶性化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。一般に、ディスコティック液晶性化合物は、大きな複屈折率を有するとともに、多様な配向形態がある。ディスコティック液晶性化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0003】
一方、ディスコティック液晶性化合物は、多様な配向形態があるため、所望の光学特性を発現させるためには、光学異方性層におけるディスコティック液晶性化合物の配向を制御する必要がある。ディスコティック液晶性化合物を平均傾斜角が5度未満の水平配向状態に制御する方法として、ディスコティック液晶性化合物に、セルロース低級脂肪酸エステル、含フッ素界面活性剤または1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、フッ素置換アルキル基と親水基(スルホ基が連結基を介してベンゼン環に結合した)を有する化合物を光学異方性層に添加し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、疎水性排除体積効果化合物を光学異方性層に併用して、液晶性化合物の配向を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、液晶性化合物のハイブリッド配向を効果的に促進する化合物の効果およびその使用法については、言及されていない。
【0004】
液晶性化合物の配向を制御する他の方法として、配向膜(界面処理)を用いる方法が知られている。しかし、配向膜の規制力だけでは、液晶性化合物を配向膜界面から空気界面まで均一に配向(モノドメイン配向)させることが難しく、シュリーレンなどの欠陥が残りやすい。特に、生産性を向上させるために熟成時間を短縮すると、シュリーレン欠陥の発生が顕著になる。光学異方性層にシュリーレン欠陥が生じると光散乱が起こり、光学特性を損なうという問題がある。
【0005】
また、従来の技術では、主に、15インチ以下の小型あるいは中型の液晶表示装置を想定して、光学補償シートが開発されていた。しかし、最近では、17インチ以上の大型、かつ輝度の高い液晶表示装置も想定する必要がある。大型の液晶表示装置の偏光板に、従来の光学補償シートを保護フイルムとして装着したところ、パネル上にムラが発生していることが判明した。この欠陥は、小型あるいは中型の液晶表示装置では、あまり目立っていなかったが、大型化、高輝度化に対応して、光漏れムラに対処した光学フィルムをさらに開発する必要が生じている。
ムラの改良を行う技術として、重合性液晶にレベリング剤を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法は重合性液晶がホモジニアス配向の場合にのみ有効であり、本発明のようにハイブリット配向をはじめとした複雑な配向には、適用できないことが判った。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−352328号公報(第9−21頁)
【特許文献2】
特開2001−330725号公報(第7−10頁)
【特許文献3】
特開2002−20363号公報(第3−21頁)
【特許文献4】
特開平11−148080号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光学補償機能を有する偏光板に用いられ液晶セルを光学的に補償する光学フィルムを提供することにある。とりわけ、大型の液晶表示装置に適用した場合でも、ムラを生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる光学フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に優れる光学フィルムを備えた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記光学フィルム、該光学フィルムを備えた下記偏光板、及びそれらから構成された液晶表示装置により達成される。
1.液晶化合物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層が下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーから導かれる繰り返し単位を少なくとも一つ含むフルオロ脂肪族基含有共重合体をから形成されることを特徴とする光学フィルム。
一般式[1]
【0009】
【化3】
【0010】
(一般式[1]において、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
2.フルオロ脂肪族基含有ポリマーが、さらに下記一般式[2]で表されるモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とする上記1に記載の光学フィルム。
一般式[2]
【0011】
【化4】
【0012】
(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は置換基を有しても良いポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有しても良い炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
3.液晶化合物が、ディスコティック化合物であることを特徴とする上記1又は2に記載の光学フィルム。
4.上記1〜3のいずれかに記載の光学フィルムと、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
5.上記4に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記の本発明の光学フィルムの特徴は、光学異方性層中に、前記一般式[1]で表されるモノマー、即ち末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基含有モノマーより形成される共重合体を含有させたことであり、この共重合体の共存によって、光学補償シートと偏光板を組み合わせた光学フィルムに起因するムラが抑止される。したがって、その光学フィルムを大型の液晶表示装置に適用することにより、ムラを生じることがなく、表示品位の高い画像を表示することが可能となる。
上記のフルオロ脂肪族含有共重合体は、さらに一般式[2]で示されるモノマーを共重合成分として加えることによって光学特性を調節して本発明の効果をさらに高めたり、液晶表示装置への適合性を調整することができる。
【0014】
以下、本発明に係る前記一般式[1]で表されるモノマー、即ち末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基含有モノマーより形成される共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)について詳細に説明する。
本発明で用いるフッ素系ポリマーは上記一般式[1]で表されるモノマーから導かれる繰り返し単位を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、一般式[1]および[2]で表されるモノマーから導かれる繰り返し単位のいずれをも含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂が好ましく、さらにはこれらモノマーと共重合可能なビニル系モノマーが共重合体したアクリル樹脂、メタアクリル樹脂も好ましい。
【0015】
本発明にかかわるフッ素系ポリマーにおけるフルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導くことができる。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747−752頁に記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme−1に例を示した)。
【0016】
【化5】
【0017】
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、さらに所望のモノマー構造へと変換されフルオロ脂肪族基含有ポリマーの製造に使用される。
【0018】
【化6】
【0019】
上記一般式[1]において、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子、または−N(R2)−を表す。ここでR2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
一般式[1]中のmは1以上6以下の整数を表し、1または2が好ましい。
一般式[1]中のnは2〜4の整数を表し、3または4が好ましく、また、これらの混合物を用いてもよい。
一般式[1]で表される末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基含有モノマーのより具体的なモノマーの例を以下にあげるがこの限りではない。
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は置換基を有しても良いポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有しても良い炭素数1以上20以下の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表す。Yで表される2価の連結基としては、酸素原子、イオウ原子、または−N(R5)−が好ましい。ここで、R5は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルが好ましい。R5はより好ましくは、水素原子またはメチルである。Yは、酸素原子、−NH−、または−N(CH3)−であることが特に好ましい。
【0028】
一般式[2]において、ポリ(アルキレンオキシ)基は(RO)xで表すことができ、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、または−CH(CH3)CH(CH3)−であることが好ましい。
上記ポリ(アルキレンオキシ)基中のアルキレンオキシ単位は、例えばポリ(プロピレンオキシ)のように全ての単位が同一であっても良く、また互いに異なる2種以上のアルキレンオキシ単位が不規則に分布したもの(例えば、直鎖プロピレンオキシ単位、分岐状プロピレンオキシ単位およびエチレンオキシ単位が不規則に分布したもの)であっても良く、また互いに異なる2種以上のアルキレンオキシ単位のブロックが結合したもの(例えば、直鎖または分岐状のプロピレンオキシ単位のブロックとエチレンオキシ単位のブロックが結合したもの)であっても良い。
このポリ(アルキレンオキシ)鎖として、複数のポリ(アルキレンオキシ)単位同士が1つまたはそれ以上の連結基(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など、ここでPhはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連結基が3価またはそれ以上の原子価を有する場合には、これにより分岐鎖状のアルキレンオキシ単位を得ることができる。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(アルキレンオキシ)基の分子量は250〜3000が適当である。
【0029】
一般式[2]のR4で表される炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0030】
R4で表されるポリ(アルキレンオキシ)基またはアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。
【0031】
一般式[2]で表されるモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートまたはポリ(アルキレンオキシ)(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0032】
一般式[2]で示されるモノマーの具体例を次に示すが、この限りではない。
【0033】
【化14】
【0034】
【化15】
【0035】
【化16】
【0036】
【化17】
【0037】
【化18】
【0038】
【化19】
【0039】
【化20】
【0040】
【化21】
【0041】
【化22】
【0042】
【化23】
【0043】
【化24】
【0044】
【化25】
【0045】
【化26】
【0046】
なお、ポリ(アルキレンオキシ)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)、“アデカポリエーテル”(旭電化工業(株)製)“カルボワックス”[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、“トリトン”[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))および“P.E.G”(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0047】
本発明のフッ素系ポリマーとしては、一般式[1]で表されるモノマーの単独重合体または一般式[1]で表されるモノマーと一般式[2]に包含されるポリアルキレンオキシ(メタ)アクリレートとの共重合体が好ましく、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートまたはポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートを含むことが特に好ましい。
【0048】
本発明に用いる上記一般式[1]で表されるモノマーと一般式[2]で表されるモノマーの共重合体は、上記各モノマーの他に、さらにこれらと共重合可能なモノマーをも加えて共重合させた共重合体であってもよい。この共重合可能なモノマーの好ましい共重合比率としては、全モノマー中の20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。このようなモノマーとしては、PolymerHandbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2Page 1〜483記載のものを用いることが出来る。例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
【0049】
具体的には、以下のモノマーをあげることができる。
アクリル酸エステル類:
フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど、
メタクリル酸エステル類:
フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど、
【0050】
アリル化合物:
アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなど
【0051】
ビニルエーテル類:
アルキルビニルエーテル(例えばヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど
【0052】
ビニルエステル類:
ビニルビチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなど。
【0053】
イタコン酸ジアルキル類:
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなど。
フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類:
ジブチルフマレートなど
その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレンなど。
【0054】
本発明で用いられるフッ素系ポリマー中の一般式[1]で示される末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基含有モノマーから誘導される繰り返し単位の量は、該ポリマーを構成する全繰り返し単位の5モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。
本発明のフッ素系ポリマー中の一般式[2]で示されるモノマーから誘導される繰り返し単位の量は、該ポリマーを構成する全繰り返し単位の10モル%以上が好ましく、より好ましくは10〜50モル%であり、さらに好ましくは10〜40モル%である。
【0055】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましい。
更に、光学異方性層を形成するための液晶化合物を主成分とする塗布組成物(溶媒を除いた塗布成分)において、本発明に係るフッ素系ポリマーの好ましい含有量は、0.005〜8質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜1質量%の範囲であり、更に好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲である。フッ素系ポリマーの含有量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0056】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーは公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフルオロ脂肪族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリレート等の単量体を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造てきる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0057】
以下、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量(ポリスチレンを標準物質とし、GPCにより測定した)を表す。
【0058】
【化27】
【0059】
【化28】
【0060】
【化29】
【0061】
【化30】
【0062】
【化31】
【0063】
【化32】
【0064】
【化33】
【0065】
【化34】
【0066】
以下、光学フィルムに必要な構成材料について説明する。
[支持体]
本発明の支持体は、ガラス、もしくは透明なポリマーフイルムであることが好ましい。
支持体は、光透過率が80%以上であることが好ましい。ポリマーフイルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースジアセテート)、ノルボルネン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックスいずれも商品名)を用いてもよい。
中でもセルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。ここで、低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。とくに炭素原子数が2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)が好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0067】
なお、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、WO 00/26705号明細書に記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明の光学フイルムに用いることもできる。
偏光板保護フィルム、もしくは位相差フィルムに本発明の光学フィルムを使用する場合は、ポリマーフイルムとしては、酢化度が55.0乃至62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0乃至62.0%であることがさらに好ましい。
【0068】
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算によって求められる。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.0乃至1.65であることがさらに好ましく、1.0乃至1.6であることが最も好ましい。
【0069】
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位、6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。本発明に用いるポリマーフイルムでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度または多い方が好ましい。
2位、3位、6位の置換度の合計に対する、6位の置換度の割合は、30乃至40%であることが好ましく、31乃至40%であることがさらに好ましく、32乃至40%であることが最も好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。
各位置の置換度は、NMRによって測定することできる。
6位置換度が高いセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、そして段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0070】
[光学異方性層]
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶化合物の配向状態に関しては、IDW’00、FMC7−2、P411〜414に記載されている。
光学異方性層は、支持体上に直接液晶性分子から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性分子から形成する。配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子およびディスコティック化合物が含まれる。棒状液晶性分子およびディスコティック化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
【0071】
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
本発明のように非常に均一性の高い光学フィルムを作製する場合には、表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることが更に好ましい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μmであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。
【0072】
(棒状液晶性分子)
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001乃至0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
【0073】
(ディスコティック化合物)
ディスコティック化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告(J.Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0074】
ディスコティック化合物を重合により固定するためには、ディスコティック化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0075】
一般式(III): D(−LQ)n
一般式(III)において、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、そして、nは4乃至12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0076】
【化35】
【0077】
【化36】
【0078】
【化37】
【0079】
一般式(III)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10であることが好ましい。
【0080】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0081】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0082】
式(III)において重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)は、不飽和重合性基またはエポキシ基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが最も好ましい。
式(III)において、nは4乃至12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0083】
ハイブリッド配向では、ディスコティック化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
【0084】
ディスコティック化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック化合物あるいはディスコティック化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0085】
ディスコティック化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーは、ディスコティック化合物と相溶性を有し、ディスコティック化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることが出来る。
【0086】
光学異方性層には、本発明に係る前記のフルオロ脂肪族系ポリマーが含まれているが、さらに別のポリマーをディスコティック化合物とともに使用してもよく、そのポリマーは、ディスコティック化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0087】
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0088】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0089】
[偏光膜]
本発明の光学フィルムは、偏光板と貼り合せるか、偏光板の保護フィルムとして使用することで、その機能を著しく発揮する。
本発明の偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素または二色性色素からなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在、汎用の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
汎用の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。一方、厚みの上限については、特に限定はしないが、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在、汎用の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
【0090】
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーから形成することができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるそれ自体架橋可能なポリマーを、光、熱あるいはpH変化により、ポリマー鎖間で架橋させて、架橋しているバインダーからなる偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより架橋構造を形成することができる。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なっても良い。
【0091】
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0092】
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、95乃至100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至5000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、COONa、Si(OH)3、N(CH3)3・Cl、C9H19COO、SO3Na、C12H25を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、COONa、SH、SC12H25を導入することができる。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ケン化度が85乃至95%の未変性ポリビニルアルコールおよびアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0093】
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1乃至20質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー層中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
【0094】
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。二色性色素は、遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩として用いられる。二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜または偏光板が、単板透過率および偏光率とも優れており好ましい。
【0095】
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましく、40乃至50%の範囲にある(偏光板の単板透過率の最大値は50%である)ことが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
【0096】
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を接着剤を介して配置することも可能性である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。その中でもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01乃至10μmの範囲にあることが好ましく、0.05乃至5μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0097】
(偏光板の製造)
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10乃至80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、液晶表示装置(LCD)を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0098】
延伸法の場合、延伸倍率は2.5乃至30.0倍が好ましく、3.0乃至10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5乃至5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0乃至10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフイルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10乃至80度斜め延伸されたバインダーフイルムが製造される。
【0099】
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフイルムのラップ角度は、0.1乃至90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フイルムをラビング処理する場合は、フイルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフイルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50゜が好ましい。45゜が特に好ましい。
偏光膜の光学異方性層とは反対側の表面には、ポリマーフイルムを配置する(光学異方性層/偏光膜/ポリマーフイルムの配置とする)ことが好ましい。
【0100】
[液晶表示装置]
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0101】
セル中央部分の棒状液晶性分子に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)の円盤状液晶性分子もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性分子に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)の円盤状液晶性分子で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性分子に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性分子もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性分子に対しては、ハイブリット配向の円盤状液晶性分子で補償することもできる。
【0102】
ホメオトロピック配向の液晶性分子は、液晶性分子の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95゜の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性分子は、液晶性分子の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5゜未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性分子は、液晶性分子の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15゜よりも大きいことが好ましく、15゜〜85゜であることがさらに好ましい。
【0103】
(透明)支持体もしくはディスコティック化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性分子がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック化合物とホモジニアス配向した棒状液晶分子の混合体からなる光学異方性層は、Rthレターデーション値が40nm乃至200nmであり、Reレターデーション値が0乃至70nmであることが好ましい。Rthレターデーション値(Rth)は、下記数式(I)で定義される値であり、Reレターデーション値(Re)は、下記数式(II)で定義される値である。
数式(I): Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
数式(II): Re=(nx−ny)×d
[式(I)、(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり、またnzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。そして、dは、フイルムの厚さである]。
ホメオトロピック配向(水平配向)している円盤状液晶性分子層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性分子層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向している円盤状液晶性分子層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
【0104】
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードと呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0105】
黒表示にTNモードと液晶の配向は同じ状態であるため、好ましい態様もTNモード対応を同じである。ただし、TNモードに比べ、OCBモードの方がセル中央部で液晶化合物が立ち上がった範囲が大きいために、ディスコティック化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性分子がホモジニアス配向している光学異方性層について、若干のレターデーション値の調整が必要である。具体的には、(透明)支持体上のディスコティック化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性分子がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm乃至500nmであり、Reレターデーション値が20乃至70nmであることが好ましい。
【0106】
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0107】
VAモードの液晶表示装置の黒表示において、液晶セル中の棒状液晶性分子は、そのほとんどが、立ち上がった状態であるため、ディスコティック化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性分子がホモジニアス配向している光学異方性層で液晶化合物を補償し、別に、棒状液晶性分子がホモジニアス配向し、棒状液晶性分子の長軸の平均配向方向と偏光膜の透過軸方向との角度が5゜未満である光学異方性層で偏光板の視角依存性を補償することが好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性分子がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm乃至500nmであり、Reレターデーション値が20乃至70nmであることが好ましい。
【0108】
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
【0109】
【実施例】
[実施例1]
(ポリマー基材の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0110】
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター) 80質量部
酢化度60.8%のセルロースアセテート(リンター) 20質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0111】
(レターデーション上昇剤溶液の調製)
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記のレターデーション上昇剤16質量部、シリカ微粒子(粒径20nm,モース硬度約7)0.5質量部、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
レターデーション上昇剤
【0112】
【化38】
【0113】
(ドープの調製)
セルロースアセテート溶液464質量部にレターデーション上昇剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、5.0質量部であった。
【0114】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、残留溶剤量が43質量%のフィルムを剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、テンターを用いて幅方向に28%延伸した。この後、135℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のポリマー基材(PK−1)を製造した。
得られたポリマー基材(PK−1)の幅は1340mmであり、厚さは、92μmであった。エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、43nmであった。また、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)を測定したところ、175nmであった。
作製したポリマー基材(PK−1)を2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。このPK−1の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
このPK−1上に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
【0115】
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0116】
【化39】
【0117】
ポリマー基材(PK−1)の遅相軸(波長632.8nmで測定)と45゜の方向に配向膜にラビング処理を実施した。
【0118】
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物 41.01Kg
(特開平7−306317号公報記載の例示化合物(TP−53))
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06Kg
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.35Kg
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35Kg
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45Kg
を、102Kgのメチルエチルケトンに溶解し、この溶液にさらにフッ素系ポリマー(P−2)を0.1Kgを加えて塗布液とし、この塗布液を配向膜上に、#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布し、130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層付き光学補償シート(KH−1)を作製した。
波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は38nmであった。
後記の如く作製した偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出出来なかった。
【0119】
(偏光子の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜した。
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままよう素0.5g/L、よう化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、よう化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してよう素系偏光子(HF−01)を得た。偏光子は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
【0120】
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、KH−1(光学補償シート)をポリマー基材(PK−1)面で偏光子(HF−01)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の透過軸とポリマー基材(PK−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と上記トリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−1)を作製した。
【0121】
[比較例1]
フッ素系ポリマーを光学異方性層に添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、光学補償シート(KH−H1)、さらには、KH−H1付偏光板(HB−H1)を作製した。
【0122】
[比較例2]
フッ素系ポリマー(P−2)を下記のフッ素系ポリマー(A)に変更した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シート(KH−H2)、さらには、KH−H1付偏光板(HB−H2)を作製した。
【0123】
フッ素系ポリマー(A):特開平11−148080号公報記載のモノマー(a−1)と(b−2−1)の共重合体
【0124】
【化40】
【0125】
[実施例2]
(ポリマー基材の作製)
ミキシングタンクに、実施例1で使用したレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
実施例1で作製したセルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.5質量部であった。
【0126】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が0.3質量%のポリマー基材(PK−2)を製造した。
得られたポリマー基材(PK−2)の幅は1500mmであり、厚さは、65μmであった。エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、4nmであった。また、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)を測定したところ、78nmであった。
【0127】
(光学異方性層付き光学補償シートの作製)
ポリマー基材(PK−2)を、2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。PK−2の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
<配向膜の形成>
作製したPK−2上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
【0128】
<配向膜塗布液組成>
実施例1の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
次に、PK−2の長手方向と平行な方向に配向するように変性ポリビニルアルコール膜にラビング処理を実施した。
【0129】
<光学異方性層の形成>
配向膜上に、
実施例1のディスコティック液晶性化合物 41.01Kg
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06Kg
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.90Kg
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.23Kg
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35Kg
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45Kg
を、102Kgのメチルエチルケトンに溶解した溶液に、さらにフッ素系ポリマー(P−51)を0.1kgを加えて塗布液とし、これを、#3.4のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cmの高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(KH−2)を作製した。
波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は40nmであった。
後記の如く作製した偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出出来なかった。
【0130】
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、KH−2(光学補償シート)を偏光子(HF−1)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の透過軸とPK−2の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と上記トリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−2)を作製した。
【0131】
[比較例3]
フッ素系ポリマーを光学異方性層に添加しないこと以外は、実施例2と同様にして、光学補償シート(KH−H3)、さらには、KH−H3付偏光板(HB−H3)を作製した。
【0132】
[比較例4]
フッ素系ポリマー(P−51)を前記フッ素系ポリマー(A)に変更した以外は、実施例2と同様にして、光学補償シート(KH−H4)、さらには、KH−H4付偏光板(HB−H4)を作製した。
【0133】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。Δn(屈折率neとnoの差)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは20インチであった。
作製したベンド配向セルを挟むように、実施例1で作製した偏光板(HB−1)を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
また、同様の方法で、比較例1および2で作製した偏光板(HB−H1)および(HB−H2)を貼り付け、視野角の測定を行った。視野角の評価尺度として、視野の画像のコントラスト比が10以上を維持し、かつ黒側の階調反転の起こらない(即ち黒表示(L1)と次ぎのレベル(L2)の間で反転が起こらない)範囲の開角度の値を用いた。測定結果を第1表に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例1、および比較例1の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例1は、どの方向から見てもムラは観察されなかったが、比較例1では、上視野45°以上で格子状にムラが検出された。また、比較例2では、ムラは観察されなかったが、アワスジ模様が観察された。
【0136】
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例2で作製した偏光板(HB−2)を、光学補償シート(KH−2)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。測定結果を第2表に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例2、比較例3、および比較例4の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例2は、どの方向から見てもムラは観察されなかったが、比較例3および比較例4では、上視野45°以上で格子状にムラが検出された。
【0139】
[実施例3]
(光学異方性層の形成)
市販のトリアセチルセルロースフィルム(富士タック 富士写真フィルム(株)製)を、2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。PK−2の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
<配向膜の形成>
上記富士タック上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布を行なったのち、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
【0140】
【0141】
をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が38質量%の溶液を調製し、この溶液にさらにフッ素系ポリマー(P−61)を0.5Kg添加して塗布液とした。
【0142】
この塗布液を実施例2と同じ塗布量で配向膜上に塗布し、乾燥した。130℃で1分間加熱して、ディスコティック化合物を配向させた。直ちに室温に冷却し、500mJ/cm2の紫外線を照射して、ディスコティック化合物を重合させ、配向状態を固定し、光学補償シート(KH−3)を作製した。形成した光学異方性層の厚さは、1.7μmであった。
該光学異方性層のレターデーションの角度依存性を、エリプソメーター(日本分光(株)製)で測定した。その結果、ディスコティック化合物の円盤面と配向膜面との角度は0.2゜、厚み方向のレターデーション(Rth)は150nmであった。
偏光子の透過軸とPK−2の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のトリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−3)を作製した。
【0143】
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、ポリマー基材(KH−3)を偏光子(HF−1)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子(HF−1)の透過軸とKH−3の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のトリアセチルセルロースフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−3)を作製した。
【0144】
[比較例5]
フッ素系ポリマーを光学異方性層に添加しないこと以外は、実施例3と同様にして、光学補償シート(KH−H5)、さらには、KH−H5付偏光板(HB−H5)を作製した。
【0145】
(垂直配向型液晶セル)
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の位相差を剥がし、代わりに偏光板(HB−3)を、ポリマー基材(PF−1)が液晶セル側となるように粘着剤を介して貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そしてバックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
【0146】
(パネルでのムラ評価)
実施例3、および比較例5の液晶表示装置を全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例3は、どの方向から見てもムラは観察されなかったが、比較例5では、視野を45°傾けると、全方向で格子状にムラが検出された。
【0147】
【発明の効果】
本発明の光学フィルム及び本発明の光学フィルムを有する偏光板は、光学フィルムの光学補償層に末端にCHF2基を有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーを存在させているので、液晶セルを効果的に光学補償することができる。
本発明の光学フィルムや偏光板を適用した液晶表示装置は、大型であっても、ムラを生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
Claims (5)
- 液晶化合物が、ディスコティック化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムと、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項4に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007138099A (ja) * | 2005-11-22 | 2007-06-07 | Dainippon Ink & Chem Inc | 重合性液晶組成物及び光学異方体 |
WO2011125620A1 (ja) | 2010-03-31 | 2011-10-13 | 富士フイルム株式会社 | 液晶性化合物、液晶性組成物、光吸収異方性膜、及び液晶表示装置 |
JP2016519691A (ja) * | 2013-03-15 | 2016-07-07 | トランジションズ・オプティカル・インコーポレイテッド | フォトクロミック二色性物質を含むフォトクロミック物品 |
-
2003
- 2003-05-07 JP JP2003129354A patent/JP2004333852A/ja not_active Abandoned
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JP2016519691A (ja) * | 2013-03-15 | 2016-07-07 | トランジションズ・オプティカル・インコーポレイテッド | フォトクロミック二色性物質を含むフォトクロミック物品 |
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