JP2004333261A - 水中観測記録装置及びその装置を用いて魚群情報をモニタリングする方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】魚群探知機とカメラを組み合わせて、遠近いずれの魚群情報も入手可能にすると共に、魚体をステレオ撮影できるコンパクトな水中観測記録装置及びその装置の収集した情報に基づいて、高層魚礁などの大深度領域における魚群情報をモニタリングする方法の提供。
【解決手段】少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機で魚群の反射音響を間欠的に収録すると共に、2種類のミラーのうち、一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右それぞれの視野を再び前方に向けて被写体を左右両方の視野で同時に撮影できるようにした水中観測記録装置。その装置を魚礁内に設置して定点観測をおこない、収集した情報に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測し魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法。
【選択図】 図9
【解決手段】少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機で魚群の反射音響を間欠的に収録すると共に、2種類のミラーのうち、一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右それぞれの視野を再び前方に向けて被写体を左右両方の視野で同時に撮影できるようにした水中観測記録装置。その装置を魚礁内に設置して定点観測をおこない、収集した情報に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測し魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な水中観測記録装置及びその装置を用いて魚群情報をモニタリングする(観測する)方法に関する。詳しくは、魚類を主な観測記録対象とする新規な水中観測記録装置とその装置を用いて主として魚礁内の魚群情報をモニタリングする方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、魚群探知機とステレオ撮影が可能なカメラとを一体的に内蔵した新規な水中観測記録装置とその装置を用いて収集した情報に基づいて魚礁内に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測すると共に魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法に関する。本発明の水中観測記録装置及びその装置を用いて魚群情報をモニタリングする方法は、高層魚礁に蝟集する魚類をモニタリングするのに特に適している。
【0002】
【従来の技術】
最近の人工魚礁は、設置場所の大深度化に伴い、次第に大型化し、かつ高層化している。従来型の人工魚礁に比べてコストのかかる高層魚礁においては、これまで以上に定量的な魚礁効果の判定が求められる。一方、これまでの魚礁調査はダイバーによる目視が主であったが、大深度化によって潜水調査は困難になりつつある。そのため、高層魚礁における蝟集魚群分布を正確に観測できる魚類蝟集モニタリング方法の開発が求められている。
【0003】
高層魚礁の魚類蝟集モニタリング方法を開発するには、魚群探知機によって魚群密度などを間欠的に計測すると共に、カメラを併用して、魚体のステレオ映像(一つの被写体を複数の方向から同時に撮影した映像)に基づいて、魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズなどをステレオ計測(ステレオ映像の各々に含まれる情報を組み合わせることにより被写体の三次元情報を得ること)し、さらに、魚の種類や蝟集量を推定するなどその魚礁における魚群情報を入手しなければならない。
【0004】
一般に、ステレオ計測をおこなうには、カメラを使って、一つの計測対象を少なくとも左右両方の視野(画角)で同時に撮影する必要がある。従来、ステレオ映像を得るには、2台以上のカメラが必要とされており、しかも、複数のカメラを同期させる特殊な機械が必要である。そのため、ステレオ撮影(一つの被写体を複数の方向から同時に撮影すること)は、コストがかかると共に撮影装置が大型化するので、水中撮影用にはなじまないものとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−196711号公報
【特許文献2】
特開2003−069864号公報
【非特許文献1】
赤松友成・高橋秀行・松田秋彦共著の報文「画像音響統合型の魚類蝟集モニタリングシステム」(2002年4月1日発行・日本水産学会漁業懇話会報No.46の19〜20頁)
【0006】
従来技術を調べると、水中の映像を長期間にわたって記録する方法及びその方法に使用する水中映像記録装置については特開2003−069864号公報に開示されている。この方法及び装置は、ビデオカメラ等の映像記録用機器を耐圧密閉容器に封入した水中映像記録装置であり、また、この装置を水中に設置してビデオカメラ等を間欠的に駆動させて録画をおこない、水中の生物などの映像を長期間にわたって記録する方法である。しかし、この方法及び装置は、本発明のように、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせた観測記録装置ではない上、水中の被写体をステレオ撮影するとか、ステレオ計測するためのものではない。
また、特開平11−196711号公報には、魚群の内部を確認できるカメラを利用した魚群探知機について開示されている。しかし、この装置も、カメラアイを水中に降ろして探索し、キャビン内のモニタテレビで観測するだけで、水中の被写体をステレオ撮影するとか、ステレオ計測するためのものではない。
すなわち、頻繁に移動する水中の魚を1台のカメラでミラーを利用してステレオ撮影を可能とした水中観測記録装置は未だ開発されておらず、その装置を用いて撮影した魚体のステレオ映像に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測し、かつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法(魚類蝟集モニタリング方法)も未だ開発されていない。
【0007】
上記の状況に鑑み、本発明者らは、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせて遠近いずれからも魚群の情報を観測しかつ記録できる水中観測記録装置とその装置によって収集した情報に基づいて高層魚礁に蝟集する魚群の情報をモニタリングできる魚類蝟集モニタリング方法の開発を志向し、その構想の一部を平成14年度日本水産学会漁業懇話会報に発表した(非特許文献1を参照。当初は、耐圧容器内に左右視野ごとに別々の「2つの観察窓」を設ける構想であった)。本発明者らは、その後研究を続け、装置をコンパクト化することに苦心したが、小型の魚群探知機を採用すると共に、1台のカメラでも2種類のミラーを配することによって1つの観察窓を通してステレオ撮影が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は、魚群探知機とカメラを組み合わせて防水性耐圧容器内に密封し、遠近いずれの魚群情報も入手可能にすると共に、1台のカメラによって水中の魚体(移動する被写体)をステレオ撮影できる新規にしてコンパクトな水中観測記録装置を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、高層魚礁内に設置するのに特に適した新規にしてコンパクトな水中観測記録装置を提供することを第2の課題とする。さらに、本発明は、その水中観測記録装置の収録音とステレオ映像に基づいて、高層魚礁などの大深度領域における魚類の蝟集量の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングすることにより、魚礁の効果範囲、魚種群ごとの漁獲可能量、高層魚礁の経済的な効果などを正確に推定できる魚類蝟集モニタリング方法を提供することを第3の課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記諸課題を解決するための本発明のうち、請求項1に記載する発明は、少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、カメラとミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録し、カメラによって魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置である。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に記載する発明は、少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって間欠的に発信した音響のうち魚体に当たって反射された音響を収録すると共に、2種類のミラーのうち、一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右それぞれの視野を再び前方に向けて被写体を左右両方の視野で同時に撮影できるようにして魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置である。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に記載する発明は、防水性耐圧容器内において、カメラの視野を左右に分割する方のミラーを2枚で構成し、カメラの前面にその2枚のミラーを光軸を中心として対象状の鋭角をなすように配置し、他方のミラーも2枚で構成し、鋭角をなすように配置した先の2枚のミラーに対してそれぞれ平行かつ等間隔に配置してある請求項1又は2に記載の水中観測記録装置である。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に記載する発明は、カメラの視野を左右に分割する方のミラーとして、表面反射鏡を使用してある請求項1から3のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0013】
また、本発明のうち請求項5に記載する発明は、カメラ部のカメラとして、デジタルスチルカメラを内蔵している請求項1から4のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0014】
さらに、本発明のうち請求項6に記載する発明は、魚群探知機として、市販の小型の魚群探知機を内蔵している請求項1から5のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0015】
さらに、本発明のうち請求項7に記載する発明は、請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して定点観測をおこない、収集した情報に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法である。
【0016】
さらに、本発明のうち請求項8に記載する発明は、請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して一定時間の定点観測をおこない、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、カメラを間欠的に作動させて魚礁内をステレオ撮影し、撮影した魚体のステレオ映像と魚群探知機の収録音とを合わせて三次元解析し、当該魚礁の魚群情報をモニタリングする方法である。
【0017】
さらに、本発明のうち請求項9に記載する発明は、請求項7又は8に記載のモニタリング方法において、水中観測記録装置を高層魚礁内に設置して魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、高層魚礁内を間欠的にステレオ撮影し、魚体のステレオ映像と収録音に基づいて当該高層魚礁の魚群情報をモニタリングする方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
まず、本発明に係る水中観測記録装置の構成について説明する。
(1)耐圧容器内の機器の配置
水中では、音はかなり遠方まで届くのに対し、光は減衰が激しくて、遠くまで届かない。したがって、魚群探知機が遠方の魚群を捕捉できるのに対し、カメラは近距離の魚体しか捕捉できない。そのため、本発明の水中観測記録装置は、魚群探知機によって遠くの魚群の状態を概括的に調査すると共に、カメラによって近くの魚群を詳細に調べるというように、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせて、遠近いずれの情報も入手可能とする。
【0019】
そこで、本発明に係る水中観測記録装置は、少なくとも前面(フロント面)が透明である防水性の耐圧容器内に、小型の魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、これらの機器を同期させて間欠的に作動させるタイマーとバッテリーなどを内蔵し、密封したものである。
耐圧容器内の機器の配置は、一般的には、カメラ区画を容器中央に設けて1台のカメラを設置し、その前方及び左右に2種類のミラーを配置する。魚群探知機などのその他の機器はカメラ区画の上下に配置して、容器内で完結するシステムとする。全ての搭載機器はバッテリー駆動とし、タイマーにより全ての機器を同期させて任意の間隔で同時に間欠作動させるようにする。
【0020】
(2)耐圧容器
耐圧容器の少なくとも前面は、アクリルガラス板などの透明な耐圧性素材で製作して視界を確保する。耐圧容器本体は、ステンレス鋼やアクリルガラスなど十分な耐圧強度を有する素材のものを使用する。耐圧容器は、シンプルな構造で高強度なものとし、ダイバー1名ないし2名で設置・回収可能なコンパクトサイズにすることが好ましい。
【0021】
(3)魚群探知機
本発明の水中観測記録装置に用いる魚群探知機は、市販の魚群探知機で差し支えない。その大きさは、耐圧容器サイズのコンパクト性に制限されるので、小型漁船に使用するタイプのもの、すなわち、幅20cm×高さ20cm×奥行10cm程度の本体(信号の処理と表示をおこなう装置)と直径5cm×高さ5cm程度のセンサー部とからなるものが好ましい。なお、この他に、受波器で拾った音響情報の記録装置が必要である。また、この記録装置にDATレコーダーを使用するとレコーダー内蔵のバッテリーで駆動するので、その分バッテリーの電力を節約することができる。
【0022】
(4)バッテリー
電源供給用のバッテリーは、通常2基内蔵させて、1基はカメラ及びタイマーと直列に接続し、他の1基は魚群探知機に接続するとよい。
【0023】
(5)カメラ
本発明の水中観測記録装置に用いるカメラとしては、デジタルスチルカメラを使用することが好ましい。デジタルカメラは、高画質・高解像度である上、撮影後の解析が容易である。ステレオ計測のためには、被写体が画像上のどこに写っているかを正確に知る必要があるが、デジタルカメラであれば画像をそのままパソコンで見ることができる上、パソコン上の画像処理ソフトなどで、被写体(魚体)の写った位置を簡単に知ることができる。これに対して、通常のフィルム式カメラでは、引き伸ばした写真に定規をあてがって長さを測り、パソコンにその値を逐一入力したり、スキャナなどで画像を取り込んでからドットを読み取るなどの処理が必要である。また、デジタルカメラは解像度の点でビデオカメラに比べてはるかに優れており、計測精度が高い。
しかし、本発明に用いるカメラは、デジタルカメラに限るものではなく、解析の手間や計測精度の点がクリアできるならば、フィルム式スチルカメラでも、また、ビデオカメラ(動画を記録するカメラ)でも使用して差し支えない。
【0024】
(6)ミラーの配置
以下、ミラーの配置について図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の水中観測記録装置では、1台のカメラの視野を2つに分割してステレオ映像を撮影するために2種類のミラー(ミラーAとミラーB)を使用する。2種類のミラーはそれぞれ2枚のミラー(ミラーA1とミラーA2及びミラーB1とミラーB2)で構成する。すなわち、本発明においては、カメラの視野を一旦横方向に屈折させる2枚のミラーAとその視野を再び前方に向ける2枚のミラーBの2種類・4枚のミラーを用いる。
【0025】
図2の(1)に示すように、まず、カメラのレンズの前方に広がる視野を、ミラーA(ミラーA1=右眼ミラーAとミラーA2=左眼ミラーAの2枚で構成するミラーA)によって左右2方向に分割する。しかし、このままでは左右どちらの視野も横を向いているので、それぞれの視野が重なる領域を作ることができない。ステレオ映像を得るには同じ被写体を左右両方の視野で同時に撮影する必要がある。
【0026】
そこで、図2の(2)に示すように、ミラーA1・A2の左右にもう1枚づつ別のミラーB(ミラーB1=右眼ミラーBとミラーB2=左眼ミラーBの2枚で構成するミラーB)を配して、ミラーA1・A2で左右に屈折させた視野の向きを再び屈折させる。そうすると、左右の視野は再び前方を向き、2つの異なる視点から同時に同じ場所を写すことができるようになる。すなわち、図3に示すように、1台のカメラによる両眼視野(両方の視野で同時に見える範囲)の中で被写体のステレオ映像を得ることができる。
【0027】
本発明の水中観測記録装置において、写った魚の位置や魚体サイズを正確に知るためには、ステレオ計測の精度をできるだけ高くする必要がある。本発明の水中観測記録装置では、1台のカメラの視野をミラーAで分割してステレオ化する(1つの被写体を同時に複数の方向から撮影すること)が、一般的なステレオ撮影には2台以上のカメラを使用する。図4は、2台のカメラを用いた一般的なステレオ撮影におけるカメラの配置と計測精度の関係を示す。すなわち、原理的には、2台のカメラの距離(ベースライン長という。)が長いほど計測精度が高くなる。本発明の水中観測記録装置では2台のカメラを離れた位置にセットする代わりに、ミラーの配置を工夫する必要がある。
【0028】
また、ミラーAとミラーBの配置には、以下の条件が関係し、そのトレードオフによって決まる。すなわち、すばやく泳ぐ魚を捕捉するためには、或る程度広い視野が必要である(条件1)。一方、撮影装置そのものはダイバー1名〜2名で移動可能なようにコンパクトな大きさにする必要がある(条件2)。さらに、写った魚体の位置やサイズを正確に知るためにステレオ計測の精度をできるだけ高くする必要がある(条件3)。
条件1を満たすには広角レンズを使用する必要があるが、無闇に視野を広げると広い視野を反射する大きなミラーが必要となり、全体として装置が大がかりなものとなってしまい、条件2を満たすことができなくなる。そこで、実用的な見地から、条件2を満たす耐圧容器サイズの上限をあらかじめ決めておいて、その範囲において最適な視野やミラーの配置を考える方がよい。以上の観点から検討した結果、本発明の水中観測記録装置は、可搬性の点を考慮し、耐圧容器の内寸を直径50cm×奥行25cmまでとするのが最も好ましい。
【0029】
ミラーAとミラーBの大きさについて、耐圧容器サイズの点からは小さいミラーが好ましいが、一方で、広い視野を得るためには大きいミラーが好ましいという相反する要素がある。そこで、上記耐圧容器サイズの制限の下で採用できる最大のミラーで最大の視野を実現することを検討した。その結果、図5に示すように、視野の幅(高さ)はカメラのレンズに近づくほど(光軸が短いほど)小さくなり、小さいミラーで視野を反射できることが判明した。(図5では、カメラのレンズに近いミラーaの方がカメラのレンズから遠いミラーbに比べて、ミラーのサイズを小さくできることを示している。)そこで、本発明の水中観測記録装置ではミラーAはレンズに極力近い位置に配置することで光軸の長さを短くするのが好ましく、また、ミラーBは、図6に示すように、容器のフロント面に近い側に配することで光軸を短くすることが好ましい。
【0030】
なお、ミラーBの配置には条件3も関係する。すなわち、図7に示すように、本発明の水中観測記録装置においては、ミラーBの間隔が概ねベースラインに相当する。すなわち、ステレオ計測の精度を上げるためには、ミラーB1とB2の間隔を極力広げる必要がある。したがって、ミラーB1・B2はそれぞれ耐圧容器の内端にできるだけ寄せて配置することが好ましい。
【0031】
以上を総合すると、本発明の水中観測記録装置では、カメラに対するミラーの配置は、カメラの前面にミラーA1とミラーA2を光軸を中心として対象状の鋭角をなすように配置し、ミラーB1とミラーB2は、ミラーA1とミラーA2に対してそれぞれ平行かつ等間隔に配置するのが好ましいことになる。
【0032】
(6)レンズの選定
上記のようにしてミラーの配置を決定した後、レンズの焦点距離を決める必要がある。上記のミラー配置方針で実現できる最大の視野を有するレンズとして、焦点距離28mmのものを選定するのが好ましい。
その後、ミラー位置と角度を微調整する。被写体(計測対象)からの距離が5ないし7mの付近で最大の両眼視野が得られるように調整するのが好ましい。
【0033】
カメラの視野(画角)は、使用するレンズの焦点距離で決まる。本発明の水中観測記録装置では、デジタルカメラに焦点距離28mmのレンズを組み合わせると約46度の画角(距離約5mで約4mの視野の幅=ステレオ化すると左右各々約2m)を得ることができる。また、レンズの焦点距離は、計測対象とする魚のサイズや遊泳速度、耐圧容器サイズの制限などを考慮して適宜選定すればよい。
【0034】
本発明において、「視野」とは、一言でいえば「見える範囲」ないし「写る範囲」のことを意味する。見える範囲を表現する方法としては、任意の距離における視野の幅(高さ)で表現することもできるが、一般的には、図1に示すように「画角」によって表現する。通常、カメラの視野は、縦横比が1対1ではないので画角も縦と横では異なるが、本発明では横向きの角度を対象とする。一般に、画角が判れば任意の距離における視野の幅(高さ)は容易に計算できる。また、視野の中心を通る直線を「光軸」という(図1)。
【0035】
(8)ミラーAとして「表面反射鏡」が好ましい理由
まず、ミラーAに普通のガラス鏡を使用した場合を考える。図8の(A)に示すように、ガラス鏡の反射面はガラスの奥にあり、光はガラスを通過して反射面に到達し、初めて反射する。すなわち、ガラス鏡において反射が正しくおこなわれるためには、光の出入りがガラスの正面でおこなわれる必要がある。ガラス鏡をミラーAとして使うと、図8の(A)に示すように、左右のミラー(ミラーA1とA2)の継ぎ目の部分に、最も継ぎ目に近いところで正しく反射できない箇所が生じて、反射面で反射した光がガラス正面から出なくなって、正しい方向に反射されなくなる。
【0036】
これに対して、図8の(B)に示すように、表面反射鏡の反射面は、文字どおりミラーの表面にあるので、表面反射鏡を用いれば、継ぎ目付近でも正しく反射できる。また、図8の(B)のように、ミラー側面を適当な角度で斜め加工しておけば、左右のミラーは反射面の一点のみで接するようになり、ミラーの設置角度の調整に自由度が加わることになる。なお、ガラス鏡でも、図8の(A’)のように、左右ミラーの継ぎ目の角度に合わせて、2枚のミラー(ミラーA1とA2)がぴったり付くようにガラス側面を斜め加工すれば、表面反射鏡と同様に継ぎ目付近でも正しく反射できる。しかし、この方法では、ミラーの設置角度に自由度がないため、ミラーA1とA2の角度を変えないという条件で使用することになる。以下、実施例及び試験例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
【0037】
【実施例1】
<耐圧容器内の機器の配置例>
図9は、本発明の水中観測記録装置の機器の配置の一例を示す正面から見た説明図であり、図10は、その配置を側面から見た説明図である。
図9・図10に示すように、本実施例の水中観測記録装置は、フロント面に透明なアクリルガラス製の耐圧板を嵌めてあるステンレス鋼製で円筒型の耐圧容器の本体内に全ての機器を配置してある。すなわち、耐圧容器本体内の中央の板上にデジタルスチルカメラを載置し、カメラの前面には2枚のミラーA1・A2を組み合わせてカメラに対して光軸を中心とする対象状の鋭角をなすように配置して、その左右には別の2枚のミラーB1・B2をミラーA1・A2と同じ角度でたがいに等間隔にして配置してある。また、デジタルカメラの上方の板上には魚群探知機の本体とタイマーを載置し、デジタルカメラを載置した板の下方には魚群探知機のセンサーとバッテリーとフラッシュライトを配置してある。なお、図示しないが、耐圧容器の外壁に適宜の凹凸を設けておくと、人工魚礁などへの固定が容易となる。
【0038】
【実施例2】
<水中観測記録装置の機器の一例>
以下の仕様により、本発明の水中観測記録装置を製作した。
(1)耐圧容器
(2)カメラ部
(3)魚群探知機
(4)その他の機器
【0039】
【試験例1】
<実海域試験>
(1)試験方法
実施例1及び実施例2の仕様で製した水中観測記録装置を、山形県温海沖の水深約60mの海域の高層魚礁(SR−35:底面幅17.5m×奥行17.5m×高さ35m)の頂上部(水深は約25m)に設置し、蝟集魚群の情報を観測しかつ記録した。タイマー設定は20分に1枚の割合とした。撮影時間は約4時間である。
(2)試験結果
設置した水中観測記録装置は、概ね良好に作動し、撮影したステレオ映像12枚のうち6枚に魚が写っていた。撮影された魚体(合計約20尾:主としてカワハギ類)のうち11尾は両眼視野で捉えていた。この魚体のステレオ映像を三次元計測したところ、表1に示すデータが得られた。すなわち、表1は、撮影した魚体のステレオ計測の結果を示すものである。
【表1】
(註1)体長=ステレオ計測によって推定された体長
(註2)距離=ステレオ計測によって推定された水中観測記録装置からの距離
(註3)外挿による推定=キャリブレーション空間外にいると推定される魚を計測したことを意味する。
【0040】
(3)考察
熟練したダイバーがカメラ片手に潜って魚体を撮影することは、さほど困難ではないが、本発明の水中観測記録装置のように水中に放置された無人のカメラが魚を捕捉するのは難しいことである。水中では、水の透明度にもよるが、10mより先はほとんど何も見えない。見える範囲の狭い水中で魚体を撮影することは想像以上に困難である。また、水中の魚をステレオ撮影することは、さらに困難である。
【0041】
しかしながら、本試験によって、魚礁近辺を泳ぐ魚をステレオ撮影し、その魚体サイズや装置からの距離を測ることができた。その結果、計測データは実際の魚体の大きさなどから見て妥当なサイズ範囲に納まっていることが確認された。すなわち、この試験結果により、実施例1・実施例2の水中観測記録装置を用いると目的とするデータの取得が可能であることが判明した。したがって、本発明に係る水中観測記録装置及びその装置を用いて魚礁の魚群情報をモニタリングする方法は信憑性が高いことが確認された。すなわち、この試験結果により、本発明の装置及び方法が魚礁における魚類蝟集情報の収集に有用であることが判明した。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したとおり、本発明の水中観測記録装置は、魚群探知機とカメラを組み合わせて防水性耐圧容器に内蔵し密封した装置であるから、魚群探知機によって魚群の反射音響を収録して概括的に調べると共に、カメラによって魚体をステレオ撮影して詳細に調べるというように、遠近いずれの魚群情報も入手が可能となる。
また、本発明の水中観測記録装置は、カメラの近傍に2種類のミラーを配して一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右の視野を再びそれぞれ前方に向けるようにして1台のカメラによって被写体を左右両方の視野で同時に撮影することができるようにしたので、1台のカメラでステレオ撮影が可能となり、複数台のカメラを使うシステムに付随する煩雑さがなく、しかも、装置全体をコンパクト化でき、かつ安価なものにできる。したがって、本発明の水中撮影装置は、ダイバー1名〜2名で設置することができ、また回収が可能である。さらに、本発明の水中撮影装置は、高解像度・高画質のデジタルスチルカメラを使用することによって、解析の手間を省き、かつ計測精度を上げることができる。
【0043】
本発明の水中観測記録装置を使用すると、高層魚礁においてダイバーによる目視観測の必要がない。本発明の水中観測記録装置を魚礁内に設置して定点観測できるので、長期間にわたる計測であっても人手が不要である。
本発明の装置を用いて収集した情報に基づいて、魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定する方法は、正確な計測データに基づいているで、魚礁の効果範囲、魚種群ごとの漁獲可能量など高層魚礁の経済的効果を定量的に正確に推定することが可能である。
したがって、本発明に係る水中観測記録装置及びその装置を用いて魚礁に蝟集する魚群の情報をモニタリングする方法は、高層魚礁などにおける魚類蝟集モニタリングシステムとしてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】画角と光軸の関係を示す一般的な説明図
【図2】本発明に用いるステレオ撮影の原理「2種類のミラーでカメラの視野を左右に分割し、分割した視野を再び前方に向ける方法」の説明図
【図3】本発明に用いるステレオ撮影の原理「1台のカメラで両眼視野を作る方法」の説明図
【図4】カメラの配置と計測精度の関係を示す一般的な説明図
【図5】本発明に用いるステレオ撮影の原理「ミラーの配置と光軸の関係」の説明図
【図6】本発明に用いるステレオ撮影の原理「ミラーの配置と光軸の関係」の説明図
【図7】本発明に用いるステレオ撮影の原理「光軸間の距離とベースラインの関係」の説明図
【図8】本発明の水中観測記録装置においてミラーにガラス鏡と表面反射鏡を用いたときの相違点の説明図
【図9】本発明の実施例の水中観測記録装置について耐圧容器内の機器の配置を正面から見た説明図
【図10】本発明の実施例の水中観測記録装置について耐圧容器内の機器の配置を側面から見た説明図
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な水中観測記録装置及びその装置を用いて魚群情報をモニタリングする(観測する)方法に関する。詳しくは、魚類を主な観測記録対象とする新規な水中観測記録装置とその装置を用いて主として魚礁内の魚群情報をモニタリングする方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、魚群探知機とステレオ撮影が可能なカメラとを一体的に内蔵した新規な水中観測記録装置とその装置を用いて収集した情報に基づいて魚礁内に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測すると共に魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法に関する。本発明の水中観測記録装置及びその装置を用いて魚群情報をモニタリングする方法は、高層魚礁に蝟集する魚類をモニタリングするのに特に適している。
【0002】
【従来の技術】
最近の人工魚礁は、設置場所の大深度化に伴い、次第に大型化し、かつ高層化している。従来型の人工魚礁に比べてコストのかかる高層魚礁においては、これまで以上に定量的な魚礁効果の判定が求められる。一方、これまでの魚礁調査はダイバーによる目視が主であったが、大深度化によって潜水調査は困難になりつつある。そのため、高層魚礁における蝟集魚群分布を正確に観測できる魚類蝟集モニタリング方法の開発が求められている。
【0003】
高層魚礁の魚類蝟集モニタリング方法を開発するには、魚群探知機によって魚群密度などを間欠的に計測すると共に、カメラを併用して、魚体のステレオ映像(一つの被写体を複数の方向から同時に撮影した映像)に基づいて、魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズなどをステレオ計測(ステレオ映像の各々に含まれる情報を組み合わせることにより被写体の三次元情報を得ること)し、さらに、魚の種類や蝟集量を推定するなどその魚礁における魚群情報を入手しなければならない。
【0004】
一般に、ステレオ計測をおこなうには、カメラを使って、一つの計測対象を少なくとも左右両方の視野(画角)で同時に撮影する必要がある。従来、ステレオ映像を得るには、2台以上のカメラが必要とされており、しかも、複数のカメラを同期させる特殊な機械が必要である。そのため、ステレオ撮影(一つの被写体を複数の方向から同時に撮影すること)は、コストがかかると共に撮影装置が大型化するので、水中撮影用にはなじまないものとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−196711号公報
【特許文献2】
特開2003−069864号公報
【非特許文献1】
赤松友成・高橋秀行・松田秋彦共著の報文「画像音響統合型の魚類蝟集モニタリングシステム」(2002年4月1日発行・日本水産学会漁業懇話会報No.46の19〜20頁)
【0006】
従来技術を調べると、水中の映像を長期間にわたって記録する方法及びその方法に使用する水中映像記録装置については特開2003−069864号公報に開示されている。この方法及び装置は、ビデオカメラ等の映像記録用機器を耐圧密閉容器に封入した水中映像記録装置であり、また、この装置を水中に設置してビデオカメラ等を間欠的に駆動させて録画をおこない、水中の生物などの映像を長期間にわたって記録する方法である。しかし、この方法及び装置は、本発明のように、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせた観測記録装置ではない上、水中の被写体をステレオ撮影するとか、ステレオ計測するためのものではない。
また、特開平11−196711号公報には、魚群の内部を確認できるカメラを利用した魚群探知機について開示されている。しかし、この装置も、カメラアイを水中に降ろして探索し、キャビン内のモニタテレビで観測するだけで、水中の被写体をステレオ撮影するとか、ステレオ計測するためのものではない。
すなわち、頻繁に移動する水中の魚を1台のカメラでミラーを利用してステレオ撮影を可能とした水中観測記録装置は未だ開発されておらず、その装置を用いて撮影した魚体のステレオ映像に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測し、かつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法(魚類蝟集モニタリング方法)も未だ開発されていない。
【0007】
上記の状況に鑑み、本発明者らは、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせて遠近いずれからも魚群の情報を観測しかつ記録できる水中観測記録装置とその装置によって収集した情報に基づいて高層魚礁に蝟集する魚群の情報をモニタリングできる魚類蝟集モニタリング方法の開発を志向し、その構想の一部を平成14年度日本水産学会漁業懇話会報に発表した(非特許文献1を参照。当初は、耐圧容器内に左右視野ごとに別々の「2つの観察窓」を設ける構想であった)。本発明者らは、その後研究を続け、装置をコンパクト化することに苦心したが、小型の魚群探知機を採用すると共に、1台のカメラでも2種類のミラーを配することによって1つの観察窓を通してステレオ撮影が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は、魚群探知機とカメラを組み合わせて防水性耐圧容器内に密封し、遠近いずれの魚群情報も入手可能にすると共に、1台のカメラによって水中の魚体(移動する被写体)をステレオ撮影できる新規にしてコンパクトな水中観測記録装置を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、高層魚礁内に設置するのに特に適した新規にしてコンパクトな水中観測記録装置を提供することを第2の課題とする。さらに、本発明は、その水中観測記録装置の収録音とステレオ映像に基づいて、高層魚礁などの大深度領域における魚類の蝟集量の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングすることにより、魚礁の効果範囲、魚種群ごとの漁獲可能量、高層魚礁の経済的な効果などを正確に推定できる魚類蝟集モニタリング方法を提供することを第3の課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記諸課題を解決するための本発明のうち、請求項1に記載する発明は、少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、カメラとミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録し、カメラによって魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置である。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に記載する発明は、少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって間欠的に発信した音響のうち魚体に当たって反射された音響を収録すると共に、2種類のミラーのうち、一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右それぞれの視野を再び前方に向けて被写体を左右両方の視野で同時に撮影できるようにして魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置である。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に記載する発明は、防水性耐圧容器内において、カメラの視野を左右に分割する方のミラーを2枚で構成し、カメラの前面にその2枚のミラーを光軸を中心として対象状の鋭角をなすように配置し、他方のミラーも2枚で構成し、鋭角をなすように配置した先の2枚のミラーに対してそれぞれ平行かつ等間隔に配置してある請求項1又は2に記載の水中観測記録装置である。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に記載する発明は、カメラの視野を左右に分割する方のミラーとして、表面反射鏡を使用してある請求項1から3のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0013】
また、本発明のうち請求項5に記載する発明は、カメラ部のカメラとして、デジタルスチルカメラを内蔵している請求項1から4のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0014】
さらに、本発明のうち請求項6に記載する発明は、魚群探知機として、市販の小型の魚群探知機を内蔵している請求項1から5のいずれかに記載の水中観測記録装置である。
【0015】
さらに、本発明のうち請求項7に記載する発明は、請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して定点観測をおこない、収集した情報に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法である。
【0016】
さらに、本発明のうち請求項8に記載する発明は、請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して一定時間の定点観測をおこない、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、カメラを間欠的に作動させて魚礁内をステレオ撮影し、撮影した魚体のステレオ映像と魚群探知機の収録音とを合わせて三次元解析し、当該魚礁の魚群情報をモニタリングする方法である。
【0017】
さらに、本発明のうち請求項9に記載する発明は、請求項7又は8に記載のモニタリング方法において、水中観測記録装置を高層魚礁内に設置して魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、高層魚礁内を間欠的にステレオ撮影し、魚体のステレオ映像と収録音に基づいて当該高層魚礁の魚群情報をモニタリングする方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
まず、本発明に係る水中観測記録装置の構成について説明する。
(1)耐圧容器内の機器の配置
水中では、音はかなり遠方まで届くのに対し、光は減衰が激しくて、遠くまで届かない。したがって、魚群探知機が遠方の魚群を捕捉できるのに対し、カメラは近距離の魚体しか捕捉できない。そのため、本発明の水中観測記録装置は、魚群探知機によって遠くの魚群の状態を概括的に調査すると共に、カメラによって近くの魚群を詳細に調べるというように、魚群探知機とカメラを一体的に組み合わせて、遠近いずれの情報も入手可能とする。
【0019】
そこで、本発明に係る水中観測記録装置は、少なくとも前面(フロント面)が透明である防水性の耐圧容器内に、小型の魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、これらの機器を同期させて間欠的に作動させるタイマーとバッテリーなどを内蔵し、密封したものである。
耐圧容器内の機器の配置は、一般的には、カメラ区画を容器中央に設けて1台のカメラを設置し、その前方及び左右に2種類のミラーを配置する。魚群探知機などのその他の機器はカメラ区画の上下に配置して、容器内で完結するシステムとする。全ての搭載機器はバッテリー駆動とし、タイマーにより全ての機器を同期させて任意の間隔で同時に間欠作動させるようにする。
【0020】
(2)耐圧容器
耐圧容器の少なくとも前面は、アクリルガラス板などの透明な耐圧性素材で製作して視界を確保する。耐圧容器本体は、ステンレス鋼やアクリルガラスなど十分な耐圧強度を有する素材のものを使用する。耐圧容器は、シンプルな構造で高強度なものとし、ダイバー1名ないし2名で設置・回収可能なコンパクトサイズにすることが好ましい。
【0021】
(3)魚群探知機
本発明の水中観測記録装置に用いる魚群探知機は、市販の魚群探知機で差し支えない。その大きさは、耐圧容器サイズのコンパクト性に制限されるので、小型漁船に使用するタイプのもの、すなわち、幅20cm×高さ20cm×奥行10cm程度の本体(信号の処理と表示をおこなう装置)と直径5cm×高さ5cm程度のセンサー部とからなるものが好ましい。なお、この他に、受波器で拾った音響情報の記録装置が必要である。また、この記録装置にDATレコーダーを使用するとレコーダー内蔵のバッテリーで駆動するので、その分バッテリーの電力を節約することができる。
【0022】
(4)バッテリー
電源供給用のバッテリーは、通常2基内蔵させて、1基はカメラ及びタイマーと直列に接続し、他の1基は魚群探知機に接続するとよい。
【0023】
(5)カメラ
本発明の水中観測記録装置に用いるカメラとしては、デジタルスチルカメラを使用することが好ましい。デジタルカメラは、高画質・高解像度である上、撮影後の解析が容易である。ステレオ計測のためには、被写体が画像上のどこに写っているかを正確に知る必要があるが、デジタルカメラであれば画像をそのままパソコンで見ることができる上、パソコン上の画像処理ソフトなどで、被写体(魚体)の写った位置を簡単に知ることができる。これに対して、通常のフィルム式カメラでは、引き伸ばした写真に定規をあてがって長さを測り、パソコンにその値を逐一入力したり、スキャナなどで画像を取り込んでからドットを読み取るなどの処理が必要である。また、デジタルカメラは解像度の点でビデオカメラに比べてはるかに優れており、計測精度が高い。
しかし、本発明に用いるカメラは、デジタルカメラに限るものではなく、解析の手間や計測精度の点がクリアできるならば、フィルム式スチルカメラでも、また、ビデオカメラ(動画を記録するカメラ)でも使用して差し支えない。
【0024】
(6)ミラーの配置
以下、ミラーの配置について図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の水中観測記録装置では、1台のカメラの視野を2つに分割してステレオ映像を撮影するために2種類のミラー(ミラーAとミラーB)を使用する。2種類のミラーはそれぞれ2枚のミラー(ミラーA1とミラーA2及びミラーB1とミラーB2)で構成する。すなわち、本発明においては、カメラの視野を一旦横方向に屈折させる2枚のミラーAとその視野を再び前方に向ける2枚のミラーBの2種類・4枚のミラーを用いる。
【0025】
図2の(1)に示すように、まず、カメラのレンズの前方に広がる視野を、ミラーA(ミラーA1=右眼ミラーAとミラーA2=左眼ミラーAの2枚で構成するミラーA)によって左右2方向に分割する。しかし、このままでは左右どちらの視野も横を向いているので、それぞれの視野が重なる領域を作ることができない。ステレオ映像を得るには同じ被写体を左右両方の視野で同時に撮影する必要がある。
【0026】
そこで、図2の(2)に示すように、ミラーA1・A2の左右にもう1枚づつ別のミラーB(ミラーB1=右眼ミラーBとミラーB2=左眼ミラーBの2枚で構成するミラーB)を配して、ミラーA1・A2で左右に屈折させた視野の向きを再び屈折させる。そうすると、左右の視野は再び前方を向き、2つの異なる視点から同時に同じ場所を写すことができるようになる。すなわち、図3に示すように、1台のカメラによる両眼視野(両方の視野で同時に見える範囲)の中で被写体のステレオ映像を得ることができる。
【0027】
本発明の水中観測記録装置において、写った魚の位置や魚体サイズを正確に知るためには、ステレオ計測の精度をできるだけ高くする必要がある。本発明の水中観測記録装置では、1台のカメラの視野をミラーAで分割してステレオ化する(1つの被写体を同時に複数の方向から撮影すること)が、一般的なステレオ撮影には2台以上のカメラを使用する。図4は、2台のカメラを用いた一般的なステレオ撮影におけるカメラの配置と計測精度の関係を示す。すなわち、原理的には、2台のカメラの距離(ベースライン長という。)が長いほど計測精度が高くなる。本発明の水中観測記録装置では2台のカメラを離れた位置にセットする代わりに、ミラーの配置を工夫する必要がある。
【0028】
また、ミラーAとミラーBの配置には、以下の条件が関係し、そのトレードオフによって決まる。すなわち、すばやく泳ぐ魚を捕捉するためには、或る程度広い視野が必要である(条件1)。一方、撮影装置そのものはダイバー1名〜2名で移動可能なようにコンパクトな大きさにする必要がある(条件2)。さらに、写った魚体の位置やサイズを正確に知るためにステレオ計測の精度をできるだけ高くする必要がある(条件3)。
条件1を満たすには広角レンズを使用する必要があるが、無闇に視野を広げると広い視野を反射する大きなミラーが必要となり、全体として装置が大がかりなものとなってしまい、条件2を満たすことができなくなる。そこで、実用的な見地から、条件2を満たす耐圧容器サイズの上限をあらかじめ決めておいて、その範囲において最適な視野やミラーの配置を考える方がよい。以上の観点から検討した結果、本発明の水中観測記録装置は、可搬性の点を考慮し、耐圧容器の内寸を直径50cm×奥行25cmまでとするのが最も好ましい。
【0029】
ミラーAとミラーBの大きさについて、耐圧容器サイズの点からは小さいミラーが好ましいが、一方で、広い視野を得るためには大きいミラーが好ましいという相反する要素がある。そこで、上記耐圧容器サイズの制限の下で採用できる最大のミラーで最大の視野を実現することを検討した。その結果、図5に示すように、視野の幅(高さ)はカメラのレンズに近づくほど(光軸が短いほど)小さくなり、小さいミラーで視野を反射できることが判明した。(図5では、カメラのレンズに近いミラーaの方がカメラのレンズから遠いミラーbに比べて、ミラーのサイズを小さくできることを示している。)そこで、本発明の水中観測記録装置ではミラーAはレンズに極力近い位置に配置することで光軸の長さを短くするのが好ましく、また、ミラーBは、図6に示すように、容器のフロント面に近い側に配することで光軸を短くすることが好ましい。
【0030】
なお、ミラーBの配置には条件3も関係する。すなわち、図7に示すように、本発明の水中観測記録装置においては、ミラーBの間隔が概ねベースラインに相当する。すなわち、ステレオ計測の精度を上げるためには、ミラーB1とB2の間隔を極力広げる必要がある。したがって、ミラーB1・B2はそれぞれ耐圧容器の内端にできるだけ寄せて配置することが好ましい。
【0031】
以上を総合すると、本発明の水中観測記録装置では、カメラに対するミラーの配置は、カメラの前面にミラーA1とミラーA2を光軸を中心として対象状の鋭角をなすように配置し、ミラーB1とミラーB2は、ミラーA1とミラーA2に対してそれぞれ平行かつ等間隔に配置するのが好ましいことになる。
【0032】
(6)レンズの選定
上記のようにしてミラーの配置を決定した後、レンズの焦点距離を決める必要がある。上記のミラー配置方針で実現できる最大の視野を有するレンズとして、焦点距離28mmのものを選定するのが好ましい。
その後、ミラー位置と角度を微調整する。被写体(計測対象)からの距離が5ないし7mの付近で最大の両眼視野が得られるように調整するのが好ましい。
【0033】
カメラの視野(画角)は、使用するレンズの焦点距離で決まる。本発明の水中観測記録装置では、デジタルカメラに焦点距離28mmのレンズを組み合わせると約46度の画角(距離約5mで約4mの視野の幅=ステレオ化すると左右各々約2m)を得ることができる。また、レンズの焦点距離は、計測対象とする魚のサイズや遊泳速度、耐圧容器サイズの制限などを考慮して適宜選定すればよい。
【0034】
本発明において、「視野」とは、一言でいえば「見える範囲」ないし「写る範囲」のことを意味する。見える範囲を表現する方法としては、任意の距離における視野の幅(高さ)で表現することもできるが、一般的には、図1に示すように「画角」によって表現する。通常、カメラの視野は、縦横比が1対1ではないので画角も縦と横では異なるが、本発明では横向きの角度を対象とする。一般に、画角が判れば任意の距離における視野の幅(高さ)は容易に計算できる。また、視野の中心を通る直線を「光軸」という(図1)。
【0035】
(8)ミラーAとして「表面反射鏡」が好ましい理由
まず、ミラーAに普通のガラス鏡を使用した場合を考える。図8の(A)に示すように、ガラス鏡の反射面はガラスの奥にあり、光はガラスを通過して反射面に到達し、初めて反射する。すなわち、ガラス鏡において反射が正しくおこなわれるためには、光の出入りがガラスの正面でおこなわれる必要がある。ガラス鏡をミラーAとして使うと、図8の(A)に示すように、左右のミラー(ミラーA1とA2)の継ぎ目の部分に、最も継ぎ目に近いところで正しく反射できない箇所が生じて、反射面で反射した光がガラス正面から出なくなって、正しい方向に反射されなくなる。
【0036】
これに対して、図8の(B)に示すように、表面反射鏡の反射面は、文字どおりミラーの表面にあるので、表面反射鏡を用いれば、継ぎ目付近でも正しく反射できる。また、図8の(B)のように、ミラー側面を適当な角度で斜め加工しておけば、左右のミラーは反射面の一点のみで接するようになり、ミラーの設置角度の調整に自由度が加わることになる。なお、ガラス鏡でも、図8の(A’)のように、左右ミラーの継ぎ目の角度に合わせて、2枚のミラー(ミラーA1とA2)がぴったり付くようにガラス側面を斜め加工すれば、表面反射鏡と同様に継ぎ目付近でも正しく反射できる。しかし、この方法では、ミラーの設置角度に自由度がないため、ミラーA1とA2の角度を変えないという条件で使用することになる。以下、実施例及び試験例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
【0037】
【実施例1】
<耐圧容器内の機器の配置例>
図9は、本発明の水中観測記録装置の機器の配置の一例を示す正面から見た説明図であり、図10は、その配置を側面から見た説明図である。
図9・図10に示すように、本実施例の水中観測記録装置は、フロント面に透明なアクリルガラス製の耐圧板を嵌めてあるステンレス鋼製で円筒型の耐圧容器の本体内に全ての機器を配置してある。すなわち、耐圧容器本体内の中央の板上にデジタルスチルカメラを載置し、カメラの前面には2枚のミラーA1・A2を組み合わせてカメラに対して光軸を中心とする対象状の鋭角をなすように配置して、その左右には別の2枚のミラーB1・B2をミラーA1・A2と同じ角度でたがいに等間隔にして配置してある。また、デジタルカメラの上方の板上には魚群探知機の本体とタイマーを載置し、デジタルカメラを載置した板の下方には魚群探知機のセンサーとバッテリーとフラッシュライトを配置してある。なお、図示しないが、耐圧容器の外壁に適宜の凹凸を設けておくと、人工魚礁などへの固定が容易となる。
【0038】
【実施例2】
<水中観測記録装置の機器の一例>
以下の仕様により、本発明の水中観測記録装置を製作した。
(1)耐圧容器
(2)カメラ部
(3)魚群探知機
(4)その他の機器
【0039】
【試験例1】
<実海域試験>
(1)試験方法
実施例1及び実施例2の仕様で製した水中観測記録装置を、山形県温海沖の水深約60mの海域の高層魚礁(SR−35:底面幅17.5m×奥行17.5m×高さ35m)の頂上部(水深は約25m)に設置し、蝟集魚群の情報を観測しかつ記録した。タイマー設定は20分に1枚の割合とした。撮影時間は約4時間である。
(2)試験結果
設置した水中観測記録装置は、概ね良好に作動し、撮影したステレオ映像12枚のうち6枚に魚が写っていた。撮影された魚体(合計約20尾:主としてカワハギ類)のうち11尾は両眼視野で捉えていた。この魚体のステレオ映像を三次元計測したところ、表1に示すデータが得られた。すなわち、表1は、撮影した魚体のステレオ計測の結果を示すものである。
【表1】
(註1)体長=ステレオ計測によって推定された体長
(註2)距離=ステレオ計測によって推定された水中観測記録装置からの距離
(註3)外挿による推定=キャリブレーション空間外にいると推定される魚を計測したことを意味する。
【0040】
(3)考察
熟練したダイバーがカメラ片手に潜って魚体を撮影することは、さほど困難ではないが、本発明の水中観測記録装置のように水中に放置された無人のカメラが魚を捕捉するのは難しいことである。水中では、水の透明度にもよるが、10mより先はほとんど何も見えない。見える範囲の狭い水中で魚体を撮影することは想像以上に困難である。また、水中の魚をステレオ撮影することは、さらに困難である。
【0041】
しかしながら、本試験によって、魚礁近辺を泳ぐ魚をステレオ撮影し、その魚体サイズや装置からの距離を測ることができた。その結果、計測データは実際の魚体の大きさなどから見て妥当なサイズ範囲に納まっていることが確認された。すなわち、この試験結果により、実施例1・実施例2の水中観測記録装置を用いると目的とするデータの取得が可能であることが判明した。したがって、本発明に係る水中観測記録装置及びその装置を用いて魚礁の魚群情報をモニタリングする方法は信憑性が高いことが確認された。すなわち、この試験結果により、本発明の装置及び方法が魚礁における魚類蝟集情報の収集に有用であることが判明した。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したとおり、本発明の水中観測記録装置は、魚群探知機とカメラを組み合わせて防水性耐圧容器に内蔵し密封した装置であるから、魚群探知機によって魚群の反射音響を収録して概括的に調べると共に、カメラによって魚体をステレオ撮影して詳細に調べるというように、遠近いずれの魚群情報も入手が可能となる。
また、本発明の水中観測記録装置は、カメラの近傍に2種類のミラーを配して一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右の視野を再びそれぞれ前方に向けるようにして1台のカメラによって被写体を左右両方の視野で同時に撮影することができるようにしたので、1台のカメラでステレオ撮影が可能となり、複数台のカメラを使うシステムに付随する煩雑さがなく、しかも、装置全体をコンパクト化でき、かつ安価なものにできる。したがって、本発明の水中撮影装置は、ダイバー1名〜2名で設置することができ、また回収が可能である。さらに、本発明の水中撮影装置は、高解像度・高画質のデジタルスチルカメラを使用することによって、解析の手間を省き、かつ計測精度を上げることができる。
【0043】
本発明の水中観測記録装置を使用すると、高層魚礁においてダイバーによる目視観測の必要がない。本発明の水中観測記録装置を魚礁内に設置して定点観測できるので、長期間にわたる計測であっても人手が不要である。
本発明の装置を用いて収集した情報に基づいて、魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定する方法は、正確な計測データに基づいているで、魚礁の効果範囲、魚種群ごとの漁獲可能量など高層魚礁の経済的効果を定量的に正確に推定することが可能である。
したがって、本発明に係る水中観測記録装置及びその装置を用いて魚礁に蝟集する魚群の情報をモニタリングする方法は、高層魚礁などにおける魚類蝟集モニタリングシステムとしてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】画角と光軸の関係を示す一般的な説明図
【図2】本発明に用いるステレオ撮影の原理「2種類のミラーでカメラの視野を左右に分割し、分割した視野を再び前方に向ける方法」の説明図
【図3】本発明に用いるステレオ撮影の原理「1台のカメラで両眼視野を作る方法」の説明図
【図4】カメラの配置と計測精度の関係を示す一般的な説明図
【図5】本発明に用いるステレオ撮影の原理「ミラーの配置と光軸の関係」の説明図
【図6】本発明に用いるステレオ撮影の原理「ミラーの配置と光軸の関係」の説明図
【図7】本発明に用いるステレオ撮影の原理「光軸間の距離とベースラインの関係」の説明図
【図8】本発明の水中観測記録装置においてミラーにガラス鏡と表面反射鏡を用いたときの相違点の説明図
【図9】本発明の実施例の水中観測記録装置について耐圧容器内の機器の配置を正面から見た説明図
【図10】本発明の実施例の水中観測記録装置について耐圧容器内の機器の配置を側面から見た説明図
Claims (9)
- 少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、カメラとミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録し、カメラによって魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置。
- 少なくとも前面が透明である防水性耐圧容器に、魚群探知機、1台のカメラと2種類のミラーとフラッシュライトからなるカメラ部、及びこれらの機器を同期的に作動させるタイマーとバッテリーとを内蔵して密封してあり、水中に設置したとき、魚群探知機によって間欠的に発信した音響のうち魚体に当たって反射された音響を収録すると共に、2種類のミラーのうち、一方のミラーでカメラの視野を左右に分割し、他方のミラーで左右それぞれの視野を再び前方に向けて被写体を左右両方の視野で同時に撮影できるようにして魚体を間欠的にステレオ撮影するようにした水中観測記録装置。
- 防水性耐圧容器内において、カメラの視野を左右に分割する方のミラーを2枚で構成し、カメラの前面にその2枚のミラーを光軸を中心として対象状の鋭角をなすように配置し、他方のミラーも2枚で構成し、鋭角をなすように配置した先の2枚のミラーに対してそれぞれ平行かつ等間隔に配置してある請求項1又は2に記載の水中観測記録装置。
- カメラの視野を左右に分割する方のミラーとして、表面反射鏡を使用してある請求項1から3のいずれかに記載の水中観測記録装置。
- カメラ部のカメラとして、デジタルスチルカメラを内蔵している請求項1から4のいずれかに記載の水中観測記録装置。
- 魚群探知機として、市販の小型の魚群探知機を内蔵している請求項1から5のいずれかに記載の水中観測記録装置。
- 請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して定点観測をおこない、収集した情報に基づいて魚礁に蝟集する魚群の空間分布や魚体サイズを計測しかつ魚種を推定するなど魚群情報をモニタリングする方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の水中観測記録装置を、水面下の魚礁内に設置して一定時間の定点観測をおこない、魚群探知機によって魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、カメラを間欠的に作動させて魚礁内をステレオ撮影し、撮影した魚体のステレオ映像と魚群探知機の収録音とを合わせて三次元解析し、当該魚礁の魚群情報をモニタリングする方法。
- 請求項7又は8に記載のモニタリング方法において、水中観測記録装置を高層魚礁内に設置して魚体からの反射音響を間欠的に収録すると共に、高層魚礁内を間欠的にステレオ撮影し、魚体のステレオ映像と収録音に基づいて当該高層魚礁の魚群情報をモニタリングする方法。
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