JP2004331570A - 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、治療および予後のための方法、組成物およびシステム - Google Patents
乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、治療および予後のための方法、組成物およびシステム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】乳がんおよびその関連疾患の診断、予防、治療および予後に有効な薬剤を提供すること。
【解決手段】乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。本発明はまた、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物をも提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。本発明はまた、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物をも提供する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホルモンの分野に関する。より詳細には本発明は、アディポネクチンの新規用途に関する。
【従来の技術】
乳がんは、日本、米国、欧州など世界中で、女性にとって深刻な問題となってきている。その疾患の検出および処置において、進歩が成されてきたが、乳がんは、女性のがん関係の死因では二位または三位と、上位にある。
現在のところ、乳がんの予防または治療のための方法として有効なものはほとんど存在せず、診断のために有効なマーカーも報告されていない。乳がんの処置は、現在のところ、早期の診断(慣用的な乳房のスクリーニング手順を通じて)および積極的な処置の組み合わせに依存し、その処置は、手術、放射線治療、化学療法、およびホルモン療法のような、1以上の種々の処置を含み得る。特定の乳がんの処置の過程は、しばしば、特異的な腫瘍マーカーの分析を含む、種々の予後のパラメーターに基づいて選択される。
腫瘍マーカーの分析について記載する非特許文献1では、確立されたマーカーの分析が記載されているが、この分析の解釈は難しく、乳がん患者において観察される高い死亡率は、その疾患の処置、診断、および予防において、改善が必要とされることを示している。
アディポネクチンは、脂肪組織から分泌されるペプチドホルモンであり、種々の細胞型の増殖とインスリン感受性とに影響する。脂肪と乳がんリスクとの関連が十分に確立されているので、アディポネクチンは、乳がんの発生においてある役割を果たす可能性がある。従って、本出願において、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連を調査した。
従って、当該分野において、乳がんの治療および診断の改善された方法の必要性が存在する。
【非特許文献1】
Porter−JordanおよびLippman、Breast Cancer 8:73−100(1994)
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明では、乳がんおよびその関連疾患の診断、予防、治療および予後に有効な薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明者らが、予想外に、アディポネクチンが乳がんのような乳房の疾患、障害または状態と有意に相関し、診断、予防、治療および予後に有効であることを発見したことによって解決された。本発明は、これらの必要性を満たし、さらに他の関係する利点を提供する。
(本発明の要旨)
(方法)
102人の乳がん患者(ケース)および100人の健常な女性(コントロール)に対して、ケース−コントロール研究を行った。種々の古典的危険因子(家族歴、初潮年齢、経産、ボディマス指数など)について調整した後に、ケースおよびコントロールの血清アディポネクチンレベルを、彼女達の乳がんリスクに関して試験した。さらに、その血清アディポネクチンレベルと乳がんの種々の臨床病理学的特徴との間の関連性を、研究した。
(結果)
血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.005)増加したリスクと関連があった(OR=4.27、95% CI=1.81〜10.08)。このような関連は、閉経前の女性において(OR=3.81、95% CI=0.90〜16.07)と閉経後の女性において(OR=5.14、95% CI=1.50〜17.58)の両方にて観察された。大きな(>2cm)腫瘍の頻度および高組織学的グレード(2+3)の腫瘍の頻度が、血清アディポネクチンレベルが高三分位範囲および中三分位範囲にある乳がん患者においてよりも、血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲にある乳がん患者において、有意に(それぞれ、P<0.005およびP<0.05)高かった。
(考察)
これらの結果は、低血清アディポネクチンレベルが、乳がんについて増加したリスクと有意に関連すること、および低血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍が、生物学的に進行した表現型を示す可能性が高いこと、を示唆する。肥満と乳がんリスクとの間の関係は、アディポネクチンにより部分的に説明され得る。
ボディマス指数(BMI)と乳がんリスクとの関連が、十分に確立されている(Morimoto LMら、Cancer Causes Control 2002;13:741〜51;Hirose Kら、Cancer Causes Control 2001;12:349〜58;Tung HTら、Jpn J Clin Oncol 1999;29:137〜46)。エストロゲンは、閉経後の女性において、副腎に由来するアンドロゲンの芳香族化を介して末梢脂肪組織中で大部分が合成される(Edman CDら、Am J Obstet Gynecol 1978;130:439〜47)ので、高BMIの女性は、増加したエストロゲンレベルを有する可能性があり、それゆえ増加した乳がんリスクを有する可能性があると、推測される。閉経後の女性における、BMIと血清エストロゲンレベルとの関連ならびに血清エストロゲンレベルと乳がんリスクとの関連を示すいくつかの研究によって、この推測は支持される(Verkasalo PKら、Cancer Causes Control 2001;12:47〜59;Hankinson SEら、J Natl Cancer Inst 1998;90:1292〜9)。しかし、BMIが、血清エストロゲンレベルとは独立した、乳がんについての危険因子として役立つという事実(Verkasalo PKら(前出);Hankinson SEら(前出))は、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強は、閉経後の女性における乳がんリスクにBMIが影響を与える唯一の機構ではないことを、示す。さらに、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強は、閉経前の女性におけるBMIと乳がんリスクとの間の関連を説明しそうにない。なぜなら、エストロゲンは、卵巣において大部分が生成され、そして実際には、閉経後の女性において、BMIと血清エストロゲンレベルとの間に有意な関連は存在しないからである(Verkasalo PKら(前出))。これらの結果は、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強ではない、BMIが乳がんリスクに影響を与える他の機構の存在を、強く示す。
脂肪組織は、脂肪貯蔵組織であるだけでなく、種々のサイトカインを生成してアディポネクチンを誘導する内分泌器官でもあることが、最近の研究により開示されている。アディポネクチンは、脂肪組織だけから分泌されるペプチドホルモンであり、コレクチンファミリーに属する(Maeda Kら、BiochemBiophys Res Commun 1996;221:286〜9;Nakano Yら、J Biochem(Tokyo)1996;120:803〜12)。このペプチドは、血管平滑筋および内皮細胞の増殖の阻害を介して、アテローム性動脈硬化症の病因において予防的役割を果すこと(YokotaTら、Blood 2000;96:1723〜32;Arita Yら、Circulation 2002;105:2893〜8)、そして種々の間質細胞および上皮細胞において、グルコースおよび脂肪酸の代謝ならびにインスリン感受性の調節を介して、糖尿病の病因において予防的役割を果すことが、示されている(Yamauchi Tら、Nat Med 2001;7:941〜6;Fruebis Jら、Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:2005〜10;Berg AHら、Nat Med 2001;7:947〜53;Maeda Nら、Nat Med 2002;8:731〜7)。
乳房上皮細胞および乳がん細胞に対するアディポネクチンの効果は未だ研究されていないが、アディポネクチンは、これらの細胞の増殖および分化に影響を与える可能性がある。興味深いことに、血清アディポネクチンレベルは、MBIと逆に関連することが、報告されている(Arita Yら、Biochem Biophys Res Commun 1999;257:79〜83;Hotta Kら、Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000;20:1595〜9;Yang WSら、Obes Res 2002;10:1104〜10)。この関連性は、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連の可能性を示唆するように思われる。本発明者らが知る限り、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性を調査した報告は、現在までに入手可能ではない。従って、本出願において、本発明者らは、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連性を、ケース−コントロール研究によって研究した。血清アディポネクチンレベルと乳がんの臨床病理学的特徴との間の関連性もまた、研究した。
従って、本発明は、以下を提供する。
(1) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
(2) 上記アディポネクチン、またはそのフラグメントもし、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;くは改変体は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、項目1に記載の組成物。
(3) 上記アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目1に記載の組成物。
(4) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目1に記載の組成物。
(5) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
(6) 上記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、項目1に記載の組成物。
(7) 上記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する、項目1に記載の組成物。
(8) 上記ポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲を含む、項目5に記載の組成物。
(9) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子、を含む、組成物。
(10) 上記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目9に記載の組成物。
(11) 少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(12) 上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対して相補的な配列またはそれに対して少なくとも70%の同一性を有する配列を有する核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(13) 上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(14) プライマーとして使用される、項目9に記載の組成物。
(15) プローブとして使用される、項目9に記載の組成物。
(16) 上記ポリヌクレオチドまたは上記ポリペプチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲または配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目9に記載の組成物。
(17) 上記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、項目9に記載の組成物。
(18) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目9に記載の組成物。
(19) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子、
を含む、組成物。
(20) 上記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目19に記載の組成物。
(21) 抗体またはその誘導体である、項目19に記載の組成物。
(22) プローブとして使用される、項目19に記載の組成物。
(23) 上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目19に記載の組成物。
(24) 上記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、項目19に記載の組成物。
(25) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目19に記載の組成物。
(26) 乳房の疾患、障害または状態の予防、処置または予後のための組成物であって
血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子、
を含む、組成物。
(27) 上記血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト、グリメピリドおよびアディポネクチンを産生するアデノウイルスからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、項目26に記載の組成物。
(28) 上記PPARγアゴニストは、チアゾリジンジオンを含む、項目27に記載の組成物。
(29) 上記チアゾリジンジオンは、トログリタゾンまたはピオグリタゾンを含む、項目28に記載の組成物。
(30) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目26に記載の組成物。
(31) 乳房に関連する状態、障害または疾患を診断するための方法であって、上記方法は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記(a)のレベルと上記(b)のレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、上記(a)のレベルが上記(b)のレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、方法。
(32) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目31に記載の方法。
(33) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、項目31に記載の方法。
(34) 上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも少なくとも統計学的に有意に低いことを特徴とする、項目31に記載の方法。
(35) 上記測定工程において、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子
を使用する、項目31に記載の方法。
(36) 上記因子は抗体である、項目35に記載の方法。
(37) 上記因子は標識されているかまたは標識と結合し得る、項目35に記載の方法。
(38) 上記測定工程において、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子が使用される、項目31に記載の方法。
(39) 上記因子はプライマーとして使用される、項目38に記載の方法。
(40) 上記因子はプローブとして使用される、項目38に記載の方法。
(41) 乳房の疾患、障害または状態に関連する状態、障害または疾患を診断するためのキットであって、上記キットは、
(A)
(A−1)
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子;および/または
(A−2)
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、因子;ならびに
(B)指示書、
を備え、上記指示書は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを上記(A−1)因子および/または上記(A−2)因子を用いて測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを上記(A−1)因子および/または上記(A−2)因子を用いて測定する工程;
(c)上記診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、上記診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、
キット。
(42) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目41に記載のキット。
(43) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、項目39に記載のキット。
(44) 上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも統計学的に有意に低いことを特徴とする、項目43に記載のキット。
(45) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のための方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を施す工程、
を包含する、方法。
(46) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示する方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する工程、
を包含する、方法。
(47) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のためのシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段、
を備える、システム。
(48) 上記測定手段、上記判定手段および上記提供手段は、ネットワークによって接続される、項目47に記載のシステム。
(49) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示するシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段、
を備える、システム。
(50) 上記測定手段、上記判定手段および上記提供手段は、ネットワークによって接続される、項目49に記載のシステム。
(51) 乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子を同定するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)血漿アディポネクチンレベルが正常ではない同種の被験体を複数提供する工程;
(b)試験因子を上記被験体の一部に投与する工程;
(c)試験因子を投与されていない上記被験体および試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(d)試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルよりも、有意に正常被験体に近似するか否かを判定する工程を包含し、
ここで、試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルより有意に正常被験体に近似する場合、上記試験因子は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子であることを示す、方法。
(52) 上記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、項目51に記載の方法。
(53) 項目51に記載の方法によって同定される、調節因子。
(54) 項目53に記載の調節因子を含む、薬学的組成物。
(55) 乳房に関連する状態、障害または疾患を処置または予防する方法であって、上記方法は、項目54に記載の薬学的組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(56) 上記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、項目55に記載の方法。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(定義)
本明細書において「アディポネクチン」(adiponectin)とは、脂肪細胞で作られる分泌タンパク質として同定されたタンパク質またはそれをコードする遺伝子をいう。アディポネクチン は、Acrp30 (脂肪細胞補体関連30kDaタンパク質=adipocyte complement−related protein of 30kDa)、ゼラチン結合タンパク質(Gelatin−binding protein)、Adipose most abundunt gene transcript 1(apM−1)等の別名を有し、遺伝子名はAPM1、ACRP30、GBP28として知られている。そのmRNAは脂肪細胞分化の過程で100倍以上誘導される。アディポネクチンはまた、豊富に存在する血清タンパク質で、結果としてエネルギー・恒常性、肥満に影響を与えます。現在までにインスリンの効果を高めて血糖値を下げる働きがあることが知られている。アディポネクチンは、TNFαと構造的に非常に似ており、ヒト、マウスなどの動物の様々な肥満形態において調節不能になることから、エネルギー・恒常性に影響を与える重要な分子として研究が進められている。
同定されたアディポネクチンの塩基配列およびアミノ酸配列としては、代表的には、ヒト(配列番号1および2)、サル(配列番号3および4)、マウス(配列番号5および6)、ラット(配列番号7および8)などが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書においてアディポネクチンをコードするポリヌクレオチドは、代表的に、
(a)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
本明細書において「アディポネクチン」または「アディポネクチンポリペプチド」は、
(a)少なくとも配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質分子またはその改変体;
(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
本発明では、アディポネクチンをコードする核酸分子およびアディポネクチンポリペプチドのフラグメントおよび改変体もまた、有用であることが理解される。
アディポネクチンはまた、ある実施形態において、グリコシル化されていてもよいが、グリコシル化されていることは必須ではない。
アディポネクチンは、1996年、前田らによりヒト脂肪組織から新たに分離された動物脂肪組織特異的タンパク質であり、そのアミノ酸配列も明らかにされている。(Maeda K,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.221:286(1996))。これとほぼ同時期に他の研究グループにより、マウス3T3−F442A細胞からクローニングされたACRP30と呼ばれる物質(Scherer PE et al.J.Biol.Chem.270:26746〜26749(1995))はアディポネクチンと同一物質と考えられている。このアディポネクチンは、脂肪組織のみならず、血中にも多量存在しており、正常ヒト血中には5〜10μg/mlという高濃度で存在している(Arita Y et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.257:79〜83(1999))。また、このアディポネクチンは肥満が進むにつれてパラドキシカルに血中濃度が低下する。
このアディポネクチンの作用については、これまでにいくつかの研究グループにより血管平滑筋の増殖ならびに細胞遊走の抑制、抗動脈硬化作用、単球、マクロファージの活性化抑制、抗炎症作用、肝星細胞の活性化の抑制、細胞外マトリックス産生の抑制、肝星細胞増殖の抑制、肝細胞増殖促進などが判明しているが、その作用の全容については未だ明らかではない。本発明らは、このアディポネクチンの作用について、種々検討を重ねるうち、乳房疾患に関連していることが本発明において初めて明らかになった。しかも、アディポネクチンの体内量と乳房疾患との関連は、被検体の肥満度にかかわらず有意な相関が見出されたことから、乳房疾患の診断の指標、治療などへの適用が可能であるという多大な有用性を有する。
本発明において用いられるヒトアディポネクチンは、ヒト脂肪組織特異的なコラーゲン様因子である。その遺伝子は、244のアミノ酸より構成されるタンパク質であることが知られている。ヒトアディポネクチンタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1および2に示されている。ヒトアディポネクチンの生理作用を検討する中で本発明者らは、すでに、ヒトアディポネクチンが単球系の細胞およびB細胞系の細胞の増殖を抑制する現象を見出し、それら血球系細胞の増殖抑制剤として有効である事を示した。上述したように、炎症時には単球、マクロファージ、好中球等の白血球系細胞が増殖し、かつ集積する現象が見られる。アディポネクチンにより増殖が抑制される単球は、そのような細胞性の生体防御反応において重要な役割を担っている細胞であり、成熟すると貪食を担うマクロファージとなり、一方ではインターロイキンー1、腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインを産生する。炎症反応の過程おいて、単球はそのように重要性な働きをしており、アディポネクチンは単球の増殖を抑制して集積を防ぐ事により、抗炎症剤として用いる事ができる。
アディポネクチンはヒトを含む動物の脂肪組織で産生され、血中にも多量存在するタンパク質である。ヒトアディポネクチンについては、これをコードするcDNAから遺伝子組換え法により高純度に精製されたものが得られている(Arita,Y.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.257,79〜83(1999))。マウス由来のACRP30も、前述のとおり組み換え遺伝子の手技により高純度のものが得られており、市場で入手可能である。本発明の組成物が投与されるべき患者は、乳房疾患(例えば、乳がん)に罹患した患者あるいはその危険性のある患者である。そして、これらの患者に対して本発明の組成物を投与することにより、その悪化を抑えるか、または改善もしくは完治、あるいは予防することができ、あるいは、正常乳房の再生が促進される。
本明細書において「アディポネクチンの生物学的活性」は、アディポネクチンが有する少なくとも1つの機能を包含し、例えば、血管内皮機能改善作用、血管平滑筋増殖抑制作用、マクロファージ泡沫化抑制作用、炎症性サイトカイン分泌抑制作用、筋肉細胞取り込み促進作用が挙げられるがそれらに限定されない。そのような生物学的活性は、血管平滑筋細胞への[3H]チミジン取り込み、マクロファージ培養上清TNFα分泌、筋肉細胞[3H]デオキシグルコース取り込みなどによって測定することができる。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。アディポネクチンの遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態のアディポネクチン遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。アディポネクチンなどの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。このようなポリヌクレオチド形態のアディポネクチン遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、アディポネクチン遺伝子には、アディポネクチンのスプライス変異体もまた包含され得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、アディポネクチン遺伝子というときは、通常、アディポネクチンの構造遺伝子ならびにアディポネクチンのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含する。本発明では、構造遺伝子のほか、転写および/または翻訳などの調節配列もまた、乳房疾患の診断、治療、予防、予後などに有用であることが理解される。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
本明細書において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、マウスアディポネクチン遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウスアディポネクチン遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものをいう。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において用いられる用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
本明細書中で使用される「モノクローナル抗体」は、同質な抗体集団を有する抗体組成物をいう。この用語は、それが作製される様式によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子ならびにFab分子、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、およびもとのモノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当該分野で公知であり、そして以下でより十分に記載される。
モノクローナル抗体は、当該分野で周知の標準的な技術(例えば、KohlerおよびMilstein,Nature(1975)256:495)またはその改変(例えば、Buckら(1982)In Vitro 18:377)を使用して調製される。代表的には、マウスまたはラットを、タンパク質キャリアに結合したタンパク質で免疫化し、追加免疫し、そして脾臓(および必要に応じていくつかの大きなリンパ節)を取り出し、そして単一細胞を解離する。必要に応じて、この脾臓細胞は、非特異的接着細胞の除去後、抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することにより、スクリーニングされ得る。抗原に特異的なイムノグロブリンを発現するB細胞がプレートに結合し、そして懸濁液の残渣でもリンス除去されない。次いで、得られたB細胞(すなわちすべての剥離した脾臓細胞)をミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマを得、このハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体を産生させる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。
本明細書において「単鎖抗体」とは、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じたものをいう。
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、アディポネクチン遺伝子またはその産物あるいは本発明の因子と同様の機能を有する限り、それぞれアディポネクチン遺伝子またはその産物あるいは本発明の因子としてそのような複合分子も使用することができる。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチド(例えば、アディポネクチン)の発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチド(例えば、アディポネクチン)の発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。このような遺伝子または遺伝子産物(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の発現の増加または減少は、本発明の治療形態、予後形態または予防形態において有用であり得る。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。したがって、本発明において、ある実施形態では、罹患した箇所に局所的にアディポネクチンを特異的に発現させてもよい。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、2つの因子が相互作用する(例えば、アディポネクチンとその受容体とが結合する)場合、その生物学的活性は、アディポネクチンとその受容体との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化例えば、血管内皮機能改善作用、血管平滑筋増殖抑制作用、マクロファージ泡沫化抑制作用、炎症性サイトカイン分泌抑制作用、筋肉細胞取り込み促進作用が挙げられるがそれらに限定されない。そのような生物学的活性は、血管平滑筋細胞への[3H]チミジン取り込み、マクロファージ培養上清TNFα分泌、筋肉細胞[3H]デオキシグルコース取り込みなどによって測定することができる。また、例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
本明細書において「アンチセンス(活性)」とは、標的遺伝子の発現を特異的に抑制または低減することができる活性をいう。アンチセンス活性は、通常、目的とする遺伝子(例えば、アディポネクチンなど)の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列によって達成される。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。そのような核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、もっとも好ましくは95%相同な核酸配列が含まれる。そのようなアンチセンス活性は、目的とする遺伝子の核酸配列の5’末端の配列に対して相補的であることが好ましい。そのようなアンチセンスの核酸配列には、上述の配列に対して、1つまたは数個あるいは1つ以上のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有するものもまた含まれる。
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、より好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、DevelopmentalBiology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
アディポネクチンタンパク質をコードする天然の核酸は、配列番号1、3、5および7の核酸配列の一部を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいアディポネクチンの核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1、3、5または7に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアディポネクチンには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschulet al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267−2268参照のこと)。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
本明細書において、「エピトープ」とは、構造の明らかな抗原決定基をいう。従って、エピトープには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは線状であってもコンフォメーション形態であってもよい。
(遺伝子の改変)
あるタンパク質分子(例えば、アディポネクチン)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in MolecularBiology,Greene Pub.AssociatESand Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associat ES and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: ACompendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子工学)
本発明において用いられるアディポネクチンならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
本明細書において、レトロウイルスの感染方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology 前出(特にUnits 9.9−9.14)などに記載されるように、当該分野において周知であり、例えば、トリプシナイズして胚性幹細胞を単一細胞懸濁物(single−cell suspension)にした後、ウイルス産生細胞(virus−producing cells)(パッケージング細胞株=packaging cell lines)の培養上清と一緒に 1−2 時間共培養(co−culture)することにより、十分量の感染細胞を得ることができる。
本明細書において使用されるゲノムまたは遺伝子座などを除去する方法において用いられる、Cre酵素の一過的発現、染色体上でのDNAマッピングなどは、細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ「FISH実験プロトコール ヒト・ゲノム解析から染色体・遺伝子診断まで」松原謙一、吉川 寛 監修 秀潤社(東京)などに記載されるように、当該分野において周知である。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法 ・ 中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
本明細書において「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端に向かう位置を示す。
本明細書において「下流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの3’末端に向かう位置を示す。
本明細書において「塩基対の」および「Watson & Crick塩基対の」という表現は、本明細書では同義に用いられ、二重らせん状のDNAにおいて見られるものと同様に、アデニン残基が2つの水素結合によってチミン残基またはウラシル残基と結合し、3つの水素結合によってシトシン残基とグアニン残基とが結合するという配列の正体に基づいて互いに水素結合可能なヌクレオチドを示す(Stryer,L.,Biochemistry,4th edition,1995を参照)。
本明細書において「相補的」または「相補体」という用語は、本明細書では、相補領域全体がそのまま別の特定のポリヌクレオチドとWatson & Crick塩基対を形成することのできるポリヌクレオチドの配列を示す。本発明の目的で、第1のポリヌクレオチドの各塩基がその相補塩基と対になっている場合に、この第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと相補であるとみなす。相補塩基は一般に、AとT(あるいはAとU)、またはCとGである。本願明細書では、「相補」という語を「相補ポリヌクレオチド」、「相補核酸」および「相補ヌクレオチド配列」の同義語として使用する。これらの用語は、その配列のみに基づいてポリヌクレオチドの対に適用されるものであり、2つのポリヌクレオチドが事実上結合状態にある特定のセットに適用されるものではない。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した植物の細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
本発明のポリペプチドは、そアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明の新規ps20様ポリペプチドの生理活性は、公知の測定法[Cell,75,1389(1993)、J.Cell Bio.l146,233(1999)、Cancer Res.58,1238(1998)、Neuron 17,1157(1996)、Science 289,1197(2000)]に準じて測定することができる。
(変異型ポリペプチドの作製方法)
本発明ポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCTWO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
(免疫化学)
本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製もまた当該分野において周知である。例えば、ポリクローナル抗体の作製は、取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のタンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)]等で確認する。
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクローナル抗体を分離、精製することができる。モノクローナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリドーマの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。このようにして得たハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体は種々の目的に使用することができる。
このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫学的検出方法に使用することができ、本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法・蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等を挙げることができる。
また、本発明ポリペプチドの免疫学的定量方法にも使用することができる。本発明ポリペプチドの定量方法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピトープが異なる2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、126I等の放射性同位体で標識した本発明のタンパク質と本発明のタンパク質を認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等を挙げることができる。
本発明ポリペプチドのmRNAの定量方法もまた、当該分野において周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドあるいはDNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコードするDNAの発現量をmRNAレベルで定量することができる。このような技術は、当該分野において周知であり、本明細書において列挙した文献にも記載されている。
当該分野で公知の任意の方法によって、これらのポリヌクレオチドが得られ得、そしてこれらポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、決定され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、この抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ得(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242(1994)に記載されるように)、これは、手短に言えば、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップするヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに次いでPCRによるこの連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から作製することができる。ある抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリーまたは抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリドーマ細胞)から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリA+RNA))から、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、その配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、またはその特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得ることができる。PCRによって作製された増幅された核酸は、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照のこと。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生成するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し得る。
特定の実施形態において、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、相補性決定領域(CDR)の配列の同定のために、当該分野において周知の方法によって(例えば、配列超可変性の領域を決定するために、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較することによって)調べられ得る。慣用的な組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRが、前述のようにフレームワーク領域内に(例えば、非ヒト抗体をヒト化するために、ヒトフレームワーク領域中に)挿入され得る。このフレームワーク領域は天然に存在し得るか、またはコンセンサスフレームワーク領域であり得、そして好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、列挙したヒトフレームワーク領域については、Chothiaら、J.Mol.Biol.278:457−479(1998)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上記に議論されるように、1つ以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内で作製され得、そして好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如した抗体分子を生成するように、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は、本発明によって、および当該分野の技術において包含される。
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851−855(1984);Neubergerら、Nature 312:604−608(1984);Takedaら、Nature 314:452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
単鎖抗体を製造する場合、単鎖抗体の産生に関する記載された公知の技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら、Nature 334:544−54(1989))が、利用され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraら、Science 242:1038−1041(1988))。
(抗体を産生する方法)
本発明の抗体は、抗体の合成のために当該分野で公知の任意の方法によって、化学合成によって、または、好ましくは、組換え発現技術によって産生され得る。
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターの構築のために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開 WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)をコードするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクターにクローニングされ得る。
この発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移入され、次いで、このトランスフェクトされた細胞は、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
本発明の関連した局面において、薬学的組成物(例えば、ワクチン組成物)が、予防適用または治療適用のために提供される。このような組成物は、一般に、本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび免疫刺激剤(例えば、アジュバント)を含む。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
(疾患)
本明細書において「乳房の疾患」とは、乳房の機能,構造,器官などの断絶,停止,または障害をいい、通常、次の基準のうち少なくとも2つを満たす病変をいう:1)病因物質をもつこと;2)はっきりと指摘できる徴候および/または症候群があること;3)一致した解剖学的変化があること。乳房の疾患としては、例えば、上皮性腫瘍(例えば、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫など);非上皮性腫瘍(例えば、間質肉腫、軟部腫瘍、リンパ腫および造血器腫瘍など);混合腫瘍(例えば、葉状腫瘍、線維腺腫など);乳腺症;硬化性腺増生症;閉塞性腺増生症;嚢胞症;アポクリン化生;腫瘍様病変;乳管拡張症;過誤腫;女性化乳房症;副乳;皮膚由来の腫瘍;粉瘤;炎症性疾患(例えば、急性化膿性乳腺炎、急性鬱帯性乳腺炎、乳輪下膿瘍、乳腺結核など)などが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において「乳房の障害」とは、乳房の機能、構造、あるいは両方の障害で、発育における遺伝、発生上の欠陥、または毒素、外傷、疾病など外因性要因に起因するものをいう。
本明細書において「乳房の状態」とは、乳房の健常度を示す度合いをいう。そのような状態は、種々のパラメータによって表すことができる。本発明により、血漿アディポネクチンレベルを測定することにより乳房の状態が判定できるようになった。
本明細書において「乳がん」とは、乳腺組織の末梢乳管や腺房上皮から発生する癌腫であり、上皮性腫瘍(例えば、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫など);非上皮性腫瘍(例えば、間質肉腫、軟部腫瘍、リンパ腫および造血器腫瘍など);混合腫瘍(例えば、葉状腫瘍、線維腺腫など)などを包含する。乳がんの,リスク因子として,乳癌の既往、家族歴、未婚、高齢初産、早期初潮および晩期閉経、肥満、放射線被曝、高脂肪食、良性乳腺疾患の既往などがあげられるが、本発明において初めて血漿アディポネクチン濃度が乳房の疾患、障害または状態に関連することが判明した。
(チップ/アレイ技術)
本発明はまた、アレイ・チップ技術を用いて診断、スクリーニングなどを行うために利用することができる。
本明細書において使用される「プレート」とは、アディポネクチンに対する特異的因子(例えば、抗体)のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明では、プレートは、プラスチック、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面にもつガラス基板を基材とすることが好ましい。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、コーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。本明細書において、そのようなコーティングのための物質は、「コーティング剤」と呼ばれる。そのようなコーティング剤としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、生体分子(例えば、タンパク質、DNA)に(特に、測定、診断において)有害な影響を与えない物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも102個、より好ましくは少なくとも103個、およびさらに好ましくは少なくとも104個、さらにより好ましくは少なくとも105個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、DNA、抗体のようなタンパク質などの生体分子)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、108個の生体分子まで、他の実施形態において107個の生体分子まで、106個の生体分子まで、105個の生体分子まで、104個の生体分子まで、103個の生体分子まで、または102個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、108個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質、DNAなど)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、各々の生体分子は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1〜2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science andEngineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbookof Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
したがって、本発明では、アディポネクチンの遺伝子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
本明細書において「形質」および「表現型」という用語は、本明細書では同義に用いられ、生物の可視的な性質、検出可能な性質またはこれ以外の場合における測定可能な性質すべてを意味するものであり、一例として疾患の徴候または疾患に対する感受性があげられる。本明細書では通常、「形質」または「表現型」という用語は、乳房に関する疾患(例えば、乳がん)、肥満または肥満に関連した障害、特に、アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性、高血圧症、2型糖尿病の肥満個体における細小血管障害、II型糖尿病の肥満個体における細小血管障害に関連した眼病変、またはII型糖尿病の肥満個体における細小血管障害に関連した腎病変の症状またはこれらに対する羅患性を示すときに用いられ得る。
本明細書において「遺伝子型」という用語は、ある生物個体の遺伝子の構成をいい、しばしば個体または試料中に存在する対立遺伝子を意味することがある。試料または個体の「遺伝子型を判定する」という表現は、個体の特定の遺伝子の配列を解析することを包含する。
本明細書において「多型」という用語は、異なるゲノムまたは個体間で2以上の選択的ゲノム配列または対立遺伝子が出現することを示すために用いられる。「多型(の)」という表現は、特定のゲノム配列の2以上の変異体が個体群に見出される可能性がある状態を示す。「多型部位」は、そのような変異が発生する遺伝子座である。単一ヌクレオチド多型(SNPs)は、多型部位で1つのヌクレオチドが別のヌクレオチドに置換されたものである。1つのヌクレオチドの欠失または1つのヌクレオチドの挿入によっても単一ヌクレオチド多型が生じる。本明細書において「単一ヌクレオチド多型」は、1つのヌクレオチドの置換を示すものであることが好ましい。一般に、異なる個体間では、多型部位を2つの異なるヌクレオチドが占めている場合がある。本発明では、アディポネクチンの多型もまた、乳房疾患に関連すると考えられることから、1つの実施形態では、このような多型の分析によって同定された対立遺伝子を用いることが乳房の、予防、診断、治療または予後に有効であり得る。
(アディポネクチンの増強剤および減少剤)
「血漿アディポネクチンレベルを増加させる物質」とは、その物質が投与された被験体において、血漿アディポネクチンレベルを増加させる、任意の物質を包含する。このような物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:チアゾリジンジオン(thiazolidinedione)(TZD)(Diez JJら、Eur J Endocrionol 2003 Mar;148(3):293〜300;Yu JGら、Diabetes 2002 Oct;51(10):2968〜74;Stockli Rら、Ther Umsch 2002 Aug;59(8):388〜92;Maeda Nら、Diabetes 2001 Sep;50(9):2094〜9);トログリタゾン(troglitazone)(Phillips SAら、Diabetes 2003 Mar;52(3):667〜74);ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト(例えば、ラガグリタザル(ragaglitazar)およびロシグリタゾン(rosiglitazone))(Ye JMら、Am J Physiol Endocrinol Metab 2003 Mar;284(3):E531〜40;YamamotoYら、Metabolism 2002 Nov;51(11):1407〜9;Combs TPら、Endocrinology 2002 Mar;143(3):998〜1007);グリメピリド(glimepiride)(Tsunekawa Tら、Diabetes Care 2003 Feb;26(2):285〜9);ピオグリタゾン(Pioglitazone)(Pio)(Ye JMら、Endocrinology 2002 Dec;143(12):4527〜35);アディポネクチンを産生するアデノウイルス(Matsuda Mら、J Biol Chem 2002 Oct 4;277(40):37487〜91);精製した組換えAcrp30(Combs TPら、J Clin Invest 2001 Dec;108(12):1875〜81)。トログリタゾン、ピオグリタゾンはチアゾリジンジオンに含まれ、さらにチアゾリジンジオンはPPARγアゴニストに含まれる。
アディポネクチン遺伝子の94位のヌクレオチドのT→G置換が、循環中のアディポネクチンレベルの増加と関連した(Medizinische Klinikら、Diabetes 2002 Jan;51(1):37〜41)ことも判明している。したがって、このような変異置換もまた本発明において有用である。
「血漿アディポネクチンレベルを減少させる物質」とは、その物質が投与された被験体において、血漿アディポネクチンレベルを減少させる、任意の物質を包含する。このような物質は、当業者が当該分野において周知のスクリーニング法を用いて適宜同定することができる。
(治療活性または予防活性の証明)
本発明の化合物または薬学的組成物は、好ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで、そして次いでインビボで、所望の治療活性または予防活性について試験される。例えば、化合物または薬学的組成物の、治療有用性または予防有用性を証明するためのインビトロアッセイとしては、細胞株または患者組織サンプルに対する化合物の効果が挙げられる。細胞株および/または組織サンプルに対する化合物または組成物の効果は、当業者に公知である技術(細胞溶解アッセイが挙げられるがこれらに限定されない)を利用して決定され得る。本発明に従って、特定の化合物の投与が示されるか否かを決定するために用いられ得るインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、このアッセイでは、患者組織サンプルが培養物において増殖し、そして化合物に曝されるか、そうでなければ化合物が投与され、そして、組織サンプルに対するそのような化合物の効果が観察される。
(治療的/予防的な投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、アディポネクチン、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
特定の実施形態において、本発明の化合物または組成物を、処置の必要な領域に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of ControlledRelease,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
他の制御された徐放系は、Langerにより総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどの投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、経口投与が可能な形態で投与される場合、0.01mg〜10gであり、好ましくは、0.1mg〜1g、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。非経口投与の場合、0.01mg〜1gであり、好ましくは、0.01mg〜100mg、0.1mg〜100mg、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。あるいは、体重gあたりでは、例えば、0.1〜100g/kg体重、好ましくは、0.5g〜10g/kg体重、より好ましくは1g〜5g/kg体重であり得る。このような非経口投与は、代表的に、腹腔内投与であり得る。
本明細書中、「投与する」とは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与することを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果またはアディポネクチンに関連する疾患に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、アディポネクチンに関連する疾患の再発により再開することができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかです。
(アディポネクチンのポリペプチド形態)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物を提供する。ここで、診断、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる(例えば、Harris J., Lippman M, Morrow M, Osborne CK. Disease of the breast. Philadelphia;Lippincott Williams & Wilkins, 2000参照)。
1つの実施形態において、本発明において用いられるアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(b)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチン遺伝子産物と類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(c)における対立遺伝子変異体は、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書中上述のように同定することができ、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記(e)における上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号8に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号1に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号3に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号5に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号7に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、ある因子と相互作用することができる限り、その上限の長さは、配列番号2、4、6または8に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
1つの実施形態において、アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号2、4、6または8のアミノ酸のうち、それぞれ19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位)の範囲を含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチンの核酸形態)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物を提供する。
ここで、診断、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる(Harris J., LippmanM, Morrow M, Osborne CK. Disease ofthe breast. Philadelphia; Lippincott Williams & Wilkins, 2000.参照)。
1つの実施形態において、本発明において用いられるアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチン遺伝子産物と類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
別の好ましい実施形態において、対立遺伝子変異体は、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが有利である。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のアディポネクチンをクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のアディポネクチンの全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明のアディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントおよび改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、マーカー、プライマー、プローブ)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号8に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号1に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号3に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号5に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号7に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
1つの実施形態において、アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列の、それぞれ、ヌクレオチド81位〜758位、52位〜729位、151位〜786位、および84位〜764位(または87位〜764位)の範囲を含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチン遺伝子と相互作用する因子)
1つの局面において、本発明は、アディポネクチン遺伝子と特異的に相互作用する因子を含む乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物を提供する。
1つの実施形態において、この因子は、(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド; (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、と特異的に相互作用する、因子であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される。
好ましい実施形態では、本発明の因子は、核酸分子である。本発明の因子が核酸分子である場合、そのような核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、マーカー、プライマー、プローブ)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
従って、1つの例示的な実施形態において、本発明の因子は、上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対して相補的な配列またはそれに対して少なくとも70%の同一性を有する配列を有する核酸分子であり得る。
別の例示的な実施形態において、本発明の因子は、(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の因子が特異的に相互作用するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列の、それぞれ、ヌクレオチド81位〜758位、52位〜729位、151位〜786位、および84位〜764位(または87位〜764位)の範囲、または配列番号2、4、6または8のうち、それぞれアミノ酸19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位の範囲を含む。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識と結合し得るものであることが有利であり得る。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディンポネクチンポリペプチドに対して相互作用する因子)
1つの局面において、本発明は、アディポネクチンと特異的に相互作用する因子を含む、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物を提供する。
1つの実施形態において、アディポネクチンと特異的に相互作用する因子は、代表的に、(a)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(b)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチンと類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(c)における対立遺伝子変異体は、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書に他の場所において記載されるように同定することができ、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記(e)における上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
本発明の因子が特異的に相互作用するポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、ある因子と相互作用することができる限り、その上限の長さは、配列番号2に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される。より好ましくは、本発明の因子は、抗体またはその誘導体(例えば、単鎖抗体)である。従って、本発明の因子は、プローブとして使用することができる。
好ましい実施形態において、本発明の因子が特異的に相互作用するポリペプチドは、配列番号2、4、6または8ののうち、それぞれ19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位)の範囲を含む。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識と結合し得るものであることが有利であり得る。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん(例えば、転移性乳がん)、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチン増強物質)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の予防、処置または予後のための組成物であって血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子、を含む、組成物を提供する。
このような血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、例えば、アディポネクチンそのものであってもよく、あるいは、内因性のアディポネクチン発現を誘導または増強するもの(例えば、アゾリジンジオン)であってもよく、外因的にアディポネクチンの発現を誘導するもの(例えば、アディポネクチンをコードする核酸配列を含む発現ベクター)であってもよい。当業者は、そのような増強因子を、適宜選択することができる。
1つの好ましい実施形態において、そのような血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、チアゾリジンジオン、トログリタゾン、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト、グリメピリド、ピオグリタゾン、アディポネクチンを産生するアデノウイルスなどを含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、上皮性良性腫瘍、非上皮性腫瘍、混合腫瘍、乳腺症、腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(診断法)
1つの局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を診断するための方法を提供する。この方法は、(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該(a)のレベルと該(b)のレベルとを比較する工程を包含し、ここで、該(a)のレベルが該(b)のレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
ここで、血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の方法により測定することができる。そのような測定には、抗原抗体反応などを利用し、蛍光標識、放射能標識などを利用することができる。そのような測定法の例示としては、例えば、ELISA、RIAなどを挙げることができ、インスリンを測定することによっても判定することができる。そのような測定法を実施するアッセイ系は市販されており、そのように市販されているものを利用することができる。
測定された血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の手法に基づいて比較することができる。そのようなデータ処理は、手動で行ってもよく、コンピュータにより行ってもよい。統計学的処理を行う際はコンピュータプログラムを利用することが有利であり得るがそれに限定されない。ここで、正常レベルの血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
1つの実施形態において、診断の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、上皮性良性腫瘍、非上皮性腫瘍、混合腫瘍、乳腺症、腫瘍様病変を含む。理論に束縛されないが、アディポネクチンが乳房の疾患、障害または状態に関連するのは、アディンポネクチンと乳がんとの相関が、本発明の症例対象研究により確認されることにより実証される。乳腺の良性腫瘍や乳腺症は、乳癌の罹患性と相関することが知られているため、これらの増殖性病変もまた、アディンポネクチンと関連するといえる。
特に好ましい実施形態において、正常レベルより低い血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳がんであると診断されるかまたはそうであることが疑われる。
したがって、好ましい実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも低い。
より好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも統計学的に有意に低いことが有利であり得る。
1つの好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
別の好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
ここで、生物学的因子のアッセイを大量に行う技術は、当該分野において周知であり、どのような技術を用いてもよい。例えば、DNAアレイ(チップ)を用いた検出法が挙げられるがそれらに限定されない。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。
(診断キット)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に関連する状態、障害または疾患を診断するためのキットおよびシステムを提供する。
ここで、このキットは、
(A)
(A−1)
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子;および/または
(A−2)
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、因子;ならびに
(B)指示書、
を備え、該指示書は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(c)該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較する工程
を包含する。
ここで、該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
ここで、血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の方法により測定することができる。そのような測定には、抗原抗体反応などを利用し、蛍光標識、放射能標識などを利用することができる。そのような測定法の例示としては、例えば、ELISA、RIAなどを挙げることができ、インスリンを測定することによっても判定することができる。そのような測定法を実施するアッセイ系は市販されており、そのように市販されているものを利用することができる。したがって、そのような測定のための手段が本発明において利用される。そのような測定手段としては、例えば、市販されるキットを利用することができるがそれらに限定されない。
測定された血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の手法に基づいて比較することができる。そのようなデータ処理は、手動で行ってもよく、コンピュータにより行ってもよい。統計学的処理を行う際はコンピュータプログラムを利用することが有利であり得るがそれに限定されない。ここで、正常レベルの血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。したがって、そのような比較のための手段が本発明において利用される。そのような比較手段としては、例えば、コンピュータなどが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、診断の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。したがって、そのような疾患、障害および/または状態に関する情報が本発明のキットに含まれていてもよい。
理論に束縛されないが、アディポネクチンが乳房の疾患、障害または状態に関連するのは、アディンポネクチンと乳がんとの相関が、本発明の症例対象研究により確認されることにより実証される。乳腺の良性腫瘍や乳腺症は、乳癌の罹患性と相関することが知られているため、これらの増殖性病変もまた、アディンポネクチンと関連するといえる。
本発明のキットまたはシステムの特に好ましい実施形態において、正常レベルより低い血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳がんであると診断されるかまたはそうであることが疑われる。
したがって、本発明のキットまたはシステムの好ましい実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも低い。
本発明のキットまたはシステムのより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことが有利であり得る。
1つの好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
別の好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
本発明のキットにおいて提供される指示書は、指示を伝えることができる限り、どのような形態をとってもよく、紙、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、CD−R)、電子メール、ウェブサイトなどであり得る。
(テーラーメイド治療)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のための方法を提供する。
この方法は、(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を施す工程、
を包含する。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較は、本明細書において上述したとおり、当該分野において周知の技術を用いて当業者が容易に実施することができる。
次に、本発明の予防、処置または予後のための方法では、正常と被検体とについて血漿アディポネクチンレベルを比較し対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する。ここでは、乳房に関連する個々の状態によって、その高い低いのレベルは異なるが、乳房に関連する疾患、障害および/または状態の各々について、そのようなレベルを当業者は容易に決定することができる。
本発明の診断方法のより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことによって、その被検体が乳がんであると判断することができる。
このようにして乳房に関する異常、障害または疾患を有すると判定された場合、その対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置が施される。このような処置としては、アディポネクチンを増強させることが所望される場合は、アディポネクチンを増強させる物質を用いることができ、アディポネクチンを減少させることが所望される場合は、アディポネクチンを減少させる物質を用いることができる。そのようなアディポネクチンを増強させる物質としては、本明細書において列挙したものなどが挙げられる。
(テーラーメイド治療提示法)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示する方法を提供する。この方法は、(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する工程、を包含する。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較は、本明細書において上述したとおり、当該分野において周知の技術を用いて当業者が容易に実施することができる。
次に、本発明の予防、処置または予後のための方法では、正常と被検体とについて血漿アディポネクチンレベルを比較し対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する。ここでは、乳房に関連する個々の状態によって、その高い低いのレベルは異なるが、乳房に関連する疾患、障害および/または状態の各々について、そのようなレベルを当業者は容易に決定することができる。
本発明の提示方法のより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことによって、その被検体が乳がんであると判断することができる。
このようにして乳房に関する異常、障害または疾患を有すると判定された場合、その対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置が提示される。このような処置としては、アディポネクチンを増強させることが所望される場合は、アディポネクチンを増強させる物質を用いることができ、アディポネクチンを減少させることが所望される場合は、アディポネクチンを減少させる物質を用いることができる。そのようなアディポネクチンを増強させる物質としては、本明細書において列挙したものなどが挙げられる。
このような提示方法としては、例えば、コンピュータのディスプレイ上への表示、印刷、音声、インターネットでの通知(電子メールを含む)などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、提示される場所には、医師または薬剤師が存在することが有利である。
(テーラーメイド治療システム)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のためのシステムを提供する。このシステムは、(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段、を備える。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較ならびに判定のための手段としては、本明細書中上述したようなものが例示されるがそれに限定されない。比較および判定の好ましい手段としては、コンピュータが挙げられるがそれに限定されない。
本発明のシステムにおいて、対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段としては、判定手段からの信号を受けることができ、それによって処置(投薬)または処方箋の調製あるいは薬剤の処方を行うことができる手段が挙げられるがそれに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明のシステムの各手段(例えば、測定手段、判定手段および提供手段)はネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、WLANなど)で接続されていることが有利であり得る。個人情報が漏洩することが憂慮されることから、これらのネットワークは、セキュリティー保護の処置を講じたものであることが好ましい。
(テーラーメイド治療提示システム)
別の局面において、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示するシステムが本発明において提供される。このシステムは、(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段、を備える。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較ならびに判定のための手段としては、本明細書中上述したようなものが例示されるがそれに限定されない。比較および判定の好ましい手段としては、コンピュータが挙げられるがそれに限定されない。
本発明のシステムにおいて、対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段としては、判定手段からの信号を受けることができ、それによって処置(投薬)または処方箋の調製あるいは薬剤の処方に関する情報の提示をすることができる手段であればどのようなものであっても用いることができる。このような提示手段としては、例えば、コンピュータのディスプレイ上への表示、印刷、音声、インターネットでの通知(電子メールを含む)などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、提示される場所には、医師または薬剤師が存在することが有利である。
好ましい実施形態において、本発明の提示システムの各手段(例えば、測定手段、判定手段および提示手段)はネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、WLANなど)で接続されていることが有利であり得る。個人情報が漏洩することが憂慮されることから、これらのネットワークは、セキュリティー保護の処置を講じたものであることが好ましい。
(スクリーニング)
他の局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子を同定するための方法を提供する。この方法は、(a)血漿アディポネクチンレベルが正常ではない同種の被験体を複数提供する工程;(b)試験因子を該被験体の一部に投与する工程;(c)試験因子を投与されていない該被験体および試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(d)試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルよりも、有意に正常被験体に近似するか否かを判定する工程を包含する。ここで、試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルより有意に正常被験体に近似する場合、該試験因子は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子であることを示す
本発明の同定方法において、被検体の提示、選択は任意に行うことができるが、被検体がヒトである場合、コンセントを事前にもらっておくことが好ましい。被検体としては、血漿アディポネクチンレベルが正常ではないものを提供することができる限りどのようなものでも選択することができる。
本発明の同定方法において、次に、本発明の同定方法で用いられる投与工程は、どのような技術を用いてもよい。好ましくは、経口投与、静脈注射など、通常の治療において使用される形態であることが有利である。
本発明の同定方法において、被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程およびその比較工程もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。そのような技術は、本明細書において詳述したとおりである。
1つの実施形態において、試験因子の投与の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍であり得る。
本発明の同定方法のより好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとの相対的な相違が、統計学的に有意であることによって、試験因子が有効であるとの判断を下すことができる。
このようなスクリーニングまたは同定の方法は、当該分野において周知であり、例えば、そのようなスクリーニングまたは同定は、マイクロタイタープレート、DNAまたはプロテインなどの生体分子アレイまたはチップを用いて行うことができる。スクリーニングの試験因子を含む対象としては、例えば、遺伝子のライブラリー、コンビナトリアルライブラリーで合成した化合物ライブラリーなどが挙げられるがそれらに限定されない。
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、乳房に関連する状態、障害および/または疾患の調節因子を同定する方法を提供する。このような調節因子は、それぞれの疾患の医薬またはそのリード化合物として用いることができる。そのような調節因子ならびにその調節因子を含む医薬およびそれを利用する治療法もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。
したがって、本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
本発明は、他の実施形態において、本発明の化合物に対する調節活性についての有効性のスクリーニングの道具として、コンピュータによる定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationship=QSAR)モデル化技術を使用して得られる化合物を包含する。ここで、コンピューター技術は、いくつかのコンピュータによって作成した基質鋳型、ファーマコフォア、ならびに本発明の活性部位の相同モデルの作製などを包含する。一般に、インビトロで得られたデータから、ある物質に対する相互作用物質の通常の特性基をモデル化することに対する方法は、最近CATALYSTTM ファーマコフォア法(Ekins et al.、Pharmacogenetics,9:477〜489,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,288:21〜29,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,290:429〜438,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,291:424〜433,1999)および比較分子電界分析(comparative molecular field analysis;CoMFA)(Jones et al.、Drug Metabolism & Disposition,24:1〜6,1996)などを使用して示されている。本発明において、コンピュータモデリングは、分子モデル化ソフトウェア(例えば、CATALYSTTMバージョン4(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA)など)を使用して行われ得る。
活性部位に対する化合物のフィッティングは、当該分野で公知の種々のコンピュータモデリング技術のいずれかを使用してで行うことができる。視覚による検査および活性部位に対する化合物のマニュアルによる操作は、QUANTA(Molecular Simulations,Burlington,MA,1992)、SYBYL(Molecular Modeling Software,Tripos Associates,Inc.,St.Louis,MO,1992)、AMBER(Weiner et al.、J.Am.Chem.Soc.,106:765−784,1984)、CHARMM(Brooks et al.、J.Comp.Chem.,4:187〜217,1983)などのようなプログラムを使用して行うことができる。これに加え、CHARMM、AMBERなどのような標準的な力の場を使用してエネルギーの最小化を行うこともできる。他のさらに特殊化されたコンピュータモデリングは、GRID(Goodford et al.、J.Med.Chem.,28:849〜857,1985)、MCSS(Miranker and Karplus,Function and Genetics,11:29〜34,1991)、AUTODOCK(Goodsell and Olsen,Proteins:S tructure,Function and Genetics,8:195〜202,1990)、DOCK(Kuntz et al.、J.Mol.Biol.,161:269〜288,(1982))などを含む。さらなる構造の化合物は、空白の活性部位、既知の低分子化合物における活性部位などに、LUDI(Bohm,J.Comp.Aid.Molec.Design,6:61〜78,1992)、LEGEND(Nishibata and Itai,Tetrahedron,47:8985,1991)、LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MO)などのようなコンピュータープログラムを使用して新規に構築することもできる。このようなモデリングは、当該分野において周知慣用されており、当業者は、本明細書の開示に従って、適宜本発明の範囲に入る化合物を設計することができる。
別の局面において、本発明は、本発明の上記同定方法によって同定される、調節因子を提供する。
別の局面において、本発明は、本発明の調節因子を含む、薬学的組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を処置または予防する方法を提供する。ここで、この方法は、本発明の調節因子を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、この乳房に関連する状態、障害または疾患は、同定方法において有効であると判断された異常、障害または疾患であり、好ましくは乳がんを包含するがそれに限定されない。
乳房に関連する疾患、障害および状態は、特に早期の診断が困難で、その治療についても根本的な治療が困難といわれてきた。しかし、本発明の上述のような効果によって、従来では不可能とされていた早期診断が可能となり、治療にも応用することができることが明らかとなった。したがって、本発明は、従来の診断薬でも医薬でも達成不可能であった有用性を有するといえる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
以下の実施例では、対象となる患者からはすべて事前に告知しコンセントもらった上で実験を行った。動物の取り扱いは、大阪大学において規定される基準を遵守した。
(実施例1)
(方法)
(ケースおよびコントロール)
適格なケースは、2000年3月から2001年3月までの期間に、大阪大学病院において乳房切除術または乳がん保存手術で継続的に処置された、102人の原発性乳がん患者であった。アディポネクチンアッセイのための血液サンプルを、手術の直前に得た。乳がんの組織学的診断を、各ケースにおいて確認した(93個の浸潤性腺管がん、2個の非浸潤性腺管がん、および他の7つの型)。大阪の関連する研究所における乳がんスクリーニングプログラムに参加した、100人の健常な女性を、2001年6月から2001年12月までの期間、本研究におけるコントロールとして継続的に募集した。すべてのコントロールが乳がんに罹患していないことを、身体的検査およびマンモグラフィによって確認した。本研究に関して、文書でのインフォームドコンセントを、すべての参加者から得た。
(血清アディポネクチンおよび血清エストロンの分析)
すべての血液サンプルを、早朝の空腹時に入手し、そしてその血清を、遠心分離によってすぐに分離し、使用するまで−20℃にて貯蔵した。血清アディポネクチンレベルを、以前に記載されたようにELISAにより測定し(AritaYら、Biochem Biophys Res Commun 1999;257:79〜83)、そして血清エストロンレベルを、DiagnosticSystems Laboratories(DSL−8700,Webster,Texas)により供給されるキットを使用して、ラジオイムノアッセイにより測定した。
(エストロゲンレセプターアッセイ)
乳がんにおけるエストロゲンレセプター(ER)レベルを、Abbott Research Laboratories(Chicago,IL)により供給されるキットを使用して、酵素免疫法により測定した。ERに関するカットオフ値を、製造業者の指示に従って、13fmol/タンパク質mgとして規定した。
(統計学的解析)
血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性を、ロジスティック回帰法を使用して決定し、ORおよび95%CIを得た。このORおよび95%CIを、古典的な疫学的危険因子(例えば、年齢、家族歴、初潮年齢、初産年齢または未経産、およびBMI)について調整した。この解析を閉経後の女性の間で行った場合、上記の危険因子に加えて、閉経年齢もまた、調整した。これらの危険因子を、以下の通りに分類した:一親等の家族歴(はい、または、いいえ)、初潮年齢(12歳以下、13歳〜14歳、および15歳以上)、経産(25歳以下で初産、26〜29歳で初産、30歳以上で初産、または未経産)、BMI(20.935kg/m2未満、20.935〜<23.0kg/m2、および23.0kg/m2以上)、および閉経年齢(48歳以下、49歳〜50歳、および51歳以上)。血清アディポネクチンレベルと腫瘍の臨床病理学的パラメータとの間の関連性を、χ2−検定を使用して評価した。種々のグループ間での血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの比較を、スチューデントt−検定により行った。コントロールにおける血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間の相関性を、単一曲線あてはめ試験(simple curve fit test)により分析した。P値<0.05を有意であるとみなした。
(結果)
(血清アディポネクチンレベルと乳がんリスク)
コントロールを、血清アディポネクチンレベルに従って3つのグループ(低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(<10.6μg/ml))に分割し、そしてケースもまた、同じ基準を使用して3つのグループに分割した。種々の疫学的危険因子(BMIを含む)について調整した後の、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連を、表1に示す。血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.005)増加したリスクを示した(オッズ比(OR)4.27、95%信頼区間(CI)1.81〜10.08)。中三分位範囲の女性もまた、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて増加したリスクと有意に(P<0.01)関連した(OR 3.03、95%CI1.31〜7.02)。閉経状態に従う部分集合分析において、中三分位範囲および低三分位範囲の閉経前女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんリスクの増加に向かって、それぞれ有意な(P<0.05)傾向および有意でない(P=0.068)傾向を示し、そして低三分位範囲の閉経後女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.01)増加したリスクを示した。
【表1】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。c)年齢、家族歴、初潮年齢、経産、BMI、および閉経者に関する閉経年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。d)括弧内の数字は、パーセンテージである。e)P<0.05。f)P<0.01。g)P<0.005。h)P<0.10。
血清アディポネクチンレベルと、ER陽性乳がんリスクまたはER陰性乳がんリスクとの間の関連を、表2に示す。低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して有意に増加したリスクを、ER陽性ケース(OR 3.62、95% CI 1.22〜10.70)およびER陰性ケース(OR 4.96、95% CI 1.52〜16.18)の両方で示した。
【表2】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。c)年齢、家族歴、初潮年齢、経産、およびBMIについて調整した、オッズ比および95%信頼区間。d)括弧内の数字は、パーセンテージである。e)P<0.05。f)P<0.10。g)P<0.01。
(血清アディポネクチンレベルおよび腫瘍の臨床病理学的特徴)
低血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍の臨床病理的特徴を、高血清アディポネクチンレベルおよび中血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍の臨床病理的特徴と比較した(表3)。大きな腫瘍(>2cm)の頻度は、高三分位範囲および中三分位範囲の女性(41%)よりも低三分位範囲の女性(70%)において有意に(P<0.005)高かった。そして高組織学的グレード(2+3)の腫瘍の頻度は、高三分位範囲および中三分位範囲の女性において(63%)よりも低三分位範囲の女性において(84%)、有意に(P<0.05)高かった。他のパラメータ(例えば、リンパ節の状態、およびERの状態)は、低三分位範囲の女性と高三分位範囲の女性および中三分位範囲の女性との間で、有意には異ならなかった。
【表3】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)括弧内の数字は、パーセンテージである。
(BMIと血清アディポネクチンレベルおよび血清エストロンレベルとの間の相関性)
BMIと血清アディポネクチンレベルおよび血清エストロンレベルとの間の相関性を、閉経後コントロールにおいて研究した。高BMI三分位範囲の女性における血清アディポネクチンレベルは、低BMI三分位範囲の女性においてよりも有意に(P<0.001)低かった(表4)。対照的に、高BMI三分位範囲の女性における血清エストロンレベルは、低BMI三分位範囲の女性においてよりも有意に(P<0.005)よりも有意に高かった。血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間には、単一曲線あてはめ試験(simple curve fit test)によって有意な相関性は観察されなかった(r0.13、P=0.40、図1)。
【表4】
a)低(<20.935kg/m2)、中(20.935≦,<23.0kg/m2)、および高(≧23.0kg/m2)。b)低三分位範囲と比較した場合に、P<0.001。c)低三分位範囲と比較した場合に、P<0.005。
(考察)
タモキシフェンを用いた化学予防試験(NSABP P1)における最近の成功によって、定着した乳がんの処置よりも乳がんの予防を大いに重視する場合の、新たな門戸が開かれたように思われる(Fisher,B.ら、J NatlCancer Inst 1998;90:1371〜1388)。予防のためにタモキシフェンを使用する場合、乳がんのリスク評価が最も重要な段階である。このリスク評価のために、Gailモデルが通常使用される(Gail,M.H.ら、J Natl Cancer Inst 1999;91:1829〜46)が、その正確性は満足のいくものでないので、より効率的に化学予防を実行するためには、乳がんリスクに関する新規な予測因子を発見する必要がある。本出願において、本発明者らは、閉経前の女性および閉経後の女性の両方において、血清アディポネクチンレベルが乳がんリスクと関連すること、ならびに低血清アディポネクチンレベルが、古典的な疫学的危険因子とは独立した重要な危険因子として役立ち得ることを、示すことができた。これらの結果は、血清アディポネクチンレベルを古典的な疫学的危険因子と併せることによって、乳がんのリスク評価をより正確に行い得る可能性を示唆するように思われる。タモキシフェンは、ER陽性乳がんの発生数を減少させる際に有効であるが、ER陰性乳がんの発生数を減少させる際には有効ではないことが、NSABP P−1試験により示された(Fisherら、上記)ので、タモキシフェンを用いる化学予防をより効率的に実行するためには、ER陽性乳がんについてのリスクを予測することもまた重要である。Gailモデルにより、すべての乳がんのリスクを予測し得るが、ER陽性乳がんに特異的なリスクは予測し得ない。同様に、本出願において、血清アディポネクチンレベルは、ER陽性乳がんリスクおよびER陰性乳がんリスクの両方と関連することが示された。
アディポネクチンが乳がんリスクを調節する機構は、現在未知である。しかし、血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間に相関性が欠如していることは、アディポネクチンが、閉経後の女性における血清エストロンレベルに影響を与えることを介して乳がんリスクを調節することはありそうにないことを、示すように思われる。アディポネクチンは、グルコース代謝において重要な役割を果す(Yamauchi Tら(前出)、Fruebis Jら(前出)、Berg AHら(前出)、Maeda Nら(前出))。血清アディポネクチンレベルの減少は、グルコースレベルの増加と関連があることが示されている(Hotta Kら(前出))。高グルコースレベルは、培養した乳がん細胞の増殖を刺激する(Okumura Mら、Biochim Biophys Acta.2002;1592:107〜16)ので、これらの知見をまとめると、アディポネクチンは、グルコース代謝に影響を与えることを介して、乳がんリスクを調節することが、推測される。さらに、アディポネクチンは、血管平滑筋細胞の増殖に対する直接的阻害効果を有し(Yokota Tら(前出))、そして骨髄性単球前駆体の増殖に対する直接的阻害効果を有する(YokotaTら(前出))。従って、アディポネクチンは、乳房上皮細胞の増殖を阻害し得、その結果、低血清アディポネクチンレベルは、乳房上皮細胞の増殖の増加と関連し、乳がんについて増加したリスクを生じることもまた、推測される。興味深いことに、低血清アディポネクチンレベルは、大きな腫瘍サイズ(>2cm)および高組織学的グレード(2+3)と有意に関連があった。このことは、高増殖活性を有する腫瘍は、低アディポネクチン条件下で発達する可能性が高いことを示す。肥満は、予後不良と関連があることが、十分に確立されている(Daling JR、Cancer 2001;92:720〜9;PetrelliJM、Cancer Causes Control 2002;13:323〜52)。この関連は、肥満した乳がん患者において観察される低血清アディポネクチンレベルによって、部分的に説明され得る。
レプチンは、脂肪組織から主に分泌されるペプチドホルモンであるが、アディポネクチンとは異なり、血清レプチンレベルは、BMIと比例して増加する(McGregor GPら、Endocrinology 1996;137:1501〜4)。最近、レプチンは、正常な乳房上皮細胞および乳がん細胞の増殖をインビトロで刺激することが、示された(Okumura Mら(前出);Dieudonne MNら、Biochem Biophys Res Commun 2002;293:622〜8;Hu Xら、J Natl Cancer Inst 2002;94:1704〜11)。Tessitoreらは、乳がん患者における血清レプチンレベルが、健常コントロールにおいてよりも有意に高いことを報告した(Tessitore Lら、Int J Mol Med 2000;5:421〜6)。このことは、血清レプチンレベルが、乳がんについての危険因子として役立ち得ることを示す。しかし、Mantzorosらは、このような関連を示すことができなかった(Mantzoros CSら、Int J Cancer 1999;80:523〜6)。さらに、Petridouらは、血清レプチンレベルが、乳がんリスクと逆に関連したことを報告した(Petridoue Eら、Cancer Causes Control 2000;11:383〜8)。従って、血清レプチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性は、いまなお議論の余地があり、依然として立証されるべき状態のままである。
結論として、本発明者らは、低血清アディポネクチンレベルと乳がんについて増加したリスクとの間の有意な関連を示した。さらに、低血清アディポネクチンレベルを有する女性において生じる乳がんが、大きさ腫瘍サイズおよび高組織学的グレードにより示される、急速進行性表現型を示す可能性が高い。これらの結果は、血清アディポネクチンレベルが、乳がんについての新規な危険因子であり得る可能性を示唆すると思われ、そして肥満と乳がんリスクとの間の関連を理解することに関する新規な洞察を提供するように思われる。
(実施例2:増強剤による効果)
次に、血清アディポネクチン効果を増強させることによる効果を確認した。血清アディポネクチン濃度を測定し、上記の基準で低値であった症例に対し、チアゾリジンジオンを含むPPARgアゴニスト、Adiponectinプロモーターエンハンサーという血清アディポネクチン濃度を上昇させる薬剤、および受容体アゴニストを投与する処置を行ったところ、乳がんの改善が確認された。
(実施例3:血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニング)
次に、プロモーターレベルで血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニングを行った。アディポネクチンプロモーターにレポーター遺伝子を接続し、これを脂肪細胞にトランスフェクションして、薬剤添加によりレポーター活性が上昇するものを選ぶ。このような薬剤は、血清アディポネクチンレベルの調節剤として有用である。
(実施例4:他の血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニング)
次に、個体レベルで血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニングを行った。候補化合物をマウスに投与し、実際血清アディポネクチン濃度が上昇するものを選ぶ。このような薬剤は、血清アディポネクチンレベルの調節剤として有用である。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【発明の効果】
本発明により、乳房疾患の効率的な診断、予防、処置および予後のための組成物、方法、システム、キットが提供される。
(配列表の説明)
配列番号1:ヒト アディポネクチン 核酸配列
配列番号2:ヒト アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号3:サル アディポネクチン 核酸配列
配列番号4:サル アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号5:マウス アディポネクチン 核酸配列
配列番号6:マウス アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号7:ラット アディポネクチン 核酸配列
配列番号8:ラット アディポネクチン アミノ酸配列
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、閉経後コントロールにおける、血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの関連(r 0.13,P=0.40)を示す。
本発明は、ホルモンの分野に関する。より詳細には本発明は、アディポネクチンの新規用途に関する。
【従来の技術】
乳がんは、日本、米国、欧州など世界中で、女性にとって深刻な問題となってきている。その疾患の検出および処置において、進歩が成されてきたが、乳がんは、女性のがん関係の死因では二位または三位と、上位にある。
現在のところ、乳がんの予防または治療のための方法として有効なものはほとんど存在せず、診断のために有効なマーカーも報告されていない。乳がんの処置は、現在のところ、早期の診断(慣用的な乳房のスクリーニング手順を通じて)および積極的な処置の組み合わせに依存し、その処置は、手術、放射線治療、化学療法、およびホルモン療法のような、1以上の種々の処置を含み得る。特定の乳がんの処置の過程は、しばしば、特異的な腫瘍マーカーの分析を含む、種々の予後のパラメーターに基づいて選択される。
腫瘍マーカーの分析について記載する非特許文献1では、確立されたマーカーの分析が記載されているが、この分析の解釈は難しく、乳がん患者において観察される高い死亡率は、その疾患の処置、診断、および予防において、改善が必要とされることを示している。
アディポネクチンは、脂肪組織から分泌されるペプチドホルモンであり、種々の細胞型の増殖とインスリン感受性とに影響する。脂肪と乳がんリスクとの関連が十分に確立されているので、アディポネクチンは、乳がんの発生においてある役割を果たす可能性がある。従って、本出願において、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連を調査した。
従って、当該分野において、乳がんの治療および診断の改善された方法の必要性が存在する。
【非特許文献1】
Porter−JordanおよびLippman、Breast Cancer 8:73−100(1994)
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明では、乳がんおよびその関連疾患の診断、予防、治療および予後に有効な薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明者らが、予想外に、アディポネクチンが乳がんのような乳房の疾患、障害または状態と有意に相関し、診断、予防、治療および予後に有効であることを発見したことによって解決された。本発明は、これらの必要性を満たし、さらに他の関係する利点を提供する。
(本発明の要旨)
(方法)
102人の乳がん患者(ケース)および100人の健常な女性(コントロール)に対して、ケース−コントロール研究を行った。種々の古典的危険因子(家族歴、初潮年齢、経産、ボディマス指数など)について調整した後に、ケースおよびコントロールの血清アディポネクチンレベルを、彼女達の乳がんリスクに関して試験した。さらに、その血清アディポネクチンレベルと乳がんの種々の臨床病理学的特徴との間の関連性を、研究した。
(結果)
血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.005)増加したリスクと関連があった(OR=4.27、95% CI=1.81〜10.08)。このような関連は、閉経前の女性において(OR=3.81、95% CI=0.90〜16.07)と閉経後の女性において(OR=5.14、95% CI=1.50〜17.58)の両方にて観察された。大きな(>2cm)腫瘍の頻度および高組織学的グレード(2+3)の腫瘍の頻度が、血清アディポネクチンレベルが高三分位範囲および中三分位範囲にある乳がん患者においてよりも、血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲にある乳がん患者において、有意に(それぞれ、P<0.005およびP<0.05)高かった。
(考察)
これらの結果は、低血清アディポネクチンレベルが、乳がんについて増加したリスクと有意に関連すること、および低血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍が、生物学的に進行した表現型を示す可能性が高いこと、を示唆する。肥満と乳がんリスクとの間の関係は、アディポネクチンにより部分的に説明され得る。
ボディマス指数(BMI)と乳がんリスクとの関連が、十分に確立されている(Morimoto LMら、Cancer Causes Control 2002;13:741〜51;Hirose Kら、Cancer Causes Control 2001;12:349〜58;Tung HTら、Jpn J Clin Oncol 1999;29:137〜46)。エストロゲンは、閉経後の女性において、副腎に由来するアンドロゲンの芳香族化を介して末梢脂肪組織中で大部分が合成される(Edman CDら、Am J Obstet Gynecol 1978;130:439〜47)ので、高BMIの女性は、増加したエストロゲンレベルを有する可能性があり、それゆえ増加した乳がんリスクを有する可能性があると、推測される。閉経後の女性における、BMIと血清エストロゲンレベルとの関連ならびに血清エストロゲンレベルと乳がんリスクとの関連を示すいくつかの研究によって、この推測は支持される(Verkasalo PKら、Cancer Causes Control 2001;12:47〜59;Hankinson SEら、J Natl Cancer Inst 1998;90:1292〜9)。しかし、BMIが、血清エストロゲンレベルとは独立した、乳がんについての危険因子として役立つという事実(Verkasalo PKら(前出);Hankinson SEら(前出))は、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強は、閉経後の女性における乳がんリスクにBMIが影響を与える唯一の機構ではないことを、示す。さらに、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強は、閉経前の女性におけるBMIと乳がんリスクとの間の関連を説明しそうにない。なぜなら、エストロゲンは、卵巣において大部分が生成され、そして実際には、閉経後の女性において、BMIと血清エストロゲンレベルとの間に有意な関連は存在しないからである(Verkasalo PKら(前出))。これらの結果は、末梢脂肪組織におけるエストロゲン生合成の増強ではない、BMIが乳がんリスクに影響を与える他の機構の存在を、強く示す。
脂肪組織は、脂肪貯蔵組織であるだけでなく、種々のサイトカインを生成してアディポネクチンを誘導する内分泌器官でもあることが、最近の研究により開示されている。アディポネクチンは、脂肪組織だけから分泌されるペプチドホルモンであり、コレクチンファミリーに属する(Maeda Kら、BiochemBiophys Res Commun 1996;221:286〜9;Nakano Yら、J Biochem(Tokyo)1996;120:803〜12)。このペプチドは、血管平滑筋および内皮細胞の増殖の阻害を介して、アテローム性動脈硬化症の病因において予防的役割を果すこと(YokotaTら、Blood 2000;96:1723〜32;Arita Yら、Circulation 2002;105:2893〜8)、そして種々の間質細胞および上皮細胞において、グルコースおよび脂肪酸の代謝ならびにインスリン感受性の調節を介して、糖尿病の病因において予防的役割を果すことが、示されている(Yamauchi Tら、Nat Med 2001;7:941〜6;Fruebis Jら、Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:2005〜10;Berg AHら、Nat Med 2001;7:947〜53;Maeda Nら、Nat Med 2002;8:731〜7)。
乳房上皮細胞および乳がん細胞に対するアディポネクチンの効果は未だ研究されていないが、アディポネクチンは、これらの細胞の増殖および分化に影響を与える可能性がある。興味深いことに、血清アディポネクチンレベルは、MBIと逆に関連することが、報告されている(Arita Yら、Biochem Biophys Res Commun 1999;257:79〜83;Hotta Kら、Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000;20:1595〜9;Yang WSら、Obes Res 2002;10:1104〜10)。この関連性は、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連の可能性を示唆するように思われる。本発明者らが知る限り、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性を調査した報告は、現在までに入手可能ではない。従って、本出願において、本発明者らは、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連性を、ケース−コントロール研究によって研究した。血清アディポネクチンレベルと乳がんの臨床病理学的特徴との間の関連性もまた、研究した。
従って、本発明は、以下を提供する。
(1) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
(2) 上記アディポネクチン、またはそのフラグメントもし、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;くは改変体は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、項目1に記載の組成物。
(3) 上記アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目1に記載の組成物。
(4) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目1に記載の組成物。
(5) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
(6) 上記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、項目1に記載の組成物。
(7) 上記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する、項目1に記載の組成物。
(8) 上記ポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲を含む、項目5に記載の組成物。
(9) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子、を含む、組成物。
(10) 上記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目9に記載の組成物。
(11) 少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(12) 上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対して相補的な配列またはそれに対して少なくとも70%の同一性を有する配列を有する核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(13) 上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子である、項目9に記載の組成物。
(14) プライマーとして使用される、項目9に記載の組成物。
(15) プローブとして使用される、項目9に記載の組成物。
(16) 上記ポリヌクレオチドまたは上記ポリペプチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲または配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目9に記載の組成物。
(17) 上記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、項目9に記載の組成物。
(18) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目9に記載の組成物。
(19) 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子、
を含む、組成物。
(20) 上記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目19に記載の組成物。
(21) 抗体またはその誘導体である、項目19に記載の組成物。
(22) プローブとして使用される、項目19に記載の組成物。
(23) 上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、項目19に記載の組成物。
(24) 上記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、項目19に記載の組成物。
(25) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目19に記載の組成物。
(26) 乳房の疾患、障害または状態の予防、処置または予後のための組成物であって
血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子、
を含む、組成物。
(27) 上記血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト、グリメピリドおよびアディポネクチンを産生するアデノウイルスからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、項目26に記載の組成物。
(28) 上記PPARγアゴニストは、チアゾリジンジオンを含む、項目27に記載の組成物。
(29) 上記チアゾリジンジオンは、トログリタゾンまたはピオグリタゾンを含む、項目28に記載の組成物。
(30) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目26に記載の組成物。
(31) 乳房に関連する状態、障害または疾患を診断するための方法であって、上記方法は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記(a)のレベルと上記(b)のレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、上記(a)のレベルが上記(b)のレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、方法。
(32) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目31に記載の方法。
(33) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、項目31に記載の方法。
(34) 上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも少なくとも統計学的に有意に低いことを特徴とする、項目31に記載の方法。
(35) 上記測定工程において、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子
を使用する、項目31に記載の方法。
(36) 上記因子は抗体である、項目35に記載の方法。
(37) 上記因子は標識されているかまたは標識と結合し得る、項目35に記載の方法。
(38) 上記測定工程において、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子が使用される、項目31に記載の方法。
(39) 上記因子はプライマーとして使用される、項目38に記載の方法。
(40) 上記因子はプローブとして使用される、項目38に記載の方法。
(41) 乳房の疾患、障害または状態に関連する状態、障害または疾患を診断するためのキットであって、上記キットは、
(A)
(A−1)
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子;および/または
(A−2)
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、因子;ならびに
(B)指示書、
を備え、上記指示書は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを上記(A−1)因子および/または上記(A−2)因子を用いて測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを上記(A−1)因子および/または上記(A−2)因子を用いて測定する工程;
(c)上記診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、上記診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、
キット。
(42) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、項目41に記載のキット。
(43) 上記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、項目39に記載のキット。
(44) 上記(a)のレベルは、上記(b)のレベルよりも統計学的に有意に低いことを特徴とする、項目43に記載のキット。
(45) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のための方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を施す工程、
を包含する、方法。
(46) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示する方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する工程、
を包含する、方法。
(47) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のためのシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段、
を備える、システム。
(48) 上記測定手段、上記判定手段および上記提供手段は、ネットワークによって接続される、項目47に記載のシステム。
(49) 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示するシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、上記対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが上記正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、上記被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)上記対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段、
を備える、システム。
(50) 上記測定手段、上記判定手段および上記提供手段は、ネットワークによって接続される、項目49に記載のシステム。
(51) 乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子を同定するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)血漿アディポネクチンレベルが正常ではない同種の被験体を複数提供する工程;
(b)試験因子を上記被験体の一部に投与する工程;
(c)試験因子を投与されていない上記被験体および試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(d)試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルよりも、有意に正常被験体に近似するか否かを判定する工程を包含し、
ここで、試験因子を投与された上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない上記被験体中の血漿アディポネクチンレベルより有意に正常被験体に近似する場合、上記試験因子は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子であることを示す、方法。
(52) 上記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、項目51に記載の方法。
(53) 項目51に記載の方法によって同定される、調節因子。
(54) 項目53に記載の調節因子を含む、薬学的組成物。
(55) 乳房に関連する状態、障害または疾患を処置または予防する方法であって、上記方法は、項目54に記載の薬学的組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(56) 上記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、項目55に記載の方法。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(定義)
本明細書において「アディポネクチン」(adiponectin)とは、脂肪細胞で作られる分泌タンパク質として同定されたタンパク質またはそれをコードする遺伝子をいう。アディポネクチン は、Acrp30 (脂肪細胞補体関連30kDaタンパク質=adipocyte complement−related protein of 30kDa)、ゼラチン結合タンパク質(Gelatin−binding protein)、Adipose most abundunt gene transcript 1(apM−1)等の別名を有し、遺伝子名はAPM1、ACRP30、GBP28として知られている。そのmRNAは脂肪細胞分化の過程で100倍以上誘導される。アディポネクチンはまた、豊富に存在する血清タンパク質で、結果としてエネルギー・恒常性、肥満に影響を与えます。現在までにインスリンの効果を高めて血糖値を下げる働きがあることが知られている。アディポネクチンは、TNFαと構造的に非常に似ており、ヒト、マウスなどの動物の様々な肥満形態において調節不能になることから、エネルギー・恒常性に影響を与える重要な分子として研究が進められている。
同定されたアディポネクチンの塩基配列およびアミノ酸配列としては、代表的には、ヒト(配列番号1および2)、サル(配列番号3および4)、マウス(配列番号5および6)、ラット(配列番号7および8)などが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書においてアディポネクチンをコードするポリヌクレオチドは、代表的に、
(a)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
本明細書において「アディポネクチン」または「アディポネクチンポリペプチド」は、
(a)少なくとも配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質分子またはその改変体;
(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
本発明では、アディポネクチンをコードする核酸分子およびアディポネクチンポリペプチドのフラグメントおよび改変体もまた、有用であることが理解される。
アディポネクチンはまた、ある実施形態において、グリコシル化されていてもよいが、グリコシル化されていることは必須ではない。
アディポネクチンは、1996年、前田らによりヒト脂肪組織から新たに分離された動物脂肪組織特異的タンパク質であり、そのアミノ酸配列も明らかにされている。(Maeda K,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.221:286(1996))。これとほぼ同時期に他の研究グループにより、マウス3T3−F442A細胞からクローニングされたACRP30と呼ばれる物質(Scherer PE et al.J.Biol.Chem.270:26746〜26749(1995))はアディポネクチンと同一物質と考えられている。このアディポネクチンは、脂肪組織のみならず、血中にも多量存在しており、正常ヒト血中には5〜10μg/mlという高濃度で存在している(Arita Y et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.257:79〜83(1999))。また、このアディポネクチンは肥満が進むにつれてパラドキシカルに血中濃度が低下する。
このアディポネクチンの作用については、これまでにいくつかの研究グループにより血管平滑筋の増殖ならびに細胞遊走の抑制、抗動脈硬化作用、単球、マクロファージの活性化抑制、抗炎症作用、肝星細胞の活性化の抑制、細胞外マトリックス産生の抑制、肝星細胞増殖の抑制、肝細胞増殖促進などが判明しているが、その作用の全容については未だ明らかではない。本発明らは、このアディポネクチンの作用について、種々検討を重ねるうち、乳房疾患に関連していることが本発明において初めて明らかになった。しかも、アディポネクチンの体内量と乳房疾患との関連は、被検体の肥満度にかかわらず有意な相関が見出されたことから、乳房疾患の診断の指標、治療などへの適用が可能であるという多大な有用性を有する。
本発明において用いられるヒトアディポネクチンは、ヒト脂肪組織特異的なコラーゲン様因子である。その遺伝子は、244のアミノ酸より構成されるタンパク質であることが知られている。ヒトアディポネクチンタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1および2に示されている。ヒトアディポネクチンの生理作用を検討する中で本発明者らは、すでに、ヒトアディポネクチンが単球系の細胞およびB細胞系の細胞の増殖を抑制する現象を見出し、それら血球系細胞の増殖抑制剤として有効である事を示した。上述したように、炎症時には単球、マクロファージ、好中球等の白血球系細胞が増殖し、かつ集積する現象が見られる。アディポネクチンにより増殖が抑制される単球は、そのような細胞性の生体防御反応において重要な役割を担っている細胞であり、成熟すると貪食を担うマクロファージとなり、一方ではインターロイキンー1、腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインを産生する。炎症反応の過程おいて、単球はそのように重要性な働きをしており、アディポネクチンは単球の増殖を抑制して集積を防ぐ事により、抗炎症剤として用いる事ができる。
アディポネクチンはヒトを含む動物の脂肪組織で産生され、血中にも多量存在するタンパク質である。ヒトアディポネクチンについては、これをコードするcDNAから遺伝子組換え法により高純度に精製されたものが得られている(Arita,Y.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.257,79〜83(1999))。マウス由来のACRP30も、前述のとおり組み換え遺伝子の手技により高純度のものが得られており、市場で入手可能である。本発明の組成物が投与されるべき患者は、乳房疾患(例えば、乳がん)に罹患した患者あるいはその危険性のある患者である。そして、これらの患者に対して本発明の組成物を投与することにより、その悪化を抑えるか、または改善もしくは完治、あるいは予防することができ、あるいは、正常乳房の再生が促進される。
本明細書において「アディポネクチンの生物学的活性」は、アディポネクチンが有する少なくとも1つの機能を包含し、例えば、血管内皮機能改善作用、血管平滑筋増殖抑制作用、マクロファージ泡沫化抑制作用、炎症性サイトカイン分泌抑制作用、筋肉細胞取り込み促進作用が挙げられるがそれらに限定されない。そのような生物学的活性は、血管平滑筋細胞への[3H]チミジン取り込み、マクロファージ培養上清TNFα分泌、筋肉細胞[3H]デオキシグルコース取り込みなどによって測定することができる。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。アディポネクチンの遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態のアディポネクチン遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。アディポネクチンなどの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。このようなポリヌクレオチド形態のアディポネクチン遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、アディポネクチン遺伝子には、アディポネクチンのスプライス変異体もまた包含され得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、アディポネクチン遺伝子というときは、通常、アディポネクチンの構造遺伝子ならびにアディポネクチンのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含する。本発明では、構造遺伝子のほか、転写および/または翻訳などの調節配列もまた、乳房疾患の診断、治療、予防、予後などに有用であることが理解される。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
本明細書において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、マウスアディポネクチン遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウスアディポネクチン遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものをいう。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において用いられる用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
本明細書中で使用される「モノクローナル抗体」は、同質な抗体集団を有する抗体組成物をいう。この用語は、それが作製される様式によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子ならびにFab分子、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、およびもとのモノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当該分野で公知であり、そして以下でより十分に記載される。
モノクローナル抗体は、当該分野で周知の標準的な技術(例えば、KohlerおよびMilstein,Nature(1975)256:495)またはその改変(例えば、Buckら(1982)In Vitro 18:377)を使用して調製される。代表的には、マウスまたはラットを、タンパク質キャリアに結合したタンパク質で免疫化し、追加免疫し、そして脾臓(および必要に応じていくつかの大きなリンパ節)を取り出し、そして単一細胞を解離する。必要に応じて、この脾臓細胞は、非特異的接着細胞の除去後、抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することにより、スクリーニングされ得る。抗原に特異的なイムノグロブリンを発現するB細胞がプレートに結合し、そして懸濁液の残渣でもリンス除去されない。次いで、得られたB細胞(すなわちすべての剥離した脾臓細胞)をミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマを得、このハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体を産生させる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。
本明細書において「単鎖抗体」とは、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じたものをいう。
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、アディポネクチン遺伝子またはその産物あるいは本発明の因子と同様の機能を有する限り、それぞれアディポネクチン遺伝子またはその産物あるいは本発明の因子としてそのような複合分子も使用することができる。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチド(例えば、アディポネクチン)の発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチド(例えば、アディポネクチン)の発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。このような遺伝子または遺伝子産物(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の発現の増加または減少は、本発明の治療形態、予後形態または予防形態において有用であり得る。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。したがって、本発明において、ある実施形態では、罹患した箇所に局所的にアディポネクチンを特異的に発現させてもよい。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、2つの因子が相互作用する(例えば、アディポネクチンとその受容体とが結合する)場合、その生物学的活性は、アディポネクチンとその受容体との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化例えば、血管内皮機能改善作用、血管平滑筋増殖抑制作用、マクロファージ泡沫化抑制作用、炎症性サイトカイン分泌抑制作用、筋肉細胞取り込み促進作用が挙げられるがそれらに限定されない。そのような生物学的活性は、血管平滑筋細胞への[3H]チミジン取り込み、マクロファージ培養上清TNFα分泌、筋肉細胞[3H]デオキシグルコース取り込みなどによって測定することができる。また、例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
本明細書において「アンチセンス(活性)」とは、標的遺伝子の発現を特異的に抑制または低減することができる活性をいう。アンチセンス活性は、通常、目的とする遺伝子(例えば、アディポネクチンなど)の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列によって達成される。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。そのような核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、もっとも好ましくは95%相同な核酸配列が含まれる。そのようなアンチセンス活性は、目的とする遺伝子の核酸配列の5’末端の配列に対して相補的であることが好ましい。そのようなアンチセンスの核酸配列には、上述の配列に対して、1つまたは数個あるいは1つ以上のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有するものもまた含まれる。
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、より好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、DevelopmentalBiology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
アディポネクチンタンパク質をコードする天然の核酸は、配列番号1、3、5および7の核酸配列の一部を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいアディポネクチンの核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1、3、5または7に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアディポネクチンには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschulet al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267−2268参照のこと)。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
本明細書において、「エピトープ」とは、構造の明らかな抗原決定基をいう。従って、エピトープには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは線状であってもコンフォメーション形態であってもよい。
(遺伝子の改変)
あるタンパク質分子(例えば、アディポネクチン)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in MolecularBiology,Greene Pub.AssociatESand Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associat ES and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: ACompendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子工学)
本発明において用いられるアディポネクチンならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
本明細書において、レトロウイルスの感染方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology 前出(特にUnits 9.9−9.14)などに記載されるように、当該分野において周知であり、例えば、トリプシナイズして胚性幹細胞を単一細胞懸濁物(single−cell suspension)にした後、ウイルス産生細胞(virus−producing cells)(パッケージング細胞株=packaging cell lines)の培養上清と一緒に 1−2 時間共培養(co−culture)することにより、十分量の感染細胞を得ることができる。
本明細書において使用されるゲノムまたは遺伝子座などを除去する方法において用いられる、Cre酵素の一過的発現、染色体上でのDNAマッピングなどは、細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ「FISH実験プロトコール ヒト・ゲノム解析から染色体・遺伝子診断まで」松原謙一、吉川 寛 監修 秀潤社(東京)などに記載されるように、当該分野において周知である。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法 ・ 中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
本明細書において「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端に向かう位置を示す。
本明細書において「下流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの3’末端に向かう位置を示す。
本明細書において「塩基対の」および「Watson & Crick塩基対の」という表現は、本明細書では同義に用いられ、二重らせん状のDNAにおいて見られるものと同様に、アデニン残基が2つの水素結合によってチミン残基またはウラシル残基と結合し、3つの水素結合によってシトシン残基とグアニン残基とが結合するという配列の正体に基づいて互いに水素結合可能なヌクレオチドを示す(Stryer,L.,Biochemistry,4th edition,1995を参照)。
本明細書において「相補的」または「相補体」という用語は、本明細書では、相補領域全体がそのまま別の特定のポリヌクレオチドとWatson & Crick塩基対を形成することのできるポリヌクレオチドの配列を示す。本発明の目的で、第1のポリヌクレオチドの各塩基がその相補塩基と対になっている場合に、この第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと相補であるとみなす。相補塩基は一般に、AとT(あるいはAとU)、またはCとGである。本願明細書では、「相補」という語を「相補ポリヌクレオチド」、「相補核酸」および「相補ヌクレオチド配列」の同義語として使用する。これらの用語は、その配列のみに基づいてポリヌクレオチドの対に適用されるものであり、2つのポリヌクレオチドが事実上結合状態にある特定のセットに適用されるものではない。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した植物の細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
本発明のポリペプチドは、そアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明の新規ps20様ポリペプチドの生理活性は、公知の測定法[Cell,75,1389(1993)、J.Cell Bio.l146,233(1999)、Cancer Res.58,1238(1998)、Neuron 17,1157(1996)、Science 289,1197(2000)]に準じて測定することができる。
(変異型ポリペプチドの作製方法)
本発明ポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCTWO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
(免疫化学)
本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製もまた当該分野において周知である。例えば、ポリクローナル抗体の作製は、取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のタンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)]等で確認する。
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクローナル抗体を分離、精製することができる。モノクローナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリドーマの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。このようにして得たハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体は種々の目的に使用することができる。
このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫学的検出方法に使用することができ、本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法・蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等を挙げることができる。
また、本発明ポリペプチドの免疫学的定量方法にも使用することができる。本発明ポリペプチドの定量方法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピトープが異なる2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、126I等の放射性同位体で標識した本発明のタンパク質と本発明のタンパク質を認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等を挙げることができる。
本発明ポリペプチドのmRNAの定量方法もまた、当該分野において周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドあるいはDNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコードするDNAの発現量をmRNAレベルで定量することができる。このような技術は、当該分野において周知であり、本明細書において列挙した文献にも記載されている。
当該分野で公知の任意の方法によって、これらのポリヌクレオチドが得られ得、そしてこれらポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、決定され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、この抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ得(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242(1994)に記載されるように)、これは、手短に言えば、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップするヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに次いでPCRによるこの連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から作製することができる。ある抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリーまたは抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリドーマ細胞)から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリA+RNA))から、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、その配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、またはその特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得ることができる。PCRによって作製された増幅された核酸は、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照のこと。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生成するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し得る。
特定の実施形態において、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、相補性決定領域(CDR)の配列の同定のために、当該分野において周知の方法によって(例えば、配列超可変性の領域を決定するために、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較することによって)調べられ得る。慣用的な組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRが、前述のようにフレームワーク領域内に(例えば、非ヒト抗体をヒト化するために、ヒトフレームワーク領域中に)挿入され得る。このフレームワーク領域は天然に存在し得るか、またはコンセンサスフレームワーク領域であり得、そして好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、列挙したヒトフレームワーク領域については、Chothiaら、J.Mol.Biol.278:457−479(1998)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上記に議論されるように、1つ以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内で作製され得、そして好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如した抗体分子を生成するように、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は、本発明によって、および当該分野の技術において包含される。
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851−855(1984);Neubergerら、Nature 312:604−608(1984);Takedaら、Nature 314:452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
単鎖抗体を製造する場合、単鎖抗体の産生に関する記載された公知の技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら、Nature 334:544−54(1989))が、利用され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraら、Science 242:1038−1041(1988))。
(抗体を産生する方法)
本発明の抗体は、抗体の合成のために当該分野で公知の任意の方法によって、化学合成によって、または、好ましくは、組換え発現技術によって産生され得る。
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターの構築のために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開 WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)をコードするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクターにクローニングされ得る。
この発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移入され、次いで、このトランスフェクトされた細胞は、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
本発明の関連した局面において、薬学的組成物(例えば、ワクチン組成物)が、予防適用または治療適用のために提供される。このような組成物は、一般に、本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび免疫刺激剤(例えば、アジュバント)を含む。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
(疾患)
本明細書において「乳房の疾患」とは、乳房の機能,構造,器官などの断絶,停止,または障害をいい、通常、次の基準のうち少なくとも2つを満たす病変をいう:1)病因物質をもつこと;2)はっきりと指摘できる徴候および/または症候群があること;3)一致した解剖学的変化があること。乳房の疾患としては、例えば、上皮性腫瘍(例えば、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫など);非上皮性腫瘍(例えば、間質肉腫、軟部腫瘍、リンパ腫および造血器腫瘍など);混合腫瘍(例えば、葉状腫瘍、線維腺腫など);乳腺症;硬化性腺増生症;閉塞性腺増生症;嚢胞症;アポクリン化生;腫瘍様病変;乳管拡張症;過誤腫;女性化乳房症;副乳;皮膚由来の腫瘍;粉瘤;炎症性疾患(例えば、急性化膿性乳腺炎、急性鬱帯性乳腺炎、乳輪下膿瘍、乳腺結核など)などが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において「乳房の障害」とは、乳房の機能、構造、あるいは両方の障害で、発育における遺伝、発生上の欠陥、または毒素、外傷、疾病など外因性要因に起因するものをいう。
本明細書において「乳房の状態」とは、乳房の健常度を示す度合いをいう。そのような状態は、種々のパラメータによって表すことができる。本発明により、血漿アディポネクチンレベルを測定することにより乳房の状態が判定できるようになった。
本明細書において「乳がん」とは、乳腺組織の末梢乳管や腺房上皮から発生する癌腫であり、上皮性腫瘍(例えば、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫など);非上皮性腫瘍(例えば、間質肉腫、軟部腫瘍、リンパ腫および造血器腫瘍など);混合腫瘍(例えば、葉状腫瘍、線維腺腫など)などを包含する。乳がんの,リスク因子として,乳癌の既往、家族歴、未婚、高齢初産、早期初潮および晩期閉経、肥満、放射線被曝、高脂肪食、良性乳腺疾患の既往などがあげられるが、本発明において初めて血漿アディポネクチン濃度が乳房の疾患、障害または状態に関連することが判明した。
(チップ/アレイ技術)
本発明はまた、アレイ・チップ技術を用いて診断、スクリーニングなどを行うために利用することができる。
本明細書において使用される「プレート」とは、アディポネクチンに対する特異的因子(例えば、抗体)のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明では、プレートは、プラスチック、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面にもつガラス基板を基材とすることが好ましい。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、コーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。本明細書において、そのようなコーティングのための物質は、「コーティング剤」と呼ばれる。そのようなコーティング剤としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、生体分子(例えば、タンパク質、DNA)に(特に、測定、診断において)有害な影響を与えない物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも102個、より好ましくは少なくとも103個、およびさらに好ましくは少なくとも104個、さらにより好ましくは少なくとも105個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、DNA、抗体のようなタンパク質などの生体分子)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、108個の生体分子まで、他の実施形態において107個の生体分子まで、106個の生体分子まで、105個の生体分子まで、104個の生体分子まで、103個の生体分子まで、または102個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、108個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質、DNAなど)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、各々の生体分子は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1〜2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science andEngineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbookof Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
したがって、本発明では、アディポネクチンの遺伝子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
本明細書において「形質」および「表現型」という用語は、本明細書では同義に用いられ、生物の可視的な性質、検出可能な性質またはこれ以外の場合における測定可能な性質すべてを意味するものであり、一例として疾患の徴候または疾患に対する感受性があげられる。本明細書では通常、「形質」または「表現型」という用語は、乳房に関する疾患(例えば、乳がん)、肥満または肥満に関連した障害、特に、アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性、高血圧症、2型糖尿病の肥満個体における細小血管障害、II型糖尿病の肥満個体における細小血管障害に関連した眼病変、またはII型糖尿病の肥満個体における細小血管障害に関連した腎病変の症状またはこれらに対する羅患性を示すときに用いられ得る。
本明細書において「遺伝子型」という用語は、ある生物個体の遺伝子の構成をいい、しばしば個体または試料中に存在する対立遺伝子を意味することがある。試料または個体の「遺伝子型を判定する」という表現は、個体の特定の遺伝子の配列を解析することを包含する。
本明細書において「多型」という用語は、異なるゲノムまたは個体間で2以上の選択的ゲノム配列または対立遺伝子が出現することを示すために用いられる。「多型(の)」という表現は、特定のゲノム配列の2以上の変異体が個体群に見出される可能性がある状態を示す。「多型部位」は、そのような変異が発生する遺伝子座である。単一ヌクレオチド多型(SNPs)は、多型部位で1つのヌクレオチドが別のヌクレオチドに置換されたものである。1つのヌクレオチドの欠失または1つのヌクレオチドの挿入によっても単一ヌクレオチド多型が生じる。本明細書において「単一ヌクレオチド多型」は、1つのヌクレオチドの置換を示すものであることが好ましい。一般に、異なる個体間では、多型部位を2つの異なるヌクレオチドが占めている場合がある。本発明では、アディポネクチンの多型もまた、乳房疾患に関連すると考えられることから、1つの実施形態では、このような多型の分析によって同定された対立遺伝子を用いることが乳房の、予防、診断、治療または予後に有効であり得る。
(アディポネクチンの増強剤および減少剤)
「血漿アディポネクチンレベルを増加させる物質」とは、その物質が投与された被験体において、血漿アディポネクチンレベルを増加させる、任意の物質を包含する。このような物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:チアゾリジンジオン(thiazolidinedione)(TZD)(Diez JJら、Eur J Endocrionol 2003 Mar;148(3):293〜300;Yu JGら、Diabetes 2002 Oct;51(10):2968〜74;Stockli Rら、Ther Umsch 2002 Aug;59(8):388〜92;Maeda Nら、Diabetes 2001 Sep;50(9):2094〜9);トログリタゾン(troglitazone)(Phillips SAら、Diabetes 2003 Mar;52(3):667〜74);ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト(例えば、ラガグリタザル(ragaglitazar)およびロシグリタゾン(rosiglitazone))(Ye JMら、Am J Physiol Endocrinol Metab 2003 Mar;284(3):E531〜40;YamamotoYら、Metabolism 2002 Nov;51(11):1407〜9;Combs TPら、Endocrinology 2002 Mar;143(3):998〜1007);グリメピリド(glimepiride)(Tsunekawa Tら、Diabetes Care 2003 Feb;26(2):285〜9);ピオグリタゾン(Pioglitazone)(Pio)(Ye JMら、Endocrinology 2002 Dec;143(12):4527〜35);アディポネクチンを産生するアデノウイルス(Matsuda Mら、J Biol Chem 2002 Oct 4;277(40):37487〜91);精製した組換えAcrp30(Combs TPら、J Clin Invest 2001 Dec;108(12):1875〜81)。トログリタゾン、ピオグリタゾンはチアゾリジンジオンに含まれ、さらにチアゾリジンジオンはPPARγアゴニストに含まれる。
アディポネクチン遺伝子の94位のヌクレオチドのT→G置換が、循環中のアディポネクチンレベルの増加と関連した(Medizinische Klinikら、Diabetes 2002 Jan;51(1):37〜41)ことも判明している。したがって、このような変異置換もまた本発明において有用である。
「血漿アディポネクチンレベルを減少させる物質」とは、その物質が投与された被験体において、血漿アディポネクチンレベルを減少させる、任意の物質を包含する。このような物質は、当業者が当該分野において周知のスクリーニング法を用いて適宜同定することができる。
(治療活性または予防活性の証明)
本発明の化合物または薬学的組成物は、好ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで、そして次いでインビボで、所望の治療活性または予防活性について試験される。例えば、化合物または薬学的組成物の、治療有用性または予防有用性を証明するためのインビトロアッセイとしては、細胞株または患者組織サンプルに対する化合物の効果が挙げられる。細胞株および/または組織サンプルに対する化合物または組成物の効果は、当業者に公知である技術(細胞溶解アッセイが挙げられるがこれらに限定されない)を利用して決定され得る。本発明に従って、特定の化合物の投与が示されるか否かを決定するために用いられ得るインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、このアッセイでは、患者組織サンプルが培養物において増殖し、そして化合物に曝されるか、そうでなければ化合物が投与され、そして、組織サンプルに対するそのような化合物の効果が観察される。
(治療的/予防的な投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、アディポネクチン、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
特定の実施形態において、本発明の化合物または組成物を、処置の必要な領域に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of ControlledRelease,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
他の制御された徐放系は、Langerにより総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどの投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、経口投与が可能な形態で投与される場合、0.01mg〜10gであり、好ましくは、0.1mg〜1g、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。非経口投与の場合、0.01mg〜1gであり、好ましくは、0.01mg〜100mg、0.1mg〜100mg、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。あるいは、体重gあたりでは、例えば、0.1〜100g/kg体重、好ましくは、0.5g〜10g/kg体重、より好ましくは1g〜5g/kg体重であり得る。このような非経口投与は、代表的に、腹腔内投与であり得る。
本明細書中、「投与する」とは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与することを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果またはアディポネクチンに関連する疾患に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、アディポネクチンに関連する疾患の再発により再開することができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかです。
(アディポネクチンのポリペプチド形態)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物を提供する。ここで、診断、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる(例えば、Harris J., Lippman M, Morrow M, Osborne CK. Disease of the breast. Philadelphia;Lippincott Williams & Wilkins, 2000参照)。
1つの実施形態において、本発明において用いられるアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(b)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチン遺伝子産物と類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(c)における対立遺伝子変異体は、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書中上述のように同定することができ、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記(e)における上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号8に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号1に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号3に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号5に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号7に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、ある因子と相互作用することができる限り、その上限の長さは、配列番号2、4、6または8に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
1つの実施形態において、アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号2、4、6または8のアミノ酸のうち、それぞれ19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位)の範囲を含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチンの核酸形態)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物を提供する。
ここで、診断、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる(Harris J., LippmanM, Morrow M, Osborne CK. Disease ofthe breast. Philadelphia; Lippincott Williams & Wilkins, 2000.参照)。
1つの実施形態において、本発明において用いられるアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチン遺伝子産物と類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
別の好ましい実施形態において、対立遺伝子変異体は、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが有利である。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のアディポネクチンをクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のアディポネクチンの全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明のアディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントおよび改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、マーカー、プライマー、プローブ)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列は、配列番号8に示すアミノ酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号1に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にヒトを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号3に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にサルを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号5に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にマウスを対象とする場合に好ましい。
別の好ましい実施形態において、上述の配列番号1、3、5または7に示す核酸配列は、配列番号7に示す核酸配列であり得る。この形態は、特にラットを対象とする場合に好ましい。
1つの実施形態において、アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列の、それぞれ、ヌクレオチド81位〜758位、52位〜729位、151位〜786位、および84位〜764位(または87位〜764位)の範囲を含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチン遺伝子と相互作用する因子)
1つの局面において、本発明は、アディポネクチン遺伝子と特異的に相互作用する因子を含む乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物を提供する。
1つの実施形態において、この因子は、(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド; (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、と特異的に相互作用する、因子であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される。
好ましい実施形態では、本発明の因子は、核酸分子である。本発明の因子が核酸分子である場合、そのような核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、マーカー、プライマー、プローブ)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
従って、1つの例示的な実施形態において、本発明の因子は、上記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対して相補的な配列またはそれに対して少なくとも70%の同一性を有する配列を有する核酸分子であり得る。
別の例示的な実施形態において、本発明の因子は、(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の因子が特異的に相互作用するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、配列番号1、3、5または7に示す核酸配列の、それぞれ、ヌクレオチド81位〜758位、52位〜729位、151位〜786位、および84位〜764位(または87位〜764位)の範囲、または配列番号2、4、6または8のうち、それぞれアミノ酸19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位の範囲を含む。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識と結合し得るものであることが有利であり得る。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディンポネクチンポリペプチドに対して相互作用する因子)
1つの局面において、本発明は、アディポネクチンと特異的に相互作用する因子を含む、乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物を提供する。
1つの実施形態において、アディポネクチンと特異的に相互作用する因子は、代表的に、(a)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(b)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、アディポネクチンと類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(c)における対立遺伝子変異体は、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書に他の場所において記載されるように同定することができ、配列番号2、4、6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記(e)における上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2、4、6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、アディポネクチンレセプターとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
本発明の因子が特異的に相互作用するポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、ある因子と相互作用することができる限り、その上限の長さは、配列番号2に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される。より好ましくは、本発明の因子は、抗体またはその誘導体(例えば、単鎖抗体)である。従って、本発明の因子は、プローブとして使用することができる。
好ましい実施形態において、本発明の因子が特異的に相互作用するポリペプチドは、配列番号2、4、6または8ののうち、それぞれ19位〜244位、18位〜243位、21位〜247位、18位〜244位(または19位〜244位)の範囲を含む。
好ましい実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識と結合し得るものであることが有利であり得る。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん(例えば、転移性乳がん)、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(アディポネクチン増強物質)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態の予防、処置または予後のための組成物であって血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子、を含む、組成物を提供する。
このような血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、例えば、アディポネクチンそのものであってもよく、あるいは、内因性のアディポネクチン発現を誘導または増強するもの(例えば、アゾリジンジオン)であってもよく、外因的にアディポネクチンの発現を誘導するもの(例えば、アディポネクチンをコードする核酸配列を含む発現ベクター)であってもよい。当業者は、そのような増強因子を、適宜選択することができる。
1つの好ましい実施形態において、そのような血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、チアゾリジンジオン、トログリタゾン、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト、グリメピリド、ピオグリタゾン、アディポネクチンを産生するアデノウイルスなどを含む。
1つの実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、上皮性良性腫瘍、非上皮性腫瘍、混合腫瘍、乳腺症、腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。
(診断法)
1つの局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を診断するための方法を提供する。この方法は、(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該(a)のレベルと該(b)のレベルとを比較する工程を包含し、ここで、該(a)のレベルが該(b)のレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
ここで、血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の方法により測定することができる。そのような測定には、抗原抗体反応などを利用し、蛍光標識、放射能標識などを利用することができる。そのような測定法の例示としては、例えば、ELISA、RIAなどを挙げることができ、インスリンを測定することによっても判定することができる。そのような測定法を実施するアッセイ系は市販されており、そのように市販されているものを利用することができる。
測定された血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の手法に基づいて比較することができる。そのようなデータ処理は、手動で行ってもよく、コンピュータにより行ってもよい。統計学的処理を行う際はコンピュータプログラムを利用することが有利であり得るがそれに限定されない。ここで、正常レベルの血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
1つの実施形態において、診断の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、上皮性良性腫瘍、非上皮性腫瘍、混合腫瘍、乳腺症、腫瘍様病変を含む。理論に束縛されないが、アディポネクチンが乳房の疾患、障害または状態に関連するのは、アディンポネクチンと乳がんとの相関が、本発明の症例対象研究により確認されることにより実証される。乳腺の良性腫瘍や乳腺症は、乳癌の罹患性と相関することが知られているため、これらの増殖性病変もまた、アディンポネクチンと関連するといえる。
特に好ましい実施形態において、正常レベルより低い血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳がんであると診断されるかまたはそうであることが疑われる。
したがって、好ましい実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも低い。
より好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも統計学的に有意に低いことが有利であり得る。
1つの好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
別の好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
ここで、生物学的因子のアッセイを大量に行う技術は、当該分野において周知であり、どのような技術を用いてもよい。例えば、DNAアレイ(チップ)を用いた検出法が挙げられるがそれらに限定されない。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。
(診断キット)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に関連する状態、障害または疾患を診断するためのキットおよびシステムを提供する。
ここで、このキットは、
(A)
(A−1)
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子;および/または
(A−2)
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、因子;ならびに
(B)指示書、
を備え、該指示書は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(c)該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較する工程
を包含する。
ここで、該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。
ここで、血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の方法により測定することができる。そのような測定には、抗原抗体反応などを利用し、蛍光標識、放射能標識などを利用することができる。そのような測定法の例示としては、例えば、ELISA、RIAなどを挙げることができ、インスリンを測定することによっても判定することができる。そのような測定法を実施するアッセイ系は市販されており、そのように市販されているものを利用することができる。したがって、そのような測定のための手段が本発明において利用される。そのような測定手段としては、例えば、市販されるキットを利用することができるがそれらに限定されない。
測定された血漿アディポネクチンレベルは、当該分野において周知の手法に基づいて比較することができる。そのようなデータ処理は、手動で行ってもよく、コンピュータにより行ってもよい。統計学的処理を行う際はコンピュータプログラムを利用することが有利であり得るがそれに限定されない。ここで、正常レベルの血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される。したがって、そのような比較のための手段が本発明において利用される。そのような比較手段としては、例えば、コンピュータなどが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、診断の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍を含み得る。したがって、そのような疾患、障害および/または状態に関する情報が本発明のキットに含まれていてもよい。
理論に束縛されないが、アディポネクチンが乳房の疾患、障害または状態に関連するのは、アディンポネクチンと乳がんとの相関が、本発明の症例対象研究により確認されることにより実証される。乳腺の良性腫瘍や乳腺症は、乳癌の罹患性と相関することが知られているため、これらの増殖性病変もまた、アディンポネクチンと関連するといえる。
本発明のキットまたはシステムの特に好ましい実施形態において、正常レベルより低い血漿アディポネクチンレベルであることが判明した場合、その被験体は乳がんであると診断されるかまたはそうであることが疑われる。
したがって、本発明のキットまたはシステムの好ましい実施形態において、乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも低い。
本発明のキットまたはシステムのより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことが有利であり得る。
1つの好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
別の好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルの測定には、アディポネクチンをコードする核酸分子またはそのフラグメントもしくは改変体に対する因子を使用することができる。このような因子の好ましい形態は、上述のとおりであり、当業者は測定形態に基づいて適宜選択することができる。
本発明のキットにおいて提供される指示書は、指示を伝えることができる限り、どのような形態をとってもよく、紙、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、CD−R)、電子メール、ウェブサイトなどであり得る。
(テーラーメイド治療)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のための方法を提供する。
この方法は、(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を施す工程、
を包含する。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較は、本明細書において上述したとおり、当該分野において周知の技術を用いて当業者が容易に実施することができる。
次に、本発明の予防、処置または予後のための方法では、正常と被検体とについて血漿アディポネクチンレベルを比較し対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する。ここでは、乳房に関連する個々の状態によって、その高い低いのレベルは異なるが、乳房に関連する疾患、障害および/または状態の各々について、そのようなレベルを当業者は容易に決定することができる。
本発明の診断方法のより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことによって、その被検体が乳がんであると判断することができる。
このようにして乳房に関する異常、障害または疾患を有すると判定された場合、その対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置が施される。このような処置としては、アディポネクチンを増強させることが所望される場合は、アディポネクチンを増強させる物質を用いることができ、アディポネクチンを減少させることが所望される場合は、アディポネクチンを減少させる物質を用いることができる。そのようなアディポネクチンを増強させる物質としては、本明細書において列挙したものなどが挙げられる。
(テーラーメイド治療提示法)
別の局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示する方法を提供する。この方法は、(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する工程、を包含する。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較は、本明細書において上述したとおり、当該分野において周知の技術を用いて当業者が容易に実施することができる。
次に、本発明の予防、処置または予後のための方法では、正常と被検体とについて血漿アディポネクチンレベルを比較し対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する。ここでは、乳房に関連する個々の状態によって、その高い低いのレベルは異なるが、乳房に関連する疾患、障害および/または状態の各々について、そのようなレベルを当業者は容易に決定することができる。
本発明の提示方法のより好ましい実施形態において、診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも、統計学的に有意に低いことによって、その被検体が乳がんであると判断することができる。
このようにして乳房に関する異常、障害または疾患を有すると判定された場合、その対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置が提示される。このような処置としては、アディポネクチンを増強させることが所望される場合は、アディポネクチンを増強させる物質を用いることができ、アディポネクチンを減少させることが所望される場合は、アディポネクチンを減少させる物質を用いることができる。そのようなアディポネクチンを増強させる物質としては、本明細書において列挙したものなどが挙げられる。
このような提示方法としては、例えば、コンピュータのディスプレイ上への表示、印刷、音声、インターネットでの通知(電子メールを含む)などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、提示される場所には、医師または薬剤師が存在することが有利である。
(テーラーメイド治療システム)
1つの局面において、本発明は、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のためのシステムを提供する。このシステムは、(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段、を備える。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較ならびに判定のための手段としては、本明細書中上述したようなものが例示されるがそれに限定されない。比較および判定の好ましい手段としては、コンピュータが挙げられるがそれに限定されない。
本発明のシステムにおいて、対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段としては、判定手段からの信号を受けることができ、それによって処置(投薬)または処方箋の調製あるいは薬剤の処方を行うことができる手段が挙げられるがそれに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明のシステムの各手段(例えば、測定手段、判定手段および提供手段)はネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、WLANなど)で接続されていることが有利であり得る。個人情報が漏洩することが憂慮されることから、これらのネットワークは、セキュリティー保護の処置を講じたものであることが好ましい。
(テーラーメイド治療提示システム)
別の局面において、乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示するシステムが本発明において提供される。このシステムは、(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段、を備える。
ここで、血漿アディポネクチンレベルの測定および比較ならびに判定のための手段としては、本明細書中上述したようなものが例示されるがそれに限定されない。比較および判定の好ましい手段としては、コンピュータが挙げられるがそれに限定されない。
本発明のシステムにおいて、対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段としては、判定手段からの信号を受けることができ、それによって処置(投薬)または処方箋の調製あるいは薬剤の処方に関する情報の提示をすることができる手段であればどのようなものであっても用いることができる。このような提示手段としては、例えば、コンピュータのディスプレイ上への表示、印刷、音声、インターネットでの通知(電子メールを含む)などが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、提示される場所には、医師または薬剤師が存在することが有利である。
好ましい実施形態において、本発明の提示システムの各手段(例えば、測定手段、判定手段および提示手段)はネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、WLANなど)で接続されていることが有利であり得る。個人情報が漏洩することが憂慮されることから、これらのネットワークは、セキュリティー保護の処置を講じたものであることが好ましい。
(スクリーニング)
他の局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子を同定するための方法を提供する。この方法は、(a)血漿アディポネクチンレベルが正常ではない同種の被験体を複数提供する工程;(b)試験因子を該被験体の一部に投与する工程;(c)試験因子を投与されていない該被験体および試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;(d)試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルよりも、有意に正常被験体に近似するか否かを判定する工程を包含する。ここで、試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルより有意に正常被験体に近似する場合、該試験因子は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子であることを示す
本発明の同定方法において、被検体の提示、選択は任意に行うことができるが、被検体がヒトである場合、コンセントを事前にもらっておくことが好ましい。被検体としては、血漿アディポネクチンレベルが正常ではないものを提供することができる限りどのようなものでも選択することができる。
本発明の同定方法において、次に、本発明の同定方法で用いられる投与工程は、どのような技術を用いてもよい。好ましくは、経口投与、静脈注射など、通常の治療において使用される形態であることが有利である。
本発明の同定方法において、被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程およびその比較工程もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。そのような技術は、本明細書において詳述したとおりである。
1つの実施形態において、試験因子の投与の対象となる乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり得る。より好ましくは、本発明の組成物が対象とする乳房の疾患、障害または状態は、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、特殊型乳癌、非上皮性悪性腫瘍であり得る。
本発明の同定方法のより好ましい実施形態において、血漿アディポネクチンレベルは、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとの相対的な相違が、統計学的に有意であることによって、試験因子が有効であるとの判断を下すことができる。
このようなスクリーニングまたは同定の方法は、当該分野において周知であり、例えば、そのようなスクリーニングまたは同定は、マイクロタイタープレート、DNAまたはプロテインなどの生体分子アレイまたはチップを用いて行うことができる。スクリーニングの試験因子を含む対象としては、例えば、遺伝子のライブラリー、コンビナトリアルライブラリーで合成した化合物ライブラリーなどが挙げられるがそれらに限定されない。
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、乳房に関連する状態、障害および/または疾患の調節因子を同定する方法を提供する。このような調節因子は、それぞれの疾患の医薬またはそのリード化合物として用いることができる。そのような調節因子ならびにその調節因子を含む医薬およびそれを利用する治療法もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。
したがって、本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
本発明は、他の実施形態において、本発明の化合物に対する調節活性についての有効性のスクリーニングの道具として、コンピュータによる定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationship=QSAR)モデル化技術を使用して得られる化合物を包含する。ここで、コンピューター技術は、いくつかのコンピュータによって作成した基質鋳型、ファーマコフォア、ならびに本発明の活性部位の相同モデルの作製などを包含する。一般に、インビトロで得られたデータから、ある物質に対する相互作用物質の通常の特性基をモデル化することに対する方法は、最近CATALYSTTM ファーマコフォア法(Ekins et al.、Pharmacogenetics,9:477〜489,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,288:21〜29,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,290:429〜438,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,291:424〜433,1999)および比較分子電界分析(comparative molecular field analysis;CoMFA)(Jones et al.、Drug Metabolism & Disposition,24:1〜6,1996)などを使用して示されている。本発明において、コンピュータモデリングは、分子モデル化ソフトウェア(例えば、CATALYSTTMバージョン4(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA)など)を使用して行われ得る。
活性部位に対する化合物のフィッティングは、当該分野で公知の種々のコンピュータモデリング技術のいずれかを使用してで行うことができる。視覚による検査および活性部位に対する化合物のマニュアルによる操作は、QUANTA(Molecular Simulations,Burlington,MA,1992)、SYBYL(Molecular Modeling Software,Tripos Associates,Inc.,St.Louis,MO,1992)、AMBER(Weiner et al.、J.Am.Chem.Soc.,106:765−784,1984)、CHARMM(Brooks et al.、J.Comp.Chem.,4:187〜217,1983)などのようなプログラムを使用して行うことができる。これに加え、CHARMM、AMBERなどのような標準的な力の場を使用してエネルギーの最小化を行うこともできる。他のさらに特殊化されたコンピュータモデリングは、GRID(Goodford et al.、J.Med.Chem.,28:849〜857,1985)、MCSS(Miranker and Karplus,Function and Genetics,11:29〜34,1991)、AUTODOCK(Goodsell and Olsen,Proteins:S tructure,Function and Genetics,8:195〜202,1990)、DOCK(Kuntz et al.、J.Mol.Biol.,161:269〜288,(1982))などを含む。さらなる構造の化合物は、空白の活性部位、既知の低分子化合物における活性部位などに、LUDI(Bohm,J.Comp.Aid.Molec.Design,6:61〜78,1992)、LEGEND(Nishibata and Itai,Tetrahedron,47:8985,1991)、LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MO)などのようなコンピュータープログラムを使用して新規に構築することもできる。このようなモデリングは、当該分野において周知慣用されており、当業者は、本明細書の開示に従って、適宜本発明の範囲に入る化合物を設計することができる。
別の局面において、本発明は、本発明の上記同定方法によって同定される、調節因子を提供する。
別の局面において、本発明は、本発明の調節因子を含む、薬学的組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、乳房に関連する状態、障害または疾患を処置または予防する方法を提供する。ここで、この方法は、本発明の調節因子を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、この乳房に関連する状態、障害または疾患は、同定方法において有効であると判断された異常、障害または疾患であり、好ましくは乳がんを包含するがそれに限定されない。
乳房に関連する疾患、障害および状態は、特に早期の診断が困難で、その治療についても根本的な治療が困難といわれてきた。しかし、本発明の上述のような効果によって、従来では不可能とされていた早期診断が可能となり、治療にも応用することができることが明らかとなった。したがって、本発明は、従来の診断薬でも医薬でも達成不可能であった有用性を有するといえる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
以下の実施例では、対象となる患者からはすべて事前に告知しコンセントもらった上で実験を行った。動物の取り扱いは、大阪大学において規定される基準を遵守した。
(実施例1)
(方法)
(ケースおよびコントロール)
適格なケースは、2000年3月から2001年3月までの期間に、大阪大学病院において乳房切除術または乳がん保存手術で継続的に処置された、102人の原発性乳がん患者であった。アディポネクチンアッセイのための血液サンプルを、手術の直前に得た。乳がんの組織学的診断を、各ケースにおいて確認した(93個の浸潤性腺管がん、2個の非浸潤性腺管がん、および他の7つの型)。大阪の関連する研究所における乳がんスクリーニングプログラムに参加した、100人の健常な女性を、2001年6月から2001年12月までの期間、本研究におけるコントロールとして継続的に募集した。すべてのコントロールが乳がんに罹患していないことを、身体的検査およびマンモグラフィによって確認した。本研究に関して、文書でのインフォームドコンセントを、すべての参加者から得た。
(血清アディポネクチンおよび血清エストロンの分析)
すべての血液サンプルを、早朝の空腹時に入手し、そしてその血清を、遠心分離によってすぐに分離し、使用するまで−20℃にて貯蔵した。血清アディポネクチンレベルを、以前に記載されたようにELISAにより測定し(AritaYら、Biochem Biophys Res Commun 1999;257:79〜83)、そして血清エストロンレベルを、DiagnosticSystems Laboratories(DSL−8700,Webster,Texas)により供給されるキットを使用して、ラジオイムノアッセイにより測定した。
(エストロゲンレセプターアッセイ)
乳がんにおけるエストロゲンレセプター(ER)レベルを、Abbott Research Laboratories(Chicago,IL)により供給されるキットを使用して、酵素免疫法により測定した。ERに関するカットオフ値を、製造業者の指示に従って、13fmol/タンパク質mgとして規定した。
(統計学的解析)
血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性を、ロジスティック回帰法を使用して決定し、ORおよび95%CIを得た。このORおよび95%CIを、古典的な疫学的危険因子(例えば、年齢、家族歴、初潮年齢、初産年齢または未経産、およびBMI)について調整した。この解析を閉経後の女性の間で行った場合、上記の危険因子に加えて、閉経年齢もまた、調整した。これらの危険因子を、以下の通りに分類した:一親等の家族歴(はい、または、いいえ)、初潮年齢(12歳以下、13歳〜14歳、および15歳以上)、経産(25歳以下で初産、26〜29歳で初産、30歳以上で初産、または未経産)、BMI(20.935kg/m2未満、20.935〜<23.0kg/m2、および23.0kg/m2以上)、および閉経年齢(48歳以下、49歳〜50歳、および51歳以上)。血清アディポネクチンレベルと腫瘍の臨床病理学的パラメータとの間の関連性を、χ2−検定を使用して評価した。種々のグループ間での血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの比較を、スチューデントt−検定により行った。コントロールにおける血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間の相関性を、単一曲線あてはめ試験(simple curve fit test)により分析した。P値<0.05を有意であるとみなした。
(結果)
(血清アディポネクチンレベルと乳がんリスク)
コントロールを、血清アディポネクチンレベルに従って3つのグループ(低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(<10.6μg/ml))に分割し、そしてケースもまた、同じ基準を使用して3つのグループに分割した。種々の疫学的危険因子(BMIを含む)について調整した後の、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの関連を、表1に示す。血清アディポネクチンレベルが低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.005)増加したリスクを示した(オッズ比(OR)4.27、95%信頼区間(CI)1.81〜10.08)。中三分位範囲の女性もまた、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて増加したリスクと有意に(P<0.01)関連した(OR 3.03、95%CI1.31〜7.02)。閉経状態に従う部分集合分析において、中三分位範囲および低三分位範囲の閉経前女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんリスクの増加に向かって、それぞれ有意な(P<0.05)傾向および有意でない(P=0.068)傾向を示し、そして低三分位範囲の閉経後女性は、高三分位範囲の女性と比較して、乳がんについて有意に(P<0.01)増加したリスクを示した。
【表1】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。c)年齢、家族歴、初潮年齢、経産、BMI、および閉経者に関する閉経年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。d)括弧内の数字は、パーセンテージである。e)P<0.05。f)P<0.01。g)P<0.005。h)P<0.10。
血清アディポネクチンレベルと、ER陽性乳がんリスクまたはER陰性乳がんリスクとの間の関連を、表2に示す。低三分位範囲の女性は、高三分位範囲の女性と比較して有意に増加したリスクを、ER陽性ケース(OR 3.62、95% CI 1.22〜10.70)およびER陰性ケース(OR 4.96、95% CI 1.52〜16.18)の両方で示した。
【表2】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)年齢について調整した、オッズ比および95%信頼区間。c)年齢、家族歴、初潮年齢、経産、およびBMIについて調整した、オッズ比および95%信頼区間。d)括弧内の数字は、パーセンテージである。e)P<0.05。f)P<0.10。g)P<0.01。
(血清アディポネクチンレベルおよび腫瘍の臨床病理学的特徴)
低血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍の臨床病理的特徴を、高血清アディポネクチンレベルおよび中血清アディポネクチンレベルの女性において生じる腫瘍の臨床病理的特徴と比較した(表3)。大きな腫瘍(>2cm)の頻度は、高三分位範囲および中三分位範囲の女性(41%)よりも低三分位範囲の女性(70%)において有意に(P<0.005)高かった。そして高組織学的グレード(2+3)の腫瘍の頻度は、高三分位範囲および中三分位範囲の女性において(63%)よりも低三分位範囲の女性において(84%)、有意に(P<0.05)高かった。他のパラメータ(例えば、リンパ節の状態、およびERの状態)は、低三分位範囲の女性と高三分位範囲の女性および中三分位範囲の女性との間で、有意には異ならなかった。
【表3】
a)低(≦6.9μg/ml)、中(6.9<,≦10.6μg/ml)、および高(>10.6μg/ml)。b)括弧内の数字は、パーセンテージである。
(BMIと血清アディポネクチンレベルおよび血清エストロンレベルとの間の相関性)
BMIと血清アディポネクチンレベルおよび血清エストロンレベルとの間の相関性を、閉経後コントロールにおいて研究した。高BMI三分位範囲の女性における血清アディポネクチンレベルは、低BMI三分位範囲の女性においてよりも有意に(P<0.001)低かった(表4)。対照的に、高BMI三分位範囲の女性における血清エストロンレベルは、低BMI三分位範囲の女性においてよりも有意に(P<0.005)よりも有意に高かった。血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間には、単一曲線あてはめ試験(simple curve fit test)によって有意な相関性は観察されなかった(r0.13、P=0.40、図1)。
【表4】
a)低(<20.935kg/m2)、中(20.935≦,<23.0kg/m2)、および高(≧23.0kg/m2)。b)低三分位範囲と比較した場合に、P<0.001。c)低三分位範囲と比較した場合に、P<0.005。
(考察)
タモキシフェンを用いた化学予防試験(NSABP P1)における最近の成功によって、定着した乳がんの処置よりも乳がんの予防を大いに重視する場合の、新たな門戸が開かれたように思われる(Fisher,B.ら、J NatlCancer Inst 1998;90:1371〜1388)。予防のためにタモキシフェンを使用する場合、乳がんのリスク評価が最も重要な段階である。このリスク評価のために、Gailモデルが通常使用される(Gail,M.H.ら、J Natl Cancer Inst 1999;91:1829〜46)が、その正確性は満足のいくものでないので、より効率的に化学予防を実行するためには、乳がんリスクに関する新規な予測因子を発見する必要がある。本出願において、本発明者らは、閉経前の女性および閉経後の女性の両方において、血清アディポネクチンレベルが乳がんリスクと関連すること、ならびに低血清アディポネクチンレベルが、古典的な疫学的危険因子とは独立した重要な危険因子として役立ち得ることを、示すことができた。これらの結果は、血清アディポネクチンレベルを古典的な疫学的危険因子と併せることによって、乳がんのリスク評価をより正確に行い得る可能性を示唆するように思われる。タモキシフェンは、ER陽性乳がんの発生数を減少させる際に有効であるが、ER陰性乳がんの発生数を減少させる際には有効ではないことが、NSABP P−1試験により示された(Fisherら、上記)ので、タモキシフェンを用いる化学予防をより効率的に実行するためには、ER陽性乳がんについてのリスクを予測することもまた重要である。Gailモデルにより、すべての乳がんのリスクを予測し得るが、ER陽性乳がんに特異的なリスクは予測し得ない。同様に、本出願において、血清アディポネクチンレベルは、ER陽性乳がんリスクおよびER陰性乳がんリスクの両方と関連することが示された。
アディポネクチンが乳がんリスクを調節する機構は、現在未知である。しかし、血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの間に相関性が欠如していることは、アディポネクチンが、閉経後の女性における血清エストロンレベルに影響を与えることを介して乳がんリスクを調節することはありそうにないことを、示すように思われる。アディポネクチンは、グルコース代謝において重要な役割を果す(Yamauchi Tら(前出)、Fruebis Jら(前出)、Berg AHら(前出)、Maeda Nら(前出))。血清アディポネクチンレベルの減少は、グルコースレベルの増加と関連があることが示されている(Hotta Kら(前出))。高グルコースレベルは、培養した乳がん細胞の増殖を刺激する(Okumura Mら、Biochim Biophys Acta.2002;1592:107〜16)ので、これらの知見をまとめると、アディポネクチンは、グルコース代謝に影響を与えることを介して、乳がんリスクを調節することが、推測される。さらに、アディポネクチンは、血管平滑筋細胞の増殖に対する直接的阻害効果を有し(Yokota Tら(前出))、そして骨髄性単球前駆体の増殖に対する直接的阻害効果を有する(YokotaTら(前出))。従って、アディポネクチンは、乳房上皮細胞の増殖を阻害し得、その結果、低血清アディポネクチンレベルは、乳房上皮細胞の増殖の増加と関連し、乳がんについて増加したリスクを生じることもまた、推測される。興味深いことに、低血清アディポネクチンレベルは、大きな腫瘍サイズ(>2cm)および高組織学的グレード(2+3)と有意に関連があった。このことは、高増殖活性を有する腫瘍は、低アディポネクチン条件下で発達する可能性が高いことを示す。肥満は、予後不良と関連があることが、十分に確立されている(Daling JR、Cancer 2001;92:720〜9;PetrelliJM、Cancer Causes Control 2002;13:323〜52)。この関連は、肥満した乳がん患者において観察される低血清アディポネクチンレベルによって、部分的に説明され得る。
レプチンは、脂肪組織から主に分泌されるペプチドホルモンであるが、アディポネクチンとは異なり、血清レプチンレベルは、BMIと比例して増加する(McGregor GPら、Endocrinology 1996;137:1501〜4)。最近、レプチンは、正常な乳房上皮細胞および乳がん細胞の増殖をインビトロで刺激することが、示された(Okumura Mら(前出);Dieudonne MNら、Biochem Biophys Res Commun 2002;293:622〜8;Hu Xら、J Natl Cancer Inst 2002;94:1704〜11)。Tessitoreらは、乳がん患者における血清レプチンレベルが、健常コントロールにおいてよりも有意に高いことを報告した(Tessitore Lら、Int J Mol Med 2000;5:421〜6)。このことは、血清レプチンレベルが、乳がんについての危険因子として役立ち得ることを示す。しかし、Mantzorosらは、このような関連を示すことができなかった(Mantzoros CSら、Int J Cancer 1999;80:523〜6)。さらに、Petridouらは、血清レプチンレベルが、乳がんリスクと逆に関連したことを報告した(Petridoue Eら、Cancer Causes Control 2000;11:383〜8)。従って、血清レプチンレベルと乳がんリスクとの間の関連性は、いまなお議論の余地があり、依然として立証されるべき状態のままである。
結論として、本発明者らは、低血清アディポネクチンレベルと乳がんについて増加したリスクとの間の有意な関連を示した。さらに、低血清アディポネクチンレベルを有する女性において生じる乳がんが、大きさ腫瘍サイズおよび高組織学的グレードにより示される、急速進行性表現型を示す可能性が高い。これらの結果は、血清アディポネクチンレベルが、乳がんについての新規な危険因子であり得る可能性を示唆すると思われ、そして肥満と乳がんリスクとの間の関連を理解することに関する新規な洞察を提供するように思われる。
(実施例2:増強剤による効果)
次に、血清アディポネクチン効果を増強させることによる効果を確認した。血清アディポネクチン濃度を測定し、上記の基準で低値であった症例に対し、チアゾリジンジオンを含むPPARgアゴニスト、Adiponectinプロモーターエンハンサーという血清アディポネクチン濃度を上昇させる薬剤、および受容体アゴニストを投与する処置を行ったところ、乳がんの改善が確認された。
(実施例3:血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニング)
次に、プロモーターレベルで血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニングを行った。アディポネクチンプロモーターにレポーター遺伝子を接続し、これを脂肪細胞にトランスフェクションして、薬剤添加によりレポーター活性が上昇するものを選ぶ。このような薬剤は、血清アディポネクチンレベルの調節剤として有用である。
(実施例4:他の血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニング)
次に、個体レベルで血清アディポネクチンレベルの調節剤のスクリーニングを行った。候補化合物をマウスに投与し、実際血清アディポネクチン濃度が上昇するものを選ぶ。このような薬剤は、血清アディポネクチンレベルの調節剤として有用である。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【発明の効果】
本発明により、乳房疾患の効率的な診断、予防、処置および予後のための組成物、方法、システム、キットが提供される。
(配列表の説明)
配列番号1:ヒト アディポネクチン 核酸配列
配列番号2:ヒト アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号3:サル アディポネクチン 核酸配列
配列番号4:サル アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号5:マウス アディポネクチン 核酸配列
配列番号6:マウス アディポネクチン アミノ酸配列
配列番号7:ラット アディポネクチン 核酸配列
配列番号8:ラット アディポネクチン アミノ酸配列
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、閉経後コントロールにおける、血清アディポネクチンレベルと血清エストロンレベルとの関連(r 0.13,P=0.40)を示す。
Claims (56)
- 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
- 前記アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、請求項1に記載の組成物。 - 前記アディポネクチン、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項1に記載の組成物。
- 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって、診断、予防、処置または予後上有効な量のアディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む、組成物。
- 前記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、請求項1に記載の組成物。 - 前記アディポネクチンをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲を含む、請求項5に記載の組成物。
- 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子、を含む、組成物。 - 前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
- 少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する核酸分子である、請求項9に記載の組成物。
- 前記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対して相補的な配列またはそれに対して少なくとも70%の同一性を有する配列を有する核酸分子である、請求項9に記載の組成物。
- 前記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドの核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子である、請求項9に記載の組成物。
- プライマーとして使用される、請求項9に記載の組成物。
- プローブとして使用される、請求項9に記載の組成物。
- 前記ポリヌクレオチドまたは前記ポリペプチドは、配列番号1のヌクレオチド81位〜758位の範囲または配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、請求項9に記載の組成物。
- 前記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、請求項9に記載の組成物。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項9に記載の組成物。
- 乳房の疾患、障害または状態の診断、予防、処置または予後のための組成物であって:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子、
を含む、組成物。 - 前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
- 抗体またはその誘導体である、請求項19に記載の組成物。
- プローブとして使用される、請求項19に記載の組成物。
- 前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸19位〜244位の範囲を含む、請求項19に記載の組成物。
- 前記因子は、標識されているかまたは標識と結合し得る、請求項19に記載の組成物。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項19に記載の組成物。
- 乳房の疾患、障害または状態の予防、処置または予後のための組成物であって
血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子、
を含む、組成物。 - 前記血漿アディポネクチンレベルを増加させる因子は、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γアゴニスト、グリメピリドおよびアディポネクチンを産生するアデノウイルスからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、請求項26に記載の組成物。
- 前記PPARγアゴニストは、チアゾリジンジオンを含む、請求項27に記載の組成物。
- 前記チアゾリジンジオンは、トログリタゾンまたはピオグリタゾンを含む、請求項28に記載の組成物。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項26に記載の組成物。
- 乳房に関連する状態、障害または疾患を診断するための方法であって、該方法は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)該(a)のレベルと該(b)のレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、該(a)のレベルが該(b)のレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、方法。 - 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項31に記載の方法。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、前記(a)のレベルは、前記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
- 前記(a)のレベルは、前記(b)のレベルよりも少なくとも統計学的に有意に低いことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
- 前記測定工程において、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子
を使用する、請求項31に記載の方法。 - 前記因子は抗体である、請求項35に記載の方法。
- 前記因子は標識されているかまたは標識と結合し得る、請求項35に記載の方法。
- 前記測定工程において、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、
因子が使用される、請求項31に記載の方法。 - 前記因子はプライマーとして使用される、請求項38に記載の方法。
- 前記因子はプローブとして使用される、請求項38に記載の方法。
- 乳房の疾患、障害または状態に関連する状態、障害または疾患を診断するためのキットであって、該キットは、
(A)
(A−1)
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、ポリペプチドに対して特異的に相互作用する、因子;および/または
(A−2)
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
と特異的に相互作用する、因子;ならびに
(B)指示書、
を備え、該指示書は、
(a)診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを該(A−1)因子および/または該(A−2)因子を用いて測定する工程;
(c)該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較する工程
を包含し、
ここで、該診断の対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると診断される、
キット。 - 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がん、非上皮性腫瘍、上皮性良性腫瘍、乳腺症または腫瘍様病変を含む、請求項41に記載のキット。
- 前記乳房の疾患、障害または状態は、乳がんであり、前記(a)のレベルは、前記(b)のレベルよりも低いことを特徴とする、請求項39に記載のキット。
- 前記(a)のレベルは、前記(b)のレベルよりも統計学的に有意に低いことを特徴とする、請求項43に記載のキット。
- 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のための方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を施す工程、
を包含する、方法。 - 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示する方法であって、
(a)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(b)正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(c)該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する工程;
(d)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する工程、
を包含する、方法。 - 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後のためのシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提供する手段、
を備える、システム。 - 前記測定手段、前記判定手段および前記提供手段は、ネットワークによって接続される、請求項47に記載のシステム。
- 乳房の疾患、障害または状態に罹患したかまたは罹患する可能性のある被験体の予防、処置または予後を提示するシステムであって、
(a)血漿アディポネクチンレベルを測定する手段;
(b)対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルと、正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルとを比較し、該対象とされる被験体における血漿アディポネクチンレベルが該正常な被験体における血漿アディポネクチンレベルよりも高いかまたは低い場合、該被験体は乳房に関連する状態において異常、障害または疾患を有すると判定する手段;
(c)該対象とされる被験体に血漿アディポネクチンレベルを正常に近づける処置を提示する手段、
を備える、システム。 - 前記測定手段、前記判定手段および前記提供手段は、ネットワークによって接続される、請求項49に記載のシステム。
- 乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)血漿アディポネクチンレベルが正常ではない同種の被験体を複数提供する工程;
(b)試験因子を該被験体の一部に投与する工程;
(c)試験因子を投与されていない該被験体および試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルを測定する工程;
(d)試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルよりも、有意に正常被験体に近似するか否かを判定する工程を包含し、
ここで、試験因子を投与された該被験体中の血漿アディポネクチンレベルが、試験因子を投与されていない該被験体中の血漿アディポネクチンレベルより有意に正常被験体に近似する場合、該試験因子は、乳房に関連する状態、障害または疾患を調節する因子であることを示す、方法。 - 前記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、請求項51に記載の方法。
- 請求項51に記載の方法によって同定される、調節因子。
- 請求項53に記載の調節因子を含む、薬学的組成物。
- 乳房に関連する状態、障害または疾患を処置または予防する方法であって、該方法は、請求項54に記載の薬学的組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
- 前記乳房に関連する状態、障害または疾患は、乳がんを包含する、請求項55に記載の方法。
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---|---|---|---|---|
WO2005042007A1 (ja) * | 2003-11-04 | 2005-05-12 | Sankyo Company, Limited | 抗腫瘍剤 |
JP2007061047A (ja) * | 2005-09-01 | 2007-03-15 | Oriental Yeast Co Ltd | 乳癌細胞の検出方法 |
-
2003
- 2003-05-07 JP JP2003129564A patent/JP2004331570A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
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WO2005042007A1 (ja) * | 2003-11-04 | 2005-05-12 | Sankyo Company, Limited | 抗腫瘍剤 |
JPWO2005042007A1 (ja) * | 2003-11-04 | 2007-04-26 | 三共株式会社 | 抗腫瘍剤 |
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JP5386056B2 (ja) * | 2003-11-04 | 2014-01-15 | 第一三共株式会社 | 抗腫瘍剤 |
JP2007061047A (ja) * | 2005-09-01 | 2007-03-15 | Oriental Yeast Co Ltd | 乳癌細胞の検出方法 |
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