JP2004331117A - 加熱殺菌済み食品の製造方法及び加熱殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】典型的には紙容器の内側にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法を提供する。
【構成】底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法であって、前記複合容器の中に食品を充填して該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法。
【選択図】 図1
【構成】底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法であって、前記複合容器の中に食品を充填して該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、典型的には紙からなる外側容器の内側にプラスチックシートを接着した複合容器を用いてレトルト食品等の加熱殺菌済み食品を製造する方法及び加熱殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境問題や省資源化という社会的な関心に応じるために、耐熱水性などの機能性を付加した複合容器に関する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この複合容器は、典型的には紙からなる外装容器の内側に、プラスチックシート又はプラスチック成形体を接着した構造を有する。この複合容器によれば、レトルト食品を製造する過程で行う熱水処理、つまり容器に熱水を接触させて加熱殺菌する処理や、レトルト食品を食べる前に容器ごと熱水で加熱する行為に耐えることができることから、この複合容器を使用したレトルト食品の実用化が急がれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−270511号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、典型的には紙容器の内側にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法を提供するものであり、フランジ付き複合容器に食品を充填して蓋で密封した後、加熱殺菌処理を行うときに、蓋に反り及び/又はしわが発生するのを防止することのできる加熱殺菌済み食品の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、内側にプラスチックシートを延伸させて接着した比較的深い複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、複合容器を用いるレトルト食品の製造などに適用される加熱殺菌方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法であって、前記複合容器の中に食品を充填して該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法を提供することにより達成される。
【0008】
上記の技術的課題は、本発明の他の観点によれば、
底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器の中に被殺菌物を充填し、該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌方法を提供することにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を適用するのに、好ましい実施の形態として、外装繊維構造容器の材料としては、100%バージンパルプを材料とした紙、100%再生紙、再生紙とバージンパルプとを材料とした紙、NBKPやLBKPを材料とした紙、木材パルプ以外のケナフ、バンブーなどの植物繊維材料からなる紙、クレーコート処理した紙などを例示的に挙げることができる。また、これらの紙材料に、湿潤時の紙力増強剤や耐水化剤、撥水剤を含浸させた加工紙であってもよい。
【0010】
また、外装繊維構造容器の材料として、上述した紙材料の抄紙段階あるいは抄紙後に、剛性、耐水性、耐熱水性を付与できる樹脂を含浸させる二次加工を施した紙であってもよく、例えば、ラミネート用接着剤の硬化剤を約5%程度含浸させることによりパルプと樹脂との結合組織(構造式:R−NCO、ここにRは樹脂)を含む含浸紙を採用するのが耐熱水性を確保する上で好ましい。また、外装繊維構造容器は、例えば一枚のボードを折り込み、糊代を糊付けすることにより容器の形状に成形したものであってもよく、或いは、金型を用いて容器の形状に成形したものであってもよい。
【0011】
典型的には紙からなる外装繊維構造容器に含浸することのできる樹脂、つまり乾燥強度や耐水性、湿潤強度を付与できる樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド、でんぷん等を挙げることができ、また、湿潤時の紙力増強剤としては、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、でんぷん、ポリアミドアミン、そのエピクロルヒドリン変性体、各種ラテックスを挙げることができる。ここに、各種ラテックスとしては、天然ゴムラテックス、SBR、NBR、ポリクロロプレンなどの剛性ゴムラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、これらの共重合体の樹脂ラテックスなどを例示することができる。
【0012】
外装繊維構造容器に耐熱水性を付与するのに適した樹脂として、シラン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂などの熱硬化性樹脂を例示することができるが、この他に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂なども、要求耐熱水温度によっては選択可能である。
【0013】
外装繊維構造容器としては、紙の片面又は両面に樹脂層をラミネートしたものであってもよい。外装繊維構造容器の外側の面に例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂をラミネートしたものであってもよく、また、これに代えて又はこれに加えて、容器の内側の面に、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体のようなバリア性樹脂の単体又はこれらの樹脂を組み合わせた複合シートをラミネートしたものであってもよい。
【0014】
外装繊維構造容器の内側に貼着するプラスチックシートの材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン樹脂の他に、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂などを挙げることができる。また、これらの成形可能な樹脂と、ポリアミド樹脂やエチレン−ビニルアルコール共重合体のようなバリア性樹脂との積層構造を含む材料であってもよい。このような積層構造のプラスチック材料を用いることにより、酸素バリア性、水蒸気バリア性、保香性を付与することができる。
【0015】
外装繊維構造容器の内側にプラスチックシートを延伸させて成形しつつ貼着するには、真空成形法を採用するのがよい。また、必要に応じて、圧空成形法を付加してもよい。これにより、プラスチックシート材料は延伸し、真空引きにより外装繊維構造容器の内面に密着した状態になる。
【0016】
外装繊維構造容器の深さを実質的に意味するプラスチックシートの面絞り比は、1.6〜2.1%、より好ましくは、1.8%〜2.1%であるのがよい。このような面絞り比に設定することにより、比較的深い30mm〜40mm程度の深さを有する外装繊維構造容器の内面に沿ってプラスチックシートを延伸し、成形した複合容器を得ることができる。このような30mmを超える深さを有する複合容器を使用すれば、肉や野菜などの比較的大きな固形物を含む食品を収容することが可能になる一方、特に、熱水を接触させて加熱殺菌処理を施したときに、蓋に反り及び/又はしわが発生しやすくなるのであるが、本発明を適用することにより、この問題を好適に解決することができる。尚、上記の「面絞り比」については、例えば、伊神秀生著,「シートフォーミングとその設計手法」,1995年1月12日初版発行,株式会社日報発行,第170頁に記載されている。
【0017】
外装繊維構造容器として、最も好適には、矩形の底と該底の各側縁から起立する側壁とを有する打ち抜き材料を折り込むことにより作られた容器であるのがよい。このような打ち抜き材料を折り込むことにより作られる外装繊維構造容器を採用したときには、容器の底の4つの角に必然的にできる隙間を通じて真空引きを行うことができる。また、真空引きによるプラスチックシートの成形を確実にするのに必要で有れば、外装繊維構造容器の底の角隅部に小孔を形成するようにしてもよい。
【0018】
外装繊維構造容器の坪量は、特に制限するものではないが、例えば、加熱殺菌処理後の乾燥処理を効率的に実施でき、また、製品化後喫食する際に、電子レンジなどで温めてから手で持って取り出すときに手に熱さを感じ難くさせるなどの観点から、約200g/m2〜約350g/m2、より好ましくは、約200g/m2〜約300g/m2であるのがよい。
【0019】
加熱殺菌処理としては、加熱媒体として熱水を使用する既知の処理法を採用することができる。具体的には、例えば被殺菌物を熱水の中に浸漬させて殺菌処理を行う熱水式殺菌法、被殺菌物に熱水をシャワー状にかけて殺菌処理を行うシャワー式殺菌法を挙げることができる。また、これらの処理方法を適宜組み合わせた殺菌法を採用することもできる。更に、これらに代えて又はこれらに加えて過熱水蒸気を用いて殺菌処理を施すこともできる。加熱殺菌処理の条件としては、レトルト食品のように常温保存性を付与する場合には、被殺菌物の殺菌価(固形物を含む食品の場合には当該固形物の殺菌価)がF=4以上を達成するように設定するのがよい。このようなF=4以上を達成し得る条件としては、具体的には、例えば110〜135℃で10秒間〜40分間を例示することができる。
【0020】
前記加熱殺菌処理を施した後の複合容器には、乾燥処理を施すのがよい。すなわち、加熱殺菌処理を施した複合容器は、外装繊維構造容器が熱水を吸収して軟化しているので、その強度が弱くなっている。したがって、複合容器に乾燥処理を施すことによって、外装繊維構造容器が吸収した水分を取り除き、複合容器の強度を復元させることができる。これにより、製品の出荷時や陳列時などにおいて、複合容器に物理的な力が加わっても複合容器の不用意な変形を防止することができる。また、乾燥処理は、例えば複合容器を60〜110℃の雰囲気下に8分間〜1時間置くことに行うことができる。また、例えば複合容器に60〜110℃の熱風を5分間〜1時間吹きつけることにより行うことができる。
【0021】
【実施例】
添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を以下に詳しく説明する。
図1は、実施例の複合容器を示す。図示の複合容器1はレトルト食品の包装材として好適に適用される。複合容器1は、外側に位置する有底の外装繊維構造容器2と、その内側面の全域に接着された内装プラスチックシート3とからなり、内装プラスチックシート3は四層構造のシート材料から作られている。
【0022】
外装繊維構造容器2は、パルプにラミネート用接着剤の硬化剤を約5%含浸させてパルプと樹脂を結合させた、構造式R−NCOで表される耐熱水性含浸紙から作られている。この外装繊維構造容器2は、約290g/m2の厚みを有する。
【0023】
内装プラスチックシート3の材料は、最も外側に位置する接着性樹脂層7、その内側にポリプロピレン樹脂からなる外側樹脂層4、最も内側に位置して食品と接することになる内側樹脂層5(ポリプロピレン樹脂)と、これら内外の樹脂層4と5との間に挟まれた中間樹脂層6との四層構造を有し、中間層6は、ガスバリア性樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合体)で構成されている。内装プラスチックシート3の材料は、接着性樹脂層7として、外側樹脂層4の外側面に予め塗布された接着剤で構成してもよい。
【0024】
外装繊維構造容器2は、図2に示す打ち抜き含浸紙材料10を折り込んで、フラップ11及び後に説明する側壁14の端部を糊付けすることのより作られる。すなわち、打ち抜き含浸紙材料10は、矩形の平らな底13の各側縁から独立した各側壁14を含む片が延びており、この片によって各側壁14が形成される。含浸紙材料10は、フラップ11が外装容器2の内面に露出するようにして折り込むことにより、図3に示す外装繊維構造容器2が作られる。
【0025】
この外装容器2は、図3から理解できるように、矩形の底13の各側縁から斜め外方に起立する傾斜側壁14を有する。外装容器2は、また、側壁14の上端縁から外方に向けて広がる略水平のフランジ15を有し、このフランジ15は全周に亘って延びている。すなわち、外装繊維構造容器2は、矩形の底13から徐々に拡開する傾斜側壁14によって広口の矩形の開口16を有し、また、側壁14の上端には、外方に広がる略水平の全周フランジ15を有する。ちなみに、外装繊維構造構造容器2は、寸法は次のとおりである。
【0026】
底13:横90mm×縦60mm;
高さ :35mm;
フランジ15の幅:10mm;
【0027】
外装繊維構造容器2は、打ち抜き含浸紙材料10を折り込むことにより作られていることから、底13の4つの角には、隣接する側壁14、14間に隙間が必然的にでき、この隙間を利用して、後に説明する真空引きが可能であるが、この真空引きの作用を確実なものにする必要が有れば、底13の4つの角隅部の各々に小孔18を設けるようにしてもよい。
【0028】
複合容器1は、そのフランジ15に、一枚のシート状の蓋体20を接着することにより密封される。蓋体20は、図3に示すように、フランジ15の外縁で規定される矩形とほぼ同じ大きさの矩形の形状を有する。蓋体20は、図示を省略したが、上側(外側)に含浸紙層を有し、下側(内側)に二層構造のプラスチックシート(アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリプロピレン樹脂)を有し、これらは接着層で互いに結合されている。なお、複合容器1及び/又は蓋体20は、その外側に位置する含浸紙の表面に商標などを印刷して、その上にニスを塗布するようにしてもよいし(図1参照)、又は、蓋体20で密封した複合容器1を、商標などを印刷したシュリンクフィルムで覆うようにしてもよい。
【0029】
複合容器1の製造方法を図4を参照して説明すると、打ち抜き含浸紙材料10を上下に積み重ねた含浸紙スタックから一枚ずつ取り出して、これを組み立てて外装繊維構造容器2を作り、この容器2を成形型Mのキャビティに装着する。成形型Mは、キャビティの底の角部、つまり外装繊維構造容器2の底13の4つの角隅部、つまり底13の4つの角及び/又は小孔18にほぼ対向する部位に開口する透孔30を有する。外装繊維構造容器2を成形型Mに装着した後、ロール31に巻回されているプラスチックシート3を引っ張り出して加熱し、この加熱されたプラスチックシート3を一定の張力をかけた状態で容器2の上に位置決めし、この状態で、真空成形法に従い成形型Mの透孔30を通じて真空引きを行う。
【0030】
この真空引きにより、プラスチックシート3は、外装容器2の内面に密着した状態となるまで延伸され成形される。変形例として、この真空成形に加えて、加圧エアでプラスチックシート3を加圧する圧空成形を行うようにしてもよい。これにより、プラスチックシート3は延伸され、外装繊維構造容器2の内面及びフランジ15に沿った形状に成形されつつ、接着性樹脂層7によって外装容器2の内面に結合されて一体化する。そして、次の工程で、カッタ32により、プラスチックシート3が切断され、供給ロール31から切り離されて、複合容器1の製造が完了し、この複合容器1は、成形型Mから取り出される。このようにして製造した複合容器1は、プラスチックシート3の材料が、外装容器2の内表面の全面積まで拡張する面絞り比は約2.0であった。
【0031】
複合容器1をレトルト食品の包装用に使用する場合、複合容器1の中に食品、具体的にはカレー、シチュー、スープ、ソース、粥などを充填し、この食品を充填した複合容器1を蓋20で密封した後、レトルト殺菌処理を施し、これにより複合容器入りレトルト食品を製造することができる。なお、ここでのレトルト殺菌処理は、122℃、6分間(F=8)の条件で行う。
【0032】
ここで、レトルト殺菌処理は、図5に示すように、レトルト殺菌装置内の載置台又は殺菌トレーの載置部に複合容器1を上下に反転させて載置し、容器1の底13を上にした状態で行う。これにより、複合容器1の変形を防止することができる。すなわち、複合容器1にレトルト殺菌処理を施すと、延伸されたプラスチックシート3が熱によって収縮しようとする。しかし、外装繊維構造容器2は熱水を吸収して軟化しているので、このプラスチックシート3の収縮を抑えることができない。そのため、仮に、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理を施した場合には、延伸したプラスチックシート3が収縮し、これに伴ってフランジ15の外側が上方に反り返り、蓋20の反り返り及び/又はしわが発生してしまうことになる。また、この場合には、容器1の傾斜側壁14に内容物からの力が加わり易くなるので、この側壁14が外方に向けて膨出してしまう「容器の胴膨れ」現象が発生する。
【0033】
これに対して、容器1を上下に反転させて容器1の底13を上にした状態で加熱殺菌処理を施した場合には、容器1のフランジ15及び蓋20に内容物の自重が加わった状態で処理されることになる。これにより、外装繊維構造容器2が熱水を吸収して軟化しても、フランジ15及び蓋20に反り返り及び/又はしわが発生してしまうのを効果的に防止することができる。また、この場合には、容器1の傾斜側壁14に内容物からの力が加わり難くなるので、「容器の胴膨れ」現象も効果的に抑えることができる。
【0034】
次に、加熱殺菌処理を施した複合容器1に乾燥処理を施して、外装繊維構造容器2が吸水した水分を取り除く。ここでの乾燥処理は100℃、10分間の条件で行う。この乾燥処理も、乾燥装置内の載置台又はトレーの載置部に複合容器1を上下に反転させて載置し、容器1の底13を上にした状態で行うのが、複合容器1の変形、すなわちフランジ15及び蓋20に反り返り及び/又はしわの発生を防止する上で好ましく、また、効果的である。なお、変形例として、加熱殺菌装置に乾燥処理を行うための設備を付加して、加熱殺菌装置内で乾燥処理を行うようにすることもできる。
【0035】
因みに、上述のように、プラスチックシート3の面絞り比が比較的高い場合に、特に、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理を施すと、フランジ15及び/又は蓋20の反り又はしわ、並びに「容器の胴膨れ」現象が発生し易くなる。これに対して、容器1を上下に反転させて容器1の底13を上にした状態で加熱殺菌処理を施すことで、このような問題の発生を効果的に抑えることが可能になる。
【0036】
(比較評価)
実施例のレトルト食品と、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理及び乾燥処理を施したこと以外は、実施例と同様にして製造した比較例のレトルト食品とで、比較評価を行った。すなわち、図6は、蓋20を上からみた図を示し、先ず、実施例と比較例について、フランジ15の上に位置する蓋20のA〜Dの各位置における高さを測定して、その平均値を求めた。その結果、実施例では、A〜Dの各高さの平均は36.76mmであったのに対して、比較例では、A〜Dの各高さの平均は38.28mmであった。これは、比較例では、実施例と比べて、フランジ15が上方に反り返っていることを示している。
【0037】
次に、実施例と比較例について、開口16の上に位置する蓋20のE〜Mの各位置における高さを測定して、その標準偏差値を求めた。その結果、実施例では、E〜Mの各高さの標準偏差は0.598であったのに対して、比較例では、E〜Mの各高さの標準偏差は1.286であり、標準偏差の値は実施例の方が比較例と比較して明らかに小さかった。そして、両者の外観を比べると、比較例では、蓋20に反り返りとしわが明らかに認められるのに対して、実施例では蓋20に反り返りとしわが殆ど認められなかった。
【0038】
このようにして、本発明を適用して製造されたレトルト食品は、例えば、容器1を蓋20が上を向くように元の状態に戻し、段ボール箱に詰めるなどして販売先まで搬送され店頭に陳列される。この際、このレトルト食品は、多段に積み重ねられることがあっても、上述のように、乾燥処理によって外装繊維構造容器2から水分を取り除いて複合容器1の強度を復元させているので、不用意に変形したり、また、変形して倒れたりすることがない。また、このレトルト食品は、店頭に陳列されたときに、蓋20に反りとしわがなく、また、「容器の胴膨れ」現象もなく綺麗な外観を呈する。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の複合容器の構造を説明するための図である。
【図2】実施例の複合容器の外装含浸紙容器を作るために用意される打ち抜き材料の平面図である。
【図3】打ち抜き材料を折り込むことにより作られた外装含浸紙容器と、複合容器の蓋体の材料とを説明するための図である。
【図4】実施例の複合容器の製造プロセスの概要を説明するための図である。
【図5】実施例のフランジ付き複合容器に食品を充填して蓋体で密封した後に、加熱殺菌処理を行うときに、容器を逆さまにすることを説明するための図である。
【図6】実施例および比較例のレトルト食品について高さを測定した位置A〜Mを説明するための図である。
【符号の説明】
1 複合容器
2 内装含浸紙容器
3 プラスチックシート
7 接着層
13 内装含浸紙容器の底
14 内装含浸紙容器の側壁
15 フランジ
18 小孔
20 蓋体
M 成形型
【発明の属する技術分野】
この発明は、典型的には紙からなる外側容器の内側にプラスチックシートを接着した複合容器を用いてレトルト食品等の加熱殺菌済み食品を製造する方法及び加熱殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境問題や省資源化という社会的な関心に応じるために、耐熱水性などの機能性を付加した複合容器に関する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この複合容器は、典型的には紙からなる外装容器の内側に、プラスチックシート又はプラスチック成形体を接着した構造を有する。この複合容器によれば、レトルト食品を製造する過程で行う熱水処理、つまり容器に熱水を接触させて加熱殺菌する処理や、レトルト食品を食べる前に容器ごと熱水で加熱する行為に耐えることができることから、この複合容器を使用したレトルト食品の実用化が急がれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−270511号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、典型的には紙容器の内側にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法を提供するものであり、フランジ付き複合容器に食品を充填して蓋で密封した後、加熱殺菌処理を行うときに、蓋に反り及び/又はしわが発生するのを防止することのできる加熱殺菌済み食品の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、内側にプラスチックシートを延伸させて接着した比較的深い複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、複合容器を用いるレトルト食品の製造などに適用される加熱殺菌方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法であって、前記複合容器の中に食品を充填して該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法を提供することにより達成される。
【0008】
上記の技術的課題は、本発明の他の観点によれば、
底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器の中に被殺菌物を充填し、該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌方法を提供することにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を適用するのに、好ましい実施の形態として、外装繊維構造容器の材料としては、100%バージンパルプを材料とした紙、100%再生紙、再生紙とバージンパルプとを材料とした紙、NBKPやLBKPを材料とした紙、木材パルプ以外のケナフ、バンブーなどの植物繊維材料からなる紙、クレーコート処理した紙などを例示的に挙げることができる。また、これらの紙材料に、湿潤時の紙力増強剤や耐水化剤、撥水剤を含浸させた加工紙であってもよい。
【0010】
また、外装繊維構造容器の材料として、上述した紙材料の抄紙段階あるいは抄紙後に、剛性、耐水性、耐熱水性を付与できる樹脂を含浸させる二次加工を施した紙であってもよく、例えば、ラミネート用接着剤の硬化剤を約5%程度含浸させることによりパルプと樹脂との結合組織(構造式:R−NCO、ここにRは樹脂)を含む含浸紙を採用するのが耐熱水性を確保する上で好ましい。また、外装繊維構造容器は、例えば一枚のボードを折り込み、糊代を糊付けすることにより容器の形状に成形したものであってもよく、或いは、金型を用いて容器の形状に成形したものであってもよい。
【0011】
典型的には紙からなる外装繊維構造容器に含浸することのできる樹脂、つまり乾燥強度や耐水性、湿潤強度を付与できる樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド、でんぷん等を挙げることができ、また、湿潤時の紙力増強剤としては、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、でんぷん、ポリアミドアミン、そのエピクロルヒドリン変性体、各種ラテックスを挙げることができる。ここに、各種ラテックスとしては、天然ゴムラテックス、SBR、NBR、ポリクロロプレンなどの剛性ゴムラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、これらの共重合体の樹脂ラテックスなどを例示することができる。
【0012】
外装繊維構造容器に耐熱水性を付与するのに適した樹脂として、シラン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂などの熱硬化性樹脂を例示することができるが、この他に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂なども、要求耐熱水温度によっては選択可能である。
【0013】
外装繊維構造容器としては、紙の片面又は両面に樹脂層をラミネートしたものであってもよい。外装繊維構造容器の外側の面に例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂をラミネートしたものであってもよく、また、これに代えて又はこれに加えて、容器の内側の面に、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体のようなバリア性樹脂の単体又はこれらの樹脂を組み合わせた複合シートをラミネートしたものであってもよい。
【0014】
外装繊維構造容器の内側に貼着するプラスチックシートの材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン樹脂の他に、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂などを挙げることができる。また、これらの成形可能な樹脂と、ポリアミド樹脂やエチレン−ビニルアルコール共重合体のようなバリア性樹脂との積層構造を含む材料であってもよい。このような積層構造のプラスチック材料を用いることにより、酸素バリア性、水蒸気バリア性、保香性を付与することができる。
【0015】
外装繊維構造容器の内側にプラスチックシートを延伸させて成形しつつ貼着するには、真空成形法を採用するのがよい。また、必要に応じて、圧空成形法を付加してもよい。これにより、プラスチックシート材料は延伸し、真空引きにより外装繊維構造容器の内面に密着した状態になる。
【0016】
外装繊維構造容器の深さを実質的に意味するプラスチックシートの面絞り比は、1.6〜2.1%、より好ましくは、1.8%〜2.1%であるのがよい。このような面絞り比に設定することにより、比較的深い30mm〜40mm程度の深さを有する外装繊維構造容器の内面に沿ってプラスチックシートを延伸し、成形した複合容器を得ることができる。このような30mmを超える深さを有する複合容器を使用すれば、肉や野菜などの比較的大きな固形物を含む食品を収容することが可能になる一方、特に、熱水を接触させて加熱殺菌処理を施したときに、蓋に反り及び/又はしわが発生しやすくなるのであるが、本発明を適用することにより、この問題を好適に解決することができる。尚、上記の「面絞り比」については、例えば、伊神秀生著,「シートフォーミングとその設計手法」,1995年1月12日初版発行,株式会社日報発行,第170頁に記載されている。
【0017】
外装繊維構造容器として、最も好適には、矩形の底と該底の各側縁から起立する側壁とを有する打ち抜き材料を折り込むことにより作られた容器であるのがよい。このような打ち抜き材料を折り込むことにより作られる外装繊維構造容器を採用したときには、容器の底の4つの角に必然的にできる隙間を通じて真空引きを行うことができる。また、真空引きによるプラスチックシートの成形を確実にするのに必要で有れば、外装繊維構造容器の底の角隅部に小孔を形成するようにしてもよい。
【0018】
外装繊維構造容器の坪量は、特に制限するものではないが、例えば、加熱殺菌処理後の乾燥処理を効率的に実施でき、また、製品化後喫食する際に、電子レンジなどで温めてから手で持って取り出すときに手に熱さを感じ難くさせるなどの観点から、約200g/m2〜約350g/m2、より好ましくは、約200g/m2〜約300g/m2であるのがよい。
【0019】
加熱殺菌処理としては、加熱媒体として熱水を使用する既知の処理法を採用することができる。具体的には、例えば被殺菌物を熱水の中に浸漬させて殺菌処理を行う熱水式殺菌法、被殺菌物に熱水をシャワー状にかけて殺菌処理を行うシャワー式殺菌法を挙げることができる。また、これらの処理方法を適宜組み合わせた殺菌法を採用することもできる。更に、これらに代えて又はこれらに加えて過熱水蒸気を用いて殺菌処理を施すこともできる。加熱殺菌処理の条件としては、レトルト食品のように常温保存性を付与する場合には、被殺菌物の殺菌価(固形物を含む食品の場合には当該固形物の殺菌価)がF=4以上を達成するように設定するのがよい。このようなF=4以上を達成し得る条件としては、具体的には、例えば110〜135℃で10秒間〜40分間を例示することができる。
【0020】
前記加熱殺菌処理を施した後の複合容器には、乾燥処理を施すのがよい。すなわち、加熱殺菌処理を施した複合容器は、外装繊維構造容器が熱水を吸収して軟化しているので、その強度が弱くなっている。したがって、複合容器に乾燥処理を施すことによって、外装繊維構造容器が吸収した水分を取り除き、複合容器の強度を復元させることができる。これにより、製品の出荷時や陳列時などにおいて、複合容器に物理的な力が加わっても複合容器の不用意な変形を防止することができる。また、乾燥処理は、例えば複合容器を60〜110℃の雰囲気下に8分間〜1時間置くことに行うことができる。また、例えば複合容器に60〜110℃の熱風を5分間〜1時間吹きつけることにより行うことができる。
【0021】
【実施例】
添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を以下に詳しく説明する。
図1は、実施例の複合容器を示す。図示の複合容器1はレトルト食品の包装材として好適に適用される。複合容器1は、外側に位置する有底の外装繊維構造容器2と、その内側面の全域に接着された内装プラスチックシート3とからなり、内装プラスチックシート3は四層構造のシート材料から作られている。
【0022】
外装繊維構造容器2は、パルプにラミネート用接着剤の硬化剤を約5%含浸させてパルプと樹脂を結合させた、構造式R−NCOで表される耐熱水性含浸紙から作られている。この外装繊維構造容器2は、約290g/m2の厚みを有する。
【0023】
内装プラスチックシート3の材料は、最も外側に位置する接着性樹脂層7、その内側にポリプロピレン樹脂からなる外側樹脂層4、最も内側に位置して食品と接することになる内側樹脂層5(ポリプロピレン樹脂)と、これら内外の樹脂層4と5との間に挟まれた中間樹脂層6との四層構造を有し、中間層6は、ガスバリア性樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合体)で構成されている。内装プラスチックシート3の材料は、接着性樹脂層7として、外側樹脂層4の外側面に予め塗布された接着剤で構成してもよい。
【0024】
外装繊維構造容器2は、図2に示す打ち抜き含浸紙材料10を折り込んで、フラップ11及び後に説明する側壁14の端部を糊付けすることのより作られる。すなわち、打ち抜き含浸紙材料10は、矩形の平らな底13の各側縁から独立した各側壁14を含む片が延びており、この片によって各側壁14が形成される。含浸紙材料10は、フラップ11が外装容器2の内面に露出するようにして折り込むことにより、図3に示す外装繊維構造容器2が作られる。
【0025】
この外装容器2は、図3から理解できるように、矩形の底13の各側縁から斜め外方に起立する傾斜側壁14を有する。外装容器2は、また、側壁14の上端縁から外方に向けて広がる略水平のフランジ15を有し、このフランジ15は全周に亘って延びている。すなわち、外装繊維構造容器2は、矩形の底13から徐々に拡開する傾斜側壁14によって広口の矩形の開口16を有し、また、側壁14の上端には、外方に広がる略水平の全周フランジ15を有する。ちなみに、外装繊維構造構造容器2は、寸法は次のとおりである。
【0026】
底13:横90mm×縦60mm;
高さ :35mm;
フランジ15の幅:10mm;
【0027】
外装繊維構造容器2は、打ち抜き含浸紙材料10を折り込むことにより作られていることから、底13の4つの角には、隣接する側壁14、14間に隙間が必然的にでき、この隙間を利用して、後に説明する真空引きが可能であるが、この真空引きの作用を確実なものにする必要が有れば、底13の4つの角隅部の各々に小孔18を設けるようにしてもよい。
【0028】
複合容器1は、そのフランジ15に、一枚のシート状の蓋体20を接着することにより密封される。蓋体20は、図3に示すように、フランジ15の外縁で規定される矩形とほぼ同じ大きさの矩形の形状を有する。蓋体20は、図示を省略したが、上側(外側)に含浸紙層を有し、下側(内側)に二層構造のプラスチックシート(アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリプロピレン樹脂)を有し、これらは接着層で互いに結合されている。なお、複合容器1及び/又は蓋体20は、その外側に位置する含浸紙の表面に商標などを印刷して、その上にニスを塗布するようにしてもよいし(図1参照)、又は、蓋体20で密封した複合容器1を、商標などを印刷したシュリンクフィルムで覆うようにしてもよい。
【0029】
複合容器1の製造方法を図4を参照して説明すると、打ち抜き含浸紙材料10を上下に積み重ねた含浸紙スタックから一枚ずつ取り出して、これを組み立てて外装繊維構造容器2を作り、この容器2を成形型Mのキャビティに装着する。成形型Mは、キャビティの底の角部、つまり外装繊維構造容器2の底13の4つの角隅部、つまり底13の4つの角及び/又は小孔18にほぼ対向する部位に開口する透孔30を有する。外装繊維構造容器2を成形型Mに装着した後、ロール31に巻回されているプラスチックシート3を引っ張り出して加熱し、この加熱されたプラスチックシート3を一定の張力をかけた状態で容器2の上に位置決めし、この状態で、真空成形法に従い成形型Mの透孔30を通じて真空引きを行う。
【0030】
この真空引きにより、プラスチックシート3は、外装容器2の内面に密着した状態となるまで延伸され成形される。変形例として、この真空成形に加えて、加圧エアでプラスチックシート3を加圧する圧空成形を行うようにしてもよい。これにより、プラスチックシート3は延伸され、外装繊維構造容器2の内面及びフランジ15に沿った形状に成形されつつ、接着性樹脂層7によって外装容器2の内面に結合されて一体化する。そして、次の工程で、カッタ32により、プラスチックシート3が切断され、供給ロール31から切り離されて、複合容器1の製造が完了し、この複合容器1は、成形型Mから取り出される。このようにして製造した複合容器1は、プラスチックシート3の材料が、外装容器2の内表面の全面積まで拡張する面絞り比は約2.0であった。
【0031】
複合容器1をレトルト食品の包装用に使用する場合、複合容器1の中に食品、具体的にはカレー、シチュー、スープ、ソース、粥などを充填し、この食品を充填した複合容器1を蓋20で密封した後、レトルト殺菌処理を施し、これにより複合容器入りレトルト食品を製造することができる。なお、ここでのレトルト殺菌処理は、122℃、6分間(F=8)の条件で行う。
【0032】
ここで、レトルト殺菌処理は、図5に示すように、レトルト殺菌装置内の載置台又は殺菌トレーの載置部に複合容器1を上下に反転させて載置し、容器1の底13を上にした状態で行う。これにより、複合容器1の変形を防止することができる。すなわち、複合容器1にレトルト殺菌処理を施すと、延伸されたプラスチックシート3が熱によって収縮しようとする。しかし、外装繊維構造容器2は熱水を吸収して軟化しているので、このプラスチックシート3の収縮を抑えることができない。そのため、仮に、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理を施した場合には、延伸したプラスチックシート3が収縮し、これに伴ってフランジ15の外側が上方に反り返り、蓋20の反り返り及び/又はしわが発生してしまうことになる。また、この場合には、容器1の傾斜側壁14に内容物からの力が加わり易くなるので、この側壁14が外方に向けて膨出してしまう「容器の胴膨れ」現象が発生する。
【0033】
これに対して、容器1を上下に反転させて容器1の底13を上にした状態で加熱殺菌処理を施した場合には、容器1のフランジ15及び蓋20に内容物の自重が加わった状態で処理されることになる。これにより、外装繊維構造容器2が熱水を吸収して軟化しても、フランジ15及び蓋20に反り返り及び/又はしわが発生してしまうのを効果的に防止することができる。また、この場合には、容器1の傾斜側壁14に内容物からの力が加わり難くなるので、「容器の胴膨れ」現象も効果的に抑えることができる。
【0034】
次に、加熱殺菌処理を施した複合容器1に乾燥処理を施して、外装繊維構造容器2が吸水した水分を取り除く。ここでの乾燥処理は100℃、10分間の条件で行う。この乾燥処理も、乾燥装置内の載置台又はトレーの載置部に複合容器1を上下に反転させて載置し、容器1の底13を上にした状態で行うのが、複合容器1の変形、すなわちフランジ15及び蓋20に反り返り及び/又はしわの発生を防止する上で好ましく、また、効果的である。なお、変形例として、加熱殺菌装置に乾燥処理を行うための設備を付加して、加熱殺菌装置内で乾燥処理を行うようにすることもできる。
【0035】
因みに、上述のように、プラスチックシート3の面絞り比が比較的高い場合に、特に、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理を施すと、フランジ15及び/又は蓋20の反り又はしわ、並びに「容器の胴膨れ」現象が発生し易くなる。これに対して、容器1を上下に反転させて容器1の底13を上にした状態で加熱殺菌処理を施すことで、このような問題の発生を効果的に抑えることが可能になる。
【0036】
(比較評価)
実施例のレトルト食品と、容器1を上下に反転させることなく加熱殺菌処理及び乾燥処理を施したこと以外は、実施例と同様にして製造した比較例のレトルト食品とで、比較評価を行った。すなわち、図6は、蓋20を上からみた図を示し、先ず、実施例と比較例について、フランジ15の上に位置する蓋20のA〜Dの各位置における高さを測定して、その平均値を求めた。その結果、実施例では、A〜Dの各高さの平均は36.76mmであったのに対して、比較例では、A〜Dの各高さの平均は38.28mmであった。これは、比較例では、実施例と比べて、フランジ15が上方に反り返っていることを示している。
【0037】
次に、実施例と比較例について、開口16の上に位置する蓋20のE〜Mの各位置における高さを測定して、その標準偏差値を求めた。その結果、実施例では、E〜Mの各高さの標準偏差は0.598であったのに対して、比較例では、E〜Mの各高さの標準偏差は1.286であり、標準偏差の値は実施例の方が比較例と比較して明らかに小さかった。そして、両者の外観を比べると、比較例では、蓋20に反り返りとしわが明らかに認められるのに対して、実施例では蓋20に反り返りとしわが殆ど認められなかった。
【0038】
このようにして、本発明を適用して製造されたレトルト食品は、例えば、容器1を蓋20が上を向くように元の状態に戻し、段ボール箱に詰めるなどして販売先まで搬送され店頭に陳列される。この際、このレトルト食品は、多段に積み重ねられることがあっても、上述のように、乾燥処理によって外装繊維構造容器2から水分を取り除いて複合容器1の強度を復元させているので、不用意に変形したり、また、変形して倒れたりすることがない。また、このレトルト食品は、店頭に陳列されたときに、蓋20に反りとしわがなく、また、「容器の胴膨れ」現象もなく綺麗な外観を呈する。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の複合容器の構造を説明するための図である。
【図2】実施例の複合容器の外装含浸紙容器を作るために用意される打ち抜き材料の平面図である。
【図3】打ち抜き材料を折り込むことにより作られた外装含浸紙容器と、複合容器の蓋体の材料とを説明するための図である。
【図4】実施例の複合容器の製造プロセスの概要を説明するための図である。
【図5】実施例のフランジ付き複合容器に食品を充填して蓋体で密封した後に、加熱殺菌処理を行うときに、容器を逆さまにすることを説明するための図である。
【図6】実施例および比較例のレトルト食品について高さを測定した位置A〜Mを説明するための図である。
【符号の説明】
1 複合容器
2 内装含浸紙容器
3 プラスチックシート
7 接着層
13 内装含浸紙容器の底
14 内装含浸紙容器の側壁
15 フランジ
18 小孔
20 蓋体
M 成形型
Claims (7)
- 底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器を用いて、加熱殺菌済み食品を製造する方法であって、前記複合容器の中に食品を充填して該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法。
- 前記加熱殺菌処理を施した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に乾燥処理を施す、請求項1に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
- 前記プラスチックシートの面絞り比が1.6〜2.1%である、請求項1又は2に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
- 前記外装繊維構造容器の側壁が、底の周縁から斜め外方に起立している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
- 底と側壁と該側壁の上端から外方に広がるフランジとを備えた有底の外装繊維構造容器の内面にプラスチックシートを延伸させて接着した複合容器の中に被殺菌物を充填し、該複合容器を蓋で密封した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に熱水を接触させて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする加熱殺菌方法。
- 前記加熱殺菌処理を施した後、該複合容器を上下に反転させて底を上に向けた状態で、該複合容器に乾燥処理を施す、請求項5に記載の加熱殺菌方法。
- 前記プラスチックシートの面絞り比が1.6〜2.1%である、請求項5又は6に記載の加熱殺菌方法。
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