JP2004330654A - 導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度及び湿度等の雰囲気等に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】本導電性ローラは、芯材と、芯材を被覆し且つ芯材に接着された弾性多孔質層23と、弾性多孔質層の表面に接着層3を介して植毛されている、導電性高分子被覆繊維41(表面がポリピロールにより被覆された繊維等)及び電着処理繊維42(表面がコロイダルシリカにより処理された繊維等)とを備える。本導電性ローラの製造方法は、芯材と、芯材を被覆し且つ芯材に接着された弾性多孔質層とを備えるローラ基体における弾性多孔質層の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、この塗膜に、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備える。
【選択図】 図3
【解決手段】本導電性ローラは、芯材と、芯材を被覆し且つ芯材に接着された弾性多孔質層23と、弾性多孔質層の表面に接着層3を介して植毛されている、導電性高分子被覆繊維41(表面がポリピロールにより被覆された繊維等)及び電着処理繊維42(表面がコロイダルシリカにより処理された繊維等)とを備える。本導電性ローラの製造方法は、芯材と、芯材を被覆し且つ芯材に接着された弾性多孔質層とを備えるローラ基体における弾性多孔質層の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、この塗膜に、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備える。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法に関する。
本発明は、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置、半導体等の静電気の影響を受け易い電子部品を取扱うところでの除電装置、カメラ等の光学機械の部材、電磁ノイズ防止シートなどに広く利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来より、導電性繊維を備える導電性材料は、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置、除電装置、光学機械の部材等において幅広く利用されている。
また、従来より使用されている導電性繊維としては、ポリピロール等の導電性高分子により繊維表面が被覆された導電性高分子被覆繊維が知られている(例えば、特許文献1参照。)。更には、繊維をタンニン、吐酒石等により処理して、繊維表面にタンニン化合物等を生成させ、その保水性を利用して表面の通電性を保つ方法や、繊維に界面活性剤、珪酸ソーダ、コロイダルシリカ等を付着させ、それらの吸着水分を利用して表面の通電性を保つ方法を用いた電着処理繊維、即ち導電性を得るために繊維表面に水分を保持させるための処理が施された繊維が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−220776号公報
【非特許文献1】
「静電気学会誌」、1992年、第16巻、第5号、p.389−395
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
導電性繊維を備える導電性材料を機能部材として、特に画像形成装置等に用いられる導電性ローラなどとして使用するには、静電気力を作用させるために必要な電荷を移動させるため、部材の電気抵抗を所望の値に制御できることが必要である。特に、近年、画像形成装置に対する高画質化、装置の小型化等の要求が高まりつつあり、電気抵抗を制御する際の精度の向上、導電性機能部材の長寿命化等が求められている。
しかしながら、上記の従来技術は、静電植毛の際に効率よく均質に植毛するため、繊維の帯電性、分離性等を向上させ、繊維の飛翔性を向上させることを目的としたものであり、繊維が植毛された後の導電性材料の導電性に関しては何ら考慮されていない。
即ち、上記の導電性高分子被覆繊維を用いて導電性機能部材を作製した場合、低湿度雰囲気下の使用においては印加電圧及び経過時間によらず105〜107Ωの比較的低い抵抗値を示し、導電性は安定しているが、高湿度雰囲気下の使用、特に長時間連続での使用においては、印加される電界により繊維表面の導電性高分子層からドーパントが電気泳動して離脱してしまい、抵抗値が時間と共に不可逆的に上昇し、要求される抵抗値の範囲を逸脱してしまうことが考えられる。よって、電気抵抗を所望の値に制御することが困難となることがあり、長寿命化の要求に対応することも困難となる。
また、上記の電着処理繊維を用いて導電性機能部材を作製した場合、高湿度雰囲気下の使用においては経過時間によらず105〜107Ωの比較的低い抵抗値を示し、高電圧を印加しても、空気中から水分が供給されるため抵抗値は安定しているが、低湿度雰囲気下の使用においては、水分の離脱が生じるため、抵抗値が109Ωを超える程高くなってしまい、電気抵抗を所望の値に制御することが困難となることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の通りである。
(1)基材と、該基材の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性植毛部材。
(2)上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである上記(1)に記載の導電性植毛部材。
(3)基材の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性植毛部材の製造方法。
(4)芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層と、該弾性多孔質層の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性ローラ。
(5)上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである上記(4)に記載の導電性ローラ。
(6)芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層とを備えるローラ基体における該弾性多孔質層の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【0007】
【発明の効果】
本発明の導電性植毛部材によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維における表面漏洩抵抗値がそれぞれ105〜1010Ωである場合には、十分な導電性を有する導電性植毛部材とすることができる。
本発明の導電性植毛部材の製造方法によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材を容易に製造することができる。
本発明の導電性ローラによれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。そのため、精度の高い電気抵抗の制御が可能となり、且つ寿命が長くなり、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置において好適に利用できる。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである場合には、十分な導電性を有する導電性ローラとすることができる。
本発明の導電性ローラの製造方法によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性ローラを容易に製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]導電性植毛部材及びその製造方法
(1)導電性植毛部材
本発明の導電性植毛部材における上記「基材」は、導電性を有しており、接着層により導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を支持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、導電性を付与した弾性多孔質体、導電性プラスチック、及び鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属などの材質からなるものが挙げられる。
【0009】
上記「接着層」は、上記基材の表面に導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を固定するものである。この接着層は導電性を有していれば特に限定されず、例えば、公知の接着剤に導電性フィラーを含有させたものを基材表面に塗布し、乾燥及び/又は硬化させて形成される。
この接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、合成ゴム及び天然ゴム等を主成分とする接着剤を用いることができる。また、これらの樹脂を主成分とする水系接着剤は、基材として弾性多孔質のものを用いた場合、基材を膨潤させることが少ないため好ましい。特に、この樹脂としてはアクリル樹脂が好ましい。このアクリル樹脂は、非反応性ポリアクリル酸エステル(非架橋型)、反応性ポリアクリル酸エステル(主としてメチロールメラミンを架橋剤として用いる)及び自己架橋型ポリアクリル酸エステルに分けられ、反応型、自己架橋型は耐水性、耐アルカリ性、耐溶剤性等に優れるため、多く用いられている。また、反応型アクリル樹脂の場合、物性を改良するために官能基としてカルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基及びヒドロキシル基等の少なくとも1種を導入したものであってもよい。尚、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0010】
導電性フィラーとしては、例えば、導電性金属酸化物、炭素系導電性フィラー等が挙げられる。導電性金属酸化物としては、酸化スズ、酸化チタン、インジウム等の原子価の異なる元素をドープした酸化スズ、チタン酸カリウムウィスカー等の電気絶縁性酸化物の表面に酸化スズをコートしてなる導電性チタン酸カリウムウィスカーなどが挙げられる。また、炭素系導電性フィラーとしては、カーボンブラック、炭素短繊維、グラファイト粒子等が挙げられる。
【0011】
この接着層の厚みは特に限定されないが、20〜500μmであることが好ましく、より好ましくは40〜300μmである。この厚みが20〜500μmである場合、繊維の脱落が起こりにくい。また、基材が弾性多孔質体等の柔軟性を有するものであっても、その柔軟性を損なうことが少ないため好ましい。
【0012】
上記「導電性高分子被覆繊維」は、繊維の表面に導電性高分子が被覆されたものである。導電性高分子が被覆される繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン及びビニロン等の化学繊維、羊毛、木綿及び麻等の天然繊維、その他の複合紡糸繊維などが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
繊維の表面に被覆される導電性高分子としては、例えば、ピロール、N−メチルピロール、アニリン、チオフェン及びチオフェン−3−スルホン酸等のモノマーを重合させたポリマー又はコポリマーが挙げられる。なかでも、重合反応の活性が高く、繊維表面に導電性高分子層を短時間で形成することが可能なため、ピロールが好ましく用いられる。
【0013】
この導電性高分子被覆繊維における導電性は、例えば、重合する際に用いられる酸化重合触媒がドーパントとして機能し、導電性高分子と錯体を形成することにより発揮される。また、重合する際にドーパントを併用することなどにより導電性を向上させることもできる。
上記酸化重合触媒は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄及び過マンガン酸カリウム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記他のドーパントとしては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロベンゼンスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及びスルホサリチル酸等の芳香族スルホン酸、トリフルオロスルホン酸、過塩素酸、塩酸、硫酸及び硝酸等が挙げられる。更には、これらのアルカリ金属塩を用いることもできる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
尚、上記導電性高分子被覆繊維を製造する方法は特に限定されず、例えば、特許文献1に記載の方法等を参照することができる。
【0014】
この導電性高分子被覆繊維の長さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。この長さが0.1〜5mmである場合、繊維同士が絡み合うことなく、接着層を介して基材に植毛することができる。また、導電性高分子被覆繊維の太さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.56〜5.6デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.56〜3.3デシテックスである。この太さが0.56〜5.6デシテックスである場合、繊維を基材に接着層を介して十分且つ均一に植毛することができる。尚、この繊維の長さ及び太さは、上記の好ましい値を適宜組み合わせることができる。
【0015】
この導電性高分子被覆繊維における導電性高分子層の厚さは、0.01〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.04〜0.15μmである。この厚さが0.01〜0.2μmである場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。更には、繊維からの導電性高分子層の脱落が抑制でき、且つ繊維の柔軟性が損なわれにくい。
また、導電性高分子被覆繊維の表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)は、105〜1010Ωであることが好ましい。この値が105〜1010Ωである場合、得られる導電性植毛部材を、画像形成装置や除電装置等に好適に利用できる。
【0016】
上記「電着処理繊維」は、繊維の表面に水分を保持させるための処理、即ち導電性を得るために繊維表面に水分を保持させるための処理が施された繊維である。この処理が施される繊維については、前記繊維の説明をそのまま適用できる。
この電着処理繊維としては、上記処理が施されたものであれば、特に限定されず、例えば、繊維をタンニン、吐酒石等により処理し、繊維表面にタンニン化合物等を生成させ、その保水性を利用して表面の通電性を保つ繊維や、繊維表面に界面活性剤、珪酸ソーダ、コロイダルシリカ等を付着させ、それらの吸着水分を利用して表面の通電性を保つ繊維などが挙げられる。
尚、上記電着処理繊維を製造する方法は、特に限定されず、例えば、非特許文献1に記載の方法等を参照することができる。
【0017】
この電着処理繊維の長さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。この長さが0.1〜5mmである場合、繊維同士が絡み合うことなく、接着層を介して基材に植毛することができる。また、電着処理繊維の太さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.56〜5.6デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.56〜3.3デシテックスである。この太さが0.56〜5.6デシテックスである場合、繊維を基材に接着層を介して十分且つ均一に植毛することができる。尚、この繊維の長さ及び太さは、上記の好ましい値を適宜組み合わせることができる。
【0018】
この電着処理繊維における電着処理層の厚さは、0.01〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1μmである。この厚さが0.01〜0.2μmである場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。更には、繊維からの電着処理層の脱落が抑制でき、且つ繊維の柔軟性が損なわれにくい。
また、電着処理繊維における表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)は、105〜1010Ωであることが好ましい。この値が105〜1010Ωである場合、得られる導電性植毛部材を、画像形成装置や除電装置等に好適に利用できる。
更に、導電性高分子被覆繊維と電着処理繊維との表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)の比(電着処理繊維/導電性高分子被覆繊維)は、10−4〜104であることが好ましく、より好ましくは10−3〜103、更に好ましくは10−2〜102である。この比が10−4〜104である場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。
【0019】
また、導電性高分子被覆繊維と電着処理繊維との割合は、質量比(導電性高分子被覆繊維:電着処理繊維)で1:99〜99:1であることが好ましく、より好ましくは3:97〜97:3、更に好ましくは5:95〜95:5である。この質量比が1:99〜99:1である場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。
更に、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維は基材の表面に均一に植毛されていることが好ましく、基材の表面に対する植毛密度は、その太さにもよるが特に限定されず、合計で50〜1000本/mm2であることが好ましく、より好ましくは75〜800本/mm2である。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維は、それぞれ基材の表面に対して、30〜90°の角度で植毛されていることが好ましく、より好ましくは50〜90°、更に好ましくは70〜90°である。この角度が90°に近いほど、繊維の先端が導電性植毛部材の対向物におよそ垂直にあたることになるため好ましい。
【0020】
(2)導電性植毛部材の製造方法
本発明の導電性植毛部材を製造する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の導電性植毛部材の製造方法により製造することができる。
上記「塗膜形成工程」においては、基材の表面に接着剤が塗布され、上記「塗膜」が形成される。上記「基材」、上記「接着剤」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
接着剤の塗布量は、所望の本数の導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を固着することができれば特に限定されないが、20g/m2以上であることが好ましく、より好ましくは20〜500g/m2、更に好ましくは40〜300g/m2である。
接着剤の塗布方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スプレー塗布、ロールコート及び浸漬塗布等の方法が挙げられる。なかでも、均一に塗布することができ、且つ塗布量の制御が容易であるため、スプレー塗布法により塗布することが好ましい。
【0021】
また、上記「静電植毛工程」においては、上記塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維が静電力により植毛される。
具体的には、塗膜が形成された基材に高電圧を印加しながら、塗膜に向けて所定長さの導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を供給して、各繊維を基材に植え込み、その後、塗膜を乾燥及び/又は硬化させて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を基材に固着させる。上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0022】
[2]導電性ローラ及びその製造方法
(1)導電性ローラ
上記「芯材」は、十分な機械的強度を有し、その表面に弾性多孔質層を支持できるものであればよく、その材質等は特に限定されない。この芯材としては、例えば、快削鋼等にめっきを施した芯材、アルミニウム合金及びステンレス鋼等からなる芯材、樹脂製の基体にめっきを施し、導電性を付与した芯材等を使用することができる。
また、芯材の径方向の断面形状は、特に限定されないが、通常、円形又は略円形であり、楕円形、四角形又は三角形等の形状であってもよい。更に、この芯材は中実体であっても、中空体であってもよい。
【0023】
上記「弾性多孔質層」は、弾性多孔質体からなり、芯材の周面に形成されているものである。
この弾性多孔質体としては、例えば、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、エチレンプロピレン非共役ジエンゴムスポンジフォーム、及びクロロプレンゴムスポンジフォーム等が挙げられる。なかでも、ウレタンフォームである場合、容易に低密度、且つ低硬度のフォームとすることができるため好ましい。尚、ウレタンフォームなどのようにセル膜を有しているものは、除膜処理されていても、除膜処理されていなくてもよい。
また、この弾性多孔質層には、導電性が付与されており且つ上記芯材と導通していることが好ましい。特に、導電性高分子被覆繊維等を固定している接着層に導電性が付与されていない場合、又は接着層に導電性が付与されてはいるが、接着層と芯材とが接触しておらず、両者が導通していない場合には、弾性多孔質層に導電性が付与されており、且つ芯材と導通している必要がある。一方、接着層に導電性が付与されており且つ芯材と接触しており、両者が導通している場合には、必ずしも弾性多孔質層に導電性が付与されていなくてもよい。尚、弾性多孔質層に導電性を付与する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0024】
この弾性多孔質体のセル数は特に限定されないが、30〜3000個/25mmであることが好ましく、より好ましくは40〜3000個/25mmである。このセル数が30〜3000個/25mmである場合、導電性繊維の植毛密度が適度となる。
また、弾性多孔質体の密度は特に限定されないが、10〜500kg/m3であることが好ましく、より好ましくは30〜300kg/m3である。この密度が10〜500kg/m3である場合、導電性ローラの硬さが適度となる。
【0025】
尚、上記「接着層」、上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0026】
(2)導電性ローラの製造方法
本発明の導電性ローラを製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明の導電性ローラの製造方法により製造することができる。
上記「塗膜形成工程」においては、ローラ基体の表面に接着剤が塗布され、上記「塗膜」が形成される。
上記「ローラ基体」は、芯材と、芯材を被覆し且つこの芯材に接着されている弾性多孔質層とを備える。また、上記「芯材」及び上記「弾性多孔質層」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
ローラ基体を製造する方法は特に限定されず、例えば、円筒状の弾性多孔質体を形成し、その後、接着剤を塗布した芯材を挿入し、弾性多孔質体と芯材とを接着することにより得ることができる。また、弾性多孔質体ブロックを形成し、芯材を挿通させるための孔を開け、その後、接着剤を塗布した芯材を挿入し、弾性多孔質体ブロックと芯材とを接着し、次いで、ローラ形状となるように外面を研磨等することにより得ることもできる。更に、仮シャフトを用いたモールド成形等により得ることもできる。
上記接着剤は特に限定されず、前記と同様の接着剤を使用することができる。この接着剤には、前記の導電性フィラーを含有させてもよい。
【0027】
また、上記「静電植毛工程」においては、上記塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維が静電力により植毛される。
具体的には、塗膜が形成されたローラ基体に高電圧を印加しながら、塗膜に向けて所定長さの導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を供給して、各繊維を弾性多孔質層に植え込み、その後、塗膜を乾燥及び/又は硬化させて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を弾性多孔質層に固着させる。上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0028】
また、本発明の導電性ローラ及び本発明の製造方法により得られる導電性ローラは、温度10〜28℃及び湿度85%以下(特に、湿度15〜85%)の雰囲気下において、後記実施例と同様にして測定した抵抗値(印加電圧:5000V以下、特に5〜3000V、更には5〜2000V)が105〜1010Ωであって、環境変化や経時変化の小さいものとすることができる。
更に、これらのローラは、後記実施例と同様にして測定した、初期と60分後との抵抗値の変化率(常用対数で表した場合の変化率)を±15%以内、特に±10%以内、更には±5%以内とすることができる。
【0029】
また、本発明の導電性ローラ及び本発明の製造方法により得られる導電性ローラは、事務機器用ローラとすることができる。この事務機器用ローラとしては、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置などに組み込まれているトナー供給ローラ、クリーニングローラ及び帯電ローラ等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
[1]導電性ローラの製造
実施例1
図1〜3を用いて、実施例1の導電性ローラ1の製造方法を説明する。尚、図1は導電性ローラを説明する模式図、図2は導電性ローラの断面を説明する模式図、及び図3は図1におけるA部の拡大図である。
芯材21(直径;6mm、長さ;360mm、材質;SUM22)の表面に、厚さ20μm程度となるようにホットメルト接着剤(乾燥後、接着層22となる。)を塗布し、この芯材21を弾性多孔質体に挿通させるために予め設けられた弾性多孔質体の孔に挿通し、加熱して接着させた。尚、この弾性多孔質体としては、導電性カーボンブラック分散液とアクリルエマルジョンとを混合し、エマルジョン中のカーボンブラックが30質量%となるようにしたものを、弾性多孔質体(ポリエーテル系軟質ウレタンフォーム、株式会社イノアックコーポレーション製、セル数;70個/25mm、密度;80kg/m3)に含浸させ、乾燥させて導電性を付与した弾性多孔質体(体積固有抵抗値;5×105Ω・cm)を用いた。また、上記導電性カーボンブラック分散液としては、三陽色素株式会社製、固形分が36質量%であるものを用いた。更に、上記アクリルエマルジョンとしては、日本ゼオン株式会社製、固形分が45質量%であるものを用いた。
その後、外形を研削、研磨し、芯材21と弾性多孔質層23(長さ;310mm)とが接着層22を介して接合されてなるローラ基体2(直径;16mm)を製造した。
【0031】
次いで、エマルジョン中の酸化スズが30質量%となるように、酸化スズ分散液とアクリル系エマルジョンとを混合して得られたアクリル系エマルジョン接着剤を、塗着量が2.5g(160g/m2)となるように、得られたローラ基体2における弾性多孔質層23の表面に、スプレー塗布し、塗膜(乾燥後、接着層3となる)を形成した。尚、上記酸化スズ分散液としては、御国色素株式会社製、商品名「MLF−30」、固形分が29質量%であるものを用いた。また、上記アクリル系エマルジョンとしては、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 852」、不揮発分が約45%であるものを用いた。
その後、静電植毛装置(東洋電植株式会社製)により、60kVの電圧で、導電性高分子被覆繊維41[株式会社ニッセン製、商品名「ドリーマロン」、ナイロン66繊維(長さ;1.0mm、太さ;3.3デシテックス)の表面がポリピロールにより被覆されたもの(導電性高分子層の厚さ;0.05μm)、酸化重合触媒;過硫酸アンモニウム(ドーパント:硫酸イオン)]、及び電着処理繊維42[ナイロン66繊維(長さ;1.0mm、太さ;3.3デシテックス)の表面がコロイダルシリカにより電着処理されたもの(電着処理層の厚さ;0.02μm)]を質量比(導電性高分子被覆繊維:電着処理繊維)9:1で、塗膜が形成された弾性多孔質層23に向けて供給して植毛(植毛密度;100本/mm2)し、温度80℃に調整した熱風循環乾燥炉内で30分間乾燥させて繊維を固着し、導電性ローラ1を製造した。
【0032】
尚、使用した導電性高分子被覆繊維の各条件における表面漏洩抵抗値は、2×107Ω(温度:23℃、湿度:55%)、1×105Ω(温度:28℃、湿度:85%)であり、且つ電着処理繊維の各条件における表面漏洩抵抗値は、4×107Ω(温度:23℃、湿度:55%)、1×107Ω(温度:28℃、湿度:85%)である。また、表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)の比(電着処理繊維/導電性高分子被覆繊維)は102である。
【0033】
比較例1(電着処理繊維を有していない導電性ローラ)
実施例1における電着処理繊維を使用せず、導電性高分子被覆繊維のみを静電植毛したこと以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。
【0034】
比較例2(導電性高分子被覆繊維を有していない導電性ローラ)
実施例1における導電性高分子被覆繊維を使用せず、電着処理繊維のみを静電植毛したこと以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。
【0035】
[2]導電性ローラの性能評価
(1)温度23℃、湿度55%の雰囲気下における抵抗値
実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラを、温度23℃、湿度55%の雰囲気下で24時間静置し、その後、各導電性ローラにおける芯材の両端に各々100gのおもりを取り付け、この雰囲気下で100Vの電圧を印加して、導電性ローラの下に敷いた真鍮板と芯材との間における、初期(電圧を印加して10秒後)の抵抗値を、絶縁抵抗計(株式会社アドバンステスト製、型式「R8340」)にて測定した。その結果を表1に示す。尚、抵抗値は、常用対数[log(R/Ω)]で表した。
【0036】
(2)測定雰囲気及び印加電圧の変化による抵抗値の変化
実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラを、表2に示す各雰囲気下(温度;10℃、湿度;15%、及び温度;28℃、湿度;85%)で24時間静置し、上記(1)と同様に芯材におもりを取り付け、各雰囲気下で10V及び1000Vの各電圧を印加して、導電性ローラの下に敷いた真鍮板と芯材との間における、初期(10秒後)及び60分後の抵抗値を上記と同様にして測定した。その結果を表2に併記する。尚、各抵抗値は、常用対数で表した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
[3]実施例の効果
表1によれば、実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラの抵抗値[log(R/Ω)]は、7.52、7.49及び7.70であり、温度23℃、湿度55%の雰囲気下での導電性においては何の問題もないことが分かった。
【0040】
しかし、表2によれば、導電性高分子被覆繊維のみが植毛された比較例1においては、温度28℃、湿度85%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.31(初期)から8.46(60分後)となり、約16%(常用対数で表した場合)も上昇してしまった。また、印加電圧1000Vの際にも7.32(初期)から9.57(60分後)となり、約31%も上昇してしまった。よって、この雰囲気下では安定した導電性が得られないことが分かった。尚、温度10℃、湿度15%の雰囲気下では、印加電圧及び経過時間に関係なく、導電性に問題はなかった。
また、温度28℃、湿度85%の雰囲気下で、60分後の抵抗値が9.57と上昇してしまった比較例1の導電性ローラを、温度23℃、湿度55%の雰囲気下で24時間静置し、この雰囲気下で100Vの電圧を印加したところ、10秒後の抵抗値は8.5となり、表1における比較例1の抵抗値7.49よりも大きな値となった。このことから、一度抵抗値が上昇してしまうと、雰囲気が変わっても導電性は改善されず、抵抗値の上昇は不可逆的なものであることが分かった。
【0041】
更に、電着処理繊維のみが植毛された比較例2においては、温度10℃、湿度15%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際には初期の段階から10.3と高く、60分後においても11.3と高かった。更に、印加電圧1000Vの際にも初期の段階から抵抗値が10.3と高く、60分後においても11.0と高かった。このことから、この雰囲気下では安定した導電性が得られないことが分かった。尚、温度28℃、湿度85%の雰囲気下では、印加電圧及び経過時間に関係なく、導電性に問題はなかった。
【0042】
これに対して、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維が植毛された実施例1においては、温度10℃、湿度15%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.48(初期)、7.59(60分後)(抵抗値の変化率;約+1%)であり、印加電圧1000Vの際に7.52(初期)、7.68(60分後)(変化率;約+2%)であった。また、温度28℃、湿度85%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.61(初期)、7.54(60分後)(変化率;約−1%)であり、印加電圧1000Vの際に7.64(初期)、7.49(60分後)(変化率;約−2%)であった。これらのことから実施例1の導電性ローラは、湿度等の雰囲気、印加電圧及び経過時間により性能が左右されず、優れた導電性を有するものであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】導電性ローラを説明する模式図である。
【図2】導電性ローラの断面を説明する模式図である。
【図3】図1におけるA部の拡大図である。
【符号の説明】
1;導電性ローラ、2;ローラ基体、21;芯材、22;接着層、23;弾性多孔質層、3;接着層、41;導電性高分子被覆繊維、42;電着処理繊維。
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法に関する。
本発明は、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置、半導体等の静電気の影響を受け易い電子部品を取扱うところでの除電装置、カメラ等の光学機械の部材、電磁ノイズ防止シートなどに広く利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来より、導電性繊維を備える導電性材料は、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置、除電装置、光学機械の部材等において幅広く利用されている。
また、従来より使用されている導電性繊維としては、ポリピロール等の導電性高分子により繊維表面が被覆された導電性高分子被覆繊維が知られている(例えば、特許文献1参照。)。更には、繊維をタンニン、吐酒石等により処理して、繊維表面にタンニン化合物等を生成させ、その保水性を利用して表面の通電性を保つ方法や、繊維に界面活性剤、珪酸ソーダ、コロイダルシリカ等を付着させ、それらの吸着水分を利用して表面の通電性を保つ方法を用いた電着処理繊維、即ち導電性を得るために繊維表面に水分を保持させるための処理が施された繊維が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−220776号公報
【非特許文献1】
「静電気学会誌」、1992年、第16巻、第5号、p.389−395
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
導電性繊維を備える導電性材料を機能部材として、特に画像形成装置等に用いられる導電性ローラなどとして使用するには、静電気力を作用させるために必要な電荷を移動させるため、部材の電気抵抗を所望の値に制御できることが必要である。特に、近年、画像形成装置に対する高画質化、装置の小型化等の要求が高まりつつあり、電気抵抗を制御する際の精度の向上、導電性機能部材の長寿命化等が求められている。
しかしながら、上記の従来技術は、静電植毛の際に効率よく均質に植毛するため、繊維の帯電性、分離性等を向上させ、繊維の飛翔性を向上させることを目的としたものであり、繊維が植毛された後の導電性材料の導電性に関しては何ら考慮されていない。
即ち、上記の導電性高分子被覆繊維を用いて導電性機能部材を作製した場合、低湿度雰囲気下の使用においては印加電圧及び経過時間によらず105〜107Ωの比較的低い抵抗値を示し、導電性は安定しているが、高湿度雰囲気下の使用、特に長時間連続での使用においては、印加される電界により繊維表面の導電性高分子層からドーパントが電気泳動して離脱してしまい、抵抗値が時間と共に不可逆的に上昇し、要求される抵抗値の範囲を逸脱してしまうことが考えられる。よって、電気抵抗を所望の値に制御することが困難となることがあり、長寿命化の要求に対応することも困難となる。
また、上記の電着処理繊維を用いて導電性機能部材を作製した場合、高湿度雰囲気下の使用においては経過時間によらず105〜107Ωの比較的低い抵抗値を示し、高電圧を印加しても、空気中から水分が供給されるため抵抗値は安定しているが、低湿度雰囲気下の使用においては、水分の離脱が生じるため、抵抗値が109Ωを超える程高くなってしまい、電気抵抗を所望の値に制御することが困難となることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の通りである。
(1)基材と、該基材の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性植毛部材。
(2)上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである上記(1)に記載の導電性植毛部材。
(3)基材の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性植毛部材の製造方法。
(4)芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層と、該弾性多孔質層の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性ローラ。
(5)上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである上記(4)に記載の導電性ローラ。
(6)芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層とを備えるローラ基体における該弾性多孔質層の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【0007】
【発明の効果】
本発明の導電性植毛部材によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維における表面漏洩抵抗値がそれぞれ105〜1010Ωである場合には、十分な導電性を有する導電性植毛部材とすることができる。
本発明の導電性植毛部材の製造方法によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性植毛部材を容易に製造することができる。
本発明の導電性ローラによれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。そのため、精度の高い電気抵抗の制御が可能となり、且つ寿命が長くなり、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等に適用される電子写真方式の画像形成装置において好適に利用できる。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである場合には、十分な導電性を有する導電性ローラとすることができる。
本発明の導電性ローラの製造方法によれば、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性を有する導電性ローラを容易に製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]導電性植毛部材及びその製造方法
(1)導電性植毛部材
本発明の導電性植毛部材における上記「基材」は、導電性を有しており、接着層により導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を支持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、導電性を付与した弾性多孔質体、導電性プラスチック、及び鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属などの材質からなるものが挙げられる。
【0009】
上記「接着層」は、上記基材の表面に導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を固定するものである。この接着層は導電性を有していれば特に限定されず、例えば、公知の接着剤に導電性フィラーを含有させたものを基材表面に塗布し、乾燥及び/又は硬化させて形成される。
この接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、合成ゴム及び天然ゴム等を主成分とする接着剤を用いることができる。また、これらの樹脂を主成分とする水系接着剤は、基材として弾性多孔質のものを用いた場合、基材を膨潤させることが少ないため好ましい。特に、この樹脂としてはアクリル樹脂が好ましい。このアクリル樹脂は、非反応性ポリアクリル酸エステル(非架橋型)、反応性ポリアクリル酸エステル(主としてメチロールメラミンを架橋剤として用いる)及び自己架橋型ポリアクリル酸エステルに分けられ、反応型、自己架橋型は耐水性、耐アルカリ性、耐溶剤性等に優れるため、多く用いられている。また、反応型アクリル樹脂の場合、物性を改良するために官能基としてカルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基及びヒドロキシル基等の少なくとも1種を導入したものであってもよい。尚、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0010】
導電性フィラーとしては、例えば、導電性金属酸化物、炭素系導電性フィラー等が挙げられる。導電性金属酸化物としては、酸化スズ、酸化チタン、インジウム等の原子価の異なる元素をドープした酸化スズ、チタン酸カリウムウィスカー等の電気絶縁性酸化物の表面に酸化スズをコートしてなる導電性チタン酸カリウムウィスカーなどが挙げられる。また、炭素系導電性フィラーとしては、カーボンブラック、炭素短繊維、グラファイト粒子等が挙げられる。
【0011】
この接着層の厚みは特に限定されないが、20〜500μmであることが好ましく、より好ましくは40〜300μmである。この厚みが20〜500μmである場合、繊維の脱落が起こりにくい。また、基材が弾性多孔質体等の柔軟性を有するものであっても、その柔軟性を損なうことが少ないため好ましい。
【0012】
上記「導電性高分子被覆繊維」は、繊維の表面に導電性高分子が被覆されたものである。導電性高分子が被覆される繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン及びビニロン等の化学繊維、羊毛、木綿及び麻等の天然繊維、その他の複合紡糸繊維などが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
繊維の表面に被覆される導電性高分子としては、例えば、ピロール、N−メチルピロール、アニリン、チオフェン及びチオフェン−3−スルホン酸等のモノマーを重合させたポリマー又はコポリマーが挙げられる。なかでも、重合反応の活性が高く、繊維表面に導電性高分子層を短時間で形成することが可能なため、ピロールが好ましく用いられる。
【0013】
この導電性高分子被覆繊維における導電性は、例えば、重合する際に用いられる酸化重合触媒がドーパントとして機能し、導電性高分子と錯体を形成することにより発揮される。また、重合する際にドーパントを併用することなどにより導電性を向上させることもできる。
上記酸化重合触媒は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄及び過マンガン酸カリウム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記他のドーパントとしては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロベンゼンスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及びスルホサリチル酸等の芳香族スルホン酸、トリフルオロスルホン酸、過塩素酸、塩酸、硫酸及び硝酸等が挙げられる。更には、これらのアルカリ金属塩を用いることもできる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
尚、上記導電性高分子被覆繊維を製造する方法は特に限定されず、例えば、特許文献1に記載の方法等を参照することができる。
【0014】
この導電性高分子被覆繊維の長さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。この長さが0.1〜5mmである場合、繊維同士が絡み合うことなく、接着層を介して基材に植毛することができる。また、導電性高分子被覆繊維の太さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.56〜5.6デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.56〜3.3デシテックスである。この太さが0.56〜5.6デシテックスである場合、繊維を基材に接着層を介して十分且つ均一に植毛することができる。尚、この繊維の長さ及び太さは、上記の好ましい値を適宜組み合わせることができる。
【0015】
この導電性高分子被覆繊維における導電性高分子層の厚さは、0.01〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.04〜0.15μmである。この厚さが0.01〜0.2μmである場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。更には、繊維からの導電性高分子層の脱落が抑制でき、且つ繊維の柔軟性が損なわれにくい。
また、導電性高分子被覆繊維の表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)は、105〜1010Ωであることが好ましい。この値が105〜1010Ωである場合、得られる導電性植毛部材を、画像形成装置や除電装置等に好適に利用できる。
【0016】
上記「電着処理繊維」は、繊維の表面に水分を保持させるための処理、即ち導電性を得るために繊維表面に水分を保持させるための処理が施された繊維である。この処理が施される繊維については、前記繊維の説明をそのまま適用できる。
この電着処理繊維としては、上記処理が施されたものであれば、特に限定されず、例えば、繊維をタンニン、吐酒石等により処理し、繊維表面にタンニン化合物等を生成させ、その保水性を利用して表面の通電性を保つ繊維や、繊維表面に界面活性剤、珪酸ソーダ、コロイダルシリカ等を付着させ、それらの吸着水分を利用して表面の通電性を保つ繊維などが挙げられる。
尚、上記電着処理繊維を製造する方法は、特に限定されず、例えば、非特許文献1に記載の方法等を参照することができる。
【0017】
この電着処理繊維の長さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。この長さが0.1〜5mmである場合、繊維同士が絡み合うことなく、接着層を介して基材に植毛することができる。また、電着処理繊維の太さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.56〜5.6デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.56〜3.3デシテックスである。この太さが0.56〜5.6デシテックスである場合、繊維を基材に接着層を介して十分且つ均一に植毛することができる。尚、この繊維の長さ及び太さは、上記の好ましい値を適宜組み合わせることができる。
【0018】
この電着処理繊維における電着処理層の厚さは、0.01〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1μmである。この厚さが0.01〜0.2μmである場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。更には、繊維からの電着処理層の脱落が抑制でき、且つ繊維の柔軟性が損なわれにくい。
また、電着処理繊維における表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)は、105〜1010Ωであることが好ましい。この値が105〜1010Ωである場合、得られる導電性植毛部材を、画像形成装置や除電装置等に好適に利用できる。
更に、導電性高分子被覆繊維と電着処理繊維との表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)の比(電着処理繊維/導電性高分子被覆繊維)は、10−4〜104であることが好ましく、より好ましくは10−3〜103、更に好ましくは10−2〜102である。この比が10−4〜104である場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。特に、湿度の高低に応じて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維に電流が選択的に流れ、湿度が高くなっても導電性高分子からのドーパントの移動が抑制されるため、安定した導電性が得られる。
【0019】
また、導電性高分子被覆繊維と電着処理繊維との割合は、質量比(導電性高分子被覆繊維:電着処理繊維)で1:99〜99:1であることが好ましく、より好ましくは3:97〜97:3、更に好ましくは5:95〜95:5である。この質量比が1:99〜99:1である場合、温度及び湿度等の雰囲気や印加される電圧に関わらず、安定した導電性が得られる。
更に、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維は基材の表面に均一に植毛されていることが好ましく、基材の表面に対する植毛密度は、その太さにもよるが特に限定されず、合計で50〜1000本/mm2であることが好ましく、より好ましくは75〜800本/mm2である。
また、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維は、それぞれ基材の表面に対して、30〜90°の角度で植毛されていることが好ましく、より好ましくは50〜90°、更に好ましくは70〜90°である。この角度が90°に近いほど、繊維の先端が導電性植毛部材の対向物におよそ垂直にあたることになるため好ましい。
【0020】
(2)導電性植毛部材の製造方法
本発明の導電性植毛部材を製造する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の導電性植毛部材の製造方法により製造することができる。
上記「塗膜形成工程」においては、基材の表面に接着剤が塗布され、上記「塗膜」が形成される。上記「基材」、上記「接着剤」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
接着剤の塗布量は、所望の本数の導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を固着することができれば特に限定されないが、20g/m2以上であることが好ましく、より好ましくは20〜500g/m2、更に好ましくは40〜300g/m2である。
接着剤の塗布方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スプレー塗布、ロールコート及び浸漬塗布等の方法が挙げられる。なかでも、均一に塗布することができ、且つ塗布量の制御が容易であるため、スプレー塗布法により塗布することが好ましい。
【0021】
また、上記「静電植毛工程」においては、上記塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維が静電力により植毛される。
具体的には、塗膜が形成された基材に高電圧を印加しながら、塗膜に向けて所定長さの導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を供給して、各繊維を基材に植え込み、その後、塗膜を乾燥及び/又は硬化させて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を基材に固着させる。上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0022】
[2]導電性ローラ及びその製造方法
(1)導電性ローラ
上記「芯材」は、十分な機械的強度を有し、その表面に弾性多孔質層を支持できるものであればよく、その材質等は特に限定されない。この芯材としては、例えば、快削鋼等にめっきを施した芯材、アルミニウム合金及びステンレス鋼等からなる芯材、樹脂製の基体にめっきを施し、導電性を付与した芯材等を使用することができる。
また、芯材の径方向の断面形状は、特に限定されないが、通常、円形又は略円形であり、楕円形、四角形又は三角形等の形状であってもよい。更に、この芯材は中実体であっても、中空体であってもよい。
【0023】
上記「弾性多孔質層」は、弾性多孔質体からなり、芯材の周面に形成されているものである。
この弾性多孔質体としては、例えば、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、エチレンプロピレン非共役ジエンゴムスポンジフォーム、及びクロロプレンゴムスポンジフォーム等が挙げられる。なかでも、ウレタンフォームである場合、容易に低密度、且つ低硬度のフォームとすることができるため好ましい。尚、ウレタンフォームなどのようにセル膜を有しているものは、除膜処理されていても、除膜処理されていなくてもよい。
また、この弾性多孔質層には、導電性が付与されており且つ上記芯材と導通していることが好ましい。特に、導電性高分子被覆繊維等を固定している接着層に導電性が付与されていない場合、又は接着層に導電性が付与されてはいるが、接着層と芯材とが接触しておらず、両者が導通していない場合には、弾性多孔質層に導電性が付与されており、且つ芯材と導通している必要がある。一方、接着層に導電性が付与されており且つ芯材と接触しており、両者が導通している場合には、必ずしも弾性多孔質層に導電性が付与されていなくてもよい。尚、弾性多孔質層に導電性を付与する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0024】
この弾性多孔質体のセル数は特に限定されないが、30〜3000個/25mmであることが好ましく、より好ましくは40〜3000個/25mmである。このセル数が30〜3000個/25mmである場合、導電性繊維の植毛密度が適度となる。
また、弾性多孔質体の密度は特に限定されないが、10〜500kg/m3であることが好ましく、より好ましくは30〜300kg/m3である。この密度が10〜500kg/m3である場合、導電性ローラの硬さが適度となる。
【0025】
尚、上記「接着層」、上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0026】
(2)導電性ローラの製造方法
本発明の導電性ローラを製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明の導電性ローラの製造方法により製造することができる。
上記「塗膜形成工程」においては、ローラ基体の表面に接着剤が塗布され、上記「塗膜」が形成される。
上記「ローラ基体」は、芯材と、芯材を被覆し且つこの芯材に接着されている弾性多孔質層とを備える。また、上記「芯材」及び上記「弾性多孔質層」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
ローラ基体を製造する方法は特に限定されず、例えば、円筒状の弾性多孔質体を形成し、その後、接着剤を塗布した芯材を挿入し、弾性多孔質体と芯材とを接着することにより得ることができる。また、弾性多孔質体ブロックを形成し、芯材を挿通させるための孔を開け、その後、接着剤を塗布した芯材を挿入し、弾性多孔質体ブロックと芯材とを接着し、次いで、ローラ形状となるように外面を研磨等することにより得ることもできる。更に、仮シャフトを用いたモールド成形等により得ることもできる。
上記接着剤は特に限定されず、前記と同様の接着剤を使用することができる。この接着剤には、前記の導電性フィラーを含有させてもよい。
【0027】
また、上記「静電植毛工程」においては、上記塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維が静電力により植毛される。
具体的には、塗膜が形成されたローラ基体に高電圧を印加しながら、塗膜に向けて所定長さの導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を供給して、各繊維を弾性多孔質層に植え込み、その後、塗膜を乾燥及び/又は硬化させて、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維を弾性多孔質層に固着させる。上記「導電性高分子被覆繊維」及び上記「電着処理繊維」については、前記の各説明をそのまま適用できる。
【0028】
また、本発明の導電性ローラ及び本発明の製造方法により得られる導電性ローラは、温度10〜28℃及び湿度85%以下(特に、湿度15〜85%)の雰囲気下において、後記実施例と同様にして測定した抵抗値(印加電圧:5000V以下、特に5〜3000V、更には5〜2000V)が105〜1010Ωであって、環境変化や経時変化の小さいものとすることができる。
更に、これらのローラは、後記実施例と同様にして測定した、初期と60分後との抵抗値の変化率(常用対数で表した場合の変化率)を±15%以内、特に±10%以内、更には±5%以内とすることができる。
【0029】
また、本発明の導電性ローラ及び本発明の製造方法により得られる導電性ローラは、事務機器用ローラとすることができる。この事務機器用ローラとしては、複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置などに組み込まれているトナー供給ローラ、クリーニングローラ及び帯電ローラ等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
[1]導電性ローラの製造
実施例1
図1〜3を用いて、実施例1の導電性ローラ1の製造方法を説明する。尚、図1は導電性ローラを説明する模式図、図2は導電性ローラの断面を説明する模式図、及び図3は図1におけるA部の拡大図である。
芯材21(直径;6mm、長さ;360mm、材質;SUM22)の表面に、厚さ20μm程度となるようにホットメルト接着剤(乾燥後、接着層22となる。)を塗布し、この芯材21を弾性多孔質体に挿通させるために予め設けられた弾性多孔質体の孔に挿通し、加熱して接着させた。尚、この弾性多孔質体としては、導電性カーボンブラック分散液とアクリルエマルジョンとを混合し、エマルジョン中のカーボンブラックが30質量%となるようにしたものを、弾性多孔質体(ポリエーテル系軟質ウレタンフォーム、株式会社イノアックコーポレーション製、セル数;70個/25mm、密度;80kg/m3)に含浸させ、乾燥させて導電性を付与した弾性多孔質体(体積固有抵抗値;5×105Ω・cm)を用いた。また、上記導電性カーボンブラック分散液としては、三陽色素株式会社製、固形分が36質量%であるものを用いた。更に、上記アクリルエマルジョンとしては、日本ゼオン株式会社製、固形分が45質量%であるものを用いた。
その後、外形を研削、研磨し、芯材21と弾性多孔質層23(長さ;310mm)とが接着層22を介して接合されてなるローラ基体2(直径;16mm)を製造した。
【0031】
次いで、エマルジョン中の酸化スズが30質量%となるように、酸化スズ分散液とアクリル系エマルジョンとを混合して得られたアクリル系エマルジョン接着剤を、塗着量が2.5g(160g/m2)となるように、得られたローラ基体2における弾性多孔質層23の表面に、スプレー塗布し、塗膜(乾燥後、接着層3となる)を形成した。尚、上記酸化スズ分散液としては、御国色素株式会社製、商品名「MLF−30」、固形分が29質量%であるものを用いた。また、上記アクリル系エマルジョンとしては、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 852」、不揮発分が約45%であるものを用いた。
その後、静電植毛装置(東洋電植株式会社製)により、60kVの電圧で、導電性高分子被覆繊維41[株式会社ニッセン製、商品名「ドリーマロン」、ナイロン66繊維(長さ;1.0mm、太さ;3.3デシテックス)の表面がポリピロールにより被覆されたもの(導電性高分子層の厚さ;0.05μm)、酸化重合触媒;過硫酸アンモニウム(ドーパント:硫酸イオン)]、及び電着処理繊維42[ナイロン66繊維(長さ;1.0mm、太さ;3.3デシテックス)の表面がコロイダルシリカにより電着処理されたもの(電着処理層の厚さ;0.02μm)]を質量比(導電性高分子被覆繊維:電着処理繊維)9:1で、塗膜が形成された弾性多孔質層23に向けて供給して植毛(植毛密度;100本/mm2)し、温度80℃に調整した熱風循環乾燥炉内で30分間乾燥させて繊維を固着し、導電性ローラ1を製造した。
【0032】
尚、使用した導電性高分子被覆繊維の各条件における表面漏洩抵抗値は、2×107Ω(温度:23℃、湿度:55%)、1×105Ω(温度:28℃、湿度:85%)であり、且つ電着処理繊維の各条件における表面漏洩抵抗値は、4×107Ω(温度:23℃、湿度:55%)、1×107Ω(温度:28℃、湿度:85%)である。また、表面漏洩抵抗値(温度:23℃、湿度:55%)の比(電着処理繊維/導電性高分子被覆繊維)は102である。
【0033】
比較例1(電着処理繊維を有していない導電性ローラ)
実施例1における電着処理繊維を使用せず、導電性高分子被覆繊維のみを静電植毛したこと以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。
【0034】
比較例2(導電性高分子被覆繊維を有していない導電性ローラ)
実施例1における導電性高分子被覆繊維を使用せず、電着処理繊維のみを静電植毛したこと以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。
【0035】
[2]導電性ローラの性能評価
(1)温度23℃、湿度55%の雰囲気下における抵抗値
実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラを、温度23℃、湿度55%の雰囲気下で24時間静置し、その後、各導電性ローラにおける芯材の両端に各々100gのおもりを取り付け、この雰囲気下で100Vの電圧を印加して、導電性ローラの下に敷いた真鍮板と芯材との間における、初期(電圧を印加して10秒後)の抵抗値を、絶縁抵抗計(株式会社アドバンステスト製、型式「R8340」)にて測定した。その結果を表1に示す。尚、抵抗値は、常用対数[log(R/Ω)]で表した。
【0036】
(2)測定雰囲気及び印加電圧の変化による抵抗値の変化
実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラを、表2に示す各雰囲気下(温度;10℃、湿度;15%、及び温度;28℃、湿度;85%)で24時間静置し、上記(1)と同様に芯材におもりを取り付け、各雰囲気下で10V及び1000Vの各電圧を印加して、導電性ローラの下に敷いた真鍮板と芯材との間における、初期(10秒後)及び60分後の抵抗値を上記と同様にして測定した。その結果を表2に併記する。尚、各抵抗値は、常用対数で表した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
[3]実施例の効果
表1によれば、実施例1及び比較例1〜2の各導電性ローラの抵抗値[log(R/Ω)]は、7.52、7.49及び7.70であり、温度23℃、湿度55%の雰囲気下での導電性においては何の問題もないことが分かった。
【0040】
しかし、表2によれば、導電性高分子被覆繊維のみが植毛された比較例1においては、温度28℃、湿度85%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.31(初期)から8.46(60分後)となり、約16%(常用対数で表した場合)も上昇してしまった。また、印加電圧1000Vの際にも7.32(初期)から9.57(60分後)となり、約31%も上昇してしまった。よって、この雰囲気下では安定した導電性が得られないことが分かった。尚、温度10℃、湿度15%の雰囲気下では、印加電圧及び経過時間に関係なく、導電性に問題はなかった。
また、温度28℃、湿度85%の雰囲気下で、60分後の抵抗値が9.57と上昇してしまった比較例1の導電性ローラを、温度23℃、湿度55%の雰囲気下で24時間静置し、この雰囲気下で100Vの電圧を印加したところ、10秒後の抵抗値は8.5となり、表1における比較例1の抵抗値7.49よりも大きな値となった。このことから、一度抵抗値が上昇してしまうと、雰囲気が変わっても導電性は改善されず、抵抗値の上昇は不可逆的なものであることが分かった。
【0041】
更に、電着処理繊維のみが植毛された比較例2においては、温度10℃、湿度15%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際には初期の段階から10.3と高く、60分後においても11.3と高かった。更に、印加電圧1000Vの際にも初期の段階から抵抗値が10.3と高く、60分後においても11.0と高かった。このことから、この雰囲気下では安定した導電性が得られないことが分かった。尚、温度28℃、湿度85%の雰囲気下では、印加電圧及び経過時間に関係なく、導電性に問題はなかった。
【0042】
これに対して、導電性高分子被覆繊維及び電着処理繊維が植毛された実施例1においては、温度10℃、湿度15%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.48(初期)、7.59(60分後)(抵抗値の変化率;約+1%)であり、印加電圧1000Vの際に7.52(初期)、7.68(60分後)(変化率;約+2%)であった。また、温度28℃、湿度85%の雰囲気下の抵抗値が、印加電圧10Vの際に7.61(初期)、7.54(60分後)(変化率;約−1%)であり、印加電圧1000Vの際に7.64(初期)、7.49(60分後)(変化率;約−2%)であった。これらのことから実施例1の導電性ローラは、湿度等の雰囲気、印加電圧及び経過時間により性能が左右されず、優れた導電性を有するものであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】導電性ローラを説明する模式図である。
【図2】導電性ローラの断面を説明する模式図である。
【図3】図1におけるA部の拡大図である。
【符号の説明】
1;導電性ローラ、2;ローラ基体、21;芯材、22;接着層、23;弾性多孔質層、3;接着層、41;導電性高分子被覆繊維、42;電着処理繊維。
Claims (6)
- 基材と、該基材の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性植毛部材。
- 上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである請求項1に記載の導電性植毛部材。
- 基材の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性植毛部材の製造方法。
- 芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層と、該弾性多孔質層の表面に接着層を介して植毛されている、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維とを備えることを特徴とする導電性ローラ。
- 上記導電性高分子被覆繊維及び上記電着処理繊維における表面漏洩抵抗値が、それぞれ105〜1010Ωである請求項4に記載の導電性ローラ。
- 芯材と、該芯材を被覆し且つ該芯材に接着された弾性多孔質層とを備えるローラ基体における該弾性多孔質層の表面に接着剤を塗布し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜に、導電性高分子が被覆された導電性高分子被覆繊維及び水分を保持させるための処理が施された電着処理繊維を、静電力により植毛する静電植毛工程とを備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
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JP2003130795A JP2004330654A (ja) | 2003-05-08 | 2003-05-08 | 導電性植毛部材及び導電性ローラ並びにそれらの製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009204653A (ja) * | 2008-02-26 | 2009-09-10 | Kyocera Mita Corp | 画像形成装置 |
JP2009244471A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Toray Ind Inc | 導電性フロック |
-
2003
- 2003-05-08 JP JP2003130795A patent/JP2004330654A/ja active Pending
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