JP2004326639A - 回収製品の分解、再生計画および製品の生産および製品の生産部品の調達計画立案方法ならびに装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回収製品の回収予定数量と、調達により使用することができるようになる部品毎の利用可能日と数量と、製品を必要とする要求日と数量の情報である生産要求量とが入力されると、予め定められた制約条件に基づいて線形計画法アルゴリズムに基づく計算を行い、分解、再生、生産、調達品目の数量を出力する。制約条件には、回収製品から取り出した部品の再利用率および消費コストの情報が含まれる。
【選択図】図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収製品の分解計画、新規製品の生産計画、および新規製品の部品や材料の調達計画に関し、特に、回収製品を分解して得られた再生部品や材料の利用率が定められている場合の分解、再生、生産、調達計画に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境問題に対する人々の意識は、年々高まってきており、環境問題は、社会全体として取り組むべき課題となっている。そのような中、環境問題に対する意識が高い生産企業は、環境への負荷を小さくするため、ライフサイクルを終えた製品を回収して再利用する体制を構築しつつある。このような企業の自発的な動きだけでなく、すでに一部の産業機器においては企業目標として一定の再利用率を定めることを促進する省令が発令されており、再利用を前提とした生産体制の構築が必要となってきている。
【0003】
また、回収された製品に含まれる部品の中には、プリント基板など適正な処理を行わないと環境に負荷がかかる物質を用いている部品もある。そのような部品については再利用するしないに関わらず、環境負荷物質を分解して取り出す必要がある。
【0004】
従来、リサイクル部品の利用に関しては、新しい製品を生産する場合の部品の発注量決定方法として、部品を抽出することができる使用済み製品の回収台数を予測し、使用済み製品の予測台数から抽出することができるリサイクル部品の数を算出し、算出されたリサイクル部品の数と、部品の在庫数と、総生産計画とに基づいて部品の発注量を決定するというものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、リサイクルシステムとしては、回収される使用済み製品の数量が、回収時期の予測に反してずれた場合でもリサイクル製品の生産計画が確実に実行できる計画修正機能を備えたリサイクルシステムがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−150083号公報
【特許文献2】
特開2002−328976号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
使用済みとなり回収した製品は、例えば、中間品まで分解して再利用してもよく、その中間品をさらに細かい中間品や部品にまで分解して再利用してもよい場合が数多く存在する。従来の技術においては、回収した使用済み製品を、いつ、どの段階まで分解するかを定めることまでは考慮されていない。つまり、生産計画から分解計画へのフィードバックはなく、回収した製品は、全て分解することを想定しているものであった。そのため、分解後のリサイクル部品の使用予定の有無とは関係なく分解作業が行われる可能性があった。
【0007】
また、予め決められた再利用率を満たし、かつ不要な分解作業を行わずになるべく上位の中間品の状態で再利用することが重要である。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的は、回収した使用済み製品に含まれる部品や材料の予め決められた再利用率を満たしつつ、使用済み製品の分解作業量を必要最小限に抑える分解計画、およびこの分解計画と整合性がとれ消費コストの和が最小となるように生産、調達計画を作成する方法および装置を提供することにある。
【0009】
また、従来の技術においては、設備や作業員などのリソースの使用可能量を考慮していないため、生産要求量がある期間に集中した場合、リソース不足で想定していた時期に生産や分解作業ができない可能性がある。
本発明の第二の目的は、リソースの制約の範囲で目標再利用率を満足し、かつ消費コストの和が最小となるように生産・分解・再生・調達品目(製品、中間品、部品)の日別数量を算出する計画方法および装置を提供することにある。
【0010】
また、適正な処理を行わないと環境に負荷を与える物質を含有する部品(以下、要適正処理品目と称す)については、生産工程での再利用はないが分解作業は必須である。本発明の第3の目的は、要適正処理品目を取り出すための日別分解・再生数量を算出する計画方法および装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、回収製品の回収予定数量と、調達により使用することができるようになる部品毎の利用可能日と数量と、製品を必要とする要求日と数量の情報である生産要求量とが入力されると、予め定められた制約条件に基づいて線形計画法アルゴリズムに基づく計算を行い、分解、再生、生産、調達品目の数量を出力するようにしたものである。制約条件としては、製品の生産に用いる部品のうち回収製品から取り出して製品再利用された部品の割合を示す再利用率に関する情報が含まれ、再利用率に関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力する。また、制約条件には回収した製品の分解、再生処理の際に消費するコストおよび製品の生産、部品の調達に要するコストに関する情報が含まれ、消費コストに関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、製品の生産および再利用の流れを示す図である。
まず、製品の生産および再利用の流れについて図1を用いて説明する。
本実施の形態においては、分解して再利用することをリユース、再生して再利用することをリサイクルと呼び、リユースとリサイクルの総称として再利用という言葉を用いる。
製品を生産する会社は、まず製品の生産に必要な部品を調達する(101)。そして、調達した部品から中間品を生産し(102)、さらに中間品や部品、材料を組み合わせてさらに上位の中間品の生産を行う(103)。そしてこの中間品から製品の生産を行い(104)、製品を出荷する(105)。製品は顧客に届けられる(106)。製品が顧客のもとで使用済みとなるとその製品は回収される(107)。そして、回収された使用済みの製品は、製品から中間品、部品へと分解される(108〜110)。
【0013】
ここで、再利用には、製品を分解して取り出した上位の中間品(112)の状態で用いる場合、さらに分解した下位の中間品113の状態で用いる場合、部品、部材(114,115)まで分解して生産に再利用する場合がある。部材にまで分解する例としては、パソコンの筐体などがある。プラスチックでできた部品は、一旦粉砕、融解してプラスチックの粒として再生し、この粒から部品を再生して生産に再利用する。
このように、分解と再生が多段階で構成される場合、できるだけ上位の中間品で再利用できれば分解の作業量が少なくて済むという利点がある。逆に、部品まで分解すれば、再利用できる可能性が高いという利点がある。コストを抑えながら、目標とする再利用率を満足するような生産を行うためには、生産対象の製品に応じて、分解、再生作業を決定するのが望ましい。
【0014】
一般的な生産、調達計画および分解再生計画の作成について図2を用いて説明する。
図2は、製品の生産、調達計画および回収製品の分解、再生計画を作成する装置の位置付けを説明する図である。
図2に示すように、一般的には生産する製品の需要予測201をもとに、生産、調達計画装置202で、部品調達、中間品生産計画、製品生産計画を作成する。そして、これとは独立して使用済み製品の回収予測203をもとに分解、再生計画装置204で製品、中間品の分解計画、および部品の再生計画を作成していた。このような構成のため生産の状況にあわせて回収製品をどこまで分解し何をいくつ取り出すのかを決めることができず、回収した製品を予め決めておいた状態(一定の中間品または部品)まで機械的に分解、再生をおこなっていた。
【0015】
また、図2に示すような一般的な構成では、生産に使った部品のうち再利用品が占める割合である再利用率(リユース・リサイクル率)は、生産時点での再生品の在庫量に依存している。そのため生産、調達計画と分解、再生計画が同期していないので、環境対応などで再利用率の目標を掲げて製品を生産しなければならない場合、その再利用率を考慮した生産計画を立案するようにはなっていない。
【0016】
一方、本発明の一実施形態の生産、調達計画および分解再生計画の作成について図3を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態における製品の生産、調達計画および回収製品の分解、再生計画を作成する装置の位置付けを説明する図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、生産する製品の需要予測201と回収予測203に基づき、決められた再利用率目標(リユース・リサイクル率目標)312と生産や調達、分解や再生により消費するコスト313を考慮し、分解、生産、調達計画装置300にて、生産、調達計画と分解、再生計画とを整合性をとって同時に作成する。
なお、本実施の形態においては、前記のように再利用のうち、分解して再利用することをリユース、再生して再利用することをリサイクルと呼ぶ。そして、再利用率をリユース、リサイクルごとに管理することを前提とする。リユース、リサイクルの区別をしないで再利用率を管理する場合でも、本発明にて考慮することは可能である。
【0017】
一般に、回収する製品および生産する製品は複数種類あり、部品構成も多段で複雑な構成をしている。実際の製品を扱うには膨大な処理を必要とする。本実施例では、本発明の内容を明確に示すために、製品の種類、部品構成を単純化して説明する。
【0018】
次に、本実施形態の分解、生産、調達計画装置300の構成を、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態における分解、生産、調達計画装置の構成を説明する図である。
本発明の一実施形態における分解、生産、調達計画装置300は、大きく分けると入力情報を記憶する記憶部と、計算を行い結果を出力する処理部と、計算結果を記憶する記憶部の3つに分類される構成要素からなる。
【0019】
まず、一つめの入力情報を記憶する記憶部について説明する。
入力情報を記憶する記憶部は、回収予定記憶部401とリサイクル部品表記憶部402と、在庫記憶部403と、入庫予定情報記憶部404と、部品表記憶部405と、生産要求記憶部406と、目標リサイクル率記憶部407と、コスト情報記憶部408と、互換性情報記憶部410と、リソース情報記憶部413と、リソース能力情報記憶部414と、要適正処理品目記憶部415である。以下各記憶部について説明する。
【0020】
回収予定記憶部401は、製品毎の回収予定日と数量からなる回収予定情報を記憶する記憶部である。リサイクル部品表記憶部402は、回収した製品を分解・再生して得られる中間品および部品の構成と分解リードタイムもしくは再生リードタイムを記憶する記憶部である。在庫記憶部403は、回収した製品、および製品を分解・再生して得られる中間品および部品毎の在庫数量、および生産する製品、中間品および調達した部品の在庫数量を記憶する記憶部である。入庫予定情報記憶部404は、調達を行うことにより使用することができるようになる部品毎の利用可能日と数量を記憶する記憶部である。部品表記憶部405は、製品毎の部品構成と生産リードタイムを記憶する記憶部である。生産要求記憶部406は、製品を必要とする要求日と数量からなる生産要求情報を記憶する。目標リユース率、目標リサイクル率記憶部407は、リサイクルする分解部品の割合、再生部品の割合を記憶する。コスト情報記憶部408は、回収した製品を分解・再生するのに消費するコスト、および製品を生産するのに消費するコスト、および部品を調達するのに消費するコストを記憶する。互換性情報記憶部410は、回収した製品を分解・再生して得られる中間品および部品と、製品を生産するのに必要となる中間品および部品との互換性を記憶する。リソース情報記憶部413は、生産、分解、再生をするために必要となる設備や人などのリソース量を記憶する。リソース能力情報記憶部414は、生産、分解、再生をする設備や人の使用可能量を記憶する。要適正処理品目記憶部415は、適正処理を行う必要のある回収製品、および製品を分解・再生して得られる中間品および部品を記憶する記憶部である。
なお、記憶部403,404,407,408,410,413,414,415は、その記憶部に記憶する情報がない場合には構成から外してもよい。
【0021】
次に、各種計算を行う処理部について説明する。
各種計算を行う処理部に含まれるのは、計画立案部411と計画出力部412である。
計画立案部411は、生産・分解・再生・調達する品目(製品、中間品、部品)の日別数量を計算し、計画記憶部409に出力する。計画出力部412は、計画記憶部から生産・分解・再生・調達計画を出力手段に出力する計画出力部412から構成される。
【0022】
次に、計算結果を記憶する記憶部について説明する。
計算結果を記憶する記憶部に含まれるのは、計画記憶部409である。
計画記憶部409は、製品、中間品を分解する日と数量からなる分解計画と、部品を再生する日と数量からなる再生計画と、製品、中間品を生産する日と数量からなる生産計画と、新規に調達が必要な部品の必要な日、数量からなる調達計画を記憶する記憶部である。
【0023】
入力情報を記憶する記憶部と、計算を行い結果を出力する処理部、計算結果を記憶する記憶部は、スタンドアロンの装置に全て搭載してもよいし、イーサーネット等で接続された複数の装置それぞれに分散して搭載し、必要に応じてネットワークを介して情報を送受信してもよい。
複数の装置それぞれに分散して搭載する例としては、例えば、生産や調達に関わる情報を記憶する記憶部を生産管理部門が管理する装置に搭載し、分解や再生に関わる情報を記憶する記憶部は回収部門が管理する装置に搭載し、計画立案部および計画記憶部および計画出力部は情報部門が管理する装置に搭載する形態が考えられる。
また、本発明は、以下に説明する本発明の処理内容をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現し、それをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納した形態での実施も考えられる。
【0024】
次に、本発明の一実施形態の生産・分解・再生・調達計画装置300の動作について説明する。
図5は、本発明の一実施形態における回収製品の部品構成および分解、再生リードタイムを示す図である。
図5において、回収製品はAP+番号で示している。また、回収製品を分解して取り出すことのできる中間品や部品、材料およびその下位の中間品、部品、材料についてはA+番号で示している。R+番号で示しているのは再生品で、回収製品または回収製品から取り出した中間品、部品、材料を組み合わせて再生したものである。
【0025】
ここではAP01、AP02、AP03が回収製品である。部品構成ツリーの下の表は、例えばAP01からはリードタイム1日でA00、A01、A02、A03をそれぞれ1単位ずつ分解して取り出すことができることを示している。また、その下の再生の表は、AP03を2単位、A11を3単位組み合わせてR23をリードタイム1日で再生することができることを示している。この図5に示すデータは、リサイクル部品表記憶部402に記憶されている。
【0026】
次に、本実施形態における生産製品の部品構成について説明する。
図6は、本実施形態における生産製品の部品構成および生産リードタイムを示す図である。
図6において、P+番号は生産製品を示している。i+番号は中間品を、B+番号は部品を示している。図6は、例えば生産製品P01は、中間品i11および部品B11、B12から構成されており、生産リードタイムは1日である。この図6に示すデータは、部品表記憶部405に記憶されている。
【0027】
回収製品の部品表を示す図5に戻り、図5の楕円で囲んでいる部品A12は、図6の生産製品の楕円で囲んでいる部品B12にリユースできるリユース品である。P01は、中間品i11、および2つの部品B11、A12のから生産することができる。同様に、図5の四角で囲んでいる部品R13、R23はそれぞれ図6の四角で囲んでいる部品B13、B23にリサイクルすることができるリサイクル品である。これらの互換性関係情報は互換性情報記憶部410に記憶されている。なお、互換性関係情報は1対1でなく、1対nでもよい。例えば、パソコンを生産する場合に、128MBのメモリを必要とする場合、その容量が128MB以上であればよいのなら、リユース可能な部品は複数となる。
【0028】
図5の回収製品の部品表において下線でマークした部品A03は、図6の生産製品のどの部品とも互換性がないが、要適正処理品目として指定されているものである。このデータは要適正処理品目記憶部415に記憶されている。
生産、分解、再生をするために必要となる設備や人などのリソース量に関して1日に使用可能なリソース量が限られている場合には、リソース情報記憶部413に品目ごとに生産、分解、再生をするために必要となるリソースとその量を登録し、各リソースの日別の使用可能量をリソース能力情報記憶部413に登録しておく。
【0029】
次に、コスト情報について図7および図8を用いて説明する。
図7は、分解および再生作業の際に消費されるコストのコスト情報を示す図である。
図8は、生産の際に消費される生産コストおよび部品の調達の際に消費される調達コストのコスト情報を示す図である。
図7に示されている分解コストは、親品目を分解して子品目を1単位取り出すのに必要となるコストである。例えば1つの親から子を2つ取り出すと、コストは2倍になる。生産コストは、親品目に子品目を1単位組み付けるのに必要となるコストである。新品を組み付ける場合と、再利用品を組み付ける場合との生産コストが異なっていてもよい。この図7、図8に示すコスト情報は、コスト情報記憶部408で記憶されている。
【0030】
本実施の形態では、目標リユース率、目標リサイクル率は、製品P01、P02合計で20%とする。目標リユース率、目標リサイクル率は、製品別、もしくは今回の例のように製品をグループ化した製品群別に設定し、その値は期間ごとに異なる率を設定できる。例えば、製品P01は、4月1日から9月30日は20%、10月1日から3月31日までは10%などと設定できる。このデータは記憶部407にて記憶されている。
【0031】
次に、回収予定情報について説明する。
図9は、回収予定記憶部401に記憶される回収予定情報を示す図である。
回収予定情報は、回収済製品とその在庫数量、および回収製品毎の回収予定数量と回収予定部の情報を含むものである。
図9に示す製品は分解および再生する可能性のある製品である。図9に示す例では回収済み在庫はない。回収製品AP01は4月11日に100個回収する予定である。図9に示すデータのうち、回収済み在庫のデータは在庫記憶部403で、回収予定のデータは回収予定記憶部401で記憶されている。
【0032】
一方、生産要求情報の方を次に見てみる。
図10は、在庫情報、入庫予定情報、生産要求情報を示す図である。
を図10に示す例では、製品P01は4月7日に生産要求が50個ある。製品の在庫および製品の生産に必要となる部品等の在庫や入庫予定量は0である。図10に示すデータのうち、在庫のデータは在庫記憶部403で、入庫予定のデータは入庫予定情報記憶部404で、生産要求のデータは生産要求記憶部406で記憶されている。この生産要求情報と図7に示した回収予定情報とに基づき、計画立案部411で生産、分解、再生、調達計画を作成する。
【0033】
計画立案部411における生産、分解、再生、調達計画の作成ステップについて次に説明する。
生産、分解、再生、調達計画の作成ステップは、大きくは以下のステップ1から3からなる。
ステップ1:入力情報の読み込み
ステップ2:制約条件のモデル生成
ステップ3:最適化計算
各ステップにおける処理内容を以下に述べる。
まず、ステップ1の処理内容は以下の通りである。
<ステップ1>
前述の入力情報となる記憶部より計算に必要な情報をメモリ上に読み込む。
このとき、分解、再生する可能性がある製品(以下の説明においては品目と称する)の在庫および回収予定と、生産要求のデータが両方ともない場合、生産、分解、再生、調達するものがないとみなし、処理を終了する。
【0034】
次に、ステップ2の処理内容を説明する。
<ステップ2>
ステップ2では、ステップ3の最適化計算にインプットするためのモデルを生成する。
本発明では、線形計画法アルゴリズムを最適化計算に利用する。線形計画法は、制約条件と目的関数を線形方程式で記述し、制約条件を満たす解集合の中から目的関数が最適となる解を検索するものである。
図11に、本発明の一実施形態における制約条件を模式的に表した図を示す。
各品目について、その役割に応じて日別の変数を定義する。例えば、品目AP01について変数となるのは、在庫量、出庫量、AP01から分解したA01の量、A01の分解量、入庫量、在庫量、出庫量、A01から分解したA12の量である。図11で四角で囲んで示している「回収」「入庫予定」は、記憶部より入力した定数であることを示している。四角で囲まれていない文字は変数であることを示している。
【0035】
図11において、モノの流れを矢印で表わす。モノの流れ方に従属して変数の値を決める必要があるので、おのおのの変数を結ぶ矢印を1つの制約条件として記述する必要がある。矢印と変数との関係は、以下の4パターンの制約条件で記述できる。
【0036】
一つめの制約条件は在庫制約である。
(1)在庫制約
品目の在庫は、入庫量と出庫量と入庫予定量で記述する。例えば、図11のA02に関しては
t日在庫量=t−1日在庫量+t日入庫量+t日入庫予定量−t日出庫量
が成り立たなければならない。
【0037】
二つめの制約条件は部品構成制約である。
(2)部品構成制約
品目の親子関係は、図5、図6に示すような親子関係であると定義する。そうすると、例えば、図11のP01を1単位作るためには、1日前にi11が1単位必要となるので、
P01のt日の生産量=i11のt−1日の消費量
と記述する。B11のように、複数の製品で消費される場合には、
B11のt日の消費量=P01のt+1日の生産量+P02のt+1日の生産量
と記述する。
例えば、AP01からA01を1単位取り出すことができるので、
AP01のt日の分解量≧1×t+1日にAP01から分解したA01の量
と記述する。ここで分解の場合、親品目から全ての子品目と取り出すとは限らないので、不等式となっている。
【0038】
三つめの制約条件は引当制約である。
(3)引当制約
分解、再生した品目が何に使えるのかを記述する。例えば、図11でAP01から分解したA02は、再生の材料として使用されるので、
t日にAP01から分解したA02の量=A02のt日の入庫量
もし、分解場所と再生場所が離れていて、輸送するのに日数がかかるならば、その日数分だけオフセットすればいい。例えば輸送に3日かかるなら、上式は
t日にAP01から分解したA02の量=A02のt+3日の入庫量
となる。
【0039】
四つめの制約条件は生産要求量引当制約である。
(4)生産要求量引当制約
製品を生産した量は、生産要求量を満たしたいので、例えば、図11では
P01のt日出荷量=P01のt日生産要求量(S111)
と記述する。ところが、リードタイムの関係や、回収量の関係で、この等式条件が常に成り立つとは限らない。そこで、生産要求量に対して出荷量の不足量を変数として定義し、
P01のt日出荷量+P01のt日出荷未達量=P01のt日生産要求量(S111)
と記述し、等式条件が常に成り立つようにする。
【0040】
(1)(2)(3)(4)の制約条件により、生産要求量(S111)が与えられると、従属的に変数の値を決めることができる。
【0041】
次に、上記4つの制約条件にさらに追加する制約条件を説明する。
生産S113、S114、分解S115、S116、再生S117を行うために必要となる設備や人などのリソース量に対し、1日に使用可能な量が限られている場合には、制約条件(5)を更に追加する。
(5)リソース制約
例えば、生産S113で、設備を使って生産を行う場合には、
i11を1単位生産する際の設備占有時間×i11のt日入庫量≦設備のt日稼動時間と記述する。設備を複数の品目で共有する場合には、各品目の設備占有時間×入庫量を左辺に加算する。
【0042】
次に、目標リユース率、目標リサイクル率について説明する。
本発明では、変数の値を決めるパラメータとして、目標リユース率、リサイクル率を与える。リユース率、リサイクル率は、製品の生産に対する分解および再生量を生産に引き当てた量の割合で記述するので次のようになる。
(分解量を生産に引き当てた量)÷(製品の生産量)=目標リユース率
(再生量を生産に引き当てた量)÷(製品の生産量)=目標リサイクル率
割合を求めるための「量」は、個数でもよいし、重量などの別の基準に換算した量でもよい。なお、この制約条件も、回収量の与え方によっては、目標となる量に必ずしも一致しないことがあるので、目標を超過した引当量、目標に満たない引当量変数を定義して、
(分解量を生産に引き当てた量−目標を超過した引当量+目標に満たない引当量)÷(製品の生産量)=目標リユース率
と記述する。
【0043】
次に、目的関数を定義する。本実施形態においては、コスト、目標リユース、リサイクル率、生産要求の充足度を計画の評価指標とする。
コストは、今回の例では分解量、再生量、生産量、調達量にそれぞれ分解コスト、再生コスト、生産コスト、調達コストを乗算することで計算できる。別のコストとして、在庫コストや輸送コストなども考慮することができる。例えば、在庫コストは在庫量に単位あたり在庫コストを乗算すればよい。在庫コストを導入すれば、生産のタイミングにあわせて分解や再生の作業を行うような結果が得られる。以上のコストの和がなるべく小さくなればよい。
目標リユース、リサイクル率は、変数「目標に満たない引当量」がなるべく小さくなればよい。
生産要求の充足度は、変数「出荷未達量」がなるべく小さくなればよい。
本発明では、それぞれの「小さくなればよい」変数および数式の加重和を目的関数とする。
なお、要適正処置品目がある場合には、要適正処置品目の入庫量に負の係数を掛け、目的関数に加えることで、適正処理品目を分解したほうが解がよくなるように制御する。
【0044】
次に、ステップ3について説明する。
<ステップ3>
ステップ3にて、制約条件を満たす解集合(=変数の値の組み合わせパターン)の中で、目的関数が最小となる解を求める。線形計画法を解くソフトウエアにステップ2のモデル(=制約条件と目的関数)を入力し、求解する。
計画立案部411で計算した結果(=変数の値)は、計画記憶部409に出力する。
図12は、計画記憶部に出力する計画立案部の計算結果情報のうち生産計画情報と調達計画情報を示す図である。
図13は、計画記憶部に出力する計画立案部の計算結果情報のうち分解計画情報と再生計画情報を示す図である。
図12に示している生産計画情報として出力するのは、図11の生産S113、S114の直後にある入庫量変数の値である。図12に示す調達計画情報として出力するのは、図11の生産S113直前にある出庫量変数の値である。図13に示す分解計画情報として出力するのは、図11の分解S115、S116直後にある分解量である。図13に示す再生計画情報として出力するのは、図11の再生S117直後にある再生量である。
【0045】
計画出力部412を介して計画の結果を評価するための情報として、目的関数に使用した各コストの計算結果と目標リユース、リサイクル率、計画充足度を計画記憶部409に出力してもよい。
また、変数全ての値を計画記憶部409に出力しておき、計画出力部412を介して計画担当者が必要に応じて編集して確認できるようにしてもよい。例えば、在庫量の変数を抽出して、在庫推移を確認するといった確認方法が考えられる。
【0046】
最後に、計画出力部412が、計画記憶部408で図12、図13のように記憶された生産計画、調達計画、分解計画、調達計画を紙、またはディスプレイ、または別システムへの電子データとして出力する。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、リユース・リサイクル率の目標を満たし、かつ生産・分解・再生・調達コストの合計が最小となる生産・分解・再生・調達計画を作成することができる。本実施形態では、発明の特徴的な内容を明確に示すために、製品の種類、部品構成を単純化して説明したが、回収する製品および生産する製品とも複数種類あり、部品構成も多段で複雑な構成をしている製品に対しても本発明は同様に適用できるものである。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、所与の再利用率(リユース・リサイクル率)を満たしながら、消費コストの和が最小となる生産・分解・再生・調達計画を立案することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製品の生産およびリサイクルの流れを示す図である。
【図2】一般的な製品の生産、調達計画および回収製品の分解、再生計画を作成する装置の位置付けを説明する図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における製品の生産、調達計画および回収製品の分解、再生計画を作成する装置の位置付けを説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態における生産、分解、再生、調達計画装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態における回収製品の部品構成および分解再生リードタイムを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態における生産製品の部品構成および生産リードタイムを示す図である。
【図7】分解および再生作業の際に消費されるコストのコスト情報を示す図である。
【図8】生産の際に消費される生産コストおよび部品の調達の際に消費される調達コストのコスト情報を示す図である。
【図9】回収製品の在庫および回収予定情報を示す図である。
【図10】在庫情報、入庫予定情報、生産要求情報を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態における制約条件を模式的に表した図である。
【図12】計画立案部での計算結果の出力例を示す図である。
【図13】計画立案部での計算結果の出力例を示す図である。
【符号の説明】
300:リサイクルに対応した生産・分解・再生・調達計画装置
401:回収予定記憶部
402:リサイクル部品表記憶部
403:在庫記憶部
404:入庫予定情報記憶部
405:部品表記憶部
406:生産要求記憶部
407目標リユース率、目標リサイクル率記憶部
408:コスト情報記憶部
409:計画記憶部
410:互換性情報記憶部
411:計画立案部
412:計画出力部
413:リソース情報記憶部
414:リソース能力情報記憶部
415:要適正処理品目記憶部
Claims (12)
- 回収した使用済み製品の分解、再生計画および製品の生産および製品の生産に用いる部品の調達計画作成装置であって、
回収製品の回収予定数量を記憶する回収予定情報記憶部と、調達により使用することができるようになる部品毎の利用可能日と数量を記憶する入庫予定記憶部と、線形計画法アルゴリズムに基づく計算により分解、再生、生産、調達計画を立案する計画立案部と、前記計画立案部における計算上の複数の制約条件に関する情報を記憶する制約条件記憶部とを有し、
前記計画立案部は、前記回収予定情報記憶部に記憶された回収予定情報と前記入庫予定情報記憶部に記憶された入庫予定情報と製品を必要とする要求日と数量の情報である生産要求量とが入力されると、前記制約条件記憶部に記憶された制約条件情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案装置。 - 前記制約条件記憶部には、製品の生産に用いる部品のうち回収製品から取り出して製品再利用された部品の割合を示す再利用率に関する情報が含まれ、
前記計画立案部は、前記再利用率に関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする請求項1に記載の分解、再生、生産、調達計画立案装置。 - 前記制約条件記憶部には、回収した製品の分解、再生処理の際に消費するコストおよび製品の生産、部品の調達に要するコストに関する情報が含まれ、
前記計画立案部は、前記消費コストに関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする請求項2に記載の分解、再生、生産、調達計画立案装置。 - 請求項3に記載の分解、再生、生産、調達計画立案装置であって、分解、生産、再生処理に要する設備や人的リソースに関する情報を記憶するリソース情報記憶部をさらに有し、
前記計画立案部は、リソースの使用可能量を制約条件とする線形方程式をさらに有し、
該リソース制約の範囲で分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案装置。 - 請求項3に記載の分解、再生、生産、調達計画立案装置であって、分解処理の際に適正な処理が必要な品目に関する情報を記憶する要適正処理品目情報記憶部をさらに有し、
前記計画立案部は、適正処理が必要な品目を取り出すための分解、再生数量をさらに出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案装置。 - 回収した使用済み製品の分解、再生計画および製品の生産および製品の生産に用いる部品の調達計画作成方法であって、
回収製品の回収予定数量と、調達により使用することができるようになる部品毎の利用可能日と数量と、製品を必要とする要求日と数量の情報である生産要求量とが入力されると、線形計画法アルゴリズムに基づく計算を、予め定められた制約条件に基づいて行い、分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案方法。 - 前記制約条件として、製品の生産に用いる部品のうち回収製品から取り出して製品再利用された部品の割合を示す再利用率に関する情報が含まれ、
前記再利用率に関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする請求項6に記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法。 - 前記制約条件として、回収した製品の分解、再生処理の際に消費するコストおよび製品の生産、部品の調達に要するコストに関する情報が含まれ、
前記消費コストに関する情報に基づいて分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする請求項7に記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法。 - 請求項8に記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法であって、分解、生産、再生処理に要する設備や人的リソースに関する情報として、リソースの使用可能量を制約条件として追加し、該リソース制約の範囲で分解、再生、生産、調達品目の数量を出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案方法。
- 請求項8に記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法であって、分解処理の際に適正な処理が必要な品目に関する情報さらに有し、
適正処理が必要な品目を取り出すための分解、再生数量をさらに出力することを特徴とする分解、再生、生産、調達計画立案方法。 - 請求項6ないし請求項10のいずれかに記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法をコンピュータ実行させるためのプログラム。
- 請求項6ないし請求項10に記載のいずれかに記載の分解、再生、生産、調達計画立案方法をコンピュータ実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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