JP2004323896A - 細管製造用電鋳装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電鋳層の肉厚が芯線全体に亘って精度良く形成され、また電鋳処理の作業性の向上、金属細管の量産化を図る。
【解決手段】細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽1と、電鋳槽1の半径方向に電解液面と略並行に放射状に配置され、電鋳槽1の電解液8内を円周方向に回動するように設けた複数本の芯線ホルダー5に各々支持された芯線6と、電解液8に浸漬され、各芯線6上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケース7と、各芯線6とアノードケース7間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段16,17,18とからなり、各芯線6が電鋳槽1内を略1周または所定の角度回動する間に、各芯線6に所定の電鋳層が形成されるようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽1と、電鋳槽1の半径方向に電解液面と略並行に放射状に配置され、電鋳槽1の電解液8内を円周方向に回動するように設けた複数本の芯線ホルダー5に各々支持された芯線6と、電解液8に浸漬され、各芯線6上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケース7と、各芯線6とアノードケース7間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段16,17,18とからなり、各芯線6が電鋳槽1内を略1周または所定の角度回動する間に、各芯線6に所定の電鋳層が形成されるようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細管製造用電鋳装置に係わり、例えば、光ファイバコネクタ部品として使用されるフェルール等の金属細管を電鋳によって製造する細管製造用電鋳装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属メッキは被膜加工に使用され、金属製品の装身具や錆防止等に利用されている。近年は、このような電鋳技術を利用して、線材に電鋳層を形成し、電鋳層から線材を抜き取って電鋳パイプを製造することが行われている。しかし、これを製造する装置には多くの機械構造上、電気制御、化学上の問題がある。
【0003】
特許第3308266号には、フェルールを製造するための電鋳装置が開示されている。この装置には、電鋳槽を立方体状に構成し、電鋳槽内の左右の長手方向に陽極となる電鋳材料を入れたケースを配置し、電鋳槽の中央部には陰極となる線材を支持治具の上下端間に張り、線材表面に電鋳層を形成するものである。
【0004】
【特許文献1】
特許第3308266号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示されている電鋳装置では、電鋳開始前に線材を取り付けた支持治具を電鋳装置にセットして電鋳を行い、電鋳後は線材を取り付けた支持治具を電鋳装置から取り出し、再び新たに線材を取り付けた支持治具を電鋳装置セットする作業を繰り返すものであり、自動化されておらず、また作業性も良くなかった。さらに、これは支持治具の取り換え作業を行う毎に電鋳処理を中断しなければならず、電鋳パイプの量産には適していなかった。
また、電鋳槽内の電解液は常に所定の温度に保たれることが好ましいが、上記装置では、電鋳槽内に上下方向に線材が張られているため、線材の上端部と下端部とでは電解液に温度差を生じ、線材表面に均一な電鋳層を形成することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上記の種々の問題点に鑑み、芯線ホルダーに支持された芯線をドーナツ状(還状)に形成された電鋳槽内に放射状に複数本配置すると共に、配置された複数の芯線を電鋳槽の円周方向に常時回動させながら電鋳処理を行わせることにより、作業性を改善し、比較的短時間で多量の金属細管の製造を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は、ドーナツ状(還状)に形成された電鋳槽の所定の箇所から、電鋳層が形成され芯線を取り付けた芯線ホルダーを取出し、また新たに電鋳するための芯線を取り付けた芯線ホルダーの取付けを行うことを可能にし、その間も、電鋳槽に浸漬されている他の複数の芯線の電鋳処理を継続させることにより、電鋳処理の作業性の向上、さらには金属細管の量産を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は、電鋳槽の電解液に浸漬された芯線を液面と略平行に配置することにより、芯線全体を等温度の電解液に接触されることにより、芯線表面に均一な電鋳層の形成を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0009】
また、他の目的は、電鋳処理の際に、各芯線毎に、所定の電流パターンに従って芯線に流れる電流値および該電流値の積算値を管理することにより、各芯線毎に、芯線表面に形成される電鋳層の真円度と同心度を高精度に制御すると共に、所望の肉厚にすることを可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽と、この電鋳槽の半径方向に電解液面と略並行に放射状に配置され、前記電鋳槽の電解液内を円周方向に回動するように設けた複数本の芯線ホルダーに各々支持された芯線と、前記電鋳槽の電解液に浸漬され、前記各芯線上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケースと、前記各芯線と前記アノードケース間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段とからなり、前記各芯線が前記電鋳槽内を略1周または所定の角度回動する間に、前記各芯線表面に所定の電鋳層が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
第2の手段は、第1の手段において、前記電鋳槽内を芯線を支持する前記各芯線ホルダーが円周方向に回動している状態において、電鋳完了後の芯線を支持する芯線ホルダーを取出し、または電鋳前の芯線を支持する芯線ホルダーの取付けを行うことが可能な芯線ホルダー着脱箇所を前記電鋳槽に設けたことを特徴とする
第3の手段は、第1の手段または第2の手段において、前記所定の電流パターンは、小定電流期間と、この小定電流期間に続く増加電流期間と、この増加電流期間に続く大定電流期間とから構成されていることを特徴とする
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、前記電解液に芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合、または電鋳前に前記芯線をニッカノンタックA,Bを混合した液に浸漬したことを特徴とする。
【0012】
第5の手段は、第1の手段ないし第4の手段のいずれか1つの手段において、前記各アノードケースの半径方向の両端部に、半径方向の両端を覆うように前記アノードケースの半径方向の幅を制御する邪魔板を設けたことを特徴とする。
【0013】
第6の手段は、第1の手段ないし第5の手段のいずれか1つの手段において、前記電鋳槽に隣接され、この電鋳槽からオーバーフローした電解液を、所定の温度に加熱すると共に、不純物を濾過して前記電鋳槽に循環させるためのオーバーフロー槽を設けたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1乃至図5を用いて説明する。
図1は本実施形態の発明に係る細管製造用電鋳装置の主要な構成を示す正面図、図2は図1のA−Aから見た平面図である。
【0015】
これらの図において、1は図1および図2に示すようにドーナツ状(環状)に形成され、半径方向の断面が略U字状形成され、電解液で満たされた電鋳槽、2は電鋳槽1の外側に設けられ、電鋳槽1からオーバーフローした電解液を濾過すると共に所定の温度に加熱された電解液を貯留するオーバーフロー槽、21はオーバーフロー槽2に貯留された電解液を所定の温度(例えば、55℃〜65℃)に加熱するヒータ、3はターンテーブル4の回転に伴って回転され、芯線ホルダー5を支持して電鋳槽1内を円周方向に回動する、放射状に配置された数十本(例えば、60本)の傘骨状のアーム、4は、電鋳槽1内を1周する間に芯線6表面に所定の肉厚の電鋳層が形成されるように、公転モータ10によって微速(例えば、1周約4時間)で回転されるターンテーブル、5はアーム3に支持され芯線6を支持する芯線ホルダー、6は、電鋳槽1の半径方向に電解液8面と略平行かつ放射状に配置されると共に、電鋳槽1の電解液8内を円周方向に回動するように設けた芯線ホルダ5ーに支持された、表面に電鋳層が形成される芯線(例えば、ステンレス線)、7は電鋳材料(例えば、直径5mm〜6mmのニッケル球)が収納されたアノードケース、8は電解液、9は芯線6表面に均一に電鋳層が形成されるようにするために、芯線6を自転(例えば、20〜40回転/分)させるための自転モータ、10はターンテーブル4を回転させる公転モータ、11は昇降アーム12を昇降する昇降モータ、12は芯線ホルダー5をアーム3に取付けまたは取外しするために、アーム3を電鋳槽1から昇降させる昇降アーム、13はオーバーフロー槽2に貯留された電解液を濾過して不純物を除き電鋳槽1に循環させるための濾過機、14は電鋳槽1内の電解液8を対流させて電解液8の均一化を図る還流ポンプ、15は電流制御装置17から配線される固定側と電鋳槽1内を回動する芯線ホルダー5から配線される可動側との電気的接続を図るためのスリップリング、16はコンピュータ18によって制御され、ドーナツ状(環状)の電鋳槽1内に配置された、数十組(例えば、60組)の芯線ホルダー5に支持された各芯線6毎に電流制御する電流制御装置、17は電源装置(例えば、DC8V、100A定格)、18は、電流制御装置16に対して、所定の電流パターン特性に従って、各芯線6に流れる電流値を指示し、また所定の電流積算値に達したとき各芯線6に流れる電流を遮断するように指示するために設けられたコンピュータ、19は、ドーナツ状に形成された電鋳槽1の任意の箇所に、芯線6を支持する芯線ホルダー5をアーム3に取付けたり、またアーム3から取外したりするために設けられた芯線ホルダー着脱箇所である。
【0016】
なお、本装置では、図2に示すように、ドーナツ状に形成された電鋳槽1に芯線ホルダー着脱箇所19を1箇所設けたが、電鋳槽1をより大型化したり、または芯線6をより低速で電鋳槽1内を回動させて電鋳処理を行うような場合には、芯線ホルダー着脱箇所を複数箇所設けることも可能である。例えば、電鋳処理を電鋳槽1を略半周回動する間に完了させる場合には、芯線ホルダー着脱箇所を2箇所設けることができる。
【0017】
また図1に示すように、アーム3が電鋳槽1の円周方向を1周して、芯線6表面に所定の電鋳層が形成されたアーム3が、この芯線ホルダー着脱箇所19に達すると、昇降モータ11が回転し、それに伴って昇降アーム12が上昇して、電鋳槽1の電解液8面上に持ち上げられる。アーム3が持ち上げられると、アーム3から電鋳層が形成された芯線6を支持する芯線ホルダー5の取外しが可能となる。その芯線ホルダー5がアーム3から取外され、新たに電鋳するために芯線6を取付けた芯線ホルダー5がアーム3に取付けられると、再び、昇降モータ11が回転し、昇降アーム12が下降して、アーム3が電鋳槽1の電解液8内に浸漬され、電鋳が開始される。このように、芯線ホルダー5の着脱を1本ずつ1箇所で行うことができるので、自動化への対応が可能となる。
【0018】
また、上記のごとく、アーム3から芯線ホルダー5の取外し、取付けが行われている間においても、他の各アーム3に取付けられた芯線6を支持する各芯線ホルダー5は電解液8に浸漬された状態にあって、電鋳槽1内を回動し、電鋳処理が継続して行われる。いわゆる無停止連続運転が可能となる。また、芯線ホルダー着脱箇所19において、アーム3から芯線ホルダー5の取外し、取付けが行われている間においても、取外し、取付けが行われているアーム3も電鋳槽1の円周方向に回動を継続しているが、この回動は、例えば、1周約4時間程度の微速であるので、芯線ホルダー5の取外し、取付け作業に影響を与えることなく容易に行うことができる。
【0019】
また、芯線ホルダー5を保持する各アーム3は、各アーム3を取付けたターンテーブル4が公転モータ10により回転されることにより回動され、これにより、芯線6を取付けた数十組の芯線ホルダー5がアーム3に支持されてドーナツ状の電鋳槽1内を円周方向に回動する。
【0020】
また、各芯線6は、電鋳処理中、自転モータ9により回転(自転)されているので、ドーナツ状の電鋳槽1内を円周方向に回動(公転)する間に、芯線6表面に真円度および同軸度の高い電鋳層を形成することが可能となる。
【0021】
また、複数本の芯線ホルダー5に支持された各芯線6は、電鋳槽1の半径方向に電解液8面と略平行に放射状に配置されているので、芯線6全体を等温度の電解液8に接触させることができるので、芯線6表面全体に均一な電鋳層を形成することができる。
【0022】
また、図1に示すように、各芯線6は、電源装置17のマイナス側から、電流制御装置16、スリップリング15、アーム3、芯線ホルダー5を介して電気的に接続され、一方、アノードケース7は電源装置17のプラス側と電気的に接続されている。その結果、各芯線6は、ドーナツ状の電鋳槽1内で自転されると共に電鋳槽1内を1周(公転)する間に、電流制御装置16によって芯線6とアノードケース7間に流れる電流が制御され、芯線6表面に所定の肉厚の電鋳層を形成することができる。
【0023】
また、電鋳槽1の上部から溢れた電解液8はオーバーフロー槽2に流れ落ち、ここでヒータ21によって所定の温度(例えば、55℃〜65℃)に暖められ、その後、濾過機13によって不純物が取り除かれて再び電鋳槽1に循環される。
【0024】
また、図2に示すように、電解液8に浸漬された、電鋳材料を収納した数十組(例えば、16組)のアノードケース7は、数十組(例えば、60組)の各芯線6の上部に対向するように、かつドーナツ状の電鋳槽1内を周回するように密に配置される。またアノードケース7は芯線ホルダー5に支持された各芯線6と一定の距離を保つように配置されている。
【0025】
図3は、図1に示したアノードケース7の拡大図である。
アノードケース7には、アノードケース7に入れたニッケル球等からなる電鋳材料が電解液8に溶解して流出するように、かつ電鋳材料が2/3程度消耗してもアノードケース7から落下しない程度に無数の小さな穴71が底部および側面に設けられる。また、アノードケース7の側部にはそれぞれ邪魔板(フラップ)72が設けられおり、この邪魔板(フラップ)72は、アノードケース7に対して上下、左右に移動可能に設けられており、これを上下、左右に移動させることにより、アノードケース7の実質的な幅の伸縮が可能となる。これによって、アノードケース7から電解液8への電鋳材料の溶出量を微調整することができる。
【0026】
また、電鋳後、形成された電鋳層から芯線6を抜き取り、金属細管を容易に製造するために、電解液8に、剥離剤として、芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合したり、または電鋳前にニッカノンタックA,Bを混合した液に芯線6を浸漬処理後に電鋳処理するとよい。
【0027】
図4は、本実施形態の発明に係る細管製造用電鋳装置の制御系統の概要を示す図である。
同図に示すように、数十本(例えば、60本)の各芯線6は、コンピュータ18に記憶されている電流パターンに従い、電流制御装置16を介して各々電流制御される。コンピュータ18に記憶されている電流パターンは、小定電流I1の期間(例えば0.1Aで30分)、増加電流I2の期間(例えば、0.1Aから1Aまでを3時間かけて徐々に増加)、大定電流I3の期間(例えば、1Aで数十分の期間)から構成されている。このような電流パターンに従って各芯線6に流れる電流を制御することにより、芯線6に形成される電鋳層の真円度と同心度を向上させることができる。一方、芯線6に形成される電鋳層の厚さは、芯線6に流れる電流の積算値に比例するので、電流制御装置16において、微小な時間間隔をおいて各芯線6に流れる電流値が検出し、この検出した電流値を逐次積算して、電流積算値として記憶する。記憶された電流積算値はコンピュータ18に読み出され、この電流積算値が所定値に達したと判断されたとき、コンピュータ18から電流制御装置16に対して当該芯線6に流れる電流の切断が指示される。
【0028】
ここで、図5を用いて、コンピュータ18と電流制御装置16間の制御手順の詳細を説明する。
なお、以下の制御手順の説明においは、1本の芯線6について行っているが、同様の制御が各芯線6について同時並行的に行われる。
まず、ステップ1において、アーム3に芯線6が張られた芯線ホルダー5がセットされ、芯線6が電鋳槽1に浸漬されると、コンピュータ18から電流制御装置16に対して電流積算開始指示が出力される。電流制御装置16では、電流積算開始指示を受けて、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流積算値を0にリセットする。次に、ステップ2において、コンピュータ18から電流制御装置16に対して、図4に示すような所定の電流パターンに従う電流値が指示される。電流制御装置16は芯線6に流れる電流を指示された電流値に設定する。ここで、電流制御装置16は芯線6に実際流れている電流を把握するために、芯線6に流れている電流を微小な時間間隔をおいて検出する。検出された電流値および微小な時間間隔をおいて検出された電流値を逐次加算した電流積算値は、それぞれ電流制御装置16内のメモリに記憶される。次に、ステップ3では、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流値を読み出すことを要求する。コンピュータ18は読み出した電流値をコンピュータ18のディスプレイに時々刻々と画面表示したり、またはデータ管理のためにハードディスク等に記憶する。次に、ステップ4では、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流積算値を読み出すことを要求する。ステップ5では、コンピュータ18は、読み出された電流積算値が所定値(例えば、図4の電流パターンに示す所定の積算値A)に達したか否かを判断する。積算値が所定値に達していないと判断されたときは、ステップ2からの処理が繰り返えされる。積算値が所定値に達したと判断されたときは、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、芯線6に流れる電流の切断を指示し、電流制御装置16は芯線6に流れる電流を切断する。
【0029】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽と、この電鋳槽の半径方向に電解液と略平行に放射状に配置され、前記電鋳槽の電解液内を円周方向に回動するように設けた複数本の各芯線ホルダーに各々支持された芯線と、前記電鋳槽の電解液に浸漬され、前記各芯線上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケースと、前記各芯線と前記アノードケース間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段とからなり、前記各芯線が前記電鋳槽内を略1周または所定の角度回動する間に、前記各芯線に所定の電鋳層が形成されるようにしたので、電鋳層の肉厚が芯線全体に亘って精度良く形成され、作業性、生産性に優れた細管製造用電鋳装置を提供することが可能となる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、前記電鋳槽内を芯線を支持する前記各芯線ホルダーが円周方向に回動している状態において、電鋳完了後の芯線を支持する芯線ホルダーを取出し、または電鋳前の芯線を支持する芯線ホルダーの取付けを行うことが可能な芯線ホルダー着脱箇所を前記電鋳槽に設けたので、芯線ホルダーの取出し、取付けを行いながら電鋳処理を行うことができ、生産性の高い細管製造用電鋳装置を提供することが可能となる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、前記所定の電流パターンは、小定電流期間と、この小定電流期間に続く増加電流期間と、この増加電流期間に続く大定電流期間とから構成したので、芯線表面に形成される電鋳層の真円度と同心度を高精度に制御することができる。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、前記電解液に芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合、または電鋳前に前記芯線をニッカノンタックA,Bを混合した液に浸漬したので、電鋳完了後の電鋳層から芯線の抜き取りを容易に行うことができる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、前記各アノードケースの半径方向の両端に、半径方向の両端を覆うようにして前記アノードケースの半径方向の幅を制御する邪魔板を設けたので、アノードケースから電解液への電鋳材料の溶出量を微調整し、芯線に形成される電鋳層の厚さを調整することが可能となる。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、前記電鋳槽に隣接され、この電鋳槽からオーバーフローした電解液を、所定の温度に加熱すると共に、不純物を濾過して前記電鋳槽に循環させるためのオーバーフロー槽を設けたので、電鋳槽に常に不純物が除去され所定温度に制御された電解液を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る細管製造用電鋳装置の主要な構成を示す正面図である。
【図2】図2は図1のA−Aから見た平面図である。
【図3】図1に示したアノードケース7の拡大図である。
【図4】本発明に係る細管製造用電鋳装置の制御系統の概要を示す図である。
【図5】コンピュータ18と電流制御装置16間の制御手順を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電鋳槽
2 オーバーフロー槽
21 ヒータ
3 アーム
4 ターンテーブル
5 芯線ホルダー
6 芯線
7 アノードケース
71 穴
72 邪魔板
8 電解液
9 自転モータ
10 公転モータ
11 昇降モータ
12 昇降アーム
13 濾過機
14 還流ポンプ
15 スリップリング
16 電流制御装置
17 電源装置
18 コンピュータ
19 芯線ホルダー着脱箇所
【発明の属する技術分野】
本発明は、細管製造用電鋳装置に係わり、例えば、光ファイバコネクタ部品として使用されるフェルール等の金属細管を電鋳によって製造する細管製造用電鋳装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属メッキは被膜加工に使用され、金属製品の装身具や錆防止等に利用されている。近年は、このような電鋳技術を利用して、線材に電鋳層を形成し、電鋳層から線材を抜き取って電鋳パイプを製造することが行われている。しかし、これを製造する装置には多くの機械構造上、電気制御、化学上の問題がある。
【0003】
特許第3308266号には、フェルールを製造するための電鋳装置が開示されている。この装置には、電鋳槽を立方体状に構成し、電鋳槽内の左右の長手方向に陽極となる電鋳材料を入れたケースを配置し、電鋳槽の中央部には陰極となる線材を支持治具の上下端間に張り、線材表面に電鋳層を形成するものである。
【0004】
【特許文献1】
特許第3308266号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示されている電鋳装置では、電鋳開始前に線材を取り付けた支持治具を電鋳装置にセットして電鋳を行い、電鋳後は線材を取り付けた支持治具を電鋳装置から取り出し、再び新たに線材を取り付けた支持治具を電鋳装置セットする作業を繰り返すものであり、自動化されておらず、また作業性も良くなかった。さらに、これは支持治具の取り換え作業を行う毎に電鋳処理を中断しなければならず、電鋳パイプの量産には適していなかった。
また、電鋳槽内の電解液は常に所定の温度に保たれることが好ましいが、上記装置では、電鋳槽内に上下方向に線材が張られているため、線材の上端部と下端部とでは電解液に温度差を生じ、線材表面に均一な電鋳層を形成することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上記の種々の問題点に鑑み、芯線ホルダーに支持された芯線をドーナツ状(還状)に形成された電鋳槽内に放射状に複数本配置すると共に、配置された複数の芯線を電鋳槽の円周方向に常時回動させながら電鋳処理を行わせることにより、作業性を改善し、比較的短時間で多量の金属細管の製造を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は、ドーナツ状(還状)に形成された電鋳槽の所定の箇所から、電鋳層が形成され芯線を取り付けた芯線ホルダーを取出し、また新たに電鋳するための芯線を取り付けた芯線ホルダーの取付けを行うことを可能にし、その間も、電鋳槽に浸漬されている他の複数の芯線の電鋳処理を継続させることにより、電鋳処理の作業性の向上、さらには金属細管の量産を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は、電鋳槽の電解液に浸漬された芯線を液面と略平行に配置することにより、芯線全体を等温度の電解液に接触されることにより、芯線表面に均一な電鋳層の形成を可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0009】
また、他の目的は、電鋳処理の際に、各芯線毎に、所定の電流パターンに従って芯線に流れる電流値および該電流値の積算値を管理することにより、各芯線毎に、芯線表面に形成される電鋳層の真円度と同心度を高精度に制御すると共に、所望の肉厚にすることを可能にした細管製造用電鋳装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽と、この電鋳槽の半径方向に電解液面と略並行に放射状に配置され、前記電鋳槽の電解液内を円周方向に回動するように設けた複数本の芯線ホルダーに各々支持された芯線と、前記電鋳槽の電解液に浸漬され、前記各芯線上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケースと、前記各芯線と前記アノードケース間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段とからなり、前記各芯線が前記電鋳槽内を略1周または所定の角度回動する間に、前記各芯線表面に所定の電鋳層が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
第2の手段は、第1の手段において、前記電鋳槽内を芯線を支持する前記各芯線ホルダーが円周方向に回動している状態において、電鋳完了後の芯線を支持する芯線ホルダーを取出し、または電鋳前の芯線を支持する芯線ホルダーの取付けを行うことが可能な芯線ホルダー着脱箇所を前記電鋳槽に設けたことを特徴とする
第3の手段は、第1の手段または第2の手段において、前記所定の電流パターンは、小定電流期間と、この小定電流期間に続く増加電流期間と、この増加電流期間に続く大定電流期間とから構成されていることを特徴とする
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、前記電解液に芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合、または電鋳前に前記芯線をニッカノンタックA,Bを混合した液に浸漬したことを特徴とする。
【0012】
第5の手段は、第1の手段ないし第4の手段のいずれか1つの手段において、前記各アノードケースの半径方向の両端部に、半径方向の両端を覆うように前記アノードケースの半径方向の幅を制御する邪魔板を設けたことを特徴とする。
【0013】
第6の手段は、第1の手段ないし第5の手段のいずれか1つの手段において、前記電鋳槽に隣接され、この電鋳槽からオーバーフローした電解液を、所定の温度に加熱すると共に、不純物を濾過して前記電鋳槽に循環させるためのオーバーフロー槽を設けたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1乃至図5を用いて説明する。
図1は本実施形態の発明に係る細管製造用電鋳装置の主要な構成を示す正面図、図2は図1のA−Aから見た平面図である。
【0015】
これらの図において、1は図1および図2に示すようにドーナツ状(環状)に形成され、半径方向の断面が略U字状形成され、電解液で満たされた電鋳槽、2は電鋳槽1の外側に設けられ、電鋳槽1からオーバーフローした電解液を濾過すると共に所定の温度に加熱された電解液を貯留するオーバーフロー槽、21はオーバーフロー槽2に貯留された電解液を所定の温度(例えば、55℃〜65℃)に加熱するヒータ、3はターンテーブル4の回転に伴って回転され、芯線ホルダー5を支持して電鋳槽1内を円周方向に回動する、放射状に配置された数十本(例えば、60本)の傘骨状のアーム、4は、電鋳槽1内を1周する間に芯線6表面に所定の肉厚の電鋳層が形成されるように、公転モータ10によって微速(例えば、1周約4時間)で回転されるターンテーブル、5はアーム3に支持され芯線6を支持する芯線ホルダー、6は、電鋳槽1の半径方向に電解液8面と略平行かつ放射状に配置されると共に、電鋳槽1の電解液8内を円周方向に回動するように設けた芯線ホルダ5ーに支持された、表面に電鋳層が形成される芯線(例えば、ステンレス線)、7は電鋳材料(例えば、直径5mm〜6mmのニッケル球)が収納されたアノードケース、8は電解液、9は芯線6表面に均一に電鋳層が形成されるようにするために、芯線6を自転(例えば、20〜40回転/分)させるための自転モータ、10はターンテーブル4を回転させる公転モータ、11は昇降アーム12を昇降する昇降モータ、12は芯線ホルダー5をアーム3に取付けまたは取外しするために、アーム3を電鋳槽1から昇降させる昇降アーム、13はオーバーフロー槽2に貯留された電解液を濾過して不純物を除き電鋳槽1に循環させるための濾過機、14は電鋳槽1内の電解液8を対流させて電解液8の均一化を図る還流ポンプ、15は電流制御装置17から配線される固定側と電鋳槽1内を回動する芯線ホルダー5から配線される可動側との電気的接続を図るためのスリップリング、16はコンピュータ18によって制御され、ドーナツ状(環状)の電鋳槽1内に配置された、数十組(例えば、60組)の芯線ホルダー5に支持された各芯線6毎に電流制御する電流制御装置、17は電源装置(例えば、DC8V、100A定格)、18は、電流制御装置16に対して、所定の電流パターン特性に従って、各芯線6に流れる電流値を指示し、また所定の電流積算値に達したとき各芯線6に流れる電流を遮断するように指示するために設けられたコンピュータ、19は、ドーナツ状に形成された電鋳槽1の任意の箇所に、芯線6を支持する芯線ホルダー5をアーム3に取付けたり、またアーム3から取外したりするために設けられた芯線ホルダー着脱箇所である。
【0016】
なお、本装置では、図2に示すように、ドーナツ状に形成された電鋳槽1に芯線ホルダー着脱箇所19を1箇所設けたが、電鋳槽1をより大型化したり、または芯線6をより低速で電鋳槽1内を回動させて電鋳処理を行うような場合には、芯線ホルダー着脱箇所を複数箇所設けることも可能である。例えば、電鋳処理を電鋳槽1を略半周回動する間に完了させる場合には、芯線ホルダー着脱箇所を2箇所設けることができる。
【0017】
また図1に示すように、アーム3が電鋳槽1の円周方向を1周して、芯線6表面に所定の電鋳層が形成されたアーム3が、この芯線ホルダー着脱箇所19に達すると、昇降モータ11が回転し、それに伴って昇降アーム12が上昇して、電鋳槽1の電解液8面上に持ち上げられる。アーム3が持ち上げられると、アーム3から電鋳層が形成された芯線6を支持する芯線ホルダー5の取外しが可能となる。その芯線ホルダー5がアーム3から取外され、新たに電鋳するために芯線6を取付けた芯線ホルダー5がアーム3に取付けられると、再び、昇降モータ11が回転し、昇降アーム12が下降して、アーム3が電鋳槽1の電解液8内に浸漬され、電鋳が開始される。このように、芯線ホルダー5の着脱を1本ずつ1箇所で行うことができるので、自動化への対応が可能となる。
【0018】
また、上記のごとく、アーム3から芯線ホルダー5の取外し、取付けが行われている間においても、他の各アーム3に取付けられた芯線6を支持する各芯線ホルダー5は電解液8に浸漬された状態にあって、電鋳槽1内を回動し、電鋳処理が継続して行われる。いわゆる無停止連続運転が可能となる。また、芯線ホルダー着脱箇所19において、アーム3から芯線ホルダー5の取外し、取付けが行われている間においても、取外し、取付けが行われているアーム3も電鋳槽1の円周方向に回動を継続しているが、この回動は、例えば、1周約4時間程度の微速であるので、芯線ホルダー5の取外し、取付け作業に影響を与えることなく容易に行うことができる。
【0019】
また、芯線ホルダー5を保持する各アーム3は、各アーム3を取付けたターンテーブル4が公転モータ10により回転されることにより回動され、これにより、芯線6を取付けた数十組の芯線ホルダー5がアーム3に支持されてドーナツ状の電鋳槽1内を円周方向に回動する。
【0020】
また、各芯線6は、電鋳処理中、自転モータ9により回転(自転)されているので、ドーナツ状の電鋳槽1内を円周方向に回動(公転)する間に、芯線6表面に真円度および同軸度の高い電鋳層を形成することが可能となる。
【0021】
また、複数本の芯線ホルダー5に支持された各芯線6は、電鋳槽1の半径方向に電解液8面と略平行に放射状に配置されているので、芯線6全体を等温度の電解液8に接触させることができるので、芯線6表面全体に均一な電鋳層を形成することができる。
【0022】
また、図1に示すように、各芯線6は、電源装置17のマイナス側から、電流制御装置16、スリップリング15、アーム3、芯線ホルダー5を介して電気的に接続され、一方、アノードケース7は電源装置17のプラス側と電気的に接続されている。その結果、各芯線6は、ドーナツ状の電鋳槽1内で自転されると共に電鋳槽1内を1周(公転)する間に、電流制御装置16によって芯線6とアノードケース7間に流れる電流が制御され、芯線6表面に所定の肉厚の電鋳層を形成することができる。
【0023】
また、電鋳槽1の上部から溢れた電解液8はオーバーフロー槽2に流れ落ち、ここでヒータ21によって所定の温度(例えば、55℃〜65℃)に暖められ、その後、濾過機13によって不純物が取り除かれて再び電鋳槽1に循環される。
【0024】
また、図2に示すように、電解液8に浸漬された、電鋳材料を収納した数十組(例えば、16組)のアノードケース7は、数十組(例えば、60組)の各芯線6の上部に対向するように、かつドーナツ状の電鋳槽1内を周回するように密に配置される。またアノードケース7は芯線ホルダー5に支持された各芯線6と一定の距離を保つように配置されている。
【0025】
図3は、図1に示したアノードケース7の拡大図である。
アノードケース7には、アノードケース7に入れたニッケル球等からなる電鋳材料が電解液8に溶解して流出するように、かつ電鋳材料が2/3程度消耗してもアノードケース7から落下しない程度に無数の小さな穴71が底部および側面に設けられる。また、アノードケース7の側部にはそれぞれ邪魔板(フラップ)72が設けられおり、この邪魔板(フラップ)72は、アノードケース7に対して上下、左右に移動可能に設けられており、これを上下、左右に移動させることにより、アノードケース7の実質的な幅の伸縮が可能となる。これによって、アノードケース7から電解液8への電鋳材料の溶出量を微調整することができる。
【0026】
また、電鋳後、形成された電鋳層から芯線6を抜き取り、金属細管を容易に製造するために、電解液8に、剥離剤として、芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合したり、または電鋳前にニッカノンタックA,Bを混合した液に芯線6を浸漬処理後に電鋳処理するとよい。
【0027】
図4は、本実施形態の発明に係る細管製造用電鋳装置の制御系統の概要を示す図である。
同図に示すように、数十本(例えば、60本)の各芯線6は、コンピュータ18に記憶されている電流パターンに従い、電流制御装置16を介して各々電流制御される。コンピュータ18に記憶されている電流パターンは、小定電流I1の期間(例えば0.1Aで30分)、増加電流I2の期間(例えば、0.1Aから1Aまでを3時間かけて徐々に増加)、大定電流I3の期間(例えば、1Aで数十分の期間)から構成されている。このような電流パターンに従って各芯線6に流れる電流を制御することにより、芯線6に形成される電鋳層の真円度と同心度を向上させることができる。一方、芯線6に形成される電鋳層の厚さは、芯線6に流れる電流の積算値に比例するので、電流制御装置16において、微小な時間間隔をおいて各芯線6に流れる電流値が検出し、この検出した電流値を逐次積算して、電流積算値として記憶する。記憶された電流積算値はコンピュータ18に読み出され、この電流積算値が所定値に達したと判断されたとき、コンピュータ18から電流制御装置16に対して当該芯線6に流れる電流の切断が指示される。
【0028】
ここで、図5を用いて、コンピュータ18と電流制御装置16間の制御手順の詳細を説明する。
なお、以下の制御手順の説明においは、1本の芯線6について行っているが、同様の制御が各芯線6について同時並行的に行われる。
まず、ステップ1において、アーム3に芯線6が張られた芯線ホルダー5がセットされ、芯線6が電鋳槽1に浸漬されると、コンピュータ18から電流制御装置16に対して電流積算開始指示が出力される。電流制御装置16では、電流積算開始指示を受けて、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流積算値を0にリセットする。次に、ステップ2において、コンピュータ18から電流制御装置16に対して、図4に示すような所定の電流パターンに従う電流値が指示される。電流制御装置16は芯線6に流れる電流を指示された電流値に設定する。ここで、電流制御装置16は芯線6に実際流れている電流を把握するために、芯線6に流れている電流を微小な時間間隔をおいて検出する。検出された電流値および微小な時間間隔をおいて検出された電流値を逐次加算した電流積算値は、それぞれ電流制御装置16内のメモリに記憶される。次に、ステップ3では、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流値を読み出すことを要求する。コンピュータ18は読み出した電流値をコンピュータ18のディスプレイに時々刻々と画面表示したり、またはデータ管理のためにハードディスク等に記憶する。次に、ステップ4では、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、電流制御装置16のメモリに記憶されている電流積算値を読み出すことを要求する。ステップ5では、コンピュータ18は、読み出された電流積算値が所定値(例えば、図4の電流パターンに示す所定の積算値A)に達したか否かを判断する。積算値が所定値に達していないと判断されたときは、ステップ2からの処理が繰り返えされる。積算値が所定値に達したと判断されたときは、コンピュータ18は電流制御装置16に対して、芯線6に流れる電流の切断を指示し、電流制御装置16は芯線6に流れる電流を切断する。
【0029】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、細管製造用電鋳装置において、ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽と、この電鋳槽の半径方向に電解液と略平行に放射状に配置され、前記電鋳槽の電解液内を円周方向に回動するように設けた複数本の各芯線ホルダーに各々支持された芯線と、前記電鋳槽の電解液に浸漬され、前記各芯線上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケースと、前記各芯線と前記アノードケース間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段とからなり、前記各芯線が前記電鋳槽内を略1周または所定の角度回動する間に、前記各芯線に所定の電鋳層が形成されるようにしたので、電鋳層の肉厚が芯線全体に亘って精度良く形成され、作業性、生産性に優れた細管製造用電鋳装置を提供することが可能となる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、前記電鋳槽内を芯線を支持する前記各芯線ホルダーが円周方向に回動している状態において、電鋳完了後の芯線を支持する芯線ホルダーを取出し、または電鋳前の芯線を支持する芯線ホルダーの取付けを行うことが可能な芯線ホルダー着脱箇所を前記電鋳槽に設けたので、芯線ホルダーの取出し、取付けを行いながら電鋳処理を行うことができ、生産性の高い細管製造用電鋳装置を提供することが可能となる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、前記所定の電流パターンは、小定電流期間と、この小定電流期間に続く増加電流期間と、この増加電流期間に続く大定電流期間とから構成したので、芯線表面に形成される電鋳層の真円度と同心度を高精度に制御することができる。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、前記電解液に芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合、または電鋳前に前記芯線をニッカノンタックA,Bを混合した液に浸漬したので、電鋳完了後の電鋳層から芯線の抜き取りを容易に行うことができる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、前記各アノードケースの半径方向の両端に、半径方向の両端を覆うようにして前記アノードケースの半径方向の幅を制御する邪魔板を設けたので、アノードケースから電解液への電鋳材料の溶出量を微調整し、芯線に形成される電鋳層の厚さを調整することが可能となる。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、前記電鋳槽に隣接され、この電鋳槽からオーバーフローした電解液を、所定の温度に加熱すると共に、不純物を濾過して前記電鋳槽に循環させるためのオーバーフロー槽を設けたので、電鋳槽に常に不純物が除去され所定温度に制御された電解液を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る細管製造用電鋳装置の主要な構成を示す正面図である。
【図2】図2は図1のA−Aから見た平面図である。
【図3】図1に示したアノードケース7の拡大図である。
【図4】本発明に係る細管製造用電鋳装置の制御系統の概要を示す図である。
【図5】コンピュータ18と電流制御装置16間の制御手順を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電鋳槽
2 オーバーフロー槽
21 ヒータ
3 アーム
4 ターンテーブル
5 芯線ホルダー
6 芯線
7 アノードケース
71 穴
72 邪魔板
8 電解液
9 自転モータ
10 公転モータ
11 昇降モータ
12 昇降アーム
13 濾過機
14 還流ポンプ
15 スリップリング
16 電流制御装置
17 電源装置
18 コンピュータ
19 芯線ホルダー着脱箇所
Claims (6)
- ドーナツ状に形成され、半径方向の断面が略U字状に形成された電鋳槽と、この電鋳槽の半径方向に電解液面と略平行に放射状に配置され、前記電鋳槽の電解液内を円周方向に回動するように設けた複数本の芯線ホルダーに各々支持された芯線と、前記電鋳槽の電解液に浸漬され、前記各芯線上方に所定の間隔をおいて配置された電鋳材料が収納された複数個のアノードケースと、前記各芯線と前記アノードケース間に、所定の電流パターンに従う電流を流すと共に、所定の電流積算値に達するまで前記電流を流すように制御する電流制御手段とからなり、前記各芯線が前記電鋳槽内を略1周または所定の角度回動する間に、前記各芯線表面に所定の電鋳層が形成されるようにしたことを特徴とする細管製造用電鋳装置。
- 前記電鋳槽内を芯線を支持する前記各芯線ホルダーが円周方向に回動している状態において、電鋳完了後の芯線を支持する芯線ホルダーを取出し、または電鋳前の芯線を支持する芯線ホルダーの取付けを行うことが可能な芯線ホルダー着脱箇所を前記電鋳槽に設けたことを特徴とする請求項1に記載の細管製造用電鋳装置。
- 前記所定の電流パターンは、小定電流期間と、この小定電流期間に続く増加電流期間と、この増加電流期間に続く大定電流期間とから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細管製造用電鋳装置。
- 前記電解液に芳香族スルフォン酸アミドまたは芳香族スルフォン酸塩とアセチレン系アルコールを主成分とした水溶液、もしくはラウリルアルコール硫酸エステルを混合、または電鋳前に前記芯線をニッカノンタックA,Bを混合した液に浸漬したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の細管製造用電鋳装置。
- 前記各アノードケースの半径方向の両端に、半径方向の両端部を覆うように前記アノードケースの半径方向の幅を制御する邪魔板を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つの請求項に記載の細管製造用電鋳装置。
- 前記電鋳槽に隣接され、この電鋳槽からオーバーフローした電解液を、所定の温度に加熱すると共に、不純物を濾過して前記電鋳槽に循環させるためのオーバーフロー槽を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つの請求項に記載の細管製造用電鋳装置。
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