JP2004323434A - ジシアノピラジノキノキサリン誘導体 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なジシアノピラジノキノキサリン誘導体に関するものである。更に詳細には、高い電子親和性を有するジシアノピラジノキノキサリン誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子輸送剤やn−型半導体の開発が進められており、その開発には電子受容体が重要である。そのため、電子受容体の材料となる高い電子親和性を有する新規化合物の合成が重要となっている。その中でも、有機化合物は溶媒に可溶であるため加工性が良く、また軽量性、廃棄処理の容易性等の利点を有することから、電子受容性を有する、安定な有機化合物が求められている。
【0003】
現在まで開発された電子受容体の材料となる有機化合物は、電子供与体の材料となる化合物に比べて種類が少なく、また、有機FETに用いた場合にn−型半導体特性を示す化合物は、その種類が少ないのが現状である。電子受容性を示す有機化合物としては、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)が知られており、金属的な性質を示す電荷移動錯体が製造されている。また、TCNQのアニオンラジカル塩は半導体の性質を示すことから、コンデンサーの材料として実用化されている。ただし、TCNQは分子間相互作用が小さいために電界効果トランジスタ(FET)の特性を示さない。有機FET特性を有し、n−型半導体特性を示す化合物としては、チオフェンオリゴマー誘導体(例えば、非特許文献1参照)、ナフタレンテトラカルボキシジイミド(NTCDI)誘導体(例えば、非特許文献2参照)等が報告されている。しかし、さらにより多くの電子受容体の材料となる有機化合物は少ないのが現状であり、このような化合物の開発が望まれている。
【0004】
【非特許文献1】
Antonio Facchetti et al.,Angewandte Chemie International Edition,2000,39,No.24, 4547−4551
【非特許文献2】
H.E.Katz, et al., Nature, 2000, 404,478−481
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、電子受容体、電子輸送剤、n−型半導体、酸化剤等の材料となる高い電子親和性を有する新規有機化合物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するジシアノピラジノキノキサリン誘導体が、高い電子受容性、熱的安定性及びπ−πスタッキングによる分子間相互作用を有し、また、誘導体の置換基の変更や縮合ベンゼン環の導入により電子状態や分子間相互作用を調整できることを見出し、ジシアノピラジノキノキサリン環を導入した化合物が上記目的を達成し得るという知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(1)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化9】
【0008】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。)
【0009】
また、本発明は、下記式(2)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化10】
【0010】
また、本発明は、下記式(3)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化11】
【0011】
また、本発明は、下記一般式(4)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化12】
【0012】
(式中、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。)
【0013】
また、本発明は、下記式(5)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化13】
【0014】
また、本発明は、下記一般式(6)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化14】
【0015】
(式中、Xは、N又はCHである。式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。)
【0016】
また、本発明は、下記式(7)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化15】
【0017】
また、本発明は、下記式(8)で示される、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供するものである。
【化16】
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のジシアノピラジノキノキサリン誘導体について説明する。
本発明のジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、分子内に電子受容性であるジシアノピラジノキノキサリン環を有しており、前記一般式(1)、式(4)又は一般式(6)で示されるものである。
【0019】
一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。R1、R2、R3及びR4がアルキル基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。また、アルコキシ基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基の中でもメトキシ基が最も好ましい。また、アラルキル基である場合は、炭素数1〜10のアラルキル基であることが好ましい。また、アリール基である場合は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。また、電子親和性を向上させる観点から、R1、R2、R3及びR4は水素であることが好ましい。
一般式(1)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体としては、例えば、前記式(2)で示される誘導体、及び前記式(3)で示される誘導体が挙げられる。
【0020】
本発明の前記一般式(1)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、R1、R2、R3及びR4を変更することによりジシアノピラジノキノキサリン誘導体の電子状態や分子間相互作用を調整することが可能であるため、使用目的によってR1、R2、R3及びR4を選択することが好ましい。
【0021】
前記一般式(4)及び(6)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、ジシアノピラジノキノキサリン環に縮合ベンゼン環が導入された構造を有する。
前記一般式(4)において、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。R1、R2、R3及びR4がアルキル基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。また、アルコキシ基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルコキシ基であることが好ましい。また、アラルキル基である場合は、炭素数1〜10のアラルキル基であることが好ましい。また、アリール基である場合は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。また、電子親和性を向上させる観点から、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は水素であることが好ましい。
一般式(4)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体としては、例えば、前記式(5)で示される誘導体が挙げられる。
前記一般式(6)において、Xは、N又はCHであり、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基である。R11、R12、R13、R14、R15及びR16がアルキル基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。また、アルコキシ基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルコキシ基であることが好ましい。また、アラルキル基である場合は、炭素数1〜10のアラルキル基であることが好ましい。また、アリール基である場合は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。また、電子親和性を向上させる観点から、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は水素であることが好ましい。
一般式(6)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体としては、例えば、前記式(7)及び前記式(8)で示される誘導体が挙げられる。
【0022】
本発明の前記一般式(4)及び一般式(6)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、π−π相互作用により分子間相互作用が強いためFET特性を示す。
【0023】
上述した、本発明のジシアノピラジノキノキサリン誘導体の合成法に特に制限はなく、従来公知の合成法を組み合わせて合成することができる。前記一般式(1)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体の合成方法としては、以下の方法が挙げられる。
まず下記一般式(9)で示されるフェニレンジアミンと2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノピラジンとを溶媒中で還流加熱して反応させ、冷却後析出した固体をろ過し、さらに水洗を行って下記一般式(10)で示されるジアミノ化合物を得る。次いで、得られたジアミノ化合物を2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)を用いて脱水素し、析出した固体をろ過し、テトラヒドロフラン(THF)等で洗浄することにより上記一般式(1)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を得ることができる。
【0024】
【化17】
【0025】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基を表す。)
【0026】
【化18】
【0027】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基を表す。)
【0028】
上記の反応を式で表わすと以下の通りである。
【0029】
【化19】
【0030】
(式中、R1、R2、R3、R4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基を表す。)
【0031】
上記反応において、使用する溶媒としては、例えばアセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また反応温度は20℃〜100℃で1〜18時間反応を行うことが好ましい。DDQによる脱水素反応の条件としては、室温で3〜10時間撹拌することが好ましい。
また、上記反応で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶、昇華等の精製方法により精製することができる。
【0032】
また、前記式(4)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体の合成も、前記一般式(1)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体の上記合成方法と同様に行うことができる。この反応を、式(5)で示される誘導体を例として表わすと以下の通りである。
【0033】
【化20】
【0034】
上記反応において、使用する溶媒としては、例えばアセトニトリル、トルエン、THF等が挙げられる。また反応温度は20〜80℃で2〜18時間行なうことが好ましい。DDQによる脱水素反応の条件としては、室温で10〜48時間撹拌することが好ましい。
また、上記反応で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶、昇華等の精製方法により精製することができる。
【0035】
また、前記一般式(6)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体の合成方法としては、例えば、下記一般式(11)で示されるキノン誘導体と2,3−ジアミノ−5,6−ジシアノピラジンとを溶媒中で還流して反応させた後、この反応溶液に水を加えて反応物を析出させ、析出した固体をろ過し、水洗を行い、一般式(6)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を得る方法が挙げられる。
【0036】
【化21】
【0037】
(式中、Xは、N又はCHである。)
【0038】
この反応を式で表わすと以下の通りである。
【0039】
【化22】
【0040】
(式中、Xは、N又はCHである。)
【0041】
上記反応において、使用される溶媒としては、例えばピリジン、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。また還流条件としては、温度80〜120℃で5〜20時間行うことが好ましい。
また、上記反応で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶、昇華等の精製方法により精製することができる。
【0042】
本発明のジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、電子輸送剤、n−型半導体、酸化剤、FET等に利用することができる。本発明のジシアノピラジノキノキサリン誘導体は熱安定性に優れているため、例えば製膜する場合には昇華蒸着等の方法を用いることができる。
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0044】
実施例1
フェニレンジアミン216mg(2.0mmol)及びジクロロジシアノピラジン400mg(2.0mmol)を20mlのアセトニトリルに溶解し、還流加熱(82℃)を2時間行った。反応溶液を冷却した後、析出した赤色固体をろ過し、これを水洗して、オレンジ色の固体のジアミノ化合物を197mg(収率42%)得た。
【0045】
次いで、得られたジアミノ化合物及びDDQ210mg(1.1eq)をTHF10mlに入れて室温で4時間撹拌した。析出した固体をろ別し、これをTHFで洗浄し、オレンジ色の固体(前記式(2)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体)を186mg(収率95%)得た。
【0046】
実施例2
ジメトキシフェニレンジアミン1.02g(6.07mmol)及びジクロロジシアノピラジン1.20g(6.0mmol)を30mlのアセトニトリルに溶解し、還流加熱(82℃)を1時間行った。反応溶液を冷却した後、析出した赤色固体をろ過し、これを水洗して、オレンジ色の固体のジアミノ化合物を700mg(収率40%)得た。
【0047】
次いで、得られたジアミノ化合物700mg(2.38mmol)及びDDQ1.62g(7mmol)をTHF20mlに入れて室温で48時間撹拌した。析出した固体をろ別し、これをTHFで洗浄し、前記式(3)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を500mg(収率79%)得た。
【0048】
実施例3
2,3−ジアミノナフタレン100mg(0.63mmol)及びジクロロジシアノピラジン126mg(0.63mmol)を8mlのアセトニトリルに溶解し、室温で18時間撹拌した。析出した赤色固体をろ過し、これを水洗して、オレンジ色の固体のジアミノ化合物を110mg(収率61%)得た。
【0049】
次いで、得られたジアミノ化合物30mg(0.11mmol)及びDDQ70mg(0.31mmol)をTHF3mlに入れて室温で48時間撹拌した。析出した固体をろ別し、これをTHFで洗浄し、青色の固体の前記式(5)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を25mg(収率84%)得た。
【0050】
実施例4
一般式(11)においてXがCHであるフェナントラキノン104mg(0.5mmol)及び2,3−ジアミノ−5,6−ジシアノピラジン80mg(0.5mmol)を1mlのピリジンに溶かし、15時間還流を行った。反応溶液に水15mlを加えて反応物を析出させ、これをろ過し、水洗して、褐色固体の前記式(8)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を156mg(収率94%)得た。次いで、得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体を340℃、1Torrの条件で昇華して、暗赤色の純品に精製した。なお、得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体の分解点は365〜370℃であった。
【0051】
実施例5
一般式(11)においてXがNであるジアザフェナントラキノン53mg(0.25mmol)及び2,3−ジアミノ−5,6−ジシアノピラジン40mg(0.25mmol)を1mlのピリジンに溶かし、15時間還流を行った。反応溶液に水15mlを加えて反応物を析出させ、これをろ過し、水洗して、褐色固体の前記式(7)(X=N)で示されるジシアノピラジノキノキサリン誘導体を60mg(収率60%)得た。
【0052】
実施例1〜5で得られた化合物の構造決定は、元素分析、NMRスペクトル、UVスペクトル、IRスペクトル及びMassスペクトル測定により行い、単結晶X線構造解析により分子構造を確認した。それぞれの化合物の性状を以下に示す。
【0053】
実施例1で得られた、前記式(2)で示される化合物:
オレンジ色固体(収率95%);mp331−334℃
IRスペクトル(KBr):γmax(cm−1)1543,1493,1400,1186,1132,912,766,502;
UVスペクトル(CHCl3):λmax(nm)(logε)241(4.36),288(4.72),378(4.24),398(4.45);
MSスペクトル:(EI)m/z(%)232(M+,100)
【0054】
実施例2で得られた、前記式(3)で示される化合物:
緑色固体(収率79%);mp280℃
IRスペクトル(KBr):γmax(cm−1)1613,1480,1240,1143,1098,739,496;
UVスペクトル(CHCl3):λmax(nm)(logε)214(4.52),339(4.52),375(3.85),394(4.00),567(2.92)
1H NMRスペクトル(300MHz、CDCl3):δ 7.52(s,2H),4.08(s,2H);
MSスペクトル:(EI)m/z(%)292(M+,100)
【0055】
実施例3で得られた、前記式(5)で示される化合物:
青色固体(収率84%);mp(>300℃)
IRスペクトル(KBr):γmax(cm−1)3034,2240,1713,1536,1454,1387,1199,1120,885;
UVスペクトル(CHCl3):λmax(nm)(logε)247(4.35),342(4.59),426(3.86),451(4.14);
MSスペクトル:(EI)m/z(%)282(M+,100)
【0056】
実施例4で得られた、前記式(8)で示される化合物:
暗赤色固体(収率94%);mp365−370℃
IRスペクトル(KBr):γmax(cm−1)3410,3157,2232,1672,1628,1504,1394,1191,776;
UVスペクトル(CHCl3):λmax(nm)(logε)239(4.64),269(4.76),334(4.40),435(4.43);
MSスペクトル:(EI)m/z(%)332(M+,100)
【0057】
実施例1〜5で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体について、下記試験により評価を行った。なお、比較例1、2及び3として、TCNQ、p−ベンゾキノン、クロラニルを用いて同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
評価方法
(1) 電子親和性
サイクリックボルタモグラムで還元電位Ered及び酸化電位Eoxを測定した。
(2) 電子の移動度
得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体を用いて真空蒸着によりFETを作成した(膜厚:約100nm、ボトム電極:Al or Au)。ドレイン電位、ゲート電圧を変化させながらドレイン電流を測定することにより、3種類の物質のキャリア移動度を求めた。Al電極を用いた時の電子移動度を表1に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜5で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、高い電子受容性を有していることがわかる。還元電位の結果から判断すると、実施例1〜5で得られたジシアノピラジノキノキサリン誘導体の電子受容性は、比較例1のTCNQよりは弱いが、p−ベンゾキノンよりも強く、クロラニルと同等である。実施例1のジシアノピラジノキノキサリン誘導体より縮合ベンゼン環が1個多く有する実施例3のジシアノピラジノキノキサリン誘導体は、実施例1よりも還元電位が0.13V上昇し、より電子受容性が強いことが確認された。また、紫外可視スペクトルにおいて、実施例3のジシアノピラジノキノキサリン誘導体の吸収極大値は実施例1のジシアノピラジノキノキサリン誘導体よりも長波長側にシフトしている。
実施例1のジシアノピラジノキノキサリン誘導体にメトキシ基が導入された実施例2は、還元電位は実施例1とほぼ同等であるが、酸化電位が測定され、電子供与性も有することがわかった。また、実施例2は分子内電荷移動吸収のために吸収極大値が567nmに観測され、緑色を呈した。
さらに、実施例1、3及び実施例4のジシアノピラジノキノキサリン誘導体を用いてFETを作製したところ、得られたFETにおいてはn−型特性が観測された。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、電子受容体、電子輸送剤、n−型半導体、酸化剤等の材料となる高い電子親和性を有する新規ジシアノピラジノキノキサリン誘導体を提供することができる。
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