JP2004323278A - 改質装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】構成の高精度化、複雑化を招くことなく、負荷変動応答性に優れた改質装置を提供することを課題とする。
【解決手段】水素を含むガスを生成する改質装置であって、改質原料、酸素ならびに水蒸気を反応させて改質ガスを生成するATR1と、ATR1の入口と出口を連通する流路6を備え、流路6には、水蒸気を生成する気相気化器3と、ATR1の出口のガスをATR1の入口に還流させる循環装置4を備えて構成される。
【選択図】 図1
【解決手段】水素を含むガスを生成する改質装置であって、改質原料、酸素ならびに水蒸気を反応させて改質ガスを生成するATR1と、ATR1の入口と出口を連通する流路6を備え、流路6には、水蒸気を生成する気相気化器3と、ATR1の出口のガスをATR1の入口に還流させる循環装置4を備えて構成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱反応である酸化反応と、吸熱反応である改質反応をひとつの反応器内で行わせる、いわゆるオートサーマル改質型の改質装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の移動体用の動力源として、環境の観点から望ましいものとして、燃料電池が注目されている。特に移動体用の燃料電池として有力と目されているもののひとつとして、高分子電解質膜(以降、PEMと称する)型の燃料電池(以降、PEFCと称する)が挙げられる。
【0003】
PEFCは水素を燃料ガスとし、酸化ガス(通常は酸素)との反応により電気を取り出すものであるが、その水素を得る手段として、水素を含む化合物から水素を分離する改質という方法がある。
【0004】
特に、炭素と水素を含む有機化合物は容積あたり、もしくは重量あたりのエネルギー密度が水素に比べて高いため、改質について多くの研究や開発がなされている。中でもメタン等のアルカンや、アルコール・エーテル類、もしくはガソリン等(以降、炭化水素系燃料と称する)は常温常圧、もしくはわずかな加圧条件で液体となって取り扱いが容易である、燃料としての利用技術が確立されている等の理由で、改質の原料として有力視されている。
【0005】
ここで改質について、簡単に説明する。
【0006】
改質とはガソリン等の炭化水素系燃料や水、空気等から水素を含むガス(以降、改質ガスと称する)を生成するものである。以下に、水蒸気改質反応と部分酸化反応の反応式を示す。
【0007】
【化1】
(水蒸気改質反応) CnHm+nH2O→nCO+(m/2+n)H2
(部分酸化反応) CnHm+(n/2)O2→nCO+(m/2)H2
部分酸化反応に必要な酸素も、移動体用としては空気が用いられることが多い。
【0008】
上記で生成されたCO(一酸化炭素)は、以下のシフト反応の原料として水素の生成に寄与する。
【0009】
【化2】
(シフト反応) CO+H2O←→CO2+H2
上記で示した式では、オクタンC8H18 のような炭化水素(CnHm)を改質原燃料としているが、メタノールCH3OH のように、炭素原子と水素原子以外を含むものも原燃料になりうる。
【0010】
なお、上記の式からも分かるように、水や酸素も改質原料であるが、ガソリン等の炭化水素系燃料は原燃料と呼んで、水や酸素、もしくは空気のような酸素を含むガスと区別している。また、特に断らない限り、酸素もしくは空気のような酸素を含むガスを総称して空気と称する。
【0011】
一方、吸熱反応である水蒸気改質反応と、発熱反応である部分酸化反応を組み合わせるオートサーマル改質(以下、ATRと称する)型のATR反応も、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0012】
上記特許文献1に記載されているように、ATR反応は部分酸化反応によって生じる熱を、水蒸気改質反応に利用するものであり、原燃料に対する空気の量を適切に設定することにより、原理的には外部からの熱の供給を行うことなく改質反応を行わせるものである。吸熱反応である水蒸気改質反応の反応速度は、発熱反応である部分酸化反応の反応速度に比べて遅いため、反応器の入口付近で部分酸化反応が急速に進んで改質ガスや反応器の温度が急激に上昇し、その後水蒸気改質反応が進むにつれて温度が下がっていく、という温度分布となる。
【0013】
化学反応は一般的に高温になるほど高活性となるが、過度に高温になった場合には、触媒がシンタリングと呼ばれる劣化を起こしたり、あるいはPEFCでは利用できないメタンが生じたり、あるいは改質器に供給した空気中の窒素ガスが反応することにより、窒素酸化物が生じたりすることがある。
【0014】
したがって、原燃料と水と空気との比率を適切に保つことが非常に重要である。上記文献に記載された従来例では、起動時のように改質反応を行う処理量を急激に増やす必要があるときには、より反応速度の大きい発熱反応の割合を大きくして、より速く必要量の改質ガスを得るようにしている。しかし、それによって反応器が高温になって、前述したような弊害を招くおそれがあった。
【0015】
その対策として上記従来例では、ATR反応器に供給する空気を複数箇所に分散して供給することにより、発熱部位を分散させたり、あるいは熱伝導性の部材を反応器内に配して反応器上流の反応熱を反応器下流に分散させたり、もしくは反応器の上流と下流とで触媒の総表面積を変化させることや反応器の断面積を上流と下流とで変化させることによって、酸化反応の速度を抑制するようにしている。
【0016】
【特許文献1】
特開平9−315801号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
自動車のような移動体に改質装置を備えた燃料電池システムを適用する場合には、その改質装置には高い負荷変動応答性が要求されると考えられる。しかし、上述した従来例に述べられているように、発熱反応の割合を大きくすることにより応答性を確保することは本質的ではない。むしろ十分な量の水蒸気を供給して反応器温度が過剰な高温になることを防ぎながら改質反応処理量を増やすことが望ましい。
【0018】
水蒸気改質反応自体は、吸熱反応であるため負荷変動に対する応答性は部分酸化反応に比べて劣るものの、十分な量の水蒸気が供給されれば、部分酸化反応によって生じる一酸化炭素とその水蒸気がシフト反応を起こして水素を生成する。シフト反応は平衡反応なので、水蒸気を多くすれば水素が発生する側に反応が進みやすくなるのである。
【0019】
上記従来例では、メタノールを原燃料とする改質反応が中心であるため、メタノールと水の混合物が熱交換型の蒸発器に供給されて、原燃料蒸気と水蒸気を生成する。しかし、従来例で説明されているような高温ガスを熱媒とする熱交換型の蒸発器では、気体である高温ガスから固体である熱交換器への伝熱速度が律速となって応答性がよくないとされている。そのため、水蒸気の生成速度が不十分となって部分酸化反応による改質反応で負荷変動に対応するようにしている。しかし、低応答の蒸発器で生成される水蒸気の量に合わせて、空気を精度よく供給するためには、高精度のセンサ、アクチュエータを必要とし、複雑な装置構成が必要となる可能性があり、コスト的、サイズ的に不利であるという問題があった。
【0020】
また、ガソリンのように非水溶性の原燃料では水と混合して、原燃料蒸気と水蒸気をひとつの蒸発器で生成するということができない。したがって、空気系の部品や装置構成はいっそう高精度で複雑なものが要求されるといった問題も招いていた。
【0021】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成の高精度化、複雑化を招くことなく、負荷変動応答性に優れた改質装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決する手段は、水素を含むガスを生成する改質装置であって、改質原料、酸素ならびに水蒸気を反応させて改質ガスを生成する第1の反応器と、前記第1の反応器の入口と出口を連通する流路を備え、前記流路には、前記水蒸気を生成する第1の水蒸気生成装置と、前記第1の反応器出口のガスを前記第1の反応器の入口に還流させる循環装置を備え、前記第1の水蒸気生成装置は気相蒸発器であることを特徴とする。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、高温の第1の反応器出口ガスを利用して水を気相気化させることで、高い応答性で水蒸気を生成して第1の反応器入口に供給することが可能となる。これにより、空気系の部品や装置構成を高精度化、複雑化することなく、高い負荷変動応答性を達成することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態に係る改質装置を含む改質型パワープラントの構成を示す図である。改質型パワープラントは、本発明の第1の実施形態の改質装置で生成した改質ガスを燃料電池スタックに供給して発電を行うプラントであり、このプラントで発電された電力によって、例えば車両等の移動体が駆動される。
【0026】
図1において、この第1の実施形態の改質装置は、第1の反応器として機能するオートサーマル改質器(ATR)1、第1の水蒸気生成装置として機能する気相気化器3、ATR1の出口ガスをATR1の入口に環流させる循環装置4、ATR1で生成された改質ガスをさらに反応させる高温ガスシフト反応器(HTS)14ならびに低温ガスシフト反応器(LTS)15、シフト反応器用の気相気化器16、17、燃料電池スタック(CSA)20、CSA20の排出ガスに含まれる可燃成分を燃焼する燃焼器21、第2の水蒸気生成装置として機能する蒸発器22、ならび燃焼器21の排出ガスから水分を回収するWRD30を備えて構成されている。
【0027】
第1の反応器であるATR1には、ガソリン等の燃料(原燃料)と水蒸気と空気が供給される。空気はWRD30を経た後、ATR1の出口の約750℃の高温ガスを利用した熱交換器(HEX)11で約600℃まで加熱され、原燃料がその高温の空気中に気相気化器10で噴霧されて気化することで、空気が燃料蒸気を含む形でATR1に供給される。
【0028】
WRD30は、CSA20の下流に設けられた燃焼器21の排ガスから水分を回収する装置であり、例えば中空糸膜等が用いられる。中空糸膜を介して水分を含む高温のガスと大気から取り入れた比較的低温の乾燥空気を接触させることで、高温ガス中の水分が中空糸膜の毛管中で凝縮し、その凝縮水が毛管現象で吸い出されて乾燥空気中に透過し、乾燥空気が加湿されるというものである。もちろん、WRD30は中空糸膜に限定されるものではなく、焼結金属板を利用するものでもよい。
【0029】
燃焼器21は、CSA20の排ガスに含まれる可燃成分を燃焼させるものである。可燃成分の主な成分は、CSA20で利用されずに排出された水素である。燃焼器21の熱は、第2の水蒸気生成装置である蒸発器22でも利用できるように構成される。また、燃焼器21には、ガソリン等の燃料が合わせて供給できるように配管23が設けられ、この配管23には弁24が設けられている。燃焼器21の可燃成分を燃焼させるための酸化ガスの一部または全部は、CSA20の排ガスでまかなわれるが、それでも不足の場合には空気が燃焼器21に直接供給される。
【0030】
なお、図1ではWRD30を通過した空気を燃焼器21に供給するものとしているが、WRD30を通過しない空気を供給するものとしてもよい。
【0031】
CSA20に供給される改質ガスは、ATR1で生成された改質ガスを高温ガスシフト反応器(HTS)14、低温ガスシフト反応器(LTS)15、選択酸化反応器(PrOx)18でさらに反応させて得られるものである。
【0032】
HTS14およびLTS15は、前述したシフト反応により一酸化炭素COを低減しながら水素を生成するものである。HTS14は、反応温度を高温に設定することで反応速度を大きくする。LTS15は、反応温度を低温に設定することで、前述した平衡反応式の組成が右寄りとなるように、すなわちCOが減って水素が増える方向の平衡となるようにするものである。HTS14およびLTS15の運転温度は限定されるものではなく、適用する触媒に応じたものとなるが、例えばHTS14が350℃程度から400℃程度、LTS15が250℃程度から300℃程度で運転される。
【0033】
シフト反応は平衡反応であるため、上記のような所定の温度域で運転するために、入口に熱交換器(HEX)12を設けて温度調節を行うことがある。シフト反応に必要な水蒸気の生成を、高温の改質ガス中に水を噴霧し、気相気化させることで行えば、水の気化熱により改質ガスの温度が低下するので、HEX12,13を省略する構成も可能である。
【0034】
なお、シフト反応器用の気相気化器16,17とHEX12,13の位置関係は、図1に示す位置関係に限定されるものではなく、例えばHEX、気相気化器の順に並ぶように構成してもよい。
【0035】
HTS14とLTS15が個別に設けられるのは、前述したように温度域を分けるためであり、原理と機能は共通である。したがって、以下の説明では場合によってはHTS14とLTS15を総称して第2の反応器と称する。また、HTS14、LTS15のそれぞれの上流に設けられたシフト反応器用の気相気化器16,17についても、場合によっては総称して第3の水蒸気生成装置と称することがある。
【0036】
PrOx18は、LTS15の出口の改質ガス中に含まれるCOを選択的に酸化する反応器である。すなわち、ミキサ(MIX)19で供給される空気により、改質ガス中の水素の酸化を極力低く抑えながら、改質ガス中のCOを酸化して二酸化炭素CO2 に変化させる。
【0037】
ATR1には、出口と入口を連通する流路6が設けられ、この流路6のATR1の出口側には弁2が設けられている。弁2の下流には、第1の水蒸気生成装置である気相気化器3が設けられている。気相気化器3の下流には、ATR1の出口ガスをATR1の入口に還流させるための循環装置4が設けられている。ATR1の出口には温度センサ5が設けられている。
【0038】
なお、循環装置4は、一般に流体を輸送するポンプのうち、流体が気体であり、その入口と出口の圧力比が1.3程度ないしは2.0程度のものの総称である。しかし、本実施形態で用いられるものは圧力比がその範囲に限定されるものではなく、2.0程度以上の圧力比を持つコンプレッサを用いるものとしてもよい。
【0039】
第1から第3の水蒸気生成装置に供給される水は、図示されない水タンクから供給され、その水はWRD30を通過後の燃焼器21の排出ガスに残る水分を凝縮させて回収するものでもよく、CSA20で改質ガス中の水素と酸化ガスである空気が反応したときに生じる水を回収するものでもよく、あるいは外部から水タンクに随時供給するものとしてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用と効果を説明する前に、図2〜図3を用いて本発明を適用しない場合に起こり得る現象について簡単に説明し、その後図4〜図8を用いて本実施形態の作用ならびに効果を説明する。
【0041】
ここで、移動体の運転者が移動体を加速させるなどの目的で出力を上げようとする場合を考える。このときパワープラントに要求される負荷要求が、例えば図2(a)に示すように変化したとする。
【0042】
原燃料蒸気の供給は、前述したとおり高温空気中に原燃料を噴霧して気化させる方式のため、噴霧量を増量することにより、図2(b)に示すようにほぼ応答遅れなく原燃料蒸気を反応器に供給することができる。空気の供給は図示されないコンプレッサによって行われるが、コンプレッサはその慣性により若干の応答遅れを生じる。
【0043】
ここで、応答遅れと称するのは、一般的に一次遅れや二次遅れと称される現象において、ステップ入力に対してなだらかに応答するときの時定数のことである。また、改質装置内で発生する熱を極力無駄なく利用して装置全体の効率を向上させるべく、ATR1の下流のHEXで空気を加熱できる構成にすることなどにより空気系の経路が長くなると、若干のむだ時間が生じる。制御系のゲインを上げることにより、具体的にはコンプレッサの流量指示値を負荷変動初期の所定時間だけ最終的な流量目標値よりも大きめに設定することで、制御系のむだ時間や応答時間による応答遅れを改善することは可能である。しかし、適切なゲインは様々な条件で変わるため、空気供給量が図2(c)に示すようにオーバーシュートすることがありうる。
【0044】
水蒸気生成については、WRD30での燃焼器21の排出ガスからの回収された水蒸気と、燃焼器21の熱を利用可能に設けられた蒸発器22での水蒸気生成(これらを総称して第2の水蒸気生成装置と称する)による場合に、原理的に極めて低い応答性となる。
【0045】
すなわち、まず燃焼器21に追加の原燃料を供給しない場合を考えると、WRD30に供給される高温ガスが多くの水分を含むのは、改質ガスの流量が増加し、増加した改質ガスによってCSA20から持ち出される水蒸気およびCSA20から排出される未利用の水素が増加し、それが燃焼器21で燃焼されるなどして燃焼器21から排出された後、つまり改質装置に適切な量の水蒸気が供給されて改質ガスの流量が増加した後となるからである。もちろん、燃焼器21に追加の原燃料と空気を供給して燃焼させることにより蒸発器22により多くの熱を供給して蒸発器22での水蒸気生成を促したり、原燃料に含まれる水素が水分となってWRD30で回収されたりすることによって、第2の水蒸気生成装置での水蒸気生成量を増加させることは可能である。
【0046】
しかし、燃焼器21で生じた熱により水を気化させる熱交換型の蒸発器22は、前述したように比較的低い応答性を有しているので、結果として生成される水蒸気は図2(d)に示すようになる。
【0047】
次に、負荷要求に対する原燃料の供給、空気の供給、水蒸気の生成が上述した図2(a)〜同図(c)に示すようになった場合の、改質装置への影響について引き続き説明する。
【0048】
前述したように、ATR1の改質反応とは発熱反応である部分酸化反応と、吸熱反応である水蒸気改質反応の割合をバランスさせ、部分酸化反応で生じた熱を水蒸気改質反応で利用するというものである。しかし、部分酸化反応の反応速度は水蒸気改質反応のそれに比べて大きいため、ATR1ではまず原燃料と空気の量に応じた量の部分酸化反応が生じ、その反応で消費されずに残った原燃料と水蒸気の量に応じた水蒸気改質反応が生じる。
【0049】
すなわち、原燃料に対する空気の量によって部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合が決まるということになるが、部分酸化反応の割合が適切でない場合には発熱と吸熱のバランスが適切でなくなり、反応器の温度が適切でなくなるおそれがある。すなわち、空気の量が多すぎれば発熱量が増えて吸熱量が減るため、反応器の温度が高くなりすぎて前述したような過度に高温になった場合の不具合が生じるおそれがある。一方、空気の量が少なければ反応器の温度が低くなりすぎて十分な反応速度が得られず、未反応の原燃料や反応の中間物質としての低級の炭化水素等が下流に流出することになる。
【0050】
未反応の原燃料や、反応の中間物質が下流に流出した場合には、下流の反応器やCSA20の触媒に付着して触媒活性を低下させたり、あるいは逆に触媒表面で反応して過度に発熱し、触媒を劣化させたりするおそれがある。あるいは、それら未反応の原燃料や反応の中間物質が反応しないまま燃焼器21に到達した場合には、その量によっては燃焼器21の定格を越えた燃焼熱が生じて燃焼器21の触媒等を劣化させるおそれがある。
【0051】
部分酸化反応の反応式は、先に説明したとおりであり、原燃料中の炭素原子1単位量(例えば1mol)に対して、酸素原子1単位量(同1mol)、言い換えれば酸素分子0.5単位量(同0.5mol)で、一酸化炭素1単位量(同1mol)が生じるというものである。
【0052】
そこで、原燃料に対する空気の量を、供給する原燃料中の炭素原子の数に対する、供給する空気中の酸素分子の数の比を、O2/C(読み方:オーツー・バイ・シーまたはオーツー・トゥ・シー)で表すと、O2/Cは部分酸化反応の割合の情報となる。部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合に適切な範囲があることから、O2/Cにも適切な範囲がある。
【0053】
図2(e)に、原燃料供給が図2(b)に示す場合で、空気供給が図2(c)に示す場合のO2/Cを示す。図2(e)において、負荷要求に対して原燃料がほぼ遅れなく供給されるのに対して、空気供給が前述したようなむだ時間や応答遅れをもって供給されるため、負荷変動初期においてはO2/Cが破線で示した適切な値よりも小さくなる。一方、負荷変動後期、空気供給量がオーバーシュートするときにはO2/Cが適切な値よりも大きくなり、その後空気供給空気量のオーバーシュートに応じてO2/Cも変動しながら次第に適切な値に収束する。
【0054】
このときのATR1の出口の温度は、図2(f)の実線に示すように、ほぼO2/Cと同様に変動し、破線で示した適切な温度から外れる。図2(f)に破線で示したものは、所定の条件でのATR温度である。所定の条件とは、以下に説明するS/C(読み方:エス・バイ・シーまたはエス・トゥ・シー)が一定で、かつ高温の水蒸気が得られる場合のことである。
【0055】
S/Cとは、供給する原燃料中の炭素原子の数に対する、供給する水蒸気の水分子の数の比で、図2(a)〜図2(d)に示す条件でのS/Cを図2(g)に示す。
【0056】
前述したとおり水蒸気改質反応は、部分酸化反応で反応しきれずに残った原燃料と供給水蒸気によって生じる反応であるので、供給された原燃料全体の炭素原子の数でなく、部分酸化反応で反応しきれずに残った炭素原子の数を分母にすることも考えられるが、ここでは供給された原燃料全体の炭素原子の数を分母としている。S/Cの適切な値とは、部分酸化反応で反応しきれずに残った原燃料を水蒸気改質するのに最低限必要な水分子の量よりも大きく設定することが多い。その理由は、化学反応が一般に反応物質の濃度が高くなるほど活性が高くなるからである。すなわち、水蒸気の濃度を高くすることにより、水蒸気改質反応の活性が高くなることを期待して、S/Cを必要最小限よりも大きめに設定するからである。
【0057】
水蒸気生成の応答が、図2(d)に示すように低応答であるため、負荷変動開始後長時間にわたってS/Cは低いままである。負荷変動初期においては、O2/Cが小さいために部分酸化反応の割合が小さくなり、発熱量が小さくなるのであるが、そのことは部分酸化反応で消費されずに残る原燃料が多くなるということである。
【0058】
一方、負荷変動初期においては、S/Cも適切な値より小さいのであるが、前述したとおり定常運転時の設定が必要最小限よりも大きめであるため、負荷変動初期のS/Cが小さい区間においては水蒸気濃度を高くすることによる水蒸気反応の活性向上の効果は期待できない。しかしながら、水蒸気改質反応に必要な量の水蒸気は存在しているため、水蒸気改質反応の量が小さくなるということはなく、結果としてO2/Cが小さくなる負荷変動初期には、ATR温度が低下する。
【0059】
また、ATR1に供給される水蒸気の温度が十分に高い場合には、水蒸気が少なくなることによってATR温度の変動幅が大きくなる。部分酸化反応の割合が変動して発熱量が適切な値からずれたときに、ATR温度と同等の温度の水蒸気が比較的多く供給されていればATR1内のガス全体の熱容量が大きくなり、発熱量、吸熱量の変動によるATR温度変化が小さくなる。しかし、水蒸気の供給量が少ない場合には反応器内のガス全体の熱容量が小さいために、発熱量、吸熱量の変動によるATR温度変化が大きくなる。すなわち、S/Cが小さいと、ATR温度の変動が大きくなる。
【0060】
図3はS/Cを横軸にとり、O2/Cの変化に対する温度変化の感度がS/Cによってどのように変化するかを縦軸にとって表した図である。図3において、ATR1に供給される水蒸気の温度が低い場合には、S/Cが大きいことによってATR温度の変動幅が小さいのは同様であるものの、O2/Cを大きくしない限りはATR温度自体が下がってしまう。
【0061】
次に、図4〜図8を参照して、本実施形態の作用ならびに効果を説明する。なお、本実施形態の動作は、改質装置の負荷に応じて行われる。
【0062】
まず、図4のフローチャートに示すように、負荷が所定の領域にあるか否かを判別し(ステップS400)、負荷が所定の領域にある場合には作動を開始する。負荷が所定の領域とは、ATR温度が厳しくなる負荷条件であり、例えばATR1内のガス流量が小さくなる低負荷域である。ATR1内では前述したとおり発熱反応である部分酸化反応が反応器上流で起こり、吸熱反応である水蒸気改質反応が比較的ゆっくり進むため、反応器内の温度分布は、例えば図5に示すようになる。すなわち、図5に示すように反応器入口付近で温度が急激に上昇し、その後ゆっくりと下降していく。
【0063】
改質装置の負荷が低負荷であっても高負荷であっても、反応器入口の温度が等しく、部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合が一定であればATR1の出口の温度は不変であるが、反応器内の温度分布は低負荷と高負荷で違ったものになる。
【0064】
高負荷の場合には、発熱量は低負荷のときよりも大きくなるものの、ガスの流量が増えることにより流速が大きくなるので、部分酸化反応が起こる領域が下流側に広がって、結果的に温度分布が図5の破線に示すようになだらかになる。逆に、低負荷の場合には、発熱量自体は高負荷のときよりも小さいものの、部分酸化反応の起こる領域が反応器入口付近のごく狭い領域になるため、図5の実線に示すように急峻な温度分布となり、高負荷の場合よりもピーク温度が高くなることがあり得る。また、空気供給量の精度が不十分になる可能性がある場合には、高負荷でも本実施形態を適用することが望ましいことがある。
【0065】
空気系の精度不足により適正量よりも多くの空気が反応器に供給された場合には、発熱反応の割合が多くなってATR温度が上昇するが、高負荷の場合には原燃料自体がすでに負荷に応じて多く供給されているため、温度上昇によってATR1に与える影響が中負荷の場合よりも大きくなる可能性があるからである。
【0066】
図4に戻って、負荷が所定の領域にあるか否かを判別した結果、負荷が所定の領域にない場合には、続いて負荷変動が所定の領域にあるか否かを判別する(ステップS401)。判別結果において、負荷が所定の領域でない場合であっても、負荷変動が所定の領域であれば、本実施形態の動作を開始する。なお、負荷変動によって温度が変動することについてはすでに説明した。
【0067】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態の作用の説明を続ける。
【0068】
図4に示す処理手順にしたがって、本実施形態の作動が指示された場合には、まずATR1の出口と入口を連通する流路6に設けられた弁2を所定量だけ開くとともに、循環装置4の作動を開始し、気相気化器3で水を所定量噴霧する(ステップS600)。引き続いて、温度センサ5でATR1の出口の温度を検出しながら(ステップS601)、その温度と改質装置の負荷に応じて弁2の開度、循環装置4の送風量、気相気化器3の水の噴霧量の調整を行う(ステップS602)。調整後、適宜図4に示す処理手順を実行することで、上記ステップS601、S602に示す処理の継続を判断する(ステップS603)。
【0069】
次に、図7を参照して、本実施形態の効果を説明する。
【0070】
図2に示す場合と同様に、負荷要求が図7(a)に示すように変化し、それに応じて図7(b)に示すように原燃料が供給されるが、空気供給は空気系のむだ時間や応答遅れのために図7(c)に示すようになる。ここでは、原燃料供給が負荷要求に対してほぼ遅れなく応答するものとして、縦軸の尺度を調整して両者を一つのグラフとしてプロットしている。
【0071】
負荷変動が検出されると、図7(d)に示すように弁2が所定量開かれ、また図7(e)に示すように循環装置4が所定の送風量で運転される。ここでも、弁2の開度と循環装置4の送風量をほぼ同じプロファイルで操作するものとして、縦軸の尺度を調整して一つのグラフとしてプロットしている。このときの水蒸気生成量は図7(f)に示すようになる。すなわち、第2の水蒸気生成装置からの水蒸気が本実施形態を適用しないときと同様に点線で示すように供給されるとともに、図7(e)に示すように噴霧された水が水蒸気となってATR1の入口に供給されるので、両者を合計した水蒸気量は図7(f)の実線で示すようになる。
【0072】
これは、ATR1の出口と入口を連通する流路6に導かれたATR1の出口からの高温ガス中に、図7(e)に示すように水が噴霧されると、水はほぼ瞬時に気相気化して水蒸気となるからである。この場合でも、ATR1におけるO2/Cは本実施形態を適用しない場合と同じく図7(g)に示すようにあるものの、ATR温度は図7(h)に示すように本実施形態を適用しない場合と比べて変動幅が小さく抑えられたものとなる。
【0073】
次に、図8に示すシミュレーションの計算結果を参照し、変動幅が小さく抑えられる様子を、具体的な数値例を挙げて説明する。
【0074】
図8に示す結果が得られたシミュレーションは以下のようにして行われた。すなわち、原燃料としてのイソオクタンと水と空気とを混合したものが平衡組成になったときに温度がどうなるかを計算し、所定のS/Cとなるように水蒸気を与えたときに、温度が所定の温度、例えば約750℃程度になるようなO2/Cを求めた。ギブズの自由エネルギーが極小となる組成を平衡とみなした。平衡前、すなわち反応前の組成と反応後の組成によって、生じる反応熱は一意に計算でき、平衡組成での温度はATR1の出口での温度に相当する。
【0075】
次に、O2/Cをわずかに変化させたときの温度の変化を同様の計算で求め、O2/Cの変化に対する温度の変化の比を温度感度として計算した。この温度感度を、本実施形態を適用せずにS/Cを変更した場合と、S/Cが比較的小さい、すなわち水蒸気生成の応答が不十分な状態に対して本実施形態を適用した場合について求めた。
【0076】
図8において、条件番号1に示すS/C=2の条件での温度感度が2150であるのに対して、負荷変動時に水蒸気応答性が不十分であることを想定した条件番号2のS/C=1の条件では、温度感度が約2800となっている。これは、条件番号1ではO2/Cが0.05だけずれたときに温度が約108℃変動するのに対して、条件番号2では140℃もの変動になることを意味している。さらに、ATR1の内部での温度分布が図5に示すようであることを考えると、ピーク温度の変動幅はさらに大きいと考えられる。
【0077】
条件番号3と4は本実施形態の適用を想定したものである。条件番号3ではS/C=1のまま、分配率0.2、すなわちATR1の出口のガスの20%を分岐させて流路6で入口に還流し、その中に気相気化器3で毎秒2molの水を噴霧している。なお、一連の計算はイソオクタンの供給量を毎秒1molとしており、イソオクタン1分子中に炭素原子が8個含まれることから、毎秒2molの水を追加噴霧することは、S/Cにして0.25増加させることに相当する。イソオクタン(C8H18) 1mol中の炭素原子は8molなので、8molの炭素原子に対する水の増加が2molならば、S/Cの増加は2/8=0.25となる。
【0078】
条件番号4では条件番号3と同様に、追加噴霧する水を除いたS/Cは同じく1のまま、ATR1の出口ガスの40%を分岐した中に毎秒5.6molの水を噴霧している。条件番号3では温度感度が約2500となって、条件番号2に比べて10%以上の改善が見られる。また、条件番号4では条件番号1とほぼ同様の温度感度となり、第2の水蒸気生成装置の応答性が低く、十分なS/Cが得られない場合であっても、O2 /Cの変動に対するATR温度の変動が小さく抑えられていることが分かる。
【0079】
なお、図8に示すO2/CはATR温度を約750℃程度に保つのに必要なものであるが、条件番号2から条件番号4にかけてその値が大きくなっている。これは同じ原燃料に対してより多くの空気が必要となることを示している。
【0080】
空気系の応答は、前述したように若干のむだ時間と応答時間を持つため、負荷変動開始直後に弁2と循環装置4を作動させてATR1の出口ガスを入口に還流し、その中に水を噴霧することはむしろATR1の出口温度の低下を招くことになる。したがって、本実施形態の作動には、空気供給系等の応答時間を考慮した応答性、すなわち適度な応答遅れを持たせることが望ましい。したがって、O2 /Cを考慮して(原燃料供給に対する空気供給遅れを考慮して)、ATR1の温度ができるだけ一定になるように図7(d)や同図(e)に示すグラフの傾きを設定する(応答遅れを持たせる)。
【0081】
また、条件番号3と条件番号4では、S/Cを1に固定しているが、実際の負荷変動では第2の水蒸気生成装置からの水蒸気量が徐々に増加するので、それに応じて追加噴霧する水の量を変更することは言うまでもない。さらに、ATR1の下流の第2の反応器であるシフト反応器14,15が水と一酸化炭素を反応させて水素と二酸化炭素を生じさせる反応器であり、水が多いほど水素が生成される方向に反応の平衡がずれることから、シフト反応器14,15の上流で供給する水の量とATR1の入口に還流するガス内に噴霧する水の量は総合的に制御することが望ましい。
【0082】
なお、図1では温度センサ5をATR1の出口に備え、ATR1の出口温度の検出を兼ねるものとしているが、ATR1の出口とは別に第1の水蒸気生成装置である気相気化器3からATR1の入口までの間に本実施形態の制御のための温度センサを設けてもよい。そのように構成した場合の利点としては、循環装置4の耐熱性を下げられるということが挙げられる。循環装置4はモータで駆動されるが、モータを構成する電気部品のすべてを高耐熱とすることはコストの増大を招くことになる。
【0083】
そこで、温度センサ5を気相気化器3の下流に設けて循環装置4を通過するガスの温度を直接検出できるようにすれば、循環装置4の耐熱温度を上回らないように弁2、循環装置4、気相気化器3を制御することが可能となる。なお、負荷変動時の原燃料供給、空気供給、ATR1の出口ガス循環量(分岐割合)、水噴霧量は図7の各プロットに示すように制限されるものではない。また同様に、図8に示す条件に制限されるものではない。
【0084】
また、図1ではATR1の下流にシフト反応器14,15とPrOx18を設けて一酸化炭素濃度を下げ、水素濃度を上げるものとしているが、この部分を水素分離膜もしくは水素分離膜とシフト反応器を組み合わせたものに置き換えてもよい。さらに別の構成としても本発明の本質に関わるものでないことはいうまでもない。
【0085】
第2の水蒸気生成装置についても、WRD30と燃焼器21の熱を利用する熱交換型の蒸発器22との組合せに限定されるものではないことは言うまでもない。原燃料の気相気化器10についても、高温に加熱した空気中で気相気化させる形態に限定されるものではないことはいうまでもない。ただし、気相気化器10の形式が異なることにより原燃料供給の応答性が異なるものとなる場合には、結果的にO2/CやS/Cの時間変化が上記で説明したものと異なるものとなるため、弁2、循環装置4、気相気化器3の応答性をそれに合わせたものとすることが必要であることは言うまでもない。また、本実施形態では改質ガスをCSA20に供給して発電するものとしているが、改質ガスエンジンで直接動力に変換するものであってもよい。
【0086】
以上説明したように、本発明の実施形態においては、第1の反応器となるATR1の入口と出口を連通する流路6を備え、この流路6には、水蒸気を生成する第1の水蒸気生成装置となる気相気化器3と、ATR1の出口のガスを入口に還流させる循環装置4を備え、気相気化器3が気相蒸発器としているので、高温のATR1の出口ガスを利用して水を気相気化させることで、高い応答性で水蒸気を生成してATR1の入口に供給することが可能となり、空気系の部品や装置構成をいたずらに高精度、複雑なものとすることなく、高い負荷変動応答性を実現することができる。
【0087】
また、ATR1における反応が、少なくとも一つの発熱反応と一つの吸熱反応の組合せであり、発熱反応が、改質原料の少なくとも一部と酸素との反応であるため、改質触媒上で部分酸化反応(発熱)して水蒸気改質反応(吸熱)に必要な熱を生成ことにより、応答性を上げやすく、より高い負荷応答性を得ることができる。
【0088】
さらに、流路6に弁2を備えるようにしているので、負荷変動時など、改質装置の運転条件等に応じて好適な運転方法を選択することができる。また、ATR1の出口、もしくは流路6に温度センサ5を備えることにより、ATR1の運転温度を好適な温度範囲とすることができる。
【0089】
また、改質装置の負荷に応じて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、改質装置の負荷に応じた好適な運転方法を選択することができる。さらに、温度センサ5で検出された温度に基づいて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、ATR1の運転温度に応じた好適な運転方法を選択することができる。
【0090】
また、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つの制御が、所定の応答遅れを伴うことにより、ATR1の温度が急激に変化することを防ぐことができる。さらに、ATR1に水蒸気を供給する蒸発器22を備え、蒸発器22からATR1に供給される水蒸気量に応じて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、蒸発器22の運転状態に応じて、改質装置全体の効率を考慮した好適な運転方法を選択することができる。
【0091】
さらに、ATR1よりも下流に第3の水蒸気生成装置となる気相気化器16,17を備え、気相気化器16,17よりも下流に第2の反応器となる高温ガスシフト反応器(HTS)14,低温ガスシフト反応器(LTS)15を備え、高温ガスシフト反応器14ならびに低温ガスシフト反応器15における反応が、水蒸気を必要とする反応であって、少なくとも気相気化器16,17で供給される水蒸気量に応じて、気相気化器3が制御されるようにすることで、気相気化器16,17の運転状態に応じて、改質装置全体の水蒸気量を考慮した好適な運転方法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る改質装置を含む改質型パワープラントの構成を示す図である。
【図2】本発明を適用しない場合に起こり得る現象を説明するための図である。
【図3】S/Cと、O2/Cの変化に対する温度変化の感度との関係を示す図である。
【図4】リサイクル作動の手順を示すフローチャートである。
【図5】ATR1内の温度分布を示す図である。
【図6】第1の実施形態における作用の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の効果を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態における効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
1…オートサーマル改質器(ATR)
2,24…弁
3,10,16,17…気相気化器
4…循環装置
5…温度センサ
6…流路
11,12,13…熱交換器(HEX)
14…高温ガスシフト反応器(HTS)
15…低温ガスシフト反応器(LTS)
18…選択酸化反応器(PrOx)
19…ミキサ
20…燃料電池スタック(CSA)
21…燃焼器
22…蒸発器
23…配管
30…WRD
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱反応である酸化反応と、吸熱反応である改質反応をひとつの反応器内で行わせる、いわゆるオートサーマル改質型の改質装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の移動体用の動力源として、環境の観点から望ましいものとして、燃料電池が注目されている。特に移動体用の燃料電池として有力と目されているもののひとつとして、高分子電解質膜(以降、PEMと称する)型の燃料電池(以降、PEFCと称する)が挙げられる。
【0003】
PEFCは水素を燃料ガスとし、酸化ガス(通常は酸素)との反応により電気を取り出すものであるが、その水素を得る手段として、水素を含む化合物から水素を分離する改質という方法がある。
【0004】
特に、炭素と水素を含む有機化合物は容積あたり、もしくは重量あたりのエネルギー密度が水素に比べて高いため、改質について多くの研究や開発がなされている。中でもメタン等のアルカンや、アルコール・エーテル類、もしくはガソリン等(以降、炭化水素系燃料と称する)は常温常圧、もしくはわずかな加圧条件で液体となって取り扱いが容易である、燃料としての利用技術が確立されている等の理由で、改質の原料として有力視されている。
【0005】
ここで改質について、簡単に説明する。
【0006】
改質とはガソリン等の炭化水素系燃料や水、空気等から水素を含むガス(以降、改質ガスと称する)を生成するものである。以下に、水蒸気改質反応と部分酸化反応の反応式を示す。
【0007】
【化1】
(水蒸気改質反応) CnHm+nH2O→nCO+(m/2+n)H2
(部分酸化反応) CnHm+(n/2)O2→nCO+(m/2)H2
部分酸化反応に必要な酸素も、移動体用としては空気が用いられることが多い。
【0008】
上記で生成されたCO(一酸化炭素)は、以下のシフト反応の原料として水素の生成に寄与する。
【0009】
【化2】
(シフト反応) CO+H2O←→CO2+H2
上記で示した式では、オクタンC8H18 のような炭化水素(CnHm)を改質原燃料としているが、メタノールCH3OH のように、炭素原子と水素原子以外を含むものも原燃料になりうる。
【0010】
なお、上記の式からも分かるように、水や酸素も改質原料であるが、ガソリン等の炭化水素系燃料は原燃料と呼んで、水や酸素、もしくは空気のような酸素を含むガスと区別している。また、特に断らない限り、酸素もしくは空気のような酸素を含むガスを総称して空気と称する。
【0011】
一方、吸熱反応である水蒸気改質反応と、発熱反応である部分酸化反応を組み合わせるオートサーマル改質(以下、ATRと称する)型のATR反応も、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0012】
上記特許文献1に記載されているように、ATR反応は部分酸化反応によって生じる熱を、水蒸気改質反応に利用するものであり、原燃料に対する空気の量を適切に設定することにより、原理的には外部からの熱の供給を行うことなく改質反応を行わせるものである。吸熱反応である水蒸気改質反応の反応速度は、発熱反応である部分酸化反応の反応速度に比べて遅いため、反応器の入口付近で部分酸化反応が急速に進んで改質ガスや反応器の温度が急激に上昇し、その後水蒸気改質反応が進むにつれて温度が下がっていく、という温度分布となる。
【0013】
化学反応は一般的に高温になるほど高活性となるが、過度に高温になった場合には、触媒がシンタリングと呼ばれる劣化を起こしたり、あるいはPEFCでは利用できないメタンが生じたり、あるいは改質器に供給した空気中の窒素ガスが反応することにより、窒素酸化物が生じたりすることがある。
【0014】
したがって、原燃料と水と空気との比率を適切に保つことが非常に重要である。上記文献に記載された従来例では、起動時のように改質反応を行う処理量を急激に増やす必要があるときには、より反応速度の大きい発熱反応の割合を大きくして、より速く必要量の改質ガスを得るようにしている。しかし、それによって反応器が高温になって、前述したような弊害を招くおそれがあった。
【0015】
その対策として上記従来例では、ATR反応器に供給する空気を複数箇所に分散して供給することにより、発熱部位を分散させたり、あるいは熱伝導性の部材を反応器内に配して反応器上流の反応熱を反応器下流に分散させたり、もしくは反応器の上流と下流とで触媒の総表面積を変化させることや反応器の断面積を上流と下流とで変化させることによって、酸化反応の速度を抑制するようにしている。
【0016】
【特許文献1】
特開平9−315801号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
自動車のような移動体に改質装置を備えた燃料電池システムを適用する場合には、その改質装置には高い負荷変動応答性が要求されると考えられる。しかし、上述した従来例に述べられているように、発熱反応の割合を大きくすることにより応答性を確保することは本質的ではない。むしろ十分な量の水蒸気を供給して反応器温度が過剰な高温になることを防ぎながら改質反応処理量を増やすことが望ましい。
【0018】
水蒸気改質反応自体は、吸熱反応であるため負荷変動に対する応答性は部分酸化反応に比べて劣るものの、十分な量の水蒸気が供給されれば、部分酸化反応によって生じる一酸化炭素とその水蒸気がシフト反応を起こして水素を生成する。シフト反応は平衡反応なので、水蒸気を多くすれば水素が発生する側に反応が進みやすくなるのである。
【0019】
上記従来例では、メタノールを原燃料とする改質反応が中心であるため、メタノールと水の混合物が熱交換型の蒸発器に供給されて、原燃料蒸気と水蒸気を生成する。しかし、従来例で説明されているような高温ガスを熱媒とする熱交換型の蒸発器では、気体である高温ガスから固体である熱交換器への伝熱速度が律速となって応答性がよくないとされている。そのため、水蒸気の生成速度が不十分となって部分酸化反応による改質反応で負荷変動に対応するようにしている。しかし、低応答の蒸発器で生成される水蒸気の量に合わせて、空気を精度よく供給するためには、高精度のセンサ、アクチュエータを必要とし、複雑な装置構成が必要となる可能性があり、コスト的、サイズ的に不利であるという問題があった。
【0020】
また、ガソリンのように非水溶性の原燃料では水と混合して、原燃料蒸気と水蒸気をひとつの蒸発器で生成するということができない。したがって、空気系の部品や装置構成はいっそう高精度で複雑なものが要求されるといった問題も招いていた。
【0021】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成の高精度化、複雑化を招くことなく、負荷変動応答性に優れた改質装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決する手段は、水素を含むガスを生成する改質装置であって、改質原料、酸素ならびに水蒸気を反応させて改質ガスを生成する第1の反応器と、前記第1の反応器の入口と出口を連通する流路を備え、前記流路には、前記水蒸気を生成する第1の水蒸気生成装置と、前記第1の反応器出口のガスを前記第1の反応器の入口に還流させる循環装置を備え、前記第1の水蒸気生成装置は気相蒸発器であることを特徴とする。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、高温の第1の反応器出口ガスを利用して水を気相気化させることで、高い応答性で水蒸気を生成して第1の反応器入口に供給することが可能となる。これにより、空気系の部品や装置構成を高精度化、複雑化することなく、高い負荷変動応答性を達成することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態に係る改質装置を含む改質型パワープラントの構成を示す図である。改質型パワープラントは、本発明の第1の実施形態の改質装置で生成した改質ガスを燃料電池スタックに供給して発電を行うプラントであり、このプラントで発電された電力によって、例えば車両等の移動体が駆動される。
【0026】
図1において、この第1の実施形態の改質装置は、第1の反応器として機能するオートサーマル改質器(ATR)1、第1の水蒸気生成装置として機能する気相気化器3、ATR1の出口ガスをATR1の入口に環流させる循環装置4、ATR1で生成された改質ガスをさらに反応させる高温ガスシフト反応器(HTS)14ならびに低温ガスシフト反応器(LTS)15、シフト反応器用の気相気化器16、17、燃料電池スタック(CSA)20、CSA20の排出ガスに含まれる可燃成分を燃焼する燃焼器21、第2の水蒸気生成装置として機能する蒸発器22、ならび燃焼器21の排出ガスから水分を回収するWRD30を備えて構成されている。
【0027】
第1の反応器であるATR1には、ガソリン等の燃料(原燃料)と水蒸気と空気が供給される。空気はWRD30を経た後、ATR1の出口の約750℃の高温ガスを利用した熱交換器(HEX)11で約600℃まで加熱され、原燃料がその高温の空気中に気相気化器10で噴霧されて気化することで、空気が燃料蒸気を含む形でATR1に供給される。
【0028】
WRD30は、CSA20の下流に設けられた燃焼器21の排ガスから水分を回収する装置であり、例えば中空糸膜等が用いられる。中空糸膜を介して水分を含む高温のガスと大気から取り入れた比較的低温の乾燥空気を接触させることで、高温ガス中の水分が中空糸膜の毛管中で凝縮し、その凝縮水が毛管現象で吸い出されて乾燥空気中に透過し、乾燥空気が加湿されるというものである。もちろん、WRD30は中空糸膜に限定されるものではなく、焼結金属板を利用するものでもよい。
【0029】
燃焼器21は、CSA20の排ガスに含まれる可燃成分を燃焼させるものである。可燃成分の主な成分は、CSA20で利用されずに排出された水素である。燃焼器21の熱は、第2の水蒸気生成装置である蒸発器22でも利用できるように構成される。また、燃焼器21には、ガソリン等の燃料が合わせて供給できるように配管23が設けられ、この配管23には弁24が設けられている。燃焼器21の可燃成分を燃焼させるための酸化ガスの一部または全部は、CSA20の排ガスでまかなわれるが、それでも不足の場合には空気が燃焼器21に直接供給される。
【0030】
なお、図1ではWRD30を通過した空気を燃焼器21に供給するものとしているが、WRD30を通過しない空気を供給するものとしてもよい。
【0031】
CSA20に供給される改質ガスは、ATR1で生成された改質ガスを高温ガスシフト反応器(HTS)14、低温ガスシフト反応器(LTS)15、選択酸化反応器(PrOx)18でさらに反応させて得られるものである。
【0032】
HTS14およびLTS15は、前述したシフト反応により一酸化炭素COを低減しながら水素を生成するものである。HTS14は、反応温度を高温に設定することで反応速度を大きくする。LTS15は、反応温度を低温に設定することで、前述した平衡反応式の組成が右寄りとなるように、すなわちCOが減って水素が増える方向の平衡となるようにするものである。HTS14およびLTS15の運転温度は限定されるものではなく、適用する触媒に応じたものとなるが、例えばHTS14が350℃程度から400℃程度、LTS15が250℃程度から300℃程度で運転される。
【0033】
シフト反応は平衡反応であるため、上記のような所定の温度域で運転するために、入口に熱交換器(HEX)12を設けて温度調節を行うことがある。シフト反応に必要な水蒸気の生成を、高温の改質ガス中に水を噴霧し、気相気化させることで行えば、水の気化熱により改質ガスの温度が低下するので、HEX12,13を省略する構成も可能である。
【0034】
なお、シフト反応器用の気相気化器16,17とHEX12,13の位置関係は、図1に示す位置関係に限定されるものではなく、例えばHEX、気相気化器の順に並ぶように構成してもよい。
【0035】
HTS14とLTS15が個別に設けられるのは、前述したように温度域を分けるためであり、原理と機能は共通である。したがって、以下の説明では場合によってはHTS14とLTS15を総称して第2の反応器と称する。また、HTS14、LTS15のそれぞれの上流に設けられたシフト反応器用の気相気化器16,17についても、場合によっては総称して第3の水蒸気生成装置と称することがある。
【0036】
PrOx18は、LTS15の出口の改質ガス中に含まれるCOを選択的に酸化する反応器である。すなわち、ミキサ(MIX)19で供給される空気により、改質ガス中の水素の酸化を極力低く抑えながら、改質ガス中のCOを酸化して二酸化炭素CO2 に変化させる。
【0037】
ATR1には、出口と入口を連通する流路6が設けられ、この流路6のATR1の出口側には弁2が設けられている。弁2の下流には、第1の水蒸気生成装置である気相気化器3が設けられている。気相気化器3の下流には、ATR1の出口ガスをATR1の入口に還流させるための循環装置4が設けられている。ATR1の出口には温度センサ5が設けられている。
【0038】
なお、循環装置4は、一般に流体を輸送するポンプのうち、流体が気体であり、その入口と出口の圧力比が1.3程度ないしは2.0程度のものの総称である。しかし、本実施形態で用いられるものは圧力比がその範囲に限定されるものではなく、2.0程度以上の圧力比を持つコンプレッサを用いるものとしてもよい。
【0039】
第1から第3の水蒸気生成装置に供給される水は、図示されない水タンクから供給され、その水はWRD30を通過後の燃焼器21の排出ガスに残る水分を凝縮させて回収するものでもよく、CSA20で改質ガス中の水素と酸化ガスである空気が反応したときに生じる水を回収するものでもよく、あるいは外部から水タンクに随時供給するものとしてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用と効果を説明する前に、図2〜図3を用いて本発明を適用しない場合に起こり得る現象について簡単に説明し、その後図4〜図8を用いて本実施形態の作用ならびに効果を説明する。
【0041】
ここで、移動体の運転者が移動体を加速させるなどの目的で出力を上げようとする場合を考える。このときパワープラントに要求される負荷要求が、例えば図2(a)に示すように変化したとする。
【0042】
原燃料蒸気の供給は、前述したとおり高温空気中に原燃料を噴霧して気化させる方式のため、噴霧量を増量することにより、図2(b)に示すようにほぼ応答遅れなく原燃料蒸気を反応器に供給することができる。空気の供給は図示されないコンプレッサによって行われるが、コンプレッサはその慣性により若干の応答遅れを生じる。
【0043】
ここで、応答遅れと称するのは、一般的に一次遅れや二次遅れと称される現象において、ステップ入力に対してなだらかに応答するときの時定数のことである。また、改質装置内で発生する熱を極力無駄なく利用して装置全体の効率を向上させるべく、ATR1の下流のHEXで空気を加熱できる構成にすることなどにより空気系の経路が長くなると、若干のむだ時間が生じる。制御系のゲインを上げることにより、具体的にはコンプレッサの流量指示値を負荷変動初期の所定時間だけ最終的な流量目標値よりも大きめに設定することで、制御系のむだ時間や応答時間による応答遅れを改善することは可能である。しかし、適切なゲインは様々な条件で変わるため、空気供給量が図2(c)に示すようにオーバーシュートすることがありうる。
【0044】
水蒸気生成については、WRD30での燃焼器21の排出ガスからの回収された水蒸気と、燃焼器21の熱を利用可能に設けられた蒸発器22での水蒸気生成(これらを総称して第2の水蒸気生成装置と称する)による場合に、原理的に極めて低い応答性となる。
【0045】
すなわち、まず燃焼器21に追加の原燃料を供給しない場合を考えると、WRD30に供給される高温ガスが多くの水分を含むのは、改質ガスの流量が増加し、増加した改質ガスによってCSA20から持ち出される水蒸気およびCSA20から排出される未利用の水素が増加し、それが燃焼器21で燃焼されるなどして燃焼器21から排出された後、つまり改質装置に適切な量の水蒸気が供給されて改質ガスの流量が増加した後となるからである。もちろん、燃焼器21に追加の原燃料と空気を供給して燃焼させることにより蒸発器22により多くの熱を供給して蒸発器22での水蒸気生成を促したり、原燃料に含まれる水素が水分となってWRD30で回収されたりすることによって、第2の水蒸気生成装置での水蒸気生成量を増加させることは可能である。
【0046】
しかし、燃焼器21で生じた熱により水を気化させる熱交換型の蒸発器22は、前述したように比較的低い応答性を有しているので、結果として生成される水蒸気は図2(d)に示すようになる。
【0047】
次に、負荷要求に対する原燃料の供給、空気の供給、水蒸気の生成が上述した図2(a)〜同図(c)に示すようになった場合の、改質装置への影響について引き続き説明する。
【0048】
前述したように、ATR1の改質反応とは発熱反応である部分酸化反応と、吸熱反応である水蒸気改質反応の割合をバランスさせ、部分酸化反応で生じた熱を水蒸気改質反応で利用するというものである。しかし、部分酸化反応の反応速度は水蒸気改質反応のそれに比べて大きいため、ATR1ではまず原燃料と空気の量に応じた量の部分酸化反応が生じ、その反応で消費されずに残った原燃料と水蒸気の量に応じた水蒸気改質反応が生じる。
【0049】
すなわち、原燃料に対する空気の量によって部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合が決まるということになるが、部分酸化反応の割合が適切でない場合には発熱と吸熱のバランスが適切でなくなり、反応器の温度が適切でなくなるおそれがある。すなわち、空気の量が多すぎれば発熱量が増えて吸熱量が減るため、反応器の温度が高くなりすぎて前述したような過度に高温になった場合の不具合が生じるおそれがある。一方、空気の量が少なければ反応器の温度が低くなりすぎて十分な反応速度が得られず、未反応の原燃料や反応の中間物質としての低級の炭化水素等が下流に流出することになる。
【0050】
未反応の原燃料や、反応の中間物質が下流に流出した場合には、下流の反応器やCSA20の触媒に付着して触媒活性を低下させたり、あるいは逆に触媒表面で反応して過度に発熱し、触媒を劣化させたりするおそれがある。あるいは、それら未反応の原燃料や反応の中間物質が反応しないまま燃焼器21に到達した場合には、その量によっては燃焼器21の定格を越えた燃焼熱が生じて燃焼器21の触媒等を劣化させるおそれがある。
【0051】
部分酸化反応の反応式は、先に説明したとおりであり、原燃料中の炭素原子1単位量(例えば1mol)に対して、酸素原子1単位量(同1mol)、言い換えれば酸素分子0.5単位量(同0.5mol)で、一酸化炭素1単位量(同1mol)が生じるというものである。
【0052】
そこで、原燃料に対する空気の量を、供給する原燃料中の炭素原子の数に対する、供給する空気中の酸素分子の数の比を、O2/C(読み方:オーツー・バイ・シーまたはオーツー・トゥ・シー)で表すと、O2/Cは部分酸化反応の割合の情報となる。部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合に適切な範囲があることから、O2/Cにも適切な範囲がある。
【0053】
図2(e)に、原燃料供給が図2(b)に示す場合で、空気供給が図2(c)に示す場合のO2/Cを示す。図2(e)において、負荷要求に対して原燃料がほぼ遅れなく供給されるのに対して、空気供給が前述したようなむだ時間や応答遅れをもって供給されるため、負荷変動初期においてはO2/Cが破線で示した適切な値よりも小さくなる。一方、負荷変動後期、空気供給量がオーバーシュートするときにはO2/Cが適切な値よりも大きくなり、その後空気供給空気量のオーバーシュートに応じてO2/Cも変動しながら次第に適切な値に収束する。
【0054】
このときのATR1の出口の温度は、図2(f)の実線に示すように、ほぼO2/Cと同様に変動し、破線で示した適切な温度から外れる。図2(f)に破線で示したものは、所定の条件でのATR温度である。所定の条件とは、以下に説明するS/C(読み方:エス・バイ・シーまたはエス・トゥ・シー)が一定で、かつ高温の水蒸気が得られる場合のことである。
【0055】
S/Cとは、供給する原燃料中の炭素原子の数に対する、供給する水蒸気の水分子の数の比で、図2(a)〜図2(d)に示す条件でのS/Cを図2(g)に示す。
【0056】
前述したとおり水蒸気改質反応は、部分酸化反応で反応しきれずに残った原燃料と供給水蒸気によって生じる反応であるので、供給された原燃料全体の炭素原子の数でなく、部分酸化反応で反応しきれずに残った炭素原子の数を分母にすることも考えられるが、ここでは供給された原燃料全体の炭素原子の数を分母としている。S/Cの適切な値とは、部分酸化反応で反応しきれずに残った原燃料を水蒸気改質するのに最低限必要な水分子の量よりも大きく設定することが多い。その理由は、化学反応が一般に反応物質の濃度が高くなるほど活性が高くなるからである。すなわち、水蒸気の濃度を高くすることにより、水蒸気改質反応の活性が高くなることを期待して、S/Cを必要最小限よりも大きめに設定するからである。
【0057】
水蒸気生成の応答が、図2(d)に示すように低応答であるため、負荷変動開始後長時間にわたってS/Cは低いままである。負荷変動初期においては、O2/Cが小さいために部分酸化反応の割合が小さくなり、発熱量が小さくなるのであるが、そのことは部分酸化反応で消費されずに残る原燃料が多くなるということである。
【0058】
一方、負荷変動初期においては、S/Cも適切な値より小さいのであるが、前述したとおり定常運転時の設定が必要最小限よりも大きめであるため、負荷変動初期のS/Cが小さい区間においては水蒸気濃度を高くすることによる水蒸気反応の活性向上の効果は期待できない。しかしながら、水蒸気改質反応に必要な量の水蒸気は存在しているため、水蒸気改質反応の量が小さくなるということはなく、結果としてO2/Cが小さくなる負荷変動初期には、ATR温度が低下する。
【0059】
また、ATR1に供給される水蒸気の温度が十分に高い場合には、水蒸気が少なくなることによってATR温度の変動幅が大きくなる。部分酸化反応の割合が変動して発熱量が適切な値からずれたときに、ATR温度と同等の温度の水蒸気が比較的多く供給されていればATR1内のガス全体の熱容量が大きくなり、発熱量、吸熱量の変動によるATR温度変化が小さくなる。しかし、水蒸気の供給量が少ない場合には反応器内のガス全体の熱容量が小さいために、発熱量、吸熱量の変動によるATR温度変化が大きくなる。すなわち、S/Cが小さいと、ATR温度の変動が大きくなる。
【0060】
図3はS/Cを横軸にとり、O2/Cの変化に対する温度変化の感度がS/Cによってどのように変化するかを縦軸にとって表した図である。図3において、ATR1に供給される水蒸気の温度が低い場合には、S/Cが大きいことによってATR温度の変動幅が小さいのは同様であるものの、O2/Cを大きくしない限りはATR温度自体が下がってしまう。
【0061】
次に、図4〜図8を参照して、本実施形態の作用ならびに効果を説明する。なお、本実施形態の動作は、改質装置の負荷に応じて行われる。
【0062】
まず、図4のフローチャートに示すように、負荷が所定の領域にあるか否かを判別し(ステップS400)、負荷が所定の領域にある場合には作動を開始する。負荷が所定の領域とは、ATR温度が厳しくなる負荷条件であり、例えばATR1内のガス流量が小さくなる低負荷域である。ATR1内では前述したとおり発熱反応である部分酸化反応が反応器上流で起こり、吸熱反応である水蒸気改質反応が比較的ゆっくり進むため、反応器内の温度分布は、例えば図5に示すようになる。すなわち、図5に示すように反応器入口付近で温度が急激に上昇し、その後ゆっくりと下降していく。
【0063】
改質装置の負荷が低負荷であっても高負荷であっても、反応器入口の温度が等しく、部分酸化反応と水蒸気改質反応の割合が一定であればATR1の出口の温度は不変であるが、反応器内の温度分布は低負荷と高負荷で違ったものになる。
【0064】
高負荷の場合には、発熱量は低負荷のときよりも大きくなるものの、ガスの流量が増えることにより流速が大きくなるので、部分酸化反応が起こる領域が下流側に広がって、結果的に温度分布が図5の破線に示すようになだらかになる。逆に、低負荷の場合には、発熱量自体は高負荷のときよりも小さいものの、部分酸化反応の起こる領域が反応器入口付近のごく狭い領域になるため、図5の実線に示すように急峻な温度分布となり、高負荷の場合よりもピーク温度が高くなることがあり得る。また、空気供給量の精度が不十分になる可能性がある場合には、高負荷でも本実施形態を適用することが望ましいことがある。
【0065】
空気系の精度不足により適正量よりも多くの空気が反応器に供給された場合には、発熱反応の割合が多くなってATR温度が上昇するが、高負荷の場合には原燃料自体がすでに負荷に応じて多く供給されているため、温度上昇によってATR1に与える影響が中負荷の場合よりも大きくなる可能性があるからである。
【0066】
図4に戻って、負荷が所定の領域にあるか否かを判別した結果、負荷が所定の領域にない場合には、続いて負荷変動が所定の領域にあるか否かを判別する(ステップS401)。判別結果において、負荷が所定の領域でない場合であっても、負荷変動が所定の領域であれば、本実施形態の動作を開始する。なお、負荷変動によって温度が変動することについてはすでに説明した。
【0067】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態の作用の説明を続ける。
【0068】
図4に示す処理手順にしたがって、本実施形態の作動が指示された場合には、まずATR1の出口と入口を連通する流路6に設けられた弁2を所定量だけ開くとともに、循環装置4の作動を開始し、気相気化器3で水を所定量噴霧する(ステップS600)。引き続いて、温度センサ5でATR1の出口の温度を検出しながら(ステップS601)、その温度と改質装置の負荷に応じて弁2の開度、循環装置4の送風量、気相気化器3の水の噴霧量の調整を行う(ステップS602)。調整後、適宜図4に示す処理手順を実行することで、上記ステップS601、S602に示す処理の継続を判断する(ステップS603)。
【0069】
次に、図7を参照して、本実施形態の効果を説明する。
【0070】
図2に示す場合と同様に、負荷要求が図7(a)に示すように変化し、それに応じて図7(b)に示すように原燃料が供給されるが、空気供給は空気系のむだ時間や応答遅れのために図7(c)に示すようになる。ここでは、原燃料供給が負荷要求に対してほぼ遅れなく応答するものとして、縦軸の尺度を調整して両者を一つのグラフとしてプロットしている。
【0071】
負荷変動が検出されると、図7(d)に示すように弁2が所定量開かれ、また図7(e)に示すように循環装置4が所定の送風量で運転される。ここでも、弁2の開度と循環装置4の送風量をほぼ同じプロファイルで操作するものとして、縦軸の尺度を調整して一つのグラフとしてプロットしている。このときの水蒸気生成量は図7(f)に示すようになる。すなわち、第2の水蒸気生成装置からの水蒸気が本実施形態を適用しないときと同様に点線で示すように供給されるとともに、図7(e)に示すように噴霧された水が水蒸気となってATR1の入口に供給されるので、両者を合計した水蒸気量は図7(f)の実線で示すようになる。
【0072】
これは、ATR1の出口と入口を連通する流路6に導かれたATR1の出口からの高温ガス中に、図7(e)に示すように水が噴霧されると、水はほぼ瞬時に気相気化して水蒸気となるからである。この場合でも、ATR1におけるO2/Cは本実施形態を適用しない場合と同じく図7(g)に示すようにあるものの、ATR温度は図7(h)に示すように本実施形態を適用しない場合と比べて変動幅が小さく抑えられたものとなる。
【0073】
次に、図8に示すシミュレーションの計算結果を参照し、変動幅が小さく抑えられる様子を、具体的な数値例を挙げて説明する。
【0074】
図8に示す結果が得られたシミュレーションは以下のようにして行われた。すなわち、原燃料としてのイソオクタンと水と空気とを混合したものが平衡組成になったときに温度がどうなるかを計算し、所定のS/Cとなるように水蒸気を与えたときに、温度が所定の温度、例えば約750℃程度になるようなO2/Cを求めた。ギブズの自由エネルギーが極小となる組成を平衡とみなした。平衡前、すなわち反応前の組成と反応後の組成によって、生じる反応熱は一意に計算でき、平衡組成での温度はATR1の出口での温度に相当する。
【0075】
次に、O2/Cをわずかに変化させたときの温度の変化を同様の計算で求め、O2/Cの変化に対する温度の変化の比を温度感度として計算した。この温度感度を、本実施形態を適用せずにS/Cを変更した場合と、S/Cが比較的小さい、すなわち水蒸気生成の応答が不十分な状態に対して本実施形態を適用した場合について求めた。
【0076】
図8において、条件番号1に示すS/C=2の条件での温度感度が2150であるのに対して、負荷変動時に水蒸気応答性が不十分であることを想定した条件番号2のS/C=1の条件では、温度感度が約2800となっている。これは、条件番号1ではO2/Cが0.05だけずれたときに温度が約108℃変動するのに対して、条件番号2では140℃もの変動になることを意味している。さらに、ATR1の内部での温度分布が図5に示すようであることを考えると、ピーク温度の変動幅はさらに大きいと考えられる。
【0077】
条件番号3と4は本実施形態の適用を想定したものである。条件番号3ではS/C=1のまま、分配率0.2、すなわちATR1の出口のガスの20%を分岐させて流路6で入口に還流し、その中に気相気化器3で毎秒2molの水を噴霧している。なお、一連の計算はイソオクタンの供給量を毎秒1molとしており、イソオクタン1分子中に炭素原子が8個含まれることから、毎秒2molの水を追加噴霧することは、S/Cにして0.25増加させることに相当する。イソオクタン(C8H18) 1mol中の炭素原子は8molなので、8molの炭素原子に対する水の増加が2molならば、S/Cの増加は2/8=0.25となる。
【0078】
条件番号4では条件番号3と同様に、追加噴霧する水を除いたS/Cは同じく1のまま、ATR1の出口ガスの40%を分岐した中に毎秒5.6molの水を噴霧している。条件番号3では温度感度が約2500となって、条件番号2に比べて10%以上の改善が見られる。また、条件番号4では条件番号1とほぼ同様の温度感度となり、第2の水蒸気生成装置の応答性が低く、十分なS/Cが得られない場合であっても、O2 /Cの変動に対するATR温度の変動が小さく抑えられていることが分かる。
【0079】
なお、図8に示すO2/CはATR温度を約750℃程度に保つのに必要なものであるが、条件番号2から条件番号4にかけてその値が大きくなっている。これは同じ原燃料に対してより多くの空気が必要となることを示している。
【0080】
空気系の応答は、前述したように若干のむだ時間と応答時間を持つため、負荷変動開始直後に弁2と循環装置4を作動させてATR1の出口ガスを入口に還流し、その中に水を噴霧することはむしろATR1の出口温度の低下を招くことになる。したがって、本実施形態の作動には、空気供給系等の応答時間を考慮した応答性、すなわち適度な応答遅れを持たせることが望ましい。したがって、O2 /Cを考慮して(原燃料供給に対する空気供給遅れを考慮して)、ATR1の温度ができるだけ一定になるように図7(d)や同図(e)に示すグラフの傾きを設定する(応答遅れを持たせる)。
【0081】
また、条件番号3と条件番号4では、S/Cを1に固定しているが、実際の負荷変動では第2の水蒸気生成装置からの水蒸気量が徐々に増加するので、それに応じて追加噴霧する水の量を変更することは言うまでもない。さらに、ATR1の下流の第2の反応器であるシフト反応器14,15が水と一酸化炭素を反応させて水素と二酸化炭素を生じさせる反応器であり、水が多いほど水素が生成される方向に反応の平衡がずれることから、シフト反応器14,15の上流で供給する水の量とATR1の入口に還流するガス内に噴霧する水の量は総合的に制御することが望ましい。
【0082】
なお、図1では温度センサ5をATR1の出口に備え、ATR1の出口温度の検出を兼ねるものとしているが、ATR1の出口とは別に第1の水蒸気生成装置である気相気化器3からATR1の入口までの間に本実施形態の制御のための温度センサを設けてもよい。そのように構成した場合の利点としては、循環装置4の耐熱性を下げられるということが挙げられる。循環装置4はモータで駆動されるが、モータを構成する電気部品のすべてを高耐熱とすることはコストの増大を招くことになる。
【0083】
そこで、温度センサ5を気相気化器3の下流に設けて循環装置4を通過するガスの温度を直接検出できるようにすれば、循環装置4の耐熱温度を上回らないように弁2、循環装置4、気相気化器3を制御することが可能となる。なお、負荷変動時の原燃料供給、空気供給、ATR1の出口ガス循環量(分岐割合)、水噴霧量は図7の各プロットに示すように制限されるものではない。また同様に、図8に示す条件に制限されるものではない。
【0084】
また、図1ではATR1の下流にシフト反応器14,15とPrOx18を設けて一酸化炭素濃度を下げ、水素濃度を上げるものとしているが、この部分を水素分離膜もしくは水素分離膜とシフト反応器を組み合わせたものに置き換えてもよい。さらに別の構成としても本発明の本質に関わるものでないことはいうまでもない。
【0085】
第2の水蒸気生成装置についても、WRD30と燃焼器21の熱を利用する熱交換型の蒸発器22との組合せに限定されるものではないことは言うまでもない。原燃料の気相気化器10についても、高温に加熱した空気中で気相気化させる形態に限定されるものではないことはいうまでもない。ただし、気相気化器10の形式が異なることにより原燃料供給の応答性が異なるものとなる場合には、結果的にO2/CやS/Cの時間変化が上記で説明したものと異なるものとなるため、弁2、循環装置4、気相気化器3の応答性をそれに合わせたものとすることが必要であることは言うまでもない。また、本実施形態では改質ガスをCSA20に供給して発電するものとしているが、改質ガスエンジンで直接動力に変換するものであってもよい。
【0086】
以上説明したように、本発明の実施形態においては、第1の反応器となるATR1の入口と出口を連通する流路6を備え、この流路6には、水蒸気を生成する第1の水蒸気生成装置となる気相気化器3と、ATR1の出口のガスを入口に還流させる循環装置4を備え、気相気化器3が気相蒸発器としているので、高温のATR1の出口ガスを利用して水を気相気化させることで、高い応答性で水蒸気を生成してATR1の入口に供給することが可能となり、空気系の部品や装置構成をいたずらに高精度、複雑なものとすることなく、高い負荷変動応答性を実現することができる。
【0087】
また、ATR1における反応が、少なくとも一つの発熱反応と一つの吸熱反応の組合せであり、発熱反応が、改質原料の少なくとも一部と酸素との反応であるため、改質触媒上で部分酸化反応(発熱)して水蒸気改質反応(吸熱)に必要な熱を生成ことにより、応答性を上げやすく、より高い負荷応答性を得ることができる。
【0088】
さらに、流路6に弁2を備えるようにしているので、負荷変動時など、改質装置の運転条件等に応じて好適な運転方法を選択することができる。また、ATR1の出口、もしくは流路6に温度センサ5を備えることにより、ATR1の運転温度を好適な温度範囲とすることができる。
【0089】
また、改質装置の負荷に応じて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、改質装置の負荷に応じた好適な運転方法を選択することができる。さらに、温度センサ5で検出された温度に基づいて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、ATR1の運転温度に応じた好適な運転方法を選択することができる。
【0090】
また、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つの制御が、所定の応答遅れを伴うことにより、ATR1の温度が急激に変化することを防ぐことができる。さらに、ATR1に水蒸気を供給する蒸発器22を備え、蒸発器22からATR1に供給される水蒸気量に応じて、循環装置4と弁2と気相気化器3のうち少なくともいずれか一つが制御されるようにすることで、蒸発器22の運転状態に応じて、改質装置全体の効率を考慮した好適な運転方法を選択することができる。
【0091】
さらに、ATR1よりも下流に第3の水蒸気生成装置となる気相気化器16,17を備え、気相気化器16,17よりも下流に第2の反応器となる高温ガスシフト反応器(HTS)14,低温ガスシフト反応器(LTS)15を備え、高温ガスシフト反応器14ならびに低温ガスシフト反応器15における反応が、水蒸気を必要とする反応であって、少なくとも気相気化器16,17で供給される水蒸気量に応じて、気相気化器3が制御されるようにすることで、気相気化器16,17の運転状態に応じて、改質装置全体の水蒸気量を考慮した好適な運転方法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る改質装置を含む改質型パワープラントの構成を示す図である。
【図2】本発明を適用しない場合に起こり得る現象を説明するための図である。
【図3】S/Cと、O2/Cの変化に対する温度変化の感度との関係を示す図である。
【図4】リサイクル作動の手順を示すフローチャートである。
【図5】ATR1内の温度分布を示す図である。
【図6】第1の実施形態における作用の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の効果を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態における効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
1…オートサーマル改質器(ATR)
2,24…弁
3,10,16,17…気相気化器
4…循環装置
5…温度センサ
6…流路
11,12,13…熱交換器(HEX)
14…高温ガスシフト反応器(HTS)
15…低温ガスシフト反応器(LTS)
18…選択酸化反応器(PrOx)
19…ミキサ
20…燃料電池スタック(CSA)
21…燃焼器
22…蒸発器
23…配管
30…WRD
Claims (9)
- 水素を含むガスを生成する改質装置であって、
改質原料、酸素ならびに水蒸気を反応させて改質ガスを生成する第1の反応器と、前記第1の反応器の入口と出口を連通する流路を備え、
前記流路には、前記水蒸気を生成する第1の水蒸気生成装置と、前記第1の反応器出口のガスを前記第1の反応器の入口に還流させる循環装置を備え、
前記第1の水蒸気生成装置は気相蒸発器である
ことを特徴とする改質装置。 - 前記第1の反応器における反応は、少なくとも一つの発熱反応と一つの吸熱反応の組合せであり、前記発熱反応が、改質原料の少なくとも一部と酸素との反応である
ことを特徴とする請求項1記載の改質装置。 - 前記流路に弁を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の改質装置。 - 前記第1の反応器の出口、もしくは前記流路に温度センサを備えた
ことを特徴とする請求項1,2及び3のいずれか1項に記載の改質装置。 - 前記改質装置の負荷に応じて、前記循環装置と前記弁と前記第1の水蒸気生成装置のうち少なくともいずれか一つが制御される
ことを特徴とする請求項3又は4記載の改質装置。 - 前記温度センサで検出された温度に基づいて、前記循環装置と前記弁と前記第1の水蒸気生成装置のうち少なくともいずれか一つが制御される
ことを特徴とする請求項4又は5記載の改質装置。 - 前記循環装置と前記弁と前記第1の水蒸気生成装置のうち少なくともいずれか一つの制御は、所定の応答遅れを伴う
ことを特徴とする請求項3,4,5及び6のいずれか1項に記載の改質装置。 - 前記第1の反応器に水蒸気を供給する第2の水蒸気生成装置を備え、
前記第2の水蒸気生成装置から前記第1の反応器に供給される水蒸気量に応じて、前記循環装置と前記弁と前記第1の水蒸気生成装置のうち少なくともいずれか一つが制御される
ことを特徴とする請求項3,4,5,6及び7のいずれか1項に記載の改質装置。 - 前記第1の反応器よりも下流に第3の水蒸気生成装置を備え、
前記第3の水蒸気生成装置よりも下流に、改質ガスを生成する第2の反応器を備え、
前記第2の反応器における反応が、水蒸気を必要とする反応であって、少なくとも前記第3の水蒸気生成装置に供給される水蒸気量に応じて、前記第1の水蒸気生成装置が制御される
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7及び8のいずれか1項に記載の改質装置。
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