JP2004322388A - 印刷版の作製方法及び印刷版材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料を提供するものである。
【解決手段】吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版の作製方法。
【選択図】 なし
【解決手段】吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版の作製方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の印刷版の作製方法及び印刷版材料に関し、詳しくは、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷データのデジタル化に伴い、画像データを直接印刷版に記録するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)が普及してきた。一般に、CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミ支持体を使用するタイプと、フィルム基材上に、印刷版としての各種機能層を設けたフレキシブルタイプがある。
【0003】
近年、商業印刷分野においては、印刷の少量多品種化の傾向が進み、市場では高品質で、かつ低価格な印刷版材料への要望が強まってきている。従来のフレキシブルタイプの印刷版材料としては、例えば、特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいは特開2001−96710号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる。
【0004】
銀塩拡散転写方式では、露光後に湿式の現像処理工程と乾燥工程が必要となり、画像形成工程での寸法精度が十分得られない。一方、アブレーション方式は湿式の現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するため、ドット形状が不安定になりやすい。また、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものは、画像形成後の印刷版をオフセット印刷機で印刷することにより、湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去されるため、特別な現像処理は不要であり、かつ熱溶融による画像形成のためドット形状がシャープであり高画質の印刷物が得られる。
【0005】
フレキシブルタイプの印刷版材料にレーザー露光で画像記録する場合、一般には、露光装置の平板状あるいは曲面上固定部材の一定位置に印刷版材料を固定してから露光を行う。印刷版材料の固定部材上への固定方法としては、固定部材上に設けた吸引孔から固定部材と印刷版材料間のエアを抜いて大気圧で固定する減圧密着法、強磁性体表面を有する固定部材上に印刷版材料を磁石で固定する磁石固定法、印刷版材料の両端を挟持して機械的に固定部材上に固定するクランプ法等が用いられる。特に、減圧密着法は駆動制御が容易で、かつ印刷版材料への影響が少ないことから、フレキシブル印刷版材料の固定には好ましく用いられる。
【0006】
しかしながら、従来のフレキシブルタイプの印刷版は、金属基材を使用する印刷版に比較して、画像(特に印刷版における網点形状)均一性、印刷時の耐刷力の安定性、露光位置精度の再現性等に課題を有していた。上記課題に対し、例えば、基材上に、無機粒子、光熱変換材及び熱により溶融する素材を含む平版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、耐傷性、汚れ耐性、汚れ回復性、耐刷性に優れた平版印刷版原版が得られるものであるが、平版印刷版のみでの改良には自ずと限界があり、その平版印刷版の作製に用いる画像形成装置に対しての改良が求められている。
【0007】
また、特に近年の印刷業界においても環境保全が叫ばれ、湿し水に添加するイソプロピルアルコールの削減、印刷インキにおいては石油系の揮発溶剤(VOC)を使用しないインキ(例えば、大豆油インキ)が開発され、その普及が進みつつあるが、従来の湿し水、インキに比べると印刷版材料及び印刷条件の実用上の許容幅が狭く、特に、フレキシブルタイプのレーザー露光版では、シャドー部の仕上がりやインキの乗りが不安定になりやすかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−138652号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版の作製方法。
【0012】
2.前記印刷版材料の固定部材が円筒状ドラムであり、該円筒状ドラムを回転させながら、ドラム外面側から該印刷版材料表面にレーザー露光を行うことを特徴とする前記1項に記載の印刷版の作製方法。
【0013】
3.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さいことを特徴とする前記1または2項に記載の印刷版の作製方法。
【0014】
4.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定し、表面にレーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製に用いる印刷版材料において、減圧密着で固定した画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版材料。
【0015】
5.総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であることを特徴とする前記4項に記載の印刷版材料。
【0016】
6.裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であることを特徴とする前記4または5項に記載の印刷版材料。
【0017】
7.フレキシブルフィルム基材上に、親水性層と感熱性画像形成層とを有し、該親水性層または感熱性画像形成層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記4〜6項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内である印刷版の作製方法、あるいは吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定し、表面にレーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製に用いる印刷版材料において、減圧密着で固定した画像形成領域の平面度が、±50μm以内である印刷版材料により、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版の作製方法とそれに用いる印刷版材料を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
更に、本発明で規定する上記構成に加えて、印刷版材料の固定部材が円筒状ドラムであり、該円筒状ドラムを回転させながら、ドラム外面側から該印刷版材料表面にレーザー露光を行うこと、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さい構成とすること、また、印刷版材料として、総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であること、裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であること、あるいはフレキシブルフィルム基材上に、親水性層と感熱性画像形成層とを有し、該親水性層または感熱性画像形成層が光熱変換素材を含有する構成とすることにより、本発明の目的効果がより一層発揮されるものである。
【0020】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明の印刷版の作製方法で用いる画像形成方法の概要について、図を用いて説明する。
【0021】
本発明の印刷版の作製方法においては、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることが特徴である。
【0022】
本発明の印刷版材料に対する画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0023】
本発明に係る画像形成において、露光手段としては、赤外または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしては、ガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0024】
本発明において、走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0025】
一般的には、
(1)平板状の保持機構に保持された印刷版材料に、一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0026】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0027】
次いで、本発明の印刷版の作製方法で用いる露光記録装置の一例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本発明に係る露光記録装置は、主に、後述する特定の表裏面特性を有する印刷版材料を収納した繰り出し部と、この印刷版材料を露光部に搬送するための搬送ロールが複数配置され、必要に応じて、その搬送ロールの一部を、表面に粘着材料を配設した粘着ロールとしてもよい。この粘着ロールを設けることにより、印刷版材料表面のゴミを除去し、画像欠陥をなくすことができる。
【0029】
露光工程では、露光部として、本発明に係る吸引孔を有する固定部材、例えば、吸引孔を有する平板状の固定部材(露光板)、あるいは吸引孔を有する円筒ドラム状の固定部材(露光ドラム)を有している。この露光板あるいは露光ドラムは、搬送された印刷版材料を、上部に位置する圧力ロールにより圧着し、所定の長さにカッターにて定尺した後、減圧をして、露光板あるいは露光ドラムに密着させ露光面の平面性を均一に維持する。この露光ドラムに対面する位置には、レーザー光による露光書き込み手段が設けられており、露光板あるいは露光ドラムに保持された印刷版材料表面に露光を与えるものである。
【0030】
本発明に係る露光記録装置について、図を用いて更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る露光ドラムを用いた露光記録装置の全体構成図である。
【0031】
また、図2は、印刷版材料を、露光ドラムに巻き付けた状態を示す模式図である。
【0032】
また、図3は、印刷版材料を、露光板に減圧密着して固定した状態を示す模式図である。
【0033】
また、図4は、幅手方向で吸引孔径(開口面積)の開口面積が異なる露光ドラムに印刷版材料を圧着した状態を示す断面模式図である。
【0034】
図1において、主に露光ドラム5とレーザー光による露光書き込み手段6とで構成されている露光部に繰り出される印刷版材料は、画像記録面側を外側になるようにして、繰り出し部4に装着されている。図1では、この繰り出し部4に収納されているロール状に積層した印刷版材料8は単一で示してあるが、必要に応じて各色別に複数のロール状に積層した印刷版材料8を配置することができる。
【0035】
この繰り出し部4から搬出された印刷版材料3は、搬送ロール11を経て、表面に粘着材料が配設された粘着ロール7に搬送される。粘着ロール7は、印刷版材料の供給部位または搬送部位の何れかに配置されていればよい。本発明に係る露光記録装置において、この粘着ロール7を、印刷版材料3の表面及び/または裏面に接触させることにより、表面あるいは裏面に付着している異物、ゴミ、あるいは印刷版材料片等を接着、剥離してクリーニングすることにより、下流に位置する露光ドラム5への印刷版材料の密着精度を高めることができ、また画像記録面に付着している異物等を除去することにより、異物により生じる露光欠陥(異物ポチ故障)を取り除くことができる。
【0036】
上記粘着ロール間を通過し、表面の異物等が取り除かれた印刷版材料3は、次いで、圧力ロール1により露光ドラム5表面に移動されて、そこに巻き付けられ、所定の長さにカッター(不図示)によりシート状に断裁される。本発明では、印刷版材料3の裏面層が、露光ドラム5に密着して保持される。
【0037】
詳しくは、図2において、印刷版材料3は、図1に記載の圧力ロール1に保持されながら、表面に多数の吸引孔2を有する露光ドラム5表面に密着され、更に露光ドラム内を吸引減圧して、吸引孔2を介してシート状に断裁された印刷版材料3を密着させて高い平面性を保持するものである。
【0038】
同じく、図3に示すように、平板状の吸引孔2を有する固定部材12への密着方法も同様であり、シート上に断裁された印刷版材料3を、吸引孔2を介して固定部材12に減圧密着させる。この状態で、対向する位置の設けたレーザー光による露光書き込み手段により、画像形成領域10に露光を行う。
【0039】
この様にして、露光ドラム5あるいは固定部材12に密着された印刷版材料3に対し、レーザー光による露光書き込み手段6により、所定の露光が施される。レーザー光源としてはアルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、露光板あるいは露光ドラム上に吸引孔を介して減圧密着された印刷版材料の画像形成領域10(露光部)の平面度が、±50μm以内であることが1つの特徴である。
【0041】
画像形成領域の平面度を、上記で規定する範囲とすることにより、形成した画像(特に、印刷版における網点形状)の均一性、印刷時の耐刷力の安定性、露光位置精度の再現性を確保することができる。
【0042】
本発明でいう平面度とは、印刷版材料画像領域の最表面を結んだ曲面形状成分から連続的な傾斜成分を除いた凹凸の幅を表す。具体的には、固定状態で印刷版材料表面変位の2次元測定、あるいは偏光を使用した歪測定をすることで平面性を確認することができる。
【0043】
本発明に係る固定部材に設ける吸引孔の形状や開口面積は、特に限定されるものではないが、通常は丸形、溝型であり固定部材上の位置によってその形状や面積、開口密度が異なっていてもよい。吸引孔の外縁部は固定部材表面から突出していないことは勿論重要である。
【0044】
本発明においては、印刷版材料の画像領域を減圧密着する吸引孔は丸状が好ましく、個々の開口面積は、0.5〜5mm2であることが好ましい。吸引孔の開口面積を、上記の範囲にすることにより、固定部材と印刷版材料との減圧密着速度と密着力を両立することが可能となる。
【0045】
本発明においては、減圧密着速度と密着力の両者を改善するため、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さいことが好ましい。
【0046】
詳しくは、図4で、排気孔13を有する露光ドラム5上に吸引孔2を介して減圧密着した印刷版材料3において、画像形成領域10(露光部)にある中心部の吸引孔2の吸引孔口径(開口面積)aが、外縁部に位置する吸引孔2の吸引孔口径(開口面積)bよりも小さい(a<b)ことにより、効率的な減圧と、高い密着力を実現することができる。
【0047】
本発明に係る平面性は、1)固定部材の平面精度、2)印刷版材料の厚み変動、3)固定部材上への印刷版材料の初期密着性、4)減圧密着時の減圧度に大きく影響を受ける。特に、3)項、4)項の因子は影響が大きく、繰り返し再現性の観点からも重要な因子である。
【0048】
本発明の印刷版材料では、総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であることが好ましい。上記構成からなる印刷版材料を用いることにより、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版を得ることができる。
【0049】
本発明でいうスティフネスとは、市販のフィルムスティフネステスター(例えば(株)東洋精機製作所社製の「スティフネステスター UT−100−230」や「スティフネステスター UT−200GR」など)を用いて測定できる。
【0050】
本発明では、その中でも、(株)東洋精機製作所製の「スティフネステスターUT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した値と定義する。
【0051】
《測定条件》
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度:10度
押し込み量:2mm
具体的には、平坦な台に置いた10cm×8cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmを台へ固定して、中央部を台から10度の角度で上方にたわませて、頂上部を針で押して2mm押し下げた時の荷重で評価したものとする。
【0052】
印刷版材料において、本発明で規定するスティフネスの範囲は、下記に示す技術手段を複数適宜選択し、組み合わせることで達成される。
【0053】
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いる、
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚を100〜300μmとする、
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する、
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする、
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ該親水性層を多孔質構造とする、
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする、
(7)該支持体の少なくとも一方の面に、導電性化合物を含有する少なくとも1層を設ける。
【0054】
また、本発明の印刷版材料では、裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であることが好ましい。上記構成からなる印刷版材料を用いることにより、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版を得ることができる。
【0055】
スムースター値とは、J.TAPPI紙パルプ試験法No5に記載されている物性値であり、拡散型反動体圧力変換器を利用して、測定材料の表面平滑度により変化する空気の流入量を圧力の変化として測定し、表面の凹凸度、マット度を示すバロメーターである。本発明で用いられるスムースター値は、下記条件で測定される吸引圧の値(MPa)で定義される。測定は、東栄電気工業社製スムースターSM−6Bを用いて行う。真空型の空気マイクロメーターを利用したこの装置では、測定ヘッドに吸着された被測定面の粗さに応じ流入する空気を圧力(MPa)の変化として測定する。数値が大きいことは、表面の凹凸が大きいか、または凹凸の数が多いことに対応する。測定すべき試料の表面上に測定ヘッドを置き一定の開口面積を持つ絞りを通してヘッド内の空気を真空ポンプで排気し、ヘッド内の気圧P(MPa)を読みとり、スムースター値として表示する。なお、測定する前に23℃、60%RH(相対湿度)で2時間調湿し、同じ環境下で測定する。本発明の印刷版材料においては、スムースター値が0.06MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは0.001〜0.06MPaである。
【0056】
また、本発明に係る静摩擦係数は、JIS K7125の摩擦係数試験方法に準じ、具体的には以下の方法に従って測定できる。
【0057】
印刷版材料の裏面を上向きにして平面架台上に粘着テープで貼り付ける。印刷版材料の裏面上に、固定部材表面と同じ材質のブロック(接触面積20mm2、荷重を200gに調整)を乗せて、架台に傾斜を与える。前記ブロックが滑り出したときの架台傾斜角度θを測定し、tanθを静摩擦係数として定義する。また、測定装置としては、例えば、新東化学(株)社製 静摩擦係数測定機 トライボギアTYPE10等を用いることができる。
【0058】
次いで、本発明の印刷版材料の詳細について説明する。
本発明の印刷版材料で用いることのできる基材としては、特に制限はないが、好ましくは、金属箔、紙、プラスチックフィルム、あるいはそれらの複合体であり、その中でも取り扱い性の観点から、プラスチックフィルムが特に好ましい。
【0059】
本発明の印刷版材料においては、露光記録装置内での搬送性や、印刷版としての取り扱い易さの観点から、基材の厚みとしては100〜290μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0060】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0061】
支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層が使用できる。帯電防止層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、例えば、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。
【0062】
帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。
これらプラスチックフィルムの表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていても良い。また、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に基材表面を粗面化することもできる。更に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けることも好ましい態様である。
【0063】
次いで、親水性層について説明する。
本発明の印刷版材料において、親水性層に用いられる素材は、下記のものが挙げられる。
【0064】
親水性層マトリクスを形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスや、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックス層、金属酸化物等が好ましく用いられる。特に、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0065】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤として使用することが可能である。金属酸化物微粒子は、有機結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0066】
本発明では、上記の中でも、特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0067】
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0068】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0069】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能が不十分となる場合がある。
【0070】
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0071】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2 +、C8H16N+等であり、M2はCa2 +、Mg2 +、Ba2 +、Sr2 +、C8H18N22 +等である。また、n≧mであり、m/nの値、すなわちAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0072】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えば、ゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0073】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0074】
また、本発明の印刷版材料の親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0075】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(例えば、ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(例えば、シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0076】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)で、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0077】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全質量に対し0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に、膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは、少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(例えば、メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0078】
本発明に係る親水性層マトリクスには、その他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率は、ケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが、無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0079】
また、金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されている方法、あるいは本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0080】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0081】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0082】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸構造により、保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することが、より良好な印刷適性を有する構造を得ることができ好ましい。
【0083】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0084】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0085】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0086】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0087】
粒径は1μm以上であることが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1.5〜8μmが更に好ましく、2μm〜6μmが特に好ましい。
【0088】
粒径が10μmを超えると、画像形成の解像度の低下や、ブランケット汚れの劣化が生じる懸念がある。本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0089】
本発明においては、基材と親水層の間に中間親水性層を設けることができる。中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。ただし、中間親水性層は多孔質であることの利点が少なく、また、より無孔質である方が塗膜強度の観点から好ましい。親水性マトリクス構造を形成する多孔質化材の含有量は、親水性層よりも少ないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0090】
中間親水性層で用いる粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、中間親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0091】
中間親水性層全体としても、上記親水性層と同様に、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0092】
本発明の印刷版材料においては、上述の親水性層、または後述の感熱性画像形成層が、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0093】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物を用いることが好好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0094】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0096】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0097】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0098】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2をアンモニアで還元した酸化窒化チタン(一般的には、チタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
【0099】
これらの光熱変換素材のうち、黒色酸化鉄または二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、後者の具体例としては、例えば、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物を挙げることができる。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0100】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0101】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0102】
これらの光熱変換素材の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1〜60質量%であり、3〜50質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0103】
次いで、感熱性画像形成層(以下、画像形成機能層ともいう)について説明する。
【0104】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0105】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインキ着肉感度が低下する。
【0106】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0107】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0108】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0109】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0110】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全質量に対し1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0111】
本発明で用いることのできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、この熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度としては、特定の上限はないが、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の重量平均分子量(Mw)は、10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0112】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0113】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0114】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0115】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0116】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全質量に対し1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0117】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインキを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0118】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0119】
オリゴ糖の中でも、トレハロースは比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0120】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果があり、オリゴ糖の中でも、特にトレハロースが好ましい。
【0121】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全質量の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。
【0122】
本発明の印刷版材料の裏面には、本発明で規定する平滑度と静摩擦係数を達成するため、バックコート層が形成されていてもよい。バックコート層には、バインダー成分とマット剤の他、表面滑性や導電性を付与する化合物を添加することが好ましい。
【0123】
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、芳香族ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(R)樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、有機硼素化合物、芳香族エステル類、弗化ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらのモノマーを主成分とする共重合体などの汎用ポリマーを使用することができる。
【0124】
バインダーとして架橋可能なバインダーを用いることは、マット剤の粉落ち防止やバックコートの耐傷性の向上に効果がある。また、保存時のブロッキングにも効果が大きい。この架橋手段は、用いる架橋剤の特性に応じて、熱、活性光線、圧力の何れか一つまたは組合せなどを特に限定することなく採用することができる。場合によっては、支持体への接着性を付与するため、支持体のバックコート層を設ける側に任意の易接着層を設けてもよい。
【0125】
バックコート層に好ましく添加されるマット剤としては、有機または無機の微粒子が使用できる。有機微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂よりなる有機微粒子等が挙げられ、中でも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子なども挙げられる。無機微粒子としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛等の無機微粒子が挙げられ、中でも、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化珪素が好ましい。
【0126】
無機微粒子の平均粒径としては、0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、バックコート層に十分な粗面化を施すことができずに均一な密着を得るために長時間の減圧が必要になる。10μmを超えると、バックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が大きくなり、固定部材との安定した密着性が確保できなくなる。
【0127】
プラスチックフィルム支持体には、バックコート層は0.5〜3g/m2程度の付量で設けることが好ましい。0.5g/m2未満では塗布性が不安定となり、マット剤の粉落ち等の問題が生じ易い。また、3g/m2を超えて塗布されると好適なマット剤の粒径が非常に大きくなり、保存時にバックコート層による受像面へのエンボス化が生じ、記録画像の抜けやムラが生じ易くなる。尚、マット剤を添加しない場合のバックコート層の付き量は0.01〜1.0g/m2が好ましい。
【0128】
前記各微粒子の含有量としては、バックコート層の全固形分質量に対し、0.5〜80質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、バックコート層表面に十分な粗面化を施すことができないことがあり、80質量%を超えるとバックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が本発明でき規定す範囲外となり、画質が低下することがある。
【0129】
バックコート層には、表面滑性を調整する目的で、各種界面活性剤、シリコンオイル、フッ素系樹脂、ワックス類等を添加することも好ましい。
【0130】
印刷版材料が搬送路内で摩擦帯電による搬送異常や、帯電に起因する異物の付着を防止するために帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子等が使用できる。中でも、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の微粒子、有機半導体等の導電性微粒子が好ましく用いられる。特に、カーボンブラック、グラファイト、特に金属酸化物の微粒子を用いることは、温度等の環境の影響によらず安定した帯電防止能が得られるため好ましい。
【0131】
上記金属酸化物微粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。これらのうち好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAl或いはIn、SnO2に対してSb、Nb或いはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
【0132】
金属酸化物微粒子は、バックコート層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物微粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物微粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0133】
印刷版材料は、相対湿度80%以下における表面比抵抗が1×108〜1×1012Ω/m2である層または支持体を有することがより好ましい。使用出来る帯電防止剤としては、相対湿度80%以下における層の表面比抵抗が1×108〜1×1012Ω/m2となるように各種界面活性剤、導電剤の中から適宜使用することができる。とりわけ、層中にカーボンブラック、カーボングラファイト及び金属酸化物の微粒子の少なくとも1種を含有せしめて、表面比抵抗を1×108〜1×1012Ω/m2となるように設計することが好ましい。
【0134】
本発明の画像形成時にレーザー露光を行う場合、フォーカスがずれないようにするためには、プラスチックフィルム支持体を固定するのに公知の方法と組み合わせて減圧密着を行うことが好ましい。ブロッキングの防止や良好な減圧密着性の付与の目的で、裏面が粗面化された支持体或いはバックコート層にマット剤を添加した場合の表面粗さ(Rz)は0.04〜5.00μmの範囲が好ましい。
【0135】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「%」は、特に断りがない限りは「質量%」を表す。
【0136】
実施例1
《基材(プラスチックフィルム)の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)が0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融した後、T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定した未延伸フィルムを、2軸で熱延伸し、平均膜厚が各々150、175、200、250、300μmのポリエチレンテレフタレート(表4には、PETと略記)の基材1〜5を作製した。
【0137】
《基材の下引き処理》
上記で得られた基材1〜5の一方の面側に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら、下記の下引き塗布液aを乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設し、更に、その上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら、下記の下引き塗布液bを乾燥膜厚が0.1μmになるように塗設して下引き済み基材1A〜5Aを得た。
【0138】
【0139】
【化1】
【0140】
《支持体1A〜5Aの作製》
上記作製した基材1A〜5Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下のようにしてバックコート層1(BC層1)を設けて、支持体1A〜5Aを作製した。
【0141】
上記作製した基材1A〜5Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら、下記の下引き塗布液cを乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設し、更に、その上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下記の下引き塗布液dを乾燥膜厚が1.0μmになるように塗設して、両面に下引き処理を施した支持体1A〜5Aを得た。
【0142】
〈成分d−11〉
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
〈成分d−12〉
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
〈成分d−13〉
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0143】
【化2】
【0144】
《支持体1Bの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量2.5g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層2(BC層2)を設けて、支持体1Bを作製した。
【0145】
《支持体1Cの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量0.6g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層3(BC層3)を設けて、支持体1Cを作製した。
【0146】
ポリビニルアルコール(EG−30:日本合成化学社製) 9.5部
PMMA樹脂粒子(MX−300:綜研化学社製) 0.6部
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
《支持体1Dの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量0.3g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層4(BC層4)を設けて、支持体1Dを作製した。
【0147】
ポリビニルアルコール(EG−30:日本合成化学社製) 9.5部
PMMA樹脂粒子(MX−100:綜研化学社製) 0.6部
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
《印刷版材料1〜8の作製:本発明》
表1に示す親水性層1用塗布液、表2に示す親水性層2用塗布液、および表3に示す画像形成機能層塗布液を、上記作製した下引き済みの支持体1A〜1D及び2A〜5Aの下引き層塗布面上に、ワイヤーバーを用いて塗布して、印刷版材料1〜8を作製した。
【0148】
詳しくは、各支持体の下引き処理を施した面側に、親水性層1用塗布液(表1)、親水性層2用塗布液(表2)の順番でワイヤーバーを用いて、それぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥した後、60℃で24時間の加熱処理を施した。次いで、表3に示す画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布し、50℃で3分間乾燥した後、50℃で72時間のシーズニング処理を施して印刷版材料1〜8を作製した。
【0149】
〔親水性層1用塗布液〕
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0150】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0151】
【表1】
【0152】
この親水性層1用塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0.4である。
【0153】
〔親水性層2用塗布液〕
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0154】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0155】
【表2】
【0156】
この親水性層2用塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0.3である。
【0157】
〔画像形成機能層塗布液〕
【0158】
【表3】
【0159】
【化3】
【0160】
この画像形成機能層塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0である。
【0161】
《印刷版材料9〜14の作製:比較例》
上記印刷版材料1〜8の作製において、支持体として基材の種類、基材の厚さ(表4に記載の基材番号6〜11)及びバックコート層の組み合わせを、表4に記載のように変更して作製した支持体6A〜11Aを用いた以外は同様にして、比較の印刷版材料9〜14を作製した。
【0162】
以上のようにして作製した各印刷版材料を、730mm幅で32mの長さに切断し、画像形成層塗工面が外側になるように、内径71.9mmのボール紙製のコアに巻き付けロール形状の試料とした。
【0163】
《印刷版材料の各特性値の測定》
〔スティフネスの測定〕
各印刷版材料について、(株)東洋精機製作所製の「スティフネステスター UT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した。
【0164】
〈測定条件〉
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度:10度
押し込み量:2mm
平坦な台に置いた10cm×8cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmを台へ固定して、中央部を台から10度の角度で上方にたわませて、頂上部を針で押して2mm押し下げた時の荷重で評価した。
【0165】
〔スムースター値の測定〕
各試料のバックコート層塗設面側(裏面)について、J.TAPPI紙パルプ試験法No5に則り、東栄電気工業社製スムースターSM−6Bを用いて、測定する前に23℃、60%RH(相対湿度)で2時間調湿し、同じ環境下で測定した。
【0166】
〔静摩擦係数の測定〕
各試料のバックコート層塗設面側(裏面)について、新東化学(株)社製 静摩擦係数測定機 トライボギアTYPE10を用いて測定した。
【0167】
印刷版材料の裏面を上向きにして平面架台上に粘着テープで貼り付ける。印刷版材料の裏面上に、固定部材表面と同じ材質のブロック(接触面積20mm2、荷重を200gに調整)を乗せて、架台に傾斜を与え、ブロックが滑り出したときの架台傾斜角度θを測定し、このtanθを静摩擦係数とした。
【0168】
以上により得られた結果を、表4に示す。
なお、表4に記載してある基材材料の略称の詳細は、以下の通りである。
【0169】
PET:ポリエチレンテレフタレート
LPET:低比重ポリエチレンテレフタレート
HDPE:高密度ポリエチレン
PEN:ポリエチレンナフタレート
【0170】
【表4】
【0171】
《印刷版の作製》
印刷版材料1〜14をロール巻方向860mmに断裁した後、発振波長830nmの半導体レーザーの露光ユニットと、印刷版材料を固定する減圧吸引孔を有する直径350mmの露光ドラムとを搭載した図1に記載の構成からなる露光装置で露光を行って、表5に記載の減圧度で印刷版1〜20を作製した。この際、露光ビームの焦点は、レーザー光のビーム径が印刷版材料表面で最も小さくなるように調整した。
【0172】
また、露光ドラムとしては、表面に設けた吸引孔の開口面積が全て同一の露光ドラム1と、一部の印刷版で図4に記載のように印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さい露光ドラム2を用いて行った。
【0173】
また、回転ドラムへの印刷版材料の固定状態は、接続した減圧ポンプの出力を調整して、表5に記載の減圧度となるように調整した。
【0174】
露光におけるレーザービームのスポット径は、約18μm、副走査方向の解像度2400dpiで、175線相当の網点画像を露光した。なお、ここでいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を意味する。
【0175】
更に、印刷版材料面での露光エネルギーは、150〜350mJ/cm2となるようにレーザー出力と露光ドラムの回転数を適宜調整した。
【0176】
(露光ドラム上での平面性の測定)
各印刷版材料を露光ドラムに固定状態した際の、印刷版材料表面の4辺周縁から20mm内側部分での平面性を測定した。測定は、露光ヘッド面と印刷版材料表面との距離の最大値と最小値の差を求めた。
【0177】
《印刷版の評価》
上記のように画像形成した作製した各印刷版について、下記の印刷条件で印刷版としての諸特性を評価した。
【0178】
印刷機:DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インキ:下記の2種類を用いた
インキ1:トーヨーキングハイエコーM紅(東洋インキ社製)
インキ2:TKハイエコーSOY1(東洋インキ社製 大豆油インキ)
(評価項目)
〈現像性の評価〉
印刷開始のシーケンスをPS版の印刷シーケンスで行い、非画線部のインキ汚れが完全になくなるまでの枚数を計測した。
【0179】
〈インキの乗りの評価〉
湿し水、インキ量を適宜変化させ、印刷物の仕上がりを、2種類のインキについて目視観察し、下記の基準に則りインキの乗りの評価を行った。
【0180】
○:インキ量基準±50%以上で安定した刷り上がり
△:インキ量基準±30%の領域で、網点部のカラミ、ベタ濃度ムラが発生
×:インキ量基準+30%未満で、網点部のカラミ、カスレ、ベタ濃度ムラが発生し、実用上問題がある品質
〈印刷品質の評価〉
20,000枚印刷を行った後、ベタ画像部、50%平網部、2%平網部の仕上がり品質について目視観察を行い、下記の基準に則り印刷品質の評価を行った。
【0181】
○:仕上がり品質が良好である
△:10%未満の面積で、カスレ、網点欠けの発生が認められる
×:10%以上の面積で、カスレ、網点欠けの発生が認められる
〈耐刷性の評価〉
3%網点画像部の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた。なお、印刷は3万枚まで行った。
【0182】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
表5より明らかなように、本発明に係る構成からなる印刷版材料を用いて作製した印刷版は、現像性、インキの乗り、印刷品質が良好で、かつ耐刷性に優れていることが分かる。
【0185】
実施例2
上記実施例1において、露光時に印刷版材料を固定する方法として、露光ドラムに代えて、図3に記載の露光板を用いて、同様の評価を行った結果、実施例1の結果と同様に、本発明に係る構成からなる印刷版材料を用いて作製した印刷版は、現像性、インキの乗り、印刷品質が良好で、かつ耐刷性に優れていることを確認することができた。
【0186】
【発明の効果】
本発明により、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る露光ドラムを用いた露光記録装置の全体構成図である。
【図2】印刷版材料を、露光ドラムに巻き付けた状態を示す模式図である。
【図3】印刷版材料を、露光板に減圧密着して固定した状態を示す模式図である。
【図4】幅手方向で吸引孔径(開口面積)の開口面積が異なる露光ドラムに印刷版材料を圧着した状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 圧力ロール
2 吸引孔
3 印刷版材料
4 繰り出し部
5 露光ドラム
6 レーザー光による露光書き込み手段
7 粘着ロール
8 ロール状に積層した印刷版材料
9 筐体
10 画像形成領域
11 搬送ロール
12 固定部材
13 排気孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の印刷版の作製方法及び印刷版材料に関し、詳しくは、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷データのデジタル化に伴い、画像データを直接印刷版に記録するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)が普及してきた。一般に、CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミ支持体を使用するタイプと、フィルム基材上に、印刷版としての各種機能層を設けたフレキシブルタイプがある。
【0003】
近年、商業印刷分野においては、印刷の少量多品種化の傾向が進み、市場では高品質で、かつ低価格な印刷版材料への要望が強まってきている。従来のフレキシブルタイプの印刷版材料としては、例えば、特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいは特開2001−96710号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる。
【0004】
銀塩拡散転写方式では、露光後に湿式の現像処理工程と乾燥工程が必要となり、画像形成工程での寸法精度が十分得られない。一方、アブレーション方式は湿式の現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するため、ドット形状が不安定になりやすい。また、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものは、画像形成後の印刷版をオフセット印刷機で印刷することにより、湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去されるため、特別な現像処理は不要であり、かつ熱溶融による画像形成のためドット形状がシャープであり高画質の印刷物が得られる。
【0005】
フレキシブルタイプの印刷版材料にレーザー露光で画像記録する場合、一般には、露光装置の平板状あるいは曲面上固定部材の一定位置に印刷版材料を固定してから露光を行う。印刷版材料の固定部材上への固定方法としては、固定部材上に設けた吸引孔から固定部材と印刷版材料間のエアを抜いて大気圧で固定する減圧密着法、強磁性体表面を有する固定部材上に印刷版材料を磁石で固定する磁石固定法、印刷版材料の両端を挟持して機械的に固定部材上に固定するクランプ法等が用いられる。特に、減圧密着法は駆動制御が容易で、かつ印刷版材料への影響が少ないことから、フレキシブル印刷版材料の固定には好ましく用いられる。
【0006】
しかしながら、従来のフレキシブルタイプの印刷版は、金属基材を使用する印刷版に比較して、画像(特に印刷版における網点形状)均一性、印刷時の耐刷力の安定性、露光位置精度の再現性等に課題を有していた。上記課題に対し、例えば、基材上に、無機粒子、光熱変換材及び熱により溶融する素材を含む平版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、耐傷性、汚れ耐性、汚れ回復性、耐刷性に優れた平版印刷版原版が得られるものであるが、平版印刷版のみでの改良には自ずと限界があり、その平版印刷版の作製に用いる画像形成装置に対しての改良が求められている。
【0007】
また、特に近年の印刷業界においても環境保全が叫ばれ、湿し水に添加するイソプロピルアルコールの削減、印刷インキにおいては石油系の揮発溶剤(VOC)を使用しないインキ(例えば、大豆油インキ)が開発され、その普及が進みつつあるが、従来の湿し水、インキに比べると印刷版材料及び印刷条件の実用上の許容幅が狭く、特に、フレキシブルタイプのレーザー露光版では、シャドー部の仕上がりやインキの乗りが不安定になりやすかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−138652号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版の作製方法。
【0012】
2.前記印刷版材料の固定部材が円筒状ドラムであり、該円筒状ドラムを回転させながら、ドラム外面側から該印刷版材料表面にレーザー露光を行うことを特徴とする前記1項に記載の印刷版の作製方法。
【0013】
3.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さいことを特徴とする前記1または2項に記載の印刷版の作製方法。
【0014】
4.吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定し、表面にレーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製に用いる印刷版材料において、減圧密着で固定した画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版材料。
【0015】
5.総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であることを特徴とする前記4項に記載の印刷版材料。
【0016】
6.裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であることを特徴とする前記4または5項に記載の印刷版材料。
【0017】
7.フレキシブルフィルム基材上に、親水性層と感熱性画像形成層とを有し、該親水性層または感熱性画像形成層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記4〜6項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内である印刷版の作製方法、あるいは吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定し、表面にレーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製に用いる印刷版材料において、減圧密着で固定した画像形成領域の平面度が、±50μm以内である印刷版材料により、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版の作製方法とそれに用いる印刷版材料を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
更に、本発明で規定する上記構成に加えて、印刷版材料の固定部材が円筒状ドラムであり、該円筒状ドラムを回転させながら、ドラム外面側から該印刷版材料表面にレーザー露光を行うこと、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さい構成とすること、また、印刷版材料として、総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であること、裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であること、あるいはフレキシブルフィルム基材上に、親水性層と感熱性画像形成層とを有し、該親水性層または感熱性画像形成層が光熱変換素材を含有する構成とすることにより、本発明の目的効果がより一層発揮されるものである。
【0020】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明の印刷版の作製方法で用いる画像形成方法の概要について、図を用いて説明する。
【0021】
本発明の印刷版の作製方法においては、吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることが特徴である。
【0022】
本発明の印刷版材料に対する画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0023】
本発明に係る画像形成において、露光手段としては、赤外または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしては、ガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0024】
本発明において、走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0025】
一般的には、
(1)平板状の保持機構に保持された印刷版材料に、一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0026】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0027】
次いで、本発明の印刷版の作製方法で用いる露光記録装置の一例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本発明に係る露光記録装置は、主に、後述する特定の表裏面特性を有する印刷版材料を収納した繰り出し部と、この印刷版材料を露光部に搬送するための搬送ロールが複数配置され、必要に応じて、その搬送ロールの一部を、表面に粘着材料を配設した粘着ロールとしてもよい。この粘着ロールを設けることにより、印刷版材料表面のゴミを除去し、画像欠陥をなくすことができる。
【0029】
露光工程では、露光部として、本発明に係る吸引孔を有する固定部材、例えば、吸引孔を有する平板状の固定部材(露光板)、あるいは吸引孔を有する円筒ドラム状の固定部材(露光ドラム)を有している。この露光板あるいは露光ドラムは、搬送された印刷版材料を、上部に位置する圧力ロールにより圧着し、所定の長さにカッターにて定尺した後、減圧をして、露光板あるいは露光ドラムに密着させ露光面の平面性を均一に維持する。この露光ドラムに対面する位置には、レーザー光による露光書き込み手段が設けられており、露光板あるいは露光ドラムに保持された印刷版材料表面に露光を与えるものである。
【0030】
本発明に係る露光記録装置について、図を用いて更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る露光ドラムを用いた露光記録装置の全体構成図である。
【0031】
また、図2は、印刷版材料を、露光ドラムに巻き付けた状態を示す模式図である。
【0032】
また、図3は、印刷版材料を、露光板に減圧密着して固定した状態を示す模式図である。
【0033】
また、図4は、幅手方向で吸引孔径(開口面積)の開口面積が異なる露光ドラムに印刷版材料を圧着した状態を示す断面模式図である。
【0034】
図1において、主に露光ドラム5とレーザー光による露光書き込み手段6とで構成されている露光部に繰り出される印刷版材料は、画像記録面側を外側になるようにして、繰り出し部4に装着されている。図1では、この繰り出し部4に収納されているロール状に積層した印刷版材料8は単一で示してあるが、必要に応じて各色別に複数のロール状に積層した印刷版材料8を配置することができる。
【0035】
この繰り出し部4から搬出された印刷版材料3は、搬送ロール11を経て、表面に粘着材料が配設された粘着ロール7に搬送される。粘着ロール7は、印刷版材料の供給部位または搬送部位の何れかに配置されていればよい。本発明に係る露光記録装置において、この粘着ロール7を、印刷版材料3の表面及び/または裏面に接触させることにより、表面あるいは裏面に付着している異物、ゴミ、あるいは印刷版材料片等を接着、剥離してクリーニングすることにより、下流に位置する露光ドラム5への印刷版材料の密着精度を高めることができ、また画像記録面に付着している異物等を除去することにより、異物により生じる露光欠陥(異物ポチ故障)を取り除くことができる。
【0036】
上記粘着ロール間を通過し、表面の異物等が取り除かれた印刷版材料3は、次いで、圧力ロール1により露光ドラム5表面に移動されて、そこに巻き付けられ、所定の長さにカッター(不図示)によりシート状に断裁される。本発明では、印刷版材料3の裏面層が、露光ドラム5に密着して保持される。
【0037】
詳しくは、図2において、印刷版材料3は、図1に記載の圧力ロール1に保持されながら、表面に多数の吸引孔2を有する露光ドラム5表面に密着され、更に露光ドラム内を吸引減圧して、吸引孔2を介してシート状に断裁された印刷版材料3を密着させて高い平面性を保持するものである。
【0038】
同じく、図3に示すように、平板状の吸引孔2を有する固定部材12への密着方法も同様であり、シート上に断裁された印刷版材料3を、吸引孔2を介して固定部材12に減圧密着させる。この状態で、対向する位置の設けたレーザー光による露光書き込み手段により、画像形成領域10に露光を行う。
【0039】
この様にして、露光ドラム5あるいは固定部材12に密着された印刷版材料3に対し、レーザー光による露光書き込み手段6により、所定の露光が施される。レーザー光源としてはアルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、露光板あるいは露光ドラム上に吸引孔を介して減圧密着された印刷版材料の画像形成領域10(露光部)の平面度が、±50μm以内であることが1つの特徴である。
【0041】
画像形成領域の平面度を、上記で規定する範囲とすることにより、形成した画像(特に、印刷版における網点形状)の均一性、印刷時の耐刷力の安定性、露光位置精度の再現性を確保することができる。
【0042】
本発明でいう平面度とは、印刷版材料画像領域の最表面を結んだ曲面形状成分から連続的な傾斜成分を除いた凹凸の幅を表す。具体的には、固定状態で印刷版材料表面変位の2次元測定、あるいは偏光を使用した歪測定をすることで平面性を確認することができる。
【0043】
本発明に係る固定部材に設ける吸引孔の形状や開口面積は、特に限定されるものではないが、通常は丸形、溝型であり固定部材上の位置によってその形状や面積、開口密度が異なっていてもよい。吸引孔の外縁部は固定部材表面から突出していないことは勿論重要である。
【0044】
本発明においては、印刷版材料の画像領域を減圧密着する吸引孔は丸状が好ましく、個々の開口面積は、0.5〜5mm2であることが好ましい。吸引孔の開口面積を、上記の範囲にすることにより、固定部材と印刷版材料との減圧密着速度と密着力を両立することが可能となる。
【0045】
本発明においては、減圧密着速度と密着力の両者を改善するため、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さいことが好ましい。
【0046】
詳しくは、図4で、排気孔13を有する露光ドラム5上に吸引孔2を介して減圧密着した印刷版材料3において、画像形成領域10(露光部)にある中心部の吸引孔2の吸引孔口径(開口面積)aが、外縁部に位置する吸引孔2の吸引孔口径(開口面積)bよりも小さい(a<b)ことにより、効率的な減圧と、高い密着力を実現することができる。
【0047】
本発明に係る平面性は、1)固定部材の平面精度、2)印刷版材料の厚み変動、3)固定部材上への印刷版材料の初期密着性、4)減圧密着時の減圧度に大きく影響を受ける。特に、3)項、4)項の因子は影響が大きく、繰り返し再現性の観点からも重要な因子である。
【0048】
本発明の印刷版材料では、総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であることが好ましい。上記構成からなる印刷版材料を用いることにより、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版を得ることができる。
【0049】
本発明でいうスティフネスとは、市販のフィルムスティフネステスター(例えば(株)東洋精機製作所社製の「スティフネステスター UT−100−230」や「スティフネステスター UT−200GR」など)を用いて測定できる。
【0050】
本発明では、その中でも、(株)東洋精機製作所製の「スティフネステスターUT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した値と定義する。
【0051】
《測定条件》
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度:10度
押し込み量:2mm
具体的には、平坦な台に置いた10cm×8cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmを台へ固定して、中央部を台から10度の角度で上方にたわませて、頂上部を針で押して2mm押し下げた時の荷重で評価したものとする。
【0052】
印刷版材料において、本発明で規定するスティフネスの範囲は、下記に示す技術手段を複数適宜選択し、組み合わせることで達成される。
【0053】
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いる、
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚を100〜300μmとする、
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する、
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする、
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ該親水性層を多孔質構造とする、
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする、
(7)該支持体の少なくとも一方の面に、導電性化合物を含有する少なくとも1層を設ける。
【0054】
また、本発明の印刷版材料では、裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であることが好ましい。上記構成からなる印刷版材料を用いることにより、解像度と耐刷性均一性が良好で、かつ繰り返し再現性に優れた印刷版を得ることができる。
【0055】
スムースター値とは、J.TAPPI紙パルプ試験法No5に記載されている物性値であり、拡散型反動体圧力変換器を利用して、測定材料の表面平滑度により変化する空気の流入量を圧力の変化として測定し、表面の凹凸度、マット度を示すバロメーターである。本発明で用いられるスムースター値は、下記条件で測定される吸引圧の値(MPa)で定義される。測定は、東栄電気工業社製スムースターSM−6Bを用いて行う。真空型の空気マイクロメーターを利用したこの装置では、測定ヘッドに吸着された被測定面の粗さに応じ流入する空気を圧力(MPa)の変化として測定する。数値が大きいことは、表面の凹凸が大きいか、または凹凸の数が多いことに対応する。測定すべき試料の表面上に測定ヘッドを置き一定の開口面積を持つ絞りを通してヘッド内の空気を真空ポンプで排気し、ヘッド内の気圧P(MPa)を読みとり、スムースター値として表示する。なお、測定する前に23℃、60%RH(相対湿度)で2時間調湿し、同じ環境下で測定する。本発明の印刷版材料においては、スムースター値が0.06MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは0.001〜0.06MPaである。
【0056】
また、本発明に係る静摩擦係数は、JIS K7125の摩擦係数試験方法に準じ、具体的には以下の方法に従って測定できる。
【0057】
印刷版材料の裏面を上向きにして平面架台上に粘着テープで貼り付ける。印刷版材料の裏面上に、固定部材表面と同じ材質のブロック(接触面積20mm2、荷重を200gに調整)を乗せて、架台に傾斜を与える。前記ブロックが滑り出したときの架台傾斜角度θを測定し、tanθを静摩擦係数として定義する。また、測定装置としては、例えば、新東化学(株)社製 静摩擦係数測定機 トライボギアTYPE10等を用いることができる。
【0058】
次いで、本発明の印刷版材料の詳細について説明する。
本発明の印刷版材料で用いることのできる基材としては、特に制限はないが、好ましくは、金属箔、紙、プラスチックフィルム、あるいはそれらの複合体であり、その中でも取り扱い性の観点から、プラスチックフィルムが特に好ましい。
【0059】
本発明の印刷版材料においては、露光記録装置内での搬送性や、印刷版としての取り扱い易さの観点から、基材の厚みとしては100〜290μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0060】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0061】
支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層が使用できる。帯電防止層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、例えば、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。
【0062】
帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。
これらプラスチックフィルムの表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていても良い。また、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に基材表面を粗面化することもできる。更に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けることも好ましい態様である。
【0063】
次いで、親水性層について説明する。
本発明の印刷版材料において、親水性層に用いられる素材は、下記のものが挙げられる。
【0064】
親水性層マトリクスを形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスや、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックス層、金属酸化物等が好ましく用いられる。特に、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0065】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤として使用することが可能である。金属酸化物微粒子は、有機結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0066】
本発明では、上記の中でも、特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0067】
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0068】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0069】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能が不十分となる場合がある。
【0070】
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0071】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2 +、C8H16N+等であり、M2はCa2 +、Mg2 +、Ba2 +、Sr2 +、C8H18N22 +等である。また、n≧mであり、m/nの値、すなわちAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0072】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えば、ゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0073】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0074】
また、本発明の印刷版材料の親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0075】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(例えば、ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(例えば、シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0076】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)で、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0077】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全質量に対し0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に、膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは、少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(例えば、メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0078】
本発明に係る親水性層マトリクスには、その他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率は、ケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが、無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0079】
また、金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されている方法、あるいは本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0080】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0081】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0082】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸構造により、保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することが、より良好な印刷適性を有する構造を得ることができ好ましい。
【0083】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0084】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0085】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0086】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0087】
粒径は1μm以上であることが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1.5〜8μmが更に好ましく、2μm〜6μmが特に好ましい。
【0088】
粒径が10μmを超えると、画像形成の解像度の低下や、ブランケット汚れの劣化が生じる懸念がある。本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0089】
本発明においては、基材と親水層の間に中間親水性層を設けることができる。中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。ただし、中間親水性層は多孔質であることの利点が少なく、また、より無孔質である方が塗膜強度の観点から好ましい。親水性マトリクス構造を形成する多孔質化材の含有量は、親水性層よりも少ないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0090】
中間親水性層で用いる粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、中間親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0091】
中間親水性層全体としても、上記親水性層と同様に、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0092】
本発明の印刷版材料においては、上述の親水性層、または後述の感熱性画像形成層が、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0093】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物を用いることが好好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0094】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0096】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0097】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0098】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2をアンモニアで還元した酸化窒化チタン(一般的には、チタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
【0099】
これらの光熱変換素材のうち、黒色酸化鉄または二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、後者の具体例としては、例えば、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物を挙げることができる。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0100】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0101】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0102】
これらの光熱変換素材の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1〜60質量%であり、3〜50質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0103】
次いで、感熱性画像形成層(以下、画像形成機能層ともいう)について説明する。
【0104】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0105】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインキ着肉感度が低下する。
【0106】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0107】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0108】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0109】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0110】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全質量に対し1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0111】
本発明で用いることのできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、この熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度としては、特定の上限はないが、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の重量平均分子量(Mw)は、10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0112】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0113】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0114】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0115】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0116】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全質量に対し1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0117】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインキを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0118】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0119】
オリゴ糖の中でも、トレハロースは比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0120】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果があり、オリゴ糖の中でも、特にトレハロースが好ましい。
【0121】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全質量の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。
【0122】
本発明の印刷版材料の裏面には、本発明で規定する平滑度と静摩擦係数を達成するため、バックコート層が形成されていてもよい。バックコート層には、バインダー成分とマット剤の他、表面滑性や導電性を付与する化合物を添加することが好ましい。
【0123】
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、芳香族ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(R)樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、有機硼素化合物、芳香族エステル類、弗化ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらのモノマーを主成分とする共重合体などの汎用ポリマーを使用することができる。
【0124】
バインダーとして架橋可能なバインダーを用いることは、マット剤の粉落ち防止やバックコートの耐傷性の向上に効果がある。また、保存時のブロッキングにも効果が大きい。この架橋手段は、用いる架橋剤の特性に応じて、熱、活性光線、圧力の何れか一つまたは組合せなどを特に限定することなく採用することができる。場合によっては、支持体への接着性を付与するため、支持体のバックコート層を設ける側に任意の易接着層を設けてもよい。
【0125】
バックコート層に好ましく添加されるマット剤としては、有機または無機の微粒子が使用できる。有機微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂よりなる有機微粒子等が挙げられ、中でも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子なども挙げられる。無機微粒子としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛等の無機微粒子が挙げられ、中でも、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化珪素が好ましい。
【0126】
無機微粒子の平均粒径としては、0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、バックコート層に十分な粗面化を施すことができずに均一な密着を得るために長時間の減圧が必要になる。10μmを超えると、バックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が大きくなり、固定部材との安定した密着性が確保できなくなる。
【0127】
プラスチックフィルム支持体には、バックコート層は0.5〜3g/m2程度の付量で設けることが好ましい。0.5g/m2未満では塗布性が不安定となり、マット剤の粉落ち等の問題が生じ易い。また、3g/m2を超えて塗布されると好適なマット剤の粒径が非常に大きくなり、保存時にバックコート層による受像面へのエンボス化が生じ、記録画像の抜けやムラが生じ易くなる。尚、マット剤を添加しない場合のバックコート層の付き量は0.01〜1.0g/m2が好ましい。
【0128】
前記各微粒子の含有量としては、バックコート層の全固形分質量に対し、0.5〜80質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、バックコート層表面に十分な粗面化を施すことができないことがあり、80質量%を超えるとバックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が本発明でき規定す範囲外となり、画質が低下することがある。
【0129】
バックコート層には、表面滑性を調整する目的で、各種界面活性剤、シリコンオイル、フッ素系樹脂、ワックス類等を添加することも好ましい。
【0130】
印刷版材料が搬送路内で摩擦帯電による搬送異常や、帯電に起因する異物の付着を防止するために帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子等が使用できる。中でも、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の微粒子、有機半導体等の導電性微粒子が好ましく用いられる。特に、カーボンブラック、グラファイト、特に金属酸化物の微粒子を用いることは、温度等の環境の影響によらず安定した帯電防止能が得られるため好ましい。
【0131】
上記金属酸化物微粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。これらのうち好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAl或いはIn、SnO2に対してSb、Nb或いはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
【0132】
金属酸化物微粒子は、バックコート層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物微粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物微粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0133】
印刷版材料は、相対湿度80%以下における表面比抵抗が1×108〜1×1012Ω/m2である層または支持体を有することがより好ましい。使用出来る帯電防止剤としては、相対湿度80%以下における層の表面比抵抗が1×108〜1×1012Ω/m2となるように各種界面活性剤、導電剤の中から適宜使用することができる。とりわけ、層中にカーボンブラック、カーボングラファイト及び金属酸化物の微粒子の少なくとも1種を含有せしめて、表面比抵抗を1×108〜1×1012Ω/m2となるように設計することが好ましい。
【0134】
本発明の画像形成時にレーザー露光を行う場合、フォーカスがずれないようにするためには、プラスチックフィルム支持体を固定するのに公知の方法と組み合わせて減圧密着を行うことが好ましい。ブロッキングの防止や良好な減圧密着性の付与の目的で、裏面が粗面化された支持体或いはバックコート層にマット剤を添加した場合の表面粗さ(Rz)は0.04〜5.00μmの範囲が好ましい。
【0135】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「%」は、特に断りがない限りは「質量%」を表す。
【0136】
実施例1
《基材(プラスチックフィルム)の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)が0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融した後、T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定した未延伸フィルムを、2軸で熱延伸し、平均膜厚が各々150、175、200、250、300μmのポリエチレンテレフタレート(表4には、PETと略記)の基材1〜5を作製した。
【0137】
《基材の下引き処理》
上記で得られた基材1〜5の一方の面側に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら、下記の下引き塗布液aを乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設し、更に、その上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら、下記の下引き塗布液bを乾燥膜厚が0.1μmになるように塗設して下引き済み基材1A〜5Aを得た。
【0138】
【0139】
【化1】
【0140】
《支持体1A〜5Aの作製》
上記作製した基材1A〜5Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下のようにしてバックコート層1(BC層1)を設けて、支持体1A〜5Aを作製した。
【0141】
上記作製した基材1A〜5Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら、下記の下引き塗布液cを乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設し、更に、その上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下記の下引き塗布液dを乾燥膜厚が1.0μmになるように塗設して、両面に下引き処理を施した支持体1A〜5Aを得た。
【0142】
〈成分d−11〉
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
〈成分d−12〉
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
〈成分d−13〉
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0143】
【化2】
【0144】
《支持体1Bの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量2.5g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層2(BC層2)を設けて、支持体1Bを作製した。
【0145】
《支持体1Cの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量0.6g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層3(BC層3)を設けて、支持体1Cを作製した。
【0146】
ポリビニルアルコール(EG−30:日本合成化学社製) 9.5部
PMMA樹脂粒子(MX−300:綜研化学社製) 0.6部
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
《支持体1Dの作製》
上記作製した基材1Aの下引き処理を施した面とは反対側の面に、以下の塗布液を乾燥付量0.3g/m2になるように塗布、乾燥してバックコート層4(BC層4)を設けて、支持体1Dを作製した。
【0147】
ポリビニルアルコール(EG−30:日本合成化学社製) 9.5部
PMMA樹脂粒子(MX−100:綜研化学社製) 0.6部
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
《印刷版材料1〜8の作製:本発明》
表1に示す親水性層1用塗布液、表2に示す親水性層2用塗布液、および表3に示す画像形成機能層塗布液を、上記作製した下引き済みの支持体1A〜1D及び2A〜5Aの下引き層塗布面上に、ワイヤーバーを用いて塗布して、印刷版材料1〜8を作製した。
【0148】
詳しくは、各支持体の下引き処理を施した面側に、親水性層1用塗布液(表1)、親水性層2用塗布液(表2)の順番でワイヤーバーを用いて、それぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥した後、60℃で24時間の加熱処理を施した。次いで、表3に示す画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布し、50℃で3分間乾燥した後、50℃で72時間のシーズニング処理を施して印刷版材料1〜8を作製した。
【0149】
〔親水性層1用塗布液〕
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0150】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0151】
【表1】
【0152】
この親水性層1用塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0.4である。
【0153】
〔親水性層2用塗布液〕
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0154】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0155】
【表2】
【0156】
この親水性層2用塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0.3である。
【0157】
〔画像形成機能層塗布液〕
【0158】
【表3】
【0159】
【化3】
【0160】
この画像形成機能層塗布液の単位質量当たりの吸光度(absorbance/g)は、0である。
【0161】
《印刷版材料9〜14の作製:比較例》
上記印刷版材料1〜8の作製において、支持体として基材の種類、基材の厚さ(表4に記載の基材番号6〜11)及びバックコート層の組み合わせを、表4に記載のように変更して作製した支持体6A〜11Aを用いた以外は同様にして、比較の印刷版材料9〜14を作製した。
【0162】
以上のようにして作製した各印刷版材料を、730mm幅で32mの長さに切断し、画像形成層塗工面が外側になるように、内径71.9mmのボール紙製のコアに巻き付けロール形状の試料とした。
【0163】
《印刷版材料の各特性値の測定》
〔スティフネスの測定〕
各印刷版材料について、(株)東洋精機製作所製の「スティフネステスター UT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した。
【0164】
〈測定条件〉
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度:10度
押し込み量:2mm
平坦な台に置いた10cm×8cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmを台へ固定して、中央部を台から10度の角度で上方にたわませて、頂上部を針で押して2mm押し下げた時の荷重で評価した。
【0165】
〔スムースター値の測定〕
各試料のバックコート層塗設面側(裏面)について、J.TAPPI紙パルプ試験法No5に則り、東栄電気工業社製スムースターSM−6Bを用いて、測定する前に23℃、60%RH(相対湿度)で2時間調湿し、同じ環境下で測定した。
【0166】
〔静摩擦係数の測定〕
各試料のバックコート層塗設面側(裏面)について、新東化学(株)社製 静摩擦係数測定機 トライボギアTYPE10を用いて測定した。
【0167】
印刷版材料の裏面を上向きにして平面架台上に粘着テープで貼り付ける。印刷版材料の裏面上に、固定部材表面と同じ材質のブロック(接触面積20mm2、荷重を200gに調整)を乗せて、架台に傾斜を与え、ブロックが滑り出したときの架台傾斜角度θを測定し、このtanθを静摩擦係数とした。
【0168】
以上により得られた結果を、表4に示す。
なお、表4に記載してある基材材料の略称の詳細は、以下の通りである。
【0169】
PET:ポリエチレンテレフタレート
LPET:低比重ポリエチレンテレフタレート
HDPE:高密度ポリエチレン
PEN:ポリエチレンナフタレート
【0170】
【表4】
【0171】
《印刷版の作製》
印刷版材料1〜14をロール巻方向860mmに断裁した後、発振波長830nmの半導体レーザーの露光ユニットと、印刷版材料を固定する減圧吸引孔を有する直径350mmの露光ドラムとを搭載した図1に記載の構成からなる露光装置で露光を行って、表5に記載の減圧度で印刷版1〜20を作製した。この際、露光ビームの焦点は、レーザー光のビーム径が印刷版材料表面で最も小さくなるように調整した。
【0172】
また、露光ドラムとしては、表面に設けた吸引孔の開口面積が全て同一の露光ドラム1と、一部の印刷版で図4に記載のように印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さい露光ドラム2を用いて行った。
【0173】
また、回転ドラムへの印刷版材料の固定状態は、接続した減圧ポンプの出力を調整して、表5に記載の減圧度となるように調整した。
【0174】
露光におけるレーザービームのスポット径は、約18μm、副走査方向の解像度2400dpiで、175線相当の網点画像を露光した。なお、ここでいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を意味する。
【0175】
更に、印刷版材料面での露光エネルギーは、150〜350mJ/cm2となるようにレーザー出力と露光ドラムの回転数を適宜調整した。
【0176】
(露光ドラム上での平面性の測定)
各印刷版材料を露光ドラムに固定状態した際の、印刷版材料表面の4辺周縁から20mm内側部分での平面性を測定した。測定は、露光ヘッド面と印刷版材料表面との距離の最大値と最小値の差を求めた。
【0177】
《印刷版の評価》
上記のように画像形成した作製した各印刷版について、下記の印刷条件で印刷版としての諸特性を評価した。
【0178】
印刷機:DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インキ:下記の2種類を用いた
インキ1:トーヨーキングハイエコーM紅(東洋インキ社製)
インキ2:TKハイエコーSOY1(東洋インキ社製 大豆油インキ)
(評価項目)
〈現像性の評価〉
印刷開始のシーケンスをPS版の印刷シーケンスで行い、非画線部のインキ汚れが完全になくなるまでの枚数を計測した。
【0179】
〈インキの乗りの評価〉
湿し水、インキ量を適宜変化させ、印刷物の仕上がりを、2種類のインキについて目視観察し、下記の基準に則りインキの乗りの評価を行った。
【0180】
○:インキ量基準±50%以上で安定した刷り上がり
△:インキ量基準±30%の領域で、網点部のカラミ、ベタ濃度ムラが発生
×:インキ量基準+30%未満で、網点部のカラミ、カスレ、ベタ濃度ムラが発生し、実用上問題がある品質
〈印刷品質の評価〉
20,000枚印刷を行った後、ベタ画像部、50%平網部、2%平網部の仕上がり品質について目視観察を行い、下記の基準に則り印刷品質の評価を行った。
【0181】
○:仕上がり品質が良好である
△:10%未満の面積で、カスレ、網点欠けの発生が認められる
×:10%以上の面積で、カスレ、網点欠けの発生が認められる
〈耐刷性の評価〉
3%網点画像部の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた。なお、印刷は3万枚まで行った。
【0182】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
表5より明らかなように、本発明に係る構成からなる印刷版材料を用いて作製した印刷版は、現像性、インキの乗り、印刷品質が良好で、かつ耐刷性に優れていることが分かる。
【0185】
実施例2
上記実施例1において、露光時に印刷版材料を固定する方法として、露光ドラムに代えて、図3に記載の露光板を用いて、同様の評価を行った結果、実施例1の結果と同様に、本発明に係る構成からなる印刷版材料を用いて作製した印刷版は、現像性、インキの乗り、印刷品質が良好で、かつ耐刷性に優れていることを確認することができた。
【0186】
【発明の効果】
本発明により、現像性、インキ乗り、印字品質が良好で、かつ耐刷性に優れた印刷版の作製方法と、好適に使用される印刷版材料を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る露光ドラムを用いた露光記録装置の全体構成図である。
【図2】印刷版材料を、露光ドラムに巻き付けた状態を示す模式図である。
【図3】印刷版材料を、露光板に減圧密着して固定した状態を示す模式図である。
【図4】幅手方向で吸引孔径(開口面積)の開口面積が異なる露光ドラムに印刷版材料を圧着した状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 圧力ロール
2 吸引孔
3 印刷版材料
4 繰り出し部
5 露光ドラム
6 レーザー光による露光書き込み手段
7 粘着ロール
8 ロール状に積層した印刷版材料
9 筐体
10 画像形成領域
11 搬送ロール
12 固定部材
13 排気孔
Claims (7)
- 吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、減圧密着で固定した該印刷版材料の画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版の作製方法。
- 前記印刷版材料の固定部材が円筒状ドラムであり、該円筒状ドラムを回転させながら、ドラム外面側から該印刷版材料表面にレーザー露光を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷版の作製方法。
- 吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定した印刷版材料の表面に、レーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製方法において、印刷版材料を減圧密着で固定した中心部の該吸引孔の開口面積が、外縁部に位置する吸引孔の開口面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版の作製方法。
- 吸引孔を有する固定部材上に、裏面側を減圧密着で固定し、表面にレーザー光で画像露光を行って画像形成する印刷版の作製に用いる印刷版材料において、減圧密着で固定した画像形成領域の平面度が、±50μm以内であることを特徴とする印刷版材料。
- 総膜厚が150〜300μmで、スティフネスが0.50〜5.00Nで、かつ平均比重が1.4〜1.8g/cm3であることを特徴とする請求項4に記載の印刷版材料。
- 裏面のスムースター値が0.06MPa以下で、かつ固定部材面との静摩擦係数が0.3〜0.6であることを特徴とする請求項4または5に記載の印刷版材料。
- フレキシブルフィルム基材上に、親水性層と感熱性画像形成層とを有し、該親水性層または感熱性画像形成層が光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の印刷版材料。
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