JP2004321252A - 携帯型生体情報測定装置 - Google Patents

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Abstract

【目的】複数の生体情報を測定することができる携帯型生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】手首50に向かって同時に押圧させられる押圧面38、42に、表皮上から橈骨動脈46に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する半導体感圧素子と、橈骨48に向かって押圧させられる圧電シート34とを備え、心音抽出手段により、圧電シート34により検出される橈骨の振動から、骨を媒体として伝播した心音を抽出する。また、圧電シート34に第1電極36を積層し、携帯電話機10の側面に第2電極44を設け、第1電極36と第2電極44との電位差から心電図を測定する。従って、一つの装置により、橈骨動脈波、心音、心電図を測定することができる。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯型の生体情報測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
診断をするために様々な生体情報が測定される。たとえば、心音、心電波形(心電図)、動脈脈波などを測定する生体情報測定装置が知られている。また、生体情報測定装置には、生体から直接測定した一次的な生体情報に基づいて、二次的な生体情報を決定する機能を備えている装置も種々知られている。たとえば、二次的な生体情報として、生体の所定の2部位間の動脈内を脈波が伝播する速度や時間など、脈波の伝播速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を測定する脈波伝播速度情報測定装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。なお、脈波伝播速度情報からは、動脈硬化度や血圧が推定できることが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されている脈波伝播速度測定装置は、右手が挿入されるカフと、左手が載置される載置部分とを備えた比較的大型の装置であり、台上に設置される。この脈波伝播速度測定装置のように、生体情報測定装置は一般的に大きく、携帯することはできない。しかし、体調に不安がある者が常時生体情報を測定するため、あるいは、体調の異変を感じたときにすぐに生体情報を測定できるようにするために、携帯型の生体情報測定装置も種々提案されている。たとえば、特許文献2に記載されている装置などがそれである。特許文献2の装置は、生体情報として心電図を測定する装置すなわち心電計である。
【0004】
また、特許文献2に記載されている心電計は、データ伝送機能を備えており、この心電計により測定されたデータに基づいて医療機関において診断を行うために、測定されたデータを予め登録された医療機関に伝送できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−122091号公報
【特許文献2】
特開平8−10235号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
携帯型の生体情報測定装置は、携帯型であるために大きさに制限がある。そのため、従来の携帯型生体情報測定装置は、特許文献2に記載の心電計のように単一の生体情報しか測定できない。また、脈波伝播速度情報は、生体の所定の2部位において発生する心拍同期信号を検出する必要があることから、通常、脈波伝播速度情報を測定するためには、心拍同期信号を検出するためのセンサを生体の2部位に装着する。そのため、携帯型とするにはセンサの装着が面倒であるので、携帯型の脈波伝播速度情報測定装置は知られていない。
【0007】
それに対して医療機関で診察を受ける場合には、複数の生体情報が測定されて、それら複数の生体情報に基づいて総合的に患者の状態が判断される。従って、より信頼性のある診断を行うために、複数の生体情報を測定できる携帯型生体情報測定装置が望まれていた。
【0008】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、複数の生体情報を測定することができる携帯型生体情報測定装置、特に、生体情報の一つとして脈波伝播速度情報を測定することができる生体情報測定装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための第1の手段】
上記目的を達成するための第1発明は、携帯型生体情報測定装置であって、手首に向かって押圧させられる押圧面と、その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、その押圧面に設けられ、その手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、その振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
【第1発明の効果】
この発明によれば、生体情報測定装置の押圧面が手首に押圧されると、圧力検出素子により橈骨動脈波が検出され、振動センサにより骨を媒体として手首に伝播した心音を含む振動が検出され、心音抽出手段により、その振動センサにより検出された振動から心音が抽出されるので、この装置の押圧面を手首に押圧するだけで、橈骨動脈波と心音の2つの生体情報を測定できる。
【0011】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明は、心電図および橈骨動脈波を測定するための携帯型生体情報測定装置であって、手首に向かって押圧させられる押圧面と、その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられる圧力検出素子と、その押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、その押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極とを含むことを特徴とする。
【0012】
【第2発明の効果】
この発明によれば、携帯型生体情報測定装置は、押圧面に、橈骨動脈波を検出する圧力検出素子とともに第1電極が設けられ、その押圧面とは異なる面に第2電極が設けられていることから、押圧面を手首に向かって押圧し、第2電極に他方の手を接触させている状態では、圧力検出素子により橈骨動脈波が検出され、第1電極と第2電極との電位差に基づいて心電図が測定できるので、押圧面を手首に向かって押圧し、第2電極に他方の手を接触させるだけで、心電図と橈骨動脈波の2つの生体情報が測定できる。
【0013】
【課題を解決するための第3の手段】
また、前記目的を達成するための第3発明は、第1発明の構成および第2発明の構成の両方の構成を備えた生体情報測定装置である。すなわち、第3発明は、携帯型生体情報測定装置であって、手首に向かって押圧させられる押圧面と、その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、その押圧面に設けられ、その手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、その押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、前記振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、その押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極とを含むことを特徴とする。
【0014】
【第3発明の効果】
この発明によれば、押圧面を手首に向かって押圧し、第2電極に他方の手を接触させるだけで、心電図、心音および橈骨動脈波の3つの生体情報が測定できる。
【0015】
【課題を解決するための第4の手段】
また、前記目的を達成するための第4発明は、第1発明または第3発明の生体情報測定装置であって、前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、生体の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を算出する脈波伝播速度情報算出手段をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
【第4発明の効果】
この発明によれば、脈波伝播速度情報を算出するために必要な生体情報を生体から測定するためには、押圧面を手首の表皮に向かって押圧するだけでよいので、容易に脈波伝播速度情報を測定することができる。従って、脈波伝播速度情報を測定するための携帯型生体情報測定装置として好適である。
【0017】
【課題を解決するための第5の手段】
また、前記目的を達成するための第5発明は、第2発明または第3発明の生体情報測定装置であって、前記第1電極と前記第2電極との電位差が表す心電波形において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、生体の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を算出する脈波伝播速度情報算出手段をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
【第5発明の効果】
この発明によれば、脈波伝播速度情報を算出するために必要な生体情報を生体から測定するためには、押圧面を手首に向かって押圧し、第2電極に他方の手を接触させるだけでよいので、容易に脈波伝播速度情報を測定することができる。従って、脈波伝播速度情報を測定するための携帯型生体情報測定装置として好適である。
【0019】
【発明の好適な実施の形態】
次に、本発明の好適な実施の形態を説明する。まず、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例であって、脈波伝播速度測定機能を備えた携帯電話機10を示す斜視図である。
【0020】
携帯電話機10は、一般的な携帯電話機に備えられたものと同様の表示器12、複数の入力キー14、スピーカ16、マイク18、アンテナ20を備えた電話機本体部21と、その電話機本体部21の下部に設けられた図示しないコネクタに差し込まれる生体情報センサユニット22とを有している。
【0021】
図2はその生体情報センサユニット22の正面図であり、図3はその生体情報センサユニット22の底面図である。図2および図3に示すように、生体情報センサユニット22には、ユニット本体部24と、そのユニット本体部24から上側(電話機本体部21側)に突き出して設けられたコネクタ26と、ユニット本体部24からコネクタ26とは反対側に突き出して設けられた検出部28とを備えている。上記ユニット本体部24には、検出部28により生体から検出された信号を増幅し、アナログ−デジタル変換するための回路が収容されている。
【0022】
生体情報センサユニット22の検出部28は、感圧素子設置台30、ゴムシート32、圧電シート34、第1電極36を備えている。感圧素子設置台30は、ユニット本体部24の下面略中央においてその下面から下方に突き出す角柱状であり、この感圧素子設置台30の水平断面の大きさは、長手方向(図2、図3の横方向)の長さがユニット本体部24の長手方向長さの1/3程度であり、幅方向長さがユニット本体部24の幅方向長さの半分程度とされている。感圧素子設置台30の下面は手首の表皮に向かって押圧させられる押圧面(以下、第1押圧面38という)であり、その第1押圧面38には、圧力検出素子として機能する複数の半導体感圧素子40(以下、単に感圧素子40という)が第1押圧面38の長手方向に一列に埋設されている。
【0023】
上記ゴムシート32は、前記感圧素子設置台30を取り囲むようにしてユニット本体部24の下面に設けられている。このゴムシート32の下面も、手首の表皮に向かって押圧させられる押圧面(以下、第2押圧面42という)であるが、その第2押圧面42には、平面形状がゴムシート32の平面形状と同一とされた圧電シート34が設けられているので、第2押圧面42は圧電シート34により覆われている。この圧電シート34は、振動センサとして機能し、圧電性高分子として良く知られているポリフッ化ビニリデン樹脂製であり、表皮の凹凸に対応するのに十分な可撓性を有している。
【0024】
第1電極36は、膜状の薄い部材であり、圧電シート34に積層されている。すなわち、第2押圧面42には、圧電シート34を介して第1電極36が設けられている。この第1電極36の平面形状もゴムシート32の平面形状と同一とされているので、圧電シート34の下面は第1電極36により覆われている。
【0025】
図1に戻って、携帯電話機10には、さらに、両側面の略中央部に、その側面から正面(表示器12や入力キー14が設けられている面)および裏面にかけて一対の第2電極44が設けられている。
【0026】
図4は、携帯電話機10により脈波伝播速度PWVを測定している状態を示す図である。携帯電話機10により脈波伝播速度PWVを測定するには、図示しない一方の手(図4の場合には右手)で第2電極44に触れるようにして携帯電話機10を把持して、第1押圧面38が表皮上から橈骨動脈46を押圧し、同時に、第2押圧面42が表皮上から橈骨48を押圧するように、携帯電話機10を他方の手首50に押圧する。
【0027】
前述のように第1電極36は薄い膜状であり、また、その第1電極36に積層されている圧電シート34は可撓性を有しており、さらに、圧電シート34の第1電極36とは反対側にはゴムシート32が積層されているので、第2押圧面42が表皮上から橈骨48に向かって押圧させられると、第1電極36およびそれに積層された圧電シート34は、手首の凹凸形状に対応して変形させられる。従って、橈骨からの振動が第1電極36を介して圧電シート34に伝達される。また、第1押圧面38には複数の感圧素子40が埋設されているので、第1押圧面38が橈骨動脈に向かって押圧させられると、それら複数の感圧素子40により橈骨動脈波がそれぞれ検出される。
【0028】
図5は、携帯電話機10の内部の回路構成を概略的に示す図である。図5に示すように、生体情報センサユニット22のユニット本体部24には、電極36、44間の電位差すなわち心電図を表す心電信号SE、圧電シート34から出力され橈骨の振動を表す振動信号SV、複数の感圧素子40からそれぞれ出力され橈骨動脈波を表す脈波信号SMをそれぞれ増幅する増幅器52、54、56と、それら増幅器52、54、56に接続され、増幅器52、54、56により増幅された信号をA/D変換するA/D変換器58、60、62が設けられている。そして、A/D変換器58、60、62によりデジタル信号に変換された信号は、電話機本体部21内に備えられた電子制御装置64に供給される。
【0029】
上記電子制御装置64は、CPU66、ROM68、RAM70等を備えた所謂マイクロコンピュータであり、CPU66は、通常の携帯電話機に備えられたCPUと同様の機能を備えていることに加え、生体情報を測定するための特別の機能を備える。すなわち、CPU66は、RAM70の一時記憶機能を利用しつつROM68に記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、心音図、心電図、橈骨動脈波を決定してRAM70に記憶させるとともに、その決定した心音図および橈骨動脈波に基づいて脈波伝播速度PWVを決定して、決定した脈波伝播速度PWVを表示器12に表示させる。また、入力キー14から、RAM70に記憶された生体情報を所定の医療機関の端末装置へ送信させることを指示する信号が供給された場合には、RAM70に記憶されている生体情報を送受信回路72へ出力するとともに、送受信回路72を制御してその生体情報をアンテナ18から出力させる。なお、上記送受信回路72は、通常の携帯電話機10に備えられているものと同様の構成であり、変復調回路や発振回路などを備えている。
【0030】
図6は、上記電子制御装置64の生体情報を測定するための制御機能の要部を示す機能ブロック線図である。心音抽出手段80は、圧電シート34から出力される振動信号SVをデジタルフィルタ処理することにより、その振動信号SVから、一般的に心音が有する周波数帯域に予め設定された周波数帯域の成分を心音成分として抽出する。たとえば、上記周波数帯域は30〜600Hzの帯域に設定される。圧電シート34は橈骨に向かって押圧させられており、心臓の弁の開閉によって発生する音すなわち心音は骨を伝って手首にも伝播しているので、振動信号SVには心音成分が含まれている。従って、振動信号SVから心音が有する周波数帯域の信号を抽出すれば、手首において心音が検出できるのである。
【0031】
最適素子決定手段82は、第1押圧面38に備えられた複数の感圧素子40から、橈骨動脈波の検出に最も適している感圧素子40(以下、これを最適素子Aという)を一つ決定する。橈骨動脈波を検出するためには、感圧素子40を橈骨動脈の直上部に位置させることが好ましく、感圧素子40が橈骨動脈の直上部に位置している場合には検出される橈骨動脈波の振幅が最も大きくなることから、最適素子決定手段82では、振幅が最も大きい脈波信号SMを出力した感圧素子40を、橈骨動脈の真上に位置している最適素子Aに決定する。
【0032】
橈骨動脈波決定手段として機能するノイズ除去手段84は、最適素子Aから出力された脈波信号SMから橈骨動脈波を抽出するために、その脈波信号SMから橈骨動脈波にとってはノイズとなる成分をデジタルフィルタ処理によって除去する。橈骨動脈波は脈拍周期の脈波であることから、たとえば、このノイズ除去手段84では、脈波信号SMから50Hz以上の高周波数成分を除去する。
【0033】
測定データ記憶手段86は、心電信号SEすなわち心電図、心音抽出手段80により抽出された心音波形、ノイズ除去手段84により決定された橈骨動脈波を、RAM70の所定の記憶領域に記憶する。
【0034】
脈波伝播速度情報算出手段88は、時間差算出手段90および脈波伝播速度算出手段92とから構成されている。時間差算出手段90は、心音抽出手段80によって抽出された心音の所定部位を一方の基準点とし、ノイズ除去手段84により決定された橈骨動脈波の所定部位を他方の基準点として、上記2つの基準点の検出時間差(すなわち脈波伝播時間)DT(sec)を算出する。上記心音の所定部位には、たとえば心音のI音の開始点(立ち上がり点)、I音のピーク、II音の開始点、II音のピークなどを用いる。また、上記橈骨動脈波の所定部位には、橈骨動脈波の立ち上がり点やピークなどを用いる。
【0035】
前記入力キー14からは被測定者の身長が入力されるようになっており、脈波伝播速度算出手段92は、入力キー14から供給される被測定者の身長Tを、身長Tと伝播距離Lとの間の予め記憶された関係である式1に代入することにより、脈波が心臓から手首まで伝播する経路の距離すなわち伝播距離Lを求め、得られた伝播距離Lと上記脈波伝播時間DTとを式2に代入することにより脈波伝播速度PWV(cm/sec)を算出する。
(式1) L=aT+b
(a,bは、実験に基づいて決定された定数)
(式2) PWV=L/DT
なお、脈波伝播速度PWVの算出は一回のみでもよいが、信頼性を高めるためには複数の脈波伝播速度PWVを算出して平均することが好ましいので、本実施例では、10拍分の信号に基づいて脈波伝播速度PWVを10回算出し、それら10拍分の脈波伝播速度PWVを平均した平均脈波伝播速度PWVAVを算出して、その平均脈波伝播速度PWVAVを表示器12に表示する。
【0036】
平均脈波伝播速度PWVAVが表示器12に表示されると、被測定者すなわち携帯電話機10の操作者は、表示された平均脈波伝播速度PWVAVを自分の正常時あるいは基準時の脈波伝播速度PWVと比較して、自分の容態を判断することができる。そして、医師等の専門家による診断結果が必要と判断した場合には、測定した心電図、心音、橈骨動脈波、平均脈波伝播速度PWVAVを予め登録した医療機関へ送信するために、入力キー14を予め定められた送信指示操作に従って操作する。この送信指示操作が行われると、送信指示信号が電子制御装置64に供給される。
【0037】
生体情報伝送手段94は、上記送信指示信号が供給された場合に、RAM70に記憶されている心電図、心音、橈骨動脈波、平均脈波伝播速度PWVAVを、送受信回路72へ出力するとともに、送受信回路72を制御して、それら心電図、心音、橈骨動脈波、平均脈波伝播速度PWVAVを所定の医療機関へ送信する。なお、上記医療機関へ心電図等の生体情報が送信されると、医療機関では、送信された生体情報に基づいて、担当医による診断、またはコンピュータによる自動診断が行われ、診断結果が携帯電話機10に返信されるようになっている。
【0038】
図7は、図6に示した電子制御装置64の制御機能のうち、生体情報伝送手段94を除く機能をフローチャートにして示す図である。なお、図7のフローチャートは、入力キー14から患者の身長Tを表す信号が予め供給されていることを条件として、その入力キー14により所定の測定開始操作がされることにより開始するようになっている。
【0039】
図7において、まず、ステップS1(以下、ステップを省略する。)では、電極36、44の電位差すなわち心電図である心電信号SE、圧電シート34から供給される振動信号SV、および複数の感圧素子40からそれぞれ供給される脈波信号SMを所定のサンプリング周期毎に10拍分読み込み、それら読み込んだ信号をRAM70の所定の記憶領域に記憶する。なお、この10拍分の信号を読み込んだ否かは、ここでは、心電図のR波の検出回数に基づいて判断する。
【0040】
続くS2は最適素子決定手段82に相当し、上記S1で読み込んだ脈波信号SMに基づいて、以下のようにして第1押圧面38に備えられている複数の感圧素子40から最適感圧素子Aを決定する。すなわち、複数の感圧素子40からそれぞれ供給された脈波信号SMから、それら複数の感圧素子40がそれぞれ検出した10拍分の橈骨動脈波の振幅を決定し、感圧素子40毎に振幅を平均し、振幅の平均値が最も大きくなる橈骨動脈波を検出した感圧素子40を最適素子Aに決定する。
【0041】
続くS3はノイズ除去手段84に相当し、前記S1においてRAM70に記憶されている脈波信号SMのうち、上記S2で決定した最適素子Aにより検出された脈波信号SMから50Hz以上の周波数成分を除去するデジタルフィルタ処理を施すことによってその脈波信号SMからノイズを除去し、ノイズ除去後の信号を橈骨動脈波に決定する。そして、続くS4では、上記S3で決定した橈骨動脈波をRAM70の所定の記憶領域に記憶する。
【0042】
続いて心音抽出手段80に相当するS5を実行する。S5では、前記S1で読み込んだ振動信号SVを、30〜600Hzの周波数成分を抽出するデジタルフィルタ処理することによって、振動信号SVから心音成分を抽出する。そして、続くS6において、S5で抽出した心音をRAM70の所定の記憶領域に記憶する。本フローチャートでは、前記S1で心電図を記憶し、S4で橈骨動脈波を記憶し、S6で心音を記憶するので、S1、S4およびS6が測定データ記憶手段86に相当する。
【0043】
続いて、脈波伝播速度情報算出手段88に相当するS7乃至S13を実行する。S7乃至S13のうち、S7乃至S10は時間差算出手段90に相当し、S7では、S5で抽出した心音成分から脈波伝播時間DTの一方の基準点を決定するために、その心音成分の波形処理を行う。すなわち、上記S5で抽出した10拍分の心音成分を、生体信号の処理に有用なものとして一般的に知られている平滑微分処理し、さらに、その平滑微分処理後の波形を乗処理する。この二乗処理は、心音が発生していないときの信号強度を表す基線に対する心音波形の振幅を二乗することである。そして、続くS8では、上記S7で二乗処理した10拍分の心音波形に基づいて、脈波伝播時間DTを算出するための一方の基準点として心音のI音の開始点を一拍毎に決定する。
【0044】
続くS9では、上記S3で決定した橈骨動脈波に基づいて、脈波伝播時間DTの他方の基準点として、心音のI音の開始点に対応する部位である橈骨動脈波の立ち上がり点を一拍毎に決定する。そして、続くS10において、S8で一拍毎に決定したI音の開始点と、S9で一拍毎に決定した橈骨動脈波の立ち上がり点とから、10拍分の時間差すなわち脈波伝播時間DTを算出する。
【0045】
続くS11乃至S13は脈波伝播速度算出手段92に相当し、S11では、予め供給されている被測定者の身長Tを前記式1に代入することにより伝播距離Lを算出し、続くS12では、S10で算出した各脈波伝播時間DTおよび上記S11で算出した伝播距離Lを、前記式2に代入することにより10拍分の脈波伝播速度PWVを算出する。そして、続くS13では、上記S12で算出した10拍分の脈波伝播速度PWVを平均して平均脈波伝播速度PWVAVを算出し、算出した平均脈波伝播速度PWVAVを表示器12に表示する。
【0046】
被測定者すなわち携帯電話機10の操作者は、表示された平均脈波伝播速度PWVAVから自分の容態を判断し、必要に応じて、測定した心電図、心音、橈骨動脈波、平均脈波伝播速度PWVAVを予め登録した医療機関へ送信することにより、専門家による診断を受けることができる。
【0047】
上述の実施例によれば、携帯電話機10に備えられた生体情報センサユニット22の第1押圧面38および第2押圧面42が手首50に押圧されると、感圧素子40により橈骨動脈波が検出され、圧電シート34により骨を媒体として手首50に伝播した心音を含む振動信号SVが検出され、心音抽出手段80(S5)により、圧電シート34により検出された振動信号SVから心音が抽出される。また、携帯電話機10は、手に保持される部分に第2電極44が設けられ、第2押圧面42に、橈骨動脈波を検出する圧電シート34とともに、第1電極36が設けられていることから、第2電極44に接触するようにして携帯電話機10を一方の手に保持して、第2押圧面42を他方の手首50に向かって押圧した状態では、感圧素子40により橈骨動脈波が検出され、第1電極36と第2電極44との電位差に基づいて心電図が測定できる。従って、携帯電話機10を一方の手に保持して、押圧面38、42を他方の手首50に向かって押圧するだけで、心電図、心音および橈骨動脈波の3つの生体情報が測定できる。
【0048】
また、上述の実施例によれば、脈波伝播速度情報算出手段88(S7乃至S13)により、心音抽出手段80(S5)によって抽出された心音において所定部位が発生した時間と、最適素子Aにより検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて脈波伝播速度PWVが算出されることから、脈波伝播速度PWVを算出するために必要な生体情報を生体から測定するためには、第1押圧面38および第2押圧面42を手首50の表皮に向かって押圧するだけでよいので、容易に脈波伝播速度PWVを測定することができる。従って、脈波伝播速度PWVを測定するための携帯型生体情報測定装置として好適である。
【0049】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0050】
たとえば、前述の実施例では、脈波伝播速度PWVは心音と橈骨動脈波とから算出していたが、心音に代えて心電図を用いても良い。この場合、一方の基準点としては、たとえば、心電図のR波やQ波を用いる。なお、心電図のR波やQ波が発生してから、実際に大動脈弁から血液が駆出されるまでには前駆出期間PEPとよばれる時間差が存在するので、前記式2に代えて、式3に示すような前駆出期間PEPが考慮された算出式を用いて脈波伝播速度PWVを算出することが好ましい。
(式3) PWV=L/(DT−PEP)
(PEPは予め設定された定数)
【0051】
このように、心電図と橈骨動脈波を用いて脈波伝播速度PWVを算出する場合でも、脈波伝播速度PWVを算出するために必要な生体情報を生体から測定するためには、第2電極44に接触するようにして携帯電話機10を一方の手に保持して、第1押圧面38を他方の手首に向かって押圧するだけでよいので、容易に脈波伝播速度PWVを測定することができる。従って、脈波伝播速度PWVを測定するための携帯型生体情報測定装置として好適である。
【0052】
また、前述の実施例の装置10は、第1押圧面38と第2押圧面42とを備え、第1押圧面38に感圧素子40を設け、第2押圧面42に圧電シート34および第1電極36を設けていたが、一つの押圧面にそれら感圧素子40、圧電シート34、第1電極36を設けてもよい。
【0053】
また、前述の実施例では、生体から心音、心電図、橈骨動脈波を検出していたが、橈骨動脈波と、心音および心電図のいずれか一方を測定するようになっていてもよい。また、脈波伝播速度PWVを算出しない場合には、橈骨動脈波を測定せず、心音および心電図のみを測定しても良い。
【0054】
また、前述の実施例では、二次的な生体情報として脈波伝播速度PWVを算出していたが、それに加えて、またはそれに代えて、脈拍数を算出するようになっていてもよい。また、脈波伝播速度PWVと推定血圧値との関係が予め記憶されており、算出した脈波伝播速度PWV(または平均脈波伝播速度PWVAV)からさらに推定血圧値を算出するようになっていてもよい。
【0055】
また、前述の実施例の携帯電話機10は、手に把持して測定する型式の生体情報測定装置であったが、腕時計型のようにベルトで固定されて生体情報を測定する型式であってもよい。また、ベルトに替えて、クリップで固定されてもよい。そのように、測定時に手に把持する必要がない型式の装置により心電図を測定する場合には、押圧面とは異なる面すなわち手首の表皮に接触させられない面に第2電極44を設け、装置が装着されていない側の手をその第2電極44に接触させて心電図を測定する。
【0056】
また、前述の実施例では、圧電シート34は橈骨に向かって押圧させられるようになっていたが、橈骨ではなく手首における他方の骨すなわち尺骨に向かって押圧させられても良い。
【0057】
また、前述の実施例では、心音抽出手段80はソフトウェアによるデジタルフィルタ処理であったが、抵抗、コンデンサ等によって構成されるアナログフィルタを心音抽出手段として用いてもよい。
【0058】
また、前述の実施例では、振動センサとしてポリフッ化ビニリデン樹脂製の圧電シート34を用いていたが、圧電シートは、ポリフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンあるいはテトラフルオロエチレンとの共重合体製であってもよい。また、前述の実施例の圧電シート34は圧電式加速度センサに分類されるセンサであるので、前述の実施例の圧電シート34に代えて、チタン酸バリウムなどの圧電セラミックスや水晶などの他の圧電式加速度センサを用いても良い。また、歪みゲージ式加速度センサを用いても良い。さらに、加速度センサではなく、変位センサ、速度センサを振動センサとして用いても良い。変位センサには、圧力センサが含まれ、圧力センサとしては、前述の実施例の感圧素子42や、ダイヤフラムに形成した歪みゲージが圧力によって変位して抵抗値が変化することを利用する薄膜式圧力センサなどがある。
【0059】
また、前述の実施例では、感圧素子42は複数個設けられていたが、一つのみであってもよい。
【0060】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であって、脈波伝播速度測定機能を備えた携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話機に備えられた生体情報センサユニットの正面図である。
【図3】図1の携帯電話機に備えられた生体情報センサユニットの底面図である。
【図4】図1の携帯電話機により脈波伝播速度PWVを測定している状態を示す図である。
【図5】図1の携帯電話機の内部の回路構成を概略的に示す図である。
【図6】図5の電子制御装置の生体情報を測定するための制御機能の要部を示す機能ブロック線図である。
【図7】図6に示した電子制御装置の制御機能のうち、生体情報伝送手段を除く機能をフローチャートにして示す図である。
【符号の説明】
10:携帯電話機(携帯型生体情報測定装置)
34:圧電シート(振動センサ)
36:第1電極
38:第1押圧面
40:半導体感圧素子(圧力検出素子)
42:第2押圧面
44:第2電極
46:橈骨動脈
48:橈骨
50:手首
80:心音抽出手段
88:脈波伝播速度情報算出手段

Claims (5)

  1. 携帯型生体情報測定装置であって、
    手首に向かって押圧させられる押圧面と、
    該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、
    該押圧面に設けられ、該手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、
    該振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と
    を含むことを特徴とする携帯型生体情報測定装置。
  2. 心電図および橈骨動脈波を測定するための携帯型生体情報測定装置であって、
    手首に向かって押圧させられる押圧面と、
    該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられる圧力検出素子と、
    該押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、
    該押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極と
    を含むことを特徴とする携帯型生体情報測定装置。
  3. 携帯型生体情報測定装置であって、
    手首に向かって押圧させられる押圧面と、
    該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、
    該押圧面に設けられ、該手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、
    該押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、
    前記振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、
    該押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極と
    を含むことを特徴とする携帯型生体情報測定装置。
  4. 請求項1または3に記載の生体情報測定装置であって、
    前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、生体の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を算出する脈波伝播速度情報算出手段をさらに含むことを特徴とする携帯型生体情報測定装置。
  5. 請求項2または3に記載の生体情報測定装置であって、
    前記第1電極と前記第2電極との電位差が表す心電波形において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、生体の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を算出する脈波伝播速度情報算出手段をさらに含むことを特徴とする携帯型生体情報測定装置。
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