JP2004319771A - 半導体装置の製造方法および半導体装置の界面安定化処理装置 - Google Patents
半導体装置の製造方法および半導体装置の界面安定化処理装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】極薄膜ゲート絶縁膜を有する最先端の半導体装置を製造する場合でも、従来の方法よりも半導体装置の電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理方法を達成しうる半導体装置の製造方法および界面安定化処理装置を提供する。
【解決手段】シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜と基体の界面と、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜と基体の界面と、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の製造方法および界面安定化処理装置に関し、特に、半導体集積回路、液晶ディスプレイに用いられるトランジスタのゲート絶縁膜の界面安定化処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の高集積化が進むに伴い、高速・低消費電力化の要求がますます高まっている。
半導体素子を高速化するためには、ゲート絶縁膜の薄膜化・チャネル長の縮小が必須である。ところが、ゲート絶縁膜が薄膜化すると、ゲート絶縁膜に印加される電界が高くなり、また、チャネル長を縮小するとチャネルでの電界が高くなり、デバイスの信頼性の確保が重要な課題となっている。
この信頼性の劣化は、電気的なストレス下において、ゲート絶縁膜中や、ゲート絶縁膜とゲート電極との界面、およびゲート絶縁膜と基板との界面に生成される欠陥に電荷が捕獲されることによって引き起こされると考えられている。そこで、従来は、これら欠陥に水素を結合させることにより欠陥を不活性化していた。
【0003】
具体的な不活性化方法としては、トランジスタ作製工程の最終段階で行う400℃〜500℃程度の水素アニールが知られている。
これはデバイス作製の際に、ゲート絶縁膜や前記界面などに生成される欠陥を水素ガスでアニールすることにより、シリコンの未結合手(界面欠陥)を終端し、不活性化させることを目的とした安定化処理である。
【0004】
しかし、近年のデバイスの微細化により電気的ストレスが高くなった結果、水素結合が電気的なストレス印加で切れてしまい、デバイスの動作不良(信頼性不良)を引き起こし、このような従来の方法では信頼性を十分に確保できないことがわかってきている。
そこで、最近では、デバイスの信頼性をより高めるために、水素の同位体である重水素をゲート絶縁膜とシリコン半導体基板の界面などに導入して、シリコン原子の未結合箇所(Dangling Bond)に重水素を結合させることにより、界面を安定化させる方法が採用されていて、例えば非特許文献1には、シリコンLSIに重水素熱処理を施すことにより、LSIの長寿命化を達成可能であることが報告されている。
そして、さらに最近になって、このように水素ガスのかわりに重水素ガスを用いることで、ホットエレクトロンストレス下における界面の特性を10〜100倍向上できることがわかってきた。
【0005】
【非特許文献1】
株式会社富士通研究所、“重水素熱処理によって次世代LSIの寿命を実用レベルに向上”、[online]、平成13年10月12日、富士通株式会社、[平成15年4月2日検索]、インターネット<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2001/10/12.html>
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水素ガスを用いた安定化処理では、400〜460℃に加熱した基板に、窒素などで数%に希釈した水素を、一分間に3リットル程度の流量で数時間流すことによりゲート絶縁膜へ水素を導入していたが、同じ操作を重水素を用いて行うと、重水素ガスは、その価格が水素に比べて高価(1000〜2000倍)であるためコスト的に問題があった。
その上、水素や重水素は窒素よりも比重が軽いため、このように水素や重水素を窒素で希釈して使用すると、温度分布がある処理室内では水素または重水素の分布は均一にならず、その結果、実効的に使われるガス量が少なくなるという問題があり、さらに、最近の300mmといった大口径の基板に対しては均一性が得られにくかった。
すなわち、このように重水素を用いた安定化処理は、高価なガスを使用する上に効率が低く、コスト的にも半導体装置の特性的にも、満足するものが得られず、その適用範囲に限界があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、極薄膜ゲート絶縁膜を有する最先端の半導体装置を製造する場合でも、従来の方法よりも半導体装置の電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理方法を達成しうる半導体装置の製造方法および界面安定化処理装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、安定化処理に際して、水素ラジカルまたは重水素ラジカルを含有するガスを使用することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜と基体の界面と、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とする。
前記基体の温度を20℃〜200℃の範囲として、前記安定化処理工程を行うことが好ましい。
また、触媒を使用した接触分解反応により、水素および/または重水素を含有するガスから前記水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを生成させ、前記安定化処理工程を減圧下で行うことが好ましい。
本発明の半導体の界面安定化処理装置は、シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させるための半導体装置の界面安定化処理装置であって、シリコン半導体装置を保持するホルダーを備えた処理室と、該処理室内に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させるラジカル発生手段と、前記処理室内を減圧するための減圧手段とを具備することを特徴とする。
前記ラジカル発生手段は、水素および/または重水素を供給するガス供給手段と、接触分解反応により、供給された水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させる触媒と、該触媒を加熱するための触媒加熱手段とを具備することが好ましい。
前記ホルダーは、該ホルダーを加熱するホルダー加熱手段を具備することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1および図2は、それぞれ、本発明において安定化処理工程が施されるシリコン半導体装置10の一例であって、基体であるシリコン半導体基板11上に、ゲート絶縁膜12が形成され、その上にゲート電極13が形成されたものである。図中、符号14はソース領域となる拡散層、符号15はドレイン領域となる拡散層、符号16はサイドウォールである。
ここで、図1のゲート絶縁膜12はSiO2膜から形成され、図2のゲート絶縁膜12はSiO2膜12aとSi3N4膜12bの積層体から形成されている。ゲート絶縁膜12としては、これら酸化膜や、酸化膜と窒化膜の積層体などの他、窒化膜の単層(例えば、8nm以下のSi3N4膜)や、最近評価が進んでいる高融点金属の酸化膜(例えば、Al2O3、ZrO2、HfO2など)や希土類系元素の酸化膜(La2O3、Y2O3など)なども適用できる。
【0010】
本発明においては、このようなシリコン半導体装置10に、水素ラジカル、重水素ラジカルの少なくとも一方を含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板11との界面、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面の、少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を行う。このような安定化処理工程により、シリコン半導体装置10の電気的特性を効率的に向上させることができる。
【0011】
安定化処理工程には、例えば図3に示すような、界面安定化処理装置20を好ましく使用することができる。
この界面安定化処理装置20は、シリコン半導体装置10を保持するホルダー21を備えた処理室22と、この処理室22内に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させるラジカル発生手段23と、処理室22内を減圧するための排気装置などの減圧手段26とを備えている。なお、図3中符号27は、処理されるシリコン半導体装置10を搬送するための前室(図示略)との接続部である。
【0012】
この例の界面安定化処理装置20におけるホルダー21は、安定化処理対象であるシリコン半導体装置10を1枚のみ保持するものであるが、ホルダー21の形態には特に制限はなく、複数を同時に保持して安定化処理できるものであってもよい。また、シリコン半導体装置10を保持する向きも、この例のようにシリコン半導体基板が水平方向となる向きに限らず、鉛直方向となる向きなどであってもよい。
また、この例のホルダー21には、ヒータなどのホルダー加熱手段21aが内蔵されていて、ホルダー21を加熱できるようになっている。
【0013】
この例のラジカル発生手段23は、水素および/または重水素を処理室22内に供給するガス供給手段24と、接触分解反応により、供給された水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させる触媒25と、触媒25を加熱するための図示略の触媒加熱手段とを具備して構成されていて、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10と対向する位置に設けられている。
ガス供給手段24は、水素および/または重水素と、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスとが所定の比率で混合された混合ガスを供給するガス供給源24aと、ガス供給源24aからのガスを処理室22内に導入し触媒25に向けて噴射するための図示略の多数のガス導入穴が周壁に形成された管状のシャワーノズル24bとを備え、このようなシャワーノズル24bを使用することによって、ガス供給源24aからの混合ガスに含まれる水素および/または重水素を、効果的に触媒25に接触させられるようになっている。なお、管状のシャワーノズル24bの代わりに、多数のガス導入穴が片面に形成された中空板状のシャワープレートが備えられていても良い。
【0014】
触媒25としては、接触分解反応により、水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させられるものであれば制限はないが、例えば、タングステン、タンタル、白金、モリブデンなどの金属触媒を例示でき、これらを1種単独で、または2種以上を同時に使用できる。
触媒25の形態としては特に制限はないが、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10の全面に、発生した水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルが効果的に接触するような形態であることが好ましい。例えば、シリコン半導体装置10とシャワーノズル24bとの間に、触媒25である多数本のタングステン線をシリコン半導体基板と略平行となるように配置し、シャワーノズル24bからの水素および/または重水素が触媒25に接触して水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルとなり、それが均一にシリコン半導体装置10に拡散するような配置が好ましい。また、この際、効果的に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルがシリコン半導体装置10に均一に照射されるように、シリコン半導体基板に対向する複数のタングステン線の配置領域が単数または複数のシリコン半導体基板の配置領域より面積が広いことが望ましい。
【0015】
また、この例において触媒25を加熱する触媒加熱手段は、触媒25に直接電流を流すことにより触媒25を加熱するものである。処理室22には図示略の電流導入端子が設けられ、触媒25が例えばタングステン線である場合には、この端子とタングステン線とを接続することにより、処理室22内に触媒25を保持でき、かつ、触媒25を加熱することができる。
【0016】
次に、この界面安定化処理装置20を使用して、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10に対して水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させ、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板との界面、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面の、少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程について具体的に説明する。
まず、安定化処理対象であるシリコン半導体装置10を処理室22内に搬入し、ホルダー21に配置する。ついで、ガス供給源24aからの水素および/または重水素を含む混合ガスを、シャワーノズル24bのガス導入穴から発生させるとともに、減圧手段26を作動させて、処理室22内を数mTorr〜数100Torr程度まで減圧する。
また、触媒加熱手段により、触媒25を所定の温度に加熱する。例えば触媒25がタングステンである場合には、1000〜2000℃に加熱することが好ましい。
【0017】
一方、ホルダー加熱手段21aを作動させて、ホルダー21を適宜加熱することにより、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10を加熱する。例えば、シリコン半導体装置10を20〜200℃とする場合には、ホルダー21を同程度の温度まで加熱する。
【0018】
すると、シャワーノズル24bから発生した混合ガスが、加熱された触媒25に接触して接触分解反応し、高密度活性ラジカル(>1012〜1015atom/cm3)である水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生する。そして、この水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルは、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10に接触して、ゲート絶縁膜12中や、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板との界面、あるいは、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面に導入される。導入された水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルは、これら界面に蓄積され、これらの界面の原子が水素原子および/または重水素原子と直接結合し、その原子配列あるいは原子結合状態が安定化される。
このような安定化処理は、例えば1〜5分程度行うことが好ましい。
また、この例では、ガス供給手段24は、水素および/または重水素と、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスとが所定の比率で混合された混合ガスを供給するガス供給源24aを備えているが、水素および/または重水素は不活性ガスで必ずしも希釈される必要はなく、ガス供給源24aは、水素単独、重水素単独、あるいは水素と重水素との混合ガスを供給するものであってもよい。
【0019】
原子配列あるいは原子結合状態が安定化されたかどうか、すなわち、欠陥が結合により不活性化され安定化されたかどうかを確認する方法としては、ソース・ドレイン間に流れる電流(ドレイン電流)が、一定割合変化するまでの時間(寿命)を測定する方法があり、未処理のものと比べて寿命が長くなっていれば安定化されたことを確認できる。また、間接的な確認方法として、XPS(X線光電子分光分析装置)によるシリコンと水素・重水素との結合度合い(ピーク強度の比較)の測定、SIMS(二次イオン質量分析計)による水素・重水素の分布(界面にどの程度集中しているか)の測定などの物理的分析方法も有効である。
こうして安定化処理されたシリコン半導体装置10には、必要に応じて、さらに金属配線のパターン形成、層間絶縁膜の形成などが施され、トランジスタとして使用される。
【0020】
なお、以上の例においては、界面安定化処理装置20として、ホルダー21を加熱するホルダー加熱手段21aを備えたものを例示したが、ホルダー加熱手段21aは必ずしも必要ではない。すなわち、従来の安定化処理では、一般に、450℃近傍の高温炉によって、水素ガスおよび/または重水素ガスの分子の熱エネルギーを高め、気相中のこれら分子の運動を活発化することにより、シリコン半導体基体中での拡散を速めて、欠陥部への結合速度を高めていたが、以上説明したような安定化処理工程では、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを使用しており、これら活性化された分子(または原子)はすでに十分なエネルギーを持っているため、従来の水素ガスおよび/または重水素ガスをそのまま使用する方法のように、高温に加熱する必要はない。よって、ホルダー加熱手段21aを設けず、20℃程度の室温でも十分に安定化処理することができる。しかしながら、処理速度や処理効率の向上の点からは、ホルダー加熱手段21aを設け、シリコン半導体装置10を加熱することが好ましい。安定化処理の速度、効率の点と、加熱によるエネルギーコストの点とを両方考慮した場合には、シリコン半導体装置10の温度を100℃〜200℃の範囲として、安定化処理工程を行うことが好ましい。
【0021】
以上説明したような半導体装置の製造方法にあっては、シリコン半導体基板11を備えた基体にゲート絶縁膜12とゲート電極13とが形成されたシリコン半導体装置10に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜12と基体の界面と、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とするので、極薄膜ゲート絶縁膜を有する最先端のシリコン半導体装置を製造する場合でも、従来よりもその電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理を行うことができる。また、対象となる半導体装置としては、シリコン半導体基板11を備えた基体にゲート絶縁膜12とゲート電極13とを有するシリコン半導体装置10であれば、具体的な構成に限定はない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
図3の界面安定化処理装置20を使用し、水素ラジカルを発生させて、図1に示すシリコン半導体装置(ゲート絶縁膜(SiO2)の厚さ=8nm)10に対して安定化処理を行った。
以下に安定化処理の条件を示す。
・供給ガス:100%水素ガス、20ml/min
・触媒:タングステンワイヤ
・触媒温度:1200℃
・処理温度(シリコン半導体基板(基体)の温度):450℃
・処理時間:5分、30分、60分、90分、120分
・処理室内圧力:7.6Torr
【0023】
このようにして水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。なお、耐用寿命τは、ドレイン電流が低下するまでの時間を測定することにより評価した。具体的には、ソース・ドレイン間に一定電圧(ここでは2.0V)を印加した状態で流れる電流(ドレイン電流)が一定割合(ここでは3%)変化するまでの時間を測定し、その時間を耐用寿命τと定義して相対比較した。
【0024】
[実施例2]
水素ガスのかわりに重水素ガスを供給ガスとして重水素ラジカルを発生させた以外は実施例1と同様にして安定化処理を行った。
このようにして重水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0025】
[比較例1]
実施例1で使用したものと同じシリコン半導体装置10を、ラジカル発生手段を備えていない処理室内に配置して450℃に保持し、この処理室内に窒素で希釈された2mol%水素ガスを3L/minの流量で所定時間(5分、30分、60分、90分、120分)流通させ、水素処理を行った。
また、このようにして水素で安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0026】
[比較例2]
2mol%水素ガスの代わりに2mol%重水素ガスを使用した以外は比較例1と同様の方法で、重水素処理を行った。
また、このようにして水素で安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0027】
図4のグラフから、水素ラジカルや重水素ラジカルを使用すると、水素や重水素を使用した場合に比べて、非常に短時間で同等の耐用寿命が得られること、また、水素や水素ラジカルを使用した場合に得られる耐用寿命に比べ、重水素や重水素ラジカルを使用した場合には、その10倍程度の耐用寿命が得られることがわかる。さらに、水素ラジカルや重水素ラジカルを使用すると、より短時間で高い効果が得られるが、それは、必要となるガス量が少量で済むことをも示すものである。
すなわち、実施例の方法によれば、処理時間の短縮と、デバイス特性の向上と、ガス利用効率の向上が達成できることが明らかとなった。
【0028】
[実施例3、4]
処理温度(シリコン半導体基板(基体)の温度)を200℃(実施例3)、100℃(実施例4)とした以外は実施例2と同様にして安定化処理を行った。
このようにして重水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、相対安定化処理時間(log T)[a.u.]に対する相対耐用寿命をプロットしたものを図5のグラフに示す。また、実施例2で安定化処理されたもの、比較例2で安定化処理されたものについても、図5のグラフにプロットした。なお、Tは安定化処理時間である。
【0029】
図5のグラフから、重水素を使用した450℃での処理で得られる耐用寿命が、重水素ラジカルを使用することにより100℃の温度でも得られることが解る。また、重水素ラジカルを使用すると、重水素を使用した場合に比べて、非常に短時間で同等の耐用寿命が得られるが、その際、処理温度が高いほど、さらに短時間で同等の耐用寿命が得られることがわかる。
すなわち、重水素ラジカルを使用すると、処理温度の低温化が達成できることが明らかとなった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の半導体装置の製造方法によれば、極薄膜ゲート絶縁膜を有する半導体装置を製造する場合でも、従来の方法よりも半導体装置の電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理方法を達成できる。また。本発明の界面安定化処理装置によれば、このような効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコン半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】シリコン半導体装置の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の界面安定化処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】処理温度450℃における安定化処理時間と耐用寿命との関係を示すグラフである。
【図5】処理温度を変化させた際の安定化処理時間と耐用寿命との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 シリコン半導体装置
11 シリコン半導体基板
12 ゲート絶縁膜
13 ゲート電極
14 ソース領域となる拡散層
15 ドレイン領域となる拡散層
20 界面安定化処理装置
21 ホルダー
21a ホルダー加熱手段
22 処理室
23 ラジカル発生手段
24 ガス供給手段
25 触媒
26 減圧手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の製造方法および界面安定化処理装置に関し、特に、半導体集積回路、液晶ディスプレイに用いられるトランジスタのゲート絶縁膜の界面安定化処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の高集積化が進むに伴い、高速・低消費電力化の要求がますます高まっている。
半導体素子を高速化するためには、ゲート絶縁膜の薄膜化・チャネル長の縮小が必須である。ところが、ゲート絶縁膜が薄膜化すると、ゲート絶縁膜に印加される電界が高くなり、また、チャネル長を縮小するとチャネルでの電界が高くなり、デバイスの信頼性の確保が重要な課題となっている。
この信頼性の劣化は、電気的なストレス下において、ゲート絶縁膜中や、ゲート絶縁膜とゲート電極との界面、およびゲート絶縁膜と基板との界面に生成される欠陥に電荷が捕獲されることによって引き起こされると考えられている。そこで、従来は、これら欠陥に水素を結合させることにより欠陥を不活性化していた。
【0003】
具体的な不活性化方法としては、トランジスタ作製工程の最終段階で行う400℃〜500℃程度の水素アニールが知られている。
これはデバイス作製の際に、ゲート絶縁膜や前記界面などに生成される欠陥を水素ガスでアニールすることにより、シリコンの未結合手(界面欠陥)を終端し、不活性化させることを目的とした安定化処理である。
【0004】
しかし、近年のデバイスの微細化により電気的ストレスが高くなった結果、水素結合が電気的なストレス印加で切れてしまい、デバイスの動作不良(信頼性不良)を引き起こし、このような従来の方法では信頼性を十分に確保できないことがわかってきている。
そこで、最近では、デバイスの信頼性をより高めるために、水素の同位体である重水素をゲート絶縁膜とシリコン半導体基板の界面などに導入して、シリコン原子の未結合箇所(Dangling Bond)に重水素を結合させることにより、界面を安定化させる方法が採用されていて、例えば非特許文献1には、シリコンLSIに重水素熱処理を施すことにより、LSIの長寿命化を達成可能であることが報告されている。
そして、さらに最近になって、このように水素ガスのかわりに重水素ガスを用いることで、ホットエレクトロンストレス下における界面の特性を10〜100倍向上できることがわかってきた。
【0005】
【非特許文献1】
株式会社富士通研究所、“重水素熱処理によって次世代LSIの寿命を実用レベルに向上”、[online]、平成13年10月12日、富士通株式会社、[平成15年4月2日検索]、インターネット<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2001/10/12.html>
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水素ガスを用いた安定化処理では、400〜460℃に加熱した基板に、窒素などで数%に希釈した水素を、一分間に3リットル程度の流量で数時間流すことによりゲート絶縁膜へ水素を導入していたが、同じ操作を重水素を用いて行うと、重水素ガスは、その価格が水素に比べて高価(1000〜2000倍)であるためコスト的に問題があった。
その上、水素や重水素は窒素よりも比重が軽いため、このように水素や重水素を窒素で希釈して使用すると、温度分布がある処理室内では水素または重水素の分布は均一にならず、その結果、実効的に使われるガス量が少なくなるという問題があり、さらに、最近の300mmといった大口径の基板に対しては均一性が得られにくかった。
すなわち、このように重水素を用いた安定化処理は、高価なガスを使用する上に効率が低く、コスト的にも半導体装置の特性的にも、満足するものが得られず、その適用範囲に限界があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、極薄膜ゲート絶縁膜を有する最先端の半導体装置を製造する場合でも、従来の方法よりも半導体装置の電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理方法を達成しうる半導体装置の製造方法および界面安定化処理装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、安定化処理に際して、水素ラジカルまたは重水素ラジカルを含有するガスを使用することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜と基体の界面と、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とする。
前記基体の温度を20℃〜200℃の範囲として、前記安定化処理工程を行うことが好ましい。
また、触媒を使用した接触分解反応により、水素および/または重水素を含有するガスから前記水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを生成させ、前記安定化処理工程を減圧下で行うことが好ましい。
本発明の半導体の界面安定化処理装置は、シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させるための半導体装置の界面安定化処理装置であって、シリコン半導体装置を保持するホルダーを備えた処理室と、該処理室内に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させるラジカル発生手段と、前記処理室内を減圧するための減圧手段とを具備することを特徴とする。
前記ラジカル発生手段は、水素および/または重水素を供給するガス供給手段と、接触分解反応により、供給された水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させる触媒と、該触媒を加熱するための触媒加熱手段とを具備することが好ましい。
前記ホルダーは、該ホルダーを加熱するホルダー加熱手段を具備することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1および図2は、それぞれ、本発明において安定化処理工程が施されるシリコン半導体装置10の一例であって、基体であるシリコン半導体基板11上に、ゲート絶縁膜12が形成され、その上にゲート電極13が形成されたものである。図中、符号14はソース領域となる拡散層、符号15はドレイン領域となる拡散層、符号16はサイドウォールである。
ここで、図1のゲート絶縁膜12はSiO2膜から形成され、図2のゲート絶縁膜12はSiO2膜12aとSi3N4膜12bの積層体から形成されている。ゲート絶縁膜12としては、これら酸化膜や、酸化膜と窒化膜の積層体などの他、窒化膜の単層(例えば、8nm以下のSi3N4膜)や、最近評価が進んでいる高融点金属の酸化膜(例えば、Al2O3、ZrO2、HfO2など)や希土類系元素の酸化膜(La2O3、Y2O3など)なども適用できる。
【0010】
本発明においては、このようなシリコン半導体装置10に、水素ラジカル、重水素ラジカルの少なくとも一方を含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板11との界面、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面の、少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を行う。このような安定化処理工程により、シリコン半導体装置10の電気的特性を効率的に向上させることができる。
【0011】
安定化処理工程には、例えば図3に示すような、界面安定化処理装置20を好ましく使用することができる。
この界面安定化処理装置20は、シリコン半導体装置10を保持するホルダー21を備えた処理室22と、この処理室22内に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させるラジカル発生手段23と、処理室22内を減圧するための排気装置などの減圧手段26とを備えている。なお、図3中符号27は、処理されるシリコン半導体装置10を搬送するための前室(図示略)との接続部である。
【0012】
この例の界面安定化処理装置20におけるホルダー21は、安定化処理対象であるシリコン半導体装置10を1枚のみ保持するものであるが、ホルダー21の形態には特に制限はなく、複数を同時に保持して安定化処理できるものであってもよい。また、シリコン半導体装置10を保持する向きも、この例のようにシリコン半導体基板が水平方向となる向きに限らず、鉛直方向となる向きなどであってもよい。
また、この例のホルダー21には、ヒータなどのホルダー加熱手段21aが内蔵されていて、ホルダー21を加熱できるようになっている。
【0013】
この例のラジカル発生手段23は、水素および/または重水素を処理室22内に供給するガス供給手段24と、接触分解反応により、供給された水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させる触媒25と、触媒25を加熱するための図示略の触媒加熱手段とを具備して構成されていて、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10と対向する位置に設けられている。
ガス供給手段24は、水素および/または重水素と、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスとが所定の比率で混合された混合ガスを供給するガス供給源24aと、ガス供給源24aからのガスを処理室22内に導入し触媒25に向けて噴射するための図示略の多数のガス導入穴が周壁に形成された管状のシャワーノズル24bとを備え、このようなシャワーノズル24bを使用することによって、ガス供給源24aからの混合ガスに含まれる水素および/または重水素を、効果的に触媒25に接触させられるようになっている。なお、管状のシャワーノズル24bの代わりに、多数のガス導入穴が片面に形成された中空板状のシャワープレートが備えられていても良い。
【0014】
触媒25としては、接触分解反応により、水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させられるものであれば制限はないが、例えば、タングステン、タンタル、白金、モリブデンなどの金属触媒を例示でき、これらを1種単独で、または2種以上を同時に使用できる。
触媒25の形態としては特に制限はないが、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10の全面に、発生した水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルが効果的に接触するような形態であることが好ましい。例えば、シリコン半導体装置10とシャワーノズル24bとの間に、触媒25である多数本のタングステン線をシリコン半導体基板と略平行となるように配置し、シャワーノズル24bからの水素および/または重水素が触媒25に接触して水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルとなり、それが均一にシリコン半導体装置10に拡散するような配置が好ましい。また、この際、効果的に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルがシリコン半導体装置10に均一に照射されるように、シリコン半導体基板に対向する複数のタングステン線の配置領域が単数または複数のシリコン半導体基板の配置領域より面積が広いことが望ましい。
【0015】
また、この例において触媒25を加熱する触媒加熱手段は、触媒25に直接電流を流すことにより触媒25を加熱するものである。処理室22には図示略の電流導入端子が設けられ、触媒25が例えばタングステン線である場合には、この端子とタングステン線とを接続することにより、処理室22内に触媒25を保持でき、かつ、触媒25を加熱することができる。
【0016】
次に、この界面安定化処理装置20を使用して、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10に対して水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させ、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板との界面、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面の、少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程について具体的に説明する。
まず、安定化処理対象であるシリコン半導体装置10を処理室22内に搬入し、ホルダー21に配置する。ついで、ガス供給源24aからの水素および/または重水素を含む混合ガスを、シャワーノズル24bのガス導入穴から発生させるとともに、減圧手段26を作動させて、処理室22内を数mTorr〜数100Torr程度まで減圧する。
また、触媒加熱手段により、触媒25を所定の温度に加熱する。例えば触媒25がタングステンである場合には、1000〜2000℃に加熱することが好ましい。
【0017】
一方、ホルダー加熱手段21aを作動させて、ホルダー21を適宜加熱することにより、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10を加熱する。例えば、シリコン半導体装置10を20〜200℃とする場合には、ホルダー21を同程度の温度まで加熱する。
【0018】
すると、シャワーノズル24bから発生した混合ガスが、加熱された触媒25に接触して接触分解反応し、高密度活性ラジカル(>1012〜1015atom/cm3)である水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生する。そして、この水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルは、ホルダー21に保持されたシリコン半導体装置10に接触して、ゲート絶縁膜12中や、ゲート絶縁膜12とシリコン半導体基板との界面、あるいは、ゲート絶縁膜12とゲート電極13との界面に導入される。導入された水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルは、これら界面に蓄積され、これらの界面の原子が水素原子および/または重水素原子と直接結合し、その原子配列あるいは原子結合状態が安定化される。
このような安定化処理は、例えば1〜5分程度行うことが好ましい。
また、この例では、ガス供給手段24は、水素および/または重水素と、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスとが所定の比率で混合された混合ガスを供給するガス供給源24aを備えているが、水素および/または重水素は不活性ガスで必ずしも希釈される必要はなく、ガス供給源24aは、水素単独、重水素単独、あるいは水素と重水素との混合ガスを供給するものであってもよい。
【0019】
原子配列あるいは原子結合状態が安定化されたかどうか、すなわち、欠陥が結合により不活性化され安定化されたかどうかを確認する方法としては、ソース・ドレイン間に流れる電流(ドレイン電流)が、一定割合変化するまでの時間(寿命)を測定する方法があり、未処理のものと比べて寿命が長くなっていれば安定化されたことを確認できる。また、間接的な確認方法として、XPS(X線光電子分光分析装置)によるシリコンと水素・重水素との結合度合い(ピーク強度の比較)の測定、SIMS(二次イオン質量分析計)による水素・重水素の分布(界面にどの程度集中しているか)の測定などの物理的分析方法も有効である。
こうして安定化処理されたシリコン半導体装置10には、必要に応じて、さらに金属配線のパターン形成、層間絶縁膜の形成などが施され、トランジスタとして使用される。
【0020】
なお、以上の例においては、界面安定化処理装置20として、ホルダー21を加熱するホルダー加熱手段21aを備えたものを例示したが、ホルダー加熱手段21aは必ずしも必要ではない。すなわち、従来の安定化処理では、一般に、450℃近傍の高温炉によって、水素ガスおよび/または重水素ガスの分子の熱エネルギーを高め、気相中のこれら分子の運動を活発化することにより、シリコン半導体基体中での拡散を速めて、欠陥部への結合速度を高めていたが、以上説明したような安定化処理工程では、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを使用しており、これら活性化された分子(または原子)はすでに十分なエネルギーを持っているため、従来の水素ガスおよび/または重水素ガスをそのまま使用する方法のように、高温に加熱する必要はない。よって、ホルダー加熱手段21aを設けず、20℃程度の室温でも十分に安定化処理することができる。しかしながら、処理速度や処理効率の向上の点からは、ホルダー加熱手段21aを設け、シリコン半導体装置10を加熱することが好ましい。安定化処理の速度、効率の点と、加熱によるエネルギーコストの点とを両方考慮した場合には、シリコン半導体装置10の温度を100℃〜200℃の範囲として、安定化処理工程を行うことが好ましい。
【0021】
以上説明したような半導体装置の製造方法にあっては、シリコン半導体基板11を備えた基体にゲート絶縁膜12とゲート電極13とが形成されたシリコン半導体装置10に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜12と基体の界面と、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とするので、極薄膜ゲート絶縁膜を有する最先端のシリコン半導体装置を製造する場合でも、従来よりもその電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理を行うことができる。また、対象となる半導体装置としては、シリコン半導体基板11を備えた基体にゲート絶縁膜12とゲート電極13とを有するシリコン半導体装置10であれば、具体的な構成に限定はない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
図3の界面安定化処理装置20を使用し、水素ラジカルを発生させて、図1に示すシリコン半導体装置(ゲート絶縁膜(SiO2)の厚さ=8nm)10に対して安定化処理を行った。
以下に安定化処理の条件を示す。
・供給ガス:100%水素ガス、20ml/min
・触媒:タングステンワイヤ
・触媒温度:1200℃
・処理温度(シリコン半導体基板(基体)の温度):450℃
・処理時間:5分、30分、60分、90分、120分
・処理室内圧力:7.6Torr
【0023】
このようにして水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。なお、耐用寿命τは、ドレイン電流が低下するまでの時間を測定することにより評価した。具体的には、ソース・ドレイン間に一定電圧(ここでは2.0V)を印加した状態で流れる電流(ドレイン電流)が一定割合(ここでは3%)変化するまでの時間を測定し、その時間を耐用寿命τと定義して相対比較した。
【0024】
[実施例2]
水素ガスのかわりに重水素ガスを供給ガスとして重水素ラジカルを発生させた以外は実施例1と同様にして安定化処理を行った。
このようにして重水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0025】
[比較例1]
実施例1で使用したものと同じシリコン半導体装置10を、ラジカル発生手段を備えていない処理室内に配置して450℃に保持し、この処理室内に窒素で希釈された2mol%水素ガスを3L/minの流量で所定時間(5分、30分、60分、90分、120分)流通させ、水素処理を行った。
また、このようにして水素で安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0026】
[比較例2]
2mol%水素ガスの代わりに2mol%重水素ガスを使用した以外は比較例1と同様の方法で、重水素処理を行った。
また、このようにして水素で安定化処理されたシリコン半導体装置10の、安定化処理時間に対する相対耐用寿命(log τ)[a.u.]をプロットしたものを図4のグラフに示す。
【0027】
図4のグラフから、水素ラジカルや重水素ラジカルを使用すると、水素や重水素を使用した場合に比べて、非常に短時間で同等の耐用寿命が得られること、また、水素や水素ラジカルを使用した場合に得られる耐用寿命に比べ、重水素や重水素ラジカルを使用した場合には、その10倍程度の耐用寿命が得られることがわかる。さらに、水素ラジカルや重水素ラジカルを使用すると、より短時間で高い効果が得られるが、それは、必要となるガス量が少量で済むことをも示すものである。
すなわち、実施例の方法によれば、処理時間の短縮と、デバイス特性の向上と、ガス利用効率の向上が達成できることが明らかとなった。
【0028】
[実施例3、4]
処理温度(シリコン半導体基板(基体)の温度)を200℃(実施例3)、100℃(実施例4)とした以外は実施例2と同様にして安定化処理を行った。
このようにして重水素ラジカルにより安定化処理されたシリコン半導体装置10の、相対安定化処理時間(log T)[a.u.]に対する相対耐用寿命をプロットしたものを図5のグラフに示す。また、実施例2で安定化処理されたもの、比較例2で安定化処理されたものについても、図5のグラフにプロットした。なお、Tは安定化処理時間である。
【0029】
図5のグラフから、重水素を使用した450℃での処理で得られる耐用寿命が、重水素ラジカルを使用することにより100℃の温度でも得られることが解る。また、重水素ラジカルを使用すると、重水素を使用した場合に比べて、非常に短時間で同等の耐用寿命が得られるが、その際、処理温度が高いほど、さらに短時間で同等の耐用寿命が得られることがわかる。
すなわち、重水素ラジカルを使用すると、処理温度の低温化が達成できることが明らかとなった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の半導体装置の製造方法によれば、極薄膜ゲート絶縁膜を有する半導体装置を製造する場合でも、従来の方法よりも半導体装置の電気的特性を向上させられるとともに、安定化処理の処理時間の短縮、ガスの利用効率の向上、さらには、処理温度の低温化など、高効率な安定化処理方法を達成できる。また。本発明の界面安定化処理装置によれば、このような効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコン半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】シリコン半導体装置の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の界面安定化処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】処理温度450℃における安定化処理時間と耐用寿命との関係を示すグラフである。
【図5】処理温度を変化させた際の安定化処理時間と耐用寿命との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 シリコン半導体装置
11 シリコン半導体基板
12 ゲート絶縁膜
13 ゲート電極
14 ソース領域となる拡散層
15 ドレイン領域となる拡散層
20 界面安定化処理装置
21 ホルダー
21a ホルダー加熱手段
22 処理室
23 ラジカル発生手段
24 ガス供給手段
25 触媒
26 減圧手段
Claims (6)
- シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させることにより、ゲート絶縁膜と基体の界面と、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面の少なくとも一方における原子配列あるいは原子結合状態を安定化する安定化処理工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 前記基体の温度を20℃〜200℃の範囲として、前記安定化処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 触媒を使用した接触分解反応により、水素および/または重水素を含有するガスから前記水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを生成させ、前記安定化処理工程を減圧下で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
- シリコン半導体基板を備えた基体にゲート絶縁膜とゲート電極とが形成されたシリコン半導体装置に対して、水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを含有するガスを接触させるための半導体装置の界面安定化処理装置であって、
シリコン半導体装置を保持するホルダーを備えた処理室と、
該処理室内に水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させるラジカル発生手段と、
前記処理室内を減圧するための減圧手段とを具備することを特徴とする半導体装置の界面安定化処理装置。 - 前記ラジカル発生手段は、
水素および/または重水素を供給するガス供給手段と、
接触分解反応により、供給された水素および/または重水素から水素ラジカルおよび/または重水素ラジカルを発生させる触媒と、
該触媒を加熱するための触媒加熱手段とを具備することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の界面安定化処理装置。 - 前記ホルダーは、該ホルダーを加熱するホルダー加熱手段を具備することを特徴とする請求項4または5に記載の半導体装置の界面安定化処理装置。
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JP2012186490A (ja) * | 2012-05-07 | 2012-09-27 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | 半導体装置及び半導体基板の重水素処理装置 |
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2003
- 2003-04-16 JP JP2003111826A patent/JP2004319771A/ja not_active Withdrawn
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