JP2004317359A - バイオセンサおよび酵素保存方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バックグラウンド電流の影響や酵素の失活が抑制できるバイオセンサを提供し、また酵素を安定した状態で保存する方法を提供する。
【解決手段】酵素および安定化剤を含んだ試薬部を備え、かつ試料に含まれる分析対象成分を分析する際に利用されるバイオセンサにおいて、安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を用いた。オリゴ糖としては、グルコースに複数の単糖が結合したものが挙げられる。安定化剤としては、最も好ましくは、ラフィノースを用いる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料(たとえば血液や尿などの生化学的試料)における分析対象成分(たとえばグルコース、コレステロールあるいは乳酸)を分析する際に使用されるバイオセンサ、および酵素の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血液中のグルコース濃度を測定する場合、簡易な手法として、使い捨てとして構成されたバイオセンサを利用する方法が採用されている(たとえば特許文献1参照)。バイオセンサとしては、たとえば本願の図1ないし図3に示したバイオセンサ1のように、血糖値の演算に必要な応答電流値を、作用極21および対極22を利用して電圧を印加したときに測定できるように構成されたものがある。バイオセンサ1では、基板2上に、スリット30が形成されたスペーサ3を介して、カバー4を積層した構成を有している。基板2上には、これらの要素2〜4により、キャピラリ5が規定されている。キャピラリ5は、毛細管力により血液を移動させるためのものであり、その内部において、作用極21および対極22をつなぐようにして試薬部23が設けられている。
【0003】
試薬部23には、通常、グルコースと特異的に反応してグルコースを酸化するための酸化還元酵素と、この酸化還元酵素と作用極21との間の電子伝達を助けるための電子伝達物質とが含まれている。電子伝達物質は、応答電流値を酸化電流として測定する場合には、試薬部23において酸化型として含有させられる。この試薬部23は、固体状に形成され、キャピラリ5に血液が導入されたときに溶解し、キャピラリ5内に酸化還元酵素や電子伝達物質が分散するように構成されている。
【0004】
しかしながら、バイオセンサ1では、保存時や使用時において一部の電子伝達物質が共存物質から電子を受け取って還元される。電子伝達物質が還元された場合には、作用極21および対極22の電圧の印加によって作用極21に対して電子が供給されてしまう。すなわち、電子伝達物質が試料中のグルコース以外の成分により還元された場合には、応答電流値の測定において、バックグラウンド電流が生じることとなる。このような電子伝達物質の還元は、酸化還元酵素を媒体として起こる。また、酸化還元酵素は、経時的に活性が小さくなるものであるから、バックグラウンド電流の問題とは別に、酸化還元酵素の活性が小さくなることを抑制する必要があり、バイオセンサ1の保存安定性を高めるために、酸化還元酵素の保存安定性を高めることが検討されている。
【0005】
上述した問題を解決するために、試薬部に安定化剤を含有させる方法がある。安定化剤の一例としては、スクロースが挙げられ、その他に、糖アルコールが挙げられる(たとえば特許文献2参照)。確かに、これらの安定化剤は、電子伝達物質の還元を抑制し、酸化還元酵素が失活するのを抑制することができる。しかしながら、スクロースはバックグラウンド電流を抑制する点において改善の余地があり、また糖アルコールについてはバックグラウンド電流および酵素活性維持の双方の点において改善の余地がある。
【0006】
【特許文献1】
特公平8−10208号公報
【特許文献1】
特開2002−207022号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとに考え出されたものであって、バックグラウンド電流の影響や酵素の失活を抑制することができるバイオセンサを提供し、また酵素を安定した状態で保存する方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討した結果、バイオセンサの試薬部に特定のオリゴ糖を含有させることにより、バックグラウンド電流の影響や酵素の失活が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の側面により提供されるバイオセンサは、酵素および安定化剤を含んだ試薬部を備え、かつ試料に含まれる分析対象成分を分析する際に利用されるバイオセンサであって、上記安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を含んでいることを特徴としている。
【0010】
このバイオセンサでは、試薬部に安定化剤として3個以上の単糖が結合したオリゴ糖が使用されている。その結果、後述の実施例からも明らかとなるが、本発明のバイオセンサでは、試薬部における酸化還元酵素の活性を長く維持でき、またバックグラウンド電流の影響を適切に抑制することができる。
【0011】
本発明のバイオセンサでは、安定化剤としてのオリゴ糖として、たとえば1つのグルコースに複数の単糖が結合したものを使用することができる。グルコースに結合させる単糖としては、たとえばフルクトース、ガラクトース、グルコース、マントース、リボース、アラビノース、キシロース、リブロース、およびキシルロースを例示することができる。これらのうち、グルコースに対してフルクトースおよびガラクトースのうちの少なくとも一方を結合させて、安定化剤としてのオリゴ糖を構成するのが好ましい。安定化剤としては、最も好ましくは下記化学式1で示されるラフィノースが使用される。
【0012】
【化1】
Figure 2004317359
【0013】
本発明で用いる酵素は、分析対象成分の種類に応じて選択され、典型的には、酸化還元酵素が用いられる。ここで、分析対象成分としては、たとえばグルコース、コレステロール、乳酸、およびビリルビンを挙げることができる。ただし、本発明を適用することができる分析対象成分は、例示したものには限定されない。分析対象成分がグルコースの場合には、酸化還元酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼやグルコースオキシダーゼが使用され、分析対象成分がコレステロールの場合には、酸化還元酵素としてコレステロールデヒドロゲナーゼやコレステロールオキシダーゼが使用される。
【0014】
試薬部におけるオリゴ糖の含有量は、使用される酵素の種類や活性に応じて適宜選択されるが、その含有量は、たとえば酵素100重量部(あるいは酵素活性1kU)に対して、10〜1000重量部(あるいは0.1〜10mg)とされる。
【0015】
試薬部は、固相あるいは液相として形成される。試薬部を固相として形成する場合には、試料が液体の場合に、試薬部に対して不溶なものとして構成してもよいし、試薬により溶解するように構成してもよい。試薬部を試料に溶解するように構成する場合には、試薬部におけるオリゴ糖の含有量は、試薬部に含まれる成分と試料において構築される液相反応系において、その割合が0.1〜5.0vol%となるように設定するのが好ましい。安定化剤の割合が不当に小さいと、酵素を十分に安定化させることができないばかりか、バックグラウンドの影響を十分に抑制することができず、また安定化剤の割合が不当に大きいと、試薬部の溶解性が悪化し、また試薬部が溶解したときの液相反応系の粘度が大きくなって測定精度および反応速度が低下することが懸念されるからである。
【0016】
本発明のバイオセンサは、液相反応系に電気的刺激を与え、かつ電気的応答を出力するための第1および第2電極をさらに備えたものとして構成してもよいし、試薬部が分析対象成分と反応して吸収波長の変化する試薬を含んだものとして、光学的手法により試料の分析を行えるように構成してもよい。
【0017】
本発明の第2の側面においては、酵素を安定化剤と共存させて保存する方法であって、安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を用いることを特徴とする、酵素保存方法が提供される。
【0018】
保存対象となる酵素としては、典型的には酸化還元酵素が挙げられ、その場合には、安定化剤としてのオリゴ糖として、ラフィノースが使用される。
【0019】
酵素に対する安定化剤の共存量は、酵素100重量部(あるいは酵素活性1kU)に対して、10〜1000重量部(あるいは0.1〜10mg)とされる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図1ないし図3を参照しつつ具体的に説明する。
【0021】
図1ないし図3に示したバイオセンサ1は、使い捨てとして構成されたものであり、濃度測定装置(図示略)に装着して血液中のグルコース濃度を測定するように構成されたものである。このバイオセンサ1は、長矩形状の基板2に対して、スペーサ3を介してカバー4を積層した形態を有している。バイオセンサ1においては、各要素2〜4により、基板2の長手方向に延びるキャピラリ5が規定されている。キャピラリ5は、開口部(導入口)50から導入された血液を、毛細管現象を利用して基板2の長手方向に移動させ、かつ導入された血液を保持するためのものである。
【0022】
スペーサ3は、基板2の上面20からカバー4の下面40までの距離、すなわちキャピラリ5の高さ寸法を規定するためのものである。このスペーサ3には、先端部が開放したスリット30が形成されている。スリット30は、キャピラリ5の幅寸法を規定するためのものであり、スリット30における先端の開放部分は、キャピラリ5の内部に血液を導入するための導入口50を構成している。このスペーサ3は、たとえばアクリルエマルジョン系材料を用いて形成されている。
【0023】
カバー4には、貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、キャピラリ5の内部の気体を外部に排気するためのものである。
【0024】
基板2の上面20には、作用極21、対極22および試薬部23が形成されている。作用極21および対極22は、全体として基板2の長手方向に延びている。作用極21および対極22の端部21a,22aは、基板2の短手方向に延び、かつ長手方向に並んでいる。一方、作用極21および対極22の端部21b,22bは、濃度測定装置(図示略)に設けられた端子に接触させるための端子部を構成している。
【0025】
試薬部23は、作用極21および対極22の端部21a,22aどうしを橋渡すようにして設けられており、たとえば電子伝達物質、酸化還元酵素および安定化剤を含む固体状に形成されている。この試薬部23は、血液に対して容易に溶解するものとして形成されている。したがって、キャピラリ5に血液を導入した場合には、基板2の表面に沿って血液が移動しやすく、またキャピラリ5の内部には、電子伝達物質、酸化還元酵素およびグルコースを含む液相反応系が構築される。
【0026】
酸化還元酵素としては、たとえばGODやGDHを用いることができ、典型的にはPQQGDHが使用される。電子伝達物質としては、たとえばルテニウム錯体や鉄錯体を使用することができ、典型的には[Ru(NH]ClやK[Fe(CN)]を使用することができる。
【0027】
安定化剤としては、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖が使用される。オリゴ糖としては、たとえばグルコースに複数の単糖が結合したものを使用するのが好ましい。グルコースに結合させる単糖としては、たとえばフルクトース、ガラクトース、グルコース、マントース、リボース、アラビノース、キシロース、リブロース、およびキシルロースを例示することができる。これらのうち、グルコースに対してフルクトースおよびガラクトースのうちの少なくとも一方を結合させて、安定化剤としてのオリゴ糖を構成するのが好ましい。安定化剤としては、最も好ましくは下記化学式2で示されるラフィノースが使用される。
【0028】
【化2】
Figure 2004317359
【0029】
試薬部23におけるオリゴ糖の含有量は酵素100重量部(あるいは酵素活性1kU)に対して、10〜1000重量部(あるいは0.1〜10mg)とされ、試薬部23が溶解したときの液相反応系において、その割合が0.1〜5.0vol%となるように設定するのが好ましい。
【0030】
バイオセンサ1を用いた血糖値の測定は、バイオセンサ1を濃度測定装置(図示略)に装着した上で、バイオセンサ1の導入口50を介してキャピラリ5に血液を供給することにより、濃度測定装置(図示略)において自動的に行われる。
【0031】
濃度測定装置(図示略)に対してバイオセンサ1を装着した場合、バイオセンサ1の作用極21および対極22が濃度測定装置の端子(図示略)に接触する。一方、キャピラリ5に血液を供給した場合、キャピラリ5において生じる毛細管現象により、血液が導入口50から貫通孔41に向けて進行する。血液の進行過程においては、血液により試薬部23が溶解させられ、酸化還元酵素および電気伝達物質が分散してキャピラリ5の内部に液相反応系が構築される。
【0032】
液相反応系においては、たとえば酸化還元酵素が血液中のグルコースと特異的に反応してグルコースから電子が取り出され、その電子が電子伝達物質に供給されて電子伝達物質が還元型とされる。液相反応系に対して作用極21および対極22を利用して電圧を印加した場合、還元型とされた電子伝達物質から作用極21に電子が供給される。一方、濃度測定装置においては、たとえば作用極21に対する電子供給量が、応答電流値として測定される。濃度測定装置(図示略)ではさらに、キャピラリ5に対する血液の供給から一定時間が経過したときに測定される応答電流値に基づいて、血糖値が演算される。
【0033】
上述したバイオセンサ1には、試薬部23に安定化剤として、ラフィノースのような3個以上の単糖が結合したオリゴ糖が使用されている。その結果、後述の実施例からも明らかとなるが、バイオセンサ1では、試薬部23における酸化還元酵素の活性を長く維持でき、またバックグラウンド電流の影響を適切に抑制することができる。
【0034】
本発明は、上述した実施の形態に係るバイオセンサには限定されない。本発明は、たとえば血液以外の試料を用いてグルコースを測定するためのバイオセンサ、血液中のグルコース以外の成分、あるいは血液以外の試料液を用いてグルコース以外の成分を分析するためのバイオセンサに対しても適用することができる。
【0035】
本発明はさらに、電圧印加による応答電流値に基づいてグルコース濃度を測定する場合に限らず、光学的手法を用いてグルコースなどの分析対象成分を分析するように構成されたバイオセンサに対しても適用することができる。
【0036】
【実施例】
以下においては、本発明に係るバイオセンサについて測定レンジおよびバックグラウンドの影響を検討し、あわせて本発明に係る保存方法について検討する。
【0037】
実施例1(測定レンジ)
本実施例では、本案センサおよび比較センサを用いて、グルコース濃度に対する応答電流値の直線性に基づいて測定レンジを検討した。
【0038】
グルコースセンサは、次の要領で作成した。まず、PET製の基板上に、カーボンインクを用いたスクリーン印刷により作用極および対極を形成した。次いで、電子伝達層および酵素含有層からなる2層構造の試薬部を形成した。電子伝達層は、作用極および対極の端部を覆うように、基板上に第1材料液を0.4μL塗布した後に第1材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)することにより形成した。酵素含有層は、電子伝達層上に、酸化還元酵素を含む第2材料液を0.3μL塗布した後に第2材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)することにより形成した。
【0039】
第1材料液は、下記表1に▲1▼〜▲4▼で示した材料をその番号通りの順序で混合した混合液を、1〜3日放置した後、この混合液に電子伝達物質を添加することにより調製した。電子伝達物質としては、[Ru(NH]Cl(同仁化学研究所製「LM722」)を使用し、試薬部における電子伝達物質の含有量は、キャピラリが標準液で満たされたときの濃度が4vol%となるように設定した。
【0040】
【表1】
Figure 2004317359
【0041】
表1などにおいて、SWNはルーセンタイトSWNの略称であり、CHAPSは3−[(3−cholamidopropyl)dimethylammonio] propanesulfonic acidの略称であり、ACESはN−(2−acetamido)−2−aminoethanesulfonic acidの略称である。SWNとしてはコープケミカル(株)製「3150」を使用し、CHAPSとしては同仁化学研究所製「KC062」を使用し、ACESとしては同仁化学研究所製「ED067」を使用した。なお、ACES溶液はpHが7.5となるように調製した。
【0042】
一方、第2材料液は、酸化還元酵素および安定化剤を0.1%CHAPSに溶解させることにより調製した。酸化還元酵素としては、酵素活性が500U/mgであるPQQGDHを使用した。安定化剤としては、ラフィノース(本案センサ)およびスクロース(比較センサ)を使用した。試薬部における安定化剤の含有量は、キャピラリが標準液で満たされたときの濃度が2vol%となるように設定した。
【0043】
応答電流値は、本案センサおよび比較センサのそれぞれに対して、グルコース濃度が0mg/dL、93mg/dL、415mg/dL、663mg/dLおよび836mg/dLの5種類の標準液1μLを用いて、印加電圧を200mVとして測定した。応答電流値のサンプリングは、作用極および対極の間に電圧を印加した状態を継続し、試薬部に対する標準液の供給が検知されてから5秒経過後に行った。標準液が供給されたことの検知は、応答電流値に基づいて、作用極と対極とが液絡したことを検出することにより行った。その結果を図4に示した。
【0044】
図4から分かるように、本案センサおよび比較センサともに、測定した範囲におけるプロット点の群が高い直線性を示し、グルコース濃度が高い場合(400mg/dL以上)でも適切にグルコース濃度を測定できることを示している。とくに、本案センサでは、グルコース濃度が0〜400mg/dLの範囲において、比較センサより高い直線性を示している。したがって、安定化剤としてラフィノースを用いた場合には、安定化剤としてスクロースを用いた場合と同等の測定レンジを有するとともに、低濃度から中濃度領域において、スクロースよりも正確な測定が行える。
【0045】
ところで、安定化剤は、その含有量が大きいほど酵素を安定化させる効果が大きくなると考えられるが、安定化剤の含有量が大きくなれば、試薬部の溶解性が低下し、また試薬部の溶解時において液相反応系の粘度が大きくなって測定精度および反応速度を低下させる要因ともなりかねない。しかしながら、本案センサでは、試薬部の溶解時において2vol%となるように安定化剤が含まれている。この濃度は、安定化剤の濃度として比較的に大きなものであり、このような濃度において高い直線性が得られていることの意義は大きい。すなわち、安定化剤としてラフィノースを用いた場合には、測定精度をさほど低下させることなく、より確実に酵素を安定化できることを意味している。
【0046】
実施例2(バックグラウンド電流の影響)
本実施例では、バイオセンサに対して標準液を供給したときの応答電流値に基づいて、バックグラウンド電流の影響について検討した。
【0047】
バイオセンサについては、実施例の場合と同様にして作成した。ただし、下記表2に示したように、本実施例では、安定化剤の種類の異なる9種類のバイオセンサを作成し、試薬部における安定化剤の含有量は、キャピラリが標準液で満たされたときの濃度が1vol%となるように設定した。
【0048】
応答電流値は、バイオセンサのキャピラリにグルコースを含まない標準液(蒸留水)を1μL供給し、印加電圧を200mVとして測定した。応答電流値のサンプリングは、作用極および対極の間に電圧を印加した状態を継続し、試薬部に対する標準液の供給が検知されてから5秒経過後に行った。標準液が供給されたことの検知は、応答電流値に基づいて、作用極と対極とが液絡したことを検出することにより行った。その結果を表2に示した。
【0049】
【表2】
Figure 2004317359
【0050】
表2から分かるように、安定化剤としてラフィノースを用いた場合(センサNO.1)には、安定化剤として2糖のオリゴ糖であるスクロースを用いた場合(センサNO.2)や糖アルコールを用いた場合(センサNO.3〜9)に比べて、バックグラウンド電流値が小さくなっている。したがって、安定化剤としてラフィノースを用いた場合には、保存時や使用時における電子伝達物質の還元を抑制し、バックグラント電流の影響を適切に抑制することができる。
【0051】
実施例3(残存活性)
本実施例では、酵素の保存方法について、凍結乾燥直後の酵素の活性と凍結乾燥後に5日間保存した酵素活性とを比較することにより評価した。
【0052】
酵素の凍結乾燥は、常法にしたがって行なった。安定化剤を共存させる場合には、凍結乾燥酵素を9000U/mlの溶液としたときに、安定化剤の濃度が0.5vol%となるように凍結乾燥させた。
【0053】
一方、酵素活性の測定は、DCIP法にしたがって行った。まず、リン酸緩衝液(pH6.0)を47mM、グルコースを0.20mM、フェナジメントサルフェートを2mM、および2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)を0.1mM含む混合溶液を調整した。この混合溶液を37℃に加温した後、溶液の温度を37℃に維持しつつ、凍結乾燥した酵素を、溶液中における活性が9000U/mlとなるように加えて反応を開始させた。酵素の添加後、波長が600nmの光に対する吸光度変化を測定した。残存活性は、DCIPの分子吸光係数を4.76mM/cmとし、1分間に1μmolのDCIPが酸化される量を1Uとして定義して算出した。
【0054】
5日後の活性の測定を行う場合には、酵素の保存は、30℃、80%Rhの環境下で行った。凍結乾燥直後および5日後の活性の測定結果については、表3に示した。表3においては、凍結乾燥直後の吸光度を100%とし、5日後の値については、その相対値として示してある。
【0055】
【表3】
Figure 2004317359
【0056】
表3から分かるように、安定化剤としてラフィノースを用いた本案保存方法では、安定化剤としてスクロースを用いた参考保存方法に比べて残存活性が若干劣るものの、安定化剤としてラクチトール(糖アルコール)を用いた比較保存方法1に比べて、残存活性が大きくなっている。すなわち、安定化剤としてラフィノースを用いた場合には、スクロースには劣るものの、相当に高いレベルで酵素の安定性を維持できるようなる。また、残存活性の評価は、安定化剤の含有量を比較的に小さくして行っている。すなわち、安定化剤としてラフィノースを用いた場合には、試薬部に少量の安定化剤を含ませるだけで酵素の失活を抑制することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明では、安定化剤として、ラフィノースのような3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を使用することにより、酸化還元酵素の活性を長く維持でき、また上記オリゴ糖を酸化還元酵素と共存させた試薬部を備えたバイオセンサでは、バックグラウンド電流の影響を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バイオセンサの一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示したバイオセンサの分解斜視図である。
【図3】図1のIII‐III線に沿う断面図である。
【図4】複数のグルコース濃度に対する応答電流値の測定結果をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1 バイオセンサ
21 作用極(第1電極)
22 対極(第2電極)
23 試薬部
5 キャピラリ(反応空間)

Claims (11)

  1. 酵素および安定化剤を含んだ試薬部を備え、かつ試料に含まれる分析対象成分を分析する際に利用されるバイオセンサであって、
    上記安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を含んでいることを特徴とする、バイオセンサ。
  2. 上記オリゴ糖は、グルコースに複数の単糖が結合したものである、請求項1に記載のバイオセンサ。
  3. 上記オリゴ糖は、ラフィノースである、請求項2に記載のバイオセンサ。
  4. 上記酵素は、グルコース酸化還元酵素である、請求項1ないし3のいずれかに記載のバイオセンサ。
  5. 上記試薬部を保持し、かつ上記試薬部に試料を供給したときに、試料と上記試薬部に含まれる成分とにより液相反応系を構築するための反応空間をさらに備えている、請求項1ないし4のいずれかに記載のバイオセンサ。
  6. 上記試薬部における上記オリゴ糖の含有量は、上記液相反応系における割合が0.1〜5.0vol%となるように設定されている、請求項5に記載のバイオセンサ。
  7. 上記液相反応系に電気的刺激を与え、かつ電気的応答を出力するための第1および第2電極をさらに備えている、請求項5または6に記載のバイオセンサ。
  8. 上記試薬部は、試料に含まれる分析対象成分と反応して吸収波長が変化する試薬を含んでおり、光学的手法により試料の分析を行えるように構成されている、請求項5または6に記載のバイオセンサ。
  9. 酵素を安定化剤と共存させて保存する方法であって、
    上記安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖を用いることを特徴とする、酵素保存方法。
  10. 上記酵素は酸化還元酵素であり、上記オリゴ糖はラフィノースである、請求項9に記載の酵素保存方法。
  11. 上記酵素に対するオリゴ糖の共存量は、酵素100重量部に対して、10〜1000重量部とされる、請求項9または10に記載の酵素保存方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113447541A (zh) * 2020-03-27 2021-09-28 爱科来株式会社 生物传感器和使用了该生物传感器的测定方法
WO2022119086A1 (ko) * 2020-12-02 2022-06-09 동우 화인켐 주식회사 패치형 바이오센서

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CN113447541A (zh) * 2020-03-27 2021-09-28 爱科来株式会社 生物传感器和使用了该生物传感器的测定方法
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