JP2004316477A - アーシングシステム並びにアーシング方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】自動車の電装系に電圧を供給するバッテリーのマイナス端子と、この自動車のエンジンに点火するための点火系とを、複数の細線で形成した複素線2・3から成るアース線1を用いて接続したものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエンジンに用いるアーシングシステム並びにアーシング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般的に、自動車のCPU,点火系,ライト等の電装系はプラス側は各機器に対して個別に配線されているが、その戻り道となるマイナス側は配線の簡略化及び低コスト化のため、ボディ全体を零電位の導体(ボディアース)とみなして一律にこのボディに配線されている。
【0003】
しかしながら、このボディアースは、部位によっては歪みや汚れ等、主にボディの劣化による抵抗が存在し、この抵抗により電流が阻害されることで、マイナス端子が完全な零電位とならないアース浮きと呼ばれる現象を生じる。
【0004】
このアース浮きを生じた場合には、バッテリーのプラス・マイナス間の電位差が小さくなること(電圧が低下すること)で、回路を流れる電流が低下し、CPU,点火系,ライト等の電装系が本来の性能を発揮できず、自動車全体の効率低下につながるために好ましくない。
【0005】
そこで、自動車のバッテリーのマイナス端子から新たに直接各電装機器にアース線を導くことにより、上述したアース浮きをなくして機器の持つ本来の性能を発揮させることを目的とするアーシングシステムが提案されている。
【0006】
このアーシングシステムは、具体的には、各電装機器のマイナス側をまとめてアースブロックを作り、アーシング用の極めて大きな導電率を持つ、例えば極太の銅線等の導体をアース線として、前記アースブロックとバッテリーのマイナス端子とを接続するものである。
【0007】
このアーシングシステムによって実行されたアーシングにより、実際にCPUの作動性の向上,ライト,オーディオ等の効率の向上,燃費の向上等を達成できることが確認されている。
【0008】
ところが、エンジンの始動性の向上及び低・中速時のトルクの向上が期待される点火系の効率化に関しては、未だにアーシングによって顕著な効果を確認できていないのが現状である。
【0009】
本発明は、上述のような現状に鑑み、エンジンの点火系と、バッテリーのマイナス端子とを、複数の細線で形成した複素線から成るアース線で接続することで、従来前記点火系に生じていたアース浮きをなくすことができるから、十分に発揮されていなかった点火系の本来の性能を引き出すことができ、アーシングによるパワーアップを確実に実感できる極めて実用的なアーシングシステム並びにアーシング方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するため手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
自動車の電装系に電圧を供給するバッテリーのマイナス端子と、この自動車のエンジンに点火するための点火系とを、複数の細線で形成した複素線2・3から成るアース線1を用いて接続したことを特徴とするアーシングシステムに係るものである。
【0012】
また、前記点火系は、高電圧を発生させるための点火コイルと、この点火コイルに高電圧を誘起するためのブレーカー部を有するディストリビュータと、この点火コイルにより発生させた高電圧により火花放電を行う点火プラグとから成り、この点火プラグの陰極部及び点火コイル,ディストリビュータの近傍と、前記バッテリーのマイナス端子とを、前記アース線1を用いて接続したことを特徴とする請求項1に記載のアーシングシステムに係るものである。
【0013】
また、前記アース線1は、異なる周波数特性を有する複数の複素線2・3により構成したハイブリッドケーブルとしたことを特徴とする請求項1,2のいずれか一項に記載のアーシングシステムに係るものである。
【0014】
また、前記請求項1〜3に記載のアーシングシステムを用いるものであって、前記バッテリーのマイナス端子と、前記点火系とを前記アース線1を用いて接続すると共に、このアース線1に電流を優先的に流すために、前記自動車に予め備えられている既存アース線を撤去することを特徴とするアーシング方法に係るものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
好適と考える本発明の実施の形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいてその作用効果を示して簡単に説明する。
【0016】
自動車のCPU,点火系,ライト等の電装系と、バッテリーのマイナス端子とをアース線1で接続することでアーシングを行う。
【0017】
一般的に点火系は、二つのコイルを重ねて巻いた点火コイルと、この点火コイルに二次起電力を誘起するために電流を遮断するブレーカー部を有するディストリビュータと、二次側コイルに誘導される高圧の二次起電力によって火花放電を行う点火プラグとから成るものである。
【0018】
従って、この点火系に流れる電流は、前記一次側コイルに流れる電流によって生じる磁束が二次側コイルを横切る変化率と、この一次側コイルと二次側コイルとの巻数比とによって決まる誘導起電力に応じて流れることになる。
【0019】
即ち、一定の大きさの電流が常に流れる直流電流ではなく、時間によって大きさが変化する交流電流となり、時間の影響を受けるためオームの法則を適用できなくなる。
【0020】
特に、火花放電を起こすような高電圧を発生させるような場合には、前記した二次側コイルを横切る際の磁束の変化率を大きくする必要があるため、この点火系に流れる電流は高周波電流となる。
【0021】
よって、従来の単導体のアース線を用いて、オームの法則によれば一見抵抗が零に見えるような配線を行っても、点火系に流れるのは高周波電流であるため、この高周波電流が単導体の表面に偏って流れる表皮(フェランチ)効果により前記アース線の抵抗は零とならず、アース浮きが発生して十分なアーシングの効果を得ることができない。
【0022】
この際、本発明は、前記点火系とバッテリーのマイナス端子とを複数の細線で形成した複素線2・3から成るアース線1で接続するから、表皮効果による導電率の低下が起こりにくく、常に高い導電率で高周波電流を流すことができ、更に、異なる周波数特性を有する複数の複素線2・3を使用しても良く、この場合より一層効果的にアース浮きを防ぐことができるため、従来は十分に発揮されていなかった点火系の本来の性能を引き出すことができる。
【0023】
具体的には、前記アース線1により、前記点火プラグの陰極部のアース浮きが防止されるから、エンジンを始動する際の要求電圧(放電開始電圧)が小さくなり、且つ、放電時間が延びることで、気温の低い冬季等のエンジンにとって苛酷な環境下でも確実なスパークを得られると共に、ピストン圧縮上死点後のスパークが延長される方向となるため常に高い燃焼効率で運転できるから、低・中速時のトルクが向上することになり、従来は実感しにくかったアーシングによるパワーアップを確実に実感することができる。
【0024】
更に、前記点火コイルのアース浮きが防止されることにより、前記点火コイルに蓄えられるエネルギーが増加し、より高い二次起電力を得ることができ、エンジンの始動がより一層容易となる。
【0025】
また、前記ディストリビュータのアース浮きが防止されることにより、点火波形の立ち上がりが早くなり、アクセルレスポンスが向上する。
【0026】
特に、例えばディストリビュータがフルトランジスタ式のブレーカー部を有する場合には、このフルトランジスタ式のブレーカー部のパワートランジスタにアーシングすることにより、より一層点火波形の立ち上がりが早くなることで、アクセルレスポンスが一層向上する。
【0027】
従って、本発明は、エンジンの点火系と、バッテリーのマイナス端子とを、細線で形成した複素線から成るアース線で接続することで、従来前記点火系に生じていたアース浮きをなくすことができるから、十分に発揮されていなかった点火系の本来の性能を引き出すことができ、アーシングによるパワーアップを確実に実感できる極めて実用的なアーシングシステム並びにアーシング方法となる。
【0028】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について説明する。
【0029】
本実施例は、自動車の電装系に電圧を供給するバッテリーのマイナス端子と、高電圧を発生させるための点火コイルと、この点火コイルに高電圧を誘起するフルトランジスタ式のブレーカー部を有するディストリビュータと、この点火コイルにより発生させた高電圧により火花放電を行う点火プラグとから成る点火系とを、複数の細線で形成した複素線2・3から成るアース線1によって接続したものである。
【0030】
また、本実施例においては、この接続したアース線1に優先的に電流を流すように、このエンジンに予め接続されていた既存アース線を撤去している。
【0031】
アース線1の概略は図1に図示したようなものであり、高周波伝送特性に秀れた複素線2や低周波伝送特性に秀れた複素線3等、異なる周波数特性を有する複数の複素線から成るハイブリッドケーブルである。尚、図中符号4はシースである。
【0032】
本実施例は、このアース線1を用いて、前記点火プラグの陰極部及び前記点火コイル,ディストリビュータの近傍と、前記自動車のバッテリーのマイナス端子とを接続したものである。
【0033】
また、本実施例においては、このディストリビュータの近傍(具体的には前記フルトランジスタ式のブレーカー部において電流を遮断する役目を果たすパワートランジスタ)に前記アース線1を接続するように構成することで極めて良好なアーシング効果を得ることができたが、このアース線1をエンジンヘッド部の対角(両辺)に接続しても十分なアーシング効果を得られる。
【0034】
尚、前記点火プラグの陰極部が複数ある場合には、これらの陰極部夫々に前記アース線1を接続することで一層良好なアーシング効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施例においては、前記バッテリーとの接続端子に圧着部による接続部を設けることで、ネジの緩み等によるトラブルの低減を図っている。
【0036】
また、多数の配線を取り回すことにより電流分布が乱れ、配線間に容量キャパシタンスの発生によるコンデンサ効果により電圧が異常上昇するのを防ぐため、前記バッテリーのマイナス端子から分岐する線を極力少なくするように構成している。
【0037】
具体的には、マイナス端子からの分岐を極力少なくするために、このアース線1を太く形成して前記マイナス端子からはごく小数だけ分岐し、接続先において多数の細い線でこの接続先夫々に分岐するように構成している。
【0038】
また、ボディアースは点火系から見た場合、単導体と同じであるため、前記点火系の点火コイル,点火プラグ,ディストリビュータへの接続は、できるだけ単導体区間が短くなるように構成している。
【0039】
本実施例は上述のように構成したから、自動車のCPU,点火系,ライト等の電装系と、バッテリーのマイナス端子とをアース線1により接続する際、前記点火系とバッテリーのマイナス端子とを、細線で形成した複素線2・3から成るアース線1で接続するから、前記エンジンの点火系に流れる高周波電流を前記アース線1により、高い導電率で抵抗なく流すことができ、従来のように表皮効果によって単導体の断面積を有効に利用できずにアース浮きを生じてしまうことがなく、十分に発揮されていなかった点火系の本来の性能を引き出すことができる。
【0040】
具体的には、前記点火系である点火プラグの陰極部は接地電極であるが、アース浮きがない程、所定の電圧がかかり易くなり、前記陽極部との間で放電しやすくなるために前記要求電圧が低下することになり、エンジンの始動性が向上し、また、点火時間が延びることで、前記放電状態を長く維持できるからより燃焼効率が良くなり、低・中速時のトルクが向上するから、従来は実感しにくかったアーシングによるパワーアップを確実に実感することができる。
【0041】
また、前記点火コイルにアーシングすることにより、前記点火コイルに蓄えられるエネルギーが増加し、より高い二次起電力を得ることができ、エンジンの始動がより一層容易となる。
【0042】
また、前記ディストリビュータの近傍にアーシングすることにより、点火波形の立ち上がりが早くなり、アクセルレスポンスが向上する。
【0043】
また、前記バッテリーのマイナス端子から分岐するアース線1を太くして、このアース線1の接続先において細く分岐するように構成したから、配線が簡略化されるだけでなく、配線間に容量キャパシタンスがなくなることで、コンデンサ効果が発生しなくなるから、電圧の異常上昇を阻止して安全に使用することができる。
【0044】
また、前記アース線1は、単導体ではなく周波数特性の異なる複素線2・3から成るハイブリッドケーブルとしたから、高周波電流が流れる場合でも表皮効果が極めて起こりにくく、高い導電率を保って抵抗なく流すことができる。
【0045】
従って、本実施例は、アーシングにより、点火系本来の性能を引き出すことができるから、アーシングによるパワーアップを確実に実感できる実用的で画期的なものとなる。
【0046】
尚、本実施例においては、前記ディストリビュータのブレーカー部がフルトランジスタ方式とした場合について説明したが、例えばポイント方式やコンデンサ放電式点火システム(CDI)等、方式の異なるブレーカー部を有するディストリビュータであってもアーシングの効果を実感できることは実証済みである。
【0047】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成したから、エンジンの点火系と、バッテリーのマイナス端子とを、細線で形成した複素線から成るアース線で接続することで、従来前記点火系に生じていたアース浮きをなくすことができるから、十分に発揮されていなかった点火系の本来の性能を引き出すことができ、アーシングによるパワーアップを確実に実感できる極めて実用的なアーシングシステムとなる。
【0048】
また、請求項2に記載の発明においては、点火波形の立ち上がりが早くなり、アクセルレスポンスを向上させることができる極めて実用的なものとなる。
【0049】
また、請求項3に記載の発明においては、高周波電流の表皮効果をより確実に防ぐことができるより一層実用的なものとなる。
【0050】
また、請求項4に記載の発明においては、配線が極めて簡略化されると共に、より効率よく電流を流すことができ、より一層アース浮きが発生しなくなる極めて実用的なアーシング方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のアース線の構成概略説明図である。
【符号の説明】
1 アース線
2 複素線
3 複素線
Claims (4)
- 自動車の電装系に電圧を供給するバッテリーのマイナス端子と、この自動車のエンジンに点火するための点火系とを、複数の細線で形成した複素線から成るアース線を用いて接続したことを特徴とするアーシングシステム。
- 前記点火系は、高電圧を発生させるための点火コイルと、この点火コイルに高電圧を誘起するためのブレーカー部を有するディストリビュータと、この点火コイルにより発生させた高電圧により火花放電を行う点火プラグとから成り、この点火プラグの陰極部及び点火コイル,ディストリビュータの近傍と、前記バッテリーのマイナス端子とを、前記アース線を用いて接続したことを特徴とする請求項1に記載のアーシングシステム。
- 前記アース線は、異なる周波数特性を有する複数の複素線により構成したハイブリッドケーブルとしたことを特徴とする請求項1,2のいずれか一項に記載のアーシングシステム。
- 前記請求項1〜3に記載のアーシングシステムを用いるものであって、前記バッテリーのマイナス端子と、前記点火系とを前記アース線を用いて接続すると共に、このアース線に電流を優先的に流すために、前記自動車に予め備えられている既存アース線を撤去することを特徴とするアーシング方法。
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