【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車のブレ−キチュ−ブや冷蔵庫の放冷管などに使用されている二重巻きパイプを製造する際の素材である片面複層めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
二重巻きパイプの製造は、所定幅に裁断しためっき鋼板を造管用ロールでパイプ状に二重に巻き重ねた後、めっき層の融点以上(例えば、めっき層がCuの場合は1150℃に加熱した窒素と水素の混合ガス雰囲気中)に2〜3分間保持して、Cuめっき層を溶融させ、その溶融しためっき層で巻き重ね面間を相互に融解接合させる、いわゆるセルフブレージングで行われている。セルフブレージングにより二重巻きパイプを製造するためのめっき鋼板としては、Cuめっき鋼板(特許文献1)やCu−Sn/Cuの2層めっき鋼板(特許文献2)などが提案されている。
【0003】
特許文献1で提案されているCuめっき鋼板では、めっき層が純Cuであるためにブレージング温度はCuの融点(約1085℃)+30℃以上、例えば、1150℃まで加熱する必要があった。加熱処理に要するコストが高くなるため、加熱処理温度を低下することが望まれている。
セルフブレージング時の加熱処理温度を低下するためには、めっき層の融点を下げる必要がある。融点を下げるためには、めっき金属種としてCuよりも融点の低い金属を選択すればよいが、二重巻きパイプの用途には熱伝導性がよく、展延性にも優れることが要求される。この点から、実際にCu以外のめっき金属が使用されている例は見当たらない。このため、Cuと低融点金属との合金化によりめっき層の融点を下げる方法が検討されている。
【0004】
Cuめっき層の融点を低下させるのに有効な低融点の合金化元素としては、例えば、「BINARY ALLOY PHASE DIAGRAMS」(ASM発行)にまとめられた2元系合金状態図から推定すれば、Ba,Mg,Ag,Sn,Be,Ti,Mn,Ce,Zn,Au,Ca等が挙げられる。これらのうち、Cu−ZnおよびCu−Sn合金めっきが工業的に実施されている。
このようなCu合金めっきでは、めっき層中のZnあるいはSnのCuに対する含有率の増加に伴ってめっき層の融点が下がり、ブレージング温度を下げることができる。例えば、上記状態図からは、Cu‐20質量%Zn合金では約1000℃に、Cu−20質量%Sn合金では約910℃にまで下げることが可能になる。
【0005】
また、特許文献2には、Cuめっき層上にCu−Sn合金めっき層を形成した多重巻きパイプ用Cu系複層めっき鋼板が提案されている。上層のCu−Sn合金めっき層は、下層Cuめっき上に上層Snめっきを施し、Sn/Cuの2層めっき鋼板を加熱処理して表層にCu−Sn合金層を形成するか、あるいはCuめっき層上にCu−Sn合金を電気めっきしてもよいとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−72086号公報
【特許文献2】
特開平7−233499号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、下層Cuめっき上に上層Snめっきを施して合金化させる場合、コイル形状での合金化熱処理に課題が残されている。すなわち、バッチ式コイル焼鈍炉での加熱処理では、コイル内でSnめっき層同士の融着が発生する恐れがある。また連続焼鈍ラインでの加熱処理の場合においても、ライン内の金属ロールにSnが融着したり、Snの蒸発が起こり目的の合金組成が得られないといった問題点がある。いずれの態様の合金化加熱処理であっても、ブレージング処理の前に実施する必要があるため、コストアップの要因になっている。さらに、加熱拡散によってCu−Sn合金層を形成させようとすると、加熱条件によってはSn;約38質量%のCu3SnやSn;約61質量%のCu6Sn5といった硬くて脆い金属間化合物が生成することがある。このような金属間化合物が形成されためっき鋼板を用いて二重巻きのパイプを造管しようとすると、造管後の曲げ加工において内面,外面ともめっき層の割れによる剥離が発生しやすくなる。
【0008】
またCuめっき層上にCu−Sn合金をめっきする場合、Cu−Sn合金めっきに非シアン浴を用いようとすると、陰極電流効率が低いため、生産性を向上させるためには多額の設備投資が必要になるばかりでなく、めっき浴の価格が非常に高価であることから、製造コストが高くなってしまうという問題点がある。一方、シアン浴による合金めっきでは、人体への毒性が高く、環境への負荷も大きいので好ましくない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、二重巻きパイプ製造時のブレージング温度を下げ、製造コストを削減することが可能な二重巻きパイプ用Cu系めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の二重巻きパイプ用Cu系めっき鋼板は、その目的を達成するため、両面に片面当り1.0〜10.0μmの膜厚でCuめっき層が設けられ、さらにその片面のCuめっき層上に15μm以下の膜厚のZnめっき層がZn/Cuのめっき膜厚比が0.75〜2.05の範囲になるように設けられていることを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明者らは、Cuとの合金化元素として、安価で延性に優れるZnを選択し、二重巻きパイプ造管時に、パイプ内面はCuめっき層になるように、かつ融着面はZn/Cu複層めっき層とCuめっき層が接するように構成すれば、Cuめっき二重巻きパイプの加工性や耐食性あるいは各種機能性を低下させることなく、ブレージング温度を低下できることを見出した。
すなわち、図1に示すように鋼板1の両面にCuめっき層2を形成し、その片面の上面にのみZnめっき層を形成ことにより、パイプ造管後の工程であるブレージング時の加熱工程で上層のZnめっき層が下層のCuめっき層および造管後に接するCuめっき層に相互拡散してCu−Zn合金層3を形成することにより、めっき層の融点が下がり、比較的低温での加熱で融着層4の生成が可能となるのである。
【0011】
二重巻きパイプの内面をCuめっき層としている理由は、造管時にマンドレルと当ることにより生じるめっき層の剥離や焼付きを防止するためである。内面をZn/Cu複層とした場合、表層のZn層が軟らかく、焼付き等が起こりやすくなる。さらには、二重巻きパイプの外面をZn/Cu複層めっき層としているために、ブレージング後にはCu−Zn合金となって耐食性が向上する。
【0012】
【実施の態様】
本発明二重巻きパイプ用Cu系めっき鋼板のめっき原板としては、板厚0.2〜1.0mm程度の通常の冷延鋼板で十分である。通常の脱脂・酸洗等の前処理を施した後、通常のCuめっきを施す。
Cuめっき手段としては、電気めっき,無電解めっき,気相めっきのいずれでもよい。公知の方法で膜厚が片面当り1.0〜10.0μmになるようにCuめっきする。下層のCuめっき厚が1.0μmに満たないと二重巻きパイプ造管時に内側の表層めっき層が少なく、マンドレルによってキズが付き易くなる。キズが付くと鋼素地が露出して耐食性が低下することになる。膜厚を10.0μmよりも厚くすると、ろう付け部分となるめっき層全体の融点を下げるために必要なZnめっき膜厚も厚くする必要があり、全体としてコストアップになる。
【0013】
膜厚をコントロールし易い点を考慮すると、電気めっき法で行うことが好ましい。またコスト的な面をも考慮すると硫酸銅めっき浴を用いることが好ましい。この際、鋼板上に直接硫酸銅めっき浴を適用すると、鋼板表面にCuが置換析出するため密着性が低下し、造管時にCuめっき層が剥離しやすくなる。そこで、予めピロリン酸銅めっき浴等を用いて、Cuが置換析出しないように膜厚、例えば0.1〜0.4μm程度のストライクめっきを施した後、硫酸銅めっき浴による所定膜厚のCuめっきを施すことが好ましい。
【0014】
Cuめっき層上にZnめっき層が設けられる。
上層のZnめっき膜厚は、Zn/Cuのめっき膜厚比を0.75〜2.05の範囲内であって、しかも15μm以下にする。Zn/Cuのめっき膜厚比が0.75に満たないと、加熱時に溶融してCuめっき層に拡散するZn量が少ないために融点は十分に下がらない。逆にZn/Cuのめっき膜厚比を2.05よりも大きくすると、めっき層の硬度が上昇して造管後の曲げ加工で外面のめっき層に割れや剥離が生じやすくなる。また、Znめっきの膜厚が15μmを超えると、Zn/Cuのめっき膜厚比が0.75〜2.05の範囲内にあっても、CuめっきとZnめっきを加えためっき層が厚くなりすぎ、加熱によってめっき層が溶融状態となったとき、パイプ外面が均一な表面とならなかったり、ブレージング設備の内部を汚すという問題も起こりやすくなる。
【0015】
上記のようにCuめっき,ZnめっきおよびZn/Cuのめっき膜厚比を調整すると、ブレージング温度は、純Cuめっきを施した場合と比較して、約100〜200℃下げることができる。
Znめっき層も、通常の電気めっき、気相めっきのいずれかで形成される。膜厚をコントロールし易い点を考慮すると、Cuめっきと同様に、電気めっき法で行うことが好ましい。電気Znめっきを行う際に用いる浴としては、一般的に用いられている硫酸浴,ジンケート浴,塩化アンモン浴あるいは塩化Zn浴等が使用できる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
〔実施例1〕
アルカリ脱脂及び酸洗の前処理を施した板厚0.5mmの冷延鋼板に、ピロリン酸銅(Cu2P2O7・3H2O)56g/l,ピロリン酸カリウム(K4P2O7)253g/l,pH8.7,P比(P2O7 4−/Cu2+)8からなるピロリン酸銅めっき浴を用いて、浴温60℃,電流密度5A/dm2の条件で、膜厚0.3μmの下地電気Cuめっきを施した。次に、この下地Cuめっき鋼板に硫酸銅200g/l,硫酸45g/lからなる硫酸銅めっき浴を用いて、浴温30℃,電流密度15A/dm2の条件で、片面当りのCuの総膜厚が表1に示すCuめっきを施した。
続いて、このCuめっき層の上に、硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)350g/l,硫酸ナトリウム(NaSO4・7H2O)80g/lからなるめっき浴を用いて、浴温60℃,電流密度30A/dm2の条件で、表1に示す膜厚のZnめっきを片面に施して、Zn/Cu複層めっき鋼板を製造した。
以下、簡便のためにZnめっきを施した面をA面,施していない面をB面と称することにする。
【0017】
以上のようにして作製したZn/Cu複層めっき鋼板から試験片を採取して、平板形状でめっき層の融解接合試験,めっき層の溶融垂れ試験を行った。
これらの試験および観察評価の結果を表1に併せて示す。
なお、各試験方法および評価基準は次の通りである。
〔融解接合試験〕
2枚の試験片のA面とB面とを重ね合わせ、スポット溶接で密着固定したものを複数個作製し、これを800〜1140℃の各窒素ガス雰囲気中で3分間加熱して、めっき層を融解接合させ、完全に融着する温度を20℃刻みで調査した。
〔溶融垂れ試験〕
100×100mmの試験片を45度の傾斜をもたせて、A面を下面として融着温度+50℃の窒素ガス雰囲気中で3分間加熱して、めっき層の溶融垂れ発生の有無を肉眼により調査し、垂れの発生なしを○,垂れありを×で評価した。
【0018】
【0019】
〔実施例2〕
実施例1で作製した鋼板を用いて、造管ラインにおいて10%水素−窒素ガス雰囲気下で最高材温が(表1の融着温度)+30℃のブレージング処理を行って外径15mmとなるような造管を行った。
続いて、作製した二重巻きパイプを長手方向に垂直に50cm毎に切断して10本の試験片を得た。この試験片にいついて、外観観察による内外面の形状評価およびボイド試験を行った。これらの試験および観察結果を表2に示す。
なお、試験方法および評価基準は次の通りである。
〔外観観察による形状評価〕
切断断面を光学顕微鏡にて観察し、10本の試験片のうち、最も状態の悪い試験片をそのパイプの評価とした。そして、内面形状については、カジリによる焼付きやめっき層の剥離が発生していないものを○,カジリによる焼付きの発生や剥離が生じていたものを×で評価した。また、外面形状については、液垂れが発生しておらず目視外観が良好であったものを○,液垂れが発生しており目視外観が不良であったものを×で評価した。
〔曲げ加工密着性試験〕
二重巻きパイプを180度密着折り曲げして、折り曲げ部にセロハンテープを貼り付けて引き剥がし、めっき層の剥離の有無を次の基準で評価した。
○:めっき層の剥離なし
△:若干めっき層の剥離あり
×:めっき層の剥離あり
【0020】
【0021】
表1,2の結果からわかるように、両面にCuめっきを施し、さらに片面の上層にZnめっきを施した鋼板を素材として、パイプ内面がCuめっき面になるように二重巻きパイプに造管し、セルフブレージング処理を施すとき、Cuめっき層およびZnめっき層が請求項の記載で特定した関係を外れると、所望の二重巻きパイプが得られていない。すなわち、下層Cuめっき膜厚が1.0μmに満たないと、内面にカジリによる焼付きの発生、あるいはめっき層の剥離が発生している(試験No.14)。上層に施したZnめっき膜厚がZn/Cuのめっき膜厚比0.75に満たないように薄いと、融着温度が1000℃を超え、ブレージング温度を低くすることができていない(試験No.13)。逆にZnめっき膜厚がZn/Cuのめっき膜厚比2.05を超えるほどに厚くZnめっきを施すと、ブレージング後の外面のめっき層の加工密着性が低下している(試験No.15)。さらに、上層のZnめっき膜厚が15μmを超えると、液垂れが生じて外面に欠陥が生じている(試験No.16)。
これに対して、片面当り1.0〜10.0μmの膜厚でCuめっき層を両面に形成し、さらにその片面のCuめっき層上にZn/Cuのめっき膜厚比が0.75〜2.05の範囲でしかも最大膜厚15μmのZnめっき層を形成しためっき鋼板を素材としてパイプ内面がCuになるように二重巻きパイプを造管し、ブレージング処理を施すと、加熱温度を100〜200℃下げたブレージングが可能で、焼付きや溶融垂れがない奇麗な外観の二重巻きパイプが得られている(試験No.1〜12)。
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によるCu系複層めっき鋼板は、めっき層の融点が下がるため、二重巻きパイプ製造時のブレージング温度を下げることができ、製造コストの削減に寄与することができる。しかも、本発明のCu系複層めっき鋼板を用いると、二重巻きパイプ製造時に造管機のマンドレルの焼付きもなく、ブレージング時のめっき層の溶融垂れをも防止することができ、外観の奇麗な二重巻きパイプが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】二重巻きパイプを示す模式的断面図
【符号の説明】
1:基地鋼板 2:Cuめっき層 3:Cu−Zn合金めっき層
4:融着層[0001]
[Industrial applications]
BACKGROUND OF THE INVENTION 1. Field of the Invention The present invention relates to a single-sided multi-layer plated steel sheet which is used as a material for manufacturing a double-wound pipe used for a brake tube of an automobile, a cooling tube of a refrigerator, and the like.
[0002]
[Prior art]
In the production of a double-wound pipe, a plated steel sheet cut to a predetermined width is double-wrapped in a pipe shape using a pipe-forming roll, and then heated to a melting point of the plating layer or higher (for example, heating to 1150 ° C. when the plating layer is Cu). (In a mixed gas atmosphere of nitrogen and hydrogen) for 2 to 3 minutes to melt the Cu plating layer, and to perform fusion bonding between the wrapped surfaces with the molten plating layer, so-called self-brazing. I have. As plated steel sheets for manufacturing double-wound pipes by self-brazing, Cu-plated steel sheets (Patent Document 1) and Cu-Sn / Cu two-layer plated steel sheets (Patent Document 2) have been proposed.
[0003]
In the Cu-plated steel sheet proposed in Patent Literature 1, since the plating layer is pure Cu, the brazing temperature has to be heated to the melting point of Cu (about 1085 ° C.) + 30 ° C. or more, for example, 1150 ° C. Since the cost required for the heat treatment increases, it is desired to lower the heat treatment temperature.
In order to lower the heat treatment temperature during self-brazing, it is necessary to lower the melting point of the plating layer. In order to lower the melting point, a metal having a lower melting point than Cu may be selected as the plating metal species. However, the use of a double-wound pipe requires good heat conductivity and excellent ductility. From this point, there is no example in which a plating metal other than Cu is actually used. For this reason, a method of lowering the melting point of the plating layer by alloying Cu with a low melting point metal has been studied.
[0004]
Examples of the low melting point alloying element effective for lowering the melting point of the Cu plating layer include Ba, Ba, as estimated from a binary alloy phase diagram compiled in “BINARY ALLOY PHASE DIAGRAMS” (issued by ASM). Examples include Mg, Ag, Sn, Be, Ti, Mn, Ce, Zn, Au, Ca, and the like. Among them, Cu-Zn and Cu-Sn alloy plating are industrially practiced.
In such Cu alloy plating, as the content of Zn or Sn in the plating layer relative to Cu increases, the melting point of the plating layer decreases, and the brazing temperature can be lowered. For example, from the above phase diagram, the temperature can be lowered to about 1000 ° C. for the Cu-20 mass% Zn alloy and to about 910 ° C. for the Cu-20 mass% Sn alloy.
[0005]
Patent Literature 2 proposes a Cu-based multi-layer plated steel sheet for a multiply-wound pipe in which a Cu-Sn alloy plating layer is formed on a Cu plating layer. The upper Cu—Sn alloy plating layer is formed by applying an upper Sn plating on a lower Cu plating and heat-treating a Sn / Cu two-layer plating steel sheet to form a Cu—Sn alloy layer on a surface layer, or a Cu plating layer. It is stated that a Cu-Sn alloy may be electroplated thereon.
[0006]
[Patent Document 1]
JP-A-4-72086 [Patent Document 2]
JP-A-7-233499
[Problems to be solved by the invention]
However, when an upper Sn coating is applied on the lower Cu plating to form an alloy, there remains a problem in heat treatment for alloying in a coil shape. That is, in the heat treatment in the batch type coil annealing furnace, there is a possibility that fusion between the Sn plating layers occurs in the coil. Further, even in the case of the heat treatment in the continuous annealing line, there is a problem that Sn is fused to the metal roll in the line, or Sn evaporates, and a desired alloy composition cannot be obtained. Regardless of the form of the alloying heat treatment, it must be performed before the brazing treatment, which causes an increase in cost. Furthermore, if an attempt is made to form a Cu—Sn alloy layer by heat diffusion, depending on the heating conditions, Sn is a hard and brittle intermetallic compound such as about 38 mass% of Cu 3 Sn or Sn; about 61 mass% of Cu 6 Sn 5 . May be generated. If it is attempted to form a double-wound pipe using a plated steel sheet on which such an intermetallic compound is formed, peeling due to cracks in the plating layer is likely to occur on both the inner surface and the outer surface during bending after the pipe is formed.
[0008]
Further, when plating a Cu-Sn alloy on a Cu plating layer, if a non-cyanide bath is used for the Cu-Sn alloy plating, the cathode current efficiency is low, so a large capital investment is required to improve productivity. In addition to the necessity, the price of the plating bath is extremely high, so that there is a problem that the production cost is increased. On the other hand, alloy plating using a cyanide bath is not preferred because it has high toxicity to the human body and a large burden on the environment.
The present invention has been devised to solve such a problem, and it is possible to lower the brazing temperature during the production of a double-wound pipe and reduce the production cost. The purpose is to provide.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the object, the Cu-plated steel sheet for a double-wound pipe according to the present invention is provided with a Cu plating layer on both sides with a thickness of 1.0 to 10.0 μm per side, and further, a Cu plating layer on one side thereof A Zn plating layer having a thickness of 15 μm or less is provided thereon so that a plating film ratio of Zn / Cu is in a range of 0.75 to 2.05.
[0010]
[Action]
The present inventors have selected Zn, which is inexpensive and has excellent ductility, as an alloying element with Cu. When forming a double-wound pipe, the inner surface of the pipe becomes a Cu plating layer, and the fusion surface is Zn / It has been found that the brazing temperature can be reduced without lowering the workability, corrosion resistance, or various functions of the Cu-plated double-wound pipe if the Cu multilayer plating layer and the Cu plating layer are configured to be in contact with each other.
That is, as shown in FIG. 1, a Cu plating layer 2 is formed on both surfaces of a steel sheet 1 and a Zn plating layer is formed only on the upper surface of one side thereof, so that an upper layer is formed in a heating step during brazing, which is a step after pipe making. Is diffused into the lower Cu plating layer and the Cu plating layer that comes into contact with the lower layer after forming the tube to form the Cu—Zn alloy layer 3, thereby lowering the melting point of the plating layer and melting by heating at a relatively low temperature. The formation of the deposition layer 4 becomes possible.
[0011]
The reason why the inner surface of the double-wound pipe is made of the Cu plating layer is to prevent peeling and seizure of the plating layer caused by contact with the mandrel during pipe making. When the inner surface is a Zn / Cu multilayer, the surface Zn layer is soft and seizure or the like is likely to occur. Furthermore, since the outer surface of the double-wound pipe is a Zn / Cu multi-layer plating layer, it becomes a Cu-Zn alloy after brazing to improve corrosion resistance.
[0012]
Embodiment
An ordinary cold-rolled steel sheet having a sheet thickness of about 0.2 to 1.0 mm is sufficient as a plating base sheet of the Cu-based plated steel sheet for the double wound pipe of the present invention. After performing pretreatment such as normal degreasing and pickling, normal Cu plating is performed.
The Cu plating means may be any of electroplating, electroless plating and vapor phase plating. Cu plating is performed by a known method so that the film thickness is 1.0 to 10.0 μm per side. If the Cu plating thickness of the lower layer is less than 1.0 μm, the inner surface plating layer is less at the time of forming a double-wound pipe, and the mandrel tends to scratch. If the scratch is made, the steel base is exposed and the corrosion resistance is reduced. If the film thickness is larger than 10.0 μm, the Zn plating film thickness required for lowering the melting point of the entire plating layer to be brazed must also be increased, which increases the cost as a whole.
[0013]
Considering that the film thickness is easily controlled, it is preferable to perform the electroplating method. In view of cost, it is preferable to use a copper sulfate plating bath. At this time, when a copper sulfate plating bath is applied directly on the steel sheet, Cu is substituted and precipitated on the surface of the steel sheet, so that the adhesion is reduced and the Cu plating layer is easily peeled off during pipe making. Therefore, after a strike plating having a thickness of, for example, about 0.1 to 0.4 μm is performed using a copper pyrophosphate plating bath or the like so as not to cause substitutional precipitation of Cu, a Cu film having a predetermined thickness is formed using a copper sulfate plating bath. Preferably, plating is performed.
[0014]
A Zn plating layer is provided on the Cu plating layer.
The Zn plating film thickness of the upper layer is set so that the plating film thickness ratio of Zn / Cu is in the range of 0.75 to 2.05 and 15 μm or less. If the Zn / Cu plating film thickness ratio is less than 0.75, the melting point is not sufficiently lowered because the amount of Zn that melts during heating and diffuses into the Cu plating layer is small. Conversely, when the Zn / Cu plating film thickness ratio is greater than 2.05, the hardness of the plating layer increases, and cracking or peeling is likely to occur in the plating layer on the outer surface due to bending after pipe formation. Further, when the thickness of the Zn plating exceeds 15 μm, the plating layer obtained by adding the Cu plating and the Zn plating becomes thick even if the plating film ratio of Zn / Cu is in the range of 0.75 to 2.05. When the plating layer is in a molten state due to heating, the problem that the outer surface of the pipe does not become a uniform surface or that the inside of the brazing equipment is soiled easily occurs.
[0015]
By adjusting the plating thickness ratio of Cu plating, Zn plating and Zn / Cu as described above, the brazing temperature can be lowered by about 100 to 200 ° C. as compared with the case where pure Cu plating is performed.
The Zn plating layer is also formed by one of ordinary electroplating and vapor phase plating. Considering that the film thickness is easy to control, it is preferable to perform the electroplating similarly to the Cu plating. As a bath used for performing the electro-Zn plating, a generally used sulfuric acid bath, zincate bath, ammonium chloride bath, Zn chloride bath, or the like can be used.
[0016]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described in detail based on examples.
[Example 1]
The cold-rolled steel sheet having a thickness of 0.5mm was subjected to a pretreatment alkaline degreasing and pickling, copper pyrophosphate (Cu 2 P 2 O 7 · 3H 2 O) 56g / l, potassium pyrophosphate (K 4 P 2 O 7 ) Using a copper pyrophosphate plating bath composed of 253 g / l, pH 8.7, and a P ratio (P 2 O 7 4− / Cu 2+ ) 8, at a bath temperature of 60 ° C. and a current density of 5 A / dm 2 , An underlying electric Cu plating having a thickness of 0.3 μm was applied. Next, a copper sulfate plating bath composed of 200 g / l of copper sulfate and 45 g / l of sulfuric acid was used for the underlying Cu-plated steel sheet at a bath temperature of 30 ° C. and a current density of 15 A / dm 2 to obtain a total Cu content per side. Cu plating having a film thickness shown in Table 1 was performed.
Subsequently, on the Cu plating layer using the plating bath consisting of zinc sulfate (ZnSO 4 · 7H 2 O) 350g / l, sodium sulfate (NaSO 4 · 7H 2 O) 80g / l, bath temperature 60 ° C. Under the condition of a current density of 30 A / dm 2 , Zn plating having a thickness shown in Table 1 was applied to one surface to produce a Zn / Cu multi-layer plated steel sheet.
Hereinafter, for simplicity, the surface on which Zn plating is performed is referred to as surface A, and the surface on which Zn plating is not performed is referred to as surface B.
[0017]
A test piece was sampled from the Zn / Cu multi-layer plated steel sheet produced as described above, and a fusion bonding test of the plating layer and a sagging test of the plating layer were performed in a flat plate shape.
Table 1 also shows the results of these tests and observation evaluation.
In addition, each test method and evaluation criteria are as follows.
(Fusion joining test)
A surface and a B surface of the two test pieces were overlapped and fixed to each other by spot welding to produce a plurality of test pieces, which were heated in a nitrogen gas atmosphere at 800 to 1140 ° C. for 3 minutes to form a plating layer. Were melt-bonded, and the temperature at which complete fusion was performed was investigated in steps of 20 ° C.
(Melting test)
A test specimen of 100 × 100 mm was inclined at 45 °, and the surface A was heated in a nitrogen gas atmosphere at a fusion temperature of + 50 ° C. for 3 minutes with the surface A as a lower surface.な し, no sagging, and ×, sagging.
[0018]
[0019]
[Example 2]
The steel sheet prepared in Example 1 was subjected to a brazing treatment at a maximum temperature of (fusing temperature in Table 1) + 30 ° C. in a 10% hydrogen-nitrogen gas atmosphere in a pipe-forming line so as to have an outer diameter of 15 mm. Pipe making.
Subsequently, the produced double-wound pipe was cut perpendicularly to the longitudinal direction every 50 cm to obtain ten test pieces. The test piece was subjected to a shape evaluation of the inner and outer surfaces by observing the appearance and a void test. Table 2 shows the results of these tests and observations.
The test method and evaluation criteria are as follows.
[Shape evaluation by external appearance observation]
The cut cross section was observed with an optical microscope, and among the ten test pieces, the test piece in the worst condition was evaluated for the pipe. With respect to the inner surface shape, も の indicates that no galling or peeling of the plating layer occurred, and X indicates that galling or peeling occurred due to galling. Regarding the outer surface shape, the case where no dripping occurred and the visual appearance was good was evaluated as ○, and the case where dripping occurred and the visual appearance was poor was evaluated as x.
(Bending process adhesion test)
The double-wound pipe was bent 180 ° in close contact, a cellophane tape was applied to the bent portion and peeled off, and the presence or absence of peeling of the plating layer was evaluated according to the following criteria.
○: No peeling of plating layer △: Slight peeling of plating layer ×: Peeling of plating layer
[0021]
As can be seen from the results in Tables 1 and 2, a steel pipe with both surfaces plated with Cu and further with a Zn plating on the upper surface on one side was used as a material, and the pipe was formed into a double-wound pipe so that the inner surface of the pipe became the Cu plated surface. However, when performing the self-brazing treatment, if the Cu plating layer and the Zn plating layer deviate from the relationship specified in the claims, a desired double-wound pipe cannot be obtained. That is, when the lower Cu plating film thickness is less than 1.0 μm, seizure due to galling or peeling of the plating layer occurs on the inner surface (Test No. 14). If the Zn plating film thickness applied to the upper layer is so thin as to be less than the Zn / Cu plating film thickness ratio 0.75, the fusion temperature exceeds 1000 ° C. and the brazing temperature cannot be lowered (Test No. .13). Conversely, when Zn plating is applied so thick that the Zn plating film thickness exceeds the Zn / Cu plating film thickness ratio of 2.05, the processing adhesion of the plating layer on the outer surface after brazing is reduced (Test No. 15). ). Further, when the thickness of the upper Zn plating film exceeds 15 μm, liquid dripping occurs and defects occur on the outer surface (Test No. 16).
On the other hand, a Cu plating layer is formed on both sides with a thickness of 1.0 to 10.0 μm per side, and the Zn / Cu plating thickness ratio is 0.75 to 2 on the Cu plating layer on one side. When a double-wound pipe is formed from a plated steel sheet having a Zn plating layer having a maximum thickness of 15 μm and having a maximum thickness of 15 μm, and the inner surface of the pipe is made of Cu and subjected to a brazing treatment, the heating temperature becomes 100 to 100 ° C. A double-wound pipe with a beautiful appearance that can be brazed at 200 ° C. lower and has no seizure or dripping is obtained (Test Nos. 1 to 12).
[0022]
【The invention's effect】
As described above, the Cu-based multi-layer plated steel sheet according to the present invention can lower the brazing temperature at the time of manufacturing a double-wound pipe because the melting point of the plated layer is lowered, which can contribute to a reduction in manufacturing cost. it can. Moreover, when the Cu-based multi-layer plated steel sheet of the present invention is used, there is no seizure of the mandrel of the tube-forming machine at the time of manufacturing the double-wound pipe, and it is possible to prevent the plating layer from melting and sagging at the time of brazing. A beautiful double wound pipe is obtained.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic sectional view showing a double-wound pipe.
1: base steel sheet 2: Cu plating layer 3: Cu-Zn alloy plating layer 4: fusion layer