JP2004315461A - 自己組織化単分子膜の製造方法 - Google Patents

自己組織化単分子膜の製造方法 Download PDF

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正道 藤平
Uichi Akiba
宇一 秋葉
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Abstract

【課題】分子レベルの精密構造制御を可能とする自己組織化単分子膜を製造する方法を提供する。
【解決手段】金属基板上に物質の自己組織化単分子膜を形成する方法は、アダマンタン構造を有する化合物(例えばビス(トリシクロ[3.3.1.1.]デシルメチルジスルフィド)を含む溶液に、金属基板を浸漬して、該アダマンタン構造を有する化合物からなる自己組織化単分子膜を該金属基板表面に形成することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己組織化単分子膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体表面に配向性の分子層を構築する方法として、チオール基やトリメトキシシリル基等の結合性官能基を有する分子を固体表面に固定・配列させる自己組織化法が近年注目されている。液相系又は気相系において無秩序に互いに相関なく分布していた分子が、ある特定の物質表面を系に共存させるだけで、その表面上に担持され、二次元状に集合して分子一層に成長し、その集合した中で分子全てが同じ配向で表面に沿って広く規則的に並ぶことがある。このように、ある特定の担体表面上で起こるこのような分子の吸着および分子一層の秩序構造形成の自発的な過程を経て、分子一個分の大きさに相当する厚さで形成される単分子層状の秩序構造体および境界相を自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer)という。
【0003】
このようにして形成される自己組織化単分子膜は、表面科学の分野における有機薄膜の一形態である。このような自己組織化単分子膜は基板表面に、触媒作用、生体機能等の機能性を付加するための技術として有用であり、センサーや電子デバイスに利用する等の様々な試みがなされている。
【0004】
単分子膜が表面上に自己形成することは古くから知られていて、1940年代にはすでに表面科学の研究対象の一つになっていた。しかし、この当時の単分子膜は基板上での吸着結合が弱いものを研究対象としていたために、構造安定性に欠けていて材料としての認識は乏しかった。吸着分子と担体表面との強固な化学結合を介することによって安定な構造を有する自己組織化単分子膜が形成されることが立証されるのは1980年代になってからである。
【0005】
特に、2つの先駆的な研究が自己組織化単分子膜の材料としての有用性をはっきりと認識させた。そのうちの1つは、1980年、有機シラン化合物を用いてガラス基板上に化合物のシランとガラス表面上の酸素との間の化学結合を介して自己組織化単分子膜を作成したイスラエルのSagiv, J. の研究である(Sagiv, J., J. Am. Chem. Soc., 102, 92−98 (1980))。2つ目は、1983年、有機イオウ化合物が金表面上にイオウ原子と金原子との結合を介して構造安定な自己組織化単分子膜を容易に形成できることを実証したアメリカのNuzzo, R. G.及びAllara, D. L. の研究である(Nuzzo, R. G. and Allara, D. L., J. Am. Chem. Soc., 105, 4481−4483 (1983))。
【0006】
特に、Nuzzo, R. G.及びAllara, D. L.の研究は、有機イオウ化合物の化学合成の容易さと化学的安定性、幅広い化合物汎用性、自己組織化単分子膜の構造安定性、及び単分子膜作成の簡便さの特徴を兼ね備えていることから、表面科学に大きな影響を与えた。
自己組織化単分子膜を安定に支持する担体としては、分子が有する吸着部位又は官能基と化学結合をすることができるような表面構成元素を有する担体表面が選択される。たとえば、有機シラン化合物にはガラス基板、有機イオウ化合物には金基板、有機カルボン酸化合物にはアルミニウム酸化膜基板が選択される。通常、担体としては固体が用いられるが、水銀等の液体が用いられる場合もある。
【0007】
近年、科学技術の複合化と微細化とが社会から求められており、表面・薄膜の材料が幅広い応用分野において重要な役割を担うようになってきた。界面を原子・分子レベルで理解し、創成・制御をおこなう必要性が強く意識される中で、有機薄膜を材料とした表面の化学修飾法が活発に研究されるようになってきた。自己組織化単分子膜は、化学吸着を利用することによって分子一個一個を平坦な基板上に化学結合により強固に固定化して単分子膜構造を安定化させて、自己組織化法と呼ばれる自発的に秩序構造体を成長させる手法を基板上の単分子膜構造の形成に用いることで、膜構造の秩序化を同時に達成させた簡便な化学修飾法として見出された。このために、自己組織化法の有用性と、安定な秩序構造を有する単分子膜が容易に作成できるという材料としての魅力が同時に急速に認知されることになった。この手法を利用した表面の化学修飾の研究が幅広い分野で活発におこなわれるようになったことで、表面・薄膜に関する材料・ナノテクノロジーの開発が急進展する先導的な役割を果たした。
【0008】
従来の自己組織化単分子膜を構成している分子一個の構造は、生体系に学んだ柔軟構造が主流であり、アルキルシランカップリングやアルカンチオール等の柔軟な長鎖炭化水素鎖構造を有する分子を基本骨格とした、種々の自己組織化単分子膜の作製が行われている。従来の自己組織化単分子膜は、柔軟な分子構造の長鎖炭化水素鎖構造を有することが必須であるとの考え方に基づいて作製されており、従って、従来の自己組織化単分子膜は、その膜内に長鎖炭化水素構造が組み込まれた形態を有する。しかし、長鎖炭化水素鎖分子構造の柔軟性は、形成された単分子膜表面上の分子の構造ダイナミックスを引き起こすとともに、単分子スケールの超薄膜の特性を有していながら、例えば高分子薄膜材料と同様に、界面全体を通して分子機能を平均するようなバルク材料に類似した界面薄膜構造の分子設計に基づいた機能材料の範疇から脱却することができなかった。従って、分子レベルの精密構造制御を可能とする自己組織化単分子膜が望まれていた。
また、Fujii, et al., Chem. Commun., 1688(2001)にはビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた自己組織化単分子膜が開示されている。該文献に記載された自己組織化単分子膜は、ある程度は精密構造制御を可能とすることのできるものであるが、構造制御を更に精密にすることのできるものが望まれていた。
【0009】
【非特許文献1】
Sagiv, J., J. Am. Chem. Soc., 102, 92−98 (1980)
【非特許文献2】
Nuzzo, R. G. and Allara, D. L., J. Am. Chem. Soc., 105, 4481−4483 (1983)
【非特許文献3】
Fujii, et al., Chem. Commun., 1688(2001)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、分子レベルの精密構造制御を可能とする自己組織化単分子膜を製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、金属基板上に物質の自己組織化単分子膜を形成する方法において、かご形分子としてアダマンタン構造を有する化合物(有機ジスルフィド)を用いることによって上記目的を達成し得るという知見を得た。
本発明は上記目的に基づいてなされたものであり、金属基板上に物質の自己組織化単分子膜を形成する方法であって、アダマンタン構造を有する化合物を含む溶液に、金属基板を浸漬して、該アダマンタン構造を有する化合物からなる自己組織化単分子膜を該金属基板表面に形成することを特徴とする方法を提供するものである。
アダマンタン構造を有する化合物として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることができる。
【0012】
【化3】
Figure 2004315461
【0013】
一般式(1)において、Y及びYは、それぞれ独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ケタール基、シリル基、カルボキシ基、COOR(Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜14の整数を表す。
アダマンタン構造を有する化合物として、下記一般式(2)で示される化合物を用いることができる。
【0014】
【化4】
Figure 2004315461
【0015】
有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物が用いられる。
また、本発明は、上記方法により製造された、自己組織化単分子膜を表面に有する金属基板を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
本発明の自己組織化単分子膜の製造方法は、金属基板上に物質の自己組織化単分子膜を形成する方法であって、アダマンタン構造を有する化合物を含む溶液に、金属基板を浸漬して、該アダマンタン構造を有する化合物からなる自己組織化単分子膜を該金属基板表面に形成することを特徴とする。
本発明の自己組織化単分子膜を形成する方法において用いられるアダマンタン構造を有する化合物としては特に制限はないが、アダマンタン構造を有するジスルフィドを用いることが好ましい。アダマンタン構造を有する化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0017】
【化5】
Figure 2004315461
【0018】
上記一般式(1)において、Y及びYは、それぞれ独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ケタール基、シリル基、カルボキシ基、COOR(Rは炭素数1〜8のアルキル基である)、nは1〜14の整数を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜8個のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−−オクチル基又は2−エチル−ヘキシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜8個のものが好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0019】
アルコキシ基としては、炭素数1〜8個のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシブチル基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、i−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、i−ヘキソキシ基、n−ヘプトキシ基、i−ヘプトキシ基、n−オクトキシ基、i−オクトキシ基又は2−エチル−ヘキソキシ基等が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ケタール基としては、例えばジメチルケタール基等が挙げられ、シリル基としては、例えばトリメチルシリル基等が挙げられる。また、COORのRとしては、上述したアルキル基が挙げられる。
【0020】
本発明の自己組織化単分子膜を形成する方法において用いられるアダマンタン構造を有する化合物の具体例として、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0021】
【化6】
Figure 2004315461
【0022】
本発明の自己組織化単分子膜を形成する方法において用いられるアダマンタン構造を有する化合物の合成法に特に制限はなく、従来公知の合成法を組み合わせて合成することができる。前記一般式(2)で示される化合物の合成法を例として説明すると、例えば以下の方法で合成することができる。
【0023】
まず、下記式(3)で示されるトリシクロ[3.3.1.1]−デカン−1−メタノールとトリフェニルホスフィンとを加熱還流して反応させて下記式(4)で示される1−クロロメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンを得る。1−クロロメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンが固体として得られるので、エーテル等の溶媒に溶解し、ろ過した後、シリカゲルクロマトグラフィー等を用いて精製する。
【0024】
上述のようにして得られた1−クロロメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンとチオ酢酸カリウム塩とを、ジメチルホルムアミド等の溶媒中で加熱還流して、下記式(5)で示される1−トリアセチルメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンを得る。1−トリアセチルメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンを含む反応液に水を加えてエーテルで抽出し、濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー等を用いて精製する。
【0025】
次いで、得られた1−トリアセチルメチルトリシクロ[3.3.1.1]−デカンをメタノール等の溶媒に混合し、水酸化カリウム等のアルカリを加え、加熱還流し、上記式(2)で示される化合物ビス(トリシクロ[3.3.1.1]−デシルメチル)ジスルフィドを得る。得られたビス(トリシクロ[3.3.1.1]−デシルメチル)ジスルフィドをエーテルで抽出し、乾燥し、濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー等を用いて精製する。
【0026】
【化7】
Figure 2004315461
【0027】
【化8】
Figure 2004315461
【0028】
【化9】
Figure 2004315461
【0029】
本発明において、アダマンタン構造を有する化合物を含有する溶液に用いられる溶媒としては、その種類に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ペンタン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。溶媒の種類によって自己組織化単分子膜の欠陥の種類や量が変化することが知られているので(Yamada, R. et al., Chem. Lett., 667, 1999)、上記論文を参照しつつ金属基板の種類や反応温度等に応じて適宜の溶媒を選択することが好ましい。上記溶媒の中でも、エタノールを用いることが好ましい。
【0030】
また、用いられる金属基板の種類は特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金等を基板として用いることが可能である。上記金属基板の中でも、金が好ましい。
【0031】
本発明において、アダマンタン構造を有する化合物を含む溶液を金属基板と反応させるにあたり、アダマンタン構造を有する化合物の濃度は特に限定されないが、0.1〜1mM程度であることが好ましい。
また、アダマンタン構造を有する化合物を金属基板と反応させるにあたり、アダマンタン構造を有する化合物を含む溶液の温度は、15〜25℃程度にしておくことが好ましい。また、反応時間は特に限定されないが、1〜24時間程度であることが好ましい。
【0032】
本発明の方法により製造された自己組織化単分子膜は、エレクトロニクス材料、センサー(バイオセンサー)、光学装置、光電子装置、有機半導体、薄膜トランジスタ、LED及び液晶装置等の無機又は有機物質からなる薄膜を形成することが要求される基板の表面特性を変更するために用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
アダマンタン構造を有する化合物の合成
トリシクロ[3.3.1.1]−デカン−1−メタノール(300 mg, 1.80 mmol)、及び乾燥した四塩化炭素(2 mL)を反応容器に入れ、該反応容器中を窒素雰囲気下にした後、トリフェニルホスフィン (520 mg, 1.98 mmol) を加えた。次いで、反応容器中の混合物を、80℃の温度で18時間加熱還流した。次いで、溶媒の四塩化炭素を真空下で除去した。反応容器中の残査をエーテル(10mL)に溶解し、セライトを介してろ過した後、真空下で濃縮し、1−クロロメチルトリシクロ [3.3.1.1]デカン (300 mg, 1.62 mmol )を90%の収率で得た。化合物の同定は、H NMR (300MHz, CDCL) により行った。
【0034】
上述のようにして得られた1−クロロメチルトリシクロ [3.3.1.1]デカン (300 mg, 1.62 mmol )及びチオ酢酸カリウム塩 ( 350 mg, 2.44 mmol) を乾燥ジメチルホルムアミド(1 mL) 中で混合して、窒素雰囲気下で48時間、160℃の温度で加熱還流した。次いで、水(10mL)を加えてから反応混合物をエーテルで抽出し、真空下に濃縮した。生成物の精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行い、分離した後、1−チオアセチルメチルトリシクロ [3.3.1.1]デカン (160 mg, 0.71 mmol )を43%の収率で得た。化合物の同定は、H NMR (300MHz, CDCL) により行った。
【0035】
上述のようにして得られた1−チオアセチルメチルトリシクロ [3.3.1.1]デカン (160 mg, 0.71 mmol)を乾燥メタノール(2mL)に溶解し、この溶液中に、水酸化カリウム(200 mg) を加え、その混合物を4時間、80℃の温度で加熱還流した。次いで、水(5mL)を加え、更に反応混合物を12時間、80℃の温度で加熱還流してから、エーテルで抽出した。その抽出層を飽和食塩水で洗浄してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、真空下で濃縮した。生成物の精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行い、分離後、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィド (60 mg, 0.16 mmol )を46%の収率で得た。化合物の同定は、H NMR (300MHz, CDCL) 、及び元素分析法により行った。得られた化合物の融点は66−67℃であった。
【0036】
実施例2
350−400℃で10−5 パスカルの真空下に、新たに劈開したマイカ表面上に99.99%純度の金を加熱蒸着することによって、金(111)表面を作製し、金属基板として用いた。
次いで、実施例1で得られたビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドを0.5mM濃度になるようにエタノールに溶解し、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィド溶液を作製した。次いで、この溶液に、上記金属基板を10〜72時間浸漬し、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜を金属基板表面に形成させた。
【0037】
実施例3
実施例2で得られた自己組織化単分子膜について、走査型トンネル顕微鏡(STM)による表面観察を行った。観察は、デジタルインスツルメンツ社製(DI: Nanoscope IIIa)の装置を用いて、大気雰囲気下での走査型トンネル顕微鏡観察により行った。走査型トンネル顕微鏡象は定電流モードを用いて室温測定にて行った。走査型トンネル顕微鏡測定には、タングステン探針を用いた。トンネル電流の設定値は30−100pAの間であり、試料への印加電圧は+0.5−+1.5Vで行った。また、走査型トンネル顕微鏡で得られたの画像信号は、特に断らなければ、すべて無修正のままである。
【0038】
顕微鏡観察の結果を図1に示す。図1は金(111)基板上のビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜を20×20 nmの面積で大気雰囲気下に観察した定電流モード像を示す。図1から明らかなように、単分子膜表面は六方最密構造を有する複数の相構造からなっており、それらの相構造どうしは同一の最隣接格子間隔を有してはいるが、異なった回転角を有している。
【0039】
ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの自己組織化単分子膜の格子定数の決定は、測定に用いたSTM探針ですでに格子定数が既知であるn−デカンチオールからなる金(111)上に形成される自己組織化単分子膜のSTM測定で求めた格子定数を 0.499 nm に一致するように較正された。ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの自己組織化単分子膜の、そのように較正された格子定数は0.65±0.02 nmであった。
【0040】
次いで、図1で観察された3つのドメイン相構造の回転角を決定した。回転角の決定の際に、下地基板の金(111)表面の格子とビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの自己組織化単分子膜の格子構造との間の回転角度は、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの自己組織化単分子膜の一部をSTM探針によって機械的に剥離して、その下地の金(111)表面格子構造の観察に基づき決定された。その結果、下地の金原子列に対して、その回転角度は、−1±3゜、−21±3゜、及び+19±4゜であった。ここで+の印は時計の回る方向と一致している。
【0041】
実施例4
実施例2で得られた自己組織化単分子膜について、日本電子製 (JEOL: JSPM−4500S) の装置を用いて、超高真空下でのSTMによる表面観察を行った。測定時の真空度は5×10−8パスカル以下であった。その他の条件については実施例3と同様の条件で行った。
顕微鏡観察の結果を図2に示す。図2は金(111)基板上のビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜を55×55 nmの面積で超高真空条件下に観察した定電流モードSTM像を示す。図1で観察されたSTM像とドメイン構造が異なっており、図2においては単一のドメイン構造を有している領域が観察された。したがって、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜は、このような55×55 nm の面積で単一ドメイン構造を有する規則的な分子配列構造を形成することも可能であることが示された。
【0042】
次いで、上記単一ドメインの格子定数を決定した。格子定数の測定は、図3に示す部分の断面地形プロフィールより求めた。図3は、図2のSTM像の白く囲った部分の拡大図であり、14×14mmの定電流モードSTM像である。図3中の、線(a)、(b)及び(c)について断面地形プロフィールを測定した。断面地形プロフィールの測定結果を図4に示す。計測結果より、単一ドメインの格子定数は0.665±0.017nmであった。この格子定数の値は図1の大気雰囲気下で観察された、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜の複数のドメイン構造が有する格子定数の実測値、0.65±0.02 nmとほぼ一致している。したがって、大気雰囲気下と超高真空条件下において、化合物4の自己組織化単分子膜の秩序配列構造に変化はないことが示された。さらに、本実施例において従来の柔軟な長鎖炭化水素鎖構造に基づく自己組織化単分子膜の表面構造のSTM観察結果と決定的に異なる単分子膜構造の特徴が見いだされた。
【0043】
すなわち、従来の柔軟な長鎖炭化水素鎖構造に基づく自己組織化単分子膜においては、本実施例の図2と同様な表面スケールでSTM観察を行うと、必ず複数のドメイン境界が観察される。このドメイン境界構造が生じる理由は次のように説明されている。すなわち、単分子膜を構築している柔軟な長鎖炭化水素鎖構造が格子定数、0.499nmを有しており、√3×√3R30°の秩序構造を金(111)面上で形成するためには、長鎖炭化水素鎖が金(111)面に対して垂直な配向に並んでしまうと、炭化水素鎖1本当たりの占める分子占有面積が小さいために、隣接する炭化水素鎖間に空隙が生じてしまう。しかし、実際は金(111)面に対して垂直な配向から約30°自発的に傾斜することによってこのような隣接分子間の空隙を減じて、柔軟な長鎖炭化水素鎖の分子間相互作用に基づく単分子膜の構造安定化をある程度達成している。
【0044】
従来の柔軟な長鎖炭化水素鎖構造に基づく自己組織化単分子膜においては、このような約30°の傾斜の自発的な方向に自由度があるために、同一な√3×√3R30°秩序構造であるにもかかわらず、ドメイン境界が生じてしまう。
一方、本実施例の自己組織化単分子膜構造のSTM観察結果を示す図2においては、そのような吸着分子鎖の傾斜に由来するドメイン境界が全くみとめられなかった。また、アダマンタン分子結晶のx線構造解析結果から求めた3次元結晶構造中の隣接アダマンタン分子間距離は、0.667±0.001 nm であることが知られており(Helv. Chim. Acta., 28, 1233 (1945))、この値は本発明で明らかにされたビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの自己組織化単分子膜の単一ドメインの格子定数、0.665±0.017nm と非常によく一致している。この結果は、ビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドの構造に用いたアダマンタン分子の分子断面積が金(111)面上に形成されたビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜の配列秩序構造を支配的に決定していることを示している。したがって、本実施例で得られたビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜構造は金(111)面上に分子が垂直に配向した二次元の六方最密構造を有していると考えられる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明は、かご形分子としてアダマンタンという剛直な分子を単分子膜を構成する分子構造として選択し、金属基板上で、合成したアダマンタン構造を有する有機ジスルフィドから成る単分子膜が作製された。本発明により、剛直なアダマンタン表面膜構造を有する自己組織化単分子膜が、従来では全く不可能であった分子レベルの精密構造制御を可能とする新しい自己組織化単分子膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金(111)基板上のビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜を大気雰囲気下に観察した定電流モード像である。
【図2】金(111)基板上のビス(トリシクロ [3.3.1.1]デシルメチル)ジスルフィドからなる自己組織化単分子膜を超高真空条件下に観察した定電流モードSTM像である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】測定した断面地形プロフィールの測定結果である。

Claims (6)

  1. 金属基板上に物質の自己組織化単分子膜を形成する方法であって、
    アダマンタン構造を有する化合物を含む溶液に、金属基板を浸漬して、該アダマンタン構造を有する化合物からなる自己組織化単分子膜を該金属基板表面に形成することを特徴とする方法。
  2. 上記アダマンタン構造を有する化合物が、下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1に記載の自己組織化単分子膜を形成する方法。
    Figure 2004315461
    (式(1)において、Y及びYは、それぞれ独立に、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ケタール基、シリル基、カルボキシ基、COOR(Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜14の整数を表す。)
  3. 上記アダマンタン構造を有する化合物が、下記式(2)で示される化合物である、請求項1に記載の自己組織化単分子膜を形成する方法。
    Figure 2004315461
  4. 有機溶媒が、アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自己組織化単分子膜を形成する方法。
  5. 有機溶媒がエタノールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自己組織化単分子膜を形成する方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により製造された、自己組織化単分子膜を表面に有する金属基板。
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