JP2004309717A - 偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウェットラミネーション法による偏光板製造工程において製造することができ、高温高湿環境に置かれても優れた耐久性を有する偏光板の提供、高温高湿環境下で優れた耐久性を有する液晶表示装置の提供。
【解決手段】合成樹脂フィルムからなる偏光子の両側に、異なる水蒸気透過度の保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、少なくとも片側の保護フィルムが水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムが水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムである偏光板。
【選択図】 なし
【解決手段】合成樹脂フィルムからなる偏光子の両側に、異なる水蒸気透過度の保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、少なくとも片側の保護フィルムが水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムが水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムである偏光板。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)はパーソナルコンピューター、卓上電子計算機、ワードプロセッサ等に用いられてきた。特に近年は、その機能性が注目され、携帯電話等の電子情報端末やカーナビゲーション等の分野でも使用されるため、高温ないしは高湿下、紫外線照射下、においても優れた耐久性を有する偏光板が要求されるようになった。
【0003】
従来偏光板としては、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)系フィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させたPVA系フィルムを偏光子として用い、上記偏光子の両側を、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略す。)フィルム等の保護フィルムで挟持した偏光板が、比較的安価でしかも偏光性能が優れているため、汎用されている。
【0004】
しかし、TACフィルムを保護フィルムに用いた偏光板は、TACフィルムの有する高い水蒸気透過性のため、高温高湿下における耐久性が乏しく、80℃、90%RHのような高温高湿環境下では100時間程度で劣化し、偏光性能が急激に低下するという問題があった。
【0005】
この問題を解決する技術として、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる高分子フィルムを保護フィルムとして用いた光線透過率、外観、水蒸気不透過性に優れた液晶ディスプレイ用偏光フィルムが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
ところが偏光板の製造において、偏光子に使用されるポリビニルアルコールフィルムは、乾燥しすぎると強度を失い脆くなること及び、高度に乾燥させるには時間を要するため製造工程上からも難しい等の理由のため通常5〜20%の水分を含んだ状態で、保護フィルムと貼り合わせられる。貼り合わせには、水を主な溶媒とする接着剤を用い、貼合後に溶媒を乾燥除去する方法、いわゆるウェットラミネーション法が一般に行われ製造ライン化されている。他にも溶媒を乾燥除去したあと貼合するドライラミネーション法による貼合方法もあるが同法を既存設備に導入するのは設備投資が莫大となり困難である。
【0007】
しかしウェットラミネーション法により製造した偏光板は保護フィルムの水蒸気透過度が低いと、乾燥されずに残った水分により、接着剤に十分な接着強度が得られなかったり、外観が不良になったりするなどの問題を生じる。(接着剤の加熱硬化の際に発泡が生じる場合があり、歩留まりが低下することがある。)
【0008】
この問題を改善するため、保護フィルムの少なくとも一方に300g/m2・24hr以下の水蒸気透過度を有する保護フィルムを用い、偏光子と第一の保護フィルムを貼合して巻き取り、その後第二の保護フィルムを貼合する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
【0009】
しかしこの方法では、水分を含んだ偏光子を第一の保護フィルムに接着した後、一旦乾燥させて溶媒を除去する工程が必要となり、従来のウェットラミネーション設備が使用できるものの、乾燥工程や水分の管理が必要となり生産工程管理が煩雑になりやすい。
【0010】
一方、特許文献3には、水蒸気透過度が低い層を液晶セルと反対側に配設することにより、長期湿熱試験においても偏光度が高く維持される偏光板の用法が開示されている。
【0011】
しかしながら上記公報では水蒸気透過度の低い層を得るために紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂で防湿層を形成しており防湿層形成のための生産工程が増加する。
【0012】
他方、PVA偏光子の片側に水蒸気透過度が約200〜3000g/m2・24hrのプラスチックフィルムが、他の側に環状オレフィン系樹脂フィルムが、PVA水溶液の接着剤で積層されてなる偏光板が開示されており、従来のウェットラミネーション製造工程でも偏光板を作製できることが開示されている(例えば特許文献4参照。)。
【0013】
しかしながらこの構成による偏光板に長期の高温、高湿下の耐久試験を行ったところ、偏光度の低下が見られた。また保護フィルムを貼り合わせた後硬化乾燥した場合には、加熱試験によって偏光板のカールが発生する場合があった。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−51117号公報
【特許文献2】
特開2002−196132号公報
【特許文献3】
特開2001−235625号公報
【特許文献4】
特開2002−221619号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑み、簡易に、従来のウエットラミネーション法による偏光板製造工程においても製造することができ、高温高湿における環境に置かれても優れた耐久性を有する偏光板を提供すること及び高温高湿における環境に置かれても優れた耐久性を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、合成樹脂フィルムからなる偏光子の両側に、異なる水蒸気透過度の保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、少なくとも片側の保護フィルムが水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムが水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムであることを特徴とする偏光板を提供する。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、両側の保護フィルムがともに環状オレフィン系樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の偏光板を提供する。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の偏光板が液晶セルの少なくとも片側に使用された液晶表示装置であって、環状オレフィン系樹脂よりなる水蒸気透過度の低い方の保護フィルムが、液晶セルに対向する側とは反対側になるように配設されたことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる偏光子は二色性を有する、沃素、二色性染料等が配向して固定された合成樹脂フィルムであって、延伸PVAフィルム、変性PVAフィルム等が好適に用いられる。
【0020】
偏光子の製造方法については、特に限定されず、例えば、PVA系フィルムを延伸後ヨウ素イオンを吸着する方法、PVA系フィルムを二色性染料により染色後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後二色性染料で染色する方法、二色性染料をPVA系フィルムに印刷後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後二色性染料を印刷する方法などが挙げられる。
【0021】
より具体的には、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して高次のヨウ素イオンを作り、このイオンをPVAフィルムに吸着させて延伸し、次いで1〜4%ホウ酸水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して偏光膜を製造する方法、あるいはPVAフィルムを同様にホウ酸処理して一軸方向に3〜7倍程度延伸し、0.05〜5%の二色性染料水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して染料を吸着し、80〜100℃で乾燥して熱固定して偏光膜を製造する方法などがある。
【0022】
本発明における保護フィルムは、偏光子を保護するために偏光子の両側に貼り付けられるフィルムであり、TACフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等が用いられるが、環状オレフィン系樹脂フィルムが、光線透過率、外観性、低光弾性率などに優れ、かつ、偏光子に貼合された場合に、偏光板が優れた耐熱性、耐湿性を有するため好ましい。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンを重合することにより得られる。上記環状オレフィン重合体系樹脂の原料となるノルボルネン系モノマーは、特開平5−39403号、特開平5−212828号、特許第3038825号、特許第3019741号、特許第3030953号などに記載されており、例えば、ノルボルネン、メタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノドデカヒドロアントラセン、ジメタノデカヒドロアントラセン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、又はそれらの置換体、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、メタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロフルオレン、又はそれらの置換体などを挙げることができる。なお、これらノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であっても、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記置換体における置換基は、従来から周知のものであれば、炭化水素基又は極性基のいずれでも良く、例えば、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基などが例示される。具体的な化合物としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0025】
本発明における環状オレフィン系樹脂としてはノルボルネン系樹脂が好ましく、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が好ましい。例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加共重合させた樹脂などを挙げることができる。本発明における環状オレフィン系樹脂としては飽和環状オレフィン系樹脂が好ましい。飽和させるためには、通常の水素添加法を用いることができ、重合後水素添加法により残存二重結合に水素を結合させ飽和させる。飽和度は高い方が好ましく、完全飽和であることがより好ましい。成形時の劣化を防ぎ、または保護フィルムとして用いた場合に高温耐久性を増すためである。これらの樹脂は、商業的に入手することができる。
【0026】
上記環状オレフィン系樹脂をフィルム化するには、通常用いる方法を用いることができる。例えばキャスティング法、溶融押し出し法等が挙げられる。保護フィルムは高光線透過率、低位相差、低光学欠陥が要求されるため、これらの要求を実現できる製法が好ましい。
【0027】
保護フィルムは偏光子を物理的、化学的に保護する役割を果たす必要があるが、一方LCDの薄型化に対する要請も満たす必要があり、フィルム厚は10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上である。薄すぎると保護が不十分となるためである。逆に厚すぎると薄型化の要請に反するため200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0028】
本発明の保護フィルムに用いるノルボルネン系樹脂フィルムは平行光線透過率が88%以上であることが好ましい。更に好ましくは90%以上である。88%未満であればLCDに搭載された場合に、輝度が不足するためである。
【0029】
偏光子に保護フィルムを積層するには、例えば、透明な接着剤もしくは粘着剤などにより接着することが行われる。接着剤や粘着剤の種類は従来のウェットラミネーションによる接着に用いられている接着剤や粘着剤であれば特に限定されず,接着強度が発現しやすい水系PVAや水系ウレタン系接着剤などから適宜選択すればよい。環状オレフィン系フィルムに対しては、ウレタン系接着剤などを用いると高い接着強度が得られ、耐久性の点からも好ましい。また、接着力を向上させる手段として、保護フィルムに予めコロナ放電処理などの表面処理を施しておくことが好ましい。
【0030】
本発明において、少なくとも片側の保護フィルムは水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムは水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムである必要がある。
【0031】
水蒸気透過度の低い方の保護フィルムの水蒸気透過度は、好ましくは20g/m2・24hr以下、更に好ましくは10g/m2・24hr以下である。20g/m2・24hrより大きければ、偏光板が高湿環境におかれた場合に偏光板内部に水分が浸入して光学特性が劣化しやすいからである。
【0032】
又、水蒸気透過度の低い方の保護フィルムは環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでなければならない。透明性と耐熱性を満たすためである。
【0033】
水蒸気透過度の高い方の保護フィルムの水蒸気透過度は、50g/m2・24hr以上、200g/m2・24hr未満が好ましい。水蒸気透過度が低すぎると、接着剤を硬化させる際に乾燥を高温短時間で行うと発泡しやすくなり、高すぎると高湿環境におかれた場合に偏光板内部に水分が浸入して光学特性が劣化するからである。
【0034】
本発明の液晶表示装置は、請求項1または請求項2記載の発明に係る偏光板が液晶セルの少なくとも片側に使用された液晶表示装置であって、環状オレフィン系樹脂よりなる水蒸気透過度の低い方の保護フィルムが、液晶セルに対向する側とは反対側になるように配設されることが必要である。偏光板の水蒸気透過度の高い保護フィルムはガラス等の水蒸気を透しにくい液層表示素子に貼り付けられており、偏光板の他方は水蒸気透過度の低い保護フィルムであるため、60℃・90%RH、60℃・95%RH、80℃・90%RH等の高温高湿環境に置いても、水蒸気に曝される側の保護フィルムが水蒸気透過度が低く水分を透過しにくいので偏光子の光学特性の劣化の進行を抑えることができる。
【0035】
(作用)
本発明の偏光板は片側の環状オレフィン系樹脂よりなる保護フィルムの水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満であるから、これを液晶セルの反対側に配設すると湿熱下の耐久性に優れた偏光板とすることができ、他方の保護フィルムの水蒸気透過率が50〜200g/m2・24hrであるので、従来のウェットラミネーションによる偏光板製造工程でも安定して水分率の低い偏光板が製造できる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
(PVA偏光子の作製)
鹸化度99モル%、厚み75μmのPVA未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。このフィルムの緊張状態を保持したままで、ヨウ素0.5wt%、ヨウ化カリウム5wt%からなる水溶液に浸漬してヨウ素を吸着させた。さらに、ホウ酸10wt%、ヨウ化カリウム10wt%からなる50℃の水溶液で5分間架橋処理を行い、PVA偏光子を得た。
【0038】
(保護フィルムの作製)
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A))
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(日本ゼオン社製「商品名:ZEONEX#490」、以下「ZEONEX」と略す。)の30wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)を得た。乾燥後の厚みは約40μmであった。またASTM F372−73に準拠して測定したところ水蒸気透過度は約6g/m2・24hrであった。
【0039】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)を得た。乾燥後の厚みは約40μmであった。また水蒸気透過度は約90g/m2・24hrであった。
【0040】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(C)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(C)を得た。乾燥後の厚みは約120μmであった。また水蒸気透過度は約30g/m2・24hrであった。
【0041】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(D)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(D)を得た。乾燥後の厚みは約10μmであった。また水蒸気透過度は約250g/m2・24hrであった。
【0042】
(TACフィルムの作製)
市販の80ミクロンのTACフィルム(富士写真フイルム社製「フジタッククリアー」)を鹸化して使用した。水蒸気透過度は約680g/m2・24hrであった。
【0043】
(偏光板の作製)
接着剤を用いて、上記PVA偏光子の両面を上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)及び同(B)で挟みゴム製の対ロールでウェットラミネートし、50℃で3分間、65℃で3分間、80℃で3分間乾燥した。その後、45℃で48時間保持し養生した。接着剤として、水性ウレタン接着剤(東洋モートン社製「EL−436A/B」)を主剤100部に対して硬化剤30部、イオン交換水520部を配合したもの、または、平均重合度1800でケン化度99モル%のPVAを5%水溶液としたものを用いた。同様に表1に示すように、上記保護フィルム(A)と上記TACフィルムとで挟んで積層したもの、上記保護フィルム(A)を両側にして挟んだもの、上記保護フィルム(B)を両側にして挟んで積層したもの、上記保護フィルム(A)と上記保護フィルム(C)とで挟んで積層したもの、上記保護フィルム(C)と上記保護フィルム(D)とで挟んで積層したもの、を作製した。
【0044】
尚、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(1)、同(2)には前処理として接着面にコロナ処理を施した。ASTM D5946−96準拠により測定の結果、コロナ処理面の蒸留水との接触角は43°であった
【0045】
(偏光板外観)
上記偏光板を目視で観察し、50mm×50mmの正方形内の接着層中の気泡数を数えた。気泡数が5個未満の場合には○、5個以上の場合には×として評価した。
【0046】
(偏光板カール)
上記偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜き、23℃・55%RHの恒温恒湿室中にて平坦な机上に24hr放置した後、4隅のカール高さを測定し、4隅中最大値が10mm未満のものを○、10mm以上のものを×として評価した。
【0047】
(ガラス板への貼合)
上記乾燥後得られた偏光板を、50mm×50mmの正方形に打ち抜き、60mm×60mmの正方形の無アルカリガラス板に、アクリル粘着剤を用い、ゴム製のニップロールを備えた卓上ラミネーターを用いて貼り合わせた。
実施例1、2においては水蒸気透過度の小さい上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)が上記ガラス板と対向する側とは反対側になるよう、すなわち水蒸気透過度の大きい上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)がガラス板に向くようにして、偏光板をガラス板に貼り付けた。比較例1〜5においても、貼り付け方向を表1に示ように配設して偏光板をガラス板に貼り付けた。
【0048】
(高温高湿試験)
上記ガラス板に貼合した偏光板に対し貼合した状態で耐久評価試験を行った。試験条件は、90℃ドライでの高温条件下、及び80℃90%RHの高温高湿条件下で500Hr放置し、耐久試験前後での透過率の変化、偏光度の変化により、耐久光学特性(高温、高温高湿環境下での耐久性、耐熱性)を評価した。なお、透過率変化、偏光度変化は、次のようにして求めた。
【0049】
(透過率変化)
透過率の測定には分光測色計(TC−1800、東京電色工業(株))を用い、透過率をY値で表した。各々の試験後の値から試験前の各々の値を減じて変化を求めた。透過率が上昇しているのは偏光子が脱色していることを意味する。
【0050】
(偏光度変化)
2枚の偏光板を用い、常法により平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度を次の式により求めた。
偏光度=[(H1−H2)/(H1+H2)]1/2
(式中、H1は平行透過率、H2は直交透過率を表す。)
各々の試験後の値から試験前の値を減じて変化を求めた。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の如く、本発明の構成にすることにより偏光子にウェットラミネーション法で保護フィルムを貼り付けた時の発泡、カールがなく、高温、高温高湿環境においても光学特性が劣化しない偏光板を提供することが可能となる。
【0053】
【発明の効果】
本発明の偏光板は、簡易に、従来のウエットラミネーション法にて製造することができる。したがって、新たな設備の導入や改造をしなくとも、従来の偏光板製造プロセスでを用いて製造することができ、高温高湿下でも優れた耐久性を有する。
本発明の液晶表示装置は、高温高湿下でも優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】偏光板をガラス板に貼り付けた状態を表す断面模式図
【符号の説明】
1:ガラス板
2:粘着剤層
3:偏光板保護フィルム(B)
4:接着層
5:偏光子
6:接着層
7:偏光板保護フィルム(A)
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)はパーソナルコンピューター、卓上電子計算機、ワードプロセッサ等に用いられてきた。特に近年は、その機能性が注目され、携帯電話等の電子情報端末やカーナビゲーション等の分野でも使用されるため、高温ないしは高湿下、紫外線照射下、においても優れた耐久性を有する偏光板が要求されるようになった。
【0003】
従来偏光板としては、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)系フィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させたPVA系フィルムを偏光子として用い、上記偏光子の両側を、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略す。)フィルム等の保護フィルムで挟持した偏光板が、比較的安価でしかも偏光性能が優れているため、汎用されている。
【0004】
しかし、TACフィルムを保護フィルムに用いた偏光板は、TACフィルムの有する高い水蒸気透過性のため、高温高湿下における耐久性が乏しく、80℃、90%RHのような高温高湿環境下では100時間程度で劣化し、偏光性能が急激に低下するという問題があった。
【0005】
この問題を解決する技術として、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる高分子フィルムを保護フィルムとして用いた光線透過率、外観、水蒸気不透過性に優れた液晶ディスプレイ用偏光フィルムが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
ところが偏光板の製造において、偏光子に使用されるポリビニルアルコールフィルムは、乾燥しすぎると強度を失い脆くなること及び、高度に乾燥させるには時間を要するため製造工程上からも難しい等の理由のため通常5〜20%の水分を含んだ状態で、保護フィルムと貼り合わせられる。貼り合わせには、水を主な溶媒とする接着剤を用い、貼合後に溶媒を乾燥除去する方法、いわゆるウェットラミネーション法が一般に行われ製造ライン化されている。他にも溶媒を乾燥除去したあと貼合するドライラミネーション法による貼合方法もあるが同法を既存設備に導入するのは設備投資が莫大となり困難である。
【0007】
しかしウェットラミネーション法により製造した偏光板は保護フィルムの水蒸気透過度が低いと、乾燥されずに残った水分により、接着剤に十分な接着強度が得られなかったり、外観が不良になったりするなどの問題を生じる。(接着剤の加熱硬化の際に発泡が生じる場合があり、歩留まりが低下することがある。)
【0008】
この問題を改善するため、保護フィルムの少なくとも一方に300g/m2・24hr以下の水蒸気透過度を有する保護フィルムを用い、偏光子と第一の保護フィルムを貼合して巻き取り、その後第二の保護フィルムを貼合する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
【0009】
しかしこの方法では、水分を含んだ偏光子を第一の保護フィルムに接着した後、一旦乾燥させて溶媒を除去する工程が必要となり、従来のウェットラミネーション設備が使用できるものの、乾燥工程や水分の管理が必要となり生産工程管理が煩雑になりやすい。
【0010】
一方、特許文献3には、水蒸気透過度が低い層を液晶セルと反対側に配設することにより、長期湿熱試験においても偏光度が高く維持される偏光板の用法が開示されている。
【0011】
しかしながら上記公報では水蒸気透過度の低い層を得るために紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂で防湿層を形成しており防湿層形成のための生産工程が増加する。
【0012】
他方、PVA偏光子の片側に水蒸気透過度が約200〜3000g/m2・24hrのプラスチックフィルムが、他の側に環状オレフィン系樹脂フィルムが、PVA水溶液の接着剤で積層されてなる偏光板が開示されており、従来のウェットラミネーション製造工程でも偏光板を作製できることが開示されている(例えば特許文献4参照。)。
【0013】
しかしながらこの構成による偏光板に長期の高温、高湿下の耐久試験を行ったところ、偏光度の低下が見られた。また保護フィルムを貼り合わせた後硬化乾燥した場合には、加熱試験によって偏光板のカールが発生する場合があった。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−51117号公報
【特許文献2】
特開2002−196132号公報
【特許文献3】
特開2001−235625号公報
【特許文献4】
特開2002−221619号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑み、簡易に、従来のウエットラミネーション法による偏光板製造工程においても製造することができ、高温高湿における環境に置かれても優れた耐久性を有する偏光板を提供すること及び高温高湿における環境に置かれても優れた耐久性を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、合成樹脂フィルムからなる偏光子の両側に、異なる水蒸気透過度の保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、少なくとも片側の保護フィルムが水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムが水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムであることを特徴とする偏光板を提供する。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、両側の保護フィルムがともに環状オレフィン系樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の偏光板を提供する。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の偏光板が液晶セルの少なくとも片側に使用された液晶表示装置であって、環状オレフィン系樹脂よりなる水蒸気透過度の低い方の保護フィルムが、液晶セルに対向する側とは反対側になるように配設されたことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる偏光子は二色性を有する、沃素、二色性染料等が配向して固定された合成樹脂フィルムであって、延伸PVAフィルム、変性PVAフィルム等が好適に用いられる。
【0020】
偏光子の製造方法については、特に限定されず、例えば、PVA系フィルムを延伸後ヨウ素イオンを吸着する方法、PVA系フィルムを二色性染料により染色後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後二色性染料で染色する方法、二色性染料をPVA系フィルムに印刷後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後二色性染料を印刷する方法などが挙げられる。
【0021】
より具体的には、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して高次のヨウ素イオンを作り、このイオンをPVAフィルムに吸着させて延伸し、次いで1〜4%ホウ酸水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して偏光膜を製造する方法、あるいはPVAフィルムを同様にホウ酸処理して一軸方向に3〜7倍程度延伸し、0.05〜5%の二色性染料水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して染料を吸着し、80〜100℃で乾燥して熱固定して偏光膜を製造する方法などがある。
【0022】
本発明における保護フィルムは、偏光子を保護するために偏光子の両側に貼り付けられるフィルムであり、TACフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等が用いられるが、環状オレフィン系樹脂フィルムが、光線透過率、外観性、低光弾性率などに優れ、かつ、偏光子に貼合された場合に、偏光板が優れた耐熱性、耐湿性を有するため好ましい。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンを重合することにより得られる。上記環状オレフィン重合体系樹脂の原料となるノルボルネン系モノマーは、特開平5−39403号、特開平5−212828号、特許第3038825号、特許第3019741号、特許第3030953号などに記載されており、例えば、ノルボルネン、メタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノドデカヒドロアントラセン、ジメタノデカヒドロアントラセン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、又はそれらの置換体、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、メタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロフルオレン、又はそれらの置換体などを挙げることができる。なお、これらノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であっても、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記置換体における置換基は、従来から周知のものであれば、炭化水素基又は極性基のいずれでも良く、例えば、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基などが例示される。具体的な化合物としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0025】
本発明における環状オレフィン系樹脂としてはノルボルネン系樹脂が好ましく、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が好ましい。例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加共重合させた樹脂などを挙げることができる。本発明における環状オレフィン系樹脂としては飽和環状オレフィン系樹脂が好ましい。飽和させるためには、通常の水素添加法を用いることができ、重合後水素添加法により残存二重結合に水素を結合させ飽和させる。飽和度は高い方が好ましく、完全飽和であることがより好ましい。成形時の劣化を防ぎ、または保護フィルムとして用いた場合に高温耐久性を増すためである。これらの樹脂は、商業的に入手することができる。
【0026】
上記環状オレフィン系樹脂をフィルム化するには、通常用いる方法を用いることができる。例えばキャスティング法、溶融押し出し法等が挙げられる。保護フィルムは高光線透過率、低位相差、低光学欠陥が要求されるため、これらの要求を実現できる製法が好ましい。
【0027】
保護フィルムは偏光子を物理的、化学的に保護する役割を果たす必要があるが、一方LCDの薄型化に対する要請も満たす必要があり、フィルム厚は10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上である。薄すぎると保護が不十分となるためである。逆に厚すぎると薄型化の要請に反するため200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0028】
本発明の保護フィルムに用いるノルボルネン系樹脂フィルムは平行光線透過率が88%以上であることが好ましい。更に好ましくは90%以上である。88%未満であればLCDに搭載された場合に、輝度が不足するためである。
【0029】
偏光子に保護フィルムを積層するには、例えば、透明な接着剤もしくは粘着剤などにより接着することが行われる。接着剤や粘着剤の種類は従来のウェットラミネーションによる接着に用いられている接着剤や粘着剤であれば特に限定されず,接着強度が発現しやすい水系PVAや水系ウレタン系接着剤などから適宜選択すればよい。環状オレフィン系フィルムに対しては、ウレタン系接着剤などを用いると高い接着強度が得られ、耐久性の点からも好ましい。また、接着力を向上させる手段として、保護フィルムに予めコロナ放電処理などの表面処理を施しておくことが好ましい。
【0030】
本発明において、少なくとも片側の保護フィルムは水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでであり、他の側の保護フィルムは水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムである必要がある。
【0031】
水蒸気透過度の低い方の保護フィルムの水蒸気透過度は、好ましくは20g/m2・24hr以下、更に好ましくは10g/m2・24hr以下である。20g/m2・24hrより大きければ、偏光板が高湿環境におかれた場合に偏光板内部に水分が浸入して光学特性が劣化しやすいからである。
【0032】
又、水蒸気透過度の低い方の保護フィルムは環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムでなければならない。透明性と耐熱性を満たすためである。
【0033】
水蒸気透過度の高い方の保護フィルムの水蒸気透過度は、50g/m2・24hr以上、200g/m2・24hr未満が好ましい。水蒸気透過度が低すぎると、接着剤を硬化させる際に乾燥を高温短時間で行うと発泡しやすくなり、高すぎると高湿環境におかれた場合に偏光板内部に水分が浸入して光学特性が劣化するからである。
【0034】
本発明の液晶表示装置は、請求項1または請求項2記載の発明に係る偏光板が液晶セルの少なくとも片側に使用された液晶表示装置であって、環状オレフィン系樹脂よりなる水蒸気透過度の低い方の保護フィルムが、液晶セルに対向する側とは反対側になるように配設されることが必要である。偏光板の水蒸気透過度の高い保護フィルムはガラス等の水蒸気を透しにくい液層表示素子に貼り付けられており、偏光板の他方は水蒸気透過度の低い保護フィルムであるため、60℃・90%RH、60℃・95%RH、80℃・90%RH等の高温高湿環境に置いても、水蒸気に曝される側の保護フィルムが水蒸気透過度が低く水分を透過しにくいので偏光子の光学特性の劣化の進行を抑えることができる。
【0035】
(作用)
本発明の偏光板は片側の環状オレフィン系樹脂よりなる保護フィルムの水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満であるから、これを液晶セルの反対側に配設すると湿熱下の耐久性に優れた偏光板とすることができ、他方の保護フィルムの水蒸気透過率が50〜200g/m2・24hrであるので、従来のウェットラミネーションによる偏光板製造工程でも安定して水分率の低い偏光板が製造できる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
(PVA偏光子の作製)
鹸化度99モル%、厚み75μmのPVA未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。このフィルムの緊張状態を保持したままで、ヨウ素0.5wt%、ヨウ化カリウム5wt%からなる水溶液に浸漬してヨウ素を吸着させた。さらに、ホウ酸10wt%、ヨウ化カリウム10wt%からなる50℃の水溶液で5分間架橋処理を行い、PVA偏光子を得た。
【0038】
(保護フィルムの作製)
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A))
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(日本ゼオン社製「商品名:ZEONEX#490」、以下「ZEONEX」と略す。)の30wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)を得た。乾燥後の厚みは約40μmであった。またASTM F372−73に準拠して測定したところ水蒸気透過度は約6g/m2・24hrであった。
【0039】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)を得た。乾燥後の厚みは約40μmであった。また水蒸気透過度は約90g/m2・24hrであった。
【0040】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(C)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(C)を得た。乾燥後の厚みは約120μmであった。また水蒸気透過度は約30g/m2・24hrであった。
【0041】
(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(D)の作製)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物(JSR社製「ARTON G」)の35wt%トルエン溶液を調製し、PET基材上に流延し60℃で5分間、120℃で5分間の2段階で乾燥した後、基材上より剥離して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(D)を得た。乾燥後の厚みは約10μmであった。また水蒸気透過度は約250g/m2・24hrであった。
【0042】
(TACフィルムの作製)
市販の80ミクロンのTACフィルム(富士写真フイルム社製「フジタッククリアー」)を鹸化して使用した。水蒸気透過度は約680g/m2・24hrであった。
【0043】
(偏光板の作製)
接着剤を用いて、上記PVA偏光子の両面を上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)及び同(B)で挟みゴム製の対ロールでウェットラミネートし、50℃で3分間、65℃で3分間、80℃で3分間乾燥した。その後、45℃で48時間保持し養生した。接着剤として、水性ウレタン接着剤(東洋モートン社製「EL−436A/B」)を主剤100部に対して硬化剤30部、イオン交換水520部を配合したもの、または、平均重合度1800でケン化度99モル%のPVAを5%水溶液としたものを用いた。同様に表1に示すように、上記保護フィルム(A)と上記TACフィルムとで挟んで積層したもの、上記保護フィルム(A)を両側にして挟んだもの、上記保護フィルム(B)を両側にして挟んで積層したもの、上記保護フィルム(A)と上記保護フィルム(C)とで挟んで積層したもの、上記保護フィルム(C)と上記保護フィルム(D)とで挟んで積層したもの、を作製した。
【0044】
尚、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(1)、同(2)には前処理として接着面にコロナ処理を施した。ASTM D5946−96準拠により測定の結果、コロナ処理面の蒸留水との接触角は43°であった
【0045】
(偏光板外観)
上記偏光板を目視で観察し、50mm×50mmの正方形内の接着層中の気泡数を数えた。気泡数が5個未満の場合には○、5個以上の場合には×として評価した。
【0046】
(偏光板カール)
上記偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜き、23℃・55%RHの恒温恒湿室中にて平坦な机上に24hr放置した後、4隅のカール高さを測定し、4隅中最大値が10mm未満のものを○、10mm以上のものを×として評価した。
【0047】
(ガラス板への貼合)
上記乾燥後得られた偏光板を、50mm×50mmの正方形に打ち抜き、60mm×60mmの正方形の無アルカリガラス板に、アクリル粘着剤を用い、ゴム製のニップロールを備えた卓上ラミネーターを用いて貼り合わせた。
実施例1、2においては水蒸気透過度の小さい上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(A)が上記ガラス板と対向する側とは反対側になるよう、すなわち水蒸気透過度の大きい上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム(B)がガラス板に向くようにして、偏光板をガラス板に貼り付けた。比較例1〜5においても、貼り付け方向を表1に示ように配設して偏光板をガラス板に貼り付けた。
【0048】
(高温高湿試験)
上記ガラス板に貼合した偏光板に対し貼合した状態で耐久評価試験を行った。試験条件は、90℃ドライでの高温条件下、及び80℃90%RHの高温高湿条件下で500Hr放置し、耐久試験前後での透過率の変化、偏光度の変化により、耐久光学特性(高温、高温高湿環境下での耐久性、耐熱性)を評価した。なお、透過率変化、偏光度変化は、次のようにして求めた。
【0049】
(透過率変化)
透過率の測定には分光測色計(TC−1800、東京電色工業(株))を用い、透過率をY値で表した。各々の試験後の値から試験前の各々の値を減じて変化を求めた。透過率が上昇しているのは偏光子が脱色していることを意味する。
【0050】
(偏光度変化)
2枚の偏光板を用い、常法により平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度を次の式により求めた。
偏光度=[(H1−H2)/(H1+H2)]1/2
(式中、H1は平行透過率、H2は直交透過率を表す。)
各々の試験後の値から試験前の値を減じて変化を求めた。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の如く、本発明の構成にすることにより偏光子にウェットラミネーション法で保護フィルムを貼り付けた時の発泡、カールがなく、高温、高温高湿環境においても光学特性が劣化しない偏光板を提供することが可能となる。
【0053】
【発明の効果】
本発明の偏光板は、簡易に、従来のウエットラミネーション法にて製造することができる。したがって、新たな設備の導入や改造をしなくとも、従来の偏光板製造プロセスでを用いて製造することができ、高温高湿下でも優れた耐久性を有する。
本発明の液晶表示装置は、高温高湿下でも優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】偏光板をガラス板に貼り付けた状態を表す断面模式図
【符号の説明】
1:ガラス板
2:粘着剤層
3:偏光板保護フィルム(B)
4:接着層
5:偏光子
6:接着層
7:偏光板保護フィルム(A)
Claims (3)
- 合成樹脂フィルムからなる偏光子の両側に、異なる水蒸気透過度の保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、少なくとも片側の保護フィルムが水蒸気透過度が20g/m2・24hr未満の環状オレフィン系樹脂よりなるフィルムであり、他の側の保護フィルムが水蒸気透過度が50g/m2・24hr以上200g/m2・24hr以下のフィルムであることを特徴とする偏光板。
- 両側の保護フィルムがともに環状オレフィン系樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の偏光板。
- 請求項1または請求項2記載の偏光板が液晶セルの少なくとも片側に使用された液晶表示装置であって、環状オレフィン系樹脂よりなる水蒸気透過度の低い方の保護フィルムが、液晶セルに対向する側とは反対側になるように配設されたことを特徴とする液晶表示装置。
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