JP2004305832A - 液体製造装置および方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の溶質を含有する液体から成分バランスのよい液を簡単かつ低コストで得る方法を提供する。
【解決手段】圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットによって、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理して透過液と濃縮液とを得る液体製造装置であって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置する。
【選択図】図1
【解決手段】圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットによって、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理して透過液と濃縮液とを得る液体製造装置であって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体分離膜を用いた液体処理製造装置および方法に関するものであり、さらに詳しくは、海水からイオンバランスが適切な溶液を製造するにあたり好適に用いることができる液体製造装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体分離膜は、化学工業、食品工業、電子工業などの進歩とともに、液体中の懸濁物質、微粒子、細菌の除去に応用されてきた。とくに、最近の水不足や環境問題の深刻化から、海水や鹹水の淡水化による飲料水製造、水中の環境汚染物質の除去などさらに用途は多岐に広がってきている。また、飲料水への安全性の認識の高まりからミネラルウォーターへの需要が高まり、各種湧水、イオン水、海洋深層水など様々な成分を含む水を飲料水として精製する技術が求められてきている。とくに、水深200m以深から得られる海洋深層水は漁業用水の鮮度維持に効果がある、皮膚炎治療に効果があるなどの効用が報告されはじめ、食品工業・医療用途などへ展開されるようになり、海洋深層水を用いてミネラル分を残しながら塩分(塩化ナトリウムや塩化カリウム)を除去(脱塩)したミネラルウォーターが製造・販売されるようになっている。
【0003】
現在、海洋深層水から適切にミネラル分を残しながら飲用レベルまで脱塩し、ミネラルウォーターを製造する方法としては、海水や濃縮海水から晶析法や電気透析によって、ミネラルと塩分のような価数の異なるイオンを分離して適切にミネラル分を残し、ある程度脱塩した上で塩分を舌で感じない程度まで純水で希釈するという方法がある(特許文献1、2)。しかしながら、晶析法では、溶解度の差によってとくに濃度の高い成分である塩分を除去することはできても、その他の成分を望むように除去することは困難である。また、電気透析法においても1価と2価のイオンを分離することはできるが、適切にミネラル分を残すために2価のイオン濃度を調整するには、さらに2価イオン同士の分離を行う行程が必要となり、2価イオン濃度の調整をこれらで行うには原理的に問題があった。
【0004】
また、現在、海水のような高濃度溶液から硬度成分を除去した液の製造をするにあたり、荷電型の限外濾過膜やナノ濾過膜の適用が試みられ始めている。前者は10nmオーダーの細孔を有しているのに対して、後者は0.1〜1nm程度の細孔を有し、後者は前者よりもより小さな分子の分離を行うことができるもので、細孔径による分画性能に加え、膜が荷電を有することによる電気的反発力を利用した分離を原理としており、硬水の軟水化や飲料水中の有害イオン成分除去といった低濃度原液の処理に適用されている。
【0005】
そして、さらに処理効率を上げるために、逆浸透膜ですべてのイオンを濃縮した上でナノろ過膜による分離を行ったり(特許文献3)、ナノ濾過膜の透過側に塩水をながすことにより浸透圧差の低減をはかりさらに動力費を低減させる方法が提案されている(特許文献4)。ナノ濾過膜は、前述の晶析法や電気透析と異なる分離原理を有し、例えばナノろ過膜による前処理によって硫酸イオンをあらかじめ除去する方法(特許文献5)や、2種類の異なるナノろ過膜を直列に配置し、その多段に配置したナノろ過膜に原液を連続して通すことによって硫酸イオンを除去しながらミネラル分を回収する方法(特許文献6)など、ナノろ過膜によってミネラル分を残しつつ海水のような高濃度溶液から硬度成分を除去する方法が種々提案されている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法も、ミネラル分離工程が二段処理になるなど一段処理に加えた動力費が必要となり、十分に省エネルギー化されているとは言えない。透過液側に液を流すような方法もその動力費や液の製造コストなど総合的にみれば効率的とは言い難い。さらに、二段処理の場合は、一段目の性能の影響を二段目がうけるために、安定した生産液を得るためには高度な運転技術が必要となる問題点を有していた。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−85024号公報(請求項)
【0008】
【特許文献2】
特開2002−205070号公報(請求項)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−172392号公報(請求項)
【0010】
【特許文献4】
特開2002−113465号公報(請求項)
【0011】
【特許文献5】
特開2002−292248号公報(請求項)
【0012】
【特許文献6】
特開2002−85944号公報(請求項)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、求めるイオンバランスの溶液を低コストに得ることができる液体製造装置および方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するための本発明は、下記(1)〜(15)を特徴とするものである。
(1)圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットによって、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理して透過液と濃縮液とを得る液体製造装置であって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置したことを特徴とする液体製造装置。
(2)各分離膜ユニットの下流側には濃縮液流路および透過液流路を有し、各濃縮液流路を通過する濃縮液の流量を調節する流量調節手段を備えていることを特徴とする上記(1)記載の液体製造装置。
(3)分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中の一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0であるとともに、分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットの透過液と透過液とを、または濃縮液と濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の液体製造装置。
(4)溶質AおよびBが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び硫酸イオンからなる群から選ばれる2つであることを特徴とする上記(3)記載の液体製造装置。
(5)分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中のすべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下であるとともに、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の液体製造装置。
(6)溶質Aが硫酸イオンまたはマグネシウムイオンであり、溶質Bがカルシウムイオンであり、溶質Cがナトリウムイオンまたは塩素イオンであることを特徴とする上記(5)記載の液体製造装置。
(7)複数種の溶質を含有する原液の主成分が海水であることを特徴とする上記(1)〜(6)いずれかに記載の液体製造装置。
(8)少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする上記(1)〜(7)いずれかに記載の液体製造装置。
(9)生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする上記(1)〜(8)いずれかに記載の液体製造装置。
(10)カチオン性分離膜を有する分離膜ユニットと、アニオン性分離膜を有する分離膜ユニットとを備えていることを特徴とする上記(1)〜(9)いずれかに記載の液体製造装置。
(11)複数種の溶質を含有する原液を、圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットで処理して、特定種の溶質を分離処理した透過液と濃縮液とを得る液体製造方法であって、原液を、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、透過液と濃縮液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする液体製造方法。
(12)一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0である2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする上記(11)記載の液体製造装置。
(13)すべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下である、少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする上記(11)記載の液体製造装置。
(14)少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする上記(11)〜(13)いずれかに記載の液体製造方法。
(15)生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする上記(11)〜(14)いずれかに記載の液体製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の液体製造装置および方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明の液体製造装置は、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に接続してなるもので、原液を分割処理するものである。本発明における分離膜ユニットとは、分離膜が一つまたはそれ以上集まって一つの分離性能を発現する集合体のことをいう。また、本発明における分離性能とは、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理する際、特定種の溶質それぞれの除去性能のことをいう。分離性能が等しいとは、特定種の溶質それぞれの除去性能がすべて等しいことをいい、特定種の溶質のうち、どれか一つの除去性能が異なっていても、分離性能が異なるものとする。したがって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットとは、分離膜自体の性能が異なるものである以外に、同じもしくは異なる膜を用いて異なる構造のユニットにしたものや、異なる運転条件を適用することによって異なる分離性能を発現するものであってもよい。すなわち、分離膜は運転圧力や回収率、また、原水温度、濃度、pHによって阻止性能が変化する。そこで、たとえ分離膜が同じであっても流路幅、膜面積、流路長さなどのユニット構造を変えたり、ユニット構造も同じであっても運転圧力や回収率を変えることによって、さらには片方の原水のみに加温やpH調整剤などの薬剤を投入するといった方法によって阻止性能の異なる分離膜ユニットを得ることが可能である。
【0017】
図1に示す本発明に係る液体製造装置は、互いに並列に配置された、分離性能が異なる分離膜ユニット3、4と、これら分離膜ユニット3、4に原液を昇圧して供給する昇圧ポンプ2および原液流路51、52、53と、分離膜ユニット3、4から得られた濃縮液の流路54、55、58および透過液の流路56、57、59とを備えている。原液流路51は原液流路52、53に分岐して最終的に分離膜ユニット3、4それぞれに原液を供給できるように構成されている。また、分離膜ユニット3、4の濃縮液同士および透過液同士が合流されるように、濃縮液流路54と濃縮液流路55とを合流させて全濃縮液流路58が構成され、透過液流路56と透過液流路57とを合流させて全透過液流路59が構成されている。そして、濃縮液流路54および55には濃縮液バルブ5、6が、また、透過液流路56、57には、透過液バルブ11、12が、さらに原液流路52、53には、原液バルブ9、10が設けられている。
【0018】
この装置において、原液1は、昇圧ポンプ2によって加圧され、分離膜ユニット3、4に送られる。互いに分離性能が異なる分離膜ユニット3、4に送られた原液1は、それぞれの分離膜ユニット3、4において処理されて、異なる組成の濃縮液および透過液を製造する。次いで、分離膜ユニット3、4で得られた異なる組成の濃縮液および透過液は、それぞれ合流し、全濃縮液流路58の出口から全濃縮液7が、全透過液流路59の出口から全透過液8として取り出される。このとき、所望の液質になるように濃縮液バルブ5、6でそれぞれの濃縮液の流量、および透過液バルブ11、12でそれぞれの透過液の流量が調整され混合される。
【0019】
このように、本発明によれば、互いに分離性能が異なる分離膜ユニットを並列に配置し、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成することで、一段処理でもあるにもかかわらず、簡単なバルブ操作もしくはポンプ流出力調節のみで、所望の液質の生産液を得ることが可能となる。
【0020】
具体的には、たとえば、分離膜ユニット3における溶質Aの阻止率RAが分離膜ユニット4における溶質Aの阻止率RA0よりも高く、分離膜ユニット4における溶質Bの阻止率RBが分離膜ユニット3における溶質Bの阻止率RB0よりも高い場合、分離膜ユニット3の濃縮液、透過液と分離膜ユニット4の濃縮液、透過液とでは溶質A、溶質Bの濃度が異なる。すなわち、分離膜ユニット3の濃縮液は、分離膜ユニット4の濃縮液よりも溶質Aの濃度が高く、溶質Bの濃度が低くなり、分離膜ユニット3の透過液は、分離膜ユニット4の透過液よりも溶質Aの濃度が低く、溶質Bの濃度が高くなる。そこで、これらの濃縮液、透過液の混合比率を濃縮液バルブ5、6および透過液バルブ11、12で調整することで、溶質A、溶質Bの組成比が異なる所望の液質の生産液(全濃縮液あるいは全透過液)を得ることができる。
【0021】
分離膜ユニット3、4としては、分離性能が異なる分離膜ユニットを用い、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成するが、たとえば膜表面の荷電が異なる2種類の膜を用いて分離膜ユニット3、4を構成すればよい。膜荷電が正、すなわちカチオン荷電膜では、正荷電同士の電気的斥力のために陽イオン、とくに価数の大きな陽イオンの阻止率が上がり、反対に価数の大きな陰イオンの阻止率が下がる。逆に膜荷電が負、すなわちアニオン荷電膜では、負荷電同士の電気的斥力のために、陰イオン、とくに価数の大きな陰イオンの阻止率が上がり、価数の大きな陽イオンの阻止率が下がる。したがって、例えば、海水をカチオン荷電膜でろ過すると、二価の陽イオンであるマグネシウムイオンやカルシウムイオンを高度に阻止でき、アニオン荷電膜でろ過すると二価の陰イオンである硫酸イオンを高度に除去することができる。さらに、電気的反発力による阻止の場合、電気的相互作用が非イオン性の溶質や水の透過流束に影響を及ぼさないので、細孔の大きさが阻止対象イオンよりも大きくても問題はなく、低い圧力で高い透過流束を得ることが可能となり、エネルギー的にも優位である。
【0022】
また、膜細孔の形状が異なる2種類の膜を用いて分離膜ユニット3、4を構成してもよい。具体的には、溶質Aが直鎖状、溶質Bが球状の分子の場合、膜の細孔が円状のものと楕円状のものを使用すれば、円状の膜の溶質Bに対する阻止率が低い場合でも溶質Aの阻止率を高くすることができ、円状の膜の溶質Bに対する阻止率が100%近い場合でも直鎖状の溶質Aは細長いために溶質Aよりも小さな阻止率となる。楕円状の膜においては、溶質Aが通り抜ける場合でも、溶質Bの直径よりも膜の細孔幅が小さければ、溶質Bを完全に阻止することができる。
【0023】
本発明を適用可能な原液は2つ以上の成分を含有する液体であればよく、価数の異なるイオンを含有する液体、特に海水や鹹水、また、形状の様々な溶質が含まれる河川水など自然水を処理してイオンを分離したり、飲用ミネラル水を製造したり、食用塩を製造したり、飲用ミネラル水に供されるミネラル液を製造したりする場合に適用することが好ましい。なお、原液は、そのままでもあるいは濃縮されていてもよく、さらに濁質の除去やpHの調製などの処理をされていても構わない。
【0024】
海水や鹹水からイオンを分離する場合は、片方の分離対象成分として、陽イオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを、もう片方の分離対象成分として、陰イオンである硫酸イオン、塩素イオンなどを選択し、膜としてもカチオン性の膜とアニオン性の膜を使用することが好ましい。特に分離対象成分を二価のイオンにすると、阻止率の違いが大きくなるために本発明の効果が大きくなり、さらに、二価のイオンは分離対象としてのニーズも多いため本発明の適用に好ましいものである。
【0025】
特に、海水や鹹水や硬水から飲用ミネラル水を製造する場合には、分離膜ユニット3をマグネシウムイオン除去率の高いカチオン性ナノろ過膜で、分離膜ユニット4を硫酸イオン除去率の高いアニオン性ナノろ過膜で構成することによって、硫酸イオンとマグネシウムイオンの少ない液を得ることができ、好ましい。硫酸イオンとマグネシウムイオンは、飲用ミネラル水の味に関して苦みをます成分であるといわれており、海水や鹹水や硬水からミネラル水を製造する場合にはこれらの濃度を低減することが求められる。海水から飲用ミネラル水を製造する場合には、本方法を前処理として、得られたミネラル液から塩分を取り除くことによって、ミネラル組成に優れたおいしい水を得ることが可能となる。また、鹹水や硬水を同様に処理すれば、塩分除去なしで直接、飲用に適したおいしいミネラル水を得ることができる。
【0026】
一方、食用塩を製造するためには、カチオン性ナノろ過膜とアニオン性ナノろ過膜で、かつ前述のものよりも膜表面荷電が大きいものや細孔が小さいものを用いれば、生産液は二価イオンのみがかなりの程度で除去されながら、いくらか残存している塩化ナトリウムが豊富な液を得ることができる。この液は、塩化ナトリウムに海水の各種溶質が含まれているため、この液を脱水することによって健康・味の面でバランスのとれた食用塩を製造することができる。
【0027】
なお、上述した態様は、図1の実施形態において、濃縮液流路54、55に設けた濃縮液バルブ5、6や透過液流路56、57に設けた透過液バルブ11、12によって分離膜ユニット3、4の回収率を調節するものであったが、必要に応じてこれらのいずれか一方を用いてもよく、流量比をさらに変化させ易くするために、原液流路52、53に設けられた原液バルブ9、10も用いてもよい。そして、原液バルブ9、10の代わりに昇圧ポンプを用いてもよい。
【0028】
さらに、少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する機構が備えられていれば、自動運転が可能となるため、非常に好ましい。たとえば図1に示すように、全透過液流路59に全透過液8の濃度を測定する濃度測定部13と、その測定情報に基づいて昇圧ポンプ2の出力と濃縮液バルブ5、6の開度を制御する流量制御部14とを設け、分離膜ユニット3、4それぞれの透過液流量が制御されるように構成する。ここで、少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度とは、いずれか一方の分離膜ユニットから得られる透過液濃度でも構わないし、全ての分離膜ユニットから得られた透過液を合流させた後の全透過液濃度でも構わない。
【0029】
さらに、本発明は図2に示すように変形実施することもできる。
【0030】
図2に示す本発明に係る液体製造装置は、互いに並列に配置された、分離性能が異なる分離膜ユニット23、24と、これら分離膜ユニット23、24に原液21を章圧して供給する昇圧ポンプ22および原液流路71、72、73と、分離膜ユニット23、24から得られた濃縮液の流路74、75および透過液の流路76、77とを備えている。原液流路71は原液流路72、73に分岐して最終的に分離膜ユニット23、24それぞれに原液を供給できるように構成されている。また、分離膜ユニット23から得られる透過液と分離膜ユニット24から得られる濃縮液とを合流させる排液流路78、および分離膜ユニット24から得られる透過液と分離膜ユニット23から得られる濃縮液とを合流させる生産液流路79も配されており、排液流路78の出口から排液27が、生産液流路79の出口から生産液28が得られる。さらに、濃縮液流路74および75には濃縮液バルブ25、26が、透過液流路76、77には、透過液バルブ31、32が、さらに原液流路72、73には、原液バルブ29、30が設けられている。
【0031】
この装置において、原液21は、昇圧ポンプ22によって加圧され、分離膜ユニット23、24に送られる。互いに分離性能が異なる分離膜ユニット23、24に送られた原液21は、それぞれの分離膜ユニット23、24において処理されて、異なる組成の濃縮液および透過液を製造する。次いで、分離膜ユニット23、24で得られた異なる組成の濃縮液および透過液は、所望の液質になるように濃縮液バルブ25、26や透過液バルブ31、32などで流量が調整されながら混合される。このとき、分離膜ユニット23から得られる透過液と分離膜ユニット24から得られる濃縮液とが混合流路78にて合流し、分離膜ユニット24から得られる透過液と分離膜ユニット23から得られる濃縮液とが混合流路79にて合流する。
【0032】
このように、本実施態様においても、互いに分離性能が異なる分離膜ユニットを並列に配置し、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成しているので、一段処理でもあるにもかかわらず、簡単なバルブ操作もしくはポンプ流出力調節のみで、所望の液質の生産液を得ることが可能となる。
【0033】
溶質A、溶質B、溶質Cが含まれる溶液から、溶質Bの濃度が溶質Aや溶質Cの濃度よりも高い溶液を得るというニーズは多くあるが、たとえば、すべての分離膜ユニット23、24において溶質Aの阻止率RAが溶質Cの阻止率RCより高く、かつ、分離膜ユニット23における溶質Bの阻止率RBが分離膜ユニット24における溶質Bの阻止率RB0よりも高い場合、溶質A、Bの濃度が高い分離膜ユニット23の濃縮液と、溶質Aの濃度が低く、溶質Bの濃度が高い分離膜ユニット24の透過液とを混合させれば、その混合液は、溶質Bが溶質Aや溶質Cよりも濃縮される割合が大きいものとなる。そして、すべての分離膜ユニットにおけるRAが70%以上でありかつRCが30%以下である状況で、分離膜ユニット23におけるRBが70%以上でありかつ分離膜ユニット24におけるRB0が30%以下である場合に、溶質Bの濃縮される割合がより大きいものとなり、より好ましい。
【0034】
具体的には、海水から飲用ミネラル水に供されるミネラル液を製造する場合、ミネラル成分としてカルシウムイオンやマグネシウムイオンを濃縮しながら、ナトリウムイオンの濃縮を抑える必要がある。また、カルシウムイオンに対してマグネシウムイオンが多いと苦みの多い水になるため、マグネシウムよりカルシウムをより多く回収したいというニーズがある。このような場合、カルシウムイオンとマグネシウムイオンは二価であり、ナトリウムイオンは一価であり、イオンの大きさ(ストークス半径:溶液中におけるイオンの拡散係数や溶液粘度から求めた実効半径)は、マグネシウムイオン>カルシウムイオン>ナトリウムイオンであるので、分離膜ユニット23は、二価イオンであるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの阻止率が高いカチオン性膜、中でもカチオン性ナノろ過膜で構成することが好ましい。このようにカチオン性膜で構成すると、分離膜ユニット23からは、ナトリウムイオンがほとんど濃縮されずに、カルシウムイオンとマグネシウムイオンが濃縮された濃縮液を得ることができる。一方で、分離膜ユニット24は、荷電が少ない膜で、細孔の大きさがナトリウムイオン、カルシウムイオンより大きくかつマグネシウムイオンより小さな膜で構成すると、マグネシウムが高度に除去された透過液を得ることができる。したがって、分離膜ユニット23の濃縮液と分離膜ユニット24の透過液との混合液は、原液に対してカルシウムイオンの濃縮率がマグネシウムイオンやナトリウムイオンよりも高い液となる。その結果、一段で不必要な硬度成分を除去しながらミネラル分を濃縮することが可能となる。このようにして得られたミネラル液において、まだ塩分が多い場合は、晶析法などによって脱塩すれば、ミネラル組成に優れたおいしい飲料水を得ることが可能となる。また、海水よりも塩濃度が低いかん水や硬水を同様に処理する場合には、塩分除去なしで直接、飲用に適したおいしいミネラル水を得ることができる。
【0035】
なお、分離膜ユニット23、24に送られる原液21の量および回収率は、昇圧ポンプ22の動力と濃縮バルブ25、26や透過液バルブ31、32によって調節される。また、流量比をさらに変化させたい場合は、原液流路72、73に設けた原液バルブ29、30を用いて調整することも好ましい。さらに、原液バルブ29、30の代わりに昇圧ポンプを設けることもできる。
【0036】
さらに、生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する機構が設けられていれば、自動運転が可能となるため、非常に好ましい。たとえば、混合流路79が生産液流路であるとすれば、図2に示すように、生産液28の濃度を測定する濃度測定部33を混合流路79に設け、そして、その測定情報に基づいて昇圧ポンプ22の出力と濃縮液バルブ25、26、さらには透過液バルブ31、32の開度を制御する流量制御部34を設ける。これにより、濃度測定部33によって生産液の濃度が測定され、その情報をもとに、昇圧ポンプ22の出力と濃縮液バルブ25、26および透過液バルブ31、32の少なくとも一つの開度が流量制御部34によって制御される。
【0037】
そして、本発明における「分離膜ユニット」としては、圧力を分離の駆動力とし、液中成分を分離することを目的としたものであれば特に限定されるものではなく、一般に溶質を除去する膜と言われている細孔径0.45μm以下の逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜等を備えたものであればよく、この中で、分離溶質に応じて、細孔径の異なる膜を選択することが可能である。
【0038】
例えば先に述べたように海水等からイオンを分離する場合、細孔径が1〜サブナノメートルであるナノろ過膜を適用することが好ましい。また、分子量が数千から数十万になる蛋白質、河川水などに含まれるフミン酸やフルボ酸といった腐食酸類を分離する場合は、限外ろ過膜を適用することが好ましい。
【0039】
膜形態としては中空糸膜、管状膜、平膜などいずれの形態でもよく、中空糸膜や管状膜の場合は、外圧式もしくは内圧式で全濾過型やクロスフロー型、また平膜の場合は、スパイラル型や積層型のユニットとして用いることができる。中でも、透過液側で滞留部分がなく、汚染のおそれが少ないスパイラル型や、外圧式の中空糸膜や管状膜を用いて生産液を膜の内側に流す方式のユニットとすることが好ましい。
【0040】
限外濾過膜、精密濾過膜としては、相分離法や溶融延伸法など一般的な多孔性分離膜の作製方法を採ることができ、膜素材としても、有機材料、無機材料のいずれも適用可能であり、有機材料としてはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリ6フッ化プロピレンなどが例示される。
【0041】
そして、逆浸透膜やナノ濾過膜は、相分離法や界面重縮合法など一般的な作製方法を採ることができ、その素材として酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく使用される。代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。
【0042】
そして、これらのなかでも、酢酸セルロース系の非対称膜やポリアミド系複合膜は、分離性能と高透水性を両立しており、分離膜としてのポテンシャルが高く、さらに脂肪族系のポリアミド複合膜では細孔の分布が小さくイオンの分離特性に優れることからとくに本発明を適用するにあたり効果が大きい。また、上述のように、ミネラル水製造などイオン分離を目的とする場合には、カチオン性ナノ濾過膜とアニオン性ナノろ過膜を用いることが好ましいが、カチオン性ナノろ過膜の場合には、[I]を主な繰り返し単位とする水溶性重合体を主成分として3官能以上の芳香族多官能酸塩化物を架橋反応させて得られるポリアミド複合膜がイオン分離性能に優れ、アニオン性ナノろ過膜としては、ピペラジンまたはその同族体を主成分としかつ次式[II]および/または[III]で示される酸成分を構成成分として含有する架橋ポリアミド複合膜が細孔の分布が小さくイオンの分離特性に優れることからとくに本発明を適用するにあたり効果が大きい。
【0043】
【化1】
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
さらに、これらの膜を表面修飾することによって細孔径、細孔構造、表面特性の異なる膜を得ることができ、これらも本発明の適用に支障はない。
【0047】
膜に荷電を有する膜としては、表面官能基としてアミノ基、アンモニウム基などのカチオン性基やカルボン酸、スルホン酸などのアニオン性基を有し、カチオン性基が相対的に多い場合は、カチオン性膜となり、アニオン性基が多い場合は、アニオン性膜となる。カチオン性膜は膜のpH7でのゼータ電位が正であり、アニオン性膜は膜のpH7でのゼータ電位が負となる。なお、ゼータ電位は市販のゼータ電位測定装置で測定することができる。
【0048】
さらに、膜に荷電を持たせる方法としては、膜素材の重合の際に官能基を持たせることもできるし、表面修飾によって膜表面に官能基を付与することも可能である。
【0049】
そして、ナノ濾過膜の膜構造においても非対称膜、複合膜などを限定するものではない。膜の少なくとも片面に緻密層を有し、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜であってもよい。
【0050】
【実施例】
<実施例1>
図1に示したフローで、原液1として東レ(株)愛媛工場近海の海水(表1)を圧力1.0MPa、総原液流量50m3/日、温度25℃の条件で、分離膜ユニット3および分離膜ユニット4それぞれに同量流れるように濃縮液バルブ5、6を絞って運転を行った。原液バルブ9、10および透過液バルブ11、12は全開で運転を行った。
【0051】
分離膜ユニット3としては、ポリスルホン多孔膜の片面に脂肪族アミンと酸クロライドを界面重縮合して薄膜を形成させたナノ濾過膜をスパイラル状に巻回して得られた、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−610(外径10cm、全長1m)4本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。分離膜ユニット4としては、ポリスルホン多孔膜の片面に脂肪族ポリアミンと酸クロライドを界面重縮合して薄膜を形成させたナノ濾過膜をスパイラル状に巻回して得られた、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−210(外径10cm、全長1m)4本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。
【0052】
得られた全透過液8の組成を、表1(実施例1−1)に示す。全透過液の硫酸イオンおよびマグネシウムイオン濃度はカルシウムイオン濃度に対して大きく減少した。
【0053】
また、原液流量比が分離膜ユニット3:分離膜ユニット4=1:2になるように濃縮液バルブ5、6を調節したところ、全透過液8の組成および濃縮率は、表1(実施例1−2)のようになった。
【0054】
<比較例1>
分離膜ユニット3、4を、共にSU−210で構成した他は実施例1と同じ装置および同じ条件で海水を処理した。
【0055】
全透過液8の組成および濃縮率を、表1に示す。
【0056】
全透過液の硫酸イオン濃度は小さくなり、カルシウムイオン濃度の低下は防げたが、マグネシウムイオンはあまり除去できなかった。
【0057】
<比較例2>
分離膜ユニット3、4を、共にSU−610で構成した他は実施例1と同じ装置および同じ条件で海水を処理した。
【0058】
全透過液8の組成および濃縮率を、表1に示す。
【0059】
全透過液のマグネシウムイオン濃度は小さくなったが、硫酸イオン濃度はまだ高く、カルシウムイオン濃度も大きく減少した。
【0060】
【表1】
【0061】
<実施例2、比較例3〜6>
図2に示したフローで、原液21として東レ(株)愛媛工場近海の海水(表2)を、圧力2.0MPa、温度25℃の条件で、分離膜ユニット23および分離膜ユニット24それぞれに40m3/日流れるように濃縮液バルブ25、26を絞って運転を行った。原液バルブ29、30および透過液バルブ31、32は全開で運転を行った。
【0062】
分離膜ユニット23としては、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−610(外径10cm、全長1m)2本を直列にして圧力容器に装填したモジュールを用いた。分離膜ユニット24としては、分離膜ユニット23と同じSU−610を5,000ppm次亜塩素酸ソーダに10時間浸漬して得られた低阻止型ナノろ過膜エレメント2本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。
【0063】
分離膜ユニット23の濃縮液と分離膜ユニット24の透過液との混合液(生産液)の組成を、表2に示す。他のイオンの濃度をほとんど変えずに、カルシウムイオンを高い倍率で濃縮した液を得ることができた。
【0064】
一方、分離膜ユニット23の透過液を比較例3とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット23単独ではカルシウムイオン濃度が低下し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることができないことがわかる。
【0065】
また、分離膜ユニット23の濃縮液を比較例4とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット23単独では、マグネシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度が増加し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできないことがわかる。
【0066】
そして、分離膜ユニット24の透過液を比較例5とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット24単独では、カルシウムイオン濃度はほとんど変わらず、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできなかいことがわかる。
【0067】
さらに、分離膜ユニット24の濃縮液を比較例6とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット24単独では、マグネシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度が増加し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできないことがわかる。
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置するので、濃度バランスが適切な溶液を簡単な操作かつ低コストで得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体製造装置の一例である。
【図2】本発明を係る液体製造装置の他の一例である。
【符号の説明】
1:原液
2:昇圧ポンプ
3:分離膜ユニット
4:分離膜ユニット
5:濃縮液バルブ
6:濃縮液バルブ
7:全濃縮液
8:全透過液
9:原液バルブ
10:原液バルブ
11:透過液バルブ
12:透過液バルブ
13:濃度測定部
14:流量制御部
21:原液
22:昇圧ポンプ
23:分離膜ユニット
24:分離膜ユニット
25:濃縮液バルブ
26:濃縮液バルブ
27:排液
28:生産液
29:原液バルブ
30:原液バルブ
31:透過液バルブ
32:透過液バルブ
33:濃度測定部
34:流量制御部
51:原液流路
52:原液流路
53:原液流路
54:濃縮液流路
55:濃縮液流路
56:透過液流路
57:透過液流路
58:全濃縮液流路
59:全透過液流路
71:原液流路
72:原液流路
73:原液流路
74:濃縮液流路
75:濃縮液流路
76:透過液流路
77:透過液流路
78:排液流路
79:生産液流路
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体分離膜を用いた液体処理製造装置および方法に関するものであり、さらに詳しくは、海水からイオンバランスが適切な溶液を製造するにあたり好適に用いることができる液体製造装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体分離膜は、化学工業、食品工業、電子工業などの進歩とともに、液体中の懸濁物質、微粒子、細菌の除去に応用されてきた。とくに、最近の水不足や環境問題の深刻化から、海水や鹹水の淡水化による飲料水製造、水中の環境汚染物質の除去などさらに用途は多岐に広がってきている。また、飲料水への安全性の認識の高まりからミネラルウォーターへの需要が高まり、各種湧水、イオン水、海洋深層水など様々な成分を含む水を飲料水として精製する技術が求められてきている。とくに、水深200m以深から得られる海洋深層水は漁業用水の鮮度維持に効果がある、皮膚炎治療に効果があるなどの効用が報告されはじめ、食品工業・医療用途などへ展開されるようになり、海洋深層水を用いてミネラル分を残しながら塩分(塩化ナトリウムや塩化カリウム)を除去(脱塩)したミネラルウォーターが製造・販売されるようになっている。
【0003】
現在、海洋深層水から適切にミネラル分を残しながら飲用レベルまで脱塩し、ミネラルウォーターを製造する方法としては、海水や濃縮海水から晶析法や電気透析によって、ミネラルと塩分のような価数の異なるイオンを分離して適切にミネラル分を残し、ある程度脱塩した上で塩分を舌で感じない程度まで純水で希釈するという方法がある(特許文献1、2)。しかしながら、晶析法では、溶解度の差によってとくに濃度の高い成分である塩分を除去することはできても、その他の成分を望むように除去することは困難である。また、電気透析法においても1価と2価のイオンを分離することはできるが、適切にミネラル分を残すために2価のイオン濃度を調整するには、さらに2価イオン同士の分離を行う行程が必要となり、2価イオン濃度の調整をこれらで行うには原理的に問題があった。
【0004】
また、現在、海水のような高濃度溶液から硬度成分を除去した液の製造をするにあたり、荷電型の限外濾過膜やナノ濾過膜の適用が試みられ始めている。前者は10nmオーダーの細孔を有しているのに対して、後者は0.1〜1nm程度の細孔を有し、後者は前者よりもより小さな分子の分離を行うことができるもので、細孔径による分画性能に加え、膜が荷電を有することによる電気的反発力を利用した分離を原理としており、硬水の軟水化や飲料水中の有害イオン成分除去といった低濃度原液の処理に適用されている。
【0005】
そして、さらに処理効率を上げるために、逆浸透膜ですべてのイオンを濃縮した上でナノろ過膜による分離を行ったり(特許文献3)、ナノ濾過膜の透過側に塩水をながすことにより浸透圧差の低減をはかりさらに動力費を低減させる方法が提案されている(特許文献4)。ナノ濾過膜は、前述の晶析法や電気透析と異なる分離原理を有し、例えばナノろ過膜による前処理によって硫酸イオンをあらかじめ除去する方法(特許文献5)や、2種類の異なるナノろ過膜を直列に配置し、その多段に配置したナノろ過膜に原液を連続して通すことによって硫酸イオンを除去しながらミネラル分を回収する方法(特許文献6)など、ナノろ過膜によってミネラル分を残しつつ海水のような高濃度溶液から硬度成分を除去する方法が種々提案されている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法も、ミネラル分離工程が二段処理になるなど一段処理に加えた動力費が必要となり、十分に省エネルギー化されているとは言えない。透過液側に液を流すような方法もその動力費や液の製造コストなど総合的にみれば効率的とは言い難い。さらに、二段処理の場合は、一段目の性能の影響を二段目がうけるために、安定した生産液を得るためには高度な運転技術が必要となる問題点を有していた。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−85024号公報(請求項)
【0008】
【特許文献2】
特開2002−205070号公報(請求項)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−172392号公報(請求項)
【0010】
【特許文献4】
特開2002−113465号公報(請求項)
【0011】
【特許文献5】
特開2002−292248号公報(請求項)
【0012】
【特許文献6】
特開2002−85944号公報(請求項)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、求めるイオンバランスの溶液を低コストに得ることができる液体製造装置および方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するための本発明は、下記(1)〜(15)を特徴とするものである。
(1)圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットによって、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理して透過液と濃縮液とを得る液体製造装置であって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置したことを特徴とする液体製造装置。
(2)各分離膜ユニットの下流側には濃縮液流路および透過液流路を有し、各濃縮液流路を通過する濃縮液の流量を調節する流量調節手段を備えていることを特徴とする上記(1)記載の液体製造装置。
(3)分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中の一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0であるとともに、分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットの透過液と透過液とを、または濃縮液と濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の液体製造装置。
(4)溶質AおよびBが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び硫酸イオンからなる群から選ばれる2つであることを特徴とする上記(3)記載の液体製造装置。
(5)分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中のすべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下であるとともに、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の液体製造装置。
(6)溶質Aが硫酸イオンまたはマグネシウムイオンであり、溶質Bがカルシウムイオンであり、溶質Cがナトリウムイオンまたは塩素イオンであることを特徴とする上記(5)記載の液体製造装置。
(7)複数種の溶質を含有する原液の主成分が海水であることを特徴とする上記(1)〜(6)いずれかに記載の液体製造装置。
(8)少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする上記(1)〜(7)いずれかに記載の液体製造装置。
(9)生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする上記(1)〜(8)いずれかに記載の液体製造装置。
(10)カチオン性分離膜を有する分離膜ユニットと、アニオン性分離膜を有する分離膜ユニットとを備えていることを特徴とする上記(1)〜(9)いずれかに記載の液体製造装置。
(11)複数種の溶質を含有する原液を、圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットで処理して、特定種の溶質を分離処理した透過液と濃縮液とを得る液体製造方法であって、原液を、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、透過液と濃縮液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする液体製造方法。
(12)一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0である2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする上記(11)記載の液体製造装置。
(13)すべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下である、少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする上記(11)記載の液体製造装置。
(14)少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする上記(11)〜(13)いずれかに記載の液体製造方法。
(15)生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする上記(11)〜(14)いずれかに記載の液体製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の液体製造装置および方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明の液体製造装置は、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に接続してなるもので、原液を分割処理するものである。本発明における分離膜ユニットとは、分離膜が一つまたはそれ以上集まって一つの分離性能を発現する集合体のことをいう。また、本発明における分離性能とは、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理する際、特定種の溶質それぞれの除去性能のことをいう。分離性能が等しいとは、特定種の溶質それぞれの除去性能がすべて等しいことをいい、特定種の溶質のうち、どれか一つの除去性能が異なっていても、分離性能が異なるものとする。したがって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットとは、分離膜自体の性能が異なるものである以外に、同じもしくは異なる膜を用いて異なる構造のユニットにしたものや、異なる運転条件を適用することによって異なる分離性能を発現するものであってもよい。すなわち、分離膜は運転圧力や回収率、また、原水温度、濃度、pHによって阻止性能が変化する。そこで、たとえ分離膜が同じであっても流路幅、膜面積、流路長さなどのユニット構造を変えたり、ユニット構造も同じであっても運転圧力や回収率を変えることによって、さらには片方の原水のみに加温やpH調整剤などの薬剤を投入するといった方法によって阻止性能の異なる分離膜ユニットを得ることが可能である。
【0017】
図1に示す本発明に係る液体製造装置は、互いに並列に配置された、分離性能が異なる分離膜ユニット3、4と、これら分離膜ユニット3、4に原液を昇圧して供給する昇圧ポンプ2および原液流路51、52、53と、分離膜ユニット3、4から得られた濃縮液の流路54、55、58および透過液の流路56、57、59とを備えている。原液流路51は原液流路52、53に分岐して最終的に分離膜ユニット3、4それぞれに原液を供給できるように構成されている。また、分離膜ユニット3、4の濃縮液同士および透過液同士が合流されるように、濃縮液流路54と濃縮液流路55とを合流させて全濃縮液流路58が構成され、透過液流路56と透過液流路57とを合流させて全透過液流路59が構成されている。そして、濃縮液流路54および55には濃縮液バルブ5、6が、また、透過液流路56、57には、透過液バルブ11、12が、さらに原液流路52、53には、原液バルブ9、10が設けられている。
【0018】
この装置において、原液1は、昇圧ポンプ2によって加圧され、分離膜ユニット3、4に送られる。互いに分離性能が異なる分離膜ユニット3、4に送られた原液1は、それぞれの分離膜ユニット3、4において処理されて、異なる組成の濃縮液および透過液を製造する。次いで、分離膜ユニット3、4で得られた異なる組成の濃縮液および透過液は、それぞれ合流し、全濃縮液流路58の出口から全濃縮液7が、全透過液流路59の出口から全透過液8として取り出される。このとき、所望の液質になるように濃縮液バルブ5、6でそれぞれの濃縮液の流量、および透過液バルブ11、12でそれぞれの透過液の流量が調整され混合される。
【0019】
このように、本発明によれば、互いに分離性能が異なる分離膜ユニットを並列に配置し、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成することで、一段処理でもあるにもかかわらず、簡単なバルブ操作もしくはポンプ流出力調節のみで、所望の液質の生産液を得ることが可能となる。
【0020】
具体的には、たとえば、分離膜ユニット3における溶質Aの阻止率RAが分離膜ユニット4における溶質Aの阻止率RA0よりも高く、分離膜ユニット4における溶質Bの阻止率RBが分離膜ユニット3における溶質Bの阻止率RB0よりも高い場合、分離膜ユニット3の濃縮液、透過液と分離膜ユニット4の濃縮液、透過液とでは溶質A、溶質Bの濃度が異なる。すなわち、分離膜ユニット3の濃縮液は、分離膜ユニット4の濃縮液よりも溶質Aの濃度が高く、溶質Bの濃度が低くなり、分離膜ユニット3の透過液は、分離膜ユニット4の透過液よりも溶質Aの濃度が低く、溶質Bの濃度が高くなる。そこで、これらの濃縮液、透過液の混合比率を濃縮液バルブ5、6および透過液バルブ11、12で調整することで、溶質A、溶質Bの組成比が異なる所望の液質の生産液(全濃縮液あるいは全透過液)を得ることができる。
【0021】
分離膜ユニット3、4としては、分離性能が異なる分離膜ユニットを用い、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成するが、たとえば膜表面の荷電が異なる2種類の膜を用いて分離膜ユニット3、4を構成すればよい。膜荷電が正、すなわちカチオン荷電膜では、正荷電同士の電気的斥力のために陽イオン、とくに価数の大きな陽イオンの阻止率が上がり、反対に価数の大きな陰イオンの阻止率が下がる。逆に膜荷電が負、すなわちアニオン荷電膜では、負荷電同士の電気的斥力のために、陰イオン、とくに価数の大きな陰イオンの阻止率が上がり、価数の大きな陽イオンの阻止率が下がる。したがって、例えば、海水をカチオン荷電膜でろ過すると、二価の陽イオンであるマグネシウムイオンやカルシウムイオンを高度に阻止でき、アニオン荷電膜でろ過すると二価の陰イオンである硫酸イオンを高度に除去することができる。さらに、電気的反発力による阻止の場合、電気的相互作用が非イオン性の溶質や水の透過流束に影響を及ぼさないので、細孔の大きさが阻止対象イオンよりも大きくても問題はなく、低い圧力で高い透過流束を得ることが可能となり、エネルギー的にも優位である。
【0022】
また、膜細孔の形状が異なる2種類の膜を用いて分離膜ユニット3、4を構成してもよい。具体的には、溶質Aが直鎖状、溶質Bが球状の分子の場合、膜の細孔が円状のものと楕円状のものを使用すれば、円状の膜の溶質Bに対する阻止率が低い場合でも溶質Aの阻止率を高くすることができ、円状の膜の溶質Bに対する阻止率が100%近い場合でも直鎖状の溶質Aは細長いために溶質Aよりも小さな阻止率となる。楕円状の膜においては、溶質Aが通り抜ける場合でも、溶質Bの直径よりも膜の細孔幅が小さければ、溶質Bを完全に阻止することができる。
【0023】
本発明を適用可能な原液は2つ以上の成分を含有する液体であればよく、価数の異なるイオンを含有する液体、特に海水や鹹水、また、形状の様々な溶質が含まれる河川水など自然水を処理してイオンを分離したり、飲用ミネラル水を製造したり、食用塩を製造したり、飲用ミネラル水に供されるミネラル液を製造したりする場合に適用することが好ましい。なお、原液は、そのままでもあるいは濃縮されていてもよく、さらに濁質の除去やpHの調製などの処理をされていても構わない。
【0024】
海水や鹹水からイオンを分離する場合は、片方の分離対象成分として、陽イオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを、もう片方の分離対象成分として、陰イオンである硫酸イオン、塩素イオンなどを選択し、膜としてもカチオン性の膜とアニオン性の膜を使用することが好ましい。特に分離対象成分を二価のイオンにすると、阻止率の違いが大きくなるために本発明の効果が大きくなり、さらに、二価のイオンは分離対象としてのニーズも多いため本発明の適用に好ましいものである。
【0025】
特に、海水や鹹水や硬水から飲用ミネラル水を製造する場合には、分離膜ユニット3をマグネシウムイオン除去率の高いカチオン性ナノろ過膜で、分離膜ユニット4を硫酸イオン除去率の高いアニオン性ナノろ過膜で構成することによって、硫酸イオンとマグネシウムイオンの少ない液を得ることができ、好ましい。硫酸イオンとマグネシウムイオンは、飲用ミネラル水の味に関して苦みをます成分であるといわれており、海水や鹹水や硬水からミネラル水を製造する場合にはこれらの濃度を低減することが求められる。海水から飲用ミネラル水を製造する場合には、本方法を前処理として、得られたミネラル液から塩分を取り除くことによって、ミネラル組成に優れたおいしい水を得ることが可能となる。また、鹹水や硬水を同様に処理すれば、塩分除去なしで直接、飲用に適したおいしいミネラル水を得ることができる。
【0026】
一方、食用塩を製造するためには、カチオン性ナノろ過膜とアニオン性ナノろ過膜で、かつ前述のものよりも膜表面荷電が大きいものや細孔が小さいものを用いれば、生産液は二価イオンのみがかなりの程度で除去されながら、いくらか残存している塩化ナトリウムが豊富な液を得ることができる。この液は、塩化ナトリウムに海水の各種溶質が含まれているため、この液を脱水することによって健康・味の面でバランスのとれた食用塩を製造することができる。
【0027】
なお、上述した態様は、図1の実施形態において、濃縮液流路54、55に設けた濃縮液バルブ5、6や透過液流路56、57に設けた透過液バルブ11、12によって分離膜ユニット3、4の回収率を調節するものであったが、必要に応じてこれらのいずれか一方を用いてもよく、流量比をさらに変化させ易くするために、原液流路52、53に設けられた原液バルブ9、10も用いてもよい。そして、原液バルブ9、10の代わりに昇圧ポンプを用いてもよい。
【0028】
さらに、少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する機構が備えられていれば、自動運転が可能となるため、非常に好ましい。たとえば図1に示すように、全透過液流路59に全透過液8の濃度を測定する濃度測定部13と、その測定情報に基づいて昇圧ポンプ2の出力と濃縮液バルブ5、6の開度を制御する流量制御部14とを設け、分離膜ユニット3、4それぞれの透過液流量が制御されるように構成する。ここで、少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度とは、いずれか一方の分離膜ユニットから得られる透過液濃度でも構わないし、全ての分離膜ユニットから得られた透過液を合流させた後の全透過液濃度でも構わない。
【0029】
さらに、本発明は図2に示すように変形実施することもできる。
【0030】
図2に示す本発明に係る液体製造装置は、互いに並列に配置された、分離性能が異なる分離膜ユニット23、24と、これら分離膜ユニット23、24に原液21を章圧して供給する昇圧ポンプ22および原液流路71、72、73と、分離膜ユニット23、24から得られた濃縮液の流路74、75および透過液の流路76、77とを備えている。原液流路71は原液流路72、73に分岐して最終的に分離膜ユニット23、24それぞれに原液を供給できるように構成されている。また、分離膜ユニット23から得られる透過液と分離膜ユニット24から得られる濃縮液とを合流させる排液流路78、および分離膜ユニット24から得られる透過液と分離膜ユニット23から得られる濃縮液とを合流させる生産液流路79も配されており、排液流路78の出口から排液27が、生産液流路79の出口から生産液28が得られる。さらに、濃縮液流路74および75には濃縮液バルブ25、26が、透過液流路76、77には、透過液バルブ31、32が、さらに原液流路72、73には、原液バルブ29、30が設けられている。
【0031】
この装置において、原液21は、昇圧ポンプ22によって加圧され、分離膜ユニット23、24に送られる。互いに分離性能が異なる分離膜ユニット23、24に送られた原液21は、それぞれの分離膜ユニット23、24において処理されて、異なる組成の濃縮液および透過液を製造する。次いで、分離膜ユニット23、24で得られた異なる組成の濃縮液および透過液は、所望の液質になるように濃縮液バルブ25、26や透過液バルブ31、32などで流量が調整されながら混合される。このとき、分離膜ユニット23から得られる透過液と分離膜ユニット24から得られる濃縮液とが混合流路78にて合流し、分離膜ユニット24から得られる透過液と分離膜ユニット23から得られる濃縮液とが混合流路79にて合流する。
【0032】
このように、本実施態様においても、互いに分離性能が異なる分離膜ユニットを並列に配置し、それぞれの分離膜ユニットにおいて異なる組成の濃縮液および透過液を得られるように構成しているので、一段処理でもあるにもかかわらず、簡単なバルブ操作もしくはポンプ流出力調節のみで、所望の液質の生産液を得ることが可能となる。
【0033】
溶質A、溶質B、溶質Cが含まれる溶液から、溶質Bの濃度が溶質Aや溶質Cの濃度よりも高い溶液を得るというニーズは多くあるが、たとえば、すべての分離膜ユニット23、24において溶質Aの阻止率RAが溶質Cの阻止率RCより高く、かつ、分離膜ユニット23における溶質Bの阻止率RBが分離膜ユニット24における溶質Bの阻止率RB0よりも高い場合、溶質A、Bの濃度が高い分離膜ユニット23の濃縮液と、溶質Aの濃度が低く、溶質Bの濃度が高い分離膜ユニット24の透過液とを混合させれば、その混合液は、溶質Bが溶質Aや溶質Cよりも濃縮される割合が大きいものとなる。そして、すべての分離膜ユニットにおけるRAが70%以上でありかつRCが30%以下である状況で、分離膜ユニット23におけるRBが70%以上でありかつ分離膜ユニット24におけるRB0が30%以下である場合に、溶質Bの濃縮される割合がより大きいものとなり、より好ましい。
【0034】
具体的には、海水から飲用ミネラル水に供されるミネラル液を製造する場合、ミネラル成分としてカルシウムイオンやマグネシウムイオンを濃縮しながら、ナトリウムイオンの濃縮を抑える必要がある。また、カルシウムイオンに対してマグネシウムイオンが多いと苦みの多い水になるため、マグネシウムよりカルシウムをより多く回収したいというニーズがある。このような場合、カルシウムイオンとマグネシウムイオンは二価であり、ナトリウムイオンは一価であり、イオンの大きさ(ストークス半径:溶液中におけるイオンの拡散係数や溶液粘度から求めた実効半径)は、マグネシウムイオン>カルシウムイオン>ナトリウムイオンであるので、分離膜ユニット23は、二価イオンであるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの阻止率が高いカチオン性膜、中でもカチオン性ナノろ過膜で構成することが好ましい。このようにカチオン性膜で構成すると、分離膜ユニット23からは、ナトリウムイオンがほとんど濃縮されずに、カルシウムイオンとマグネシウムイオンが濃縮された濃縮液を得ることができる。一方で、分離膜ユニット24は、荷電が少ない膜で、細孔の大きさがナトリウムイオン、カルシウムイオンより大きくかつマグネシウムイオンより小さな膜で構成すると、マグネシウムが高度に除去された透過液を得ることができる。したがって、分離膜ユニット23の濃縮液と分離膜ユニット24の透過液との混合液は、原液に対してカルシウムイオンの濃縮率がマグネシウムイオンやナトリウムイオンよりも高い液となる。その結果、一段で不必要な硬度成分を除去しながらミネラル分を濃縮することが可能となる。このようにして得られたミネラル液において、まだ塩分が多い場合は、晶析法などによって脱塩すれば、ミネラル組成に優れたおいしい飲料水を得ることが可能となる。また、海水よりも塩濃度が低いかん水や硬水を同様に処理する場合には、塩分除去なしで直接、飲用に適したおいしいミネラル水を得ることができる。
【0035】
なお、分離膜ユニット23、24に送られる原液21の量および回収率は、昇圧ポンプ22の動力と濃縮バルブ25、26や透過液バルブ31、32によって調節される。また、流量比をさらに変化させたい場合は、原液流路72、73に設けた原液バルブ29、30を用いて調整することも好ましい。さらに、原液バルブ29、30の代わりに昇圧ポンプを設けることもできる。
【0036】
さらに、生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する機構が設けられていれば、自動運転が可能となるため、非常に好ましい。たとえば、混合流路79が生産液流路であるとすれば、図2に示すように、生産液28の濃度を測定する濃度測定部33を混合流路79に設け、そして、その測定情報に基づいて昇圧ポンプ22の出力と濃縮液バルブ25、26、さらには透過液バルブ31、32の開度を制御する流量制御部34を設ける。これにより、濃度測定部33によって生産液の濃度が測定され、その情報をもとに、昇圧ポンプ22の出力と濃縮液バルブ25、26および透過液バルブ31、32の少なくとも一つの開度が流量制御部34によって制御される。
【0037】
そして、本発明における「分離膜ユニット」としては、圧力を分離の駆動力とし、液中成分を分離することを目的としたものであれば特に限定されるものではなく、一般に溶質を除去する膜と言われている細孔径0.45μm以下の逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜等を備えたものであればよく、この中で、分離溶質に応じて、細孔径の異なる膜を選択することが可能である。
【0038】
例えば先に述べたように海水等からイオンを分離する場合、細孔径が1〜サブナノメートルであるナノろ過膜を適用することが好ましい。また、分子量が数千から数十万になる蛋白質、河川水などに含まれるフミン酸やフルボ酸といった腐食酸類を分離する場合は、限外ろ過膜を適用することが好ましい。
【0039】
膜形態としては中空糸膜、管状膜、平膜などいずれの形態でもよく、中空糸膜や管状膜の場合は、外圧式もしくは内圧式で全濾過型やクロスフロー型、また平膜の場合は、スパイラル型や積層型のユニットとして用いることができる。中でも、透過液側で滞留部分がなく、汚染のおそれが少ないスパイラル型や、外圧式の中空糸膜や管状膜を用いて生産液を膜の内側に流す方式のユニットとすることが好ましい。
【0040】
限外濾過膜、精密濾過膜としては、相分離法や溶融延伸法など一般的な多孔性分離膜の作製方法を採ることができ、膜素材としても、有機材料、無機材料のいずれも適用可能であり、有機材料としてはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリ6フッ化プロピレンなどが例示される。
【0041】
そして、逆浸透膜やナノ濾過膜は、相分離法や界面重縮合法など一般的な作製方法を採ることができ、その素材として酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく使用される。代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。
【0042】
そして、これらのなかでも、酢酸セルロース系の非対称膜やポリアミド系複合膜は、分離性能と高透水性を両立しており、分離膜としてのポテンシャルが高く、さらに脂肪族系のポリアミド複合膜では細孔の分布が小さくイオンの分離特性に優れることからとくに本発明を適用するにあたり効果が大きい。また、上述のように、ミネラル水製造などイオン分離を目的とする場合には、カチオン性ナノ濾過膜とアニオン性ナノろ過膜を用いることが好ましいが、カチオン性ナノろ過膜の場合には、[I]を主な繰り返し単位とする水溶性重合体を主成分として3官能以上の芳香族多官能酸塩化物を架橋反応させて得られるポリアミド複合膜がイオン分離性能に優れ、アニオン性ナノろ過膜としては、ピペラジンまたはその同族体を主成分としかつ次式[II]および/または[III]で示される酸成分を構成成分として含有する架橋ポリアミド複合膜が細孔の分布が小さくイオンの分離特性に優れることからとくに本発明を適用するにあたり効果が大きい。
【0043】
【化1】
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
さらに、これらの膜を表面修飾することによって細孔径、細孔構造、表面特性の異なる膜を得ることができ、これらも本発明の適用に支障はない。
【0047】
膜に荷電を有する膜としては、表面官能基としてアミノ基、アンモニウム基などのカチオン性基やカルボン酸、スルホン酸などのアニオン性基を有し、カチオン性基が相対的に多い場合は、カチオン性膜となり、アニオン性基が多い場合は、アニオン性膜となる。カチオン性膜は膜のpH7でのゼータ電位が正であり、アニオン性膜は膜のpH7でのゼータ電位が負となる。なお、ゼータ電位は市販のゼータ電位測定装置で測定することができる。
【0048】
さらに、膜に荷電を持たせる方法としては、膜素材の重合の際に官能基を持たせることもできるし、表面修飾によって膜表面に官能基を付与することも可能である。
【0049】
そして、ナノ濾過膜の膜構造においても非対称膜、複合膜などを限定するものではない。膜の少なくとも片面に緻密層を有し、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜であってもよい。
【0050】
【実施例】
<実施例1>
図1に示したフローで、原液1として東レ(株)愛媛工場近海の海水(表1)を圧力1.0MPa、総原液流量50m3/日、温度25℃の条件で、分離膜ユニット3および分離膜ユニット4それぞれに同量流れるように濃縮液バルブ5、6を絞って運転を行った。原液バルブ9、10および透過液バルブ11、12は全開で運転を行った。
【0051】
分離膜ユニット3としては、ポリスルホン多孔膜の片面に脂肪族アミンと酸クロライドを界面重縮合して薄膜を形成させたナノ濾過膜をスパイラル状に巻回して得られた、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−610(外径10cm、全長1m)4本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。分離膜ユニット4としては、ポリスルホン多孔膜の片面に脂肪族ポリアミンと酸クロライドを界面重縮合して薄膜を形成させたナノ濾過膜をスパイラル状に巻回して得られた、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−210(外径10cm、全長1m)4本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。
【0052】
得られた全透過液8の組成を、表1(実施例1−1)に示す。全透過液の硫酸イオンおよびマグネシウムイオン濃度はカルシウムイオン濃度に対して大きく減少した。
【0053】
また、原液流量比が分離膜ユニット3:分離膜ユニット4=1:2になるように濃縮液バルブ5、6を調節したところ、全透過液8の組成および濃縮率は、表1(実施例1−2)のようになった。
【0054】
<比較例1>
分離膜ユニット3、4を、共にSU−210で構成した他は実施例1と同じ装置および同じ条件で海水を処理した。
【0055】
全透過液8の組成および濃縮率を、表1に示す。
【0056】
全透過液の硫酸イオン濃度は小さくなり、カルシウムイオン濃度の低下は防げたが、マグネシウムイオンはあまり除去できなかった。
【0057】
<比較例2>
分離膜ユニット3、4を、共にSU−610で構成した他は実施例1と同じ装置および同じ条件で海水を処理した。
【0058】
全透過液8の組成および濃縮率を、表1に示す。
【0059】
全透過液のマグネシウムイオン濃度は小さくなったが、硫酸イオン濃度はまだ高く、カルシウムイオン濃度も大きく減少した。
【0060】
【表1】
【0061】
<実施例2、比較例3〜6>
図2に示したフローで、原液21として東レ(株)愛媛工場近海の海水(表2)を、圧力2.0MPa、温度25℃の条件で、分離膜ユニット23および分離膜ユニット24それぞれに40m3/日流れるように濃縮液バルブ25、26を絞って運転を行った。原液バルブ29、30および透過液バルブ31、32は全開で運転を行った。
【0062】
分離膜ユニット23としては、東レ(株)製スパイラル型ナノ濾過膜エレメントSU−610(外径10cm、全長1m)2本を直列にして圧力容器に装填したモジュールを用いた。分離膜ユニット24としては、分離膜ユニット23と同じSU−610を5,000ppm次亜塩素酸ソーダに10時間浸漬して得られた低阻止型ナノろ過膜エレメント2本を直列して圧力容器に装填したモジュールを用いた。
【0063】
分離膜ユニット23の濃縮液と分離膜ユニット24の透過液との混合液(生産液)の組成を、表2に示す。他のイオンの濃度をほとんど変えずに、カルシウムイオンを高い倍率で濃縮した液を得ることができた。
【0064】
一方、分離膜ユニット23の透過液を比較例3とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット23単独ではカルシウムイオン濃度が低下し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることができないことがわかる。
【0065】
また、分離膜ユニット23の濃縮液を比較例4とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット23単独では、マグネシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度が増加し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできないことがわかる。
【0066】
そして、分離膜ユニット24の透過液を比較例5とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット24単独では、カルシウムイオン濃度はほとんど変わらず、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできなかいことがわかる。
【0067】
さらに、分離膜ユニット24の濃縮液を比較例6とし、組成を表2に示す。分離膜ユニット24単独では、マグネシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度が増加し、カルシウムイオン濃度が高い求める水質の液を得ることはできないことがわかる。
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置するので、濃度バランスが適切な溶液を簡単な操作かつ低コストで得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体製造装置の一例である。
【図2】本発明を係る液体製造装置の他の一例である。
【符号の説明】
1:原液
2:昇圧ポンプ
3:分離膜ユニット
4:分離膜ユニット
5:濃縮液バルブ
6:濃縮液バルブ
7:全濃縮液
8:全透過液
9:原液バルブ
10:原液バルブ
11:透過液バルブ
12:透過液バルブ
13:濃度測定部
14:流量制御部
21:原液
22:昇圧ポンプ
23:分離膜ユニット
24:分離膜ユニット
25:濃縮液バルブ
26:濃縮液バルブ
27:排液
28:生産液
29:原液バルブ
30:原液バルブ
31:透過液バルブ
32:透過液バルブ
33:濃度測定部
34:流量制御部
51:原液流路
52:原液流路
53:原液流路
54:濃縮液流路
55:濃縮液流路
56:透過液流路
57:透過液流路
58:全濃縮液流路
59:全透過液流路
71:原液流路
72:原液流路
73:原液流路
74:濃縮液流路
75:濃縮液流路
76:透過液流路
77:透過液流路
78:排液流路
79:生産液流路
Claims (15)
- 圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットによって、複数種の溶質を含有する原液から特定種の溶質を分離処理して透過液と濃縮液とを得る液体製造装置であって、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットを並列に配置したことを特徴とする液体製造装置。
- 各分離膜ユニットの下流側には濃縮液流路および透過液流路を有し、各濃縮液流路を通過する濃縮液の流量を調節する流量調節手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の液体製造装置。
- 分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中の一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0であるとともに、分離性能が互いに異なる2種類の分離膜ユニットの透過液と透過液とを、または濃縮液と濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の液体製造装置。
- 溶質AおよびBが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び硫酸イオンからなる群から選ばれる2つであることを特徴とする請求項3に記載の液体製造装置。
- 分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットが並列に配置され、その中のすべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下であるとともに、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して生産液を得る混合手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の液体製造装置。
- 溶質Aが硫酸イオンまたはマグネシウムイオンであり、溶質Bがカルシウムイオンであり、溶質Cがナトリウムイオンまたは塩素イオンであることを特徴とする請求項5記載の液体製造装置。
- 複数種の溶質を含有する原液の主成分が海水であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の液体製造装置。
- 少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の液体製造装置。
- 生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の液体製造装置。
- カチオン性分離膜を有する分離膜ユニットと、アニオン性分離膜を有する分離膜ユニットとを備えていることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の液体製造装置。
- 複数種の溶質を含有する原液を、圧力を透過の駆動力とする分離膜ユニットで処理して、特定種の溶質を分離処理した透過液と濃縮液とを得る液体製造方法であって、原液を、分離性能が互いに異なる少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、透過液と濃縮液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする液体製造方法。
- 一方の分離膜ユニットにおける2種類の溶質A、Bの阻止率RA、RBが他方の分離膜ユニットにおける阻止率RA0、RB0に対して、RA>RA0かつRB<RB0である2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、各分離膜ユニットで得られた透過液と透過液、または濃縮液と濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする請求項11記載の液体製造装置。
- すべての分離膜ユニットにおける溶質Aの阻止率RAが70%以上であり、その中の少なくとも1種類の分離膜ユニットにおける溶質Bの阻止率RBが70%以上で、かつ、その他のすべての分離膜ユニットにおける阻止率RB0が30%以下であり、さらに、すべての分離膜ユニットにおける溶質Cの阻止率RCが30%以下である、少なくとも2種類の分離膜ユニットそれぞれに原液を供給し、少なくとも1種類の分離膜ユニットを通過した透過液と残りの分離膜ユニットによる濃縮液とを混合して、生産液を得ることを特徴とする請求項11記載の液体製造装置。
- 少なくとも1種類の分離膜ユニットから得られる透過液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする請求項11〜13いずれかに記載の液体製造方法。
- 生産液濃度に基づいて原液流量もしくは透過液流量を制御することを特徴とする請求項11〜14いずれかに記載の液体製造方法。
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JP2013022580A (ja) * | 2011-07-26 | 2013-02-04 | Daicen Membrane Systems Ltd | Nf膜及びその製造方法 |
WO2020203142A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 栗田工業株式会社 | 微粒子除去装置及び微粒子除去方法 |
-
2003
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