JP2004299003A - 金属酸化物ナノ薄膜の製造方法、該方法により得られたナノ薄膜及び該ナノ薄膜を有する誘電材料 - Google Patents

金属酸化物ナノ薄膜の製造方法、該方法により得られたナノ薄膜及び該ナノ薄膜を有する誘電材料 Download PDF

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Abstract

【課題】極めて薄い金属酸化物ナノ薄膜の製造方法及び該方法により得られたナノ薄膜の提供、並びに該ナノ薄膜を用いた誘電材料の提供。
【解決手段】基材表面に金属塩を含む水溶液を接触させることにより、前記金属塩に含まれる金属イオンを前記基材表面に吸着させる工程Aと、前記基材表面に吸着させた金属イオンを純水と接触させる工程Bとからなり、好ましくは工程A及びBを少なくとも1回繰り返し、繰り返し工程において異なる種類の金属塩を含み、得られる金属酸化物ナノ薄膜がアモルファス状であり、ナノ薄膜の膜厚が0.1〜10nm、密度が0.5〜10.0g/cmであり、誘電材料が該ナノ薄膜を有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物ナノ薄膜(以下、単に「ナノ薄膜」ともいう)の製造方法及び該製造方法で得られたナノ薄膜、並びに該ナノ薄膜を有する誘電材料に関する。特に、本発明は、基材表面に吸着した金属イオンを純水と接触させることにより、金属酸化物のナノ薄膜が形成されるという新たな事実に基づき、一定の膜厚を有するアモルファス状のナノ薄膜の製造方法及び該方法で得られたナノ薄膜、並びに該ナノ薄膜を用いた、優れた誘電特性を有する誘電材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物のナノ薄膜の製造は、今日の製造業において極めて基盤的な技術と位置づけられる。基材表面の酸化物薄膜は、材料の機械的性質の向上、化学的な安定化、電気や磁気特性又は誘電特性や光学特性の付与、触媒の調製や接着性の向上など多様な目的のために形成される。その応用範囲は、記憶材料や電子デバイス、表示材料、センサーなど幅広い。超伝導や巨大磁気抵抗効果を利用するデバイスでは、金属酸化物をナノメートル精度で積層化する技術が重要となる。
【0003】
このような酸化物薄膜の製造技術は、産業の動向や社会的要請と密接に関わりながら発展してきた。例えば、液晶ディスプレイでは、透明導電体の薄膜製造技術が要求され、金属酸化物に適用可能なCVD法やスパッタ技術が発達してきた。今日、MOS−FETデバイスにおける微細化のニーズは、数オングストロームの厚みを有する酸化物絶縁膜(High−k膜)の作製に集中している。さらに、光触媒や太陽電池、環境浄化などの応用分野では、より温和な条件下での薄膜製造プロセスへの期待も大きい。
【0004】
電子デバイスを構成する高精度の酸化物ナノ薄膜は、一般に、CVD法、イオンビームによるスパッタリング、レーザーアブレーションなどの気相法によって製造される。これらの真空技術を利用する方法は、圧力や温度、原料ガスやターゲットを幅広く選択でき、得られる薄膜の均一性も高い。しかしながら、エピタキシャル成長する特殊な例を除くと、数ナノメートルのレベルで金属酸化物の組成や膜厚が制御できるものは少ない。これは、金属酸化物が一般に微小なドメインやクラックを形成しやすいためである。特に、CVD法では原料ガス由来の炭素の混入が避けられない場合が多い。また、均質性の高い金属酸化物のナノ薄膜を得るためには、通常、基板温度を非常に高くする必要がある。
【0005】
一方、液相法による金属酸化物の薄膜製造法としては、陽極酸化などの電気化学的な方法、又はスピンコーティングやスプレーコートなどの塗布による方法が知られている。これらの方法では、温和な条件下、低コストで、大面積の基板に金属酸化物の薄膜を製造することが可能である。しかしながら、電気化学的な方法あるいは塗布による方法では、10nm以下の膜厚を制御することが難しい。
【0006】
本件特許出願人は、これまで表面ゾルゲル法と命名した金属酸化物の薄膜製造法に関する一連の報告を行ってきた(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、まず、表面に水酸基を有する基板に金属アルコキシド化合物を化学吸着させ、次いで、これを加水分解することにより、分子厚みの金属酸化物のナノ薄膜が製造できる。また、この方法では、金属アルコキシド化合物の吸着と加水分解を繰り返すことで、ナノ薄膜を逐次積層化することも可能である。
【0007】
しかし、上記表面ゾルゲル法に用いることができる化合物は、固体表面の水酸基に化学的に結合でき、かつ加水分解によって表面に新たな水酸基を生成し得る金属化合物(例えば、金属アルコキシド化合物)に限られる。また、このような金属化合物を表面に吸着させるためには一般に有機溶媒が用いられ、製造されるナノ薄膜中への炭素の混入が避けられなかった。
【0008】
一方、固体表面への金属化合物の静電的な吸着と、それに続く化学反応を利用することで、金属酸化物のナノ薄膜を作製することもできる。この方法は、SILAR法(Successive Ionic−Layer Adsorption and Reaction)と呼ばれ、80年代の後半、金属カルコゲナイトのナノ薄膜の作製法として発達してきた方法である(例えば、非特許文献2参照)。Gonzailezらは、過剰のアンモニアを添加して形成させた亜鉛のアミン錯体([Zn(NH2+)を用いたSILAR法による金属酸化物ナノ薄膜の作製方法を報告している(非特許文献3参照)。すなわち、Gonzailezらは、まず[Zn(NH2+の水溶液にガラス基板を浸漬し、次いで96℃の熱水に浸漬して吸着したアミン錯体を分解し、酸化亜鉛(ZnO)に変換し、さらに基板表面に生じた粒子状のZnOを取り除くために水中で攪拌して洗浄した。これらの操作を繰り返すことで、1サイクル当り2.5nmの厚みのZnO薄膜を成長させることができる。
【0009】
近年、Lindroosらにより、エチレンジアミンを含む塩化亜鉛(ZnCl)水溶液と過酸化水素(H)水溶液を用いたSILAR法による金属酸化物のナノ薄膜の作製方法が報告されている(非特許文献4参照)。この方法では、まず、3倍モルのエチレンジアミンを含むZnClの水溶液にガラス基板を浸漬し、次に水で十分に洗浄し、さらに10%のH水溶液に浸し、水で充分洗浄する。これらの操作を繰り返すことで、1サイクル当り0.15nmの厚みで二酸化亜鉛(ZnO)のナノ薄膜が成長する。これを熱処理することで、ZnOのナノ薄膜が得られる。
【0010】
他方、Parkらは、SILAR法により複合金属酸化物のナノ薄膜の作製を報告している(非特許文献5参照)。具体的な実験条件の報告はないが、基板の亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液への浸漬と洗浄、そしてシリカイオン(SiO 4−)を含む水溶液への浸漬と洗浄を繰り返すことで、ZnSiOのナノ薄膜を得ている。
【0011】
このようにSILAR法は、金属化合物の吸着操作と分解操作、あるいは金属イオンの吸着操作と反対電荷を有するイオンとの吸着操作を交互に繰り返すことにより、金属酸化物のナノ薄膜が製造される方法である。ここで、SILAR法において金属化合物の分解操作を含む場合には、熱処理又は酸化剤などによる処理操作が必要である。一方、反対電荷を有するイオンとの反応操作を含む場合には、少なくとも2種類の水溶液を用いなければならない。さらに、再現性よく一定厚みのナノ薄膜を製造するためには、水溶液からの薄膜の析出には、何らかの化学反応により薄膜を不溶化する必要があるとの理由から、少なくとも吸着と洗浄と反応(又は分解)と洗浄という4つ操作を繰り返して行う必要がある。
【0012】
一方、SILAR法では、金属アルコキシド化合物を利用する表面ゾルゲル法とは異なり、有機溶媒を使用する必要がない。しかしながら、金属錯体や金属イオンとして溶解させるため、さらには金属酸化物を析出させるために、有機アミンや酸、塩基を添加する必要がある。これらは、形成される金属酸化物のナノ薄膜中に容易に混入し、取り除くことが困難となる。特に、ナトリウムイオンやカリウムイオンが混入した場合、ナノ薄膜の電気特性を著しく低下させる可能性がある。
【0013】
【非特許文献1】
I. Ichinoseら、Chemistry of Materials、Vol.9、p1296−1298、1997年6月
【非特許文献2】
Y. F. Nicolau、Application of Surface Science、Vol.22/23、p1061−1074、1985年6月
【非特許文献3】
A. E. J−Gonzailezら、Semiconductor Science and Technology、Vol.10、p1277−1281、1995年9月
【非特許文献4】
S. Lindroosら、International Journal of Inorganic Materials、Vol.2、p197−201、2000年7月
【非特許文献5】
S. Parkら、Science、Vol.297、p65、2002年7月5日発刊
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、金属酸化物ナノ薄膜の製造方法としては、これまで満足の行くものは開発されるに至っていない。かくして本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、穏和な条件かつ簡単な操作で金属酸化物のナノ薄膜を製造することができる方法、及びその製造方法で得られる極めて薄いナノ薄膜を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このようなナノ薄膜を用いて優れた特性を有する誘電材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、基材表面に吸着している金属イオンを純水と接触させることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の製造方法は、基材表面に金属塩を含む水溶液を接触させることにより、前記金属塩に含まれる金属イオンを前記基材表面に吸着させる工程Aと、前記基材表面に吸着した金属イオンを純水と接触させる工程Bとからなる。さらに、本発明の製造方法は、前記工程A及びBを少なくとも1回以上繰り返すことができる。さらに、本発明の製造方法は、前記繰り返し工程において、異なる種類の金属塩を含む水溶液を用いることもできる。さらに、本発明の製造方法は、好ましくは、金属イオンを化学的又は静電的に吸着可能な官能基を有する基材を用いる。
【0017】
さらに、本発明の製造方法は、金属塩としてオーレーション可能な金属イオンを含む金属塩を用いることが好ましく、pH8〜10の範囲で水酸化物の沈殿を形成し得る金属イオンを含む金属塩を用いることがより好ましい。また、本発明の製造方法では、純水として、0℃より高く、かつ50℃以下の温度の純水を用いることが好ましい。
【0018】
さらに、前記製造方法により得られる金属酸化物ナノ薄膜は、アモルファス状であり、膜厚が0.1〜10nmであり、かつ密度が0.5〜10.0g/cmであるものが好ましい。また、本発明の金属酸化物ナノ薄膜は、該ナノ薄膜を有する誘電材料として用いることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のナノ薄膜について詳細に説明する。なお、本発明において「〜」は、その前後に記載されている数値をそれぞれの最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0020】
[本発明の金属酸化物ナノ薄膜の製造方法]
本発明の製造方法では、基材表面に金属イオンを吸着させ、次いで該金属イオンを純水と接触させることによりナノ薄膜を製造することができる。
本発明のナノ薄膜は、このような極めて単純な操作でナノ薄膜を製造できる。
以下にその理由を具体例を挙げながら説明する。
【0021】
例えば、硝酸ガドリニウム(III)六水和物(Gd(NO・6HO)を純水に溶解し、所定の濃度になるように調製し、基材をこの溶液中で数分間浸漬した後、純水で充分洗浄する。その後、この基材を乾燥すると、基材表面には酸化ガドリニウムのナノ薄膜が形成される。
上記の製造方法では、純水を金属塩の溶媒として用いているが、純水で洗浄することにより金属塩が基材表面から洗浄されることなく、基材表面にナノ薄膜が形成される。
【0022】
金属酸化物などの基材は、表面に金属イオンを吸着することが知られており、その吸着の仕方には、様々な様式がある。例えば、表面の酸素原子や水酸基は、配位結合を介して金属イオンを化学的に結合することができる。また、金属酸化物の基材は、水中で表面の水酸基が解離することで負電荷を帯び、表面に金属イオンを静電的に吸着することができる。金属イオンの吸着量は、金属塩の水溶液の濃度やpHなどに依存するが、一般には金属イオンの吸着により表面に十分な量の正電荷が生じたときに飽和する。
【0023】
上記硝酸ガドリニウム(III)(Gd(NO)を用いた場合、金属酸化物の表面には、表面の酸素原子に化学的に結合したガドリニウムイオン(Gd3+)と、表面の負電荷と静電的に結合したガドリニウムイオン(Gd3+)とが存在するため、金属酸化物の表面は全体として正電荷を帯びる。そのため、正電荷を中和するための硝酸イオン(NO )も金属酸化物の表面に存在している。
【0024】
本発明の製造方法では、上記のような状態でガドリニウムイオン(Gd3+)が吸着している基材表面を純水で洗浄する。洗浄工程において、まず、基材表面近傍に過剰に吸着した硝酸ガドリニウム(Gd(NO)が除去される。一方、表面の酸素原子に化学的に結合したガドリニウムイオン(Gd3+)と表面の負電荷と静電的に結合したガドリニウムイオン(Gd3+)とは、基材表面から容易には除去されない。また、固体表面の正電荷を中和している硝酸イオン(NO )は、純水中に極微量に存在する水酸化物イオン(OH)と交換され純水中に拡散する。
【0025】
ここで、硝酸イオン(NO )が水酸化物イオン(OH)に交換される理由は、次のように説明することができる。
例えば、ガドリニウムイオン(Gd3+)の吸着に用いた硝酸ガドリニウム水溶液の濃度を2mMとした場合、硝酸ガドリニウム水溶液中には6mMの硝酸イオンが存在する。また、該水溶液のpHは6.03であり、水酸化物イオンの濃度は1.07×10−5mMである。一方、純水と接触させる際、純水中には硝酸イオンが存在しておらず、水酸化物イオンの濃度は、1.00×10−4mMである。したがって、硝酸イオンと水酸化物イオンとの間の大きな濃度勾配により、基材表面に静電的に吸着している水和した硝酸イオンは、純水中の水酸化物イオンと容易にイオン交換すると考えられる。
【0026】
上記イオン交換を別の見方で解釈すると、ガドリニウムイオンが吸着した基材表面は、水酸化物イオンを濃縮し、純水中よりもpHが高くなっているとも考えられる。ここで、表面に引き寄せられた水酸化物イオンは、固体表面のガドリニウムイオンに配位し、引き続くオーレーションにより水和した酸化ガドリニウムのナノ薄膜を形成する。
なお、「オーレーション」とは、配位水酸基が複数の金属イオンと橋かけすることの総称であり、いわゆる金属の水酸化物の沈殿は、一般に水和した酸化物であるが、通常この金属水酸化物の生成もオーレーションである。
【0027】
以上のように、硝酸ガドリニウム水溶液を純粋と接触させると、硝酸ガドリニウム水溶液中の硝酸イオンの水中への移動と同時に、酸化ガドリニウムのナノ薄膜が形成される。
本発明の製造方法において、金属イオンの対アニオンの物質移動は、金属酸化物ナノ薄膜が形成される際に、その駆動力となり得るものである。
【0028】
次に、本発明の製造方法の工程についてさらに詳細に説明する。
<工程A>
本発明の製造方法は、基材表面を金属塩を含む水溶液(以下「金属塩水溶液」ともいう。)に接触させることにより、前記金属塩に含まれる金属イオンを前記基材表面に吸着させる工程Aを有する。
【0029】
工程Aで用いられる基材は、その表面において金属イオンを吸着し得るものであれば、特に制限されないが、金属イオンを化学的又は静電的に吸着可能な官能基を有する基材であることが好ましい。例えば、金属酸化物の層を表面に有する基材は、好適に用いることができ、さらにアモルファス状の金属酸化物の層を表面に有する基材は、より好適に用いることができる。
【0030】
また、金属イオンを吸着できない貴金属などを基材として用いる場合、その表面をメルカプトエタノールやメルカプトプロピオン酸などにより修飾することにより、金属イオンの吸着特性を向上させることができる。例えば、シリコンウエハーの表面に形成される結晶性の高いシリカ層は、金属イオンを十分に吸着させることができないが、表面ゾルゲル法などの手法で表面修飾することにより、金属イオンに対して吸着活性を有するようになるため、基材として用いることができる。
【0031】
さらに、本発明における基材は、表面に金属イオンを吸着可能なプリカーサー膜を有するものであってもよい。このようなプリカーサー膜は、特に限定されないが、最外層にアニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸型のポリマー)を有する薄膜を交互吸着法により形成されたものが好適である。また、最外層としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの金属イオンへの配位性を有するポリマー層を形成させてもよい。
【0032】
本発明における基材の形状及び表面状態は、本発明におけるナノ薄膜と相互作用し、かつ該ナノ薄膜を表面に保持できるものであれば、特に制限はない。すなわち、本発明の製造方法では、基材表面に吸着した金属イオンを純水と接触させてナノ薄膜を得るため、表面は平滑である必要はなく、材質や形状にも様々なものを選択できる。一般に、金属イオンを十分に吸着し得る基材は、該ナノ薄膜とも相互作用することができる。
【0033】
工程Aで用いられる金属塩を含む水溶液は、金属塩を純水に溶かした水溶液であることが好ましい。純水は、イオン交換法によって得られた高純度水であることが好適である。純水の温度は、0℃より高く、かつ50℃以下であることが好ましい。
【0034】
金属塩は、基材表面でオーレーションを起こすことが可能な金属イオンを含む金属塩であり、かつ水中で金属イオンを生じた場合、該金属イオンの第一配位圏には、水、水酸化物イオン又は架橋配位子となり得る酸素原子のみが単独又は組み合わせて存在し、酸素原子以外の元素は、該第一配位圏に存在しないものである。したがって、酸素原子以外の元素を含む金属塩、例えば、アミン錯体などの金属錯体やエチレンジアミンなどのアミン化合物を含む金属塩は、本発明の金属塩には含まれない。
【0035】
一般に、基材表面に吸着した金属イオンは、水溶液中の金属イオンと比較して水酸化物イオンと結合しやすい傾向がある。さらに、基材表面の金属イオンに配位した水酸化物イオンは、その濃縮効果のために、互いに縮合しやすい傾向がある。すなわち、基材表面に吸着した金属イオンは、水溶液中の金属イオンよりもオーレーションを起こしやすい傾向がある。このため、金属塩は、一般には、pH8〜10の範囲で水酸化物の沈殿を形成する金属イオン(例えば、ガドリニウムイオンなど)を含む金属塩であることが適当である。
【0036】
本発明で用いられる代表的な金属塩を例示すれば、例えば、硝酸ランタン(III)六水和物(La(NO・6HO)、硝酸ユウロピウム(III)六水和物(Eu(NO・6HO)、硝酸ガドリニウム(III)六水和物(Gd(NO・6HO)、塩化ランタン(III)七水和物(LaCl・7HO)、塩化ユウロピウム(III)六水和物(EuCl・6HO)などのランタノイドイオンの塩が挙げられる。
【0037】
金属水溶液中の金属塩の濃度は、基材表面にナノ薄膜を形成し得る濃度であれば特に限定されず、0.01〜100mMの範囲内であることが好ましく、0.1〜10mMの範囲内であることがさらに好ましい。
【0038】
工程Aにおいて、基材表面と金属塩水溶液との接触は、特に制限されることはないが、基材を金属塩水溶液中に浸漬することにより接触させることが好ましい。接触時間及び接触温度は、10秒〜5分の時間で0〜50℃の範囲内で適宜決定することができる。通常は、基材表面を金属塩水溶液中に室温で1分間浸漬させることで、金属イオンの吸着が行われる。金属イオンは、飽和吸着量で吸着させることができる。また、低濃度の金属塩の水溶液を用いて、飽和吸着量より少ない量の金属イオンを吸着させてもよい。
【0039】
<工程B>
本発明の製造方法は、上記基材表面に吸着させた金属イオンをさらに純水と接触させる工程Bを有する。本発明の製造方法は、工程Bを経ることにより金属酸化物のナノ薄膜を得ることができる。
工程Bで用いられる純水は、工程Aと同様、イオン交換法によって得られた高純度水を利用することが好適である。また、純水の温度は0℃より高く、かつ50℃以下であることが好ましい。
【0040】
工程Bにおける純粋との接触時間及び接触温度は、10秒〜5分の時間で0〜50℃の範囲内で適宜決定することができる。通常、基材表面を該純水に室温で1分間浸漬させることにより行うことができる。
【0041】
工程Bでは、純水との接触後、必要に応じて窒素ガス等の乾燥用ガスを用いて表面を乾燥して本発明のナノ薄膜を得ることができる。乾燥ガスの種類、乾燥時間などはナノ薄膜の大きさ、厚さ等に応じて適宜決定することができる。
【0042】
以上の工程A及びBの操作により、所定の膜厚を有する金属酸化物ナノ薄膜が得られる。また、本発明の製造方法は、上記の操作を少なくとも1回繰り返すことができ、所望の膜厚を有するナノ薄膜を得ることができる。また、上記の操作において、異なる種類の金属塩水溶液を用いることで、複合金属酸化物ナノ薄膜を製造することもできる。
【0043】
[本発明の金属酸化物ナノ薄膜及び誘電材料]
本発明のナノ薄膜は、上記の製造方法により得られるものであり、ナノ薄膜の膜厚は、特に制限されないが、0.1〜10nmの範囲であることが好ましく、0.2〜5.0nmの範囲であることがより好ましく、0.5〜2.0nmの範囲であることがさらに好ましい。膜厚が0.1nm未満であると、基材表面を均一に覆うことが困難である場合があり、10nmより厚くなると、乾燥時にクラックが生じる場合がある。さらに、ナノ薄膜の厚さは、上記の製造方法を繰り返すことにより、適宜調製することができる。
【0044】
本発明のナノ薄膜は、概してアモルファス状の薄膜として得られる。また、水溶液から製造されるため、一般に水和した金属酸化物として得られる。ナノ薄膜の密度は、用いる金属イオンの種類により異なるが、通常、0.5〜10.0g/cmの範囲であり、1.0〜5.0g/cmであることが好ましく、2.0〜4.0g/cmであることがさらに好ましい。ナノ薄膜の密度が0.5g/cm未満であると、内部に空隙が生じてナノ薄膜の均一性が低下する場合がある。一方、ナノ薄膜の密度が10.0g/cmよりも大きな薄膜を本発明の製造方法により作製することはできない。
【0045】
また、本発明のナノ薄膜は、アルカリ性の水溶液に対して安定であり、例えば、pH11の水酸化ナトリウム水溶液に室温で数時間浸漬させてもナノ薄膜の脱離や溶解はみられない。一方、本発明のナノ薄膜は、酸性の水溶液を用いて溶かすことが可能である。本発明のナノ薄膜は、膜厚が10nm程度の場合、pH4程度の塩酸水溶液に室温で10分程度浸漬することで、完全に溶解する。
【0046】
本発明の金属酸化物ナノ薄膜は、特に、誘電材料として優れた特性を有する。また、本発明のナノ薄膜を製造後、熱処理などを行うことで、ナノ薄膜中の水和水の量、結晶化度、密度などを変化させることができ、電気特性、磁気特性、光学特性などの物性を改良することが可能である。
本発明の誘電材料は、誘電率が1〜50、好ましくは2〜30の範囲であり、1Vの電場を印加したときの漏れ電流密度は、1.0×10−4A/cm以下、好ましくは、1.0×10−6A/cm以下である。
【0047】
[本発明の利用分野]
本発明の製造方法によれば、金属酸化物のナノ薄膜材料を厚み精度よく形成することができる。また、本発明の製造方法によれば、金属塩水溶液からの吸着に基づき、穏和な条件かつ簡単な操作で、あらゆる形状の表面、パターンを有する表面や大面積の基板に金属酸化物のナノ材料を製造することができる。このため、本発明の製造方法は、極めて広範な技術分野に応用することが可能である。
【0048】
本発明の製造方法では、従来のCVD法では困難であった酸化物薄膜中への炭素原子の混入を完全に防ぐことができる。このため、本発明のナノ薄膜は、優れた物理特性、電子特性を有する材料となり得、例えば、MOS−FETの微細化に重要な役割を担う高誘電体(High−K)ゲート絶縁膜の製造等に用いることができる。特に、アモルファス状の酸化ランタノイドのナノ薄膜は、優れた誘電材料として、その重要な候補となる。
【0049】
さらに本発明の製造方法では、多様な金属酸化物のナノ薄膜をナノメートルの精度で積層化でき、新しい電気的、磁気的、光学的特性を設計することが可能となる。例えば、ガドリニウムイオンを多量に含むナノ薄膜は、次世代の磁気記憶材料に利用することができ、ユウロピウムイオンなどの発光特性を有する金属イオンを導入すると、新しい発光材料としての利用が期待できる。
【0050】
また、本発明の製造方法は、環境負荷が小さく、光触媒や環境触媒などの調製法としても重要な意味をもつ。生体親和性や殺菌効果などバイオテクノロジーに不可欠な表面の設計にも有効である。また、本発明のナノ薄膜を機能材料の構成要素として用いれば、排ガスの浄化触媒や燃料電池、各種センサーの製造などの分野で重要な材料となり得る。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
なお、本実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0052】
本実施例では、金属酸化物ナノ薄膜が逐次、一定量で積層されていることを示すために、水晶振動子の金電極上への該ナノ薄膜の作製を行い、その振動数変化から該ナノ薄膜の重量の増加量を見積もった。
【0053】
水晶振動子は、マイクロバランスとして知られ、その電極上に形成されたナノ薄膜の重さを10−9gの精度で測定できるデバイスである。本実施例で用いたシステムは、振動子の基準振動数が9MHzであり、ナノ薄膜の厚み(d)と密度(ρ)と振動数変化(ΔF)の間には、以下の関係式(1)が成り立つ。ここで、厚み(d)、振動数変化(ΔF)、密度(ρ)の単位は、それぞれÅ、Hz、g/cmである。
【0054】
【数1】
2d = −ΔF/1.832ρ (1)
【0055】
水晶振動子は、エタノールとイオン交換水で十分に洗浄した後、メルカプトエタノール又はメルカプトプロピオン酸のエタノール溶液(10mM)に12時間浸漬して金電極の表面に水酸基を導入し、エタノールで洗浄後、窒素ガスを吹き付けて十分に乾燥させたものを用いた。このときの振動数を基準とし、その後のナノ薄膜の形成に伴う振動数変化からナノ薄膜の重量を算出した。
【0056】
(実施例1)
1.ナノ薄膜の作製
メルカプトエタノールで修飾した水晶振動子を硝酸ユウロピウム(III)六水和物(Eu(NO・6HO)の0.1mM水溶液に1分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、水晶振動子の振動数を測定した。さらにユウロピウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作ならびに乾燥操作を19サイクル繰り返し、酸化ユウロピウムのナノ薄膜を形成させた。
【0057】
2.ナノ膜のアルカリ処理及び酸処理
得られた酸化ユウロピウムのナノ薄膜を表面に有する水晶振動子をpH10の水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、イオン交換水に1分間浸漬し、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、水晶振動子の振動数を測定した。さらに水酸化ナトリウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を3サイクル繰り返した。
次いで、上述の水晶振動子をpH4の希塩酸水溶液に3分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬し、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、水晶振動子の振動数を測定した。さらに希塩酸水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を7サイクル繰り返した。
【0058】
図1は、実施例1の一連の操作における水晶振動子の振動数変化を示す。図1に示されるように、酸化ユウロピウムのナノ薄膜の形成過程では、水晶振動子の振動数が規則的に減少した。ユウロピウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を20サイクル繰り返す過程で、水晶振動子の振動数は、4253Hz減少した。これより、本実施例の方法によりメルカプトエタノールで修飾した水晶振動子の電極表面に一定重量の酸化ユウロピウムのナノ薄膜が逐次形成されていることが分かる。
また、得られたナノ薄膜を水酸化ナトリウム水溶液で処理した場合、水晶振動子の振動数の大きな変化は見られなかった。一方、pH4の希塩酸水溶液による処理を3サイクル繰り返した場合、水晶振動子の振動数は4169Hz増加した。この振動数の値は、酸化ユウロピウムのナノ薄膜の形成に伴う水晶振動子の振動数の減少値とほぼ同じである。
これより、実施例1で得られた酸化ユウロピウムのナノ薄膜は、水酸化ナトリウム処理に対して安定である一方、希塩酸で処理することにより容易に取り除くことができることが分かる。
【0059】
3.ナノ薄膜の膜厚の測定
メルカプトエタノールで修飾した水晶振動子を1mMの硝酸ユウロピウム(III)六水和物(Eu(NO・6HO)の水溶液に1分間浸漬した後、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄し、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。この浸漬、洗浄、乾燥操作を30サイクル繰り返し、水晶振動子の金電極表面に酸化ユウロピウムのナノ薄膜を製造した。得られたナノ薄膜の断面の走査型電子顕微鏡による撮影写真を図2に示す。
【0060】
図2の写真より、ナノ薄膜の膜厚は約143nmであった。この膜厚から1サイクル当りの膜厚の増加量を見積もると約5nmであった。また、水晶振動子の振動数変化は15144Hzであった。また、振動数変化と膜厚より上式(1)を用いて、ナノ薄膜の密度を算出すると2.9g/cmであった。
【0061】
4.ナノ薄膜の金属塩水溶液濃度による膜厚の変化
上記と同様の方法により0.1mMの硝酸ユウロピウム水溶液から酸化ユウロピウムのナノ薄膜を製造した場合、1サイクル当りの平均振動数変化は213Hzであった。一方、1mMの硝酸ユウロピウム水溶液からの酸化ユウロピウムのナノ薄膜を製造した場合、1サイクル当りの平均振動数変化が505Hzであった。
これより、用いるユウロピウム水溶液の濃度により、該ナノ薄膜の形成に要するユウロピウムイオンの吸着量が増減し、1サイクル当りのナノ薄膜の膜厚の増加量が変化することが分かる。
【0062】
(実施例2)
メルカプトプロピオン酸で修飾した水晶振動子をポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド(PDDA)の水溶液(1 mg/mL)に10分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次いで、上記水晶振動子をポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)の水溶液(1 mg/mL)に10分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。これらの操作をさらに2サイクル繰り返し、水晶振動子の電極表面にアニオン性のプリカーサー膜を作製した。プリカーサー膜の形成による水晶振動子の振動数の減少量は118Hzであった。
次いで、上記プリカーサー膜を表面にもつ水晶振動子を硝酸ユウロピウム(III)(Eu(NO・6HO)の水溶液(1 mM)に1分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、水晶振動子の振動数を測定した。さらにユウロピウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作ならびに乾燥操作を19サイクル繰り返し、酸化ユウロピウムのナノ薄膜を形成させた。
【0063】
図3に、実施例2の酸化ユウロピウムのナノ薄膜の形成過程における水晶振動子の振動数の変化を示す。図3に示されるように、酸化ユウロピウムのナノ薄膜形成により、水晶振動子の振動数が規則的に減少し、20サイクル後の振動数の減少値は10772Hzであった。
これより本発明の方法によりアニオン性のPSS層を最外層として有する水晶振動子の電極表面に一定重量の酸化ユウロピウムのナノ薄膜が逐次形成されたことが分かる。
【0064】
(実施例3)
メルカプトプロピオン酸で修飾した水晶振動子をPDDA水溶液(1 mg/mL)に10分間浸漬させ、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次いで、上記水晶振動子をポリアクリル酸(PAA)のエタノール溶液(1 mg/mL)に10分間浸漬させ、エタノールに1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。これらの操作をさらに2サイクル繰り返して行い、水晶振動子の電極表面に最外層としてPAA層を有するプリカーサー膜を作製した。プリカーサー膜の形成による水晶振動子の振動数の減少量は、223Hzであった。
次いで、上記プリカーサー膜を表面にもつ水晶振動子を硝酸ユウロピウム(III)(Eu(NO・6HO)の水溶液(1mM)に1分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、水晶振動子の振動数を測定した。さらにユウロピウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を19サイクル繰り返し、酸化ユウロピウムのナノ薄膜を形成させた。
【0065】
図4に、実施例3の酸化ユウロピウムのナノ薄膜形成過程における水晶振動子の振動数変化を示す。図4に示されるように、酸化ユウロピウムのナノ薄膜の形成により、水晶振動子の振動数が規則的に減少し、20サイクル後の振動数の減少値は8157Hzであった。
これより、本発明の方法により、PAA層を最外層として有する水晶振動子の電極表面に一定重量の酸化ユウロピウムのナノ薄膜が逐次形成されたことが分かる。
【0066】
(実施例4)
トルエンとエタノールの1:1(vol/vol)混合溶液にチタンブトキシド(Ti(O−nBu))を100mMになるように溶解させた。この溶液にシリコンウエハーを3分間浸漬させ、エタノールに1分間浸漬して洗浄した後、イオン交換水に1分間浸漬し、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。さらにチタンブトキシド溶液への浸漬操作、エタノールによる洗浄操作、イオン交換水への浸漬操作、及び乾燥操作を4サイクル繰り返し、酸化チタンゲルのプリカーサー膜を作製した。
上記酸化チタンゲルのプリカーサー膜を表面にもつシリコンウエハーを硝酸ユウロピウム(III)六水和物(Eu(NO・6HO)の水溶液(1 mM)に1分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。さらに硝酸ユウロピウム水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を19サイクル繰り返し、酸化ユウロピウムのナノ薄膜を形成させた。
実施例4の方法により製造した酸化ユウロピウムのナノ薄膜の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。その撮影像を図5に示す。
【0067】
図5に示されるように、シリコンウエハー上の薄膜の厚みは、約112nmであった。プリカーサー膜の膜厚(約4nm)を考慮すると、実施例4での酸化ユウロピウムの膜厚は、1サイクル当り約5nm増加すると見積もられた。
これより、シリコンウエハーの表面にも適当なプリカーサー膜を形成すれば、本発明の金属酸化物ナノ薄膜が製造できることを示している。
【0068】
(実施例5)
石英基板上に約200nmの金を蒸着し、ピラナ溶液で洗浄後、メルカプトエタノールのエタノール溶液(10 mM)に12時間浸漬した。この石英基板を硝酸ランタン(III)六水和物(La(NO・6HO)の水溶液(10 mM)に1分間浸漬し、イオン交換水に1分間浸漬して洗浄後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。さらにランタン水溶液への浸漬操作、イオン交換水による洗浄操作及び乾燥操作を49サイクル繰り返し、酸化ランタンのナノ薄膜を形成させた。得られた酸化ランタンのナノ薄膜の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。その撮影像を図6に示す。
【0069】
図6に示されるように、石英基板上の金の上に位置するナノ薄膜の厚みは、約230nmであった。これより、ナノ薄膜の膜厚の増加は1サイクル当り約4.6nmと見積もられた。
【0070】
次いで、上記石英基板上のナノ薄膜上に、さらに150nmの厚みのアルミニウム電極を真空蒸着した。該アルミニウム電極は、直径1mmの円の面積を有する。このようにして金属−絶縁体−金属の構造を有するキャパシターを作製し、インピーダンス分光法により誘電率の測定を行い、引き続き漏れ電流密度の測定を行った。インピーダンス分光法の測定は、20mVで100Hz〜1MHzの周波数範囲で行った。また、漏れ電流密度は、印加電圧0〜5V、掃印速度50mV/秒で電流−電圧曲線を測定することで評価した。
【0071】
上記方法により作製したキャパシターの全インピーダンスと電流−電圧位相差とを周波数に対してプロットした結果を図7aに示す。また、ナノ薄膜の誘電率を求めるために、図7bに示した等価回路モデルを用いて計算を行った。
なお、図7(a)の●及び△は、それぞれ周波数(ω/Hz)に対する全インピーダンス(|Z|/Ω)及び位相シフト(φ/deg.)の実測値を示し、実線は全インピーダンス及び位相シフトの計算値を示す。また、図7(b)のRは測定系の内部抵抗及び界面抵抗、RとCは、それぞれナノ薄膜の抵抗及び静電容量を示している。図7(a)のプロットは、図7(b)の等価回路モデルによる計算値と極めて一致した。その値を表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 2004299003
【0073】
及び膜厚から見積もられた比誘電率(ε)は21であった。この値は、バルクの酸化ランタンの値(ε=27)とほぼ同じであった。
【0074】
図8は、漏れ電流密度の測定結果を示す。印加電圧が1Vのときの漏れ電流密度は1.04×10−5A/cmであった。また、印加電圧が5Vまで、絶縁破壊は観察されなかった。
以上の結果より、本発明の方法で得られたナノ薄膜が絶縁キャパシターの構成要素として機能することが分かる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法は、基材表面に金属塩を含む水溶液を接触させることにより、金属塩に含まれる金属イオンを基材表面に吸着させる工程と、基材表面に吸着させた金属イオンを純水と接触させる工程とからなる。本発明の製造方法であれば、金属酸化物のナノ薄膜材料を厚み精度よく製造することができる。さらに、本発明の製造方法であれば、金属塩の水溶液における吸着に基づき、穏和な条件かつ簡単な操作で、あらゆる形状の表面、パターンを有する表面や大面積の基板に金属酸化物のナノ材料を製造することができる。
【0076】
さらに、本発明の製造方法により得られる金属酸化物ナノ薄膜は、炭素原子が含まれないアモルファス状の薄膜であることができる。このため、本発明は、優れた物理特性、電子特性を有する材料、特に優れた誘電材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のメルカプトエタノールで修飾した水晶振動子の電極表面でのナノ薄膜の形成による振動数変化、及び水酸化ナトリウム処理と希塩酸処理による振動数変化を示す図である。
【図2】実施例1のナノ薄膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。図中の1目盛りは100nmである。
【図3】実施例2の最外層としてPSS層を有する水晶振動子の電極表面へのナノ薄膜の形成による振動数変化を示す図である。
【図4】実施例3の最外層としてPAA層を有する水晶振動子の電極表面へのナノ薄膜の形成による振動数変化を示す図である。
【図5】実施例4のナノ薄膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。図中の1目盛りは50nmである。
【図6】実施例5のナノ薄膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。図中の1目盛りは100nmである。
【図7】(a)実施例5のキャパシターの全インピーダンスと電流−電圧位相差を周波数に対してプロットした図である。
(b)等価回路モデルを示す図である。
【図8】実施例5のキャパシターの電流/電圧特性を示す図である。

Claims (12)

  1. 基材表面に金属塩を含む水溶液を接触させることにより、前記金属塩に含まれる金属イオンを前記基材表面に吸着させる工程Aと、前記基材表面に吸着させた金属イオンを純水と接触させる工程Bとからなることを特徴とする金属酸化物ナノ薄膜の製造方法。
  2. 前記工程A及びBを少なくとも1回繰り返す請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記繰り返し工程において、異なる種類の金属塩を含む水溶液を用いる請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記基材として、前記金属イオンを化学的又は静電的に吸着可能な官能基を有する基材を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記金属塩として、オーレーション可能な金属イオンを含む金属塩を用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記金属塩として、pH8〜10の範囲で水酸化物の沈殿を形成し得る金属イオンを含む金属塩を用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記純水として、0℃より高く、かつ50℃以下の温度の純水を用いる請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により得られる金属酸化物ナノ薄膜。
  9. 前記金属酸化物ナノ薄膜がアモルファス状のナノ薄膜である請求項8に記載の金属酸化物ナノ薄膜。
  10. 前記金属酸化物ナノ薄膜の膜厚が0.1〜10nmである請求項8又は9に記載の金属酸化物ナノ薄膜。
  11. 前記金属酸化物ナノ薄膜の密度が0.5〜10.0g/cmである請求項8〜10のいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ薄膜。
  12. 請求項8〜11のいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ薄膜を有する誘電材料。
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JP2015524991A (ja) * 2012-11-30 2015-08-27 エルジー・ケム・リミテッド 表面特徴の異なる無機物粒子の二重多孔性コーティング層を含む二次電池用分離膜、それを含む二次電池、及び分離膜の製造方法
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