JP2004298546A - 生体組織補填材 - Google Patents

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Yuji Takamiya
裕児 高宮
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Abstract

【課題】生体組織に十分な種類及び量の作動因子を供給するとともに、その徐放量を調整可能な生体組織補填材を提供すること。
【解決手段】骨補填材(生体組織補填材)10は、β―TCPを原料として、一方向に延びる複数の貫通孔11をほぼ同一厚さの隔壁部材12で相互に区画したハニカム形状の本体13と、細胞の活性を高める成長因子(作動因子)14を含浸して複数の貫通孔11に充填されたコラーゲン(生分解粘性体)15とを備えている。隔壁部材12は、本体13の内部を同心円状に区画して、扇形状に形成された複数の貫通孔11を形成している。
貫通孔11は均一に分配されているが、貫通孔11の大きさ及びコラーゲン15が充填されている貫通孔11の位置は、コラーゲン15に充填された成長因子14の徐放量およびコラーゲン15の量によって決められている構成とした。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体組織欠損部を再生する際に使用される生体組織補填材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨等の生体組織の欠損部に、骨補填材等の生体組織補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
一方、骨欠損部の状態によっては、骨欠損部周辺の細胞の活性を高めるために成長因子を骨補填材に添加することによって、骨形成作用の促進を行う場合がある。
このときの成長因子の添加方法として、骨補填材に各種の大きさを有する貫通孔を設け、そこに成長因子を含有するコラーゲン等の生分解粘性体を充填して補填する方法が知られている。
【0004】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第三0巻,第10号,p.38−41
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の骨補填材においては、多孔体同士の連通性は確保されているが、直線的な貫通孔は設けられておらす、血管形成が十分でないという過大があった。また、十分な種類及び量の成長因子を添加することができず、時間の経過とともに欠損部周囲の生体組織にしみ出させるという徐放特性を持たせた供給を行うことができず、長時間にわたる効果の維持を図ることができないという課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、生体組織に十分な種類及び量の作動因子を供給するとともに、その徐放量を調整可能な生体組織補填材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の生体組織補填材は、一方向に延びる複数の貫通孔を略同一厚さの隔壁部材によって相互に区画したハニカム形状の本体と、該本体の少なくとも1つの貫通孔に充填され、細胞の活性を高める作動因子を含有する生分解粘性体とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この生体組織補填材によれば、本体がハニカム形状に成形されているので、貫通孔の大きさや形状を自在に制御することができる。また、この貫通孔に作動因子を含む生分解粘性体を充填するので、貫通孔の位置や充填する数を調整することによって、欠損部への作動因子の供給順序及び徐放量を制御することができ、効率的に生体組織形成を促進することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る生体組織補填材について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態に係る骨補填材(生体組織補填材)10は、β―TCPを原料として、一方向に延びる複数の貫通孔11をほぼ同一厚さの隔壁部材12で相互に区画したハニカム形状の本体13と、細胞の活性を高める成長因子(作動因子)14を含浸して複数の貫通孔11に充填されたコラーゲン(生分解粘性体)15とを備えている。
【0010】
隔壁部材12は、図1に示すように、本体13の内部を同心円状に区画して、扇形状に形成された複数の貫通孔11を形成している。
貫通孔11の大きさ及びコラーゲン15が充填されている貫通孔11の位置は、コラーゲン15に充填された成長因子14の徐放量およびコラーゲン15の量によって決められている。
【0011】
上述した本体13の製造方法について説明する。
まず、例えば、特開平5−237178号公報に開示されている方法によって、混合発泡させた水性の発泡スラリを調整したものにβ―TCPから作製した顆粒状成形体を混合してスラリ状に形成した原料を作製する。この原料を所定の形状、大きさでスリットが設けられたハニカム成形型に挿入することによって、ハニカム形状に成形されたハニカム成形体を得て、さらに焼結することによって、本体13が得られる。
【0012】
コラーゲン15は、図2及び図3に示すように、所定の位置の貫通孔11に充填されている。このコラーゲン15はタンパク質の1種であって、体や臓器の形を支える構造材として、細胞同士を接着する接着剤として、及び、細胞の増殖や器官の形成、傷口の治癒促進などの生体活動を行うものとして機能する。
このコラーゲン15を40℃から60℃の温度状態でゾル化してから成長因子14を添加して、これを貫通孔11内に流し込んだ後、冷却してゲル化させることによって貫通孔11に充填される。
成長因子14は、PRP(platelet−rich plasma)等のサイトカインであって、骨の再生や血管形成などを促す作用を有する。
【0013】
次に、以上の構成からなる本実施形態の骨補填材10の作用について説明する。
この骨補填材10を骨欠損部に移植すると、骨組織と接触する本体13の外周部側から骨再生が開始される。この際、図4に示すように、本体13の外周部側に充填したコラーゲン15から成長因子14が徐々に外部へ放出される。すると周囲の骨芽細胞等が活性化されて、本体13を構成するβ―TCPが本体13の外周部側から吸収されて骨が形成される。
これらの吸収及び骨形成が進行しても、本体13の中央部に配設された貫通孔11にも成長因子14が含浸されているので、本体13の全部が吸収されるまで成長因子の機能が持続して骨再生が行われる。
【0014】
この骨補填材10によれば、成長因子14が含浸されているので、β―TCP担体のみを移植して補填する場合よりも、周囲の組織細胞の活性を高めることができ、骨形成を促進することができる。
また、ハニカム形状に構成されているので、成長因子14を含むコラーゲン15を充填する貫通孔11の位置及び数を、最適な徐放性を考慮して決めることができる。
さらに、ハニカム形状の作製時に貫通孔の大きさや形状を自在に制御することができるので、骨補填材10を補填する患部の状態に最適な形状のものを提供することができる。
【0015】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、貫通孔の形状は扇形状に限らず、図5に示す六角形状の貫通孔16のような多角形状であってもまたこれらの組み合わせであっても構わない。また、貫通孔に充填する生分解粘性体はコラーゲンに限らず、コラーゲンから抽出して製造したゼラチン等のタンパク質や他の生分解粘性体であってもよい。さらに貫通孔の配置及び大きさは均一であっても不均一であっても構わない。
【0016】
本体13の材料は、生体組織に親和性のある材料であればβ―TCPのみならず、リン酸カルシウム系セラミックス、ポリ乳酸等やこれらを組み合わせたものでも構わない。また、作動因子としては、PRPに限らず生体組織の再生において必要なものであればよく、BMP(Bone Morphogenetic Protein)、FGF(Fibroblast Growth Factor)、TGF−β(Transforming Growth Factor−β)、IGF(Insulin−like Growth Factor)、PDGF(Platelet−Derived Growth Factor)、VEGF(VascularEndothelial cell Growth Factor)などの骨形成因子を単独又はこれらを複合させたものを補填してもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明した本発明においては以下の効果を奏する。
本発明の生体補填材によれば、生体組織に十分な種類及び量の作動因子を供給するとともに、その徐放量を調整することができ、生体組織の再生を最適な状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における骨補填材本体の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における骨補填材の正面を示す図である。
【図3】図2のII−II断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における骨補填材による骨形成作用を示す概要図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるその他の例である骨補填材の正面を示す図である。
【符号の説明】
10 骨補填材(生体組織補填材)
11 貫通孔
12 隔壁部材
13 本体
14 成長因子(作動因子)
15 コラーゲン(生分解粘性体)

Claims (1)

  1. 一方向に延びる複数の貫通孔を略同一厚さの隔壁部材によって相互に区画したハニカム形状の本体と、
    該本体の少なくとも1つの貫通孔に充填され、細胞の活性を高める作動因子を含有する生分解粘性体とを備えていることを特徴とする生体組織補填材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012139539A (ja) * 2005-06-22 2012-07-26 Warsaw Orthopaedic Inc 骨誘導および骨移植片一体化を促進するための骨移植片処理
JP5565721B2 (ja) * 2006-06-23 2014-08-06 株式会社クラレ 多孔質セラミックス材料およびその製造方法
CN112930156A (zh) * 2018-07-23 2021-06-08 奥格门塔有限责任公司 促进组织扩张的阴茎植入件和其它植入件

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