JP2004298208A - パルスレーザ治療器およびパルス照射光治療器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レーザ発振部と、前記レーザ発振部から発振されるレーザをパルス状に制御するレーザ制御部と、前記レーザを生体の筋肉や関節等の疼痛・炎症患部に照射する照射プローブとを備え、前記照射プローブから照射されるレーザの1パルスのエネルギー量を350mJ/cm2を超えない量としたものである。また、前記照射プローブから照射されるレーザの平均パワー密度は700 mW/cm2を超えない密度としたものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルスレーザ治療器およびパルス照射光治療器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザの光作用を利用して筋肉や関節の痛みを緩和させる治療器は、数mWから1Wの連続波状態のレーザを生体に照射して治療を行うものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−327781号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の治療器による方法では、筋肉・関節の中でも深い位置、例えば膝関節、肩関節、腰等に疼痛患部をもつ症例においては、照射されたレーザが生体組織内で散乱することから、患部に到達するレーザエネルギー量が十分でなく、レーザが持つ疼痛緩解効果が十分発揮されていなかった。
【0005】
また、深い位置にレーザエネルギーを到達させるために照射パワーを高めると、レーザが持つ光エネルギーが熱に変換されて人が熱いと感じてしまうことから、700mW/cm2以上のパワー密度で、かつ、トータル1W以上のレーザを生体に連続して長時間照射することは不可能であった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決し、深い位置にある患部へのレーザの到達性を高め、これによりレーザの疼痛緩解効果が発揮されやすいレーザ治療器を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のレーザ治療器は、ハイパワーレーザを採用し、生体への深達性を高めると同時に、ハイパワーレーザの持つ熱的影響を回避するために照射されるレーザをパルス状にし、パルス幅の時間調整により1パルス当たりの熱エネルギー量を軽減する。同時にパルスのON/OFF時間比の調整を行うことで平均パワーの調整を行い、長時間照射時の温度上昇の抑制を行う。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1から図6を用いて説明する。
【0009】
図1にレーザ治療器の概略構成を示す。図1において、1はパルスレーザ治療器であり、内部にレーザを発振するレーザ発振部2と、レーザ発振部2から発振されるレーザの出力を制御するレーザ制御器3とを備え、側面には照射条件等を表示するための表示部8と、電源投入や照射条件の設定を行う操作部9が設けられている。また、パルスレーザ治療器1には光ファイバ4を介して照射プローブ5が接続されており、レーザ発振部2から発振されたレーザ7は、光ファイバー4により照射プローブ5まで導光され、照射プローブ5の照射先端部6から照射される。
【0010】
次に、図2を用いてレーザ照射の状態について説明する。
【0011】
照射プローブ5の照射先端部6から照射されたレーザ7は生体組織11に入射し、生体組織11の中を散乱しながら、あるいは生体組織11に吸収されながら生体組織11内を透過していく。なお、患部の治療の程度に影響する透過レーザのパワー密度は、基本的には目的地までの距離を半径としたややいびつな球の面積に大きく依存し、また、生体組織11の吸収特性にも依存する。
【0012】
このレーザ7の到達パワー密度を計測する方法としては、一例として、牛肉の赤身を使って計測を行う方法が知られている。本実施の形態においても、従来の連続波レーザと本発明によるパルスレーザとの透過パワーの評価を行うため、前述の牛肉の赤身を使って試験を行った。
【0013】
この試験の結果を図3に示す。図3は牛肉の赤身における肉厚と透過レーザパワーの関係を示す図であり、同一の牛肉を30 mmから20 mm、さらに10mmへと順に薄くして行き、それぞれ厚さにおいて、1Wのレーザを照射した場合と10Wのレーザを照射した場合の照射部直下における透過レーザのパワー密度を測定したものである。
【0014】
図3より、同部位におけるパワー密度は、入射されるパワーに比例するすることがわかる。また、深さ方向の影響については、10 mmの深さにおいて1Wの連続波を照射した場合のパワー密度に対し、深さを20 mm、30 mmと深くしていくとパワー密度がほぼ1桁ずつ減衰することがわかった。
【0015】
以上の結果より、仮にレーザパワーを1Wに対して10倍となる10Wに高めた場合、同一パワー密度の位置は10mm深くなるということがわかる。また、高出力のレーザほど患部への到達性が高まるといえる。
【0016】
一方、レーザ出力のハイパワー化により問題となる熱影響については、レーザ制御部3によりレーザ発振部2を制御して発振するレーザのパルス幅並びにON−OFF比を調整し、照射プローブ5の照射先端部6から照射されるレーザ7をパルス状にすることでレーザ7の平均パワーの調整が可能となり、これにより熱影響回避が可能となる。従って、人が熱い等不快に感じる温度以上に生体組織11の温度を上げることなく効果的な治療を行うことができる。
【0017】
このように、パルス状のハイパワーレーザを生体組織11に照射することで、人が熱い等不快と感じる温度以上に生体組織11の温度を上げることなく深部までレーザ7を透過させることが可能となり、深部に疼痛部位を持つ場合でも効果的な治療を行うことができる。
【0018】
以下に、人に不快感を与えないレーザ照射について、図4と図5を用いて説明する。
【0019】
図4はパルス状のレーザ出力の概要を示す図である。図4において、14は従来技術におけるレーザ出力例として1Wの連続波を示している。また、15は本発明におけるパルス波の一例を示しており、このパルス波はピークパワーが10Wに設定され、平均パワーを1Wにする場合は、レーザのduty(ON比率)は10%となる。
【0020】
これら従来技術における連続波のレーザと、本発明におけるパルス波のレーザを生体組織11に照射した場合の皮膚表層における温度上昇を図5に示す。ハイパワーレーザを連続波として生体組織11に照射した場合、レーザ7が持つエネルギーが熱に変換され、生体組織11の温度は図5の連続波照射の温度上昇曲線16に示すように急激に上昇して人は不快に感じる。この対策として、本願発明のように、ハイパワーレーザの出力を図5に示すようなパルス状のパルス波15とすることで、生体組織11の温度はパルス波照射の温度上昇曲線17に示すように一瞬の立ち上がりを示すが、その後の照射を行わないインターバル時間の間に冷却され、皮膚温の急激な上昇が抑制される。実験的に、このパルスレーザが持つエネルギー量として、1パルス当たり350 mJ/cm2を超えないエネルギーとすることで体感的に不快を感じないことを確認している。
【0021】
次に、治療に適したレーザの平均パワー密度について、図6を用いて説明する。
【0022】
図6は照射パワー密度と皮膚温度の上昇を示す特性図であり、照射面積1.5cm2の範囲に照射したパルスレーザのパワーを平均パワー密度に置き換え、それぞれのパワー密度条件で約5分間連続して皮膚に照射した場合の皮膚表面の到達温度を示している。
【0023】
なお、治療の対象となる慢性疼痛患者に対するレーザ治療器においてはある程度の温感は必要であるが、皮膚温度が43 ℃を越えると熱的不快を感じる領域になることが一般に知られており、このことと図6に示す結果より、約1.5cm2の照射面積におけるレーザの平均パワー密度としては、700 mW/cm2を越えない範囲とすることが好ましい。
【0024】
(実施の形態2)
本実施の形態において実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0025】
図7において、図7(a)は従来の照射先端部6の光学構成を示しており、図7(b)は本発明のパルスレーザ治療器1の照射先端部6の光学構成をしている。
【0026】
図7(b)において、20は照射窓材として光りの散乱機能を有する曇りガラスのような散乱ガラスであり、実施の形態1と異なるのは、照射先端部6にこの散乱ガラス20を設けた点である。
【0027】
以下、図7(a)に示す従来の照射先端部6と図7(b)に示す本発明の照射先端部6について説明する。
【0028】
図7(a)に示す従来の照射端部6では、光ファィバー4から出射されたレーザ7は透明ガラスで構成された照射窓19を経て光形状を崩すことなく生体11まで到達する。一方、図7(b)に示す本発明のパルスレーザ治療器1の照射先端部6では、照射窓材として散乱ガラス20が使用されており、レーザ7の減衰等デメリットはあるが照射先端部6から照射されるレーザ7は散乱光21となる。このようにレーザ7を散乱光21にする利点について説明する。レーザ7による治療は照射先端部6を照射対象に近接させて照射するので散乱光21であっても治療効果には全く影響することはない。さらに、レーザ7が誤って目に照射された場合、レーザ7が散乱されているので平行光線の比率が少なく、網膜で結像した場合のパワー密度が低減されるため、目へのダメージを受けにくくすることができる。
【0029】
以上のように、照射先端部6に散乱ガラス20を設けることにより、これを設けない場合と比べ、ハイパワーレーザの誤使用に対する安全性を高めることができる。
【0030】
(実施の形態3)
本実施の形態において実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図8において、23はレーザ7の照射により上昇する生体組織11の温度を測定する温度センサーであり、実施の形態1と異なるのは、照射先端部6にこの温度センサー23を設けた点である。
【0031】
以下、本実施の形態のパルスレーザ治療器について、その動作を説明する。
【0032】
温度センサー23は、レーザ7の照射により上昇する生体組織11の温度を常時監視しており、異常使用時を含む最先端の温度情報をレーザ制御部3に伝える。このレーザ制御部3は温度センサー23からの情報を分析し、生体組織11の温度が安全領域であるか否か、あるいは予め設定された熱的不快を感じる領域内であるか否かの判断を行う。そして、温度上昇の抑制が必要であると判断した場合は、レーザ制御部3はレーザ発振部2から発振されるパルスレーザの発振条件を低duty側になるように制御し、例えば図8に示すように、パルスレーザを高密度パルスの状態から低密度パルスの状態に変更する。
【0033】
このように、レーザパルスを低duty側へ変更することで照射されるレーザエネルギー量が軽減され、患者は熱的不快を感じることなく安全で気持ちの良い治療を受けることができる。
【0034】
なお、上記した実施の形態1から3において、レーザ光を照射するレーザ治療器について説明したが、レーザ発振部2にかえて照射光の光源としてLEDを用いて照射光治療器としてもよい。そして、LEDの出力をレーザ光を照射する場合と同様に、高エネルギーでかつパルス状にすることで、レーザ光を照射する場合と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、LEDを光源として用いる場合、レーザ素子と比べてLEDの方が構造的に強固であることから、装置の取り扱いが容易となるという利点がある。
【0036】
また、レーザ素子を組み込む場合に静電気に対して非常に注意して作業を行う必要があるが、LEDの場合にはそれほど注意を要することなく組み込み作業を行うことができる。
【0037】
なお、本発明のパルスレーザ治療器およびパルス照射光治療器は、疾病予防等に用いるものを権利範囲から除外するものではない。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、従来のレーザ治療器ではレーザの深達性の問題で治療できなかったような深い患部の治療が可能となり、パルス条件の選択により安全で気持ちの良いレーザ治療器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーザ治療器の概略構成を示す図
【図2】生体組織に対するレーザの深達性を示す図
【図3】牛肉の赤身における肉厚と透過レーザパワーの関係を示す図
【図4】パルスレーザの概要を示す図
【図5】ハイパワーレーザとパルスレーザ照射時の皮膚温度の上昇を示す図
【図6】照射パワー密度と皮膚温の上昇を示す特性図
【図7】(a)従来の照射先端部の光学構成を示す図
(b)本願発明の照射先端部の光学構成を示す図
【図8】照射先端部に取り付けた温度センサーと、パルスレーザの状態を示す図
【符号の説明】
1 パルスレーザ治療器
2 レーザ発振部
3 レーザ制御部
4 光ファイバー
5 照射プローブ部
6 照射先端部
7 レーザ
8 表示部
9 操作部
10 透過レーザ
11 生体組織
12 1W照射時の透過特性
13 10W照射時の透過特性
14 1W連続波
15 10Wパルス波
16 連続波照射時の温度上昇曲線
17 パルス波照射時の温度上昇曲線
18 温度上昇曲線
19 照射窓
20 散乱ガラス
21 散乱光
22 制御回路
23 温度センサー
Claims (8)
- レーザ発振部と、前記レーザ発振部から発振されるレーザをパルス状に制御するレーザ制御部と、前記レーザを生体に照射する照射プローブとを備え、前記照射プローブから照射されるレーザの1パルスのエネルギー量は350mJ/cm2を超えない量であるパルスレーザ治療器。
- レーザ発振部と、前記レーザ発振部から発振されるレーザをパルス状に制御するレーザ制御部と、前記レーザを生体に照射する照射プローブとを備え、前記照射プローブから照射されるレーザの平均パワー密度は700 mW/cm2を超えない密度であるパルスレーザ治療器。
- 照射プローブは、照射側先端部に光の散乱機能を有する照射窓材を備えた請求項1または2記載のパルスレーザ治療器。
- 照射プローブは、照射側先端部に温度検知部を備えた請求項1から3のいずれかに記載のパルスレーザ治療器。
- レーザ制御部は、温度検知部からの信号に基づいてレーザの照射条件を制御する請求項4記載のパルスレーザ治療器。
- 光源と、前記光源から照射される照射光をパルス状に制御する制御部と、前記照射光を生体に照射する照射プローブとを備え、前記照射プローブから照射される照射光の1パルスのエネルギー量は350mJ/cm2を超えない量であるパルス照射光治療器。
- 光源と、前記光源から照射される照射光をパルス状に制御する制御部と、前記照射光を生体に照射する照射プローブとを備え、前記照射プローブから照射される照射光の平均パワー密度は700 mW/cm2を超えない密度であるパルス照射光治療器。
- 光源はLEDからなる請求項6または7記載のパルス照射光治療器。
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JP2003091185A JP2004298208A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | パルスレーザ治療器およびパルス照射光治療器 |
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-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003091185A patent/JP2004298208A/ja active Pending
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