JP2004298103A - 有毒渦鞭毛藻類検出用核酸断片及びそれを用いた有毒渦鞭毛藻類の検出法 - Google Patents

有毒渦鞭毛藻類検出用核酸断片及びそれを用いた有毒渦鞭毛藻類の検出法 Download PDF

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Seiki Takishita
清貴 瀧下
Kazuhiko Koike
一彦 小池
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Abstract

【課題】貝毒の原因となるディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類を迅速かつ簡便に検出するための手段及び方法を提供し、ディノフィシス属藻類の大量発生の早期予測を可能とすること。
【解決手段】特定の塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有し、かつプライマー又はプローブとして実質的な機能を有することを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プライマー及び/又はプローブとして利用可能な核酸断片を用いたディノフィシス(Dinophysis)属藻類及びその増殖に影響する微細藻類の検出・同定方法に関する。本発明は、ディノフィシス属藻類及びその増殖に影響する微細藻類の検出又は同定を必要とする各種産業分野において有用である。
【0002】
【従来の技術】
ホタテガイやカキ等の二枚貝は海中のプランクトンを餌として摂取している。しかし、プランクトンの中には有毒物質を生産するものもあり、有毒プランクトンを摂取した二枚貝は、有毒物質を体内に蓄積して毒化する。主に問題とされる貝毒は麻痺性貝毒と下痢性貝毒であるが、このうち下痢性貝毒はディノフィシス属藻類による汚染が原因となっている。
【0003】
ホタテガイやカキ等の二枚貝は貝毒が発生した場合には出荷が規制される。下痢性貝毒の場合は、定期的に採集した現場海水中のディノフィシス属渦鞭毛藻の発生量のモニタリングにより出荷がコントロールされている。しかし顕微鏡下におけるディノフィシス属藻類の同定・計数には熟練作業を要し、長時間に及ぶため、毒化貝の迅速な出荷規制という面からも問題がある。ディノフィシス属渦鞭毛藻はいずれの種も培養が確立されていないため、その増殖要因が解っていない。現在は、野外調査結果から蓄積されてきた出現の至適水温・塩分帯の形成や、現場水中の分裂中の細胞の割合などから、各水産試験場レベルで主観的・短期的な下痢性貝毒の発生予報がなされているに過ぎない。このような予報の信頼性は非常に低く、予期しない貝毒の発生は二枚貝養殖に関連する産業に大きな損害をもたらしている。
【0004】
従来、貝類に有害なディノフィシス属藻類の検出方法として、該貝類の筋活動電位のスパイクの波形を観察し、その波形からディノフィシス属藻類を含む種々の浮遊生物の種を判別して検出する方法が開発されている(特許文献1)。しかし、この検出方法では、採集された貝類が既に浮遊生物に汚染されているか否かを検出するにすぎず、海水中の貝毒の発生予測を行うことはできない。
【0005】
ディノフィシス属藻類は、葉緑体による光合成を営むが、その葉緑体は渦鞭毛藻類には極めてまれなフィコビリンという色素を含んだタイプである。フィコビリンを含有する葉緑体は本来クリプト藻類の特徴であるが、ディノフィシス属藻類の細胞内に葉緑体以外にはクリプト藻を取り込んだ痕跡は無いため、進化の過程においてクリプト藻から葉緑体を獲得し共生させたと考えられてきた。最近、本発明者らはディノフィシス属渦鞭毛藻3種(acuminatafortiinorvegica)の核及び葉緑体遺伝子の特定部位の塩基配列を決定し、進化の過程で種毎に変異してゆくはずの葉緑体遺伝子が3種で完全に同一であり、しかもその配列がクリプト藻のある分類群のものとほぼ一致することを見出した(非特許文献1)。このことは、これらディノフィシス属藻類によるクリプト藻からの葉緑体の獲得が、進化の過程ではなく今現在行われている現象であることを強く示唆している。また現場海域調査の結果、ディノフィシス属藻類の大量出現は必ず葉緑体含量の増加の後に起こることが判明している(非特許文献2及び3)。すなわちディノフィシス属藻類の大量出現は、その葉緑体の起源となるクリプト藻の発生がトリガーとなっている可能性がある。
【0006】
しかしながら、ディノフィシス属藻類の葉緑体起源となるクリプト藻は、いまだ不明であり、該クリプト藻を直接計数することによってディノフィシス属藻類の大量出現を早期に予測することは不可能である。従って、ディノフィシス属藻類の大量出現を早期に予測するための有効な手段は未だ存在していない。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−93038号公報
【非特許文献1】
Kiyotaka Takishita, Kazuhiko Koike, Tadashi Maruyama, and Takehiko Ogara,「Molecular Evidence for Plastid Robbery (Kleptoplastidy) in Dinophysis, a Dinoflagellate causing Diarrhetic Shellfish Poisoning」,Protist(ドイツ),第153巻,p.293−302,2002年
【非特許文献2】
K. Koike,「Mixotrophy of Dinophysis fortii: A strategy for growth in various environmental conditions」,Proceedings of International Commemorative Symposium 70th Aniversary of the Japanese Society of Fisheries Science, K. Aida, T. Aoki, T. Arimoto, H. Kurokura, H. Nakata, S. Otake, F. Takashima, T. Takeuchi, S. Watabe (eds), The Japanese Society of Fisheries Science, Tokyo, Japan(日本国),p.529−532,2002年
【非特許文献3】
小池一彦、小池香苗、吉田禎寿、緒方武比古,「有毒渦鞭毛藻Dinophysis fortiiの細胞内構造の動態」,平成13年度日本水産学会春季大会講演要旨集(日本国),p.142,2001年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貝毒の原因となるディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類を迅速かつ簡便に検出するための手段及び方法を提供し、ディノフィシス属藻類の大量発生の早期予測を可能とすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ディノフィシス属藻類の葉緑体小サブユニットリボソームRNA遺伝子(葉緑体SSU rDNA)及びリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ大サブユニット遺伝子(rbcL)がディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類に特異的な配列を有することを見出した。また、上記の二つの遺伝子に存在するディノフィシス属藻類に特異的な配列を含む核酸断片を用いることにより、ディノフィシス属藻類を特異的に検出可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類を特異的に検出することができる核酸断片及びそれらの核酸断片を用いたディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出方法である。
【0011】
すなわち、本発明の第一は、配列番号1で示される塩基配列において、9番のg、15番のt、16番のa、19番のc、739番のc、740番のc、746番のg、747番のg、998番のa及び999番のgからなる群より選択される少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有し、かつプライマー又はプローブとして実質的な機能を有することを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片である。該塩基配列は、配列番号1で示されるディノフィシス属藻類の葉緑体SSU rDNAの塩基配列において、9番〜19番、739番〜747番及び998番〜999番からなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列であることが好ましい。そのような塩基配列としては、例えば配列番号3〜5のいずれかに示される塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列が挙げられる。
【0012】
また、本発明の第二は、配列番号6で示されるディノフィシス属藻類のrbc の塩基配列において、配列番号7で示される塩基配列と比較して異なる塩基のうち少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有し、かつプライマー又はプローブとして実質的な機能を有することを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片である。該塩基配列は、配列番号6で示される塩基配列の40番〜133番、148番〜188番、208番〜223番、259番〜280番、295番〜322番、340番〜355番、379番〜412番、475番〜496番、541番〜586番、622番〜643番、664番〜688番、743番〜763番、814番〜866番、889番〜905番、及び937番〜1003番からなる群より選択される少なくとも1つの領域の全部若しくは一部を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列であることが好ましく、61番〜82番若しくは388番〜412番の領域の全部若しくは一部を含む塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列であることが特に好ましい。そのような塩基配列としては、例えば配列番号8で示される塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列が挙げられる。
【0013】
また、本発明の第三は、上記の核酸断片からなるプライマー及び/又は上記の核酸断片からなるプローブを含むことを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用キットである。
【0014】
さらに本発明の第四は、上記の核酸断片をプライマーとして用いて、試料から調製した被検核酸を鋳型とした増幅反応を行うことを特徴とする、該試料中のディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出方法である。
【0015】
またさらに本発明の第五は、上記の核酸断片をプローブとして用いて、試料又は該試料から調製した被検核酸に対するハイブリダイゼーション反応を行うことを特徴とする、該試料中のディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片
ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片(以下、「本検出用断片」ともいう)は、ディノフィシス属藻類の葉緑体小サブユニットリボソームRNA(葉緑体SSU rDNA)又はリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ大サブユニット(rbcL)遺伝子に存在するディノフィシス属藻類に特異的な塩基配列を用いて設計することができる。
【0017】
本発明において「ディノフィシス属藻類」とは、Dinophysis属に属する渦鞭毛藻を指す。また「ディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類」とは、ディノフィシス属藻類の葉緑体の起源となる微細藻類であって、ディノフィシス属藻類の大量出現の前に発生する微細藻類を指し、クリプト植物門(Cryptophyta)に属しかつ葉緑体に含まれるDNAがディノフィシス属藻類の葉緑体に含まれるDNAと一致する微細藻類のことを指す。従って、ディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の葉緑体に存在する遺伝子は、ディノフィシス属藻類の葉緑体に存在する遺伝子と同一であるため、ディノフィシス属藻類と該微細藻類は、同じ核酸断片を用いて検出することができる。また「微細藻類」とは、光合成能力を有する単細胞生物を意味する。
【0018】
本発明者らは、本検出用核酸断片の設計において、クリプト藻の1種であるゲミニゲラ・クリオフィラ(Germinigera cryophila)との配列の比較を行った。これは、G. cryophilaがディノフィシス属藻類の葉緑体と最も近縁な種であり、ディノフィシス属藻類をcryophilaと区別して特異的に検出することができる核酸断片、すなわちcryophilaにはなくディノフィシス属藻類に特異的に存在する塩基配列を含む核酸断片、を設計することにより、他の微生物の存在下においてもディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類のみを特異的に検出することができるためである。
【0019】
また、本検出用核酸断片は、プライマー又はプローブとして実質的な機能を有するように設計される。本発明において「プライマー又はプローブとして実質的な機能を有する」とは、特異的なアニーリング又はハイブリダイズが可能な条件を満たす、例えば特異的なアニーリング又はハイブリダイズが可能な長さ及び塩基組成(融解温度)を有する、という意味である。すなわち、本検出用核酸断片は、検出の対象とする被検核酸(DNA又はRNA)と特異的にアニーリング又はハイブリダイズする配列を含む必要があり、その配列の長さが短いために又はその塩基組成が適切ではないために非特異的なアニーリング又はハイブリダイゼーションを頻繁に起こし、特異的な検出に使用できない核酸断片を排除することを意図するものである。
【0020】
例えば、本検出用核酸断片をプライマーとして使用する場合、プライマーとして実質的な機能を有する長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは16〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。また本検出用核酸断片をプローブとして使用する場合、プローブとして実質的な機能を有する長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは16〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。
【0021】
また設計の際には、プライマー又はプローブの融解温度(Tm)を確認することが好ましい。Tmとは、任意の核酸鎖の50%がその相補鎖とハイブリッドを形成する温度を意味し、鋳型DNA又はRNAとプライマー又はプローブとが二本鎖を形成してアニーリング又はハイブリダイズするためには、アニーリング又はハイブリダイゼーションの温度を最適化する必要がある。一方、この温度を下げすぎると非特異的な反応が起こるため、温度は可能な限り高いことが望ましい。従って、設計しようとする核酸断片のTmは、増幅反応又はハイブリダイゼーションを行う上で重要な因子である。Tmの確認には、公知のプライマー又はプローブ設計用ソフトウエアを利用することができ、本発明で利用可能なソフトウエアとしては、例えばAmplifyなどが挙げられる。またTmの確認は、ソフトウエアを使わず、自ら計算することによっても行うことができる。その場合には、最近接塩基対法(Nearest Neighbor Method)、Wallance法、GC%法等に基づく計算式を利用することができる。本発明では、平均Tmが約45〜55℃であることが好ましい。
【0022】
プライマー又はプローブとして特異的なアニーリング又はハイブリダイズが可能な条件としては、その他にもGC含量などがあり、そのような条件は当業者に周知である。
また本発明において「核酸」とは、DNA又はRNAのいずれであってもよいし、DNA及びRNAのハイブリッド核酸であってもよい。
【0023】
本発明の検出用核酸断片は、ディノフィシス属藻類の葉緑体SSU rDNAの塩基配列のうち、ディノフィシス属藻類に特異的な塩基を含むように設計する。すなわち、配列番号1で示されるディノフィシス属藻類の葉緑体SSU rDNAの塩基配列において、9番のg、15番のt、16番のa、19番のc、739番のc、740番のc、746番のg、747番のg、998番のa及び999番のgからなる群より選択される少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を用いて設計することができる。ここで「連続する」とは、基準とする塩基配列のうち連続した塩基配列を含むことを意味する。上記の塩基は少なくとも1つ以上含まれている必要があるが、検出の特異性を上げるためには複数の塩基が含まれていることが望ましい。従って、例えば、配列番号1で示される塩基配列において、9番〜19番、739番〜747番及び998番〜999番からなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する核酸断片が好ましい。そのような核酸断片の具体的な例としては、配列番号3〜5で示される塩基配列及び該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する核酸断片が挙げられるが、本検出用核酸断片は、これに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の検出用核酸断片は、ディノフィシス属藻類のrbcL遺伝子の塩基配列のうち、ディノフィシス属藻類に特異的な塩基を含むように設計する。すなわち、配列番号6で示されるディノフィシス属藻類のrbcLの塩基配列において、配列番号7で示されるcryophila MBIC10567の塩基配列と比較して異なる塩基のうち少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を用いて設計することができる。cryophila MBIC10567と比較して異なる塩基は、少なくとも1つ以上含まれている必要があるが、検出の特異性を上げるためには複数個の該塩基が含まれていることが望ましい。好ましくは、配列番号6で示される塩基配列において、40番〜133番、148番〜188番、208番〜223番、259番〜280番、295番〜322番、340番〜355番、379番〜412番、475番〜496番、541番〜586番、622番〜643番、664番〜688番、743番〜763番、814番〜866番、889番〜905番、及び937番〜1003番からなる群より選択される少なくとも1つの領域の全部若しくは一部を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する核酸断片が好ましく、61番〜82番若しくは388番〜412番の領域の全部若しくは一部を含む塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する核酸断片が特に好ましい。ここで「一部」とは、上記領域内の塩基のうち、配列番号7で示される塩基配列と比較して異なる塩基を少なくとも1つ含む連続する塩基配列を指す。連続する塩基配列の長さは、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは16〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。そのような核酸断片の具体的な例としては、配列番号8で示される塩基配列及び該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する核酸断片が挙げられるが、本検出用核酸断片は、これに限定されるものではない。
【0025】
上述のように設計した本検出用核酸断片は、当業者に公知の方法に従って調製することができる。さらに、当業者には周知のように、プライマー又はプローブとして用いる核酸断片には、アニーリング又はハイブリダイズする部分以外の配列、例えばタグ配列などの付加配列が含まれていてもよく、上述した本検出用核酸断片にそのような付加配列が付加されたものも本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0026】
2.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用キット
ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用キット(以下、「本検出用キット」ともいう)は、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類を特異的に検出するためのものであり、上記「1.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片」の項に記載の核酸断片を含むことを特徴とする。本検出用キットは、少なくとも上記核酸断片からなるプライマー及び/又はプローブを含有する。
【0027】
(1)プライマー
プライマーには、フォーワードプライマーとリバースプライマーがあり、本検出用キットにおいては、フォワードプライマー又はリバースプライマーの少なくとも一方が上記の検出用核酸断片からなるものとする。もう一方のプライマーは、上記の検出用核酸断片からなるものでもよいが、ディノフィシス属藻類の葉緑体ゲノム中に存在する配列又は該配列に対し相補的な配列に基づいて設計されたものであれば、どのような塩基配列を有するものでもプライマーとして用いることができる。ここでプライマーは、設計時に鋳型として使用する配列に対し相同的な場合と相補的な場合があり、一般にフォワードプライマーの場合は鋳型配列に対し相同配列となり、リバースプライマーの場合は鋳型配列に対し相補配列となることに留意してプライマーを設計する必要がある。このようなプライマーの設計は当業者には周知である。
【0028】
例えば、葉緑体SSU rDNAの配列に基づいて設計された本検出用核酸断片を一方のプライマーとして使用する場合には、配列番号1で示される葉緑体SSU rDNAの塩基配列の適当な領域に基づいてもう一方のプライマーを設計することができる。また、例えばrbcLの配列に基づいて設計された本検出用核酸断片を一方のプライマーとして使用する場合には、配列番号6で示されるrbcLの塩基配列の適当な領域に基づいてもう一方のプライマーを設計することができる。
【0029】
なお、検出の特異性を上げる必要がある場合には、フォーワードプライマー及びリバースプライマーの両方に本検出用核酸断片を用いることが望ましい。さらに検出の特異性を上げる必要がある場合には、本検出用キットは2組以上のプライマーを含んでもよい。
【0030】
(2)プローブ
本検出用キットに含まれるプローブは、上記の検出用核酸断片からなる。このプローブは、相補性に基づいてディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類に特異的な配列とハイブリダイズ可能であれば、DNAプローブであってもRNAプローブであってもよい。
本検出用キットは、1つのプローブを含んでもよいし、又は検出の特異性を上げる必要がある場合には2つ以上のプローブを含んでもよい。
【0031】
(3)その他の成分
本検出用キットは、プライマーを含む場合には、さらに、反応液を構成するバッファー、dNTP混合物、酵素類(逆転写酵素、RNaseHなど)、校正用の標準試料などを含んでもよい。または、本検出用キットは、プローブを含む場合には、さらに、ハイブリダイゼーションバッファー、洗浄バッファー、マイクロプレート、ナイロンメンブレンなどを含んでもよい。
【0032】
3.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出
ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出(以下、「本検出方法」ともいう)は、「1.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片」の項に記載の検出用核酸断片を用いて行うことができる。通常は、本検出用核酸断片をプライマー及び/又はプローブとしてそれぞれ増幅反応又はハイブリダイゼーション反応において用いることにより、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の特異的検出が可能となる。また、本検出方法は、「2.ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出用キット」の項に記載の検出用キットを用いてさらに簡便に行うことができる。なお、本発明において「検出」とは、単に試料中にディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類が存在するかどうかを判定することのみならず、これらの微細藻類が試料中にどのくらい存在するかを判定する定量的検出をも含んでいる。
【0033】
本検出方法において、試料は、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類が存在するか否かを検出することが望まれるものであれば特に限定されず、例えば、海水、海水から採集した藻類、二枚貝などが挙げられる。本検出方法においては、試料をそのまま使用することができる場合もあり、例えばin situハイブリダイゼーションを行う場合には、ヌクレポアフィルター等の適当なフィルター又はスライドガラス上に試料を固定してハイブリダイゼーション反応を行えばよく、試料から被検核酸を調製する必要はない。フィルター又はスライドガラス上への試料の固定は、当業者に公知の方法で行うことができる。
【0034】
また通常は、この試料から、検出方法を行うための被検核酸を調製する。被検核酸は、核酸であればDNA又はRNAのいずれでもよい。DNA又はRNAは、当技術分野で周知の方法を適宜使用して抽出することができる。例えば、DNAを抽出する場合には、フェノール抽出及びエタノール沈殿を行う方法、ガラスビーズを用いる方法など、またRNAを抽出する場合には、グアニジン−塩化セシウム超遠心法、ホットフェノール法、又はチオシアン酸グアジニウム−フェノール−クロロホルム(AGPC)法などを利用することができる。以上のように調製した試料又は被検核酸を用いて、以下に示す増幅反応及び/又はハイブリダイゼーション反応を行う。
【0035】
(1)プライマーを用いる増幅反応
本検出方法においては、本検出用核酸断片をプライマーとして用いて被検核酸を鋳型とした増幅反応を行い、その特異的増幅反応を検出することにより、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出を行うことができる。
【0036】
増幅手法としては、特に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の原理を利用した公知の方法を挙げることができる。例えば、PCR法、LAMP(Loop−mediated isothermal AMPlification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等を挙げることができる。増幅は、増幅産物が検出可能なレベルになるまで行う。
【0037】
例えば、PCR法は、被検核酸であるDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼにより、一対のプライマー間の塩基配列を合成するものである。PCR法によれば、変性、アニーリング及び合成からなるサイクルを繰り返すことによって、増幅断片を指数関数的に増幅させることができる。PCRの最適条件は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0038】
またRT−PCR法では、まず、被検核酸であるRNAを鋳型として、逆転写酵素反応によりcDNAを作製し、その後、作製したcDNAを鋳型として一対のプライマーを用いてPCR法を行うものである。
【0039】
なお、増幅手法として競合PCR法やリアルタイムPCR法等の定量的PCR法などを採用することにより、定量的な検出が可能となる。例えば競合PCR法は、同じプライマーを用いて、定量の内部標準となる競合的鋳型から得られる増幅産物と被検核酸から得られる増幅産物との量を比較することにより、被検核酸に含まれる検出対象を定量することができる。また、検出の特異性を高めるために、2組以上のプライマーを用いて2回以上増幅反応を行ってもよく、そのような増幅手法はnested PCR法として当技術分野で公知である。
【0040】
本検出方法においては、本検出用核酸断片をプライマーとして用いて特異的な増幅反応が起こる条件下で増幅反応を行う限り、その増幅手法は特に限定されない。また、特異的な増幅反応が起こるような条件は、当業者であれば適宜設定することができる。
【0041】
上記増幅反応後に特異的な増幅反応が起こったか否かを検出するには、増幅反応により得られる増幅産物を特異的に認識することができる公知の手段を用いることができる。例えば、アガロースゲル電気泳動法等を利用して、特定のサイズの増幅断片が増幅されているか否かを確認することにより、特異的な増幅反応を検出することができる。
【0042】
増幅産物のサイズは設計したプライマー間の塩基配列に基づいて推測することが可能である。例えば、葉緑体SSU rDNAの塩基配列に基づいてプライマーを設計した場合には、配列番号1で示される塩基配列においてプライマー間の距離を算出することにより、上記プライマーを用いて得られる増幅産物のサイズを予測することができる。また、rbcLの塩基配列に基づいてプライマーを設計した場合には、配列番号6で示される塩基配列においてプライマー間の距離を算出することにより、上記プライマーを用いて得られる増幅産物のサイズを予測することができる。
【0043】
あるいは、増幅反応の過程で取り込まれるdNTPに、放射性同位体、蛍光物質、発光物質などの標識体を作用させ、この標識体を検出することができる。放射性同位体としては、32P、125I、35Sなどを用いることができる。また蛍光物質としては、例えば、フルオレセン(FITC)、スルホローダミン(TR)、テトラメチルローダミン(TRITC)などを用いることができる。また発光物質としてはルシフェリンなどを用いることができる。
【0044】
これら標識体の種類や標識体の導入方法等に関しては、特に制限されることはなく、従来公知の各種手段を用いることができる。例えば標識体の導入方法としては、放射性同位体を用いるランダムプライム法が挙げられる。
【0045】
標識したdNTPを取り込んだ増幅産物を観察する方法としては、上述した標識体を検出するための当技術分野で公知の方法であればいずれの方法でもよい。例えば、標識体として放射性同位体を用いた場合には、放射活性を、例えば液体シンチレーションカウンター、γ−カウンターなどにより計測することができる。また標識体として蛍光を用いた場合には、その蛍光を蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーなどを用いて検出することができる。
【0046】
以上のようにして特異的な増幅反応が検出された場合には、試料中にディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類が存在していることになる。
【0047】
(2)ハイブリダイゼーション
本検出方法においては、本検出用核酸断片をプローブとして用いて試料又は被検核酸に対するハイブリダイゼーション反応を行い、その特異的結合(ハイブリッド)を検出することにより、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出を行うこともできる。
【0048】
ハイブリダイゼーション反応は、本検出用核酸断片からなるプローブがディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類に由来する塩基配列のみと特異的に結合するような条件、すなわちストリンジェントな条件下で行う必要がある。そのようなストリンジェントな条件は当技術分野で周知であり、特に限定されない。
【0049】
本検出方法においてハイブリダイゼーションを行う場合には、プローブに蛍光標識(フルオレセイン、ローダミンなど)、放射性標識(32Pなど)、酵素標識(アルカリホスファターゼ、西洋ワサビパーオキシダーゼ等)、ビオチン標識等の適当な標識を付加することができる。従って、本検出用核酸断片には、上記のような標識を付加した核酸断片も含まれる。
【0050】
標識化プローブを用いたディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の検出は、試料又は被検核酸とプローブとをハイブリダイズ可能なように接触させることを含む。「ハイブリダイズ可能なように」とは、上述したストリンジェントな条件下にて特異的な結合が起こる環境(温度、塩濃度)において、ということである。具体的には、試料又は被検核酸をスライドグラス、メンブラン、マイクロタイタープレート等の適当な担体に担持し、標識を付加したプローブを添加することにより、プローブと試料又は被検核酸とを接触させてハイブリダイゼーション反応を行い、ハイブリダイズしなかったプローブを除去した後、試料又は被検核酸とハイブリダイズしているプローブの標識を検出する。標識が検出された場合には、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類が試料中に存在していることになる。また、標識の濃度を指標とすることにより、定量的な検出も可能となる。標識化プローブを用いた検出方法の例としては、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法等を挙げることができる。
【0051】
あるいは、本検出方法においては、プローブではなく被検核酸を標識化することによっても行うことができる。この場合は、次のような方法によって検出を行うことができる。すなわち、プローブをスライドグラス、メンブラン、マイクロタイタープレート等の適当な担体に担持し、被検核酸を標識化した後でプローブとのハイブリダイゼーション反応を行い、ハイブリダイズしなかった被検核酸を除去した後、プローブとハイブリダイズしている被検核酸の標識を検出する。標識の濃度を指標とすることにより、定量的な検出も可能となる。被検核酸を標識化する方法としては、マイクロアレイ法等を挙げることができる。
【0052】
また、本検出方法は、プローブ及び被検核酸のいずれも標識化せず、プローブと試料又は被検核酸とのハイブリダイゼーションによって形成された二本鎖核酸(ハイブリッド)を検出することによっても行うことができる。この場合には、プローブ又は試料若しくは被検核酸のいずれを担体に担持してもよい。二本鎖核酸の検出は、例えば、核酸の二本鎖部分に特異的に結合する蛍光色素等を用いて行うことができる。そのような色素としては、例えば、特開2002−181816号公報に記載された蛍光インターカレータ等を挙げることができる。
【0053】
本検出方法においてハイブリダイゼーションを行う場合、被検核酸はDNA及びRNAのいずれでもよいが、高感度の検出を必要とする場合には、RNAを被検核酸とする方が望ましい。
【0054】
また、検出感度を高めるために、複数の検出用核酸断片を組み合わせてプローブとして用いることにより、検出の特異性を高めることができる。さらに高感度の検出を必要とする場合には、増幅反応とハイブリダイゼーション反応とを組合せ、本検出用核酸断片をプライマーとして用いた増幅反応を行って得られる増幅産物に対し、別の本検出用核酸断片をプローブとして用いてハイブリダイゼーションを行うこともできる。そのような組合せを利用する場合のプライマー及びプローブの設計は当業者であれば理解することができる。
【0055】
また、ガラス、シリコン等の適当な基板上にプローブを単独又は複数組み合わせて保持する装置は、ディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類の簡便かつ迅速な検出器とすることができる。そのような装置としては、例えばDNAチップ、マイクロアレイなどが知られている。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕ディノフィシス属藻類の採集及び分離
fortii及びnorvegicaは、それぞれ2001年5月30日及び7月13日に岩手県大船渡市起喜来湾にてプランクトンネットを用いて採集した。acuminataは2001年8月30日に宮城県気仙沼市気仙沼湾にて同様にプランクトンネットを用いて採集した。生きた細胞はキャピラリーピペットによって分離し、濾過(0.2μm)海水中で数回洗浄した。他の微細藻類のコンタミネーションの可能性を調べるために、最後の洗浄に用いた濾過海水をIsopore(登録商標)メンブレンフィルター(0.2μm)(GTTP01300;Millipore Co., Bedford, USA)で濾過し、その濾紙上のサンプルを、青色又は緑色光励起下の蛍光顕微鏡(BH2− RFC;Olympus Co., Tokyo, Japan)を用いて観察した。ディノフィシス属藻類の細胞内の葉緑体の存在も蛍光顕微鏡にて確認された。ディノフィシス属藻類の葉緑体はオレンジ色の蛍光を示し、このことからディノフィシス属藻類の葉緑体内におけるフィコビリンの存在が確認された。
【0058】
〔実施例2〕クリプト藻類の培養
Geminigera cryophila Hill MBIC(Marine Biotechnology Institute Culture Collection)10567は、南極海で採取されたものであり、海水1リットルに対して、NaNO 200mg;NaHPO 1.4mg;KHPO 5mg;NHCl 2.68mg;Fe−EDTA 5.2mg;Mn−EDTA 0.332mg;Na−EDTA 37.2mg;ZnSO−7HO 0.023mg;CoSO−7HO 0.014mg;NaMoO−HO 0.0073mg;CuSO−5HO 0.0025mg;HSeO 0.0017mg;チアミン−HCl 0.2mg;ビオチン 0.0015mg;ビタミンB12 0.0015mg;MnCl−4HO 0.18mgを溶かしたものを培地に用いて、4℃で培養を行った。
【0059】
〔実施例3〕DNAの抽出
ディノフィシス属藻類3種からのDNA抽出はMarinら(Marin I, Aguilera A, Reguera B, Abad JP (2001) Preparation of DNA suitable for PCR amplification from fresh or fixed single dinoflagellate cells. Biotechniques 30: 88−93)に従って行った。まず、10〜100細胞をバッファーA(0.5×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS),0.25Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)pH9.5)で5回洗浄後、10μlのバッファーAに懸濁した。そこに10μlの1.6%低融点アガロースを加え、4℃でインキュベートすることによって固化させた。その固化したアガロースゲルをバッファーB(0.4MD−マンニトール pH5.8,1%セルラーゼ,1%ヘミセルラーゼ)を用いて26℃で3時間、その後ESP溶液(0.5M EDTA pH9.5,1%ラウロイル−サルコシン,1mg/mlプロテイナーゼK)を用いて50℃で48時間インキュベートすることによって、細胞からDNAだけを精製した。
【0060】
培養したGeminigera cryophilaの細胞は対数増殖期の中期から後期のものが回収された。回収された細胞ペレットは液体窒素中にて乳棒、乳鉢を用いてホモジナイズされた。ホモジナイズ後、核酸抽出キットSepaGene(登録商標)(Sanko Junyaku, Tokyo, Japan)を用いて、DNA抽出を行った。
【0061】
〔実施例4〕葉緑体SSU rDNAの解析
ディノフィシス属藻類の3種及びcryophilaから葉緑体SSU rDNAをPCR増幅するために、プライマーセットはPL16S1(5’−GRGCTYGCGKCTGATTAGCT−3’;配列番号9、配列中、「R」はG又はAを、「Y」はT又はCを、「K」はG又はTを表す)とPL16S2(5’−CAGWACSSCTACCTTGTTAC−3’;配列番号10、式中、「W」はA又はTを、「S」はG又はCを表す)(Takishita K, Nakano K, Uchida A (1999) Preliminary phylogenetic analysis of plastid−encoded genes from an anomalously pigmented dinoflagellate Gymnodinium mikimotoi (Gymnodiniales, Dinophyta). Phycol. Res., 47: 257−262)、PCR増幅のための酵素はTakara EX TaqTM(TaKaRa, Tokyo, Japan)、サーマルサイクラーはProgene thermal cycler(Techne, Cambridge, UK)を用いた。サーマルサイクルの条件はすべて、94℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間を1サイクルとして30サイクル行った。正確な塩基配列を得るために(PCR反応の際に起こる不正な塩基取り込みの可能性を排除するために)、それぞれのディノフィシス属藻類由来のそれぞれの遺伝子のPCR反応は複数回、独立のチューブ内で行った。PCR増幅産物は1.0%アガロースゲル電気泳動にて確認した。PCR増幅産物はTA Cloning(登録商標)kit(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)のベクターpCRIIを用いてクローン化され、BigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Ready Kit(PE Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて、シークエンス反応を行い、ABI PRISMTM 3700 DNA Analyzer(PE Biosystems)を用いて塩基配列を決定した。決定された塩基配列はソフトウェアGENETYX−MAC(Software Development, Tokyo, Japan)を用いて解析された。ディノフィシス属藻類の葉緑体SSU rDNA特異的塩基配列はcryophilaの葉緑体SSU rDNAの塩基配列との比較によって見出された(図1)。
【0062】
〔実施例5〕葉緑体rbcLの解析
ディノフィシス属藻類の3種からrbcLをPCR増幅するために、プライマーセットはGMRUBISCO1(5’−TGGACIGTIGTITGGACIGA−3’;配列番号11、配列中、「I」はイノシンを表す)とGMRUBISCO2(5’−GCYTGDATICCRTCIGGRTG− 3’;配列番号12、式中、「Y」はT又はCを、「I」はイノシンを、「R」はG又はAを表す)(Takishita K, Nakano K, and Uchida A (2000) Origin of the plastid in the anomalously pigmented dinoflagellate Gymnodinium mikimotoi (Gymnodiniales, Dinophyta) as inferred from phylogenetic analysis based on the gene encoding the large subunit of form I−type RuBisCO. Phycol. Res., 48: 85−89)を用いた。PCR増幅のための酵素はTakara EX TaqTM(TaKaRa, Tokyo, Japan)、サーマルサイクラーはProgene thermal cycler(Techne, Cambridge, UK)を用いた。サーマルサイクルの条件はすべて、94℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間を1サイクルとして30サイクルで行った。正確な塩基配列を得るために(PCR反応の際に起こる不正な塩基取り込みの可能性を排除するために)、それぞれのディノフィシス属藻類由来のそれぞれの遺伝子のPCR反応は複数回、独立のチューブ内で行った。PCR増幅産物は1.0%アガロースゲル電気泳動にて確認した。PCR増幅産物はTA Cloning(登録商標)kit(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)のベクターpCRIIを用いてクローン化され、BigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Ready Kit(PE Biosystems)を用いて、シークエンス反応を行い、ABIPRISMTM 3700 DNA Analyzer(PE Biosystems)を用いて塩基配列を決定した。決定された塩基配列はソフトウェアGENETYX−MAC(Software Development, Tokyo, Japan)を用いて解析された。ディノフィシス属藻類のrbcL特異的塩基配列はcryophilarbcLの塩基配列との比較によって見い出された(図2)。
【0063】
〔実施例6〕FISH法によるディノフィシス属藻類の特異的検出
本発明の核酸断片のディノフィシス属藻類に対する特異性を調べるために、下痢性貝毒原因渦鞭毛藻のDinophysis spp.と、その葉緑体の起源に近縁と思われるクリプト藻種の培養株に対して、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行った。
【0064】
Dinophysis はプランクトンネット試料から分離したfortii(2002年5月21日岩手県越喜来湾採集)、acuminata(2002年8月1日宮城県気仙沼湾採集)、tripos(2002年7月31日越喜来湾採集)の計3種の天然細胞を、クリプト藻類はGeminigera cryophila(MBIC10567)、Guillardia theta (CCMP327)、Plagioselmis prolonga(CCMP644)の対数増殖期の培養株を用いた。その後の細胞の固定とFISH操作はMiller及びScholin(2000, J. Phycol 36, 238−250)に従って行った。すなわち、細胞の入った海水若しくは培養液と、固定液(25×SET:蒸留水:90% EtOH=2:3:25)を1:9の割合で混合し、孔径0.8μm、直径13mmのヌクレポアフィルター(ミリポア)上に細胞を吸引−トラップした。その後の操作は全てフィルター上で行った。ハイブリダイゼーションバッファー(5×SET中、0.1% IGEPAL CA−630,25μg/mL Poly A)にて室温で30分間インキュベート後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したSSU rDNAプローブ(5’−CCCTTTCAGGAAGATTTGTGAC−3’:配列番号13(配列番号3の相補配列に相当する))及びrbcLプローブ(5’−GAAGTATTGGTCTTGTGCAC−3’:配列番号14(配列番号8の相補配列に相当する))を45℃で3時間ハイブリダイズさせ(ハイブリダイゼーションバッファー中プローブ濃度5μg/mL)、45℃の5×SETにて2回吸引洗浄し、未反応のプローブを除去した。なお、以上のMiller及びScholinのオリジナルの方法に加えて、固定後の細胞に殺菌灯を1時間照射し、自家蛍光を減衰させた。また、プローブが葉緑体にハイブリダイズしたかを把握するために、対比染色として核領域を4’、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)溶液(5×SET中0.5μg/mL)で室温にて15分間かけて染色した。
【0065】
以上の操作を行った細胞をフィルターごとスライドグラスにマウントし、無蛍光エマルジョンオイルで封入した後、蛍光顕微鏡(オリンパスBH2−RFC)紫外線励起光下でDAPIによる核領域を、青色励起光下でプローブの葉緑体への結合状況を観察した。その結果、いずれのプローブを用いた場合でも、ディノフィシス属藻類のみにおいてFITC由来の特異的蛍光が観察され、cryophylaを含めた3種のクリプト藻類では、その蛍光は観察されなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の検出方法によれば、現場海水域においてディノフィシス属藻類及びその増殖に寄与する微細藻類を高精度、特異的かつ迅速に検出することができ、さらにそれらの出現消長の追跡も可能になる。従って本発明により、二枚貝養殖業に多大な被害を与える下痢性貝毒の正確な予知が可能になると期待される。将来的には、これらの特異的な配列をプローブとしたDNAチップの開発により、下痢性貝毒の迅速な予知システムの確立も可能となりうる。
【0067】
【配列表】
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【0068】
【配列表フリーテキスト】
配列番号3〜5:合成オリゴヌクレオチド
配列番号8〜10:合成オリゴヌクレオチド
配列番号11及び12:合成オリゴヌクレオチド(配列中、「n」はイノシンを表す)
配列番号13及び14:合成オリゴヌクレオチド
【図面の簡単な説明】
【図1】ディノフィシス属藻類(上)とcryophila(下)の葉緑体SSU rDNAの塩基配列を比較した図である。
【図2】ディノフィシス属藻類(上)とcryophila(下)のrbcLの塩基配列を比較した図である。

Claims (9)

  1. 配列番号1で示される塩基配列において、9番のg、15番のt、16番のa、19番のc、739番のc、740番のc、746番のg、747番のg、998番のa及び999番のgからなる群より選択される少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有し、かつプライマー又はプローブとして実質的な機能を有することを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片。
  2. 塩基配列が、配列番号1で示される塩基配列において、9番〜19番、739番〜747番及び998番〜999番からなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列である、請求項1記載の核酸断片。
  3. 塩基配列が配列番号3〜5のいずれかに示される塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列である、請求項1記載の核酸断片。
  4. 配列番号6で示される塩基配列において、配列番号7で示される塩基配列と比較して異なる塩基のうち少なくとも1つの塩基を含む連続する塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列を有し、かつプライマー又はプローブとして実質的な機能を有することを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用核酸断片。
  5. 塩基配列が、配列番号6で示される塩基配列において、61番〜82番若しくは388番〜412番の領域の全部若しくは一部を含む塩基配列、又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列である、請求項4記載の核酸断片。
  6. 塩基配列が配列番号8で示される塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な塩基配列である、請求項4記載の核酸断片。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸断片からなるプライマー及び/又は請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸断片からなるプローブを含むことを特徴とするディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出用キット。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸断片をプライマーとして用いて、試料から調製した被検核酸を鋳型とした増幅反応を行うことを特徴とする、該試料中のディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸断片をプローブとして用いて、試料又は該試料から調製した被検核酸に対するハイブリダイゼーション反応を行うことを特徴とする、該試料中のディノフィシス属藻類及びディノフィシス属藻類の増殖に寄与する微細藻類の検出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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